八幡「キスだけでどこまでいけるか・・・」雪乃「最低ね・・・」 (319)




 例えばそう、陸上競技なんかが今のそれにあたると思う。



 目的地に早く着きたいなら車がある。

 遠くに飛びたいなら飛行機がある。

 重いものを持ちたいならフォークリフトがある。


 だが、競技者は薄い服とスポーツシューズのみでそれらに挑む。

 決して機械や道具には勝てないのだが、それでも挑み続ける。


 要は何が言いたいかというと、人は一つの事象を枠内で極めることが好きな生き物なのだ。




SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1411468807



 ―――パチン。


 皮膚と皮膚が正面衝突すると、存外に大きな音がする。

 手と頬のどちらが痛いのだろうと想像してみるも、なるほど殴られたことしかないから全く分からない。


小町「………」


 目の前で小町が顔を真っ赤にして震えている。瞳は潤んでいて、呼吸は荒い。

 いつもなら、大きな声で罵ってくるところだが――それもない。


 身体だけが時間を認識しているようだ。お互いの思考は完全に停止している。


 小町の背中越しに聞こえるジャーと言う水音が、ここが洗面所だと言うことを思い出させてくれた。

 人間というのは連想が得意な生き物で、俺は頭の中に一つの言葉が生まれた。


八幡「……遅刻するぞ」


 






―――もう一度、大きな音が洗面所に響いた。








 人は進化していくと同時に様々なものを捨ててきた。



 四足歩行であったり、尻尾であったり、ふさふさの毛であったり。

 比企谷八幡もたった一世代で進化した生き物である。



 他人との繋がりを断った人類。



 ……いや、負け惜しみじゃねーよ。……ないよね?

 とにかく、比企谷八幡は他人を必要としない男である。

 登校中も1人だし、授業中も1人だ。

 昼休みも1人だし、放課後も1人。

 生物は強くなるほど個体数を減らしていく。



 つまり、比企谷八幡は世界で最強なのである。



雪乃「絶滅寸前と言った方が正しいと思うのだけれど」



 背中越しに突き刺さるナイフのような言葉。

 淡々とした口調を無表情で、こちらに目をくれることもなく放つ女――雪ノ下雪乃。



八幡「……じゃあ、保護しろよ」



 先ほどまでの自分進化論を容易く捨てて、繋がりを求める辺り、今日の俺はいつもと違った。

 雪ノ下もそれに気付いたのか、


雪乃「………」


 両目を見開いて、まるで幽霊にでも遭ったかのような表情をしていた。



 誤魔化すように逃げた俺は、教室へ駆け込んだ。


 これが少女マンガのイケメンであったならば、クラスメイトたちが心配そうに駆け寄ってくれるのだろうが、もちろん俺の場合は何も起きない。RPGで花壇の周りを駆け回る兄妹くらい背景に溶け込んでいるんだろう。


 ――兄妹。


八幡「……っ」


 自然と頬に熱がこもる。

 着席のタイミングでばれないように唇に手をあててみる。

 ……何もない。


 だが、高鳴る心臓は治まりそうにない。

 こんな時、エロ漫画の主人公なら素数でも数えるんだろうが、俺はその方法を実行できるほど落ち着いてなかったようで、


八幡「……落ち着け、落ち着け比企谷八幡」


 と、厨二病顔負けのセリフを小声で吐き続けたのである。



 これがギャグ漫画なら、1人の個性的なキャラが誕生した瞬間である。

 教室の隅でぶつくさと厨二病的なセリフを吐くクラスメイト。なるほどつまらん。

 だが、ここは現実であり同時に俺は物語のモブですら不採用になるような男だ。誰も気づくことなく、誰も気にかけることがない。


 まぁ今回だけはそれで良かったと思うが。



 しばらく呟いていると、なんとか落ち着いてきた。

 そのタイミングで、目の前にやってきたのは――、


彩加「おはよう八幡」


 天使……いや、女神?


八幡「……うす」


 幸せとは待っているだけでやってくるものなのか。

 頬に暖かいものが流れた気がするが、きっと気のせいだろう。


彩加「……あれ? シャンプー変えた?」


 ガタンッ。

 さすがに椅子の倒れた音は物語の中心人物様方にも伝わるようで、一斉に視線がこっちへ集まる。

 だが、なんだぼっちか、と言わんばかりに視線は外れていく。

 ――そんなことよりも、だ。



八幡「な、ななな、何を言ってる」


 動揺が全身に広がる。

 悲惨な幼少期が、鉄仮面比企谷八幡を生んだと思っていたが、どうやら紙のお面だったようだ。


彩加「……なんで慌ててるの?」


 小首をかしげる戸塚。

 そ、そうだ。何を慌てる必要があるんだ。

 確かに俺と小町は違うシャンプーを使ってるが、俺は自分のシャンプーを使い続けている。

 ……朝の件で小町のシャンプーの匂いがこっちへ移る訳がないだろうし……ないよね? ないと言ってくれ。


八幡「シャンプーは生まれてこの方リンスを使わなければならないというデメリットがないのを使っている」

彩加「分かりにくいよ八幡、メリットのことだよね」

八幡「……なんか匂いが着いてるか?」

彩加「……んー」


 クンクンと俺の周りを嗅いでいく彩加。うおっ、なにこれすげー興奮する!


彩加「くんくん……うん、気のせいみたい」


 そういう戸塚の表情はいたって真剣で、まるで気のせいだとは思えない。

 その後、謎の不安を抱えたまま受ける授業は、いつもより長く退屈だった。


 放課後、適当に理由を作って奉仕部を休んだ俺は真っすぐ家に帰る。

 とにかく小町より早く帰りたかった。

 俺の方が遅いと、小町がどういう精神状況しているか分からないが、待ち構えていれば帰ってきたときのテンションである程度分かる。毎日大きな声でただいまという愛らしい彼女は今日もきっと大きな声でただいまというに違いない。


 愛らしい彼女。


 不意に思い出す柔らかい感触。

 ……いや、想像していたよりも硬かったかもしれない。自分の硬さしか知らなかったから、女の子は柔らかいマシュマロのような感触だと思っていたから、少し衝撃を受けた。


八幡「ふぁーすと……」


 言いかけて自分を殴る。

 バカか、と。


 がちゃり。


八幡「!?」


 俺はその場に鞄を落とし、上半身だけ振り返った。

 なぜ。こんな早くに帰ってくるはずがない。

 先ほどまで落ち着いていた心臓が一気に跳ね上がる。



小町「……っ」


 ドアを開けたのはもちろん妹の比企谷小町。

 年に似合った健全さと元気さを持つ、中学生。


 その彼女が、俺を見て中学生らしからぬ複雑な表情を見せている。


八幡「……お、おお、はやい、な」


 必死に冷静を装って、小町を出迎える。

 だが、彼女の方は俺の精神状態なんて知ったこっちゃないのか、


 ――ばたんっ。


 外に出て思い切りドアを閉めた。


八幡「………」


 当然と言えば当然の反応だが、少し心が痛んだ。

 その痛みの質は、普通の人が考えるような綺麗なものではなかったが。



 とにかく謝らなければ。


八幡「こ、小町……」


 玄関へ駆け寄ると、同時に小町がドアを開ける。


小町「お兄ちゃん!!」


 その表情は真っ赤で、今にもゆであがりそうだ。


八幡「は、はいっ」


 思わず直立不動になってしまった。

 これは決していじめっ子に調教された訳じゃなく、あくまで小町に対して誠意を見せたいからである。


小町「………」


 ふーっふーっと、大きく呼吸をして落ち着こうとする小町。

 一体これからどんな罵声が飛んでくるのか。

 俺は両手足をピーンと伸ばしたまま、彼女の動きを待つ。



 そして、小町は口を開いた。







小町「責任はきちんと果たすべきだと思います!!」






八幡「……え?」


 それって……、


小町「………」

八幡「自首しろってことか?」

小町「うぇ!?」


 大げさに肩を落とす小町。

 どうやら責任を果たす=自首して罪を償うではないらしい。


小町「小町中学生だから分からないけど、今朝の件で警察が動いたら世の中忙しすぎると思うけど」


 どうやら、先ほどの言葉には違う意味が込められていたらしい。

 責任。

 この場合、今朝のことに対する言葉だと見て間違いないだろう。

 そろそろ脳内でも言葉にして思い出すべきなのか。

 俺は思い出す。

 比企谷八幡の罪。



 妹に、洗面所で、……………キスしたこと。



八幡「やっぱり自首してくる」

小町「思った以上にヘタれごみぃちゃんだった!!」


 そして、俺と、俺の周りの奇妙な物語が始まる。



 着替えてくるね。

 と、小町は部屋へと続く階段を駆け上った。

 どうやら、責任を果たすという言葉は悪い言葉じゃないらしい。

 それでも、この言葉がいったいどういう意味を持つのか想像もつかなかった。


 だから、聞いた。


 それがいかに愚かな行為かも分からずに。



 メールはすぐに返ってきた。

 つーか、俺がメールして返ってくる環境ってあったんだな。奇跡みたいだ。


 送り主の戸塚は題名に顔文字を使う天使だった。


 しかし、内容は背筋を凍らせた。


――――――――――――――――

名前:戸塚彩加
題名:え、それって……(≧∀≦*)
内容

 結婚してってことじゃない?

――――――――――――――――


八幡「……は?」


 どこの都市伝説ですか。

 キスした責任に結婚って。

 続けざまにもう一通メールが来る。戸塚からだ。


――――――――――――――――

名前:戸塚彩加
題名:
内容:


 それでにおいが違ったんだね


――――――――――――――――


 その瞬間、なぜか俺は振り返った。

 が、そこには誰もいるはずもなく。


八幡「……明日休もうかな」


 だけど、そのほうが後々恐ろしいことになりそうだったので却下した。



小町「………」

八幡「………」


 あれから何分が経っただろうか。

 小町の提案で俺の部屋へ入ったものの、俺はベッド、小町は椅子の上に座ったまま一言も言葉を交わさない。


 責任。

 しかし、考えれば考えるほど戸塚の言葉が重みを増してきた。

 いや、結婚は飛躍しすぎだが、キスの責任を果たすということは、つまりそういうことなんだろう。


 意を決した俺は、ゆっくりと口を開く。


八幡「……責任…」


 小町は太ももと太ももの間に両手を入れて、前傾姿勢をとった。その瞳はある種の期待に満ちているようだった。


八幡「……果たしても……いいか?」


 確かに俺は愚かかもしれないが、バカじゃない。

 この流れで小町が伝えたいことを理解できなかったら、それこそ家族失格だ。

 ……いやまぁ、どっちみち家族失格にはなるのだけど、……つーか朝の時点で家族失格か。


小町「………うにゃ///」


 顔を真っ赤にしてこくりと頷く小町。

 その口元はだらしなくにやけていて、目じりも嬉しさを隠せていない。


 抱きしめても……いいのだろうか。


 



 だが、問題は生じた。


八幡「………っ」


 股間の膨張が激しすぎて、ベッドから立ち上がることができなかったのだ。

 いや、これはあくまで生理現象であり、俺に妹を凌辱したいなどという気持ちは…………黙秘。

 とにかく、可愛さの頂点である小町へ近づいてキス。なんてことは今は不可能だ。


小町「………///」


 前傾姿勢のまま、じっとこちらを見据える小町。

 期待に満ちたそのまなざしは、早くしろと訴えているみたいだ。


 考えに考え抜いた末に、出した答えが――、


八幡「……こっちに来いよ」


 ベッド上にいる兄が妹にかける言葉として、最も間違っている言葉だった。




小町「へっ!?」


 明らかに動揺する小町を見て、俺は気づく。


八幡「い、いやっ、そ、そういう意味じゃねーよ! 俺はただあそこが抑えきれなくてだな」

小町「あ、あそこが!?」


 顔を真っ赤にして大声を上げる小町。

 しまった、これじゃあ完全に最後まで狙っている狼じゃないか。


八幡「ち、違う!! 俺はただお前を抱きしめたくて!!」


 泥沼である。


小町「っ///」


 泥沼へ 落ちるのならば 妹も

 謎の俳句ができたと同時に、世界一可愛らしい妹は両手を広げてこちらへ飛び込んでくる。


小町「今のは小町的にポイント高いよお兄ちゃん!」


 そして比企谷八幡の世界に色が加わる。

 小町のシャンプーの匂いは、誰かと同じだった。


こっからすーぱーいちゃらぶタイムだったのですが、少し用事ができたので離れます!

小町の後は誰を攻略するかは決めていませんが、少なくとも三人くらいはいくので期待してください!では!


 キスという言葉は魔法の言葉である。

 なぜなら、1人で言葉を口にしてもそれはただの言葉、キス以上でもなくキス以下でもない。

 だが、目の前に人がいる時に口にしようにも、……なかなかできない。


八幡「す……す、す…するぞ」


 これではとんだ変態である。

 まぁ、妹に手……いや唇を出そうとしている時点で変態ここに極まってはいるのだが。


小町「……ごみぃちゃん、これから先そんなのでやってけんのー?」


 目を少し細め、呆れるように言い放つ妹。いつもの小町だ。


八幡「……こうなったら普通の恋愛はできねーだろ」


 しまった。

 言葉にしてから、この行為が“異常な行為”だと認めたことに気づく。


八幡「あ、いや、これがそうという訳では――」


 慌てて誤魔化そうとしたが、小町は別に気にしてる風もなく、


小町「駄目だよ。ごみぃちゃんにはこれからいーっぱい恋してもらうんだから」


 と、いつもの悪戯っ子な表情を見せた。



八幡「ど、どういうことだよ」


 俺が神様も認めるぼっちだということは知ってるだろ。

 そういうと小町はやれやれと大げさにため息を吐いて、それからグイと顔を近づけた。


八幡(え、いきなり!?)


 まさか妹に唇を奪われるのか。

 反射的に両目を閉じると、小町の体温が身体に伝わってきた。

 密着状態、とでもいうのだろうか。

 お互いに腕を回していないのであくまでくっついているだけだが、それがもどかしくて――興奮した。


 もし小町が舌を入れてきたらどうしよう。俺は迎えてやるのか。それとも小町の口内へ舌を入れるのか。


 しかし、小町の顔は俺の右肩の上で停まった。


小町「おにぃちゃん」


 優しく。

 触れるか触れないかのところを撫でるように、小声でつぶやく小町はもはや子供の域をはるかに逸脱していた。


小町「小町と……したい?」


 まるで、心臓を鷲掴みされたかのように呼吸が乱れた瞬間だった。



 人間というのは、けっこう単純な生き物らしい。

 心臓が跳ねると息ができない。

 息ができないと言葉を紡げない。

 言葉を紡げないと、行動で示すしかない。


小町「……んっ」


 脚の上に乗っている小町を強く抱きしめると、驚いたせいか小町は甘い吐息を漏らした。

 知らない小町の声に俺はドキドキしながらも、とにかく性の欲望をぶつけたくて力任せに倒そうとした。


 が、


小町「もー、駄目だってばー」


 と、脇腹をくすぐる小町。

 そして、うひゃ、という間抜けな声を出す俺に向かって人差し指を突き出した。


小町「今のは小町的にマイナスポイントだね」


 頬をぷくーと膨らませて腕を組む小町は、俺の人生のヒロイン以外の何者でもなかった。

 



小町「ごみぃちゃんは、小町が欲しいの? それとも小町の身体が欲しいの?」


 上目づかいの小町は、逃げ道はないぞと言いたげにこちらを見据えた。


 正直なところ、両方ほしい。


 小町の健康的な身体に自分の全てをねじ込みたいし、でもそれ以上に可愛がりたい愛したい。

 だが、世の女性の大半は前者を嫌い後者を夢見るのだろう。

 だから俺が出すべき答えは……、


八幡「も、もちろん「はいごみぃちゃんのうそつきー」


 ……さすが俺の妹である。


小町「あのねぇ、無理やり押し倒そうとしておいて、いまさらプラトニックな愛を囁かれたって小町信じられないよ!?」


 正論だ。正論すぎる正論だ。


八幡「……小町の、全部が欲しい」


 その可愛い瞳も、鼻も、口も、涼やかな首筋も、健康的な太ももも、膨らみ始めの胸も、けがれの無いお腹も、そして――男にはないあそこも……。


小町「……あのね…小町はね」


 もじもじと、言葉を詰まらせる小町。

 この流れから言うと、小町はキスだけをしたかっただけなのだろう。

 中学生による中学生らしい恋愛ごっこ。

 なるほど、それなら兄弟を相手にしたこともうなずける。

 要は誰でもいいのだ。


小町「小町は孕ませセックスがしたいの!」

八幡「」


 間違いだ。

 これは幻聴、そう幻聴だ。


小町「あ、間違えた」


 ほらな。やっぱりな。


小町「孕ませるのはごみぃちゃんだから、孕まされセックスか」


 間違いじゃない!?


八幡「い、いやいやいや、どこでそんな言葉覚えたんだよ!?」

小町「ん? ごみぃちゃんの持ってるエッチな本だよ」


 と、指さす方向には、俺が本屋でサンドイッチ購入法で買ったエロ本を隠してる本棚があった。


小町「いやー、興奮するよね実際!」

八幡「するのか!?」


 そういえば聞いたことある。

 少年漫画はパンツを愛でるばかりにその先へ行けず、少女マンガはちんぽを愛でるばかりに挿入シーンが多いと!

 ……んな訳あるか、と。


小町「でもね、小町には夢があるんだ」

八幡「……夢?」





小町「お兄ちゃんが、幸せになること」







八幡「……お、俺は…」


 猛スピードで緩んでいく涙腺を必死に締めながら、俺は言葉を紡ごうとする。

 が、言葉にならない。

 後悔と、喜びと、悔しさと、嬉しさが入り混じって視界がゆがむ。


 小町は、そんな俺の弱さを見抜いているのか、ぎゅっと頭を抱きしめた。


小町「お兄ちゃんはね、少し不器用なだけで、普通の男の子だよ」


 まるで泣きじゃくる子供をあやすように、ゆらゆらと身体を揺らす小町。

 その揺れが何とも懐かしくて、俺の心は急激に落ち着いていく。


小町「だからね、幸せになる権利は、あるんだよ」


 小町の匂いが身体を満たしていく、

 小町の熱が、身体を温めていく、

 小町の言葉が、心を暖めていく。


 気づけば、俺も、小町も、泣いていた。


中途半端ですがいったん離れます!

お待たせです。

二股というか……ハーレム系が苦手な方は避けた方がいいかもです。

続きー



小町「簡単に言うと、小町が孕むとお兄ちゃん捕まっちゃうよね?」

八幡「ぬぐっ」


 当たり前の話だが、未成年なのはもちろん兄妹で性行為をすることは社会的に良くない。さらに言えば子供ができた日には俺は戸塚ヨットスクールに入れられるだろう。

 ……戸塚ヨットスクール?

 戸塚……彩加…よっと…すくーる?


小町「何をにやけてんのごみぃちゃん」


 少しばかりトーンの低い声で、にらみつけてくる小町。……こんな表情まで可愛いと思うようになった俺は末期なのだろう。


八幡「いや……、じゃあ抱き合うだけか?」

小町「不満かにゃー?」


 やべ、今の八幡的に萌えポイント高い。


八幡「……不満…」

小町「正直なのは小町的にポイント高いねー」

八幡「でも……駄目なんだろう?」


 自分でも嫌になるほど受け身な言動だ。

 だが、小町はそんな発言すらも受け入れてくれたのか、両目を閉じて、


小町「じゃあ、とりあえず……いいよ?」


 と、口を前に出した。


 プルンとした唇。

 小さい。とても小さい。


八幡「あの、さ……」

小町「今朝のがファーストキスだよ」

八幡「……そっか」


 俺も顔を前に出す。


小町「んっ……」


 触れた瞬間、小町の吐息が俺の口の中に入る。

 しゃべり続けたせいか小町の唇は少し乾燥していた。


 舐めてもいいのだろうか。俺のせいで渇いた唇は、俺の力で潤したい。


小町「……ん、ふぅ…」


 迷っていると、小町が少し息苦しそうに吐息を漏らした。

 もしかして……息してない?


八幡「………」


 ゆっくりと顔を離すと、小町はぷはぁと大きく息を吸った。


小町「もぉ、窒息死するところだったよぉ!」


 ……萌え死ぬところだったよぉ。



小町「そっか、鼻で息をすればいいのか」


 目から鱗と言わんばかりに、小町は何度もうなずいた。


 もう一回したい。


 が、小町は話の続きがあるのか、椅子に戻っていった。


小町「じゃーん、今日からお兄ちゃんには小町コレクション、略して“こまコレ”してもらいます!」

八幡「こま……これ?」


 大きくうなずくと、小町は説明を始めた。


小町「要はお兄ちゃんが一人唇を奪ってくるごとに小町の身体を好きにする権利が発生します!」

八幡「小町の……体?」


 思わず生唾を飲み込んでしまう。


小町「まぁ、細かいルールは追って決めていこうと思うけど、一人目の唇を奪ったら……」


 グイ、と服をめくる小町。

 透き通るような肌がそこにはあった。縦に伸びたヘソが妙にエロい。


小町「小町のお腹を好きにさせてあげるよん、お兄ちゃん♪」


 こうして小町コレクションは始まった。

 長く、淫らで、エロく、官能的な生活が。



八幡「でも、それと俺が幸せになることに何の関係があるんだ」


 俺の質問に小町はちっちっち、と人差し指を振った。


小町「人間なんてキスしないと相手のことを分からない生き物なのだよ」

八幡「何言ってんだこの妹」

小町「女の子の八割は、キスやセックスがうまい男の子には勝てないんだよ」

八幡「え、マジ!?」

小町「小町調べだけど」

八幡「………」

小町「まぁでも、お兄ちゃんはキスも下手だからなぁ」


 下手。

 分かってはいたが、明言されると凹む。


小町「あ、下手と言っても経験が少ないだけで、柔らかさとか匂いとかは全然大丈夫だったよ」


 と、フォローを入れる小町は少し顔が赤い。


小町「駆け引きも勉強しなきゃ、ね」


 再びベットの上に移動する小町。

 馬鹿にでもわかる。


小町「……んっ」


 それから一時間、一度も休むことなくキスを続け、気が付いたら外は暗かった。



 要は、小町は俺に普通の恋愛を経験してほしいということだった。

 普通の恋愛をして、普通の交際をして、あわよくば結婚してほしい、と。


 それで俺が普通の家庭に満足して幸せになれば万々歳だし、そこに小町自身も組み込まれればよりハッピー、と。


 我が妹ながら変わっていると思う。

 だが、俺自身恋愛経験的にも、実践的にも小町を満足させられないであろうことは自覚している。

 だから、俺はこの話を受けた。


 小町で覚えたキスの味。それをもっと知りたいという気持ちも……ある。

 由比ヶ浜とのキス。

 雪ノ下とのキス。

 川崎とのキス。

 ……いや、戸塚とはしないぞ。……しない…ぞ。


 小町ルールの中で、もっとも厳格に設定されたものは、


小町『無理やりは絶対にNGだよお兄ちゃん』


 いや、俺が無理やりやれるような相手は一人もいないとは思うけどな。

 ……無理やりじゃなくてもやれそうにないが。



 翌朝、目覚めると机の上に紙が置いてあった。


『最初は恋愛経験豊富な方に技術指導してもらうと良いよ 小町』


 と、書かれている。


八幡「……恋バナをする相手すらいないのに、経験数なんてわかんねーよ」


 ……ん、まてよ。

 八方美人の由比ヶ浜か、見た目からしてビッチ確定の三浦なら……。


八幡「いやいや、どっちも無理ゲーだろ……」


 


 結局、その日はずっと小町とのキスを思い出して上の空だった。

 由比ヶ浜が何度か話しかけてきたような気もするが、覚えていない。

 戸塚が話しかけてきたときにはもちろん全力で答えたし、一言一句覚えている。


 放課後、今日は部室へ行こうと教室を出たところで、平塚先生に呼び止められた。


静「比企谷、ちょっといいか」

八幡「いや、無理っす」

静「比企谷、ちょっといいか」

八幡「RPGの出来レース選択肢かよ」

静「よし、行くぞ」


 と、いつもの場所へ連れていかれるのだろう。

 説教されたり、説教されたり、説教されたりしたあの場所――生活指導室である。


静「よし、悩みを言え」


 開口一番、平塚先生はそういった。


八幡「………」


 無理に決まってんだろ。

 どうやってクラスメイトの唇を奪うか考えていたなんて言った日にはラストブリッドが待っているだろう。


 だが、あるいは平塚先生なら真剣に悩みを聞いてくれるかも。


 その甘さが命取りだった。




静「私なら、君の悩みを払拭することができると思うのだがな」


 と、目をつぶる平塚先生。

 ……え、もしかして全部わかってるの!?


八幡「い、いいんですか?」


 まさか、平塚先生に実践指導を受けることができるとは。


静「ああ、生徒を導くことが私の使命だ」

静(昨日ゲームやりすぎたな。目が自然と閉じてしまう……)


 どうやら平塚先生はすべてを理解しているようだ。

 そういえば小町とは面識があったな。

 つまり、朝の紙の真意は“恋愛豊富な平塚先生に指導を受けろ”と、そういう事だったのだ。


八幡「……失礼します」


 グイ、と顎を持ち上げる。


静「……え?」


 平塚先生も目を閉じてキスをするタイプか。

 自分と同じだったのが、少し嬉しい。

 だが、今は少しでも技術を身につけなくてはいけない。

 だから俺は目を開く。

 目の前にいる、クールで、生徒想いの美人な先生の全部を知るために。


静「んっ!?」


 思いのほか柔らかい感触が、小町とは違う大人の味が、そこにはあった。


またまた中途半端ですが、今日はここまで!

明日は静タイムからのスタートです!

(おもらしプレイとか需要あるのかな……)


 目を開けてのキスは、思いのほか閉じてのキスと違うものだった。

 目でものを語るとは、何も瞳自体の部分を指すのではないことが分かった。

 たとえば、先生の普段は釣り上がっている眉が少しばかり垂れているのは、状況を理解できず困っているからだろう。

 ピクピクと小刻みに揺れる瞼は、目を開けたいけど何が起きてるのか知るのが怖い、と言った感じか。

 さらに言えば、上唇にかかる少し強い吐息は軽い興奮状態を示しており、本人が意図した状況でないことが分かる。


 つまり、だ。


八幡(もしかして、キスするために目をつぶったんじゃない?)


 冷静に考えれば、……いや、冷静に考えなくても――当たり前である。

□小町コレクションルール□

1、無理強いは駄目。
(ただし、強がりや照れ隠しを見抜いてのキスはオッケー)

2、基本的にはキスのみ。
(ただし、キスをメインとした演出はオッケー)
例:キスをしながらのペッティングなど。

3、相手を幸せにするキスを心がけること。


小町『これで君も立派なこまコレプレイヤーだねっ☆』



 気づいてしまうと、急速に血の気が引いた。

 なぜなら、相手は“あの”平塚静だからである。


 社会的制裁なら、元々何も持っていない俺に失うものはない。

 だが、彼女には鉄拳制裁という恐ろしい武器がある。


 どうする。

 今、唇を離せば間違いなく待っているのは――死。


八幡(ここは攻めるしかない!)


 血迷っているのは分かっている。

 だが、俺には成し遂げなければならないことがある。


八幡(小町のおへそは俺のもんだぁああああ!)


 比企谷八幡、進化の時だった。




静「!?」


 固く閉じた上唇と下唇の境界線をなぞるように、舌を這わす。

 リップだろうか、自分の唇とは違う少し甘い味が口の中に広がった。


静(口の中に……舌を入れる気なのか!?)


 と、思ってくれただろうか。

 いきなり舌をねじ込むのは己の欲望。

 あくまで優しく、エスコートするように平塚静の欲望を解放していく。


静「……んっ…」


 頬骨から耳、耳から後頭部にかけて優しく撫でる。

 垂れ下った眉がぴくぴくと動く……可愛い。

 右手を後頭部に置いて軽く上下させ、同時にもう一度唇の境界線をなぞった。


 ぎゅっ。


 シャツの裾を強く握って引っ張ってくる平塚先生。

 乙女の姿がそこにはあった。

中途半端ですがいったんここまでにします!


 ぎゅーっと、服の裾を引っ張られると、まるでおねだりされているように感じる。

 言葉攻めが好きなわけではないが、もっと平塚先生の困った顔が見たい衝動にかられた。


 だが、口は塞がっている……いや、塞いでいる。


 考える、しばし。

 そして、ひらめく。



 ちゅぷり。



 再び舌で平塚先生の唇をねじ開ける。裾をつかむ彼女の手から力が弱まった。

 

 ――がしっ。



平塚「んっ!?」



 顔を両手で固定すると、驚いたのか平塚先生は目を見開いた。

 思い切り目が合い、気恥ずかしそうに視線をそらす彼女。……なんて可愛いばば……お姉さまだ。






静(唾液!?)


 ぎゅーっと、俺の上半身を抱きしめる先生。……可愛い。

 まぁそれも仕方ないだろう。

 何せ、平塚静の体内には異物が混入したのだから。


 このタイミングで少し顔を離す。

 拳一つ分の距離で先生の目を見据えると、彼女の頬がかぁーっと赤くなる。


八幡「……もっと、欲しいですか?」


 いろんな答えを導ける質問だが、平塚先生の頭には一つのことしか思い浮かんでいないようだ。

 視線を右往左往し、口をもごもごさせる。……乙女か。

 そして、口元に手を当て小さな声で――、


静「……もっと///」


 と、おねだりをした。

 なんだこの支配欲が満たされた感覚…めちゃくちゃ気持ち良い……。



静「んっ……ふっ…ん……」


 唾液を送る方法はいくつかあるものの、俺は平塚先生の舌を挟み込むように唾液を送った。

 舌を唾液が伝うたびに、彼女の舌が硬くなったり柔らかくなったりして面白い。


 キス一つにしても、状況、相手、体調、方法、奥深いものだと思う。


 しばらくの間、お互いの吐息のみが部屋を満たした。

 
八幡「………ふぅ…」

静「……はぁ…はぁ……」


 体力の限界までキスをつづけた俺たちは、同時に腰から砕けてしまった。

 応接間用みたいな豪華な椅子に倒れこむ。やっべ、勃起してるけど誤魔化す元気がねぇ。


八幡「……先生…」

静「馬鹿者が!」

八幡「!?」


 冷静になってみると、これってすごーくめちゃくちゃやばいことじゃないか。

 殺されても文句を言えないよな。


静「しずちゃんと呼べっ!」


 この瞬間、俺は殴り殺されるよりよほど人生のレールを踏み外したのじゃないかと、そう思ったのだった。



短くてすんまそん。いったんここまでです。

次は、小町コレクションが一つ手に入ったので、ご褒美タイムです。

おやすみなさい。



 一難去ってまた一難と人はよく言うが、なるほど、確かに自分がその立場になってみるとぶっちゃけありえないな。


 もう少し一緒にいたいという平塚先生をなだめ、教室に出た瞬間、


三浦「………」


 手を耳にあてた状態で扉にひっついている女王様を発見してしまう。


八幡「……お前は野々村議員か」

三浦「あ、あーしは泣いたりしねーし!」


 ツッコむ方向は少し面白かったが、彼女がとっていたポーズを考えると全く笑えない。


八幡「何してたんだ?」


 いつもなら、どうでもいいと立ち去るところだが、あまりの動揺につい聞いてしまった。


三浦「は? 何であーしの行動の意味をあんたに伝えないといけねーし」


 向こうも動揺してるのか語尾がおかしい。

 だが、なんていうか……焦る女王は少し可愛かった。


八幡「これが不良が捨て猫に優しい効果か」

三浦「は?」

八幡「いや、こっちの話」


 だが考えてみると少しおかしい。

 もし、俺と平塚先生の行動を把握しているなら、どうして高圧的な態度をとらないのか。


八幡「教えてくれねーのならいいや。俺は行くぞ」

三浦「ま、待つし!」


 ぐい、と裾をつかむ三浦。……なんだ、今日はギャップ萌えの記念日か?


三浦「ヒキオ……あんた、ここで何してたの?」


 言えるかボケ。

 だが、彼女の真剣なまなざしから察するに生半可な誤魔化しはきかないようだ。


 だから、ここはひとつ、


八幡「恋の相談をしていたんだ」


 大ウソをついてみることにする。



 ――恋。

 

 それは魔法の言葉。……いや、水戸黄門の印籠か?

 とにかく、恋をかざせば大抵のことが切り抜けられる。


三浦「恋の相談って……ヒキオが恋してんの?」


 ひとつ、話題を逸らせる。


八幡「あ、ああ、悪いかよ」


 正直なところ恋バナには碌な思い出はない。

 中学の頃に相談した時は、「あ、ああうん、そうだね」と露骨に興味なさそうな顔されたり、次の日にはクラス中に知れ渡っていたり、恋の相手が泣き崩れてしまったりトラウマの山だ。

 まぁ、三浦が「は、超キモイんだけど」と見下して来たらそれはそれで成功だし、乗ってきたらきたで平塚先生とのことは誤魔化せたことになる。


三浦「……誰なん?」


 ……なんだこの雰囲気。

 上目づかいにチラチラとこちらを見る三浦。

 いや、可愛いけど。


八幡「俺の好きな人が気になるのか?」


 率直な疑問だったが、少し嫌味な言い方になってしまう。

 三浦もそう感じ取ったのか、


三浦「はぁ!? なんなんその言い方!」


 と、怒ってしまった。



八幡「いや、三浦が俺なんかの好きな人気になるなんて思わなくて」


 いつもなら憎まれ口の一つでも叩くところだが、三浦をこれ以上を怒らせると平塚先生のところへ行きかねない。

 そうなると中でしたことがばれてしまう。それだけは避けなくては。


三浦「……あーしは知りたいことを知れないことが許せないだけだし」


 こうなってしまっては、架空の相手を創るしかない。

 だが、いったい誰を……。


 雪ノ下……いや、三浦と仲の悪い相手を出しては話を拗らせかねない。

 由比ヶ浜……もっとだめだ。三浦と仲が良すぎる。ずっとからかわれるのはごめんだ。


八幡「俺は……」


 こうなったら三浦自身を……って俺は暗黒の中学生活を取り戻すつもりか。


三浦「………」


 体中が緊張で強張り、脳内活動が最高潮に達した時――、


川崎「……あんた達こんなところで何してんの?」


 運命の女神――、いや川崎沙希が現れた。



 ファンタジーバトル漫画などで、大勢の敵に囲まれた主人公が、仲間を助けるために覚醒する時がある。

 すると、周囲の敵の動きがすべて手に取るように分かったり、自分のすべきことが先の先の先まで分かったりする。


 この時の俺が、まさに漫画のそれだった。


八幡「い、いやー、そのシュシュもお前が作ったのか?」


 突然の褒め言葉に戸惑う川崎。


川崎「あ、ああ……そうだけど?」

三浦「………」


 三浦が怪訝そうな顔でこちらを見ているが、俺は構わずつづけた。


八幡「す、すげぇ似合ってるな。まじで、うん」

川崎「あ、ありがと。うれしい……よ」


 三浦が横にいたせいか、俺自身が信用されていないのか、川崎が複雑そうな顔をしている。

 しかし、それも想定内。俺は、少し目線を泳がせながら、


八幡「あ、あのさ、今日……暇、か?」


 何か思いついたのか、三浦は笑みを浮かべた。


川崎「……いや、今日は忙しいけど」

八幡「そ、そうか」


 もちろんその返しも想定内だ。

 暇だったとしても気まずそうに話をうやむやにすればいい。


川崎「じゃあ私は行くから」


 そうして、運命の女神は去って行った。

 すまん、利用させてもらうぞ。お前という存在そのものを。



三浦「へー、ふーん」


 にやにやとこちらを見る三浦。


八幡「……悪いかよ」


 あくまで曖昧に答える。

 相手の中に明確な答えができても、それは勘違い。


三浦「応援してやるよ! ヒキオ!」

八幡「お……おう」


 じゃあね、と部屋に入っていく三浦。

 結局平塚先生のところへは行くのか……。


八幡「さ、帰るか」


 奉仕部はまた休むことになるが、まぁ小町が待ってるだろうしな。

 この時、三浦についてもっと深く考えるべきだった。

 なぜここにいたのか。

 なぜ聞き耳を立てていたのか。


 そして――、なぜ俺の好きな相手を聞いてきたのか。


 だが、この時の俺がそんなことに気が回るわけがなく、小町に会うために家路を急ぐのであった。

平塚「……ああ、そうだなー」ポーッ

三浦「悔しい……」グスッ

平塚「分かる、分かるよ」ポーッ

三浦「……でも、諦めらんねーし」グシグシ

平塚(比企谷……いや八幡君……会いたいな)

三浦「……これからも聞いてもらえる? 平塚先生」

平塚「当たり前だ。お前は私の可愛い生徒なんだから」

平塚(八幡君は可愛い恋人なのだが)ポーッ

三浦「………それじゃ、あーしは行きます」

平塚「ああ、またな」

三浦「失礼しました」ガラッ

平塚「………」シュボッ

平塚「………」フーッ



平塚「可愛い生徒の恋する相手と付き合ってしまった」ズーン




 帰宅するなり、小町は駆け寄ってきた。


小町「……クンクン」


 犬のように俺の体中の匂いを嗅いで、一度頷いて、


小町「平塚先生かー、最初は結衣さんだと思ってたんだけどなー」

八幡「はっ!? な、何で……」

小町「へへぇ、女の勘ってやつだよお兄ちゃん」


 満面の笑みを浮かべる小町。

 うん、この人に嘘を吐くわけにはいかないみたいだ。




 先に部屋で待ってろと言われたので、部屋で着替えて待っていると、


小町「じゃーん♪」


 と、夏に着てた黄色いビキニで現れた。


八幡「………っ」


 以前は妹の身体なんて、と注意して見ることもなかったが、こうして改めてみると、なんてエロイんだこの中学生は!


小町「へへ、世界一可愛いんだよね?」


 クルクルと回って全身を見せてくる小町。

 小ぶりな胸、小さなお尻、少しだけ膨れた……って俺はどこを見てんだ。


小町「……お腹、約束だもんね///」


 照れくさそうに、こちらへ近づいてくる小町。


八幡「いい……のか?」


 ごくり、つい生唾を飲み込んでしまう。


小町「小町的にポイント低いな、その発言」

八幡「あ、ああ、すまん。俺はお前のお腹を……触りたい」


 そして、小町コレクション一回目のご褒美タイムが始まった。


中途半端ですがここまでにします。続きはこまコレのご褒美タイムからです。
おやすみなさい。

嗜虐心の人?

>>152
八股先輩か、好きだったなあアレ

>>152 まぁ、ばれますよね。隠してもないですが……

>>155 あざす。八幡が後輩になるシリーズが書いてて一番楽しかったです。

少しだけ続きいきますー


 お腹。

 人間の数ある部位の中で、最も異性が触っても許される場所ではないだろうか。

 胸とさほど変わらない距離、柔らかさでありながら、くすぐったり触ったりしても喜ぶ場合が多い。

 ……俺の場合は別だけど。


 逆にいえば、それほど性的快感を覚えない場所でもあるということだ。

 脂肪のせいかは分からないが、くすぐったい感覚はあっても、気持ちいい感覚はあまり生まれない。

 だから、小町は最初にこの部位を選んだんだろう。



 だが、それは大きな勘違いだ、小町。



八幡「改めて聞くが、俺は小町のおなかを好きにしていいんだな」

小町「うん、まぁ痛いのはやめてほしいかなー」

八幡「誰が大切な小町に痛いことするか」

小町「う、うん(今の小町ポイント高いかも…)」

八幡「じゃあ、行くぞ」



 そして、俺は小町の地肌に触れて……ゆっくりと撫でた。





小町「そんな触り方でいいのー」


 くすくすと笑う小町。

 どうやら俺が遠慮していると思っているらしい。


八幡「ああ、ゆっくりと……な」


 言葉に合わせて人差し指をツーッと滑らせる。


小町「んっ……」


 ぴくりと身体をこわばらせる小町。今のはくすぐったい反応だろう。


八幡「どうした?」

小町「う、ううん、ちょっとくすぐったかっただけ」

八幡「そうか」


 軽くうなずくと、俺は再び小町のおなかを撫でる。

 優しく、ゆっくりと、愛でる。


 十分は経っただろうか。残暑のせいか小町の身体にじわじわと汗がにじむ。


小町「時間制限決めとけばよかったかも」


 あはは、と笑う小町。

 だが、俺はそれこそを利用しているのであって、時間制限なんてされてはたまらない。


八幡「そろそろ舐めるぞ」

小町「うん、いい……いっ!?」


 予想外の言葉に思考が追いつかなかったのだろう、小町は両目を見開いて驚く。


八幡「好きにしていいんだろう?」

小町「う、うーん……そ、そうだけど…」


 両手の人差し指をツンツンして顔を赤く染める小町。……可愛い。


八幡「じゃあ、行くぞ」


 ひょいと持ち上げ、ベッドに押し倒すと、小町は軽く声をあげた。

 どうやら長時間他人に触れられたことにより、気分が高揚してるようで、感度が上がってるように思える。


小町「ね、ねぇお兄ちゃん、お風呂入ってから――」


 ぺロリ。

 脇腹を思い切り、舐め上げると、身体をビクンと跳ねた小町は、


小町「ひゃぁあああ///」


 と、大声をあげた。


 両脇を撫でつづけたのだから、そこを舐められると思ったのだろう。

 だが、それこそが時間をかけて撫でつづけた布石だったのだ。


 下腹の少し下、いわゆる子宮の位置に当たる部分を思い切り舐める。


 すると大声をあげて反応した小町の膝が思い切り俺の顎を捉えた。


八幡「ぐがっ……」


 舐め終わった後でよかった。危うく舌を噛んで死ぬところだったぞ小町……。


小町「はぁはぁ……///」


 自分でも予想外の反応をしてしまったのだろう小町は、顔を真っ赤にしてこちらを見ていた。むろん膝が当たったことさえ気づいていない。


 もう一度舐めようとすると、小町は両手を前に突き出して妨害を始めた。


小町「だ、ダメダメダメ! お、終わり終わりだよお兄ちゃん! 閉店ガラガラー///」


 オーバーリアクションで動き回る小町、くぁいい。


八幡「………」

小町「………」


 しばらく沈黙が続く、顔を真っ赤にして涙目の小町は、肩を小刻みに震わせながら、


小町「……………だめ?///」


 と、可愛く小首を傾げた。

 正直抱き締めたかったが、欲望を抑えて、


八幡「いいよ、愛する妹の願いだ」


 と、少し残念そうに笑った。……まぁ、ここで終わることも想定内だったのだが。



 とにもかくにも、小町コレクション第一回目のご褒美を終えた俺は、お風呂に入ると出ていく小町を見送った後、



 全力で青春を謳歌したのだった。



八幡「……ふぅ」




小町コレクション

頭【】
首【】
口【ゲット!】
胸【】
腹【ゲット!】
性器【】
太もも【】
ふくらはぎ【】
足【】


唇を奪った人物

1、平塚静

 生活指導室にて勘違いにより接吻を行う。なお、相手を勘違いさせた模様。


お風呂

小町「………んっ…」

小町(いやー、まいったなぁ……本気になっちゃったよー)

小町「歩くのが精いっぱいだったけど、ばれなかったかなー」アハハ

小町(でも、これでお兄ちゃんが外交的になって幸せになってくれるなら!)

小町「次は頭にしよーかなー。撫でてほしいし」

小町「……はうっ、じ、自分の為じゃないもん!」



ネクストターゲット






 翌日、学校へ行くと校門の前にいた平塚先生に熱烈な視線を送られたが、たまたま登校していた由比ヶ浜のおかげで何とか逃げ出すことに成功した。


由比ヶ浜「え、なんでお礼?」


 相変わらず無償の愛に安らぎを感じている由比ヶ浜は、お礼を言われることを苦手としているみたいだ。

 めちゃくちゃ希望的観測だが、おそらく由比ヶ浜なら頼みこめばキスくらいなら許してくれるだろう。

 もちろん、俺なんかとするのは嫌だろうが、それでも我慢してくれると思う。


 ……だが、それじゃあ小町コレクションの趣旨と合わない。


 小町コレクションの肝は、俺が生涯の伴侶足り得る相手を見つけるために接吻をするというもの。

 本来であれば、普通に恋愛できればいい話なのだ。

 だが、あいにく俺はコミュニケーションを得意としない。

 だから小町は無理やりにでも俺を幸せへと導こうとしてるのだ。


 ―――つまり、


八幡「……由比ヶ浜」

由比ヶ浜「ん? どうしたの?」


 俺自身も変わる時がきたのである。


八幡「俺、変わることにするわ」

由比ヶ浜「……変わる?」


 まぁ、伝わらないだろうな、うん。



 玄関口に入り、下駄箱前に行くと、川崎が靴を履き替えていた。


由比ヶ浜「あ、サキサキだ、やっはろー」

川崎「サキサキ言うなし……ん?」

八幡「お、おう」

川崎「………」

由比ヶ浜「ヒッキー? サキサキ?」


 川崎が俺の方を見つめたまま、停まっている。

 何かを悩んでいるようにも思えるが、それが何か分からない。

 だが、俺が口を出すよりも早く、川崎は口を開く。心なしか顔が赤い。


川崎「……今日なら、空いてるよ」


 吐き捨てるように、と言ったら語弊が生じるかもしれないが、精一杯の照れ隠しなのだろう。

 言葉を出すと同時に鞄を肩に回して走り去る川崎。

 いつもなら、聞き流すか無視をするおれだが、今日からは違う。


八幡「川崎!」

川崎「………」


 ぴた、と立ち止まる川崎。


八幡「放課後、な」


 こちらを見ることなく再び走り出す川崎。

 そして、ちらりと横を見れば、


由比ヶ浜「」


 由比ヶ浜が何故か茫然自失状態になっていたのだった。

 
 教室へ入るなり戸塚彩加が嬉しそうに挨拶をしてきたので、思わず小町コレクションしそうになったが寸前の所で我慢することができた。


戸塚「?」


 きょとんと首をかしげる戸塚は、世界中の誰よりも愛嬌に満ちていて、世界中のだれよりも純粋な存在だった。


相模「ちょっとあんた、机出し過ぎじゃない?」


 幸せに浸っている俺に向かって、前の席の相模南が心底嫌そうな顔でこっちを睨みつけてきた。

 文化祭の一件以来、相模と相模一派の連中とは、犬猿の仲を通り越して冷戦状態になっていたからだ。

 まぁ、俺の方は全く気にしていない(というよりも、関わらないで欲しい)ので、あちらからの牽制を全て見て見ぬふりするだけなのだが。


八幡「ああ、悪いな」


 と、机を引き、それに合わせて椅子を引くと、

 
 ガン、と後ろの席の机と当たった。


三浦「………」ゴゴゴゴゴ

八幡「」


 なんだ俺の席、前にはドラゴン後ろにジャバザハットか?


三浦「………」ゴゴゴゴゴ

八幡「え、えっと……」




三浦「……ふんっ」


 ぷいっ、とそっぽを向く女王。

 いつも通りと言えばいつも通りなのだが、どこか様子がおかしい。

 しかし、その理由が分かるはずもなく、俺は机に突っ伏して小さくなる。


 ……これじゃあ今までどおりじゃないか。


 だが、そうはいっても人間すぐに変われる訳じゃないみたいで、突っ伏したまま横目を流すと、


川崎「………」


 左の席にいた川崎が、呆れたようにこちらを見ていた。


 少し……ほんの少し自分が情けなくなった。


※八幡のクラスの席順について※


席替えをして、八幡は一番右の列の後ろから二番目。

後ろが優美子、前が相模、左が川崎、左後ろが戸塚、左前が葉山となっています。

ちなみに由比ヶ浜は左の一番前です。



 昼休み、呼び出しをくらった俺は、恐る恐る生活指導室へと赴く。


 平塚先生に童貞を奪われるんじゃないかという恐怖は、よく知る後頭部を見た瞬間消えてしまった。


静「よく来たなはち……比企谷。まぁ座れ」


 ポンポンと、自分の横に座るように指示する平塚先生。

 まぁ、さすがに雪ノ下の前で暴走することはないだろうから、俺は素直に指示に従う。


雪乃「………」


 雪ノ下がこちらを見つめていた。

 睨むでもない、見下すでもない。ただただ真正面から俺を見据えていた。


平塚「ここに呼んだ理由が分かるか、はち……比企谷」

八幡「えっと、奉仕部のことですか?」

平塚「ああそうだ。最近、顔を出していないそうじゃないか」

八幡「あ、ええ、まぁ……ちょっと忙しくて」


 その原因の一つがあんただよ。と、言いたいがその原因の根本的な問題は俺のせいなので黙っておく。


雪乃「………」

平塚「あのな、はち……比企谷。部活動というのはな――」

※名前間違えた。次から平塚で行きます。


 昼休みの大部分を部活の存在意義について聞かされた俺は、雪ノ下と共に部屋を出た。

 それにしてもおかしいのは雪ノ下だ。いつもなら憎まれ口の100は叩くはずなのに、一言もしゃべらなかった。


八幡「お、おい、雪ノ下」

雪乃「………」


 呼びかけても、反応しない。

 今まで数多くの罵倒をされてきたが、完全な無視は初めてだ。

 少し、ムカついてしまう。

 それは、他者に対して何も期待しなくなった俺に生まれるはずの無い感情で、自分が変わっていることを象徴していた。


雪乃「……あなた、川崎沙希さんを放課後デートに誘ったそうね」

八幡「ほ、ほうか?」


 放課後デート。

 まさか雪ノ下からそんな単語が出るなんて夢にも思わなかったので、つい驚いてしまった。


雪乃「その反応……本当だったみたいね」


 どうやら、リアクションを図星ゆえにとった行動と思われたみたいで、雪ノ下は少し悲しそうな表情をしながら、


雪乃「……でも、あなたが誰かとコミュニケーションをとれるようになったのなら、それは素晴らしいことだわ」


 と、こちらの返答も待たずに颯爽と歩いて行ってしまった。

 静寂だけが、廊下に残った。


 午後の授業も背中に突き刺さるプレッシャーと戦いながら過ごすこととなった。

 どうやら三浦優美子は少なくとも何かしらの感情を俺に持っているらしく、俺はそれを知らない限りずっとこの調子が続くようだ。

 だが、今日はその確認をとる前に、


川崎「……で、どうするの?」


 川崎沙希とのいわゆる一つの放課後デートに出かけなくてはならなかった。


相模「………」


 相模まで何故かこっちを睨んでいたが、そんなのに気をとられている場合じゃない。


八幡「お、おう……それじゃ…」


 俺は、鞄を持って席から立ち上がると、


八幡「じゃあな、三浦」


 と、挨拶をしてみることにした。

 これで、好意的な反応があれば、視線を気にする必要はないし、罵声を浴びせてきたらその原因を解決してやればいい。


 だが、反応は意外なもので、


三浦「……ぉ、ぁ……ぅん」


 と、女王あるまじきモジモジ反応を見せつけられることとなる。


八幡「………」


 驚きとギャップに戸惑っていると、


川崎「ほら、行くよ」


 と、耳を引っ張ってくる川崎。


八幡「い、いてーよ」

川崎「あんたがのんびりしてるからでしょ」

三浦「………」





三浦「挨拶……してくれたし…」




いったんここまで! 以前のssを覚えてくれている人はあざます!

八幡後輩シリーズを妄想してきます!では!

□八股シリーズおすすめ□


八幡「やはり俺の嗜虐心は間違っている」結衣「しがくしん?」

↑若干エロ注意。たぶん八股シリーズの原典。あーしかわいい。


八幡「やはり俺の先輩たちは間違っている」雪乃「あなたを後輩にした覚えはないわ」

↑八股シリーズで一番ノリノリ。駄目な雪ノ下を愛でるシリーズ。


八幡(例え世界が間違っていると罵ったとしても)モノクマ「うぷぷぷぷ」

↑元々ダンガンロンパのSSが書くのも読むのも好きだったので、作ったss。実はダンロンのssとオチは被っている。


読むのはこの三つだけでいいと思う。(間違ってもロジカリストを開いていはいけない)

嗜虐心
八幡「やはり俺の嗜虐心は間違っている」結衣「しがくしん?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1390/13903/1390325217.html)

連投すみません、うまく専ブラでリンクが反映されてなかったので

>>194なんだこのスレ変態か(自画自賛)

モノクマのを冷静に見ると、もう少しやれたんじゃないかと思う。


では、続きー



 校門を抜けると、川崎は数歩前に出て振り返った。(背中には何かおぞましい気配が突き刺さっていた)


 肩に手提げ鞄をかける辺りどう見ても不良なのだが、本人にその自覚はない。まぁ実際中身は良妻賢母キャラを地で行くお姉さんなのだが、それを知っている人は多くないだろう。


川崎「で、どうするつもりだよ。早く言えよ」


 と、今日の予定を催促してくる川崎。

 だが、あいにく俺に決めていた予定はなく、


八幡「か、川崎は何かしたいことないのか?」


 と、ごまかしてしまう。


川崎「……なんだよ、エスコートしてくれーのかよ」


 ぶっきらぼうに言い放つその顔は少し寂しそうだった。

 だからなのだろうか、俺の中の少しだけ芽生え始めたリア充の心が口を開かせる。


八幡「ぷ、プリクラ!」

川崎「………」


 いや、分かるよその表情。

 こんな無表情二人がプリクラを撮って何の意味があるのかと、そう言いたいんだろ。

 文字はそうだな、チャリで来たっていうのが流行ってたし、無表情で撮ったにするか。事実を書くのが流行ってるんだろ。違う?


 そんな妄想を繰り広げてる間に、川崎は肩を震わせ、次第に大きな声で笑い始めた。


川崎「あ、あはは! ははははは! ぷ、プリクラねっ!」



八幡「なんだよ、そんなに笑うところか?」


 悪い悪い、と川崎は謝る。目じりに涙を溜めるほど笑ったのか、つーかまつ毛なげーなこいつ。


川崎「いや、こんなしかめっ面女とプリクラ撮るために、昨日三浦の前で誘ってきたのかと思うと面白くてな」


 それでも、嫌じゃなかったのかゲームセンターに向かう道のりの歩き方はかなり楽しそうだった。

 そして、リア充とボッチが入り混じる電子機器の巣窟へとたどり着いた。


八幡「普段なら50円ゲームコーナーに一直線するところだが」

川崎「さすがのあたしでも、怒るよ?」


 はい、行きません。絶対に。


八幡「なぁ川崎」

川崎「何?」

八幡「……やったこと、あるか?」

川崎「………」


 無言の返答。

 どうやら俺たちは、文明を得た類人猿のように四苦八苦しなければならないようだった。




 プリクラという機械はなるほど、巨大なアミューズメント施設にありながら、閉鎖的でカラオケボックスのような小規模空間を作り出しているのか。


八幡「何してもばれねーのかな」

川崎「……何する気だよ?」


 見下すように突き刺さる視線に狼狽しつつ、お金を入れる。


川崎「あたしも半分出すよ」

八幡「いや、いいよ。俺が撮りたかったんだし」


 まぁ実際はお金払ってまでこんな無駄なものを撮った、なんて言われたら残りの人生ひきこもりで終わりそうだったからなんだけどね。


川崎「撮りたかった……ね///」


 顔を赤らめて、反対側を向く川崎。……そこに気づけるようになった俺はもうコミュ障じゃないのか?

 プリクラ機の案内に従い、初めは二人でピースする。……その表情は固い。


 ――パシャ。


 一瞬だけ映る結果。なるほど、思っている以上に無表情だ。


プリクラ「次は、仲良しのポーズ! 手をつないでアピールしちゃおう!」


 画面に映る二人の表情が強張る瞬間だった。

あれ、八幡は戸塚とプリクラとったことなかったっけ?



八幡「じょ、冗談だよな……」


 プリクラって恋人だけじゃなく友達同士だって撮るだろ。女子同士に言うのはまだ分かるが男子同士にも言う……あ。

 男子だけの利用は禁止って、そういうことだったのか!!


川崎「ま、まじでやらなきゃなんねーの?」


 珍しく焦る川崎。

 実際、プリクラがゲームであればこっちが指示に従う必要なんてない。

 だが、俺の最終目的があれである以上、このルートは通っておいて損はないはず。


八幡「……みたい、だな」


 俺は、そっと左手を差し出す。

 プリクラ機がカウントダウンを始めた。

 3、


川崎「だ、だけど、男と手をつなぐなんて」


 2、


川崎「い、いや、でも……」


 1、


川崎「………っ」


 ――ぱしゃり。


 顔を真っ赤にして映る美少女と、相変わらず無表情で映る八幡の姿がそこにはあった。

サキサキの口調こんなんだったっけ?原作読んでくる勘違いだったらすまん。



川崎「ふん、やってみればどうってことないね」


 額にかいた汗をぬぐう川崎。どんだけ緊張してんだこいつ。


プリクラ「次は恋人のポーズ! いつものように抱き合っちゃおう♪」


二人「」


 ここで、俺の脳内で神速の会議が始まった。

>>199 せやったか。ちょっと記憶になかったわ。

>>202 原作が今手元にないからあれだけど、なんか~~だけど。とか、そういうぶっきらぼうな言いまわしが多かったような。


 小町コレクションルール的には、

 2、基本的にはキスのみ。
 (ただし、キスをメインとした演出はオッケー)
 例:キスをしながらのペッティングなど。


 と、ある。

 この場合、キスをするために抱きつくなら問題なさそうだが、抱きつくために抱きつくのは……。


八幡(キスするためだし、問題は……ないか?)


 結論、


 川崎沙希に抱きつく。


 会議終了。



 3、


川崎「な、なぁ早くない?///」


 2、


八幡「………」クンカクンカスーハースーハー


 1、


川崎「//////」



 ――パシャリ。


 川崎の首筋の匂いを嗅ぐ変態が、そこにいた。





 結局、そのあとの指示は仲良しポーズや元気なポーズなど曖昧なものが多かったため、照れた川崎に近づくことはできなかった。


川崎「……なんかすごく疲れた」


 お互いプリクラのお絵かき機能なんて使いこなせる自信もなく、証明写真のような無機質なプリクラを半分に分けた。


川崎「で、これで満足なの?」


八幡「は? んなわけねーだろ」


 間違えた。


川崎「これ以上あたしに何を望んでるんだよ」


 小さいため息を吐きながらも、その表情はまんざらではない。


八幡「そりゃあ、……公園デートとか?」


 さすがに、平塚先生の時とは条件が違う。今日はこれくらいにするべきだ。

 その後、公園を少しだけ歩いた俺たちは、暗くなったのでその場で解散となった。

>>川崎「な、なぁ早くない?///」

なぁとかこんな男口調は使わないと思う

>>209参考にした!

実は川崎さんをヒロインにしたことがないので、違和感あったらすまん。

徐々に皆の理想の川なんとかさんにして見せる!



 翌日、教室へ入った俺は、いつもと違う空気に嫌な予感がした。

 どうやら、その予感は的中したようで、席に着くなり前の席の性悪女が嬉しそうにこっちに話しかけてくる。


相模「あんたら昨日楽しそうに歩いてたけど、そういう関係なん!?」


 あからさまな態度の変化にかなりイラついたが、隣の川崎に迷惑をかける訳にもいかないので、適当に相槌を打つ。


八幡「ああ、放課後遊ぶような友達関係だよ」


 否定するでもなく、大きく肯定する訳でもない適当な返事。

 どうやら、それがお気に召さなかったようで、相模は美人な顔を醜く歪ませて、


相模「やだぁ、そんなはぐらかさなくてもクラスメイトなんだしぃ、教えてよぉ」


 と、囃したてる。

 どんなに興味がない相手でも、さすがにここまで騒げば野次馬が集まるのも必然。


葉山「何の話してんだ?」


 と、三浦の近くにいた葉山が割り込み、


戸部「つーか、気になるっしょ!」


 と、葉山の取り巻き軍団が盛り上げる。


川崎「………」


 川崎は相変わらず無表情で黒板を見つめていた。

 どうするのが正解なのか……。



 ―――ガンッ!


一同「!?」


 突如、鳴り響いた大きな音に全員が振り向く。

 俺だけは振り向かない。……だって音の発生源は俺の下だし。


三浦「つーか、朝っぱらからうぜーんだけど」


 どうやら、三浦優美子が俺の椅子を蹴りあげたらしい。なんだこの女王様。


相模「い、いや、だって気になるじゃん?」


 クラスカーストの観点から三浦に全く頭の上がらない相模は、へこへこと取り繕う。


三浦「あ? つーかあんたヒキオのこと好きなん?」


 その言葉に、相模の表情が一気にひきつった。

 どうやら、というかどう考えても、俺のことを好きだということにされるのは心底嫌らしい。


相模「そんな訳っ!!」


 大きな声をあげた瞬間、もう一度ガンという音が鳴り響く。……ケツいてぇ。


三浦「なら、もう黙れし」


 その一言で、決着がついてしまった。

 ああ、男前三浦優美子女王。


 

いったん離れます!

つーかこのssの落とし所が見えないっしょ!

何であーしさんの好感度こんな高いんだww
現時点でも単純な好感度だけなら小町の次ぐらいあるだろww

八股先輩があーしさん推しだからね

嗜虐と後輩になるの読んだ!どっちも面白い!嗜虐は続きなりなんなりもっと見たい感じ!

これが似てる感じなのかな?

2巻読んでもサキサキの口調つかめん。。。。。。

>>220>>221、見た目はさがみんの方が好きなんだけどな、なんでだろうな。。。

>>222 あざます! これがリメイクというか別パターンみたいな感じです! これ終わったら後輩八幡やるかも?


では、続きー



 教室中が静まりかえる。


三浦「隼人ぉ、あんたも普段ヒキオとつるんでない癖に、何が気になるんだし」

葉山「あ、いや、まぁ」

戸部「それもそだなー」


 全員に加害者意識があったのだろう、一斉に散り散りになる。

 俺はこの席なので逃げる訳にもいかないし、どうすればいいか迷っていると、


三浦「ヒキオ、あんたももっと男らしくなりな」


 なんだこの人、抜刀術の師匠か。


川崎「………」



 昼休みに入り、いつものようにボッチ飯を楽しもうかとした途端、呼び出しを食らった。

 中庭に行くと椅子に座っている女子生徒がいた。

 小説だろうか、教科書くらいの本を顔が隠れるくらいの高さで読んでいる。


 色とりどりの落ち葉を背景に、ゆっくりとページを捲る姿は、正直美しいと思った。


八幡「で、肝心のあいつは……」


 待ち人を探すが、見当たらない。


八幡「どこにいるんだよ――」



 と、声を上げた瞬間――、



由比ヶ浜「あ、ヒッキー来てたんだ」



 本をおろし、笑顔を見せる少女の姿があった。





八幡「お、お前、本なんて読めるのかよ?」


 それ以前に文字読めたのか。


由比ヶ浜「酷いよヒッキー!」


 悲しそうな表情を見せる由比ヶ浜。

 日頃の行いだろ、と憎まれ口を叩こうとしたが、由比ヶ浜の嬉しそうな顔を見て思いとどまった。


八幡「なんで嬉しそうなんだよ」


 と、尋ねると、満面の笑みを浮かべながら、


由比ヶ浜「えへへ、ヒッキーと久しぶりに話せたから///」


 危ない危ない、久々のビチヶ浜パワーを受けて好きになるところだった。

 
八幡「で、話ってなんだよ」

由比ヶ浜「うん、あんさぁ……ヒッキーって……その…」


 モジモジとはっきりしない由比ヶ浜は珍しい。

 こういう時は、


八幡「どうした、俺のウンコタイムに興味があったのか」


 まったく別方向のボケをかませば、


由比ヶ浜「違うよ! ヒッキーの好きな人の話をしようとしただけ!」

八幡「は? 俺の好きな人?」

由比ヶ浜「あ……」


 相変わらずちょろい女である。

川崎の口調や性格を理解するにはゲームをやるといいぞ

>>227VITAか……やりたいな…



 どうやら、ここ最近の行動が俺に好きな人ができたからだと思った由比ヶ浜は、今朝の流れから誰を好きか分かったらしい。


由比ヶ浜「あ、あのね、私ね。最初はヒッキーはゆきのんが好きだと思ってたんだ」

八幡「いや、さすがに俺もジャイアンを好きになったりしねーよ」

由比ヶ浜「ゆきのんは少し正直なだけだよ……」

八幡「で、お前は俺が誰を好きかと勘違いしてるんだ?」

由比ヶ浜「か、勘違いじゃないし! 絶対間違いないんだから!」

八幡「戸塚か? もちろん間違ってないぞ」

由比ヶ浜「なんでそうなるの!? しかもそれ自分でいう台詞!?」

八幡「いいから早くしろよ」


 どうせ川崎だろ。

 そもそもが川崎とデキているという噂から発展した事件なんだから、それ以外ないだろ。


由比ヶ浜「さがみんのこと、好きなんだね」

八幡「へーへー、それでい……え?」


 伏兵現る。


由比ヶ浜「……やっぱりそうだったんだ…」

八幡「おーい、由比ヶ浜さーん」


 このままじゃまずい。非常にまずい。




由比ヶ浜「ヒッキーの好きな子ほど苛めたくなる体質ーーーー!」


 俺の性質を一ミリたりとも理解してない叫びと共に走り去るなーーーー!


八幡「……ま、いいや。これ以上変な噂されても気にならねーし」


 次の相手を見つけるのが若干難しくなるだけだ。

 その時は、そう思っていた。



 だが、異変は午後の授業から起きる。


相模「………」チラッ

八幡「………」

相模「………」チラッ

八幡「………」

相模「………」チラッ


 なんだこれ。

 さっきからチラチラと見すぎだろ、思春期か? ……思春期か。



 休み時間。


「比企何とか君が文化祭で相模さんのこと苛めてたの、好きだかららしいよ」

「えー、それって子供過ぎない!?」

「うわー、きもー」


八幡「………」


 気にしない気にしない。

 俺の底辺だった評価に色が着いただけだ。何の問題もない。

 それよりも、だ。


三浦「………」ゴゴゴゴゴゴ

川崎「………」ゴゴゴゴゴゴ

戸塚「………」ゴゴゴゴゴゴ


 なんだか俺の周りだけスタンド能力が発動してるみたいなんだけど。


相模「………」チラッ


 こいつはこいつでさっきから人のことをちらちらと……。



 午後の授業も、チラチラと振り返る相模に、変なオーラを放つ横と後ろと天使。

 そんな異質な空間の中心にいる俺は、正直な話限界を迎えていた。


 だが、それよりも気になるのが、葉山隼人の存在である。

 いつもなら、俺みたいな底辺オブ底辺でもフォローに回るはずが、今回は傍観者に徹している。


 こつんこつん。


 椅子の下に響く振動。

 どうやら、後ろの女王が俺に用があるらしい。

 すこぶるめんどくさいが、無視する方が後々面倒なことになりそうだ。


 振り向いてみると、両腕を組んだ三浦が一枚の紙を差し出した。

 そこには……なんだこの数字。


八幡「……これ、何?」


 小声で聞くと、


三浦「ラインのIDに決まってるし」


 ライン……ID?


三浦「は? もしかして、ラインやってねーし?」


 なんだよ、その未登録宇宙人を見つけたときのような反応は。


八幡「よくわからんが、オンラインゲームならやらんぞ」


 オンラインゲームですらボッチになる自信があるからな、えへん。



 ゲームを進めるのは諦めたのか、三浦はルーズリーフに何かを書きなぐる。

 そして、背中に思い切りたたきつけてきた。……少し目覚めそうだった。


八幡「なんだこれ?」


 そこには荒っぽい字でデカデカと、


『アンタ川崎のことが好きなんじゃなかったし』


 と、書かれていた。


 ああ、そういう設定になっていたか。

 この場合の返答はどうすればいいものか……。

 とりあえず、三浦の紙に書いたら怒られそうだったので自分のノートを千切ってメッセージを返す。


『ああ、すまん。あれは嘘だ』


 人間認めることが大事だ。

 だから俺は正直に答えた。

 しかし、


三浦「はぁ!?」


 女王がバァンッと、机をたたいて立ち上がった。

 クラス中の人間が彼女に注目する。



八幡「お前のせいで追い出されたじゃねーか」


 ノートの落書きを指摘され、追い出された俺たちは、とりあえず校舎裏に来た。というより三浦に引きずられてきた。


三浦「はぁ? ふざけんなし。あーしはあんたが川崎を好きだって言うから!」


 そこまで言って、ストップした女王。

 そしてゆっくりと顔を赤くしていき、ゆでだこのように赤くなる。


八幡「どした、大丈夫か?」


 とりあえず熱があるか測ろうとおでこに手を当てる。小町が熱の時によくやった方法だ。

 しかし、この時の俺は相手が女王だということを完全に忘れていた。


三浦「……ぁ………なっ…///」


 プルプルと震える三浦。やっぱ風邪ひいたのか。


八幡「保健室行けよ」

三浦「……だ、大丈夫だし」

八幡「……ちげーよ。俺が移されたくねーだけだ」

三浦「………」


 なんだよ。女王の癖になんでそんな寂しそうな顔してんだよ。


三浦「……そうするしっ!」


 これでいい。

 今の俺は最低最悪の底辺オブ底辺。

 トップカーストの三浦優美子が仲良くして良い相手じゃねーんだよ。


八幡「……さて、何して時間つぶそう……」


 と、思った瞬間、


平塚「………」ゴゴゴゴゴ


 今度はアルター使いが現れたのだった。



 これはいわゆる一つのモテキなんだろうか。

 常に命の危険を感じているが。


 生活指導室に入った途端、強い衝撃と共に来客用の椅子へと押し倒された俺は、借りてきた猫のように縮こまった。


平塚「……ハチ君。私の言いたいことが分かるか?」


 長い髪の毛が鼻に当たってむず痒い。

 だがそれを指摘する勇気がない俺は、視線を落として平塚先生の胸を覗くことしかできなかった。


平塚「ハチ君と付き合って56時間記念日だというのに、もう二股されるなんて……」


 56時間記念日。この人頭弱いのか?


八幡「ちょ、ちょっと待ってください」

平塚「もう、待てるわけないだろ。分かるだろ?」


 ちゅっ、という音が部屋に響く。

 どうやら首筋を吸い付かれたようだ。ジンジンと痛みが広がる。


平塚「はぁはぁ/// ハチ君、す、好きだよ///」


 ちゅっちゅっという音と共に、痛みが増えていく。

 もしかして、このまま喰いちぎられるんじゃね。


 そう思った瞬間、


戸塚「あ、あのっ、八幡いますか!?」


 天使が舞い降りたのだった。


八幡「」

戸塚「」

平塚「んっ/// はち……くぅん///」





戸塚「な、なななっ///」


 顔を真っ赤にして、両手で顔を覆うがしっかりと隙間から覗く戸塚。可愛いぞ。

 だが、今はそんなことより、この悪霊を退治してほしい。

 そう願いをこめて見つめ続けると、戸塚はにっこりと笑顔を浮かべ、


戸塚「………」パクパク


 えっ、


戸塚「………」パクパク


 ぼ・く・の・は・ち・ま・ん?


戸塚「………」スゥ…





戸塚「僕の八幡に何してんのさぁあああああ!」



 と、叫んだ。

 もはや俺の青春は間違っているどころか五回くらい裏返ったんじゃないかと思う。



平塚「……よく言ったな戸塚」ゴゴゴゴゴ



 いや、その前に教職生命心配しましょうよ。

 ゆらりと立ち上がるその姿は、スタンド使いでありアルター使いであった。



戸塚「いくら先生でもやっていいことと悪いことがあるよ平塚先生」


 
 落ち着け二人とも。このssはバトルものでもなければギャグでもないぞ。ってとうとうメタ発言まで始めちゃったよ。



八幡「落ち着いてください二人とも」


平塚戸塚「「八幡(ハチ君)は黙ってて!!」」


八幡「」


 もう、どうにでもなれって感じだった。





 君たちは不思議に思ったことはないだろうか。


 なぜプラスとプラスをかけたらプラスに、プラスとマイナスをかけたらマイナスになるのに、


 ――マイナスとマイナスをかけたらプラスになるのか。


 だって俺と材木座がフュージョンしたって絶対にプラスの存在にはならないだろ。


 だが、この時ばかりはその疑問の答えを見出した気がした。




平塚「じゃあ、そういう事でいいか」

戸塚「はい、ありですね」



 どうやら、結婚できない戸塚とバレたら教職生活が終わる平塚先生の利害が一致したらしい。

 偽装結婚というわけではないが、俺と平塚先生が結婚して三人で幸せに暮らす。

 そんな未来(地獄)が待っているらしい。


 ――いや、まったくもう……ごめんだ。




 説得しても無駄だと悟った俺は、とりあえず指導室から逃げ出した。

 待てぇ、とか、逃がさない、とか、ホラー映画レベルの叫びが聞こえたけど、俺は振り返らずに走り去った。



八幡「はぁはぁはぁ……」



 屋上へ飛び出すと、思い切りドアを閉める。

 どうやら、ついては来てないみたいだ。

 俺はずり落ちるように座り込んだ。


八幡「勘弁してくれよ……」

川崎「何を勘弁するの?」


 空から声が降ってきたので顔を上げるとそこには――、


八幡「黒の……レース」


 見覚えのある光景があった。


 隣に座った川崎からはとてもいい匂いがした。

 しばらく心地よい風に心を癒していると、川崎が口を開く。


川崎「ねぇ、あんた本当にあのショートカットが好きなの?」

八幡「はぁ? お前の眼は節穴か?」

川崎「……だよね」


 なんだ最初の間は。


川崎「好きな奴がいるのにあたしとプリクラ撮ったりしないよね」


 うんうんと頷く。

 なんだかいつもと違う川崎に、俺は少し戸惑う。


八幡「えっと……」


 言葉に迷っていると、川崎の指が俺の指先に触れる。


川崎「………///」


 顎に手のひらを置いて、そっぽを向く川崎の顔は赤い。

 やはりモテキなのか? それとも死ぬのか?

 とにかく、こんなシチュエーションに慣れていない俺は、動くことができず……。


 ぎゅっ、


 と、手をつなぐのであった。


小町「んー、なんだか大変なことになってそーだなー」

クラスメイト「どうしたの小町ちゃん」

小町「あ、ううん、何でもない」

クラスメイト「?」

小町(小町的にいつまでも優柔不断な態度とってると、最悪の結末を迎えちゃうぞお兄ちゃん)



 何をするでもなく、ただただ手を繋ぎ空を見上げる時間を共有した俺たちは、別々にクラスへと戻ることにした。

 教室のドアを開けた瞬間、混沌とした光景が飛び込んできた。


相模「最初っからむかついていたのよ!」

三浦「はんっ、ビビッて何もできなかった癖して!」

葉山「二人ともやめろよ!」

戸部「そうだぜ! 落ち着けよ!」

三浦「あんた達は黙ってるし!!」

相模「そうだよ! ウチらの問題だし!!」

葉山「ぐっ……」


 あの葉山さえ苦労している。

 ということは俺の出る幕はないな。うん、かえろ――、


由比ヶ浜「あ、ヒッキー!」


 あー、そういう奴だったよお前は由比ヶ浜。


 由比ヶ浜が指さした瞬間、全員が一斉にこちらを向く。


八幡「えっと……その……」


 原因も状況も分かってない俺に何を求めているんだ。


戸部「お、お前がわりーんじゃね!? ヒキタニ君!」

八幡「……は?」


大岡「そうだ! お前が調子に乗らなきゃよかったんだし!」

相模「そうだよ! ウチはあんたのせいでどんだけ迷惑食らってんだし!」


 葉山集団と相模集団の同時攻撃に乗せられて、クラス中の空気が俺を責める雰囲気になっていた。

 慣れていると言えば慣れているが、いくら慣れていても解決できるわけじゃないのが面倒だ。


戸部「どう責任取ってくれんだよ!」


 ぐいっ、と襟元をつかむえっと……葉山の取り巻き。


由比ヶ浜「ヒッキー!」


 由比ヶ浜が叫ぶ。

 しかし、どうしてこんなになっても葉山は何も言わないんだ。

 まぁいい、ここは使えないヒーローより己の力だ。


八幡「……はぁ~~~~」


 クラスメイト全員に聞こえる声でため息を吐く。


戸部「な、なんだよその態度は!」


 戸部が殴りかかろうとしてきたので、俺はグイと戸部の襟元を引き込む。


戸部「……えっ」



 柔らかい感触が唇に広がる。……ていうかデコきれいだなこいつ。


戸部「んーーーっ!?」


 教室に悲鳴が駆け巡る。なんだか喜びの叫びも聞こえるが気にしない。

 言っておくが葉山の取り巻きよ。

 俺は中途半端な男じゃないぜ。


戸部「!?」


 さすがに描写は割愛するが、葉山の取り巻きはおそらく生まれて初めての感覚に驚いているだろう。

 ふん、経験人数二人とはいえ内容は濃かったんだ。お前みたいな薄い恋愛してきた奴を骨抜きにするくらい訳ないんだよ。


戸部「………んっ///」


 ……いや、さすがにその甘い吐息は引くぞ。

 これ以上やったらあへ顔ダブルピースさえやりかねなかったので、俺は襟から手を離した。


 しばらく呆然と立ち尽くす戸部だったが、我に返ったのか顔を真っ赤にして出て行ってしまった。


由比ヶ浜「ヒッキー……」


 全員から突き刺さる異常者を見るような視線。

 俺じゃなきゃきっと逃げるか泣き崩れるかしただろうな。


三浦「………」イライライライラ


 


 結局、葉山の取り巻きは戻って来ず、女子生徒からは冷たい目線を送られ、後ろからは突き刺さるような視線を食らい、前からは相変わらずチラチラと見られ続けたが何とか授業を終えることができた。

 そして、ホームルームが終わって解散宣言が出た瞬間、大部分の生徒が逃げるように教室を去り、残ったのは――、


三浦「………」

相模「………」

川崎「………」

葉山「………」

由比ヶ浜「………」

戸塚「………」

海老名「………」ダラダラ


 謎のメンバーだった。



三浦「そろそろはっきりさせるし」

川崎「そうだね」

由比ヶ浜「な、何を?」

戸塚「そんなの、決まってるよ」

葉山「ああ、そうだな」

相模「………」

海老名(ハヤハチ希望ハヤハチ希望……)ブツブツ


八幡(一体何が……)


一同「「八幡(ヒキタニ君)(ヒッキー)(ヒキオ)(アンタ)!!」」



 ――いったい、だれが好きなんだし!!



八幡「………え?」


 八幡が好きなのは誰?

 安価↓下一桁が7の早いもん順(連投禁止)。

 ※ただし、男性陣は勘弁。安価↓になります。


 八股復活一発目にふさわしい相手をお願いします!


 おやすみなさい!

やっぱそうだよね。うん。

寝て起きたらあーし様エンドにします。

次作は八幡後輩リメイクでええかね?

それともモノクマリメイク?

おやすみなさい。

色々意見あざす。次の八幡ssで生かせるように頑張るので、とりあえずこれはクライマックスに行きます!

少し前、林間学校のサポートへ行った時。


戸部「いやー、ヒキタニ君の案まじひでーっしょ!」

葉山「まぁでも、結果が出たしね」

戸部「隼人君まじ天使! 優しすぎっしょ!」

三浦「………」

三浦(あいつ、もしかして今までもずっとこんな方法ばっか使ってたってこと!?)


八幡「………」ボケーッ


三浦「?」

三浦(どこ行くんだし)タタタッ


八幡「………はぁ~~~~」ズリズリズリ

八幡(何事もなくてよかったぁ……)

三浦(何であんな疲れてんだろ)チラッ

八幡「結局のところ、今回は俺は見てるしかできなかった」

八幡「それは他人の人生を人任せで決めたってことだ」

八幡「そんなの……」ツーッ

三浦「!?」


八幡「無責任だ」


三浦(こ、こいつ、こんな責任感あったんだし!?)ドキドキ


八幡「……早く戻らなきゃ、小町や皆が心配する……」ガクガク

八幡「あ、あれ……上手く立てない…」

八幡(それほど緊張してたのか)ハハハ…


三浦「ひ……」ピタッ

三浦(今あーしが出て何になるんだよ……あいつのプライド傷つけるだけじゃねーの……)プルプル


八幡「それにしても……三浦の奴」


三浦「!?」

三浦(あ、あーし!?)


八幡「………たな」


三浦「!!」ドキッ///



 思えば、この瞬間。


 あーしはヒキオに恋をしたんだと思う。


二学期初め。


三浦「静ちゃん相談が」

平塚「おい、平塚先生と呼べ」

三浦「先生はヒキ……ひき?」

平塚「比企谷か?」

三浦「あーそうそう、比企谷君のことずっと見てたんだよね」

平塚「ぬぁっ/// ま、まぁ生徒としてな! 出来が悪い子ほどかわいいっていうしな!」ハハハ

三浦「ヒキオはできが悪い訳じゃねーし!」ガンッ

平塚「!!」

三浦「あ……」カァ///

平塚「ほう、ほうほうほう///」ニヤニヤ

三浦「う、うぜーし///」プイッ

平塚(とうとう、あのバカのバカ行動に気付いたバカが現れたか)ズキッ

平塚(ん? なんだ今の痛みは……)


三浦「だからさ、あーしはヒキオにもっと自信を持って欲しいんだ!」

平塚「いいや、あいつはもっと自信をなくすべきだ。1人で生きていける者などいない」

三浦「あーしがいるから1人になんてさせねーよ!」

平塚「………」

三浦「………/// ああ、そうだよ! あーしはヒキオに惚れちまったんだよ!」プイッ

平塚「………」ポンッ

三浦「?」


平塚「お前も立派な変人だな」ウンウン


三浦「ヒキオを好きになっただけでその仕打ちかよ!」

平塚「いや、悪い意味じゃない。あいつの本質を見抜くと言うのはそれだけで凄いことなんだ」

三浦「……今なら分かるよ。その意味がさ」

平塚「……だが、あいつは相当の捻くれ者だ。変に構えば逃げてくぞ」

三浦「だから先生に相談したんだし」

平塚「………」

文化祭


相模「ひっく……えっぐ…」

モブ「大丈夫だよさがみん」

モブ「そうだよ、あいつがあそこで変なこと言わなかったら――」


八幡「………」


三浦(あいつまた自分を傷つけて……)イラッ

戸部「つーかヒキタニ君まじひでーの! この前の林間学校でも――」

三浦「つーかうるせーし」

戸部「ひぇっ!?」

葉山「優美子?」


葉山「……そっか」

三浦「……自分でも意外だし」アハハ///

葉山「……悔しいな」

三浦「えっ?」

葉山「優美子のことは俺が一番分かってると思ってた」

三浦「隼人……」

葉山「でも、それは俺のエゴで実は何も見てなかったんだな」

三浦「……ごめん」

葉山「ははは、珍しいな。優美子が謝るなんて」

三浦「だって……」

葉山「まぁ一番の男友達として言わせてもらう」ジッ

三浦「……う、うん」



葉山「俺はいつだって優美子の味方だ。彼が君を泣かせた時は――」



席替え


三浦(あー、後ろからヒキオを眺めるの結構好きだったんだけどなぁ……)

平塚「それじゃあくじを引けー」





八幡「後ろから二番目か……まぁまぁだな」

葉山「………」

葉山(俺は一番後ろか……)

三浦「……真ん中か」

戸部「うげー、真ん中かー! 漫画読めないっしょ!」

葉山「………」

三浦(ヒキオは……)ドキドキ


葉山「優美子」


三浦「?」

相模「……最悪」ハァ

八幡(何だこの席……)

川崎「………」

三浦「………」ドキドキドキ


葉山「………」フッ

戸部「つーか隼人君また近くって運命っしょ!」

葉山「ああ、そうだな」


三浦(やばい近いやばい、ヒキオの匂いがするヒキオのオーラが見える、ヒキオの動きが分かるドキドキするやばいやばいやばい)

三浦「………こんなの」




―― 一晩でディズニーランドが建っちゃうしーーーー///




放課後


三浦「……あれは、先生とヒキオ?」

三浦(指導室へ入っていく……)

三浦「……気になるし」シュタッ





三浦(何も聞こえねーし……)


――ガラッ


八幡「……お前は野々村議員か」

三浦「あーしは泣いたりしねーし!」


 やっばぁーーーー!

 いきなり二人きりなんて難易度高すぎだしぃいいい!


八幡「何してたんだ?」

三浦「!!」


 ヒキオがあーしに興味を持ってる!

 う、嬉しすぎだし!!


三浦「は? 何であーしの行動の意味をあんたに伝えないといけねーし」 カァ///


 ……あーしのあほ…。


八幡「これが不良が捨て猫に優しい効果か」

三浦「は?」

八幡「いや、こっちの話」


 ヒキオはたまにあーしの分からない言いまわしをする。

 それがあーしにはもどかしい。

 一緒の景色見たいのに……。



八幡「恋の相談をしてたんだ」



三浦「!?」


 な、ななな、なん……なんだってーーーーーーー!!

 お、落ち着けあーし。ヒキオにだって好きな人の一人や二人できるはず……って二人はだめーーー!


三浦「だ、誰なん?」


 う、うわぁあああ!

 あーしキモイ! 何きょどってんのよバカ!


八幡「俺の好きな人が気になるのかよ」


三浦「はぁ!? 何なんその言い方!」


 ちょーーーーー気になるっつーーーーの!!



 は?

 え、まじ……?


八幡「す、すげぇ似合ってるな。まじで、うん」

川崎「あ、ありがと。うれしい……よ」


 いや、そりゃあーしだってあーしのことが好きだなんて自惚れるつもりはなかったけど。

 ……あーしの目の前でそれやる?


八幡「今日、暇か?」


 さ、誘ってるし……がーん。


川崎「今日は忙しい」


 は? あーしのヒキオの誘い断るっつーの?


八幡「そ、そーか」


 はい! あーしなら空いてます! いつでも出動できます!


川崎「じゃ」


 ……うわぁ……まじかぁ……。

 ……でも、そっか。



三浦(ヒキオも、ちゃんと人を好きになれるんだ……)ニマニマ

三浦「へー、ふーん、ほー」

八幡「……なんだよ」


 なんであーしじゃないのに、ヒキオが普通の恋をしてるってだけでこんなに嬉しいんだろ。

 これが恋って奴なのかな……。


現在



一同「「八幡(ヒキタニ君)(ヒッキー)(ヒキオ)(アンタ)!!」」



 ――いったい、だれが好きなんだし!!



八幡「………え?」



 おい、落ち着けお前ら。

 俺が誰を好きか以前に俺に興味があるやつなんていたのか。



相模「こんな噂立てておいて、ウチのこと好きじゃないなんていうつもりなん!?」

八幡「いや、しらねーししらねーよ」

相模「」


川崎「……ま、あたしは関係ないし、帰るわ」

一同「えっ?」

川崎「……頑張んなよ」ボソッ

三浦「!?」

三浦(な、なんで!?)

川崎「見てれば分かるよ」フッ

三浦「/////」

葉山「姫菜、行こう」

海老名「え、あ、うん」

葉山「ほら、相模も」グイ

相模「」トボトボ



葉山「……比企谷」

八幡「………」



葉山「真剣に……考えてくれ」ガラッ



由比ヶ浜「………」

三浦「………」

八幡「………」

由比ヶ浜「あ、あははー、なんだろうね、このメンバー」

三浦「………」

八幡「………」

由比ヶ浜「なんだか変な空気になってきたし、もう奉仕部いこっかヒッキー」

八幡「………」

三浦「……結衣」


由比ヶ浜「……だめ」


二人「!」

由比ヶ浜「優美子はヒッキーを好きになる資格ない!」

三浦「っ!!」ズキッ

由比ヶ浜「ヒッキーはずっと苦しんでたのに! 何にも知らない優美子がヒッキーを好きになっちゃだめだよ!」

三浦「あ、あーしは……」

三浦(……言葉が…出ない…)

由比ヶ浜「ねぇヒッキー、行こうよ。明日からまた普通の生活を送ろう?」

八幡「………俺は…」



由比ヶ浜「ヒッキー最低だよ!」パシンッ

八幡「………ああ、俺は最低だ」

由比ヶ浜「……っ!」ダッ

八幡「………」

三浦「ヒキオ……」

八幡「お前だって軽蔑しただろ。俺は妹と情事を重ね、先生に手を出し、クラスメイトを毒牙にかけようとしたんだ」

三浦「………」

八幡「だから、お前も――」



三浦「気にすんなし」ギュッ



八幡「………っ」

三浦「どうでもいいよ」ナデナデ

八幡「どうでも……よくなんか…」

三浦「あんたがあーしと結衣の仲を取り持とうとしてたって、誰かと何かをしてたって」

八幡「………」




三浦「あーしが八幡を好きなことに何も影響したりしない」コツン




八幡「……三浦…」

三浦「好きだよ、八幡」

八幡「………」

数日後。。。


三浦「比企谷優美子かー、ちょっとなげーし」

八幡「気が早すぎだろ」

三浦「は? あーしと付き合っておいて結婚せずに逃げる気?」

八幡「いや、普通に別れる可能性だって」

三浦「やだ」

八幡「………」

三浦「あーしさ、思ってる以上に重いからね」

八幡「へーへー」

三浦「……へへっ/// 好きだよヒキオ」

八幡「好きな相手をそんな呼び方するもんかね」

三浦「だって、世界であーししか呼ばないっしょ?」

八幡「………」



三浦「大好き!!」



完?

飯食って、タイミングが合えば後輩八幡やります。

では、お疲れさまでした。

小町はどうなったの?

なんか毎回最初は良いのに駄目になってくよね

こまこれとは何だったのか…

>>299 小町は次はお姉ちゃんとして搭乗する予定です。

>>300 枠の無い紙に好き勝手描いた絵だからね。製品版をお買い求めください。

>>301 つぎは雪乃下先輩大活躍です。


ちょっと、次のssで使うAAを置かせてください。



          _,,..,,,,_
         / ,' 3  `ヽーっ
         l   ⊃ ⌒_つ
          `'ー---‐'''''"


次はヒロインも決まってるし、竜頭蛇尾にはならないはずです!


次のssです。

八幡「やはり俺の先輩たちは間違っている」雪乃「駄目な子ほどかわいい」
八幡「やはり俺の先輩たちは間違っている」雪乃「駄目な子ほどかわいい」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1411803908/)



このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年10月01日 (水) 17:00:42   ID: HUBkW1eP

八幡ただの屑じゃん
あとあーし推しなのに口調に違和感あるよね

2 :  SS好きの774さん   2014年10月02日 (木) 13:38:10   ID: HGtpF3we

こいつ頑なに原作読まない宣言して叩かれてたやつじゃなかったっけ

3 :  SS好きの774さん   2014年10月07日 (火) 22:35:49   ID: neEDc0aR

後半ダレ打ち切りの典型か

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom