勇者「フンッ! フンハッ!」(15)

魔王「……そうか。勇者はもうこの城まで辿り着いたか」

魔王がそう呟いた瞬間、王の間の物々しい扉が物凄い音を立てて吹き飛んだ。

勇者「紙のように薄い扉だな。少し蹴ってみただけでこれとは」

現れたのは一人の男。
異様なのはその出で立ちだ。
男は半裸だった。全身の筋肉を惜し気もなく晒している。
片手には剣を提げていた。
魔王にはわかる。あれは聖剣だ。

勇者「剣など要らぬ!」グシャァ

魔王「えっ。ちょ」

勇者「私は勇者。そして彼らは私の仲間――」

勇者の後ろから、スキンヘッドのマッチョたちが部屋に雪崩れ込んでくる。

マッチョ「フンハッフンハッ」

マッチョ「フンハァーーッ!」

光る汗。筋肉。
大勢の筋肉たちに囲まれ、勇者が不敵に笑った。

勇者「武闘家だ」

魔王「」

マッチョ「ゼハァッ!」

マッチョ「シャァッ!」

先頭のマッチョが両腕を広げて魔王に躍りかかってくる。咄嗟に魔法で壁を作り、進撃を止める。

魔王「――っ!」

勇者「フンハァッ! ラリアット!」

しかし、勇者の一撃により、魔法の壁が粉々に砕け散った。

魔王「ば、ばかな!」

マッチョ「ウーーーホッ! ホッ!」

マッチョ「ハァハァフゥーーッ」

好機とばかりに、後続のマッチョたちが、腕を鎌首のように曲げて飛びかかってきた。
まるでホラーだ。

魔王「ひい!」

魔王は魔法で火の壁をつくり、後ろに下がる。
マッチョたちは壁を越えてこようとはしない。

だが――

マッチョ「フンハァッ!」

魔王「うわあっ!」

床を突き破って、さらにもう一体のマッチョが姿を現した!
そして、その逞しい腕で魔王の体を押さえ込む。

マッチョ「ハァ、ハァハァフゥーー」

魔王「離れろ――こ、の! ……ぐ、なんて力だ、拘束が溶けぬ」

勇者「無駄だ。彼らの筋肉は、すでに人の域を越えている。神の肉体なのだ」

炎の壁が二つに裂けた。
勇者が壁を両断するように手を降り下ろすと、その風圧で炎がかき消えたのだ。

魔王「は? ……ウワァァア!?」

そして、壁の消失はマッチョたちの侵入を許すことになる。


マッチョ「ウハァ!」

マッチョ「フンッ。フンッ」

マッチョ「ンホォッ! ハッ、ゼヤァ!」

マッチョ「シェェエエッ!」

魔王「化け物だ! 貴様らは化け物だ!」

四脚を地につけ、尻を高くあげ、高速で地面を移動する。
マッチョたちの瞳はギラギラと闘志に燃え、その視線は魔王に注がれていた。
犬のように舌を出し、涎を垂らしている。

マッチョ「ハッハッ! ハッハッ!」

魔王「私が想像してたんとちゃう! 私が想像してた勇者と魔王の最終決戦とちゃうぅぅ!」

魔王が暴れるが、マッチョに固く絡み付かれて身動きがとれない。
残る四人のマッチョたちが近づく。
勇者の前に横並び一列に座った。


勇者「おいで」

勇者が一番端にいるマッチョを呼ぶと、勇者の側まで歩いてくる。

勇者「仰向けになるんだ」

マッチョが仰向けになった。
体の前で腕を小さく折り曲げる、犬の服従のポーズだ。

勇者「いいこだ」

勇者がマッチョの割れた腹を優しく撫でた。
勇者の太い指が腹筋の割れ目を沿うたび、マッチョは息を荒げて高く鳴く。
喜んでいる。喜んでいるのだ。

魔王「おえええええええ」

魔王は吐いた。
そして泣いた。

勇者「君もやってごらん」

勇者が魔王の腕を掴んだ。
魔王はいやいやと首を振るが、勇者の力には逆らえず、マッチョの腹に手のひらを押しあてられる。
魔王は撫でた。
やけくそだ。
マッチョを見ないように撫でた。
ざらざらとした感触がやけにリアルだ。

勇者「ふふふ、彼も喜んでいるよ」

勇者は次のマッチョを呼ぶ。
今度のやつはやけに元気だった。

勇者「やってごらん」

勇者が言う。


魔王はマッチョの腹を撫でてみる。
ふさふさとしている。
胸毛だった。

マッチョ「フゥ、フゥ」

そのまま手を下に持っていく。
少しごつごつしていた。
これは腹筋だ。
汗の滑りが気持ち悪かった。

魔王「うう……」

マッチョ「ハッハッ」

魔王「ぎゃあ!」

後ろにいたやつに耳を舐められる。
熱い吐息が頬にかかる。

勇者「ははっ。気に入られたようだ」

魔王は吐いた。

勇者「よし、次だ」

魔王「イヤダアアアアア!」

――こうして魔王は

マッチョ「フンハッ」

マッチョ「ハァッ!」

勇者「さあ、次だ」

魔王「……やめて……許して……」

――マッチョたちが満足するまで

勇者「フンハッ! フンッ!」

――ひたすらマッチョたちの腹を撫で続けたとさ

魔王「……」

マッチョ「ゼェヤァ!」

マッチョ「フンッ! ハハン!」




くぅ~疲れましたw これにて完結です!

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