女「安価2つで物語を作るって?」 (25)


女「無茶を言わないでくれるかい。普通に作品書くのでも難しいというのに」

男「小説家、目指してるんだろ?」

女「それとこれとは」

男「トレーニングさ。小説家たるもの、小さな題材を空前絶後の冒険絵巻を書き上げて当然!」

女「ハードルを上げないでくれ!」

男「オーケー。じゃあ早速安価を募ってみようか」

【ルール】
・エログロ安価は「安価下」とします
・アニメや漫画等、他の作品が明確に絡む安価は「安価下」」とします
 (知らない作品と知っている作品で対応が違うのは不平等だからです)

安価
>>2 >>3

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宇宙の心

日本酒

あぶりだし


女「宇宙の心……あー! 詳しくないけど、これガンダムだね。安価下っと……」

男「待て」

女「えっ」

男「宇宙の心……素晴らしいテーマじゃないか。>>2がガンダム抜きで辿り着いた神秘的な命題かもしれない」

女「これを安価として採用しろということかい?」

男「その通り」


お題

宇宙の心
日本酒


男「出来そうか?」

女「んー……まあ、書きながら考えますか」

ぶっちゃけ元ネタはガンダムだけど宇宙の心でガンダム関係なく書けそうやからやった
ガンダムイメージ強いなら下にしてもええのよ

腕の見せどころと思うより素直に引いた方がいい時あるよ


タイトル「忘れたほうがいい」


「その酒だけは飲んじゃいかん」

 ラベルの張られていない一升瓶を大事に抱えて、父親が言う。
 
 父の口癖だった。父は別に酒好きでもなかったが、自宅の敷地内に大きな酒蔵が設けられていた。
酒蔵は3部屋に分かれている。すなわち、日本酒の部屋と、ワインの部屋と、その他蒸留酒の部屋だ。


娘「何で3部屋も酒蔵があるの?」

父「酒によって、保存に適した温度や湿度が異なるからね」

 
 空調完備。24時間体制でしっかりと一定の温度・湿度が保たれているらしい。
電気代もバカにできない。母はよくそのことで嘆いていた。


母「もう、飲みもしないくせに! 酒蔵管理費を全て娘の教育に充てるべきだわ!」

父「君にはわからないだろうが、これは先祖代々伝わる、大事な酒蔵なんだよ」


 母は家を出ていきたがっていたが、父はお金もちなので離婚できないように見える。
ある日、娘は思い切って聞いてみた。


娘「そんなに離婚したいなら、すればいいのに」

母「……最初はそう考えていたのよ……。けれど、今は違うの」

娘「違うって?」

母「離婚はしたくない」

娘「パパがお金もちだから?」

母「……アハハ。それもあるけど、それ以上に、あの人のことを心から好きになったからなの」


 母の言葉に偽りはない。娘ながらそう直感する。
 
 その日以降も度々、私の人生と酒蔵は、何かに導かれるように接点を持つことになる。


友人「わあ……。ひんやりしていて気持ちがいいね」

娘「でしょ、うちの酒蔵、避暑地に最適なの」

友人「大事なお酒なんでしょ。あなたのお父様、怒らないかしら」

娘「大丈夫よ、パパったら、私を猫のように可愛がってるし」

友人「愛されてるのね」


ア”ア”ア”ア”ア”ア”アアアアアアアアアアアァァァ!!!!!!!

 唐突だった。サイレンのような叫び声が、酒蔵を乱反射する。
 音の鳴る方へと目を向けると、そこには


父「ハァーッ! ハァーッ!! ハァーッ!!」

 
 父ではないように思われた。
 目は血走り、着衣は異様に乱れて、靴の片方が脱げている。
 父は汗をまき散らしながら迫ってくる。

 鬼のようだった。
 私と友人は、きっと殺されてしまうんだと、本能で感じ取った。


父「見てはいけないものをヲヲ!!! お前ッ! 無断で酒蔵に入るなと言ったろう!!!」


 温厚な父の面影はどこにもない。


友人「きゃああああああああ!!」

父「グオオオオオッ!!!」

娘「やめてお父様ッ!!」


 父が、友人の口の中に手を突っ込み、顎を引き裂こうとする。

 ここは酒蔵。こうなったらここにあるワインで父を殴ってしまうしか方法はない。
娘はワインの瓶を握りしめ……。


娘「……っ!?」


 瓶の中身は空だった。何も入っていないまま、丁寧に封がされている……。

 いや、そんなことはどうだっていい。娘はワインを父の頭めがけて振り抜いた。

 ガシャン!!

 破片が飛び散り、父は頭部から流血する。
しかし父は一切身じろがず、ただ機械のように、娘の友人の顎を引き裂こうとする。


友人「……ッ! ンーッ! ……!!」


 友人が最後に向けたのは、私への恨みか、死にたくないという執念か。
 ただ、その潤んだ瞳を娘は一生忘れないだろう。

 メキメキッ。 ゴリッ、バリバリバリ!!

 友人は引き裂かれ、無惨に死んだ。


父「……墓穴にしてはまだ小さいね。もうちょっと頑張ろうか」

娘「……ッ……うぇぇっ……うぅぅぅぅ……」


 父は優しく涙を拭いてくれる。そして厳しく宣言する。


父「君が殺したんだ。私は『その酒だけは飲んじゃいかん』と言ったろう」

娘「私、お酒なんて飲んでないし、飲ませてもいない……」

父「いいや。飲んだのさ。ともかく……君の友達には『あの部屋に無断で入るな』と言っておいたのだが」

娘「……ごめんなさい」

父「娘よ……君は、2重で約束を侮辱した。自身で約束を破り、友人に約束を破らせた」


 返す言葉もなかったが、父の言葉が詭弁だらけというのも分かっていた。
 殺したのは父だ。原因が何であれ、誰に落ち度があろうが、酒蔵への無断侵入で人を殺したのだ。
 
 父は殺人を犯したというのに、ごく平然と振る舞っていた。
 先程までの狂乱ぶりがまるで嘘のように。
 娘にはそれがこの上なく恐ろしかった。
 できれば、今すぐ父のもとを離れ、孤独に暮らしたい。その方がよっぽどマシだと思えていた。


父「二度とうちの敷居を跨がないでくれ。親戚に説明するから、これからは親戚の家で暮らしなさい」


 やはり直接聞けばショックだが、それでも、一刻も早く父から離れたかった。
 友人の顔を見る。血の気が失われていて、死人だということがはっきりわかる。
 
 ……私が酒蔵に誘わなければ、こんなことにもならなかったんだろうか。
 やはり涙が止まらない。

 明日からは親戚の家で暮らすことになる。


 【娘→女】

 その後私は親戚のもとで暮らし、高校生になり、女になった。
 親戚のおじさんとおばさんは、まるで実子のように私を大切にしてくれた。
 それが何よりの幸運だった。


彼「なー。クリスマスってさァー……オリジナリティがないよな」

女「クスクス。いきなり何を言い出すのよ」

彼「日本のクリスマスって、つまり海外の真似だろ? 日本らしさを前面に押し出さなきゃ」

女「海外の行事だし、日本らしさなんていらないよ」

彼「とにかく、クリスマスに日本らしさをブレンドした『和風クリスマス』……考えて来たんだ。どよ、聞きたい?」

女「んー……言ってみて」

彼「家族や大切な人とな……こう……日本っぽいものを飲み食いするんだよ」

女「なんだかすごいフワフワしたイメージね。具体的に何食べるの?」

彼「肉じゃがとか、すき焼きとか……」

女「両方とも明治以降の料理よ。伝統が足りないので却下」

彼「じゃあ日本酒でどうよ!! 神話の時代からあるんだぜ」

女「日本酒……。……ッ!?」

 
 電流走る。
 
 「その酒だけは飲んじゃいかん」

 父の口癖だ。一升瓶の日本酒を抱える父を想起する。

 私の友人が死ぬ直前の、あの潤んだ瞳……。


女「瞳に反射して、日本酒の瓶が映っていたんだ……」


 父はなぜ発狂したように友人を殺した?
 なぜ私は殺されなかった?

 きっと、その時は日本酒を見ていなかったからだ。


 事件はワインの酒蔵で起こった。
 私のちょうど背後には、日本酒の酒蔵へのドアが。

 酒蔵同士のドアは厳重に閉ざされていたが、鏡が張られていて、そこから日本酒を見ることができる。
 そして友人は私に視線を向け、その更に奥の日本酒を見たんだ。


女「……じゃあ日本酒が何だっていうの? いったい……普通のものとは思えない」

彼「おーい……聞いてる?」

女「……ごめんなさい。ちょっと用事が出来たから出かけるわよ」


 ベッドから出て、手早く服を着る。

 向う先は、私を追い出した父の家。

 友人は何のために殺されたのか……理由を知りたい。友人を弔うためにも、それは絶対だった。


彼「なあ、用事って……」

女「バイク借りるわよ」

彼「無免許はヤバいって!」

女「なに? 法律が怖いの? 私は、真実が闇に葬られるほうがよっぽど怖いわ」

彼「えー……あっ、行っちゃったし……まるで意味が分からないなぁ……」


 バイクを走らせ、夜風を直に浴びる。

 頭が冷えてくると、私の推理の欠点が明らかになってくる。

 
女「父は、友人だけを殺した。私もちらっとは日本酒を見たはずなのに、殺意は明らかに友人にだけ向いていた」


 それに、死ぬ直前の目線で殺意が確定したとするのも不自然だ。
 殺すなら私も殺すはず。いや、娘だから殺せなかった……?


女「そもそも日本酒を見たから殺されるっていう前提が、まるっきり頭おかしいわよね。ハハハッ!!」


 盗んだバイクで走り出しているという事実に、少しずつテンションが上がっていく。
 実家は遠い。


 【深夜】


女「酒蔵に着いたわ……実家は何も変わらないし、セキュリティも昔のままだったから突破が楽だったわね……」


 鍵をピッキングでこじ開け、警報システムをクラックしつつ中に入る。
 真っ暗だ。懐中電灯の明かりを頼りに進む。

 いくつか日本酒を漁っていく。大抵ラベルつきで、高価なものだらけだがwikipediaでも確認が取れるほどメジャーな品ばかりだ。
 共通しているのは、中身が一切入っていないということだけ。


女「ワインの時も中身が入ってなかった……どういう事なのかしら……。あっ……」


 例の日本酒を発見する。

 これだけは、中身がしっかり入っていた。
 栓が一度開けられ、再度栓をされたような跡がある。


女「中身を確認しよう……」

 
 栓を抜こうとしたその瞬間、酒蔵入口のドアが開いた。
 パチ、パチ。照明のスイッチが押される。


父「娘よ……何をしている……?」

女「どうして気が付いたの……?」

父「ハハハ……。当時君は8時には寝ていたから、私が深夜、この酒蔵に来ることは知らなかったのかな?」

女「このお酒なんでしょう!? これにどんな秘密があるの!?」

父「秘密など、どこにもないさ」

女「どうして他のお酒は空なの? どうしてそれなのに念入りに温度・湿度を管理していたの!?」

父「その日本酒が喜ぶからだよ」

女「何言ってるの?」

父「まあ、飲んでみなさい」


女「絶対飲むもんですか。怪しすぎるでしょ」

父「だが君の手は、酒を君に飲ませようと動いているようだが」

女「えっ!?」


実際、女の手は、本人の意思とは無関係に、一升瓶を口につけさせようと動いていた。


父「この日本酒は、君に飲まれることを望んでいるんだ」


強制的に動く手を必死に抑え、顔をそむけるが、ついに1口、2口と飲んでしまう。


女「飲んじゃった……クソッ。だがしかし、何ともないわね……」

父「やはり……適合者よ、歓迎するぞ!!」

女「ナイフ!? や、やめ……」


父は取り出したナイフを女の腹に突き立て、縦に引き裂いた。


女「う……。あれ……ここは……?」


黒い空間の中で、砂糖が渦を巻いている……。

いや、これは銀河……?


星々がきらめき、彼女は地球を地球の外側から見下ろしている。

いや、宇宙では上下という概念もないから、見下ろすという表現はちょっと違う。

地球の中では、大勢人々が言い争っている。それより大勢の人間が、話し合いすら通さずに殺し合っていた。


父「宇宙よ、地球に救いはない、悲劇の土地なのか!?」


父が、宇宙の心へ向かって叫ぶ。
だが、宇宙は答えない。


父「地球よ、お前は何故人々を生かしておく。生まれていなければ、悲劇もないというのに!」


父が、地球の心へ向かって必死に叫ぶ。
だが地球は、時折の大災害をもって答えとした。
人類はまだ生き延びている。

女は、全て理解した。
父は敵ではない。
この宇宙の中で1人、無限の寒さのなか、孤独と戦っていたのだ。


女「お父様。なにゆえ叫ばれるのですか」

父「おお娘よ、全て理解したか……お前自身の心で至ることが大事だと思い、親戚に預けて正解だった」

女「宇宙に心はあるのですか?」


父「分からん。私にも分からん……」

女「私も、父の心を分かりかねています。なぜ私の友人を殺したのですか」

父「殺さねばならなかった」

女「何故」

父「宇宙の心がそう仰ったからだ!!」

女「では……なぜあの時私に、私がお酒を『飲んだのさ』と?」

父「妻が酒を飲んだからだ。その直後にお前を妊娠したので、お前にも酒の影響があると考えた」

女「酒の影響?」

父「私を、私なんかを好きになったことだ。あ、あが……ぐっぎぎぃぃぃぃぃぃ!!


父が頭を押さえてのたうちまわる。
父の頭が風船のようにはじけ飛んでしまった。

その風船は私の顔をしていた。
つまり私の顔がはじけ飛んでいたらしい。


【数日後】


##


アナウンサー「その酒蔵の日本酒の瓶から検出された『危険ドラッグ』により、親娘は死亡したという事件ですが」

学者「ええ。そのドラッグの成分を確認しましたが、これは珍しいものでした」

アナウンサー「というと、どのような?」

学者「古来より巫女が神々と対話する儀式のために使った、いわば『日本最古の危険ドラッグ』ということです」

アナウンサー「巫女ですか」

学者「ええ。酒が儀式に使われるのは珍しいことではありません。ですがそれが今日でいう危険ドラッグと同じ成分というのは、非常に稀なことでしょう」

学者B「東北地方の、今は限界集落となっている1つの村でのみ使われるお神酒でした」

アナウンサー「これは興味深い話が聞けそうです。続きはCMの後で」


##

 彼は怒りに任せてリモコンを押し、テレビの電源を落とす。
 

彼「……クソッ……あの子を見世物みたいに扱いやがって」

彼「あの子は親に殺されたんだ……」


 ふと頭をよぎるのは、日本酒というワードに反応する彼女の瞳。
 その瞳の中には自分はいなかった気がする。

 「果たして彼女は親に殺されたのか……?」

 疑問が頭にこびりついて離れない。
 

彼「クソ、クソ、クソッ!! もやもやする……これは、調べる必要があるな……」

  
 彼は自宅を後にし、女がバイクで描いた軌跡を辿って行った。
 

##


 この後追い自殺のループに、彼は気が付いて歩みを止めるだろうか。
 それとも日本酒の本当の正体に辿り着くことなく果てて、謎解きの代行を遺族に任せるのだろうか。

 宇宙は何も考えない。
 考えるのは、その酒を追い求める人間の仕事だからだ。



「忘れたほうがいい」 


 


――――――――――――――――――


女「以上」

男「うーん……」

女「何よ」

男「……いや、感想は見てくれた読者の方に任せよう」

女「何なのさ。良いから言いなよ」

男「あー……」

男「……即興で書いたのは分かる。だが、伏線の管理がガバガバすぎやしないかい?」

女「そうね、そこは反省してる」

男「オーケー。次のお題はこちらだ」


【安価】
>>23 >>24

オペラ座の怪人

トマトケチャップ


男「安価了解しました。大丈夫? 書けそう?」

・オペラ座の怪人
・トマトケチャップ

女「申し訳ないが、オペラ座の怪人は知らないんだ」

男「まあ、知らないなりに頑張るべきじゃないかな」

女「あー……うん。分かったよ。その前に一旦寝させてくれ」


一旦睡眠を挟みます
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