透華「名探偵透華の事件簿」 (21)

とある島


透華「今日は我が龍門渕グループに付き合いがある、とある会社の社長の保有する島の屋敷に招待されてやってきましたわ」

透華「私の家の者は来れませんでしたから、代わりに麻雀部の面々を連れてきましたの」

透華「独白終わり」

純「何言ってんだ透華」

透華「なんでもありませんわ」

一「それにしても残念だねー。折角水着持ってきたのに、台風が近づいてるせいで泳げないんだもん」

智紀(常に水着みたいな格好のくせに……)

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透華「まあ、泳ごうと思えば長野のプールに行けばいいし、たまにはあなた達も使用人の仕事を休んで羽を伸ばしなさい」

衣「よし、じゃあ麻雀を打とう!」

一「そうだね。今日は雨雲で月も隠れてるし……」

メイド「あの……」

一「ん?どうしたのこの屋敷のメイドさん」

メイド「それが、夕食ができたから御主人様をお呼びしようとしたのですが、いくら部屋に呼びかけても返事をしないんです」

純「寝てんじゃねーの?」

メイド「いえ……。御主人様は多忙が故、眠りが浅いので、すぐ起きるはずなんです」

透華「これは……殺人事件の匂いがしますわ!」

透華「いつもは無粋な刑事が私の現場入りを拒んでますけど、今日は刑事がいないから私の独壇場でしてよ!」

純「いや普通一般人を通さないだろ」

透華「ミステリー小説では刑事が探偵の協力者なのはお約束でしてよ」

智紀「現実にそんな刑事がいたら世も末……」

メイド「それで……」

透華「あ、そうでしたわ。では部屋に行きましょう。一、ピッキングで鍵を開けなさい」

一「はいはい」

純「本当に人が死んでたら、そんなん見たらヤバイから衣は留守番な」

衣「むー」

御主人部屋


一「うん、本当に鍵がかかってるね。これをちょいちょいと」ガチャリコ

御主人「」

透華「!!ベッドの上で心臓をナイフで一突き……これは殺人事件ですわ!」

メイド「そんな……御主人様……」

純「流石に人が死んでテンション上がるのはどうかと思う」

一「まあ会ったばかりの人だから泣きはしないけどね」

智紀「むしろ自分の身が心配……」

透華「窓には鍵がかかってる……そして部屋の鍵は机の上」

透華「これはミステリーの王道!トリックの王様!ズバリ!」



透華「密室殺人ですわ!」



一「いっつも思うんだけど、密室ってやってる事はワンパターンだよね」

純「まあ、種の違うだけの同じ手品を見せられてる気分だな」

智紀「そもそも、密室にする理由が意味不明……」

メイド「と、とにかく私は警察に電話してきます!」

透華「チッ」

一「舌打ちしたよ……」

透華「今この屋敷にいる人は私たち5人とハギヨシ、メイドと、館の主人の妻と息子三人、長男の妻、弟夫妻、甥の15人ですわね」

透華「探偵シリーズモノ的にレギュラーメンバーの私たちは犯人という事はありえませんから、容疑者は9人ですわね」

智紀「ミステリー小説は先がどうなるかわからない意外性こそが売りなのに、レギュラーメンバーは犯人にも被害者にもならないって確定しているのはどうかと思う……」

透華「ハギヨシ、みなさんをロビーに集めなさい」

ハギヨシ「わかりました」

ロビー


透華「というわけですわ」

妻「そんな……あなた……」

長男「父さんがそんな……」


(中略)


甥「一体誰が叔父さんを……」

透華「この館の窓や扉を全てハギヨシが確認したけれど、全て施錠されていましたわ。つまり、犯人はこの中にいますわ!」

一「共犯者の可能性もあるのにね」

純「それ考慮したらすごく面倒くさくなるからな」

一「そう言えば館モノのミステリーにありがちな、館の見取り図は無いの?」

智紀「どうせつけたところで大抵の読者は真面目に見て推理したりしない……」

純「探偵が犯人を推理する本格推理モノも減ってきたしな」

一「ミステリーで有名な某作家も、ちょっと前から本格推理小説じゃなくて、犯人や刑事視点の人情モノやドキュメントモノになってきたしね」

透華「ではまずみなさんのアリバイをお聞きますわ」


一時間後


透華「みなさん、アリバイがありますわね。つまりこれは不可能犯罪!」

一「ミステリーモノの基本だね」

純「ていうか下手にアリバイトリックしたら、それが破れた時に怪しまれる事になるんだからいっそアリバイが無いって言ってもいいんじゃないのか?」

智紀「いくら怪しまれてもどうせ証拠が無ければ捕まらない……」

透華「アリバイトリックを破るのは探偵の基本ですわ」

メイド「あの……」

透華「ん?どうしたんですの」

メイド「実は、台風のせいで船が出せなくて、警察の方が来れないんです……」

透華「なるはど……」

智紀「孤島や雪山とかの封鎖された空間での事件は、海外ではとっくに廃れたらしい……」

一「そもそも、そんな容疑者が絞られる場所で殺人を犯すメリットってあるのかなぁ。夜道で通り魔でもした方が良さそうだけど」

純「そりゃ、透華みたいな探偵が困るからだろ」

透華「それだけではありませんわ。恐らく、警察が介入できず、なおかつ標的に逃げられないという状況が欲しいんですの」

衣「標的……つまり」



キャァァァァ!!



純「なるほど。連続殺人か」



殺害現場


透華「今度は弟さんですの……。浴場で縛られて溺死してますわね」

弟妻「そんな……酷い……」

一「流石にヘビィな死に方だね……」

メイド「ま、まさかこれは……!」

透華「どうしたんですの?」

メイド「実は……この島に伝わるわらべ歌があって」



一人目は寝たまま起きなかった云々

二人目は川に溺れた云々

三人目は真っ二つになった云々

四人目は火傷を負った云々

五人目は首を吊った云々

そして誰もいなくなったちゃんちゃん



透華「なるほど……わらべ歌に見立てた、見立て殺人ですわね」

一「この歌ってパクリじゃん……ていうか作中の歌を自作ってどうなのさ。殺人しやすいよう都合いい歌にできるじゃん」

純「某大物推理作家は見立て殺人の話は二本書いてたな。一本は自分で考えた歌だけど、もう一本は既にある歌を使ってたぜ」

智紀「海外の某女流推理作家も、有名な歌を使ってた……」

一「殺人に必要なプロセスを誤魔化すためにやってるってのが、ありふれた見立て殺人の理由だっけ」

純「労力考えたら絶対他にやりようあるよな」

透華「まあそれはそれとして、見立て殺人が起こったら一つ問題があるんですの」

衣「?」

透華「物語の展開上、歌が終盤になるまで犯人当てを待たないといけませんの……」

純「oh……」




なんやかんやあってあと二人死んだ



透華「さて、これまでの事件で誰が犯人かわかりましたわ」

純「へー」

一「ミステリー小説の読者なんて、だいたい全員に対して、こいつが犯人かも。って思ってるから、誰が犯人でも驚かないんだよね」

透華「ふっふっふ。心配はご無用。今度は意外な犯人ですわ」

衣「おお!」

透華「犯人はメイド、あなたですわ!」

メイド「そ、そんな……私はアリバイが……」

透華「いいえ。あなたなは共犯者がいたんですの。そう……あなたの双子の姉が!」

一「でたよ双子トリック」

純「これ卑怯だよな」

智紀「ノックスの十戒では、あらかじめ読者に知らせておけばいいらしい……」

メイド「私の負けよ探偵さん。あいつらは昔私たちに(ry」



透華「こうして隠れていたメイドの姉も見つけ出し、無人島を舞台にした事件は幕を閉じましたわ」

透華「さて、次の事件はいつかしら」

一「ミステリー小説に色々疑問点や御都合展開あるけどさ」

純「うん」

智紀「一番の御都合展開は」



「どうして探偵はいく先々で事件に遭うんだ」



透華「それは禁句でしてよ」



カンッ

乙です

最終的に出所した二人のメイドが透華ん家のメイドになるんですねわかります

短っ!VIPでやれや

透華「フーダニット(Who done it)」

透華「誰が殺したか」

透華「既に挙げた通り、これはもはや重要じゃありませんの」

透華「読者は大体犯人当てを」


本命:メイド
第二候補:妻
……
大穴:甥


透華「のように、様々な候補を張り巡らせていますの」

透華「よって、犯人が明かされても『俺の予想通り』となるわけですわ」

透華「けれど作家も様々な手を凝らしますの」

透華「探偵が犯人、刑事が犯人、語り手が犯人……」

透華「けれどただ一つ、不可能な犯人がいますわ」

透華「それは」

透華「読者が犯人」

透華「ミステリー界で長年不可能と言われ続けましたの」

透華「もしそれを可能にした小説を書き上げれば、ミステリー界に名を残すでしょうね」

おつー

特定人物の未公開犯罪を暴露する筋立てで最後に実名で犯人を暴けば「読者が犯人」の推理小説ができそうだな。

>>17
作中の登場人物の一人に過ぎない読者が犯人だったり、被害者に特殊能力があったりだと、真にその本を手に取ってる読者が「俺が犯人だ!」って納得できない

名探偵ならむしろ一だろう某金田一の孫的に考えて

おつ

なんか一レス目の時点で推理要素なさそうな予感に怯えてたら本当に推理要素なかった…乙

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