棟方愛海「怪我人」 (19)

美由紀「今日もいろいろあったねー」

愛海「いやいやまだまだ、お仕事が終わっても事務所に帰れば再びそびえたつ双丘がね?」

美由紀「そびえ立つ? そういえばこの前は帰ってすぐに清良さんとお隣の部屋に行ってたけど、何してたの?」

愛海「大人の会議かなぁ」

美由紀「大人の? 千枝ちゃんが興味ありそうだね?」

愛海「まだ千枝ちゃんには早いかなー、扉の向こうは神聖な領域なんだよー」

美由紀「……?」

愛海「ふふふー……んっ?」

美由紀「あれ?」

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愛海(木に風船が引っ掛かってる?)

美由紀「女の子がいるよ? ……迷子かな?」

愛海「いや、ここは普通の通り道だから……きっと風船を離しちゃったんだろうね?」

美由紀「大人の人を呼んで来よう!」

愛海「いやいや、ここは任せてっと!」

――ガシッ ヒュッ

愛海「小さな取っ掛かりでもあたしの手に掛かればスムーズに!」

美由紀「わぁ! お猿さんみたい!」

愛海「褒めてるんだよね? はーい、夢が詰まった小さな膨らみを――」

美由紀「風船だよね?」

愛海「キャッチ! っとと……」

美由紀「危ないよ?」

愛海「大丈夫大丈夫! 間違ってもあたしのこの指が自然にモノから離れる事はないよ」

愛海「狙ったエモノは逃がさないってねー?」

美由紀「木の事だよね?」

愛海「もちろんだよ? さて、今からゆっくりと降りるから、近くにいたら危な――」

――ベキッ

愛海「いっ」

美由紀「あっ!?」

――ドシーン



・・

・・・


清良「はい、これで大丈夫」

愛海「じゃないよっ! 力を込めてもパサパサした触感しかしない!」

清良「包帯だから当たり前ですよ」

早苗「慣れない事するからそんな事になるのよ、判断が悪かったわけじゃないけど」

愛海「ああーそんな事言われたくない人に言われたー」

早苗「ほう」

愛海「あいだだだだ! きよらさん! 怪我人に追撃する人が!」

清良「早苗さん、一応腕は本当に怪我しているので……」

早苗「そう? でもきっとこの子両腕使えなくてもいつも通りよ?」

愛海「甘いね、この手の感触を通してお山に登ることこそ重要なんだよ……!」

清良「……だそうですけど」

早苗「説得力があるのかないのか」

愛海「木に登ったでしょ? 枝が折れて落ちちゃったでしょ? それでコレなわけ」

早苗「コレねぇ、折れてるの?」

清良「そこまでは大丈夫でしたが、念のためです」

愛海「念のためなら外してもいいと思うんだよ、ほらこうしても……」

――ギュムッ

愛海「……って感じで、お山の感触も大特価半額セール中だよー、嬉しくないよー」

早苗「ほう、揉んでおいてつまらないと言う?」

愛海「あいだだだだ! きよらさん! 怪我人に投げハメする人が! 痛い!」

紗南「何々? ゲームの話……ってなにこれ!?」

愛海「へるぷ!」

紗南「怪我? 手を? ゲームも出来ないね」

愛海「あたしはそれより生活に不便が出そうで嫌だよ」

紗南「そっか、ドアを開けるとか宝箱を開ける時も大変だね」

愛海「後者の心配はしなくてもいいかな、でもお宝といえば手に感触が伝わらないのが」

――ギリッ

愛海「痛っ! 肩外れちゃう! とめて!」

早苗「いい加減にしなさんな」

愛海「そういいつつ曲げるっ!? 壊れちゃう! あたし壊れる!」

紗南「アンダーフローすれば一気に255だよ!」

愛海「ここ現実! 大丈夫じゃないっ!」

清良「あの、仮にも怪我人なんでそれ以上は……」

早苗「でもこんなタイミングじゃないとまともに話も出来ないのよ、焦点が胸よこの子」

早苗「今は手がこんなだから、ほかにも気が向いてるけど」

紗南「どれくらいで治るの?」

清良「一、二日安静にしておくようにと念を込めての包帯だから、そこまで大怪我じゃないですよ」

愛海「だから外してくれてもいいのに」

早苗「日頃の行いよ、しばらく反省しなさい」

愛海「もどかしい……でも、一日安静にすれば明日は外せる?」

清良「ええ、問題なく」

愛海「そっか、一日……たった一日……うう……いや、努力してみせる!」

愛海「だから本日最後の一回を紗南ちゃんで――」

――グイッ

早苗「短い決意だったわね」

愛海「痛い痛い痛い! きよらさん! きよらさあああん!!」

清良「早苗さん、何度も言っていますが仮にも怪我人なので……」

愛海「よく考えたら怪我人に仮もおかしいって! 怪我は本物あいたたた!」

早苗「じゃあ怪我人らしく大人しくしときなさいっ……!」

紗南(……今日は事務所が大変そうだから帰ろう)



・・

・・・


――ガチャッ

沙理奈「おはよっ!」

愛海「豊満な気配がするよっ!」

清良「こらこら暴れないの」

沙理奈「怪我は聞いてたけど、本当だったんだね? いつもなら一直線に飛んでくるのに」

愛海「ご所望なら今すぐにでもっ!」

早苗「ほう」

愛海「ぐえっ、く、苦しい……痛くはなくなったけどそれはそれで辛い……」

沙理奈「なんか、大変そうだね?」

早苗「手じゃなきゃ駄目とは本人が言ってるんだけど、無視して飛び掛かりそうな勢いよ」

愛海「この手が乾く……」

沙理奈「大丈夫なの? 放っておいたら何か能力に目覚めそうな台詞だけど」

清良「おそらくは大丈夫かと」

早苗「最悪、折っちゃいましょう」

沙理奈「え、そっちに振るの? 折る方向で話進むの?」

――ガチャッ

くるみ「お、おはようございま――」

愛海「せええいっ!!」

くるみ「ひゃああああ!?」

――ガシッ

愛海「ぎゃああああ!!」

早苗「はいはい、お薬の時間ですよー」

愛海「痛いよ! 治すところないって! それに薬と言いながら包帯を叩かないで!」

早苗「整備不良の恐れがあるから、ブレーキつけなきゃ」

愛海「あたしは機械じゃないよ! レンチじゃ治らないって! きよらさん助けて!」

清良「ボルトで固定……」

愛海「あっ! 何だか物騒な結論を導きそうだよ!?」

くるみ「ふえぇ……?」

沙理奈「くるみちゃん、付き合ってたら怪我するよ」

愛海「こっちが怪我してるの! あたしはいたってアクセルもブレーキも正常だって!」

美世「おっ、車の話?」

愛海「あんたは帰って!!」

――ガチャッ

千枝「あの……愛海さん、怪我したって……」

沙理奈「そこにいるよ」

早苗「これでよし」

清良「よし、ですか?」

千枝「えっ……!? ぜ、全身包帯まみれですけどそんなに大怪我……!?」

愛海「犯人はそこのお姉さんです、ばたっ」

早苗「ごめんね、わざわざおみまいに来てくれたところ悪いけど、今から躾(治療)しなきゃダメなの」

愛海「変なルビが見えたよ、いやルビじゃない普通に変だったよ今の発言」

千枝「あ……えっと、手術ですか?」

早苗「手術にしとく?」

清良「名目上は……」

愛海「名目!?」

早苗「それとも改造にしておく?」

千枝「えっ? 愛海さん改造されちゃうんですか……?」

愛海「そんなわけないと言い切れないから助けて」

――カン カン カン

マキノ「……事務所の階段がやけに暗いと思ったら、電気が切れてるわね」

マキノ「これはこれで怪しげな雰囲気が出ていて面白いかもね、さて……ドアを――」

――ギャアアア

マキノ「…………」

マキノ(悲鳴!? いや、ここは確かに……××事務所と書いてある、間違ってはいない)

マキノ(そもそもこのビル内に他にテナントは入っていないし、間違うはずもない……)

――アアアア

マキノ「……気づかないうちに、変な世界へ飛んだのかしら、いやそんな非論理的な」

マキノ「でも事務所から悲鳴が聞こえるなんてありえないし……」

小梅「あの」

マキノ「ひっ!?」

――ガタンッ ドタン!

早苗「あら? 外が騒がしいわね」

沙理奈「どう考えても中の方が騒がしいけどね」

愛海「本気で壊れるってあたしの腕……腕どころじゃなくて全身……」

くるみ「だ、大丈夫でしゅか……?」

愛海「ありがとー、味方はくるみちゃんだけだよー、ついでに動かないあたしの腕にその豊満な丘を持ってきて」

――ギリッッ

愛海「あいたあぁ!!」

くるみ「ふえぇっ!?」

――ガチャッ

小梅「……あの、入っても大丈夫ですか?」

清良「どうぞ、別にいつも通り入ってきてもいいんですよ?」

小梅「でもなんだか……取り込み中?」

早苗「大丈夫大丈夫、小梅ちゃん一人?」

小梅「いや……マキノさんも」

マキノ「おはようございます」

愛海「どしたの? 怪我してるよ?」

マキノ「……あなたの方が重傷に見えるけど」

小梅「包帯人間…………ゾンビ?」

沙理奈「ある意味正解」

愛海「じゃないって」

愛海「それにしてもひどい、何がひどいかって怪我人に対する扱いが」

早苗「包帯に覆われているはずなのに、手がいつもの動きをしているように見えるわ」

愛海「実際にしているよ」

早苗「本当に怪我してるの……?」

清良「そう聞いていますが」

愛海「この両手の感触さえ戻れば一発で完治しますよきよらさん!」

早苗「……しばらくこのままにしておきましょう」

愛海「具体的には?」

早苗「そうね……その胸に対する執着の病気が治ったら」

千枝「黄色い救急車……?」

愛海「それ治らない奴じゃない? あとそれはちょっとひどくない?」

美世「おっ、車の話?」

愛海「そうだね車の話だね! でも今は関係ないかな!」

小梅「救急車で運ばれた先は怪しい研究施設……」

愛海「病院だね!? 改造はされないよ!?」

光「改造!?」

愛海「ほらもうややこしくなった! 人の怪我を茶化すのは止めよう!」

マキノ「仕事は大丈夫なの?」

清良「数日後なので、それまでに収まれば」

早苗「性格が?」

愛海「怪我がだよね?」

早苗「えっ?」

愛海「あたしは自分を曲げないよ」

早苗「なら腕を曲げるしか……」

愛海「ねぇねぇきよらさん、この人さっきからあたしをイジめてくるあいたたたたた」

小梅「関節が逆に……!」

千枝「柔らかいですね」

愛海「あたしとしては間接よりその柔らかいお山が――あーっ! 早苗さんギブギブ!」

清良「……治るでしょうか」

沙理奈「いや無理でしょ? それこそ根本からどうにかしないと」

愛海「本当にっ! あっ、だめっ……」

マキノ「…………仕事ね」

くるみ「お外行ってきましゅ」

小梅「あの子が呼んでる」

愛海「あっ! 見捨てないでっ! あたしもついていくっ!」

――ガシッ

早苗「君はこっち」

愛海「あうっ」

清良「みなさん射なくなったところで……一度カウンセリングですね」

愛海「それ絶対駄目! 広がっちゃう! 何とは言わないけど!」

早苗「はいはい連行しまーす」

愛海「警察ノー! あたしは病院に行くべきかなって!」

美世「車の話?」

愛海「この際救急車でもいいからさああぁぁぁ」

――バタン

千枝「…………」

光「尊い犠牲だったね」

千枝「うん……う、うん?」

――アアアアッ



終。


師匠はあいかわらずだなぁ

師匠ともあろう方がたかだか手が使えなくなっただけで情けない。
顔を挟んでもらえばいいんです。
怪我人だからみんな優しくしてくれるハズですよ。

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