剣士「冒険物語…!」(1000)

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上記作品の3スレ目となります。よろしくお願いいたします。

 
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――――【 星降町 宿 】
 

剣豪「…無事に塔からココへ戻ってこれて良かったぜ」ハァ


…パサッ

戦士「…よくお似合いです!やっぱりどんな服でも似合いますね!」

魔道士「そうかな…?」

戦士「はいっ!」


…ゴツンッ!!

戦士「」

 
剣豪「お前な…!」

戦士「ってぇな!!」

剣豪「恋煩いかよオメーは!人妻みてぇなもんだぞ!」

魔道士「ひ、人妻かぁ…」


戦士「わ、分かってるよ!だけど、あんな一枚羽織っただけじゃダメだろうが!」

剣豪「似合ってまーす!じゃねえっつーの!それよりこれからの事決めるぞ!」

魔道士「あ、あはは…。そ、それじゃこれからどうするの?」


戦士「えーと…先ずはここの軍の支部へ行きましょう」

戦士「お、お父さんのことと…。貴方が生きていたことを、一刻も早く伝えないといけないので…」


魔道士「…うん、わかった」

 
戦士「じゃあ、行きましょうか」

剣豪「当たり前だ。ほら、行きましょう」

魔道士「うん…」


………

 
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――――【 中央軍 星降町支部 】


戦士「…っていうわけなんですが」

星降兵「…」

剣豪「…」


星降兵「…」チラッ


魔道士「…」ペコッ

 
戦士「…お願いします。一刻も早く、武装中将に会わなければならないんです!」


星降兵「まぁ…話は分かった」

星降兵「では、それを踏まえて…もしもの話だが」


戦士「は、はい」

星降兵「もし君が俺と同じ立場で、世界有数の冒険者が師匠だと言う子が現れたら…どうする?」

戦士「…」

星降兵「しかも、その人が死んだから国のトップを担う人物へ会わせてくれという」

戦士「…」

星降兵「…君なら、信じるかな?」

戦士「…」

星降兵「…どうなんだ」


戦士「…」

戦士「…し、信じます…」


星降兵「…ほう?それが、何か大きな問題を起こすかもしれなくてもかい?」


戦士「…はい。きっと、その人の眼を見れば…本当かどうかは分かるはずだから…」


星降兵「…」

戦士「…」

星降兵「…」

戦士「…」

星降兵「…ふっ」

戦士「?」

 
星降兵「…分かった。連絡がつくよう、聞いてみよう」

星降兵「だが、君たちが直接…という訳にはいかん。本部の者に許可を取り次第だがな」


戦士「…いいんですか!」

星降兵「君たちの名は、戦士と剣豪…だろう?」

戦士「!」

剣豪「!」


戦士「な、何でそれを!」

剣豪「俺らの名前を…?」


星降兵「はは、やはりな」

星降兵「…実は、大戦士殿の名前を出す二人組のパーティが来たら、連絡をよこすように言われていたんだ」

星降兵「大戦士殿の名前、そして武装中将殿の名前を出す二人組の若い男のパーティがあるかもしれない、とね」

 
戦士「だ、誰がそんなことを…」

星降兵「武装中将殿さ。本当に現れるとは思わなかったよ」

戦士「…!」

剣豪「はは…マジかよ…」

魔道士(凄い……!)


星降兵「だが、念には念をおして情報だけ先に共有しろって事は言われてる」

星降兵「すぐに連絡はつくし、転移装置も動く。ちょっとだけ待ってて貰えるかな」


戦士「…は、はいっ!ありがとうございます!」


………
……

 
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それからすぐ、武装中将と連絡がついた3人は転移装置を利用し、中央軍本部へと足を運んだ。

そして、武装中将と対面し――……

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――――【 中央軍 本部 】


武装中将「…っ」ブルッ

魔道士「ぶ、武装先生…!そんな…泣かなくても…!」

武装中将「よく…生きていてくれた…!辛かっただろう…!」

魔道士「い、いえ…」

武装中将「ありがとう…。本当に……ありがとう……っ!」

魔道士「…っ」

 
武装中将「本当に…すまなく思っている…!」

武装中将「若き者たちへ、軍にも関係のない者へ、ここまで迷惑をかけたこと…」

武装中将「利用してしまったこと、犠牲を出したこと…全てへ…!」


魔道士「仕方のないことです…」

武装中将「…っ」


戦士「…武装さん、話を割りますが…少しよろしいでしょうか」

武装中将「…」


戦士「大戦士師匠の望みは、魔道士さんが剣士さんの場所へ戻ること」

戦士「そして、この問題が全て解決し、平和が訪れること」

戦士「まだ、終わりじゃないんです。だから、俺たちが見た事、聞いたこと…信じてくれますか」


武装中将「当たり前だ。…話を聞かせてくれるか」

戦士「…はいっ」

 
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戦士「…以上が、俺たちの知った全てです」


武装中将「そんな場所まで侵攻があったとは…」

武装中将(…見落としていた。まさか西方側からも侵攻があるとは!)

武装中将(恐らく、あの前の西方の地震の場所…消失した村に現れた面子だ…くそっ…!)


戦士「その塔は既に、完成間近と聞きました。完成すれば、魔族は一斉に世界に飛び立つかと…」

武装中将「…参った。まさかこんな事態になるとは…」

戦士「…」


剣豪「…武装さん、すぐに東方祭壇町の奪回戦は始めないのか?」


武装中将「無論、準備は進めている。近々、奪回戦の開始する予定ではある」

 
剣豪「…へぇ」

武装中将「すぐにでも動けるよう、準備はしているが…あとは元帥殿の許可次第なんだがな…」

剣豪「なるほどな」


武装中将(…拳闘家少佐は、恐らくもうこの世にはいない)

武装中将(彼もまた、世界を担う若者の一人であったというのに…俺のせいで…)

武装中将(老害とはよく言ったものだ…。自分で自分が本当に情けなくなる…!)


戦士「…」

剣豪「…」

魔道士「…」

 
武装中将「…」

武装中将「…そうだ、魔道士」


魔道士「は、はい」

武装中将「軍の手に空いている者に、剣士の捜索を頼むか?」

魔道士「!」


武装中将「剣士が姿を消したのは、お前を失った責任感と哀しみ…あらゆる想いのせいだ」

武装中将「その全ては…俺が原因だ…」


魔道士「…」


武装中将「…すぐにでも、あいつに魔道士が生きていることを知らせてやりたいんだ」

武装中将「絶望の淵にいるであろうアイツにもう1度、光を見せたい…」

 
魔道士「…お手数、かけることになりますが」

武装中将「構わない。俺の権限をかけ、剣士を探し出すと誓う」

魔道士「…お願いします」

武装中将「…承諾してくれて、ありがとう。すぐにでも捜索を開始させよう…」

魔道士「…」ペコッ


剣豪「…ふっ。これで剣士が見つかって、再び剣士パーティが集まれば…」

戦士「あぁ。再び冒険者たちを照らす光にもなる…!」

武装中将「必ず見つける。絶対に誓う」

魔道士「はいっ!」


武装中将「では、捜索と東方祭壇町奪回戦の会議の為、すぐに連絡を通達するよう伝える!」

 
魔道士(…)

魔道士(…剣士、会いたいよ……)

魔道士(1か月も…ごめんね…。私の勝手で……)ブルッ

魔道士(武道家、乙女格闘家…)

魔道士(剣士パーティはまだ終わってないんだから…!)

魔道士(まだ…これからなんだから……!)

…………
………

 
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――――【 中央都市 教会 】

リンゴーン…リンゴーン…


子供たち「しんかんさーん!」

神官「こらこら、はしゃぎ過ぎるんじゃないからな~」

子供たち「わかってまーす!」

タタタタッ…


神官「…ふふ、子供は本当に元気だね」

神官「さて、僕もそろそろ残った仕事でも片づけようかな」スクッ

 
…ポンポンッ

神官「うむ?はいはい、どちらさまですかー…」クルッ

…グニッ

神官「う゛っ」

神官「ほ、頬に指を…。誰がこんな古いイタズラを!」バッ!


魔道士「…」

魔道士「…え、えへへ…。ひ、久しぶり……だね」


神官「…」

神官「…」

神官「…」

神官「…幽霊っっ!?」ビクッ!!!


魔道士「ちょっと」

 
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――――【 教会 応接室 】


神官「よ、良かった……」グスッ

魔道士「ちょっと泣きすぎ…!」

神官「だ、だって…魔道士さん…!」ポロポロ

魔道士「…そんなに泣いたら、私も…」グスッ


剣豪「…」

戦士「…」

 
剣豪「…神官さん、魔道士さん。気持ちは分かるが、まだ終わっていないんだ」

神官「そ、それは分かってるけどね…でも…」ゴシゴシ

魔道士「…っ」


剣豪「…神官さん、直球に聞く。剣士の居場所は本当に知らないのか?」

剣豪「この状況だ。ほんの少しでも情報が有ったら欲しいんだ」


神官「…」

神官「僕は本当に知らないよ。知っていたら、今すぐにでも剣士くんにこの事を伝えにいくからね」


剣豪「そりゃそうか…」

戦士「…そりゃそうですよね」

 
魔道士「剣士…どこに行ったの…」


神官「…武道家くんや乙女格闘家さんもあれから姿を消したんだ」

神官「僕もこの立場として、色々と情報は入ってくるけど、剣士くんたちの話はさっぱり……」


魔道士「…っ」


剣豪「他の2人がどこかにいれば、剣士の居場所も何とか探せると思ったんだが…」


神官「…」

剣豪「…」

戦士「…」

魔道士「…」

 
剣豪「…剣士なら、どう動くか予想はつかないのか?」

神官「剣士くんなら…か。魔道士さん、どう?」


魔道士「剣士…」

魔道士「…」

魔道士「…」

魔道士「…僧侶、私って…生きてたか死んだかどうか、分からなかったんだよ…ね?」


神官「うん。行方不明だってなってたけど、ほとんどは亡くなったっていう…話で…」


魔道士「…」

魔道士「…剣士は、そのわずかな望みにでも賭けて、動くかもしれないかな…」

 
神官「!」

剣豪「まさか!そしたら、あの東方祭壇町に乗り込んだかもしれないのか!」

戦士「あ~…剣士さんなら、ありうるかも……」


魔道士「…剣士自身、あの強大な敵の魔物の前に実力不足だっていうのは…あの時の戦いで充分に理解はしてた」

魔道士「…」

魔道士「だけどもし、剣士が私を生きてると信じたなら、多分戦いにあの町へ一人で戻った可能性が…高いかも」


神官「…っ」

剣豪「だ、大戦士さんですら負けた相手に再び…」

戦士「だけど剣士さんなら確かに、そんなこと関係なしに救出へ向かうかもしれないな…」

 
魔道士「でも、私がもう死んでしまったものと思っていたら…」

魔道士「…剣士が、どこまで私へ想いがあったか…分からないけど…」ギュッ

魔道士「…」

魔道士「…っ」

魔道士「…ごめん…なさい…。だめ、考えられないよ…」ブルッ

魔道士「私が死んだなんて思って欲しくないけど、でも、そうして新しい道を探して新しい人生を歩もうとしてるとか…」

魔道士「色々考えちゃう…!うっ…うぅ…」グスッ


戦士「ま、魔道士さん…」

剣豪「…」

神官「…」

 
戦士「…」

戦士「…えとっ!」

戦士「ま、魔道士さん!」


魔道士「…?」


戦士「け、剣士さんは魔道士さんを見捨てるような人じゃありませんっ!!」

戦士「魔道士さんは、剣士さんが本当に貴方自身を見捨てるような人だと思いますか!」


魔道士「…っ!」

魔道士「…そ、そうだよね…」


戦士「…」コクン

 
魔道士「剣士だもん…。剣士だもんね…」


神官「魔道士さん、中央軍も協力するって言ってくれてるんだよ…きっと大丈夫」

魔道士「うん…」

神官「剣士くんは絶対に見つかるよ。魔道士さんの話を聞けば、どんな遠くにいても…すっ飛んでくるよ!」

魔道士「うんっ…」

神官「僕、お茶淹れてくるよ。待ってて」スクッ

タタタタッ…ガチャッ!バタンッ…


魔道士「…」

剣豪「…」

戦士「…」

 
剣豪「…まぁ、大丈夫だと思う」

剣豪「剣士は剣士で戻ってくるか、見つかるとは思ってる。だが……」


戦士「待て、剣豪。お前、これ以上魔道士さんの…」


剣豪「ちげぇよ。あっちのことだよ」

戦士「あっち?」

剣豪「…魔界とやらのほう」

戦士「あぁ…」

剣豪「黒魔石にしろ、魔族にしろ、洒落にならねえぞ」

戦士「…武装中将さんがどうにかしてくれるはずだ。それは心配はしていない」

剣豪「それなら、いいんだがな」

戦士「…」


………
……

 
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――――【 数時間後 中央軍 本部 】


武装中将「…緊急会議を開かせてもらったのは、以上の情報の共有の為でした」


元帥「黒魔石に、星降町に造られた魔の塔…」

槍士大将「…大戦士が、死んだ…。あの…大戦士がか……!」

聖大佐「魔族…竜族……」

大魔術中佐「魔界の存在、エルフ族が霧に……」


武装中将「星降町の情報でも、謎の霧の確認はしております」

武装中将「この情報は、全てが繋がっています。エルフ族が消えた事も、大戦士が戻らぬことも…」

 
元帥「…つまり、魔界に住む住民共が、我らを襲わんとしているということか」

武装中将「夢物語、幻想物語のようですけどね…」


元帥「いや…エルフ族の歴史ないし魔法の歴史、もしかしたら魔獣の存在ですら魔界との関連性も見えてきた」

元帥「我々は人間の長き歴史の中で、全ての時代が変わる瞬間へ立ち会っているのかもしれぬ…」


槍士大将「…元帥殿。これは早急に手を打つべきです。今すぐにでも行動を!」

聖大佐「お待ちください、槍士大将殿。まだ、隊の振り分けや編隊が終了していない。統率を取るべきまで待つほうがいい」

槍士大将「そんなことを言っている場合か!」

聖大佐「統率のない隊など、無駄に命散らすだけですよ!」

槍士大将「では、その塔が完成して一般市民へ魔物たちが動いたらどうする!」

聖大佐「そ、それは…」


元帥「…」

元帥「武装中将、君はどう考える」

 
武装中将「…どちらの言い分も正しいのは確かです」

武装中将「ですが、一般人へ被害が出るのだけは抑えたい」

武装中将「…かといって、今の軍ではその"竜族"一匹の相手すら、数百の迎撃力が必要でしょう」


聖大佐「は…。我々軍人が、その一匹と数百で釣り合うレベルとおっしゃるのか?侮辱ですよ」


武装中将「ならお前は、本気の大戦士を相手に、何人の兵力が必要だと思う?」

聖大佐「は?」


武装中将「聞く話では、"竜1匹"に対し、大戦士自身、一人でどうにかなったかもしれぬレベルと言ったらしい」

武装中将「俺は大戦士一人を相手にするのに、そのくらいの兵力は必要と思う」


聖大佐「…過大評価ですな」

武装中将「…」

 
元帥「…」

槍士大将「…」

武装中将「…」

聖大佐「…」

大魔術中佐「…」


元帥「…っ」

元帥「…これではいつまでたっても時間ばかりが過ぎていく」

元帥「ここはワシが独断での判断を下す!反対は許さぬ!」


4人「…はっ!」

 
元帥「…奪回作戦は中止とし、祭壇町周辺の封鎖区域の強化を行う!東方祭壇町防衛線とし、これを伝えろ!」

元帥「更に、東西のエルフ族の各町村へ連絡隊を送り、この情報の全てを共有する!」

元帥「現状の霧をこれ以上広げぬよう、全てエルフ族を保護し、一度、南方大陸へ避難させる!」


聖大佐「…ま、待ってください!エルフ族を全て南方へ!?」


元帥「…口答えか、反対か」ギロッ


聖大佐「い、いえ…」


元帥「では続ける。同時に、星降町の山沿いにあるという魔力の塔の強襲作戦を開始!」

元帥「一個大隊クラスを三隊!塔の破壊作戦とし、魔族の侵攻を抑える!」

元帥「…この会議が終了次第、作戦の準備を早急に進めるぞ!いいな!」


4人「…了解いたしました!」ビシッ!

………

 
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…次の日。

中央軍の元帥の指揮のもと、魔族の侵攻を食い止めるべく、その作戦は開始された。

祭壇町の防衛線、星降町の魔の塔強襲破壊戦、エルフ族輸送作戦。

元帥の判断は、まず間違いなく正しかったと言える。


だが…そのすべては、遅すぎたのだ。


そう……。


その日、作戦を開始を決断した時……それは"完成"したのだから…。

 
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――――【 星降町 魔の塔 】


…パァァッ!!


???『一時はどうなることかと思ったが、もう魔力霧はいらぬ!』

???『こレで我ラは…』

???『ようやく、刻は来た……!』

???『あとは、あの方へ伝え…我々が動く時…』

???『さぁ…行クぞ……!』


…………
………

 
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本日はここまでです。有難うございました。

皆さま、有難うございます、沢山のお言葉本当に嬉しく思います。
それでは、投下致します。


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――――【 星降町 観光道 】


観光客A「はぁ…はぁ…!」

観光客B「結構、この辺の道って険しいんだね…!」ゼェゼェ

観光客A「私、ちょっと苦しいかも…」

観光客B「あはは、俺なんて余裕だぞ?」

観光客A「そりゃ当然でしょー!」

観光客B「へへ、そりゃそうか!」

 
観光客A「も~…。あっ、そういやこの登山道のこと…知ってる?」

観光客B「何をだ?」

観光客A「なんか最近、軍の動きが慌ただしいのは強大な敵が現れたからなんだって」

観光客B「へぇ?聞いたことないな」

観光客A「それで、この観光用の登山道も封鎖されちゃうんだってさ」

観光客B「まじかよ!じゃあ、今日登れたのは良かったな」

観光客A「うん。もしかしたら、もう下の方じゃ封鎖されてたりして」


観光客B「おいおい、そしたら俺ら帰れないじゃねえか!」

観光客A「えへへ、かもね」

観光客B「はははっ!」

 
ヒュッ…ズバァンッ!!

観光客B「は……はっ……?」ズリッ

ズリズリッ…ドシャッ……


観光客A「…」

観光客A「…え?」


ドクッ…ドクッ…


観光客A「…えっ?」

観光客A「…」

観光客A「何…これ……首……」

観光客A「い、いや…嫌っ……!!」

 
ザザザザッ…ガシッ!

観光客A「…むぐっ!?」

ゴブリン『ウひっ…』

観光客A「ひっ…!?」

ゴブリン『霧がイらないノは、自由デいいな…?』

観光客A「…!?」

ゴブリン『…お前ら、オ楽しみダぜ』ニタッ


ゴブリンたち『…』ニヤッ


観光客A「む…むぐぅぅ…っ!!」


………
……

  
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 東方側 祭壇町 防衛線 】


防衛軍人A(冒険者A)「ふわぁ~…」

防衛軍人B(冒険者B)「くぁ…」


防衛軍人A「…暇」

防衛軍人B「同じく…」

防衛軍人A「…んだよ。軍人ってこういう仕事ばっかなの?」

防衛軍人B「まぁ文句言うなよ、給金はかなり高いじゃないか」

 
防衛軍人A「そりゃそうだけどよー…」

防衛軍人A「何でこんな場所で、監視役なんだ?それに最近、配属される人も増えてきたし」


防衛軍人B「…わからん」

防衛軍人A「わからんて。情報通のくせに」

防衛軍人B「普段、俺はお前とずっとここに立ってるだけじゃねえか。情報もクソもあるかよ」

防衛軍人A「はは…そうか」
 
防衛軍人B「…ま、これだけでしばらく暮らせるような金も入るわけだし、不満はいえねえよ」

防衛軍人A「ほとんど、嫁のために仕送りだろ?」

防衛軍人B「仕方ねーだろ。これで楽な暮らしもさせてやれるんだから」

防衛軍人A「現実的ですこと…」

 
…ウー…ウー!!ウー!!

防衛軍人A「!?」ビクッ

防衛軍人B「!?」ビクッ


防衛軍人A「なな、なんだ!?」

防衛軍人B「し、知らねぇよ!」

防衛軍人A「え、えーと確か…このサイレンは、緊急配備ないし緊急招集の合図…だったな!?」

防衛軍人B「だった…はずだ!ってことは、何か起きたのか!?」

防衛軍人A「どっかから冒険者入り込んだとか、そういうことじゃあ…」


…ヒュッ…ヒュオオオオッ…!!

ボォォンッ!!!ボワッ!ゴォォォォッ…!!!


防衛軍人A「ひ…!」

防衛軍人B「火ぃぃぃっ!?」

 
防衛軍人A「…火!?空から…落ちてきたのか!?」

防衛軍人B「そ、空って…!つーか、祭壇町のほうから何か飛んできたー……」ハッ


…ゴオオォォォォッ!!!!……


防衛軍人A「…へ?」

防衛軍人B「ちょっ、待っ…」


ゴバッ…!!ボォォォォンッ!!!!!!!

ズッ…ズドォォォォンッ!!!!!!!!!!


…………
………

 
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――――【 中央軍 本部 】


…バタンッ!!!

中央軍人「き、緊急連絡!」

中央軍人「東方町の第二防衛線にて謎の攻撃を確認!被害状況は不明!…って」


ザワザワ…ガヤガヤ…!!

少尉「もういい!準備はまだ終わらないのか!」

新人軍人「し、しかしまだ自分は実践経験も浅く…!」

准尉「今はそんなこと言ってる場合じゃない!早く動け!」

 
中央軍人「な、なんだ…?何でこんなに本部が慌しい…」

中央軍人「…!」ハッ


…ザッ!

元帥「みな、落ち着け!尉官以上は、直属の部下の話を整理し、左官へ伝えること!」

元帥「それぞれに情報の共有がしっかり出来るよう、伝えるのだ!」

元帥「ただし、情報は確定…コミットではなく"仮定"で進めること!裏付けが取れてから行動事項としろ!」


全員「はっ!!」ビシッ


ザワザワ…ガヤガヤ…!


中央軍人「げ、元帥殿がこんな場所に!?」

中央軍人「これは本当に一体どういうこと……」

 
…ドカッ!

中央軍人「いっ…!」

中尉「ボサっとするな!さっさと動け!」

中央軍人「あっ!ち、中尉殿…これは一体!」

中尉「あぁ!?これは一体って…お前、何を言ってる!?」

中央軍人「自分は、先ほどまで防衛線付近にいましたので…」


中尉「…あ、あぁ……」

中尉「時間もないし、手短に話すぞ。魔界の話は聞いているな?」


中央軍人「それは…。別の世界からの侵攻という話ですよね」

中尉「そうだ。そいつらが、俺らがたてていた作戦行動の前に動き始めたんだ。俺らが遅すぎたんだよ」

中央軍人「なっ…!」

 
中尉「確認出来ている情報は、2つ」

中尉「祭壇町の防衛線への攻撃、星降町の魔の塔付近および観光地付近にて、軍の交戦が開始した」

中尉「それに伴い、情報が錯綜している…」


中央軍人「…!」


中尉「この情報は、恐らくもうじき一般公開も始まるはずだ」

中央軍人「一般公開!?」


中尉「先ほど、星降町の観光ルートの数人と、警備にあたっていた軍人が犠牲になったという話が入ってきた」 

中尉「ただでさえ有名な観光地での事故…隠し通すには無理があるという元帥殿の判断だ」


中央軍人「じ、住民らがパニックを起こしますよ!?」

 
中尉「…っ」

中尉「分かっているが、どうしようもない!」ダッ!

タッタッタッタッタッ……!!


中央軍人「な、なんてことだ…」


………
……

 
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――――【 中央都市の宿 魔道士の部屋 】


…ドンドンドンッ!! 
 

魔道士「は、はーい!どうぞ~」


…ガチャッ!!


戦士「…し、失礼します!」

魔道士「戦士!どうしたの、そんなに慌てて」

戦士「大変なんです!と、とにかく軍の依頼一般受付所へ急ぎましょう!」

魔道士「…う、うん?」


………
……

 
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――――【 一般依頼受付所 】


ガヤガヤ…ワイワイ…!!

冒険者たち「…」

一般市民たち「…」


魔道士「わっ…!な、何これ!凄い人!?ていうか、普通の人たちも…」


戦士「えーと…」キョロキョロ

戦士「…あっ、いた!おーい!」ダッ

タタタタッ…


剣豪「…来たか」

神官「あ、魔道士さん!」

魔道士「あれ、僧侶までいたんだ。この騒ぎ…どうしたの?」

 
戦士「ちょっと不味い事態になってるみたいです」

魔道士「まずいって…?」

戦士「えと…。あそこの張り紙を見てください!」スッ

魔道士「張り紙って…あれ?」

…ペラッ


戦士「数分前に、中央軍より情報開示が行われたんです」

戦士「俺らが知った、あの全てのことを、一般公表したんですよ!」


魔道士「…え!?」

魔道士「ちょっと待って、急にどうして!?そんなのパニックになるに決まってるじゃない!」


戦士「…武装中将さんたちの作戦決行は、本日からの予定らしかったのですが…」

戦士「その前に、奴らが塔の完成と…放たれた魔族たちが星降町や東方防衛線を攻撃してきたようなんです」

 
魔道士「…!」

戦士「…ただ、得られている情報はそこまでです」

魔道士「ま、待ってよ…。一体どうなるっていうの…」

戦士「わかりません。だけど、一般受付所にこれが張られたってことは…」


神官「そう…。軍で仕切れる問題じゃなくなっている可能性があるってことだね」

魔道士「塔が完成したってことは、あの魔族たちが…自由に…」ゾクッ

神官「…僕は、その魔族を見た事がないけど。話を聞く限り、どれだけの相手かはわかるよ」

魔道士「…っ」


剣豪「軍はまだしも、冒険者として魔族を相手にしたことあるのは俺らと魔道士さん、あとは剣士たちだけだ」

戦士「…この第一線に立ってた俺らは、何かやれることがあるのか…?」

 
神官「何かやれることって、今は軍を頼るしか…」

戦士「…この混乱が、そう簡単に収まるとは思えません」


剣豪「その竜族とやらが最強という存在なんだろう?」

剣豪「大戦士さん一人で一匹相手に出来るというなら、大隊程度で何とかなるんじゃねーのか」


戦士「…そう信じてるが」


魔道士「…」

魔道士「…」

魔道士「…っ!」ハッ

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???『…おいおい、回復薬とかやめろよ。そんな粘られちゃ困るぜ?うちの親方様に怒鳴られちまうからな』

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魔道士「ま…待って…」

 
戦士「…どうしました?」

魔道士「竜族って、巨大なトカゲみたいなもの…なんだよね」

戦士「らしいですよ」

魔道士「なら、それが最強じゃないと思う…!」

戦士「えっ?」


魔道士「いけない…!早く、武装中将さんに伝えないと!」ダッ!


戦士「ま、魔道士さん!?」

………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央軍本部 】

…バタンッ!!

中央軍人「…失礼します!武装中将殿!」

武装中将「今度はどうした!」

中央軍人「お話があるという冒険者が来ております!」

武装中将「何?…こんな時に、わざわざ通したのか!そんな時間はない!」

中央軍人「い、いえ…しかし、武装中将殿を先生と呼ぶ方で…」

武装中将「何?…そうか。なら、許可する」

中央軍人「はっ!冒険者様、こちらです!」


…スッ

魔道士「…武装中将さん!」

 
武装中将「魔道士か…どうした?」

魔道士「お話聞きました。今、大変なことになってるって!」

武装中将「…行動が遅すぎたんだ。各地で被害が出始めている。まさか…こんなにも早く…!」

魔道士「こんな状況で、お忙しいところ邪魔してごめんなさい。でも、どうしても話をしたくて」

武装中将「何かあったのか」


魔道士「…思い出したんです。竜族には、竜族が"親方"と呼ぶ上の魔族がいることを」


武装中将「な、なにっ!?」

魔道士「…ごめんなさい、私、こんな大事な情報を…」


武装中将「…っ」

武装中将「い、いや。伝えてくれただけ有難い!すぐに情報の共有に努める!」

 
魔道士「…」


武装中将「それより…魔道士」

魔道士「は、はい」

武装中将「戦士や友達は、中央都市から出すな。ここはまだ安全な場所…必ず守る」

魔道士「…」コクン

武装中将「ココに未だにいる冒険者の力も、これ以上は借りるわけにはいかんのだ…」

魔道士「えっ?ま、まさか!武装中将さんが、一般人の力を借りたのですか?」


武装中将「今日、祭壇町の第二防衛線が壊滅的被害を受けた」

武装中将「そこへ配属された多くの兵力が、1か月前に冒険者から募集した臨時の者たちだったんだ…」


魔道士「…!」

 
武装中将「くそっ、完全に誤った…。悔やんでも悔やみきれん…っ」

魔道士「これから…どうなるんでしょうか…」

武装中将「なぁに、大丈夫だ。あとは俺らが全力でこの状況を打破していくからな」ニカッ

魔道士「…はい」


武装中将(この僅かな期間にこれほどの事態になるとは……!)

武装中将(…だが。これ以上の被害は絶対に出せない。いや、絶対に出してはならぬ…!)




…………
………

  
・・・・・・・・・・・・・・・・
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・・・・・・
・・・・
・・・
・・

 
――――武装中将の言葉通りにはいかなかった。

東方祭壇町の周囲にある、第一、第二、第三防衛線の全てを突破されるまで僅か4日。

西方側の星降町および近辺の町村に侵攻を受けるまで僅か5日。


元々東方側には確固たる支部が点々としていたため、その後の侵攻はある程度の抑圧に成功した。
 
だが、西方側は広大な山地の小さな村へは防衛拠点となる支部が存在せず、その殆どが犠牲になってしまう。


この事態に中央軍は、この西方側の侵攻を食い止めるため、中央軍の緊急全力迎撃作戦を下す。


そして、中央軍はこの戦いのことを大陸全土が巻き込まれし大戦とし、

『魔族侵攻迎撃戦、東西大陸戦争』…

通称『大陸戦争』と決定する。


 
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 西方側 山部 】


ヒュッ…ヒュオオオオオッ…ドゴォォォンッ!!!!


軍人たち「な…何なんだよ…こいつら…!」

軍人たち「どう戦えばいいんだよ…!」


ゴブリン兵たち『…クク』

オーク兵たち『…ヒヒ』

スライムたち『…』

エレメンタルたち『…』ゴォォ

 
軍人「くっ…!」


オーク『人間如きが俺らに逆らうもんじゃねぇぜ…?』


軍人「戯言を!俺らの住む世界を、荒らすんじゃねぇぇ!!」ダッ!

ダダダダダッ!!

オーク『…』ニヤッ

オーク『…そこは、危険だぜ?』


軍人「何っ!」


スライム『…』バッ!!

…クワッ!!

軍人「ひ…!?」

…バクンッ…!

 
軍人「…むぐっ…!」

軍人(た、体内に飲み込まれた…!?)


オーク『うはは!』


軍人(こ、これくらい!我が剣術で…!)ググッ


スライム「…」トプンッ

ジュッ…ジュワァァッ!!


軍人「!?」


オーク『あぁ、そうそう。元々スライム族にゃ物理は効かんぞ?

オーク『それに魔法耐性も尋常じゃねえしな、俺らでも一苦労する相手だぜ」ククク

オーク『あと言い忘れたが、捕食するためにそいつの液体はー…」

 
スライム「…」ペッ!

ボトッ…!ボトボトッ…ドロォッ……

オーク『…聞いちゃいないか。ドロドロに溶けちまった』クク


…ザワッ!

軍人たち「…!」

軍人たち「い、一瞬で…!」

軍人たち「くっ!」

軍人たち「ひ、ひるむな!俺らだって誇り高き中央軍!やってやる!」

軍人たち「うおぉぉお!!」

ダッ…!!ダダダダダダッ…!!!!

 
オーク『来るか!人間共が!!』

軍人A「うっ、うおぉぉぉ!」ブォンッ!!

…ガキィンッ!!

オーク『俺の肉体は、貴様らの武器など受け付けんぞ!』

軍人A「…」ニヤッ

オーク『むっ』


軍人A「後方部隊っ!!」

魔法軍人「…任せてください!中雷撃魔法っ!!」パァッ!!

バチッ…バチバチバチッ!!バチィッ!!


オーク『ち…!エレメンタル共!』

 
エレメンタル『…』パァッ!!

バチッ!!バチバチバチィッ!!!


魔法軍人「なっ…無詠唱…!」


…バチバチバチッ!!!

魔法軍人「ぐあああっ!!」


軍人A「なっ…!」

オーク『エレメンタル族の事も教えてやろうか?無能な人間くん』


軍人A「…っ!」
 
軍人A「この…豚面がぁぁ!!」ブォンッ!!

 
オーク『…てめぇの頭、ひねりつぶす!』

ゴブリン兵たち『ククク…覚悟シろよ……!』チャキッ!


軍人B「やらせるかよ!!」

軍人C「後方部隊、もっと支援だ!回復の準備も怠らないでくれよ!」

軍人D「うおおおっ!」

魔法軍人たち「支援魔法!準備!!」パァァッ!!


ダダダッ…ガキィンッ!!!

ズバァンッ!!…バキィッ……!!ドゴォンッ……!!


…………
………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 同時刻 西方山部 後方 】 


……ザッ


槍士大将「…始まったか」

聖大佐「この距離でも、戦いの音が風に乗って聞こえてきますね…」


ガキィンッ…!

ヒュオオオッ……ドゴォンッ……!


槍士大将「中央軍の今ある力を用いて、西方側の侵攻を食い止める…か」

聖大佐「総力戦のようなものです。緊急のため、動ける人数が限られてはいますが…充分でしょう」

槍士大将「…ここから見える場所以外、他の町村にも派遣はされているんだろう?」

聖大佐「確認しているだけで、小さな集落を含め16の町村で同時に戦いが始まっています」

 
…チャキッ

槍士大将「…この槍も、振わねばならぬ時が来るのか」

聖大佐「そうなるほど、緊迫しなければいいのですが」

槍士大将「この戦いが、今後を左右される可能性は非常に高い」

聖大佐「総力戦…。それほど、ここの戦いに力を入れる必要があったのでしょうか」


槍士大将「今、東方側は元々支部が多く…それほど侵攻被害は出ていない」

槍士大将「元々東方の防衛線の強化もあって、それは元帥殿の考えの及ぶところであったということ」

槍士大将「だが西方側の塔の存在や、まさか西方側のエルフ族の村からも奴らが出現するとは…」


聖大佐「約10年前にあった、あの最初の地震の時の神隠し事件の場所でしょうね」

槍士大将「…だろうな」

聖大佐「しかし知性ある魔物ですか。未だに信じられませんよ」

 
槍士大将「…分かってる情報では、魔族は我々とは違い、何種類かの種族として存在しているようだ」 
 
槍士大将「得ている情報では、"ゴブリン族"と"オーク族"がほとんどの兵力となっている」

槍士大将「中央軍の一般兵では難しいこともあるが、相手に出来る実力を持った者は決して少なくない」

槍士大将「そのゴブリン族とオーク族が主軸となるならば、この総力戦も勝利は出来るだろう」


聖大佐「…ですが、安易に考えられぬ敵がいます」


槍士大将「分かっている。大戦士がやられた竜族の存在だろう」

聖大佐「はい…。竜族のようなクラスが出てこられれば、こちらとしても壊滅的被害は免れません」

槍士大将「竜族は2体を確認しているが、いつどこで出てくるか…」

聖大佐「それに考えたくはないですが、竜族に匹敵するクラスが何種かいたとしたら…」

槍士大将「…武装中将の話では、竜族の上にもう1体の存在がいる可能性があるそうだからな」

 
聖大佐「…それが虚の話であることを願うばかりです」

槍士大将「そうなればそれこそ、指揮官たちが前線へ出る時だろうな」

聖大佐「そうですね…」


槍士大将「今はただ、そうならぬよう祈るのみ」

槍士大将「この総力戦の行く末を、見守ろう……」


…………
………

 
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
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・・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・

 
この総力戦は、お互いの実力が均衡してか、気が付けば3日がたっていた。

そして、3日目の夜。辺りが暗くなり始めた夕闇の刻の頃……

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――――【 総力戦 夜 】

ボォンッ…ズドォンッ……


槍士大将「…今日も夜戦へ突入したか」

聖大佐「まさかココまで長引くとは……」

槍士大将「俺らが確認出来るのは、この山間部までだ。他の地区はどうなっている?」

聖大佐「一部では侵攻の食い止めに成功したそうですが、別の場所では…」


槍士大将「…」

槍士大将「…明日以降、その地区へ重点的に応援を送るよう要請する」


聖大佐「それが良いでしょうね…」

 
槍士大将「…」

槍士大将「……ん?」ピクッ


聖大佐「どうしました?」


槍士大将「音が…止まった…?」

聖大佐「音って…」ハッ


シーン…


槍士大将「いや、音だけじゃない。魔法の攻撃すら目視出来ないぞ!」

聖大佐「…戦いが終わったのでしょうか」

槍士大将「いや、これは…!嫌な予感がする!」ダッ!

聖大佐「あっ、大将殿!?」


…………
………

本日はここまでです。有難うございました。

皆さま有難うございます。投下致します。

 
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――――【 前 線 】


タタタタッ……!!


槍士大将「確か、この辺だな!」

聖大佐「槍士大将殿!あなたが前線へ出ては…!」


槍士大将「…」

槍士大将「…み、見ろ!」


聖大佐「…」

聖大佐「……!?」

 
オォォォォ……ォォォ………!!


魔族たち『…』

軍人たち「…」


槍士大将「こ…これは…」

聖大佐「魔族も中央軍も、みな…倒れている!?」


槍士大将「…見たところ、倒れている者に目立った怪我はないが…」

槍士大将「大佐、倒れている者に回復は効くか、なぜ倒れたか分かるか?」


聖大佐「やってみます」バッ


…パァァッ!!

聖大佐「…」

…ズズッ…

聖大佐「…うあっ!?」ゾクッ!

 
槍士大将「…どうした?」

聖大佐「な、なっ…!」

槍士大将「…どうしたのかと聞いている」

聖大佐「だ、ダメです近づいては!」バッ!

槍士大将「どうしたというんだ!」


聖大佐「…っ!」

聖大佐「今、触れた瞬間…自分の魔力を吸い込まれるような感覚が…!」


槍士大将「何っ?」

聖大佐「な、なんだ今の感覚は…!」

 
槍士大将「…ということはまさか、ここで倒れている仲間と魔族は、魔力を失って……?」

聖大佐「な、何かの技でしょうか。今の感覚…その技の残り香のような気がしますが…」

槍士大将「…魔族もそれで倒れているということは、その魔族すらも飲み込んだ相手がいるということか」

聖大佐「人間が使う技に、このようなものは聞いたことありません…。恐らく、魔族の仕業でしょう」

槍士大将「…その相手はどこに」

聖大佐「大将殿、敵の気配を読み取ることは出来ますでしょうか…」


…サァァ……


槍士大将「…」

槍士大将「…何も感じぬ。ただ、先ほどまでの戦いが嘘のように静かな風が吹くのみ…」


聖大佐「遠くの山には、まだ魔法の明かりが見えています。あそこではまだ戦いは続いているのでしょうが…」

 
サァァ……ヒュウウッ……


槍士大将「…」

聖大佐「…」


ヒュウウッ……


槍士大将「…」

聖大佐「…」


ヒュウッ……ウゥゥ……


槍士大将「…」

聖大佐「…」

 
サァァ……

槍士大将「…」

聖大佐「…」


ヒュウウウウッ……ゴッ!!!!!……


槍士大将「…伏せろっ!!!」バッ!

聖大佐「!!」


グォォォォォオッ!!ブォンッ!!!!バスッ!!


槍士大将「っ!?」ブシュッ!

聖大佐「大将殿、腕に傷が!?」


槍士大将「っ…!」

槍士大将「い…今のは何だ!確認できたか!?」

 
聖大佐「こ、この暗闇では…!」

槍士大将「くそっ!」

…ジュウゥッ!!

槍士大将「ぐっ!?」ズキンッ!

聖大佐「どうしましたか!?」

槍士大将「ぐっ…!ど、毒か何かか…!?」ズキン!

聖大佐「…!」


…ヒュウウウッ!!ゴッ!!!…


槍士大将「くっ…また来たな!」

槍士大将「…ぬらぁぁぁっ!!」ブォンッ!!


…ガキィンッ!!!

 
???『!』


槍士大将「…何度も同じ手を食らうか!」

槍士大将「姿を現せよ……!うおらぁぁぁっ!!!」グググッ!!


バキャアンッ!!!ズザザザァ…ドォンッ!!


聖大佐「な、何も見えないのに重量音が…!」

槍士大将「手ごたえあり…だが!」


???『…やルな』


聖大佐「…声!」

槍士大将「やはり魔族か何かか…姿を現せ!」


???『ククッ……』


…スゥゥ……

 
槍士大将「…!」

聖大佐「なっ…!」


バンシィ『…我が名はバンシィ。よクぞ攻撃を与エた。褒メてやろう…!』


槍士大将「ま、まるで本に出てくる死神の姿…!」


バンシィ『…』ニタッ


槍士大将「この一帯…貴様の仕業か……!」
 
 
バンシィ『…ソのほうが、こちら側に慣れテないアイツにとってイいと思っテね…!』


槍士大将「…あいつだと?」

 
…ズッ、ズズゥンッ!!!


槍士大将「!」

聖大佐「!」


バンシィ『来タか…デュラハン!』

デュラハン『やはり霧のない自由はいい…。我が愛馬、コシュタバワーも暴れやすかろう…!』コォォ


…ゾワゾワッ!!

槍士大将「…首のない鎧騎士!?馬に乗った人型…!人間ではないのか!?」

聖大佐「ただそこにいるだけで、この二体からのオーラが…!か、身体が…!」ビリビリ


バンシィ『クハハ…!』

デュラハン『そこの人間共…。どうやら、その辺の一般兵とは違う様子だな?実力が、見て取れるぞ…』

 
槍士大将「…っ」チャキッ

聖大佐「…やるしかないようですね」スッ


デュラハン『ほう…我輩と同じ槍使い…』

デュラハン『そして好戦的…。いいぞ…嫌いではない……!チャキンッ


バンシィ『クッ…クハハ……!』

バンシィ『貴様ノほうは、俺と同ジく魔法を主トするか…!』スゥッ


ォォォ……


槍士大将「…」

聖大佐「…」


デュラハン『…』

バンシィ『…』

 
槍士大将「いざ…」ダッ!!

デュラハン『…勝負ッ!!』ダッ!!


聖大佐「…大風刃魔法っ!!」パァァッ!!

バンシィ『闇の波動…っ!』パァァッ!!


カッ…ボォォォンッ!!!ガキィンッ!!!!

 
槍士大将「…ぐっ!な、何という重い攻撃!」ビリビリ

デュラハン『その程度か!』ビュンッ!!

槍士大将「ぬぐっ!」ヒュッ!

デュラハン『避けてばかりでは!』

…ビュビュビュッ!!!

槍士大将「はぁっ!」バッ!

タァンッ!!ヒュオオオッ…!!


デュラハン『飛翔か…高い!』クワッ!


槍士大将「大…水流魔法っ!!」パァァッ!!

ズッ…ズドォォォッ!!!

 
デュラハン『ただの水流如き!』ブゥンッ!!

…ザバァンッ!!!バシャアッ!!!

槍士大将「なっ!…空からの水の大砲を突き抜くとは!」

デュラハン『…ふんっ!!』

ブォッ…ブォオオオッ!!!!
 

槍士大将「や、槍が伸びっ…!回避をー……」

…ズキンッ!

槍士大将「ぐっ!?」

デュラハン『…』ピクッ


…ズブシュッ!!!

槍士大将「がっ…!?」

 
デュラハン『…』

槍士大将「…っ!」


聖大佐「や、槍士大将殿っ!!」


ヒュオオオォォッ…ドシャアッ!!

槍士大将「う、うぐっ…!?」

槍士大将「がはっ…!」ズキッ!ズキッ!


デュラハン『…』

ザッザッザッ…チャキッ

槍士大将「…ッ」

 
デュラハン『…』

槍士大将「…な、なぜ槍を突き付けたまま動かぬ…」

デュラハン『この首を刎ねるのは容易い。だが、気になることがある』

槍士大将「な、何だ…」

デュラハン『何故、避けれるものを避けなかった。あの程度、貴様なら避けられたはず』

槍士大将「…言い訳にすぎん」

デュラハン『聞かせろ』

槍士大将「…っ」

スッ…ドクンドクン……

デュラハン『これは…』


バンシィ『クク…俺ガつけた傷ダな。闇の傷は、呪イをツけ、魔力を奪い、その自由も奪ウ…』

バンシィ『その程度の傷デは、魔力の消失も僅かナものバカりだがな』

 
槍士大将「…この傷は、俺が未熟ゆえにつけられたもの」

槍士大将「言い訳にもならん!殺せ!」


聖大佐「大将殿!そんなことを言ってはなりません!!」


デュラハン『…』

デュラハン『…実力の有る者を、このような形で打ち取っても何も面白くない』

デュラハン『興がそがれた…帰るぞ』


バンシィ『お、おイ!ソれはないだロう…!』

デュラハン『…我輩は確かに王に忠誠を誓った。だが、己ノ道まデ売ってはおらぬ…!』

バンシィ『…』

デュラハン『…戻るぞ』クルッ

バンシィ『チッ…。ワケの分かラん面倒な奴メ……』

 
槍士大将「ま、待て…!魔族に情けなど…!」

デュラハン『悔しければ、その情けなき自分の実力を悔やむがいい』

槍士大将「…っ!」


デュラハン『その闇の傷は、傷の治癒が終えれば身体の自由も戻るだろう…』

デュラハン『我輩たちは暗闇の中でしか生きられぬ』

デュラハン『…また戦おう。次に会えることがあればな…ははは……!』

ザッザッザッザッ……!


槍士大将「ぐっ…!」グググッ…

聖大佐「…っ」


…………
………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 数時間後 中央軍本部 】


元帥「…」

武装中将「…」

元帥「まさか、槍士大将が敗北するとは…」

武装中将「まさかです。手負いとはいえ、話に聞く限りあっという間だと…」


元帥「だが、そのデュラハンが消えたおかげで西方側に被害が広がることはなかった」

元帥「他の場所へ出現されていては、我が軍の大敗は確実だっただろう…」


武装中将「…っ」

武装中将「闇の魔術を持つというバンシィ、槍士大将の攻撃を通さぬデュラハン…」

武装中将「竜族に、その者たちを従える魔族の王の存在まで…明らかになったということ……」

 
元帥「…言いたくないことだが、認めざるを得ない」

元帥「この戦いは、長期的に見れば……」


武装中将「元帥殿!」バッ!

元帥「!」


武装中将「…この戦いは、勝ちます」

武装中将「いえ、勝たねばならないのです。人のために、未来のために」


元帥「…」


武装中将「既に…数え切れぬ命が失われました」

武装中将「その者たちの為にも!その言葉は決して言ってはなりません!」

 
元帥「…すまぬ。そうだな…。あまりのことで、どうかしていたようだ」


武装中将「この総力戦を勝てば、魔族の軍勢にもダメージは大きいものとなるはず」

武装中将「前線に立つ者たちを信じ、今は次の作戦を考えていくべきです」


元帥「…あぁ」


武装中将「今、西方側では総力戦。西方および東方のエルフ族の保護を急ぎ、南方への船を準備しています」

武装中将「竜族がいるという東方側は、不思議と今は落ち着いています」

武装中将「この間に、総力戦を勝ち抜き、エルフ族を安全な南方地区に保護し、優勢で戦いを進めましょう!」


元帥「…分かっている。そうだな、必ず…魔族には勝つ」

元帥「そうだとも…絶対に…」


……………
………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・

 
西方の山に輝き浮かぶは、魔法の花火。

その下で、中央軍と魔族の総力戦は、熾烈を極めた。


………
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

軍人たち「うっ、うぉぉぉ!!」

…ブォンッ!!ガキィンッ!!!


アウルベア『…グルッ』ギロッ

カルキノス『ゴポッ…』

アラクネ『うふふ…』

ヒュドラ『…シュルッ』


軍人たち「く、くそっ…!魔獣も意思をもって俺らを襲ってくるなんて反則だろ……!」

軍人たち「それに見た事のない敵も増えてきてる…。そ、それに……」

 
グール(死んだ軍人たち)「…ウ…ウゥ……!」チャキッ

スケルトン(死んだ軍人たち)「ア゛……」パァァ


軍人たち「な、何でお前らが生き返って俺らを襲ってくるんだよぉ!!」

軍人たち「闇の魔法だか知らないが、こんな非道なこと……っ!!」

軍人たち「だ…だけどな……!」チャキッ

…ブォンッ!!ズバァンッ!!!

グール『ガッ……』

ドシャアッ……


軍人たち「お前らとて…容赦は…出来ないんだ……!!すまない!!」


ゴブリン兵『くっ…!や、ヤるな!』

オーク兵『怯むな…攻めろっ!!』

 
ガ゙キィンッ!!!

…ドゴォォンッ!!ボォンッ……!!


軍人たち「…いかなる犠牲があろうとも、俺らは絶対に勝つ!!うあぁぁっ!!」


魔族たち『…っ!!』


カッ…!!ドゴォォオンッ……!!
 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
………

 
戦いが長引くにつれ、現れる新たな魔族。

それに応用するように、中央軍も形を変えてこれを迎撃。

お互いの実力は均衡したまま、その後、総力戦は2週間にも及んだ。


その間、エルフ族の保護と輸送作戦も裏で進行。

中央軍の輸送隊のもと、エルフ族を含む西方および東方側の戦域近辺に住む住民たちも、

魔族の侵攻が及んではいない比較的安全な南方大陸へと避難させていった。


そして……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 15日目 西方山脈の村 】


中央軍人「…うらああっ!!」

ガキィンッ!!!

クルクルクル…ザシュッ!!


ゴブリン『ま…マて…!』


中央軍人「…俺の友は、そう言って目の前で殺されていったんだ…」

中央軍人「お前も、その運命を呪い…死ねばいい……!」


ゴブリン『う…うァぁぁッ!!』


ブンッ…ザシュウッ……!!!


ゴブリン『ア゛ッ……』

  
…ドシャッ……


中央軍人「はぁ…!はぁ…!!」


軍人たち「これで…全て倒したのか…?」

軍人たち「俺らの勝ち…か…?」

軍人たち「うっ…うおぉぉ!!!」

ワァァァッ…!!!


中央軍人「…っ」

中央軍人「……!」ハッ

 
村人たち「…まま、どこ……」

村人たち「息子が…。私の息子が……」

村人たち「これから俺らは、どうしたらいんだよ……!」



中央軍人「……っ」ギリッ

中央軍人「…失うものが多すぎて、何が…勝利だ……」


………
……

 
―――15日目の昼。

西方山脈に点々とした村の一つで、

西方側の侵攻し、確認されている魔族軍の最後の一匹が倒れた。

つまり、この総力戦は人間側…中央軍の勝利となったのだ。


しかし歓喜に沸く前線の軍人たちの中、

その村で魔族によって被害を被った住民たちは、涙ながらに訴えた。

「どうして、もっと早く私たちを守ってくれなかったのか」…と。


そして、この『総力戦に勝利した』という言葉が中央軍へ伝わった頃、

中央都市にて―――……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央都市の一角 】


ザワザワ…ガヤガヤ…!!


街人A「聞いたか?魔族軍との戦いで、中央軍が勝ったんだってよ」

街人B「あぁ、当たり前だろ!冒険者たちも軍へ入隊して参加してるらしいし、勝つに決まってるだろ!」

街人C「でもさ、エルフ族の輸送や、その前線付近の住民は強制避難だろ?悲惨だよなぁ」


ザワザワ……!!ワイワイ…!!


ローブの男「…悲惨、か」

ローブの男「その言葉は、そうなっていない人間しか言えない言葉だ」

ローブの男「ぬくぬくと平和な時間が進んでいるココで、戦いも知らぬような奴だからこそ、言えるんだよ…」

 
街人C「…あ?」

ローブの男「…おっと、聞こえたか。すまないな」

街人C「…好きでここにいるわけじゃねーんだよ。俺だってな、仕事だってまだあるし!」

ローブの男「くっ…くははは!!」

街人C「…何がおかしい!」


ローブの男「自分に起きたことは、大騒ぎして助けを求める」

ローブの男「他人に起きたことは、悲惨だの可哀想だの言葉は言うくせに、動かない」

ローブの男「まさに人間らしい。いいんじゃないか」


街人C「…ケンカうってんのか」


ローブの男「お前、本当に悲惨だと思うなら…その若さを軍に売ったらどうなんだ?」

ローブの男「前線で戦っている軍人たちの囮くらいにはなって、勇敢な死の称号くらいはもらえるぞ?」

 
街人C「…殺す」

…グイッ!

ローブの男「…」

街人B「お、おい落ち着けって!アンタも喧嘩売るな!今は軍も厳戒態勢だし、下手に暴れたら一発で牢屋行き…」

ローブの男「あぁ、そうか…それじゃあ訂正する」

街人C「今更謝ってもゆるさねぇぞ!」


ローブの男「…こんなところで粋がっているようじゃ、囮にすらなれない…とね」クク


街人C「てめ…!コラァ!!」ブンッ!!

…バキィッ!!ズザザァ…!

カキィーン…コロコロ……


ローブの男「…」


街人C「はぁ、はぁ……!思い知ったかクソ野郎!」

 
ローブの男「…」

街人C「…何とか言えよ!そんな厚いローブ着やがって…!どんな面ぁしてやがるか見てやる!」

…グイッ!!…パサッ

街人C「お…」


ギラッ…!!


街人C「け…剣!?大剣…っ!?」

街人C「て、てめぇ冒険者か何かか…!」


ローブの男「だったらどうする」

街人C「い、いや…その…」

ローブの男「…どうした?」


街人C「…ちっ!」

街人C「こ…このくらいで勘弁してやるよ…」クルッ

タッタッタッタッタッ……

 
ローブの男「…やれやれ」


タタタタッ…チョイチョイ

ローブの男「ん…」クルッ

子供「…ねぇねぇ!」

ローブの男「…何だ?」

子供「これ…落ちたよ」スッ

ローブの男「…」

子供「殴られてたね…。大丈夫…?」

ローブの男「…物好きな子供だ。こんな風貌の俺に、何も思わないのか?」

子供「うんっ。だって、人は優しくしてあげなさいって言われてるから!」

 
ローブの男「…」

ローブの男「…そうか、いい子だな」


子供「えへへー!えっとね、はいっどーぞ!キラキラしててキレイだねこれっ」


ローブの男「何が落ちたと…」

ローブの男「!」ハッ

ローブの男「これが…俺の剣から落ちたのか?」


子供「わ、わかんないけど…落ちたよ…?」


ローブの男「…この大剣を扱う資格がないって…ことなのかもしれないな……」


子供「え?」

ローブの男「…」

…ポンッ、ナデナデ

子供「あうっ?」

 
ローブの男「それはあげよう。不思議な魔法の石さ、大事にしてくれよ」

子供「…くれるの!?」

ローブの男「俺に優しくしてくれたお礼だ。お前の親は、さぞかし立派な親なんだろうな」

子供「…ううん」

ローブの男「?」

子供「ぼく、おとうさんも、おかあさんもいないよ…」

ローブの男「…そうだったのか。すまない」

子供「ううん!いいよ!」ニコッ


ローブの男「…ふっ。じゃあ…またな」クルッ

トコトコトコトコ…

………



子供「えへへ…きれいな石もらっちゃった♪」

 
タッタッタッタッタッ…コツンッ!

子供「いたいっ!」

神官「…はぁ~全く!やっと見つけた!」

子供「あっ!神官さん!」

神官「今は物騒なんだから、一人であまり出歩かないことって言ってるのに!」

子供「ご、ごめんなさい…」シュン

神官「でも無事に見つかって良かった。さ、帰ろう」


子供「うん!」

子供「……あっ!そうだ、神官さん!」


神官「うん?」

子供「これ…」

…スッ

神官「…ん?」

 
子供「えっとね!これね!今、そこにいたお兄ちゃんにもらったの!」

神官「…見せてくれるかな?」

子供「うんっ」


…キラッ


神官「…へぇ、キレイだね。魔石か何かだね」

神官「…」

神官「……って!?」ハッ

神官「ち、ちょっと待って!こ、これは…!」


子供「知ってるの?」

神官「今、これはどこで手に入れたって言ったかな!?」

子供「さっきいたお兄ちゃんにもらったの」

神官「お兄ちゃんはどこに!?」

子供「えっとね、あっちに行ったよ」

 
神官「あっちって…」


ザワザワ…ワイワイ……!!

街人「えー、ウッソー!」

街人「マジだって!」

街人「あとで行くから待っててよー!」

街人「あはは!」

ガヤガヤ…!!


神官「…この人ごみじゃ」

子供「神官さん、これが何か知ってるの?」

 
神官「で、でも…間違いないよ……!」

神官「早くみんなに教えないと!一回、急いで帰ろう!」ガシッ

タッタッタッタッ…!!


子供「わわっ!ど、どうしたの神官さん!」


神官(絶対にそうだ…!)

神官(これはあの時の…!)

神官(ってことは…!っていうことは……!!)


……………
………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央軍本部 最上階の廊下 】

カツカツカツ…

武装中将(今回、総力戦の勝利は何とか得ることができた)

武装中将(現在は輸送作戦および避難している住民らの安全も確保している)

武装中将(かのバンシィやデュラハン、竜族の姿も今は見せていない)

武装中将(…この機に、中央軍の戦闘力の確保および対策を進めねば)


武装中将(…ん?)

 
…ヒュオオオッ…

武装中将「ガラスが…割れている…」

武装中将「…!」ハッ


…バサバサッ

ローブの男「…こんにちわ」


武装中将「貴様の仕業か…?この中央軍本部へ…ガラスを割って侵入したのか」

ローブの男「…さすがに落ち着いて分析してくれる」

武装中将「何者だ。表には門番もいるはず…どうやってココへ入った」

ローブの男「…壁を飛び越えて」

武装中将「バカな!本部の壁は数十メートルだぞ!いかな飛翔とて、登り切れるものか!」

ローブの男「…」

武装中将「…まさか、魔族か」

 
ローブの男「…」

武装中将「この俺を知り、直接挑みにきたか…?」チャキッ

ローブの男「…違う」

武装中将「では、何用だ!」

ローブの男「落ち着いてくれ。話があるだけだ…」

ヒュオォォ…バサバサバサッ!!


武装中将「むぐっ…風が…!」

ローブの男「…おっと、ローブが」

…パサッ


武装中将「…」

武装中将「……何っ!?」

 
ローブの男「…」


武装中将「お、お前…なぜここに…!」


ローブの男「久しぶりだな…オッサン」


…………
………

本日はここまでです。有難うございました。

皆さま有難うございます。投下致します。

 
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 1時間後 】

…バタァンッ!!!

武装中将「ん…。何だ、ノックもせず」


魔道士「ぶ、武装先生…!」

神官「武装先生!」

剣豪「武装さん…」

戦士「武装さん!」


武装中将「…お前らか」

 
神官「武装先生!お話があるんです!」

武装中将「なんだ?」

神官「もしかしたら、"剣士くん"がこの中央都市へ来てるかもしれないんです!」

武装中将「…ふむ?」

神官「…何か、情報を聞いていませんか!」

武装中将「いや…。ところでなぜ、剣士がこの街にいると情報が?」

神官「これを…!」

ゴソゴソ…キラッ


武装中将「これは…魔石か」


神官「はい。この魔石は、僕らが学生時代に訪れたエルフ族の村の鍛冶師に造って頂いた武器の装飾品なんです!」

神官「しかもこれは大剣の…!剣士くんのなんです!」

 
武装中将「これはどこで」

神官「うちの教会にいる子が受け取ったものです。ですから、この街に剣士くんがいるはずです!」


魔道士「…武装先生、何か知っていることはないですか…!」

武装中将「…すまないが、俺は何も聞いてはいない」

魔道士「そんな…」


武装中将「何かあったら伝えることは伝える。だが、知り得ている情報がない以上、どうにも言えぬ」

武装中将「すまんな…」


剣豪「くそっ…無駄足かよ…!」

戦士「ここに来ればすぐに情報が分かると思ったのに…」

 
神官「仕方ない、僕らで剣士くんを探しにいこう!」

魔道士「うんっ…!」

剣豪「まだこの街にいるかもしれないしな…」

戦士「…やっと剣士さんを見つけたんだ!魔道士さんのためにも、絶対に見つける…!」

ガチャッ…!!バタンッ…


武装中将「…」

武装中将「やれやれ、あんなに慌てて入ってくるとはな……」

武装中将「それほど愛されているということか…」

武装中将「なぁ…"剣士"」


…スッ

剣士「…」

 
武装中将「…本当に会わなくていいのか。魔道士は、お前に会いたくて仕方ないだろうに…」

剣士「いや、まだ早いだろう。俺はまだ、顔を見れただけで充分だ」

武装中将「…大戦士の言葉か」

剣士「…」

武装中将「お前のもとにも、大戦士が現れていたとはな…」


剣士「…俺らが祭壇町から戻った数日後の夜、大戦士兄が現れた」

剣士「魔道士が塔へ生きていること、捕われたこと。そして、これからの行く末のこと…」


…………
……
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

剣士「…大戦士兄っ!今の話…!」

大戦士「大丈夫だ。あいつは生きている…」

剣士「…よ、良かった…!良かった……っ!!良かった…………っ!!」


大戦士「…お前には、これからの起きる事を話しておくべきだと思う」

大戦士「そして、お前がやるべきことを…」


剣士「…!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
……
…………

 
剣士「話を聞いて、すぐにでも魔道士を俺は助けに行きたかった」

剣士「だが大戦士兄は、俺にまだ動く時ではないと。俺には俺にこの時に出来ることがあるはずだ…と」


武装中将「…いくらアイツの言葉とはいえ、お前が魔道士を救うのをやめるとは」


剣士「"あいつらが必ず魔道士を助けてくれるはずだ"と言った言葉を…大戦士兄の言葉を、俺は信じただけだ」

剣士「…今はそれが正しかったとオッサンもわかってるはず」


武装中将「…」


剣士「そして大戦士兄には、最期の言葉として色々と言われたし…聞かされた」

剣士「俺はその通り、世界のために動いてただけさ」

 
武装中将「…大戦士に、何を言われたかは知らぬ」

武装中将「だが、魔道士は助け出され、この戦いにも活路を見いだせている」

武装中将「一人の冒険者であるお前がこれ以上、この世界の重荷を感じることはないんだぞ」


剣士「…大戦士兄の言葉だ。まだ、会うべきじゃないと」

武装中将「…死んだ人間の言葉なぞ、お前が気にするべきではない!!」

剣士「…」


武装中将「俺はお前らを利用し、情報を手に入れ、国の犠牲になってもらおうとした!」

武装中将「どんな謝罪をしようとも、その行為は変わらん!」

武装中将「これ以上、国の犠牲となって己の不幸を導くような真似は見せないでくれ…」

武装中将「お前にとっての幸せは、すぐそばにある!すぐに日常は戻ってくるんだ…。俺にその寂しさを…見せないでくれ…」

武装中将「この言葉も、俺が責任を逃れたい言葉だろう…」

武装中将「だが、お前が幸せになって欲しいということは本当だ……」

 
剣士「…」

剣士「…確かに、オッサンから見たら俺はただの冒険者だよ」

剣士「だけど、こんなことに巻き込まれ、全てを知ってしまったのは…運命だと思う」


武装中将「今なら戻れるんだぞ!」


剣士「戻れない。そうさせたのは、オッサン自身だろ」

武装中将「…っ」


剣士「今、魔道士に会って部屋で抱き合うのもそりゃ幸せだ。これ以上のことはない」

剣士「だけど、こうなった以上…逃げる道はもうないと思うんだ」


武装中将「お前はここから、何をしようというんだ!」

剣士「…戦う」チャキッ

 
武装中将「バカを言うな!」

剣士「…行方不明なら、行方不明のまま消えて本望」

武装中将「魔道士が哀しむぞ!」

剣士「…あいつには、あいつの人生が」

…バキィッ!!!

剣士「がっ…!」

ズザザァ…!


武装中将「…お前は軍人ではない!」

剣士「ぐっ…!確かに軍人じゃねえよ…!だが俺は、大戦士兄の魂をを受け継いでる!」

武装中将「大戦士はな、他人の幸せを第一に考えていた!お前のそれは、自己満足だ!」

剣士「…俺が平和の為に戦うことが、他人の幸せを考えることじゃないのか!」

 
武装中将「そういう意味ではない!」

剣士「…大戦士兄は、俺が平和の礎となり、その腕を振えと言葉を残して消えたんだ!」

武装中将「…っ」

剣士「…所詮アンタも、中央軍の中…この仲間が多い地で守られているから…甘いことばかり!」

武装中将「何だと…!」

剣士「よっぽど、他の冒険者のほうが現状を理解してるさ!」

武装中将「どういう意味だ…!」


剣士「恐らくだがな、この国のトップの元帥だっけか?」

剣士「その辺やオッサン、幹部連は"勝利は手に入れたが安心してならない"なんか言ってるんだろ?」


武装中将「…!」

 
剣士「俺は、この1か月…東方祭壇町を取り囲む防衛線の付近、魔族との前線にいた…」

剣士「そこは中央軍の防衛隊の息の掛からなかった前線だ……」

剣士「そこで、俺ら冒険者が力を合わせ、町や村を守っていたことも知らないだろう!!」


武装中将「な…」


剣士「そこだけじゃない。軍の知らぬところで、魔族は次々と暴れ始めてる」

剣士「そして、その知らぬ場所で今も冒険者は戦い続けている…!」

剣士「だが、それも中央軍は知らず、総力戦の情報だけを表へだし、"勝利した"なんて甘い事言ってやがる…」

剣士「中央軍は確かに活躍したよ。だが、それは軍の知る中でのことだ」

剣士「…お前らが知らないところで、お前らの知らない人間が、戦ってるんだよ!」

剣士「あんたは、冒険者の力もこれ以上借りれないとか言ったんだろうが…俺らは戦っていたのは事実だ」


武装中将「…っ」

 
剣士「それを、軍に任せて己の幸せだけを考えればいい?」

剣士「…何言ってやがる!」

剣士「現状も知らないのは、お前らのほうだ!」

剣士「…同じ志を持っていた、冒険者の仲間は…目の前で死んでいった」

剣士「俺は、それを見て…戦うべき道を選んだ」

剣士「本当なら今日、俺はこんな場所にいるべきじゃない。まだ、その冒険者たちと戦わないといけないからだ」


武装中将「…」


剣士「だけど、アンタには今の俺らのような存在もいるんだという…、そういう現状を知って欲しかった」

剣士「だから俺はここへ来た」

剣士「行方不明のままで良いと言ったのは、その魔族と戦い続ける中で死んでも、魔道士は俺が死んだと気付かない」

剣士「魔道士には、俺が死んだと思って欲しくないという…我がままのためさ」

剣士「最期の…願いなんだよ……」

 
武装中将「…剣士」


剣士「…俺は前線へ戻る。中央軍は、中央軍のままで戦ってればいい」

剣士「俺は冒険者たちの義勇軍で、大戦士兄の言ってくれた"平和の為に力を使え"を貫き通す」

剣士「…魔族との戦いは、アンタらが考えてるほど簡単じゃない」


武装中将「…」

剣士「…っと、違うか…。ごめん…オッサン」

武装中将「…何を謝る」

剣士「…"簡単じゃない”って言葉、取り消す。それじゃ中央軍で散ってった軍人や家族への侮辱だ」

武装中将「…」

剣士「お互い、その力で魔族へ勝てるように、勝利をつかもう…か」

武装中将「…」

 
剣士「くくっ…。まるで成長してねぇぜ、俺」

剣士「すぐに調子乗って、昔…エルフ族に裏切られた大戦士兄の過去の仲間を侮辱してさ…」

剣士「それで魔道士に怒られたこともあったっけ」


武装中将「…」


剣士「また魔道士がいたら、怒られるところだった。ははっ…それじゃ…」


魔道士「…本当だよ。剣士ったら、まだそんなこと言って…!」


剣士「はは、すまんすまん!」

魔道士「…」


剣士「…」

剣士「……え?」クルッ


魔道士「剣士っ…」ブルッ

剣士「ま…どうし…?」

 
武装中将「…」


魔道士「剣士…!剣士ぃ……!」グスッ

剣士「なっ…!」


…スッ

神官「剣士くん!!」

剣豪「剣士…さん…っ」

戦士「剣士さん…!!」


剣士「お、お前ら…!!」

魔道士「…剣士っ!!」ダッ

ダダダダダッ…ギュッ!!!

剣士「…!」

 
魔道士「剣士…剣士…!ひぐっ…!」ポロポロ

ギュッ…ギュウウッ…!!

剣士「…っ」


神官「…やっぱり、剣士くんだったんだね」

剣士「僧侶…なんでここに…!」

神官「…」スッ

剣士「あん?」チラッ


武装中将「…」


神官「武装中将さんが考えていたことだよ。剣士くんが戻ってきたら、こういう手筈になってたんだ」

剣士「何っ!?」

 
神官「剣士くんが戻ってきて、もしこの部屋にいるようなら、合図を出してほしいと」

神官「たぶん、この状況だから…皆に会えないようにしてるんじゃないかって考えた末の策だよ」


剣士「…オッサンに既に読まれてたのか」

武装中将「…お前が戻るのは、魔道士か俺のところしかいないからな」

剣士「…またオッサンには先に読まれてたってか……」

武装中将「…」


魔道士「け、剣士、剣士ぃ……」ギュウウッ

剣士「魔道士…」

魔道士「会いたかった!会いたかったよ…!」

剣士「ば…バカやろう…。そ、それは…俺だって……」

魔道士「う…あうぅ…」グスッ

剣士「…ッ」

…ギュウッ!!

 
戦士「…」

剣豪「失恋」ボソッ

戦士「うっせ!」

神官「はは…」


武装中将「…その温かさを感じて、どう思う。友の声を聞いて、どう思う」

武装中将「お前はまだ、その義勇軍に行きたいというのか」


剣士「お、おいおい…オッサン、逆に聞くぞ?俺が戻るのは予想していただろうが、義勇軍の存在はどうだった」

武装中将「それは…」

剣士「…だろうな。俺は、まだココへ戻ってるわけにはいかないんだ…」

武装中将「だが!それでは魔道士が!」


魔道士「…」

剣士「魔道士…」

 
魔道士「…」

魔道士「ごめんね…。私、さっきの話、ドア越しに聞いてたんだ…」


剣士「…」

魔道士「それで、その……」


剣士「…魔道士、その言葉は待ってくれ」

剣士「俺はさ、本当はこんなこと知られたくなかった。そして本当は、お前に会いたくても会いたくなかった」

剣士「どうしてだか、分かるか…」


魔道士「剣士…本当は私に会いたくなかった…の……?」

剣士「俺が、お前とずっと一緒にいたくなるからだよ…!!」

魔道士「…っ!」


剣士「俺は、このままもう、ずっと一緒にいたいと思っちまってる…!」

剣士「ずっとこのままならって…思ってるんだよ……!」

 
魔道士「…ッ!」


剣士「戦いの道を選んだと強く言い放っても、欲望には俺は勝てない人間なんだよ…」

剣士「…お前がもう、一緒にいてほしいと言ったら、俺は……」

剣士「だから……」


魔道士「…っ」ゴクッ

魔道士「…い……」


剣士「…っ」


魔道士「い…一緒に……」

魔道士「…っ」ギュッ

魔道士「う……ううん!」

魔道士「…剣士がそう言うなら…私はまだ、一緒にはいれないよ……」

  
…ドンッ!


剣士「…!」


ヨロッ…


魔道士「やっぱり、剣士の我がままは、やっぱり私が直してあげないとねっ!」

剣士「魔道士…っ」

 
魔道士(…一緒にずっとこのままいてほしい)

魔道士(そんな本音を、思いっきり叫びたい。抱きしめてほしい、撫でてほしい…)

魔道士(温かさが欲しい、剣士をもっと傍に感じたい。明日からまた、寝起きの剣士の顔を見たい…)

魔道士(…だけど。だけど……!)


武装中将「魔道士!それでいいというのか!」


魔道士「…」

魔道士「…はいっ」ニコッ


武装中将「…!!」


剣士「魔道士…」

魔道士「剣士、あんたは今、その冒険者の義勇軍で戦う仲間がいるんでしょ!」

剣士「あ、あぁ…」

 
魔道士「だったら、その戦い続ける仲間より、先に落ち着いていいの!?」

魔道士「剣士が今やりたいことは、その仲間とともに、大戦士兄の言葉を受け継ぐことなんでしょ!」

魔道士「わ…私は…大丈夫だから…」ブルッ

魔道士「だから、剣士はまだ、戦って!」


剣士「…」


魔道士「でも…。必ずまた、会いに来てね」


剣士「…わかった」


魔道士「…うんっ!約束!」

剣士「あぁ…約束だ!」

 
…クルッ

剣士「…みんな、顔を見れて嬉しかったぜ」


神官「本当に行っちゃうの!?」

剣豪「剣士さん!」

戦士「そんな…!やっと会えたっていうのに!」

魔道士「…」

武装中将「…剣士」


剣士「俺はやっぱり、戦いの中で生きていたいらしい」

剣士「世界を巡って、世界で戦い、世界を知る、冒険者でいたいらしい」

剣士「なぁに、また戻ってくるさ」

剣士「みんな…。魔道士のこと、そして己自身のこと、守ってやってくれよ…」バッ!

ダダダダダッ…!!!
 
……………
……

 
神官「剣士くん!」

剣豪「…剣士さん」

戦士「剣士さんっ…」

魔道士「剣士…頑張ってね…」


武装中将「…」

武装中将「…あいつは、この1か月でどれほどの地獄を見てきたのか」


神官「地獄…ですか」


武装中将「信じられない事だったが、この本部へあそこのガラスを割って入って来たんだ」

武装中将「ここの階層は、大戦士に匹敵する飛翔がなければ届かぬ場所…」

武装中将「それにあいつの身体から出ていたオーラは、もはや並大抵のものではなかった…」

 
戦士「…剣士さんは、また強くなっていたということですね」

武装中将「強く…なりすぎている。短期間の成長速度ではない…!」

戦士「…」


武装中将「たまに見えていた身体の傷は、その1つ1つが重いもの…」

武装中将「あいつはどこまで自分を傷つけ、この世界の礎となろうというのか…!」


魔道士「…多分、それは違いますよ」

武装中将「何?」


魔道士「剣士は、知らない世界へ飛び込むのが人より好きなだけなんです」

魔道士「魔界の話も知っているだろうし、その強大な相手と戦うのもまた、剣士はきっと楽しんでます」

魔道士「…その義勇軍は冒険者の仲間がいると言ってました」

魔道士「きっとその人たちは、この戦争ともいえる中で、世界を守るためだけじゃなく…」

魔道士「冒険者として知らない世界を見たい人たちなんじゃないでしょうか」


武装中将「…!」

 
戦士「…はははっ!自分勝手な人間たちみたいじゃないですか、それじゃ」

剣豪「冒険者とは人の為であれ。そして、自由に生きてこそ…だったか?」

戦士「…お父さん、大戦士師匠が使ってた言葉か…」

剣豪「くくくっ…剣士さんそのまんまじゃないか」

戦士「っていうか、その義勇軍に集まってる人たち、みんなそうじゃないか…」


神官「はは…っ。剣士くんみたいなのが、沢山集まってるんだろうね」


戦士「でも…剣士さん、やっぱりその道をやめたわけじゃなかったんだ」

剣豪「…安心した」

戦士「あぁ…」

 
魔道士「…」
 
魔道士「えへへ…」


武装中将「…どうした?」

魔道士「なんか、剣士は剣士のままで安心したんです。それと……」

武装中将「それと?」

魔道士「なんか、また近いうちすぐ会えそうな気がして」

武装中将「ふむ…」

魔道士「あんな別れ方しといて…。もしかしたら、寂しさ隠しなのかもしれませんけど…」

武装中将「はは…。意外と、そういうカンも当たったりするものだぞ」

魔道士「…だと、いいんですけどね♪」

武装中将「とにかく今は、剣士の無事を祈ることとしよう」

魔道士「はいっ。そうですね…」

………

 
・・・・・・・・・・・・・・・
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・・・・・・・・・・・
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・・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 3日後 東方大陸 前線付近の村 】


…ザッ!

剣士「…ただいま、みんな」


仲間たち「剣士!?お前、戻って来たのか!」

仲間たち「こんな地獄へ…」


剣士「当たり前だろ。ここでの戦いは、中央軍本部の中将へ伝えてきた」

剣士「…あの人なら、もっと多くへ目を配り、他の場所も守ってくれるよう指示してくれるはずだ」

剣士「もうすぐこの村も、軍の援軍…いや、避難も進めてくれるだろう」

 
仲間「…お前、本当に本部の中将と知り合いだったのか…」

剣士「だから言っただろ。つーか、俺が離れてから何かあったか?」


仲間「…いや。中央軍が総力戦に勝利した途端、ここへの襲撃もある程度おさまった」

仲間「南側の村や、他の場所とも連絡を取ったが、ほとんど落ち着いているらしい」


剣士「…あとは他の村にも、中央軍が守ってくれるようになれば、安泰っつーことかな」

仲間「だな。魔族との戦いはきつかったが…見ろよ」クイッ

剣士「…」


…タタタッ

村のこども「ありがとう、おにいちゃんたち!」

村のこども「えへへ、お母さんがね、おにぎりもってけって!」スッ

村の大人「…本当に助けていただいて…」

 
仲間「子供たちの笑顔、見れて良かった。逝った仲間も、きっと喜んでるはずだ」

剣士「…」

仲間「…どうした?」

剣士「こども…か」

仲間「…欲しいのか?」

剣士「ちげえよ!」

仲間「じゃあなんだよ」


剣士「いや…。少し前に、俺がエルフ族の村に行ったことがあるって言っただろ?」

仲間「…あぁ、覚えてるぜ」

剣士「…その時いた、女の子のエルフがいるんだ。無事だっただろうか…ってな」

仲間「確か、西方海岸街の近くっつってたな。あそこは中央軍支部も近いし、大丈夫だろう」

剣士「…だといいんだが」

仲間「心配な気持ちもわかるが……心配のしすぎはやめとけ」

 
剣士「…心労で俺が参っちまうってか」

仲間「そーいうこと」

剣士「まぁ…今は考えても仕方のないことだし、気にしないことにするさ」

仲間「…っていうか、お前さ、これからどうするんだ?」

剣士「どうするって?」

仲間「とりあえず一旦落ち着いたし、ここへいる必要はないんだぞ?」

剣士「…」

仲間「いつ現れるかは分からないが、少なくとも今はー……」


村の大人「…うわぁぁっ!?」

村のこども「いやああっ!」

 
剣士「…何だ!?」

仲間「魔族か!?」


…チャキンッ

盗賊たち「はっはっは!魔族とやらが暴れてくれるおかげで、俺らも仕事がしやすいぜ!」

盗賊たち「くくく…!女はいるか!金目のものをよこせぇ!!」


剣士「…まだ、俺らは離れるわけにはいかないようだぜ」チャキッ

仲間「こんな時だというのに…。逆にあのハングリーな精神…見習うべきなのかもしれん」シャキンッ


……………
………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 夜 村の外 剣士のテント 】

ホー…ホー……

…ゴロンッ

剣士(…ったく、何で魔族の他に人の相手もしねぇといけねぇんだっつーの)

剣士(確かにこんな時だし、元々山賊やら盗賊はチャンスだと思う気持ちもわかるが)

剣士(…)

剣士(…こんな時だから、お前らだってやれることがあるって考えねぇのかよ…)


ザッザッザッ…ピタッ


剣士(ん…誰か来た…?)

剣士「…誰だ。テント、開けていいぞ」

 
ジィィ……ヌッ…

冒険傭兵(仲間の一人)「…よっ」

剣士「お前か。どうした?」

冒険傭兵「…いやちょっとな」

剣士「まぁ、虫入るから早く閉めろ」

冒険傭兵「おう」

…ストンッ


剣士「なんだよ、そろそろ寝ようと思ってたんだが」

冒険傭兵「いや何、ちょっと村の奴らから話が来てたんだよ」

剣士「…話?」

 
冒険傭兵「おう。それで、言伝みたくこうして回って来てるわけ」

剣士「言伝?何だ?」

冒険傭兵「…お前って、彼女いたよな?」

剣士「まぁ…」

冒険傭兵「じゃあ良心的にどうかと思うが、村の娘がお前の相手をしたいんだってよ」

剣士「…はぁ?」


冒険傭兵「男だろうし、こんな辺境を守ってもらってるお礼をしたいんだと」

冒険傭兵「で、村長から話を通してくれと。お前のことを気に入った娘が何人かいるみたいだぜ」


剣士「いやいや。村長アホなの?」

冒険傭兵「…いや、意外とあることだろ」

 
剣士「…俺は結構。断っておいてくれ」プイッ

冒険傭兵「いいのか?」

剣士「いいっつーの」

冒険傭兵「勿体ねぇな。結構いい娘だったぞ」

剣士「欲望満たすためだけに、相手はしねぇよ」

冒険傭兵「…情けねぇな!」

剣士「あのな…」


冒険傭兵「まぁ冗談さ。お前がそういうんじゃ、断っておくぜ」

剣士「そうしてくれ。俺はもう寝る」

冒険傭兵「…分かった」

スクッ…ジィィィ……

ザッザッザッ…ザッザッ…

………
……

 
剣士「…はぁ」


…ジィィ、ヌッ

冒険傭兵「気が変わったら、行ってみろよ。この村の端っこにいる娘だぞ」


剣士「…いいからお前ももう寝ろ!」


冒険傭兵「うひっ!おっかねぇ!」


…………
………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


剣士「…」

剣士「…」

剣士「…はぁ」


…ゴロンッ

剣士(そりゃー…まぁ……)

剣士(だけどな…)

剣士(…)

剣士(俺にゃ魔道士がいてくれるから…それでいいんだよ…)

 
…ゴロゴロ

剣士(…)

剣士(…)


ゴロゴロ……


剣士「…」

剣士「…くそっ!!」バッ!

剣士「…っ」

剣士「くっそ…眠れん!」

剣士「頭冷やす!少し散歩するか…」


………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 近くの平野 】

ザッザッザッ…

剣士(それにしても…なんだ)

剣士(少し前の戦いが嘘のように、ただ静かな時間が流れてる)


ヒュウウ…


剣士(西方側の総力戦の時は、この平野も地獄のような戦いだった)

剣士(俺も含め、よくこの村を守れたと思う)

剣士(…だが、多くの仲間の死を見た。きっと、総力戦側も同じような形だったんだろう)

 
…サァァッ

剣士(今はまだ、ゴブリンやオーク程度の対処できる魔物。時々強力なやつもいるが、まだ問題はない)

剣士(だが…あいつ……!)

ドクンッ…

剣士(…竜族ッ)

ドクンッ…

剣士(恐らく、アイツらが動けばこの村だけじゃない。この一帯は確実に落とされる)

剣士(だけど…)


ドクンッ…!!


剣士(どこかで、アイツと戦いたい俺がいる。負けるのは必須かもしれない)

剣士(しかし…)

…パサッ

 
剣士(この1か月、俺は前線で戦い続けた。きっと、その経験は俺の身体を確実に成長させている)

剣士(…少なくとも、あの時よりは戦えるはずだ)


スゥゥ…


剣士(…月明かりの中、わずかな風。平野に生える緑が揺れる音…)

剣士(ふぅぅ…)


ブンッ…ブォンッ!!!


剣士(…)

剣士(…まだ。まだだ。俺はまだ戦って、もっと強くなる)

剣士(大戦士兄…俺は、あんたに追いつく。見ていてくれよ……!)


…………
……

 
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・・・・・
・・・・
・・・
・・

 
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――――【 8時間後 中央軍本部 】


元帥「諸君。現在の情報と、これからの作戦について話し合おうと思う」

槍士大将「…」

武装中将「…」

聖大佐「…」

大魔術中佐「…」


聖大佐「…その前に、少しよろしいですか?」スッ

元帥「…構わない」

 
聖大佐「今更なのですが、元帥殿のご判断でエルフ族の輸送作戦を決行したのは覚えておりますよね」

聖大佐「そして、この作戦は今も継続し、続いている」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
元帥「ここはワシが独断での判断を下す!反対は許さぬ!」

元帥「現状の霧をこれ以上広げぬよう、全てエルフ族を保護し、一度、南方大陸へ避難させる!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

元帥「…それがどうかしたか」


聖大佐「…なぜ、エルフ族の輸送までしたのでしょうかと…」

聖大佐「落ち着いた状況になり、よく考えてもみれば…それは少しおかしいのでは?」


元帥「何がだ」


聖大佐「…この度の襲撃、強襲、戦争。全てのトリガーは、あのエルフ族……。」

聖大佐「その戦犯ともいうべき存在を、軍が命を張ってまで彼らを守る義務はないと考えるのですが」

 
元帥「…」

聖大佐「…どうでしょうか、間違っていますでしょうか?」

元帥「…それについてだが、今回の事件はエルフ族は犠牲者となっただけに過ぎないと思っている」

聖大佐「と、いうと?」


元帥「魔族の何体かを捕虜とし、エルフ族共々情報を聞き出しているのだが…」

元帥「エルフ族はあくまでも霧の媒体とし、その霧は彼らが一時的に生存できるようにするもの」

元帥「西方側の過去の事件…。あれは魔界とこちら側の世界を通じさせようとして失敗した結果だそうだ」


聖大佐「…ですが、完全にシロとは言えません」


元帥「確かに東方の祭壇の存在や、彼らがいつ牙を剥くかは分からない」

元帥「だが、エルフ族を避難させる際、霧となった者や同胞たち、その家族は涙を流していたそうだ」

 
元帥「…」

聖大佐「…どうでしょうか、間違っていますでしょうか?」

元帥「…それについてだが、今回の事件はエルフ族は犠牲者となっただけに過ぎないんだ」

聖大佐「と、いうと?」


元帥「魔族の何体かを捕虜とし、エルフ族共々情報を聞き出している」

元帥「エルフ族はあくまでも霧の媒体とし、その霧は彼らが一時的に生存できるようにするもの」

元帥「西方側の過去の事件…。あれは魔界とこちら側の世界を通じさせようとして失敗した結果だそうだ」


聖大佐「…ですが、完全にシロとは言えません」


元帥「確かに東方の祭壇の存在や、彼らがいつ牙を剥くかは分からない」

元帥「だが、エルフ族を避難させる際、霧となった者や同胞たち、その家族は涙を流していたそうだ」

 
聖大佐「…演技では?」


元帥「エルフ族との歴史は、俺らが生まれる以前、その前から何代にも渡ってきている」

元帥「もし、先代のエルフたちがそのような考えを持っていたとしても、今のエルフ族には何ら関係のないことではないか?」

元帥「むしろ、今日という日まで共にこの世界に生きてきた住民。それを守らない理由はない」


聖大佐「…」

元帥「…では、話を本題に戻すがいいか?」

聖大佐「…はい」


元帥「では…本題だ。現在、総力戦に勝利し、我が軍勢の指揮は満ち足りている」

元帥「総力戦の勝利後、魔族の動きは比較的落ち着いている。これは、彼らも我ら程の戦力と見ていい可能性はある」

元帥「また、武装中将から話があった通り、総力戦で我が中央軍以外にも冒険者が村を守ってたという」

元帥「直ぐにでも東方側や他の地区で、彼らの守る村へ援軍で固め、その負担を軽減したいと思うのだが、意見を頼む」

 
槍士大将「自分は賛成です。全体的にバラけさせ、世界全体で守りを固めるべきでしょう」

聖大佐「…自分は反対ですね。陥落させられたら困る、主要都市をもっと固め、その他はある程度に抑えるべきです」

大魔術中佐「ふむ…。私はどちらかというと聖大佐殿の考えに賛成です」


元帥「…武装中将はどう思う」


武装中将「元帥殿。その前に、それに加えた情報を少しよろしいでしょうか」スッ
 
元帥「構わぬ」


武装中将「この度、総力戦に駆り出された人数はおおよそ4、50万目安です」

武装中将「中央軍で、支部も合わせた待機人数はその2倍以上」

武装中将「いうなれば、実働出来た人数は100万以上ということ」

武装中将「…世界全体の戦闘を行える人口でいえば、500万を越します」

武装中将「この中で、町村での被害人数は推定1500万以上…これがどういう意味か分かりますか」

 
元帥「…」

槍士大将「…」

聖大佐「…」

大魔術中佐「…」


武装中将「中央軍の怠慢とも言わざるを得ないと思います」

武装中将「こんな事があると、誰も予想は出来なかったのは仕方ないとは思います」

武装中将「ですが、改めて落ち着き、数字を見直せばこれは恥ずべきこと」

武装中将「今までが平和だったのもあり、予想できないのもあり、仕方ないことではありますが…しかし」

武装中将「この数字は、どういうことでしょうか」


聖大佐「…ちょっとお待ちを。話を割りますが、大隊以上の指揮は将官以上に限られていますよね?」

聖大佐「それを軍全体の責任にするのはどうかと」


武装中将「聖大佐、その大隊の準備をさせたのは、君もだったな」

聖大佐「そ、それは…」

 
武装中将「もちろん、将官以上…俺らも腑抜けていると言わざるを得ない」

武装中将「だが。これは軍全体が腑抜け、動けなかったために起きた事だと言わざるを得ません」


元帥「…痛い言葉だ」

武装中将「それを踏まえ、自分は今後の作戦の提案をいたします」

元帥「構わん」


武装中将「現在の避難区域を大きく広げ、前線付近数百キロメートル範囲内は危険区域に指定し、避難を迅速に進めます」

武装中将「その後、その避難した場所に軍の臨時支部を設置」

武装中将「少なくとも、彼らは東方と西方の一定の場所からしか出現はしないようです」

武装中将「この落ち着いている間に、守るだけではなく…攻めに転じましょう」


元帥「…!」

槍士大将「…ほう」

聖大佐「なっ…」

大魔術中佐「…」

 
武装中将「今、確認しているのはバンシィ、デュラハン、竜族の2体」

武装中将「これを撃破できれば、おのずと相手の戦力は傾くはず」


聖大佐「しかし、彼らが主と呼ぶ相手もいるわけですよ」


武装中将「…1体に対し、大隊を2とする。それより強い相手なら、更にその大隊を4、6と増やす」

聖大佐「ははぁ…玉砕覚悟、死んで勝利をもぎ取る前提だと」

武装中将「軍にいる以上、覚悟はあったはずだ」


聖大佐「…まぁ、既にいる軍に所属している人間はよしとしましょう。」

聖大佐「ですが、東方の防衛線に配置されている人間はどうですか?」

聖大佐「少なくとも、彼らは元冒険者。しかも、何も知らず配置された冒険者たちですよ」

聖大佐「…ただでさえ、総力戦の始まりの時に多くの犠牲を伴っているというのに…」


武装中将「…そうだな」

聖大佐「まさか、引き続き彼らも利用する…と?」

 
武装中将「先ほど言った、戦闘人口が500万という話」

武装中将「これは、軍の他に…冒険者の数も入れている数と分かるはずだ」


聖大佐「!」


武装中将「…冒険者の数でいえば、3000万人を越す。戦闘能力がある一般市民も混ぜていえば、その10倍はいてもいい」

武装中将「だが、その中でも実力の有る者は少ない。その中で、大きく見積もって500万ということ…だが」

武装中将「俺としては、その戦えるであろう人々をも全て立ち上がらせることが最終目標だ」


槍士大将「ふむ…今の我々が掌握している世界人口は、おおよそ50億に満たない数」

槍士大将「冒険者が増えたとはいえ、その冒険者人口割合は非常に低い…」

槍士大将「だがもし、武装中将のいう一般市民も含んだ"戦闘人口"とあわせ考えると…」


元帥「…全人口のうち、下手をすれば数%を戦闘者として立ち上がらせるということだな」

元帥「そして今いる戦闘能力のある者すべてを使い、西方と東方側の魔族の拠点へ攻め入る…と」

 
聖大佐「…っ!!」

聖大佐「ば…バカげている!市民や冒険者の力も借りるなど!」

聖大佐「いや、それだけじゃない!その戦闘で敗北すれば、世界は終わりですよ!」

聖大佐「…戦闘が出来る人間のほぼ全て!?ば、バカな提案にも程がある!!」

聖大佐「訓練された軍人が数千万ならまだしも、ただの冒険者や市民など、命を散らすだけだ!」


武装中将「…あくまで俺の考えだ。これは大陸全土…大陸戦争だということは分かるな」

武装中将「だからこそ、俺ら軍だけで勝とうなど、甘い考えではないかと思い始めた」


聖大佐「…あなたが、軍だけで解決するような言い方をしてきたんですよ!」

 
武装中将「…考え方も変わることもある」

武装中将「それに、問題もかなりあるだろう」

武装中将「戦闘意思のある者の招集準備や、その体制を整理すること」

武装中将「彼らを大隊として派遣する準備もあれば、まだまだ決定を下せるようなものではー……」


…バゴォオンッ!!!!グラグラグラッ……!!

 
武装中将「むっ…」

大魔術中佐「…何の音?」

聖大佐「何だ?」

槍士大将「会議室の壁が…壊された……?」

元帥「待て…。みな、落ち着け」


モワッ…


武装中将「壁の中から、霧が……」

聖大佐「ま、まさかこの霧は!」

大魔術中佐「なぜ、この本部に!」

槍士大将「しっ…全員静かに。足音がする」


ザッ…ザッ…ザッ……


元帥「何か…来るぞ…」

 
ザッザッザッ…モワッ……


中央軍人「あ゛……っ」



元帥「何…。軍の人間か?」

槍士大将「…いや、血だらけですね」

武装中将「彼の後ろ、何かいるようです」

聖大佐「ま、まさか…この場所に……」

大魔術中佐「魔族が…?」


…ドシャアッ

中央軍人「た…助け…」

スッ…バキィッ!!ベチャッ!!!


???『……ココが、人間たちの中央軍の本部とやら…か』

 
…ババババッ!!!

槍士大将「元帥殿、自分の後ろに!」

武装中将「人型か!?人間ではないのか!」

聖大佐「…それならいいんですが!」

大魔術中佐「一体、何者ですか」


???『…霧を使うのは趣味ではないのだが、塔が完成したとはいえ、俺にとっては不十分だったからな』


槍士大将「…やはり魔族か!どうやってここに!」


???『お前たちの便利な技術を利用させてもらったのだよ』


槍士大将「…まさか、転移装置を!」


???『あれは、そう言うものなのか。エルフ族の祭壇から、飛ばせてもらってね』

 
槍士大将「待て…あれは動かなかったはず…。一体どうやって…」


???『…まぁ、無駄話はいい。用事があるのは…お前だ』スッ

元帥「…」

???『お前がこの世界のトップ…だな』

元帥「…それがどうした」

???『この度の戦いについてー……」


聖大佐「…ここをどこだと思っている!魔族の一匹くらい……」パァァァッ!!


槍士大将「ま、待て!!」

武装中将「早まるんじゃない!!」


聖大佐「極っ!!雷撃まほ……っ!!」

 
パァッ…バシュウッ!!!

聖大佐「…がっ!?」

…ズブシュッ……!

???『…お前には用事がない。黙っていろ』


聖大佐「あ゛っ……」

……ズザザァ…ドォンッ!!ドシャアッ!

 
槍士大将「せ、聖大佐っ!!!」


聖大佐「…」ダランッ


武装中将「し、心臓を正確にっ…」

大魔術中佐「い、今のは…何を…!魔法!?高速の矢のような…!」

元帥「…っ!」

 
???『…話を続けても?』

元帥「ぜ、全員動くんじゃない…。話を聞こう……」


???『…ありがとう。では、改めて』

???『この度の戦い、見事だった。我が配下が、その実力の前に敗北をしたことは認めよう』


元帥「…我が配下だと?」


???『あぁ、申し遅れていたな。自己紹介をしよう』


元帥「…っ」

武装中将「…」

槍士大将「…」

大魔術中佐「…」

 
アリオク『私の名前は、アリオク。』


アリオク『お前たち人間が魔族の軍と呼ぶ全てを…率いさせてもらっている。」


アリオク『突然のことで悪く思うが、この世界…俺に預けてくれないか』ニコッ

 
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・・・・
・・・
・・

 
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――――【 1時間後 中央軍本部 】


…シーン

……


……

………ザワッ

…ザワザワ…ガヤガヤ……!!

軍人「…この辺だ」

軍人「うっ…。門番兵たちが倒れている……。血だらけじゃないか…」

軍人「会議室には中佐殿たちがいたはずだが…」

軍人「最上階の途中から、死体だらけで…。一体何があったというんだ…」

 
ベチャッ…ドロッ……

軍人たち「…っ」


…ソー

軍人「元帥殿たちは…いらっしゃいますでしょうか……」

軍人「…」

軍人「…えっ?」


…ベチャッ……!


軍人「…え?」

軍人「えっ…あっ……」

軍人「あ……あぁぁっ!!」


………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

――――本日、朝方。

元帥以下、大将、大佐。

以上3名が、中央軍本部にて遺体となって発見された。

武装中将は一命を取り留めたものの、意識不明の重体。

大魔術中佐は行方不明となる。


これにより、中央軍の本部は一時混乱に陥る。

中央軍本部の残された中尉以下は、その指揮も不慣れなもので、

実質、軍の機能は停止したものと……思われた。

だが…。

この騒動の最中。


幹部達のうち、姿を見せず唯一、前線で戦い続けてた男が―…帰還する。


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――――【 中央軍本部 入口 】


…バババッ!!

中尉「…全員、敬礼!」

軍人たち「…」ビシッ!!
 

???「…俺がいない間に、随分とまぁ大変なことになっちゃって」

???「ま、これも漁夫の利ってやつで上手いこと考えようか」


軍人A「…なぁ」ボソボソ

軍人B「なんだ?」

軍人A「あの人って…少将なんだろ?俺、見た事ないんだが…」

軍人B「あぁ…あまりにも自分勝手で、遥か遠くに飛ばされてたって話だ…」

 
軍人A「…そんな人が、本部に戻って来たのか」

軍人B「仕方ないだろう。元帥殿も…、大将殿も…。みんな、死んじまったんだぜ…」

軍人A「謎の襲撃だっけな。だからっつって、飛ばした人間が戻ってくるとは…」

軍人B「…頼りざるを得ない状況なんだろう」

軍人A「名前、何ていったっけ」

軍人B「えーと…確か…」


剣聖少将「…剣聖少将っつーんだが、覚えててくれるか?」ボソッ


軍人A「いっ!?し…失礼しましたぁ!!」

剣聖少将「はっはっは、そんな畏まるな。内緒話は仕方ねぇよ!別にいいぜ!」

軍人A「…は、はいっ!」

剣聖少将「…ま、気楽にいこうや」

…ポンポンッ

軍人A「は…はいっ…」ビクッ

 
剣聖少将「じゃーな」


ザッザッザッザッ……

ザッザッザッ……

………



軍人A「はぁ…はぁ…。びっくりした……」

軍人B「す、すげぇオーラだったな…」

軍人A「…殺されるかと」

軍人B「はは…。でも確かに、自由な感じはしたわな。なんか、将官らしくねーっつうか」

軍人A「どっちかっつーと、冒険者よりっぽかったな…」

…………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央軍 会議室 】
 
ガチャッ、ギィィ……


剣聖少将「…へぇ、ここが元帥たちが簡単に殺された会議室ね。狭いしきったねぇなぁ」

中尉「そ、そんな言い方していいんですか…」

剣聖少将「死人に口なしだろ。どんな偉くても、死んじまったらただの肉塊と一緒よ」

中尉「し、しかし…」

剣聖少将「死ぬっつーことは、所詮その程度だったっつーことだ」

中尉「…」

 
剣聖少将「っつーか、集まったのこれだけ?本気で左官もいなくなったのな」


中尉「…中将殿は意識不明。中佐殿は行方不明ですので」

少尉「じ、自分がこんな場所に…いていいんですか…」

准尉「…っ」


剣聖少将「おいおい頼むぜ。トップらが消えた以上、俺とお前らを合わせた4人が人間側の四天王だぞ?」


准尉「じ、自分は先月に准尉にあがったばかりで、突然こんな場所にこのような形で……」

剣聖少将「…あのなぁ。お前は誰だ?」

准尉「…え?」

剣聖少将「…一般市民か?軍人か?」

准尉「そ、それは軍人でありますが…」

 
剣聖少将「…本当か?」

准尉「あ、当たり前です!」

剣聖少将「じゃあなぜ、そんなにビビってんだよ」

准尉「うっ…」

剣聖少将「…そんなんで、他の人間が守れるのか」

准尉「あ…その……」


剣聖少将「不安があるなら、俺を頼ってもいいぜ?」

剣聖少将「だが、お前を変えるのはお前自身。この状況を受け入れられるのも、お前自身」

剣聖少将「…この状況が受け入れられないなら、出て行ってもいいんだぞ?」

 
准尉「…っ」

准尉「…せ、誠心誠意、あたらせていただきます!」


剣聖少将「うむ…いい声だな。だが、その言葉は俺にじゃねえだろ?」

准尉「へ?」

剣聖少将「お前が言うのは、こっちだ!」

ガシッ…グリンッ!!

准尉「うわっ!?」 

 
剣聖少将「…この窓から見える、守るべき人々に言うんだよ」

剣聖少将「お前が誠心誠意あたるのは、この世界に住む人々の笑顔のためなんだからな」


准尉「は…はいっ!」

 
中尉「…!」

少尉「…っ」


剣聖少将「…さて、諸君。俺の噂は聞いていると思うが、こんな状況だ」

剣聖少将「まず、俺に従うことは必須…と言いたいが。文句があるなら言え、誰が正しいかなんてわからないんだからな」

剣聖少将「意見を言わないやつは、ドンドン外すぞ。いいか!」


…ビシッ!!

中尉「はっ!」

少尉「承知しました!」

准尉「了解いたしました!」

 
剣聖少将「…では、さっそく始めようと思うんだが、これからのことや、魔族への対抗策をな」

中尉「は、はいっ」 

剣聖少将「…の、前にまず。ココへ呼てぇ奴がいるんだ」

中尉「…呼びたい方ですか?」 
 
 
剣聖少将「ここにいるのが四天王とかいったが、どっちかというと五芒星になるかもしれん」


中尉「…と、いうと?実力の有る者がいるということですか?」


剣聖少将「あぁ…つえぇぞ。俺はしばらく会ってなかったんだがな」

剣聖少将「…噂は聞いてる。ま、一回行方不明になっちまったけどな」

剣聖少将「だが、行方は既につかんだ。アイツのことだから来るかわかんねーけどよ…」

 
中尉「それは…どなたでしょうか」


剣聖少将「おうよ。まぁ…その…」

剣聖少将「俺の"息子"だ」


中尉「…息子さんですか」

少尉「剣聖少将殿の…子を呼びたいと?」

准尉「自分は構いませんが…」


剣聖少将「…アイツも俺に似て自由だからな~。本当に来るかどうか…」


 
………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 東方側 防衛線付近の村 】


剣士「…」

剣士「…へっくしょんっ!!」

剣士「…」ズズッ


剣士「…風邪でも引いたか?」


………
……

 
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・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・

【 to be continue... .】

 
本日はここまでです。

本来3日にわけて行うパートを一気にやってしまい、
一部を抜け・一部未修正のままアップをしてしまいましたので後日修正を行います。

また、ここで章区切りとなり、次回より、

『最終章後編』

となります。

次回更新は5~7日以内の予定ですが、よろしくお願いいたします。

それでは、ありがとうございました。



地球の総人口が2013年で約71億なの考えると
wikiの地図は人が住めない所含めて地球の倍以上の土地ありそう

乙!
ちょっと人口多くない?あの地図だと中央国は海から相当離れてることになるけど…

皆さま、多くのお言葉有難うございます。

>>245 >>246
実は一部未修正だったのはそこも該当しまして、
>>212
50億→20億 に訂正いたします。
そのほかの修正内容は、後日まとめて行う予定です。

それでは、やや遅くなりましたが投下致します。

 
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【これまでのあらすじ】

北西冒険学校に入学した剣士と武道家は、

魔道士、乙女格闘家、僧侶、魔術賢者、大戦士などの仲間と出会い、成長していった。

やがて卒業を迎えた剣士たちは、夢であった冒険者となり世界へと飛び出す。


それから数年。

名実とともに冒険者として実力を磨いた剣士、魔道士、武道家、乙女格闘家の4人。

何もかも順調にいくはずだった。……だが。

剣士が放った一言『学生時代に修学旅行で訪れたエルフ族の村へ行きたい』。

この言葉で世界を統治する"中央軍本部"へ足を運んだ4人。

 
そこで学生時代以来の武装先生と再び出会い、エルフ族の村の現状を調査してくれるという。
 
剣士は喜んでそれを承諾したが、その夜、彼らに大地震が襲いかかった。

震源地は東方エルフ族、太陽の祭壇の町。

それは学生時代に話を聞いた、地震後にエルフ族の村の住民全員が消失した

"エルフ族消失事件"そのままであった。


武装中将はこれを重く見て大戦士を再び軍へ呼び戻し、小隊とともに祭壇町へ送り込む。

しかし……。

大戦士を含めた小隊は行方不明となってしまう。

 
そこで剣士は大戦士のため、エルフ族のため、仲間とともに祭壇町へ行くことを決意し、

剣士たち4人は大戦士を追い、祭壇町へ突入する。

だが、そこで出会ったのは無残な軍の遺体と、強大な魔族…"竜族"の存在であった。

その竜族の前に剣士たちは敗北し、魔道士は祭壇町へ残され、他の3人も行方不明となる。


それからしばらくして、かの冒険学校の後輩である「戦士」と「剣豪」は、

西方にある星降町にて謎の霧の中に存在する、"魔力の塔"を発見する。

そこで出会ったのは、命果てる寸前の大戦士と、行方不明になっていた「魔道士」であった。


更に戦士と剣豪は魔族とも対峙し、勝利。その魔族より、

「魔族たちは魔界より人間界へ侵攻し、謎の霧は魔族が動く為に必要なもの」

「塔の存在は"霧がなくても動けるようになる"」ものだと聞かされる。

 
話を聞いたのち、魔道士の救出に成功したものの…大戦士を目の前で失ってしまう。


その後、塔の存在とその完成を阻止をすることを

中央軍本部にいる武装中将へ伝えたのだが、その全ては遅かった。

情報を伝えた翌日、魔族の「魔力の塔」は完成し、魔族たちは自由に動けるようになってしまったのだ。


そして、中央軍と冒険者、一般市民の全てを巻き込むような戦い…

『大陸戦争』

へと発展していった。


その最中、中央軍を担っていた元帥・大将・大佐・中佐が亡き者となり、

全てが敗北してしまうと思われたその時。

身勝手なあまり、果ての支部へ飛ばされていた「剣聖少将」が帰還する。

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【現在の情勢・情報】
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■中央軍
意識不明重体の中将、行く不明の中佐以外の幹部が死亡。
現在、剣聖少将が引き継いで指揮をとっている。

■魔族軍
東方・西方大陸の一部より出現し、謎が多い。
魔族軍にはトップであるアリオク以下、
デュラハン、バンシィ、バハムート、バジリスクが魔族軍を率いている形となっている模様。

●市民たち
西方星降町、東方祭壇町から一定距離以内の市民は南方大陸へ避難中。
エルフ族も同様に、南方大陸へと避難を進めている。

●冒険者たち
一部冒険者たちの一部は義勇軍を結成し、魔族と対抗中。

▲大陸戦争の侵攻と防衛
・東方西方魔族侵攻迎撃戦(総力戦):人間側の勝利

・エルフ族輸送作戦:進行中

・東方西方市民避難作戦:上記と同様に進行中
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……
………
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 2時間後 中央軍本部 会議室 】


剣聖少将「…げぇっぷ」


中尉「ち、ちょっと少将殿…」

剣聖少将「あん?」

中尉「か、会議中に…」


剣聖少将「一丁前にしたって、戦況が動くわけじゃねーんだから仕方ねーべ」

中尉「そ、それはそうなんですが…」

剣聖少将「それに他のお偉いさんたちが行動をしなかったから、こんなことになってんだろーけどな」

中尉「……そう、ですが」

 
剣聖少将「で、何だっけ?アリオクっつったか…それが相手側のリーダーなんだろ?」

中尉「はい。武装中将殿が、残した言葉らしいです」

剣聖少将「…強いの?」

中尉「そ、それはそうだと思います。今の左官たち以上は、その実力で上り詰めた方々ですし…」

剣聖少将「…いや、左官以上が弱いんじゃねーの?」

中尉「そ、そんなことは……」


剣聖少将「のらりくらり過ごしてるからこんなことになってんだよ」

剣聖少将「俺みたくよぉ…、魔獣でも何でもいいから、戦闘に常に従事してないと平和ボケしちまうもんなんだぜ」


中尉「…」

剣聖少将「そんな立場で偉そうに、あーしろこーしろ。だったらテメーが先に動けってな?」ハハハ

 
中尉「…しかし、彼らの指揮がなければ我々は動けなかったですので……」

剣聖少将「あぁ。ま、そうか…」

中尉「はい…」


剣聖少将「…」

剣聖少将「なんか、勿体ねーやつも死んだみたいだしな」フゥ


中尉「勿体ない方…ですか?」

剣聖少将「大戦士だよ。あいつ、普通に軍にいたら今頃は俺と同じ立場になってただろうな」

中尉「…自分は実際に見たことがないもので」

剣聖少将「あいつさ、俺と一緒で実践主義でな。それに強かったぜ…。ああいう奴が、軍を引っ張るべきだったんだ」

 
中尉「…お知り合いなんですね」


剣聖少将「まぁな。同期っちゃ同期だ」

剣聖少将「…」

剣聖少将「くそ…。本当なら、アイツがここにいてよ…。俺ら二人で思い切り暴れられたかもしれねーのに……」


中尉「…」

剣聖少将「…それに、俺の息子もお世話になったみてーだし」

中尉「へぇ、そうなんですか?」

剣聖少将「んむ」

中尉「…色々と繋がりがあるんですね」

 
剣聖少将「まぁそれはいい。それより、まだ剣士のやつこねぇのかよ…。おせぇっ!」

中尉「剣士さん…。今は冒険者で、黄金世代の卵って呼ばれてるんですよね」

剣聖少将「あ~…噂じゃそうらしいな」

中尉「…父である貴方へ憧れ、軍への道は入らなかったのでしょうか?」

剣聖少将「まともに家にいたことねーし、どっちかっつーと兄貴のほうがそれっぽかったからな」

中尉「そうなんですか?」


剣聖少将「俺の兄貴は、生粋の冒険家でな」

剣聖少将「帰って来くる度に、息子へ会いに来て、その楽しさを伝えてたんだよな」

剣聖少将「それもあって、冒険者への道を目指したんだろうが…」

剣聖少将「ま、そういう理由の他に、俺に似て自由主義で…軍なんて場所は嫌だったんだろ」


中尉「…自由主義の割に、剣聖少将殿は軍に?」

 
剣聖少将「俺は、若い頃からコレがいたからだ」ピンッ

中尉「…女性ですか」

剣聖少将「おうよ。好きな女にゃ、不自由な暮らしさせたくなかったしな」

中尉「剣聖少将殿は相当な実力があると思いますが、若い頃より鍛錬を?」


剣聖少将「うちは元々、割と有名な冒険家が出てた家系だったってこともあるが」

剣聖少将「俺は若い頃からケンカばっかしてたし、なんつーか…自然にそうなっちまった」

剣聖少将「息子の場合は、冒険家に憧れててずっとそういうマネをしてたから、強くなったってだけだろ…多分な」


中尉「へぇ…」


剣聖少将「まぁ無駄話もいいが、アイツ本当におっせぇな!」

剣聖少将「他の支部から迎えを向かわせたとしても、そろそろ来てもいいようなー……」

 
…ガチャッ!!


剣聖少将「お…?」


…ザッ

剣士「…」


剣聖少将「…来たか」

剣士「……!」

剣聖少将「…どうした。久々に会ったのに、その顔は」

剣士「親父…なのか……?」

剣聖少将「顔も忘れちまったか?」


剣士「…」

剣聖少将「…」

 
剣士「…どれだけ久しぶりだと思ってるんだ」

剣聖少将「9年ぶり」

剣士「…っ」

剣聖少将「…」

剣士「…色々と言いたいことはある。だが…今はそんな場合じゃないのも分かってる」

剣聖少将「ほう?」


剣士「話は聞いた…武装のオッサンがやられたとか、みんな死んだとか……」

剣士「何がどうなってる!?」

剣士「そ、それに…親父が軍の人間だったなんて聞いてねぇよ!!」


剣聖少将「そりゃ言った事ねーし」ハハハ


剣士「たまに姿を見せたと思えば、すぐにどこかへ出かけていくし…!」

剣士「軍の人間が俺のところへきて、親父のことを話すから何事かと思えば…!」

 
剣聖少将「くははっ、びっくりしたろ?」

剣士「…俺に一体なんの用だ!くそっ、いきなりすぎて何がなんだかわかんねぇよ…!」


剣聖少将「…じゃあ、もっとびっくりすること教えてやろうか、うん?」

剣士「あんだよ!」

剣聖少将「母さんがな、村を襲った魔族にやられて……残念だ…」

剣士「…は?」

剣聖少将「避難を進めていた最中だった。だが、間に合わなかったんだ……」

剣士「う、ウソ…だろ?」

剣聖少将「ウソだ」


剣士「…」

剣士「…」

剣士「…」チャキッ

 
中尉「!?」

少尉「!?」

准尉「!?」


剣士「…殺す」

剣聖少将「うはははっ!お前に殺されるような俺じゃねーっつーの!!」

剣士「こ、この…!」

剣聖少将「くくく…」

剣士「はぁ…。相変わらずだな……ペースが乱れる……」


剣聖少将「はぁっはっはっは!久しぶりだな…剣士。元気そうで何よりだ」

剣士「…親父こそな」


………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 数十分後 】


剣士「…オッサンは意識不明、大魔術中佐は行方不明か」

剣聖少将「こんなところで会議ばっかしてっから、襲撃も許すし殺されちまうんだっつーのな」

剣士「…」

剣聖少将「気がつきゃ、漁夫の利だ。俺が元帥の立場だぜ?すげーだろ」


剣士「…俺は未だに親父が軍人だったなんて信じられねぇよ」

剣士「アンタはいつも自由で…。それで久々に親父の話を聞いたと思えば、こんな形で……」

剣士「未だに…混乱してるっつーの……」

 
剣聖少将「ちっと自由に暴れすぎて、遠方の支部側に飛ばされちまってたしなぁ……」

剣聖少将「しかも前線で、抜け出すに抜け出せない場所だった」

剣聖少将「だから、兄貴に様子見を頼んでたんだ」


剣士「…」


剣聖少将「たまにしか家に顔が出せないのは悪かった」

剣聖少将「だが今のお前なら、その時の俺の現場が浮かぶはず。そして、俺の気持ちが分かるはずだ」


剣士「まぁ、分かるけど…よ…」

剣聖少将「…」ニカッ

剣士「…って、それは別にいい。何で俺を呼んだんだ」

剣聖少将「これから、新たな体制での軍の発足だ。手伝え」

剣士「断る」

剣聖少将「断るのを断る」

剣士「おい」

 
剣聖少将「…なぜ手伝わない。人の為の仕事だぞ?」

剣士「俺には俺の立場がある。冒険者同士で、軍には頼らないやり方でやらせてもらう」

剣聖少将「…俺に似て、自由主義な奴だなお前も」

剣士「うっせーな…」


剣聖少将「俺はお前の実力は聞いてるし、認めてるんだぜ?」

剣士「認めてようが、認めてまいが、関係ない」

剣聖少将「…つまりそれは、将官たちも倒れ、ガタガタの軍を見捨てるっつーことか?」

剣士「軍には軍のやり方が。俺は軍人じゃない」

剣聖少将「なるほど、正論だ。だが、その正論は"人の為にあること"をやめるっつーことだな?」

剣士「…どうしてそうなる」

 
剣聖少将「正直言って、軍の内部はボロボロ。どうしようもねぇ」

剣聖少将「こんな俺だが、それでもこの少将っつー立場で、お前に頭下げてんだぞ」

剣聖少将「…その意味が分からないか?」


剣士「…どういう意味だ」


剣聖少将「あのなぁ…。つまり、もう人間側はダメだっつーことだよ」

剣聖少将「人間は、中央軍は!魔族に勝てる要素がねえんだよ!」ククク


剣士「…おい!」


剣聖少将「そして、お前ら冒険者が粋がって戦ったところで、ゾウにかみつく蟻だ。何にもならん」

剣聖少将「…確かに戦いにおいては、冒険者はその辺のやつよりは上かもしれん」

剣聖少将「だが、所詮素人は素人。規律はねえし、自由主義」

剣聖少将「お前らみたいなのが集まったところで、結束もねぇ以上、いつ崩れるかもしれぬパズルと一緒だ」


剣士「…っ!」

 
剣聖少将「…だから、お前はそっち側じゃない」

剣聖少将「…」

剣聖少将「いや、お前にはお前にやって欲しい事があるのさ。その…黄金の名を使ってな」


剣士「…黄金の名?」

剣聖少将「まぁ…お前は冒険者たちから見れば、黄金剣士か英雄ってところだろ?」

剣士「俺が英雄だって?」


剣聖少将「冒険者の中に突然生まれた、黄金の卵と呼べたパーティとそのリーダー…」

剣聖少将「実力もさることながら、その名をもらったのは若き冒険者たちの先駆けとなり、そいつらから見れば英雄だ」


剣士「…だとしたら、それがどうしたんだ」

剣聖少将「お前を憧れる、お前みたいな冒険者は、軍へ協力しようと思うか?」

剣士「…しないだろうな」

 
剣聖少将「だが、軍へ所属せず、冒険者としても名を馳せた男が"俺について来い"と言ったなら…?」

剣士「…するかもしれん」

剣聖少将「そうだな、例えば…大戦士のような男だ」

剣士「…そりゃ、するだろうな」

剣聖少将「おいおい、ここまで言ってまだわからんのか」

剣士「あぁ?」


剣聖少将「だからな、つまり。俺ら軍がバックアップする。正式に、大戦士の立場を引き継げ」


剣士「…は?」

剣聖少将「それだけでいい」

剣士「ど、どういう意味だよ。具体的に教えろって」

 
剣聖少将「今の世代は、お前に憧れを持つ者が多い。お前が指揮をとれば、きっと他の奴はついてくるだろう」

剣士「…!」

剣聖少将「だが、そいつらを立ち上げるには、お前の足らねぇ脳で行動してもどうにもならん」

剣士「おい」

 
剣聖少将「だからそこで、俺には従え。軍が、直々にお前を黄金の復活と銘打ってやる」

剣士「だ、だが…」


剣聖少将「前の幹部はアホみてぇに"一般市民を巻き込まない"、"冒険者の力も借りない"」

剣聖少将「その姿勢を、限界まで貫いていた。」

剣聖少将「だがな…。この戦争、冒険者の力や一般市民の力を借りねば……確実に負けるぞ」


剣士「何っ…!」


剣聖少将「どんだけお前や、一般市民が軍を信用してるかはしらねぇ。だが、俺は知ってる」

剣聖少将「…今の軍は、終わっているんだよ」

 
剣士「…っ」

剣聖少将「中将らへんは、そのことに気付いたかもしれないが…遅すぎたんじゃねえの」フワァ…

剣士「…」


剣聖少将「まぁなんだ…」

剣聖少将「何百人、何千人、何万人。今の軍がいたって勝てるわけがねえよ」

剣聖少将「ほんの一握りだが、この戦いに…既に見切りをつけた軍人も少なくねぇし」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
中央軍人「何が…勝利だ……」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

剣聖少将「…もしかしたら、この戦いに意味がないんじゃないかと…」

剣聖少将「前線に近いやつほど、そのことを知っているし、そう思ってるはずだ」

 
剣士「…だからといって、俺が冒険者と立ち上がらせることが意味あるっつーのかよ」

剣聖少将「起爆剤だ」

剣士「…起爆剤?」

剣聖少将「腐っても軍人っつーことさ」

剣士「あぁ?」

剣聖少将「そうだなぁ……准尉!教えてやれ」


准尉「えっ!じ、自分ですか?」

剣聖少将「…お前だ」


准尉「…」

准尉「…はいっ」

 
剣士「…」

准尉「で、では。えっと…剣士さん」

剣士「ん?」

准尉「もし貴方たち冒険者が立ち上がれば、自分たちは恥ずべきことなんです」

剣士「恥ずべきこと?」


准尉「軍人は人の為であるべきですが、それを冒険者に遅れをとるわけにはいきません…」

准尉「ですので、冒険者たちがより戦争へ立ち上がれば、我々の士気もあがるんです」


剣士「あぁ…」

 
剣聖少将「…准尉、正解。ま、そういうこった。だからお前には、世界の為に立ち上がって欲しいわけよ」

剣士「…なるほどな」


剣聖少将「俺がやれりゃ俺がやるんだけどな」

剣聖少将「だが、冒険者という肩書きは俺は持ってないし、軍のトップでもある以上…離れられん」


剣士「…」


剣聖少将「それに、お前ほどの実力を持つものも今はもう…いないだろう」

剣聖少将「だから…やって欲しいんだ。頼めないか」


剣士「…」

剣士「…はぁ」


剣聖少将「…おっ」

剣士「軍には振り回されてばっかしだぜ……」
 
剣聖少将「…」ニカッ

 
剣士「ちっ…。分かった、分かったよ」

剣聖少将「おうよ!」

剣士「だがな。それをやるっつーなら、こっちもお願いがある」

剣聖少将「金ならやらんぞ」

剣士「ちげぇよ!っつーか、金くらい寄越せよ!」

剣聖少将「…たかり怖えぇ~」

剣士「…やっぱやめるわ」

剣聖少将「あっ、ウソウソ!何、なんだ!」


剣士「…」

剣士「…ったく。お願いっつーのは…時間が欲しいんだ」


剣聖少将「却下」

剣士「おい」

 
剣聖少将「今は、暇な時間なんてないんだ。それは分かってるだろう」

剣士「そ、それはそうなんだが…。冒険者を立ち上がらせることに、必要な時間なんだよ」

剣聖少将「…んだよ。言ってみろ」

剣士「…俺のパーティメンバー、全員が戻ってくることが必須だと思うんだ」

剣聖少将「お前のパーティっつーと…、えー…魔道士、武道家、乙女格闘家だったか」

剣士「知ってるのか!?」

剣聖少将「名前だけはな。つーか腐ってもお前らは有名人だったし、名前だけでも知ってるやつは多いだろ」


剣士「…なら、意味はわかるだろ。俺が一人でやるより、全員が揃ったほうが…いいと思うんだ」

剣士「だけど、魔道士はともかく…武道家と乙女格闘家の居場所はつかめていない」

剣士「その2人をもう1度呼び戻すために…時間が必要なんだ」


剣聖少将「何日だ」

剣士「…1週間」

 
剣聖少将「却下」

剣士「おいコラ」

剣聖少将「……3日だ」

剣士「!」

剣聖少将「今の時間はえーと…中尉。何時だ」


中尉「はっ!16時です!」


剣聖少将「…72時間後までは待つ。それまでに戻ってくるなら許可してやる」

剣士「…無茶言いやがる」

剣聖少将「お前は俺に"やってやる"と言った。その言葉を言った以上、従ってもらう」

剣士「…ちっ」

剣聖少将「できるのか。できないのか。その言葉だけ言え」

剣士「やれば…いいんだろ。いや、やるしかないんだろ…」

 
剣聖少将「…それしかないな」

剣士「くそっ…。72時間後に!ここへ4人で!戻ってくる…!戻ってくるからな!」

剣聖少将「…」ニカッ

剣士「くっそ…!振り回されっぱなしは、性に合わねぇんだけどな……」

剣聖少将「まぁそう言うな。お前が捜索する間、俺はちっとばかしくっそ面倒くせぇ準備があるのよ」

剣士「…準備?」


剣聖少将「確かに時間勝負だが、出撃には色々と準備が必要なんだよ」

剣聖少将「それをやりすぎたり、慎重になりすぎたりしたから前の幹部連は敗北したわけなんだが…」

剣聖少将「だからいらないもんは取っ払いつつ、3日でほぼ全軍出撃状態まで持って行けるようにはする」


中尉「ぜ、全軍出撃状態!?」ガタッ!

剣聖少将「なんだ中尉…おかしいか?」

 
中尉「な、何十万といる兵力ですが、それをまとめ、それを出撃する申請も出し…」

中尉「大隊申請許可証、出撃申請書、資金利用の許可、国民への情報開示書、各支部への派遣書…」

中尉「と、とても3日で終わる代物では!」


剣聖少将「…それは全部、俺がイエスといえばいけるもんだろ?」

中尉「で、ですが!」

剣聖少将「…ま、剣士。こんな感じの準備を3日で終わらせねーといかん。俺も大変なんだよ」ハァ


剣士「…そ、そうみたいだな」

剣聖少将「おう。それじゃお前は、その黄金パーテをここへ集えるよう…行ってこい!」


剣士「…おう」

剣士(あいつらと再び武器を握るのが、まさかこんな形になるなんてな…)


………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 そして 中央都市 宿 】

…コトッ

戦士「お茶、どうぞ」

魔道士「ありがとう」ニコッ

戦士「…へへ」

魔道士「そういえば、剣豪は?」

戦士「あいつは、武器の新調するために武器屋に行くと」

魔道士「なるほどね~」

 
戦士「…」

…グビッ


魔道士「…今日もいい天気だね。剣士はこの中で、まだ戦ってるのかな」

戦士「どうでしょうか。今は少し落ち着いている様子ですし、少し休めてるんじゃないですか?」

魔道士「そうだといいな…。剣士、すぐに無茶しちゃうから」

戦士「…」

…チラッ

戦士「…」ジー

戦士「…」ジー

 
魔道士「…どうしたの?」チラッ

戦士「あっ、あぁぁ!い、いや!」

…バチャッ!!

戦士「あ、あち~っっ!!」

魔道士「あっ!だ、大丈夫!?」

戦士「は、はは…大丈夫ですっ」

魔道士「ほら…ダメじゃないの。布巾あるから…」

…ソッ

戦士「…っ」


魔道士「…」

魔道士「…よしっ。これで大丈夫、染みにはならないね♪」

 
戦士「…」

魔道士「…?」

戦士「…魔道士さんは、何故、剣士さんを好きになったんですか?」

魔道士「えっ!き、急にどうしたの?」

戦士「…少し、気になって」


魔道士「な、何で好きになったって…。う、う~ん……」

魔道士「…」

魔道士「…剣士の猛烈な勢いもあったけど、ずっと一緒にいるうちに自然と…かな」


戦士「…そう、ですか」

戦士「…っ」

戦士「じゃ、じゃあ魔道士さん、お聞きしたいことがあるのですが…いいでしょうか」

 
魔道士「うん。どうしたの?」


戦士「もし、もしもですよ。もし…俺が剣士さんの立場が逆だったら……」
 
戦士「魔道士さんは、俺へ…振り向いてくれましたか…?」


魔道士「逆だったら……」


戦士「…へ、変な質問でごめんなさい!」

魔道士「ううん。そっか、立場が逆だったら…か」

戦士「は、はいっ」

魔道士「戦士と剣士が逆だったら…うん……」

戦士「…」

魔道士「そうなってい……」


…ガチャッ!!!

 
剣士「…よ、ようっ!ひ、久しぶり!」


魔道士「…えっ?」

戦士「…えっ!」


剣士「よ、よう……」


魔道士「け、剣士…!?ど、どうして……!」

戦士「…剣士さん、どうしてここに!」


剣士「あんな別れ方して、1週間もしないうちに形でまた会うなんてよ…」

剣士「ち、ちょっと戻ってくる事情が出来ちまって…な…?」

剣士「は…はは……」

 
魔道士「…」

魔道士「…っ」


剣士「な、なんか…すまん……」


魔道士「でも、またすぐにどっかに行っちゃうんでしょ…?」

剣士「い、いや……」

魔道士「…え?」


剣士「…本当に混乱させて悪いと思ってる」

剣士「だけど、今日ここへ来たのは…お前とまた、パーティを組むため。一緒にいるためなんだ」


魔道士「…えっ!?」

剣士「…い、いや!お前が嫌なら別に……」

 
魔道士「い…今の言葉、本当…なの……?」ブルッ

剣士「…あぁ」

魔道士「…っ」グスッ

剣士「…っ」


…スクッ

トコトコ……

戦士「…ご、ごゆっくり」


ガチャッ…バタンッ!!

………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 戦士と剣豪の部屋 】

…ガチャッ

剣豪「ふぅ、いい買い物したぜ」

剣豪「…って、あれ?」


戦士「」


剣豪「…戦士?」

剣豪「どうしたよ、魔道士先輩の部屋にいたんじゃねえのか」

 
戦士「…うるっせぇぇ!!」

剣豪「おい、うるせぇってなんだ!」


戦士「くっそ!くっそ~!!分かってるけどさぁ~!!」

戦士「分かってるんだけどさぁ……!」


剣豪「…」

剣豪「…何がなんだか」


………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 魔道士の部屋 】

剣士「…っていうわけだ。お前や武道家たちでまた、戦いに赴きたいんだ」

魔道士「そっか。また、みんなで戦う時が…来たんだね」

剣士「…すまなかった。俺のワガママで振り回してしまってる」

魔道士「ううん。いいよ」クスッ

剣士「…なぜ笑う」

魔道士「いつも、そんなもんだったでしょ」

剣士「んーむ…」

 
魔道士「でも、嬉しい。えへへ…」

剣士「こうしてまた、お前の顔を近くで見れたこと…触れられること…今、凄い幸せだ」

魔道士「…うん」

剣士「だけど、すぐにでも武道家たちを探しにいかないといけないんだよな…」

魔道士「…うん」

剣士「少しでも、短い時間の中でも、こうして触れ合っていたいと思う…」

魔道士「…うん」


剣士「…」

剣士「…そういえば、さっきの話。ドア越しで聞いちまった」


魔道士「さっき?」

剣士「ほ、ほら…何だその。俺と戦士の立場が逆だったらとか…その…」

魔道士「あぁっ!」

 
剣士「そ、それって…どうなんだ…?」

魔道士「聞きたいの?」

剣士「べ、別にそ…そんなことじゃねえけど?そんなことじゃねえけど、ちょっとほら、な?」

魔道士「…剣士と戦士の立場が逆になっていたら、ね」

剣士「…う、うむ」


魔道士「…」クスッ

魔道士「もしそうなっていても、私はきっと変わらず剣士に惹かれてたと思う。好きになってたと思う」


剣士「!」

魔道士「きっと、そうだと思う。…ううん、絶対そうだよ」

剣士「…」

魔道士「…」ニコッ

剣士「魔道士……」

 
魔道士「…」

剣士「…」

魔道士「…」

…ギュウッ


剣士「少しくらいの休みは、神様も許してくれるよな……」


…………
………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 2時間後 戦士と剣豪の部屋 】


戦士「」ゴロゴロ


剣豪「…いつまでスネてんだよ!オメーは!」

戦士「分かってたんだよ~…。分かってたんだよ~……」

ゴロゴロゴロ…

戦士「あーーー…」

ゴロゴロゴロ…

戦士「うーーー……」

ゴロゴロゴロ…

 
剣豪「…」イラッ

剣豪「…いい加減、うるっせぇぇ!」

…ゲシッ!!ドシャアッ!!

戦士「のああっ!!」


剣豪「あのな、恋だとか何だとかは別にいいが、それをこっちまで見せるんじゃねーよ!」

剣豪「第一、魔道士先輩はお前じゃなくて剣士がいるんだっつーの!」

…ムクッ

戦士「…分かってるよ」

剣豪「だったらグダグダしてねーで、ピシっとしてろ!武器でも磨いてやがれ!」

戦士「ぬぐぐ…」

 
…コンコン

剣豪「あ?…どうぞ」

…ガチャッ

剣士「…よ」ビシッ

魔道士「こ、こんにちわ~…」コソッ


剣豪「剣士…さんと、魔道士先輩」

戦士「い、いらっしゃいませー!魔道士さぁん!」

…ゴツンッ!!

戦士「」

 
剣士「…ちょっと、お前らにちょっとしたお願いがあってな」


剣豪「お願い?」 

戦士「な、何でしょうか」ズキズキ


剣士「武道家と乙女格闘家を探すのを手伝ってほしいんだ。期限は明後日の16時」 
 
剣士「急なことで悪いんだが、頼めないか」


剣豪「…意味ありげだな。どういうことだろうか」

剣士「世界の冒険者のため、この戦争に勝つため。それで察して欲しい」

剣豪「…なるほど。別に構わないが、そんな短い時間じゃ探す場所も探せないのでは…」

剣士「それは、これを使っていい」

ゴソゴソ…ペラッ

剣豪「…これは?」

 
剣士「中央軍本部、少将の直筆のサインだ。支部にある転送装置を、自由に使えるようにしている」ペラッ

剣士「ただ、知ってると思うが、東方祭壇町を含むその周囲と、その他一部は停止しているけどな」

剣士(…出てくる時に渡されたが、親父のやつも妙に準備のいいことしやがって)


戦士「…少将の直筆のサインってことは、剣士さんが中央軍に協力を?」

剣士「まぁ、そうなるか。時間もないし、早急に探してほしいんだ」

戦士「了解です。見つかっても見つからなくても、待ち合わせを決めたほうがいいのでは…」

剣士「…その期限1時間前の3日後の15時。中央軍本部前に集合で…どうだ」


戦士「…わかりました」

剣豪「了解した」


剣士「じゃあ、俺たちもすぐに出かける。また3日後に」

戦士「はいっ」

剣豪「了解っ」

ガチャッ……バタンッ……

 
戦士「…」

剣豪「…」

戦士「…」


剣豪「……残念っ!」ポンッ

戦士「お前が俺の傷口広げてるんじゃねぇかっ!!!」


…………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・

 
―――それから、武道家と乙女格闘家の捜索にあたった4人。

それぞれが支部の転生装置を利用しながら点々と捜索を続けたものの、

一向に武道家たちの手がかりを得ることは出来ず、時間だけが過ぎていった。

そして2日目の昼―――……

本日はここまでです。有難うございました。

皆さま有難うございます。
>>308
転生装置→転移装置のとんでも間違いです。失礼いたしました。

それでは、投下致します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 南方大陸 砂漠港 支部 】
 
ギュッ…ギュウウンッ!!バシュウッ!!!


支部軍人「…ん?」


…スタッ

剣士「…よいしょっと。砂漠港なんざ久々だな」

魔道士「うん。みんなで最後に来た場所もここだったよね」


支部軍人「…転移装置から一般人?おい、お前らどうしてー…」

 
剣士「ん…」

剣士「あぁ、ほい」

…ペラッ


支部軍人「む?」

剣士「中央軍本部、少将のサイン。俺ら、自由に移動していいことになってんの」

支部軍人「…何?」

剣士「…極秘任務ってやつだな」


支部軍人「…」ペラッ

支部軍人「…っ!」

支部軍人「これは本物の…!し、失礼いたしました!」ビシッ!


剣士「うい」

 
魔道士「…やっぱり毎回聞かれちゃうよね」

剣士「親父のサインがなかったら、相当な時間かかってただろうな…」

魔道士「うん…」

剣士「さてと…。んじゃ、探しにいきますかっ」

魔道士「うんっ!」


カツカツカツ…

ガチャッ、バタンッ…

…………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 砂漠港 】

…ジリジリ

剣士「あ…っつ……」

魔道士「…久々だね、ここ」

剣士「あ~…そうか。そこの服屋で、また服買わないとな……」

魔道士「うん…」

フラフラ…
 
剣士「つ~かさ…」チラッ

 
ザワザワ…ワイワイ……!!!

子供たち「今日も暑いなぁ…」

大人たち「こらこら、走っちゃだめだぞ~!」

軍人たち「…」ビシッ!

エルフたち「…こんなことに…なるなんて……」ブルブル

ワイワイ…!


剣士「…何このカオス」

魔道士「すっごい人多いし、エルフ族もいるし……」

剣士「そういやオッサンが、前線付近の村やエルフ族を全部、南方大陸へ移動したって言ってたなー…」

魔道士「だからだね。これはこれで問題起きそうだけど、大丈夫なのかなぁ…」

剣士「まぁ軍も普段より多くいるし、大丈夫だろ……」


軍人「…」ジロジロ

 
魔道士「…」

魔道士「…って、剣士!そうだ!」


剣士「あん?」

 
魔道士「もしかして、西方海岸村のエルフ族もいるんじゃない?」

剣士「!」

魔道士「もしそうなら、鍛冶長さんとか幼エルフもいるんじゃ…!」

剣士「あ…!」

魔道士「もしかしたら…だけどね」

剣士「ち、ちょっと探してみようぜ!」

魔道士「で、でも期限まであと1日しかないし…」

剣士「…そこの軍人さんに聞くだけだって!」

タタタタッ……

 
剣士「おーい!軍人さん!」

軍人「むっ?何用ですかな」


剣士「ここに避難民が結構来てると思うんだが、西海岸村のエルフ族も来てるのか?」

軍人「…詳細については、お答え致しかねます」

剣士「何でよ」

軍人「混乱している状況ですので、何かきっかけで問題が起こらないとも言い切れません」

剣士「そ、そうか。立派だな…」

軍人「いえ」

剣士「…じゃあ、これならどうだ」
 
…ペラッ

 
軍人「これは…」

軍人「…」

軍人「…ほ、本部の少将殿の直筆サイン!?」


剣士「これでも、俺らは本部幹部からの勅命で動いてるんだがな」


魔道士「…それ、いいの?」ボソボソ

剣士「少しくらい、使わせてもらう」ボソボソ


軍人「そ、そうでありましたか。大変失礼を…!」ビシッ!

剣士「そういうのはいいから、どうなの?」

軍人「はっ!一部を除き、西海岸村のエルフ族は既に避難を終えています」 
 
剣士「一部を除き?」

 
軍人「一部というのは、彼らの中に、最後に避難をすると志願した方々がおられたからです」

軍人「その村を率いる住民の方々も含まれ、重要輸送作戦とし…」

軍人「恐らく、本日中に着けるよう、コチラへ向かって船が動いているかと」


剣士「…っつーことは、鍛冶長とかのこと…かね」

軍人「確か、そのように呼ばれておりました」
 
剣士「本当か!今日着くのかよ!いつ着くんだ!?」

軍人「予定では、もうそろそろ…」

剣士「…おっ!じゃあ、既にいる西海岸村の住民はどこにいるんだ?」

軍人「本日、その方々を迎えるということで、この港の船着き場に集まっておられます」

剣士「…本当かよ!」

軍人「かなりの人数はいますが、お探しの方がいるならお手伝いを…」
 
剣士「いや、いい!俺らで探すよ!」

 
軍人「了解致しました」 
 
軍人「あっ…。で、ですが……」


剣士「何?」

軍人「その前にまず、暑さにやられてしまうので服を変えたほうがいいかと…」


剣士「…」

魔道士「…」


ジリジリ……


剣士「あつい……」


………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 砂漠港 船着き場 】 

…ザザァン……ザバァンッ…

ミャア…ミャア…

ワイワイ…ガヤガヤ…


剣士「…さて、服も着替えた事だし。あとは探すだけだなっ」

魔道士「ここも凄い人が多いね。どこにいるんだろ」

剣士「…あれから数年だし、幼エルフも大きくなってるだろうな」

魔道士「子供の成長って早いっていうしね。見つけられるかなぁ」


剣士「えーと…」キョロキョロ

剣士「……ん?」ピクッ

 
エルフたち「…まだかな、鍛冶長たち」

エルフたち「そろそろだろ。落ち着けって」ハハハ

ワイワイ…


剣士「…知らない若いエルフが鍛冶長の名前を」

魔道士「当時、子供だったエルフもいっぱいいるから……」

剣士「うーん…」


ウロウロ…


???「…鍛冶長まだかな♪」

???「…」

???「あ、あれっ……?」ハッ

 
ワイワイ…!!

剣士「くっそ、さすがに人もエルフ族も多すぎるぞ!」

魔道士「う~ん、やっぱり手伝ってもらったほうが…」


タタッ…タタタタタッ…


剣士「だけど、個人的な用事を軍にお願いするのはなぁ…」

魔道士「もう私利私欲でサイン使っちゃったけど…言うセリフ?」

剣士「そ、それはー…」


タタタッ…!!

???「やっぱりだぁぁ!!それぇっ~♪」

…バッ!!ギュウッ!!


剣士「…うん?」 
 
魔道士「…え?」

 
???「やっぱりこの匂い…剣士さんだ♪」


剣士「…どなた?」

魔道士「…だ、誰…この女の子…」プルプル

剣士「お、落ち着け!俺も知らないから!!」


???「…わかりませんか?」


剣士「い、いや…わからねぇよ!」

魔道士「誰なのかな…」プルプル


???「…もう!」

???「本当に…分からないんですか?二度も助けてくれたのにっ!」

 
剣士「え…」

魔道士「え…?」


少女エルフ(幼エルフ)「…」ニコッ


剣士「幼…エルフ…?」

少女エルフ「はいっ!もう幼くなんかないですけど…」ブスー

剣士「う、うそぉ!?」

少女エルフ「ウソじゃないですよ!」

剣士「ウッソだ!!おま、そんな成長し…えぇっ!?」

少女エルフ「驚きすぎです!」

 
魔道士「…本当に幼エルフちゃんなの!?」

少女エルフ「魔道士さんですよね!そうですよ♪」

魔道士「…待って。あれから5年くらいなのに…」

少女エルフ「?」

魔道士「せ、成長しすぎだし、まだ15歳にもなってないんだよね……ウソでしょ…」

フラフラ…ドシャアッ

少女エルフ「ど、どうしたんですか!」

 
剣士「はは…。ま、まぁ放っておいてやってくれ…」

少女エルフ「は、はい…」

剣士「それよか…本当に久々だな!会えて嬉しいぜ」ニカッ

 
少女エルフ「…はいっ。私もとっても嬉しいです!」

剣士「はは」

少女エルフ「…えいっ♪」


…ギュウ~ッ!!


剣士「お、おいおい」

少女エルフ「えへへ…。またいつか会いに来てくれると思ってました」

剣士「…もっと、落ち着いた時に会えればよかったな」

少女エルフ「いえ、こうして会えただけで…凄く、嬉しいです……」ニコッ

剣士「ふ…」

 
少女エルフ「…もうすぐ、鍛冶長さんたちの船も到着する予定です♪」

剣士「そ、そうだ。鍛冶長はまだ来てないんだったな」


少女エルフ「最後まで残って、西方側のエルフ族の避難が終わったら来る…と」

少女エルフ「それぞれの村や町の、長老さんや兵士たちが残ってて、もうそろそろ……」


…ボォォォッ!!!


少女エルフ「!」

剣士「!」

魔道士「!」

 
剣士「…あの地平線に見える、汽笛のあげた船か…もしかして」

少女エルフ「…多分、そうじゃないでしょうか!」

魔道士「鍛冶長があの船に…」

剣士「久々だな…。と、あの時の職人エルフも一緒なのか?」

少女エルフ「はい、そうだと思います」


剣士「…」

剣士「あー…」

剣士「…参ったな、どんな顔して会えばいいのか……」


少女エルフ「…どうかしたんですか?」


剣士「いや、その……。ちょっと謝ることが……」

剣士(…造ってもらった大剣の魔石が取れちまった、壊れちまったなんて言えるかよ)

 
少女エルフ「…」

少女エルフ「…えへへ、それじゃあ私が一緒に謝ってあげます!」


剣士「ぬ…」

少女エルフ「それなら、会えますよね!」

剣士「ま、まぁ……」

少女エルフ「えへへっ♪」

剣士「…はは、ありがとな」


魔道士「…」

魔道士「……ロリコン」ボソッ

 
剣士「は、ははは!さぁて、鍛冶長はまだかなぁ~!!」

魔道士「…」

少女エルフ「う~ん…。なんか少し、遅いですね」

剣士「帆船で、結構風もあるし…もっとスピードあがっても良さそうなんだが……」


剣士「…」

剣士「…むっ、なんだ?」ピクッ


魔道士「え?」

少女エルフ「…ど、どうしたんですか?」


剣士「おい…。なんか船の動き、おかしくないか」

魔道士「と、遠すぎて見えないよ。何が変なの?」

剣士「いや、おかしいぞ!」

魔道士「だから、何が…」

 
剣士「う、海からのツタみてーなのが這出て、絡まれてるように…見えるんだが……」

魔道士「え…」

少女エルフ「えっ!?」


剣士「…ちょっと待て、小舟か何かはないか!いや、支部に一回行くぞ!」ダッ!

魔道士「あっ、ちょ、ちょっと!」

少女エルフ「あ、待って下さい剣士さんっ!!」


………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 砂漠港 支部 】

…ガチャッ!!

剣士「…失礼!」

魔道士「し、失礼します」

少女エルフ「こんなとこ、初めて入った…」ヒョコッ

剣士「…っと」


ガヤガヤ…!

支部軍人たち「おーい!アイツどこ行った!早く準備させろっ!」

支部軍人たち「武器は入れたのか!?船の許可はまだかっ!」

支部軍人たち「分かってるっつーの!」

…ザワザワ!

 
剣士「…ビンゴ。何かあったな」

魔道士「何が…」

剣士「…おい、誰か!何が起きているか教えてくれ!本部少将の勅命を受けている者だ!!」


…ザワザワ!!

支部軍人A「…本部の少将殿だと?そういやさっき、そんなこと言って転移装置使ってた奴いたな」

支部軍人B「ははは!お前たちのようなガキがか!」

支部軍人C「お、おいバカ!お前さっきまで外にいたから知らないだろうが、あの人は本当に…!」

…バンッ!!!!

剣士「…少将のサインだ。これで…いいか」


支部軍人たち「…はい」


魔道士「…剣士に権力を持たせたらいけない気がした」

 
剣士「何が起きてるか教えてくれ。あのエルフ族たちが乗ってる船で何か起きてるんだろ!」

支部軍人「…あれが見えるのか!?双眼鏡が必要な距離だぞ…」

剣士「特別目がいいんだよ!だから何が起きてる!」

支部軍人「…魔族があの船を襲ってるんだよ!今すぐ支援部隊の出撃の準備をしてるんだ!」

剣士「…なにっ!」


エルフ少女「えっ…」

魔道士「…ほ、本当ですか!?」


支部軍人「本当だっつーの!いいからジャマだ!」

支部軍人「…いいか、準備したらすぐに出航だぞ!」


支部軍人たち「はっ!」ビシッ!!

 
剣士「…」

剣士「…おい、アンタ」


支部軍人「だから何だよ!忙しいって言ってる…!」


剣士「その船…。俺も乗せて…もらおうか」


支部軍人「……へ?」


…………
……

本日はここまでです。有難うございました。

皆さま有難うございます。投下致します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 砂漠港沖 海上 】

…ザバァンッ!!ザバァッ!!


支部軍人A「…あんた、少将殿の部下とはいえ冒険者だろ?」

支部軍人B「我々に任せて貰って良かったんだぞ?」


剣士「ま、いいじゃねーか。その辺の冒険者と一緒にするなって」


支部軍人A「確かにその身体、その辺の奴とは違うようだが……」

剣士「これでも死線は何度もくぐってるんだよ」

支部軍人A「…本当か?」

 
ザバァンッ…サアアッ……


剣士(魔道士と少女エルフは念のため陸に置いてきたが…大丈夫だろう)

剣士(…それより、鍛冶長の乗った船……無事なのか)


支部軍人A「…」

支部軍人A「…ずいぶんと、神妙な顔をするんだな」


剣士「ん?」

支部軍人A「さっきまで騒いでたと思えば、今度は真剣な顔。あの船に何かあるのか?」

剣士「まぁ…ちょっと知り合いが乗ってるかもしれないんだ」

支部軍人A「…エルフ族だぞ?」

剣士「…これさ」

クルクルクル…ズドンッ!!!

 
支部軍人A「で、でっけぇ剣だよな。よくそんな簡単に振り回せる…」

剣士「これは、あの船に乗ったエルフ族にもらったものなんだよ」

支部軍人A「何!?エルフ族にか!?」

剣士「…そして、大戦士兄の魂でもあるんだ」

支部軍人A「だ、大戦士って……あの大戦士殿か?」

剣士「…」

支部軍人A「お前、一体何者……」


…ブォォオッ!!!!


剣士「!」

支部軍人A「なんだ!?」

 
支部軍人B「前方に巨大な影!それと、エルフ族の乗った船は見えた…が……!!」


支部軍人A「ん…」

支部軍人A「……なっ!?」


剣士「…何だ、あれ」


ウネ…ウネウネ……バキッ…メキメキメキッ!!!


剣士「なんだあの…でけぇ吸盤…タコか何かの触手みてぇだぞ!?」

剣士「つーか、鍛冶長が乗ってる船を…!!」


バキバキィッ!!メキッ……!!


支部軍人A「全員、武器を構えろ!あの船に、巨大な魔族が張り付いているぞ!」

支部軍人たち「はっ!」チャキッ

 
触手『…』

グググッ……ブォンッ!!バキャアンッ!!!


剣士「おいおい!!あのクソ触手…!それ以上やめろコラァ!船が壊れちまうだろうがよっ!!」


支部軍人A「魔法を使える者は、あの触手へ向かって放て!」

支部軍人A「武器を構えたものは、あちらの船へ近づいたら攻撃を行うよう、準備しろ!」

ババババッ…!!


触手『…』

ウネウネ…グルグルッ!!バキバキバキィッ……!!


剣士「…だ、ダメだ!そんなんじゃ間に合わない!向こうの船が持たないぞ!」

支部軍人A「…分かってるが、どうしようもない!この距離では!」

剣士「…俺がやる」チャキンッ

支部軍人A「…は?」

 
剣士「…」

グググッ……ビキビキッ……!!


支部軍人A「お、おい…。何する気……」


剣士「…っしゃあっ!!」

ダァンッッ!!バキャッ!ビュッ…!ヒュオオオッ……!!


支部軍人A「なっ!!木板とはいえ床を踏み抜い…!」

支部軍人B「な、なんだあの飛翔力!?」


ヒュウウウウウッ!!!!

剣士「…らぁぁぁあああっ!!」


支部軍人A「こ、この距離を強化魔法もなしに…!」

 
剣士「これ以上…鍛冶長の乗った船を壊すんじゃねえぇぇっ!!!」

触手『!』


ビュオッ…ズバァンッ!!バスバスッ…ズバァァンッ!!!


触手『…ッ!!』

グラッ…ボトボトッ……ザバァンッ!……


剣士「…うしっ!!」

ズザザザァ…キキィ……

剣士「…どうだ!」ビシッ!!


…ザワザワ!

支部軍人A「…あのサイズの触手を切り裂いて……」

支部軍人B「向こう側の船へ着地するとは…」

支部軍人たち「一体何者……」

  
剣士「…っと、船はまだ沈まないみたいだな…。大丈夫か、みんな!」クルッ

ガヤガヤ…!!

エルフ族「た、助けてくれたのか…?」

護衛軍人「も、もうダメかと思った……」

避難市民「あ、ありがとう…ありがとう…」ブルッ


剣士「…無事なようで、よかった」


???「…」

???「…おい、お前!」


剣士「あん?」クルッ

 
職人エルフ「…あの時の、人間のガキか!」

剣士「…げっ!」

職人エルフ「…覚えてるか、俺のこと」

剣士(や、やっぱり乗ってたのか…!)

職人エルフ「なんだその"やっぱり乗ってたのか"っていう顔はよ…あぁ?」

剣士「い、いや!」


…ポンポン

職人エルフ「ん?」

エルフ族の男「…おい、お前の知り合いなのか?」

職人エルフ「…まァな」

エルフ族の男「じゃあ、お前がいたから、俺らを助けに…?」

職人エルフ「…何?」

エルフ族の男「…そうじゃないのか?」

 
職人エルフ「…」

職人エルフ「…剣士っつったっけお前。お前…俺がいたから助けに来たのか?」


剣士「えっ」

剣士「…」

剣士「い、いや。エルフ族だろうが何だろうが、こんな状況だったら…助けにくるっつーの」


職人エルフ「…本当か?」

剣士「…本当だ」

職人エルフ「…」

剣士「…」

職人エルフ「ふっ…。そうか……」

 
剣士(…)

剣士(俺、この人…苦手だわ)


職人エルフ「…」

剣士「……そ、そうだ。鍛冶長はどうした?」

職人エルフ「あ?」

剣士「鍛冶長だよ!この船に乗ってるってことも聞いてるんだが!」

職人エルフ「……おい、親父。お呼びだ」


剣士「…」


…ヨロッ

鍛冶長「…」

 
剣士「…ジイちゃん!」

鍛冶長「久しぶりじゃの…」

剣士「お…おう!」

…ヨロヨロ

鍛冶長「むおっ……」


…ガシッ

職人エルフ「…歳なんだから無理すんなよ」

鍛冶長「すまんな…」


剣士「ジイちゃん、歳…とったんじゃねーか?」

 
鍛冶長「何を言うか!ふはは…!また、顔を見れて嬉しいぞ…小僧…」ニカッ

剣士「おい…。もう俺は小僧って呼ばれる歳じゃねーぞ!」

鍛冶長「何…、ワシから見たらみんな子供じゃよ!うはははっ!」

剣士(はは…変わってねぇなぁ…)


…ザワザワ!!

剣士「ん?」

護衛軍人「…け、剣士さんでしたっけ!剣士さん、向こう側見てください!」

剣士「向こう側って……」

護衛軍人「支部軍人たちが乗っている船が!」

剣士「…!」ハッ


触手『…』

ウネッ…グォォォォオッ!!!


 
支部軍人A「…うあああっ!」

支部軍人B「うっそだろ……!」

支部軍人たち「うわあああっ!!」


バキャアアンッ!!!!


バキバキッ…メキメキメキッ!!!


ズッ…ズズズゥン………ザバァンッ……!!

 
剣士「なっ!」

護衛軍人「あぁっ!!」

エルフ族たち「…軍の船が!」

職人エルフ「お、おいおい…沈んじまったぞ!」

鍛冶長「な、なんということ……!」

避難市民たち「な、なんで……!」


剣士「…っ!」

剣士「まだ触手のやつ、動けたのか…!」


護衛軍人「…海に軍人たちが放り出されています!」

剣士「この船に救出に使える小舟はあるのか!?」

護衛軍人「確か、裏側に!」

剣士「…くそっ!」ダッ

 
護衛軍人「…いや、ち…ちょっと待って下さい剣士さん……」

剣士「なんだよ!」

護衛軍人「も、もう…遅いです……」

剣士「何っ!?」

護衛軍人「触手の…本体らしきものが……」

剣士「…!!」


ザバァンッ……!!

ォォォ……ォォ………


クラーケン『…』


…ォォォ………ォォ…


剣士「なっ…何じゃありゃ…。イカかタコの化け物かよ!?あんな魔族まで…っ!」

 
触手『…』

…ギュルンッ!!ガシイッ!!

支部軍人たち「う…うあああっ!離せぇぇ!」

支部軍人たち「いやだ…死にたくない!死にたくないぃ!!」


グググッ…

支部軍人たち「あ゛っ…!」

…バチュッ!!…ボトボトッ……ザボザボォンッ……


剣士「…っ!!」

エルフ族たち「う、うわああああっ!!」

避難市民たち「ぐ、軍人さんがぁぁぁっ!!」

護衛軍人「な、なんてことだ……」ブルッ


 
クラーケン『…』

クラーケン『…』ギロッ


剣士「!」


護衛軍人「こ、こっちを見た…」

エルフ族たち「もう…だめだ……」

避難市民たち「死ぬ……」

職人エルフ「はは…笑えてくるな……」

鍛冶長「…」


触手『…』

グググッ…ブォンッ!!!!

 
護衛軍人「…っ!」

エルフ族たち「うわあああっ!」

職人エルフ「…っ」

鍛冶長「…」


剣士「……大丈夫だって。お前らは幸運だよ」


護衛軍人「へ?」

エルフ族たち「な、なんてっ!?」

避難市民たち「幸運だって…?」


剣士「…俺が、この船に来ていたってことさ!」

…ググッ…グググッ!!

 
護衛軍人「!」
 
剣士「…ふんぬっ!!」

ブォッ!!!…ザシュザシュウッ!!!


触手『…ッ!』


…ボチャボチャッ…ザバァンッ……

クラーケン『…!』


剣士「…どうだ、イカタコの化けモンが!」

 
護衛軍人「お、おぉ……!また、一撃で触手を…!」

エルフ族たち「うおおっ!」

職人エルフ「…やるじゃねえか」

鍛冶長「その実力は本物のようじゃな……」


剣士「何本でも来いよ…。俺が全部切り落としてやる!」


クラーケン『…ッ』

クラーケン『…』


…ザバァンッ、ザバンッ、ザバァンッ……


触手たち『…』

ウネウネ…グニッ…ウネウネ……

 
剣士「…へぇ、隠していた触手か」

剣士「1、2、3、4……、10本程度っつーとこか。それがお前の全てか?」


クラーケン『…』ギロッ

剣士「…そうみたいだな」

クラーケン『…』

剣士「…いいぜ、来いよ」クイッ


触手たち『…』

ググッ…グググググッ………!!


剣士「…」スゥゥ

剣士「いっ…せー…の……」

…グググッ…!!

 
触手たち『…』

ビュッ…ブォンッ!!!ビュオオオオオオオッ!!!!


剣士「…せいやぁぁっ!!」

ブォッ…バシュウウウッ!!!ビュオッッ!!!


エルフ族「!」

護衛軍人「う、うおおっ!」

職人エルフ「け、剣気が…目に見えて……!」

鍛冶長「おぉ……!」


ズバァンッ…ズバズバズバズバァンッ!!!!!

ブシュッ…ズブシュッ!!…ブシャアッ……!

 
クラーケン『…ッ!!』 

触手たち『…』

…ドシャアッ…ボチャボチャボチャッ……


剣士「…全部、落としたな」トントン


…ザボザボザボ…ザボォンッ………!!!


クラーケン『…!』


ワッ…ワァァァッ!!

護衛軍人「す、凄い!剣士さん、凄いですよ剣士さん!!」

エルフ族たち「す、全ての触手を…」

職人エルフ「やるじゃねえか…」

鍛冶長「小僧……!」

 
剣士「あとは本体、お前だけだ。やるなら…かかってこいよ」

クラーケン『…』クワッ!!

剣士「ふっ、潔し!いくぞ……!」

ググッ…ビキッ!

剣士「…あ?」


ビキビキ…ビキッ……パキャアンッ……!!

カラァン……


剣士「なっ!?」

護衛軍人「!」

エルフ族たち「た…大剣が折れた!?」

職人エルフ「何っ!?」

鍛冶長「!」

 
剣士「なっ…なんで……!」

職人エルフ「な…何をしたんだ!」

剣士「わ、わかんねぇよ!と、突然ヒビが入って…」

職人エルフ「…み、見せてみろ!」

…バッ!


職人エルフ「…っ!」

職人エルフ「…お前、俺の武器を折るくらいまで…一体何を……」


剣士「…武器が折れたらあのイカタコを倒せねぇぞ!」

職人エルフ「ちっ…俺の武器を貸してやる。お前の腕なら、これでも充分だろう!」スッ

剣士「軽剣か……」チャキッ

職人エルフ「…不満かよ!」

剣士「いや…全然っ!」チャキンッ

 
クラーケン『…ッ』

…グッ…グオォォォォッ!!!


護衛軍人「つ、突っ込んできました!」


剣士「…そんな心配すんなって」

グググッ…タァンッ!!

護衛軍人「ひ、飛翔!さっきよりも高い…!」


剣士「この剣じゃ、威力も足りねぇ…。なら、高さで威力の1つも上がるだろってな!!」

クルクル……ビュオォォォオッ!!!


剣士「ぬうううああああっ!!!」

クラーケン『…ッ!!』

 
ヒュオオオッ!!ズバズバァンッ!!!

ドシュッ…!!!ズドォンッ!!!


剣士「…」

クラーケン『…』


剣士「…ま、そうだな」

…シャキンッ


クラーケン『…ッ』

グラッ……ザバァァァン……!!!


剣士「…軍人さん方、守れなくてすまなかった……」


………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 砂漠港 】

…ワァァァッ!!!

エルフ族たち「よ、よかった…家族に生きて会えた……!」

エルフ族たち「お爺ちゃん…無事で…」グスッ

エルフ族たち「あの方のおかげで…!」


少女エルフ「剣士さん、本当にありがとうございました……」

剣士「礼はいいさ。当然のことだ」

魔道士「剣士、無事でよかった……」

 
剣士「無事なんか喜べるかよ…。俺の失態で、支部の人間の何人かが…犠牲になっちまった……」

魔道士「け、剣士は悪くないよ!」


剣士「…亡くなった人たちは、戦いの場においての覚悟がなかった目だった」

剣士「その場の雰囲気に浮かれ、興奮して、気が付けば死の寸前…」

剣士「そこでようやく状況に気付き、嘆き、死んでいった。くそっ……!」


魔道士「…っ」


少女エルフ「…そんな犠牲の中でも、多くの人が助かったんです」

少女エルフ「剣士さんがいなければ、全員やられていました。だから…気を落とさないでください」


剣士「あぁ…分かってるよ。死というものは、嫌というほど見せられたからな…」

少女エルフ「…」

 
ザッザッザッ…

職人エルフ「…おい」

剣士「あん?」

職人エルフ「お前の大剣…見てやったぞ」スッ

剣士「あ、あぁ…」


職人エルフ「お前、本当にこの大剣、どんな使い方をしたんだ…」

職人エルフ「芯を固める魔石が欠け、刃はこぼれ、滑り止めの柄は思い切り削られている」

職人エルフ「…これでは途中から砕けるのは当然だ。金属疲労が並大抵じゃない」


剣士「す、すまん……」

職人エルフ「エルフ族の魂を、よくもこんな……」

 
剣士「…っ」

剣士「す…すまない…。本当に悪く思っている……」バッ!


職人エルフ「な、なんだよ。お前らしくないな…」

剣士「い、いや……」


少女エルフ「…」

タタタッ…ベシッ!!

職人エルフ「い、いてっ!」

…ベシベシッ!!

少女エルフ「また剣士のこといじめてる!ダメだよ!!」

職人エルフ「ち、違う!違う違う!」

少女エルフ「違わない!みんな救ってもらったのに、なんでそんな事言うの!」

職人エルフ「ちげーっつーの!話は最後まで聞け!」

少女エルフ「なに!」

 
剣士「…?」


職人エルフ「…俺はこれでも鍛冶師だぞ。この大剣が、どんな風に使われたのかくらい…見てわかる」

職人エルフ「これを、お前はどれだけの命を守るのに使ってきたんだ?」

職人エルフ「武器の声がな、聞こえるんだよ」

職人エルフ「…だから、本当にそんな事は思っちゃいない」

職人エルフ「本当は、俺の武器を良く使ってくれて…、その……お礼は言う」

職人エルフ「さっきの魂をこんな…ってのはちょっとした悪口だったが…。す、すまんな……」


剣士「…っ!」

魔道士「…剣士、だってさ。よかったね♪」

剣士「あぁ……っ」


職人エルフ「な、何だ…そんなに気にしてたのか?」

 
剣士「え、エルフ族の魂の話は痛いほど聞いてたし……」

剣士「何より、それをこんな風にしたのは俺だったから…。」

剣士「その武器を折っちまうとか、壊すなんて…取り返しのつかないことを…と……」


職人エルフ「…」

少女エルフ「剣士さん…」


剣士「…そう言ってくれるなら、本当に救われた気がする」

剣士「その武器はもう…使えないよな。そんな形で悪いが…溶かせばまた使えるんだろ?」

剣士「あとは…あんたが他のモノに使えるようにしてくれ…」


職人エルフ「そのことなんだがー…」

鍛冶長「…待て」


剣士「……ジイちゃん?」

 
ヨロッ…ヨロヨロ…

鍛冶長「…小僧、その言いぐさ…。お前はあの時に大戦士に言われた"平和の礎"を…投げ捨てるのか…?」

剣士「はぁっ!?そ、それは捨てようとなんか思っちゃいない!」

鍛冶長「…なら、その武器をもう1度、俺に造ってくれとでも言うべきなんじゃないか……?」

剣士「そ、それは……」

鍛冶長「…」


剣士「お、俺の武器は折れた。だけど、魔道士や他の2人が貰った武器はまだ…生きているはず」

剣士「そして、みんなは仲間だ。俺の武器が折れたとしても…」

剣士「その仲間の武器がまだある限り、俺はあんたたちエルフ族やこの戦いの礎となる覚悟はある!」

剣士「…俺は、約束は守る!礎となる覚悟は、あるから!!」

剣士「そ、それに…。その武器は魂。その魂を、もう1度造ってくれなんて…気軽に言えないだろ……」


鍛冶長「…」

鍛冶長「…よう吠えるのは、当時となんら変わっちゃいないんじゃな。安心したぞ」ククク

 
剣士「む…」


鍛冶長「…おい」

職人エルフ「…へいへい。分かってるっつーの」

ゴソゴソ…

剣士「…?」


職人エルフ「…親父の最後の作品だ。お前のような奴に渡されりゃ…。まぁいいか……」


ゴソゴソ…ドスンッ!!!パァァッ……!!


剣士「!?」

魔道士「うっわ…!」

少女エルフ「すごーい!」

 
剣士「な、何だよこれっ!漂うオーラが半端じゃ…!」

パァァァッ…!!

鍛冶長「うわっはっはっは!ワシが鍛冶師として最期に造り上げた武器…大剣じゃ!」

剣士「…っ!」

鍛冶長「ワシは、人との繋がりを、人との未来を考えていたことを言ったのを覚えているか?」

剣士「あ、あぁ……」


鍛冶長「…何となしに、最期に造り上げるべくものを考えていた時だった」

鍛冶長「そこに浮かんだのは…お前がワシらを信じ、架け橋になると言った言葉……」

鍛冶長「気付が、自然と手が動き……この大剣が出来ていた」


剣士「…」

鍛冶長「…そしていつか、願わくばワシが死んだあとでもいつかお前の手に…とな」

 
剣士「お、俺の手に…?」

鍛冶長「…生きているうちにこうして渡せて、ワシは幸せもんじゃな!」

剣士「い…いいのか…。俺が貰っても……」

鍛冶長「…遠慮するな。お前の血を、お前の力を…この大剣は更なるものとしてくれるはずじゃ」

剣士「…」ゴクッ


職人エルフ「素直に受け取っておけ。親父の銘の最期の作品がまさか人間へ渡すことになるとは……」

職人エルフ「しかも、生意気なガキだったとは…思いもしなかったがよ!」


剣士「…」

剣士「…」

剣士「…」

……スチャッ

 
剣士「…っ!!」

パァァァッ!!ドクンッ、ドクンッ……

剣士「あっ…」スゥゥ…


鍛冶長「…エルフ族の血は、魔族の血であった。」

鍛冶長「魔族には魔族の武器が、きっとその力となってくれるはず……」


剣士「全身から力が……!」ドクンドクン!


鍛冶長「…受け取ってくれて、ありがとう。これでワシも…安心して逝ける……」

剣士「お、おいそんなこと…」

鍛冶長「ふはは、じゃがな…この老いぼれ!せめてこの戦いの行く末くらいは…見守る覚悟じゃ。安心しとけ!」

剣士「はは…」

 
魔道士「…良かったね、剣士」ニコッ

剣士「…おう!」


少女エルフ「…それで、剣士さんたちはこれからどうするの?」

剣士「…まだ探すべき人がいるんだ。すぐにでも別の場所へ行かねーとな」

少女エルフ「探してる人?」

剣士「武道家と、乙女格闘家さ。覚えてるだろ?」

少女エルフ「…え、あの二人を探してるの?ど、どうして?」

剣士「いや、その…。あいつら、ちょっとワケあってパーティを抜けててな…」

少女エルフ「う、ううん。そうじゃなくて」

剣士「ん?」

 
少女エルフ「武道家さんと、乙女格闘家さんがいるから…ココへ来たと思ってました」


剣士「…」

魔道士「…」

剣士「…」

魔道士「…」


剣士&魔道士「…えっ?」


…………
……

本日はここまでです。有難うございました。

皆さま有難うございます。
投下致します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 砂漠港付近の村 】


剣士「…ここが、西海岸村の住民が避難してる村か」

魔道士「あの時の村の風景と…だいぶ変わっちゃったね」

少女エルフ「ですが、みんな一緒にいれるので…それだけで充分です♪」


剣士「…ま、みんな一緒にいれる幸せもあるか」


少女エルフ「はい♪」

少女エルフ「…えっと、あそこです!あの小屋が、武道家さんたちがいる場所です」


…ヒュオオオッ……


剣士「お…おぉ。あそこに…」

魔道士「武道家と乙女格闘家が……」

 
少女エルフ「はいっ。では私は、ちょっと家のお手伝いがあるので…失礼します」ペコッ

剣士「おう、ありがとな」

魔道士「またね~」

タッタッタッタッ……
 
 
剣士「…にしても、たった2か月もない別れだったが、少し緊張するな」ゴホンッ

魔道士「うん…」

剣士「だけど、あいつらも俺らが突然来て驚くだろうな…ははっ」

魔道士「あははっ、そうだね」

剣士「じゃあ…」

魔道士「行こうっ」

ザッザッザッザッ……


剣士(…そういえば、何であいつはこのエルフ族の村に?)

魔道士(考えたら、何で二人はこの村にいたんだろう…)

 
ザッザッザッ…ピタッ

剣士「…」

剣士「…」

剣士「……よしっ」


ソッ……

コンコンッ…


剣士「…」

魔道士「…」


???「はーい!」

 
タタタタッ…ガチャガチャッ
 
 
剣士「…」

魔道士「…」


…ガチャッ…ギィィ……


剣士「…」

魔道士「…」

…スッ

乙女格闘家「どちら様でしょうかー……」

 
剣士「…あっ」

魔道士「あっ…!」


乙女格闘家「…」

乙女格闘家「…えっ?」


魔道士「乙女…格闘家……?」

剣士「だよな…」


乙女格闘家「け、剣士…?っていうか、ま…魔道士…ちゃんっ!?」

魔道士「…うんっ」

 
乙女格闘家「ゆ…幽霊じゃな…い……?」

魔道士「…うんっ。生きてるよ!」

乙女格闘家「…!」

魔道士「…久しぶりだね、乙女格闘家♪」

乙女格闘家「…っ!!」

クルッ、ガチャッ!!バタンッ!!


剣士「うおい!?」

魔道士「えっ、ちょっ!何でドア閉めて…!」


乙女格闘家「…あ、会えないよ……!」

魔道士「えっ!?」

 
乙女格闘家「私…、魔道士ちゃんに会えないよ……!」

魔道士「どうして…!?」

乙女格闘家「魔道士ちゃんが行方不明になって、私…酷いこと…言ったの……」

魔道士「…」

乙女格闘家「武道家がそんな目に合わなくて、良かったねって…!!」

魔道士「…」

乙女格闘家「…そんなんだから、私…」

魔道士「…乙女格闘家」

乙女格闘家「…」


魔道士「…どんな言葉だろうと、私は気にしないよ」

魔道士「今は、こうして会えたことを…少しでもうれしく思ってくれるなら…それでいい」

 
乙女格闘家「…っ」

魔道士「…乙女格闘家は、私に会えて…嬉しくないの?私は…凄く嬉しいよ」

乙女格闘家「嬉しくないわけなんかない!」

魔道士「うん…。だから、大丈夫だよ」

乙女格闘家「…っ」

魔道士「…開けるね」


ガチャッ…ギィィ……


魔道士「…乙女格闘家」ニコッ

乙女格闘家「魔道士…ちゃん……」グスッ

魔道士「…えいっ♪」

ソッ…ギュウッ

 
魔道士「えへへ…。いつもと逆だね、これじゃ」

乙女格闘家「う…うぅ……」

魔道士「会えて…嬉しい」

乙女格闘家「私も嬉しいよぉ……」ポロポロ

…ギュウウッ……


剣士「…」

剣士「感動の再会に俺も嬉しいんだが…武道家はいるか?」


乙女格闘家「あ、うん……」

剣士「…部屋の奥かどこかか。入っても?」

乙女格闘家「い、いいけど…」

剣士「…?」

 
乙女格闘家「…驚かないでね」

剣士「驚く?」

乙女格闘家「…うん」コクン

剣士「…何があった」

乙女格闘家「…」

剣士「…何があったんだ!」

乙女格闘家「一番奥の部屋に…いるから……」


剣士「…っ!」ダッ!

タタタタタッ……!

 
魔道士「ぶ、武道家…何かあったの?」


乙女格闘家「祭壇町から戻ってきて、武道家が病気だったってことが分かったの」

乙女格闘家「…自分で話をしてくれたんだけどね」


魔道士「び、病気…?武道家が!?」

乙女格闘家「うん。その病が、魔力枯渇症といって…不治の病なんだって」

魔道士「魔力枯渇症って…!」

乙女格闘家「そ、それでね…」

魔道士「う、うん…」


乙女格闘家「その話を聞いた時は、まだ武道家は凄く元気でね」

乙女格闘家「私たちがバラバラになったあと、二人で行方不明になった剣士を探す計画をたててたんだ」

 
魔道士「…うん」

乙女格闘家「だけど、それからすぐだった…」

魔道士「どう…したの?」
 

乙女格闘家「武道家が……!」ブルッ


魔道士「…っ!?」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…

トコトコトコッ……ピタッ

剣士「…この部屋だな、武道家がいるのは」

剣士「…」

剣士「ったく、どうしたっつーんだよ…」


…コンコンッ


剣士「…」


…コンコンッ

 
剣士「…返事もしねぇ」

剣士「ったくよ…おい!入るぞ、剣士だ!!」


ガチャッ…ギィィ……


剣士「…」

剣士「…」

剣士「は……」


武道家「……」ダランッ


剣士「武道…家……?」

 
武道家「あ……」

剣士「武道家……?」

武道家「けん……し……?」ヨロッ

剣士「ぶ、武道家…だよ…な……?」

武道家「…」ニコッ


剣士「…っ!」ダッ!!

ダダダダッ…バッ!!


剣士「お…お前……!」

 
武道家「ひさ…しぶり…だな…。どれくらい……ぶりだ…?」

剣士「な、何で…こんな……」

武道家「は…はは……」

剣士「笑いごとじゃねえだろうが!!何してんだよ、お前!!」


武道家「……あ、あれから……すぐに…倒れてな…」

武道家「ど、どうやら…俺の身体は……限界だった…らしいんだ……」


剣士「…っざ、ざけんな!!ふざけんなよコラァ!!」


武道家「…」

 
剣士「そ、そんな弱々しくなって…!ど、どうすんだよお前……!」

武道家「…からだがなぁ…だんだんと…よわってくんだよ……」

剣士「んなの、見て分かるっつーの!おま…!ど、どうして……!」

武道家「うっ…おえっ……!」ゲホッ!!

剣士「!」


武道家「はぁっ…はぁ……」


剣士「…っ」


武道家「ひさびさで…わるいん…だが……」
 
武道家「…すこ…しばかり…ね…かせて…くれ……」


………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 居 間 】


乙女格闘家「はい、コーヒー」

…コトンッ


剣士「…っ」

魔道士「…」

乙女格闘家「…」


剣士「…乙女格闘家」

乙女格闘家「…」

 
剣士「…武道家がどうしてああなったか教えてくれ」


乙女格闘家「…うん。武道家と私は、剣士が消えたあとに二人の捜索の作戦を改めてたてたんだ」

乙女格闘家「だけど、その直後ね…武道家が血を吐いて、また倒れたの…」

乙女格闘家「それで治療院に戻って…。検査をし直したんだけど…そしたら……」


剣士「…」


乙女格闘家「もう、武道家の身体は……限界だって…!」

剣士「…ウソだろ」

乙女格闘家「本当は、生きてるのも不思議なくらいで…」

剣士「…っ!」

 
魔道士「そ、そんな……!」

乙女格闘家「いつ…どうなってもおかしく…ないって……!」

魔道士「…ぶ、武道家が……」

乙女格闘家「うぅっ……ひぐっ…」ポロポロ

魔道士「…っ」


剣士「…ぬかよ」


乙女格闘家「…え?」


剣士「武道家が、そんなことで死ぬかよ!」

剣士「武道家は…死なねえよ!!俺らの仲間だぞ!!」


乙女格闘家「剣士っ……」

 
剣士「乙女格闘家…お前だって、武道家だって諦めてないはずだ!」

剣士「そうじゃないと、お前らがここにいる理由がない。本当は治療院にいるべきだろう!」

剣士「何か、武道家のための理由があるんだろ…!」


乙女格闘家「…!」

乙女格闘家「う、うん…。じ、実は…その……」


剣士「…何だ?」

乙女格闘家「武道家の魔力枯渇症は、魔力の維持を何とかできれば…延命もできるって聞いて…」

剣士「…」

乙女格闘家「南方大陸なら、戦争に巻き込まれることもなく、エルフ族の技術なら、何とかなるかもと思って…」

剣士「…なるほどな。確かにエルフ族の道具なら、何かあるかもしれん…」

 
乙女格闘家「そしたら、少女エルフちゃんとか、武道家のことを知ってるエルフ族がいてね…」

乙女格闘家「普段、寝れないほど苦しんでた武道家も、少し落ち着ける魔力の道具も貸してもらったんだ…」


剣士「…」

魔道士「…」


乙女格闘家「でも、こんなことしてても…武道家の病は止められないのは分かってる」

乙女格闘家「これからはもう、待つしかないのかな……」ブルッ


剣士「…」

剣士「…」スクッ


魔道士「…剣士?」

 
トコトコトコ…カチャッ、バタンッ


魔道士「ど、どこに…」

乙女格闘家「…?」


………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

…ガチャッ

剣士「…」

剣士「…」

剣士「…」スゥゥ

剣士「…」ピタッ


剣士「…武道家ぁぁっ!!!」


武道家「っ!?」ビクッ!!

 
ダダダダッ…グイッ!!

武道家「ご、ごほっ……!な、なん…だ……」


剣士「…しっかりしろ、武道家!」

武道家「けん…し…」

剣士「いいか、良く聞け!お前はそうやって寝てる暇もねーんだよ!」

武道家「な、なに…が……」


剣士「この世界を守れるのは、俺らにかかってるかもしれねーんだぞ!」

剣士「黄金の卵と呼ばれた俺らが、英雄として産まれる時が来たんだ!!」


武道家「えい…ゆう……?」

 
剣士「あぁ!俺らが冒険者たちを引っ張って、この戦いに勝つんだよ!」

剣士「そして、俺らは世界を救った英雄になるんだ!!」


武道家「は…はは……」


剣士「…真面目な話、軍も俺らに合わせて動いてくれることを決定している」


武道家「お、おまえが…ぐんに……てつだいを…?」


剣士「…」ニヤッ

武道家「…はは…おまえらしくも…ない…」

 
剣士「…軍のトップに、直々に俺の腕を使い、大戦士のあとを継げと言われた」

剣士「だが、俺一人じゃ無理だ」

剣士「やっぱり、背中で守ってくれる仲間が必要なんだ!」


武道家「…っ!」


剣士「その背中を預けられるのは、お前しかいない」


武道家「け……けん……し…!」


剣士「…お前じゃなきゃダメだ。だから、俺はお前を待つぞ」


武道家「…ッ!」

 
剣士「…俺は先に行ってる。だから、お前は俺を追ってこい!」

武道家「…っ」

剣士「これ以上の言葉はない。待ってるぞ…武道家っ」

武道家「…」


クルッ……トコトコトコ…ピタッ


剣士「…」

剣士「"またな"」


ガチャッ……バタンッ

 
武道家「…っ」

武道家「……っ!」ギリッ


武道家「わ……わか…ってる……」


武道家「おれは…かならず……おいつく…」


武道家「そうさ…おいつく……!」


武道家「待っていろ…剣士っ…!!」


…………
………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 小屋の外 】


剣士「…じゃ、俺らは中央へ戻る」

乙女格闘家「…ごめんね。力になれなくて」

剣士「仕方のないことだ」

乙女格闘家「何かあったら、必ず伝えに行くから…」

剣士「あぁ、頼んだ」


魔道士「乙女格闘家…」

乙女格闘家「魔道士ちゃん…」

…ギュッ

 
魔道士「…っ」

乙女格闘家「…っ」

剣士「…じゃあな」

乙女格闘家「うん…」


ザッザッザッザッ……

………
……



乙女格闘家「…」

乙女格闘家「……武道家のごはん、作らないと…」クルッ

 
タタタタタッ……

???「お、乙女格闘家さーんっ!」

乙女格闘家「…?」


少女エルフ「はぁ、はぁ……!」

乙女格闘家「あ、少女エルフちゃん。どうしたの?」

少女エルフ「剣士さんたち、戻りましたよね」キョロキョロ

乙女格闘家「うん。挨拶するなら、あっち側に…」

少女エルフ「あ、いいえ!そうじゃないんです。きっと知ったら、あまり良くないかなって」

乙女格闘家「…え?」

少女エルフ「実はその、紹介したい方が」


…ザッ

職人エルフ「…お初にお目にかかる」

 
乙女格闘家「ど、どなた…?」


少女エルフ「…武道家さんたちの役に立ってくれる方だと思います!」

乙女格闘家「ど、どういうこと?」


…………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 寝 室 】


職人エルフ「…想像以上に弱っているな。久しぶりだ、武道家。覚えているか?」

少女エルフ「武道家さん…」


武道家「はは…。きょうは…きゃくがおおいな……」


職人エルフ「…話は聞いたが、まさかお前が魔力枯渇症になるとはな」

武道家「へっ…ほっとけ……」

 
職人エルフ「…」

職人エルフ「…あのバカ、外まで大声で聞こえちまったんだけどな」

職人エルフ「お前ともう1度、戦いたいんだってな」


武道家「は、ははっ……。きこえてた……のか」


職人エルフ「…罪滅ぼしじゃねえが、俺はあいつの心をえぐる一言をいっちまった」

職人エルフ「その謝罪の意味を込めて、お前に話がある」


武道家「なん…だ……?」


職人エルフ「…お前次第といったところだ」


武道家「だ、だから…なんだ……」

 
職人エルフ「…これも絶対と言えるわけではないが、効果はあるはずだ」


…スッ…

ギラッ…!


武道家「それ…は……」


職人エルフ「お前の未来の選択肢を、もう少しだけ広げてくれるかもしれんモノだ」


武道家「みらいの…せんたくし……?」


…………
………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・

 
それから、剣士と魔道士は中央都市にて一泊。

期日となる3日目の15時、中央軍本部前にて戦士らと合流。

武道家の病について伝えると、戦士と剣豪は落胆の色をかくせなかった。


無論、剣士たちも武道家のことが頭に残り、

その落ち込みようは、戦士と剣豪の比ではなかった。

だが、剣士と魔道士にはそんな時間もなく…。

迫る時間に、本部の会議室へと足を運び――……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央軍本部 会議室 】

…ガチャッ

剣士「…待たせた」

魔道士「失礼します」ペコッ


剣聖少将「…時間まであと10分。ずいぶんと遅い到着だったな」

剣聖少将「その様子だと、無理だったか」


剣士「…っ」

魔道士(この人が、剣聖少将。剣士のお父さん……!)

 
剣聖少将「それと、その隣のが魔道士か……」ギロッ


魔道士「は、はいっ!」

魔道士(凄い威圧感……。本当に強い人なんだ……)


剣聖少将「…」

剣聖少将「……可愛いな」ボソッ


魔道士「い、いえっ!」

魔道士「…」

魔道士「……はい?」


剣聖少将「俺の奥さんには敵わないが、充分可愛らしい娘だな」

剣聖少将「剣士のどこに惚れたかは知らんが、乗り換えるなら早くした方がいいぞ……」


剣士「おい」

 
魔道士「あ…あはは…」

魔道士(やっぱり…。なんか、剣士のお父さんだ……)


剣聖少将「それとは別に、ドアの外にいる二人は誰だ?」

剣士「えっ」ドキッ

剣聖少将「そこの二人もオーラが違うな。お前の友達か誰かか?」

剣士「…戦士と剣豪だ。隠して連れてきたつもりだったんだが…」

剣聖少将「そんな実力をさせて、隠すもクソもあるか」

剣士「…そんなハッキリと感じるもんなのか」

剣聖少将「まぁな」

剣士「…」


剣聖少将「…っと、残り8分。残りの二人は…そのドア越しの二人なのか?」

剣聖少将「確かに実力はそれなりのようだが…それでいいのか」

 
剣士「い、いや…。それは……」

剣聖少将「残り時間以内に決めろよ。俺らのほうは、既に出撃準備は出来ている」

剣士「出撃準備って…」

剣聖少将「第一陣から、攻撃隊を向わせる。玉砕覚悟のバカ共で構成した大隊だ」

剣士「…本気なのか」

剣聖少将「犠牲なくして勝利をつかもうなど、愚の骨頂」

剣士「…」

剣聖少将「…」

魔道士「…」


剣聖少将「…残り、7分」

 
剣士「ま、待ってくれ…」

剣士「決心が…つかないんだ……」


剣聖少将「…ここまできて決心がつかない?何言ってんだお前」

剣士「た、確かに冒険者たちを引っ張る気持ちはある。だが、パーティとして…足りないんだよ」

剣聖少将「武道家たちのことか」


剣士「やっぱり、俺のパーティはあいつらがいてこそなんだ…」

剣士「僧侶もいるが、あいつにはあいつの別の道がある」

剣士「…たとえ僧侶を入れたところで、一人も足りないんだけどな……」


剣聖少将「気持ちは分かるが、それは…」

剣士「…分かってるっつーの!分かってる!」

剣聖少将「…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 会議室の外 】

…ボソボソ

戦士「俺らのこと、バレてるし」

剣豪「あれが剣士の親父かよ…」

戦士「…最悪、俺らがこの戦争の中心となるかもしれないんだろ」

剣豪「剣士曰く、俺らにそこまでのことはさせたくないらしいが…」


戦士「くそっ…。武道家さんたちが、あんなことになっていなければ……」ギリッ

剣豪「折角、剣士が戻ってきたっつーのにな……」

 
戦士「…今、何時だ?」


剣豪「んとな…」スッ

剣豪「時間の5分前だ……」


戦士「…俺らが、剣士さんのパーティに入るしかないっつーことか」

剣豪「俺らで…冒険者たちを引っ張れるのか…?」

戦士「…」

剣豪「…」


戦士「…やるしかないんだろう」

剣豪「そりゃ、分かってるけどよ…」

 
カツ…カツ…カツ……


剣豪「…俺は、正直やりたいと思う心はある。お前は?」

戦士「正直な奴だ。俺だって、こんな経験…冒険者としてしてみたいさ」


カツ…カツ…


剣豪「だけどな…」

戦士「分かってる…」


カツ…


剣豪「やっぱり、剣士さんのパーティは…」

戦士「…あの人たちじゃないと…」

 
???「…そうだよな。やっぱり、俺らじゃないとダメだよな」ボソッ


剣豪「…ん?」

戦士「…へ?」


???「…よう、お前ら。久しぶりだな」ニカッ

???「やっほー♪」


剣豪「…な、何っ!!」

戦士「えぇぇっ!?」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 会議室 本部 】


…カチンッ!

ボォーン…ボォーン……


剣聖少将「…時間だ」


剣士「…っ」

魔道士「…剣士」


剣聖少将「さぁ、これ以上は1秒も待てないぞ」

剣聖少将「…聞かせろ、どうするのか!」


剣士「わ…分かった…。分かったよ…。俺は……!」

 
…ガチャッ、ギィィ……


???「あぁ~ん…?おいおい、何…そんな哀しそうな声で叫んでんだよ」

???「剣士らしくないよ!」


剣士「…あぁ?」クルッ

魔道士「…えっ?」クルッ



???「…あれから大体24時間。随分と待たせたが……追いつかせてもらったぜ?」

???「遅れてごめんね、魔道士ちゃん!」

 
魔道士「え……」

剣士「……はっ!?」


武道家「…剣士っ!お前の背中で戦えるのは、俺しかいないんだろう?はーっはっはっは!」

乙女格闘家「ふふっ、私だって頑張るからね」


剣士「ぶ、武道家ぁッ!?お前、どうして……!」

武道家「…」ニヤッ

剣士「お前…!び、病気は……っ!?」


剣聖少将「…そこまで。4人全員が集まったな!」

剣士「い、いやちょっと待ってくれ!武道家は昨日まで…!」

 
剣聖少将「無駄な話はあとでしろ。今は俺の話からよく聞け。」

剣聖少将「今から、お前らには俺に従い、その冒険者たちを率いる地位として戦ってもらう!」


武道家「剣士の親父さんですね…。久しぶりです」

武道家「…この身体、この世界のために、剣士のために。何なりと!」



剣聖少将「いい心がけだ」



剣士「な、なんで…武道家が……」

 
武道家「…あとで話をしてやるよ。それより今はそっちだろ?」クイッ

剣聖少将「…そうだな。武道家の言う通りだ、こっちに集中しろ」

剣士「い、いや…!そりゃ分かってるけど、だけど……」


剣聖少将「…と、全員集まったところ悪いが、具体的な内容は明日の朝8時に説明する」

剣聖少将「作戦自体も、明日の朝にならないとちょっと整わないんだ」


剣士「…は?」

剣聖少将「話はそれだけだ。一度、お前らは宿に戻れ」シッシッ

剣士「い、いやちょっと待てよ。期日は今日までだっつってたのに…」

剣聖少将「…期日と決行は別だ」

剣士「…」

 
剣聖少将「明日以降に、もう1度話をする。明日は朝7時30分までにココへ来い」

武道家「了解です!」

乙女格闘家「わっかりました~!」


剣士「な、何だってんだよ、一体……!」


武道家「ま…あとで説明してやるよ」ニカッ


…………
………

本日はここまでです。
前日は申し訳なかったのですが、
投下できる状況ではなかったので、遅れてしまいました。

それでは、有難うございました。

皆さま有難うございます。
投下致します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 夜 中央都市 宿のテラス 】

…カランッ

剣士「く…くく…」

武道家「ははは!」


剣士「また、こうしてここでウィスキーを交わすとは思わなかったぜ」

武道家「…俺もさ。やっぱ、お前とこうするのが一番落ち着くぜ」

剣士「…飲めよ」

…トクトクッ

武道家「…おうっ」

 
…グビッ!

武道家「…ぷはぁっ!」


剣士「…」

剣士「それで、聞かせてくれ。なぜお前が…ここへ来れたのか」


武道家「…もちろんだ。」

武道家「お前らが帰ったあと、実は職人エルフがうちへ来てな……」


……

 

……
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


職人エルフ「お前の未来の選択肢を、もう少しだけ広げてくれる道具だ」

武道家「みらいの…せんたくし……?」


職人エルフ「これは、砕け散った俺らの同胞の魔力を集めたもの」

職人エルフ「俗にいう、魔力霧。それを集め、結晶石としたものだ」


武道家「そ、それ…が……?」


職人エルフ「これをお前の血に打ち、魔力へ溶かし、お前にエルフ族の血と魔力を渡す」

職人エルフ「そうすれば、お前の身体は一時的に劇的な回復を見せるはず」


武道家「…っ!」

 
職人エルフ「だが、問題もある」

武道家「なん…だ……」


職人エルフ「これはまるでドーピングそのもの。一度打ち込めば、確かに効力はとてつもないだろう」

職人エルフ「しかし、膨大な魔力に包まれた身体は、その反動もとてつもないものとなる…」


武道家「…」


職人エルフ「…お前は、一度既に東方祭壇町で霧に触れていたと聞いている」

職人エルフ「こちら側に戻ってきた時に、その反動で壮絶な痛みと吐血で倒れているんだろ?」

職人エルフ「そして、この結晶石は祭壇町の霧と同じ効果を得るということ」

職人エルフ「つまり…。この効果が切れた時……そういうことだ」


武道家「…」

 
職人エルフ「そして、見る限り…いや。お前自身、わかってるはず」

職人エルフ「お前の身体はもう…次の反動に耐える事は……」


武道家「さ、ささいな…ことさ……」


職人エルフ「…」


武道家「あいつが…。まって…くれてると……いった……」

武道家「おれは…それにこたえる……だけ……」


職人エルフ「…やるんだな」

武道家「きく…ことか……?」

職人エルフ「…そう言うと思っていた」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
……

  

……
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

剣士「…っ」

剣士「…本当なんだよな。昨日までのお前が、そんな美味そうに酒を飲めるんだから」


武道家「…残念ながらな。俺の今の身体には、エルフ族の魔力が宿ってるよ」パァァッ

剣士「あのエルフが、俺らに協力するなんてな」

武道家「…お前が色々してきたからな。あのエルフも心変わりしたんじゃねーの?」

剣士「んー…」


武道家「…そうだ。話は変わるが、本当かどうか教えてほしいことがあるんだ」

剣士「…何だ?」

 
武道家「大戦士さんて、亡くなったのか……?」

剣士「…」

武道家「…」

剣士「俺は直接見たわけじゃないが、大戦士兄は…剣豪と戦士の前で散ってった……とかな」

武道家「…っ!」


剣士「…大戦士兄は、一応、俺の前にも最期に姿を見せてくれた」

武道家「…」

剣士「だから、今回のことまで上手く運んだわけだ」

武道家「…俺の場所には来なかったのか」

剣士「いや行ったと思うぞ?」

武道家「何?」

 
剣士「お前、病気でぶっ倒れてたし…」

武道家「あ、あぁ…」

剣士「それに戦士たちの話だと、武道家のことも言ってたっつってたし」

武道家「俺のことも!」

剣士「…やっぱり、お前も大戦士兄にとっちゃ、弟子のひとりだったんだろ」

武道家「そうか…」


剣士「…」

剣士「なぁ…武道家」


武道家「…なんだ?」

 
剣士「大戦士兄の話をしてて改めて思う。…本当に、戦いの道でいいのか」

剣士「いつ、どこで、どんなことになるかなんて……。せめてもの、時間を……」


武道家「そんなこと言うなら、俺の動けるエネルギーを全て使い切るまで、殴るぞ」

剣士「おい」


武道家「あのなぁ、お前が待ってくれるっつったんだろうがよ」

武道家「お前の背中で戦えるのは俺だけだろうし、俺の背中で戦えるのもお前だけだろうが」


剣士「…ふっ」

武道家「まぁ、俺がどうこうしてるうちに…お前は随分と強くなっちまったみたいだがな」フンッ

剣士「そうか?」

武道家「…エルフ族の魔力を得たせいか、なんか…見えるんだ」

剣士「見える…?」

 
武道家「お前の身体から、物凄いパワーを感じる」

剣士「…」ニヤッ

武道家「だけどな、他の人にとっちゃ怒られるような事も俺の身体に起きてんだよなぁ」

剣士「…なんだ?」


武道家「…お前が強くなった分、俺もお前と同じくらい強くなってると思う」

武道家「エルフ族の血と魔力が、俺の身体を底上げしてるのが分かるんだ」


剣士「…何もせず、経験値が溜まっちまったってのかよ!」

武道家「羨ましい?」ニカッ

剣士「く、くっそ!俺だってだいぶ命削った戦い方してたんだけどよぉ!」


武道家「うはは!羨ましがれ、バーカ!」

剣士「うるっせぇ、バーカ!」

 
武道家「バカはおめーだ、バーカ!!」

剣士「あぁん!?バーカ!」

武道家「…くっ」

剣士「ぷっ…」


武道家「はーっはっはっは!」

剣士「うわっはっはっはっは!」

…ヌッ

剣聖少将「うあーっはっはっは!」


武道家「…はぁっ!?」ビクッ

剣士「うおっ!?」


剣聖少将「…あ、バレた」

 
剣士「な、何してんだよ親父!」

剣聖少将「バカ共の声が聞こえたからな!」

剣士「親父も充分バカだろうが!っつーか、どっからきやがった!」

剣聖少将「一番下から飛んできただけだが?」


剣士「…ひ、飛翔か。ここ何階だと思ってやがる!」

剣士「自分の実力をそんな、ストーカー紛いなことに使うんじゃねーよ!」

 
剣聖少将「ストーカーとかいうんじゃねぇ!」

剣士「つーか、アンタにゃまだ中央軍本部でやることとかあるだろうが!」 
 
剣聖少将「だって息苦しいし、抜けてきた」

剣士「おい仮元帥」


剣聖少将「…まぁそういうな。明日からは作戦の決行なんだからな。今日は休みだ」

剣士「…そういや、何で明日からにしたんだ?期日は今日までだったのによ…」

 
剣聖少将「…もともと4日は余裕を持たせるつもりだった」

剣聖少将「こうして、3日目の夜はのんびりできる時間があればなと思って、3日にしたんだよ」

剣聖少将「作戦決行の前日くらいは、のんびりしたほうがいいだろ?」

剣聖少将「集まって、すぐに行動開始!よりは余裕をもって行動したほうが結果につながるんだ」


剣士「…それじゃ、前の幹部連と変わらなくねえか」

剣聖少将「あいつらの余裕と、俺の休みは違う。それに、既に動いている部隊はある」

剣士「…じゃあ、ますます本部から離れたらダメだろうが!」

剣聖少将「少しの間だけだ。俺にもグラスを寄越せ」

剣士「…へいへい」

…スッ

 
剣聖少将「…武道家。ついでやる」スッ

武道家「は、はいっ」スッ

トクトクトクッ……


剣聖少将「…剣士」スッ

剣士「…」スッ

トクトクトクッ……


剣聖少将「…剣士、グラスの半分まで俺に酒を」

剣士「…半分かよ」スッ

トクトクッ…


剣聖少将「…もう半分は、武道家がついでくれ」

武道家「…はいっ」スッ

トクトクッ…

 
剣聖少将「…よし」

剣士「んだよ、乾杯でもすんの?」


剣聖少将「明日以降は、誰が死んでもおかしくない戦いになる」

剣聖少将「酒を飲みかわし、これからの武運を祈り合う」

剣聖少将「…お前ら二人に、酒をついでもらって最期の酒とすれば本望だ」ニヤッ


剣士「…」

武道家「…」


剣聖少将「…乾杯をしよう」

 
剣士「…わかった」

武道家「はいっ…」


剣聖少将「んじゃ…えっとな。勝利の為に……!」スッ


三人「乾杯っ!!」

ガチィンッ……!!


剣士「…」

剣士「…適当すぎんだろ」


剣聖少将「…うるせっ!」


………

 
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・・・・
・・・
・・

 
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――――【 次の日 朝 】


…ガチャッ

剣士「…来たぜ」

剣聖少将「…来たか」


武道家「おはようございます」

乙女格闘家「おはようございます!」

魔道士「おはようございます」ペコッ

 
剣聖少将「…さて、何から話をすればいいか」

剣聖少将「とりあえず、そこに並んで立ってくれるか」


4人「…」スタッ


剣聖少将「改めて、説明する。この戦争を勝ちぬくためには、軍だけの力では決して勝てるものではなくなった」

剣聖少将「そこで、お前たちは…冒険者の黄金時代の卵と呼ばれた4人」

剣聖少将「その名を借りて、やって欲しいことがある」


4人「…」


剣聖少将「お前たちは、軍ではなく…いち個人の冒険者パーティとして他の冒険者を率いて…」

剣聖少将「この戦争への勝利の礎の一つとなって欲しい」

剣聖少将「無論、甘い事は言わん。礎というのは…その身を犠牲にすることも込めている」


4人「…」

 
剣聖少将「…軍は俺が率いる」

剣聖少将「亡き者となった者たちへ、志半ばで倒れた者たちの意思も継いで、俺は戦う」

剣聖少将「だからお前たちは、大戦士の意思を継いでほしい」

剣聖少将「冒険者たちの糧となれ。光となれ。力となれ!」

剣聖少将「…お前たちが、世界を救う英雄と呼ばれるその時まで、その命…貸してほしい」


剣士「…何かしこまってんだか、クソ親父が」

武道家「ふっ…」

魔道士「…はいっ!」

乙女格闘家「私たちでよければ…!」


剣聖少将「では…具体的な作戦を伝える」

4人「…」

 
剣聖少将「実は既に、中尉や少尉、准尉らに頼み…あることを進行している」

剣士「あること?」


剣聖少将「中央都市および、ほぼ全ての一般依頼受付所に加え、公共情報として…」
 
剣聖少将「剣士たちのパーティが復活したことを公開させた」


剣士「…は?」


剣聖少将「黄金の卵、堂々の復活~!!ってな!」ハハハ

剣士「…い、いやいやいや!何してんだよ!」

剣聖少将「黄金の卵のリーダー剣士が、魔族へ立ち向かうぜ!集え!反撃の狼煙だ!とかよ!」

剣士「…立ち向かうぜ!じゃねえよ!」

剣聖少将「既に、この情報は世界全体へ駆け巡ってるはずだぞ」

剣士「か、駆け巡ってるって……!」

 

……
………
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央都市 教会 】

…ペラッ

神官「…みんな、戻って来たんだね……!」

神官「良かった…!剣士くん!武道家くん!魔道士さん!乙女格闘家さんっ!」


子供「…知ってる人ー?」

神官「ほらこの間、君がキレイな石をくれたおにいちゃんだよ!」

子供「あの時のお兄ちゃん!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 北方大陸 雪降町支部 】

…スッ

魔術賢者「魔道士…乙女格闘家…無事だったんだね……」

魔術賢者「は…反撃の狼煙だって……みんならしいな……」クスッ

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 北西冒険学校 】

…ペラッ

冒険先生「あの時のメンバーが、立派になって…」

冒険先生「今度は世界の問題児か……?」


後輩たち「…この学校の卒業をした大先輩ですよね!すっげー!!」

冒険先生「あ、あまり目標に出来る先輩たちではないのだがな…」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 西方大陸 前線臨時支部 】

星降兵「…ほう、大戦士の魂を継ぐ者…か」

星降兵「剣士と武道家、魔道士に乙女格闘家……黄金の卵か」

  
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 南方大陸 砂漠港 】

支部軍人「あの時、この支部で暴れていた男か…!」

盗賊団長「…おい、こんな状況なんだから俺を牢屋から出してもよくないか。剣士に協力するぞ?」

支部軍人「…うそこけ」


少女エルフ「えへへ…みんな、またパーティ出来てよかったね!」

職人エルフ「その代償は、どうなるか分からんがな…」 

鍛冶長「うはは!ワシらの心配など、きっと彼らには無用じゃて」


少女エルフ「…みんな、頑張って…!」ギュッ

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 世界各地の冒険者たち 】

冒険者たち「…おいおい、あのパーティ…また復活したのか!」

冒険者たち「し、しかも魔族に喧嘩うるってよ!」

冒険者たち「なんだよそれ、面白そうじゃねえか…!」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 世界各地の市民たち 】

市民たち「な、なんだよ黄金のパーティって…」

市民たち「でも世界で出してる情報らしいぞ…!」

市民たち「相当強いらしいし、なんとかしてくれるんじゃ…」

市民たち「や、やってくれるのか…!?」


………
……

 

……
……… 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 そして 中央軍本部 】


剣士「…まじかよ」


剣聖少将「…"表舞台に出なかった場所"もお前らは冒険してきただろう」

剣聖少将「もちろん、その場所へも全て伝わってると思うぞ?」


剣士「…っ」

剣聖少将「無論、魔族にも入らないわけはないな……」

剣士「!」

 
剣聖少将「あとは、お前に任せる」

剣聖少将「ここまですれば、必ずお前にたちの後ろへ着いてくる面子が大勢出てくるはず」

剣聖少将「…そして、冒険者らしく自由に戦え」

剣聖少将「目標は魔族の撃破。それだけは命令とし、あとは…自由にしろ」


剣士「…」


剣聖少将「…頼んだぞ」

剣士「…わかったよ」


剣聖少将「…うむ。では、作戦の開始を宣言する!」

剣聖少将「今度は、人間側があいつらを攻撃させてもらう番だっ!!」

 
剣士「あぁ…その通りだな!」

剣士「さぁ、みんな…準備はいいか!」


武道家「くく、この言葉を言うのも、聞くのも久々なんじゃないか?リーダー」

魔道士「あ、なっつかしぃ♪リーダー!」

乙女格闘家「…その強くなったっていう実力、見せてよねリーダー!」


剣士「く…くくっ…!はーっはっはっは!」

剣士「やっぱり、このやり取り…落ち着くぜ!」

剣士「さぁ!俺らが世界を救ってやるか!!」



…………
………

 
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・・・・・・・・・
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・・・・・
・・・・
・・・
・・

 
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――――【 とある場所 】


オォォ…ォォォォ………

 
バンシィ『…冒険者タちも含メた、新タな作戦をたテたらしイな……!』

デュラハン『人間側も本気ということか。面白い…』

バハムート『我らも動く時ということか…?』

バジリスク『いいぜ、楽しくなってきた……』


アリオク『どこまで足掻けるか…楽しみなことだ……』

 
デュラハン『…』

デュラハン『…ところで、主よ』


アリオク『何だ』


デュラハン『少し前…軍の本部とやらの上位メンバーをつぶしたと聞いたが……』

デュラハン『主だけで、全てを決することは出来たのではないか…?』


アリオク『…それも考えたのだがな』

アリオク『人間側には、いつでも堕とせるという、俺らの実力を見せておきたかったのよ……』


デュラハン『…嫌いではない、その考え』ニタッ

アリオク『くく…!』

 
バンシィ『そウいえバ…。その時、さらっテ来たトいう人間がイたと聞いタのだガ…?』

アリオク『大魔術中佐という…女か』

バンシィ『…ソう言う名だっタな』

アリオク『あいつは、面白い事をさせてもらっている。くく…』

バンシィ『面白イこと?』

アリオク『…俺の子を産んで貰うんだ』クク

バンシィ『…なニっ!?』


バジリスク『おいおい…それは聞き捨てならねェな。人間に、アンタの血をくれてやるのか?』

アリオク『人間と魔族の混血…興味はないか?どうやら、人間は俺の子を産めるようなのだ』

バジリスク『…どちらの血が濃くなるかは知らねェが、あまり良い事ではなさそうに思うぜ?』

 
アリオク『くはは!面白いことは、何でもやってみるものだ…!』

アリオク『…それにあの人間の女、それに興味を持ったようでな」

アリオク『協力的ならば、尚更よ……」


バハムート『…物好きなことだ。貴方は魔界の王ともいうべき存在』

バハムート『その強大な魔力の血を引き、超越した魔術師が生まれてくる可能性もゼロではないというのに』


アリオク『その時はその時だ…!』


バハムート『やれやれ……』


アリオク『まぁ、今はどうということもない』

アリオク『今はその、人間共がどのようにして我々に攻撃を仕掛けてくるのか……』

アリオク『楽しむとしよう……』

 
…………
………

 

・・
・・・
・・・・
・・・・・
・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・

 
"黄金の卵パーティ、堂々の復活!"

"そして、全ての魔族へ宣戦布告する!"

"有志たちよ立ち上がれ!魔族との大喧嘩だ―――!"


その情報が世界へ伝わりきる頃、中央軍の作戦は始まった。

中央軍大隊が、東方祭壇町の魔族領地とされた場所へ奪回戦を仕掛け、

同時に西方星降村を含む、こちらも魔族領地とされた場所の奪回戦を開始。

東西魔族領地奪回戦…。

これが剣聖少将の初の指揮のもと、初の人間側の攻撃に転じた戦いとなった。

 
そして、剣士たちは――……

本日はここまでです。有難うございました。

皆さま有難うございます。投下致します。

  
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――――【 東方祭壇町 防衛線付近の平野 】


…ガキィンッ!!バシュッ!!!

冒険傭兵「…ぐっ!!」

オーク兵『ぐはは!人間共め、我らに攻撃を仕掛けてくるとはな!』ググッ

冒険傭兵「お…俺らの知ったことじゃねえ!」ググッ 
 
オーク兵『中央軍とやらが、攻撃に転じたようだがー…無駄なこと!!』 

冒険傭兵「無駄かどうかなんか…分かるものかぁぁっ!!」

…ブォンッ!!グシャッ!!


オーク兵『…っ!』


ドシャアッ…

 
冒険傭兵(く…くそっ。確かに剣士の言った通り、中央軍の援軍は町や村へ派遣された)

冒険傭兵(だが、攻撃にも転じたせいで落ち着いていた魔族が再び発起しやがった……!)

冒険傭兵(これで本当に正解なのか…。俺らはもうボロボロなんだぞ……)


…ズズッ

スライム『…』

スライム『…ッ!』クワッ!!


冒険傭兵「し、しまっ……!」


…ズバズバァンッ!!ボォンッ!!!

ズザザザァ…ドゴォンッ!!


冒険傭兵「…お」

 
…ザッ

剣士「…危ないところだったじゃないの、冒険傭兵」ニカッ

冒険傭兵「…剣士っ!?」


魔道士「こんにちわ♪」

武道家「おー、これが剣士が戦ってた平野か」キョロキョロ

乙女格闘家「ここが前線…」


冒険傭兵「…うおっ!?」ビクッ


剣士「どうした?」

冒険傭兵「こ、この3人てもしかして…」

剣士「…前に話しただろ。俺のパーティさ」

冒険傭兵「ってことは、黄金の卵か!」

剣士「そーいうこと」ニヤッ

 
冒険傭兵「う、噂にゃ聞いてたが…本当に全員そろったんだな!」

剣士「そうさ。俺らは、魔族へ喧嘩を売る。中央軍とは別に、自由に暴れてやるのさ」

冒険傭兵「それ、面白そうだよな……」

剣士「くははっ。それでな、ちょっと…」


…コソッ

ゴブリン兵『うはハ!…好機を得タりッ!死ねェッ!!』ブォンッ!!

武道家「…おっと、話合いの邪魔すんな」

…ガシッ!!

ゴブリン兵『なっ…お、俺ノ剣を素手で受けトめタ……!?』

武道家「お前ら如きじゃ相手にならねーんだ、一回お取引願うぜ!』グググッ

ゴブリン兵『…ヒッ!』


武道家『掌底波ぁぁっ!!』

ゴバッ…!!!

 
ゴブリン兵『ひギゅっ……』

ズッ…ズザザザァ!!ドゴォンッボゴォォンッ!!!

ゴブリン兵たち『ヌアアアッ!』

オーク兵たち『ガァァッ!?』

ズズッ…モクモク……


剣士「…あらら、全部吹き飛ばしちゃった」

武道家「ちょーっとやりすぎたかな?」


冒険傭兵「す…すげぇ……!」


武道家「…っ」ズキン!

武道家「は、はは……!どうだ!」

 
冒険傭兵「…す、すげぇよアンタら!」

冒険傭兵「本気で魔族に、あんたたちで暴れるつもりなのか!?」


剣士「…だからそう言ってるだろ。俺らには、俺らしか出来ない事がある」

冒険傭兵「はは…かっけぇよお前…。とてもあの村で、村娘と寝ようとしていた奴とは思えな……」

剣士「…ふんぬっ!!」

…バキィッ!!!

冒険傭兵「ぬがぁっ!!」

ズザザザァ…!!


剣士「あ、すまぬー。つい後ろに敵がー」


…ムクッ

冒険傭兵「殺す気かコラァ!!」

 
剣士「はっはっは!ま、それより話を戻すぞ」

冒険傭兵「あん?」

剣士「この付近の町や村は、ほとんど避難も開始し、軍の息がかかっているから安心していいだろう」

冒険傭兵「まぁ…」

剣士「だから、冒険者の力を借りたいんだ」

冒険傭兵「…ん?」

剣士「…俺ら4人だけじゃ、さすがに挑むのも厳しい。この戦い、他の冒険者たちの力も欲しいっつーことさ」

冒険傭兵「つまり、俺らも守りだけじゃなく攻めに転じろ…ってか?」


剣士「…お前だから言うが、ぶっちゃけた話、俺らが立ち上がって冒険者たちも攻めに転じさせる作戦なんだよ」

剣士「俺らが魔族にケンカを売れば、お前みたいな奴らも一丸となって戦うんじゃないか…ってな」

 
冒険傭兵「…なるほどな。確かにそうかもしれん」

 
剣士「最初、全員を俺のパーティ……いや、本格的な義勇軍として集わせようとも考えた」

剣士「だけどな、冒険者なんて自由主義だし…指揮をとろうとしても集まるのすら難しいだろ?」

剣士「だったら、俺らがケンカを売って、冒険者や戦闘意識のある人間の先駆けとなればいいと思ってな!」


冒険傭兵「確かに、それがあの"黄金の卵"のメンバーがケンカを売ったとなりゃ、俺らも燃えるっつーか…」


剣士「…俺らは、このまま冒険者がいる場所を走り回り、冒険者たちの士気をあげる」

剣士「これからどうするかは、お前ら次第だ」


冒険傭兵「…それは分かった。確かに士気も上がるだろう」

冒険傭兵「だが、どうやって攻撃をする?現状、どこにどんな風に攻撃を行えばいいか、全然情報もないんだぞ」

冒険傭兵「それに、あいつらに奇襲っつーか…そういう行為がどうすればなるのか……」

 
剣士「…逆になればいいだけだけじゃねえか?」

冒険傭兵「はぁ?」

剣士「今までは、村を守る為、ただ魔族の攻撃を待っていた。それを、相手の拠点へ攻めればいい」

冒険傭兵「…ふむ」


剣士「そうすりゃ、あいつらにとっては人間側からの"奇襲"の行為になる」

剣士「あいつらも軍人か冒険者、市民かどうかは理解してる。それが軍人以外も攻撃されちゃ、びっくりするだろ?」


冒険傭兵「確かに…」


剣士「…俺らは、すぐに別の場所へ行き、俺らが戦っている姿を見せる」

剣士「黄金のパーティの名もバンバン使わせてもらう」

剣士「それで、この魔族との戦争の…平和の礎になる。お前らにも礎の一人となってもらう!…ってな!」


冒険傭兵「…んだよそれ」

冒険傭兵「俺みてぇな、ただの冒険者でも…平和の礎になれるってか」

 
剣士「…黄金の卵はな、本当は俺らだけじゃない」

剣士「この世界を彩る、全ての冒険者に、この現状で戦ってくれている、全ての人々へ捧ぐ名前なんだと思ってる」


冒険傭兵「…俺も、黄金の卵だっつーのかよ」

剣士「…そう思ってる」

冒険傭兵「…」

剣士「…」

冒険傭兵「く…くくっ」

剣士「あん?」

冒険傭兵「お前、よくこの状況でそんな恥ずかしいこと…はっはっは!」

剣士「あぁ?」

冒険傭兵「後ろ…見てみな」

剣士「なんだ…」クルッ

 
ワッ…ワァァァッ!!!


前線の冒険者たち「…今、俺らも黄金の卵っつったのか!?」

前線の冒険者たち「本物の人たちに、俺らのことも褒めてもらったんだな!」

前線の冒険者たち「憧れのパーティにそう言われちゃ、やるしかないだろ!」

前線の冒険者たち「くっくっく、俺の時代が来たっつーことか!」

 
剣士「な、なんだこいつらっ!?」ビクッ

武道家「なんぞっ!」

魔道士「いつの間に周りに人が!?」
 
乙女格闘家「ど、どうなってるの!?」


冒険傭兵「はっはっは!気付いてなかったのかよ!」

冒険傭兵「お前が一言話す度に、ここにいたやつら…集まって来てたんだぜ」


剣士「…今、気付いた」

冒険傭兵「はぁはっはっは!なるほどな、俺らも黄金の卵……か」

剣士「……あぁ。」

 
冒険傭兵「…時代を代表するであろうパーティに、そう言われちゃ動かないワケにはいかねぇなあ!」

…ワァァアッ!!!

前線の冒険者たち「そうだな!」

前線の冒険者たち「お前らみたく、純金じゃなく金メッキかもしれねぇぞ!?いいのか!?」

前線の冒険者たち「…俺らだってやれるっつーところ、見せてやるしかないだろ!」


剣士「お…」

武道家「…俺らって、こんな尊敬される存在だったの?」

魔道士「少なくとも、あの情報を出したせいで余計有名になったのは確かだと思う…」

乙女格闘家「…恥ずかしい」


冒険傭兵「…剣士!」

剣士「あん?」

 
冒険傭兵「…お前は別の場所でも、その志を伝え、士気を高めるんだろ!」

冒険傭兵「俺らはもう大丈夫だ。お前の意思、充分に伝わった」

冒険傭兵「…任せてくれ!」


剣士「…わかった」ニカッ

冒険傭兵「さぁ…世界にお前らの実力を見せてやれよ!」

剣士「おうよっ!」


………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・

 
……それから1週間。

世界は黄金パーティの復活により冒険者たちは士気を大きく高めた。


そして、剣聖少将のもとに攻撃に転じた人間側は、魔族を圧倒する勢いで戦った。


…『東方西方奪回戦』…


序盤、冒険者の立ち上がりもあってすべてが有利に進んでいたのだが、

ついにあの魔族たちが動き出す……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 夜 中央軍本部 】

…ガチャッ!!


中尉「剣聖少将殿、ご報告いたします!」

剣聖少将「…どうした」


中尉「現在、東方西方奪回戦にて戦闘は継続中!」

中尉「その他、大隊を含む中央軍各隊は魔族と有利に戦いを進めております…」

中尉「で、ですが……!」


剣聖少将「…ですが?」

 
中尉「西方前線にて先ほど、デュラハンと思われる魔族を確認!」

剣聖少将「…来たか」


…ガチャッ!!

少尉「ご報告いたします!」

剣聖少将「お前もどうした」

少尉「東方前線にて、竜族と思われる巨大なトカゲのような魔族を確認したと報告が!」

剣聖少将「…何体だ?」

少尉「現在の報告では、1体のみです!」

剣聖少将「…1体か」

少尉「い、いかがいたしましょうか!」

 
剣聖少将「…大丈夫だ、案ずるな。ある程度の戦力準備は整っている」

剣聖少将「中尉、少尉!各該当の魔族が出現した地区へ、準備させていた大隊を派遣!」

剣聖少将「前線に既に戦っている隊を交替させ、休息を取らせろ!」


中尉「はっ!」ビシッ!

少尉「はっ!」ビシッ!


ガチャッ…バタンッ……


剣聖少将(いよいよ、向こう側の四天王もお出ましってわけか)

剣聖少将(…言っちゃわりぃが、軍の四天王は話にならないほど弱いわけで)

剣聖少将(…)

剣聖少将(こうすると実力主義で…アイツらが四天王になるんだろうな)

 
剣聖少将(んーむ…)

剣聖少将(それにしても、魔族側のアイツらは"闇"にしか生きられないとか言ってたな)

剣聖少将(どこまで信憑性もあるかは知らないが、西方側も陽は落ちているはず)

剣聖少将(まさか、あいつらは陽に弱い…?)

剣聖少将(…)


剣聖少将(そういえば、竜族も霧に覆われた中にしか確認されていない……)

剣聖少将(一定以上の強さを持つ者が今まで出れなかったのは、霧の中にしか生きられなかったから…)

剣聖少将(今、今日という時まで塔の魔力が世界に浸透しなかったから?)

剣聖少将(ふむ……)

 
剣聖少将(…)

剣聖少将(…あっ!)

剣聖少将(……ま、まさかっ!)ハッ


剣聖少将(…わからん)フム


………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 西方側 前線 】


ゴォォ…パチパチッ……


剣士「な…なんじゃこりゃ……」

武道家「ひでぇ…!」

魔道士「よ、夜なのに一面焼けて…炎でまるで昼間みたいに…」

乙女格闘家「軍人さんたち、みんな倒れてるよ…」


剣士「前線で援護でも回ろうと来てみれば…」

剣士「一体何があったっつーんだ…。生きてる奴はいないのか!?」

 
…モゾッ

剣士「!」

軍人「う…」

剣士「…おい!大丈夫か!」ダッ

ダダダダッ…バッ!

剣士「…しっかりしろ!」

軍人「ど、どなたでしょうか…」

剣士「…そんなことどうでもいい!おい、回復薬!」


魔道士「う、うんっ!」

ゴソゴソ…


軍人「いえ…。自分はもう……だめです…」

 
剣士「何言ってんだ、諦めんな!」

軍人「…痛みも…感じない……」ゴホッ

剣士「痛みも感じない?お前、それほどの傷……って!」

ドクッ…ドクッ……!


魔道士「…ッ!!」

武道家「な、なんだその傷っ…!」

乙女格闘家「こ、腰から下が……!」


剣士「な…何があった!?なんだこの傷は…!」


軍人「あ、あいつが……き……っ」

軍人「うっ…!」グリンッ

…ガクッ

 
剣士「…く、くそっ!」

武道家「…それは斬り傷か何かか?」


剣士「い、いや…。斬撃なら真横か一直線に切れるはず…」

剣士「どっちかっつーと…槍のような…」


…ズドォンッ!!


剣士「!?」

魔道士「何っ!?」

武道家「なんだ!」

乙女格闘家「何の音!」

 
ドォンッ…ドォンッ……


剣士「…この音は」

魔道士「な、何か…」

武道家「近づいているのか…?」

乙女格闘家「向こうから、何か……!」


剣士「…」

剣士「……み、見えた…が…!こいつは…!」


ドォンドォンドォンッ……ズザザザァ……!


???『……』コォォ

 
ォォォ……ォォ………!!


剣士「…っ!」

魔道士「な…」

武道家「…なんだよコイツ!」

乙女格闘家「み、見た事ない…魔族……!」

 
デュラハン『…我輩はデュラハン。貴様らは…冒険者の一行か何かか』


剣士「首無しの…騎士…か」

魔道士「も、もうどんなのが現れても驚かないね…」

武道家「はは…強そうじゃねえか」

乙女格闘家「…っ」


デュラハン『…』

ォォォ…ォォ……


剣士「こいつ…似ている……」ゾワッ!

デュラハン『ほう、我輩に似ている者が?』

剣士「…お前、竜族の何かなのか。その…実力は分かるぞ……」

デュラハン『ほう!バジリスクとバハムートを知っているのか』

剣士「あいつら…そういう名前なのか…!」

 
デュラハン『…我らが魔族軍を率いる、4体のマスターのうちの一体よ』

剣士「…!」


デュラハン『ふむ…。貴様らも相当なやり手と見える。落ち着いているな…』


剣士「こういう場面は…既に体験していてね」

魔道士「…」

武道家「…」

乙女格闘家「…」


デュラハン『貴様ら全員、実力があるな。面白い……』チャキッ


剣士「…やはり、やるか」チャキッ

魔道士「…」スッ

武道家「…」スチャッ

乙女格闘家「…」スチャッ

 
…サァァッ……
 

デュラハン『くく、いいぞ…。かかってくるがいい……!』

剣士「…行くぞっ!」

ダッ……!


デュラハン『…』

デュラハン『…』ピクッ

デュラハン『むっ…待て…!』バッ


剣士「どうした、臆したか!」

デュラハン『違う…この音……』

剣士「…音だ?」

 
ァァ……ァァァァ………!!!


剣士「…何か、聞こえる」

武道家「音…?」

乙女格闘家「お、音っていうか…声っぽいよーな……」


魔道士「…あっ!」ハッ

魔道士「け、剣士!みんな!後ろ見てっ!」


剣士「あぁ?」クルッ

 
…アァァァァッ!!!!
 
大隊長『…目標、デュラハンを確認!全員、武器を構え!!』

大隊軍人たち「了解!!」

ババババッ!!パァァッ!!


剣士「なっ…なんだぁ!?」

魔道士「もしかして、剣士のお父さんが準備させたのかも…?」

武道家「なるほど、次から次への行動が早いわけだ…。撤退も作戦のうちだったんだな…」

乙女格闘家「あ、あんな人数を用意するほどの相手なんだ……」

 
デュラハン『…あのような者達が群がった所で、我輩をどうにか出来るわけではないのだがな』

デュラハン『いたしかたない……』クルッ


剣士「…おい、逃げるのか!」

 
デュラハン『…興がそがれただけよ。貴様らとは、邪魔の入らぬ戦いを望む』

デュラハン『…』

デュラハン『…ふっ…くく…』


剣士「何を笑う!」


デュラハン『あの者…槍士大将と言ったか。同じように別れ、再戦を望んでいた』

デュラハン『だが、あの者には我輩と再戦する技量はなかったようだ』

デュラハン『くはは…!』

デュラハン『貴様らはどうか…。我輩と再び一戦交えるというのなら、この先の塔で待とう!』


剣士「…何っ!」


デュラハン『…さらばだ!』


剣士「ま、待て!その前に、聞かせてくれ!」

 
デュラハン『…何だ』

剣士「お前と竜族…。どちらが強い?」


デュラハン『…』 
 
デュラハン『吾輩……』


剣士「!」


デュラハン『…と言いたいところだが、あやつらは更に強いだろう』


剣士「…っ!」


デュラハン『…なるほど。バジリスクとバハムートに何か思いがあるか』

デュラハン『あやつらは強いぞ…。我輩に勝てぬようでは、到底追いつくことなど出来ぬ!』

 
剣士「…お前を倒せば、いいんだな」

デュラハン『ふはははっ!楽しみにしておくぞ!』クルッ

ドォンッ…ドォンドォンドォンッ………

…………
………



剣士「…っ」

魔道士「剣士…」

剣士「…面白いじゃねぇかよ…。倒してやるよ……」


武道家「…この先にある塔ってことは、その魔力の塔ってやつか」

剣士「いいぜ、待ってくれてるなら…挑むだけだ」

武道家「…そうだな」

 
ガヤガヤ……!!


剣士「ん…」


ザワザワ…

軍人たち「…あれは冒険者か?」

軍人たち「なぜこんなところに……」

軍人たち「あいつの周り…!仲間が大勢倒れている…。ど、どうなってるんだ…?」

軍人たち「まさか、あそこにいる冒険者どもは…魔族…!?」


剣士「…」

武道家「…何か、あまりよろしくない感じだな」

魔道士「まぁ…こんな状況じゃね…」

乙女格闘家「話、聞いてくれるかなぁ…」

 
…チャキッ


大隊長「おい、その恰好…冒険者だな」

剣士「そういうアンタは、軍人…大隊長ってところか?」


大隊長「よもや、この惨劇…貴様も加担したのではないだろうな」

大隊長「それとも何か、貴様は魔族の仲間か」


武道家「お、おい!ちょっと待ってくれ!」

乙女格闘家「私たちは……!」

魔道士「ま、待って二人とも……」スッ

 
剣士「…」


大隊長「…黙っていては分からないぞ?」

大隊長「この場所は並大抵の実力では近づくことすら困難な戦いの最前線」

大隊超「ココへ立つ冒険者など、魔族かも分からぬ。素性が分からねば斬ることになるぞ」


剣士「…」

大隊長「…」

剣士「…」

大隊長「…」

剣士「…」

 
大隊長「…敵と見なす。我々はデュラハンを討伐せねばならない指示があるのでな」チャキッ

剣士「…お前らにゃ無理だ」

大隊長「何?」


剣士「…戻って親父に伝えろ。西のデュラハンは俺らがぶっ倒して来るってな!」

…ダッ!


大隊長「…おいっ!待て!!」


魔道士「す、すみません。彼、剣聖少将の息子なんです」ダッ!

武道家「それと、俺らはただの冒険者じゃないからな!」ダッ

乙女格闘家「えへへっ!黄金の卵ってのは私たちのことだからっ!」ダッ

ダダダダダッ……

………
……

>>551
大隊超・・・?

 
大隊長「…」

大隊長「…剣聖少将殿の息子…!?」

大隊長「そ、それに黄金の卵だと…」


副隊長「だ、大隊長。確かに、話は聞いております」

大隊長「それは知っているが……」

副隊長「い、いかがいたしましょうか」

大隊長「…一度、剣聖少将殿に報告しよう」


………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央軍本部 】


大隊長「…というわけで、一部を除き準備していた隊は帰還を…」

剣聖少将「…」

大隊長「…」


剣聖少将「…」ブルッ


大隊長(怒ってらっしゃる!?)

大隊長「…も、申し訳ございません!勝手な判断で…!」

 
剣聖少将「ぶ…」

剣聖少将「ぶわーっはっはっはっはっ!」


大隊長「…は」


剣聖少将「あ、あのバカ…!軍の支援もなしに前線にあのパーティで突っ込んだのか!」ハハハ!

剣聖少将「俺の息子ながら、本当にバカだと思うぜ!」


大隊長「は、はぁ……」


剣聖少将「ま、話によるとデュラハンってやつは妙な奴っつってたし…」

剣聖少将「本当に戦いを望むなら、サシでやってくれるかもしれん」

 
大隊長「…いいんですか?」

大隊長「今の塔の前、星降町は魔族の巣窟となっています」

大隊長「あの周辺は休まる場所もないですし、たった4人では…」


剣聖少将「…今のあいつらを甘くみるな」

大隊長「は…」

剣聖少将「よっぽどな覚悟と、地獄を見たんだろうな…」

大隊長「どういうことでしょうか」

剣聖少将「…どうしようもねぇバカだが、一級品のバカってことさ」

大隊長「はぁ…?」

 
剣聖少将(ったく…仕方ねぇやつだ)

剣聖少将(ま、お前がそう望むなら、それでいい)

剣聖少将(だが…。お前がそう言った以上、その結果…出せよ)


………
……

本日はここまでです。有難うございました。

>>553 ご指摘、有難うございます。
>>551 大隊超「ココへ立つ冒険者などー…」→大隊長

有難うございます。投下致します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 星 降 町 】


剣士「どけコラァ!!」

…ズバズバァンッ!!!ドゴォンッ!!


ゴブリン兵『…ッ!』

オーク兵『な…っ』


武道家「…どうした?」

乙女格闘家「やっちゃうよ!」

魔道士「今度は、足手まといになんかならない…!」パァァッ

 
ゴブリン兵『グッ…!まサか4人如きで…!』

オーク兵『応援を呼べ!こいつら、予想以上に強いぞ!』


剣士「…別に全滅もさせることもできるが、今の俺は塔に用事があるんだ!」

オーク兵『塔だと…?今更、破壊したところでどうにもならんぞ!』

剣士「…違う。デュラハンってやつに用事があるんだよ!」

オーク兵『で、デュラハン様!?』


剣士「へぇ、デュラハン様…か」

剣士「あいつが言ってた、魔族を率いるマスターの地位ってのはあながち嘘じゃねえんだな」


オーク兵『…ココを通すわけにはいかぬ!』シャキンッ

剣士「…いいぜ。死にたければかかってこい!」チャキッ

 
オーク兵『ぬおおぉっ……!』ダッ

???『まぁ…待てや……』

…ガシッ!!

オーク兵『ぬぐっ!?』


剣士「!」

魔道士「!」

武道家「何だっ!」

乙女格闘家「うわっ…でっか……」


オーク兵『あ…!お、オーガ様!』

オーガ『さっきからうるせぇぞ…。なんだぁお前ら……』

 
剣士「で、でけぇっ…!」


ゴォォォ……ォォ……


オーガ『人間が、こんな場所までなぁ……』

剣士「…何言ってやがる。お前らが俺らの世界へ来たんだろうが!」

オーガ『あぁ…知らん知らん』

剣士「この…!」

オーガ『…あんまりお前らに暴れられると、ちぃと面倒なんでな』グググッ

剣士「!」


オーガ『…死んでおけっ!!』グワッ!!

ゴッ…ゴォォォォォッ!!!

 
武道家「…素手で真空波を生んだのか!」

魔道士「剣士!」

乙女格闘家「ど、どうするのっ!?」


剣士「まぁ…大丈夫だろ」

…グググッ

剣士「おらぁっ!」ブォンッ!!!


ゴッ…ゴォォォォッ!!!…ドゴォンッ!!!…

グラグラ……


オーガ『…!』

剣士「…何だ、この程度で相殺かよ」

 
オーク兵『お、オーガ様の攻撃を…』

オーガ『ちぃとばっかし…やれるやつみたいだな……』


剣士「…この町を守ってる親方さんは、オメーなんだな?」

オーガ『…』

剣士「…なら、お前を斬れば他の奴も大人しくなるか。相手にすらならねーだろうが」

…チャキッ


オーガ『…』イラッ

オーガ『…やってみろォ!下等な人間がァッ!!!』


………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

オーガ『つ…強すぎ…る……』

ズッ…ズドォォンッ……


剣士「…言っただろ。相手になんかなんねーんだよ」

武道家「ふっ…」

魔道士「す、すごい…」

乙女格闘家「剣士…。見ない間に、また強くなってる…」

 
剣士「…大人しく、ここを通せ!切り刻まれたい奴は、前に出ろ!」


…ザワッ……

オーク兵『…っ』

ゴブリン兵『お、俺タちじゃ…勝テねェよ……』


剣士「じゃ、通るぞ。行こうぜ、みんな」クルッ

魔道士「うんっ」

武道家「おうっ」

乙女格闘家「剣士、やるー!」


…………
………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 西方 魔力の塔 】

ォォォ…オォォォ……ォォ…


剣士「ここが魔力の塔ってやつ……」


魔道士「夜で周りが暗かったし、塔からの明かりが見えてて良かったね」

魔道士「…」ブルッ


剣士「…」

武道家「山の中じゃ、すげぇ目立ってたしな」

乙女格闘家「…ここに、さっきのデュラハンってやつがいるんだ」


剣士「…」

 
…ザッ!!

門番魔族『…』


剣士「…やはり、簡単には通さないか」チャキッ


門番魔族『…貴様、剣士カ』

剣士「…俺の名を?」

門番魔族『…ソウカ。コノ塔ノ頂上デ、デュラハン様ガ待ッテイル…』スッ

剣士「!」

門番魔族『…通レ』


剣士「…そんな簡単に通していいのかよ」

門番魔族『デュラハン様ノ命令ダ』

 
武道家「…おいおい、随分と物分かりがいい魔族さんだな」

剣士「罠か…?」

魔道士「でも、どっちみち、上らないといけないんでしょ…?」

乙女格闘家「どうするの…?」


門番魔族『…俺ハ通セト言ワレテイルダケダ。敵対スルツモリハナイ』


剣士「…」

剣士「…おい」


門番魔族『…何ダ』

剣士「お前は、人を殺したことはあるか。この戦争に、参加したのか?」

 
門番魔族『ア?ソレハ当然ダロウ。人間ドモナゾ、タヤスイモノ……』

ブンッ!!…ザシュウッ!!!バスッ!!

門番魔族『ア゛……?』

ズルッ…ドシャアッ……


剣士「…なら、死んでおけ」

武道家「…」

魔道士「…」

乙女格闘家「…」

 
剣士「…町では少し我慢してたが、やっぱりココにいる奴だけは許せねぇんだよ…」


武道家「…あ」ハッ

武道家「そうか。ここは、あの大戦士さんの……」


剣士「…そう。ちっとばかし我慢してたが、やっぱ無理だ」ギリッ

武道家「…」

剣士「それに、魔道士も閉じ込められていた場所…。何があっても許したくねぇ」

武道家「あぁ…」


魔道士「…」ブルッ

剣士「…魔道士」

ソッ…ギュウッ

 
魔道士「!」

剣士「…今度は守る」

魔道士「け、剣士……」

剣士「…約束する」

魔道士「…うん」


剣士(…怯えさせてゴメンな…。また、嫌な思いをさせるようで……)


魔道士「…うん。本当は怖かったの。ここへ戻るのは…ちょっと嫌だった」

剣士「!」

魔道士「でえへへ…でもね。こうしてくれたら、震えも止まっちゃった」

剣士「ふっ…」

 
乙女格闘家「…」

乙女格闘家「…武道家、私も震えが」ガタガタガタ


武道家「地震かな?」

乙女格闘家「…」

…ゲシッ!!ゲシッ!!

武道家「あだっ!あだだだっ!お前、病人になんてことを!」


剣士「…はは」

魔道士「…」クスッ

 
武道家「…ったく。そんじゃまぁ…上りますか」コキコキッ

剣士「たっけぇなぁ…」


ォォォ…ォォ……!!


魔道士「…中には、魔族が沢山いるのかな」

剣士「…まぁ、襲ってきたら俺が全部倒してやるけどな!」

武道家「何を言う、俺が全部倒してやるぜ」

剣士「…無理すんじゃねーぞ」

武道家「無理なんかしてねーよ。なんなら、ここでお前を吹き飛ばすのも容易いぜ…?」

 
剣士「はっはっは、病み上がり武術で俺を倒せるとでも」

武道家「あぁ?てめぇなんざ、その武術以下で倒せるっつーの」


剣士「…」

武道家「…」


剣士「…あぁん!?」

武道家「…おぉっ!?」
 
武道家「病み上がりにバカにされりゃ意味ねーな、バーカ!」

剣士「おめーがバカだろうが、バカ野郎が!」

ギャーギャー!!!

 
魔道士「…はぁ」

乙女格闘家「あはは、二人らしいね」

魔道士「…まぁ、ちょっとこれを見れて安心したけどね」

乙女格闘家「うんっ」


魔道士「でもね…」スゥゥ

魔道士「…いい加減にしなさい!二人とも!!」


剣士「ひえっ!」

武道家「は、はいっ!」


魔道士「…うん、素直でよろしい!」

 
剣士「…全く武道家のせいでよ!んじゃ、さっさと行くぞ!遅れんなよ!」

武道家「分かってるっつーの!うるせぇぞ、お前こそ!」

魔道士「はいはい。行くよ!」

乙女格闘家「しゅっぱーつ!」


…………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 塔の内部 】


魔族兵たち『…』ジロッ

魔族兵たち『…』ヒソヒソ

魔像兵たち『…』ボソボソ


カツ…カツ…カツ……


剣士「…」

 
魔道士「な…なんか…嫌な感じ」

武道家「不思議な感じだな…。今まで戦ってただけに、こんな傍観されてると…」

乙女格闘家「怖い…」


剣士「…気味が悪い」

剣士「意気揚々と戦うつもりで飛び込んだのに、襲いかかってこねーのかよ」

剣士「門番の言ってた、デュラハンが俺らを待ってると言ったのは本当みてぇだな…」


魔道士「…あのデュラハンって魔族、他のとなんか違うよね」

剣士「強いのはヒシヒシと感じるが、自分の道を貫き通してる感じだ」

魔道士「槍士大将との再戦も望んでたのに出来なかったって、少し悔やんでたよ」

剣士「中には、ちょっとマシなやつがいるっつーことか……」

 
…ナデッ…サワサワッ

魔道士「…きゃああっ!?」

剣士「!?」


魔族兵『うへっ…。クソ人間共が、デュラハン様の命令じゃなければヤっちまってるのによ』


剣士「…てめぇ」

魔族兵『へっへっへ!』

剣士「…殺すぞ」

魔族兵『なーにが殺すだ、ガキが!命令さえなけりゃ、お前らなんか一瞬であの世だっての!』

剣士「…」

 
魔族兵『…何かの間違いだろ、デュラハン様がこんな奴らを招待してるなんてよ!』

魔族兵『人間の女ってのも、悪くないんだぜ…。どうだ?置いて行けよ!』


剣士「…」

武道家「…」

魔道士「…っ」

乙女格闘家「…」


魔族兵『聞こえてないのか?聞こえてないふりなのか?』

魔族兵『それともビビっちゃって漏らしちゃったかな…?くくく…!』


剣士「…」チャキッ


魔族兵『…お?やるのか?そんな勇気もねーくせに、はっはっは!』

 
…ヒュッ!

バスバスッ!!!

魔族兵『…へ?』

…ドシャアッ……


剣士「…俺らは、お前らを殺すなとはそのデュラハン様には言われてないんだぜ」

武道家「ま、そうだな」ハハハ


…ザワッ!!!

魔族兵たち『てめぇ……っ!』チャキッ

魔族兵たち『ヨクも同胞ヲ…!』シャキンッ

魔族兵たち『だ、ダケド待て!デュラハン様の命令ガ…!』バッ

 
剣士「おぉ怖い。俺らと戦う気か?」

剣士「"そんな勇気もねーくせに、はっはっは!"」

剣士「……なんてな」ニヤッ


魔族兵たち『…ッ』ブチッ

魔族兵たち『……殺すっ!!!』ババババッ!!


魔道士「…そうなると思ってた!」パァァッ

武道家「はっはっは、面白いことしやがる!」スチャッ

乙女格闘家「…まぁ、分かってた!」バッ!


剣士「…最初から素通りする気なんざなかったっつーの」


…………
………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 数十分後 最上階 】

…バゴォンッ!!パラパラッ…

魔族兵『ガアアッ!』

ズザザァ……!!ビュオッ…ザシュッ…!

魔族兵『ア゛グッ…!」

ドシャアッ……


カツ…カツ…カツ…スチャッ!


剣士「…」

武道家「…」

魔道士「…」

乙女格闘家「…」

 
『…ほう。ココまで来れたか』ボソッ


剣士「待たせたな…デュラハン!」バッ!!

デュラハン『…吾輩の部下達を、こうも簡単にな』

ォォォ……ッ!!


武道家「くっ…!」

乙女格闘家「や、やっぱり凄い威圧感……!」

魔道士「…っ」


剣士「…約束通り、ここまできてやったぜ」

剣士「軍の人間もココへは来ない。これで邪魔は入らないはずだ」


デュラハン『…嬉しいぞ』

 
剣士「あん?」

デュラハン『…人間界で実力の有る者と万全にて対峙できること。戦いを出来ることが嬉しく思う』

剣士「…なんだかな、変な気分だ」

デュラハン『…どうした』

剣士「竜族にしろ、アンタにしろ、どうも上の魔族ってやつは話し方もマナーもあるようだ」

デュラハン『…ふむ』


剣士「アンタらは、人間界を侵攻して何をしようとしてるんだ」

剣士「…俺らの仲間も、軍人も、市民も、今回のことで大きな傷を負った」

剣士「それは魔族たちも一緒のはず。そこまでのメリットはないはずだ」


デュラハン『…吾輩は、主に着いてきただけよ」

デュラハン『貴様は、上の者に着いてこいと言われたら嫌だというのか』

 
剣士「ふむ、なるほど。確かに一理ある」

剣士「…だが、それはちょっと俺には共感できん」チャキッ


デュラハン『…』


剣士「残念ながら、俺は上の者もいなけりゃ下の者もいない、自由な人間なんだよっ!!」

…ブォンッ!!!

デュラハン『…嫌いではない!』バッ!!

…ガキィインッ!!!


剣士「…ふんぬっ!」グググッ!

デュラハン『…ぬぐっ!』グググッ!

 
…ババッ!クルクルクル…ズザザァ…

剣士「…一旦、距離を置かせてもらう!」

デュラハン『後退…早い!』

剣士「先ずは、馬からやらせてもらうか!」ググッ

デュラハン『コシュタバワー!』

コシュタバワー『…ッ!』

…ドォンッ…ドォンドォンドォンッ!!!


剣士「いっ!?早っ!」


コシュタバワー『…ッ』

タァンッ……!グワッ!!ヒュオオオオオッ!!

剣士「おい、馬の圧し掛かり攻撃なんて有りかー…!」

 
魔道士「…剣士っ!」


剣士「…大丈夫さ」

剣士「うぉらあああっ!!!」


ビュッ…ブォォォンッ!!!


デュラハン『!』

コシュタバワー『!』


ガキッ…バキャアンッ!!!


コシュタバワー『…ッ!!』ビキビキッ

 
デュラハン『…なっ!コシュタバワー毎、吾輩をふきとば…』

…ズドォンッ!!パラパラ……


剣士「…どうだ!」


武道家「……あいつ、あのでっけぇ馬を鎧騎士ごと壁に叩きつけやがった」

乙女格闘家「馬鹿力もここまでくると…」


剣士「…聞こえてるんだよ、コラァ!」

剣士「…」

剣士「…!」ハッ

 
モクモク……

…ムクッ

デュラハン『…』

デュラハン『…やるではないか。コシュタバワーから落とされたのは久々だ』


剣士「…無傷か」

デュラハン『吾輩の鎧は、貴様程度の攻撃では傷一つ付かぬ』

剣士「くそっ…厄介なもん着込みやがって」

デュラハン『では…こちらから行くぞ!はぁっ!』


…グオッ!!!


剣士「や、槍が伸び…!」

…ザシュウッ!!

 
ズザザザァ…ドシャアッ!


魔道士「け、剣士ぃっ!」

武道家「は、早すぎて槍の攻撃が見えなかった!」

乙女格闘家「あんなの有り!?」


…ムクッ

剣士「く、くそっ…!ぎりぎりで防げた!危ねぇ…っ!」

デュラハン『…』

剣士「その真っ黒な槍…伸びるのかよ…!」

デュラハン『…我輩の影の槍は、変幻自在。その身体を自在に貫こうぞ』

剣士「…面白い。いいぜ、もっかいやってみろ」クイッ

 
デュラハン『…そう来なくては!はぁっ!』

…グォッッ!!!


剣士「…」

剣士「…見える!」バッ!

…ガシィッ!!

デュラハン『…槍を掴まえただと!』

剣士「武器を掴まえれば…」

デュラハン『ふ…』

…ギュウゥゥンッ!!

剣士「げっ!!」

デュラハン『…少し、考えが足りなかったな』

 
剣士「やっべ……!引き寄せられ……!」

ギュウウウウンッ…!!!

デュラハン『…踏みつけられるがいいッ!!』

グオッ…ズドォンッ!!!!

剣士「…ッ!!」ビキビキッ


武道家「ひ、引き戻した槍についた剣士を、踏みつけやがった!」

魔道士「…っ!!」

乙女格闘家「い、今…頭をつぶし……!」


デュラハン『…終わりか。頭を潰せば、貴様ら人間は生きていられまい』

デュラハン『…』

デュラハン『…むっ』ピクッ

 
剣士「あ…!あぶねぇ……!」


シュウウッ……


デュラハン『…寸前で、我が踏みつけを避けていたか』

剣士「…魚じゃねーんだぞ俺は!釣りみてぇなことしやがって……!」

デュラハン『…吾輩の下に転んだ状態で、剣も振えないようだが…どうする?』

剣士「…」

デュラハン『…次は避けられぬ!』ググッ…!!


剣士「…小火炎魔法っ!!」パァッ

…ボォンッ!!

デュラハン『むおっ!』

 
魔道士「…剣士!」

武道家「あの野郎…。かなり戦い慣れしてやがる…」

乙女格闘家「どんな修羅場くぐって来たんだろうね…」


タンタンッ…ズザザァ……!

剣士「へへっ、これで振出しだな」

デュラハン『…初期位置に戻ったところで、吾輩の槍には勝てぬ』スチャッ

剣士「…ちょい待ち!」

デュラハン『…何だ』

剣士「…この塔は、どれだけで壊れる?」

デュラハン『…黒魔石によって造られた塔だ。そう簡単に崩れはせぬ』

 
剣士「…なるほど。確かに、あの馬やアンタが踏みつけても軽くヒビが入っただけだったからな」

デュラハン『それがどうした』

剣士「…だが、壊れるかもしれねーぞ」

デュラハン『…ほう』


剣士「…」

剣士「…」スゥゥゥ

剣士「…っしゃああぁぁっ!!」

剣士「いっー…!」グググッ!


デュラハン『気合溜めか…!良かろう!来い!』

剣士「せーっ……!!」グググッ

デュラハン『…』スゥゥ

剣士「のぉぉぉ……!」ググググッ!

 
デュラハン『…ふんっ!!!』

…グォッ!!!グォォォォオッ!!!

剣士「せぇぇいっ!!!!」

…ゴッ!!!ゴォォォォオッ!!!


……ズッ、ズドオオォォォォオオオンッ!!!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 塔の外 】

…ドゴォォォンッ!!!

パラパラ…!!

魔族兵たち『…と、塔の上部が崩れた!?』

魔族兵たち『で、デュラハン様の場所だなんだ!?』

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 
グラグラグラッ……!!モクモク…


魔道士「ごほっ…!け、剣士は…!」

武道家「げほっ、げほげほっ!あのバカ…本当に塔ごと壊しやがった…!」

乙女格闘家「ど、どうなったの…!」


モクモクモク……サァァッ…


魔道士「…」

魔道士「あっ……!」

 
剣士「…」

デュラハン『…』

剣士「…」

デュラハン『…』


剣士「…これで、どうだ」

デュラハン『…』

ビキッ…ビキビキビキッ……パキャアンッ…!!

デュラハン『我輩の槍と鎧を……』


剣士「…その鎧は相当な代物だったみたいだが、次の一撃は受け止められないだろう」

デュラハン『…』

剣士「…どうする」

 
デュラハン『…』

デュラハン『この槍と鎧は、己が力を具現化したもの』

デュラハン『…鎧を砕かれ、槍を失った時点で、どう戦おうというのか』


剣士「…」


デュラハン『…己の負けを認めよう』

剣士「…」

デュラハン『…この命、自由にするがいい』バッ

剣士「…いいのか?」

デュラハン『二言は無い』

 
武道家「け、剣士の勝ち…なのか」

魔道士「やった…の?」

乙女格闘家「た、多分…」


デュラハン『…吾輩に負けという言葉をこれ以上言わせたいのか?若き冒険者たちよ』


武道家「お…!」

乙女格闘家「や、やったぁぁ!!」

魔道士「剣士…さすが!」

剣士「…っしゃあ!!」


…………
………

本日はここまでです。有難うございました。

お疲れ様
デュラハン『…この命、自由にするがいい』バッ
剣士「…いいのか?」
このやり取りはまさか…っ

皆さま有難うございます。
なるほど、その考えが…ッ。

それでは、投下いたします。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

剣士「…早々と命は取らない」

デュラハン『…』

剣士「お前には、色々と教えてほしいことがあるからな」

デュラハン『…敗北者に拒否する権限等はない。知っていることを教えよう』


剣士「…」

剣士「…アンタの主って呼ぶ奴は何者なんだ」

 
デュラハン『…我輩たちの棲む、魔界を統一する絶対王だ』

剣士「…強いのか」

デュラハン『…強い』

剣士「ま、そりゃそうか。強くなったら、アンタみたいなのは従わないもんな」

デュラハン『…』


剣士「…ちょっとそれと気になったことがある」

デュラハン『申してみよ』

剣士「お前さ、首ないじゃん。殺せって言ったけど、首なかったら殺せねーだろ…。心臓とかあんの?」

デュラハン『…ふむ、そのことも知りはしなかったのか』

剣士「…こっちとしては、情報はそこまで持ってないんだ」

 
デュラハン『…魔族には、2つの種類がある』

剣士「2つの種類?」


デュラハン『オークやゴブリンなど、貴様ら人間と同じく、その数と性を受け種族として繁栄するもの』

デュラハン『我輩のような、その個体でその種族とするものだ』


剣士「…個体で種族って、お前一体しかいないってことか」


デュラハン『そうだな。それでお前たちの言う、命を削る行為は…基本的に他種族にしか通じない』

デュラハン『我輩のような個体種族は特別でな、正確に"命を奪う"ということは出来ないのだ』


剣士「は!?…ってことは、死なないのか!?」

デュラハン「…死ぬのではない。消滅する」

剣士「…一緒じゃねえかよ!」

デュラハン『違う。そうだな…。簡単にいえば…封印のようなもの』

 
剣士「ふ、封印だと?」

デュラハン『我輩を含め、その個体魔族は、転生術というものを持っている』

剣士「…」

デュラハン『いくら身体が崩れようとも、魔力を有する限り、いつかこの身体は戻るのだ』

剣士「…何だよそれ。じゃあ、幾ら倒しても意味ないっつーのか」


デュラハン『だが、崩れ去った身体を戻すには膨大な時間を要する』

デュラハン『故に封印のようなものということだ』

デュラハン『…何かのきっかけで戻ることもあるかもしれぬが』


剣士「…おい!それじゃココでお前らを倒したところで…」

デュラハン『…意味のないことかもしれぬ』

剣士「…っ!」

デュラハン『…』

 
武道家「…じ、じゃあ…俺からも一つ聞きたい。その個体種族は…お前の他にどれだけいるんだ?」
 
デュラハン『…個体種族は吾輩、バンシィ、他には数体ほどいるな』

武道家「…ってことは、竜族もか」

デュラハン『いや、あやつらは違う。種族として、ゴブリンたちと同様の繁栄種族だ』


武道家「…」

武道家「…はっ!?」


剣士「…は?」

魔道士「えっ…!?」

乙女格闘家「り、竜族が繁栄種族っ!?」


デュラハン『あぁ。首を落とせば死ぬし、心臓もある』

デュラハン『だが、あの皮膚は硬く、その実力も魔界では主に次いで強くー……』

 
剣士「ま…待ってくれ。あんなのが、ゴブリンやオークのように…沢山いるのか!?」

デュラハン『…いるぞ』

剣士「う、ウソだろ?」

デュラハン『我輩はこのような状況で、嘘は言わぬ』

剣士「り、竜族が…。な、なんだよそれ……」

デュラハン『…』

剣士「か、勝てるわけねぇじゃねえか……。に、人間が……!!」


デュラハン『…なるほど。そういう意味なら、少し違う』

剣士「…何?」

デュラハン『あいつらはな……』

 
ビュオッ……ドシュッ!!!


デュラハン『…がっ!?』ビクッ!


剣士「!」

魔道士「!」

武道家「!」

乙女格闘家「!」


デュラハン『がはっ…!こ、これ…は……』ブルッ

ドクッ…ドクッ……


剣士「お、おい…何か刺さって……!」

 
…ザッ…ヒュウウッ……


武道家「…待て、剣士!お前の壊した壁から、だれか入って来てるみたいだぞ!」

剣士「何っ!?」バッ


???『冒険家諸君。個体種族を倒すには、何通りかあるのだがー…』

???『そのうちの1つ、こちら側での最も簡単な方法は…』

???『彼らの身体に、この黒魔石の1つも刺せば、魔力を奪い取り、その身体は消滅する』

???『…黒魔石で出来た傷から、その個体の魔力は吸収され、封印されるのだ』

???『封印が解除されるのは、普通、君たちの寿命ではよっぽどの限りがないと有り得ない。安心するといい」


剣士「…だ、誰だ!」


デュラハン『…あ、主っ!!』


剣士「ッ!?」

 
カツ…カツ…カツ……
 
アリオク『…私の名前は、アリオク』

アリオク『恥ずかしながら、そこの役立たずの主ってやつだ』ニコッ


剣士「…ッ!!」ゾクゾクッ!!

魔道士「あ…!」フラッ

武道家「なっ…!」ビリビリッ!

乙女格闘家「…っ!」フラフラ


デュラハン『…あ、主……!』

ドクンドクン……ポタッ、ポタッ…


アリオク『…その恰好、辛いだろう』

 
デュラハン『…!』

アリオク『…今、楽にしてやろう』

ビュッ…ズバズバズバァンッ……!!

ボトボトッ…!ドシャアッ…!


剣士「…なっ!」

魔道士「…っ」

武道家「デュラハンを簡単に…!」

乙女格闘家「…!」

 
アリオク『ご苦労だったな、デュラハン。しばしの休みをとるといい』

アリオク『…』

アリオク『…さて』ギロッ


剣士「!」


アリオク『…まさか、デュラハンを討ったのが…ただの冒険者だったとは』

アリオク『その実力、評価に値しよう』


剣士「…あ、ありがとよ」

アリオク『…』

剣士「…」

 
アリオク『…くくっ。さっきまでの話の中で、面白いことを一つ教えよう』

剣士「な、なんだ」

アリオク『…私は、個体種族だが…個体種族ではない』

剣士「…?」

アリオク『つまり、頭を落とせば死ぬし…心臓と呼ばれる部分もある』

剣士「!」


アリオク『…私を1度殺せば、他の個体種族のように復帰することはなくなる』

アリオク『それに、私を倒せばこの戦争…終えるのも容易になろう』


剣士「…そんな情報を、いいのかよ」

アリオク『いいさ。この世界で、俺に敵う人間は…いない』ニヤッ

剣士「…べらべらとしゃべるんだな」

 
アリオク『強い者は嫌いじゃないのでね』

剣士「…っ!」


アリオク『…軍のトップを落としたつもりだったが、まだその根本は残っていたようだ』

アリオク『だが、そちらのほうが私としても面白い』

アリオク『…はははっ』クルッ


剣士「…ど、どこへ行く!」

アリオク『…私にはやるべきことがまだあるのでね』

剣士「…俺らを見逃すって言いたいのか」

アリオク『君では、私の足元にも及ばない』

 
剣士「…こ、この野郎…!やってみなければ!」バッ!

魔道士「ま、待って!」

…ガシッ!

剣士「!」

魔道士「ダメ…。剣士、ダメ……!」ギュウッ!

剣士「…っ!」


アリオク『…ほう』

アリオク『俺の前で、力に圧倒されずに動ける女は…二人目だ』


剣士「…!」

 
アリオク『…』

アリオク『…気に入った』ニタリ


剣士「!」


アリオク『その女、私の血を受け継ぐのに値する!』バッ!

…グイッ!

魔道士「っ!?」


アリオク『人間との混血の子…試すには一人でも多いほうがいい…!』

アリオク『それも、お前のような女…強き女なら猶更な…!』


魔道士「…っ!」ゾクッ

 
剣士「ま、魔道士っ!」

武道家「お、おいそれって!」

乙女格闘家「…魔道士ちゃんっ!」


アリオク『…くく!』

剣士「ま、待てっ!!」

アリオク『…お前程度では、どうにもならん。諦めておけ』


魔道士「い…嫌ぁぁっ!!剣士っ!!」


剣士「…ッ!!」

 
ドクンッ…

ドクン…ドクン……
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

魔道士「いけない、さっきの奴らが…!じゃあ、行くよ…」

魔道士「全員、衝撃に備えるようにくいしばってね!」パァァッ!!


剣士「…」

剣士「待て、よく考えたらお前、魔法を使うって…ゲートに触れないようにどうやって魔法を……」


魔道士「…」ニコッ

魔道士「極…火炎……」パァァァ!!

 
剣士「おい!!待てって!!」

武道家「ま、魔道士…?」

乙女格闘家「ち、ちょっと待って魔道士ちゃん!!」

 
魔道士(剣士……ごめんね……)

魔道士「魔法っっっ!!」


剣士「ま…魔道士ぃぃっ!」バッ!


ピカッ………!!

ズッ…ズドォォォォォォオンッ!!!!!



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ドクン…ドクン……!!

ドクンッ…!!

 
剣士(俺は…魔道士を…二度と目の前で失うことは…しないと決めた…)

剣士(そうだ…)

ドクン…ドクン……!

剣士(絶対に…。魔道士を…もう……!)

ドクンッ…!!

剣士(離さないっ!!!)


魔道士「剣士ぃぃっ!!」


剣士「…やらせるかよぉぉぉっ!!」ゴッ!!


アリオク『!』

 
パァァァアッ!!!!

剣士「ぬうううああああああっ!!」

パァァァァッ……!!!

武道家「け、剣士の大剣が光って…!!」

乙女格闘家「…な、何が!?」


アリオク『ぬぐっ…!?そ、その光…!その武器…!まさか!』


剣士「ああぁぁぁああ………っ!!!」スゥゥ


アリオク『魔族の血を打ち込んだ……!』

 
剣士「極……っっ!!!」


アリオク『…ッ!!』


剣士「………斬っっ!!!!」



………ヒュッ……!!!


アリオク『…ッ!!!』


………カッ……!!!!

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 魔力の塔の外 】


…ピカッ…!!!

バゴオオオォォォオオオンッ…!!


魔族兵A『こ、今度はなんだ!』

魔族兵B『また最上階のほうで…って!!」

魔族兵C『よ、避けろ!!!上から何か…!!』


グラッ…ズズッ………


ヒュオオオオオオッ…オォォォォオオオッ……!!


…ズドォォォォオオンッ!!!!!!!


パラパラ…

 
魔族兵A『な…何が……!』ハッ

魔族兵B『…って、あの方はまさか!?』


剣士「…ああああぁぁッ!!」ググッ!!

アリオク『…が、がはっ!』ブシャッ

剣士「…全ての元凶が、消え去りやがれぇぇっ!」

アリオク『わ、私をこんな…!!』ギリギリッ!


剣士「…情報を伝えたのは間違いだったな!その首…!」ググッ!!

剣士「これで…終わりだぁぁぁあっ!!!」


アリオク『!!』

…バスバスッ!!!ズバァンッ!!!!

ヒュオッ…ドシャアッ……!!ゴロゴロッ……

 
魔族兵A『あぁっ!!』


…ゴロンッ


剣士「…消え失せろっ!!」

剣士「はぁ…はぁっ……!」クラッ


ヒュオオオ…!!スタスタッ!

武道家「け、剣士!」

乙女格闘家「剣士!」


剣士「お、おう…。魔道士は……」


武道家「…無事だ。気絶してるが、傷はない」

魔道士「…」

 
剣士「よ…良かった……」フラッ

…ドサッ

武道家「剣士っ!」

剣士「だ、大丈夫だ…。ぜぇ…ぜぇっ……!」

武道家「…アリオクは!」

剣士「そ、そこに首が転がってる……!どうだぁぁあっ!!」


武道家「…!」

武道家「アリオクを倒したってことは…、これで…終わりなのか?」


剣士「!」

武道家「…こいつが魔族を率いてたということは…、それで終わりなんじゃ…ないのか」

 
剣士「…そうか!じゃあ、この戦争はもしかしてー…」


…終わりだと思うか、クソ人間共…


剣士「!?」

武道家「何っ!」クルッ

乙女格闘家「あ、アリオクの首が…!」


…ゴロンッ…フワッ…


アリオク『…"俺"の身体を、よくもまぁ…!』

 
剣士「く、首を刎ねて終わりじゃないのかよ!」

アリオク『そりゃあ…本体を刎ねればの話だろうがっ……!』

剣士「!」

アリオク『…俺の幻影とはいえ、よくも…やってくれた……!』

ゴ…ゴゴゴゴ……!!


剣士「げ、幻影!?まさか!」

アリオク『ク…クク…。許さんぞ貴様ら……!』

剣士「だ、大戦士兄が使ってた…エルフ族の魔法のやつか!」


アリオク『…遊んでやろうと思っていたが…』
 
アリオク『それとその大剣…。武器は厄介な代物…!』

アリオク『許さぬ…。絶対にな……!』

 
剣士「…っ!」チャキッ

武道家「くっ…!」スチャッ

乙女格闘家「…ッ」スチャッ


アリオク『遊ぶ時間は…終わりだ……!』

パァァッ…バシュウッ…!!!


剣士「…消えた!」

武道家「…本体に戻ったっつーことか」

剣士「あぁ…」

武道家「…まだ、終わってないのか…くそっ!!」

剣士「…っ」

 
…モゾッ

魔道士「あれ…私……」

剣士「!」

魔道士「あ…」

剣士「ま、魔道士っ!」ガバッ!

魔道士「けん…し…」

剣士「…良かった…。本当に良かった…」

魔道士「また…迷惑かけちゃった…ね…」


剣士「…そんなことない!大丈夫だ…気にするんじゃない…!」

…ギュウッ

魔道士「…っ」

 
剣士「…今度は、お前を守れて良かった…!」

魔道士「ごめんね…」

剣士「…いいんだ。いいんだ!」ギュウウッ

魔道士「…」グスッ


武道家「良かった…」

乙女格闘家「魔道士ちゃん……っ」


武道家「それにしてもアリオク……か」

剣士「…っ」ギリッ

 
乙女格闘家「…これから、どうするの?」

剣士「ん…」

乙女格闘家「一応、西側の魔力の塔の中心は撃破したってことになるんだよね?」

剣士「まぁ…」

乙女格闘家「それじゃ、次に私たちはどうすればいいんだろ?」

剣士「あー…」


武道家「西側の敵側の主力をぶっ殺したし、ある程度ここの戦場は落ち着くぜ?」

剣士「…次はどこにいくか」

武道家「南方は落ち着いてるし、北方側にゃそんな被害も効かない。どうする?」

 
剣士「このまま、西方側の魔族を殲滅するのに加わってもいいとは思う…」

剣士「……だけど正直、今回の事で向いたい場所が出来た」


武道家「どこだ?」


剣士「…祭壇町ッ」


武道家「!」

乙女格闘家「!」

魔道士「!」


剣士「…そこには、竜族がいるはずだ。あいつらを…この手で葬る…!」

 
武道家「…出来るのか」

剣士「今までの俺とは違う。もちろん…お前らもな」


武道家「…」

乙女格闘家「…」

魔道士「…」


剣士「東方側も、竜族を倒せば戦況は落ち着くし…奪回戦が楽になるはず」

剣士「俺の力で出来るならば、そうしよう…」


武道家「…」

武道家「…ま、俺らもお前が言うなら、着いていくに決まってるわな」

 
剣士「…何も言わないぞ」

武道家「当たり前だろうが」

乙女格闘家「…リベンジってやつだね」

剣士「…おうよ」


魔道士「…っ」

魔道士「で、でも剣士…!私、また…足を引っ張ったら……っ」


剣士「…」

…グイッ!!

魔道士「んっ…!」

 
剣士「…」

魔道士「…っ」





剣士「はっ…。だから、そう言うな…仲間だろ。俺の女だろ?大丈夫だって」ニカッ

魔道士「剣士…」

剣士「…な?」

魔道士「うん……」


 
乙女格闘家「…」

乙女格闘家「…」

乙女格闘家「武道家、私も足をひっ……」


…グイッ


乙女格闘家「!」

武道家「…」





武道家「…あーうるせぇうるせぇ!これでいいんだろ!」

乙女格闘家「…うにゃ」

武道家「…人前であんまりこういうことは俺は好きじゃねーんだけどな」ハァ

 
剣士「…うわぁ、見たか魔道士。人前でハシタナイ!」

武道家「…お前らもやってただろうが!」

剣士「さぁ、知らないなぁ」

武道家「この…!」

剣士「おっ、やるか!?」


魔道士「…」

魔道士「…二人とも」ニコッ


剣士「…申し訳ございませんでした」

武道家「すみませんでした」

 
乙女格闘家「えへへ…。いつもの光景、見れて安心♪」

魔道士「もうっ…」

剣士「…すまんて」

武道家「んじゃあ、まぁとりあえず…近場の西方支部にでも寄って休憩させてもらうか?」


剣士「そうだな。さすがの俺らもちょっと疲れた」ハァ

魔道士「…うん」

武道家「んじゃ、行くかぁ」

乙女格闘家「だね~」


…ギラッ

剣士(…ん?)

 
ザッザッザッ…スッ

剣士(んじゃこりゃ…)

剣士(……黒魔石の破片?)


剣士(…)チラッ


剣士(あぁ…。一部が砕けて一緒に落ちてきたのか……)

剣士(……ま、いくつかもっといて損はなさそうだ)スッ


武道家「…おーい、何してるんだ剣士。行くんだろ!」


剣士「分かってる!」

剣士(さて…と……)

…………
………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 とある場所 】 


アリオク『…くそったれがッ!!』ドンッ!


バンシィ『……どウした、主。荒レてイるナ…?』


アリオク『力のほとんどが出せない幻影とはいえ…!あ、あの…クソ人間共…!俺の首をッ!』


バンシィ『主ガそこマでヤられる相手カ?』

 
アリオク『あの男…!人間一人としては相手にならんが、あの……武器だ』

アリオク『あれは魔族が造り上げた武器…!あれだけは厄介なもの…!』

アリオク『本来、人間に使いこなせるはずのない武器を、あそこまで順応させているとは……!」


バンシィ『魔族の武器ダと?…裏切りガいルってイうのか』

アリオク『違う…。あれは恐らく、俺らが取り逃がしたエルフ族の生き残りが造ったものだ…』ギリッ

バンシィ『なルほどナ…』

アリオク『……バンシィ!』

バンシィ『なンだ?』


アリオク『…もう、遊ばせておくことはない!』

アリオク『貴様の部下を用いて、エルフ族や人間が逃げた先…南方大陸へ向かえ!』

 
バンシィ『…わかっタ』ニヤッ

アリオク『それと…バハムート!!』


…ザッ

バハムート『…お呼びでしょうか』


アリオク『バジリスクは、既に東方へ向かわせていたな!』

アリオク『ならば貴様は、中央都市へ向かい、人間共の中心となっている場所で暴れつくせ!』


バハムート『…了解した』


アリオク『…それとあの冒険者共は…最期に俺が始末してやる……』


…………
………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・

本日はここまでです。有難うございました。

皆さま有難うございます。
投下致します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 2日後 夕方 中央軍本部 】


…バタァンッ!!

中尉「ご、ご報告です!!」

剣聖少将「どうした」

中尉「…視察隊より、東方大陸側より、竜族の1体が率いる魔族の大群を確認!」

剣聖少将「…何だと」ピクッ

中尉「ど、どのように対応すればよろしいでしょうか!」

 
…バタンッ!!

少尉「…報告です!」

剣聖少将「何だ」

少尉「バンシィが率いたと思われる魔族の大群が、南方側へ向かっていると!」

剣聖少将「…確実か」

少尉「はいっ!」


剣聖少将「…」

剣聖少将「…本当だとしたら、少し予想外な展開だ」


中尉「…予想外?」


剣聖少将「アリオクとやらの動きは、どちらかというと落ち着いて行動していた」

剣聖少将「それを、このタイミングで大群による強襲紛いの事をするとは…予想外なんだ」

 
中尉「…し、しかし」


剣聖少将「分かってる。実際に起きてる以上…予想外もクソもない」

剣聖少将「…アリオクが何か急いだのか、刺激されたのか…」


中尉「ど、どうすればよろしいでしょうか」


剣聖少将「…」
 
剣聖少将「…」

剣聖少将「…」

剣聖少将「……よし!中尉、少尉…良く聞け!」


2人「はっ!」ビシッ

 
剣聖少将「…この事態は非常に不味い」

剣聖少将「中尉は中央都市の東側に、戻ってきていた大隊を配備し、緊急迎撃準備!」

剣聖少将(…剣士が戻してくれた大隊が出撃準備が出来ていて良かったぜ)


中尉「了解っ!」


剣聖少将「少尉は、南方側にこの情報を緊急伝達!」

剣聖少将「各支部にも通達し、各前線にいる待機部隊を中央都市へ移動、迎撃準備にあたらせろ!」

剣聖少将「それと同時に、中隊や小隊は南方大陸の砂漠地帯に散り散りに避難場所を設置!」

剣聖少将「エルフ族および避難民を、そこへ上手く分散して緊急避難だ!」


少尉「はっ!」

 
剣聖少将「更に共通事項とし、冒険者や戦闘のできる者も集えるよう、各情報を展開っ!」

剣聖少将「また、中央都市全域に緊急避難の呼びかけだ!」

剣聖少将「…以上、迅速に準備しろ!」


2人「…承知致しました!」

 
剣聖少将(…また夕刻に現れたか)

剣聖少将(相手の誰かが、闇にしか生きれぬ者がいる可能性があるな)

剣聖少将(ま、それを抜きにしてもちょっとヤバイ状態だ)

剣聖少将(上手く切り抜けられるか…どうか……)


………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央都市 東側 】
 
ザワザワ…ガヤガヤ……!!

中央軍人たち「慌てずにお願いします!」

中央軍人たち「道は大変混んでおりますので、足元に気を付けてください!」


…ワイワイ

街人たち「お、おいおい…中央都市で緊急避難とか聞いてないぞ…」

街人たち「なんで急にこんな…。ここは安全じゃなかったのかよ…」

街人たち「都市にはかなりの人数がいるんだぞ…?大丈夫なのか…」

 
…ザッ!

戦士「…まさか、中央都市に攻め込んでくるなんて」

剣豪「さっき、戦闘の志願者への協力通達が依頼一般受付所にも貼り付けられてたみたいだしな」

戦士「…敵側も大群だっていうし、本気なんだろう」

剣豪「それこそ、俺らの出番ってか」

戦士「…見ろよ」


ザワ…ザワザワ…

冒険者たち「…魔族とやって人の為になるなら、いくらでもやってやるぜ」

冒険者たち「あの黄金パーティだって頑張ってるんだもんな。やってやるさ!」

…ビシッ!

中央軍人たち「…冒険者に後れを取るわけにはいかないな」

中央軍人たち「そうさ。俺らが率先してやってやらねば、どうするってな!」チャキッ

 
戦士「…少将さんと、剣士さん。うまくやってるみたいだ」

剣豪「さすがだ」

…ポンッ

戦士「ん?」クルッ


神官「…二人とも、やっぱりここにいたんだね」


戦士「あっ、僧侶さん!」

剣豪「僧侶さん、どうしてここに…」


神官「そりゃあんな情報出たら、元冒険者としてココへ来るさ」

戦士「…でも、教会の子供たちは」

神官「もう、避難させたよ。でも、帰る場所を守るために…僕も戦わないとね」グッ

戦士「僧侶さん…」

 
剣豪「…そうだな」

戦士「俺らが戦わないと、大勢の命が…失われることになるんだから」

神官「子供たちのため、この国のため、世界のため…戦うさ」


…ザワッ!!!

神官「ん…」


大隊長「…ここにいる者全員へ告ぐ!」

大隊長「もう直、魔族の大群が押し寄せ、我々と衝突するだろう!」

大隊長「ここにいる全ての人々へ、君たちは勇者となりて、この戦いに勝利するべし!」

大隊長「中央軍代表とし、この言葉を捧ぐ!ありがとう!」


オ…オォォォ!!!ウオォォォオオオッ!!!

 
剣豪「…士気も充分。兵力もある」

戦士「あとは相手次第…」

神官「どれだけの数が来るのか…」

中央軍人たち「…どんな相手でも、中央は俺らが守る」

冒険者たち「さぁ…どんな奴らが来るのか……」


戦士「…」

戦士「…」

戦士「……あれだ!見えたぞ!」バッ!

 
…バサッ!バサッバサッ!!!


『…ほう』


中央軍人たち「そ、空を飛んでやがるぞ…」

冒険者たち「あれは…?」

戦士「…一体だけ?」

剣豪「いや、情報によると大群らしいが…」

神官「…?」


バサッ…バサバサッ……


バハムート『…人間たちよ。我の名は…バハムート』

 
剣豪「っ!?」

戦士「ば、バハムート!」


バハムート『…奇襲といえども、どうやら情報は伝わっていたらしい』

バハムート『その心意気や良し、君たちの勇気に敬意を表する』


中央軍たち「な…何が敬意だ!」
 
冒険者たち「貴様らのせいで、俺の仲間や家族は…!」

中央軍たち「大隊長!相手は見える限りあの一体だけ…命令を!」

冒険者たち「俺らは命令なんざ知らねぇ!やってやるぞ!」

ワァァァアッ!!!

 
バハムート『…』

バハムート『…すまないとは思う。少しばかり辛いだろうが……」

バハムート『君たちには、消えてもらうこととなる…』

バハムート『……』スゥゥッ


大隊長「何か…来るぞ!」

大隊長「魔法隊!発動準備だっ!急げ!!」


魔法隊「はっ!」

魔法隊「大…雷…撃……っ!」パァァッ!

 
バハムート『…』スゥゥ!!

バハムート『…ッ』

バハムート『……ガァァァッ!!!』ボッ

ゴッ…ボォォォォォオッ!!!


魔法隊「魔法ぉぉっ!!」

パァァッ!!!バチッ…バチバチバチィッ!!!


大隊長「…雷魔法の前に、その身を落とすがいいバハムート!!」

 
魔法隊「ぬぅぅぅっ!!」パァァァッ!!

バチバチバチッ…ゴォォォッ!!!!


バハムート『…』

…ゴォォォォォォオッ…!!!


大隊長「ただの火球、火炎など、我が魔法隊の前には!!」


ズッ…ズドォォォォォォンッ!!パラパラ…!


大隊長「…くっ!?相殺か…!」

 
戦士「おぉ…。竜族の攻撃だろうと、さすがに魔法隊の一撃の前には相殺で……」

剣豪「…って!お、おいっ!」

神官「だ、だめだっ!!」

戦士「…ッ!」ハッ!



ゴッ……ゴォォォォオオオッ!!!!


大隊長「へっ?」


バハムート『…愚かな』


大隊長「な、何で攻撃が止まってな……」


ゴッ…ズドオオォォォォオオンッ!!!

グラグラグラッ……!!

 
中央軍人たち「ぬああああっ!」

冒険者たち「ぐあああっ!!」


ドッ…ドォォォンッ……!!

モクモク…ッ

…パラパラ…


戦士「なっ…!」

剣豪「た、ただの火球であの威力かよ……!」

神官「今の火球を受けたのは前進してる部隊…!あの軍の大隊長の場所じゃ!」

戦士「じゃあ、前衛部隊は壊滅か!?」


神官「分からない!だけど、怪我人も多いはずだし、すぐに治療に当たらないと!」バッ

神官「…」

神官「…って!」

神官「えっ…!?」ハッ

 
…ボォンッ!!ドゴォンッ!!

中央軍人たち「ぬあああっ!?」

中央軍人たち「な、なんだぁ!」


剣豪「こ、今度はどうした!」


軍広報員「…全体へ通達!東部側より、魔族の軍が出現!」

軍広報員「前進部隊は壊滅的被害、各個、迎撃に当たれとのことっ!!」


神官「…っ!」

剣豪「は……」

戦士「最初のバハムートの一撃で、主力部隊の壊滅が目的だったのか…!」

 
剣豪「ど、どうする!」

戦士「既に、ここから見えないが前方では戦闘が始まってるはずだ!」

剣豪「じゃあ俺らも!」ダッ!

戦士「…行くしかない!」ダッ!

ダダダダダッ……!!


神官「…この状態じゃ、前に出たら足手まといか…!」

神官「僕は、後方から支援をさせてもらうよ!」

神官「僕だって、黄金パーティの一人なんだからっ……!」


…………
………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央軍本部 会議室 】 
 
 
剣聖少将「…戦況はどうなっている」


中尉「前進させていた主力部隊の2割が壊滅的被害」

中尉「引き続き、戦闘は中衛、後衛の待機部隊が変わる形で前進」

中尉「相手側の数は相当数」

中尉「更に、竜族と思われる相手の空中から行われる火球の一撃を防ぐ手段がなく…。」

中尉「もしも次に攻撃を受ければ、本当に危機的状況です…」


剣聖少将「…本部の魔法隊の攻撃が、ただの火球で押し負けたのか」

中尉「…とのことです」

 
剣聖少将「はは…。予想以上に、相手のリーダーさんは強いみてぇだな」

中尉「このままでは、いずれ我々の敗北は必須です!」

剣聖少将「…中央軍の援軍に、ある程度は集まる予定だ。持ちこたえは出来るだろう」

中尉「ですが、それでは犠牲を増やすばかりですよ……!」

剣聖少将「…ここを陥落させられたら、完全に俺らの負けだぞ」

中尉「…っ」


剣聖少将「冒険者たちもいて助かったな。あいつらがいなけりゃ、もっと早く決してただろう」

剣聖少将「そうそう…剣士たちの動向は分かるか?」


中尉「剣士様たちは、最後に確認したのは西方側の支部にて休憩をとっております」

中尉「その後、東方側へ向かったと…」

 
剣聖少将「…東方側だ?」

中尉「西方の星降の丘にあります、魔力の塔にてデュラハンを討伐したのは聞いておりますよね?」

剣聖少将「何っ!?聞いてないぞ!」


中尉「…ほ、本当ですか!?れ、連絡を差し上げるよう、部下に命令してたはずなのですが…!」

中尉「も、申し訳ございませんっ!!」


剣聖少将「…」

剣聖少将「あ…あぁっ!?」ガタッ!


中尉「申し訳ございませんっ!!」バッ!


剣聖少将「なるほどな!そういうことか!」

中尉「へ…」

剣聖少将「…はっはっは!なるほどな!」

中尉「…け、剣聖少将殿?」

 
剣聖少将(そうか、そういうことか。アリオクのやつも、焦ったんだな)ニヤッ

剣聖少将(…剣士の野郎、やるじゃないか。なら、俺も俺自身で…勝利をつかまねーとな!)


中尉「け、剣聖少将殿……?」

剣聖少将「…俺ばかり、こんな安泰の場所にいるわけにゃあいかんよなぁ」

中尉「へ?」

剣聖少将「…俺の武器を持て。やっぱり俺は、前線にいないと落ち着かないみてーなんだよ」

中尉「ま、まさか…!」


…………
……

 

………
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 その頃 東方側 前線 臨時拠点 】


剣士「…ここが今の、東方祭壇町に一番近い臨時拠点だが…」

武道家「うっ…」ツンッ

魔道士「げほっ…!ひ、酷い臭い…。あらゆる物が焼けて……」

乙女格闘家「一体ここで何が…」


剣士「…人の気配もなし。だけど、戦いの跡が酷いな…」

魔道士「さっきまで戦ってたのかな。西方側と同じ感じだね……」

 
武道家「…軍は退いたのか?」

剣士「…そんなわけあるか?前線区域だぞ?」

武道家「だが、魔族の姿もないし…。ちょっと気になるな」

剣士「…」キョロキョロ


乙女格闘家「…目立つものはないけど、そこら中に人が……」ブルッ

乙女格闘家「かなり見てきたけど、いつまでも慣れないよ……」


武道家「…慣れなくていい。俺だって、辛いさ」

武道家「それと、遺体っつっても見た感じ…古いのと新しいのが混じってる」

武道家「…どういうことだろうか」


乙女格闘家「まだ…回収出来てないんじゃないかな」

 
魔道士「…」

魔道士「…ここは、臨時拠点の前に確か、中央軍の第二防衛線だった場所だったはず」

魔道士「その多くが、この戦争の最初に犠牲になった人たちで…」

魔道士「ほとんど、冒険者から募集されたものだって…武装中将さんが言ってた気がする……」


剣士「…」


ザッザッザッ…スッ…


剣士「だとすると、この倒れてる古い遺体の二人組みは…冒険者か何かだったんだろうな」

剣士「……同じ仲間として、誇りに思う」


冒険者A「…」

冒険者B「…」

 
剣士「…」

武道家「…」

魔道士「…」

乙女格闘家「…」


剣士「ん~…。それにしても、祭壇町への道がここまで不気味な雰囲気だとは」

剣士「…進んでいいものか」


武道家「一度、中央へ戻るか?」


剣士「…」

剣士「…ちっとばかし、突っ込むのは危険な気がするんだよな」

剣士「近くに、冒険傭兵や俺のいた村があるし、冒険者が待機してたら、そこで情報の収集を……」

 
…ズゥンッ!!!


剣士「ん…!」ピクッ

武道家「なんだ、今の音…」

魔道士「何か…落ちたような」

乙女格闘家「…近かったよね」


…ズンッ…ズンッ……ズシンスジンズシンッ……!!


剣士「ま…待て……」

武道家「これは…あの時と同じじゃないか……!」

魔道士「もしかして…。ううん、もしかしなくても……」

乙女格闘家「し、しかも…これって……!」

 
ズシンズシンズシンッ……コォォ……


バジリスク『…みーつけた』ニタッ


剣士「…竜族ッ!!!」バッ!

武道家「おいおい…!」

魔道士「…ッ!」

乙女格闘家「な、なんでっ!」


バジリスク『あぁん…?』

バジリスク『おやおや…。前に会った、冒険者一行じゃねーか……』

バジリスク『ん、何でその女が生きて……』ピクッ

 
剣士「な、何でお前がこんなところに!」


バジリスク『あァ?そりゃお前…。そりゃいるだろうが……』

バジリスク『つーか俺はバジリスクだ。名前を呼べや』


剣士「ここの臨時支部に倒れてる新しい遺体は、お前の仕業か……!」

バジリスク『…』ニタリッ


剣士「…てめぇ」チャキッ

バジリスク『おォ?今度は逃げないのか……?』

剣士「誰が逃げるものか…。俺はお前を…ココで斬るっ!」

バジリスク『…出来るのかな?』

剣士「…ッ」

バジリスク『ま、丁度いい。逃げた腰抜け軍人より、よっぽど相手になる…』

 
剣士「…に、逃げた?」

バジリスク『おうよ…。すこーし前までは俺と戦ってたクセに、その途中で一部を残して退いたのよ…』

剣士「…退いただと」

バジリスク『…おかげで暇になっちまってたところだ』フワァ


魔道士「ま、待って!軍がこの状況で退いた?そ、そんなわけ……」


バジリスク『…』


魔道士「…」

魔道士「!」ハッ

魔道士「…まさか、退く事態…どこかで何かあったんじゃ!」

 
バジリスク『勘がいいなァ…。』

バジリスク『いいぜ、教えてやるよ』

バジリスク『主によると、中央都市と南方大陸にバハムートとバンシィの奴が向かったらしいぜェ…』


魔道士「ま、魔族を率いてる4体のマスターのうちの2体も一緒にってこと…!?」


バジリスク『…おッ。知ってる奴だなぁ…。そうそう、大群を引き連れてなァ…』


魔道士「…そ、そんな!」

武道家「な、南方ってまさか!それに中央都市だって!?」

乙女格闘家「今、避難してる皆が……!」

剣士「そういう…ことかよっ……!」ギリッ


バジリスク『まァなんだ…。今のお前らにゃ、関係ねーことさ』

バジリスク『…その闘気、ちょっとは出来るようになったみてーだし…俺と遊ぼうぜッ!!』クワッ!

本日はここまでです。有難うございました。

皆さま有難うございます。
投下致します。

 
バッ…バァァァッ!!!ビリビリビリッ…!!!


剣士「ぐっ…!」ビリビリッ

武道家「相変わらずの…オーラ……!」ビキッ

魔道士「…くうぅっ!」バチバチッ

乙女格闘家「でも、やるしかないんだよね…!」ググッ


バジリスク『はははァーッ!!そう来ねェとなァ!!』

バジリスク『さァて……!』スゥゥッ


剣士「…火球か!」


バジリスク『…カァッ!!』ボッ

ゴッ…ボォォォオッ!!!


剣士「…」スチャッ

 
バジリスク『はァーっはっはっはっ!!燃えろォッ!!』


剣士「おぅりゃあぁぁっ!!!」


カッ…ビュォォンッ!!!!

…ズバァンッ!!ドゴォォンッ!!!


バジリスク『!』


パラパラ……


剣士「…しっ!」グッ!


バジリスク『お、俺の火球を…切り裂いただと……!?』


剣士「…どうだ、この野郎!」

 
バジリスク『…そんなバカな話があるか!たかが大剣如き、俺の火球を…』

バジリスク『…』

バジリスク『…!』ハッ

バジリスク『貴様…その大剣の印…!魔族のモノか…!』


剣士「…」


バジリスク『なるほど…。魔の血を打ち込んだ武器かァ…!』

バジリスク『それを易々と使いこなすとは…。そこは褒めてやろう…』


武道家「…アリオクも似たような事を言ってたな」

魔道士「たぶん、あの武器には特別な加工がしてあるのかな……」

乙女格闘家「…それを剣士が使い切ってることを不思議とアリオクも言ってたし、凄いことなんだね…」

 
バジリスク『何?貴様ら、主に会っているのか…?』


剣士「…幻影だったけどな。俺の大剣に切り裂かれて、首が吹き飛んでたぜ?」ククク


バジリスク『…嘘を言うな』

剣士「…冗談を言うと思うか」

バジリスク『…』

剣士「…」


バジリスク『…』

バジリスク『あァ…。だからか…。その大剣にやられて、主が急にな……』


剣士「…」

バジリスク『まァ…今は関係ないことだ……ッ!』スゥゥッ!!

剣士「来るか…」ググッ

 
バジリスク『ガァァァッ!!!』


ゴッ…ゴオオォォォォオオッ!!!!


剣士「っ!!」

魔道士「今までのより遥かに大きい!?」

乙女格闘家「こ、これはまずいんじゃ!」


武道家「…剣士!合わせろ!」パァァ

剣士「…いけるのか!」

武道家「…」ニヤッ

剣士「…わかったぜ」ニヤッ


…チャキッ

…スチャッ

 
武道家「闘気……!!」パァァ!

剣士「いっ…せー…のぉぉぉ…!!」グググッ…


武道家「…連弾ッ!!!」

剣士「……せいッ!!!」


ゴッ…!!


バジリスク『ッ!?』


ゴォォォォォオッ!!!

ズッ…ズドォォォォォオオンッ!!!!

パラパラ…

 
剣士「相…!!」

武道家「殺ッ!!」


魔道士「…す、凄い!そっか、武道家はエルフ族の魔力を受け継いで……」

乙女格闘家「さすが…!」


バジリスク『大火炎を止められたのは予想外だが……隙も多いようだぜ?』ボソッ

剣士「!」ゾクッ

バジリスク『ふんっ!!』

…グォォオオッ!!!

剣士「炎からの連撃…!尾の攻撃かよっ!」

武道家「やらせるかぁっ!」ブンッ

…ガキャァンッ!!!

 
武道家「ぐっ…!次から次へと…早くて重い……!」ギリギリッ

バジリスク『…小賢しいッ!』グンッ!!

武道家「げ…!押し負け…っ!」

ドゴォッ!!…ズザザザァッ……!! 
 

剣士「武道家っ!」


バジリスク『貴様も吹き飛べッ!』

…ギュオンッ!!シュパァッ!

剣士「今度は爪かよ!うおらあぁっ!」ブンッ!


ガキィンッ!!ビリビリッ…!


バジリスク『よく…止められたな。だがァ……!』スゥゥ!

 
剣士「げっ!ここで火球っ!?」

バジリスク『ガァ…ッ!』


ヒュッ…ボォォンッ!!!


バジリスク『グオッ!?』グラッ


剣士「!」


バジリスク『貴様ら……』ギロッ


魔道士「…私の火炎魔法。ようやく…あなたに当てられた」

乙女格闘家「私の闘気の味は、どうかにゃー!」

 
バジリスク『…邪魔な女どもがァ!また真空波で切り裂いてやるぜッ!』

…ブォンッ!!ヒュオオオッ!!


剣士「爪の真空波ッ!やべえ、避けろッ!」


バジリスク『死んでおけェッ!』


ヒュオオオオッ!!


魔道士「くっ!」


乙女格闘家「…」ニコッ

乙女格闘家「…えへへ、大丈夫だよ魔道士ちゃん!」


魔道士「えっ?」

 
…バスバスゥッ!!ヒュオオッ…


バジリスク『何っ、かき消しただと!?』


…ザッ!

武道家「相殺…っ!はははー!」

バジリスク『貴様…俺の一撃で吹き飛んでいたはず……!』

武道家「あの程度でやられるかっつーの!ぶぁぁぁっか!!!」

バジリスク『…ッ!』


魔道士「武道家!」

乙女格闘家「やっるー♪さすがっ!」


剣士「はは…。いつの間にアイツ……」


バジリスク『…』ギリッ!

 
剣士「…どうだ、俺の仲間は。強いだろ…クソトカゲ」ニヤッ

バジリスク『…ッ』ギロッ

剣士「っと!」

タァンッ!クルクルクル…ズザザザァ……


剣士「…うはははっ!どうだ、見たか!」ビシッ

武道家「もう、あの時の俺たちじゃねえんだよ!」

魔道士「…もう、逃げないんだから!」

乙女格闘家「かかってこぉーい!」


バジリスク『こ…この……!』ギリギリッ

バジリスク『…ッ』

バジリスク『あァ…もう面倒くせェ……!』


 
剣士「…?」


バジリスク『ク…クククッ!これならどうだっ!』

バサッ…バサッバサッバサッ!!ヒュオオオオッ!!


武道家「た、たけぇぇっ!!」

魔道士「それに早いっ!」

乙女格闘家「あんなに高かったら、攻撃が届かないよ!」

剣士「…」


バジリスク『この一帯を全て…焼き払ってやる……ッ!』

バジリスク『覚悟しやがれ…クソどもがッ!!』

バジリスク『ぬっ…!ぬぅぅぅぅ……ッ!』スゥゥゥッ!

 
武道家「あ、あれはやべぇぞ!」

魔道士「…ど、どうするればいいの!?」

乙女格闘家「闘気も届かないし、止められない!」


剣士「…なぁに、届くさ」

武道家「何?」


剣士「……でぁぁぁっ!!」


ブンッ!!!…ヒュオオオッ!!


魔道士「武器を空高く投げたっ!?」

武道家「お、おい!どうするつもり……」

 
剣士「…」

グググッ…ダァンッ!!!!! 
 
 
乙女格闘家「…け、剣士も飛んだーっ!?」

武道家「おいおい、むちゃくちゃな…」

魔道士「まさか……」


バジリスク『…ッ』スゥゥゥ!!


ヒュオオ…クルクルッ…


バジリスク(んッ!?こいつはアイツの大剣……)ピクッ

 
…ヌッ!グワッ!!

剣士「どんな高さだろうが、逃さねえぞコラァ!!」


バジリスク『ッ!?』


…ガシィッ!!

剣士「っしゃあ!大剣も掴んだっ!!」

ググッ…!

剣士「…ちぃと踏ん張りは効かないが、その首…落とさせてもらう!」


バジリスク(…こ、攻撃の溜めのせいで反応が遅っ……!)


剣士「…うおらあああっ!!!」

ビュッ……!!!


………
……

 
……ズバァンッ!!!……ブシュッ……


……
………

 
剣士「よっしゃああっ!!手応えあり……!」

剣士「…って!な、何っっ!」
 

バジリスク『…ッ!!』

ドクッ…ドクッ……!!


剣士「う、嘘だろっ!避けやがったのか!?腕一本しか切れてねぇっ!」


バジリスク(危ねェ!!寸前で…身体は反らせた!)

バジリスク(そして溜めた攻撃は……呑み込めたっ!)

バジリスク『…ぶはぁっ!』


剣士「…っ!」


…ギロッ!!

バジリスク『てめぇ!!空中で俺に敵うと思うなァッ!!』クワッ!


剣士「やっべ…」

 
バジリスク『俺の腕をよくも……!』

バサバサッ!!…ガシッ!!…


剣士「つ、つかまっ…!」


バジリスク『このまま地上に頭から落下して、叩き潰してやるッ!!』

バジリスク『その無残な遺体と血を、下の仲間にぶちまけるがイイッ!!』


剣士「ぐっ……!!」ギリギリッ

剣士「こ、この高さから思い切り落ちたら、お前だってどうにかなるんじゃねえのかっ!」


バジリスク『俺ら竜族の皮膚は、鱗はッ!その全てを防ぐ硬さを持ってんだよッ!』

剣士「…その割には、俺の大剣に腕の一本も斬られたな…虫の皮膚の間違いじゃねぇのか……!」

 
バジリスク『…ッ!』ギリッ

バジリスク『どうとでも言っておけッ!貴様はこのまま…死ぬんだからよォォォッ!!』


バサッバサッ……グッ…ヒュオオオオオオッ!!!!


剣士(この距離じゃ、この勢いじゃ剣もふるえねぇ…!)

剣士「…く、くっそぉぉっ!!」


バジリスク『ハハハハハッ!!!』


ヒュオオオッ…グオオオォォォォォオオッ!!!


剣士(地面がどんどん近づいてくるっ…!だ、ダメだ…やられるっ……!!)

 
魔道士「け、剣士ぃぃっ!」

武道家「ど、どうやって止めろっつーんだ、あのバカッ!!」

乙女格闘家「な、何かないのっ!?」 
 

…ヒュオオオオオォオオッ!!…


バジリスク『ハハハーッ!!』


剣士「…っ」

剣士「…ッ」

剣士「…ッッ!!」

剣士「…あ、諦めてたまるかぁぁぁぁあっ!!!」カッ!


バジリスク『死ねぇぇっ!!』


剣士「し、死ぬくらいなら…!掴まれているこの両腕…くれてやるっ!!!」

 
ブチッ…ゴリゴリゴリッ…ゴキャッ!!!メキメキッ…!!

剣士「少しでも大剣が動けば、この切れ味だ…!俺の腕くらいっ!!!」ギリッ!!

バジリスク『なっ!!お、大剣で自ら腕をッ!?』

剣士「あ゛…あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!!!』

ゴリッ…ブチブチッ…!!!ブチュッ!!

バジリスク『正気かてめェッ!!』


剣士「だらぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ!!」

…ブツッ


シュルッ…


剣士「がぁっ!!」


バジリスク『ぬ…ぬけやがっ……!だが、それでは大剣も掴めんだろうがッ!』

 
剣士「ぐっ…!」グワッ!!

…ガチィッ!!

剣士「…んぐぅ゛ぅ゛っ!」


バジリスク『落ちていく武器を口で取りやがッ……!』

剣士「がぁぁぁっ!!!」


ビュッ…!


バジリスク『…ッ!!』


ヒュッ…ヒュオオオオオオッ!!!


…ドッ…ズドォォォオオオンッ!!!!ミシミシミシッ……!


パラパラ…

 
魔道士「け…剣士が落ち……」

武道家「あのバカ、もろに地面に!!」

乙女格闘家「け、剣士っ!!」


モワモワ…モクモク……

……モワッ……


魔道士「け…剣士……?」

武道家「くっ…!途中からきりもみで、何がなんだか見えなかった!」

乙女格闘家「ぶ…無事なの…?」


サァァッ……

 
魔道士「…」

魔道士「…」

魔道士「……あっ!」


…スクッ


剣士「…がはっ…!はぁ…!はぁ……!」

魔道士「けん…し……!」


バジリスク『…』

ドクドク……


魔道士「剣士…っ!!」

武道家「…み、見ろ!バジリスクの首に大剣が刺さってやがる!」

乙女格闘家「た、倒したの…!?」

 
武道家「待て、だけど様子が……」

乙女格闘家「様子って…いうか…」

魔道士「け、剣士の…腕……!」


ドクンドクン…ポタッ…ドロッ……


剣士「…」


魔道士「う、腕が…!腕がっ……!!」


剣士「…」

…フラッ

 
武道家「…やべぇっ!」

ダッ……ズザザザァ…ガシィッ!!


武道家「お、おい!しっかりしろっ!」

剣士「はぁ…はぁ……!お、男のお姫様抱っこなんざ…趣味じゃねえぞ……」

武道家「乙女格闘家!バッグから止血剤と回復薬だっ!」

乙女格闘家「わ、わかった!」

ゴソゴソッ…


武道家「しっかりしろ、バカ野郎っ!おいっ!!」

剣士「あ゛ー…。大丈夫大丈夫…」クラッ


魔道士「け…剣士……っ」ヘナッ

 
剣士「…心配すんなっ…って。大丈夫だっつーの…大丈夫……」

魔道士「…っ」

剣士「ちっと、意識が…とびそ…う…だ…が……」


乙女格闘家「武道家っ!止血剤と回復薬…これっ!」バッ!

武道家「…おう!剣士、ちょっと沁みるぞ……!」


…グリッ!


剣士「…ッ!!」


…………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 数分後 】


剣士「…」スゥッ


武道家「はぁ…はぁ~…!」

魔道士「だ、大丈夫…なんだよね……」

武道家「おう。これで血は止まったしな…。寝てるだけだ……」

魔道士「よ、よかった…けど……」

武道家「…っ」


乙女格闘家「こ、これからどうすればいいんだろ……」

乙女格闘家「剣士の腕、元に戻さないと…!」

 
武道家「小さな支部でもいいから、どこかの治療院に持ってけばなんとかなるはず…!」

武道家「時間との戦いになりそうだ、とにかく急いで行くしか……」


…ググッ…ピクッ…


武道家「…」

武道家「…っ!」ハッ


乙女格闘家「どうしたの?」


武道家「い、今…動いたような…」

乙女格闘家「えっ?」

 
…グググッ…ムクッ……!!


バジリスク『……ッ!!』


…ォォォ……!


武道家「冗談…だろっ……」

魔道士「…え?」

乙女格闘家「う…うそっ……!」


…ゴゴゴッ……!!ググッ!!

バジリスク『ゴ、ゴホッ……ッ!や、やってくれたな…クソ共…ッ!!』


武道家「うっそだろ…」

 
バジリスク『この野郎ォ…!俺がこの程度…で…死ぬと思うか……ッ!!』


武道家「く、首にエルフ族の大剣が刺さってんだぞ!」


バジリスク『あァ…?』


グイッ…ズチュッズリュッ……!!


バジリスク『…ッ!!』


ズボォンッ!!…ガシャアンッ!!


バジリスク『っと…血がいけねェな……』

ドプッ…ドロッ……

バジリスク『…ふんっ!』ググッ

ポタッ…ポタッ……ビタッ…

 
武道家「じ、自分の肉圧で血を止めやがった!」

魔道士「そんな……」

乙女格闘家「け、剣士があんなに頑張ったっていうのに…」


バジリスク『ク…クク……』

バジリスク『……ガハッ!』ゲホッ!

バジリスク『グッ…!』フラッ

バジリスク(す、少し血を流しすぎた…!こんな人間に、お、俺が…!)

バジリスク(それと、この魔の大剣の傷…!内部で血が…俺の力で完全に止められてはいない……!)

バジリスク『…ッ』ギロッ


武道家「ち…!剣士ばっかにいい恰好…!今度は俺がやるしかねえな…!」スクッ

魔道士「…私だって!」パァァ

乙女格闘家「私もやるよ!」スチャッ

 
バジリスク『…』


武道家「…」

魔道士「…」

乙女格闘家「…」


バジリスク(ちっ…!俺の腕も治さにゃいけねえし…この武道家の相手はちとやべェか…)

バジリスク(大剣と同じ、エルフ族の魔力とぶつかるわけには……)

バジリスク『…クソがァッ!!』

…クルッ


武道家「お…」

 
バジリスク『…ちっ!』


ググッ…!バサッ!ヒュオオオッ!!

バサバサバサッ…バサッバサッバサッ……

バサッバサッバサッ………

バサッ……


………

 
武道家「…行ったか」

魔道士「…」

乙女格闘家「…」


剣士「う、うぐっ……!」モゾッ


武道家「…っと、腑抜けてる場合じゃねえ!一番近い支部でもいいから、治療してもらわねぇと!」

魔道士「うんっ!」

乙女格闘家「急ごうっ!」


…………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 最寄の支部 】


…ガチャッ!

武道家「失礼!」

魔道士「お邪魔します!」

乙女格闘家「こんにちわ!」


武道家「誰かいないか!治療員がいるなら、見てほしい患者がいるんだっ!!」

 
…シーン…


武道家「…無人なのか?」

魔道士「そ、そんなわけは……」


…ガタッ!

武道家「!」


支部軍人「…ど、どなたでしょうか!魔族ですか!?」


武道家「良かった!この支部に治療員はいないか!?」

武道家「ちっとやべぇ事態なんだ…!」


剣士「…」ゼェゼェ

 
支部軍人「こ、この傷は……」

武道家「頼む!助けてくれっ!」

支部軍人「…申し訳ないですが、今ここに治療員はいないんです」

武道家「なんだって!?」


支部軍人「今、中央都市と南部大陸の砂漠地帯に魔族の大群が攻撃を仕掛けてきているらしく…」

支部軍人「自手を空いている者はかり出されているんです。自分はここの守りで残っておりますが」


武道家「そ、そういやそんなことアイツが……」


支部軍人「それで…。えっと、この方の状況は芳しくないようですね」

支部軍人「確か、中央軍本部では現在…戦闘で傷ついた人を一般に関わらず、臨時増設で請け負ってるはずです」

支部軍人「今、ここの支部の転移装置は動きますので、すぐに行ってあげてください!」

 
武道家「わ、悪い!助かる!」

支部軍人「いえ」


武道家「じゃあ皆、急ごうぜ!」

魔道士「うん!剣士…っ!」

乙女格闘家「大丈夫だよ、きっと…!」


タッタッタッタッタッ………


…………
………

本日はここまでです。有難うございました。

皆さま有難うございます。
遅くなりましたが、投下致します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央都市 中央軍本部 治療院 】


ガヤガヤ…ワイワイ……!!


治療員たち「おーい!早くこっちに戻って来てくれ!」

治療員たち「こっちはもうダメだな…。遺体置き場に投げておけ!」

治療員たち「ヒールが効かない魔法…?魔法研究家の人とかはいないのかっ!」


武道家「な、なんじゃこりゃ…」

魔道士「治療員と患者の数が…ぎゅうぎゅうだよ……」

乙女格闘家「この状況で、剣士を見てもらえるのかな…」

 
ヒュオォォッ…!

…ドォォンッ!!グラグラッ…!


武道家「なんだっ!?」

魔道士「きゃ…!」

乙女格闘家「爆発音…?」


…ザワザワ…!

治療員たち「ちっ、またか!集中治療室のほうは大丈夫だろうな…」

治療員たち「怪我人の傷に障るから、優しくしてほしいもんだぜ」

治療員たち「…前線の人たちよりマシだろ。住んで20年にもなるが、こんなの初めてだ…」


武道家「…っ!」

乙女格闘家「本当に中央都市で戦いが……」

 
武道家「…そ、それより!剣士の今だ!一体どうすればいいんだよ…!」

武道家「こんな状況じゃよ…!」


剣士「…」ゼェゼェ

魔道士「剣士…っ!しっかりして…!」

乙女格闘家「剣士…!」


武道家「クソッ…!誰か、知ってるやつでもいれば…!」

魔道士「割り込む」

武道家「…治療は平等だ。だけど…!だけどよっ……!!」

乙女格闘家「…っ」

 
???「…」

???「…!」ハッ

???「…あ、あれっ?ね、ねぇっ!」


武道家「ん?なんだ…今俺らは忙しいんだよ!」

魔道士「ちょっと武道家、そんな言い方…」


???「あ…。な、なんかゴメン…。でも、そのさ…僕なんだけど……」


武道家「…あん!?」


神官「武道家くんたち…!だよね!」


武道家「そ、僧侶っ!?」

 
神官「一体どうしてここに!」

神官「ー…って、いうか!け、剣士くんっ!?」


剣士「…」ゼェゼェ


武道家「そ、僧侶がなんでこんなところに…!とはいえ、光明だ!助かった!」

魔道士「僧侶、お願い!剣士のこと見て欲しいの!」

乙女格闘家「僧侶、お願い!」


神官「剣士くんの…腕…が……!」


武道家「お前なら、何とかできるんじゃないか!頼むっ!」

神官「こ、ここまで酷い傷…!一体何があったの!?」

武道家「…竜族と戦った」

神官「!」

 
武道家「東方側で、バジリスクっつーやつと対峙したんだ」

武道家「何とか引き分けには持って行けたが、剣士は……」


神官「…そうだったんだね。分かった…。剣士くんのこと、僕が治療にあたるよ。ううん…。やらせてほしい」


武道家「すまない!助かる…!」


神官「…今、この中央軍本部には最先端の治療魔法器具が集まってる」

神官「この傷なら、まだ新しいし…大丈夫だと思う」


武道家「…よかったっ!」

魔道士「よかった…」

乙女格闘家「腕…くっつくんだ。よかった……」


神官「うん。絶対に治すよ!」

  
武道家「…」

武道家「…と、安心したところで、話を戻したいんだが、お前がなんでここにいるんだ…?」


神官「あ、うん。最初、僕も中央都市の迎撃作戦に加わってたんだけどね…」

神官「あまりにも怪我人が多くて、治療技術のある人はここに移動させられたんだよ」


武道家「な、なるほど…。そんなにヤベー状況なのか」


神官「戦士や剣豪も戦ってるよ。相手側も本気で、僕らを落としにかかってるみたいなんだ」

神官「竜族の1体を筆頭に、かなりの大群で……」

神官「さっきから多くの患者が運ばれてくるけど、そのほとんどが……」


武道家「…」

 
魔道士「武道家…」

武道家「…分かってる。じゃあ、俺らも参戦するしかねーっつーことだろ」

魔道士「うん…」

乙女格闘家「だね。私たちの世界は、私たちで守らないと」


神官「…僕はここで戦う。武道家くんたちも、頑張って!」


武道家「おうっ!剣士のこと…任せたぞ」

魔道士「しっかり治してあげてね!」

乙女格闘家「勝利の二文字を引っ提げて、帰ってくるよ!」


ダッ…タタタタタッ……


神官「みんな、頼んだよ……。僕も、剣士くんを…絶対に治すから……!」


…………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央都市 前線 】

ゴォォォッ…ズドォンッ!!!ドゴォォンッ!!


中央軍人たち「退くなぁっ!俺らの背中には、多くの命があることを忘れるなぁっ!」

冒険者たち「お前らの好きになど、させないっ!!」


魔族兵たち『諦めろ人間共がっ!』

魔族兵たち『どのみち…あの方たちがいれば貴様らなど、一瞬よ!』

 
戦士「…うおおおっ!」ビュオッ!

…ズシャッ!!ドスッ!!

魔族兵『ぐっ!』

…ドシャアッ…


戦士「…おしっ!」

剣豪「っしゃあ!」

戦士「はぁ、はぁ……!見ろよ、この光景…信じられるか」

剣豪「…この都市部で戦争。そのうえ、中央軍と冒険者が入り乱れて戦ってやがる」

…ワァァァッ!!!

戦士「世界中から集まった軍、冒険者が力を合わせて戦う…。二度と見れない光景かもな…」


剣豪「世界を守るためなら…ってな!」

剣豪「……っと!」

…ビュオッ!!ガキィィンッ!!

魔族兵『くはは…!何が世界を守るだ。所詮お前らなど、相手になる存在ではない!さっさと諦めろォ!』

 
剣豪「この…雑魚はすっこんでろ……!!」ググッ!

魔族兵『ぐっ!?な、なんて力…!』

ブンッ!!バスゥッ!!ズザザザァ……!


剣豪「…っけ。粋がる雑魚の相手はいくらでも出来るんだよ」

剣豪「だが、あの空で傍観してる…アイツ…!」


戦士「……竜族っ!」バッ!

剣豪「バハムート…!」


ヒュオオオッ…バサッ…バサバサッ……!!


バハムート『…』


ォォ…ォォォ……

 
剣豪「最初の火球以降、ずっとあぁして眺めてやがる……」

戦士「一体何を考えてる……」

剣豪「…」

戦士「…」


バサッ…バサッ……


バハムート『…』

バハムート『…』

バハムート『……!』ピクッ


バサッバサッバサッ……バッ!!ヒュオオオッ!!!

 
剣豪「…動いた!?」

戦士「どこへ!」

剣豪「追ってみるぞ!」

戦士「おう!」


ダッ…タタタタッ……

………

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

タタタタッ…ズザザァ……


戦士「この辺のはずだが…」キョロキョロ


剣豪「…」

剣豪「…!」ハッ

剣豪「お、おい!あれ見ろよ!」


戦士「!」

 
コォォォ……オォ………


剣聖少将「…」

バハムート『…』



戦士「な、なんであんな所に少将がっ!」

剣豪「…待て。何か話してるみたいだぞ」



……ヒュウゥ……

剣聖少将「…お前がバハムートってやつか?」

バハムート『お初にお目にかかる。貴殿は、剣聖少将か。前線へ姿を現すとは、勇敢なことだ』

剣聖少将「…よく御存じで。思ったより魔族ってのは、頭もまわるようでビックリだ」

バハムート『これでも、無駄に攻め入っているわけではないのでね』

 
剣聖少将「…」

バハムート『…』


剣聖少将「……で!俺の場所へ来たっつーことはアレか。俺を殺しにきたか」

バハムート『少なくとも、貴殿を倒せばこれ以上の犠牲もお互いに出さないだろう』

剣聖少将「…へぇ、"互いの犠牲"か。俺らのことも考えてくれんのか?」

バハムート『我らとて、その犠牲は哀しむべきものだ』

剣聖少将「その気持ちがあるなら、こんな戦争けしかけたりしねーと思うんだけど?」

バハムート『…それは』


???「…待てっ!」


剣聖少将「ん…?」

バハムート『む……』

 
ダダダッ…ズザザァ…!

武道家「…っしゃ!親父さんっ!」

魔道士「剣士のお父さんっ!」

乙女格闘家「黄金の卵、ただいま参上っ!」


剣聖少将「お、お前ら…」

バハムート『お前たちは…』


武道家「久しぶりだな。まさか、こんな場所まで攻めてくるとは思わなかったぞ」コキコキ

バハムート『…ふむ。久方ぶりだが、その実力はだいぶ違うようだな』

武道家「…強くなったってか」

バハムート『あの時よりも、遥かにな』

武道家「へへ、嬉しいこと言うな。じゃあ、これも教えてやろうか」

バハムート『…何だろうか』

 
武道家「お前の仲間…バジリスク。剣士のやつが、そいつの腕を切り落とした」ニヤッ

バハムート『…何?』ピクッ

武道家「しかも、あいつは俺らから逃げちまったぜ。実質、俺らが勝ったんだよ』

バハムート『バジリスクのやつが……』


剣聖少将「ほぉ…。剣士がやったのか?」

武道家「あぁ。だけど、剣士も痛手を負って…。今は本部で治療を受けてる」

剣聖少将「そうか、よくやったな」

武道家「ははは、当たり前っす。というか、何で親父さんがこんな前線に……」

剣聖少将「部下が戦う中、俺も戦わないで威厳も何もないだろう」

武道家「…さすがっすね」

剣聖少将「ふっ…」

 
バハムート『…その様子では、本当にバジリスクを倒したのだな』

バハムート『ふむ…。バジリスクがやられるとは、どこか…慢心でもあったか』


武道家「おいおい、俺らが強かったっていう認識はないのかよ」

バハムート『…失礼とは思うが、それはない』

武道家「おいおい、ずいぶんバシっと言ってくれるな」

バハムート『なぜなら…。我ら竜族は、かの主以外の全てに負けを知らぬ存在だからだ……!』


…パァァッ!!


武道家「!」

剣聖少将「なんだ…」

魔道士「光…?」

 
…ストンッ

バハムート『…だが、我が本気でやってはこの一帯を燃やし尽くしてしまう』

バハムート『多少、手を抜いて戦ってやろう…』

バハムート『君たちが中央都市における、最大の敵とみなそう。存分に…戦おうではないか…』


武道家「…人になった!?」

魔道士「そ、そうだ!前に会った時も、確か人間に……」

乙女格闘家「そうだったよね…。ど、どういうことっ!?」


バハムート『…竜族は、常にあの姿であるわけではない』

バハムート「君たちと同じように、いわゆる"人型"で生活をしている』

バハムート『この格好はそうだな…。そのまま竜人と言おうか』

 
武道家「…人型は、見たところ竜の力も使えないってことでいいのか」


バハムート『防御の要となる竜鱗はないし、攻撃面もそれほどではなくなっただろう』

バハムート『だが……。スピードや戦闘技術はそれほど変わっていないぞ…?』スッ


武道家「…なら、試してやる!」ダッ!

ダダダダダッ…!!

武道家「掌底波ぁぁっ!!」グォッ!!

バハムート『…ほう、良い速度だ。だが…』

スッ…ビシィッ!!

武道家「うおっ…!俺の掌底波を簡単に……!」


バハムート『…』

バハムート『…ふむ』ピクッ

バハムート『珍しいな…。その血に、純粋なエルフ族の魔力が宿っているのか。拳から伝わってくるぞ』

 
武道家「…だから、どうした!!連撃ッッ!!」

バッ…バババババッ!!

バハムート『…』

ビシィッ!!バシバシバシィッ!!

バハムート『一つ一つが速度を維持し、正確な打撃だ。しかし……』

…ブォンッ!!バキィッ!!

武道家「ぐあっ!?」


バハムート『もう1歩、不足しているな』


武道家「くっ…!よ、余裕かよ!だけどな、いいのか?余所見してて…」ニヤッ


バハムート『ふむ?』

 
…パァァッ!!

魔道士「極…火炎魔法っ!!」


ゴッ…ゴオオオオォォォォオオオオッ!!!!!


バハムート『…』

…スッ…

バシュゥゥゥウンッ!!


武道家「はっ!?」

魔道士「えっ!?か、片腕だけで私の魔法をかき消し…た…!?」


バハムート『大きな魔力の変動は、大気を揺るがす。気付かぬはずがない』シュウ…

バハムート『だが、魔力の密度もよく、詠唱も早く、その若さでこのレベルの魔法…。』

バハムート『君は、とても見込みがある女性のようだ』

 
…ダダダダッ!!タァンッ!!

乙女格闘家「好機っ!落下掌ぉぉぉっ!!」


バハムート『…チャンスを逃さない動きは素晴らしい。だが、君は威力が甘い』

…ガシッ

乙女格闘家「ゆ、指先で!?」

バハムート『君はそこの武道家と夫婦か。戻るといい』

…ブォンッ!!

乙女格闘家「きゃ……!」


ヒュオオオオ…ッ!!ガシィッ!!


武道家「っと…!」

乙女格闘家「…っ!」

 
ダッ…ダダダダッ…!!!


???「俺らもやらせてもらうっ!」

???「行くぞコラァ!」
 

バハムート『…参戦者が増えたのか』
 
 
ズザザァ……!!

戦士「…すみませんみなさん!俺らも参戦します!」

剣豪「あんたたちだけに、いい恰好させてられないからな!」

 
武道家「…剣豪たちか!」

魔道士「そういえば、前線にいるって僧侶が言ってたっけ…!」

乙女格闘家「やっちゃえ二人ともっ!」

 
ダダダダダダッ!!!


戦士「あぁぁぁっ!」

剣豪「おぉぉぉっ!」
 

…ビュォンッ!!ブォンッ!!


バハムート『…』


…パシッ!!

戦士「!」

剣豪「!」

バハムート『…その勇気は認めよう。だが、君たちにこのフィールドはまだ早い』


武道家「か、片腕ずつで二人の斬撃を止めやがった!」

 
バハムート『…ここに立つ技量ではない。下がっているといい』

…ブンッ!!

戦士「ぐっ!」

剣豪「ぬあっ!」

ズザザザァ…!ドシャアッ…!

戦士「こ、こんな簡単に…!」

剣豪「ウソだろ…」


武道家「お、おいおい……」

 
バハムート『…戦闘意欲やよし。技術もそれなり。人間といえども、我らが押される理由もわかる」

バハムート『だが…。』

バハムート『……所詮、この程度だ』


武道家「…っ!」

魔道士「ウソでしょ…」

乙女格闘家「私たちの攻撃が……」

戦士「一切通用しないなんて…」

剣豪「こ、これでも手を抜いてるっつーのか!」


剣聖少将「…何て強さだ。格が違う…」

 
バハムート『…剣聖少将。我が本気になれば、一帯など消し去ることが出来ることを分かってくれただろうか』

バハムート『ここは大人しく、全ての軍と世界政府として降伏の宣言をー…』


戦士「…黙れぇぇっ!」

…ブンッ!!!ガキィンッ!!

バハムート『…』

戦士「黙れ黙れ黙れっ!!」

バハムート『…』

…バキィッ!!

戦士「ぐあっ!!」

ズザザァ……!


戦士「……まだまだぁぁっ!!!」ダッ!!

ビュオッ!…ガキィンッ!!…

 
戦士「くっ、くそぉぉっ…!」グググッ!!

バハムート『無駄なことだ。君にはこのフィールドはまだ少し早いと言ったはず』

戦士「う、うるさいっ!お前は…俺が倒すんだっ!」

バハムート『…我に何かあるのか?』

戦士「俺の師匠…!お父さん!大戦士師匠を殺したのはお前だろうっ!」

バハムート『大戦士…。その名前は、あの時の……』

 
戦士「お前だけは…許さない……!!許せないんだぁぁぁっ!!」グググッ!


バハムート『…』
 

…パッ


戦士「っ!?」

 
…ズブシュッ!!…


バハムート『…』


ポタッ…ポタッ…… 
 

戦士「なっ……!?」


バハムート『…』

 
武道家「は……」

魔道士「え…?バハムートが、自ら攻撃を受けたの…?」

乙女格闘家「…ど、どうしたのかな」

剣聖少将「あいつ…」


バハムート『…』

バハムート『…せめてもの、償いだ』


戦士「つ、償いだと!?」


バハムート『大戦士は君の師匠とし、親だったのか。それはすまないことをした』

バハムート『その一撃は、君の哀しみとして、君の気持ちとして受け入れよう』

 
戦士「そんな戯言を……!」

バハムート『だが、戦いでの決着という以上、それは仕方ないことだと思わないか』

戦士「…ッ!」


バハムート『…いいだろう。君がここのフィールドが少し早いという言葉は撤回させてもらう』

バハムート『その全力をもって、かかってくると良い。そして我も、その気持ちに応え…相手をしよう』

 
戦士「な…に……っ!!」ギリッ


バハムート『…それが君に対しても、大戦士に対しても償いになるだろうと思う』


戦士「良いさ…!やってやるよ…!!後悔すんなよ……!!」

 
剣聖少将「……待て!戦士っ!!バハムートも!!」バッ!


戦士「!」


剣聖少将「その言葉は有難いが、バハムート…。お前がそこまでの知性と想いが分かるなら、分かって欲しい」

剣聖少将「若き者を先に逝かせるわけにはいかないんだ。そいつと戦わせるわけにはいかない」

剣聖少将「そして戦士も落ち着け。お前に出来る戦いじゃないのは、分かっているだろう」


バハムート『…』


戦士「…っ!」

戦士「…」

戦士「…めです」ギリッ


剣聖少将「む…」


戦士「ダメです!それは従えません!俺が、俺自身で!バハムートに一矢報いたいんだ!」

 
剣聖少将「…やめろと言っているだろうがっ!!」

戦士「…!」


剣聖少将「お前では、あいつに勝てない!」

剣聖少将「お前が自分で自分を失っては、大戦士もあの世で満足に笑えないだろう!」


戦士「…っ」

戦士「……ッ!」

戦士「……そ、それでも!ここで、敵に会ったことは…偶然なんかじゃないからっ!!」

…グワッ!!!
 

バハムート『…その気持ち、しかと受け取った』

戦士「あぁぁぁっ!!」

…ビュオオッッ!!!

 
バジリスク『…命までは取らぬ。その師の為に、命を紡ぐといい』

剣聖少将「この…馬鹿野郎が……」


戦士「倒れろぉぉぉっ!!」




……ザシュウッ!!!ドシュッ!!!……




戦士「…」

バハムート『…』

戦士「…」

バハムート『…』

戦士『…』

バハムート『…』

>>788
先生、バハムートさんのセリフを別の人が言っています!

 
戦士「…」

戦士「……がっ……!!」


ブシュッ……ドシャアッ……!!


剣豪「せ、戦士っ!!」

武道家「戦士ッ!」

魔道士「戦士!」

乙女格闘家「戦士っ!?」

剣聖少将「…」


バハムート『…脚の腱に、魔力を打ち込んだ一撃を与え、切り裂いた』

バハムート『その両足は歩けることはあっても、二度と戦えぬ身体となろう……』

 
戦士「がっ…!!ぐ、ぐぅ゛ぅ゛う゛っ…!」ズキンズキンッ!

戦士「お、俺の脚が…!あし…!あっ……!!俺の…脚…!!!」ブシュッ…!


剣豪「し、しっかりしろっ!!戦士ィっ!!!」


バハムート『…戦士を連れて下がれ。今ならまだ、命は助かるはずだ』


剣豪「くっ…!」


バハムート『…』


剣豪「……せ、戦士、行くぞ!」

戦士「く、くそぉぉぉぉっ……!!うあああああっ……!!!」

戦士「…っ!!」


ザッザッザッザッザッ………

……………
………

 
剣聖少将「…」

剣聖少将「……はぁ。味な真似もするじゃないの。」ポリポリ


バハムート『…』

剣聖少将「…」

バハムート『…』


…チャキッ

剣聖少将「…若者ばかり。そろそろ、俺の出番っちゅーことだ」

バハムート『やはりこうなるか…。それでは、相手をしよう…』スッ

剣聖少将「おいおい、人間の姿のままでいいのか?」

バハムート『本気でやっては、全てが廃墟になりかねないと言っているだろう』

剣聖少将「そのくらいなら、俺も出来るんだけどな」

バハムート『…兎に角、先ずはこのまま戦えってもらおう。実力差が分かるはずだ」

剣聖少将「後悔すんじゃねーぞコラァ!」

 
バハムート『…来い』

剣聖少将「いくぜぇっ!!」

ダダダダダッ…ガキィインッ!!!


武道家「…っ」

魔道士「ど、どうなっちゃうんだろ……」

乙女格闘家「少将さん…勝って……!」


…………
………

本日はここまでです。

>>789
ご指摘、有難うございます。
>>788
バジリスク→バハムートの間違いになります。

本日の更新で時間がなく、いつものように修正後にアップではなく
更新と修正を目視入力してたので、申し訳ないです。

それでは、有難うございました。

皆さま有難うございます。投下致します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央軍本部 第四集中治療室 】


神官「…っ」

カチャ…カチャ…パァァッ……


剣士「…」


神官(…何て酷い傷だ。しかもこの傷のつなぎ目…一体何で切り裂いたんだ…?)

神官(縫合できるはずの魔法の糸を受け付けないし、魔法治療具の魔力が弾かれる…!)

神官(何か、特殊な魔術式を打ち込んだように…傷つけられたみたいだ…)

神官(くっ…!剣士くん…!)

 
剣士「う……」モゾッ

神官「!」

剣士「ここは……ど…こだ……」

神官「…集中治療室だよ!今、剣士くんの腕を治療してたから…!」

剣士「うぐっ……!」ゴホッ


神官「剣士くん、辛いだろうけど…教えてほしいんだ!この傷は一体どうやってつけたのか…」

神官「治療用の魔法糸、どの種類でも縫合が効かないし、治療用の道具が受け付けないんだ…」


剣士「そ、それ…だ……」


…ギラッ


神官「それって…」

神官「た、大剣……!?」

 
剣士「自分で…つけ…た。エルフの…魔力の血が…打ち込んで……」

神官「!?」

剣士「う……」ガクッ


神官「…剣士くんっ!」


神官(い、いま確かに、エルフ族の大剣で切り裂いたと…!)

神官(だからか…!特殊な術式で打ち込まれた剣の傷だから、どの施術も受け付けないんだ!)

神官(ど、どうすればいいんだ…。エルフ族に術式の話を訊きに行く…?)

神官(ダメだ!そんな時間はない…。遅すぎたら、腕が動かなくなってしまうかもしれない!)

神官(冷凍させれば…。いや、そんなことで無事に動く確証はない…)

神官(ど、どうすれば……!)


コンコン…ガチャッ!!

 
治療員「失礼いたします!…っと」

治療員「既にこの部屋は使われておりましたか、失礼いたしました!」


神官「…また重症の急患だね。大丈夫、気にしないで」

神官「……って、待って!ハッ


戦士「ぐぅぅ……」ズキズキ

神官「せ、戦士…!?」

戦士「し、神官…さん……!?」

神官「戦士、まさか…!そ、その脚の傷っ!」

戦士「はは…ドジっちゃって……!くっ…そぉぉお……!」ズキンッ!!

神官「治療員さん、その人はココで大丈夫!僕が見る!」


治療員「い、いや…しかし、既にそこに別の患者が…」

神官「いいんです、任せて下さい!」

治療員「…わ、わかりました」

 
ガチャッ…バタンッ……


神官「戦士!」バッ

戦士「うぐっ…。そ、そこに寝てるのは…け、剣士さん…ですか……」

神官「…っ」

戦士「俺より先に…まず…そっちを……」

神官「…どっちがどっちはないよ。今、隣に運ぶから」

ガラガラッ……


神官(せ、戦士まで、こんな…!)

神官(剣豪や、みんなは無事なんだろうか…!)

神官(い、いや。きっと大丈夫だよね。僕は今、僕に出来ることに集中する!)ギラッ

 
神官「…」フゥゥッ!

神官「…落ち着け、僕。よし…戦士の傷から消毒して、先に怪我の応急処置だけ済ますよ」

神官「上級魔法糸をセット。戦士の傷口が化膿する前に、止血剤とヒーリングの…」スッ

…パキャアッ!

神官「うわっ!?」

戦士「ぐっ!?」ズキッ


神官「ま、魔法糸を弾いた…!?」

戦士「…っ!」

神官「剣士くんと同じ…。もしかして、戦士!君の傷も、何か魔力を受けて…?」

戦士「竜族に…魔力を…打ち込んだ…一撃を……」

神官「!」

 
戦士「ははっ…!脚が全く……動きません……!」ギリッ

神官「そ、そんな!」

戦士「冒険者として…終わり……ですかね……」

神官「り、竜族の魔傷だって…!?」

戦士「…っ」


神官「…ど、どうすればいいんだ」

神官「ち、治療方法なんて聞いたこともない…!」

神官「…っ!!」

神官「なんて…無力な…」ヘナッ

神官「剣士くんも…戦士も……!」

神官「僕に出来ることは…ないのか……っ!」

 
剣士「…」


…ポロッ…

キィーン…!カランッ…カランカランッ…


神官「今、剣士くんのポケットから何か落ち……」スッ

神官「…」

神官「な、何…これ…!」ゾワッ


戦士「…」

戦士「…そ、それ…は……!」


神官「戦士、これが何か知ってるの!?」

 
戦士「く、黒魔石……!」

神官「黒魔石!?」

戦士「し、衝撃や魔法を吸収し…て……しまう…こちらにはない…魔石で…す……」

神官「魔界のものってこと…?」

戦士「は…い……」


神官「…」


…パァァッ!…


神官「あれ…黒魔石が光って……」

戦士「…!」

 
神官「…せ、戦士の傷も…仄かに光ってる!?」

戦士「な…んで……」


神官「…」

神官(…衝撃や魔法を吸収する魔石って言ったっけ)

神官(この戦士の傷の光は、恐らく放出系のもの)

神官(…ということは…まさか…)


戦士「…?」


神官「…そ、そうかっ!」ハッ

 
戦士「どうか…したんですか……」


神官「…戦士」

神官「このまま放っておけば、脚は動かないままだと思う」


戦士「そう…です…よね……」

神官「だけど、その魔の傷だけは治せる可能性を見出した」

戦士「どういう…ことでしょうか……ごほっ……!」


神官「…僕は、今から卑怯なことをしようと思う」


戦士「ひ…きょう……?」

神官「君に、僕の友達のため、世界のため…実験台になってもらうってことなんだ」

戦士「…どういうことか…教えてください……」

 
神官「…黒魔石の特性を生かす。」

神官「この感じとしても恐らく、放出された魔力を中心にして反応し、それを吸収するんだと思う」

神官「だから、君の傷に宿った魔力を吸収すれば、その治療も上手く進むはず」

神官「だけど、危険がないわけじゃないし、僕もしたことはない」

神官「…どうなるかは運次第。治験体のようにして進める。だから君が…決めてほしい」


戦士「はは…。そういうこと…ですか……」

戦士「俺で…成功したら剣士さんに…。つまり、俺で…試すと……」

 
神官「…」コクン


戦士「…」

神官「…」

戦士「…」

神官「…」


戦士「…卑怯ですね」

神官「…わかってる」

戦士「ちが…いますよ…。そんなこと言われたら……拒否する理由がないから……」

神官「!」

 
戦士「剣士さんしか…」

戦士「剣士さんしか…!この戦場はきっと…もう、戦える人はいない…から…!」ブルッ

戦士「戦えるのは、剣士さんだけって分かってるから…!」

戦士「あとは…」

戦士「……お願いしますっ……!」

…ガクンッ

戦士「…」スゥッ


神官「…あっ」ブルッ

神官「ありがとう、戦士…っ!」ギュッ

 
…スッ

神官「あと、僕は…僕に出来ることを…全力でやるだけ…!!」

神官「絶対に成功させる」

神官「…絶対に」


…………
……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央都市 】


…ガキィインッ!!ビリビリッ…!


剣聖少将「…まだ、本気を出さないっつーのか?おぉ?」

バハムート『…早い。単純な速度では、我に遅れをとっていないな』

剣聖少将「だから言ってんだろうが…。そんなナメた真似してていいのかってな!」

バハムート『ふむ……』


武道家「す、すげぇ…。親父さん、あんなに強かったのか……」

魔道士「凄い…!」

乙女格闘家「が、頑張れぇっ!」

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央都市 】


…ガキィインッ!!ビリビリッ…!


剣聖少将「…まだ、本気を出さないっつーのか?おぉ?」

バハムート『…早い。単純な速度では、我に遅れをとっていないな』

剣聖少将「だから言ってんだろうが…。そんなナメた真似してていいのかってな!」

バハムート『ふむ……』


武道家「す、すげぇ…。親父さん、あんなに強かったのか……」

魔道士「凄い…!」

乙女格闘家「が、頑張れぇっ!」

 
剣聖少将「…今更、俺の強さに気付きやがったのかガキども!うははは!」


武道家「い、いや…強いのは知ってたスけど。まさかそれほどとは……」

乙女格闘家「凄いパワーもあるのが分かるのに、私たちより早く動けてるし…」

魔道士「剣士みたく、大剣っていう大剣じゃなくて普通の剣武器で…そこまでの力が…」


剣聖少将「…俺のいた前線は、今回のような前線区に近いところだったからな」

剣聖少将「元々、純粋な力はあったが、そこでは危険指定種の魔獣がうじゃうじゃいやがった」

剣聖少将「出来るだけ軽い装備で相手を翻弄し、戦う。無論、切り落とすには力を加える」

剣聖少将「俺はそれが当たり前だった。歳とってからも、そんな場所だったしメキメキと経験だけは伸びてったぜ」


武道家「…!」


バハムート『…なるほどな』

 
剣聖少将「…見た目より、繊細な戦い方するんだぜ俺は!」バッ!

ダダダッ!!ビュオッ!!

バハムート『…それは少し意味が違うのではないか?』

…ガキィンッ!!


剣聖少将「どっちでもいいっつーの!」

バハムート『…』


剣聖少将「…剣撃乱舞!!」

バッ…バババッ!!ビュオォォッ!!

バハムート『…』

ガガガガキィンッ!!ガキィンッ!!

 
剣聖少将「足元がお留守だ!」

…ビュオッ!!

バハムート『…』

ガキィインッ!ビリビリッ……


剣聖少将「…っ!」

剣聖少将「かってぇなチクショウ!何が防御力は皆無だよ!」

剣聖少将「素足を打ち込んでも、ビクともしねえじゃねえか!」


バハムート『魔力を具現化し、その剣術による物理攻撃を防いでいるのだ』

バハムート『いくら我でも、相当な集中力を要するものでね。それだけで本気ではないと思ってくれ』


剣聖少将「…よく分からなねぇな!硬いものなら、それを切り裂く力があればよぉ!!」

 
バハムート『…』

剣聖少将「…どりゃあああっ!!!」

ビュッ…ゴォォッ!!ガッキィィンッ!!!

バハムート『無駄だ』

剣聖少将「…もう一丁ッ!!」

ビュッ…!!ガキィンッ!!

剣聖少将「…くそっ!」


バハムート『…威力が不足している限り、どうしようもない!』ググッ

剣聖少将「!」


武道家「なっ…!あ、あれは!」

乙女格闘家「…武術の闘気の構え!」

魔道士「バハムートが、闘気を!?」

 
バハムート『……発ッ!!』グワッ!!

ゴッ!!ブワッ!!

剣聖少将「のああぁぁっ!?」

ビュオオオッ!!ビリビリッ……!


武道家「うおっ…!」ビリビリッ

魔道士「離れてるこっちまで、バハムートの力が…!」ググッ

乙女格闘家「私たちの気とは全然違う…!これが竜気…!」バチッ


バハムート『…ふんっ!!』

ビュッ…ズンッ!!

剣聖少将「ぐおっ…!!」

 
ズッ…ズドォォォンッ!!ズザザザァ…!ゴロゴロッ……


武道家「お、親父さんっ!?」

魔道士「少将さんっ!」

乙女格闘家「す、凄い一撃をモロに……!」


バハムート『…』フゥッ

バハムート『竜気を宿した一撃の拳だ。威力のある攻撃とは、こうするものだ』


剣聖少将「…」


武道家「…お、おい。親父さん、動かねぇぞ…」

魔道士「ま、まさか……!」

乙女格闘家「し、少将さんっ!!」

 
バハムート『手ごたえは深い。普通の人間ならば内臓をも吹き飛ばし……』

…ムクッ

剣聖少将「…いってぇなコラァ!!」クワッ!

バハムート『…!』


武道家「…元気っぽいぞ」

魔道士「えぇ……」

乙女格闘家「さ、さすが剣士のお父さん…」


バハムート『…どうして立ち上がれた。さすがに、少し驚いたぞ』


剣聖少将「あ゛~…」コキコキ

剣聖少将「オメーがやってたことだろうが」ゲホッ

 
バハムート『我が……?』

バハムート『…』

バハムート『まさか…』


剣聖少将「オメーほど上手く魔力は練れねぇが、魔力の具現化した防御ってやつだ」

剣聖少将「あんなバスバス攻撃を受けてくれれば、その仕組みくらいは分かるっつーの」


バハムート『…なるほど。戦闘の中で成長出来るか』


剣聖少将「…」ニヤッ

剣聖少将「だが、完璧じゃねぇからな……。ちょっと……」

…フラッ

剣聖少将「くっ…!」

ガクッ!

 
武道家「親父さんっ!」

魔道士「膝をついた…!」

乙女格闘家「…っ」


バハムート『…その一撃を受け、ただのダメージに抑えたことだけで賞賛に値する』

剣聖少将「くそっ…!褒められてるんだか、けなしてるんだか…!」

バハムート『…』


剣聖少将「ひ、ヒール……!」パァァッ

剣聖少将「…」シュワシュワ

剣聖少将「……うっし!」

剣聖少将「別に切り傷で直接受けたわけじゃねーし……」

剣聖少将「魔傷じゃなけりゃ、物理打撃ならヒールでいくらでも修正が効くな」

…スチャッ


バハムート『…戦いの技術は、相当なものだな』

  
剣聖少将「はぁ…バハムートよ。いい加減、退いちゃくれないか」ボリボリ

バハムート『出来ぬ相談とは分かっているだろう』

剣聖少将「お前にゃ、想う心もある。それがあれば、違う道だってあるだろう」

バハムート『…共存しようというのか』

剣聖少将「お前が言ってくれれば、そうなるんじゃないのか」

バハムート『無理だ。我にそれほどの力はない』


剣聖少将「…なんでだ。どうしてそれほど、こちら側へ固執する」

剣聖少将「お前だって、魔族としての同胞が失われるのは哀しいことなんだろう」


バハムート『…』

 
剣聖少将「無益な争いなど…ただの犠牲を生むだけだぞ」

剣聖少将「お前は、こんな戦いは望んでないんだろう?犠牲は、哀しむものだとお前自身で……」


バハムート『…!』

バハムート『そ、それは分かっていると言っているだろう…!』


剣聖少将「!」

バハムート『…だが、従わねばならぬ理由がある』

剣聖少将「その、魔族の王…アリオクとやらか」

バハムート『…主の言い分は絶対なのだ。それに抗うことは出来ぬ』

剣聖少将「…どうしてだ」
 

バハムート『…気にする必要はない』

バハムート『お前たちが降伏すれば、それですべては終えるのだから』

 
剣聖少将「魔族の王、アリオク。」

剣聖少将「それに従うバハムート。争いが無益だと思ってもやらねばならない理由…。」

剣聖少将「…」

剣聖少将「…どこか繋がるな」


バハムート『…』


剣聖少将「…戦いの中で、お前の攻撃には邪念らしい邪念がない」

剣聖少将「それよりも…辛さ。何か、背負うものを感じる」


バハムート『…』


剣聖少将「…この戦い、終わらせることが出来るなら終わらせたいと思うのは一緒のはずだ」

剣聖少将「どうだ…。理由を話せねぇか?』

 
武道家「…」

魔道士「…」

乙女格闘家「…」


剣聖少将「…こうしている間にも、お前の同胞と俺の部下は命を落としていっているんだ」


バハムート『…』

バハムート『…さっきも言ったはずだ。お前に話す理由はない……!』

バハムート『はぁ……っ!』

ピカッ…!!


剣聖少将「!」

 
…ズドォンッ!!ミシミシッ…!!

ォォォ…オォォ……ォォ……!!


バハムート『……いい加減、犠牲も増えていく…!もう、容赦はせぬ……』


武道家「竜に戻りやがった!」

魔道士「ここからは本気ってこと…」

乙女格闘家「…剣士のお父さん、大丈夫だよね…」


剣聖少将「…本気になるか。いいぜ…受けて立つ!」チャキッ

バハムート『我が炎に焼かれ、悶え死ぬがいい…!』

剣聖少将「…そんな終わりはゴメンだな!どうせなら、好いた女の腕の中で逝きたいもんだ!』チャキッ

バハムート『…その願い、敵わぬこと…己を呪え!』

剣聖少将「…やなこった!」


ダッ…ダダダダッ!!!ガキィィンッ…!!!

 
バハムート『…ッ!』

剣聖少将「くっ……!」


ガキィンッ!!バキィッ!!

ザシュッ…!

バスッ…!

……

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 中央軍 第四集中治療室 】


神官「…」


…パチンッ


神官「…」

神官「…」

神官「で、でき…た……!」

 
剣士「…」

戦士「…」


神官「やった…!やったよっ!!剣士くんに、戦士…。治療施術…終了っ!!」

神官「…っ!」

神官「剣士くんの腕は…完璧に戻った!戦士の命も…救えた…!

神官「よし…!よぉぉおっし…!!」グッ!


戦士「う…?」パチッ

神官「…あ、戦士!目が覚めた?」

戦士「終わったん…ですか……」

神官「…うん。戦士も、剣士くんも。命に別条はないし、剣士くんは腕もつながったよ…!」

 
戦士「…」 
 
戦士「…"剣士くん"は?」


神官「あっ……」ハッ


戦士「ち、ちょっと待って下さい…。俺の脚は……!」バッ

戦士「…」

戦士「…!」 

戦士「…な、なぁんだ!あるじゃないですか!」ハハハッ


神官「…っ」


戦士「びっくりさせないでくださいよ。ち、治療が終わったなら…すぐに行かないと…」

ググッ……ガタァンッ!!!

戦士「いっ…!」

 
神官「…っ!」

戦士「…はは。ご、ごめんなさい。ちょっとまだ上手く動かないみたいで…」

神官「…せ、戦士」

戦士「い、今立ちますよ。待って下さい…」

ググッ…!

戦士「…ッ!」ギリギリッ

…ドシャッ!


戦士「あ、あれ?おかしいな…。僧侶さんに治して貰ったんだから…すぐに立たないと…!」

グググッ…!

 
神官「戦士…!」

戦士「待って下さいって!今…!」

神官「戦士っ!!話を聞いてくれっ!!!」

戦士「!」


神官「き、君の脚は…。魔の傷の前に、その傷は腱を削り取られ、もう…動かないんだ……!」


戦士「…ッ!」


神官「…今の君の脚は、魔具のボルトを差し込んである」

神官「それが、今の君の身体を支えている。本来ならその両足…切り取ってもおかしくなかった」


戦士「…っ」

 
神官「たまたま、今日という日。この場所へ最新の治療用の道具が集まっていたこと」

神官「魔具を打ち込めるよう、黒魔石がたまたま手に入ったこと」

神官「…僕が優先的に処理できたこと」

神官「それだけで、その脚が繋がったことを分かって欲しい」

神官「だけど、君がどんな気持ちかは分かる…。痛いほど……!」

神官「だから……!」


戦士「僧侶…さん……」

神官「ごめん…」

戦士「…」

神官「ごめんっ……!!」

 
戦士「…」

戦士「…僧侶さん。俺は、もう歩けないのでしょうか」


神官「…君に施術した魔具のボルトは、その肉体が徐々に浸透していく」

神官「その後、体内の魔力を利用して、いずれ松葉杖くらいでは動けるようになる…はず」


戦士「…つまり」

戦士「それは、歩けるということ。今まで通り戦える可能性があるってことですよね…?」


神官「治療者の観点から言えば、前例がない以上…絶対とはいえない」

戦士「…僧侶さんからの観点からで言うと」

神官「動ける…。戦える。そう信じてる」


戦士「…なら、問題ないですね」ニカッ

神官「戦士…」

 
戦士「俺は、諦めないですよ!まだまだ、この脚には頑張ってもらわないといけないんで!」パンッ!

神官「戦士……」

戦士「…リハビリってやつでしたっけ。それをすればいいんでしょ!」

神官「…」

戦士「なら余裕です!大戦士さんの修行のほうが辛いくらいでしょうしね…はは…」

神官「はは…」


戦士「…」

戦士「…ごめんなさい」


神官「え?」


戦士「さっき倒れたりしたのは、子供のようでした」

戦士「実は目覚めた時から動かないのは分かってたし、斬られた時にどうなるかなんて…分かってた」

戦士「だけど…。どうしてもあんな風にしないと…気が済まなかったんです……」ブルッ


神官「…っ」

 
戦士「…俺は納得しました。ですが僧侶さん、剣士さんは…どうなってるんでしょうか」

神官「剣士くんは、今そこに寝てるけど…両腕も無事に施術は終わってるよ」

戦士「…よかった」


神官「黒魔石で、傷にあった魔力を吸収することにも成功したし、傷自体はすぐに治せるものだったからね」

神官「最新の治療技術なら、身体の部位がきちんと残っていたなら、施術自体は簡単にいくしね」


戦士「…」

戦士「…あれ?」


神官「だけど、剣士くんの傷の深さは、すぐ動けるようなものじゃないんだけどー……」

戦士「…そ、僧侶さん?」

神官「どうしたの?」

戦士「剣士さん、寝てませんけど……?」

 
神官「…」

神官「えっ?」クルッ


戦士「……ほ、ほら」


…シーン…


神官「…」

戦士「…」


神官「…た、大剣は!?」バッ

戦士「な、ないですよ!」


神官「ま、まさか…!」

戦士「今、話してる最中に……」


………
……

本日はここまでです。有難うございました。

皆さま有難うございます。
投下致します。

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

…ブシュッ!

剣聖少将「ぐはっ……!」

バハムート『…』


ポタッ…ポタッ……


剣聖少将「ま、参ったね……」フラッ

バハムート『諦めろ。所詮、人間の力では我が力を打ち破ることなど出来ぬ』

剣聖少将「だ、だが…!貴様を葬らねば、人間の未来に明日はない!」

バハムート『…何を格好つけても、結果は変わらぬ』

 
剣聖少将「た、確かにな。お前と俺とじゃ、決定的な差がある……」

バハムート『…』

剣聖少将「だが、俺らにゃ俺らの意地がある。俺がトップとして、諦めるわけにはいかねえんだよ!」

バハムート『…まだ挑むというのか』

剣聖少将「おうよ…!当たり前じゃねえか!!」チャキンッ!!


タァンッ!…ズザザァ!


剣聖少将「ん…」


…バッ!

中尉「…剣聖少将殿!」

少尉「お待たせいたしました!」


剣聖少将「お、お前ら!?」

 
中尉「剣聖少将殿はまだ、逝ってはいけません!」

少尉「ならば、自分たちが代わりに戦います!」

剣聖少将「…引っ込んでろ!お前らが戦える相手じゃねえ!」


バハムート『…茶番とは言わぬぞ。戦いたくば、来るがいい』


中尉「…茶番と言葉にして言っているだろうが!」ダッ!

少尉「少将殿!せめて、自分たちの中に勝機を見てくれれば…っ!」ダッ!

ダダダダダダッ…!!!


剣聖少将「よせっ!!」

 
バハムート『…お前たちでは遅すぎる』

…グォッ!!ズバズバァンッ!!


中尉「がっ…!」

少尉「ぐっ…!」


…ドシャドシャアッ…!


バハムート『何と意味のないことを。負けると分かって突っ込むのは、勇気とは違うー……』

バハムート『…!』ハッ


タァンッ…ビュオオオッ!!


剣聖少将「…っだらあああああ!!」


バハムート『…何っ!二人に隠れて…!』

 
…ズブシュッ…!!


バハムート『…ぬぐッ!!』


剣聖少将「…くっ!頭に刺さったか!?」

ゴロゴロゴロ…ズザザァ……!バッ!


武道家「や、やったのか!?」

魔道士「バハムートの頭に剣が刺さった!?」

乙女格闘家「ち…違うよ!よく見て二人とも!」


バハムート『…ッ!』

ポタッ…ポタッ…

 
剣聖少将「ちっ…!」


バハムート『…惜しかったな』

ズボッ…カランカランッ……


剣聖少将「あの状況から…顔をそらしたのか……」


バハムート『…片目など、時間もたてば再生する。どのみち、我の頭部は防御が最も硬い』

バハムート『防御の薄い眼球に刺さったことを幸運と思うがいい』


剣聖少将「部下の二人を犠牲にしたっつーのに……!!」ギリッ


武道家「…」

武道家「…ん!?」ハッ

武道家「……お、親父さん!」


剣聖少将「なんだ!」

 
武道家「少尉と中尉…!生きてるぞ!」


少尉「ご、ごほっ…!」

中尉「ゲホッ…っ!」


剣聖少将「い、生きてる……?」


バハムート『…』


剣聖少将「バハムート…お前……」

 
バハムート『…今の戦いは我とお前の戦い。他の命、容易く奪うまではせぬ』


剣聖少将「くく…。そういうなら、最初の一撃で何人も殺さないでほしかったのだがな」


バハムート『あれは我らの軍の命を守るための、必要な一撃だ』

バハムート『だが元々、あのようなことも我のするべきことではないのだろうが…』

 
剣聖少将「…やっぱり変だぜ、お前。血の通った…あったけー奴なんじゃねーのか」

バハムート『ははは…。大勢を殺し、それのどこが温かいか』

剣聖少将「…」

バハムート『……見ろ。この状況を!』バッ!


………
……

…ワァァァッ!!

魔族兵たち『…はははー!』

人間たち「ぐああっ!」ズバァンッ!

魔族兵たち『や、やめろぉぉ!』

人間たち「死ねっ!!友の敵だぁぁ!」


ガキィンッ…バシュゥッ…!!ドゴォンッ………!

……
………

 
バハムート『魔族、人間。どちらも…多くの命が今も奪われていっている!』

バハムート『…これを率いたのは、まぎれもなく我だ。今更、後戻りも出来ぬのよ…!』


剣聖少将「そんなことを言えば、俺だって一緒だろうが」

バハムート『…お前の行動は、守る為のことだ。お前と我は違う』

剣聖少将「犠牲のもとに、勝利を得る。戦争を受け入れた時点で、何も変わらん」

バハムート『…その犠牲は、我らが起こしたせいだろう』

剣聖少将「…戦いを受け入れた時点で、俺とお前は一緒なんだよ」


バハムート『…我々は、エルフ族を生贄にしてこちらの世界の自由を手に入れた』

バハムート『そのうえで配下は人とエルフ族を殺し、遊び、快楽を得た…』

バハムート『親をなくし、子をなくし、故郷をなくし、その全ては我らがしたこと…』

バハムート『その魔族を率いたマスターのうち、我もそれにあたる。それでも、温かいと言うのか…!?』

 
武道家「…っ」

魔道士「…」

乙女格闘家「…」


剣聖少将「…」

剣聖少将「……温かい」


バハムート『!』


剣聖少将「…俺は、お前の中にわずかな温かさ…優しさの火を見た」

剣聖少将「それがどんな小さな火でも、俺は見つけりゃそれに油を注いでやる」

剣聖少将「…小さな火なら、でかくさせてやりゃいい。お前はそれに値すると思っている」


バハムート『くっ…!くははっ…!バカなやつだ…!』

 
剣聖少将「…だがな、バハムート」

バハムート『…』

剣聖少将「ちっとお前はやり過ぎた。その報いの一撃だけは、受けないといけねぇとな」ニヤッ

バハムート『…報いの一撃だと』
 
剣聖少将「…意外と、報いっつー天罰はちゃんと降ってくるもんなんだぜ?」

バハムート『ふっ…。確かに、天罰というものがあれば我にー……』


ゴォォォ…!!

ヒュオンヒュオンヒュオンッ!!!


……ザシュウッ!!……


バハムート『がはッ!?』

 
武道家「な、何だぁっ!?」

魔道士「ば、バハムートに剣が刺さって…っていうか…!」

乙女格闘家「あ、あの大剣って…!」


バハムート『…っ!』

ドクッ…ドクッ……


剣聖少将「…見ろ。報いはこうして飛んでくるもんなんだぜ」ハハハ!


バハムート『ゲホッ…!』ドクッ…

バハムート『こ、これは……!』バッ



……
………
 
剣士「…どうだクソ竜ッ!…!想いの籠った大剣の一撃はよっ!!」

………
……

 
武道家「…剣士っ!?」

魔道士「け、剣士っ!?怪我は…!」

乙女格闘家「り、両腕がきちんとついてるよ!」


タァンッ!!クルクルクル…スタッ!


剣士「…うむ。身体の調子はすこぶる良好!」

剣士「最初は魔創傷とか言われて、両腕がつくか分からなかったんだが…」

剣士「拾った黒魔石が役にたってな、あとは簡単な治療で終わったんだ」ニカッ


武道家「デュラハンの時のか!」


剣聖少将「……ったくよ!おせぇぞクソ息子!」

剣士「うるせぇぞクソ親父!」

剣聖少将「はは…はははっ!」

剣士「はっはっはっ!」

 
バハムート『…お前は、剣士か』

…ジュワッ

バハムート『ぐおっ!?』シュウウッ
 
 
剣士「…いてぇだろ。お前、こんな一撃…食らったことないんじゃねえのか」

バハムート『こ、これは…っ!』


ジュウウッ…!


バハムート『これが例の大剣か……!』

バハムート『な、なるほど…!この大剣…特別な魔術式を……!』ゴホッ!

 
剣士「…報いの一撃だ。その痛み、味わいやがれ!」


バハムート『…ッ!』


…ガシッ!グググッ……!!


バハムート『…ぬんっ!』


ズボォッ!!ボタボタッ……

ブンッ…ガランガランッ…!!


バハムート『いい…攻撃だったぞ……!』

 
剣士「…」

ザッザッザッ…スチャッ


剣士「…俺の実力だけじゃ、到底お前らを倒せないことは分かってる」

剣士「だから、俺はみんなの力を借りても…戦う」

剣士「俺は自慢じゃないが、誰よりも我がままで…誰よりも卑怯な人間なんだろうよ」

剣士「それに…誰よりも負けず嫌いさ」ニヤッ 
 
 
バハムート『…使えるものを使い、戦いに勝利するのは普通のこと…』

バハムート『誰が卑怯と、誰が使うなと言うものか……』

 
剣士「そりゃ有難い。んじゃ、俺の出番っつーことっしょ!」コキコキッ

武道家「お、おい剣士!」

魔道士「剣士…。腕、大丈夫なの…?」

乙女格闘家「ちゃんとくっついてるの…?」


剣士「おうよ。不思議と傷も痛まねえし…。エルフの爺ちゃんの武器のおかげかもしれねえぞ」

剣士「…まぁ、自分自身で大剣の強さは嫌というほど味わったが」ハハ…


バハムート『…』

バハムート『…人とエルフ族は、いがみ合っていると聞いていた』

バハムート『だが、どうやら少し違うらしいな…。剣士とやら、お前はエルフ族の信頼を得ているのか』

 
剣士「…信頼?」

バハムート『…』


剣士「…どうだろうな。ただ、俺は運命に流されるままに、平和のために…」

剣士「ただただ、戦うと決めただけさ」


バハムート『…』


剣士「そのことで、エルフ族が認めてくれた。」

剣士「それで、みんなが着いてきてくれた。」

剣士「そして、今。俺はこうしてみんなの為に、戦っている…。」

剣士「偶然だろうが、運命だろうが。…ま、考えるだけムダだ」

剣士「とにかぁぁく!俺は今!お前を…倒すだけだ!!」ビシッ!


バハムート『なるほど。真っ直ぐな心か』


剣士「…」

 
バハムート『…お前の思う通り、お前の傷は、その武器から発せられた魔力によって治癒を早めているのだ』

バハムート『自らもそれを味わっただろうが、それで強さは充分にわかったはず』

バハムート『何という武器…道具よ。それを造ったのは、さぞや名のある鍛冶師なのだろう』

バハムート『それを扱う男として、お前を心から認めたい』


剣士「…」


バハムート『……バジリスクでは勝てぬわけだ』

バハムート『お前のような男が、その武器を手にし、あのバジリスクが勝てるわけがないか……』


剣士「…武器のおかげっぽい言い草だな」

剣士「それは俺をほめてるのか、バカにしてるのか微妙なところだな、オイ」


バハムート『自分の力でそれを手に入れ、その力を見事に使いこなしている。ほめているのだ』


剣士「…そうかよ」

 
剣聖少将「…さて、横槍を入れるが…バハムート!」

バハムート『…何かな』


剣聖少将「無駄話はここまでにしよう。わずかな時間でも、戦いの犠牲は増えていく」

剣聖少将「…それとも、お前が戦うことをやめてくれるというのなら、これ以上のことはないがな」


バハムート『はは…そうだったな。我が時間も惜しいと言っておいて、話をするとは…すまない』

バハムート『このバハムート…!"竜族の王"とし、全身全霊をもって相手をしよう…!』


剣士「な、なんだと!?」

武道家「竜族の王っ!?つ、つえぇはずじゃねえか!バジリスクすら従えてるのか!?」

魔道士「そういえば、竜族は繁栄種族って言ってた…!」

乙女格闘家「あ、あんなのがうじゃうじゃいるって…!」

 
バハムート『…では、改めて!全身全霊を持って…相手をしよう……!』

バハムート『いざ……』スゥゥッ


剣士「…っ」チャキッ


魔道士「剣士…!」


剣士「なぁに大丈夫だ!一瞬でケリはつく…はずだ」ニヤッ


魔道士「…え?」

 
バハムート『…』スゥゥゥッ!

バハムート『……我が炎に焼かれよ』ピタッ

バハムート『がぁぁぁっ!!』ゴッ!!


ゴッ…ゴォォォオォォォォオオッ!!!


剣士「おらあああっ!」

バッ…ビュオオオンッ!!

バスッ…ズバァンッ!!ドゴォオンッ!!!


バハムート『…うぬっ!我が炎を切り裂くとは!』

 
剣士「竜の炎は、俺の相手にならんっ!」ダッ!

ダダダダダダッ…ブォンッ!!

バハムート『早いっ!』

…ガキィンッ!!

剣士「やはり防ぐか!」ビリビリッ


バハムート『この距離ならば……!』スゥゥ


剣士(…来た!)


バハムート『がぁっ!』ゴッ…


剣士「であぁぁぁっ!!」ブンッ!!

…バクッ!!

バハムート『むぐっ!?』ゴクッ

 
剣士「…の、呑み込んだか!?」

バハムート『何を……』


…ドクンッ!

バハムート『ぐおっ!?』


剣士「…っ!」


バハムート『ぬ…!?ぬぐっ…!!』グラッ

ドクン…ドクンッ…ドクンッ……!!


剣士「…き、効いてるのか!?」


武道家「け、剣士!一体、何をした!?」

剣士「…バジリスクの攻撃パターンと同じと読んだんだよ!」

武道家「何っ?」

剣士「俺が近接を振った時、バジリスクは大剣を防いで、炎を吐こうとしたのを覚えてるか!?」

 
武道家「あ、あぁ…!」

剣士「だから、その一瞬を狙ってアレを呑ませたんだよ!」

武道家「あれ?」

剣士「…黒魔石の欠片さ」


武道家「!」

魔道士「!」

乙女格闘家「!」

剣聖少将「…なるほど」


剣士「いくらバハムートといえども、内部からの黒魔石の鋭利での傷は、どうしようもねーんじゃねぇか!?」

剣士「あのタフさもあるし、どこまで効くかは知らねーけどよ…!」

剣士「まさかあの状況で、何か食わせようとするなんてバハムートでも思いつかねーだろうって!」

 
バハムート『…ッ!!』

ドクンドクンドクンッ……!!


剣士「…下手すりゃ、内部で消化もしてるかもしれん」

剣士「もし黒魔石を消化したらどうなるか……!」


バハムート『…が、がぁぁあああっ!』ゴホッ!!

バハムート『ごほっ…!!』

ベチャッ…!!ブシャアッ!!


剣士「血…!ダメージはあるか……!」

武道家「効いてるのか…!?」

 
バハムート『ぐ、ぐぬぅぅ……!!』ググッ
 

剣士「…」
 
剣士「…」ギリッ

剣士「…すまねぇ、バハムート。お前とはもっと、正々堂々と勝負したかったぜ」


バハムート『…っ!』
 

剣士「卑怯な人間と恨め。情けない人間だったと恨め。」

剣士「…覚悟しろ」シャキンッ!


武道家「…」

魔道士「…」

乙女格闘家「…」

 
バハムート『…く…くはははっ!勝利した者こそ…正しいのだ…!』ゴホッ!

バハムート『勝利者が全てというもの…!誰が…恨むものか……!』


剣士「そうかよ。なら…いくぞッ!!」

剣士「…いぃぃぃっ……!!」スゥゥゥ!
 
…パァァァッ!!


武道家「ま、また剣士から光が!」

剣聖少将「大剣が、あいつの心に反応しているんだ…」

魔道士「…剣士」ギュッ

乙女格闘家「剣士…!」

 
バハムート『ぐっ…!』フラッ

バハムート『情けない…!』

バハムート『我が故郷の産物を…上手いように使われるとは……!』


剣士「せぇぇぇっ……!!」グググッ…!!!

パァァッ…!!!!


バハムート『だ、だが……!!』


剣士「のぉぉーーーっ……!!!」ググググッ!!

パァァァァァッ!!!


バハムート『これしきでは、我は負けぬっ!!』

バハムート『ぬぅぅぅううっ!!!』

スゥゥゥゥゥゥッ……ッ!!!

 
剣士「せいやぁぁぁぁああああっ!!!」バッ…

ゴッ…グゥゥゥオオオオオオオオッ!!!!!


バハムート『があぁぁぁああああああっ!!!』

ゴッ…ゴォォォオオオオオオオオッ!!!!


剣士「…ッ!!!」

バハムート『…ッ!!!』


武道家「…巨大な竜炎!?剣士には効かないっつってんだろうがよ!剣士、いけぇぇぇっ!」

乙女格闘家「勝って、剣士っ!!」

魔道士「剣士…っ!」

 
…グォォオオオッ!!

…ゴォオオオッ!!!!

カッ……ドゴォォォォォオオンッ!!!!!


剣士「らぁぁぁぁあああっ!!!」ビリビリッ

バハムート『ぬぅぅううううっ!!!!』ビリビリッ


剣士「…俺が、負けるかよぉぉおお!」グググッ!
 
バハムート『…ッ!!』ググッ

 
剣士「らぁぁぁあああぁぁっ!!」ギリギリッ


バハムート『こ、この打ち合い…!ただの炎ならば…負けていただろう…!』グググッ!!

剣士「何っ!!」

バハムート『だが、我らの竜気…!それを交えた炎との衝突を、エルフ族の魔力では!!』グワッ!!

…グンッ!!

剣士「うおっ…!?」

バハムート『…それだけか、その程度かぁぁあっ!!!』


グッ…ググググッ!!!


剣士「…っ!!」

剣士「ま…負けるわけには…!いかねぇぇんだぁぁぁぁっ!!!」グオッ!!!!


バハムート『…ッ!』

……ピカッ……
 

 
…ドゴォォォォォオオッ!!…

………………
…………
……




……
…………
………………

…パラパラッ………



……サァァッ……

 
武道家「…っ!」

剣聖少将「…な、なんて火力だ…!都市部ぶっ飛ばすつもりかあいつらは…!」

乙女格闘家「け、剣士は…!」

魔道士「…ッ」


…サァァァアッ…


魔道士「…人影!み、見えた!」バッ!

乙女格闘家「どっちも立ってる!?」

武道家「引き分けたのか…?」

剣聖少将「…!」

  
剣士「…」

バハムート『…』

剣士「…」

バハムート『…』

剣士「…」

バハムート『…』


…ヒュオオオッ…


剣士「…バハムート…」

バハムート『…何だ…』

 
剣士「…笑ってもいいよな」

バハムート『構わぬ……』

剣士「…ふっ」ニヤッ

バハムート『よ、よくぞ…ここまで……』ニカッ


武道家「…剣士が勝ったのか…!?」

魔道士「剣士…ッ!」

乙女格闘家「多分…!やったんじゃない…かな…!」

剣聖少将「…」

 
剣士「…」


剣士「ちっ…」


剣士「マジ…かよ……」


剣士「…卑怯なマネまでして…」


剣士「だっせぇ…な……」


剣士「……げほっ!」ブシュッ!


フラッ…!


…ドシャアッ…

 
魔道士「えっ…?」

武道家「は…?」

乙女格闘家「…え?」

剣聖少将「参ったね…こりゃ……」



剣士「…」



バハムート『見事な一撃だったぞ…」

バハムート『だが、まだ…我は倒れるわけにはいかんのだ……!』ゴホッ!!

バハムート『よ、よくぞココまで…!』ゴボッ…!

 
魔道士「…そだ…」ボソッ

乙女格闘家「!」

魔道士「ウソ…だ……!」ダッ!

乙女格闘家「あっ!魔道士ちゃん!」


魔道士「ウソだ…ウソだ…!ウソだよ!剣士っ!」

タタタタッ…!ガバッ!

魔道士「剣士…!起きてよ…!剣士!剣士っ!!」

剣士「…」ユサユサ

魔道士「ウソだよね…剣士!!剣士!!剣士ぃっ!!!」


武道家「さ、作戦こそ完璧なものだっただろうがっ!!なんで倒れないんだよ!!」

乙女格闘家「あそこまでやったのに!それでも倒れないなんて!!」

剣聖少将「俺らの思ってたところよりも、アイツはずっと高くにいるっつーことだ……」ギリッ

 
バハムート『ぐっ…。そ、そうとも言えぬ…!』

武道家「…どういうことだコラァ!俺らをバカにして……!」


バハムート『そういうことでは…ない…!』
 
バハムート『…ぐぬっ!』

…ズブシュッ!!


武道家「じ、自分の胸に手を突っ込んだ!?」


ポイッ…ベチャッ!

ゴォォオッ…!


武道家「な、なんだよこれ……」 
 

バハムート『我が竜族の体内に宿る、炎の核の一部。欠片だ…』

バハムート『これが我が力の源であり、全ての根源……。』

 
武道家「炎の核…!?」


バハムート『…作戦は見事なものだった。』

バハムート『だが、黒魔石を飲み込んだ瞬間、それを核に包んだ』

バハムート『無論、消化もせず、体内の傷もついてはいない…』

バハムート『その上で、あの威力の打ち合いだ…。それをあそこまで耐えるとは…』

バハムート『誰が高みにいると言えるものか……』

バハムート『しかし、体内に入れるだけで身体全体がきしむようだ……』

バハムート『…さすが黒魔石といったところか……』ゴホッ


武道家「…はは、マジ…かよ…」

剣聖少将「…っ!」

魔道士「そ、そんな…」

乙女格闘家「つ、強すぎるよ…!」

 
剣聖少将「…あと、一歩ともいえないな。完璧に…やられたぜ……」


バハムート『…たかだか、人の一人に、ここまで押されるとは思わなかった』

バハムート『最後の一撃の勝負、我が思った以上の攻撃だったぞ…』

バハムート『我が渾身の一撃を受け切ったこと…。素晴らしいの一言だろう……』

バハムート『だがこれで、戦いは終わりなのだ…!お前たちの負けを認め、諦めるがいい!!」


武道家「くっ…!おいおい!俺のことを忘れてないか!?」バッ!

乙女格闘家「まだ…私たちだって!」スチャッ!

剣聖少将「…俺の命だって、まだ尽きちゃいねぇ。最後までやらせてもらう」チャキッ


バハムート『…どこまで向かって来れば気が済むのだ』

バハムート『降伏の一言で、戦いは終わるというのに……!』

バハムート『己が命を燃やすまで、戦おうというのか!』

 
魔道士「け、剣士の大剣があれば…!私だって、戦える…!」グスッ

魔道士「…剣士が戦えないなら、剣士の代わりになれるのは…私だけだからっ…!」フラッ

魔道士「剣士だったら…!最後まで…みんなを守るために…あきらめないはずだから……!」

魔道士「に、人間が…魔族に屈したら…ダメだから……!!」

…グイッ!チャキッ!


バハムート『…!』


魔道士「私が…みんなを守るために…一人で…戦うっ……!!」


バハムート『なんと…強き心よ……』


魔道士「私が、バハムートを倒すから……っ!!」ブルッ…

 
…ギュウッ…!


魔道士「えっ…?」ハッ


剣士「へ…へへ。魔道士…。それでこそ、俺の…女だなぁ……」ヨロッ

魔道士「け、剣士…ッ!」


剣士「よく言ったぜ…魔道士。そうだな…戦うしか……ないもんな……!」

剣士「一緒に…守ろうぜ……世界をよ……」


武道家「…ッ」

乙女格闘家「剣士…!魔道士ちゃん…!」

剣聖少将「剣士……」


バハムート『…っ』


剣士「ば、バハムートッ!まだ俺は…倒れちゃいない……!」

剣士「もう1度だ…!諦めねえよ…絶対に……!次の一撃は…必ず…勝つ!!」

 
バハムート『…』

バハムート『…ッ』

バハムート『…よしておけ。無駄に命散らすだけ…。お前のような人間を失いたくはない』


剣士「はは…!バカいうなよ……」

剣士「まだ俺は死んじゃ…いない……。つまり、俺自身の覚悟が…なかったんだろ……」


バハムート『…その命散らすまで、この世界の為に戦おうというのか』


剣士「…死ぬまで本気を出してこそ…だろうが…!」

剣士「死ぬ覚悟がなかったから…!俺は死んじゃいないし…お前を倒せなかった……!」


バハムート『…!』


剣士「さぁ……もう1度だ……。やろうぜ……っ!」チャキッ

 
バハムート『…』

バハムート『…ッ』

バハムート『…お前たちの強い心…よくわかった……』

バハムート『もういい。よせ……』


剣士「…何を言ってる…!」


バハムート『…お前たちを見ていると、自分が情けなくなる…』


剣士「あ…あァ…!?ご、ごほっ…!」ゲホッ!


バハムート『…っ』

 
剣聖少将「…」

剣聖少将「…バハムートよ。やはりお前は、どこか違う。何か…隠しているのだろう…?」

剣聖少将「お前のことを話をしてくれないか」


バハムート『…』

バハムート『…負けたようなものか』


剣士「な…何っ……!?」


バハムート『…我は気高き、竜族の王。そんな言葉、自分を保つための言い訳よ…』


剣士「ど、どういうことだ……」


バハムート『良かろう。少しばかり、話をさせて欲しい…』

バハムート『……元々、魔界は我ら竜族が支配をしていたのだ』


剣士「…!」

 
武道家「…ってことは、バハムートが竜族の王だとしたら」

魔道士「魔族の王ともいうべき存在は…」

乙女格闘家「バハムートだったってことになるんだね……」

剣聖少将「…格が違うはずだ。俺らは元魔王と対峙してたっつーことか」

剣士「…」


バハムート『…まぁ、そのようになってしまうな』 
 
バハムート『そして、我ら竜族の竜の姿は違えど、人型でもあり、同じような知性もある』

バハムート『無論、バジリスクのような闘争本能のある竜族もいる』

バハムート『…だが、我を筆頭にしてその竜族のほとんどは、温厚な同族と思ってもらいたい…』

 
剣士「…」

魔道士「…」

武道家「…」

乙女格闘家「…」


バハムート『…我ら竜族は、魔界を統治し、その平和を保っていた』

バハムート『だが突然…。あいつが現れたのだ……』


剣士「…アリオクか」

 
バハムート『あいつは、魔界の果て…荒れ果てた荒野の、貧しい場所で産まれたと聞く』
 
バハムート『…魔界の果てで、我らの声も届かぬ場所…』

バハムート『まるで地獄ともいうべきか。そこで、幾年も…暴力の世界に生きたらしい』


剣士「…」


バハムート『…それが、生半可にアリオクの"暴力が全て"という重いを増長させたんだろう』

バハムート『そして、矛先は魔界の全て…。知性のある、魔族らへと向けられた』

バハムート『既に魔界の果てで力を得ていたアリオクは、力の限り魔界の侵攻を進めてきたのだ』


剣士「…」

 
バハムート『…我らは平和な生活の前に、その戦いに打ち勝つことが出来なかった』

バハムート『竜族や魔界統治に携わってた繁栄種族らは、アリオクの監視下におかれた』


剣士「…」


バハムート『…こちらの世界への侵攻だって、一部の魔族は反対していただろう』

バハムート『だが、従うしかなかった』

バハムート『…力が全てという考えを持ったアイツは、支配欲に支配されていたのではないかと思う』


剣士「…そういうことか」


バハムート『お前たちの諦めぬ心を見て、我もあの時、全力で向っていればと…そう思ったのだ』

バハムート『…こんなこと、話す気などなかったが……』

 
剣士「はは…バハムートさんよ…。今ならまだ…やれるんじゃないのか…」

バハムート『何?』

剣士「遅くないだろうが…。あんたが…魔界の王に戻れば…平和になるんだろ……?」

バハムート『それは……』


剣士「それとも…。まだ、犠牲を伴い…戦いを続けるというのか……」

剣士「本音を話してくれた今なら……。アンタと一緒に…戦いを終わらせられる気がするんだ……」


バハムート『剣士……』


ヒュッ…ヒュオオオオオッ!!!


バハムート『!』ハッ

バハムート『ふんっ!!』ビュオッ!!

 
ガキィインッ!!!…パキャアンッ!!!…


剣士「な、なんだ…!?」

魔道士「空から、何か…!」

武道家「振って来た…?」

乙女格闘家「え…。っていうか…あれ……!」

剣聖少将「あ、あらら……」


フワフワ…


バハムート『…これは、招かざる客というもの』ギロッ

 
武道家「…あれが、幻影でもない…本物ってわけか…!」

乙女格闘家「…な、なんでこんな時に!」

魔道士「なんでココに……!」

剣聖少将「…全てを終わらせにきたというのか」



剣士「…アリオクッ!!!」



アリオク『…ご機嫌よう』

アリオク『クソ冒険者どもに、裏切りのクソ竜……』ニコッ

本日はここまでです。有難うございました。

有難うございます。
投下致します。

 
バハムート『…ッ!』


ヒュオオォォォオオ……!

…ストンッ…


アリオク『…よもや、貴様が人間に気持ちを削がれるとはな…』

バハムート『…元々我は、こんな戦いは反対だったのは知っているはずだ』

アリオク『だが、それでいいのか?貴様の種族の命、俺が預かってるんだということを忘れたか…』

バハムート『…ッ』

アリオク『お前の愛するアイツの腹の子は…娘だったか…』

バハムート『よせ!』

アリオク『どちらに似ている娘かな…。赤髪の可愛い女の子か…?』

バハムート『…ッ!』

 
アリオク『貴様では俺に勝てないことを知っているだろうに……』

バハムート『そ、それは…!』


アリオク『…それと、そこのクソ冒険者ども…!』ギロッ
 

剣士「!」
 
魔道士「!」

武道家「…!」

乙女格闘家「!」


アリオク『…多少、力のある武器を手に入れ、我が同胞配下を打ち破ったようだが…』

アリオク『それも終わりだ。魔族の血を得る武器は、もう…造らせんっ…!』

 
剣士「なにっ…!」


アリオク『…バンシィのやつは、既に南方に逃げたエルフ族を全て根絶やしにしているはずだ』

アリオク『バンシィは深き闇の魔族。これでもう、人間どもに少しの光も与えんっ!!』


剣士「え、エルフ族を根絶やし…だと……!!」


アリオク『…多少、道具を上手く造れたところで、戦いに不慣れな奴らよ』

アリオク『既に、一瞬で蹴りもつき、エルフ族は全て殺しているだろうよ……』ククク


剣士「…て、てめぇっ!!」バッ

…ガシッ!

剣聖少将「…落ち着け」

剣士「親父…!」

 
剣聖少将「アリオクっつったか?お前」

アリオク『…』

剣聖少将「お前、俺らが本当にそう簡単にエルフ族をやらせると思うか?」

アリオク『…何?』
 
 
剣聖少将「俺の軍は、南方大陸に即座に防衛線の準備と、避難を進めさせてもらった」

剣聖少将「…少なくとも、エルフ族は南方のいたる場所に分散させている」

剣聖少将「いくら魔族が空飛んだり、強かったりしても。そう簡単にいかないだろうな」


アリオク『…』


剣聖少将「つまりなんだ、お前はそうだな」

剣聖少将「多少つえー、多少有能な部下がいる、少しばかり最初だけうまくいった」

剣聖少将「それだけで余裕をぶっこいた、大馬鹿野郎ってことだよ!はーっはっはっはっ!」

 
アリオク『貴様…。俺をバカにするとは、いい度胸だ……』パァッ!


ビュオッ…!!


剣聖少将「うおっ!無詠唱で早っ…!」


ブンッ…バキィンッ!!パラパラ…


剣聖少将「……おろ?砕けた?」


アリオク『!』

アリオク『貴様……』ギロッ

シュウウ……

バハムート「…剣聖少将。まだ、貴殿を失うわけにはいかない」

 
アリオク『バハムート…。貴様、裏切ったな……』

バハムート「…」

アリオク『いいだろう…!ならば、貴様から殺してやるッ!!』パァッ!

…ビュオンッ!!

バハムート「…その程度では、我は殺せぬっ!!」

…ガキャアンッ!!!


アリオク『ぐっ…!』ビリビリッ

バハムート「ぐぬっ…!」ビリビリ…!

 
武道家「…お、おいおい!仲間割れかよ…」

剣聖少将「……好機だ」

武道家「え?」

剣聖少将「これは、バハムートが味方についたと同じこと!勝機だ!」

武道家「…!」

剣聖少将「とはいえ、この戦いに今は干渉するべきじゃないだろう」

武道家「…っ」


剣士「…」

乙女格闘家「…」

魔道士「バハムート…」

 
…ズブシュッ!!

アリオク『ちっ!…ふんっ!』

バシュッ…!!

バハムート「ぐおっ!」

バハムート「…ッ」スゥゥ

バハムート「…がぁぁぁっ!!」ゴッ!!

ゴォォォオォオオォッ!!!


アリオク『こんなもの、防御するまででもない…!はぁっ!』

ゴッ!!…バシュゥッ!!


バハムート「我が炎を気合で打ち消すか。だが、百も承知…はいやっ!!」

ググッ…ブォンッ!

アリオク『火炎からの爪の連撃とは、型にはまった戦い方。そんなものでは、俺には通用せん!』ビュッ!!

…ガキィンッ!!

 
バハムート「基本に忠実だからこそ、勝利も見えるものだ!食らえっ!!」

グォッ!!ブォォォォッ!!!

アリオク『炎、爪、それを防御させてからの尾の物理程度。こんなもの、指一本で止められるぞ…?』

…ビシィッ!!

バハムート「!」


アリオク『…甘い』パァァッ

ボヒュウッ……!!!


バハムート「…光速無詠唱魔法っ!!くっ!!」

…ヒュンッ!!

バハムート「相変わらず、強力な魔法を…!」

 
アリオク『さて…バハムートくん』

アリオク『…避けさせてからの基本に忠実は、こうだったか?』ボソッ


バハムート「…ッ!」ゾクッ

バハムート「いつの間に、後ろへ!」バッ!!


アリオク『…ふんっ!!』

ビュッ!…ズブシュッ!!

バハムート「ッ!!」

アリオク『…俺の手刀で、貴様の中身を引きずりだしてやろうか…!』グリッ!


バハムート「ぐっ…あっ……!!」

バハムート「ぬっ…!ぬぅうおあああっ!!発っ!!!」ゴッ

ゴバァァァアアッ!!!

 
アリオク『ぬぐっ!竜気を…!』ビリビリッ!


バハムート「…一瞬を逃さん!我が爪の前に、砕け散れッ!!」ビュッ!!

ブンッ…ズバァンッ!!

アリオク『ぐおっ!?』

バシュッ…ポタポタッ……

アリオク『貴様、俺の身体を……!』


バハムート「…身体の半分を切り裂けば、いくらお前とて」


アリオク『お、おのれ!』

バハムート「…」

アリオク『なんてな…』ニタッ

…ブゥゥンッ…


バハムート「ッ!」

バハムート「何っ!斬ったアリオクの身体が霞んで……!」

 
…ヒュンッ!!ゴツッ!!

バハムート「がっ!?う、上から…!?」


アリオク『俺が、幻影魔法も無詠唱で使えることを忘れたか』


バハムート「いつの間に……」

アリオク『クククッ…!』


バハムート「…くっ!」

アリオク『…まだ、遊ぶのか?』ククッ


ゴゴッ…ゴゴゴッ……!!

 
剣士「…!」

剣士「ちっ、ちくしょう…!み、見てるしかないのか…!」


武道家「なんて戦いだ…」

魔道士「援護したいけど、戦いが複雑でそんな隙が……」

乙女格闘家「どうすれば……」


剣聖少将「…っ」


剣士「バハムート…!」

 
グググッ…!!

アリオク『…はははっ!どうした!その程度か!』

バハムート「アリオク…!」

アリオク『お前が死んだら、お前の嫁は腹の子と一緒に公開処刑をしてやろうぞ!』

バハムート「なんだと……!!」

アリオク『そして、竜族は根絶やしだ…!くははははっ!』

バハムート「させる…ものかっ!!竜気…火炎っ!!」スゥゥッ


…ゴッ!ゴォォオッ!!
 

アリオク『はぁっ!!』

バシュウッ!!!…シュウゥゥ……

アリオク『甘いぞバハムート!その程度、どうにもならんぞ…ははは!』