凛「そらとべ」 (41)


ずっと皆と一緒に見上げたいと

思ってた空は今はどんより黒くて

飛び立とうとする羽を雨が奪うよ

でも頑張れるのさどんなに遠くても


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学校の帰り道ふと見上げると街中の大型テレビに煌びやかな衣装で身を包んだアイドルが映る。

(アイドルか、まぁ機会が有ったらなってみたいかな)

何て有り得ない事を思いつつ止めてた足を動かし自宅に向かおうとしていた時、後ろから声を掛けられる。

「あの」

その声に振り向くと如何にもサラリーマンな格好の男性、そして間髪入れず次の言葉が飛んできた。

「アイドルとか興味有りませんか?」


「え?」

余りに唐突な事なので思考が追いつかなかった、私が?何で?

「あ、私こう言う者でして」

と名刺を渡される、シンデレラプロダクション、知らない名前だ。

「最近出来たばかりで知名度は全く無いんですけどね、もしご興味が有りましたらそちらの電話番号にお掛け下さい、それでは」

そう言って立ち去ろうとする男性を今度は私が引き止める。

「あの、何で私なんですか?」

「それは、おかしな話ですけど一目見てこうティンと来たと言いますか直感ですね、気付いたら声を掛けてました」

少し頭を掻きながら恥ずかしそうに話す男性。


「じゃあ私がアイドルになるって言ったらプロデューサーはあなたになるの?」

「え、えぇそうなりますね、プロデューサーは自分だけなんで」

名刺と男性の顔を交互に見るの、名刺を見て、男性を見てを繰り返す。

「ふーん、アンタが私のプロデューサー?……まあ、悪くないかな…。私は渋谷凛。今日からよろしくね。」

「え、それって」

「悪い人じゃなさそうだしね、機会が有ったらやってみたいと思ってたんだ、よろしくねプロデューサー」

こうして私の私達のシンデレラプロダクションの物語が始まった。


素晴らしい気分さ 素晴らしき文化 音楽と一緒にひとっ飛びさ

とくと見とけ遠く飛び込める ペンギンの翼でFly Away

泣いた景色はぼやけるだけ? その向こうに見える扉があんのにな

ファーストになる事、勇気の証 背中を押すのは月の灯り


後日、プロダクションに行くとそこにはプロデューサーと事務員の千川ちひろさんだけだった。

本当に出来たばかりで私以外のアイドルは誰も居なかった、私がこのプロダクションの初めてのアイドル。

アイドルの活動は休日か放課後の空いた時間にちょくちょく始まった。

宣材写真、挨拶回りの営業、小さな商店街で握手会、ちょっとした雑誌のモデル、主な活動はプロデューサーと一緒に営業とモデルみたいな写真系のお仕事、偶に地方テレビでやるドラマのエキストラの役をプロデューサーが持って来たりしてくれた。


そんなある日

「凛!凛!やったぞ!」

慌ただしくプロデューサーが事務所に入ってる、その手に持ってたのは茶色封筒。

「どうしたのプロデューサー?そんなに慌てて」

「ほらこれ!」

と言って茶色封筒から企画書を取り出し私に見せてきた。

「モデルのお仕事?…プロデューサーこれって」

「あぁ!モデルはモデルでもあのハイスクールガールズのモデルだぞ!」

「嘘…本当?あのハイスクールガールズでしょ?わ、私も見てるよ、ほら」

「ふふっ凄いだろ?それともう一つ良いお知らせだ」

プロデューサーら封筒の中からもう一枚の紙を取り出した。


「これは、歌詞?」

「そう、凛の歌だよ」

その言葉に一瞬思考が止まる、声にならない声が出た。

「こ、これが私の歌…本当に、これが」

胸から熱い何かが込み上げてくる、そしてポツリ、ポツリと涙が出てくる、歓喜極まるってこの事を言うんだな。

「これからがアイドルとして本番だな、これからも一緒に頑張って行こうな」

私はぐちゃぐちゃの顔で精一杯の笑顔を作った。

「ふふっ、これからも一緒にがんばろうね」


何度も何度も何度も何度も風に吹かれて踏み出せぬ証言

ワンコインでTo be continueなど 出はしないのさ、勝手に言うなよ

例えラスボスにエンカウントして そこで俺が倒れたとしても

過去と今をこの手に掴んで飛べたなら 今届けたなら...


私は今、煌びやかな衣装で身を包みファンの前で歌い、踊っている。

CDデビューからここに来るまで様々な嬉しい思い出、嫌な思い出、色々有ったけどそれでもプロデューサーと一緒に頑張ってきた。

ライブが終わり着替えを済ますとプロデューサーが楽屋の前で待っていた。

「お疲れ様、ライブ大成功おめでとう」

「ありがとうプロデューサー、比奈さんの方は大丈夫なの?」

「あぁ比奈のサイン会も無事に終わったよ、同人時代のファンが多かったけど」


私が有名になるに連れてプロダクションも相対的に大きくなった、今では結構な数のアイドルが所属している。

けど…

「プロデューサーが1人ってウチの事務所ある意味凄いよね」

「あぁ、この前ちひろさんに新しいプロデューサー雇おうって相談したら大きなため息と舌打ちを貰ったよ…なんでだろうな?」

鈍感、プロデューサーの仕事に対する手腕は私を含めて皆が驚く位だけどこう言う好意には全く気が付かないか違う方に捉えてしまうのが偶に傷…いや何時も傷である。

「全くもう、プロデューサー何時か刺されるよ」

「えぇ!?何で!?」

「はいはい、それじゃあライブ成功のお祝いとしてプロデューサーの奢りでご飯ね、奈緒と加蓮も呼んで」


ずっと皆と一緒に見上げたいと

思ってた空は今はどんより黒くて

飛び立とうとする羽を雨が奪うよ

でも頑張れるのさどんなに遠くても


そして月日は流れ季節は巡り巡り…

「まさか私がシンデレラガールに選ばれるなんて」

「まさかって何だよ」

「ふふっだって季節がどんなに変わっても、私はずっと同じ私だと思ってたんだもん…けどプロデューサーと出会って、アイドルを始めて、泣いたり、笑ったり、嫌な思いをしたり、嬉しかったり、でも、この変化は私に大切なものをくれたよ」

またあの時みたいに涙が零れる。

「プロデューサーがくれたのは、きっかけかもしれないけど…私はもう、アイドルだよ。だから…これからもよろしく」

そしてまたあの時みたいにぐちゃぐちゃの顔で精一杯の笑顔を作る

「私は歌うよ。今日も明日も…ずっとずっと、輝きたいから」


「やめろよ…俺まで涙が…ううっ…俺もずっとずっと、お前を輝かせるよ」

「あっはは、プロデューサーの泣き顔ブサイク」

「うるせぇ…もう泣かないからな!」

「ふふっ、じゃあこれから輝く私の姿をしっかり見ていてね」

「あぁ勿論だ、しっかり見てるよ、だから好きなだけ歌って踊って来い」

その言葉を聞きアイドルにとって最高の舞台に駆け出す、輝く最高の舞台に。


今、私は煌びやかな衣装で身を包み舞台に立っている。

シンデレラガールの渋谷凛として、アイドルの渋谷凛として、そして、そして。

私、渋谷凛として今、ここに立っている。

「私はファンの皆のおかげで今この舞台に立ってます。」

そしてプロデューサーや皆のおかげで…

「ここに来るまで色々な事が有りました、今から歌う歌は私がその一歩を踏み出した時の思いを込めた歌です。聞いてください」



「そらとべ」






people! Are you ready? people! Are you ready?
people! Are you ready? 理想像へ...。

people! Are you ready? people! Are you ready?
きっと楽園に 飛べると思う





おしまい


まずこのバーボンは奢りだ。
星空凛かと思ったかい?残念だねでも君はこのスレッドを見た時にときめ(ry

はい、今回もらっぷびとさんの「そらとべ」と言う曲を題材に書かせていただきました。

ファーストになる事、勇気の証って歌詞がクールで最初に出会うのが凛なんで良いなと思いました。

三つ程似たような感じで書かせてもらってるのですがその中であの渋谷凛的な台詞を使っていたのでそろそろ凛を出さなければ…みたいな

一応時系列的には凛、比奈、泰葉、拓海の順番です。

それでは読んでいただいた皆様有難うございました。

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