南条光「仮面ライダーの魂」(43)

こんばんは。
こちら

南条光「仮面ライダー!」
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南条光「新たなる仮面ライダー!」
南条光「新たなる仮面ライダー!」 - SSまとめ速報
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の続きでございます。

仮面ライダーとアイマスのクロス。
ノリも展開も昭和臭でお送りします。


光誕生日おめでとう!ということで新スレです。


「仮面ライダー!ルゥゥゥクスッッッ!」

赤いスカーフたなびかせ
今日もアイツがやってくる

白い仮面の小さな英雄
僕らのルクスライダーだ

みんなの輝く笑顔の為に
砕くぞブラックシンデレラ

戦え正義の為に
叫べその名は
仮面ライダールクス

「仮面ライダールクス、南条光は改造人間である。謎の秘密組織『ブラックシンデレラ』によって重傷を負わされたが、天才科学者池袋晶葉の手によって改造手術を受け、仮面ライダールクスとして蘇った!」






仮面ライダー光 第十二話 

「危うし!怪人トリオの魔の手!」





―――とあるライブ会場

『みんなー!これからのアタシたちの活躍、見ててくれよなっ!』

『アーッハッハッハ!このレイナサマの…最後まで喋らせなさいよ!』

『南条光ちゃんと小関麗奈ちゃんの、「ヒーローヴァーサス」でした!ふたりともありがとー!』

歓声を背に受けて、光と麗奈は舞台袖に戻ってくる。

「おう光、良かったぞ」

「すっごく楽しかったよ風見P!」

「流石はレイナサマだな!」

「当然よ、このアタシを誰だと思ってんの?てか最後のアレ何よ!」

それぞれのプロデューサーが出迎え、二人は一息ついた。
今日は二人のユニット「ヒーローヴァーサス」の初めての大型ライブ出演だ。

初舞台に緊張気味の光が何度かとちりかけたが、経験者の麗奈がそれとなくフォローし、結果出番は大成功と言って差し支えない出来となった。


「いやぁあっはっは、あっちの方が面白いかと」

「このレイナサマのかっこいいとこを邪魔しようなんていい度胸じゃないの!」

楽しそうな麗奈Pの首を、麗奈がギリギリと締め上げる。
割と良く見られる光景だ。

「おい麗奈、そんなことしちゃダメじゃないか!」

光が見かねて麗奈の肩をそっと叩く。

「…っ!そうね、この下僕が主のアタシにはむかうのは今に始まったことじゃないし、今日はこのくらいにしといてあげるわ」

一瞬顔をしかめた麗奈だが、すぐにいつもの調子に戻る。
その表情の変化に、光は気付いていない。

「なんだ?今日はやけに聞き分けが良いな」

「ライブが成功して気分がいいから特別よ。それともなに、いつもの三倍しめられたいかしら?」

「初めての大舞台で随分うまく立ち回れていたぞ。やっぱりお前には才能があるな」

麗奈と麗奈Pのやり取りはひとまず置いて、風見は光に声をかけた。


「ううん、ちょっとトチっちゃったし。上手くいったのは麗奈のおかげだよ!」

「自覚があるなら大丈夫だ。お前はまだまだ伸びるな」

ワシワシと頭を撫でられ、光はまんざらでもなさそうに笑う。

ステージから見た客席。
自分たちを見るファンの笑顔。

光は、何か大事なものがつかめそうな気がしてきたのだった。


―――数日後、都内某所

「ホラ、着いたぞ」

「助かったわ」

時刻は午後十時ほど。
辺りはすっかり暗くなり、夜だ。

「ごめんな、遅くなっちゃって」

「仕事だから仕方ないでしょ」

レッスン後の打ち合わせが長引いた麗奈は、麗奈Pに送られ家まで帰ってきたのだった。

「じゃ、車から離れるのもあれだしここで。親御さんによろしくお伝えしてくれ」

「うん、また」

「…なんか最近元気ないけど大丈夫か?」

「元気がない?このレイナサマが?ハッ、ちゃんちゃらおかしいわね。ちょっとレッスンで張り切りすぎただけよ」

「ほー、レイナサマはやる気たっぷりか、こりゃ期待できるな」

「当然でしょ、アタシを誰だと思ってんのよ…そんじゃ」

麗奈Pの言葉を軽く流し、麗奈は車を降りる。


「麗奈!」

「なによ!」

「…俺はお前のプロデューサーだから、なんでも言ってくれていいんだからな」

「…何かと思えばそんなこと?くだらないわね、アタシはいつでもアタシがやりたいようにやるの。今の言葉、後悔するんじゃないわよ?」

ニヤリと笑う麗奈に安心したのか、麗奈Pは肩をすくめると車を発進させた。
車が見えなくなるまで見送った麗奈は、不敵な笑みをやめ、ため息を吐く。


「下僕に心配されるとは、悪の帝王失格かしらね」

言いながら、麗奈は襟元から自分の体を覗いてみた。
あちこちにあざが浮かんでいる。

「最近はちょっと無茶しすぎたかしらね」

怪人が暴れ回らずとも、ブラックシンデレラの戦闘員は時々姿を現す。
奴らの次なる狙いを暴くためにも、光と麗奈はその度出動して戦っているのだが。

「いつつ、あー、体が軋むわー。やだやだ、早苗じゃないんだから」

本人が聞いたら目を剥いてヘッドロックをかけてくるようなセリフを吐いて、麗奈はまたもため息を吐く。

「…なんかちょっと歩きたい気分だわ」

麗奈は玄関脇に荷物を置いて、ふらりと歩き出した。

「やっぱり生身ってのが無理あるのかしらねー」

麗奈が考えているのは戦いの事だ。
もともと、ただの14歳女子である自分の体を戦う為に無理やり強化しているわけで、どこかでほころびが来るのも当然と言えるのかもしれない。


「やっぱり諦めて晶葉に少し出力を下げてもらうべきなのかしら」

考え込みながら歩を進める麗奈。

いくらイタズラっ子の麗奈とはいえ、この時間に歩き回ることが世間的に言う危ないことというのは重々理解している。

だから、そうそう遠出するつもりもなかった。

「考えても仕方ないか…アタシらしくないわね!帰って寝ちゃい…何アレ」

視界の端を怪しく走り去ろうとする何かに気づかなければ。

「趣味の悪い黒の全身タイツ…ブラックシンデレラ!?こんなんとこで何やってんのよ」

麗奈はすぐにケータイを取り出し光と晶葉に連絡しようとしたが、思いとどまる。

(アイツらも疲れてるはず…あの戦闘員が何をしようとしてるか確かめてから連絡しても遅くはないわ)

そう思った麗奈は、戦闘員の尾行を開始した。


―――地下駐車場

十五分ほども尾行しただろうか。
戦闘員は大きな地下駐車場へと入って行った。

「駐車場…?なんでこんなところに」

麗奈はいぶかりながらも後を追って入った。

「キー!」

「あ、戻ってきたよぉ!」

物陰に潜みながら移動していると、奥から戦闘員の掛け声と何者かの声が聞こえてくる。

「首尾は?」

「キキィ!」

「うんうん、さっすが1号の作戦や!バッチリやんなっ」

「作戦と言うほどの事もないよ。本番はこれから」

話しているのは三人の怪人のようだ。
赤と青と黄。狸の怪人に見える。

(本番?何をする気よ)


麗奈は慎重に身を隠しながら、何者かの会話に耳を澄ませる。
だが。

「そこにいるんでしょ?出ておいでよ」

「…」

「あなたがここに来るってことは、ちゃぁんとお見通しなんですよぉ」

「…どういうことよ」

知らんふりが厳しいとみた麗奈は、ポケットに忍ばせた緊急連絡装置のスイッチを入れながら姿を見せる。
この装置は、突発的な窮地に陥った場合、即座にほかの仲間へと連絡を飛ばせるようにと晶葉が作ったものだ。

ケータイを使う暇がないときには重宝する。

「ルクスが最近調子づいとるやろ?せやからなんとか力を削げんかなーって思ったわけや」

「ルクスは強い。しかも、仲間がいるとより厄介になる。だから、まずはあなたから倒すことにした。一般戦闘員の姿をちらつかせれば後を追ってくると思ったけど、予想通りだね」


「まんまとハメられたってわけね。つまりアンタらは、アタシがアイツよりも弱いって言いたいんでしょ」

「そうですよぉ」

「はぁ…」

麗奈はため息を吐いた。
自分のなかでイラつきのボルテージが上がっていくのを感じられる。

「舐めンじゃないわよッ!!」

変身アイテムを取り出し、三人の怪人に向けて構える。

「好き放題言ってくれちゃって…アッタマきたわッ!」

麗奈のポケットの中の緊急連絡装置は沈黙を保っている。
誰かがSOSを受け取った場合には、すぐさまバイブレーションで知らせてくれるはずなのだが、気が付いていないのだろうか。

「アタシにケンカ売ったこと、後悔すんじゃないわよ!ライダースーツッッッ!!」

怪人、しかも三人を相手に戦える力がないのは麗奈が一番理解している。
しかし仲間を待つにも、隙をついて逃げるにも、変身しない状態でなんとかなる状況ではないのは明らかだった。


「オーンッ!!」

黒のスーツが麗奈の体を包み、仮面ライダーレブルが姿を現す。

「…っ」

スーツが体を締め付ける感触に、レブルは少し息を漏らす。

「変身したね。なら、こっちも遠慮なくいくよ」

青い怪人が合図をすると、赤と黄の怪人も身構えた。

「…見せてやるわ、このレブルサマの実力ってやつをね」

逃げるか、仲間を待つか。
レブルは、戦う道を選んだ。


―――とある埠頭

「何を考えているんだ?」

暗い海をぼんやりと見つめていた飛鳥は、突然後ろからかけられた声に思わず振り向く。

「…キミは誰だい?」

「私はV3。ルクスと同じ仮面ライダーだ」

現れたのは仮面ライダーV3。
彼は飛鳥と話をするために探し回っていたのだ。

「…ブラックシンデレラの…!」

「違う。私はブラックシンデレラの改造人間ではない」

身構える飛鳥を、V3は手で制した。

「少し話せるか?」

「ボクはキミと話すことなんて何もない」

「君になくとも、私は君と話がしたいんだ」

「…」

ストレートなV3の言葉に、飛鳥は押し黙って視線を海へと戻した。


「二宮博士の事は残念だった」

「…どうでもいいよ。どんな言葉をかけられても、死んだ人は戻らない」

「そうだな。だから、生き残った者は前を向いて生きていかなければならない」

「何が言いたい」

V3の言い回しに何かを感じた飛鳥はその真意を問いただす。

「単刀直入に言おう。私は君を助けたい」

「助ける?ブラックシンデレラを潰す手伝いでもしようというのかい?大きなお世話だ。ボクは独りでいい」

「違う。君は今、大きな絶望を目の当たりにしたせいで光を見失っているのだ。自分を粗末にするような戦いはよせ。前を見て生きるんだ」

「キミにそんなことを言われる筋合いなんかない。この命以外、ボクにはもうなにもない。それをどう使おうとボクの勝手だ」

「そんなことはない。ご両親だって君にそんな生き方は望んでいないはずだ」

「キミに何がわかるんだ!!」

V3の言葉に、飛鳥は激高した。
瞳に怒りの炎が宿り、彼女の姿を黒衣の復讐者、ネモへと変える。


「平凡でも平和で幸せな日常を突然壊されたボクの!家族を殺され、人間ですらなくなったボクの!こんな力を振るう術も知らないただの女の子だったボクの気持ちが!キミなんかにわかってたまるか!」

「わかるさ」

「まだ言うか…!」

「私も家族を殺された」

「…っ!?」

V3の思わぬ一言に、ネモは絶句する。

「私が悪の組織の犯行現場を目撃してしまったがために、父と母、そして妹は…殺された。私たちは何も知らなかった。何もだ」

「…」

「私は殺される寸前に先輩にあたる仮面ライダーに助けられ、生き延びてしまった。あぁ、始めは君と同じだ、復讐に生きることを誓い、悪の組織デストロンを憎んだ」

「なら、なぜボクに前を見て生きろなんて言うんだ。ボクの気持ちがわかるならなおさら…」

「復讐はなにも産まない。その言葉の本当の意味に気付いたからだ。破壊するだけの力に平和を創り出すことはできない。心だ、心が伴わなくては、我々改造人間は悪の組織と同じ化け物に成り下がってしまう」


「平和?そんなものボクには関係ない。ボクはただ壊すだけでいい。最後には自分も殺すのだから。ボクはアイツらと同じにはならない、自分の始末は自分でつける」

「本当にそうか?罪もない人をだまし、操り、傷つける悪の組織。奴らに操られているだけの人でさえ傷つけることを厭わない君。本当に自分が奴らと違うと言い切れるか」

「…力の無い者が悪い」

「力でもって弱者を虐げる奴らと、力が全てだと言い張る君。本当に自分が奴らと違うと言い切れるか」

「う、うるさい!ボクはボクの日常を奪った奴らを根絶やしにする!それにかかわった人も同じだ!」

V3の問いかけに窮したネモは、悲鳴に近い調子で叫んだ。

「子供だな…いや、ムリもないか…アイツと同じ年だ、こんなことを背負うには幼すぎる」

そんなネモの様子に、V3は悲しげにつぶやく。

「キミと話しているのは時間の無駄だ!これ以上ボクの邪魔をしようというなら、キミを殺す!」

「君にそんな度胸があるのであれば、やって見せろ。ただし…」


V3は右腕を立て、左腕を横にして右ひじに沿え、構えた。
両の手はVサインを形作り、甲の方をネモに向けている。

「私は手ごわいぞ?」

「…くっ」

V3の本気の気迫を感じ、ネモも拳を握る。
この埠頭でもまた、ひとつの戦いが始まろうとしていた。


―――地下駐車場

「レブルサマバッズーカッ!」

「おぉっと!あっぶなっ」

一方その頃、地下駐車場ではレブルが三人の怪人を相手に大立ち回りを演じていた。

「えぇいっ!このぉ!」

「フンッ!ていっ…あうっ!」

狸怪人の三人組、トリオ・ザ・ラクーンは、一人一人の戦闘力はさほどでもない。
しかし、そのコンビネーションがそれぞれの力を何倍にも高めているのだ。

「予測済み、だよ」

「なっ…あぁっ!」

1号と呼ばれる青い怪人の蹴りをまともにくらい、レブルは吹き飛ばされる。
かれこれ十分はこの調子だ。

(くそっ…どうなってんのよ…なんで誰も反応しないわけ!?)

もがきながらなんとか立ち上がり、レブルは構えなおす。
救援要請への返事は、まだない。


「あー、めっちゃ頑張るなぁ。もうあきらめた方が良くない?」

「おあいにく様、アタシは負けるとか諦めるって言葉が大っ嫌いなのよ!」

「でも、あなたじゃわたしたちには勝てませんよぉ?」

「さて、どうかしらね。まだわかんないでしょ」

時間を稼ぐためにも精いっぱい虚勢を張るレブル。
しかし、彼女のそんな思いは、次の1号の言葉で粉々に砕かれる。

「無理だよ。さっきから時間を稼ぎたいみたいだけど、どれだけ待っても仲間は来ないから」

「なん、ですって?」

「あはは、自分気ぃついとらんかったん?アンタらがヤバイ時に仲間と連絡取りあおって思うことなんて、そんなん予測済みやで」

「そうだよぉ。だから、1号の妨害装置でこのあたりは通信系の装置はぜーんぜん使えないことになってるんだからぁ」

「2号、3号、喋りすぎだよ」

「えへへ」


「そう…そういうことだったの」

いくら信号を送っても返事がなかったことに、レブルは納得した。
それと同時に、この窮地を脱出するためのチャンスがないかを考えている。

「あなたのスペックじゃ、私たち三人を相手にすることは不可能。大人しく諦めた方が良いよ。大丈夫、命はとらないから。再起不能になってもらうだけ」

「それもゴメンだわ。アタシはこんなとこでやられてあげるわけにはいかないのよ!」

何とか話を繋ぎながら、レブルは考える。

(スピードはあの青いのに勝てない…ただ走るだけじゃ逃げ切れない)

「アンタたちの狙いはなんなのよ。アタシを倒すっていうそれだけ?」

「とりあえずはそうだよぉ」

(あの赤いのは遅いけど力が強い。アレひとりだったら逃げ切れるけど、他のも一緒となるとムリね)

「ま、最終的な狙いはルクスだけどね」

「アンタらじゃアイツには勝てないわ」

(黄色いのは抜け目がない。青いのとはまた違う感じで。出し抜くのは難しそうね)


「そーやんなー。せやから、アンタがこっちに寝返ってもええんやで?そしたらボスにとりなしてブラックシンデレラに歓迎したるわ!」

(小手先は通用しない…なら、派手にやってやるわよ)

レブルは覚悟を決め、怪人たちをまっすぐ睨み付けた。

「そっちに寝返る?ハン、それこそ冗談じゃないわ。このアタシを誰だと思ってんのよ」

言いながら、レブルは自慢のバズーカに弾を込める。




「アタシは、仮面ライダーレブル。ルクスのライバルよ!!」




「あくまで戦うんだね。いいよ、それなら相手をしてあげる」

「アンタたちの言うとおりアタシじゃアンタらに勝てないわ。だから…」

「だからぁ?」


「こーすんのよッ!」

レブルはバズーカをぶっ放した。

「今さらそんなもの…ってコレは!」

ボガーン!

「げっほげっほ!え、煙幕やって!?」

「アーッハッハッハゲホゲホッ…とんずらさせてもらうわ!」

レブルは全力で地下駐車場の出口目指して走り出した。
走りながら周囲に何かを投げつける。

「こ、こんな古典的な…追わないと!」

「う、うん!…ってえぇぇっ!?」

「さ、3号!なにしてんねん!」

「だ、だってなんか紐がぁ!」

レブルが投げたのはロープダートの一種。
長い紐の両端に刃物やかぎづめの付いたものだ。

駐車場の壁と壁にロープを渡すことで、即席のブービートラップを作り出したのだ。


それだけではない。

「な、なんやこれ!べったべたで歩きにくい!」

「どこ!?なになにぃ!?」

「ふたりとも落ち着いて!」

イタズラ七つ道具のひとつ、トリモチを撒いて敵の進行を阻む。
先ほど張った煙幕のおかげでどこになんの罠があるのか見破られにくい。

「…はぁ…はぁ…もうすぐ、もうすぐ出口…ここを出ればアイツに連絡できる…」

レブルは痛む体に鞭打ち、全速力で駐車場を駆け抜けた。
出口まであとほんの少し。


「あと少し…ここをあがれば…きゃあああああああああああああ!!」

地下駐車場の出口、地上へ上がるための坂道へ足を踏み入れようとした瞬間、レブルの体に電流が流れた。
たまらずレブルは大きな悲鳴をあげる。

「ああああああああああ!!…あ、う、あ…」

体中の力が抜け、レブルはそのままそこに倒れ伏した。
変身が解けていく。

「やれやれ、万一の為にバリアを張っておいて正解だったね」

「さっすが1号!冴えとるわぁ!」

「褒めても何も出ないよ。ていうか二人とも焦りすぎ」

「えへへ」

「く、そ…なめん、じゃ…な…」

もはや変身の解けてしまった麗奈は、それでもなんとか立ち上がろうと力を振り絞るが、指一本動かせない。
スーツを着ていたおかげで致命傷には至っていないが、もう麗奈の体を守るものはない。

これ以上攻撃を受けるのはマズイ。


(動け…動きなさいよ…アタシの体…ッ)

「ふぅ、手間をかけさせてくれたね。でも、これでおしまい。あなたをブラックシンデレラに連れて行って、たっぷりお仕置きしてあげるから」

コツコツ、とラクーン1号が歩み寄ってくる。

何をする気だろうか。

(負けちゃったのか…アタシ…冗談じゃないわよ…でも…)

薄れゆく意識の中で、麗奈は悔しさに身を焦がす。
しかし、彼女が最後に考えたのは。

(ごめんね…光…)

彼女のライバルの事だった。


―――とある埠頭

「うあぁ!あああっ!」

「どうしたネモ!そんなことでは、私どころかブラックシンデレラの怪人にも勝てんぞ!」

無茶苦茶に暴れまわるネモを、V3がいなしていた。
その様子はまるで大人と子供。

素体のスペックでV3が勝っているのはもちろんだが、それ以上に戦いへの経験が違った。

「うぅっ!くそっ!」

「怒りに支配されるな!君はなんだ!獣か?それとも血も涙もない化け物か!」

「わああああああ!!」

「違うだろう!君は人間だ!体は違えど、心は人間だ!思い出せ、ネモ!」

「黙れえええええ!!」


V3が言葉をかけるたびに、ネモは駄々っ子のように飛びかかり、転がされる。

「君は若い。まだまだやり直しがきく。無限の可能性が君を待っている。だから、自分を取り戻せ!復讐のみにとらわれるな!」

「ボクには…ボクにはあああ!」

「この…分からず屋!」

聴く耳を持とうとしないネモを、V3は地面へ叩きつけ、押さえつける。

「聴け、ネモ!お前の怒り、憎しみ、私には理解できる。だが、お前はそれの矛先も、ぶつけ方も間違えている!奴らに操られた人を傷つけるのが正しいか?ルクスを憎むことが本当に正しいのか?」

「放せ!くそっ…ルクスがいなければボクはこんな体に…」

「アイツだって望んで手に入れた体じゃない。真に憎むべきはブラックシンデレラのみではないのか?お前は、目の前の絶望と抑えられない怒りに自分を見失っているだけだ!目を覚ませ!力の振るい方を間違えるな!」

「黙れ…黙れ黙れ黙れえええええええええええ!!」

渾身の力でV3から逃れたネモは、距離を取って飛び上がる。

「フン…ライダーキックの真似事か。良いだろう、本当のライダーキックを教えてやる」

V3も、ネモと同じように飛び上がる。


「死ねえええ!V3ィィィ!!」

「V3ィキィックッ!!」

お互いの繰り出した右足の蹴りが、綺麗に交差する。

そのまますれ違い、着地する二人。

「…がふっ…そんな…」

血を吐き倒れたのはネモだった。
膝から崩れ落ち、変身が解けていく。

「魂のこもっていないライダーキックが、本物のライダーキックに勝てるわけがない。飛鳥、それが私とお前の違いだ」

V3は飛鳥に近付きながら言葉を続ける。

「お前は、『自分にはこの命しかない、どう使おうと自由だ』と言ったな。では聞くが、お前のその命は誰からもらったものだ」

「それは…っ!」


「お前の命は、お前の両親からもらったたった一つの、最も大事な宝物だ。機械の体に変わろうと、それだけは変わらない。そんな宝物を、お前の両親は粗末にしてほしいと思っていると思うか?」

「それは…」

「私から言えるのはこれだけだ。後はお前が考え、お前が決めろ。これからどう生きるか、な」

そう言い残し、V3は呼び出したハリケーンに乗って去っていった。

「ボクは…ボクは…」

あとに残された飛鳥は、呆然とつぶやくのみだった。


―――埠頭から離れて

「…優しい子だ。だからこそ、あれほど追い詰められてしまったんだろうな…」

変身を解いた風見は、バイクの上でつぶやく。
何でもない顔をしているが、ズボンの膝には血がにじんでいる。

「目覚め始めているじゃないか…頑張るんだぞ、飛鳥」

ネモの放ったライダーキックは、V3に届いていたのだ。
少なくとも、指先ほどには。

「戻ろう…ん?連絡?」

風見はバイクを止め、ケータイを取り出し確認する。

「アイツ、なんで急に…なんだと!?」

ケータイに届いた文面を確認した風見は、すぐさまバイクを発進させた。





「麗奈…!」


―――地下駐車場

(ごめんね…光…)

麗奈が観念し、ライバルへの謝罪を頭に浮かべた瞬間のことだ。

「じゃあこれで…」

「そこまでだ、ブラックシンデレラの怪人諸君」

「誰!?」

トリオ・ザ・ラクーンが声の方へ振り向くと、青い半頭マスクに赤い目の男が立っていた。
黄色いマフラーをなびかせた男は、駐車場の入口から怪人トリオを睨んでいる。

「その子から離れろ」

「誰だか知らないけど、そんな話聞けると思う?」

「聞けないのであれば、強硬手段に出るだけの話だ」

「やれるもんならやってみたらええんやないの?どーせそっから先にはいっ、ぽ、もっ!?」

黄色の3号が驚きの声を上げる。
マスクの男は悠々と駐車場に足を踏み入れてきたからだ。


「なんでぇ!?1号のバリアーはぁ!?」

「なるほど、アレを張ったのは君だったんだね」

マスクの男は微笑みながら左手をあげ、その手の物を見せる。
なにかのコードと基盤の様だ。

「なかなかの技術力だ。解体には少しばかり骨が折れたよ」

「あなた、誰なのっ?」

「自己紹介が遅れたね。私はライダーマン。仮面ライダー4号さ」

そう、彼こそライダーマン。
V3やストロンガーと言ったライダーとはまた一味違うが、彼もまた仮面ライダーの一員だ。

「新手か…!」

「早速だが、その子を渡してもらうよ。私にはその子を助ける使命がある」

「そ、そう簡単に渡さへんで!」

「では、手荒に行くぞ!」


ライダーマンは三人に向かって走り出した。

「え、えぇいっ!」

「そりゃっ!」

赤の2号と黄色の3号が、ライダーマンに飛びかかる。

「パワーアーム!」

ライダーマンは素早く右手を掲げると、三日月形のアームが付いたアタッチメントを装着した。

「くっ、このぉ!」

「な、なんてパワーや!」

「さぁどうした!ヤー!」

腕の一振りで二人を弾き飛ばしたライダーマンは、麗奈に駆け寄る。

「君、大丈夫か?」

「あ、アンタ…は…?」


「意識はあるな?…よかった、ケガもそれほどひどくない。すぐに助けてやるからしばし待っていたまえ」

「…フン…く…」

助けが来た安心感から、麗奈は気を失った。

「そう簡単には行かせないよ!」

「ハッ、ヤァッ!」

青の1号が放つ蹴りを、ライダーマンはアームで受け流す。
V3ほどではないが、彼もまた歴戦の勇士、青の1号だけでは痛撃を与えることはできない。

「このっ…」

「甘いぞ!」

渾身のハイキックを掻い潜ったライダーマンは、ショルダータックルで青の1号を突き飛ばすと、素早くアームを付け替え、三人に向けた。


「ネットアーム!」

「な!これは!」

「なんやなんや!」

「うわぁん!からまっちゃったよぉ!」

「今だっ」

ライダーマンはネットに動きを封じられた三人に背を向けると、麗奈を抱えて地下駐車場を走り出た。


―――地上

「妨害電波はまだ発信されているか…もう少し移動する必要があるな」

「まてぇ!!」

ライダーマンが麗奈を背負いなおすと同時に、地下から怪人たちの追ってくる声が聞こえた。

「ふむ…やはり足止めにしかならないか…」

それを聞いたライダーマンは、焦ることもない様子で再び右腕のアタッチメントを付け替える。

「逃がさないっ!」

「そこまでや!」

「えぇーい!」

「ロープアーム!」

地上に走り出た怪人たちがライダーマンと麗奈にとびかかろうとした刹那、彼は近くのビルに向かって鉤付きロープを撃ち出した。
ロープの先端のフックは見事にビルの屋上てすりに引っ掛かり、ライダーマンの体を引っ張り上げる。


「うそっ!?」

「生憎だが、君たちとの勝負はお預けだ!」

一刻も早く麗奈を病院へ。
ライダーマンはそれを至上目的として、見事怪人トリオから逃げおおせたのだった。


―――次回予告

怪人トリオに麗奈が襲われたと連絡を受けた光。

怒りのあまり周囲の制止も聞かず単身で飛び出した彼女の姿に、麗奈は一つの決心をする。

その頃飛鳥は、自らの生きる意味について考えていた。

次回、仮面ライダー光「新生、新たなる仮面ライダー!」

ご期待ください。

~ED~


「燃えよルクス!」

熱血 アタック
正義の血潮が燃えたぎる

怒りのパンチは風起こし
炎のキックが敵砕く

跳べ空高く
ブーストジャンプで鳥になれ

燃えろ燃えろよ
我らのルクス

燃えろ燃えろよ
我らのルクス


はい、以上十二話でした。

誕生日の内に投下で来て良かった。

改めて光おめでと!

ではー。

多分あんまり書き込まないと過去ログ入ってしまうと思うので一応カキコ

すいません、ちょいと副業が。
ちゃんと完結はさせるんで!

では。

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