ロリ陽乃「大きくなったらお姉ちゃんと結婚しようね」ショタ八幡「うん、いいよ」 (195)

ロリ陽乃「嘘ついたら針千本口に入れてボクシングだからね?」


ショタ八幡「お姉ちゃん怖っ!」


ロリ陽乃「大丈夫、大人になってお姉ちゃんと結婚してくれたらしないから」


ショタ八幡「あれ?お姉ちゃん以外と結婚出来なくなった?」


ロリ陽乃「結婚は一人としか出来ないよ」


ショタ八幡「でもテレビでいっぱいお嫁さんいる人見たよ?」


ロリ陽乃「浮気したら八幡をてるてるぼうずにするからね」


ショタ八幡「怖いよ陽乃お姉ちゃん!?」

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束になって月日は流れ


八幡「!」ガバッ

八幡「思い出した…!」

あれはたしか、俺が小学校に上がる前


父ちゃんと母ちゃんに結構広い公園に連れて行ってもらった事がある


まだよちよち歩きが限界の小町がぐずって、小町をあやしている父ちゃんと母ちゃんが見ていない隙に探検をしたくなったんだ。

広い公園だったから思い切り遊びたかった、家の近所の小さな公園にはなかったアスレチックや長い滑り台に興奮して遊んでいた。



ロリ陽乃「君、一人なの?」


ショタ八幡「うん」


当時の俺より少し背が高く、年上なのがすぐにわかった。

だけど何より、美醜の観点がまだ曖昧だった俺はお姉ちゃんに見とれていた


ショタ八幡「お姉ちゃん誰?」


ロリ陽乃「あたしは陽乃、お姉ちゃんだよ」


母ちゃんと父ちゃんに見つかってどやされるまでお姉ちゃんと遊び続けた

遊んでいる最中に冒頭の猟奇的なやり取りがあったのだが


八幡「……まあ、あの人も覚えてないだろ」


針千本口に入れてボクシングとか、いたいけな年下の子供吊しててるてるぼうずにするとかお転婆ってレベルじゃねえぞ。
そもそもボクシングって小学生の発想じゃねえだろ


臭い物には蓋をするに限る、この記憶は墓まで持って行っておしまいにしよう。

雪乃「あら比企谷君、部室の備品が動き回ってはダメじゃない」


八幡「誰が備品だよ」

結衣「消耗品?」


八幡「お、おい雪ノ下!大変だぞ!由比ヶ浜が消耗品なんて言葉知ってやがる!」

結衣「ウザッ!ヒッキーマジキモイ!」

雪乃「由比ヶ浜さん、熱があるの?無理は禁物よ?」

結衣「ゆきのんまで!?」


八幡「青天の霹靂だったからな」

雪乃「そういえば最近姉さんが妙な買い物をしているのよ」


八幡「妙な買い物?」


結衣「ってなに?」


雪乃「ボクシンググローブと百本入りの裁縫用の針を十セット、後は大きな無地の布を買っていたわ」


結衣「何に使うのかな?」

雪乃「分からないから妙なのよ」


結衣「ヒッキーは分かる?…ってすごい汗だねヒッキー!?」


八幡「なななななんでももももないぞぞぞぞそ」プルプル

雪乃「なんでもなさそうには見えないのだけれど」


八幡「帰るるるるる」プルプル


結衣「う、うん…またね…」

雪乃「???」

八幡(冗談じゃねえ!三十六計逃げるに如かずだ!)

陽乃「ひっきがーやくーん♪」

八幡「ひいぃっ!?」

陽乃「何か思い出せたかな?」

八幡「さあ?何の事やら」

陽乃「よーし、赤コーナーか青コーナーか選ぼっか」

八幡「すみません許して下さい陽乃お姉ちゃん!」


陽乃「分かればよろしい」

八幡「あの…」


陽乃「お姉ちゃんとデートしよっか」


八幡「え?」

陽乃「アイスコーヒーで」

八幡「あ、同じ奴で」


陽乃「やっぱり運命なのかな」


八幡「ベートーベンですか?」


陽乃「クラシックでもロックでもポップスでもないよ」


八幡「…」


陽乃「危うく怒りの日になりかけたけどね」


八幡「今朝夢で思い出したんです」


陽乃「八幡は薄情だねー」

八幡「雪ノ下さんはいつから俺だって分かったんですか?」


陽乃「陽乃お姉ちゃんって呼んでよ」

八幡「は、陽乃お姉ちゃん」

陽乃「あたしは最初からだよ」

八幡「最初からっていうと、雪ノ下とららぽにいたときからですか?」

陽乃「うん」


八幡「マジか…」


陽乃「最初の最初に気付かないのは仕方ないから泳がせてたけど、遅すぎるよ」


八幡「すみません」

陽乃「どうしようかなー」

ここまででごわす

八幡(帰りたい胃が痛いパンシロンプリーズ)キリキリ


陽乃「うーん…」


八幡「な、なんすか」キリキリキリキリ


陽乃「あたしさ、昔はあんまり自由な時間無かったんだよね」


八幡「そうなんすか?」

陽乃「経済的に不自由はなかったけど、長女だし教育に熱心な家だったからひたすら何かしらやらされてたの」


八幡「何か想像つきますね」


陽乃「で、あの時初めて年の近い男の子と思い切り遊べたんだよ」


八幡「そういえばなんで色々とタイトな生活しててあの公園にいたんですか?しかも割と距離ありますよあの公園」


陽乃「家出したからだよ」


八幡「なるほど」


陽乃「興味もない習いたくもない事ばっかさせられてたからある日プッツンしてね、もらったお小遣いで好き勝手してやるって」


八幡「好き勝手って何を?」


陽乃「たしか数千円だったかな、もらったお小遣いで好きなだけお菓子食べて、帰る時のことなんか無視して電車で出来るだけ遠くに行って広い公園で何しようか迷ってたら…八幡と会ったの」


八幡「破天荒ですね」


陽乃「破天荒っていうのは前人未到の何かを成し遂げる事だよ、あたしのはただの反抗期、誰でも通る道じゃない」


八幡「というかそもそも何であの時結婚するとか言ったんですか?」


陽乃「だーかーらー!生まれて初めて年の近い男の子と遊んだからだってば」


八幡「…?」


陽乃「うわ、ホントに分かってない…」


八幡「ははは、まさかあれが初恋とか言い出さな…」


陽乃「…」//////


八幡「…チョロすぎでしょ陽乃お姉ちゃん」

陽乃「だって仕方ないじゃない!小学校でも習い事のせいで誰とも遊べなかったもん!」//////


八幡(魔王と思ってたら囚われの姫君だったでござる)


陽乃「しかもみんな少し漢字が難しくなっただけで読み書きできなくて話合わなかったし…」


八幡(そういうところが優れた人間の悩みどころなのか)


陽乃「雪乃ちゃんも似たような事言って孤立しちゃったみたいだし」


八幡(時期的にあいつも幼稚園児の終わりらへんか、根っこが変わってないから簡単に想像できるな)

陽乃「だから結婚するなら八幡しかいないって思ったの!分かった!?」///

八幡「昔の謎は解けました」


陽乃「それはよかった」


八幡「あれから何年経ちました?」


陽乃「十年以上だね」


八幡「十年もの間に良さげな異性との出会いは?」

陽乃「無かったね」


八幡「HAHAHA、そんなバカな」


陽乃「無かったね」


八幡「いやいや、冗談はほどほどにしましょうよ」


陽乃「無かったね」


八幡「あの、陽乃さん?」


陽乃「無  か っ  た  ね  」


八幡(俺質問間違えた?)

陽乃「十年ぶりに会った八幡の印象聞きたい?」

八幡「いえ別に」


陽乃「…」ギロッ


八幡「スミマセンオシエテケツカレ」


陽乃「変わったけど変わってないなって」


八幡「矛盾してませんか?」


陽乃「見た目は十年以上経ってるんだから変わるのは当たり前でしょ、あたしが言いたいのは八幡の根っこの話」


八幡「根腐れしてますよとっくに」


陽乃「まあたしかに卑屈にはなったけど、あの時一人でいたあたしに優しかったでしょ?そういうところが変わってなかったからさ」


八幡「そりゃ違いますよ」

陽乃「違う?何が?」


八幡「あー、まあ、あれです、陽乃さんに見とれてたんですよ俺」


陽乃「…」


八幡「こんな綺麗な女の子いるのかって固まってて、そしたらなし崩し的に遊ぶ事になって…」


陽乃「な、なななななな…」/////////


八幡「あの、陽乃さん?」


陽乃「釣りはとっとけぃいいいいい!!」ダン!

八幡「まさかの諭吉!?」

八幡「ふう…ただいま」

小町「おかえりー遅かったね」

八幡「まあな」

小町「彼女とデートしてたの?」

八幡「彼女じゃないがデートではあるな」


小町「おお!?結衣さん!?雪乃さん!?」


八幡「陽乃さん」


小町「妄想も大概にしろよビッグブラザー」


八幡「マジだよリトルシスター」


小町「…どんな弱味を握ったの?」


八幡「昔、小町がよちよち歩きしか出来なかった頃にだな…」

小町「えぇー!?陽乃さんの初恋の相手がお兄ちゃんだってー!?」


八幡「本人の言葉だからな」


小町「嘘じゃないのはすぐ分かるけどさ」


八幡「なー、男の趣味悪いよなー」


小町「自分で言うんだ…」

八幡「まあ意外と世間は狭いっつー事だな」


小町「適当に結論づけても何も解決してないからね?」


八幡「大丈夫!初恋相手が俺なだけで今好きな相手は俺じゃないだろ」

小町「どこをどう判断したらそんな答えが出るの!?」


八幡「あーあー聞こえないー」


小町「最低だこのごみぃちゃん…」

八幡「さっき話したじゃん、小学生の時点で針千本ボクシングとか脅してくる相手と結婚とか怖いじゃん」

小町「それは陽乃さんもあれだけど…」


八幡「だろ?以上、デート内容暴露でしたシーユーネクストタイム!」ビシッ

小町(大丈夫かなこのバカ…)

ブーン!ブーン!

八幡「はい、ああ探偵事務所です」


陽乃『あ、すみません間違えました』

八幡「…」ピッ

ブーン!ブーン!

八幡「…コンビニ行くか」

ブーン!ブーン!

八幡(まだ鳴ってんのか、元気だな俺のスマホ)

ブーン!ブーン!


八幡(ティラミスうめぇ)

ブーン!ブーン!

八幡(今夜のアニメなんだっけなー)

ブーン!ブーン!

八幡(お、今期イチオシアニメか、明日は学校で寝て過ごすか)

シーン…


八幡(やっと鳴り止んだか、シュークリームうめぇ)


小町「お兄ちゃーん!陽乃さんから電話だよ!」

八幡「このプリン食べたら出るわ」

小町「とか言ったらリングインさせるってさ」

八幡「はいもしもし比企谷です」

陽乃『よかったやっと出た』

八幡「出てませんから、これ小町の電話ですから」

陽乃『八幡出てくれないから小町ちゃんに助けてもらったの』

八幡「さいですか」

陽乃『明日ヒマ?』

八幡「いえ、ポテチの新作の試食があります」

陽乃『ヒマって事だね』
八幡「他にも柿ピーとハッピーターンとプリッツの試食がありまして」

陽乃『ヒマならまた会ってくれない?』


八幡「ああ、あとは」

陽乃『針千本食べたい?』

八幡「どこで待ち合わせますか?病院ですか?」

陽乃『何で病院で待ち合わせるのwww部活が終わり次第駅前ね』

八幡「分かりました」ピッ

小町「…」


八幡「ポテチと柿ピー、ハッピーターンにプリッツがおあずけになっちまった」


小町「タフな精神してるねお兄ちゃん」

八幡(来てないな、帰るか)クルリ


陽乃「待った?」ニコニコ


八幡「今来たところです」

陽乃「あたしもあたしも」

八幡「…」

陽乃「急に黙ってどうしたの?」

八幡「なんかデートみたいだなって」


陽乃「なーに言ってるの、デートだよ」バシーン!

八幡「ええ!?そうなんですか!?」

陽乃「ほら、行くよ」つ

八幡「?」


陽乃「手繋いでよ」つ


八幡「なんでですか?」

陽乃「いいから」


八幡「…」キュッ


陽乃「なんか照れるね」////

八幡「////」

陽乃「ここにしよっか」

八幡「おしゃれな店ですね」

陽乃「八幡と行ってみたくてさ」

八幡「リサーチしてたんですか?」

陽乃「うん」


八幡「…」

陽乃「入ろうよ」

八幡「あ、はい」

陽乃「美味しかったねー」

八幡「本当にうまかったです、会計持ってもらってすみません」

陽乃「いいのいいの、あたしが誘ったんだから」
八幡「しかもわざわざ会計前にお金渡してくれて」

陽乃「ふふん、あたしの親のすねは強力だから」
八幡「それでも申し訳ないですよ」

陽乃「あ、もういい時間だし帰ろっか」

八幡「送っていきます」
陽乃「じゃあ腕組んでいい?」

八幡「…どうぞ」

陽乃「えへへー」ギュ

八幡「…」

陽乃「ねえ八幡」

八幡「はい」

陽乃「初恋は実らないって言うけど本当なのかな?」

八幡「分かりません」

陽乃「もっと考えてよ」
八幡「いや、恋が実った試しがない奴が答えられる質問じゃないですよ」
陽乃「…」

八幡「初恋が実るやら実らないやらはあくまでも結果論であって、ましてや俺は陽乃さんに対してあの十年前の遭遇では初恋にはならなかったんですから」


陽乃「育ち方が違うから仕方ないけど悔しい」


八幡「だけど、今も昔も陽乃さんには見とれてしまいます」


陽乃「!」


八幡「陽乃さんの見てくれが良いってのは当然ありますが、ここまで目が引き付けられるのは陽乃さんだけです」

陽乃「…」

八幡「美的感覚って言うんですかね、あの公園でたまたま出くわした陽乃さんが俺のそれに絶対的な価値観を与えてくれました」

陽乃「つまり?」

八幡「恋かまではわからないですけど、陽乃さんがすごく魅力的だと思っています」

陽乃「…そっか」

八幡「そうです」

小町「甘っ!小町砂糖吐いちゃうよ!甘い甘い甘い甘い!」ペッペッ


八幡「陽乃さんに出会った十年前が運の尽きだった」


小町「ねえビッグブラザー」


八幡「なんだリトルシスター」


小町「完璧に陽乃さんはお兄ちゃんにホの字なわけじゃん」


八幡「あーあー聞こえないー」


小町「いいから聞けこのバカちんが」ゴスッ


八幡「小町がぶった!?」

小町「で、わからないのはお兄ちゃんが何でそこまで陽乃さんから逃げたがるの?」


八幡「小町というものがありながら他の女にうつつをぬかしたくないから」


小町「やだ小町感激…じゃない!危ない危ない、高坂さんちみたいになるところだった」


八幡「惜しい」

小町「いい加減にしなさい、陽乃さんの事もう少し前向きにならないとお兄ちゃん嫌いになるよ」

八幡「…釣り合わんだろ」

小町「なにが?」

八幡「俺と陽乃さんとじゃいくらなんでも有り得ないんだよ」


小町「はぁ?」


八幡「いいか、俺は道端の犬のウンコにも劣る何かだ」


小町「どんな物体だよそれ」


八幡「対して陽乃さんは高嶺過ぎて大気圏突破してるような所に咲くコスモスだ」

小町「そんな高度だとコスモス枯れるわ」


八幡「そこで枯れないのが魔王なんだよ」


小町「コスモスやら魔王やらコンビニ店員並みにあだ名付けるね」


八幡「ちなみに誤解を避けるために説明するが、十年前に運が尽きたのは陽乃さんだからな」


小町「逃げ口上を尽きさせなよまったく」

八幡「っつーわけで俺は全力で陽乃さんから逃げ切るから」


小町「こんなこと言ってますよ陽乃さん」


八幡「え?」


陽乃『ぶふっwwwごめwww犬のウンコにも劣る何かがツボっちゃったwwwあはははは!』


八幡「!?」


小町「お兄ちゃんが泣き言言い出したら会話を電話で中継してって頼まれたんだよ」


八幡「…」サー…


陽乃『八幡』

八幡「ハイ…」

陽乃『誰が大気圏突破してる枯れないコスモスの魔王なのかな?』

八幡「イエメッソウモゴザイマセン」

陽乃『元気ないよ?大丈夫?』

八幡「ダイジョウブジャナイデス」

陽乃『何より一番気になったのはね』


八幡「ナンデゴザイマスカ」


陽乃『八幡は誰から逃げるって?』


八幡「ユキノシタハルノサマデスハイ」

陽乃『出来ると思う?』

八幡「タイヘンインポッシボーニチカイカトゾンジマス」


陽乃『それなら逃げてみるだけ無駄だよね?』


八幡「オッシャルトオリデスハイ」

陽乃『分かればよろしい、明日も同じ場所でね?』

八幡「カシコマリマシタ」

陽乃『おやすみ八幡♪』
八幡「オヤスミナサイマセ」ピッ

小町「…」ニヤニヤ

八幡「よっしゃ、ちょっと手頃な大志殴ってくる」


小町「現実逃避しないの」

八幡「あの魔王マジ怖いんだけど!?」


小町「いやいや、陽乃さんが義姉になってくれるなら最高じゃないの?」

八幡「いやそれ小町の見解!小町の願望!小町の意見んんんんん!」


小町「ふっふっふ」

八幡「あーどうしよう魔王怖い魔王怖い…」

八幡(はあ…帰りたい)


陽乃「お待たせ♪」

八幡「どうも」

陽乃「中々いい雰囲気の喫茶店があってさ」


八幡(まるで昨日の事を忘れているかのような振る舞いだな)


陽乃「またお姉ちゃんに見とれてるの?」ニコニコ


八幡「え、あ、はい」


陽乃「!」////

八幡(聞いてなかったから適当に答えたら赤らんだ、何を聞かれたんだ俺)

陽乃「い、行こっか」キュッ

八幡「はい」

陽乃「雪乃ちゃんはどう?」


八幡「いつも通りです」

陽乃「そっか、八幡が言うなら大丈夫だね」


八幡「こないだ変な買い物してたのを怪しんでた位です」


陽乃「変な買い物?」


八幡「針を千本とかボクシンググローブとか買ってたんですよね」


陽乃「あーあれね」


八幡「マジで俺をリンチする気だったって事ですよね」


陽乃「八幡の記憶があるかどうか確かめたくなってさ」


八幡「殺す気満々ってことですか?」

陽乃「いやいや、キーワードとして充分効果的だと思ったから揃えてたの」


八幡「思い出さなかったら?」


陽乃「あの公園まで一緒に行ってたかな」


八幡「っていうか陽乃さん、雪ノ下と俺をくっつけたがってませんでした?」


陽乃「…」


八幡「まあ、俺からすればあいつとそうなるのは考えにくいし、雪ノ下からすれば有り得ないでしょうけど」


陽乃「雪乃ちゃんが孤立しがちだったのは話したよね?」


八幡「はい」

陽乃「あの子男の子に好かれることは多かったけど女の子に好かれることが全く無かったのよ」


八幡「本人も言ってました」


陽乃「モテてもあんなんだから、男っ気ゼロの友達ゼロで心配してたんだよこの十年間」


八幡(平塚二世だったのかあの雪女)


陽乃「あ、なんか失礼な事考えてるwww」


八幡「何の事やら」


陽乃「まあいいや、で、そんな時にあの雪乃ちゃんが生まれて初めて連れてた男の子が八幡だったんだよ」


八幡「因果な話ですね」


陽乃「あ、付け足すとその前の事故の時は確証が得られなかったから、別の形でチャンスを伺ってたらその一年後に八幡は雪乃ちゃんとデートしてたって形になるね」


八幡「雪ノ下家に呪われてんのか俺」


陽乃「運命じゃないかな?」ニコニコ


八幡「偶然ですよ」

陽乃「八幡は運命とかそういうの嫌いそうだよねwww」


八幡「それで、律儀な陽乃さんは愛しい妹と自分の十年越しの約束を天秤に乗せたって事ですか」

陽乃「うん」


八幡「なんつうか、俺の意志ガン無視なのが癪ですけど泣かせる話ですね」

陽乃「あ、ちょっと抵抗しようとしてる」


八幡「十年前のあの出来事から始まって、車に跳ねられて部活に強制的に入れられて、あれこれ振り回されて…迷惑です」

陽乃「だろうね」


八幡「もう振り回されるのにも嫌気が差しました。俺と俺の家族に二度と関わらないで下さい」

陽乃「…」


八幡「それでは失礼します、こないだのお釣りと二日分の食事代はまとめてお返しします」スッ


陽乃「…てよ」


八幡「え?」


陽乃「約束守ってよ…」

八幡「はい?」


陽乃「八幡まであたしから離れないでよ…」


八幡「…」


陽乃「イヤだよ、やっと八幡とずっと一緒にいられると思ったのに行かないでよ…」ポロポロ


八幡「あ、え?」オロオロ


陽乃「雪乃ちゃんの為に八幡のこと一回諦めたのに、また諦めたくないよ」ポロポロ


八幡「な、泣かないで下さい」


陽乃「うわあああああん!」

八幡「あわわわわ…」オロオロ

いたたまれなくなり店から出た後


八幡「落ち着きましたか?」


陽乃「うん、泣いてすっきりした」ケロッ


八幡「それはよかったです、じゃあ」クル


陽乃「え?どこ行くの?」ガシッ


八幡「帰ります、雪ノ下さんもお元気で」


陽乃「ヤダ」


八幡「…」


陽乃「ヤダ」ウルウル


八幡「はあ…」


陽乃「♪」


八幡「いつまでこうしてたらいいんですか?」


陽乃「え?死ぬまでだけど」


八幡「嫌だよ!」


陽乃「絶対八幡と結婚するからね」

八幡「会う度に追い詰められてる感じがするんだが」


小町「はいはいお腹いっぱいお腹いっぱい」


八幡「いや、追い詰められてんだぞ俺」


小町「超美人のお姉さんに、初対面から十年以上ずっと一途に想われてて追い詰められてるとか罰が当たるよ!?」


八幡「えー…あの人手段選ばな過ぎて一歩間違えたらえらい目に遭いそうなんだけど」


小町「お兄ちゃんが面倒な奴だから陽乃さんは手段を選ばないんじゃないの!?」



八幡「そもそも俺が好きとか正直趣味悪すぎて引くんですけど」


小町「うわぁ…本当に犬のウンコ以下だこいつ」


八幡「待てよ、引く…」

小町「?」


八幡「そうか!その手があったか!」


小町「多分通用しないよー」


八幡「ふははは!雪ノ下陽乃敗れたり!ふはははははは!」キリッ



小町「ムダにイケメンになってんじゃねえよ」

駅前


八幡「お待たせしました」


陽乃「ちょっと遅かったね」


八幡「すみません、これ買ってたら遅くなって」つエロ本


陽乃「ふーん」ヒョイ


八幡(さあ引けすぐ引け今引けドン引きしろ魔王!)


陽乃「大胆なポーズだねー」ペラッ


八幡「あの…」


陽乃「どの子がお気に入りなの?」


八幡「ああ、買ったばかりで読んでないです」


陽乃「この巨乳の女の子可愛くない?」


八幡「お、すげー可愛いです」


陽乃「売れっ子みたいだねこの子」


八幡「この乳でこのくびれってスゴいですね」


陽乃「あたしもあるよ?くびれ」


八幡「そうなんですか?」

陽乃「うん、見る?」


八幡「…」ゴクリ


陽乃「あ、ちょうどいいところにラブホテルが…」

八幡「待てぇーーーーい!」


陽乃「どしたの急に?」

八幡「どうしたのはあんただよ!エロ本だぞ!?」

陽乃「うん、エロ本だね」

八幡「待ち合わせの前にエロ本買ってきたら引くだろ普通!」


陽乃「八幡くらいの男の子なら誰だって興味津々じゃない」


八幡「そりゃそうだけどなんで受け入れてんだよ!」


陽乃「あたしたちだっていつかはこんな事するでしょ?」


八幡「なっ!?」//////

陽乃「あたしも初めてだからリードしてね?」



八幡「////////////」ボンッ!

恥ずかしくなって逃げ出したらたまたま戸塚と会ったから洗いざらい話す八幡




戸塚「お姉さんってすごいんだね…」


八幡「魔王怖い魔王怖い魔王怖い魔王怖い魔王怖い」


戸塚「ねえねえ八幡」


八幡「ん?」


戸塚「そのエロ本貸してくれないかな?」ムラムラ


八幡「ぐはぁっ!?」つエロ本

戸塚「え!?八幡大丈夫!?エロ本はありがとう!!」


八幡(そういえば戸塚は男だった…)

小町「まさか戸塚さんがエロ本をねぇ」


八幡「今までの事全部吹っ飛んだぞまったく」


小町「まあお兄ちゃんの恋人候補としてよりマシだからね」


八幡「戸塚に迫られたら断れる自信がない」


小町「戸塚さん的に有り得ないよそれ」


八幡「ぐはぁっ!」ビシャッ


小町「なんで吐血するの!?」


八幡「ダメージがヤバい」


小町「…」

ゆきのんズハウス

陽乃「ねえ雪乃ちゃーん」パタパタ


雪乃「いきなり上がり込んで来てくつろいで何かしら姉さん」


陽乃「お兄ちゃん欲しい?」


雪乃「……もう結婚するのね」


陽乃「んー相手次第かな、あたしは今すぐにでもいいけど」


雪乃「相手次第?というよりも姉さんが待たされているの?」


陽乃「まあねー」


雪乃「どんな人なのかしら?」


陽乃「まだちゃんと決まったわけじゃないから教えなーい」


雪乃(お見合いではなさそうね、姉さんが待っている相手…どんな超人なのかしら)


陽乃「実はかれこれ10年以上待っててさー」


雪乃「10年以上前だと姉さんが家出をした時期よね」


陽乃「そうそう、その時一緒に遊んでくれた男の子がずっと好きなんだよ」


雪乃「純愛ね」


陽乃「向こうは気付いてくれるまで長かったから大変だったよ」


雪乃「そう」


陽乃「明日もデートでね」ニマニマ


雪乃「それなら仮面はしないほうがいいわね」


陽乃「大丈夫大丈夫、一瞬で見抜かれたから」


雪乃「比企谷君以来ね」

陽乃「っていうか比企谷君なんだけどね」


雪乃「………え?」

学校

八幡(戸塚はあのエロ本で抜いたのだろうか…)

結衣「ひ、ヒッキーどういうこと?」


八幡「は?なにが?戸塚は男だから当然だろ?」

結衣「いやさいちゃんじゃないし」


八幡「あ、違うのか」


結衣「ヒッキー陽乃さんと結婚するってホントなの?」


ざわ…ざわ…


八幡「由比ヶ浜、お前ちょっと来い」

結衣「うん…」

屋上

八幡「誰から聞いた?」

結衣「ゆきのん」


八幡(となるとこの話を陽乃さんから直輸入したのは雪ノ下か)


結衣「教えてよヒッキー、ホントに陽乃さんと結婚するの?」

八幡「アホか、俺まだ17だぞ」


結衣「あ、そっかよかったぁ…ってあと一年したら結婚できるじゃん!?」


八幡「学校卒業してすぐ結婚とか金のある家庭でしか成立しないだろ」


結衣「いやいや陽乃さんの家超お金持ちだよね」

八幡「そういやそうだった」


結衣「あれ?条件バッチリじゃん」


八幡「たたた、たしかに!!」


結衣「なんで逃げてんの?」


八幡「追われるから」


結衣「うわぁ…最っ低」

八幡「一途に想われてたのは嬉しいが、十年のビフォーアフターを比べると惨めになりそうでな」

結衣「陽乃さんが、とか考えてるんでしょ?」


八幡「ちっ、お前に考え読まれると腹が立つな」ペッ


結衣「はあ!?」


八幡「あの人はもっと立派で素晴らしい男が幸せにしてくれる」


結衣「…」


八幡「俺じゃない方がお互いにとってベストなんだよ」


結衣「ヒッキーもかなりのバカなんじゃないの?」


八幡「陽乃さんじゃなくて俺がか?」


結衣「ヒッキーが」


八幡「もったいない事してるって意味なら俺は今世紀最大級のバカだな」

結衣「それもだけど違くて、陽乃さんはヒッキーに立派さとかそんなの求めてたの?」


八幡「一切無かったな」

結衣「陽乃さんからすれば、立派な男の人よりもヒッキーを選んだって事だよね?」


八幡「…」


結衣「陽乃さんはあたしちょっと苦手だけど、そこまで一生懸命頑張ってるのに逃げられたらいくらなんでも可哀想だよ」

八幡「誠意ってのはこういう形もあるんだよ」


結衣「だーかーらー!何で好意を誠意で返すの!?」


八幡「よく知ってたな誠意なんて言葉」


結衣「多分好意の逆だろうなって思ったから」


八幡「私欲を離れた気持ちってな意味合いだから間違いではないな」


結衣「簡単じゃん!陽乃さんの好意をヒッキーも好意で返せばいいじゃん!」

八幡「好意を好意で返したら逃げられないだろうが」


結衣「またそうやって…」


八幡「好意も誠意も善意も悪意も独りよがりの産物だ」


結衣「違うよ!」


八幡「違うと思うのはお前の考えで、俺の見解ではない」


結衣「…」


八幡「白状するが、たしかに俺は陽乃さんに好意を抱かれている事実は嬉しい」


結衣「だったら」


八幡「俺みたいなのが陽乃さんとくっつくのは当事者以外が許さない」


結衣「どういうこと?」

八幡「例えばお前の言うとおり陽乃さんと俺が結婚するとしよう、その結婚を祝福する人数と止める人数どちらが多いと思う?」


結衣「それは…」


八幡「明らかに周囲を取り巻く白血球に排除されるよな?」


結衣「そんなの陽乃さんが許さないよ」


八幡「その可能性もある、そうなると陽乃さんは裕福な暮らしを捨てて俺と苦しい生活を余儀なくされるわけだ」


結衣「…」


八幡「甲斐性なしの俺とほぼ駆け落ち状態で頼れる人間がいないまま生きていくことになるよな」

結衣「…」


八幡「そもそも身分が違うんだ分かるか?」


雪乃「姉さんはそんなにヤワではないわ」


八幡「冷凍モヤシ」


結衣「それゆきのんのこと!?」


雪乃「…たしかに姉と比べると体力は劣るのだけれど、私の体力が尽きる前にあなたを抹殺することは可能よ?」


八幡「うるせえひんやりまな板」


雪乃「!」ブチッ


結衣「あわわわわ…」


雪乃「今すぐブチ殺すわね」ニコニコ


八幡「殺られる前に逃げるわ」タタタター


結衣「待ってよヒッキー…行っちゃった」


雪乃「どうして姉さんはあんな男に…」


結衣「ゆきのんもじゃん」

雪乃「いきなりなにをいいだすのわたしはあくまでねえさんとあのおとこがつりあわないことをおしえに」


結衣「あたしもなんだけどね」ニッ


雪乃「今日はあなたの分の紅茶は抜きね」


結衣「ええっ!?」

八幡「ただいま」

陽乃「おかえり八幡」

小町「おかえりー、ケーキあるよ」

八幡「マジか最高だな」

陽乃「はい紅茶、あたしのお気に入りだよ」


八幡「おおこれは素晴らしい香り…っておい!なんでさらっと家にいるんだ小町!?」


小町「ピンポン鳴ってー、出たら陽乃さんが有名店のケーキ渡してくれてー、せっかくだし一緒に食べよってなってー」


陽乃「今に至る、みたいなー?」


八幡「話し方うぜえよチョベリバだよ」


小町「多分きっとこれが甘い罠」


陽乃「きゃはははー!超ウケるー!」


陽乃小町「イエーイ!」(^▽^)人(^▽^)


八幡「…」

小町「兄は昔から…」


陽乃「ふむふむ」


八幡(なにこれうまっ)ムグムグ


小町「面倒な兄ですみませんホントに」


陽乃「そういうのも含めて八幡だからさ」


八幡(なにこれうまっ)ズズー


陽乃「お、いい食べっぷりだね」


小町「なんか話しなよ」

八幡「え?ああ、ケーキと紅茶がうますぎて集中してた」


陽乃「美味しいよねこのケーキと紅茶」


小町「いやらしい話ですけどハウマッチ?」


陽乃「秘密♪」


小町「おっと小町とごみぃちゃんはなんてものを胃袋に入れたのかな怖すぎるぞー?」プルプル


八幡「秘密にする程の値段なのか…」プルプル


陽乃「そうやって気を使われるのはなんだから言わないだけで、実際はそこまでの値段じゃないよ」(紅茶は高いけど)


八幡小町(金持ちの感覚はアテにならない…)


陽乃「お父様とお母様の分もあるからね」


小町「ありがとうございます、両親も喜ぶと思います」


八幡(抜け目ねえな)


陽乃「紅茶おかわりいる?」


八幡「あ、はい」

小町「お願いします」


陽乃「任せて♪」


八幡(…あれ?陽乃さんが家に馴染んでる?あれ?あれ?)


陽乃(ふふふ、八幡も二人目の可愛い妹もゲット)コポコポ


カマクラ(なんだあの姉ちゃんなんかすげぇやべぇぞ)


陽乃「猫踏んじゃった♪猫踏んじゃった♪」


カマクラ(さ、逆らうと殺られる…)ブワッ

八幡(マジうまっ)ゴクゴク

小町(お兄ちゃんが陽乃さんと結婚したら、この紅茶が手軽に飲めるのかー)ズズー


陽乃(美味しそうに飲んでるなー)ニコニコ


カマクラ(あの姉ちゃん最高だな!こんなエサくれるのかよ!)ガツガツ


小町「かーくんなに食べてるの?」


八幡「あれ猫のおやつじゃね?」


陽乃「猫飼ってるの知ってたから買ってきたの」

八幡(リサーチしたのか?いや、冷凍まな板モヤシが話したのか)


小町「かーくん良かったね」


カマクラ「にゃう」ハグハグ

陽乃「ふふふふ」


八幡(うまいコーヒーも飲んでみたいな)


陽乃「次は美味しいコーヒー持ってくるよ」


八幡「…」ピクッ


小町「いいんですか!?やったー!」


陽乃(また来る口実ゲット)


八幡(何か取り返しのつかない事になった気がする…)

陽乃「おっと良い時間だね、帰るよ」


小町「お兄ちゃん」


八幡「ん?」


小町「ん?じゃないよ送ったら?」ヒソヒソ


八幡「バカだな小町は、陽乃さんは吉田沙保里と谷亮子の二人掛かりでも勝てない戦士の中の戦士でだな」ヒソヒソ


陽乃「聞こえてるよ?」ニコニコ


八幡「何も言ってません幻聴じゃないですか?」

陽乃「ならかよわいあたしを送ってくれるかな?」

八幡「イイトモー」


小町(ふむふむ、いい感じにお兄ちゃんを尻に敷いてるね)


陽乃「お邪魔しました」
八幡「行ってきます」

小町「行ってらっしゃい二人とも」


陽乃「行ってきます」

八幡(なんてこと言うんだ小町…)

陽乃「本当は迎えを呼ぶのも考えたんだけどね」

八幡「そうした方がお互い楽じゃないんですか?」


陽乃「自由に運転手呼んだりしたら悪いじゃない」

八幡「あーたしかに」


陽乃「車で味気なく帰るよりも八幡と歩いて帰る方が好きだしさ」

八幡「はあ、そっすか」

陽乃「リアクション薄っwww」


八幡「あんなうまいケーキと紅茶をご馳走になったんだからこれくらいはしますよ」


陽乃「吉田沙保里と谷亮子に勝てるゴリラ女でも?」


八幡「マジで勝ったんですか!?」


陽乃「それ以前に勝負する機会がないじゃない」


八幡「勝率はどのくらいで考えてますか?」


陽乃「勝率なんか考えないよ、お互いやりあう意味がないし」


八幡「それはとにかく、陽乃さんはゴリラ女って呼び方似合わないですね」


陽乃「急にどしたの?」

八幡「似合わないから似合わないって言っただけです」


陽乃「八幡に本気でゴリラだと思われたら泣くけどね」


八幡(うわごめん、魔王とか呼んでるんだけど)

陽乃「腕組んでよ」


八幡「レディ…」スッ


陽乃「レスリング!?」

八幡「冗談です」


陽乃「だろうね」


八幡(魔王と取っ組み合いとかしたら死ぬ)

陽乃「あ、もう着くよ」

八幡「そっすか、じゃあこの辺で」


陽乃「まあまあ、ちょっとくらいいいじゃない上がっていきなよ」


八幡「蝋人形にされそうだから嫌です」


陽乃「あたしをなんだと思ってるの?」

八幡(結局なし崩し的に陽乃さんの家に呼ばれたが)


陽乃「誰もいないみたい」

八幡(部屋広い天井高いソファーフカフカシャンデリアあるなんだこれ神殿かいや蝋人形の館か)

陽乃「そういえば八幡は事故の後遺症とかはない?」

八幡「ないっすね、しばらく通学がしんどかったくらいです」


陽乃「病院のご飯って味がないとか聞くけどどうなの?」


八幡「味がないというかマズいですね」


陽乃「そうなの?」


八幡「健康にはいいんでしょうけど、その分味が落ちる感じでした」


陽乃「食べ盛りには地獄だね」


八幡「地獄でなぜ悪い」

陽乃「あっ、ごめん…」


八幡「映画とその主題歌のタイトルですよ」


陽乃「そうなんだよかった…」


八幡「元からこの世は楽しい地獄で、生まれ落ちた時から出口が無いって歌なんですけどね」


陽乃「暗っ」


八幡「そんな地獄を進む奴が悲しい記憶に勝つっていうサビなんで前向きではありますよ」


陽乃「ほうほう」

八幡「さて、広いお家は落ち着かないので帰ります」


陽乃「もう帰るの?」


八幡「貧乏性ですから」

陽乃「ふーん、お土産に美味しい漬け物があるから持って帰りなさい」コト

八幡「箱から高そうですね、なんか申し訳ないからいいです」


陽乃「こういうのは受け取っておくのがマナーだよ?」

八幡「そ、そうなんですか分かりましたありがたく戴いて行きます」


陽乃「ん、よろしい」


八幡「あ、でもお返しもそれなりの奴がいるんじゃ…」


陽乃「あーそれなら大丈夫大丈夫」


八幡「なんでですか?」

陽乃「八幡といられるのが何よりのお返しだから」ニコッ

八幡「////」


陽乃「またね」

八幡「お邪魔しました」////

翌日

八幡(教室群をはぐれた重い空を行くってフレーズは俺のためにあるのかもしれない。生まれ落ちたときから居場所もないし)


結衣「やっはろーヒッキー」


八幡「地獄でなぜ悪い」

結衣「あの映画グロかっよね」


八幡「歌しか知らん」


結衣「ヒッキーって星野源と知り合いなの?」


八幡「は?」


結衣「あの歌まんまヒッキーだったし」


八幡「星野源が病気の時に書いた曲らしいぞ」


結衣「そーなんだー」


沙希(あいつら結婚がどうとか話してたのに普通に会話してる…)


戸塚(川崎さんって脱いだら凄そう、Fカップくらいありそう)ジー

放課後

八幡(なんで駅前での待ち合わせがお決まりになったんだろう)


沙希「ちょっと」


八幡「え?なんすか?」ピョーンピョーン


沙希「急に飛び始めてどうしたの?」


八幡「金ならないっすよ」ピョーンピョーン


沙希「しばくぞコラ」


八幡「金持ってないからってしばくのはあんまりだろ!?」


沙希「カツアゲじゃないから」


八幡「ああパシリか、マジで金無いから小銭くれ」つ


沙希「…」ニギ


八幡「?」


沙希「ふん!」メリメリメリメリ!


八幡「あ゛がぁ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛!!」


沙希「あんたと話すのは骨が折れるよ」メリメリメリメリ


八幡「折れるの俺の骨!あと心!」


沙希「うるさい」メリメリメリメリ

八幡「あ゛がぁ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛ぁ゛あ゛!」

八幡「いてぇ…金田ばりの乙女ボイスが出たぞまったく…着信音で売れるかな…」プラプラ


沙希「ちょっと聞きたいんだけど」


八幡「ん?」


沙希「こないだあんたが結婚するみたいな話してたでしょ?」


八幡「あーあれか」


沙希「どういうことなの?」


八幡「んなこと聞いてどうすんだ」


沙希「べ、別に、興味本位」

八幡(コイツもぼっちだしリアル柔道殺しだし話してもいいか)


沙希「言えないの…?」ウルウル

八幡「話してもいいけどいきなり涙目になってどうした?」


沙希「なんでもない、早く話して」


八幡「アッハイ、実は昔々あるところに…」

沙希「ふーん…」


八幡「正直金持ちの酔狂は分からん」


沙希「は?あんたバカなの?」


八幡「あぁん?なんで?」


沙希「そんなに一途に思われてて逃げるとかクソ野郎でしょ」


八幡「あぁんひどぅい…」


沙希「…って今から待ち合わせなんでしょ!?行けバカ野郎!」


八幡「聞いといてそれはないんじゃないか?」


沙希「うるせえボケさっさと行け!」ゲシッ


八幡「どわあ!ま、また黒のレースかよ」


沙希「っ!」////


八幡「逃げよ」タタタタ


沙希「…十年か、かなわないね」

駅前

八幡「すみません遅くなりましたヤンキーに絡まれまして」


陽乃「え!?大丈夫だったの!?ケガとかない!?」グイグイ


八幡「あ、いや大丈夫でした」


陽乃「良かったぁ…」


八幡(魔王が普通に心配してくれてる…怖っ)


陽乃「今日はデート中止、本当に大丈夫?」

八幡「は、はい」


陽乃「こういう時の八幡は信用出来ないからなぁ」ジロジロ

八幡「本当に大丈夫ですから」


陽乃「…ん?」クンクン


八幡「陽乃さん?」


陽乃「…」クンクン


八幡(そんなに臭いか俺?)


陽乃「ねえ八幡」


八幡「はい」


陽乃「絡んできたヤンキーって女?」

八幡「はい、同じクラスのヤンキー女です」


陽乃「進学校にヤンキーがいる意味も分からないけど、絡まれたんだよね?」


八幡「はい、最初はカツアゲかと思ってジャンプして金ならないぞって」
陽乃「他には?」

八幡「えっと…」

陽乃「…」


八幡「…」


陽乃「…」バチコーン!


八幡「ITEッ」


陽乃「…」バチコーンバチコーンバチコーンバチコーン!


八幡「ちょっ!?マジで痛いです!」


陽乃「女たらし」


八幡「誰がですか?」


陽乃「君だよ君」グリグリグリグリ


八幡「地味に痛いからやめて下さい」


陽乃「雪乃ちゃんガハマちゃんめぐり、静ちゃん後輩ちゃんだけじゃなくて他にもいたの!?信じられない!ヤンキーまで守備範囲だったなんて思わなかった!」


八幡「どういう事ですか?」


陽乃「あーもう!そんなだから片っ端から女が寄ってくるんでしょ!?」

八幡「いや寄ってきてないでしょ」


陽乃「きてるよ雪だるまだよ塊魂だよ!!」


八幡「なっつかしいネタを…」


陽乃「静ちゃんといるとつい」


八幡「あー」


陽乃「いい八幡?女はね、どうでもいい男が誰と結婚しようがどうでもいいものなの」


八幡「野郎も同じじゃないんですか?」


陽乃「そこは一旦置いといて、八幡はあたしと結婚する予定、それが気になる女は何で気になると思う?」


八幡「そもそも何で陽乃さんと俺が結婚するんですか?」


陽乃「約束したからでしょ!Promise!Engagement!」


八幡「おー、ネイティブな発音」パチパチ


陽乃「はいありがとう、そんなあたしと八幡の間柄が気になる女は八幡にどんな気持ちを抱いてると思う?」


八幡「うーん…殺意?」

陽乃「そうその通り、八幡を憎からず想っているからだよね」


八幡「殺意…」


陽乃「あたしは絶対浮気とか愛人とか認めないから、八幡には泥棒猫達とおさらばしてもらいます」

八幡「どうやってですか?」

陽乃「本当はもう少し時間を掛けてから渡すつもりだったけど、今から八幡はこれを着けて生活してもらいます」つ箱


八幡「指輪?」パカッ


陽乃「そう婚約指輪、指のサイズはバッチリだと思うよ?手をつないだ時に大体把握したから」


八幡「…」


陽乃「早く着けてよ」


八幡「…」パコッ


陽乃「ちょっと、何で閉じるの?」


八幡「…」グイッ


陽乃「何で返すの!?」

八幡「…」ダダダダダダ!

陽乃「えぇっ!?」

八幡「はあはあ…」

材木座「おお八幡、どうしたそんなに息を切らして」

八幡「ざ、材木座…」ゼエゼエ

材木座「おう?」

八幡「俺の話を聞け、二分だけでもいい」


材木座「タイガー&ドラゴンか」

八幡「今まさに魔王に追われていてな」


材木座「随分剣呑な話だな」


八幡「本の感想を言ってやるから匿ってくれ」


材木座「悪くない取引だが、いつまでかによるな」

八幡「ひとまず夜まで頼む」


材木座「あい分かった、大したもてなしはできんがな」

八幡「ありがとう…」


材木座(八幡の言う魔王の正体が気になるのもあるしな)

材木座「粗茶ですが」


八幡「すまん」


材木座「して八幡よ、魔王とは一体…」


八幡「事の初めは十年以上前にたまたま出くわしただけだった」


材木座「ふむ」


八幡「思わず見とれるような綺麗な女の子と遠目のでかい公園で一緒に遊んだ事があってな」


材木座「羨ましいな」


八幡「その女の子と再会してみたら、なんと十年間俺を一途に想い続けてくれていたそうだ」


材木座「死ぬほど羨ましいな」


八幡「対して俺はその事そのものを忘れていて、思い出したのはつい最近だった」


材木座「…」


八幡「その女の子は久しぶりに会った俺を見てすぐに分かったのにだ」


材木座「うーむ…」


八幡「その女の子が一途に俺を想い続けていた十年間、俺は能天気にひねくれていっていた」


材木座「お前にも色々あったんだろう」

八幡「あったのはあったんだろう、ひねくれていくだけのことはな」


材木座「そういえば、話を聞いて見ても今のところは魔王要素ないぞ」


八幡「その女の子の十年間は俺がひねくれる原因なんかより遥かに過酷だった、と思う」


材木座「んん?」


八幡「十年間汚い大人のやり取りをひたすら目の当たりにし続けたんだろうな、凄まじい女優になってたんだよ」


材木座「そんな事が…」

八幡「心の寄りどころのない女の子が、俺との思い出と約束を信じてひたすら耐えて、あっさりと約束なんか忘れてヘラヘラ生きてきた俺に失望もしないで結婚を迫ってくるんだよ」


材木座「純愛…とは言いにくいか」


八幡「こんな俺がどの面下げて結婚の約束を果たしたらいいんだ?」

次回予告(今回の担当は小町!)

いぇーい!小町だよ!
お兄ちゃんの復讐が段々はげしくなってるねぇ〜。でも、小町はお兄ちゃんを応援するのです!あ、今の小町的にポイントたかーい!
そんな事より次回予告!
お兄ちゃんの噂を聞きつけ、ついに動こうとした結衣さん!
彼女の口から出たのは謝罪では無く糾弾だった!
お兄ちゃんはそれに対して声を荒らげる!
次回!『断罪するバハムート』

お兄ちゃん、きっとお兄ちゃんを理解してくれる人は現れるよ!あ、いまの小町的にポイントたかーい!

あとがき

遂に文化祭実行委員会からのヘイトが霧散し始めました。そして、葉山を停学にしたのは、ご都合主義ということで理解してください。

あと、R-18にはしません。

書けないし。

ということで今回も読んでくださりありがとうございました!


次回予告!(今回の担当はシド!)

やぁ皆。
当分出ないからという理由で駆り出されちまった。

次回!
それぞれが抱いた思いが入り乱れ、彼等の運命は激しく絡み合う。
彼等はその時何を思うのか。

そして動き出した時は何処へ向かうのか!
次回
番外編『それぞれの思い、それぞれの後悔』

観てくれよな。



あとがき

八幡の噂が粗方片付きました。
由比ヶ浜への復讐はまだ続き、葉山は死ぬほうが楽だと思う程に地獄へたたき落とすつもりです。

今回も読んで下さってありがとうございました!

DESU002016年7月5日 01:12
んー…3/9?ネギ=初○ミクなので…

DESU002016年7月5日 02:24
あれ?いろは…?(´・ω・`)そして、このふたりは八幡の女になったな…

DESU002016年7月5日 22:57
ふむ!総武高校評価下がれ…原因は…楽しみですね…

DESU002016年7月12日 11:23
おぉ…辞めたか。良い判断だ。だか…愚山何かやりそうだな(´・ω・`)安心出来ぬ

DESU002016年7月2日 02:40
ガハマ…まるで成長してない(;゚д゚)

DESU002016年7月22日 14:57
(´・ω・`)ガハマが奉仕部入らなかったらトラブル回避できたな…

DESU002016年7月25日 16:19
(´・ω・`)急げ!雪乃&いろは

DESU002016年7月6日 11:19
(´・ω・`)GJ!…そろそろメイドのんの続き見たい

DESU002016年8月1日 13:54
(´・ω・`)戸塚が可愛いのは当然。
DESU002016年8月6日 03:33
(´・ω・`)葉山、お前は何もするな屑ゴミ。むしろ自殺しておけ。奉仕部二人だけいけるって、なめてのか?依頼失敗続けて絶望に味わって…一度死んで来い(あっ感想ですよ)

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年06月30日 (木) 06:31:38   ID: v9rAXDTW

八陽好きだから期待

2 :  SS好きの774さん   2016年07月02日 (土) 14:19:53   ID: dFj37q5u

表現が素晴らしい。いいセンスだ…。

3 :  SS好きの774さん   2016年07月13日 (水) 16:48:53   ID: IwkHbfsN

期待してるぜ!!

4 :  SS好きの774さん   2016年07月13日 (水) 17:42:46   ID: mPdJ2t0f

続きはよ( ^ω^ )

5 :  SS好きの774さん   2016年07月13日 (水) 19:13:02   ID: tVGC_wtN

面白い!

6 :  SS好きの774さん   2016年07月15日 (金) 08:31:40   ID: kZG4DvcN

冷凍モヤシとひんやりまな板はさすがに草

7 :  SS好きの774さん   2016年07月21日 (木) 07:00:34   ID: 7Y2oqhI3

草を生やすはるのんもおかしいし、
小町と八幡

8 :  SS好きの774さん   2016年07月27日 (水) 12:58:34   ID: lxVPAr0G

八幡が自らゆきのんを怒らせにいくとかマジパネェ

9 :  SS好きの774さん   2016年08月01日 (月) 21:13:50   ID: B64fR4DW

名前被せただけでキャラが全く違うけど、これはこれで面白い

10 :  SS好きの774さん   2016年08月24日 (水) 22:52:41   ID: GjQOMVMT

は や く か け よ

11 :  SS好きの774さん   2016年09月14日 (水) 09:09:43   ID: pnJjZi49

エタった?

12 :  SS好きの774さん   2016年09月29日 (木) 07:47:58   ID: TlEfnpuf

面白かったのにエタったか・・・残念

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