いすず「唐突だけど鳴上くん。明日の休日、私と遊園地に行かない?」(955)





登場するのはゲームクリア時のハイスペック能力を持った

アニメ版番長だと思ってください。

P4(PS2版)はネタバレが多少あります。

見切り発車ですのでエタったらごめん。マジごめん。

>>1は甘ブリ原作未読のアニメ組です。





鳴上「…………」

いすず「…………」


鳴上(この状況……どう解釈すればいいのか)

鳴上(2年生に転入してきた美少女が、放課後『二人だけで話がしたい』と持ちかけてきた)

鳴上(名前は千斗いすず、という)

鳴上(……多少よこしま……もとい、俺にも春が来たかと喜んでいたが)

鳴上(それは俺の勘違いに過ぎなかった……)


いすず「…………」

鳴上「…………」


鳴上「……ひとつ聞きたいのだが」

鳴上「なぜ、俺はマスケット銃を突きつけられているんだ?」


     ダーン!!

鳴上「!!」

いすず「……とにかく」

いすず「明日の休日。 私に付き合いなさい」

いすず「鳴上くん」

鳴上「…………」


―――――――――――


翌日の休日

甘城駅前のバス停


鳴上「…………」

いすず「…………」


鳴上(俺は彼女に何かしたのだろうか?)

鳴上(顔立ちは整っているのだが、常に仏頂面で愛想がない)

鳴上(それでも私服のコーディネートはセンスを感じるし十分可愛いのだが)

鳴上(……そして何よりもすごい巨乳だ)


鳴上「…………」

鳴上「ところで……遊園地と言っていたが、どこに行くんだ?」

いすず「甘ブリよ」

鳴上「甘ブリ?」


いすず「甘城ブリリアントパーク。 通称甘ブリ」

いすず「遊園地というのは少し違ったわね。 テーマパークよ」

鳴上「…………」


鳴上(甘城ブリリアントパーク?)

鳴上(正直、聞いた事もないテーマパークの名前だ)

鳴上(しかし……なぜそんなところへ……?)


鳴上「…………」

いすず「…………」

鳴上「ええと、俺はどうして」

いすず「バスが来たわ」

鳴上「…………」


     ブロロロロ…

鳴上「…………」

いすず「…………」

鳴上「……理由を聞かせてくれないか?」

いすず「最後に話すわ」

鳴上「…………」

いすず「…………」

鳴上「……とりあえず、俺は君をなんと呼べばいい?」

いすず「好きに呼べばいい」

鳴上「じゃあ……いすずで構わないか?」

いすず「どうぞ」


     ツギハ~ 甘城ブリリアントパーク~

     甘城ブリリアントパーク~

鳴上「……着いたみたいだな」

いすず「違うわ」

いすず「もう一つ先の停留所よ」

鳴上「え?」

鳴上「しかし、立派な西洋風の城が見えているが?」

いすず「…………」

いすず「……あれはラブホテルよ」

鳴上「……は?」

いすず「ラブホテルよ」

鳴上(なぜ二回言う)


いすず「10年くらい前、今の場所に移転した後も停留所の名前がそのままなの」

いすず「名称変更をお願いしているんだけど、なかなか通らなくて」

いすず「間違えて降りるゲストも多いというのに……」

鳴上「ゲスト?」

いすず「お客様の事よ」

いすず「テーマパークではお客様を『ゲスト』」

いすず「従業員を『キャスト』と呼ぶの」

鳴上「そうなのか……」

鳴上「…………」

鳴上「しかし変わった事に詳しいな?」

いすず「…………」

いすず「もうすぐ着くわ」



―――――――――――


     ヒュウウウウウ……

鳴上「…………」

いすず「…………」


     そこにあったのは……身も蓋もない言い方をすると

     潰れかけの遊園地・正面ゲート広場、というのが的確だ。

     錆だらけの正門や看板……ところどころ雑草が生え、ひび割れている石畳……

     壊れたのか、使わなくなったのか、その両方なのか分からないが

     干上がってボロボロの噴水(と思わしきオブジェ)……


鳴上「…………」

いすず「行くわよ、鳴上くん」


鳴上(……しかし休日で この客入りか)

鳴上(まあしょうがないとは言え、ガラガラ……寂しい光景だ)

鳴上(…………)

いすず「最初はソーサラーズ・ヒルに行きましょう」

いすず「甘ブリのマスコットでもある魔法の国メープルランドから来た妖精達が」

いすず「ゲストをもてなしてくれてるわ」

鳴上「……任せる」

―――――――――――

いすず「ここはティラミーのフラワーズ・アドベンチャー」

いすず「ティラミーはお花の妖精なの」

いすず「愛と喜びに満ち溢れた世界へ 夢いっぱいのファンシートレインに乗って出発よ」


鳴上(……施設全体がボロボロで入る前から嫌な予感しかしない)

きゃすとぉ「いらっしゃいませー……」

鳴上「…………」

いすず「大人二枚よ」

きゃすとぉ「は~い……ありがとうございまぁ~すぅ……」

鳴上(凄いやる気のなさだ……)

いすず「乗るわよ」

鳴上「……あ、ああ」

     ガガガ……ギギギ……

鳴上(見た目がボロボロなのは言うまでもないが)

鳴上(乗ってるゴンドラ?から、嫌なきしみ音と小刻みな揺れががが)

     ガギィッ!

鳴上「うわっ!?」


いすず「……レールがズレているみたいね」

鳴上「あ、危なくないか?」

いすず「危ないわね」

鳴上「…………」

     ぃ……よぉ……こぉそぉ……ティ……らぉ……

いすず「…………」

鳴上「…………」


鳴上(……設備が古いせいか、電池が切れかかっているのか)

鳴上(おそらく前者だろうが……動きがクタクタしている花のオブジェ群と)

鳴上(締まりのない音声と音楽がとても不愉快だ……)


いすず「…………」

鳴上「……?」

鳴上「なんだ? この場所は……」

いすず「本来なら、あそこのステージでティラミーがゲストに手を振ってくれるのだけど」

いすず「今日も出てこないみたいね」


鳴上(……それ、テーマパーク的に、というか)

鳴上(客商売としてアウトなんじゃないのか……?)


―――――――――――


きゃすとぉ「ありがとうございましたぁ~……」


いすず「…………」

いすず「どうだったかしら?」

鳴上「……ちょっと休憩させてくれ」

鳴上「酔った……」

いすず「わかったわ」

―――――――――――

いすず「次はマカロンのミュージックシアターよ」

いすず「マカロンは音楽の妖精。 彼の奏でる音楽は」

いすず「心洗われるようなメロディでゲストを幸せいっぱいにしてくれるわ」

鳴上「…………」

鳴上「いすず……さっきから気になっているんだが」

鳴上「もっと楽しそうに言えないn」

いすず「行くわよ」



     本日は休業します

     マカロン


いすず「…………」

鳴上「…………」

いすず「……気が乗らないとすぐ休んでしまうの」

鳴上「客商売としておかs」

いすず「きっと芸術家肌なのよ」

鳴上「……次に行こう」

―――――――――――

いすず「ここはモッフルのお菓子ハウス」

いすず「甘ブリの看板マスコットでもある お菓子の妖精モッフルが」

いすず「夢いっぱいのお菓子でゲストをもてなしてくれるわ」


鳴上「…………」


鳴上(ん……?)

鳴上(このアトラクションハウスは小奇麗だな)

鳴上(少なくとも今までの様なボロさは感じられない)

鳴上(…………)

鳴上(看板マスコットだから、か……?)


いすず「どうしたの? 鳴上くん」

鳴上「……何でもない」



     ようこそ、モッフルのお菓子ハウスへ!

     だけどごめんね、いたずらネズミがいっぱい居るんだ

     だから いたずらネズミを懲らしめてくれないかい?


鳴上「…………」

いすず「…………」


     係員の人に魔法の水鉄砲を借りて

     たくさん懲らしめてくれたら、モッフルが素敵な景品をくれるよ!


鳴上「ガン・シューティング……という事か」

いすず「ええ。 まずはキッチンよ」


鳴上「…………」

     にょきっ!

鳴上「! そこか……」

     ヒュン!

鳴上「え!?」

     にょきっ!

鳴上「くっ……!」 ピッ

     ヒュン!

鳴上「は、早い!?」

いすず「…………」

いすず「食料庫に行くと もっと早くなるわ」

鳴上「」


     にょきっ! ヒュン! にょきっ! ヒュン!

にょきっ! ヒュン! にょきっ! ヒュン! にょきっ! ヒュン!

     にょきっ! ヒュン! にょきっ! ヒュン!

鳴上「ちょ、え? は、くっ……」 ピッ ピッ

鳴上「い、いくらなんでも、早すぎないか!?」

いすず「そうかしら?」

―――――――――――

鳴上「はあっ……はあっ……」

     残念! あんまり殺せなかったね!

鳴上「!?」

鳴上「こ、殺してたのか!?」

いすず「そうよ」


鳴上「いやまて」

鳴上「こういうメルヘンチックな施設で『殺す』とかは」

鳴上「子供に対する表現としていかがなものk」


     でもモッフルはあなたに大感謝!

     最後にモッフルと記念写真を撮ってね!


いすず「行くわよ」

―――――――――――

鳴上「…………」

いすず「…………」

     ガチャ…

着ぐるみ?「……もふ」 ペコッ


鳴上「あれがモッフルか」

いすず「ええ」

鳴上「…………」

モッフル「…………」

鳴上(……なぜか睨まれているような)

いすず「モッフル、記念写真を撮りたいのだけど」

モッフル「ふも」 コクッ

     ジー… カシャ☆

モッフル「ふもっ」

いすず「ありがとう」

鳴上「……ちょっと待ってくれ」


いすず「どうしたの?」

鳴上「なぜモッフルが俺といすずの写真を撮るんだ?」

鳴上「こういうのは普通、着ぐるみと一緒に写るものじゃないのか?」

モッフル「……チッ」

鳴上「…………」 ムッ…


鳴上(いくら何でも態度が悪すぎる……)


鳴上「…………」 ハアッ…

鳴上「……次に行こう、いすず」

いすず「わかったわ」



―――――――――――


鳴上「……それにしても」

鳴上「あの着ぐるみのスーツアクター、態度が悪いな」

いすず「……中の人など居ないわ」

鳴上「……?」


鳴上(どういう意味だ?)

鳴上(周りに人は居ないし、別にこんな話をしても問題ないと思うが)


鳴上「……確かに夢を壊したくない気持ちはわかるが」

いすず「そうじゃないの」

いすず「本当に中の人なんて居ないのよ」

鳴上「…………」

鳴上(ますますわからない……)



―――――――――――


いすず「ここは屋内シアターのエレメンタリオ」

いすず「4人の精霊がステージをしているわ」

いすず「磨きぬかれたダンスと、あっと驚くワイヤーアクションが見所よ」

鳴上(……ここの建物もボロいな)

―――――――――――

ミュース「私はミュース。 水の精霊よ♪」

ミュース「今日はエレメンタリオへようこそ!」

シルフィー「私はシルフィー! 風の精霊。 仲良くしてね☆」

コボリー「私は土の精霊コボリー……あの……よろしくお願いします」

サーラマ「私はサーラマ……火の精霊」


鳴上「…………」

いすず「…………」


ミュース「みんなー!」

ミュース「元気ぃ~??」


     シーン…


鳴上(客は……俺たちを入れて4人か)

鳴上(おまけに俺たち以外は寝てるし……)

いすず「…………」


ミュース「わ、わぁ~い! とっても元気ー!」(涙目)

ミュース「張りきっていっくぞぉ~!!」(涙目)


鳴上(……見ていて痛々しいな)

鳴上(4人とも可愛いのに もったいない……)

いすず「…………」


いすず「さ、次へ行くわよ」

鳴上「え?」

鳴上「見ていかないのか?」

いすず「いつもこんな感じなの」

いすず「時間もないし先へ行きましょう」

鳴上「…………」

鳴上「……わかった」

鳴上(何故か……すごい罪悪感)


いすず「次はどきどきコースター」

いすず「スリルと興奮を載せて走る 疾風怒濤の弾丸コースターよ」

鳴上「…………」


鳴上(……ここも設備が古いな)

鳴上(サビだらけではないが、宙返りもないし)

鳴上(違う意味でのスリルなら味わえそうだ……)


いすず「怖いの?」

鳴上「……別の意味で」

いすず「そう」

いすず「乗るわよ」


     ガチャ……キィ パタン

鳴上「…………」

いすず「…………」

     ゴー……

―――――――――――

     ゴー……

     オツカレサマデシタ

鳴上「…………」

いすず「…………」

いすず「どきどきした?」

鳴上「それなりに」

いすず「そう」


いすず「次はブリリアントマーケット」

いすず「甘ブリの最新グッズが目白押しよ」

鳴上「…………」

鳴上(八十稲羽で売っている お土産の雰囲気に似ているな)

―――――――――――

いすず「次はわんぱく広場」

いすず「いつも子供たちの元気が弾けているわ」

鳴上「……俺の目にはお年寄りしか見えないが」

―――――――――――

いすず「次はフリーフォール」

いすず「小さな子供でも楽しめる様に落ちる速度を抑えているわ」

鳴上「……いくらなんでも抑えすぎだと思う」


―――――――――――

いすず「次はコーヒーカップ」

いすず「甘ブリのものは、早さとスリルをとことん追求しているわ」

     ゴ―――――――――――!!

鳴上「だからってこの速度は異常だだだだだ」

     ゴ―――――――――――!!



―――――――――――

    

鳴上「」 チーン…

いすず「大丈夫? 鳴上くん」



―――――――――――


夕方

フードコート


鳴上「……ふう」

鳴上「ようやく落ち着いてきた」


     テク テク テク…


いすず「気分はどう?」

鳴上「いすず……まあ何とか」

いすず「そう」 スチャ…(着席)


いすず「ところでどうだったかしら? 甘ブリは」

鳴上「……率直に言ってもいいのか?」

いすず「ええ……」

鳴上「…………」

鳴上「一言で言うなら」

鳴上「最低の遊園地だった」

いすず「…………」

鳴上「設備は古く、ほとんどの従業員は無気力」

鳴上「清掃もいい加減で不衛生な上に 改善しようとする意欲すら見受けられない」

鳴上「一度来たら、またここへ来ようと思う事は まず無いだろう」

いすず「……耳が痛いわね」


鳴上「いすず。 改めて聞くが」

鳴上「何の為に俺をここへ連れてきたんだ?」

いすず「……その前にまず、怒らないの?」

鳴上「…………」

鳴上「……俺に迷惑をかけている、という」

鳴上「自覚はあるみたいだな」

いすず「…………」

     ゴソゴソ… パララ…

いすず「鳴上悠。 甘城高校3年2組 17歳」

いすず「一年ほど前、家庭の事情で八十稲羽というところに単身転居していたけど」

いすず「今年の新学期からは、両親と共に過ごしている」

鳴上「……え?」


いすず「今でこそ眉目秀麗、成績優秀で社交的だけど」

いすず「以前は内向的で」

いすず「心貧しく、ちぐはぐな伝達力で世間知らずな上に」

いすず「意気地なしの腑抜けだった」

鳴上「……おい」

いすず「多芸多才で大抵の事は そつなくこなせるものの」

いすず「八十稲羽で出来た、妹の様な従兄弟が可愛すぎて」

いすず「極度のシスコンをこじらせる」

鳴上「」

いすず「その事で周囲に引かれているけど、本人はそれに全く気がついていない模様」

いすず「その為、めぼしい友人も彼女も居ない」

鳴上「ぐがっ!?」


いすず「何しろケータイの待受けに その娘の画像を使い」

いすず「お昼はその画像を眺めながら ぼっち飯……」

鳴上「ぐああああっ! 菜々子ぉぉ―――!!」

いすず「……筋金入りね」

鳴上「な、菜々子は可愛い!」

いすず「確かに可愛いみたいだけど、あなたの行動はドン引きだわ」

鳴上「と言うか!」

鳴上「なぜそんな詮索をするんだ!?」

いすず「入念なリサーチと言って欲しいわね」

鳴上「答えになっていない!」

いすず「……八十稲羽連続殺人事件」

鳴上「……!」


いすず「鳴上くんが一年間過ごした街で起こった不可解な事件」

いすず「最終的にどうなったのか……警察がウヤムヤにしていて」

いすず「とうとう掴む事が出来なかったわ」

鳴上「…………」

鳴上「どうなったも何も、その事件と俺に何の関係が……」

鳴上「いや、その前にこのパークへ誘った事と何の関係性があるんだ?」

いすず「…………」

いすず「あなたは……調べれば調べるほど」

いすず「転校する前のあなたと違うからよ」

鳴上「…………」

いすず「確かに極度のシスコンではあるけど、それだけが原因とは考えにくい」

いすず「大事な事を頼む前に見落としがないか、調べておきたかった」


鳴上「……大事な……頼み?」

いすず「その事を話す前に」

いすず「これを食べてもらえないかしら?」

     スッ…

鳴上「…………」

鳴上「コロッケか……」

鳴上「……いただこう」

     パクッ… モグ モグ

鳴上「!?」

     ガツッ パクッ  ムシャムシャ…

鳴上(衣は厚すぎず、それでいてサクサク感はしっかり)

鳴上(中身はジューシィかつ、ふわふわ!)

鳴上(練り込まれたひき肉と 丹念に潰されたジャガイモが)

鳴上(絶妙な風味を醸(かも)し出しているっ……!)


鳴上「ふう……」

いすず「どうだった?」

鳴上「菜々子にも食べさせてやりたい美味さだった」

いすず「そう」

いすず「これ……甘ブリで作ってるの」

いすず「ここでしか食べられない味よ」

鳴上「……もしかして、いすずが?」

いすず「いいえ」

いすず「作ったのは違う人よ」

鳴上「…………」


いすず「実は……その人が」

いすず「あなたに頼みたい事があるのよ」

鳴上「…………」

いすず「ぜひ、会って欲しい」

いすず「鳴上くん」

鳴上「…………」


―――――――――――


メープル城

エレベーター前


鳴上「やはりここの関係者だったのか」

いすず「ええ」

いすず「言ってなかったかしら?」

鳴上「一言も」

鳴上「……まあ口ぶりでだいたい察しはついたが」

鳴上「それで、俺はどこへ連れて行かれるんだ?」

いすず「メープル城の屋上」

いすず「このパークの支配人が居られるわ」

鳴上「…………」


メープル城 屋上


     キィ…

いすず「あの方よ」

鳴上「…………」


     屋上のテラスに居たのは……

     薄いピンク基調のドレスに身を包み

     まだ幼さの残る金髪ロングの美少女だった


鳴上(……確か)

鳴上(支配人と言ってたと思うが)

鳴上(どう見ても若すぎる……)


?????「あなたが鳴上悠様ですね?」

?????「私はラティファ・フルーランザと申します」

ラティファ「この甘城ブリリアントパークの支配人をしております」

ラティファ「今日はわざわざ御足労いただき、誠にありがとうございました」

鳴上「……よろしく」

     コポポ…

ラティファ「どうぞ」

鳴上「いただきます」

     ズズッ…

鳴上(……美味い紅茶だ)

鳴上「…………」

鳴上「あのコロッケは君が?」

ラティファ「はい」


ラティファ「ゲストの皆さんに 少しでも楽しい思いをしていただけたら、と」

鳴上「…………」

鳴上「単刀直入に聞く」

鳴上「いすずから、俺に何か頼みたい事がある、と聞いた」

鳴上「それは何だ?」

ラティファ「…………」

ラティファ「鳴上様」

ラティファ「もうこのパークの実情は、ご覧になられましたか?」

鳴上「……ああ」

ラティファ「いかがでした?」

鳴上「率直に言って、もう二度と来たくないと思った」

ラティファ「……はっきりおっしゃいますね」


鳴上「…………」

ラティファ「いえ……実際その通りでしょう」

ラティファ「休日の今日ですら、この有様なのですから」

鳴上「…………」

ラティファ「鳴上様」

ラティファ「お願いを聞いて欲しいのです」

ラティファ「この滅亡寸前の遊園地をあなた様の手腕で」

ラティファ「救っていただけないでしょうか?」

鳴上「…………」

鳴上「……え?」

ラティファ「どうか、この甘城ブリリアントパークの支配人になってください」


鳴上「俺が……支配人?」

ラティファ「はい」

鳴上「……しかし、俺はただの高校生に過ぎないが」

ラティファ「あなたなら、この遊園地をきっと救えます」

ラティファ「そう神託が、私たちに降(くだ)されたのです」

鳴上「神託……」

ラティファ「…………」

ラティファ「私たちは、魔法の国メープルランドの住人なのです」

ラティファ「この地上とは違う、別の世界の本物の魔法の国からやって来ました」

鳴上「…………」

ラティファ「この甘城ブリリアントパークのキャストもほとんどが」

ラティファ「メープルランドの住人なのです……」


鳴上「メープルランド……住人」

鳴上(……あの世界とクマみたいなものか)

ラティファ「ですが……あと三ヶ月以内にゲストを25万人お呼びする事が出来なければ」

ラティファ「このパークは閉園になります」

ラティファ「そうなったら……私たちメープルランドの住人は居場所を失い」

ラティファ「生きる力を無くしてしまうでしょう……」

鳴上「…………」

ラティファ「…………」

鳴上「話は分かった……が」

鳴上「やはり俺には荷が重いと思うのだが……」

ラティファ「え?」


鳴上「ん?」

ラティファ「今の話……お信じに?」

鳴上「何の事だ?」

ラティファ「魔法の国とか……疑問に思わないのですか?」

鳴上「…………」

鳴上「あ」

鳴上「そ、そうだな。 確かに信じがたい話だ」

ラティファ「…………」

ラティファ「やはり、そうですよね……」

ラティファ「ですので……」 チラッ

いすず「…………」 ペコッ

     キィ… パタン


ラティファ「……ですので」

ラティファ「これから、鳴上様に魔法を授けたいと思います」

鳴上「魔法?」

ラティファ「はい……」

     スタ スタ スタ

ラティファ「鳴上様」

ラティファ「そのまま……動かないで」

ラティファ「少しの間、目を閉じてください」

鳴上「え?」

鳴上「…………」

鳴上「分かった」 スッ…


ラティファ「…………」///

     フワッ

鳴上「!」

鳴上(何か……俺の唇に柔らかいものが触れ)


     ――我は汝――

     ――汝は我――


鳴上「ぐがっ!?」


     ――汝は更なる扉を開けし者なり――


鳴上「あああああああああああああああああああああああっ!!!?」

ラティファ「な、鳴上様!?」


ラティファ「いすずさんっ!」

ラティファ「いすずさん、来てください!」

ラティファ「鳴上様の様子が――」


鳴上(……いったい)

鳴上(……何……が……)

鳴上(起……こっ……た……)

鳴上(…………)



―――――――――――




―――――――――――


????


????「……おや?」

????「おお……これはこれは」

????「お久しぶりでございますな、お客様」

     イゴール…

イゴール「はい……ふふふ……」

イゴール「ようこそ、我がベルベット・ルームへ」

イゴール「正直……もうお会いする事は無いかと思っておりましたが」

イゴール「息災でございましたかな?」

イゴール「…………」


イゴール「……ほう」

イゴール「…………」

イゴール「魔法の国メープルランド……」

イゴール「…………」

イゴール「なるほど……左様でございましたか」

イゴール「しかし。 お話をお聞きした限りでは」

イゴール「なぜお客様が再びここへお越しになられたのかは」

イゴール「皆目見当もつきませぬな……」

イゴール「ですが――」

イゴール「全くの無意味ではなく、何かの”必然”やもしれませぬ」

イゴール「…………」


イゴール「ええ、もちろんこちらでもお調べいたしましょう」

イゴール「それにしても……」

イゴール「節目の年を越えられたお客様に」

イゴール「この様な事象が起こるとは……」

イゴール「やはり、類い稀なる”ワイルド”の持ち主ゆえ」

イゴール「という事なのでしょう」

イゴール「…………」

イゴール「ふふふ……これは失礼でしたかな?」

イゴール「…………」

イゴール「おお……そろそろお目覚めの時刻の様でございますな」

イゴール「それでは いずれまた」

イゴール「夢の中でお会いいたしましょう……」



―――――――――――


鳴上の部屋


     チュン… チュンチュン…

鳴上「…………」

鳴上「……ん」

     ムクリ…

鳴上「ここは……俺の部屋?」

鳴上(……昨日……確かいすずに連れられて……)

鳴上(そしてラティファに……)

鳴上(…………)

鳴上「……顔でも洗うか」


洗面所


     テク テク テク…  ガチャ

いすず「!」 半裸

鳴上「」

     バタンッ!

鳴上「す、すまん!」

いすず「…………」

いすず「あ」

いすず「きゃ~……」

鳴上「細かい事を突っ込むが、タイミングとかボリュームとか」

鳴上「いろいろおかしいぞ」


鳴上「というか、何で俺の家にいすずが居るんだ!?」

いすず「…………」

     ガチャ…

いすず「ご挨拶ね……昨日は突然気絶したあなたを」

いすず「ここまで運んだのだけど?」

鳴上「……いすずが俺を担いで?」

鳴上「どんな怪力なんだ……」

いすず「…………」

     すうぅぅぅー…… ジャキン!

鳴上「」

鳴上「な……」



     いすずは、スカートの裾の辺りに手を入れると

     質量的に絶対存在できないであろう、例のマスケット銃を取り出した。


いすず「……そんな目立つ事はしないわ」

いすず「この魔法を使っただけよ」

鳴上「…………」

鳴上「つまり」

鳴上「俺はいすずのスカートの中に出たり入っ」

     ズドンッ! ズドンッ! ズドンッ!

鳴上「あgkんhxdsdf¥・pmッ―――――!!!」



鳴上(う、撃たれたっ!!)

鳴上(こんな……こんな事で死ぬ事になるなんて……)

鳴上(菜々子……!)

鳴上(…………)

鳴上(…………)

鳴上(……あれ?)


いすず「今後は下品な事を言わないように」

鳴上「……これも魔法、という事か」

いすず「ええ」

いすず「話を戻すけど」

いすず「私は、あなたの経過観察を仰せつかったのでここに居るのよ」

鳴上「仰せつかった? ……ラティファか」

いすず「その通りよ」


いすず「という事なので聞くけど」

いすず「体調に変化はない?」

鳴上「…………」

鳴上「……とりあえずは無いが」

いすず「そう」

鳴上「そういえばラティファは、俺に魔法を授けるとか何とか言っていたな」

いすず「ええ」

いすず「本来なら痛みも何もなく、その場で開眼して」

いすず「何らかの魔法を使えるようになるハズなの」

鳴上「それで経過観察か……」

いすず「飲み込みが早くて助かるわ」

いすず「あなたの様なケースは、こちらも初めてなのよ」


鳴上「…………」

鳴上(……まさか)

いすず「……鳴上くん?」

鳴上「…………」

鳴上「いすず……俺に一つだけ思い当たる節(ふし)がでてきた……が」

鳴上「その前に少し聞いておきたい」

いすず「何かしら?」

鳴上「例えばの話だが……魔法を既に授けている人間に」

鳴上「もう一度魔法を授けようとしたら……どうなる?」

いすず「……それは禁忌(きんき)の邪法よ」

いすず「大抵激痛に見舞われてのたうち回り、その器が小さければ死に……」

いすず「!!」


いすず「まさか……鳴上くん、あなたは!?」

鳴上「……どうやら」

鳴上「こちらの事情も話さないといけないみたいだな」

いすず「…………」

鳴上「実は、八十稲羽で俺は――」


     ――我は汝――

     ――汝は我――


鳴上「ぐがっ!?」 ズキンッ!

いすず「な、鳴上くん!?」


     ――その双眼を見開きて欲し――


鳴上(こ……これ、はっ……!)







     ――今こそ発せよ!!――






鳴上「はあっ……はあっ……はあっ……」

鳴上「……はあ……はあ……」

いすず「大丈夫……なの?」

鳴上「…………」

鳴上「…………」 グッ…!

いすず「鳴上くん……?」











     ペ   ル   ソ   ナ   !!










いすず「!!?」

いすず「なっ――」

鳴上「…………」

鳴上「……信じられん」

鳴上「まさか、現実世界でペルソナを出せるなんて……」




     だが……

     そこには……見間違う訳もなく

     静かに佇む、俺のペルソナ

     イザナギが居た――






―――――――――――

―――――――――――


鳴上「追求」

いすず「考察」


鳴上・いすず「二次創作ー」


     パチパチパチ


いすず「このコーナーでは、原作との差異や>>1の考え等を語っていくわ」

鳴上「……誰も望んでいない気もするな」

いすず「考えたら負けよ」


いすず「まず、原作の主人公、可児江西也くんとは似ても似つかぬ鳴上くんが」

いすず「なぜ選ばれたのか」

鳴上「この>>1に俺以外が扱えないからだろう」

いすず「正確には、甘ブリを救う手立てを」

いすず「鳴上くん以外のキャラで思いつけなかったからよ」

鳴上「……最初は中の人つながりで一夏を使おうとしてたな」

いすず「ワンサマーやバ○ージに一○楽では絶対無理でしょうね」

鳴上「他のキャラをディスるのは止めておけ」

いすず「その点あなたなら、多少の高校生らしからぬ行動や考察を行っても」

いすず「十分許容できると判断した、という事ね」

鳴上「それならどこぞの劣等生やキリトくん(仮)でも良かったんじゃ……」

いすず「その二人は無双しすぎるから案にすら登らなかったそうよ」


鳴上「……他にどんな候補がいたんだ?」

いすず「そうね……某『ただ一つの塔』の勇者や電波な彼女の彼氏」

いすず「題名『三つ目』(仮)の主人公なんかも候補だった様よ」

鳴上「……そのワードだけで誰だかわかる奴、居るのか?」

いすず「いずれも世界観や私と絡めるのが難しくて断念したそうだけど」

鳴上「……まあわかる」

いすず「さていよいよ二次創作らしく、あなたが現実世界で」

いすず「ペルソナを使う、というありきたりな展開になってきたけど」

鳴上「……>>1が涙目になっているぞ?」

いすず「どうせハーレムを築くのはわかっているのだし」

いすず「早いとこ済ませて欲しいところね」

鳴上「……もうその辺にしておいてやれ」

続きはまた今度……



―――――――――――


駅のホーム


鳴上(……とりあえず)

鳴上(現実世界でもペルソナを使える様になったが)

鳴上(体調に変化は ほとんどない)

鳴上(……かえって怖い気もするが、今はよしとしておこう)

鳴上(とにかく、ラティファが行った魔法発動の儀式?が原因である事は)

鳴上(間違いない……彼女の魔法の国の話は真実という事だろう)

鳴上(…………)

鳴上(今日は平日……ラティファに事情を聞きに行きたいところだが)

鳴上(俺はしがない学生だ)


いすず「鳴上くん」

鳴上「ん?」

鳴上「何だ? いすず?」

いすず「学校ではあなたも迷惑でしょうから」

いすず「今の内に言っておくけど……」

鳴上「…………」

いすず「今日の放課後も私に付き合いなさい」

鳴上「……その上から目線的な発言は控えた方がいいと思う」

いすず「必ず来て。 じゃ……」

     スタ スタ スタ…

鳴上「…………」



―――――――――――


放課後

バス車内


     ブロロロロ…

鳴上「…………」

鳴上「そういえば、いすず」

いすず「何かしら?」

鳴上「メープルランドって、どこにあるんだ?」

いすず「メープルランドは海と大地の狭間にある魔法の国よ」

いすず「ラティファ様はその国の第一王女なの」

鳴上「……それってバ○スト○・ウェルじゃn」

いすず「あれは海と陸の間よ」

鳴上(聖○士ダ○バイン知ってるのか、いすず)


鳴上「……後、ラティファがパークの存続がメープルランド住民の」

鳴上「生きる力とか何とか言っていたが……どういう意味だ?」

いすず「【アニムス】の事ね」

鳴上「【アニムス】?」

いすず「私達はパークに来たゲストの”楽しい”という気持ちを結晶化できるの」

いすず「それが【アニムス】」

いすず「私達はそれを糧として、この世界に存在できている」

いすず「パークは、その【アニムス】の巨大な収集施設、という事なの」

鳴上「【アニムス】が切れたらどうなるんだ?」


いすず「……消滅してしまうわ」

鳴上「…………」

鳴上「なるほど……」

鳴上「いすず達にとって文字通り死活問題、という訳か」

いすず「ええ」

いすず「ちなみにこういう収集施設の事を【アゲル】と言い」

いすず「浦安にあるデジマーランドやハイランダー富士見も【アゲル】よ」

鳴上「その2つもメープルランドが作ったのか?」

いすず「いいえ。 別の魔法の国よ」

鳴上「…………」


いすず「私もあなたに聞きたい事があるわ」

鳴上「……ペルソナの事か」

いすず「それもだけど『ベルベット・ルーム』の事よ」

鳴上「かいつまんで、だったが……」

鳴上「俺が知っている事は ほとんど話したと思うが」

いすず「それでもいい」

鳴上「…………」

鳴上「大きな車の中……推測だがリムジンの内装みたいな場所で」

鳴上「そこにイゴールという やたらと鼻の長い紳士の老人と」

鳴上「そのサポートをするマーガレットという、怖さのある美しい女性がいた」

いすず「…………」

鳴上「彼らは……俺の『特殊な何か』の成長を見守るとか何とか言っていた」

いすず「それは何?」


鳴上「このあたりの記憶があやふやでな……わからない」

いすず「…………」

鳴上「後は『テレビの中の世界』で役に立つペルソナカードの提供(有料)や」

鳴上「少々の助言をしてくれて……」

鳴上「そういえば【シャドウ】は『ベルベット・ルーム』に入れないとか言っていたな」

いすず「…………」

鳴上「後は……うーん」

鳴上「やはり、この程度しか思い出せない」

いすず「そう……」


鳴上「…………」

鳴上「いすずは何か引っかかるのか?」

いすず「気にしない方がおかしいと思うわ」

いすず「リサーチ以外の情報が突然出てきた上に」

いすず「今まで見た事もない魔法や、人間との関わり方法を持つ知的生命体」

いすず「信託を受けているとは言え、あなたは規格外の胡散臭さよ」

鳴上「……俺は両方とも巻き込まれただけなんだが」


甘ブリ 関係者入口


マスクマン「あ、これはどうも、いすずさん」

いすず「ええ」

鳴上「」

―――――――――――

鳴上「……今のも魔法の国の住人か?」

いすず「いいえ」

いすず「彼はオークロ。 れっきとした人間よ」

いすず「他にも人間のキャストは大勢いて、ここで働いているわ」

鳴上「……色々突っ込みたいが、今は別のことを聞こう」


鳴上「今日は何の為に俺をここに連れてきたんだ?」

いすず「…………」

いすず「あなたに……『敵』を知ってもらう為よ」

鳴上「敵?」

いすず「ええ」

いすず「私はそこの従業員用宿舍に下宿してるの」

いすず「ちょっと着替えてくるから、先にあそこの事務棟に行って待ってて」

鳴上「……わかった」

     スタ スタ スタ…

鳴上「…………」


事務棟 玄関ロビー


鳴上「ん?」

モッフル「……!」

鳴上「…………」

モッフル「…………」

モッフル「ふん……」

     テク テク テク…

鳴上「……ちょっと待て、モッフル」

     ピタ

モッフル「……何か用ふも?」

鳴上「俺は何か、お前の気に触る事をしたのか?」


モッフル「…………」

モッフル「違うふも」

鳴上「では何故、俺を毛嫌いする?」

鳴上「理由が不明のまま、嫌われている事だけ分かるのは」

鳴上「こちらも不愉快だ」

モッフル「…………」

モッフル「お前は知らなくていい事ふも」

     テク テク テク…

鳴上「…………」

いすず「お待たせ、鳴上くん」

鳴上「……ああ」

いすず「こっちの会議室よ。 もう準備は出来ているわ」


会議室


栗栖「これは初めまして」

栗栖「私、甘城企画の栗栖隆也(くりすたかや)と申します」つ(名刺)

栗栖「以後、お見知りおきを」

鳴上「どうも」

栗栖「ちなみにこちらの学生はどなたですか?」

いすず「インターンです」

栗栖「そうですか」

栗栖「ところで支配人さんのラティファさんは?」

いすず「体調不良の為、支配人代行の私がお話を伺います」

鳴上(! 支配人代行だったのか……いすず)


栗栖「えー、それでは改めて契約内容を ご確認させていただきますが」

栗栖「8月1日を年初日として、年間の観客動員数が5年連続で50万人を下回った場合」

栗栖「このパークの経営権は、私共 甘城企画に移行するという事になっています」

いすず「……はい」

栗栖「現在、このパークは4年連続で動員数が50万人を下回っており」

栗栖「今年度の動員数は現在約25万人……そして残り三ヶ月で」

栗栖「目標を達成するのは、ほぼ不可能です」

栗栖「なのにあなた方は閉園の準備を全くしていない。 何故ですか?」

いすず「それは……まだ目標動員数に達しないとは言い切れないからです!」

栗栖「……失礼ながら」

栗栖「あなた方は現実が見えていない様ですね」

鳴上「…………」


栗栖「このパークの現状では、どう見ても達成は不可能でしょう」

栗栖「それなのにあなた方は莫大な赤字を垂れ流し続けている」

いすず「いずれ……夏休みに入ります」

いすず「そうなれば!」

栗栖「夏休みは7月後半に入ってからです」

栗栖「わずか2週間では、到底動員数の足しになるとは思えませんが?」

いすず「……チャンスを」

いすず「チャンスをいただければ……」

栗栖「チャンス……ねぇ」 ニヤニヤ

     キュッ パキョ (メガネフキフキ)

鳴上「!?」

鳴上(レンズとレンズの間にあるフレーム部分で分離するだと!?)


栗栖「では……仮にの話をしましょう」

栗栖「ある4人家族がこのパークを毎日訪れたと仮定して」

栗栖「昨年度の来場者数から、このパークに利益が出るには」

栗栖「この家族が一日いくら支出すればいいのでしょうか?」

いすず「…………」

鳴上「…………」

     ピッ ポッ パッ

栗栖「だいたいですが8万3200円となります」

栗栖「お分かりですか? 1日に8万3200円です」

いすず「……っ」

鳴上「…………」

鳴上「……あの」


栗栖「何かね? インターンくん」

鳴上「あなたのそのメガネ……ハイカラですね」

栗栖「……ありがとう」

栗栖(こいつ……馬鹿か) フッ…

鳴上「何というメーカーの品なんですか?」

栗栖「……○○というブランドだよ」

鳴上「高そうですね」

栗栖「いや、そうでもない」

栗栖「ほんの10万くらいさ」

鳴上「俺からしたら、十分高いです」

栗栖「そうかね。 君も買えるように頑張りなさい」 フフン

鳴上「ははは……」


鳴上「ところで経営権が移った後、どうするんですか?」

栗栖「すでにいくつかの……」

栗栖「っ!!」

いすず「……?」

鳴上「…………」

栗栖「…………」

栗栖「ほう……」

鳴上「…………」

栗栖「ともかく。 これ以上の赤字を出さない内に」

栗栖「早めの資産整理をなさった方がよろしいですよ?」

いすず「…………」

栗栖「では、今日のところはこの辺で失礼します」



―――――――――――


いすず「鳴上くん」

鳴上「ん?」

いすず「さっきの……栗栖隆也(くりすたかや)」

いすず「一瞬驚いていたけど、なぜなの?」

鳴上「向こうにも予定がある、という事を漏らしたからだ」

いすず「わかる様に説明して」

鳴上「……単純な心理戦だ」

いすず「心理戦?」

鳴上「相手はやたらと強気でいただろう?」

鳴上「そうやってこちらの戦意を削ぎ、誤った方向へ導こうとしたんだ」


いすず「誤った方向?」

鳴上「契約内容は後25万人を呼べるかどうか、という話なのに」

鳴上「何故、『利益を求める数字』を出してきた?」

いすず「!!」

鳴上「それに、それだけ強気に出るのには」

鳴上「あちらにも何か理由があると思って、少し探ってみた」

いすず「……探り?」

鳴上「つまり」

鳴上「このパークの経営権を『必ず得る前提』でいろいろ話を進めて……」

鳴上「もっと言えば、経営権を『必ず得られないとやばい状況』なんじゃないのか?」

鳴上「そう考えたんだ」

いすず「……!!」


鳴上「さっきの一言からでは推測の域を出ないが」

鳴上「甘城企画……いや、もしかしたら栗栖隆也(くりすたかや)個人は」

鳴上「パークが閉園する前提で何か予定を組んでいる可能性が高い」

いすず「……それはつまり」

いすず「パーク存続は、彼にとって責任問題に繋がる、と……」

鳴上「あくまで推測だ」

いすず「…………」


いすず(あの短い問答で、しかもたった一度見ただけで)

いすず(そこまで分析していたなんて……)

いすず(…………)


いすず「……それで、鳴上くん」

いすず「支配人の件、受けてくれるのかしら?」

鳴上「…………」

鳴上「その質問に答える前に聞きたいのだが」

鳴上「なぜ経営のプロを雇わない?」

鳴上「他の人間よりは多少出来るかもしれないが」

鳴上「ただの高校生に支配人を任せるなんてどう考えてもおかしい」

いすず「……雇ったけど、みな辞めてしまったわ」

鳴上「どうして?」

いすず「私が銃で脅したからかしら」

鳴上「……おい。 他の人間にもあれをやっていたのか」

いすず「ええ」

     ジャキン!


いすず「魔銃シュタインベルガー」

鳴上「出さなくていい!」

いすず「様々な弾丸を打ち出す事ができるわ」

鳴上「……たまには俺の言うことを聞いてくれないか?」

いすず「あなたを撃った弾丸はペインブリンガー」

いすず「タンスの角に足の小指をぶつけた痛みの2倍の苦痛が襲うわ」

鳴上「……もうどこから突っ込んでいいのかわからないが、とにかくそれをしまってくれ」

いすず「…………」

鳴上「……それにしても」

鳴上「いすずが支配人代行だったとはな」

いすず「自分に合っていない事も承知で、一年間取り組んできたわ……」

いすず「でも、責任は感じてる」

いすず「だからこそ……!」


鳴上「…………」

いすず「あなたは、私たちにとって最後の希望なの!」

いすず「この為に私はあなたの学校に転校した!」

いすず「お願い、鳴上くん!」

鳴上「……どうしてそういう風に最初から出来ないんだ?」

いすず「え……」

鳴上「メープルランドでは、挨拶に銃を突きつけるものだと勘違いしてしまうぞ」

いすず「…………」

いすず「……私は、こちらの世界に慣れていないから」

鳴上「……どうひいき目に見ても、それ以前のレベルだ」

いすず「なら、もう一度ラティファ様に!」


鳴上「落ち着け、いすず」

いすず「っ!」

いすず「…………」

鳴上「話はわかった。 支配人代行、引き受けよう」

いすず「!!」

いすず「鳴上くん……」

鳴上「だが、こちらにも言いたい事がある」

鳴上「とにかく、もう一度ラティファと話をしたい」

鳴上「詳しくはその時に」

いすず「……わかったわ」



―――――――――――


メープル城

空中庭園


ラティファ「ありがとうございます、鳴上様」 ニコッ

鳴上「……お兄ちゃんと呼んでくれ」///

ラティファ「はい?」

鳴上「!!」

鳴上「な、何でもない……」

ラティファ「??」

鳴上「と、ともかくだ!」

鳴上「支配人の件、確かに引き受ける……が」

いすず「が?」

鳴上「パーク存続は非常に困難だ」


ラティファ「!」

いすず「!」

鳴上「残念だが、ほぼ不可能だと考えてくれ」

ラティファ「…………」

いすず「鳴上くん!?」

鳴上「もちろん努力はする。 だが、現実問題」

鳴上「俺は経営に関して ど素人。 時間も資金もない」

鳴上「こんな状況で成功すると思う方がおかしい」

ラティファ「…………」

いすず「…………」


鳴上「だから……覚悟はしておいて欲しい」

鳴上「特に従業員……キャスト?だったか」

鳴上「彼らの身の振り方とかな」

ラティファ「…………」

ラティファ「分かりました、鳴上様」

ラティファ「キャストの皆さんが閉園後も存続出来るように」

ラティファ「今から模索しておきます」

いすず「! ラティファ様……!」

ラティファ「いすずさん。 いいんです……」

鳴上「……?」

ラティファ「でも……私は希望を捨てません、鳴上様」

鳴上「……神託が降りているからか?」

ラティファ「いいえ」


ラティファ「神託は道しるべの一つ……行先をほんの少し照らしてくれるだけです」

ラティファ「でも、鳴上様は来てくださいました」

ラティファ「きっと……それは新たな変化を生み、新たな未来を切り開いていくでしょう」

ラティファ「だから、私は鳴上様に深く感謝します」

鳴上「…………」

鳴上「……そうか」

鳴上「それでは、さっそくだが やってもらいたい事がある」

ラティファ「はい。 どの様な事でしょう?」

鳴上「従ぎょ……キャストのみんなを一堂に集めてくれ」

鳴上「まずは、キャスト達の意識改革からだ」

いすず「…………」



―――――――――――


閉園後

メープル城 中庭


     ガヤ ガヤ…

マカロン「おーい、モッフル」

ティラミー「やっと来たミー」

モッフル「もふ」

マカロン「それにしても急にキャスト全員集めて何の話するのか……」

マカロン「モッフル、何か聞いてるロン?」

モッフル「……聞いてないふも」

ティラミー「ラティファ様からも聞いてないミー?」

モッフル「ふも……」


モッフル「…………」

ティラミー「モッフル、なんか機嫌悪いミー?」

マカロン「もしかして……いすずちゃんが連れてきた奴が原因ロン?」

ティラミー「あー。 あの神託で選ばれたっていう」

マカロン「モッフル、会ったのかロン?」

モッフル「……気に入らなかったふも」

ティラミー「どういうところがミー?」

モッフル「何もかもだふも」

マカロン「それは理不尽ロン……」


いすず「傾注(けいちゅう)せよ! 傾注(けいちゅう)せよ!」

いすず「これよりメープルランド第一王女」

いすず「ラティファ・フルーランゾ様よりお言葉がある!」

いすず「心して聞くがよい!」


     ハイハイ… 聞キマスヨ…

     イヨイヨカー…  トウトウコノ日ガ来タカー…

     マア… ショウガナイヨー…


ティラミー「……みんな諦めムードだミー」

マカロン「それぞれある程度は覚悟してた事ロン……」

モッフル「…………」


ラティファ「皆さん、こんばんは」

ラティファ「今日、急にお集まりいただいたのは理由があります」

ラティファ「皆さんもご存知の通り……この甘城ブリリアントパークの現状は」

ラティファ「決して明るいものではありません」


一同「…………」


ラティファ「その点について……支配人である私の責任は大変大きく」

ラティファ「この場を借りて深く謝罪します……」


一同「…………」


ラティファ「ですが」


ラティファ「先ごろくだされた、神託の人物が当パークを訪れ」

ラティファ「支配人に就任してくれると約束をしてくださいました」


一同「!!」


ラティファ「今日は、その方を紹介したいと思います」

ラティファ「鳴上様。 どうぞこちらへ……」


     噂デ聞イテタケド…  大丈夫…?

     ザワ… ザワ…


ティラミー「へー。 快諾したのミー」

マカロン「どうせまた、すぐ辞めちゃうロン……」

モッフル「…………」


鳴上「…………」


     アイツガ… ナンダヨ… 若造ジャネーカ…

     ケッコウイケメンー 頼リニナルノー…?


鳴上「初めまして、みんな。 今紹介された鳴上です」


一同「…………」


鳴上「みんなの俺に対する第一印象は」

鳴上「絶対に良くないものばかりだと思う……」

鳴上「いきなり知らない奴に、パークの存続を任せる不安は底知れないだろう」


一同「…………」


鳴上「はっきり言う」


鳴上「俺は経営に関しては素人」

鳴上「さらに遊園地の事もよくわかっていない」

鳴上「神託はあっても ただの高校生に過ぎない」


     エエー…… イキナリ敗北宣言……

     ハイハイ…… 予防線ハッタト……


鳴上「だが」

鳴上「その素人の目から見ても、このパークの酷さは明白だ」


一同「……!」


鳴上「まずは、その素人でもわかる酷さから直して行きたいと思う」


鳴上「明日から二日間、おきゃ……ゲストに告知の上」

鳴上「パークを三日後丸一日臨時休業し、念入りに清掃作業と設備メンテナンスを行う」

鳴上「まずは見てくれを直す事から始めたいと思う」

鳴上「異議のあるものは居るか?」


     ……言イタイ事ハワカルケドー 何ヤッテモ無駄ニナルッテ言ウカー

     メンドクサイシー… 予防線ハッテル奴ニ言ワレテモー


マカロン「……みんな態度悪いロン」

ティラミー「でも気持ちはわかるミー……」

モッフル「…………」


鳴上「…………」

鳴上「みんな、今から俺の言う事を聞いてくれ」

鳴上「頭にそれぞれで、大切な人を思い浮かべて欲しい」

鳴上「親、兄弟、友人、恋人、妻、夫、子供、尊敬する上司……誰かしら居ると思う」


一同「…………」


鳴上「そして」

鳴上「その人が、今のこのパークで働く自分を見たら、どう思うだろうか?」


一同「……!!」


鳴上「また、その人をこのパークに連れてきたい、と思えるだろうか?」


一同「……っ」


鳴上「…………」


鳴上「俺には……小学2年生の従兄弟がいるが」

鳴上「少なくとも今のこのパークに連れて来たいとは思わない」


一同「…………」


鳴上「俺は、まず、その従兄弟を連れてきたいと思えるパークにして行きたい」

鳴上「今、俺が言える事、言いたい事はそれだけだ」

鳴上「みんな、どうか協力をよろしく頼む」


一同「…………」


ティラミー「…………」

マカロン「…………」

モッフル「…………」



―――――――――――


事務棟


     ドサッ…

いすず「言われた資料はこれで全部よ」

鳴上「ありがとう」

鳴上「持ち出しても構わないか?」

いすず「基本的にNGよ」

鳴上「そうか……」

鳴上「もう遅い時間だし今日のところは帰って、明日本格的に調べる事にする」

いすず「任せるわ、鳴上くん」


いすず「それと……」

鳴上「ん?」

いすず「…………」

いすず「引き受けてくれて……ありがとう」

鳴上「…………」

鳴上「……どういたしまして」

いすず「それじゃ、また明日……」

鳴上「ああ」



―――――――――――


西太丸(甘ブリ前停留所) バス停


鳴上「…………」

??「よお、インターンくん」

鳴上「……?」

鳴上「! ……あなたは、さっきの」

??「名刺、渡したはずだが?」

??「栗栖隆也(くりすたかや)だ」

鳴上「……何かご用ですか?」

栗栖「いやなに……君の名前を聞いていなかったのを思い出してね」

鳴上「……鳴上悠です」

栗栖「鳴上悠、ね」

栗栖「覚えておこう」


栗栖「ところで君……鳴上くん」

栗栖「甘城企画へ来る気はないかい?」

鳴上「残念ながらありません」

栗栖「……そうかい」

栗栖「まあ、ひとつ忠告をしておこう」

鳴上「忠告?」

栗栖「馬鹿な気は起こすなよ?」

栗栖「負け犬に付き合っていると、自分も負け犬になるぞ?」

鳴上「…………」

     ブロロロロッ……キキィッ(バス到着)

栗栖「じゃあな」


鳴上「栗栖さん」

栗栖「……ん?」

鳴上「わざわざその一言を言うために」

鳴上「俺を待っていたんですか?」

栗栖「……まさか」

栗栖「少し時間ができたから暇つぶしにここへ来ただけだよ」

鳴上「そうですか……」

栗栖「そうだとも」

鳴上「……その割に靴」

鳴上「ずいぶん汚れてますね」

栗栖「……っ!」 バッ!

鳴上「…………」

鳴上「じゃ」


     ブロロロロ……

栗栖「チッ……」

栗栖(汚れていない……が、つい靴を見てしまった)

栗栖「…………」

栗栖「鳴上悠……何者なんだ」


―――――――――――


居酒屋さべーじ


     ガララ…

タカミ「いらっしゃいませー」

タカミ「あ、モッフルさん」

タカミ「いつものお座敷で、お二人がお待ちですよ~」


モッフル「もふ」

モッフル「生と冷やしトマト」

タカミ「はーい!」

     ガラッ

マカロン「おーモッフル、待ってたロン」

ティラミー「遅いミー」

モッフル「少し片付けが残ってたふも……」 着席

モッフル「ふう……」

     ガラッ

タカミ「お待たせしました~。 生です♪」


マカロン「タカミちゃん、生二つ追加だロン」

タカミ「はーい」

ティラミー「ボクは~タカミちゃんのお尻も追加だミー♪」

タカミ「はいはい」

     ピシャッ

モッフル「ティラミー……そういう発言は控えるふも」

モッフル「甘ブリのマスコットが女の尻の話とか……どこに人の目があるか分からないふもよ?」

ティラミー「大丈夫だミー」

ティラミー「このララパッチのお守りを着けていれば、誰も気にしないミー」

モッフル「……それの効果は見た目だけふも」

モッフル「過信は良くないふもよ」

ティラミー「むー……」


ティラミー「ボクはもっと弾けた生き方をしたいんだミー!」

ティラミー「ボッ○とかヴァ○ナとかス○○マとか○ッ○スとか言いまくりたいミー!」

     ガスッ! ゴスッ! ドゴッ!

マカロン「じゃあその口塞ぐロン……!」

モッフル「品のない話が出来ない様にしてやるふも……!」

ティラミー「フゴゴッ!!」

     ガララッ!


タカミ「みなさん お静かに! 他のお客さんに迷惑です!」


モッフル「ごめんなさいふも……」

マカロン「ごめんなさいロン……」

ティラミー「ごめんなさいミー……」


ティラミー「ところで……あの鳴上っていう神託の子」

ティラミー「ボク、なんとなくモッフルが嫌う理由わかった気がするミー」

マカロン「ロン?」

ティラミー「なんか……あの目」

ティラミー「怖い、とかじゃないんだけど」

ティラミー「いろいろと見透かされている気がして、しょうが無かったミー……」

マカロン「あー……何かそれわかるロン」

モッフル「…………」

マカロン「それにあそこまでいろいろはっきり言う奴も珍しいロン」

ティラミー「まったくだミー」

モッフル「…………」


モッフル「……けど」

マカロン「ロン?」

ティラミー「ミー?」

モッフル「あいつは……間違った事は言ってないふも」

マカロン「…………」

ティラミー「…………」

マカロン「……確かにロン」

ティラミー「……正直、あいつの言葉は心にグサッと来たミー」

モッフル「……同じ気持ちふも」

マカロン「ともかく」

マカロン「神託で選ばれた彼が何をしていくのか」

マカロン「お手並み拝見といくロン!」

モッフル「…………」



―――――――――――


鳴上の部屋


     ドサッ…

鳴上「ふう……」

鳴上(…………)

鳴上(さて……どうするか)

鳴上(俺は経営に関してはど素人……)

鳴上(……どうやって立て直していけば)

鳴上(…………)

鳴上(あ)

鳴上(ラティファにペルソナの事とか聞くの忘れた……)



―――――――――――


メープル城 資料室


いすず「…………」

いすず「…………」

いすず(……これも違う)

     スッ… パララッ…

いすず(ベルベット・ルーム……)

いすず(外敵に関する資料で、見かけた様な気がするのだけど)

いすず(…………)

     パラッ… パラッ…

いすず(……これも何もなし)


いすず(杞憂なのかしら……) ふう…

     スッ… パララッ…

いすず「っ!!」

いすず(あった!)

いすず(…………)

いすず(……我々魔法の国と対局をなす勢力有り)

いすず(人の意識の闇の部分を糧とする種族……!?)

いすず(…………)

いすず(長きに渡り我々と敵対し、争い続け、敗北した……)

いすず(…………)











     ――彼らは自身を、ベルベット一族と名乗っていた――











―――――――――――

―――――――――――


鳴上「追求」

いすず「考察」


鳴上・いすず「二次創作ー」


     パチパチパチ


いすず「めでたく二回目ね」

鳴上「めでたいのかどうかは置いといて……」

鳴上「これ、ネタとして毎回続けられるのか心配なんだが」

いすず「>>1が自主的に始めたのだから、いいんじゃないかしら?」

鳴上「どうしてこういう無茶をするんだ……」

いすず「SS書きは少なからず、いつも思いつきで行動しているからよ」


いすず「さて、今回のお話であっさり支配人を引き受けるという」

いすず「原作の熱い展開をガン無視した改悪を繰り出してきたけど」

鳴上「>>1のライフはもうゼロだぞ」

いすず「ベルベット一族とかいう謎ワードを出してきたわね」

鳴上「P4を知っている人もまったく意味がわからないだろうな」

鳴上「今後の展開に乞うご期待、というところだろう」

いすず「所詮>>1の妄想であって公式設定すらガン無視よ」

鳴上「……二次創作なのだから、多少は多めに見てやれないのか?」

いすず「そういう人が甘やかすから>>1が付け上がるのよ」

鳴上「……>>1が白目をむいて倒れ込んでいるぞ」

いすず「豆腐メンタルね」


いすず「あなたは、何か気になるところはないの?」

鳴上「俺としては、このスレを読んでレスしてくれている人が居るのに驚きだ」

いすず「確かに貴重ね」

いすず「今後増えるかどうかは微妙だけど」

鳴上「やめろ。 >>1の呼吸が止まりかけている」

いすず「事実を言っただけなのに」

鳴上「お前はこのスレを終わらせたいのか……」

いすず「そんな事はないわ」

いすず「エロ同人みたいな展開になっていない所だけは」

いすず「評価してる」

鳴上「…………」

鳴上(……そっとしておこう)

がひゅー……がひゅー……
今日は……ここまで……がふっ



―――――――――――


翌日の早朝

甘ブリ 事務棟 支配人室


     ガチャ…

鳴上「おはよう、いすず」

いすず「!!」 ビクッ

いすず「……おはよう、鳴上くん」

鳴上「……?」

鳴上「どうしたんだ? いすず?」

いすず「何でもないわ」

いすず「それよりも早いわね。 まさか朝一でここに来るとは思わなかった」

鳴上「……それなりにいくつか方策を考えたが」

鳴上「行けるかどうか、早く確かめたくて」


いすず「それは心強いわね」

鳴上「上手く行く保証はどこにもないし、時間もないからアテにはならない」

鳴上「でも……やるからには精一杯をつくして行こうと思っている」

いすず「…………」

いすず「そう……」

鳴上「…………」

鳴上「早速だが……モッフルを見かけたら呼んできてくれ」

いすず「わかったわ」


―――――――――――



モッフル「何か用ふも?」

鳴上「今日から臨時休業日の告知を始めるが」

鳴上「マスコットの何人かを選抜して、甘城駅前で告知活動をして欲しい」

モッフル「……待つふも。 それだとパークの仕事がおろそかになるふも」

鳴上「わかっている」

鳴上「厳しい事を言うが、平日だしパーク内はそれほど忙しくならないだろう」

鳴上「人気のないマスコットを中心に選抜を行なって欲しい」

鳴上「キャストリーダーのお前なら、よく分かっているハズだ」

モッフル「……っ!」

モッフル「それでは……僕が『お前は人気がないから選んだ』と言ってるのと同じふも!」

鳴上「できないのなら、俺がやる」

モッフル「!!」

鳴上「…………」

モッフル「…………」


モッフル「……わかったふも」

鳴上「頼む」

鳴上「知名度の低いマスコットの宣伝にもなる」

モッフル「!!」

モッフル「…………」

モッフル「……駅にはちゃんと許可を取ったふも?」

鳴上「……忘れていた」

鳴上「いすずに頼んで駅に連絡をするよう言っておく」

鳴上「詳しい事は、いすずから聞いてくれ」

モッフル「ふん……危なっかしいふも」

     キュム キュム キュム…

モッフル「しっかり支配人代行やってくれないと困るふも」

     パタンッ

鳴上「…………」


モッフル「――という事で」

モッフル「ワニP、ゲンジュウロウ、ジョー」

モッフル「お前たち人気ないから一緒にくるふも」

ワニP「」

ゲンジュウロウ「」

ジョー「」

ワニP「モッ、モッフル、酷いっピー!」

モッフル「残念だけど事実ふも。 受け入れるふも」

ワニP「だからって……だからって!」

ワニP「もう少し言い方があるっピー!!」

     ワ~ンッッ!!

モッフル「……ワニP。 お前ここに来て何年ふも?」


ワニP「……12年になるっピー」

モッフル「だったら、どうしてその間に知名度を上げなかったふも」

モッフル「チャンスは、たくさんあったはずふも」

ワニP「!!」

ワニP「…………」

モッフル「そして、今回もチャンスと捉えるふも」

ワニP「え……?」

モッフル「僕たちのみでの告知ふも。 きっと目立つふも」

モッフル「目立てば目立つほど、知名度は上がるふも!」

ワニP「!」

ゲンジュウロウ「!」

ジョー「!」


ワニP「が、頑張るっピー!」

ゲンジュウロウ「拙者……この機会、モノにするでござる!」

ジョー「じ、自分っ……! 精一杯っ……! やらせていただくでありますっ……!」

モッフル「もふ。 気合入ったふもね」

ワニP「そ、それで、僕たちは何をするっピー?」

ゲンジュウロウ「チラシを配るでござるか?」

ジョー「自分っ……! プラカード持ちぐらいならっ……! できるでありますっ……!」

モッフル「…………」

モッフル「あ」

3マスコット「?」

モッフル(そういえば、何をどうやるのか聞いてないふも……)


いすず「モッフル卿」

いすず「駅の方には許可を取ったわ」

モッフル「! いすず!」

いすず「どうしたの?」

モッフル「あの小僧から何をどうするのか、聞いてるふも!?」

いすず「いいえ」

モッフル「くっ……! 下準備も何もなしでどうしろと!」

いすず「鳴上くんに聞いてきましょうか?」

モッフル「そ、そうふもね」

いすず「では、少し待ってて。 鳴上くんの指示を聞いてくるわ」

モッフル「!!」

モッフル「……いすず。 ちょっと待つふも」

いすず「え? モッフル卿?」



モッフル(何から何まであいつの言う通りにするのは癪ふも)

モッフル(ここは……僕の存在感を見せつける意味も込めて)

モッフル(僕の実力を示すふも!)


モッフル「…………」

モッフル「やっぱり僕たちだけで何か考えてみるふも」

3マスコット「ええー!?」

モッフル「お前たち黙るふも」

モッフル「あの小僧に何もかも頼っていては変われないふも!」

いすず「!」

モッフル「そういう訳で、こっちは何とかするふも」

いすず「……わかったわ」



―――――――――――


ティラミーのフラワーハウス


     ゴソ ゴソ…  カン カン カンッ!

ティラミー「おはようだミー」

ティラミー「ん?」

男性キャスト「あ、おはようございます、ティラミーさん」

ティラミー「何してるミー?」

男性キャスト「はは……まだ開演まで時間があるので」

男性キャスト「出来る範囲でゴンドラのレールを直していました」

ティラミー「どうせ明後日、徹底的にやるのに……」


男性キャスト「そうなんですけどね……ほら、例の新しい支配人代行さんの言葉」

男性キャスト「あれ聞いてから早く何とかしたいって思っちゃって……」

ティラミー「…………」

男性キャスト「……私、息子が居るんです」

男性キャスト「その子が、ここで働く自分を見たら……きっとがっかりすると思います」

ティラミー「…………」

男性キャスト「親として、人として」

男性キャスト「やっぱり……息子にはいいところ見せたいです」

ティラミー「…………」

男性キャスト「頑張りましょう、ティラミーさん!」

ティラミー「そ、そうだミーね……」

ティラミー「…………」


事務棟


マカロン「ロンロンロ~ン」

     ゾロ ゾロ ゾロ…

ミュース「あ、マカロンさん、おはようございます」

マカロン「おーミュースちゃん、おはようロン」

マカロン「他のみんなもおはようロン!」

サーラマ「はようっす……」

コボリー「どうも……」

シルフィー「おっはよーございっ!」

マカロン「今からエレメンタリオだロン?」

マカロン「……ん?」


マカロン「そのバケツとモップは?」

ミュース「合間合間にできるだけ舞台の清掃をしようと思って……」

マカロン「やれやれ……ミュースちゃんもかロン」

ミュース「……も?」

マカロン「なーんか、今朝から張り切ってる奴が何人かいて」

マカロン「調子狂うロン」

ミュース「そう……ですか」

サーラマ「あーあたしもそれー」

サーラマ「どうせ明後日、大掃除するんだしー」

コボリー「…………」

シルフィー「へ・り・こ・ぷ・たー!」 みょん みょん みょん みょん


ミュース「……私」

ミュース「すごく落ち込みました」

マカロン「ロン?」

ミュース「あの鳴上っていう新しい支配人さんが」

ミュース「素人から見ても酷い遊園地だって、はっきり言われて……」

ミュース「何も言い返せない自分が悔しかったです」

マカロン「…………」

サーラマ「…………」

コボリー「…………」

シルフィー「お・す・ぷ・れ・いー!」 みょん みょん みょん みょん


ミュース「私……ほんの少しでも、いい方向に変えていきたい」

ミュース「その第一歩が……これなんです」

マカロン「…………」

マカロン「やれやれ……みんなあいつに感化されすぎロン」

マカロン「僕は付き合いきれないロン」

ミュース「マカロンさん……」

コボリー「…………」

コボリー「ミュース。 行こう」

コボリー「私も……少し手伝う」

ミュース「! コボリー……うん!」

サーラマ「……しょーがナスー」

シルフィー「精霊ル○バー!!」 ぐるん ぐるん ぐるん

     ゾロ ゾロ ゾロ…

マカロン「…………」


マカロン「はぁ……」

マカロン「…………」

マカロン(いまさら頑張って……どうなるロン)

マカロン(気持ちだけじゃどうにもならないって)

マカロン(嫌というほど味わったロン……)

マカロン(…………)

マカロン(僕は……何も考えず、あの鳴上って奴の言う通りにしてればいいんだロン)

マカロン(それ以上……頑張りたくないロン)

マカロン(…………)



―――――――――――


事務棟 執務室


     カタカタカタ…(PC閲覧中)

鳴上「…………」

鳴上(……酷いな)

鳴上(こんな赤字続きで、よく今日まで営業できたものだ)

鳴上(…………)

鳴上(新しいアトラクションの建設は資金的にも期間的にも難しい)

鳴上(どうテコ入れすればいいのか……)

鳴上(…………)


メープル城 空中庭園


ラティファ「いすずさん。 お話とは何でしょうか?」

いすず「…………」

いすず「ラティファ様、実は――」

―――――――――――

ラティファ「…………」

いすず「……という事ですので」

いすず「今後、彼をあまり信用しない方がいいかもしれません」

ラティファ「いすずさん」

いすず「はい」

ラティファ「今日のパークの雰囲気……どうでしたか?」

いすず「…………」


いすず「……多少は良くなっている、かと」

ラティファ「私もそう思いました」

いすず「ですが!」

ラティファ「いすずさんの懸念は……分からなくはないです」

ラティファ「でも……偶然の一致かもしれませんし、それに」

ラティファ「鳴上様のあの言葉には力がありました」

いすず「…………」

ラティファ「いずれにしても鳴上様の手を借りないままでは」

ラティファ「パークの滅亡を待っているだけなのでは ないでしょうか?」

いすず「……っ」


ラティファ「……言葉が過ぎましたね」

ラティファ「すみません、いすずさん」

いすず「……いえ」

いすず「私の方こそ、出過ぎた事を言いました」

いすず「私が……もっとしっかり運営できていれば」

ラティファ「いすずさん、そんなに自分を責めないでください」

ラティファ「私の方こそ責任ある立場なのに」

ラティファ「何の役にも立てなくて……」

いすず「…………」

ラティファ「…………」

ラティファ「いすずさん」

いすず「はい」

ラティファ「彼を信じましょう」

いすず「心得ました、ラティファ様」



―――――――――――


夕方

事務棟 執務室


     ガチャ

いすず「鳴上くん」

鳴上「ん?」

いすず「ずっとここに篭っていたの?」

鳴上「ああ……」

鳴上「さすがに昼は食べに行ったがな」

いすず「そう……」

いすず「いい案は浮かんだ?」


鳴上「いくつかは、な……」

いすず「どんな案?」

鳴上「今度の臨時休業日に部長クラスを集めて会議をする」

鳴上「そこで発表する為に煮詰めているところだ」

いすず「そう」

鳴上「…………」

鳴上「ところで、モッフル達は帰ってきたか?」

いすず「まだだと思うわ」

鳴上「…………」

鳴上「何かあったのだろうか?」



―――――――――――


モッフル「……ただいま戻ったふも」

鳴上「遅かったな、モッフル」

いすず「どうしたの?」

モッフル「どうしたもこうしたも……」

モッフル「平日の昼間だったから、駅前にほとんど人が居なかったふも」

鳴上「……あ」

いすず「それでどうして遅くなったの?」

モッフル「告知なのに人がいないとか、洒落にならないふも」

モッフル「だから帰宅ラッシュの時間まで粘っただけふも」

いすず「……そういう事だったの」


鳴上「……すまないモッフル」

鳴上「完全に俺のミスだ」

モッフル「……ふん」

モッフル「今回は、お前のミスに気がつかなかったから僕も同罪ふも」

モッフル「でも明日は朝と夕方、通勤ラッシュの時間帯に出張って」

モッフル「しっかりアピールして来るふも」

鳴上「わかった」

鳴上「いすず、明日も駅の許可を取っておいてくれるか?」

いすず「了解よ」

モッフル「じゃあ僕は明日に備えてもう休むふも」

鳴上「すまない。 よろしく頼む」

モッフル「……ふん」


     パタン…

鳴上「ふう……」

いすず「…………」

鳴上「すまないな、いすず」

いすず「急に何?」

鳴上「慣れていないとは言え、こんな事も気がつけないとは……」

鳴上「先が思いやられる」

いすず「…………」

いすず「いいえ」

いすず「気にしないで、鳴上くん」

いすず「あなたの思う通りにやって」

いすず「私も秘書として全力でサポートするわ」

鳴上「…………」


鳴上「……そうか」

鳴上「それは心強い。 頼りにさせてもらう、いすず」

いすず「ええ」

鳴上「…………」

いすず「…………」


鳴上(今朝感じた違和感……あれは無くなっている?)

鳴上(……気にしすぎだな)


鳴上「それじゃ……今日はこれで帰る」

鳴上「明日は俺もパークを見回りたいから案内を頼めるか?」

いすず「わかったわ」



―――――――――――


二日後 パーク臨時休業当日の午前中

会議室


鳴上「それでは、これから俺の考えた方策を発表する」


一同「…………」


鳴上「まず、定休日の全廃」

鳴上「はっきり言って時間的余裕がない」

鳴上「それを少しでも補うため、やむ得ない処置と考えて欲しい」


一同「えー……」


鳴上「気持ちはわかるが……」


鳴上「それ以前に定休日が金曜とか、サービス業として致命的だ」


一同「…………」

一同「分かりました……」


鳴上「次に営業時間の延長」


一同「えー……」


鳴上「……これも定休日全廃と理由がほぼ同じだ」

レンチくん「けどよぉ……大将」

レンチくん「ウチにゃあナイター設備なんて、ありゃしねぇぜ?」

レンチくん「延長といってもいつまでやるんだい?」


鳴上「これからまだ日は長くなる」

鳴上「少なくとも現在の夕方5時閉園を7時まで延長したい」

レンチくん「ふ~ん……まあ妥当なところだな」

モッフル「……いた仕方ないふもね」

鳴上「よし」

鳴上「次に新たなサービスとして、子供向けクイズを提案する」


一同「……!?」


鳴上「俺の案としては、子供……小学校低学年くらいをターゲットにして」

鳴上「『答えられそうで答えられない』問題を解いてもらう」

鳴上「正解した子供には駄菓子を景品として贈る」

モッフル「ちょっと待つふも」

モッフル「それは誰がやるんだふも?」


鳴上「裏方を除く、キャスト全員でだ」


一同「はあ!?」


未来くん「いやいやいや! それはいくら何でも無理があるって!」

オークロ「じ、自分も一応ゲストに接しているのですが……」

ニック「問題もキャストが考えるニク?」

アーシェ「経理部としても、駄菓子とは言え」

アーシェ「正解し続けられると、経費が心配になってきます」

鳴上「…………」

鳴上「……わかった」

鳴上「では、この案は一時保留とする」


鳴上「次に」

鳴上「全キャストの給与5%アップだ」


一同「!!?」


アーシェ「ま、待ってください支配人代行!」

アーシェ「正気なんですか!?」

鳴上「ああ」

アーシェ「当パークは、慢性的な赤字続きで」

アーシェ「どこにもそんな余裕はありません!」

鳴上「しかし、定休日の全廃や営業時間の延長など」

鳴上「これからキャスト達に相当な無理を強いる」


アーシェ「お言葉ですが、ここで人件費に回してしまったら」

アーシェ「パークの維持が難しくなるかと……」

鳴上「キャストのモチベーションが下がったら元も子もない」

鳴上「施設の維持はもっともだが、それを運営しているのはキャストだ」

鳴上「それをないがしろにして いい訳はない」

アーシェ「おっしゃる事はわかりますが……!」


モッフル「……ちょっと待つふも」


鳴上「モッフル……」

モッフル「お前の魂胆は見え見えふも」

モッフル「おそらく……人心掌握の為のパフォーマンスふも」

鳴上「…………」

モッフル「馬鹿にするなふも」


モッフル「僕たちは、痩せても枯れてもこのパークに誇りがあるふも」

モッフル「愛着だってあるふも」

鳴上「……だが、モッフル」

モッフル「パークの危機は僕たちも理解しているふも」

モッフル「アーシェの言葉から、本当に余裕がない事は明白」

モッフル「7月31日を待たずにキャストの給料で閉園とか目も当てられないふも」

鳴上「…………」

鳴上「みんなも同じ気持ちなのか?」


一同「…………」


鳴上「…………」

鳴上「……わかった」


鳴上「では、この案も一時保留とする」


一同「…………」

モッフルとアーシェ以外(ちょっとやって欲しかったかも……)


鳴上「最後に」

鳴上「昨日、一昨日とモッフルにやってもらったが」

鳴上「マスコットキャストによる広報活動だ」


一同「…………」


鳴上「もちろんそれ以外でも広報活動を活性化させる」


鳴上「チラシ・ティッシュ配り・ポスター等で、とにかく宣伝する」


いすず「っ!」

一同「…………」


鳴上「まず、ゲストにこれまでの甘ブリとは『違うんだ』という事を」

鳴上「重点的にアピールしようと思う」


いすず「…………」

一同「…………」


鳴上「……どうした?」

モッフル「……何でもないふも」

モッフル「みんな、何か反対意見はあるふも?」


一同「…………」


鳴上「……?」


アーシェ「……それでは支配人代行」

アーシェ「どのくらいのチラシやポスターを用意しますか?」

鳴上「待ってくれ」

鳴上「言いたい事があるのなら、言ってくれ」

いすず「…………」

いすず「鳴上くん」

いすず「その手は……私が支配人代行の時やって」

いすず「ほとんど効果が無かったのよ……」

鳴上「!」


いすず「10回くらい繰り返したけど……最後の方なんて自治体から」

いすず「『チラシがゴミになるからやめてくれ』とまで言われたわ」

鳴上「…………」

鳴上「……そうか」


一同「…………」


鳴上「…………」

鳴上「……では、この案も一時保留とする」

鳴上「以上で、今日の会議は終わりだ」

鳴上「各自、それぞれの部署でのメンテナンス、備品の要望等まとめておいてくれ」

鳴上「それでは……解散。 お疲れ様」



―――――――――――


鳴上「ふう……」

いすず「…………」

いすず「鳴上くん」

鳴上「ん?」

いすず「あなたの案は半分以上受け入れられなかったのに」

いすず「悔しくはないの?」

鳴上「…………」

鳴上「まあ……悔しいさ」

鳴上「だが、まだみんなを納得させるだけの説得力がない」

鳴上「まだまだこれからだ」

いすず「……前向きね」


鳴上「気持ちだけは、ポジティブに行かないとな」

いすず「…………」

いすず(……私は……そんな気になれなかった)

鳴上「そうだ、いすず」

いすず「何かしら?」

鳴上「さっき言ってたチラシの話」

鳴上「良かったら詳しく教えてくれないか?」

いすず「!」

いすず「……わかったわ」

いすず「明日、レポートにまとめて提出する」

鳴上「……? いや、話を……」

いすず「それでいいでしょう?」

鳴上「…………」


鳴上「……それでいい」

いすず「じゃあ、今日はこれで失礼させてもらうわ」

いすず「また明日」

鳴上「ああ……」

     パタン…

鳴上「…………」


鳴上(やれやれ……)

鳴上(前途多難、だな)

鳴上(…………)



―――――――――――


居酒屋さべーじ


いすず「……で?」

いすず「モッフル主催の決起会、と聞いたのだけど……」

モッフル「…………」

マカロン「…………」

ティラミー「…………」

いすず「集まったのはこれだけなのかしら?」

モッフル「……誘ったけど他は来なかったふも」

モッフル「とりあえず、お疲れ……」

     カンパーイ……


マカロン「モッフル意外と人望ないロン」

ティラミー「今時飲み二ケーションとか流行らないミー」

モッフル「うっ……」

マカロン「だいたい給料アップを断るとか、どういう神経ロン」

ティラミー「大したキャストリーダーさんだミー……」

モッフル「ぐはっ……!」

マカロン「おまけに極度のシスコンだし」

モッフル「なっ!?」

モッフル「誰がそんな事を言ったふも!?」

ティラミー「みんな知ってるミー」


マカロン「ラティファ様が、モッフルのお姉さんに生き写しで」

マカロン「それで執着してるって、もっぱらのうわs」

     ドゴッ! バキッ!

モッフル「黙るふも!」

モッフル「姪を心配するのは当然ふも!」

マカロン「何すんじゃコラ……」

ティラミー「やる気かミー……」

モッフル「……かかって来いふも」

マカロン・ティラミー「上等だゴルァッ!!」


     ズドンッ! ズドンッ! ズドンッ!


いすず「やめなさい、みんな」


モッフル「ふ、ふもっ……!」 ビクンッビクンッ

マカロン「おお、うっ……!」 ビクンッビクンッ

ティラミー「い、いすずちゃんっ……女の子は、もっとおしとやかにっ……!」 ビクンッビクンッ

いすず「あなたの女性像など、どうでもいいわ」

モッフル「……いすず、どうしたふも?」

モッフル「あの鳴上って奴と何かあったのかふも?」

いすず「……どうして鳴上くんの名前が出てくるの」 ギロッ…

モッフル「い、いや……ここのところあいつと一緒に居るいすずは」

モッフル「不機嫌そうだったし……」

ティラミー「ほっほー!」

ティラミー「それは聞き捨てなりませんミー!」


マカロン「そういえばいすずちゃんは」

マカロン「ラティファ様の指示で、あいつの家に泊まったって聞いたロン!」

ティラミー「きっとムフフな展開になって、貫通済m」


     ズドンッ! ズドンッ! ズドンッ!


マカロン「」

ティラミー「」

モッフル「」

いすず「はあっはあっはあっ……」

いすず「まったく……」

     ……ドドドドドドッ!

     ガラッ

ワニP「たたたたた、大変だっピー!」


モッフル「ワニP?」

マカロン「どうしたロン?」

ティラミー「とにかく落ち着くミー」

ワニP「お、落ち着いてなんて、いられないっピー!」





ワニP「ラティファ様が……!」





いすず「!?」



―――――――――――


鳴上の部屋


鳴上「…………」

     ピッ…… ルルルッ…… ルルルッ……

     ガチャ

鳴上「こんばんは、陽介」

鳴上「…………」

鳴上「ああ、久しぶりだな」

鳴上「今、いいか?」

鳴上「…………」

鳴上「そうか……それじゃ、ちょっと聞きたい事があるんだが」


鳴上「今……商店街の方はどうなってる?」

鳴上「…………」

鳴上「……ああ、ちょっと巻き込まれた事があってな」

鳴上「話すと長い」

鳴上「事情は後で話すから、質問に答えてくれないか?」

鳴上「…………」

鳴上「…………」

鳴上「……!」

鳴上「…………」

鳴上「…………」

鳴上「……なるほど」











鳴上「それは面白い方法だな」











―――――――――――

―――――――――――


鳴上「追求」

いすず「考察」


鳴上・いすず「二次創作ー」


     パチパチパチ


いすず「そういえば鳴上くん」

鳴上「なんだ?」

いすず「あなた、このスレではコミュ障っぽく描かれているけど」

いすず「その事について、どう思っているのかしら?」

鳴上「……それより菜々子の画像を見ながら ぼっち飯という方がトラウマだ」

鳴上「さすがにしないだろう……」


いすず「>>1的には大ウケだったようだけど」

鳴上「とりあえず、それと今回の話と何か関係あるのか?」

いすず「ないわ」

鳴上「…………」

いすず「さて、原作やアニメでもあった、一番読者や視聴者を驚かせた」

いすず「30円キャンペーンを外す、という大暴挙にでた展開だけど」

鳴上「……いや、あれは普通に無茶だと思うが」

いすず「インパクトとしてはパンチが効いていただけに」

いすず「これは大失敗だと思うわ」

鳴上「……俺としては、PV制作が無かったのが」

     ジャキン!

鳴上「何でもない」


いすず「はたしてどうなるのか?と思いたいところだけど」

いすず「案の定ジュネスを使ってきたわね」

鳴上「気になる終わり方だと思うが?」

いすず「どうせジュネスも甘城高校に転校してきて」

いすず「二人で何とかするぜー(棒)的な展開になると思うわ」

鳴上「……それはそれで逆に見てみたくなる展開だな」

鳴上「というか、陽介を『ジュネス』と呼ぶのは いかがなものかと思う」

いすず「それで通じるのだから構わないわ」

鳴上「……せめて陽介の前では止めてやってくれ」

というところで、今日はここまでです。

ジュネスより、アイドルの方が集客率上がりそう。

確かにりせちーがブログなりなんなりで一言出すだけで大きな宣伝効果ありそう。
おつ



―――――――――――


翌日の午前中

メープル城 ラティファの部屋


ラティファ「伯父様!」

モッフル「ラティファ……良かった、大丈夫そうふもね」

モッフル「心配したふも」

ラティファ「少しふらついただけです」

ラティファ「伯父様も皆さんも心配しすぎですよ」 クスッ

モッフル「そうは言っても……やっぱり心配ふも」

ラティファ「…………」

ラティファ「あの、伯父様」

モッフル「ん?」


ラティファ「昨日の会議で鳴上様の意見を否定ばかりしていたとか……」

モッフル「……そんな事はないふも」

モッフル「無茶な方策に対して反論しただけふも」

ラティファ「そうなのですか……」

モッフル「神託が降りたとはいえ、やっぱりあいつはど素人ふも」

モッフル「危なっかしくて見ていられないふも」

ラティファ「…………」 クスッ

モッフル「……ラティファ? どうして笑うふも?」

ラティファ「いえ。 何でもありません、伯父様」

ラティファ「これからも鳴上様をサポートしてあげてください」

モッフル「……!」

モッフル「も、もちろんふも」


ラティファ「ところで、今日、いすずさんはどうされたのでしょう?」

モッフル「今日はあいつと一緒で学校ふも」

モッフル「いすずは監視役と言っていたが……」

モッフル「何か聞いているふも?」

ラティファ「…………」

ラティファ「実は……」

―――――――――――

モッフル「」

モッフル「ペルソナ? テレビの世界?」

モッフル「どんなファンタジーふも!?」

ラティファ「伯父様、私たちがそれを言っていいのでしょうか……」


モッフル「……とにかく、警戒しておくに越した事はないふも」

モッフル「いすずの判断は正しいふも!」

ラティファ「伯父様」

モッフル「何ふも?」

ラティファ「私は……私達は鳴上様にこのパークの未来を託したのです」

モッフル「し、しかし!」

ラティファ「伯父様。 鳴上様をお呼びしたのは私達の方なのですよ?」

ラティファ「彼にご迷惑をかけているのは、こちらなのです」

モッフル「…………」

ラティファ「いすずさんにも言ったのですが……」

ラティファ「鳴上様を信じましょう? 伯父様」

モッフル「…………」

モッフル「……わかったふも」



―――――――――――


事務棟


マカロン「おはようロン」

ティラミー「おはよーミー」

マカロン「はぁー……今日もクソガキ共の相手かロン」

ティラミー「これも仕事だミー」

     キュム キュム キュム

モッフル「おはようふも」

マカロン「おーモッフル」

ティラミー「おはようだミー」


モッフル「二人とも何朝から景気悪い顔してるふも」

マカロン「ちょっとした愚痴を言ってたロン」

ティラミー「パーク存亡の危機とはいえ、労働時間増えるし」

ティラミー「イマイチ気持ちが盛り上がってこないんだミー」

モッフル「…………」

モッフル「……気持ちを切り替えるふも」

モッフル「最悪、僕らだけになったとしても、パークを盛り上げていくふも」

マカロン「はぁ~??」

ティラミー「そんなの絶対無理ミー……」

モッフル「心構えはそうあるべきと言ってるだけふも」

マカロン「…………」

ティラミー「…………」



―――――――――――


昼休み

甘城高校 屋上


いすず「鳴上くん」

鳴上「来たか、いすず」

いすず「これ……昨日頼まれたレポートよ」

鳴上「助かる」

いすず「……じゃ」

鳴上「待て、いすず」

いすず「何かしら?」


鳴上「せっかくだ」

鳴上「昼を一緒に食わないか?」

いすず「あなたと?」

鳴上「ああ」

いすず「……遠慮しておくわ」

鳴上「……そうか」

鳴上「それからな、今日の放課後」

鳴上「俺はパークに行かない」

いすず「……理由は?」

鳴上「少し確かめたい事があってな」

鳴上「明日はちゃんと顔を出す」

いすず「…………」


いすず「……了解したわ」

鳴上「ラティファにも済まないと言っておいてくれ」

いすず「ええ」

いすず「それじゃ……」

     スタ スタ スタ…

鳴上「…………」

鳴上「さて……」 パラッ…

鳴上「…………」

鳴上「…………」 パラッ…

鳴上「…………」

鳴上「…………」 パラッ…

鳴上「…………」



―――――――――――


夕方

事務棟


     キュム キュム キュム

モッフル「いすず」

いすず「何かしら?」

モッフル「あいつはどうしたふも?」

いすず「今日は来ないわ」

モッフル「何!?」

いすず「少し確かめたい事があると……」

モッフル「…………」


モッフル「いすず、ラティファから あいつの事情を聞いたふも」

いすず「!」

モッフル「ラティファから『信じろ』と言われたけど……」

モッフル「正直不安ふも」

いすず「…………」

モッフル「破壊工作や妨害工作の可能性は無いふも?」

いすず「……何とも言えないわ」

いすず「表面的には無い、としか……」

モッフル「…………」

モッフル「まったく……何であんな奴に神託が降りたふも」

いすず「…………」


モッフル「いすずもどうして今日に限って あいつから目を離したふも?」

いすず「!」

いすず「……すみません」

モッフル「…………」

モッフル「まあいいふも」

モッフル「明日もあるし……今日はもう休むふも」

モッフル「お疲れ様」

     キュム キュム キュム…

いすず「…………」

いすず(……私は)

いすず(……っ)



―――――――――――


数日後の休日 午前中

執務室


トリケン「支配人代行」

トリケン「インターネット動画サイトへ投稿する動画が完成いたしました」

鳴上「見せてくれ」

     動画再生中…

トリケン「いかがでしょう?」

鳴上「……やや女性キャストに偏っていないか?」

鳴上「俺はマスコットを重点的にと頼んだはずだが?」

トリケン「それは重々承知しておりますが、やはり昨今、ある程度の色気は必要かと……」

鳴上「…………」


鳴上「ふむ…… 一理あるか」

鳴上「では、このままの感じで続けてくれ」

鳴上「それから大変だと思うが、違う種類の本数もできるだけ増やしてほしい」

トリケン「前かがみで取り組みます」

鳴上「案内板の方はどうなっている?」

トリケン「現在の進行状況は50%という所でして……」

トリケン「もう少し時間をいただきたいのですが」

鳴上「出来ている所まででいい。 見せてくれ」

トリケン「分かりました」

     ガチャ…

いすず「! ……鳴上くん」


鳴上「いすず。 おはよう」

いすず「……おはよう」

トリケン「こちらになります」

鳴上「どれ……」

いすず「…………」

鳴上「少し文字が小さいな」

トリケン「しかし、これ以上大きくすると ごちゃごちゃするかと……」

鳴上「いや、やはり小さい」

鳴上「背の低い子供や老眼の進んでいるゲストには読みづらいと思う」

鳴上「それからパーク周辺が寂しすぎる」

鳴上「マスコットのイラストや風船、花柄などで飾り付けてみたらどうだろう?」

トリケン「なるほど! とても勉強になります」

トリケン「このトリケン、思わず前かがみです」


いすず「…………」

鳴上「すまなかったな、いすず」

鳴上「要件は何だ?」

いすず「……今日中に片付けないといけない案件が山積みよ」

いすず「その準備をする為に来たの」

鳴上「そうか」

鳴上「準備が出来次第、声をかけてくれ」

いすず「わかったわ」

鳴上「トリケン、あと例のリサーチの件なんだが……」

トリケン「はい」

いすず「…………」



―――――――――――


フードコーナー バックヤード


ニック「やっと来たニクか」

鳴上「すまない。 要件は?」

ニック「食料品の備蓄が心配ニク」

ニック「今あるのはこれだけニクけど……いつもの量で注文するかどうか迷ってるニク」

ニック「かと言って、急に必要になった時、いつもの業者じゃ心元ないし」

ニック「余らせて食材をダメにするのも頂けないニク」

いすず「では、緊急に対応できる業者を探しましょう」

鳴上「日持ちのいい食材のみで新しいメニューを考えられないか?」

ニック「うーん……不可能ではないニクけど」

ニック「やはりバランスを考えると野菜なんかの生鮮食品は必要ニク」


鳴上「そうか……」

ニック「でも、いくつか考えてみるニク」

ニック「料理人の血が騒ぐニク!」

鳴上「頼む」

いすず「…………」


―――――――――――


地下 排水ポンプ室


レンチくん「よお、大将」

レンチくん「これを見てくれ。 三機あるポンプ、どいつもこいつもガタが来ててな」

レンチくん「どうにかしてーんだ」


鳴上「具体的にはどうしたい?」

レンチくん「理想を言えば、新しいのに取り替えてーんだが」

レンチくん「金がねーのはわかってるからな……」

レンチくん「せめて痛んでる箇所の部品交換をしてぇ」

鳴上「ふむ……いすず、ここの優先度はどれくらいになる?」

いすず「かなり重要だと思うわ」

いすず「ここはパーク全体の排水を支えている施設よ」

鳴上「わかった。 経理部に掛け合って何とか部品を用意しよう」

いすず「ええ。 それが最善だと思うわ」

レンチくん「ありがてぇ!」

レンチくん「ひとつ、急ぎで頼まぁ!」

鳴上「欲しい部品の一覧を書いて経理部に届けてくれ」



―――――――――――


経理部


アーシェ「……現状、厳しいですが」

アーシェ「何とかしましょう」

鳴上「頼む」

アーシェ「それから……こちらにも要望がありまして」

アーシェ「不必要な支出が多いので、それを見ていただきたいのですが」

いすず「確か……服飾の修繕に関連していた事案ね」

鳴上「一覧はあるか?」

アーシェ「こちらになります」

鳴上「どれ……」 パラッ…


いすず「…………」

アーシェ「…………」

鳴上「線引きが難しいが、緊急に必要な物以外は除外でいいだろう」

アーシェ「と、おっしゃいますと?」

鳴上「レインコートやキャストの制服等以外、除外としておいてくれ」

アーシェ「分かりました」

アーシェ「では、その様に取り計らいます」

鳴上「苦労をかけるが頼む」

いすず「…………」



―――――――――――


甘ブリ 正面ゲート付近


オークロ「防犯カメラの映像ディスプレイがいくつか調子悪くて……」

鳴上「……残念ながら予算が厳しい」

鳴上「何とか、だましだまし使ってくれないか?」

オークロ「と、言われましても……」

鳴上「では……何とか時間を作ってもらうから」

鳴上「レンチくんに見てもらってくれ」

オークロ「そうですか……分かりました」

鳴上「すまないな」

いすず「…………」



―――――――――――


倉庫


いすず「キャラグッズ等の置き場が無くて困っているそうよ」

鳴上「パーク内の閉鎖したアトラクション施設の一つを」

鳴上「臨時の仮置き場として使うのはどうだろう?」

いすず「!」

マーちゃん「なるほど! その手がありましたか!」

マーちゃん「さっそく候補を挙げて検討します」

鳴上「あくまで仮置き場という事を忘れずにな」

マーちゃん「わかりました」

いすず「…………」



―――――――――――


いすず「社員食堂のレバニラ炒めがマズイのを何とかして欲しい」

鳴上「……それ、ほぼ雑用じゃないのか?」

いすず「正式な要望よ」

鳴上「……マニュアル通り、忠実に作れとコックに言っておけ」


―――――――――――


いすず「大ファンのアイドルのお泊りが発覚して」

いすず「仕事が手につかないそうよ」

ワニP「」 チーン…

鳴上「……真下かなみの事でも紹介しておけ」



―――――――――――


執務室


鳴上「疲れた……」

     ドサドサッ

いすず「疲れているところ悪いけど」

いすず「この書類に目を通して、許認可の判断をしておいて」

鳴上「わかった……他には何がある?」

いすず「後は、アトラクション施設のリニューアルについてよ」

鳴上「リニューアル? どこから要望が出ている?」

いすず「モッフル、ティラミーの二人よ」

鳴上「そうか……しかし、この書類の量……」


鳴上「悪いが、いすず。 そちらは任せてもいいだろうか?」

いすず「私に?」

鳴上「ああ」

いすず「了解したわ」

鳴上「なるべく彼らの意見を聞いて、円滑に頼む」

いすず「……言われなくても」

鳴上「ん?」

いすず「何でもないわ」

いすず「任せておいて」

     パタン…

鳴上「…………」


鳴上「さて……」

鳴上「こちらも取り掛かるか」 フウ…

     コン コン

鳴上「ん?」

鳴上「どうぞ」

     ガチャ…

ミュース「ど、どうも……」

コボリー「お邪魔します……」

サーラマ「よろしくー」

シルフィー「ぎゅんぎゅーん!」


鳴上「エレメンタリオの4人か……要件は?」

ミュース「そ、その、ですね……」

ミュース「……どう言ったらいいのか」

鳴上「……?」

コボリー「ねえ、ミュース」

コボリー「直接見てもらった方がいいんじゃない?」

ミュース「あ! 確かにそうかも……」

サーラマ「まあ早いよねー」

シルフィー「迅速解決ー!」

鳴上「…………」

ミュース「鳴上さん、とにかくお時間をもらえますか?」

鳴上「……わかった」



―――――――――――


モッフルのお菓子ハウス


モッフル「これを見るふも」つ(ボロ水鉄砲)

モッフル「魔法の水鉄砲が、どれもボロボロのクタクタ!」

モッフル「前から言ってるけど、買い替えの予算をそろそろつけて欲しいふも!」

いすず「却下よ」

いすず「自分で何とかして」

モッフル「し、しかし!」

     ジャキン!

いすず「こっちの弾ならいくらでも用意できるわ」


モッフル「い、いすず!?」

モッフル「いくら何でも横暴すぎるふも!」

     グググッ…

いすず「全力で事に当たり、ゲストの皆様を迎撃しなさい」

モッフル「げ、迎撃!?」

いすず「わかったかしら?」

モッフル「…………もふ」



鳴上「…………」

エレメンタリオズ「…………」


ティラミーのフラワーアドベンチャー


ティラミー「これを見るミ」つ(オ○ホ)

     ズ ド ムッ !!

いすず「……くだらない事で呼んだのなら、もっとお見舞いするけど?」

ティラミー「ま、間違えた……」

ティラミー「これを見るミー!」つ(ボロ花オブジェ)

いすず「…………」

ティラミー「喋るお花がどれもボロボロのクタクタ!」

ティラミー「新しいのを買って欲しいミー!」

いすず「却下よ」

いすず「そちらで何とかして」

ティラミー「で、でも……!」


     ジャキン!

いすず「何度も言わせないで」

ティラミー「ミー……」



鳴上「…………」

ミュース「……というわけで」

ミュース「いすずさんに相談しにくくて……」


いすず「……あなたたち」


ミュース「ひっ!?」


いすず「用があるのなら私が聞くわ」

ミュース「は、はい……」

いすず「彼の手を煩わせないで」

ミュース「すみませんっ」

鳴上「…………」

鳴上「いすず、ちょっと来てくれ」

いすず「何かしら?」

鳴上「いいから来るんだ」

いすず「…………」



―――――――――――


鳴上「あれでは皆、萎縮してしまうぞ」

いすず「あなたのご要望通り、円滑に進めただけよ」

いすず「何が不満なの?」

鳴上「…………」

鳴上「いすず……支配人代行をやっていた一年間は」

鳴上「ずっとあんな感じだったのか?」

いすず「…………」

鳴上「……ともかくだ」

鳴上「あんな高圧的な態度……しかもマスケット銃を突きつけて」

鳴上「妥協点もないまま強引に進めるのは、円滑とは言えない」

鳴上「そんな調子でこのまま秘書を続けられても困る」

いすず「!?」

いすず「な……」


鳴上「いすず……」

鳴上「しばらく休んだらどうだ?」

いすず「っ!!」

鳴上「ずっと気を張り詰めていたみたいだし」

鳴上「鋭気を養っ」

     (壁)ダンッ!!

鳴上「!?」

いすず「私を……足でまといだと言いたいの!?」

鳴上「一言も言っていない」

鳴上「少し休めと……」

いすず「同じ事よ!」


いすず「私はあなたとは違う!」

いすず「いまさら休んで、何をどうしたらいいのよ!?」

鳴上「……いすず?」

いすず「!!」

鳴上「…………」

いすず「…………」

いすず「……ごめんなさい」

     タッ タッ タッ…

鳴上「…………」



―――――――――――




事務棟


モッフル「領収書の提出?」

鳴上「そうだ」

鳴上「将来的に経費で落とすよう取り計らう」

鳴上「まあ言ってみるなら『とりあえず立て替えておいてくれ』」

鳴上「というところだ」

モッフル「…………」

ティラミー「…………」


モッフル「そういう事なら……」

ティラミー「わかったミー」

鳴上「苦労をかけるな……すまない」

モッフル「…………」

モッフル「お前もずいぶん疲れているふもね?」

鳴上「今日がちょっとハード過ぎただけだ」

モッフル「……そうふもか」

ティラミー「じゃ……そろそろお暇(いとま)するミー」

鳴上「ああ。 明日もよろしく頼む」

     パタン…

鳴上「……ふう」

鳴上「…………」


翌日 雨天の平日

事務棟


     サアアアアア……


鳴上「雨か……」

鳴上「…………」

鳴上(今日はあいにくの天気だから仕方ないとしても)

鳴上(連日の同員数が全然伸びて来ないな……)

鳴上(…………)

鳴上(……今日、いすずは休みなのか?)

鳴上(確かに休め、とは言ったが……無断とはな)


鳴上「…………」

     ピッ…… ルルルッ…… ルルルッ…… ガチャ

鳴上「トリケンか?」

鳴上「今日は天気が悪くてパークは暇な状態だ」

鳴上「この機会を利用して部長クラスを集め、緊急会議を開きたいのだが」

鳴上「手配を頼めるか?」

鳴上「…………」

鳴上「……いすずが来てなくてな。 すまないが頼む」

鳴上「準備ができ次第、呼んでくれ」

鳴上「…………」

鳴上「議題?」

鳴上「緊急招集とでもしておいt」



     ギュウウウウウウウンッ……


鳴上「っ!?」

鳴上「…………」

鳴上「あ、ああ、すまないトリケン」

鳴上「そんな感じで頼む」

     ガチャ……

鳴上「…………」

鳴上(……この妙な感覚は何だ?)

鳴上(…………)



―――――――――――


パーク地下道


いすず「…………」

いすず「……ん」

いすず「…………」

いすず「ここは……?」

いすず「…………」

いすず「地下道……かしら?」

いすず「…………」

いすず(私……確か昨夜、お風呂に入って、着替えて……)

いすず(…………あれ?)

いすず(そこからの記憶が……ない)



     『目が覚めたかしら?』


いすず「!?」

いすず「誰!?」

     ジャキン!

いすず「!!」

いすず「あ……あなたは!?」


影・千斗『ふふふ……』


いすず(こ……これは、まさか)

いすず(鳴上くんが言っていた……!?)



影・千斗『そう……鳴上くんから聞いている通り』

影・千斗『私はあなたよ。 千斗いすず』


いすず「だ、黙りなさい!」


     タッ タッ タッ


鳴上「!?」

鳴上「い、いすず!?」


いすず「!?」

いすず「鳴上くん!?」


鳴上(間違いない……あれは、いすずの【シャドウ】!!)

鳴上(どういう事なんだ!?)


いすず「……これは、あなたのせいなの!?」

いすず「いったい何をしたの!?」


鳴上「俺にも全くわからない!」

鳴上「とにかく落ち着くんだ!」


いすず「黙って!」


影・千斗『何をおびえているの?』 クスクス


いすず「!!」

いすず「あ、あなたも黙りなさい!!」



影・千斗『そうよね。 あなたは『怖い』のよね』

影・千斗『何もかもが!』


いすず「な、何を!」

いすず「私は……何も恐れてなんていない!」

鳴上「…………」


影・千斗『嘘ばっかり』 クスクス

影・千斗『パークの支配人に大抜擢されるも、その期待に応えられず』

影・千斗『周囲からの冷めた目つき……』


いすず「!!」


影・千斗『初めは無能で、自分より使えないと思ってた鳴上くんの成長っぷり』

影・千斗『おまけにその彼から能無し扱いされる始末』


いすず「黙れと言っている!!」

     ズドンッ! ズドンッ! ズドンッ!

いすず「……!?」

いすず「き、効か……ない!?」


影・千斗『ふふふ……そうやって銃で高圧的に接するのも』

影・千斗『自分の恐怖心をごまかす為にやっているのよね?』


いすず「もうやめて……! もう黙って!」


影・千斗『どうしてよ? 外見は可愛いのだから、こわ~い♡って』

影・千斗『そこに居る鳴上くんに甘えたらいいじゃない!』


いすず「違う! そんな事、考えた事もない!」

鳴上「!」

鳴上「落ち着け、いすず!」


影・千斗『嘘をついてもダメよ』

影・千斗『私はあなたなのだもの……何でも知っているわ』

影・千斗『ラティファへの義理や責務すら鬱陶しくて……』

影・千斗『何もかもぜーんぶ! 鳴上くんに押し付けたいのよね!』


いすず「ち、違う! あなたなんて……あなたなんて!」

鳴上「いすず!! それ以上言うな!!」











いすず「あなたなんて、私じゃない!!」












     ズウウウウウウウウウウンッ……!


影・千斗『うふふ……あーはっはっはっ!!』


     ド  ン  ッ  !!


いすず「」 ドサッ…


鳴上「くっ……!」


影・千斗?『我は影……真なる我……』

影・千斗?『鳴上悠……お前は災い運びしモノ……』

鳴上「!?」

影・千斗?『ここで……死ぬばいい!!』

     グワッ!!

鳴上「……ペルソナ!!」



―――――――――――


鳴上「はあっはあっはあっ……」


影・千斗『…………』


鳴上「…………」

いすず「……う」

鳴上「気がついたか……いすず」

いすず「…………」

いすず「鳴上くん……はっ!?」


影・千斗『…………』


いすず「ち、違う! あれは私じゃ――」


鳴上「いすず」

いすず「…………」

鳴上「俺は……ペルソナの事は詳細に話したな?」

いすず「………っ」

いすず「……テレビの世界で具現化した【シャドウ】は」

いすず「本人がどれだけ否定しようとも、その人物の本音であるのは間違いない……!」

鳴上「そうだ」

いすず「…………」

鳴上「だが、あれはあくまでお前の一面に過ぎない」

いすず「!」

鳴上「それを忘れるな、いすず」


いすず「鳴上くん……」

鳴上「自分の心と向き合ってくれ」

鳴上「そして、早いとこ仕事に復帰して欲しい」

いすず「え……」

鳴上「いすずが傍に居てくれないと困る」

いすず「そ、それって……」///

鳴上「?」

いすず「……何でもないわ」

     スクッ…

いすず「…………」

いすず「……そうね」


いすず「確かに私は……自分を見る周囲の目が恐ろしかった」

いすず「周りの期待に答えられない自分が……嫌だった」


影・千斗『…………』


いすず「支配人に抜擢された時……自分に合っていない事も分かっていた」

いすず「ラティファ様への忠誠や家名を重荷に感じて、逃げ出したかったのも……その通りよ」


影・千斗『…………』


いすず「でも……私は、この仕事に誇りを感じているのも確か」

いすず「私は、茨の道であろうとも自分の意思でそれを選んだ」

いすず「例え微力でも、ラティファ様、メープルランドの為になりたいと」

いすず「心から思ったわ」



影・千斗『…………』


いすず「…………」

いすず「そうね……あなたは、確かに私で」

いすず「私は、あなただわ」


影・千斗『…………』 クスッ


     ヒィイイイイイインッ!


いすず「こ……これは……?」

鳴上「ペルソナだ」

いすず「これが……」


いすず「…………」

鳴上「…………」

いすず「…………」

鳴上「……?」

いすず「……何?」

鳴上「いや……何というペルソナなのかと」

いすず「特に何も……」

鳴上「気分が悪くなったりとかは?」

いすず「それもないわ」

鳴上(……魔法の国の住人だからか?)

いすず「何か気がかりなの?」

鳴上「……すまないが、よく分からない」


鳴上「それよりもいすずに何があったのか教えてくれ」

いすず「……昨夜、お風呂に入って、パジャマに着替えて」

いすず「そこからの記憶がないわ」

鳴上「……八十稲羽での事件に似ているな」

いすず「ベッドに入った覚えはないのだけど……」

いすず「どうしても思い出せない」

鳴上「…………」

     ピピピ…… ピピピ……

鳴上「!」 ピッ

鳴上「もしもし……ああ、トリケンか」

鳴上「…………」

鳴上「……わかった、今行く」 ピッ


いすず「何の連絡?」

鳴上「緊急会議を開こうと思って、その準備を頼んでおいたんだ」

いすず「そう……」

鳴上「体調は大丈夫か?」

鳴上「できれば手伝って欲しい」

いすず「問題ないわ」

鳴上「そうか。 頼りにしている」 ニコッ

いすず「…………」///

鳴上「どうした?」

いすず「何でもないわっ」///

鳴上「?」


いすず「私の心配より、鳴上くんはどうなの?」

いすず「見た目、かなりボロボロよ?」

鳴上「体の方は何ともないが……」

鳴上「予備の制服、あるか?」

いすず「あるわ」

いすず「私が着替えたあと、持って行くから」

いすず「そうね……執務室で待ってて」

鳴上「頼む」

鳴上「ペルソナについては後で話そう」

いすず「わかったわ」



―――――――――――


会議室


鳴上「すまない、待たせたな」

トリケン「いえ」

鳴上「それでは、肝心の議題だが……」

鳴上「この前提案した方策について一つ修正案を示したいと思う」


一同「…………」


鳴上「新サービスについてだが……」

モッフル「クイズがどうの、と言ってたふもね」

鳴上「そうだ」


鳴上「基本姿勢は変わらない。 ターゲットは小学校低学年くらいを目安とし」

鳴上「”答えられそうで答えられない”という感じのクイズを出題し」

鳴上「景品として駄菓子を贈る」

アーシェ「どの様に修正したのですか?」

鳴上「出題の仕方だが、まずパーク入場時にクイズに参加するかどうか訪ね」

鳴上「参加者にスタンプカードを贈る」

モッフル「……なるほど。 それなら何度も答えられる事は防げるふも」

鳴上「そうだ。 今はとりあえずだが、1問1スタンプとして3つ集めたら」

鳴上「スタンプカードと景品を交換する形にすれば、経費も予測しやすいと思う」

未来くん「出題者はどうするの?」

鳴上「首から下げる形のプラカードを付けてもらい」

鳴上「そのプラカードに問題を書いて、正解ならスタンプを押す」


トリケン「ふむ……面白いですね」

トリケン「しかし、中には同じ出題者に何度も尋ね」

トリケン「安易にスタンプを稼ぐ子供も居るかと思いますが?」

鳴上「それは確かにあるだろうが、キャストに注意喚起をしてもらえば……」

いすず「チェックポイント方式にするのは?」


一同「!」


マーちゃん「それならある程度コース化して、こちらの思わく通り」

マーちゃん「ゲストを誘導もできますね」

鳴上「いや、待ってくれ」

鳴上「俺としては『出題者を探す』という事も楽しんでもらいたいのだが」


アーシェ「楽しませる?」

鳴上「何というか……パーク内を『探検』してもらいたいんだ」


一同「!」


モッフル「そういう意図があったふもか……」

モッフル「しかし、お前の言う通りにしていたらキャストの負担は倍増ふも」

モッフル「ここはいすずの言う通りチェックポイント方式にして」

モッフル「実験的に導入してみるのが妥当ふも」

鳴上「そうしたいところだが時間がない」

鳴上「なるべく経費をかけず行えるサービスとしての一計だ」

鳴上「正直、まだまだインパクトは弱い」



一同「…………」


モッフル「……では、こうしてみたらどうふも?」

鳴上「聞こう」

モッフル「チェックポイント方式で行うけど、日替わりでポイントを変えるふも」

モッフル「これならキャストの負担も軽減できるし」

モッフル「ある程度、ゲストがパーク内を探検もできるふも」

鳴上「…………」


一同「…………」


鳴上「……よし、それで行こう」



一同「!」


鳴上「それではトリケン、スタンプカードのデザインを頼む」

鳴上「簡単なものでいい」

トリケン「わかりました」

鳴上「アーシェ、諸経費がどの程度になるかの試算をして」

鳴上「可能な範囲で予算を組んでみてくれ」

アーシェ「はい」

鳴上「各エリアの日替わりチェックポイントのシフトは」

鳴上「いすず、やってくれるか?」

いすず「!」

いすず「私が……?」


鳴上「ああ」

鳴上「俺はまだここに来て日が浅い」

鳴上「ぜひ、一年間ここの支配人代行だった経験を活かして」

鳴上「シフト表を組んで欲しい」

いすず「…………」

いすず「……しかし、私は」

モッフル「いすず……やって欲しいふも」

いすず「!」

いすず「モッフル卿……」

モッフル「確かに……いすずはこのパークを立て直せなかったふも」

モッフル「でも一生懸命頑張っていたのは、みんな知っているふも」

いすず「!?」


レンチくん「そうだぜ、嬢ちゃん」

レンチくん「ちいっとばかし強引だったけどな」

ニック「たくさんお世話になったニク」

オークロ「その通りです、いすずさん」

未来くん「いすずさんなら信頼できる」

いすず「……みんな」

いすず「…………」

いすず「わかったわ、鳴上くん」

いすず「各エリアの日替わりチェックポイント・シフト表」

いすず「作成しておくわ」

鳴上「頼む」


鳴上「最後に肝心のクイズだが……」

鳴上「これはキャスト各員全員で考えて欲しい」

鳴上「”答えられそうで答えられない”という抽象的なボーダーだが」

鳴上「それを目指して考案してくれ」


一同「わかりました」


鳴上「では、今日の会議はこれで終わるが……」

鳴上「この前、保留した他の案件はまだ続けて考えている」

鳴上「まとまったら、また突然になるだろうが、緊急会議を開く」

鳴上「そのつもりでいて欲しい」

鳴上「それじゃ、お疲れ様」


―――――――――――


鳴上「体調の方は変化ないか?」

いすず「大丈夫よ」

鳴上「そうか……」

いすず「それで、ペルソナの事なのだけど」

いすず「私の方でつかんでいる事を教えるわ」

鳴上「つかんでいる事?」

いすず「ベルベット・ルームという言葉にずっと引っかかっていたの」

いすず「どこかで見聞きした気がして、メープル城の古い文献を調べてみたら……」

いすず「遥かな昔、私たちと敵対していた『ベルベット一族』という記述を見つけたわ」

鳴上「!」

いすず「文献には長い間 私たちと争い続けたけど、最終的にこちらが勝利したと……」

鳴上「…………」


鳴上「それで……『ベルベット一族』はどうなったんだ?」

いすず「わからないわ」

鳴上「……そうか」

いすず「…………」

鳴上「ここのところ何かよそよそしかったのは」

鳴上「それのせいか?」

いすず「……ええ」

鳴上「…………」

鳴上「分からない事だらけだな」

鳴上「イゴール達に悪意があるとは思えないし……」

鳴上「なぜ、現実世界で【シャドウ】が出てきたのかも謎だ」

いすず「…………」


いすず「とりあえず……事のいきさつをラティファ様にお伝えするわ」

鳴上「ああ、頼む」

鳴上「俺の方でも情報収集しておく」

鳴上「なにか掴めたら、すぐに連絡しよう」

いすず「ええ。 お願いするわ」

いすず「……それから」

鳴上「ん?」

いすず「…………」

いすず「これからもよろしくね」

鳴上「ああ、こちらこそ頼む」



―――――――――――






     サアアアアアア……










マカロンのミュージックシアター


マカロン「はぁ~……ヒマだロン」

マカロン「…………」

マカロン(……やれやれ)

マカロン(こんな調子でどうにかなるのかロン……?)

マカロン(…………)

マカロン(……まあ)

マカロン(どうでもいいロン……)

マカロン(…………)





     パーク閉園期限まで

      あと残り 74 日



     必要来園者数

       243844 人






―――――――――――

―――――――――――


鳴上「追求」

いすず「考察」


鳴上・いすず「二次創作ー」


     パチパチパチ


いすず「まったく……とんでもない事をしてくれたわね」

鳴上「今日はいつになく怒っているな」

いすず「当然よ」

いすず「私の唯一とも言える有能さを発揮できるエピソードが」

いすず「丸々削除されてしまっているわ」

鳴上(アニメ最終話でも見事なポンコツぶりを発揮してたしな)


いすず「そしてやっとデレ表現を行ったわね」

鳴上「あれでか?」

いすず「ついでにマカロンをあからさまに怪しくしていたわね」

鳴上(無視された)

いすず「次の被害者がマカロンなのは、ほぼ間違いないと思うわ」

鳴上「いすず。 お前は>>1の胃に穴を開けたいのか?」

いすず「そのつもりなら、とっくに魔銃シュタインベルガーを使っているわよ」

鳴上「普通に殺人になるから止めておけ」

いすず「そういえば……」

鳴上「ん?」


いすず「前回の最後でもったいぶっていたジュネスがらみの話」

いすず「今回、何も触れていなかったわね」

鳴上「いすずは陽介が転校してくるとか言っていたが」

鳴上「案外外れなのかもしれないぞ?」

いすず「もしかしたら、ガン○ムA○Eの日○みたいに」

いすず「広げた風呂敷をしまいきれないのかも」

鳴上「……その例えは盛大に引くが、言いたい事はわかる」

鳴上「だが、ある程度は信頼してやってもいいんじゃないか?」

いすず「ハーレムエンドになると分かりきっているのに?」

鳴上「……次回に乞うご期待」

というところで、今日はここまでです。



―――――――――――


????


イゴール「…………」

イゴール「おお、お客様。 お待ちしておりました」

イゴール「ようこそ、我がベルベット・ルームへ」

イゴール「早速ですが……む?」

イゴール「…………」

イゴール「…………」

イゴール「ほう……」

イゴール「…………」


イゴール「……なるほど」

イゴール「ベルベット一族でございますか……」

イゴール「これはまた随分と古き呼び名が飛び出してまいりましたな」

イゴール「ふふふ……」

イゴール「…………」

イゴール「では……ご説明致しましょう」

イゴール「まず、お客様の申されましたました通り」

イゴール「太古の時代……我々はベルベット一族と名乗り」

イゴール「魔法の国と呼ばれる一連の種族と敵対関係にありました」

イゴール「しかし……元々は同じ種族だったのです」

イゴール「…………」

イゴール「ふふふ……驚かれた様でございますな?」


イゴール「お客様はメープルランドに限らず」

イゴール「魔法の国と呼ばれる一族がどの様にして」

イゴール「人の住む世界に存続できているのか、ご存知でしょうか?」

イゴール「…………」

イゴール「【アニムス】……左様にございます」

イゴール「我々が彼らと たもとを分かつ前……人の”感情”を糧にするという行為は」

イゴール「同じものだったのでございます」

イゴール「ですが、ある時……」

イゴール「画期的な方法が考案され、人の”感情”の効率的な採取が可能となった」

イゴール「すなわち……喜びや楽しいと思う正の意識と」

イゴール「……悲しみや憎しみという負の意識」

イゴール「この二つの感情は大きなエネルギーとなり、糧となりました」


マーガレット「……でも」

マーガレット「負の意識は当時の技術水準では、到底扱いきれるものではなかった」

マーガレット「負の意識から得た糧を摂取した魔法の国の住人は」

マーガレット「変調をきたし、死ぬ者も続出した……」

イゴール「……故に」

イゴール「負の意識は取ってはならないものとされ」

イゴール「研究すらタブーとなったのです……」

イゴール「…………」

イゴール「……そう、それに従わなかった者達」

イゴール「それが我々の祖先、ベルベット一族でございます」


イゴール「お客様の得た情報では、魔法の国と敵対、争った……となっておりますが」

イゴール「我々の方では一方的に国を追い出され、流浪の中、技術を磨き」

イゴール「多くの犠牲を払いながらも”負の意識”を安全に摂取できる方法を考案した」

イゴール「と……なっておりまする」

マーガレット「ふふっ……信じる信じないは お客様しだいです」

マーガレット「こちらは魔法の国を最初から敵とも味方とも見ていないわ」

イゴール「それではお客様」

イゴール「こちらからお話ししたい事があるのですが……む?」

イゴール「なんと……もうお目覚めの時刻にございましたか」

イゴール「どうやら少々お話が長くなった様で……申し訳ありませぬ」

イゴール「この続きは、またの機会に」

イゴール「現実の世界で お会いした時に致しましょう……」



―――――――――――


鳴上の部屋


鳴上「…………」

鳴上「……ふあ」

鳴上「…………」

鳴上(……何か……夢の中で)

鳴上(さらっと、とんでもない事を言われたような……)

鳴上(…………)

鳴上(……だめだ。 思い出せない)

鳴上「…………」

鳴上「起きるか……」



―――――――――――








     サアアアアアア……










翌日の午前中

執務室


トリケン「支配人代行、お待たせしました」

トリケン「チラシとポスターの仮刷りが上がりました」

鳴上「ご苦労様」

鳴上「……ふむ。 OKを出したものの、もう少し……何か欲しい」

トリケン「そうですか……」

鳴上「悪くはない……と思う」

鳴上「早く仕上げて宣伝したいところだが、やり直しは難しいからな」

トリケン「わかりました、ではもう少しデザインを考えてみます」

鳴上「ああ、ポスターはここに置いててくれ」

鳴上「今日の会議に使いたい」

トリケン「わかりました。 ではその様に」

鳴上「動画の方はどうなっている?」


トリケン「それが……」

トリケン「あまり閲覧者数は伸びていません」

鳴上「そうか……」

鳴上「だが、見ている人達は少なくてもいる」

鳴上「きっと来場者数に繋がるはずだ」

トリケン「そうですね」

トリケン「このトリケン、これからも前かがみで取り組んでまいります」

     ガチャ…

いすず「おはよう、鳴上くん」

鳴上「おはよう、いすず」

鳴上「では、トリケン。 頼むぞ」

トリケン「はい」


いすず「…………」

いすず「今のトリケン……チラシの事かしら?」

鳴上「ああ」

いすず「そう……」

いすず「……ん?」

鳴上「どうした?」

いすず「…………」

いすず「……このポスター」

いすず「パーク開園30周年記念企画『第一弾』となっている……」

鳴上「何かおかしいか?」


いすず「『第二弾』もあるという事?」

鳴上「そうだ……だが問題も多い。 そこでだ」

鳴上「いすず、会議の準備を頼む」

いすず「議題は何かしら?」

鳴上「議題は……」

鳴上「資金集めの方法についてだ」

いすず「資金集め……頭の痛い問題ね」

鳴上「俺もいくつか考えたが、三人寄らば文殊の知恵ともいう」

鳴上「案外、いい解決策が生まれるかも知れない」

いすず「…………」

いすず「……そうね」



―――――――――――


会議室


鳴上「それでは会議を始める」

鳴上「まず、このポスターを見て欲しい」


一同「…………」


アーシェ「『第一弾』……ですか?」

モッフル「この前決めた、クイズの事ふもね」

モッフル「しかし……第二弾の事は何も聞いて無いふも」

鳴上「勝手にこういう見出しにした事は謝る」

鳴上「しかし、ゲストに『期待感』を持ってもらう為にこうした」

未来くん「なるほど……」


アーシェ「ですが……第二弾の企画内容はどの様なものなのですか?」

アーシェ「経理部としては心配なところです……」

鳴上「実は……考えとしては以前からあったんだが」

鳴上「どうしても多額の費用が必要になる」


一同「…………」


鳴上「そこでだ」

鳴上「背に腹は変えられない」

鳴上「時間もないし何か、てっとり早く資金集めをできないか考えてもらいたい」


一同「…………」


鳴上「まず、俺の考えた方法だが……」


鳴上「備品を販売する事だ」


一同「……は?」


鳴上「聞いた事はないか? 古くなった電車をバラして、分解した部品などを」

鳴上「鉄道マニアに売ったりしているのを。 それをヒントにしている」

モッフル「……つまりテーマパークマニアにゴミを売りつけると」

鳴上「言葉が過ぎるが、そういう事だ」

アーシェ「経営に利するだけの売り上げが見込めるのでしょうか?」

鳴上「……正直、難しいと思う」

鳴上「誰もが知る有名なパークや遊園地ならともかく」

鳴上「こことなると……」


モッフル「僕達を侮辱したいふもか?」

鳴上「その意図はない」

鳴上「厳しいが、これが現実、という事だ」


一同「…………」


アーシェ「……ですが、しないよりはマシかもしれません」

アーシェ「経理部としては、やってみてもいいかと思います」

鳴上「そうか」

鳴上「では、チャンダイズ担当のマーちゃん」

マーちゃん「は、はい」

鳴上「各アトラクションやエリアで出た、使い古しの備品や部品の一覧をまとめ」

鳴上「経理部と協力して、販売方法を模索してくれ」

マーちゃん「わ、わかりました」


鳴上「俺としては……他に考えた案としては」

鳴上「現在使われていない南の第二パークエリアの土地を担保として」

鳴上「銀行から金を借りられないか?という事だ」


一同「!」


鳴上「いくつか大手の銀行に掛け合ってみたが……」

鳴上「経営状況や土地の価格から、かなり足元を見られ」

鳴上「俺が思った程の額からは程遠かった」


一同「…………」


鳴上「以上が、俺の考えた方法だ」


モッフル「……なりふり構っていられないのは分かるふも」

モッフル「しかし、事、パークの土地に関しては、事前に知らせて欲しいふも」

鳴上「わかっている」

鳴上「今回は見積もりのみなので行動に出た」

鳴上「では、意見を述べてもらいたい」

鳴上「どんな方法でも構わない。 とりあえず出してみてくれ」


     ガヤ ガヤ…


トリケン「支配人代行。 この様な案はいかがでしょう?」


     開幕! 大人のテーマパーク♡


鳴上「……いすず」


いすず「ええ」 スチャ

     ズドンッ!

トリケン「ぶりたぁぁぁぁぁにあっ!!」

鳴上「他には?」

モッフル「こんなのはどうふも?」


     殴られ屋


鳴上「……できる者が限られるし、キャストに怪我をされても困る」

モッフル「チッ……」

鳴上「他には?」

いすず「こんなのはどうかしら?」



     え Fu えっ  クスッ


鳴上「……? なんだ?この絵は?」

いすず「FXのつもりだけど?」

鳴上(宇宙人?が何かを捕食している様にしか見えないが……)

鳴上「……気持ちはわかるが確実性が無いし、ほぼ博打だ」

鳴上「他に無いだろうか?」


     競馬 競輪  パ○ンコ! 宝くじ!


鳴上「モロに博打はもっとダメだ!」


一同「ええー」


鳴上「ええー、じゃない……もっと真面目に考えてくれ」



―――――――――――


モッフル「そうふも!」

鳴上「ん?」

モッフル「さっきの第二パークの話で思い出したふもけど……」

モッフル「ドルネルの洞窟があったふも!」

鳴上「ドルネル?」

モッフル「ティラミーの前にお花の妖精を努めていたキャストの名前ふも」

いすず「確か……行方不明になったと記憶しているけど?」

モッフル「その通りふも」

モッフル「ドルネルが行方不明になった洞窟には……」

モッフル「財宝があると噂されてたふも!」



―――――――――――







     サアアアアアア…










園内


     ピチャ ピチャ ピチャ…

モッフル「嫌な雨ふも……」

鳴上「そうだな……ゲストも減ってしまうし」

     タッ タッ タッ…

男性キャスト「あ、モッフルさん、支配人さん、それにいすずさん」

いすず「どうかしたの?」

男性キャスト「それが……ティラミーさんを見かけませんでした?」

モッフル「ティラミー? ……知らないふも」

いすず「今日は雨でゲストも少ないし……どこかでサボっているんじゃないかしら?」

男性キャスト「う~ん……今朝はちゃんと来てたし」

男性キャスト「それにここのところ、頑張っていたので……」


いすず「…………」

鳴上「…………」

モッフル「ともかく、僕たちには やる事があるふも」

モッフル「もう少し探してみて欲しいふも」

男性キャスト「わかりました」

     タッ タッ タッ…

モッフル「まったく……どうせ隠れて休憩しているに違いないふも」

モッフル「ほら、さっさと目的地に行くふもよ」

鳴上「あ、ああ……そうだな」

いすず「……そうね」



―――――――――――


ブリリアントスタジアム前


鳴上「…………」

いすず「どうしたの? 鳴上くん」

鳴上「このスタジアム……資料には『建設中』とあったが」

鳴上「外観を見た限りじゃ、ほぼ出来ている様に見えるな」

モッフル「スタジアムとしては完成しているふも」

モッフル「バブルが弾けてからお金を掛けられなくなって」

モッフル「外装の計画が先延ばしになり、そのままになってるふも……」

鳴上「……使おうと思えば使えるのか?」

いすず「長いあいだ放置しているから、補修が必要になると思うわ」

鳴上「そうか……」

モッフル「さ、行くふも。 洞窟はこの先ふも」



―――――――――――


噂の洞窟


鳴上「ここか……」

モッフル「少し待つふも。 柵の鍵を開けるふも」

     カチャカチャ…… カチリ✩

モッフル「開いたふも」

いすず「行きましょう」

鳴上「ああ」


洞窟内


     テク テク テク…

モッフル「……ん?」

マカロン「…………」

モッフル「マカロン? どうしてこんな所に居るふも?」

     ズウウウウウンッ…

鳴上「……!」

いすず「……この気配は!?」

モッフル「二人共どうしたふも?」

モッフル「っていうかマカロン、ここで何をやっていたふ……」



     『どうせ何やっても無駄ふも』


モッフル「へ?」

鳴上「!?」

いすず「まさか……モッフル卿の!?」


影・モッフル『無駄なあがき……どんなに頑張っても結果は同じ』

影・モッフル『なら……ほどほどテキトーにやるのが一番ふも』


モッフル「なっ!?」

モッフル「お、お前! 何を言ってるふも!?」


影・モッフル『ふふふ……何を慌ててるふも?』


いすず「落ち着いて、モッフル卿!」


モッフル「し、しかし!」

マカロン?「…………」

     タッ タッ タッ…

モッフル「マカロン!? どこに行くふも!?」

鳴上「……とにかく、モッフル」

鳴上「いすずから事情は聞いているか?」

モッフル「事情……?」

モッフル「!!」

モッフル「ま……まさか、あれは……!?」


影・モッフル『やっと気がついたふもか?』


モッフル「バ、バカな! 僕があんな事を考える訳がないふも!」



影・モッフル『そうふも。 そうやって表向きは頑張るスタンスを取っているふも』

影・モッフル『けど……こんな絶望的な状況であがいても無駄ふも』

影・モッフル『だからお前は、さっさと止めて終わりにしたいふもよ!』


モッフル「ち、違う!」

鳴上「!」

いすず「!」

いすず「モッフル卿! 落ち着いて!」


影・『何が違うふも? こんなダメパーク……さっさと終わらせてしまえば』

影・『以前みたいにラティファは、お前を頼ってくる様になる……それがお前の望みふも!』


モッフル「だ、黙れふも! お前なんか……お前なんか!!」


>>298修正↓



影・モッフル『そうふも。 そうやって表向きは頑張るスタンスを取っているふも』

影・モッフル『けど……こんな絶望的な状況であがいても無駄ふも』

影・モッフル『だからお前は、さっさと止めて終わりにしたいふもよ!』


モッフル「ち、違う!」

鳴上「!」

いすず「!」

いすず「モッフル卿! 落ち着いて!」


影・モッフル『何が違うふも? こんなダメパーク……さっさと終わらせてしまえば』

影・モッフル『以前みたいにラティファは、お前を頼ってくる様になる……』

影・モッフル『それがお前の望みふも!』


モッフル「だ、黙れふも! お前なんか……お前なんか!!」


鳴上「ダメだ、モッフル!」

いすず「モッフル卿!」







モッフル「お前なんか、僕じゃない!」







鳴上「くっ……!」

いすず「ああ……!」








     ズウウウウウウウウウウンッ……!







影・モッフル『ふふふふふふふふふふ……』

影・モッフル『あははははははははははははははははははははははははは!!』


     ドンッ!!


モッフル「」

     ドサッ……



影・モッフル?『我は影……真なる我……』

影・モッフル?『ラティファは……僕のモノだふもッ!!』


     グワッ!


鳴上「ペルソナ!」 イザナギ!

いすず「援護するわ! 鳴上くん!」


―――――――――――


鳴上「…………」

いすず「…………」



影・モッフル『…………』


モッフル「…………」

モッフル「……う」

鳴上「気がついたか、モッフル……」

モッフル「……? 僕は……どうし……」

モッフル「!!」


影・モッフル『…………』


モッフル「ち、違うふも! あ、あれは」

鳴上「落ち着け……モッフル」

いすず「モッフル卿。 もう分かっているハズよ」

モッフル「………っ」


鳴上「モッフル……事情を聞いているのなら、もう知っていると思うが」

鳴上「あれは【シャドウ】……お前の心の一部であり」

鳴上「誰にも見せたくない、と思っている本心の一面だ」

モッフル「…………」

いすず「モッフル卿……恥ずかしながら」

いすず「私にもああいった気持ちがありました」

モッフル「! ……いすずにも?」

いすず「ええ……あまり言いたくはありませんが……」

いすず「ですから、モッフル卿が今、どんな気持ちなのか」

いすず「わかります」

モッフル「…………」


モッフル「……僕は……僕はどうしたらいいふも?」

いすず「自分の気持ちに向き合ってみてください」

いすず「たとえあれがモッフル卿の本心でも、それは将軍の心の一部に過ぎません」

モッフル「!」

鳴上「そうだ、モッフル」

鳴上「俺は……いや、俺といすずは、あれがモッフルの全てじゃないと分かっている」

鳴上「だから、安心してくれ」

モッフル「……小僧」

モッフル「…………」


影・モッフル『…………』


モッフル「…………」

モッフル「……そうふもね」


モッフル「確かに……お前は僕ふも」

モッフル「僕は……もうこのパークを……どこか見限っていた部分があるふも」


影・モッフル『…………』


モッフル「そして……悔しかったふも」

モッフル「以前のラティファは、僕をよく頼って、伯父様伯父様と」

モッフル「話しかけて来ていたのに……最近は口を開けば小僧の話ばかり」

モッフル「僕は……ラティファに離れて欲しくなかったふも」


影・モッフル『…………』


モッフル「……けど」


モッフル「僕は仕事で手を抜いた事はないし」

モッフル「パークに愛着があるのも嘘じゃないふも」

モッフル「何よりも……ラティファを悲しませる様な真似は、絶対したくないふも!」


影・モッフル『…………』


モッフル「……そうふもね」

モッフル「お前は確かに僕で、僕は……お前ふも」


影・モッフル『…………』

影・モッフル『…………』 クスッ


     ヒイィィィィィィンッ!!


いすず「【シャドウ】が……!」


モッフル「これは……?」

鳴上「ペルソナ……なんだが」

鳴上「何か変化はあるか?」

モッフル「変化?……特に無いふも」

鳴上「本来なら……イザナギ!」

     ズオッ!

モッフル「!?」

鳴上「こんな風にペルソナを使える様になるんだ」

モッフル「召喚魔法の一種ふも?」

いすず「いいえ、モッフル卿」

いすず「私たちの使う魔法とは根本、というか」

いすず「何もかも……概念から違う感じです」


モッフル「そうふもか……」

鳴上「それよりも洞窟の奥に向かって行ったマカロンが気にかかる」

鳴上「さっきのティラミーの事といい、追いかけた方がいいと思うのだが」

いすず「そうね……」

モッフル「確かに詳しい詮索は後回しふも」

鳴上「行こう」

     タッ タッ タッ…

―――――――――――


モッフル「……ここは、どこふも?」

鳴上「良く分からないが……冒険アトラクションみたいな雰囲気の場所だな」

いすず「私が知る限りでは、見た事もない施設だけど……」



     よく来たな、冒険者よ!


鳴上「!?」

いすず「!?」

モッフル「!?」


     財宝を求めし者よ

     己が勇気と知恵と体力の限りを尽くし……


鳴上「……ますますアトラクション施設の感じだな」

いすず「!」

いすず「鳴上くん、モッフル卿! あれを見て!」


マカロン?「…………」

ティラミー「…………」

     ダッ!

モッフル「マカロン!……くっ! さらに奥へ行ったふも!」

いすず「ティラミー! あなたは、大丈夫なの!?」

ティラミー「…………」

ティラミー「……ん?」

鳴上「気を失っていたのか……どこも問題はないか?」

ティラミー「え?……うーん」

ティラミー「っていうか、ここはどこだミー?」

モッフル「気楽なものふもね……」

いすず「どうする? 鳴上くん」

いすず「一度戻って……」



     『ああー……うざいったいミー』


一同「!!」


ティラミー「へ?」

ティラミー「あいつは……誰だミー??」

鳴上「予想はしてたが……やはり【シャドウ】が出てきたか!」

モッフル「ティラミー、落ち着くふも!」

モッフル「あいつはお前の本心を言うけど、僕たちは気にしないふも!」

ティラミー「はあ???」

鳴上「俺が説明する。 いいか、ティラミー……あれは」



影・ティラミー『まったく……鬱陶しい連中だミー』

影・ティラミー『言葉じゃなく態度で示して欲しいミーよねぇ?』


いすず「……?」

ティラミー「何言ってるミー?」


影・ティラミー『とぼけても無駄だミー』

影・ティラミー『お前はいつも本心を隠して行動してるんだミー』


ティラミー「はあ? そんな事ないミー」

ティラミー「ボクはいつでも本音と本能丸出しで行動してるミー」

鳴上「それはそれで問題だぞ、ティラミー」

いすず「これの出番かしら?」 ジャキン!

モッフル「なんか、どうでもよくなって来たふも……」



影・ティラミー『くっくっくっ……嘘ばっかり言っちゃって』


ティラミー「嘘なんて言ってないミー」


影・ティラミー『お前、本当は寂しいんだミー?』


ティラミー「っ!?」


影・ティラミー『だからいつもおちゃらけて、セクハラまがいの事をしでかして』

影・ティラミー『誰かに構って欲しいんだミー』


ティラミー「そ、そんなわけないミー!」

鳴上「!」



影・ティラミー『そんなこと言っても体は正直だミー』

影・ティラミー『誰かに触れられた時、誰かに言葉をかけられた時』

影・ティラミー『それがたとえ ほんの一瞬でも、ものすごく安心できるのミー』


ティラミー「ち、違うミー!!」

いすず「!」

モッフル「!」


影・ティラミー『何も違わないミー』


ティラミー「お前、誰なんだミー!? 何でそんなこと言うんだミー!?」


影・ティラミー「ボクはお前だミー。 ボクの言ってる事は、すべてお前の本心だミー……』


ティラミー「ち、違うミー! お前なんて……!」






ティラミー「お前なんてボクじゃないミー!!」





―――――――――――


ティラミー「…………」

ティラミー「……う」

ティラミー「…………」

鳴上「気がついたか、ティラミー」

ティラミー「ボクは……はっ!?」



影・ティラミー『…………』


ティラミー「ち、違うんだミー! あれは……!」

いすず「かくかくしかじか」

鳴上「まるっとごくごく」

ティラミー「……わかったミー」

モッフル「……酷い省略を見た気がするふも」

いすず「気のせいよ」

鳴上「断じて尺の都合とかではない」

モッフル「聞いてないふも」


ティラミー「ボクは……確かに寂しかったミー」

ティラミー「誰かに構ってもらえると、安心できたミー……」

ティラミー「でも! 女の子にセクハラするのは、恥じらう姿や」

ティラミー「反応が楽しくてしょうがなかったし」

ティラミー「セッ○○はとっても気持ちよ」


     ズドンッ! ズドンッ! ズドンッ!


鳴上「ペルソナだな」

モッフル「どこがふも!?」

いすず「先へ急ぎましょう」

モッフル「マカロンの扱いが心配ふも……」



―――――――――――


大広間?



????「ひいいいいいいいいっ……」



鳴上「……何か野太いおっさんの悲鳴が聞こえたな?」

いすず「私も聞いたことのない声だったわ」

モッフル「僕も知らない声ふも……」

ティラミー「行ってみれば分かる事ミー」

モッフル「ティラミー。 もう回復したのふも……」

ティラミー「最高記録は一晩で8回だミー!」


     ズドンッ! ズドンッ! ズドンッ!


ティラミー「」


モッフル「キジも鳴かずば撃たれまいに……」

鳴上「それよりもモッフル」

いすず「……あそこで縮こまっているの、レッドドラゴンかしら?」

モッフル「そしてオークとおぼしきモンスターが多数倒れて……」

モッフル「マカロン、いったい何をしたふも!? 説明するふも!!」


マカロン?「…………」


????「で、ですから……ここはアトラクション『赤竜帝ルブルムの試練場』でして」

ルブルム「財宝、というか、そういうの……置いてないんですよ」


マカロン?「……ふざけるなロン」



マカロン?『せっかく……噂の財宝を手に入れて』

マカロン?『こんなダメパーク、おさらばしてやるつもりだったのに……』

マカロン?『こんな……ところ……トコロ……ロロロロロッ!!』


     ズウウウウウウウウウウンッ……!


ルブルム「ひっ!? ひいいいいいいいっ!!」

ルブルム「あ!? そこの人! すみません! 助けてくださいっ!」


モッフル「……あんなでかい図体ですごいヘタレふも」

鳴上「ともかく、いろいろ知ってそうだし助けに入るぞ!」

いすず「わかったわ」

ティラミー「ヒャッハー! 血だるまにしてやるミー!!」

モッフル「……たぶん省略されるパターンふも」



―――――――――――


ルブルム「――というわけで」

ルブルム「私、ここでお客さんをずっと待っていたんですよ」

モッフル「予想以上にすごい省略ふも……」

タラモ「オイラ達モグート族は土木建築技術が超優秀で」

タラモ「それをポリーティア帝国に狙われて、ずっと逃げてた所を」

タラモ「10年くらい前、ここの支配人さんに匿ってもらったんだモグ」

鳴上「しかし……どうしてこんなアトラクション施設を作ったんだ?」

タラモ「便宜上アトラクション施設という事にしておかないとまずかったらしいモグ」

いすず「……確かに10年くらい前に」

いすず「不正な資金の流れがあった……という話を聞いた事があるわ」


タラモ「最初の資金だけ頂いたモグ」

タラモ「けど、それからは自前の資金を切り崩して生活してたモグ」

鳴上「お金まで出していたのか……ん?」

モッフル「自前の資金って!?」

タラモ「オイラ達が持ち出した財宝モグ」

タラモ「この大広間にあったけど、見事に使い切ってしまったモグ!」

マカロン「マジかロン……骨折り損だけだロン……」

モッフル「っていうかマカロン。 いつの間に正気に戻ったふも?」

マカロン「そこは置いておけロン」

いすず「どうしてこうなったのかも覚えていないそうよ」

モッフル「……もう早く帰って寝たいふも」

いすず「……私はお風呂に入りたい」


     テト テト テト…

????「……なんか騒がしいネル」

ティラミー「え?」

マカロン「お、お前! ドルネルロン!?」

ドルネル「ネル?」

―――――――――――

ドルネル「――というわけで」

モッフル「今回キ○クリ多すぎふも……」

ドルネル「なんか居心地良くて、ここから帰る気が無くなってたネル」

いすず「【アニムス】はどうしてたの?」

ドルネル「MMOでやってたネカマキャラが人気だったから」

ドルネル「たぶんそれのおかげネル!」



一同「…………」


鳴上「……別に俺がパークを何とかしなくても大丈夫なんじゃないのか?」

いすず「彼が特異なのであって、ラティファ様や私たちは大問題よ」

鳴上「しかし、モッフルやマカロンの【シャドウ】はパークを潰すとか……出て行くとか……」

いすず「気をしっかり持ちなさい! 鳴上くん!」

ドルネル「何だかややこしい事になってるネル?」

モッフル「半分位はお前のせいふも……」

ティラミー「はー……これからどうするミー」

マカロン「……とりあえず」

マカロン「ラティファ様に報告した方がいいんじゃないかロン?」

モッフル「お前も的確に正論吐くなふも……」



―――――――――――


メープル城 ラティファの部屋


ラティファ「そうですか。 その様な事が……」

鳴上「ああ……」

鳴上「俺が原因なのか、他の要因なのか……」

鳴上「思い当たるフシがまったく無くてな……」

ラティファ「…………」

鳴上「それから……倒れたと聞いたけど大丈夫か?」

ラティファ「あ……はい。 大丈夫です、鳴上様」

鳴上「お見舞いもしなくて、すまなかった」


ラティファ「いえ。 私はこの通り元気です」

ラティファ「少しふらついただけなのに周りの皆さんが騒ぎすぎなんですよ」 クスッ

鳴上「良かった」

     コン コン

ラティファ「はい、どうぞ」

いすず「ラティファ様、失礼します」

     …ガチャ

ラティファ「どうされました? いすずさん」

いすず「実は……」

―――――――――――

ラティファ「モグート族とルブルムさんが、ここで雇って欲しいと?」

いすず「はい」


いすず「ですが……現状は厳しく、どうしたものかと」

ラティファ「……そうですね」

鳴上「…………」

ラティファ「どうでしょう? 鳴上さん」

ラティファ「何とか出来ないでしょうか?」

鳴上「…………」

鳴上「ちょっと電話をかけさせてくれるか?」

ラティファ「どうぞ」

鳴上「…………」 ピッポッパッ

鳴上「アーシェ、例の件はどうなっている?」

―――――――――――

鳴上「……ありがとう、じゃ」 ピッ


鳴上「何とか雇える様になった」

ラティファ「!」

いすず「何をしたの?」

鳴上「ドルネルが引き篭ってた間に溜め込んだ持ち物を売り払って資金を確保した」

ラティファ「え……?」

鳴上「少々気が引けるが、10年以上音信不通で好き勝手していた罰金として、な……」

ラティファ「そ、そうなのですか……」

いすず「ラティファ様、やむを得ない処置とご理解ください」

ラティファ「は、はい……」

鳴上「それじゃ、ラティファ。 そろそろ仕事に戻る」

いすず「私も失礼します」

ラティファ「はい。 鳴上様、いすずさん、お疲れ様でした」



―――――――――――




居酒屋サベージ


マカロン「ぷはー!」

マカロン「あ、タカミちゃん。 生おかわりだロン」

タカミ「はーい」

ティラミー「ボクは~タカミちゃんのオッパ」


     ズドンッ! ズドンッ! ズドンッ!


いすず「私はモロキューを」

タカミ「はーい」


>>331修正↓



―――――――――――




居酒屋さべーじ


マカロン「ぷはー!」

マカロン「あ、タカミちゃん。 生おかわりだロン」

タカミ「はーい」

ティラミー「ボクは~タカミちゃんのオッパ」


     ズドンッ! ズドンッ! ズドンッ!


いすず「私はモロキューを」

タカミ「はーい」


モッフル「で? 本当に何も覚えていないふも?」

マカロン「そうなんだロン……」

マカロン「昨日の夜……いや、明け方かな?」

マカロン「雨の音で目を覚ましてトイレに行ってから……記憶が無いロン」

モッフル「そうふもか……」

ティラミー「ボクは誰かに後頭部を殴られたと思うミー」

ティラミー「まったく酷い犯人だミー」

マカロン「あ……それたぶん僕だロン」

ティラミー「ミ?」

マカロン「おかしくなってから、財宝取りに行こうと思ったけど」

マカロン「一人じゃ不安だったから囮か何かに使おうと思って……」



     ゴインッ!


ティラミー「お前……ここで血の海に沈めてやるミー……」

マカロン「イタタタタ……落ち着けロン!」

マカロン「あの時の僕は超おかしかっただけロン!」

ティラミー「問答無用だゴルァ!!」


     ズドンッ! ズドンッ! ズドンッ!


マカ・ティ・モッ「あががっ……!」 ビクンッビクンッ!

いすず「静かになさい」

モッフル「い、いすず……何で今の流れで僕まで撃ったふもっ……!?」

いすず「ついでよ」

タカミ「お待たせしましたー」



―――――――――――


いすず「ごちそうさま」

タカミ「毎度ありがとうございます~♪」

タカミ「お会計、しめて……」

モッフル「……!?」

モッフル「お、おい、いすず!」

いすず「何かしら?」

モッフル「あれを見るふも!」

いすず「……?」

いすず「!?」




     そこには……手描きだけど

     間違いなく甘ブリの宣伝ポスターが貼られていた。



いすず「どうして……いったい誰が」

タカミ「あーそのポスターですか?」

タカミ「何日か前、甘城高校の男子学生さんが訪ねてきて」

タカミ「甘ブリでもこの店の宣伝ポスター貼るから、貼らせて欲しいって」

タカミ「頼んできたそうですよ」

タカミ「ね、親父さん?」

いすず「…………」

モッフル「…………」


タカミ「まあ親父さんも突然だったから驚いたらしいんですけど」

タカミ「お互いの宣伝になるなら、って事でOKしたって言ってました」

     オーイ タカミチャーン

タカミ「あ、はーい」

タカミ「これ、お釣りになります」

タカミ「ありがとうございました♪」

     タッ タッ タッ…

モッフル「……あの小僧。 一人でこんな事してたふもか」

モッフル「居酒屋にテーマパークのポスター貼って、どうするんだふも……」

いすず「…………」

いすず「……でも、モッフル卿」

モッフル「ん?」


いすず「客層はどうあれ……人の目に付くことは確か」

いすず「そじて『お互いの宣伝』という相乗効果を提示して」

いすず「上手く、円滑に交渉しているわ」

モッフル「…………」

いすず「それに、私は……私たちは」

いすず「彼ほどなり振り構わず、宣伝してきたのか……」

モッフル「…………」

モッフル「……ふん」

モッフル「もう、今日は遅いふも」

モッフル「今夜はゆっくり休み、明日以降は」

モッフル「僕達もなり振り構わず頑張ればいいんだふも!」

いすず「モッフル卿……その通りね」

いすず「…………」

いすず(鳴上くん……)



―――――――――――


鳴上の部屋


鳴上「……というわけで」

鳴上「まだ効果の程は薄い現状だ」

花村『そっか……こっちの商店街はわりかし上手く行ったんだけどな』

花村『最初は俺も疑問に思ったんだぜ?』

花村『ジュネスに商店街の店のポスター貼るなんて……』

花村『お互い客の奪い合いをしているのに、何で敵に塩を贈るんだ?ってな』

鳴上「だろうな」


花村『親父は地域の共存をして行く為の方策として考えたんだが』

花村『面白い事に一度仲間っつーか、ジュネスに敵対心が無いってわかると』

花村『商店街の方からこういう方法はどうだろう?と提案してきたからな』

鳴上「ジュネスと商店街による」

鳴上「買い物スタンプ・ポイントカードサービスがそれだな」

花村『ああ』

花村『今のところ、お互いの客層がそれぞれの店に出向いてって感じで』

花村『相乗効果を上げてはいるみたいだ』

鳴上「そうか……俺も大いに参考にさせてもらった」

花村『しかし、お前も大変だな』

花村『甘ブリ……だっけ? 何とかなりそうなのか?』


鳴上「……正直、四苦八苦している」

花村『前にも言ったが、りせに宣伝を頼んでみればいいんじゃねーのか?』

花村『>>186>>187にもそう言われてるし』

鳴上「メタ発言は置いておいて……まだ早いと思う」

鳴上「彼女の人気に頼って呼んだゲストは、今の甘ブリに魅力を感じないだろう」

鳴上「そうなると、必ずりせに対してファンが疑問を抱く事になる」

鳴上「なぜ、りせちーはこんな遊園地の宣伝をしたのだろう?と……」

花村『…………』

鳴上「上辺だけの薄っぺらい宣伝ではダメなんだ」

鳴上「実際にりせに来てもらって、ありのままのパークの感想を述べてもらう」

鳴上「そういう事じゃないと、りせと甘ブリ双方のイメージダウンに繋がりかねない」

花村『……言いたい事は分かるけどな』


花村『もう時間が無いんだろ?』

花村『りせも復帰コンサートに向けて忙しくなっているし……』

花村『その内、話すのも大変になると思うぜ?』

鳴上「……分かっている」

鳴上「だが……今日、いろいろ分かった事や、出来る事」

鳴上「もっと言うと、選択肢が増えたんだ」

花村『へえ?』

鳴上「まだ……おぼろげな姿だが、希望は捨てていない」

花村『そっか……』

花村『ま、これからも何か相談や困った事があれば、いつでも掛けてきてくれ』

花村『それから親父に もっといろいろ聞いてみる』


鳴上「ああ。 これからも頼む陽介」

鳴上「頼りにしている」

花村『へへっ! 任せとけ! じゃあ、またな!』

     ブッ…… ツー ツー

鳴上「…………」

鳴上「……さて、どうするかな」


鳴上(経営の事とは別にペルソナ関連の事件もある)

鳴上(難題は山積み……か)


鳴上「…………」



―――――――――――


花村の部屋


クマ「どうだったクマ?」

花村「元気そうではあるが、大変みたいだ」

クマ「まったく……センセイ、ヨースケだけに相談するなんて水臭いクマ!」

花村「だな」

花村「いいか、クマ。俺たちは学校があるし、動けねえのが歯がゆいが」

花村「悠の手助けをしっかりしてくれよ?」

クマ「わかってるクマ!」

花村「直斗の方はどうなんだ?」


直斗「もう少し時間がかかりそうです」

花村「こういう時は、探偵業が羨ましく思うぜ」

花村「とは言っても……本当にいいのか?」

直斗「構いませんよ。 これまでも一つの所に留まる事はそれ程なかったですし」

直斗「鳴上先輩のお手伝いが出来るのなら、転校の一回や二回」

直斗「どうって事ないです」 クスッ

花村(くそっ……悠の奴が羨ましいっ……!)

直斗「おそらく……来週中には甘城市に行けると思いますので」

花村「ああ、頼んだぜ、二人共」

花村「俺たちも夏休みに入りしだい、悠の手伝いに行くからな!」






     パーク閉園期限まで

      あと残り 73 日



     必要来園者数

       248302 人







―――――――――――

―――――――――――


鳴上「追求」

いすず「考察」


鳴上・いすず「二次創作ー」


     パチパチパチ


いすず「……何なの? この展開は」

鳴上「俺に聞かれても困る」

いすず「おおかた……モッフル卿の【シャドウ】描写で飽きたから」

いすず「こんな事になったのでしょうね」

鳴上「誰もゲスコットの本心なんて見たくないだろうしな」


いすず「さて、本編の方はというと」

いすず「キン○リしすぎてP4のみ知ってる人は置いてけぼりになっていると思うわ」

鳴上「新キャラが多数登場したな」

いすず「まずドルネル。彼は10年前に行方不明になったけど」

いすず「それをいい事に引き篭って遊び呆けてたクズコット」

いすず「元々はティラミーの前にお花の妖精をやっていたそうよ」

鳴上「全財産没収されたんだから大目に見てやれ」

いすず「次に赤竜ルブルム。図体のでかさに反比例しているヘタレドラゴンね」

鳴上「否定はできないが、もう少しオブラートに包んでやれ」


いすず「最後にモグート族とその長のタラモ」

いすず「そういえば、彼らを執拗に追っていたポリーティア帝国とやらは」

いすず「滅亡してたらしいわね」

鳴上「本編で書き忘れていたな……」

いすず「この>>1なのだから、このくらいのミスは当たり前よ」

鳴上「それと、いよいよP4の面々が顔を出してきた」

鳴上「少し心配な奴が来るみたいだが……」

いすず「大丈夫よ」

鳴上「意外に前向きだな?」

いすず「いざとなれば、この私が撃ち殺してあげるから」

     ジャキン!

鳴上「……冗談だよな?」

というところで、今日はここまでです。
お付き合い、ありがとうございます。
エレメンタリオの4人、何とか活躍させたいなー



―――――――――――


翌日の午前中

甘ブリ 関係者入り口付近


     ブロロロロロロ…… キィ

オークロ「……ん?」

オークロ(随分と場違いな……リムジンかな?)

     ガチャ…

??????「すみません、ちょっといいかしら?」

オークロ(すごく綺麗な女性が降りてきた)

オークロ「はい。 何か御用でしょうか?」

??????「こちらで支配人をされている鳴上、という人に会いたいのですが……」

オークロ「!?」


会議室


鳴上「それでは、新たなポスターを見てくれ」

     ピラッ

モッフル「ふも。 大きな変更は……ん?」

マーちゃん「これは……漫画ですか?」

鳴上「ああ」

鳴上「以前から問題になってる事案についても考えてみた」

鳴上「少し卑怯な方法ではあるがな」

鳴上「とりあえず、この漫画を読んでみてくれ」





ヽ(*´∀`)ノ< バス停名、西太丸の甘城ブリリアントパークへどうぞお越し下さい♪



(´・ω・`)< え? バス停に甘城ブリリアントパーク前ってのがあるけど?



゚(゚´Д`゚)゚< それはね……いろいろ事情があるんだよ



(´・ω・`)< 事情??





一同「…………」


いすず「例の名称変更の事ね」

モッフル「言いたい事は分かるふも。 けど……」

モッフル「どうして確かめに甘ブリへ来てね♪とか無いふも?」

鳴上「理由としてはまず、ゲストに疑問を持ってもらう事を主な目的にしたのと」

鳴上「甘ブリに来て欲しいの文言を無くしたのは、あざとい宣伝と思われない為だ」

未来くん「それはわかるけど……」

マーちゃん「それにこんなに小さくて、読んでもらえるのでしょうか?」

マーちゃん「かなりポスターに近づかないと読めないと思うのですが……」

鳴上「実はそれも狙いの一つだ」


アーシェ「と、おっしゃいますと?」

鳴上「遠くから見ても、この漫画の部分はかなり異質に見える」

鳴上「何が書いてあるのか?と疑問に思ったなら、大抵の人間は近づいて見ようとする」

鳴上「見れば他愛のない内容だが、読み終わった瞬間」

鳴上「ポスターの宣伝が目に入る、という筋書きだ」


一同「おおー……」


トリケン「なるほど……その様なテクニックがあるとは」

トリケン「このトリケン、思わず前かがみです」

モッフル「広報部長のお前が言っていいセリフじゃないふも……」

鳴上「という訳で、これからキャスト達に尋ねるゲストも増えると思う」

鳴上「また、バス運営会社の方に要望としてゲストの声が行くかもしれない」



一同「!!」


いすず「なるほど……」

いすず「一般客からの声が、私たちの要望の後押しになるかもしれないのね」

鳴上「正直……まだまだ希望的観測にすぎないがな」

鳴上「また、チラシの方にも同様の漫画を載せてある」

鳴上「後はこれらを どれだけ効果的に人の目に触れさせるか、だ」


一同「…………」


鳴上「俺の案としては、飲食店内やデパート等を重点的に貼っていきたい」

モッフル「なぜふも?」

モッフル「電車の駅とかの方が人が多いふも」


鳴上「滞留時間だ」

いすず「滞留時間?」

鳴上「少し聞くが、みんなは電車の駅に長く留まる事はあるか?」

鳴上「もっと言うと、駅に貼られてるポスターに気を留めた事はあるか?」


一同「!」


いすず「言われてみれば……」

アーシェ「見ない事は無いと思いますけど……確かに意識した事はあまり無いですね」

鳴上「今回のこのポスターは、一瞬だけ見ても効果の程は薄い」

鳴上「だから、どうしても人が長く居る空間に貼る必要がある」

マーちゃん「なるほど……」

未来くん「駅は乗り降りして素通り、という人は多いね」


鳴上「そこでだ」

鳴上「ポスターをそういった店で貼る代わりに」

鳴上「甘ブリの方でも、各店舗のポスターを貼る、という」

鳴上「ギブ・アンド・テイク方式の契約を交わした店をいくつか確保した」


一同「!」


いすず「…………」

モッフル「…………」

鳴上「リストはトリケンに預けているので、今後のポスター関連については彼に任せる」

トリケン「前かがみで取り組みます」

鳴上「何か質問は?」


未来くん「バス停の名称変更が通ったその後は?」

鳴上「もちろん取り替えないといけないだろう」

鳴上「その辺もトリケンに任せている」

鳴上「他には?」

レンチくん「甘ブリに貼るポスターは、どこに貼るんでぇ?」

鳴上「案内板の脇にポスターを貼る掲示板を作ろうと考えている」

レンチくん「んなもん作らなくても、その辺にベタベタ貼りゃいいんじゃねーのか?」

鳴上「もっともな意見だが、店舗側が自分の店のポスターを」

鳴上「ぞんざいに扱われていると判断された場合、信頼関係が大きく損なわれる」

鳴上「そうなったら悪い噂を立てられるかもしれない」

鳴上「また分け隔てなく、どの店舗も同じように貼っていないと、いろいろとマズイ」

レンチくん「……なぁーるほど。 よくわかったぜ、大将」

鳴上「他には?」



一同「…………」


鳴上「では、次にチラシの配布だが」

いすず「…………」

鳴上「以前の配布の問題点は、おそらく長く深く行った事に原因があると思う」

モッフル「どういう事ふも?」

鳴上「簡単に言うと、駅周辺でその日に用意したチラシすべてを」

鳴上「配り終えるまで配布し続けているが、それでは必然的に」

鳴上「見ずに捨ててしまう人が多くなるのも当然だ」

鳴上「したがって、ゴミになる量も増えてしまう」

いすず「……では、どうすればいいのかしら?」


鳴上「広く浅く短く行ってみるのはどうだろうか?」

未来くん「具体的には?」

鳴上「簡単に言えば、時間を決め、各駅停車で配り歩く」


一同「……!?」


モッフル「つまり、ひと駅ごとにチラシを配ると……」

鳴上「そうなるな」

鳴上「おまけに朝夕の時間帯に限られるし、キャストの負担は倍増する」

鳴上「しかし、いちいち着替える必要のないお前達なら不可能ではないと考える」

未来くん「うーん……それでも大変なのは変わらないね」

アーシェ「足はどうするのですか? 電車ですか?」

鳴上「もちろん公用車を使う。それで何とか経費としては軽く済むはずだ」

鳴上「他に案があれば聞こう」



一同「…………」


マーちゃん「あの……」

鳴上「どうした?」

マーちゃん「時間外労働……になるんですが」

マーちゃん「一般のキャストの皆さんに自宅周辺だけでもいいので」

マーちゃん「配布をお願いするのはどうでしょう?」

鳴上「なるほど……それだけでもマスコットキャストにとって、少し負担軽減になる」

鳴上「では、各部署で希望者を募っておいてくれ」

鳴上「郵便受けに入れるだけでも、一度だけでも構わない」


一同「わかりました」


鳴上「よし」


鳴上「何か他に意見はあるだろうか?」


一同「…………」


鳴上「それでは次の議題だが……」


―――――――――――


鳴上「ふう……」

いすず「お疲れ様」

鳴上「いすず……ああ、お疲れ様」

鳴上「とりあえず、みな納得してくれた様だな」

いすず「そうね……」


鳴上「今回はいすずのおかげだ」

いすず「え?」

鳴上「いすずが前回の失敗を詳細に教えてくれたおかげで」

鳴上「今回の答えにたどり着けた」

いすず「そう……」

鳴上「失敗は……程度にもよるが、悪い事ばかりではない」

鳴上「失敗の経験は、必ず次の結果につながる」

鳴上「だから、ありがとう」

いすず「…………」///

いすず「さ、さて、仕事に戻らないとっ」///

     スタ スタ スタ…

鳴上「?」


オークロ「あ、支配人代行。 お疲れ様です」

オークロ「会議は終わりましたか?」

鳴上「オークロ。 ああ、終わったが?」

オークロ「実は……支配人代行にお会いしたいと仰る女性の方が来てまして」

鳴上「女性? ……俺は誰とも約束していないが?」

オークロ「はい、アポなしで来た事は分かっています」

オークロ「ただ、彼女が言うには……」

オークロ「『マーガレットが来ている』と言えば、支配人代行は会ってくれるだろうと……」

鳴上「」



―――――――――――


どこかの喫茶店


マーガレット「お久しぶりね、お客様」

鳴上「……ああ」

鳴上「しかし、いきなり訪ねてくるとは……何かあったのか?」

マーガレット「それについて我が主、イゴールより伝言があります」

鳴上「伝言?」

マーガレット「お客様の事情を知り、お調べしたところ……」

マーガレット「あの遊園地が正体不明の霧に包まれつつある事が判明しました」

鳴上「!!」


マーガレット「……その反応」

マーガレット「やはりお心当たりがあるのね?」

鳴上「…………」

鳴上「ああ……」

マーガレット「お話していただけますか?」

鳴上「もちろんだ」

鳴上「正直、謎だらけで解決の糸口すら掴めていない」

―――――――――――

鳴上「――という事だ」

マーガレット「現実世界で現れた【シャドウ】……確かにありえない事象ね」

マーガレット「思ったより深刻な状況かも知れないわ」

鳴上「…………」


マーガレット「そこで……お客様に相談なのだけど」

マーガレット「このパークで私と我が主を雇っていただけないかしら?」

鳴上「…………」

鳴上「……え!?」

マーガレット「無理を言ってるのは分かってるわ」

マーガレット「でも……今回の事象は間近で観察しないと」

マーガレット「解明できないかもしれない」

鳴上「…………」

鳴上「言いたい事は理解できるが……こちらもいろいろと事情がある」

鳴上「はっきり言うと、金がなくて厳しいんだ」

マーガレット「…………」


マーガレット「では、こういうのはどうかしら?」

鳴上「ん?」

マーガレット「パーク内テナントとして出店する、という形にできないかしら?」

鳴上「!」

マーガレット「もちろんテナント料を払うけど、そこは勉強して欲しいわね」

マーガレット「どう?」

鳴上「…………」

鳴上「そこまでする理由はなんだ?」

マーガレット「ふふ……さっきも言った通り、間近で観察したいのと」

マーガレット「太古の昔より別れた同胞が、どんな暮らしを営んでいるのか」

マーガレット「興味があるのよ」

鳴上「…………」


鳴上「……ひとつだけ条件がある」

マーガレット「何かしら?」

鳴上「いすず……いや、魔法の国の者に」

鳴上「イゴール達の正体を明かして紹介させて欲しい」

マーガレット「…………」

鳴上「無用な警戒やゴタゴタを防ぐ意味もある」

マーガレット「…………」

マーガレット「致し方ないみたいね……」

マーガレット「わかりました、お客様。 その条件」

マーガレット「こちらは受け入れます」

鳴上「交渉成立だな」

鳴上「詳しい事はこれから決めるが、よろしく頼む」



―――――――――――


執務室


鳴上「……という訳で紹介しよう」

鳴上「イゴールとマーガレットだ」

イゴール「ふふふ……以後、お見知りおきを」

マーガレット「よろしくね。 いすずさん、モッフルさん」

いすず「」

モッフル「」

いすず「な、鳴上くん……い、いきなり過ぎるのはともかく」

いすず「あっさり決めすぎなんじゃないかしら!?」


鳴上「そうは言うがな……経営に関して頭を使いたいのに」

鳴上「ペルソナや【シャドウ】についても同時進行で調べるのでは俺が持たない」

いすず「た、確かにそうだけど……」

モッフル「文献に『敵』と記されている連中の末裔ふも……」

モッフル「いきなり来て敵意は無い、と言われても信頼できないふも」

イゴール「ふふふ……ご懸念はごもっともでございますな」

イゴール「しかし」

イゴール「双方とも、もう争う理由はございません」

マーガレット「私たちが太古の昔にたもとを分かった理由は」

マーガレット「『糧』の生成方法の仕方や摂取方法です」

マーガレット「それがお互いにそれぞれで確立され、もはや幾年月も経っています」

マーガレット「いまさら争って何になるのですか?」


モッフル「そちらの説明では、僕たちに追い出された事になっているふも」

モッフル「その恨みを晴らす……という目的なら有り得るふも」

イゴール「これはしたり。 少々心外でございますが」

イゴール「そう疑われるのも道理でございますな……」

鳴上「モッフル。 そう思うのも分からないではないが」

鳴上「私怨で仕返しをするのであれば、奇襲するのが普通だ」

鳴上「こうやって堂々と名乗りを上げ、正面から交渉をしてきた」

鳴上「そこは評価してやってくれないか?」

モッフル「…………」

モッフル「わかったふも」

鳴上「モッフル……」

モッフル「ただし!」


モッフル「ラティファの居るメープル城に近づいてはダメふも」

モッフル「それは譲れない条件ふも」

いすず「モッフル卿……」

イゴール「……わかりました、モッフル卿」

イゴール「その条件でよろしゅうございます」

モッフル「……ふん」

モッフル「では、僕は仕事に戻るふも」

     キュム キュム キュム… パタン

鳴上「すまないな、イゴール」

イゴール「いえ、お客様……元々無理を言っているのは わたくし共の方でございます」

イゴール「寛大な処置をしてくださったモッフル卿に感謝こそすれ恨むなど」

イゴール「見当違いも甚(はなは)だしく思います」


鳴上「そうか……」

マーガレット「それでは……改めてよろしくね、いすずさん」

いすず「え? あ……ええ、そうね」

いすず「よろしく、マーガレットさん」

マーガレット「うふふ」

いすず「…………」

鳴上「それでは、いすず。 手続きを頼めるか?」

いすず「わかったわ、鳴上くん」

鳴上「頼む」

鳴上「イゴールは俺に付いて来てくれ」

鳴上「イゴール達のアトラクションへ案内する」

イゴール「お手数をおかけします、お客様」



―――――――――――


占いの館 長鼻


イゴール「…………」

鳴上「マーガレットの希望に即して」

鳴上「閉鎖したアトラクション施設をリニューアルした」

鳴上「……施設名が気に入らなければ、彼女と相談してくれ」

イゴール「……いえ。 何も問題ありませぬ」

鳴上「そうか。 それならいいんだが」

イゴール「それにしても……急なお話でしたのに」

イゴール「改装とは言え、この短時間でここまで仕上げるとは……」


鳴上「先日雇った、モグート族という土木建築のスペシャリストが居てな」

鳴上「あそこに見える自分たち用の住処を一晩で仕上げてしまうほどの腕なんだ」

イゴール「ほほう……なんと見事な」

イゴール「あれを一晩で、とは、恐れ入る腕前と技術にございます」

鳴上「内装もマーガレットの指示通りに仕上げてくれている」

鳴上「この辺りも気に入らなければ、彼女とモグート族に相談してやってくれ」

鳴上「ただし、材料費だけは必ずかかるので要注意だ」

イゴール「ほう? 材料費だけで済むのですか?」

イゴール「随分と気前の良い種族の様でございますな」

鳴上「ここに居させてもらっているという恩義に報いたいそうなんだ」

鳴上「そういう事なので、悪いが甘えさせてもらっている」


イゴール「ふふふ……どうやらお客様は」

イゴール「この地においても良い『コミュ』を紡いでおられる様にございますな」

鳴上「意識した事はないが……」

イゴール「ともあれ……これでわたくし共も」

イゴール「お客様のお役に立てるかと思われます」

鳴上「ああ。 よろしく頼む」

鳴上「何か分かったら教えてくれ」

イゴール「ふふふ……心得ておりまする、お客様」

イゴール「分かり次第、すぐにでもお伝え致しましょう」

鳴上「期待している」


夕方

地下道


マカロン「これが例の実ロン?」

ティラミー「そうだミー」

ティラミー「いろいろあったから苦労したミー」

マカロン「すまないロン」

マカロン「今度メシでも奢るロン!」

ティラミー「ちょっと割にあってない気もするけど……」

ティラミー「まあいいって事だミー!」

マカロン「くっくっくっ……」

ティラミー「むっふっふっ……」

     ヒーヒッヒッヒッ……


メープル城 ラティファの部屋


ラティファ「まあ……その様な方々がいらしたのですか」

いすず「はい……」

いすず「先にお知らせしたペルソナ関連の事案で」

いすず「鳴上くんがお世話になった方々……という事だそうです」

ラティファ「私たちと起源を同じくする種族の人たち……」

ラティファ「少しお話してみたいですね」 クスッ

いすず「それは……さすがにご遠慮下さい、ラティファ様」

ラティファ「分かっていますよ、いすずさん」

ラティファ「ちょっと残念ですが……」


ラティファ「それにしてもパークに掛かる正体不明の霧……気になりますね」

いすず「ラティファ様……」

いすず「申し訳ありません。 私が不甲斐ないばかりに……」

ラティファ「いすずさん。 不測の事態は起こり得るものです」

ラティファ「鳴上様は、今回の事にも対処してくださっているだけ」

ラティファ「もちろん、いすずさんや伯父様に落ち度がある訳ではありません」

いすず「はい。 恐縮です」

ラティファ「あ……もし良かったら、ええと、イゴールさん……でしたっけ?」

ラティファ「今度、私のコロッケを差し入れてあげてくださいませんか?」

いすず「そうですね……そのくらいならモッフル卿もお許しいただけるでしょう」

ラティファ「お願いしますね、いすずさん」 ニコッ



―――――――――――


????


いすず「…………」

いすず「……ここは?」

いすず「…………」

いすず(いったい……どこなのかしら?)


??「いすず」


いすず「!?」

いすず「鳴上……くん?」

鳴上「ああ」


いすず「……?」

いすず「その二人は……誰なの?」

??「お前には関係ないクマ」

いすず「っ!?」

??「ひとつ言えるのは……」

??「あなたは、もう用済みという事なんですよ」

いすず「な……!?」

いすず「鳴上くん! どういう事なの!?」

鳴上「どういう事も何も……こういう事だと理解できないのか?」

??「ねー。 クマ!」

??「ふふふ……」


いすず「そ、そんな……鳴上くん、あなたは」

いすず「アッー!で、ウホッ!な趣味だったと言うの!?」

鳴上「そうだとも」

鳴上「だからお前に仕事以外での興味などない」

いすず「っ!!」

??「そして、それすらも僕たちが来た事で無くなりました」

??「負け犬は黙って出てていくクマ!」


     アハハハハハ……


いすず「……や……い…や…」

いすず「いやあああああああああああああああああああああああああああああっ!!」



―――――――――――


数日後の朝

いすずの部屋


いすず「…う……く…う……」

いすず「はっ!?」

     ガバッ!

いすず「…………」

いすず「……夢?」

いすず「…………」

いすず(……最低な夢だわ)


パーク社員食堂


     ガヤ ガヤ…

いすず「…………」

マカロン「いすずちゃん、おはようロン」

いすず「マカロン。 おはよう」

マカロン「ん? 朝からカレー?」

いすず「……食券のボタンを押し間違えたの」

マカロン「ははは、寝ぼけてたのかロン?」

いすず「…………」

いすず「かもしれないわね」


いすず「マカロン、体調の方は大丈夫かしら?」

マカロン「あー、まったく問題ないロン」

マカロン「っていうか、あの一件以来調子がいいくらいだロン」

マカロン「ティラミーなんて元気すぎて毎朝困ってるって言ってるし……」

マカロン「そういえば、いすずちゃんも同じ目に会ったって聞いたけど?」

いすず「私も体調に関してはマカロンと全く同じよ」

マカロン「そうなのロン?」

マカロン「その割に元気が無いロンね?」

いすず「……そんな事ないわ」


マカロン(素直じゃないロン……)

マカロン(!!)

マカロン(そうだロン!)

マカロン(あれを試してみるロン!)


マカロン「……あ、マーガレットちゃんだロン」

いすず「え?」 クルッ


マカロン(今だロン!!)

     ススッ! パッ!

マカロン(よしッ! 成功だロン!)


いすず「……居ないみたいだけど?」

マカロン「ごめん、見間違いだったロン」

いすず「そう……」 モク モク


マカロン(ムフフ……効果が楽しみだロン♪)



―――――――――――


甘城高校 正門付近


     オハヨー ゲンキー?

いすず「…………」

モブ子「おはよう、千斗さん」

いすず「……おはよう」

モブ子「どうしたの? 何か元気ないね? 悩み事?」

いすず「体調は悪くないわ」

いすず「私自身、役に立てているのかどうか、気になってて……」

モブ子「そうなの?」

モブ子「あ! それよりさ、今日、転校生が来るみたいなんだけど……」

いすず「興味ないわ」


モブ子「そ、そう……」

モブ子「なんか……本当に大変そうだね?」

いすず「大変よ」

いすず「問題は次々に起こるし、訳の分からない人たちを頼らないといけないし」

いすず「よりもよって自分が役に立ててるかどうか悩んでいる状態なのに」

いすず「鳴上くんに対して良く分からない気持ちまで抱えてて……」

モブ子「鳴上…くん?」

いすず「……!?」

いすず(今……私、何を言ったの!?)

モブ子「……どうしたの? 千斗さん?」


いすず「な、なんでもないわ……」

モブ子「本当?」

いすず「っ!……んぐっ」

いすず「私、今日は病欠するからっ!」

     タッ タッ タッ…

モブ子「……変な千斗さん」


―――――――――――


屋内シアター エレメンタリオ


モッフル「はい、ワンツー ワンツー」

     トトトトト……トト


モッフル「……シルフィー以外ダメふも」

ミュース「す、すみません……」

モッフル「もう一回最初からやってみるふも」

サーラマ「ええー……」

モッフル「ええーじゃないふも。 これもゲストの皆さんに楽しんでもらう為ふも」

モッフル「頑張るふも」

コボリー「……頑張ります」

シルフィー「ふぁいとー!! よんぱつー!!」


ティラミー「ええー!? いすずちゃんにポンネーの実を飲ませたミー!?」

ティラミー「あれはマカロンの離婚した奥さんの元にいる」

ティラミー「娘さんの本音を聞きたいって言うからあげたのに……」


マカロン「いやー……娘に使う前にちょっと試してみようと思ったんだロン」

ティラミー「マカロン外道だミー……」

ティラミー「今いすずちゃんは本音がポロポロ出てきて、きっと困ってるミー」

マカロン「まあ、効果が現れる前にいすずちゃんは学校に行ってしまったけど……」

ティラミー「でも……そういう事なら」

ティラミー「『週に何回モナピーしてるの?』とか聞いてみたかったミー♡」

マカロン「ぐふふっ! ティラミー外道だロンw」

マカロン「そんなこと聞いたら間違いなく殺されるロンwww」

???「心配いらないわ」

     ジャキン!!

マカロン「!!」

ティラミー「!!」


いすず「今」 ゴゴゴ…

いすず「すぐ」 ゴゴゴゴゴゴ…

いすず「殺してあげるわ……」 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

マカロン「」

ティラミー「」

     アイエエエエエェェッ!!!

―――――――――――

いすず「はあっ……はあっ……はあっ……」

マカロン「」

ティラミー「」つ犯人は乳袋~

モッフル「」

4精霊(どうしてモッフルさんまで……?)


鳴上「……いすず?」

いすず「!!?」

いすず「な、鳴上くん!?」

いすず「どうして……あなたは学校に居るはずじゃ」

鳴上「いすずが早引けしたと聞いてな」

鳴上「どうしたのかと心配になって、俺も早引けしたんだ」

いすず「そ、そうなの……」

いすず「心配……してくれたの……」///

鳴上「だけど……この惨状は何だ? 何があった?」

いすず「報復よ」

いすず「私にポンネーの実を飲ませて下品な質問をしようとしたの」


鳴上「下品な質問?」

いすず「週に何回モナピーする……っ!!」

いすず「んっ! んぐぐぐっ!!」

鳴上「???」

いすず「はあ……はあ……」

鳴上「……何か良く分からないが」

鳴上「病気とかじゃないんだな?」

いすず「……ええ」

鳴上「そうか」

鳴上「で? 何回するんだ?」

いすず「10回くら……」

いすず「っ!!?」///





     ズドンッ! ズドンッ! ズドンッ!




―――――――――――


執務室


鳴上「…………」

鳴上「……ん」

鳴上「…………」

鳴上「……執務室?」

鳴上「あれ……? 俺はどうしてここに居るんだ?」


ミュース「あ……鳴上さん、気がつきましたか?」

鳴上「ミュース? どうしてここに……いすずは?」

鳴上「いや、それよりも俺はどうしてここに居るんだ?」

鳴上「確か……エレメンタリオに向かったと思うんだが」

ミュース「そ、その……鳴上さん、暑さにやられたのか」

ミュース「舞台に入った時に倒れられて……」

鳴上「そうだったのか……よく覚えていないが」

鳴上「迷惑かけたな」

ミュース「い、いえ……」

鳴上「いすずはどうしている?」

ミュース「そ、その、体調が思わしくないから夕方まで休むって……」

鳴上「そうなのか……心配だな」



―――――――――――


いすずの部屋


いすず「…………」

いすず「……はあ」

いすず(フォーゴットンレルム……)

いすず(任意で部分的な記憶消去が可能な魔法の弾丸)

いすず(一発作るのに一年もかかるのに……)

いすず(こんな事で大量消費してしまうなんて……)

いすず「はあ……」

いすず(…………)

いすず(ミュースは上手くやってくれたかしら?)



―――――――――――


夕方

メープル城 空中庭園


ラティファ「いらっしゃいませ、鳴上様」

鳴上「ああ」

ラティファ「今、紅茶を入れますね」

     コポポ…

ラティファ「どうぞ」

鳴上「いただきます」

     ズズッ…


ラティファ「それで……今日はどの様なご用件なのでしょうか?」

鳴上「…………」

鳴上「以前、頼んでおいた」

鳴上「閉園になった場合のキャストの身の振り方はどうなっている?」

ラティファ「…………」

ラティファ「……申し訳ございません」

ラティファ「他の魔法の国のテーマパーク等に打診しているのですが」

ラティファ「あまり芳(かんば)しくありません……」

鳴上「……そうか」

鳴上「こちらも……まだいい報告が出来ない状況だ」

ラティファ「そう……ですか」


鳴上「…………」

鳴上「ただ……」

ラティファ「え?」

鳴上「ここから思い切った方法を取りたいんだが、どうしても多額の資金がいる」

鳴上「皆に相談したりもしたんだが……残る手段は限られていて」

鳴上「その手段は……ラティファやここのキャストにとって」

鳴上「とても辛い方法だと思う」

ラティファ「…………」

ラティファ「……仰ってください。 その方法を」

鳴上「…………」

鳴上「……南にある第二パークの土地を」

鳴上「売却したい」

ラティファ「!!」


ラティファ「…………」

鳴上「…………」

鳴上「俺も……いろいろ考えたんだ」

鳴上「土地を担保に金を借りれないかどうか、とか……」

ラティファ「…………」

鳴上「でもそれでは、とても足りない」

鳴上「それに時間的余裕も考えると、今から行動して買い手を探しても」

鳴上「間に合うかどうかすらも怪しい」

ラティファ「…………」

鳴上「だから……迷っている暇がない」

ラティファ「…………」


ラティファ「……鳴上様」

鳴上「……ああ」

ラティファ「わかりました」

ラティファ「鳴上様の思う通りに行動してください」

鳴上「!」

ラティファ「もし必要なら、私からキャストの皆さんに説明します」

鳴上「ラティファ……」

鳴上「…………」

鳴上「すまない」

ラティファ「いえ……」

ラティファ「私の考えは、まだまだ甘いのだと実感しました」

ラティファ「きっと……未来の私は驚くでしょうね」

鳴上「……? 未来の?」


ラティファ「ふふっ、何でもありません。 鳴上様」

ラティファ「ともかく、ご用件の方は了承します」

鳴上「…………」

ラティファ「あの土地……元々はこれから どんどんこのパークを大きくして」

ラティファ「もっともっと、大勢のゲストの方に楽しんでもらって」

ラティファ「他のどんな魔法の国のテーマパークより、すごい遊園地を作るんだって」

ラティファ「私たちの……メープルランドの希望が込められていたんです」

鳴上「…………」

ラティファ「ですので」

ラティファ「これからの甘ブリの為に……糧になるのなら」

ラティファ「きっと……伯父様を含めて、キャストの皆さんも承知してくれると思います」


ラティファ「だから、鳴上様の、思う……通りに、してくだ……」

     ポタ… ポタ…

鳴上「…………」

ラティファ「……っ」

ラティファ「……すみ、ません……ぐっ……鳴上、様……」

ラティファ「……すぐ……っ………終わり…くっ……ます、からっ……」

ラティファ「ぐすっ……うくっ……ひっく……ぐっ……っ……」

鳴上「…………」

鳴上「……すまない、ラティファ」



―――――――――――


執務室


     ガチャ…

鳴上「ふう……」

いすず「鳴上くん」

鳴上「ん? いすず?」

鳴上「体調の方はもういいのか?」

いすず「ええ」

     コン コン

いすず「誰かしら?」

オークロ「すみません、警備部のオークロです」

鳴上「どうぞ。 入ってくれ」


     ガチャ

オークロ「お疲れ様です」

オークロ「実は……また支配人代行にお会いしたい という人物が」

オークロ「訪ねてきまして」

いすず「鳴上くんに?」

鳴上「……今回も俺は誰とも約束していないが」

オークロ「その人達も自分の名前を聞けば分かってもらえると言ってまして……」

オークロ「白鐘直斗とクマ、と名乗っていました」

鳴上「」

いすず「……知っている人物みたいね」


関係者入口付近


直斗「あ! 鳴上先輩!」

クマ「センセーイ!!」

鳴上「」

いすず「」

直斗「ふふっ、やっぱり驚かれた様ですね」

クマ「ぬふふ! さぷらいず成功クマ!」

―――――――――――

鳴上「そうか……陽介に聞いて俺を手伝いに来てくれたのか」

直斗「ええ」

クマ「センセイ、ヨースケだけ頼るなんて、水臭いクマ!」


クマ「ところで、センセイ」

クマ「このベリベリキュートな女の子は誰クマ?」

鳴上「千斗いすず、という名前で」

鳴上「俺専属の秘書をやってもらっている」

直斗「」

直斗(ひ……秘書!? 専属の!?)

クマ「ひしょ?って、何クマ?」

鳴上「俺の言った通り、雑多な仕事をこなして、予定を組んだり」

鳴上「身の回りの世話をしてくれている」

直斗「」

直斗(み、みみみ身の回りっ!?)///

クマ「ほほー! クマもぜひして欲しいクマ!」


直斗「…………」

いすず「…………」


直斗(……予定や身の回りの世話)

直斗(な、鳴上先輩に限って……そ、そんな、いやらしい事はしない!)///

直斗(と……思うけど……けど……)

直斗(抜群のスタイルに……かなりの美人……そして秘書……)


いすず(……まさか)

いすず(夢に出てきた二人が、鳴上くんの知り合いだったなんて……)

いすず(どういう事なの……正夢? ううん……そんなレベルじゃない)

いすず(! 正夢だったら……私は……お払い箱に……!?)


直斗「…………」

いすず「…………」

直斗「……初めまして」

いすず「……こちらこそ」

直斗「…………」

いすず「…………」

直斗「…………」 ゴゴゴ……

いすず「…………」 ゴゴゴ……

クマ「センセイ、それでそれで、クマは何を手伝えばいいクマ?」

鳴上「クマ……お前の空気の読めなさが、時々羨ましくなる」


占いの館 長鼻


イゴール「ようこそ、占いの館へ……モッフル卿」

モッフル「もふ」

モッフル「何か用と聞いたふも」

イゴール「はい……」

イゴール「実は……現実世界でペルソナを出されたお方をお調べしたく思いまして」

モッフル「検査ふも?」

イゴール「有り体に申し上げますと、その通りでございますな」

モッフル「……どうすればいいふも」

イゴール「はい……この水晶玉に触れていただくだけにございます」

イゴール「もちろん傷み等はございませぬので……」

モッフル「…………」


     スッ…

モッフル「……これでいいふも?」

イゴール「はい……結構にございます」

イゴール「マーガレット」

マーガレット「わかりました、我が主」

マーガレット「…………」

モッフル「…………」

モッフル(……見たところ、魔力測定の魔法術式に似ているふも)

マーガレット「……終了しました、我が主」

イゴール「お疲れ様でした、モッフル卿」

モッフル「何を調べたふも?」


イゴール「現段階では、何とも言えませんが……」

イゴール「やはりペルソナを出現なされた者に、何の変化もないのは」

イゴール「奇妙な事にございます」

モッフル「…………」

イゴール「もちろん何か分かり次第、お知らせする事をお約束いたします」

モッフル「……分かったふも」

モッフル「正直、僕としても知りたい事ふも」

モッフル「それじゃ……もう行くふも」

イゴール「はい……御足労、ありがとうございました」

     キュム キュム キュム…

イゴール「…………」


マーガレット「我が主」

イゴール「ふむ?」

マーガレット「これをご覧下さい」

     ヒィイイイイイイイン……

イゴール「……!」

イゴール「ほう……この輝きは」

マーガレット「はい。 いすずさん、マカロン、ティラミー」

マーガレット「そしてモッフル卿……」

マーガレット「いずれも同じ輝きを放っています」

イゴール「ふむ……」

イゴール「まことに……奇妙にして大仰……」

イゴール「いったい……この地にて、何が起こっているのか」

イゴール「…………」











イゴール「それとも……何かが起ころうとしているのか……」














     パーク閉園期限まで

      あと残り 66 日



     必要来園者数

       245982 人





―――――――――――

―――――――――――


鳴上「追求」

いすず「考察」


鳴上・いすず「二次創作ー」


     パチパチパチ


いすず「まず最初に」

鳴上「?」

いすず「私は、そんな事しないから」

鳴上「……誰でもやっている事だr」

     ジャキン!

鳴上「いすずの言う通りだな」


いすず「さて、お話の方は多少進展があったものの」

いすず「これってアニメであったバイトの募集が無くなっているわね?」

鳴上「確かに」

鳴上「>>1には何か考えがあるのだろう」

いすず「まあこれまでの流れは、一応それなりの説得力があったわね」

鳴上「ようやく>>1の力量を評価したか」

いすず「二次創作って他人が作った料理レシピを」

いすず「後付けアレンジしてる様なものでしょ? 何の自慢にもならないわ」

鳴上「お前は>>1の心臓を止めたいのか?」

いすず「前にも言ったけど、事実を言ってるだけよ」

鳴上「今は止めてやれ。 レスが少なくなって相当へこんでいる」


いすず「ちょうど甘ブリらしくていいんじゃないかしら?」

いすず「ここからが>>1の真の力量が試されていると思えばいいのよ」

鳴上「珍しく肯定的だな」

いすず「ここまでやって完結しないのは、気に入らないだけよ」

鳴上「ツンでもありデレでもある、高度な発言だ」

いすず「そんなつもりは毛先ほどもないわ」

鳴上「そういう事にしておこう」

いすず「本編の方では、それなりにクライマックスへと突入しているわね」

鳴上「ああ。 いよいよP4の面々が本格的に関わってきた」

いすず「そういえば……少し気になったのだけど」

いすず「鳴上くんって、本当はホ○なの?」

鳴上「断じて違う!」

というところで今日はここまでです。
お付き合いありがとうございます。

乙ー
>>363は公用車じゃなくて社用車じゃね

>>429
すまない、モッフル。
>>363修正↓


鳴上「広く浅く短く行ってみるのはどうだろうか?」

未来くん「具体的には?」

鳴上「簡単に言えば、時間を決め、各駅停車で配り歩く」


一同「……!?」


モッフル「つまり、ひと駅ごとにチラシを配ると……」

鳴上「そうなるな」

鳴上「おまけに朝夕の時間帯に限られるし、キャストの負担は倍増する」

鳴上「しかし、いちいち着替える必要のないお前達なら不可能ではないと考える」

未来くん「うーん……それでも大変なのは変わらないね」

アーシェ「足はどうするのですか? 電車ですか?」

鳴上「もちろん社用車を使う。それで何とか経費としては軽く済むはずだ」

鳴上「他に案があれば聞こう」

それから業務連絡&生存報告。
遅れてまことにすみませんが、明日の今くらいに続きを投下します。



―――――――――――


翌日の朝

執務室


     コン コン

鳴上「どうぞ」

     ガチャ

アーシェ「おはようございます、支配人代行」

鳴上「アーシェ? 珍しいな」

いすず「何かあったのかしら?」

アーシェ「はい……実は」


アーシェ「先日ご提案された、資金獲得の方策なのですが」

いすず「資金集めの方策……というと、テーマパークマニアに」

いすず「古い備品等を売ると言ってた事かしら?」

アーシェ「はい」

鳴上「上手く行っていないのか……」

アーシェ「いえ、逆です」

いすず「え?」

鳴上「まさか……売れすぎて困っているのか?」

アーシェ「結論を言えばその通りです」

鳴上「在庫切れ……か?」

アーシェ「その通りです。 が……」

アーシェ「一部の商品に偏っていまして……」


鳴上・いすず「?」

アーシェ「その……簡単に言いますと」

アーシェ「女性キャストが使っていた衣装の一部や小道具に人気が集中しているんです」

鳴上「…………」

いすず「…………」

アーシェ「…………」

アーシェ「……いかが致しましょう?」

鳴上「……いかがも何も」

鳴上「というか、そういう物まで売ってしまっていたのか……」

いすず「顔写真でも付けていたの?」

アーシェ「いいえ」


鳴上「…………」

いすず「…………」

アーシェ「…………」

鳴上「ともかく」

鳴上「追加などはしない方向で」

アーシェ「そうですよね……わかりました」

鳴上「それで、どの程度の売上になったんだ?」

アーシェ「このくらいになります」つ(電卓)

鳴上「……少し心が揺らいでしまう金額だな」

いすず「……鳴上くん?」

鳴上「冗談だ」

アーシェ「それでは、失礼します」


鳴上「……あ」

鳴上「ちょっと待ってくれ、アーシェ」

アーシェ「はい?」

鳴上「その儲けなんだが……キャストのみんなに分配できないだろうか?」

いすず「え?」

アーシェ「分配……ですか」

鳴上「厳しいか?」

アーシェ「不可能ではないですが、諸経費等を引くと」

アーシェ「おそらく3~4千円程度になるので経理部としては」

アーシェ「内部留保として置いておきたいのですが……」

鳴上「そうか……」


いすず「なら……ナイター設備の予算として計上できないかしら?」

いすず「今ならモグート族の技術力でかなり安くできると思うのだけど……」

アーシェ「…………」

鳴上「…………」

いすず「鳴上くん?」

鳴上「それは……その通りなんだが」

いすず「反対なの?」

鳴上「正直、これ以上は人員的に負担が大きすぎる」

鳴上「ただでさえギリギリのシフトで働いてもらっているからな……」

アーシェ「…………」

アーシェ「では……新たなアルバイトを雇う、というのはいかがでしょうか?」

アーシェ「短期バイトという形でなら、何人かは可能だと思います」

鳴上「!」


いすず「アーシェ……いいの?」

アーシェ「今なら……支配人代行のお気持ちも分かりますから」

アーシェ「急に休みも無くなり、営業時間も延長されて」

アーシェ「キャストの負担は増えているのに給料は上げられない」

アーシェ「パーク存続の為とはいえ、これではモチベーションを保つ事は厳しいでしょう」

アーシェ「我々とは違う、人間のキャストは特に……」

いすず「…………」

アーシェ「あと、将来的にゲストが増加して仕事が増えるのなら」

アーシェ「それに備えて、今から人員を確保しておくのは重要です」

アーシェ「これは立派な先行投資と考えます」

鳴上「アーシェ……」


いすず「私はアーシェの案に賛成するわ」

鳴上「いすず……」

鳴上「…………」

鳴上「では、その方向で行こう」

アーシェ「わかりました、支配人代行」

アーシェ「期間は約2ヶ月間、7月31日までとして」

アーシェ「何人雇えるか分かり次第お知らせいたします」

鳴上「頼む」

いすず「私はアルバイト募集のポスターをパーク内に貼っておくわ」

鳴上「そうだな」

鳴上「俺も手伝おう」


パーク内 中央広場


モッフル「もふ、もふ、もふ」

子供「わぁ~モッフルだー!」

     キャッ キャッ

ゲスト「あのー」

男性キャスト「はい。 何でしょう?」

ゲスト「バス停の停留所、どうしてああなったんですか?」

男性キャスト「ああ、それはですね……」

     ガヤ ガヤ

ワニP「問題っピー」

ワニP「日本一高い山は、何だっピー?」


ワニP「正解だっピー!」

ワニP「スタンプ一個どうぞっピー!」

ワニP「次はエレメンタリオ前に行って欲しいっピー!」

     ワイ ワイ

鳴上「……この辺りでいいか」

いすず「そうね」

     ペタペタ…

鳴上「ふう……」

いすず「…………」

いすず(ゲストの数、少し増えたみたいね)

いすず(何よりも楽しんでもらえている……様に思う)

いすず(…………)


いすず「ねえ、鳴上くん」

鳴上「ん?」

いすず「今なら……今の甘ブリなら」

いすず「あなたの従姉妹を呼びたいと思えるかしら?」

鳴上「…………」

     ガヤ ガヤ   ワイ ワイ

鳴上「……そうだな」

鳴上「今なら、呼んでみてもいいかと思う」 ニコッ

いすず「そう」 クスッ

     キュム キュム キュム

クマ「センセーイ!」

鳴上「クマ」

いすず「え?」


クマ「おおーイッちゃん、今日もベリベリキュートねー!」

いすず「い、イっちゃん!?」

いすず「というか……この着ぐるみ、何なの?」

鳴上「あー……クマのオリジナル?だ」

いすず「クマくんが作ったの?」

鳴上「説明がややこしいから、そういう事でいい」

クマ「ムッホホー! これはマイ・プリティ・ボディ クマ!」

いすず「そ、そう……」

いすず「甘ブリとしてもマスコットが増えるのは、ありがたいわね」

クマ「クマ、頑張るクマ!」


いすず「…………」

いすず「鳴上くん。 もう一人の……直斗?という人」

いすず「もしかしてアルバイトに誘うつもりかしら?」

鳴上「そのつもりだ」

いすず「そう……」

鳴上「不満なのか?」

いすず「!」

いすず「そ、そんな事、ないわ」

鳴上「いすずは思った事が顔に出るから、わかりやすいな」 クスッ

いすず「~~っ!」///


鳴上「まあ直斗は、接客業に向いていないかもしれないが」

鳴上「きっと役に立ってくれる」

鳴上「だから心配しないでくれ」

いすず「…………」

鳴上「いすず?」

いすず「……何でもないわ」

いすず「次のポスター、もらえるかしら?」

鳴上「あ、ああ」

クマ「クマも頑張るクマ!」


夕方 パーク閉園後

エレメンタリオ


ミュース「で、ここでこう来て……」

     トトトトト……

ミュース「こう……ポーズ……」

     スチャ

ミュース「…………」

ミュース「……うーん」

     パチパチパチ

ミュース「え?」

クマ「ミューちゃん、とっても上手クマ!」


ミュース「あ、ありがとう……」

ミュース「えっと……クマくん、だったかな?」

クマ「クマ!」

ミュース「私、もう少しここに……」

クマ「モッフル達がクマ達新入りの歓迎会を開いてくれるって言うから」

クマ「ミューちゃん達も誘いに来たクマ!」

ミュース「え? ……そ、そうなんだ」

クマ「さ! 一緒に行くクマ!」

クマ「コっちゃんも サーちゃんも シルちゃんも来てくれるクマ!」

ミュース(個性的なネーミングセンスね……)

ミュース「あ、あの……私は」

クマ「さささ! 行くクマ~!」 グイ グイ



―――――――――――


居酒屋さべーじ


モッフル「お、来たふもね」

クマ「お待たせクマ!」

ミュース「私は来た、というか、連れてこられた、というか……」

サーラマ「諦めなよ~」つ(スマホ) ピッポッパッ

コボリー「私も断りきれませんでした……」

シルフィー「楽しければよしッ!」

いすず「…………」

マカロン「今日は賑やかロンね」

ティラミー「綺麗どころがいっぱいだミー♡」


マーガレット「あら、お上手ね。 ふふふ」

イゴール「わたくし、この様な席はどうも苦手でして……」

直斗「僕もです……」

鳴上「まあそう言わずに」

鳴上「主役なのだから、楽しんでくれ」

モッフル「えーコホン。 それでは、主役も来たのでそろそろ始め」

     カンパーイ!

モッフル「ふも!? 僕の合図を待ってくれふも!」

マカロン「お前の前説は長いロン」

ティラミー「いちいち待ってられないミー」

クマ「ブレイコークマ!」


サーラマ「てかミュース。 まだ練習してたの?」つ(スマホ) ピッポッパッ

ミュース「……うん」

サーラマ「そんなに練習しなくても、キレイに踊れてるって」つ(スマホ) ピッポッパッ

ミュース「でも、サーラマ」

ミュース「私、もっともっと上手になりたい」

サーラマ「ふーん……」つ(スマホ) ピッポッパッ

コボリー「…………」

シルフィー「ウーロンおかわりっ!」

ミュース「演目も増えたし、練習しておかないと不安で……」

サーラマ「あんたは深く考えすぎよ」つ(スマホ) ピッポッパッ

サーラマ「本番で失敗しても へっちゃらってくらいになろうよ」つ(スマホ) ピッポッパッ

ミュース「絶対無理ぃ……」


鳴上「…………」

クマ「センセイ、センセイ!」

鳴上「ん?」

クマ「写メ撮って欲しいクマ!」

鳴上「ああ、構わないぞ」

     パシャ!  パシャ!

鳴上「これでいいか?」

クマ「クマ! お礼にセンセイも撮ってあげるクマ!」

     パシャ!

鳴上「おいおい……もう少しゆっくり撮ってくれ」

     アハハ…



―――――――――――


翌日の朝

エレメンタリオ


ミュース「ワン、ツー ワン、ツー」

ミュース「……で、ポーズ」

     トトト……ト

ミュース「ふう……」

鳴上「こんな早くから精が出るな、ミュース」

ミュース「あ……鳴上さん」

ミュース「何かご用ですか?」


鳴上「そういう訳じゃないんだが……」

鳴上「最近、気を張り詰めすぎているんじゃないかと思って」

ミュース「…………」

鳴上「サーラマじゃないけど……もう少し気楽に考えても」

ミュース「……鳴上さんがそんな事を言うんですか?」

鳴上「え?」

ミュース「あなたの方じゃないですか」

ミュース「素人が見ても酷い遊園地だって言ったのは」

鳴上「…………」

ミュース「私……ゲストの皆さんにもっと楽しんでもらいたくて」

ミュース「必死に頑張っているのに……それだけなのに」

ミュース「どうして鳴上さんまで、そんな事を言うんですか!!」


鳴上「…………」

ミュース「…………」

鳴上「……なあ、ミュース」

ミュース「私、練習の続きをしたいので」

ミュース「特に用がないのなら、放っておいてください」

鳴上「…………」

鳴上(これは重症だな……)

鳴上「……わかった」

     スタ スタ スタ…

ミュース「…………」

ミュース「さて……もう一度初めから……」



―――――――――――


ミュース「――ありがとうございました!」

サーラマ「ありがとうございました」

コボリー「ありがとうございました」

シルフィー「ありがとうございましたッ!」

     パチパチパチ

ミュース「…………」

ミュース(どうして……どうしてゲストの数が)

ミュース(他のアトラクション並に増えて来ないの)

ミュース(どうして……)

ミュース(…………)


サーラマ「あー……疲れた」

コボリー「お昼ですね」

シルフィー「腹八分目厳守ッ!」

サーラマ「何食べようかなー」

ミュース「…………」

ミュース「……私、午後の演目ちょっと練習していくから」

3精霊「え……」

ミュース「そんな時間は掛けないよ」

ミュース「みんなは先に行ってて」

3精霊「…………」


鳴上「ちょっといいか?」

4精霊「!」

ミュース「……鳴上さん」

鳴上「ふと、一度もエレメンタリオの演劇を」

鳴上「最初から見た事が無いと思ってな」

鳴上「午前中の演舞を見させてもらった」

ミュース「…………」

ミュース「……どうでした?」

鳴上「俺が言わなくても……この客入りが物語っていると思うな」

ミュース「……っ」


サーラマ「……もういいでしょ、鳴上さん」

サーラマ「あたしらも一応、頑張っているのよ」

サーラマ「ちょっと空回っているけど……」

ミュース「どこがよ!!」

サーラマ「!?」

ミュース「私はこんなに頑張ってるのに!」

ミュース「みんなが足を引っ張っ……」

シルフィー「はーい、そこまでー」

シルフィー「それ以上は喧嘩になっちゃうよ~?」

サーラマ「…………」

ミュース「…………」

コボリー「…………」


鳴上「……そこで、だ」

ミュース「え?」

鳴上「俺と勝負をしてみないか?」

サーラマ「……勝負?」

鳴上「午後の演舞、俺とミュース、交互で演じたい」

4精霊「はあ!?」

ミュース「何を言っているんですか!?」

ミュース「セリフや舞台装置の扱いとか、たった一度見ただけで」

ミュース「分かる訳ないでしょう!?」

鳴上「まあそうだろうな」

ミュース「勝負にすら ならないじゃないですか!!」


サーラマ「……だったら、返って いーんじゃない?」

ミュース「え?」

サーラマ「勝負に勝ったら、何かおねだりしてみなさいよ」

サーラマ「欲しい服とかさ」

コボリー「あーそれいいですね」

シルフィー「約束された勝利……掴むべしッ!」

ミュース「…………」

ミュース「……勝敗はどうやって決めるんですか?」

鳴上「ゲストの拍手の音の大きさはどうだ?」

ミュース「……わかりました」

ミュース「そこまで言うのなら、受けて立ちます」

ミュース「私が勝ったら、上下一式の新しい服を買ってもらいますから」

鳴上「いいとも」





     ……鳴上さんは、私の物とは違うけど、それっぽい精霊の衣装で

     私の役をやり始めた。



     酷い。 はっきり言って酷い。



     ゲストの皆さんには、無鉄砲な役者志望の若者が

     私たちに挑戦状を叩きつけてきた、という説明の上で

     それでもいい、という方のみお通しして観覧してもらった。








     セリフは棒。 ワイヤーアクションもなっていない。

     タイミングすらちぐはぐ。

     大失敗ばかりしている。


     …………


     でも…… 一生懸命だった。 ひたむきだった。

     そして、失敗してもめげずに挑戦している姿に

     ゲストの皆さんは、いつしか彼を応援するようになり

     サーラマ達のフォローや、アドリブも楽しいアクセントになっていた。








     私は……

     いつの間にか笑っていた。

     お腹をかかえて笑っていた。



     本来、この演目は喜劇なんかじゃない。

     ……ううん、もしかしたら、ただお話を

     だらだらと流して見せていただけかもしれない。

     そんな風にすら思ってしまう程、酷い……でも














     楽しくて時間を忘れてしまう演劇になっていた。












―――――――――――


鳴上「……あ、りがとうっ、ござ、いましっ……ぜえ、ぜえ……」

     ワー パチパチパチッ!

     ヨクガンバッター! アハハハハハッ!

     サイコウニ ヒドカッタゾー!

鳴上「ハ……ハハ……ハハハ……」 ボロッ…

―――――――――――

ミュース「お疲れ様でした、鳴上さん」

鳴上「……ああ」 ボロッ…

ミュース「…………」

ミュース「……ゲストの皆さん、楽しそうでしたね」

ミュース「私がやった時なんかよりずっと……」

サーラマ「ミュース……」

ミュース「サーラマ……私、やっとわかった気がする」


ミュース「みんなが、私に何を言いたかったのかが……」

コボリー「ミュース……」

シルフィー「これにて~ 一件っ落着ッ!」

ミュース「アハハ!」

鳴上「それは……よかった……な……」 ボロッ…

ミュース「ところで……勝負は私の負けですけど」

ミュース「そういえば、鳴上さんは何をして欲しいのか言ってませんね?」

鳴上「いや……俺は……別に……」 ボロッ…

サーラマ「んなの、男が望むものって言ったら……ヤラしい事って決まってるでしょ?」

ミュース「ええー!?」///

コボリー「……不潔ですっ」///

鳴上「本当に……何も……いいから……」 ボロッ…


ミュース「……それはそれで腹が立ちますね」

シルフィー「ならばっ!」

シルフィー「その疲れた体を癒してあげるべしっ!!」

サーラマ「あー。 そゆ事ね」

ミュース「それなら問題ないと思う!」

コボリー「その手がありましたか」

鳴上「いや……もう……帰って寝たい……」 ボロッ…


―――――――――――




執務室


     ガチャ

いすず「鳴上くん? 今日はどこに行って……」

いすず「」


ミュース「あ、いすずさん」

サーラマ「お邪魔さまー」つ(スマホ) ピッポッパッ

鳴上「」

いすず「な……なな、何をしているの!? あなた達!?」

コボリー「見ての通り、マッサージですが……」

シルフィー「鳴上さん、あちこちこってますっ!」

鳴上「」

いすず「だからって4人そろって、体を鳴上くんに密着させる必要はないでしょ!?」///

いすず「……というか鳴上くん?」

いすず「どうしてそんな魂が抜けた様な顔をしているの?」

鳴上「」

ミュース「はは……ちょっと事情がありまして」


サーラマ「――っていうわけ」

いすず「…………」

ミュース「今の内にほぐしておかないと、明日たぶん立てないと思って」

ミュース「ついさっきまで起きてたんですが……」

鳴上「」

いすず「……寝てるって言うより、気絶している様に見えるのは気のせいかしら?」

サーラマ「気のせー 気のせー」

コボリー「私は土の精霊」

シルフィー「風の精霊だけど風邪じゃないッ!」

鳴上「」

いすず「……後で私が彼の家に送っておくわ」

ミュース「あ! 私も付き添います!」



―――――――――――


数日後

管理棟 臨時アルバイト面接会場


鳴上「…………」

いすず「鳴上くん、体は大丈夫?」

鳴上「アア……」

モッフル「まだ尾を引いてそうふもね」

鳴上「慣レナイ事ハ、スルモノジャナイ……」

モッフル「しっかりするふも」

いすず「まるで壊れかけたロボットね……」

鳴上「全身ノドコカヲ動カスタビ、筋肉痛デ悲鳴ヲアゲソウニナルンデナ」


いすず「そんな調子で面接できるの?」

鳴上「始マッタラ、気合デすいっちヲ入レル」

鳴上「>>1モ書クノガ面倒ダト言ッテルシ」

モッフル「メタ発言は止めるふも……」

いすず「それじゃ……始めましょう」

いすず「最初の方、入ってきてください」

     ガチャ…

??「失礼します」

いすず「どうぞ。 そこのイスに座ってください」

??「はい」

     スチャ…(着席)


いすず「ええと……お名前は……ヤン・○ェンリー?さん、ですか」

ヤン「はい」

モッフル「……中国の人ふも?」

ヤン「そういう訳ではないのですが……いろいろありまして」

いすず「志望動機を言っていただけますか?」

ヤン「本来なら貰えるはずの年金も貰えなくなったし」

ヤン「保護者が被保護者に養ってもらってばかり、というのも気が引けまして……」

ヤン「それなら、と、心機一転 全く違う仕事をやってみよう、という気になったので」

鳴上「以前はどの様な仕事をなされていたのですか?」

ヤン「ある要塞の指揮官と、艦隊の司令官を兼任していました」


いすず「軍隊経験があるのなら、こちらとしては扱いやすいわ」

鳴上「よし、採用」

モッフル「えっ!?」

モッフル「いやいやいや!? 今時、要塞と艦隊司令官兼任ってありえないふも!?」

モッフル「経歴、おかしいふも!!」

鳴上「その経験を生かして、パーク存続に役立ってもらおう」

モッフル「……このパークの人手不足はここまで深刻だったふもか」

いすず「それでは後日、出勤日のシフト表等を郵送しますので」

ヤン「わかりました」

いすず「次の方、どうぞ」

     スチャ…(着席)

??「どうも」

??「ルルー○ュ・ラン○ージです」


モッフル「……いつから日本は外国人だらけになったふも」

鳴上「学生さんですね……趣味の欄にボランティア活動とありますが」

鳴上「どの様な活動に従事されているのですか?」

ルル「一言で言うのなら、我が国の真の独立を勝ち取るための活動です」

モッフル「はあ? 日本はちゃんとした独立国ふも」

ルル「いいえ!」

ルル「現在の日本国は、既存メディアを在○○○人に汚鮮され」

ルル「これらの排除が――」

     ――30分経過――

ルル「――という事で、その活動資金を稼ぐ為、ここに来たのです!」


モッフル「ちょっと危ない人ふも……」

いすず「けど、明確な意志と信念を持ち、法律に触れる様な事はしていないわ」

鳴上「何より自分の力で、正攻法で、取り組む姿は感動すら覚える」

鳴上「よし、採用」

ルル「ありがとうございます!」

モッフル「本気かふも……」

鳴上「感動を与えるのはパークに必要な事だと思うが?」

モッフル「……まあいいふも」

いすず「それでは後日、出勤日のシフト表等を郵送しますので」

ルル「わかりました」

ルル(フフフ……これで我が理想に一歩近づいた!)

いすず「次の方、どうぞ」

     ……シン ズシン ズシン ズシンッ


???「失礼する」

鳴上「」

いすず「」

モッフル「」

???「……ぬ。 このイスは小さすぎるな」

???「このラオウが座ると おそらく壊れてしまうであろう。 あぐらをかかせてもらうぞ?」

鳴上「ど……どうぞ」

     ズズン…

いすず「ええと、お名前は……世紀末覇者ラオウさん、ですか」

ラオウ「うむ」


鳴上「失礼ながら、少々変わった苗字ですね」

ラオウ「よく言われる」

モッフル「それで済む問題ふも!?」

いすず「ところで、志望動機は何なのですか?」

ラオウ「……このラオウの見てくれ、体躯で、様々な職場で断られてな」

ラオウ「ワラにもすがる思いでここに来たのだ」

鳴上「格闘技団体などの方が向いているのでは?」

ラオウ「……このラオウ、愛を知った。 愛とは悲しいもの」

ラオウ「そう心で理解しているものの、相手の闘気を感じてしまうと」

ラオウ「つい、本気(北斗剛掌波)を出してしまいそうになる」

モッフル「言ってる事は支離滅裂ふもけど、やばい事なのはビンビン伝わってくるふも……」

いすず「それで他の……戦いとは無縁の職業を選んだのね」

ラオウ「うむ」


モッフル「どうするふも?」

鳴上「これだけキャラが立っているのなら」

鳴上「アトラクションでの業務に使えるかもしれないな」

いすず「体も大きくて目立つし、確かに悪役などで活躍できると思うわ」

鳴上「ただ……彼の体格に合う衣装の費用が心配だな」

いすず「そうね……」

モッフル「引っかかるのはそこふも!?」

ラオウ「ならば……このラオウの趣味が役立つやも知れぬな」

モッフル「ふも?」

ラオウ「…………」 ピッポッパッ

ラオウ「この画像を見るのだ」つ(スマホ)

3人「?」


3人「!」

鳴上「この衣装は……」

いすず「とげとげしく……いかにも、な、悪役風のコスプレね」

ラオウ「この様な事もあろうかと、密かに世紀末的な衣装を自作しておったのだ」

モッフル「どんな事態を想定してたふも……」

鳴上「よし、採用」

ラオウ「おお……!」

ラオウ「このラオウ、全身全霊をかけて感謝するッ!」

ラオウ「我が生涯に一片の悔いなしッ!」 ウルウル…

モッフル「いちいち大げさふも……」

いすず「それでは後日、出勤日のシフト表等を郵送しますので」

ラオウ「うむ。 相分かった」


     ズシンッ ズシン ズシン …シン

モッフル「……今思ったけど、どうやってあの出入り口を壊さずに入ってきたふも」

鳴上「考えたら負けだ、モッフル」

いすず「次の方どうぞ」

     スチャ…(着席)

??「初めまして。 俺、滝川吉野、といいまs」

鳴上「よし、不採用」

吉野「名前を言っただけなのに!?」

鳴上「なんとなく声が気に入らない」

鳴上「宇宙空間で殺し合いをしてしまいそうな感覚が……」

吉野「意味がわかりませんよ!?」

いすず「私もなぜか俺様キャラで不愉快な思いをさせられる気が……」

モッフル「奇遇ふも……僕もつい殴り合いをしてしまいそうな気分になるふも……」


いすず「残念ですが、お引取り願います」

吉野「」

     リフジンダー!! ダダダダダダダダ…

いすず「次の方どうぞ」

―――――――――――

??「不純かもしれませんが、エリオ……従姉妹にプレゼントを買ってやりたくて」

鳴上「採用」

―――――――――――

???「パニック障害治したけど、宇宙に行けなくなったので……」

鳴上「採用」

―――――――――――

??????「拙者、山を飛び谷を越え、伊賀の里から」

鳴上「採用」



―――――――――――


モッフル「……ふう。 ずいぶん採用したけど大丈夫ふも?」

いすず「まだ2~3人は大丈夫よ」

モッフル「なら安心ふもね」

鳴上「それでは次の方、どうぞ」

     スチャ…(着席)

??「初めまして。 安達映子(あだちえいこ)と申します」

モッフル「おお……普通ふも」

鳴上「ええと、安達さんは……以前、芸能プロダクションに所属していたのですか」

鳴上「映像作品に出演とありますが、どの様な作品に?」


映子「はい。 AVです」

鳴上「なるほど、AVに……」

鳴上・モッフル「   え   」


映子「AVです」 ニコッ


鳴上・モッフル「!!」

いすず「…………」

映子「どうかなさいましたか?」

鳴上「っ! す、すみません……少し珍しい経歴だったので」///

映子「よく言われます」 クスッ

鳴上「きょ、恐縮ですっ」///

モッフル「面接官が恐縮してどうするふも……」


モッフル(それよりも芸名を聞くふも!)

モッフル(後で検索かけたいふも!)

鳴上「え……し、しかし……」

モッフル(小僧だって気になるふも!?)

鳴上「そ、それは……」

いすず「AV、というのはアニメビデオの略ですか?」

鳴上・モッフル「!」

鳴上・モッフル(……そういうオチか)

映子「いいえ。 アダルトビデオの略です」

鳴上「」

モッフル「」

いすず「」


映子「……やっぱり、こんな経歴の女では無理でしょうか?」

鳴上「! い、いえ! そんな事はありません!」

モッフル「大事なのは心ふも!」

いすず「……いつになく寛容ね」

映子「それでは……採用していただけますか?」

鳴上「は、はい。 採用します!」

鳴上「本来なら、隠す様な事柄を正々堂々とオープンにしてくれた事、素晴らしいです!」

モッフル「ふも! まったくもって同意見ふも!」

モッフル「大歓迎するふも!」

映子「ありがとうございます」 ニコッ

いすず「……それでは後日、出勤日のシフト表等を郵送しますので(棒)」

映子「わかりました。 よろしく お願いします」


鳴上「ふう……」

モッフル「いい人材が入ってくれたふも」 キラキラ☆

いすず「それでは次の方、どうぞー(棒)」

     スチャ…(着席)

???「初めまして。 私、伴藤美衣乃(ばんどうびいの)といいます」

美衣乃「よろしく お願いします」

鳴上「はい、よろしく」

鳴上「……ん?」

     ポタ… ポタ… ポタ…

鳴上「……美衣乃さん。 その、お腹から血が出ていませんか?」

モッフル「……よく見るとドアの方向にも点々と滴り落ちたモノが」

美衣乃「だ、大丈夫です……それよりも面接を」


モッフル「手で押さえてて この出血……」

モッフル「刺突によるものとすると、ざっと1リットルは流れているふもね」

鳴上「面接どころではないな」

いすず「冷静に分析していないで、すぐに救急車を!」

美衣乃「本当に、大丈夫ですから……こんなの」

美衣乃「いつも兄にバイトの面接を邪魔されて、こんな怪我、日常茶飯事なんです」

モッフル「さらっと恐ろしい日常風景を吐露したふも……」

     ババンッ!

超有名蜘蛛男コスプレ男「許せるッ! ス○イ○ーマッ!」

美衣乃「お兄ちゃんッ!」

鳴上「……ペルソナ」 イシス!



―――――――――――


超有名蜘蛛男コスプレ男「」

モッフル「……こいつどうするふも」

鳴上「警察に突き出すしかないと思うが」

美衣乃「……それでいいです」

美衣乃「お兄ちゃんも頭を冷やす時間が要るでしょうし……」

いすず「妥当なところね」

美衣乃「それよりも……私の怪我も治しちゃうし、あなたはもしかして」

美衣乃「東方仗s」

鳴上「違うし、パクリではないし、それ以上言ってもいけない」

いすず「いろいろとグレートね」

モッフル「いすずも飛ばすなふも」


鳴上「ともかく、採用します」

いすず「過酷な状況にも関わらず、へこたれない精神は評価に値するわ」

美衣乃「あ、ありがとうございます!」

モッフル「……僕はちょっと心配ふも」

いすず「それでは後日、出勤日のシフト表等を郵送しますので」

美衣乃「はい!」

いすず「それでは……次で最後みたいね」

いすず「どうぞ」

     スチャ…(着席)

??「は、ははは初めましゅて! 中条椎菜(ちゅうじょうしいな)と、も、申しましゅ!」


鳴上「初々しいな」

モッフル「カミカミふも……」

いすず「中条さん、緊張はわかりますが落ち着いて」

椎菜「は、はひっ!」

モッフル「……こりゃ接客業は難しいふもね」

いすず「その制服……もしかして甘城高校の?」

椎菜「は、はいっ! 一年生ですっ!」

鳴上「志望動機を言っていただけますか?」

椎菜「は、はいっ」

椎菜「わ、私、このあがり症を克服したくてっ」

椎菜「が、頑張ろうと思って、ここに応募しましゅたっ!」

3人「…………」

モッフル「……という事は接客志望ふもか」

モッフル「どうするふも?」


いすず「仕事には慣れてもらえばいいし」

いすず「それに女性キャストは貴重よ」

モッフル「あー……確かに採用者、半分以上男ふもね」

鳴上「それでは、採用で構わないか?」

モッフル「まあいいんじゃね?」

モッフル「もう今までが濃ゆい連中だったから、どうでもよくなったふも……」

鳴上「では中条椎菜さん。 採用します」 ニコッ

椎菜「!!」///

椎菜「は、はいっ! あ、ありがとうごじゃいますっ!」///

いすず「それでは後日、出勤日のシフト表等を郵送するから」

椎菜「わ、わかりましたっ!」



―――――――――――


夕方

パーク関係者出入り口付近


直斗「……ふう」

クマ「ナオト、お疲れクマ!」

直斗「クマくん。 お疲れ様」

クマ「何をしてるクマ?」

直斗「え……い、いえ、特に何か、という訳じゃ……」///

直斗(鳴上先輩を待っている、何て、とてもじゃないけど言えない……)///

クマ「クマは~これから、シルちゃんを逆ナンするクマ!」

直斗「え? 逆ナン?」

クマ「そうクマ!」


クマ「あ! シルちゃん、来たクマ!」

クマ「おおーい、シルちゃーん!」

直斗「ふふ、クマくんは元気で……」

直斗「」


鳴上「……な、なあ、みんな」

鳴上「ちょっと近すぎじゃないか?」

ミュース「え? そうですか?」

コボリー「これくらいフツーですよ」

サーラマ「そーそー。 フツー」

シルフィー「ノープロブレムッ!」

いすず「歩きにくいと言ってるのよ、鳴上くんは」 ゴゴゴ…


クマ「ウッホホーイ! センセ~イ!」

鳴上「クマ」

クマ「クマもみんなと帰りたいクマ!」

ミュース「いいですよ」 クスッ

サーラマ「あたしもー」

コボリー「金髪ぽよよん男子と鳴上さん……アリですねっ」///

シルフィー「うむっ! 来るがよいっ!」

クマ「シルちゃん大好きクマ~♪」

     アハハ…

直斗「」

直斗「……はっ!?」

直斗「せ、先輩! ぼ、僕も一緒に!」

直斗(というか! どうしてこんな事に!?)



―――――――――――




八十稲羽 陽介の部屋


花村「ふ~。 ああーいい風呂だった♪」

花村「そして……んぐっんぐっんぐっ」

花村「プハー!!」

花村「うめぇ! やっぱ風呂上がりのラムネは最高だな!」

花村「……ん?」

花村「お、クマからメールが届いてるじゃねーか!」

花村「ったく、向こうに行ってから全然連絡よこさねーで、何やって……」


花村「」

花村(……え?)

花村(何だこの画像付きメールの量? ずいぶんあるな……)

花村(つーかクマの奴、こんな事できたのかよ……)

花村(…………) ピッピッピッ

花村「」

花村(この大量の女の子画像は……!?)

花村(しかもどの娘もみんな超可愛い!? ハズレが居ねえ!!)

花村(…………)

花村(…………) ピッピッピッ


花村(ヨースケ元気クマ? クマは元気クマ!)

花村(甘ブリは女の子がいっぱい働いてて、天国クマ……)

花村(センセイには秘書のイっちゃんが付いてて……)

花村(…………) ピッピッピッ

花村「」

花村「何この巨乳美少女……」

花村「…………」

花村「……悠の奴」

花村「羨ましすぎんだろ!?」

花村「おまけに秘書!?」

花村「超・妄想しちゃうんですけど!?」

花村「…………」 ワナワナワナッ…!

花村「ちっきしょー!! なんで悠ばっかり!!」

花村「早く夏休みになれ―――――――――――!!」





     パーク閉園期限まで

      あと残り 59 日



     必要来園者数

       239168 人






―――――――――――

―――――――――――


鳴上「追求」

いすず「考察」


鳴上・いすず「二次創作ー」


     パチパチパチ


いすず「…………」

鳴上「……何か言ってくれ」

いすず「まったく……少し褒めると、すぐこの体たらくよ」

鳴上「前回、バイト募集が無いのは何かの伏線かと思ったが」

鳴上「単に入りきらなかっただけの様だな……」

いすず「>>1に期待した私が馬鹿だったわ」


鳴上「まあいいじゃないか」

鳴上「アニメの甘ブリでは絶対に出来ないであろう、バイトのキャスティングだし」

いすず「まあ確かに二次創作の醍醐味と言えるかもしれないけど」

いすず「本当にグレーな世界ね」

鳴上「俺は楽しいと思うが……」

いすず「話のつまらなさを補う為にやる愚策としか思えないのだけど?」

いすず「それにしてもこの>>1は、中の人ネタが好きみたいね」

鳴上「これも普通のアニメでは絶対に出来ないからな」

いすず「やりすぎると、せっかく前回でレスしてくれた人達も逃げると思うわ」

鳴上「……>>1の心をへし折るのは、もうその辺でいいだろう」

鳴上「さて、本編では>>1も活躍させたいと言っていた」

鳴上「エレメンタリオの面々が随分と顔を出していたな」


いすず「盛大に無理矢理な感じがしたけど」

鳴上「どうしていすずは>>1の後頭部を殴りつけるような言い方をするんだ?」

いすず「事実は事実でしょう?」

鳴上「……読者の皆さんは、可愛いミュース達を楽しんでくれたなら」

鳴上「>>1は喜んでくれると思う」

いすず「安易にレスを募るのはやめた方がいいと思うわ」

鳴上「そんな意図はない」

いすず「そうなの? エレメンタリオの面々にモテて嬉しいから」

いすず「鳴上くんは>>1を擁護しているんじゃないの?」

鳴上「……まったく無いといえば嘘になるが、そんなk」

いすず「菜々子ちゃんに伝えておくわ」

鳴上「絶対にやめてくれ!!」

というところで今日はここまでです。
一応週間ペースを守りたいのですが、やっぱり難しいですねぇ……
次回、出来るだけ早くお届けできるよう、頑張ります。
では。



―――――――――――


平日の午後

占いの館 長鼻


イゴール「…………」

イゴール「む? これはこれは、失礼をいたしました」

イゴール「ようこそ、占いの館・長鼻へ……」

イゴール「わたくしは当アトラクションの主、イゴールと申します」

イゴール「以後、お見知りおきを……」

イゴール「…………」

イゴール「ふふふ……結構」

イゴール「して、お客様は、どの様な内容の占いをお望みなのですかな?」

イゴール「…………」

イゴール「……ほう」


イゴール「…………」

イゴール「なるほど」

イゴール「他人から見れば些細な事……確かにおっしゃる通りでございましょう」

イゴール「しかし……」

イゴール「どの様な悩みも等しく、道しるべが欲しくなるのは道理」

イゴール「お気になさる必要はございません」

イゴール「わたくし共は、お客様が対価を支払ってくだされるのであれば」

イゴール「ささやかながら、その疑問に対する道しるべをお教えしましょう」

イゴール「それでは……」

イゴール「この先の部屋へとお進みください」

イゴール「助手のマーガレットが、お客様の要望にお答えします」


イゴール「む……?」

イゴール「…………」

イゴール「ふふふ……確かにそうでございますな」

イゴール「わたくしが占ってもよろしいのですが」

イゴール「この様な老いぼれよりも、若く、美人な女性に占ってもらった方が」

イゴール「非常に受けが良いのでございまする」

イゴール「…………」

イゴール「ふふふ……疑問は解けましたかな?」

イゴール「それではごゆるりと……ああ、そうそう。 ひとつだけ注意をしておきます」

イゴール「くれぐれもマーガレットにやましい感情は抱かぬ様、お願いいたします」

イゴール「どの様な悲惨な結果になっても、わたくしは責任を持てませぬので」

イゴール「よろしいですかな? ふふふ……」

イゴール「それでは、行ってらっしゃいませ」



―――――――――――


執務室


鳴上「…………」

鳴上(……ようやっと動員数がいい伸びを見せてきた)

鳴上(赤竜帝ルブルムの試練場に イゴール達の占いの館と)

鳴上(思いがけず新アトラクションを2つも開けたのは大きいな)

鳴上(パーク開園30周年記念企画、第二弾として)

鳴上(とりあえず、という形になってしまったが、ゲストの期待を裏切らずに済んだみたいだ)

鳴上(……だが動員数が増えた事で)

鳴上(園内のアトラクションは忙しくなり、宣伝でマスコットキャラを使いにくくなってきた)

鳴上(また、夏に向けてプール系施設の準備もしなくてはならない)

鳴上(そして……)



テレビ『続いてお天気情報です』

テレビ『現在、九州の西にある梅雨前線は、明日から明後日にかけて』

テレビ『西日本に雨をもたらす見込みで……』


鳴上(…………)

鳴上(天気だけは、どうする事もできない)

鳴上(休日が雨になると、とんでもないダメージだ)

鳴上(何とか雨でも動員数を稼げる、いい方法はないだろうか……)

鳴上(…………)



―――――――――――




鳴上の部屋


鳴上「…………」 ピッ

     ルルル… ルルル… ガチャ

鳴上「もしもし、陽介か?」

鳴上「また聞きたい事があr」

花村『悠! お前なんで黙ってたんだよ!?』

鳴上「……は?」

花村『は? じゃねーよ!』


花村『クマからのメールに画像が付いててな』

花村『悠! お前、めちゃくちゃ女の子に囲まれているじゃねーか!』

花村『羨ましい!!』

鳴上「あー……」

花村『おまけに巨乳美少女の専属秘書まで居るし!』

花村『ちょっとイケナイ妄想までしちまったじゃねーか!!』

鳴上「…………」

花村『やったのか!? もう2段飛ばしで階段登っちまったのか!?』

鳴上「落ち着け、陽介」

花村『落ち着いてられるか!』

鳴上「……陽介がこっちに来た時、紹介するから」 ハア…

花村『!!』


鳴上「とにかく落ち着け」

花村『…………』

鳴上「落ち着いてくれたか?」

花村『……絶対だからな』

鳴上「ん?」

花村『絶っっっ対っに!紹介してくれよな!?』

鳴上「わかっている。 約束は必ず守る」

花村『おっしゃ―――――――――――!!』

鳴上「……落ち着け、陽介」 ハア…


花村『で? いったい何の用だ?』

鳴上「ああ、それなんだが……」

―――――――――――

花村『なるほど……雨の日対策ね』

鳴上「何かいい手はないだろうか?」

花村『親父も梅雨時は いい顔しねーしなぁ……』

花村『分かった、とにかく親父に聞いてみる』

鳴上「頼む」

鳴上「それから……あるアイテムを大量に買っておいて欲しい」

花村『あるアイテム?』

鳴上「リボンシトロンとか、精神力が回復するアイテムだ」

鳴上「それと角氷……四六商店にある、壊れかけたガチャガチャで時たま手に入るんだが」

鳴上「これらを出来るだけ大量に手に入れておいて欲しい」

鳴上「お金はとりあえず10万円ほど陽介宛で送っておいたから」

鳴上「それを使ってくれ」


花村『おいおい……穏やかじゃないな』

花村『【シャドウ】が現実にも出たって言ってたけど』

花村『雑魚も現れているのか?』

鳴上「いや、まったく別の目的で使うかも知れないんだ」

鳴上「使わないで済めば、ありがたいんだがな……」

花村『ふ~ん……まあよくわかんねーけど、わかったぜ!』

花村『雨の日対策は、明日にでも聞いておくからな』

鳴上「手間をかけるな」

花村『いいって事よ。 けど……』

鳴上「けど?」


花村『紹介の事は、絶っっっ対! 忘れんなよ!?』

鳴上「……わかっている。 任せてくれ」

花村『よし!』

花村『それじゃ、またな!』

     ブッ… ツーツー

鳴上「…………」

鳴上「……まあ」

鳴上「マスケット銃を突きつけられれば、嫌でも夢から覚めるだろう」

鳴上「…………」

鳴上「陽介は相変わらずだな」 クスッ



―――――――――――


数日後の午前中

会議室


鳴上「今日の議題は、雨の日に行うサービスについてだ」


一同「…………」


鳴上「もっと早く考えるべきだったのだが、つい忙しくてな」

モッフル「確かに大問題ふも……で? どんな事を思いついたふも?」

鳴上「どこまで集客につながるかは、未知数だが……」

鳴上「真っ先に思いついたのは、入場料、アトラクション使用料の割引だ」


モッフル「……ふも。 まあ、誰でも考えるところふも」

モッフル「しかし……たぶん経理部は、いい顔しないふもね」

アーシェ「……否定しませんが、割引の度合いにもよります」

鳴上「正直なところを言えば、入場料だけでも無料とかにしたいが……」

鳴上「現在のところ、事実上不可能だ」

いすず「……?」

いすず(『現在』……の?)

鳴上「そこで、だ」

鳴上「屋内アトラクション及び、フードサービスの皆に」

鳴上「雨の日限定の『何らかのサービス』を考えてもらいたい」


一同「!」


未来くん「新しいサービス……?」


鳴上「ああ」

鳴上「例えば……ある大衆食堂では」

鳴上「雨の日限定で超大盛り丼を提供していた」


一同「!!」


ミュース「……なるほど」

ミュース「つまり、雨の日でないと見られない『特別な何か』を」

ミュース「考えればいいんですね?」

鳴上「その通りだ」

ミュース「そういう事なら、さっそく私たちは雨の日のみに行う演目を考えてみます!」

鳴上「期待している」

ミュース「はいっ」///


モッフル「ふむ……これは僕達キャストに課せられた宿題ふもね」

モッフル「言いたい事は良く分かったふも」

未来くん「……でも難しいね」

未来くん「僕のアトラクションじゃ、なかなか新しいサービスは思いつけないよ……」

マーちゃん「こちらと連携してみては どうでしょう?」

マーちゃん「小さな物ですけど、マスコット人形を閲覧者にプレゼントするとか」

アーシェ「いえ、それだと経費が心配ですので」

アーシェ「支配人代行の行っていたクイズの様に」

アーシェ「何らかのゲームを雨の日限定で……」

     ガヤ ガヤ ガヤ…

いすず「…………」

いすず(……みんな、いい雰囲気で議論しているわ) クスッ



―――――――――――




執務室


いすず「……ふう」

鳴上「お疲れ様、いすず」

いすず「ううん……鳴上くんの方こそ」

いすず「…………」

いすず「そういえば、さっきの会議」

鳴上「ん?」

いすず「『現在のところ』、と言ってたけど……」

いすず「将来的には入園無料にできる、という意味なのかしら?」

鳴上「!」


鳴上「…………」

鳴上「……そうだな」

鳴上「いすずには話しておこう」

いすず「え?」

―――――――――――

いすず「」

いすず「第二パークエリアの土地を……売却!?」

鳴上「ああ……」

いすず「そんな……! あの土地は、このパークと同じくらいの敷地面積なのよ!?」

いすず「それを売ってしまうなんて!!」


鳴上「ラティファの許可は得ている」

いすず「!!」

鳴上「…………」

いすず「…………」

いすず「……そう」

鳴上「俺の考えとしては、できるだけ早く入園料無料として」

鳴上「動員数を稼ぎたいところなんだが……」

鳴上「後ろ盾が無いと、どうしても資金繰りに息詰まる」

いすず「…………」

鳴上「昔から言う『タダほど怖いものはない』というものが」

鳴上「どれほど的を射ているのか、実感している状況だ」

いすず「…………」


鳴上「だが、時間的余裕が無いから……」

鳴上「売却がまだでも7月に入り次第、パーク開園30周年記念企画最終弾として」

鳴上「実施するつもりだ」

いすず「…………」

いすず「……という事は」

いすず「まだ買い手が付いていない、という事なの?」

鳴上「……ああ」

鳴上「正直、難航している」

鳴上「甘ブリのすぐ隣の土地でもあるし……下手な不動産業者に売る事もできない」

鳴上「ラブホやパ○ンコ店なんかを建設されては、たまったものではないからな」

いすず「……その通りね」


いすず「それで、他にこの売却話を知っている人は居るのかしら?」

鳴上「いや……今のところ俺とラティファ以外では、いすずだけだ」

いすず「そう……確かに公開しにくい内容だものね」

鳴上「いつまでも隠していい事ではないがな……」

いすず「…………」

鳴上「…………」

鳴上「そろそろお昼だが、いすずはどうするんだ?」

いすず「!? いきなりね……」

鳴上「ハラが減っては戦はできぬ、と言うからな」

いすず「特に何も考えていなかったから、適当に済ませるつもりだけど……」

鳴上「なら、一緒に食べないか?」

いすず「!」

鳴上「嫌なら別に……」


いすず「い、嫌ではないわっ」///

鳴上「良かった」 クスッ

鳴上「どこで食べる?」

いすず「え? ……う~ん」

いすず(社員食堂……が無難だけど)

いすず(できれば、もう少し落ち着いた雰囲気の場所が……)///

いすず(…………)

いすず(くっ……思いつかない)

いすず「……社員食堂で」

鳴上「行こう」 クスッ



―――――――――――


宵の口

メープル城 空中庭園


ラティファ「いすずさん、ようこそいらっしゃいました」 ニコッ

いすず「失礼します、ラティファ様」

いすず「夜分にすみません。 たまにはケーキでも、と思って持参いたしました」

ラティファ「あら、お気遣いありがとうございます」

ラティファ「今、紅茶を入れますね」

―――――――――――

いすず「……ふう」


ラティファ「いすずさん。 このケーキ、とても美味しいです」

いすず「恐縮です」

いすず「お加減に変わりは無いでしょうか?」

ラティファ「ええ、大丈夫ですよ?」

いすず「そうですか……」

ラティファ「……?」

ラティファ「どうしました? いすずさん」

いすず「…………」

いすず「……実は」

いすず「第二パークエリアの土地の事……今日、鳴上くんに聞かされました」

ラティファ「ああ……その事でしたか」

いすず「ラティファ様の心中を考えると、さぞ、お辛いだろうと思いまして……」


ラティファ「…………」

ラティファ「そうですね……辛くないと言えば、それは嘘に……」

ラティファ「…………」

ラティファ「……いいえ」

ラティファ「本音を言えば、ものすごく辛いです……」

いすず「ラティファ様……」

ラティファ「でも……それは『甘え』です」

ラティファ「私は、このパークの支配人として、メープルランド第一王女として」

ラティファ「まだまだ覚悟が足りていなかったのです」

いすず「…………」

ラティファ「ですから、そんな顔をしないでください、いすずさん」


いすず「しかし……」

ラティファ「鳴上様も……私に話す時、とてもお辛そうでした」

いすず「!」

ラティファ「きっと……鳴上様もよくよく考えての事だったのだと思います」

ラティファ「彼は本来、私達と何の関わり合いもないのに」

ラティファ「心を痛めてまで、方策を考えてくださったのです」

いすず「…………」

いすず「……ええ。 その通りでしょう」

ラティファ「ふふ。 ですから、もうその様なお顔はなさらないでください」

いすず「心得ました、ラティファ様」

いすず「ただ……」

ラティファ「……いすずさん」

ラティファ「あの事は……鳴上様に知らせないで欲しいのです」


いすず「ラティファ様……」

ラティファ「少なくとも今は……もう余計な心配を掛けさせたくありませんから」

いすず「…………」

いすず「……わかりました」

ラティファ「お願いしますね、いすずさん」 クスッ

ラティファ「そうそう、例の……ベルベットの……イゴールさん?のアトラクション」

ラティファ「とても評判がいいと聞いています」

いすず「はい。 あやしい雰囲気がいい意味で占いの臨場感を出していると人気です」

ラティファ「私も一度占って欲しいですね」

いすず「そ、それは……モッフル卿が……その……」

ラティファ「うふふ、わかっていますよ」


ラティファ「でも今度、伯父様におねだりしてみるつもりです」

いすず「そ、そうですね。 それがいいかと思います」

ラティファ「ルブルムさん達のアトラクションも評判がいい様ですが」

ラティファ「何か問題があったそうですね?」

いすず「聞いたところでは」

いすず「ゲームオーバーになったゲストが牢屋に入れられるのですが……」

いすず「あまりにも至れり尽くせりの歓待を受けるので」

いすず「なかなか帰りたがらないそうなのです」

ラティファ「まあ……それは困りますね」 クスッ

いすず「はい」

いすず「ぞんざいに扱え、とも言えませんし……」

     アハハ…



―――――――――――


翌日の朝

甘城高校 いすずの教室


いすず「」

いすず「あなた……いったい何をしているの?」

直斗「え? ……ああ、いすずさん」

直斗「何、と言われても……先週この学校に転校してk」

いすず「そこじゃないわ」

いすず「あなた……なぜ女装しているの!?」


     ザワッ…

直斗「……あの、誤解がある様ですけど」

直斗「僕は、女なんです……」///

いすず「」

いすず「え?」

直斗「いろいろありまして……普段は男性みたいな格好をしていますが」

直斗「少しずつでも、女性の服装に慣らしていくつもりでして……」

いすず「……意味が分からないのだけど」

     モミッ

直斗「っ!」///

直斗「な、何をするんですか!?」///

いすず「この感触……作り物じゃないみたいね」

直斗「公衆の面前で確かめようとしないでください!」///


いすず「…………」

直斗「…………」///

直斗「……まだ何か?」///

いすず「いいえ」

いすず「少し安心しただけよ」

直斗「安心?」

いすず(鳴上くんは、ホ○じゃ無かったのね……) ホッ…

直斗「……?」

いすず「ともかく、同じクラスだとは知らなかったわ」

直斗「……僕もいすずさんの新たな一面を知る事が出来ましたよ」

いすず「よろしく」 ゴゴゴ…

直斗「よろしく」 ゴゴゴ…

     フフフフフフフフ……

クラスメイト(……なにこの雰囲気)



―――――――――――


翌日の午前中

執務室


トリケン「支配人代行」

鳴上「どうした?」

トリケン「それが……ポスターを貼らせていただいているお店の一つから」

トリケン「クレームを頂いておりまして……」

鳴上「クレーム? ……どんな内容だ?」

トリケン「はい。 そのお店がおっしゃるには」


トリケン「エレメンタリオ近くにある案内板付近ではなく」

トリケン「中央広場にある案内板付近の掲示板にポスターを貼れと……」

鳴上「クイズのイベントでゲストを周回させている事は伝えたのか?」

トリケン「はい。 ちゃんとご説明したのですが……」

鳴上「ふむ……」

鳴上「…………」

鳴上「トリケン。 その店にある甘ブリのポスターは、どこに貼ってある?」

トリケン「は? ……少々お待ち下さい」

鳴上「…………」

トリケン「お待たせしました……ええと、店の中央奥の壁ですね」

鳴上「なら……こちらもドア付近に移動させて欲しいと要望してみよう」

トリケン「え? しかし……それでは反感を買いませんか?」

鳴上「このポスター契約はギブ・アンド・テイク方式だ」


鳴上「向こうが場所を指定してくるのなら、こちらも同じ様にできないとおかしい」

鳴上「どちらが上でも下でもない。 そう思ってもらわないと困るからな」

トリケン「はあ……ですが、本当によろしいのでしょうか?」

鳴上「おそらくだが……これはこちらの出方を探っているのだと思う」

鳴上「ここではいはい、と要望に応えるのは簡単だが」

鳴上「同時に『文句を言えば従う』と思わせてしまう可能性がある」

トリケン「……失礼ですが、そこまで警戒する必要があるのですか?」

鳴上「ある」

鳴上「双方が場を提供するという契約を交わしているのに」

鳴上「『客』であるかの様な振る舞いでクレームをつけている」

鳴上「はっきり言ってフェアなやり方じゃない」

トリケン「…………」


トリケン「わかりました」

トリケン「このトリケンには少々理解しかねる内容ですが」

トリケン「支配人代行のおっしゃる通りに処理致します」

鳴上「頼む」

トリケン「それでは失礼いたします」

     ……パタン

鳴上「ふう……」

鳴上(……とは言うものの)

鳴上(これでいいのかどうか、難しいな……)

鳴上(…………)

鳴上(いかん、弱気になるな)

鳴上(もっとしっかりしないと……)


     ババンッ!

いすず「鳴上くん! 大変よ!」

鳴上「!?」

鳴上「どうした、いすず?」

いすず「中央広場でモッフル卿が……!」


―――――――――――


     ガスッ! ガスッ!

モッフル「……っ」

親父DQN「ったく、ふざけたマスコットだなぁ!」

親父DQN「よくもウチの子供に手を出してくれたのぉ……オラァッ!!」

     ドゴォッ!

モッフル「ぐっ……!」


ガキDQN「いいぞいいぞ、とーちゃん! もっとやってぇ!」

母親DQN「まったく……最近リニューアルして良くなったと聞いてきたのに」

母親DQN「飛んだペテンね!」


鳴上「…………」

鳴上「いすず、何があった?」

いすず「どうも……あの子供がふざけてワニPを蹴りまくってたらしいの」

いすず「それをモッフル卿が止めようとして……」

鳴上「……ともかく、止めさせないと!」

いすず「ええ!」

     タッ タッ タッ…


鳴上「お客様!」

親父DQN「ああん?」

鳴上「それ以上はお止めください」

親父DQN「何だぁ……お前は?」

鳴上「支配人代行をやっている鳴上と申します」

親父DQN「ほう……という事は、お前が責任者か」

鳴上「はい」

鳴上「まずは事情をお聞かせください」

親父DQN「事情? は! そこのボンクラマスコットが」

親父DQN「ウチの大事な大事な一人息子を突き飛ばしやがったんだ!」

モッフル「違うふも……止める様、抑えただけふも……」

鳴上「……モッフルはこう言ってますが?」


親父DQN「ああん? てめえ……ウチの子供が嘘ついてるって言いたいのか?」

鳴上「それよりも一方的にここまでモッフルに暴行を加えたのは」

鳴上「明らかに過剰防衛です」

親父DQN「やかましいっ!」

親父DQN「何にしても先に手を出して、ウチの子供に怪我をさせたのは」

親父DQN「そこのパクリマスコットの方だろーが!」

いすず「あ」

     ブチンッ

モッフル「……お前、今なんて言ったふも」

鳴上「モッフル?」

いすず「言うのを忘れていたけど……モッフル卿は『パクリ』と言われると」

いすず「即ギレしてしまうの」


鳴上「落ち着け、モッフル!」

モッフル「こっちが手を出せないのをいい事に、よくも好き勝手やってくれたふも……」

モッフル「もう許さないふも……!」

鳴上「落ち着くんだ、モッフル!」

いすず「モッフル卿!」

親父DQN「おっ……なんだこのパクリ。 やる気か?」

親父DQN「上等だコラァ!」


ゲスト1「止めろよ、このチンピラ!」


親父DQN「なっ!?」

ゲスト2「そうだそうだ、モッフルが可哀想だぞ!」

ゲスト3「元々はお前の子供がワニPを蹴っていたのが原因じゃないか!」



ルル(……ふふふ。 どうだ我がギアスの力)

ルル(周囲の一般人に指摘されるのは、かなり心外だろう)

ルル(そのまま意気消沈して立ち去るがいい!)


ガキDQN「ち、違わい!」

親父DQN「んだと、てめえら?」

親父DQN「お前らも殴られたいのか!? ああん!?」


ルル(しまったああああっ!! あいつ逆ギレしたあああああっ!!)

ルル(まずい! このままではゲストに被害が及んでしまう!!)


鳴上「と、ともかく、みなさん落ち着いてください!」

いすず「お話は、あちらでお聞きしm」



     ……シン ズシン ズシン ズシンッ


親父DQN「な、なんだ? この振動は……」



     バァァァァァァァァァンッ…



親父DQN「」

ガキDQN「」

母親DQN「」

ラオウ「……うぬら、ここで何をしておる?」

親父DQN「!!」

親父DQN「お、脅かすんじゃ、ねえ!」


親父DQN「て、てめ……い、いや。 あ、あんたも、ここの従業員だろうが!」

ラオウ「いかにも」

親父DQN「な、なら……」

ラオウ「だが」

親父DQN「へ?」

ラオウ「このパークから出れば、このラオウとてただの人……」

ラオウ「その行動は、支配人代行や天ですら預かり知らぬ事ッ!」

親父DQN「」

ラオウ「うぬは……その覚悟があって、この狼藉を働いたのか?」 ギロッ…

DQN一家(ひ、ひいいいいいいいっ!!)

ガキDQN「と、とーちゃん! も、もう帰ろうよっ」

親父DQN「お、お前も黙ってろ!」


ヤン「あ、支配人代行さん」

鳴上「え……あなたは、ヤンさん」

ヤン「お言いつけ通り、監視カメラ映像をお持ちしました」

ヤン「これがあれば どちらが正しいのか、立派な証拠になると思います」

親父DQN「!!」

親父(そ、そんな……監視カメラなんてどこに!?)

ヤン「警察もお呼びしましょうか?」

親父DQN「くっ……!」

親父DQN「か、帰るぞっ! お前ら!」

ガキDQN「ま、待ってよ、とーちゃん!!」

母親DQN「こ、こんなところ、もう二度と来てやらないんだからっ!」

     ソソクサ……


いすず「……どうやら、何とかなったみたいね」

鳴上「……ああ」

鳴上「しかし、監視カメラ映像なんて よく都合よくありましたね?」

ヤン「はは……ただのフェイクですよ」

ヤン「これで引き下がらなくても警察を呼ぶとまで言えば、さすがに暴れにくいでしょうし」

ヤン「それにこれだけ周囲の目がある中、ラオウさんで冷静になった頭なら」

ヤン「そうそう無茶もできません」

鳴上「……なるほど」

ラオウ「ヤンに案内された時は、わけが分からなかったが」

ラオウ「その様な意図があったとはな……このラオウ、見事に利用されたわ」

ヤン「すみません。 でも助かりました」

鳴上「俺からも礼も言います」


ラオウ「うむ。 このラオウ、いささかでも役に立てたのなら嬉しく思う」

ラオウ「では……仕事に戻る」

ヤン「私も戻ります」

いすず「ありがとう。 助かったわ」

鳴上「モッフル、大丈夫か?」

鳴上「今、医務室に連れて行ってやるからな」

モッフル「大丈夫ふも……こんな事ぐらいで……うっ」

鳴上「無理をするな、モッフル」

鳴上「医務室なら人の目もない。 ペルソナが使える」

モッフル「……なるほど。 そういう事なら医務室に行くふも」

鳴上「いすず、そっちの肩を持ってくれ」

いすず「わかったわ」


ルル(…………)

ルル(あれ? 俺、役に立ってない?)


医務室


鳴上「どうだ? モッフル?」

モッフル「……ん。 もう痛くないふも」

鳴上「そうか……良かった」

モッフル「……世話になったふもね」

モッフル「礼を言っておくふも」

鳴上「気にするな」

いすず「……それにしても」

いすず「今後、ゲストが増加するにつれて」

いすず「ああいった出来事に出くわす機会が増えるという事でもあるわ」

鳴上「……考えたくないが、懸念はあるな」


モッフル「対応マニュアルが必要ふもね……」

モッフル「いちいち小僧が出張る様では、今後の業務に差し支えるふも」

いすず「それなら、私が対応マニュアルを作成するわ」

鳴上「いすずが?」

いすず「……不満なの?」

鳴上「……ひとつだけ注文をつけさせて欲しい」

鳴上「普通の人間を基準にする事。 これだ」

鳴上(マスケット銃で狙撃、とか書きそうだし……)

いすず「言われなくても分かっているわ」

鳴上「ともかく、やってくれるのはありがたい」

いすず「任せて」

モッフル「じゃ……僕は仕事に戻るふも」



―――――――――――




鳴上の部屋


鳴上「――という事があってな」

陽介『あー……ウチの親父もそういう客は困るって、言ってたなぁ』

鳴上「ジュネスでは、どう対処しているんだ?」

陽介『詳しくは知らねーけど……』

陽介『そういうクレーム処理専門の部署があるって聞いた事がある』

鳴上「専門部署か……」


陽介『甘ブリには無いのか?』

鳴上「ああ……」

鳴上「今、慌てて対応マニュアルを作っているところだ」

陽介『客が増えたら増えたで、次々と問題が起こるな……』

鳴上「正直、完全に想定外だ」

陽介『こういう連中は逆恨みとかしそうだし』

陽介『マジに厄介だな……』

鳴上「まともなクレームなら大歓迎なんだがな……」

鳴上「サービスを悪用したり、逆手にとったりして」

鳴上「とにかく、とことん己の利潤を追求しようとする人間も居たりするしな……」

陽介『……ま、くよくよ考えても仕方ねぇさ』

陽介『その辺も親父に聞いてみるわ』

鳴上「いつもすまないな、陽介」


陽介『いいって事よ』

陽介『そういやクマはともかく、直斗は元気か?』

陽介『一応知らせはあるんだが、業務連絡、というか』

陽介『報告書みたいなメールで、味気ねーんだよ』

鳴上「もちろん元気だ」

鳴上「アルバイトとして頑張ってくれている」

陽介『…………』

陽介《そういう意味じゃねーんだけどなぁ》

陽介《あれだけ可愛い女の子に囲まれている悠を見て》

陽介《直斗は気が気じゃないだろうなぁ……と》

陽介《俺は思うんだけど……》


陽介『……まあ元気でやってるのなら、それでいいんだけど』

鳴上「?」

陽介『いやー何? 完二の奴も気にしててな』

陽介『いろいろ聞いてくるんだわ』

鳴上「そうなのか……」

陽介『……予想してた反応だけど』

陽介『お前も里中や天城にメールの一つくらい出してやれよ?』

陽介『はっきり言わなかったけど、結構気にしている感じだったぞ』

鳴上「それは……悪い事をしたな」

鳴上「この後、すぐに出しておく」

陽介『ああ、きっと喜ぶと思うぜ』

陽介『じゃ、またな。 悠!』

鳴上「ああ、またな。 陽介」



―――――――――――


天城屋 雪子の部屋


     ピピロピン♪

雪子「ん? ……メール?」

雪子「!」

雪子「鳴上くんからだ……!」 ピッ


     Re:鳴上くん

     天城、長い間連絡しなくてごめん。

     いろいろと忙しくて暇がなくて……でも君の事、忘れた事は無かった。

     俺は元気で過ごしています。 良かったらこっちに遊びに来てください。

     歓迎します。


雪子「鳴上くん……私も忘れた事ないよっ」///


里中の部屋


     Re:鳴上くん

     里中、しばらくぶり。 元気か?

     ここのところ忙しくて、メールするのも忘れてしまうほどだった。

     すまない。

     俺は元気にやっています。 時々里中が居てくれたらな……

     と考える時があったりします。

     良かったらこっちに遊びに来てください。

     歓迎します。


里中「鳴上くん……」///

里中「あ、あたしが居てくれたら……って」///


りせの部屋


     Re:悠先輩

     りせ、久しぶり。 なかなか連絡しなくてごめん。

     りせの復帰コンサート、忙しくなっていると陽介に聞いててな。

     邪魔しちゃ悪いと思って。

     俺も今、忙しいけど元気です。 落ち着いたら話したい事がたくさんあります。

     難しいかもしれないけど、良かったらこっちに遊びに来てください。

     歓迎します。


りせ「悠先輩……気を使わなくてもいいのに」///

りせ「それに話したい事って、もしかして……」///


完二の部屋


     Re:鳴上先輩

     完二、元気か? 長い事連絡しなくて悪かった。

     直斗の事、心配してるそうだな。 大丈夫だ。 俺もクマも居る。

     それでも安心できないのなら……良かったらこっちに来てくれ。

     歓迎する。

     きっと直斗も喜ぶだろう。


完二「鳴上先輩……俺、嬉しいっス」

完二(直斗……喜んでくれる、か……)

完二(…………)///



―――――――――――


翌日の午前中

甘ブリ正面ゲート付近


親父DQN「…………」

ガキDQN「…………」

母親DQN「…………」

ガキDQN「……とーちゃん、何で僕達ここにいるの?」

親父DQN「……知るか」

親父DQN「何でか知らないけど、ここに来ようと思ったんだよ」

母親DQN「本当に……何でかしら」


ルル(くくく……)


―――――――――――
回想
―――――――――――

親父DQN「ったく……」

ルル「あの……お客様」

母親DQN「何よ?」

ルル「ははは……大した事では無いのですが」

ルル「少しの間、こちらを見てもらえますか? そちらのお坊ちゃんも一緒に」

ガキDQN「はー??」



     我  に  従  え !!



DQN一家「」


ルル「いいか、お前たち」

ルル「お前たちはこれより一年間、毎週一度は必ず甘ブリに来園しろ」

ルル「もちろん絶対に問題行動を行ってはならない」

ルル「普通に甘ブリを楽しめ。 以上だ」


DQN一家「」


―――――――――――


ルル(ふふふふふふ……)

ルル(毎日、としなかった事に感謝するのだな)

ルル(我が理想の為……わずかでも甘ブリの糧となるがいい!)

  ※注 ルルは甘ブリの事情を知りません



―――――――――――


閉園後の夕方

占いの館 長鼻


鳴上「イゴール」

イゴール「おお、お客様」

イゴール「お待ちしておりました」

鳴上「何かわかったと聞いたが……」

いすず「ええ。 私もそう聞いたわ」

マカロン「いったい何がわかったロン?」

ティラミー「早く教えて欲しいミー」

モッフル「ふも」


イゴール「それでは、お話いたしましょう」

イゴール「ですがその前に……魔法の国の皆様にお聞きしたいのですが」

イゴール「ここのところ、体の調子はいかがですかな?」

いすず「特に問題は無いわ」

マカロン「いすずちゃんと同じロン」

ティラミー「ボクは元気すぎてちょっと困るくらいだミー♪」

モッフル「僕も最近は、多少寝なくても疲れなくなっているふも」

イゴール「……なるほど」

鳴上「それがどうかしたのか?」

イゴール「…………」

イゴール「では……少々奇妙な質問なのですが」


イゴール「常に体に力がみなぎっている様な印象はございませぬか?」

マカロン「あー……確かにそんな感じはあるロン」

ティラミー「ボクも覚えがあるミー」

いすず「……私は得には」

モッフル「僕も無いふも」

イゴール「…………」

鳴上「イゴール?」

イゴール「それでは、結論を言いましょう」

イゴール「これは、断定できませぬが……ほぼ間違い無いと思われます」

イゴール「おそらく、魔法の国の皆様は」

イゴール「【アニムス】の過剰摂取が原因と思われる症状が出ておられます」



一同「!?」


マカロン「【アニムス】の過剰摂取?」

ティラミー「でも……ボクに覚えは無いミー」

いすず「私もいつも通り定期的にしか摂っていないけど……」

モッフル「どういう事ふも?」

イゴール「…………」

イゴール「どういう仕組みかは、わかりませぬが……」

イゴール「皆様はペルソナを手に入れたにも関わらず」

イゴール「我々の知る能力は、まったく開眼なされておりませぬ」

イゴール「しかし……」

鳴上「…………」

鳴上「……まさか」


鳴上「いすず達は……体内、もしくは能力として」

鳴上「【アニムス】を自給自足している、とでも言うのか?」


一同「!?」


イゴール「さすがでございますな、お客様」

いすず「し、しかし……そんな症状、聞いた事も見た事もないわ!」

いすず「それに私には自覚症状が……」

イゴール「【アニムス】の過剰摂取で起こる症状は、我々にとって未知にございます」

イゴール「ですが、我々の場合に当てはめた場合……」

イゴール「異様に元気になったり、睡眠を取らずとも疲れを感じなくなったり」

イゴール「性欲が強くなったり、予知夢など奇異な能力が時折開眼したりするのです」


いすず「……!」

モッフル「……!」

マカロン「うわー……すっごく心当たりがあるロン」

ティラミー「ボクも朝、やたらと元気になるのミー」

ティラミー「……ん? という事はいすずちゃんも性y」

     ズドンッ!

いすず「……仮にそうだとして」

いすず「何か不都合はあるのかしら?」

イゴール「まことに申し訳ありませぬが……何とも言えませぬ」

イゴール「ただ……」

モッフル「ただ?」

イゴール「ペルソナ能力は、己自身の精神を制御する事で発動する力でございます」

イゴール「ですので……」


モッフル「害は無い、という事ふも?」

イゴール「断言はできませぬが、言いたい事はその通りにございます」


一同「…………」


イゴール「……とりあえずの対処療法になりますが」

イゴール「【アニムス】の摂取をお止めする事をお勧めします」

マカロン「え……」

ティラミー「どうしてミー? 元気になっているなら、いいんじゃないのミー?」

イゴール「何事にも適量がございます」

イゴール「今の皆様は……簡単に言えば、過剰に栄養を摂り込み」

イゴール「体に無理をさせている状態と推測します」



一同「…………」


マカロン「……ちょっと驚いたけど」

マカロン「確かに言われてみれば、納得出来る話ロン」

ティラミー「とりあえず従ってみるミー」

いすず「…………」

モッフル「…………」

鳴上「……?」

鳴上「いすず? モッフル?」

いすず「何でもないわ、鳴上くん」

モッフル「話はわかったふも。 引き続き調査を頼むふも」

イゴール「はい……お任せを」

鳴上「…………」



―――――――――――


マーガレット「お疲れ様です、我が主」

イゴール「…………」

マーガレット「どうされました?」

イゴール「ひとつ……腑に落ない事がある」

マーガレット「と、申されますと?」

イゴール「推測に間違いは無いと思うが……全員の能力が同じなのは」

イゴール「何故なのか……?」

マーガレット「……?」

マーガレット「しかし……それならば、ペルソナ能力も同じなのでは?」


イゴール「確かにその通りだ」

イゴール「だが……『個性』が感じられない」

イゴール「ペルソナ能力は根本が同じでも、使い手によって」

イゴール「何らかの得手・不得手……『個性』があった」

イゴール「しかし……今回はそれが感じられぬ」

マーガレット「…………」

マーガレット「種族的な違いから……でしょうか?」

イゴール「ふむ……ありえそうな仮説ではある、が」

イゴール「結論づけるには説得力が足りぬな……」

マーガレット「……そうですね」

イゴール「いずれにしても、もっと調査しないと何とも言えぬ」

イゴール「これからも注意深く調べねばならぬな……」

マーガレット「わかりました、我が主」



―――――――――――




どこかの喫茶店


     イラッシャイマセー

直斗「お待たせしました、鳴上先輩」

鳴上「すまないな、こんな時間に」

鳴上「コーヒーでいいか?」

直斗「はい。 かまいません」

鳴上「コーヒーを二つ、お願いします」

     カシコマリマシタ


直斗「それで……話って何でしょうか?」///

鳴上「…………」

鳴上「バイト、大変じゃないか?」

直斗「え? ……まあ、初めてやる事ばかりなので」

直斗「確かに大変ですけど……大分慣れてきました」

鳴上「そうか……」

直斗「……?」

     オマタセシマシタ

鳴上「ありがとう」

直斗「どうも」

     ズズッ…

直斗「ふう……」


鳴上「…………」

鳴上「……実は、な」

鳴上「調べて欲しい事があるんだ」

直斗「え……探偵として、ですか?」

鳴上「ああ」

直斗「どういった依頼なのでしょうか?」

鳴上「甘城企画……というコンサルタント会社を調べてもらいたい」

直斗「甘城企画……ですか」

直斗「なぜ調べる必要があるんでしょうか?」

鳴上「実を言うと、根拠はない」

直斗「……え?」


鳴上「直斗は知っているだろうが……」

鳴上「甘ブリに課せられているあの契約内容」

鳴上「あれがどうにも引っかかっていてな……」

直斗「例の5年連続で動員数が50万人を下回ったら……というやつですか」

鳴上「ここまで甘ブリが酷い事になったのは、確かに経営に問題があったのは事実だ」

鳴上「でも……ここまで極端に酷い状態になったのには」

鳴上「どうにも納得できなくてな」

直斗「…………」

直斗「なるほど……何らかの妨害工作の可能性を疑っているのですね?」

鳴上「平たく言えばそうだ」

鳴上「……まあ、今さら調べても経営に関して意味のあるものではないが」

直斗「いえ。 彼を知り己を知れば、百戦して危うからず、という言葉もあります」

直斗「無駄にはならないでしょう」


鳴上「やってくれるか?」

直斗「他ならぬ先輩の頼みですから」

鳴上「すまない」

鳴上「費用の方はちゃんと請求してくれ」

直斗「いえそんな……お金なんて」

鳴上「いや、こういう事は、はっきりしておかないといけない」

鳴上「もしかしたら直斗に危険な事をさせるのかもしれないし……」

鳴上「身の危険を感じたら、絶対に止めるんだぞ?」

直斗「心配してくれるんですか……」

鳴上「当然だ」

直斗「ふふっ」///


直斗「ともかく、お話はわかりました」

直斗「甘城企画、調べておきます」

鳴上「くれぐれも気をつけてな……」

直斗「分かっています」

直斗「期待して待っててください」

直斗「では……」

鳴上「ああ、伝票は俺に任せてくれ」

直斗「すみません、ご馳走になります」

直斗「それでは……」

     スタ スタ スタ…

鳴上「…………」



―――――――――――


メープル城 地下


モッフル「……いすず」

モッフル「分かっていると思うけど……さっきの話」

モッフル「ラティファにしてはダメふも」

いすず「……心得ております、モッフル卿」

モッフル「…………」

モッフル(でも……つい考えてしまうふも)

モッフル(この力があれば……ラティファは……)

モッフル(ラティファは……!)

いすず「…………」





     パーク閉園期限まで

      あと残り 52 日



     必要来園者数

       228445 人






―――――――――――

―――――――――――


鳴上「追求」

いすず「考察」


鳴上・いすず「二次創作ー」


     パチパチパチ


いすず「ぷ……くふふ……」

鳴上「……何を笑っている?」

いすず「前回の読者からのレスを見て、青ざめていく>>1は見ものだったわ」

いすず「単なるウケ狙いでバイトのキャスティングをしたのが丸分かりよ」

鳴上「今回、しっかり登場してたじゃないか?」


いすず「>>1がコードギ○スの情報を必死に見てたの知らないの?」

鳴上「>>1はコード○アス知らないのか……」

いすず「きっとキャラ崩壊しすぎ、とかいうレスが増えるわね♪」

鳴上「……満面の笑顔で言う事じゃないと思うが」

いすず「いい精神修養になるのを喜んでいるのよ」

鳴上「いすずが>>1を嫌いなのは、よくわかった」

鳴上「さて、本編の方では……少し混沌としてきたな」

いすず「謎が謎を呼ぶ展開は、エ○ァでやり尽くしてる手法ね」

鳴上「……あの作品ほどの謎は無いと思う」

鳴上「それに>>1程度の脳みそで思いつける謎なのだから、大した事も無いだろうし」


いすず「……あなたも何げに酷いわね」

鳴上「言葉のあやだ」

鳴上「きっと分かりやすい解明がなされる、と思っている」

いすず「後は鳴上くんの修羅場フラグ乱立ね」

鳴上「……ちょっとあれは無いだろうと思う」

鳴上「夏休みに入るのが怖すぎるんだが……」

いすず「私はある意味、楽しみになってきたわ」

鳴上「複雑な気持ちだが、とりあえず喜んでおく」

いすず「乱立するフラグ……」

いすず「それはハーレムエンドを目指す者にとって避けられない運命」

いすず「鳴上悠に待ち受けるゴールは破滅か、ハーレムか?」

いすず「次回。 『菜々子と阿鼻叫喚』」

いすず「ロリと愛の狭間に奇跡は起きる……」

鳴上「ボ○ムズ風の嘘予告をするな!」

というところで、今日はここまでです。
お付き合いありがとうございました。



―――――――――――






     サアアアアアア……










数日後の午後

屋内シアター エレメンタリオ


ミュース「みんなー!」

ミュース「雨が降ってるのに来てくれてありがとう!」

ミュース「今日はみんなも知ってると思うけど」

ミュース「甘ブリ開園30周年 記念企画・第三弾!」

ミュース「雨の日にだけ見られる特別講演を開催しまーす!」

     ワー! パチパチパチ!

サーラマ「その第一回を飾るにあたり」

コボリー「甘ブリの新しい仲間が駆けつけてくれました」

シルフィー「出番だよっ! クマくん!」

     キュムキュムキュム!

クマ「ウッホホーイ!」


クマ「みんなー! クマは、クマクマ!」

クマ「いつもはお外で風船配ったりしてるけど」

クマ「今日は張り切って、頑張るクマー!!」

     ワー! パチパチパチ!

ミュース「それじゃみんな!」

ミュース「いつもの言っとくねー!」

ミュース「みんなー! 元気ー!?」

     元気ー!

クマ「クマも元気クマー!」

ミュース「はい! みんなとっても元気ー!」

ミュース「それじゃあ……いっくよー!」

     ワー! パチパチパチ!



―――――――――――


執務室


鳴上「…………」

     カタカタカタ…(PC操作中)

鳴上(……ふむ)

鳴上(動員数は一応の伸びを見せているな……)

鳴上(だが……このままじゃ)

鳴上(…………)


いすず「…………」

いすず(……鳴上くん)


     コン コン

タラモ「支配人代行、ちょっといいモグ?」

鳴上「タラモか? ああ、どうぞ入ってくれ」

     ガチャ…

タラモ「失礼するモグ」

鳴上「どうした?」

タラモ「頼まれていたスタジアムの補修の中間報告モグ」

鳴上「!」

いすず「スタジアムの補修? そんな事を頼んでいたの?」

鳴上「ああ……それで?」

いすず「…………」

タラモ「とりあえずグラウンドの整備と通路の電気系統は終わったモグ」

鳴上「そうか!」


タラモ「後は観客席と電光掲示板、夜間照明設備」

タラモ「それと外装も含め、予算さえ貰えれば すぐにでも取り掛かるモグ」

鳴上「わかった」

鳴上「グラウンドの維持管理を任せてもいいだろうか?」

タラモ「もちろんモグ」

鳴上「頼む」

鳴上「いすず、アーシェを呼んでくれ」

いすず「……わかったわ」


―――――――――――



アーシェ「お呼びでしょうか?」

鳴上「アーシェ、さっそくだがスタジアムの使用料の試算をしてくれ」

アーシェ「使用料……と申されましても」

アーシェ「どの様な目的で使うのか」

アーシェ「また、期間や規模などで変わってくるのですが」

鳴上「観客席は使用せず、グラウンド使用料のみと仮定してみてくれ」

アーシェ「…………」

アーシェ「……そうなりますと」 ピッポッパッ

アーシェ「相場や設備維持等を考慮して、これくらいは頂きたいです」つ(計算機)

鳴上「……ふむ」


鳴上「採算は度返しして、ギリギリの値段は?」

アーシェ「そうですね……どう切り詰めても半額が限界かと」

鳴上「もう一声」

アーシェ「そ、そうおっしゃられても……」

鳴上「…………」

アーシェ「…………」

アーシェ「……少し先が心配になりますが、六割引きなら」

鳴上「よし、それでいこう」

いすず「鳴上くん」

いすず「何を始めるつもりなの?」

鳴上「あれだけの施設を遊ばせておくのはもったいないと」

鳴上「常々思っていた」

いすず「でも……どう使うの?」


鳴上「周辺自治体や市町村等に何らかのイベントを開催しないか打診する」

いすず「!」

鳴上「小規模な球技大会や祭り、その他のイベントを」

鳴上「あのスタジアムでやらないか、持ちかけるんだ」

アーシェ「しかし……それがパークの利に繋がるのですか?」

鳴上「スタジアム使用の際にパーク正面ゲートを必ず通ってもらう」

鳴上「それで少しでも動員数を稼ぐ」

いすず「多目的スタジアムとはいえ……そんな事に使う人が居るのかしら?」

鳴上「……なら、他にいい案はあるのか?」

アーシェ「…………」

いすず「……いいえ」


鳴上「なら、この案でやるしかない」

鳴上「あれ程の施設を遊ばせておく余裕はないからな」

アーシェ「わかりました、支配人代行」

アーシェ「では、その様に考えて予算を編成します」

鳴上「頼む」

鳴上「いすず、これから営業をかけるぞ」

いすず「待って、鳴上くん」

鳴上「……なんだ?」

いすず「確かに言いたい事はわかるけど、今は夏に向けて」

いすず「プール系アトラクションの準備を行うべきだと思うわ」

鳴上「…………」

いすず「人員の確保も難しい状況なのだし……」

いすず「まだ来るかどうかわからないゲストより、優先すべき事ではないかしら?」


鳴上「……いや」

鳴上「ここで守りに入って、堅実さを求めてもダメだ」

鳴上「ゲストは、常に新しいものを求めている」

いすず「鳴上くん!」

鳴上「アーシェ、考えは変わらない。 行ってくれ」

アーシェ「……はい」

いすず「…………」

鳴上「いすず」

鳴上「納得できないのなら、代案を考えてくれ」

鳴上「ないのなら、営業を手伝うんだ」

いすず「……わかったわ」


鳴上「よし」

鳴上「営業するにあたり、ひとつ言っておくが」

鳴上「最初にアーシェが提示した使用料を言ってから」

鳴上「パーク開園30周年記念企画につき60%割引する、と告げる」

鳴上「これを心がけてくれ」

鳴上「きっと興味をそそられるだろう」

いすず「…………」

いすず「……そうね」

いすず「あなたの指示通りにするわ」



―――――――――――






数日後の午後










赤竜帝ルブルムの試練場


ラオウ「ゲァ――ハッハッハッ!」

ラオウ「笑止! うぬらの様な か細い冒険者など」

ラオウ「このラオウが相手をするまでもないわッ!」

ラオウ「こやつらで十分よ!」

オーク(着ぐるみinモグート族)「ブモモー!」

ラオウ「それでもこのラオウと戦いたくば……己の知恵と勇気で乗り越えて来るが良い!」

ラオウ「ゲァ――ハッハッハッ……」


ルブルム(あの……ここ私のアトラクションなんですけど……)


メープルキッチン(フードコート)


椎菜「そそそそれは、2番テーブルのお客様で……」

椎菜「こっちの料理は5番テーブルのやつでしゅっ!」

ヤン「……えっと、こっちが5番でこれが2番、と」

ヤン「じゃ、行ってきま……あっ!」

     ガッシャーン!

ニック「何やってるニクー!!」

椎菜「しゅみませんっ!」

ヤン「あの、中条さんは悪くないので……」

ニック「わかってるニク! あんたも今日これで3回目だニク!」


ヤン「面目ない……」

ニック「あーもう、こうなったらヤケクソニク!」

ニック「椎菜ちゃんとヤンさん、持ち場を変えてみるニク!」

椎菜「は、はひっ!」

ヤン「わかりました」

―――――――――――

ヤン「6番、7番のオーダーできました」

椎菜「はひっ! 行ってきまふっ!」

ニック「…………」

ニック(何このテキパキ感……)

ニック(ヤンさん、オーダーを読み取って出来上がる順番を考慮して)

ニック(しかも、効率よく出して回れるように椎菜ちゃんに渡してるニク)

ニック(そして椎菜ちゃん、口調とは裏腹にものすごく動き回れるニク)

ニック(……最初からこうしておけば良かったニク)


執務室


鳴上「くそっ……!」

いすず「…………」

いすず(自治体に打診しても、どこも間に合っているという話だった)

いすず(また、値段で興味を惹かれたところも)

いすず(これまでの場所で祭りをやって欲しいという声が多くて)

いすず(色よい返事はもらえなかった……)

鳴上「こんなはずじゃ無かったのに……」

いすず「気を落とさないで、鳴上くん」

いすず「このままではダメという事」

いすず「何か、他にいい案が浮かぶまで保留にしておいた方がいい」


鳴上「…………」

鳴上「……いや、もう一度、打診してみる」

鳴上「あれだけのグラウンド……使い道が無いわけがない」

いすず「鳴上くん!」

鳴上「もういい、いすず!」

鳴上「俺だけでもやる!」

鳴上「プールの準備でも何でも好きにやればいい!」

いすず「……!」

鳴上「…………」

いすず「…………」

いすず「……そう」

いすず「…………」


いすず「……ねえ、鳴上くん」

鳴上「…………」

いすず「いつだったか……私に『休め』と言った事があったわよね?」

鳴上「!」

いすず「同じ事を今のあなたに言うわ」

いすず「鳴上くん、少し休んだ方がいい」

鳴上「…………」

いすず「…………」

鳴上「……そうだな」

いすず「!」

鳴上「俺の方がどうかしていたみたいだ……すまない、いすず」

いすず「いいのよ、鳴上くん」


鳴上「…………」つ(ケータイ時計)

鳴上「……まだ少し早いか」

鳴上「雑務があるから、これをやって」

鳴上「終わらなくても定時で上がることにする……」

いすず「残りは私がやっておくわ」

鳴上「……いい」

鳴上「何かに没頭したいしな」

鳴上「明日、続きをやらせてくれ……」

いすず「…………」

いすず「わかったわ」



―――――――――――


宵の口

メープル城 ラティファの部屋


いすず「失礼します、ラティファ様」

ラティファ「はい、いすずさん」

ラティファ「今夜はどうされました?」

いすず「…………」

ラティファ「いすずさん?」

いすず「ラティファ様……実は」

いすず「折り入って、お願いしたい事があるのです」

ラティファ「え?」



―――――――――――


翌日の朝

執務室


鳴上「…………」

     コン コン

鳴上「? いすず? どうしたんだ? ノックなんかして……」

ラティファ「私です、鳴上様」

鳴上「ラティファ? ……どうぞ、入ってくれ」

     ガチャ…

ラティファ「おはようございます、鳴上様」


鳴上「ああ、おはよう、ラティファ」

ラティファ「お忙しい所すみませんが……」

ラティファ「少し、私のわがままに付き合っていただけないでしょうか?」

鳴上「わがまま?」

ラティファ「はい」

鳴上「…………」

鳴上「……いったい何をするつもりなんだ?」

ラティファ「ふふっ、秘密です」

ラティファ「ともかく、一緒に来てください」

鳴上「…………」



―――――――――――


パーク中央広場


ワニP「あ、ラティファ様!」

ワニP「おはようございますッピー!」

ラティファ「はい、ワニPさん。 おはようございます」

未来くん「おはようございます、ラティファ様」

ラティファ「はい、未来くんさん。 おはようございます」

鳴上「…………」

ワニP「支配人代行さんも おはようだっピー!」

未来くん「おはようございます、支配人代行」

鳴上「おはよう」


観覧車前


ラティファ「すみません、開園前ですけど」

ラティファ「動かしてもらってもいいですか?」

女性キャスト「え……ああ、支配人さん」

女性キャスト「と、代行さんもいらっしゃるんですね」

女性キャスト「わかりました」

鳴上「…………」

     …ゴウン

ラティファ「さ、鳴上さん」

ラティファ「乗りましょう」

鳴上「……ああ」


     ゴウン ゴウン…

ラティファ「いかがですか? この観覧車」

ラティファ「少し古いのですが……私のお気に入りなんです」

鳴上「…………」

ラティファ「お気に召しませんか?」

鳴上「い、いや……」

ラティファ「…………」

ラティファ「鳴上様が支配人になられてから」

ラティファ「このパークは、とてもいい方向に変わったと思います」

鳴上「…………」

ラティファ「何よりもキャストの皆さんの表情が明るくなりました」

ラティファ「それだけでも……鳴上様の功績はとても大きいです」


鳴上「しかし……」

ラティファ「はい。 現実がとても厳しいのは分かっています」

ラティファ「ですが……今の鳴上様は」

ラティファ「とても余裕が無くなっていると思います」

鳴上「…………」

ラティファ「…………」

     ゴウン ゴウン…

ラティファ「そろそろ一番高いところですね」

鳴上「……ああ」

ラティファ「見てください、鳴上様」

ラティファ「あんなに遠くの街まで見えますよ?」

鳴上「……そうだな」


ラティファ「…………」

ラティファ「少し前……」

鳴上「…………」

ラティファ「伯父様から上に立つ者の心構え、というものを学びました」

ラティファ「それは……常にどっしりと構えておく事だとおっしゃっていました」

鳴上「…………」

ラティファ「下の者は、不安そうな指揮官を見ていると」

ラティファ「それを感じ取ってしまって、同じように不安に思ってしまうからだそうです」

鳴上「!」

ラティファ「だから……私はどんな時も笑って」

ラティファ「皆を安心させるのが仕事だと、伯父様は教えてくれました」

鳴上「…………」


ラティファ「でも……」

ラティファ「どうしても不安で、それを隠すのが厳しくなったら」

ラティファ「少しの間、何か違う事を考えたり、やってみたりすれば良いと」

ラティファ「伯父様は付け加えてくれました」

鳴上「…………」

鳴上「……そうか」

ラティファ「……鳴上様」

ラティファ「私に出来る事は……せいぜいこのくらいです」

ラティファ「それに比べたら、鳴上様は」

鳴上「ラティファ」


ラティファ「は、はい?」

鳴上「…………」

鳴上「ラティファの入れた紅茶が飲みたい」

ラティファ「!」

鳴上「頼めるか?」

ラティファ「ええ、もちろんです。 鳴上様」 ニコッ

鳴上「良かった」 ニコッ

鳴上「…………」

ラティファ「…………」

鳴上「ラティファ」

ラティファ「はい」

鳴上「ありがとう」

ラティファ「どういたしまして」 ニコッ



―――――――――――


経理部


鳴上「アーシェ」

アーシェ「支配人代行? どうされました?」

鳴上「先日のスタジアムの件なんだが……」

鳴上「抜本的に見直す事にした」

アーシェ「……そうですか」

鳴上「もう予算は組んでしまったか?」

アーシェ「……いえ、まだです」

アーシェ「元々、当パークにあっさり組める程の余剰資金はありませんし」


鳴上「ははは……今回は、そのおかげで助かったという訳か」

アーシェ「笑い事ではないですけどね。 ふふっ」

アーシェ「わかりました、支配人代行」

アーシェ「今回のお話は無かった事にしておきます」

鳴上「頼む」

アーシェ「……ですが」

鳴上「ん?」

アーシェ「あのスタジアムを活用する、というアイデアは」

アーシェ「悪くは無いと思います」

鳴上「…………」

アーシェ「今後の事を考えるのなら、補修を急ぎたいところですね」

鳴上「……その通りだな」


鳴上「ともかく、スタジアムの件は一時保留としておく」

アーシェ「わかりました」

鳴上「いつも苦労をかけてすまないな、アーシェ」

鳴上「これからも頼りにしている」

アーシェ「…………」///

アーシェ「……殺し文句ですよ、それ」/// ボソッ

鳴上「?」

アーシェ「何でもありませんっ」///

鳴上「???」

     アハハ…


鳴上「…………」

鳴上(……俺は、あのグラウンドの広さに注目して)

鳴上(なんとか活用できないか?と考えてきたが……)

鳴上(それではダメなんだ)

鳴上(スタジアムは、スタジアムとして使う)

鳴上(そうでなくては意味が無いんだ)

鳴上(…………)

鳴上(……こんな当たり前の事に今さら気が付くなんて)

鳴上(どうやら、相当頭に血が上っていたようだな……)

鳴上(…………)


ティラミーのフラワーアドベンチャー前


映子「はい、問題です」

映子「ミツバチは、どうしてお花に止まるのでしょう?」

映子「…………」

映子「わぁ~正解だよ♪」

映子「はい、スタンプを押すね?」

映子「次は、占いの館・長鼻の前に行ってください♪」


ティラミー「……あの娘かミー?」

トリケン「はい」


トリケン「モッフルさんに頼まれ、前かがみでお調べしたところ」

トリケン「出演作品は10本」

ティラミー「10本!?」

トリケン「しかもどの作品も彼女の魅力を100%引き出しており」

トリケン「素晴らしい出来になっていまして……」

トリケン「このトリケン、久しぶりに大フィーバー前かがみでございました」

ティラミー「ほほう……それは楽しみだミー♡」

トリケン「いやはや あの作品を見た後では、生の彼女を見ただけで、もうッ!」

トリケン「思わず前かがみでございます♡」

ティラミー「まあ僕は大抵、どんなのでもイける口だけど……」

ティラミー「あんな大人しそうな女の子が乱れるなんて、想像だけでも十分息が荒くなるミー♡」


ルル(……何か、ゲスい会話をしている様な気がするが)

ルル(甘ブリのマスコットが、そんな猥談をする訳は無いな、うん……)


執務室


     ガチャ

鳴上「ふう……」

いすず「……お帰りなさい」

鳴上「いすず……ただいま」

鳴上「……と、言うのも変な気がするな」

いすず「そうね」 クスッ

鳴上「…………」

鳴上「いすず」

いすず「ん?」

鳴上「ありがとう」


いすず「……雑務の処理くらい、大した事じゃないわ」

鳴上「…………」

鳴上「ふふっ」

いすず「な……何?」

いすず「どうして笑うのよ?」

鳴上「何でもない」

鳴上「あまりにもタイミング良く、気分転換できたが……」

鳴上「いすずがそれでいいのなら、もうそれでいい」

いすず「!」

いすず「…………」///

鳴上「さて、プール系アトラクションの準備に取り掛かろう」

いすず「そ、そうね……」///



―――――――――――


放課後

八十稲羽 八十神高校3年2組教室


     ガヤ ガヤ

花村「はー……今日も終わったなぁ」

雪子「そうだね、花村くん」

里中「もうちょっとしたら期末試験かぁ」

花村「憂鬱だな……けど!」

花村「それさえ終われば、悠の奴を助けに行けるな!」

雪子「今年から試験終わったら、終業式まで試験休みになったからね」

里中「鳴上くん、元気にしてるかな?」


花村「時々電話があるけど、苦労はしているみたいだが」

花村「元気にやってる感じだったぜ?」

雪子「それにしても支配人なって」

雪子「遊園地の立て直しを頼まれるなんて、すごいね」

里中「まあそこはアレでしょ?」

里中「鳴上くんの持つオーラ的な何かって事だよね」

花村「……人徳って言いたいのか?」

里中「そうそう! それ!」

里中「花村、意外とモノ知ってるもんだね」

花村「意外は余計だっつーの!」


花村「とはいえ、大所帯で手伝う事になるからな……」

花村「今の内から準備しとかね?」

雪子「そうだね、花村くん」

雪子「確か……女子は直斗くんのアパートに泊まって」

里中「男の子は、クマくんの部屋って事になってたよね?」

花村「ああ」

花村「しかし、7月一杯泊まる事になるから」

花村「プライバシーの問題がなぁ……」

里中「大丈夫だって、花村」

里中「やってみれば案外大した事ないものよ、こんなの」

雪子「千枝……1日2日じゃないんだよ?」

雪子「ストレスに感じたら、一人になれる場所の確保もしておいた方がいいと思う」


花村「じゃ、その辺りの相談も含めて」

花村「完二誘ってジュネスに行かねーか?」

里中「いいね!」

里中「花村の奢りでジュース付きで!」

花村「なんでだよ!?」

雪子「まあまあ……ほら、二人共」

雪子「完二くん、呼びに行こう?」

花村「だな!」

里中「うん!」



―――――――――――




鳴上の部屋


鳴上「…………」


テレビ『……それでは、次のニュースです』

テレビ『昨年、突然の休業宣言で世間を驚かせた』

テレビ『現役女子高生アイドルの久慈川りせさんが』

テレビ『都内の多目的スタジアムで、復帰コンサートを行いました』


鳴上「…………」



テレビ『かねてより、復帰を待ち望む声が多く』

テレビ『今日を心待ちにしていた大勢のファンで観客席は埋め尽くされ』

テレビ『彼女の歌う姿に酔いしれ、大きな歓声を上げて喜びを爆発させていました』


鳴上(りせ……良かったな)


テレビ『それにしても一時は引退説も流れましたが』

テレビ『りせちーの人気は今だ健在ですね』

テレビ『そうですねぇ』

テレビ『昨年、彼女と同じプロダクションで入れ替わる様にデビューした』

テレビ『かなみんこと、真下かなみさんの人気も今、すごいのですが』

テレビ『一年間の休養を経て、この盛況っぷり!』

テレビ『やはり彼女は持っている、という事なのでしょう』


テレビ『それでは、スタジアムでの取材をご覧下さい』

     ワー ワー

テレビ『す、すごい人数です!』

テレビ『見渡す限り、人、人、人!』

テレビ『この多目的スタジアムは約5万人収容できるのですが』

テレビ『体感的にはもっと居るようにすら……キャー!』

     ワー ワー

テレビ『ははは、本当にすごい人数ですね』

テレビ『それでは、次のニュースを……』


鳴上「…………」


鳴上「…………」 ピッポッパッ

     ルルル…… ルルル…… ガチャ

鳴上「もしもし、陽介か?」

鳴上「突然すまないが、りせに甘ブリの事を伝えたか?」

鳴上「…………」

鳴上「ああ、そういう事じゃない」

鳴上「りせに『甘城ブリリアントパーク』という名前を伝えたか?という意味だ」

鳴上「…………」

鳴上「そうか、良かった」

鳴上「ん? いや、な。 少し思いついた事があって」

鳴上「…………」

鳴上「まあそんなところだ」

鳴上「それじゃ、また……え?」


花村「こっちにも頼みたい事があってよ」

花村「実は……みんなで悠の仕事を手伝おう、という話になってな」

花村「バイトでも何でもやるつもりだから、遠慮なくこき使って欲しい」

花村「…………」

花村「いや、気を使う使わないって事じゃねーよ」

花村「俺を含めてみんな、お前の力になりたいんだ」

花村「…………」

花村「ああ、その事なら気にすんな」

花村「すでにそっちへ行ってるクマ達と同様、何かの見返りが欲しいわけじゃない」

花村「まあ、迷惑だってんなら止めるが……」

花村「…………」


花村「へへ! そう言ってくれると思ったぜ! 相棒!」

花村「で、だ」

花村「さっき言いかけた頼み事なんだけどよ」

花村「臨時に悠の家の部屋を使わせて貰えねーかな?」

花村「…………」

花村「かいつまんで言うと、共同生活に疲れた時」

花村「一人になれる、宿泊先が欲しいんだ」

花村「…………」

花村「そうか! すまねえ、迷惑かけるがよろしく頼むぜ!」


鳴上「こっちこそすまない」

鳴上「こんなに心強い事はない、陽介」

鳴上「…………」

鳴上「ああ、さっそく準備しておく」

鳴上「みんなにもよろしく言っておいてくれ」

鳴上「それじゃ、またな」

     ブッ…… ツー ツー

鳴上「…………」

鳴上「本当にありがとう、陽介、みんな……」



―――――――――――


数日後の午前中

会議室


     ガヤ ガヤ

鳴上「揃ったようなので会議を始める」


一同「…………」


鳴上「それでは、このポスターを見てくれ」


一同「……!」


モッフル「これは……記念企画・最終弾」

アーシェ「入場料無料サービス……!?」

鳴上「そうだ」


鳴上「無茶なのは承知の上だ」

鳴上「資金面の事は、今は忘れてくれ」

モッフル「しかし……タダはいただけないふも」

モッフル「7月一杯という期間限定ふもけど……」

モッフル「それに慣れてしまったゲストは、お金を払う状況になったら」

モッフル「もう来てくれないふも」

鳴上「その懸念はもっともだな」

鳴上「だが……もうなりふり構っていられる状況では無い」

鳴上「現在の動員数の伸びのままでは、期限内に目標達成はできないだろう」


一同「…………」


レンチくん「いやはや……またどえらい事を言ってくれるじゃねーか」

レンチくん「まさに背水の陣だな」


鳴上「ああ」

鳴上「だが……勝算が無いわけじゃない」


一同「!」


アーシェ「と、おっしゃいますと?」

鳴上「まだ確定事項ではないので詳しくは話せないが……」

鳴上「上手くいけば、様々な問題が解決するだろう」


一同「…………」


レンチくん「わーったぜ、大将!」

レンチくん「ここまでこれたのも、みんなあんたのおかげだからな」


未来くん「そうだね……支配人代行を信じるよ」

マーちゃん「そうなれば、後は行動あるのみです」

アーシェ「出来うる限り、サポートします」

トリケン「このトリケンも前かがみで取り組みます」

鳴上「当てにさせてもらう」

鳴上「それでは、今後の方針として」

鳴上「まず、ポスターを貼る時期だが……」

―――――――――――

いすず「ふう……」

鳴上「お疲れ様、いすず」

いすず「お疲れ様」


いすず「……例の話」

いすず「進捗(しんちょく)状況はどうなのかしら?」

鳴上「芳(かんば)しくないな……」

いすず「そう……」

鳴上「…………」

鳴上「やはり、俺の様な高校生の若造じゃ」

鳴上「最初から相手にされていない感じがする」

いすず「…………」

いすず「土地の売買だし、困ったものね……」

いすず「いっその事、アーシェや大人のキャストに任せてみてはどうかしら?」

鳴上「それも一案だな……」

鳴上「だがみんなの仕事もこれからどんどん忙しくなってくる」

鳴上「今、別の仕事を任せられる程の余裕が、たぶん無い」


いすず「……そうね」

鳴上「とりあえず、この件は保留だ」

鳴上「今は、プール系アトラクションの準備に集中しよう」

いすず「ええ」

いすず「人員の確保は、モグート族の全面的協力で何とかなったわ」

鳴上「設備の方はどうなっている?」

いすず「大まかな補修と点検は済ませてあるわ」

いすず「後は、行政への届出と安全審査の日取りを決めるだけよ」

鳴上「よし」

鳴上「それでは……来週の中頃くらいに」

鳴上「閉園後、準備作業を始めよう」

いすず「わかったわ」



―――――――――――




どこかの喫茶店


鳴上「直斗、ここだ」

直斗「あ、はい。 鳴上先輩」

直斗「お待たせしました」

鳴上「いや……」

鳴上「コーヒーでいいか?」

直斗「はい」

鳴上「コーヒーを二つ」

     カシコマリマシタ


直斗「それでは……この前、頼まれた」

直斗「甘城企画の件ですが……」

鳴上「…………」

直斗「今の段階では、ごく普通のコンサルタント会社としか言えませんね」

直斗「内容としては主に観光業の改善などが多い様です」

直斗「今回の甘ブリの様な、テーマパーク事業もいくつか手がけていますが」

直斗「およそ10年くらい前から始まっている感じですね」

鳴上「そうか……」

直斗「ただ……」


鳴上「ただ?」

     オマタセシマシタ

鳴上「どうも」

直斗「ありがとうございます」

     ズズッ…

鳴上「…………」

直斗「……ふう」

直斗「ただ……キレイすぎる気がするんです」

直斗「この会社」

鳴上「キレイすぎる?」

直斗「ええ」

直斗「何と言うか……上手く行き過ぎている、というか」

直斗「コンサルタントを行った企業との揉め事が、調べた限りで一切ないんです」

鳴上「……それは確かに妙だな」


直斗「また、資金調達の方でも同様です」

直斗「詳しくは調べていないのですが……」

直斗「高額であるにも関わらず、大手銀行からの借り入れもあっさり認められていますし」

直斗「時間にすれば許容範囲、とも言えますが」

直斗「返済が一度 遅れた事があって、それでも新たな借り入れが」

直斗「その直後に行われていました」

鳴上「…………」

直斗「この辺りは信用貸し、という事もありえますし」

直斗「考えすぎ、と言われればそれまでですが……」

鳴上「ふむ……」

直斗「どうしますか?」

直斗「このまま調べ続けましょうか?」


鳴上「…………」

鳴上「…………」

鳴上「……続けてくれ」

直斗「わかりました」

鳴上「だが、くれぐれも――」

直斗「危険を感じたら、やめろ、ですね?」

直斗「わかっていますよ」 クスッ

鳴上「そうか……」

鳴上「あと」

直斗「費用の事は、まだ先でいいですよ」

直斗「今は甘ブリの事で大変でしょうし」

鳴上「……すまない」


直斗「いえ」

直斗「鳴上先輩のお役に立てるだけで、うれしいですから」///

直斗「あ、クマくんは大丈夫ですか?」

鳴上「ああ、元気にやっている」

直斗「そうですか、良かった」

直斗「それでは、僕はそろそろ戻ります」

鳴上「あ、伝票は……」

直斗「でも、この前もご馳走になりましたし」

鳴上「これくらいさせてくれ、直斗」

直斗「……そうですか」

直斗「では、今日もご馳走になりますね?」

鳴上「ああ、任せてくれ」

直斗「失礼します、鳴上先輩」



―――――――――――


占いの館 長鼻


イゴール「…………」

マーガレット「お疲れ様です、我が主」

イゴール「……マーガレットか」

マーガレット「どうされました?」

イゴール「…………」

イゴール「どうにも……静かすぎる」

マーガレット「静かすぎる?」


イゴール「お客様(鳴上)のお話では」

イゴール「雨の日に怪現象に見舞われたと聞かされたが……」

イゴール「我々がここに来てから、雨の日にさえ一向に動きがない」

マーガレット「…………」

イゴール「あらゆる手段で調べたが……」

イゴール「このパークには何の異常も見受けられなかった」

マーガレット「……確かに妙ですね」

マーガレット「『現象』ならば」

イゴール「…………」

イゴール「……やはり、お前もそう思うか」

マーガレット「はい」


イゴール「…………」

イゴール「……我々が来てから、なりを潜めた怪現象」

イゴール「だが」

イゴール「意思を持つ『何者』かが起こしている事象と仮定すれば」

イゴール「説明もつく」

マーガレット「…………」

マーガレット「そして」

マーガレット「私たちがこのパークで調べていない場所は」

マーガレット「ただの一箇所だけ……」

イゴール「……ふむ」

イゴール「これはやはり、モッフル卿に嘆願せねばならぬ様だな」

マーガレット「その通りですね、我が主」










イゴール「一度、メープル城を調べねば……」













     パーク閉園期限まで

      あと残り 38 日



     必要来園者数

       197891 人






―――――――――――

―――――――――――


鳴上「追求」

いすず「考察」


鳴上・いすず「二次創作ー」


     パチパチパチ


鳴上「今回、俺がダメダメになる回だったな」

いすず「>>1としては必要だから入れたのでしょうけど」

いすず「アニメ通り、一ヶ月キ○クリでも良かった気がするわね」

鳴上「>>1も内心そう思ったみたいだが、突っ込んでやるな」

鳴上「どうしても俺とラティファを観覧車に乗せたかったみたいなんだ」


いすず「ああ……」

いすず「ハーレムフラグを立てるという目的があったのね」

鳴上「……いい加減、そこから離れよう」

いすず「私に対しても着々と建築していたわ。 あとアーシェも」

鳴上「言ってるそばから話を蒸し返すな」

いすず「さて、今回は鳴上くんが焦ってダメになり、なんの感動も葛藤もなく立ち直るという」

いすず「前代未聞のなんじゃそら?展開だったけど」

鳴上「……ラティファの紅茶が飲みたくなってきた」

いすず「ジュネス達も含め、やたらと引っ張るわね。 読者もイライラしてそう」

鳴上「やめろ……>>1の頭髪がそよ風でも抜け落ちている」


いすず「後はりせちーね」

いすず「てっきり復帰コンサート、甘ブリのスタジアムでやると思ってたんだけど」

鳴上「ああ、それは俺も思ったな」

鳴上「それに、そうじゃない何かで りせを使うつもりみたいだし」

いすず「どうせ宣伝に使うのだと思うわ」

鳴上「…………」

鳴上「そこは分かっても気がつかないふりをしてやるのが、マナーだと思うんだ」

いすず「あら……という事は、鳴上くんもそう思ってるという事ね?」

鳴上「……ノーコメントで」

いすず「それから>>1の気まぐれで入れた、あのバイト」

いすず「どう扱うつもりなのかしら?」

鳴上「下手にキャラが立ってるだけに、甘ブリ・P4キャラの出番を奪ってしまいそうだな」

いすず「北○神拳を扱うモッフル卿とか見てみたいわね」

鳴上「いろんな意味で絶対にダメだ!!」

やっと投下できた……今日はここまでです。
お付き合い、ありがとうございました。



―――――――――――


ある日の夜

マカロンの部屋


マカロン「ふむふむ」

マカロン「ここまではいい感じだロン」

マカロン「問題は無さそうだロンね」

いすず?「…………」

マカロン「それじゃ最終チェックするロン!」

いすず?「…………」 コクッ


マカロン「前!」

いすず?「…………」 サッ

マカロン「後ろ!」

いすず?「…………」 ササッ

マカロン「スカート!」

いすず?「…………」 スススッ

マカロン「上出来だロン!」

マカロン「いい仕上がりだロンよ……ムフフ」

いすず?「…………」



―――――――――――


数日後の朝

甘ブリ 事務棟休憩室


テレビ『現在、台風は伊豆半島沖の海上を時速20kmで北北東に進んでおり』

テレビ『関東地方に今夜半、上陸するものと見られ』

テレビ『気象庁は、台風の進路上にある各自治体に注意を呼びかけています』

テレビ『なお、今回の台風は並の強さですが……』


一同「…………」


モッフル「……ついていないふも」


ミュース「よりにもよって、休日に来なくてもいいのに……」

いすず「……天気はどうしようもないわ」

いすず「残念だけど、私たちも台風に備えて行動した方がいい」

ティラミー「そうだミーね……」

マカロン「明日一日は、開店休業だロン……」

鳴上「…………」

いすず「鳴上くん?」

いすず「どうしたの?」

鳴上「…………」

鳴上「……悪いがいすず」

鳴上「俺は今日一日休みを取る」

いすず「……え!?」


いすず「どういう事なの?」

モッフル「何をするつもりふも?」

鳴上「…………」

鳴上「すまないが、それは言えない」

鳴上「台風の備えは いすず達に任せる」

いすず「……それはいいけど」

鳴上「それじゃ、また明日」

     スタ スタ スタ…

モッフル「あ……」

いすず「…………」



―――――――――――


数時間後

伊豆半島先端地域






     ヒュゴオオオオオオオオッ……






鳴上「…………」

鳴上「頼むぞ……キングフロスト」

鳴上「…………」 グッ…!











     ペ  ル  ソ  ナ !!











上空3000m付近


  ※注 鳴上はキングフロストに乗っています

鳴上「……くっ」

鳴上(一応防寒具を着て来たが……)

鳴上(思ったより寒い)

鳴上(……風のせいで体感温度が低いんだな)

鳴上(だが、もう引き返している時間はない)

鳴上(このまま……続行するっ!!)


鳴上「マハブフ!(複数体氷系呪文)」


     ヒュオオオオオッ


鳴上「…………」

鳴上「よし、実験通りなら これで雨になる」


鳴上(マハブフダインやマハブフーラでは)

鳴上(氷が大きくなりすぎて、大した雨にならなかった)

鳴上(本当は細かい砂や小麦粉など、微粒子の方がいいんだが)

鳴上(台風の雨雲を何とかするだけの量を持ってくる事は不可能)

鳴上(だが……)

鳴上(最下級の氷系呪文、マハブフなら)

鳴上(より広範囲に拡散させる事で威力を抑え)

鳴上(適度な氷の粒を作ることができる……!)

鳴上(…………)

鳴上(……正直、無茶な方法だが)

鳴上(今、これを出来るのは俺しかいない!)


鳴上(以前の残りと、陽介に買ってもらった精神力回復アイテム……)

鳴上(これで足りてくれるといいが)

鳴上(…………)


鳴上「……はああああああああっ!」

鳴上「マハブフ! マハブフ! マハブフ! マハブフ! マハブフ! マハブフ!」

     ヒュオオッ     ヒュオッ     ヒュオオオオオッ

鳴上「マハブフ! マハブフ! マハブフ! マハブフ! マハブフ! マハブフ!」

     ヒュオオオオオッ     ヒュオオオオオッ     ヒュオオオオオッ

マハブフ! マハブフ! マハブフ! マハブフ! マハブフ! マハブフ!マハブフ!
  マハブフ! マハブフ! マハブフ! マハブフ! マハブフ! マハブフ! マハブフ!
マハブフ! マハブフ! マハブフ! マハブフ! マハブフ! マハブフ! マハブフ!
  マハブフ! マハブフ! マハブフ! マハブフ! マハブフ! マハブフ! マハブフ!
マハブフ! マハブフ!マハブフ! マハブフ! マハブフ! マハブフ! マハブフ!
  マハブフ! マハブフ! マハブフ! マハブフ! マハブフ! マハブフ! マハブフ!
マハブフ! マハブフ! マハブフ! マハブフ! マハブフ! マハブフ! マハブフ!
  マハブフ! マハブフ! マハブフ! マハブフ! マハブフ! マハブフ! マハブフ!



―――――――――――


翌日の朝

事務棟


テレビ『……ており、突然台風が消える、などという事は信じられない事象で』

テレビ『気象庁は元より、世界中の気象研究者を驚かせて……』


モッフル「」

いすず「」

鳴上「……おはよう」

モッフル「こ、小僧、いったい何をやったんだふも!?」

鳴上「…………」

いすず「……?」


いすず「どうしたの? 鳴上――」

     ドササッ!

モッフル「!?」

いすず「!?」

いすず「鳴上くん!?」


―――――――――――


医務室


鳴上「はあ……はあ……」

モッフル「…………」

いすず「酷い熱……」


モッフル「……何をどうやったのか、分からないふもけど」

モッフル「相当な無茶をしたのは間違いなさそうふも」

いすず「そうね……」

モッフル「医者の話だと、体力も落ちているから当分は安静にさせないと」

モッフル「体に良くないと言ってたふも」

いすず「…………」

鳴上「……はあ……はあ……」

鳴上「だ……大丈夫、だ……」

モッフル「!」

いすず「!」

モッフル「……起きてたふもか」

鳴上「このくらい……何でも……はあ……はあ……」


モッフル「やせ我慢はやめるふも」

モッフル「お前には、まだやってもらわなければならない事が、たくさんあるふも」

鳴上「はあ……はあ……」

モッフル「とにかく、今は休んでおけふも」

いすず「そうよ、鳴上くん」

いすず「せめて……今日一日くらい安静にしていて」

鳴上「はあ……はあ……」

鳴上「……わかった……はあ……はあ……」

モッフル「…………」

モッフル「じゃ、僕は仕事に行くふも」

モッフル「そうだ。 通り道だし、ラティファにも伝えておくふも」

いすず「わかったわ」



―――――――――――


ラティファ「……鳴上様」

ラティファ「相当な無理をしたと、伯父様から聞きました」

鳴上「…………」

ラティファ「パークの事を考えてくださるのは嬉しいのですが」

ラティファ「この様な無茶は、もうなさらいでください」

ラティファ「いいですね?」

鳴上「……しかし、ラティファ」

ラティファ「しかしは無しです」

鳴上「…………」

ラティファ「……鳴上様。 どうして、そこまでしてくださるのですか?」


ラティファ「あなたは、もう十分すぎる程の貢献を」

ラティファ「このパークに、私たちに行っていますよ?」

鳴上「…………」

鳴上「……好きだから」

ラティファ「っ!?」///

鳴上「このパークで……いろいろやっていく内に……」

鳴上「俺も……ここが好きになっていたから……」

鳴上「失いたくない……と思っているんだ……」

ラティファ「鳴上様……」

ラティファ「…………」

ラティファ「私……とても嬉しいです」

鳴上「ラティファ……」


ラティファ「でも」

ラティファ「それなら尚の事、しばらくお休みください」

鳴上「だ、だが……」

ラティファ「ダメですよ、鳴上様」

ラティファ「健康は何よりも代え難い宝なのです」

ラティファ「少しの間、伯父様といすずさんにお任せして」

ラティファ「ゆっくり休まないといけません」

鳴上「…………」

鳴上「……わかった」

ラティファ「時々、ここに来て確認しますからね?」

鳴上「いや、ちゃんと休むから……」

ラティファ「いいえ」


ラティファ「もう……放っておきませんから」///

鳴上「……え?」

ラティファ「な、何でもありませんっ」///

ラティファ「と、ともかく、またお昼くらいに様子を見に来ますから」

鳴上「……ああ」

ラティファ「それでは、失礼します」

     スタ スタ スタ…

鳴上「…………」

鳴上「……ふう」

鳴上「…………」

     コッ コッ コッ…

鳴上「……?」


鳴上「どうした? ラティファ、忘れも……」

いすず?「…………」

鳴上「いすず? どうしたんだ?」

鳴上「というか……頭のそれは何だ?」

いすず?「気にしないで。 それよりも……」

     スッ… ギシッ

鳴上「!?」

いすず「ねえ、鳴上くん……私」

     ギシギシッ…

いすず?「もう……秘書って立場じゃ我慢できないの」

鳴上「」

鳴上「お、おい!? いすず!?」


いすず?「ねえ……鳴上くん」 スッ…

鳴上「お、落ち着け! いすずっ!」///

鳴上「……っ」///

いすず?「…………」

いすず?「……ぷっ」

鳴上「……?」

いすず?「ぶははははははっ!!」

鳴上「!?」

     ジィィィィィィィッ…… シュッパッ!

いすィラミー「ざーんねーん! ボクでーしたー!」

鳴上「」


     バァンッ!

マカロン「やったロン! ドッキリ大成功だロン!」

ティラミー「どぅ~お~?」

ティラミー「いすずちゃんだと思ってドキドキしたミー?」

鳴上「…………」

マカロン「思った通り、あっけにとられているロン♪」

ティラミー「鳴上くんにわかりやすく説明すると」

ティラミー「このいすずちゃんスーツは魔法の肉襦袢(にくじゅばん)なんだミー♡」

鳴上「……!」

マカロン「ほら、モグート族の連中がオークの格好をしてたけど、あれと同じモノだロン」

ティラミー「このいすずちゃんスーツは試作品なんだけど……」

ティラミー「細かいところの調整がこの前やっと終わったんだミー♡」


マカロン「このスーツの凄いところは、体重や体格関係なく着れる事と」

ティラミー「スーツの人と同じ声が出せる事だミー♪」

鳴上「そ、そうなのか……な、なあ」

マカロン「いやはや、苦労したロン……」

ティラミー「ちょっとした思いつきだったけど、お小遣いまでつぎ込んで完成させたし」

ティラミー「再現度高めるために、かなり入念にいすずちゃんを観察したのミー」

鳴上「お、おい……」

マカロン「そーそー!」

マカロン「いやーいすずちゃん、お風呂好きで良かったロン♪」

ティラミー「ぐふふ♡ 全くだミー♡」

鳴上「…………」

鳴上「……後ろ」



     ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……


マカロン「……ロン?」

ティラミー「……ミ?」

     ジャキン!

マカロン「」

ティラミー「」


     アイエエエエエェェ!!


―――――――――――


マカロン「」

ティラミー「」


いすず「……全く」

いすず「体の方は大丈夫なの?」

鳴上「……大丈夫だ」

鳴上「と言いたいところだが……熱で朦朧(もうろう)とする」

いすず「そう」

いすず「さっきも言ったけど、安静にしているといいわ」

いすず「しばらくパークの事は私たちに任せて欲しい」

鳴上「すまないな……」

鳴上「……けど、ひとつ気がかりな事がある」

いすず「というと?」

鳴上「出席日数が……少し心配なんだ」


いすず「!」

鳴上「親の方にも心配かけたくないし……」

鳴上「とりあえず出席するだけして、後は保健室にでも……」

いすず「ダメよ、鳴上くん」

いすず「ここで無理をしてはいけないわ」

鳴上「だが……」

いすず「…………」

いすず「私にひとつ、思いついた事があるわ」

鳴上「思いついた事?」



―――――――――――


翌日の朝

甘城高校 通学路


鳴上?「…………」


鳴すず(……このスーツ、凄いわね)

鳴すず(外見は本当に鳴上くんそのものだわ……)

鳴すず(…………)

鳴すず(後は上手く彼のふりをして、授業を受ける)

鳴すず(これで出席日数を稼げるわ)

鳴すず(…………)


椎菜「……鳴上先輩?」

鳴すず「!!」


鳴すず「……ああ、中条さん」

椎菜「え!?」

鳴すず「……? 何かおかしな事を言ったかしら?」

椎菜「だって……いつもは『椎菜』って呼んでくれるのに……」

椎菜「それに『かしら』? あと、頭のそれ、何ですか?」

鳴すず(っ! いけない、今の私は鳴上くんだったわ!)

鳴すず(……と言うか、女の子の下の名前をいきなり呼び捨てにするなんて)

鳴すず「ごめんなさ……ごめん、椎菜」

鳴すず「ちょっと寝ぼけているみたいだ」

椎菜「そうなんですか? そう言えば、倒れたって聞きましたけど……」

鳴すず「それも関係しているかもな」


鳴すず「あと、頭のこれは気にしないでくれ」

椎菜「はあ……」

鳴すず「……まだ何か、気になるところがある?」

椎菜「い、いえ」

椎菜「いつも通りのステキな先輩ですっ」///

鳴すず(……え?)

椎菜「わわわ、私、何言ってるんだか……」///

椎菜「も、もう行きますねっ」///

     タッ タッ タッ…

鳴すず「…………」

鳴すず(鳴上くん……)

鳴すず(普段あの娘と、どんな接し方をしているの……?) イラッ…


正面玄関 下駄箱


鳴すず(鳴上くんは3年生だから、こっちの下駄箱ね)

     カタッ…

鳴すず「!!」

鳴すず(……これって)

     ガサガサ…

鳴すず(…………)

     初めまして。 私、2年1組の土田香苗と言います。

     突然の事で驚かれると思いますけど……私、あなたの事が好きです。

     昼休み、校舎裏で待っていますので、どんな形でもいいから

     お返事をしていただけると嬉しいです。

鳴すず()


鳴すず(…………)

鳴すず(……もしかしなくてもラブレターね)

鳴すず(…………)

鳴すず(どうしたらいいのかしら……)

鳴すず(というか、どうして鳴上くんなのよ!)

鳴すず(…………)



―――――――――――


昼休み

校舎裏


鳴すず「え? 間違い?」

土田「すみませんでした!」

土田「私、うっかり2年生と3年生の下駄箱を間違えてしまって……」

鳴すず「そうなの……」

鳴すず「という事は、あなたは、鳴上く……じゃなくて」

鳴すず「俺の事を好き、という訳じゃないんだな?」

土田「本当にごめんなさい!」

土田「先輩なのに巻き込んでしまって……」


鳴すず(ホッ……)

鳴すず「いや、誰にでも間違いはある」

鳴すず「気にしないでくれ」

土田「許して……いただけるんですか?」

鳴すず「許すも何も……誰にだってミスはある」

鳴すず「俺の事は気にせず、本当に好きな相手に想いを伝えてくれ」

鳴すず「応援している」

土田「鳴上……先輩」

土田「本当にすみませんでした」

鳴すず「いや……それじゃ、俺はこれで」

土田「はい……私、手紙を入れ間違えて良かったです」///


鳴すず「……え?」

土田「何でもありません」///

土田「それじゃ……」///

     タッ タッ タッ…

鳴すず(…………)

鳴すず(……まあ、大丈夫……よね?)


―――――――――――


甘ブリ 管理棟休憩室


いすず「――という感じで」

いすず「無事に済ませて欲しいの」


ラオウ「……ふむ」

ラオウ「話はわかったが……このラオウ」

ラオウ「高校生活など、とんと縁がなくてな……」

ラオウ「雇っていただいた恩義に報いたいのだが……」

ラオウ「万一、パークと支配人代行の名誉を傷つけてしまった折には」

ラオウ「いかようにも罰を受けようぞ」

いすず「いいえ……本来は私達で何とかすべきなのだけど」

いすず「マスコット達は仕事を外れてもらうわけにはいかないし」

いすず「あなたの休日を丸一日奪ってしまうのに、罰なんてとんでもないわ」

いすず「どうか、よろしくお願いします」

ラオウ「うむ。 このラオウ」

ラオウ「全力を尽くそう」



―――――――――――


翌日

甘城高校 3年2組教室


先生「え~、であるからして……」

鳴オウ「…………」

鳴オウ(……くっ)

鳴オウ(あの講釈師の言う事が、全く分からぬわ)

鳴オウ(……思えば我ら4兄弟)

鳴オウ(我が師リュウケンに幼少より育てられたが……)

鳴オウ(義務教育そっちのけで拳法修行に明け暮れたものよ)

鳴オウ(だが、いざ社会に出てみると……暗殺拳などクソの役にも立たぬッ)

鳴オウ(おまけにリュウケンは数年前、行方知れずになる始末……)


先生「え~、では、この問題を……鳴上くん、答えてくれ」

鳴オウ「…………」

先生「……鳴上くん?」

鳴オウ「…………」

先生「鳴上くん!」

鳴オウ「!!」

鳴オウ「はっ! すまぬ、講釈師!」

先生「へ? 講釈師?……というか、頭のそれは……?」

鳴オウ「気にするでない」

先生「……ま、まあいいけど」


先生「とにかく、この黒板の問題をやってくれるかな?」

鳴オウ「……相分かった」

先生(……鳴上くんて、こんな喋り方したっけ?)

     ……シン ズシン ズシン ズシンッ

クラスメイト(な、なんか、妙な地響きが……)

鳴オウ(…………)

鳴オウ(……まずい)

鳴オウ(まったく分からぬッ)

鳴オウ(このままでは支配人代行の顔に泥を塗ってしまうッッ!)

先生「……どうしたのかな?」


鳴オウ「…………」


鳴オウ「ぬうううううううああああああああああああッ!!」


先生「ひょえぇっ!?」

クラスメイト「!?」

鳴オウ「は、腹が!!」

鳴オウ「腹が秘孔を突かれた様に痛むッッ!!」

先生「」

鳴オウ「すまぬが講釈師、保健室とやらに行かせてもらうぞッ!!」

クラスメイト「」

鳴オウ「しばし、さらばだッ!!」

     ズシンッ ズシン ズシン …シン

先生「…………」

先生「何だったの……?」


中庭付近


鳴オウ「……危ないところであった」

鳴オウ「緊急避難の方法を聞いておいて良かった」

鳴オウ「…………」

鳴オウ「このまま、放課後を待つべきであろうな」

鳴オウ「このラオウには荷が重い仕事よ……」 フウ…

椎菜「……ラオウ??」

鳴オウ「ぬっ?」

鳴オウ「うぬは椎菜か……」

椎菜「どうしたんですか? ラオウさんのモノマネなんかして……」

鳴オウ「」


鳴オウ(い、いかんッ!)

鳴オウ(今、このラオウは支配人代行の姿ッ!)

鳴オウ(何とか、場を取り繕(つくろ)うのだッ!)

鳴オウ「……何でもない、椎菜」

椎菜「そうなんですか?」

鳴オウ「少し気分を悪くしてな……空気の良いところでくつろいでおったのだ」

椎菜「そうなんですか……」

鳴オウ「だが、もう大丈夫だ」

椎菜「保健室には行かないんですか?」

鳴オウ「そ、その……あの独特の匂いが苦手でな」

鳴オウ「つい、注射を思い出してしまうのだ」

椎菜「え? 鳴上先輩って、注射が苦手なんですか?」


鳴オウ「そ、そうなのだ」

椎菜「へえ~」

椎菜(鳴上先輩って、可愛いところがあるんだなぁ……ふふふっ)///

椎菜「じゃ、椎菜、もう行きますね!」

鳴オウ「うむ」

     タッ タッ タッ…

鳴オウ「…………」

鳴オウ「肝を冷やしたわ……」

鳴オウ「……む?」


木村「何でだよ!?」

木村「俺、土田さんが気持ちを伝えてくれるって聞いてたから」

木村「それを待っていたのに……」

木村「なのに突然やめるって、どういう事なんだよ!?」

土田「ご、ごめんなさい、木村くん」

土田「その、間違いがきっかけだけど……」

土田「なんか、あの人ステキだなって思っちゃって」

土田「私、自分の気持ちが良く分からなくなったの」

木村「何だよそれ!?」


鳴オウ「…………」

鳴オウ(どうやら痴話喧嘩の様だが……)

鳴オウ(今は厄介事に首を突っ込む訳にはいかぬッ)

鳴オウ(許せ……娘子よ)


木村「そんなこと言われても納得できないよ!」

木村「俺……土田さんに告白されたら即OKだったのに……」

木村「俺の気持ちはどうなるんだよ!?」

土田「ご、ごめんなさい……」

木村「謝られても嬉しくないっ!」

土田「……っ」 グスッ

鳴オウ「…………」

     ……シン ズシン ズシン ズシンッ

木村「……ん? 何だ? この地響き……」

鳴オウ「少年よ、そこまでにするのだ」


木村「はあ?」

鳴オウ「うぬがその娘子を好いているのは良くわかる」

鳴オウ「だが……」

鳴オウ「怯えさせてまで、迫るのは良くないぞ?」

土田「鳴上先輩!」

鳴オウ「ぬ?」

木村「鳴上!? じゃあ、こいつが……!」

鳴オウ「…………」

鳴オウ(……どういう事だ?)

鳴オウ(申し送りでは何も聞いておらぬが……)

鳴オウ「ともかく落ち着くのだ、少年」

木村「何が少年だよ!? 上級生だからって、俺を馬鹿にするな!」

木村「っていうか、頭のそれは何なんだよ!?」

鳴オウ「気にするでない」


土田「やめて! 木村くん!」

土田「鳴上先輩は、巻き込まれただけなの!」

木村「土田さんまでこいつを庇うのかよ!?」

木村「もうアッタマ来た!」

木村「これでも喰らえええええええええええっ!!」

     バキッ!

鳴オウ「…………」

木村「はあっはあっ……」

土田「な、鳴上先輩っ!」

鳴オウ「…………」

鳴オウ「……気は済んだか、少年」


木村「っ! あ、あんた、まだ俺をバカにするのか!」

鳴オウ「ぬうううんんッ!!」

     ドゴォッ!!

     ……ギギギギギギッ ドドーンッ!

土田「」

木村「ひ、ひいっ!? 一撃で木がっ!?」

鳴オウ「……ここでこのラオウが少年を叩き伏せるのは容易」

鳴オウ「だが、愛とは悲しいもの……」

鳴オウ「力ずくで手に入れた愛は偽りであり、己の自己満足にすぎぬッ」

木村「……あ、あんた何言って……というか、ラオウ?」

鳴オウ「よいか、少年よ」

鳴オウ「うぬの心に愛があるのであれば……娘子の気持ちも汲んでやるのだ」

木村「…………」


鳴オウ「このラオウにも苦い過去がある……」

鳴オウ「振り返る度に……涙せずにはいられぬッ……!」 ブワワッ

木村「!!」

土田「!!」

鳴オウ「…………」

木村「……泣いて大人になるなんて、哀しすぎるじゃありませんか」

鳴オウ「今は分からなくて良い」

鳴オウ「だが……いずれ、それには意味があったのだと」

鳴オウ「哀しき事にも良き側面があったのだと、思える様になろう」

木村「……っ」

木村「……ぐすっ……うわあああああああああああああんっ!!」

     ダダダダダダダッ…


土田「木村くん!」

鳴オウ「追うでない、娘子よ」

土田「で、でも……」

鳴オウ「今、あの少年は……砕かれた己自身の心と戦っているのだ」

鳴オウ「ひとりの『漢』となるべくな」

土田「…………」

鳴オウ「うぬも自らを磨くがよい」

土田「え?」

鳴オウ「いきさつはどうあれ……うぬはあの少年を惑わせたのだ」

土田「す、すみません……」

鳴オウ「謝罪など要らぬ」

鳴オウ「『悪い』と思うだけなら、どの様な人間にも出来る事……」


鳴オウ「しかし……それに向き合い、己を磨き、人に接した時」

鳴オウ「うぬは真の愛を知る事になろう」

土田「愛……ですか」

鳴オウ「うむ」

鳴オウ「そなたは、今でも十分輝いている」

土田「!!」/// ドキッ

鳴オウ「だが、もっと自身を磨くのだ」

鳴オウ「さすれば……その想いは伝わるであろう」

土田「は、はいっ」!///

鳴オウ「さらばだ」

     ズシンッ ズシン ズシン …シン

土田「…………」///

土田「鳴上先輩……」///



―――――――――――


甘ブリ 管理棟休憩室


ラオウ「……という感じであった」

いすず「特に問題は無かったのね?」

ラオウ「細かいアレコレはあったが……取り立てて言う程でもない」

いすず「そう」

いすず「無理なお願いを聞いてくれてありがとう」

ラオウ「何……このラオウ、貴重な体験をさせてもらったと喜んでおる」

ラオウ「役に立てたのなら、嬉しい限りだ」

ラオウ「では、失礼させてもらうぞ」

いすず「お疲れ様、ラオウさん」

     ズシンッ ズシン ズシン …シン


いすず「……という事なのだけど、ちゃんと聞いてた?」

クマ「もっちろん聞いてたクマよー?」

クマ「クマ、センセイの為に一肌でも二肌でも脱ぐクマ!」

いすず「…………」

いすず(本当に大丈夫かしら……)

いすず(とはいえ、他に手の空いているキャストは居ないし)

いすず(ここに来てから、初めての休みなのに快く引き受けてくれたし)

いすず(何より、鳴上くんの友達だし……)

いすず「……それじゃ、明日一日お願いね」

クマ「クマ、頑張るクマ!」



―――――――――――


昼休み

甘城高校 中庭付近 ベンチ


     ガヤ ガヤ

鳴クマ(ムホ――!!)

鳴クマ(授業は退屈クマけど、学校って楽しいクマ!)

鳴クマ(カワイイ女の子いっぱいクマー!)

鳴クマ(……でも、ここはおとなしくしておくクマ)

鳴クマ(今、クマはセンセイの代わりをしているクマ!)

鳴クマ(変な事したら、センセイに迷惑かけるクマ! 我慢するクマ!)


土田「あ……鳴上先輩」

鳴クマ「え?」

土田「こ、こんにちは……」///

鳴クマ「…………」


鳴クマ(ムホ――!?)

鳴クマ(なんかとってもカワイイ女の子に話しかけられたクマ!)

鳴クマ(それにしてもセンセイ……隅に置けないクマ)

鳴クマ(……ちょっとくらい、クマもおこぼれもらっていいクマよね~?)


土田「あのっ……隣、いいですか?」///

鳴クマ「どうぞどうぞクマ!」

土田「……クマ?」


鳴クマ「ムホホ~、とってもカワイイクマね~」

土田「え!?……そ、そのっ」///

鳴クマ「それで、お名前は?」

土田「!」

土田「……覚えてないんですか?」

鳴クマ「ごめんクマ……でも」

鳴クマ「もう絶対忘れないから、教えて欲しいクマ!」

土田「…………」

土田「土田香苗です」

鳴クマ「土田香苗クマね!」

鳴クマ「クマの逆ナン魂が揺さぶられる、いいお名前クマ~」

土田「逆ナン?」


鳴クマ「んーと、じゃあ、カナちゃんって呼んでいいクマ?」

土田「え!?……い、いいですけど」

鳴クマ「ウッホホーイ!」

鳴クマ「カナちゃんは優しいクマね~」

土田「…………」

鳴クマ「カナちゃんは、もうお昼食べたクマ?」

土田「……はい」

鳴クマ「それじゃ、景色のいい屋上に行って話さないクマ?」

土田「え?」

鳴クマ「ほらほら、一緒に行こうクマ!」 グイグイ

土田「あ、あの……そんなに引っ張らなくても行きますから」


屋上手前の階段付近


     スタ スタ スタ

鳴クマ「~♪」

土田「…………」

??「……あれ? 鳴上先輩?」

鳴クマ「およ?」

鳴クマ「椎菜ちゃん!」

椎菜「どうしたんですか? こんなところで……」

椎菜「というか、そちらの方は?」

土田「……私も同じこと聞きたいんですけど」


鳴クマ「ああ、このちっちゃカワイイ娘は、椎菜ちゃんクマ!」

椎菜「はあ!?」///

鳴クマ「で、こっちのベリーカワイイ娘は、カナちゃんクマ!」

土田「……どうも」

土田「というか、お二人はどういう関係なんですか?」

鳴クマ「バイト先のドーリョークマ!」

鳴クマ「んじゃ、椎菜ちゃん。 そーゆー事で、また今度お相手するク……」

     バシッ!!

鳴クマ「マ!?」

椎菜「ハレンチですッ! っていうか屈辱ですッ!」///

鳴クマ「椎菜ちゃん、お弁当箱ぶつけるなんて、酷いクマ……」

椎菜「千斗先輩に言いつけてやる――!!」

     ダダダダダダダダッ…


土田「…………」

鳴クマ「まったく……酷い目に会ったクマ」

鳴クマ「さっ! 屋上はすぐそこクマ!」

     ピタッ…

鳴クマ「クマ? カナちゃん、どうしたクマ?」

土田「……千斗さんって、最近鳴上先輩とよく一緒にいる娘ですよね?」

鳴クマ「まあまあ、今はそれよりも……」

土田「私は千斗さんの次って事なんですか?」

鳴クマ「そんな事ないクマよ~?」

土田「あと、さっきからクマクマ言ってますけど、何なんですか?」

土田「少し変かな、という程度だったのに……今日は特におかしいです」


鳴クマ「だ、だから……」

土田「それに物凄く馴れ馴れしいですし……」

土田「なんか、遊ばれている気がするんですけど」

鳴クマ「そ、そんな事ないクマ!」

土田「じゃあ……私の名前」

土田「フルネームで言えますか?」

鳴クマ「ほえ?」

土田「…………」

鳴クマ「え、え~っと……」

鳴クマ「つ……つ……筒井」

鳴クマ「かなみ!」

土田「……帰ります」

     スタ スタ スタ


鳴クマ「」

鳴クマ「そ、そそ、そんなぁー……」

鳴クマ「クマの逆ナンがぁぁー……」


―――――――――――


甘ブリ 管理棟休憩室


いすず「……本当に問題なかったの?」

クマ「クマ……もう嫌になるくらいなぁーんにも無かったクマ」

いすず「そう」


いすず「という感じで一日、お願いできないかしら?」

ヤン「ははは、最初は冗談かと思いましたけど」

ヤン「これは休日を一日潰してでもやる価値がありそうですね」

ヤン「面白そうだ」

いすず「面白がっては困るのだけど……」

ヤン「や、これは失礼」

ヤン「支配人代行さんの名誉と出席日数がかかっているんですよね?」

ヤン「わかりました」

ヤン「精一杯、やらさせていただきます」

いすず「よろしくお願いします」



―――――――――――


翌日の昼休み

校舎裏


寺野「…………」 ゴゴゴ…

山本「…………」 ゴゴゴ…

佐々木「…………」 ゴゴゴ…

土田「…………」


鳴ヤン「…………」

いすず「…………」


鳴ヤン(……あの)

鳴ヤン(これはどういう事なんでしょう?)

いすず(私にも何が何だか……)

いすず(今日、いきなり呼び出されたのよ)


寺野「……聞きましたよ、鳴上先輩」

鳴ヤン「はあ……?」

寺野「そこの千斗って娘と付き合っているのに」

寺野「土田さんに手を出して、二股かけようとしたんですってね?」

鳴ヤン「は?」

いすず「じょ、冗談じゃない!」///

土田「て、寺野さん。 私そんなこと言ってないんだけど……」

寺野「要約するとそういう事でしょ?」


いすず「女神リーベラに誓って、そんな関係ではないわ!」

鳴ヤン「…………」

寺野「まったく……純情な乙女心をよくもまあ踏みにじったものだわ」

寺野「いくら先輩といえども見逃せないわよ!」

山本「そうよ!」

佐々木「きっとその千斗ってのも本命じゃないんでしょ!?」

山本「一年の中条ってのにも手を出してるって聞いてるしね!」

土田「だ、だから、そこまで言ってないって……」

鳴ヤン「…………」

寺野「黙っていないで答えたらどうですか? 鳴上先輩」

佐々木「とりあえず、千斗ってのと一緒に土田さんへ謝ってよ!」

山本「それとも下級生に頭は下げられませんかぁ~?」

土田「み、みんな……」


いすず「……黙って聞いてれば勝手な事を」

寺野「な、何よ?」

いすず「いいわ……女神リーベラの怒りを思い知らせてあげる」

     スッ…

山本「っていうか、女神リーベラって何?」

佐々木「鳴上先輩も頭、何、変なの付けてるのよ?」

鳴ヤン「……あの」

寺野「ん?」

鳴ヤン「君……寺野さん、といったかな?」

寺野「だから何?」

鳴ヤン「何をそんなに怒っているんだい?」


寺野「はあ!?」

寺野「そんなの、あなたが土田さんに酷い事をしたからじゃない!」

鳴ヤン「だったら」

鳴ヤン「君の怒りを私に向けるのは間違いなんじゃないかな?」

寺野「どうしてそうなるのよ!?」

鳴ヤン「当事者は土田さんだからだ」

寺野「!?」

鳴ヤン「仮に私に非があったとしても」

鳴ヤン「私に謝罪を求めらるのは、当事者の土田さんじゃないのだろうか?」

山本「へ、屁理屈言わないでよ!」


鳴ヤン「申し訳ないが、屁理屈を言っているのは君たちだ」

鳴ヤン「自分の身に起こった事でもないのに、さも当事者であるかの様に振る舞い」

鳴ヤン「しかも数的有利な状況下で、謝罪を求めている」

寺野「……っ」

鳴ヤン「もちろん誰かの痛みを分かり、味方をする事は悪ではない」

鳴ヤン「少々お節介ではある、と思うが……」

山本「うるさいわよ!」

鳴ヤン「話がそれてしまったね」

鳴ヤン「要は……土田さんが私にどうして欲しいのか」

鳴ヤン「ちゃんと聞いてまとめてから、意見して欲しいという事なのだよ」

寺野「…………」

山本「…………」

佐々木「…………」

いすず「これ以上はない正論ね」


寺野「……土田さんはどうしたいの?」

土田「え!?」

土田「えっと……その……」

山本「…………」

佐々木「…………」

土田「……あの」

土田「元々は……私の勘違いが原因で」

土田「いろいろあって、ふらふらしちゃって……」

土田「寺野さんたちに愚痴ってたら、こんな事になってしまったんです」

寺野「なっ!?」

山本「土田さん、私たちのせいにする気!?」

佐々木「ちょっと酷いんじゃないの!?」

土田「ひっ……」


鳴ヤン「まあまあ、落ち着くんだ君たち」

鳴ヤン「今、『ちゃんと聞いてまとめてから』と、私は言ったよね?」

寺野「…………」

山本「…………」

佐々木「…………」

土田「…………」

土田「すみませんでした! 鳴上先輩!」

寺野「!」

山本「!」

佐々木「!」


土田「でも、みんなは悪くないんです!」

土田「私が……私が一人で、いろいろ……」

鳴ヤン「うん、ここで君が正直に話してくれなかったら」

鳴ヤン「私はどんな目に合わされた事か、わからない」

鳴ヤン「ありがとう」

土田「鳴上先輩……」///

いすず「…………」

寺野「何なの……この展開」

山本「すっごい しこりが残るんですけど……」

佐々木「私たち、ただの噛ませになってるし……」


鳴ヤン「そんな事はないさ」

鳴ヤン「今時、誰かの為に怒れる人間は貴重だと思う」

鳴ヤン「今回の事はいい教訓として捉えて、次に繋げればいい」

寺野「…………」

鳴ヤン「特に人の話はよく聞いて噛み砕き、できるだけ中立的にモノを考え」

鳴ヤン「冷静に判断してこそ『第三者』としての意見となる」

山本「…………」

鳴ヤン「おっと……つい話が長くなってしまった」

鳴ヤン「それで、私はもう行ってもいいのだろうか?」

土田「ええと……はい、いいです」

土田「いいよね? 寺野さん」

寺野「う、うん」

鳴ヤン「では」

いすず「それじゃ……」


     スタ スタ スタ…

寺野「…………」

山本「なんか……全然反論出来なかったね」

佐々木「あいつ、ちっとも動揺してなかったし……」

土田「…………」

土田(鳴上先輩……昨日とも一昨日とも全然違う)

土田(大人な雰囲気だった……)

土田(…………)

土田(どれが本当のあなたなんですか……?)

寺野(…………)

寺野「……ふん」///

寺野「悔しくなんか……ないんだからっ」///



―――――――――――


医務室


椎菜「通りでおかしいと思いましたよ!」

いすず「ごめんなさい、中条さん」

椎菜「っていうか、みんな思いっきり地が出てましたよ!?」

いすず「そ、そうだったの……」

鳴上「…………」

椎菜「鳴上先輩、明日から学校に行くそうですけど」

椎菜「覚悟をしておいた方がいいと思います」

いすず「…………」


鳴上「……いすず達をそんなに責めないでやってくれ、椎菜」

椎菜「で、でも……」

鳴上「いいんだ」

鳴上「俺の為にやってくれた事なんだし」

椎菜「……鳴上先輩のそういうとこ、ずるいです」///

いすず「ごめんなさい、鳴上くん」

いすず「あまり役に立てなくて……」

鳴上「そんな事はない」

鳴上「おかげで久しぶりにのんびり過ごせた」

     コン コン  キィ…

ラティファ「鳴上様? お加減はどうですか?」

ラティファ「お粥をお持ちしたので……あ」


いすず「…………」

椎菜「…………」

鳴上「ラティファ、いつもありがとう」

ラティファ「い、いえ……このくらいなんて事ないですよ」///

     コン コン  キィ…

直斗「先輩、具合はどうですか?」

アーシェ「支配人代行、果物でも、と思って持ってきたのですけど……?」

ミュース「鳴上さん、気分はどうでしょ……?」


サーラマ「うあちゃ……」

コボリー「エンカウント……」

シルフィー「俗に言う修羅場ッ!」


いすず「…………」

椎菜「…………」

ラティファ「…………」

直斗「…………」

アーシェ「…………」

ミュース「…………」

鳴上「……みんな、どうしたんだ?」


サーラマ(……雰囲気でやや察してる感じだけど、とぼけたわね)

コボリー(鳴上さん……後で骨は拾ってあげます)

シルフィー「ば・く・は・つ・す・ん・ぜ・んー!!」



―――――――――――


翌日の朝

甘城高校 下駄箱付近


土田「あ……鳴上先輩」

鳴上「ん?」

土田「おはようございます」

鳴上「……おはよう」

土田「…………」 ジッ…

鳴上「?」

土田「今日は……普通ですね?」

鳴上「……え?」

土田「あはは……何でもありません」


土田「また自己紹介がいりますか?」

鳴上「……できれば」

土田「私、土田香苗って言います」

土田「よろしくお願いしますね? 鳴上先輩」

鳴上「あ、ああ……」

土田「それじゃ、また!」

     タッ タッ タッ…

鳴上「???」

木村「げっ!? あんたは!?」

鳴上「ん?」


鳴上「俺が何か?」

木村「…………」

木村「……俺」

木村「土田さんの事、諦めませんから」

鳴上「は?」

木村「じゃ!」

     タッ タッ タッ…

鳴上「…………」 唖然…

寺野「……おはようございます」

鳴上「!……おはよう」

鳴上(思わず挨拶し返したが……さっきの娘といい誰なんだ?)

寺野「…………」

鳴上「……?」

寺野「……あの」


鳴上「はい?」

寺野「鳴上先輩って……フルネームは何と言うんですか?」

鳴上「……俺の名前は鳴上悠だが」

寺野「鳴上悠……ですか」

鳴上「君は?」

寺野「私は寺野睦美(てらのむつみ)と言います」

鳴上「睦美……いい名前だ」

寺野「っ!?」///

寺野「い、いきなり下の名前で呼ばないでくださいっ」///

     タッ タッ タッ…

鳴上「…………」

鳴上「……何なんだ?」



―――――――――――




甘ブリ 管理棟


モッフル「イゴール、待たせたふも」

イゴール「いえ……こちらこそ御足労、ありがとうございます」

モッフル「それで、何の用ふも?」

イゴール「はい。 その事なのですが……」

イゴール「実は、例の怪現象について行き詰まっておりまする」

モッフル「ふも……」

イゴール「このパークのほぼ全域をお調べしたのですが……」

イゴール「特に気になる事柄はございませんでした」


イゴール「しかし……」

モッフル「…………」

イゴール「あと一箇所だけ、お調べしていない場所がございます」

モッフル「…………」

モッフル「……なるほど」

イゴール「もうお気づきでしょうが……」

イゴール「ぜひ、メープル城を調査させていただきたのです」

モッフル「…………」 フウ…

モッフル「……致し方ないふもね」

モッフル「わかったふも」

モッフル「いくつか条件を付けるけど、構わないふも」


イゴール「おお……!」

イゴール「ありがとうございまする、モッフル卿」

モッフル「……それじゃあ、条件ふもけど」

モッフル「まずこちら側の人員を必ず同行させる事と」

モッフル「調べる日時を連絡して欲しいふも」

イゴール「心得ました」

モッフル「話はそれだけふも?」

イゴール「はい。 左様にございます」

イゴール「改めてお礼を申し上げます」

モッフル「ふも。 約束は必ず守ってくれふも」

モッフル「じゃ……」

     キュム キュム キュム…

イゴール「…………」


鳴上の部屋


     ピピピッ…… ピピピッ……

鳴上「はい、もしもし」

鳴上「! りせか」

鳴上「…………」

鳴上「そうか、休みが取れたか」

鳴上「連絡ありがとう。 それじゃ、前に言ったが頼みたい事がある」

鳴上「…………」

鳴上「そ、そうだな。 その内にな」

鳴上「それでだ、敵情視察というか、見て来てもらいたいテーマパークがあるんだ」

鳴上「…………」

鳴上「そこはな」












鳴上「甘城ブリリアントパークという名前だ」














     パーク閉園期限まで

      あと残り 31 日



     必要来園者数

       190711 人






―――――――――――

―――――――――――


鳴上「追求」

いすず「考察」


鳴上・いすず「二次創作ー」


     パチパチパチ


いすず「私の勘違いかしら? このスレは甘ブリとP4のクロスSSよね?」

いすず「いつから北○の拳や銀○英○伝説とのクロスになったの?」

鳴上「言いたい事は凄く良く分かるが、ギリギリセーフとしておけ」

鳴上「第一、こうなるかもしれない事は、前々からわかっていた事だろう?」

いすず「肝心の本編が、どこかに行ってしまっている気がする……」

鳴上「そこはもう突っ込んでやるな……」


鳴上「そろそろ本題に入ろう」

いすず「と言っても今回の話は、甘ブリのモノがベースになっているというだけよ?」

いすず「キャストが大改編されているけど」

鳴上「かろうじてクマを入れ、ギリギリ甘ブリ×P4という名目は守った」

いすず「アニメの甘ブリでは、最後に可児江くんが登場していたわね」

鳴上「そう言えば、あれは見ていて見事な演技だったな」

いすず「可児江くんの中の人の話?」

鳴上「肉襦袢(にくじゅばん)を着た、それぞれのキャラの口調を見事に演じ分けていた」

鳴上「あれは一見の価値アリだと思う」

いすず「>>1も甘ブリ屈指の名シーンだと思っているそうよ」

鳴上「それは大きく頷くところだな」


いすず「さて、読者が期待しているであろう引っ張った部分は今だ解消されず」

鳴上「だからそこには突っ込んでやるな」

いすず「ハーレムフラグ建築『だけ』は着々と進んでいるけど」

鳴上「頼むから、そこを強調しないでくれ……」

いすず「ゲームのP4で6……いえ、Gで7股もかけた」

いすず「あなたの言葉とは思えないわね?」

鳴上「それはプレイヤー次第だろう?」

いすず「個人的な展開予想では、菜々子ちゃんにヤンデレフラグが立つと思うわ」

鳴上「ペルソナァァァァァァァァッ!!!」

というところで今日はここまでです。
お付き合い、ありがとうございました。

乙、
「私にはお兄ちゃんだけだけど、お兄ちゃんは違うんだね…」

>>764
鳴上「心臓に悪いから真面目にやめてくれ……」



―――――――――――


翌日の午前中

甘ブリ スプラッシュ・オーシャン


     ポンッ ポンッ ポポンッ

映子「ゲストの皆様、大変お待たせしました」

映子「本日より夏場のアトラクション」

映子「スプラッシュ・オーシャン、オープンでーす!」

     キャ~ ザブンッ ワー ワー

―――――――――――

鳴上「…………」


鳴上(……いよいよ7月が始まった)

鳴上(泣いても笑っても後一ヶ月……)

鳴上(出来うる限りの宣伝はした)

鳴上(考えられる限りのアイデアは出した)

鳴上(ダメージ覚悟のサービスも始めた……)

鳴上(…………)

鳴上(後は……神のみぞ知る、か……)

鳴上(…………)

鳴上(……今から祈る様では、ダメだな)

鳴上(全力を尽くそう)



―――――――――――


りせ「ここが甘ブリ……甘城ブリリアントパークかぁ」

りせ「…………」

りせ「正直……少し寂れている印象ね」

りせ「本当に人気が出てきているのかしら?」

りせ「…………」

りせ「でも、悠先輩に見てきてくれって頼まれたし」

りせ「同じような経営危機に見舞われている遊園地の支配人やってたら」

りせ「気になるところよね……」

りせ「…………」




     そのパークに敵対しているわけじゃない。

     普通に遊んで楽しんでみてくれ。

     そして、りせの感性で、どう思うのか、どんな印象なのか?

     また、こうしたらもっといいんじゃないか?

     そんな正直な感想を聞かせて欲しい。



りせ「…………」

りせ「……悠先輩」

りせ「あたし、頑張るよ!」



―――――――――――


宵の口

甘ブリ 正面ゲート警備室


鳴上「…………」

     本日の入場者数

        638 人

鳴上「…………」

鳴上(……平日とはいえ)

鳴上(この程度とはな……)

鳴上「…………」


     コン コン …ガチャ

鳴上「!」

??「突然失礼」

鳴上「あなたは……確か」

鳴上「クリ〇リス隆也さん」

栗栖「栗栖隆也(くりすたかや)だっ!!」

鳴上「失礼」

栗栖「……わざとやっているのかい?」

鳴上「それで? 何か御用ですか?」

栗栖「…………」

栗栖「……いや何、最近ここの客足が伸びていると聞いてね」

鳴上(敵状視察……というところか)


栗栖「それにしても本当に支配人になるとは」

栗栖「随分と思い切った決断をしたものだ」

鳴上「…………」

栗栖「まあ……せいぜい頑張ってくれ」

鳴上「…………」

     トコ トコ ト…

栗栖「……ああ、そうそう」

栗栖「ここのところ、ウチの事を嗅ぎまわっている奴がいるみたいなんだが」

鳴上「……!」

栗栖「君の差し金かな?」

鳴上「…………」


鳴上「……調べられると何か困る事でも?」

栗栖「それは肯定した……と取っていいのかな?」

鳴上「…………」

栗栖「…………」

栗栖「……ま、いずれにしても」

栗栖「あと残り1ヶ月だ」

栗栖「好きなだけ足掻くといい、インターン支配人・鳴上くん」

     パタン

鳴上「…………」



―――――――――――




どこかの喫茶店


直斗「」

直斗「バレているって……そんなまさか!?」

鳴上「いや、確証があったわけじゃないと思う」

鳴上「おそらく、カマをかけたのだろう」

鳴上「だが……これ以上は止めておいた方がいい」

直斗「くっ……」

鳴上「落ち着け、直斗」


直斗「…………」

直斗「……すみません、鳴上先輩」

直斗「あまりお役に立てなくて……」

鳴上「そんな事はない」

直斗「え?」

鳴上「少なくとも……『調べられては困る』という事と」

鳴上「真っ先に調べていた犯人の矛先を甘ブリ……もっと言うと」

鳴上「俺に向けてきた」

鳴上「つまり、栗栖隆也にとって、ここは」

鳴上「何らかの思い入れがある、という事だ」

直斗「!」

直斗「……さすがですね、鳴上先輩」


鳴上「大した事じゃないし、それに」

鳴上「直斗に危害が及ぶ前で良かった」

直斗「…………」///

鳴上「ありがとう、直斗」

鳴上「調査はここまでとして、掛かった費用を請求してくれ」

直斗「…………」

直斗「……あの、その事なんですけど」

鳴上「ん?」

直斗「お金ではなく……その……」///

直斗「せ、先輩の時間を報酬として、いただけませんか?」///


鳴上「俺の時間を?」

直斗「はいっ」///

鳴上「……直斗がそれでいいのなら、俺は構わないが」

鳴上「具体的にどうすればいい?」

直斗「そ、それは……そうですね……」 ウ~ン…

鳴上「…………」

直斗「!」

直斗「その……今は先輩も忙しいので、時間ができてからでいいのですが」

直斗「僕の服を見立ててもらえないでしょうか?」///

鳴上「……服を買うのに付き合え、という事か?」

直斗「はいっ」///

鳴上「わかった。 直斗の服選びに付き合おう」

直斗「あ、ありがとうございますっ」///



―――――――――――


鳴上の部屋


鳴上「ふう……」

鳴上「……ん?」

鳴上「いつの間にか、りせからメールが届いているな」 ピッ


     Re:りせ

     やっほー! 悠先輩、言われた通り甘ブリに行ってきたよ♡

     それで、感想なんだけど……


鳴上「…………」



     全体的に見て、やっぱり古い感じがしたかなー

     手入れは行き届いてる感じだけど、目新しさはないと思う。

     正直、第一印象はそんなとこかな。

     けど、かわいいマスコットが多いのはすごいね。

     子供は大よろこびしそう。


鳴上「…………」


     従業員の対応も悪くないし、家族向けな分

     可もなく不可もなく、普通に楽しめる内容になってるけど

     若い人……特に恋人と行きたい、と思える様な遊園地じゃない気がする。


鳴上「……ふむ」



     食べ物は美味しいね!

     勧められたコロッケは本当に美味しくて

     悠先輩にも食べさせてあげたいと思ったな♡


鳴上「…………」


     私だったら、もっと恋人同士が楽しめるアトラクションが欲しいな。

     二人で何かする、もしくは協力して行う系?

     そういうのあると、楽しくなる! 悠先輩と行ってみたい♡

     とまあ、こんな感じだったよ?


鳴上「…………」


鳴上「…………」 ピッピッピッ

     ルルル…… ルルル…… ガチャ

鳴上「もしもし、りせか?」

鳴上「…………」

鳴上「ああ、さっき見た。 ありがとう」

鳴上「で、今いいか?」

鳴上「…………」

鳴上「ありがとう」

鳴上「さっそくなんだが……相談したい事があってな」


りせ「…………」

りせ「……え!?」

りせ「甘ブリが悠先輩の立て直していた遊園地だったの!?」

りせ「もう……そういう事なら……え?」

りせ「…………」

りせ「……ブログにあの意見をできるだけそのまま載せて欲しい?」

りせ「で、でも、それじゃ……うん……うん」

りせ「…………」

りせ「…………」

りせ「……悠先輩、言いたい事は分かるけど」

りせ「時間もないみたいだし、それで間に合うの?」


鳴上「……正直、厳しい」

鳴上「だが、一度でも大ダメージを受けたら」

鳴上「どうしようも無くなる」

鳴上「本来、こうやって個人的に頼む事だって、かなりの禁じ手だ」

鳴上「だから……心苦しいだろうけど」

鳴上「りせ、俺の事には触れず、自主的に行った事にして」

鳴上「『パーク名は出さずに』正直な意見をブログに書いてくれ」

鳴上「ただし、ヒント的な画像は付けて欲しい」

鳴上「…………」

鳴上「頼む」

鳴上「…………」


鳴上「ああ、それも分かっている」

鳴上「俺の家で、手料理をご馳走しよう」

鳴上「じゃ……」

     ブッ…… ツー ツー

鳴上「…………」

鳴上「……これで、なんとかなればいいが」

鳴上「…………」



―――――――――――


数日後の午前中

会議室


モッフル「スプラッシュ・オーシャンでイベント?」

鳴上「ああ」

鳴上「時期もあるだろうが……予想をはるかに下回る動員数だ」

鳴上「何とかテコ入れをしないといけない」


一同「…………」


鳴上「そこで、だ」


鳴上「女性キャストには申し訳なく思うが……」

鳴上「少々色気をメインにしたイベントを開催する」

鳴上「ターゲットは家族連れのお父さん、お兄さんだ」

いすず「色気……ね」

鳴上「もちろんストリップをやれ、という事じゃない」

鳴上「エレメンタリオの様な演目を水着でやって欲しい」

ミュース「そういう事なら……頑張ります!」

鳴上「では、トリケン。 衣装の水着を……」

トリケン「はいっ! このトリケン」

トリケン「全身全霊を込めて前かがみな水着を選択をいたしま」つ(紐ビキニ)

     ズドンッ! ズドンッ! ズドンッ!

鳴上「……各自、用意を頼む」



―――――――――――


さらに数日後の午前中

スプラッシュ・オーシャン管理棟


     テク テク テク

いすず「鳴上くん」

鳴上「いすずか」

鳴上「準備はでき……」

鳴上「!」

いすず「……?」

いすず「何?」


鳴上「あ……いや」

いすず「?」

鳴上「……その水着」

鳴上「というか海賊の衣装、似合っているな」

いすず「!」///

いすず「そ、そう……」///

鳴上「…………」

いすず「…………」///

いすず「え、ええと……ショーの準備は出来ているから」///

鳴上「ああ、分かった」

鳴上「頑張ってくれ」

いすず「ええ」

いすず「気を引き締めて行くわ」



―――――――――――


スプラッシュ・オーシャン地下施設


椎菜「ふわぁ……大きな扉ですね、ジョーさん」

ジョー「ここは、甘ブリの建設当時」

ジョー「メープルランドからの資材搬入を行っていた船の」

ジョー「魔法ゲートであります」

椎菜「そうなんですかぁ……通りで大きいわけですね」

ジョー「はい」

     …ピシッ

椎菜「……ん?」

ジョー「何でありますか?」


椎菜「何か……音がしませんでした?」

ジョー「音? いえ、自分には何も……」

     ズゴゴゴゴゴゴゴゴ……

椎菜「え!?」

ジョー「い、今のは、自分にも聞こえたでありますッ……!」

     プシュッ!

椎菜「!」

ジョー「み、水がッ!?」

     シャアアアアアアアアア……

椎菜「こ、これって……良くないんじゃ!?」

ジョー「さ、さっそく、誰か呼んで来るでありますッ……!」



―――――――――――


スプラッシュ・オーシャン

イベント広場


モッフル「もふっ」

マカロン「ロン♪」

ティラミー「ミー♡」

     ワー モッフルダー!

     マカロンヤ ティラミーモイルー

映子「わぁ~、今日は特別に」

映子「甘ブリの妖精たちが駆けつけてくれたよ~♪」


モッフル「もふもふもふ」

映子「みんな元気だね~」

マカロン「ロンロンロ~ン♪」

映子「僕たちと遊ばない?」

ティラミー「ミーミーミー♡」

映子「きっと楽しいよ~」

映子「って、妖精たちは言ってるよ~?」

     ワー アソブー キャッ キャッ

美衣乃「かき氷はいかがですか~?」

美衣乃「ストロベリー、メロン、ブルーハワイ、レモン味がありますよ~」


舞台裏


鳴上「…………」

鳴上「……そろそろ頃合か」

鳴上「ラオウさん、お願いします」

ラオウ「うむ」

     ボボンッ!

映子「わっ! 何だ何だ~?」

ラオウ「ゲァーハッハッハッハッ!」

ラオウ「何と心地良き場所……」

ラオウ「このラオウが支配するのに相応しき土地よ!」


映子「大変!」

映子「普段は赤竜帝ルブルムのところにいる中ボス」

映子「ラオウが攻めてきた~!」

     キャー! キャー! コワーイ!

モッフル「ふもふもふも!」

マカロン「ロン! ロンロン!」

ティラミー「ミーミーミー!」

映子「そんな事はさせないぞ~!」

映子「妖精たちは激おこプンプン!」

映子「みんな、応援してあげて~!」

     ワー! モッフルー! マカロン! ティラミー!

     ガンバレー!

ラオウ「ぬうううううううううううんッ!!」


     ポコッ カコンッ パコッ

モッフル「ふもぉ~!!」

マカロン「ロ~ン!!」

ティラミー「ミ――!!」

ラオウ「ゲァーハッハッハッハッ!」

ラオウ「所詮、妖精など……この程度よッ!」

映子「ああー! た、大変!」

映子「甘ブリの妖精たちが負けちゃった!!」

     エー! ダメー!

     モッフルー! マカロン! ティラミー!

映子「ど、どうしようー!」


ラティファ「ああ、伯父様達が……!」

ラティファ「これからどうなるのでしょう!?」

トリケン「…………」

トリケン「……あの、ラティファ様」

ラティファ「はい?」

トリケン「今更なのですが……」

トリケン「隠れて見なくてもよろしいのでは?」

ラティファ「し、しかし……」

ラティファ「伯父様に城で大人しくしている様、言われましたし」

ラティファ「それに……」

トリケン「それに?」

ラティファ「な、鳴上様に……その……この水着姿を」///

ラティファ「あまり見せたく無いので……」///


トリケン「いえいえ、何をおっしゃいますか。 ラティファ様」

トリケン「このトリケン、ラティファ様の水着姿に」

トリケン「絶賛 前かがみでございます」

ラティファ「はあ……?」

トリケン「前かがみでございます」

ラティファ「…………」

ラティファ「鳴上様も……喜んでくれるでしょうか?」///

トリケン「はい。 きっと前かがみでございましょう」

トリケン「このトリケン、自信をもって断言いたします」

ラティファ「そ、そうですか……」///

トリケン「あ、ショーの方で、動きがあるようです!」


???「させないわ(棒)」

     エ? ダレー?

映子「この声は~??」

???「この海の平和は、私……(棒)」

いすず「正義の海賊、イス・ズールハが守るのだからー(棒)」

     ポポンッ!

モッフル(……かなりセリフの言い回しがアレだけど)

モッフル(まあ、許容範囲ふも)

映子「わあ! 正義の海賊さんが来てくれたよ~!」

ミュース「みんなー!」

ミュース「私たちも正義の海賊さんを手伝いに来たよー!」

映子「わぁーい!」

映子「エレメンタリオの4人も来てくれた~!」


     ワー! コレデカテルネ!

     ラオウヲヤッツケテー!

いすず「大人しく観念しなさい(棒)」

ラオウ「笑止ッ!」

ラオウ「この程度で臆するラオウではないわぁッ!」

     ポポンッ!

いすず「きゃあー(棒)」

映子「わわわっ!」

映子「ラオウが本気を出してきた~!!」

     ワー 負ケルナー!

鳴上「……よし、いい感じだ」



―――――――――――


スプラッシュ・オーシャン地下施設


     タッ タッ タッ…

レンチくん「おわっ!? こりゃ酷ぇ!!」

     ザザザザザザー…

     ピシッ…… ギギギギギギッ……

ゲンジュウロウ「な、何とかなるでござるか!?」

レンチくん「無理だな」

椎菜「えええっ!?」

ジョー「あ、あっさり諦めすぎでありますッ……!」

レンチくん「んなこと言われても無理なもんは無理だっ!」

レンチくん「今は急いでここを脱出して、大将に知らせるべきだと思うぜ!!」



     ギギギギギギッ!

     ガゴンッ!!


レンチくん「」

椎菜「」

ゲンジュウロウ「」

ジョー「」



     ドバアアアアアアアアアアアアアッ!!!






―――――――――――


スプラッシュ・オーシャン

イベント広場


     キィンッ! カァンッ!

ラオウ「やるではないか! 女海賊よ!」

ラオウ「このラオウとここまでやりあえるとはなッ!」

いすず「そろそろ決着をつけてあげるわー(棒)」

ミュース「お水攻撃!」

サーラマ「炎で目くらましよ」

コボリー「土……が無いから、やっぱり水で攻撃」

シルフィー「お茶目な そよ風こうげきー!!」

映子「正義の海賊たち、一斉攻撃だ~!」

鳴上「……よし、あとは幕引きを」





     ドバアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!




ラオウ「」

いすず「」

ミュース「」

サーラマ「」

コボリー「」

シルフィー「なにごとー!?」

鳴上「」


ラオウ「な……なんだ? あの海賊船は?」

ラオウ「副支配人……このラオウ、何も聞いておらぬぞ?」

いすず「……私も知らないわ」

映子「あ、あれれー!?」

映子「これはいったいどういう事なのかなー!?」

映子「謎の海賊船が出てきたぞー??」


????「ぐふふ……」

????「メープルランドの魔法ゲートの先には、お宝があると思っていたが……」

????「こんなところに繋がっていたのかだゾウ」

モッフル「!!」

モッフル「あ、あいつは……まさかテツヒゲ!?」

マカロン「テ、テツヒゲ!?」

ティラミー「メープルランドの海を荒らし回ってる、大海賊かミー!?」


テツヒゲ「だが……よくよく見れば」

テツヒゲ「手頃な女・子供がたくさんいるゾウ」

テツヒゲ「捕まえて売り飛ばせば、いい金になるゾウ」

テツヒゲ「手下のオットセイ水兵ども!」

テツヒゲ「手当たり次第、捕まえてくるんだゾウ!」

     オウッ オウッ オウッ――!

いすず「! いけない!」

ラオウ「ぬうううううううううううんッ!!」

     オウッ――!??

ラオウ「何がどうなっているのか 分からぬが……」

ラオウ「ゲストの皆様には、指一本触れさせぬわッ!!」


テツヒゲ「ほう……北〇神拳を使うのかだゾウ」

ラオウ「ぬ!?」

ラオウ「……なぜ、うぬはそれを知っておるのだ!?」

テツヒゲ「知れた事だゾウ」

テツヒゲ「2~3年前にリュウケンとかいう流れ者のジジイに教わったからだゾウ」

ラオウ「」

いすず「……知り合い?」

ラオウ「ええい! あのくそジジイ!」

ラオウ「魔法の国で何をしでかしておるのだァッ!?」

テツヒゲ「そういうわけで」

テツヒゲ「お前の拳は、このテツヒゲに通じないゾウ」

ラオウ「!!」

いすず「手の内を読まれる……という事ね」


テツヒゲ「魔法の国の住人に経絡秘孔はないからだゾウ」

ラオウ「…………」

いすず「……もっと根本的な理由だったわね」

     オウッ オウッ オウッ

     ワー キャー

モッフル「ともかく、応戦するふも!」

マカロン「わかったロン!」

ティラミー「地獄を見せてやるミー!」

テツヒゲ「ほう……これはこれは、ご同輩だゾウ」

テツヒゲ「どうだゾウ? こっちに付かないかだゾウ?」

テツヒゲ「仲間になれば、捕まえた女を好きにしていいゾウ」


モッフル「そんな事するかふも!」

マカロン「最後まで戦うロン!」

ティラミー「…………」


海賊ティラミー「お前たち! 抵抗は無意味だミー!」


モッフル「」

マカロン「」

モッフル「ティラミー!?」

マカロン「あいつ、あっさり裏切りすぎだロン!」

     ワー キャー  ワー キャー

鳴上「くっ! ゲストの安全を最優先に!」

     オウッ オウッ オウッ!

鳴上「うわっ!?」



     ザブンッ! ゴオオオオッ……


いすず「鳴上くん!!」

ラオウ「支配人代行ッ!!」


トリケン「はわわ……ラティファ様、ここは危険です!」

トリケン「早く安全なところへ逃げましょう!」

ラティファ「は、はい!」

     オウッ オウッ オウッ!

トリケン「ひいいっ!?」

トリケン「すでに囲まれているぅ!!」


いすず「このっ!」

ラオウ「ぬうううわあああああッ!!」

モッフル「ふもふもふも!」

マカロン「ローンッ!!」


テツヒゲ「そこまでだゾウ」


いすず「えっ!?」

テツヒゲ「ふふふ……まさか、こんなところで姫様を捕まえられるとは、思わなかったゾウ」

ラティファ「い、痛っ……」

いすず「ラ、ラティファ様!!」

ラオウ「ぬうッ……!」

モッフル「くっ……!」

マカロン「万事休すロン……!」



―――――――――――


鳴上「…………」

鳴上「……う」

鳴上「…………」

鳴上「ここは?」

ヤン「気がつきましたか、支配人代行」

鳴上「ヤンさん? というか、ここは……」

ヤン「スプラッシュ・オーシャン地下施設の一室です」

ヤン「私は、モグート族の皆さんに連れてこられまして……」

ヤン「大変な事が起こったみたいですね」


鳴上「ええ……」

鳴上「! そうだ、いすず達はどうなったんですか!?」

ヤン「今、説明します」

―――――――――――

ヤン「――という感じで」

ヤン「怪我人などは居ないみたいですが、あの場にいたゲストを含め」

ヤン「全員が捕まってしまいました」

鳴上「そうですか……ラティファまで……」

ヤン「ただ、ゲストの皆さんはイベントの一部と勘違いしているみたいで」

ヤン「事態の深刻さに気がついていないみたいです」

鳴上「それは幸い……と言っていいのか、わかりませんね」

ヤン「この場合は、人質として使われる可能性もありますから」

ヤン「冷静でいられる分、よし、としておきましょう」


鳴上「さて……どうするべきか」

ヤン「なに、やり方はいくらでもあります」

鳴上「……え?」

ヤン「彼ら、テツヒゲ一家はここの地理に詳しくありませんし」

ヤン「おまけにもう勝ったつもりで宴会まで初め、油断しています」

ヤン「それに、一番手ごわいのは首領のテツヒゲ本人だけで」

ヤン「残りのオットセイ水兵?は、大した力を持っていません」

ヤン「ゲストの皆さんやラティファさん達に怪我がない様、気を遣うという事以外で」

ヤン「難しく考えるものは無いでしょう」

鳴上「はあ……」



―――――――――――


イベント広場


テツヒゲ「ガッハッハッ! さあお前ら、大いに飲むんだゾウ!」

     オウッ――!

映子「最高だぜ、テツヒゲのお頭ー!」

美衣乃(英子さん、どうして動物っぽい人たち?の言葉)

美衣乃(わかるんだろう??)

テツヒゲ「ほら、酒をどんどん注ぐんだゾウ」

ラティファ「は、はい……」

いすず「……っ。 ラティファ様……!」

     オウッ オウッ オウッ♪

ゲスト「いやーとっても凝った演出ですねー♪」

マカロン「ロ、ロン♪」


マカロン(モッフル! どうすればいいロン!?)

モッフル(今は、どうしようもないもふ……)

モッフル(とにかく、何か動きがあるまで待つふも!)


テツヒゲ「さぁ~て……そろそろ余興を始めるとするかゾウ」

     オウッ――!!

テツヒゲ「ふんっ!」

     ポスッ パスッ ペスッ

いすず「!」

ミュース「!」

サーラマ「!」


テツヒゲ「お前らが余興の受刑者だゾウ」

テツヒゲ「おい、新入り。 お前が刑の執行をやるんだゾウ」

海賊ティラミー「え!? ボ、ボクが!?」

―――――――――――

     オウッ オウッ オウッ♪

     オウッ オウッ オウッ♪

映子「バ・ン・ジー♪ バ・ン・ジー♪」

美衣乃「ノ、ノリノリですね……映子さん」


高飛び込み台 最上階


ミュース「ひ、ひいいっ! し、下のアレって何なの!?」

     ウジュル……ウジュル……ウジュル……

テツヒゲ「グッフッフッ……ヌルヌルの魔法生物の触手だゾウ」


テツヒゲ「安心しろ。 死ぬ事はないゾウ」

テツヒゲ「それに気持ち悪いのは、最初だけだゾウ」

ミュース「い、いやああああああっ!!」

海賊ティラミー「ささっ、ミュースちゃん。 諦めて落ちるミー」

ミュース「ティ、ティラミーさん!? ふざけてないで、助けてくださいっ!」

海賊ティラミー「ボクもそうしたいんだけど……」

ミュース「だ、だったら……」

海賊ティラミー「えいっ」 トンッ

ミュース「」

     キャアアアアアアアアアアア……

     ウジュル ウジュル ウジュル

ミュース「ひいいいいいいいっ!」

ミュース「いやあっ! 気持ち悪……んんっ!?」


テツヒゲ「ガッハッハッ! いい声で鳴いているゾウ♪」

男性ゲスト1「うおっ……あんな可愛い娘がヌルヌルの触手にっ」

男性ゲスト2「まさか、こんなエロい姿を生で見られるとはっ!」

  ※注 画像をお見せできないのが残念です

テツヒゲ「さー次を落とせゾウ」

海賊ティラミー「アイアイサーだミー!」

サーラマ「…………」

海賊ティラミー「そういうわけで、サーラマちゃん、ごめんだミー」

サーラマ「……後で覚えておきなさいよ」 ゴゴゴ…

海賊ティラミー「そ、そんな目で睨んでも、怖くないミー!」

     ドンッ!


サーラマ「……火の精霊は」

サーラマ「伊達じゃないんだからね!!」

     ゴオオオオオオオオッ!

ミュース「サ、サーラマぁ……」 ウルウル…

サーラマ「ふんっ……ざっとこんなものy」

     ウジュル! ウジュル! ウジュル!

ミュース「え!?」

サーラマ「さ、再生した!?」

ミュース「きゃあああああああああっ! さっきよりも激しいっ!?」///

サーラマ「くっ、このっ……ああっ! い、いや、ダメ、そこはっ……!」///

     キャアアアアアッ……

テツヒゲ「グッフッフッ……攻撃すると、余計に張り切るんだゾウ」


海賊ティラミー「あちゃー……可哀想に」

海賊ティラミー「さ、次はいすずちゃんの番だミ……」

     コトッ……(足音)

いすず「…………」 ゴゴゴ…

海賊ティラミー「そ、そんな目で睨んでも、怖くないミー」

     コトッ…… コトッ……

いすず「…………」 ゴゴゴゴゴゴ……

海賊ティラミー「こ、怖くなん、か……」

     コトッ…… コトッ……

いすず「…………」 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

ラオウ「……ぬう。 何という凄まじき闘気!」

ラオウ「このラオウに匹敵するやもしれぬッ……!」


テツヒゲ「……全く。 何をやっているんだゾウ」

テツヒゲ「どれ……」 スクッ…


ヤン(……テツヒゲがラティファさんから離れた!)

ヤン(今です! 支配人代行!)

鳴上(わかりました)



     ペ  ル  ソ  ナ !!



テツヒゲ「むっ!? 何事だゾウ!?」

鳴上「イザナギ!」 ジオ!


     ババババババババッ!!

テツヒゲ「ぐあああああああっ!?」

ヤン「よし。 作戦開始の合図を」

ヤン「モグート第一部隊、予定通りゲストの安全を確保」

ヤン「第二部隊、第三部隊、オットセイ水兵のかく乱及び、捕獲を」


モグート族「ワ―――――――――――!!」


     オウッ!? オウッ!? オウッ!?


映子「マンホールから敵が出てきたー!?」

モッフル「ふもっ! チャンス到来ふも!」

マカロン「今だロン!」

     バキンッ!(拘束具解除)

     ワー ワー ワー!!


鳴上「大丈夫か! ミュース! サーラマ!」

ミュース「な、鳴上さんっ……」///

     ファサッ…

鳴上「とりあえず、このタオルを……遅れて済まなかった」

サーラマ「……ありがとう」///

鳴上「コボリー、シルフィー。 二人を医務室に」

コボリー「わかりました」

シルフィー「ガッテン承知の助!」


映子「ここで形勢大逆転だー!」

映子「正義の海賊さん達、がんばれー!」


テツヒゲ「くっ……! こうなったら、船に戻って」

     ドスッ ドスッ ドスッ

??「……ふふふ。 部下を置いてどこへ行く?」

テツヒゲ「誰だゾウ!?」

ゼロ「貴様の船はすでに制圧されている!」

ゼロ「日本国に明日をもたらす……我ら、黒の騎士団によってな!」

テツヒゲ「な、何だとうだゾウ!?」


モッフル「……あいつ、誰ふも?」

マカロン「僕も知らない奴だロン……」

椎菜「声と体格からして、ルルさんだと思いますが……」

美衣乃「黒の騎士団って……どう見てもタラモさん達しか居ませんけど」

ティラミー「ノリノリのコスプレまでして中二病全開だミー……」


テツヒゲ「ぬうううう……」

ゼロ「大人しく降伏するのだ。 テツヒゲとやら」

ゼロ「ここの支配人代行は、慈悲深いお方だぞ?」

テツヒゲ「…………」

テツヒゲ(……慈悲深いか)

テツヒゲ(ならば、ここは大人しくして機会をうかがい)

テツヒゲ(いずれ出し抜いてやるまでだゾウ) …ニヤリ

ゼロ「…………」

テツヒゲ「……わかった。 降参だゾウ」

     カランッ…(武装解除)

いすず「……ふう。 どうやら、何とかなったみたいね」


ティラミー「いやー、一時はどうなる事かと思ったけど」

ティラミー「何とかなったミーね☆」

ティラミー「んじゃ、ボクはこれで……」

     ガシッ

いすず「……どこへ行くつもりかしら(低音)」

ティラミー「イタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタッ!!?」

―――――――――――

ラティファ「い、いすずさーん。 お手柔らかにー……」

いすず「心得ております、ラティファ様」

いすず「……ティラミー。 何か言い残す事は?」

ティラミー「ごめんなさいだミー……ちょっと魔が差しただけだミー……」 ウルウル…☆

ミュース「ふーん。 そうなんですかぁ……(棒)」

サーラマ「じゃ、あたしらも魔が差したってことで」



     ドンッ!


     アイエエエエエエエエエッ!!


     ウジュル ウジュル ウジュル


鳴上「……そうか。 元の状態に戻すのは、そんなに金が掛かるのか」

レンチくん「しかもざっと見て、だ……」

タラモ「時間的にも相当かかるモグ……」

鳴上「……ふう」

鳴上「聞いての通り、こちらは大損害だ」

鳴上「部下のオットセイ水兵?共々、少なくとも夏の間は」

鳴上「タダ働きをしてもらう」


テツヒゲ「……寛大な処置、感謝するゾウ」

     オウッ…

鳴上「では、詳しい仕事内容は、ここの責任者である」

鳴上「ゲンジュウロウとジョー達に聞いて仕事に励んでくれ」

テツヒゲ「わかったゾウ」

鳴上「ゲンジュウロウ、ジョー。 しっかり見てやってくれ」

ゲンジュウロウ「わかったでござる!」

ジョー「じ、自分ッ……! 精一杯、頑張るでありますッ……!!」

     スタ スタ スタ…

ラティファ「あ、あの……鳴上様」

鳴上「ラティファ? 大丈夫か? どこか痛むのか?」

ラティファ「い、いえ……その……私はご迷惑をおかけしたので」


鳴上「…………」

鳴上「……そうだな」

ラティファ「すみませんでした……」

鳴上「ラティファのせいじゃない」

ラティファ「でもっ!」

鳴上「なら……紅茶を飲みたくなったから、入れてくれないか?」

鳴上「最高の一杯を頼む」

ラティファ「!」

ラティファ「…………」

ラティファ「はいっ! 鳴上様!」


鳴上「ヤンさんもご一緒にどうですか?」

鳴上「彼女の紅茶は絶品です」

ヤン「美味しい紅茶と聞いては、断る理由はありませんね」

ヤン「いただきます」

ラティファ「あ、それならいすずさんや他の皆さんの分も用意しますね!」

鳴上「頼む」


―――――――――――


夜 パーク閉園後

海賊船付近


テツヒゲ「ふー……えらい目に会ったゾウ」

テツヒゲ「それにしても監視も緩いし、とんだ甘ちゃんばかりだゾウ」 クックックッ…

??「……あの」


テツヒゲ「ん? お前は……誰だゾウ?」

ルル「いえ、昼間の勇姿を見て、すごい方だと思いまして」

テツヒゲ「ほう! グッフッフッ……おだてても何も出ないゾウ」

ルル「それで、ですね……」

テツヒゲ「ん?」



     我  に  従  え !!



テツヒゲ「」

ルル(ふふふ……善良な支配人代行や姫君の目は欺(あざむ)けても)

ルル(この俺の目はごまかせんぞ、悪党め)


ルル「いいか、テツヒゲ」

ルル「これからのお前は誰かの笑顔に喜べ」

ルル「その笑顔を守り、悪行を憎み、これまでの行いを反省して」

ルル「真面目に仕事をするのだ」

ルル「貴様の部下ともども労働に喜びを感じ……」

ルル「陽の当たるまっとうな道を歩め。 以上だ」


テツヒゲ「」


ルル(……これでいい)

ルル(このパークの平穏は、この俺が陰ながら支えよう)

ルル(我が望み、我が野望の為に……!)

ルル(…………)

ルル(……あの日から俺は、嘘をついてばかりだな)



―――――――――――


占いの館 長鼻


モッフル「イゴール、いったい何ふも?」

モッフル「内密に話をしたいと聞いたふもけど……」

イゴール「…………」

イゴール「……そうでございますな」

イゴール「まずは……モッフル卿にお礼を申し上げます」

モッフル「お礼?」

イゴール「本日のメープル城探索の件にございまする」

モッフル「……やはり、その事ふもか」


モッフル「付き添った部下の報告では」

モッフル「特に何の進展も無いように見えたと聞いたふも」

イゴール「収集したデータを調べねば、何もわかりませぬゆえ」

イゴール「お調べした時点では、そう見えたのでしょう……」

モッフル「…………」

モッフル「……結論を言って欲しいふも」

イゴール「…………」

イゴール「メープル城内をお調べした結果……最上階の」



イゴール「ラティファ姫君の部屋に、何らかの異常がある事が判明いたしました」



モッフル「!!」


モッフル「…………」

イゴール「…………」

モッフル「異常……とは、どんな事ふも?」

イゴール「……残念ながら、そこまでは」

イゴール「ただ……残留する『何か』は」

イゴール「我々で言う【シャドウ】や、糧の精製前の負の意識に近いものがあり」

イゴール「理由は不明ながら、一連の事象に大きく関係している可能性が……」

モッフル「御託はいいふも」

モッフル「おま……イゴールはどうしたんだふも?」

イゴール「…………」


イゴール「単刀直入に申し上げましょう」

イゴール「ラティファ姫君のお体を、検査させていただきたいのでございます」

モッフル「…………」

イゴール「……もちろんご心配でしょうから」

イゴール「今回の様に人を付けてもらっても構いませぬ」

イゴール「それをモッフル卿自身がおやりになられても差支えありません」

イゴール「どうか……」

モッフル「……イゴール」

イゴール「…………」

モッフル「…………」

モッフル「少し……」

モッフル「少し、考えさせてくれふも」

イゴール「……わかりました、モッフル卿」

モッフル「あと……この事、小僧には隠しておいて欲しいふも」


イゴール「え……?」

イゴール「しかし、モッフル卿……」

モッフル「頼む、イゴール」

モッフル「僕に……少し時間をくれふも!」

イゴール「…………」

イゴール「……致し方ありませぬな」

イゴール「ならば少々の間、お待ち致しましょう」

モッフル「感謝するふも、イゴール」

モッフル「それじゃ……」

イゴール「…………」


マーガレット「……よろしいのですか? 我が主」

イゴール「さて……な」

イゴール「モッフル卿の反応を見る限り……」

イゴール「どうやらお客様にも知らせていない『何か』が」

イゴール「ラティファ姫君にはある様子……」

マーガレット「…………」

イゴール「いずれにしても」

イゴール「準備はしておかなければ……な」

マーガレット「わかりました」

イゴール「…………」

イゴール「大事にならねば良いのだが……」

マーガレット「…………」



―――――――――――


モッフルの部屋


モッフル「…………」

モッフル(……どうするふも)

モッフル(考えるまでもなく、イゴールに見てもらった方がいいのは)

モッフル(わかっているふも)

モッフル(…………)

モッフル(……でも)

モッフル(おそらく、ラティファの秘密もバレてしまうふも)

モッフル(それだけは……それだけは……)

モッフル(……それだけはっ!)

モッフル(…………) ギリッ…!





     パーク閉園期限まで

      あと残り 17 日



     必要来園者数

       144598 人






―――――――――――

―――――――――――


鳴上「追求」

いすず「考察」


鳴上・いすず「二次創作ー」


     パチパチパチ


いすず「今度はコード〇アスとのクロスね」

鳴上「……もうその辺りは諦めた方がいいと思う」

いすず「はっきり言って、彼に事情を話して」

いすず「ギ〇スでゲストを呼んで貰った方がてっとり早くていいと思うわ」

鳴上「今までの努力が台無しになるから絶対にダメだ」


鳴上「本題に入ろう」

鳴上「甘ブリのアニメを見た人は気が付いているかもしれないが」

鳴上「今回と前回の話、順番が入れ替わっているな」

いすず「思わせぶりな事をしているように見えて」

いすず「『あ……勘違いしてた』というオチだと思うわ」

鳴上「>>1の言い分では」

鳴上「話の都合上、時期的におかしくなるから、だそうだ」

いすず「そんなもの、得意のご都合主義で何とでもなるでしょうに」

鳴上「アニメでは7月なり、プール開きでゲストが増え」

鳴上「これから、という大事な時に風邪をひいて陣頭指揮が取れなくなっている」

鳴上「俺たちの話ではスタートダッシュが遅れ、アニメより動員数が伸びていないから」

鳴上「いくら何でも致命的にまずいと思ったのだろう」


いすず「なるほど。 確かに説得力があるわ」

鳴上「ようやくわかってくれたか……」

いすず「けど、そろそろ>>1の本性が現れてきたわね」

鳴上「何を言っている?」

いすず「私は難を逃れたけど」

いすず「ミュースとサーラマが触手に陵辱されていたわ」

鳴上「……ある意味お約束の展開だろう?」

鳴上「SAOでもア〇ナが餌食になっていたし」

いすず「いずれ菜々子ちゃんも触手の餌食に……」

鳴上「よし、>>1をこ〇そう」

いすず「……あ。 本編の話をし忘れた」

というところで今日はここまでです。
遅れに遅れてまことにすみません……。
しかも今回は出来たてホヤホヤを投下してます。
次回がまったく出来ていません……
あとは……察してください。お付き合いありがとうございました。

どうでもいいけど誠也が内山で鳴上が浪川だな、ユニコーンを思い出してしまった

>>848
アルバイト面接の時に>>483のエピソードを入れてたのですが
誰にも突っ込んでもらえず、寂しい思いを……w
ちなみに滝川吉野(絶園のテ○ペスト)は、中の人が同じです。



―――――――――――


翌日の午前中

甘城駅


花村「よっしゃ! やっと来たぜ!」

雪子「さすがに遠かったね……」

里中「どうする? 先に直斗くんの部屋に向かう?」

完二「っスね。 荷物もあるし」

花村「何言ってんだよ! 先に甘ブリへ行くに決まってんじゃねーか!」

完二「……なんか、異様にテンション高いっスね、花村先輩」

里中「どうせ女の子が~とかいう くだらない理由っしょ」

雪子「やっぱり先に荷物を置いてからにしようよ、花村くん」


花村「えー!? 直斗の部屋は甘ブリの先にあるんだし」

花村「バス代、余計にかかるじゃねーかよ!」

里中「大した額じゃないでしょ?」

雪子「そのくらいは必要経費だと思うな」

完二「長旅で疲れているし、少し休憩入れた方がいいっスよ」

花村「……くっ。 しかたねーなぁ」

花村(巨乳美少女ちゃんは、少しの間おあずけか……)

里中「じゃ、さっそくバス停に行こう!」

雪子「うん、千枝」

完二「ほら、行くっスよ、花村先輩」

花村「ああ、わかってるよ」


     ブロロロロロロ……

花村「……ん?」

里中「どうしたの? 花村?」

花村「いや……このバスの路線図」

花村「悠の言ってた状況と違うな、と思って」

雪子「え……?」

雪子「あ、ホントだ。 甘ブリは確か『西太丸』ってバス停で降りるんだよね?」

完二「『西太丸』自体が無くなってる……」

雪子「代わりに『太丸』ってバス停があって、その次が甘ブリになってるね」

花村「以前言ってた、バス停の名称変更が終わったのか」

雪子「という事は……いい方向になっている、という事だよね?」

花村「だな!」



―――――――――――


甘ブリ 事務棟


ワニP「たたたたたた、大変だっピー!!」

モッフル「どうしたふも? ワニP」

ワニP「こ、この前、芸能界復帰コンサートを行った、久慈川りせこと りせちーが……」

ワニP「お忍びでここに来てたっピー!!」

マカロン「ほ、本当かロン?」

ワニP「何日か前、ブログ日記に載っていたんだけど……」

ワニP「フォロワーの何人かが、掲載されてた少ない画像から」

ワニP「ここだって断定したっピー!!」

鳴上(……ついに来たか!)



     タッ タッ タッ


いすず「鳴上くん、大変よ!」

鳴上「どうした? いすず?」

いすず「今、いくつかのテレビ局から取材をさせて欲しいって、連絡があったわ!」

鳴上「!!」


一同「!!」


いすず「どうする? 鳴上くん」

鳴上「わかった、俺が対応する」

鳴上「みんなはいつも通り仕事をしていてくれ」


マカロン「テレビかぁ~」

マカロン「これはいい宣伝になるロン!」

ティラミー「たぶんりせちーのブログ関連で食いついたっぽいミーね」

ワニP「それよりもまた りせちーに来て欲しいっピー!」

     アハハ……

モッフル「…………」

マカロン「……モッフル? どうしたロン?」

ティラミー「嬉しくないのかミー?」

モッフル「……何でもないふも」

モッフル「仕事に行くふも」

     キュム キュム キュム…

マカロン「……?」

ティラミー「変なモッフルだミー」



―――――――――――


甘ブリ 正面ゲート付近


     ガヤ ガヤ

花村「おー。 結構賑わってるな」

里中「聞いてた感じより、ずいぶん良くなってる?」

雪子「でも、ちょっと古さは否めないかな……」

完二「……お?」

完二「今、入場無料キャンペーンやってるって書いてあるっスよ」

花村「無料か……思い切った事をしたな」

里中「花村?」


花村「昔から言うだろ?」

花村「”タダほど高いものはない”って」

雪子「ああ……」

雪子「私も旅館の経営を多少知っているから、わかるよ」

雪子「行き過ぎた無料サービスは、かなりの負担になるんだよね……」

里中「って事は……やっぱり厳しい状況って事?」

花村「あくまで推測だが……」

花村「いよいよ なりふり構まってられなくなっているって、とこだろうな」

完二「何言ってんスか! 先輩!」

完二「きっと、鳴上先輩には考えがあるっスよ!」

雪子「とりあえず入って、どんな様子か見てみようよ?」

里中「そうだね! それにしても遊園地なんてずいぶん久しぶり~」



―――――――――――


直斗「花村先輩!」

完二「な、直斗!」///

直斗「ああ、巽くん、久しぶりですね」 ニコッ

完二「お、おうっ。 お前も……元気そうだな」///

里中「おおー! その制服 似合ってるね、直斗くん」

雪子「うん、とっても!」

花村「へぇ~。 こうやってスカート姿ってのも新鮮だし」

花村「やっぱ女の子なんだなって思うぜ、直斗!」

直斗「ど、どうも……」///


直斗「荷物は置いて来られたんですか?」

花村「ああ。 地図と鍵は郵便で貰ってたから、置いてきたぜ」

雪子「迷わずに行けたよ」

花村「で、悠の奴はどこに居るんだ?」

直斗「こちらの事務棟で待っています」

完二「クマの奴はどうしてんだ?」

直斗「最近、彼の人気も上がっていて引っ張りだこなんです」

直斗「まあ……暇さえあればプール系アトラクション、スプラッシュ・オーシャンに」

直斗「入り浸っていますけど……」

里中「……相変わらず欲望に正直みたいだね」

直斗「それでは案内します。 付いてきてください」

花村「おう! 頼むぜ!」


事務棟


鳴上「陽介!」

花村「悠!」

里中「久しぶり、鳴上くん!」

雪子「手伝いに来たよ♪」

完二「雑用でも何でもやりますぜ! 鳴上先輩!」

鳴上「みんな……ありがとう」

花村「へへっ! いまさら気にすんなよ!」

いすず「…………」

鳴上「ああ、いすず。 今 紹介する」

鳴上「八十稲羽でできた、心強い仲間たちだ」


鳴上「こちらから名前を里中千枝、天城雪子、巽完二、花村陽介という」

一同「よろしくー」

鳴上「後で手続き等を頼む」

いすず「わかったわ」

鳴上「で、みんな。 彼女は俺の専属秘書兼、福支配人の千斗いすずという」

いすず「よろしく」

里中「…………」

里中(……何このありえない大きさの胸)

雪子「…………」

雪子(こんなに可愛いくて、美人な娘が……秘書?)

里中「……よろしく」

雪子「……よろしく」


花村(うひょー♪)

花村(間近に見ると、さらに迫力の巨乳だぜ!)

花村「よろしく! えっと……いすずちゃん、でいいかな?」

いすず「どうぞ」

花村「うっしゃあ!」

里中「何ガッツポーズとってんの? 花村」

雪子「そういう気分なんじゃない?」

完二「俺は……いすずさんっスかね?」

いすず「あなたは……確か直斗くんと同い年よね?」

いすず「なら、私とも同い年だわ」

完二「そっか。 ならいすずでいいか?」

いすず「構わないわ」


花村「なっ!?」

花村「じゃあ俺もいすずって呼ぶ!」

里中「花村……」

雪子「ごめんね、いすずちゃん」

いすず「いえ、気にしないで」

いすず「クマくんで慣れたわ」

花村「俺とあいつが同レベル扱い!?」

     ハハハ……

鳴上「変わらないな、陽介」

花村「いきなり面食らったぜ……」

鳴上「そういえばジュネスの方は……」

鳴上「!!」


花村「ああ、そっちは心配しないでくれ」

花村「今年は事前のバイト募集に応じてくれた奴が結構いてな」

花村「去年みたいな事はねぇよ」

鳴上「…………」

里中「ん?」

雪子「どうしたの? 鳴上くん?」

鳴上「……そうだ、ジュネス」

完二「は?」

鳴上「ジュネスがあった!!」

いすず「ど、どうしたの? 鳴上くん」


鳴上「すまないがいすず。 後の事は任せる」

鳴上「陽介、ありがとう!」

花村「お? おう……」

     タッ タッ タッ…

いすず「…………」

花村「…………」

里中「…………」

雪子「…………」

完二「…………」

里中「ねえ、花村……鳴上くん、ジュネスがどうのって言ってたけど、わかる?」

花村「いや、さっぱりだ」

花村「何か思いついた、って感じだが……」

いすず「…………」



―――――――――――


     ブロロロロ…

鳴上「トリケン、突然すまない」

トリケン「いえ……それはいいのですが」

トリケン「ジュネス本社へ行くのは どういったご要件なのですか?」

トリケン「それにその荷物は?」

鳴上「用事の事は詳しく話せないが、荷物はヤンさんの着ぐるみだ」

トリケン「例の魔法の肉襦袢(にくじゅばん)ですか」

鳴上「高校生が交渉に立っても相手にされない事が多くてな……」

鳴上「本人に了解を得て作らせてもらった」

トリケン「なるほど」


鳴上「ララパッチのお守りはちゃんと持ってきたか?」

トリケン「はい。 この通り」つ(ララパッチのお守り)

鳴上「よし」

鳴上(……上手く行くといいが)

     ブロロロロ…


―――――――――――


ジュネス本社 玄関ロビー付近


トリケン「初めまして」

トリケン「私はこういう者ですが……」つ(名刺)

受付「甘城ブリリアントパーク……広報部長様でございますか」


受付「どういったご要件なのでしょうか?」

ヤン上「突然の来坊ですみませんが……」

ヤン上「そちらの経営陣のお方と是非お話をしたく」

受付「ご予約等はございますでしょうか?」

トリケン「申し訳ございません」

トリケン「残念ながら本日初めてお伺いさせていただきましたので……」

受付「左様でございますか」

受付「残念ですが、こちらも予定がございますので」

受付「ご予約の無いお方をお通しするわけには……」

ヤン上「はい。 よく分かっております」

ヤン上「ですので、今回は顔見せ、という事で寄らせていただきました」


ヤン上「誠にお手数なのですが」

ヤン上「この書類を経営陣のどなたでも構いませんので」

ヤン上「お渡し願えるとありがたいです」つ(書類)

受付「はい。 確かに承りました」

トリケン「アポイントメントもぜひお願いいたします」

受付「はい。 その様にお伝えします」

トリケン「では、これで失礼します」

ヤン上「失礼します」

受付「はい」


―――――――――――


     ブロロロロ…

トリケン「……あれでよろしかったので?」


鳴上「相手に何かを頼む時」

鳴上「ゴリ押しや必死に懇願するのは逆効果だ」

トリケン「と、おっしゃいますと?」

鳴上「例えば……」

鳴上「ティラミーが20万円貸してくれ!と、必死の形相で懇願してきたら」

鳴上「トリケンはそれに応じるか?」

トリケン「……そりゃあ、まあ……貸すと思いますよ?」

鳴上「では逆に」

鳴上「相談なんだけど、20万円貸して欲しいと頼んできたら」

鳴上「トリケンはどう思う?」

トリケン「う~ん……ティラミーさんの事ですから少々疑ってしまいますが」

トリケン「先程よりは、軽い気持ちで貸せるかもしれませんね」


鳴上「この辺りは人間関係もからんでしまうから、一概に言えないが」

鳴上「こと、ビジネスにおいては『余裕のある相手』と取引をしたくなる傾向がある」

トリケン「ほう……初耳ですね」

鳴上「甘ブリの経営は余裕があるとは言えないが」

鳴上「交渉の第一歩として『余裕のある態度』を相手に見せてきた」

鳴上「まずはこれを足がかりに、こちらのペースへ乗せていく」

トリケン「このトリケンには全くわからない理屈ですが」

トリケン「鳴上支配人代行はいつも深いところを読んでいるのですね」

トリケン「思わず前かがみです」

鳴上「ははは」

鳴上「…………」

鳴上(後は……例のテレビ報道を見てくれるかどうか)



―――――――――――


翌日の午前中

甘ブリ 正面広場


レポーター「見てください!」

レポーター「最近、人気急上昇中の甘城ブリリアントパークです!」

レポーター「ネットで、あの人気アイドルりせちーがお忍びで訪れたという噂も手伝って」

レポーター「訪れる人がかなり増えたと、園内関係者も嬉しい悲鳴を上げているそうです!」


モッフル「ふもふもふもっ」


レポーター「わあ、可愛い!」

レポーター「この甘城ブリリアントパークの看板マスコットのモッフルが」

レポーター「挨拶に来てくれました!」



―――――――――――


いすず「鳴上くん」

いすず「ジュネスから、ぜひ話をしたいと連絡があったわ」

鳴上「そうか」

鳴上(思ったより早かったな……)

鳴上「トリケン、いすず、ジュネスに向かうぞ」

トリケン「わかりました」

いすず「わかったわ」



―――――――――――


ジュネス本社ビル 応接室


??「ようこそ、おいでくださいました」

??「私はジュネスの専務でございます」

専務「以後お見知りおきを」

トリケン「これはご丁寧に……私、広報部長のトリケンと申します」

トリケン「こちらは、アドバイザーと部下の人間になります」

トリケン「どうぞ、よろしくお願いいたします」

ヤン上「よろしくお願いします」

いすず「よろしくお願いします」

専務「それでは早速ですが……単刀直入に言いましょう」


専務「弊社がご提示なされた提案……土地の売却とその後の限定使用方法」

専務「興味はございますが、いささか度が過ぎる要求のように思えます」

トリケン「……え? 土地の売却?」

専務「知らなかったのですか?」

トリケン「! い、いえ……その様な事は」

専務「……では、話を続けますが」

専務「従来は買っていただくお客様に要求などしないものです」

トリケン「…………」

専務「さらに売却金額ですが……」

専務「こちらも相場より少々お高い様に思えるのですが?」

トリケン「は……ま、まあ、相場……ですかねぇ」


ヤン上(…………)

ヤン上(……なるほど。 要求を飲んで欲しかったら、安くしろ、と言いたいのか)

ヤン上(だが……)

ヤン上(この話に興味を持った時点で、こちらの勝ちだ)


専務「当方としましては、もう少し検討を重ねた上で判断したいのですが……」

トリケン「え!? い、いや、あのですね……」

ヤン上「そうですか。 それならば致し方ないですね」

トリケン「!?」

いすず「!?」

専務「……ほう?」


トリケン(ちょっ、ちょっと支配人代行!)

トリケン(売却とか私、聞いてないですよ!?)

トリケン(それに断られてもいいんですか!?)


ヤン上「突然失礼しました」

ヤン上「私は支配人の命を受け、代弁者として全権を委任されています」

専務「そうでございますか」

ヤン上「当社としたしましては、弊社の各店舗状況・経営状態」

ヤン上「更にはお客様に対する真摯な姿勢等を考慮し、適正価格を提示したのですが」

ヤン上「お気に召さないのなら、このお話は無かった事にしてもらっても結構です」

トリケン「」

いすず「」

専務「……いきなりなお言葉ですな」


ヤン上「こちらとしても残念です」

ヤン上「八十稲羽店で行われた地域との共存を目指す方針は」

ヤン上「あの店舗だけだった様ですね」

専務「…………」

トリケン(し、支配人代行! 言いすぎなのでは!?)

いすず「…………」

ヤン上「トリケン広報部長」

ヤン上「次の候補に向かいましょう」

専務「!」

トリケン「え!? い、いや、しかし……」

いすず「トリケン広報部長のジュネスを押す気持ちは分かりますが……」

いすず「致し方ありません」


ヤン上「お手間を取らせました」

ヤン上「失礼します」

専務「…………」

専務「……次、と言いましたが」

専務「どこでしょうか?」

ヤン上「すみませんがお答えしかねます」

ヤン上「それでは」

     スタ スタ ス…

専務「ま、待ってくれんかね!」

ヤン上「まだ何か?」

専務「昨日テレビで見たが……久慈川りせは、今後もそちらのパークを訪れると思うか?」

ヤン上「それは何ともお答えしかねますが……」


ヤン上「もしかしたら、来ていただけるかもしれません」

専務(…………)

専務(ふむ。 やはり何らかの繋がりが……?)

専務「……もう一度お話を伺えませんか?」

ヤン上「…………」

ヤン上「わかりました」


―――――――――――


     ブロロロロ…

トリケン「いやはや……寿命が縮みましたよ」

鳴上「すまないな」


トリケン「とりあえず交渉は上手く行きましたが……」

トリケン「結構な譲歩をさせられた気がしますね」

鳴上「そういうのも込みで、ちゃんと金額を提示してある」

鳴上「商売の基本だが……本当に欲しいものは欲しそうな顔をしない事」

鳴上「そして狙っている金額は最初に提示しない、というのが鉄則なんだ」

いすず「……というと?」

鳴上「例えば……俺がいすずの持ち物の一つを欲しがっているとして」

鳴上「それがわかったら、いすずはどうする?」

いすず「モノにもよるけど……高く売りつけられるチャンスと思うわ」

鳴上「それを悟られない様に複数のモノをまず要求する」

鳴上「まとめ買いすれば、意図を隠した上で欲しいものごと、安く買いやすい」

いすず「……たくさん買ってくれるなら、安くして、という要求も」

いすず「つい聞いてしまいそうね」


いすず「値段の金額は?」

鳴上「本当に売りたい金額より高く設定すれば」

鳴上「交渉に応じて値段を下げやすいからな」

鳴上「例えば10万円欲しかったとして、その金額をそのまま要求しても」

鳴上「全額手に入る可能性は低いが……」

鳴上「最初に20万円くれ、と言って断られたら、じゃあ18万円、じゃあ15万円、と」

鳴上「値段下げていき、目標の10万円を貰いやすくなる」

鳴上「また、相手によっては10万円以上になる事だってあるしな」

トリケン「……いやはや」

トリケン「その様な心理戦を繰り広げられていたのですか……」

トリケン「このトリケンには、荷が重いですねぇ……」


鳴上「俺だって経験の浅い高校生だ」

鳴上「今回は商売のいろはを知っている相手だったし……余裕なんて無い」

鳴上「内心はヒヤヒヤしていた」

トリケン「とてもそうは思えませんでしたが……」

いすず「むしろ楽しんでいるように思えたわ」

鳴上「気のせいだ」

トリケン「気のせい……ですか」

トリケン「いやはや、このトリケン。 思わず前かがみです」

     ハハハ…

鳴上「さて、これから忙しくなる」

鳴上「資金面での不安はなくなったが、動員数に関して、まだ安心できない」

いすず「ええ、わかっているわ」

トリケン「全力を尽くしましょう」



―――――――――――


メープルキッチン 厨房(ちゅうぼう)


ラティファ「そうなのですか。 あの土地の売却……まとまったのですね」

いすず「はい。 ラティファ様」

いすず「ただ……」

ラティファ「ただ?」

いすず「かなり無茶な条件を飲ませる為に……」

いすず「こちらもある条件を突きつけられました」

ラティファ「どの様な条件なのですか?」


いすず「土地売却に伴い、必ずジュネス・ショッピングモール建設を要求しましたが」

いすず「その代わり、こちらも経営悪化等による閉園が ジュネス開業前に行われた場合」

いすず「莫大な違約金を支払う事となりまして……」

ラティファ「まあ……」

いすず「鳴上くんは、何か手立てを考えている様なのですが」

いすず「果たして……」

ラティファ「…………」

いすず「!」

いすず「も、申し訳ございません! ラティファ様!」

いすず「気の滅入る話をしてしまって……」

ラティファ「いえ、大丈夫ですよ、いすずさん」

ラティファ「私たちも鳴上様の頑張りに応えて行きましょう」

いすず「心得ております、ラティファ様」


ラティファ「それで……いかがでしょうか?」

ラティファ「新作のコロッケのお味は……」

いすず「はい。 甘味がよく引き出されていて、美味しいです」

ラティファ「そうですか! 良かっ……」

     フラッ…

ラティファ「……っ」

いすず「ラ、ラティファ様!?」

     ガシッ

いすず「だ、大丈夫ですか!? ラティファ様!!」

ラティファ「……だ、大丈夫、です」

ラティファ「う……」

いすず「ラティファ様!!」



―――――――――――


メープル城 応接室


モッフル「ラティファが倒れたと聞いたふも!」

モッフル「大丈夫かふも!?」

鳴上「モッフル……」

いすず「モッフル卿……落ち着いて」

いすず「ラティファ様は今、自室で休まれております」

いすず「大事には至っていません。 ご安心を」

モッフル「そ……そうふもか……」 ホッ…

いすず「……ですが」

モッフル「!?」


いすず「最近はゲストも増え、以前より安定して【アニムス】の供給があるはずなのに」

いすず「ラティファ様の衰弱が……」

鳴上「……衰弱?」

モッフル「いすず!」

いすず「!!」

鳴上「…………」

鳴上「……何か事情があるのか?」

いすず「…………」

モッフル「…………」

モッフル「……お前には関係な」

いすず「モッフル卿」

いすず「やはり、彼には……」

いすず「鳴上くんには知っておいてもらった方がいいと思います」


モッフル「…………」

鳴上「…………」

いすず「…………」

モッフル「……わかったふも」

モッフル「けど……」

鳴上「けど?」

モッフル「場所を変えたいふも」

いすず「どこへ……ですか?」

モッフル「イゴール達のところで話すふも」

モッフル「この事は……イゴール達にも聞いて欲しい事ふも」

鳴上「……わかった」



―――――――――――


居酒屋さべーじ


ティラミー「タカミちゃ~ん♪」

ティラミー「生おかわりだミー♪」

マカロン「僕もおかわりだロン」

タカミ「は~い」

     ガヤ ガヤ

里中「…………」

雪子「…………」

完二「…………」

花村「…………」


クマ「みんなどうしたクマ?」

花村「い、いや……何つーの?」

里中「あの可愛い外見で、そこらのおじさんみたいに」

里中「ビール飲んでる姿見てると……ねぇ?」

雪子「いろいろ……何かがっかり」

完二「ガキどもには見せらんねーっス……」

直斗「き、気持ちは、わからないではないですが」

直斗「その内に慣れますよ、きっと」 アハハ…

クマ「今日はみんなの歓迎会クマよー?」

クマ「飲んで食べて、元気になるクマ!」

里中「あんたは相変わらずだね、クマ」 クスッ


ミュース「それにしても……鳴上さん、遅いですね?」

サーラマ「そうね……何かあったのかな?」

コボリー(残念イケメンと鳴上さん……いいっ!)///

シルフィー「冷奴、おかわりっ!」

アーシェ(……来ないなら、帰ろうかしら)


里中(……しっかし、どうしてこう女の子率高いの?)

里中(おまけにみんな美人でスタイル抜群だし……)

里中(さっきから鳴上さん鳴上さんって、つぶやいてるし……) イライラ

雪子(早く来ないかな……鳴上くん)

直斗(正直……気が気じゃありません)


花村(あー……来てよかったぜ♪)

花村(これだけの綺麗どころ、なかなか拝めるものじゃねぇしな!)

花村(誰か一人くらい、俺と……むふふ♡)

完二(……花村先輩)

完二(たぶんっスけど、無理だと思うっス)

     ピピピッ…… ピピピッ……

花村「お?」 ゴソゴソ

花村「悠からメールか」


女性陣「!!」


完二「何て書いて来たんスか?」

花村「えーっと、なになに……?」




     Re:悠

     陽介、すまない。 せっかくのみんなの歓迎会だが

     急用が入ってしまった。

     いすずともども欠席する。

     みんなにもすまない、と謝っておいてくれ。



花村「……だってよ」

完二「あちゃー……そっスか。 残念スね」

クマ「お仕事じゃ仕方ないクマ」


女性陣「…………」


里中(……急用? しかも『あの』いすずちゃんと欠席……)

ミュース(夜の……他に誰もいない執務室で)

サーラマ(二人っきり……)

雪子(な、鳴上くんに限って……そんないやらしい事はしない)

アーシェ(と……思いますけど)

直斗(このまま……いすずさんとの仲が進展するのは)



女性陣(すっごく面白くない……) ゴゴゴ…



コボリー(何かただならぬ気配が)

シルフィー「枝豆おかわりー!」


ミュース「……私、そろそろ帰りますね」

花村「え」

サーラマ「あたしもー」

アーシェ「私も失礼させていただきます」

クマ「えええ!?」

ティラミー「ちょ、ちょっと、みんなどうしたミー?」

里中「あーあたし、甘ブリに忘れ物しちゃったー(棒)」

里中「取りに行かないとー(棒)」

雪子「私も付き合うよ、千枝」

直斗「お二人共、甘ブリの地理に詳しくないでしょうから」

直斗「僕も付き添います」

完二「な、直斗!?」


     ゾロ ゾロ…

花村「…………」

完二「…………」

ティラミー「…………」

マカロン「今更ながら……鳴上くんの凄さが良く分かるロン」

花村「ちっくしょー!」

花村「なんで……なんで悠ばっかりー!!」

完二「…………」

完二「お、俺。 (直斗が)心配だから一緒に行くっス!」

クマ「何だか楽しくなりそうだからクマも行くクマ!」

花村「今日という今日は、悠に一言物申す!」

花村「俺も甘ブリに行くぞ!」



―――――――――――


占いの館 長鼻


イゴール「お待たせいたしました、モッフル卿。 お客様」

モッフル「来たふもね……」

モッフル「…………」

モッフル「それじゃ……始めるふも」

鳴上「…………」

いすず「…………」

モッフル「そうふもね……まず、結論を言うふも」

モッフル「ラティファは……『呪い』を掛けられているんだふも」

鳴上「呪い?」

イゴール「ほう……それは穏やかではありませぬな」


モッフル「…………」

モッフル「もう……10年以上昔の話ふも」

モッフル「ある日、メープルランド王国は……悪しき邪竜に襲われて」

モッフル「滅亡の危機に見舞われたふも」

いすず「…………」

モッフル「僕を含め……王国の軍隊は総力を挙げて迎え撃ったけど」

モッフル「邪竜の侵攻を食い止められず……王都の目の前まで攻め込まれたふも」

イゴール「…………」

モッフル「そんな時」

モッフル「一人の若い魔法使いが王宮を訪ねて来たふも」


モッフル「その魔法使いは自分の魔法でなら、邪竜を倒せると豪語したふも」

モッフル「しかし……」

モッフル「その代わり、ラティファとの結婚を国王に要求したふも……」

鳴上「…………」

モッフル「最初は得体の知れない者に愛娘のラティファをやれない、と」

モッフル「国王も渋っていたけど……目前に迫る危機に」

モッフル「やむを得ず、その条件を飲んだふも」

いすず「…………」

モッフル「邪竜はその魔法使いにより見事、撃破されたふも」

モッフル「だけど……国王は……」

モッフル「邪竜との戦いで消耗したところを狙い、魔法使いに軍隊を差し向けたふも」

イゴール「なんと……」


いすず「そこからは私が……」

いすず「その結果、魔法使いは追い立てられ……」

いすず「最終的に渓谷が口を開ける崖の上に追い詰められて」

いすず「ラティファ様に呪いを掛けて、崖から飛び降りたそうよ……」

鳴上「…………」

イゴール「……その魔法使いはどうなりましたかな?」

いすず「すぐに崖下を捜索したけど……死体は見つからなかったと記録しているわ」

イゴール「左様でございますか……」

イゴール「して、ラティファ姫君は、どの様な呪いを掛けられたのでございましょう?」

いすず「【アニムス】の欠乏症よ」

いすず「ラティファ様はその出来事以降、【アニムス】を大量摂取しないと」

いすず「立つことすら出来ない様になってしまわれた……」


イゴール「ほう……」

モッフル「…………」

いすず「でも……メープルランドでは【アニムス】の供給が間に合わなくなり」

いすず「【アニムス】の溢れる地上施設……ここ甘ブリに『静養』という形で」

いすず「お越しになられました」

鳴上「…………」

鳴上「ちょっと待ってくれ」

いすず「何かしら?」

鳴上「今の話は10年以上前のもの……なら」

鳴上「ラティファは今、何歳なんだ?」

いすず「…………」

いすず「……呪いは、もう一つあるのよ」

鳴上「…………」


いすず「ラティファ様は、呪いを掛けられた当時、14歳」

いすず「でも、呪いを掛けられてからは……8月1日の誕生日を迎えられる度に」

いすず「身体的成長や記憶すらも」



いすず「1年前の状態に戻ってしまうのよ……」



鳴上「!」

イゴール「なんと……」

いすず「私たち魔法の国の住人よりも深刻度が桁違いに大きいわ」

いすず「ラティファ様にとって、甘ブリを失うという事は……命に関わる一大事なのよ」

モッフル「…………」 ギリッ


鳴上「…………」

イゴール「…………」

モッフル「……これがラティファに関するすべてふも」

モッフル「参考になるかどうかわからないふもが……」

モッフル「イゴール、さっそくラティファを見てやって欲しいふも」

モッフル「ゲストが増え、以前より【アニムス】の摂取量は多くなっているのに」

モッフル「ラティファの衰弱度合いが強くなっているふも……!」

鳴上「!?」

イゴール「……現状、よくわかりましたモッフル卿」

イゴール「まずは原因を究明する事が肝要にございまする」

イゴール「もう準備は整っておりますので……お許しがいただけるのなら」

イゴール「すぐにでもラティファ姫君を診て差し上げましょう」


モッフル「イゴール……よろしく頼むふも」

イゴール「はい……モッフル卿」

いすず「…………」

イゴール「お客様」

鳴上「何だ?」

イゴール「よろしければお客様にも来ていただけますかな?」

イゴール「何らかの不測の事態が起きないとも言えませぬので……」

鳴上「聞かれるまでもない」

鳴上「もちろん同行しよう」

イゴール「ありがとうございます」

イゴール「それでは……メープル城へ参りましょう」



―――――――――――


甘ブリ 関係者入口前


里中「っと、着いた」

里中「……あれ?」

完二「何か……もやってねぇか?」

アーシェ「と言うより、霧と言った方が的確かもしれませんね」

花村「…………」

花村「えっと、ミュース……でいいかな?」

ミュース「え? は、はい。 何ですか?」

花村「ここって、霧が出やすかったりするのか?」


ミュース「私は、ほんの半年前からここに来ているので何とも……」

ミュース「アーシェさん、どうですか?」

アーシェ「私がここに来てから、霧が出た事なんて一度もありません」

マカロン「けっこう前からいる僕も初めてだロン」

ティラミー「ボクも初めての霧だミー」

花村「…………」

完二「…………」

里中「…………」

雪子「…………」

クマ「…………」

直斗「…………」

コボリー「……どうしたんですか?」


里中「……花村、持ってる?」

花村「ああ、肌身離さずな」 ゴソゴソ…

     スチャ…(クマのメガネ装備)

花村「っ!!」

花村「くそっ……薄くなって見えやがる!」


P4組「!!」


里中「ど、どうして!?」

里中「元凶のアメノサギリは倒したでしょ!?」

花村「俺にだってわからねーよ!」

花村「とにかく、悠に連絡しないと……」

雪子「そ、そうだね!」


ミュース「い、いったい、どうしたんですか?」

サーラマ「説明してくんない?」

直斗「簡単に言いますと……八十稲羽、というところで起こった怪現象の霧と」

直斗「同じ特性をこの霧が持ってるんです」

マカロン「あー。 何か鳴上くんが【シャドウ】がどうのって言ってたアレかロン」

ティラミー「で、何かまずいのかミー?」

直斗「……何事もなければいいんですが」

直斗「八十稲羽では、怪現象を使った殺人事件まで起きたんです」


甘ブリ組「!?」


ミュース「そ、そんな……!?」

サーラマ「何で……甘ブリに!?」


直斗「僕らにもわかりません」

直斗「ただ……以前から鳴上先輩に【シャドウ】が」

直斗「甘ブリ……こっちの世界に現れたと聞いていたので……」

コボリー「…………」

シルフィー「…………」

花村「よし、悠の居場所がわかったぜ」

花村「メープル城のラティファ?とかいう人の部屋に居るそうだ」

アーシェ「ラティファ姫のお部屋ですか……」

花村「詳しい事情は向こうに着いてから聞こう」

花村「外が霧に覆われている事を知って驚いてもいたし……」

花村「何か……ヤバイ事が起こる前兆かも知んねぇ」

花村「急ぐぞ!」



―――――――――――


ラティファの部屋


鳴上「…………」

モッフル「誰からふも?」

鳴上「陽介からだ」

モッフル「……今はここに来て欲しくないふも」

鳴上「それよりも……気がかりな事がある」

     スタ スタ スタ…  シャッ(カーテンオープン)

鳴上「!!」

イゴール「これは……いつの間に」

いすず「霧が出ているわね。 さっきまで何とも無かったのに……」


マーガレット「…………」

マーガレット「……我が主。 急がれた方がよろしいかもしれません」

イゴール「うむ……」

イゴール「それでは、ラティファ姫君」

イゴール「多少苦痛を伴うかもしれませぬが……始めてよろしいですかな?」

ラティファ「はい……よろしく……お願いします」

イゴール「……では」

     ジジジ……ジジッ… バチバチッ!

ラティファ「うっ!?……くっ…………っ!」

イゴール「…………」

イゴール「マーガレット?」


マーガレット「…………」

マーガレット「異常なしです」

イゴール「ふむ……」

     ジジジ……ジジッ… バチバチッ!

ラティファ「……っ! くっ……うっ……はっ!」

モッフル「……っ!」 ギリッ!

いすず「モッフル卿! ダメです!」

モッフル「わかってる……わかっているふもっ!」

鳴上「…………」

イゴール「…………」

イゴール「マーガレット?」

マーガレット「…………」

マーガレット「っ!?」


マーガレット「いけない! 我が主、そこを離れ――」

イゴール「!――」

鳴上「な――」

いすず「え――」

モッフル「ラティ――」


     ドオオオオオオオオオンッ!!


花村「っ!?」

里中「な、何!? 今の!?」

雪子「上の方から……だよね!?」

クマ「およよ……センセイ!」

直斗「急ぎましょう!」

完二「ああ!」


鳴上「…………」

鳴上「……くっ」

いすず「……鳴上くん」

鳴上「いすず……無事か? 他のみんなは?」

マーガレット「こちらは我が主ともども、何とか無事です……」

イゴール「……面目ございませぬ、お客様」

いすず「私も……何とか」

いすず「!! モッフル卿!!」

モッフル「」

いすず「……大丈夫だわ。 脈はある。 気絶しているだけね」


鳴上「そうか……とりあえず良かった」

鳴上「だが……」

いすず「……ええ」


ラティファ?『…………』


鳴上「イゴール。 あれは……ラティファの【シャドウ】なのか?」

イゴール「おそらくは……しかし」

鳴上「しかし?」

イゴール「原因はよく分かりませぬが……」

イゴール「『アレ』は、ラティファ姫君の『魔力』を吸い取っている模様です」

イゴール「いや……それも違うような……?」

鳴上「……?」


イゴール「ともかく、ラティファ姫君の膨大な魔力を携えているのは間違いありませぬ」

イゴール「お気をつけてください……」

鳴上「ああ、気をつける」


ラティファ「……あ……あなたは……いったい……」


影・ラティファ『私はあなたよ。 ラティファ・フルーランゾ』

影・ラティファ『何の関係もないのに生贄にされた、哀れな姫君……』

影・ラティファ『ふふふ……』


ラティファ「!」


いすず(ラティファ様……)

鳴上「…………」


     バァーン!!

花村「悠! 大丈夫か!?」

鳴上「陽介! みんな!」

ミュース「って……あれは!?」

サーラマ「ラティファ様が……2人居る!?」

鳴上「詳しい話は後でする」

鳴上「ここは俺に任せて、みんなは下がっててくれ!」

雪子「で、でも、鳴上くん!」

花村「大丈夫だ!」

花村「いざとなったら、俺らで何とかする!」

鳴上「陽介……」


ラティファ「まさか……あなたは……」


影・ラティファ『ふふふ……そうよ』

影・ラティファ『いすずさんから聞いている通り、私はあなた』

影・ラティファ『あなたの本音を体現する者……』


鳴上「本音を……体現?」

ティラミー「ラティファ様、何かしたかったのかミー?」

ラティファ「っ!!」

ラティファ「や……やめてください!」


影・ラティファ『なぜ? あなたが望んでいた事ですよ?』

影・ラティファ『いい加減うんざりでしたからね……』

影・ラティファ『同じことの繰り返しは!!』


モッフル「……何を……言ってるふも……」

いすず「! モッフル卿……気がつかれましたか」

モッフル「そんな事、ラティファが……ラティファがいう訳無いふも!」


ラティファ「……っ」


影・ラティファ『あらあら……親愛なる伯父様もこの程度』

影・ラティファ『誰も私の苦しみを理解してない、わかっていない』


ラティファ「やめて……もうやめて……!」


いすず「そんな事はないわ!」


いすず「私たちは、ラティファ様の苦しみを……」

     スッ…

鳴上「…………」

いすず「鳴上くん?」

鳴上「今は……まだ口を出すべきじゃない」

いすず「し、しかし!」

花村「しかしも かかしもねーよ」

花村「自分の苦しみや隠してある本音は」

花村「当の本人すら、わからなかったりするんだ」

いすず「…………」

里中「……あたしにも経験ある」

里中「誰かの事、わかった『つもり』でいて、実は全然理解していなかった」

雪子「千枝……」



影・ラティファ『だから私は、すべてを終わらせたかった』

影・ラティファ『いつまでも苦しいままなのは嫌。 でも……』

影・ラティファ『一人で終わるのは、もっと嫌』


ラティファ「!!」

ラティファ「ま……まさか……!?」


影・ラティファ『うふふ……鳴上様との接触でこの力を知ってから』

影・ラティファ『わかっていない伯父様たちで遊んだりして楽しかった』


一同「!!」


モッフル「という事は……ラティファが」

完二「ここの【シャドウ】事件の黒幕って事かよ!?」


ラティファ「…………」


影・ラティファ『……でも、それも飽きてきた』

影・ラティファ『あとは……すべてを終わらせる為に』

影・ラティファ『何もしなければいい』


ラティファ「いいえ! 私は……私はっ!」


影・ラティファ『ふふふ……否定しても無駄よ』

影・ラティファ『もう甘ブリなんてどういでもいい』

影・ラティファ『むしろ無くなれば、スッキリ終わらせられる』

影・ラティファ『でも……ひとりでそうなるのは嫌』

影・ラティファ『だから』


ラティファ「やめて……やめて、やめてっ!」




影・ラティファ『甘ブリキャストの再就職先探しを行わなかった』




一同「!!」



ラティファ「あ……ああ……」


ミュース「そ……そんな……」

サーラマ「うそでしょ……」

鳴上「…………」



影・ラティファ『何も驚く事じゃないわ』

影・ラティファ『そうすれば、私の苦しみも終わるし』

影・ラティファ『ひとりでなく、みんなと一緒に最後を迎えられえる』

影・ラティファ『これが、私の望みなのよ』


ラティファ「違います! 私は……私は、そんな事を望んでなんていません!」


影・ラティファ『うそはダメよ』

影・ラティファ『あの土地の売却が決まって、甘ブリ存続に光明が見えてきた』

影・ラティファ『それを喜ばなかったのは、あなたじゃない』


ラティファ「いいえ!」

ラティファ「私は……誰よりも甘ブリの存続を願い、行動して」



影・ラティファ『あらそう?』

影・ラティファ『なら……そこにいる他のみなさんの目を見る事ができるかしら?』


ラティファ「え……」


影・ラティファ『ふふふ……できないわよね?』


ラティファ「い、いいえ!」


影・ラティファ『何しろ普段から怖くて怖くて仕方なかったのですから』

影・ラティファ『自分の『綺麗な一面』しか見てくれない……みなさんの目が!』


ラティファ「違います! そんなこと、私は思わない!」

ラティファ「あなたなんて……」


いすず「!」

モッフル「!」

いすず「いけない! ラティファ様!」








ラティファ「あなたなんて、私じゃありません!!」











     ズウウウウウウウウウウンッ……!


影・ラティファ?『うふふふふふふふふふ……』

影・ラティファ?『あ――はっはっはっ!!』


     ド  ン  ッ !!


ラティファ「」 ドサッ…

モッフル「ラティファ!!」


影・ラティファ?『我は影……真なる我……』

影・ラティファ?『我が望むは……永遠なる平穏』

影・ラティファ?『それを邪魔する鳴上悠……殺すっ!!』


花村「結局、こうなったか……」

鳴上「陽介、下がってくれ」

花村「……ああ、わかってる」

花村「俺たちは、現実でペルソナを使えないからな……」

鳴上「……すまない」

花村「こっちこそ、大事な場面は いつもお前任せで悪いと思ってるよ」

花村「けど……」

鳴上「…………」

花村「悠、お前なら、きっと大丈夫だ」

花村「何も手伝えないのは悔しいが、任せたぜ! 相棒!」

鳴上「ああ、任せてくれ!」

鳴上「……っ!」 グッ…!










     ペ    ル    ソ    ナ   !!










影・ラティファ?『……なぜ?』

影・ラティファ?『私の望む平穏を乱すの?』


     ゴウッ! ガキィッ!


鳴上「イザナギ!」

鳴上「本当の君は……いや」

鳴上「君の全てが、それを望んでいないからだ!」


     ドガッ!!  ゴウッ!!


影・ラティファ?『……どうしてそう言い切れるの?』

影・ラティファ?『どうしようもない現実を前にして、絶望して何が悪いの?』


     ゴガッ! バグンッ!


鳴上「ぐはっ……!」

鳴上「……そんな君を、放っておけないからだ!」


影・ラティファ?『…………』


鳴上「はあっはあっ……」

鳴上「そして……それは俺だけじゃない」


影・ラティファ?『……嘘よ』


     バゴォッ!!


鳴上「うがあっ!!」


影・ラティファ?『あんな私の本心を見た後で』

影・ラティファ?『そんな事を言う人は居ない』


鳴上「ぐ……くっ……」 ヨロッ…


鳴上「だがそれは……『予想』に過ぎない」


影・ラティファ?『!』


鳴上「なぜ諦める?」

鳴上「なぜ最初から『理解してもらえない』と思い込む?」


影・ラティファ?『…………』


鳴上「それは……周りがお前を理解しないからじゃない」

鳴上「お前が、周りを『信頼していない』からだ!!」


影・ラティファ?『だ、黙れぇぇっ!!』



     ドゴォッ!!


鳴上「うがあああああっ!!」


影・ラティファ?『はあ……はあ……』


鳴上「……平穏は心地いいだろうさ」

鳴上「だが……そこに変化は『無い』」


影・ラティファ?『……やめて』


鳴上「『悲しく』も、『苦しく』もないが……同時に」


鳴上「『楽しく』も、『嬉しく』もない……!」


影・ラティファ?『あ……ああ…あ………』


鳴上「それをお前は望んでいるのか?」

鳴上「お前の『全て』は、本当にそれを望んでいるのか!?」


影・ラティファ?『ああ……あ……あ……ああ…あ………』

影・ラティファ?『ああああああああああああああああああああああああああっ!!』


     ピシッ……!

     パアアアアアアアアアアアンッ!!


影・ラティファ『…………』


鳴上「…………」


イゴール「いつもながら、お見事でございます、お客様」

花村「さすがだぜ、相棒!」

いすず「ラティファ様!」

モッフル「ラティファ、しっかりするふも!」


ラティファ「……う」

ラティファ「伯父様……? はっ!!」


影・ラティファ『…………』


ラティファ「ち、違うのです、伯父様!」

ラティファ「あれは……!」

鳴上「ラティファ、聞いてくれ」


ラティファ「鳴上様……」

鳴上「…………」

鳴上「俺は……君の事をもっと知りたい」


ラティファ「っ!?」///

一同「」


鳴上「ラティファの綺麗な部分だけじゃなく、君自身が醜く思っている部分もすべて」

ラティファ「……鳴上様」

鳴上「誰にだって、そういう部分がある」

鳴上「ラティファは立場上、それを見せるわけには いかなかっただろう」

鳴上「でも……もう抱え込まなくてもいいんだ」

ラティファ「で、でも……!」


鳴上「ラティファの醜い部分を嫌悪する気持ち」

鳴上「それはきっと俺の中にもある」

ラティファ「……っ」

鳴上「でも、それだけじゃない」

鳴上「ラティファを支えていきたいという気持ちだってある」

ラティファ「鳴上様……」

鳴上「ここにいる全員、ラティファと同じく」

鳴上「嫌な自分がいる。 見せたくない本心がある」

鳴上「俺や陽介達は……その心と向き合ってきた」

ラティファ「…………」

鳴上「きっと、君にもできる」

鳴上「自分と向き合ってくれ」

ラティファ「…………」



影・ラティファ『…………』


ラティファ「…………」

ラティファ「……そうですね」

ラティファ「私は……確かに何もかも終わりにしたかった」


影・ラティファ『…………』


ラティファ「お父様と魔法使いとのやり取りで、突然呪いを受け」

ラティファ「何もかもを恨んでいました……」

モッフル「ラティファ……」


ラティファ「どうして私が……?」

ラティファ「どうして私『だけ』が、こんな目に会わなければならないの?」

ラティファ「王族とか、王家とか、どうでも良くなった事もしばしばありました……」

いすず「ラティファ様……」


影・ラティファ『…………』


ラティファ「なのに……伯父様もいすずさんも……周りの人たちは」

ラティファ「私に清らかさを求める。 こうであれ、と強要してくるっ!」

ラティファ「もう……私は、どこかへ逃げたかった……」


一同「…………」


ラティファ「だけど……ひとりは嫌」

ラティファ「誕生日の度に1年間が無かった事になって」

ラティファ「伯父様や皆さんと過ごした思い出が無くなったのを実感して……」

ラティファ「どうしようもなく……私は……寂しかった……!」

モッフル「ラティファ!」 ギュッ…!

モッフル「もういい! もういいんだふも!」

ラティファ「伯父様……ごめんなさいっ……ごめんなさいっ……ううっ」


影・ラティファ『…………』


     シュウウウウウウウ……!


里中「【シャドウ】が!」

雪子「ペルソナ……かな?」

クマ「ラッちゃん、良かったクマ!」


鳴上「……イゴール、これで大丈夫だろうか?」

イゴール「マーガレット……どうなっておる?」

マーガレット「はい、我が主」

マーガレット「すべて記録できました」

イゴール「うむ……お客様」

イゴール「詳しい事は、記録を解析せねば申し上げられませぬが……」

イゴール「おそらく【シャドウ】がらみの事象は、お客様が原因にございましょう」

鳴上「俺が?」

イゴール「はい……」

イゴール「先ほどラティファ姫君の【シャドウ】は……」



影・ラティファ『うふふ……鳴上様との接触でこの力を知ってから』


イゴール「と……言っておりました」

鳴上「…………」

イゴール「また、お客様はラティファ姫君の『ある儀式』で」

イゴール「ペルソナを現実世界で出せる様になられたと聞いております」

鳴上「…………あ」

鳴上「まさか……あれで俺にラティファが力を与えると同時に」

鳴上「ラティファへ俺が何らかのきっかけを与えてしまった、という事か!?」

イゴール「これは、お客様にもラティファ姫君にも責任は無いのでしょう」

イゴール「誰も『そうなる』事なぞ、想像していなかったのですから……」

いすず「なるほど……すべては、あの儀式から始まっていたのね」

モッフル「これからは……力を入れる側の能力も調べないとダメふもね」

里中「……ところで」


里中「『ある儀式』って、どんな事したの?」

鳴上「…………」 ギクッ…

ラティファ「そ、それは、その……」///

完二「何で姫さん、赤くなってんだ?」

雪子「……すっごく気になるんだけど」

直斗「……奇遇ですね。 僕もです」

ミュース「……私も」

アーシェ「……同じく」

サーラマ「……確かに」

ティラミー「魔法を授ける儀式の事かミー??」

マカロン「ああ、それなら大抵は口づけ、キスの事だロン♪」

ラティファ「マ、マカロンさんっ!」///


里中「へー……」 ゴゴゴ…

雪子「そうなんだー……」 ゴゴゴ…

直斗「いい儀式ですねー……」 ゴゴゴ…

ミュース「仕方ない、ですかー……」 ゴゴゴ…

アーシェ「これはノーカウントですよねー……」 ゴゴゴ…

サーラマ「ふうん……」 ゴゴゴ…

いすず「何故か私も腹が立ってきたわ……」 ゴゴゴ…



鳴上「」




イゴール「……さて、我々は退散しますかな」

マーガレット「はい、我が主」

花村「……行こうぜ、クマ、完二」

完二「え?……で、でも……」

クマ「……センセイ、大丈夫クマ?」

コボリー「……鳴上さん、健闘を祈ります」

シルフィー「明日の夜明けは近いっ!」

ティラミー「ぷふふっ! 明日、どんな顔してるか楽しみだミー♪」

マカロン「ぐふふっ! 俺もだロン!」

モッフル「さ、ラティファ……行くふも。 休むふも」

ラティファ「え!? あ、あの、鳴上様は……」

モッフル「あいつは絶対大丈夫だふも(棒)」






     次の日



     表面上鳴上の姿は無事だったが

     目がどこか死んでいたという……









     パーク閉園期限まで

      あと残り 10 日



     必要来園者数

       108439 人






―――――――――――

―――――――――――


鳴上「追求」

いすず「考察」


鳴上・いすず「二次創作ー」


     パチパチパチ


いすず「……これやるの、ずいぶん久しぶりな気がする」

鳴上「……後で>>1が謝罪するだろうから、突っ込んでやるな」

鳴上「それよりも いよいよP4のみんなが甘ブリに来た」

いすず「いろいろ詰め込んだせいで、かなり長くなったわね」

鳴上「一時は、前後編にしようかと思ったそうだ」


いすず「それはそうと、里中さんって苗字なのに」

いすず「どうして天城さんは『雪子』なのかしら?」

鳴上「二人共苗字にしたかったが……」

鳴上「『天城』と『甘城』で変換がややこしくなるかもしれないと思ったからだそうだ」

いすず「そうなの。 一応考えているのね」

鳴上「……たまには褒めてやれ」

いすず「それよりもやっと、謎が解けたわね」

いすず「大方の予想通り、ラティファ様が黒幕かー(棒)という気もするけど」

鳴上「……そういうレスは無いのだから、言わないでおけ」

鳴上「>>1は、大成功!とか思ってるみたいだし……」

いすず「この程度で天狗とか、ありえない低脳ね」

鳴上「…………」


いすず「それにしても強引な交渉だったわ」

鳴上「実際、あんなケンカ腰では、まとまる物もまとまらないだろう」

鳴上「良い子のみんなは真似などしないでおいてくれ」

鳴上「真似して交渉決裂しても、責任は持てないからな?」

いすず「あと、いよいよ修羅場が激化してきたわ」

鳴上「……そこには触れないでくれ」

いすず「どうしてよ? ある意味、読者が一番望んでいる展開なのよ?」

鳴上「どうしてみんな、俺をひどい目に遭わせたいんだ……」

いすず「それだけ○○を見ない○○が多いって事でしょう?」

鳴上「読者にケンカを売ってどうする!?」

いすず「二次は二次と理解させないと、そろそろヤバイと思うわ」

鳴上「いすず、もうしゃべるな。 頼む」

いすず「次回は、いよいよ菜々子ちゃんも参戦かしら?」

鳴上「ペルソナアアアアアアアアアアッ!!」

大変お待たせしました……。
生存報告も無くなり、エタったかと思われた皆様
ご心配おかけして、誠にすみません……
次回も気長にお待ちください……。
ではまた……


次スレのURL貼っておきます。
結局1スレで終わらなかった……

いすず「唐突だけど鳴上くん。明日の休日私と遊園地に行かない?」2 - SSまとめ速報
(http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1430544158/)

残りは、埋めてもらって構いませんので。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom