静(50)「すまん、八幡。閉経期が来たようだ」八幡(37)「」 (363)

八幡「先生…?いまなんて…?」
静「八幡、君はいつまで私を先生と呼ぶつもりだ……」
八幡「あ、ごめん……戸惑ってつい。それよりいまなんて言ったの?俺の聞き間違い?」
静「だからその……へ、閉経期が来たみたい……」
八幡「そ、そうか…」
静「その……ごめん……」
八幡「いや、まあ……静が悪いわけじゃない……ですし、ポジティブに考えればゴムも買わなくて済むし、コンドームも買わなくて済むし、フレンチレターも買わなくて済むし、いいじゃないですか」
静「全部ゴムの話ではないか……それよりなんで急に敬語なんだ!?やめろ、気まずいだろ…!」
八幡「はあ、まあ…歳が歳だから結婚する前からある程度覚悟はしてたんですが、いざ直面してみるとなんというか……」
静「で、でも平均よりは遅い方なんだぞ!早ければ四十代初半から始まんだ!それと妊娠が出来ないだけでセックスを出来ないわけでは…!」


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八幡「あーそれはわかるけどさ。それと閉経期でなくとも静は不妊じゃないか……」
静「っく……す、すまん……」
八幡「あ、ごめん。今のは俺が悪かった」
静「無駄に年だけ取って、その上子供も出来ない体ですまない……」しくしく
八幡「泣くなって。俺は子供なんざいらないって言ったろ?もとより子供好きじゃないし、子育てに掛かる費用を考えるとすごい負担かかるしさ」
八幡(今になってはもう遅いしね)
静「でも……」
八幡「いや、子供なんてほんとにいらないから。俺はただ二人で仲睦まじく生きればそれでいいんだよ。それと大事なのはそれではなくてだな」
八幡「なんというか、閉経期の女性とは――いや、なんでもない」
静「言いかけてやめたら気になるだろ!」(´;ω;`)

結衣(37)「あ、ヒッキ!久しぶりー!」
八幡「ああ、久しぶりだな。ってか二十年も過ぎたのにそのアホっぽい呼び方どうにかならないのか?」
結衣「だってヒッキはヒッキだし!」
八幡「いや、俺達ももういい年だしさ……正直、三十代半ばのババアにヒッキはないわ」
結衣「ヒッキマジきもい!女に年の話しちゃだめだし!それとババアじゃないし!」
八幡「俺たち同い年なのに年云々もなにもないだろ。それとお前ババアだろうが」
結衣「ババアって言うな!まだsy―…と、とりあえずババアじゃないよ!服とか買いに行けばまだ姉さんって言われるもん!」
八幡「それはお世辞に決まってんだろうが。いや、ちょっと待って、お前、まだ処女なのか?」
結衣「キモッ!なに訊いてるの!?……しょ、処女だけと……///」
八幡「えっ…いや、お前だいたい自分が何歳だと思って……まさか、今まで誰とも付き合わなかったとか?」
結衣「……」
八幡「ま、まじか」
結衣「うう……全部ヒッキが悪い!ヒッキのせいだよ!」涙目

八幡「いや、お前がその年まで処女なのがなんで俺のせいになるんだ」
結衣「……ほんとに教えて欲しいの?」
八幡「いや、すみませんでした」
八幡「はあ……あのな、俺最近憂鬱なんだよ。あんまり悩み事増やさないでくれよ」
結衣「え、どうしたの?なにかあった?」
八幡「静先生がな……いや、よそう」
結衣「そこまで言ってやめはないでしょ!言ってよ。相談に乗るからさ」
八幡「いや、お前に相談するのはちょっとあれなんだが」
結衣「そ、そりゃあたしは頼りないかも知れないけど……」
八幡「あ、いや、別にお前だからって――はあ、わかった話すよ。実はな、静先生は閉経期が来たらしいんだ」
結衣「へ?」
八幡「なんだお前閉経期がなにかわからんのか?閉経期ってのはな――」
結衣「いや、それくらいは知ってるし!そうじゃなくて…先生は歳が歳だから閉経期が来てもおかしくはないでしょ?むしろ今更って気もするし」
八幡「はあ……やはりそうか」
結衣「先生が閉経期になったのがそんなに気になる?」
八幡「どうしてもな。精神的にちょっとあれっていうか、いくらなんでも閉経期の女性とはやりづらいというか、俺はまだまだって感じなのに――いや、すまん。失言だ」
結衣「……ねえ、ヒッキ」
八幡「あ?」
結衣「ヒッキが望むならあたしが手伝ってあげてもいいよ…?」
八幡「」

八幡「ただいま」

静「あ、おかえり八幡」

八幡「ごめん、夕飯まだだろ?いま準備するよ」

静「いや、毎日八幡が苦労してくれるから今日くらいは私が支度しよう」

八幡「そう?じゃ適当になんでもいいよ。俺は風呂入ってくるわ」

静「あ、ああ」

八幡「ふう、いい風呂だった」

静「八幡、ごはん出来たぞ!」

八幡「生姜焼きか。そういえば奉仕部の頃、生姜焼きがおすすめだと返信して以来、ずっと生姜焼きだけ作ってくれるね。静って一途だな」

静「あはは、それほどでもないさ」

八幡(褒めてないけどな)
八幡「いただきます」

静「はい、召し上がれ」

静「……し、しかしだな八幡」

八幡「ん?」もぐもぐ

静「今日はその……誰に会いに行ったんだ?」

八幡「あ?由比ヶ浜だけど」

静「そ、そうか。由比ヶ浜か。ふむ……久しぶりにあったのだから楽しかったのだろ?」

八幡「まあね。由比ヶ浜とはもう二十年の付き合いだしな。あいつも結構年を取ったもんだよ」

静「くっ……」

八幡「あれ?あ、ごめんごめん。別に静が老いたってわけじゃないよ」

静「い、いや…認めたくはないけと客観的にもう老いたって言える年だから……」

八幡「いや、そう―…だな。でも静は童顔だからまだ四十代に見えるぞ?」

静(くっ、褒めてくれてるのに涙が……)

静「あ、ところで由比ヶ浜とは二人だけで会ったのか?」

八幡「まあ、な」

静「……」

八幡「ん?あ……ごめん。やっぱりいま考えてみたらいくら友達といえど女の由比ヶ浜と二人で会うのはダメだったかな」

静「い、いや、由比ヶ浜は私の弟子でもある上、奉仕部の一員だからな。お前にとっても大事な人だというのはわかってるさ」
静(はあ……まさか私は嫉妬してるのか?弟子の由比ヶ浜に?こんなことなかったのに……これも閉経期のせいかな?)

雪乃(37)「あら、久しぶりね比企谷くん」

八幡「やあ、久しぶり」

雪乃「相変わらず腐った魚のような目をしてるわね」

八幡「そんなにDHAが豊富そうに見えるか?」

雪乃「ふふ……相変わらずね。静先生のヒモになってから身も心も腐ってはいないか心配してけれど」

八幡「ヒモじゃなくて専業主婦だ。それと心はともかく体は以前より健康になったんだぜ。主婦うつにかからないように毎日運動してるんだよ。……ん?なに驚いてんだ」

雪乃「い、いいえ。あまりにも比企谷くんとは思えない言葉が出たので少し脳が驚いただけよ」

八幡「俺が運動するのがそんなにおかしいのかよ」

雪乃「引き籠もりくんが運動だなんて誰も信じられないと思うけれと」

八幡「引き籠もりじゃねえよ。まあ、たしかに周期的な運動なんてらしくないとは思うけどよ、何年も家で家事ばかりするのも大変なわけよ」

雪乃「そう、気分転換は大事なことよね」

八幡「それにしてもお前は本当に変わらないな。由比ヶ浜もそうだが、お前も二十代通るぞ」

雪乃「そ、そうかしら?/// 引き籠もりくんに言われても嬉しくないけれど、とりあえず褒め言葉だとして受け取ってやるわ」

八幡「偉すぎて俺の呆れが有頂天だよ」

雪乃「それより、あなた由比ヶ浜さんとも会っているの?」

八幡「は?まあ、そうだが。家もそんなに遠くないからちょくちょくな。お前らのそうだったんじゃねえのか?」

雪乃「いいえ、そういうわけでは……最近ずっと会ってないから」

八幡「え?まさか喧嘩でもしたのか?」

雪乃「違うわ。暫くの間、私が……忙しすぎたのよ。会う暇がないほど」

八幡「仕事本当に大変そうだな。苦労してるな」

雪乃「仕事はたしかに忙しいけれど、そのせいじゃないわ」

八幡「?じゃなにが原因だ?」

雪乃「……この間、離婚したの」

八幡「……え、まじ?」

雪乃「私がこんなことで冗談を言うとでも?」

八幡「あ――それもそうだな…そ、そのなんだ、元気だせよ」肩とんとん

雪乃「もしかしてそれで慰めのつもりかしら」

八幡「……正直いま反応に困っている。こんな時どうすればいいのかわかんねえ……他人ならともかく、お前の事だしな……」

雪乃「『他人』ではないのね」

八幡「あーその、なんだ……お前は大事の友達だからな」こほん

雪乃「そう……///」

八幡「で、どうなんだ?離婚に関する問題は全部終わったのか?」

雪乃「先日全部終わったわ。子供のないし、お互い愛情もなかったから」

八幡「そ、そうか」

雪乃「そう。親に決められた結婚って結局こうなんるものね」

八幡(気まずい……雪ノ下じゃなければ今すぐ逃げ出すくらいに気まずい…!)

八幡「それで…これからどうするつもりだ?」

雪乃「さあね……」

八幡「離婚の直後に言うのもなんだが、お前はまだ若いし、やっぱり再婚相手を探したほういいんじゃないか?人生長いといっても俺たちもうこんな年だしな」

雪乃「そうね。思い浮かぶ相手が一人いるのだけれど」

八幡「え、そうなの?」

雪乃「離婚した男と結婚する前から気に留めていた人がいたわ」

八幡「なに?じゃそんな人がいるのに別の人と結婚したのかよ」

雪乃「そう」

八幡「好きな相手がいると話はしてみたのか?」

雪乃「……話したことはないわ」

八幡「なんでだ?話さなきゃどうにもならんだろ」

雪乃「その人はすでに別の人と結婚してしまったのよ」

八幡「……あ?」

雪乃「ふふ、そうね。人生はまだ長いもの。久しぶりに会えて楽しかったわ比企谷くん。静先生にも残りの人生どうか元気で、と伝えてくれる?」

八幡「え?あ、ああ……」

雪乃「いえ、その時まで待つ必要はないかしら」

八幡「え?」

雪乃「なんでもないわ。それじゃ、またね。比企谷くん」

八幡「ああ……」


八幡「小町、来たぞ」

小町(35)「あ、いらっしゃい、お兄ちゃん!」

八幡「元気だったか?」

小町「うん!お兄ちゃんはどう?」

八幡「俺も変わらないよ。さっちゃんは?」

小町「姫さまはいま夢の国ですよ~」

八幡「そうか」
小町「起こそうか?」

八幡「いや、いい。寝かせとけ。それより昼は食べた?俺がなんか作ろうか?」

小町「ふふふ、今の小町的にポイント高い!でもお客さんにそんな手間かけさせないよ?」

八幡「でも、お前まだ大変だろ?」

小町「まだ五ヶ月だから大丈夫!それに初めてでもないから。小町が作るからお兄ちゃんは待っててね」

八幡「そうか。じゃ、久しぶりに妹にごちそうされるかな」

八幡「おお、なんだこれ豪華過ぎるだろ。なんかの記念日か?」

小町「そりゃお兄ちゃんが来た記念日だよ?あ、今の小町的にポイント高すぎる!」

八幡「その余計な言葉がなければな。ていうかそのポイント制度はいつまで続くんだ。年を考えろ」

小町「ブブー女に年の話をするなんていまのはすごくポイント低いよ」

八幡「はいはい、悪かったよ。しかしお前も由比ヶ浜と同じこというのな」もぐもぐ

小町「ん?お兄ちゃん結衣さんと会ったの?」

八幡「まあ、この間ちょっとな」

小町「なっつかしいー!もう三年くらい結衣さんと会ってないもん。結衣さん元気?」

八幡「健康には問題なさそうだが、元気ではないかな」

小町「へ?なんで?」

八幡「その、なんだ……こう言っちゃ悪いが、あいつまだ一人らしくてな」

小町「へえ……昔はまさか結衣さんが静姉さんより遅く結婚するとは思わなかったけど」

八幡「しかもただ独り身ってだけじゃなく、未だ誰とも付き合ったことないらしい」

小町「……え?」

八幡「いいやつなのになんでああなったんだろうな。静と結婚してなかったら貰っちゃいそうだよ」

小町(そうか……結衣さんはまだ……)
小町「ゆ、結衣さん、なにもしてあげられなくてごめんね!」ぽろぽろ


八幡「おいおい、泣くほどかわいそうなのかよ」

小町「小町は泣かないよ……泣きたいのは小町じゃないから……」

八幡「いや泣いてんだろうが。しかしまあ、今年は気の毒な事が多ことよ」

小町「またなにかあるの?」もぐもぐ

八幡「いや、それが……まあ、お前ならいいか。実は雪ノ下が離婚したらしい」

小町「……本当に?」

八幡「ああ。でも幸いというか何と言うか、子供もないし、雪ノ下なら再婚もそう難しくはないだろうよ」

小町「そうか……でもそうだね。雪ノ下さん、結婚式の時もあんまり幸せにはみえなかったから」
小町(雪ノ下さんもやっぱりまだ……)

小町「はあ……お兄ちゃんがこんなに罪な男になるとは思わなかったよ」

八幡「はあ?いきなりなんだ?」

小町「本当に知らないっていうの?」

八幡「まさか存在が罪とはいわないだろうな」

小町「はあ…このごみいちゃんは本当に…」

八幡「お前までなんだよ。癒やしに来たのにひでえな」

小町「え?まさかまたなにかあるの?」

八幡「……」

小町「お兄ちゃん…?」

八幡「実はな…」

小町「ど、どうしたの?そんな真剣な顔で…」

八幡「静……静がな……」

小町「ま、まさか?!」

八幡「閉経期が来たんだよ」

小町「……」

八幡「まあ、由比ヶ浜や雪ノ下に比べるものではないが、なんというか、男してはちょっと受け入れ難いというか、気が抜けるんだよ」

小町「お兄ちゃん」

八幡「ん?」

小町「黙ってご飯食べて」

八幡「じゃあ、そろそろ行くよ」

小町「え、もう行くの?もう少しいてもいいのに」

八幡「いや、静のために夕飯の支度しなきゃな。さっちゃんの顔だけ見ていくよ」

小町「ううん、それもそうだね。はい、こっちだよ」

八幡「いい顔して寝てるな」

小町「やっぱり起こそうか?」

八幡「いや、いいよ」なでなで

八幡「しかし、我が妹の娘だからか、やっぱりかわいいな」なでなで

小町「えへへ」

八幡「……」なでなで

小町「お兄ちゃん」

八幡「ん?」

小町「やっぱり……子供ほしかったの…?」

八幡「いや、俺はあんまり子供好きじゃないからな。静と二人で生きるほうが気楽だよ」

小町「……」

八幡「それにもう遅いしな。静は産みたかったようだったけど、いまさら養子ってのもな」

小町「…そっか」

八幡「じゃ、本当に行くぞ。元気でな」

小町「うん。お兄ちゃんも元気でね。次は小町が遊びに行くよ!」

八幡「ああ、いつでも来いよ」がちゃり

小町「……」

小町「本当に、嘘が下手なんだから…」

結衣「失礼しますー!」

雪乃「久しぶりです、平塚先生」

八幡「おう、いらっしゃい」

静「久しぶりだな、由比ヶ浜、雪ノ下。元気だったか?」

結衣「もちろんです!」

雪乃「はい、先生もげ……すみません。愚問でした」

八幡「おいおい、なんで俺を見るんだ」

雪乃「ヒモがやくんのような寄生虫が取り付いているのに先生が元気なはずがないもの」

八幡「だからヒモじゃなくて専業主婦だっつの。内助の功はしっかり果たしてるんだよ」

静「あのな、雪ノ下。一応は私の旦那s――」

雪乃「あら、内助の功の意味は分かってるの?異性に飼われるのは内助とは言わないの」

八幡「主婦経歴15年を馬鹿するな。もうプロの領域だぜ」

結衣「あはは、なんか楽しいね!まるで昔に戻ったみたい」

静「あの……その…」

雪乃「そうね。あの時に戻ったようね」ふふっ

八幡「だな」

静「こほん、雪ノ下も由比ヶ浜も、そう立ってないで入ったらどうだ?」

八幡「おっと、俺としたことが。ほら入って入って」

雪乃「そうですね。では失礼します」

結衣「はい、ヒッキ。おみやげだよ」

八幡「え、わざわざ買って来る必要なかったけどな」

結衣「以前ここに引越しの時には渡せなかっから。遅いけど引越祝いと思って」

八幡「引越ししたのは七年前だがな……えらく時間に寛容だな」

雪乃「素朴で綺麗な家ですね」

静「ははは、そうかい?」

雪乃「はい。子供なしに二人で生きるにはちょうどかと」

静「そ、そうよね」

結衣「ヒッキーの家久しぶり~前とは結構変わったね?」

八幡「まあな。本棚も新しく買ったし、この前はテレビも変えたからな。それに鉢植えも置いた」

結衣「カーテンも変えたの?」

八幡「カーテンは二年前に変えたよ。お前頭悪いくせによく覚えてるな」

結衣「ヒッキー、あたしの事また馬鹿にするし!こう見えても生徒たちに尊敬される先生だし!」
結衣(それにヒッキのことはなんでも覚えてるし…)ボソッ

八幡「ああ、そうだっけ。実のところお前が小学校の先生になるって言い出した時は無理だと思ったがな」

雪乃「そうね。私もその話を聞いた時はかなり心配だったわ」

結衣「ゆ、ゆきのんまで……」

八幡「でも、もうすっかり中堅教員だな、由比ヶ浜」

結衣「もうー!中堅っていうとあたしが年よりみたいじゃん!」

静「あはは……は…」

八幡「さてと、俺はご飯の支度済ませるからその間お茶飲んで待ってろよ。すぐ出来るからな」

雪乃「そう。プロと自負したその腕前、期待してるわ」

結衣「ヒッキー、あたしが手伝ってあg」

八幡「いや、いい」

結衣「最後まで聞きもしないで断った!?ヒッキーひどい!あたしだって今は普通に料理できるんだから!」

八幡「いや、そういうんじゃなくて、お前らは今日お客さんだから大人しくもてなされて行け」

静「そうだぞ、由比ヶ浜。君らはお客さんだからな」
結衣「そっか。わかった。じゃ、頑張ってね、ヒッキー」

八幡「あいよ」


雪乃「……」

結衣「……」

静「……」あせあせ
静(いきなり空気が……)

静(しかし、二人とも相変わらず若くて綺麗なものだ。私なんてもうただのおばさんなのに…)

結衣「……ヒッキーが淹れてくれた紅茶、昔ゆきのんが淹れてくれた紅茶と同じくらいに美味しいよ」ずる

雪乃「そうね。本当にいい味を出して来たわね」

静(私と結婚してなかったら八幡もまだ若くて綺麗な奥さんと住んでいたんだろうな……多分子供もあって……)

雪乃「平塚先生は紅茶が好きでしたっけ?」

静「う、うん?あ、紅茶は嫌いではないが、特に好きっていう事もないな」

結衣「へえーそうなんだ。ヒッキーが淹れてくれた紅茶が美味しすぎていつも飲んでるのかと思ったのに」

静「まあ、私達はどちらかと言うとコーヒー派だからな。紅茶はたまにくらいしか飲まん」

雪乃「それにしては本当にいい紅茶を淹れるようになりましたね。……誰の為にうまくなったのかって思うほどに」

静「え?」

雪乃「平塚先生」

静「な、なんだ?」

雪乃「今日は招待してくださってありがとうございます」

結衣「ありがとうございます、静先生」

雪乃「せっかくの休日なのに迷惑ではなかったんでしょうか」

静「いや、私こそ久しぶりに弟子たちに会えて嬉しい。明日は日曜日でもあるから、なんなら泊まってもいいんだぞ?ゆっくりしていてくれ」

結衣「ありがとうございます!よかった。ヒッキーに誘われたのは嬉しかったけど、二人の時間を邪魔してるんじゃないか心配だったんですよ」

静「邪魔なわけあるか。別に新婚ってわけでもないし、せっかくの休日に君らが来てくれて嬉しい限りだ」

雪乃「相変わらず優しいですね、平塚先生。だから彼も先生を選んだんでしょう」

静「え?あ、ああ……それにしてもだな、雪ノ下。私はもう平塚じゃなく、比企谷なわけだから…」

雪乃「あら、そうでしたね。申し訳ありません、先生。先生も比企谷だというのに」

結衣「あはは、あたしも意識しないと平塚先生と呼びそうだもん」

静「まあ、君たちは長い間平塚と呼んでいたからな。だが私が八幡と結婚して比企谷になったのも随分昔なわけだから、いくらなんでもそろそろ……」

雪乃「そうですね。でも比企谷先生と呼んでしまっては比企谷くんと紛らわしいかも知りません」

静「ん?あ、私なら普通に静せんs」

雪乃「それではこれから比企谷くんを苗字ではなく名前で呼んだほうがいいですね。それなら紛らわしい事もないですから」

静「う、うん?…そ、そうだな」

結衣「……」


静「あ……し、しかし君たちは本当に年を取らないものだ。ふたりとも八幡と同い年とは思えない」

結衣「本当ですか?ありがとう先生!この前、ヒッキーにババアって言われたから自信なくしたけど、やっぱりまだいけますようね?ヒッキーに」

静「え?」

雪乃「お褒めに預かり恐縮です、先生。先生も……五十代には見えません」

静「あ、あはは……私はつい先日になったからな。五十代というよりは四十代後半だと思うぞ?あはは……は…」

結衣「そうですよ~静先生はまだ綺麗ですから。なんていうか、おばぁさんじゃなくて熟女という感じ?閉経期か来たというのが信じられませんよ」

静「?!なっ…」

結衣「あれ?違いました?ヒッキーにそう聞いたんですけど……先生に閉経期が来たったて」

雪乃「あら……」

静(くっ、はちまあああああああん!よくも喋ってくれたな!ふたりとも帰ったら鉄拳制裁だぞ!)

八幡「おーい、静、運ぶの手伝ってくれ」

静「よし!いま行く!!」   

                     え、どうしたの?ちょっ…くはっ!
雪乃「……仲良さそうね」

                     私が閉経期というのを世界に知らせる気か!!! 
結衣「うん……そうだね」

結衣「うわ!ヒッキー、まじでおいしい!」

八幡「ふっ、だろ?」

結衣「ヒッキー、本当に料理が上手になったんだね~こんな料理を毎日食べられる静先生が羨ましすぎるよ!」

静「あはは、まあ、普段はこんなに手の込んだ料理は出ないんだがな」

雪乃「門前のひも、望まぬ職を得る、だったかしら」

八幡「なにそのことわざ。なんで俺追い出されてんの。てか普通に美味しいと言え」

雪乃「そうね。まあ、プロと自負するくらいはあるわね。もしかしたら、私より上手くなっているかもしれないわ」

八幡「お、まじか」

雪乃「そう。家にお手伝いさんとして雇いたいくらいよ、八幡くん」

八幡「そりゃどうも――あれ?いま名前で呼んだのか?」

雪乃「なにか問題でもあるのかしら?」

八幡「いや、そういうわけじゃないが、今までずっと苗字だったのにいきなり名前で呼ばれたら、な」

雪乃「先生の苗字もいまは比企谷なのだから、比企谷と呼んでしまっては紛らわしいでしょう?ねえ、先生」

静「え?あ、まあ、そうだな」

八幡「そっか。まあ、たしかに紛らわしいし、二十年近くの付き合いでまだ苗字で呼び合うのもそっけなくはあるな」

雪乃「そう。だから貴方も私を雪乃ってよ呼びなさい、八幡くん」

八幡「はは、正直ちょっと照れくさいな」

結衣「あー考えてみればヒッキーは比企谷を略称だから先生とヒッキーが紛らわしいかも。あたしも八幡って呼ぶかな~?」

八幡「それは紛らわしいくないだろ」

結衣「紛らわしいよ!」

八幡「いや、まったくもってそんなことないな。というかお前、以前俺にヒッキーはずっとヒッキーとかなんとか言ってなかったけ」

結衣「でもヒッキーもヒッキーって呼ばれるのいやそうだし、あたしだけ苗字で呼んでるようでいやだし……」

八幡「いまさらかよ。……それと、ヒッキーって呼ばれるの別に嫌じゃねえ」

結衣「へ?」

八幡「そりゃ最初の頃は嫌がったが、もう二十年近く呼ばれ続けてるからな。もう他の呼び方がむしろぎこちないというの?それに、…せっかく友達が付けてくれたあだ名だしな」ぼりぼり

結衣「ほ、ほんと?」

八幡「まあ、他のやつらがヒッキーって呼んだらぶっ飛ばしたいが、お前なら別にいいよ」

結衣「ひ、ヒッキー…!」

静「たしかに、由比ヶ浜が八幡を他の呼び方で呼ぶのは想像がつかないな」

雪乃「私も、由比ヶ浜さんが八幡くんをヒッキーって呼ばないのは想像し難いわ」

八幡「おい、雪乃、俺は名前で結衣は苗字ってのもおかしくないか?」

雪乃「そうね……八幡くんの言うとおりだわ。私としたことが八幡くんに指摘されてしまうとは、不覚ね。ごめん、結衣。遅かったのだけれど、これからは名前で呼んでもいいかしら?」

結衣「!もちろんだよ、ゆきのん!」

八幡「本当にいまさらって感じだが、名前で呼び合うのも、悪くないな」

雪乃「そう。いまになって考えると、私も余計な意地を張ったものね」

八幡「うん?」

雪乃「なんでもないわ、八幡くん」ふふっ

静(よかった。なんか言葉に棘がある気がして、実は来たくなかったのかと思っていたが、どうにも杞憂だったようだ。場も和やかになって、今日が雪ノ下に慰めになったらいいんだが)

結衣「この肉じゃがもヒッキーが作ったの?」

八幡「あ、それは静が作ったやつだな。どうした?ひょっとして口に合わないとか?」

結衣「いや、おいしいよ。でもなんだかこれだけ味が違うなーと思って」
雪乃「確かに八幡くんの料理とは味が違うわ。でもまあ、働いてる先生より実力が落ちたらそれこそ主婦失格ものだもの」

静(八幡が名前で呼ぶのは私と義妹だけだったんだが……微笑ましいと思いながら、なんか寂しい……どこか羨ましい気もする)

結衣「あたしも自炊するけど、ヒッキーにはかなわないかな……そうだ!ヒッキー、暇があったら家に来て料理教えてくれたらだめ?」

八幡「え、めんどくさい」

結衣「もうー!一日くらいはいいでしょ!長い付き合いだし!」

雪乃「そうね、だったら結衣、私も八幡くんと一緒に教えてあげるわ」

結衣「え…?あ、うん!いいよ!」

雪乃「ではいつがいいかしら。私は週末以外は忙しいのだけれど。八幡くんはいつでもいいんでしょう?」

八幡「おいおい、まだ行くとは一言も言ってないぞ」

静(先生か……私だけ壁が出来ているようだな……そりゃ師弟の間柄ではあるが、私も名前で呼んでくれたら…)

静「あ、あのな、雪ノ下、由比ヶ浜」

雪乃「はい、先生」

結衣「なんですか?先生?」

静「その……私も君たちを名前で呼んでもいいか?」

結衣「もちろんです!静先生」

雪乃「お好きになさってください、先生」

静「そうか!じゃ、これからは私も名前で呼ぶとしよう。雪乃、結衣。君たちも私を先生じゃなくて静姉さんと呼んでいいんだぞ?君たちは弟子達である上、旦那の親友だからな」

雪乃「すみません、それは無理です」

結衣「ねー、いくらなんでも先生なのに姉さんはちょっと……」

八幡「まあな」

静 (´;ω;`)

雪乃「今日は楽しかったですよ、先生」

結衣「また来ますねー」

静「はいはい、気を付けて帰れよ」

八幡「んじゃ、またな」

雪乃「……」

八幡「ん?」

雪乃「八幡くん、まさかか弱い女性二人を夜道に放っておくつもり?」

八幡「は?いや、二人だし、別に問題ないんじゃ」

雪乃「私や結衣みたいに若くて綺麗な女性が一緒だからむしろ危険なの。それほどの常識のないのかしら?」

結衣「そうだよ!それにここから駅は遠いし」

八幡「若くて綺麗って、……まあ、きれいなのは別になんとも言わないが、お前らもうあと三年で
四十――」

雪乃「…」ギロッ

結衣「…」ギロッ

八幡「…が、お前たちは童顔だからそうかもしれないな」

静「そ、そうだな遅い時間だし送ってやってやれ八幡」

結衣「ありがとうございます~先生」

雪乃「はい、では失礼します。八幡くん?」

八幡「仕方ない、静、ちょっと行ってくるわ」

静「わかった。みんな気を付けておかえりなさい」


結衣「今日は本当に楽しかったねー」

雪乃「そうね、こんなに楽しかったのは久しぶりだわ」

八幡「そりゃよかった」

雪乃「で、どういう風の吹き回しで食事に誘ったのかしら?」

八幡「別に何かあるわけじゃねえよ。俺たち三人で会わなくなって久しいからな。三人で顔あわせていいんじゃないかって思っただけだ」

雪乃「ついでに離婚して傷心してる私を慰める為に?」

八幡「……まあ、否定はしねえが」ぼりぼり

結衣「ヒッキーは相変わらず優しんだね」

八幡「そんなことはない。本当にキツかった時には何も知らなかったし、何もしてないから。むしろ申し訳ない」

結衣「あたしもごめんね、ゆきのん……ゆきのんが苦しんでるのに全然しらなくて……」

雪乃「知らなくて当然よ。私が言ってないもの。言ってないのを知ってるほうが不自然だわ」

八幡「そう言ってもな…まあ、知ってたとしてもどうにか出来たとは思えないが。家庭の問題はいくら親しいと言っても勝手に出来ないからな。しかも俺は男だから相談や慰めで会ってるのを旦那に誤解されたら火に油だ」

雪乃「……」

八幡「だから出来ることはこんなことしかない。これもお前が離婚したからこそ出来るっていうのは皮肉なものだな」

雪乃「いいえ、これで十分よ。ありがとう、嬉しいわ」

八幡「とにかく、これで誰かに誤解されることもないし、鬱になったり、暇だったらいつでも遊びに来いよ。結衣はともかく俺は暇だからな」

雪乃「あら、でもそうしたら貴方が誤解されるんじゃないかしら」

八幡「他の人ならまだしも静がそんな誤解するはずないだろ」

雪乃「ふふ、そうね」

結衣「あ、そうだ。料理を教えてくれるのはいつがいい?」

八幡「さてな、お前と雪乃が時間が合う日でいいんじゃねえの」

雪乃「そうね、では来週の日曜日はどうかしら?」

結衣「来週の日曜日ね、わかった!」

八幡「こっちもオッケー」

雪乃「では結衣の家に行く日はその日として、私の家に来る日を決めましょう」

結衣「え?」

雪乃「私は貰ったものは必ず返す主義よ、恩も仇も。今日は八幡くんにごちそうされたから次は私の番ということよ」

八幡「おいおい、取引先との接待でもあるまいし、そうすることないだろ」

雪乃「たとえ友達同士だと言っても貰ってばかりはいやなのよ。それとやっぱり私の方が料理の腕が上だというのを証明しなきゃならないし」

八幡「いつもの負けず嫌いかよ。わかったよ」

雪乃「結衣、再来週の土曜日はどう?時間があるかしら?」

結衣「え?あ、土曜日の夕方ならたぶん大丈夫」

雪乃「そう。なら来週の日曜日は結衣の家、再来週の土曜日は私の家ね」

八幡「土曜日の夕方か。静の時間を聞かなきゃな」

雪乃「いいえ、その日は私達三人だけで集まって欲しいわ。元奉仕部の部員だけということで」

結衣「!」

八幡「は?でも静も奉仕部の顧問だったぞ?」

雪乃「静先生には悪いけど、その日は部員だけで集まってみたいの。それと先生ももう年だから遠くまで足を運ぶのは大変でしょう?」

結衣「そうそう!先生もそろそろ体に気をつける年だからね。あ、健康検診でもさせてあげたら?」

八幡「おいおい、そんなにお年寄りではないだろ、たったのg――とにかく、車があるから別に無理じゃねえよ」

雪乃「先生とは次の機会に小町さんと戸塚さん達も呼んでみんなで会いましょう」

八幡「戸塚か。戸塚もしばらく見てないな…はあ、元気かな?」

結衣「ヒッキーまじきも!さいくんの話したらすぐ顔緩むし!」

雪乃「もうすぐ駅ね。ここまででいいわ、今日はありがとう、八幡くん」

結衣「うん、たのしかったよヒッキー!じゃ、また来週!」

八幡「あいよ、また来週な。気をつけろよ」





雪乃「……」

結衣「……」

雪乃「……結衣」

結衣「うん?」

雪乃「結衣に話したいことがあるの」

結衣「そう?偶然だね。あたしもゆきのんと話したいことがあったよ」

土曜日

八幡「いくら夏で、家の中だと言ってもな……」

八幡「なんだその格好は。見てるこっちがまいっちんぐだよ」

雪乃「まいっちんぐ?何を言ってるのかしら。もっと人間にわかるように言ってくれる?」

八幡「人間じゃねえのか俺は。だからお前ら露出しすぎなんだよ」

結衣「ヒッキーサイッテー」

八幡「いや、最低なのはお前らの羞耻心パラメータだ。由比ヶ浜至っては、それミニってレベルじゃねーぞ」

結衣「夏だからあついし、家の中くらいは楽でいたいし」

八幡「なんでエアコン付けないんだよ。あれは飾りなの?見るだけで涼しくなるような新技術なの?」

結衣「省エネだよ、省エネ!」

雪乃「そうね。国家的な問題になってるもの」

八幡「小学校の教科書かよ。そんなの気にしても国家的な問題を個人がどうこう出来るわけないし、そんなの事で得られるのはけし粒のような自己満足だけだ。だから文明の利器を使いこなした方がお得なんだよ」

結衣「二十年経ってもヒッキーはヒッキーだね……」

八幡「まあ、いくら年を取ったからって本質的なところは変わらんだろう。俺を変えたければ映画のように事故でも起こして記憶をなくすことだな」

雪乃「そうね、八幡くんを変えるには頭の中をフォーマットしたほうがよさそうね。まあ、それだから彼らしいけど」

結衣「あはは、昔はこんなおじさんになってまでとは思わなかったよ」

八幡「うるせ、お前らもおばさんだろ」

雪乃「あら、こんな若くて綺麗なおばさんがあるとでも?」

結衣「そうだよ!毎日欠かさず運動してるからまだぴちぴちだし!」

八幡「お前らが綺麗で若くみえるのは認めるが、他のところでそんな事言うなよ。正直37歳ババアがそんな事言ったら引くぞ」

結衣「ババアいうな!大事なのは中身だし!」

雪乃「そうよ、大事なのは何歳かじゃなく、何歳に見えるかだもの」

結衣「かわいいって言い寄って来たから年を教えると黙って去っていたあの筋肉バカまじ許すまじ……」

八幡「そ、それはご哀愁様で…まあ、お前らが実際の年が重要じゃないと言うならそうだろうな。お前らの中ではな」ニヤリ

結衣「ヒッキーひどい!うう……やっぱり男は若い子がいいのかな……」

雪乃「心配しないで、結衣。言葉はそう言っても八幡くんは女の年なんか気にしないわ」

八幡「は?」

雪乃「だってそうでしょう?貴方が静先生と結婚した時に静先生はちょうど今の私達と同じ年だもの」

結衣「あ、本当だ」

雪乃「二十代半ばの時から恋愛対象であったから、三十代半ばの今はいうこともなしね。それとも今は五、六十代の完熟した女が好みかしら?」

八幡「それは完熟しすぎて腐るだろ」

雪乃「あら、年上好きの八幡くんならそれくらいは当然のものだと思ったのだけれと」

八幡「俺は別に年上好きじゃねえよ。惚れた女が偶然年上だっただけだ。それと男という生物は結局年下好きになってしまうんだよ。同い年いい、年上がいいってやつらも五十歳超えれば対象は全部年下になるんだからな」

結衣「へえー…」

雪乃「頭が禿げて老いぼれた八幡くんならともかく、今の八幡くんにとっては五、六十代の女性は異性としては見れないということかしら」

八幡「禿げねえよ。まあ、そうだが、年上だろうが年下だろうが結婚してる俺には関係ないがな」

結衣「……静先生も五十代なのに」

八幡「え?」

雪乃「可哀想な先生。もう旦那に女として愛されないんでしょうね」

結衣「先生、かわいそうだよー」しくしく

八幡「いや、おま、違う」

雪乃「八幡くんが悪いわけじゃないわ。年の差を考えるとこういう問題は避けられない問題だったのよ」

結衣「うん、そうだね。先生はもう閉経期だし。夫婦で過ごした時間も長いからもう異性には見れないようね」

八幡「ち、ちかうからな?俺達はまだラブラブだからな?」

雪乃「あらそう。結婚して十五年も経ってる夫婦がまだまだラブラブなんて大したものね」

結衣「へえ、ラブラブか。でももうそのラブラブは出来ないんでしょ?」

八幡「だからちげーよ!他の女はともかく静は例外というか……ま、まあ、大事なのは何歳かじゃなく、何歳に見えるかであって――」

雪乃「あら、さっきとは話が違うんじゃない?」

結衣「あはは」

八幡「ちっ、うるせえな。無駄に暑くなってしまったぜ。おい、結衣、頼むから本当にエアコン付けくれ。電気代なら三百円まで出すからさ」


雪乃「三百円って……小学生にも劣る器量ね」

八幡「三百円をバカにするな。三百円あればMAXコーヒーが買える」

結衣「ごめんヒッキー、実はそのエアコン壊れていて使えないの。近いうちに業者さん呼ぶつもりだから、次きた時は付けてやるね?」

八幡「はあ、まじか……」

雪乃「そんなに暑かったら服を脱いだらどうかしら」

八幡「は?俺この下はタンクトップだけだぞ?家の中でしか着ないやつだから」

雪乃「いいじゃない。短い付き合いでもないんだから。それに貴方の言うとおり、そんな事で恥じる年でもないでしょう?」

結衣「そうだよヒッキー。暑かったら脱いでよ」

八幡「いや、なんで脱がそうとするんだよ」

雪乃「あら、もしかして恥ずかしいのかしら。気にしないで頂戴。私と結衣は八幡くんがぽっこりしたお腹を持っていても受け入れられるわ」

八幡「ぽっこりなんてないな。どこにぽっこりがあるように見える?」

結衣「恥ずかしがらなくてもいいんだよ?ヒッキー」

雪乃「そうよ。結婚した主婦が太るのは当然だもの。家の中のひき幡くんならそうなるのが当然のもの」

八幡「おいおい、この前運動してるって言っただろ?割れてはいないが、結構自身あるんだよ」

結衣「へえー」

雪乃「八幡くん、羞耻を逃れる為に嘘をついてしまってはもっと大きい羞耻心に苦しむ事になるわ」

八幡「信用ねえな。見せてやろうか?」

結衣「へ?」

雪乃「そう、結局露出癖に目覚めてしまったのね。いつかはそうなると思ってはいたのだけれど」

八幡「何も目覚めてねえよ。腹を少しめくるだけだ」

結衣「でもヒッキー、それならただシャツを脱ぐだけでいいんじゃない?」

八幡「…まあ、そうだな」

雪乃「暑いことも解決して、自信の体も見せる事が出来るのね。合理的だわ」

八幡「ううむ……いや、考えてみると別に見せる必要はねえな。自慢したいわけじゃないしな」

雪乃「もしかして静先生の事が気になるの?それなら余計な心配よ。貴方が言ったでしょう?そういうことで誤解する方ではないと。普通の奥さんなら私達が会うことさえ快く思ってないだろうけれど、旦那とその親友の為に長い時間頑張って来てくれた先生なら気にしないと思うわ」

結衣「ゆきのんの言う通りだよ!それともあたし達を意識して恥ずかしいの?」

八幡「バーカ。二十年近く見て来たのに意識なんてするか。学生の頃ならまだしも、いまさらお前らの裸を見てもなにも思わねえよ」

雪乃「……それはそれでむかつくのだけれど」

結衣「失礼だよ!」ぶるぶる

八幡「はいはい、わかったわかった。脱いだらいいんだろ?脱いだら」

雪乃「そういう言い方はやめてくれないかしら。まるで私達が貴方を脱がしたように聞こえて不快だわ。私達はあくまで暑いと駄々をこねる露出狂に解決策を提示しただけよ」

八幡「はいはい、ふうー暑いな本当」

結衣「あ……///」

雪乃「あら……///」

八幡「ん?どうした?惚れたか?」

結衣「き、きもい!ひ、ヒッキー本当に運動してるんだね///」

雪乃「まあ、見苦しくはないわね///」

八幡「見るがいい、この素晴らしいボディーを!」ポーズ

結衣「うわ……腕が前より太くなったとは思ったけどここまでだなんて……」

八幡「主婦のプロとまでなれば相手の為の健康維持は基本だからな」

雪乃「驚いたわ。貴方がそこまで真面目に主婦をやっていたなんて」

八幡「ようやくわかったか?男の中では俺は専業主婦全国上位1%のうちに入るんだよ。優秀な旦那の鏡って言えるぞ」

結衣「優秀な旦那さんは専業主婦じゃないと思うけど」

八幡「それは差別的な発言だ。男女平等の旗印を掲げてもはや何十年。性別なんて構わず適性によって分担するのが真の夫婦ってものだ。正直、静に家事を任せるのは不安だしな」

雪乃「言ってることはそれほど間違ってないわね。先生は家事が下手そうに見えるもの。それに主婦の仕事も大事なものである事を考えると八幡くんがいい旦那さんと言うのはあながち間違ってはないかもね」

八幡「だろ?だからお前らも俺みたいないい男を探せ」

結衣「……」

雪乃「……」

八幡「おいおい、冗談だぜ、そんなにきつい顔するな」

雪乃「いいえ、貴方の言うとおりだわ」

結衣「うん、そうだね」

八幡「そ、そっか。まあ、頑張れ」

雪乃「……ところで八幡くん」

八幡「ん?」

雪乃「青い鳥という話を知ってるかしら?」

八幡「過去文系で優秀な成績を誇った俺が知らないはずないだろ」

雪乃「そう。チルチルミチルの兄妹が青い鳥を探しに行く話しなの。その結末がどうなったか知ってる?」

八幡「夢オチで自分たちが飼っていた鳥がその青い鳥だったって話だろ?」

雪乃「そうよ。幸せはすぐそばにあったという話し」

八幡「それがどうしたんだよ」

雪乃「さあね、ふふ」

結衣「あはは」

八幡「何なんだ?いきなり変な奴らだな」




雪乃「本当に暑いわね、今日は」

結衣「うん。もうすっかり夏だね」

八幡「俺がなんども暑いって言ったろ。結衣、扇風機はないのか?」

結衣「エアコンがあるから扇風機は買ってないの」

八幡「いや、そのエアコンまったく使われてねえし。お前この夏をどうするつもりだ…」

雪乃「まあ、暑いなら熱の放出を遮るものを排除すればいいんじゃないかしら」

八幡「これ以上どうしろと」

雪乃「そうね。そのズボンでも脱いだら?」

八幡「ズボン脱いじゃうと下着しか残らないんですが?」

雪乃「気にしなくていいわ。私は貴方の下着を見ても何も思わないもの」

八幡「俺が気になるんだよ」

結衣「ヒッキー、そんなに暑いならシャワーでも浴びたら?」

八幡「あ?」

結衣「結構汗かいてるようだし、お水でシャワー浴びだらしばらくは涼しくなるじゃん」

雪乃「いい考えね。ただでさえ臭い八幡くんだから洗ってきた方がいいわ」

八幡「え、まじ?俺来る前にシャワー浴びて来たんだが」

雪乃「冗談よ」

八幡「勘弁してくれ、あやうく昔のトラウマが蘇るところだったぞ。結衣、本当にシャワー借りていいのか?」

結衣「もちろんだよ。あたし達の仲だし気楽に使ってよ」

八幡「そっか。ありがとな。じゃ、行ってくるわ」テクテク

結衣「うん!」
                    ガチャ

雪乃「……」

結衣「……」


八幡(なっ、これ結衣の下着なのか?)

八幡(ありし日の俺が見たら一発でビッチと叫ぶレベルのきわどさだな)

八幡(いくら長い付き合いでも俺も一応男だから気を付けてくれよな……)

八幡(今日にしてもあれはヤバイだろ。俺じゃなかったらこいつ誘惑してると勘違いするレベルだぞ)シャアア

八幡(まあ、いまさらそんなことがあるはずもないし、大体、真の友情を交わした俺達にそんなのあり得ないしな)

八幡「生き返るわー」

八幡(しかし、あいつら本当に年に合わない体してるな。三十七ならもう立派なババアって言うのによ)

八幡(時が過ぎても由比ヶ浜は由比ヶ浜で、雪ノ下は雪ノ下ということか)シャワー

八幡「ふいーいいシャワー浴びだぜ」

結衣「おかえりー」

雪乃「あら、もう上がったの?」

八幡「ああ、体流しただけ――え?」

結衣「ん?どうしたの?」

八幡「いや、お前らがどうしたんだよ?」

雪乃「私達がなにか?」

八幡「ほぼ下着姿じゃねえか。なんで脱いでんだよ」

結衣「暑いからに決まってるじゃん。そしてこれ下着じゃないし」

雪乃「なにか問題でも?」

八幡「あるに決まってんだろ」

雪乃「貴方の姿も私達とそう変わらないんじゃなくて?結衣が言ったようにこれは下着じゃないから問題ないわ」

八幡「いや、下着じゃないかもしれないが、布の面積が圧倒的に少ないんですけど」

結衣「いいじゃん、ここは家ん中だし、あたし達しかないし」

雪乃「それともなにか?刺激が強すぎて八幡くんは犯罪者になってしまいそう?」

八幡「んなわけあるか、ババアども」

結衣「じゃいいんでしょ?それとババアないし!」

雪乃「本当にダメそうなら言って頂戴。お願いしたら聞いてあげないこともないわ」

八幡「お願いするのもあれだが、お願いしたら服でも着るのかよ」

雪乃「乱暴な獣を野放しにして一般人を犠牲にするわけにはいかないもの。古い友人が性犯罪を犯すのを見過ごすのは本意ではないから、貴方の為にこの体を犠牲にしてもいいわ」

結衣「うん、あたしもヒッキーの為なら大丈夫だよ」

八幡「な、なん――」

雪乃「それに……いまは独り身だから。ねえ、結衣?」ニコ

結衣「ねえー」ニコ

八幡「……」

雪乃「ふふ、冗談よ」

結衣「あれ?ヒッキー顔赤くなってる?」ニヤ

八幡「お前ら、年食ってシモネタばかりかよ……大体こっちはそんなつもり毛頭もない」

雪乃「あら、そう」

八幡「さっきも言ったが、いまさらお前らを意識したりしねえよ」

結衣「そっか。じゃあ、ヒッキーは意識しないからこのままでもいいよね?」

八幡「はあ……勝手にしろ」

雪乃「八幡くんも私達を気にせず、暑いならそのズボン脱いでいいわ」

八幡「結構です」

静(50)「おかえり!ごはんにする?風呂にする?それとも、わ・た・し?」

八幡「……」

静「……」

八幡「……」

静「……な、なにか言ってくれ」

八幡「ごめん……一瞬、鳥肌全開だったもので」

静「くっ……す、すまない。年甲斐もなくはしゃいじゃって…」

八幡「あ、いやいや、こっちこそつっこみきれなくてごめん」

静(つっこみ待ちだったわけじゃないんだが……)

八幡「それにしても、その格好はなに?まさか裸エプロン?」

静「いや、下着はつけている。さすがにこの年で裸エプロンはな……」

八幡「いや、下着エプロンもどうかと思うんですが」

静「あ、暑かったから…」

八幡「だからエアコンをな…」

静「その……省エネというか、あはは……」

八幡「またそれか。まったく俺の周りはなにを起こそうとしてるんだ」

静「え?」

八幡「なんでもないです。ふむ、しかし裸エプロンね……十年前なら素直に喜んだけどな」

静「ううっ……若い頃の私にはハードルが高かったんだ」

八幡(十年前なら四十代だから若く無いといったら鉄拳制裁だろうな)


八幡「でも本当にどうしたんだよ。なにかあったの?」

静「特になにかあるわけではないんだが、ちょっと思いついたから……」

八幡「まったく……子供かよ」

静(夫婦の仲が疎遠になるか不安だったからって言えないだろ……何が裸エプロンならイチコロだ!2chに相談した私が馬鹿だった……)

八幡「ごはんは?まだならいま作るよ」

静「あ、それなら私が作っておいたぞ。夕飯まだなんだろ?一緒に食べよう」

静(そう、裸エプロンは失敗したが、まだ愛妻料理が残っている!)

八幡「え?あ、こめん。夕飯は材木座ともう食べてきたんだ。連絡するの忘れたな」

静「へ…?そう、なのか?七時前には帰るといったから……」

八幡「本当にごめん!俺も夕飯は一緒に食べようと思ったんだけど材木座の奴がお腹空いたってうるさかったから仕方なくな」

静「そ、そうか……」

八幡「だからまだ食べないで待ってたんだ?ごめん。先に食べていいのに……」なでなで

静「い、いや、私は大丈夫」

八幡「そうか。じゃ、俺は先に風呂入ってくるから夕飯食べていて」

静「うん……」

八幡「くう~風呂あがりはMAXに限るわ」

静「は、八幡」

八幡「うん?」

静「ひ、久しぶりに一杯どうだ?」

八幡「うん、いいよ」

静(よ、よかった……これもダメだったらもうどうしたらいいのか…)ぶるぶる

八幡「外で飲む?」

静「いや、買っておいたものがあるし、家でゆっくりと飲みたいが…」

八幡「そうか。で、なんでそうおしゃれしてるの?それ静の一張羅じゃなかったけ?見るの久しぶりだな」

静「これはその……おしゃれした方が酒が美味いという話を聞いて…」

八幡「まあ、確かに雰囲気はよくなるかもな。しかしまだその服が着れるとは、さすがだな静。見直したよ」

静「ま、まあなー」
静(実は油断すると服が破れそうだとは死んでも言えない!)

八幡「じゃせっかくだから俺もおしゃれするか」

静「い、いいね」

八幡「おまたせー、え?なんで真っ暗なの」

静「こっちこっち」

八幡「おいおい、どうしたんだ蝋燭まで準備して。なんか記念日だったけ?」

静「なにかの記念日じゃなくてもたまにはいいだろ?」

八幡「まあ、そうだわな。これはビール飲むって雰囲気じゃないが、ひょっとしてワインか?」

静「ははは、正解だ」

八幡「ワインはよくしらないけど、これそこらへんで買える安物じゃないな。いくらしたの?」

静「そんなに高くはないよ。二万くらいだ」

八幡「いやいや、高いと思うんですが。二万だったらMAXコーヒーが何箱買えると……」

静「た、たまにはいいだろ!酒で高いものを探せば二万は足元にも及ばないんだぞ?それと私の給料も高くはないが二人の生活には十分だから……」

八幡「いや、まあ、そうだな。ごめん、せっかく準備してくれたのに余計な言葉だった。ありがとう、美味しくいただくよ」

静「いや、私こそ相談もしないで買ってごめん。ふふ」ぽん

八幡「へえ、いい音するな」

静「そうだな」コポコポ

八幡「お、いい匂いだな。今度は俺が注いでやるよ」コポコポ

静「ありがと。じゃあ、乾杯しようか?」じー

八幡「ああ、君の瞳に乾杯―」チリン


八幡「この味は……クレオパトラ!?」真剣

静「ブ――ッ、けふっ、あはは、なんだそれ」

八幡「どうだ、それっぽいだろ?昔読んでいたマンガでこんなセリフがあってな」

静「それなら私も見たことがあるが、実際に言葉にするものではないな」

八幡「まあ、ビーム噴き出したり、食べ物で絶頂するよりはましなんじゃね?」

静「そりゃ漫画だからな」

八幡「どこかの番組でこんなセリフをいうソムリエを見た気がするけどな」

静「あはは、そうか」

静(せっかく作った夕飯が無駄になった時は泣きたかったけど、まあ、こうやって二人で飲めるからいいか)




八幡「ふう、いいワインだったよ」

静(13歳下の若い旦那との結婚)

八幡「たまにはこういうのもいいな」

静(先生という身分で教え子に手を出したという事に世間の視線はきつかったし、雪乃や結衣に対する罪悪感もあった)

八幡「もう十一時半か」

静(だが一人の女性として、彼との結婚は幸せだった。幸せを手に入れる事が出来たんだ)

八幡「ふむ、明日は月曜日か」

静(でも不安なんだ……君はまだ若いのに私だけこんなに老いてしまったことが……)

八幡「昨日無理して疲れてるから」

静(子供でもあったらこんなに不安になることもなかったはずだが、不幸にも私には子供が出来なかった)

八幡「早く寝るほうがいいかもな」

静(私は子供なしに二人だけでも幸せだけど、君はそうじゃないかも知れないという事実が怖くてたまらない)

八幡「静も寝るだろ?」

静(子供も出来ないおばさんの私に飽きて他の女の所に行ってしまうのではないか、そんな想像が怖くてたまらない)

八幡「ん?」

静(もう五十路。早ければ孫さえある年だ)

八幡「静?」

静(そのうちお婆さんと呼ばれてもおかしくないこの年に自分でも色ボケたと思うけど)

八幡「もしもし~」

静(私はまだ君と愛し合いたい。愛されたい…!)


静「は、八幡!」

八幡「な、なに?」

静「あ、あのな……今日は、その、久しぶりに……」

八幡「ん?」

静「や、やらないか…?///」

静(く、くうっ、言ってしまった////)

八幡「え?あ、その……悪いけど俺、昨日ちょっと精力消耗してしまっちゃってさ、違う日にしない?」

静「!?!?!」

八幡「ごめんな、こんなに準備してくれてるのに」

静「しょ、消耗しちゃったの……?」

八幡「え?あ、ああ」

静「そそそそそれは、つ、つまり、うううううう浮気…?」

八幡「なっ、いや違う!」

静「そ、そうか……私はもう飽きてしまったのか……」涙目

八幡「待って、お前いま絶対誤解してるぞ!」

静「そう、だな……八幡はまだ若いし、私は閉経期の廃れ物だからな……」しくしく

八幡「だから誤解だって!」

静「子供もできない……もう捨てられて当然か……あは、は……」ぽろぽろ

八幡「おい静!」

静「!?」ビク

八幡「誤解されるようなこと言ってしまったのは悪いけど、浮気じゃないから」

静「ほ、ほんとに?」

八幡「大体浮気の告白をこんな堂々とするか。昨日は……そのナニを頑張ってしまっただけなんだよ」

静「……」

八幡「その、なんだ、この間があれだったからな115回目のあれ。材木座の奴がなんかいっぱい送ってきたんだよ」

静「……」

八幡「そんなの貰っても迷惑だが、来てしまったものを捨てるのもあれだし、その、…な?」

静「……」

八幡「だから全部誤解だ。泣くなよ」

静「……」

八幡「まあ、そういうわけで今日はちょっと疲れてるから、次にしよ。な?」

静「………うん」

八幡「怒るなって。ごめん、愛してる」チュ

静「あっ…///」

八幡「じゃ、先に寝るぞ」

静「うん!///」

静(ふええ…よかった……閉経期が来たと言った日からなんかよそよそしいと思って……でもまだ愛されてるんだ……よかった……本当に……)

静「……」

静(……でもよく考えてみたら、私と関係は持たなくてもナニはしてるってこと?)

静(最後にしたのはいつだったかな……)

静(妻として愛してるけど、性的対象にはならないと……)

静「くっ……心が…!」


つづく

静(50)「すまん、八幡。連帯保証人になっていたのが……」
八幡(37)「」


八幡「先生……?いまなんて…?」

静「だ、だからその……お、甥の連帯保証人になっていたのが……」

八幡「なん……だと……?」

静「言い訳する気はない……本当に……本当にすまない……」

八幡「いやいや、連帯保証って、一体いつの話だ?俺は何も聞いてないぞ?」

静「じ、実は去年の初頃に頼まれて……」

八幡「まじかよ……」

静「す、すまない……」

八幡「なんで一言もなかったんだよ」

静「き、君に心配かけたくなかったから……言うと反対されると思ったし……」

八幡「そりゃ反対するだろ」

静「本当にすまない……まさかあんないい子だった甥が夜逃げしてしまうとは思ってもなかったから……」

八幡「思ってもないって、連帯保証といのは自分の借金お前が返せって言ってるものだろ?親戚はおろか、親兄弟でも連帯保証はだめだろ」イラッ

静「ご、ごめん……」


八幡「……それで?」

静「へ?」

八幡「借金はいくらなんだよ」

静「お、およそ三千二百万くらい……詳しくはこの請求書に……」

八幡「今日来たの?」

静「来たのは二日前に……」

八幡「二日前か。なんでその時に言わなかったんだよ」

静「ご、ごめん、一体なんて言ったらいいのか分からなかったから……」

八幡「だから二日前から居心地悪そうにしてたのか」

静「ごめん……」

八幡「『当社は、貴殿の連帯保証のもと、○○○○殿に対し、後記のとおり貸し付けを行いました。
しかしながら、返済期限を徒過しているにもかかわらず、現在に至るまで、金三千二百十三万二千百十二円について返済がなされておりません』」

静「……」


八幡「ふう……3,213,212円か…」

静「……」

八幡「貯金していたのが大体千四百万くらいあるから、それとこの家を売って合わせばなんとか……」

静「……」

八幡「この冬に道端に居座るわけにもいかないし、賃貸を探せねば……でもその金が……」

静「……」

八幡「いや、どうせこんなに荷物を置けるとこには行けるはずがないから、本当に必要なものだけ残して全部売ってしまえば小さい部屋くらいは借りれるか」

静「……」

八幡「だとしたら今まで集めいた本も処分しなきゃな。最近は殆ど電子書籍化してるが、紙の本を好きな人はまだあるし、今ではレアな物も結構あるからある程度足しはなるはず」

静「……」

八幡「はは、この家で最後を迎えるつもりでいたのに、こんな風に離れるとは……この家のロン全部返してまだ三年も経ってないのにな……」

静「ううっ……ごめん……ほんとうにごめん……」

八幡「なんで泣くんだよ。泣きたいのはこっちだぞ」

静「……」ぽろぽろ

八幡「……ちょっと風にあたってくる」

静「……」

八幡「……」ガチャ

静「……」

八幡「……遅くなるかも思うから先に寝ていいよ」バタン

静(´;ω;`)

居酒屋


材木座「お主から飲みに誘われるとは珍しいではないか」

八幡「今日はちょっとな。ごめん、呼んどいてなんだが、忙しいんだろ?」

材木座「なに、心配などいらん!時間が命の業界だ、余裕がなかったらこうして会ってもいられないのだよ」

八幡「そうだな。最近はどうだ?上手く行ってるのか?」

材木座「ふむ、我はいつも通りだ。豊かではないにしろ、一人で生きるには問題はない」

八幡「お前はくらいになると結構売れるものだと思ったのにそうでもないのか?声優の仕事って本当に大変だな」

材木座「これでも随分ましになったものよ。お主が知ってる通り、新人の頃は本当にきつかったのだからな」

八幡「まあな。お前がマヨネーズ入りの雑草を食べ、流し台で体を洗っているのを見た時はさすがの俺も涙ぐんだから」

材木座「拙者、あの地獄は二度と経験したくないでござる……まあ、今になっては思い出として話せるけど」

八幡「そういえばラジオなんかでもネタにしていたな。ウィキにも書いていたぞ?」

材木座「ふむ、おそろく我を慕うファンの誰かが書き込んだのであろう」

八幡「うざいけど、今になってはあながち間違ってないというのが世の不思議だ。高校生の俺にお前が人気声優になると言っても絶対信じない自信がある」

材木座「我も信じないと思う」

八幡「売れるラノベ作家になって人気声優と結婚するとかいう戯言をほざいていた奴が人気声優になるとは、人生が謎すぎるだろ」

材木座「はっはっはっ、それが我という人間に潜められた力だったのだ!……いまさらだが八幡、本当に感謝してるぞ」

八幡「は?いきなりなんだ?」

材木座「あの頃、飢えた我のために作ってくれたご飯と叱咤がなかったら、きっと我は中途半端にあきらめていたのであろう。……今の成功は全部お主のおかげだ」

八幡「ご飯と小言なんて誰でもやるだろ。お前の成功はお前が頑張ったからだ。ご飯と小言でどうにかなるんなら、俺は総理大臣でもなってるはずだがな」

材木座「だとしても嬉しかったんだ。他人にお節介なんて根っこから嫌うお主が我の為にそこまでしてくれたという事実が」

八幡「……」

材木座「まあ、マスターであり、兄弟でもある我を助けるのは当然だからのう。フハハハ!」

八幡「うるせ。すいませんー生中をもうひとつ」

材木座「だから八幡よ。お主が我を助けるのが当然であるように、我がお主を助けるのもまた然り。悩み事があるならいつでも頼ってくれ」

八幡「……」

八幡「そりゃありがたい」

材木座「では乾杯しようではないか。我らが友情は永遠なり!」

八幡「いい声で何くだらんことを」

材木座「ごくごく……くう~」

八幡「……」

八幡「なあ、材木座……」

材木座「ぬ?」

八幡「……」

材木座「どうしたのだ?」

八幡「……いや、お前いつ結婚するつもりかな、と思って。結婚する気はあるのか?」

材木座「くっ、我も結婚する気は満々だが、思い通りに行かないものでな」

八幡「お前、ファンもいっぱいあるだろ?ファンとの結婚も珍しくないようだし」

材木座「うむ、だが人気声優との結婚という我が宿願、そう簡単には諦められないものよ」

八幡「まだそれ言ってるのか?お前も声優になったことだし、いい加減幻想も壊れる頃だろ?」

材木座「それはそうだが、むしろ目が高くなってしまったのだよ。どれだけ美人であろうとも、声が綺麗じゃないと満足出来ない体になってしまったのだ」

八幡「外見はともかく、中身は高校生のままだな。人間、そう簡単には変わらないか」

材木座「それはそうと八幡よ。我は最近また小説を書き始めているのだが、いつか感想を頼むぞ」

八幡「は?また書いてるのか?声優の仕事は?」

材木座「もちろん本業は声優である。暇なときにちょくちょく書いてるだけだが、考えてみろ、現役の人気声優が書いたラノベとなるとそれだけで注目を浴びるだろ?しかもアニメ化に成功すると声優は思うがままに選べる!どうだ、この素晴らしい考えが」

八幡「まあ、面白そうだな。無理だろうけど」

材木座「ふふふ、望むならお主が好きな声優を選んでやってもいいぞ?」

八幡「ふん、書いてから言え」




八幡「……」ガチャリ

静「お、おかえり」

八幡「……」

静「あ……」

八幡「……」

静「そ、外寒かったんだろ?コーヒーでも飲む?」

八幡「別にいい」

静「あ、うん……」

八幡「俺はもう寝るよ。お前も明日早いだろ?」

静「そ、そうだな」

八幡「……」ぐるり

静「……」

静(こんなに冷たい八幡は初めてだ……)

静(夫婦として十五年、喧嘩は数えるほどしかやったことがない……誰も認める仲良し夫婦だったけど……なのに……)

静「でもしかたないよね……あんなことやってしまったから……」

静「ぐすっ……」

もう死ぬしか無いじゃない(絶望)

もう死ぬしか無いじゃない(絶望)

週末、由比ヶ浜の家


結衣「ヒッキー、どう?」

八幡「まあ、悪くないな」

結衣「もう、悪くないだけ?ヒッキーは厳しすぎるよ」

八幡「俺くらいのプロになるには程遠いんだよ」

結衣「そっか…」

八幡「でも高校生の時と比べれば大した進歩だ。頑張ったな結衣」なでなで

結衣「ひ、ヒッキー…!///」

八幡「プロへの道はまだ遠いが、ここまで来たなら一人でも出来るだろ。お前に料理を教えるのは今日が最後だ。卒業おめでとう」

結衣「え、卒業って…まだ教えて欲しいのに…」

八幡「三ヶ月も教えたんだ。もう十分だろ?」

結衣「それはそうだけど、回数で数えるとそんなに多くないし、ヒッキーあたしに教えるのもう面倒臭くなった…?」

八幡「なに言ってんだ。最初から面倒臭かったよ」

結衣「ヒッキーひどい!」

八幡「冗談だ。別に面倒くさいからじゃねえよ。俺も忙しいからな。これからはここまで来て料理を教えるほどの余裕がないんだよ」

結衣「え?でもヒッキーは仕事してないでしょ?」

八幡「主夫をなめてるのか?年収1200万円分の仕事の大変さを馬鹿にするな」

結衣「いや、そういうわけじゃないけど、いきなりそんなこと言うから……ひょっとして何かあったの?」

八幡「いや、何もない」

結衣「じゃあなんでいきなり余裕がなくなったの?」

八幡「えーと、まあ、俺もそろそろ職業を持つべきかなと思って」

結衣「ヒッキーが仕事?!やっぱりなんかあるんだ!」

八幡「おいおい、俺が働くのがそんなに問題かよ。なにもねえよ。ただ家事ばかりなのが飽きただけだ」

結衣「……」じー

八幡「…信用ねえな」

結衣「でもヒッキー、働きたくないから専業主夫になったんでしょ?働いた負けとか言ってたし」

八幡「あの時は甘かったんだよ」

結衣「やっぱりなにかあるんだ。だったら素直に言ってほしいな」

八幡「……」

結衣「……」じー

八幡「……実はな」

結衣「うん」

八幡「最近、静がお小遣いをくれないんだよ」

結衣「え?」

八幡「この年にゲーム買いたいからねだるのもあれだし、趣味に使う金くらいは自分で稼ごうかな、と思ったわけだ」

結衣「……」

八幡「……」

結衣「なにそれ……心配して損した」

八幡「だから言ったじゃねえか。何もないって」

結衣「そういう所は本当に変わらないね……」

八幡「人間、そう簡単には変わらないんだよ」

結衣「うん、そうだね」




八幡「……」カチャリ

静「おかえり…」

八幡「……ああ」

静「あ、あの…」

八幡「……なんだ?」

静「う、ううん、なんでもない……」

静(まともに話さなくなってもう五日……)

八幡「……」

静(五日しか経ってないのに本棚はもう半分以上なくなっている。所蔵用とか感想用とかを別に買うほどではなかったけど、それでも本を大事にしていた人なのに……)

八幡「これとこれはブックオフだな。これは……」

静(いつでも出来るようにテレビの横に置いていたPS7もいつの間にか箱の中に入っている。きっとこれも売るつもりなのだろ……誕生日にプレゼントした時は子供のようにはしゃいでいたのに……八幡のそんな姿は珍しくて私も嬉しかったのに……)

八幡「どれどれ……」

静(郵便が一枚来ただけで……老後のために貯金していた金が、八幡との思い出が込められている物が……家が……心が……次々と無くなっていく……)

八幡「これはヤフオクにするか」

静(十五年か……長かったようで短い時間……)

八幡「これは……」

静(幸せだった時間はもう過ぎ去ってしまったな……)

静「ぐすっ……」

次の日、喫茶店


雪乃「おはよう、八幡くん。待たせてしまったかしら」

八幡「いや、俺もさっき着いたよ」

雪乃「そう」

八幡「で、どうしたんだよ。平日なのにお前から用事って」

雪乃「あら、平日は会ってはダメなの?私達は週末だけの関係?」

八幡「それは言い方がちょっと変だろ。誤解されるぞ」

雪乃「私は別に構わないわ」

八幡「お前が困らなくても俺が困る」

雪乃「ふふ、そうね。八幡くんは私と違って結婚してるもの」

八幡「まったく。お前、平日は忙しいんじゃなかったのかよ」

雪乃「そう、暇ではないわ」

八幡「だったらなんで……ひょっとして何かあったのか?」

雪乃「そうね。普通ではないわ」

八幡「何があった?」

雪乃「さあ、それを知ってるのは私じゃなく、貴方ではないかしら。八幡くん?」

八幡「なに?」

雪乃「結衣から聞いたわ。貴方が何か起きたって」

八幡「……」

雪乃「一体どうしたの?」

八幡(結衣のやつ……余計な事を……)

八幡「おいおい、俺が働くのがこんだけ騒ぐほどのものかよ。別になにもねえって」

雪乃「それは嘘ね。八幡くん、二十年の間、貴方を見て来た私を騙せると思ってるの?」

八幡「結衣が勘違いしただけだ。何もねえよ」

雪乃「そう、言うつもりはないのね。そういうところは本当に変わってないわ」

八幡「……」

雪乃「でも私と結衣は変わったの。昔のようには行かないわ。それは、貴方も知っているでしょ?」

八幡「……」

雪乃「貴方が何も言わなくても、私達は諦めない。時間の問題よ。私達は貴方にどんな事が起きているのかどんな手段を使っても突き止めて、助ける」

八幡「雪乃……」

雪乃「でも、どうせなら貴方の口から聞きたいの。何があったのか」

八幡「……」

雪乃「八幡くん、私達を信じられない?」

八幡「そんな事はない……」

雪乃「大切だと思ったのは私達だけ?」

八幡「そんなんじゃない……」

雪乃「だったらなんで言ってくれないの?」

八幡「……」

雪乃「……」

八幡「お前らが大事だからこそ、言えないこともあるんだよ」

雪乃「八幡くん、貴方は何度も私と結衣を助けてくれたわ。私達は何度も貴方に救われた。なのにどうして貴方は私達の助けを拒もうとしてるの?」

八幡「あの時とは違う。言葉はありがたいが、誰かに助けてもらう事は出来ない」

雪乃「出来るかどうかを判断するのは私よ」

八幡「……」

八幡「魚を与えるのではなく、魚を釣る方法を教えるのが奉仕部の方針だったな。だが、釣る魚がない時はどうする?」

雪乃「……」

八幡「魚を与えるのは奉仕部の精神に背く行為だ。しかも一人でも足りないことがわかってるのにそれを欲しいとねだる事はいくら友達でも、いや友達だからこそ、出来ない」

雪乃「そうね。魚を与えるのは奉仕部のやり方ではないわ。でもこの問題は奉仕部の問題じゃない」

八幡「……」

雪乃「それと八幡くん、私達を見くびってもらったら困るわ。私達は貴方の為ならどれくらいの魚を持っていても、それを全部あげるのに何の疑問も持たないわ」

八幡「言葉だけでも嬉しいものだ……」

雪乃「言葉だけ?私が嘘言を言わないのは知ってるはずでしょ?」

八幡「……」

八幡「そうだな。雪乃は嘘も欺瞞もしない奴だったな。結婚式の時に永遠の愛を誓いますかと聞いてるのに最後まで何も何も言わなかった奴だもんな」

雪乃「だって本当に愛してなかったもの。愛してないのに誓いなんて出来ないわ」

八幡「だったら結婚すべきではなかっただろ」

雪乃「親に強要されたのよ。それにあの時は自棄になっていた頃だから。世界が灰色に見えた頃だから」

八幡「……」

雪乃「それで、何があったかそろそろ聞きたいのだけれど」

八幡「はあ……仕方ない……実は連帯保証人になっていたのが問題になって借金を負う事になったんだよ」

雪乃「連帯保証?連帯保証人になったの?」

八幡「そう」

雪乃「八幡くん、貴方がそこまで愚かだったとは思わなかった。連帯保証人になるのがどれだけ危険なのか知らなかったと言うの?」

八幡「俺だって知ってるよ」

雪乃「それならなんで連帯保証人になったの?もう自己犠牲なんてしないと約束したでしょ?」

八幡「おいおい、なんで俺が連帯保証人になったと決め付けるんだ。俺が連帯保証人になるのはこの世で唯一、小町だけだ。まあ、小町は俺にそんな事頼まないだろうけど」

雪乃「……としたら、まさか静先生が?」

八幡「はあ……去年、俺に隠して甥の連帯保証人になったそうだ。でもその甥は夜逃げ、結局その借金は全部俺達のものになったという事」

雪乃「……」

八幡「お前らには知られたくなかったんだよ。言っても心配掛けるだけだから。それだけは避けたかったんだが」

雪乃「金額はいくら?」

八幡「三千二百万だ。まあ、貯金していたのといま住んでる家を売れば何とかなると思う。何億の借金じゃないのが幸いだな」

雪乃「家を売ってしまえば貴方と先生はどこに住むの?」

八幡「まあ、いまあっちこっち安い賃貸を探してるんだよ。予算に合いそうな物で十畳くらい部屋は見つけたんだが、どうもどおくてな」

雪乃「十畳……」

八幡「そんなに深刻そうな顔するな。たしかに青天の霹靂だが、死にそうな状態ではないから。大体材木座なんて雑草を食べて生きてたんだぞ?それに比べればな」

雪乃「……」

八幡「気にするなってのが無理なのはわかるが、それでも気にするな。大丈夫だ」

雪乃「八幡くん……」

八幡「これからは俺も働くし、二人で頑張ればまた元の家に帰れるだろ。子供ないからすぐだ」

雪乃「そう……」

八幡「人生どう転ぶかわからないし、宝くじが当たるかもしれないし、だから、そんな顔するな」

雪乃「……」

八幡「この話はこれで終わり。結衣には心配しないように言ってくれ。それと、他の人には秘密な。特に小町には絶対秘密だぞ。あいつもうすぐ出産だから」

雪乃「……八幡くん」

八幡「ん?」

雪乃「……」

雪乃「よかったら、私の家で一緒に住んだらどうかしら……?」

誤字が多いですが、ご了承ください

つづくで区切りを付けたつもりですが、分かりにくかったかも知りません。
連帯保証人から第二話という感じで見て下さい。

八幡って仕事したことないらしいから国民年金も最低支給だし、五十歳で貯蓄一千万ちょっとって人生詰んでるじゃん…
保証人になってなくても遅かれ早かれ退職後すぐ同じような状況になる

>>191
SSに突っ込むようなバカに理解できるかどうかはわからんが
万が一日本語が読めるなら3号でぐぐれカス

この子供がドヤ顔でフィクション相手に間違った知識を披露して
大恥かく流れっていつまで続くの?

>>192
教員の共済年金はそこらの厚生年金よりも優遇されてるけど三号被者に対しては雀の涙だよ?
現行でも一万五千円も出てない。役所ならもうちょっとマシ。国家公務員は周りにいないから知らんけど

ドヤ顔でマヌケな知識ご披露して大恥かく流れは止まらないね

八幡「ただいま」

静「おかえり」

八幡「ああ」

静「……」

静「今日はどこに行ってたんだ?」

八幡「ちょっと雪乃とな」

静「……」

八幡「……」

静「夕飯美味しかったよ。ありがとう」

八幡「……主夫として当然だからな」

静「そうか……」

八幡「……」

静「さっき電話であったよ。明日は家を見に人が来るって言ってた」

八幡「……そっか」

静「広くはないけど、金かけてインテリア変えたおかげで綺麗でいい家になったから、きっとすぐ売れるさ」

八幡「……」

静「駅まではちょっと距離があるけど、バス停はすぐそこだし、商店街も近いからいい値段になるはずだ」

八幡「……そうだな」

静「君に何も言わずに保証人になったの事、本当に申し訳ないと思ってる」

八幡「……いい、もう過ぎた事だ」

静「幸せにするって言ったのに、約束守れなくてすまない。いつも貰ってばかりだった」

八幡「……」

静「だから八幡、離婚しよう」

八幡「は?」

静「全部私が勝手にやった事だ。お前まで苦しむ必要はない」

八幡「……」

静「子供も出来ない、勝手に保証人になって借金まで負った。離婚の理由としては十分だろう」

八幡「……」

静「慰謝料もちゃんと払うよ。多くはないが、一人で生きるには不足ないように準備する」

八幡「……」

静「そして八幡は若いから、きっと私よりいい女と再婚出来るはずだ」

八幡「……」

静「だから……いて!」

八幡「アホか」

静「え、え?」

八幡「こんな事で離婚するくらいだったら、最初から結婚なんてしない。プロの専業主夫を馬鹿にするなよ。配偶者が辛い時は隣で支えてやるのも主夫の仕事だ」

静「で、でも……私に怒っていたんじゃ……?」

八幡「そりゃ怒るに決まってんだろ。あんな事があったのに普通でいられるか」

静「……」

八幡「だがな、夫婦は喧嘩もするし、怒ったりもするものじゃないのか?間違ってしくじっても、許すのが夫婦じゃないのか?」

静「……」

八幡「もちろん今回は度が過ぎたが、それでも夫婦だろ?家族だろ?こんな偽物ばかりの世の中で信頼できる一番大事な本物だろ?」

八幡「逆に聞くよ。もし俺が連帯保証人になってこんな事になったら、静は俺を捨てるのか?」

静「いや……」

八幡「だろ?俺も同じだ。だから二度と離婚なんて下らないこと言うな。次に言ったらマジギレするからな」

静「うん……」ぐすっ


八幡「はあ、本当に泣き虫さんだな。これじゃ誰が年上なのかわからん」

静「うう……だって……あの日以来、八幡すごく冷たかったから……それじゃなくても私は閉経期だし……子供もないし……だから……」

八幡「捨てられる前に自分から言ってしまえばいいと?」

静「ううっ……ぐっすん……」

八幡「……」ギュッ

静「!?……///」

八幡「はあ……本当にアホだな。昔の頼もしい静はどこに行ったんだよ」

静「年を取ると心細くなるから……母にもなれなかった私は弱くて当然だよ……」

八幡「……」

八幡「だから子供なんていらないと何度も言ったはずだがな……静はやっぱり欲しいのか?」

静「愛する人の子供を産みたいのは当然だから。それに……」

静(子供という枷があったら今のように捨てられるんじゃないかと悩む事もなかったはずだから)

八幡「それに?」

静「なんでもない……」

八幡「……そう」

静「うん……」

八幡「静、後にまたこの家に戻られたら、養子でも貰うか?」

静「養子って……今ではもう遅いだろ」

八幡「そうか?現代の平均寿命を見ると普通に孫までは見れると思うけどな」

静「あはは、孫の顔が見れる頃には私はシワだらけの老いぼれになってるけどな」

八幡「それは俺もだ」

静「そうだな。だがやっぱり気が進まない」

八幡「なんでだ?」

静「わからない……十年前はそれでもいいと思ったけど、今は無理だ。八幡の血が通ってない子供を愛する自信がない……」

八幡「そうか」

静「ごめん……」

八幡「謝る必要はない。言ったろ?俺は子供はいらないと。繁殖の本能は俺にないんだよ」

静「……」

八幡「まあでも、繁殖の本能はないが、繁殖行為には興味がある」

静「え?」

八幡「静、久しぶりにどう?」

静「!?ほ、本当か八幡!?」

八幡「え?ああ、まあ……」

静「そ、そうか!じゃ、わ、私は風呂に入ってきたほうがいい!?」

八幡「ちょっと落ち着け。まだ九時もなってねえよ」

静「あ、そ、そうだな……」

八幡「俺が言い出してなんだが、喜びすぎじゃねえか?」

静「は、はうう……///」

八幡「……そういう所も可愛いけどな」なでなで

静「……」かぁ

八幡「その前に軽くビールでも飲もうぜ。シャワー浴びてくるから準備してくれる?」

静「わ、わかった」

八幡「じゃ、頼むな」

静「……」

静「ううっ……」べったり

静「よかった……本当によかった……」ぐすっ

>>194
ttp://allabout.co.jp/gm/gc/13233/
>第3号被保険者は保険料の負担がありませんが、第1号被保険者と同額の老齢基礎年金を受け取ることができます。
>老齢基礎年金の支給額
>年額788,900円(平成23年度額)
月15000円がなんだって? 割り算とか難しい?

>>194
そもそもおまえのその間違いだらけの年金講座は
このSSがさらに面白くなると思って
書き込んでんのかよカスってだけの話なんだが

>>202
>>204
あのさー、周りも迷惑がってるから引っぱりたかないんだけど、君年金の仕組みしらないならもう出てくんなよww
一生懸命ぐぐった労力は認めるけどさ、調べなきゃわからない程度のお子ちゃま知識で難癖付けてくんない

まず、厚生年金と共済年金は階段の仕組みが全然違う
国家・地方で支給額も違う。更に言うなら共催は被扶養家族の収入でめちゃくちゃ支給額変わる
とどめに公立教員の三号は最底辺
もう恥ずかしいったらありゃしねえなマジで

どこの世界に一年も働いてない高校教師の扶養家族に7万も出す運用団体があるんだよ
かーちゃんにでも聞いて来いよ。可哀想な目で見てくれるから。ほら

つうかこの子本気で馬鹿そうだから基礎年金と老齢厚生年金の計算分かってなさそうなんだよなあ…

>>191 「基礎年金最低やね」
>>192 「三号でぐぐれ」

ここの時点で間違ってるって気付いてね
これで分からなかったらほんと馬鹿だと思う

八幡(自分から離婚しようと言い出すほど追い込まれていたとは……)

八幡(冷たくあたっていたのは事実だが、あれほど苦しんでいるとは思わなかった)

八幡(喧嘩なんて殆どしてなかったから、余計に傷付いたのかもな……)

八幡(年を取るたび心細くなるとは言ったが、静、あんなに弱くなって……)

八幡(貰ってばかりはこっちの方だ。十分に幸せだったんだ)

八幡(専業主夫として頑張ったとは思うが、面倒を見てもらったのはいつも俺だ)

八幡(静はもう五十路。ひねくれた俺に鉄拳制裁を加えていたあの頃とは違う)

八幡(俺はいいとしても、身も心も弱くなった静にボロい家はきつくなかろうか)

八幡「……」シャアア

八幡「よかったら一緒に、か……」

(回想)

八幡「は?なんだって?」

雪乃「難聴かしら?私の家で一緒に住んだらどうかと聞いてるの」

八幡「いや難聴じゃねえ、聞き取れなかったんじゃなく、言ってる意味が分からないって言ってんだ。雪乃、お前がいま一人なのは知ってるが、いくらなんでもそれは出来ないだろ。そんなの迷惑では済まない」

雪乃「迷惑?誰が迷惑になるのかしら?私は全くもって構わないわ」

八幡「お前の気持ちは嬉しいが、それでも……」

雪乃「八幡くん、勘違いしないで頂戴。貴方を助ける為に言い出したけど、だとしてもこれは私の一方的な犠牲とかじゃないわ」

八幡「は?」

雪乃「知っている通り、私は仕事で忙しいし、私の家は一人で暮らすには広すぎるのよ。八幡くんが言ってるように家事は大変だけど、それに割く時間があんまりないわ」

八幡「それって……」

雪乃「そう。私の家に住む代わりに、八幡くんは家事をやってもらって欲しいの。要するに家政婦になるのよ」

八幡「家政婦……」

雪乃「もちろん、多くはないけれどそれなりの給料も与えるわ。家も広くなって、人も増えるから今より大変だろうけど、悪い話ではないでしょ?」

八幡「いや、悪い話ところか、むしろ良すぎて困るんだが……それではお前が…」

雪乃「貴方にこんな事が起こったからではなく、元々お手伝いさんを雇うつもりだったの。部屋は多いから一つくらい誰が使っても構わないし、知らない人を雇うより、信頼できる腕の良い人の方を雇うのが合理的でしょ?プロの主夫さん」

八幡「……」

雪乃「それと静先生はもう歳だから、八幡くんならまだしも、貧乏な生活を強いるのはあまりにも酷いわ」

八幡「それはそうだが……」

雪乃「それに、私もひとり暮らしはもう疲れたから……」

八幡「雪乃……」

雪乃「八幡くんと静先生が来てくれるなら本当に嬉しいと思う。だから何も迷惑になることはないわ」

八幡「……」

八幡「ふう、さっぱりした。あれ?なんでまた真っ暗に……」

静「こ、こっちだ八幡!」

八幡「静?なにしてん……」

静「……」ドキドキ

八幡「……」

静「……」

八幡「……」

静「な、なんで黙ってしまうんだ!」

八幡「あ、ごめん。……この短い時間でよくもここまで準備出来たものだ」
静「じ、準備ってほどもないが……」

八幡「力入れすぎでしょ……蝋燭に、ワインに、勝負下着に……」

静「せ、せっかくだからムードを大事にしようと……」

八幡(正直、ここまで積極的だと引くわー)

八幡「風引いちゃうぞ?勝負下着は後で見てやるから一旦服を着てくれ」

静「へ?あ、うん……」




八幡(その後、気持ちよくワインを飲み、半年ぶりに静とひと時を過ごしたのだが……)

八幡(くっ……これほど疲れるとは……)

静「はあはあ……」アヘアヘ

八幡(静、本当に溜まっていたんだな……)

八幡(セックスの時はいつも恥ずかしがってた彼女が恐ろしいほど積極的になっていた)

八幡(年を考えて、もうそういう欲求はないだろうと思ってたのに、とんでもない勘違いだったな……)

静「はあ……ふへへ」

八幡(本当に嬉しそうにしているな……こんな姿見てしまったら、これからもやってやるしかねえな)

静「忘れられない日になると思ったが、違う意味で忘れられなくなった……」

八幡「そうか……」

静「やっぱり八幡と結婚して正解だった。私が行き遅れだったのはきっと君と結婚するためだったんだろう」

八幡「セックスの後にそんなこと言われても反応に困るがな」

静「え?あ、いや、そういうことじゃなくて……いや、それもあるけど……///」

八幡「本当に、何歳になってもかわいいな静は」

静「だ、だから年の話はするな!」

八幡「ははは、ごめんごめん」

八幡(俺一人だったら雑草を食うが、流し台で体を洗うが構わないけど、静にそういう生活をさせたくない。だから……)

八幡「静」

静「うん?」

八幡「この家が売れたら、俺たち、雪乃の家に世話になるのはどうかな?」

静「なに?雪乃の家に世話になるって、いきなり何を言っているんだ?」

八幡「実は、俺の様子がおかしいと雪乃達に聞かれてな……」

静「……」

八幡「仕方なく全部言うと、自分の家でお手伝いさんをやらないかって言われたんだよ。住み込みで」

静「雪乃が……話はすごくありがたいものだが……」

八幡「人の家で世話になるのが申し訳ないし、気が進まないのはわかるけど、現実的に、これ以上の条件はないと思う」

静「……」

八幡「もしあいつが離婚してなかったらさすがに俺も断っただろうけど、いまは独り身だからな。それと家も随分と広いらしい。部屋の一つや二つは人が住み着いても構わないほど」

静「……」

八幡「でもまあ、お手伝いさんになる以上、俺も文句を言われないように今まで以上に頑張るつもりだ」

八幡「電気代や水道代をきっちりと払えば、雪乃にとってもそれほど迷惑にはならないんじゃないかな」

静「……そうだな」

八幡「一年くらい世話になって、余裕が出来たら小さい家を借りて出よう」

静「……うん」


一ヶ月後

八幡「というわけで、雪乃の家に世話になる事になったんだが……」

結衣「静先生、ヒッキー、やっはろー」

八幡「なんでお前がここにいるんだ?もしかして引越しを手伝いに来たのか?」

結衣「ん?もちろん引越しは手伝うけど、別にわざわざ来たわけじゃないよ?」

八幡「は?」

結衣「あたしも先週からゆきのんと一緒に住んでるから」

八幡「なん……だと?」

静「……」

八幡「一体どういう事だ?なんで結衣がお前の家で住んでる?」

雪乃「あら、結衣が私の家にいる事のどこがおかしいのかしら?」

八幡「いや、だって……」

結衣「別にあたしも借金で、とかじゃないよ?ゆきのんもあたしも女一人で暮らすのは不安だったし、話し合ってあたしの家より広いゆきのんの家に引っ越すことにしたの」

雪乃「たしかに言ったはずよ?準備する食事や洗濯物の数が増えると」

静「……」

八幡「まあ……ここはお前の家だから誰と住もうがお前の自由だが……」

雪乃「それとも八幡くんは結衣と一緒では不満かしら?」

結衣「え?!そうなの?」

八幡「違う違う。そんなことはない。まあ、何か言える立場でもないし」

結衣「ふうん、そっか~」

静「……」

八幡「しかし何と言うか、これじゃ奉仕部の合宿でも来たようだな。お前らと一つ屋根の下で暮らすのは想像も出来なかったが」

雪乃「そうね。私もこんな日が来るとは思ってなかったわ」ニコ

結衣「うん、ほんとにね」

八幡「とにかくまあ、いつまでになるかはわからんが、これからよろしくな、雪乃、結衣」

結衣「うん、よろしくね!ヒッキー、静先生」

雪乃「宜しくお願いします、八幡くん、静先生」

静「そ、そう……私も、これから……よろしく……」

静 (´;ω;`)

現在、海外で書いてるため、不具合があります。ご了承ください

話数を付けることにしました。
最初から連帯保証人の前までが1話で、連帯保証人から今までが2話、今からが3話になります。


比企谷八幡(37)
大学卒業と同時に高校生の頃担任だった平塚静と結婚し、専業主夫になる。
妻の静を心から愛しているが、彼女の閉経期が始まった以来、性関係は殆ど持たなくなる。
異性の友達である雪乃と結衣に恋愛感情は持っていないが、妻と同じくらいに大事にしている。

平塚静(50)
35歳というギリギリの年で夢に見てた結婚にゴールイン。
雪乃と結衣の気持ちを知りながら、やや卑怯とも言える方法で八幡を横取りしてしまったという罪悪感を持っている。
心から旦那を愛し、愛されているが、年をとるに連れ、段々不安になっている。

由比ヶ浜結衣(37)
雪乃とはお互いの気持ちを知り、八幡の恋愛対象になるべく応援し、競っていたが、予想外の第三者である静に奪われてしまう。
八幡が結婚してからも諦めがつかなく、言い寄ってくる男性を全部拒絶した結果、まともに恋愛も出来ず行き遅れになってしまう。
結婚してから八幡を会っていなかった雪乃とは違い、友達として彼との関係を続けて来た。

雪ノ下雪乃(37)
八幡を取られてしまったことに自棄になって、親の言い付け通り政略結婚してしまうが、苦痛のすえ、離婚する。
戸籍も体も汚れてしまったけど、心だけは清らかにあろうと、八幡だけを思って生きてきた。
借金で行きどころを無くした比企谷夫婦を自分の家に招き入れる。

話数を付けることにしました。
最初から連帯保証人の前までが1話で、連帯保証人から今までが2話、今からが3話になります。


比企谷八幡(37)
大学卒業と同時に高校生の頃担任だった平塚静と結婚し、専業主夫になる。
妻の静を心から愛しているが、彼女の閉経期が始まった以来、性関係は殆ど持たなくなる。
異性の友達である雪乃と結衣に恋愛感情は持っていないが、妻と同じくらいに大事にしている。

平塚静(50)
35歳というギリギリの年で夢に見てた結婚にゴールイン。
雪乃と結衣の気持ちを知りながら、やや卑怯とも言える方法で八幡を横取りしてしまったという罪悪感を持っている。
心から旦那を愛し、愛されているが、年をとるに連れ、段々不安になっている。

由比ヶ浜結衣(37)
雪乃とはお互いの気持ちを知り、八幡の恋愛対象になるべく応援し、競っていたが、予想外の第三者である静に奪われてしまう。
八幡が結婚してからも諦めがつかなく、言い寄ってくる男性を全部拒絶した結果、まともに恋愛も出来ず行き遅れになってしまう。
結婚してから八幡を会っていなかった雪乃とは違い、友達として彼との関係を続けて来た。

雪ノ下雪乃(37)
八幡を取られてしまったことに自棄になって、親の言い付け通り政略結婚してしまうが、苦痛のすえ、離婚する。
戸籍も体も汚れてしまったけど、心だけは清らかにあろうと、八幡だけを思って生きてきた。
借金で行きどころを無くした比企谷夫婦を自分の家に招き入れる。

第三話

もしも、
もしも私がほんの少しだけ素直だったら、人生は変わったんでしょうか?
もしも私がほんの少しだけ勇気を出していたら、人生は変わったんでしょうか?
答えは分からない。人生にもしもという言葉は通じない。
だけど、それでも思ってしまう。いつも思ってしまう。
そうしていたら彼の側に居るのは私だったのではないか、という儚い思いを。
自分が特別だという思いはは幻で、誰より強いという思いも錯覚だった。
数え切れない痛みを他人に与えたくせに、自分はたった一度の痛みに崩れてしまった。
現実を認めず後悔だけを繰り返す。
過去を見るこの目に未来は映らない。
あの日から、私の時間は止まってしまった。

比企谷八幡を平塚静に奪われたその日から。


16年前、クリスマス

結衣「ゆきのん、やっはろー!」

雪乃「いらっしゃい、由比ヶ浜さん。比企谷くんは?」

結衣「ヒッキーは少し遅くなるんだって」

雪乃「そう。なら、先に二人で準備する?」

結衣「うん!それにしても、今年は飾りも多くて派手だね!」

雪乃「そうした方がいいと去年、由比ヶ浜さんが言ってたから」

結衣「え、それを覚えてくれたの?」

雪乃「余計だったかしら。おかしい?」

結衣「ううん、すごく綺麗だよ!覚えてくれてありがと、ゆきのん!」ギュッ

雪乃「あ、あまりくっつかないで欲しいのだけれど……」

結衣「えへへーゆきのん大好き!」

雪乃「私も……由比ヶ浜さんが好きよ」

雪乃「だから……仮に私が選ばれなかったとしても……その相手が貴方なら……私は大丈夫」

結衣「……」

結衣「あたしも……あたしも、その相手がゆきのんなら……大丈夫」

雪乃「ふふ、そうね」

結衣「ゆきのん、どっちが選ばれても、あたしたち、ずっと友達よね?」

雪乃「当たり前でしょ。私はずっとそのつもりでいるもの」

結衣「えへへ……なんか緊張するね。ついに来たっていうか」

雪乃「そうね、私も緊張してるわ」

結衣「ゆきのんも緊張する時があるんだ?」

雪乃「私だって緊張くらいはするわ」

結衣「そっか。……あたしたちに告白されたら、ヒッキー、驚くよね?」

雪乃「当然だわ。こんな美人の二人に同時に告白されるなんて、あの男の人生に二度とない光栄だもの」

結衣「はは、そうだね~♪」




結衣「ヒッキー遅いね」

雪乃「そうね。もう料理も出来上がるというのに、あの男はいったいどこで……」

結衣「あたしが電話して見るよ」ぴっぴっぴ  トゥルルルル

八幡「もしもし?」

結衣「あ、ヒッキー、遅いよ!一体いつ来るの?もう40分も過ぎちゃったよ」

八幡「ごめんごめん、こっちから電話しようとしたところだ」

結衣「ひょっとして何かあったの?ヒッキー、これまで約束時間に遅れたことなかったじゃん」

八幡「あ、元々は時間より早く着こうと思ってたんだが、行く途中に偶然平塚先生と会ってな」

結衣「平塚先生を?」

八幡「ああ。それでなんだが、由比ヶ浜、急に言われても困ると思うけど、平塚先生も一緒でいいか?」

結衣「え?平塚先生を連れて来るって?」

八幡「そう。だから雪ノ下にも連れて行っていいか聞いてみてくれ」

結衣「ゆきのん……」

雪乃「……」

雪乃「はあ……いいと思うわ。平塚先生は私達の恩師だから」

結衣「そうだね……うん、そうだね」

結衣「ヒッキー、ゆきのんがいいって」

八幡「オッケー、すぐ行くわ」

結衣「うん、早く来てね」ピッ

結衣「あはは……久しぶりに平塚先生に会うのは嬉しいけど、正直に言うと、複雑……」

雪乃「そうね。他の日ならまだしも、よりによって今日というのは、困るものね」

結衣「うん、でも今日しか時間が無い訳じゃないし」

雪乃「そうよ。機会はいつでもあるわ」




結衣「平塚先生、久しぶりです!」

雪乃「お久しぶりです、平塚先生」

静「ああ、久しぶりだな、由比ヶ浜、雪ノ下。元気だったかい?」

結衣「はい、もちろん!平塚先生も変わりないんですか?」

静「ははは、私はいつも通りだ。今日はいきなり訪れてすまないな」

雪乃「そんなことないです。平塚先生はいつでも歓迎ですよ」

静「そう言ってくれると助かる」

結衣「というかヒッキー、その大きい荷物は何?」

八幡「あ?あ、これか。全部酒だ」

結衣「え、それ全部?!」

雪乃「今日は飲み会ではなくクリスマスパーティーのはずだけれど……そんなに飲みたかったの?」

八幡「いや、俺が飲みたくて買ったわけじゃねえ」

静「あ、それは私のだ。パーティーには酒がつきものだからな」

結衣「あはは……こんなにたくさんは飲めないと思うけど……」

静「なに、心配するな。君がダメでも比企谷が責任をもって全部飲むさ」

八幡「は?いや、俺もこの量は無理ですよ。その以前に、酒あんまり好きじゃんないし」

静「まあまあ、遠慮するな」

八幡「いや、遠慮してないけど」

静「今日はクリスマスだからな、久しぶりに比企谷ショーが見たいのだ」

八幡「は?なんですか比企谷ショーって」

雪乃「たしかに最近見てないですね。久しぶりに鑑賞するのもわるくないと思います」

結衣「あはは、そうだね」

八幡「いや、なんで俺が知らない俺のショーってのを当然のように知ってるんだお前ら」

雪乃「あら、もう忘れてのかしら、カルボがやくん」

八幡「……」

結衣「あはは、それ久しぶりに聞いた~」

八幡「ぐっ、あれを掘り出してくるとは……」

静「はは、冗談だ。そんなに恥ずかしがるな。今日は楽しく飲むぞ」

八幡「はいはい」

雪乃(今日のためにいいシャンパンを用意したのだけれど、これも次の機会がよさそうね)




結衣「ううん……zzZ」

雪乃「比企谷くん、本当に大丈夫?」

八幡「だいじょうぶ、だいじょうぶ~まだよってねねえー」ベロンベロン

雪乃「とてもそうは見えないけれど……比企谷くん、今日は遅いし随分と酔ってるようだから、私の家で泊まったh――」

静「大丈夫だ、雪ノ下。こいつは私が送ってやる」

雪乃「いえ、平塚先生にそこまで面倒を掛けるのは……」

静「なに、問題ないさ。比企谷の家は私の家からもそう遠くないからな。酔い覚めにちょうどいい」

雪乃「……」

雪乃「そうですね。では、よろしくお願いします」

静「ああ、任せろ。比企谷!寝るな、帰るぞ!」

八幡「ううん?かえる?あ、かえる、かえる」

静「雪ノ下、今日は久しぶりに君たちに会えて本当に楽しかったよ」

雪乃「はい、私もです、先生」

静「元気でな。由比ヶ浜にもそう伝えてくれ。行くぞ、比企谷」

八幡「あーい……雪ノ下~じゃあな~」

雪乃「気をつけて帰りなさい。ではまた」

静「比企谷、どこに行く!そっちじゃない!」

八幡「はあい?」ベロンベロン

静「仕方ないな、ほれ、こっちに寄れ」

八幡「はあい~」

雪乃(本当に大丈夫かしら……)

雪乃(……平塚先生もいることだし、そこまで心配はいらないかもね)

結衣「ううん……ヒッキー……zzZ」

雪乃(ふう、今日は思ってもない客に予定がくるってしまったわ。今日こそ私達の思いを伝えるつもりだったのに)なでなで

雪乃(まあ、久しぶりに平塚先生に会えて楽しかったのは事実だし、話す機会はいつでもあるもの)




それから8日が過ぎた1月3日。その年も変わらずに彼と彼女は私の誕生日を祝ってくれた。
友達に誕生日を祝ってもらうという、他の人には当然のことが、私には慣れないとても特別な事で、五年目になるその日にやっとその幸せを素直に受け入れる事が出来た。

八幡「雪ノ下、洗い物終わったぞ」

結衣「ヒッキー、お疲れ~」

雪乃「ありがとう、比企谷くん」

八幡「まったく、いくら誕生日とはいえ、洗い物までさせるか?ってかなんで俺だけ残ってやってるんだ?」

雪乃「戸塚さんや小町さんにやってもらう訳にはいかないでしょ?」

八幡「俺はいいのかよ……まあ、別にいいけどな」

結衣「あはは、別にいいんだ」

八幡「他の人でもない、お前らの頼みだからな。楽しいんならそれで十分だ」

雪乃「……」

結衣「……ヒッキーってたまにぐっと来ること言うよね。無自覚だろうけど」

雪乃「そうね。意外と女の敵かもしれないわ」

八幡「は?」

雪乃「なんでもないから忘れて」

八幡「何なんだ、一体……」

結衣「あ!ゆきのん、この前買っておいたあれ今日飲もうよ!」

雪乃「……そうね。比企谷くんも苦労してくれたことだし、ご褒美にあげましょ」

八幡「え?あれって?」

結衣「実はクリスマスに買っておいたシャンパンがあったけど、平塚先生が買ってきた酒が多くて出せなかったんだ」

八幡「シャンパンか……そういえばシャンパンは飲んだことないな。それ高くないか?」

雪乃「二万くらいのものだから、安くはないわね」

八幡「まじかよ……クリスマスだとしても張り切りすぎだろ」

結衣「高かったけど、その日は他のクリスマスとは違う特別な日だったから」

雪乃「感謝しなさい。比企谷くんがこれくらいのシャンパンを飲むことはそうはないだろうから」

八幡「まあ、そうだな。ならありがたくいただくよ」


雪乃「どう?初めてのシャンパンは」

八幡「すっぱい」

結衣「それだけ?!もうちょっと言うことあるでしょ!」

八幡「そう言ってもな……俺はソムリエとかじゃないんだよ」

結衣「うう……ヒッキーのために買ったのに、こんな反応じゃ期待したあたしがバカみたい……」

雪乃「はあ……本当に空気を読めない男ね」

八幡「え、これ俺の為に買ったの?」

結衣「奉仕部の三人のためだからヒッキーのためでもあるんだよ!」

八幡「そ、そうか……」

八幡「その、なんだ……まずいってわけじゃない。美味いと思う。でも俺、酒はもうやめようかなって思ってたところだから……」

結衣「え?なんで?」

八幡「……酒のせいで色々やらかしたっていうか、この前も……いや、あれは違うな……」

雪乃「クリスマスの事なら気にしないで。みっともない姿はいつものことでしょ?」

結衣「うん~あたしは途中から寝てしまったから、よくわからないけど」

八幡「そんなことじゃ……いや、なんでもない。まあ、せっかくの貴重な酒だし、お前の誕生日だから今日くらいはいいか」

雪乃「そうよ。今日は特別だもの」

結衣「うん、そうだね」

相槌を打つ由比ヶ浜さんの笑顔が微妙に強張っているのがわかる。私も同じだったから。
あと一杯。
あの酒の瓶が空になる時、私達は長い時間、この胸で育んできた思いを彼に打ち明けるのだろう。
待っててもどうしようもない人には、こっちから行くものだと、由比ヶ浜さんは言っていた。
本当にその通り。比企谷くんを待っていたら、多分お婆さんになってしまうから。

八幡「ふう、美味しかったよ。ありがとな」

雪乃「そう……」

結衣「……」
私の人生で、ここまで緊張した事があったのだろうか?
初めて母に逆らった時も、これほど胸が苦しくはなかった。比企谷くん、貴方が側にいてくれたから。
でも今は貴方が側にいるせいで、こんなにも胸が高鳴る。緊張するほど、実感が湧き上がる。
ああ、私はこんなにも、比企谷くんを好きなんだ……
それはきっと由比ヶ浜さんも同じだ。

八幡「ん?どうした?なんでふたりとも俺をそんな目で見てるんだよ」

結衣「え?あ、な、なんでも……」

雪乃「……」

いまから、一人は泣き、一人は笑うことになる。
でも大丈夫。もし私が選ばれなかったとしても、私は笑える。
相手が由比ヶ浜さんなら、心から祝福する事が出来る。それはきっと由比ヶ浜さんも同じ。
だから……

雪乃「ひ、比企谷くん」

結衣「ひ、ヒッキー」

八幡「どうしたんだよ、ふたりそろって」

雪乃「……」

結衣「……」

雪乃「ふう……実は……」

八幡「あ、そういうばお前らに言わなきゃならない事があったな。……実はその、俺、平塚先生と付き合う事になったよ」


私達は、誰一人笑えなかった。

すみません、遅くなりました。
申し訳ないですが、一身上の都合で次回も遅くなること思います。
よろしくお願いします。

三ヶ月後

静「……お父さん、お母さん。私はいま、本当に幸せです!」

静「考えてみれば、私が三十すぎでも独り身だったのも、八幡が高校の頃、彼の担任になったのもすべてこの日のためだったと思います!」

太陽より明るく笑っている花嫁の笑顔に、祝いに来た人達も自ずと笑顔になる。
幸せに満ちた笑顔というのは、きっとあの顔に対する言葉なのだろう。
懲りずに恥ずかしい秘密を打ち明ける花嫁に、花婿は困ったように笑っていたけど、きっと彼も幸せに違いない。
皆が笑っている結婚式場の中、私だけが笑っていない。
ほんの少しだけ、口元を緩めばいいのだけれど、それがどても難しくて……涙を堪えることが精一杯で……
だから、私は笑っていない。
ふいと、膝に置いた私の左手を由比ヶ浜さんの右手が握る。
前を向いた彼女の顔は笑っていた。疑う余地もない祝福の笑顔だった。
でも私にはわかる。彼女もまた笑っていない。
私の手を包んだ彼女の手が止めどなく震えていたから。

小町「雪乃さん、結衣さん、今日は来てくれてありがとうございます」

結衣「そんな、当然でしょ。ヒッキーと先生の結婚式だもん」

雪乃「そうよ。先生は私の先生でもあるし、比企谷くんは……友達だから……」

小町「そうですね……」

結衣「うん……友達だから……」

小町「……」

小町「正直な話、小町はお兄ちゃんと結婚するのは結衣さんか雪乃さんだと思ってました」

結衣「え?いやいや」

雪乃「そうよ。いくらなんでも失礼だわ」

小町「あはは、クリスマスパーティーだからって雪乃さんちに行って次の日の午後になって帰ってきた時は間違いないと思ったんですけどね~」

雪乃「……いまなんて?」

結衣「え……?それ、どういう事…?」

小町「え…?」

結衣「ゆきのん、ヒッキーはその日、平塚先生が家まで送ったんじゃないの?」

雪乃「……」

結衣「まさか……まさか……」

小町「あ、あちゃー……」

帰り道

春乃「静ちゃん、幸せそうだったねー」

雪乃「……そうね」

春乃「比企谷くんも幸せそうだったしー」

雪乃「……そうね」

春乃「まさかあの二人が結婚するなんてねー」

雪乃「……そうね」

春乃「比企谷くんは絶対雪乃と結婚すると思ってたけどー」

雪乃「………そうね」

春乃「……」

春乃「雪乃は、今回も選ばれなかったね……」

雪乃「……」

雪乃「……ふふ」

春乃「雪乃…?」

雪乃「ふふ……そういうことだったのね……」

春乃「雪乃……」

雪乃「ふふ……ふふふ……ふ、ううっ、うっ、ひ、ひきい、がやっ……ぐん……」

春乃「……」ぎゅっ

それから二年後、私は母に言われる通り政略結婚をする。
自棄になっていた私に、母に逆らう気力なんてなかった。
誰なのか分かりもしない年上の男に私が要求したのはたったひとつ。雪ノ下家の入り婿になること。
比企谷くんに雪ノ下ではない苗字で呼ばれるのは我慢できなかった。

結衣「ゆきのんは本当にそれでいいの?」

雪乃「……大丈夫よ」

結衣「うそ。ゆきのん全然幸せそうに見えないし……気持ちはわかるけど、これはないよ。結婚しても不幸になるだけだよ……」

雪乃「……」

雪乃「もう…どうしようもないわ」

結衣「……」

結衣「この結婚、やっぱりあたしは祝ってあげられない……」

そう言って背を向ける由比ヶ浜さんに私は何も言えなかった。
それから何ヶ月後、私の意思とは構わず進んでいた私の結婚式で、私は久しぶりに比企谷くんと再会した。

八幡「結婚おめでとう、雪ノ下。いや、もう雪ノ下じゃないのか?」

雪乃「いいえ、彼は入婿になるんだから私の苗字は変わらないわ」

八幡「そっか」

静「久しぶりだな、雪ノ下。結婚おめでとう。今日は本当に綺麗だな」

雪乃「……はい、ありがとうございます、平塚先生」

静「ははは、もう平塚ではなく比企谷だけどな」

雪乃「……」

雪乃「…比企谷くん」

八幡「ん?」

雪乃「……この姿、どう?」

八幡「……そうだな。とても綺麗た。やっぱり雪ノ下雪乃って感じだな」
雪乃「……そう」

比企谷夫婦には招待状を出していない。
今日だけは彼らの顔を見たくなかったから。他の男と結婚する姿を見せたくなかったから。
それでもドレスを着た私を綺麗だと言ってくれる比企谷くんの言葉は、とてもうれしくて、悲しかった……

ホテル

夫「どういうつもりだ!!」

雪乃「……」

夫「結婚式をぶち壊すつもりか!?誓いの言葉を言うのがそんなに難しかったのか!!」

雪乃」……」

夫「何か言ったらどうだ!?」

雪乃「……最初から言ったはずよ。私は貴方を愛する自信なんてないって。それでもいいって言ったのは貴方ではなくて?」

夫「だとしてもだ!結婚式なんだぞ!どれだけの人が今日あの様を見たと思うんだ!!」

雪乃「……私は虚言だけは吐かない」

雪乃(そう。比企谷くんの前で虚なんて言えないから……)

夫「そうかよ!勝手にしろ!!」バタン!

雪乃「……」

雪乃「……」

ホテルを飛び出した彼が帰ってきたのは時計が十二時を示す頃。
散々酔っぱらいになって来た彼がいきなり私の服を脱がした時、私は抵抗してなかった。意味がないから。
きっとそれが気に入ったのだろう。息巻きながら私に怒鳴っていた彼は自分の手を拒まない私を見てすぐ笑みを浮かべた。
そして私が処女という事実を知り、その上キスもしたことが無いと知った時は笑みは歓喜に変わっていた。
そうやって比企谷くんの為だったはずの初めては、全部、彼に奪われ、汚された。
それでも。
この体が何百回汚されても、心だけは渡さない。
心だけはいつまでも比企谷くんのものだから……
だから目を閉じよう。この苦痛の時間が終わるまで……




もしも、
もしもその日、平塚先生を連れてくると言っていた彼を止めていたら、人生は変わったんでしょうか?
もしも酔っていた彼を送ると言っていた先生を止めていたら、人生は変わったんでしょうか?
答えは分からない。人生にもしもという言葉は通じない。
だけど、それでも思ってしまう。いつもそれだけを思う。
もしその日に戻れるのなら、もし私にもう一度機会が与えられるのなら、今度こそ。
二度と戻ってこないその日を思い、いつまでもその日が来るのを待っていた。

現在、クリスマス

八幡「クリスマスパーティーか。こうやってみんあ集まってパーティーやったのは本当に久しぶりだな」

結衣「うん、本当にねー。ヒッキーが結婚してから一度もなかったから十五年ぶりかな?」

静「そうか。その時が最後だったな」

八幡「一人だったお前はまだしも、結婚していた雪乃をクリスマスに呼ぶわけにはいかないからな」

雪乃「あら、別に構わなかったのに」

八幡「いや、そうして誤解されたらどうするつもりだ。って、いまになってはどうでもいいが」

雪乃「ふふ、そうね」

八幡「でもクリスマスではなかったが、四人で集まったのはあったじゃないか。小町が結婚した時とか、小町が引越しパーティーやった時とか、小町が子供を産んだ時とか」

結衣「あはは、全部小町ちゃんのことだったね」

八幡「まあ、結婚して以来みんなで集まるのは少なかったけど、結衣とは結構頻繁に会っていたし、雪乃もメールでいつもやりとりしていたじゃないか」

雪乃「そうね。八幡くんとするメールだけが生きがいだったわ」

静「……」

八幡「それは大げさだろ……どんな獄中生活だよ」

雪乃「大げさじゃないわ。元主人はからかっても面白くなかったもの。ふふ」

結衣「へえーゆきのん、ヒッキーといつもメールしてたんだ」

八幡「ん?お前知らなかったのか?」

結衣「うん。全然知らなかった。ゆきのんが離婚する前まではヒッキーに関して一言も話してないから」

八幡「どこの魔法使いだよ。名前を言ってはいけない存在か?俺は」

雪乃「あら、八幡くんは私達が八幡くんを話題にしてほしいの?そんなに哀願されたら出来ないこともないけれど」

八幡「誰が哀願したんだよ。自分の事を話題にしてほしいなんてナルシストにもほどがあるぞ」

雪乃「中学の頃にナルが谷と呼ばれていたのでは?」

結衣「あはは、そういえば言ってたね」

八幡「いつの話だよ……まったく、お前らに会うといつも昔に戻った気分だ」

雪乃「そう、私もあの頃に戻った気分だわ。三人でいつも顔をあわせていた奉仕部の頃を……」

八幡「まあ、あの頃はこんなに喋っていない日も多かったけどな」

結衣「うん。ヒッキーとゆきのんは何も言わずに本読出る時が多かったし、奉仕部の雰囲気が悪かった時期もあったし」

雪乃「でもそれらをすべて乗り越えたからこそ、私達はお互いを分かり合えたから」

八幡「そうだな。そうでなきゃ、きっと今のようにはいられなかったんだろ」

結衣「またこうやってみんなでパーティーが出来て嬉しいよ」

八幡「ああ。ここに小町と戸塚もいたら最高だったけど、もうふたりともそれぞれ家庭があるから仕方ない」

結衣「ヒッキーのシスコンとサイちゃん好きは変わらないね……」

八幡「当然だ。戸塚が相変わらず綺麗で本当によかったよ。普通のおじさんになっていたら俺は号泣する自信がある」

結衣「ヒッキー、まじできもい……」

雪乃「ふふ……」

静「……」

雪乃「あら、体調でも悪いんですか?さっきから何も言わずにどうしたんですか?静先生」

静「え?い、いや、ちょっと思いにふけていた」

雪乃「そうですね。思いふけるのも分かります。まるであの日に戻ったようですよね?十六年前のクリスマスに」

静「……」

雪乃「……もしその日、酔っていた八幡くんを送ると言っていた先生を止めていたなら……」ボソッ

静「!?」

雪乃「先生を連れて来ると言っていた八幡くんを止めていたなら……」ボソッ

静「ゆ、雪乃……」

雪乃「私と結衣の人生は変わったんでしょうか?」ボソッ

静「……」

雪乃「ふふ、冗談ですよ」

その時、静先生の顔に隠っていた罪悪感と不安の色を私は見逃さなかった。
私達の幸せを奪った彼女。そんな彼女の幸せを少しだけ分けてもらおうとするのは間違っているのだろうか?
分からない。知る必要もない。
間違いでも何でも、私は前に進むと決めたから。

止まっていた私の時間が動き出す。



三話終

これで一旦話を終わらせます。
無論、続きはありますが、今のところ時間に余裕がないので誠に申し訳ないですが、当分の間、更新は出来ません。
おそろく続きは新しいスレッドになると思います。
その時もよろしくお願いします。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年01月06日 (火) 00:50:03   ID: 6Xjk6CyN

面白い。
期待!

2 :  SS好きの774さん   2015年01月13日 (火) 02:21:51   ID: lJz4noHR

更新はよ!!
ガンガン書いてください!!
めちゃめちゃ楽しみにしてます!!!

3 :  SS好きの774さん   2015年01月13日 (火) 13:39:13   ID: wZ_EqdTY

wktk

4 :  SS好きの774さん   2015年01月14日 (水) 00:49:00   ID: VnEGii8E

SSスレで言い合ってるの見苦しい...
それ以外はいいと思うけど。

5 :  SS好きの774さん   2015年01月15日 (木) 00:10:21   ID: w3xAKhSw

年金の話してるの、馬鹿かコイツら…w

6 :  SS好きの774さん   2015年01月19日 (月) 22:55:26   ID: GHYEuHY9

はよーはよーはよー!!
ずっと待ってるんだからね!!

7 :  SS好きの774さん   2015年01月21日 (水) 22:22:31   ID: nAoJozGx

今あるSSで一番期待してるから早よ!!!!

8 :  SS好きの774さん   2015年01月22日 (木) 00:55:49   ID: Tubi7zJM

やったー続きだぁ!!

9 :  SS好きの774さん   2015年01月22日 (木) 18:12:19   ID: nuVW_zm5

続きを要求する!!
お願いします。オカワリ下さい。

10 :  SS好きの774さん   2015年01月25日 (日) 01:24:43   ID: i2TdHE9C

まさかの酒に酔わせて責任取らせて結婚するとは…行き遅れると最低になるのか…

11 :  SS好きの774さん   2015年01月25日 (日) 18:40:29   ID: sFP3csGD

キタァー!!!!
新しいのも待ってます!!!!
ここからメチャクチャ楽しみすぐる!!
待ってます!!!!

12 :  SS好きの774さん   2015年01月28日 (水) 17:01:13   ID: tH8nGX8k

続き、楽しみです!

13 :  SS好きの774さん   2015年01月28日 (水) 20:48:33   ID: Wg_g62Co

先生が閉経とか妙にリアルでワロタ。
続き期待してます!

14 :  SS好きの774さん   2015年01月29日 (木) 23:00:19   ID: VATzhJYp

ふむ、なかなか面白いw
続き待ってますねw

15 :  SS好きの774さん   2016年01月08日 (金) 11:10:31   ID: oJ2mIbVe

お前の人生と同じで中途半端だな
産まれてきた事を親に土下座してこいよ

16 :  SS好きの774さん   2016年08月17日 (水) 15:00:51   ID: 3QMteYse

年金の話してるの、なんで生きてるの

17 :  SS好きの774さん   2018年04月11日 (水) 14:47:38   ID: T4c7IE6E

これで終わりってのも悪くはないな

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