にこ「ユメノトビラ~夢を諦めたスクールアイドル~」 (164)

一つ目
にこ「夢を諦めたスクールアイドル」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1409602583/)

二つ目
にこ「夢を諦めたスクールアイドル」 完結編 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1425203370/)


これはにことツバサが小学生の時に出会ったことにより大きく変貌したラブライブの可能性
夢を諦めたにこが再び夢を見つける為にゆっくりと成長してきた物語
そして、このスレで長く続いた物語は終わりを迎える

矢澤にこの歩みは最終地点の夢へと辿り着く

邪道とフラグ遊びをしてきたじぶたれた邪道物語はここからはわき道にそれずに進みます

●クライマックス後編
●本編の最終回
●ラストエピソード
●エピローグ
●外伝(海未の邪道の話のみ)
※夏休みの三日間の続きのみ寄り道します

250~300くらいで完結予定

いつの間にか終わってたと思われたいので最後までsage進行でいきます

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1457962878

にこ「3分ちょっとでわかる!! 夢を諦めたスクールアイドル」

あんじゅ「を、予定してましたが、2スレ分をダイジェストするのは無謀過ぎたので変則紹介で誤魔化します」

にこ「最後のスレなのにいきなり挫折からなの!?」

あんじゅ「最後のスレだからって気合い入れる必要なんてないよ。ただ終わるだけだもの」

にこ「……それもそうね」

あんじゅ「ちなみにネタバレが含まれる場合があるので、嫌な人は次の更新(16レス目)からお読みください」

にこ「ダイジェストの代わりなのにネタバレがあるの!?」

あんじゅ「にこってば驚いてばかり。斬新さを求めた結果だよ」

にこ「斬新過ぎるわ! 邪道を通りこしてもはや外道よ」

あんじゅ「掟破りのえべっさんの外道クラッチからの3カウントを思い出すね」

にこ「何それ!?」

音ノ木坂学院

◇矢澤 にこ / ニコフィラ◇
小学五年生の時にレッスンスクールでキラ星(ツバサ)と出会いアイドルになるという夢を諦める
人を笑顔にするという気持ちを何よりも大切にし、学内・商店街を明るくしてきた
音ノ木坂学院スクールアイドルSMILEのリーダーであり策略家
色んな部を活性化させてきたこともあり、学内での信頼は物凄い
自身を過小評価することが多く、姉妹達をやきもきさせる一面も
キラ星とラブライブ本選で再会することを目標としている
一度もA-RISEのライブを観に行ったことがないがファンである

パパが生前に作ってくれてよく歌っていた歌にアレンジを加えた笑顔の魔法
その大切な魔法はあんじゅと出逢った日に貸し与えている
将来は何をするにしても、あんじゅを養っていくつもり

「あんじゅ。あんたは一生私の傍にいなさい」

◇矢澤 あんじゅ / アンジュリカ◇
中三の春先に矢澤家の隣の部屋に引っ越してきて、にこと出逢った
最初は甘えるのにも遠慮があり一人暮らしであることを黙ってた
矢澤姉妹にさん付けで呼んでたけど、にこだけは呼び捨てにするも最初の頃はにこにー呼びを多用していた
現在は矢澤家のにこの部屋で寝起きもお風呂も登下校も常に一緒!
少年漫画に嵌った時に運命の書物と出会い、以降策略家として目覚める ざわ・・・ざわ・・・
万能っぽいがにこが居ないと不安定になるヤンデレ。明晰夢でにこを庇って死にかけたことがある
毎朝海未と自主練をしていて、放課後は陸上部と走ることもある
とにかく寝ても覚めてもにこと一緒!
こころとここあに対してはきちんとお姉ちゃんをしている
にこの手作りカレーとお肉が好き
コスプレ幽霊 紅蓮女がハロウィンでコスプレするくらい好き
ヤンデレだけの特技『目のハイライトを消せる』を使える
綺羅ツバサが大嫌い!!

「にこと私は姉妹星。一生一緒にラブラブ姉妹にこ。ね、ダーリン☆」

◇絢瀬 絵里 / エリーチカ◇
ロシアでバレエ選手になる夢をトウシューズと一緒に捨て、一人日本へ
一年生の時ににことあんじゅが生徒会に乗り込んできて、返り討ちにするも生徒会長に命令され、一月だけスクールアイドルの練習を共にする
初日に元メンバー達と組んだ練習メニューを全否定し、にこを泣かせた
生徒会長の暗躍にお婆様と亜里沙が力を貸してスクールアイドル入りを果たす
現在の生徒会長であり、にこ達の邪道の結果もあり新しい夢を見つけた
『自分の劇団を立ち上げる』
ミュージカルを亜里沙と一緒に観に行くことが最近の趣味でもある
重度のシスコンであり、特にリトルシスターズへの愛情は激熱
ツバサに対して勝手だと知りながら嫌な感情を抱いてしまう

お婆様に自信を持ってスクールアイドルの自分を見て貰い、見つけた夢を告げるのが現在の目標
アイドルに夢をにこに取り戻してもらうのも目標の一つ

「妹に甘くない姉なんて存在しないわ!」

◇園田 海未 / ウミンディーネ◇
中学三年生の秋の終わりにあんじゅの邪道により嫌々スクールアイドルの練習に参加
同年の商店街のハロウィンで初ライブを経験し、自分の意思で活動の継続を決める
正義感が強く、嫌々の参加の時に他のメンバーが泥を被ろうとした際に自分も泥を被ろうとした
それが後の音ノ木坂体験という制度を生み出す要因となり、運動部との絆を生む切っ掛けともなった
姉達(三年生)を尊敬していて、次期生徒会長となることを確約している
中二病を患っていてにこやあんじゅに隠すことなく前に出した方がいいと言われ悩んでいる最中
必殺技は現在ラブアローシュートしかないが……?
ツバサに対して自分勝手だと思いながらも憎む気持ちがある
時間か要望がある時は弓道部と剣道部に指導することもあって、運動部からの信頼度は高い
家のこともあり小学生の途中で夢を持つことをやめたが、今はにこをアイドルにするという夢を持っている

「邪道の中にも正義あり。邪道シスターズ四女・愛弗精霊ウミンディーネ!」

音ノ木坂学院サイドで一人だけ諦めてたり暗かったりする状態で始まっていない異色の子
だから本当はスクールアイドルにならずにリストラされる予定だったけど、安価で救済された
そこから物語の方向性が決まったのである意味裏主人子的存在
リストラされてたら当然邪道シスターズも生まれなかった...

◇高坂 穂乃果◇
音ノ木坂学院入学当初は暗かったが、にこの邪道によりスクールアイドルを初めてから元の明るさを取り戻す
何かある度に頑張る頑張ると言うがすぐにだらける性格だったが、三年生に恩返しをする為に家を継ぐ覚悟を決めて覚醒!
SMILEの二代目リーダーとして気合いを入れている
海未とことりを守れる王子様となるべく日々邁進中!

「いつかお父さんの味を受け継いでみせるよ」


◇星空 凛◇
花陽と別々の学校になったことでスクールアイドルを嫌い、笑顔を失っていた
しかし、にことあんじゅの邪道の結果陸上部に入り、兼任でSMILE入りを果たす
足の速さは次期部長のシカコに近く、勝てるように頑張っている
花陽に対して同じスクールアイドルになったことで今までとは少し違うライバル心もある
真姫ともライバルであり友達でもある関係を築いている
A-RISEのことりに対して敵愾心が強い

「陸上もスクールアイドルも暗かった分を取り戻す為に頑張るニャー!」

◇SMILE◇
現在ラブライブランキング25位(予選通過は20位まで)
作詞・海未(中二の時にポエムブームがあった)
作曲・あんじゅ(ピアノを習っていた為)
振付・絵里(バレエ経験を活かしている)
衣装デザイン・穂乃果(ことりとよく描いていた頃があった)
衣装制作・にこ(呉服屋のお婆ちゃん直伝の腕前)

元メンバーは三人
一人は美術部部長。一人はバイト戦士。もう一人は影が薄いが優しい少女
初ライブからずっと支えてくれている縁の下の力持ち


◇邪道シスターズ◇
長女絵里・次女にこ・三女あんじゅ・四女海未
邪道を是として活動する謎の四姉妹
夢の中なら穂乃果もメンバーである
初めて使ったのは名付け親のあんじゅで、海未が初めて音ノ木坂学院に連れられた日の出来事
にこが初めてこの名を行ったのはつい最近で、凛を笑顔にする邪道の時

これとは別にシスターズもあり、そちらは五女亜里沙・六女こころ・七女ここあ

◇姉妹星◇
にこが作った自分とあんじゅを比喩した星座
常に隣に寄り添う誰よりも近い存在ということ
ツンデレのにこがデレ期に突入し始めた《愛図》でもある


◇願いの旅人◇
あんじゅが書いた物語。音ノ木坂新聞版とネット版が存在する
前者は好評で、後者は荒らされに荒らされてあんじゅのトラウマとなった
願いの宝玉という物をテーマにしたお話
一見無駄としか思えない話だが、中二病の誰かさんの覚醒に必要な物で……?


◇フラグ◇
あんじゅが大好きなフラグ遊び
個人差があるが、フラグが立つと音が鳴るらしい
クライマックスの見せ場も最初にフラグが成立している
今回の合宿~大下剋上でのフラグは

《最近天気予報が当てにならない》
《ウミンディーネ》
《願いの旅人》
《ラーメン好きな凛》
《梅屋メンVSメンジョルノ》
《矢澤絵里の二段目のサプライズだっちゃ》
《パパとの約束》

◇ラブライブ◇
今年で開催十年目であり、来年からはシステムが変更されるというほぼ確実な噂が立っている
開催する季節はバラバラで、今年は予選が七月三十一日の正午まで、本選は八月半ば


◇大連続公開合宿/大下剋上◇
七月二十二日~二十九日までが合宿
七月三十日が大下剋上

予選二十一位~三十位のグループが音ノ木坂で合宿をしながらその様子を公開する
ラストスパートでの変動はないと言われている昨今に挑む少女達を応援するように、ラブライブ実行委員会は予選開始日からランキングを非公開へ
予選通過発表は八月一日の正午に一位から順に一グループ毎に公開されていく仕様
今回のメンバー達は未来においてもその絆が深く、毎年全員とは無理でも集まっているみたい

UTX学院

◇南 ことり◇
穂乃果・海未と同じ音ノ木坂に入学すると思っていたけど、UTXから被服科の設立に伴った特待生としてのスカウトを受ける
悩んだ結果二人に背中を押されて一人UTXへ入学
その年の冬、課題提出にUTXへ行った際に英玲奈に声を掛けられそのままA-RISEにスカウトされる
被服科の課題と勉強に加えてスクールアイドルになる為の練習の日々
ことりにとって一番辛かったのは其れを大切な幼馴染に告げることを禁止され、秘密としていたこと
UTXに入学した日にA-RISE入りが発表され、スクールアイドル掲示板はアンチことりの板が立ち並んだ
特待生というだけでなく、スクールアイドルもやっていることから被服科では孤立
ファーストライブ後、自分に絡んできたことのあるアンチ先輩という友達が出来る
尚、現在もメンバーを除いた友達はアンチ先輩しか居ない
穂乃果の影響を受けた所為か無茶をすることが多く、ツバサと英玲奈には問題児の烙印を押されている
次期A-RISEのリーダーで、花陽と真姫をスカウトした
英玲奈の妹に懐かれていることもあり、英玲奈の家にお泊まりすることが多い
A-RISEの衣装デザインを担当させてもらっている

◇綺羅 ツバサ / キラ星◇
小学五年生の時にミニバスに入りたかったが母に無理やりレッスン教室に入れられて不貞腐れる
そこでにこと出逢い、半分が過ぎた頃からは本気で取り組むようになった
にこがスクールアイドルになると宣言したことで自分もなることを誓う
約束を果たし、その先にあるアイドルになることを目指して日々輝き増す
自分を変えたにこのファンであり、SMILEが初めて載った雑誌は自分達が初めて載った雑誌の二倍以上購入した
商店街のハロウィンイベント(二年目)に参加する条件としてラブライブ本選で再会することを提示し、絵里がその条件を呑んだ
リーダーとして呼び捨てにしようと心掛けるも、直ぐにさん付けで呼んでしまう
その為、一年生達は最初から呼び捨てにする気を無くした可愛い一面もある
にこを誰よりも高く評価していて、自分を星とするならにこは太陽とよく口にする
掲示板等で過去最高のスクールアイドルに真っ先に名前が挙がるカリスマの申し子

◇藤堂 英玲奈◇
ことりのお姉ちゃん的存在で、懐かない年離れた実妹より可愛がれている
実家の花屋を継ぐことを決めているのでスクールアイドル引退後はアイドルになることはない
凛々しく男性ファンより女性ファンの方が多い
だけどことりには年々女子力が深まっていると思われている
ツバサ同様過去最高のスクールアイドルには必ず名前が挙がる
A-RISE一のしっかり者で、頼れるお姉さん的存在
油断すると暴走しがちになることりを上手く包み込む

◇小泉 花陽◇
A-RISEことり参加のファーストライブでその強さに凄く惹かれる
その強さから凛に守られるだけの存在から卒業したいと願い、UTXへ入学を決めた
入学以来、一般生徒でありながらスクールアイドルへの想いから一人で練習を重ねた
その噂を聞きつけたことりがやってきて一緒に練習をする
可愛く見せる為には眼鏡を外した方がいいのかな? と悩んだけれど
「ありのまま等身大の自分で挑戦して、本当の意味での自信を掴んで欲しい」
「『今までの自分を否定したことを一生後悔する』って、だから等身大のままでいいの」
アンチ先輩の言葉をアレンジしたことりに否定され、現在も眼鏡のまま!


◇西木野 真姫◇
中学時代にクラスメイトのまこに遊びに誘われるも、自転車に乗れないことで断った
だけど、そのままじゃ駄目だと奮闘して休みの日に自転車の練習をする
漸く乗れるようになって調子に乗った際、ことりとぶつかって怪我をさせてしまう
西木野病院に来るように言うも南条病院へ行った為再会は出来ず
自分の責任だしだからって素直に自分からお詫びにも行けず、だから正攻法であるUTXに入学した
体力面では花陽より劣るもののことりへの負けん気から食らいつく現在
医者になる為にも自分の音楽は高校までときちんと線引きをしている


◇A-RISE◇
ツバサと英玲奈が一年目に三年生のメンバーと対決し、その座を受け継いだ
二人で挑んだラブライブは二位という結果に甘んじたが、二年目はことりを加え見事優勝した
次期リーダーのことりにスカウトさせ、新メンバーの花陽と真姫が加入
ラブライブ本選を見据えて連続ライブをしてライブに慣らせるか練習を優先するか悩む
だが、SMILEの合宿と大下剋上の告知を見て七月二十九日に一度だけライブをする英断を下す

◇東條 希◇
UTX学院に入学し、当時の生徒会長に上手く誘われて生徒会入りを果たす
生徒会が自分にとっての居場所となり、音ノ木坂学院との合同学園祭の野望も受け継いだ
前生徒会長により生徒会を辞めさせられた少女を何度も誘い、説得して頼りになる相方を得た
スピリチュアルパワーという名の予見の力を持っていたが、三年目にはその力を失う
それでも今は野望の成功の為に忙しく、だけど幸せな日々を送っている
絵里とも打ち合わせでよく顔を合わせ、時間があれば喫茶店でお茶をすることもある
生徒のアンケート結果の繰り上げ一位として、合同学園祭一日目に副会長とペアでライブをする


◇副会長◇
漫画版で会長だったけどなんだかんだで副会長の座で満足してる
他校には厳しいが身内には優しく、A-RISEの為に先生達を熱い言葉で説得!
ことりがアンチ先輩とリボン先輩に絡まれた時に助けたり、迷ってる花陽にアドバイスしたりもした

本来は絵里がUTX行きになる予定だったが、この人に勝てないという点で希が行くことになった


◇アンチ先輩◇
漫画版一巻一話のそばかすの嫌味の先輩でことりに絡んだ英玲奈のファン
言いたいことはズケズケと言うタイプで何だかんだことりの良き相談相手
現在は学園祭の一日目(UTX開催)のライブ企画でことりとペアで出る為に猛特訓中

これからはぜひラブライブ板にも立ててもらいたい

にこあんはこれでこれで好きになりました

>>5
アイドルに夢をにこに取り戻してもらうのも目標の一つ

アイドルの   ですよね?

アンチじゃないです でも 大正義ドイツ様とはまた別の長編で可能性を生み出す 完璧な>>1さんですがこういう所を見つけることができ嬉しい

むずがゆいですね ふふふっ  

>>6
時間か要望がある時

時間に ですよね?   前スレはせかしてごめんやで 焦らんでええやで(ニカッ 

ママ「会わせてあげることは無理だけど、あんじゅちゃんだったなら会えるかもしれないわ」

あんじゅ「えっ、どういうこと?」



ここの伏線もちのろんっありますよね(期待の眼差し

※残りレス数に惑わされて大事な部分を入れ忘れてましたので少しだけ続きを...

◇続・矢澤絵里の最良の一日◇

にこ「あら、エリーチカお姉ちゃん。目が真っ赤ね。私を泣かせた過去の自分を恨むがいいわ!」

絵里「ぐぬぬ!」

あんじゅ「にこってば童話の意地悪な義母みたいな顔になってる」

あんじゅ「にこは私の旦那さんなんだから、男っぽい顔しないと」

にこ「旦那さんっておかしいでしょ。いや、あんたに常識を言う時点で今更だけど」

絵里「明日はUTXと打ち合わせがあるのに……明日瞼が腫れてないといいけど」

亜里沙「大丈夫だよお姉ちゃん。腫れててもお姉ちゃんは綺麗だから」

凛「発言が少しズレてる辺りが姉妹の絆を感じるね」

穂乃果「うんうん。逆に言えば亜里沙ちゃんもスクールアイドルになったら絵里ちゃんみたいにダンスが上手くなるかも」

海未「単純にそう言えるものではありませんよ。絵里は元々バレエをしていましたからね」

凛「でもかよちんや真姫ちゃんが練習し始めたのも最近なのにA-RISE入り出来たし」

凛「やる気と根気があるなら充分化けると思う」

穂乃果「そう言われるとそうかも。私の妹の雪穂は元々卒なくこなせるし」

穂乃果「他の子が入ってくれるかは別として、二人は充分な戦力になりそうだね」

海未「少し気が早いですが偉大な姉達の足跡を汚さぬよう、精進していきましょう」

ここあ「エリーちゃんおいしい?」

絵里「ええ、美味しいわ。ここあちゃんが味見しただけあるわ」

こころ「これ食べて! これはこころが形つくったにこ!」

絵里「可愛い形。ありがとう頂くわね」

あんじゅ「絵里ちゃんは泣いても直ぐに天使二人に癒されちゃった。にことは違うね」

にこ「くっ!」

あんじゅ「でも泣く時には私が居てあげるから安心だよ。大天使アンジュリカ」

にこ「私はもう泣かないって言ってるでしょ」

あんじゅ「大下剋上・ラブライブ・卒業式・大人の階段。これだけ泣く要素が待ってるよ」

にこ「最後の明らかにおかしいでしょ。何よ大人の階段って?」

あんじゅ「私とにこが一緒に上がる物。処女Tシャツを作って、翌日はお互いにバッテンマークを書くの」

にこ「あんたは一体私とどこまでいきたいのよ。いや、そのハイライト消した目で笑顔浮かべるのやめなさい」

にこ「さて、復活したならもう一度叩き潰すまでよ。穂乃果!」

穂乃果「あれの登場だね。任せて!」

にこ「私達もアレを持ってくるわよ。第一弾の邪道はこのイベントに非ず」

にこ「亜里沙というスパイがあって可能だった正確なデータ」

にこ「絵里の涙を倍プッシュよ!」

あんじゅ「涙をプッシュってなんか戻って行きそう」

にこ「そんな茶々は要らないわ!」

――3分後...

絵里「ふふふっ。なんて幸せなのかしら。今日は私の最良の一日ってやつね」

穂乃果「これで終わりだと思ってるのかな?」

凛「誕生日は皆でこうしてお祝いするだけじゃないにゃ!」

海未「とはいえ当然私達ですから普通とは違う物を用意させていただきました」

絵里「えっ、まだ何かあるの?」

穂乃果「お父さんが本気を出して作り出した穂むら始まって以来の初作品」

穂乃果「妥当名古屋を胸に頑張った巨大お饅頭!!」

絵里「ハ、ハラショー」

こころ「とっても大きいにこ!」

ここあ「あんなに食べられるかな? ここあちょっとしんぱい」

こころ「こころ一人で食べるわけじゃないよ。みんなで食べるから心配ないの」

ここあ「それもそっか!」

穂乃果「私も手伝ってね。尊敬する先輩の為にって頑張ったんだよ」

穂乃果「お父さん出来た後に凄いやりきった顔してて格好良かったんだー」

絵里「穂乃果……ありがとう。お父様にもありがとうと伝えておいて」

絵里「今度挨拶に伺わせて貰うわ」

にこ「また涙ぐんで泣き虫な姉だこと。そんなエリーチカにメンバーから誕生日プレゼントがあるのよ!」

あんじゅ「活き活きとしてるけど小悪魔っぽさが全然皆無なにこが愛しい♪」

あんじゅ「そして今のはエリーチカお姉ちゃんの涙再びフラグにこっ」

絵里「誕生日プレゼントまであるの!? でもこれだけも充分なのに」

海未「こう言ってはなんですが、これはロシアに居た頃の絵里との決別と和解」

海未「その為に絶対必要なアイテムかと思います」

凛「是非とも大下剋上までに慣らして欲しいなって」

穂乃果「過去の夢への想いが未来の夢の力になる。そう信じて皆で決めたんだよ」

にこ「亜里沙が渡してあげて。それが一番ふさわしいわ」

亜里沙「にこさん、ありがとうございます。……さ、お姉ちゃん。これを開けてみて」

絵里「何かしらね。なんか緊張して手が震えちゃってるわ」

絵里「――」

あんじゅ「震える手で開けた箱の中に入っていたのはあの日のトウシューズ」

あんじゅ「訂正。今のサイズにピッタリと一致するトウシューズ」

あんじゅ「そして、その純白さを隠すかのように書かれている皆からのメッセージ」

にこ「オーダーメイド=高級ってイメージあったけどそうでもなかったのが幸いね」

凛「そうだね。バレエってだけで高いイメージあったけど」

あんじゅ「さて、ここでネタばらし。亜里沙ちゃんが一緒に寝るようになった事があったよね」

あんじゅ「足を掴まれる夢を見たりしたのは、絵里ちゃんが寝た後に亜里沙ちゃんが足を図る為に触っていたから」

あんじゅ「オーダーメイドだからより正確なデータが欲しかったからね」

海未「絵里のシスコンと怖い話が苦手という部分を利用して誤魔化したと聞きました」

にこ「そこは楽勝だったわ。邪道とは相手の弱点を利用してこそだもの」

にこ「本来なら大下剋上当日の朝とかに渡した方が威力はあったんだけどね」

にこ「トウシューズに慣らす為にも今渡すことが一番の意味だから」

にこ「大下剋上のルールは制服縛り。でも靴の指定はしなかった」

にこ「だから絶対にそれまでに履き慣らして、歌姫より...を歌う時はそれを履きなさい」

にこ「皆の想いが詰まってるんだから」

あんじゅ「部屋に飾ってる過去のトウシューズとは違う希望の証だよ」

あんじゅ「諦めて尚、踊ることが好きである気持ちを灯し続けてくれたから訪れた今!」

あんじゅ「その集大成。私達のメッセージと一緒に夢まで歩んでね」

海未「正直ラブライブ本選へ進めるかどうかはエリーチカに掛かってると思っています」

海未「連続合宿の出来は当然必要になります。ですが大下剋上で歌う新曲が決めてですからね」

海未「偉大なる長女の為に作られた曲を、幸せな気持ちを込めて歌ってください」

絵里「うっ……もうっ、もう!」

絵里「せっかく、涙っが、とまったのにぃ」

亜里沙「お姉ちゃん。一緒にラブライブを目指すことは出来ないけど」

亜里沙「でもね、私はお姉ちゃんに負けないくらい素敵なスクールアイドルになるからね」

亜里沙「だからお姉ちゃんも最高のスクールアイドルであることを魅せてね」

絵里「……ひっぐ、うぅぅ~……もう、あしたまぶたはれてても、もういいわ」

絵里「みんなっ、ほんとうにありがとう。わたしみんなのことだいすきよ」

にこ「エリーチカは二度泣く。完ってところね!」

あんじゅ「いやいや、パーティーはこれからだよ☆」

穂乃果「その通り! お饅頭は大きいけど元々私達だけでどうにか食べる予定だったから」

穂乃果「早い者勝ちになるからあんこが好きな人は集まれー!」

凛「改めてパーティーの始まりにゃ~♪」

海未「ニコフィラ姉さん。アンジュリカ姉さん」

にこあん「ん?」

海未「つまり私の誕生日も三月十五日以外にもあるということですよね?」

海未「邪道シスターズ四女だけ仲間ハズレではあんまりです」

にこ「それもそうね。何かやれるか考えておきましょう」

あんじゅ「海未ちゃんが喜びそうなことをしよっか。音ノ木坂学院ポエム大会とか」

海未「其れは止めてください!」 おしまい

合宿編重大なフラグ一つ抜けてました
○新聞部部長が用意してる防水仕様のビデオ

今回はにこ視点としては前スレの598~613の一日目途中から夜までの間の話
次回からがクライマックス後半の続き

合宿編一日目ダイジェスト!(開始は前スレ578)
大連続合宿の始まりは七月二十二日
にこの誕生日と重なる為、今年の誕生日パーティーは大下剋上翌日に回された

にことツバサの再会が近づいてきてあんじゅの不安は積もる
その所為で中々夜は寝付けず、それに付き合うにこもまた睡眠不足
他のグループが集まるまでの間に眠るあんじゅ
そんな隣で他のメンバーに言われて家庭科室の椅子で眠りについたにこ

その最中絵里は学校全体の準備等の最終点検中
凛は駅から音ノ木坂学院までの道のりが不安なグループを案内する係
海未と穂乃果は自分たちで学院まで来たグループを出迎える為に校門で出迎える

一日目の夜は穂乃果が海未に家を継ぐ決意をしたことを伝え、穂乃果が覚醒したことを認識した
その数時間後の真夜中。あんじゅはにこを連れて音楽室へ
にこを膝に乗せながらピアノを弾き、そこでにこは一つのヒントを得る
まだ自分は子供でいてもいいんだと
不安を隠しきれないあんじゅに対し、にこは素直な言葉を投げかけてあんじゅを泣かせる
夜が明けるまで語り合い二日目も寝不足が確定する中、あんじゅが覚醒した
そしてにこもまた、自分の中への答えに一歩近づいた……

※あんじゅはかつてSMILEのブログでお薦めの本『人形屋敷の殺人』を紹介し、ブログを炎上させたことがある

◆No brand girls◆

――七月二十二日 十一時半 家庭科室 にこあん

にこ「……ん、あれ?」

あんじゅ「うふふ。おはよう、にこ」

にこ「あんたの方が先に目が覚めてたのね」

あんじゅ「うん。だからこうして優しい妹はにこにーお姉ちゃんを膝枕してあげてるんだよ」

にこ「んー……いくら寝不足だったとはいえ、変な時間に寝たから夜中に起きそう」

あんじゅ「膝枕をスルーして深夜徘徊フラグを立てるにこはよっぽどの怖いの好きだねぇ」

にこ「普通の発言すらフラグに侵食される悲しい世界」

あんじゅ「にこの世界はナイトメアレベルだからしょうがないね」

にこ「寧ろあんたって存在がリアルナイトメアよ」

あんじゅ「鍵爪でにこを追い回すんだね★」

にこ「私はフレディよりジェイソン派だから」

あんじゅ「ジェイソンの方が技巧派だからね。きちんと観るまでは斧かチェーンソーってイメージが強かったけど」

にこ「ジェイソンママが一番素敵だけどね。で、私が目覚めるまで何かあった?」

あんじゅ「雪穂ちゃんがここあちゃんとこころちゃんと亜里沙ちゃんを連れて来たよ」

にこ「そういう時は起こしてよ。朝からおちびちゃん達を預かってもらって、改めてお礼言わなきゃならないんだから」

にこ「お礼と言えばクッキング部のあなた達も本当にありがとうね」

「いいのいいの。ここクーラー使っていいから快適でいいし」

「お菓子も飲み物も持ち込みOKだから実に素晴らしき哉」

「夏休みなのに三年だから家に居ると勉強しろってお母さんが煩いし」

にこ「いや、勉強しなさいよ」

「勉強は言われてやるものじゃないの。自発的にするからこそ意味が生まれるの。だから私は今は勉強をしない!」

「言い切った! さっすがだよ。ビューティーウーマンの風格」

にこ「駄目女の戯言でしかないでしょうが」

「そんな私に今の日本がしたのよ。私は被害者でしかない」

あんじゅ「ここまでくると将来は大物の予感がしてきた」

にこ「ないない」

「私の将来はバックパッカーになって日本の甘さを捨てるの」

にこ「バックアタッカー?」

あんじゅ「違うよ、にこ。バック一つで世界を回る人のことだよ」

「……バックアタッカー。強きものに隠れながら、隙あらば刺す。いいかもしれない。その時、私の将来に光明が射した!」

にこ「いや、もういいわ。なんでも好きになさい。じゃあ、私達はちょっと挨拶回りに行ってくるから」

にこ「次第に色んな学校の子が集まってくるけど、余り変なこと言うんじゃないわよ。音ノ木坂が馬鹿の集まりに思われるから」

あんじゅ「にこが言うとこれ程耳が走ることもないよね」

にこ「目が走るなら分かるけど、耳が走るってどんな状況よ」

あんじゅ「聞かなかったことにしてあげようって気持ちになる状況だね。反論したくば夏休みの宿題を一人でやり遂げるにこよ」

にこ「ぐぬぬ! 一切の反論を封じる悪魔の遣い。矢澤あんじゅ……妹にして最大の敵にこ!」

あんじゅ「ぐふふっ」

にこ「って遊んでる場合じゃないわ。ほら、さっさと行くわよ」

あんじゅ「はーい♪」

――廊下

あんじゅ「やっと二人きりにこね」

にこ「なんで恋人同士みたいな会話になってるのよ」

あんじゅ「さっきすっごい良い夢みたの。だから夢の続きを見る為にあと一日くらい寝てたかった!」

にこ「いや、理由になってないじゃない」

あんじゅ「なってるよ。夢の内容がリムジンに乗ってる所から始まったの」

にこ「リムジンって……あの長い高級な車?」

あんじゅ「高級車でなく間に『な』を入れる辺りがにこの可愛さをアップさせてる」

あんじゅ「そうそう、にこの言うポンポンがきりんさんみたいになが~いぶーぶだよ☆」

にこ「なんで幼稚園児に言うみたいに言うのよ!」

あんじゅ「あ、ごめん。にこって可愛いと少し幼く見えるから」

にこ「少し幼くなら中学生でしょ!」

あんじゅ「背伸びしたい年頃だもんね。ごめんね」

にこ「がるるるる~!」

あんじゅ「にこが野生化したにこ~あんじゅ食べられちゃう♪」

にこ「捕食はあんたのブームでしょうが」

あんじゅ「まるで何でも食べたいみたいに聞こえるにこよ。私はにこを食べたいだけ」

にこ「あたかもそれが正義みたいに語るんじゃないわ」

あんじゅ「音ノ木坂学院の今の風紀ではにこあんは正義だよ」

にこ「そんな風紀はな……いわ」

あんじゅ「言い淀んだ。にこも正義だって肯定してる証拠だね」

にこ「違うわよ。あんたが寝てる間にちょっとあったの。で、リムジンに乗ってどうなって?」

にこ「ていうかあんたリムジン乗ったことあるの?」

あんじゅ「まぁ、何度か」

にこ「車の中であれよね、冷蔵庫があるのよ」

あんじゅ「多分にこが想像してるのとは違うけどね。あるよ」

にこ「へぇ~なんか便利よね。でもお手洗いは付いてないのが不便ね」

あんじゅ「……流石にこ。リムジンよりバスの方がいいみたいな発言」

にこ「だって飲み物あるのにお手洗いないのは困るじゃない」

あんじゅ「確かにそうだけど」

にこ「それにリムジンって相当高いんでしょ? 市内バス以外のバスでもそこまで高くないわ」

あんじゅ「にこは将来いいお嫁さんになりそう」

にこ「ふっふーん♪」

あんじゅ「でもどちらかというお嫁さんポジションは私! にこは旦那さん!」

にこ「廊下で大きな声で言う内容じゃないうえに、あんたのどこに嫁性能があるのよ」

あんじゅ「そうだね、まず私はエプロン姿が色っぽい」

にこ「あんたのエプロンは家にないわよ」

あんじゅ「料理出来ないから調理中に後ろから悪戯しても安心」

にこ「料理出来ないのに調理中って矛盾してるじゃない」

あんじゅ「お布団関係は完璧にこ♪」

にこ「ま、布団関係だけはね」

あんじゅ「お風呂掃除もそこそこ出来る超性能」

にこ「中途半端に汚れが落ちてないけど」

あんじゅ「そういう落ち度があるのが萌え嫁ポイント」

にこ「そんな萌えは要らないわ。一般的に必要なもんをあげなさいよ」

あんじゅ「ヤンデレだから一生を捧げ、他に揺れたりなんて絶対しない。妻の一番大切な物」

にこ「確かにそれは正論かも」

あんじゅ「でしょ? 寧ろ一つの最高があれば誰よりも輝く良妻になると思う」

にこ「中々やるじゃないの。でも、それだと私は夫に向いてる物がないわ」

あんじゅ「私が愛してる。これ以上の最高はないにこ☆」

にこ「あんたは本当にブレないわよね」

あんじゅ「にこがツンデレな分、私がヤンヤンしないと」

にこ「デレがなくなってる!?」

あんじゅ「うっふふ♪」

にこ「で、話がズレたけどリムジンに乗ってどうしたって?」

あんじゅ「あ、そうそう。素敵な夢の続きを話さなきゃ。夢は忘れちゃうものだから」

にこ「夢はなんたらかんただから起きた後は忘れた方がいいって聞いたわ」

あんじゅ「重要な部分を全部忘れるにこの記憶力が残念」

にこ「自分に興味ない情報なんて忘れた方がいいのよ」

あんじゅ「にこってば男前。旦那さんを意識してるなんてかぁいいかぁいい♪」

にこ「別にそんなの意識してないわ。とっとと夢の続き話しなさいってば」

あんじゅ「リムジンに乗ってふかふかの座り心地と広い窓から眺める風景」

あんじゅ「優雅に飲み物を嗜みながら辿り着いた先は温泉街」

あんじゅ「私は宿に入って開放感のある露天風呂を入り、旅館らしい食事を頂くの」

にこ「なんか映画とかの世界ね。私露天風呂って入ったことないのよ」

あんじゅ「そうなの?」

にこ「露天風呂ってお湯が白いのよね」

あんじゅ「それテレビ的な都合で濁り湯の温泉を使ってるだけで、透明なのが一般的だよ」

にこ「そうなの?」

あんじゅ「うふふ、ついさっきの私と同じ反応。それに私の夢も透明なお湯だったにこ」

にこ「一度でいいからママとおちびちゃん達連れて温泉旅行とか行きたいわね」

あんじゅ「いいね! その時は夢みたいににこは自転車で旅館まで来てね」

にこ「商店街の福引で温泉旅行のチケットでも当てれば行きましょう」

あんじゅ「うん!」

にこ「……ん? あんたさっきなんて言った?」

あんじゅ「にこは自転車で旅館まで来てねって言ったよ」

にこ「聞き間違いじゃなかったのね」

あんじゅ「私が優雅に二度目の温泉に浸かりながら暮れる夏の陽を眺める緩やかな時間」

あんじゅ「部屋に戻る為に玄関前を通った時、にこがふらふらの状態で入ってくるの」

あんじゅ「汗だくで砂埃に塗れて汚いボロボロのにこ」

あんじゅ「私は温泉上がりで綺麗な身が汚れるのも気にせずににこを抱きしめるの」

あんじゅ「にこ、逢いたかった。にこも逢いたかったにこってね」

あんじゅ「それでにこをお姫様だっこして露天風呂に運ぶの」

あんじゅ「そこでにこの汗と砂埃の付着した汚い衣服を脱がせて」

あんじゅ「疲れ果てて身動き出来ないにこに襲い掛かろうとして夢から覚めたの」

にこ「なんで襲いかかろうとしてんのよ!?」

あんじゅ「夢の中は何をしても自由なんだよ?」

にこ「そういう意味をすっ飛ばした疑問ニコ!」

にこ「それ以前になんであんたがリムジンでにこが自転車なのよ?」

にこ「しかもあんたご飯はともかく二回も温泉入ってるし。私の状態が酷過ぎるし」

にこ「私も温泉入りたかったのにあんたに襲われそうになって終わりって悲惨過ぎるわ!」

あんじゅ「キュンキュンキュン♪ 今の音は強制フラグを立てた音」

にこ「誰もそんなこと訊いてないわよ。てか強制フラグって何よ?」

あんじゅ「私とにこはお風呂で初めてを迎えることになるようにね」

にこ「もう言うのも面倒になってきたけど、あんたは一体私とどうなりたいのよ」

あんじゅ「にこがもし男の子だったら今日は市役所に行ってたんだよ」

にこ「市役所?」

あんじゅ「籍を入れに♪」

にこ「はいはい。あんたはほんと~に私のことが好きよねぇ」

あんじゅ「こんな話を知ってる? 完璧なくらい可愛い人形と少し不細工な人形があるとするでしょ」

あんじゅ「長く愛されるのはどっちの人形かっていうと、後者の方が圧倒的に多いんだって」

あんじゅ「大概の女の子は成長していく度に自分より整っている人形が許せなくなっていくの」

にこ「その話を今する意味を是非聞かせて欲しいわね!」

あんじゅ「にこは……可愛いってことだよ」

にこ「可愛いの前の明らかな無言は何よ!」

あんじゅ「うふふ。こんな風に素敵な反応を見せてくれるにこは聞き上手」

あんじゅ「心配しなくてもにこがミイラになろうとゾンビになろうと男の子になろうと愛してるからへーきへーき♪」

にこ「最後のは明らかに願望じゃないの」

あんじゅ「違うよ。私はにこが最終的に初代貞子ちゃん体質になれば一番だと思ってるから」

にこ「え、服着てないんだっけ? 私に常に裸でいろって思ってるの?」

あんじゅ「違う違う。初代貞子ちゃん体質のことを人は両性具有とかフタナリとか言うんだって」

にこ「りょうせー……カエル?」

あんじゅ「それは両生類。後で絵に描いてあげる」

にこ「別にいいわよ。あんたが変なことを言い出したことを一々気にしてたら頭がパンクしちゃうわ」

あんじゅ「にこの頭の容量は小さいもんね」

にこ「小さくないわよ!」

あんじゅ「私の脳みそを別けてあげたい。……ぱくぱくっ」

にこ「寧ろ食べてるじゃないの」

あんじゅ「そっか。耳からちゅーちゅーして吸い出す方が一般的だよね」

にこ「そんな一般常識は存在しないニコ!」

あんじゅ「さて、にこの身も心も解したところで一組目のグループから挨拶していこうか」

にこ「解れるどころか力尽きそうよ」

あんじゅ「画面右上のにこの顔はまだまだあるから、残機尽きるまでにこは戦える子だよ」

にこ「私に髭なんて生えてないわ!」

あんじゅ「そうだね、にこに和毛なんて生えてないよね★」

にこ「だーかーら! そのにこげネタヤメなさいよ!」

あんじゅ「大丈夫だよ。にこが大好き過ぎてにこの名前で遊べないかと色んな事を調べるヤンデレでもない限り」

あんじゅ「和毛なんて言われても何のことか分からないよ」

にこ「そりゃそうだけど」

あんじゅ「でも今日の夜に銭湯行った時点でバレちゃうけど」

にこ「べ、別に平気だし」

あんじゅ「今更恥ずかしくなってるにこが可愛い♪」

あんじゅ「私が手で隠しててあげるから安心してね」

にこ「さっきの強制フラグの話の後だと身の危険しか感じないわ」

あんじゅ「大丈夫だって。フラグは忘れた頃にやってくるものだから」

にこ「ヤンデレのフラグはまるで時限爆弾ね」

あんじゅ「にこが珍しく座布団貰える発言をした。午後から大雨かも」

にこ「朝の天気予報で今日は一日中晴れだって言ってたじゃない」

あんじゅ「にこはもう忘れちゃったの? 最近の天気予報は当てにならないって」

にこ「そういえばそうだったわね」

あんじゅ「雨を望む人達には悪いけど、大下剋上まではずっと降らないで欲しいよね」

にこ「少しの夕立くらいなら構わないけど、降りっぱなしは困るわ」

あんじゅ「後で海未ちゃんにお願いしておこうよ」

にこ「海未にお願いしたところで何ともならないっての」

あんじゅ「ううん、何とかなるよ。だってウミンディーネは泉の精霊。水遣いだから」

にこ「泉と雨じゃ規模が違い過ぎるけど」

あんじゅ「細かい事は気にしないの。ネタにマジレスする幼稚園児なにこが私は好きだよ☆」

にこ「だからなんで小学生から幼稚園児にランクダウンしてんのよ!」

あんじゅ「私がこうして手を繋いでてあげないと迷子になっちゃうから」

にこ「暑いのも関係なしに手を繋いでくるのはあんたでしょうが」

あんじゅ「運命の赤い糸と白い糸が繋がってるからしょうがないにこ」

にこ「白い糸なんてないわよ」

あんじゅ「前にも言ったよね。大下剋上の時に白い糸と赤い糸を指に巻いて出ようねって」

あんじゅ「にこの左手の薬指に赤い糸。右の薬指に白い糸。私はその逆」

あんじゅ「指に運命の糸を具現化しちゃ駄目ってルールはないからね!」

にこ「もう何でもありね。はいはい、もう好きにしなさい」

あんじゅ「うっふふ。さぁ、挨拶挨拶♪」

にこ「そうだったわ。あんたに流されてるとお昼前に着いてるグループに挨拶出来ないじゃない」

にこ「お腹一杯食べて貰える為にも挨拶して緊張感を少しでも取り除いて貰わないと」

あんじゅ「ここがホスト側の見せどころだね」

にこ「ええ、そうね。それじゃあまずは名古屋から来たオール一年生グループ。gerogeからね」

あんじゅ「一年生に胸のサイズも身長も負けてても気にしちゃ駄目だよ?」

にこ「気にしないわよ!」

あんじゅ「シークレット上履きを用意してなくてごめんね」

にこ「負ける前提で謝ってるんじゃないわよ、この愚昧!」

――校門前 ほのうみ

海未「くしゅん! ……どうやらにことあんじゅが起きて私の噂でもしてるようですね」

穂乃果「くしゅみの時にそういうこと言うのはにこちゃん達の影響だねぇ」

海未「妹というのは良いところも悪いところも真似てしまうものです」

穂乃果「そうかな? 雪穂は全然私に似てないけど」

海未「優秀な妹は姉の駄目さを反面教師にするので似ません」

穂乃果「ガーン!」

海未「ふふっ。穂乃果も日々精進しなければいけませんよ」

穂乃果「はぁい。後は何グループだっけ?」

海未「二グループですね。内一グループは凛が迎えに行ってます」

穂乃果「お昼前には集まれるかな?」

海未「どうでしょうか。こればかりは神のみぞ知るってところですね」

穂乃果「にこちゃんか絵里ちゃん経由で連絡貰えば簡単に分かることだけど」

海未「人生はたまには正論を置いて楽しまなければいけません」

穂乃果「海未ちゃんらしからぬ発言」

海未「……先ほどにこが言ってたではありませんか」

海未「もっと自分を出せと。甘えられるのは今だけだと」

穂乃果「そうだね。もう直ぐ卒業しちゃうんだもんね」

海未「ですから姉達のようにもっと自分を出して、楽しもうと思います」

海未「楽しんでいればきっと私の夢も叶う筈です」

穂乃果「そうだね。みんなが笑顔になることがにこちゃんの夢へ繋がる道なのかも」

海未「そうだと信じようと思います。でないと怖くて自分を出すなんて出来ませんから」

穂乃果「これは海未ちゃんのポエムブーム再びかな?」

海未「いえ、言うなれば覚醒のウミンディーネでしょうか」

穂乃果「なんだかんだ言ってその名前気にいってるね」

海未「姉妹の絆を体現するのがこの真名ですから」

穂乃果「マナ?」

海未「真の名と書いて真名です。海外で家族が使う愛称の魂版ですね」

穂乃果「……そ、そうなんだ。あっ! あの子達って雑誌で見たことある」

海未「私も覚えがあります。福岡のDreamだった筈です」

穂乃果「そうそう。眼鏡掛けてるから印象強かった」

海未「ええ、実際に五十位以内で眼鏡を掛けているスクールアイドルは彼女一人だったみたいです」

穂乃果「今はA-RISEの花陽ちゃんが眼鏡掛けてるよね」

海未「ええ、インタビュー記事では眼鏡を外すことを考えていたらしいですがことりが止めたそうです」

穂乃果「そうなの?」

海未「等身大の自分で輝くようにと。逃げになる変化はいつか自分を苦しめるということですね」

海未「本当にことりは逞しくなりました」

穂乃果「うん。私達もことりちゃんに置いて行かれないように頑張らないと!」

海未「やはりこの合宿は私のターニングポイントなのかもしれません」

穂乃果「例え失敗して出逢った頃の海未ちゃんみたいになってもいいんだよ」

穂乃果「どんな結果になろうと海未ちゃんのことを支えるし、守ってみせるから」

穂乃果「それが王子様の在り方だと思うから」

海未「……はい」

「とうちゃーく! っと、もしかしてこんな暑い中出迎えですか?」

穂乃果「うん。音ノ木坂学院へようこそ! 初めましてSMILEの高坂穂乃果です」

海未「初めまして同じくSMILEの園田海未です」

海未「この階段をダッシュで上るとは移動疲れはないようですね」

「初めまして! ボクは福岡のDreamのリーダー綾辻有栖です」

有栖「でもって、あっちの眼鏡が本体の子がボクのパートナーである赤川葉月」

海未「眼鏡が本体……ですか?」

有栖「本体っていっても冗談ですからね。って、お互い同い年だし普通に喋ってもいいかな?」

穂乃果「うん、勿論。私もその方が気兼ねしなくていいから嬉しいし」

穂乃果「でも海未ちゃんは誰にでも敬語だから気にしないでね」

有栖「了解。それにしてもまずは何よりもお招きありがとう」

有栖「二十一位のギリギリで届かないっていう一番悔しい展開で一年を待つことになってたけど」

有栖「このチャンスを貰って届かなかったとしたら、きちんと気持ちを切り替えて来年に望めるし」

有栖「本当に感謝してるんだ! 欲言えばこのチャンスを物にして本選に届きたいけどね」

有栖「あーでもこういうことを言っちゃうのは駄目なのかな?」

有栖「ここに居るグループ全員同じ考えだろうし、ということは最大のライバルだし」

海未「この合宿で下剋上を果たすことが目的ですから。志低くては成せるものも成せません」

海未「ですからそんな風に気負う必要はありませんよ」

海未「そんなことで不快になるようならそもそもこの合宿を提案すらしていませんし」

穂乃果「それににこちゃんの最大の目的は本選じゃない気がするんだよね」

穂乃果「勿論本選に出ることを望んでいるけど、一番は大下剋上を見に来てくれたファンの人達」

穂乃果「その全てを笑顔にさせることだと思うんだー」

穂乃果「だから全力で頑張って最高のライブにしようね!」

有栖「うん、ありがとう! それであんじゅさんは校内かな?」

海未「あんじゅは少し休んでいるか既に来ているグループに挨拶回りしている頃かと思います」

穂乃果「あんじゅちゃんに……もしかして人形屋敷の件でとか?」

有栖「そうだよ。何あのオチ! あんなのありなの? おかしくない!?」

葉月「……はぁはぁ。この階段急過ぎだよ」

海未「大丈夫ですか?」

葉月「は、はい」

有栖「眼鏡が本体とは言え体力もっと鍛えないと」

葉月「本体じゃないよ。というかお弁当のリクエストあったから早起きして作って寝不足だからだよ」

葉月「あ、自己紹介が遅れました私――」
有栖「――ボクが紹介しておいたから大丈夫。二人の名前も顔も知ってるよね」

葉月「私の扱いが酷い」

穂乃果「くすっ。ちょっとにこちゃんの扱いに似てるかも」

有栖「書き手って読み手を楽しませる為に書くんじゃないの!?」

葉月「また言ってるの!?」

有栖「ボクはあんじゅさんに文句言うまで言い続ける!」

海未「気持ちは分かりますのでどうぞ本人に言ってあげてください」

穂乃果「その発言、絶対に海未ちゃんも何だかんだ根に持ってるよね!?」

海未「当然ではないですか。楽しませる云々は違うとは思いますがあのオチはありえません」

海未「私はあんじゅのネタバレの後に読んだのでそこまでの傷は負いませんでしたが許せません」

穂乃果「ちなみに今まで出迎えたメンバーの誰か一人はあんじゅちゃんに文句言いたいって言ってきたから」

穂乃果「後で相談してあんじゅちゃんに文句言う時間を取るように言ってみるね」

葉月「私は既読でしたけど好きですけど」

海未「正気ですか!?」

葉月「もっと酷い内容の物を読み慣れているのであれくらいでは文句なんて出てきません」

葉月「自分のスタイルを崩さずに、寧ろより前に出ていくスタンスは高評価です」

葉月「トラウマになるような内容でもない限り私は文句なんて言いません」

葉月「……世の中には本当に色んな本がありますから。アッハハ」

穂乃果「おぉっ!? あんじゅちゃんと同じ瞳からハイライトが消えてる!」

海未「では彼女もまたヤンデレってことでしょうか?」

穂乃果「いや、これは違うと思う」

有栖「ごめん。葉月はこのモードに入ると復帰作業まで時間掛るから連れていくね」

海未「それはいいですが、大丈夫なのですか?」

有栖「だいじょうぶだいじょーぶ。トラウマになった本の内容を思い出してフリーズしてるだけだから」

有栖「ボク達の寝泊まりする教室は何処かな?」

海未「真っ直ぐ行った昇降口に案内の紙が置いてあります」

有栖「ありがとう。じゃあ、またね!」

穂乃果「……本は危険な物だったんだね」

海未「まぁ、確かに海外のノンフィクション等は心に刺さるような内容が多いようですから」

穂乃果「よし、穂乃果は絶対に本は読まないよ!」

海未「何の決意をしているんですか」

海未「取り敢えずあんじゅの件は絵里に連絡入れておこうと思います」

穂乃果「海未ちゃんってば鬼ぃ~」

海未「失礼なことを言わないでください」

海未「あの炎上事件さえもフラグだったのかもしれません」

穂乃果「何のフラグに繋がってるの?」

海未「当然この合宿ですよ。グループも年齢も違うけど怒りという一体感」

海未「そのぶつける相手が同じというのは仲良く成り易いですから」

海未「これはにこが凛の勧誘の際に証明しましたし」

海未「だからこれは謝罪させるというより一つのオリエンテーションです」

穂乃果「ああ、なるほど。多分今頃あんじゅちゃんくしゃみしてるね」

海未「ふふっ。もしかしたら寒気かもしれませんよ?」

穂乃果「あははっ。そうかも!」

――不安定な妹

あんじゅ「う~るる~」

にこ「自業自得ってやつよ。SMILEのブログを炎上させた報いが今きたわね」

あんじゅ「まさか会う度必ず人形屋敷の話の恨み事を言われるなんて」

にこ「削除したとはいえSMILE総合スレでは有名なネタだし」

あんじゅ「みんなであの置いてけぼり展開を共有したかっただけなのに」

にこ「面白い本以外読みたがる奴なんていないのよ。つまらないは悪!」

あんじゅ「それはにこが普段本を碌に読まないからだよ。本っていうのはね、人にとっての最良のパートナーって言われててね」

あんじゅ「その人の心が成長する度にその顔を変えるものなんだよ」

にこ「どういう意味よ」

あんじゅ「小さい頃に読んだ絵本って面白い以外の物が多くなかった?」

あんじゅ「後味が悪い展開で終わってたり、悲しかったり、意味が良く分からなかったり」

にこ「ああ、確かにそうかも。泣いた青鬼とか狼少年とか人魚姫とか雪女とか鶴の恩返し」

にこ「言われてみるといくつも思いつくわね」

あんじゅ「ああいうのを今読んでみるのが本が最良のパートナーって意味が分かるよ」

にこ「だからどういう意味よ」

あんじゅ「あの頃は絵本という世界が全てで其れ以外は見えなかったけど」

あんじゅ「今だとその作者が何を伝えたいが為に描いた世界なのかとか見えてくるの」

あんじゅ「だから本は人にとっての最良のパートナー」

にこ「そういう意味ね」

あんじゅ「そして、本は成長するって私に教えてくれたのはアンちゃんだった」

にこ「もう一人の私とかいうオチね」

あんじゅ「違うよ! 私じゃなくて赤毛のアンの主人公」

にこ「ああ、タイトルだけは聞いたことがあるわ!」

あんじゅ「そりゃ有名だもの。それなのに得意気な顔をするにこに私涙」

にこ「うっさいわね。本なんて読まなくても生きていけるにこよ!」

あんじゅ「そうだよね。にこにとって最良のパートナーは私だもんね☆」

にこ「はいはい。アンちゃん最高アンちゃん最高」

あんじゅ「にこにアンちゃんとか言われるとくすぐったくて食べたくなっちゃう」

にこ「なんで猟奇的な回答なのよ! その捕食ブームいつまで続ける気?」

あんじゅ「私が飽きるまで。マイブームってそういうものにこっ♪」

にこ「ま、いいわ。次は青森の『Verse』ね」

あんじゅ「それって廃校が決まってる学校の子達だよね?」

にこ「ええ、メンバーは全員三年生。後輩が存在しない環境でスクールアイドルを頑張るって、どういう心境だったのかしら?」

あんじゅ「……私には想像出来ないなぁ」

にこ「そうよね。それに、勝手に想像して同情するなんてもっての他よね」

あんじゅ「うん。劣等環境ではどちらかと言わずに私達音ノ木坂も近いものがあったし」

にこ「大切なのは下に見ず、上を見ず。ただあるがままを見ること」

あんじゅ「こないだ電話でお話したエリーちゃんのお婆ちゃんの言葉だね」

にこ「含蓄のある言葉よね。先入観を消すことが人生においてどれだけ大事なことか」

あんじゅ「分かってても先入観は付き物。でも、この言葉が心に有ればいつかはそういうのを意識せずに生きられるかも」

にこ「若輩者の私達には難しいけどね。いつか自然にそう成れるように」

あんじゅ「大丈夫。にこには私が居るからそう成れるよ。ニンニン三脚で」

にこ「何その忍者っぽい速い動き」

あんじゅ「一人ひとりだと歩みは遅くても、にこあん二人になると女忍者の如く也!」

にこ「何よそれ? あんた何だかんだ言って新しい物語を書きたいんじゃないの?」

あんじゅ「私はもう絶対に書かないって決めたニコ!」

にこ「何かの作品をベースに書いてみたらその作品のファンの人が好意的に読んでくれるんじゃない?」

あんじゅ「……ケータイ少女をベースに描く恋愛物とか?」

にこ「携帯彼氏なら聞き覚えがあるけど、それは聞いたことないわね」

あんじゅ「ある日携帯電話から小さい女の子が出てきて主人公の恋を応援してくれるようになるの」

にこ「ふーん。なんか男の子が好きそうな設定ねぇ」

あんじゅ「私はにこにー妖精ニコちゃん! あなたの恋を応援しにきたにこ♪」

あんじゅ「手の平サイズの可愛いニコちゃんに私の瞳にハートマークが浮かぶの」

あんじゅ「私の恋を応援してくれるの? うん、そうにこ!」

あんじゅ「じゃあニコちゃんが私に恋をしてくれるということね? にこにこっ!?」

あんじゅ「ど、どういう意味にこ? だって私はついさっき初めての恋心を貴女に奪われたんだもの」

あんじゅ「恋を応援してくれるってことは私の恋人になってくれるってことよね?」

あんじゅ「でもニコは妖精だから……。妖精と人間なんて関係ないわ!」

あんじゅ「私がキスすると愛の奇跡で小学生くらい(今のにこの身長)に変化するの」

にこ「かっこの中の説明が一番おかしいわよ! てか、あんたはやっぱり書かない方が私の胃の安寧の為になるわね」

あんじゅ「うふふ。ニコちゃんってば騒がしい子ね」

にこ「その口調ヤメなさいって言ってるでしょ!」

あんじゅ「にこは好きな子に強制するタイプ。私はにこに染められていくにこ☆」

あんじゅ「そして気が付けば地下室。首輪を付けてにこに飼われる私」

にこ「何その犯罪臭がする展開。そもそも地下室なんて何処にあんのよ」

あんじゅ「地下室あり物件って実際にあるのかな?」

にこ「知らないわよ。あんたの好きな屋敷シリーズの設計者が作ったなら地下室くらいあるんじゃないの」

あんじゅ「にこってばフィクションと現実を混同しちゃうなんて危ない犯罪者タイプ」

あんじゅ「でも大丈夫だよ。私はストックホルム症候群以前ににこに夢中だから」

にこ「よく分かんないけど誰が犯罪者タイプよ」

あんじゅ「愛は人を狂わせ、私はにこを狂おしくさせる。罪つくりな女の子」

にこ「あんたが私に狂ってるだけじゃないの」

あんじゅ「えへへ!」

にこ「なんでいい笑顔浮かべてるのよ。まったくもう」

あんじゅ「ヤンデレとしては最高の褒め言葉だったから」

にこ「ソレを誇ってるのが全てにおいて間違ってるのよ」

あんじゅ「でもよく考えてみて。私がヤンデレじゃなくなったらにこは絶対後悔するニコ!」

にこ「なんで私が後悔するのよ?」

あんじゅ「寝起きもこころちゃんとここあちゃんとママと一緒の部屋でするでしょ」

あんじゅ「登下校も別。お昼も別。お風呂も別。休みの日も一緒に居る時間はご飯の時くらい」

あんじゅ「スキンシップもないからにこは寂しくて一人にこにこにーで慰める日々」

にこ「何よそれ」

あんじゅ「でも大丈夫! 現実のにこには百合ヤンデレなあんじゅちゃんが常に一緒だから」

にこ「結局ヤンデレを正当化したいだけの話じゃないの」

あんじゅ「話してる最中にどんどん私の手を握る手が強くなっていくにこが可愛いって話」

あんじゅ「不安で汗かいてて繋いでる手がネチャネチャしてて気持ち悪い」

あんじゅ「でもヤンデレだからそれも愛で離さないであげる私は天使!」

にこ「だから離そうとしてるのにあんたが離さないんだからただの悪魔じゃないの!」

あんじゅ「唾って汗疹にも効くのかな? 効くなる毎日ぺろぺろしてあげるね」

あんじゅ「拷問で足の裏にバターを塗って骨が出るまでヤギに舐めさせるのがあったよね」

あんじゅ「にこの手の平ぺろぺろ♪ あれ? 何か固い物がぺろぺろ♪」

にこ「恐ろしいわ!」

あんじゅ「でもそういうのはヤンデレじゃなくてメンヘラのお仕事だから私は我慢」

にこ「メンヘラとヤンデレの違いって何なの?」

あんじゅ「メンヘラは相手のことを考えず、自分の世界を相手に押しつけてくる悪!」

あんじゅ「自身の行動を全て正当化し、相手の命のみならず関係者の命も奪いにくる」

あんじゅ「ヤンデレは相手に尽くし、相手の為を第一に考えて行動出来る優しい子」

あんじゅ「時に冷静さを失って相手と無理心中しちゃうこともあるお茶目さん。許してあげよう」

にこ「お茶目で許される訳ないでしょうが! あんた本当に最近不安定よねぇ」

あんじゅ「にっこにこ♪」

にこ「はいはい。って! あんたと話してたら教室通り越してるじゃないの」

あんじゅ「にこが『なんで私が後悔するのよ?』って言った時に前を通ってたよ」

にこ「気付いてるなら教えなさいよね」

あんじゅ「にことの話に夢中で口が言うこと効かなかったにこ」

にこ「なんて使えないヤンデレ妹なのかしら」

あんじゅ「妹との話に夢中で目的の場所を忘れる姉に使えないと言われたあんじゅ」

あんじゅ「けれど健気な妹は姉の言葉を黙って受け入れるのでした」

にこ「ぐっ……悪かったわよ」

あんじゅ「その小さな見た目とは裏腹にきちんと自分の非を認めて謝れるにこはとても偉い」

あんじゅ「偉いから私がハグしてあげる。ぎゅーっ!」

にこ「うぐっ! ちょっと、今日から他の学校の子が来てるんだから変なことするんじゃないわよ」

あんじゅ「愛し合うにこと私が人目を憚らずに抱き合うことは変なことじゃないにこよ」

あんじゅ「暑くてもにこの抱き心地は最高。汗臭いけど私は好きだよ★」

にこ「花も恥じらう年頃の乙女に向かって汗臭いなんて言うんじゃないわ」

あんじゅ「えっ? 私の腕の中で恥じらう乙女?」

にこ「そんなこと言ってないニコ!」

あんじゅ「にこってば相変わらず可愛い。処女って書いたTシャツ着せたい」

にこ「何その悪趣味なシャツ」

あんじゅ「夏休み後に赤でバッテンを書いて処女×Tシャツに変身!」

あんじゅ「にこと私に何があったのかを察して会う皆がおめでとうって言ってくれるの」

あんじゅ「いくら百合とは言え皆に愛を祝福されるのは夢だもんね」

にこ「そんな夢は捨ててしまいなさい」

あんじゅ「成程。にこは祝われることなんてないと知りながら愛し合う方がいいんだね」

あんじゅ「それなのにこうして誰が通るかも分からない廊下で抱き合う」

あんじゅ「恋心とは常に二律背反。期待と不安。現実と理想。願望と欲望」

あんじゅ「揺れ動く自分の心の弱さと想い人への気持ちの強さ」

あんじゅ「認めて欲しいと願いと諦めの心」

にこ「あんた私が初恋でしょ? 普通の恋を知らないのに恋心を語ったところで意味ないわよ」

あんじゅ「ぐぬぬ!」

にこ「ほら、私分は補充したでしょ。そろそろ離しなさい」

あんじゅ「補充分を今のにこの言葉に奪われたからもう少しにこ分を補充」

あんじゅ「それに何だか寒気がするし」

にこ「寒気? こんなに暑い上に、あんたの体温で寧ろ熱いのに?」

あんじゅ「もしかしたらにこの身に何かが!?」

にこ「そういうのは傍に居ない人の身に起こる不幸の時に使われるやつでしょ!」

――五分後...

にこ「……はぁ~。なんだかとてつもなく疲れたわ」

あんじゅ「にこってば体力ないんだから」

にこ「あんたの所為で精神的に疲れたって言ってるのよ!」

あんじゅ「うふふ。にこは照れ屋さんだからしょうがないね」

にこ「あんたがヤンデレなのが悪いんでしょうが」

あんじゅ「ピロートークでこんな風に学生時代騒いでたにこが今や私をあんなに激しく愛すようになるなんてね」

あんじゅ「って、いつか言う事になるにこ☆」

にこ「ぴろ……ぴろしき?」

あんじゅ「そんな子供知識なにこを大人な私がぱくぱくしちゃう♪」

にこ「もういいから。挨拶するんだから大人なら少しは大人しくしてなさい」

あんじゅ「今の寒くないかニャー」

にこ「なんで唐突に凛の真似が入るのよ!」

あんじゅ「弄ってあげないと駄目なのかなーって」

にこ「はいはい。もう分かったから寝不足気味なのになんでそんな元気なのよ」

にこ「仮眠取ったとはいえ私と大差ないでしょ」

あんじゅ「にこと居られれば私は常に元気!」

にこ「それってただ単に私の元気をあんたが奪ってるんじゃないの?」

あんじゅ「その代わり私の愛をにこに注いでるから大丈夫」

にこ「どうりで最近身体が重いと思ったのよ」

あんじゅ「ヤンデレの愛は重いからね!」

にこ「だからドヤるタイミングがおかしいっての!」

にこ「さってと。気持ちを切り替えて挨拶いくわよ」

あんじゅ「うん!」

にこ「Verseのリーダーは青木由美さん。人数は四名」

――廃校を背負う

由美「移動のバスまで用意してもらって。本当にありがとうございました」

にこ「だからもうお礼は良いってば。この合宿自体が私の我がままだし」

あんじゅ「そうそう。にこは我がままだし」

にこ「誰がよ。我がままはあんたでしょうが!」

あんじゅ「そんな、我がままボディだなんてにこはいやらしい子にこっ」

にこ「誰もそんなこと言ってないわよ!」

由美「ふふっ。お二人はブログ以上に仲がいいんですね」

あんじゅ「今日は会う度に言われます」

にこ「ソレ以外に言える言葉が屋敷シリーズの恨み事しかないってことよ」

にこ「つまりあんたの言動に皆呆れてるのよ!」

あんじゅ「呆れるよりも愛飢えてるの方が正しいよね。だからにこは愛をもっともっと私に与えるべき」

にこ「そういうところだって言ってるニコ!」

由美「ふふふふっ。いえ、呆れてないですよ」

あんじゅ「ほら、にこの被害妄想だったにこよ」

にこ「初対面でいきなり『あ、このヤンデレはヤバい』とか言う人は居ないわよ」

あんじゅ「同じヤンデレなら空気で分かるからそもそも言葉要らないし」

にこ「何その不思議ちゃん設定みたいなやつ。もういいわ、あんたは少し黙ってなさい」

由美「呆れてませんし、そういうのいいですよね。遠慮のない関係って」

あんじゅ「もしかして百合に憧れが!?」

にこ「そんな奴は存在しないっての!」

由美「残念ながらうちは健全なんでそういうのじゃないですけど」

由美「でも、楽しいのが一番ですよね。何でも言い合えて分かり合える関係が理想です」

にこ「んー、じゃあその理想に一歩近づく意味でも単刀直入で訊いてもいいかしら?」

由美「遠慮なくどうぞ」

にこ「廃校が決まって後輩が居ない学校ってどうなのかなって」

あんじゅ「そんなこと訊くのは失礼だよ」

にこ「先入観を持たない為には直接訊くのが一番でしょ。無駄に遠慮してたら合宿が終わっちゃうじゃない」

由美「そうですね。私達もそういうので遠慮されると逆に気まずいですから」

由美「最初に知ってて貰える方が嬉しいです」

あんじゅ「にこの『ほら見なさい。にこの言うことは正しいのよ』って顔が可愛い♪」

にこ「なんであんたは不安定になるとシリアスブレイカーになんのよ!」

あんじゅ「え~なんて~?」

にこ「はぁ~ごめんなさいね。いつもはもう少しマシなんだけど、最近ちょっとおかしくて」

由美「いえいえ。別段シリアスって訳でもないですから」

にこ「そうなの?」

由美「はい。廃校が決まってたのは入学する時点で分かってたことだったので」

由美「一年生の時は特に悲観的な考えもなければ、何かをしようと思うこともなかったんです」

由美「でも二年生になって、当然新入生が入ってこないまま」

由美「そんな状況で梅雨が明けてこのままでいいのかなっと考えが生まれて」

由美「この学校が在ったことを一人でも多くの人に残したいって思うようになりました」

由美「その一番の方法は学校の代表として輝くスクールアイドルでした」

由美「そこからはもうただの直感で同じクラスなのに余り会話したこともないメンバーを勧誘したんです」

由美「我武者羅に頑張って今に至ります。廃校がなければ今の大切なメンバーとは親しくなれなかったし」

由美「自分から何かをしようなんて思わずにただ時間を無駄に過ごしてました」

由美「卒業していった去年の卒業生達から応援されるようなこともなかったですし」

由美「廃校あっての私達なんです。だから変な遠慮とか気配りされると困ります」

にこ「随分と強いのね」

由美「いいえ、本当に強い人は入学した時点でスクールアイドルでなくても行動を開始してます」

あんじゅ「にこは入学時点で行動を起こし、後の生徒会長にその練習メニューを否定されて泣いてたにこ」

にこ「うっさいわね! そういう身内の恥は晒さなくていいのよ!」

あんじゅ「顔を赤らめて激おこするにこはとってもかぁいい♪」

あんじゅ「でもその反応が私の言葉を肯定してるんだけど、優しい私は内緒にしておいてあげようと思いました」

にこ「だからそういうのは心の中で思ってなさいって言ってるでしょうが!」

由美「そんな状況で梅雨が明けてこのままでいいのかなっと考えが生まれて」

由美「この学校が在ったことを一人でも多くの人に残したいって思うようになりました」

由美「その一番の方法は学校の代表として輝くスクールアイドルでした」

由美「そこからはもうただの直感で同じクラスなのに余り会話したこともないメンバーを勧誘したんです」

由美「我武者羅に頑張って今に至ります。廃校がなければ今の大切なメンバーとは親しくなれなかったし」

由美「自分から何かをしようなんて思わずにただ時間を無駄に過ごしてました」

由美「卒業していった去年の卒業生達から応援されるようなこともなかったですし」

由美「廃校あっての私達なんです。だから変な遠慮とか気配りされると困ります」

にこ「随分と強いのね」

由美「いいえ、本当に強い人は入学した時点でスクールアイドルでなくても行動を開始してます」

あんじゅ「にこは入学時点で行動を起こし、後の生徒会長にその練習メニューを否定されて泣いてたにこ」

にこ「うっさいわね! そういう身内の恥は晒さなくていいのよ!」

あんじゅ「顔を赤らめて激おこするにこはとってもかぁいい♪」

あんじゅ「でもその反応が私の言葉を肯定してるんだけど、優しい私は内緒にしておいてあげようと思いました」

にこ「だからそういうのは心の中で思ってなさいって言ってるでしょうが!」

――廊下 にこあん

あんじゅ「後はもうお昼ご飯の前に挨拶する感じかな?」

にこ「そうね。放送部に連絡して家庭科室に集まってもらいましょうか。それとも一旦部室に戻る?」

あんじゅ「部室でにことイチャイチャしてからにする」

にこ「イチャイチャなんてしないわよ」

あんじゅ「改めて言う必要がないくらい普段からイチャイチャしているってことだね」

にこ「否定は出来ないけど、あんたが一方的にってのが正しいにこね」

あんじゅ「つまりにこがデレた時は底が知れないってことにこ♪」

にこ「どういう理屈よ」

あんじゅ「でも実際ににこがデレた時は凄そうだよね。私の比じゃないって気がする」

にこ「私ってそんなイメージあるかしら?」

あんじゅ「ツンデレはツンが強ければ強い程デレた時の反動が強いのがお約束」

あんじゅ「何より私の直感がにこのデレは凄いって確信してる」

にこ「それ直感じゃなくて妄想でしょ」

あんじゅ「デレても人前ではツンツンして、人目から隠れた瞬間に女の顔になるの」

あんじゅ「そしてにこが私も女の顔に変えるの」

あんじゅ「何事もなかったかのように皆の前に戻った時モジモジしてる私に対してにこは素知らぬ顔」

あんじゅ「そう考えるとやっぱりにこは小悪魔の素質があるにこ!」

にこ「ないわよ。その破天荒な妄想どうやったら出てくるのよ」

あんじゅ「にこってばそれを言うなら破天荒じゃなくて破廉恥だよ★」

にこ「あんたのイメージ的にはどっちも同じ」

あんじゅ「ヤンデレはいざそういう関係になると超初心なんだよ」

あんじゅ「今までの積極的な数々はなんだったんだって思うくらいに」

あんじゅ「だからこそにこは『自分が責め立ててリードしなきゃ』って使命感を煽られるの」

にこ「何その人生で間違いなく要らない使命感」

あんじゅ「でもにこはお姉ちゃん気質高いから絶対にそうなるよね?」

にこ「否定した次の瞬間に投げかける言葉じゃないわね」

あんじゅ「うふふ。でも否定はしないのがツンデレの鏡。自分のことをよく理解してるにこね」

にこ「否定しても素直じゃないとかで切り返されるのが目に見えてるからよ」

あんじゅ「でも実際ににこは自分がリードしたがると思うの」

にこ「そんなことないわよ」

あんじゅ「じゃあ真剣に考えてみて。一つの首輪があったとするでしょ」

あんじゅ「自分に付けるか私に付けないといけないとしたらにこはどうする?」

あんじゅ「どちらかが付けないと二人とも死にます」

にこ「何その生命の危機なのにカオスでしかない救済条件」

あんじゅ「ちなみに首輪をつけた方が受けになるニコ!」

にこ「要らない情報まで……。まぁ、その場合はあんじゅに首輪を付けるわね」

にこ「そうしないと生命の危機になるくらい貪られそうだし」

あんじゅ「と、言い訳しながら私に首輪を付けたい願望のあるにこにーお姉ちゃん」

にこ「あんたが元々首輪とかボブキャット耳が欲しいとか言ってるからでしょ!」

あんじゅ「ということだけど、それが本心なのか言い訳に聞こえるかエリーちゃんはどう思う?」

絵里「……」

にこ「って何時の間に!? てか、その引いた顔して無言で去って行くんじゃないわよ!」

あんじゅ「言えないってことはつまり絵里ちゃんにもそう思われてるってことだよ」

にこ「あんた達の中でのにこのイメージがおかしいのよ!!」

あんじゅ「そんなに照れなくてもいいのに。にこってば本当に恥ずかしがり屋さんにこ」

あんじゅ「合宿終わったら二人で人間仕様の首輪を見に行こうね♪」

にこ「そんな物見に行くわけないでしょ」

あんじゅ「色はやっぱりにこの瞳の色である赤がいい。それともにこは黒の方がいい?」

あんじゅ「そ・れ・と・も♪ 両方の方がいいにこっ」

にこ「首輪なんて必要になる人生送ってないわよ!」

にこ「本当に今のあんたは不安定過ぎるわ。部室に閉じ込めておいた方がいいかも」

あんじゅ「ほらやっぱり。にこは私を飼いたい願望丸出し」

にこ「危険だからよ。臭い物には蓋理論」

あんじゅ「心配しなくても私はにこの物だから安心するにこよ」

にこ「会話を成立させなさいよ、このヤンデレ!」 つづく

~データ~
29位 青森『Verse』リーダー青木由美
廃校が確定し、最後の卒業生達が学校の名を残す為に結成したグループ

30位 名古屋『geroge』リーダー岡本楓
オール一年生でにこが来年はA-RISEと並ぶライバルになりそうと予想としている
別の世界では普通に予選通過してたり、三年生花陽が率いるμ’sを下したりもしたとか

21位 福岡『Dream』リーダー綾辻有栖
二年生二人組。二十一位の実力者であり、花陽が紹介されるまで上位グループで唯一の眼鏡スクールアイドルとして注目を集めていた為、一部雑誌の常連でもある
別の世界では普通に予選通過してたり、μ’sの呼び掛けた秋葉でのスクールアイドルによるライブには不参加?

せんちゃん:千泉恵美
にこの憧れのアイドル。元々はスクールアイドル
学校での練習場もなくメンバーも居らず一人で努力し続けて最終的には三十位でラブライブ本選に進むことなく終えた
尚、現在母校はスクールアイドル禁止になっている

にこ「色んなことがあったけど、そろそろプロットだけでも書いてUPしとかないとね!」

あんじゅ「せめて私とにこがちゅーするまでは続けないと駄目だよ!」

にこ「……なんで私とあんたがキスすんのよ」

あんじゅ「自他共に認めるカップルだから☆」

にこ「いつカップルになったって?」

あんじゅ「合宿一日目の明け方にかけて」

にこ「なってないわよ」

あんじゅ「うふふ。にこってば照れちゃって可愛いんだから。デレることなくツンデレにこね♪」

にこ「べっつに照れてないニコ!」

あんじゅ「ちゅーより先の『これ以上はだ~め!』『制御不能』みたいな状態でもいいよっ」

にこ「意味わかんない!」

あんじゅ「次回はプロットにこ! 次回だけはお楽しみに」

にこ「外伝以外のエピローグまでの全ネタバレにこ!」

あんじゅ「プロット書く前に落ちるのは阻止しないと」

にこ「そうね」

あんじゅ「プロット書いたら次はにこと私のキスシーン書いて」

にこ「そしたら落とすにこね」

あんじゅ「その前にこの物語らしい外伝の海未ちゃんの邪道で締めるのもいいかも」

にこ「じゃあそれで落としましょう」

あんじゅ「でも、その前ににこと私の―――」

にこ「―――って! あんた書かないのに落とさないとか最悪よ!」

あんじゅ「だってにこあんってマイナー過ぎて二度とお目にかかれなそうだし」

あんじゅ「ダーちゃんにバトンを譲るのはプライドが許さないニコ!」

にこ「ダーって誰よ?」

あんじゅ「こんな言葉を知っている? にこあんは何度ピンチが訪れても不滅だって」

あんじゅ「にこあんは不滅にこ!」

絵里「それって解散フラグなんじゃないの?」

あんじゅ「!?」

海未「今週末か来週頭くらいにでもプロットを上げてから何か言うべきですよ」

あんじゅ「正論が一番効くっていう一例……ガクリ」

あんじゅ「ねぇねぇ、ダーリン」

にこ「何よ?」

あんじゅ「私考えたの。何を持ってして良妻の条件とするのか」

にこ「家事が出来るのは最低条件よね」

あんじゅ「ううん、そんな些細なことはにこがしてくれるからいいの!」

にこ「全然些細じゃないわよ!」

あんじゅ「でね、良妻とは仕事で疲れてるけど、そこから更に家事を行う夫の元気を出させる事だと思う☆」

にこ「もはや奴隷じゃない」

あんじゅ「愛の奴隷……にこってば私をそんな風に見てたなんて照れるにこっ♪」

にこ「どういう解釈ニコ!」

あんじゅ「で、どんな風に元気を出してもらうかを考えた結果――」

にこ『ただいま~私のあんじゅ。今帰ったにこよ!』

あんじゅ『おかえりなさい、あ・な・た♪』

あんじゅ『焼き土下座にする? 硫酸風呂にする? それともわ・た・し♪』

にこ『勿論愛妻のあんじゅに決まってるわ』

あんじゅ『もぅ、にこってば発情期の猫みたいに私ばっかり』

あんじゅ『流石エロネコにこねっ★』

にこ「色々突っ込みたい部分はあるけど、そういうネタはヤバいわ!」

あんじゅ「そういうネタ?」

にこ「時代は流れて今はそういうのは別室行きになるみたいよ」

あんじゅ「R行き? 時々にこは変なことを言い出すにこ。でも、そこが可愛い。ぺろぺろ」

にこ「舐めてるんじゃないわよ!」

あんじゅ「うふふ」

にこ「笑って誤魔化しても無駄よ! てか月曜日どこ行ったのよ!?」

あんじゅ「~消えた月曜日とスマイルの歌~」

にこ「何そのサブタイトルみたいなやつ」

あんじゅ「やっとみつけたよ。私たちのダイジェスト!」

にこ「意味わかんないにこっ!」

あんじゅ「私たちのダイジェストはこれからにこ☆ミ」

【本編終了後のフラグ建設】

秋・UTX学院

副会長「流石に連日のこの量を捌くのは疲れるわね」

会長「副会長が居なかったら絶対に処理しきれなかったよ」

副会長「……ふんっ。希のごますりなんて疲れを癒す効果なんてないわよ」

会長「なんて言いながらも少し口元がくいっと上がる副会長はツンデレさんやね」

副会長「誰がよ! というか、いくら秋葉だからってそういう単語生徒会長が使うんじゃないわ」

会長「ふふっ。少し疲れたし小休止としようか」

副会長「そうね。根を詰めすぎても効率下げるだけだものね」

会長「それじゃあ紅茶でも入れるね。こないだ貰ったロシアンティーは秋が一番美味しいらしいから」

副会長「秋って暦の上ではそうだけど連日まだまだ暑いじゃない」

会長「それ以上に熱いスポットライトの下で練習してる子達も居るわけだし」

副会長「A-RISEはラブライブでより人気が増したものね。先行発売したチケットは即完売だったし」

会長「来年優勝すればスクールアイドル史上最高の記録。故にことりちゃんがプレッシャーに負けないか少し心配だけど」

副会長「……そういえば、その南さんのことなんだけど」

会長「どうかしたの?」

副会長「希だからこそ言うんだけど先生が口を滑らせて本人よりも先に聞いちゃったのよ」

副会長「南さんの留学の話」

会長「ことりちゃんが留学?」

副会長「UTX学院のスクールアイドルとしての株は今でも充分」

副会長「だからこそ新設した装飾科の株も上げていきたいというのが学院の考えみたいよ」

会長「でも、そうなると」

副会長「まだ本決まりかは分からないみたいだし、当然断ることもありえるでしょう」

副会長「責任力のある子みたいだし、スクールアイドルのリーダーを優先させる可能性は高いわ」

会長「……」

副会長「一体彼女は夢と責任のどちらを取るのかしらね」

会長「ことりちゃんには音ノ木坂に幼馴染が二人居て現在は共にリーダー」

会長「どちらも取れずに立ち止まらないといいけど」

副会長「何を言ってるのよ、希。うちの学院の生徒がそんな惰弱な訳ないじゃない」

会長「くすっ。そうだね。ウチ副会長のそういうところ好きやよ」

副会長「はいはい、もう休憩終わりよ!」

会長「照れ臭いからって、まだお茶も入れ終わってないって」

副会長「誰も照れてないわよ!」 チャンチャン☆

あんじゅ「更新 アリ度 50%」

にこ「何それ?」

あんじゅ「……GETだ! にこあん!」

にこ「だから何よそれ」

あんじゅ「この提供は 《にこあんぶぅむめんと》 の提供でお送りします」

にこ「だからなんだっての!?」

あんじゅ「にこってば私の全てを理解してないと直ぐ癇癪起こす。全く俺様キャラにこね」

にこ「意味不明な電波発言するから突っ込んであげてるんでしょ」

あんじゅ「時系列はバラバラだけど、遡っていく感じかな?」

あんじゅ「回想の巨人のように回想していくニコよ!」

にこ「意味わかんないわよ!」

あんじゅ「私の下着はにこ色ってことだよ」

にこ「何よにこ色って」

あんじゅ「にこ色と解きまして大人の色気と解きます。そのこころは?」

あんじゅ「赤と黒の下着だから。それではいくにこ♪」

にこ「何よそれーッ!」

あんじゅ「にこの髪の色と瞳の色=にこ色。おあとがよろしいようで」

にこ「全然よろしくないわよ!」

――九月 音ノ木坂学院 屋上 SMILE(-絵里)

海未「穂乃果、そろそろいいのではないですか?」

穂乃果「う、うん。にこちゃんどうかな?」

にこ「……はぁ。あのね、穂乃果。もうあなたがリーダーなの。もっと自信を持ちなさい」

凛「そうだよ。陸上部のシカコ先輩なんて最初から部長だったみたいにみんなを仕切ってるよ」

穂乃果「分かってはいるんだけど、ほらまだ実感が湧かなくて」

あんじゅ「リーダーなんてにこですら務められたんだから重く考えない方がいいよ」

にこ「そうそうっ、どういう意味よ!」

あんじゅ「そっか。にこにはあんじゅちゃんというヒロインが居たからやれてただけだよね」

あんじゅ「にこ一人じゃ到底リーダーをやりきることは出来なかった」

あんじゅ「でもね、穂乃果ちゃんにも支えてくれる海未ちゃんと凛ちゃんが居るでしょ?」

あんじゅ「だから大丈夫。そんな緊張したり不安がったりせずともやり通せるよ」

にこ「良い話風に語ってるけど結局にこのことを貶めたいだけしょ!」

あんじゅ「そんなことないにこ~♪」

にこ「目が笑ってんのよ!」

穂乃果「よし! 今日は一段と暑いから少し長めの休憩にしよっか。絵里ちゃんも戻ってくるかもだし」

凛「賛成にゃー!」

海未「そうですね。絵里が戻ってこれるかは分かりませんが」

あんじゅ「ほらほら、にこってばカッカしてると余計に汗が出るにこよ?」

にこ「あんたがカッカさせてんでしょうが!!」

凛「にこちゃんはいつも元気だよね」

穂乃果「その元気と明るさと笑顔があったからこそ、私達メンバーが引き寄せられたんだよっ」

海未「まぁ、そこに邪道という絶対的要素が不可欠でしたが」

あんじゅ「スンスン……臭い。にこのにおいにこ」

にこ「だからそれやめなさいよ! まるで私が常に汗臭いみたいに思われるでしょ」

あんじゅ「男の子の汗は勲章だって言ってたよ。大丈夫大丈夫」

にこ「私は女の子よ!」

あんじゅ「ねぇねぇ、ダーリンダーリン♪」

にこ「何よ?」

あんじゅ「ダーリンと呼ばれて返事をする女の子なんて存在しない。つまりにこはやっぱり男の子」

にこ「あんたがそんな風に呼ぶからでしょうが、このヤンジュ!」

あんじゅ「うっふふ」

海未「二人ともいつまでもじゃれ合ってないで、日射病にならないように日陰で涼みましょう」

あんじゅ「そうだね。にこはショタなんだから身体をもっと労らないと」

にこ「誰がショタだってのよ。せめてロリにしなさいよ……って! 誰がロリよ!」

凛「今のノリツッコミ寒くないかなー」

穂乃果「ずずずっ……はぁ~。暑い中で飲む熱いお茶は格別だよねぇ」

あんじゅ「穂乃果ちゃんの二代目リーダーの自覚を持たせる為にも、総集編でもしようか」

穂乃果「そうしゅうへん?」

凛「どういう意味かな?」

あんじゅ「みんなで夏休みの日々で想いで深い出来事を語っていくの」

海未「……嫌です!」

穂乃果「ぐふふ~ウミンディーネちゃんってば嫌がることなんてないじゃない」

海未「あんじゅの変な笑い方とその呼び方を止めてください!」

にこ「SMILEの奇跡の体現者だもの。今尚世界中でウミンディーネの名前が囁かれてるわよね」

あんじゅ「それをにこが言ってもね。にこの名前だって世界の皆が呼んでるよ」

あんじゅ「日本のスクールアイドル・矢澤二号って★」

にこ「二号じゃなくてにこよ!」

凛「大量生産型にこ……ちゃん?」

にこ「何を想像してんのよ。量産なんてされる訳ないでしょ」

あんじゅ「二万を超えるにこシスターズ。それを一人ずつ食べて経験値を積むあんじゅちゃん」

海未「何故食べるのですか」

あんじゅ「それは私が彼氏を愛しているから。ワタシニゴウマルカジリ」

にこ「二号じゃないわよ! 愛人みたいじゃない」

あんじゅ「大丈夫だよ。私にはにこ一人居ればいいから。にこだけしかいない世界」

凛「今度は映画っぽくなったニャ!」

穂乃果「アレだよねレンタルで借りてみたよ。犯人も意外だったけど、結末も意外だった!」

凛「凛も観たよ。でも犯人は直ぐに分かったけど」

穂乃果「えぇっ!?」

海未「穂乃果の推理は外れるのが基本ですからね。その割にクイズは得意でしたが」

あんじゅ「クイズならこころちゃんとここあちゃんも大の得意だよ」

にこ「いや、あんたの出すクイズはクイズという枠に収まってないじゃない」

あんじゅ「昔はパズルも平面だけだったらしいけど、今は立体もあるでしょ?」

あんじゅ「遊びっていうのは進化していくべきなんだよ。将棋もチェスのように立ててやるとか」

あんじゅ「崩れたらその駒は相手に渡るの」

にこ「何その理不尽な将棋。てか、立てたら自分から見えにくいじゃない」

あんじゅ「自らの防衛の為に死地に送る部下の背中を見分けられない王なんて死すべしだよ!」

海未「ちょっと面白そうですね。今度家に来た時にやってみましょうか」

にこ「何処に海未の琴線に触れる内容があったのよ!?」

あんじゅ「今度絶対にやろうね。ということで夏を振り返ってみよう。誰から語る?」

凛「じゃあ皆それぞれに凄いのがあるから凛からがいい」

あんじゅ「じゃあ凛ちゃんからお願いね」

凛「凛はやっぱり合宿の夜に観たラーメン王選手権かなぁ」

凛「メンジョルノ対梅屋メン。ラーメンへの愛情がヒシヒシと伝わってくる最高の対決」

凛「ラウンドが進むに連れてお互いへのリスペクトが感じられてどっちも応援したくなるあの空気」

凛「でも決着は着かなくちゃいけなくて……激闘を制したのは梅屋メン選手!」

凛「チャンピオンとしてもう一度メンジョルノ選手が挑戦してくるまで防衛し続けるって宣言は痺れたにゃー」

海未「ラーメンのことはよくわかりませんが、あの燃え滾る感覚は色々勉強になりました」

穂乃果「どれも美味しそうで夕飯食べたばかりなのに胃が刺激されたなー」

あんじゅ「そして、その後に繋がるにこのサプライズだよね」

にこ「あんな外道は二度とやらないというか、やれないけどね。子供だってルールあるし」

凛「外道だなんて、すっごく嬉しかったよ!」

凛「凛の為に凛のお気に入りのラーメン屋さんに頼みこんでカレーラーメン作ってくれたこと」

凛「あの味と感動は生涯絶対に忘れない!!」

その言葉通り、凛が三年生になって大スランプに陥った時に思い出すことになる。

陸上部では頼りになりライバルであったシカコが卒業。

スクールアイドルではA-RISEでは二年の頃に覚醒を果たした花陽と真姫。

何よりも凛を苦しめたのは新入生の加入がなかったこと。

自分がリーダーだから誰も入ってこなかったんじゃないか

実力でも魅力でも先輩達には遠く及ばないままで最上級生になってしまったんじゃないか

負の迷宮に迷い込んだまま梅雨入りし、ネットで殿堂入りした梅屋メンと現チャンピオンのメンジョルノの特別試合が放送された。

それを見て凛は思い出したのが嫌いだったスクールアイドルを大好きになった合宿のこと。

他のラーメン好きの子達と応援したあのTV放送。

当時リーダーだったにこが自分の為に無理を通して御馳走してくれたカレーラーメン。

スクールアイドルになろうと思わされたにこ達の邪道。

そして……

数々の思い出が迷宮を打ち崩し、凛を覚醒させて最高のリーダーとして亜里沙と雪穂を引っ張って行くことになる。

凛「他にも色々あるけど本人が語るのがいいと思うから凛はこれくらいかな」

穂乃果「じゃあ次は私が言うね。大いに驚いたって意味ではやっぱり……あんじゅちゃんだよね」

海未「それはそうですよね」

凛「うんうん」

にこ「私が一番驚いたけどね」

あんじゅ「え、私? にこと私が恋人同士になるなんて驚くようなことじゃないと思うけど」

にこ「そっちじゃないわよ!」

あんじゅ「それ以外に何かあったっけ?」

にこ「わざとらしくポニテにしてる髪を触ってる時点で分かってるじゃない」

あんじゅ「ツインテールのにこ。サイドテール右のこころちゃん。サイドテール左のここあちゃん」

あんじゅ「そしてポニーテールのあんじゅちゃん。これでしっぽ四姉妹の完成ニコ!」

あんじゅ「だけどにこが下ろしてる私の方が好きなので練習の時だけだけど」

にこ「そんな言わなくていい情報はどうでもいいのよ。本当に驚いたんだからね」

海未「誰もが驚いたと思いますよ。今はもう見慣れてきたので素直に似合ってると言えますけど」

凛「思い切ったことをしたよね」

穂乃果「最初お店に来た時誰かと思ったくらい驚いたよ」

にこ「綺麗な馬色だったのに」

あんじゅ「だから馬色じゃないよ! 栗毛色とか亜麻色とか言い方あるでしょ」

にこ「本当に勿体無い。綺麗な色だったのに」

あんじゅ「いいの。私は矢澤四姉妹の次女だから」

あんじゅ「何よりこれなら紅蓮女だけじゃなく、ゆずきちゃんにもなれるんだから」

あんじゅ「そしてにこは千尋ちゃんと地獄少女が出来るからハロウィンはWカップリング☆」

にこ「そんなの観に来た人は全く分かんないわよ」

穂乃果が其れを目撃したのはSMILEの三日間の完全休養となった最終日。

夏休みも終わりに近づき、でも家の手伝いとスクールアイドル活動をこなしながら宿題もきちんと終わらせていた。

今までの夏休みの歴史で最終日までに宿題を終わらせられたのは今回が初めて。

海未に怒られ、ことりに慰められながらどうにか終わらせていたのはもはや過去。

「これが成長ってやつなんだね」と海未に言ったところ「それが当たり前です」と返された。

そんなことはともかく、今日はにことあんじゅがわざわざ店を手伝いに来てくれる約束の日。

そして、あんじゅの髪の色が黒くなっていて驚かされることになる日の出来事。

◇穂むらのお手伝い◇

ここあ「おまんじゅう屋さん!」

こころ「ユキちゃんのお家~」

にこ「こんなにも暑いのに子供は元気よねぇ」

あんじゅ「にこってば一歳年上なだけでお姉さんぶるなんて背伸びしてて可愛いんだから」

にこ「誰が十歳よ!」

あんじゅ「ここあちゃん。穂むらは正式には和菓子屋さんだよ」

にこ「ってスルー!?」

ここあ「おー。わがし屋さん……おまんじゅう屋さんにこ!」

こころ「おまんじゅう屋さん♪」

あんじゅ「うんうん。お饅頭屋さんにこね」

にこ「なんであんたも納得してんのよ。和菓子屋でしょうが」

あんじゅ「難しい言い方をしてお兄さんぶるなんて、本当にダーリンは可愛い★」

にこ「私は女の子だっての! ……ああ、もう。何度も言われてどうでもよくなってきたわ」

あんじゅ「にこの調教率25%」

あんじゅ「今日は亜里沙ちゃんも来て雪穂ちゃんと四人で遊ぶんだよね?」

ここあ「うん!」

こころ「おままごとするにこっ!」

あんじゅ「幼稚園生みたいで可愛いっ」

にこ「いや、そこは小学三年生にもなってする遊びじゃないって言うべきじゃない?」

あんじゅ「演技力を磨くことはスクールアイドルになった時に役に立つと思うの」

あんじゅ「私もにこにベタ惚れのヤンデレ依存百合美少女って演技をしてるし」

にこ「どこが演技よ! なんで付き合ったこと知れても、

『えっ、まだ二人って付き合ってなかったの?』

なんて逆に驚かれるのよ。女の子同士なのにおかしいでしょうが!」

あんじゅ「にこは男の子。あんじゅちゃんは女の子。これで何もおかしくないね♪」

にこ「全てがおかしいわ!」

こころ「にこにーも元気にこっ」

ここあ「暑くても元気なのはいいことにこ☆」

にこ「……はぁ。ま、二人は亜里沙と雪穂ちゃんに迷惑かけないように良い子にするのよ?」

こころ「こころはいつもいい子にこ♪」

ここあ「ここあもー♪」

にこ「そうだといいけど。合宿の時もずっと迷惑かけたし、何かしらお礼を考えないとね」

あんじゅ「でも亜里沙ちゃんと雪穂ちゃんも妹の立場からお姉ちゃんになれて喜んでると思うよ」

あんじゅ「私もお姉ちゃんの立場嬉しいし」

にこ「まぁ、普段がアレだけど二人の前じゃあんたもきちんとお姉ちゃんやってるしね」

にこ「物語はもう書かないとは言いながら即興で考えた物語聞かせたり」

ここあ「アンちゃんのお話はとっても面白くて大好きニコ!」

こころ「こころとここあも出てくるにこ!」

あんじゅ「今度は鬼ヶ島に観光に行く桃ニコ姫でも話すにこね」

にこ「鬼ヶ島に観光って……いや、遠く離れていながら鬼を滅しに行くより説得力はあるけど」

あんじゅ「鬼だっていつまでも略奪だけで生計が成り立つ訳ないもん」

あんじゅ「人間は自分達より弱気生き物だからこそ、身を守る為の武器を開発する力に長けている」

あんじゅ「で、あれば今までの業を返上し、名誉を築くことに熱心になるの」

あんじゅ「当然最初から受け入れられるなんて物語だから許される的なことにはならないけど」

あんじゅ「村が吹き飛ぶような恐ろしい台風の夜に鬼達は我が身、我が命を賭して村を守るの」

あんじゅ「幾匹の鬼が傷付き、その命を地に返しながらも村は守りきられた」

あんじゅ「そこで漸く鬼達は村人達に――」

にこ「帰りにお饅頭買ってあげるから挨拶からきちんとするにこよ?」

こころあ「うん!」

あんじゅ「ってスルー!?」

にこ「この子達に難しい場面から語ってもつまらないだけでしょうが」

あんじゅ「……不覚。にこにもまだ難しい描写を使ってしまったことを深く反省するにこぉ」

にこ「にこは理解してるわよ!!」

あんじゅ「にこがお饅頭なら私はお団子買って帰るね。みたらし団子みんなで食べようね」

ここあ「うさぎさーん♪」

こころ「お月さま♪」

にこ「そうね。秋の満月にもまた皆でお団子食べましょうね」

ここあ「エリーちゃんのお家がいい! お庭で食べたい」

こころ「お月さま見ながらみんなでぴょんぴょんしたいにこ!」

にこ「絵里に許可を取ってみてからね」

あんじゅ「それって訊くまでもないと思うけど」

にこ「……受験生の大切な秋の日であっても、絶対に歓迎しか返ってこないわよね」

あんじゅ「寧ろ平日であっても泊まって家から学校に通うべきとか言い出しそう」

にこ「そうね。てか、頻繁に二人が泊まりに行ってるし」

あんじゅ「シスターズ一のシスコンを欲しいがままにしているエリーチカ。恐るべしにこ」

にこ「本来は不名誉以外のなんでもないんだけど。あっ、漸く見えてきたわね」

――朝 穂むら 矢澤四姉妹

にこ「いつも穂乃果さんにはお世話になってます。今日一日よろしくお願いします!」

ママ「寧ろこっちこそあのやる気ない娘だった穂乃果に色々よくしてくれて」

ママ「お手伝いどころかこっちが何か力を貸したいくらいなのに」

にこ「いえいえ。穂乃果さんだけじゃなくて雪穂さんにも妹達がよくお世話になってますし」

雪穂「ここあちゃん、こころちゃんいらっしゃーい」

ここあ「遊びにきたにこ!」

こころ「ここあ、まずはあいさつが先にこよ? ユキちゃん、おはようございます」

ここあ「そうだったー。ユッキーおはようにこ!」

雪穂「二人ともきちんと挨拶出来て偉いね。おはようございます。よしよし」

こころあ「えへへ♪」

ママ「それくらい全然。雪穂は元々自分より年上の妹がいたようなものだしねぇ」

あんじゅ「自分より大きい妹。まるで私のことみたい」

にこ「誰がいつ大きなって言ったのよ。あんたは挨拶終わるまで黙ってなさい」

あんじゅ「亭主関白なにこの言葉に従い、良き妻のあんじゅちゃんは黙るのでした」

にこ「全ッ然黙ってないじゃないの!」

ママ「あははっ。あんじゅちゃんの方は随分と変わったみたいね」

あんじゅ「にこの愛により過去の自分と決別したので」

にこ「勝手に染めてきて何を勝手に私の愛の所為にしてんのよ」

あんじゅ「じゃあにこに身も心も染められたにこ★」

にこ「意味分かんない!」

雪穂「ああっ、誰か別の人かと思ったらあんじゅさんだ」

あんじゅ「まさか気付かれてもいなかったなんて」

にこ「目立つ髪の色してたから当然ね」

ママ「客商売している娘なら髪の色が変わったくらいで分からなくなるなんて駄目よ」

ママ「特に今の時代はイメチェンで一新するお客さんも多いんだから」

ママ「看板娘をしたいならもっと人間観察に勤しむべきね」

雪穂「はぁい。にこさんとあんじゅさんいらっしゃい」

にこ「ええ、お邪魔するわ。今日はここあとこころのこと面倒だろうけどよろしくね」

雪穂「二人ともいつもいい子だから面倒なんてないですよ。寧ろ私の方こそ遊んでもらってるくらいですし」

雪穂「この時期になるとみんな勉強のラストスパートで捕まらないですから」

にこ「夏休みの宿命よね」

あんじゅ「にこも私という頼りになる彼女がいなければ泣きながら机にへばりついてたよね」

にこ「うっさいわね」

雪穂「じゃあ、ここあちゃんとこころちゃんは上がって。今、お姉ちゃん呼んできますから」

にこ「ありがとう。二人ともきちんとするにこよ?」

ここあ「うん!」

こころ「おぎょうぎよくするにこ!」

あんじゅ「楽しんできてね」

こころあ「楽しむにこ♪」

にこ「接客のお仕事はしたことないんで逆に足手まといかもしれませんが」

ママ「あら? 去年カレー屋さんを学園祭でしたって聞いたけど」

あんじゅ「ニコ屋です! 名前が一文字上にズレてたらニコは勇者でした」

にこ「あんた何を意味不明なこと――」

ママ「――懐かしいわね。その漫画好きな娘が後輩に居てね。読ませてもらったから覚えてるわ」

にこ「なんだか知らないけど通じてる!?」

あんじゅ「魔法陣グルグルって漫画の勇者ニケ君がお店を開いたのがニケ屋。それがニコ屋の原点」

にこ「元ネタがあったなんて。ネーミングセンス的にあんたのオリジナルかと思ってた」

あんじゅ「失礼な。それだとまるで私がネーミングセンスがないみたいに聞こえるにこよ?」

にこ「何度も言うけどネーミングセンスがないのよ。壊滅的なの」

あんじゅ「そんな酷いことを言うにこには脇の下でおにぎりを握ってもらうしかないニコね!」

にこ「何それ!? 火傷するし、ばっちぃじゃないの」

ママ「あったあった。キタキタおやじだったかしら?」

あんじゅ「そうです。一秒に六個くらい作れるとか。にこなら二十五個くらい作れそう」

にこ「作れるか!」

あんじゅ「……汗は塩分。にこの塩結び。危ない扉が目の前に」

にこ「その扉開いたら地下行き1050年よ!」

あんじゅ「ちょっと大人になるところだったにこ」

にこ「大人じゃなくてただの変態だから。どういう神経したら脇の下でおにぎりの発想になるのやら」

あんじゅ「文句は作者に言ってね。今でも色々とネタにされてるの見るよ」

ママ「へぇ。随分と古い作品なのにまだ残ってたりするのね」

あんじゅ「面白い物は廃れないですから。だからニコ屋も不滅!」

にこ「ニコ屋は面白くないし不滅も何も、今度の学園祭でフィナーレよ」

あんじゅ「にこが気取ってフィナーレなんて単語を使ってる。ぷーくすくす」

にこ「何そのムカつく笑い方!」

あんじゅ「うっふふふふふ」

にこ「ふが多すぎてそれはそれでムカつくわ」

あんじゅ「こんな風に注文が多い彼氏共々今日一日よろしくお願いします」

にこ「あんたにしかこんな風に文句言わないわよ、この愚昧!」

穂乃果「にこちゃんは朝から元気だねぇ。仕込み手伝って、朝一もお父さんのお手伝いして」

穂乃果「穂乃果は眠いよ……いらっしゃい、にこちゃん」

にこ「親孝行はこの世で最も尊ぶ好意よ。流石SMILE二代目リーダーね」

穂乃果「まだリーダーの自覚がないけど。それよりそっちの人は?」

あんじゅ「にこの彼女の矢澤あんじゅです。初めまして」

穂乃果「あっ、初めまして。にこちゃんにはいつもお世話になってます」

穂乃果「穂むら次期店長の高坂穂乃果……って、あんじゅちゃん!?」

あんじゅ「うふふ。こうやって驚いてくれるとちょっと快感」

にこ「馬色綺麗だったのに」

あんじゅ「だから馬色言わないでってばー」

穂乃果「どどどどどどどっ!?」

あんじゅ「ドーン!」

にこ「ぎゃあっ! 何で私攻撃されてんのよ」

あんじゅ「攻撃じゃなくて愛の体当たりニコ♪」

穂乃果「どうしたのその髪!?」

あんじゅ「にこに嫁ぐ為に乙女の命もにこの色に染めたの……ぽっ」

穂乃果「えぇぇぇぇっ!!」

少なくなった蝉が穂乃果の驚きの声に目を覚ましたのか、辺り一面で鳴き始める

両目を大きく見開きながらあんじゅのことを下から上まで見つめ、

「結婚したの?」

混乱の末に紡ぎ出した穂乃果の珍回答に、ドヤ顔で頷くあんじゅだった……。

穂乃果「最近覚えたこと全部吹き飛んじゃうくらいのインパクトだったよ」

海未「それは流石に驚き過ぎです。私は驚きはしましたがあんじゅですからね」

海未「こういうことをしても心の何処か納得してしまいました」

凛「付き合いが長いから故にってやつかな?」

海未「そうですね。あんじゅがどれ程にこを好いているのかは色んな場面で感じてきましたし」

にこ「恥ずかしいことを臆面もなく語るんじゃないわよ!」

海未「確かにこれが他の人なら恥ずかしくて語るなんて出来ません」

海未「ですがにことあんじゅの二人ならば、尊敬する二人の姉達であれば恥ずかしくありません」

あんじゅ「これは披露宴で友人代表挨拶をエリーちゃんにするか海未ちゃんにするか悩むね」

にこ「そんなもの悩まなくていいのよ!」

海未「そうです。こればかりは譲れません。私が勤めあげてみせましょう」

あんじゅ「いや、でも何もせずに決めるのも面白くないかも」

凛「確かに。にこちゃんを慕ってる子は陸上部一年生で沢山いるニャ!」

にこ「あれは雨の中で動物を保護してるのを見たみたいな感じでしょ?」

あんじゅ「嫌な奴だと思ってたのに実はいい人だったってやつだね」

あんじゅ「でも私は噛ませ犬だと思ってたにこが最後にいい場面を貰う方がいいかな」

にこ「何そのさりげない『私=噛ませ犬』って公式」

あんじゅ「……にこ、大丈夫だよ。世界の誰からも噛ませ犬だと思われてもにこは私の主人公だから」

にこ「あんた以外に私を噛ませ犬なんて思うやついないわよ!」

穂乃果「にこちゃんは気さくで二年生からも人気だし。友人代表挨拶枠狙ってる人多いかも」

海未「平等にチャンスを与えて、その結果次第というのはどうでしょう?」

あんじゅ「じゃあ学院内で二番目ににこを好きな人をイベントで決めるのがいいかも」

あんじゅ「二番目ならば友人代表に相応しいし」

にこ「何あんたは勝手に結婚式フラグを立ててるのよ!」

あんじゅ「最近にこがツッコミ役に徹してる気がするけど、誤解しないでね?」

あんじゅ「こう見えても夜に二人きりになるとデレモードになるから」

あんじゅ「その反動で昼間はよりツン度を上げてるの。正にツンデレの鏡にこっ♪」

にこ「うううっさいわね! そんなんじゃないわよ」

あんじゅ「駄目だよにこ。そういう時は『ツーン』って言ってそっぽを向かないと」

にこ「そんなこと言うやつ居る訳ないでしょ!」

海未「そのイベントも楽しみですが、次は私が夏の想いでを語りましょう」

海未「やはりラブライブの――」

穂乃果「――駄目だよ、海未ちゃん! 自分のことをきちんと語らないと!」

凛「そうだよ! 凛も穂乃果ちゃんもあの奇跡を語らなかったのは海未ちゃんの為に残したんだから!」

海未「うっ!」

にこ「そうね。海未はそろそろ冷静になって自らの口で語るべきだわ」

あんじゅ「ウミンディーネ伝説。SMILEが起こした奇跡の一つ」

あんじゅ「あの子と紡いだ奇跡の掛け橋」

海未「…………」

海未「…………」

海未「…………分かりました。ですが、私が語るのです」

海未「にこもきちんとあの日起こした奇跡のことを語ってくださいね」

にこ「……え゛ぇっ」

海未「妹にだけ語らせて自分は語らないのは姉として失格です」

あんじゅ「そうだよにこ!」

にこ「分かったわよ。私が話すことで海未も話して少しは現実を受け入れるのであれば」

にこ「きちんと話すわよ。それが妹の成長に繋がるのであればね」

海未「……では、あの合宿の終わり。大下剋上が目前に迫ったあの日のことを語ろうと思います」 つづく!

あんじゅ「にこ。そいやっさ踊りをしてる場合じゃないよ!」

にこ「なんかこれ癖になるのよ。極めたくなる!」

あんじゅ「いや、そんな踊り極めても意味ないし」

にこ「まぁ、いいわ。で、何よ?」

あんじゅ「海未ちゃんの話が始まらないんだけど」

にこ「すっかり忘れてたわ。じゃあ、今回はこうしましょう」

にこ「一年三ヶ月前のプロットを上げるの」

あんじゅ「なんでまたそんな物を? 大体あれって致命的なミスがあるし」

にこ「それよ! 次回更新は《七不思議・音ノ木研・オカ研》この三つを使って致命的なミスを誤魔化す」

にこ「今回のは読まない方が次の更新である海未の話を素直に楽しめるけど」

にこ「読んだ場合は致命的ミスを回避する方法を推理出来るにこよ」

あんじゅ「それってアニメでいうところの制作が間に合わないから総集編で誤魔化すやつなんじゃ」

にこ「……」

にこ「わ、私の反応も冷たすぎたし。最後の文も色々と変わるし」

あんじゅ「誤魔化せてないのに誤魔化してる。にこってば全然進化しないにこね」

にこ「ぐぬぬ! と、取り敢えずもう少しだけ待ってて欲しいニコ!」

あんじゅ「……あ、そうだにこ。地の文は読み手を惑わせる罠だったりするらしいよ」

にこ「何よ、唐突に」

あんじゅ「それから注意書きもまた然り。じゃあ、致命的なミスがあるヴァージョンスタート!」

――蒼の神話 ~黒の歴史~

ライブまで後二日。

外は昨日までの晴天を嘲笑うように雨が降り注ぐ。

天気予報は三日連続の雨。

自分達の下克上を否定するかのような行いに、それぞれグループに分かれて外を見つめている。

凛「あ~めあ~めざ~ざ~ざ~」

穂乃果「今日の天気予報も三日連続雨だって」

絵里「困ったわね。せめて雨が明日までなら……」

凛「ぬかるむことを考えると今日中に止んで、明日明後日が晴れじゃないと難しくないかな?」

海未「そうですね。凛の言うとおりです」

穂乃果「でも今日中に止むなんて思えないくらいに雨激しいよ」

絵里「そうね。まるで台風みたい」

穂乃果「にこちゃん。あんじゅちゃん。なんとかならないかな?」

あんじゅ「自然現象ばかりはどうしようもないよ」

にこ「……」

あんじゅ「にこどうしたの?」

にこ「不思議となんとかなるような気がするのよ」

あんじゅ「なんとかってこの状況から?」

にこ「だってほら、SMILEには水を司るウミンディーネがいるからね」

暗くなった気分を明るくさせる為の冗談。

暗くなっていた雰囲気が少し柔らぐ中で、海未が不敵に笑う。

海未「流石ニコフィラ姉さんですね。私が今日の朝方に何を取りに行ったのか気付いているのですね」

にこ(……どうしよう。冗談のつもりが海未の中二スイッチが入っちゃったわ)

にこ(でも暗くなられてるよりはマシね。適当に話を合わせておきましょう)

にこ「妹の行動くらい読めているわ。この状況を打破出来るアレを見つけてきたんでしょう」

海未「ええ、そのとおりです」

絵里「つまり雨をどうにかしちゃえるアイテムがあるってこと?」

穂乃果「えぇっ!? 海未ちゃんの家にそんなトンデモアイテムがあったの!?」

凛「家元の家系だけあって、もしかして雨乞いならぬ雨止めの舞とか儀式を知ってるとかかな?」

海未「舞や儀式なんて非科学な行為で雨を止ますことが出来るなんて思ってはいませんよ」

海未「そう、これは私だけでは不可能なことでした。しかし、SMILEには魔法使いが居ます」

海未「あんじゅの物語のお陰で、幼い頃に聞いたお婆様の話を思い出せたんです」

あんじゅ「え、私の物語のお陰で?」

海未「まさか願いの旅人の宝玉のルーツが我が家の物だったとは……。邪道シスターズの参謀は本当に魔法使いですね」

あんじゅ(どうしよう。大ピンチの所為か海未ちゃんの中二病が加速し過ぎて意味が分からない)

あんじゅ(でも海未ちゃんの奇怪な行動のお陰で暗い雰囲気が霧散したし、適当に話を合わせておこう)

あんじゅ「うん、ファンタジーとはいえ真実味を増す為には存在する人間だけじゃなく、物もあった方がいいからね」

絵里「願いの宝玉があるってこと……?」

穂乃果「そ、そんな家宝があったなんて」

凛「でも普通ずっと前に誰かが使っちゃってもう使えない物なんじゃない?」

海未「鋭い指摘ですね。そうです、今となってはただの綺麗な玉でしかない可能性も高いです」

海未「しかし今回の願いは雨。それならばこのウミンディーネにとって造作もないことです」

海未「微かにでも願いの力が残っているのであれば、私の蒼の神話の力を出せば事足ります」

穂乃果「神々しいくらいに自信たっぷり。こんな海未ちゃん見たことない!」

凛「なんだか後光が差して見えるよ」

絵里「今の海未なら何でもやれそうね」

にこ(……そんなわけないっての)

あんじゅ(でもにこ。何だかみんなやれるオーラになってるよ)

にこ(絵里は中二というよりシスコンスイッチの所為ね。穂乃果と凛は場の空気に影響されてって感じで)

あんじゅ(これが中二感染)

にこ(あたかも空気感染みたいにそんな単語があるみたいに言ってるんじゃないわ)

あんじゅ(でも、こういうやり取りもまた合宿の思い出になるからいいんじゃないかな?)

にこ(まぁ、大休止中だしくだらないことしてもいいんだけど。この流れが終わった時にドッと疲れそう)

あんじゅ(一番ダメージを受けるのは海未ちゃんだけどね。小道具まで用意した全力中二病だもん)

にこ(ま、その時はなんとかして慰めないとね)

あんじゅ(うん! そうなったら主人公のニコフィラちゃんの出番だよ☆)

絵里「分かったわ。蒼の神話の真の力を魅せてもらいましょう」

穂乃果「いつも練習してる屋上がこんな大舞台のステージになるなんて……凄いよっ海未ちゃん!」

凛「本当に雨が止んで明日明後日と晴れになってくれれば全てが順風満帆だもんね」

海未「任せて下さい。願いの力は対価なしに神すら力を貸すのです。純粋な想いこそが最強なのですよ」

海未「では行きましょう。私達の一足早いステージへ」

あんじゅ(新聞部に連絡入れておこうか。ほら、あのビデオは防水だって言ってたし)

にこ(いや、こんなの撮影させてどうするのよ)

あんじゅ(防水だったのはこのイベントの為だったのかもしれないから。だったらそこに意味があると思うの)

にこ(こんなフラグないわよ)

あんじゅ(運命は時にフラグを超越するから。何かが起こりそうな気がしてきた)

にこ(あんたまで中二感染してどうするのよ)

あんじゅ(でも感じるんだよ。素敵なディスティニー)

にこ(……海未には悪いけど、本日の休憩時間の1シーンに使わせて貰えば無駄にならないわね)

にこ(黒歴史になるだろうけど次期生徒会長のお茶目なシーンとか親しみ易さが生まれるだろうし)

にこ(自由な校風っていうのを宣伝出来れば新入生も増えるかもしれないしね。凛の為にも増えて欲しいからね)

海未「ニコフィラ姉さん、アンジュリカ姉さん。どうかしたのですか? 早く行きましょう」

にこ「ちょっとね。分かったわ、行きましょう。あんじゅ、連絡を」

あんじゅ「了解。……もしもし、今から屋上で撮影お願いしても平気かな? 内容は蒼の神話の喜劇」

海未「今喜劇と言いませんでしたか?」

にこ「奇跡の聞き間違えでしょ。それより今から屋上に出るなら先にカッパを用意しておいた方がいいわよ」

海未「いいえ、全身で感じるからこそ願いの力は意味を成すのです。このままで構いません」

にこ「一応撮影するから体操着の上に暑いだろうけどジャージ着なさい。下着が透けるから」

海未「分かりました。ジャージくらいなら平気でしょう」

――蒼の奇跡 屋上

穂乃果「直ぐに海未ちゃんびしょ濡れになっちゃったね」

にこ「そりゃこれだけ雨が激しいんだもの。そのまま外に出れば直ぐに濡れ鼠になるわよ」

凛「でも凛には海未ちゃんが雨を弾いてるように見えるニャー」

絵里「凛……いいえ、リンガー・ベル。貴女にもそう見えるのね。私にもそう見えるわ」

凛「リンガー・ベル?」

絵里「凛のもう一つの名前よ」

にこ「外国人なんだからリンガーが名前ってことでしょ? 女の子の名前じゃないわよね」

あんじゅ「日本風でリンガーが家名でベルが名前なんじゃないかな?」

にこ「なんでもありね。というか、あんじゅのことを言えないくらい絵里もネーミングセンスが悪いわね」

穂乃果「ねぇねぇ、絵里ちゃん。ホノチカ以外で穂乃果の皆みたいな名前ないの?」

絵里「穂乃果は残念だけど……名前が日本人過ぎたわ。でも、夢の中でなら穂乃果は邪道シスターズの四女だから」

穂乃果「夢の中限定って全くフォローになってないよ!」

凛「なんでリンガー・ベルなんだろう?」

海未「それでは皆さん。願いの力も集まりました。始めます」

あんじゅ「海未ちゃんの声が不思議と雨を縫うようにきちんと耳に届くね。何か本当に起こりそう」

にこ「……いやいや。まさか、ね」

穂乃果「いよいよか~。ウミンディーネちゃん、ファイトだよ!」

凛「頑張って!」

絵里「しっかりね。私達の自慢の四女・ウミンディーネ」

海未は願いの宝玉を左手に持ち、雨雲覆う空へ突き上げる。

まるで洗礼されたその動きは、神話に出てくる彫刻を再現するかのような美しさ。

何かが起こる筈なんてありえない。

冷静な判断を持っているにこですら、完全に海未の雰囲気に呑まれていた。

「この蒼の神話・ウミンディーネが願う」

先ほど以上に雨の中でも不思議と響き渡る海未の美声。

雨に濡れたその黒髪は、後姿でありながら神々しい艶を醸し出す。

「今日を含めた三日間だけでいいのです」

舞踏会でダンスをするようにその場で一回転半をした。

幼馴染としてその場に居る誰よりも見慣れている穂乃果ですら、無意識に見惚れる程の魅力。

かつてのハロウィンイベントの初ライブ前に震えていた海未と同一人物とは思えない。

「雨よ、雨雲よ……私達の前から姿を消しなさい!」

願い宝玉を高らかに投げ上げ、即興とは思えない綺麗なステップを披露して落ちてきた宝玉キャッチした。

膝を着いて両手に包み込み、空を見上げる。

蒼の神話・ウミンディーネの儀式が終わった――。

あんじゅ「ねぇ……にこ」

にこ「な、なに」

あんじゅ「雨、弱くなってきてない?」

にこ「ありえないわよ。ううん、確かに弱くなってきたけど偶然でしょ。止むなんてことは絶対にないわ」

絵里「でも雨雲を見て。段々と割れてきてる」

穂乃果「なんとかのじゅっかいみたい」

あんじゅ「モーゼの十戒かな?」

穂乃果「そうそう、あの海を割る人。じゅっかいじゃなくて十戒だったんだね」

凛「そんなことより見て。雨がもう止みそう」

にこ「……ねぇ、あんじゅ」

あんじゅ「なぁに?」

にこ「願いの宝玉ってあんたの創作よね? 海未の家に伝わる家宝を元にして作ったとかないわよね?」

あんじゅ「勿論創作だよ」

にこ「でもこれどう見ても海未の思い込みが自然現象を動かした風にしか見えないんだけど」

にこ「だとしたらあんじゅの願いの旅人がフラグだったとしか思えない。いえ、待って!」

にこ「そう言えばあったじゃないの。きちんとしたフラグが立ってたわよ。あんた自身がそう言ってたもの」

あんじゅ「なんだっけ?」

にこ「天気予報が最近あてにならないって話してた時にフラグの音がとか言ってたでしょ」

あんじゅ「そういえばあったね。でも、私が聞いたのはにこのフラグの音だったんだけど」

にこ「その基準はともかく。天気予報があてにならないってのはこれで証明されたわね」

にこ「タイミングがドンピシャだったからあたかも海未の奇跡かと私も信じちゃうところだったわ」

あんじゅ「奇跡でいいんじゃないかな」

海未「これは……随分とサービスがいいですね」

凛「うっわー♪ あんなに綺麗で大きな虹って始めて見た!」

穂乃果「穂乃果も! まるで虹に雨雲が消されていくみたい」

絵里「ハラショー」

海未「……ニコフィラ姉さん。これで下克上の準備は完璧です。この蒼の神話・ウミンディーネが保証します」

にこ(やり遂げた感のある海未に真実を告げられる程、私は悪魔じゃないわ)

にこ(であるのなら私が掛けるべき言葉は一つね)

にこ「あの日あの時海未と出逢えたことは今日という奇跡を起こす為の必然だったのかもしれないわね」

にこ「SMILEに蒼の神話なくては下克上は果たせなかった。後にそう言われること間違いなしだわ」

海未「尊敬する姉にそう言って貰えると光栄です」

夕方に新聞部が撮影した海未の儀式が本日の休憩PVとしてUPされると、多くの動画サイトにもUPされる。

スクールアイドルやラブライブに興味がない層や日本外までもその奇跡の光景に魅入られた。

大下克上と銘打つ大会の成功はこの《蒼の奇跡》が不可欠だったと誰もが口にする。

大会当日のにこの伝説と対になる伝説として、予選の時期になるとファンに語られていく。

海未にとっては人生で一番忘れたい黒歴史となったが、皮肉なことに生涯忘れられない記憶となった。

そんな本人の思いとは裏腹に、奇跡の立役者が生徒会長を勤める音ノ木坂学院の入学希望者が殺到する。

そして『ウミンディーネ会長』と呼ばれる度に顔を赤くする未来が待ち受ける。

……それはまだ少しだけ先のお話。

あんじゅ「あの子はもしかしたらエリーちゃんのお婆ちゃんが海未ちゃんのお婆ちゃん達の前で呼び込んだ」

あんじゅ「天気を司る妖精だったのかもしれないね」

海未「私たちが生まれる前からこうしているのが決まっていたのかもしれませんね」

絵里「ええ、そうね。私達の出逢いは運命に決められていたのよ」

あんじゅ「スピードワゴンさん」

絵里「何か言った?」

あんじゅ「なんでもないよ! なんでも!」

にこ「……え、あれ?」

あんじゅ「にこ、どうかしたの?」

にこ「どうして絵里がここに居るのよ。てか、海未の回想どこいったのよ」

海未「あの日の奇跡は今話したばかりじゃないですか」

にこ「いやいやいや! だとしても絵里が居なかったでしょ?」

あんじゅ「そしてにこは大下剋上で奇跡を起こし、私達はラブライブ予選を三位通過したにこ」

にこ「もはや前触れも何もなくなってる!?」

穂乃果「ラブライブ本選一位通過はリトルトーキョー。二位がアライズだよっ」

凛「それでこれはにこちゃんが本選の抽選会の話ニャー」

――ラブライブ本戦 抽選会

今でも信じられないけど、SMILEは予選を奇跡の三位通過。

抽選の権利は私が一番先。

Aグループなら一位通過のLittele Tokyo。

BグループはA-RISEが待ち受ける。

くじ運のない私より他のメンバーにお願いしたかったのに、リーダーなんだからと押し切られた。

どんな結果になっても後悔しないと言ってたけど、責任重大よね。

「それでは抽選会を開始します。一番は三位通過、音ノ木坂学院SMILE」

改めて一番に呼ばれると胸の奥がギュッと締め付けられた。

小さく呼吸を三度繰り返してから返事を返す。

にこ「はいっ!」

シンデレラはどういう気持ちでお城の階段を上ったのかしらね。

十二時になれば魔法は解けてしまう。

そのことが心配だったのか、それともただ舞踏会に参加出来ることが嬉しかったのか。

それとも……今のにこみたいにふわふわとした表現し難い気持ちだったのかしらね。

二年半。色んなことがあったけどここまでやってきた。

夢にまで見たラブライブ本戦への権利。

どこまでやれるのか分からない。

でも、やれるところまでやる以外の道はない。

例え一回戦の相手が誰であろうと全力で望む。

「それではお願いします」

箱の中にある番号の書かれたボールを取る。

それだけのことなのに箱に向ける手が震えているのが分かった。

にこ「…………」

目を閉じずともここまであった出来事が思い出される。

最近絵里と海未に言われるアイドルになるという夢のこと。

キラ星と出逢わなければみたいに思われてる感じがするけど、それは違うと思う。

何故か過大評価されて誤解してるのよね。

もしキラ星に出逢わなかったらのIFがあるとすれば……。

きっと何があってもスクールアイドルで人気になることを優先させてたと思う。

そんな盲目的になっていた私が果たしてあんじゅのことを気に掛ける余裕があったかどうか。

何よりも自分のことを優先させて、アイドルを目指すには不向きな性格になっていたと思う。

そうなれば完全にグループは解散したのと同じように一人ぼっち。

きっと周りの所為にして不貞腐れて、スクールアイドルとして人前に立つことすら出来なかった筈。

もしかしたら一人を理由に生徒会長になった絵里にアイドル研究部廃部の知らせを受けていたかも。

向こうが正しくても私は間違ってないと勝手に噛み付いてた。

今のような関係になるのには私が夢を諦める必要があった。

運命なんて言葉は信じてないけれど、でも……確かにそう言いたくなる出逢いの数々があった。

だったら私が引き当てる番号は決まっている。

Bグループ九番。

キラ星の隣以外にありえない。

「出ました。音ノ木坂学院SMILE。Bグループ九番!」

やっぱりね。

「早くも二位通過のA-RISEと三位通過のSMILEが対戦することになりました!!」

これでハロウィンイベントの時に絵里が勝手にしてきたキラ星との約束を反故にせずに済む。

他のメンバーには怒られる結果かもしれない。

でも私にとっては最高の引き。

今日という日までの全てを無駄にしなくて済んだ。

一等星の輝きの前では四等星の私じゃ霞むだけだけど、私以外のメンバーは強力よ。

私達の全てをA-RISEに魅せる。

ううん、A-RISEだけでなく観に来てくれたお客さんも笑顔にしてみせるわ。

本当に沢山の人達に支えられてここまできた。

その人達が元気になってくれるようなライブにしてみせる。

予選のような奇跡はもう起きないと分かってる。

だからこそ後悔のないように出し惜しみなしで。

あんじゅが言ってた提案を本当にやってみようかしらね。

今から本戦までの間にSMILEのみんなで作る最高の新曲を――。





ツバサ「始まる」





最終回に続く...


■さよならのよこく■

第十回ラブライブ本戦

SMILE VS A-RISE

矢澤にこと綺羅ツバサの再会がついに果たされる

夢を諦めた少女は様々なことを経験し、自分の中の答えと廻りあう


次回 夢を諦めたスクールアイドル 最終回


【ネバーエンディングラブライブ】


「さぁ、夢を始めましょう」

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