【ラブライブ×デジモン】ラブライブ!―Digital idol Adventure― (1000)

このSSはラブライブとデジモンシリーズのクロスSSです
設定はそれぞれのアニメとゲームを元にしたオリジナルです
作者は遅筆なので更新速度はお察しください
久しぶりのSSなのでミスもあるかと思います。疑問点、指摘があればどんどん下さい


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1417970461

―――ここは国立音ノ木坂学院

秋葉原と神田と神保町という3つの街のはざまに建つ伝統ある女子校である

しかし近年の少子化と秋葉原に出来たUTX学院という新設校の影響により年々入学希望者は減少

あわや廃校寸前という状況にまで落ち込んでいた

しかし、そんな状況を打開するべく立ち上がった9人の学生がいたのである

彼女達はスクールアイドルとして学校を背負い活動を行っている

彼女達の名前は『μ's』

この物語はそんな彼女達が経験したひと夏の物語である

私、高坂穂乃果。音ノ木坂学院に通う高校2年生

わたし達は音ノ木坂学院の廃校を阻止するために9人のメンバーでスクールアイドル「μ's」の活動を行っています

最近は夏休み中に行う予定のライブの練習で大忙し

今日も朝からみんなで集まって練習!のはずだったんだけど………

穂乃果「ふえぇ~今日も暑いよー」

にこ 「こんなに暑い中、屋上で練習するとかどうなのよ」

凛  「凛はゆでだこになっちゃうにゃー」

にこ 「まったく、日焼けはアイドルの天敵なのよ」

ジリジリと射す日差しの中、私たち3人は僅かに残る日陰の下に避難中

ことり「他の部活が使っていて、ここしか空いていないんだから仕方ないよ」

どうやら生徒数が減って廃校の危機と言っているわりには部活動は盛んなようです

せめて沢山ある空き教室の一つでも使わせてくれたら良いのに

そこは歴史と伝統を重んじるゆえの融通の利かなさと言ったところなのかもしれません

海未 「ほら、せっかく午前中に集まったのですから暑くなる前に練習を始めましょう」

花陽 「それに最近は異常気象が各地で起きていて天気も変わりやすいですから」

穂乃果「あー雪でも降ってくれれば涼しくなるのになぁ」

神様にお願いしたら本当に降ってくれないかな「雪降れーー!!」って

にこ 「そういえば残りの3人はどこ行ったのよ」

海未 「絵里と希は生徒会の仕事があるそうで生徒会室に寄ってから来ると連絡がありました」

生徒会は夏休み明けに新生徒会に引き継ぐための準備で忙しいみたい

でも二人とも生徒会とμ'sの掛け持ちでやっていて本当に凄いと思う

私だったらそんなハードなスケジュールじゃ絶対やっていけないよ

花陽 「真姫ちゃんは曲作りのために音楽室に行くって言ってたよ」

ことり「あ、ほら真姫ちゃんのピアノの音が聞こえるよ」

窓の開いた音楽室からクラシックかな?ピアノの音色が風にのって流れてきます

~♪

凛  「この曲聴いたことあるかも」

海未 「ラヴェルのボレロですね。よくテレビやフィギュアスケートなどでも使われる曲です」

穂乃果「やっぱり真姫ちゃんはピアノが上手いなぁ、ずっと聞いていたいくらい」

真姫ちゃんのピアノの演奏に聞き入っていると急にピューッと強い風がふいてきました

にこ 「きゃーにこのカワイイ髪型が乱れちゃうぅ~」

凛  「…なんか寒くないかにゃ」

にこ 「あんたねぇ……って確かに少し寒いわね、さっきまであんなに暑かったのに」

あんなに照り輝いていた太陽がいつの間にか厚い雲に覆われていました

流れるような汗も止まり半袖でいるのが寒いくらいに気温も下がっているみたい

花陽 「こ、これは噂の異常気象なのかな」

海未 「どうやら一雨きそうですね」

ことり「汗をかいていたから身体が冷えてきちゃった…ってこれ雪だよ!?」

穂乃果「え?嘘!?私があんな事言ったから?」

あ、あれ?もしかしてこれ私のせいかな?神様にあんな事願っちゃったから…

にこ 「そんなわけ無いでしょ。それにしても真夏に雪だなんて異常気象ここに極まりって感じね」


ゴロゴロゴロ

海未 「雷も鳴りはじめましたね、とりあえず部室に戻りましょうか」

みんなが部室に戻る準備を始めたその時でした

ピカッ!! ドゴーーン!!!

突然の光と轟音、そして微かに漂う何かが焦げたような臭い

ことり「キャーー!!」

海未 「み、みなさん大丈夫ですか?」

にこ 「何今の音、雷が落ちたの?………えっ…嘘…」

穂乃果「あ、あの教室って……

花陽 「あっ…あっ…あぁっ………!!」

わたし達の目に映るのは先ほどまで綺麗なピアノが聞こえていた教室が崩れ落ちている光景

凛  「ま、真姫ちゃんが…」

ことり「そんな、イヤーーー!!!」

海未 「くっ…みんな落ち着いて下さい。とりあえずここは危険です。避難を…」

ピカッ!!

2度目の光は先ほどよりも大きく強く、そして近い

穂乃果「えっ?」


わたし達は屋上全体を覆う眩い光に瞬く間に飲み込まれていきました

――穂乃果

(うーん、雪穂?もう朝なの?)

――穂乃果

(あと5分だけで良いから寝かせてよー)

――穂乃果

(わかった、わかったからもうちょっとだけ…)

「穂乃果!!」

穂乃果「んっ……うわっ!?」

目覚めた穂乃果の前に広がるのはいつもの自分の部屋では無く一面緑に覆われた木々と……黄色い恐竜?

穂乃果「何だ、まだ夢の中か…おやすみ」

「夢じゃないよ。ほら、起きて起きて」

夢じゃない?いやいやいや。突然森の中にいて目の前に恐竜がいてその上それが喋って穂乃果の名前を呼んでいる。

ここまで理解不能な状態が現実であるはずが…

「ダレカタスケテー」

穂乃果「え?この声は…」

聞き覚えのある叫び声と共に茂みから飛び出して来た影が3つ、その内の2つは私も良く知る人物

穂乃果「にこちゃん!凛ちゃん!」

にこ 「ほ、穂乃果?」

凛  「穂乃果ちゃん、穂乃果ちゃんだー会いたかったにゃー」

凛ちゃんは走ってきた勢いのまま私に飛びつき頬を摺り寄せてきます

「もう、そんな事をしている場合じゃ…みんな伏せて!」

3つ目の影である私の知らない人…じゃなくて青い恐竜?が叫ぶと木が倒れる音と共に何かが聞こえてきます

ブブブブブブブ

穂乃果「え?これって何の音?」

激しい羽音が聞こえて戸惑う私を凛ちゃんが押し倒したのと同時に目の前を何かが通り過ぎました

赤い身体で頭には大きなハサミ、素早い動きで飛ぶソレは私の知っているクワガタ虫に近い生き物

でもその大きさは私の2倍以上あり、森の木々をなぎ倒しながら飛んでいきました

穂乃果「今の何なの…」

「あれはクワガーモンだね、とりあえず避難しよう。こっちだよ」

「君は彼女のパートナー?」

「うん、とりあえず話しは後にして早く行こう」

にこ 「そのほうが良さそうね。穂乃果もさっさと行くわよ」

穂乃果「え、あ、うん。わかった……」

混乱する頭で私はこれは夢だと思い込みたかった。けれど倒された時の背中の痛みがこれが現実なのだとズキズキ伝えてくるのでした

今日はここまで
まだアニメ1話の半分しかなぞっていないのか

凛  「凄い!木の中に入れるなんて」

にこ 「へぇ~こんな木もあったのね。木のCGみたいなものかしら」

わたし達3人と2匹?は黄色い恐竜に連れられて中に入れる木?の中へ避難しました

「森の中でもほとんど無いからね、ぼくもここしか知らないよ」

穂乃果「ね、ねぇ。にこちゃん、凛ちゃん」

にこ 「ん、どうしたのよ?」

穂乃果「何で2人はその子?達と普通に喋ってるの?」

にこ 「あぁ、もしかして穂乃果はまだここに来たばかりなのね」

「そう言えば穂乃果がなかなか起きないから自己紹介もまだだったね」

アグモン「ボクはアグモン、君のパートナーだよ」


“アグモン”
成長期 爬虫類型 ワクチン

小型の恐竜の様な姿をした爬虫類型デジモン。
両手足には硬く鋭い爪が生えており、戦闘においても威力を発揮する。力ある偉大なデジモンへの進化を予測させる存在でもある。
必殺技は口から火炎の息を吐き敵を攻撃する『ベビーフレイム』

穂乃果「パートナー?私の?どういう事?何で私の名前を知ってるの?」

アグモン「一度にそんなに聞かれても答えられないよ」

「あ、あの……」

ブイモン「僕はブイモンっていいます。良かったらぼくが説明しましょうか」


“ブイモン”
成長期 小竜型 フリー

デジタルワールドの創世記に繁栄した種族の生き残りと言われる。
優れた戦闘種族であり、秘めた力を持っていて正義感が強い。
得意技は両腕をグルグル振り回し、相手を殴る『ブンブンパンチ』。必殺技は強烈な頭突きで相手を倒す『ブイモンヘッド』。

青い身体にアグモンに比べると恐竜っていうよりもドラゴンの様な少しファンタジーなシルエット

人の言葉を喋る恐竜や人より巨大な昆虫がいるってだけで充分過ぎるほどファンタジーではあるけれど

とにかく、どこかやる気の無さそうなアグモンに比べてこの子のほうがちゃんと説明してくれそうな気がする

穂乃果「お願いできるかな」

ブイモン「わかりました、まずはこのデジタルワールドと言う世界と僕たちデジタルモンスター、通称デジモンの話から…」


凛  「ブイモンは凛のパートナーなんだよー」

後ろからブイモンを抱きしめる凛ちゃんを見て早速話の腰が折れる音が聞こえた気がした

―――

穂乃果「えっと、つまりこの世界は私たちの世界とは別の世界で、君達デジモンはパートナーになる人をあの森で待ってたんだね」

ブイモン「そうです。どうやらパートナーになる相手の事は直感的にわかるみたいで」

ブイモン「凛さんを見たときにすぐにこの人がパートナーだとわかりました」

凛  「もう、ブイモンったら凛って呼んでって言ってるのに」

ブイモン「あっ、ごめん。えっと…凛」

凛  「そうそう、それでいいの」

アグモン「ぼくも穂乃果を見た時にすぐパートナーだってわかったよ」

穂乃果「だから私の名前も知ってたのかぁ」

アグモン「え?知らないけどなんとなく穂乃果だなって思ってたや」

なんかこのアグモンって子少し抜けてるというか…変わった子だなぁ

穂乃果「そういえばにこちゃんにはパートナーはいないの?」

にこ 「知らないわよ、そんなの。とりあえず起きた時には何もいなかったわ」

にこ 「とにかく私は3日前に、凛は2日前にこのデジタルワールドっていう世界に来たのよ」

にこ 「穂乃果が今日来たんだとしたら他のメンバーも時間差でこの森に来ているかもしれないわね」

穂乃果「うぅ…これって本当に夢じゃないのかぁ」

にこ 「私だって信じられないけど凛に会うまでの2日も一人でこの森の中で死ぬ思いしてきたのよ、こんな夢があってたまるもんですか」

にこ 「絶対に7人みんなで音ノ木坂に帰るわよ」

穂乃果「あれ?でもあの時屋上にいたのって6人じゃ……あっ…

凛  「凛たちがあの雷のせいでここに来たとしたら真姫ちゃんもきっといるよ」

穂乃果「そ、そうだよね。とにかくみんなを探してみよ」

雷が目の前に落ちて気付いたらここに…まるで漫画の世界みたいだけど今が最悪な事態って事だけはわかる…

もしかしたらわたし達は…それでもこうして動けるんだし諦めちゃ駄目だよね

わたし達にはまだ希望があるんだから

とりあえずここまです

ブブブブブブ

私は聞き覚えのある音を耳にして背筋がゾッっとしました

にこ 「ねぇ、この音ってまたさっきのやつよね?」

穂乃果「何だか近づいて来ている気が…」

アグモン「んー見つからないとは思うんだけど……」

ブブブブブブブブブブ

アグモン「偶然通る事はあるかもね」

「………………」

凛  「に、逃げるにゃー」

私たちが木の中から飛び出した直後、先ほどまでいた場所を赤いクワガタ虫が通り過ぎます

にこ 「もう少し遅かったらやばかったわね」

アグモン「そうだ、穂乃果さっき教えたデジヴァイスを使ってみてよ」

穂乃果「え、えっとこの機械をアレに向ければいいんだよね」

ポケットから青い携帯ゲームのような機械を取り出して赤いクワガタ虫に向ける

“クワガーモン”
成熟期 昆虫型 ウイルス

頭部に巨大なハサミを持った昆虫型デジモン
強靭なパワーと硬い甲殻に守られており、特にハサミの部分の力は強力で一度相手を挟み込むと相手が息絶えるまで締め上げる
必殺技は大きなハサミで相手を両断する『シザーアームズ』


穂乃果「へー、これで相手の情報がわかるんだね」

どうやらこの機械はデジモンとパートナーになるといつの間にか手に入っているお得な特典みたいで私のポケットにもいつの間にか入っていました

にこ 「あんた達、何ノンキな事やってんの。早く逃げるわよ」

ブイモン「どうやらこっちに気付いているみたいだ。またこっちに向かってくるよ」

再度こちらに向かって飛んでくるクワガーモンから逃げるため全速力で森の中を走り抜けますが羽音はどんどんと近づいてきます

にこ 「はぁ、はぁ、どこまで逃げればいいっていうのよ」

凛  「あっ!!」

先頭を走っていた凛ちゃんが突然大声を出して止まりました

続いてブイモン、私、アグモンも凛ちゃんの横に並んで止まり、最後ににこちゃんが到着

にこ 「ちょっと、あんた達なんで止まって…」

その先に道は無く、広がるは学校の屋上よりもはるかに高いであろう崖だけでした

下には川が流れていましたがいくら泳ぎが得意と言ってもこの高さから飛び降りて無事に着水できるとは思えません

穂乃果「うわぁぁぁー、ど、ど、どうしよー」

ブイモン「すぐに戻って他の道を…」

しかし、私たちの後ろにはすでに追いついたクワガーモンが道を塞ぐように立ちはだかっていました

クワガーモン「グワアァァァァァ」

にこ 「あぁ、もう駄目なのね。短い人生だったわ」

凛  「わーん、凛はまだやりたい事いっぱいあったのにー」

穂乃果「うぅっ…私だってこんなとこで死にたくないよ…」

いつも通り練習に来ただけなのに何でこんなことに…そう思いながら泣く私たちの目に2体のデジモンの背中が映ります

ブイモン「せっかく凛に出会えたのにこんなところでやられてたまるもんか」

アグモン「ボクなんてさっき会ったばかりだからね。これから話したい事だっていっぱいあるんだよ」

凛  「ブイモン…」

穂乃果「アグモン…」

アグモン「いくぞー!ベビーフレイム!!」

ブイモン「ブイモンヘッド!!」

アグモンの吐いた火球とブイモンの頭突きがクワガーモンに当たり一歩後ずさる

穂乃果「凄い!!」

にこ 「もしかして倒せるの!?」

しかし、喜んだのもつかの間、クワガーモンの4本の腕の一つがブイモンを殴り飛ばします

凛  「ブイモン!!」

ブイモン「くうぅ…くそう…」

アグモン「ダメだ、やっぱり効いてない」

アグモン「僕もブイモンも成長期だからね、成熟期のクワガーモンと比べたら子供と大人くらいの差があるんだよ」

にこ 「そんなぁ、やっぱりダメなのね」

ブイモン「大丈夫、凛たちは僕が必ず守るから…」

凛  「動いちゃダメだよ、もうボロボロなんだから」

ブイモン「でも僕がやらないと凛が、みんなが…」

凛  「ブイモン……」

凛  「穂乃果ちゃん、にこちゃん。凛がおとりになるからブイモンを連れて逃げて」

にこ 「何言ってるのよ、あんた」

穂乃果「そうだよ、凛ちゃんを置いて逃げるなんて出来るわけないよ」

凛  「でもこのままじゃみんなやられちゃう。大丈夫、凛はμ'sで一番足が速いんだから逃げ切ってみせるよ」

そう言うと凛ちゃんは足元にあった石をクワガーモンに向けて投げつけて言いました

凛  「この赤いの!お前なんかに凛は捕まらないんだから!!悔しかったら追いかけてみろ!!」

もう一つ石を投げて崖沿いに全力で走り出す凛ちゃん

その動きに興味を示したのかクワガーモンは凛ちゃんに向かって突進していきます

穂乃果「凛ちゃん危ない!!」

咄嗟に凛ちゃんが横に飛んだおかげで寸でのところで突進を回避できたようです

しかしバランスを崩して倒れた凛ちゃんに再びクワガーモンのハサミが迫ります

にこ 「凛!!」

穂乃果「凛ちゃん!!」

凛ちゃんも必死に立ち上がって空中から迫るそのハサミから逃れようとしますがどう見ても間に合わない

「もう駄目だ」そう思い視線を逸らそうとする凛ちゃんが赤いハサミが触れるよりも早く青い影が凛ちゃんの目の前にたどり着きました

「もう駄目だ」そう思い視線を逸らそうとする凛ちゃんが赤いハサミが触れるよりも早く青い影が凛ちゃんの目の前にたどり着きました

ブイモン「凛は僕が守るんだー!!」

叫びと共に凛ちゃんの持つデジヴァイスが光を放ちその光にブイモンが包まれていきます



『ブイモン進化!――エクスブイモン!!』

光の中から現れたブイモンは一回り大きく、逞しく成長していて、振り上げたそのコブシの一撃でクワガーモンの突進を退けました

アグモン「あれは進化の光だ」

穂乃果「進化?」

アグモン「ボクたちデジモンが成長して姿が変わる事、それを進化っていうんだ」

にこ 「それって変態の事じゃないの?」

アグモン「よくわかんないけどそういうんだから仕方ないよ」

凛  「ブイモン?ブイモンなの?」

エクスブイモン「そうだよ、でもただのブイモンじゃない。凛を守るためにエクスブイモンに進化したんだ」


“エクスブイモン”

成熟期 幻竜型 フリー

ブイモンが本来の力を得て進化した幻竜型デジモン。
その発達した腕力と脚力から繰り出される攻撃力は凄まじく、山ほどもある岩石など跡形も無く破壊できるほどである。
必殺技は胸のX字の模様から放射されるエネルギー波『エクスレイザー』

凛  「エクスブイモン!凄くかっこいいにゃー」

エクスブイモン「どうやらまだ終わって無いみたいだ。凛、危ないから下がってて」

一度叩く伏せられたクワガーモンが立ち上がり、今度は更に上空からエクスブイモン目掛けて突進をはじめました

クワガーモン「グアアアァァァァァ!!」

しかしエクスブイモンも空を飛ぶ事で攻撃を回避し逆に地面へと蹴り落とします

エクスブイモン「これでも食らえ、エクスレイザー!!」

エクスブイモンの胸のX字の模様が輝くと、そこからクワガーモンに向けてビームが放ちました

クワガーモン「ギャアアアァァァァァ!!」

ビームを受けたクワガーモンはさっきまでよりも少し高い声で鳴きそのまま動かなくなりました

にこ 「や、やったの?」

凛  「エクスブイモンのおかげで助かったにゃー」

アグモン「ブイモンばっかりずるいよ、どうやって進化したのさ」

エクスブイモン「無我夢中だったから、自分でも気がついたらいつの間にかって感じで」

穂乃果「うわーん、みんな無事でよかったよー」

にこ 「もう、穂乃果ったら助かったんだから泣くんじゃないわよ」

凛  「にこちゃんもさっきまで泣いてた癖に」

にこ 「う、うるさいわね。あんたは……もう2度とあんな無茶な事するんじゃないわよ」

凛  「うん、ごめんなさい」

アグモン「とりあえずここから移動しよう。もう少し安全な場所に行かないと」

凛  「実は凛はさっきので腰が抜けて立てません」

にこ 「はぁ、もう仕方ないわねぇ」

穂乃果「待って!さっきのアイツが」

そこには先ほどまで倒れていたクワガーモンが立ち上がっていました、けれど

アグモン「もう瀕死って感じだね」

エクスブイモン「でもまだ何かしてくるかもしれない、気をつけて」

凛  「でもフラフラして、ほらまた倒れるよ」

凛ちゃんの言うとおりクワガーモンはハサミを下にしてフラフラとまた倒れて…

アグモン「あ、マズイ」

クワガーモンは倒れる身体ごと地面にハサミを突き立て崖を砕きました

にこ 「ギャー!落ちるー!!」

凛  「にこちゃん、焦らないで」

崖を半分程落ちたところでエクスブイモンが3人と1匹を抱きかかえて助けます

アグモン「ふぅ、助かったよ」

凛  「流石エクスブイモン、頼りになるにゃー」

エクスブイモン「………ごめん、みんな。力が抜け…」

進化した時と同じように光に包まれたエクスブイモンの身体はみるみる小さくなっていき元のブイモンに戻ってしまいました

それと同時に再び落下を始める3人と2匹

穂乃果「ちょ、ちょっと!」

にこ 「嘘でしょ……」

凛  「落ちるにゃー!!」

「ダレカタスケテー」

助けを呼ぶ叫びも虚しく私たちは川に投げ出されました

※次回予告

湖のほとりに流れ着いた穂乃果たち。辺りが暗くなる中で今晩はそこでキャンプをすることに
おいしいご飯とポチャポチャお風呂、夜の星空で感傷に浸る中、風呂上りの彼女たちを白い魔の手が襲う

次回 ラブライブ!―Digital idol Adventure―
【夢と希望! グレイモン】
今、冒険が進化する

今晩はここまで
次の話の書き溜めが終わっていないのでペースダウンすると思います
このペースだと全員1段階進化するまでにいつまでかかるのやら

絵里のパートナーにしっくりくるのが居ないんですが見た目や技で合いそうなデジモンって何がいますかね?

1です。私生活が忙しくてなかなか更新に来れませんでした

絵里のパートナーの提案ははレナモン、テイルモン、ガブモン、ペンモン、トイアグモン辺りでしょうか
フロンティアのは性質上使いづらいので申し訳ない
自分もレナモンは考えたのですが意見の通り進化先がちょっとイメージと違うので他の形で出そうと思います
トイアグモンも使用予定なのでテイル、ガブ、ペンから出してみようと思います

ペンモンの進化先って何でしょうか?シードラ系?

にこ 「まったく酷い目にあったわ」

穂乃果「本当に、生きてるのが不思議なくらいだよ」

川に流された私たちは何とか流れ着いた湖のほとりでキャンプをする事になりました

幸いというべきか近くに使われていない古い電車がありその中で眠る事が出来そうです

フカフカのベッドとは言えないけどにこちゃんは2日間野宿だったようなのでそれよりは大分マシです

穂乃果「はぁー、お風呂に入りたいなぁ」

アグモン「さっきまで川で洗濯されてたじゃん」

穂乃果「川で流されるのとお風呂は全然違うよー」

にこ 「濡れてる服も乾かしたいわね、こんなところで風邪ひいたらたまったもんじゃないし」

穂乃果「それにお腹も空いたよー」

にこ 「そこは凛とブイモンに期待しましょ」

凛ちゃんとブイモンは近くの森に食料と火が起こせそうな木を探しに行ってくれてます

それにしても凛ちゃんの体力は凄いなぁと歓心しちゃう、私はもうヘトヘトで動けないよ

凛  「たっだいまー」

にこ 「あ、さっそく帰ってきたみたいよ」

凛  「見て見てーこんなに沢山取れたよ」

穂乃果「うわっ!何この黒いキノコ、本当に食べれるの?」

アグモン「これはデジタケって言ってデジタルワールドのあちこちに生えてるんだ。野生のデジモンの主食になってるんだよ」

にこ 「生でも食べれるし結構美味しいのよ」

穂乃果「にこちゃんも食べたことあるんだ」

にこ 「……そりゃ生きるために必死だったからね、死ぬ気で食べたわよ」

にこちゃんも2日間で相当サバイバルな生活送ってたんだなぁ……

ブイモン「後は薪になりそうな木と、凛がどうしてもって言うからドラム缶も持ってきたよ」

穂乃果「ドラム缶?」

にこ 「ふーん、念のため確認するけど私たち3人以外には他の人間っていないのよね?」

アグモン「それはわからないけど、ボクは一度も見たこと無いよ」

ブイモン「僕も昔話で聞いた事あるくらいで実際見たのは凛たちが始めてだよ」

にこ 「わかったわ。凛、穂乃果、準備するわよ」

凛  「やったー!!」

穂乃果「え?え?何するの?」

にこ 「察しが悪いわね、お風呂を作るのよ。あんたも入りたがってたでしょ」

アグモン「ベビーフレイム!」

凛  「おぉー」

にこ 「アグモンがいて助かったわ、火を起こすのって一苦労なのよね」

ドラム缶風呂を完成させて後はお湯が沸けば念願のお風呂です

にこ 「とりあえず服を乾かしておいてお湯が沸いたら2人で入っちゃいなさい。私はさっきのキノコとアグモンの取ってきた魚で料理してみるから」

乾きかけていた服もドラム缶の洗浄や水入れでまた濡れてしまっていたのでついでに焚き火で乾かします

大空の下、下着を着けているとはいえ服を脱ぐのはちょっとドキドキ

穂乃果「下着でも寒くないから助かったね、冬場だったら凍死してるよ」

凛  「でも流石に恥ずかしいにゃー」

アグモン「他に人間もいないから大丈夫だよ」

穂乃果「そういう問題じゃないんだけど、我慢するしかないよねぇ」

凛  「あ、そろそろ沸いたみたいだよ。一緒に入ろ」

アグモン「ボクはブイモンと一緒にゴハンを見に行ってこようかな」

穂乃果「わかった、後でそっちに行くね」

にこ 「さて、料理と言っても道具も調味料も無いのよね…」

にこ 「あ、ブイモン。さっきのドラム缶の蓋を丸くへこましてくれない?」

ブイモン「こ、こうかな?」ガンガン

にこ 「そうそう、そんな感じ。アグモン、このあんたの爪でこの魚を一口大に切って、あと火もよろしく」

アグモン「はいはい、ヒト使いが荒いなぁ」ザクザク

にこ 「あんた達ほんと便利ね、一家に一匹欲しいくらいだわ」

――――――

穂乃果「にこちゃーん、お風呂上がったよー」

凛  「服も乾いてたからにこちゃんの分も持ってきたよ」

にこ 「ありがと、こっちも美味くとは言えないけど食事が出来たわ」

穂乃果「わー、凄い。キノコと魚の鍋だ」

凛  「美味しそうだにゃー」

アグモン「ボク達も手伝ったんだよ」

ブイモン「僕は入れ物を作っただけだけどね」

凛  「ブイモンありがとー」ギュー

ブイモン「そ、そんなにくっ付かないでよー」

穂乃果「アグモンもエライエライ」ナデナデ

アグモン「えへへへ」

穂乃果「じゃあさっそく食べよ、いっただきまーす」

凛  「モグモグ、ちょっと味が薄く無いかにゃ?」

にこ 「仕方ないでしょ、調味料が無いんだから。素材の味よ、素材の」

穂乃果「でもキノコと魚のダシが出てて美味しいよ」

にこ 「そういえば今更だけど凛は魚苦手だったわね、大丈夫だった?」

凛  「非常時に好き嫌いなんてしてられないよ、別に食べられないわけじゃないし」

アグモン「生と焼く以外の食べ方があるなんて知らなかったよ」

ブイモン「僕なんていつも生でしか食べてなかった」

にこ 「そのうちもっとちゃんとした料理も食べさせてあげるからね、楽しみにしてなさい」

にこ 「さて、食事も終わったし私はお風呂に入ってくるわね」

凛  「いってらっしゃーい」

穂乃果「もうすっかり暗くなっちゃったねぇ」

穂乃果「私たち音ノ木坂に帰れるのかなぁ…」

凛  「お母さんもお父さんも心配してるよね…」

「………………」

しばらく沈黙の中、東京よりも多く見える星空を眺めながら大切な家族や友達、そしてμ'sのメンバーのことを思い出しまい目元に涙が滲んでくる

そんな私の様子を知ってか知らずかアグモンが問いかけてきた

アグモン「ねぇ、穂乃果たちの世界ってどんなところなの?」

穂乃果「私たちの……うーん、、こことは違って家とかビルがいっぱいあって、車が走ってて、学校があって……私たちはそこでスクールアイドルをしているの」

アグモン「スクールアイドル?」

穂乃果「うん、歌ったり踊ったり…あ、ちょっと待ってて。確かここに…」

私はポケットの中にしまい込んであった携帯型の音楽プレイヤーを取り出す

アグモン「それは何?」

穂乃果「この中に私たちの歌が入ってるんだ。良かった、壊れてないみたい」

練習の合間に確認しようと持っていたんだけど、さっきの川流れでも壊れなかったってことは防水仕様だったのかな

穂乃果「はい、このイヤホンを耳につけ……あれ?耳ってどこ?」

アグモン「ほら、ここにちゃんとあるから、着けたよ」

穂乃果「じゃあ、再生するね」

――ファイトだよ! 風を抜けて走ってく 今日も君は走ってく♪

アグモン「何これ、穂乃果の声が聞こえてくるよ」

穂乃果「へへーん、それが穂乃果の歌なんだよ、どう?」

アグモン「よくわかんないけど何だか力が湧いてくるみたい、これが歌っていうんだ。凄いね」

ブイモン「そうだ!ギアサバンナにあるゴミの山にアイドルがいるって聞いた事あるよ」

先ほどから何か考え事していたブイモンがやっと思い出したという様子で口を開く

穂乃果「それホント?もしかしたら海未ちゃん達がいるのかも」

凛  「ゴミの山って…凄い場所にいるんだね」

穂乃果「どうせ当ても無いんだしとにかくそこを目指してみようよ」

アグモン「ボクも穂乃果の友達を探すの手伝うよ。ファイトだよ!」

穂乃果「うん、みんなと一緒に音ノ木坂に帰るんだ!ファイトだよ!!」

とりあえずここまで

にこのパートナーはにこほのりんチームの次の話で出す予定です

水棲系デジモンは場所が限られるんですよね、
ポンコツえりちでも良いけど肝心な時に一人進化出来ないとか設定的に厳しい

にこ 「はぁ……良いお湯ねぇ~こうして夜空を見ながら湯船に浸かってると今の状況が夢のように思えてくるわ」

にこ 「あれから3日、みんな心配してるだろうな。にこがいないのが寂しくて泣いてないといいんだけど」

にこ 「うっ……ひっく……ママ、パパ、こころ、ここあ、こたろう、みんなに会いたいよぅ」

時間にすればたったの数十秒のことだろう、思わず涙を流してしまった自分を戒めつつ湯船で顔を洗う

にこ 「さあ、明日も動かなきゃいけないだろうし早めに寝る準備しないと」

湯船から出たにこは濡れた身体のまま先ほどまで着ていた練習着の前に立ちふと考えた

にこ 「あの子たちどうやって身体拭いたのよ」

身体も当然だが普段は髪を上げて結んでいるのでわかりづらいが海未やことり、希ほどじゃないにしろにこの髪はそれなりに長い

このまま服を着ればせっかく乾いた服がまたびしょ濡れになってしまうだろう

にこ 「また濡らすわけにもいかないし……仕方ない、痛みそうだけど焚き火で乾かすしかないわね」

そう言うとそのままの姿でお湯を沸かすために焚いている火に髪を近づける

にこの白い身体は湯上りのためか焚き火の熱のためか、いつもよりもほんのり赤く染まっている

そしてその身体よりももっと白い足が自分に近づいているのに気づいた時にはもう逃げることは出来なかった


穂乃果「にこちゃん遅いねぇ」

凛  「矢澤長風呂すぎるにゃ、凛はもう眠くなってきたよ」

ブイモン「先に寝ちゃっててもいいんじゃない?」

凛  「うーん、そうしようかなぁ」

「きゃーーーー!!」

穂乃果「この声はにこちゃん!?」

アグモン「何かあったのかな?行ってみよう」

にこ 「ちょ、やめ……離しなさいよ!!」

穂乃果たちが駆けつけた時、そこには巨大な烏賊のようなデジモンに産まれたままの姿で巻きつかれているにこの姿があった


“ゲソモン”

成熟期 軟体型 ウイルス

ネットの深海に棲むイカの形態をしたデジモン。
「深海の白い悪魔」として恐れられており知能も高い
必殺技は沢山の脚で連打攻撃する『デビルバッシング』、食らうと長時間視覚がマヒしてしまうイカ墨『デッドリーシェード』

穂乃果「にこちゃん、大丈夫!?」

にこ 「もう、何で淡水の湖にイカが棲んでるのよ」

凛  「にこちゃん、何かえっちぃよ!!」

にこ 「馬鹿なこと言って無いで早く助けなさい!!」

にこの助けを呼けを求める声を聞き、待ってましたとデジヴァイスを掲げた凛が叫ぶ

凛  「よーし、ブイモン、進化だよ!!」

ブイモン「よし!任せて!!」

凛&ブイ「…………」

凛  「あれ?何も起きないよ?」

ブイモン「うーん、ダメだ前みたいな力が出ない」

にこ 「ちょ、ちょっとどうにかしなさいよー」

穂乃果「と、とにかくにこちゃんを助けないと、アグモンお願い」

アグモン「出来るだけやってみるよ、『ベビーフレイム!!』」

アグモンの吐いた火球はゲソモンに命中するが怯む様子どころか逆に活発に動きはじめる

アグモン「やっぱり効かないみたい。下がって、攻撃してくるよ」

口から何かを吐き出そうとするゲソモンに対してアグモンはもう一度火球を飛ばす

そのおかげで穂乃果とアグモンに向けられた攻撃は外れることになったが外れた先にはまだデジヴァイスと悪戦苦闘する凛とブイモンがいた

ゲソモンが吐いたのは墨、ただし唯の墨では無く相手の視覚を奪う必殺技『デッドリーシェード』である

凛  「にゃーー!!な、何これ?前が全然見えないよー!!」

ブイモン「しまった、ゲソモンはこの墨を受けた相手を優先的に狙ってくるんだ」

墨により視覚を失った獲物を刈り取るかのようにゲソモンは2本の長い脚のうちにこを捕まえていない方を高く振り上げる

アグモン『ベビーフレイム!!』

三度放った火球を受けてゲソモンは脚を振り下ろすのが一瞬遅れた

穂乃果「凛ちゃんこっち!」

穂乃果の声が聞こえる方へ走ることで凛とブイモンは間一髪ゲソモンの攻撃を回避する

しかしジリジリと距離を詰めてくるゲソモン対して目の見えない二人がこれ以上回避し続けるのが無理である事は明らかだった

穂乃果「こんなのもう無理だよ……私たちみんなやられちゃう……」

にこ 「こらー!何諦めてんのよ。今どうにか出来るのはあんた達しかいないのよ」

にこ 「最後まで頑張りなさいよ!それがあんたの口癖でしょうが!!」

穂乃果「でも私だけじゃ何も出来ないよ」

アグモン「穂乃果だけじゃない、ボクもいるよ。2人だったらきっと何とかなるよ」

アグモン「だから、穂乃果。ファイトだよ!」

穂乃果「アグモン……」

私はあの曲を思い出す、さっきアグモンに聞かせたあの曲だ

――I say fight! 私の応援

穂乃果「そうだよね、あの時だって諦めなかったからμ'sのみんなと出会えたんだ」

――いつでも熱いままなんだよ

穂乃果「諦めなきゃ絶対に希望はある!アグモン、お願い手伝って!!」

アグモン「大丈夫、ボクと穂乃果は最高のパートナーなんだから、絶対に負けない!」

穂乃果の叫びと共にデジヴァイスの輝きがアグモンを包み込む

「夢なき夢は夢じゃない」



『アグモン進化!――グレイモン!!』


穂乃果「アグモンが……進化した」


〝グレイモン〟

成熟期 恐竜型 ワクチン

頭部が硬質化して兜のようになった恐竜型デジモン。
鼻先と後頭部の左右に生えた計三本のツノと、オレンジの体色に幾本もの青い筋が入っているのが特徴。
得意技は強靭な角で攻撃する『グレートアントラー』、必殺技は超高温の炎を吐き出す『メガフレイム』

グレイモン「うおおぉぉぉ!!」

凛とブイモンに迫っていたゲソモンに対してアグモンの頃とは比べ物にならないパワーで突進し吹き飛ばす

凛  「うわーん、見えないから何が起こってるかさっぱりわからないよー」

ブイモン「よくわからないけど助かったみたいだよ」

にこ 「ちょっと、私が捕まってるのを忘れんじゃないわよ!!」

グレイモン「世話が焼ける」

グレイモンがにこを捕まえている脚に噛み付くとゲソモンは痛みから拘束していたにこを放して湖へ逃げようと移動を始める

にこ 「た、たすかったわぁ」

グレイモン「火傷したくなかったら離れてて、『メガフレイム!!』」

アグモンの時よりも数倍の大きさはある火球が逃げるゲソモンを捕らえた

全身を炎に包まれたゲソモンは池に戻ること無くそのまま動かなくなっていく

それを確認したグレイモンは役目を終えたというように元のアグモンへと戻ってしまう

穂乃果「凄い、凄いよーアグモン!!」

アグモン「ちょっと、疲れてるからそんなに抱きつかないで」

穂乃果「アグモンはみんなの命の恩人だよ、感謝しきれないくらいだよ」

アグモン「違うよ、穂乃果が諦めない心がボクを進化させてくれたんだ。だから穂乃果のおかげだよ」

にこ 「穂乃果とアグモン。2人の力があったから私たちは助かったのよ、どちらが欠けたって助からなかったわ」

穂乃果「にこちゃん……」

ブイモン「うぅ、やっと目が見えるようになってきたよ……」

凛  「やっと見えたと思ったらにこちゃんは何で裸で偉そうにしてるのかにゃ?


にこ 「う、うるさいわね!もう、お風呂入ったばかりなのに身体中ヌルヌルだわ


凛  「凛も全身墨まみれだよ」

穂乃果「よーし、みんなで一緒にお風呂入りなおしだ。アグモンも洗ってあげるねっ」

凛  「ブイモンも綺麗にしてあげないとね」

にこ 「ちょっと待って、そいつらオスなんじゃないの?」

ブイモン「デジモンには性別は無いよ、男っぽいとか女っぽいとかはあるけど」

にこ 「そうなの?……仕方ないわねぇ、とことん綺麗に磨いてやるから覚悟しなさい」

その後、3人と2匹は遅くまでお湯と戯れて話し合いました

湯船に浸かり星空を見上げる穂乃果は改めて思い浮かべます

それは先ほど思い浮かべた人達と同じ顔、だけど思いは少し違う

穂乃果「絶対にみんな一緒に音ノ木坂に帰ろうね」

空を見上げたままの私は2人が頷いているような気がしました

これで2話は終わりです
年内にパートナー8体は出したかったけど無理です

せめて異世界組だけでも頑張ろうと思います

ゲソモンの住んでいた湖を後にした私たちはアイドルがいるという情報を元にギアサバンナにあるゴミの山へと向かっています

ミハラシ山のふもとにあるドリルトンネルを問題なく抜けた私たちはギアサバンナへとたどり着きました

今、私たちの目の前にはテレビで見たアフリカの大地のような光景が広がっています

ブイモン「ここを半日くらい歩いた先にゴミの山があるよ」

にこ 「半日って……山の中を抜けてきたのよ、そんなに歩けるわけないじゃない」

穂乃果「私も流石にここから半日歩くのは厳しいかも」


アグモン「2人ともだらしないなぁ」

凛  「凛は山を登らなくて済んだからまだまだ大丈夫だよ」

にこ 「あんた達を基準にしないでよ、こっちは普通の女子高生なんだから」

凛  「凛が普通じゃないように言われてるみたいで嫌なんだけど」

ブイモン「じゃあ、もうちょっと進んだ先に水場があったはずだからそこで野宿しようか」


穂乃果「うぅ~ついに野宿かぁ。せめてテントが欲しいよー」

にこ 「無いものは仕方ないでしょ。それにしても本当にゴミの山なんかにアイドルがいるんでしょうね」

ブイモン「僕も見たことは無いけど現地のデジモンに大人気だって聞いたことがあるよ」

凛  「きっとみんなそこにいるよ!早くかよちんに会いたいなぁ~」


――――


花陽 「ダレカタスケテー」

花陽 「学校の屋上にいたはずなのにここどこなの?みんなどこ行っちゃったの?」

私が目覚めた時、周りには誰もおらず何故か森、というよりも熱帯のジャングルのような場所にいました

混乱している頭で思い出せるのは学校で雷が落ちて……

自分の身体を確認しますがいつもの練習着で焦げているどころか汚れている様子もありません

そうだ、あの雷も今ジャングルにいるのも夢に違い無い

そう思って思い切りほっぺたを抓りますが

花陽 「うぅ~痛い」

勢いよく抓ったせいで思ったよりも痛くて、こんな事なら軽く手の甲でも抓っておくべきでした

頬の痛みのせいか少し落ち着きを取り戻した私はまだ半信半疑ですがこれは現実なのかもしれないと思いはじめています

花陽 「はっ!そうだ、携帯で連絡を……駄目だ、圏外」

花陽 「み、みんな近くにいるのかなぁ?」

ここにいても埒が明かないのでとにかく辺りの探索をことにしました

30分ほど周りを探索しましたがやはりここは花陽の記憶に無い場所のようでした

とにかくこのジャングルから出て街に出られればきっと帰れるはず

その思いからとにかく前へ前へと進んでいると遠くから声が聞こえてきます

「だすけてー」 「まてー」

その声に一瞬身を強張らせましたが他の人に会えるかもしれないという期待から恐る恐る声の聞こえた方へ向かう事にしました

茂みの影から声の主を確認した私は思わず声をあげそうになり口を押さえます

視線の先には私の膝くらいまではありそうな大きな芋虫を

人の形はしていますが明らかに人では無い緑色の肌をした何かが追い掛け回していました

しかもその2匹は私達と同じ言葉を喋っているのです

ゴブリモン「やっと追い詰めたぞ、さあ大人しくこっちにきやがれ」

〝ゴブリモン〟
成長期 鬼人型 ウイルス

悪さが大好きな困った小鬼の姿をしたデジモン。
勇気がないズルがしこい性格で、1体で行動することがなく、いつも集団で森の中の木陰や、建物に隠れて攻撃してくる。
必殺技はマッハのスピードで火の玉を相手に投げつける『ゴブリストライク』。


クネモン「な、何で僕たちを狙うんだよぅ」


〝クネモン〟
成長期 幼虫型 ウイルス

全身にイナズマの模様が入った幼虫型デジモン。
顔と思われる部分にあるイナズマの模様は感情によって形を変えるところから、恐らく目ではないかと言われている。
必殺技は硬い嘴から吐き出される電気を帯びた糸『エレクトリックスレッド』。

ゴブリモン「この辺りに選ばれし子供達が現れるって噂があるからな」

ゴブリモン「とにかく近くにいるデジモンを片っ端から連れて来いって命令なんだよ」

花陽 (選ばれし子供達?)

話の内容は分かりませんがどうやら緑色の人っぽい生き物が悪者で大きな虫を苛めているようです

クネモン「そんなの僕は知らないよぅ」

ゴブリモン「うるさい!大人しく着いて来ないなら痛い目にあってもらうぜ」

突然、緑色の生き物の手に炎の塊が現れ、大きな虫に目掛けて投げつけようと振りかぶりました


花陽 「危ない!!」

ゴブリモン「え?」

クネモン「え?」

花陽 「あっ……」

しまった……思わず叫んでしまった私に2匹の視線が刺さります

クネモン「もしかして人間?」

ゴブリモン「え、選ばれし子供達か!」

花陽 「えっ、あっ、その……」


もうヤケです。茂みから出た私は緑の人と虫の間に立ちふさがりました

花陽 「よ、弱い者イジメは良くないと思います!!」

自分では精一杯かっこよく立ち振る舞ったつもりですが足も身体も震えてガクガク

ゴブリモン「ん?もしかしてお前パートナーいないのか?」

パートナー?えっと……恋人のことかな?

花陽 「わ、私にはそういうのはまだ早いというか、アイドルは恋愛禁止だからというか、凛ちゃんがいるからというか……」


ゴブリモン「よくわからないが選ばれし子供を捕まえるチャンスだ、みんな出てこい!」

ガサガサっと茂みが揺れると、その中から緑の人が左右から。そして後ろからも……

総勢4人の緑の人に辺りを囲まれてしまいました

花陽 「えぇっ!?そ、そんなぁ」

ゴブリモンB「うへへっ、抵抗すると痛い目を見るぜ」

ゴブリモンC「大人しくしてれば優しくしてやるからよぅ」

ゴブリモンD「ハァハァハァハァハァ」

花陽 「ダ、ダレカタスケテーーー!!」

ゴブリモンA「さぁ、こっちへ来い」

正面の緑の人が私に手を伸ばした瞬間、まるで台風の中にいるような強い風が吹き抜けました

その風で緑の人は吹き飛ばされ、変わりに私の前にいたのは大きなキツネ?

「大丈夫ですか?」

キツネの背中から手を伸ばす様はまるで白馬の王子様のようで、風に流れる黒い髪はまるでお姫様のよう

花陽 「海未ちゃん!!」

海未 「早く乗って下さい、ここから離れますよ」

花陽 「あ、うん。ちょっと待ってて」

私は急いで大きな虫を抱えた後、海未ちゃんの手を取りキツネさんの背中によじ登ります

海未 「しっかり捕まっていてくださいね」

私が海未ちゃんにしがみ付くとキツネさんはまるで風のようにその場を後にするのでした

今回はここまでです

>>122
例えはセリフの後ろに()で心情を描写する 日常に関しては誰の視点でもいいと思いますができるだけ過去形にしない方がいいと思います あとキャラの口調、口癖等をもう少し積極的に出していくと脳内再生率上がっていいと思います 面白いんで続き期待してます!

>>123
ありがとうございます。参考にさせて貰います

とりあえず少し修正したのでいままでと若干書き方が変わっていますが投稿を始めます

海未 「さあ、着きましたよ」

時間にして数十秒ほどで目的地に到着する

そこはまだジャングルの中で目の前には小さい洞窟

花陽がキツネから降りて洞窟の中を覗き込むと奥からうっすらと光が見えていた

花陽 (誰かいるのかな?)

花陽 「ここって……えっ?」

花陽はいつの間にか自分たちを乗せて走っていた大きなキツネが居なくなっている事に気が付いた


花陽 「海未ちゃん、さっきのキツネさんは?」

さっきまでキツネの横にいたはずの海未に問いかける

季節外れの白いマフラーを巻いた海未は何も言わず近づいてくるだけだった

花陽 (あれ?さっきはマフラーなんてしてなかったような……)

「アナタ、このアタシが助けてやったんだから感謝しなさいよね」

花陽 「えぇっ!マフラーが喋った!?」

クダモン「誰がマフラーよ。アタシの名前はクダモンよ」

〝クダモン〟
成長期 聖獣型 ワクチン

聖なる薬莢に巻きつく聖獣型デジモン。
冷静沈着な性格をしており、戦いにおいても的確に状況判断を行って、戦いを優勢に進める。
必殺技は身体を回転しつつ薬莢ごとぶつける『弾丸旋風』と、ピアスから発する大きな輝きで目を眩ます『絶光衝』。


マフラーだと思ったのはフェレットのような生き物でしかもまた言葉を喋っている

花陽は今更ながら抱えたままである芋虫のことを思い出した

花陽 (この子も喋ってたよね)


もう一体何が何なのかと頭がパンク寸前の花陽に今度は海未から問いかける

海未 「花陽、そのデジモンは?」

花陽 「デジモン?」

クネモン「ボクはクネモンって言います。助けてくれてありがとう」

クダモン「アンタがその子のパートナーなの?」

クネモン「いえ、ボクは違うと思います」


花陽 「パートナー?そういえばさっきもそんなことを言っていた気が」

海未 「どうやら花陽も混乱しているようですし、とりあえず洞窟の中に入りましょうか」

そう言って花陽の肩をポンと優しく触れてから洞窟へと向かう海未

こういうさり気ない気遣いやボディタッチが学年問わず女子に人気がある所以なのだろうか

花陽がそんな事を考え少しドキドキしていると、海未は洞窟の前で優しく微笑んで言いました

海未 「ことりも中で待っていますよ」

――――――

海未 「私たちが今わかっているのはそのくらいですね」

花陽は洞窟でことりと合流した後、海未とことり、そしてデジモン達の解説を含めながらこの世界の説明を受けていた

ここが自分たちの世界とは違う場所である事、人はおらずデジモンと呼ばれる生き物が生活している事

この世界に来た人間は選ばれし子供と呼ばれてそれぞれにパートナーデジモンがいる事

海未は6日前、ことりは5日前にここに来てパートナーと出会った事、そして進化の事


花陽 「そんな……じゃあ、どうやったら元の世界に戻れるの?」

海未 「それはまだわかりません。しかし来る方法があるという事は戻る方法もきっとあるはずです」

ことり「私と海未ちゃんだけで心細かったけど花陽ちゃんも見つかったし、もしかしたら穂乃果ちゃん達も来てるかもしれないね」

花陽 「そうだね、凛ちゃんも真姫ちゃんも無事だと良いんだけど……」

ことり 「そういえば、花陽ちゃんはパートナーがまだいないんだよね」

花陽 「う、うん。起きた時に近くには何もいなかったよ」

クダモン「はぁ、ほんと海未の仲間は役立たずばっかりなのね」

海未 「そんな言い方は止めてください。ことりも花陽も大切な仲間なのですから」

クダモン「フン、事実を言っただけじゃないの」

海未 「そんな事はありません。2人共ちゃんと役に立ってくれます」

花陽 (海未ちゃんとクダモンはパートナーだけどあまり仲が良くないのかな)

クダモンの言い方は少しキツイものが多く、説明している間も何度も海未と言い争いをしていた

花陽 (私のパートナーになる子はどんな子なんだろう。仲良くなれると良いんだけど)

海未 「あぁ、すいません。こちらの話ばかりしてしまって」

クネモン「大丈夫です。それでパートナーの話なんですが」

ことり「何か知ってるの?」

クネモン「はい。さっき襲ってきたゴブリモンが最近この辺りのデジモンを捕まえているんです」

花陽もさっきの緑のデジモンが言っていたことを思い出した

クネモン「ボクの友達も捕まっていて、もしかしたらその中にパートナーデジモンもいるかもしれません」

海未 「ふむ、その可能性もありますね」

海未 「一度ゴブリモンのアジトに行ってみましょうか。クネモンの友達も助けなければなりませんし」

クダモン「ほんと、世話が焼けるやつばっかりね」

海未たちは日が暮れるのを待ってから、クネモンの案内でジャングルの奥にあるゴブリモン達のアジトまでやってきた

今は夜目が利くことりのパートナーがアジトの様子を確認しに行っているところである

ファルコモン「ホー、ホー」

ことり「あ、戻ってきたみたい」

〝ファルコモン〟
成長期 鳥型 ワクチン

3000m級の高山に生息する、鳥型デジモン。
翼はあまり発達していないが、脚力が強力で岩山を猛スピードで駆け回ることができる。
必殺技は翼の爪で相手を引っかく『スクラッチスマッシュ』と強力な脚力から繰り出される『ファルコラッシュ』。

ファルコモン「ホー、ホー、ホー」

ことり「うんうん、ありがとう。アジトの横にある、あの小屋に捕まってるデジモンがいるみたい」

ファルコモンは言葉が喋れないのだがことりだけは何を言っているかわかるようだった

花陽 (何でファルコンなのにホーホー鳴いてるんだろう)

海未 「とにかく捕まっているデジモンを解放しましょう」

ことり「小屋の前に見張りが2人いるみたい」

海未 「クダモン、頼みます」

ことり「ファルコモン、おねがぃ」

クダモン「さっさと終わらせるわよ、『弾丸旋風』」

クダモンはまるで銃弾のような勢いでゴブリモンに向けて突進する

ゴブリモンB「ぐわーっ!!」

ゴブリモンC「な、何だ!?」

ファルコモン「ホーッ!!」

仲間がやられ動揺するゴブリモンの背後からファルコモンの鋭い爪が襲う

奇襲によって見張りを気絶させた事を確認し、海未達は小屋へと向かった


海未 「今のうちです早く捕まってるデジモンを解放しましょう」

周囲の警戒は海未とことり達が担当し、花陽とクネモンで鍵を壊して小屋の中にいるデジモン達を救出する

クネモン「みんな、早く逃げて!」

小屋の中にいた十数体のデジモンがいたが、皆無事なようだった

それぞれ感謝の言葉を言いながら思い思いの方向へ逃げ出していくデジモン達

花陽とクネモンが小屋のデジモンが全て逃げた事を確認すると緑色の芋虫のようなデジモンがこちら近づいてくるのに気が付いた

どうやらこのデジモンがクネモンの言っていた友達のようだ


「クネモン、助けに来てくれたんだね」

クネモン「ワームモン、無事だったんだ。良かった」


〝ワームモン〟
成長期 幼虫型 フリー

気弱で臆病な性格の幼虫型デジモン。
ブイモン等と同じ古代種族の末裔。単体では非力だが脆弱な幼虫が力強い成虫に成長するように、未来への可能性を秘めているデジモン。
必殺技は粘着力の強い網状の糸で相手の動きを封じこめる『ネバネバネット』と、針の様に硬質な糸を吐出す『シルクスレッド』。


ワームモン「ありがとう、助かったよ」

クネモン「選ばれし子供達のおかげだよ」

ワームモン「選ばれし子供達?」

花陽はワームモンと呼ばれるデジモンと目が合ってしまう

しかし、着いてきただけで何もしていない自分が感謝されるのを恥ずかしく思い俯いて目を逸らしてしまう花陽

ワームモン「あ、あの、君は……」

花陽は何かを言いたげなワームモンから距離を取ろうと小屋から出る

その時だった、花陽に向かって凄い勢いで白い何か、骨のようなものが飛んできたのだ

海未やことり、デジモン達も気づいたが間に合わない

海未 「花陽!!」

ことり「花陽ちゃん!!」

もう駄目だ。そう思い花陽は目を瞑る……しかしすぐにくるはずの衝撃がこない

恐る恐る目を開けるとそこに見えたのは花陽に当たるはずだった攻撃の身代わりとなり倒れるワームモンの姿だった

花陽 「あっ・・・えっ……わ、ワームモン?」

かろうじて息のあるワームモンに触れた瞬間、花陽のポケットの中には小さな光と共に一つの機械が現れる

それはデジヴァイス、人間とデジモンとの絆の証

ワームモンは花陽のパートナーだった

「てめぇら、せっかく捕まえてきたのに何勝手に逃がしてやがるんだ」

先ほど飛んできた白い骨の棍棒を持った、ゴブリモンよりも2周りは大きいデジモンがこちらを睨みつけている

クネモン「オ、オーガモンだ」

〝オーガモン〟
成熟期 鬼人型 ウイルス

東洋の伝説に登場する「オニ」のような姿をしたデジモン。
恐ろしく発達した筋肉から繰り出される攻撃はすさまじい破壊力を持つ。「怒り」を原動力としている彼らは破壊の限りを尽くす。
必殺技は巨大な両腕から繰り出される『覇王拳』。


オーガモン「まあいいか。お目当ての選ばれし子供達が3人も来てくれてるんだ。上出来ってもんよ」

海未 「花陽、大丈夫ですか?」

花陽 「私は大丈夫、だけどワームモンが……」

花陽は傷ついたワームモンを抱きかかえたまま何も出来ない悔しさと、命を失うかもしれないという悲しみで涙がこぼす

海未 「ことりと花陽はそのデジモンを連れて逃げてください、後は私が」

オーガモン「そう簡単に逃がすかよ」パチン

オーがモンが指を鳴らすと木陰から現れたのは沢山のゴブリモン達

海未たち周りはいつの間にかゴブリモンの群れに囲まれていた

海未 「くっ……この手際の良さは、私たちが来るのはお見通しだったということですか」

オーガモン「昼間のお前らの話を聞いたからな、正義の味方なら当然捕まった奴らを助けにくるだろうと思ってたぜ」

海未 「そこまでして私たちを捕まえてどうするつもりですか?」

オーガモン「何だ?お前ら、自分が指名手配されてることも知らないのか」

海未 「指名、手配?」

オーガモン「お前らを捕まえてAって奴に引き渡せば代わりに進化する力が貰えるのさ」

海未 「A?それは何者ですか?」


オーガモン「あぁ?そんなもん知るかよ。とにかくおれはお前達を捕まえて進化の力を手に入れるんだよ!!」

海未 「進化の力ですか。ならば、何故このジャングルに私たちがいるとわかったのですか?」

オーガモン「そんなのAがここに子供達が現れるって言っていたからに決まってるじゃねぇか」

海未 「ふむ、ではAもこの近くにいるのですね」

オーガモン「知らねぇよ、おれはAの使いって奴に話を聞いただけだからな」

海未 「なるほど……これ以上は聞いても意味が無さそうですね。情報提供ありがとうございました」

オーガモン「あぁ?……ん?、え?」

海未 「貴方は悪知恵は働くようですが頭はあまりよろしくないようですね」


オーガモン「てめぇ!騙しやがったな!!」

海未 「私はただ質問しただけですよ。そうだ、一つお礼をしましょうか」

オーガモン「何ぃ?」

海未 「見せてあげましょう、貴方が欲しがっていた進化の力を」

海未のデジヴァイスが光を放ち、その光がクダモンを包み込む



『クダモン進化!!――レッパモン!!』



〝レッパモン〟
成熟期 聖獣型 ワクチン

尻尾が刃になっている鎌鼬の様なデジモン。
尻尾の刃自身に意志があり、背後からの不意をついた攻撃にも対処できるようになっている。
必殺技は、前転しながら突撃する『駆駆裂空斬(くるくるれっくうざん)』と、尻尾を振って目に見えない風の刃を放つ『真空カマイタチ』


オーガモン「なっ!本当に進化しやがった!!」

海未 「レッパモン!!」

レッパモン「大声出さなくてもわかってるわよ、『真空カマイタチ』」

レッパモンは尻尾の刃を回転させると、背後のゴブリモンたちへ真空の刃を飛ばす

突然の攻撃で慌てて逃げ出すゴブリモン達

包囲は崩れて逃げるのに充分なスペースが出来ていた


海未 「今です、早く逃げて下さい」

その言葉に頷いたことりは、ワームモンを抱えたまま泣く花陽の手を取り走り出した

オーガモン「てめぇ、よくもおれの部下をやってくれたな」

海未 「貴方もすぐに後を追わせてあげますよ」

レッパモン「アンタ、言ってることが完全に悪役よ」

海未 「そ、そうですね。どうも仲間を傷つけられて冷静さを欠いてしまっているようです」

レッパモン「戦闘中は常にクールじゃないと駄目よ。冷静さを失えば足元を掬われるわ」


海未 「そうですね。弓道と同じ、心を静め、集中し、マトだけを見据え、撃つ」

レッパモン「飲み込みが早くて助かるわ、流石アタシのパートナーね」

レッパモン「アンタが弓でアタシが矢。2人が力を合わせればどんなマトでも撃ち抜ける」

レッパモン「言いなさい、アンタがどうして欲しいのかを」

海未 「レッパモン!オーガモンを撃ち抜いて下さい!!」

レッパモン「りょーかい!!」


レッパモンは風のような速さでオーガモンへと近づく

オーガモン「クソ、舐めやがって。食らいやがれ『覇王拳』」

オーガモンの拳から鬼の顔を模した衝撃波がレッパモンを襲う

しかし、レッパモンは軽々と攻撃を回避し、そのまま一気にオーガモンとの距離を詰めた

レッパモン「アンタ、もうちょっと綺麗な言葉を使ったほうがいいわね」

レッパモン「ほら、言ってみなさい。おウンチ、お舐めなされて。お食べなさいってね」

オーガモン「てめぇ、オレを馬鹿にしてやがるのか」

オーガモンは目の前に迫ったレッパモンに骨棍棒を振りかぶり殴りかかる

だが大振りの攻撃は当たるはずも無く、レッパモンはそのままオーガモンの背後へと回りこんだ


レッパモン「してるわよ、言ったでしょ。戦闘中は常にクールであれって」

レッパモン「愛しのパートナーの頼みなの、撃ち抜かせてもらうわ『駆駆裂空斬!!』」

レッパモンはオーガモンが振り向いたと同時に尻尾の刃と共に回転し、右肩から左腰にかけてをザックリと切り裂いた

普通の人間ならば即死であろう傷だったがオーガモンはその強靭な身体のおかげでなんとか倒れずに持ちこたえる

しかし、重症であることには変わりなく戦闘不能である事は海未から見ても明らかだった


オーガモン「くっ……チクショウ」

海未 「勝負有りですね。このままここを去るなら命までは取りません」

オーガモン「てめぇ、情けをかけるつもりかよ」

海未 「止めをさして欲しいのならばそうしますが?」

オーガモン「クソ……いつか絶対に後悔させてやるぞ、絶対にだ!」

そう言い残し、オーガモンはゴブリモンを引きつれ闇の中へ去っていきました

海未 「ふぅ……お疲れ様です、レッパモン」

レッパモン「このくらい、私にかかれば朝飯前ってものよ」


海未 (あの時、もし殺せと言われていたら私は本当に殺すことができたでしょうか)

海未 (自分が生き残るためとはいえ相手を殺す、それも自分と同じ言葉を喋る生き物を)

海未 (きっと、私はそこまで割り切って行動する事は出来ないですね)

海未 「さあ、早くことり達を追いましょう」

海未は今更ながら震える身体を抑えつつ、レッパモンと共にことり達の元へ向かった


海未 「ことり、花陽」

ことり「海未ちゃん、大丈夫?怪我とかしてない?」

海未 「私は大丈夫です。そちらは?」

ことり「私は大丈夫だけど……」

海未 「先ほど花陽を庇ったデジモン、確かワームモンと言いましたか」

海未 「そんなに悪いのですか?」

ことり「ファルコモンが言うにはもう……」

海未 「そうですか」


海未 「花陽、大丈夫ですか?」

花陽 「海未ちゃん、私は平気だけどワームモンが、ワームモンが……」

まだ会って数時間も経っていないパートナーを抱えて泣きじゃくる花陽

海未 (私はクダモンがいなくなった時、あんなに素直に泣くことが出来るでしょうか)

首に巻きつくパートナーに一瞬視線を向けますがすぐに花陽達に戻します

ワームモン「泣かないで、ボクは大丈夫だから」

それは言葉とは裏腹に弱く、今にも消えてしまいそうな声

ワームモン「君が、ボクのパートナーなんだよね」

花陽 「うん、そうみたいです」

ワームモン「良かった、やっと会えた……名前を教えてくれる?」

花陽 「花陽、小泉花陽だよ」

ワームモン「ハナヨ、花の様にきれいな名前だね」

ワームモン「ハナヨ、最後に会えて良かったよ。ありがとう」

花陽 「そんな、ワームモン。死なないで、ワームモン!」

しかし、ワームモンが閉じた目を開けることはもうありませんでした


夜の静けさの中に花陽の泣く声だけが響き渡ります

ワームモンの亡骸を抱き泣き続ける花陽

これが命のやり取り、日本で普通の学生生活をおくっていればまず出会わないであろう状況

海未 (弱肉強食と言えば聞こえは良いかもしれません)

海未 (しかし、これはただの自己欲の為の殺しではありませんか)

海未が花陽を慰めるために近づこうとすると、その動きより先にクダモンが言いました

クダモン「花陽、ワームモンから離れなさい」

花陽 「えっ?」

海未 「な、何を突然言うのですか」

クダモン「良いから少し離れない、デジタマが産まれるわ」

海未 「デジタマ?」

花陽がワームモンを置いて2,3歩下がると、死んだはずのワームモンの身体が光に包まれ、

まるで卵のような形へと変化していきます

クダモン「全てのデジモンは死ぬとデジタマになって生まれ変わるのよ」


花陽 「え?じゃあ、ワームモンは?」

クダモン「記憶や経験の一部はより強い個体になる為に引き継がれるわ」

クダモン「もしかしたらアンタの事も少しは覚えているかもしれないわね」

光の中から顔よりも大きい緑色の水玉模様が付いたのタマゴが現れます

花陽はそのタマゴを抱いて再び泣き始めました

デジモンのタマゴ、デジタマ

悲しみに中に少しですがやさしい光が射した気がしました

今日はここまで
実家へ急遽帰る事になりそうなので続きは年明けになるかもしれない

海未 「それでは行きましょうか、山頂アタックです!!」

海未の号令で一行はトロピカジャングルを抜けてグレートキャニオンの頂上にいるという運び屋に会う為に移動を始めた



遡る事数分前

ことり「それで、デジタマを孵すには暖めればいいのかな?」

花陽「鶏になった気持ちでがんばるよ!!」

ことり「頑張って、ちゅんちゅん」

クダモン「そんな事してもデジタマは孵らないわよ、はじまりの町に行かないと」


海未 「はじまりの町ですか?」

クダモン「デジタマははじまりの町でのみ孵化するって言われているわ」

クダモン「本当は死んだデジモンははじまりの町でデジタマに生まれ変わるはずなんだけど、パートナーデジモンは例外なのかもしれないわね」

ことり「もしかしたら例外で暖めたら産まれるかもしれないよ」

海未 「その可能性が無いとは言いませんが、試すには時間がかかりすぎますね」

花陽 「そのはじまりの町ってどこにあるの?」

クダモン「ここから西に行ってデジブリッジを渡ればすぐなんだけど……今はデジブリッジが壊れていて渡れないわね」


クダモン「飛べるデジモンがいれば良かったんだけど、アタシもファルコモンもみんなを連れて行くのは無理だし」

海未 「他に方法は無いんですか?船で渡るとか」

クダモン「出来ない事はないでしょうけど、海上で他のデジモンに襲われたらお終いよ」

海未 「うっ、確かにそうですね」

ファルコモン「ホーホー」

ことり 「え?本当?」

ファルコモン「ホーホホーホー」

花陽 「ことりちゃん、何て言ってるの?」

ことり「北にあるグレートキャニオンの頂上に運び屋をしているデジモンがいて、そのデジモンに頼めばいいって」


海未 「グレートキャニオン?グランドキャニオンみたいなものでしょうか」

クダモン「他に良い方法も無いしそこを目指してみるのが早そうね」

花陽 「グランドキャニオンってアメリカの凄い山が続いてるところだよね、そ、そんなところ行けるかなぁ」

海未 「正確には峡谷なので山というよりも谷というべきですね」

海未 「デジタマを孵化させるためです。花陽、頑張りましょう」

花陽 「う、うん。私のパートナーのためだもんね。頑張ってみるよ」

海未 「そうと決まればすぐに行動した方がいいですね」

海未 「それでは行きましょうか、山頂アタックです!!」

こうしてグレートキャニオンに向けて歩き始める海未達一同

数時間後、やめておけば良かったとことりと花陽は後悔する事となるのでした


――――



凛  「着いたよー!!」

穂乃果「ここがゴミの山なんだ……]

そこはまるで大きなゴミ捨て場

主に家具や家電などの粗大ゴミがまさに山のように積み上げられている

ゴミの中には穂乃果達の世界でも最新と思われる製品まであり、今までの自然溢れる世界観からはずいぶんかけ離れているように感じた

にこ 「本当にゴミで出来てるのね、入らなくてもうちのメンバー居なさそうだってわかるわ」

凛  「何か臭うにゃー」

にこ 「ねぇ、本当にこんなところにアイドルがいるの?」

ブイモン「僕も噂を聞いた事があるだけだから」


穂乃果「でも見て、テレビとか冷蔵庫とか炊飯器まで捨ててあるよ」

凛  「炊飯器が捨ててあるからかよちんはいるかもしれないね」

穂乃果「花陽ちゃんって凛ちゃんから見てもそういうイメージなんだ……」

にこ 「これってどう見ても私達の世界の物よね、もしかして本当に人がいるのかしら」

アグモン「とにかく入ってみればわかるんじゃないかな」

穂乃果「そうしよう!ほらあそこにゲートがあるよ」

ブイモン「ダストキングダムって書いてあるね」

にこ 「ゴミの王国って、嫌な予感しかしないわ」



「ん?お前ら何者だ?デジモンじゃなさそうだな」

凛  「うわっ、でっかいウンチが喋った!!」

スカモン「失礼なやつだな、おれはウンチでは無くスカモンっていうデジモンだ」

〝スカモン〟
成熟期 ミュータント型 ウイルス

金色に輝くウンチの形をしたイヤーなデジモン
コンピュータの画面上にあるゴミ箱に捨てられたデータのカスが集まって突然変異をおこして誕生した。
必殺技は相手ににウンチを飛ばす『ウンチ』


穂乃果「説明文までウンチだらけだよ……


にこ 「あんた達、アイドルがウ○チ、ウ○チ言うんじゃないわよ」

スカモン「アイドル?何だお前達もしかしてアイドルを見に来たのか?」

アグモン「アイドルのこと知ってるの?」

スカモン「当然だ、何と言っても全スカモンのアイドルだからな」

凛  「ウンチのアイドルって何か嫌だにゃー」

穂乃果「ねぇ、そのアイドルってもしかして私達みたいな人間なのかな?」

スカモン「人間?もちろんデジモンに決まってるだろ」

穂乃果「まあ、そうだよねー」


スカモン「興味があるなら中で見ていくといい、もうすぐライブも始まるはずだぞ」

アグモン「どうする?見に行くの?」

穂乃果「せっかくここまで来たんだし少し見て行こうよ」

にこ 「そうね、この世界のアイドルっていうのも気になるし」

凛  「凛は嫌な予感しかしないんだけど」

期待と不安を感じつつもスカモンに連れられ、穂乃果達はダストキングダムの中へと入って行った

ダストキングダムの中はあまり飾り気は無く、王宮というよりは大きな倉庫のような作り

しかし、外のゴミ山とは違いゴミ一つ無く綺麗に掃除されているようだった

ブイモン 「中は割りと広いんだね」

穂乃果 「学校の体育館よりも広いかも、それにゴミも落ちてないよ」

凛  「臭くないにゃー」

スカモン 「この会場全てがアイドルにとっての舞台だからな、綺麗にするのはファンとしては当然だろう」

にこ 「あんた、見た目の割に良い所あるじゃないの」

アグモン「ボクは中が綺麗に出来るなら外もするべきだと思うけどね」

穂乃果「あ、あそこにウンチの子がいっぱいいるよ、あそこでやるのかな」


穂乃果が指を指す先には教室程の広さの小屋に集まるスカモン達が見える

小屋を覗くと小さいながらも可愛く飾り付けをされた舞台と観客席

簡易ながら証明設備もあり、μ'sがオープンキャンパスで作った舞台よりもよほどしっかりとしているように見える


にこ 「月や星の飾りが付いてるわね、夜空がイメージなのかしら」

凛  「凛が思っていたよりも本格的で驚きだよ」

スカモン「全部ゴミ山から拾ってきた物を俺等で直して設置してるのさ」

スカモン「飾りつけや照明もおれたちスカモンがやってるんだぜ」

にこ 「へーファンにそこまでやって貰えるなんて、アイドル冥利につきるわね」

穂乃果「私も何だかライブやりたくなってきちゃったよ」

凛  「凛も思いっきり踊りたいにゃー」

にこ 「その為にも早く帰らないとね、このままラブライブに参加出来ないなんて冗談じゃないわ」

スカモン「じゃあ、そろそろ始まるはずだから俺は行くぜ、楽しんでいきなよ」

ブイモン「うん、ありがとう」

アグモン「どんなデジモンが出てくるのかな」

穂乃果「ねぇねぇ、デジモンって可愛いのもいるの?」

アグモン「ボクみたいに可愛いのも沢山いるよ」

にこ 「今までろくなデジモン見て無いから不安しかないわね」

凛  「あ、始まるみたいだよ」

会場の照明が消え始め、先ほどまで騒がしかったスカモン達が徐々に静かになる

会場中が静まり返るとどこからか聞こえるドラムロールが皆の期待を高めていく中

「ドン」というドラムの終わりと同時にスポットライトが舞台へと注がれ、同時に上がる歓声


舞台で光を浴びるのは白い身体に青紫色の大きな耳、額に月の模様とぴょんと伸びた長い毛が特徴的なデジモン



ルナモン「みんなーこんにちはルナー」

〝ルナモン〟
成長期 哺乳類型 データ

月の観測データと融合して生まれた、うさぎのような姿をした哺乳類型デジモン。
大きな耳でどんな遠くの音も聞き分ける事ができる。臆病だが、懐きやすく寂しがり屋である。
必殺技は闇の力が込められた爪で引っかく「ルナクロー」、力を額の触覚に集中し、綺麗な水球を敵に放つ「ティアーシュート」


穂乃果「うわぁーなんか凄く可愛いデジモンが出てきたよ」

凛  「ウサギさんだにゃー」


ブイモン「あれはルナモンだね。確か凄く頭の良いデジモンのはずだよ」

にこ 「アイドルは見た目だけじゃダメなのよ、どんなパフォーマンスを見せてくれるか楽しみだわ」

穂乃果「見て見て、ぴょんぴょん跳ねてるよ」

凛  「かわいいにゃー」





……5分後

穂乃果「凄いね、まだ跳ね回ってるよ」

凛  「元気だにゃー」

にこ 「…………」



……10分後

穂乃果「あ、やっと止まったみたい」

凛  「凛はもう眠くなっちゃったにゃ……」

にこ 「…………」




ルナモン「みんな、ありがとーまた来てルナー」

にこ 「ってそれで終わりかい!!」


突然の大声に会場中の視線がにこへと集まる

ルナモン「あ、アナタは……」

にこ 「ん?何よ」

ルナモン「何でも無いルナ。それよりもアナタ、ルナのライブに文句があるって言うルナ?」

にこ 「文句アリアリよ!!何よ今のライブは、あんたが飛び跳ねてるのを見せただけじゃないの」

ルナモン「何を言っているルナ。ファンのみんなが喜んでくれてるんだからそれで良いルナ」

スカモンズ「そうだそうだー」「ルナたんマジ天使」「うはwwwアンチキタコレwww」


にこ 「あんたにはプロ意識が足りないのよ、供給が少ないからって胡座をかいてただファンの前に姿を見せているだけ」

にこ 「アイドルって言うのはね、自分を磨いてそれを全力で魅せるからこそアイドルなのよ」

にこ 「私はあんたがアイドルだなんて絶対に認めないわ!!」

ルナモン「ふーん……ならアナタはルナよりも人気のアイドルになれるって言うルナ?」

にこ 「あったり前じゃないの」

ルナモン「だったら……」

ルナモン「みんなー!!そこのおバカさんがルナよりももーーっと凄いライブを見せてくれるらしいルナー」

にこ 「なっ!?」

ルナモン「フフン、とーーっても楽しみにしているルナ」


穂乃果「で、結局断れずに明日ライブする事になったと」

ブイモン 「何でこんな事に……」

にこ 「仕方ないじゃない、あんなライブ見せられて我慢なんて出来ないわ。アイドルに対する冒涜よ」

凛  「まさにトラブルメーカーだにゃー」

穂乃果「それで明日はどうするつもりなの?」

アグモン「バックレちゃえば良いんじゃないの?」

にこ 「そんな事出きるわけないでしょ!!」


凛  「んー3人だしグループ曲でも踊る?」

穂乃果「みんな別グループだし明日までに覚えるなんて無理だよー」

にこ 「せっかくだけど舞台に上がるのは私だけよ。一対一じゃないと勝った事にならないし」

にこ 「その代わりと言っちゃなんだけど、みんなには明日までに探して欲しい物があるわ」

ブイモン「探し物?」

にこ 「そう、これだけゴミがあるんだもの、きっとアレも見つかるわ」

にこ 「待ってなさい、宇宙No.1アイドルにこにーのライブをアイツに見せつけてやるんだから」

今夜は以上
考え無しに書いてたら他の話の倍以上の長さになってる。続きはもう少しまとめたら投下します


作者はテイマーズのレオモンさんが大好きです

――――――

ダストキングダムのアイドルに喧嘩を売った人間の話題はすぐに王国中に知れ渡った

もちろん熱狂的なルナモンファンの耳にも入り、ある者は絶叫し、ある者は怒りのあまり壁を殴る

彼等(?)の中で崇拝対象とも言えるルナモンを侮辱されたのだから当然とも言えるだろう

そんな騒ぎの中、ライブ会場には前日に勝るとも劣らない程のスカモン達が集まっていた

新しいアイドル誕生を期待する者も少なからずいるかもしれないが、その場にいるほとんどはルナライバーと呼ばれる熱狂的ルナモンファン

にこにとってこの会場はまさに敵地のど真ん中なのであった



凛  「うわぁ、なんだかお客さんがみんな殺気立ってるよ」

ブイモン「まさにアウェーって感じだね」

にこ 「だだだ、だいじょうぶよ。こっこのにににににこがこのくらいでおお、怖気づくわけないでしょ」

凛  (めちゃくちゃビビッてるにゃ)

ルナモン「フフン、そんな状態でまともにライブなんて出来るルナ?」

にこ 「なっ!アンタどっから湧いて出たのよ」

ルナモン「ここはルナの会場なんだからいるのは当然ルナ。せいぜいみんなの前で無様な姿を晒すと良いルナ」

にこ 「アンタこそちゃんと見てなさいよ、本当のアイドルってものを見せてあげるわ!」

ルナモン「じっくりと裏から見学させてもらうルナ」


穂乃果「にこちゃーん、準備できたよー」

にこ 「穂乃果、あんたちゃんとセッティングしたんでしょうね」

穂乃果「えへへ、裏方のスカモンさんにちゃんとお願いしたから大丈夫だよ」

スカモン「ファイトだよ!!」

にこ (こいつらちょろいわね)

にこ (準備は万端、後はやるだけね)

にこ 「よーし、宇宙No.1アイドル にこにーの最高のパフォーマンス見せてあげるわっ!!」


会場のライトが暗くなると同時ににこは舞台の中央へと向かって走る

舞台の中央に立ちその全身にスポットライトを浴びた彼女は逆光により沢山の影のように見える観客席を見据えた

にこ (一人で舞台に立つのは2年振りかしら)

1年生の時、自分達で作ったスクールアイドル

しかし、メンバーは一人また一人と減り、それに比例するかのように観客も減っていく

そして残ったのは舞台に立つ一人の少女と誰もいない観客席

にこ (この会場全体がにこの敵)

にこ (上等じゃない、誰もいない会場よりも数倍マシよ)

小さく深呼吸をしたにこは満面の笑みを会場の全ての観客へと向けた



にっこにっこにー♪
あなたのハートににこにこにー♪
笑顔届ける矢澤にこにこー♪
にこにーって覚えてラブにこ♪



会場は凍りついた



アグモン「何あれ?」

凛  「盛大にスベったにゃー」

ブイモン「僕も初めて会ったとき言われたけどアレはちょっと……」

穂乃果「ま、まああれがにこちゃんのキャラクターだから」



ルナモン「す、凄いルナ」

ルナモン「でもまだ自己紹介だけ、これからが本番ルナ」



にこ (うーん、反応が良くないわね。デジモンにはにこの可愛さが理解出来ないのかしら)

にこ (だったら……)

にこ 「今日はぁ~にこのためにぃ~集まってくれてぇ~ありがとうにこ♪」

にこ 「今からにこがぁ~みぃ~んなに本当のアイドルを見せてあげるから~楽しみにして欲しいにこ~♪」

穂乃果「あ、にこちゃん。それは……」

凛  「完全に地雷だよね……」

スカモン's「………………」

スカモン's「ふざけんなー!!」「何がにこにーだ寒いんだよ!」「さっさとルナちゃんだせー!」

にこ 「にこぉ!?」



アグモン「どうなってるの?」

穂乃果「うーん、自分が好きなものが偽者だって言われたら誰でも怒るよね」

アグモン「なるほど、確かに大好きな肉だと思って食べたら実は肉じゃなくて魚だったらボクも怒るよ」

穂乃果「あーうん、もうそれでいいや」



にこ 「み、みんなぁ~ちょっと落ち着いて欲しいにこぉ~♪」

スカモン's「うるせぇー引っ込めー!!」ヒュンッ!!



ブイモン「あ、スカモンが舞台に何か投げてきてるよ」

穂乃果「あれって………」

凛  「ウンチだにゃー」



にこ 「ちょっ!うわっ!!ぶ、舞台にモノは投げ込まないでくださいにこぉ~」



ブイモン「大変だ、早く助けないと」

穂乃果「待って、にこちゃんはこんな事でライブを止めたりしないよ」

凛  「凛知ってるよ、にこちゃんはどんな逆境でもきっと乗り越えてみせるって」



にこ 「みんなぁ~止めるにこぉ~……ぶっ!!」



アグモン「あっ、当たった」

穂&凛(やっぱりダメかも知れない)


ルナモン「プププーッ、これじゃライブどころじゃ無いルナね。やっぱりナンバーワンアイドルはルナルナー」



にこ 「…………」



ブイモン「どうしよう、今更だけど助ける?」

穂乃果「う、うん。そうしようか」

凛  「待って、にこちゃんが何か言いたそうにこっちを見てるよ」

アグモン「頭にウンチ乗せて怒ってるんじゃないの?」

穂乃果「もしかして……スカモンさん、アレをお願いします!!」

スカモン「おう、これを押せば良いんだよな」ポチッ



ニコプリ ニコニコ ニコプリ イェーイ ニコニコ

ブイモン「これって……音楽?」

穂乃果「私のプレイヤーに入ってたにこちゃんの曲を流してるんだよ」

凛  「昨日、ゴミ山からスピーカーを探させてたのはこの為だったんだね」



スカモン's「何か聞こえてきたぞ」「なんだなんだ?」「にこぷり?」



ルナモン「な、何が始まるルナ!?」



にこ (見てなさい、あんた達全員に本当のアイドルっていうのを見せてあげるわ)


《にこぷり 女子道》

ニコプリ ニコニコ ニコプリ 

にこ 「いぇーい ぷーりてぃーがーる!!」

~♪

にこ「キメがーおきびしく追求― ありったけの情熱を捧げてー♪」

にこ「たどりついた\らぶりー/ 完成されたほほえみ♪」

にこ「にこ にこ うん 絶対負けない♪」



アグモン「凄い、これが生の歌なんだね」

ブイモン「僕なんて歌を聞いたのも初めてだよ」

穂乃果「えっ?歌じたいを聞いた事が無かったの?」

ブイモン「歌で攻撃するデジモンはいるって聞いた事はあるけど聞くのはこれが初めてだよ」

凛  「凛はみんなが初めて聞いたのがこの歌っていうのが何とも言えない気持ちになるよ」


アグモン「でも前に機械から穂乃果の歌を聴いた時と同じくらい、ううん、それ以上に力が湧いてくる気がする」



ルナモン「これ何ルナ。これ、こんなの……ずるいルナ……」



にこ 「ちやほーやされたいだけじゃー 志し低すぎるね はんたーい♪」

にこ (ルナモン、聴いてるんでしょうね。これはあんたの為の歌でもあるのよ)

にこ 「ぴょんぴょこぴょんぴょんかーわいいーっ 髪の毛がはねてぴょんぴょこー♪」

にこ 「痛さもほんきー 悪いか本気さー それがにこの『女子道』♪」

にこ (可愛くて人気もあるアンタが惰性でアイドルするなんて絶対に許さないんだから)



ルナモン「これがアイドル……」


スカモン's「うぉーーーにこにー!!」「Hi Hi Hi Hi Hi Hi」「心がぴょんぴょんするんじゃぁ」



穂乃果 「さっきまであんなに野次ってたスカモンがすっかりにこちゃんファンになってる」

凛  「熱い手のひら返しだにゃー」

アグモン「ぴょんぴょこぴょんぴょん」

ブイモン「ぴょんぴょこぴょんぴょん」


にこ (これよ、これこそがアイドルなのよ!!)



にこが会場中のスカモンから歓声を浴びる中、ステージの袖からルナモンが現れた

ルナモン「アナタ!!」

にこ 「アンタ……どう?本当のアイドルがどういうものかわかったかしら?」

ルナモン「アナタ、名前は何だったルナ?」

にこ 「そういえばちゃんと名乗って無かったわね。矢澤にこよ」

ルナモン「矢澤にこ……様」

にこ 「さま?」

突然走り出したルナモンがにこへと飛びつくと同時ににこの目の前には小さな光が現れた

光はすぐに消えてしまったがそこには小さな青い機械が残っている



にこ 「ア、アンタまさかっ!?」

ルナモン「ルナは矢澤にこ様の大ファンになったルナー」

ルナモン「だから矢澤にこ様はルナのパートナーになるルナ」

にこ 「まさかアンタが私のパートナーだなんて……交代って出来ないのかしら」

ルナモン「パートナーは一生に一人だけルナ、ルナのパートナーになれて光栄に思って欲しいルナ」


にこ 「ファンになったって言う割にはずいぶんと上から目線な言い方ね」

ルナモン「そんな事は無いルナ、ルナは矢澤にこ様にずっと付いていくルナ」

にこ 「アンタね、私に付いて来るって事はここのアイドルを辞めなきゃなんないのよ」

ルナモン「じゃあ、辞めるルナ。みんなールナは普通のデジモンに戻るルナー」

にこ 「ちょ、軽っ!本当にそんなんでいいわけ?」



スカモン's「うおーっ!ルナたーん、にこにー」「淋しいけど2人共頑張ってー」「ルナにここそ至高」

ルナモン「ほら、ファンのみんなもこう言ってるルナ」

にこ 「まったく、私がアンタに伝えたかったのはねー……あーーもう良いわよ。こっちも助かるし、付いて来なさい」

ルナモン「わーい、これからはずっと矢澤にこ様と一緒ルナー」

にこ 「あと、そのフルネームと様付けは止めなさい。にこにーで良いわ」

ルナモン「わかったルナ、にこにー」

とりあえずここまで
夜までにこの話が書き終わると良いな

アグモン「何だかよくわからないけど話がまとまったみたいだよ」

穂乃果「これで3人ともパートナーが揃ったね」

凛  「どうでも良いけど、にこちゃん頭にウンチ乗っけたままだにゃ」

ブイモン「待って、何か音が聞こえるような……」



ドスーン ドスーン

にこ 「な、何?何の音?」

ルナモン「あー面倒なのが来ちゃったルナ」


ダストキングダムの奥からやって来たのはスカモン、しかしその大きさは他のスカモンの数倍

照明の為に少し高めに作られている天井にも届く程の巨体を持つデジモンだった

スカモン大王「ルナたーん、行かないでーー!!」


〝スカモン大王〟
完全体 突然変異型 ウイルス

スカモンの亜種でスカモン達の住処とされる“ダストキングダム”の王。
頭に機械をつけており、これで知能を補っているとされるが真偽不明。
必殺技は『ウンチ』

凛  「ウンチの王様がきたー」

穂乃果「完全体?成熟期とは違うの?」

ブイモン「デジモンの世代には幼年期、成長期、成熟期、完全体とその成長の順番によって強くなるんだよ」

穂乃果「じゃあ、完全体って事は……」

アグモン「今まで会ったデジモンの中で一番強いって事だね」

凛  「最強のウンチだにゃー……」


にこ 「もう、デジモンって何でこんなデザインの奴ばっかりなのよ」

スカモン大王「ルナたん、アイドル辞める何て嘘だべ。おでのアイドルはルナたんだけなんだべ」

ルナモン「ルナはもうにこにーと一緒に行くって決めたルナ、邪魔しないで欲しいルナ」

スカモン大王「そんなぁ、おで今までずっとルナたんのファンを続けてきたのに……」

スカモン大王「おめぇか、おめぇのせいでルナたんが!!」

逆上したスカモン大王がにこへと手を伸ばす

にこ 「にこっ!?」

ルナモン「『ルナクロー!!』」


スカモン大王の手がにこへと届く前にルナモンの爪がその手を防いだ


ルナモン「にこにーに手は出させないルナ」

スカモン大王「ルナたんに引掻かれるだなんて……おで、おで、もう全部壊しておでも死ぬだーー!!」


スカモン大王はまるで子供が駄々をこねるように暴れ始める

だがその威力は子供のものとは比較にならず、床、照明、スピーカーと次々に会場を破壊していく

スカモン's「大王様が暴れだしたぞー」「わー逃げろー」「ダレカタスケテー」

にこ 「ちょっとどうにかしなさいよ。アンタのファンなんでしょ」

ルナモン「それは無理ルナ、死んでしまうルナ」

にこ 「もうっ!とにかくここから逃げるわよ」

ルナモン「賛成ルナ」

スカモン大王「逃がさんだべー」


舞台袖へと逃げようとするにこ達に気付きスカモン大王は再び手を伸ばした

逃げる隙を衝かれたにこ達は2人揃って捕まってしまう

にこ 「もう!私こんな役ばっかりじゃないのー!!」

穂乃果「大変!にこちゃん達が!!」

アグモン「何かデジャヴを感じるね」

ブイモン「凛、進化だ!今なら進化できそうな気がする」

凛  「よーし、ブイモン進化だー!!」

穂乃果「アグモンも進化してにこちゃんを助けてあげて」

アグモン「わかった、行くよ」


2人のデジヴァイスが光の帯を放ちデジモン達に注がれていく


『ブイモン進化!――エクスブイモン!!』

『アグモン進化!――グレイモン!!』

エクスブイモン「スカモン大王、2人を放せ!」

スカモン大王「何だおめぇは、おでの邪魔すんじゃねぇべ」


スカモン大王は空いている手でエクスブイモンに向かって『ウンチ』を投げつけるが

エクスブイモンは背中の翼を羽ばたかせながら空中へと回避しそのまま攻撃へと転じる


エクスブイモン「大人しく放さないならこれで『エクスレイザー』」


エクスブイモンの放ったエネルギー波はスカモン大王に直撃して爆発を起こした

だが煙の中から現れたスカモン大王はダメージを受けた様子も無く再度『ウンチ』を投げ付ける

エクスブイモン「しまった!」


不意を突かれ動けないエクスブイモンに『ウンチ』が迫る


グレイモン「『メガフレイム!!』」


グレイモンの吐いた火球によってエクスブイモンへと向かう『ウンチ』は間一髪のところで相殺された


グレイモン「大丈夫か?」

エクスブイモン「あぁ、助かった。あんな姿でも流石は完全体、手強い」

グレイモン「今度は一緒に行くぞ」


地上のグレイモンと空中のエクスブイモン。2体のデジモンが同時に必殺技を繰り出す

業炎の火球と閃光のエネルギー波の同時攻撃に完全体であるスカモン大王にも流石にダメージがあったのか、にことルナモンを手放した

それでも倒すまでには至らず、スカモン大王は自由になった両手でグレイモンとエクスブイモンを殴り飛ばす

グレイモンの巨体が会場の壁へと吹き飛ばされ、エクスブイモンは地面へと叩きつけられる

そのまま意識を失った2体は成長期であるアグモンとブイモンへと戻ってしまった

成熟期同士の戦いでは圧倒的な力で勝利した2体のデジモンだったが、それがたった1発のパンチで倒されてしまう

完全体と成熟期ではそれ程大きな力の差があった

穂乃果「アグモン!!」

凛  「ブイモン!!」

にこ 「助かった……わけじゃないみたいね」

ルナモン「早く逃げるルナ、成長期じゃ完全体には勝てないルナ」

にこ 「あの子達を置いて逃げられるわけないでしょ。アンタも私のパートナーなら戦いなさいよ」

ルナモン「無理ルナ、あんなのと戦ったら死んじゃうルナ」

にこ 「どうせこの状況じゃ逃げられっこ無いわ。それに別に倒す必要は無いのよ」

にこ 「あいつを静める事さえ出来れば良いの、ファンの暴走を嗜めるのもアイドルの仕事よ」

ルナモン「そんな事言ったって無理ルナー」

にこ 「大丈夫出来るわよ、アンタなら、ルナモンなら出来る。そんな気がするの」

ルナモン「だったら……だったらさっきのもう一度聞かせて欲しいルナ」

にこ 「さっきのってにこの歌のこと?」

ルナモン「そうルナ。あれを聞いてれば何とか出来る気がするルナ」

にこ 「しょうがないわねぇ……その代わりちゃんと結果を出しなさいよ」


そう言い終えるとにこは一人で舞台の袖にいる穂乃果達の元へと向かって走り出した

ルナモン「うぅ~逃げたいけど仕方ないルナ『「ロップイヤーリップル』」


ルナモンが両耳をクルクルと回転させると沢山のシャボン玉が現れていく

増え続けるシャボンは暴れ続けるスカモン大王の周囲を囲み、徐々に視界を奪っていった

本来はこのままシャボンの渦で攻撃する技であるが成長期であるルナモンでは完全体であるスカモン大王にたいしたダメージを与える事は出来ない

このシャボンはあくまで煙幕の代わりであり暴走するスカモン大王に自分の存在を伝える為の手段であった

スカモン大王「この泡は……ルナたんの技だべ」

ルナモン「アナタいい加減にしなさいよ、良い年した完全体がアイドルが辞めるってだけで暴れるなんてどうかしてるわよ」

スカモン大王「そんなぁ、おではルナたんの事が大好きで辞めて欲しく無いだけだべ」

ルナモン「ルナの事が大好きならルナの新しい門出も応援するルナ」

スカモン大王「そうだ、どうせ辞めるならルナたんがおでと結婚すれば良いだべ。ルナたん女王として一緒に暮らしていけばみんな幸せだべ」

ルナモン「こいつダメルナ、まったく話が通じないルナ」


全速力で舞台の袖へと向かったにこは戦闘を見守っていた穂乃果達と合流する


にこ 「穂乃果、凛。もう一曲歌うから準備して頂戴」

穂乃果「え?歌うって今から!?」

にこ 「そうよ、にこの歌を求めてるファンがいるんだから、私はどんな状態でも歌うわよ」

穂乃果「でも、さっきのでスピーカーが壊されちゃってるし、スタッフのスカモンも逃げちゃったよ」

にこ 「うっ、スピーカー無しって事はマイクもダメだしBGMも流せないじゃないの」

凛  「メガホンなら昨日見つけたのがあるよ」

にこ 「メガホンって……無いよりはマシね。貸して頂戴」


にこはメガホンを受け取ると再び会場へと走り出した


スカモン大王「ルナたーん、どこだべー?一緒に結婚式あげるだべー」

ルナモン(冗談じゃないルナ、捕まってたまるもんかルナ)


話の噛み合わないスカモン大王の説得は不可能だろう

ルナモンはシャボンに隠れつつその場を離れることにした


ルナモン(予定変更ルナ、きっと時間が解決してくれるルナ)

スカモン大王「うーん、シャボンが邪魔で見えないべ。だったら……」


スカモン大王は口の中にシャボンが入るのも気にせずスーッと大きく息を吸い込みそのまま吐き出した

スカモン大王の周り覆っていたシャボンは全て吹き飛び、逃げるルナモンを隠していた地表のシャボンも宙に舞い上がる

身を隠す術を無くしたルナモンはそのまま呆気無くスカモン大王に捕まってしまう


スカモン大王「ルナたーん、見つけただーもう逃がさないべ」

ルナモン「いやー離すルナー、ルナはにこにーと一緒に行くんだルナ」

ルナモン「ルナのパートナーはお前じゃないルナ、にこにーだけなんだルナー」

にこ 「さっきまであんなに生意気言ってたのにずいぶんと可愛いこと言うようになったじゃない」

ルナモン「にこにー!!」

スカモン大王「おめぇ、性懲りも無くまた出てきたべか」

にこ 「仕方ないわねぇ、そこのでかいのにも本当のアイドルってもんを見せてあげるわ」

にこは左手にメガホンを構えつつ右手を天へと向けて大きく息を吸い込む

にこ 「いくわよー!!《まほうつかいはじめました》」

にこ 「Hi Hi Hi にっこり~してーみてよー♪」

にこ 「Hi Hi Hi にっこり~って大事だーもん♪」

にこ 「悩むよりー焦るよりーのんびりといきましょ~ にっこにこのまいにち~♪」

ルナモン「にこにーやっぱり素敵ルナ」

スカモン大王「な、なんだべこれ……頭が痛い……うぅ……や、やめろー!!」


にこの歌を聴き急に頭を押さえながら苦しみだすスカモン大王だが異常を感じながらもにこは歌い続ける


スカモン大王「やめろって……言ってるんだべっ!!」


スカモン大王はにこへと目掛けて拳を振り下ろすが錯乱している為かその拳はにこの2メートル程横の舞台を破壊していた

直接当たらなかったとはいえ、その衝撃と数メートルのズレで命を落としていたかもしれない恐怖でにこの歌は止まってしまう

目的であった歌は止まったがスカモン大王の拳は再度にこへと向けられる

にこは急いで逃げなければと考えるがその足は意思とは反して震えたまま動かない


にこ 「に、にこぉ……」

ルナモン「にこにー!!」


それはいつかの凛とブイモンの時と同じだった

パートナーの危機、それはデジヴァイスが起動する為の一つのトリガーである

出会って間もないにことルナモンも例外では無くデジヴァイスは輝きを放つ

2人は本能的にわかっているのかもしれない

パートナーを護らなければ無い事を その為の力をパートナーに与える事を




『ルナモン進化!――レキスモン!!』


〝レキスモン〟
成熟期 データ 獣人型

驚異的なジャンプ力を見に付け、すばやい動きで敵を翻弄する獣人型デジモン。
月の満ち欠けのように、つかみどころのない性格をしているが、そのたたずまいはどこか神秘的。
必殺技は背中の突起から美しい氷の矢を引き抜いてはなつ『ティアーアロー』。



ルナモンはレキスモンへと進化してスカモン大王の手から抜け出してそのまま蹴りを繰り出した

突然の攻撃にスカモン大王がバランスを崩している隙にレキスモンはにこを抱きかかえて距離を取る


レキスモン「にこにー大丈夫?」

にこ 「た、助かったわ、ルナモンも進化出来たのね」

レキスモン「今はレキスモンって言うのよ」


その姿はルナモンの面影を残しつつも身体はよりしなやかに戦闘向きになっており、顔には仮面、両手にはグローブを装着していた


にこ 「随分強そうになったんじゃないの?」

レキスモン「それでもアイツには勝てないわ」

にこ 「じゃあどうするって言うのよ、もう逃げるしかないの?」

レキスモン「にこにーが言ったじゃない、静める事が出来れば良いって」


自分に任せろという笑みを見せるとレキスモンは自慢の跳躍力を活かして一気にスカモン大王へと近づいて行く


レキスモン「もう止めなさい、アナタ元々変なデジモンだったけれど見境無く暴れるような性格じゃなかったでしょ」

スカモン大王「フーッ、フーッ、フーッ、フーッ」

レキスモン「どうやらダメみたいね、だったら……」


レキスモンは両手のグローブにある三日月模様から頭ほどの大きさの泡を出してスカモン大王へと当てる

とくにダメージを与えている様子も無いが暴れるスカモン大王の攻撃を回避しつつ何度も何度も繰り返し当てていった

十数発は当てただろうか、徐々に攻撃の速度が落ちていくスカモン大王に対して更に泡を当てていくとついにスカモン大王の攻撃が止まった

大きな鼻提灯を作り出すスカモン大王

それを確認するとレキスモンはにこの元へと跳び戻った

にこ 「ちょっと一体どうやったのよ」

レキスモン「このムーングローブから出る泡は『ムーンナイトボム』って言って相手を眠らせる効果があるのよ」

レキスモン「流石に完全体相手じゃ時間かかったけど、相手が正気じゃなかったから攻撃が単調で助かったわ」

にこ 「アンタもしかしてめちゃくちゃ強いんじゃないの?」

レキスモン「当たり前じゃない、だってにこにーのパートナーなんだからね」


そう言って笑うレキスモンの姿を見て緊張が解けたのかにこはその場に尻餅をつく

どうやらすぐには自分で立てそうには無いらしい

仕方なくレキスモンに手を伸ばした


にこ 「今のあんた、今までで一番良い笑顔してるわよ」



――――――

凛  「いやー昨日は大変だったにゃ」

にこ 「そういえばアンタ達、あの時どこ行ってたのよ」

穂乃果「アグモンとブイモンを助けて会場から避難してたよ」

にこ 「ちょっと!私が頑張ってる時に逃げてたの?」

凛  「むしろ立ち向かうにこちゃんの方がおかしいんだよ」

ルナモン「それには同意だルナ」

にこ 「あ、あんたまで……」

ブイモン「まあまあ、でもみんな無事で良かったよ」

アグモン「いやー本気で死ぬかと思ったけどね」

ブイモン「ルナモン達はあの後スカモン大王に会いに行ったんだよね?」

ルナモン「落ち着いているようだったしお世話にもなったから一応挨拶はしてきたルナ」


~~~~~~~~~

スカモン大王「本当に申し訳無い事をしたべ、許して欲しいべ」

ルナモン「それは何度も聞いたルナ、一体何であんな事したルナ」

スカモン大王「確か選ばれし子供達を捕まえろって連絡を受けてたら意識が朦朧としてきて…」

スカモン大王「その時にルナタンがアイドル辞めるって連絡を聞いて理性が保てなくなってしまったんだべ」

にこ 「確かブイモンも言ってたけど選ばれし子供って私達の事なのよね?捕まえろってどういう事よ?」

スカモン大王「理由はわかんねぇべがAって奴がそう言ってただ」

~~~~~~~~~~



穂乃果「そのAって人が私達を探してるの?」

にこ 「どうやらそうみたいね」

凛  「A、A……絢瀬絵里?」

穂乃果「でも絵里ちゃんはあの時屋上にいなかったよ」

にこ 「そもそも絵里がデジモンに私達を捕まえろって言うのもおかしいじゃないの」

ルナモン「スカモン大王も催眠術みたいなものにかかってたみたいだし、Aはデジモンの可能性もあるルナ」

ブイモン「どちらにしても今の段階じゃわかりそうも無いね」


アグモン「解らないものを考えても仕方ないし、とりあえず次の目的地を決めようか」

にこ 「んーそうね。このゴミの山がどこから来ているのか解ればもしかしたらそこに人間がいるんじゃないかしら」

ルナモン「このゴミはファクトリアタウンから流れているはずだけど人間がいるって言うのは聞いた事が無いルナ」

穂乃果「でも他に当ても無いし、とりあえずそのファクトリアタウンって場所に行ってみようよ」

ルナモン「ファクトリアタウンに行くならギアサバンナの端の岬から海を渡るしかないルナ」

凛  「とにかく行ってみるにゃー早くかよちんに会えるといいなぁ~」

こうして3人と3匹になった穂乃果達一行は次の目的地であるファクトリアタウンを目指して旅を続けるのでした

以上、長い上にグダグダでした。文章上手く書けるようになりたい
そして書き溜めが無くなり続きは明日から書くので少し空きます

穂乃組か海未組かのぞえりかAどれにしようか

ダストキングダムを離れた穂乃果達はファクトリアタウンへと向かう為、ルナモンの案内でギアサバンナの端にある岬に到着していた


にこ 「海まで来たけどここからどうするのよ?」

ルナモン「少し待っていればわかるルナ」

穂乃果「船でも来るのかな?」

凛  「人がいないのに船があるの?」

にこ 「湖に電車があったし、ゴミの山に家電が捨ててあったのよ。船どころか潜水艦が出てきても驚かないわよ」

ルナモン「そろそろ時間のはずルナ」

再び海の方を見るが辺りにはただ真っ青な海が広がっているだけ

にこが文句でも言ってやろうかと思っていると海から何かの泣き声が聞こえ海面からは大きな噴水が立ち昇る

皆が噴水へと目を向けると目の前の海は突然迫り上がり、今まで海だったそこはあっという間に山へと変貌していた


ルナモン「時間通りルナ、相変わらず几帳面な奴ルナ」


山へと話しかけるルナモンを見てその山が大きなデジモンである事に気付いた

いったい何メートルあるのだろうか、世界最大の生き物と呼ばれるシロナガスクジラは30メートル程と言われているがそれ以上にも見える


ホエーモン「ルナモンさんでしたか、貴方がダストキングダムから出られるとは珍しい」

〝ホエーモン〟
成熟期 ワクチン 水棲哺乳類型

「ネットの海」の深海に住む水棲哺乳類型デジモン。
その容量はデジタルワールド最大級の大きさで、並のコンピューターでは解析不可能。
必殺技は噴射口からもの凄い勢いで、水を吹きだす『ジェットアロー』



ルナモン「今はこの人達と旅に出ているルナ。それでファクトリアルタウンへと連れて行って欲しいルナ」

ホエーモン「お安い御用です、それが私の仕事ですから。さあ乗って下さい」


そう言うとホエーモンは大きな口を開いた

乗れ、とはつまりそう言う事なのだろう

ルナモン「さっさと乗るルナ」

ブイモン「わーホエーモンに乗るなんて初めてだよ」


まるではしゃぐ子供のように嬉々としてデジモン達が口の中へと入るのを見て少し不安そうな表情をしつつ穂乃果と凛も後に続く

最後に残されたにこも観念するかのようにホエーモンへと近づく


にこ 「アンタ、消化したりしないでしょうね」


口を開いたままのホエーモンは返事の代わりと言うようにプシューっと背から潮を噴いた

にこはその肯定とも否定とも分からない返事に溜め息をつきつつも口の中へと入って行った

ホエーモンの体内は思っていた以上に快適だった

少しジメジメはしているがホエーモンが泳いでいる間も大きな揺れは無い

穂乃果は地面(?)に座り持っていたカバンから水筒を取り出して少しだけ水を飲む

少し前の穂乃果ならこの場に座るのも躊躇ったかもしれないが今は休める時に出来るだけ休んでおきたいという気持ちの方が強かった

にこも同じ気持ちなのか穂乃果の横に並んで座る


にこ 「私にも頂戴」

穂乃果「あ、うんどうぞ」


コップに水を入れて手渡すとにこは少しだけ口に含んだ

間接キスだなと思いつつもにこが気にしていない様子なので口には出すのはやめる

このカバンも水筒もスカモン達に出発前に貰った物だ

スカモン達はこの他にも色々と旅に使えそうな物を用意してくれていた

全てゴミの山で見つけた物のようだが綺麗に洗ってあったし何も持っていない穂乃果達にはとてもありがたかった

逆に言えば今まで何の用意も無く行き当たりばったりで行動してきたのだ

海未ちゃんが一緒だったら怒られちゃいそうだと苦笑いが漏れる


にこ 「凛ってばほんと元気ね」


凛はデジモン達と一緒に探検と称してホエーモンの体内を探索していた

パッと見は園児の世話をするお姉さんにも見えるが実際は全員やんちゃな子供と言った感じだろうか

視線に気付いたのか一番大きな子供が穂乃果達に向かって凄い勢いで走ってくる


凛  「2人ばっかりずるいにゃー、凛にもお水頂戴」

にこ 「しょーがないわねぇ、はい」

凛  「ありがとー」


凛はにこからコップを受け取ると一気に飲み干した後に「あっ」と何かに気付いたように声をあげた


凛  「凛、にこちゃんと間接キッスしちゃったにゃ」

にこ 「なっ!」


照れくさそうに言う凛の言葉ににこは無自覚だった行動を思い出して凛と穂乃果の顔を交互に確認する

穂乃果は愛想笑いで誤魔化そうとしたが効果は無かったようだ


にこ 「おっ、おっ、女の子同士だからノーカンよ。ノーカンッ!!」


顔を真っ赤にして叫ぶにこをデジモン不達は思議そうに見つめていた

ファクトリアタウン、そこはタウンと言われているものの居住区があるわけでは無くまさに工場そのものである

ところどころから機械の駆動音が聞こえ、鉄やオイルの臭いが漂っている

都会に住む女子高生である穂乃果達にとっては今まで見たデジタルワールドとは別の意味で異世界

まるでSFの世界に紛れ込んだような感覚であった


穂乃果「ここがファクトリアルタウン?」

凛  「見た事無い機械がいっぱいだよ」

アグモン「とりあえず中に入って人がいないか探してみようか」

にこ 「ちょっとした工場見学気分ね」


穂乃果「うーん、どこも機械が自動で動いているみたいだね」

アグモン「ここで作っている物を保管する場所だったら誰かいるかもしれないよ」

凛  「よーし、じゃあ凛がパパッとこのコンベアの先を見てくるね」

ブイモン「あぁ、凛ーちょっと待ってよー」

にこ 「こら、凛!1人で先に行かないの!!」

ルナモン「にこにー追いかけるルナー」

穂乃果「ちょっとー穂乃果を置いて行かないでよーってあれ?」

アグモン「穂乃果どうしたの?」

穂乃果「今向こうの先に人影が見えたような」

アグモン「本当?でもみんな先に行っちゃったよ」

穂乃果「うーん、今は他に人がいるのか確認しなきゃ、アグモン着いて来て」

アグモン「わかったよ、急ごう」


穂乃果「あっ、いたよ!でもあれは……ロボット?」

アグモン「あれはガードロモンだね」


〝ガードロモン〟
成熟期 マシーン型 ウイルス 

鉄壁の防御力を持つマシーン型のデジモン。
コンピュータネットワークの防御壁を守っており、防御壁へ不法に進入してくるものを撃退する
必殺技は敵を世界の果てまで追い詰めて破壊してしまう『ディストラクショングレネード』



穂乃果「よし、ちょっと他に人がいないか聞いて来るよ」

アグモン「あっ、ちょっと待って」

穂乃果「すいませーん、ちょっとお聞きしたいんですが」

ガードロモン「ピピッ シンニュウシャハッケン シンニュウシャハッケン」

穂乃果「あ、あれぇ~?」

ガードロモン「タダチニ ハイジョスル『ディストラクショングレネード』」

穂乃果「嘘ッ!!キャーー!!」



凛  「な、何これー?」

ブイモン「一度組み立てた機械をまた分解して更にまた組み立ててるね」

凛  「こんなんじゃいつまでたっても終わらないよー」

にこ 「はぁはぁ、やっと追いついた」

ルナモン「にこにーは体力無いルナねー」

にこ 「うるさいわねー、それにしても何なのよこの無駄な工場は」

ルナモン「きっとどこかにこの工場を管理してる場所があるルナ。そこなら誰かいるかもしれないルナ」

にこ 「管制室ってやつね。期待薄だけどとりあえず行ってみましょうか」


ウィーンウィーンウィーン シンニュウシャヲハッケンシマシタ タダチニハイジョ シテクダサイ


凛  「なんにゃなんにゃ?」

ブイモン「もしかして勝手に入ったらまずかったのかな?」

にこ 「とにかく逃げましょ。みんな急ぐわよ」

凛  「あれ?穂乃果ちゃん達は?」

にこ 「えっ!?嘘、いつからいないのよ」

ルナモン「凛が走った時から着いて来て無かったルナ」

にこ 「何でアンタは知ってて言わないのよー」ムニー

ルナモン「痛いルナ、ほっぺ引っ張らないでルナ」

ガシャンガシャンガシャンガシャン


凛  「な、何かいっぱい来たにゃー」

ブイモン「あれはガードロモンだ。マズイい、攻撃してくるよ」

ガードロモン's『『『『ディストラクショングレネード』』』』

凛  「ブイモン!!」

ブイモン「任せて!」



『ブイモン進化!――エクスブイモン!!』


エクスブイモン「『エクスレイザー!!』」


エクスブイモンの胸の十字から出る光線がガードロモンの攻撃を全て撃ち落した

しかしガードロモンは更に数を増やし気付けば十数体ものガードロモンが隊列を組んでいる


エクスブイモン「くっこのままじゃ……」

にこ 「敵はどんどん増えてるわね、ルナモンが進化してもジリ貧になるだけか」

にこ 「とりあえずこの場は逃げるわよ。ルナモン、泡出して、泡」

ルナモン「泡って……にこにーの頼みなら仕方ないルナ『ロップイヤーリップル』」


ルナモンの耳から出る大量のシャボンが渦のようになりガードロモン達を包み込んだ

突然現れたシャボンの壁に動揺してガードロモン達の攻撃の手が止まる

その隙にとエクスブイモンは2人と1匹を抱えてその場を飛び去った

穂乃果「キャーー!!」

アグモン「穂乃果!!」


急ぎ飛び出すアグモンだったがガードロモンは穂乃果のすぐ目の前

例え進化してもその距離の差を埋める事は出来ないだろう


アグモン「くっ、ダメだ間に合わない……」


その時だった

アグモンの更に後ろから弾丸のように何かが横切り、そのまま攻撃態勢だったガードロモンを吹き飛ばす

その弾丸は成長期のアグモンよりも更に小さく、しかしその拳に着けた赤いグローブは強者の風格を醸し出している


アグモン「君は!?」

マメモン「危ないところだったな」


〝マメモン〟
完全体 突然変異種 データ

過酷な環境の元で進化した突然変異型デジモン。
見た目の可愛さとは裏腹に恐るべき破壊力を秘めており、その見た目と強さから「スマイリーボマー」とも呼ばれる
必殺技は強力な爆弾である拳を飛ばす『スマイリーボム』

穂乃果「あ、ありがとう」

マメモン「無事なら良かった。すまないがボクは急いで管制室に行かなきゃならないから失礼するよ」

マメモン「アグモン君、今度はちゃんとパートナーを守るんだよ、それじゃ」


そう言い残すとマメモンはまた弾丸のようなスピードでその場を去っていった


穂乃果「何か可愛いけどカッコイイデジモンだったね」

アグモン「うん……ごめんね、ボクが助けられなくて」

穂乃果「あれは私が1人で先走っちゃったからでアグモンのせいじゃないよ」

アグモン「でも、ボクはパートナーなのに何も出来なくて……」

穂乃果「ありがとうアグモン、今度は穂乃果の事ちゃんと守ってね」

アグモン「うん……」

今晩はここまで

凛  「あー穂乃果ちゃん達いたー」

穂乃果「あっ、みんな。良かった~」

にこ 「もう、勝手に居なくなって何やってるのよ」

穂乃果「えへへ、面目無い」

エクスブイモン「そんな事より早く移動しないとまたガードロモン達がやってくるよ」

にこ 「管制室の場所がわかれば良かったんだけど、大人しく外に出た方が良いかしら」

穂乃果「えっ?管制室ってさっき言ってた……」

凛  「穂乃果ちゃん場所知ってるの!?」

穂乃果「た、たぶんだけどあっちの方かな」

にこ 「でかしたわ!急いで向かいましょう」

ルナモン「あちこちでガードロモンが倒されてるルナ」

エクスブイモン「俺達意外にも侵入者がいるって事か」

穂乃果「たぶんさっきの小さなデジモンが倒してるんだ」

にこ 「小さなデジモン?」

アグモン「マメモンってデジモンがボクらより先に管制室に向かったんだよ」

にこ 「管制室に?……何が目的なのかしら」

凛  「あっ、あの部屋かな?」

穂乃果「凄い、部屋の前にガードロモンの山が」

にこ 「一体でどんだけ倒してるっていうのよ」

にこ 「よし、部屋に入るわよ」

ルナモン「気をつけて、中で2体のデジモンが戦ってるルナ」

にこ 「何でそんな事わかるのよ?」

ルナモン「ルナモンのロップイヤーは僅かな音でも聞き分けるルナ」

にこ 「アンタって何気に優秀よね」

エクスブイモン「俺が先に入って様子を見るよ」


ウィーンという音と共に管制室の扉は開き、それと同時に激しい爆風が部屋の中から吹き抜ける

部屋の中では2体の小さなデジモンがその身体の大きさにそぐわない威力の爆発の中で戦っていた

その内の一体は先ほど穂乃果を助けたマメモン、そしてもう一体は……

〝ギロモン〟
完全体 機雷型 ワクチン


ふわふわと空中に浮きながら、コンピュータネットワーク内をパトロールしているデジモン。
別名“ネットキーパー”とも呼ばれ、違法にネットワークに進入しようとするデジモンを撃退する。
必殺技は超強力な手投げ爆弾『デッドリーボム』。



穂乃果「凄い爆発、中がよく見えないよ」

ルナモン「マメモンとギロモン、完全体同士の対決ルナ」

にこ 「ちょっとシャレになって無いわね、これじゃ近づけないじゃない」

ギロモン「ギギギッ」

エクスブイモン「しまった、こっちに気付かれた」

ギロモン「ギギギ『デッドリーボム』」

エクスブイモン「『エクスレイザー!!』」

ギロモンの投げた爆弾を破壊して何とか直撃は避けるがその爆風で壁へと叩きつけられてしまう

今のダメージと長時間の進化による疲労によってエクスブイモンはブイモンへと戻ってしまった


ブイモン「くそう、もう力が……」

凛  「ブイモン!大丈夫!?」

ギロモン「ギギギギギッ」

アグモン「マズイ、また攻撃してくるよ」

にこ 「ルナモン、助けて!!」

ルナモン「間に合わないルナ!」

マメモン「『スマイリーボム』」


いつの間にか扉の前へと回り込んだマメモンの攻撃によりギロモンの攻撃は相殺される

周囲は爆煙に包まれいてハッキリとは見えないがどうやら全員無事のようである


マメモン「君達、大丈夫か?」

凛  「た、助かったにゃー」

ブイモン「ありがとう、マメモン」

マメモン「無事ならよかった、早くここを……」

そう言い掛けるマメモンに向けて煙の中から赤い機雷が迫る


マメモン「クッ、マズイ!『スマイリーボム!!』」


マメモンのスピードなら避けることは可能だっただろう

しかし回避してしまえばその爆発で周囲に被害が及ぶ

マメモンはあえて攻撃する事により周りへの被害を最小限に抑えようとした

その結果、目の前で爆発を浴びたマメモンの小さな身体はボロボロとなってしまう

満身創痍で動けないマメモン、しかしギロモンはとどめをさそうと更に攻撃の体勢を取る


にこ 「今度こそ!」



『ルナモン進化!――レキスモン!!』

レキスモンは自慢の脚力でマメモンの元へと跳び、なんとか爆発の直前に助け出す

ギロモンは続けて機雷を投げつけるがレキスモンはピョンピョンと飛び跳ね回避してく

しかしギロモンは執拗にマメモンへの攻撃を止めようとはしなかった


レキスモン「くっ、このままじゃいつか当たっちゃうわ」

にこ 「一先ず工場の外へ撤退するわよ」

凛  「うん!ブイモン走れる?」

ブイモン「大丈夫、いけるよ」

逃げるメンバーに対してギロモンは先ほどまでの素早い動きとは違いゆっくりとした動きでこちらに近づいて来てくる

その様子に不気味なものを感じながらもこの好機を逃すわけにはいかない

一行は急いで出口へと向かった


にこ 「確かその先が出口だったはず」

穂乃果「嘘、これって……」


確かに道に間違いは無い筈だ

しかし、出口だったはずの場所はぶ厚い鉄の扉で閉じられていた

ギロモンも急いで追いかける必要は無いはずだ、この工場にもはや逃げ場なんて無いのだから

このまま進めば逃げ場が無くなってしまう

先頭を走るレキスモンは咄嗟に別のルートへと方向を変えた

しかしこの道がどこに繋がっているかもわからない

それどころか警備中のガードロモンがこちらを見つけて敵はどんどん増えていくばかりだった

にこ 「もう、どうするのよ。このままじゃいつか捕まっちゃうわ」

マメモン「……メンテナンスルームに行ってくれ」

レキスモン「アナタ、気付いてたのね」

マメモン「その先にあるメンテナンスルームに行けばオレを改修出来るはずだ。頼む……」

にこ 「改修って傷を治せるって事?」

ブイモン「このまま逃げていてもそのうち追いつかれちゃうし、マメモンの言う通りにしてみよう」


マメモンの指示通りに移動するとすぐにメンテナンスルームへとたどり着いた

室内は無骨な機械が動く工場とは一風変わった様子を見せている

まるで病院の一室のような綺麗で清潔感のある部屋であった

部屋は大きなガラスで二つに隔たれており、手前の部屋には複数のボタンやモニターが

奥の部屋には天井にある赤い卵に刃が生えたようなデザインのライトに照らされた手術台が見える

穂乃果「わー、外とは全然違うね」

にこ 「何ノンキな事言ってるのよ。ほら、次はどうしたらいいの?」

マメモン「その台にオレを乗せてそのボタンを押してくれれば後は自動でやってくれるはずだ」

レキスモン「わかったわ、あそこね」


マメモンを手術台に寝かせてボタンを押すと周囲の機械が慌しく動きモニターが点灯する

『The user is checked. MAMEMON was certified. An upgrade is begun.』

手術台の上から伸びている複数のアームがマメモンを治療を始める

いや、治療というよりも手術。まるで悪の組織が怪人を作るかのようなそんな物々しさを感じさせる


にこ 「それで、どのくらいで治るのよ」

凛  「見て見て、この画面に何か映ってるよ」

ブイモン「このバーがいっぱいになれば完了って事なのかな」

にこ 「これどう見ても30分くらいかかりそうなんだけど……」

ルナモン「部屋の扉はロックしたけど、後はなんとか時間稼ぎするしかないルナ」

ガンッ!ガンッ!と部屋の外からは手荒いノックが聞こえている

音と共に少しづつ形を変えていく扉が破られるのは時間の問題だろう


穂乃果「アグモン、行くよ!!」

アグモン「わかった、今度こそ守ってみせるよ」




『アグモン進化!――グレイモン!!』



にこ 「頼んだわよ、レキスモン」

レキスモン「任せておいてよ」

凛  「よーし、ブイモンももう一回進化だよ」

ブイモン「わかった!!…………ダメだ力が出ないみたい」

グレイモン「さっき進化したばかりだから仕方ないさ、後ろで3人を守ってあげてくれ」

ブイモン「うぅ~わかったよ、頑張って」

-------------------------------------------------------------------



レキスモン「『ティアーアロー!!』」

グレイモン「『メガフレイム!!』」

にこ 「もう!いったい何体いるっていうのよ」

穂乃果「20体くらいは倒したかな?入り口が小さくて一体づつだから何とかなってるけど」

にこ 「凛、治療は後どのくらいで終わりそうなの?」

凛  「えーっと、今半分をちょっと過ぎたくらいだよ」

にこ 「残り15分弱か……厳しいわね」

レキスモン「もうダメ、疲れたわ」


レキスモンの身体が光に包まれたまま小さくなりそのままルナモンに戻ってしまう

ルナモン「ばたんきゅ~」

にこ 「ちょ!何勝手に退化してんのよ!!」

ルナモン「別に戻りたくて戻ったわけじゃないルナ。必殺技の連発でもう体力の限界ルナ」

穂乃果「グレイモンは大丈夫?」

グレイモン「ちょっと厳しいけれどやってみせるよ。『メガフレイム!!』」

にこ (このペースじゃグレイモンも長くは持ちそうに無いわね……)

ブイモン「やっぱり僕も一緒に戦うよ」

にこ 「あんたは大人しく下がってなさい。進化出来なきゃ邪魔になるだけだし、もしかしたらもう一度進化出来るかもしれないんだから」

にこ (時間は……残り10分弱ね。あーもうどうしたら良いのよ)

凛  「ねぇねぇ、あの倒したロボットで入り口塞いでみたらどうかな」

穂乃果「それいいかも!グレイモンお願い」

グレイモン「了解」


グレイモンは部屋に入ろうとするガードロモンを『メガフレイム』で牽制しつつ入り口へと突進する

そのまま入り口の周りに倒れている十数体のガードロモンを入り口の前まで押し込んだ

倒れていたガードロモン達は鉄の山となりバリケードとして入り口を塞ぐ

部屋の外にいるガードロモンが押し返そうとするがグレイモンのパワーが勝っており部屋に入る事は叶わないようだ


にこ 「よーし、これで時間稼ぎは出来るわね」


残り時間は5分を切り皆が安堵したその時、ガードロモンの山のわずかな隙間から小さい何かが飛び込んで来る

ギロモン「ギギギギ」

ルナモン「うわぁぁ、よりもよって一番厄介なのが来たルナ」

穂乃果 「こっちに向かってくるよ!」

グレイモン「行かせない、『メガフレイム!!』」

ギロモン「ギギギィィ」


ギロモンは右手のチェーンソーで『メガフレイム』を切り裂きグレイモンへ『デッドリーボム』を投げつける


グレイモン「ぐあああぁぁぁぁ」

穂乃果「グレイモン!!」

ギロモン「ギギギッ」

にこ 「ちょっと、今度はこっち見てるわよ。ルナモンなんとかしなさいよ」

ルナモン「むーりールーナー」

凛  「ブイモン進化は?」

ブイモン「うーん……ダメだ、まだ力が出ない」

にこ 「時間は……あと3分くらい、もう!早く起きなさいよー」



穂乃果「大丈夫だよ、みんな」

穂乃果「だって守ってくれるって約束したもん!!」

グレイモン「うおぉぉーー『グレートアントラー!!』」

ギロモン「ギィ!?」


グレイモンは鼻の上の角を突き出して巨体ごとギロモンにぶつかりそのまま壁へと突っ込んだ

不意を突かれたギロモンの身体は鉄製の壁へとめり込んでいた


ブイモン「凄い、完全体の攻撃を受けたのにまだこれだけの力が残ってるなんて」

グレイモン「食らえ『メガフレイム!!』」


壁から抜け出せ無いギロモンに対してグレイモンは連続で火球を放った

無防備なギロモンへ火球が次々と直撃していく


グレイモン「これで終わりだーー!!」


大きく息を吸い込み今までで一番の大きさの火球を放った

その渾身を込めた一撃が当たったのを確認し、グレイモンはそのまま倒れてアグモンへと戻ってしまう



穂乃果「アグモン!!」

アグモン「穂乃果、今度はちゃんと守れたかな?」

穂乃果「うんうん、アグモン凄くかっこ良かったよ」

アグモン「へへへ、良かった」

にこ 「やるじゃないの、格上相手に勝っちゃうなんて」

ルナモン「まだ終わってないルナよ」

にこ 「え?どういう……」

ルナモン「まだ煙の中から声が聞こえてくるルナ」





ギロモン「ギギギギ」

穂乃果「うそ……」


爆煙の中から現れたギロモンは傷ついてはいるもののしっかりとした動きで穂乃果達との距離を詰めてくる

その上、部屋の入り口を塞いでいたバリケードを抜けて沢山のガードロモンも進入していた


にこ 「こんなのどうしろって言うのよ……」

ルナモン「万策尽きたルナ」

アグモン「まだだ、ボクはまだ戦うよ」

穂乃果 「いくらなんでもその身体じゃやられちゃうよ」

アグモン「ボクが穂乃果を守るって約束したんだ、絶対に諦めないよ」

穂乃果 「アグモン……」




「よく頑張ったな、強きデジモン達よ」



奥の部屋の硝子が破られ小さな影が現れる

身体の大きさこそ変わってはいないがその右手には鋭い鉤爪を持ち左手には小さな身体と同等の大きさの砲を携える

愛らしかったその顔は鉄の仮面に覆われて戦士の顔つきに変わっている


穂乃果「もしかしてマメモン?」

アグモン「あの姿はメタルマメモンだ」


〝メタルマメモン〟
完全体 サイボーグ型 データ

“スマイリーボマー”の異名を持つマメモンを更に強化したサイボーグ型デジモン。
体の9割は機械化されており、戦闘力は強化されている分機動力は下がっている。
必殺技は左腕に装備されたサイコブラスターから発射される『エネルギーボム』

進み遅くて申し訳ないがここまで

にこ 「って治してたんじゃなくて本当に機械に改造しちゃったの!?」

凛  「まるで仮面なんとかーみたいだにゃ」

メタルマメモン「データで作られ進化し続けるデジモンにとって身体なんてものはただの器みたいなものだ」

メタルマメモン「より強くなれるのなら機械の身体になる事くらい大した問題じゃない」

メタルマメモン「何よりもこれは今必要な力だ」

メタルマメモン「とにかく今はこの状況をなんとかしよう」


メタルマメモンは左腕のサイコブラスターを部屋の入り口へと向ける

キュイーンという短いチャージ音の後、バスケットボール程の大きさのエネルギー弾、『エネルギーボム』を放った

そのエネルギー弾はガードロモンに当たると大爆発を起こし周囲の数体をまとめて吹き飛ばす

その爆発は倍の大きさはあるだろう『メガフレイム』と以上の威力である

その後も2,3発続けて撃つと数十はいたであろうガードロモンは撤退し、残ったのは動かなくなったモノだけになっていた

ブイモン「あんなに沢山いたガードロモンを一瞬で……」

ルナモン「バカみたいに強いルナ」

にこ  「後は問題のアイツだけね」

ギロモン「ギギギギギッ」

メタルマメモン「待たせたな、決着をつけてやる」


先に動いたのはギロモンだった

空中から機雷を投げて急降下しながら突進をかける

メタルマメモンは一瞬、周囲を確認してエネルギー弾で機雷を破壊する


メタルマメモン「お前達は奥の部屋へ移動しておけ!」

爆煙の中から現れたギロモンはチェーンソーで接近戦を仕掛けるがメタルマメモンは右手の鉤爪で受ける

激しく火花が飛び散る中、穂乃果達が全員移動したのを確認してギロモンへと至近距離から『エネルギーボム』を放つ

しかしギロモンはひらりと回避して再びチェーンソーで攻撃する

メタルマメモンは後ろに飛び距離を取ろうとするが遠距離での不利を感じたギロモンは執拗に近接戦を挑んでくる

一方のメタルマメモンは強化による重量増加で速度が落ちており、上手く間合いを取れないでいた


にこ 「ちょっと押されてるじゃない、強くなったんじゃなかったの?」

ルナモン「あれはまだ進化後の身体に慣れていないみたいルナ」

ブイモン「通常は進化すると本能的に身体の使い方や技なんかがわかるんだけど、今回のマメモンは特殊だったから完全じゃないみたいだ」

穂乃果「えぇっ!?じゃあメタルマメモンは全力が出せないって事なの?」

凛  「このままじゃ負けちゃうにゃー」

ブイモン「こうなったら僕が行くよ」

凛  「ブイモン、そんな事言ったってまだ進化出来ないでしょ」

ブイモン「でもアグモンもルナモンもさっきまで戦っていて体力の限界だよ」

ブイモン「今は少しでも休んで体力が回復している僕が行くしか無いんだ」

凛  「ブイモン……わかった、でも凛も行くよ」


凛は落ちていた鉄の棒を拾い扉の方へと歩き出す


にこ 「あんたこの前のこと忘れたの!?足手まといになるだけよ」

凛  「大丈夫、この前とは気構えが違うんだから。簡単にはやられないよ」

凛  「それにブイモンだけを行かせられないよ。だって凛とブイモンはパートナーなんだから」


そう言って部屋を出ようと扉に手をかけた時、凛のデジヴァイスが光を放った

その光は紛れも無く進化の光だったがいつものようにパートナーへとは向かわずデジヴァイス自体が輝きを放っている

その光の中でデジヴァイスは徐々に姿を変えつて更に天井の照明へと光の帯を伸ばしていく


凛  「何何何?何が起こってるの?」

ブイモン「あの照明……まさかデジメンタル!?」

穂乃果「でじめんたる?」

アグモン「聞いた事あるよ。確かはるか昔に古代種のデジモンが擬似的な進化のために使っていた道具のはず」

ルナモン「ただの改造でメタルマメモンへ進化出来るなんておかしいと思ったらアレの力を使っていたルナね」


デジメンタルはそのまま光の塊となって凛の新しいデジヴァイスへと吸い込まれていった


にこ 「凛のデジヴァイスの形が変わった?」

凛  「いったいどうなってるの?」

ブイモン「わからないけど、もしかしたらこれでいけるかもしれない」


ブイモン「凛、進化するよ。デジメンタルアップって叫ぶんだ!」

凛  「よ、よーし!デジメンタル・アップ!!」



「ブイモン!アーマー進化っ!!」



「燃え上がる勇気 フレイドラモン!!」




“フレイドラモン”
アーマー体 竜人型 フリー

ブイモンが勇気のデジメンタルでアーマー進化した竜人型デジモン
炎を操る格闘技を得意とする
必殺技は腕から炎を繰り出す『ナックルファイア 』と全身を炎で包み敵に突撃する『ファイアロケット』

凛  「ブイモンが進化できたーー!!」

ルナモン「デジメンタルの力で強化する分、デジモン自身の力が溜まって無くても進化出来るみたいルナ」

にこ 「それって何度でも進化出来るって事?チートくさいわね」

ルナモン「デジメンタルの力だって無限じゃないルナ。エネルギーの予備タンクみたいなものルナね」

凛  「難しい事は良くわかんないけど、フレイドラモン行っくにゃー!!」

フレイドラモン「おう!!」

フレイドラモン「『ナックルファイアー!!』」


フレイドラモンが右腕に装着したガンドレッドから放った火球はギロモンへと命中する

ギロモンは突然の奇襲に優勢だった接近戦を諦めて距離を取る

フレイドラモン「加勢するぞ、大丈夫か?」

メタルマメモン「すまない、助かる」

ギロモン「ギッ……ギギギッ」


ギロモンは先ほどまでとは戦術を一変させ、2体の周りを高速で動きながら機雷を投げつけた

2対1と有利になったものの、どちらもその素早い動きにギロモン捕らえられない

機雷を全て落としつつもその爆破範囲はジリジリとその身に近づきつつあった


フレイドラモン「くっ……こんなに素早いだなんて」

メタルマメモン「一瞬だけでも良い、奴の動きを止められるか」

フレイドラモン「一瞬だけなら、やってみる!!」

フレイドラモン「いっけーー!!『ナックルファイアー!!』」


フレイドラモンは両手から周囲に向けて十数発の火球を飛ばす

その火炎の雨にギロモンの動きも鈍りを見せる


フレイドラモン「うおぉぉぉっ!!『ファイヤロケット!!』」


その隙を見逃さずフレイドラモンはその全身を炎に包みギロモンへと突進した

炎の塊となったフレイドラモンの角とギロモンのチェーンソーがぶつかり更に激しい火花を散らす

しかしアーマー体となったフレイドラモンよりも完全体であるギロモンの方がまだパワーは上

すぐにフレイドラモンの身体は床へと弾き飛ばされてしまう

その間、わずか数秒……しかしメタルマメモンにとっては十分な時間だった

その左手の発射口にはすでにギロモンへと向き、オレンジに輝くエネルギーは発射の瞬間を待っていた


メタルマメモン「これで終わりだ『エネルギーボム!!』」



メタルマメモンが放った光は一直線にギロモンへと向かいその全身を飲み込んで天井へと激突する


ギロモン「ギギッ!?ギギギィィィッ!!」


その光の中、ギロモンは叫びと共に0と1のデータの塵となり消滅していった


穂乃果「終わった……の?」

ブイモン「いててて、いつの間にか元に戻っちゃってるや」

凛  「ブイモン大丈夫!?」

ブイモン「うん、平気だよ」

にこ 「ほんとどうなる事かと思ったわよ~」

ルナモン「全員無事だったのが奇跡みたいなものルナ」

メタルマメモン「君達のおかげで奴を倒すことが出来た。感謝する」

穂乃果「いったい何でこんな事に……」

メタルマメモン「それは管制室で説明しよう。着いて来てくれ」



一行はメタルマメモンと共に管制室へと戻る

道中にはガードロモンが何十体もいたが先程までの騒ぎが嘘のようにこちらへ危害を与えてくる事は無かった

管制室へとたどり着くとメタルマメモンはすぐに何かの機械を操作し始めた


にこ「それで、何で私達が襲われなきゃいけなかったのよ」

メタルマメモン「それは君達が侵入者だったからだろう」

にこ「うっ……」

メタルマメモン「まあ普段なら侵入者がいてもこうはならないはずなのだが」

メタルマメモン「どうやらギロモンはウイルスに侵されていたようだ」

ブイモン「ウイルスだって?」

メタルマメモン「私とギロモンは共にこのファクトリアタウンの警護の担っていたのだ」

メタルマメモン「私はガードロモンを率いて工場の内外を、ギロモンはネットワークの管理を行っていた」

メタルマメモン「しかし、どうやらあるメールを受け取った時からギロモンの様子がおかしくなり」

メタルマメモン「気がついたら工場内の全てのシステムとガードロモンへの指揮権はギロモンに掌握されていた」

メタルマメモン「私は急いでギロモンの元へと向かったのだが、ご覧の有様だ」

ルナモン「じゃあ、そのメールを送ってきた奴が犯人ルナ?」

メタルマメモン「あぁ、何か犯人の手がかり無いか確認してみたがどうやら全て削除されているようだ」

穂乃果「ねぇ、もしかしてこれもAってやつのせいなんじゃないかな?」

アグモン「うーん、これだけじゃわからないよ」

にこ 「わかったのはやっぱりここには人間はいなさそうって事だけね」

メタルマメモン「君達は人間を探しているのか?」

凛  「うん、凛達の仲間がいるかもしれないんだ」

穂乃果「あ、あと元の世界に戻る方法も!」

メタルマメモン「どちらも私は知らないがここはモニターで島のあちこちの様子を確認出来る」

メタルマメモン「もしかしたらどこかに映るかもしれない、少し待っていてくれ」

メタルマメモンが機械を操作すると工場内をモニターしていたディスプレイの映像が変わっていく

自分達が最初にいたジャングルのような場所、ここに向かう途中に通った湖や火山

ゴミの山や霧の深い森や氷の浮かぶ海、そして深い谷……そしてそこに映る少女達


凛 「あっ!!かよちん!!」

穂乃果「ほんとだ、海未ちゃんとことりちゃんもいるよ!!」

にこ「やっぱりあの子達も来てたのね、無事で良かったわ」

アグモン「あそこは……グランドキャニオンみたいだね」

ブイモン「島の反対側だね、行くのには4,5日かかるかも」

穂乃果「ねぇ、この機械で連絡できないの?」

メタルマメモン「残念ながら映像を見る事しか出来ないんだ」

穂乃果「そうかぁ、でもみんな元気でいるってのがわかって少し安心したよ」

凛 「そうにゃそうにゃ、早くかよちん達に会いたいにゃ~」

にこ「そうよね、さっさと合流して元の世界に帰らないと……んっ?」

ルナモン「にこにーどうかしたルナ?」

にこ「あの真ん中のモニターに人影が映ってた気がしたんだけど、気のせいかしら」

ルナモン「うーん、あそこははじまりの町ルナね、デジモンでも映ってたんじゃないルナか?」

にこ「そうね、そうかもしれないわ」

メタルマメモン「君達が良ければ今日はここで休んでいってくれ、静かに休める場所を用意しよう」

穂乃果「うーん、そうだね。早くみんなに会いたいけどアグモン達も疲れてるだろうしお言葉に甘えよっか」

にこ「ここからまだ遠いみたいだし、その方が良いかもしれないわね」

凛 「凛、お腹空いちゃったよぉ」

ブイモン「僕もお腹ペコペコだ」

メタルマメモン「わかった、とびきりのご馳走を用意させよう」

「「「わーーい」」」



その後、ご馳走という名の様々な高級オイルが彼女達の前に届くのであった

今回はこれで終わりです
好きなように書き殴ってたら全体的に冗長になってますね
次はたぶんそんなに長くはならないと思います

谷というのは周囲を山等に囲まれておりその標高が周りに比べて低い場所の事を指す


海未「…………」

花陽「はぁはぁ、チョットマッテー」ユッサユッサ

ことり「ふぇ~ん暑いよ~、歩いてたら汗かいてきちゃった」パタパタ

花陽「こ、ことりちゃん、そんなに首元を広げたら見えちゃうよ!」

ことり「えぇ~でもここには3人しかいないし良いんじゃないかな」ボイン

花陽「それは、その…そうだけど……」

ことり「ほら、花陽ちゃんも暑いでしょ。せっかくだし脱いじゃおうよ」プルン

花陽「キャッ!!ことりちゃん駄目だよ、あぁん、ダレカタスケテー」ポヨン

海未「…………」


そう、谷というのは周囲の標高が高くなければ出来ないのだ


クダモン「哀れね」

ファルコモン「ホーホー」

つい先程までジャングルを歩いていたはずなのだが一歩抜けるとそこはまさにグレートな谷であった

周囲は絶壁の山々に囲まれて谷の底は目で見る事が出来ないほど深い

山から山へと移動する術はわずかな足場とそこに架かる木と縄で出来た簡素な橋だけである


海未「ここがグレートキャニオンですか」

クダモン「初めて来たけれどこれは圧巻ね」

ことり「う、海未ちゃん、この橋手すりすら無いんだけど」

花陽「そ、それどころか風でカタカタ揺れてますよ。絶対危険です!止めましょう!!」

海未「そうですね……クダモン、もしもの時はお願いします」

クダモン「ふん、任せておきなさい」


そう言うと海未は木の橋をゆっくりと渡り始める

確かに風は強いが歩く身体がバランスを崩す程では無い

結局1分程の時間をかけておよそ200メートル程の橋を問題無く渡りきった

海未「2人ともーどうやら強度は問題無いようでーす。ゆっくりで良いのでこちらに来てくださーい」

ことり「ほ、本当にこんな場所渡なきゃいけないのかな?」

花陽「私こんなの渡れる自信無いよー」

ことり「あーん、ファルコモン助けてぇ~……ってあれファルコモンがいない?」

花陽「ことりちゃん、あっち」

ファルコモン「ホー!ホー!」

ことり「ふえぇ~ん、何で先に渡っちゃってるのぉー!?」

花陽「うぅぅ、もうこうなったら勇気を出して渡るしかないよ」

ことり「じゃあ花陽ちゃんからどうぞ」

花陽「えぇっ!?ことりちゃんずるいよー」

ことり「ほらほら早く~」

花陽「あっ、ちょっと押さないで、ふえぇ~ダレカタスケテー」

海未「2人ともー早くして下さい。この先にも橋は沢山あるのですから」

こ&花「」

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海未「もう日が暮れてきましたか、思ったよりも遅くなってしまいましたね」

クダモン「そりゃ全部の橋を這いつくばりながら移動してたら時間もかかるわよ」

花陽「うぅ~ごめんなさい」

ことり「あんな橋をスタスタ歩ける海未ちゃんがオカシイんだよぉ」

クダモン「さあて、この山を登ればバードラモンの巣のはずよ」


そこは周囲の山の中でも一際高く大きな山

しかし問題は高さでは無くその傾斜である

その角度はほぼ直角。これを登ると言う事は命綱無しでロッククライミングをしろという事である

ことり「山を登るって、もしかしてここを!?」

花陽「コレヲノボルノォー!?」

海未「流石にこれは私でも登れるかどうか……」

ファルコモン「ホーッホーッ」

ことり「凄い!ファルコモンが軽々と昇ってくよ」

花陽「もう、ここで待っててファルコモンにバードラモンを連れて来て貰うのが良いんじゃないかなぁ」

クダモン「何言ってるの、そこにエレベーターがあるからそれで上がるのよ」

ファルコモン「フォッ!?」

ことり「よかったぁ、これなら安全に上まで登れそうだね」

花陽「文明の力がこんなにも愛おしく思えるだなんて」

海未「何故崖の中にエレベーターが、これはどうやって作ったのでしょうか?」

海未「いったい誰が何のために、そもそも電気はどこから……」ブツブツ

チーン

ことり「エレベーター来たよー早く乗ろー」

海未「あぁ、ちょっと待ってくださーい」

ファルコモン「ホーッホーッ」


海未「ここが頂上ですか」

ことり「無事に着けて良かったね」

花陽「本当に良かったです。崖を昇るアイドルなんて普通はありえませんから」

クダモン「さて、このどこかにバードラモンがいるはずなんだけど」

???「あら、人間のお客さんなんて珍しいわね」


グレートキャニオンで最も高いこの場所の更に上

雲より高い空を見上げると、そこには大きな翼を広げた火の鳥が飛んでいた



〝バードラモン〟
成熟期 ワクチン 巨鳥型

燃え盛る炎に包まれた大きな翼を持つ巨鳥型デジモン。
炎に包まれた身体は敵意のある者でないかぎりその熱で火傷を負うことはないという
必殺技は両翼に炎を集め、羽にのせて撃ち出す『メテオウィング』

海未「あの火の鳥がバードラモンですか!?」

ことり「うわぁ、すごくおっきぃ」

花陽「ひ、火の粉が落ちてきて、あっつ!……あれ?熱くない?」

バードラモン「安心してください、私に敵対する意思はありませんから」


バードラモンは翼を広げながらゆっくりと海未達の元へと降りる

その全身は炎に包まれていたが、不思議と熱さは感じずほんのりと暖かい程度であった


バードラモン「それで、人間がこんなところまで何のようで来たのかしら」

クダモン「貴方、運送屋をやっているんでしょ?私達をはじまりの町まで連れて行って欲しいんだけれど」

ファルコモン「ホーホー」

バードラモン「デジモンも一緒……という事は貴方達は選ばれし子供なのね」

海未「えぇ、どうやらそのようです」

バードラモン「そう……連れて行くのは構わないけれどその前に一つお願いを聞いて貰えないかしら」

海未「お願い……ですか?」

バードラモン「えぇ、実はこの山の麓に最近になって山賊が住み着いたようなの」

バードラモン「最初は大人しかったのだけれど近頃は周辺に住むデジモンを襲っているらしいわ」

バードラモン「その山賊を少し懲らしめてきて欲しいの」

海未「山賊ですか」

バードラモン「私が行くと狭い場所に逃げられてしまって困っていたのよ」

海未(レッパモンなら狭い場所でも平気でしょう。しかし、出来れば戦闘は避けたいのですが)

ことり「海未ちゃん、どうしよう」

海未「…………」

海未「わかりました。引き受けましょう」

ことり「海未ちゃん……」

花陽「でも、また危ない目に合うんじゃ」

海未「こちらのお願いを聞いてもらうのですから、あちらのお願いを無視するわけにはいきませんよ」

海未「それに、他のデジモンが被害が受けているのなら見過ごすわけにいきませんから」


バードラモン「助かるわ、山賊のアジトにはエレベーターで一番下まで降りればいけるはずよ」

海未「わかりました、ことりと花陽はここで待っていて下さい。私達だけで行ってきますので」

ことり「そんな、海未ちゃん1人じゃ危ないよ!」

海未「1人ではありませんよ、クダモンもいますから」

クダモン「そうね、山賊程度なら私達だけで十分。足手まといはここで待っていなさい」

花陽「でも、もしもの事があったら……」

海未「花陽が一緒に来てタマゴに何かあったらそれこそ大変ですよ」

海未「ことりとファルコモンは花陽の事を宜しくお願いします」

ファルコモン「ホーホーッ!」

ことり「海未ちゃん……わかった、でも絶対無事に帰ってきてね」

海未「えぇ、約束します」

話のベースが今のところデジワー基準ですゆえに


エレベーターで崖の最下層まで降りた先は周りを岩の壁で囲まれた狭い空間であった

その正面には車1台がやっと通れるくらいの細い道が続いている


海未「確かにバードラモンではここを通るのは難しそうですね」


海未は陽の光も僅かにしか届かない薄暗い道を慎重に進んで行く

徐々に広くなっていく道を抜けると少し開けた場所へと出ることができた

そこには廃工場のような建物が岩場と重なるように建っている

警戒しつつ進む海未だったが入り口らしき場所に人の気配を感じて岩陰へと隠れる

〝人〟とは言ったがその身体は海未より一回り小さく何よりもその肌の色が自分と同じ〝人〟では無い事を表している

海未はその〝人〟、いや、デジモンには見覚えがあった

海未「ゴブリモン……また彼らの仕業ですか」

海未「後ろに見える建物が彼らのアジトでしょうか」

クダモン「アイツ見覚えがあるわね。昨日の奴らで間違いないわ」

海未「全部同じ顔にしか見えませんが……」

クダモン「私も人間はほとんど同じ顔に見えるしそんなものよ」

海未「そうなのですね……ならどうやって私達を見分けているのですか?」

クダモン「それは服装や臭いとか、海未はとくに匂いが強いからすぐにわかるわね」

海未「わ、わたしってそんなに臭いですかぁ!?」

ゴブリモン「ん?そこにいるのは何者だ!!」

海未「あっ……」

クダモン「はぁ、何やってるのよ」

海未「仕方ないのです、こちらの世界に来て着替えも無いしお風呂も入れないし仕方ないのです」

ゴブリモン「お前、選ばれし子供!早くお頭に報告しろ!!」

海未「町に行ったら絶対にどこかで身体を清めます、絶対です」

クダモン「今はそんな事どうでもいいから、さっさと行くわよ」

海未「すぐに終わらせましょう!!」




『クダモン進化!!――レッパモン!!』

レッパモン「『真空カマイタチ』!!」

ゴブリモン「ぎゃぁーーー!」


レッパモンが尻尾から放った風の刃がゴブリモンをアジトの扉ごと切り裂く

海未はレッパモンの背中に乗りバラバラとなった扉を越えてアジトの中へと突入する

アジトの中には数体のゴブリモンがいたがすれ違いざまにレッパモンの尻尾で撃退していく


海未「昨日のやつらという事はどこかにアイツがいると言う事ですね」

レッパモン「そうでしょうね」


いくつかの部屋を抜けると少し広い部屋へとたどり着く

園田家の道場よりもよりも少し狭いくらいだろうか、畳が敷き詰められた床にゴミや何やらが散らばっている

「てめぇ!」という聞き覚えのある叫びを聞き言葉の主が立ち上がった

海未より一回り大きい緑色の身体、胸の大きな切り傷は痕こそ残っているがすでに治っているように見える

大きな目をギョロリこちらに向け、警戒するかのように棍棒でこちらを指した

オーガモン「てめぇ、昨日の選ばれし子供じゃねぇか!!」

海未「やはり貴方が山賊の長でしたか、覚悟して下さい」

???「残念ながらそいつは違うぜ」


部屋の奥から現れたのはオーガモンと同じタイプのデジモン

その頭には角が無くその全身はオーガモンと違い土気色をしている



〝フーガモン〟
成熟期 鬼人型 ウイルス

東洋の伝説の鬼のような姿をしたデジモン。
オーガモンと同じ種族で、戦い好きの荒っぽい性格も同様である。
必殺技は、「ホネこん棒」を振り回し、全てをなぎ倒す『イビルハリケーン』


フーガモン「こいつらがお前の言っていた選ばれし子供ってやつか」

オーガモン「そうなんだ。兄貴、やっちまってくれよ」

フーガモン「任せておきな。ぶっ倒しておれが進化の力ってやつを頂いてやるぜ」

海未「なるほど、似たもの兄弟と言う事ですね」

海未(しかし、成熟期が2体ですか)

レッパモン「さーて、どうしたものかしら。相手が2体でも負ける気はしないけれど」

海未「室内では動きも制限されます。ここは一度外へと出ましょう」

オーガモン「おっと、させねぇよ『覇王拳!!』」


オーガモンの放った闘気の塊は海未達が先ほど入って来た道の天井を破壊する

崩れた天井は瓦礫となって出口を塞ぐ

人一人なら通れる隙間は残っているがレッパモンの身体はどう見ても通れそうに無い

海未「しまった!!」

海未(退化すれば通れそうですが、その後に追いつかれれば打つ手が無くなってしまう)

レッパモン「このままやるしかなさそうね」

フーガモン「てめぇ!オレのアジトを破壊するんじゃねぇよ!!」

オーガモン「すまん、兄貴。でもこいつらに逃げられるわけには……」

フーガモン「うるせぇ!だったら責任持ってそのデジモンはお前が相手をしろ」

オーガモン「お、おうよ、昨日のリベンジだ覚悟しやがれ」

レッパモン「海未、下がっていなさい」

海未「わかりました、お願いします」

オーガモン「食らえ!!『覇王拳!!』」

レッパモンはオーガモンの攻撃を回避しそのまま尻尾で切りつける

しかしその攻撃はオーガモンの持つ骨棍棒で防がれてしまう


オーガモン「ふん、そんな単純な攻撃当たるかよ!」

レッパモン「それ、アンタにだけは言われたく無いわね」

海未(やはり狭い室内では動きが制限されてしまいますね)

海未(これは2対1になる前に早めの決着を……おや?)

海未(フーガモンがいない?いったい何処に……)

その瞬間、海未の周りに突然影が落ちる

ゾッと寒気を感じつつ影の正体を確認するとそこにはすでに骨棍棒を振り上げているフーガモンの姿があった

フーガモンは「ふんっ!!」と勢い良く棍棒を振り下ろす

その狙いは海未の頭、威嚇などでは無く完全にこちらを[ピーーー]ための攻撃

しかし、武道の経験があった事が幸いしたのだろう

海未はその攻撃を反射的に後ろへ飛ぶ事でかろうじて回避した

地面へと叩きつけられた棍棒は床に敷いていた畳を無残な状態へと破壊する

かすっただけでも致命傷だったであろうその威力を目にし、海未は倒れたまま動けなくなる


海未「あっ、ああっ、あぁぁ……」

フーガモン「ほう、今の攻撃を避わすとはなかなかやるじゃねぇか」

レッパモン「しまった!海未!!」

オーガモン「おっと隙だらけだぜ『覇王拳』」

レッパモン「きゃぁーーーー!!」


レッパモンは海未の身を案じて向かおうとするがその隙を狙われ始めてオーガモンの攻撃を受けてしまう

レッパモンは高い機動力と攻撃翌力を併せ持った強いデジモンである

しかし耐久力に関してはお世辞にも高いとは言えない

オーガモンの必殺技の直撃は致命傷ともいえるダメージである

海未「レ、レッパモン!」

レッパモン「うぅっ、海未……」

オーガモン「兄貴、選ばれし子供は生きたまま捕まえなきゃいけないんだぜ。気をつけてくれよ」

フーガモン「あぁん?そう言う事は早く言いやがれ。それで、こっちのデジモンはどうするんだ?」

オーガモン「デジモンに関しては何も聞いてないからヤッちまっても良いんじゃないかな」

フーガモン「よーし、止めはおれがさしてやるよ」

オーガモン「そりゃずるいぜ、兄貴ぃ~」

フーガモン「うるせぇ!よーし、覚悟しやがれ」

レッパモン「くそっ、身体が動かない……こんな奴らに……」

海未「やめて、やめて下さい!レッパモンを殺さないで!!」

オーガモン「あの時、後悔させてやるって言ったがこんなに早く実現するとはな」

フーガモン「この世界は甘ちゃんから死んでくってこった、怖くて動けない奴は黙ってな」

海未「うっ…くぅっ……レッパモン、すみません。私は……」

レッパモン「海未、良い女が泣くもんじゃないわ。大丈夫、私は死なないわよ」

フーガモン「フハハハ、死に底無いが。これで終わりだ!」

レッパモン(最後にこいつだけでも!!)

今日はここまで
レッパモンかわいいよレッパモン

ファルコモン「ホーーーーッ!!!」



突然現れたファルコモンはその翼に付いた鋭い爪でフーガモンの顔を切り裂いた


フーガモン「ぎゃーーー!!」

レッパモン「えっ?」

オーガモン「てめぇッ、どこから!?」

海未「どうしてファルコモンが……」


『どうして』の疑問は解けないが『どこから』の答えは一つしかない

先ほどオーガモンが破壊し、瓦礫で塞がれた入り口の隙間からだろう

もしかしてと海未がそちらを見ると予想通りの相手が場にそぐわない様子で瓦礫を登っている

ことり「んしょ、よいしょ、も~ファルコモン先に行っちゃうなんて酷いよぉ」

海未「ことり!?」

ことり「あっ、海未ちゃんやっと会えたよ~」


ことりは瓦礫から飛び降り海未の元へと駆け寄る


ことり「海未ちゃん大丈夫?こんなに汚れちゃって、それに……」

海未「どうしてことりがここに、それよりも早く逃げないとここは危険です!」

オーガモン「てめぇは確か昨日一緒にいた子供達の一人か」

ことり「もう心配しなくて大丈夫だよ、後は私に任せて」

ことり「ファルコモン、おいで」

ファルコモン「ホーッ」

フーガモン「クソッ!こいつ、よくもやりやがったな!!」

ことり「行くよ、ファルコモン進化!!」


ことりのデジヴァイスから光の帯が伸びファルコモンを包んでいく



『ホーホーッ!!――ギャーース!!』



〝ディアトリモン〟
成熟期 古代鳥型 ワクチン

金属を含んだ羽毛と強靭な脚力を持つ古代鳥型デジモン。
時速200km/hを超える速度で疾走することができる脚を持っているが飛ぶことはできない。
必殺技は硬質化されたボディ超高速の体当たりを繰り出す『メガダッシュインパクト』
巨大な咆哮で広範囲にダメージを与える『デストラクションロアー』

海未「ファルコモンも進化が出来たのですか!?」

ことり「えへへ、そうなんだ」

オーガモン「こいつも進化しやがった」

フーガモン「これが進化の力ってやつか。そいつを寄越しやがれ!!」


フーガモンはディアトリモンへと棍棒を振り下ろすが頭部で攻撃を受け止めてそのまま押し返す


フーガモン「何ぃッ!?」

レッパモン「あのフーガモンのパワーを押し返すなんて」

ことり「ディアトリモン、あの瓦礫を退かせて」

ディアトリモン「ギャーース!!」


ディアトリモンは翼をすぼめると猛ダッシュで入り口に積まれた瓦礫に向かって体当たりをした

瓦礫の大部分は吹き飛び通るのに十分な広さが出来る

ことり「レッパモン、海未ちゃんを連れて早く外へ」

ことり「ことりは少しだけこのデジモン達とお話があるから」

海未「そんな、危険です。ことりも一緒に……」

ことり「海未ちゃんお願い、ここは危ないから、だから逃げて」

海未「ですからことりも……」

レッパモン「ごちゃごちゃ言ってないでさっさと逃げるわよ」


いつの間にか近づいていたレッパモンは海未を無理矢理に背中へと乗せると急いで出口へと向かう


海未「レッパモン戻って下さい、あのままではことりが!」

レッパモン「冷静になりなさい。貴方が戻っても足手まといになるだけよ」

レッパモン「それに、どうやら私も、限界…みたい」


アジトの外へと出たと同時に倒れたレッパモンはクダモンへと退化してしまう


クダモン「ごめん、少し眠る…わ」

海未「クダモン!!」


慌ててクダモンへと駆け寄る海未だったが息はあるようでとりあえず安堵する

ことりの事は心配であったが確かに自分が行っても邪魔にしかならないだろう

岩場に座りクダモンを腿の上に寝かせる


海未「私がことりと花陽を守らなければと思っていましたが」

海未「結局私1人では何も出来ないのですね」


今、海未が出来るのはことりが無事に戻るのを祈る事と傷ついたクダモンの背を撫でる事だけであった

―――――――――――――――――――


フーガモン「チッ、1匹逃げられちまったか」

フーガモン「まあいい、こいつを捕まえたらそれで十分だろう」

オーガモン「兄貴この鳥野郎は」

フーガモン「あぁ、どうやらさっきの狐よりも強いようだが俺達2人なら」

ことり「……さないよ」

フーガモン「あん?」

ことり「許さないって言ったの」

ことり「海未ちゃんを、私の大切な友達を泣かせた貴方達を私は許しません!!」

フーガモン「許さなかったらどうするって言うんだ?てめぇ1人でよぅ」

フーガモン「それに足だって震えてるじゃねぇか。弱い奴が粋がるんじゃねぇよ!」

ことり「私は弱いし今だって怖いです。でも1人じゃない」

ことり「今の私にはこの子がいるから、だから1人じゃないの」

ことり(ごめんね海未ちゃん、本当は海未ちゃんのためじゃなくてことりのために外に出て貰ったんだ)

ことり(ことりが弱いから、言えなくてごめんね)


ことりは目を閉じて大きく深呼吸をした後に再び敵を見据える



ことり「行くよ、ディアトリモン!!」



『スピカテリブル』



ことりのデジヴァイスが白い輝きを放った

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


海未(あれからどのくらい経ったでしょうか)

海未(待つことしか出来ない時間がこんなにも長いだなんて)

海未(ことり、どうか無事に帰ってきてください)


「……ちゃ~~ん」


海未(ん?この声は)


ことり「海未ちゃ~~ん、ただいま~」

海未「ことり!無事でですか?怪我などしていませんか?」

ことり「うん、私もファルコモンも何とも無いよ」

ファルコモン「ホーホー」

海未「それなら良かった……あの、それで山賊達は」

ことり「それは~~少し驚かしたら逃げちゃったみたい」

海未「逃げた?あのデジモンがですか?」

ことり「うん、ディアトリモンが暴れたからかな。きっともう悪さもしないはずだよ」

ことり「花陽ちゃんも待ってるだろうし早く戻ろ」


ことりは足早にエレベーターへと向かって走り出す


ことり「海未ちゃん早く早く~」

海未「あっ、ことり待って下さい」


海未はことりの言葉に違和感を感じながらも聞くことが出来ず

眠ったままのクダモンを抱いてエレベーターに乗り込む

二人は何を考えるのか、頂上へと着くまでの間は口を開かなかった

バードラモン「無事に私のお願いを叶えてくれたようね」

海未「はい、ことりとファルコモンのおかげです」

ことり「そんな事ないよ~」

ファルコモン「ホーホーッ」

海未「そう言えば、助けて貰って何ですが何故ことりは私のところへ?」

ことり「花陽ちゃんが海未ちゃんの事が心配だから後を追って欲しいって言ってくれたんだ」

花陽「だってことりちゃんってば海未ちゃんが行ってからずっと心配そうにソワソワしてたから」

花陽「それに、何かあったらバードラモンさんが守ってくれるって言ってくれたし」

バードラモン「普通は会ったばかりのデジモンの言う事を信じて一人残ったりなんてしないものよ」

花陽「そうですか?でも、バードラモンさんはちゃんと守ってくれる気がします」

バードラモン「相手を信じるのは良い事だとは思うけど、程々にしないとダメよ」

花陽「は、はい、気をつけます……」

海未「結局は皆さんの心遣いに助けられたと言う事ですね、ありがとうございます」

バードラモン「お礼を言うのはこちらの方だわ」

バードラモン「それじゃ今度はそちらのお願いを叶える番ね」


バードラモンは海未達の近くに降りると大きく翼を広げ


バードラモン「さあ、私の足に捕まりなさい」

「…………」


海未達の間に沈黙が流れる

ことりの顔は作り笑いをしながらも顔から血の気が引いており、花陽に関してはすでに涙目である

こちらの様子を不思議そうに見ているバードラモン

海未「あ、あの……」

バードラモン「何かしら?」

海未「足に捕まってそのまま飛ぶって事でしょうか?」

バードラモン「そうよ」

海未「乗り物などは……」

バードラモン「無いわよ」

海未「もし落ちたら……」

バードラモン「出来る限りは助けるわよ、出来る限りは」

バードラモン「昔乗せた子は落ちなかったからきっと大丈夫よ」

海未「……ことり、花陽。諦めて捕まりますよ」

ことり「むりむりむりむりむりーー」

花陽「あーん、ダレカタスケテェー」


その後、諦めて捕まった3人にバードラモン一言言って飛び立った

「怖いのなら早く着くように全速で飛ぶわね」

その言葉に返事をするまでも無くバードラモンは宙を舞う

飛行中に花陽は失いそうな気を辛うじて保ちつつこう思うのであった

ジェットコースターとは何て安全な乗り物だったのだろうか、と

今回はこれで終わり

早く完全体や究極体を出したいけれど飛ばすわけにもいかずダラダラとしてしまう

時間は少し遡る



まだ午前中だと言うのに焼け付くような夏の陽射しがジリジリと照り付けている

全開に空けた窓からは僅かばかりの生温い風が入ってくるだけ

そんな中、生徒会室で2人の少女が汗を拭いつつもせっせと書類の整理をおこなっていた

この部屋の主と言うべき少女は金色の長い髪を後ろに束ねつつもう1人の少女に話しかける


絵里「もう、何で日本の夏ってこんなに暑いのかしら」

希「えりちったら、まるで外国人みたいな言い方やな~」


黒髪の少女はニヤニヤと笑いながら少し意地悪そうに返事する

しかし金髪の少女はその意図に気付いているのかいないのか普段通りといった感じで会話を進めていく

絵里「もう、何年も日本に住んでるけれどこの暑さは慣れないわ」

希「そうやねぇ、今時じゃ教室内に冷房設備が着いている学校も多いみたいやし」

絵里「廃校寸前の音ノ木じゃそんなの設置する予算があるわけないじゃない」

希「それで他の学校に生徒が流れるっと」

絵里「嫌な事言わないでよ、学校の設備なんてそれこそ私達じゃどうしようもないわ」


彼女達はこの学院の生徒会長と副会長である

そしてもう一つ彼女達には肩書きがある

音ノ木坂学院 スクールアイドルグループ 『μ's』

廃校寸前の状況を何とか打開しようと彼女達は日々活動している

希「そうやね、μ'sも少しづつ人気が出てきているし入学希望者も増えてくれると良いんやけど」

絵里「増えてくれると、じゃなくて増やすのよ。絶対に廃校になんてさせないんだから」

絵里「お婆様が通って、亜里沙だって入学するのを楽しみにしていた」

絵里「学校が存続されたらきっと亜里沙だって……」

希「んっ、亜里沙ちゃんどうかしたん?」

絵里「あ、いえ、何でも無いわよ。ほら、さっさと仕事終わらせて練習に行きましょ」


生徒会の仕事を続けていると風に流れてある音楽が聞こえてくる

一定のリズムで繰り返されるピアノの演奏

希「この演奏は真姫ちゃんやんな」

絵里「ボレロね。これってバレエの音楽なのよ、懐かしいわ」

希「それにしても、さっきまで暑かったのに寒くなってきたんやけど窓閉めてええかな?」

絵里「確かに寒いわね、天気も悪くなってきたし雨でも……えっ?」

希「うわぁ雪降ってるやん、真夏に雪やなんてスピリチュアルな事もあるもんやね」

絵里「これって異常気象……まさか」


ピカッ!! ドゴーーン!!!

「キャーー!!」

空の輝きと共に聞こえる音と悲鳴


絵里「何よ今の音、雷が落ちただけにしては凄い音だったけど」

希「え、えりち、あそこ……」


窓から見えたのは壁が壊れた校舎の一室

先ほどまで綺麗な音色が聞こえていた音楽室は無残に崩れ落ちていた

絵里「まさか……」


絵里は青い顔で生徒会室を飛び出す


希「えりち、待って!」


そしてその直後に再び起きる光と轟音

またどこかに落ちた?

絵里の事も心配だったが落ち着いて窓の外を確認する

音楽室以外に煙が上がっている場所が一つ


希「うそ、なんで……」


煙が上がっていたのは先ほどまでμ'sのメンバーが練習をしていた屋上だった

生徒会室からでは屋上の様子は見えないが人が動いている様子は無い

希は部屋を出て廊下を全力で走り出した


希(1度目の時点で部屋を出たえりちは音楽室へ向かったはず)

希(だったらうちは屋上に行って残りのメンバーの無事を確認しないと)

希(大丈夫、きっと最初の雷でみんな避難してきているはずやから途中で会える)

しかし希の希望も虚しく誰ともすれ違わないまま屋上の入り口へとたどり着いてしまう

きっと自分の通ったルートとは別のルートで避難したに違い無い

もしかしたら屋上のどこかに隠れているかもしれない

出来る限りポジティブに考えながら焦げた臭いが漏れる扉を開けた

絵里「何よこれ」


音楽室の近くまで走った絵里の足が止まる

廊下は白い煙霧が充満して先が見えなくなっていたのだ

絵里はハンカチで顔を抑えてゆっくりと煙霧へと近づく

特に臭いはしないが身体に害が無いとは限らない

しかし今は出きるだけ早く音楽室の状態を確認したかった

場所はわかっているのだ、意を決して煙霧の中へと飛び込んでいく


絵里(この辺りのはずなんだけど)


煙霧の中で音楽室への扉を探すがなかなか見つからない

何度も来ている場所であり間違えるはずも無いと思っていた、しかし

絵里「え?嘘……」


音楽室への入り口が見つからないまま煙霧を抜けた場所は音楽室を通り過ぎた先だった

急いで元の道を戻るがやはり音楽室への扉を見つける前に煙霧を通り抜ける

たった数十メートルの距離で何度も扉を見落とすわけがない


絵里「何で見つからないのよ、早くしないと真姫まで……」

絵里「この霧のせいで扉が見つからないんだとしたら」


絵里はポケットから機械を取り出し煙霧にライトを照らす


絵里「絶対、絶対に見つけてやるわ」

屋上の扉を開けると同時に希の周囲は煙幕に包まれた

驚いて結構な量を吸い込んでしまったがとくに苦しくは無い

少なくとも直ちに影響がある類のものでは無い様だ

希は屋上へと出るが煙が濃くて周りの様子はわからなかった


希「みんなーー!!誰かーー!!いないんかー!!」


大声で叫ぶが返事は無い

やはりみんな避難していたのか、それとも……

ガラッ

瓦礫が崩れる音が聞こえそちらを振り向くと何かが動く影が見えた

影の大きさは1メートル無いくらいだろうか

人の動きに似ているが一番小さなにこでもここまで小さくは無い

だったらアレは何か……少しづつ近づいてくるソレが煙の中から姿を現す

モノドラモン「おい、お前何者だ?」


〝モノドラモン〟
成長期 ワクチン 小竜型

両手にはこうもりのような翼がついている小竜型のデジモン。
翼を持ってはいるが空を飛ぶ事は出来ない。。
必殺技は『ビートナックル』は、ものすごい勢いで突撃して強力なツメでぶんなぐるという単純明快な大技



希「か、怪獣!?」


それは紫色の身体の小さなドラゴンのような生き物

そんな漫画やアニメでしか見た事の無い生き物が私達と同じ言葉でこちらに話しかけている


モノドラモン「お前、聞いているのか」

希「え?あ、あのうちは東條希って言うんやけど……」

モノドラモン「トウジョウノゾミか、俺はモノドラモンって言うんだ」

希「モノドラ……ってあんた何者なん?こんなところで何を、それよりもここにいた人達のこと知らん?」

モノドラモン「そんなに一遍に聞かれてもわかんねぇよ」

希「ごっ、ごめんなさい」


モノドラモンはきつい物言いではあったが怒気は篭っている様子は無い

希は目の前にいるスピリチュアルと言うにはリアルすぎる生き物の前に戸惑ってはいるものの

こちらを警戒されないよう出来るだけ平静を保つように努めていた


モノドラモン「まずは俺はモノドラモン、デジモンの一種だ。断じてナニモンじゃない」

モノドラモン「ここにはあるデジモンを追ってきた」

モノドラモン「そして、おれがここに来た時は他に誰もいなかった」

希「でじもん?それって一体、いやそれよりも本当にここには誰もいなかったん?」

モノドラモン「あぁ、少なくともおれが来た時には誰も……」



「キャーーーッ!!」

突然の悲鳴にモノドラモンの会話が途切れる


希「えりち!?」

聞き覚えがある声に反応し、希はすぐに屋上を飛び出して絵里がいるであろう音楽室へと向かう

どうやら後ろからモノドラモンも着いてきているようだがこちらに危害を加える様子は無い

色々な事が起きすぎて何をすればいいのかは解らなかったが

とりあえず今は絵里のいる音楽室へと向かう事を優先する事にした

雷が落ちた場所にいたモノドラモンは〝デジモンを追ってきた〟と言っていた

絵里の向かった音楽室にも同じく雷が落ちている

今の悲鳴はその追ってきたデジモンに会ったからかもしれない

それに音楽室には真姫ちゃんがいるはずだが、もしかしたら……

他のみんなの事も気になるが今はとりあえず絵里の事が気がかりだった

音楽室前の廊下は霧のようなものがかかっていたが気にせずそのまま突っ込んだ

希「あれ!?何で……」


霧を抜けるといつの間にか音楽室を通り過ぎていた

3年間何度も行き来している教室だ、今更場所を間違えるはずが無い

もう一度霧の中に入るがやはり音楽室を通り過ぎてしまう


希「そんな、どういうことなん」

モノドラモン「どうやらこの霧の中はデジタル空間になっているみたいだな」

希「え?デジタル空間?」

モノドラモン「簡単に言えば俺達の世界と繋がっているって事だな」


いつの間にか後ろにいたモノドラモンはそう言うと何かの希へと機械を投げた

突然投げられた機械を何とか受け止める希

その機械は手の平程の大きさでシルバー外観に大きなディスプレイ

そしてその右横側には溝のようなものがある

希「えっと、これは?」

モノドラモン「それはアーク、おれの元パートナーが持っていたものだ」

希「これがあれば音楽室に入れるんか?」

モノドラモン「あぁ、でもそれを使うには条件がある」

希「もう、急いでるんやから早くして!」

モノドラモン「それはおれとパートナーになる事……」

希「よくわからんけどなるから早く、えりちの事が心配なんよ」

モノドラモン「……よし、ならば契約は完了だ」

希「うわっ!!」


希の持っていたアークが輝くと一部の色が紫へと変わっていく


希「凄い……これどうなってるん?」

モノドラモン「原理はわからないがこれで霧の中に入れるはずだぜ、そいつを霧に向けてみろ」

希「こう?」


希がアークを霧へと向けるとディスプレイからの光で霧の中が照らされる


希「よし、急いでえりちの所に行くよ」

モノドラモン「あぁ、よろしくな。パートナーさん」

以上、先週末に更新予定がずいぶん遅くなりました

続きも近いうちに更新する予定です

絵里「キャーーーッ!!」


絵里が音楽室へと入ると黒い何かが室内を飛び回っているのを見て悲鳴をあげた

その何かは小さな身体に黒い羽と鋭い牙、まるで物語に出てくる悪魔のような見た目をしている


絵里「あ、あんた!何者よ!!」

イビルモン「イビ、イビ、イビビビビ」


〝イビルモン〟
成熟期 ウイルス 小悪魔型

気が強く負けずぎらいの小悪魔型デジモン。
強い相手には直接戦わず、チクチクと弱いものをいたぶるひきょうもの。
必殺技は、口から出す超音波で覚めない悪夢を見続けさせる『ナイトメアショック』

絵里が室内を見渡すと落雷の影響で外側の壁は崩れ、ところどころは焦げたようになっており

置いてあったピアノもその椅子もバラバラに壊れてしまっていた


絵里「私達の音楽室をこんなにして、真姫は、真姫はどうしたのよ!!」

イビルモン「イビビ、ビビビビ」

絵里「どうやら話は通じないようね」

絵里(ピアノや椅子の残骸はあるのに真姫の姿は見えないわね)

絵里(いくら雷が直撃したとしても真姫だけ消えてしまうなんて無いはず、やっぱり……)

絵里「手がかりは貴方しかいないようだけど」

イビルモン「イビ、イビビ、イビーィィィィ」

絵里「な、何?……くっ、耳が……」

イビルモンが鳴き始めると絵里は突然の耳鳴りに襲われた

イビルモンの必殺技『ナイトメアショック』

その技の威力は他のデジモンに比べれば弱いものだが相手に悪夢を見せ続けるという恐ろしい技である


絵里「んぅっ…あっ……待って……ダメ、行かないで……あr」

モノドラモン「見つけたぜ、『ビートナックル!!』」

イビルモン「イビッ!?」


音楽室へと飛び込んだモノドラモンはそのままの勢いでイビルモンへと突進して爪を振るう

不意打ちを食らったイビルモンは壁へと叩きつけられた

希「えりち!!大丈夫!?」

絵里「あっ…の、のぞみ……どうして」

希「助けに来たに決まってるやん、えりちはそこで休んでて」

希「あいつがモノドラモンの言ってた探し人君なん?」

モノドラモン「人じゃなくてデジモンだけどな」

イビルモン「イビッ!イビビビッ!!」

モノドラモン「あっちもやる気のようだな。希、こっちも行くぞ!」

希「イクって、うちはどうすればいいん?」

モノドラモン「アークの溝にカードを通せ、そうすれば想いが力になるはずだ」

希「カードを通すって……」

カードと言っても希の持つカードなんてタロットくらいのものだ

希はポケットからタロットを一枚取り出し見つめる

そのカードは『戦車』

正の意味は勝利、征服、成功


希「えぇい、なるようになれや!カードスラッシュ!!」


希が溝へとカードを通すとアークは輝きを放ちそのディスプレイに文字が表示されていく


EVOLUTION_


『モノドラモン進化!――ストライクドラモン!!』



短いですがここまでで

よりによっての場所に誤爆したせいでお腹痛い……

ストライクドラモン「ウオォォォォォォォォ!!!!」

希「モ、モノドラモンが変身した!?」

ストライクドラモン「タオス、ウイルス、オレガ、タオス」

希「でも……なんか様子がおかしいような気が……」



イビルモン「イビーィィィィ!!」


イビルモンが再び『ナイトメアショック』を使おうと大きく口をあける

だがそれと同時にストライクドラモンはイビルモンとの距離を一気に詰めて左手で口を塞ぎ


イビルモン「ンビッ!?」

ストライクドラモン「ウオォォォォ!タオス!タオス!タオス!!」


そのまま空いている右手でイビルモンの顔面を殴りつけた

イビルモン「ンィィィィィイイ!!」


イビルモンは悲鳴をあげながら暴れるがストライクドラモンの腕を振り払うことは出来ない

その間も何度も何度もストライクドラモンは拳を振るい

それはイビルモンが動かなくなっても止まることは無かった


希「モノドラモン止めや!いくらなんでもやりすぎやん!!」

ストライクドラモン「グルルルルル」


しかし希の言葉に反応する事は無く殴り続ける

戦車のアルカナの逆位置の意味は失敗、不注意、そして暴走

その名の通り制御が効かない戦車のようなその様子に味方であるにも関わらず恐怖を感じる

希「ダメや、何とかする方法は……」


力では当然敵わない、ならば……

こうなった原因でもある機械『アーク』

これにカードを通した事でこうなったのなら、これを使う事でどうにか出来るかもしれない

希はポケットから新たにタロットを1枚取り出してカードを通した


希「カードスラッシュ!『吊るされた者』!!」


するとアークから光の帯が伸び、その先はストライクドラモンの首へと巻きついていく

突然の拘束にストライクドラモンはイビルモンを手放し首に巻きついた光の帯を引き千切ろうとする

しかしそれはかなわず、イビルモンの身体がデータの塵になるとストライクドラモンも元のモノドラモンの姿へと戻っていった

希「ふぅー、何とか戻ったようやね」

モノドラモン「あぁ、すまない。どうもウイルス種のデジモンを見ると昂ってしまって」

希「昂ったって完全に自分を見失ってたやん!」

絵里「あ、あの、希?その怪物はいったい……」

希「えっと、何かよくわからんけど、ここに来るのに必要やったからパートナー?になったんよ」

絵里「ぱーとなー?あっ、それよりさっきの奴、手がかりが」

モノドラモン「さっきの奴ってイビルモンの事か?」

絵里「名前はわからないけど、せっかくの向こうの世界の手がかりだったのに」

希「向こうの世界って、何の話なん?」

絵里「さっきの怪物のいる世界よ、きっとそこに……真姫達もいるはずよ」

モノドラモン「イビルモンが来た事で代わりにこの世界の人間が俺達の世界、デジタルワールドに転送されたって事か」

希「そんな、そんな事がありえるん?」

モノドラモン「わからないが、ありえない話じゃ無いだろうな」

希「じゃあもしかしてにこっち達も……」

絵里「えっ?にこ達もってどういう事なの?」


希は屋上の様子とモノドラモンとの出会いについて簡単に絵里へ話した

他のメンバーの携帯電話に連絡を入れてみるが誰一人として繋がらない

やはり自分達以外のメンバー全員別の世界へと行ってしまったのだろうか

希「こっちからそのデジタルワールドに行く事は出来ないんかな?」

モノドラモン「それは可能だが、行き来をするためのゲートが必要だ」

希「ゲート?」

モノドラモン「デジタルワールドとこの世界を繋ぐ道の事をそう呼んでいる」

絵里「なら貴方が来た時のゲートを使えば」

モノドラモン「いや、簡単に説明すると最近デジタルワールドからこちらへ無理矢理デジモンを送っている奴がいてね」

モノドラモン「その調査中に転送中のイビルモンを見つけて一緒にこっちへと来たんだ」

希「つまり、さっきのデジモンもモノドラモンもゲートは使って無いんやね」

モノドラモン「アークを使えばゲートを探す事が出来るがそう簡単には見つからないだろうな」

希「えっと、ここ押せばいいんかな」

希がアークのボタンを押すとディスプレイにこの周辺の地図が表示された

その中で一箇所、音ノ木坂からさほど遠くない場所で丸い印が点滅していた


希「何か点滅してるんやけど」

モノドラモン「なっ、ゲートの反応がある!しかもこんなに近くに!?」

希「ふふん、流石ラッキーガール希ちゃんやね」

絵里「ここって……秋葉原駅辺りかしら」


すると突然「おーーい」と遠くから誰かの声が聞こえてくる

希と絵里には聞き覚えのある大人の声、おそらく当直の先生だろう

イビルモンを倒した事で音楽室の周りの霧が晴れて外からの干渉が可能となっていた

希「先生か、どうしようえりち」

絵里「どうしようって……こんな事説明してもきっと信じて貰えないわ」

絵里「それにモノドラモンだって捕まったら何されるか」

モノドラモン「それは困る」

絵里「とにかく、みんなを探す為にも今はそのゲートの場所へ行ってみましょう」

希「うん、わかった」


希はポケットに手を入れると一枚のタロットを取り出す

幸運を暗示するそのカードを見て少しだけ口元が緩んだ


希(大丈夫、きっとみんな無事に帰ってくる)

希「さあ、行こう。えりち、モノドラモン」


彼女達の運命の輪は回りだしたばかりだ

ここまで


希達の冒険はこれからだ!!

絵里「希、本当にここなの?」


アークに表示された地図を元にゲートを探しに秋葉原まで来た希達

目的のゲートがある場所へとたどり着くがゲートの反応はある建物の中を表していた

秋葉原駅の目の前にある高層ビルのような建物『UTX学院』

地図の点滅はその校舎を表していたのである

希「そのはずなんやけど……本当にこんなところにゲートがあるんかな」

モノドラモン「場所に間違いは無いはずだが、問題はこんな大きなゲートが発生し続けている件だな」

絵里「大きいってどのくらいの大きさなの?」

モノドラモン「反応から見て直径5メートル程はあると思うんだが」

希「5メートルって横はともかく高さは余裕でワンフロア突き抜けてるんやないの?」

絵里「もしくは体育館や講堂のような大きな場所とか……」

希「でもそんなところにあったら大騒ぎになるんやない?」

絵里「そうよね、そんな大きなものが学院内にあって誰にも見つからないだなんてどう考えてもおかしいわ」

絵里「そうなると誰かが意図的に隠してるとしか……」

絵里「……とにかく中に入ってみない事にはどうしようも無さそうね」


絵里の言葉に希が頷くと一行は校門へ向かい歩き出した




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ファクトリアタウンでの事件から一晩が明け、穂乃果達は再び管制室へと集まっていた


穂乃果「おはよーメタルマメモン」

メタルマメモン「あぁ、おはよう。よく眠れたかな?」

にこ「おかげさまで、工場内とは思えないほど静かだったし久しぶりにベッドでゆっくりさせて貰ったわ」

凛 「最初にオイルが出てきた時はどうしようかと思ったけどご飯も美味しかったにゃ~」

メタルマメモン「満足して貰えたのなら良かった」

ブイモン「それで、そろそろ凛の友達を探しに出ようと思うんだ」

メタルマメモン「わかった、昨日見た彼女達はどうやらグランドキャニオンからはじまりの町へと移動しているようだ」

にこ (はじまりの町って確か昨日人影が見えた場所)

ルナモン「はじまりの町って昔は島の中心で栄えてたけど今は廃墟になってるんじゃなかったルナ?」

ブイモン「何でそんなところに……」

穂乃果「とにかくそこに行けば海未ちゃん達に会えるって事だよね、急いで行かなきゃ」

メタルマメモン「ホエーモンなら深海の洞窟を通ってはじまりの町にある池へと直接行けるはずだ」

凛 「やったーこれならすぐにかよちんに会えるね」

穂乃果「よーし、さっそくその町へ向かおう。ありがとうね、メタルマメモン」

メタルマメモン「あぁ、無事に仲間に会えることを願っているよ」


アグモン「……あ、あのメタルマメモン」

メタルマメモン「ん?どうかしたのか?」

アグモン「い、いや、何でも無いや。またね」

メタルマメモン「…………」

???「へぇ~自然ばっかりだと思ってたけどこんな場所もあるのねぇ」

???「あまり気を抜くな、任務中だぞ」

???「もう、そんなに怖い顔しなくてもわかってるわよ」

???「油断は禁物よ、いつ凶暴な《Wild One》が出てくるかもわからないんだから」

???「心配性なんだから、どうせ私達に敵う奴なんていないわ」

???「待て!前方から何か来るようだ」



凛 「いっくぞー!穂乃果ちゃんこっちこっちー!はやく~」

穂乃果「待って凛ちゃん!」

凛 「ほらほらっ」

ブイモン「りーん、待ってよー」

アグモン「2人とも元気だなぁ」

にこ「ちょっとあんた達、そんなに走らないの!!」

ルナモン「そんなに急いでもまだホエーモンが来るまで時間があるルナ」

凛 「あはは……にゃにゃ!?」

穂乃果「凛ちゃんどうしたの……えぇ!?」


凛と穂乃果が港へと到着するとそこには3人の少女が立っていた

一人は長身でサラサラのロングヘアに切れ長の目でクールな雰囲気を漂わせて

一人はゆるくパーマのかかった髪を指で巻きつつ女の子らしい可愛い仕草で

そして一人はショートヘアに大きくおでこが特徴的で自信に満ちた笑みを浮かべながらこちらを見据えている


???「へぇ、私達以外でこの世界にいる人間なんて始めて見たわね」

???「ねぇねぇ、この子達ってどこかで見たことない?」

???「確か同じ地区のスクールアイドルだな」

???「ふーん、貴方達もスクールアイドルなのね」

凛 「凛達以外にも人がいたにゃ!!?」

ブイモン「ほんとだ、初めて見たよ」

穂乃果「し、しかもこの人達ってまさか」

にこ「あれ?こんなところで止まってどうしたの……う、う、う、ううぅぅ嘘!!?」

穂&に「A-RISE!!?」


凛 「あらいずって誰だったかにゃ?」

にこ「なーに、言ってるのよA-RISEって言ったら大人気、いえ超人気のスクールアイドルよ!!」

ツバサ「あら、私達の事を知ってくれているなんて。嬉しいわ」

穂乃果「な、何でA-RISEのみなさんがこんなところに?」

英玲奈「それはこちらが聞きたいところだな」

あんじゅ「そうよねぇ、《Wild One》も連れているみたいだしもしかして貴方達もテイマーなのかしら」

凛 「わいるどわん?ていまー?」

穂乃果「あの、私達は学校の屋上で練習していたら雷が落ちて、気付いたらここにいたんです」

英玲奈「そんな見え透いた嘘を」

穂乃果「う、嘘じゃありません!私達は本当に……」

ツバサ「そんな事はどうでもいいんじゃない?」

穂乃果「……え?」

凛 「そんな、こっちは色々と必死だったのにどうでも良いだなんて酷いよ!」

ツバサ「英玲奈、こちらの世界で別のテイマーに会った場合のマニュアルはどうなってたかしら」

英玲奈「相手がこちらに投降するのなら身柄を確保、こちらに反抗するようならば拘束、連行する」

英玲奈「なお、どちらの場合にも《Wild One》はデリートする」

ツバサ「ふふっ、そうそう。そうだったわよね」

凛 「あの人達が何を言ってるのかさっぱりわからないんだけど」

ルナモン「テイマーがにこにー達の事なら《Wild One》っていうのは私達の事みたいルナ」

アグモン「じゃあボク達をデリートするって事は……」

ツバサ「へー《Wild One》の割には察しが良いみたいね」

穂乃果「ちょ、ちょっと待ってください!アグモン達は悪いデジモンじゃないんです!」

英玲奈「でじもん?君達はそれをそう呼んでいるのか」

あんじゅ「良い悪い関係無くイレギュラーな《Wild One》は全部デリートしなきゃいけない存在なのよね」

穂乃果「そんな……なんで……」

ツバサ「理由なんてどうでもいいわ、後はそこの《Wild One》をデリートしてから聞いてあげる」

ツバサ「もしそれが嫌なら、精々抗ってみなさい」

ツバサ「出てきなさい!レオルモン!!」


ツバサが機械を取り出すとそのディスプレイから光が飛び出し

その光の中からライオンの子供のようなデジモンが現れる


〝レオルモン〟

成長期 ワクチン 聖獣型

黄金色の体毛を持つ聖獣型デジモン。
頭の毛は警戒時に静電気を帯び、威嚇の音を出すという。
必殺技は鋭い爪で敵を切り裂く『レオクロー』と、キバで敵の急所を狙う『クリティカルバイト』

レオルモン「グルルルルルゥ」

凛 「あの電話みたいな機械の中からデジモンが出てきたよ!?」

ブイモン「もしかしてあれがあいつのデジヴァイスなのかも」

凛 「凛のも形が変わっちゃったけどあれも全然形が違うね」


英玲奈「どうやらデバイスの形も違うようだな」

あんじゅ「メンバー内でも違うみたいだし、もしかしてどこかの混成部隊とか?」

ツバサ「良いじゃないの少しは私を楽しませてみせなさい」

ツバサ「デジソウルチャージ!!」


EVOLUTION


子供のライオンのようなレオルモンの姿が一瞬にして変わる

2本の足で立ちその全身は強靭な筋肉の壁で包まれており、腰には一本の刀を携える

顔の周りに生える金のたてがみをなびかせる姿は正に百獣の王と呼ぶに相応しい威圧感を感じさせていた


〝レオモン〟
成熟期 ワクチン 獣人型

気高き勇者とも呼ばれる獣人型デジモン。
強い意思と正義の心を持ち、日々の鍛錬で鍛え上げられた強靭な肉体はあらゆる攻撃に耐る
「獅子王丸」という意思を持った妖刀を腰に携え、必殺技の究極奥義『獣王拳』で敵を倒す

今回はここまで

死亡率100%のデジモン出てきたwww
にしてもデジモンを全てデリートすると言ってる割にはちゃっかりデジモン持ってるけどどういうことよ

レオモンが出た時だけこんなに反応があるとか嫉妬するわ……

>>436
あくまで(彼女達にとって)イレギュラーなデジモンがデリート対象なので悪影響が無ければ基本は放置です
自分達以外の人間が連れているデジモンも何をしでかすかわからないので対象になります


それでは続き

レオモン「グルルルァァァァッ!!!!」

にこ「ほんとに進化した……」

ツバサ「さぁ、貴方達も本気を出さないと一緒でデリートされる事になるわよ」

凛 「もう!何でちゃんと話聞いてくれないのさ!!行くよ、ブイモン!!」

ブイモン「わかった!!」



『ブイモン進化!――エクスブイモン!!』

ルナモン「にこにー、私達も行くルナ」

にこ「で、でもあのA-RISEと戦うなんて……」

ルナモン「何言ってるルナ、相手がアイドルなら尚更負けるわけにはいかないルナ」

ルナモン「あいつらを蹴散らしてにこにーとルナが宇宙No.1ってところを見せてやるルナ」

にこ「そ、そうよね、ラブライブでもやり合うんだしこんなところで気後れするわけにはいかないわよね」

にこ「よーし、ルナモン行くわよ!」



『ルナモン進化!――レキスモン!!』

アグモン「穂乃果、ボクも進化だよ!」

穂乃果「ダメ、ダメだよ。だって私達が戦う必要なんて無いんだよ?」

穂乃果「戦ってもどっちかが、ううん、どっちも傷つくだけなんだから」

アグモン「何もしなきゃこっちがやられるだけだ」

穂乃果「だからってこっちがやり返してもきっと何も解決しないよ、ちゃんと話し合わないと」

アグモン「穂乃果……」


あんじゅ「どうやら相手は2体みたいね、手伝いはいるかしら?」

ツバサ「必要無いわ、私一人で十分よ。レオモン行きなさい」

レオモン「グワァオゥ!!」

雄たけびと共にレオモンがエクスブイモンに向かって飛び掛り拳を繰り出す

その攻撃をエクスブイモンは腕をクロスさせて受けるが堪えきれずに吹き飛ばされてしまう


エクスブイモン「くっ!何てパワーだ」

レオモン「ウオォォォッ!!」


レオモンは倒れてバランスを崩したエクスブイモンへと更に追い討ちをかけにいく

しかし、その進行を妨げるように数十もの氷の矢がレオモンの前へと襲い掛かった


レキスモン『ティアーアロー!!』


レキスモンは背中の突起から次々と氷の矢を引き抜き飛ばしていく

勢いを殺されたレオモンは後ろへと飛び攻撃を回避するが今度はエクスブイモンが追い討ちをかける

エクスブイモン『エクスレイザー!!』


エクスブイモンの胸から発射した光線がレオモンへと直撃する

その直前にレオモンは腰から愛刀の獅子王丸を引き抜くとエクスレイザーを切り裂いた


エクスブイモン「そんなっ!?」


切り裂かれたエクスレイザーはレオモンの背後で爆風を放つ

その爆風に目を背けた瞬間、エクスブイモンは目の前にいたはずのレオモンの姿を見失っていた


エクスブイモン「しまった、何処に?」

その直後、「キャーー!!」という叫びが聞こえエクスブイモンが振り向く

そこには刀を振り降ろすレオモンと背中から切られるレキスモンの姿があった

レキスモンは3体の中ではダントツに動きが早い

そのレキスモンが距離を取っていたはずの相手からこうも簡単に、しかも背後からの攻撃を受けるだなんて

このレオモンはパワーもスピードもこちらよりも圧倒的に勝っているのだ


にこ「いやーーっ!!レキスモン!!」


にこの悲痛な叫びが響くがレキスモンに返事無い

息はあるようだがその背中からは大量の血が流れていた

エクスブイモン「レキスモーーン!!」


近くにレキスモンがいる以上エクスレイザーは使えない

エクスブイモンは翼を羽ばたかせ、全速でレオモンへと向かい突進をかける


エクスブイモン『ハーティシャッター!!』


空中からの全力の突進。並みの成熟期なら一撃で吹き飛ばす程の威力である

しかし、レオモンはその突進を左手一本で受け止めてしまう


エクスブイモン「うっ……ぐっ……!!」

レオモン「グルルルルルゥ!!」


レオモンは空いている右手を握り締めるとその拳に力を込めていく

エクスブイモンは一度距離を取ろうとするが捕まれた左手を振りほどく事が出来ないでいた

やっとの事で左手から解放されたその時、すでにレオモンの拳からは獅子の頭を模した闘気が放たれた後だった

必殺技である『獣王拳』をまともに受け、エクスブイモンの身体はファクトリアタウンの壁へと叩きつけられる

重症を負ったレキスモンとエクスブイモンはそのまま成長期へと退化してしまう

穂乃果「そんな、2人ともあんなに簡単に……」

凛「ブイモン大丈夫!!しっかりして!!」


凛は倒れたブイモンの元へと駆け寄り傷だらけのブイモンを抱き寄せる

気絶しているのか返事は無いが息はしているようだった


にこ「ルナモン!!」


にこも倒れているルナモンへと駆け寄ろうとする

しかしその目の前にはレオモンが立ちふさがっていた

にこ「アンタよくもルナモンを……そこを退きなさいよ!!」

レオモン「…………」


ツバサ「残念ね、少しは歯応えがあるかと思ったけれど、こんなもの……」

あんじゅ「私たちと同じスクールアイドルって言うから少し期待したんだけどなぁ」

英玲奈「2人ともいい加減にしろ、早く終わらせて本来の任務に戻らなければ」

ツバサ「わかってるわ、レオモンそいつらに止めを刺しなさい」

にこ「や、やめて!!お願いだから!まだ会ったばかりだけど、この子は私のパートナーなの!!」

ツバサ「何を言ってるの?そいつらは只のデータの塊よ」

ツバサ「この行動だって自分達を守る為にそうプログラムされてるだけ」

ツバサ「こいつら《Wild One》に自分の意思なんてものは無い、人形と同じなのよ」

にこ「くっ……そんな……」

凛 「違う!ブイモンは人形なんかじゃないよ!!」

にこ「凛!?」

凛 「ブイモンと一緒にご飯を食べて、一緒に寝て、一緒に話して、一緒にここまで来たんだから」

凛 「ブイモンもアグモンもルナモンも凛の大切な友達!他のデジモン達だって人形なんかじゃないよ!!」

穂乃果「凛ちゃん……」

アグモン「そうだよ、ボクたちの身体はデータで出来てるかもしれないけど意思が無いなんて言わせないよ」

アグモン「ボクはボクの意思で穂乃果と一緒にここまで来たんだから」

穂乃果「アグモン……そうだよね」

穂乃果「誰も傷つかないように、悲しまないようにしたいって思ったけど」

穂乃果「結局ブイモンもルナモンも怪我をして、凛ちゃんもにこちゃんも悲しんで」

穂乃果「私バカだから話せばどうにかなるんじゃないかって思ったけど……やっぱりそれだけじゃ駄目なんだよね」

穂乃果「私、皆を守りたい。みんな笑顔でいて欲しいの。だからお願い、アグモン力を貸して」

アグモン「もちろんだよ、ボクが穂乃果を、みんなを守る!」



『アグモン進化!――グレイモン!!』

今日はここまで

一週間の出張から帰ったら体調不良でぶっ倒れてました
まったく書き溜め進んで無いですが少しづついきます

穂乃果「にこちゃん伏せて!!」

にこ「え?」


にこが急いでしゃがむと頭のすぐ上をオレンジ色の何かが通りレオモンが吹き飛ばされる

グレイモンが進化と同時に身体を回転させて尻尾を振り抜いたのだ

しかし不意の一撃だったにも関わらずレオモンはしっかりと着地し、大きなダメージを受けた様子も無い


にこ「ちょっとー!私に当たったらどうするつもりよ!!」

穂乃果「にこちゃん、そんな事は良いから早くルナモンを!」

にこ「はっ、そうね」


にこは倒れたままのルナモンを抱きかかえると穂乃果の方へと駆け戻る

ツバサ「ふーん……貴方、名前は?」

にこ「矢澤にこです!」

ツバサ「貴方じゃないわ、そっちの子」

穂乃果「わ、私は音ノ木坂学院スクールアイドル、μ'sの高坂穂乃果です!」

ツバサ「高坂さんね……少しはやるじゃない、でもその程度じゃ!」

穂乃果「くっ、グレイモン、『メガフレイム!!』」


走り出すレオモンに対してグレイモンは火球を飛ばして牽制を行う

レオモンは飛んでくる火球を持っていた刀で真っ二つに切りそのまま突っ込んでこようとした

しかし、火球を切り裂いた先にあったのは更に大きな火球

最初の火球はあくまで牽制、その直後に力を込めた一撃を叩き込んだのだ

突進中のレオモンは対応が遅れそのまま火球に飲み込まれ爆発する

穂乃果「やった!!」

作戦が上手くいき思わず喜びの声が漏れる




だが……

爆発の中から再びレオモンが姿を現す

それも先ほどまでと変わらない勢いのままグレイモンへと向ってきていた


ツバサ「だから、その程度じゃ相手にならないのよ!」


レオモンは空高く飛び上がるとグレイモンの頭部へ刀を振り降ろした

ガキンッ!!

金属と金属がぶつかり合う音が周囲に響く

彼はその左腕に装着した鉤爪でレオモンの刀を受け止めていた

初めて会った時と同じように、まるで弾丸のような速さで彼女達の前に現れて



穂乃果「メタルマメモン!?」

メタルマメモン「状況はカメラで見ていた、早くホエーモンに乗って逃げるんだ」


タイミングを見計らっていたかのように港にホエーモンが顔を出す

おそらく到着はしていたが戦闘の様子を伺っていたのだろう

グレイモン「そんな、オレも一緒に戦う!」


メタルマメモンは前に出ようとするグレイモンを戒めるかのように道を塞ぐ


メタルマメモン「お前じゃ勝負にならない、私に任せるんだ」

グレイモン「でも、オレは負けてない。まだ戦えるのに逃げるなんて……」

メタルマメモン「お前は敵と戦いたいのか?それとも仲間を守りたいのか?」

グレイモン「くっ、それは……」

メタルマメモン「大丈夫だ、お前は必ず強くなる。だからここは私に任せてお前は皆を守れ」

グレイモン「わ、わかった」

穂乃果「よし、にこちゃん、凛ちゃん、早くホエーモンの中へ」

にこ「わかったわ。ルナモン、ちょっと我慢しなさいよ」

凛 「ブイモン、すぐに手当てしてあげるからね」

にこと凛はそれぞれ傷ついたパートナーを抱えてホエーモンの元へと走り出した


ツバサ「簡単に逃がすわけ無いでしょ、レオモン!」

レオモン「グワァーオ」

メタルマメモン「お前の相手は私だ!」

ツバサ「くっ、この小さいのが邪魔しないでよ」


英玲奈「ツバサめ、遊びすぎだ。リリース、トイアグモン」


英玲奈の持つデジヴァイスからカラフルなブロックの身体を持ったデジモンが現れる



〝トイアグモン〟

成長期 ワクチン パペット型

全身が特殊プラスチックのブロックでできている特殊なデジモン
インターネットで楽しんでいる子供がアグモンの姿形を真似て造ったと言われている
必殺技は炎の形をしたおもちゃのミサイルを飛ばす『トイフレイム』

トイアグモン「クワーッ!!」

英玲奈「トイアグモン、デジコードスキャ……」

穂乃果「させないよ、グレイモン!」

グレイモン「ふんっ!」


グレイモンは尻尾を振り上げると英玲奈達の近くへと力強く叩き付けた

その衝撃で地面は揺れて英玲奈達は体勢を崩す


英玲奈「くっ、しまった!」

あんじゅ「ちょっとー!危ないじゃない!!」

グレイモン「大丈夫、当てはしないから少し大人しくしていてくれ」

その隙ににこと凛、そして穂乃果がホエーモンの口へと入って行く

それを確認したグレイモンはアグモンへと退化して後に続いた

振り返りレオモンと対峙するメタルマメモンの様子を見つめる

どうやら戦況はメタルマメモンの優勢のように見える


アグモン「メタルマメモン……」


その様子もホエーモンの口が閉じられ見えなくなってしまう

そのままホエーモンは深海へと身を沈めていった


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

英玲奈「逃げられたか……」

あんじゅ「別に良いんじゃない?今回の任務とは関係無いんだし」

ツバサ「そうね、逃げられたものは仕方ないわ。また今度相手をすれば良いんだし」

ツバサ「それにしても……あのデジモンなかなかやるわね、レオモンが押されてるわ」

あんじゅ「アレが今回のターゲットなの?」

英玲奈「いや、あれはギロモンでは無いようだ」

メタルマメモン「目的はギロモンか……それなら私達が処分した」

ツバサ「そうなの?じゃあ今回の任務は終了ね」

あんじゅ「なら早く帰りましょ、私早くお風呂に入りたいわ」

英玲奈「完了はちゃんと工場内を確認してからだ」

あんじゅ「え~、あの中に入るの~?」

メタルマメモン「この工場の管理者は私だ、お前達を無断で進入させるわけにはいかない」

ツバサ「それなら無理矢理入るだけよ。それに邪魔をした貴方をこのままにするわけないじゃない」

英玲奈「やっと真面目にやる気になったか」

あんじゅ「ちゃっちゃと終わらせて帰りましょ」

ツバサ「レクイエムが私達の歌声である事を幸せに思いなさい!行くわよ『Private Wars』!!」


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にこ「ふぅ、とりあえず血は止まったけど……」

凛 「ブイモンもルナモンも目が覚めないね……」

ホエーモン「その様子ならしばらくすれば目を覚ましますよ」

にこ「お腹の中にいる私達の様子がわかるの?」

ホエーモン「お腹の中にいるからわかるのですよ」

凛 「そういうものなのかー」



穂乃果「アグモン、大丈夫」

アグモン「うん、ボクは大丈夫だけど……」

穂乃果「メタルマメモンならきっと大丈夫だよ、だってあんなに強いんだもん」

アグモン「そうだよね、もっと強くなって何時かまた会いに行こう」

穂乃果「そうだね、そうしよう」


ホエーモン「もうすぐはじまりの町の近くに到着します」

にこ「意外と早かったわね」

凛 「やっとかよちんに会えるにゃー」

穂乃果「私も海未ちゃんやことりちゃんに早く会いたいよ」

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ツバサ「そして、やっぱりターゲットはいなかったと」

あんじゅ「もぅ!中にあんなに《Wild One》がいるなんて聞いて無いわよ」

英玲奈「まあ、有象無象ではあったがな」

ツバサ「結局は最初に戦った小さいのが一番強かったわね」

あんじゅ「それでもツバサ一人で十分だったじゃない」

ツバサ「まあね……後はあの子かしら」

あんじゅ「あの子って、あの弱いスクールアイドルの子達?」

英玲奈「確か、音ノ木坂の……μ'sというグループだったか」

ツバサ「そう、μ'sの高坂穂乃果さんね。次に会うのが楽しみだわ」

今回はこれで終わり

ラブライブ一挙放送からのデジモン一挙放送とかまさに俺得なGWですね
まあ、おれは1日から8日まで休み無しですが

少し後に続きを投下します

わずかに機械のランプが光る薄暗い部屋の中にその男はいた

大きな眼鏡に白衣を着たその男は複数のディスプレイに映る映像や数値を確認しながら

忙しくキーボードを叩き続けている

しかしカタカタカタと小気味の良いリズム刻む指先はあるディスプレイに映る数値を見た瞬間にピタリと止まった

すると彼は突然椅子から立ち上がると目を見開きながら笑い声をあげる


「くくくっ、ふはははははっ、やっと完成した。完成したぞ!」

「ピコデビモンよ、早く、急いであの娘を呼んで来るのだ」

ピコデビモン「はい、了解しました」


〝ピコデビモン〟
成長期 ウイルス 小悪魔型

蝙蝠の姿をした小型の使い魔デジモン。
攻撃力などは強くないが、悪知恵が働きあちらこちらで悪さをしたりしている。
必殺技は大きな注射器を投げつけ、相手から血を抜き取ってしまう『ピコダーツ』



部屋の隅い待機していたピコデビモンは小さな黒い翼を羽ばたかせながら部屋を出て彼女の元へと向かった


「残りはあの2つさえ完成すればこのデジタルワールドを支配するくらい容易い」

「これで奴らに……いや、全世界の奴らにこの私の偉大さを証明する事が出来る」

「ふふふ、ははは、はーっはっはっはっはっはっ」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

パタパタパタパタ

小さな翼しか持たないピコデビモンの飛行速度はお世辞にも速いとは言えない

普段通りの速度で飛んでいれば成人女性の歩く速度と変わらないくらいだろうか

急いでとは言われているが気乗りのしないピコデビモンはゆっくりと目的の部屋を目指していた


「あら、ピコデビモン。こんなところで何しているの?」


突然声をかけられてピコデビモンが後ろを振り返ると一人の少女が立っていた

彼女は確かに少女ではあるが目的の娘では無い

それどころかピコデビモン自身は彼女と会いたくない、簡単に言えば苦手な相手である

ピコデビモン「貴方こそ、こんなところでウロウロして何をしているのかしら?」

「別に何処で何をしていようと私の勝手じゃない?」

ピコデビモン「なら私が何をしているか言う必要も無いわね」

「別にいいよ、どうせあの人のところへ行くんでしょ?」


やはりこの娘は苦手だ

そう思いながらピコデビモンは目的の部屋を目指す為に彼女を無視して背を向けることにする

しかし、彼女は背後から続けて声をかけてきた

「あの人だったらさっき外の出て行くのを見たよ」

ピコデビモン「なっ、本当でしょうね!?」

「私が嘘つく必要無いと思うけど、用事があるなら早く探した方がいいんじゃないかな?」

ピコデビモン「本当、面倒くさい娘だわ」バサッ


彼女は普段から何度もこの施設から外へと抜け出していた

彼女の元いた世界と違い危険が多いから一人で出歩くなとあれ程言ったというのに

ピコデビモンは急いで彼女を探すために出入り口へと向かう

残された少女は慌てるピコデビモンを見送りながら笑顔で手を振っていた


「ふふっ、パカー。いってらっしゃい」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

バードラモン「みんなお疲れ様、ここがはじまりの町よ」

海未「な、なんとか無事に着きましたね……」

ことり「地面に足が着くって素晴らしい事だと思うよ……」

海未「おや、花陽の姿が見えませんが」

クダモン「到着してすぐにあっちの木陰に走って行ったわよ。ほら、戻ってきたみたい」

花陽「うっぷ……うぅ、すいません……お待たせしました……」

バードラモン「これが今の選ばれし子供達だなんて、本当に大丈夫なのかしら」

バードラモン「そうね……花陽、貴方に良い物をあげる」

花陽「良い物って……これは、タマゴの置物?」

バードラモン「きっとどこかで役に立つ時が来るわ」

花陽「は、はい。ありがとうございます」

バードラモン「デジタマを孵すならそこに見える小屋へ向かいなさい」

バードラモン「それじゃあ私は谷に帰るわね。旅の無事を願っているわ」

海未「ここまで連れて来て頂きありがとうございました」

花陽「色々とお世話になりました」

ことり「バードラモンさんもお元気で」

バードラモン「あっ、最後に一言……仲間を信じることも必要よ」

ことり「…………」

ファルコモン「ホーホー」

バードラモン「それじゃあまたね」バサッ

花陽「うわぁ、もうあんなに遠くに、それにしても最後のは何だったのかな?」

海未「それは……」

ことり「そんなことより早くあの小屋に行ってみようよ」

花陽「そうだね、デジタマがちゃんと孵ってくれると良いんだけど……」

海未(ことり……)

今回はここまで

花陽「うーん、この小屋は誰か住んでるのかな?」

海未「人の気配はしないようですが……」

クダモン「デジモンの気配も無いわね」

ことり「入って見るしかないんじゃないかな」

海未「仕方ないですね、私が先に入って様子を見てきます」



海未「……中はやはり誰もいないようですね」

海未「見た目は普通の山小屋のようですが……」

海未「この部屋の真ん中にある藁は何でしょうか?鳥の巣の用にも見えますが」

クダモン「私も初めて見たけれどここでデジタマを孵化させるんじゃないかしら」

海未「なるほど……みなさん、中に入ってきて下さい」

ことり「海未ちゃん、大丈夫だった?」

海未「どうやら今は誰もいないようですが室内は整っていますし誰かが住んでいるのかもしれません」

海未「とにかく目的のデジタマの孵化だけでもやってしまいましょう」

クダモン「花陽、そこの藁の上にデジタマを置いて頂戴」

花陽「えっと、ここでいいのかな?」コトン


花陽がデジタマを藁の上に置くと同時にデジタマは大きく震えだす


花陽「えっ!?突然動き出しちゃったよ!!?」

海未「まさかもう孵化するんですか!?」


そのままデジタマの全体にヒビが入り少しづつ剥がれいく殻の中から緑色のデジモンが姿を現した


リーフモン「リリィ?」


〝リーフモン〟
幼年期Ⅰ ― スライム型
尻尾部に小さな葉っぱを持ったスライム型デジモン。
植物の要素を多く持ち体成分には葉緑素を含んでいて、光合成をして成長している。
生まれたてで戦うことは出来ないが、生命力あふれる初々しい心は周りの人々を穏やかな空気で包み込む。

花陽「産まれた……これが、私のパートナー……」

リーフモン「リリ、リリ」

花陽「始めまして、リーフモン。私は花陽、小泉花陽です」

リーフモン「……ハ……ナ…………ヨ?」

花陽「そう!そうです、花陽です。良かった、無事に産まれて本当に良かったよ~」

ことり「良かったね、花陽ちゃん」

ファルコモン「ホーホー」

花陽「はい、みんなのおかげです」

クダモン「出来ればその子が少し成長するまでここで休みたいところね」

海未「そうですね……周りに誰かいないか確認してきますのでことりと花陽達はここで待っていて下さい」

ことり「そんな、海未ちゃんにばっかり悪いよ。今度は私が行くよ」

海未「いえ、ことりは何かあった時の為に花陽の傍にいてあげてください、それでは行ってきます」

ことり「あっ!海未ちゃん……」

花陽「海未ちゃんの様子おかしい気がするけど、何かあったのかな?」

ことり「…………」

クダモン「海未、貴方少し冷静さを欠いてるんじゃないかしら?」

海未「……そんな事はありません」

クダモン「この前の戦いの事は私の不注意よ、貴方が必要以上に気にする事は無いわ」

海未「いえ、私さえしっかりとしていればあんな……あんな事には……」

クダモン「海未……?貴方…………」

クダモン「……待って!あそこに誰かいるわ」

海未「確かに人影が……えっ!?まさかあれは……!!」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

短いがここまで



希「意外と簡単に入れて貰えるもんやね」

絵里「えぇ、生徒会同士の交流で来た事はあるけれどこんな部屋に通されたのは始めてね」


UTXに進入する方法を考えた希達だったが何も思い浮かばず結局は音ノ木坂の生徒会として正面から受付へと向かう事にした

その後少しゴタゴタとしたが結果的に今のUTX内の応接室へと通されたところである


希「それに……」

モノドラモン「ん?」

絵里「その子を見て受付の人の様子が変わったわね」


ゴタゴタというのはもちろんこのデジモンに関する事である

苦し紛れに布で包んで備品として進入しようとしたのだが当然ながら中身の確認を要求されたのだ

もちろん事前に人形として振舞うように話を合わせてはいたのだが受付の人はモノドラモンを見た瞬間

驚きの表情を見せるとすぐにどこかへ連絡を取り、そのままこの部屋へと案内されたのだ

希「生徒のほとんどは人形か何かと思ってたみたいやけど、明らかにこっちを警戒している様子の子もおったね」

絵里「受付の人がデジモンを知っているとなるとやっぱり学校が関与しているって事よね」

希「そうなると校内に大きなゲートがあるって言うのも偶然じゃなさそうやね」

モノドラモン「……希、デジモンが近づいてくる。恐らく2体だ」

希「えっ?それって……」


コンコン

会話を遮るかのように鳴ったノック音で室内に緊張が走る

彼女達が返事に戸惑っている間に扉は外から開けられ2人の少女が入ってきた

制服姿であるところを見ると彼女達はUTXの生徒のようである

だがその傍らには白色と黒色をした小さな騎士姿のデジモンをそれぞれ連れていた


〝ポーンチェスモン〟
成長期 ウイルス パペット型

チェスゲームのスパコンから流出したデータから生まれたパペット型デジモン
力は弱いが功績を挙げると成り上がり、究極体クラスの力を持つという謎を秘めた一般歩兵である
必殺技は、槍で突く『ポーンスピアー』と、円盾を構えて突進する『ポーンバックラー』

UTX生徒A「音ノ木坂学院のスクールアイドル、μ'sの絢瀬絵里さんと東條希さんですね」

UTX生徒B「お待たせしました。我々と一緒に来てください」

絵里「随分と物々しい雰囲気ね、それにμ'sの事まで知っているなんて」

UTX生徒A「《Wild One》が一緒にいる以上警戒はさせて頂きます」

UTX生徒B「それに私たちも芸能科の生徒ですからライバル校のメンバーくらいは把握していますよ」

モノドラモン「ウイルス……ガルルルゥ」

希「こら、暴れんといてよ。そんな事よりもうちらをどこへ連れて行くつもりなん?」

UTX生徒A「それは先生、いえ室長がお会いになりたいというのでそちらまで」

絵里「室長?学校の職員ということかしら」

希「何にしても行ってみるしかなさそうやね」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

穂乃果「ここがはじまりの町なんだ……」


海中を通ってはじまりの町近くの池へと到着した穂乃果達は、ホエーモンの体内から外へと出てきていた

通常の場合、町と聞いて思い浮かべるのは住居や商店が立ち並び人や乗り物が行き交う。そんな場所であるだろう

しかし穂乃果がそこに見た風景は家は小屋が一軒あるのみで他にまともな建物は見当たらない

少なくとも町どころか村にも満たない有様であった


にこ「人どころかデジモンの姿も見えないわね」

ホエーモン「昔は栄えていたようだが今はこのような状態のようだな」

凛「とりあえずブイモン達をどこかに休ませてあげないと」

穂乃果「そうだね。ホエーモンありがとう」

ホエーモン「あぁ、早く良くなる事を願っているよ」


そう言うとホエーモンは再び池へと潜り海へ帰っていった



にこ「とりあえずあの小屋に入ってみましょうか」


穂乃果達が小屋へと近づくとどうやら中から話し声がするようである


穂乃果「どうしよう、中に誰かいるみたいだけど」

アグモン「この小屋に住んでるデジモンかな?」

にこ「ルナモン達がこんな状況で戦闘になる事を考えるとマズイわね。ここは大人しく……」

凛「あれ?この声って!」

にこ「あっ!こら、待ちなさい!!」


凛は小屋へと走り出すとノックもせずに扉を大きく開けて中へと飛び込んだ


花陽「きゃっ!!だっ、誰か部屋に入って……って凛ちゃん!?」

ことり「えっ?わぁ、本当に凛ちゃんだぁ」

凛「かよちんにことりちゃん!!うえーーーん!会いたかったよーーー!!」

花陽「うん、うん、私も凛ちゃんに会いたかったよぅ」

穂乃果「凛ちゃん大丈夫!?」

にこ「凛!!勝手に入って何かあったら……ってアンタ達!!」

ことり「穂乃果ちゃん!!にこちゃんも!!」

花陽「良かった、みんな無事だったんだね」

にこ「何とかね。アンタ達も元気そうね。良かったわ」

穂乃果「あれ、そう言えば海未ちゃんは?一緒だったんじゃなかったの?」

ことり「海未ちゃんは周囲の様子を見に行ってくれてるの」

花陽「そういえばもう結構時間が経っているけど戻って来ないね」

穂乃果「よーし、ちょっと海未ちゃんを探してくるよ。行くよ、アグモン」

アグモン「ちょっと、穂乃果ー待ってよー」

ことり(……あのデジモンって……まさか)



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ここまで

デジモン=WildOne です。名称が違うだけで善悪関係無く同じものと思って下さい

海未「まさかあれは……!!」


輝く太陽に照らされた青い空と緑の木々とピンクの花々、そして黄色い蝶

漆黒のドレスに映える白い肌、そして燃えるかのような赤い髪

その少女はまるで物語のお姫様のように花畑の中に佇んでいた


海未「あれは……真姫!!真姫ではありませんか!?」


青き少女の叫び声に気づき赤い少女がそちらに振り返る

真姫「誰っ!?」

海未「真姫!無事だったのですね、良かった。ことりと花陽も心配して……」

真姫「くっ……近づかないで!」

海未「!?」

真姫「貴方……私の事を知っているようだけれど、一体何者?」

海未「なっ、何を言っているのですか。私です。園田海未です」

真姫「海未……私は貴方の事なんて知らないわ」

海未「そんな……」

ピコデビモン「お嬢様ーまた勝手に抜け出して」

真姫「うえ゛ぇ!?ピコデビモン、何でここが……」

ピコデビモン「そんな事より早くお戻り下さい。ご主人様がお呼びしております」

真姫「お父様が?」

ピコデビモン「そうです。ですから早く……なっ!?選ばれし子供達が何でこんなところに」

海未「あれは……蝙蝠のデジモンですか?」

クダモン「ピコデビモンね。強さは大した事は無いけどずる賢い相手よ」

真姫「ピコデビモンはあの人の事を知っているのね」

海未「真姫、本当に私の事が……μ'sの事がわからないのですか!?」

真姫「ミュー……ズ?」

ピコデビモン「っ!?そいつはご主人様の計画の邪魔になるものです。早くお逃げ下さい」

真姫「お父様の……邪魔……ミューズ…………園田……海未」

海未「真姫、思い出して……」



「グルルルルルッ!!」

海未「えっ?」

何かの泣き声が聞こえた刹那、海未の目の前に白地に紫の縞が入ったオオカミのようなデジモンが現れる

そのデジモンは真姫へと駆け寄ろうとした海未との間に猛然と立ちはだかった


クダモン「海未、下がって!!」

海未「うっ……あっ……デジ、モン……」

クダモン「海未!?どうしたの?」

海未「ひっ……いや、イヤッ……!!」

真姫「このデジモンはあの子の……」

ピコデビモン「お嬢様、早くこちらへ」

真姫「もう、わかってるわよ」

海未「ま、待って下さい。真姫!!」

「グルルルルルッ」

海未「あっ……んっ……」

クダモン「海未、早く進化よ」

海未「進化、そうだ進化を………………あれ?何で、おかしいです」

海未「何で、何でデジヴァイスが……反応…………しないんですか?」

「グルルルワアァァッ!!」

クダモン「海未!危ない!!」


反応の無いデジヴァイスを手に呆然と立ち尽くす海未

そんな彼女へと向かって狼のデジモンが飛び掛ろうと身構える

しかしそれは実行される前に第三者によって妨害に合うことになる


『メガフイレム!!』


狼のデジモンは自分へと向かって放たれた火球に気づき大きく後ろへと跳び回避する


クダモン「これは……」


クダモンが火球が放たれた方を見るとオレンジ色の肌をした怪獣の様なデジモンがこちらに向かって走ってきている

その肩口には同じくオレンジ色の髪をした少女がしがみ付いていた

オレンジの怪獣が目の前で止まると、少女は飛び降りて警戒するこちらを気にも留め無いかのように海未の傍へと駆け寄ってきた

穂乃果「海未ちゃん!大丈夫!?」

海未「あっ、えっ?ほ、穂乃果?どうして……」

穂乃果「へへー海未ちゃんの帰りが遅いって聞いたから迎えに来たんだよ」


まるで普段通りの、太陽のような陰りの無い笑顔で穂乃果を見せる

その笑顔に海未は命のやり取りをしている今がまるで夢であるかのようにも感じていた

しかし、その甘い思いも辺りの焦げた臭いですぐに現実へと戻される


グレイモン「穂乃果、今はこっちに集中して」

穂乃果「わかってる、えっとこのデジモンは」


〝グルルモン〟
成熟期 ワクチン 獣型

闇の中に生きる獣型デジモン。
凶暴な性格で周りでは常に争いごとが絶えないと言われている。
必殺技は口から高熱の炎を吐き出す『カオスファイアー』

グルルモン「こいつは予定外のお客様が来たようだ、どうしたものか」

(そうね……真姫さんも無事に戻ったようだし私たちも帰りましょうか)

グルルモン「了解だ」

グルルモン『カオスファイア!!』


グルルモンが自分の足元に向かって炎を吐いた

足元に咲いていた花々は一気に燃え上がり、その炎は海未達へと向かって広がっていく


グレイモン「くそっ!!」


グレイモンは身体を捻らせ尻尾を地面へと叩き付け、周囲の花を地面ごと抉って炎の進行を妨げる

その隙にグルルモンは距離を取ると颯爽と森の奥へと消えていった

グレイモン「逃げられたか……」

穂乃果「海未ちゃんが無事だっただけで十分だよ」

海未「しかし、真姫にも逃げられてしまいました」

穂乃果「えっ?真姫ちゃんがいたの?それに逃げたって」

海未「それがですね……詳しくはことり達のところへ戻ってから話しましょうか」

穂乃果「わかった、にこちゃんと凛ちゃんもいるよ」

海未「本当ですか?そうですか、みんな無事で良かった」

穂乃果「うん!早く戻ろっ、真姫ちゃんの話聞きたいし」

海未「そう、ですね……」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「お帰りなさい、真姫さん」

真姫「貴方……何であんな事したの?」

「あんな事って?」

真姫「惚けないで、さっきのあの子との会話を邪魔するためにデジモンをけしかけたでしょ」

「それはいけない事ですか?だってあの人はお父様の邪魔になるんでしたよね」

「真姫さんはお父様に逆らうんですか?」

真姫「そっ、そんな事は……無い……けど……」

「ふふっ。そうだ、お父様が呼んでるんですよね。早く行かないと」

真姫「わ、わかってるわよ!ほら、ピコデビモン行くわよ!!」

ピコデビモン「はい、お嬢様」



「さーて、そろそろ私も動かないと。まずは嘘吐きなあの人からにしましょうか」

ここまで

花陽「そんな、真姫ちゃんが記憶喪失だなんて……」


小屋へと戻りメンバーの再会を喜んだのも束の間

海未と穂乃果は先程の出来事を皆に話していた

真姫が生きていた事、μ'sの記憶が無い事、そしてデジモンと共にどこかへ消えた事

話し終えた短い沈黙の後、最初に口を開いたのは意外にも花陽だった


にこ「……海未、それは本当に真姫だったのよね」

海未「間違いありません。見た目も声も真姫そのものでした」

海未「それに、μ'sの名前にも反応していましたし」

にこ「そうよね、あんな特徴的な子が何人もいるとも思えないし」

凛「きおくそーしつなんてTVや漫画の世界だけのものだと思ってたよ……」

穂乃果「そうだよねー私なんて忘れたくても忘れられない事ばっかりだっていうのに」

ことり「…………」

クダモン「それで、あんた達はどうするつもり?」

海未「……どうすると言うのは?」

クダモン「どうせさっきの子を探すんでしょ?どうやって探すのかって聞いているの」

にこ「うーん……真姫が逃げて行った方向に何かあるんじゃないかしら」

海未「そう言えば『お父様』がどうと言っていた気がします」

凛「お父様?真姫ちゃんのお父さんもこの世界に来ているの?」

にこ「そうは思えないけど……A-RISEの件があるから無いとも言い切れないわね」

海未「A-RISEがこの世界にいたと言う話ですね」

花陽「A-RISEはこの世界の事を詳しく知っていたようですが夏休みの間に何度もライブをしているはずなんです」

花陽「なので、もしかしたらA-RISEはこの世界と私達の世界を行き来する方法を知っているのかもしれません」

海未「それは本当ですか!?」

にこ「仮定の話よ、仮定。そもそもあのA-RISEが私達の知ってるA-RISEだったのかもわからないわ」

にこ「今私達は異世界にいるんだもの、パラレルワールドがあってもおかしくないでしょ」

穂乃果「あぱれるわーるど?」

ことり「穂乃果ちゃん、アパレルは衣服の事だよ」

花陽「パラレルワールド。平行世界とか言われる私達の世界に似た別の世界の事です」

海未「では先程の真姫も戦ったA-RISEもパラレルワールドの住人だと?」

にこ「だから仮定だって言ってるでしょ」

アグモン「ねぇ、穂乃果。みんなが何を言ってるか全然わからないんだけど」

穂乃果「だいじょーぶ、穂乃果もよくわかってないから」

凛「凛もちんぷんかんぷんだにゃー」

クダモン「話が逸れてしまったけれど、真姫って子がいなくなった辺りを探索するのね」

にこ「そうね……と言いたいところなんだけど」

凛「ブイモンとルナモンがまだ目覚めないんだよ」

海未「凛とにこのパートナーですね。それに……」

ミノモン「ミノミノー」


〝ミノモン〟
幼年期Ⅱ - 幼虫型

硬い外郭の殻に入った、リーフモンの進化系デジモン。
頭から生えた蔦(毛髪?)で高いところにぶら下がったり、大型デジモンにぶら下がって移動する


花陽「うん、成長はしているけど危ない所にはまだ……」

クダモン「ならさっきのように二手に分かれましょうか」

穂乃果「今戦えるのは私達と海未ちゃん、それにことりちゃんだけか~」

アグモン「一組は残ってここにいるみんなを護衛しないとね」

海未「わ、私は行かせて下さい。一度真姫に会っていますし」

クダモン(海未、あんた……)

穂乃果「じゃあもう一組は私達が行くよ。早く真姫ちゃんにも会いたいし」

アグモン「ボクも早く穂乃果の友達に会いたいなぁ」

ことり「それなら私達はまたお留守番だね」

穂乃果「うっ……ことりちゃんごめんね」

ことり「ううん、大丈夫だよ。真姫ちゃんの事お願いね」

ファルコモン「ホーホー」

にこ「よし、組み分けは決まったけど……外は暗くなってきたわね」

にこ「安全の為にも探索は明日の朝からにしましょうか」

海未「早く探しに行きたいのは山々ですが……その方が良さそうですね」

海未「それでは今日は解散にしましょう。みなさん早めに……」

凛「よーし、かよちん!朝まで語り合うにゃー!!」

花陽「えぇー!?ちゃんと寝ないとダメだよー」

穂乃果「穂乃果もね、話したい事いーーっぱいあるんだ」

ことり「私も穂乃果ちゃんと色々お話したかったよ」

海未「あぁ、もう!みんな、遊びでは無いんですよ!!」

にこ「まあまあ、みんなが再会出来て、心配だった真姫ちゃんも一応無事だってわかって」

にこ「今まであんまり口にしないようにしていたけど心に引っかかってた思いが沢山あるのよ」

にこ「今日くらいは大目に見て……あんたも穂乃果達に甘えてきなさい」

海未「なっ!甘えてなんてそんなこと……」

にこ「どうせ海未の事だから無理してでも頑張ってことりと花陽を守ろうとしてきてくれたんでしょ」

にこ「今夜くらいは気を抜いてきなさいよ。どうせ明日もまた頑張って貰わなきゃいけないんだから」

海未「…………そうですね。少しは息抜きも必要かもしれません」

海未「にこ、ありがとうございます」

にこ「んっ……良いから早く行ってきなさい」

海未「はい」


ウミチャーコッチココッチ ネェネェウミチャンキイテヨー チョ チョットホノカ カオガチカイデスヨー


にこ「はぁ……まったく世話が焼けるわね」

クダモン「…………」

にこ「あれ?あんた確か海未のパートナーの」

クダモン「クダモンよ」

にこ「クダモンね、海未のところ行かなくていいの?」

クダモン「貴方、結構良いやつみたいね」

にこ「な、何よ突然…………」

にこ「…………海未の事、頼んだわよ」

クダモン「当たり前よ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


しんとした廊下を4人の少女と3体のデジモンが歩いて行く

エレベーターで最上階まで上がった先の扉はIDカードと虹彩認証が必要と

一般にも公開している下層とは明らかにセキュリティレベルが違っていた

本来はここに入る権限を持たない2人の少女と1体のデジモンは他の2人のと2体に挟まれる形となっている


絵里「まるで護送される犯罪者の気分ね」


小さな声で呟いたつもりだったが靴音だけが聞こえるこの場所では全員の耳に届くには十分な大きさだった

UTX生徒B「私語は謹んで下さい。それに絢瀬さんの言った事はあながち間違いではありませんから」

絵里「何?それは私達が犯罪者だって言いたいのかしら?」

UTX生徒B「似たようなものだと言っているんです」

絵里「何ですって!!」


絵里は相手に詰め寄ろうと手を伸ばすがその腕を希が掴んで制止させる


希「えりち、落ち着いて」

絵里「止めないで、この子、私達の事を犯罪者呼ばわりしたのよ?」

UTX生徒A「すいませんが抑えて下さい。貴方も挑発するような事言わないで」

UTX生徒B「ふんっ」

UTX生徒A「すいません、この子の家族が《Wild One》の被害者なのでノラを目の仇にしているんです」

希「……悪いんやけど、その《Wild One》とかノラって何なのか教えてくれんかな」

希「出来ればこのUTX学院と貴方達の事も」

UTX生徒A「そう……ですね。歩きながら少しだけ説明します」

そう言うと彼女は白い騎士のデジモンを横に連れ再び先頭を歩き始めた

その後希とモノドラモン、そして希に腕を掴まれたままの絵里が渋々と続く

そして黒い騎士デジモンを連れた少女が少し距離を取りつつ最後尾を歩く

全員がついてきた事を確認して先頭の少女が再び口を開いた


UTX生徒A「まずは《Wild One》ですね。これは私達や東條さんの横にいるこの生き物の事です」

希「デジモンの事なんやね」

UTX生徒A「デジタルモンスター、そう呼ばれる事もあるそうですが基本的に私達は《Wild One》と呼んでいます」

UTX生徒A「《Wild One》はこの世界とは違う電脳世界に存在していますが東條さんが連れているように突然この世界に現れる事があります」

UTX生徒A「《Wild One》がこの世界に現れる事をリアライズと言います」

UTX生徒A「リアライズした《Wild One》、私達はノラと呼んでいますが名前の通り野生の生き物なので周囲に危害を与える可能性があります」

UTX生徒A「その為、逆に《Wild One》を使役して《Wild One》を退治する。それが私達テイマーです」

UTX生徒A「そしてこのUTX学院は国が定めたテイマーを育成するための機関でもあるのです」

希「国って、随分大げさな話になってるんやね」

UTX生徒B「街の人々の安全がかかってるんですよ、当然じゃないですか」

絵里「でもデジモンを倒すためにデジモンを使うだなんて滑稽な話ね」

UTX生徒B「私は人間側の被害が最低限に抑えられる良い方法だと思いますけどね」

絵里「だったらデジモンには何かあっても良いって言うの?」

UTX生徒B「そうですよ、この子達も所詮データの塊なんですから」

UTX生徒A「いい加減にしないさい……着きました、ここが室長の部屋です」


先頭の生徒がコンコンと扉を叩くと中から男性の声で「入れ」と一言返事が聞こえる

部屋の広さは理事長室と同じくらいだろか

床には絨毯が敷き詰められており過去に入ったUTX内の部屋の中でもとくに高級感を感じさせている

そして入り口から真っ直ぐ正面、部屋の奥にある大き目のデスクの前に部屋の主であろう男は座っている

金髪にサングラス、おおよそ教師とは思えない風貌の男は深く座った椅子から身体を起こし立ち上がった


山木「ようこそ、私は情報管理局・ネットワーク管制室、室長の山木だ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


穂乃果「ふわぁ~まだ眠いよぅ」

海未「まったく、日が昇り始めるまで話し込んでいれば当たり前です」

ことり「海未ちゃんも一緒に起きてた割りに元気だよね」

海未「それは気の持ち方が違うんです」

アグモン「他の子達はまだ寝てるみたいだね」

クダモン「さっさと仕事終わらせて2度寝でも3度寝でもすればいいわよ」

穂乃果「そうだね、そうしよう!」

海未「さあ、行きますよ」

穂乃果「あぁん、海未ちゃん置いていかないでよー」

ことり「あっ……穂乃果ちゃん」

穂乃果「ん?ことりちゃんどうしたの?」

ことり「あのね……海未ちゃんの事守ってあげてね」

穂乃果「へっへー、任せておいてよ」

ことり「後ね…………何か困った事があったら……歌を、歌って」

穂乃果「歌を?」

ことり「そう、歌。きっと穂乃果ちゃんなら出来ると思うから」

穂乃果「ん?良くわからないけどわかったよ」

海未「穂乃果ー早くしないと本当に置いて行きますよー」

穂乃果「わかってるよー! じゃあ、行ってくるね」

ことり「うん、気をつけてね」

にこ「完全に寝過ごしたわ」

凛「にこちゃんってば遅くまで起きてるんだから、しょうがないにゃぁ」

にこ「一緒に寝てたアンタに言われたくないわよ!」

ことり「まあまあ、じゃあ穂乃果ちゃん達が戻ってくるまでに美味しいご飯でも準備しておこうか」

にこ「そうねぇ、って言っても魚とキノコと木の実しか無いけど」

ファルコモン「ホーホー」

ことり「えっ?本当?」

花陽「ことりちゃん、ファルコモン何て言ってるの?」

ことり「この近くに美味しいお肉の畑があるんだって」

にこ「お肉の畑って何よ!?そもそも何でことりはこの子の言葉が解かるのよ」

ことり「えへへー何ででしょうか?」

凛「そういえば他のデジモンはみんな喋れるのにファルコモンだけ喋れないんだね」

花陽「言われてみればミノモンも産まれた時から喋れてたよね」

にこ「でも喋らないデジモンも何体かいた気がするわよ」

凛「ファルコモンも進化したら喋れるようになったりするのかな?」

ことり「うーん、そうなると良いんだけどね」

ファルコモン「ホーホーゥ」

にこ「それで、そのお肉の畑ってのはどこにあるのよ?」

ファルコモン「ホーホー」

ことり「池の近くにあるみたい」

凛「池って凛達が来たところだよね。だったらすぐ傍だよ」

ことり「じゃあ、私とファルコモンで取ってきちゃうね」

花陽「あっ、ことりちゃん私も手伝うよ」

ことり「ありがとう、助かるよ」

にこ「じゃあ私達は料理の準備でもしましょうか、凛もちゃんと手伝うのよ」

凛「うーん、凛はお料理作るのは苦手なんだけどなぁ」

ことり「それじゃあちょっと行ってくるね」

にこ「うん、お願いするわ」

凛「行ってらっしゃーい」

今回はここまで
別に問題は無いけど>>530の前に次回予告を入れ忘れたのを今更気が付いた

ことり「ここがお肉の畑かぁ~思ったよりも近かったね」

花陽「何かの比喩かと思ってたんだけど本当に骨付きのお肉が畑に埋まってるなんて……」

花陽「もしかしたらご飯の田んぼとかパンの木とかラーメンの川もあるのかも」

ことり「うーん、それはどうかなぁ」

ことり「でも、このお肉って焼いた後に見えるけどもしかしてこのまま食べられるのかな?」

ファルコモン「ホーホー」

ことり「あっ、やっぱり食べられるみたいだよ」

花陽「こういうのを見ると改めて私達の世界とは違うんだなって思い知らされるよ」

ミノモン「ハナヨのセカイだとおニクはどうやってできるの?」

花陽「えぇっと、牛さんや豚さんがいてそのお肉を……」

ミノモン「ウシさん?ブタさん?ハナヨのトモダチ?」

花陽「ち、違うよ。牛さんと豚さんって言うのはね……」

ことり「ふふっ、花陽ちゃんは大変そうだから先にお肉を採ってようか」

ファルコモン「ホーゥ!」


「いましたね……ことりさん!!」

グルルモン「グルルルルルッ!!」


突然の唸り声に驚きことり達は後ろを振り向いた

先程までは誰もいなかったはずの場所に大きな狼の姿をしたデジモンが現れていたのだ

完全に不意をつかれる形となったが狼のデジモンは襲いかかってくる様子は無くただこちらを見ているだけである


ことり「いつのまにデジモンが!?」

花陽「狼のデジモン……穂乃果ちゃん達が言ってた」

ことり「うん、真姫ちゃんと一緒にいたデジモンの一体みたいだね」

グルルモン「さあ進化しろ、選ばれし者共よ」

花陽「こ、このデジモンも喋れるんだね」

ファルコモン「ホーホーッ!」

ことり「わかってるよ、花陽ちゃん危ないから離れてて」

花陽「うん、ことりちゃんも気をつけて」

ことり「ファルコモン、進化だよ!!」

『ホーホーッ!!――ギャーース!!』


光に包まれたファルコモンはディアトリモンへと進化していく

その様子を静観していたグルルモンだったが進化が終わると同時にディアトリモンへと飛び掛った

しかしディアトリモンはその行動を予見したかのように鉄を含んだ羽毛で攻撃をいなす


グルルモン「意外とやるじゃないか、だったら……『カオスファイアー!!』」


グルルモンは大きく息を吸い込むと青白い炎を吐き出した

ディアトリモンも自慢の脚力で炎を回避するがグレイモンの吐く火球とは違い火炎放射のような持続性のある炎を吐きつつ

グルルモンはディアトリモンを追いつめて行く

ことり「ディアトリモンそっちはダメ!!」

ディアトリモン「……ギギッ!?」

花陽「あっ、えっ、何で……」


ディアトリモンが逃げる先にはミノモンを連れた花陽が立っていた

グルルモンは炎が避けられる方向を制限し故意にディアトリモンと花陽達を近づけていたのだ


グルルモン「さあ、避けれるものなら避けてみるがいい」

ディアトリモン「ギッ!!」

ことり「!!花陽ちゃん、耳を塞いで!!」

花陽「えっ?わ、わかった」

グルルモン「『カオス…』」

ディアトリモン「ギャャーーーーーーーーッッッッッス!!!!」

グルルモンの攻撃を遮るようにディアトリモンのけたたましい鳴き声が周囲を震わせた

これは比喩では無く実際にその場は音によって震えたのだ

ディアトリモンは必殺技である『デストラクションロアー』と呼ばれる咆哮はその周囲に音波の壁を作り

更には前方、つまりグルルモンへは衝撃波として襲い掛かった

咆哮という予想外の攻撃にグルルモンは虚を突かれ、その見えない衝撃をまともに受けることとなる


グルルモン「グハッ、何だ今のは……くっ、耳が……」

花陽「うぅ~耳がキンキンするよ~」

ことり「ここまでです!もう観念して下さい!!」

グルルモン「ふん、このくらいの攻撃でおれがやられるとでも……」

ことり「今の攻撃で平衡感覚もおかしくなっているはずです。その状態でも勝てるつもりですか?」

グルルモン「くっ、小娘の分際で……やってくれる」

「見苦しいよ、グルルモン」

ことり「あっ、えっ?何で貴方が?」

「本当はまだ姿を見せるつもりは無かったんですけど、流石はことりさんですね。先輩なだけあります」

ことり「もしかして絵里ちゃんや希ちゃんもこっちに来てるの?」

「お姉ちゃん達は関係無いじゃないですか。それに今の状況で私が本当の事言うとでも思います?」

ことり「じゃあ何で、何でこんなことするの!?亜里沙ちゃん!!」

亜里沙「復讐ですよ。デジモンと人間、そしてことりさんとファルコモンへの……」

短いですがここまで
少し落ち着いたので今月からはもう少し早く更新していくつもりです

花陽「何で亜里沙ちゃんがこの世界にいるの?ことりちゃんと何か話しているみたいだけど耳鳴りが酷くて聞こえないよ」


ことり「何で……だな…て……もし…・・・…亜里………んあの………知って……!?」

亜里沙「知って………よ、あ……誰の………何が…………も、何………な忘…………ったの……」

亜里沙「………にも知って……………うよ、ことり………何をし…………海未………穂乃果……、μ'sのみんなに!!」

ことり「やめて!!お願い!!それだけはやめてっ!!」


花陽(やっと聞こえるようになってきた。だけど、ことりちゃんは何であんなに取り乱してるの?)

花陽「ことりちゃん!亜里沙ちゃん!!」

ことり「あっ……花陽ちゃん…………」

亜里沙「そう言えば花陽さんも一緒だったんでしたね。今の話聞いてました?」

花陽「えっと、耳鳴りが酷くて全然聞こえなかったんだけど、その子は亜里沙ちゃんのパートナーなんだよね」

亜里沙「そうですか、こっちは私のパートナーのグルルモンです」

花陽「じゃあ、何で私達や海未ちゃん達を襲ったの?」

亜里沙「海未さんには悪い事をしたと思いますがあの時はまだ真姫さんを渡すわけにはいきませんでしたから」

亜里沙「今回はことりさんの近くに花陽さんがいたので……たまたまです」

花陽「たまたまってそんな……だったら何でことりちゃんを狙うの?」

亜里沙「それは本人に聞いて下さい」

ことり「………………」

亜里沙「さあ、グルルモン。貴方もやられっぱなしじゃ嫌だよね。本気を出そうか」

グルルモン「あぁ、耳鳴りもマシになってきたところだ」

亜里沙「ふふっ、憧れのμ'sのメンバーに聞いてもらうのは恥ずかしいですが」

亜里沙「行きますよ……」





亜里沙「『soldier game』!!」

―――Three,two,one,zero! ここで登場 見てなさい 私の本気

―――スリルと美意識で勝つのよ必ず



花陽「これって真姫ちゃん達の歌だよね?何で突然……」

ことり「亜里沙ちゃんはやっぱり知ってるんだ」



―――優しげな言葉ささやく 偽の可愛さじゃなくて

―――冷たく強く守らなきゃ 


ことり「いけない!花陽ちゃん早くここから逃げなきゃ!!」

花陽「え?何で?」

グルルモン「これだ!これだ!!力が沸いてくる!!!」

―――大切なモノ達 弱きモノ達




亜里沙が持つデジヴァイスがライトブルーに輝くとそのディスプレイから伸びた進化の光がグルルモンへと浴びせられていく

グルルモンの身体は光に包まれ更なる進化を始めた。成熟期を越えた完全たる進化を


『グルルモン超進化!――アスタモン!!』


〝アスタモン〟
完全体 ウイルス 魔人型

悪魔デジモンの軍団を束ねるダークエリアの貴公子。
敵に対する残虐性と味方に対する慈愛を持ち合わせており、そのカリスマ性から従う悪魔デジモンはかなりの数に登ると見られる。
必殺技は愛銃の「オーロサルモン」の弾丸を全て撃ち尽くす『ヘルファイア』と、自身の暗黒の気を貯めて放つキック『マーヴェリック』。

スーツを着た長身の男性の姿に獣の仮面と手にはマシンガン型の銃

身体の大きさこそ小さくはなっているがその存在感、威圧感と言ったものはグルルモンの時よりも圧倒的に勝っていた


アスタモン「この姿になるのも久しぶりだな」


―――私は誰でしょ? 知りたくなったでしょう? ならば恋かも

―――私の中には秘密があるとして



アスタモン「さあ、そこの鳥野郎。お前は本気を出さないのか?」

ディアトリモン「ギギギギギッ」



―――それを 君は どうするの

―――It's soldier game また会えた時 訊こうかな

今回はここまで

亜里沙「さあ、ことりさんは歌わないんですか?」

ことり「わ、私は……」

花陽「ことり……ちゃん?」

亜里沙「歌わないのならそれでも良いですよ。

亜里沙「アスタモン、やっちゃって!」


亜里沙の指示を聞いたアスタモンはゆっくりとした動きでディアトリモンへと近づいていく

ことりもディアトリモンも成熟期と完全体の力の差はわかっている

しかし、だからこそ動くことが出来ない

アスタモンとの距離が5メートル程になったところで立ち止まり、その直後アスタモンの姿が視界から消えた

アスタモン「ふんっ!!」


一瞬で距離を詰めたアスタモンはディアトリモンの左側へと回りこむと、その身体へ蹴りを繰り出す

ただの蹴りだったがその威力は凄まじく、1回り以上は大きいはずのディアトリモンの身体が軽々と宙を舞い吹き飛ばされた


ディアトリモン「ギャァァァーーッッッ!!」

ことり「ディアトリモン!!」


7,8メートルは飛ばされただろうか、何とか立ち上がろうとするディアトリモンに対してアスタモンは再びゆっくりと距離を詰めていく

ディアトリモンが立ち上がり身構えるとアスタモンは右側へと回りこんで再び蹴り飛ばす

それを数回繰り返すうちに高い防御力を誇るディアトリモンでも立ち上がる事すらできなくなっていった

ディアトリモン「ギッ……ギギッ…………」

ことり「お願い!もう止めてっ!!これ以上やられたらディアトリモンが死んじゃうよ!!」

亜里沙「だったら何で歌を……進化をさせないんですか?」

ことり「それは……」

亜里沙「花陽さんが見ているからですか?そんなに自分が大事なんですか?」

ことり「っ!!…………ディアトリモン、しn」

花陽「亜里沙ちゃん、もう止めてっ!!」

亜里沙「何ですか?花陽さん、良い所なんだから邪魔しないで下さい」

花陽「亜里沙ちゃんおかしいよ、何があったか知らないけどこんなの絶対おかしい」

亜里沙「全部忘れている花陽さんにそんな事言う資格なんてありませんよ」

花陽「あるよ!だってディアトリモンやことりちゃんが傷ついてる。これ以上友達を傷つけるならいくら亜里沙ちゃんでも許さないよ!!」

ミノモン「ボクもハナヨをいじめるヤツはゆるさない!!」


『ミノモン進化!――ワームモン!!』


花陽「ミノモンがワームモンに進化した……」

亜里沙「今更成長期になったところで何が出来るっていうんですか。アスタモン少し怖がらせてあげて」

アスタモン「良いのか、亜里沙?」

亜里沙「良いからやって!!」

アスタモン「わかった……悪く思うなよ」

ワームモン「馬鹿にするな『シルクスレッド』」


ワームモンは口から絹糸のような糸を勢いよく吐き出して攻撃する

しかしその攻撃もアスタモンの持つオーロサルモンの銃弾によって全て打ち落とされてしまう


ワームモン「だったらこれだ『ネバネバネット』」


今度は粘着性のある糸を広範囲に向けて吐き出すがアスタモンに悠々と回避されてしまう


花陽(やっぱりワームモンじゃ勝負にならないよ、でも私達がなんとかしないと。このままじゃことりちゃんにも亜里沙ちゃんにも良くない)

花陽(みんなの為にも私達がここで亜里沙ちゃんを何とか止めないと)


アスタモン「そろそろお遊びは終わりだ」

アスタモンがワームモンへ銃口を向けると突然大量の泡がアスタモンの周囲を覆っていく


アスタモン「くっ、何だ!?」

花陽「えっ?何?どうなってるの?」


突然の事態に戸惑う花陽の耳にかすかに自分を呼ぶ声が聞こえる

声の先の見ると青い子竜のデジモンを連れた凛が何か光る物を持ちながらこちらに向かって走ってきていた


凛「かよちーん、これ使ってー!!」


花陽は凛が投げた光る何かを受け止める

それはバードラモンから受け取った銀色の卵型の置き物であった

その置き物の光に共鳴するように花陽のデジヴァイスも輝き、そして姿を変えていくと置き物は花陽の新しいデジヴァイスへと吸い込まれていった

凛「かよちん、デジメンタルアップって叫ぶんだにゃー!!」

花陽「あっ、うん。デジメンタルアーップ!!」


花陽の叫びと共に光となって現れた卵型の置き物――愛情のデジメンタルの光がワームモンを包んでいく



『ワームモン!アーマー進化!!』


『秘めたる愛情 アウルモン!!』



アーマー体 鳥型 フリー 

ワームモンが“愛情のデジメンタル”のパワーによって進化したアーマー体の鳥型デジモン
偵察能力に長けており夜間活動が得意で暗視スコープの目は闇の中でも1km先の相手を発見できる能力をもっている
必殺技は闇に紛れ背後より近づき、鉤爪で襲い掛かる『ミッドナイトクラッチ』

花陽「ワームモンがフクロウに進化した……」

アウルモン「全身から力が沸いてきている、これなら戦える」


アウルモンは泡によって視界が遮られているアスタモンの背後へと急降下して鉤爪で攻撃を繰り出した

予想外の空中からの攻撃に反応が遅れたアスタモンは背中を切り裂かれる

しかし、その傷は浅くアスタモン自身もさほどダメージを受けている様子も無い


にこ「ことり、花陽、大丈夫?」

花陽「私は大丈夫だけどことりちゃんとディアトリモンが……にこちゃん達はどうしてここに?」

にこ「そりゃあんなに大きな鳴き声が聞こえたら様子も見に来るわよ」

凛「あの大きな鳴き声のおかげでブイモンたちも目を覚ましたしね」

ルナモン「寝起きの怪我モンに技を使わせるなんてデジモン使いが荒いルナ」

ブイモン「みんな、あのデジモンまだやる気だよ。気をつけて」

亜里沙「みなさんお揃いのようですね」

にこ「えっ!?アンタは確か絵里の妹の……」

凛「何で亜里沙ちゃんがここにいるの!?」

亜里沙「どうやら海未さんと穂乃果さんの姿が見えないようですが…………まさか」

凛「穂乃果ちゃん達なら真姫ちゃんを探しに行ってるよ」

花陽「凛ちゃん、ダメッ!」

凛「え?」

亜里沙「やっぱり……アスタモン一度戻るよ」

アスタモン「了解だ」

花陽「アウルモン逃がさないで」

アウルモン「わかった!」

アスタモン「そういえば先ほどの攻撃の借りを返さなければな」


アスタモンはアウルモンへと向かって無造作に銃弾を乱射した

いくら玉数が多くとも狙いの定まっていない攻撃など当たる筈も無い

アウルモンは全ての銃弾を回避して逃げるアスタモンを追う…………はずだった

完全に回避したはずの銃弾が何故かアウルモンの翼を撃ち抜いていたのだ


アウルモン「うっ、何で……ちゃんと回避したはずなのに」

アスタモン「残念だが私の弾丸はそれ自体が意思を持っていてね、敵を撃ち抜くまで止まらないのさ」

アウルモン「くっ……そう……」


翼を撃たれたアウルモンは地上へと落ちそのままワームモンへと退化してしまった

花陽「ワームモン!!」


花陽が急いでワームモンの元へと駆け寄り周りを見るとすでに亜里沙とアスタモンの姿はどこにも見えなかった


ルナモン「退いてくれて助かったルナ。ルナはまだ進化出来そうに無いしあのまま戦ってたらやばかったルナ」

にこ「でも何であの子がここにいて、しかも私達を襲ってくるのよ」

凛「もしかして絵里ちゃんや希ちゃんもこっちに来てるのかな?」

花陽「そ、それはわからないけど……」

にこ「ことり?あんたも大丈夫?」

ことり「う、うん……」

にこ「…………とにかくワームモンとファルコモンの手当てをしてあげないと」

にこ「穂乃果と海未の事も心配だけどそれからよ」

ここまで

「おかあさん、このとりさんはだあれ?」

「この子はファルコモンって言うの。今日からことりのお友達よ」

「へー、よろしくね。ファルコモン」

「ホーホー」

「あれ?なにかひかってるよ?おもちゃ?」

「まさか!?ことり、これを大事に持っていなさい」

「おかあさん、これはなあに?」

「そうね……これはことりとファルコモンの友達の証みたいなものよ」

「うーん、よくわかんないけどたいせつにするね」

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凛「ことりちゃん眠っちゃってるね」

にこ「朝も早かったみたいだし、あんな事があった後だから疲れちゃったのね」

花陽「でもワームモンとファルコモンの怪我もそんなに酷くなくてよかったよ」

ブイモン「ファルコモンはしばらく安静にしないといけないけどワームモンはほとんどかすり傷で済んで良かったよ」

ルナモン「完全体が相手でこの程度で済んだなんて幸運ルナ」

花陽(幸運……ううん、もしかしたら亜里沙ちゃんのパートナーがわざと外してくれたかも)

にこ「今すぐにでも穂乃果達を追いかけたいところだけどこのままじゃ無理そうね」

ルナモン「ルナもブイモンもまだ進化するほどの体力は回復してないルナ」

ブイモン「ボクならデジメンタルを使えば進化出来ると思うけど」

にこ「下手に動いたら逆に足手まといになるかもしれないわ。ここは大人しく待ちましょう」

凛「穂乃果ちゃん達、無事だと良いんだけど」

時間は少し遡り、早朝に小屋を出た穂乃果達は前日に真姫のいた花畑へと到着していた

花畑には手がかりらしきものが見つからなかった為、今は分かれてその周辺の探索をおこなっているところである


海未「やはり手がかりらしきものはありませんね」

クダモン「昨日の様子から見てもそんなに遠くに潜んでいないと思うんだけど」

海未「そもそも何故真姫は逃げる必要があったのでしょうか」

クダモン「色々と理由はありそうだけど……」

海未「やはりピコデビモンの言っていた事が気になりますね」

クダモン「ご主人様だったかしら、私達が計画の邪魔になるって……私達を指名手配したのもそいつかもしれないわね」

海未「真姫は『お父様』と呼んでいました。しかし真姫の父親がそんな事をするとは思えません」

クダモン「記憶喪失にしても異世界の人にしてもそのお父様が海未の知ってる父親と同じとは限らないわよ」

海未「それはそうなのですが……」

クダモン「それよりも今大事なのは…………海未、貴方デジモンに恐怖しているわね?」

海未「なっ、何を言っているんですか。付き合いは短いですが私はクダモン達の事を大切な仲間だと……」

クダモン「それなら、こちらを襲ってくるデジモンは?」

海未「それは……」

クダモン「昨日の戦いを見てわかったわ、海未はデジモンに怯えている。おそらくあのフーガモン達との戦いのせいで」

海未「だ、大丈夫です。次の戦いではちゃんと進化させてみせます」

クダモン「もし出来なかったらどうするつもり?」

海未「…………」

クダモン「命がけの戦いに失敗は許されないのよ。もし貴方が進化させられない事で穂乃果に危険があるとしたら」

海未「そんな事はさせません!穂乃果は必ず私が護ってみせます!!」

クダモン「……そう、その気持ちを忘れない事ね」

海未「はい……」

穂乃果「おーい、海未ちゃーん。こっちこっち」

海未「穂乃果?何か見つかりましたか?」

穂乃果「ほら、そこ。さっきのお花畑と同じ花びらが落ちてるんだ」

アグモン「きっと服に付いてた花びらが途中で落ちたんだよ」

海未「確かに同じ花のようですが……しかしそれだけでは証拠にはちょっと……」

クダモン「風で飛ばされてきただけかもしれないしね」

穂乃果「えー!?せっかく名探偵シャーロック・ホノカになったと思ったのに」

海未「それにこの周りには滝くらいしか……おや?」

クダモン「どうかした?」

海未「いえ、あの滝の裏に通れそうなスペースがあるので」

穂乃果「あっ!もしかしたら……」

海未「こら穂乃果、一人で行ったら危ないですよ」

穂乃果「やっぱり!海未ちゃーん、滝の裏に道があるよー!!」

海未「本当ですか!?」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「真姫よ、準備は良いか?」

真姫「はい、お父様。いつでも大丈夫です」


全身に黒いドレスを身に纏い、真姫は広く分厚い壁に囲まれた部屋に一人立っていた

しんと静まり返ったその部屋に再びスピーカーから『お父様』の声が響く


「では、始めるぞ」


ウィーンという駆動音と共に床が開き中から鎖に縛られ檻に入れられたデジモンが数体現れる

どのデジモンも身体の自由を奪われ、その怒りにうなり声を上げていた


「さあ、真姫。昨日渡したデバイスを使うのだ」

真姫「はい……デジ・クロスッ!!」

真姫の掛け声と共に檻の中のデジモンのうち2体の身体が輝きその光が一つになっていく

やがて光が収まっていくとその中から1体の異形なデジモンが現れた

2体のデジモンだったものが無理矢理に一つにされたような姿をしたそのデジモンは檻の中で更に激しく暴れていた


「くっくっくっ、成功だ!成功だ!!真姫、そのまま続けろ!!」

真姫「はぁ……はぁ……はい、お父様。デジ・クロスッ!!」


更に1体、また1体とデジモン達は融合していき更なる異形な存在へと変化していく

その様子をモニター越しに見て笑みを浮かべる男は別のモニターに警告表示が出ているのに気が付いた


「これはこれは、さっそく雛鳥の仲間が来てくれるとは」

「可愛そうだが彼女達には実験台になってもらうとしようか」

元のモニターへと視線を戻すと檻の中に最初は10体程はいたデジモンはすでに残り3体にまで減っている

そして檻の前には先程まで掛け声を上げていた真姫が床へと座り込んでいた

男は一つ溜め息をつくとスピーカーのスイッチを入れて真姫へと話しかける


「どうした、まだ残っているぞ」

真姫「はぁ……はぁ…………んっ、ごめんなさい、お父様」


男は真姫が立ち上がったのを確認してスピーカーの電源を切る


「どうやら体力の消費が著しいようだな。改良の余地有りか」

「いや……これさえ完成すれば必要無いな。あのデバイスも女も」

「くっくっくっくっ、ふっはっはっはっはっはっは」


高笑いを始めた男の見るモニターにはたった1体のデジモンとその場に倒れ込む少女の姿だけが映っていた

投稿中に寝かけたし区切りがいいのでここまでで

更新遅くてすみません

滝の裏側にあった大きな洞窟

その周辺を念入りに確認した穂乃果達だったがとくに怪しい箇所は見つからずにいた


穂乃果「これだけ調べたらもう大丈夫だよね。中に入っちゃおうっと」

海未「あっ、穂乃果。待ちなさい!」


穂乃果が洞窟の中へと足を一歩踏み入れると突然周囲の景色が一変した


穂乃果「えぇっ!?」


薄暗い洞窟へと入ったはずが周囲は天井の照明に照らされており、壁も床も汚れは無くまるで新築の病院のような場所に立っていた

穂乃果は慌てて後ろを振り向くとすぐ後ろにはオロオロと自分以上に慌てる海未の姿と勢い良く流れる滝が見える

どうやら別の場所へと移動したわけでは無く、あの洞窟の中であるのは間違い無いようだった

穂乃果「これって……」

アグモン「あの森にあったのと同じでホログラムみたいだね」

穂乃果「あぁー、なるほど」


穂乃果はデジタルワールドに初めて来た日の事を思い出して納得する

あの時は外側からは普通の木にしか見えない隠れ家の中に避難したのだ

という事は内側からは海未達の姿は普通に見えているが海未からすれば洞窟に入った穂乃果が突然消えたように見えたのだろう

海未もしばらく洞窟の前で躊躇していたようだったが意を決して中へと侵入する

海未「ここは?……穂乃果!良かった無事で」

穂乃果「えへへっ、まだ中に入っただけだよ。それにしてもここはどこだろう?」

海未「人工的な施設のようですが、ここに真姫がいるのでしょうか」


目の前には横幅3メートル程の廊下がやや左曲がりに長く長く続いておりその突き当りが見えない程である

そして廊下の壁には等間隔で扉のようなものが見えている

アグモン「沢山部屋があるね。全部調べるのは大変そうだよ」

穂乃果「頑張るしかないねぇ~、じゃあまずはこの部屋から……」

海未「穂乃果、もうちょっと慎重に……」

穂乃果「あれ?海未ちゃーん、この扉、取っ手が付いて無いよー」

海未「取っ手が無い……という事は自動ドアなんでしょうか」

穂乃果「でも近づいても押しても開かないよ?」

クダモン「ここに住んでる誰かさんがロックしているんでしょうね」

穂乃果「それじゃあ調べられないじゃん!」

アグモン「壊しちゃう?」

海未「いえ、それは最後の手段です。とりあえずは開く扉が無いか確認してみましょう」

穂乃果「うーん、結構奥まで来たけど何処も開かないねぇ」

アグモン「でもここまでずっと一本道だから迷わなくて良いね」

穂乃果「そうだね、私ってすぐに道に迷っちゃうからありがたいよ」

海未「クダモン、これはやはり……」

クダモン「まあ十中八九罠でしょうね」

穂乃果「えぇー!?嘘、何で?」

海未「全て閉まったままの扉、それにこんなに長い距離一本道。怪しく思わない方がおかしいです」

クダモン「おそらくはさっきのホログラムを使って道を隠してこっちに来るように誘導しているんでしょうね」

アグモン「じゃあやっぱり扉を壊して適当な部屋に入ってみる?」

海未「ここで相手を刺激して真姫の身に何かあれば元も子もありません。それに相手の目的もわからない内に強行手段に出るのはちょっと……」

クダモン「まあ、今までの行動からして穏便に済むとも思えないけれどね」

穂乃果「それでも真姫ちゃんの安全が一番だよ。今はこのまま進もう」

海未が扉へと近づくとゴゴゴゴ……と重量感のある音と共に扉が開き始める

部屋の中はかなり広く感じるが明かりは無く中の様子をうかがう事は出来なかった


海未「暗いですが……入るしか無さそうですね」

穂乃果「絵里ちゃんがいなくて良かったねぇ」

アグモン「穂乃果、絵里ちゃんって誰?」

穂乃果「えっとね、絵里ちゃんはねー……」


全員が部屋の中へと入ると扉は閉まって行き、突然目の前に大きなディスプレイが現れる

ディスプレイと言っても物理的な画面が現れた訳ではない

アニメや漫画で見るような何も無い空間に映し出されたるという未来的な光景

しかしその映像に映し出されたのは白衣姿に黒縁眼鏡をかけた中年の男性というなんとも夢の無いものであった

「ようこそ来てくれた雛鳥の仲間達よ。私の名前は……そうだな、アナログマンとでも呼んでもらおうか」

海未「貴方がここの主人ですか。真姫は、西木野真姫はどこですか!?」

アナログマン「真姫か、それならほら、そこにいるだろう」


部屋の奥にスポットライトが当たるとそこには黒い服に包まれた赤毛の少女が倒れていた


穂乃果「真姫ちゃん!!」


穂乃果は走って真姫へと近づこうとするがその途中には複数の鉄の柱によって道を塞がれていた

何とか真姫の元へと行こうと道を探すが道は完全に閉ざされているようであった

穂乃果「アグモン!この柱を壊しちゃって!!」

アグモン「よーし、『ベビーフレイム!!』」


アグモンの吐いた火球は柱へと直撃するが傷一つ付かない


アナログマン「おやおや、乱暴なお嬢さんだ。しかしその柱はその程度攻撃ではビクともしないよ」

アナログマン「それに……その檻が壊れて困るのは真姫の方なんだがね」

海未「檻だなんて、真姫を閉じ込めてどうするつもりですか!?」

アナログマン「何か勘違いをしているようだね」

海未「勘違い?それはどういう事ですか!?」

アナログマン「こういうことだよ」

アナログマンの言葉と共に部屋全体に明かりが灯される

大きな円形の部屋を仕切るように鉄の柱……檻で2つに分けられている

真姫は穂乃果達のいる場所に比べてずいぶんと小さいスペースではあるが一人で倒れており照明の明かりで目覚めたのかゆっくりと動こうとしていた

問題は穂乃果達の方だ

部屋の広さこそ十分過ぎる程の大きさがある。しかしその空間にいたのは穂乃果とアグモン、海未とクダモンだけでは無かった

グレイモンの2倍以上はあるであろう巨大で禍々しい姿の生き物

つい先程、真姫が作り上げた合成デジモンが身体中を鎖で縛られた状態で目の前にいたのだ

アナログマン「獣の檻に入っているのは君達のほうだよ」

穂乃果「何これ……す、凄く大きい……」

クダモン「なんなのこのデジモンは?こんなやつ見たこと無いわ」

アグモン「グレイモンの身体にガルルモンの足、完全体のスカルグレイモンの腕まであるよ」

アナログマン「ふっはっはっはっは、驚いたか」

アナログマン「これこそが私の作り上げた真の完全なるデジモン キメラモンだーー!!!!」

今回はここまで

〝キメラモン〟
完全体 データ 合成型


手、足、体、尾など全体を構成する各パーツが、様々なデジモンの合成で組み合わされ創られている合成型デジモン。
複数のデジモンのデータを影響で恐るべき闘争本能と強大なパワーを持つが知能はあまり高く無い
必殺技は四本の腕から放出される、死の熱線『ヒート・バイパー』




クダモン「作り上げたって……まさかこのデジモンは貴方が作ったっていうの?」

アナログマン「その通り、私の作成したデバイスを使い10体ものデジモンを融合させて作り上げたのだ」

アナログマン「貴様等にはこのキメラモンの力を測る実験台となってもらおうか」

穂乃果「でもこのデジモン寝てるみたい。全然動かないよ」

アグモン「今のうちに攻撃しちゃえば……」

アナログマン「残念だが、必要なカギは今目覚めたようだ」

真姫「うっ……んっ……どうやら気を失ってたみたいね……」

穂乃果「真姫ちゃん!!」

海未「良かった、無事だったのですね」

真姫「貴方達は……確か昨日の」

アナログマン「さあ真姫よ、説明した通り早くキメラモンを目覚めさせるのだ」

真姫「お父様?だ、だけど今あれが目覚めたらそこの子達が……」

アナログマン「真姫、父親の言う事が聞けないのか?」

真姫「……はい。わかりました。お父様」

穂乃果「まままま待ってよ、真姫ちゃん!?」

海未「そうです!それにあの男は真姫の本当のお父様では無いではありませんか」

穂乃果「そうだよ、真姫ちゃんのお父さんはもっとダンディな……」

真姫「煩いわ!貴方達が誰かは知らないけれど、これ以上お父様を侮辱するなら許さないわよ!!」

穂乃果「ま、真姫ちゃん……本当に記憶喪失なんだ」

海未「くっ、とにかく今はこの檻から逃げなければ」

アナログマン「ふっはっはっは、さあ、歌うんだ!真姫よ!!」

真姫「はい、お父様」

――届かない夢を口にしないのは 消えそうな美しさの仕業

――冷たい光に触れたくなるのは 不思議だわ 心は謎だらけ



穂乃果「え?歌うの?何で?」

海未「何故……まさか歌で目覚めるとでも?」



――知らない世界で 見つめ合えたら

――わたし伝えたくなるわ



真姫の歌に答えるかのように合成デジモンの瞳に光が宿る


キメラモン「グアアァァァァァァァァ!!!!」


目覚めたキメラモンは自分を縛る大量の鎖を無理矢理引き千切ると目の前の獲物へと狙いをさだめた

穂乃果「本当に起きちゃった!」

アグモン「このままじゃまずい、穂乃果、進化を!!」

穂乃果「うん。海未ちゃんと2人ならきっとなんとか……」

海未「あっ……あっ……」

穂乃果「う、海未ちゃん?」

海未「いやっ……ダメです、来ないで下さい!来ないでっ……」

クダモン「海未、落ち着きなさい!」

海未「ダメッ!ダメなんです!!は、早く逃げないと!!!」



――誰かを苦しめる かまわないわ悔やまない

――ああ…激しく駆け抜ける願い

穂乃果「海未ちゃん大丈夫?」

海未「あ、穂乃果……ごめんなさい、私は……」

穂乃果「海未ちゃん…………アグモン、進化だよっ!!」

アグモン「任せて、穂乃果も海未もボクが守ってみせる」



『アグモン進化!――グレイモン!!』



穂乃果「グレイモン、私達の入って来た扉を壊して!」

グレイモン「わかった、『メガフレイム!!』」

グレイモンの吐いた業火球は入り口の扉に当たり爆発を引き起こす

しかしグレイモンの必殺技の受けても扉には何の変化も起きなかった


クダモン「この部屋があのデジモンを閉じ込めておく為の部屋だとすると完全体クラスの攻撃でも簡単には壊せそうに無いわね」

穂乃果「そんな……じゃあどうすれば」

グレイモン「だったらアイツを倒せば良いんだろ」

穂乃果「でも相手は完全体だって、今まで戦ったのもあんなに強かったのに」

グレイモン「それでも穂乃果達を守るためにはオレが戦わないと」

穂乃果「グレイモン……」

グレイモン「みんな、離れてて!」

ここまで

――このままどこまでも 共に堕ちて行く

――この時間は罪なの?


キメラモン「グワアアァァァ!!」


キメラモンは雄たけびと共にグレイモンへの距離を詰める

スカルグレイモンとクワガーモンを模した長い腕を伸ばすとグレイモンも腕を出し手四つの状態となった

パワーはやはり完全体であるキメラモンの方が上のようだったがグレイモンも負けじと食らいつく

このままならば良い戦いが出来るかもしれない……しかし状況はそう甘くは無かった

キメラモンには更にデビモンを模した2本の腕があるのだ

両手を塞がれているグレイモンにはこの腕を防ぐ手立ては無い

デビモンの腕は容赦なくグレイモンの無防備な頭部を殴りつけていく

グレイモン「ぐっ、うわぁっ!!」


グレイモンは一度距離を取るために離れようとするがキメラモンは手四つから放そうとせずに攻撃を続けた

一方的な攻撃をまともに受け続けやっとの事で腕から解放されたグレイモンはその場に倒れ込む


穂乃果「グレイモン!!」

クダモン「……っ……海未!しっかりしなさい!!」

海未「あっ……わたしは…………」

クダモン「必ず護るって約束したはずよ、貴方の決意はその程度のものだったの!?」

海未「わたしが護る……そうです、護らなければ、護らなければ……」

海未「クダモン、進化です!」






海未「…………な、なぜです?なぜデジヴァイスが反応しないのですか!?」

海未「私が護らなきゃいけないのに……進化させなきゃいけないのに……」

クダモン(やっぱり海未がこの状態じゃ進化は出来そうに無いわね)

クダモン(だったら私に出来る事は……)


グレイモン「くそう、『メガフレイム!!』」


床へと倒れたグレイモンはそのままの状態からキメラモンへと反撃を開始する

グレイモンは放った火球がキメラモンへと直撃した事を確認すると2発、3発と連続で攻撃を仕掛けていく

攻撃を受けて後ずさりしていくキメラモンに対してグレイモンは体勢を立て直しつつ更に攻撃を続ける

穂乃果「いいぞー!いけいけ!やっちゃえー!!」

クダモン(さっきまでより明らかに動きが鈍くなった?何で?)



アナログマン「どうした真姫、早く続けろ」

真姫「は、はい、お父様」



――届かない想い 閉じ込めるのさえ 切なさがくれるご褒美のよう


グレイモンの攻撃を受け続けていたキメラモンは突然背中の4枚の羽を広げて宙へと舞った

その圧倒的な巨体らしからぬ速度で飛翔しつつグレイモンの火球を次々と回避していく

――重なる世界が 歪みながらも ふたり飲み込めばいいのに


穂乃果「あぁっ、攻撃が当たらなくなっちゃったよ」

クダモン(突然動きが良くなった?これはやはり何か……)


――未来を打ち壊す おそれないわ嘆かない

――ああ…優しい希望などいらない


キメラモンは空中で回避を続けながら自らの4つの手へと力を集めていく

オレンジ色に輝くその手から放たれる4つのエネルギーはレーザーとなりグレイモンを襲う

グレイモン「ぐわぁぁっっっっ!!!!」

穂乃果「いやっ!グレイモーーン!!」

――その目に引き裂かれて 共に堕ちて行け

――この祈りが罪でも


腕を、足を、身体をキメラモンの『ヒートバイパー』によって貫かれるグレイモン

いつ退化してもおかしく無い状態だったがなんとか気力で踏みとどまっていた


グレイモン「駄目だ、このまま元に戻ったら穂乃果達を守れない」

穂乃果「待って!これ以上やられたらグレイモンの身体が壊れちゃうよ!!」

グレイモン「大丈夫、オレを信じて」

穂乃果「でも……」

グレイモン「必ず穂乃果を守ってみせる!!」

『穂乃果は必ず私が護ってみせます!!』

海未「あっ……わ、わたしは……くっ……うっ……」

アナログマン「さあキメラモンよ、早く止めをさしてしまえ。真姫も早く続きを歌うのだ!」

真姫「……はい、お父様」

クダモン「そうはさせないわ!!」


いつの間にか真姫の目の前へと移動していたクダモンは身体を捻らせ真姫の持つデジヴァイスを叩き落とした

真姫「えっ、しまった!」


真姫は落としたデジヴァイスを急いで拾おうとするがその前にクダモンが立ちふさがる


クダモン「油断したわね、あの程度の格子だったら私の身体なら余裕で通り抜けれるわよ」

アナログマン「チッ、キメラモン!!さっさとそのでかい方だけでも倒してしまえ!!」

キメラモン「ググググググ、グワアアァァァァァッ!!!!」

再びキメラモンの4つの手にオレンジ色の光が集まっていく

先程までよりも力の集まりはずいぶんと遅いものの満身創痍のグレイモンは逃げることも反撃する事も出来ないでいた


グレイモン「くっ、オレは守るんだ」

『お前は必ず強くなる。だからここは私に任せてお前は皆を守れ』

グレイモン「動け身体、あのメタルマメモンみたいに強く、皆を守れるように!!」

穂乃果「ありがとうグレイモン」


穂乃果は前へと出ていた。今にも攻撃をしかけようとするキメラモンとグレイモンの間へと


海未「穂乃果!何をしているのですか!!」

グレイモン「穂乃果、下がって!」

穂乃果「ありがとう、でもグレイモンだけで守る必要は無いんだよ」

穂乃果「私達はパートナーなんだから」

グレイモン「ほの……か?」

穂乃果(たぶんこのままじゃグレイモンも海未ちゃんもクダモンも私も助からない、きっと真姫ちゃんだって)

穂乃果「私の力じゃ戦う事は出来ないし、みんなを守ることも出来ない」

穂乃果(にこちゃん、ツバサさん、そして真姫ちゃんを見ててわかった)

穂乃果「私には何の力も無いけれど」

穂乃果(もしかしたら、ことりちゃんも知ってたのかな)

穂乃果「気持ちを、想いを伝える事は出来る!」

穂乃果(歌は力を!奇跡を与えてくれるって!!)

穂乃果「いっくよーーー!!」

―― I say…… Hey,hey,hey,START:DASH!!

―― Hey,hey,hey,START:DASH!!


グレイモン「これは……穂乃果の歌?」

海未「穂乃果、いったい何を……」


――うぶ毛の小鳥たちも いつか空に羽ばたく

――大きな強い翼で 飛ぶ


キメラモン「グッ……ウガッ……」

アナログマン「ど、どうしたキメラモン!早くやってしまえ!!」

――諦めちゃダメなんだ その日は絶対くる

――君も信じてるよね はじまりの鼓動


グレイモン「傷が塞がって身体にかつて無いくらいの力が沸いてくる」

海未「穂乃果のデジヴァイスが……」


穂乃果のデジヴァイスは激しく振動を始めその全体がオレンジに輝き始めた

まるで世界を照らす太陽のようにその暖かな光はグレイモンの身体を包み込んでいく


――明日よ変われ! 希望に変われ!

――眩しい光に 照らされて変われ




――START!!

―― I say…… Hey,hey,hey,START:DASH!!

―― Hey,hey,hey,START:DASH!!


真姫「この歌は……」


初めて聞く歌のはずだった

少なくとも私にはこの歌を聞いた記憶は無い

それなのに……


真姫「それなのに、何でこんなに胸が熱いの?」

海未「この歌は私達の、μ'sの始めての歌です」

海未「真姫が作曲してくれて、穂乃果とことりと私で始めてのライブで歌った曲」

真姫「私が作曲?いったい何を言って……」

海未「あの日、初めてのライブの時にほとんど観客のいない講堂で3人で歌った」

海未「あの日、散り散りになった私達9人が再び集まって歌った」

海未「真姫、貴方は本当に忘れてしまったのですか?」

真姫「知らない、知らないわ!この歌も貴方達の事も私は知らない!!」

海未「私は思い出しました……」

真姫「え……?」

海未「初めてのライブに恥ずかしくて逃げ出してしまいたい時も、観客が誰もいなくて絶望した時も」

海未「親友が遠くへと行ってしまうのを止められなかった時も穂乃果は私の前へと進んでいきました」

海未「そんな穂乃果の事を私は支えたいと思っていましたが、また助けられてしまったようです」

海未「真姫、見てください。穂乃果のデジヴァイスが……」

真姫「あれは進化の光?……でもあんなに暖かな光、初めて見るわ」

海未「きっとこの場も真姫の事も穂乃果がなんとかしてくれると思います」

海未「穂乃果は私達のリーダーですから」

穂乃果(私はみんなを守りたい)

グレイモン(オレがみんなを守ってみせる)

穂乃果(誰かが悲しむのなんて嫌)

グレイモン(みんなを傷つかせたく無い)

穂乃果(だから私にその力があるのなら)

グレイモン(オレはその為の力が欲しい)


大空へと飛ぶ為の大きな翼を

みんなの盾となる為の強靭な身体を

敵を退ける為の鉄の左腕を

グレイモンの身体は想いを叶えるかのようにその姿を変えていく

その全身の半分を覆うように機械化した身体は燃えるような真紅に輝いていた



――START!!

「これが今のオレ達にとっての必要な力」

「進化を超えた超進化」



ライズグレイモン「このライズグレイモンがお前を撃ち倒す!!」




〝ライズグレイモン〟
完全体 サイボーグ型 ワクチン

体の半分以上を機械化しているサイボーグ型デジモン。
その巨体にも関わらず大空へ飛翔し、左腕の巨大なリボルバーから発射される攻撃は核弾頭一発分に匹敵するといわている。
必殺技は、クロンデジゾイドの限界耐久で高速連射(3点バースト)する『トライデントリボルバー』と
翼にある3連ビーム砲及び、胸部発射口からビーム弾幕を放つ『ライジングデストロイヤー』


キメラモン「グッ、グワワァァァァァァッッッ!!」

ライズグレイモン「待たせたな、決着をつけてやる」


アナログマン「バカな、成熟期から完全体に進化しただと!?たかが小娘の歌程度で!!」

アナログマン「やれ、キメラモン!!お前は私が作り上げた最強のデジモンだ、そんなヤツ蹴散らしてしまえ!!」

キメラモン「グワアァァァァッッッ!!」

――悲しみに閉ざされて 泣くだけの君じゃない



キメラモンはライズグレイモンの左腕に装備された巨大な銃を警戒してか近接戦へと持ち込もうと空中から一気に距離を詰める

再びライズグレイモンの身体を拘束しようと4本の長い腕を伸ばす

しかしライズグレイモンは機械の翼を広げると急上昇を行い、そのままキメラモンの背後へと回り左腕の銃身で殴りつけた

クロンデジゾイトという金属で作られた堅牢な銃身は鈍器としても十分な威力を発揮する

キメラモンは勢いよく床へと叩きつけられた



――熱い胸 きっと未来を 切り開く筈さ


キメラモンはすぐにライズグレイモンへと振り返ると4つの手から『ヒート・バイパー』を発射する

4本の熱線は赤く彩られたライズグレイモンの上半身へと直撃した

だがエネルギーを溜めていない攻撃は半身を機械化した身体を傷つける事は無くかき消される

お返しとでも言うように今度はライズグレイモンが両翼に付いた3連のビーム砲から光線を発射する

ライズグレイモン「『ライジングデストロイヤー!!』」

――悲しみに閉ざされて 泣くだけじゃつまらない




合計6本の光線がキメラモンの腕を足を羽を身体を貫いていく


キメラモン「グワアァァァァァァ!!」


動きが鈍ったキメラモンを見てライズグレイモンはゆっくりと照準を合わせるかのように左腕を構える



――きっと 君の チカラ 動かすチカラ


ライズグレイモン「これで終わりだ『トライデントリボルバー』!!」

ライズグレイモンの左腕の銃口からキメラモンへと向けて3発の銃弾が一斉に放たれる

3発の銃弾は全て咆哮するキメラモンの頭部から身体へと貫いていく



――信じてるよ だから START!!

キメラモン「グギャアアァァァァァァァァ…………!!」


咆哮とも悲鳴ともわからない雄たけびをあげ動かなくなったキメラモンの身体は徐々にデータの欠片となって崩れていく

データの欠片がキラキラと輝きながら散る様子はまるで一斉に飛び立つ蛍のように淡く輝いていたが

その身体の全てが光となると後には何も残らなかった


クダモン「どうやら終わったみたいね」

海未「穂乃果!無事ですか!?」

穂乃果「ふぅ、うん!なんとも無いよ。ライズグレイモンのおかげだね」

ライズグレイモン「オレだけの力じゃない、穂乃果の歌があったから進化することが出来た」

穂乃果「えへへ、私も必死だっただけだから」

海未「すいません、私が不甲斐なかったせいで皆さんに迷惑を……」

穂乃果「そんな事無いよ!とにかくみんな無事でよかった」

真姫「…………」

穂乃果「もちろん真姫ちゃんもだよ」

真姫「……貴方達何者なの?何で私の事を知って……いえ、何で私が貴方の歌を知っているの?」

海未「真姫、それは……」


アナログマン「ばぁぁぁぁかなぁぁぁぁぁぁぁ!!

穂乃果「なっ、何!?」

アナログマン「私が作り上げた最強のキメラモンがこんな小娘達にやられるだとおぉぉぉぉ!?」

アナログマン「くそがぁぁぁぁぁぁぁ!!これも全部真姫!お前のせいだ!!お前がちゃんと歌ってさえいればこんな事にはあぁぁぁぁ!!!!」

真姫「あっ……お父様……ごめんなさい、ごめんなさい」

穂乃果「真姫ちゃんが謝る必要なんて無いよ!」

海未「そうです。あの人は真姫の本当の父親ではありません。真姫の事を騙しているのです」

真姫「騙してる?お父様が私を?」

アナログマン「真姫!!そんな奴らの言う事など聞くな!!お前には私だけがいればそれでいいのだ!!」

真姫「お父様…………私、私は……」

穂乃果「真姫ちゃん!!」

海未「真姫!!」

穂乃果「みんなで帰ろう!音ノ木坂に、μ'sのみんなで!!」

真姫「音ノ木坂……みんな……μ's…………」

海未「そうです、凛や花陽、ことりもにこも待っていますよ」

真姫「りん…はなよ…ことり…にこ…………ほのか…うみ……」

穂乃果「真姫ちゃん、穂乃果の事がわかるの!?」

アナログマン「チッ、ここまでか」


アナログマンが手元にあるスイッチを押すと部屋のあちこちに設置されていたパトランプが回り警報音が流れた


海未「何事ですか!?」

アナログマン「基地の自爆スイッチを押したのさ。あと10分もすれば貴様等はその基地ごとどかーんだ」

穂乃果「えぇ!?早く逃げなきゃ!」

クダモン「ライズグレイモン、この鉄格子を壊せるかしら」

ライズグレイモン「やってみる、『トライデントリボルバー』!!」


ライズグレイモンの左腕の銃身にエネルギーが集まり3つ弾丸が鉄格子へと発射される

グレイモンの時よりも遥かに高い威力の攻撃、しかし鉄格子を破壊する事はできなかった

海未「そんな、これでも壊せないだなんて」

アナログマン「馬鹿め、その部屋の金属は全て特製のクロンデジゾイトで出来ているのだ」

アナログマン「例え完全体が束になって簡単に壊れはしないのさ」

穂乃果「ど、どうしよー!!早くなんとかしないとみんなペシャンコだよ」

真姫「穂乃果、そっちの扉を攻撃しなさい。無闇に攻撃するよりはマシかもしれないわ」

穂乃果「真姫ちゃん、記憶が戻ったの!?」

真姫「まだよくわからない、だけど貴方達が穂乃果と海未って事だけはわかるわ」

穂乃果「良かった!良かったよ!!」

真姫「わ、私の事は良いから今は脱出する事だけ考えなさい」

穂乃果「うん!ライズグレイモンお願い!!」

ライズグレイモン「あぁ、任せろ」

海未「しかしこちら側の扉を壊しても真姫はどうするのですか?」

真姫「……っ、お父様!もうこんな事は止めて下さい!!」

アナログマン「ほう、記憶が戻ったのにまだ私を父と呼ぶのかね?」

真姫「私の中にはまだ貴方が父親だっていう記憶も残っています。だから……」

アナログマン「安心しろ、お前は貴重な実験体だ。ここで死なせるような事はしないさ」

突然真姫の後ろの扉が開くとそこには全身が金属で出来たデジモンが1体立っていた


〝メカノリモン〟
成熟期 ウイルス マシーン型

小型デジモン専用のパワードスーツデジモンであり、デジタルワールド初の乗り物型デジモンでもある。
自ら行動することはできず常に他のデジモンが操縦しないと活動できない特異なデジモンである。
必殺技は、メカパワー炸裂のコークスクリューパンチ『ジャイロブレイク』と胴体に埋め込まれたリニアレンズから照射される『トゥインクルビーム』



メカノリモンは真姫の元へと近づくと長い手を真姫の身体へと巻きつけた


真姫「やっ、くっ、放しなさいよ」

メカノリモン『大人しくして下さい。早く外へ逃げますよ』

真姫「その声は、ピコデビモン?」

メカノリモン「そうです。申し訳ありませんが無理矢理にでもこのまま移動させてもらいます」

真姫「ダメ!逃げるなら穂乃果達も一緒よ!!」

メカノリモン「我侭をおっしゃらないで下さい」

アナログマン「ピコデビモンよ、クロスローダーも回収してくるのだ」

メカノリモン「……了解しました」

クダモン「大人しく渡すと思ってるの?」

海未「クダモン、そのまま渡して下さい」

クダモン「何言ってるのよ、こいつらはこのデバイスでさっきの化け物を産み出したのよ」

海未「今は争っている時間はありません。少なくもと真姫の命が助かるのなら行かせるべきです」

真姫「海未!何言って……」

クダモン「……はぁ、仕方ないわね」


クダモンが尻尾を使いクロスローダーをメカノリモンの足元へと飛ばした

メカノリモンはそれを拾うと入って来た扉へと急いで移動を始める


真姫「ちょっと待って。海未!穂乃果!!」

穂乃果「大丈夫!こっちも何とか逃げ出すから先に外で待っててよ」

海未「穂乃果の言う通りです。必ず迎えに行きますから」

真姫「絶対よ、絶対なんだから!!」


メカノリモンは真姫の叫びを響かせながら扉の奥へと消えていった

クダモン「さあ、早いところ出口を確保しないといけないわね」

海未「クダモンだけならあちらの扉を使えば外に出られるのでは?」

クダモン「私は貴方のパートナーよ、冗談でもそんな事言わないで頂戴」

海未「……すみません、しかしこのままでは……」


何度も何度も扉に攻撃を続けるライズグレイモンだったがやはり破壊する事は出来ないでいた


海未「このままでは私達は……」

穂乃果「よーし、もう一曲歌えばきっと……」

アナログマン「ふはははは、無駄だ無駄だ、その程度じゃその扉は壊せんよ」

穂乃果「そんなのやってみないとわからないよ!」

アナログマン「わかるのさ!その部屋はk…ザザ…体の上…ザザザザ……く体の…ブツン」

穂乃果「あれ?消えちゃったよ?」

海未「放送機器が壊れたのでしょうか」

ライズグレイモン「穂乃果、見てくれ。扉が!!」

先程までライズグレイモンが攻撃を行っていた扉が突然動き出し開いていく


穂乃果「え?何で!?」

クダモン「理由は後で考えればいいわ、今は早く逃げ出しましょう」

ライズグレイモン「みんな、おれに手に掴まって」


穂乃果と海未がライズグレイモンの差し出した右手の上に乗ると急いで来た道を遡っていく

そして滝の洞窟抜けると同時に爆発は起こりその入り口は瓦礫によって塞がってしまった


穂乃果「うわぁ、服がびしょびしょだよ~」

ライズグレイモン「すまない、急いでいたせいで滝まで通りぬけてしまった」

クダモン「命に比べたら身体が濡れるくらいどうって事無いでしょ」

海未「そうですね、スピードを緩めていたら爆発に巻き込まれていたかもしれませんし」

海未「それにしてもあの扉は何故開いたのでしょうか?」

穂乃果「今はそんな事よりも真姫ちゃんを探さないと」

海未「そうですね。このまま空から周囲を探索してみましょう」

ライズグレイモン「あぁ、わかった」

アスタモン「良かったのか?」

亜里沙「何が?」

アスタモン「助けた事も、あのまま行かせた事もだ」

亜里沙「私が許せないのはことりさん達だけ、海未さん達は関係無いわ」

亜里沙「それに今更探したってどうせ真姫さんは見つかりっこ無いんだし」

アスタモン「あの男はどうするつもりだ?」

亜里沙「あの人にはまだ仕事が残ってるからもう少し好きにさせておくわ」

亜里沙「後は……そうね、私にも仲間が欲しいところね」

アスタモン「仲間だと?」

亜里沙「大丈夫だよ、もう準備は済ませてあるんだから」

以上

アグモンがライズグレイモンになったのは自分が見た目が好きなのとメタルマメモンを意識したからです
ちなみに各メンバーの紋章も考えましたが役割を歌に持たせたのでたぶん登場させません

「やめて!やめてよ!ファルコモン!!」

「おねがいだからわたしのいうことをきいて!!」

「そうだ!ファルコモンのすきなおうたをうたってあげるね」

「ラララーラーラララーラーラララーラーラーラーラーラーララー」

「あっ、えっ?ともだちのあかしが……」

「おおきな……くろいとり……ファルコモン……?」

「まって!やめて!ねぇ!ファルコモーーーン!!!!」

ことり「ファル……コモン………あっ……私寝ちゃってたんだ……」

ことり「そうだ!ファルコモンは!?」

ファルコモン「ホー……ホー……」

ことり「良かった、静かに寝てるみたい」

ことり「でもこんなに傷だらけで……ごめんね」

『復讐ですよ。デジモンと人間、そしてことりさんとファルコモンへの……』

ことり「亜里沙ちゃんはあの事を知ってた……でも、私は……」



「すみませんでした!!」


ことり「あれ?この声って……海未ちゃん?」

海未「本当にすみませんでした!!」

花陽「そ、そんな、海未ちゃん頭を上げてよ」

凛「そうだよ、海未ちゃんが悪いわけじゃないんだし」

海未「いえ、私がちゃんと話していれば真姫を救う方法もあったかもしれません」

穂乃果「それを言ったら私がもっと頑張ってれば真姫ちゃんを……」

アグモン「ボクがもっと早く敵を倒していれば……」

にこ「過ぎた事を言っても仕方ないわよ。それに朝の時点じゃどちらにしてもあの組み合わせが最善だったと思うわ」

ブイモン「もし僕が朝までに気が付いてたら……」

ルナモン「完全体が相手じゃ少しくらい戦力が入れ替わっても変わらなかったルナ」

にこ「まあ、そうでしょうね。それにしても歌かぁ……ルナモン、あんた前に歌ってあげたのに完全体にならなかったわよね」

ルナモン「完全体どころか成熟期になったのだってあれが始めてルナ!!」

にこ「そうよねぇ……単純に歌えば進化出来るってわけじゃないのかしら」

凛「きっとにこちゃんの歌がへt…ヒタヒ!ヒタヒ!ヒタヒ!」

にこ「あんた、それ以上言ったら痛い目にあわせるわよ」

凛「もうほっぺ抓られて痛い目にあったにゃー、かよち~ん」

花陽「凛ちゃんたら、よしよし」

凛「にゃ~☆」

穂乃果「凛ちゃんだけずるーい、穂乃果も撫でて貰いたーい」

クダモン「……話を戻して良いかしら?」

にこ「そ、そうね」

クダモン「進化の話はともかく、今するべき事は連れ去られた子……真姫を見つける事ね」

ブイモン「どこに行ったか心当たりはあるの?」

クダモン「正直まったくわからないわね……何か手がかりでもあれば良いんだけど」

ルナモン「ふふん、こんな時はルナに任せるルナ」

にこ「あんた何処か心当たりでもあるの!?」

ルナモン「真姫の居場所はわからないけどそこに行けばきっと手がかりが見つかるルナ」

海未「本当ですか!?いったいそこは?」

ルナモン「ミスティツリーズ。そこにいるジュレイモンならきっと真姫の居場所もわかるルナ!!」

山木「ようこそ、私は情報管理局・ネットワーク管制室、室長の山木だ」

希「情報管理局?」

絵里「聞いた事無いけど、ずいぶん大層な肩書きの人が出てきたわね」

絵里「始めまして、私は音ノ木坂学院・生徒会長の絢瀬絵里です」

希「同じく、副会長の東條希です」

希「そして……」

モノドラモン「グルルルルル」

希「ちょ、ちょっと!こんなところで暴れんといてよ?」

モノドラモン「希、気をつけろ。そいつは普通の人間じゃないぞ」

希「え!?」

山木「ほう、流石はTypeAの……いや、元TypeAなだけはある」

UTX生徒B「あ、あの室長?」

山木「あぁ、案内御苦労。君達は下がってくれ」

UTX生徒B「しかし、その《Wild One》と一緒では……」

山木「私は下がれと言ったのだが」

UTX生徒A「はい、何かあればすぐに駆けつけますのでご連絡下さい」

UTX生徒B「くっ、失礼しました」

山木「騒がしてしまったね。どうぞそのソファーにでも腰をかけてくれたまえ」

絵里「……貴方は何者ですか?私達をこんなところに連れてきて、それに普通の人間じゃないって」

山木「そうだね、信用してもらう為にもまずは私の事から話そうか」

山木「私は山木満雄、このUTXで特別講師として働いているものだ」

山木「このUTXについては知っているのかな?」

絵里「えぇ、このアキバに9年前に開設された進学校」

希「そして、実はデジモンを扱うテイマーを育てるための秘密組織」

山木「その通り、私はそのテイマーの育成とこのリアルワールドとデジタルワールドとを繋ぐ道、ゲートの管理の総括をしているものだ」

山木「そしてモノドラモンの言うとおり私はこの世界の人間では無い」

絵里「この世界の人間じゃ無い……それじゃあ、もしかしてデジタルワールドの人間だっていうの?」

山木「そもそも君達の言う人間と呼べるのかも怪しいところだな」

山木「私の身体はデジタルワールドの中枢を担うイグドラシルというホストコンピュータによって作られたものだ」

山木「この姿もイグドラシルの中に保存されていた過去のデータを元に作られたにすぎない」

山木「簡単に言えばこの身体はデジモンと同じ質量のあるデータの塊で出来ているのだよ」

希「そんな、その身体がデータの塊?」

山木「君達だって脳という記憶装置の情報を基に動く肉の塊みたいなものだろう?」

絵里「私達はちゃんと意志を持って動いてるわ!データと同じだなんて……」

山木「私やデジモン達にだって意志はあるさ」

絵里「……そうね、失言だったわ」

山木「気にはしていない、データが生きているというのはこの世界には無い概念だからね」

山木「私についてはそんなところだが……そろそろ本題に入ろうか」

山木「君達をここに連れてきた理由だが、君達にはここでテイマーとなって貰いたいのだよ」

絵里「テイマー?私達が?」

山木「その通り、どうやら君達には素質があるようだ。とくにそちらの君はすでにモノドラモンを使役しているようだしね」

希「別にうちは使役しているわけじゃ無いんやけどね」

モノドラモン「…………」

山木「もちろん断ってくれても構わないよ、その場合はモノドラモンと君達のデバイスは回収してデジモンに関する記憶は無くして貰う事になるがね」

絵里「記憶を!?」

希「そんな事言われてはいそうですかって言うと思ってるん?」

山木「言わなきゃ全て忘れて貰うだけの事だよ」

希「……一つ聞きたいんやけどテイマーになるって事はUTXに編入するって事になるん?」

絵里「そうよ!私達は生徒会の役員だし、それにスクールアイドルだってあるのよ!」

山木「本来はそれが望ましいのだが、君達にも学校での立場があるようだ」

山木「特別留学という形でこちらに来れるように手配しよう」

希「そう……わかった、テイマーになれば良いんやろ?」

絵里「希!?本気なの?」

希「たぶんこの人の言っとる事は嘘やない。μ'sのみんなの居場所がわからんうちに記憶を消されるわけにはいかんやろ」

絵里「それは……そうかもしれないけど……」

希「モノドラモンも、悪いけど少しの間付き合ってな」

モノドラモン「あぁ、わかった」

希「えりちが不安ならうちらだけで……」

絵里「あぁ、もう!私もやるわよ!!希一人に任せるわけいかないじゃない」

希「えりち……」

山木「決まりだな、君達の賢明な判断は敬意に値するよ」

コンコン


山木「ん、誰だ?」

ツバサ「A-RISEの3名、侵攻任務から戻りました。その件で少し御報告があります」

絵里「A-RISE!?」

希「A-RISEってあのA-RISEまでテイマーだったん?」

山木「わかった、入れ」

ツバサ「はい…………ん?貴方達は、うちの学生じゃ無いわね?」

英玲奈「あの制服は、確か音ノ木坂の制服では」

あんじゅ「あらぁ、奇遇な事もあるものね」

山木「それで、報告とは?」

ツバサ「は、はい……ですが……」

山木「構わん、報告したまえ」

ツバサ「はい、今回の対象だった《Wild One》は別の《Wild One》により討伐された後のようでした」

ツバサ「周囲の探索もしましたが対象の《Wild One》は見つからず、対象を討伐したと言う《Wild One》はこちらで排除しました」

山木「そうか、御苦労」

ツバサ「それと……排除した《Wild One》と共に3名の少女が其々《Wild One》を従えているのを確認しました」

山木「少女だと?それでどうした?」

ツバサ「すいません、排除した《Wild One》が逃走の手助けをしたため逃げられました」

山木「我々以外にもあちらにテイマーを送り出している者がいるというのか?まさか……」

ツバサ「それで、その少女達なのですが……その、どうやら音ノ木坂の生徒のようでして」

絵里「なんですって!?」

希「まさかμ'sのみんなの事なんじゃ!!」

英玲奈「あぁ、あれは確かに音ノ木坂のスクールアイドルだったが……そういえば君達も見覚えがあるな」

絵里「私達も音ノ木坂のスクールアイドル、μ'sのメンバーです」

ツバサ「へぇ、あの穂乃果さんのお仲間」

絵里「穂乃果!穂乃果は無事なんですか?他の皆は!?」

希「えりち、気持ちはわかるけど落ち着いて」

ツバサ「今も報告したけれど3人には逃げられてそのままよ。今どうしているかまでは知らないわ」

あんじゅ「確かぁ、黒髪のツインテールの子と元気なショートカットの子もいたわよね」

絵里「にこと凛だわ……よかった、3人ともとりあえず無事なのね」

希「他の子達ももしかしたらそのデジタルワールドってとこにいるのかもしれんね」

ツバサ「私達の報告は以上です」

山木「状況はわかった、少女達の動向はこちらで調査を依頼しておく」

ツバサ「はい、それでは私達はこれで失礼します」

山木「あぁ、御苦労だった」

絵里「まさかこんな形で穂乃果達の居場所がわかるだなんて」

希「山木さん、聞いての通り話に出てた子はうちらの友達なんよ。どうにかして助けに行きたいんやけど」

山木「残念だが君達をデジタルワールドへと送るわけにはいかない」

絵里「何でですか!?早く行かないとみんなの身に何かあったら……」

山木「それは君達にも言える事だ、デジタルワールドには野生のデジモンも多数いる。君達だけで行くには危険なのだよ」

山木「それにデジタルワールドと一言で言っても居場所がわからなければ探しようも無い」

絵里「それは……でも、そんな危険なところにみんなを置いたままだなんて」

山木「彼女達の事は居場所がわかり次第A-RISEに保護して貰うように計らおう」

絵里「……わかりました」

山木「とりあえず今は絢瀬君、君のパートナーを決めるとしようか」

絵里「私の、パートナーを?」

あんじゅ「はぁ~デジタルワールドに行くと身体中埃っぽくなっちゃうのよね。早くシャワー浴びたいわ」

ツバサ「そうね、私も汗かいちゃったしさっさと行きましょ」

英玲奈「……2人とも、さっきの事どう思う?」

あんじゅ「さっきのって?」

英玲奈「音ノ木坂のスクールアイドルの事だ」

ツバサ「そうね、向こうの世界で偶然会って他のメンバーが今UTXにいる。偶然にしては出来すぎだわ」

英玲奈「そもそもテイマーはこのUTXにしかいなかったはずだ。しかし彼女達は我々とは違うデバイスで進化までさせた」

あんじゅ「UTX以外にも《Wild One》について研究してる組織があったってだけじゃないの~?」

英玲奈「それが偶然にも目と鼻の先である音ノ木坂にあるというのか?」

英玲奈「もしそんなものがあるとしたら……」

ツバサ「10年前の事件にも関係がある……って?」

英玲奈「……そこまではわからないが」

ツバサ「まあ、さっきの2人がここにいる時点で少なくとも敵対しているわけでは無さそうだし」

ツバサ「それに彼女達の《Wild One》の中にそれらしいのもいなかった」

あんじゅ「そんな事考えたって仕方ないわ、私達はただこの世界の平和を守るだけ……そうでしょ?」

英玲奈「あぁ……そうだな、すまない」

ツバサ「謝る事無いわよ、私だって同じような事考えてたもの」

ツバサ「10年前、あの時秋葉原を襲った黒いデジモン。あいつは必ず私が倒すんだから」

希「モノドラモン大人しくしとるかなぁ?」

絵里「さっきも静かにしていたし大丈夫よ、きっと」

絵里「それにこの先はデジモン立ち入り禁止って言うんだから仕方ないじゃない」

希「そうなんやけど、心配やなぁ」

山木「着いたぞ、この部屋だ」


山木と共に何重ものセキュリティーのかかった扉を抜けてたどり着いた先にあったのはまるで外の世界のような庭園であった

外から見れば分厚い鉄の壁で覆われてた四角い箱である。しかしその中はそれを感じさせずまるで自然豊かな公園の一角のように見える

その庭園では両手に納まるくらいの小さなものから7,80センチはありそうな中型のものまで様々なデジモンが思い思いに行動をしている

絵里と希はその様子を特別な強化硝子で仕切られた隣の部屋から見ているのだった

希「これってほんとにUTXの中なん?」

絵里「凄い、これが全部デジモンなのね」

山木「その箱庭には十数体のデジモンが飼育されてる。君にはその中からパートナーを選んで貰う事になる」

絵里「この中から私のパートナーを……」

希「選びたい放題やん、えりちどの子にするん?」

絵里「え、えぇっと……あんまり怖そうじゃない子が良いんだけど」

山木「残念だが好きなデジモンを選べるわけでは無い、君のパートナーに適したデジモンがいればデヴァイスが反応するはずなのだが」

希「どう?何か変化あったん?」

絵里「とくには何も……ど、どうしたら良いのかしら?」

山木「ほとんどの者はここに来ればデジヴァイスに反応があるのだが……君に合うパートナーがここにいないのか、あるいは……」

絵里「えぇっ!?合う子がいないって……希の時はどうやったのよ?」

希「うちはモノドラモンから直接デヴァイスを貰ったんやけど……えりちこそそのデヴァイスはどうしたん?」

絵里「これは……あれ?どうしたんだったかしら。昔から持っていたような最近誰かから貰ったような……」

山木「ふむ、やはり君達のデヴァイスは特別品のようだね」

希「特別品?」

山木「UTXのメンバーが持っているデジヴァイスは私がデジタルワールドから持ってきた情報を使いこちらの世界で作ったものだ」

山木「テイマーの強い意志の力を情報化しパートナーへと与える事が出来る『デジヴァイスic』」

山木「しかし君達が持っているデジヴァイスはどちらも型式が違うようだね」

希「うちのは横の部分にカードを通す隙間があって、カードを通すとモノドラモンを強化できるみたいなんよ」

絵里「私のはボタンとアンテナみたいのはあるけれど……見た目じゃ特別な部分はわからないわね」

絵里「ボタンを押しても何も反応無いし……」

その時だ、激しい衝撃と爆発音でUTXのビルが揺れると同時に赤いパトランプが回転し警報音が響き渡る

まるで漫画の中のような出来事、しかし希と絵里は意外にもこの状況を冷静に判断していた

これは学校で起きたあの時と同じだと


山木「どうした?何が起こっている!」


山木は胸元から通信機を取り出し怒鳴りつけるとすぐにオペレーターからの返答が聞こえてくる


『UTX内外に複数のリアライズ反応!全てレベル4クラスです!!』

山木「複数、しかも全てが成熟期だと!?自然発生とは考えられん、やはり何者かが故意に……」


報告を聞いた山木は右手で頭を抱えつつ何かブツブツと独り言を呟いていたがすぐに顔を上げて再度通信機へ話しかける


山木「リアライズ反応の詳しい場所と数を教えろ」

『はい、場所は―――』

 
 
 
 

リアライズ、英語表記で"realize"は理解する、実現する等の意味を表す単語である

しかし彼らの言うリアライズにはもう一つ"rearise"、現実を意味する"real"と何かが起こる・発生するという意味の"arise"を掛け合わせた造語

つまりはデータの塊であるデジモンがリアルワールドで肉体を得て出現する事を表している

そしてUTXではリアライズするデジモンに対して特に強い対抗力。つまり進化の力を使える生徒に"Anti-Real-arise"通称A-RISEの名を与えて活動させていた

A-RISEは主にリアルワールドに現れるデジモンの討伐、デジタルワールドからリアルワールドのネットワークへと影響を与えるデジモンの討伐等の任務を請け負っている

現在、UTXに在籍しているA-RISEは3人

冷静な判断力と強い使命感を持つ統堂英玲奈

独特の発想力と圧倒的な進化の輝きを持つ優木あんじゅ

そしてレオルモンをパートナーに持ちA-RISEの中でも最強と言われる綺羅ツバサ

緊急事態の連絡は任務から戻ったばかりで休憩中であった彼女達の元にもすでに届いていた

ツバサ「ゆっくりシャワーを浴びる時間も無いのね」

英玲奈「リアライズ予定地は全部で6箇所、しかも帰宅時間で人通りも多い街中に4箇所か」

ツバサ「そしてUTX内に2箇所……こんな狭い範囲で2箇所だなんて完全に狙い撃ちされてるわね」

英玲奈「UTX内は進化出来ないメンバーでも集まってなんとかしてくれればいいが」

ツバサ「どうせ時間さえ稼いでくれれば私がすぐに倒して戻ってくるわよ」

英玲奈「そうだな。時間をかけると周辺にも被害が出る可能性がある。一気に終わらそう」

ツバサ「ほら、あんじゅ!早く行くわよ!!」

あんじゅ「もう少し待ってよぉ~髪の毛はちゃんと乾かさなきゃ痛んじゃうんだから~」

 
 
 
山木「……聞いての通りだ。東條君、君の力も是非借りたい」


希「はい、わかりました」

絵里「あ、あの私も……」

山木「絢瀬君はここで待っていてくれたまえ。ここは他より頑丈な作りになっているし安全なはずだ」

絵里「そんな、私だけここで待ってるだなんて……」

希「えりち、大丈夫だからここで待ってて。パートナーが見つかったらその分働いてもらうんやからね」

絵里「希……わかったわ」

山木「それでは詳しい話は東條君のデジモンの元に行きながら説明しよう」

希「はい!それじゃ、ちょっと行ってくるね」

絵里「希、気をつけてね」


山木と希はエレベーターへと向かい足早に移動していく

一人残された絵里は小さなデジモン達の映る画面を眺めつつ呟く


絵里「私にもパートナーがいれば……」


その一言は鳴り響く警報の音が無くとも誰も聞く者はいなかった

※次回予告

UTX内に現れたデジモンと対峙する生徒達
しかしその力の差は圧倒的で一瞬でなぎ払われてしまう
絶体絶命のピンチの中、一人の少女と一体のデジモンが駆けつける

次回 ラブライブ!―Digital idol Adventure―
【UTXでの死闘!ゴリモンを倒せ!!】
今、冒険が進化する

・私事
Finalライブ落ちてて泣きそう……

UTX学院の一室、しかし学び場というには異質なこの空間には複数の人影が慌ただしく動きまわっている

壁に埋め込まれた複数のモニターには学院内の様子だけでは無く秋葉原周辺のあちらこちらの様子も映し出され

そのうちの何箇所には都内ではあまり見る機会の無い濃い霧が街を覆っているのが確認できる

そんな中、自動ドアが開くと同時に一人の男が室内へ走りこんできた


山木「状況はどうなっている!?」


金髪にサングラスというこれまた学び場には異質な見た目の男は部屋に入ると同時に大声で呼びかける

オペレーター「はい、A-RISEの3人は先程各自の目標へと向かいました」

オペレーター「学院内に現れた対象には在席していた生徒が複数で交戦中、もう一つは反応はありますがまだ出現していないようです」

山木「街への被害状況は?」

オペレーター「霧が発生して中の様子は確認出来ませんが今のところ巻き込まれた市民はいないようです」

オペレーター「ただ現場周囲は警察が封鎖していますが現場が複数なのもの有り騒ぎになるのは時間の問題かと」

山木「各報道機関には報道規制を通達。場合によってはヒュプノス・システムを使用する」

オペレーター「はい、了解しました」

山木「街の方はA-RISEに任せておけばすぐに片付くだろうが、こちらは彼女達の実力次第と言ったところか」

 
 
 
 
UTX生徒A「そんな・・・こんなこんな事って・・・」



その場にいたUTXの生徒は5人、その一人一人がデジモンを引き連れたテイマーの少女達である

しかし今彼女達の横にはデジモンの姿は一体も見当たらなかった

デジモンがリアルワールドに現れる事はめったにある事では無い

その上、現れた時の対処は迅速を要するため基本的に対処を行うのはA-RISEのメンバーである

つまりこの場にいる彼女達は誰一人として実践を行った事があるものはいなかった

もちろん訓練では何度もバトルは行っている

だが、実践と訓練ではその状況も環境も何より相手の強さが違っていた

彼女達のパートナーが成長期である事に対して敵は成熟期

数では勝る彼女達だったがその経験の浅さもあり相手の野生の力になす術も無く打ちのめされていた

 
「ウオオオオォォォォォォォォ!!!!」


真っ黒い肌の全身に白い体毛を生やしその右腕にはまるでSFアニメのような砲門を要するデジモンは

足元に倒れる5体の成長期を前に勝どきを上げるかのように雄たけびをあげる



〝ゴリモン〟
成熟期 獣人型 データ

あらゆる物を砕く腕力と、どんなに硬い物でも踏み潰す脚力を備えた、パワー型デジモン。
その体つきからは思いもよらない軽やかな動きで相手を驚かせ、その隙に右手のエネルギーカノンで攻撃を加える
必殺技の『パワーアタック』は超強力

ゴリモンは生身の左手を足元への伸ばすと一体のデジモンを掴み持ち上げる


UTX生徒B「あっ、ポーンチェスモン!!」


ゴリモンはその傷だらけの黒い鎧を身に纏ったデジモンを掴んだ腕に力を入れる

まるで見せしめだとでも言うようにゆっくり、ゆっくりと力を込めていく

ポーンチェスモンは声こそあげないがギシギシと金属が軋む音をさせながら苦しんでいるように身体を震わせていた


UTX生徒B「いや・・・やめて・・・それ以上やったらポーンチェスモンが死んじゃう!!」


泣きながら懇願する少女だったがゴリモンは気に止める様子も無く腕に力を込めていく

その場にいた誰もが何も出来ない

そんな無力感に涙し、怒り、恨み、奇跡を望み、諦めた

その時だった

まるで車輪のように回転する何かが少女達の横を通り過ぎそのままゴリモンの右目を切り裂いた


ゴリモン「ギャアアアアアアアアアァァァァ!!!!」


突然の事態にゴリモンはポーンチェスモンを手放すと回転してきた何かを掴もうと手を伸ばした

しかしその何かは回転する向きを変え今度はゴリモンの指を切り裂く


ゴリモン「グギャアアアアァァァァァァァ!!!!!」


再び叫びを上げるゴリモンに回転する何かは距離を取り少女達の前で動きを止める

決して大きくない紫色の身体に鋭い爪を持つ小さき竜型のデジモン

そしてその後ろからは大きな胸を持ち紫色にも見える長い髪を二つに結んだ少女が駆けつけた

UTX生徒A「アナタは!?」

希「何とか間に合ったみたいやね」

モノドラモン「希!相手は成熟期だ、こっちも進化するぞ!!」

希「今度は勝手に暴れんといてよ」

モノドラモン「善処する!」


希はモノドラモンの答えに苦笑いを浮かべつつもポケットから一枚のカードを取り出す

その戦車のカードをデジヴァイスの溝へとあてがえると大声をあげながらカードをスライドさせていく

希「カードスラッシュ!!《戦車-Chariot-》!!」



EVOLUTION_


『モノドラモン進化!――ストライクドラモン!!』


ストライクドラモン「グルルルル、ウォーーーー!!」


ストライクドラモンは雄叫びをあげながら一回りは大きいであろうゴリモンへと掴みかかった

しかし純粋なパワーではゴリモンには勝てず押し返されてしまう

体勢を整える為に一度距離を取るがゴリモンはその隙を狙い右手に装着された銃口からエネルギーの塊である『パワーアタック』をストライクドラモン目掛けて撃ち放つ

ストライクドラモン「グッ!?グワアァァァァァ!!」


エネルギーの塊を受けたストライクドラモンの身体は爆発と共に激しい炎に包まれる

しかしゴリモンは攻撃を休める事無く2発、3発と『パワーアタック』の連弾を浴びせ続ける

3発目の攻撃を受けたストライクドラモンはたまらずその場に倒れこんでしまう


ゴリモン「ウッホ!ウホウホウホウッホッ!!」


それを見たゴリモンは勝利を確信したのか自らの胸を叩き雄叫びをあげた

「ずいぶんとご機嫌じゃないか」


ゴリモンは突然背後から聞こえた声に驚き振り返ろうとするが


「遅いっ!!」


鋭い爪がゴリモンの右脇腹を深々と切り裂いていく


ゴリモン「グギャアアアアアアアァァァァ!!?」


ゴリモンの背後から現れたのは先程まで炎に焼かれ倒れていたストライクドラモン

しかもその身体は火傷どころかスス一つ付いていない

その後方では指の間に1枚のカードを挟んだ少女が「どうや!」と言わんばかりに大きな胸を張っていた

希「カードスラッシュ!《魔術師- Magician-》!!今のは幻術や!!」


状況を飲み込めず混乱するゴリモンに追い討ちをかけるようにストライクドラモンは飛び掛る


ストライクドラモン「食らいやがれ!!」


ストライクドラモンは両腕を振りかぶるとクロスさせるようにゴリモンの胸を爪で切り裂いた

その一撃で事切れたゴリモンの身体はデータの粒子になり消え去っていった

UTX生徒A「す、すごい……」


敵が消え去った事で緊張の解けた生徒達は各々泣き出したりその場で呆けたりしている

その中で一人の少女がパートナーの元へと走る


UTX生徒B「ポーンチェスモン!!ポーンチェスモン!!しっかりして!!」


黒いポーンチェスモンの鎧のような身体はあちこちがへこんでいるが辛うじて息はあるようである

だが見るからに弱りきっており危険な状態なのは明らかである

ストライクドラモン「希」

希「いいん?」

ストライクドラモン「希がのぞむなら俺は拒まない」

希「ありがと」


希は一枚のカードを取り出すとデジヴァイスに通す

《節制-Temperance-》のカード。その意味は調和、自制、節度、そして献身

そのカードの効果によりストライクドラモンの手には二つの杯が現れた

ストライクドラモンはその内の一つの杯を自らの身体に浴びるともう一方の杯の水をポーンチェスモンへとかけた

UTX生徒B「なっ!何をするの!?」


驚きと怒りで少女は声をあげたがすぐにその表情は安心と笑顔へと変わっていく

水をかけられたポーンチェスモンの身体は徐々に傷が無くなりその目の光も生気に満ちていく

完治とまではいかないが命の危険は脱したように見えた


UTX生徒B「あぁ……ポーンチェスモン、良かった……良かった」

ストライクドラモン「グッ……」

希「ストライクドラモン……」

ストライクドラモン「問題無い」

希「ありがとうな、ゆっくり休んで――」

その時ブツッという独特な音が天井から聞こえた

スピーカーがONになる音、その後に聞こえてきたのは希にも聞き覚えがある声だった


山木「希くん、すまないが君の力を見込んでもう一体進入してきたデジモンの相手を頼みたい」

希「えっ?でも、もうストライクドラモンは――」

山木「場所は先程私達のいたデジモンの箱庭だ」

希「!!?まさか、えりち!?」

ストライクドラモン「希、行くぞ」

希「で、でも今のストライクドラモンじゃ」

ストライクドラモン「絵里を守りたいんだろ、俺を信じろ」

希「……うん、お願い」

ストライクドラモンは希を抱きかかえると絵里のいる場所へと走り出そうとする


UTX生徒B「ま、待って!」


突然の呼びかけにストライクドラモンは走り出す体勢のまま少女に顔を向ける


希「どうしたん?」

UTX生徒B「あっ……あの……ありがとう……」


小さな声ではあったがはっきりと聞こえた感謝の言葉に希は笑顔で返しストライクドラモンは「フン」とだけ言い残して走り出した

突如リアライズした複数のデジモンとUTXの生徒達の激闘は続く
そんな中で一人取り残された絵里は突然の爆発に巻き込まれる
意を決して爆発の起きた部屋へと向かうとそこには2体のデジモンの姿があった

次回 ラブライブ!―Digital idol Adventure―
【闇の二片!デビモン!!】
今、冒険が進化する

穂乃果「ねぇー、にこち~ゃん」

にこ「はぁ……何よ?」

穂乃果「穂乃果もう疲れたよー少し休んでいこうよー」

にこ「あーもう!うるさいわね!!さっき休んだばっかりでしょうがっ!!」


穂乃果の問いににこはイライラとしながら大声で答える

広大なギアサバンナを歩き始めて2日目、このやり取りは何度目だっただろうか

はじまりの町で他のメンバーと別行動を取ることになった2人はパートナーと一緒にミスティックツリーズを目指している

穂乃果「何で穂乃果ばっかりこんな目に……」

にこ「あんたが自分で行くって決めたんでしょ!!」

にこ「それに残ったメンバーだって遊んで待ってるわけじゃないのよ」

にこ「みんなで手分けをして真姫の居場所を探しているはずなんだから」

穂乃果「それはわかってるけど……だってこの2日間ずっと歩きっぱなしなんだよ!!」

にこ「パートナーが怪我していることりや、進化が出来ない海未に行かせるわけにもいかないし」

にこ「せっかく再開出来た凛と花陽が離れ離れになるのは可愛そうだからって立候補したんでしょ?」

穂乃果「それはそうなんだけど……」

にこ「どっちにしてもミステックツリーズにいるジュレイモンの居場所を知ってるのはルナモンだけだし」

にこ「完全体に会いに行く以上用心の為にも同じ完全体になれるあんた達は外せなかったからこの組み合わせが妥当だったんだけどね」

穂乃果「あの時は必死だったからまた進化出来るとは限らないんだけど……」

アグモン「あれ以来試す機会も無かったしね」

穂乃果「そうだ!試しに進化してみて飛んで行こうよ~」

にこ「却下よ、もし肝心な時にエネルギー切れになったらどうするつもりなのよ」

にこ「実際、昨日は完全体どころか成熟期にもなれなかったじゃない」

アグモン「今なら体力も戻ってるし進化出来るはずだけど」

ルナモン「もうちょっとしたらルナがまた進化出来るから我慢するルナ」

穂乃果「うっ……レキスモンの移動はちょっと上下の揺れが激しくて……」

にこ「そうね。スピードはあるけど持久力が無いし、乗り心地もいまいちだったわ」

ルナモン「頑張って抱えて走ったのに酷い言われようルナ!!」

アグモン「まぁまぁ、そんなに怒らないで……」

にこ「さあ冗談はさておき、真姫の為にも急がないと。今日中にここを抜けるわよ!!」

穂乃果「そうだよね、真姫ちゃんの為だし……もうちょっと頑張るよ!」






「グルルルルアアアアァァァァァ!!!」


荒ぶる獅子は腰から抜いた剣で目の前にいたデジモンを切り裂き、その身体がデータの塵となるのを見て吼える

パートナーであるレオモンの勝利の咆哮を聞きツバサは通信機を手に取り報告を始める


ツバサ「こちら綺羅ツバサ、目標を排除したわ」

英玲奈『こちら統堂英玲奈、こちらも今終わったところだ』

あんじゅ『えー2人とも早いわよ、こっちなんて今着いたところなのに~』


ツバサの報告に続くように通信機からは次々と声が聞こえてくる

自分が一番乗りだった事で気を良くしたツバサはしたり顔で話を続ける

ツバサ「ふふん、やっぱり私が1番だったわね。残りも私が行って……」

英玲奈「そちらには私がすでに向かっている。ツバサはUTXの方を頼む」

ツバサ「なっ!?」


自信満々に提案したつもりがすでに英玲奈に先を越されていた事を知り、したり顔から一瞬で驚きの表情へと変わる

A-RISEのファンには見せられ無い情けない表情であったがすぐにいつもの自信溢れる表情に戻しつつ提案を呑む事にする


ツバサ「わ、わかったわ。学院に残った子達じゃ頼りないし私が颯爽と……」

あんじゅ『あ、こっちも終わったからすぐにUTX戻るわねぇ~』

ツバサ「あっ!こら、待ちなさい!あんじゅの方が近いじゃないの!!」

山木『取り込み中悪いが、こちらは急ぐ必要は無いかもしれんぞ』

ツバサ「え?どういう事ですか?」

あんじゅ『まさか~あの子達だけで倒しちゃったのかしら?』

山木『今日入りたての新入りが頑張ってくれている』

ツバサ「新入りって……もしかしてさっきの音ノ木坂の?」

あんじゅ『へぇ~あの子達も少しはやれるんだぁ~』

ツバサ「面白いじゃない、だったらその戦いっぷり見せて貰おうかしら」


ツバサはレオモンの名前を呼びその腕へと飛び乗る

レオモンは片手で赤ちゃんを抱くように優しく抱えると近くのビルの壁を蹴り昇る

屋上へとたどり着くとそのままビルの屋上伝いに猛スピードでUTXへと向かい走り出した

あれからどのくらいの時間が経っただろうか

一人きりで部屋の壁にもたれて座る彼女は手元にあるデヴァイスと箱庭で呑気に遊びまわるデジモンを見つめていた

時間で言えば10分ちょっとといったところだったが何も出来ずに待つ彼女にはそれは数十分にも数時間にも感じていた


絵里「私にもパートナーがいれば……」


何度目かもわからない呟きは警報が鳴り止んだ後でも誰も聞く者はいない

こんな無力感を味わったのはいつ以来だろうか

廃校を阻止しようとあれこれ考え、それでも理事長に認めて貰えなかったあの頃だろうか

いや、あの頃は何か手があるはずだと考え、行動できただけまだマシだったかもしれない

今の自分には希を助けに行く事も、穂乃果達を助けに行く事も出来ないのだ

…………亜里沙


数日前、妹を止められなかったあの日の事を思い出す

今だからわかる。あの時いなくなった亜里沙はきっとデジタルワールドへと行ったのだ

そしてあの時に亜里沙と一緒にいた男はきっとデジモン


絵里「何としてでもデジタルワールドに行かないと……」


改めて決意を固める絵里の身に先程と同じ、いや、先程よりも明らかに大きな爆発音と振動が衝撃を伝える

それと同時に部屋の照明は一瞬消えてしまうがすぐに非常用の薄暗いライトへと切り替わった

絵里「きゃっ!何よ今の爆発は、もしかして隣の部屋!?」

絵里「本当にここって安全なの?どうしよう、移動したほうが良いのかしら」


部屋を出るかを考えつつ立ち上がった絵里はふと自分の手の中に異変に気付いた

手の中のデジヴァイス、そのディスプレイは今まではただ淡く光を発するだけのものだったが


絵里「何かの印?点滅してる……しかもこれって」


ディスプレイの印が示す場所は目の前にある壁の更にその先

つまりは先程爆発音があった部屋からであった


絵里「もしかして、あそこに私のパートナーがいるの?」


気付いたら絵里は走って部屋を飛び出していた

危険が伴うかもしれないのは解っていた

だが、それでも彼女は今どうしても力が欲しかったのだ


爆煙が立ちこめる部屋の中、一体のデジモンが倒れこんでいる

その身体はススで汚れてもなお美しい青白銀色の毛皮に包まれ、その瞳はしっかりと爆発の起きた方向を睨みつける

瞳が見つめる先、この部屋に続く扉があった場所にも一体のデジモンが立っていた

その身体はススや外からの逆光を浴びている事など考慮する必要の無いほどの黒

立ち姿こそ人のそれと似ているが腕は地面に着こうかという程長く、頭の横には2本の角

そしてなによりも人からかけ離れた複数の穴が開いた大きな翼

まるで神話やおとぎ話に現れる悪魔のような姿をしていた

〝デビモン〟
成熟期 ウイルス 堕天使型

漆黒の衣に身を包んだ堕天使型デジモン。
元々は光り輝くエンジェモン系デジモンだったが、デジタルワールドの空間の歪に存在するダークエリアに堕ちたことにより堕天使となった。
必殺技は伸縮自在の両腕を伸ばし、相手の体を貫き通す『デスクロウ』。



デビモン「クックック、終わりの騎士ともあろうモノが良い様じゃないか」

「何者だ!?」

デビモン「クックック、忘れたのか?私を追ってこの世界にまで来たというのに」

「お前、まさか!生きていたのか!?」

デビモン「私があの程度で消えるわけが無いだろう」

「それで、意趣返しに来たってわけか」

デビモン「復讐に興味は無いのだが、貴様等に計画の邪魔をされても困るのでな」

「計画だと?今度はいったい何をするつもりだ!」

デビモン「この世界に究極をもたらして元の姿を取り戻すのだよ」

「それはどういう……」

デビモン「フッ、少し話過ぎたようだな。今の私でも成熟期の貴様くらい簡単に始末できる」

デビモン「大人しく消えてもらうぞ」

「くっ……そう簡単にやられてたまるか!!」


デビモンが両腕を振り上げ攻撃の態勢に入る

そしてその腕を振り下ろそうとした瞬間、突然背後から声が聞こえた


「まっ、待ちなさい!!」

デビモンが振り向くとそこには金色に輝く髪を一つに括った一人の少女が立っていた


デビモン「人間か、邪魔をするな」

絵里「邪魔するわ!どう見たって弱い者イジメじゃないの」

「よ、弱いモノ……」

デビモン「クックック、こいつが弱い?馬鹿を言うな。こいつは元々は最強の騎士様の一人だぞ」

絵里「えっ?あっ、そうなの?ごめんなさい、失礼な事言ってしまって」

「いや、確かに今のボクはたいした力も無い弱いモノに違いないよ」

「でも今ここでこいつにやられるわけにはいかないんだ!」

絵里「や、やっぱり弱い者イジメなんじゃない!」

デビモン「ウルサイ小娘だ、ならば貴様から先に始末してやろう」

絵里「え?」

デビモンは再び振り上げた腕を振るいその爪先は絵里との間の空間を切り裂く

何も無い空間を切り裂いた爪痕はまるで黒いカマイタチのように刃となって絵里へと襲い掛かった

その一瞬の出来事に絵里は足を動かす事も出来ず呆然と立ちつくす

黒い刃がその身体へとたどり着くその刹那の瞬間、絵里は腹部に鈍い痛みを感じながら吹き飛ばされた

その状況を理解できず放心していた絵里だったが倒れた際の背中の痛みで我に返る

切り裂かれたはずの腹には自分のものでは無い暖かさと重みを感じる

恐る恐る傷跡を確認しようとした彼女の上には背中を切り裂かれた一体のデジモンの姿があった

絵里「え、嘘?ちょっと、何で?しっかりして!」

デビモン「これは予想外に手間がはぶけてしまったな」

絵里「何で私を庇って、ねぇ、しっかりしてよ!ガブモン!!」

デビモン「フッフッフッ、今度こそ纏めて始末してやろう」


デビモンは三度腕を振り上げ、そして笑みを浮かべながら振り下ろす

しかしその爪が絵里達を襲う前にデビモンは咄嗟に大きく後ろへと飛び退いた

先程までデビモンが立っていた床は突然の爆発により無残にも破壊され、その下からまた別のデジモンの姿が現れる

絵里「希……どうしよう、ガブモンが、ガブモンが……」

希「ガブモン?そのデジモンの事?」

絵里「どうしよう!私のせいでガブモンが死んじゃう……!!」

希「えりち、落ち着いて」

ストライクドラモン「そいつはすぐ死ぬような傷じゃない、それよりもこっちに集中しろ!!」

ストライクドラモン「こいつ、タダのデジモンじゃないぞ」

希「えっ?それってどういう……」

デビモン「クックックック、まさかこんなところで貴様にまで会えるとはな」

希「そいつと知り合いなん?」

ストライクドラモン「いや、初めて見る、だが……」

デビモン「ゆっくり昔話をしてやりたいところだが他にもやる事があるのでな、すぐに消えて貰うぞ!」

デビモンが両腕を左右に大きく開くと身体の回りに複数の梵字のようなものが浮かび上がる

ゆらゆらと揺れるその梵字がピタリと止まると一斉にストライクドラモン目掛けて襲い掛かった

そのスピードは高速ではあるが希でも目で追いかけられる程の速さでストライクドラモンの動きなら避けるのは難しく無い

しかし、問題はその数である

最初の数発の攻撃を回避し距離を詰めようと試みるがすでにデビモンの周りには先程と同じだけの梵字が浮かんでおり追い討ちをかける

遠距離からの攻撃手段を持たないストライクドラモンにはこの戦法は効果覿面である


希「ずいぶんとスピリチュアルな攻撃やね、だったら……」

希「カードスラッシュ!!《隠者-The Hermit-》!!」

希がデジヴァイスにカードを通すと大きな唸り声をあげながら攻撃を回避し続けていたストライクドラモンの姿が

まるで周りの背景に溶け込むかのようにすっと消えていく


デビモン「何だと!?」


突然出来事に動揺するデビモンは周囲を無差別に攻撃するが手ごたえは無い

激しい攻撃による爆音の中でデビモンの耳元で囁くようにストライクドラモンの声が聞こえる


ストライクドラモン「望み通り消えてやったぞ、感謝しな」

デビモン「クッ……」

デビモン「クックック」


それは笑みだった

完全に隙を突いたと思われたストライクドラモンの足元には突如複数の黒い魔方陣が現れ闇の光線が放たれた

予想外の反撃にストライクドラモンは回避する間も無いまま身体中を貫かれる


ストライクドラモン「グッ……ガハッ!!」

希「ストライクドラモン!!」


そのまま仰向けに倒れこむストライクドラモン

すぐに立ち上がろうと腕に力を込めるが自分の身体を支えきれず立ち上がる事は出来なかった

デビモン「クックック、もう終わりなのか?」


ストライクドラモンの体力はすでに限界であった

この戦場に来る前に使った《節制-Temperance-》のカード

このカードの力によってポーンチェスモンを瀕死の状態から回復させていたがこのカードは単純に回復を与えるカードでは無い

自らの力を相手へと与える効果、この献身の力によって瀕死のデジモンを助けたストライクドラモンはすでに体力の半分以上を消耗していた

その上でこのダメージ、すでに成熟期の姿を保つのも難しい状態であった


デビモン「動けないか、ならばまずはお前から始末してやろう」

希「そ、そんな事させへん!!」

希はいつの間にかストライクドラモン元へと走り付いていた

ストライクドラモンを庇うようにデビモンの前に立ち睨みつける

しかしデビモンはそれを気にする様子も無く笑みを浮かべながらゆっくりと腕を振り上げる

何度目だろうか、デビモンはその爪で希達を切り裂くように振り下ろす


「待ちなさい!!」


だがしかし、やはりと言わんばかりに静止の声が響きその動きは止められる

デビモン「クックック、何だ?やはり自分から先に消して欲しいのか?」

絵里「残念だけど、希もストライクドラモンも殺させはしないわ!!」

デビモン「貴様のような人間に何が出来ると思っているのか?」

絵里「私一人の力じゃどうにもならない事があるなんてわかってるわ」

絵里「でも、一人じゃ出来無い事でも仲間と一緒なら出来る事があるって事も今の私はわかってる!」

絵里「お願い、ガブモン。私に力を貸して!!」

ガブモン「任せろ絵里、オレ達はパートナーだ!!」


絵里のデジヴァイスがまるで水のように澄んだ青に輝き、光がガブモンの身体を包むとその姿を変えていく



『ガブモン進化!――ガルルモン!!』

絵里「はぁ、はぁ、ここなら少しは安全かしら」


部屋の中に入った絵里は痛みの残る背を壁に付けてそのまま座り込んだ

ストライクドラモンとデビモンの戦いが始まった直後

ガブモンを抱えたまま先程まで自分が隠れていた箱庭が見える部屋へと移動していた

部屋は非常灯と周囲の機械のランプだけで薄暗く箱庭に滞在するデジモンも不安そうに震えている

震えているのは絵里も同じだった

元々暗闇が苦手である上にデビモンに襲われた恐怖、代わりにガブモンが傷ついてしまった悲しみ

そして希達が戦っているのに自分は隠れる事しか出来ないという悔しさと情けなさ

何か変われるかもとこの部屋を出たのに結局は何も出来ずに戻ってきてしまった

自分が出来た事といえばガブモンに助けてもらっただけ……

この時、絵里は初めて一つの疑問に気がついた




絵里「何で私、このデジモンの……ガブモンの名前を知ってるのかしら?」


腕の中で眠るデジモンは確かに初対面のはずだ

それどころかデジモンという存在自体、今日始めて知ったのだ

しかし、その姿や毛皮の感触は何か不思議と懐かしさも感じる

絵里の手が自然とガブモンの頭へと伸びて撫で始めとガブモンはうめき声を上げつつゆっくりと目を覚ました

ガブモン「んっ……くっ……」

絵里「あっ、気が付いたのね。大丈夫?」

ガブモン「うっ、あぁこれくらい大した傷じゃないよ。この毛皮は丈夫だからね」


どうやらざっくりと切り裂かれたと思った背中は頭から被った毛皮だけで

ガブモン本人の身体には大きな怪我は無いようだった

しかし傷が無いだけで受けたダメージは少なくは無く

立ち上がった姿はどこかフラフラしているようにも見える

ガブモン「行かなきゃ……」


足元がおぼつかないまま部屋を出ようとするガブモンを絵里は慌てて制止する


絵里「ちょ、ちょっと待ってよ!」

絵里「そんな状態でどこに行くってのよ」

ガブモン「さっきのヤツを倒さないとこの世界が大変な事になる」

絵里「貴方が行ってどうなるのよ!アイツの方が凄く強いんでしょ、勝てっこ無いじゃない!」

ガブモン「それでも行かなきゃならないんだ、今度こそオレが……」

絵里「待ってガブモン!今度こそ死んじゃうわ!」

(待ってガブモン!あんなのと戦ったら死んじゃう!)


ガブモン「君、何でオレの名前を…………」

ガブモン「……その髪、もしかして……エリーなのか?」

絵里「え?」


その時、絵里のポケットから青白い光が漏れる

デジヴァイスから放たれている光はまるで落ち込んでいた絵里の心に光が射していくかのように暗い部屋を照らしていく

それと同時に心の中に引っかかっていたバラバラの何かがまるでパズルが組みあがるように形作っていくのを感じた

あれは12年前、あの日夏休みだった妹の亜里沙がお婆様の家に遊びにきていた

当時の私はすでにお婆様の家で日本での生活を始めていたが妹の亜里沙はロシアの両親と一緒に住んでいた為

久しぶりに一緒に遊べるの時間がとても楽しかった

どこに行くにも2人一緒だった

買い物やプール、海や山にも行った

そしてある時私達は見つけたのだ



一つのタマゴを……

それは小学生だった私が両手いっぱいになる程の大きさのタマゴだった

私と亜里沙はそのタマゴを家に持ち帰り誰にも気付かれ無いように内緒で暖めることにした

タマゴは翌日には孵り、中からは3本のツノを持つ赤いプニプニした生き物が産まれた

更に翌日には大きな一本のツノを持つ姿へと変わり、更に3日後には亜里沙と同じくらいの大きさの蒼い毛皮を着た生き物へと変わっていった

流石に家の中で飼う事が出来なくなったので学校の使われていない倉庫に隠すことにした

その生き物は自分の事をガブモンと言い教えてもいないのに悠長に言葉を話した

今だったらオカシイと思うだろうがあの時の私は亜里沙と一緒にこのちょっと不思議な体験をするのがたまらなく楽しかった

しかし、その楽しみは長くは続かなかった

秋葉原で起きた夜間のガス爆発事故――――

いや、記憶を取り戻したからからわかる

あれはデジモンだった

黒く大きな鳥のデジモンが秋葉原の街を破壊したのだ

爆発の中にそのデジモンを見た時、私は胸騒ぎを感じて一人で学校へと走った

おそらく直感的にそれがガブモンと関係のあるものだと感じたのだろう

学校に到着するとガブモンは黒い鳥を止めに向かうところだった

ガブモン「おれが行かなきゃ!あいつを止めなきゃいけないんだ!」

絵里「待ってガブモン!あんなのと戦ったら死んじゃう!」


そうやって必死にガブモンを止めているといつの間にか自分の手の中に何か光る物が握られているのに気がついた

それがこのデジヴァイスだった

その後、黒い鳥のデジモンは突然現れた別のデジモンと一緒に空へと消えていった

これでまた明日からガブモンと遊べる、そう思った

しかし翌日ガブモンがいた小屋は大勢の大人に取り囲まれ近づくことも出来なかった



……そこからの記憶は曖昧にしか残っていない

ただその日から私はガブモンに会っていない、それだけは確かだった

いや、少し違う

ガブモンの事を完全に忘れて普段通りの生活を送ったのだ……

絵里「ガブモン。そうだ、あの時……私は……何で忘れて……」

ガブモン「エリー、久しぶりだね」

絵里「ガブモン、ごめん、私ガブモンの事……忘れちゃってた……」

ガブモン「大丈夫、大丈夫だから」

絵里「ごめん、ごめんね。ガブモン、忘れちゃっててごめんなさい」

ガブモン「気にしないで、それよりも今はアイツの事をどうにかしないと」

絵里「あの悪魔みたいなやつなら今私の友達と戦ってるわ、きっと2人が……」

「ストライクドラモン!!」


親友の悲痛な叫びに絵里は思わず立ち上がった

希達に何かがあった、それも確実に悪い事が

ガブモンがすぐに部屋の外へと向かったのを見て絵里も後を追いかける

部屋から出た目に入ったのは倒れるストライクドラモンとその前に立つ希

そして今にも襲い掛かろうとするデビモンの姿だった

絵里「待ちなさい!!」


思わず叫んでいた

何か策があるわけでも無く、自分にアイツを止める力も無いのはわかっている

それでも今切り裂かれようとする親友を前に叫ばずにはいられなかった


デビモン「クックック、何だ?やはり自分から先に消して欲しいのか?」

動きを止めたデビモンは笑いながらこちらに振り向く

完全にこちらを舐めている態度

当然といえば当然だろう

こちらには手負いの成熟期と成長期、そして無力な女子高生が2人

デビモンの実力から考えれば全員が万全の状態でも勝てるかも疑わしい

足が震える、もう本当にダメかもしれない

そんな考えがよぎると震える足にポンッとガブモンの腕が触れた

足元に視線を向けるとガブモンは真っ直ぐにこちらの顔を見つめている

その目に絶望は感じない、ただ何かを信じて進もうという自信と希望に溢れた目

あの時の、講堂で真っ直ぐにこちらを見つめるあの娘のように

自分も信じてみよう、自分を、仲間を。絶対にやれるって!

絵里「残念だけど、希もストライクドラモンも殺させはしないわ!!」

デビモン「貴様のような人間に何が出来ると思っているのか?」

絵里「私一人の力じゃどうにもならない事があるなんてわかってるわ」

絵里「でも、一人じゃ出来無い事でも仲間と一緒なら出来るって事も今の私はわかってる!」

絵里「お願い、ガブモン。私に力を貸して!!」

ガブモン「任せろエリー、オレ達はパートナーだ!!」


絵里のデジヴァイスがまるで水のように澄んだ青に輝き、光がガブモンの身体を包むとその姿を変えていく



『ガブモン進化!――ガルルモン!!』

『ガブモン進化!――ガルルモン!!』


ガルルモン 獣型 ワクチン

青白銀色の毛皮に体を覆われた、狼のような姿をした獣型デジモン
極寒の地で鍛えられた筋肉と激しい闘争本能を持ち、肉食獣のような敏捷性と標的を確実に仕留める正確さを持いる
必殺技は口から吐き出す高熱の青い炎『フォックスファイアー』

絵里の腰よりも低いくらいだったガブモンの身体は3メートルを超える巨体へと変化し

その姿はまるでオオカミのような4足歩行へと変わる

先程までは上からかぶっていただけの青白銀色の毛皮は完全に身体と一体となり、より美しく輝いて見えた


絵里「これがガブモンの進化した姿……」

ガルルモン「エリー、怖くないかい?」

絵里「いいえ、カッコイイわ!とってもハラショーよ!!」

ガルルモン「ハラショー……良いね、その響きなんだか力が湧いてくる」

ガルルモンは4本の足に力を篭めると勢いよくデビモンへと飛び掛った

その攻撃もデビモンは笑みを浮かべながら悠々と後ろに飛び回避する

しかしガルルモンも今の攻撃でダメージを狙ったわけでは無い

今の飛び掛りはあくまでデビモンと希達の距離を離す為、ここからが本番だと言わんばかりにデビモンを睨み付ける


デビモン「クックック、たかだか成熟期に進化した程度で勝てると思っているんじゃないだろうな」

ガルルモン「成熟期なのはお前も同じだろ!」

デビモン「クックック、私がただの成熟期だと思っていたのか?」

ガルルモン「何だと?」

デビモン「人間の想いはデジモンに力を与える。それは貴様達が一番知っている事だろ?」

デビモン「例えそれがどんな想いであってもな」

ガルルモン「お前、まさかパートナーが……」

デビモン「パートナーか、貴様等のそれと違うが間違いではない」

デビモン「力を求めるモノ同士、利害が一致したというだけだがな」

ガルルモン「……?どういう意味だ!?」

デビモン「単純な事だよ、4身で一番弱かった私は力を望み、新しい力を作ろうとするモノがその素体を欲しがっただけの事」

デビモン「今の私の身体は成熟期であって完全体並みの力を宿しているのだよ」

ガルルモン「バカな、そんな簡単に力が手に入るはずが……」

デビモン「簡単だと?与えられた力で進化する貴様等が身体を差し出す事で力を手に入れた私を愚弄するというのか?」

デビモン「まあいい、貴様等と問答するつもりなど毛頭無いのだ。私は私の力で貴様等に復讐してやるのだから」

デビモンの言動と行動が噛み合っていないのは薄々感じていた

私達を始末すると言いながら、そのチャンスは何度もあったにも関わらず未だに誰一人としてその手にかけていない

ただ運が良かっただけだとか、本当はそんな気は無いのではとも考えたがそれはおそらく違う

こいつの本当の目的は力の誇示、いかに自分が強く圧倒的であるかを示したいのだ

そしてその欲求が満たされた時、こいつはすぐにでも私達を始末するに違い無い


絵里はガルルモンとデビモンを見詰めつつ希とストライクドラモンの様子を確認する

希は助けが入った事による安心感からか地面に座り込んでおり、ストライクドラモンは倒れた状態からすぐに動けそうも無い

傷だらけのこちらとは違いデビモンはほとんど無傷にも見える

相手は間違いなく強い、そしてここでガルルモンが負ければ…………

逃げる事も考えたが希とストライクドラモンを連れたまま逃げ切れる甘くは無いだろう

勝てる確証だって無いが、だからといってここで退くわけにはいかない



絵里(ガルルモンはやる気よね、私もこんなところで退いてられない。覚悟を決めなくちゃ)

絵里「ガルルモン!やっちゃって!!」

ガルルモン「任せろ!『フォックスファイア!!』」

ガルルモンはデビモンに向かって飛び掛りながら口から青く燃える炎を吐き出した

まるで火炎放射のようなその炎は真っ直ぐにデビモンの元へと伸びる

しかし、その炎はデビモンに当たる前に何かに阻まれてその周囲のみを焦がしていく

良く見ればデビモンと炎の間には黒い魔方陣のようなものが現れ炎の侵攻を妨げているようだった


ガルルモン「くっ、だったらコレだ!」


ガルルモンはデビモンへと飛び掛り右前足の鋭い爪で切りつける

振り抜かれた爪がデビモンの魔方陣を切り裂き魔方陣は霧散する

しかし肝心のデビモン自身は後ろへと回避しておりダメージは無い

透かさず追い討ちを狙うガルルモンであったが次の攻撃はデビモンの方が早かった

デビモンは後ろへと退きながらも同時にその長い腕で飛び掛ったガルルモンの背へと右手の爪を伸ばす

その鋭い一撃はガルルモンの背から腹を貫通する程の攻撃である

だが、ガルルモンはその攻撃は読んでいた

ギリギリにまで攻撃を引き付けその強靭なバネにより身体を回転させギリギリのところで回避する

それにより貫通するはずの攻撃は狙いを外し今度はガルルモンのチャンスとなる

青く燃える炎がガルルモンの口から発射されデビモンの全身を包む

体勢を崩した状態での一撃の為、フルパワーとは言えないものだが並みのデジモンならば一瞬で灰になるほどの威力である

しかし、デビモンは並みでは無かった

全身に炎を浴びながらもガルルモンの頭を掴みそのまま地面へと叩きつける


ガルルモン「ぐっ、がはっ!!」


床にヒビが入るほどの力で叩きつけられ流石のガルルモンも動きが完全に止まる

たった数秒の短い攻防

ガルルモンも驚異的な身体力を見せたがその結果はデビモンの圧倒的な強さを見せ付けるものとなった

絵里「ガ、ガルルモン!!」

ガルルモン「くっ!こいつどうやってここまでの力を……」

デビモン「言っただろ、今の私はただの成熟期では無いと!!」


デビモンは床に倒れたままだったガルルモンを蹴り飛ばすとデビモンより一回りは大きい身体は宙を舞い絵里の前にまで飛ばされてくる

絵里が急いでガルルモンへと駆け寄るとガルルモンは再び立ち上がりすぐに戦闘態勢へと移る

その様子をデビモンは強者の余裕と言わんばかりに笑みを浮かべながら眺めていた


デビモン「どうした?これ以上手が無いのなら本格的に全員始末させて貰うぞ」

絵里「ね、ねぇ、このままじゃ……何か勝てる方法は無いの?」

ガルルモン「今のオレの力じゃ難しいかもしれない……完全体になる事ができさえすれば……」

デビモン「これで終わりのようだな…………ならば!!」



「なら、次は私の出番ね!」


突然の声と同時に黄金に輝く何かがデビモンによって壊された外壁から飛び込んでくる

この背後からの太陽に照らされる黄金は十数階の高さにある部屋までその足で駆け上がってきたのだ

そして仁王立ちする黄金とその肩から降りる一人の少女は共に得も言われぬ存在感を発していた

ツバサ「優秀な新人がいるって聞いて急いで来たのに、どうやら期待外れだったようね」

ツバサ「まあその代わり、面白そうな遊び相手はいるじゃないの」

デビモン「クックック、次は貴様が相手をしてくれるわけか」

ツバサ「そうね、貴方が私達の相手になるかどうかは疑問だけど」

ツバサ「私達の学校を壊したお礼、させて貰うわ!」

必要かどうかもわからない予告を忘れていた

ストライクドラモン、ガルルモンと次々に倒れるデジモン達
襲い来るデビモンの前に次に立ちふさがったのはA-RISEの綺羅ツバサだった
パートナーのレオモンとデビモンの死闘が始まる中、ツバサの歌声が戦場に響く

次回 ラブライブ!―Digital idol Adventure―
【猛き勇者!レオモン!!】
今、冒険が進化する

綺羅ツバサとデビモンが睨み合ってから十数秒

お互いに動かず黙り込んでいたが先に口を開いたのはデビモンだった


デビモン「威勢良く啖呵を切ったわりには大人しいものだな」

ツバサ「あら、意外と短気なのね」


瓦礫の上に立つツバサはデビモンを挑発するかのように見据えたままである


ツバサ「それに私はこのUTXの王者よ!先行は挑戦者に譲ってあげるのが王者の威厳ってやつじゃないかしら?」

デビモン「クックック、良いだろう。ならば一瞬で終わらせてやろう」

そう言い終ると同時にデビモンの身体はその場から消えていた

一瞬で天井へと飛び上がり翼による推進力に落下の加速を加えツバサ目掛けてその爪を振るう

しかしその爪は振り切る事無く「ガキンッ!!」という金属音と共に止められる事になった

デビモンの目にも追えぬ程の高速攻撃をレオモンは瞬時に腰の刀を抜いて受け止めたのだ

ツバサのパートナーであるレオモンの持つ刀『獅子王丸』

その切れ味は並みのデジモンであれば一刀の元に切り伏せる程の業物である

しかしデビモンの爪も何体ものデジモンを切り裂いてきた一級品とも言えるモノ

お互いの刃は一切退くこと無く火花を放ちながら競り合う

ツバサ「レオモン!!」


ツバサが大声で呼ぶとレオモンも呼応するかのように咆哮する

レオモンが刀を持つ丸太のような腕の筋肉は更に盛り上がり力任せに一気に振り抜いた

その規格外とも言えるパワーにデビモンの身体は吹き飛ばされるが翼を開く事でバランスを取り問題無く着地する

今の立会いで何かを感じたのかデビモン笑みを浮かべながらも更に攻撃へと転じる

しかしその攻撃がレオモンへと届くより先にツバサが口を開いた

 
――Can I do? I take it,baby!Can I do? I make it,baby!



デビモン「何?……!!」


デビモンは突然のツバサの奇行に眉をひそめた

普段ならたかが人間の行動など気にする必要も無かったが自身に改造を施した男のある話を思い出す

その男の研究の一つに『歌』と呼ばれる音の羅列によってデジモンに力を与えるという研究があった

デビモンはそれに興味を示していなかったが男はずいぶんと熱心にその研究を行っていた

デビモンはこれがその『歌』だと直感し急ぎそれを止める為にターゲットをツバサへと変える

 
しかし、彼女の歌い始めた時点ですでに勝負の結果は決まっていた



デビモン「ぐはっ!!?」


デビモンは一瞬自分の身に何が起きたかわからなかったが暗い天井と頬の痛みで状況を察する

何者かに殴られ、そして壁を突き抜けて薄暗い部屋の中で倒れている

もちろん殴ったのはレオモンに違い無い

先程の攻防でお互いの実力はある程度わかっているつもりだった

レオモンはパワーこそ強いが自分には及ばない

それがデビモンのレオモンに対する評価だった

だが、今のレオモンの動きどころか攻撃を受ける瞬間すらこちらに気付かせない動き


デビモン「これが……『歌』の力だというのか……」

――そう、行っちゃうの?追いかけないけど

――基本だね 群れるのキライよ



普段はあんじゅと英玲奈のパートであるが全て彼女のソロで歌う

ファンであれば生唾ものであろう光景であったがその様子を見る事が出来たのは2人の少女とそのデジモンだけであった


絵里「歌ってる?この状況で!?でも、これって……」


絵里が呆然とその様子を眺めていると先程まで呆然と座り込んでいた希が声をかける


希「えりち、大丈夫?」

絵里「え、えぇ、希こそ怪我とかしてない?」

希「うちは大丈夫だけどモノドラモンが……」

ストライクドラモンはいつのまにかモノドラモンへと退化してしまい希の腕の中で抱えられていた

その全身は傷だらけではあったが意識はしっかりしており、命の危険は無いようにみえる


モノドラモン「こっちも大丈夫だ、それにこの歌を聴いていたら少し回復したみたいだ」

希「歌を?」

ガルルモン「あぁ、こっちも大分楽になってきたみたいだ」


先程まで倒れて動けなくなっていたガルルモンもその場で立ち上がる


絵里「ガルルモン!大丈夫なの!?」

ガルルモン「あぁ、万全とは言えないがまだ戦えるくらいの力は残っている」

絵里「さっきまであんなに辛そうだったのに…………A-RISEの歌を聴いたから?」

絵里(A-RISEの歌には何か特別な力でもあるの?………いえ、もしかしたら歌そのものに何か……)

――お互いの場所で お互いの想い

――高める each other’s day



『A-RISE』の代名詞とも言える曲『Private Wars』

彼女達3人はこの曲と素人離れしたパフォーマンス力で一気に頭角を表しスクールアイドルの頂点と言える『ラブライブ』で優勝を果たした

そんな曲の中でも一番盛り上がるサビに当たる部分

そこに入る直前で彼女は突然歌うのを止めた

ツバサ「……どうやらこのまま歌い続ける必要も無さそうね」


彼女の見立ては間違っていなかった

ここまでの歌でパートナーであるレオモンの力は十二分に高まっている

このままデビモンと戦っても勝敗は明らかだろう

そして事実デビモンも戦意を消失していた

負ける戦いをする程デビモンは愚かでも潔さも無い



ならばどうするか……

デビモン「クックック、まさか本当に成熟期で私に勝てるモノがいるとはな」

ツバサ「井の中の蛙ってやつね、ってことわざが貴方達に通じるかも疑問だけど」

ツバサ「さぁて、次はどうするのかしら。このまま戦う?それとも命乞いでもしてみるの?」

デビモン「申し訳ないが私はこんなところで消えるわけにはいかなくてね」

デビモン「目標は始末出来なかったが実験は成功した。この場は退かせて貰う事にしよう」


デビモンは立ち上がると言葉とは裏腹に様子を伺いながらゆっくりとツバサ達の方へと近づいていく


ツバサ「私が大人しく逃がすと思っているのかしら?」

デビモン「簡単だとは思っていないさ、だが……」

デビモン「君達にも一緒に来て貰うと言うならどうだろうか」

その言葉と同時にデビモンはいつの間にか手に持っていたスイッチのような物を押す

するとその目の前には拳大の黒い渦のようなものが現れ始めた


ツバサ「まさか、これは……」


ツバサにはこの渦に見覚えがあった

自分達がデジタルワールドに行く際に使用するゲート

自分達が利用するそれに比べ乱れ荒れてはいるがそれと近いものに見える

ツバサ「くっ!レオモン!!」


戦闘態勢のまま待機していたレオモンはツバサを抱えてその場から離れようとする

しかし拳大だった渦はみるみるうちに巨大化していき一瞬のうちに半径十数メートルを飲み込んでしまった


デビモン「それでは運が良ければまたあちらで会おうではないか、クックックックック……」

ツバサ「まさかこんなものまで用意しているなんて……」


デビモンの笑い声が徐々に渦へと消えていくと共にツバサとレオモンの姿も飲み込まれていく


そしてそれは近くにいた絵里や希も例外では無かった

絵里「な、何!?これって?」

ガルルモン「エリー!オレに捕まって!!」

絵里「わかった、希も早くこっちへ」

希「うん!今そっちへ、きゃっ!!」


絵里の元へと走り始めた希をまるで雪崩に巻き込むかのように黒い渦は一瞬で飲み込んでいく


絵里「のぞ……み?希ー!!」

ガルルモン「エリー落ち着いて、どうやらこれはデジタルワールドへ強制的に移動させる門のようなものみたいだ」

ガルルモン「彼女にもパートナーが着いている、きっと大丈夫だ」

絵里「で、でも希が……」

ガルルモン「それに、どうやらこっちも逃げられそうに無い」

絵里「え?きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



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―――




山木「状況はどうなっている?」

オペレーター「秋葉原周辺に再度現れた《Wild One》は全てあんじゅ、英玲奈の2名がDelete」

山木「そっちは良い。ツバサと音ノ木坂の生徒はどうなっているんだ!」

オペレーター「は、はい……それが……」

英玲奈「急いで戻ってみればこれは……どういう事だ?」

あんじゅ「凄いぐちゃぐちゃになっちゃってるわね~」




デビモンが使った黒い渦の発生地点

その範囲十数メートルの壁や床は消失し残された僅かな部分もまるでテクスチャの剥がれたポリゴンのようにデジタル化されている

そして周囲のいたるところにはデジタルワールドのものであろうか

場違いな植物や岩石などが床や壁から無造作に顔を出している

まさにそれはデジタルがリアルに侵食してきたかのような異様な光景であった

希「あいたたた……ここはどこなん!?」


希は打ち付けたお尻を擦りつつ草むらの中から立ち上がると周囲の景色の変化に思わず声をあげた

辺りは見回す限り日本では見た事の無いような植物が生い茂りあちこちに倒木も見える

森や林というには土が剥き出しになっている場所も多く荒れた地であったが少し離れた場所には川のようなものも見えていた

少なくとも先程までいたUTXの中どころか秋葉原中を探してもこんな場所は見つからないだろう

希はデビモンが作り出した黒い渦に飲み込まれたのを思い出して改めてこの場所について頭を働かせる


希「ここは……デジタルワールド?」

その言葉を口にした直後、慌てて再度周囲を確認する

希のすぐ横の草むらにモノドラゴンの姿を見つけるが目当ての人物の影はどこにも見当たらなかった


希「えりち!?……えりちー!!」


希は日頃鍛えた肺活量を活かして大声で叫ぶが返事は無い

もう一度と大きく息を吸い込んだが声を発するより先に小さな声で制止がかかる


モノドラモン「待って、希!」

希「あっ、モノドラモン。大丈夫なん?」

モノドラモン「あぁ、それよりもあまり大声は出さない方が良い」

そう言われて改めて希は自分の現在の状況を認識させられる

目に見える範囲にはいないとは言え近くに先程のデビモンやそれ以外にも自分達に危害を加えようとするデジモンがいるかもしれない

万全な状態ならともかく今の傷ついたモノドラモンを戦わせるわけにもいかない


希「ここってデジタルワールド……なんよね?ここがどこかわかるん?」

モノドラモン「あぁ、ここには見覚えがある。おれが暮らしていた場所の近くだ」

モノドラモン「あっちに向かえば安全なはずだ」

希の目には目印になるようなものは見えないがモノドラモンはしっかりと向かう方向を指し示す

希は小さく頷きモノドラモンと共に薄暗い道を歩き出した

ガルルモン「エリー、気が付いたか」

絵里「が、ガルルモン。ここは一体……それに、これって……」


絵里の指す『これ』とは目の前の座布団の上に横たわるオレンジ色の塊の事である


ガルルモン「どうやらデジモンみたいだ」


そう答えたガルルモンの視線は周囲を警戒するように移動する

絵里も釣られて辺りを見回すと部屋の端には十数体もの首に管楽器を巻いた緑色の蛙のような姿をしたデジモンが怯えるように隠れているのが見える

良く見れば目の前のオレンジ色の物体にも蛙のような手足や管楽器が見える

だがその全身は傷だらけで生きてはいるものの意識は無いようだった

絵里「どういう事?ガルルモンが倒したの?」

ガルルモン「いや、おれは何もしていない」

絵里「じゃあ誰が……」

「私がやったんだよ」


突然の声に絵里とガルルモンは声の方へと目を向ける

倒れたオレンジ色のデジモンの腹の上、そこに一人の少女の姿が見えた

その姿にガルルモンは懐かしさを覚え、絵里は涙を目に浮かべながら叫ぶようにその名前を呼ぶ




絵里「亜里沙!!!」

亜里沙「久しぶりだね、お姉ちゃん」




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日頃更新の遅いSSですが僅かならがでも見てくれている人、コメント残してくれる人がいて励みになります
もうすぐ1000だし更新遅いしここで書き続けるのも迷うところですが他に場所も無いのでここで飽きるまで書き続けると思います

自分でもハーメルン向きかなとは思うのですが我ながらグレーな作品なので転載は不可能です

ギアサバンナを抜けた穂乃果達4人は予定通りミスティックツリーズという森林地帯へと入っていた

太陽はまだ高い場所にある時間のはずだが生い茂る木々によってその光はほとんど地面にまで届いていない

その上、周囲は霧に覆われていて数メートル先も見えないと探索には非常に不利な状況となっていた


にこ「涼しいのは良いけどこう霧が酷くっちゃどこが道かもわからないわね」

にこ「ルナモン、本当にこっちで合ってるんでしょうね?」

ルナモン「え?ルナはここに来たの初めてだし知らないルナ」

にこ「はぁ!?じゃあ今は何処に向かってるっていうのよ?」

ルナモン「だた道に沿って歩いているだけルナ」

にこ「ちょっと待って!じゃあジュレイモンってヤツの居場所はわかんないって言うの!!?」

ルナモン「知ってるのはミスティックツリーズにいるっていう噂だけルナ」

にこ「なっ……ここまで連れて来ておいてそんな信憑性の無い情報だったなんて……」

穂乃果「まぁまぁ、にこちゃん。他に手がかりも無かったんだから……」

にこ「それは……そうなんだけど…………もう!アグモンは何か知らないの!?」

アグモン「僕もここには初めて来たからなぁ」

にこ「はぁ……とにかく歩いて探すしか無さそうね」

ルナモン「それじゃ頑張って探すルナ!」

にこ「あんたねぇ……はぁ、まったく……」


仕方なく宛ても無いまま歩く事十数分

森の奥に進む程濃くなる霧はすでに前後を歩く者も見えなくなるほどになっていた

流石に危険を感じ、にこは再び声をかけて足を止める

にこ「みんな!はぐれたりしてないわよね?」

ルナモン「ちゃんといるルナ」

アグモン「僕もいるよー」


霧の中で小さな影が揺れながら返事をする


にこ「あれ?穂乃果は……」


そう言い掛けた直後、霧の中から何かがにこの右手を掴む

にこ「なっ!!?」


突然掴まれた事に驚き大声をあげるにこ

しかし霧の中から現れたのは無邪気な笑顔で微笑む穂乃果だった


穂乃果「へへー、こうしてれば大丈夫だよね」


にこは声が出てしまった事と手を握る穂乃果の笑顔を見て恥ずかしさのあまり顔を背けた

だが態度とは裏腹に頬が緩んでいるのを感じ穂乃果を見ないまま強がってみせる


にこ「し、仕方ないわねぇ。はぐれるんじゃないわよ!」

穂乃果「うん、ありがと。にこちゃん」

先程まで少し寒いと感じる気温だったのが今は心地よくも感じながらにこは再び歩き出す

少し後ろを歩いていた穂乃果は自然とにこの右側へと連れ添うように歩くようになった

にこは妹弟と手を繋ぐことは多いが友達と繋いだ経験はあまり無い

もちろんダンスの振り付けで少し触れ合う事などはあるがこんなにしっかりと握り合う事なんて記憶に無い

そんな事を考えていると気付けば穂乃果の手はにこの手を掴むように握っており指を絡め所謂恋人繋ぎと呼ばれる状態となっていた


にこ(こ、これは友達として普通なの?確かにことりとかはやりそうだけど、でも)


慌てて穂乃果の顔色を伺うが特別こちらに意識を向けている様子も無く前を向いて歩いている


にこ(やっぱり穂乃果にとってはこれが普通に手を繋いでるだけなのよね)

にこ(平常心よ、平常心。にこは大人の女性なんだから、これくらい……)

にこも年長者の余裕を見せてやろうと強めに握り返す

しかし穂乃果の指は予想に反して力を込めず優しく触れていく

にこの手より少し大きくそれでいて細く長い指が手を覆うように包み込む

そしてその指はまるで羽毛が触れるかのようにゆっくりと手の甲を撫でていく


にこ「!?」


にこは背中に何かが流れるようなゾクゾクとしか感覚に思わず手を振り払った

不快感とは違う普段感じたことの無い感覚に思わず身体が動いてしまった

しかし振り払った手はまたすぐに掴まれてしまう

横に並んで歩いていたはずの穂乃果の身体はいつの間にか肌が触れる程近くにあり

その顔はにこの頬に吐息がかかるくらいに密着していた

穂乃果「にこちゃんの手、小さくてカワイイね」

にこ「なっなななっ、穂乃果?な、何を言って……!?」


にこは状況が飲み込めず慌てて穂乃果から離れようと後ずさった

しかし足元もよく見えない状況で慌てて動いたために木の根に足を取られてしまう

バランスを崩した身体はそのまま後ろへと倒れこみ小さなお尻を勢い良く地面へ叩きつけた


にこ「痛ったー……穂乃果!!あんたいい加減にっ……!?」

ぶつけたお尻を擦りつつ文句の一つも言おうと穂乃果を睨みつけるがその予想外の動きに声が詰まる

穂乃果の身体はまるでこちらに覆いかぶさるかのようににこの上へ倒れこんできたのだ

にこは反射的に手を前に出すがその両手は掴まれ無理矢理地面に寝かされる形となった

穂乃果はその勢いのままにこの腰の辺りに馬乗りとなりにこの身体は地面に磔にされてしまう


にこ「なっ!?アンタちょっと様子が、いや、かなりおかしいわよ!!」

穂乃果「にこちゃんの肌って白くてスベスベで、とっても綺麗だよね」

にこ「ちょ、ちょっと!穂乃果!!待って、ひゃん!!」


穂乃果はにこの首元に顔を近づけ上目遣いで見ていたかと思うと鎖骨の辺りに舌を這わせだした

にこも必死に抵抗しようとするが腕も足もまるで縛られているかのように動かす事が出来ない

唯一出来る事は言葉で抵抗しつつ耐える事だけだった

にこ「穂乃果……アンタ本気なの?今こんな事してる場合じゃ……無い、でしょ……」

穂乃果「んっ……にこちゃんは……嫌、なの?」

にこ「嫌も何も……ルナモン達だっているし……あれ?」

にこ(そう言えばルナモンはどこ行ったの?それに後ろを歩いていたはずのアグモンもいない)

にこ「やっぱり何かおかしいわ、穂乃果本当に待って!」

穂乃果「にこちゃんは……穂乃果の事キライなの?」

にこ「いや、だから好きとか嫌いとかじゃなくて!」

穂乃果「穂乃果は……にこちゃんの事…………」


穂乃果はにこの首元から唇を離して目線を合わせるようにまっすぐ顔を向ける

そして両目を瞑ると少しづつ、ゆっくりと顔を近づけはじめた


にこ「ほ、ほほほほのか!?ままままって、わたしはじめてで、あの、その、できればもっと、ふえぇ……んんっ……!」

『メガフレイム!!』


巨大な火球がにこの前を通りすぎるとその先の霧の中から爆発音と共に「ぎゃああああ」という叫び声が響く

すると先程まで周囲見えない程だった深い霧がゆっくりの晴れて辺りの景色を映し出していく

にこは火球が飛んできた方向を確認するとそこにはオレンジ色の恐竜、そしてその背中に乗る少女とデジモンの姿が見えた


穂乃果「にこちゃん!大丈夫?」

にこ「ほ、穂乃果!?え?何で?」


先程まで目の前にいたはずの穂乃果が現れたのだ

先程まで目の前にいたはずの穂乃果が現れたのだ

慌てて目の前を確認するにこ

その眼前には先程の穂乃果の姿は無く蔓や枝が絡まって出来た木偶人形であった

良く見れば身動きの取れなかった身体中は根のようなもので縛り付けられている

グレイモンの背中から飛び降りたルナモンが急いでにこの元へと駆けつけると縛り付けていた根を爪で切り裂いた


ルナモン「どうやら幻覚を見せる霧でにこにーだけ離れ離れにされてたみたいルナ」

にこ「あ……えっ?…………幻術!?」

自由になった身体を起こし急いでルナモンの視線の先、先程メガフレイムが爆発した方向へと目を向ける

深い霧と爆煙の中からゆっくりと現れた影

そこには一本の大木、いや、一体のデジモンの姿があった


ジュレイモン「おのれ、もう少しでそいつの生気を吸い尽くしてやれたというのに邪魔をしよって」


〝ジュレイモン〟
完全体 ウイルス 植物型

樹海の主と呼ばれ長い年月を生き知識を貯えた植物型デジモン
幻覚を見せる霧『イリュージョンミスト』を発生させ枝のような触手で自らの栄養としてしまう
必殺技は頭部の茂みに生える禁断の木の実『チェリーボム』

にこ「一体これはどういう事よ!!?」

ルナモン「あいつがジュレイモンルナ。どうやらあんまり良いデジモンじゃ無かったみたいルナ」

ルナモン「もう少しでにこにーは生気を吸われて干物になっちゃうところだったルナ」

にこ「ちょっと待って!幻覚って言ったわよね!どこから幻覚だったってのよ」

ルナモン「知らないけどにこにーは森の探索始めてすぐに居なくなってたルナ」

にこ「ほとんど最初っからじゃないの!!」

にこ「おかしいと思ってたのよ……だって穂乃果が、あんな……」

穂乃果「私がどうかしたの?」

にこ「何でも無いわよ!!」

にこ「あんたジュレイモンとか言ったわよね!よくもにこの純情もてあそんでくれたわね!!絶対に許してやらないんだからっ!!」

ジュレイモン「ふん、元気の良い獲物達だ。まとめて養分にしてやろう」


ジュレイモンの周囲の地面がモコモコと盛り上がるとそこから十数本の根がまるで生き物のように飛び出した

その根は一瞬でグレイモンの全身へと撒きつくと無理矢理に地面へと叩き伏せた


グレイモン「ぐわぁっ!!」

穂乃果「グレイモン!!」

グレイモン「な、なんて力だ……起き上がれない」

グレイモンはすぐに立ち上がろうと試みるが根の数は更に増えていく

反撃をしようにも火球を放つその口も縛りつけられ完全に動きを封じ込まれてしまった

そしてその根はそのままグレイモンの背に乗っていた穂乃果の身体も巻き込んでいく


穂乃果「嫌っ!この、放して!!」


穂乃果の腕と足もグレイモンと共に根に絡めとられ縛られてしまう

にこ「ルナモン!こっちも進化よ!!」


にこのデジヴァイスが光の帯を発するとルナモンの身体が光に包まれる


『ルナモン進化!レキスモン!!」


レキスモン『ティアーアロー!!』


レキスモンは背中の生えた突起から複数の氷の矢をグレイモンの周りの根へと放つ

氷の矢が命中するとその周囲を冷やして根全体を凍りつけた


にこ「やったわ!」

しかしその喜びもつかの間、凍りついた根はすぐに氷を砕いて元の動きを取り戻した

氷の矢によって凍ったのは根のほんの表面のみでその芯まで冷気は届いていなかったのだ


ジュレイモン「ほう、自らの意思で進化するデジモンとは珍しい」


次の目標を見つけた根はレキスモンへと襲い掛かる

レキスモンは自慢の脚力で森の木々の間を飛び回避していくが根の数は次々と増えていき

そして気が付けばレキスモンの周囲には根が張り巡らされ、まるで檻のように閉じ込められてしまった


レキスモン「これは、流石に不味いかもしれないわね」


上下左右から襲う攻撃をなんとか回避し続けるが徐々に根の檻は包囲を狭め逃げ場を無くしていく

穂乃果「グレイモン、こうなったら完全体になるよ!」


口を塞がれ身動きが取れないグレイモンは分かったという返事の代わりに全身に力を込める


穂乃果「よーし……」


穂乃果は歌う為に大きく口を開けて息を吸い込んだ

しかしその瞬間、穂乃果を縛り付けていた根の一本が口の中に入り込んだ


穂乃果「んっ!?んーーーーっっっ!!」

突然口に入れられた異物に驚きと吐き気を感じ思い切り噛み付くが根が噛み切れる様子は無い

幸いなのは根が喉の奥まで入り込む事は無かったので口が閉じられないだけで息は出来るという事だろうか

しかし到底歌う事が出来る状況では無かった


ジュレイモン「何をするつもりか知らんが大人しくしていて貰うぞ、お前らには一生ワシに生気を供給して貰わなきゃならんからな」

にこ「穂乃果!!」

穂乃果「んーんー、んんんっ!!」

そしてそれに続くかのように懸命に逃げ続けていたレキスモンにも限界が訪れ始める

元々スタミナに乏しいところに止まる事も出来ずすでに息も絶え絶えである

周りの木々のほとんどに根が巻きつき、時期に避ける事も不可能になるだろう


レキスモン「万事休すってやつかしら」


レキスモンは根の檻の外の様子を確認しながら呟いた

グレイモンは完全に封じられて進化も出来ない

自分が捕まるのも時間の問題

残るはにこの一人だけ

レキスモン「にこにー!逃げて!!」


レキスモンは声をかすらせながら精一杯叫んだ

しかしこの絶望的な状況でにこは動く様子は無くただ立ち尽くしているだけだった


ジュレイモン「フンお前のような子兎風情が、脱兎の如く逃げたとしてもこの森にいる限り逃げ切ることなど出来ぬわ」


確かにジュレイモンの言う事は正しいだろう

レキスモンの足を封じるほどの動きをする根をにこが回避しながら森を抜けるのは不可能に近い

だからと言ってこのまま黙って生気を吸い取られるわけにもいかない

レキスモン「早く逃げて!!こいつは私が何とかするから!!」


レキスモンは最後の力を振り絞り、全力の『ティアアロー』を放つために力を溜める

例え倒すことは出来なくても少しでも動きを止める事が出来ればにこを助ける事が出来るかもしれない

にこが逃げ出すそのタイミングこそが攻撃の時


そして沈黙を続けていたにこがついに動いた

一歩、二歩と前へ

レキスモン「にこにー何を!?」

にこ「レキスモン、前にも言ったけど私はね、絶対に仲間を置いて逃げたりしないわ」

にこ「置いていかれるってのはね。あんたが想像しているよりも辛いんだから」


にこはゆっくりとジュレイモンへと近づきながら言葉を続ける


にこ「それにね、アイドルっていうのは辛い時、苦しい時でも笑顔でいなきゃいけないの」

にこ「アンタもアイドルなんだったらそんな怖い顔してるんじゃないわよ!」

レキスモン「にこにー、今はそんな事言ってる場合じゃ……」

にこ「そしてジュレイモンだっけ?アンタにこの事をかゎぃぃウサギちゃんに例えたのは良い線いってるわ」

にこ「でも残念、にこはタダのかょゎぃウサギちゃんじゃないの」

ジュレイモン「お前、何を言って……」

にこ「最後に穂乃果!」

穂乃果「んー?んーんー!?」

にこ「アンタに出来て私に出来ないはず無いのよ!」

にこ「だってにこは『大銀河宇宙NO.1アイドル』なんだから!!」

にこ「さあ、聞きなさい!今からこの森全てがにこのライブ会場よ!!」


そしてにこは踊りだす

まだ日は出ている時間だが深い木々に遮られて見える光は極僅か

自然のカーテンの隙間から漏れる光はまるで夜空の星のよう

先程までただの絶望感しか無かったこの森を照らす光は

にこのダンスと共にそれまでの空気を一変させたようにも感じる

 
 
 
にこ「フィーバー!!」

 
 
 

真姫(あの二人、遅いわね……。もしかしてまだケンカしてるのかしら?)

ガチャッ

穂乃果「にこちゃんは優しいなぁ」ナデナデ

にこ「だから撫でるなって言ってるにこ!」

穂乃果「やーだよー」スリスリ

真姫(うわ……。かなり面倒なことになったわね)

穂乃果「真姫ちゃんごめんね? 私、わがままなこと言っちゃって」

真姫「誰も気にしてないわよ。それに、あんたがわがままなのはいつものことじゃない」

穂乃果「うっ……。真姫ちゃん厳しい」

にこ「ねー?」

穂乃果「ねー」

真姫「わ、悪かったわね」

真姫(早くみんな戻ってこないかしら? やりづらいわ……)

にこ「みんなどこへ行ったにこ?」

真姫「あんた達が遅いから探しに行ったのよ」

穂乃果「みんなで?」

真姫「ケンカがひどくなったら困るからよ。意地っ張りのあんた達がそうなったら、本当に面倒だもの」

にこ「真姫ちゃんに意地っ張りとか言われたくないにこ」プッ

穂乃果「ねー?」

にこ「ねー」

真姫「あああ! だからそのノリやめなさいってば!」

真姫(みんなお願いだから早く戻ってきて……)ハァ


真姫ちゃんも大変にこ

善子「さあ観念して……」

果南「よーしーこー!」ダキッ

善子「ひゃっ///」

果南「あー、ヨハネに魅了されちゃった~。どうしよ~、血を吸われちゃうよ~♡」スリスリ

善子「へぁ……///」

善子(こ……こんなタイミングで急に乗ってくるとかぁ……///)

善子「ずるいっ!///」

果南「ずるくていいもーん♪」

二年教室

にこ「ことりいるにこー?」

ことり「わっ、本当に来た……」

にこ「来ちゃ悪いにこ? 分けたくなければ我慢するからいいにこ」

ことり「ううん、そうじゃないんだけど……」

モブ「あっ、にこちゃんだ!」「可愛い!」「一年生かな?」

にこ「むかっ! にこは三年生にこ! 絶対知ってて言ったにこ!?」プンプン

モブ「やーん、にこちゃん怒っても可愛いー!」「いつものやってー!」

にこ「可愛くてもだめにこ! やらないにこ!」

ことり「あはは……こうなると思った」

モブ「お昼もう食べた?」「まだなら一緒に……」「エビフライあるよ」

にこ「食べるにこ」ジュルリ

ことり(うわぁ……)

モブ「じゃあいつものやってー」

にこ「うっ……。にっこにっ」

ことり「……」ジトー

にこ「ごほん、また今度にこ。ライブに来てくれたらやってあげるにこ」

ことり「えらいえらい」ナデナデ

にこ「や、やめるにこ! みんな見てるにこ!」

モブ「可愛い!」「ことりちゃんずるい!」「私もなでなでしたーい!」

ことり「残念。にこちゃんがなでなでさせるのは私だけなの」

にこ「ちょっと、変な誤解されるようなこと言わないでほしいにこ」

モブ「そっかぁ」「仕方ないね」「無理言ってごめんね」

にこ「うわっ、完全に誤解されてるにこ」

ことり「うふふ。じゃあ行こっか?」ギュッ


恥ずかしいから手を離すにこ……

善子「当然よ!悪魔翌料理人が罪ある人間の目玉をくり抜いて、悪魔たちの宴で様々な目玉料理を振る舞、って……!」サーッ

善子「ヒィィィィッ!何想像させんのよ!バカバカバカッ!」ブンブン

果南「いや、善子が自分で言ったんじゃん!私のせいじゃないよ?」

善子「うるさーい!一人前のリトルデーモンなら、私が怖い思いする前が止めてくれないとダメなの!」

果南「あはは、何それ~?」

◯服

善子(私の恋人はとても陽気である)

善子(朝目が覚めると、朝が弱い私のために、鼻歌まじりでごはんを作ってくれる)

善子(しかし、彼女の行動には一つ致命的な欠陥があり……)



果南「ふんふんふふ~ん。ふふっ、昨日とっても楽しい夢を見たんだ♪ いいでしょ?」

善子(果南さんまたアロエに話しかけてる……)

善子「果南さんおはよー……。何か着てよ」

果南「おっ、善子おはよう!朝ご飯もうちょっとで出来るから、待っててね♪」

善子「ありがとう、果南さん。その、朝ごはんは有り難いんだけど、何か着て?」

果南「んー、今日も太陽キラキラ、いい天気だなぁ♪」ノビー

◯叩いてかぶってじゃんけんぽん

我はプリンなり。我冷蔵庫の中にて独り余れり。今二人のおなごが我を取り合わんとして争わんとす。

善子「ぽん」グー

果南「ぽん」パー

果南「……っ」グッ

善子「あっ、あっ」ワタワタ

善子「ほっ」サッ

果南「とう」ポコ

善子「よし、セーフね」

善子「ぽん」チョキ

果南「ぽん」パー

善子「……んっ」グッ

果南「えーっと、えーっと」ノロノロ

果南「ほい」サッ

善子「えいっ」㌰

果南「ふぅ、間に合った」

プリン(……何やってんだこいつら)

(一番上に戻る)

善子「全く、果南さんってどっかズレてるんだから……」パクパク

果南「あんなこと言って、結局食べてくれるんだ」

善子「えっ? そ、それは、果南さんの手料r……じゃなくて、えと、食べ物を残すのはいけない……じゃなくて! お、美味しいの! 意外と美味しいから食べてるだけ! 悪い!?」ガツガツ

果南「善子……」ズキズキ

果南(次からはちゃんと本を見て作ろう……)ズキズキ

◯G's Magazineを読むヨハかな

果南「おっ、G's読んでるんだ」

善子「くっつくなっ」

善子(果南さんのインタビューだ。どれどれ……)

Q, 果南ちゃんはハグが大好きで知られていますが、一番抱き心地がいいのは誰ですか?

A, 抱き心地かぁ……。マルなんかもふわふわして気持ちいいけど───やっぱり一番は善子かな♡ 肌がスベスベでスタイルもいいし、ちょうど私の顔の下に頭が来る大きさなんだよね♡♡ 
いつもはツンツンしてる善子も、ハグすると急にしおらしくなったりして──────ふふっ♡ 
え? してみたい? だーめっ! これは私だけの特権だよっ♡♡♡


善子「……な……な……///」プルプル

果南「ふふふ、見られちゃったかぁ」

善子「あんたねぇ!インタビューで何言って……」

果南「えーい!」ハグッ

善子「ピャッ」

果南「よしよし、善子は可愛いね~♡」ナデナデ

善子「ふぁぁぁぁぁぁぁ……///」

穂乃果「わっ、また台風来るの?」

にこ「そうみたいにこ」

穂乃果「うっ……また練習できないじゃん」

にこ「部屋の中でもできることをするにこ」

穂乃果「最近そればっかりだよ? やっぱり外で踊らないとだめだと思うんだよね」

にこ「とか言いつつ部室でお菓子食べてるじゃない」

穂乃果「それは仕方なく……ってまだ次の曲のダンスが合ってないのは本当のことでしょ?」

にこ「うーん、何とか部屋の中でも練習できたらいいにこ」

穂乃果「空き教室を借りるのは……無理なんだよね何故か」

にこ「こうなったら廊下でやるにこ。廊下なら許可はいらないにこ」

穂乃果「通行人の邪魔じゃないかな?」

にこ「ゲリラライブだと思えば平気にこ」

穂乃果「なるほど……にこちゃん天才だね!」

にこ「……まあ、海未あたりにだめって言われるのがオチにこ」

穂乃果「むむ……敵は台風でも練習場所でもなく海未ちゃんだったか」

にこ「いや台風にこ」

穂乃果「そうと決まれば説得しなきゃ! よーし!」

にこ「気合が入るとこおかしいにこ」

穂乃果「だめって言われたら代わりにお菓子食べようっと」

にこ「そっちが目的にこ!?」


穂乃果にしては真面目だと思ったにこ

善子「だーかーらー! 確かにとっても爽やかで気持ちの良い朝だけど、とりあえず何か着てよ!」

果南「えー、ダメ? ちゃんと下着は着てるじゃん」

善子「そういう問題じゃなくて!」

果南「いいじゃん、ここには私と善子しかいないんだし、それにこの方が爽やかで気持ちいいよ♪」

善子「いや、常識ってもんがあるでしょ!?」

果南「んー? 堕天使のくせに常識に囚われるなんて、おかしなこと言うね?」

善子「うぐっ! そ、それに、お湯とか油が跳ねちゃったら危ないでしょ!?」

果南「大丈夫、私皮膚強いから♪」

善子「はぁ……もうダメだこの人……」

真姫(あの二人、遅いわね……。もしかしてまだケンカしてるのかしら?)

ガチャッ

穂乃果「にこちゃんは優しいなぁ」ナデナデ

にこ「だから撫でるなって言ってるにこ!」

穂乃果「やーだよー」スリスリ

真姫(うわ……。かなり面倒なことになったわね)

穂乃果「真姫ちゃんごめんね? 私、わがままなこと言っちゃって」

真姫「誰も気にしてないわよ。それに、あんたがわがままなのはいつものことじゃない」

穂乃果「うっ……。真姫ちゃん厳しい」

にこ「ねー?」

穂乃果「ねー」

真姫「わ、悪かったわね」

真姫(早くみんな戻ってこないかしら? やりづらいわ……)

にこ「みんなどこへ行ったにこ?」

真姫「あんた達が遅いから探しに行ったのよ」

穂乃果「みんなで?」

真姫「ケンカがひどくなったら困るからよ。意地っ張りのあんた達がそうなったら、本当に面倒だもの」

にこ「真姫ちゃんに意地っ張りとか言われたくないにこ」プッ

穂乃果「ねー?」

にこ「ねー」

真姫「あああ! だからそのノリやめなさいってば!」

真姫(みんなお願いだから早く戻ってきて……)ハァ


真姫ちゃんも大変にこ

善子「さあ観念して……」

果南「よーしーこー!」ダキッ

善子「ひゃっ///」

果南「あー、ヨハネに魅了されちゃった~。どうしよ~、血を吸われちゃうよ~♡」スリスリ

善子「へぁ……///」

善子(こ……こんなタイミングで急に乗ってくるとかぁ……///)

善子「ずるいっ!///」

果南「ずるくていいもーん♪」

二年教室

にこ「ことりいるにこー?」

ことり「わっ、本当に来た……」

にこ「来ちゃ悪いにこ? 分けたくなければ我慢するからいいにこ」

ことり「ううん、そうじゃないんだけど……」

モブ「あっ、にこちゃんだ!」「可愛い!」「一年生かな?」

にこ「むかっ! にこは三年生にこ! 絶対知ってて言ったにこ!?」プンプン

モブ「やーん、にこちゃん怒っても可愛いー!」「いつものやってー!」

にこ「可愛くてもだめにこ! やらないにこ!」

ことり「あはは……こうなると思った」

モブ「お昼もう食べた?」「まだなら一緒に……」「エビフライあるよ」

にこ「食べるにこ」ジュルリ

ことり(うわぁ……)

モブ「じゃあいつものやってー」

にこ「うっ……。にっこにっ」

ことり「……」ジトー

にこ「ごほん、また今度にこ。ライブに来てくれたらやってあげるにこ」

ことり「えらいえらい」ナデナデ

にこ「や、やめるにこ! みんな見てるにこ!」

モブ「可愛い!」「ことりちゃんずるい!」「私もなでなでしたーい!」

ことり「残念。にこちゃんがなでなでさせるのは私だけなの」

にこ「ちょっと、変な誤解されるようなこと言わないでほしいにこ」

モブ「そっかぁ」「仕方ないね」「無理言ってごめんね」

にこ「うわっ、完全に誤解されてるにこ」

ことり「うふふ。じゃあ行こっか?」ギュッ


恥ずかしいから手を離すにこ……

チュンチュン

にこ「ことりがないてるちゅん」

ことり「泣いてないよ?」

にこ「あ、ごめんにこ。電線の上にとまってる方にこ」

ことり「そっち? 紛らわしいなぁ」

にこ「『ことりは私ですが』とか言わないにこ?」

ことり「言わないよ! ンミチャンだけだよそんなの」

にこ「それもそうにこ」

ことり「そう言えば昨日のお菓子……」

にこ「その話はやめるにこ。思い出したくないにこ」

ことり「えっ、あ……そうなんだ」

ことり(お礼を言いたかっただけなんだけどな……)

にこ「はぁ……」

ことり「朝から大きなため息だね……」

にこ「よし、気合を入れて今日も頑張るにこ!」

ことり「? 変なにこちゃん」

にこ「そう言えば今朝は朝ごはんがまだだったにこ」グゥ

ことり「え? でもまだ購買開いてないよ?」

にこ「大丈夫にこ。おにぎりを持ってきたにこ」サッ

ことり「塩おにぎり……花陽ちゃんみたい」

にこ「花陽はこれより二回り大きいにこ。朝からそんなに食べられないにこ」パクッ

ことり「そうだねぇ。私も朝はあんまり食べられないかも……」

にこ「はむっ……。今日の塩加減はまあまあにこ」モグモグ

ことり「わ、私もお腹空いてきちゃった」グゥ

にこ「仕方ないにこ。二つあるから一つあげるにこ」

ことり「えへへ、嬉しいなぁ」パクッ

にこ「その代わりお弁当半分よこすにこ」

ことり「ごほっ! えっ、まさかお昼と一緒なの?」


おにぎり二つなんて……ダイエット中なのかなぁ

◯服

善子(私の恋人はとても陽気である)

善子(朝目が覚めると、朝が弱い私のために、鼻歌まじりでごはんを作ってくれる)

善子(しかし、彼女の行動には一つ致命的な欠陥があり……)



果南「ふんふんふふ~ん。ふふっ、昨日とっても楽しい夢を見たんだ♪ いいでしょ?」

善子(果南さんまたアロエに話しかけてる……)

善子「果南さんおはよー……。何か着てよ」

果南「おっ、善子おはよう!朝ご飯もうちょっとで出来るから、待っててね♪」

善子「ありがとう、果南さん。その、朝ごはんは有り難いんだけど、何か着て?」

果南「んー、今日も太陽キラキラ、いい天気だなぁ♪」ノビー

◯G's Magazineを読むヨハかな

果南「おっ、G's読んでるんだ」

善子「くっつくなっ」

善子(果南さんのインタビューだ。どれどれ……)

Q, 果南ちゃんはハグが大好きで知られていますが、一番抱き心地がいいのは誰ですか?

A, 抱き心地かぁ……。マルなんかもふわふわして気持ちいいけど───やっぱり一番は善子かな♡ 肌がスベスベでスタイルもいいし、ちょうど私の顔の下に頭が来る大きさなんだよね♡♡ 
いつもはツンツンしてる善子も、ハグすると急にしおらしくなったりして──────ふふっ♡ 
え? してみたい? だーめっ! これは私だけの特権だよっ♡♡♡


善子「……な……な……///」プルプル

果南「ふふふ、見られちゃったかぁ」

善子「あんたねぇ!インタビューで何言って……」

果南「えーい!」ハグッ

善子「ピャッ」

果南「よしよし、善子は可愛いね~♡」ナデナデ

善子「ふぁぁぁぁぁぁぁ……///」

穂乃果「わっ、また台風来るの?」

にこ「そうみたいにこ」

穂乃果「うっ……また練習できないじゃん」

にこ「部屋の中でもできることをするにこ」

穂乃果「最近そればっかりだよ? やっぱり外で踊らないとだめだと思うんだよね」

にこ「とか言いつつ部室でお菓子食べてるじゃない」

穂乃果「それは仕方なく……ってまだ次の曲のダンスが合ってないのは本当のことでしょ?」

にこ「うーん、何とか部屋の中でも練習できたらいいにこ」

穂乃果「空き教室を借りるのは……無理なんだよね何故か」

にこ「こうなったら廊下でやるにこ。廊下なら許可はいらないにこ」

穂乃果「通行人の邪魔じゃないかな?」

にこ「ゲリラライブだと思えば平気にこ」

穂乃果「なるほど……にこちゃん天才だね!」

にこ「……まあ、海未あたりにだめって言われるのがオチにこ」

穂乃果「むむ……敵は台風でも練習場所でもなく海未ちゃんだったか」

にこ「いや台風にこ」

穂乃果「そうと決まれば説得しなきゃ! よーし!」

にこ「気合が入るとこおかしいにこ」

穂乃果「だめって言われたら代わりにお菓子食べようっと」

にこ「そっちが目的にこ!?」


穂乃果にしては真面目だと思ったにこ

◯叩いてかぶってじゃんけんぽん

我はプリンなり。我冷蔵庫の中にて独り余れり。今二人のおなごが我を取り合わんとして争わんとす。

善子「ぽん」グー

果南「ぽん」パー

果南「……っ」グッ

善子「あっ、あっ」ワタワタ

善子「ほっ」サッ

果南「とう」ポコ

善子「よし、セーフね」

善子「ぽん」チョキ

果南「ぽん」パー

善子「……んっ」グッ

果南「えーっと、えーっと」ノロノロ

果南「ほい」サッ

善子「えいっ」㌰

果南「ふぅ、間に合った」

プリン(……何やってんだこいつら)

(一番上に戻る)

善子「全く、果南さんってどっかズレてるんだから……」パクパク

果南「あんなこと言って、結局食べてくれるんだ」

善子「えっ? そ、それは、果南さんの手料r……じゃなくて、えと、食べ物を残すのはいけない……じゃなくて! お、美味しいの! 意外と美味しいから食べてるだけ! 悪い!?」ガツガツ

果南「善子……」ズキズキ

果南(次からはちゃんと本を見て作ろう……)ズキズキ

善子「だーかーらー! 確かにとっても爽やかで気持ちの良い朝だけど、とりあえず何か着てよ!」

果南「えー、ダメ? ちゃんと下着は着てるじゃん」

善子「そういう問題じゃなくて!」

果南「いいじゃん、ここには私と善子しかいないんだし、それにこの方が爽やかで気持ちいいよ♪」

善子「いや、常識ってもんがあるでしょ!?」

果南「んー? 堕天使のくせに常識に囚われるなんて、おかしなこと言うね?」

善子「うぐっ! そ、それに、お湯とか油が跳ねちゃったら危ないでしょ!?」

果南「大丈夫、私皮膚強いから♪」

善子「はぁ……もうダメだこの人……」

二年教室

にこ「ことりいるにこー?」

ことり「わっ、本当に来た……」

にこ「来ちゃ悪いにこ? 分けたくなければ我慢するからいいにこ」

ことり「ううん、そうじゃないんだけど……」

モブ「あっ、にこちゃんだ!」「可愛い!」「一年生かな?」

にこ「むかっ! にこは三年生にこ! 絶対知ってて言ったにこ!?」プンプン

モブ「やーん、にこちゃん怒っても可愛いー!」「いつものやってー!」

にこ「可愛くてもだめにこ! やらないにこ!」

ことり「あはは……こうなると思った」

モブ「お昼もう食べた?」「まだなら一緒に……」「エビフライあるよ」

にこ「食べるにこ」ジュルリ

ことり(うわぁ……)

モブ「じゃあいつものやってー」

にこ「うっ……。にっこにっ」

ことり「……」ジトー

にこ「ごほん、また今度にこ。ライブに来てくれたらやってあげるにこ」

ことり「えらいえらい」ナデナデ

にこ「や、やめるにこ! みんな見てるにこ!」

モブ「可愛い!」「ことりちゃんずるい!」「私もなでなでしたーい!」

ことり「残念。にこちゃんがなでなでさせるのは私だけなの」

にこ「ちょっと、変な誤解されるようなこと言わないでほしいにこ」

モブ「そっかぁ」「仕方ないね」「無理言ってごめんね」

にこ「うわっ、完全に誤解されてるにこ」

ことり「うふふ。じゃあ行こっか?」ギュッ


恥ずかしいから手を離すにこ……

善子「さあ観念して……」

果南「よーしーこー!」ダキッ

善子「ひゃっ///」

果南「あー、ヨハネに魅了されちゃった~。どうしよ~、血を吸われちゃうよ~♡」スリスリ

善子「へぁ……///」

善子(こ……こんなタイミングで急に乗ってくるとかぁ……///)

善子「ずるいっ!///」

果南「ずるくていいもーん♪」

チュンチュン

にこ「ことりがないてるちゅん」

ことり「泣いてないよ?」

にこ「あ、ごめんにこ。電線の上にとまってる方にこ」

ことり「そっち? 紛らわしいなぁ」

にこ「『ことりは私ですが』とか言わないにこ?」

ことり「言わないよ! ンミチャンだけだよそんなの」

にこ「それもそうにこ」

ことり「そう言えば昨日のお菓子……」

にこ「その話はやめるにこ。思い出したくないにこ」

ことり「えっ、あ……そうなんだ」

ことり(お礼を言いたかっただけなんだけどな……)

にこ「はぁ……」

ことり「朝から大きなため息だね……」

にこ「よし、気合を入れて今日も頑張るにこ!」

ことり「? 変なにこちゃん」

にこ「そう言えば今朝は朝ごはんがまだだったにこ」グゥ

ことり「え? でもまだ購買開いてないよ?」

にこ「大丈夫にこ。おにぎりを持ってきたにこ」サッ

ことり「塩おにぎり……花陽ちゃんみたい」

にこ「花陽はこれより二回り大きいにこ。朝からそんなに食べられないにこ」パクッ

ことり「そうだねぇ。私も朝はあんまり食べられないかも……」

にこ「はむっ……。今日の塩加減はまあまあにこ」モグモグ

ことり「わ、私もお腹空いてきちゃった」グゥ

にこ「仕方ないにこ。二つあるから一つあげるにこ」

ことり「えへへ、嬉しいなぁ」パクッ

にこ「その代わりお弁当半分よこすにこ」

ことり「ごほっ! えっ、まさかお昼と一緒なの?」


おにぎり二つなんて……ダイエット中なのかなぁ

真姫(あの二人、遅いわね……。もしかしてまだケンカしてるのかしら?)

ガチャッ

穂乃果「にこちゃんは優しいなぁ」ナデナデ

にこ「だから撫でるなって言ってるにこ!」

穂乃果「やーだよー」スリスリ

真姫(うわ……。かなり面倒なことになったわね)

穂乃果「真姫ちゃんごめんね? 私、わがままなこと言っちゃって」

真姫「誰も気にしてないわよ。それに、あんたがわがままなのはいつものことじゃない」

穂乃果「うっ……。真姫ちゃん厳しい」

にこ「ねー?」

穂乃果「ねー」

真姫「わ、悪かったわね」

真姫(早くみんな戻ってこないかしら? やりづらいわ……)

にこ「みんなどこへ行ったにこ?」

真姫「あんた達が遅いから探しに行ったのよ」

穂乃果「みんなで?」

真姫「ケンカがひどくなったら困るからよ。意地っ張りのあんた達がそうなったら、本当に面倒だもの」

にこ「真姫ちゃんに意地っ張りとか言われたくないにこ」プッ

穂乃果「ねー?」

にこ「ねー」

真姫「あああ! だからそのノリやめなさいってば!」

真姫(みんなお願いだから早く戻ってきて……)ハァ


真姫ちゃんも大変にこ

◯服

善子(私の恋人はとても陽気である)

善子(朝目が覚めると、朝が弱い私のために、鼻歌まじりでごはんを作ってくれる)

善子(しかし、彼女の行動には一つ致命的な欠陥があり……)



果南「ふんふんふふ~ん。ふふっ、昨日とっても楽しい夢を見たんだ♪ いいでしょ?」

善子(果南さんまたアロエに話しかけてる……)

善子「果南さんおはよー……。何か着てよ」

果南「おっ、善子おはよう!朝ご飯もうちょっとで出来るから、待っててね♪」

善子「ありがとう、果南さん。その、朝ごはんは有り難いんだけど、何か着て?」

果南「んー、今日も太陽キラキラ、いい天気だなぁ♪」ノビー

穂乃果「わっ、また台風来るの?」

にこ「そうみたいにこ」

穂乃果「うっ……また練習できないじゃん」

にこ「部屋の中でもできることをするにこ」

穂乃果「最近そればっかりだよ? やっぱり外で踊らないとだめだと思うんだよね」

にこ「とか言いつつ部室でお菓子食べてるじゃない」

穂乃果「それは仕方なく……ってまだ次の曲のダンスが合ってないのは本当のことでしょ?」

にこ「うーん、何とか部屋の中でも練習できたらいいにこ」

穂乃果「空き教室を借りるのは……無理なんだよね何故か」

にこ「こうなったら廊下でやるにこ。廊下なら許可はいらないにこ」

穂乃果「通行人の邪魔じゃないかな?」

にこ「ゲリラライブだと思えば平気にこ」

穂乃果「なるほど……にこちゃん天才だね!」

にこ「……まあ、海未あたりにだめって言われるのがオチにこ」

穂乃果「むむ……敵は台風でも練習場所でもなく海未ちゃんだったか」

にこ「いや台風にこ」

穂乃果「そうと決まれば説得しなきゃ! よーし!」

にこ「気合が入るとこおかしいにこ」

穂乃果「だめって言われたら代わりにお菓子食べようっと」

にこ「そっちが目的にこ!?」


穂乃果にしては真面目だと思ったにこ

◯叩いてかぶってじゃんけんぽん

我はプリンなり。我冷蔵庫の中にて独り余れり。今二人のおなごが我を取り合わんとして争わんとす。

善子「ぽん」グー

果南「ぽん」パー

果南「……っ」グッ

善子「あっ、あっ」ワタワタ

善子「ほっ」サッ

果南「とう」ポコ

善子「よし、セーフね」

善子「ぽん」チョキ

果南「ぽん」パー

善子「……んっ」グッ

果南「えーっと、えーっと」ノロノロ

果南「ほい」サッ

善子「えいっ」㌰

果南「ふぅ、間に合った」

プリン(……何やってんだこいつら)

(一番上に戻る)

善子「全く、果南さんってどっかズレてるんだから……」パクパク

果南「あんなこと言って、結局食べてくれるんだ」

善子「えっ? そ、それは、果南さんの手料r……じゃなくて、えと、食べ物を残すのはいけない……じゃなくて! お、美味しいの! 意外と美味しいから食べてるだけ! 悪い!?」ガツガツ

果南「善子……」ズキズキ

果南(次からはちゃんと本を見て作ろう……)ズキズキ

◯G's Magazineを読むヨハかな

果南「おっ、G's読んでるんだ」

善子「くっつくなっ」

善子(果南さんのインタビューだ。どれどれ……)

Q, 果南ちゃんはハグが大好きで知られていますが、一番抱き心地がいいのは誰ですか?

A, 抱き心地かぁ……。マルなんかもふわふわして気持ちいいけど───やっぱり一番は善子かな♡ 肌がスベスベでスタイルもいいし、ちょうど私の顔の下に頭が来る大きさなんだよね♡♡ 
いつもはツンツンしてる善子も、ハグすると急にしおらしくなったりして──────ふふっ♡ 
え? してみたい? だーめっ! これは私だけの特権だよっ♡♡♡


善子「……な……な……///」プルプル

果南「ふふふ、見られちゃったかぁ」

善子「あんたねぇ!インタビューで何言って……」

果南「えーい!」ハグッ

善子「ピャッ」

果南「よしよし、善子は可愛いね~♡」ナデナデ

善子「ふぁぁぁぁぁぁぁ……///」

善子「だーかーらー! 確かにとっても爽やかで気持ちの良い朝だけど、とりあえず何か着てよ!」

果南「えー、ダメ? ちゃんと下着は着てるじゃん」

善子「そういう問題じゃなくて!」

果南「いいじゃん、ここには私と善子しかいないんだし、それにこの方が爽やかで気持ちいいよ♪」

善子「いや、常識ってもんがあるでしょ!?」

果南「んー? 堕天使のくせに常識に囚われるなんて、おかしなこと言うね?」

善子「うぐっ! そ、それに、お湯とか油が跳ねちゃったら危ないでしょ!?」

果南「大丈夫、私皮膚強いから♪」

善子「はぁ……もうダメだこの人……」

善子「当然よ!悪魔翌料理人が罪ある人間の目玉をくり抜いて、悪魔たちの宴で様々な目玉料理を振る舞、って……!」サーッ

善子「ヒィィィィッ!何想像させんのよ!バカバカバカッ!」ブンブン

果南「いや、善子が自分で言ったんじゃん!私のせいじゃないよ?」

善子「うるさーい!一人前のリトルデーモンなら、私が怖い思いする前が止めてくれないとダメなの!」

果南「あはは、何それ~?」

善子「さあ観念して……」

果南「よーしーこー!」ダキッ

善子「ひゃっ///」

果南「あー、ヨハネに魅了されちゃった~。どうしよ~、血を吸われちゃうよ~♡」スリスリ

善子「へぁ……///」

善子(こ……こんなタイミングで急に乗ってくるとかぁ……///)

善子「ずるいっ!///」

果南「ずるくていいもーん♪」

チュンチュン

にこ「ことりがないてるちゅん」

ことり「泣いてないよ?」

にこ「あ、ごめんにこ。電線の上にとまってる方にこ」

ことり「そっち? 紛らわしいなぁ」

にこ「『ことりは私ですが』とか言わないにこ?」

ことり「言わないよ! ンミチャンだけだよそんなの」

にこ「それもそうにこ」

ことり「そう言えば昨日のお菓子……」

にこ「その話はやめるにこ。思い出したくないにこ」

ことり「えっ、あ……そうなんだ」

ことり(お礼を言いたかっただけなんだけどな……)

にこ「はぁ……」

ことり「朝から大きなため息だね……」

にこ「よし、気合を入れて今日も頑張るにこ!」

ことり「? 変なにこちゃん」

にこ「そう言えば今朝は朝ごはんがまだだったにこ」グゥ

ことり「え? でもまだ購買開いてないよ?」

にこ「大丈夫にこ。おにぎりを持ってきたにこ」サッ

ことり「塩おにぎり……花陽ちゃんみたい」

にこ「花陽はこれより二回り大きいにこ。朝からそんなに食べられないにこ」パクッ

ことり「そうだねぇ。私も朝はあんまり食べられないかも……」

にこ「はむっ……。今日の塩加減はまあまあにこ」モグモグ

ことり「わ、私もお腹空いてきちゃった」グゥ

にこ「仕方ないにこ。二つあるから一つあげるにこ」

ことり「えへへ、嬉しいなぁ」パクッ

にこ「その代わりお弁当半分よこすにこ」

ことり「ごほっ! えっ、まさかお昼と一緒なの?」


おにぎり二つなんて……ダイエット中なのかなぁ

真姫(あの二人、遅いわね……。もしかしてまだケンカしてるのかしら?)

ガチャッ

穂乃果「にこちゃんは優しいなぁ」ナデナデ

にこ「だから撫でるなって言ってるにこ!」

穂乃果「やーだよー」スリスリ

真姫(うわ……。かなり面倒なことになったわね)

穂乃果「真姫ちゃんごめんね? 私、わがままなこと言っちゃって」

真姫「誰も気にしてないわよ。それに、あんたがわがままなのはいつものことじゃない」

穂乃果「うっ……。真姫ちゃん厳しい」

にこ「ねー?」

穂乃果「ねー」

真姫「わ、悪かったわね」

真姫(早くみんな戻ってこないかしら? やりづらいわ……)

にこ「みんなどこへ行ったにこ?」

真姫「あんた達が遅いから探しに行ったのよ」

穂乃果「みんなで?」

真姫「ケンカがひどくなったら困るからよ。意地っ張りのあんた達がそうなったら、本当に面倒だもの」

にこ「真姫ちゃんに意地っ張りとか言われたくないにこ」プッ

穂乃果「ねー?」

にこ「ねー」

真姫「あああ! だからそのノリやめなさいってば!」

真姫(みんなお願いだから早く戻ってきて……)ハァ


真姫ちゃんも大変にこ

◯服

善子(私の恋人はとても陽気である)

善子(朝目が覚めると、朝が弱い私のために、鼻歌まじりでごはんを作ってくれる)

善子(しかし、彼女の行動には一つ致命的な欠陥があり……)



果南「ふんふんふふ~ん。ふふっ、昨日とっても楽しい夢を見たんだ♪ いいでしょ?」

善子(果南さんまたアロエに話しかけてる……)

善子「果南さんおはよー……。何か着てよ」

果南「おっ、善子おはよう!朝ご飯もうちょっとで出来るから、待っててね♪」

善子「ありがとう、果南さん。その、朝ごはんは有り難いんだけど、何か着て?」

果南「んー、今日も太陽キラキラ、いい天気だなぁ♪」ノビー

二年教室

にこ「ことりいるにこー?」

ことり「わっ、本当に来た……」

にこ「来ちゃ悪いにこ? 分けたくなければ我慢するからいいにこ」

ことり「ううん、そうじゃないんだけど……」

モブ「あっ、にこちゃんだ!」「可愛い!」「一年生かな?」

にこ「むかっ! にこは三年生にこ! 絶対知ってて言ったにこ!?」プンプン

モブ「やーん、にこちゃん怒っても可愛いー!」「いつものやってー!」

にこ「可愛くてもだめにこ! やらないにこ!」

ことり「あはは……こうなると思った」

モブ「お昼もう食べた?」「まだなら一緒に……」「エビフライあるよ」

にこ「食べるにこ」ジュルリ

ことり(うわぁ……)

モブ「じゃあいつものやってー」

にこ「うっ……。にっこにっ」

ことり「……」ジトー

にこ「ごほん、また今度にこ。ライブに来てくれたらやってあげるにこ」

ことり「えらいえらい」ナデナデ

にこ「や、やめるにこ! みんな見てるにこ!」

モブ「可愛い!」「ことりちゃんずるい!」「私もなでなでしたーい!」

ことり「残念。にこちゃんがなでなでさせるのは私だけなの」

にこ「ちょっと、変な誤解されるようなこと言わないでほしいにこ」

モブ「そっかぁ」「仕方ないね」「無理言ってごめんね」

にこ「うわっ、完全に誤解されてるにこ」

ことり「うふふ。じゃあ行こっか?」ギュッ


恥ずかしいから手を離すにこ……

穂乃果「わっ、また台風来るの?」

にこ「そうみたいにこ」

穂乃果「うっ……また練習できないじゃん」

にこ「部屋の中でもできることをするにこ」

穂乃果「最近そればっかりだよ? やっぱり外で踊らないとだめだと思うんだよね」

にこ「とか言いつつ部室でお菓子食べてるじゃない」

穂乃果「それは仕方なく……ってまだ次の曲のダンスが合ってないのは本当のことでしょ?」

にこ「うーん、何とか部屋の中でも練習できたらいいにこ」

穂乃果「空き教室を借りるのは……無理なんだよね何故か」

にこ「こうなったら廊下でやるにこ。廊下なら許可はいらないにこ」

穂乃果「通行人の邪魔じゃないかな?」

にこ「ゲリラライブだと思えば平気にこ」

穂乃果「なるほど……にこちゃん天才だね!」

にこ「……まあ、海未あたりにだめって言われるのがオチにこ」

穂乃果「むむ……敵は台風でも練習場所でもなく海未ちゃんだったか」

にこ「いや台風にこ」

穂乃果「そうと決まれば説得しなきゃ! よーし!」

にこ「気合が入るとこおかしいにこ」

穂乃果「だめって言われたら代わりにお菓子食べようっと」

にこ「そっちが目的にこ!?」


穂乃果にしては真面目だと思ったにこ

◯叩いてかぶってじゃんけんぽん

我はプリンなり。我冷蔵庫の中にて独り余れり。今二人のおなごが我を取り合わんとして争わんとす。

善子「ぽん」グー

果南「ぽん」パー

果南「……っ」グッ

善子「あっ、あっ」ワタワタ

善子「ほっ」サッ

果南「とう」ポコ

善子「よし、セーフね」

善子「ぽん」チョキ

果南「ぽん」パー

善子「……んっ」グッ

果南「えーっと、えーっと」ノロノロ

果南「ほい」サッ

善子「えいっ」㌰

果南「ふぅ、間に合った」

プリン(……何やってんだこいつら)

(一番上に戻る)

◯G's Magazineを読むヨハかな

果南「おっ、G's読んでるんだ」

善子「くっつくなっ」

善子(果南さんのインタビューだ。どれどれ……)

Q, 果南ちゃんはハグが大好きで知られていますが、一番抱き心地がいいのは誰ですか?

A, 抱き心地かぁ……。マルなんかもふわふわして気持ちいいけど───やっぱり一番は善子かな♡ 肌がスベスベでスタイルもいいし、ちょうど私の顔の下に頭が来る大きさなんだよね♡♡ 
いつもはツンツンしてる善子も、ハグすると急にしおらしくなったりして──────ふふっ♡ 
え? してみたい? だーめっ! これは私だけの特権だよっ♡♡♡


善子「……な……な……///」プルプル

果南「ふふふ、見られちゃったかぁ」

善子「あんたねぇ!インタビューで何言って……」

果南「えーい!」ハグッ

善子「ピャッ」

果南「よしよし、善子は可愛いね~♡」ナデナデ

善子「ふぁぁぁぁぁぁぁ……///」

善子「だーかーらー! 確かにとっても爽やかで気持ちの良い朝だけど、とりあえず何か着てよ!」

果南「えー、ダメ? ちゃんと下着は着てるじゃん」

善子「そういう問題じゃなくて!」

果南「いいじゃん、ここには私と善子しかいないんだし、それにこの方が爽やかで気持ちいいよ♪」

善子「いや、常識ってもんがあるでしょ!?」

果南「んー? 堕天使のくせに常識に囚われるなんて、おかしなこと言うね?」

善子「うぐっ! そ、それに、お湯とか油が跳ねちゃったら危ないでしょ!?」

果南「大丈夫、私皮膚強いから♪」

善子「はぁ……もうダメだこの人……」

善子「全く、果南さんってどっかズレてるんだから……」パクパク

果南「あんなこと言って、結局食べてくれるんだ」

善子「えっ? そ、それは、果南さんの手料r……じゃなくて、えと、食べ物を残すのはいけない……じゃなくて! お、美味しいの! 意外と美味しいから食べてるだけ! 悪い!?」ガツガツ

果南「善子……」ズキズキ

果南(次からはちゃんと本を見て作ろう……)ズキズキ

善子「さあ観念して……」

果南「よーしーこー!」ダキッ

善子「ひゃっ///」

果南「あー、ヨハネに魅了されちゃった~。どうしよ~、血を吸われちゃうよ~♡」スリスリ

善子「へぁ……///」

善子(こ……こんなタイミングで急に乗ってくるとかぁ……///)

善子「ずるいっ!///」

果南「ずるくていいもーん♪」

ss◯服

善子(私の恋人はとても陽気である)

善子(朝目が覚めると、朝が弱い私のために、鼻歌まじりでごはんを作ってくれる)

善子(しかし、彼女の行動には一つ致命的な欠陥があり……)



果南「ふんふんふふ~ん。ふふっ、昨日とっても楽しい夢を見たんだ♪ いいでしょ?」

善子(果南さんまたアロエに話しかけてる……)

善子「果南さんおはよー……。何か着てよ」

果南「おっ、善子おはよう!朝ご飯もうちょっとで出来るから、待っててね♪」

善子「ありがとう、果南さん。その、朝ごはんは有り難いんだけど、何か着て?」

果南「んー、今日も太陽キラキラ、いい天気だなぁ♪」ノビー

真姫(あの二人、遅いわね……。もしかしてまだケンカしてるのかしら?)

ガチャッ

穂乃果「にこちゃんは優しいなぁ」ナデナデ

にこ「だから撫でるなって言ってるにこ!」

穂乃果「やーだよー」スリスリ

真姫(うわ……。かなり面倒なことになったわね)

穂乃果「真姫ちゃんごめんね? 私、わがままなこと言っちゃって」

真姫「誰も気にしてないわよ。それに、あんたがわがままなのはいつものことじゃない」

穂乃果「うっ……。真姫ちゃん厳しい」

にこ「ねー?」

穂乃果「ねー」

真姫「わ、悪かったわね」

真姫(早くみんな戻ってこないかしら? やりづらいわ……)

にこ「みんなどこへ行ったにこ?」

真姫「あんた達が遅いから探しに行ったのよ」

穂乃果「みんなで?」

真姫「ケンカがひどくなったら困るからよ。意地っ張りのあんた達がそうなったら、本当に面倒だもの」

にこ「真姫ちゃんに意地っ張りとか言われたくないにこ」プッ

穂乃果「ねー?」

にこ「ねー」

真姫「あああ! だからそのノリやめなさいってば!」

真姫(みんなお願いだから早く戻ってきて……)ハァ


真姫ちゃんも大変にこ

チュンチュン

にこ「ことりがないてるちゅん」

ことり「泣いてないよ?」

にこ「あ、ごめんにこ。電線の上にとまってる方にこ」

ことり「そっち? 紛らわしいなぁ」

にこ「『ことりは私ですが』とか言わないにこ?」

ことり「言わないよ! ンミチャンだけだよそんなの」

にこ「それもそうにこ」

ことり「そう言えば昨日のお菓子……」

にこ「その話はやめるにこ。思い出したくないにこ」

ことり「えっ、あ……そうなんだ」

ことり(お礼を言いたかっただけなんだけどな……)

にこ「はぁ……」

ことり「朝から大きなため息だね……」

にこ「よし、気合を入れて今日も頑張るにこ!」

ことり「? 変なにこちゃん」

にこ「そう言えば今朝は朝ごはんがまだだったにこ」グゥ

ことり「え? でもまだ購買開いてないよ?」

にこ「大丈夫にこ。おにぎりを持ってきたにこ」サッ

ことり「塩おにぎり……花陽ちゃんみたい」

にこ「花陽はこれより二回り大きいにこ。朝からそんなに食べられないにこ」パクッ

ことり「そうだねぇ。私も朝はあんまり食べられないかも……」

にこ「はむっ……。今日の塩加減はまあまあにこ」モグモグ

ことり「わ、私もお腹空いてきちゃった」グゥ

にこ「仕方ないにこ。二つあるから一つあげるにこ」

ことり「えへへ、嬉しいなぁ」パクッ

にこ「その代わりお弁当半分よこすにこ」

ことり「ごほっ! えっ、まさかお昼と一緒なの?」


おにぎり二つなんて……ダイエット中なのかなぁ

穂乃果「わっ、また台風来るの?」

にこ「そうみたいにこ」

穂乃果「うっ……また練習できないじゃん」

にこ「部屋の中でもできることをするにこ」

穂乃果「最近そればっかりだよ? やっぱり外で踊らないとだめだと思うんだよね」

にこ「とか言いつつ部室でお菓子食べてるじゃない」

穂乃果「それは仕方なく……ってまだ次の曲のダンスが合ってないのは本当のことでしょ?」

にこ「うーん、何とか部屋の中でも練習できたらいいにこ」

穂乃果「空き教室を借りるのは……無理なんだよね何故か」

にこ「こうなったら廊下でやるにこ。廊下なら許可はいらないにこ」

穂乃果「通行人の邪魔じゃないかな?」

にこ「ゲリラライブだと思えば平気にこ」

穂乃果「なるほど……にこちゃん天才だね!」

にこ「……まあ、海未あたりにだめって言われるのがオチにこ」

穂乃果「むむ……敵は台風でも練習場所でもなく海未ちゃんだったか」

にこ「いや台風にこ」

穂乃果「そうと決まれば説得しなきゃ! よーし!」

にこ「気合が入るとこおかしいにこ」

穂乃果「だめって言われたら代わりにお菓子食べようっと」

にこ「そっちが目的にこ!?」


穂乃果にしては真面目だと思ったにこ

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年01月03日 (日) 20:48:37   ID: H2HtbJBg

ハヤクシナサイヨ!

2 :  SS好きの774さん   2016年02月28日 (日) 23:02:35   ID: vdHP8pP4

続きが気になるん

3 :  SS好きの774さん   2016年07月30日 (土) 22:12:45   ID: E_wSqSax

デビモンにそのデジモンで立ち向かうのは死亡フラグですよ!ツバサさん!

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