悪い奴「ぐへへ、体は正直なんだなーッ!!」女「イ、イヤー!」(12)


悪い奴「お、女ってのはさ、無理やりされても感じるように出来てるんだな」

女「(さめざめ泣く)」

悪い奴「な、泣いても誤魔化せないんだな。か、からだの反応が良くなってるんだな!」

女「違う……違う……」

悪い奴「お前、好きな奴いるんだってな! これでおしまいなんだなお前!」

女「そ、それはっ」

悪い奴「わははは! う、で、出る……ッ」

女「いや、あんたの子なんて、い、イヤーッ!」

ドピューチャクショー!


~~~
~~



母「これがお父さんとお母さんの出会いよ」

男「」



 十二歳の時、初めて母に両親の出会いを聞いて、私は衝撃を受けた。

 あの仲睦まじい二人の出会いがまさかこんなひどいものだったなんて。

 あの優しくも芯の強さを秘めた母があんなに泣き叫ぶ小娘だったなんて。

 あの誇り高く強い父があんな裸の大将みたいな喋り方をしていたなんて。

 しかし、私は母にそのことで父を恨まなかったのか、とは聞かなかった。
あの二人の間にあるのは確かな信頼であり、きっと母の寛容さは海よりも広いのだ。
それを疑うことはおろかに思われた。きっと大人の人間関係とは絵物語のよりも複雑でよきものに違いない。
そう思うわされた。


 もちろんそんなわけはなかった。

私の、十八の、成人の誕生日。母は父を殺して捕まった。

もう、惨殺も惨殺。まさか陰茎にあんな使い道があるなんて。口も憚る所業で噂は帝都中に広まった。

何しろ父は騎士団でも高名な剣の使い手。まさかあんな死に方するなんて、と誰もが言う。

もちろん私もその口。ただおろおろするしかなかった。

そしておろおろしている間に裁判は終わり、母に罰が課された。


女「それが私ってわけね」

男「そう」


 母に課されたのは時間刑十八年。時間刑はこの国の魔法で一番重い刑罰だ。

つまり、今母は15の少女になってしまった。以下は裁判所での会話。

男「あのう、すいません。普通人殺したら死刑なんじゃないですかね」

判事「君、学校でてんの?」

男「すみません大学生です……魔術が専攻でして……」

判事「信じられないもの知らずだね、魔法と魔術の違いは?」

男「魔法は…魔術はその……えと…」

 私は魔法大学にはスポーツ推薦で入った口だった。

判事「はあ……、法ってついてんだから法律に決まってるでしょ。魔の法律」

男「へえ」

判事「魔ってのは間に通じる。つまり、それは人以外の世界の全てなんだ。法なんかより偉いんです」

男「ふうん」

判事「その魔のルールに照らせばアヤマチは元をたどればいいんだよ」

男「はあ」

 そこから先の記憶はない。さっぱり意味が分かんなかったからだ。

女「間抜けね」

 ごもっとも。

 とにかく、母の残酷な所業のおかげで私は大学にも居られなくなってしまった。

女「どうすんのよ」

男「地方に出よう、仕事だって探せばあるだろう」

女「帝都の外!? 私、初めて」

男「初めてなんてそんな……、父さんの領地に何度も避暑に行ったじゃないか」

女「そんなの知るもんか! 私は初めてなの!」


 母が変わったのは見た目だけではない。18年分の記憶はちっとも残っていない。

女「楽しみぃ! もうお針子もしなくていいんだ」

 普通の酒屋の娘だった母は、父に無理やりされたその日の朝まで巻き戻されている。

男「母さん、お針子なんてしてたの?」

女「その呼び方は止めてよ、名前で呼んで」

男「無理だよ」

女「変なの」

 今の母は私が母さんと呼ぶたびに困ったように笑う。その笑顔が私の母であったころよりずっと柔らかいことには最近気づいた。

一か月後
南の街・ヤ魔ザキ製パン・工場

工場長「困るんだよね」

男「すみません……」

工場長「こんなことはね、始まって以来ですよ」

男「すみません」

工場長「我々が作っているのはね、魔法で定められた大事なパンなんです」

男「すまんこ」

工場長「まったくっ! こんなんじゃ来年の春のパン魔つりに間に合わないよ!」

女「その『ま』を魔にするのはハリー・ポッターの翻訳者以下のセンスだと思う」

工場長「この……っ、クビだっ! お前たちはクビだよ!」

男「ええっ、そんなあ!」

女「横暴だ!」

工場長「……こないだ入ったパートの人、帝都から来たばかりの人なんだ」

男「……」

工場長「作業服は置いてってね」

南の街
裏町

男「母さんのせいだからね」

女「なんかウィンナー見るとグチャグチャにしたくなるのよね」

男「はあ、どうしよこれから」

女「別の街に行きましょ、ここ暑いし」

男「母さんが、『熱帯雨林って、いいよね…』とか言ったんじゃん!」

女「あんときはまだ夏じゃなかったから、それに熱帯雨林っててくさそう」

男「なにそれ」

女「あ、でもでも、もうちょっと待ってくれない?」

男「え?」

女「やりたいことがあるの」

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