穂乃果「μ'sの冬の日」 (25)

・時間や設定はバラバラで短い話をいくつか
・アニメとSIDの設定をごちゃ混ぜにしています
・ほんのちょっぴり、過去作の続きです(知らなくても読めます)
  穂乃果「μ'sの雨の日」
  穂乃果「μ'sの雨の日」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1401799858/)



希「絵里ち、備品のリストアップ終わったよ」

絵里「お疲れさま。日誌の整理が終わったらファイルに追加しておくわ。明日にこにチェックして貰いましょう」

希「うぅ、寒…絵里ち、はよはよ」ピト

絵里「もう、くっつかないの。…暖房は入ってるのに、人が居ないとこの部室も案外冷えるものね」

希「いつもにぎやかなとこが静まり返ってると、なんや薄ら寒く感じるなあ」

絵里「でも静かなのは好きよ…前にも言ったかしら。あの時は生徒会室だったけど、いつになっても私たちは二人で書類整理に追われているわね…」

希「今回は仕事じゃなくて部活動のボランティアやけどね」

絵里「次回の部費の申請と冬季休暇前の報告に使うデータなんだから、結局は生徒会の仕事よ」

絵里「会長の椅子は穂乃果に譲ったとはいえ、まだしばらくは隠居できそうにないかな…」

希「…嬉しそうやね?」

絵里「……そう見える?ふふ」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1419940825

絵里「……」

希「……」

絵里「…静かね。雪が降っているだけでどうしてこんなに静かに感じるのかしら」

希「いい雰囲気?」

絵里「突然なに――、ああ…そういえば、あの時もこんな風に寄り添っていたわ」

希「……あったかい」

絵里「ええ……暖かい」

希「絵里ち、日誌の整理、あとどれくらい?」

絵里「もうあと少しも無いわよ」

希「終わっちゃうん?」

絵里「ええ……でも――」

絵里「あなたが取り付いていて腕が動かしにくいから…しばらくかかっちゃう、かも」

希「…んふふ、やむなしやんなー」

凛「う~…」

真姫「……」ペラ

凛「うぅ~」ソワソワ

真姫「ちょっと、いつまで人の隣で唸っているのよ」

凛「寒くて落ち着かない…」

真姫「冬なんだから仕方ないでしょ…走ってきたら?」ペラ

凛「雪で練習着濡れちゃうから今日はイヤなのー!」

真姫「じゃあ大人しくしてなさいよ、私は読書してるんだから」

凛「真姫ちゃんだって寒そうにしてるクセに…」

真姫「別に我慢できるから平気よ」ペラ

凛「真姫ちゃん、何読んでるの?」

真姫「恋愛小説だけど」

凛「…凛も読む」ズイ

真姫「途中から読んでもつまらないんじゃない?」

凛「……」ジ

真姫(…珍しく集中してる……)

―――――

真姫「……」

凛「……」

真姫「……」ペラ

凛「あーっ、まだ凛読んでない」

真姫「…早く読みなさい」

凛「だってここからじゃ読みにくいし…あ、真姫ちゃん、お膝貸して」

真姫「膝?」

凛「真姫ちゃんの腕の間に入るから」モゾモゾ

真姫「はあ!?ちょっ…何してるのよ!」

凛「この方が読みやすいもん。あったかいし一石二鳥にゃ!」

真姫「……足が痺れるから!せめてお尻は椅子に降ろして!」

凛「はあい…椅子ちょっと空けてー」モゾモゾ

真姫「まったく…」

―――――

真姫「……」

凛「……」

真姫「…読んだ?」

凛「…うん」

真姫「ん…」ペラ

凛「……」

真姫(…体温上がってる……)

真姫「眠いの?」

凛「うん……」

真姫「…凛には難しい話だったかしら」

凛「真姫ちゃん、あったかい……」

真姫「ちょっと、このまま寝ないでよ」

凛「んー……」

真姫「もうすぐみんなも来るんだから――凛?」

凛「…すぅ……」zzz

真姫「ちょっと!…ああもう」

凛「……」

真姫「…湯たんぽみたいね……」

真姫「……あったかい」ギュ

―――

――



真姫「すぅ…」zzz

凛「…すぴ」zzz

穂乃果「みんなでお鍋?」

絵里「ええ、凛と希がカセットコンロとか色々持ち込んできてね。ダメ元で先生方にお願いしてみたら通っちゃったのよ」

絵里「みんな室内練習にも飽き飽きしてるみたいだし、雪で屋上も使えないし…たまにはいいかなって」

穂乃果「そっかぁ、お鍋…かぁ」

絵里「あら――反応薄いのね。穂乃果が一番喜ぶと思ったのに」

穂乃果「ううん、お鍋は嬉しいの!でもその…海未ちゃんがちょっぴり鍋奉行で……」

絵里「あー…大丈夫じゃないかしら?きっとにこや希辺りが上手い具合に場を崩してくれるわ」

―――
――


にこ「お肉そんなに多くないんだからそれぞれ食べた数カウントしときなさいよ!
   ほら、花陽が鍋から席遠いんだからおたまくらい寄せてあげて!…凛っ!野菜よけない!
   海未、白菜はまだいいからネギ!お豆腐煮えてるから誰か取ってって!」

海未「はっ、はい!」

穂乃果「うぅ…もっと奉行だぁ…」

絵里(…奉行というより)

希「おかーさん、おかわりっ!」

にこ「誰がお母さんよ!自分でよそいなさい!!」

海未「真姫、居ますか?」ガラッ

真姫「…どうしたの?音楽室に来るなんて珍しいけど」

海未「外を見てください、雪が降り出しました」

真姫「雪?――あ、本当ね…気が付かなかったわ」

海未「ええ、ですから、あの…ピアノ、弾いてください」

真姫「…? いいけど…どうして?」

海未「何か歌詞が浮かんできそうなんです。でも、上手く言葉にならなくて――
   ですから、何か…雪に似合う曲、弾けませんか?」

真姫「ああ、そういうこと…レパートリーはいくつかあるけど、そうね――こういうのはどう?」


―――――


――♪ 

海未「……」

真姫「何か浮かんできた?」

海未「……」

真姫(…話しかけない方がいいかしら)



――♪、 ――――♪



真姫「――はい、おしまい。どう?」

海未「え……、あ、すみません、何も…」

真姫「…あんまり役に立たなかったみたいね」

海未「いえ、そうではなく――つい、聴き惚れてしまって」

真姫「……」

海未「雪を見ながらピアノを聴くというのも良いものですね――真姫の演奏だからでしょうか?」

真姫「そ…そう?なら良かったわ――良くないのかしら――とにかく…その、ありがとう」

海未「歌詞は後でじっくり推敲しますから大丈夫です。良ければ他の曲も聴かせてくれませんか?」

真姫「じ…じゃあ!これ、私のお気に入りの曲なんだけど――」

―――
――

海未「良い演奏でした。ありがとうございます」パチパチ

真姫「当たり前でしょう?渾身の一曲よ」フンス

海未「他のメンバーにも聴かせてあげたいくらいです。一度、演奏会でもやってみませんか?」

真姫「嫌よ、静かに聴いていられない人も居るでしょ。それに、そんなに近くでかしこまって聴かれても恥ずかし――困るから」

海未「それは残念です。いい曲ですのに…」

真姫「……海未だけなら、いいけど」

海未「え?」

真姫「あなた一人なら構わないって言ったの。変に茶化したりしないし、歌詞の参考にもなるんでしょう?」

海未「…ありがとうございます。ではまた聴かせてください、約束ですよ」

真姫「……ええ」

海未「今から楽しみです」

真姫「意外ね。そんなにピアノが好きだったの?」

海未「別段そういうわけでは。もちろん嫌いではないのですが――
   真姫の演奏と人前では見せない楽しそうな顔を特等席で独り占めできるのですから、贅沢ではありませんか?」

真姫「…………やっぱり聴かせてあげない」

海未「ふふ――駄目ですよ、もう約束しましたからね」

ことり「にこちゃん、にこちゃんっ」

にこ「?」

ことり「はい、ぎゅーっ!」ダキッ

にこ「うわっ…!?」

ことり「ふむ…にこちゃんはこのくらいと――」カキカキ

にこ「何をメモしてるのよ…なんだったの?」

ことり「みんなのクリスマスプレゼントに何か作ろうと思ったの。
    でも8人分だともう採寸してる時間がなくて…だから目安に」

にこ「…分かるの?抱きついただけで?」

ことり「前の衣装を作った時のサイズも残ってるからね。えっとねぇ、にこちゃんは上から――」

にこ「あーっ!いいから!!分かったからやめて!!」

ことり「にこちゃんで6人目だから…うんっ、これで全員かな」

にこ「6人…ことり本人は除くとして……まだふたり残ってるじゃない。測らないの?」

ことり「? 穂乃果ちゃんと海未ちゃんは見たら大体わかっちゃうし…cm単位で当てられるから」

にこ(え、怖…………)

ガタン ゴトン―――――


花陽「クリスマス会の後なのに付き合わせちゃってごめんね。参考書ってあんまり買ったことなくて…」

真姫「別にいいわよ、私も本屋には用があったから」

花陽「ホワイトクリスマスで良かったねえ」

真姫「ええ、暖炉と煙突の掃除も済ませてあるし」


アナウンス『――まもなく、――です。ご乗車のサンタさんはプレゼントをお忘れにならないようご注意ください――』


花陽「…ふふ、面白い車掌さん」クスクス

真姫「…え……」

花陽「あ…」

花陽(あちゃあ、どうしよう…真姫ちゃん、気付いちゃう……)

真姫「ねえ、花陽」ヒソ

花陽「えっと…あのね、真姫ちゃん!これは――」

真姫「サンタさんって、今――日本に来ているの?」ヒソヒソ

花陽「……」

真姫「……」

花陽「…………………………そっ……………………………………………………」

花陽「そうだよっ?」

真姫「――嘘、どうしよう、私そんなの知らなかった…この車両に居るのかしら?赤い服は見えないけど」キョロ

花陽「ええと…あの、ほら!赤い服だと目立っちゃうから、こういうところでは普通の格好してる…かも」

真姫「なるほど、上手く溶け込んでいるのね…見られてたらどうしよう。ちゃんといい子に見えるかしら」ソワソワ

花陽「大丈夫だよ、サンタさんはちゃんと真姫ちゃんがいい子にしてるところ見てるよ!」

真姫「そうかしら――そうよね、煙突も綺麗にしてるもの…うん」

花陽「そうだよぉ」ニコニコ

真姫「あっ…ほら、花陽もちゃんとしてないと。プレゼント貰えなくなっちゃうわよ」

花陽「そうだねぇ」ニコニコ

雪穂「はいお姉ちゃん、クリスマスプレゼント」

穂乃果「うん、ありがとー雪穂!」

雪穂「どういたしまして。それで、そっちは?」

穂乃果「あー、それなんだけど!雪穂のプレゼント買い忘れちゃってー!」

雪穂「えっ…ちょっと、ウソでしょ!?」

穂乃果「ごめんね!今度!今度一緒に買いに行こ!ね?」

雪穂「ひどいよ、今まで忘れた事なん、て――。…?」

雪穂「…………」ジッ

穂乃果「…………」ダラダラ

雪穂「…ふぅん。ま、いいよ。今度ね、今度」

穂乃果「ご、ごめんね…?」

雪穂「いいってば…私もうお風呂入って寝るね。今日は疲れたからぐっすり寝たいし」

穂乃果「そ…そう?うん、それがいいよ!おやすみ!」

―――――


ガチャ


穂乃果「……」ソロソロ

雪穂(お…きたきた)

雪穂「…ぐぅ」

穂乃果「寝てる…よね?えへへ、サプライズのサンタさんですよー」

穂乃果「靴下は…無いか。枕元に…あっ、プレゼント部屋に忘れてきた!」


ガチャ バタン パタパタ…


雪穂(えぇ……)


ガチャ


穂乃果「いやぁうっかり…さてさて」


ガンッ!!


穂乃果「…ぁいった―――――っ!!足っ、足の小指が…!!」ゴロゴロ

雪穂「……」ムク

穂乃果「あ……」

雪穂「…………」

穂乃果「め…メリークリスマス……」

雪穂「…ここまでお膳立てしてあげたのに何やってんの、もう……」










雪穂「ほら、足大丈夫?見せて」

穂乃果「痛いよう…」

雪穂「まったく、ほんとにバカなんだから…」

絵里『――そう、初詣のお手伝い、そんなに早く家を出るのね』

希「絵里ちとにこっちはこの間言った通りの時間でいいんよ、ウチの方で準備しておくから」

絵里『大丈夫?そんなに朝早くからじゃ今日は寝る時間もないんじゃない?』

希「一日くらいなら平気平気。まあ――無理に年が明けるまで起きてなくてもいいんやけどね」

絵里『あら、せっかくの年越しなのよ?もったいないじゃない』

希「だらだらテレビ番組見るくらいしかすることもないしなあ」

絵里『それにしたって――うぅ、寒…』

希「? 風の音するけど…絵里ち、もしかして外から電話かけてるん?」

絵里『ええ、ちょっとした用事で亜里沙と移動中なの』

希「師走やねー…」

希「絵里ちこそ大丈夫なん?」

絵里『大丈夫よ、真っ直ぐ神田明神に向かえるように準備してきたから。
   他にもお菓子とか飲み物とか…けっこう大荷物になってしまったけれど』

希「あ、さては忘年会?」

絵里『――まあ、そんなところ。希は…今日は起きているのよね?』

希「…なー、絵里ち、気ぃ遣ってくれなくてもいいんよ」

絵里『あら、何の話?』

希「ひとりで過ごすんはもう慣れっこやから。絵里ちもせっかく集まりがあるのに、
  ずーっとウチと電話してちゃダメよ?…だから気にせんで。ウチも静かなのは嫌いやないしね」

絵里『……。私は騒がしくするのも好きよ。希は嫌い?』

希「騒がしくする相手も居ないしなあ…家族や友達と騒ぎながら新年のカウントダウン、なんていうのも楽しそうやけどね」

絵里『ね、そうでしょう?きっと楽しいわ』

絵里『私もね、去年は亜里沙と二人きりで過ごして――それはそれで楽しかったんだけど、やっぱりちょっとだけ寂しくてね。
   密かに憧れだったのよ、そういうの』

希「親元を離れてるとちょっと辛いところやねー」

絵里『他のみんなは両親や親戚と家でゆっくり過ごすんでしょうけど――よし、着いた』

希「到着?お疲れさん。…じゃあ切るね。よいお年を」

絵里『…まだ間に合うと思うの。私たちはそういう事を心のどこかで諦めていたし……時間もあまり残されていないけれど』

絵里『μ'sの活動を始めてから、もう少しわがままになってもいいのかなって――そういうのもいいかなって。希もそうでしょう?』

希「…絵里ち」

絵里『なのに希ってば、何も言わないで結局ひとりで居るんだもの。だから…これはちょっとしたいたずら。サプライズよ』

希「え……?」

絵里『ねえ、希。私と亜里沙――今どこに居ると思う?』










ピンポーン









おしまい

おしまいです、ありがとうございました。
年末ですね。皆様どうぞよいお年をお迎えください。

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