妹「起きて、起きてお兄さん」ユサユサ 兄「う、ううん……」 (51)



兄「……も、もうちょっと待って」

妹「ダメです。お味噌汁や白米が冷めます」

兄「……ぁ……でも、ほら、いま頭痛くてね……」

兄「だからもうちょっと……」

妹「だから、ダメですって。起きて。ほら、はやく」ユサユサ

妹(ん……? 掛布団が濡れてる……?)

妹「……っ! もう! いやだァ! お兄さん漏らしてるじゃないですか?」

兄「え゛っ? 嘘、だよね?」

妹「嘘じゃないです。お兄さんのすっごく濡れちゃってますよ」

妹「ほらぁ!」ガバァ


布団「」ビッショリ


兄「う、うわぁ」

兄「……」ジョワァァァ

妹「って、また漏れてる!?」

兄「あっ、ごめん」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1410447475



妹「どうしてこんなことになってしまったのか、理由をきっちり考えて、反省してください」

兄「反省……。昨日、人生で他に類を見ないへべれけな酔い方したし、その置き土産かな、って思ってます」

妹「あなた、お酒強くないし、そんな好きでもないですよね?」

兄「たまに飲んでみたくなるときくらいはあるよ」

妹「そういうことは、自分を律することができる範囲の飲み方して言ってください」

兄「はい」

妹「二回目? ちょっと飛沫かかったんですよ」

兄「…………」

兄「本当にごめんなさい」

兄「ごめんなさい。この通りです。申し訳ございませんでした」

妹「はぁ……」

妹「じゃあ、この話はこれでお終い」

妹「今日の朝ごはん、お味噌汁どうでした?」

兄「あっ、ちょうどいい、塩分加減でした。おいしかったです」



兄「何してるの?」

妹「…………折り紙」

兄(あっ、これまだ怒ってるな)

兄「そ、そう」

兄 妹「………………」

兄(今日は何作ってるんだろう)

兄 妹「…………」

兄(完成品見ればいいか)

妹「…………なに、してるんですか?」

兄「え?」

妹「今、なにしてるんですか?」

兄「何……って、昼寝だけど」

妹「外で友だちでも作ってきたらどうです?」

兄「この年で、砂場遊びか?」

妹「そんなわけないでしょ。やりたいなら別に止めませんけど」



兄「あっ、完成したのか」

妹「ええ、完成しましたよ」

兄(鷹とワニと犬……。いつもながら完成品ほんと良くできてるな)

兄(折り紙の折り方教えてくれる本のおかげなんだろうが)

妹「……で、さっきの話の続きですけど」

兄「続き?」

妹「お兄さんのお友だち作りについてです」

兄「それまだ続くの」

妹「いけません?」

兄「いや、いけなくはないですけど」

妹「お兄さんもいい加減外に出て、新しい友だち作った方がいいと思うんです」

兄「お前はどうなんだよ」

妹「私には趣味繋がりの同性の友だちがちゃんといますよ」

兄「え?」

妹「メールとか電話とかSNSとか。時々お昼一緒したりもしてますよ」

兄「え?」




妹「~~~」ペチャクチャ 

男「…………」


妹「――ね? 深い親交のある友だちがいることの様々なメリット、これではっきりしたでしょう?」

兄「あー、うん、そうだね」

兄「……だけどさ、妹一人がいたらそれで話し相手その他諸々十分だと、俺は思ったな、正直」

妹「あーもう! そういうの絶対よくないですって」

兄「なんで?」

妹「どっちかが先に死んでしまったら、そのあと片方はひとりぼっちになってしまう。でしょう?」

兄「それは、確かにそうだが……」

兄「今更新しい友人作るなんてやっぱり面倒じゃないか」

兄「料理は妹担当。他の家事を俺がやる。俺としては現時点これで滞りなく大満足なんだよ」

妹「あのね、私はあるかもしれない未来の話を今……」

妹「……はぁ。いいです。もう。あなたが筋金入りの面倒くさがりだってことは良く知ってますから。諦めました」

兄 妹「…………」 

兄「そう言えば、今日の昼ご飯は?」

妹「から揚げ」

兄「なに、昼から油物か。胃がもたれそうだな」

妹「夜もから揚げですからね」

兄「え゛っ」



妹「久しぶりに外でかけませんか?」

兄「何のために?」

妹「健康のために? 理由はなんでもいいです。ずっと家に籠ってたら体がなまってしまうじゃないですか」

兄「おい、日用品とか食材、二人あるいは代わりばんこで買ったりしてるぞ」

妹「それじゃ機会が少なすぎます」

妹「せめて近所のあの川、あれを越えてしばらくくらいまでは今日歩きましょう」

兄「え……えぇ……歩くの疲れるよ」

妹「疲れるから、体にいいんですよ」

兄「そんな無茶苦茶な」

妹「さあ、立って。立ちなさい」

兄「……はぁ」ヨッコラショ

兄「ああ、首を回すといい音がする」ゴキゴキ

妹「……昨日、天気予報雨でしたっけ? 晴れでしたっけ?」ガサゴソ

兄「えぇ? 遠くまで行くの?」

妹「そのつもりはないですけど、確認です」

兄「晴れだったよ」

妹「そうですか」



兄「うーん、太陽が気持ちいいなぁ……」スタスタ

妹「ちょ、ちょっとお兄さん。歩くの速すぎです。お願いだからペース落として」テクテク

兄「あっ、ごめん」テクテク

兄「歩幅とテンポが違うからな。仕方ないな」

兄「……で、どこ行く? なんなら二人でカラオケでも行ってみるか?」

妹「疲れるから嫌です」

兄「なんだそれ」

妹「ストレートに言うと、私たち二人とも大して歌が上手くないのわかってるので、嫌です」

兄「あっ、はい」

兄「…………だとすると、どこ行くんだ? お前にはどっか行きたいところが?」

妹「そうですね……。いつもより遠くのスーパーでも行ってみますか?」

兄「なんだお前、ついに狂ってしまったのか」

妹「失礼な」



妹「ただいまー」
兄「ただいま」

兄 妹「…………」

兄「予想通り疲れたが、暇つぶしにはなったな」

妹「そうですね」

兄「家でテレビ見たりとかなんかして、二人で話してるのと実際やってたこと同じだからな」

妹「まあ、はい」

兄「冷蔵庫の中、何か飲むか?」ガチャ

妹「麦茶ください」

兄「わかった。コップにいれておくから、その間にちゃちゃっとテレビつけといてくれ」

妹「はいはい」



<ワーワー ワーワー

兄「テレビの音量がでかすぎる。少し小さくしてくれ」

妹「わかりました」

<ワーワー

兄 妹「…………」

妹「お兄さん」

兄「ん?」

妹「趣味、作った方がいいと思うんですよ」

兄「俺が、だよな」

妹「はい」

兄「なんだよ、藪から棒に。さっきの話の続きか?」

妹「そういうわけじゃないですけど……」

妹「でも、これだ! って何かがあったら、人生に張り合いが出てくるんじゃないかと思って」

兄「張り合いねぇ……」

妹「何かないんですか?」

兄「何か……。昔は本の活字お眺めるのがまあまあ好きだったが……」

兄「今は字を目で追って読むのが正直億劫でたまらん。最後まで読んだら疲れるにきまってる」

妹「わかりませんよ。一度やってみたらいいじゃないですか」

兄「まあ、そうなんだがなぁ……」

兄「そうなんだよ……」

兄「うーん」



兄「ただいま」

妹「おかえりなさい」

妹「本、買えましたか?」

兄「そらあ、買えたよ」

妹「何買ったんですか。見せてくださいよ」

兄「いやいや、それもいいけどまずはさ、聞いてくれよ」

妹「…………どうしました?」

兄「帰り道、犬にわんわん何度も敵意丸出しで吼えられた」

兄「あれ、無茶苦茶怖いね。怖すぎて漏れちゃうかと思ったよ」

妹「……野良ですか?」

兄「飼い犬。飼い主と散歩中だった。でっかい犬だ」

兄「ああいう吼えるか吼えないかって、しつけでどうにかなるもんじゃないのかね」

兄「たしかゴールデン・レトリバーとか言うのは優しい犬なんだろ?」

兄「外を出歩く飼い犬は、みんなそういう奴らであって欲しいよ。なぁ?」

妹「気持ちはわかりますけど、とりあえず靴、脱いだらどうですか?」

兄「あっ、うん」

10レス到着したので眠る
やる気が湧いたらまた書く

見てるぞ支援

んだんだ

うっ・・・ふぅ・・・



妹「さっき犬の話聞いて思ったんですが」

兄「うん」

妹「生き物飼ったらどうですか?」

兄「なんで」

妹「外に出て、新しい人間の友だち作るのが面倒でも、動物とかだったら家で触れ合えるでしょう?」

妹「探せばどれか一種類くらい、お兄さんに合う生き物があると思うんです」

兄「……生き物は世話がなー」

兄「俺が小学生のころのこと、覚えてない?」

妹「なんですか? それ?」

兄「俺がクワガタ飼うことになって、世話続けられなかった話」

妹「……クワガタたちは?」

兄「大参事だったはずだよ」

兄「俺が放棄して、あわやお前へとお鉢が回りかけたとき」

兄「お前が虫イヤッ! っと一蹴して、じゃあどうするってあれよあれよとなってるうちにね」

妹「まったく記憶にないです」

兄「……あー、俺が小学生のころのしょーもない話だから、覚えてないのがむしろ普通なんじゃないか?」

妹「小学生のころのこんな話、本当によく覚えてましたね……」



兄「小学生のころの話と言えば」

妹「ええ」

兄「お前、お兄ちゃんっ子でもっと可愛げあったよね」

妹「それを言うと、お兄さんはもっと頼もしかったと思いますよ」

兄 妹「…………」

兄「思い出補正じゃないか?」

妹「と言うより多分、人を見る目があの頃の私にはなかったのでは」

兄「あ、ああ……そうだね」

兄(うん。直接ばっさり言われると、これはこれできつい)



兄「なあ」

妹「なんですか?」

兄「お前って、結婚しなくてよかったのか?」

妹「はぁ?」

兄「いや、小さい頃は、ちょっと引くくらいお嫁さんに憧れてただろ?」

兄「花嫁衣装はこうだとか、子どもは何人とか、家は一戸建てのがーとか散々聞かされた記憶あるんだが」

妹「……本当に、よく覚えてますね。それ、いつの話ですか」

兄「いや、わからんけど。たしかそんなことあったよなーって」

妹「ええ、ありました」

妹「小さい頃私、そればっかり言ってましたからね……」

兄「だろ?」

兄「で、大人になってから結婚相手探してた素振り、結局ついぞ見ることなかったけど、よかったのか?」

妹「いいんですよ。あれはあくまでも子供のころの夢です」

妹「……それに、一応今の状況って、そのころの夢叶ってるようなものだし」

兄「どういうこと?」

妹「あれ、遠回しにお兄ちゃん大好き、結婚したいって言ってたんですよ」

妹「兄妹では結婚できないと理解してからも、お兄さんに好きだってことを伝えようと頑張って……」

兄「…………」



兄「ん゛?」

ん?



兄「えーと、つまり異性として、俺のことが好きだったの?」

妹「さあ、どうなんでしょう?」

妹「大好きだったのは事実ですけど、あれって恋だったんでしょうか」

妹「子どもの可愛らしい勘違いだったかも」

妹「他の男の人に今まで特別の好意を抱いたことがないから、永遠の謎ですね」

兄「小さい頃とか、俺と父親以外の男全員苦手だったよね」

兄「外出るときは、なるべく家族の男二人の傍を歩こうとしてさ」

妹「……今だって、苦手なのは変わりませんよ」

妹「苦手だからまともに接することができない、とかは全然ありませんが」

兄「…………もしかして、俺にドキドキとか、してたの?」

妹「してたらいけませんか?」

兄「そ、そんなことはないけど」

兄(全然ドキドキしたことあるように見えんな、このふてぶてしい態度)



兄(しかし、びっくりしたなぁ……)

兄(妹が恋……。恋? まあ、とにかくなんか、そういうドキドキしたことあるなんて)

兄(俺と同じで、世間からおいて行かれてるだろうと思ってたら、意外とそうでもないじゃないか)

兄(あー……。俺、異性に対してドキドキとかしたことあったかな……?)

兄(ムラムラしたことあるのは間違いないけど……)

兄(とりあえず、妹をそういう類いの目で見たことないのは確かだろうな)

兄(うーん)

兄(この話、ずっと前に聞いてたら、妹を見る目も色々と変わってたのかな)

兄(妹だって、ちゃんと女だしな)

兄(部屋で二人っきり。妹を見て、ドキドキムラムラ?)

兄(…………ははは、数十年は前の話だろうな)

妹「なんですか、さっきからじろじろ見て」

兄「えっ」ビクッ

兄「ご、ごめんなさい」

妹「?」

ああ…そういう…



兄「自分が死んだらどこに行くのか、どうなるのか、って一度は考えたことあるよね?」

妹「ありますけど、それが?」

兄「俺は、死んだらそれで全部お終い」

兄「死後の世界はないもんだって思ってるけど、どう?」

妹「どう……って、特に異論はないです」

兄「そっか」

兄「じゃあさ、自分が死んだらどこに行くだろう、どうなるだろう」

兄「なんてこと、一番最近に考えたのいつだったか、覚えてる?」

妹「……覚えてないですね」

兄「多分相当昔だよな」

兄「この年になるまで、人生観、ガチガチに凝り固まっていくなかで」

兄「いつか死ぬ、今じゃないけどいつか死ぬ、って思って生きてきた」

兄「……最近、俺、自分の死についてよく考えるんだ」

兄「腰が痛かったり、体力が衰えたり、膀胱弱まったり、物忘れしたり」

兄「目に見えて色々ガタがきてるからね」



兄「大人になって、お前と一緒に暮らし始めて、いつの間にこんな時間過ぎてたんだろうな」

妹「…………」



妹「お兄さん、勝負しましょうよ」

兄「勝負?」

妹「ええ。どっちが長生きできるかで勝負」

妹「両方同時にお迎え、なんて多分無理でしょうから」

兄「……うーん。仮にどっちかが勝ったとして、それ、どうなるんだ?」

兄「負けた方は死んでお終いなんだから、報告する相手がいないだろ」

妹「私は、報告する友だちいますけどね」

兄「なんだそれ」

妹「……そういう報告がどうのって話じゃなくてですね」

妹「互いに負けないぞって気持ちを持っ、て張り合って生きてたら、もっと長生きできるんじゃないかって話ですよ」

妹「私たち、衰えはあっても、ボケてない、ご飯はしっかり食べられる、外を歩く元気がある」

妹「年を考えたら、両方だいぶ恵まれた状況にあるわけじゃないですか」

兄「……別にいいよ。やろう」

兄「勝負したからって、どっちも損するわけじゃないからな」

妹「そうですか」

妹「では、勝負するとなったからには、負けませんよ?」

兄「あっ、うん。がんばろうな」

兄(こいつ、昔から俺相手にだけ闘争心と負けず嫌い発揮するよな……)

兄(いつも他の人たちには、事なかれ主義のおしとやかで通してるのにな……)



兄「あのさ」

妹「なに?」

兄「大した話じゃないんだけど――」

妹「いつもじゃないですか」

兄「やかましい」

兄「……どうして俺のこと、お兄さんって呼ぶようになったんだ?」

兄「昔はお兄ちゃんって呼んでただろ? いつからお兄さんに変わったんだっけ?」

妹「あぁー」

妹「いつでしったけねぇ……」

妹「理由ははっきりしてるんですけど」

兄「理由聞かせてよ」

妹「え?」

妹「いい年したお婆ちゃんが、お爺ちゃんをお兄ちゃん呼びしてたら、気恥ずかしいからですけど」




チーン


兄「…………」



兄「…………」



兄「…………」



兄「…………」



兄「…………」





兄「…………」

終盤
ここまで来たら最後まで書けよって感じだけど、精神の電池切れ
やる気が湧いたらまた書く



修正
>>6 13行
妹「……今日、天気予報雨でしたっけ? 晴れでしたっけ?」ガサゴソ

>>9 16行
兄「何か……。昔は本の活字を眺めるのがまあまあ好きだったが……」

は?



おい

改めて読み返すと面白いわ

盲目のと同じ人かな

>>29
盲目キャラ出てくるSSなんて書いたことないので間違いなく違う人だそれ




妹(起きて、起きてお兄さん)

兄「う……ううん……」

兄「……も、もうちょっと待って」

妹(ダメです)

兄(頼むからあと――)

兄「……」ガバッ







兄「…………なんだ、夢か」



チーン

兄「…………」

兄(今日もまたお前の夢を見たよ)

兄「…………」

兄(朝起きて、時々愕然とするんだ)

兄(お前がぽっくり死んでしまったんだってことに)

兄「…………」

兄(千羽鶴、作ってたのに、間に合わなかったな)

兄(いっぱい折り紙余ったけど、どうしようか)

兄「…………」

兄(張り合って生きれば、もっと長生きできるとか、そういうこと言ってただろ?)

兄(あれ、どうなったんだよ)

兄「…………」

兄(バカみたいだよな……)

兄(死後の世界なんて全然信じちゃいないのに、それでも毎朝、こうして話しかけずにいられないってさ)



<ワーワー ワーワー

兄「……」モグモグ

兄(料理、あいつに任せ切らず時々一緒にやっとけばよかったな)

兄(これじゃレパートリー少なすぎる)

兄(せめてあいつ愛用の料理本とかあったら、それ使うのに)

兄「……」モグモグ

<ワーワー ワーワー

兄(テレビうるせえ)



兄「よし、完成」

兄(あいつの作ってた作品とクオリティ変わらん良いものができた)

兄(同じ本を見て作ってるんだから当たり前だが)

兄「…………」

兄(でも、これ、趣味にするほど熱中できる物かね)

兄(趣味作れ……とか生前言ってたから、遺言か何かのつもりでやってみてるが、もう挫折しそうだぞ)

兄(あいつの趣味、折り紙の他に何かないのか)

兄(わからんな)

兄(ネットでの趣味が多かったのかな)

兄(ネットは嫌だぞ……。絶対見てて目が疲れる)

兄「…………」

兄(今更だけど、俺ってあいつのこと、思ってた以上に知らなかったんだな……)



兄(知り合い大抵、良い奴も悪い奴も死んでるからなぁ)

兄(両親がもし生きてたら会いに行くんだが……)

兄「…………」

兄(暇だな)

兄(本でも読むか)

兄(あいつが生きてた頃に買ったあれ、途中まで読んで、結局疲れてやめちゃったし)

兄(……あーと、読んだとこまで、どういうあらすじだったかな)



兄「…………」パタン

兄(読み終わった。うん、面白かった)

兄(でも、本はやっぱり無理だ。目が疲れる)

兄(趣味にはできん)

兄「…………」

兄(だからといって、TV一人で見て、ぶつくさ言うのもつまんないんだよなー)

兄(……家にいても寝る以外にすること思いつかんな。外出るか)



兄「…………」スタスタ

兄(パチンコでも行ってみるか?)

兄(いや、やめておこう。うるさくて疲れるだけだ)

兄「…………」スタスタ

飼い主 犬「……」テクテク

兄(あっ、前に吼えてきた犬だ)

犬「……」

犬「ぅう……ワン! ワンワンッ!」ガゥ!

兄「ひぇ!」ビクッ

飼い主「あっ、コラッ!」

犬「ワンッ! ウウウウウッ! ワンワンワン!」


兄「………………」スタスタ スタスタ






兄(よし、だいぶ遠ざかったか?)

兄(おいおいなんだよあの犬。吼えすぎだろ、今日)



兄「…………」スタスタ

兄(若いころは、ワンワン吼えられてもそんな気にならなかったと思うんだけど)

兄(この年になると、戦ったら一発で負けるだろうから、凄く怖い)

兄(これから外出るときは、防犯グッズ何か持ち歩こうかな)

兄「…………」

兄(外何も考えずにブラブラしてても、全然時間が過ぎて行かない)

兄(帰ろう。これ、疲れるだけだ)



<ワーワー

兄「……」

兄(まさか妹一人いなくなるだけで、毎日がここまで地獄のようになるとは思わなかった)

兄(何が辛いって、話し相手がいないってのが一番こたえるな)

<ワーワー

兄(寂しすぎる)

兄(生き物飼ったら……って、あいつ言ってたけど、何飼っても妹には劣るだろうしなぁ)

兄(こんなことなら、勝負に勝つんじゃなかった)

<ワーワー

兄(かと言って、後追い自殺とかしようにも、生きてたころのあいつが悲しむ気がして、萎える)

兄(本当にできることがない)

兄(……折り紙でもするか)



兄(俺、なんのために生きてるんだろう)

兄(……いかんな、気が完全に滅入ってる)

兄(施設、入るか?)

兄(だがなぁ……。まだ無駄に元気あるし、なるべく妹以外の人間に世話になりたくないって気持ちが)

兄「…………」



兄(とりあえず千羽鶴、最後まで折りきってみるか)



兄「…………よし、できた」

女の子「おじいちゃーん」

兄「ん?」

兄(なんだこの子)

女の子「それ、どうやって折ったの?」

兄「これか? どうやってって……普通に」

女の子「おしえてください」

兄「え?」

女の子「おねがい」ペコリ

兄「…………まあ、いいけど」

兄(別に、減るもんじゃないからな)



チーン

兄「…………」

兄(昨日、お前の趣味だった折り紙がきっかけで、新しい友だちができたんだ)

兄(幼稚園くらいの、小さい女の子)

兄(健康のために外歩いて、立ち寄った公園で、なんとなく折り紙折ってただけなんだけど)

兄(思わぬ縁があるもんだよ)

兄「…………」

兄(それでさ、久しぶりに他人と話してて、凄く楽しかったんだ)

兄(生きてるってこういうことなんだなー、って……)

兄(しまいには舞い上がって、友だちになってくれないかな? とか声かけちゃったりして)

兄「…………」

兄(お前のこと、少しでも理解できないかなって、お前が死んでから結構長い時間、折り紙やってたんだ)

兄(もう遅いとは自分でも思ったけど、他にすることなかったから)

兄(本だけじゃなくて、ネットも使った。今は、お前よりたくさんの種類作れるだろうな、って自信ある)

兄「…………」

兄(こういうことに一人でやる気を出せたのってさ、お前が生前発破かけてくれてたおかげだと思うんだ)

兄(例えば、趣味作れ―とか友だちがーとか、色々。……あれ、ありがとうな)

兄(はは、死んだ妹の言葉や存在に、いまだにおんぶに抱っこ。……なんか俺、カッコ悪いや)



女の子たち「~」ゾロゾロ

兄(なんか増えてるぞ)

兄「……今日、多いね。どうしたの?」

女の子「あのね、わたしがつくったの見せたらね、いっしょに来たいって」

女の子2「こんにちは」

兄「あっ、こんにちは」

女の子3「こんにちは」

兄「こんにちは」

女の子4「よろしくおねがいします」ペコリ

兄「あっ、こちらこそ」ペコリ

女の子「……だめ?」

兄「いや、別に大丈夫だけど」

兄(とりあえず、黙って連れて来てから訊くことじゃないんだが……)

兄(まあ、いいか。子どもだもの)



女の子母「最近この子と遊んでいただいて、ありがとうございます」

女の子母「折り紙ができるようになったって、この子もう鼻高々で、見てて可愛くて」ニコニコ

兄「それはよかったです」

兄(この物騒な世の中で、小さい女の子と遊んでて通報されなかったってのは)

兄(俺の積んできた功徳がなしえた奇跡なのでは? と思ってたけど)

兄(ついに保護者の人とまでちゃんとした面識が)

女の子「ねえねえおじいちゃん」クイクイ

兄「ん? どうかした?」

女の子「おじいちゃんはケッコンしてるのー?」

兄「結婚?」

女の子母「あら、もう……」

女の子「実はこの子、最近、知る人全員に、結婚してるかどうか訊く遊びにはまっちゃってて……」

兄「はぁ、そうですか」

兄(なんだその遊び。謎すぎるぞ)

女の子「ね~、どうなの~?」クイ クイ

兄「……あー。結婚はしたことないよ」

兄「ただ――」





兄「――生きててこの人だけだって、お嫁さんなみに大事で大好きだったって思える、妹はいた」




兄「こんにちは」

爺「こんにちは」

兄「……えーと、折り紙会ってここでいいんですよね」

兄「町内の掲示板見たら貼ってあったんで来たんですけど」

爺「はい、そうですよ。では、入ってください」ガラガラ

兄「あっ、はい」

シーン

兄「…………」

爺「今日は私しかいませんが、会員は意外と多いので、安心してください」

爺「平日なのと、今日はたまたま日が悪かったですね」

兄「あー、そうなんですか」

兄(よかった、この人とずっと二人きりなのか? とか思った)

爺「折り紙好きの、入会希望の方で?」

兄「そうです、はい」

爺「まず、名前からお聞かせいただけますか?」

兄「わかりました」

兄「――です」



チーン

兄「…………」

兄(お前が死んで、体感時間ではだいぶ長いこと経った気がする)

兄(その間に、俺が、どんだけお前との毎日に満足してたのか、痛いほどよくわかった)

兄(毎日毎日、お前が生きてたころと比べると、完全に別物だ)

兄「…………」

兄(それでも、もうすこし頑張るよ)

兄(元気だけはまだ無駄にあり余ってるし、頑張ってみたらそれなりに人生楽しめることもわかった)

兄(折り紙会入ったから、友だち、また増えそうなんだ)

兄「…………」

兄(もし、死後の世界があるんだとしたら、そこに行くとき、お前にいっぱいお土産話もって行けるよう長生きする)

兄(折り紙会、わりかし若い女性もいるらしいけど、なびくことは絶対ないから、焼きもち焼かなくていいぞ)

兄(俺にとっては、夫婦じゃなくても、お前が一番大事な人だから)

兄(……頑張るよ、お前の分まで、精一杯な)

終わり

最終一レスでやる気抜けたときは困ったけどどうにか書き切れた
最後の方、結末以外あまり考えてなかったから、プロットもうちょっと練ってから書けばよかったと後悔した
HTML化依頼してきます

おつかれよかったよ
よく一人暮らしの老人は数ヶ月に一度くる息子娘や孫との会話が本当に楽しみだって聞くね
話し相手がいなくなるとどんどん自分が腐ってくのがわかる
妹がテレビの大きい音量気にせず兄がそれを指摘したりとか散歩で兄について行けてなかったりとか
そういう細かいところですごい悲しくなった

おつ

乙だぜ

おもしろかった

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