大原みちる「ス食うライド」 (107)


ザッ、ザッ、ザッ...


大原みちる「……」

ガラッ

「いらっしゃい!」

みちる「おじさん、この『30分以内に食べ切れれば賞金5000円! オリジナル特大オムそば』ってのください」

「おいおいお嬢ちゃん、何かの罰ゲームならやめておいた方がいいぞ?」

みちる「いえ、大丈夫ですよ!」

「……じゃあ大丈夫なんだな。今作るからちょっと待ってなよ」

みちる「はい!」


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「あんな女の子が特大オムそばだってよ。それにしてもなんだ、背中のフランスパンが詰まったカゴは……っておい、どうしたんだ?」

「イーターだ……」

「あの子がイーター? 冗談だろ?」

「お前知らないのか? ここらじゃ有名なパンを背負ったイーター……」

「“シェルブレッドのみちる”!」






第一話『シェルブレッド』





「はい、特大オムそばおまち!」

みちる「結構大きいですね」

「はは、そりゃそうだ。じゃあタイマー押すぞ?」

みちる「お願いします!」スッ


「おい、あの子箸じゃなくてカゴのパンに手を伸ばしたぞ!」

「いいから見てろ、あれが“シェルブレッド”の食い方だ……」


「スタート!」ピッ

みちる「食前のファーストブレッド!」ガツガツハムハムムシャムシャゴクンッ


「なっ!?」


みちる「いただきます!」パン!


ガツガツガツガツガツガツガツガツ...

「な、なんてペースだ……まだ10分しか経ってないのにもうオムそばが半分だぞ!」

「そろそろ来るぞ……!」


みちる「……ふぅ」スッ


「箸を置いた……まさか!?」


みちる「箸休めのセカンドブレッド!」ガツガツハムハムムシャムシャゴクンッ


ガツガツガツガツガツガツガツガツ...

ダンッ!


「すげぇ、二本もフランスパンを食べたうえでペースを落とさずに完食した……」

「いや、まだだ……“シェルブレッド”の食事はまだ終わっちゃいない!」


みちる「はぁ、美味しかった……」スッ

みちる「デザートのラストブレッド!」ガツガツハムハムムシャムシャゴクンッ


「あれだけ食べてまだ足りないのか!?」


みちる「ごちそうさまでした!」パン!

「す、すげぇなお嬢ちゃん……」

みちる「美味しかった……あ、追加注文いいですか?」


???「待ちなさい“しぇるぶれっど”!」


みちる「へ、あたしですか?」


「あ、あの人は!」

「あの人なら俺でも知ってるぞ……」


「765プロのアイドルにして都内最強のイーター、“銀色の女王”……四条貴音!!!」

ד銀色の女王”
○“銀色の王女”


四条貴音「飲食店で持参のぱんを食すなど……同じいぃたぁとして許しがたき行為!」

みちる「これはあたしとパンの絆の証なんです。さすがに持ち込み禁止のところでは食べませんよ」

貴音「そのような問題ではありません! 店に対する礼儀の問題なのです!」

みちる「お互い分かり合うことはできないみたいですね……こうなったら!」


「ま、まさか!」


貴音「ふぅどふぁいとです!」


貴音「場所を変えましょう。ここは普通の飲食店……迷惑をかけるわけにはいきません」

みちる「望むところです!」

ガラッ


「おい、俺たちも行くぞ! “銀色の王女”のフードファイトなんて滅多に観れるもんじゃねぇ! ごっそさん!」

「ごちそうさん!」


ガラッ

「いらっしゃ……ん?」

みちる「……賞金貰うの忘れてました!」


貴音「店主、いつものものを」

みちる「あたしも同じやつで!」

貴音「……今から出てくる品を先に完食した方が正義、ということでいいですね?」

みちる「はい、シンプルが一番です」


「まだラーメンが出てきてねぇってのになんて威圧感だ……」

「近くで見てるだけで胃もたれしてきたぜ……!」


ゴトッ

貴音「いただきます――」

みちる「食前のファーストブレッド!」ガツガツハムハムムシャムシャゴクンッ

貴音「っ!」

みちる「いただきます!」パン!


ズルズルズルズルズルズルズルズルッ!


「なんて勢いだ……」

「あの二人、いつ息を吐いてるんだ!?」






貴音「……」ズルズルズル...

みちる(し、しまった……!)ズルズルズル...





みちる(さっきの店で食べ過ぎた!!!)




みちる「箸休めの――」

貴音「ご馳走様でした」コトッ

みちる「!!!」


「は、早い!」

「“シェルブレッド”はまだ箸休めの段階なのに!?」


貴音「わたくしの、勝ちですね」






貴音「食い改めなさい」

ガラッ


みちる「……」ズル、ズルルッ...


みちる「……」ゴクゴク...


みちる「……」コトッ


みちる「……ごちそうさまでした」


ガラッ

次回へ続く


みちる「…………」フラフラ

みちる「……うっぷ」

???「おーい、みちるちゃーん!」

みちる「あ、法子ちゃん……」

椎名法子「あれ、元気ないね? 元気がないときはドーナツだよっ」

みちる「あはは、パンの方が好きなんですけどね……」パク

みちる「……うん、元気出てきました! お礼にパンをどうぞ」

法子「あたしもドーナツの方が好きなんだけどね」モシャ


法子「……で、どうしたの?」

みちる「いやぁ、フードファイトで四条貴音に負けちゃって……」

法子「四条貴音って……あの“銀色の王女”!?」

みちる「やっぱり都内最強と言われてるだけはありましたよ。全然歯が立ちませんでした」

法子「そうなんだ……」

みちる「あそこまでボロ負けしたらさすがに悔しいですね……」

法子「じゃあリベンジしようよ!」

みちる「……そうですね!」






第二話『走れ、満腹少女』





法子「そうと決まれば特訓だね!」

みちる「特訓すると言っても何をすればいいんですかね?」

法子「いっぱい食べるとか?」

みちる「それはいつもやってます」

法子「うーん……じゃあこんなのはどうかな?」


法子「まずお店で限界まで食べます」

みちる「はい」

法子「限界まで食べた所でお店の人にこう言います」


法子「『すみません、財布を持ってくるのを忘れました! この子を置いて行くので財布を取ってくるまで待っててください!』」


みちる「あ、法子ちゃんもついて来てたパターンですか」

法子「ついて来てたパターンです。そして財布を取りに帰るために店を出たみちるちゃんは別のお店に入ってこう言います」

みちる「他のお店に入るんですか!?」


法子「『すみません、この制限時間内に食べきると賞金が貰えるやつください!』」


法子「限界の状態で挑戦して、その賞金で代金を払う……これが『走れメロス』ならぬ『食べろミチル』作戦!」

みちる「『食べろミチル』作戦!」


みちる「で、でも時間内に食べ切れなかったら……」

法子「そんな時の為に一応財布は持っておいてね」

みちる「安心しました」


――――翌日――――


みちる「すみません、財布を持ってくるのを忘れました! この子を置いて行くので財布を取ってくるまで待っててください!」

法子「できるだけ早く帰ってきてね!」


タッタッタッ...


みちる(ううっ!)


みちる(限界まで食べた後に走るのは相当辛い!)


――――一週間後――――


みちる「すみません、財布を持ってくるのを忘れました! この子を置いて行くので財布を取ってくるまで待っててください!」

法子「できるだけ早く帰ってきてね!」


タッタッタッ...


みちる(それにしても……)


みちる(この特訓を始めた時と比べて必要なお金がどんどん多くなっている気がする!)


ガツガツガツガツガツガツガツガツ...

みちる「デザートのラストブレッド!」ガツガツハムハムムシャムシャゴクンッ

みちる「ごちそうさまでした!」パン!

みちる(ここは23区の外だから……きっと四条さんは来ない!)

「あっちの店で“銀色の王女”がラーメン食ってるぞ!」

みちる「ええっ!?」ガタッ

みちる「おばちゃん賞金ください!」






みちる(今再戦したら……絶対に勝てない!)


ガラッ

みちる「ごちそうさまでした!」

タッタッタッ...


ガラッ

貴音「真、美味でした」

みちる「ああっ!」

貴音「……おや」


みちる「……今はファイトできませんよ、お腹いっぱいですから。明日なら大丈夫です!」

貴音「……」スタスタスタ

みちる「あれっ、スルーされた!?」

貴音「わたくしはあいどる……そう何度も野良ふぁいとをしていては活動に支障をきたします」

貴音「どうしても再戦したいと言うのであればこれにえんとりぃしなさい」ピラ

みちる「『大食い女王決定戦 E.O.D』……!」

貴音「開催は半月後。待っていますよ、“しぇるぶれっど”」


みちる「……みちるです」

貴音「……?」

みちる「大原みちる。それがあたしの名前です」

貴音「……待っていますよ、大原みちる。ちなみにわたくしの名前は――」

みちる「四条貴音さんですよね。知ってますよ、有名人ですから」

貴音「なんと」


『E.O.D』に向けて、みちると法子は『食べろミチル』作戦を繰り返した!

賞金を荒稼ぎしすぎたせいで都内のチャレンジメニュー提供店では『大原みちるお断り』の張り紙が張られ、最終的に神奈川や埼玉まで行くハメになった!

みちるがチャレンジメニューに挑戦している間にお腹のすいた法子が追加注文をして、予定より多く店をハシゴせざるを得ない状況に陥ったこともあったが……まあ、それも特訓の一つだろう!

なにはともあれ法子も少しずつイーターとしての才能に目覚めつつあったのだ!

「もしかして法子はみちるの特訓にかこつけて食べたい放題してるだけではないのか?」と思った読者もいるだろうが、そんなことはないぞ!

なんとこの『食べろミチル』作戦では、二人がドーナツ屋に入ることはただの一度もなかったのだ!




そして迎えた『E.O.D』当日――!


次回へ続く


法子「とうとうこの日が来たね……!」

みちる「腕が……いや、お腹が鳴りますね! パンでも食べましょうか」グキュゥ

法子「まだ試合前だよ!?」


ザッ、ザッ、ザッ...


貴音「会場までは迷わずに来ることができたようですね」フフフ

法子「ぎ、“銀色の王女”!」

貴音「そのような肩書で呼ばずとも、四条貴音で充分ですよ」






法子「し、四条貴音!」

貴音「わざわざ言い直さずとも」


みちる「トーナメント表を見ましたけど、四条さんとあたしが当たるのは決勝みたいですね」

貴音「あなたがそこまで勝ち進んでいれば、の話ですが」

みちる「勝ち進みますよ。そのために都外まで行ってきましたから」

貴音「なぜ都外に……ちなみに先程、らぁめんを食べてまいりました」

みちる「試合前にですか!?」

貴音「試合前にです」フフン






みちる「あたしもパンを食べます!」モシャァ

法子「ダメだってば!」

みちる「ふごおおおおおお!」






第三話『E.O.D -EAT OR DIE-』







第一回戦 メニュー:お茶漬け



???「ボンバァァァァァァァ!」

みちる「!?」


「一回戦第一試合、大原みちる選手 対 日野茜選手!」


日野茜「ボンバァァァァァァァ!」

みちる「え、大丈夫ですよね、ちゃんとボンバー以外も話せますよね!?」


「制限時間は30分です。それでは試合開始!」ジャァァァァァァン!

みちる「食前のファーストブレッド!」ガツガツハムハムムシャムシャゴクンッ

茜「ボンバァァァァァァァ!」ガツガツガツガツガツガツガツガツ

みちる「いただきます!」パン!


ガツガツガツガツガツガツガツガツ...


みちる「おかわりください!」ダンッ

茜「ボンバァァァァァァァ!」ダンッ


ガツガツガツガツガツガツガツガツ...


みちる(もう少し食べたら箸休めを……)


「試合終了!」ジャァァァァァァン!


みちる「ええっ!? あっ、ごちそうさまでした!」パン!

茜「ボンバァァァァァァァ!」ペコリ

「まもなく結果発表に移ります!」


「――大原みちる選手の勝ちです!」


ワァァァァァァァァァ!


茜「ボンバァァァァァァァ!」ガクッ


みちる「えぇー……まだ全然食べ足りないんですけど……はっ!」

みちる「これが『食べろミチル』作戦の成果!?」


法子「みちるちゃんどうだった?」

みちる「結局ボンバーしか言いませんでしたね……じゃなくて、勝ちましたよ! 法子ちゃんはどうでしたか?」

法子「あたしもなんとか勝ったよ! もうお腹がいっぱいで……」

みちる「……」

法子「どうしたの、みちるちゃん?」

みちる「いえ、何もないですよ!」






みちる(次からは食べるペースを上げないとダメですね……)




第二回戦 メニュー:激甘ドリンク



みちる(……ドリンクって大食いの内に入るんでしょうか)


「二回戦第一試合、大原みちる選手 対 榊原里美選手!」


榊原里美「ほわぁ、よろしくお願いしますねぇ~」

みちる「よろしくお願いします!」


「制限時間は20分です。それでは試合開始!」ジャァァァァァァン!


みちる「食前のファーストブレッド!」ガツガツハムハムムシャムシャゴクンッ

里美「いただきまぁす」ゴクゴク

みちる「いただきます!」パン!


みちる「……」ゴク...

みちる(あ、甘い! 甘すぎますよ! いくらペースを上げるって言ったってこんなの……)チラッ

里美「美味しいですぅ~」ゴクゴク

みちる(なんであんなペースで飲めるんですか!? こんなに甘い……はっ!)

みちる(そういえば……)


――――

――――――

――――――――


法子『普通のパンばっかり食べてるけどずっと同じ味で飽きないの? 惣菜パンや菓子パンならともかく……』

みちる『飽きませんね! でもちょっと味にアクセントが欲しいなぁと思った時はこれですよ!』ムシャムシャ

法子『あぁ、ジャムだね!』

みちる『マーガリンやピーナッツバターもいいですね!』ムシャムシャ


――――――――

――――――

――――


みちる(これもジャムやピーナッツバターだと思えば……!)スッ

ドボォ

「おっとォ! みちる選手パンをジュースに漬けたぞぉ!?」


みちる「シェルブレッド……バーストォォォォォォ!」ガツガツハムハムムシャムシャァァッ!


みちる(やっぱり! こういう甘いものはパンによく合いますね!)ガツガツハムハムムシャムシャァァッ!


「試合終了!」ジャァァァァァァン!


みちる「ごちそうさまでした!」パン!

里美「ごちそうさまでしたぁ」


「――大原みちる選手の勝ちです!」


ワァァァァァァァァァ!


里美「ほえぇ……負けちゃいましたぁ」ショボリン


みちる「ありがとうございます、法子ちゃんのおかげで勝てました!」

法子「ええっ!? あたし何もしてないよ!?」


ザッ、ザッ、ザッ...


貴音「順調に勝ち進んでいるようですね、大原みちる」

みちる「当然ですよ、あなたと戦うまでは負けられませんから」

貴音「明日の三回戦と準決勝も努々気を抜かぬよう……」フフフ...

みちる「その言葉、そっくりそのまま返しますよ……!」






貴音「ふふふ……!」

みちる「ふふふ……!」

法子「ええと……ふふふ?」

次回へ続く




第三回戦 メニュー:ケーキ



「三回戦第一試合、大原みちる選手 対 三村かな子選手!」


三村かな子「よろしくお願いしますね♪」

みちる「よろしくお願いします!」

みちる(とにかくペースを上げて……)


「制限時間は30分です。それでは試合開始!」ジャァァァァァァン!


みちる「食前のファーストブレッド!」ガツガツハムハムムシャムシャゴクンッ

かな子「いただきます!」パクパク

みちる「いただきます!」パン!






第四話『イーターの鼓動』





みちる「……」ガツガツガツガツ...

かな子「……」パクパクパクパク...

みちる「箸休めのセカンドブレッド!」ガツガツハムハムムシャムシャゴクンッ

「おっとォ! みちる選手ここで折り返した! まだ20分残っているが大丈夫かぁ!?」

みちる「!?」

みちる(そんな……)






みちる(ペース配分を間違えた!?)


かな子(ふふふ、ペースが落ちてきてますよ……)パクパクパクパク...

かな子(愛梨ちゃんと特訓してきた私に敵うはずがないんです)

かな子(愛梨ちゃんの作るケーキは太いんですよ……甘いんですよ……作られ続けっぱなしなんですよ!)

かな子(材料が無くなるまでケーキを食べ続ける、この日の為にそんな生活を続けてきた私には!)






みちる(ぐぐぐ、お腹がいっぱいに……はっ!)ガツガツ...

みちる(そういえば『食べろミチル』作戦の時……)


――――

――――――

――――――――


みちる『ぐぐぐ、もう食べれません……』

法子『想像して。今みちるちゃんはジャングルに迷い込んで一週間。パンはもちろん他のご飯もしばらく食べてないよ』

みちる『へ?』

法子『ほら、聞こえてこない? 一週間何も食べてないみちるちゃんのお腹が鳴ってるよ……?』

みちる『ほ、ほんとだ! なんかお腹空いてきました!』グウゥゥゥ

法子『えっ』


――――――――

――――――

――――


みちる「……」

「みちる選手の食べる手が止まってしまったぁ! これはかな子選手の勝利かぁ!?」

みちる(ここはジャングル、迷い込んで一週間、そしてあたしは……)






みちる(飢えに飢えた猛禽類!)クワッ


ガバガバガバガバッ!

かな子「!?」パクパクングッ!

かな子「げほっげほっ!」

「みちる選手、急に勢いを取り戻したぞぉ! それにつられてかな子選手がペースを乱してしまったぁ!」

みちる「……」ガバガバガバガバッ!


「試合終了!」ジャァァァァァァン!


みちる「……ご、ごちそうさまでした!」パン!

かな子「ごちそうさまでした……」


「――大原みちる選手の勝ちです!」


ワァァァァァァァァァ!


みちる「ふう……ちょっと食べすぎました……」

法子「う、うん……あたしも……でも勝ったよ!」

みちる「あたしもです」


ザッ、ザッ、ザッ...


貴音「その様子では次の準決勝、勝ち進むのは難しいのでは?」フフフ

みちる「そういう四条さんも表情が少し強張ってますよ」フフフ

貴音「…………その洞察力、さすがと言っておきましょう」

みちる「猛禽類ですから」ウヨォォォォォ

法子「……猛禽類?」

貴音「なんですかその面妖な動きは!」

みちる「面妖ならぬメンフクロウです」ウヨォォォォォ

貴音「や、やめなさい!」


貴音「……ともかく、準決勝でわたくしと当たるのはあなたですね」

法子「はい!」

貴音「互いにふぇあぷれいで参りましょう」

法子「よろしくお願いします!」

みちる「二人とも頑張ってくださいね!」ウヨォォォォォ

貴音「やめなさい!」

次回へ続く




準決勝 メニュー:ステーキ



みちる「突然重いメニューになりましたね……」


「準決勝第一試合、大原みちる選手 対 塩見周子選手!」


塩見周子「よろしゅー♪」

みちる「よろしくお願いします!」


「制限時間は30分です。それでは試合開始!」ジャァァァァァァン!






第五話『暴食の果て』





みちる「食前のファーストブレッド!」ガツガツハムハムムシャムシャゴクンッ

周子「いただきまーす」

みちる「いただきます!」パン!






みちる(やっぱり三回戦のケーキがまだ残ってる……)

みちる(それでも負けるつもりはありません!)ムシャガツムシャガツ...





周子「ギブアップ、ごちそうさまでしたー!」




みちる「へ!?」モゴフッ

「おっとどうした周子選手! 突然のギブアップ宣言だぁ!」

周子「いや、もうお腹いっぱい。まだケーキも消化できてないのにお肉はキツいわ」

「え、えっと……じゃあギブアップということでいいんですね?」

周子「二日間ご馳走様でしたーん♪」


「ではこの試合、塩見周子選手のギブアップにより大原みちる選手の勝ちです!」


周子「いやー食費が浮いた浮いた!」


みちる「えぇー……」

みちる「まあ、勝てたからありがたいと言えばありがたいんですけど……」

みちる「そうだ、法子ちゃんと四条さんの戦いはどうなってますかね?」


ワァァァァァァァァァ!


みちる「この歓声は……」


「やはり強い! 輝きの向こう側のイーター“銀色の王女”は伊達じゃあない!」

「椎名法子選手にダブルスコアを付けて四条貴音選手、圧勝!」


ワァァァァァァァァァ!


法子「みちるちゃん、あたし……」ガクッ

みちる「法子ちゃん!」ガシッ


ザッ、ザッ、ザッ...


貴音「椎名法子……自分の限界を考えずに食べ過ぎです」

みちる「……四条さん」

貴音「激しく動かしてはいけません。安静にさせておきなさい」

貴音「そして明日の決勝……楽しみにしていますよ、大原みちる」


ザッ、ザッ、ザッ...


みちる「……」


法子「……あれ、ここは……」

みちる「病院ですよ」

法子「ああそっか、あたし負けちゃったんだね」

みちる「……食べ過ぎですよ、元々そんな食べる方じゃなかったのに」

法子「特訓に付き合って、結構食べられるようになったからいけると思ったんだけどなぁ」






法子「ねえみちるちゃん、一つ頼んでいい?」

みちる「なんですか?」


法子「あたしの代わりだと思って、このドーナツ持って行ってくれないかな。この状態だと応援に行けそうにないから」

みちる「……分かりました。じゃあこれ、おみまいです」ドサッ

法子「このカゴ……パンは持ってかなくていいの?」

みちる「このドーナツだけで充分ですよ。そのパンは決勝の中継を見ながら食べててください」

法子「ドーナツの方が好きなんだけどなぁ」

みちる「あたしだってパンの方が好きですよ」


法子「……決勝、頑張ってね」

みちる「全力で味わってきますよ!」




決勝戦 メニュー:ラーメン



貴音「おや、今日はぱんを背負っていないのですか」

みちる「はい、今日はこれ一つです」スッ

貴音「どぉなつ……ぱんとの絆は捨ててしまったというのですか!」

みちる「捨てたんじゃないですよ。このドーナツはあたしの友達との、そしてパンとの絆の証です!」

貴音「友とぱん……」


みちる「さあ、食べましょう法子ちゃん! ここは! このテーブルは!!」ムシャァ


みちる「あたしとあなたの、食卓だぁぁぁぁぁぁ!!!」





「「いただきます!」」




            箸休めは――必要ありません!




                                        自らのスタイルを捨てた者に!




  パンを食べるのに箸休めが必要ですか!




                            しかしらぁめんを食す時に余計なものは不要!




                   生地があるんですよ、小麦粉には!





「「おかわり!」」














法子「それにしても凄いよ、あの貴音さんと引き分けたなんて」

みちる「あたしと四条さんで用意されてた麺、全部食べちゃいましたからね。あはは!」

法子「結局何杯食べたんだっけ?」

みちる「夢中で食べてたから覚えてないんですよね……あっ」

法子「どうしたの?」

みちる「ちょっと予定があるんで……また後で来ますね!」

法子「うん、行ってらっしゃい!」


ザッ、ザッ、ザッ...


「……」

「……」

「……」スッ

ガツガツハムハムムシャムシャゴクンッ

「……ふふっ」


ガラッ





「店主、いつものものを」

「あたしも同じやつで!」








最終話『うめぇ』




これにて終了です。六日間お付き合いいただきありがとうございました。アニメでメンフクロウの動きを真似するアイドルたちが見られますように

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