お嬢様「私は……所詮、脇役なの…?」 (12)

【とある三月・・・】



お嬢様「……いま、なんて……?」


男「だから、俺はお嬢とは付き合えない」

男「幼馴染がいるから」

男「俺は、あいつの事が好きだから」


お嬢様「……は…」

お嬢様「…はは、あははは! そんな筈はないわ…そんな事があるわけない!」

お嬢様「私はこの学園で最も美しく、最も頭脳明晰で…莫大な財産を持つあの高嶺グループの令嬢でも……」


男「お嬢」


お嬢様「……な、なによ」


男「俺は、そんなお前を好きにはなれない」

男「…あいつはお前に無いものを持ってるんだ、だからお嬢を好きにはなれない……」

男「……じゃあな」


お嬢様「…………」

お嬢様「……何よ、それ……」

お嬢様「…なにそれ……」ペタンッ



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< ポッ…ポツッ…ポツッ……

< ザァァァ……


お嬢様「……」

お嬢様「……」

お嬢様(なんで…?)

お嬢様(私……に、無いものとか……何よ…それ)

お嬢様(最低な捨て台詞じゃない…)


────────── 【……じゃあな】


お嬢様「ぁ……」

お嬢様「そ……か、今日卒業したから……もう、会えないじゃない……」

お嬢様「また明日から、何のアピールも出来ないじゃない……」

< ザァァァ……

お嬢様「………………」ポロポロ…

お嬢様「なんで……私っ…! こんな……ヒック…こんな……!」ポロポロ…


< ザァアアアア・・・


お嬢様「……」フラフラ

お嬢様(どうして……どうして……)

お嬢様(あんなに私は貴方にアピールしていたじゃない……)

お嬢様(……確かに私には、幼馴染さんの様な優しさは無いかもしれない)

お嬢様(けれど……それでも私は貴方をずっと前から知っていて、ずっと前から好きだったのに…)


お嬢様「……なんで…」



老婆「『どうして』……かぇ?」



お嬢様「…え」

お嬢様(な…に、なによここ!? いつの間に私はこんな汚い店に…っ)ビクッ


老婆「はぁ……久しぶりにアンタみたいな客を見たよ」

お嬢様「ちょっといいかしら、ここが何処か教えて貰える?」

老婆「ただの雑貨屋さね」

お嬢様(雑貨屋……?)チラッ…

お嬢様(……変なガラクタや玩具、お菓子ばかり置いてるわね)


老婆「ところでお客さんや……アンタ、意中の殿方にフラれたね?」


お嬢様「!!」

老婆「ふぇっひひ、図星かぇ」

お嬢様「……ふん、涙目になってただけよ」

老婆「心の底から涙を流した跡さね…アンタの歩いてきた所を見れば一目瞭然さ」

お嬢様「…………」

お嬢様(……外は雨が降っていただけ、別に何てことない)

お嬢様(変なお婆さんね、帰りましょ…)スッ


老婆「あの春に戻ってもう一度、やり直してみないかぇえ……?」



< ピタッ

お嬢様「……何ですって?」


老婆「入学式の、桜が舞い散っていたあの日……」

老婆「あそこからやり直してみたいだろぉ…?」


お嬢様(…っ、こんなのは偶然……今は卒業式シーズンだからよ)

お嬢様(そう……暇な老人の戯言、私がこんなお婆さんの話を聞く意味なんてない)

お嬢様(第一、私は……)


老婆「疑うんならそこのノートを見てごらん……?」




お嬢様(……黒いノート?)

< スッ…

お嬢様「…………」ペラッ

お嬢様「…………………………え?」




老婆「お代は寿命1年分……なぁに、支払い方法はそれを持ってこの店を出れば良いさね」

老婆「ほら……お客さんや…そのノートを買ってくのかいぃ…?」



【高嶺グループ所有ビル……最上階】



< ガチャッ!

< バタンッ!!


お嬢様「……はぁ…、はぁ…っ」ズルズルッ…

< ペタンッ…


お嬢様(………)

お嬢様「ノートのタイトルは……『帰る桜』…」

< ペラッ…

お嬢様(…『登場人物紹介』……)

お嬢様「……主人公、『男』」

お嬢様「……ヒロイン、『幼馴染』」

お嬢様「……クラスメイト達…、『女』、『男友』、『女友』、『眼鏡』、『取り巻きA子』『取り巻きB子』……」



お嬢様「……『高嶺お嬢様』……」



お嬢様「…………」ペラッ…

お嬢様(……このノートに描かれている事は、『主人公』を軸とした物語である)

< ペラッ…

お嬢様(そしてこのノートに『描かれている』物語は形を変える事はない、故にこの意味に気づいてもその後は登場人物次第である)

お嬢様(登場人物にとっての物語は変えられる)

< ペラッ…

お嬢様(……物語の最初に戻りたい場合は、『ノートを破棄する』と頭の中で思うだけで良い)

お嬢様「…………このページを捲ったら…『物語の完結』を迎えるまで本当の意味でノートを破棄する事は出来ない」


お嬢様「……」

お嬢様「……っ」


< ペラッ…


お嬢様「……」

お嬢様「?」

お嬢様「…………何よ……」

お嬢様「馬鹿にして!」バッ



────────── ピピピピピピピピ!!



お嬢様「!?」ビクッ!

< ピピピピピピピピ……!!

お嬢様「ど、どうして目覚ましのアラームが……」

お嬢様「……っ…ぇ?」ピクン

お嬢様(…………待ちなさいよ、そもそも私……いつの間にパジャマなんて……)

お嬢様「……」

お嬢様「ま…さか……」


< ピンポーン!ピンポーン!

お嬢様「!」

お嬢様「……だれ!」ガチャッ

< 「お嬢様、起きてますか!」

お嬢様「執事!? 答えなさい、今いったい何時な……

< 「本日は学園での入学式に向かわねばならないのに、寝坊ですよお嬢様!」


お嬢様「……!!」


< ブロロロロ……


執事「一体どうなされたので? 珍しいじゃありませんか」

お嬢様「…別に、目覚ましが1時間ずれていたのよ」

執事「左様ですか、まぁまだ間に合いますのでまずはご朝食でもお取りください」

お嬢様「……ええ」


お嬢様(……思い出したわ)

お嬢様(入学式のあの日、私は目覚ましの設定をミスして……ギリギリに集合したのだったわね)

お嬢様(そして確か……次の角を曲がる時に…)ペラッ…

お嬢様(……初めて、男を見る事になる)


お嬢様「執事、次の角を曲がる時に減速なさい」


執事「はい、ですが何故に……?」


お嬢様「人を1人拾っていくわよ」

お嬢様(例え夢でも構わない)

お嬢様(まずはあの忌まわしい入学式後の初対面よりも好印象を与えるべきよ)

お嬢様(……大丈夫、私の頭脳にかかればまたやり直せるなら直ぐに男を振り向かせられるわ)

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