向日葵「先輩とは同じ団地なんですの」(37)

高岡市繁華街。


向日葵「赤座さん。何で昨日来なかったんですの?」

あかり「ごめんね向日葵ちゃん。昨日お姉ちゃんの友達が来てて……」

あかり「ゲーム機占領されちゃったの」

向日葵「メールしてくれてもよかったですのに……」

あかり「お姉ちゃん達に付き合わされて……」

あかり「ごめんね向日葵ちゃん」拝み


向日葵「もう…それならスウィーツ…赤座さんに奢って頂きますわよ」

あかり「わかってるよぅ。まかせて向日葵ちゃん」

向日葵「えっ?いいんですの?」

あかり「勿論だよぅ。あかりにお詫びさせてね向日葵ちゃん」にこ

向日葵<ふふ…赤座さん本当に良い子なんですのね……>


その辺の兄さんの視線「じろじろ」

あかり「あっ」

あかり「やっぱり目立つね…向日葵ちゃんは」

向日葵「……正直ちょっと困ってますのよ……」

あかり「向日葵ちゃんは贅沢だよぅ」ぶー



あかり「だったらあかりに頂戴よぅ」

あかり「その髪」

あかり「瞳の色」


あかり「あと胸も!!」せつじつ!


向日葵「あげられる物ならあげますわよ」はぁ



あかり「あっ…そうだ向日葵ちゃん!」

向日葵「何ですの?」

あかり「この近くにあのゲームのコスプレが出来るプリクラが有るんだよぅ」

あかり「一緒に撮ってくれたら、すウィーツ奢ってあげるよぅ」

向日葵「……判りました。そうさせて頂きますわ」

あかり「わぁいプリクラ!あかりコスプレプリクラだぁいすき!!」



…………………………。



私は特に何のとりえもない、普通の女子中学生だった。

学校に行って友達と遊んで……

友達に勉強を教えたり、妹にごはんを作ってあげたり……

たまに覚えたてのネットゲームをして遊んだり……

そのおゲームのお陰で、同じゲームをしてる赤座さんともより仲良くなれましたし……



本当に普通の女子中学生でしたわ……






向日葵「あの『事件』が起こる迄は――――」




七森中の教室。

給食時。


あかり「ねえねえ。これ見て?昨日あかりのお家に届いたんだよぅ」

ちなつ「なになに?『あなたの周りに消えて貰いたい困った隣人はいませんか?』」

ちなつ「何なのコレ?新手の不幸の手紙?」

ちなつ「誰かを指名すると百万円!?」



櫻子「私知ってるぞー。コレ最近事件になってるやつじゃなイカ?」

櫻子「ねーちゃんが言ってた……ホントに『これ』で――――」

櫻子「人が行方不明になってるんだってさ」



ちなつ「えー本物?じゃあこれに死んでもいい人の名前を書いて……」

ちなつ「百万円貰っちゃったり?」

櫻子「ちなつちゃんひどーい」

櫻子「でもまあ…向日葵だったらそうなっても仕方ないけどさっ」にしし

向日葵「もうっ吉川さん。滅多な事を言うモノではありませんわよ」


向日葵「それに櫻子――――」

向日葵「わたくしだったら何ですって!?」ごごご

櫻子の頭「ごちん」

櫻子「あいたー!」


あかり「もう。向日葵ちゃんを恨んでる人なんて絶対いないよぅ」

あかり「少なくてもあかりは何があっても絶対に、向日葵ちゃんを恨んだりはしないよぅ」

ちなつ「まぁ向日葵ちゃんを恨む事なんて無いだろうし――――」

ちなつ「あかりちゃんや私が誰かを恨む……ナンて事は無いでしょうね」


向日葵「有り難う御座います赤座さん。それに吉川さんも」

櫻子「向日葵ー私をhitに、いい友達を持ったなー」うんうん

向日葵「それを言うなら『筆頭』でしょうに」はぁ


あかり・ちなつ・櫻子・向日葵「あははーうふふふーーー」




それから少し時が経ち――――。



あかり「嬉しいよぅ憧れの吉岡先輩の家に遊びに行けるなんて」

向日葵「赤座さんは吉岡先輩一筋なんですのね」

あかり「えへへこれも向日葵ちゃんが、誘ってくれた御蔭だよぅ」

向日葵「先輩とは同じ団地で、昔からの知り合いなんですの」

向日葵「先日…富山(こちら)に帰ってくって連絡が来まして」



向日葵「そのときわたくしの友達が、先輩に会いたがっているってお話しましたら……」

向日葵「連れて来いよって。言ってくれたんですの」


向日葵「バンドのメンバーの方も、来られるって言ってましたわよ」


あかり「えーっほんとー!?」

あかり「ジャッジメント フラッシュがそろってるの!?」きらきら


ちなつ「ホントにあかりちゃんは、そのジャッジナンとかってバンドが好きなんだから」

あかり「えへへーテレビで初めて見た時に<ずきゅーん>ってなっちゃったんだよぅ」

櫻子「何でもいいからゲーノー人が見たいぞー」


向日葵「あっもう来られている様ですわ」

あかり「きゃーだよぅ」

あかり「本物だ!本物だよぅ!!」

あかり「ほんとに夢みたいだよぅ」



あかり「ああっ憧れの吉岡先輩が目の前にいるよぅ」かんげき!


向日葵「わたくし。一度家に戻りますから、先に行ってて下さいまし」

ちなつ「うん分ったよ向日葵ちゃん」

櫻子「早く来いよ向日葵ー!」



あかり「お邪魔します先輩っ」

吉岡「ようこそマドモアゼル」イケメンお出迎え

あかり「きゃーだよぅ」

ちなつ「はは…あかりちゃん嬉しそう」

櫻子「やっぱゲーノー人見ると、よく知らなくてもこーふんする!!」ふんふん



インターフォン「ぴんぽーん」

ドア「がちゃ」


吉岡「おせーよ向日葵」

向日葵「済みません吉岡先輩。お菓子を用意しておりまして……」

吉岡「……入んな」

向日葵「お邪魔いたしますわ」




メンバー1「おっ来た来た」

メンバー2「本命の向日葵ちゃん」


向日葵「―――――――――えっ!?」



向日葵「吉岡…さん……それに……」

向日葵「さ…櫻子っ!!」


ちなつ「…………………」

櫻子「………………………」



向日葵<二人とも顔が痣だらけで……服もあんなに肌蹴て……>

向日葵<い……一体どういう事なんですの!!???>


向日葵「あっ……あぁ………」後退り



吉岡「おっとぉ」がし

吉岡「いいな向日葵…黙ってろよ?」

吉岡「いー思いさせてやっから」ぺろぺろ



向日葵「厭ですわ!!!」右フック

吉岡「ぐはっ」ばたん

向日葵「――――――」だだっ


めんばー1「吉岡っ!!」


向日葵<早く逃げて助けを!!>だだだだっ



?「いやぁぁぁぁぁぁぁ―――――!!!!」

?「向日葵ちゃん!助けてーーー!!!!」

向日葵「赤座さんっ!?」ぴた



メンバー3「うっせーっぞ!!」

あかりの頬「パチンっ!!」

あかり「うわぁぁアア!!


あかり「向日葵ちゃんっ…………」

あかりの肢体「ずず…ずずず……」



暗闇を切り裂く様な赤座さんの悲痛な叫び――――

そして扉から廊下に伸びる赤座さんの左腕は――――

引き摺られ…廊下に必死に縋る様に引っ掻きながら――――

また…暗闇に墜ちて逝く――――



そして私に身にも――――


向日葵「いやっあk――――」

向日葵の躰「ドンッ」


私は先輩に突き倒される――――


吉岡「向日葵てめぇ」



あかり「たすけ――向日葵ty――――――」

メンバー3「うっせーぞ!おらぁ!!」

あかりの肢体「ずずずずず…………」

あかり「きゃあぁあああ――――」

あかり「向日葵ちゃあん――――――」


赤座さんは更に引き摺られ――――

私の視界から絶望の暗闇に消えて逝く……



わたくしは起き上がりと同時に玄関に向かって駆け出す――――

それを吉岡先輩がわたくしの右脚を掴んで――――

再び仰向けに倒される――――

わたくしは半ば無意識に左足で先輩を蹴り上げる――――



吉岡「向日葵ィーーー!!!」


向日葵「早く警察に…」

向日葵<赤座さん…吉川さん…………櫻子っ!!>

向日葵「すぐに―――戻りm――――――」



わたくしは再び自由になると、全速で駆け出し――――


あかり「いあやぁアアああぁアア!!!向日葵ちゃーん!!!!」


赤座さんの悲痛過ぎる叫びをその背に受けながら――――

それでもその足を止める事無く――――

わたくしは玄関を飛び出す――――






わたくしが皆を先輩の家にお誘いし――――




わたくし『だけ』が逃げ出した――――



事件は公になり、先輩達は逮捕され――――

櫻子も赤座さんも吉川さんも皆――――

引っ越す事になった――――



吉川さんはわたくしに何も言わず――――


櫻子はそれでも…何時か気持ちが治まる時が来る事があれば――――

その時は…また会ってくれると言ってくれた――――




そして――――


降りしきる雨の中――――



あかり「向日葵ちゃん―――ううんっ」


あかり「アンタなんか―――アンタなんかッ!!」





あかり「消えちゃえばいいんだっ!!!!!」


赤座さんは――――

傘も差さずに…わたくしが見た事もない恐い貌をして――――

涙を滲ませながら、わたくしに呪詛の言葉を浴びせ――――



そしてわたくしの視界から消えて逝く――――





恐らく『これ』が私が最後に聞く――――



友達…だった赤座さんの…最後の言葉――――




でもこれで良かったのかもしれない……。

私の事は許さないでいい……そして嫌な思いと一緒に忘れて……


でも……

おこがましいのは判っていますわ……

それでも……

赦されるのであれば……

赤座さん……吉川さん……そして…櫻子……

あなた方の事を……



もう二度と逢えなかったとしても――――




『友達』と呼ばせて下さいまし……。




それから間もなくして――――


男「古谷 向日葵さんですね?」


向日葵「はい?―――――」くる



――――――――――。




気付いた時にはわたくしは、輸送機の中に、見知らぬ大勢の人と共に拉致され――――


シュオッチの人に常軌を逸した内容を説明され――――


殆んど何も理解出来ないまま――――


そして――――



向日葵「これが…わたくしへの罰なんですの……」




わたくしは今――――


何処なのかも判らない恐らくは南の島にパラシュートで落され――――


その島の海岸から――――


水平線を見つめながら――――



半ば呆然と立ち尽くしていた――――



おしまい。

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