【艦これ】 Diamond_Heartと夏の雨 (737)




…………。


いつから私は此処にいるのか。

私はあまり覚えていない。


私は此処で何をしているのか。

私は何もしていない。


私の心には雨が降る。

どうしようない空虚だけが、今の私を埋めている。


………。


私の心には、雨が降る。


―――

ストーリー物は初です。
俺鎮守府設定多々含みます。説明は処々で。
どうぞ、生暖かい目でごゆるりと。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1407229532

鎮守府、執務室。 08:11



一人の男が黙々と筆を走らせている。

何枚かの書類を交互に見合わせて、判子を押していたり添削をしていたり、その姿は実に作業的であった。


そんな男の傍らには、一人の女性が控えている。

凜とした印象を覚えるその女性もまた、作業する男の姿を、静かに見つめていた。


部屋は静寂に包まれている。

唯一聴こえる音があるとすれば、それは男が動かす紙の擦れる音と、窓の外で響く雨音。

そんなごく小さなものぐらいだろう。


静寂が、突然破られた。

執務室の戸が乱暴に開けられ、派手な音が鳴る。


男は作業の手を止め、戸口を垣間見る。

男の目に映ったのは、眼帯を着け、頭に角を生やした艦娘であった。



「がぁぁーッ! つっかれた!」


艦娘は男の姿を見ることもなく、執務室中央付近のソファーに倒れ込む。

男と女性は、その光景を慣れた調子で見つめていた。



「ご苦労様だな。"天龍"」


男はふと息をついて、そう投げかけた。


"天龍"はソファーから起き上がり、そこで初めて男へ顔を向ける。

その眼帯に隠れていない右目は、気だるそうにそちらを眺めた。


「おい提督、あと鳳翔さんも! あんた達からもアイツに言ってくれねぇか、オレを実験台にすんなって!」


「こんなこと言ってるが、鳳翔。どうしようか」


軽く笑いつつ、"提督"が"鳳翔"にそう声かける。

鳳翔は少しだけ困惑したかのような表情をして、


「そうですね…」


「…夕張ちゃんも喜んでいるでしょうし、このままでもいいのでは?」


「はは、だそうだ天龍。頑張れ」


「頑張ってくださいね」


提督と鳳翔は口を揃えてそう言った。その声は些か投げやりである。

提督に至っては、作業を再開している始末だ。


しかし、当の天龍は堪ったものではない。


「ちょおいッ!? 鳳翔さんまで!」


「昔のよしみだろう。付き合ってやってもいいじゃないか」


「たかが1回だけアイツがオレの後ろについて来ただけだろうがッ! そんなよしみ、いつまでも引っ張りたくねぇやい!」


机を引っ叩きながら、天龍は怒号を飛ばす。

そんな怒号を尻目に、提督は書類を纏め始めていた。


「鳳翔。これ通しておいてくれ」


「分かりました」


書類束を受け取ると、鳳翔は執務室を後にした。

一方で天龍は、やりどころのない怒りに燃えるだけである。


「話聞けぇ!」


「聞いてた。大声ださんでくれ」


葉巻の火を点けながら、提督は適当な様子で応答する。

煙を一つ吐き出したかと思うと、こう続けた。


「此処の軽巡はお前と夕張の二人だけ。"軽巡の艤装の意見"は、お前としか噛み合わんということもあるんだろう」

「大体、試し打ちはお前の十八番じゃなかったのか?」

「"早くぶっぱなしてぇなぁ!"とか、作戦の度に言ってたような気がするぞ、お前」


「もう飽きちまったよ!」


「え」


予想外の返答に、提督は葉巻を落としかける。


「おいおい大丈夫か天龍…? ドック入るか、頭の」


「うっせぇ! オレはまともだ! 毎日毎日射撃のデータ採らせろって言われりゃ、誰だってそうなるんだよ!」


ヤケになっているのか、天龍は目に少し涙を浮かべている。

なんとも言えなくなった提督は、ただ煙を吐き出すしかない。


「…それは難儀だったな」

「しかし断らないお前も中々人が良すぎるというか」


「あァ!? なんか言ったかッ!?」


「なんでもない…」


閑話休題

あんた、さっきまで何書いてたんだ?」


「何って…書類だ」


葉巻の灰を折りながら、提督は至極簡素な返事をする。


「んなもん分かってる…オレが聞いてんのはその書類の中身だ中身」

「機密情報なら、別に伝える義務はないだろうけどよ」


「ふむ」

「大したことじゃない。ちょっとした"戦力の拡張"だな」


その言葉に、天龍は目を細める。


「…"新入り"ってことか?」


「そうなるな」


「艦種は何だ。駆逐、軽巡、それとも重巡か?」


「どれも違う」


大きな煙を吐き出して、提督は続けた。


「──"戦艦"、だとさ」

休憩。導入ここまで(多分)


───


どこか、雨音のする場所。 09:25


本日は生憎の雨模様だった。

現在は夏場の真っ只中。恵みの雨と呼ぶには少し過多な程のどしゃ降りである。


(…涼しいようなそうでないような)


傘を差しながら、提督はそんな調子で歩き続ける。


提督がこんな雨の中を外出するのは理由があり、新規着任する艦娘を出迎えに行く最中であった。


提督が命じて建造した艦ではなく、軍令部から保護を依頼された艦。

平たく言えば、"他の鎮守府から流れてきた艦娘"である。


(なんだってこんな晴れ晴れしい日に雨なんぞ降るのか…)


保護に至るまでの事情はどうあれ、新規着任の際には明るい気持ちで迎えてやりたいものだろう。

しかし、こんなどしゃ降りではそんな気持ちも何処か上滑りしてしまう。

提督は心の中で毒を吐いた。


空を睨みつけても雨は止まなかった。


―――


「む」


軍令部に仰せつかった場所、そこには。


「…おいおい」


傘も差さずに、ただ雨にうたれる"女性"の姿があった。

その後ろ姿からは何も読み取れない。


「……」


提督はふと、辺りを見渡してみる。

雨の影響か、夕方だからか、比較的周りは少し暗い。こんな場所に女性が一人、何が起こるか分かったものではない。

とはいえこの雨では、誰も妙な気を起こす暇もないだろう。

…こんな状況だからこそ、妙な事を考える輩もいるのかもしれないが。


適当に考えたそんな推測を、提督は頭の中のゴミ箱にかなぐり捨てた。


提督は、女性に傘を差し出す。

自分の身体を濡らす雨が止まったことに気づき、女性は天を仰いだ。


「何をしてる。風邪ひきたいのか」


呆れた声で、女性に問いかける。

そこで初めて、提督は女性の顔を見た。


振り向いた女性は提督を見る。そこまではよかった。

問題だったのは、


「…」


その表情が、ひどく空ろであったこと。

その顔には何の感情もなく、目にも光がない。

これだけの雨にうたれていながら、この女性はどこか、渇ききっている。


提督はそんな印象を覚えていた。


「…ふむ」


胸ポケットから取り出した"艦娘の顔写真"を片手に、提督は軽く息をつく。

写真に写る、保護を依頼された"艦娘"──それが目の前の"女性"であった。

照らし合わせてみるに、写真の彼女と現実の彼女には大きな差異があるのだが。


「…自己紹介が遅れた」


「おれは提督だ」


軍人手帳を鎮守府に忘れたことに気づいた提督は、偶然ポケットに入っていた従軍勲章をちらつかせながらそう言った。

その金属の光沢は、雨の中でもよく目立つ。


「…」


反応はない。


「本日、君の着任の為に出向いた者だ」

「…雨の中、堅苦しい挨拶もなんだ。鎮守府に案内しよう」


「……」


艦娘は、その言葉に何の仕草も見せなかった。

それどころか、ふらふらと傘の外に出ていってしまう。


「…おい? 何を」


「…こうしていたい」


ぽつり、と。提督の耳に艦娘の声が届いた。


「雨に、濡れていたいんデス」


その声はひどく小さい。


「…物好きなもんだ」


提督は、雨にうたれ続ける艦娘を見て呟く。


「だがその願いは聞き入れられん」

「身体壊したらどうするんだ。もっと自分の身体を大切にしろ」


「…誰も、私を心配なんてしないネ」


「おれがしてる」


艦娘に傘を差し出しながら、きっぱりと言い張った。


「おれは、君の保護を命じられた提督だ」


「着任早々、君に風邪だとか病気になってもらっては困る」

「部下の管理責任を問われてしまうし…というか、おれとしては上司部下の肩書きはどうでもいいが」


「……」


「…いいからついて来い。濡れっぱなしは冷える」


動く素振りを見せない艦娘の手を引き、半ば強引に引きずるように、提督は鎮守府への帰路を進む。


―――


鎮守府、執務室。 10:01


「どうだ、少しは暖まったか」


「……」


「…せめて返事はして欲しいな」


艦娘は、依然として雨の中にいた時と変わっていない。

風呂にも入らせ、温かい茶も用意したが、手をつける様子もない。

美味い茶なのに、と提督は残念そうに溜め息をつく。


「…もしかして、緑茶嫌いか?」


「……」


「…はぁ」


ここまで返事がこないと、逆に提督の方がまいってしまう。

どこまでいっても感情のない目。まるで人形にでも話しかけている気分だと、提督は頭を掻いた。


「鳳翔」


「はい」


「彼女の挨拶回りに付き合ってやってくれ。本人が乗り気じゃないんなら、艦娘区画への案内を」

「荷解きの後、…もう休ませてやってほしい」


「…了解しました」


―――


鎮守府、執務室。 16:51


鳳翔が"艦娘"を連れ、部屋を後にして数時間後。


紫煙をくゆらせる以外、何をするでもなく、今日の晩飯なんだろうとか提督が考えていると、執務室の戸が開いた。


「提督。失礼するぞ」


入ってきたのは、美しい黒髪の艦娘だった。


「"長門"か」


"長門"──それがその艦娘の名前であった。


「暁はどうした、一緒じゃないのか」


「天龍に任せてきたよ」

「それにこの話はあまり、暁の前でしたくないからな」


「成程。"彼女"について、聞きに来た様子だな」


「その通りだ。話が早い」


ソファーに腰掛け、長門は提督を見る。


「とはいえ事情が事情なら、私も少し詮索を自粛するが…」


「なに、気にする事はない。おれも話さねばならんと思っていたところだし」

「お前たちには知っておいてもらうべきだとも思っていた。好きに聞いてくれ」


「そうか、ありがたい」


───


長門が息を吐く。


「…問題が尽きないな、この鎮守府は」


「そのようだ」


提督は煙を吐き出して頷く。


「…私もそこそこ提督に迷惑をかけてきたから、そんな事を言える立場でもないが」


「安心しろ。お前の時は天龍よりはマシだった」


「そうだと良いのだが…いや、良いのか?」


唸りながら首を傾げる長門を尻目に、提督は"艦娘"の写真を眺め、誰に言うでもなく、小さく呟いた。



「──"力を失った"艦娘、か」



休憩。

おつ
見てるよ

>>25 ありがとうございます。一つのレスがこんなに嬉しいとは思わなかった(素)

再開します


―――


工廠、整備場兼資料庫。 17:38


「精神面、身体面に欠陥は無し」
              オールクリア
「あと艤装の接続状態も至って良好…その他も問題無しでした」


「つまり、異常は何も無かった。そういう事か」


「ですねぇ。…一体どこが悪いのやら」


提督と話していた艦娘は腕を組み、殴り書きしすぎて真っ黒になりかけたメモ用紙を睨みつけていた。

艦娘は大きな艤装を背中に担ぎ、たまによろけては持ち直したりと、ひどく落ち着かない様子である。


提督はそのことをわざわざ問うこともない。

データ収集と称し、常に何か担いでいる。この艦娘はそういう性格なのだ。


「アレですね。理論上は機能するはずの機械が、何故か機能しないみたいな、よく分からないわだかまりがあります」


黒いメモ用紙を破り捨てて、艦娘は新たな用紙にペンを走らせる。


「しかし、力を失ってしまったなんて…」


「本営も把握できていないそうだ。前例は無い」


「前例無し、ですか」


艦娘は、ぱたんとメモ帳を閉じたかと思うと、ニッコリと笑って言った。


「面白いです。新しいデータを解析できるって事ですよね!」


「…お前のことだ。そう言うと思ったよ、夕張」


提督の言葉に、"夕張"は胸を張った。

無い胸を張る…そんなことを考えてしまった提督は、戒めに自分の腕をつねる。

雑念の痛みは思いのほか鋭かった。


「ふっふー。十八番中の十八番ですからねぇ!」


夕張はそんなことを知るよしもなく、ただ誇らしげである。


「まあデータ収集もいいが、解決策の考案も頼む」

「それと事情がどうあれ、彼女はもうおれ達の仲間だ。仲良くしてやってほしい」


「合点承知です。戦艦の方ですし、仲良くさせてもらいますよー!」

「力が戻った際には、是非とも艤装談義したいですね! ではでは!」


笑顔を湛えたまま、夕張は敬礼ポーズをしたかと思うと、整備室の奥へと戻っていく。

しかしルンルン気分で去っていく夕張はふと後ろのめりになり、


『うにゃあーっ!?』


担いでいた艤装の重さにつられて、派手にすっ転んだ。


決して小さいとはいえない音と叫び声が、整備室に響く。


乱雑に積まれていた資料が雪崩のように夕張を飲み込む光景を、提督はただ眺めていた。

"いつものこと"、提督の目はそう言いたげである。


「…重いなら艤装下ろせ。怪我しても知らんぞ?」


『…転んだ後に言わないでください』


埋もれた山の中からそんな声が聞こえてくる。


提督はひとまず箒を片手に、夕張の発掘作業を開始した。


―――


鎮守府、執務室。 22:48


「司令官」


声は提督の頭の上から聞こえた。


「どうした。もう降りるか」


「…ん、まだ」


「なんで呼んだんだ…」


素朴な疑問が漏れた提督であった。


「司令官」


「…今度はなんだ」


「あの新しい人、ちょっと変わってるわ」


「変わってる、ね。お前さんでも分かったのか」


「お前でも…って。まるで私には分からないみたいじゃない!」


「誰もそうは言ってないが…」


「分かって当然よ。レディーだもん」


「そうか…」


声の主は、頬を膨らませて憤慨する。

よく分からない感じに怒られた提督はどうすることできず、疲れ気味に相槌を打つしかなかった。


「…お前さんと話してると、レディーの定義がいまいち分からなくなる」


「なにか馬鹿にされてる気がするんだけど」


(…自覚アリなのか」


「…司令官のばか!」バシィ


「聞こえてたか!? 叩くな、痛ったッ!」


「ばかばかばか!」ペシペシ


「お、落ち着け。馬鹿って先に言ったほうが…」


「うるひゃいっ!!」ガブゥ


「あだぁッ!!? 噛むなやめろッ! 痛い痛い痛い!」


肩車のポジションもあり、提督は終始マウントを握られてしまう。

頭に噛み付いた小さな生き物を引き剥がさんと、提督は必死にもがいている。

しかし上手い感じに食い込んだ歯は、確実に提督の頭皮へダメージを与えていく。


その光景は、まるで犬か猫の喧嘩にしか見えない。それも一方的であった。


閑話休題 Zwei


「空っぽだったの。あの人の目」


「…ふむ」


自分の噛んだ場所を優しくさすりつつ、声の主は続ける。


「あいさつの他に何も話さなくて、すぐに行っちゃって…」

「私と…あまり話したくないみたいだったわ」


「…そうか」

「あまり、悪く思わないでやってほしい。彼女も彼女で色々事情があるんだ」


「うん、わかってる。…でも」


提督の頭に顎を乗せ、声の主は一つ大きなあくびをして、こう言った。


「…すごく、寂しそうだった」


「寂しい? どういう意味だ」


「……」


返答は返ってこない。


「おい、"暁"?」


「……すぅ」


返事は返ってこないが、寝息が聞こえてきた。


「…やれやれ」

「肩車のまま…器用だな」


提督が時計に目をやると、もう11時。良い子はとうに寝静まっている時間である。

"暁"を起こさないようゆっくりと、提督は肩車からおんぶの体制に移行した。


「しれぇ…かん…」


夢の中でもおれと遊んでいるのか、と少々嬉しいようなよく分からない気持ちに苛まれる提督。


「手間のかかる娘だ…」


埃のかぶった父性をそんな言葉と一緒に吐き出しながら、提督は執務室のドアノブを捻る。



提督はふと、窓に目をやる。


窓から望む海。


その光のない暗い闇夜の中で。


雨は、まだ降り続いていた。

小休止。

当鎮守府メモ其ノ一:所属艦数は現時点で6隻。
          鳳翔天龍長門夕張暁+?

タイトル的に名前を伏せる意味があんまりない


───


葉月○○日。

鎮守府、執務室前廊下。 11:23


例年に珍しく、真夏だというのに今日も雨が降り続いた。

窓の外で響く雨音を聞きながら、提督は悪態をつく。


「実に喜ばしくない天気だ。そうは思わんか」


「……」


昨日着任した"艦娘"に、提督は同意を求めてみる。


「こうも雨が続くと、お天道様の光が恋しくなる」

「おれが子供の頃は、夏に夕立こそあれ、連日雨など滅多になかったような気がするのだが」

「…時代は変わるな。この雨も温暖化というやつの影響か」


「……」


返事はない。

昨日の時点で、"雨にうたれたい"と言っていた者に対し、

今日"雨が止んでほしい"と投げかけたところで、まずお門違いだろう。


提督はその事を知ってか知らずか、ただ一方的に感想を漏らす。


「雨というのは嫌なもんだ。洗濯物は乾かんし、葉巻は湿気るし」

「恵みの雨とは言ってみても、こうもどしゃ降ると農作物は腐る」

「時には、人の心をも暗くしてしまう」


「──」


艦娘が卒然、口を開いた。

しかしその声は消え入るように小さく、提督の耳にはしっかりとは届かない。


「む?」


「sorry」


謝罪の言葉。それを革切りに、艦娘は少しずつ言葉を紡ぎ始める。


「…昨日は、ご迷惑をかけてしまいましタ」


「気にしなくていい」


それより、と提督は付け足す。


「ようやく君が口をきいてくれた。おれとしてはそれが嬉しい」


「…sorry」


「いやいや、謝る必要はない」


「でも、私は…」


艦娘はそこで言い淀む。

艦娘の内心を察し、提督は黙って見守っていた。


「…私は、戦えない戦艦」

「私はただの、使えない木偶」


「……ふむ」


「私は…迷惑をかけるだけネ」

「…何処にいても、何をしていても」


一つずつ、一つずつ、搾り出すように。艦娘は打ち明ける。


「誰も、君を木偶などとは思わないさ」


「……」


「"私は戦えない"?  …そんなもの、大した問題じゃない」

「まずそんな事で君を邪険にするような奴は、最初から此処にいない」


提督はシガーカッターを掌で弄びながら、優しい微笑みを浮かべ、艦娘を見る。


「艦娘とて人間と同じ、戦うだけが生きる道ではない。別の道を求めても構わないはずだ」

「戦いから遠ざかるのは間違った事じゃない。むしろ利口な行為だと言える」

「そもそも、戦争とは愚か者の始めたこと」


シガーカッターが小さな金属音を鳴らす。


「…ちょうどおれのような。愚か者の、な」


提督の手の平に、薄い紙の破片が落ちた。


「おれは君の意思を尊重しよう」


端を切った葉巻を、提督は無造作にシガーソケットに放り込む。

ぱたん、と小気味の良い開閉音が提督の手のひらで響いた。


「もし力が戻ったとして、君が戦いを望むなら」

「あるいは、それでも君が戦いから退きたいと望むなら」

「おれは何も言わない。君のしたいようにすればいい」


艦娘が、少しだけ顔をあげた。

提督と艦娘の目が合う。


「おれ達はもう仲間だ。同じ鎮守府のな」

「昨日は言えずじまいだったが…」



「これからよろしく頼む、"金剛"」


"金剛"は小さく、頷く。


惜しむべくはその顔に、笑顔がまだ見られないことだった。

真の導入篇終了。今日はこの辺で

またぽつぽつと投下しますので、よろしければ読んでやって下さい。

乙レスが付いてるぞー! わぁい!(無邪気)

書き溜めも全部終わってるんで、さっさとやっていきましょうか


―――


鎮守府、1F廊下。 15:05


いたって普通の日和である、雨以外は。

そんなことを考えていた提督が遭遇したのは、妙にテンションの高い天龍だった。


「よっす提督! 今日もいい天気だな!」


「…今日も大雨だ」


「おう、そうだったぜ! だっはっは!」


テンションが高いというより、頭のネジが外れてしまっているだけなのではないかと、提督はちょっと当惑する。


「どうした。金剛が来てそんなに嬉しいのか?」


天龍の顔が一瞬ひきつったのを、提督は見逃さなかった。


「お、おうよ! やっぱ仲間が増えるってのは嬉しいもんだぜ!」

「しかも高速戦艦ときたもんだ! こりゃオレ達の戦力も右肩上がり間違いなしだな!」


「…妙に口が回るな。夕張か?」


「ギクッ」


天龍の顔がまたひきつる。隠し事の出来ない彼女の性格を、提督は熟知していた。

普通に図星だったか、と提督はやれやれと首を振る。


「夕張の興味対象が金剛に移って、艤装の試験運用に付き合わされることが少なくなった」


「ギクギクッ」


「…素直だな、天龍」


「…ちぇっ。やっぱり、あんたに隠し事は出来ねぇな…」


クールな雰囲気で天龍は語ってみせたが、提督にとっては結構どうでもいいことであった。


"あんた"に、とは言うものの。天龍の嘘は大体バレるのだ。

前には、暁にすら見破られていた事があったっけ、と提督は思い出す。


「新入りのお陰でオレは少なからず解放された。新入りには感謝してるんだ、うん」


「…嬉しくない感謝のされ方だなぁ」


「…それは否定しないぜ」


提督と天龍がそんな会話をしていると、


「あ、どうも。提督と天ちゃん」


そんな声が近づいてきた。


「げ」


「げ、って何よ。げ、って」


天龍が露骨に嫌な顔をする。

本当に素直な性分なのだと、提督は改めてそう思った。


「夕張。調子はどうだ」


「いやー、てんで全くです」


夕張は両手をひらつかせた。

その手には作業用手袋がはまっており、どうやら整備場からそのまま出てきた体のようである。


「難航中の難航って感じですよ。やっぱ簡単には行かないですね」


「そ、そうか…!」


「なんで天ちゃん嬉しそうなのかしら」


「い、いや? そんな事ねぇよ!」

「オレとしても、新入りの早い回復を望んでるんだ。嘘じゃねぇぞ、うん」


「…ふーん? やけに白々しいけど…まぁいいか」


天龍の嘘が(曲がりなりとはいえ)通じた瞬間を、提督はどこか微笑ましい様子で眺めていた。


―――


「提督。この際オカルトにはオカルトで対処してみません?」


夕張から唐突な提案が来る。

提督はその提案の意味が理解できるはずもない。


「どういう意味だ」


「科学が通用しないなら、オカルトで攻めるんですよ!」


夕張もまた、先ほどの天龍のように妙なテンションに染まりつつあることに、提督は気付く。

気付きはしたものの、ツッコミを入れる気にはならなかったようだ。


理解は簡単。面倒臭かったからである。


「"白雪姫"ってご存知ですか、提督」


「ガラスの靴か?」


「それはシンデレラですよ…こっちは毒リンゴです」


「あれ…そうだったか」


提督は記憶の引き出しを再整理した。

古い記憶に齟齬が生まれ始めているのを自覚し、歳はとりたくないもんだと適当に考える提督。


「あんた、そんな事も知らねーのか」


天龍が茶々紛いのツッコミを入れてくるが、正直それだけでも提督の精神的ダメージはそこそこ大きかった。


「…もうわりとポンコツだからな、あまり苛めんでくれ」

「逆にお前は知ってたのか、天龍」


「けっ…チビに本読まされてたら、自然と身についたんだよ」


自嘲気味に笑う天龍を見て、納得の声を提督は漏らす。



「…話戻してもいいですか?」


「「はい」」


―――


「白雪姫はですね。一度毒リンゴで死んじゃったんです」


「そうだったな」


「でも生き返りました。どうしてか分かります?」


提督は腕を組み、自らのポンコツな記憶を辿る。

しかし、やはりすんなりとは解答が出ない様子で、首を少しだけ傾げた。


「…お前まさか!? 提督に何させようとしてんだよ!?」


何かに気付いた様子で、天龍が叫んだ。

なぜかその顔は真っ赤になっている。


だが軽くハイになっている夕張は、天龍のことなど眼中に無い様子である。


「さぁ! お答えください提督!」


「あ、そうだ。確か…」



「死体愛好家(ネクロフェリア)の王子が引き取って、【検閲済み】してたら生き返ったんじゃなかったか?」


「「!?」」


提督以外の両名は、複雑な驚き方をした。

天龍に至っては、赤くなったり青くなったりと大忙しである。


「しかし生き返ってしまえば死体じゃないから、死体好きの王子がひどく幻滅した~…みたいな」



「…あれ。どうしたお前たち、そんな固まって」

閑話休題 Drei


―――


「つまり」


提督は呆れ顔で言った。


「キスして毒リンゴ吐き出させてやれば、力が戻るんじゃないかと、そう言いたい訳だな」


「今、"金剛さんの力"は休眠状態に入っている可能性があります」

「ですからそれを覚醒させてやれば、金剛さんはまた力を取り戻す! そう踏んだんです!」


夕張は力説する。

しかしいかんせん、その熱弁は提督と天龍の心を動かす事は無かった。

夕張を除いた二人は揃って溜め息をつく。


「天龍、解散だ」


「おう」


「え」


「ちょ、ちょっと! 私は至って真面目に…っ」


「夕張」


提督は夕張の肩に手を置き、優しい声色で語りかける。

その声は慈愛に満ちていた。


「きっと、お前は疲れてるんだ。お前の事情を考えもせず解析を急がせて、本当に済まなかった」


「え、そんなことは」


「今日はゆっくり睡眠を摂れ、分かったな?」


そう言うが早いか、提督は踵を返し、その場を立ち去っていく。天龍もまた同様だ。



「ちょ、ちょっと! ま、待ってくださいってばぁ!」



「置いてかないでよぉーッ!!?」


鎮守府に、そんな叫び声が轟いた。

ひとまずここまで。

このパート、書いてて二番目ぐらいにワケ分かんなかった(適当)

当鎮守府メモ其ノ二:夕張は女の子、天龍も女の子。提督は中年親父。

heyテートクー、今時の子はおとぎ話の原本なんて分かんないデース

シンデレラの鉄板焼きダンスは初めて聞いた時すごい笑ったね


―――


艦娘区画。 15:40


「お、天龍じゃないか」


「ごきげんようです」


「ビッグセブンにチビか…」

「…お前ら、"白雪姫"って知ってるか?」


「白雪姫? 毒リンゴだったか」


「常識よ。王子様のキスで目覚めるんでしょ?」


「それだ。流石暁は詳しいな」

「しかし突然そんな事を聞いて、一体どうしたのだ天龍?」


「…知らねぇならいい。世の中ってのは知らねぇままでいいこともある…」


「「?」」


天龍と夕張は一つ、大人になった。

>>67 「足の指と踵を切りおとしておしまい(マジキチ)」

主的にはグリム童話は"ネズの木"がお気に入りです。お勧めですよ(ステマ)


当鎮守府メモ其ノ参:イベントなんて概念が存在しない。提督も艦娘も絶賛夏休み中。

20時辺りから投下開始します。

ちょっと寝過ごしちゃったイッケネ。再開します


―――


鎮守府、執務室。 21:18


「まあ。そんな事が」


そう言って、鳳翔は微笑む。

その微笑みはまるで、我が子を想う母親のように、優しいものであった。


「ああ。夕張の熱心さは評価したいが、多少こんつめすぎるのが悪いところだな」


湯飲みを掴みつつ、提督は椅子にもたれた。


「夕張ちゃんなりの、金剛さんを想っての発言だと、そう思いたいですね」


「そうだと良いが…」


苦笑しながら、提督は茶を啜る。


「…む。葉を変えたか?」


「はい。偶には渋味少なめのを、と思いまして」

「伊勢茶です。お口に合えば宜しいのですが」


「ほお。美味い」


「そうですか…よかった」


「君の淹れた茶が美味くなかったことなんてない」

「美味い茶を毎日飲める。ははは、おれは幸せ者だ」


「ふふ、ありがとうございます。提督」


―――


「金剛は、君に何か話したか」


「…いえ。特にはなにも」


鳳翔は首を振る。


「早く、彼女の元気が戻ってくれればいいのですけど」


「ふむ、状態が状態だ。…致し方なし」


湯飲みの水面を見つめて、提督は息を吐いた。


「…おれも声をかけてはみているが、信頼関係の構築にはおそらく時間がかかりそうだ」


「そうですか…」



「…止みませんね。雨」


「…そうだな」


二人の眺める窓の外で。


止むことを忘れた雨が、ざんざんと降りしきっていた。

鳳翔さんパート終了。
再開するとか言っといて数レス程度なんだね、しょうがないね(自虐)

では

鳳翔さんパートってどこから

>>77 >>72から4レスほど…(震え声)

それぞれの絡みは本編終わった後に書きますから許してください! なんでもしますから!

そういうフリはいらないです

>>80 へへ、怒られちった…反応ありがとうございます

投下します


───


葉月○△日。

鎮守府、執務室。 07:34


今日も例のごとく雨である。


新聞の番組欄下付近にある天気予報のマークは、開いた傘一色。

朝番組の天気予報士は、思考停止状態で雨予報を読み上げ、早々にお天気コーナーが終了してしまう。

"波浪及び大雨警報出すかもよー。外出は控えてねー"とか、テレビにおいてもそんな始末である。


しかしそれに憤慨する者が一人。


「おのれ…今日も今日とて雨模様か!」


ある鎮守府の、提督であった。


「何日目だと思ってる。もう三日目だぞ!?」

「夏なんだから仕事をせんか太陽! 給料泥棒も大概にしろ!」

「おいお天道ッ! 貴様には様など付ける必要もありはしない! "貴"でいい!」

「さっさ降りてくるがいいッ、さもなくば、引き摺り降ろして細切れにしてやるッ!!」


新聞を放り捨てるように執務机に叩きつけ、咆哮する提督。

しかし無情の雨は、その叫びに耳を貸しはしない。


噛み付くように天に吠える提督を、半ば呆れ顔で眺めながら、


「…提督が天に仇を為さんとしてるぞ」


「…司令官、おこなの?」


長門と暁はそれぞれ率直な疑問を口にする。

ひとしきり慟哭した提督は、ぱったりと机に伏したまま、動かなくなった。


鎮守府の一日は、そんなやかましい朝を迎えた。


―――


鎮守府、執務室。 10:14


執務室を訪れた金剛が目にしたのは、机に伏してぴたりと動かない提督。

それに加え、"白い布みたいな何か"を山のように作っている暁と長門という、実に奇妙な光景だった。


金剛に気付いた長門は、手を止めることもなく、ながら作業で声かける。


「おお、金剛じゃないか。おはよう」


「…おはよう、ございマス」


小さく返事をする金剛。その声には疑問の意が含まれていた。


「…アノ。何を、作っているんデス?」


「む、これか?」


手に持つ制作物を見せて、長門は笑顔で返答する。


「"てるてるぼうず"だ!」


「てるてる…?」


金剛は首を傾げる。


「そう、てるてるぼうず。知らないか?」


「…見たこと、ないネ」


「そうか、日本の風習だからな。お前が知らないのも当然かもしれない」


うんうんと、長門はどこか感慨深い様子で頷く。

その顔はどこか少々得意げである。


「一種の儀式のようなものだよ」


「Litual?」


「これを軒先に吊るして、明日の晴れを願うのさ」

「何故か雨のお陰で死にかけている者が、一人あそこにいるのでな」


長門が指差す方向には、顔を伏せたまま片手だけ挙げた提督の姿がある。

少しだけその手を振ったかと思うと、力なくそれをぺたんと机に落とす。


長門はやれやれと首を横に振り、金剛に向き直った。


「そうだ。金剛も一緒に作ろう」


「え」


「数は多い方がいい」


ひょいと、長門は金剛に作りかけの照る照る坊主を手渡す。


「なぁに、作り方は簡単だぞ。被せて縛る、それだけさ」


「で、でも…」


「む、不安か? それなら暁に習うといい。暁は玄人でな、元はといえば暁が作ることを提案したんだ」


長門の言葉に、暁は照れくさそうに帽子を深くかぶりなおした。



手の中の照る照る坊主を、金剛は見つめてみる。


「…作ってみたい、デス」


「おお、歓迎するぞー!」


そのやりとりの中で、本当に少しだけ。

金剛に笑みがこぼれた。


―――


 ふと顔をあげた真ん前に、照る照る坊主が一つ転がっていた。

 直感的に、暁が置いたものだと察する。


 脳が半分寝かけていたせいか、目の焦点が合わない。

 距離感が掴めず、伸ばした手が数回虚空を切った。


 ようやく手に取ると、それを掌で転がしてみたり、紐をつまんでみたり。



「雨なら共に泣こう、か」


照る照る坊主と艦娘達を交互に眺めながら、提督はそう独りごちた。




――その後のことだった。


金剛が、鎮守府から姿を消したのは。


ここまで。急なシリアスですまんな

イベント前日、各鎮守府の提督殿は如何お過ごしでしょうか
お暑い中ですが、お互いに頑張って参りましょう

では


貴方のss の雰囲気大好きだぜ。
スレタイに惹かれてよかった。


―――


嵐の中。 14:24


『──』

『ハッケンデキズ──』

『──アメカゼツヨシ、フキトバサレソウダ』

『オウダイジョウブカ、ダレカオウエンニムカエ』

『ダメダ』

『ネガティブ』

『ツメタイナオマエラ』


けたたましい無線連絡が提督の耳をつく。

イヤホンを軽く押さえながら、ノイズ混じりの声をただ聴いていた。


『提督。こっちも駄目だ』


「そうか」


雨外套を頭まで羽織った提督は、雨の冷たさを恨みながら、艦娘と妖精に指示を飛ばす。


「天龍、長門。妖精を連れて先に戻ってろ」

「おれはもう少し此処を洗う」


『『…了解』』


『…済まない提督。私と暁はずっと金剛と居たのに…』


悔やむ様な声で、長門からの無線が届く。


「おれも居た。…お前が謝る必要はない」


金剛が執務室を出る際に、自分もついて行くべきだったと、提督は歯噛みする。

しかしそれも"今更"でしかなかった。



あまりに自然過ぎて気づかなかったのだ。


執務室を後にする金剛が、"とても笑っていた"事に。





「――なんで気付いてやれなかった」


自分への苛立ちを呟いて、嵐の中を提督は歩く。


一昨日よりも雨の勢いは増していた。


葉巻の火が点かない。


「…これだから、雨ってやつは」


苛立たしげに舌打ちをし、雨外套のフードをかぶり直して、提督はまた歩き出す。

その時だった。


『──督! 提督!』


無線に、ある艦娘の声が届く。


「夕張、どうした」


『金剛さんの事で、言いたいことがあるんです!』


「見つかったのか?」


『い、いえ。そうじゃないんですけど…』

『"金剛さんの力"について、私なりの推測が固まったので、お伝えしておこうと』


「…手短に頼むぞ」


夕張の無線を聞き入れながら、提督は手当たり次第に金剛を捜索する。

―――――

――――

――


『――ごめんなさい提督。長々と説明しちゃいましたけど、結局力になれなくて』


夕張は申し訳なさそうに声色を弱くした。

そんな夕張を責める気などさらさらない提督は、優しさに満ちた声で言う。


「大丈夫だ。お前は十分によくやってるさ」

「おれは"雨好きな白雪姫"を叩き起こしてくる。…お前達は待っていろ、きっとすぐ戻る」


『…はい。お気を付けて、提督』


無線が切れたのを確認し、雨の中を再度見渡してみる提督。

吹き荒れる水のせいで、視界は不良。一寸先は闇、いや白い霧であった。


「心配かけおって…」


今もどこかで雨にうたれているであろう"馬鹿娘"を、早く連れ戻さなければ。


滑りやすい地面をしっかりと足で掴みながら、提督は嵐の中を駆けていった。


―――


 どれくらい走っただろうか。

 嵐のせいでそれすらも分からないので、荒れた息をひとまず回復させる。


「はぁッ…はぁッ…、ふー…っ」


 喋りながら走るもんじゃなかったと察したのは、夕張との会話にひと段落がついた辺りだった。

 中途半端に老化の始まっているおれの身体は、昔ほど機敏に動くことを許してはくれないらしい。


「…ッ!」


思えば最近運動をしていなかったと、提督は日頃の生活態度を恨んだ。

恨んだところで、現状の肺活量が増えるわけでもないのだが。



雨外套の下すらも随分と冷え、濡れてしまった頃。

胸を押さえて呼吸を整えていた提督は、ようやく、見つけた。


傘も差さずに、ただ身体を雨に濡らすだけでいる艦娘が、そこにいた。


「金剛…ッ」


「…提、督?」


金剛のその声は、若干の驚きを孕んでいる。



「お前は、一体何をしているッ!」


怒鳴りつける提督の声には、深い心配が込められていた。


「おれを心配させるぶんには構わん、だが自分の身体を何故大切にしない!?」


「…Sorry」


金剛は謝る。以前と比べ、芯のある声。


「てるてるぼうず、いっぱい作ってしまいマシタから」

「だから」


「馬鹿な事を、"だから今のうちに濡れておく"とでも言うつもりか!?」


金剛は否定しない。

そして、一つ笑みをこぼしたかと思うと、語り出す。


「私は──」




 「私は、怖いんデス」


 「力がもし、戻ったとして。提督達と共に戦う事ができるようになったとして」

 「…私は、提督達を護ることが出来るのか」


 「考え出すと、たまらなく怖いんデス」




 「此処の人はみんな、優しいネ」

 「…でも」


 「優しいからこそ、頼ってしまう」

 「迷惑を、かけてしまう」



 「…そんな自分自身が、許せないヨ」


金剛は天を仰ぐ、先日と同じように。

金剛は小さく笑う、先ほどと同じように。


しかし先日と一つ違うのは、提督の差し出す傘の下にいないこと。


 「…雨はイイものネ」

 「迷う私を洗い流してくれる」

 「…私が、私であることを、忘れさせてくれマス」



唄うように言葉を紡いだ金剛を、提督は黙って眺めていた。


そして外套のフードを持ち上げ、頭を雨の下にさらけ出す。

一度天を仰ぎ、その後すぐに金剛へ視線を落とした。



「…雨が私を洗い流す? 馬鹿を言え」

「どうあがいても、己は己自身から逃げる事は出来ん」


「……」


「おれには理解できんな」

「頼りたい時に頼って何が悪い。それが仲間ってもんだ」


金剛の理屈を、提督は真っ向から否定する。


「分かってもらえるとは思ってないネ」

「…これは私の自己満足。百も承知デス」


何も変わる様子のない金剛を見て、提督は一つ溜め息をつく。


そして外套の下から"何か"を取り出した。

その何かに、"もう一つの何か"を滑り込ませると、金剛へ投げ渡す。


「…?」


それは雨に濡れてぎらぎらと輝く、金属質なもの。

手で握るためのグリップと、筒のような。


──ちょうど、"艦船の主砲を人間の持てるサイズまで縮小したような"、そんな色々な部品がくっついたもの。


金剛はほぼ直感的に、この道具が"何をするためのものなのか"を察した。


「ナ…っ!?」


金剛の手の中にあったのは、拳銃だった。

人を傷つけ、殺す為の道具。

そんな"武器"を提督はなぜ、私に渡してきたのか。



「お前の迷いとやらを断ち切ってやる」

「迷いを雨で誤魔化すのは、もう終りにしよう」


「どういう…意味デス…っ!?」


「簡単なことだ」


両手を広げ、提督は金剛に向き直る。




 「──その銃で、おれを撃ってみろ」


ひとまずここまで。夕張の説明フェイズは後々までスキップ(長いし)

>>94 大好きだぜって言われたらもう提督冥利に尽きると思った(小並艦)
いつ期待を裏切ってしまうのかと思うと怖くて仕方ないわぁ…
どうかその時まで、お付き合い頂けると幸いです

では

イベントは…悪だ…ログイン地獄の先は…黄色地獄だ…

投下開始。誰も殺すつもりはありませんのでご心配なく



「おれ達は仲間だ。金剛」


「……」


「仲間だからこそ共に戦い、仲間だからこそ共に助け合う」

「それはお前も分かっていることだろう」


だが、と提督は付け足す。


「仲間だからこそ、間違った道に進んだ仲間を正すことも必要だ」


正す。その意味を金剛は即座に解した。

と言うよりも、手の中の拳銃から伝わる冷たさに、解さざるを得なかった。




「間違った道を進んでしまった仲間へ、お前は引き金を引いてやれるか」

「おれがもし、お前達を間違った方向に導き、その事にお前が気づいたなら」



「―――果たしてお前はおれに、引き金を引いてくれるのか」


「っ」



「…安心しろ金剛」

「その銃は"空砲"だ」


 安心など、できるはずもなかった。

 もしこの銃が空砲なら、先程滑り込ませていたものは何なのか。

 弾倉ではなかったのか。説明がつかない。


自分の手を震わせるのは雨の寒さか、引き金を引くことへの恐怖か。

金剛は、分からなくなっていた。



「どうした」

「簡単なはずだ」


 奇妙なものだった。


「砲弾で敵艦船を貫くわけじゃない」

「主砲で敵艦船を葬るわけでもない」


 少し力を込めればいい。

 それだけでいい。



「…ただ、一人の人間を、殺すだけだ」



 軽いはずの引き金が。

 何故か、とても重かった。



 手の震えを止めるため、もう片方の手で拳銃を抑えてみても。

 震えは、増すばかり。


 そんな震える手を、提督の大きな手が包み込む。

 そしてあろうことか、提督は提督自身の胸へ、銃口を寄せていく。

 確実に心臓を撃ち抜ける位置。

 本当にこの銃が空砲だったとしても、引き金は重くなる一方だった。



 怖い。


 怖い。


「できない…っ」

「できないデス…っ!」


 何度も首を横に振る。目からは涙が溢れたが、雨に全て流れてしまう。




「…おれを信じろ、金剛」


「この銃は、空砲だ」



「───!!」




――――

………

――――



かちり、と。金属的な音が、嵐の白霧に響く。


それはすぐかき消され、吹きすさぶ雨風に溶けていった。

ひとまずここまで

あと>>1は銃に関してはFPSかじった後、ネットの上っ面漁っただけのド素人です
何卒生暖かい目でよろしくお願いします(懇願)

では

博識提督殿、銃のご指導ご鞭撻ありがとうございます。俺提督、空砲の意味を少しとり違えていたことに気づく(今更)
本編には多分影響ありませんのでどうか許してやってください…

また、ぼちぼち投下しに来ます。もう残り少ないですが、その時はどうぞお付き合いください

…イベントが辛い(小声)

おはようございます。イベント合間のss漁りが楽しいです
イベ艦は一隻手に入れたし、ひとまず四桁切るまでがんばるかな(弱小鎮守府並感)


拙いのは文章力だけじゃなく画力もだってはっきりわかんだね

ではまた今夜




――――

………

――――







「…、あ」


 閉じてしまっていた目を、恐る恐る開ける。

 何が起きたのか理解できなかった。



ただ一つ分かるのは、目の前の提督が、先程までと同じように立っていたことだけ。





「あ、あぁ…」


「よくやった」


提督は倒れる訳でも苦しむ訳でもない。

風穴が開いているはずの胸には、何の外傷も無かった。


「…試すような事をして悪かった」

「おれは"お前の覚悟"を。それを確かめたかったんだ」


「…どうして」

「どうして、こんな危険な事を…ッ!」


「危険? …何てことはないさ」


提督は少しだけ笑みを漏らしたかと思うと、混乱する金剛へ説明を始める。



 オートマチック
「自動式ってのは、最初に初弾を装填する必要があるんだ」

「だから弾倉突っ込んで引き金引けば弾が出る、って訳じゃあない。まずスライドを引いて初弾を装填する」


金剛が握っていた銃の上部を掴み、かちん、とスライドを押し込む。


「見ろ、撃鉄が引かれたろう? これでようやく弾が出る」

「…っと、ああ。一応言っておくが、もう撃たんでくれよ? でないと、おれの名前が明日の朝刊に載ることになってしまう」


提督は金剛の指からゆっくりと銃を外し、弾倉を引き抜いた。

もう一度スライドを後ろに引き強制排莢すると、装填されていた次弾が銃口とは逆の位置から跳ね飛んでいく。


弾薬は雨に流され、すぐに見えなくなった。


外套の下に拳銃を戻した提督は、小さく息を吐いて胸を撫で下ろした。


「…しかし分かっていても怖いものだな。誰かに銃を向けられるってのは――」


「――んで」



「む?」


「―――なんでデスかっ!!!!」


金剛は提督の胸に掴みかかる。


「うぉっ…」


 「弾が出ないトカ、そんなの関係ないヨッ!!」


 「絶対なんて、あり得ないデス…本当に死んじゃうかも知れなかったのに…!!」


 「どうして…っ! どうして、アナタは…っ!!」


提督の胸を何度も何度も叩きながら、金剛はぽろぽろと大きい雨粒のような涙を落とす。

この雨の中でも、提督はそれを視認できた。


提督を本当に殺めてしまわずに済んだ故の"安堵"、それがその涙の理由だった。



「なんでっ…私の為に、そこまで…っ」


叩く力が徐々に抜けてゆき、膝をついて金剛はへたりこむ。


「…いいか、金剛。確かにお前は、おれへ引き金を引いた。そう、"引けた"んだ」

「これはお前の覚悟の行為だ。もしそれで弾が出てしまったとしても、別におれ一人の命、くれてやっても構わない」

「それでお前を救えるなら、それで仲間の将来を開くことが出来るなら、おれは何だってする」


「……っ」


「もう、きっと大丈夫だ」

「お前は、戦える。お前には、十分な覚悟がある」

「お前は決して、戦えない木偶なんかじゃあないんだ」


金剛の肩に手を置いて、提督は力強く、かつ優しい声で諭す。

涙と雨に震える顔を、その眼はしっかりと見すらえた。




「―――此処は、冷えるな。…帰って温かい茶が飲みたいもんだ」


「さ。帰ろう、金剛」



        ぃぇ
 「おれ達の、鎮守府へ」




提督の差し出した手を、金剛はしっかりと握る。

そして、そのまま提督の胸へと飛び込んだ。


「おぉ…」


「―――う、あああぁぁ…ッッ!!! あああああ…ッッッ!!!」


張り詰めた心の糸が切れたのか、ただむせび泣く金剛。

しっかりと金剛の身体を抱きとめ、提督はその頭を撫でてやる。


「…そうだな。今のうちに好きなだけ泣いておくといい」

「どうせこの雨じゃ誰にも聞こえやしない、誰にも聞こえる心配はないさ」



「お前を濡らすのは、この雨だけで十分だ」


―――


外套のフードを被りなおす。するとフードに溜まっていた雨を思いっきり頭からかぶってしまった。

しかし既にびしょ濡れな身、提督はそう気にも留めない。


(晴れ晴れしい気分になった…とでも思っておくべきなのだろうか)


ぼたぼたと自分の顔に水が滴るのを感じ、提督は勝手にそう考える。

そう都合よく、雨は止んでくれなかったが。



雨と涙で顔をぐしょぐしょにした金剛を連れ、提督はやっとのことで帰路に着いた。





二人並んで嵐の中を歩く。



以前とは違う金剛の足取りに、少しくらいは仲良くなれただろうかと、一人思う提督。


大雨で冷える中、しっかりと繋がれた手だけが、お互いを温めていた。


休憩。シリアスおしまい
ツッコミ所が多々あるのは仕様です。仕様なんです

では



───



葉月○×日


鎮守府近海。  05:54


 陸が雨なら此処も雨だった。

 しかし昨日ほど、風も強くなければ雨脚も小さい。


「……」


 ぽつぽつと肌に当たる雨は、火照る身体と気持ちを落ち着かせるのに一役買っていた。

 大きく息を吸い込み、前方の海へ視線を向ける。


 手は震えない。


 もう、私の雨は止んでいる。




「―――撃ちますッ! ファイアーッ!!!!」



そんな雄叫びと共に。


天を穿ち、風を裂き。

目標目掛け、砲弾が海の上を突進していく。




―――


鎮守府、海岸沿い。  同時刻


「…夾叉、中々やるもんだ」


「中々どころか、病み上がりでアレは凄いと思うんですけど」


双眼鏡を目に当てながら、提督と夕張が並んでそんなことを言う。

そのもう隣では、天龍が単望遠鏡を覗いていた。眼帯ゆえのこだわりだろうか。


「ふん、能ある鷹はなんとやらだぜ」


「…隠すというより、隠さざるを得なかった。というかなんというか」


夕張が感想を漏らす。


「つか提督。あんた結局新入りに何したんだ?」


「私も気になります。データ的にも」


「…さぁて、な」


提督はふと、昨日夕張と交わした無線会話を思い出す。


――

―――

――――


『単刀直入に言いますと、金剛さんは"力をなくした"わけじゃありません』


『何?』


『そもそも艤装との接続が出来ている以上、"力を失っている"はずがなかったんです』

『本当に力を失っているなら、艤装の接続が問題無しなんてまずありえません』

『だから"なくした"というより、"忘れてしまった"といった方が多分正しくって』


『…つまり?』


『例えば…いやでもこの表現は違うような…』

『あぁもう面倒! とりあえず聞いてください提督!』



『提督が煙草を吸うとき、まず最初に何しますか!? できればその後の順序も!』


『…葉巻を切る』

『ライターで、火を点ける』


『――そう! その"火"です!』

『今の金剛さんにはその"火"が無いんです。火の点け方を"忘れちゃってる"んです!』


『…火の点いていない葉巻は吸えない。煙が出ない…』

『…出ていない煙が、今の"彼女の力"?』


 人間である提督に、"艦娘の力"の概念はいまいち分からなかった。

 夕張の言葉を理解できたという確信も持てなかった。

 ただの人間のポンコツな頭で整理した結果。

 "金剛の力を司るスイッチ"が、現状OFFになっているものだと解釈した。


 "電源"をいれなければ、そもそも機能どころか動きはしないのだと。


『彼女に力の使い方を思い出させる事が出来れば、彼女は…?』


『そうなります。ですが』

『"艦娘の力の使い方"というのは無意識下で行われるものなので…』

『"じゃあどうすれば力の使い方を思い出すのか"と聞かれたら、どうとも答えられないんです…』


『…そうか』


―――――

――――

――


(…本当、何が効いたんだかなぁ)


回答を濁しながら、葉巻を取り出す提督。しかしライターがうまく機能せず、火を点けることが出来ない。

そんな調子で提督は何かと消化不良のまま、火の点いていない葉巻を咥えた。



提督のそんな応答に、ふーんと相槌を打って、一時的に単望遠鏡を覗きなおした天龍であったが。

急に赤面し、提督へ向き直った。


「あ、あんた…まさかコイツの言ったこと実践したんじゃないだろうなッ!?」


「え、試してくれたんですか!?」


触発された夕張からもそんな疑問が飛ぶ。


「…馬鹿を言え」


艦娘の疑問に大きな溜息をつく提督。

しかし艦娘たちの疑問は止まらない。


「な、なんでそこでちょっと返答渋ってんだよ…。ま、まさかホントに…ッ!?」


「ほらほら! やっぱ私は間違ってなかった! キスすれば力は戻る、白雪姫理論は最強だったのよ!」


「うっせぇ! ありえねぇわそんな話ッ!!」


誇らしげに右手を上げる夕張と、それを真っ向から否定していながら、顔の赤さを隠しきれていない天龍。

朝からやかましい連中だ、と提督は肩をすくめる。



提督は最初からこの二人と、金剛の射撃訓練を見ていたわけではない。

もとより、この二人は土曜のこんな朝早くに起きてきたりはしないのだ。


平日は確かに号令をかけて、全員を朝早くに起こすものである。

しかし此処の鎮守府において、土曜と日曜は基本的にフリーな日。

天龍と夕張は大抵九時ぐらいに起きてくる、そう提督は記憶しているが。


(…目の下にクマまでつけて、元気なことだ)


そしてその二人が、"なぜか"、この日に限って、朝早くから提督とともに金剛の射撃演習を見ている。

そんな妙な朝だった。



「天龍、落ち着け。とりあえず息吸ったり吐いたりしろ」


「お、おう。分かった…」


素直に深呼吸をする天龍。

その時、提督の頭の中に一種の閃きが走った。


「…天龍、お手」


「おう…、――じゃねーよ!! 誰がするか!」


提督の手が思いっきり叩き払われ、結果的にお手が成立する。

その光景に提督と夕張はけらけら笑い、嵌められたことに気づいた天龍はどこか悔しそうにまた赤面した。


――


「話戻すが、おれは彼女自身じゃないし、おれの言葉が彼女にどう作用したのかなんて分からん」


「いやまあそうかも知れねぇけど…」


「ちょっとお二人とも、私に何か謝ることg」


「知りたいなら彼女本人に聞け。あとついでに彼女が帰投したら執務室に呼んどいてくれ」


何かを言いかけた夕張に傘と双眼鏡を押し付け、提督はその場を後にする。



「ねぇねぇ天ちゃん、私に何か謝ることがあるんzy」


「んだよしつけぇな! なんなんだよお前のそのテンション!」


「いいからハイ! "オレが間違ってた"って言ってみなさいよ! さぁ!」


「黙ってろ!!」



<あ、ちょっと天ちゃん、暴力は駄目、チョークスリーパーは駄目ぇっ!

<キスだのなんだの騒ぎやがった報いだこのやろッ! 思い知れ!


何やら物騒な問答が聞こえたが、提督は聞こえていないことにする。



 後々、天龍と夕張は昼過ぎまで仲良く二度寝していた。



――


鎮守府、執務室。 8:51



「観させてもらった。良い腕じゃないか」


「ありがとうございマス」


金剛は笑顔で、提督に応答する。

提督にも自然と笑みがこぼれた。


「まあなんだ、喉元過ぎればってやつさ。悪いことはさっさと過ぎて、すぐ忘れるもんだ」

「何で力が戻ったのかーなんて、わざわざ気にしてもしょうのない事。おれだって分からんしな」


「そう、ですネ」

「……」


「…大丈夫か? 無理はするなよ、お前はまだ…」


提督が不安がちに、金剛の顔を覗き込む。


「イ、イエ! 私は大丈夫デス!」

「その、何と言ったら良いのか…ありがとうございマシタ」


「おいおいよしてくれ、そんな改まって。年甲斐もなく照れくさいじゃないか! はっはっは!」


提督は素直な大笑いをした。


「終わり良ければすべて良し、先人様はいい言葉を残してくれたもんだ! そうは思わんか?」


「…Hi!」


つられる様に、金剛にも笑みが生まれる。

くもりっけのない、そんな眩しい笑顔だった。



――


同所。  9:02



「むむむ…」


窓から海を眺める長門が、そんな声を漏らす。

その肩には、暁が肩車されていた。


「結局雨は降り止まずか…」


「…数が足りなかったのかな」


暁はしょんぼりとした様子で小さく呟く。


「…よし、こうなったら」


照る照る坊主製作キット(仮)をどこからか取り出してきた長門は、暁を降ろしつつ宣言した。


「止まぬなら止むまで作るまでよ! この長門に続けー!」


「おー!」


「ま、まだ作るんデスか…」


「当然だ! こういうのは多ければ多いほどいい、数が大切だってどっかの"提督"が言ってた!」



「…朝っぱらから元気だな、お前たち」


朝刊を握る提督が、大きな欠伸をする。


「生憎と、この雨はあと二日三日続くらしい。数を増やしたところで―――」


「何を言う!」


執務机をひっ叩いて長門は大声を張り上げた。

手にはマジックペンを持ち、照る照る坊主の顔を描く気満々な状態である。


「元はといえば、提督が雨が嫌いだのなんだのゴネるから、暁が心配して始めた事なんだぞ!」


「…いやそれは知ってるがな」


提督が目を泳がせると、恥ずかしそうに顔を赤くした暁が、黙々と作業している光景。

そしてその隣には多少困惑しつつも、照る照る坊主を製作している金剛がいた。


「提督も手伝え! 私達だけ作っててもしょうがないだろう!」


「分かった分かった…」




「時に長門」


「ん?」


「なんでお前、"照る照る坊主に顔描いてる"んだ?」



長門はその言葉に困惑する。


「え、え…? ふつう、描くものなのでは…?」


「おいおい、作ったそばから描いてどうする」


提督の口から衝撃の事実が伝えられる。


「照る照る坊主に顔を描くのは吊るした後の翌日、それも晴れた時だけだろう」

「顔を描くのは"今日を晴れにしてくれた褒美"みたいなもんだから」


「な、何だと…!?」


「それと顔を描いた照る照る坊主は、吊るすと雨乞いの意になったりもするそうだ。かえって逆効果なんだが…」

「…知らなかったのか?」


長門は凍りつく。それもそのはず。

現在吊るされている照る照る坊主には、全て顔があった。

そしてその顔を描いたのは、紛うことなき長門本人。

暁や金剛の頑張りを(知らなかったとはいえ)台無しにしてしまった事に気付き、一時的に思考が停止してしまう。



「……ぐすっ」


ハッと、長門は振り向く。


案の定その視線の先では、暁が瞳に涙を湛えていた。

暁も勿論、提督が余計な事を言われなければ残酷な真実を知ることもなかったはずだが、今となってはどうしようもない。



「―――わァーッ!? 済まん暁、金剛! 悪気はなかったんだ!」


「…ふぇ、ばか…ばかぁあ…っ!」


「あ、あぁぁごめんなさい! ごめんなさい!!」


大人が子供に土下座するという、なんともシュールな光景。


「…てるてるぼうずって、easyデスけど奥深いんですネ…」


一方で金剛はというと、長門を責めたりはせず、日本の伝統に感心の意を示していた。


もう一度欠伸をして、提督は頭を掻く。


「…黙ってた方が良かったのかな」



提督はふと何かを思い出し、執務机の引き出しを開けた。


引き出しの中には、顔のない照る照る坊主が一つ転がっている。

昨日、暁が提督の前に置いたものだ。


それを掴み取り、筆立てからボールペンを抜き取った。

しかし提督は何を思ったか、しばらくして、ボールペンを机の上に置いてしまう。


「…褒美はまだ、か」


そう小さく呟くと、机の上に照る照る坊主も置いた。



椅子から立ち上がり、執務机から移動した提督は暁の前にしゃがみ込む。


「暁、大丈夫かー?」


「しれぇかぁぁぁんっ!!」


「よーしよしもう泣くんじゃない、レディーが台無しだ」


台無しにしたのは一体どこの誰だというのか。しかし暁も暁で提督に泣きついている。

どうやら涙のせいで、怒りの矛先がしっちゃかめっちゃかになっているらしい。

見た目相応な感情の爆発を見て、微笑ましいようなよくわからない気持ちになる金剛。


長門は土下座の姿勢を崩さない。

その背中からは"日本のわびさびの心"が窺い知れた。


暁の頭を撫でる提督を見て、金剛は小さく笑う。



「――失礼致します、提督…って、まあ」


執務室の戸を開け、鳳翔が顔を覗かせる。


「…なにが、起きたのでしょう?」


泣く暁、それを慰める提督、土下座をする長門。まともなのは金剛だけ。

その質問が飛び出しても無理はない光景であった。



―――



「……」


 ひょいと照る照る坊主をつまみあげ、同じように机からボールペンを拾い上げる。

 そのままその白い頭に、ボールペンを走らせた。


 出来上がったのは、何とも不格好な笑顔。

 自分の画力の無さに、少しだけ申し訳なさを覚える。


 暁の涙をハンカチで拭いてやる提督と、未だに土下座の姿勢を崩さない長門。

 それを、困り顔混じりな微笑みを浮かべて見守る鳳翔。


 四人を眺めながら、照る照る坊主を引き出しに戻す。






「――晴れたご褒美、デース♪」





 引き出しが閉まりきるその時まで。


 顔を描いてもらった照る照る坊主は、嬉しそうに金剛を眺めていた。




                                Diamond_Heartと夏の雨 閉幕

本編おわり

どこかスカスカ感が否めないけど、おわりったらおわり。本日は晴天なり
長々とお付き合い頂きありがとうございました、加えてお目汚し失礼しました

おつおつ
本編が終わりってことはオマケとか後日談があるんですかねえ

>>158 (一応)ありますあります

地の文は夏休みに出かけたので今後は台本形式
またちょくちょく投下しに来ますので、蛇足の方もよろしくお願いしますです


 蛇足篇


『───』


提督「…はい」


『────』


提督「…はい、感謝します」

提督「はい」


『──』


提督「はい?」


『―――』


提督「……はぁい」


『───?』


提督「え? いや、決して適当な返事では…」

提督「…はい。本官、これからも十分に、職務に励ませて頂きます。はい」


『──』


提督「はい…失礼致します」

チンッ



提督「…老害め」ボソッ


天龍「叱られたのか?」


提督「"転属した艦娘の回復に貢献した功績を称える、よくやった"、とかなんとか…」ハァ


天龍「…? 褒められてんじゃねぇのかそれ?」


提督「言い方が妙に嫌味ったらしい。おれの地位を皮肉ってるんだろうなどうせ」

提督「将官だからと言って調子に乗りおって…佐官いびりがそんな楽しいのか」ブツブツ


天龍「…何処の世界にもヤな上司は居るってこったな」


提督「分かってくれるか、天龍…」


天龍「痛いほどにな。…誤解招きそうだから一応言っとくけど、あんたの事じゃないぜ」


提督「そいつはよかった」


――


夕張「提督。金剛さんから聞きましたよ」


提督「ふむ。で、満足のいく答えは返って来たか?」スパー


夕張「いえ。…それどころか」


提督「…どうした。そんな神妙な顔して」


夕張「だって提督、自分へ銃を撃たせたらしいじゃないですか」


提督「そうなるなぁ」


夕張「そうなるなぁ、って呑気に何言ってんですか!? 死んだらどうするんですか!」


提督「死んだ後に考えればいい」スパー


夕張「」


提督「お、そうだ。仮に死んだとすれば、二階級特進で将官の仲間入りじゃないか。やったな」


夕張「死んだ後の肩書きなんて役に立ちませんってばっ! もー!」プンスカ


――


長門「怒りが湧いてきたぞ」


提督「なんだいきなり。よく分からんがその怒りは実践で発散しろ、な?」


長門「怒りの矛先は貴様だ提督」フシュー


提督「…どうして?」ハテ


長門「とぼけるなァ!!」

長門「提督があの時、事前に私を止めていれば! 暁が涙を流すこともなかったはずだ!」

長門「そこ動くなッ! 46cm三連装砲で灰すら焼き焦がしてくれるわッ!!」ガシャコーン


提督「ふん、ひどい責任転嫁だな」


長門「何だとぉ!?」



提督「おれを責めるのは筋違いだ長門、そもそもおれはな」

提督「あの時お前たちが執務室に居たことを知りこそすれ、お前達が何をしていたのかなど知りもしなかった」


長門「い、言い訳か…?」フルエゴエ


提督「時に長門。…おれが初めて照る照る坊主を見たとき、お前は何してた?」


長門「」ギクゥ


提督「お前はもう既に、顔を描いてしまっていたはずだろう?」


長門「う、うわぁぁああッッ!!!!」ガクッ


提督「おい、どうした。…これでもまだ、おれに非があると、そう言えるのか?」


長門「やめろ…、やめろォォォおおッッ!!!!!」


提督「ははは。自己嫌悪が止まらぬだろう、そうだろう」

提督「…お前の考えは間違ってない。安心して再認識しろ」



提督「―――暁を泣かせたのは、他ならぬお前だということを、な?」ニッコリ


長門「あ…あぁ……ッ」ズーン


<ドウシタ、ハンロンシテミルガイイ。サァ!


<モ、モウ…ヤメテクレェェ!!


夕張「…鳳翔さん。あの人たち、何の話してたんでしたっけ?」


鳳翔「照る照る坊主、よね?」ニガワライ


夕張「…やっぱりそうでしたか」アキレ


暁(アイスおいしい)


天龍「当人台風の目で幸せそうにアイス食ってんぞ」


金剛「…PeaceがBestネ」ズズ

金剛(緑茶って中々tastyデス…渋みがなんとも…)フム



<ちょ、落ち着け長門。済まん言いすぎた! 叩くな痛い痛い!

<その減らず口を黙らせるまで私は止まらぬぅ!

<いや悪いのお前だs…ぐわぁーッ!?

<ふふ、提督。貴方は最近お疲れだ、肩を叩いて差し上げようッ!!

<よせ、やめろーッ! 冷蔵庫のおれの分のアイス饅頭食っていいからッ!

<何!? それは本当か提督! 大好きだ! ギュウー

<随分と安い愛だ――って、うごぁあああッッ!!? 矛先があばらに変わっただとッ!!? ベキベキ

<あ、そうだ! 暁にも分けてあげてもいいのだな、当然!? ギリギリ

<好きに…しろ、カハッ。あと…ェホ、早くその腕…解かないと、お前の大好きな提督が…死ん… ケホッ



金剛「Yeah、Peaceデス」ズズ


天龍「順応早いな」

蛇足篇おわり。小ネタ篇もこんな調子で投下していきます


当鎮守府メモ其ノ肆:よくわかる()人物早見表

 金剛…バーニンラヴ。本編じゃやたらネガってたけど、もう回復した模様。

 長門…ながもん。アイス与えとけばまず文句は言わない。

 暁…レディー。子ども扱いされてもしょうがないのかな、と自分で思い始めてるのが最近の悩み。

 天龍…フフ怖系女子。ツッコミ担当。鎮守府で一番乙女っちゃ乙女。

 夕張…みんな大好き便利艦。趣味は一に開発、二に開発、三に開発、四に試験運用。

 鳳翔…聖母。提督とは多くを語らずとも分かり合うことのできる関係。

 提督…中年。人生で一番後悔してるのはバブルの波に乗れなかったこと。

 照る照る坊主くん…本編のキーパーソン。今日も引き出しの奥で艦娘達の安寧を願う。

 朝刊…提督の朝の相棒。叩きつけられたり握られたり不遇なポジ。日毎に顔が変わる。


ではこれにて


 馴れ始め()篇


金剛「…紅茶が飲みたいネ」ポツリ


提督「む、金剛。紅茶好きなのか?」バキッ


金剛「oh、口に出ちゃいマシタ…sorry」


提督「思えば確かお前さんの書類にそんなこと書いてあったような…あっ」コキッ

提督「着任時に緑茶に手が伸びてなかったのはそういうことだったのか。ああ済まんな、配慮が足りなくて」ニギニギ


金剛「お気になさらずデース…提督にはどう考えても非がありませんヨ」

金剛「…と言うか提督。肩ダイジョウブ?」


提督「大丈夫だ、脱臼ぐらい自力で治せる」ウン


提督「あ、そうだ。よかったら教えてくれないか?」


金剛「ハイ?」


提督「紅茶の淹れ方とかだ。お前さん詳しそうだし」

提督「確か茶葉ならそこの棚辺りに…」ゴソゴソ


金剛「で、でも…教えるだなんテ、そんな事出来る立場でもありまセンし…」


提督「何を言うか。異文化とのふれあいってのは中々新鮮で面白みがあるもんだ」アッタ

提督「それにな。勉強しないで困ることこそあれ、勉強しすぎで困ることなんてあんまり無い。違うか?」アトハポットダナ


金剛「い、exactly…ネ」


提督「決まりだな! 金剛先生、これからよろしく頼む!」ハハ


金剛「りょ、了解デース!」



金剛「……アレ?」マルメコメラレタ?


――数分後。


提督「…」ズズ


金剛「…」ドキドキ


提督「美味い。やはり英国人の淹れる紅茶は一味違う」


金剛「よ、良かったデス!」ホッ


提督「ふむ、たまにはこういう本格的なのも良い」ズズ

提督「お前さんに会えてよかった! じゃなきゃ、お前さんの淹れる紅茶にも出会えなかったんだ」

提督「この巡り合わせは神に感謝だな…」ウンウン


金剛「…!」パァァ


――ドア越し。


鳳翔「…」ニコニコ


長門「ほ、鳳翔? 笑顔が恐ろしいんだが、大丈夫か?」アセアセ


夕張「提督に悪気は無いですから、ね?」アタフタ


鳳翔「…私は怒ってなんかいませんよ? …怒ってなんか」フフッ


暁「金剛さんと司令官、仲良さそう…」ムー


鳳翔「…フッ」スタスタ


天龍「こわい」


―――


金剛「…zzz」ヨリソイ


提督「はは、懐かれてしまった」


鳳翔「ニコニコ」バキィッ!!


提督「おれその箸気に入ってたのに!?」


――


長門「金剛と無事打ち解けたようで何よりだ」


提督「ああ、最初はどうなるかと思ったが」

提督「話していれば普通の娘だ。新しい話題の会話が出来るってのは楽しいな」


長門「仲が良いのはいいことだな」ハハ


提督「だな。そろそろデートの誘いを受けてくれる頃合いかもしれん」ハハ



長門「…その。鳳翔の目が最近怖いのだ、そういった話は控えたほうが…」


提督「只の喩え話じゃないか…」

提督「…確かに。控えよう」ハシオラレタシ


長門「それがいい」ウンウン


――


提督「……」


鳳翔「……」


提督「…怒ってるのか?」


鳳翔「そう見えますか?」ニコ


提督「多少は…その…」ゴニョゴニョ



提督「…鳳翔」


鳳翔「…」


提督「天気が落ち着いたら…散歩しに行こう。二人で、その辺に」


鳳翔「…はい!」ニコッ

馴れ初め篇おわり。
しかしもう少し投下スピード速めないと夏ネタが夏の内に投下できなくなっちゃうヤバイヤバイ



  炎天下篇


提督「済まない、鳳翔」

提督「おれはもう、君との約束を果たすことが出来んようだ…」カハッ


鳳翔「そんなこと…っ」


提督「済まな、い」

提督「君に逢えて、おれは、しあわせだった…」


鳳翔「もう喋らないで下さい! お身体が…」


提督「いいんだ」


鳳翔「…っ!」ギュ


提督「…ありがとう、鳳翔。黙って聞いてくれて」

提督「願わくば…君と、平和な、世界…で」


ドシャア


鳳翔「……」

鳳翔「てい、とく?」


提督「」


鳳翔「…いや……」


鳳翔「―――いやあぁぁぁっ!!!」ガクッ


天龍「提督…あんたの事忘れねぇよ」



天龍「とりあえず死んだなら団扇寄こせ。あちぃんだよ」



提督「…なんだ、ノリの悪い」ムクリ

提督「申し訳ないがこの団扇はおれと鳳翔のものだ。誰にも渡さんぞ」パタパタ


鳳翔「暑いですね」ボー


天龍「ならどうでもいい三文芝居展開してんじゃねぇ! 鳳翔さん、あんたもノらなくていいから!」



提督「鳳翔、多少は涼しいか?」パタパタ


鳳翔「ありがとうございます。幸せです」ニコニコ


提督「よかったよかった」



天龍「…こんなクソ暑い中さらにクソお熱いですねってか!? ふざけんな! 何もうまくねぇんだよ!」


夕張「天ちゃんうるさいしあつい」


天龍「ごめん」



天龍「なんでこの鎮守府はクーラーおろか扇風機一つ無いんだ。完全に舐めてるだろ最近の夏」


提督「そんなもの夏風邪のもとだ。必要ない」パタパタ

提督「どうしても暑いなら、海にでも入ればいい。おれは若い頃そうしてたぞ」


天龍「そこで妙にオヤジ臭くなるのやめろ!」


提督「電気代も馬鹿にならんというじゃないか。なぁ鳳翔、おれ達には必要ないと思わんか?」パタパタ



鳳翔「そうですね。私には提督さえ居れば」ボー


提督「ほーらみろ、おれには鳳翔が居ればいいって」パタパタ


天龍「あーそうかよ畜生!」

天龍(…あれっ?)



提督「暑いな鳳翔」ハハハ


鳳翔「暑いですね提督」ウフフ


提督「何故だろう、扇いでるはずなのにあまり風が来ないんだ鳳翔」ハハハ


鳳翔「おかしいですね提督」ウフフ


提督「おかしいな鳳翔」ハハハ


鳳翔「でも、良い風ですね提督」ウフフ


提督「ああ、その通りだな鳳翔」ハハハ


鳳翔「提督…」


提督「鳳翔…」


天龍(…なんかこの二人おかしくなってるーッ!?)


天龍(いつの間にか扇が持ち手になってる! 逆だろ!? 柄で扇いでどうすんだよ!?)

天龍(つかなんでオレ一人でツッコンでんだ!? 馬鹿かよ!? おかしいのオレかよ!?)


天龍(…オレがおかしいのか?)アレ



夕張「ていとく」グデン


提督「む。痛んだウリ科キュウリ属みたいな顔してどうした夕張」


天龍(悪口じゃねーか)


夕張「皆さんの予備の艤装、虫干しで屋外に置きっぱなんですが」


天龍(無視か)


夕張「たぶん目玉焼き作れるぐらいには高熱になってるとおもいます。この分だと」


提督「本当か。後で貸してくれ、葉巻に火を点けたい。ライター切らしてるんだ」


夕張「あいあいs」バタッ


提督「目玉焼き、最近食ってないな。楽しみだ」パタパタ


天龍「あ、葉巻から目玉焼きとか話が繋がってねぇ。もう駄目だこいつ」



長門「あれ、陸奥。久しぶりだな…少し縮んだような…」グデェン
(スロ1 髪留め)
(スロ2 タオル)
(スロ3 足水桶)
(スロ4 なし )


暁「しれいかんがふたり…さんにん?」チーン
(スロ1 冷えピタ)
(スロ2 濡れ布巾)
(スロ3 アクエリ)


天龍「こいつらも案の定だよッ! もう!」

天龍「やべーよ幻覚見てるよ重体じゃねーか! 鎮守府総員で入院とか洒落になんねーぞ!?」


金剛「天龍は元気ネ。こんな暑いのに」ゴクゴク


天龍「お…、おお! 無事か金ご――」



金剛?「グビグビ」ガシャガシャ
(スロ1 U C C     )
(スロ2 F I R E     )
(スロ3 G E O R G I A)
(スロ4 B O S S     )


天龍「――どわぁぁああッッ!!?」ドシャッ


金剛?「どうしたんデス? 急に尻餅ついて」ガブガブ


天龍「あ、あぁ…来るなっ! 来るなぁぁああ!!」アトズサリ


金剛?「むー。心外ネ、せっかく心配してるのに」

金剛?「今日の天龍はおかしいヨ? 頭でもknocked?」グビリグビリ


天龍「ち、違。お前は、金剛じゃ、ちがっ」


金剛?「?」


天龍「あ、オレ、は何を言て、違」ガタガタ

天龍「う、うわぁぁあああッッッ!!!?」ダダダ




金剛?「…? 行っちゃいマシタ、どうしたんデショウ」ハテ

金剛?「……」ジッ


珈琲缶「」


金剛?「」ゴクンゴクン

金剛?「」プハッ



金剛?「…今日も"紅茶"が美味しいネ」ニコニコ



天龍「ビエエ」ギュー


提督「おいおい、貴重な水分をもっと大切にせんか」ヨシヨシ


鳳翔「夏ですねぇ」



数日後


上層部が、冷房機械一式を譲渡してくれました。

天龍は泣いて喜びました。

一方、天龍を除いた鎮守府の住人は困惑しました。


彼らには、なぜお堅い上層部がそんな気回しをしてくれたのか、理解できなかったのです。

自分達が暑さに悶えた記憶こそあれ、その暑さの中で何をしていたのか、彼らは思い出せません。

"元帥が視察に来た"という事実さえも、いざ冷房具が郵送されてくるまで、すっかり忘れていたのです。


提督はしぶしぶエアコンを設置し、最低26℃を条件に冷房の使用を許しました。

天龍はそれでも構わないと、また泣いて喜びました。

そんな天龍を見ていた鎮守府の住人は、終始困惑していました。


それからというもの、鎮守府が暑さでこわれることはなくなりました。

珈琲を紅茶と称し、大量の缶コーヒーを全身に括り付けた妖怪"珈琲お化け"は、それ以来、二度と現れませんでした。


今日も天龍は、枕を高くして眠れそうです。


おしまい



金剛「…なんか体調がおかしーデス」


提督「腹でも冷やしたのか、やはりもうちょっと温度をあげて…」ピッ


金剛「イエ、そうじゃなくて。なんと言ったらいいノカ…」ウーン

金剛「私の血管を通うモノが別の物質にすりかわっているヨウナ違和感ガ…」アレー?


提督「…なんだそのハイオク車にレギュラー入れてしまったみたいな喩えは」ピッ

炎天下篇おわり。
↓ちなみに天龍ちゃんの見たお化けはこんな感じです(セルフ絵)

徹夜明けテンションだとワケわかんないネタも絵も投下できるからいいものだ(そして後で後悔する

風呂入って寝ます


>>189
幽々白書にこんなのいたよな、体全部お札まみれの……

>>190"躯"って人らしいですね。言われて調べてみたらそこそこ?似てた(小並)

乙レスありがたいです。今後の予定ですが夏ネタ終わった後はパパッと〆て、夏中にスレ落とそうかと
タイトルで夏って言っちゃってる体だし、その方が後腐れもなさそうなので(夏ネタが既に後腐れとか言ってはいけない)

まあ面倒なことは後々また通知しますので
上記の事は気にせず、のんびりお付き合いいただければ幸いであります

ではでは



ホラー番組篇


『…おわかりいただけただろうか』


長門「どわー!?」バターン


天龍「うぇぇ!? 大声出すな! 怖ぇだろ!」


夕張「え。ど、どこどこ!? 私見えなかった! おわかりいただけない!」


暁「へ、へっちゃらだし…っ!」ブルブル



『では、もう一度御覧いただこう…』


「「「「ぎゃあーッ!!?」」」」


金剛「Oh、ジャパニーズホラーはサービス精神旺盛ネ。二度目があるのデスか!」キラキラ


提督「平気そうだな金剛」


暁「…っ! …っ!」ナミダメ


提督「おお、よしよし。暁、大丈夫だ」ナデナデ


金剛「ハイ。怖いと言うよりVery Interestingデース!」

金剛「提督の言った通りネ、異文化を知るのはとても楽しーヨ!」


提督「はは、そうか。よかったな…」ズズ


金剛「…? テートク、Cupを持つ手が妙に震えていマス」


提督「……」カタカタ


金剛「…もしかして、提督」


提督「…いいか、金剛。生ける死者などこの世にいない、死者は誰を許すことも出来ないし死者は何も語らn」カタカタ


金剛「OK提督、Relax。零れてるネ、お茶」



『この写真を撮った人物は、現在行方知れずだという…』


長門「」


天龍「」


夕張「あ、あはは。こういうのって、よく撮影者が行方くらましたり怪我したりするものであって」アワワ


暁「ピエェェ」ダキツキ


提督「……」ダキツカレ


金剛「Oh、皆さん大Damageネー」ケラケラ


提督「…」ガタッ


金剛「…テートク?」



提督「」ギュ


鳳翔「て、提督…? どうなさったので…」


提督「…なぜか、君の手を握ってみたくなった。しばらくこのままで、頼む…」ギュ


鳳翔「は、はぁ…私は嬉し、じゃなくって構いませんけど…」//


金剛「…お熱いことデス」


今日は大部屋でいっしょに寝ることを許可するとかなんとか

おわり



金剛「ちなみにイギリスの怪談は、冬に暖炉の前で聞くモノだったりしマース」


提督「…あといわくつき物件が高騰したりするそうだな。…おれには理解しがたい」ヤレヤレ

ホラー篇おしまい

今夏は心霊番組&映画をそんな観ないまま処暑を迎えてしまったなぁとぽつり
今日あたり何か借りてこようかしら


世界観について。提督&軍令部篇


階級は元帥から少佐まで。元帥一人、将官数人、佐官十数人。

不信任を受けた提督も少なからず存在、俗に言う"クソ提督"は名簿から抹消されることが殆ど。

軍令部としては繊細かつ強力な艦娘を纏めるのがすんごい苦痛、すんごい胃痛。

だから出来るだけ艦娘の管理は提督に任せたい。

一時期その煽りをうけてアホみたいに提督の数を増やしたところ、ほぼ半数がクソ提督になって大惨事に。

見境無しに提督の数を増やしても、その提督に艦娘が従わなきゃ話にならんことを軍令部は再認識。

最終的に上記の人数に収まった。


金剛達の提督はその量産提督から残った、"マトモな提督"の生き残りだったりする。

あと多少変態でも人望があってちゃんと仕事してれば良し(大本営発表)


世界観について。艦娘&深海篇


色んな娘がいてそれぞれ色々な場所にいます。

軍令部直属艦と提督指揮下艦が存在。

直属艦は大体実力者。でも軍令部としてはそんな実力者達を纏め上げるのも大変なので提督制を採用。

元帥と将官数人の信認を得て初めて、直属艦は指揮下艦になります。


最近はほぼ各鎮守府の管轄下に入り、軍令部の胃荒れも大方回復しました。


艦娘は解体すると普通の女の子になります。

解体された娘は"艦娘の頃の記憶を全て失い、戦いから退きます"。PTSDやフラッシュバックがなくなる訳だね、やったね。

中年提督の傘下で言うと、鳳翔長門金剛が元直属艦。
(金剛に関しては"他鎮守府から流れてきた艦娘"と本編で表記しちゃってた。やっちまってた)

後の三人は色々あった。と言うかみんな色々あった。


続き


深海はまったく出番がなかったけど一応存在。


現れ始めた当初はわが世の春ばりに暴れまわった。いつものシーレーン破壊して回ったり諸国の艦隊にケンカ売ったり。

無論人類側も黙って攻撃される気もないので報復を開始。

最初は既存の兵器で対処してたけど、代わる兵器はないものかと模索。


その過程で艦娘誕生。鹵獲した深海を弄くりまわしてたら出来た副産物のようなもの。

双方ともにメンタルモデル方式。


Q.でも少女だよ? 戦争に出すにはすっごい気が引けるよ?

A.戦う気のある娘だけ残ってください(大本営発表)


現在では結構勢力も収まった。

中途半端に相手を怒らすととんでもない報復を貰うことが深海側に理解出来たのかどうかは不明。

今更ながら設定を挿入してみたり
小話の方も残り二、三話ほどかね



運動篇


長門「金剛! ジョギングに行くぞ!」


金剛「…ハイ?」


長門「ほら、氷紅茶なんて飲んでないで! コレに着替えろ!」つジャージ


金剛「アイスティーって言いたいんデス!? と言うかちょっとwait、いきなりすぎますヨ!」

金剛「大体何デスか、Jogging!? こんな暑い中でどうして…」


長門「それだ金剛」


金剛「へ?」


長門「暑いからなんて言って、運動を疎かにしてはいかんのだ!」

長門「こんな涼しいところで冷たいものを飲んで…あと何だっけそれ、コスーン?」


金剛「スコーン! スコーンデス!」


長門「えぇい、そんなことはどうでもいい!」

長門「動かず飲み食いばかりしてると、結構昔の提督みたいになるぞ!」ビシィッ


提督「…なんでそこでおれを引き合いに出すんだ。やめろ指差すな」


夕張「提督ってば、昔高血圧気味でしょっちゅう鳳翔さんに心配かけてましたもんね」アハハ


提督「…おかしいな、雨でもないのに古傷が痛む」ズーン



金剛「わ、私、結構昔の提督なんて知らないネ! 此処に来たのもつい最近デス!」


長門「そーか! なら教えてやろう、暴飲暴食を繰り返せばどうなるのか!」


天龍「この鎮守府で一番食うのお前じゃねぇの?」パタパタ


長門「知らん!」


天龍「一蹴かよ」


長門「何にせよだ、食ったら動く! 飲んだら汗をかく! そのサイクルが重要なのだ!」

長門「そのサイクルを乱せばどうなるか! あぶれた栄養素が皮膚の下へ溜まっていくのだよ!」


金剛「い、一理ありますケド…」


夕張「なお長門さんと天ちゃんの栄養素は胸へ行く模様…(小声)」ノーパソカタカタ



長門「せっかくだ、天龍と夕張も来い」


天張「「!?」」


夕張「ちょっと待ってくださいよ! なんで私が!」


長門「夕張…お前は最近いつも狭い室内で液晶画面を眺めて、目が疲れているだろう」

長門「そこでジョギングがてら、外の世界の"開放感"と"緑"を感じ、目の保養を図るのだ!」


夕張「…ここの周辺、町の"窮屈感"と海の"青"しかないんですがそれは大丈夫なんですかね?」


長門「じゃ、青で」


夕張「取り繕わないでくださいよ! もー!」



長門「天龍はなんだ、その。とりあえず来い」


天龍「オレだけ理由思いついてねぇのかよ! やだよ!」セッセ

天龍「今洗濯物畳む鳳翔さんの手伝い中でバリバリ忙しいんだ! オレを連れて行きたいならまず鳳翔さんを通して…」


長門「鳳翔、天龍を少しお借りしても宜しいだろうか?」セイザ


鳳翔「ええ、構いませんよ」ニコッ


長門「よしきた!」ガバッ


天龍「アイエエエ!?」



天龍「そんな事言うなよ鳳翔さん、手伝わせてくれ頼むよぉっ!!」


鳳翔「ありがとうね天龍ちゃん。でも、本当に終わりだから」


天龍「」


長門「商談成立だな!」


天龍「こんな不平等商談あってたまるか! ふざけんな! 日米関係だってもう少しうまくやるわ!!」


金剛「Victimが増えてくネ…」


長門「よし、暁も捕まえてこよう」スタスタ


金剛「暁チャン逃げテーッ!! Escaaaape!!」



カンカンデリーン


長門「思った以上に暑かった…」


金剛「…言いだしっぺが開始一秒で何言ってマス」


夕張「これ絶対焼けますよ。ちゃんと日焼け止め塗りましたか皆さん」


天龍「オレそんな塗ってねぇ…2チューブぐらい消費しときゃよかったぜ」


暁「ナンデアカツキマデ」ツカマッタ



長門「お前達。こうなれば、意地でも元気出すしかないぞ!」


金剛「意地ってwhat?」


夕張「さぁ…?」


長門「走る順番は夕張天龍ときて、金剛暁で行こう」

長門「私は最後尾で殿(しんがり)を勤める。この拡声器で後ろから応援するぞ!」キーンッ!!


天龍「うるせー! ハウリングしてんじゃねぇか!」


暁「もう最初からダメダメよぉ…」



提督「おーい、お前たち」


金剛「oh、提督」


長門「お、何だ提督。一緒に走るか?」フォーン


提督「悪いが遠慮しておく、おれにはまだ少し書類仕事が残ってるのでな」


暁「…かくせいきには反応しないの司令官」


提督「おれ直し方知らんし…」ボソッ


暁「」ガクッ


提督「それと忘れ物だ。サンバイザーと水筒、夏にこれを忘れちゃ運動どころじゃない」ヒョイ


長門「おー、ありがたい」


夕張「…サンバイザーが人数分揃ってるっていうのも珍しいんじゃ」


天龍「…違いねぇ」


提督「給水ボトル(ストロー付)だが暁は紐付だ、首に掛けるタイプ」ホレ


暁「あ、ありがと」


提督「…しっかり結んであるな。よし、頑張ってこい」ワシワシ


暁「うんっ!」ニコッ



提督「お前たち、熱中症と日射病には十分注意しろ。長門、言い出したのはお前だ。全員の健康管理はしっかりとな」


長門「了解だ」


提督「まあ何かあったらおれに連絡しろ。夕張に無線機を持たせておいたから」


夕張「多分私が真っ先に倒れそうなんですけど…」


天龍「気張れ」


提督「…よし、気をつけて行け。精々良い汗かいて来い、ではな」スタスタ


「「「「了解」」」」


金剛「了解ネ」

金剛(…提督っタラ、まるで私達のFatherデース)フフッ

ねむいのでひとまずここまで
本編で敷いた伏線回収の為にも各個人のエピソードは後々書く予定です
ただこのスレで続けるべきなのか、新スレ建てるべきなのか悩みどころ
肉付け完了まで放置するくらいなら落とした方が…ぐぬぬ


―――


天龍「だぁぁクソ暑いぃ…」


夕張「天ちゃん、ちょっとヤバイかも」


天龍「おいおい、まだ走ってすぐじゃねーか…。こっちまでへこたれるからやめろ」


夕張「疲れたとかそういう意味じゃなくって」

夕張「あの、無線機が尋常じゃないほど熱持ってる。私焦げそう」


天龍「えっ何それ。熱でダメになったりしねーだろな無線」


夕張「暑さ対策はバッチリね。でも吸熱性は考えてなかったわ、こりゃ改善の余地アリね」


天龍「なんだよ脅かせんな」


夕張「…あれっ、私の心配は? 私って無線機以下なの天ちゃん?」


天龍「御託垂れる余裕あるならお前はまだ大丈夫だよ」


夕張「天ちゃんが予想以上に冷たい」


天龍「冷たいのは良い事だろちくしょう」



金剛「古今東西、coldなモノー」


天龍「なんか始まったぜ」


金剛「アイスティー」


暁「冷蔵庫のヨウカン」


長門「冷蔵庫のアイス」フォーン


天龍「冷蔵庫」


夕張「冷蔵庫の天ちゃん」


金剛「ちょっと待つネ」



金剛「なんでもかんでも“~ in 冷蔵庫”で済ましちゃ面白くないネ。それに最後何デス、人入っちゃってるヨ。怖いヨ」


夕張(混乱)「いやだなぁ金剛さん。冷蔵庫のところ天ちゃんの略かも知れないじゃないですか」


金剛「No、それは言い訳デス」

金剛「というかなにそれ全然可愛くないネ。チャン付けしてそこまで可愛くないnameも珍しいデース」


天龍「暑さで頭やられてんじゃねぇの…?」



金剛「じゃ、仕切りなおしネー」


暁「つづけるの?」


金剛「一巡するまでは諦めないデス!」

金剛「改めて、アイスティー」


暁「…ふうりん?」


金剛「趣ですネ! fantastic!」


長門「素麺」キーン


金剛「作るの楽で助かりマス! good!」


天龍「簾(すだれ)」


金剛「あの窓に掛かってるやつですネ! all right!」


夕張「ざる蕎麦かな」


金剛「この前食べましタ、美味しかったヨ! Ok!」



金剛「Yeah! 一巡しまシタ!」


「「「「……」」」」


金剛「…皆さんノリが悪いデス」


夕張「声に出してみると案外浮かばないものですね」


長門「そうか? かき氷とかどうだ、結構あるぞ」キーン


天龍「アイスと氷って意味一緒なんじゃ…てかいい加減ハウリング直せよ」


長門「提督が知らないことを部下の私が知っていると思うのか?」キキーン


天龍「…理屈と膏薬は何処にでもくっ付く、よく言ったもんだなおい…」ボソッ


暁「あ゛つ゛い゛」チュー



―――


海沿い付近。


夕張「もうジョギングじゃなくて散歩になってるし…」トボトボ


長門「見ろ! あの海の向こうの入道雲を! でかい!」キーンッ!!


暁「おっきい」コナミカン


天龍「デケェな」ナゲヤリ


金剛「……」


夕張「…あれ、金剛さん。どこ見てるんですか?」


金剛「…」アレ



蝉「ジジジ…」


夕張「…蝉?」


金剛「ただ鳴いているだけに見えて、必死に愛を訴えているんデス」


金剛「残された刻を、ただ愛のためだけに」

金剛「限り或る刻を、ただ愛のためだけに。私もそんな生き方をしてみたいものネ」シミジミ


夕張「…そうですか。ロマンチストですねぇ金剛さん」



夕張「あ、ところで知ってます? 蝉って雌雄で体重が違うんですって」


金剛「Uh-huh(へぇ)…」


夕張「そもそも鳴くのは雄だけで、音を出すためにお腹が結構スカスカで」ペラペラ

夕張「そのお腹で、胸の振動板から発せられた音を反響させて鳴き声を出してるんです」ペラペラ

夕張「でも雌はそのスカスカな部位に産卵の為の生殖器官が詰まってて―――」ペラペ


金剛「ストォップッ!!! 生々しい現実は聞きたくないネ!! No moreッ!!!」


夕張「えー、ここからが面白いのに」ブーブー



―――


鎮守府、玄関先。


長門「陸から帰投というのも乙なものだ」


金剛「…良い感じに締めたおつもりデスか」


天龍「うおらー! シャワーだシャワーだ! 退け妖精どもー!」ズダダ


夕張「待てぇ! 一番乗りは渡さないわよ!」ダダダ


<うわッ!? お前いつもと比べて速くね!?

<艤装で鍛えてる私の足腰を舐めるんじゃなぁーいっ!!


暁「二人とも元気なのです」


長門「あの調子ならもっと走っても良かったかも知れんな」ウンウン


暁剛「「勘弁してほしい(のです/デス)」」


長門「なんだ、つれないな」ムゥ



―――


金剛「…ン?」

金剛(あれは…鳳翔? こんな暑いのに何故外に…?)


鳳翔(日傘装備)「――あら、三人とも。おかえりなさい」


暁「ただいまです」


長門「やあ鳳翔、ただいま」


金剛「Hi、鳳翔。暑いのに何してるデス…って―――」



―――


男A「―――でりゃぁあッ!!」バッ


提督「……」スッ


男A「う、おぉッ!?」クルン

男A「んぎゃ!」ビターンッ!!


提督「…次」


男B「ま、まだまだぁッ!」


提督「駄目だ。隙だらけッ!!」オオゴシ


男B「うわっ!?」ドシャアッ!!



金剛「て、提督が喧嘩してるネ!? はやく止めないト!」


長門「おや、珍しいな。あんなに提督が動いてるなんて」


暁「ほんとうだ」


鳳翔「最近は、雨続きでしたからね」



金剛「なんで皆サンそんな落ち着いてるんデス!?」


暁「司令官、お客さんが来るといつもあんな感じだし」


金剛「…guest?」


長門「ああ、金剛は見たことがなかったか」

長門「あの提督に投げられてる者たち、あれ"憲兵"だ」


金剛「…け、憲兵サン!? 提督何か悪いことしたんデスッ!?」


鳳翔「いえ、そうではなくって…」


長門「自分の運動も兼ねて、稽古をつけてるのだとさ。殊勝な心がけだ」ウン



―――


憲兵A&B「「――ご指導、有難うございました。提督殿!」」ケイレイ


提督「ああ、ご苦労だった。これからも軍内の規律を守ってやってくれ、期待してる」ケイレイ


憲兵「光栄であります! では!」タッタッタ…



提督「…」ゴソゴソ

提督「…しまった。葉巻忘れた」


提督「って、おお。お前たち、帰ってきてたのか」


暁「司令官、ただいまっ!」


提督「はは、おかえり暁」ヨシヨシ

提督「む、天龍と夕張の姿が見えないが…。一足先に風呂でも入りに行ったようだな」フム


鳳翔「提督。お疲れ様です」ニコ


提督「ああ、ありがとう。鳳翔」ニコ



金剛「……」ポー


提督「あ、金剛。すまないな、こんなみっともない格好で」ジョウハンシンハダカ


金剛「え? い、イエ! 私はソノ、大丈夫! 大丈夫デス!」ワタワタ


提督「…心なしか顔が赤くなった気が、本当に大丈夫か? もしかしたら熱中症とか…」


金剛「の、のーあぶのーまるこんでぃしょんっ!! さんきゅーふぉあ、ゆあこんさーん!」アババ


提督「ふむ、そうか? 大声が出せるなら大丈夫そうだな」


金剛「シンコキュウ」///


提督「…??」



―――


提督「さて、おれもひとっ風呂浴びてくる。お前たちもとりあえず汗洗い流してくるといい」

提督「鳳翔、今何時だ?」


鳳翔「ええと、…ヒトヒトヨンマル、ですね」


提督「よし、ちょうど良い。みんな風呂からあがったら飯にしよう。天龍と夕張にも言伝頼む」スタスタ


鳳翔「了解しました」


<しれーかん。汗かいたとこが痒いの。

<よしよし、汗疹は掻いちゃいかんぞ。ばい菌入ると酷いから。

<むー、それくらい知ってるもん!

<ア○モアどこ仕舞ったかな…。


<提督ー! 憲兵がアイスくれたぞアイス!

<…返して来い長門。もう食べ始めたのならしょうがない、貰っておけ。

<よし! 今食べた! これで返さなくていいのだな!

<誰がそんな頓智を披露しろと言った!?


―――


金剛「…鳳翔」


鳳翔「はい、なんでしょう?」


金剛「提督が、好きデスか?」


鳳翔「えっ?」

鳳翔「―――なっ、その、えぇっと…っ!」//



鳳翔「…はい、お慕いしていますよ」


金剛「…私、此処に来てそれ程経ちませんケド」

金剛「その気持ち、少し分かる気がするネ」


鳳翔「…?」



―――


提督「…っくしょんっ! ァっくしッ! ぇッくしッ!! あ゛あ…」

提督「…湯冷めしたかな」ケホケホ


長門「お、よかったな提督。"三回"だ」


提督「…二回が悪口なのは知ってるが、三回目があったのか?」ハテ


当鎮守府メモ其ノ伍:よくわかる()人物早見表【弐】


提督

四十代のオッサン。体格はそこそこゴツい。
三十代から人間には身体能力の伸びしろがない、が持論。


鳳翔

後光薄らぐことない聖母。弓道ではなく空母道である。
提督にはあまり無理をして欲しくないと願うこの頃。




誰がなんと言おうともレディー。50m走8秒(人間体換算)。
最近深夜の鎮守府廊下より、自分を見る長門の目の方が怖くなってきた。


長門

ビッグセブン系お姉さん。"武"の強さは言わずもがな。
愛でる対象が暁しかいないので愛が暴走気味。


天龍

脳派コントロールはできない系女子。竹刀は好きじゃない。
剣は両手で振った方が強いらしいけど、そもそも海戦で剣を振ること自体(ry


夕張

みんな大好き便利艦。暑い夏は氷でシャキッと冷やした蕎麦に限る。
運動で汗かくより溶接作業で汗かく方が性に合っていると自覚。


金剛

英国子女。提督LOVEのノルマは達成した模様。多分筋肉に惚れた。
日本の趣や食文化に舌鼓を打つ日々を謳歌中。

脈絡が無ければオチもない。

夏も終わりや…皆様今頃大詰めラストダンス真っ只中でしょうかね
私? 私はほっぽちゃんにカエレされて諦めましたよ、ええ

では



墓参り篇


金剛「テートク」


提督「どうした」


金剛「…一緒に来るの、私でよかったんデス? こんな大事なコト」


提督「大事と言っても、たかが墓参りだぞ? 誰が誰の墓に来ようと勝手だろう」

提督「おれ、盆だってこともお前たちに言われるまですっかり忘れてたし。気づいたら過ぎてたし」


金剛「罰当たりネ…」


提督「がはは、世の中罰当たりな奴の方が長生きするもんだ」



提督「あ、金剛。ちょいと水汲んどいてくれ、線香忘れたからとってくる」


金剛「Water…蛇口は何処ニ?」キョロ


提督「ああ、水ならこの井戸だ。ここをこう持ってだな…」シャコン


井戸「」ジョバァ


金剛「Oh!」


提督「こんな感じにパイプを通して水が出る。まあやってみろ」スタスタ


金剛「ハ、ハイ…」ドキドキ

金剛「…」シャコン


井戸「」ジョバ


金剛「!」

金剛「…」シャコンシャコン


井戸「」ジョババ


金剛「…!」キラキラ


――


提督「いや済まん金剛。線香ポケットに入ってた…」


金剛「」シャコンシャコン


井戸「」ドバー


提督「…」

提督「…ハマったのか」


金剛「…はっ! い、イエ、これはソノ!」ワタワタ


―――


墓「」


金剛「…此処が」


提督「…おれの親父とお袋だ」

提督「死んでも隣同士、仲が良いことで」ハハ


金剛「幸せなご夫婦だったんデスネ」


提督「まあそうだろうな。典型的な鴛鴦(おしどり)夫婦ってやつだったよ」

提督「親父が逝ってすぐお袋も逝った。まるで追いかけるように」バシャ


金剛「……」


提督「おれも一人立ちの歳でな、生活には困らなかった」

提督「親父とお袋も普通のひとだった。当然その下で育ったおれも、普通の人間だ」バシャ


金剛「…普通が一番幸せデース」


提督「…実を言うとおれ、親の墓参りはまだ数回しか来たことがない」


金剛「…エ?」


提督「この墓が何故こんな綺麗かと言えば、親父とお袋の人望が厚かったからだ。今でもちょくちょく誰か来てるんだろう」

提督「…比べて息子のおれは葬儀後、何もせずに"あんた"達の前から姿を消した、生粋の親不孝者だ」



提督「…今になって少しだけ分かってきた。あんた達が、どれだけ強かったのか」

提督「大切なものを護って、ただ生きる。それだけのことが、どれだけ大変な事だったのか」



提督「だから今更あんた達に、おれを見守ってくれなんて無茶なことは言わない」

提督「…ただ、こんな親不孝者のおれについてきてくれる娘達を、見守ってやってほしい」ケイレイ


金剛「提督…」


提督「…あんた達のお叱りなら、死んだ後にゆっくりと受けよう」

提督「もっとも、向こう二十年はまだ死ぬ気もないが」クル


スタスタ



金剛「……」


墓「」


金剛「…提督のお母様、お父様」



金剛「…私、あの人に逢えて良かったデス」

金剛「…あの人は、私を救ってくれマシタ。私にもう一度生きる意味をくれたネ」


墓「」


金剛「See you again。…今度は、あの人が護ってきた人達全員で、また来マス!」ペコリ


タッタッタッ…


墓「」



当鎮守府メモ其ノ陸:よくわかる(ry【参】


金剛

ヴィッカースの申し子。井戸汲み、これ長門にさせちゃ駄目だと思った。


提督

親不孝者。遠出する際は大体バイク。今回の墓参りは外出ついで。


親父&お袋

20年前程に他界。提督曰く普通の人。


―――


提督「さて、ちゃんとヘルメット被ったか?」


金剛「Hai、バッチリデース!」


提督「ははそうか。しっかり掴まってろよ」

提督「あ、そうだ。帰り道中で鯛焼きでも買ってこう、暁たちへの土産だ」


金剛「タイヤキ? 食べ物デスか?」


提督「ああ、食えば分かる。美味い店を知ってるんだこれが」


金剛「Wow! それはそれは楽しみネ!」


提督「わはは、口閉じてないと舌噛むぞー!」ブーンッ


金剛「わ、ちょ、テイトク―――!!」


ブロロロ…


墓「」

墓参り篇おわり
夏登山ネタを書こうと思ってネタ集めに富山まで出張したら思いの外酸素薄くてグロッキーになった、もうやらない

では

墓が喋った!?を待機してたのにー

>>243不覚った。し、死者は口を利かないから(震え声)



―――


???篇


『―――』


「ああ」


『――』


「儂だ。今回も世話になったな」

「君のように若い連中への負担を減らしてやるのが、我々年寄りの務めなのだが」


『――――』


「…くく、煽てても何も出ぬぞ」



「それにしても、やはり君の言う通りかも知れんな」


『―――』


「ああ、艦娘は"人"。繊細で壊れやすい、考え方を変えた方が良さそうだ」

「…とは言え、儂にも限界がある」


『――、―――?』


「そうだ。儂一人が納得しても、"取り巻き"共がそうは行くまいて」

「最近は儂一人の力より、その者共の力の方が強いのでな。いつ寝首を掻かれるか分かったものではない」



『―――』


「…くはは、そう、その通り。歳は重ねたくないものだよ」

「だからこそ、君のように若い、かつ信用足る者達とのパイプが必要だ」


『――』


「何を言う、君はまだ若い。もう二、三十年は働ける。いや、働いてもらわねば」フフ


『…――』

『――――』


「…そうだな、歳の話は終いにしよう。双方共に傷付くだけだ」



「話を戻すが、君達には"連中"を監視しておいてもらいたい」


『――――、―――?』


「そうだ。正確には、"儂の消えた後の此処"を護ってもらいたいのだ」

「儂の視えない所で、連中が何をしているのか、想像に難くない」


『……』


「…なあに、君にこれ以上の苦労をさせるつもりはない」

「老い先短い爺がこれから先、何ができるか分からんが」

「大和魂を小癪な虱共に穢させはせぬ。すべきことは全てやってから死ぬつもりだ」


『―――――、…―――』


「ふむ。…長々と老人の話につき合わせて済まなかった」


『―――、―――』


「ではな、…また何処かで」




「親愛なる"提督"殿」


『――――"――"―』



チンッ



「………」フゥ


「――御疲れ様です」


「…大淀か」


「はい。…先ほどの御電話は?」


「大した事ではないよ。世間話をしていただけさ」


「…例の、"件"ですか?」


「…」ピク


「…やっぱり」


「くく、…大淀よ」


「…はい?」


「おまえはいつ、儂を裏切るかな」


「…っ、何を仰るんです」

「私の"提督"は、後にも先にも貴方様一人だけですよ」


「ふむ、そうか」ククッ

「信じてみよう、其の言葉。…もう、儂はそう何度も誰かを信じることも出来ぬだろうからな」


「…そんな、こと」



「時に大淀。…汚染というものは、ひどく単純かつ厄介な代物だ」カタカタカタ


「……?」


「塩が一粒でも混じった時点で、真水は真水でなくなる様に。人の流れにも同じ事が言えよう」カタカタ


「…かの"腐敗"について、でしょうか?」


「そうだ。腐敗は"個人"だけでなく、周りの存在へも影響を及ぼす。俗に言う"腐った蜜柑の方程式"だ」カタタ

「…腐敗の温床が儂の傘下の将官共にあるとすれば、酷く面倒な事になる」カタタタ

「儂に寄生する"病気"。…それが"奴ら"なのだ」

タンッ


「……だが汚染を取り除く方法も、また単純」

「"汚染された蜜柑の箱"そのものを廃棄してやればよい」


「…まさか、そんな…ッ!?」


「そう」


カチッ


「―――病原体を殺すなら、その宿主を殺した方が手っ取り早いのだ」ニッ



―――

――――

―――――


【○○鎮守府、現在閲覧可能情報】


―――――

――――

―――



 提督:Admiral(提督). ▽

 military rank/career: Colonel/Captin(海軍大佐).
 ――――――――――― ?????? "??????" ?? ??("―"――――)
 ―――――――――――"??????" ????? ???????("―"――)

 ――――【――現在添削中――】――――

 skills:Operational Commander(指揮官).
 ――――????? ???????? ??????(―――――)
――――????????? ???????(―――――)

medical recodes:???????? ?????? ?? ???? ???(―――――)


 鳳翔:Light Aircraft Carrier(軽空母). ▽

 ――――【――現在添削中――】――――

 skills:Secretary "Ship"(秘書"艦").
――――Aircraft Ground(空母道).



 暁:Destroyer(駆逐艦). ▽

 ――――【――現在添削中――】――――

 skills:Thuder Stroker(雷撃使い).
 ――――Marksmanship(射撃術).


 長門:Battle ship(戦艦). ▽

 ――――【――現在添削中――】――――
 
 skills:Hand-To-Hand Combat(白兵戦).
 ――――Bombardment Stroker(砲撃使い).




 夕張:Light Cruiser(軽巡洋艦). ▽

 ――――【――添削終了、現在閲覧承認待ち――】――――

 skills:Engineer(技術者).
 ――――Examination User(試験運用艦).


 天龍:Light Cruiser(軽巡洋艦). ▽

 ――――【――添削終了、現在閲覧承認待ち――】――――

 skills:Swordsmanship(剣術).
 ――――Hand-To-Hand Combat(白兵戦).


 

  本項の閲覧、及び添削は"元帥"または"将官"以上に限るものとする。



【以下の項目をアップロードしようとしています。よろしいですか?】 <Y/N>...[Y]




 金剛:Battle ship(戦艦). △


 金剛型一番艦。

 軍令部直属艦、後に提督指揮下艦へ。

 一時期を境に"力を失い"、前線を退く。およびその頃、○○鎮守府へ転属(注1)となる。

 謎の症状の原因は不明(注2)。しかし現在は回復し、戦闘も行えるように。

 現在は○○提督の指揮の下、深海棲艦との戦争に従事している。


 再発の危険性が0%とは言えない現状では、このまま○○提督の管轄下に置いておくのが得策であろう。


 注1:表向きは転属だが、平たく言えばこれは"左遷"の処分であった。

 注2:深海棲艦は勿論であるが、一方で艦娘も分かっていない事の方が多い。
 ――取り扱いは常に慎重を極めることを留意されたし。


 skills:Bombardment Stroker(砲撃使い).
 ――――Battle Cruiser(巡洋戦艦).


 ---------  99%
  【アップロード終了まで残り弐秒、壱秒、零秒】


 ---------- 100% COMPLETE
  【――アップロード完了。システムオールダウン、本機をシャットダウンします】



ブツン


一章閉幕。

続きは肉付け添削云々でそこそこ時間がかかると思われます、のんびり待ってやってください
(展開上答えられる範囲なら)質問も受け付けるやで~(露骨なレス稼ぎ)

ではでは

お絵かき楽しe

一週間も放置しちゃっているといふ事実。近日再開します


―――

――


金剛「~♪」

金剛(…私が此処に来て数日が経ちマシタ)

金剛(でもActually、私自身の問題も相まって、碌に鎮守府の探検も済んでなかったのデース)


金剛「てな訳で、今日はどこに行きましょうかネー♪ アッどこどこどこ♪」ルンルン

金剛「ン?」


【応接室】


金剛「oh、こんなところにこんなお部屋が。新たな発見デース」


<では失礼致します。鳳翔様、お茶御馳走様でしたー!


金剛「…ン、聞いたこと無い声ネ…?」



扉「」バーンッ!!


<ぴぎゃっ!!?


??「…ん?」キョロ

??「鼠でも跳ね飛ばしたかな」アレ?


??「何やってる、出入り口で止まるんじゃない」


??「あいや、スイマセン提督殿」ミチユズリ


提督「それとドアはもっと静かに開けろ…」



提督「……む?」


金剛「」チーン


提督「!?」



??「おや、誰ですその子」


提督「金剛! どうした、誰にやられたッ!?」ガバッ


金剛「テ、テイトク…か、壁が迫って来…」ガクッ


??「あー…さっき跳ね飛ばしちゃったの、この子だったんですねぇ」ハハ


提督「貴様か」ギリギリ


??「ぐぇげげげやめてくださいぐるじい」エリクビツカマレ


鳳翔「提督? どうなされたのですか…って」

鳳翔「な、何をなさっているんですか!? 気を確かに!」


提督「…」パッ


??「」ドシャァ



提督「…はぁ、金剛。立てるか」


金剛「…うー、おでこがジンジンしマス」


提督「…後で氷でも当てておくといい」

提督「おい、お前もさっさと立たんか。とっとと金剛に謝れ」グイッ


??「…猫みたいな持ち上げ方やめて下さいませんか。ぞんざいな」

??「ええと…金剛様、でしたっけ。…先ほどはご無礼を、申し訳ありません」ペコリ


金剛「え、は、ハイ…」


<ほら用が済んだらさっさと帰れ。仕事の邪魔だ。 ズルズル


<鳳翔様ー! 金剛様ー! お達者でぇー! ヒキズラレ



金剛「……」オデコサスリ


鳳翔「大丈夫ですか、金剛さん?」つ救急箱


金剛「ダイジョウブデース…」

金剛「と言うか、あの人は誰ネ? 見たこと無い人でしタ」


鳳翔「提督のご友人、ですね。偶に此処にみられるんですよ」


金剛「…ナルホド」


―――


長門「なに、提督について聞きたい?」


金剛「ハイ」


長門「また唐突だな」

長門「まあいい。他ならぬ仲間である金剛の頼みだ、付き合ってやろうではないか」


金剛「助かるヨ。提督のこととは言ってモ…此処に偶に来る人のことなんデスが」


長門「偶に此処に来る人…どんな?」


金剛「女性ネ。服装からして軍人の方でシテ」


長門「…ああ、あの人のことか」ポン


金剛「話がquicklyネ」


長門「あの人は…まあ何だ。提督とは昔からの腐れ縁らしい」


金剛「…十分ライバル候補に挙がるという訳ネ」


長門「らいばる?」


金剛「気にしないで欲しいデース」



金剛「ふーむ、Thank you 長門。私はこれで失礼しマス」


長門「おや、もういいのか。まだまだ提督の情報は結構あるぞ?」


金剛「色々もう一度整理してから聞きに来るネ」

金剛「…でも提督の情報なら一応聞いておきたいデース。どんな?」


長門「ふふ、私とて伊達に数年間もあの人の下で戦ってきたわけではないからな」

長門「そうだな…たとえば提督の金庫の解錠方法なんかも知ってるぞ。確か右に1、左に2、また右に1、左に6…」


金剛「へー…ってなんで知ってるんデスそんなこと!?」


長門「ん、これくらいみんな知ってるが?」


金剛「何デスその杜撰なセキュリティー!? あの人そんな調子でよく提督やってこれマシタネ!?」


長門「いやあ、どうせあの人のことだ」

長門「しまってあるのはせいぜい葉巻ぐらいさ。開けても提督しか得せんよ」ハハハ


金剛「…ナルホド」



―――


夕張「へ? 提督の交友関係ですか?」カタカタカタターンッ


金剛「デス」


夕張「むむ…藪から棒ですねぇ」ッターンッ!!

夕張「まあ私に答えられることなら何なりと、艤装談義に付き合ってくれたお礼です」ズズ


金剛「Thank you.ではお聞きシマス」

金剛「提督ってFriendいるんデス?」


夕張「」ゴホッ


金剛「だ、ダイジョウブ?」


夕張「うぇっけほこほッ! 緑茶むせた…」ケホッ

夕張「何ですその質問…笑わせないでくださいよいきなり」ハハ


金剛「私、なにか可笑しなコト言いマシタ…?」ハテ


夕張「いや、その質問だとまるで提督にご友人がいない事を前提にしてるみたいで…」


金剛「むぅ。日本語ってムツカシーネー」


夕張「ですねぇ、ははー」



夕張「おっとと、論点がズレてましたね。いけないいけない」

夕張「友人はいるのかって質問でしたけど、多分いると思いますよあの人」


金剛「どんな?」


夕張「どんなと言えば…普通のですよ? たまーに此処にも来ます、たまーに」

夕張「ああそういや、結構前に"話の合う奴がいない"とか嘆いてました。同年代がいないんでしょうかねぇ」


金剛「…そのFriendの中に、女性は?」


夕張「女性? いえ、見るのは男性の方達で…」

夕張「――待てよ? 確か女性の方も一人いたような…」


金剛「どんなッ!?」グイッ


夕張「うわちょ、なんですいきなり!? 落ち着いてください!」


金剛「イイから吐ク! 情報を吐クのデス!」ブンブン


夕張「ぎゃああ揺らさないで揺らさないで」グワングワン



夕張「えとですね」クラクラ


金剛「ハイ」


夕張「正直なところ、その方は友人と呼べるのかいまいち曖昧な感じの方でして」

夕張「私あまり知らないんです。工廠に引きこもりがちだったせいかお会いする機会もあまりなかったので」クラクラ


金剛「…むぅ、ナルホド」


夕張「…あ、一つだけ思い出したことが」

夕張「前にデータ纏めたり開発履歴纏めたりで完徹きめちゃったときがあったんですけど」


金剛「不摂生ダヨー…」


夕張「失礼しちゃいますね。好きなことに熱中した方が身体の為ですよ」ムスッ

夕張「まあまあ汗も掻いて、シャワーでも浴びようと昼過ぎに人目を忍んでお風呂に向かったんです」


金剛「昼過ぎにネ」


夕張「はい。…繰り返す意味ありましたかね、そこ」


金剛「…寝不足は美容の天敵デース」


夕張「…あーもーっ! この際私の美容とかお肌の調子とかどうでもいいですから!!」ガー


金剛「でも夕張、女のコでしょう?」


夕張「女の子ですよ!? でも私はこれでいいんです!」

夕張「"やりたいことやってる方が可愛い"って、あの人はそう言ってくれたからッ!!」ガッ

夕張「だから私は私の生き方で生きていくっ! 今までも、これからもぉぉおおお!!!」ウオァー


金剛「Hey夕張、落ち着いテ」



――


夕張「向かってる最中にですね、いたんですよその方」


金剛「話したんデス?」


夕張「いえ、廊下の先にいたのを見たんです、此方に気づいてませんでした」

夕張「確か…提督と天ちゃんが一緒にいたかな。何か会話してたっぽいです」


金剛「…天龍が?」


夕張「はい。あと何故か知らないけど、天ちゃん随分その方を睨んでたような気が」

夕張「でも特段険悪なムードって訳でもなし、天ちゃんをいなしてた提督はむしろ平常運転っぽかったんですよね」


金剛「…提督の友人と天龍、何か因縁が…?」


夕張「どうなんでしょう、私が見たのはそこまでです。さっさとお風呂に逃げました」

夕張「長居して存在がばれて、醜態を晒すのは流石に乙女心に傷が付きますし」ウン


金剛(むー、…謎の確執がありそうデース。天龍に意見を仰ぐのはやめときマショウ)



金剛「Thank you 夕張.実に身になる話だったヨ」


夕張「あはは、お役に立てたなら幸いです」



金剛「…あと完徹はやめようネ。いくらなんでも健康に悪いヨー」


夕張「…善処します」


金剛「お肌にも毒デス。何度でも言うからネ?」


夕張「…はい、ごめんなさい」



金剛(さて)

金剛(結局碌に分からないままになっちゃったネー…、もうちょい長門に聞いておくべきデシタ)トボトボ


金剛(まず提督の友人であることは確定デス)

金剛(…問題なのはどこまでの仲なのか。ある程度提督に敬語を使っていたのを見るに……)フーム


<おーい、金剛。


金剛「…ン。って、提督!」


提督「さっきは色々済まなかった。大丈夫か、派手に打ったぽかったが」


金剛「問題ないヨー。鳳翔にヒエピタ貰いマシタ!」


提督「そうか、女の顔は命にも等しいと聞くからな。大事に至らなくてよかった」ナデナデ


金剛「エヘヘ…」///



提督「しかし、アイツには再度釘を刺しておいた方がいいな。…あんなガサツだから結婚できんのだ全く」ブツブツ


金剛「ふぇ、"アイツ"? …そう言えばテートク!」


提督「おぉ、なんだ?」


金剛「あの方は一体? どんなお人なんデス?」

金剛(初めから提督に聞けばよかったヨ)


提督「ああ、"アレ"か。知りたいのか?」


金剛「あ、アレ呼ばわりなんですネ…」


提督「まあお前さんの見た通りの人間だ。適当でガサツ、女のくせして品が無い。特徴は以上だな」


金剛「その…提督とのご関係ハ?」


提督「…まさか金剛。おれとアレが"そういう仲"だとか思ってるわけじゃあるまいな?」ガッ


金剛「エ、あのその…ちょっとダケ…」


提督「勘弁してくれ」セツジツ


金剛「エッ」


提督「おれ自身、人様を選り好みできるほど偉くはないがアレは駄目だ。と言うか嫌だ、絶対」

提督「あんなのと噂を立てられるぐらいなら提督なんてとっとと辞めて脱軍するぞ、おれは」


金剛「そこまでデスか…」



金剛「Sorry、提督。質問の方向をちょっと変えマス」


提督「ふむ」


金剛「その方の人柄は…まあお察しだとシテ」

金剛「此処に来るというコトは、仕事上何かしらの繋がりがあるんですよネ? あの方軍服着てマシタし」


提督「繋がりと言ってもなぁ…」

提督「アレが昔、おれと一緒に働いてた。それだけ腐れ縁だ」


金剛「提督と一緒に働いてタ…」

金剛「…つまり、私にとって"先輩"って事なのデス?」


提督「…まあそうとも言えるかも知れないな。あ、勘違いするなよ?」

提督「おれも昔から提督をやっていた訳じゃない。アレはあくまで、おれの下積み時代の同僚だから」


金剛「即ち"艦娘"としての先輩では無ク、"仲間"としての先輩にはあたるト?」


提督「That's right.I'm on Your Side」


金剛「Intonation 完璧ネー!」


提督「がはは」



金剛「ちなみに今は何されてる方デ?」


提督「職歴聞くのかお前さんは。中々しっかりしてるな、いい嫁さんになるぞ」

提督「今は…と言うか昔からだな。アレは"正義の味方"をやってる。あんな性格で」


金剛「正義ノ…A knight in shining armor ?」


提督「はは、白馬の王子様ってほど綺麗かどうかは知らないが。You say potato(そうともいうー).」


提督&金剛「HAHAHAHAHAっ!!」イェーイ ハイターッチ!!



天龍「…」


暁「…」


天龍「…なにあれ」


暁「…せかいには暁たちの知らないことも広がっているんだわ」


天龍「世界水準軽く超えてる筈のオレが知らない世界だと…」


長門「一句閃いた。天翔龍、高かり天を、いと知れど。雲に阻まれ、大海を知らず」

長門「」フフ


天龍「なんでドヤッてんだコラ、意味わかんねぇから」


暁「どういう意味?」


長門「つまりはな…ふむ」



長門「あっ、"強くなるには上ばかり睨みつけていても駄目だから、偶には下も見ておこう"ってことさ」テキトウ


天龍「"あっ"ってなんだ。何も考えてなかったろテメェ!」


長門「暁、お前はそんな大人になっちゃ駄目だぞ」


暁「う、うん…?」


長門「強いも弱いも全て飲み込んでこそ、本当の強さが見えるんだ。この長門が言うんだから間違いない」チラッ


天龍「…約一人に対して壮絶な皮肉を叩き込むのはやめろ。ちくしょうめ」チッ

二章開始。新章は新キャラと新伏線と共に。なおキャラをそんな増やす予定は無い模様
次回以降は地の文がちらほらあったりなかったり。なまあたたかいめで(ry

では



――

――――

―――――

――――

――



――


 全く、馬鹿馬鹿しい。

 俺の時間は貴様の為にあるのではない。


『わりーな。…わざわざ来てもらっちゃってよ』


 言葉ではなく行動で示すがいい、愚図が。

 俺は一刻も早く、忌々しい深海棲艦を叩き潰す為の算段を練らねばならんというのに。


 貴様のせいで随分と時間を無駄にしている。用件はなんだ?


『用件? 大したことじゃねぇさ』


 …ッ!? 貴様、なぜ俺に刀を向けている…!?


『オレも時間が無い。テメェと同じだ』

『テメェを殺すのに、悠長に会話する必要なんてねぇんだよ』


 成程。…どうやら貴様は壊れてしまったようだな。


『…そうだ。丸腰の奴を殺したって面白くねぇ』

『テメェには、十分に苦しんで、かつ惨たらしく死んでもらう予定なんだからよ』


 ──処分させてもらうぞ、"欠陥品"めッ!!


『──生きたきゃオレを殺してみろ。テメェ自身の手でなァ!!』




───


 赤い、世界だ。

 太陽だって、ここ迄赤くはない。


 だが、もうどうだっていい。

 どうせ、オレはもう此処には居られなくなるから。


 …―――、"―"。

 オレは綺麗には生きられない。

 誰かを恨まずになんて、そんな生き方、オレには出来なかった。


 ――――。

 …―――、――――…―。


――

――――

―――――

――――

――



 ――気付けば、外は明るかった。


「……」


 霞む目を擦りながら、周りを見渡す。

 寝起きだと相も変わらず遠近感がめちゃくちゃだ、もう慣れたことではあるのだが。


「…はあ」


 またやってしまった。肘を付き、ため息を吐く。

 ここ最近、碌にまともな床に就いていない。いつも椅子の上で夢を見てしまう。

 悪い癖だ。


「……」


 寝ぼけた頭をハッカ飴で覚醒させる。

 また、悪い癖だ。


「…こほッ、う」


 変な感じにむせた。どう考えてもハッカのせいである。

 これまた、悪い癖だ。


 肘へ体重をかけると、その下に挟まっていた書類が机から滑り、バランスを崩す。

 結果、デコを打った。おれの頭蓋骨がかなりの轟音を立てる。


 …癖にならないよう、気をつけよう。


 眠気に痛みを重ねて調和しながら、そんなことをおれは思っていた。



 顔を洗った方が目覚めがいいと気づいたのは、数分後の事だった。

 濡れた顔に当たる、海からの風が心地良い。提督業の役得だ。


「おはようございます」


 聞き慣れた声だった。


「ああ、おはよう。鳳翔」


「はい」


 彼女が微笑むのを見て、自然と此方もどこか、嬉しい気分になる。

 これは、良い癖だ。



―――


 腹を満たし、自分の頭にようやく栄養が行き届く。

 頭もまわる様になってきたので、自分自身へのブリーフィングを行う。


 机に置かれた書類を取り、記憶との認証をする。

 そこそこポンコツな頭だが、とりあえずは覚えていた。


「今日は新しい艦が着任するのだな」


 独り言のように呟いて見せる。

 だが実際は結局ポンコツなので、隣にいた鳳翔に確認をとる為に発した声だった。


「そうでしたね」


 彼女はいつもと変わらぬ笑みを浮かべて、おれの発言へ返答する。

 まだ記憶は衰えていなさそうだ。よかった。



「軽巡洋艦、か」


 書類に記された艦種を、確認するように呟く。


「鳳翔。彼女の到着時刻は分かるか」


「正午過ぎだと、伺っております」


 正午過ぎ。まだまだ時間があった。



――


 深海棲艦の出現から数年ほどが経った。

 各鎮守府(自分も例外じゃない)が躍起になって奮戦したお陰か、深海棲艦の圧力も以前と比べ鎮まった傾向にあった。

 だが人類の脅威である事に変わりはない。

 各鎮守府は戦力の拡大を怠りはしていなかった。


 今回の新しい艦の着任も、その影響によるものである。


――


『──』


『…おれの鎮守府は託児所じゃないが』


『──────』


『…だからおれに、か』


『――――』

『──…』


『…いや、分かった。引き受けよう』


『────』


『気にするな』


―――


「…おれもつくづく物好きだ」


「提督?」


「何でもない」



―――


 新しい艦が着任するということで、出撃は予定に無い。

 太陽が真上に昇り始めた頃、自分は執務室で事務作業に追われていた。


「……」


 外から元気な声が聴こえる。声から多分、長門と暁だろうと適当に推測する。

 暁に構ってやれない時は、大抵長門が面倒を見てくれていた。本人達も楽しそうだし、適材適所だろう。

 …一度だけ、暁から"長門の目が怖い"との相談を受けてからは、おれ自身も積極的に暁の相手をすることにした。


 基本的に自分は放任主義なので、此処の艦娘達は好き勝手に休みを謳歌している。

 "達"とはいえ、片手で数えられる程度しかいないのだが。


「提督」


 執務室の戸が開く音と共に、鳳翔の声がおれの意識を現実へ引き戻す。



「新しい艦娘の方が、到着しました」


「そうか」


 鳳翔は、そこで何故か言葉につまった。


「…どうした?」


「いえ、その…」

「提督に、面会をしたいと」


「…? 面会なら後でも構わない。暁達への挨拶回りの後でも…」


「今すぐに、だそうです」


 ……。


「分かった。通してくれ」


「…了解しました」



―――


 入って来た艦娘は、色々と特殊だった。


 片手に赤い剣をぶら下げ、左眼に眼帯を着けている。

 そこまでは"個性"という言葉の一括りで片付けられるかも知れないが、問題は彼女の"傷"の多さだった。


 まるで一戦闘終えてきたのかと思うほど、身体にいくつもの傷。

 頭に腕、ずさんに巻かれた包帯に滲む血が痛々しい。

 そんな擦り切れた風貌をした彼女は、今すぐに此処で倒れてしまってもおかしくはなかった。


 彼女はドカドカと、執務机の前に近づいてくる。

 その歩みには、その姿とは打って変わって、何の弱々しさも見られない。


  そしてそのまま、おれに刃を突きつけてきた。



 途端に辺りが殺気に満ちる。


 鳳翔は、刃の主へと弓を引き絞っていた。

 おれの手は"静止"の意味合いで、弓を構えた鳳翔へと向けられている。


「──提督」


 落ち着いてはいるが、強意に満ちた鳳翔の声。


「…大丈夫だ」


「…はい」


 おれの声と共に、鳳翔は弓を下ろす。


 目の前にある刃の主は、まだ此方を睨みつけていた。


「──」


 何か、声が聴こえた。


「何だって?」


「テメェが、提督か」


 声色を強めながら、彼女はそんなことを言う。


「そうなるな」


「ビビらなかった事は褒めてやる」


「それは光栄だ」


 問答は、互いの探り合いに近かった。



「一つ教えてやる」

「オレはテメェに従う気はない」


「ほう」


「もう二度と、誰かの指図を受ける気はない」


「崇高な精神だ」

「だが、それは困る」


 彼女が目を細める。


「おれは提督だ。提督である以上、誰かに指示をせねばならん」

「無論、お前さんにもな」


「黙れよ」


 依然として突きつけたままの刃が、ジリジリとおれに近づいて来る。


「"残った片方の目玉"。ここで潰すか?」


 右眼の傍まで、刃が近づいて来た。


「…それでもまだ、全盲って訳じゃあない」

「やってみろ」


「……」


 睨み合いが、続く。



「イイ度胸だ」


 彼女はそこでようやく剣を下ろした。


「そうか、従ってくれるか」


「勘違いするなよ」

「もう一度言うが、オレはテメェに従う気はない」


 彼女は白い紙のようなものを、机に叩きつける。

 そこそこ大きな音が響く。


「――ちゃっちゃと読め。拒否権はねぇぞ」


 此方に背を向け、歩き出す。

 そのまま扉を蹴破って、外へと去っていった。



「提督…」


「…ああ」


 鳳翔の心配の声を受け止めながら、置き土産を手に取る。

 それは封筒だった。"果たし状"と、墨で書かれている。



 そうしていると、扉の方から声が聴こえた。


「おぉい…」


 開きっぱなしになっている扉の横から、恐る恐る顔を覗かせてきた長門の姿。


「随分な音が聞こえたのだが…」


「司令官、だいじょうぶ…?」


 同じように顔を覗かせる暁。


「大丈夫だ」


 そう言い放ち、机の上に置いてあるままだった、軽巡洋艦―――"天龍"の書類に目をやる。

 その書類の文字列には一文だけ、赤線が引っ張られており、強調された項目があった。




  その項目には、"提督殺し"と。酷く目立った文字。


ヘブンリードラゴン過去篇。金剛ちゃんはお休み
スレタイがスレタイなのにどういうことだってばようごご

長ったらしい戦闘描写及びブラ鎮要素をこの篇は含みます。ご留意のほどを
では



―――


「成程。果たし状か」


 長門が墨で書かれたそれを持ちながら、確認するように言う。


「果たし状?」


「ああ。要は、戦いの申し込みだな」


 疑問に首を傾げる暁に、長門は優しく説明する。


「戦い…って」

「本当にだいじょうぶなの、司令官…?」


「…向こうだって何も、軍艦一隻でおれ風情を叩き潰すつもりはないだろう」

「あくまで戦うのは彼女自身」


 長門の手から封筒のそれを取り上げ、もう一度眺めてみる。

 …殴り書きに近い墨の字、その下の角付近。

 よく見なければ分からなかったであろう、赤黒い小さなシミがあった。


「はは、…おれを文字通り剣の錆にするつもりだな」



 暁に軽い調子で返しながら、どうするかを考える。


 何故最近はこうも物騒なのか、もっと穏便に話し合いで解決するわけにはいかないのか。

 そもそもなんで決闘なのか、最近の法律じゃ表沙汰になれば双方共に罰せられるんじゃないか。


 一通りの愚痴紛いの考えを走らせた後、おれは溜息を吐いた。


 これを置いていった当人が何処かへ去ってしまった以上、今更説得するにも相手が居ない。

 開口一番、おれの目を潰す気だった者に、そもそも説得なんて通用するとも思えない。


 結局のところ。

 どの道受けなければ問題は解決しない。

 説得云々などその時にすればいいのだ。


「どうする、受けるのか?」


 気乗りはしなかったが、長門の声に、頷いてみせた。



「鳳翔。工廠へ言伝を頼む」


 無地のメモに走り書きをし、鳳翔に渡す。

 少しだけ顔に影を落とした鳳翔だが、おれの意志を汲み取ってくれたようで、快く了承し、執務室から出て行った。


 …"心配させて済まない"と、後で謝ろうと思った。


「しかし決闘とは。新入りも大胆な事をする」

「死なないでくれ提督。貴方が死んだら、色々と困る」


 長門はおれに対してそんな事を言う。

 真面目なのか冗談なのか、よく分からない顔で言うのはやめて欲しい。



「…縁起でもないことを。まだそんなつもりはない」


 そう吐き捨て、執務室を出ようとするおれの腕が、つい、と引っ張られた。

 見るとそこには、無言で腕の袖を握ってくる暁の手が。


「……」


 …反応に困る目でおれを見るのは勘弁してくれ。

 そんな暁の頭を撫でてやることしか、おれは彼女を安心させてやる方法を知らなかった。



――――

―――


――鎮守府、台所。


 
「…」


 換気扇をフル稼働させ、その下でおれは煙を吐き出す。

 最後の一服にするつもりは毛頭ない。まだまだストックだってたくさん残っているのだ。


「ふーっ…」


 煙を吐き出し、ぼーっと視線を泳がせると。

 視界の隅っこに移りこむ、果たし状。


「……」


 力強い筆の文字が、激情を訴えている。


  …彼女は、何故こんなものを。




(…前途多難、だな。おれも彼女も)


 封筒を持ち上げ、ライターで火を点ける。

 燃え出したそれを、おれは灰皿の上に放った。



 生じた煙は、葉巻の煙と混じって換気扇に吸い込まれていく。



 残った灰は、いつの間にか、冷たくなっていた。



―――


――――


―――



―――

――


――鎮守府付近、某所。



「──来たか」

「褒めてやるよ。逃げずに来たことをな」


 オレがそう言うと、奴は背中に腕をやる。


 取り出したのは、細い金属の棍棒。

 拍子抜けだった。

 前の鎮守府では、真剣で殺り合ったからか。

 しかし結局、あの男は口だけだった。


 今度は、どうなるのだろうか。


「はッ! そんな棒きれでオレと殺り合う気か?」


「そうなるな」


 奴は調子を変えない。


「つくづくオレを舐めてやがる様だが…」

「ふん。このゲームは始まる前に終わっちまったようだぜ」


「お前に良いこと教えてやろう」



「…あ?」


「確かにこれは只の"棒"だ。棒だけあって、お前の剣の様に、敵を切り裂く事も出来やしない」


 くるくると、棍棒を掌で弄ぶ。


「だがこんな只の棒でも、当たりどころが悪ければ」


 棍棒の先端が、地面に転がる石を叩き潰す。


「…それなりに死ぬ」

「用心しろ、お遊びじゃないぞ。──天龍」


 奴が棒を持ち直した瞬間、棍棒の両端が伸びた。

 収納されていた部分が加わり、長さは奴の身長と同じ程までになる。


「──面白ぇッ」

短めですがここまで。

もう秋ですね。少しばかり肌寒くなってきました。

余談ですが>>1の風呂の給湯器のボイラーが壊れました。
さむい



「はぁ…ッ」


 距離をとって様子を見る。

 しかし奴は、追撃をしてくる素振りを見せない。

 何度も棍棒をくるくると回しながら、軽く腰を叩いている。


 …武器を手に馴染ませているのか。


 そしてオレを見たかと思うと、挑発するように手招きをした。


「るァあッ!!」


 剣を握り直し飛び込む。


「だぁあああッ!!!」


 両手で剣を握り絞って、奴に向けて何度も何度も振り下ろす。

 剣が棍棒にぶち当たる度、火花が散った。


 しかし斬撃を凌がれている内に、剣が棍棒に絡め取られてしまう。

 勢いを崩され、剣が虚空を引き裂く。



「ッ」


 奴はその瞬間を見逃さない。

 手首のスナップを利かせて棍棒を回転させ、オレの剣に横から叩き付けた。


「くッ…!」


 剣を手放しはしなかったものの、衝撃に煽られ腕が明後日の方向に弾かれる。歯を食いしばり、腕を引き戻す。

 追撃が来る。そう咄嗟に剣を構え直したが。


 奴はそこで、何故か一歩退いた。



「な…ッ!?」


 奴が何をしているのか分からなかった。

 今の瞬間なら、オレを攻める隙があったはずだ。

 なのにそのチャンスをやすやすと逃して、間合いをとるわけでもなく、攻撃の手を止めたのだ。


 奴は棍棒の先端を引っ込めたり伸ばしたり、己の得物を弄んでから、こう言った。


「ふむ」

「…そう簡単に負けそうでもないな」


「ッ!!」


 ぎり、と自分の歯の軋む音がオレの耳に届く。


 間違いない。

 オレは奴に、ナメられている。


「クソったれ…ッ!」


「しかし中々いい動きをする。その剣、我流か」


「その減らず口を黙らせてやるッ!!」


「いいだろう。付き合ってやる」



───


「はぁッ…はぁッ…!」


 どれぐらい打ち合っただろうか。


「……ッ」


「くく…息が上がってるぜ、提督様よォ!!」


 ほぼ勢いに任せて剣を奴の頭へ突き入れる。


 奴はその攻撃にも反応し、頭を振って回避する。

 しかし完全に避けきれはしなかったのか、剣の刃が奴のこめかみを掠めた。


「む…ッ」


 傷を負った患部から、決して少ないとは言えない血が流れている。

 奴は痛みからか若干目を細め、傷口を空いている手で抑えていた。


「おいおいどうした…ぎゃはははッ! 所詮はその程度だ!」

「オレに限界なんてねぇ、だがテメェは、"人間"は、限界の中で戦うしかねぇんだよ!」


「………」


 奴は無言で血を拭う。

 そして視線を血まみれの手に落としたかと思うと、


「───ふ」



「――はっはっはッッ!!!」


 高らかに大笑いをした。


「…気に入ったぞ天龍。もう一度やってみろ」


「…テメェ」


 どこまでも奴は笑みを崩さない。

 劣勢へ回っているはずの状況、それを理解していないはずがない。

 なのに何故、奴はああも余裕でいられるのか。


 オレには、分からなかった。


「お前はこう言ったな、天龍」

「"オレに限界は無い"と」


「……」



「なら何故、お前の足は震えている?」


「何…!?」


 オレの意識の外で、足は勝手に震えていた。

 何だ、これは。


「自分では気づいていなかったか、これは悪い事をした」

「だが理解しろ。それがお前の限界だ」


「ッ黙れぇ!!」


 金属同士が衝突する。


「オレ達は"兵器"だ…兵器が、疲れるかっ…」

「限界を迎えたりするもんかッ!!」


 剣を棍棒へ押し付ける。双方の得物が互いを削る。

 刃の先の男はオレの咆哮を聞いて、ただ笑う。



「…兵器だって人間だって、使い続ければ消耗する」


「ッ!?」


 鼓膜にかん高い金属音が響く。

 オレの剣は、奴の棍棒の一撃でいとも簡単に弾かれていたのだ。


 がら空きになった襟首が奴に掴まれ、


「そして兵器も人間も同じ」

「…調子を整えなきゃ、壊れるだけだッ!!」


 そのままの勢いでオレは投げ飛ばされていた。



「ゴはぁッ!!?」


 背中から地面に叩きつけられ、肺の中の空気を丸々吐き出してしまう。


 奴はこめかみからぼたぼたと滴る血をもう一度拭い、棍棒を此方へ向けた。


「さあ、立ち上がれ。"始めようじゃあないか"、天龍」


 何も変わらない、その表情。

 オレを小馬鹿にする、その腹立たしい笑み。


「…ッ」

「───クソったれが、調子に、乗るなァッ!!」


 剣を握り締めながら、オレは叫ぶ。


 
 しかし、いつの間にか。

 剣を振るたびにオレの腕は、また、だんだんと、重くなっていった。


休憩。銭湯って素晴らしいものですね

では



「っ!?」


 刃を握り止めている手からは血が流れ出していたが、そんなことも気には留めていないようだ。

 
「――どうした、随分優しい攻撃になったものだッ!!」


 そのまま刃の軌道を強引にずらし、力だけで一撃をねじ伏せてしまった。

 オレは半ば足を引きずって後退する。


(なん…だ?)

(オレの身体はどうなってる…ッ!?)


 いつの間にかオレは剣を杖がわりに、重たい身体を支えていた。


(身体が重たいだと…オレは"何を考えてる"!?)

(そんなことは今までなかったはず──)


 満足に剣すらも振れなくなっている。

 腕へ、足へ、思うように力を込められない。


 原因は痛みか。いやそれだけじゃない、なにか別のことも――。




「何をしてる」


「!?」


 いつの間にか接近してきた奴は、流れるように剣を蹴り飛ばす。

 支えを失ったオレの身体は、重力に従って落ちていった。


「ぐぁあッ!」


「ふむ、おかしいな」


 先程と同じように、オレへ追撃を加えることもなく、奴はのんびりとした口調で言う。

 ぼたぼたと赤黒い液体を左手から流してはいるが、その表情には陰りさえも無い。


「お前は自分に限界がないと言ったはずだが」

「おれの前にいるお前は、どうも疲労困憊な様子だ」


「黙、れ」


 足も腕も、何もかもが痛くて重くて堪らない。

 腕を血が伝う、どうやら傷が開いたらしい。

 妙に粘着質な忌々しい液体の感触に、オレは舌打ちをする。


 残っているのはほぼ気力だけ、転がる剣を掴み、立ち上がる。


 そんなオレを見ていた奴は、目を細めた。


「加えて満身創痍、ときたか」


「……ッ」


「なあ、天龍」


 奴の持つ、棍棒が収縮した。



「もう止めにしないか。これ以上の戦闘は無意味、お互い身体を壊すだけだ」

「傷だらけのお前の姿は、此方としても見ていて楽しいものじゃない。だから──」




「――黙れぇッ!!」



 オレは誰の指図も受けない。

 その心配の裏で、何を考えているのかなんて、想像がつくからだ。





「テメェ等は皆そうだ…っ」


  お前達は誰かの為にモノを考えてなんかない。


「テメェ等"提督"は、皆そうだ…ッ」


  お前達は部下を道具としか思っちゃいない。


「だからオレはテメェを殺す…」


  お前達のその心配は、子供が壊れた玩具に向ける視線と同じだ。


「身体が壊れようが知ったことか…ッ」


  オレのような存在を作らない為にも。


  もう二度と、"あんなこと"を繰り返さない為にも。


「──テメェを、殺してやるッ!!」



「…なるほど」


 掌の皮膚が破れ、結果血を伝わせている左手首を何度かぶらぶらと振って、奴はそう呟いてみせる。


 ふと息を吸い込んだ奴が、両手で棍棒を強く固く握りこむ音。

 それが此方にも聞こえた気がした。


「──なら、おれも相手してやらねばな」


 仕掛けたのは奴だった。

 自分自身も少なからず傷を受け、負傷しているはずなのに。

 オレを射抜くその隻眼からは、そんな様子は微塵も感じられなかった。


 息も吐かせぬままに、オレの懐へと飛び込み。


「――ッ!?」


「せやァッ!!」


 先ほどのオレと同じように、何度も何度も武器を振りかざしてくる。

 遠心力も相まってか、一撃一撃は次第に威力を増していく。

 なんとかそいつを凌ぐべく、まともに衝撃を殺せぬままに連撃へ剣を重ねる。


 しかし、そんな調子では、長くはもたない事はオレにも分かっていた。


 剣がオレの手を離れ、派手な音を立てて地面を転がっていく。


「ち、くしょうッ!」



 途端、天と地がひっくり返った。


「ッ──」


 月明かりの下、剣と同じようにオレは地面を転がった。

 奴がオレを投げ飛ばした。そう気付いたのは、地面に叩きつけられた後だった。


「ぐ…ぅ…ッ」


 身体に痛みが走る。


 原因は、この決闘で付いた傷ではない。

 そもそもおかしな話だが、この決闘でオレに傷は付いていない。



 前の傷が完治しないまま、次の闘いへ身を投じた為。そのせいで身体が悲鳴をあげている。

 それぐらいはオレでも分かった。

 この衝撃で、押さえ込んでいたものが一気に表に出てきたのだ。


 歩み寄る音が、聴こえる。

 死が、近づいてくる。


 腕と足。込められるだけの力を込めて、何とか身体を持ち上げようとする。

 しかし身体は言う事を聴かない。オレの意思とは反して、悲鳴をあげ続けた。


「どうした、立たないのか」


 奴の声が聴こえる。


「もう、剣は握れないか?」


 棍棒でオレの真横の地面を叩く。見るとそこには、吹っ飛んだはずのオレの剣が。



「──く、…はは」


 身体の痛みでそれどころではないのに、自然と笑いがこみ上げた。


 計算ずくだったのだ、オレを投げ飛ばした方向は。

 オレが仕掛けた猛攻も、奴には何ら問題じゃなかった。

 あの場面で冷静に何かを考える事が、奴にはまだ出来ていたのだ。

 
 思えば、奴は、防御ばかりで、攻撃など一度きりしかしていなかった。

 必死になっていたオレ自身が、馬鹿らしく思えてくる。



「どうした、"提督"殺し」

「おれを、殺してみせろ」


 …仰向けで転がるオレの目に、さかさまの男が映っている。




「…殺れよ」

「オレじゃ、テメェを殺せない」


「そうだろうな」


 きっぱりと、奴は言い切った。

 それが当然だと、言わんばかりに。


「…傲慢な野郎だ」


「ちょっと違う」


 オレの横に落ちている、剣を拾い上げて奴は言う。


「この決闘。おれとお前はフェアじゃなかった」

「お前には此処に来たときから既に、怪我してたろう。それも軽い傷じゃない」

「そしてそれは治ってすらいない。その包帯から滲む血が、何よりの証拠だ」


 先端の引っ込んだ棍棒を背中に戻し、オレの剣を軽く振っている。


「…この剣はそこそこの重量だ。その傷で、よくもこんな物を振り回す事が出来たな」


「何が、言いたい」


 すると、奴は剣の柄を、オレに差し出してきた。



「今回は、引き分けだ」



「まずは傷を治せ。癒えるまで此処で過ごすんだ。従ってもらうぞ、天龍」


 意図が分からなかった。

 オレのような、何を仕出かすかも分からない存在を、わざわざ手元に置いておくだと。


「テメェ、何を言って」


「おれはお前を全然知らない」

「だからお前を知る為に、此処に置く」


 柄をオレに向けたまま、剣を地面に置いた。


「お前の肩書きはどうでもいい」

「過去に何と呼ばれようが、過去に何があろうが、お前はお前だ」


「……」


「おれも肩書きが嫌いでな」

「昔は、色々な肩書きに人生狂わされたもんだ」


 オレに背を向け、自嘲気味に笑う。

 被っていた帽子を放り捨てて、こめかみの血を拭っていた。


「今度は肩書無しだ」


「…」


「おれは"提督"、お前は"提督殺し"…いや」

「"艦娘"」



「もし身体が本調子に戻って、かつまだその気が残ってるのなら」

「――それ抜きで、おれを殺しに来い」


「……ッ」


 歯を食いしばって、目の前の剣を引っ掴む。


「──お」

「ォぉぉおおおッッ!!!」


 獣のような声が自然と口から漏れる。

 踏み込み、剣を振りかぶる。


 背を向けている"人間"へ刃を落とす。



 キンッ──と、今までとは違う金属音が鳴った。



 奴の棍棒が真ん中から折れ、オレの剣もヒビが入り砕け散る。

 結局、限界を越えようと、剣は届かない。


 だが、まだ終わってない。


「ッ!?」


 首根っこを手で捉え、思い切り奴を叩き伏せる。

 そのまま馬乗りになり、目の前の首に両手を添え、絞める。


「ぐぅ…ッ」


 腕を引き剥がそうと躍起になってはいるが、体勢もあってか中々それは叶わない。


 徐々に抵抗する力が弱くなり、奴の手が地面へ落ちていった。



「……?」


 死んだのか。

 殺せたのか。


 実感が湧かない。

 ついさっきこの男の命を奪ったであろう両手を、交互に眺める。


「……はは」

「は、ハハははははッッ!!!」


 何故か、笑えてきた。

 やっぱり、簡単だった。


 誰かを殺すのは、あの時と同じように、思った以上に簡単だっ



「――やるじゃないか」


「……な」


 どこからか、聞こえるはずのない、声が。

 オレに理解できたのは、首に、誰かの手が添えられたということだけ。


「だが、詰めが甘いな。天龍?」


 添えられた手に力が増し、オレの身体はどんどんと引き剥がされていく。


「か、はっ!? …どう、なって…ッ!?」


「最近、馬鹿みたいなサスペンスドラマを観て、おれはよく思うわけだ」

「…殺す人間も、死ぬ人間も、余計な事を考え過ぎだと」



「殺す時に無駄な御託を述べる暇があるなら、その間に誰かを殺す為の努力をすればいい」

「さっきのお前のように、ただ必死に喰らいついて、首を絞めたりな」


「はッ…」


「殺す側が考えるべき事は、相手を何としてでも殺すこと。それだけだ」

「敵の弱点を突き、抉り、"生"という土俵から叩き落とす。ただそれだけなのだ」


 引き剥がした勢いでオレを突き飛ばし、死んだはずの死体が起き上がる。


「…ッげほ、ゴほッ!!」


「お前の執念は見事。だが安心するのは、完全に死んだ事を確認してからだ」

「生憎と、お前の斃した"提督様"ほど、おれはヤワじゃない」


「なんで…生きてやが、るんだ…ッ!?」


「ふむ、お陰様で意識朦朧だ。目の前がジャギーっててしょうがない」


 飄々と言葉を並べるその姿のせいで、本当に奴がその状態に陥っているとは到底思えない。

 奴はごきごきと首を鳴らし、その後に小さな咳払いをしてから、大きく息を吸った。



「そもそも天龍。逆になんでおれを殺したと思った」


「何だ、と…ッ」


「息を止めて死んだふりをしているとは、考えもしなかったか?」


 死んだ、ふり。

 首を絞められ、気が動転するであろうあの状況で。

 そんな馬鹿馬鹿しい芸当を、こいつはやってみせたのか。


「尤も、お前が本調子だったならこんな芝居は通用しなかっただろうが」


 そしてオレは、その芝居にまんまと引っかかったと。

 どこまでもナメられている。

 そんなオレ自身に、また馬鹿馬鹿しくて腹が立つ。


「…ッ!」


「繰り返すぞ天龍。それがお前の限界だ」



「お前の意識の中じゃ、おれの首を力いっぱいに絞めてたつもりだったろうが」

「実際の所、その手は随分優しかった。…お前今、碌に身体に力入らないんじゃないのか?」


「……っ」


 奴の言葉を聞き流しながら、地面に手をつき、足のつま先を地面に食い込ませ、身体を持ち上げようとする。

 しかし、手は簡単に地面から滑ってしまう。勢いで身体は肩から落ちた。

 指で地面を掴むことすら、出来なくなっているのだ。


「畜、生」


 何とも無様な格好だろうか。


「ちく、しょぉ…ッ!!」


 言うことを聞かない身体への怒りだけが、オレを支配していた。

 オレ自身への不甲斐無さからか、悔しさからか、涙まで溢れてくる。


 そんなオレを見て、奴は何を思っているのだろうか。

 想像に難くはなかったが、考えることさえ億劫だった。



 奥歯を割ってしまいそうなほど、強く歯を食いしばり。

 残った力を全て足へと集中させ。


 それでもオレは、強引に立ち上がる。


 武器も何も持っちゃいない。力の無い宙ぶらりんな両腕。

 どれだけ無様に見えようが、もうどうでもよかった。


 奴が少しだけ、驚きに目を見開いたような気がした。



 …全身をつんざく痛みで、目が霞む。

 揺れる身体を、もう止める気力も残っていない。


 だと言うのに、オレの身体は、一向に地面へ着くことはなかった。


(……?)


 精も根も尽き果てて、ただあとは倒れるだけのオレの身体が。



 ―――誰かに支えられて、落ちる寸前で止まっていた。




「…お前はよく、頑張った」 

「今はそのまま―――――」


 …今は、とにかく、瞼が重い。

 そのまま、目の前の"人間"へ身体を預ける形に。


 奴は何かを言っていたが、もうあまり聞こえない。




 結局オレは、奴を、"提督"を、殺せなかった。




ここまで。
見直してみると、無駄に長いうえに、文章の語彙自体がどんどん力尽きてる(真顔)
はやくシリアス終えて日常ネタ投下したいなぁ…どっちにしろ拙い文章なのは変わりませんが

ではでは




―――


――――


―――




────



『…天、龍さん』


 もう、喋るな。


『ごめんなさい、もう…』


 聞こえないのか。

 喋らなくてもいいんだ。


『……どうか』


 ……。


『どうか、司令官さんを、恨まないで』


 喋るな…。


『…誰も、悪くない』


 喋るな…ッ。


『だから…天龍さんも、誰かを恨まない、で』

『生きて…ほしい、のです』


 …っ。



『……』


 ……。

 おい、"―"?


『……』


 …はは、寝たか。疲れちまったんだな。

 なあ"―"、帰ったら何しようか。


『……』


 …そうだ。なあ、"―"。

 お前に読んでやってた本、アレまだ途中だったな。

 ここんとこ忙しくって読んでやれてなかったっけ。


『……』


 はは、帰ったら読んでやるよ。

 まだお前に読んでやってない本も沢山ある、だから───




────



《――艦"─"、戦没》



────




────


 ……。


『…天龍ちゃん』


 ……龍田。


『…?』


 伝えておけ、全員に。

 オレが何をしても、お前達は関知しないと。

 何がおこっても、お前達には何の罪もないと。


 …全部、オレの独断だと。


『え…?』



『ちょ、ちょっと…天龍ちゃん。何処へ…!?』


 分かってんだろ龍田。


『…っ!』


 オレやお前だけじゃない、みんな分かってる事。

 …誰かがやらなくちゃ、いけなかったんだ。


『でもそれじゃ…っ』


 そうやって、また新しい犠牲を増えるのを、黙って見てるのか。


 オレ達を、使い捨ての道具としか見てない"あの野郎"に。

 肩入れする義理なんて、何処にもねぇだろうが。


『それは…』



 …いや、いいんだ。


 誰だって、傷つくのは嫌だ。

 知って傷つくぐらいなら、もう何も知らなきゃいい。

 アイツもそうだった。


『……』


 知らないままだったから、アイツは、あんな優しい言葉をオレに言えたんだ。

 最後の最後まで、誰かを恨まずに、――恨むことすら出来ずにッ!!


 …都合のいいキレイゴトだけを刷り込まれて、"あの野郎"の汚い部分を何も知らなかったから。


 知らないまま、逝けたんだ。


『……天龍ちゃん』



 ――だが、落とし前はきっちりツケさせてもらう。

 血を洗い流すのは"ヤサシイココロ"だの、なんだのとかいう美辞麗句じゃない。

 誰かの"新しい血"、…それだけだ。


 あの野郎が奪った全部を、アイツの笑顔を、オレ達の希望を、…返してもらう。



 じゃあな、龍田。


『――天龍ちゃんっ!!』


 どこかで、また逢おうぜ。



―――

――




―――


 ……。


 物事には、必ずそこに至るまでの理由が存在する。

 地球が回り、誰かが生きる。それにだって理由がある。


 でもその理由なんて、勿論誰もわかりゃしない。

 ああだこうだと理屈を関連付けることはできても、とりとめのない数のその"理屈"。


 どれが正解かなんて、誰も知らないからだ。





 …事態ってのは、いつも突然で、当事者を置いてけぼりにする。

 原因はなんだのと考えているうちに、全てが手遅れになってしまう。



 だからオレは、"この事態"の原因を考えるつもりはない。

 理屈なんて知ったことか。



 怒りに任せて、剣を握れ。


 オレの、…オレ達の復讐の対価が、オレの血と涙だけで済むのなら。





 ―――全て枯れ尽きてでも、ここで終わらせろ。




ここまで。いい加減更新しなくちゃね

ではまた



───



『やめろ…やめてくれ…ッ』


 ……。


『頼む。てんりゅ──』

『うぎゃあああっっ!!!?』


 お前は今までそうやって助けを求めた、"―"の言葉を何度無視してきた。

 答えてみろよ。


『ぎ、うぁが…ッ』

『わるっ、悪かった…俺が悪かっ…』


 答えになってねぇ。やり直せ。

 きちんと答えろ。


 お前が頭打ち付けて、頭蓋骨割れて脳漿ぶちまけようがどうでもいい。

 答えろって言ってんだよ。


『い、イヤだ…死にたくない! しにたく…ッ』


 …ぎゃはは、そうだよ。

 アイツも死にたくなんてなかった。



 …もっともっと、生きたかったんだ。


『やめ──』




―――

―― 



 赤い、世界だ。

 太陽だって、ここ迄赤くはない。


 だが、もうどうだっていい。

 どうせ、オレはもう此処には居られなくなるから。


 …悪ぃな、"―"。

 オレは綺麗には生きられない。

 誰かを恨まずになんて、そんな生き方、オレには出来なかった。


 ゴメンな。

 …本当に、ごめんな…っ。





―――



 ぱちぱちぱち、と。

 拍手のような、こんな状況では気味の悪いとしか言いようのない音が、オレの思考を引き戻した。



『いやいやいや、お疲れ様です』


『!?』


 声と音の方向へ剣を構え直すが、体中が軋み、がくんと片膝が落ちる。


『おっと、動いちゃいけません』


『……?』


 目の前に居たのは、緑がかったカーキ色の軍服を着た女。


『と言っても、その身体じゃ動くのも辛いはず。そのまま静止しておいた方がお身体の為かと』

『抵抗が無駄なことぐらい、貴女様だって分かってらっしゃるでしょうし?』


 そんな事を言う女の後ろには、同じような軍服を着込んだ軍人が二名ほど。


 …ああ。そうか。



『…テメェ等が、"憲兵"って奴なのか』


『その通りであります、"天龍様"』


 ごほんごほんと、わざとらしく咳払いをし、女はにっこりと笑った。


『残念だったな。…テメェ等の仕事は、大方オレが終わらせちまったぜ』


『くっくっく…それはそれは。本当にお疲れ様でしたな』


 女は帽子を押さえ、けたけたと笑い始める。



 ひとしきり辺りを一瞥した女は、ポケットから紙切れのようなものを取り出す。


『…ふむ、何々?』

『…"本官達は貴官を処分しに来ました。貴官の作戦指揮、その中身には許しがたき所業が――"』


 その紙切れに書かれているのであろう、文字列を淡々と音読する。

 
 …その内容は、どうもオレに対してではなく。血溜まりに転がる"ボロきれ"に対してのようだ。


『ああ、既にボロ雑巾みたいになってるとこ。聞こえてるかはお構いなしなので悪しからず』

『で、処分理由がなんでかって言えば、ちょうど貴官のせいで"貴方の艦娘の身が――』


『…失礼ですが、△△殿』


 後ろにいた一人の憲兵が、ぺらぺらと語る女の口を遮った。


『何だ。事務報告なら後でいいから――』


『死にかけております。"ソレ"』


 憲兵の指差した方角には、オレの潰したものが転がっていた。

 しぶといことに、…まだ生きているらしい。




 女は一瞬、目をぱちくりとさせ、とことこと転がっているモノへ歩いて行く。


『…えー、失敗だなー。本当に地獄にトリップしちゃってるなんてー…』

『って、あ。これはもう駄目だ、多分もう死んでるでしょ。この傷じゃ』


 自分の手袋に血が付くのも厭わず、それをぐいと引っ張り上げてみせる女。


『……ぁ』


 か細い声が、女の持つモノから聞こえてくる。それはもう声というより、獣の唸り声に近かった。


『…た、たすげ…っでぇ』


 ぼろぼろと、涙――と呼べるのかはもはや微妙な液体を、両目から流す。

 流すたびに血と混じり、赤く染まってしまっているからだ。


 もはや生き物、あまつさえ人間とも呼べるかどうか分からない血袋。

 その姿には哀れみを感じるより先に、まず悪寒が走った。


 そんな状態になってまで、まだ生へとすがり付こうとする精神に、まだ助けを求めようとする性根の悪さに。

 自分がまだ、誰かに助けてもらえる存在であると思い込んでいることへのおこがましさに。



 反吐が出そうだった。



『……』


 女は無表情のまま、かつ無造作に、腰に添えつけていたモノをひょいと取り出す。

 がちゃがちゃと金属音を立てる"それ"をしっかり掴むべく、紙切れを放った。


 紙切れは血溜まりに着地し、その白い無地は途端に、真っ赤へと染め上がる。


 闇の中でもぎらりと光る、筒の二本並んだ物体。


 そしてそれを、持ち上げたモノの胴体へ向かって押し付ける。


『…ぇ』


『ああ、いけませんね』



『駄目じゃあないですか―――"死体"が喋っちゃ』



 鼓膜を突き刺す轟音。

 それと同時に唐突な"暴力"が、目の前でくすぶる"命"をいとも容易く吹き飛ばした。




 びたびたぼたぼたと、どす黒い液体が飛沫をあげて散乱する。

 片手でくるくると銃を回して、それを腰のホルスターへ、流れるように収納した。


『――なっ…!?』


 オレから見てもおかしいと言えるその光景。しかしどうやら、おかしいと思っているのはオレだけではなく。


 残りの二人の憲兵はそれぞれ頭を抱えたり、溜息をついたり、女の暴挙に酷く呆れている様子だった。

 しかしその反応はどこか、"慣れきっている"ような、そんな、ろくでもない印象を覚えた。


 オレ達の反応を見て満足したのか、女は何も言わなくなった肉塊をポイ捨てし、踵を返して此方へ戻って来る。


『…、何です。血が抜けた分、軽くなって万々歳でしょう。片づけし易くなったと考えるべきです』


 コトを終わらせた奴の顔には、裂けるような笑みが。自らが奪った命には、なんの感慨も見せていなかった。




『結果として散らかったのは…まあご愛嬌ってことで』

『…ああちくしょう、思いのほか服汚しちった。まあいいか、どうせ捨てるし』


 女は血に汚れた手袋を後方へ投げる。浴びた返り血はその程度で拭えるものではなかったが。


『おい、番号13に連絡。隠滅班と遺体搬送車の手配を』


『…了解』


 憲兵は命令を受領し、無線機を腰から取り出す。

 もう一人の憲兵も動き出し、誰かが散々荒らした現場を片すべく、遺体の方へと歩いていった。


 一方で女は、オレの目の前へ。


『さて、天龍様。長々とお待ち頂き申し訳ありませんでした』


『……!』


『―時―分―秒。罪状は上官への反逆…ってことにしときましょう』

『貴女様を拘束します。一応ね』





―――


『…おい』


『何でしょうかね』


『…オレは、どうなるんだ』


『…さぁ、本官にも分かりかねます』


『……』


『しかし凄まじいもので。まさか上官をその手にかけてしまうとは…』

『…貴女様の上官がもう"駄目"だったのは、此方でも把握していました』


『……』


『そこまで分かっていて動けなかったこと。間に合わなかったこと』

『…我々は貴女様に、貴女様方に謝らねばなりません』


『おい憲兵。…お前たちに今一番お似合いな言葉を教えてやる』

『もうおせぇんだよ、ばーか』


『……くく、それもそうですな』

『ここは潔く開き直っておくことにしますよ。本官が悔やんだって貴女様がどうなる訳でもなし』


『…イイ性格だな。殺してやりてぇぐらいだぜ』


『おお怖い怖い。早めに手錠かけといて正解でした』



『貴方様はある意味で本官達の仕事を減らしてくれましたからな。感謝していますよ』


『…?』


『本官達の仕事内容を簡単に言えば、貴方様の提督をしょっぴく。難しく言えば貴官の上官を拘束して――』

『"処分"、する』


『……』


『貴方様は処分の過程までをスキップしてくれました、動けないのなら抵抗されることもありませんので』

『正直ね。本官達大忙しなもので、あんなのに時間掛けてる暇ないんですわ』

『幾らでも代えの利く人間と、稀少で大切な艦娘様』

『…どう履き違えりゃ、"俺が上だー従えー"なんて馬鹿丸出しなことが言えるのか』


『……』


『よーく考えなくても、どっちが国にとって重要かなど、猿でも分かる話だってね』


『…けっ』


『おっと失礼失礼、完全な愚痴でしたな。…まあ愚痴はあの人で発散するか――』


ピピピ


『…っと、これまた失礼。上層部(うえ)からのラブコールです』

『はい、△△であります――』


――

―――



────


――



 ……。



 目を覚ましたオレが最初に見たのは、知らない天井だった。


「……」


 包帯とガーゼの感触が、身体の至る場所から伝わってくる。

 ねちっこい、そんな嫌な痛みが全身を走る。


 …でも、あの時ほど痛くはない。



「……あ」


 ベッドの脇に、オレの眼帯があった。

 前と違い、糸の解れもない。綺麗に仕立てられていた。


 それを装着してベッドから抜け出して、部屋を後にしようとした時に、オレはふと思い出す。

 
 そういえば、オレの剣はどこへ――


「…ッ」


 …派手にぶっ壊していたことを思い出し、唇を噛む。


 やるせなさからか、ドアノブを捻る手が無駄に力を持っていた。


ここまで。無駄にグロめだけどただの説明パート

ではまた



―――

 

 外は明るい、太陽もかなり昇っている。どうもオレは、随分眠ってしまっていたようだ。

 廊下を歩く。それは初め此処に来た時と、何も変わらない行動だった。


 鎮守府というものは、どこも似通っているらしい。

 まだ数回しか通っていないはずのこの廊下も、何故か歩き慣れている様に思えた。


 …その裏には、忌々しい記憶が殆どだ。楽しい記憶も、少しくらいあったかもしれないが。

 
 大方、塗りつぶされてしまっていた。


「…チッ」




―――



「──お、目が覚めたのだな」


 前方からそんな声が聞こえて、下を向いていたオレは顔を上げる。

 目の前にいたのは、オレと同じ、艦娘であろう女性だった。


「あんたは…」


「ああ、自己紹介がまだだった」

「私の名は長門、戦艦だ。初めましてだな」


 戦艦。


「オレは…天龍、軽巡だ」


「そうか、よろしく頼む天龍」

「…おっと、怪我は大丈夫か? まだ寝ていた方が…」


 心配の眼差しがオレを見る。


「…問題無い」


「む。なら、よかった」


 目の前の艦娘――長門は、にっこりとオレへ微笑む。

 屈託の無い笑み。その表情に隠し事は、何もないように見えた。



「そうだ、提督に会ってくるといい。お前のことを随分と心配していたからな」


 …心配、ね。


「…そうさせてもらうぜ」


「執務室への道はわかるか? そうだ、私が案内してやろう」


 妙にお節介を焼かれる。


「は、ガキじゃねぇんだ。…道ぐらい覚えてる」


「いやいや、やはり私が案内に就こう」

「それにお前は怪我人だ、万が一と言うこともありえるし」


「そうかよ」


 …何だってんだ。



―――


「しかし驚いたぞ。昨日夜中に提督が帰ってきたかと思ったら」

「血まみれのお前を血まみれの提督が山賊担ぎしてきたのだからな、皆何事かと目を見張ったものだ」


 …そうか。

 オレはあの後、気絶して。


「…なぁ」


「む?」


 歩きつつ、長門に疑問を投げかける。


「あんたは、奴をどう思ってる」


「奴…とは誰の事だ? 提督の事か?」


「ああ」


「どう思っている…か。はは、考えた事もなかったな」


 軽く笑って長門は答えた。


「ふーむ…"居るのが当たり前"な人、かな。私にとっては」

「信頼に足る、良いひとさ」


「……そうか」



「お前は、辛かったらしいな」


「!」


「ある程度書類を読ませてもらった」

「私は其の事について何も聞く気はない。お前の傷をえぐるつもりはないし」


「……」


「だが、辛い事を乗り越えた。そんなお前は強いやつだ」


「…何処が」

「何処が強いってんだよ、このオレが」


 長門は黙ってオレの言葉を聞いている。


「殺し合いに勝っても、心ではオレは"あの野郎"に負けた」

「戦いなんてモンは仕掛けた時点で、仕掛けた方はもう負けてる」

「それで? 二度に渡って負け越したオレが。どれも戦う前に負けてたオレが。…そんなオレの、どこが強いってんだ?」


「天龍」


 オレの名を呼び、長門が此方を見る。


「強いも弱いも、何もかも、自分で決める必要は何処にもない。もちろん、誰かに決められる必要も」


「――だったらっ!!」


「だから、天龍。言わせてくれ」




「何が正しくて何が間違いなのか、それを決める権利も義務も、理由も責任も、本当の意味では誰も持っていない」

「ましてや、神にだって決められやしないよ。そんなことは」


 その言葉に、オレは閉口するしかなかった。


「天龍。お前は、大切なものを護りたかっただけなのだろう」





「結果がどうであれ。…ただ、それだけを願ったお前の気持ちを」

「一体、何処の誰が否定できるというんだ?」



「……っ」


 長門の足が止まる。


「――さて、着いた」

「それではな、天龍。…また会おう」


 そうとだけ言い残して、長門はオレの隣をすり抜け、来た道を戻って行った。


ここまで。天龍ちゃん篇は次回で一区切り

ではまた




―――



 部屋の中には、一人の男だけ。

 椅子に座り、窓から外を眺めている。


「──ん」


 やがてオレに気が付くと、何かを手に持って立ち上がった。


 持っている物は、オレの折った棍棒の片割れ。

 杖のように体重をかけながら、オレの方へと歩いてくる。


 額と左手には包帯が巻かれ、戦闘の残滓が垣間見えた。もっともそれは、オレも同じ事だが。


「どうだ、身体の調子は」


 そんなことを言いつつ、よろよろと立ち止まる。


「…問題、無い」


「そいつは良かった」


 小気味のいい笑いを浮かべて、今度は机に向かって歩き出す。

 ふらふらと安定しない歩幅で、しきりに腰を抑えていた。


 そして机の上から何かを拾い上げつつ、再度オレの方へと歩いてくる。



 差し出してきたのは鞘に収まった、真新しい剣。


「こいつは…?」


「お前の剣だ。壊れてしまったからな」


「な、なんで」


「なんでってお前」

「お前の剣なんだから、お前の為に決まってるだろう」


 渋々、剣を受け取る。すると奴はまた、よたよたと机の方へと戻っていく。

 奴の後姿を眺めながら、オレは受け取った剣を腰へ佩きつける。


「もし寸法が合わないなら、工廠か整備室にいる"夕張"か妖精を尋ねるといい。力になってくれるはずだ」

「ああそれと…お前の眼帯を仕立てたのは鳳翔。昨日、おれの隣にいたひとだ。後で礼を言っておけ」


 そう言うと軽く息をついて、奴は椅子にもたれる。

 おもむろに箱…のようなものから、タバコ、いや葉巻を取り出す。

 奴は火も点けないままにそれを咥えて、机の引き出しを漁り始めた。



 出来は悪くない。

 鞘から剣を抜き放ち、窓から差し込む日光で刀身を照らしながら、一人思う。


 ぱちん、と心地よい納刀音が響く。いい仕事してる――


「…」


 …オレはこんな時に、何を考えているのか。


「…聞きたいことがある」


「ふむ、好きに聞いてくれ」


「…お前、今の歩き方はなんだ。そんな身体で、オレと殺りあったってのか」


「あー…痛いことを訊くんだな、お前」

「恥ずかしい話だが、これはただの腰痛だ」


「何…?」


「昔、少しばかり体壊してな。それが今でも響いてるんだ」

「運動すると歳のせいか今も痛い。やなもんだな」


「……」


「他の質問は」


「…オレの事を、どこまで知ってる」


「なんだ、おれが言ったこと覚えてないのか。全く知らないと──」


「――そうじゃねぇ!」


「……」


「そういう意味じゃ、ねぇ…!」


「…成程。相分かった」



「――お前は軽巡洋艦、天龍型一番艦の天龍。■■提督の下で建造に成功」

「諸事情で○○提督…つまりおれの下に転属。昨日付で着任となる」

「以上」


 据え置きの台本でも読み上げるかのような、淡々とした声。

 至極簡素な返答。


 端折ったのは、この男なりの配慮なのか。

 …オレには、分からなかった。


「おれから質問いいか?」


 そんなことを思っていると、今度は向こうがそう聞いてくる。


「…オレばかりはフェアじゃない。構わねぇよ」


「はは、そうだな」



「お前、後悔は?」


 後悔。すぐに何のことか察しがついた。

 こいつの立ち位置は、"オレの保護"。…オレの素性が伝わっているのは当然だ。


「…そんなもん、ねぇよ」


「ほう」


「オレは"あの野郎"が許せなかった。だから殺した」

「悔いなんざ、あるもんか」


 オレがそう言っても、奴は態度を変えないままだった。

 そして、此方へ目を向けて、口を開く。



「後悔は先に立たない。その点でお前は、充分な覚悟を持っているようだ」


「…薄汚い覚悟だぜ」


「ふむ、一人ぐらい殺してようやく一人前だ。恥ずべき事でもない」


「――知ったような口を利くな」


 誰かの手を汚して、自分は甘い汁を啜る。

 誰かの全てを奪っておいて、我が物顔で切り捨てる。


 オレはそんな奴を嫌というほど見てきた。


「……」


「お前もそうだろ。表じゃ部下に慕われてるみたいだが、裏ではそんな部下を利用してる」

「部下も部下で、酷使されるだけだ。誰も文句を付けやしない」

「…地獄を視るのは、いつだってオレ達だ」


「天龍」


「さっき会った長門だって、可哀想な奴だぜ。…"信頼に足るひと"だなんて、汚れた幻想に塗り潰されてよ」

「は、何も言えねぇのか? それもそうだろうな、お前にオレ達の心が理解できるわけ――」



「――天龍」


 奴の雰囲気が一変する。

 オレの口は何故か、言葉を紡ぐ事を止めてしまった。



「本当に、そう思っているのか」


「…な、何を」


「"おれが地獄を視てこなかった"と」


 小さな金属音を鳴らして、ライターの火が葉巻を焦がす。


「――本当に、そう思っているのか?」


 明確に。

 どす黒い"何か"が、言葉と一緒に飛び出してくる。


 嫌な汗がオレの顔を伝っていく。


「昔話をしようか、天龍」


 そんなオレを尻目に、語り始める。

 口元には、表現しがたい笑み。その隙間からは、一筋の煙が漂っていた。



「何人も殺してきた戦士がいた」


「殺したその中には、敵だけじゃない」

「味方が倒れても、時には見殺しにすることしか出来なかった」


「理由は簡単。戦士自身を護るためだ」

「戦士は、それはそれは長生きをした」


「──誰かを殺めた分だけ、のうのうとな」


 嘲笑しながら奴は言う。



「人間様は生憎と、汚れなきゃ生きていけない。汚れただけ長生きするいきものだ」

「他者を貶め、他者を殺して、汚れを糧にする」

「そう、醜いいきものだ」


 オレから視線を外し、また窓の外を眺める。


「だから、お前の言ったことは間違っちゃいない」

「汚れた人間なのも重々承知。おれもまた、醜いいきものの一人」

「逆に汚れの無い人間など何処にいるのか、おれが教えて欲しいくらいだ」


「……」


「…だがお前は違う」

「お前は仲間を、艦娘を。護るために戦った」



「何度も言うが、人間というものは醜いいきものだ」

「散々綺麗な文句を並べておいて、いざとなればそれをいつでも撤回する」


「……」


「おれも見てきた」


 言葉に合わせ、奴は杖で執務室の床を小突く。


「…"死ぬことなど怖くはない"、"何々の為死ねるのなら本望だ"」


 かつん、かつん。


「だが、いざとなって死神の鎌が自分の首に添えられてしまった事が分かると」

「"助けてくれ"、"許してくれ"」


 かつん、かつん。


「"死にたくない"。…何とも勝手な言葉ばかり」


 かつん。


「……!」


 …同じ、言葉。


「──悪い冗談だ、そうは思わんか?」


 奴は鼻で笑い、オレに問いかける。


 言葉が出ない。

 奴の目に、全て見透かされてしまっているような気がして、口が開かなかった。



 奴は棍棒をついて立ち上がる。

 金属と木の板がぶつかる音が響く。


 徐々に近付くその音はまるで、オレの死へのカウントダウンの様にも。



 音が、止まる。


 オレはただ、奴の顔を見上げる事しか出来ない。


「おれにお前さん達の心は完璧には分からない。当然だ」

「おれは、お前さん達そのものじゃない。"お前さんの気持ちが分かる"…そんな言葉を吐けば嘘になる」


 さっきとは違い、声色は優しげなものへと変わっている。

 オレの感じたどす黒い"何か"は、もう何処にも見られない。



 その途端に、頭を撫でられた。


「……え」


「だとしても、近づくことぐらいは出来るはずだ」

「少しでもいい。完璧じゃなくてもいい。一歩ずつでも近づければ、それで十分」


 …妙なものだった。

 本当なら、今すぐにでも引き剥がそうとするはずなのに。



 オレは、何故か、心地良さを覚えていた。


「おれがしてやれる事は少ない。…だが」

「お前さん達が助けを求めるなら、求める相手がおれでも構わないなら」



「おれは最期まで、お前さん達の傍に居よう」


 ひょい、と。

 目の前の男はオレに右手を差し出してきた。


 ………。



 …こんな、奴に。



 …こんな奴に、神経を尖らせていたオレ自身が馬鹿らしく思えた。



 思ってもいいのだろうか。

 理解者だと、そう思ってもいいのだろうか。


 オレは、差し出された右手へオレ自身の右手を重ねようとして――


 
 そのまま、軽く手を弾いてやった。


「む」


「…けっ。散々盾突いておいて、"はいそうですね"なんて、呑気に握手出来っかよ」


 払いのけられた手の所在に困っているのか、男は数回手を結んだり開いたり。

 
「はは、確かにそうか。握手はお預けだな」


「…それと」

「まだ、お前のことを完璧に信用した訳じゃねぇ。もしお前が部下をこき下ろす態度を見せやがったなら――」




「「その時は、今度こそ殺してやる」」


 言葉が重なった。それも、同じ言葉。

 本当に、考えていることが筒抜けなのかも知れない。オレは少し不安になった。


「んなっ…!?」


「がははっ! 是非そうしてくれ! おれとしても、お前たちを間違った方向へ導くのは御免だ」

「お前に背中を預けよう、天龍。後ろからなら、おれの善いところも悪いところも、よく見えるだろうしな!」


 またオレの頭に手が乗った。


「ゃッ!? やめろ、このッ!」


 わしゃわしゃと髪を掻き乱されるが、動転したオレは満足に抵抗もできず、なされるがまま。

 オレの悲鳴を尻目に、男はけらけらと笑っている。


 満足したのか、ようやく手が離れた。
 

「それからはお前さん次第だ。おれの背中へ剣を振り下ろすもよし、おれの心臓を一突きにするもよし」

「よりどりみどりだ! はは、何か楽しくなってきた!」


「クソぉッ! 剣か鉛玉どっちがいい!?」


「なに、"仲間"に殺されるなら文句は言わんさ! がっはっはッ!!」


 言ってはみたものが、剣を抜く気も何故か起きない。

 オレは何だかんだで、この男のペースに飲まれていた。





「…"提督"」


「お、初めてそう呼んでくれた」

「なんだ、"天龍"?」






「――もうオレを、失望させてくれんなよ」


「がはは、…ああ。頑張るとも」




―――

――――

―――――


――龍、天龍」



「…ん。なんだよ、提督」


「それはこっちの台詞だ。呼んでるんだから返事ぐらいしてくれ。無視は一番心にくる」


「…そっか、済まねぇ。ちょっと考え事してたんだ」


「考え事? お前さんがか?」


「…いいか提督、露骨な悪口は結構心にくるんだぜ」


「はは、悪かった」



「しかし考え事か。どうした、悩みがあるなら相談に乗るぞ」


「大したことじゃねぇよ」

「夕張の奴からどう逃げてやろうかとか、チビに読んでやる本どうしようかとか、いつものことだ」


「はっはっはっ!」


「な、何だよ…? いきなり馬鹿笑いしやがって」


「いやいや、珍しくお前さんが真剣な顔してると思えば」

「考えてる事が、誰かのことばかりだったときたもんだ」


「……」


「優しいな。おれは、お前さんのそういうところが大好きだ」


「…!」

「…けっ、軽々しく大好きとかほざくな。だから婚期逃すんだよ」


「…今全く関係ないだろうそれ。いいか天龍、露骨な悪口はだな――」


「…く、あははっ!」


「…やれやれ」



「なあ」


「ん」


「あんたの背中、がら空きだぜ」


「今なら簡単に殺せるぞ。どうする?」


「…なんだ、覚えてたのか」


「過去はねちねち振り返らんが、忘れもしない。それがおれのスタンスだ」


「何かと都合のいいアタマのつくりしてんな。昔からそうだけど」


「そうでもしておかないとパンクする、おれぐらいの歳のアタマってのは」


「なんかあんた、呆け早そうだ」


「それは嫌味か、それとも脅しか?」


「心配してやってんだよ。"忠告"だ」

「…あんたにはまだ、―――からな」


「…? 何だって? よく聞こえなかった、もう一回頼む」


「……」

「――あんたには、まだ生きててもらわなきゃいけないからなッ!!」



「…はは、耄碌したら生きてるほうが無駄な気がする。そうなる前に死にたいな、おれ」


「…漫才やってんじゃねえんだから、心配ぐらい素直に受け取ってくれよ」


「…悪かった。おい、そっぽ向くな。許してやってくれ、しがない中年の戯言じゃないか」


「うるせぇ、あんたのことなんてもう知るか。勝手に呆けて放浪癖でも発動しやがれ」

「遠くへ徘徊してても絶対探してやらねぇからな」


「無駄にリアルな喩えやめろ。ちょっと怖くなった、どうしてくれる」


「フフ、怖いか?」


「老いを享受するのがここまで怖いとは…やるな天龍。見直した」


「そいつはいつか、あんたを食い破る。止めることも、逃げることもできねぇぜ。せいぜい怯えるこった」


「おいおい天龍、いい加減に苛めるのはやめてくれないか。怒ってるんなら謝るぞ?」


「…謝罪なんていらねぇし」



「…じゃ、何だ。羊羹か? アイスか?」


「…食いモンで釣る気か、このオレを」


「なんだ、菓子程度じゃ響かんか? なら新しい兵装とかどうだ」


「モノで釣るのをまずやめろ。…最後のは欲しいけど」


「むう、怒った女性にゃ贈り物が効果覿面だとばかり」


「けっ…誰基準のデータだ――いや待て、言うな言うなってば!」


「暁と長門と金剛。アイスとか紅茶葉とか」


「…想像ついてた、くそ」




「……おーい、天龍ー? いつまで怒ってるんだ」


「…いつまでだって怒ってる。あんた次第でな」


「…分かった、お前さんの心配は本当に嬉しかった! おれのことを考えてくれてたんだな! うん、嬉しいな!」


「……」


「…響かないか」


「…許してほしいか?」


「出来たら」


「…ふん。そんな中途半端なレベルじゃ、とても許してなんかやらねぇ」


「……はぁ」

「おれは今、全力でお前さんと仲直りがしたい。うん」


「…本当か?」


「おれの目を見ろ。この一点の曇りもない清清しいまでの黒い瞳を見ろ、これが嘘を吐いている男の目か?」


「んなこと言われたら余計に胡散臭いぜ…。あと男の目なんてそんなに知らねぇよ」



「…」


「…」


「…あんた、ダークブラウンだな。普通の日本人らしい」


「…お前さんは金色だな。綺麗な色をしてる、宝石みたいだ」


「…口説いてんのか?」


「はは、お前さんの好きに解釈すりゃいい」


「…けっ。隻眼同士、傷の舐めあいも悪かねぇわな」


「そう気に病むな。合わせれば二個だ」


「別に気に病んでねぇし…あと右目が二個あったってしょうがないだろうよ」


「大丈夫だ。こうやって向かい合ってりゃ、死角もなくなる」


「…目の前のあんたが邪魔だ。死角だらけだぜ」


「もう少し離れよう。お前さんはそのままだ」


「…おう」



「――よし、これでいい。これで死角はなくなったなー」


「……」


「って、おい天龍。ついて来ちゃ駄目だろう、距離変わらないじゃないか」


「…忘れたのか、提督?」


「ん?」


「あんたあの時、オレに背中預けてくれたろ?」


「……」


「……」


「…おれの、何が見えた?」


「…さぁな。全部じゃねぇだろうけど、色々だ」

「散々あんたを見せてもらった結果、オレはあんたに従うことにしてる」



「…して、そのココロは」


「…捨てる奴がいるなら、拾う奴もいるんだなと思った」


「馬鹿言え。お前さんは捨て犬なんかじゃないぞ、天龍」


「誰が犬だ。せめて狼にしろ」


「狼も狼で苦労してると思うが、いいのか? 棲み処追放されて絶滅したり」


「そういう意味で言ってんじゃ…ッ」

「…いや、待て。あんたと議論してると、話がいつも変な方向にズレる。それわざとやってんのか?」


「おれは素直な意見を述べてるだけだ」


「…」


「…お、素直ついでに思い出したことがある。ちょっといいか?」


「…なんだよ、聞いてやる」






 「握手、してくれないか。天龍」



 「…おう、構わねぇぜ。提督」






         Heavenly Dragon 篇 閉幕

      ―――to be continued "Oneself Maker".





━━━━━━━━━━━━━今後も登場する人


天龍

オレっ娘。当鎮守府において、"五番目"にあたる艦娘。

当時は青く、"疲労"の概念をいまいち分かっていなかった。

>>201のクソ軍令部時代の煽りを受けた被害者。ちょっとした人間不信に。結局のところ、直接的には誰も殺していない。


提督

中年。この頃から己の身体能力に衰えを感じ始めた。

当時、天龍ちゃんをボッコに出来たのは天龍ちゃんが本調子じゃなかったから。

艦娘は人間体でも基本的にクソ強いので、暴走すると一端の軍人一人程度じゃ対処不可。


女憲兵

干物女。ゴムスラグバックショットなんでもござれトンデモソードオフカスタムを携行。

天龍ちゃんの件ではそこそこ負い目を感じてる。当時は職業柄、負い目感じてばっかり。


艦娘達

当時の鎮守府では天龍ちゃんを含めて五人。金剛ちゃんは多分元気にどっかの海の上を滑走してる。

みんな人懐っこいというか便利キャラなので、馴染みやすい職場。ギスギス空気には基本的に無縁。基本的に。

時系列は金剛ちゃん着任の二、三年前。



━━━━━━━━━━━━━今後出番がなさそうな方々


■■提督

"あくまで"殉死、二階級特進。

ブラ鎮に至るまでの経緯は当然あるだろうけど、わざわざここに記述することもない。


龍田

名前と台詞だけ登場。天龍ちゃんの妹。

■■提督の殉死後、何処かの鎮守府へ転属。他の娘も同様。


"―"

天龍ちゃんが護れなかったもの。現在、その"枠"は埋まっている。

"枠"の説明は、後述。

ここまで。特に理由もなく一週間ぐらい止めてしまったイカンイカン
投下してから表記ミスとか誤字に気づいたり。ちくせう

次回からも、やりたい放題に進行します

ではでは

一週間弱ずっと筆が進みませんでした(猛省)
プロットを肉付けするだけがここまで大変とは

近日再開します。

本日の夜辺り再開します。おそらく少なめ

では



――――

───



 ここは、どこだろう。



『――、―って――だ』



 私は、何故ここに。



『――ろいた。まさか本当に』



 ……?



『…大丈夫か? おれが分かるか、ん?』



 …あなたは?



『ああ、済まない。自己紹介をしよう』

『おれは"提督"。…まあ、そう呼ばれてるだけなんだが』



 …提督。



『そうだ、君の名前を教えて欲しい。いつまでも"あなた"と"君"じゃ、示しがつかんだろうしな』



 私の、名前。


 …名前。



 私は―――



―――

――――

―――――



Oneself_maker 篇



執務室。07:45



夕張「おはようございます提督ー」ガチャ


提督「ん。おはよう夕張」

提督「朝から珍しいな、何か用か?」


夕張「いえ、特には。駄目ですか?」


提督「…斬新な返し方だな。まあいいんじゃないか、お前さんのしたいようにしてれば」

提督「誰の邪魔になる訳でもない、ゆっくりしていけ」


夕張「ふふ。そうさせて頂きます」



夕張「そだ提督。なにか手伝うことあります?」


提督「む、いや、特に――」

提督「おっとそうだった。文面をPCに起こさなきゃならん」カタカタ


夕張「なるほど…ちょっとかしてみてください」


提督「あ、大丈夫だぞ? 同じ文面トレースするだけなんて誰にもできるし…」


夕張「まぁまぁ! 私に任せてみちゃってください!」フンスフンス


提督「お、おお。じゃあ任せるが…」


夕張「~っと♪」カタカタカタターンッ


提督「…」


夕張「出来ました!」


提督「早ッ」



提督「…驚いた、おれの五分仕事を一分足らずで終わらせるとは。電子系に強いのは知ってたが…」


夕張「ふっふー! もっと褒めて褒めて!」


提督「…しかしだな。こうも早いんじゃ誤字脱字とか…」マウスロールコロコロ

提督「……」ショルイカクニン



提督「なんてこった。一箇所も無いどころかバックアップまで…」


夕張「」ドヤ


提督「…まあなんだ。助かった、ありがとう」


夕張「いえいえ。お役にたてたなら嬉しいですよ」カタカタ


提督「はは、そうか」

提督「…ところで夕張」


夕張「はい?」カタカタ


提督「作業終わったのになんでまだPC弄ってる?」


夕張「いやね、提督の検索履歴のデータを…」カタカタ


提督「なるほど。…じゃない、そんなデータ仕入れてどうするつもりだ」


夕張「ただの好奇心で…あれー?」

夕張「提督、最近履歴消しました?」


提督「消してない」


夕張「おっかしいわねぇ、淫靡な単語一つくらい出てきてもおかしくないのに…」カタカタ


提督「…おい」



夕張「甘いですね、履歴なんて夕張先生の手に掛かれば復元もお手の物で…」カタカタ

夕張「…あれ、本当にない」カチカチ


提督「…満足か?」


夕張「ぐぬぬ…一体どんな暗号化を…」


提督「…はあ。大体おれがそんなモノ見たとして、ルーターから逆算ぐらいお前さんにゃ可能だろう?」


夕張「ええ勿論」


提督「即答か。何か怖いな」


夕張「だって提督大したこと調べてないんですもん。葉巻とかヒュミドールとかの銘柄のサイトしか見てないし」

夕張「提督は健全すぎ。もっと俗世の汚さに染まったっていいんですから」カタカタ


提督「そうだな。…もう既にお前さんが結構駄目になってる分、おれがもっとしっかりしなきゃいけないんだな」ハァ


夕張(…幼児向けのファッションサイトが出てきた)アレッ

休憩。メロンと中年のお留守番篇開始。他メンバーは仕事やら云々でお休み

名前欄を盛大にミスった。ちくせう
では



―――


執務室。 09:15



夕張「提督。予約確認しておいてくれました?」


提督「ん。しておくも何も」

提督「アレって一度番組設定だけしておけば、あとは毎週自動的に撮り続けてくれるタイプじゃなかったか?」


夕張「あー…確かそうでしたね。いやいや最近の技術は便利になっちゃって、まあ」


提督「妙に年寄り臭いぞ、その言い方」


夕張「失礼しちゃう。私はまだまだ乙女ですよ乙女」

夕張「年寄り云々は、むしろ提督の方なんじゃ? ご友人と話題が合わないってことは」ハハ


提督「おいおい夕張。その発言でおれの心はもう大破着底だ、どうしてくれる」

提督「開発への資材供給、数割がたカットしてやっていいんだぞ?」ニッコリ


夕張「あ、ごめんなさい。それだけはご勘弁を」ドゲザ


提督「…お前さんの土下座も随分安いな。長門の奴も大概だったが」


夕張「決して安くなんてないです。私にとっての開発とはっ!」

夕張「命、そのものなんですからッ!!」


提督「ふーむ、つまりは暁の信頼が長門にとっては命そのものだったということに…」ブツブツ

提督(…高いんだか安いんだかよく分からなくなってきた。もう深く考えないことにしよう)



提督「……」カチカチ


夕張「何してるんです?」


提督「…お前さんに言われてから、本当に予約できてるのかどうか不安になってきた」


夕張「鍵閉めてたっけ理論ですね」


提督「ただいまそれの確認中だ。その理論、今度何処かの学会に持ち込んでみようかな。案外関心を呼ぶかも分からん」

提督「…まあそんな冗談は置いといて、自分の記憶にも碌に確証の持てない中年を精々笑うがいい」カチカチ


夕張「…」


提督「…、できてた」ヨカッタ


夕張「…なんでしょう。ムキになってる提督、中々可愛いと思っちゃいました」


提督「…おれがいつムキになったって言うんだ。何月何日何時何分何秒、地球が何回廻った時!?」


夕張「二億八千三十一回です。現在時刻はそこの時計を参照してください」


提督「…」


夕張「…冗談ですからね?」


提督「…一瞬だけ信じた。一瞬だけ」


夕張「あははっ!」


提督「……はぁ」ヤレヤレ



―――


執務室。10:51



夕張「――っと。ご意見ありがとうございました、提督」メモメモ


提督「なに、役に立ててなによりだ」


夕張「主観視も大切ですけど、客観視も重要なんですよこういうのは」

夕張「にしても、提督と開発談義ってのも久しぶりでしたね」


提督「この前もした気がするが、そうだったか?」


夕張「そうですよ。ここ最近艤装に関してはめっきりで」


提督「ふむむ。そういえば艤装云々はお前さんに一存しすぎてたような気がする」


夕張「それはそれで、信頼してもらえてると解釈してます」


提督「うん、信頼してる。だから艤装談義は終了!」パチパチ


夕張「ナチュラルに逃げるのやめて下さい」ガシ


提督「袖掴むな。暁かお前は」



提督「…ぶっちゃけてもいいか、夕張」


夕張「大体予想はつきますけど、聞きましょう」


提督「おれ実は、艦船の艤装について語れるほど詳しくない。大まかに言うと、必要最低限のことだけしか知らない」


夕張「……」


提督「だからお前さん達に、ああしろこうしろ言わないんじゃなくて、言えないの方が正しかったりする」


夕張「…提督の放任主義はそういう理由が」


提督「放任してても素質があるなら勝手に育つ。おれはその手助けをするに過ぎん」


夕張「ひとつだけ聞きます、提督って提督歴何年で?」


提督「…十年弱かな。曖昧だ」


夕張「…よくボロが出ないままやってこれましたね」


提督「元々おれの所属は海軍じゃない。もうこの時点でとんちんかんな話だな」


夕張「初耳」


提督「今となっちゃ昔の話だが、色々やってたんだおれ」


夕張「でしょうね。内容までは想像つかないですが」


提督「おれの身の上話なんて今更お前さんにしてもしょうがないから端折るが」

提督「誰か相手に指揮するのには慣れてた。お前さんたちは明確に意思疎通ができるし、尚更なんとかなった」


夕張「つまり人の動かし方が分かってたから、艦隊指揮もなんとかなったと?」


提督「おれがその体現だ」フフン


夕張「誇るとこじゃないです、そこ」



提督「一昔前のおれの観点だと、海戦なんて"装甲付けて敵艦船に激突しとけばいい"としか考えてなかった」

提督「無論リスキー、装甲が薄けりゃ爆撃雷撃もしくは自沈で終了。激突してもしなくてもオジャンだな、なんだこれ」ハハ


夕張「そんな無茶苦茶な…三段櫂船の時代とは違うんですよ? 最後自分でも分からなくなってるじゃないですか」

夕張「大体、それが出来ないから主砲副砲担いで撃ち合いするんです。そっちの方が楽でしょうし」


提督「人間も同じ事が言えるな。自身での殴り合いが面倒だったり無理だったりで、敵を倒すために銃や兵器に頼る」


夕張「…殴り合いで片付けちゃう人も稀にいます。推奨される行為だとは思いませんけど」


提督「まあ今じゃ通用せんだろうが、単純に堅すぎる装甲ってのも馬鹿にならないもんだぞ。それが言いたかっただけだ」

提督「鉄板貼り付けたブルドーザーでSMATを蹂躙した~なんて、冗談みたいな事件が海の向こうじゃ起こってるしな」


夕張「キルドーザーですか。銃も手榴弾も効かなくて色々ぶっ壊したとかいう」


提督「がはは、艦船の砲弾なら突き破れただろうな」


夕張「人はそれをオーバーキルと呼びます。提督」

夕張「でも分厚すぎる装甲くっ付けたところで、小回りが利かなくなるだけなんじゃ…」


提督「見合う威力が発揮できれば人間は満足しそうだがな」

提督「移動速度が亀だったとしても、火力と装甲が龍なら多分問題ない」


夕張「……」


提督「…ん。夕張、どうした?」


夕張「――ったわね」


提督「え?」



夕張「亀で、悪かったわねっ!!?」ウルッ


提督「!?」



夕張「どうせ夕張ちゃんはのろまで紙耐久ですよーだ…」


提督「いや夕張、そこまで言ってな――」


夕張「やめて! 中途半端な優しさなんていらないっ!!」

夕張「私だって、私だって…重巡級の火力とか対潜特化とか色々出来ちゃうんだから…っ」グスッ


提督「…確かに昼は潜水艦級、夜は戦艦級叩きのめしたこともあったな」


夕張「元帥さんのとこの大淀さんに仕事盗られたりなんてしてないんだから…っ!」クスン


提督「…あちらさんを悪く言う気は毛頭ないが、雷撃はお前さんの方が上手かったような」


夕張「…慰めてくれてるんですか?」


提督「…この流れだと、おれが泣かせたみたいで気分悪い。お前さんの泣き顔なぞ誰も見たくない」


夕張「…提督ってば優しい。大好き」

夕張「でもそれ、どうせ皆にも同じこと言ってるんでしょう?」ヒクツモード


提督「…はぁ、心配ぐらい素直に受け取らんか。誰かさんの受け売りだ」

提督「おれは基本的に嘘は吐かない。お前さんを心配してるし、慰めようともしてる。これ以上何が必要なのか聞かせてくれ」


夕張「…涙を拭くものですかね」


提督「ハンカチか。あとは何が欲しい?」


夕張「頭でも撫でてあげてください」ゴシッ


提督「わかった」ヨシヨシ




夕張「…と、ここまでが私の演技な訳なんですが。気づいてました?」


提督「ああ」ヒョイ


夕張「へぇ、どの辺で?」


提督「恥じらいもなくお前さんが"大好き"とかほざいた辺り」シュボ


夕張「…本心だからこそ、恥じらいも何もないんですよ」


提督「…」パク


夕張「なんてね。それの真偽は提督に一存します、好きな意味で解釈しちゃってください」スタスタ

夕張「ちょいと整備室に戻ります。失礼しました、提督!」ガチャ


バタン



提督「…ふん」スパー

提督「…真であると願いたいな、おれは」



―――ドア越し―――



夕張「……」

夕張「…何言ってるんだろ、私ってば」カァァ

ここまで。地の文さんは長期休業

ではまた



――


整備兼資料室。11:21



夕張「あれ、提督。わざわざ此処まで、何か用でしたか?」


提督「いや、特に無い。駄目か?」


夕張「…ふっふー。お返しのつもりですか」


提督「はは、そういうことにしておいてくれ」

提督「…にしても、夕張」


夕張「何でしょう」


提督「整備室で重装備を担ぐ癖は、相変わらず直らないんだな」


夕張「これは癖じゃなくて本能ですよ?」フラフラ


提督「だからと言ってこんな狭い部屋で…危ないったらありゃしない」

提督「嫌だからなおれ、毎回蔵書の山からお前さん発掘するの。資料本増える度に難易度上がるし」


夕張「あっはっは! 私という宝石を発掘できるんです。いい事じゃないですか!」


提督「……」


夕張「…そんな目で私を見ないで」


提督「…いや、何か、その、…済まん」


夕張「何で謝るんですか!?」



提督「おれが無意識の内に負担掛けた結果、今のお前さんみたいになっちゃったのかなぁと…」

提督「根詰めさせ過ぎたのなら謝る。金剛の時も言った気がするが、一度作業なんて忘れてゆっくり休んで――」


夕張「邪推! 深刻に考えすぎです! 無理なんてしてませんよ!?」

夕張「私はやりたいことやって満足してます! ええ、実に素晴らしき環境ですとも!」


提督「…本当か? 無理して嘘ついてるとか、おれ嫌だからな?」


夕張「う、嘘だなんて! やだなぁ提督ったらもー!」

夕張「でもどうしてそんな、急に親身に…」


提督「…お前さんが心配だからに決まってるだろう」


夕張「提督…っ!」パァァ



提督「今のくだり、ボケてみたんだが。どうだった?」


夕張「」ガッシャーンッ!! ドサドサ…


提督「うおっ!? …ほらみろ、言わんこっちゃない!」



―――


提督「夕張」


夕張「…はい」コホッ


提督「聞こうと思ってたんだがすっかり忘れてた」

提督「発明の調子はどうだ」


夕張「…捗ってると言って欲しいんですか?」


提督「まあそりゃあな」


夕張「…あら、そう」


提督「…急にドライになってないか?」


夕張「…ご自分の行いを省みて頂けると、幾ばくか湿りますね。私の反応」


提督「でもお前さんだって似たようなことを…」


夕張「…」プイッ


提督「…女心と秋の空か」


夕張「私はその逆パターン状態だなって思ってますよ、提督を見てて」


提督「秋の空は一夜で七変化、男心も女には分からんか」


夕張「提督みたいな男性の心を理解したいなんて微塵も思いませんから、ご心配なく」フーンダッ


提督「さて夕張ガール、喧嘩はやめよう。同じ鎮守府の仲間じゃないか」


夕張「…毎度発掘させる私にうんざりしてるなら、仲間なんてやめたっていいんですよ?」


提督「まあそう言うな。確かに発掘は面倒くさい作業だが」



提督「磨かなくたって、お前さんは綺麗に輝いてる」


夕張「……」

夕張「ばか」



―――


夕張「発明に関しては、残念ながらスランプです」


提督「ほう。珍しいな」


夕張「そうだ、ネタ帳見ます? どれもイメージだけですけど」ヒョイ


提督「…」パラパラ


夕張「ああ、そういえば。かなり前に提督が私に整備頼んだ"アレ"、どこいったのかしら」


提督「アレってどれの話だ?」


夕張「アレですよアレ。金属の棒っきれ。伸縮機構ついてたやつです」


提督「ああ、アレな」


夕張「あの棒、伸びるだけじゃなくて色々変な機構ありましたからね。よく覚えてますよ」

夕張「時間も無かったし、直すの伸縮機構だけでいいってメモに書いてあったので」

夕張「結局ほぼ壊れたまんまにしちゃいましたけど。大丈夫だったんですか?」


提督「大丈夫だったから今のおれが此処にいる」パラ


夕張「折れた後、杖代わりにしてた時期がありましたよね。あれきり見ないなぁ…と」


提督「鎮守府の玄関先辺りに小さい鉄棒があるだろう?」


夕張「え? はい。暁ちゃんの為に提督が作ったとかいう…」

夕張「…まさか」


提督「それになった」


夕張「…さいですか」


提督「鉄棒といや、おれ子供の頃逆上がり出来なかったなぁ」パラパラ


夕張「あれ、提督って運動音痴でしたっけ?」

夕張「いつぞやの天ちゃんと殺りあったのを見るとそうは思えませんが」


提督「ルールの絡むスポーツは嫌いでな」


夕張「…うん。そもそもスポーツできないですね、それ」



提督「それにしても、よく全ページ真っ黒に出来たもんだ。お前のアイディア豊富すぎやしないか」


夕張「夕張先生は日々データを吸収しているので、アイディアだって無尽蔵ね!」フフン


提督「夕張先生」キョシュ


夕張「はい提督君」


提督「文字と図形が敷き詰まり過ぎで、迷路みたくなってて全然読めない。これ先生は読めるのか?」


夕張「読めないわよ」


提督「なんだそれ…」


夕張「つまりはそういうことです」


提督「?」


夕張「面白いモノ造ろうと思ってみたはいいものの、いざとなって碌に事が進まなかったり。方向が分かんなくなっちゃったり」

夕張「その結果、中途半端に失敗して廃棄しちゃったーとか。即断即決も考えもの。提督君もよく覚えておきましょう!」


提督「だが先生。思い立ったら吉日という言葉もあるぞ」


夕張「じゃあ聞きますよ提督君」


提督「ああ先生」


夕張「あなたはふと、葉巻を吸いたいと思いました。そして暁ちゃんの面倒もみたいと思いました」

夕張「あなたは二つのことを同時にこなせるのかしら?」


提督「…ふむ、なるほど。為になったな」ボウヨミ



提督「しかし先生。その理論だと先生はいつも連立で物事を構えるせいで、失敗してるように聞こえるぞ」


夕張「ギクゥ」


提督「図星か先生」


夕張「こ、こうぎしゅーりょーッ!! 授業料は開発資材1ダースでバッチリね!」


提督「おれがバッチリきてないから却下」


夕張「」カンッ



夕張「――ところで提督、知ってます? 発明っていうのは"影"がくっ付いてくるものです」


提督「……」パラ


夕張「"便利"の単語ひとつに、どれだけの失敗を積み重ねる必要があるか」

夕張「でも、やっと獲得した"便利"だけでは飽き足らず。さらなる"便利"を求めていく」

夕張「…その時点で今までの"便利"は、全て失敗作扱いになる。もしくは出来損ない扱いに」


提督「…ふむ」パラ


夕張「私達が今甘んじている"便利"は、そんなあらゆる出来損ないの上に成り立っているんです」

夕張「…かつてその出来損ないを発明したひと達の、努力や涙を知らずに」


提督「…少し違うが、こんな話がある」

提督「人間が人間の生活の幅を広げる為、人間が開発した道具。これはその名の通り、人間の道を示す器具となった」

提督「しかしその道は何も、平和だとか繁栄に限った話じゃあない」パタン



提督「当然、道具には破壊だとか支配、または戦争といった道も存在する」

提督「それらの"便利"を突き詰めた結果、道具は武器に変貌した。…開発者の意志なんて、もうそこに残っちゃいない」


夕張「そのお陰で"死の商人"とまで呼ばれた発明家がいるとかいないとか」


提督「哀しいもんだな」


夕張「あは。私も、その道を構成する哀しき器具の一つですからね」


提督「はは、安心しろ。おれも同じ、上層部(うえ)にこき使われる哀れな器具の一つだ」

提督「まあ何だ。発展しすぎってのも困りものだな」


夕張「ふふ。だと言うのに私達は、どうして発明なんてしてるのかな」

夕張「壊す為に道具を作ってしまえば、壊したかったものはどんどん強くなって」

夕張「護る為に道具を作ってしまえば、護りたかったものはどんどん脆くなって」

夕張「今となってはボタン一つで数百万の命が吹き飛ぶ始末。なんの皮肉でしょうかね」


提督「ごもっともだ、人間様は何がしたいのか分からんな」

提督「…講義はこの辺りで終了のほうがよかったんじゃないのか?」


夕張「あはは、ですね」



夕張「…原点回帰で、人の為になるようなものとか開発してみようかな」

夕張「例えば、その。失礼を承知で。…義眼とか」


提督「…気にするな。失ったものをとやかく言う気は無い」

提督「あと、義眼は別に考えてない。いつまでも黒眼帯で、退役後まで海賊風吹かすのもどうかとは思ってるがな」


夕張「…はい。まあ、この話は忘れてください」

夕張「何か良いアイディアありません?」


提督「…そうだな」

提督「じゃあおれから一つ、注文いいか?」ヘンキャク


夕張「何でしょう」ウケトリ


提督「これ」ヒョイ


夕張「…葉巻?」


提督「これを電子化してほしい」シュボッ


夕張「……」

夕張「あ、電子タバコ作れって?」


提督「そういうことだ」パク



提督「…おれも喫煙歴長い。老後は多少、健康に気を使いたいと思うわけだよ。夕張君」スパー


夕張「…言ったそばから吸ってるんですけど。健康に気を使うなら、今から禁煙してくださいよ」


提督「今はまだ老後じゃない」イイワケ


夕張「……」ハァ

夕張「合点です。リストに加えておきますね」メモ


提督「頼んだ」

提督「時に夕張」


夕張「はい?」


提督「さっきお前、"失敗して廃棄"とか言ってたな」



提督「それ、おれにちゃんと報告したのか?」ニコニコ


夕張「…あっ」



提督「それ、おれ聞かされてないんだが」


夕張「……聞かれませんでしたもの」アセダラダラ


提督「てっきり、おれは資材の大半が艤装整備に消えてるものだと思ってたんだ。だが、さっきのメモ帳見る限り」

提督「…その大半はお前さんの開発に消えてるように思える。何か間違ってるか?」ニッコリ


夕張「あっれれー…? 提督君には夕張先生マル秘メモが解読できなかったはず…?」アワワ


提督「お前さん、用紙の隅っこに日付と使用資材諸々を書き残す癖あるだろう」


夕張「はッ!?」パラパラ

夕張「…み、見ちゃいました?」パタン


提督「それはもう、きっちりと」ニッカニカ



提督「来月から開発資材の供給三割カット」カリカリ


夕張「やめてください殺生な」ガシィ


提督「決定事項だ。手を離せ」


夕張「離しません。その書類を丸めてゴミ箱に捨ててくれるまではぁっ!!」


提督「…夕張、聞こえないのか。おれは、手を離せと言ったんだ」


夕張「離しませんからね! 開発は私の命だって! さっき私言った! 私言ったもん!」


提督「その命は随分とペンギン臭いんだな、夕張先生…ッ!?」

提督「手を離せぇッ!!」


夕張「絶対に離しませんッ!!」



夕張「」グヌヌ

提督「」グヌヌ


夕張「……」

提督「……」


夕張「」ダキツキッ

提督「」ウケトメッ


妖精「ナンデ?」



夕張「…提督」


提督「…なんだ」


夕張「葉巻吸うの此処では控えてって、前から言ってるじゃないですか」

夕張「煙は精密機械の毒なんですから」


提督「あっ、済まん。すっかり忘れてた。許してくれ」


夕張「いやいや、これは許しがたき所業ね。開発資材半ダース提供して貰ってもいいくらい」ウンウン


提督「…調子に乗るんじゃない」

ここまで。投下間隔が段々と伸びてますな(白目)

では



――


執務室。12:11



提督「…」グゥ


夕張「…」グゥ


提督「腹減った」


夕張「減りましたね」


提督「なに食いたい」


夕張「お蕎麦」


提督「…知ってた。夏の中元の残りあったかな、見てくる」スタスタ


夕張「あっ、待ってください」


提督「ん?」ピタ


夕張「今、提督が思ってもみないことで、かつすごく懐かしくなるようなこと言ってみましょうか」


提督「…唐突だな。言ってみろ」


夕張「デシリットル」


提督「………」

提督「おお」



―――


仮設台所。12:25



夕張(戦意高揚)「二分で出来る、夕張先生直伝! めんつゆの作り方! いぇーい!」パフパフ


提督「ああ」


夕張(戦意高揚)「まず醤油とみりんを2:2、もしくは2:1で茶碗に注ぎます! お好みで醤油等の追加OK!」ドダバー


提督「へぇ」


夕張(戦意高揚)「鰹節を一つまみ加えます! これもお好みで増やしてOK!」パッ


提督「ほう」


夕張(戦意高揚)「電子レンジで一分チン! アルコールを飛ばします!」バタンッ チーン!


提督「ふむ」


夕張(戦意高揚)「おろし冷凍ショウガと刻み冷凍ネギ! つゆが熱いうちに散りばめて溶かす! 無論量はお好みで!」パサァッ


提督「成程」


夕張(戦意高揚)「水で二倍三倍に薄めます! この季節だとぬるま湯の方がいいかも!」ジョバー カランカラン


提督「ほお」


夕張(戦意高揚)「以上で出来上がり! 後で感想聞かせてね!」


提督「済まん夕張。言い忘れてたがこれしか無かった」 つ揖保乃糸


夕張(赤疲労)「」ガンッ


提督「あと山葵は?」


夕張「…お好みで。もう全部お好みで…バッチリね」ガクッ


提督「…あとこれ、味薄くない?」


夕張「お好みにしろって言ってるでしょーがッ!!」バシーン


提督「痛ったッ!?」



提督「…ま、まあなんだ。めんつゆって大概万能だから、蕎麦でも素麺でもあまり変わらんさ」

提督「同じ麺類だし取り回しも利く」


夕張「腑に落ちないですよぉ! こちとら蕎麦が食べられるものとばかり…ッ!」

夕張「"あまり変わらない"ですってぇ!? 喉越しも原材料もまるで違うじゃない!」


提督「お前さんの蕎麦好きは知ってるから今更ツッコミ入れる気ないが、偶には素麺でもいいじゃないか」


夕張「何言ってるんですか! 夏中ほとんど中元の素麺ばっかでしたよ! 全然偶じゃないですっ!」

夕張「大体何が悲しくて初冬入ってまで素麺啜らないといけないんですか!? にゅうめんでいいじゃん!」


提督「…めんつゆの味を指摘しただけなのに、何が悲しくておれ叩かれなきゃいけなかったんだろうか」ヒリヒリ

提督「しょうがないだろう。夏の中元って言ったら、思考停止で素麺贈りつけるしか脳の無い連中ばかりなんだから」

提督「かくいうおれもその一人でな。毎年処理に困るんだこれが」ガハハ


夕張「そんなご友人とは縁切って!! 提督もこれから蕎麦を贈る人間になってください!!」ヒッシ


提督「縁切れってお前…。後者ならまあ善処してやる」



―――


仮設台所。12:32



夕張「打ちますか」


提督「何故だろう。お前さんがそう言い出すのが分かっていたような気がする」


夕張「このまま肩透かし食らったまま素麺啜るなんて、蕎麦好きのプライドが許しちゃくれません」


提督「…そんなプライド捨ててしまえ」


夕張「打つ役は提督に」


提督「…はあ、自分でやるという選択肢はないのか」


夕張「ありますけど鍵掛かってて選択できませんね。二周目からちゃんとフラグ踏んで出直してください」


提督「多少手間かけるぐらいならおれは素麺でいいなぁ…」ポツリ


夕張「ほら、手順ぐらいならお手伝いしますから。力仕事はお任せします」


提督「本気の力ならお前さんの方が上だろうに」


夕張「甘いですねー。蕎麦相手に全力傾けてどうするんですか、身が持ちませんよ」ヤレヤレ


提督「蕎麦に対するその優しさを、是非おれにも転用してくれないもんかね」

提督「…お前さんの中じゃ、艤装≧蕎麦>おれか。随分安いモンだ」


夕張「何言ってるんです。提督>その他に決まってるじゃないですか」


提督「…へぇ。お前さんにもお世辞の一つくらいは言えたんだな」プイッ


夕張「口ではそう言っても顔は素直ですね。目を逸らさないでくださいよーぅ」コノコノ


提督「…やるならとっととやるぞ。これ以上話してても腹が減るだけだ」



以下ダイジェスト


Y:えーと蕎麦粉に麦粉、これが打ち粉。

T:…打ち粉って一般家庭に常備されてるものなのか?

Y:細かいこと気にしないで下さい。



T:しまった。蕎麦切り包丁は流石に無いぞ。

Y:ここで天ちゃんのスペアブレードよ! 洗って返せば多分大丈夫! シャキーン

T:…許せ天龍。



―――


仮設台所。13:25



提督「…あとは茹でるだけか。中々重労働だ」ゴキゴキ


夕張「お疲れ様です。やっぱ様になりますね」


提督「見様見真似で蕎麦打つ中年がか? そいつはいい、これからの趣味にしてやる」ブツクサ


夕張「まーまーそう投げやりにならないで。この調子だと年越し蕎麦も提督に手伝ってもらおうかなー!」


提督「年越しか。生憎とおせち作る仕事がある、時間ないな」


夕張「おせち? どの料理です」


提督「栗きんとん」


夕張「え」


提督「栗きんとん。薩摩芋と甘栗煮て磨り潰して味付ける。イコールおれにでも出来る」


夕張「へ、へぇ…」

夕張「え、暇ですよね?」


提督「暇じゃない」


夕張「どゆことなの…」


提督「…年末というと面倒なことが目白押し、と言いたかっただけ。年賀状書いたり掃除したり」



夕張「年賀状かぁ…明石さん辺りに送っておこうかしら」


提督「…そういや前に駐在してたとき妙に気が合ってたな。やっぱりアレか、趣味が合うのか」


夕張「ええそりゃもう! 一分話すだけでメモ用紙が十枚は吹き飛びました」


提督「ふむ。凄まじい比例定数だ」

提督「年賀状ね。自分で言っといてなんだが…また鬱になるな」ハァ


夕張「鬱? なんでまた」


提督「年賀状の写真の、会った事もない親戚の子供が毎年どんどん大きくなっていくのを見てな」

提督「…またおれも歳を取るんだと思ってな」


夕張「…なんとなく分かるようなそうでもないような」


提督「"提督"の間で似たようなのが流行ってた。所属してる駆逐艦の写真を載せてたっけ…」


夕張「なんですかそのどうでもいい対抗心は」


提督「なにか…駆り立てるものがあったんだろう。おれもその一人だ」


夕張「えぇー…」コンワク


提督「オチもあるが聞くか?」


夕張「…乗りかかった船です」


提督「ある時、ある提督が送り相手からこんな指摘をされた」

提督「『お宅の娘さん、容姿が数年前と全然変わっていないのだけど、色々大丈夫ですか?』とな」

提督「ちなみに送り相手はその提督の地元の人間、一般人だ。艦娘の事なんて名前しか聞いたことがないだろう」


夕張「…あー」


提督「…うん、まあ、それだけ。なんで一般人に送ったんだろな、この提督…」ハァ



夕張「あと掃除…やっぱいつかしなきゃよね」


提督「今すぐにしてくれ。お前さんは前科あるし」


夕張「前科じゃないです事故です。あれは悲しい事故なんです」


提督「週一で起こる悲しい事故か。世も末だな」


夕張「しょうがないじゃない! 崩れる山が悪いんですよ!」


提督「その山作ってるのは誰だと思ってる。どう戻ってもお前さんに行き着くぞ」


夕張「う、あ、えと、その…」



夕張「――あっ、そうだ! 倒れる資料本が悪い!」クルシマギレ


提督「…そんなことで責められるとは、印刷局の皆さんも予期していなかったんじゃないかな」



―――



提督「…なんだかんだで遅めの飯になってしまった」


夕張「おいしいです」


提督「そいつはよかったよ」


夕張「それにしても提督。いえこの際提督は"提督"辞めて、将来的には蕎麦屋でも開いてみたらどうですか?」


提督「まさか昼飯一回作ってやった程度で、現在の仕事否定されるとは夢にも思わなかった」

提督「…蕎麦屋だって蕎麦だけ提供してる訳じゃあないだろう。定食ぐらい作れなきゃ話にならんぞ?」マジレス


夕張「えー、それくらい何とかなりそうですよ提督なら」


提督「心なしかお前さんのテンションがトンチンカンに思える。大丈夫か夕張」

提督「あと言わせて貰うぞ、おれは料理がある種下手だ。栄養があるものしか作れん。味や見た目を捨ててるから」


夕張「巷じゃ"男の料理"なんて言って、無骨だとしても再評価されたりしなくもないじゃないですか」


提督「…ストレートに無骨と言い切ってくれるお前さんが、おれは結構好きだよ」

提督「隠し立て無しで言いたい事言ってくれてるんだなって」


夕張「ふふー、ありがとうございます。夕張ちゃんは提督に隠し事はしませんから! 誓ってもいいです」


提督「…、そうだな」ハァ


夕張「隠し事しないついでに言わせて頂きますと、味は普通に美味しいですよ。見た目も普通ですし――」


提督「見た目も普通ねぇ…」

提督「じゃあ何か?」


夕張「え?」


提督「そこの付け合せのやつ、お前さんには何に見える?」


夕張「…野菜炒め、ですよね? 味的に考えても」



提督「それな、焼きうどんのつもりだったんだ」


夕張「えっ」



提督「…」


夕張「えぇと…あの」


提督「…これでもまだ"無骨"の範疇で済まされる事案だと思うか?」


夕張「…あ、味が良いことに変わりはないですし、これくらい誤差ですよ誤差!」


提督「誤差でうどんが消失…妙な時代になったものだな」



夕張「…そもそもうどんって嘘でしょ?」


提督「…バレたか。実は代用に中元余りの素麺を細切れにして――」


夕張「あと炭水化物の付け合せに炭水化物って如何なものでしょう?」


提督「…余ってたんだから仕方ない」


夕張「蕎麦生地も余りましたよ」


提督「長門か金剛辺りに食わせりゃいい。気にせず天ぷら食え」

提督「…と言うかそれは分量間違えたお前さんの責任だろう。おれ関係ない」


夕張「バレましたか」ヘヘ


提督「はは、こいつめ」ギュム


夕張「あ、やめて耳引っ張んないで」ギブギブ



―――


執務室。14:19



夕張「提督。しりとりしましょうよ」


提督「…不意打ちにも程があるぞ。その提案」


夕張「ていとく! しりとりで しょうぶよ!」カクカク


提督「懐かしいなそのネタ。分かる人少ないんじゃないか」


夕張「わたしから いきまーす!」


提督「これ裏読みってOK?」


夕張「ああはい…パネル以前に現実でそれが出来るなら、どうぞ」


提督「急に冷めるのやめろ」



夕張「まずは 「りんご」よ! ご から はじまるのは どれ?」


提督「…どれってどれだ?」


夕張「いいから続けて続けて!」


提督「…分かった。じゃ、ゴリラで」


夕張「らっぱ」


提督「パズル」


夕張「ルビー」


提督「…"イ"か、"ビ"か?」


夕張「構いませんよ、提督の好きなほうで」


提督「でもなぁ…そうだ、麦酒」


夕張「ループ」


提督「プール」


夕張「ルンバ」


提督「バール」


夕張「…ル攻めと来ましたか」


提督「観念したらどうだ」


夕張「誰が観念なんか、まだ始まったばかりですよ」


提督「よし、なら"ル"だ、"ル"」


夕張「ル…ル級っ!」


提督「う…"う"か、海」



―――数分後



提督「――…葉巻」アキテキタ


夕張「きつね蕎麦!」


提督「…バリカン。おれの負けだ。いのちならくれてや――」


夕張「ンジャメナ!」


提督「!?」

提督「…ナーランダー僧院」


夕張「ンガウンデレ!」


提督「…零戦」


夕張「ンゴロンゴロ国立公園…あっ」



提督「おまえのまけだ。いのちはもらうぞ」ガハハ-


夕張「はい。ありがとうございました」ニコニコ


提督「…」ハァー


夕張「お疲れですか」


提督「…アレだな。子供持つと、平日より休日のほうが大変ってのは、本当だったんだな。今日平日だけど」ガク


夕張「あらやだ。夕張ちゃんってば、いつの間に提督の養子に?」ケラケラ


提督「」グデン


夕張「もう、最後までツッコミ頑張ってくださいよ。保護者さんったらー♪」



―――


執務室。14:30



夕張「提督。ガム食べます?」


提督「…なんだまた藪から棒に」


夕張「いいからいいから! はい!」サシダシ


つ板ガムの箱


提督「……??」

提督「…まあ、貰っておこう。口も寂しくなってきたs」ヒョイ

バチーンッ!!



提督「――ぐ、あ゛ぁ゛あ゛あ゛ッッッ!!!?」



夕張「あは、はははっ!! 引っかかりましたね!」


提督「お、お前、このッ」


夕張「ふっふー! 懐かしいでしょう、ガムパッチンです! 作ってみちゃいました!」


提督「…ぐッ、うぅ…」ピクピク


夕張「…あれ、そんなに痛かった? 大丈夫ですか?」


提督「爪に、クリーンヒットだ…くそッ」ポイッ


夕張「あー…」


提督「…」スタスタ


夕張「…提督?」


提督「…」ガラガラ…ピシャ


夕張「え、どうして無言で窓の雨戸閉めてるんですか。ちょっと?」



提督「――ゲンコツか、グリグリか。死ぬ手段は選ばせてやろう、夕張」バキボキ


夕張「思いのほかマジギレ!? ちょ、ちょっとストップです提督!」


提督「なんだ、遺言があるなら聞いてやる。…どうせおれ以外、誰も覚えちゃいないだろうがな」


夕張「ユーモア! ユーモアじゃないですか! ただの子供のお遊びであっt」


提督「…?」ズゴゴゴ


夕張「ひぃっ!?」

夕張「さ、避けられない運命なら…せめて終わった後に――」



夕張「ナデナデをお願いします!」


提督「…」


夕張「…っ!」チラ


提督「両方か。把握した」


夕張「言葉のドッジボォールッ!?」



<痛い! ゲンコツ


<あにゃぁああいッ!!? こめかみへこむっ! へこんじゃうぅうっ!! グリグリ


<んぁっ…そこ、は…ぁっ! ッだめっ、だめ――やっ、ンはっ…ァああっ!! オマケ



―――


海岸沿い。14:55



提督「…」スパー


夕張「…釣りですか」


提督「…ん。いたのか」


夕張「いますよ。誰かのせいで頭痛が酷いです」


提督「お気の毒に」


夕張「ただのイタズラなのに大人気ないです、もう」ムー

夕張「…瀕死の私の頭を、誰かが撫でてくれた気がしなくもないですけど」


提督「イタズラにも限度がある」リールグルグル

提督「…あと、頭撫でられただけで嬌声もな。とうとう頭壊れたのかと」


夕張「性○帯ですから」


提督「年頃の娘が○感帯とか言うんじゃありません」コラ


夕張「私は艦娘基準だとまだ三歳ですよ」


提督「あぁ違う。そういう意味じゃなくてだな…」

提督「…はあ、もういい。あと見え透いた嘘もやめろ。性感○が頭とか難儀すぎて逆に同情するぞ」


夕張「またまたぁ、提督だって男なんだからー!」

夕張「どうです私の演技は。ちょっとは込み上げるものがあったでしょう?」コノコノ


提督「…ワンセット追加を所望か」ゴキ



<え、なにその拳は――痛いッ! ゲンコツ


<んぎッあ゛あ゛あ゛あ゛!!!? グリグリ


<あッ!! んッ…ッは、ぁひっ!! そこ、イっ…イッあぁあんっ! オマケ


提督「…ちょっと待て、お前さんってそんなキャラだったっけ。おれ何処で教育間違えたんだろ」


夕張「はぁ、はぁ…っ、提督ってばテクニシャン…! 好きぃ…っ」


提督「ふーむ、これはもう駄目だな。緊急で明石呼んだ方がいいのかもしれない。後で軍令部に書簡送らないと」ゲンコツ


夕張「痛! なにするんですかっ!?」


提督「おお戻った。ブラウン管のテレビか」ハハ


夕張「提督ってば反応が薄い…」



夕張「…私じゃ、駄目ですか?」


提督「は?」



夕張「私じゃやっぱり、提督には相応しくないのね」ヨヨ


提督「…えぇー、なんだその脈絡の無い小芝居」


夕張「普通だったら、ここまで誘って落ちない男性なんていないはずなのに…」


提督「…え、何だ? またどつかれたいのか?」


夕張「…私に魅力がないのかしら」ブツブツ

夕張「妄想は膨らんでも胸は―――ッ!!」パシッ

夕張「ああ駄目よ夕張! そんなことを言ったら…そんなことを言ったら認めてしまっていることに…っ!!」モゴモゴ


提督「あくまで突き通すか。気に入った、最後まで付き合ってやろう」


夕張「でもでも私にじゃなくて、提督に原因があるとしたら――はっ!」

夕張「まさか…ッ!? 提督ってもしかしたら"イ【検閲済み】ツ"なんじゃ…!?」ワナワナ


提督「…此処おれとお前さん以外誰もいないけど、一応屋外だ。大声で言う言葉なのかな、それ」


夕張「だってぇ! おかしいじゃあないですかっ!!」


提督「お前さんの頭がか? そうだな」


夕張「迫真の演技にキョドりもしないし! まるで私が馬鹿みたいですよっ!」


提督「おおー、よく分かってるなー」


夕張「提督なんて嫌い! 大嫌い! 私との関係は一体なんだったのぉっ!?」ウワーンッ!


提督「戦闘中"仲間にする"コマンドに気づかずに、クリティカルヒットで殴殺する関係じゃないか」

提督「…あとお前さんウソ泣き下手だな」


夕張「あーそうですか! どうせ多くは語らない提督の事だから、裏で娼館の常連だったりするんでしょーね!」


提督「お前さんの中じゃ"寡黙な提督=情欲が強い"か。よかった、おれ特段寡黙じゃないし」


夕張「所詮男性なんて下半身は別のイキモノなんだからぁ! このケダモノぉーっ!!」ウミノバカヤローッ!


提督「全国の健全な男性諸君。連れが馬鹿で申し訳ない。ませた娘が何か言ってるだけだ」


夕張「でもでもーっ! 浮気なんて出来ない純真な提督はーっ!! 娼館じゃなく裏で鳳翔さんとしっぽr」


提督「…彼女の品位を貶めるのだけは許さん」ボキ




―――



夕張「…」タンコブデキタ


提督「…」


夕張「…釣れます?」アタマサスリ


提督「…お前さんに付き合ってたせいで餌食われてた」


夕張「……」


提督「……」


夕張「……」


提督「……」


夕張「」パンッ!!


提督「!?」ビクゥッ


夕張「蚊です」フッ


提督「…夏は終わったのに珍しいな」


夕張「確かに巷は秋ですが、ぶっちゃけもう冬よね」


提督「ふと思ったんだが。お前さん、そんな薄着で大丈夫か?」


夕張「玄関にあった誰かのコートを拝借しようかと思ってたんですけど」

夕張「腕通してみたら丈が全然あってなくって。ならもういっそ、このままでいいかなぁと」


提督「…だがしかし、ぶっちゃけ寒いだろう?」


夕張「寒いですよ。…まあ持ち前の艦娘ボディの強靭さでカバーですね」


提督「お前さんって打たれ強かったっけ」


夕張「…あーはいはい。そういうこと言っちゃいますか」

夕張「提督の血も涙もない一言に、夕張ちゃんの心は傷つきましたよ?」



夕張「兵装と乙女心は結構デリケートなの。扱いはもうちょっと丁寧に―――」


提督「…おれにその方面の期待はしてくれるな」

提督「おれ様みたいな人間には、艦娘の免疫力も乙女心も分からん。ちっぽけな存在だ」


夕張「何言ってるんですか。提督は少なくとも"理解しよう"としてくれた人間ですよ」

夕張「大丈夫ですって! 提督が優しいのは、私、ちゃんと知ってますから」ニコ


提督「…まあ、風邪は引いてくれるなよ」


夕張「引きたくないので、もっとくっ付いてもいいですか?」


提督「それは駄目だが上着なら貸してやる」ホレ


夕張「あら、提督ってば本当に優しい。愛してます」ハオリ


提督「…やっぱり返せ」


夕張「ふふん、返しませんよーだ」

夕張「でもナチュラルにくっ付くの断られたのが腑に落ちなかったり」


提督「落ちろ」


夕張「恋にですか?」


提督「故意に落ちたいか?」 →海


夕張「ごめんなさい」

夕張「…でもこれじゃ、上着無くなった提督が寒くなりますよね―――はっ!!」ヒラメキ



夕張「やっぱりくっ付いちゃうーっ♪ あったかーい!」ガバッ


提督「あー、もう好きにしてくれ…」

ここまで。イベントで遅くなりました(言い訳)

ウチの夕張ちゃんがE1E2のゲージ破壊してくれたうえに、明石さん大淀さん引っ張ってきてくれました。
ついでに朝雲ちゃんと清霜ちゃんも引っ張ってきてくれました。E3? プリン? しらんな

半分諦めて鉛筆噛み潰しかけてたときに、夕張ちゃんが決めてくれました。
嬉しすぎて記念に母港拡張しちまいました。後悔などない。

もうこの娘、一生愛でようと思いました

では

考察してもらえるってなんだかすごく嬉しいですね
(期待に沿えず見限られる危険性を孕んでるけど)

ではまた近日




―――



提督「…」ブル

提督「…しかし、本当に寒くなってきた」


夕張「…あっ、それはアレですか。もっと私の温もりが欲しいという、遠まわしな告白ですかっ!?」パァァ

夕張「あら^~そんなことなら面と向かって言ってくれればいいのにー!」


提督「いつ出したもんかね、炬燵。出来れば冬本場まで出したくないんだがな。面倒くさいし」


夕張「あれー…露骨にスルー…?」


提督「そろそろ中に戻るかな…」ボンヤリ


夕張「え、ええと…そうだ! 夏は暑さで天ちゃんが大騒ぎしてましたね!」


提督「ん、そうだったな。あんな炎天下でよくもまあ」


夕張「冷房設備は事なきを得ましたけど。此処、暖房設備って炬燵以外にありましたっけ?」


提督「百円カイロとそうじゃないカイロがある」


夕張「…ヒーターとかは?」


提督「…不味い。今年は炬燵の争奪戦だ、いや毎年そうだったか。金剛も増えたし、ますます戦火が激しくなる…」

提督「金剛の事だから絶対炬燵に興味深々なはず…ッ! おれは、一体どうすれば…ッ!?」ガクゥ


夕張「深刻のベクトルがずれてます」



夕張「…いい加減、提督の自費で設備整えてみては? 『提督ってケチ臭くね?』ってこないだ天ちゃんも言ってましたよ」


提督「…」


夕張「実際結構溜め込んでるんでしょ? 提督ってば、お金使う趣味何もなさそうですし」


提督「失敬な、おれだって人並みに趣味ぐらいある。葉巻も立派な趣味だ、金だって掛けてる」


夕張「葉巻ねぇ。…そういや夏のとき、連日雨でストック全部湿気っちゃったとか」


提督「…何で知ってるんだ」


夕張「だって提督。ヒュミドール入れてる金庫あけっぱで、嵐の中に消えていきましたから」


提督「そこまで知ってたなら何故閉めなかった…ッ!!?」


夕張「みんな忙しかったんですもん! 天ちゃんと長門さんは出払ってましたし!」

夕張「暁ちゃんは金庫の扱い自体分かってなさそうでしたし、鳳翔さんは何故か金庫見て顔赤くしてるし!」

夕張「かくいう私も、どうしようのない理論を提督に披露してましたから!」


提督「…そういや、そうだった、かなぁ」タジロギ


夕張「大体あの金庫、開け閉めのたびに毎回番号セットしなきゃいけないような、かなり頭悪いやつじゃないですか!」

夕張「古すぎてセット方法分かりませんでしたよ! あんな骨董品使ってた提督の過失ですからね!?」


提督「」カンゼンロンパ



夕張「あと葉巻だとか骨董品も然り、年寄り臭くもあるんですよね。天ちゃん言ってましたよ」


提督「…ちょっと待て。天龍に罪押し付けるついでに、お前さんの本音も入ってるだろう、それ」


夕張「はい」シレッ


提督「設備は…まあ、またあの爺さんにせびろうかな」


夕張「元帥さんを財布扱いとは、提督も随分偉くなったものですね。万年大佐なのに」


提督「階級なんて有って無いようなもんだ。同じ"提督"の間柄じゃあな」

提督「…そうだ、夕張。電探と間違ってファンヒーターとか作ったりとかしない? おれ実はちょっとだけ期待してたり…」


夕張「何馬鹿言っちゃってんの。作りませんよ」


提督「思った以上に辛辣だ」


夕張「それに作って欲しいなら資材の方の御捻りをですね」チラチラ


提督「おおそうか。今のお前さんの手首なら簡単に捻れるが…」


夕張「冗談ですってば」



夕張「…あ、開発ついでで試してみたい試作品が」


提督「屋外で?」


夕張「ええ屋外で。とってくるのでちょっと待っててください」スタスタ


提督「…そうか。おれは此処にいる、急がなくていいぞ」リールグルグル




―――



夕張「お待たせしました!」カチッ


機械<バチバチバチ


提督「…何だその物騒な機械。放電してるぞ」


夕張「ふっふっふ…聞いて驚け!」


提督「もう驚いてる」


夕張「簡単に言えば、倉庫で埃被ってた器械に改造を施して出力を極端に上げたスタンガンです!」バチバチ


提督「…簡単な割には説明がくどいな」


夕張「俗に言うエレクトロフィッシャーの派生形! イチコロね!」


提督「イチコロ…魚だけに限った話じゃなさそうだ」

提督「…確か電気ショック漁法って国の法律じゃ禁止されてなかったか?」


夕張「えーとゴム紐括り付けてっと…」


提督「あ、こいつ聞いてないな…」

提督「いや待て夕張。危ないからせめて、おれが代わりにやろう、貸せ」チョイチョイ


夕張「あっ、ありがとうございます」



提督「行くぞ。さがってろ」ポーイッ


<バチバチバチバチィッ!!!!


魚「」プカァ


夕張「おぉー。効果覿面でしたね!」


提督「…邪道ってレベルを遥かにオーバーしてるな、これ」ハァ

提督「キャッチ&リリースしたくて釣りやってたのに、これじゃキル&デスじゃないか」


夕張「まあまあ、魚も完全にお亡くなりになってるわけじゃありませんし、数分も経てばリリースが成立しますよ」


提督「一度殺してることについては変わりない気もする…」


夕張「貴方達には出力テストの尊い犠牲になってもらったのよ…一時的にね」フッ


提督「お前さんはもっと命の大切さを知るべきだ、夕張先生」ヒキアゲ


夕張「命捨てようとしてた人が言う台詞じゃないですよ、提督君」



機械<プスプス…


夕張「これ、バッテリーがすぐ駄目になっちゃうんですよね。だから使えるのは二、三回きりで」


提督「…そうか」ワリトドウデモイイ


夕張「最高出力だと一回…出力自体にバッテリーが耐え切れないのかも…ふむ。完全の余地アリ」メモ


提督「…」

提督「夕張」


夕張「何でしょう?」


提督「お前さんなんやかんや言ってても、ちゃっかり好きなことやれてるのな」

提督「なんかちょっとだけ安心した」


夕張「…はい」

夕張「そうした方が可愛いって、提督が言いましたから」ニコ


提督「…」


夕張「…」キラキラ



提督「…そうだったっけ?」


夕張「え、忘れちゃってる!? 言ってくれたじゃあないですか、私が此処に来て間もない頃に!!」


提督「……」

提督「…多分、言ってたかもしれん」


夕張「顔逸らさないでくださいよーっ!! もー!」




夕張「―――ん?」


<プカプカ


夕張「…あ、あぁ…っ」

夕張「そんな…っ、そんなまさか…!」


提督「む、どうした」


夕張「提督! あれ、あれっ!」ユビサシ


提督「? なにか珍しい魚でも浮いてきたのか――」



イ級「」プカァ

ヲ級「」プカァ


提督「……」



提督「!?」



夕張「て、てててて提督」ガタガタ


提督「冷静になれ、夕張」タキアセ


夕張「この状況でどう冷静になれってててて」アワワ


ヲ級「」PUKAPUKA


夕張「こ、心なしか、こっち睨んでませんか…?」


提督「落ち着け。多分ただの幻覚だ…」ゴシゴシ


ヲ級「」


提督「…消えない、幻覚じゃないなこれ」


夕張「二人揃って同じ幻覚なんて見るわけないでしょう! 私達一体どうすればいいんですかこれ!?」


提督「慌てるな落ち着け。まずは深呼吸――」スーハー



提督「…よし、まずはタイムマシンを作るんだ夕張」


夕張「そっちが落ち着いてくださいぃ! 提督が折れたら私がどうにかなっちゃいますよ!」


提督「なんだ、タイムマシンは駄目か? ならデロ○アンはどうだ。おれ一度乗ってみたかったんだデ○リアン!」


夕張「用途は一緒でしょうが! 乗りたいなら大阪行って小一時間並んでてください!」


提督「おいおい夕張馬鹿言うな、それじゃ銀行だ」ケラケラ


夕張「何言っちゃってんのこの人!?」


ヲ級「」ジトー


夕張「やっぱこっち見てるぅ! 正気に戻ってよお! 提督ってばぁ!」ブンブン


提督「揺らすな戻った戻った」グワングワン



提督「まあ落ち着け夕張。お前の開発の腕は何のためにある? この状況を打破する道具を作ればいい」


夕張「そ、そっか! タイムマシンは無理ですけど…なんとかやってみます!」

夕張「――って、ああ! 駄目です提督!」


提督「今度は何だ!」


夕張「現状じゃ道具作る道具がありませんっ!!」


提督「」




提督「…ひ、ひとまず陸に引き上げろッ!! 目の前の命を救わずして何が大和魂だ!」


夕張「ちょっと自棄になってませんか!?」


提督「かの某駆逐艦艦長の生き様を思いだせぇええッ!! うらぁああああッッ!!」ザッパーンッ


夕張「提督ぅうううッ!!? 色々混ざってるーっ!!」

休憩。登場人物を増やさない発言は忘れてしまいましょう(意志薄弱)

今頃、全国の鎮守府は秋イベスパート、それとも備蓄に移行してるのかしら
では



―――


ヲ級「……」


夕張「…しかし、深海棲艦。あなた達が何故此処に」

夕張「たかが二匹で戦争でもふっかけにでも来たんですか?」ジロ


ヲ級「…フン。馬鹿ヲ言ウナ」

ヲ級「ワタシ達トテ、人間達ノ哨戒網ヲ甘クミテルワケジャナイ」

ヲ級「一ツダケ言ッテオコウ。ワタシハ戦イニ来タンジャナイ」



提督「……」カチカチ



夕張「信用なりませんね」


ヲ級「勝手ニシロ。アア、ソレト」

ヲ級「ワタシト戦オウナドトハ考エルナ。ワタシノ"ホンタイ"ハ此処ニナイガ」

ヲ級「――ショセン"ケイジュン"クラス。ワタシニ勝テルト思ウナヨ?」ギロ


夕張「あらら、人がクソ真面目に喋ってやってるのに随分な言い草ね?」

夕張「――試してみますか? 軽巡の本気を」キッ



提督「……」パタパタ



ヲ級「ククク、好戦的ダナ? "カンムス"ヨ」


夕張「あは、怨敵目の前にして律儀に挨拶してあげるとでも?」

夕張「そのおめでたい頭には、どんな矮小な脳味噌が詰まってるのかしら」


ヲ級「残念ダッタナ。我々ハ、カンムスノ"祖"ダゾ?」

ヲ級「"カンムス"ニアルモノガ、我々ニ備ワッテイナイワケガナイ」

ヲ級「ダイタイ、ソレハソチラモオナジダロウ?」


夕張「…何ですって」


ヲ級「自分達ダケデ戦エナイカラ、人間ノ指示デ動クシカナイ」

ヲ級「――クク、矮小ナノハ、ドッチカナ?」


夕張「…」



提督「……」パチパチ…



夕張「…ッご自分の立ち位置。分かってるのかしら?」

夕張「あなた今、打ち揚げられた魚と何も変わらないんですよ」


ヲ級「ソウカモシレナイナ」

ヲ級「ダガ、煮ルコトモ、焼クコトモ、許シタツモリハナイ」


夕張「その減らず口、いつまで持つんでしょうね」

夕張「…ちょっとでも甚振ってあげれば、簡単に芯は折れそうだけど」


ヲ級「クハハッ! ワタシニ尋問ヲカケルツモリカ!?」

ヲ級「随分偉クナッタモノダナ、"カンムス"。ワタシタチカラ、ウマレタ分際デッ!!」


夕張「ッ!」ギリ



提督「」ヘックションッ!



提督「…夕張」


夕張「提督…っ」


ヲ級「オヤオヤ、カンムスノ"脳味噌"ガ、口ヲ開イタゾ」


夕張「この…ッ、まだ言うk」


提督「落ち着け」


夕張「…っ」


ヲ級「アハハッ! 脳味噌ニハ従エヨ!? シガナイ人間ノ手足風情メ――」


提督「おいおい、聞こえなかったのか」グイッ


ヲ級「…ッ」


提督「おれは夕張とお前、両方に言ったんだ。"落ち着け"、と」ガチャコッ


ヲ級「…フン。豆鉄砲デ、ワタシヲ威嚇トハナ」


提督「確かにな。お前たち艦船そのものにとって、これほど小さい砲身はないだろう」

提督「夕張」


夕張「…はい」


提督「もしおれが、これで"今のお前"を撃ったらどうなる?」


夕張「痛みで打ち転げて最悪死にますね」


提督「…だそうだ、深海棲艦」


ヲ級「…ドウイウ」


提督「艦娘に効く攻撃。艦娘が深海棲艦から生まれ出た存在ならば――」

提督「艦娘を殺せる道具は、深海棲艦を殺す道具になれる」


ヲ級「…ッ」


提督「…もっとも"オリジナル"を簡単に殺せるとは思っちゃいない。コピーの時点で、何かしらの劣化はあるだろう」

提督「まあそれでも。動きを止める為の、痛みへの恐怖。それを対象へと与えるには十分だ。そうは思わんか?」


ヲ級「…クク。流石ニンゲン。狡猾ナコトニ対シテハ、無駄ニ頭ガマワルヨウダ」



提督「…よし、みんな落ち着いたな」ガチャン

提督「夕張」ポイッ


夕張「えっ? …っとと」キャッチ

夕張「提督…?」


提督「喧嘩は嫌いだ。ついでに物騒なモノも。この場には相応しくない」ホレ


ヲ級「…ナンノツモリダ」ドウモ


提督「何のつもりもない。…だって――」



提督「おれ達、焚き火囲んで仲良く魚食ってるだけだし」


夕張「…」モグモグ


ヲ級「…」ムキュムキュ


イ級「キャッキャッ」パクパク



―――


ヲ級「イヤー、タスケテクレテ、カンシャスル!」

ヲ級「ナンカ海底遊泳シテ遊ンデタラサ。メチャクチャ痺レテ、動ケナクナッチャッテ!」


夕張「…さっきのあれは」


ヲ級「ウーン。…タテマエ?」


夕張「…建前」


ヲ級「ア、ノッテクレテアリガトネ! 演技上手ダッタヨ!」


夕張「…」ジワッ


ヲ級「ヲッ!? ナカシチャッタ!?」


夕張「怖かったぁ…っ! 怖かったぁああ…っ!!」ビエェ


提督「…おー、よしよし」


ヲ級「ヲヲ…スマナカッタ。ツイツイ熱ガハイッチャッタンダ、ゴメンネ?」



ヲ級「タスケテモラッタウエニ、焼キ魚ナンテ、フルマッテ、モラッチャッテ」モグモグ

ヲ級「恩ニキル。イヤー、ヤハリ人間モ艦娘モ、本当ハ優シイモノダ!」ゴクン

ヲ級「ホラ。オマエモ、チャント、オレイヲ言イナサイ」


イ級「アリガトー!」パクパク


夕張「そ、それは…よかった、ですねぇ」


提督「…気にせず食ってくといい」


ヲ級「ヲっ! アリガトウ!」パァァ


夕張「あっはっは…」


提督「はっはっは…」


夕張「…」


提督「…」



夕張(提督! 提督ぅううう!!)ヒッソォォォッ!!!


提督(…おい、どうするんだこれ。あとさむい)ヒソヒックション!



夕張(こっちが聞きたいですよ! なんでよりにもよってあんな獲物が取れちゃうんですか!)ヒッソォォッ!!

夕張(エレクトロフィッシャーで鮫を獲る気なんてなかったのにぃ! とりあえず上着は返しますから!)


提督(深海棲艦も感電はするんだな…。ありがとう)ブルブル

提督(…幸いなことに、こちらが仕掛けた電撃だというのは、あちらさんは分かっていないようだ)


夕張(…この状況、私達がとるべき選択は何でしょう。鹵獲ですか? リリースですか?)


提督(…良心的に、リリースだろう。あと、こんなことは珍しくはあるが、決して皆無なわけじゃないらしい)


夕張(そんなデータ知らない…)


提督(漁船の網に引っかかったり、釣りしてたら釣れたり。…いや電気流したのはおれ達が初めてだろうが)

提督(…その場合の対処は当事者に一任するんだと。最近の軍令部通信に書いてあった)


夕張(前例あったの…まずその学校通信みたいなノリはなんですか。分かんない軍令部ね…)


ヲ級「?」キョトン


提督(双方共に敵意はない。このまま平和に帰ってもらえばいいんじゃないのか――)



ヲ級「ア、ソウイエバ。サッキ叫ビ声ガ聞コエタンダ。ナニカ知ッテル?」


夕張「え、えと…どんなのですか?」


ヲ級「ウーン、確カ…ソウダ!」

ヲ級「"ナントカクンガ、ナントカサント、裏デシッポリ"トカナントカ。ドウ意味ダロウ?」


夕張「…えっ。あ、あははー…どういう意味でしょう、かねぇ…?」スットボケ



提督(…誰かさんのせいで、やっぱり生きて返すわけにはいかなくなった。そう思わんか、夕張先生?)ビキビキ


夕張(落ち着いてください。あとでお叱りなら受けます、ごめんなさい本当ごめんなさい)

夕張(…ひとまずスタンガンと拳銃は隠してきますね。適当にごまかしといてください…)フラフラ


提督(…はあ、頼んだ)



――


提督「…」

提督「…乾いたかな」


イ級「モグモグ」


提督「…美味いか?」


イ級「ウンー!」


提督「…そうか」


ヲ級「トキニ、人間。イヤ、"提督"カ」モグモグ


提督「なんだ」


ヲ級「私達ガ、怖クナイノカ?」


提督「怖いと言って欲しいのか?」


ヲ級「…ムゥ、微妙ナ、トコロダ。デモソノ口ブリダト、怖クハナイノダナ?」クビカシゲ


提督「…まあ若干そんな感情もあるかも知れんがな」

提督「今となっちゃ、お前たちが結構フレンドリーだったことに驚いてる」


ヲ級「ソレハコッチモ同ジダ。テッキリ鹵獲サレルカト――ハッ!」

ヲ級「マサカ、コノ魚ニ睡眠薬デモ混ゼテ、私達ヲ捕獲スルツモリナンジャ…!」アワワ


提督「…原型留めたままの魚にどう睡眠薬仕込むのか、聞いてみたいな」

提督「意思疎通が出来る分は、お前たちもおれ達と変わらん。安心しろ、おれはまず穏便に解決する派だ」


ヲ級「フム」


イ級「ケホケホ」


ヲ級「アア、コラコラ。骨ハチャント噛ミ砕カナキャッテ毎回言ッテルダロウ」


提督「…水でも汲んでこようか?」


ヲ級「ア、海水デ構ワナイ。アリガトウ」



ヲ級「ムキュムキュ」


提督「…しかし、深海棲艦も普通に飯を食うのか」

提督「ここ数年お前たちを相手に戦ってきた体だが、そんなことは知らなんだ」


ヲ級「アタリマエダ。栄養ナシニ活動デキル生命ナドイナイ」ゴクン


提督「妙なところで生き物臭いな」


ヲ級「ワタシタチハ生キ物サ。アナタトオナジ。カワラナイ」


提督「…一緒くたにしてイイところなのか、そこは」


ヲ級「アナタモサッキ、"カワラナイ"ッテ、イッタ。オナジ」モキュモキュ


提督「…確かにな」


ヲ級ヘッド<ウメェウメェ ガツガツ


提督「!?」


ヲ級「コボスナヨ? ワタシニ落チテクル」


提督「…はぁ」ヤレヤレ



ヲ級「食性ノ違イナラアルナ」


提督「食性? いつも魚食ってるわけじゃないのか」


ヲ級「色々イルンダ。私ミタイニ、魚トカ食ベテル者モイレバ」

ヲ級「ナンニモ食ベナイ者ヤ、…ニンゲンヤカンムスヲ喰ラウ、ソンナコトヲ言ウ者モイル」


提督「…ふむ。物騒だな」


ヲ級「マァ、少数派ダ。ワタシ達モ、ソノ考エヲ"是"トスルツモリハナイシ」

ヲ級「ムシロ否定シテル。戦争感情ヲ、ワザワザ食生活ニマデムケル必要ハナイ」ムグムグ


提督「……」


ヲ級「…スマナイ。アナタニ話スヨウナコトデモナカッタ、忘レテホシイ」


提督「…生憎と、そこそこ記憶力はいいんでな。忘れるのは無理そうだが、気には留めない。安心しろ」ヒョイ

提督「おれは提督――要は、戦争生活者だ。戦争活動の裏で何が起こっているのかは、だいたい想像がつく」ガブ


ヲ級「……」


提督「倒した敵を喰らい、敵の血肉を己の闘争への糧とする」モグモグ

提督「実に神秘的な考え方だ。しかしお前と同じ、是とするつもりは微塵もない」

提督「おれはカニバリズム、ましてやネクロフェリアでもないからな」ゴクン


ヲ級「…ソウカ」


提督「人々の悲鳴を臓腑に沁みこませ、泣く赤子を躊躇なく蹴り殺せるなら」シュボ

提督「罪無き女子供を犯し、兵士の鮮血で顔を洗うなら。…戦争なんて、勝手にやってればいい」



提督「おれはもう、"戦争"を考えるの諦めた。いくら考えたって、おれには分からん」パク

提督「"誰か"の心は、その"誰か"のものだ。完全に理解することなど、不可能だ」

提督「…ならもう、分からんままでいい。言葉の通じない相手の心なんて、分かりたくもない」


ヲ級「ナカナカフッキレテルナ。"指揮官"ニハ、ムイテイル」


提督「お褒めに与り光栄だ」フゥ


ヲ級「フム。考エダスト、ヤハリニンゲンハ、ワタシ達ニヨク似テイル」


提督「似ている? こんなどうしようのない人間にか?」


ヲ級「フフ、ソウ悲観スルナ。ワタシ達ダッテ、モウ自分達ノ"リユウ"ヲ、覚エテナインダ」


提督「理由?」


ヲ級「亡霊ハ何故コノ世界ニ留マリ、生ケルモノヲ脅カスノカ」

ヲ級「…バケモノニハ、ウマレルマデノ"リユウ"ガアルノダ。アナタ達ノ言ウ"ウラミ"トカ、"イカリ"トイッタ、ナ」


提督「…自分自身を化け物呼ばわりとはな」


ヲ級「ソウ。ワタシ達ハバケモノダ。生ケル屍、死ンダ生キ物」

ヲ級「ワタシ達ニハ、戦ウ"リユウ"ガナンダッタノカ、思イダセナイ」

ヲ級「戦争ノ炎ニ、身体ヲ焼くリユウモ。空ヲ睨ミ、散ッテユク飛行機ヲ眺メルリユウモ」



ヲ級「ウラミダッタノカ? ソレトモ、イカリダッタノカ? …モウ、覚エテナインダ」




―――


イ級「」ケプッ


ヲ級「スマナイ。スッカリ御馳走ニナッテシマッタ」ヨシヨシ


提督「ん。帰るのか?」

提督「じゃ手土産に、この魚持っていくといい。どの道このまま逃がす予定だしな」


ヲ級「ヲー、カタジケナイ。イイ土産ニナルヨ」

ヲ級「礼ト言ッテハナンダガ、私ノ艦載機デモ…」ゴソゴソ


提督「ああいや、大丈夫だ。元はと言えば此方からの一方的な施しに過ぎんし…」


ヲ級「…ナント謙虚ナ姿勢ダ! ココハ奮発シテ"タコヤキ"ヲ――」


提督「"タコヤキ"…お前たちの間でも呼び名は一緒なのか。親近感が湧いてきた――」

提督「じゃなかった。そんなに気を使わんでくれ、おれ達は見返りが欲しくてお前たちを助けた訳じゃ…」


ヲ級「ムムム…ドコマデモ謙虚ナ姿勢。ソンナアナタニ礼ヲ返スノモ逆ニ失礼カ…」

ヲ級「シカタナイ。ココハアナタノ姿勢ニ免ジテ退クトシヨウ…」

ヲ級「マタイツカ、逢ウ時マデ。達者ニナ、人間」


提督「まさか激励の言葉を貰えるとは。お前たちも達者でな」


ヲ級「アアソレカラ、アナタノ艦娘達ニモ。宜シク言ッテオイテクレ」


提督「はは、どう言っておけばいい?」


ヲ級「"アナタト談笑シタ、物好キナ敵ガイタ"。ソレデイイ」


提督「…そうか、了解だ」


ヲ級「フフッ。サラバダ、提督。艦娘ヲ、大切ニナ」


提督「ああ。ではな、深海棲艦。…地獄で、また逢おう」


ヲ級「アア。…向コウデハ、一緒ニ。鬼ヲ相手ニ遊ベルト、イイナ」




――


提督「…」


夕張「提督ー…って。あれ?」キョロ

夕張「…お帰りになったんですか?」


提督「…そのようだ」


夕張「ありゃりゃ…惜しいことをしちゃいました。せっかくの機会が」


提督「まあ、…こんな機会は二度とないかもしれんな」


夕張「向こうの技術を此方でも応用できれば、まだまだ幅が利きそうなのに」


提督「そういえば、あちらさんが去り際に、魚の礼に艦載機をと言ってきた」


夕張「貰ったんですか!?」キラキラ


提督「丁重に断っておいたが」


夕張「何て事を…ッ! なんてことをしてくれたのよぉおお!!」ウギャァー


提督「おいおい。非はこっちにあるんだから、至極真っ当な対応だろう」


夕張「これは戦争ッ! 慈悲だとか遠慮なんて猫に食わせなさい!!」


提督「…都合のいい戦争だな、まったく」


夕張「はぁ…、試作品の出力テスト出来ただけでも満足しようかなぁ…」ブツブツ



ザバッ


ヲ級「マタ、来テモイイ?」

イ級「イイー?」


提督「歓迎する」


ヲ級「ソウカ。カンシャスル!」

イ級「ワーイ! マタネー!」


ザブン



夕張「…」


提督「…」


夕張「仲良くなったんですか」


提督「二度目がありそうだな」



夕張「…今度は電気はやめときましょう」


提督「…そうだな」

ここまで。他メンバーを登場させる為に投下ペースを速めていきたい所存であります
現状がスレタイ詐欺と化してるのはお許し下さい。いつか突っ込まれるとは思っとったんや…

アイキャッチとラクガキ
http://imgs.link/nCUTmQ.jpg
http://imgs.link/xclJrc.jpg

ではまた


戦姫が愚痴りに来たりして

今日か明日の夜。メロン篇ラストダンス

あと>>513のお陰で、この世界線であやふやだった深海の立ち位置を少し練り直すことができました
本当にありがとうございました。そのネタはいずれ消費させて頂きます

ではまた



―――


――





   或る"??"の録音テープ 


 録音日時不明。保存状態劣悪。




――


―――








『…』

『"艦娘"。深海棲艦に対抗すべく、人間の生み出した新たな力』


『彼女たちは謎が多い。人間が生み出したとは言え、その実、彼女たちは偶発的な力だ』

『深海棲艦をベースとして生み出された。人間が分かっているのはそこまで』

『成功と失敗を繰り返し、…いや。失敗の方が現状は多いのか』

『人間はよく分からないままに、彼女たちという力を実用に移した。それだけ人間は焦っていたのだ』


『彼女たちの正体。その鍵を握っていると思われるのは…"妖精"と呼ばれる、なんとも腹の底の知れない存在』

『人間の言葉を理解していると思われるそれは、実に奇妙な言葉を話す』

『妖精の言葉は人間には理解できず、理解できるのは艦娘のみ』

『よって、妖精と人間の対話は、艦娘を介してしか満足に行うことは不可能だ』


『そもそもあの生命体と呼べるかも分からない存在を、人間は妖精と呼称してはいるが』

『艦娘こそが、かの大日本帝国軍艦の"精"とも呼べる存在なのでは――』

『…いや、夢物語の持論を今展開しても仕方が無い。今記録すべきなのはそんなことではないのだ』





『"記憶"』


『彼女たちの記憶は、実にあやふやだ』

『己の軍艦としての末路を鮮明に記憶している者もいれば、そうではない者も存在する』

『…艦娘一人一人の調査を行うには、時間も身体も足りない。ゆえに、この問題は保留とする』

『だが。そこで特筆すべき事項は、彼女たちの"艦娘としての記憶"。これだけには共通の事項がある』


『解体――彼女たちを戦いから退かせる、唯一の方法。…現状の本国において"是"とはされず、報告も少ない』

『解体された彼女たちは、記憶を喪う。全てを喪い、そこには何も知らぬ一人の幼い娘が生まれる』

『…言わばその時点で艦娘としての彼女たちは、死んでしまうのだ――』


【ノイズ音】


『再度、同じ艦娘が建造されたと――も。それは我々の知る彼女たちではない』

『共に戦火で傷を灼き、共に勝利の喜びに身を震――た。…そんな彼女たちは、もう戻っ――こない』

『結論を述べ――解体、及び轟沈し――娘は』

『同じ艦娘として建造さ――も、"艦娘としての記憶"を受け継ぐことはな――だ』


『―――備の関係もあり、艦娘自体量産するの――難』

『それど――ではない。我々は、まだ彼女た―を満足――造すらできない――』

『現状の建造成――、非――少ない。…おそらく、――数年はこの調―――だろう』

『つま――ころ、人間はま――彼女たちの建造―"失敗"することも、あり――のだ』

『…――し、特段。おれの障―――事柄でもない』

『今――――れ―――事を―――きだ』

『……』



ブチン




――

―――



『はい、はい』

『ですからご説明している通り、この件はまったくもって―――』


『……』


『…本官の言っている事がそこまで信用ならんのですか』

『なら視察でもなんなりと。妖精の通訳はそちらの艦娘を派遣すれば事足りる』

『軍令部直属の艦娘の証言が採れれば、全てハッキリするだろう』


『…』


『…失礼。ですがあまり彼女たちを悪く言うのはやめて頂きたい』

『彼女たちを生み出したのは我々人間だ。いつ何時であっても、人間が彼女たちを責めることなど出来はしない』

『それだけは、お忘れなく。…では、失礼致します』


『…あの』


『ん。どうかしたか?』


『…今のは』


『…ああ、お前さんは気にしなくていい』


『私のこと、よね』


『!』


『分かる、それくらい』

『やっぱり、何かおかしいのよね。私の"存在"は』


『…もう一度言うぞ。お前さんは気にしなくていい』


『私の存在はデータ上、"異常"だって。そういうことだって』



『あは、そっちもそっちで。私みたいな得体の知れない存在を、わざわざ――』


『……』


『…なんとか』


『…』


『…なんとか、言ってよ…っ』


『…』

『――"悪かった"』


『っ!!』


『無駄な心配を抱かせたこと。全て含めてお前さんに謝る、悪かった』

『だから、そんな悲しい顔をするな』


『…なんで、謝るんですか』

『厄介なら、いっそ突き放してくれればいいのに…っ!』


『…いいか』


『…』


『おれの前で、二度とそんな言葉を口にするな。絶対だ』

『厄介だと? ふざけたことを言うんじゃない』


『…っ』


『御託をのたまう連中は黙らせる。仲間にいらん飛び火を浴びせてなるものか』


『…どうして、私の為に…っ』


『お前さんは何も悪くない。だから笑顔でいろ。…それだけだ』



――

―――



執務室。16:49



夕張「…」ボー


提督「…」ボー


夕張「…」


提督「…」


夕張「…ていとく」


提督「…なんだ」


夕張「…」


提督「…」


夕張「…なんでもないです。忘れました」


提督「…」


夕張「…あっ」


提督「…思い出したか」


夕張「大規模な農業開発が完全なすばらしいメカニズムの使用によって高――」


提督「この数秒でお前さんの頭に一体何があった」


夕張「…提督の握ってる新聞の文面を音読してるだけですよ」


提督「…」チラ

提督「…ああそう」



夕張「――に関し、様々な肥料の影響を示すため、早い実験で彼らの一部雇用を簡――」


提督「…」


夕張「―――は正しい。――――の無数の使用法は、将来の―――により行――」


提督「……」


夕張「――は同時性の―――をあまり知らない。―――――」


提督「…おい、夕張」


夕張「それは創造的な――…っと、何でしょう?」


提督「それ止めろ。音読」


夕張「えー? どうして」


提督「おれの読んでる箇所とお前さんの音読箇所は違う。それは分かるな?」


夕張「当然ですね。表と裏ですもん」


提督「あのな、お前さんの声に遮られておれの読んでる内容が入ってこない」

提督「さっきからおれの頭は混線してエラーを吐き出し続けてる。だからやめてくれ」


夕張「分かりやすい説明を」


提督「数を数えてる前で、でたらめな数字を言い続けるとどうなるか」


夕張「ありがとうございます」シレッ


提督「…さてはお前、分かっててやってたな」


夕張「ふふ。どうでしょうかねー」


提督「…はあ。まあいい」


夕張「…この流れだとまた怒られると思ってたんですけど、怒らないんですね」


提督「もう今日は疲れた。お前さんに割く元気は残っちゃいない」



夕張「提督っておいくつですか」


提督「四十五」


夕張「…あれっ、素直に教えてくれた。いつもは歳ネタ切り出すと怒るのに」


提督「減るもんじゃない。…いや、むしろ減ったほうがいいのかな」

提督「あー歳とりたくないな。こんな早く中年迎えるなら若い頃もっと真面目に生きりゃよかった」ブツブツ


夕張「若々しい頃の提督の姿も見てみたいです。倉庫漁れば写真ぐらい出てくるでしょうか」


提督「やめろ、青臭い頃のおれを見ても何の得にもならんぞ」


夕張「またまた恥ずかしがっちゃってー」


提督「…あーそれはアレか。もっと若くて二枚目な提督の下で働きたいという、遠まわしな嫌味か?」

提督「何だったら探してやるぞ、お前さんの要望を満たす鎮守府。本営は艦娘の意見を第一にしてるし」


夕張「馬鹿言わないで下さいよ。私が提督から離れるわけないじゃないですか」

夕張「大体ね。二、三年も一緒に居ておいて、今更チェンジでなんていかないでしょう」


提督「いつか一人で旅立つ時も来る。二、三年で済んでる今現在の方が、別れも辛かない」ウンウン


夕張「じゃあ何です。今私が"何処何処の若い提督の下で働きたい"って言ったら、提督どうするんですか」


提督「全力で相手さんの素性と人柄調べ上げてやる。預けるのは、おれが監査しておれが納得してからだ」

提督「じゃなきゃお前さんみたいな娘を安心して預けられるものか。向こうにとってもお前さんにとってもそれが一番――」


夕張「あはは、提督ってばお父さんみたい! 別に私、嫁ぎに行くわけじゃないんですよ」


提督「夕張の親父ねぇ…、かの平賀氏がそれに当たるか。尊崇してるんだろう、お前さん」


夕張「はい勿論!」

夕張「浪漫ですよローマーンっ! 私はその先駆けに生まれたんですから!」ペシペシ

夕張「世はまさに大鑑巨砲主義ッ! 私の遺志は古鷹さん達に受け継がれたのだー!」


提督「…あー、異様にテンションが上がった。いや分かっちゃいたが」

提督「…古鷹、古鷹か。えーと確か…あった」パラパラ

提督「最近新改装の目処が立ったとか言ってな。軍令部通信の号外に載ってた、ここの写真見てみろ」


夕張「おー、それは喜ばしいことですね! これは私の改二もいつの日か来るんじゃ…」

夕張「――誰これ!?」


提督「ん、面識あったのか?」


夕張「は、はい。大昔に…」



夕張「しかしすごい様変わりしたなぁ古鷹さん、右腕の装甲が素敵…――はっ!」ヒラメキ

夕張「これは私の改二も、大いに期待してよかですか!? もっと艤装積み込めt」


提督「…お前さんの場合って改が最終形態というか、これ以上のびしろがなさそうというか」


夕張「何でそういうこと言って私の夢を壊すんです!? 夢持つ分にはタダですよ!」

夕張「艤装いっぱい持ちたいし足ももうちょっと速くなりたいし…」ブツブツ


提督「…まず足が遅いってしょっちゅう嘆いてるけど、実際問題そうでもないような」


夕張「へ?」


提督「お前さんは足が遅いって言うより、持続力がないだけじゃないのか」

提督「長距離だとスタミナ切れ起こすから、航海じゃ燃費を考慮して仕方なく遅めに走るしかないだけであって」

提督「何と言ったらいいか…そうだな。どちらかというと、短距離選手なんだお前さん」


夕張「…!」パァァ


提督「…いや、まあだからといって。持続力の無さを看過しちゃ、お前さんの為にならんのも確かだ…」ウーン



提督「…あれ。夕張、近くない? いつの間に寄って来た」


夕張「~♪」ニッコニコ


提督「…??」



提督「まあ、なんだ」

提督「二、三年だったか。お前さんが来てからもうそんな経つんだな。月日ってのは早いもんだ」


夕張「お世話になりました」


提督「畏まらなくていい」


夕張「出会いは工廠でしたっけ」


提督「そりゃそうだろう。そこしか造艦設備ないんだし」


夕張「初めて会った時、提督すごい吃驚してましたよね」


提督「…そうだったかも、なぁ」

提督「とある昼下がり。妖精が喧しく騒いでたから、重たい腰あげて工廠までついて行ってみた」

提督「…そしたら、"何故か"。建造ドックが閉め切られてたと来たもんだから」


夕張「…へぇ。そうだったんですか」


提督「話してなかったか?」


夕張「はい。その辺のことはあやふやでしたし、私も深く訊いてませんから」


提督「そうか…」

提督「なら、あやふやなままでいいな。今更気にするようなことでもない」


夕張「提督の中ではそうなんでしょう。提督の中では」


提督「…じゃあ何だ。またどうしようのない論議でもするか? "お前さんの出生"について」


夕張「出生って言っちゃうと酷く生々しくなりますね」

夕張「でもやっぱり気になりますよ、少しだけ。前ほど深刻に考えてはいませんけど」


提督「…そうか」



提督「…お前さんも、ある種で前例がなかった艦娘だった」

提督「誰も、知らないうちに建造された。誰も、建造してないのに建造された」

提督「…喩えるなら。お前さんは、火の無いところに立った煙。そんな例、前例なんてなかった」


夕張「…」


提督「いや、むしろ。この世の中で前例がある事の方が、逆に少ないのかもしれん」

提督「金剛の力の件だって、先例が確認されてなかった。お前さんもそれはよく知ってるだろう」


夕張「…はい。私も金剛さんも、結局分からずじまいでしたもんね」


提督「…おれは、そこそこお前さんたちと、艦娘と共に過ごしてきたつもりだった」

提督「だが、やはり人間であるおれは。お前さん達のことを、完全に理解はしてやれんのかもな」


夕張「…提督。お気づきかも知れませんが」

夕張「私達艦娘は、深海棲艦とほとんど同じ。一見分かりやすいようで、その実、謎ばかりなんです」


提督「はは。艦娘のお前さんが言うんなら間違いない」


夕張「一つの謎を解明しようとすると、そこから新しい謎が生まれちゃう。それが私達」

夕張「だから、分からないならもう分からないままでいいかなって、思うときもあります」



夕張「対処法も分からないまま、明かりもないまま暗闇を歩くのは、それはそれは怖いことですけど」

夕張「それ、人付き合いも同じ事が言えるんですよね」


提督「…ふむ」


夕張「だって、そうでしょう?」

夕張「私が提督と出逢ったこと、私が皆さんに出逢ったこと」

夕張「そのことに、前例なんてあるはずがありませんから」


提督「……さて、お前さんに諭されたところで、論議は終了」

提督「分からないこともあるが、おれはお前さんたちみたいな可愛い娘と出逢えて、幸せだったよ」


夕張「やめてくださいよ、そんな明日辺り死んじゃいそうな台詞」


提督「葬式は来なくていいぞ。墓参りには来て欲しいが」ガハハ


夕張「墓の前で敬礼して泣き崩れて…あ、これいいですね。メモっときましょ」メモメモ

夕張「でももし生き残っちゃったとしたら、退役後はどうするつもりなんです?」


提督「生き残っちゃったらってお前な…死ぬ前提で話進めるのやめてくれないか」

提督「葉巻やめて天寿を全うしてやりたいことやる…ぐらいだな」ユビオリ


夕張「ご結婚は?」


提督「…夕張、あまり突っ込むな」


夕張「今から言うの、ほぼ直球ですけど構いませんか?」


提督「なんだよ…」


夕張「提督、鳳翔さんとケッコンしてますよね。(仮)だとしても」


提督「……」


夕張「伴侶を残したまま、易々と死んでやるわけには行きませんもんね」ケラケラ

夕張「その伴侶護るついでと言っちゃ何ですけど、私たちもこれから守っていただかなくちゃ…」


提督「……」


夕張「顔が逸れていってますよ」


提督「おれの恥じらいなど誰も得せん」


夕張「そこそこ私得ですけど?」


提督「…はぁ」ヤレヤレ





「提督」


「ん」


「今後将来、一緒に居る限り。何度だって言います」


「何を?」


「大好きです」


「……」エェー


「なんでそんな目で私を見るんですか」


「……」シンヨウナラナイ


「むー、せっかく私が一世一代の大告白したのに。結構言うの恥ずかしかったんですよこれ」


「……」

「…それも、ちょっと、信用ならない」


「ちょっと考えてから言うのやめて下さい。傷つきます」


「…そうか、おれも大好きだぞ」


「誰が?」


「お前さんが」


「"お前さん"なんて名前の人はいませんけど」キョロ


「……」


「……」


「…面倒くさい奴め」


「ふふ」





「よし。夕張、大好きだ」ナゲヤリ


「どれくらいですか」


「めちゃくちゃ愛してはないぐらい」


「絶妙なドライ加減ですね」

「あれですか、家族的にみたいな」


「…」フーム

「おれに愛の定義はいまいち分からんが、多分それであってる…のかな」


「なるほど。…ふふっ」



「…それでも嬉しいです。提督、大好き」


「…喜んでいいのか? 今のお前さんは演技の顔をしてない」


「ええもちろん。目一杯喜んでください」

「提督は、頑固かと思ったら妙に子供っぽくて、素直なところもあって」


「そうか」


「でもその実、私達に本当に優しくって。まさに理想ですから」


「…ありがとう」


「そうそう。そこで謙遜せずにお礼を言っちゃうとことか、素直ですよね」

「…提督が提督で、本当によかった」


「夕張」


「はい? …って、なんでちょっと泣きそうになってるんですか!?」


「いや、その、だな…。なんか感極まって…っ」ゴシッ


「うわぁ素直だ!? 好きだけど素直だ!」


「ああいや違う。葉巻の煙が目に沁みた」


「言い訳が遅い! 私より遅いですよ!」


「夕張、その洒落全然うまくない」


「う、うるさいっ!」





「なんだろう、おれはどうすればいいんだ」グスッ


「わ、私もどうすればいいんでしょ…?」


「…夕張」チョイチョイ


「え、何です――って、ひゃっ!?」


「…」ギュ


「え、えと、あのっ…提督…?」


「すまんな。…こういう時に限って上手い言葉が見つからん」

「とにかく嬉しいんだ。それだけは分かってくれ」


「……!」

「…ふふ、相も変わらず素直で…提督らしい」

「大好きですからね。私も、みんなも。提督が」


「がははバカだ、バカばかりだな。おれみたいなのが好きだとさ」



「夕張。…何度だって言わせてくれ」

「ありがとう。大好きだ」


「…私も、何度だって言いますよ」

「提督。大好き、だーいすき…っ」



―――

――



『おお、お前さんはどうも手先が器用だな。こりゃ整備担当にもってこいだ』


『…器用ってわけじゃ。ただ趣味が活きてるだけで』


『はは、趣味が仕事に活きるんだ。実にいいことじゃあないか』


『…』


『おれは基本的に、誰かへあれこれと押し付けるのは好かん』

『当人の意思を鑑みずにコトを進めたところで、結局は誰も幸せにならんからな』


『…そうですね』


『だから、お前さんは好きなことをやって構わない』


『え…?』


『やりたいことをすればいい。やりたくないことは…まあ、たまにやりゃいい』

『やりたいことをやっているお前さんの笑顔。可愛いからな』


『……!』


『お前さんのその笑顔を、おれ達にもっと見せてやってくれ。約束だ』



『…はい、提督!』


『はは、いい返事だ。夕張』



――

―――



提督「――夕張?」


夕張「はい?」


提督「最初に行動を起こしたおれが、こんなこと言うのもお門違いかも知れないんだが」

提督「…そろそろ離れてほしいかなぁ、と」


夕張「嫌です」ギュ


提督「…嫌か?」


夕張「嫌ったら嫌です」ギュー


提督「……」


夕張「ふふー提督を独り占めー…♪」


提督「…物好きな奴だ、お前さんは本当に」


夕張「うふふー、お互いさまってやつです…」


提督「…はぁ」


夕張「……」


提督「…おい、夕張?」


夕張「…」スゥ


提督(…おれを枕にして寝るとか暁に準じて器用だ)


夕張「…うふ、ふ。提督ー…zzz」


提督(…お前さんの夢の中にもおれがいるとは。睡眠の邪魔して何だかすごく申し訳ない気分…)ウーム

提督(…夢の中のおれは、何を喋らされてるんだろうか。どうせあることないこと――)


夕張「…天ちゃ…ん」スピィ


提督(天龍も巻き添えだった。負担が減るぞ、よかったな。夢の中のおれ)

提督(…出演料の代わりに、手でも握らせてもらおう。寒いし)


夕張「……!!」


提督(…幸せそうな顔された。お前さんの夢の中で、どんな変換が行われたのか、結構想像つくぞ)





提督「……」

提督「…炬燵、出すかな」ポツリ





           Oneself_Maker 篇   閉幕

      ―――To be continued "Only_My_Gates".





━━━━━━━━━━━━━これからも登場しますよ組



夕張

発明家志望。当鎮守府において四番目の艦娘。

"自分を造った艦娘"。特殊なことと言えばそれくらいである。

建造をクリックしてないのに、建造が勝手に始まって勝手に終わり、そうして生まれた娘。

そんなオカルティックな経歴をもつが、艦娘自体この世界じゃオカルティック。

ただこの世界じゃ開発だけでなく建造も失敗する。なのにこんな生まれ方したので、十分異常で問題のあった娘なのかも。


提督

中年。保護者

工作は嫌いだが苦手じゃない。あと仲間厨。

一人を除き、艦娘に向けている愛情は父性的なソレであって異性としてのアレではない。

でもみんな大切。面と向かって心から大好きとか言われたら多分泣く。もう泣いた。

この男の下でメロンは生まれた。送られてきたわけではなかったり"保護"ではなかったりする艦娘としては、メロンは二番目。


他の五人

やっと帰ってきます。


ヲ級

空母系スレンダーガール。めっちゃ喋る。

時折顔を見せに来るので、何だかんだで生きているらしい。


イ級

ちっちゃいホエール。腹を満たすと寝る。

げきおこへ移行するとアンソロ並みのデカさに。


スペシャルサンクス

その他人間陣営と深海陣営の皆さん

ここまで。夜投下とか嘘やん…
なんかもうメロンちゃんは提督大好きっ子ってコトでハイよろしくぅ!(自棄)

質問はご自由にどうぞ、是非とも疑問を突き刺してやってください。答えられる範囲なr(ry
ではまた



―――


天龍「ただいまーす」ガチャ


提督「戻ったか天龍。おかえり」


天龍「戻ったぜ提督。…ん」

天龍「それ、夕張か」


提督「それ呼ばわりとは酷いな。同じ仲間だろう」


天龍「オレとそれの仲だ、それでいいんだよそれで」


夕張「zzz」スピィ


天龍「寝てんのか? 呑気なもんだぜ」


提督「今は寝かせてやってくれ」


天龍「了解…しかし何だ、こんな微妙な時間に寝てるってことは、どうせ徹夜ぶっこいてたのか」

天龍「オールして妙なテンション保って起きてたはいいけど、限界来て寝ちまったとか」


提督「……ふむ」



天龍「本人聞こえちゃいねぇだろうから言うけど、生き急ぎすぎなんだよ。そいつ」


提督「…生き急ぎ、か」


天龍「開発だかデータだか、オレは専門じゃないから興味ねぇけど」

天龍「だからって睡眠時間削ってまで取り組むことか? 寝る間惜しんでまでドンパチしたいとは思わないぜ。オレ」


提督「多分おれのせいだ」


天龍「あん? 何言って――」


提督「おれの言葉が、知らないうちに重荷になってたのかもしれない」

提督「労っただけのつもりだった。想っただけのつもりだった。それだけの言葉、それだけのはずだった」


天龍「…」


提督「…だが、この娘の中じゃ、随分重々しい言葉として響いてしまったようだ」

提督「おれは昔、言った。やりたいことをやっているお前が可愛いとな」

提督「だからこいつは、好きな"自分"だけを、見て欲しかったと」


天龍「…なんだそりゃ。だったら、どんだけ健気なんだよそいつ」

天龍「多分それ邪推だぜ? うだうだ考えすぎだ、あんたらしくねぇよ」


提督「…そうか。そうかも、知れんな…」


天龍「…おいおい。本当にどうした提督さんよ」


提督「歳は取りたくないもんだ。…何かと卑屈になりがちだからな」


天龍「…ふーん」



天龍「あと、言っとくけどな提督。オレは寝たい時に寝るし、食いたい時に食うし、戦いたい時に戦うぜ」


提督「それが普通だ」


天龍「そうだ普通だぜ。…まあ、そいつにとっちゃ。あんたの言ったことが、"普通"だったんじゃねぇの?」

天龍「あんた達と一緒に、ただ笑っていられりゃよかった。自分の身を後回しに、ただ楽しければよかったーとか」

天龍「ビックリだぜ。オレにはそんな生き方、到底できねぇわ」ケラケラ


提督「…はぁ。複雑な娘どもだ、おれみたいな中年には荷が重い」


天龍「…"ども"? ああ、こいつとか金剛のことか」


提督「…」ユビサシ


天龍「オレ? ぎゃはは、馬鹿言え! オレほど単純明快な奴も早々いねぇだろ!」


提督「そうか。…じゃ、天龍」


天龍「なんだよ?」



提督「大好きだ」


天龍「……」

天龍「はッ!? い、いきなり何言ってやが――」カァァ


提督「…おれから目を離すな」ガシ


天龍「は、ははっ! また軽々しく大好きとかほざきやがって!」

天龍「真剣な顔してたって無駄だからな! あんたの魂胆は分かってる、どうせオレをおちょくって――」ワタワタ


提督「…」ジッ


天龍「…っ!? おいっ! いい加減離せってば!」

天龍「あんたがオレに対してそういう事言うのは、オレを馬鹿にしてる時だって相場が決まってんだ――」


提督「お前は、おれが嫌いか?」


天龍「…ッ!!?」


提督「頼む。お前の返事を、聞かせてくれ…」



天龍「…っ」

天龍「オレは、あんたのそういうとこが嫌いだ」

天龍「いつも意味わかんねぇとこで嬉しくなるようなこと言いやがって。人様のココロに勝手に上がり込んできやがって」


提督「…」


天龍「…でも、そんなあんたが、オレ達は、オレは大好きなんだよッ!! ああ意味わかんねぇよ畜生!」カァァ

天龍「くそったれ…っ! これで満足か!? 分かったなら手を離してくれ――」


提督「」ギュ


天龍「ぁ…」


提督「ありがとう、天龍。……ありがとう」


天龍「お、おい…? 本当にあんた、一体どうした…?」



提督「確かにお前さんは単純明快だった。柄にもなく大好きとか言った甲斐があったな」ウンウン


天龍「……」

天龍「もうやだぁああっ!!」バタバタ


提督「うお、どうした。急に暴れだして」


天龍「うっせぇ離しやがれっ!! あんたなんて大嫌いだ!」バタバタ

天龍「人のココロに上がり込むだけじゃ飽き足らず掻き乱しやがってぇっ!!! 殺してやるぅううう!!!」


提督「…うーむ。嫌いと言ったり好きと言ったり、やっぱりお前さんも複雑だな」ヨシヨシ


天龍「黙れ黙れッ!! 抱きしめんな撫でんなぁっ!! ちくしょおおおおッッ!!!」



―――


提督「あ、そうだ天龍。蕎麦でも食うか?」


天龍「…なんだ急に。蕎麦? ははっ、この微妙な時間帯に蕎麦はねぇだろ。蕎b――」


蕎麦生地<スロ1:サ○ンラップ


天龍「ばァーッ!?」


提督「そうか。なら冷蔵庫にでも放り込んでおこう」ゴシゴシ


天龍「…つかあんたの拭いてるソレって」


提督「ん、これか」


スペアソード<ヤッホ


提督「…」


天龍「…」


提督「…まあ、何だ。手入れしてる」


天龍「なあ提督。オレ、今ものすごく意味わかんないビジョンが頭に浮かんだ」


提督「へぇ、どんな」


天龍「オレの脳内であんたと夕張が、剣で蕎麦斬ってた」


提督「…」

提督「間違ってないな」ウン


天龍「ふざけんなァッ!!」バンッ



天龍「ただでさえ用途限られてる軍刀に、どんな仕事させてんだあんた等二人はッ!?」

天龍「儀礼と帯刀以外の仕事させられて軍刀の方も逆にびっくりだろーよ!!」


提督「その儀礼と帯刀以外の仕事で傷が二つほど増えた男がいてだな」


天龍「わ、悪かったよ…頼むから手袋外してこめかみ指差すなよ…。あの時のオレは青かったんだ…」

天龍「じゃねーよ! 人体はまだ及第点だろーがッ! 大体、蕎麦を軍刀で斬る馬鹿が何処にいるんだよ!」


提督「いやその、此処に、一人…」キョシュ


天龍「あーそーだよ目の前にいたよ畜生ッ!!」ガー

天龍「蕎麦切り包丁ぐらい探せばありそうだろ! なんでオレの剣使ってんだこら!」


提督「おいおい。あんなの一般家庭に常備されてるわけないだろう」


天龍「鎮守府って一般家庭か!? ふざけろッ!! …って論点はそこじゃね――」


夕張「…zzz」モゾ


提督「…」


天龍「…」


提督「…」シィー


天龍「…」コクコク



天龍「で、だ。オレの剣を使ったことはまあとりあえず不問にしておいてやる」ヒソヒソ


提督「うむ」ヒソ


天龍「…なんであんたそんな堂々としてるんだ、釈然としねぇなクソウ」

天龍「問題は何でよりにもよって、粉モノをチョイスしやがったのかって事だ」


提督「…そこか」


天龍「粉って案外取りにくいんだからな。水で濯いで流したかと思ったら、乾いてみりゃまだ残ってたりするし」


提督「安心しろ。考慮してやってた」


天龍「もういっそ研ぎ直してくれよ」


提督「了解だ。この眠り姫に申請しておこう」


天龍「頼むぜほんと…、スペアの初陣が蕎麦切りってなんだよ笑い話にもならねぇぞ…」


提督「まあまあ、そう怒るな天龍」

提督「昔は農具の鋤(すき)で肉野菜焼いたって言うし」


天龍「へぇそうなのか…って全く関係ねぇだろ! いい加減にしろ!」ヒッソォォ!!

天龍「…だから"すき焼き"ってか!? やかましいわ! それこそ笑い話にもなりゃしねぇ!」ヒッソォォ!!


提督「おお、冴えてるな」


天龍「えっ」



天龍(あーちくしょう、なんだかんだツッコんでばっかだなオレ…)

天龍「…ん?」


板ガムの箱<ヨウ


天龍「おう提督。こいつもらうぜ」ヒョイ


提督「ん。…って、あ、おい。待て、てんりゅ――」


バッチーンッ!!!


天龍「―――うにゃぁああッッッ!!!?」


夕張「…はっ。何事っ!?」ガバッ


提督「…遅かったか」


天龍「…!? …っ!?」ゼーハーゼーハー


ガムパッチン<オレダヨ


天龍「……」

天龍「~~ッ!!!」ブンブン


提督「ちょ、天龍。吃驚したのは分かるが鞘で叩こうとするな! 痛ッ!?」


夕張「…あぁ」サッシ


天龍「うっせぇ! オレを嵌めやがったな、また嵌めやがったんだなぁッ!?」



天龍「もうあんたのこと信じてたのに! 信じようと思ってたのに!」ハンナキ


提督「冷静にならんか! おれがこんな姑息なトラップ仕掛けるわけないだろう!」


天龍「言い訳なんて聞きたくねぇ! 提督のばか! ばかっ! ばーかっ!!」


提督「むおっ!?」シラハドリ

提督「落ち着けッ! 話せば分かる、話せば分かるから!!」


天龍「だまれだまれっ! やっぱりあんたなんてだいっきらいだぁあッ!!」ウワーン


提督「おい夕張ぃいいいッッ!!!」


夕張「…」ソローリ


提督「やっぱり資材カットぉッ!!!」


夕張「あぁぁやめてやめて!!」グワシ


提督「離せぇ!!」


天龍「はなしあいで解決なんて出来るかッ!!」


提督「そっちの"話せ"じゃない!」


夕張「離しませんよ! 提督が書類を――」


提督「やかましい! お前は"離せ"!」


ギャイギャイ





―――

――――



長門「提督ー。戦艦長門、駆逐艦暁、ただいま帰還し――」ガチャ


夕張「」スピー


天龍「」クカー


提督「…おかえり、長門。暁は…お前の背中か」


長門「おおぅ。両手に華状態だ、羨ましいな提督殿」


提督「…結果、イバラで両手が血まみれだ」


長門「はは。ではそんな哀れな提督殿に、もう一つ花を献上することにしよう。棘はないから安心してほしい」ヨッコラショ


暁「…zz」


長門「あっ、すまない提督。棘はなさそうだが牙はありそうだ。噛まれないよう注意してくれ」ケラケラ


提督「まったく心のこもってない心配感謝する。…おれの腕は四本もないぞ」


長門「腕がないなら脚を使えばいいじゃないか」


提督「だからって膝上に暁を置くな。もうおれのキャパシティは一杯一杯だ」


長門「おいおい提督。私達の指揮官ともあろう御方が、その程度で限界を訴えてどうするんだ」


提督「…まるでこれ以上があるような言い方だ」


長門「その通り。だって――」



鳳翔「ただいま戻りました、提督」


金剛「ヘーイEvery oneーっ!! あいむほーっむ!!」



長門「そら。花達が揃いぶみだ」


提督「…」



金剛「Oh、提督が占領されてマス」


提督「独立を切に願ってる」


金剛「取っ付くシマが無いネ…。むぅ」

金剛「とか思ったケド背中が残ってマシタ! れっつごーっ!!」ガバッ


提督「ぐああおれに味方はおらんのか!」


鳳翔「あらあら」ウフフ


提督「…おかしいな。凄く怖い微笑みが見える」


鳳翔「私は大丈夫ですよ、提督」

鳳翔「…"後で"、お願いしますね?」ニッコリ


提督「…」ゾク


長門「大変だなぁ提督殿。私が代わってあげられればいいのだがなー」ボウヨミ


提督「…勝手に言ってろ、もう」

提督「長門、あとで炬燵組み立てるの手伝ってくれ」


長門「ん。どんな心境の変化だ提督? いつもだったら雪ちらつくまで出さないのに」


提督「寒い。それに尽きる」



提督「ほら、お前たち。そろそろ起きろ」ユサユサ


暁「…ん、しれーかん。ただいま」ムニャ


提督「夢の中からか? おかえり暁」


天龍「…」パチ

天龍「…お、金剛だ。帰ってきてたのな」


金剛「いえーす! ただいま! アンドぐっもーにん! アンドもう夜デース!」ギュー


提督「…金剛、別に抱きつく分にはもう構わん。腕が若干首にまわってるぞ、息が苦しい」


金剛「首のトレーニングネー♪」ナンテネ


提督「なんだその暴論…。ぐぅ、戦艦連中はどいつもこいつもおれを殺す気か…」ギブギブ

提督「痛い痛い! 頭のそれゴリゴリするのやめろ!」ゴリゴリ


金剛「喰らい付いたら離さないヨー。物理的にもー♪」


提督「ぐぅぅ…物理的に喰らい付いて離さなかったのは暁の方だったような…」ボソッ


暁「ッ」バクン


提督「――ご、ぁ゛あ゛あ゛あ゛ッッ!!!?」


長門「ほら言わんこっちゃない」ハハ


鳳翔「口は災いを呼びますよ――って、ふふ…もう遅かったかしら」



夕張「…」パチ

夕張「…あれ、皆さん帰ってきてる」


鳳翔「ただいま、夕張ちゃん」ニコ


夕張「おかえりなさいです鳳翔さん…って何で提督、頭から暁ちゃん生やしてるんですか?」


暁「」ガジガジ


提督「」チーン


天龍「…死亡確認か」


長門「せめて盛大に弔ってやろう、提督の自費で」


提督「ッ」ヒッペガシ


暁「」ベシャ

金剛「アウッ!」


提督「はぁッ…くそっ、冥府への予約はキャンセルだ」

提督「何だこの頭部への理不尽なダメージは…帽子越しとかまるで関係ない…」ジンジン


鳳翔「氷でも持ってきましょうか?」


提督「そこまでじゃない。大丈夫だ…ありがとう、鳳翔」

提督「…むぅ、そこそこいい時間。晩飯どうしようかな…」



提督「よしお前たち。もうどっか食いに行くぞ」ヨッコラセ


長門「お、そうか! それはそれで財布の中身が消えることになるぞ!」キラキラ


提督「自覚あるならせめてキャンセル代程度に収める努力をしてくれないか…」


金剛「Cancellation charge程度」(葬儀代より下とは言ってない)


提督「おれの命はお前たちの食費より安上がりか…哀しいな」


暁「…」ウツラウツラ

暁「たいへんねしれーかん…」モサモサ


提督「ああ心配してくれるのは噛み付かれたけどお前さんと鳳翔だけ…って」

提督「おい、何食ってるんだ、暁? 暁ー? 美味いかー?」ペチペチ


鳳翔「…あら、あらー。裁縫道具何処しまったかしら」タッカン


提督「…」エッ


暁「…zzz」モサモサ


提督「吐き出せ暁ぃぃいい!! それ食い物じゃなーいッ!!」



ギャワギャワ



夕張「…」

天龍「…」



夕張「…賑やかな家族ね」フッ


天龍「…そうだな」ケッ




―――後日。海岸沿い



金剛「洗いたてのシャツ~青空に揺れてル~♪」

金剛「フンフンフーン」カシシラナイ



金剛「…アイム、ソーハッピーデース!」



金剛「……」フゥ

金剛(…寒い。頭の中が英語一色になるぐらいには寒い)←英語

金剛(なのになんで何故私は此処に来た? 何故私は此処にいる? 私はあまり覚えていな――)←英語

金剛(あっ、そうだ。釣りしに来たんだ、私)←英語

金剛(いやそもそもなんで釣りしようと思ったの? こんな寒いのになんで? 馬鹿なの?)←英語

金剛(…釣れば思い出すかな、多分)←英語

金剛(しょうがない。来てしまったものはしょうがない。せめてやることやってから…)←英語

金剛「…ン?」


??「…」スパー


金剛「oh、先客が…って」



金剛「なんだ、テートクのFriendかつ正義のHeroデシタか」ポーイ


女憲兵「なんですそりゃ…って、金剛様!? き、奇遇ですな」

女憲兵「…装備から察するに、釣りですかね。こりゃイメージと違う」


金剛「そっちも人のコト言えないヨ。煙管とかまた古臭いチョイスネ」


女憲兵「…ん、なんかすごく唐突にディスられた気が。もしかして金剛様、根に持たれてるんじゃ…」


金剛「…あの時は提督と鳳翔の居た手前、"タテマエ的"に許さざるを得なかったダケ」リールグルグル

金剛「私のHeartは、誰かさんへの怒りで毒蛇のように煮えたぎっていマース…」ギュラギュラギュラッ!!!


女憲兵「その節は大変失礼致しました」ドゲザ


金剛「気にしてないヨー」


女憲兵「いやあの本当、これ以上艦娘の方々に負い目感じるのは本官もイヤ過ぎるので、あの」


金剛「――気にしてないって言ってるデショ? D o   y o u  u n d e r s t a n d ?」ギロ


女憲兵「は、はひッ!」ケイレイッ




金剛「…あと、これ以上ってコトは、今までにも負い目を感じる時があったト?」


女憲兵「いやはや、お恥ずかしながら、その」


金剛「ま、詳しくは聞かないネ。…それがアナタ、憲兵サンの仕事なのだと分かっていマース」


女憲兵「…それは光栄で」


金剛「Hey、Friendの証に紅茶はいかが? ダージリンネ」コポポ


女憲兵「あ、これはこれは。…と言うか、釣りでもティーセットを持参するのでありますか」


金剛「英国じゃ人が集まれば其処がティータイムのハジマリデース。ミルクとシュガーはそこから勝手に取ってネ」


女憲兵「へぇぇ、世界ってのは広いものだなぁ…」

女憲兵「――しかし、何でまた釣りなんです?」ズズ


金剛「…何でだろうネ。多分暇を持て余した末のactionダヨー」クルクル


女憲兵「と、仰いますと?」


金剛「ンー、鎮守府に居ても、とにかく暇デ」

金剛「私はオフ、天龍と夕張もオフ。提督含めた他の四人はbusiness trip(出張)、日帰りデスが」


女憲兵「む、それなら天龍様と夕張様とご一緒に、ティータイムと洒落込めば良かったのでは?」


金剛「NoNoNo、それが出来たら此処にいないネ」


女憲兵「…ま、確かに」



――


金剛『ヘーイ天龍ゥー!! ティータイムをトゥゲザーしまショー!!』バーン


天龍『テンション高ぇなお前…』

天龍『ティータイム? オレはパスだ』ズズ


金剛『Why?』


天龍『何故ってお前』

天龍『逆によくオレを誘えたな? オレが持ってるモン見えないのかお前』


金剛『…燃料のドラム缶?』ハテ


天龍『珈琲缶だよッ! もうちょい上手い冗談無かったのか!?』

天龍『つか珈琲飲んでる奴へ向かって"紅茶飲もうぜ!"なんて提案してもどうなるかぐらい分かるだろ!!』


金剛『"レッツ、ティータイム!"ですよネ?』


天龍『うわぁ同じ日本語なのに話が通じねぇ!?』

天龍『…あーちくしょう。ツッコんでばっかで頭痛くなってきた…』


金剛『ティータイムすれば治るヨ』


天龍『なんなんだよそのティータイム万能説はよぉーッ!!?』

天龍『もう意味分かんねぇし! だいたいオレが珈琲飲んでる理由だって元はと言えば夏にお前が――』ゾクゥ


金剛『?』


天龍『い、いや何でもねぇ。くそっ、嫌なこと思い出しちまった…』


――



金剛「なんてコトがあって、天龍へのアプローチはフェイルドに終わったヨ」


女憲兵「…平和なんだけど、何処かズレがありますな」


金剛「次は夕張デス」


女憲兵「一応仕掛けたことには仕掛けたのか…」



――


夕張『ティータイム、ですか』チュイイイイン


金剛『Hai!』


夕張『むー、お付き合いしたいのは山々なんですが』カシャコン

夕張『…溶接作業してる体で、片手間に紅茶啜るのはちょっと難易度高いかと…』ジュウウウ


金剛『横からストローで供給してあげマス』ホレホレ


夕張『それは果たしてティータイムと呼べるんでしょうか?』


金剛『人が紅茶と向き合えば、カタチを問わずその時点でティータイムはティータイムと成りえるのデース…』


夕張『へえ。私またひとつ賢くなっちゃったなー、じゃなくて』


金剛『…』ギュム


夕張『ちょちょ、ちょっと!? ストロー押し付けないで!』


金剛『……』ニィィ


夕張『む、無言で笑うのやめてくださいよ! なんかこう、恐ろしすぎる!!』

夕張『あと金剛さん。その紅茶はホットですか、アイスですか!?』


金剛『ホットだヨ。寒いからネ』


夕張『そりゃどうも…って熱いものをストローで飲ませちゃ駄目ッ! 口の中大火傷不可避ですから!!』



――


金剛「なんてコトが」


女憲兵「……」カタカタ


金剛「…震えてるネ、憲兵サン。寒いノ? 紅茶…?」ジロ


女憲兵「あ、ああ大丈夫大丈夫。今持ってる紅茶飲めば治りますから、はい」ガタガタ


金剛「?」



――


金剛「そういえば憲兵サン。How old are you?」


女憲兵「…ド直球で聞くんですな。もっとこう遠慮とか…」


金剛「HeyHey、女同士ダヨ? 細かいことを気にしても仕方ないネー」


女憲兵「いや確かにガールズトークには遠慮なんて皆無だったりしますがね…」


金剛「…"ガール"ズ? 私はともかく、憲兵サンをガールと呼ぶのはとても…」ハテ


女憲兵「しょっぴかれたいのか貴方様は」


金剛「艦娘をしょっぴく? 憲兵サンにそんなコト出来るんデスか?」


女憲兵「形式上なら、ね。艦娘の方々だって犯罪者になれるんですよ、人権あるから」


金剛「Crimeなんて犯したつもりはないネ。罪状述べて貰わないと満足できないヨー」


女憲兵「名誉毀損罪。大人しくお縄にかからなきゃドタマぶち抜いて差し上げます」


金剛「Objection。それは脅迫罪デース」


女憲兵「口答えした。公務執行妨害罪」


金剛「Dream on。それは職権乱用罪だヨー」


女憲兵「…くそぅ、この英国淑女め。中々に口がまわる。お付き合いありがとうございました」ハハ

女憲兵「ノリがよろしいですな金剛様。英国人ってのは感情の起伏の落ち着いたイメージがあったのですがね」


金剛「チッチッチ、物事を偏見だけで判断するなんて人生損してマース」

金剛「英国人は確かに冷たいだの何だの言われてるケド、その実とってもHeartの暖かいひとばかりネ。日本と一緒」

金剛「英国人と日本人は結構似てマス。そもそも同じ島国だったり、基本的に礼儀正しかったり。共通点はそこそこダヨ」


女憲兵「ほー…それはそれは親近感の湧く話ですな」



女憲兵「…って、あれ? そもそも金剛様って英国人? 日本人?」


金剛「……アレっ。そういや気にしたコトなかったヨ」

金剛「日本が建造をRequestしたし、Japaneseと捉えるのがNormally…」

金剛「でも、私を設計したのは英国人…建造したのも英国人…??」←半分英語

金剛「何てこと…!? 私は一体何者…!?」←英語


女憲兵「…焦ると英語が飛び出す辺り、英国の気質が強そうだと思いますがね」ズズ


金剛「…まぁ、どっちでもいいヨ。前世はともかく、この私は少なからず向こうで働いてたカラ」


女憲兵「ん、つまり、金剛様って英国帰りで?」


金剛「結構前まではネ。その後はこの国来て軍令部の下で動いてたヨ」

金剛「…でも正直サ、軍令部ッテ過保護というか温室すぎるというか。艦娘の扱いがイイ意味で酷いんデス…」


女憲兵「ほう」


金剛「極小の損害でも、すぐドック入り勧めてくるし。私達艦娘が最善の状態で出撃できるよう手配してくるし」

金剛「何でショウ。…艦娘を大切に思ってるのは分かりマス。デモ、何処か…」



金剛「…軍令部が艦娘を"怖がってる"ような、そんな気がしたんデス」


女憲兵「……へぇ」


金剛「…Oh、sorry。憲兵サンにこんなコト言ってもしょうがないネ」

金剛「違和感はUnknownなままデスけど、今は大して気にしてマセン」

金剛「事情が事情で此処の鎮守府にお世話になることになって、テートク達と出逢えて。私は満足だからネー」



金剛「で? 憲兵サン、何歳?」


女憲兵「覚えてやがったか…」

女憲兵「…そうだ、金剛様は。何歳でありますか?」


金剛「話をフって回避しましたネ。中々やりマース」

金剛「私は…The age of one hundred デス」


女憲兵「わんはんどれっど…百歳ですか。なるほどなるほど…」

女憲兵「え、百歳?」


金剛「ウン、百歳。あと、プラス数歳カナー?」


女憲兵「…あっ、大昔の竣工年からの概算で」


金剛「Umm。でもぶっちゃけ、私だって百年間ずっと海に浮かんでたワケじゃないネ」

金剛「この"身体"になって、自分で自分の過去を調べてみたコトもありマシタ」

金剛「でもActually、私が生きたと言えるのは、その半分にも満てなかったヨ。解釈の違いはいろいろだけどネ」


女憲兵「…でも、結構いい歳なんじゃ?」


金剛「ま、そうだネ。言うなれば三十代後半ぐらいデース、今の私」

金剛「艦娘である限り、私たちは不老ですケド」


女憲兵「末羨ましい。体重とかも変わったりしないんでしょうなあ…」


金剛「するヨ? 徹夜すれば顔だってむくみマス」


女憲兵「…変なところで人間と同じとは。難儀な身体ですな」

女憲兵「…てかそれ結局、金剛様もガールとは言い難い年齢じゃん…下手したら本官より歳食ってるし」ボソッ


金剛「さて憲兵サン。How old are you?」ニッコリ


女憲兵「…提督殿よりは若いかなーって。十歳以上百歳未満であります」


金剛「…フム」

金剛「じゃ、好きな人は? 早く結婚したほうがいいんじゃないデスか?」


女憲兵「えぇーそんなまたド直球な…」



女憲兵「職業柄男運に恵まれなくてですな。…あー、でも。高望みするなら若いイケメンがいいかなぁ…」ヘヘ


金剛「young…フム。提督は含まれていなさそうネ」


女憲兵「提督殿? いや確かに尊敬はしておりますが、そういう対象としては」

女憲兵「あとあの人確か契りは結んじゃってるような…」アレッ


金剛「ふーん。まあ今となっては私としても、結構どうでもいいコトだったヨ」


女憲兵「? どういう意味で」


金剛「告白する前に失恋してるみたいなものだからネ。あの二人見てると」


女憲兵「…あっ、提督殿と鳳翔様か」


金剛「Exactly。…まァ、私はいつも通り生きマスヨ。私がテートクを好きなのは確かだケド」

金剛「恋だけが愛じゃないから、ネ」


女憲兵「…ふむ」ズズ


金剛「そうだ。テートクフレンドの憲兵サンに聞いておきたかった事があるネ」


女憲兵「え? ああ、本官に答えられることなら何なりと。…テートクフレンドて」


金剛「昔、提督と一緒にworkingシテタとか」


女憲兵「…あー。そうだったかな」


金剛「昔の基準がどれぐらいか判断は付かないケド、十年弱と過程したら…」ウーム

金剛「提督は四十代って言ってたし、逆算するト…最低でも憲兵サン二十代前半はありえませんよネ?」


女憲兵「…じゃあ二十代後半で。別に過去に同僚だからっつって、同年代とは限りませぬし」

女憲兵「あと一緒といっても、提督殿に世話焼いてもらってただけと言うか、本官が迷惑掛けてただけと言うか…」


金剛「なるほど。憲兵サンもまた、提督の魅力に憑かれた者の一人ト」


女憲兵「魅力ねぇ。まあ間違っちゃいないかも」



女憲兵「あの人はね、金剛様。そこそこ寂しがり屋なのであります」


金剛「Lonely?」


女憲兵「ええ。本人は必死こいて隠してるみたいではありますが、はたから見てるとそれが結構顕著なので」

女憲兵「あとアレですな。人様に対して仲間に頼れだの何だの宣うくせして」

女憲兵「いざ自分が不安抱えると、大抵一人だけで悩んじゃう。ありがちな馬鹿野郎なのでありますよ」


金剛「…」


女憲兵「だから金剛様。あの人の傍に居てやってくださいな」


金剛「え?」


女憲兵「あの人だけじゃなし、鳳翔様暁様長門様、あと…夕張様と天龍様」ユビオリ

女憲兵「みんながみんな、結構寂しがり屋。誰かが傍に居てあげるべきなのですよ。誰も一人じゃ生きられんのです」

女憲兵「それでも一人きりで生きてしまった者の末路は想像に難くはありませぬ」


金剛「…一人。確かにそうだネ」

金剛「私も、本当にひとりぼっちになってしまったと、一時期本気で思ってたことがあったヨ」

金剛「…デモ、みんな優しくて、みんな暖かくて。その時は、世界もまだ捨てたモノじゃないと、切実に思ったものデス」



金剛「The rain already stopped, my heart clears. ―――私は、幸せ者ネ」


女憲兵「なるほど。…いい仲間をお持ちになったようですな」


金剛「…アト、中々憲兵サンも思いやりのあるイイ人デス。提督の話とは違って」


女憲兵「え」


金剛「何でもガサツとか、あんなのだから結婚出来ないトカ。結構好き放題言ってたヨー」


女憲兵「…あの野郎。予想はついてたけどやっぱり裏で悪口言ってやがったのか…ッ」カチャコンカチャコンッガチャコッ!!


金剛「OK。その物騒な二連装砲しまうネ」


クンクンッ


女憲兵「…あ、金剛様。釣竿引いてますよ」


金剛「oh yeah! ファイヤーッ!!」グイィッ!!


ザッパーンッ!!


女憲兵(リール巻かんかった!?)



魚<ピチピチ


金剛「HAHA、種類分かんないネー!」ケラケラ


女憲兵(…すっごい楽しそう)

女憲兵「お見事ですな、金剛様。ところでそれ、どうするんです?」


金剛「ふっふっふ。一度、魚を釣ったらやってみたいことがあったのデース! 思い出しマシタ!」

金剛「catch and releaseッ! Japanese say "再放流"! 自然界への礼儀ネ!」


女憲兵「ほ、ほう…」


金剛「さあnameも知らぬ魚サン! 手を離れ、再度、大海へッ!」ブンッ


女憲兵(ブン投げ…)


魚<ヒュルルル


金剛「Let's say ! キャッチアン、リリ――」


女憲兵「…」ズズ


鳥<キャッチ


金剛「…す?」


女憲兵「」ゴホッ



バサバサ…


金剛「…」


女憲兵「…あ、あの。金剛様?」


金剛「…」


女憲兵「ほ、ほら! 自然界に戻すって分には、ね? 鳥の胃袋に収まって、魚も満足かも…」


金剛「…」フラァ

金剛「―――Ahhhhhhhッッ!!!!!」クズレオチ


女憲兵「何が起こるか分かりませんな。…人生」


金剛「…憲兵サン」


女憲兵「…はい」


金剛「私、将来的に釣りで生活するのは無理みたいネ」ドンヨリ

金剛「fishing equipment…世話になったヨ。数十分ぐらい」


女憲兵「…そうでありますか」


金剛「…ま、結果的に、憲兵サンとティータイムをエンジョイできたカラ」ヨイショ


女憲兵「ん、お戻りで?」


金剛「暇も潰せたし、友達も増えたし、私は満足ダヨー」

金剛「あ、ティーカップは鎮守府に返しに来てネ!」


女憲兵「はは。了解であります、金剛様」


金剛「See you again! 憲兵サン!」スタスタ




女憲兵「…ふむ」

女憲兵「…」ズズ


女憲兵「…平和ねぇ」



女憲兵「いいものだけど、軍人にとってこれ以上の皮肉は無いんだろうなぁ」




―――



夕張「出来たわよ天ちゃん! 半自動で缶珈琲に砂糖とミルク入れるだけの機械!」


天龍「なにそれ意味わかんね」


夕張「二つのスロットにそれぞれ砂糖とミルクがあてがわれてます! 取り外し可能!」カシャコーン


天龍「…ああ、はい」


夕張「フル充填しておきます! それぞれ満タンじゃないとまともに機能してくれないから要注意!」ドダバザラザラァ


天龍「…なんでそこで妙に頭悪いんだよ」


夕張「あとはお好みの回数だけボタン押せば出る! 水洗いも対応! 防湿も完備!」パカ

夕張「完璧! どうよ!?」シャキーン


天龍「…いやどうよって言われても。オレ、ブラックイケるし」

天龍「あとお好みってお前、結局それ」



天龍「もう機械じゃなく自分でやれよ」


夕張「…あっ」



金剛「ン、夕張。そのメカは何デス?」スタスタ


夕張「存在を否定された試作機です」シクシク


天龍「…だってどう考えたって手間じゃねぇかそれ。フル充填じゃないとまとも機能してくれないとか」


夕張「機能してくれないわけじゃないもん! 時々バグるだけ!」


天龍「うん。その時々をまともに機能してない状態って言うんだけど、お前の頭バグってんじゃねぇのか?」


夕張「誰がナイチチメロンですってぇ!?」


天龍「誰もそんなこと言ってねぇよ!? お前ちゃんとある分にはあるだろーよ!」


金剛「…」パカパカ



金剛「さっきチョット聞こえたケド、防湿だっけ? コレ」


夕張「え? あ、はい」


金剛「じゃあ茶葉の保管庫にでも転用しまショウ。排出機能は取っ払う羽目になりますケド」

金剛「…まず妙にBigデスねコレ。1スロットが机の引き出し二段分ぐらいとは」


夕張「大きさは浪漫ですから」フフーン


天龍「黙ってろポンコツ」


金剛「片方はどうにかなっても、もう片方は…」ムゥ

金剛「あっ、提督にPresentで解決デス。Cigarの入物として使って貰えばOK」


夕張「お、おぉー…」ナットク



天龍「なぁポンコツ先生。お前の作ったモノが、金剛のお陰でよっぽど良い方向に使い道を見出してんだけど」


夕張「な、何言っちゃってんの天ちゃん。私は最初からこうなることを予期していたのよ?」


天龍「ほざけ種無しメロン」ケッ


夕張「貴様それどーいう意味だぁあああッ!!?」グワシィ


金剛「…oh、激しいスキンシップですネ」アハハ


夕張「これはスキンシップじゃない! 追求ですよ!」

夕張「おい! 吐け! どういう意味よそれ!? 吐けっつってんでしょーが!!」ハンナキ


天龍「…」グラグラ←特に意味は無かった

天龍「金剛。今日の晩飯当番って誰だ?」グラグラ


金剛「ン。エート確か――」


夕張「私から目を逸らすなぁあっ!! 置いてきぼりはいやぁあああっっ…!!!」ワーン



―――――



金剛

エンジョイナウ。

紅茶くれ? 知らないGhostデース。


女憲兵

最近仕事が減りました。よきかな。

自称二十代後半。若さの秘訣は中途半端に美人なこと、これも自称。


天龍

とある妖怪の残していった珈琲を消化中。

ブラック飲めるオレかっこいい、とかは別に考えてない。…考えてないっつの! 飲めるんだから別にいいだろ!


夕張

今日も元気に開発中。

結構ポンコツ。努力の方向音痴。

ここまで。気分次第でまた夜中投下。あとはシリアス()ぶちこんで二章閉廷

テープに関しては壊れかけが伝わったのなら十分よかったかなって。空欄箇所の齟齬はただの添削ミスです(本音)

あと近々鳳翔さんに濡れてもらおうかと思うんですけど
畏れ多いやら小っ恥ずかしいやらでマトモに筆が進みません。どうすりゃいいのだよ?

ではまた



人間どもの裏話篇(時期:ドラゴン篇開始直後)



リリリリッッ!!



提督『…』ムク

提督『…』アクビ


リリリリッ!!


提督『…喧しい』ゴキゴキ



提督『…』ガチャ

提督『こちら○○大佐』


女憲兵『――お久しぶりですな、提督殿』


提督『…なんだ、お前か。"団長"殿』


女憲兵『なんだ、とか言わないでもらいたい。傷つくなぁ』

団長『…あと何です。団長ってのはやめて頂きたい、慣れておりませんので』


提督『何だ、団長は嫌か。じゃあこうしよう、憲兵総司令官殿?』


団長『やめろつってんの。いい加減キレますぜ』


提督『今更何を言ってる、イイ肩書きじゃあないか』


団長『貴方と同じでね、本官も肩書きが嫌いになりましたよ。こんな席に座っちまったのが運の尽きか、ちくしょう』


提督『精々その座り心地に甘んじておくといい』


団長『皮肉ですな。管理職がここまでクソッタレだとは思わなかったであります』

団長『もっと管理職って仕事少ないんじゃないのか…こんな多忙とか聞いてない…』


提督『…で、こんな遅くに何の用件だ。冷やかしなら今度お前のあることないこと上層部(うえ)に流すぞ』


団長『いやいやd…提督殿、本官は至極真っ当な理由でこの受話器を握っております』

団長『一応愚痴も揃えてきましたけども…まあそれは次の機会に』


提督『そのまま忘れてしまえ。そうすりゃおれもお前も幸せだ』


団長『それが出来ないから苦労してるんですが――じゃなかった、本題へ戻りましょう』



団長『艦娘を一人、貴方に保護してもらいたい』


提督『…何?』


団長『詳しいことはそのうち指令が来るでしょうな。これはその事前告知のようなものと解釈して頂ければ』


提督『……』


団長『嫌ですか?』


提督『…おれの鎮守府は託児所じゃないが』


団長『上層部にとっちゃ、昔の散々馬鹿やった後始末を清算したいんでしょう。今更にも程がありますけども』

団長『…その為に本官達や各鎮守府の方々に迷惑かけるのは、お門違いでありますが』


提督『…だからおれに、か』


団長『まあ貴方が本ッ当に嫌なら、撥ね付けることも可能かと。功績もありますしな』

団長『その場合めんどくさい口実考える作業と、書類作業がもれなくセットで付いてきますがね』


提督『…いや、分かった。引き受けよう』


団長『恩に着ます』


提督『気にするな』



提督『――しかし、艦娘の異動とはな。どうした、何か起きたのか』


団長『何も起きてなきゃ、わざわざ貴方の手を借りようとは思いませんや』

団長『そもそも憲兵団を動かしてまで艦娘を異動させるんです。大体予測はつきませんかね?』


提督『…面倒ごとか。大変だねぇ団長殿』


団長『ええ。もう結構寝ずの仕事ですわ』

団長『何分、バラけた艦娘の方々の再就職先を探してあげなきゃならんので――』


提督『…? ちょっと待て。異動は一人だけじゃないのか』


団長『え、あっはい。えーと提督殿に任せる一人の方を含めて四、五隻…』パラパラ

団長『…ん、解体を望んでる方もいますね。可哀想ですが…しかしこれで本官の仕事も幾ばくか減りそうか…』ブツブツ


提督『いやそうじゃない。一人二人なら"提督との反りが合わなかった"で片付くが』

提督『お前の言う数は提督下一個レベル…、"提督が纏められなくなった"ようにしか思えん』


団長『…あー、はい。そうです、ねぇ』


提督『ふむ。"提督"の身に不幸でも遭って、任務の続行が困難になったとか、そういったことか?』

提督『だとしたら、おれが艦娘を預かるのは"提督"が戻るまでの、あくまで一時的な――』


団長『あー、いや。多分永続的です、はい』


提督『…何?』


団長『そのー。…纏める役は、もう駄目になってましてね』

団長『為るべくして不幸は訪れたと言うか、…本官達が不幸を訪れさせたと言うか』


提督『…お前まさか』


団長『…』


提督『…はぁー。どいつもこいつも、血の気が抜けん奴等め…』



提督『で、殺す必要は。本当にあったのか?』


団長『ありましたとも。ええ、私は…本官は、間違ってなどいませんとも』

団長『奴は艦娘をこきおろした。吃驚ですよ、本気で捨て艦を実行しちまいやがったんですから』


提督『なに、捨て艦だと? …おいおい、全国の提督が聞いたら腰抜かすぞ』

提督『おれのところじゃありえんな』


団長『そのありえないことをしでかしやがったから、本官達は死をもって奴を処分致しました』

団長『はい、異論は?』


提督『ふん。おれはしがない一提督、横槍を入れる気はない』

提督『憲兵の、その司令官殿がそうすべきと判断したのなら、それが正解だったんだろうな』

提督『それでお前は、悪を挫いて艦娘を助けた。よかったな、お前はヒーローだ』ボウヨミ


団長『…はい。もうそれで構いませぬ。ヒーロー達の背中は血まみれでありますよ、今も昔も』

団長『死臭は消えず、傷跡は残る。でも、残るのは悪いことばかりじゃない』

団長『そうでありましたよね、提督殿?』


提督『…』


団長『…そうだ、艦娘の方が到着した際には』

団長『本官の代わりに、謝っておいてくださいませんか。役立たずの人間達で、申し訳なかったと』


提督『…ふん。お前の代わりに? 馬鹿を言え』

提督『おれは人間代表で謝れるほど器が大きいわけでもない。おれの謝罪など、彼女等にとっては何の薬にもならん』


団長『…けけっ、確かに。無茶言って申し訳ありません』

団長『…そういえば、夕張様、でしたっけ? 最近提督殿の元で建造に成功したとか』


提督『ああ』


団長『そのことで散々気苦労かけちゃったけど、問題が起きたから貴官の手を借りたいんだーなんて』

団長『都合のいい話ですよな、あの軍令部。昔から少しずつ学んじゃいるけど、進歩が遅いの何の』

団長『こないだ元帥閣下言ってましたよ、"儂の言葉を聞く耳持ってるのか持ってないのか、なんかもう色々辛い"って』


提督『…あの爺さんも、神経磨り減らしてばかりだな。世話になりっぱなしだし楽してもらいたいもんだが』

提督『都合よさは今に始まったことじゃない。しがない手足は文句も垂れずに、お粗末な脳に従うだけだ』

提督『…まあ、昔に比べりゃ、此処も少なからず平和にはなった。進歩は十分してる』


団長『けけッ! 血生臭い平和ですな、少なくとも本官にとっちゃ』


提督『大丈夫だ、お前だけじゃない。彼女たちと違って、おれ達人間から血の臭いは消えん。いつまでもな』



提督『…あと、お前の話の続きだ』


団長『…』


提督『お前がどうしても謝りたいなら、いつか機会ぐらいは用意してやる』

提督『それでお前が満足するなら後は勝手にしてくれ。…というか、もう寝かせてくれ。おれ眠いんだ』


団長『了解であります、スイマセン。また迷惑をかけて』


提督『持ちつ持たれつだ。もう気にするな』

提督『今度茶でも飲みに来い、しみったれた話はそこで笑い飛ばせばいい』


団長『…そうでありますな』

団長『お互い頑張って参りましょう、今までと同じように』


提督『はは、またな団長殿』


団長『ええ、失礼致します。提督殿』


ガチャ




――

――――


???篇 act2



ガチャ


…ツー


『…です』


『───────』


『はい』


『───、───』


『無事に彼女、"天龍"様の着任は完了しました』

『"自分の血で信頼が買えたなら安い物"、あの人はそう語っています』

『時に、一つお聞きしても宜しいか』


『────』


『今回の件、軍令部はどう揉み消すおつもりで?』

『この事実が明るみに出れば、世間は黙っていないと思われますが』


『─────』


『…本官が気にすることではない。成程、確かにその通り』

『ですが想像はつきますな』


『───、──』


『艦娘が人間へ歯向かった、そんな不都合な事実は闇に葬るのが筋が通っている』

『邪魔なものは握り潰してしまえばいい、権力でも何でも使って』


『─────』


『じきにあの"提督だった男"の処分は決まっていた。で、ありますか』

『…それは、それは』


『―――』


『…やっかいなもので。即効性と潜伏性が存在しますのでな、"汚染"ってのは』

『あの時、駆除しきれなかったモノが今更沸いて来た。まあ、予測の範囲内であります』



『本官も人間です。非人道的な道に目を背けたくなる性分ですので』

『何です。"捨て艦"でしたか? けけっ、よくもまあ。実行に移そうと思いましたよねぇ、あんな計画』

『彼女達は人間一人程度の私物じゃないってのに』

『……本当、時期が時期で良かったのか悪かったのか。捨て艦なんて』


『…―――、―――』


『ヒトの野心って怖いモノでありますよな。部下の悲鳴すらも、笑顔で押し潰しやがる』

『…で、ヒトの道を誤った結果、自分の部下に八つ裂き。なんとも笑える末路でありました。めでたしめでたし』


『───』


『ええ、気を付けなくては。本官も部下を持つ身ですのでね』

『本官は本官の部下達の期待を裏切らぬよう、精進致す所存であります』


『────、──』


『いえいえ。本官達は為すべきことをしたまで』

『…本官達は、遅れてくるしか能の無いヒーローどもは、いつだって惨状の後の土を踏む』

『事が起こってからしか、本官達は動けない。…けけっ、とんだ偽善者だ』

『あ、あと一つ。お聞きしておきたいのですが』


『───、─────』


『単純に兵器と見るには、些か彼女達は人間に近すぎる。あの人も同じ事を言うでしょう』

『其方は、そうは思われませんか』


『……───』


『言われずとも分かっている、ですか。まあそれはそうでしょうな』

『貴方様も艦娘を指揮する"提督"の一人。彼女達のことは本官より貴方様の方が詳しいでしょう』


『―――』


『始まりも、元を辿れば艦娘だった』

『…だが彼女達を生み出したのが人間の所業ならば。その責任は、人間が払い、人間が終わらせるべきだ』



『無論、"全てが終わったあと"のことも、貴方様は考えておられるのでしょうし』


『………』

『…、─────』


『…ええ、とやかく尋ねる気はありません』

『出会いがあり、別れがあるのは。この世界の摂理』

『本官達は最後まで見届けましょう。それが我々の仕事なのだから』


『――、―――』


『ああ、そうだ。最後にこれだけお伝えしておかねば。宣伝文句を』


『―――』


『本官達、憲兵は、貴方様達の味方にもなれるし、敵にもなれる』

『常に中立の立場で、全てを審判するのが本官達のお仕事。それを、お忘れなきよう』


『―――――、――』


『では、失礼いたします』

『元帥閣下』



ブツン



『…ふん。喪うのは惜しい、ね』

『じゃあその喪いたくないモノの為、今日も働きますか』

『全国の、提督たち』



ガチャンッ




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【○○鎮守府、現在閲覧可能情報】



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 夕張:Light Cruiser(軽巡洋艦). △


 同型艦は存在せず。後継艦に古鷹型。

 ○○提督指揮下艦、及び○○提督の下で建造に成功した艦。


【本項目は未完成です。なお完成の目途もありません】


 本項目を埋めるべく情報を収集しても、まるで情報のない艦娘。 史実事項は"軽巡洋艦夕張"の項目を参照。→【――】

 艦娘としての建造日時も不明、及びそれまでの経緯も不明。

 "提督も艦娘も妖精も知らないうちに造られた"艦娘。


 ○○提督は、"この艦娘を建造した記録、その痕跡すらも見当たらない"と発言(注1、注2)。

 "この艦娘の建造を、妖精へ指示した記録もない"。秘書艦たちの証言からも、この発言が虚偽である線は薄い。

 軍令部直属の艦娘が通訳となり、妖精の証言を得ることも出来たが、同じ結果となった。


 ○○提督は本艦を自身の管轄下に置く事を宣言。反対意見も少なからず存在したものの。

 元帥の賛同意見により、本艦を○○提督管轄下艦へと最終決定(注3)。


 注1:"偶発的に発生した艦娘"という説もあるが、前例は無し。ましてや立証など出来るはずもない。

 注2:無論、"夕張"本人も、自分がどうやって生まれたのか覚えていない。
 ―――赤子の頃の記憶を、人間は覚えていないのと同義である。
 ―――理解していたのは自分の"名前"と、自分が"艦娘"ということ、それだけであった。

 注3:言ってしまえば、人間は得体の知れない存在に一種の恐れを抱いていた。
 ―――自分達の解らないものに精一杯の理由付けをしたかっただけであったのだが、結局は失敗。
 ―――ゆえに、"艦娘とはそういうもの"なのだと。人間は割り切らざるを得なかった。


skills:Engineer(技術者).
―――Examination User(試験運用艦).



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 天龍:Light Cruiser(軽巡洋艦). △


 天龍型一番艦。

 ■■提督指揮下艦、及び■■提督の下で建造に成功した艦。後に○○提督指揮下艦へ。

 艦娘として再度この世に生を受け、深海棲艦との戦争に奮戦していた。


 しかし問題が発生。

 ■■提督へと謀反を起こし交戦、殺傷(注1)。軍令部は本艦の解体を視野に。

 思案と会議の末、それは行われず、他鎮守府に左遷という処分が可決された(注2)。

 ○○提督とも交戦したが、傷と心身の疲労から敗北。人智の及ばぬ艦娘の力にも疲労という限界は存在する。

 本艦はおそらく、そのことの理解には到っていなかったものであると推測される。


 本艦は○○提督との和解に成功し、困難と思われた実戦への復帰も可能となった。



 ■■提督については、憲兵団に処分を一存。上記の謀反は、艦娘の扱いを間違えた■■提督の過失である。

 ある種において、"汚染"の残滓が色濃く残ってしまったが故の事件だと言えよう。 

 汚染(注3)については此方を参照→【リンク切れ】
 
 各鎮守府の"提督"は、以前にもまして艦娘を労る努力をせねばならぬことを、留意されたし。

 己の不注意でどんな災異が己に降りかかろうとも、誰かの関知する所ではないのだから。


 注1:事件の原因は、"提督"の横暴による士気の低下。
 ―――及び艦娘からの"提督"不信任の意見が多数であった為の、謀反だったとされる。

 注2:"艦娘はわが国の主戦力"。故に、軍令部が解体を渋ったのではないか、との意見も。

 注3:過去に軍内で発生した、二度目の内部抗争、動乱事件。
 ―――現在添削中。


 skills:Swordsmanship(剣術).
 ―――Hand-To-Hand Combat(白兵戦).




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 提督:Admiral(提督). ▽

 military rank/career: Colonel/Captin(海軍大佐).
 ――――――――― ?????? "??????" ?? ??("―"――――)
 ―――――――――"??????" ????? ???????("―"――)

 ――――【――現在添削中――】――――

 skills:Operational Commander(指揮官).
《―――Close Quarters Battle(近接戦闘術)》
 ―――????????? ???????(―――――)

《medical recodes:Impaired Vision In Left Eye(左目を視覚欠損)》


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 暁:Destroyer(駆逐艦). ▽

 ――――【――添削終了、現在閲覧承認待ち――】――――

 skills:Thuder Stroker(雷撃使い).
 ―――Marksmanship(射撃術).


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 長門:Battle ship(戦艦). ▽

 ――――【――添削終了、現在閲覧承認待ち――】――――
 
 skills:Hand-To-Hand Combat(白兵戦).
 ―――Bombardment Stroker(砲撃使い).


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ブツン…ツー


ザ、ザザザリ、ザザザ




カチ、カチ…


【現在は使われていない項目です。続行しますか?】<Y/N>…[Y]


【アクセスエラーが発生しました。このエラーを無視し、続行しますか?】<Y/N>…[Y]



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 ??:A???ral(???. ▽

 mi???ary ra????ar?er:【抹消済み】


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 ??:De??ro??r??逐??. ▽


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 ??:Ba?tl? ?h????艦?. ▽


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【復元が可能です。直ちに、またはバックグラウンドで実行しますか?】<Y/N>…[ ]


………[N]


【システムオールダウン、本機をシャットダウンします】



ブツン

ここまで。なお三章は当分ないです。添削云々より展開が半分すら纏まっておらんのです

将来的に(時系列的には過去的に)暁ちゃんには暴れてもらう予定ですが
もうこれ完成いつになるかわかんねぇです。期待せずにお待ちください

今後は小ネタ集になります。シリアスなんて必要ねぇんだよぉ!

ではまた




 雪篇



金剛「テイトク、鳳翔! 雪デス! It snow!!」バーン

金剛「…あれ? 提督は…」キョロ


鳳翔「あら、金剛さん」


金剛「Hello、鳳翔。テイトクは? どこ行きマシタ?」


鳳翔「ああ提督なら、先程外に出て行かれましたよ」


金剛「oh、報告に来る必要がなかったヨ」

金剛「出て行ったってコトは…雪掻きでもしに行ったんデスかね?」


鳳翔「最初の内はそうかも、しれませんね」


金剛「…妙に含みのある言い方ネ」


鳳翔「分かりますか?」ニコ


金剛「Hai。…最初の内ってコトは、後は一体どうなって」


鳳翔「…ふふ、見てみれば分かりますよ」




―――


長門「――だァぁあああああッッッ!!!」ブンッ


天龍「ォぉおおおあああああッッッ!!!」ブンッ


提督「…」サッ


天龍「ちィッ!」


提督「」ザッ


天龍(ッ、踏み込まれ…ッ!?)


提督「早めに返すぞ、天龍」ブンッ


天龍「ぐぁはッ!?」パスッ

天龍「」ドシャア


長門「て、天龍ゥぅうううう!!!」

長門「ッおのれ――!?」


提督「どこを見てる」ブンッ


長門「ッ!」サッ

長門「はァッ!!」ブンッ


提督「ッ!?」バッ

提督「」ゴロゴロズシャァッ!!


長門「…ちっ。当たらないか…ッ」

長門「肉を切らせるだけでは、貴方を断つことは出来んようだな…ッ」


提督「…」ムクリ

提督「…危なかった。今のは危なかったぞ、長門」


長門「立て天龍! まだ終わってない!!」グイッ


天龍「ぐ…畜生。そうだ、まだ終わってねぇぞ…ッ!!」ムクリ


提督「――面白い、来るがいい!!」



金剛「…」

鳳翔「…」


金剛「grasp」


鳳翔「ふふ」



金剛「…ワタシの地元じゃ滅多に雪降らないから、そこそこ心躍らせてたケド」

金剛「それと匹敵するぐらい楽しんでますネ、あの人たち。逆にちょっと冷めちゃったヨ」

金剛「…まあ、全力で楽しんでるようで何よりネー」


鳳翔「雪合戦を、ですね」


雪だるま「」


暁「」ペタペタ


夕張「」ガシャガシャ


金剛「wow、あのsnowman。テイトクの帽子被ってマス、可愛い」


夕張「あっ、金剛さんに鳳翔さん。どうもです」ガシャガシャ


金剛「Hey夕張。…両手にバケツめっちゃ担いでマスネ、重くないノ?」


夕張「あはは、重装備にゃ慣れてますから」

夕張「暁ちゃん、雪追加」ザバァ


鳳翔「相変わらず、こういうの上手いわね。暁ちゃん」


暁「ほ、褒められるようなことじゃないもん」カリカリカリ


金剛「素直じゃないネー…。……ン?」

金剛「あ、頭に彫りこみいれてる…ッ!?」


鳳翔「…本格的なのも相変わらず、ねぇ」フフ



提督「」ドシャァ


長門「ははは勝ったぁ!」


天龍「やってやったぜ!」


金剛「…おー、いまいち何が勝利条件か分かんないケド、お疲れサマ」


長門「当たっていいの二回まで!」


提督「…おれ四回まで」ゴロリ


金剛「二対一ダカラ? よく二人相手に張り合えマスねテートク…」


提督「…年々ごとにボロ出るの早くなってる」ユキツメタイ


天龍「金剛! お前もやるか!?」


金剛「遠慮しマス。多分ついてけないからネー」


長門「残念だったな金剛! もう戦いは始まってるぞッ!」ブンッ


金剛「ひゃっ!? ちべたっ…!」パスッ

金剛「や、やってくれましたネ! 当方に迎撃の用意アリ、思い知るがいいデス!!」ブンッ


長門「軽巡ばりあーッ!」グイッ


天龍「ぐわあーッ!?」パスッ


金剛「シット! 外した!!」


天龍「いや外してねぇよ!? オレのカウント無しか!?」


長門「はっはっは! 捉えてみろ!」ダッ


金剛「あーんもう、このっ! このぉっ!」ブンブンッ


天龍「ごふぇッ!?」ドシャァ


長門「どうした、全弾天龍に吸い込まれたぞー?」ツカマエテゴランナサーイ


金剛「も、もうーっ! 待ちなサーイっ!!」ブンッ



提督「…」


鳳翔「提督」


提督「…ん」ゴロ


鳳翔「風邪、ひいてしまいますよ?」


提督「…鳳翔の心配が暖かい、多分大丈夫だ」


鳳翔「…あら、まあ」フフ


天龍「…今に始まったことじゃねぇが、小っ恥ずかしいこと平気で言うよな。あんた」アオムケ


提督「…そうか?」


夕張「天ちゃんも大概じゃない?」ザクザク


天龍「あ?」


夕張「だって天ちゃん、自分のポエムノート()に"ゲレンデの雪溶かしちゃうくらいの熱い――」


天龍「テ、テメッ!? なんでそれ知って」


夕張「っとと、手と足がすごく滑ったー」ザバァ


天龍「もごぉあッ!?」


夕張「あっごめん天ちゃん」ハッハッハ


天龍「うぇっ、ごほッ! 何しやがんだ! 殺す気か!」


夕張「いやぁ、顔赤くしてたから。クールダウンよクールダウン」ケラケラ


暁「」ペタペタ


雪だるま「」


鳳翔「…あら、貴方様に兄弟なんていらしたかしら?」


提督「ん? …はは、話してなかったかな。実は冬だけ逢いに来るんだ、暑い所が嫌いでなこいつ」


暁「…///」ペタペタ



―――


金剛「――はぁ…ッ、はぁッ…!!」

金剛「…ッ」キョロ


金剛(び、Visual target lost…!? そんな、馬鹿なことが…)

金剛(眼を離したのは雪を固める作業の一瞬だけ。その一瞬に、長門は何処に消えタ…ッ!?)キョロ


金剛(大体ここには障壁なんてない…、ましてや隠れる場所ダッテ…)


金剛(一面は白…雪一色。屋外に引っ込むには時間が足りなすぎるハズ…)


ズッ…


金剛(…wait。snow? hide? …雪隠れ?)

金剛「まさか――ッ」クルッ


ザバァッ


長門「討ったぞ、金剛ォぉおおおッ!!」


金剛「Sure enoughッ!!」ブンッ


長門「何…ッ!?」バッ



金剛「…外した、か。each other…」フゥ


長門「…ほう。私の奇襲を避けたか」


金剛「本当に雪の中に隠れてるとはネ…。でも、タネが割れれば簡単なコト」

金剛「奇襲なんてモノは、死角からしか飛んでコナイ。なら死角からの攻撃だけに集中してやればいいのデス…」


長門「はは、見破るだけでなく、有言実行とは。流石だ金剛」


金剛「フフ、伊達に地獄の鬼金剛とは呼ばれてないからネ」

金剛「"Ogre"は姑息な策略を、絶対的な力で圧し潰す。四の五の考える前に、拳を握った方がいいヨ――長門」


長門「なるほど。確かに、その通りかも知れないな…」

長門「――だが鬼よ、知っているか?」


金剛「…?」


長門「"蛇"は、時に己が体躯以上の獲物を丸呑みにする」


金剛「…蛇の、長門。音に聞いたことがありマース」

金剛「で? そのちっぽけなSnakeが、地獄のOgreを呑み干してみせる。とデモ?」


長門「鬼だけではない。毒を喰らわば皿まで…」

長門「――鬼を喰らわば、地獄まで」


金剛「…」ザッ

長門「…」ザッ


金剛「ッ!」ダッ

長門「ッ!」ダッ



金剛「――蛇は大人しく、雪の底で、冬眠するがいいネッ!!」ブンッ


長門「――宴会は終わった、鬼はもう、帰るがいいッ!!」ブンッ



―――十数分後、居間。



長門「」ガタガタガタガタ

金剛「」ガタガタガタガタ


夕張「…炬燵からツノとアホ毛が飛び出してる」


天龍「何やってんだか…」

天龍「あれ、チビは? まだ戻ってねぇのか」


夕張「もう二、三個作るらしいわよ。提督だけだと寂しいからとか」

夕張「多分途中で飽きてくると思うけど」


天龍「優しいなァ…雪なんてどうせ溶けるってのに」

天龍「つーことは提督と鳳翔さんは子守の真っ最中か…」


夕張「あ、お二人ともー。めちゃくちゃ寒いときは胸を擦ると温まりますよー」


金剛「」コシコシコシ

長門「」コシコシコシ


天龍「それどこ情報だよ」


夕張「アメコミ映画の受け売り」


天龍「…信憑性のカケラもねぇなオイ」



――同時刻、屋外。


提督「……」


暁「司令官ー」


提督「………」


暁「司令官ってば!」


提督「……ん?」


暁「…むー、呼んでるんだから返事してよぅ…」

暁「あといつまで雪の上で寝てるの…風邪ひいちゃうじゃない」


提督「大丈夫だ。馬鹿は風邪ひかない」

提督「常日頃から馬鹿馬鹿言われ続けてる身だ。尚更大丈夫」


鳳翔「…ふふ、お止めください。遠まわしに暁ちゃんをからかうのは」


暁「…司令官?」ギロ


提督「鳳翔、余計なことを言わないでくれ。風邪より酷い目に遭いそうだ」


鳳翔「あらやだ、貴方様の癖が伝染ってしまいました」フフ



提督「で、どうした暁。おれはここにいるぞ」


暁「こころはここにいなかったくせに…呼んだ理由なんて忘れちゃったわ!」


提督「おお。今のは中々いい詩だ、レディーの詩として手帳に認(したた)めて置こう」


暁「レディーを仄めかしたって騙されないんだからね!? 馬鹿にされてることぐらいニュアンスで分かるわよ!」


鳳翔「仄めかす…難しい言葉なのに意味を分かって使えるなんて、暁ちゃんはもう大人ね」


暁「鳳翔さんも悪ノリがすぎるのよぅ! そのぐらいの言葉、暁にだって分かるんだから!」

暁「なによもーっ! 二人して暁をからかってそんなに楽しいの!?」カスンプ


鳳翔「いえそんなこと」メソラシ


提督「ないぞ」メソラシ


暁「~っ!!」ザクッ


提督「ぶぉッ!? な、なにする! 止めろ止めろ!」


暁「うるさいうるさいっ!! 雪の下敷きにしてその余計なコト言う口を黙らせてあげるわ!」ドサーッ

暁「風邪になんてさせてあげない! その前に凍死で司令官とはお別れね!!」


提督「ぐぉ、げほっ! この分だと窒息死の方が先に来る…っ」

提督「鳳翔ー! 助けてくれー!」


鳳翔「ああ、駄目よ暁ちゃん」

鳳翔「埋めるのはいい方法だけれど、雪は溶けてしまうから発見される恐れが――」


提督「鳳翔ー!? どの辺をフォローしてる!?」


暁「しれーかんの墓標はこの雪だるまでじゅうにぶーんっ!」ザクザク


鳳翔「春までには起きてきてくださいね、提督」ニッコリ


提督「」ドシャア



――数分後、居間。



提督「」ガタガタガタ


暁「…しれーかん。ちょっとくるしい」


提督「すまん、お前さんが暖かい、暖かいんだ…」ギュウ


暁「…むー」

暁「…司令官の手冷たい」


提督「暁の手は暖かい」


暁「…ごめんね司令官。ちょっとやりすぎた」


提督「ああ優しいやつめ…人にきちんと謝れるとはな…っ」ヨシヨシ

提督「謝るのはおれだ暁…すまん、すまなかった…っ!」ギュ


暁「も、もぅ…あやまらないで司令官…」

暁「だれも悪くなんてないんだから…っ」



長門(…子供の体温の方が暖かいからって突っ込んじゃ駄目なのかな)ヒソ


金剛(駄目デショ)ヒソ


鳳翔(駄目です)ヒソ


長門(やっぱり駄目か…)

ここまで。クリスマス篇は今日か明日の暇な時間にでも。無理なら明後日

時系列は仕様です。仕様ってことにしてください
最悪、最後の最後で長文世界観説明で補填すればいいかなって適当に考えてます。結局ガバガバですが

ではまた。全国の提督様、よきクリスマスを



 クリスマス篇――actイヴ


――昼


金剛「もうX’masネ提督! しかもこの分だとホワイトで迎えられそう!」


提督「The sun's been hiding~the streets are gray~♪」ラララ


金剛「古ッ!?」


提督「お前さん基準だと比較的新しい方じゃあないのか?」


金剛「ま、まあそんなコトはさておいて…」

金剛「何はともあれ、クリスマス! Father Christmasを待ちながら夜を過ごしマショー!」


提督「サンタクロース…ふむ、今年もちゃんと来てくれるのかねぇ」

提督「路面凍結でトナカイが故障するかもしれない。サンタさんは担架で運ばれてるかもしれない」


金剛「夢がないネ提督…」


提督「夢を見るにはまだ遅くない年齢だとは思ってるんだがな」

提督「…ま、せいぜいすっ転ばないように気をつけるとしよう」


金剛「…フフ、なるほど。テートクはFather役デスもんね」

金剛「夢を与える存在が夢を見るコトを忘れてはいけマセン。頑張ってネ提督ー」


提督「頑張るも何も」ハハ

提督「そうか。どうやらお前さんはサンタの正体を知ってるようだ」


金剛「さて何のコトでしょうネー♪」


提督「よかったよかった、気兼ねなくお前さんとは普通のテンポで会話が出来そうだ…」


金剛「普通のテンポ?」


提督「ああ」



提督「おれのところにいる娘どもの中には、サンタの正体を知らないやつもいてな」


金剛「…えっ」



金剛「え、エート…誰デス?」


提督「暁」ユビオリ


金剛「お、oh…ウン。ま、まだ、OKネ。可愛らしい、OK」


提督「天龍」ユビオリ


金剛「て、天龍…!? ちょっと意外カモ…」


提督「…最後」

提督「長門」ユビオリ


金剛「…あぁー」


提督「…夕張のやつは分かってた。鳳翔も大体察してた」

提督「あとな、金剛。おれも、サンタの正体を知らなかった人間だ」


金剛「…いつ頃お気づきニ?」


提督「…三十後半ぐらい。鳳翔に指摘されて気づいた」


金剛「え、えぇー…」コンワク


提督「そんな夢を見ていたおれも今となっては夢を与える側に」

提督「時代とは廻るものだな。財布の中身を糧にして」


金剛「でもまさか天龍と長門がネー…。これは一層頑張らないと、テイトク」


提督「いつかボロが出…いや、出して自覚させなきゃならんのだが」


金剛「分かっていつつもタイミングが掴めないんデスよネ?」


提督「そうなる…。おれはよき理解者に出逢えたようだ」


金剛「…ヨシ。ここはワタシが、テイトクのサポートに回りまショウ」


提督「おお、そいつは助かる!」

提督「今年はおれとお前さんでサンタ聨合の結成だ。よろしく頼むぞ金剛!」


金剛「Yeah。共に参りマショー!」



金剛「まずはそれぞれの欲しいモノを知らなくては。いつもはどうしてるんデスカ?」


提督「ああその点は大丈夫だ。律儀に本場の伝統を守ってくれてるから」


金剛「…SocksにLetterを忍ばせたり?」


提督「聖ニコラウスにとっちゃ誤算だったろうがな」


金剛「なにソレ皆可愛い」


提督「あとサンタさんは忙しいから、一週間ぐらい前からには手紙を置いておくように言ってある」

提督「昨日回収には成功した。これを見れば問題ない」ヒョイ


金剛「仕事が早いネ」

金剛「…でも、SocksからLetterが消えてたらそこそこ訝しむんジャ?」


提督「がはは、安心しろ。ダミーを置いてきた」

提督「鳳翔と夕張もなんでかしらんが靴下と手紙をセットでスロットに加えてくる始末だ…」


金剛「AHAHA、ノリがよろしいデスねぇ…」


提督「もうこの際、面と向かって言って欲しいんだがなぁ…」ハァ



金剛「誰から見まショウ」


提督「誰からでも結果は変わらんと思う」ピラ


《世界水準超えてるもの》


金剛「…」

提督「…」


金剛「OK、OK。これは天龍デスね。毎年こんな感ジ?」


提督「うん」


金剛「…どうするのコレ? いや毎年どうしてるのコレ」


提督「…新しい兵装を送りつけたりしてる」


金剛「適当デスネ提督…」


提督「その手もそろそろマンネリ化してきた。また新しい手を考えねばな…」ムゥ


金剛「New idea…ンー」

金剛「あ、そうだ。刺繍付きのswordの鞘トカどう? 天龍だけにDragonの刺繍」


提督「おお、お洒落だ。採用」


金剛「即決!?」


提督「少なくともおれの考えよりは良い」ガハハ

提督「やはり第三者の意見を聞けるのはいいものだ…」シミジミ


金剛「え、鳳翔や夕張にHelp求めたりとかしなかったノー?」


提督「金剛、考えても見ろ」

提督「鳳翔はまだしも、夕張が快く協力してくれると思うか?」


金剛「提督の頼みなら聞いてくれそうデスけど」


提督「奴はこんなことを言った。"愛娘達のことぐらい父親役が何とかしなくてどうするんですかー"と」

提督「…納得してしまったおれがいた」


金剛「…えぇー」


提督「まあそんな体だから、鳳翔に頼るのも忍びなくてな」

提督「やっぱりおれはお前さんに逢えてよかったよ。相談相手が増えるにこしたことはないし」


金剛「う、ウーン。なんだか素直に喜べないデス…」


提督「そうと決まったら早速作業工程を決めねば…」ブツブツ



《開発資金。何かアレっぽいもの。エトセトラエトセトラ――》←数十行


金剛「私欲にまみれすぎィ!?」


提督「…逆に開き直った結果がこれだ」


金剛「そもそも"何かアレっぽいもの"…。どんなアレデスか」


提督「これな、"おまかせ"って意味らしい」


金剛「うわぁ面倒くさい…」

金剛「あとすごいみっちり書き込まれてマスけど、どこまで叶えてあげればイイのやら…」

金剛「……ン?」ピラ


提督「どうした」


金剛「イエ、書き込みがすごいのは確かなんデスけど」

金剛「よく見たらコレ、途中からカレー蕎麦のレシピになってマスヨ…」


提督「…あのひねくれ娘め。毎年毎年飽きもせずによくもやってくれるもんだ…」

提督「プレゼント箱にとっておきを仕込んでやろう」ゴソゴソ


金剛「…カード? ってコレ、図書カードじゃないデスか!」


提督「奴のぬか喜びが目に浮かぶ」フォッフォッフォッ


金剛「笑い方が知名度だけ一人歩きした星人みたいネ…」



提督「あとこいつはオマケ」ヒョイ


金剛「…"太平洋の嵐5"? War_simulation_Gameって書いてあるネ」


提督「大東亜戦争のきっかけはパールハーバーの前にある。満州国を端に発する大日本帝国の外交問題…」

提督「日中戦争の泥沼化とそれに伴う陸軍、海軍の軋轢。戦時中の日本の資源問題…そう、これには夢も希望もない」

提督「そいつもそうだ、夢も希望も存在しないのが、人間同士の戦争の本質だからだ…ッ!!」ギリィ


金剛「て、提督…」


提督「…まあ、戦争というモノを知るにはこれ以上に役立つシロモノはないだろう。ってレビューに書いてあった」


金剛「あとコレ、作中でワタシ達沈みマセン?」


提督「うむ、やっぱやめよう。あいつだってもう人間同士の戦争に巻き込まれるのは嫌だろうし」ポイッ

提督「代わりに図書カードをもう諭吉一人分追加しておくとしよう。よろこべ」


金剛「結局嫌がらせの域を出てないヨ」


提督「何を言う。おれは電子文字に溺れた夕張に活字の素晴らしさを知ってもらいたくてだな…」


金剛「AHAHA…」



金剛(…ン、終わりの方に何か…)


《――あと、提督たちの笑顔》


金剛「……」ペラ


《チビたちを護れる強さ》←小文字


金剛「…優しいけど素直じゃないネ、みんな」クスッ


提督「ん、何か言ったか」


金剛「イエ、なんにも」フフ




《全世界が平和でありますように》←力強い達筆


金剛「長門…っ、プレゼントの概要がビッグセブン級ネ…っ!」ウルッ


提督「はは。あいつらしい…」


金剛「これは神社でするべき願い事ですヨ! ワタシ達出来損ないサンタクロースがなんとかできるレベルじゃないっ!」

金剛「本物のサンタさんに匿名でメール送っておきマス! From フィンランドの!」


提督「そんなことしなくたって平和の心は届きそうだが……ん」ピラ


《しれいかんとみんなと、ずっとへいわにすごせますように》←クレヨン


提督「…」

金剛「…」


提督「ぅ、おあぁぁ…っ!!」ガクゥ


金剛「な、泣いちゃダメネ…ていとく…っ」ボロボロ


提督「長門…暁ぃ…。おれはっ…おれは…っ!!」グス


金剛「気をしっかり持ちマショウ! ワタシ達は、ワタシ達はサンタなんデス…っ!」

金剛「この二人のDreamを、なんとしてでも守るのが私達の務めダヨ!」


提督「そうだ…そうだなっ…」ゴシ

提督「だが、どうすりゃいい…。おれ達に、なにができるんだ…?」


金剛「…Letterを、返しマショウ。私の筆跡なら、ある程度崩してしまえばわからないハズ!」シャッシャッ

金剛「所々にEnglishを混ぜ込めば信憑性も高まるヨ。イギリス英語と米国英語の違いなんて分かりっこないデスし!」


提督「…任せてもいいか、金剛」


金剛「Of course! サポートは私に任せるデース!!」バババ


提督「…仕上げのチェックはおれがしよう。頼むぞ…」

提督「…しかし何故、今年に限ってこんな路線で攻めてきたのか…」ピラ

提督「……ん?」ジー



提督「あっ」


金剛「どうしマシタ!? そんな素っ頓狂な声だして!?」ボロナキ


提督「…ああ、いや。気にするな、気にせず筆を進めてくれ…うん」


金剛「了解デース! この先Penが握れなくなってもいい覚悟で、文才を全て使い切る覚悟で書き上げてみせるヨ!」ガガガ


提督「…」


金剛「~ッ!!」ガガガガ


提督「…あー、金剛? 耳だけでいいから、こっちに向けててほしい」


金剛「…」ガガガ


提督「長門と暁の手紙な、…端っこの方、よーく見てみたらな」

提督「なんか書いてあった」


金剛「…」チラ


《ぬいぐるみ》←筆文字とクレヨン@小文字


金剛「…」

金剛「!?」ニドミ


提督「…素直な娘たちで、済まん」


金剛「やるせないからもう書き上げてやりマスよ…っ!!」ガリガリボキッ


提督「…すまん」


金剛「だいたいどうやってそんなLittleな文字を、毛筆とクレヨンで潰れずに書いタ…っ!?」ブツブツ


提督「…なんか本当、済まん」



―――


金剛「勢い余って全員分書いちゃったヨ」


提督「お疲れさん。きっと喜んでくれるさ」

提督「ほれ紅茶、見様見真似で煎れてみた。口に合うかは分からんが」


金剛「Wow、Thanks!」

金剛「…♪」ズ


提督「おっとそうだった、お前さんへのプレゼントはどうするかな」


金剛「エ、ワタシに?」


提督「当然だ。全員の分を考えるのがサンタの勤めだし」

提督「…まあ、鳳翔の分はおれが自分で何とかしよう。お前さんに頼りきるのも悪いからな」ペラ


金剛「う、ウーン…そうですネ…。ワタシも、皆さんのPeaceと武運長久を祈るのみだヨ」

金剛「ワタシは皆サンにいっぱい貰ってきたカラ。これ以上何貰ったらいいか、分かんないからネ」アハハ


提督「むぅ…そうか。だが、何もあげないというのもなぁ…」ウーン

提督「よし金剛、手出せ」


金剛「え。は、ハイ…?」スッ


コト


金剛「…コレ、って」


提督「夏に一回、お前さんに見せたっけ」

提督「おれが、提督になった時に貰った勲章だ。無駄に年季モノだな」


金剛「で、デモ。テイトクにとって大切なものなんじゃ…」


提督「なに、お前さん達よりかはよっぽど価値がないもんさ」

提督「それは、おれと同じ景色をずっと見てきた。おれという提督の歴史を、そっくりそのまま」


金剛「……」


提督「ま、だから何だって話だな。おれの歴史を紐解いても楽しくなんてない」

提督「プレゼントの前金だ。後々から紅茶葉セットでも…」


金剛「御守りにしマス」


提督「え?」


金剛「コレを提督だと思って、大切にするネ! 嬉しいデス!」ニコ



提督「いいんだぞ? 無理して取り繕わなくたって…」


金剛「取り繕うなんてとんでもないデース。…コレが提督と同じモノを見てきたのナラ」

金剛「コレは提督の分身みたいなモノだヨー! 御守りたるには十分な代物だと思いマース」


提督「…そうか。なんだかすっきりしないが、喜んでくれたのなら嬉しいな」


金剛「あ、デモ。紅茶セットをくれてもいいんですヨ!?」キラキラ


提督「はは、大丈夫だ用意しておく」


金剛「えへへ、楽しみネー♪」

金剛「おっと、こうしちゃいられないデス。私もテートクへのプレゼントをThinkingしなきゃ…」


提督「がはは、楽しみにするとしよう」

提督「サンタ聨合は一時解体だ。お疲れさん、金剛」


金剛「Hai! お疲れサマ、提督ゥー!」


タッタッタッ…



提督「……」ペラ


《これからも変わらぬ平和と、皆さんの健康を》


提督「…」ピラ


《―――》←裏面


提督「…」スゥー

提督「…はぁ」


提督(…買出し行くか)



――夜


長門「提督。…サンタさん、来るだろうか」


暁「…くるよね? 暁いい子にしてたし」


天龍「……来る、よな?」フアンゲ


提督「…朝になれば分かる」

提督「あと毎年毎年脅すようで悪いが、サンタさんの正体を突き止めようとはするな」


長門「…」

暁「…」

天龍「…」


提督「サンタさんは早寝早起きをモットーにしてる、夜更かしなどもっての他だ。いいな?」

提督「…大丈夫だ。お前たちは今年も、健康に過ごして、普通に自分らしく生きた。きっと来てくれるさ」


暁「…ほんとう?」


提督「ああ本当だとも。…ほら、長門も天龍も。そんな不安そうな顔をするな…」ヨシヨシ



金剛(…テイトクも苦労人デスねぇ)ヒソ


夕張(金剛さんは知ってる人で?)ヒソ


金剛(まあそうなるネ…)


鳳翔(提督のお手伝いをなさってくれたそうですね、金剛さん。お疲れ様です)ヒソ


夕張(へぇ、今回のサンタは提督と金剛さんの二人ですか)


金剛(AHAHA、Ideaを提供したりしただけダヨー)



―――


天龍「……」ヒック

天龍「…うぐぅ、結構回ってきやがった」ヨロ


夕張「早いわねー。そんなんじゃ駄目よー!」


天龍「何処のチビだよそれ…」


夕張「またまたー、将来的にいい加減強くならないと酩酊でハイエース直行コースよー?」ケラケラ


天龍「うっせぇな、オレまだ四歳だぞ…ハイエースどころの騒ぎじゃねぇだろ…」


夕張「奇遇ね! 私はさんさーい!」アッハッハ


天龍「…駄目だこいつ。オレ風当たってくる…」ヨロヨロ

天龍「…そうだ。暁、お前はこんな大人になってくれんなよな」


暁「心得たわ」シャンメリー


夕張「ちょっと天ちゃんそれどういう意味よーぅ…」ヒック



提督「暁用のシャンメリーとか買い出しに行ったんだ…」

提督「そしたらポケ○ンが消えてて妖○ウォッチ一色になってた…ト○ボ製なのには変わりなかったが…」

提督「時代とは、一年でここまで変わるものか……」


暁「…司令官酔ってる?」


提督「…すまん暁、分けてくれ。もうおれ酒やめる」


暁「構わないけど」


鳳翔「…」グイッ


夕張「あれー、鳳翔さん。えらく飛ばしますね」


鳳翔「…そう、かしら。そう…見える?」トローン


夕張「もう出来上がっちゃってるように見えまーす」


長門「はは、今日ぐらいは…無礼講だ」ヒック

長門「ほら提督、飲め。日頃の武勲のアレだアレ…むむ、言葉が出てこない」トポポ


提督「…おかしいな。誰もシャンメリーの日本酒割りを所望したつもりは無かったんだが…」


天龍「大変だ提督! 酔った金剛がチビの雪だるまをあんたと間違えて絡んでる!」バタバタ


提督「…放っておけ。雪の冷たさで酔いも醒める…」

提督「と言うかおれも雪に頭から突っ込んでこようかな…多少は熱が抜けるやもしれ――」


鳳翔「」ガシ

提督「ぐ」


鳳翔「…だめ」


提督「…そうか」


鳳翔「…いつになったら」


提督「…ん?」



鳳翔「…あなたと、同じ苗字になれるのですか…」ポツリ


提督「…――っ」


長門「…ふふ、微笑ましい…」


暁「…暁たちおいとました方がいいんじゃ」


長門「気遣いか…立派な淑女だな、暁」

長門「但し"お暇"の使い方が少し間違ってる…こういう時は普通に"退出する"でいいのだ…」ヒック


暁「…ごしてき感謝。でもお酒臭い長門さんはちょっと説得力ない」

暁「天龍お姉ちゃん。夕張お姉ちゃんのこと、頼める?」


天龍「お、おう…。任せとけ、布団に叩き込んどいてやる」


夕張「天ちゃん胸ちょうだい」ヘベレケ


天龍「んゃっ!? 掴むなこんちくしょ!」バシィ

夕張「いたいッ!?」


暁「長門さん、自分で歩けるよね? 暁は金剛さんを補導してくるのです」


長門「わははっ! 様になっているぞ暁! 立派にお姉さんできてるじゃないか!」


暁「…マトモなの暁だけだし。暁が何とかしないと駄目じゃないこれ…」ハァ

暁「もう寝ておかないとサンタさん来ないかもだし。それでもいいの、長門さん?」


長門「あ…ッ! そ、それもそうだった!」ガバッ


暁「よかった。醒めてくれたのね」

暁「…司令官。鳳翔さんを任せたわ」ケイレイ


鳳翔「…」スゥ

提督「…ああ、済まんな。暁」


暁「ごきげんよう、なのです」スタスタ



戸<パタン


鳳翔「…」

提督「…」



鳳翔「…"あなた"」


提督「…どうした」


鳳翔「…お酒臭い」


提督「…"おまえ"も、人のこと言えない」


鳳翔「あら、いつもの他人行儀は?」


提督「…しまった。酒が入ってて忘れてた」

提督「…と言うか、それも人のこと言えてないだろう。壊れてるぞ、仮面」


鳳翔「…ふふ、そうね。あなた」

鳳翔「でもね、仮面なんていつでも作れる。あなたの前でぐらい剥がれても、罰は当たらないでしょ?」


提督「さあどうだろうな。神様とやらは全てを見通してるらしい、おまえの罪は把握してるんじゃないか?」


鳳翔「そうね…見てはいけないものを見てしまったイケナイ神様の目玉は、私が打ち抜いて差し上げましょうか」


提督「怖いことを言うんだな、乱暴なのは嫌いだ」


鳳翔「あら嫌だ。私、あなただけには嫌われたくなかったのに…」



鳳翔「教えてくださいな。あなたに嫌われた私は、これから何を信じて生きてゆけばいいのですか…」ヨヨ


提督「…おまえに戯言癖なんてあったかな」


鳳翔「…ふふ、かなりあなたに毒されちゃった。あなたのせいね」


提督「何が何でもおれのせいか…」


鳳翔「もう大方、私はあなた色に染め上がってしまっています。責任を取ってくださいな」ニコ


提督「…おまえの魂胆はそこそこ分かってる。しかしだ、おれは今結構眠い」ゴロン

提督「とても、とっても残念だが。心身ともに疲れているおれ様には――」


鳳翔「……」スッ


提督「はたしておまえの相手が務まるかどうk――ッ!?」モゴ


鳳翔「――」

提督「――っ」


鳳翔「…っ、ぁは。務まるかどうかじゃ、ない」



「"努めて"頂きますわよ、…あなた?」


「……はぁ」ペラ


《あなた》←裏面


「…上等だ。かかってこい――」



――act当日


長門「提督! サンタさんが来た!」


暁「今年もちゃんと来てくれたわ! 暁いい子にしてたから!」


提督「…おー、よかったな」ゲッソリ


長門「しかも手紙までくれたぞ! 今年はなんだか気前がいいじゃあないかっ!」


暁「司令官! サンタさんの手紙、英語が混じってるの!」


提督「はは。サンタさん、きっと日本語に慣れてないんだ」


長門「全ての国を回らなければならないというのに、わざわざ私達には手紙を…!」

長門「少し文字が滲んで崩れているのも、忙しいからなのだな!」


暁「宝物にする…っ♪」


提督「…そこまで喜んでくれたなら、サンタさんも本望だろう」


金剛「…ですネ、あはは」

金剛「あれ、提督。なんか少し痩せマシタ?」


提督「そう見えるか」


金剛「あとココロ此処にあらずって感じデス。何かあったノー?」


提督「…貰ったりあげたりしてたらこんな調子になった」ボンヤリ


鳳翔「……」ツヤツヤ


金剛「…??」


提督「じんぐるべーる、じんぐるべーる、みそどーれみー…」


金剛「!?」



提督「きょうはーたのしいーくりすーま…」

提督「」ドシャ


金剛「ちょ、テートクッ!? こ、志半ばでお亡くなりに…」


鳳翔「…脈は、まだありますね」サッ


提督「…おれはあと何回死にかけるんだろう、鳳翔」


鳳翔「御身体を酷使するのは、もう十分でしょう。提督?」


提督「……酷使させた本人が言うなら、もうおれは何も言い返せん…」

提督「ぎゃあ゛ぁ゛耳を引っ張るな…謝る、謝るから…ッ!」ハンナキ


金剛「お、おー…。Japanese say 尻に敷かレ…」


鳳翔「何か?」ニッコリ


金剛「ひっ!? な、何でもないヨ! ワタシは何も言ってマセン! 愛無双法被!」ケイレイ



提督「…そういえば、暁に長門。"本命"の方はどうした」


長門「ほ、本命? …い、いや。私には何のことだかさっぱり…」メソラシ

暁「み、右におなじ…」


天龍「なんかデカめの箱抱えて喜んでなかったっけ」


長門「て、天龍!? それは言わぬが花だろうっ!」


天龍「え? あ、何か不味かったか…?」


暁「そ、そうだ! 天龍お姉ちゃんは!? 天龍お姉ちゃんは何もらったの!?」ワダイソラシ


天龍「オレ? オレな、まだ開けてねぇんだ…今回のは妙に縦に長いんだよな」


長門「そうか! 早く開けてみるといい!」


天龍「そう焦んなよ…何が入ってるか想像するのも楽しみの一つじゃねぇか…」ニコニコ



夕張「提督ッ! 夫婦漫才の最中に失礼しますが!」バーン


提督「…夕張、後半余計だしうるさい」


夕張「うるさい黙れ! 騒がずにいられますか! なんですこれ!?」

夕張「図書カードなんてどうすりゃいいんですか!? 諭吉二枚の無駄使いですよ!」


提督「…開発資金のアテにすればいい。転売しようとお前さんの自由だ」


夕張「ぐ、ぬぬぅ…っ! 回りくどいことをっ…!!」

夕張(…あとこの手紙、金剛さんのですよね?)コソッ


金剛(やっぱバレた?)ヒソ


夕張(大体想像の程はつきましたよ…)

夕張(…でも結果的に皆喜んでるし、グッドジョブです。金剛さん)グッ


金剛(AHAHA、それは何よりネー)


夕張(ええもう…あんな嬉しそうな天ちゃん久しぶりですよ)


天龍「今のオレなら姫だってぶっ潰せるゥ!!」ダダダ

天龍「あだっ!?」ズテッ


提督「落ち着け」


天龍「提督っ! 聞いてくれよ!」ガバッ


提督「復帰早いな」


天龍「サンタさん鞘くれた! 見てくれこの金の龍! 超格好いい!!」キラッキラッ

天龍「サンタさんってやっぱ何でも知ってるんだな! オレの剣のサイズにビッタだ!」キャッキャッ


提督「ああ、刻み込むのには苦労し――」

金剛「Stopッ!」


天龍「…? まあいいや」

天龍「夕張! お前何貰ったんだ!?」


夕張「…図書カード二万円分」


天龍「おおっ、よかったじゃねぇか!」ケラケラ


夕張「…うん、今の天ちゃんから見ればそんな風に見えるのかしらね」ハァ



夕張「提督、これ」ヒョイ


提督「ん」キャッチ

提督「…なんだこれ」


夕張「頼まれてたアレですよ。電子タバコ」


提督「…おお、すっかり忘れてた」


夕張「お返しだと思っといてください。この妙に喜べないプレゼントの」

夕張「あっ、そうだ。ぜひそのタバコを私だと思って、吸うたびに私のことを思い出してくださいね?」


提督「…そういや最近、電子タバコも結局害があるとかいう報道があったような」


夕張「フィルターは特別製です。従来の欠点は改善してあります」

夕張「ただし人体への害は知りません。艦娘への副流煙は心配いりませんが」


提督「…夕張。おれを健康にしたいのか、それともとどめ刺したいのか。言ってみろ」


夕張「あはは、冗談ですよ。全く害がないわけでもないですけど、ニコチンよりはマシです多分」


提督「…はぁ、ありがたくもらっておこう」


金剛「Electronic Cigar…提督、禁煙するんデス?」


夕張「しようとしてる割には、全然葉巻やめてくれないんですけどね」


提督「がはは、おれから葉巻を取ったら何が残るって言うんだ。なあ鳳翔?」


鳳翔「…そうですね」

鳳翔「私たちへの、愛。でしょうか」


提督「…」

金剛「…」

夕張「…」


鳳翔「――って、あ、あらやだ! 私ったら何を…!」

鳳翔「ごめんなさい、忘れてください…っ!」カァァ


金剛「鳳翔はああ言ってるヨ。どうなのテートク」


夕張「ほら、男らしく」


提督「よし、葉巻吸ってくる」タッタッタ



<コラーッニゲルンジャナーイ!!

<ハナセエーッ!!


金剛「…」

鳳翔「…」



金剛「鳳翔、提督とはどれぐらいの付き合いなノ?」


鳳翔「…提督が、提督になられた頃から」


金剛「へぇ」

金剛「…想い合ってるんだネ。nice husband and nice wife」


鳳翔「…茶化さないでください」


金剛「とんでもないヨ。羨ましく思えてマース」

金剛「私もいつか、鳳翔みたいに、素晴らしい恋をしてみたいものデス…」


鳳翔「…」


金剛「まあ何はともあれ!」

金剛「Merry Christmas、鳳翔」


鳳翔「…めりー、クリスマス。金剛さん」



夕張「逃げるなんて意気地がないですよーッ! 面と向かって鳳翔さんに答えたらどうですか!」


提督「やかましい! おれと彼女の間に言葉など要るかッ!」


夕張「あとものっそい赤面ですよ提督! 恥じらいが透けて見えてるから逃げてもあんま意味無いかとー!」


提督「あんま意味がないならそもそも追いかけてくるんじゃなーいッ!!」



暁「司令官の顔がトナカイさんの赤鼻状態になってる…」


長門「もうそこまで言ったのなら普通に真っ赤になってるでいいと思うぞ、暁」


天龍「メリークリスマース!」ガッハッハ

ここまで。わざわざ街中でイチャコラしてたアベック末永く爆発すればいいのに
提督様はクリスマスが終わっても嫁をprprしてあげてくださいね。時間と場所を弁えて

>>1は大人しく実家で家族とケーキ喰らってました。帰る実家があるってすごくいいことだと思うの
一日遅れですがメリークリスマス。あと足柄さん改二おめでとうございます

ではまた



 姫篇
 


南方棲戦姫「チャオ」


提督「…」


南方棲戦姫「謹賀新年ノ挨拶ニ来タヨ」ヨッコイセ

南方棲戦姫「先日ハ部下ガ世話ニナッタヨウダナ。部下ノ報告ドオリダ、隻眼ニ葉巻ノ人間」


提督「…」

提督「チェンジは?」


南方棲戦姫「ウーン。南方ダト、ツインテ&片目隠レ属性ガ殆ドダゾ」パラパラ


提督「…そのファイル、名簿帳か何かか」


南方棲戦姫「ゴ名答。見ル?」

南方棲戦姫「オ勧メハ棲鬼チャンダ。訪問スルト快ク歓迎シテクレル善イ娘ダヨ」ソレソレ


提督「本当に二つ結いばかりだな…違いがわからん。そもそも別人だったのか…」

提督「じゃなかった。わざわざ来てくれたのは光栄だが、大したもてなしは出来んぞ」


南方棲戦姫「何ィ。巷デハ"オモテナシ"精神ヲ謳ッテオキナガラ、貴様ソレデモ日本人カ」


提督「生憎と純血日本のサラブレッドだ。期待に添えなくて悪かった」


南方棲戦姫「ハッハッハ。大丈夫サ。イキナリ訪問シタ、ワタシガ悪インダカラナ」

南方棲戦姫「部下ノ評判ヲ聞イテナ、ツイツイ来テシマッタノ」


提督「お前たちは何と言うか…"ついつい"のレベルがおれ達とはかけ離れてるのな」


南方棲戦姫「ツイツイ同族ト戦争シテキタ、オマエ達ガ言エタ事カ?」


提督「違いない」




提督「そもそもだ。お前みたいなリーダー格が、一時のノリで此処に来ていいのか?」

提督「…あー、ツッコむのも今更な気がするのは重々承知だ」


南方棲戦姫「ツ、ツッコム? オイオイ初対面ナノニ結構ドストレートダナ…」

南方棲戦姫「押シノ強イ男ハ好キダ。デモソウイウ関係ニナルノハ、モウチョット段階ヲ踏ンデカラ…///」ヤダヤダ


提督「…は?」ウンザリ


南方棲戦姫「ジョークダヨ。ソウ睨ムナ」

南方棲戦姫「別ニ大丈夫ヘーキヘーキ。部下ドモハ部下ドモデ何トカヤッテルシ」

南方棲戦姫「最近ハ護衛ノ仕事モ御無沙汰ダッタリシチャッテ。暇ナンダヨネ」


提督「…ふん。それで? おれ相手に愚痴でもしに来たと?」


南方棲戦姫「ダッテ、コンナ愚痴ヲ部下ニ聞カセテ、部下ノ重荷ニサセルワケニハイカナイダロウ」

南方棲戦姫「ソレナラムシロ、敵デアルオマエノ方ガ、腹ヲ割ッテ話セソウ。逆転ノ発想ダ」


提督「おれも妙な相手に魅入られたもんだな…」


南方棲戦姫「ホラ、"司令塔"同士。仲良ク平和ニツイテ語ロウジャナイカ」


提督「…司令塔? その言い方だと、お前自身が"提督"にあたる存在のように聞こえるが」


南方棲戦姫「ソウダヨー? 第一。ワタシ達ニソンナ存在ガイルナラ、オマエヲ"提督"トハ呼バンサ」

南方棲戦姫「現ニ南方ノ管轄ヲ任カサレテルノハワタシ。トハイエ、誰カカラ命ジラレタワケデモナイガナ」


提督「…へぇ。そいつは知らなんだ…というか知るよしもなかった」

提督「じゃあ、おれも自己紹介ぐらいはしておこう」

提督「もう言う必要もないかも知れんが、提督をやってる。管轄はこの辺の海。以上」


南方棲戦姫「コンゴトモヨロシク、提督」


提督「こちらこそ、南の」



南方棲戦姫「――デ、ウチノ部下ガサー。渦潮ニ捕マッテサー」


提督「ふむ…」

提督「一ついいか、南の」


南方棲戦姫「ン。ナンダ」


提督「お前たちって仲間内の呼称も、鬼とか姫とかで通してるのか?」


南方棲戦姫「ソウダヨ。ソレガドウシタ」


提督「いやな、おれ達人間が勝手にお前たちをそう呼んでるだけだったのに」

提督「その呼称をお前たちが使ってるのを見ると、何処か違和感を覚えてな」


南方棲戦姫「ンー。ソウイエバソウカモナ」


提督「そもそもお前、自分自身がどう呼ばれてるのか知ってるのか?」


南方棲戦姫「"南方棲戦姫"、ダロウ? 南ノ方ニ棲ム戦ウ姫」


提督「それ何処で知った」


南方棲戦姫「オマエ達ノ無線カラ流レテキタ」


提督「…え」


南方棲戦姫「タマーニ無線連絡ハ混線スル。名前ハソコカラ拾ッタ」

南方棲戦姫「ワタシ達ハ元々、仲間ヲ名前デ呼ンダリスル習慣ガ無カッタカラナ。最初ハ結構新鮮ダッタヨ」


提督「今度から無線の暗号レベル、もうちょっとあげておくよう言っておくかな…」ボソッ

提督「…しかし敵の付けた名前だろう。抵抗は無かったのか」


南方棲戦姫「抵抗シタクテモ、ワタシ達ソモソモ名前ガ無カッタカラナァ…」

南方棲戦姫「ムシロ名前ノオ陰デ連携ガ取リヤスクナッタ。口頭指示ガシヤスクナッタヨ」


提督「…知らず知らずの内に、おれ達はお前たちの連携を強めてたと」


南方棲戦姫「皮肉ダネェ提督」ケラケラ

南方棲戦姫「マァ敵味方、ドチラ側カラモ知識ヲ吸収シテコソノ戦イダ」

南方棲戦姫「…ソ、ソレニ…」モジ


提督「…ん。どうした」


南方棲戦姫「ヒ、"姫"ナンテ、可愛イ名前付ケテモラッチャッタシ。ソノ…///」オトメオトメ


提督「…」ガク



提督「…そういや南の。お前って何食って生きてるんだ?」


南方棲戦姫「ソノ質問ハ色々変ジャナイカ」


提督「悪いな。ただお前の部下…でよかったか、そいつが食性の違いがあるだの何だの言ってたもんだから」


南方棲戦姫「アー、ソウイエバ。魚持ッテ帰ッテキタナ、アノ子達」

南方棲戦姫「オオソウカ、アノ魚ハオマエノ差シ入レダッタカ! 美味シク頂イタゾ」


提督「成程。お前は魚を食う深海棲艦か」


南方棲戦姫「…人間モ食ッタコトアルゾ?」ニィ


提督「味は」


南方棲戦姫「…エェッ? マズソコナノ…?」ドンビキ


提督「ふん、おれはどんな反応をすればよかった」


南方棲戦姫「イヤ、普通、"ナンダトォ!?"トカ、"怖イ!"トカ、ソウイッタ感ジノ…」


提督「…その反応はお前と会話してる時点で色々遅い気もするがな」

提督「で、人間様の肉ってのはどんな味がした? 美味かったか?」


南方棲戦姫「エ、エート…チョット待テ。食ッタノ随分前ダ、今思イ出ス」ウーン

南方棲戦姫「……ゴメン、忘レタ。記憶ニナイッテコトハ、飛ビ抜ケテ美味カッタワケジャナイハズ…」


提督「はは、そうか」


南方棲戦姫「…クソゥ、カラカッテヤルツモリダッタノニ。ナンダコノ腑ニ落チナイ感ジ…」

南方棲戦姫「…ハァ、ジャア提督。折角ダシ人間ノ食生活ニツイテ教エロ」


提督「食えるもんなら食うぞ」


南方棲戦姫「ソリャ皆ソウダロウヨ。ソノ…ナンダ、人間ダケシカ食ベナサソウナ…ソンナ感ジノヤツ」


提督「人間しか食わないものねぇ…加工品は総じてそんな感じだな」



提督「この季節だと、おれの朝飯は大抵雑煮だ。楽だし」


南方棲戦姫「ゾーニ?」


提督「出汁に焼餅突っ込んだだけの安易な代物だ」


南方棲戦姫「…ヤキモチ? "気持チ"ヲドウヤッテ食ウンダ?」


提督「……餅は分かるか?」


南方棲戦姫「……?」クビカシゲ


提督「粘り気強くて結構伸びるやつ」


南方棲戦姫「……??」


提督「…首の角度がどんどん増してる。すまん、おれが悪かった」


南方棲戦姫「…ウマイノカ?」


提督「…まあ毎日食える分にはな、当然飽きもくるが」


南方棲戦姫「……」ウーン

南方棲戦姫「食ッテミタイ!」キラキラ


提督「…そうか。待ってろ、多分三十分あれば作れる」スタスタ



―――


南方棲戦姫「…!」モチモチ


提督(律儀に正座して待ってるとは…)


南方棲戦姫「…!!」ミョーン

南方棲戦姫「美味…ッゲホこほっ!」


提督「…ああ、味の報告は嬉しいが落ち着け。餅は逃げん」セナカトントン


南方棲戦姫「…ゥウー、済マン。醜態ヲ晒シテシマッタ…」


提督「よく噛め、じゃないと本気で死ぬ。…人間の死の概念がお前にも適用されるのかは分からんが」


南方棲戦姫「アアヤッパ死ヌンダコレ…」

南方棲戦姫「…デモ経験シタコトナイ食感ダ。死ニカケテマデ食ウ価値ハアッタトイウモノダナ」モムモム


提督「冴えてるな。日本人は年末年始辺りに人口が激減する、その白い悪魔のせいで」


南方棲戦姫「何ダト…? 私達ヨリヤバインジャナイカ、ソレ」ズズ


提督「それでも餅を食うのを止めない日本人を、海の向こうじゃ色々怖がってるらしいが」


南方棲戦姫「海ノ底デモ結構怖イ」


提督「そうか」ハハ



南方棲戦姫「言ワセテ貰ウガ、人間ッテ"食"ニ対シテハ本当ニ貪欲ダナ」

南方棲戦姫「特ニ日本人。オマエタチ河豚モ食ウラシイジャナイカ。アノ猛毒魚ヲ」


提督「食いたし命は惜しし。だが食う、それが日本人様だ」


南方棲戦姫「…アァ、コレハ勝テナイナ。アタマオカシイ」ハハ


提督「はは、褒め言葉だな」

提督「折角だ。幾つか持って帰るか? 餅」


南方棲戦姫「エッ、イイノ?」


提督「構わん。どうせ年が明けても中旬ぐらいまで余るし」


南方棲戦姫「…! アリガタイ、部下モ喜ブ!」


提督「…あーっと、そうだ。お前にも忠告したとおり、よく噛むように言っておけ」

提督「おれの贈り物で深海棲艦が喉つまらせて大量死とかシュールすぎるし、それで仲が険悪になっても困る」


南方棲戦姫「ハハ、分カッテルヨ。…サテ、コチラモ何カ差シ上ゲネバナ」


提督「ああ別に気にするな。お前の部下にも同じことを言っておいたが、おれの一方的なモンで――」


南方棲戦姫「フッフッフ、部下カラ報告ハ受ケテイル。"急ダッタカラ、魚ノオ返シガデキナカッタ"ト」

南方棲戦姫「シカシ今ノワタシハ、贈リ物ニ対スル手段ヲ持ッテイルノダ! 貰イッパナシハ嫌ダカラナ!」サムズアップ


提督「…そうか」



南方棲戦姫「テナワケデ、コレ。深海デ見ツカッタ石。親睦ノ証ニ受ケ取ッテクレ」ヒョイ


提督「…ほー。覗き込むと藍色の光が見える」キレイ

提督「で、何だ? これ持ってたらいつか、おれもお前たちみたいになるのか? それか小型の発信機とか」


南方棲戦姫「安心シロ。ソンナ呪物的ナ代物ジャアナイシ、発信機ナンテ付ケル意味ナイダロウ」ケラケラ


提督「もう場所は割れてるしな」


南方棲戦姫「前ニ北方ノ仲間、ソノ姫カラ"アゲルー"トカ言ワレテナ。ソノ時貰ッタンダ」


提督「…お前に送られたんなら、お前が持ってるべきじゃないのか?」


南方棲戦姫「…押シニ負ケテ受ケ取ッタダケデナ、正直持テ余シテタンダヨ」

南方棲戦姫「ダッテ向コウノ姫ガ、スッゴイキラキラシタ目デ見テクルンダモン…」


提督「…逆らえない存在か。上下関係とは別の意味で」


南方棲戦姫「…分カッテクレルカ」


提督「…お前たちも、おれ達と一緒だな。子供の世話には苦労するとみえる」


南方棲戦姫「…」


提督「まあ貰っておこう。…そうだな、御守りにさせてもらうとする」ゴソ

提督「とりあえずその、北の姫とやらは。…おれの所の戦艦と会わせちゃいかん存在のようだな」ヤレヤレ


南方棲戦姫「苦労シテルノナ、提督」


提督「お互い様だ」


南方棲戦姫「…葉巻、クレナイ?」


提督「…安モンだぞ」シュボ


南方棲戦姫「贅沢ハ言ワナイヨ」パク


提督「…」

南方棲戦姫「…」


提督&南方棲戦姫「「…」」ハァー



提督「…しかしここまで話のできる相手だとは」

提督「なあ南の。だというのに、なんでおれ達戦争やってるんだろう」


南方棲戦姫「ワタシニ聞クナヨ。戦争行為自体ヲ創メタノハ、ワタシ達ジャナイ」

南方棲戦姫「アレダ、ヨク言ウジャン。オ互イノ正義ノ、ブツカリ合イ」


提督「…正義。お前の正義は? 理解できるかは分からんが聞かせてくれないか」


南方棲戦姫「忘レタ」


提督「…即答か」


南方棲戦姫「ジャア、コッチカラモ聞クゾ提督」

南方棲戦姫「オマエノ正義ハ何ダ? 答エテミロ」


提督「…難しいな。パッとは出てこん」


南方棲戦姫「ソウイウモノナンダヨ、正義ッテモノハ」

南方棲戦姫「集合意識ノ心理操作、プロパガンダノ賜物ダ」


提督「プロパガンダねぇ」


南方棲戦姫「弱イ存在ハ自分デ決メルコトモセズ、誰カノ真似事バカリ」

南方棲戦姫「自分ノ信ジタモノガ幻想ダッタラ? 信ジタ正義ガ嘘ダッタラ? …ソイツラノ世界ハ簡単ニ崩レルダロウヨ」


提督「…」


南方棲戦姫「"何デ信ジテタンダロウ!?" "ドウシテ自分タチガコンナメニ!?"」

南方棲戦姫「…ソンナ利己的ナ発想シカ、弱イ存在ニハ出来ナインダ」


提督「…ふむ」


南方棲戦姫「マア、弱者ノ真似事ノ連鎖ガ、コノ世界ヲ形作ッテルノモ事実」

南方棲戦姫「ヨク出来タ理想郷ダトハ思ワナイ?」


提督「…理想郷? 馬鹿を言え、この世界はディストピアだ」

提督「少なくとも、今現在でも戦場で血が流れているという事実が、その証明だ」


南方棲戦姫「フン。デ? オマエハドウシテユク? 理想郷ノ為、短イ命ヲモット削ルカ?」

南方棲戦姫「殊勝ナコトダ。オマエノ部下モ、ソノ為ニナラ―――」


提督「愚問だな」


南方棲戦姫「…?」


提督「おれ達は理想郷なんざ追い求めてない。今日を生きるので精一杯だ」

提督「理想を追うのは結構なことだぞ、南の。だがな」



提督「何かを喪う前提で追い求めた理想。それに辿り着けた奴を、おれは今まで見たことがない」

提督「どこかで邪魔が入るか、理想半ばで果てるか。…そもそも、結局は上手くいかないんだよ」


南方棲戦姫「…ジャア何ダ。オマエハ理想ノ為ニ犠牲ヲ払ウコト自体、認メナイト?」


提督「あってるが違う。おれはな。自分の理想の為に自分の身体を酷使するのは、それこそ個人の勝手だとは思ってる」

提督「だが、その中に罪のない"他人"を巻き込むなと言っているんだ」


南方棲戦姫「…」


提督「何かを喪って得たモノに何の価値がある? 得たモノで喪ったモノの補填をするとでも抜かすつもりか?」

提督「ふざけるな。空けてしまった穴は埋める事は出来ても、もう二度と元の状態に戻ることはない」


南方棲戦姫「オマエノ、目ノヨウニカ」


提督「その通りだ」


南方棲戦姫「……クク」

南方棲戦姫「アッハッハ! 面白イッ! 笑ッテシマウホドノ綺麗事ダ!!」

南方棲戦姫「ダガ、ソレガイイ…! 面白イゾ提督! 部下ガ絶賛スル理由ガ分カッタ!」


提督「楽しそうだな」


南方棲戦姫「クク…オマエノ部下ハ幸セモノダ。オマエノヨウナ上官ヲ持テテ」


提督「…だといいんだが」


南方棲戦姫「オイオイ卑屈ニナルナヨ提督! オマエノ理論ハ素晴ラシイゾ、仲間達全土ニ発信シタイホドニナ!」ハハハ


提督「小っ恥ずかしいから控えてくれると助かる」


南方棲戦姫「安心シロ、匿名ニシテオイテヤルカラ!」アッハッハ


提督「……」ハァ



南方棲戦姫「提督。オマエノヨウナ人間ニ出会エテ良カッタゾ。久々ニ戦闘以外デ楽シマセテ貰ッタ」


提督「残念だったな。世の中おれみたいな人間ばかりじゃない。幻想を抱いてると痛い目見るかもしれないぞ」


南方棲戦姫「大丈夫ダ。オマエ達人間ハ、艦娘ハ。強イ存在ダカラナ。簡単ニ崩レテハクレナイダロウ」

南方棲戦姫「ワタシトオマエガ、コウシテ普通ニ会話出来テイルコト。ソレガ証明ダ」

南方棲戦姫「……コノ世界ハ、随分ト進展シテクレタモノダナ」ボソッ


提督「…どういう意味だ?」


南方棲戦姫「…フフ。ジキニ分カルサ、提督」

南方棲戦姫「雑煮アリガトウ、美味カッタヨ。…ア、ソウダ。レシピ教エテクレナイ?」


提督「ん。ああ、構わんぞ」カリカリ…ビリッ

提督「もう一度忠告する。…よく噛むようにな」スッ


南方棲戦姫「分カッテルヨ、忠告ドウモ」ニコ

南方棲戦姫「サテ、オマエモ年始デ忙シイダロウシ。ソロソロ御暇スル」


提督「そうか。また来る時もあるのか?」


南方棲戦姫「今度ハ仲間モ連レテ来タリスルカモヨ?」


提督「がはは、そいつは賑やかなことになりそうだ。…冗談だと願いたいが」


南方棲戦姫「近イウチニマタ、顔ヲ見セニ来ルヨ」


提督「ああ、喧嘩目的じゃないんならいつでも来い。出来るだけ歓迎する」


南方棲戦姫「ワタシ達バカリジャナク、ソッチカラ来テクレテモイインダヨ?」


提督「残念だが深海まで息が続くか分からんし、この広大な海のどの辺にお前の家があるかも分からんのでな」


南方棲戦姫「アッ、ソウダッタ」


提督「…天然ボケの気があるのか? お前達には」


南方棲戦姫「一回死ンデル体ダシナ、脳味噌スカスカナンダヨ」ハハ


提督「ほう、そいつはいい。これからいっぱい詰め込めるな」


南方棲戦姫「…! イイ事言ウナオマエ! マスマス気ニ入ッタ!」


提督「…ん、おれは思ったこと言っただけだぞ」

提督「歳取ると脳の許容範囲が目に見えて少なくなってくるから、羨ましい限りだなと…」


南方棲戦姫「フフ。ナラバ…ソウダナ。ワタシノ脳ニ、オマエトイウ人間ノ記憶ヲ刻ンデオコウ」


提督「もっとマシなことに使ってくれ。…おっと」



提督「こんなところにカスティーリャが。おれ一人で食うにはちと大きいな…」


南方棲戦姫「カスティーリャ?」


提督「美味い菓子だ。どうしたものかな…」

提督「おおそうだ。ここは南の、お前に差し入れるとしよう。親睦の証、第二段だ」ヒョイ


南方棲戦姫「ワーイ、提督大好キー!」キャッチ

南方棲戦姫「…ハッ、シマッタ…ッ! 二回目ノオ返シナンテ用意シテナイ…」


提督「がっはっは、おれの勝ちだ」


南方棲戦姫「ヌムムゥ…イツカ二倍三倍ニシテ返シテヤルッ!! 覚エテイロ!」

南方棲戦姫「…ア、本当ニアリガトウネ? ナンカ、オマエガイイ人過ギテ」


提督「褒めれば褒めるほど土産が増えるぞ?」ガハハー


南方棲戦姫「ヤメロヤメロ! モウイイカラ、モウイイカラ!」ハハ



提督「ははは、…達者でな」


南方棲戦姫「アア。…マタ逢オウ。優シイ優シイ、ワタシ達ノ敵」

ここまで。年始は忙しくっていけませんね
…鳳翔さんと天龍ちゃんの登場が確定してないってのはどういうことだオイ!(アニメ)

今年も広げた風呂敷でテーブルクロス引きするテンションで続けていけたらなぁと思います
あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします
おまけ→http://imgs.link/jUbRtO.jpg

ではまた



おこたと色々篇(姫篇と同日)



金剛「…年も明け、冬も中々そこそこネー」

金剛「でも寒い。寒すぎマース…」ガタガタ


天龍「もうその文句聞き飽きたぜ」


金剛「あと出れないデス。ナニコレ、此処がヴァルハラ?」


夕張「まあ炬燵入ってる体で、これ以上高望みしても仕方ないですよ」ゲシゲシ


天龍「蹴んな」


夕張「やっぱ足冷えるから運動しとかなきゃねー」ケラケラ


天龍「おおそっか。じゃ遠慮なく」ガキッ


夕張「――ッぎゃあー!? 痛い痛いッ!!」


金剛「関節決めるとか器用ネ天龍、それも炬燵越しに」


暁「みかんの白いところって何か意味あるのかしら」モグモグ


長門「おや暁、知らないのか? 栄養素たっぷりだぞ白筋」キュッ

長門「できた! タコさんだ!」


暁「わー!」キャッキャッ


金剛「おおー、nice octpus。私、まだそんな風に剥けないネー」


長門「慣れさ慣れ。何なら私が直々に講義してやろう!」


金剛「ウーン、講義って言うほど重大なものでもないと思うケド…貰えるものは貰っておきマース」アハハ



金剛「…うー。本当に出られなくなってしまうヨ。此処って暖炉ないノ?」ムチャブリ


鳳翔「あ、ごめんなさい。それ来週からなんです」


金剛「Oh。それは楽しみネー」


暁「しれーかん。鳳翔さんがさりげなくとんでもない約束取り付けたわ」


提督「…これ以上おれに一体どうしろと言うんだ」


長門「ヒーターでも買えばいいんじゃないかな」


天龍「的確すぎて何にも言えねぇ」


提督「現状炬燵で何とかなってる、パス」


天龍「掘り炬燵の脇で座ってるあんたが言えた事なのかそれ」


提督「お前さん達が暖まってるならそれでいい。炬燵なんて大抵六人用だろう」


夕張「自己犠牲ですね。流石提督、お優しいことです」


提督「安い犠牲だ。代償には見合ってる」バサバサ


金剛「…テイトクの羽織ってるそれ、何デス? 毛布にも上着にも見えマセンが」


夕張「防災用のアルミシートじゃないですかね」


提督「…暖まるのは確かだが湿気も逃げない。密閉すると冗談抜きでびしょびしょになる」


暁「逆に寒くなっちゃうから、どの道気をつけなきゃね」


長門「濡れた寒さで目を覚ました時にはもう遅いぞ」


鳳翔「あと完全密閉すると本気で窒息するので、扱いには気をつけましょう」


金剛「Hmm、勉強になりマシタ」


天龍「いつからアルミ寝袋の講義になってんだ…」



長門「むぅ、蜜柑無くなってしまった」


天龍「早ッ。食いすぎだろお前。…いやチビと金剛も大概だけど」


金剛「手が黄色くなったヨー」アハハ

金剛「…で、誰が取りに行くんデス?」


長門「…よし、取りに行く役を決めよう」


暁「どうやって?」


長門「…うーむ。鳳翔、何かいい案ないか?」


鳳翔「そうですね…じゃんけんとか、どうでしょうか?」


長門「皆の者、異論は無いな」ゴキゴキ


天龍「え。蜜柑に手付けてないんだけど、オレも参加するの?」


長門「当然。鳳翔と提督に関しては参加義務は無し、日頃から世話になってる御両名様だからな」


天龍「ちょっと待てや! 鳳翔さんはともかく提督にはあるだろ!」

天龍「さっき三人ぐらいから蜜柑の"あーん"貰ってたぞ! あんたそこそこ食ったろ!?」


提督「おれは食わせられただけで自分から食おうと思ったわけじゃない」モグモグ


夕張「美味しかったですか?」


提督「今年のはちょいと酸味が強いな。おれの好きな味だった」ゴクン


天龍「いっちょ前にテイスティングまでしてやがるし…」



長門「ふん、蜜柑の事案ぐらいは我々で解決しなくてどうする。我々が動かなくてはならないのだ」キリッ


暁「長門さん、そこで格好付ける意味が分からないわ」


金剛「そこまで言うなら自分で行くほうが早いしネー…」


天龍「オレ参加したくねぇよぉ…。負けるフラグバリ立ちじゃねぇか出来レースなんだよこれ」


夕張「勝負なんてやってみなきゃ分からないわよ」(至言)


天龍「うっせぇ。確率云々ほざきそうなお前が言う台詞かよ」


夕張「馬鹿言わないでよ天ちゃん、世の中数値で測れないことだって山ほどあるのよ」


天龍「律儀に正論で押し潰すのやめろ」



「「「「「……」」」」」


「「「「「――じゃんけん、ぽんっ!!」」」」」


「「「「「…アイコでしょ!! ……アイコでしょ!!」」」」」



提督「…」


鳳翔「…」ヌクヌク


提督「…」ヨッコイセ


鳳翔「…お出かけですか?」


提督「…そんなところだ」スタスタ



―――


長門「…また、アイコだとっ…」


天龍「せめてもっと少人数に分けろよ! 決まらねぇぞこれ!」


長門「だって…バラバラにやって負けたら何か、腑に落ちないじゃないか…っ!」


天龍「そこは落ちろよ! お前の気持ちどことなく分からなくもねぇけどさ!」


暁「…そもそも五回連続全員出す手が同じってどんな確率なの?」


夕張「えっと…単純計算で81分の1の3パターン、243分の1の五回分だから…」

夕張「…うわ、果てしない数字になりそう。全員の運がカンストしてても再現不可能なんじゃ…」


暁「へんなところで幸運の女神って微笑むのね…」


金剛「これGoddessと言っても幸運の方じゃないような気もするデース…」

金剛「…そもそも、みんな考えてる事が大体同じって解釈もできますからネこれ」



蜜柑袋<ドサッ


「「「「「…えっ」」」」」


提督「…」スタスタ

提督「…っ、寒」バサバサッ


長門「…て、提督…?」


提督「ん?」


天龍「あんた、どうして…」


提督「ああ」

提督「負けたからな、おれ」チョキ


「「「「「…」」」」」


提督「? どうしたお前たち、揃いも揃って素っ頓狂な顔して。おれの顔に何か付いてるか?」


「「「「「」」」」」クビフリ


提督「そうか。…じゃ、おれは立ったついでに葉巻吸ってこよう」スタスタ

提督「――おっと、そうだ。鳳翔、茶葉の箱って何処しまったかな」


鳳翔「ええと…食器棚の下、右から二番目。ですね」


提督「ああ。戻るときに取ってくる、その頃には薬缶の湯も沸いてるだろう」

提督「出涸らしばかり飲んでてもしょうがないしな…」ブツブツ


戸<バタム



「「「「「…」」」」」


金剛「…アレは惚れマスヨ。惚れろって言ってるみたいなモンデス」


夕張「あの人、妙なところで紳士に変貌しますよね。ほんと」


天龍「多分アレ自覚ねぇんだろな」


暁「紳士って淑女の対義語よね…」


長門「しかし私は提督に義務はないと言ったはずなのだが…」


鳳翔「ふふ。権利までは否定されてませんから、ね」ヌクヌク


暁「鳳翔さんがいつになくリラックスしてるように見える…」


鳳翔「そう?」


長門「まあ、良いことだよ。休息は誰にでも必要だし」


金剛「休息ならテートクにだって与えられるべきだヨー。誰かが炬燵の枠換わってあげるとかサー」


夕張「嫌ですね金剛さん、そんなこと言って。おめおめと誰かが炬燵から抜けるとでも?」


金剛「…イエ。多分、無理な話だよネ、炬燵の魔力は凄まじいカラ…」


天龍「本人アルミシートで我慢してるっぽいし、甘える意味で炬燵は使わせて貰おうぜ」ヒョイヒョイ


金剛「甘える、ネ…。何事も忙しそうにしてる鳳翔が今こんな感じなのは、テートクに甘えてる結果なんデスかね?」


鳳翔「…つい貴方様に甘えてしまう、この私は。何とも不甲斐無い伴侶でありましょうか」

鳳翔「嗚呼、こんな私が貴方様の傍に。この不束者めをどうぞ叱って……」ヨヨ


暁「…わあ。こんな神々しくて切ない鳳翔さん久しぶりに見た」


長門「おー…鳳翔がそこそこノリノリだ。珍しいな」


金剛「Did not win」(確信)


天龍「――っと、終了。ほらよ」ポイッ


夕張「どうも。そういや蜜柑のお手玉って何か意味あるのかしら」キャッチ


天龍「あー、甘くなるって提督が言ってたぜ」



――数十分後


夕張「…」ボー

天龍「…」ボー


夕張「…みんな寝オチたわね」


天龍「…風邪ひいちまうからキリいいとこで起こさねぇとな」


夕張「…提督帰ってこないわね」


天龍「…湯と茶葉置いてったきりな。カステラ掴んで出てったけど、なんかあったのかな」


夕張「…」

天龍「…」


夕張「…煎餅開けよっと」ビリィ


天龍「…おい、太るぜ。ただでさえ米菓ってカロリー高いんだから」


夕張「…」ハグハグ


天龍「…聞いちゃいねぇ。勝手にしろ」



―――


テレビ<例えば、アイドルとも話せる時代になった!



天龍「…」バリッ


夕張「…アイドルが観客に背向けてどうするのよ」バリ


天龍「…みんな思ってるけど口にしねぇだけだろ」ボリ



テレビ<新世代トークアプリ"2411"! 



天龍「…アイドルなんだから最後まで一貫してちゃんと歌えよ」


夕張「…みんな分かってるけど突っ込まないだけよ」モグモグ

夕張「…天ちゃん。もしかしてアイドルが全員全員、ライブでお腹から声出してるとでも思ってる?」


天龍「…思ってねぇよ。そこまでお花畑なもんか」


天龍「…」

夕張「…」




天龍「…この煎餅醤油きつい」


夕張「…はい」ドボドボボ


天龍「…並々ならない高度で緑茶垂らすのやめろ、泡立ってんじゃねぇか」


夕張「…紅茶とかって空気含ませるのがいいとか何とか言わなかったっけ」


天龍「…この前金剛に聞いたよ。高けりゃいいってもんじゃないんだと、冷めちゃ元も子もねぇから」


金剛「zzz」ビクッ


夕張「…へぇ。ところで茶柱立ったわね」


天龍「…そりゃこんだけ雑に注いだら茶柱も立たざるを得ないだろが」


夕張「…しかも五本」


天龍「…ありがたみも五分の一になっちまったな」


天龍「…」ズズ

夕張「…」ズズ


天龍「…」フゥ

夕張「…」フゥ


天龍「…アイドルの仕事って何だっけ」


夕張「…その場凌ぎに枕営業かまして延命することじゃない?」


天龍「…お前って機雷を踏み抜くタイプだっけ」


夕張「…じゃあ他になんて言えばいいのよ?」


天龍「…そこは歌うことと踊ることーとか」


夕張「…布団の上でなら両方できるわね」


天龍「…」

天龍「クソが」


夕張「世の中皮肉よ天ちゃん」フッ



天龍「…」ボー

夕張「…」ボー


天龍「…肩痛ぇ」ゴキゴキ


夕張「…大丈夫? 叩いてあげようか」


天龍「…そいつは嬉しいけど、なんかお前妙に静かだな」

天龍「またなんか因縁つけてくるのかと思ったんだが」


夕張「いいからはい、楽にしなさいよ」トントン


天龍「…おう」


天龍「……」

夕張「……」トットット


天龍「…」

夕張「…」グニグニ


天龍「…夕張」


夕張「ん」


天龍「…上手いぜ、肩たたき」


夕張「そお? それはよかった」ニコ



天龍「…」

夕張「…」トントン


天龍「…」

夕張「…」トントン


天龍「…」

夕張「…」トントントントン


夕張「…ヒノノ○トン」ボソッ


天龍「」ブホッ


夕張(これが強さと優しさのハイブリッド)ヒソヒソ


天龍「…、囁くなよ気持ち悪ぃ」ゾワワ


夕張「」フーッ


天龍「ひゃ…っ」

天龍「…ッ何がしたいんだお前」


夕張「"ひゃっ"だって。あはは、天ちゃん可愛い」


天龍「…ったく」


夕張「うう寒…おっと、提督の脱ぎ残した皮があったわ」ハオリ


天龍「皮とか言うな」


夕張「うふふーあったかーい…」


天龍「…脱水症状には気をつけるこった」



天龍「…」

夕張「…」


夕張「…ねぇねぇ」


天龍「…なんだ」


夕張「…世界が平和になる方法思いついた」


天龍「…言ってみろよ」


夕張「…飛ばしあうのが爆弾じゃなくて、雪玉になればいいのよ」


天龍「…」


夕張「…どうよ?」


天龍「…」

天龍「…雪玉も、思いっきり握りこめば固ぇ氷玉になる。当たるとクッソ痛いぜ」


夕張「…」


天龍「…そのうち、雪玉の中に石を仕込みはじめる。下手したら包帯巻くぐらい重症になるぜ」


夕張「…」


天龍「…石がそのうち、爆薬に取って代わる。重症どころじゃ済まなくなるぜ」


夕張「…」

夕張「…だめだこりゃ」パタン


長門「…平和というものは難しいな」ムクリ


夕張「…ぉお、長門さん起きた」


長門「…起きていた、だ。3分の1ぐらい」


天龍「…ほぼ寝てんじゃねぇのそれ」


長門「…確かに落ちていたようだが、耳は生きていてな」

長門「…なんだかすごいめちゃめちゃな夢をみてしまった」フゥ


夕張「…夢と現実が混線しましたか」


長門「…そのようだ、ふぁあ…」アクビ



天龍「…」

夕張「…」

長門「…」モグモグ


テレビ<2015年。1945年より70年―――


夕張「…ですってよ皆さん」


天龍「…早ぇもんだな」


長門「…もうそれほど経ったとは。感慨深いものだ」ズズ


夕張「…そういや長門さん、最後の日まで生き残れたんですよね」


天龍「…鳳翔さんもな」


長門「…」フゥ

長門「…とんでもないよ。"生き残ってしまった"の間違いさ」


天龍「…十分な天下だろ。オレ達ポンコツは、仲良く雷撃で沈んじまったらしいし」


夕張「…あはは。責める気にもならないけどね、アルバコアさんもブルーギルさんも」


長門「…私としても、自分自身の末路を明確に覚えてはいないのだがな」

長門「…誰も、誰かを責めることは出来ないさ。戦争に善悪の区別などないから」


天龍「…ふん、前も似たような文句で誰かに諭されたっけ。なぁビッグセブン?」


長門「…ふ、それもそうだった」


夕張「…まあ、あれですね」

夕張「…過去のことでくよくよしてたら、提督に怒られちゃいますから、ねぇ」


長門「…その通り」


天龍「…違いねぇ」


長門「…それより未来のことを考えるべきだ。折角ヒトの身体で、こうして転生できたことだし」


金剛「…不自由な面も多々あるけどネ」ムクリ


夕張「…あ、金剛さん起きた」


金剛「…Good Afternoon。話はあんまり聞こえてないヨ」ノビー

金剛「覚醒間際にLionessが突進してきて死ぬかと思ったケド」


天龍「…なんで一回狸寝入り混ぜて起きてくるんだよ、この戦艦共」ハァ



長門「…にしても不便な点か。確かに、そんなこともあるかも知れないな」


夕張「…ヒトの身体って"休息"が要りますからね。機械に疲労がないのかと言えばそうでもありませんけど」


金剛「…そうナノ?」


夕張「…錆やらヒビやら、金属にも色々。それで生じる動作不良が"疲労"って解釈もできます。多分」

夕張「…あ、金属疲労って言葉がちゃんとありましたわ」


天龍「…違うのはヒトの疲労は簡単に回復が出来るってこったな。難しい手入れも必要ねぇ、専用の道具も要らねぇ」


長門「…よく食ってよく眠り、よく笑ってよく喜べば疲労も敵ではない」アカツキヨシヨシ


金剛「…フーム。皆イイInterpretationしてるネー」

金剛「…まァ、ヒトの身体になって。テイトク達"人間"に、完全とは言えなくテモ近づけて」



金剛「…誰かに愛してもらいやすくなったのなら、それはそれで、本望かもネ」


天龍「…けっ、愛ねぇ。実に感傷論って言葉だな、いけ好かねぇぜ」


夕張「…すれてるわね天ちゃん」


長門「…裏返しだ裏返し。天龍の言葉は逆にとるといい、素直な本性が透けて見える」


天龍「…うるせーやい。じゃあ何だよ、お前らは愛だのなんだのにわざわざ立派な理屈抱えてんのか?」


金剛「理屈は用意できないし、心象もいまいち出来ないヨ」


夕張「立派な理屈なんていらないいらない。そういうのは文学者と理論学者に任せとけばいいのよ」


長門「愛は個人によりけり。様々な顔を見せる」


天龍「…」


長門「…誰かを慈しみ、想うこと。これが世間一般の"愛"なのだと私は思っている。だが」

長門「誰かの自由を奪い、その誰かの全てを奪いたいと願うことも。本人がそう思うのなら、"愛"なのだろう」


天龍「飼い犬に首輪を嵌めて置くのも、愛だってか?」


長門「はっは、そうだ。その者にとってはな」

長門「…誰かを空へと羽ばたかせるための翼にもなれば、地に繋ぎとめる為の枷と鎖にもなる。それが愛なのだ」


金剛「…枷も鎖も、今のワタシ達には無縁そうデース。テイトクは放任主義だし」


夕張「放任だけどほったらかし教育ってわけでもありませんからねぇ」

夕張「…褒めるときは褒めてくれて、叱るときは叱ってくれる。これ以上何が欲しいと言うのですか」アッハッハ


天龍「…あー、そうだな」



夕張「…てなわけで"愛にも色々種類がある"って結論に落ち着いても、やっぱ度が過ぎちゃ駄目だと思うのよ」


天龍「…今度はどんな発言で場の雰囲気をぶっ壊すつもりなんだよ」


夕張「アレよ、超えちゃいけないライン考えなさいよってやつ」


金剛「あ、ワタシ知ってるヨ。"我ながらやばい扉開けちゃう――」


天龍「その路線か畜生」


長門「…? すまない夕張、私には理解がまだ追いついてない」


夕張「大丈夫です。理解できないのは、それだけ長門さんが穢れてないってことですから」


長門「穢れ…むぅ、そうなのか」


夕張「そうなんですよ。例えば…」

夕張「世の中にはですね、暁ちゃんぐらいの子を本気で好きになっちゃう殿方もいるんです」


長門「…本気で好きになっては不味いのか? 父性母性を否定するのは賛同しかねる…」


夕張「ああそうじゃなくって。父性だったはずの愛情が異性相手のモノにすり替わっちゃうんですよ」



長門「…異性として本気に愛してしまうと?」


夕張「ですです。そして本気で愛してしまった先には? 何が待ってるのかの判断は長門さんに委ねます」


長門「…」

長門「わぁお」


夕張「真の意味で暁ちゃん程の子を、異性として愛すことを所望するのだとしたら」

夕張「それこそ、その子が心身ともに一人前のレディーになるのを待つべきです。尚早は駄目、ゼッタイ」


長門「…何と言ったらいいのか。私の知らない世界は、やはり広いものなのだな」カンシン



天龍「…知らない世界は知らないままにしとけばいいんじゃねぇのかなぁ」


金剛「…I quite agree」


夕張「それでもペ○りたいならパッケージの裏に"登場人物は18歳以上"とでも書けばいいんじゃないかしら」


天龍「もう突っ込まねぇかんな」



天龍「…」

夕張「…」

長門「…」

金剛「…」ズズ


金剛「…そういや、テイトクの姿が見えないネ。帰ってきてないノ?」フゥ


長門「…それもそうだ。あと夕張、お前炬燵入ってるのにその"あるみしーと"は…逆に暑くならないのか?」


夕張「えへへー…提督の残温との相乗効果でポカポカですよ。これで寝オチたら喉ボロボロまっしぐらですけど」


天龍「残温ってお前…」


金剛「何ですッテ。Hey夕張、Give it to meッ!」ガシ


夕張「やー、離してください! これは私が最初に手に取ったんですっ! 私のモノですってば!」


金剛「Don't be silly!  テイトクのモノはみんなのモノ! それをコッチに渡しなサイ!」グイー


夕張「えぇいロック!」

金剛「Paper!」

夕張「シザーズ!」

金剛「one!」ジャン

夕張「ツー!」ケン

夕張&金剛「「スリー!」」ポン


夕張「うぎゃーっ!? 敗北など私に相応しくなーい!」グー

金剛「Diamondに向かってStoneなど嵐に向かって石礫を投げるようなものデースッ!」パー


金剛「約束通り貰い受けル! No hard feelings…ッ!」ガバッ


夕張「うわーん私の提督がーっ!」



長門「…で、この争奪戦の原因である愛され男は何処へ?」


天龍「薬缶と茶葉持ってきてそれきりだぜ。葉巻吸いに外戻ったんじゃねぇの」


夕張「…あと歳暮のカステラ掴んでね。…まったく何してるのやら」サムイ


金剛「へー…」バサバサ



金剛「そうだ、怪談でもしマショウか」


天龍「どうしてそうなんだよ」


金剛「冬だし暇だからネ。地元じゃお決まりのpatternだヨ」


長門「胸が凍えるようだ」ズーン


夕張「待ってください金剛さん」


金剛「ン?」


夕張「夏に金剛さん言ってましたが…イギリスの怪談は冬に暖炉の前でするものでしょう?」

夕張「此処に暖炉はありません。よって貴女の理論はまかり通らない!」ヒッシ


天龍「そうだぜ」フルエゴエ


金剛「何言ってるデース」

金剛「暖炉の代わりに炬燵がありマス」ニッコリ


天龍「」

夕張「」


金剛「大体皆サン、Ghostを敬遠しすぎネ。慣れてみるとあんま怖くないヨ?」

金剛「イギリスじゃ誰もいない部屋で物音がしたら"ああGhostの仕業ダネー"で割り切っちゃうモノデス」


長門「聞かん。私は聞かんぞ」ミミフサギ


金剛「Ghost_Houseもあるし、Tower of Londonなんてその最たるモノかも」

金剛「斬首刑に処されたQueenが、"首無し"で哨戒衛兵サンの前に現れたり」


天龍「だ、誰かこいつを黙らせろッ…」


夕張「紅茶…紅茶を捧げればなんとか…」


金剛「フッと現れたのならまだ走って逃げればいい話かも知れないケド」

金剛「真っ暗闇とか階段の上からバタバタバターッ!! って追っかけられたら、もうどうしようもないよネ!」

金剛「Japanese Horror的な感じだと…そうですネー」ウーン



金剛「ちょっと開いてるフスマの向こうを、地面から5cmぐらい高さで誰かの"顔"だけがすぅーと横切った、みたいナ」


天龍「」キュウ

夕張「ひぇぇ…」ゾゾゾ


長門「…」ズズ


金剛「おや長門、顔色一つ変えず茶を啜るトハ…強くなりましたネ」


長門「…」フー

長門「金剛」


金剛「Hai?」


長門「久しぶりだよ。自分の想像力を恨む羽目になったのは」

長門「そして、どうしてくれる金剛」



長門「…夜鎮守府の階段登るの怖くなったじゃないかっ!」バン


金剛「え、エート…ご愁傷サマ?」


長門「ふざけるなッ! 私を返せッ! 何も知らなかった頃の私を返してくれッ!!」ガシ


金剛「わーゴメンゴメン! 度が過ぎたのなら謝りマース!」


長門「何故だ! 何故私達がこんな目に遭わねばならんのだ!?」ブンブン

長門「怪談で階段登るのが怖くなった!? イギリスの怪談は素晴らしいな!? 何も面白くないぞッ!!」ブンブン


金剛「め、目が回るヨ…」クラクラ


夕張「天ちゃん天ちゃん、すごい秀逸なツッコミ長門さんにとられてる」

天龍「知らねーよ厠付き合え畜生」


金剛「いひゃいいひゃいっ! 頬をつねらないでくだサイ! SorrySorryッ!! おかおがのびひゃうっ!」


長門「そーりー!? 此処は英国じゃないぞ! 日本語で謝れっッ! 謝れぇぇえっ!!」グイー


金剛「うわーんごめんなサーイっ!!」



―――ちょっと後


鳳翔「……」パチ

鳳翔「……」キョロ


長門「…む、鳳翔。目が覚めたのだな」


鳳翔「…長門さん」


暁「おはようなのです、鳳翔さん」


鳳翔「…他の、皆さんは?」


暁「…司令官はたばこ吸いに行ったきり帰ってきてないんだって」


長門「他の三人は揃って整備室だ。何でも、夕張の奴がいい加減部屋を片しておきたいらしい」

長門「天龍と金剛はその道連れ。…あの乱雑具合には金剛も目を見張ることだろう。ざまあみるがいい」フン


暁「ざ、ざまあみろ? …よく分からないけど、笑い事じゃない気もするわ。夕張お姉ちゃんいっつも埋もれるし」


長門「そこで私達の誰かが発掘するまでが様式美になってしまっているな」


暁「変なくせほどよく残るものね…」



鳳翔「…」


長門「…? 鳳翔、どうしたのだ。浮かない顔をしてる」


暁「…鳳翔さん、疲れてるの?」


鳳翔「…いえ。私は大丈夫、心配かけてごめんなさいね」


長門「…本当に大丈夫なのか、なんなら今日一日ぐらい休んでいても文句は言われないと思うのだが…」


鳳翔「私は十分休みましたよ。気遣いありがとうございます、長門さん」


長門「そうか…。貴方にこんなことを言うのもお門違いかも知れないが、無理はしないでくれ」


暁「鳳翔さんが倒れたら、暁たちみんな多分つぎつぎに共倒れになっちゃうわ」


鳳翔「…ふふ。そうね」



長門「…」ノビー

長門「…さて、私は凝り固まった身体でも動かしてくるとしようかな」ヨッコイセ


鳳翔「ええ、行ってらっしゃいませ」


暁「もし司令官に会ったらよろしく言っておいて欲しいのです」


長門「はは、心得た」スタスタ



ガチャ バタム


暁「…」

鳳翔「…」



暁「…此処も、昔と比べて賑やかになっちゃったものね」


鳳翔「賑やかなのはいいことですよ」


暁「違いないわ。ひとりひとりの負担が減るんだもの」

暁「幸せも分け合える、苦しいことも分け合える。これ以上のいいことなんてない」

暁「…苦しいことを肩代わりするのは、ちょっと限界もあるけど」


鳳翔「自分のことは最終的に自分で解決するものよ」

鳳翔「私達は手助けに回れればそれでいいんです、ちっぽけだったとしてもね」


暁「…それでも暁にできることと言ったら、せいぜいそのさまを眺めて心配の声をかけるだけ」


鳳翔「傍観も大変ですね」


暁「そうでもないわ。もじのとおり見てるだけだから」

暁「暁は司令官と鳳翔さんみたいに強くないし、重たい荷物を一人で抱えるのを止めちゃったし」


鳳翔「それも一つの選択肢。持ちつ持たれつは何も悪くありません」


暁「司令官もたぶん同じようなことを言ってくれるわ。なぜって、優しいんだから」


鳳翔「…嫌ね暁ちゃん。優しさと甘さは、別物よ?」


暁「うん、分かってる」



暁「司令官と鳳翔さんはアイスみたいに甘いようにみえて、その裏はコーヒーよりも苦いってことも」


鳳翔「ふふ。まるで全てを見てきたかのような口ぶりなのね」


暁「ぜんぶは無理よ。二人が本当のこと、今まで暁に吐露してくれたことなんてなかったでしょ?」


鳳翔「知りたいのなら教えてあげましょうか。暁ちゃんには権利がある」


暁「ああ、今更教えてくれなんて言わないわ」

暁「分からないままここまで来ちゃったなら、もう分からないままでいいから」


鳳翔「…そう」

鳳翔「でもね。あの方も私も完璧じゃあない、時にはボロを出してしまうことぐらいあるのよ?」


暁「確かにそうだった。…でも肝心なところは、口にも行動にも映らなかったわ」

暁「暁はその断片を勝手に繋ぎ合わせて勝手に満足してるだけ」

暁「そもそも繋ぎ方を間違えてるかもだし、本当の答えを見つけられたとも思ってない」


鳳翔「…」


暁「さいごで暁はこう終わることにした」

暁「…本当の司令官と鳳翔さんは、いったい何処にいるのかな。って」



鳳翔「…本当の私、ねぇ。ふふ、なんだか新鮮な質問」

鳳翔「答えは簡単。本当の私は、今暁ちゃんが見ている私よ」


暁「…」


鳳翔「表の面と裏の面とがあって、どちらが本当の面なのかと議論するのは、ひとの得意技」

鳳翔「でもそんな議論は、意味の無いことに気づくはず」

鳳翔「表も裏も両方あわせて、本当の面なのだから」


暁「じゃあ今の鳳翔さんは? 表? 裏?」


鳳翔「表…かもしれないし、裏なのかもしれない。…あらやだ、私自身もあまり分からないわね」クス


暁「貼り付けた仮面も、自分の顔なの?」


鳳翔「その通り。贋物なんてものはない、自分で自覚して、そう演じている以上はね」

鳳翔「私の演技なんて大したことはない。それこそ、あの方には簡単に見破られてしまうし」


暁「それは幸せなことよ鳳翔さん。無理して頑張る必要がないんだもの」


鳳翔「幸せでもあり不幸せでもありますよ」


暁「弱いじぶんを見せざるを得ないから?」


鳳翔「流石ね。もう立派な大人よ暁ちゃん、お世辞は抜きで」ヨシヨシ


暁「茶化さないで。笑いながら言われてもあんまり嬉しくないもん」ムス

暁「…でも、それなら安心できるわ。鳳翔さんのことは司令官に任せておけるから」


鳳翔「あの方への負担は半端なものではありませんが、ねぇ」


暁「それ鳳翔さん自分で言っちゃうの?」


鳳翔「あらいけない、ふふっ…」



暁「…司令官も覚悟のうえで鳳翔さんとケッコンしたんだろうし。責任と言えば責任になっちゃうのかもだけど」


鳳翔「そう堅苦しく考えるようなことでもありませんよ。私達は立派に夫婦しているでしょう?」


暁「暁は立派に子供してるのかな。…腑に落ちないわね」


鳳翔「焦ることはない、ゆっくり大人になればいいのよ暁ちゃん」

鳳翔「大人になるっていうのはね、自分の限界を決めてしまうのと同義だから」


暁「…限界」


鳳翔「だから私としては暁ちゃん達が羨ましい。まだまだ限界が見えない、未来が残っているということだもの」

鳳翔「…私の成長はもう止まってしまったも同じ、もう伸びしろは残っていないから、ね」


暁「悲観なんてらしくないわ鳳翔さん」

暁「…じゃあ暁は、鳳翔さんみたいな立派なじょせいを目指すわ。これはお世辞じゃないんだからね?」


鳳翔「まあ、嬉しいことを言ってくれるわね」

鳳翔「できたら私のようにではなく、暁ちゃんは暁ちゃんらしく生きてもらいたいものだけど」


暁「当然よ。そのうえで立派なじょせいを目指すんだから。鳳翔さんみたいな、ね」


鳳翔「ふふ。暁ちゃんも、ひとを喜ばせる冗談が上手くなって…」

鳳翔「…誰に似ちゃったのかしら、ねぇ」クス



――整備室兼資料室、の隣室。倉庫


ゴッチャァ…


金剛「…何デス、此処は…」


夕張「あっはっは、見ての通り。楽園ですよ!」


金剛「Paradise…? ま、魔境の間違いじゃないノ…?」


天龍「…腐海でもいいじゃねぇの? 特段ニオイがキツイものは無いが」


金剛「…天龍、慣れテル?」


天龍「まあな」

天龍「此処はある意味、昔から一番変わっていない場所なんだと。ビッグセブンが言ってた」


金剛「昔から散らかってたってコト?」


天龍「そうなるんだろな。オレあんまり興味ねぇけど」

天龍「提督が夕張の奴に暇があったら片付けといてくれって名目で、この倉庫の管理とか任せてるんだが」

天龍「…何だろな、アイツにとっちゃ宝の宝庫に見えるらしい。何か掘り出しては自分が埋もれたりだぜ」


夕張「アイディアが滾るわーっ!」ガサガサ


金剛「…待ってくだサイ。そんな昔から散らかしっぱなしの場所を、夕張だけで片付けさせてるって言うんデスカ?」

金剛「テイトクも無理難題を仰るヨ…」


天龍「いや? 多分端からそのつもりはねぇだろ」

天龍「此処がもうどうにもならないレベルってのは提督の奴も分かってるしな」



天龍「何事も許容範囲があるから、それを超えねぇ程度に片付けすりゃいいんだってよ」ゴソゴソ


金剛「最初から諦めてるってのも、なんか色々ツッコミどころ満載な気が…」


天龍「まあたまに漁ってみると中々懐かしいモンを掘り当てたりするらしいぜ」


金剛「懐かシイ?」


天龍「此処の鎮守府のあれこれが色々紐解けたりするかも知れないとか何とか」ポイッ


金剛「This and that…むぅ。ちょっと興味がありマース」

金剛「…にしても、煙たいデス…。モノ動かす度に埃が舞うってどんな状態デスかもう…」バサバサ


天龍「夕張のやつが此処に来てから一層散らかり具合が激しくなったんだとよ」

天龍「"此処は宝の宝庫ですかっ!?"ってな。好き勝手引っ掻き回してるみたいぜ」


金剛「夕張らしいネー…ン」

金剛「アレ、何でもかんでも埃まみれかと思ったら。ちらほら真新しいモノもありマース」ヒョイ

金剛「…でもコレ、何でショウ? 用途が全然わかんないネ」


天龍「此処はアイツの試作品の墓場でもある」


金剛「ウン、納得しちゃったヨ」



金剛「ねぇ天龍」


天龍「なんだ」


金剛「此処って、トラブルメーカー揃い?」


天龍「…」

金剛「…」


天龍「気づいちまったか」


金剛「まぁ、…察しはついたというか、ネ」


天龍「…ならどうするよ」


金剛「どうもしないし、ワタシにはどうもできないデス。皆何かしらイロイロあったんだなーって思うだけ」

金剛「踏み込みはしまセン。思い出したくもないコトは、誰しも抱えていて当然だから」


天龍「…」

天龍「知ってるか金剛、オレ達"艦娘"の特性を」


金剛「"分からない"ってコトは知ってマス」


天龍「…そうだ。オレ達は正体不明なんだ」



天龍「大日本帝国の軍艦。その魂が現世に顕現して、オレ達艦娘が生じた――ってのが、人間の見解だ」


金剛「でも結局、推論の域を出なかったんだよネ。理由を当て付けていたひとを、ワタシも見たことがあるヨ」


天龍「ああ、"考え出すと何処かでズレが起きちまう。円周率みたいに"。夕張の奴はそう言ってた」


金剛「誤差の中にいるのが、ワタシ達。だと?」


天龍「…そうかもな。でもオレ達の存在が誤差そのものなら」

天龍「オレ達を造った人間と妖精は、そもそも一体何なんだろうな」


金剛「…Umm、philosophical。哲学の定義は知らないけどネ」

金剛「まー何だかんだで生まれちゃった訳デスし、今更四の五の言ってもしょうがないデース」


天龍「…思い切りいいのな、すっかりお前も本調子に戻っちまったらしい」フン


金剛「文句ならテイトクにお願いしマース」ケラケラ



金剛「あのひとといると、なんだか小さなコトで悩んでる自分が馬鹿みたいに思えちゃッテ」


天龍「自分より馬鹿な奴見て安心するってか? 違いねぇな、あの提督馬鹿だし」ギャハハ


金剛「またまたそんなコト言ってー。天龍だってテイトクのこと大好きなくせニー」


天龍「肯定も否定もしてやんねーよ。勝手に言ってろ」

天龍「オレはその馬鹿にボロ雑巾になってたとこを、もう一回ズタボロに叩き直されただけだ」


金剛「…Oh、随分物騒なEncounterだったみたいだネ。天龍らしいっちゃ天龍らしいケド」


天龍「けっ、…オレは人間ってのが大嫌いだったからな」

天龍「自分の願望で全部握り潰しやがった人間が嫌いだった」

天龍「…世界の中心に立ってるのが自分だと思い込んでやがった、人間がな」


金剛「…Hum」


天龍「…知ってるか金剛。怒りってのは、刃よりも速くはらわたを突き刺すんだ」

天龍「でも流れ出すのは血じゃなくて、新しい怒り。外からも内からも溢れやがって、あっという間に脳を侵す」


金剛「…それで。怒りに侵された天龍は、どうテイトクに絆されたノ?」


天龍「言ったとおりだぜ、ズタボロに叩き直されたんだよ。布団ってのは叩いた方が埃が出るって具合にな」ケッ

天龍「…護ってたはずモノ喪って、おめおめ生き延びて。それで左遷の処分受けた時にゃ、心底胸が踊ったぜ」



天龍「もう一人、"提督"ってのを地獄におくってやれるんだってな」ギリ…



金剛「やさぐれてたんだネ。そのWordから察するに、Black_roadを歩いてきちゃったのカナ」アハハ


天龍「黒っつーより赤…いや、時間が経つと黒くなるのか。別にいいやどっちでも」フン


金剛「そのBlackを…Umm、White一色とまではいかなくても、greyぐらいには薄めてくれたっぽいネ。テイトクは」


天龍「…そうだな。こんな感じのオレでも、感謝はしてるんだ。引き揚げて貰っちまったのは確かだし」


金剛「そうだネー…」シミジミ


天龍「ビッグセブンにチビ…鳳翔さんについては分からねぇけど」

天龍「夕張の奴も、何かと世話になったからあんなに提督のこと好いてるんだろうしな」


金剛「皆惹かれていく…テイトクも罪なひとデース」


天龍「…ほんと、ただの人間じゃねぇと思ったよ」

天龍「棍棒一本で立ち向かってきやがって、手負いとは言えオレに勝ちやがったんだから」


金剛「スタッフ一本で天龍に? …Uh-huh、それは驚きデス」


天龍「多分、あの提督は。"艦娘"に対する戦い方を知ってた」


金剛「艦娘との…戦い方?」



天龍「…あの提督は、過去にオレ以外の艦娘と殺りあったことがあるんだ。…オレはそう思ってる」


金剛「…」



夕張「二人して何こそこそ話してるんですか。混ぜてくださいよ」ズイッ


天龍「もう大体終わっちまったよ。相変わらず遅いんだからお前」


夕張「私を愚弄したわね。絶対に許さないわよ、水底堕ちても恨み続けてやる…」


天龍「ポンコツなのはお互い様だから安心しろって」

天龍「…そうだな、金剛の奴は高速戦艦だし、上手い感じに中和してくれんじゃね?」


金剛「熱いお湯にWater注ぐ理論は間違ってるような気がしマス…」


夕張「まいっか」


金剛「いいノ?」


夕張「こちとら積みすぎで色々イカれただけですしー。別に私後悔はしてませんしー」ヤダヤダ


金剛「エ、航海はしてるデショ?」


夕張「してませんってば。積めるだけ積めて沈んだならもう後悔するわけないでしょう」


金剛「ウン、そりゃ沈んだアトに航海なんてしないし出来ないデース」


夕張「…?? ですよね?」


金剛「…ンン? だよネ?」


天龍「…同音異義語って怖いな」ハァ



――とれえにんぐるうむ。


長門「…おや、まさか先客がいるとは」

長門「帰ってきていたのか、提督」


提督「此処以外に帰る場所はない」コブシタテフセ


長門「私としては嬉しくもとれるが、切なくもとれる発言だ。普通帰る実家があって然るべきだと思う」


提督「へえ。じゃあ嬉しい方だけ考えるんだな」


長門「…はあ、そうだった。貴方はそういうひとだった」

長門「そう言えば、かすてらを居間から持ち去ったらしいな、何処にやったのだ?」


提督「カステラ…ああ、カスティーラな」


長門「…まさか運動の合間に平らげてしまったのか? おいおい提督、貴方も人のこと言えない食い意地だ」

長門「あのかすてらは確か30㎝ぐらいあっただろうに」


提督「…平らげた、か。まあそういうことにしておけ、おれはその分燃やしてるだけだ」


長門「そうか。それはともかく…なんだか、律儀に鍛錬してる貴方を見るのも久々な気がする」


提督「動かさなきゃ筋力は衰える一方。去年の夏辺りに痛感した」


長門「はは。動かさなかったんじゃなく、貴方は動けなかったのだろう提督?」

長門「天龍が来た頃に腰痛ぶり返して、療養期間が一年ぐらい延びたじゃないか」


提督「療養終えてからの金剛が来るまで一年を、おれはサボった」

提督「人間ってのはいかんな、楽な道を見つけるとつい甘んじる。悪い癖だ」


長門「少しばかりの平和を享受していたのなら、それはそれでよかったのでは?」


提督「平和な世界に、おれ達"提督"は要らんぞ長門」


長門「これは奇遇だ。私達"艦娘"も要らないよ提督」


提督「…」

長門「…」


提督「…すまん長門、また妙な空気を作った」


長門「…ああ、私もついノってしまった。すまない」



長門「提督」


提督「…ん」ウデタテフセ


長門「やはり貴方も、前に比べて顔の皺が増えたな」


提督「…当たり前だ。おれも普通に老いる」ググ


長門「むぅ…時の流れは残酷というか、ひとを変えてしまうものだというか…」


提督「一つ聞くがな長門。お前、いつの頃のおれを比較対象にしてる?」グ


長門「…。会って間もない頃」


提督「…今のおれに、その時と同じようになれと? 冗談はやめろ」グググ


長門「むむ…些か酷な事を言ってしまったか、すまない」

長門「…まあ提督、その歳でここまでの肉体なら文句は言われないさ。うん」


提督「…ふん、妥協されたのが妙に気に食わない。伸びしろは残っちゃいないが限界を貫く心持で気張る、か…」ググググ


長門「あはは、その意気だ。…ところで、提督」


提督「…なん、だ」グギギギ


長門「この腕立てはおかしいと思う」


提督「何処が」ギリギリ


長門「えと…あの、だな」

長門「…私が上に座ってる時点で、色々」


提督「……ッ」プルプル


長門「…頼まれたからやってることとはいえ、その」

長門「私はけっして軽いとは言えない体重だ…本当に大丈夫か…?」


提督「…く、くく。笑わせる、お前なんて全然重くない…重くない…ッ」ガクガク


長門「…止してくれ提督。そんなところで乙女心を気遣われてもあまり嬉しくない」


提督「あと…三回。三回…頑張らせてくれッ…」


長門「…ああ、うん。貴方がそうしたいなら、私は止めない。多分貴方は止まってくれない。頑張ってくれ」



提督「」チーン


長門「…提督ー。やっぱり貴方って昔から、意地が絡むと途端に無鉄砲になるのだなー」サンソスプレーシュー


提督「」


長門「…」ガッショウ


提督「…腕が上がらない」


長門「…そりゃそうだろう。鉄は鍛える為に叩くもの、しかし叩きすぎると普通に折れる」

長門「貴方の身体だってそれと同じさ」


提督「…鉄よりはまだ柔軟性がある。適応力もだ」


長門「無機物と張り合ってどうする。…いや私も元々無機物だった」


提督「お前たちは"両方"。"有無機物"とでも呼ぶべきか」


長門「"はいえ"みたいな言葉遊びだ」


提督「今更お前が有機物でも無機物でも誰も気にしない。最近じゃコンピュータもAIという立派な知能を獲得してる」


長門「ああ、いんたーねっとか」


提督「…コンピュータ=インターネットの発想は間違ってないが安直すぎるな」


長門「ぐむ…その辺の世界はどうにもややこしい。しかしいつかは理解しなければならないのだろうか…」


提督「…使い方さえ覚えとけば文句は言われんだろう。黒電話と一緒だ」



長門「…慰めはいらないぞ提督。認めよう、私は機械が苦手だ。きーぼーどだって平仮名入力しかできやしない」


提督「聞け。"このボタン押すと電源がこう入って回路を電子がこう通って音声を向こうへ伝えるんだわーい"…」

提督「…そんなことわざわざ頭の中で考えて電話してる奴なんているのか? いないだろう?」


長門「…いないと思う」


提督「そうだ、いない。キーボードも難しいことは置いといて"ボタンの組み合わせ"で結果が変わると思え」


長門「それだと電話と何ら変わらないじゃないか……はっ!」


提督「後は先入観を捨てるだけ、苦手だと思うから苦手になる」

提督「…とは言え、言葉だけで何とかするのも難しい。克服には付き合ってやるさ、のんびりな」


長門「…っ!」パシ


提督「…うん。そこでおれの両手をとりたい気持ちはよく分かるが、おれ腕の調子がまだちょっt」


長門「提督っ!!」ブンブン


提督「うがッ!?」


長門「なに、乳酸をとってやってるだけだ! はっはっは!」ブンブン


提督「そ、そうか…がはは、それは嬉しいな…痛てて」



提督「…心身共に疲れた」


長門「最近しょっちゅう言ってないかそれ」


提督「そうだしょっちゅうだ…このところになって妙なプレッシャーが過多な気がする」


長門「ぷれっしゃー? 敵と睨み合っているわけでもないのに、感じる局面があるとでも?」

長門「最近はそこそこ平和で演習もまちまちだと言うのに。もしかして提督の精神には内なる敵でも潜んでいたり…」


提督「そうだ睨み合ったんだ…今日と秋下旬頃に」


長門「…うん? 今日? …なんだ提督、私達を敵扱いしてるのか」ムゥ

長門「確かに寒がる貴方を尻目に、皆が皆炬燵の温もりを享受していたぞ」

長門「しかし、貴方がそんな小さいことをねちねち気にするひとだとは思わなかった。若干失望してしまったよ」


提督「…誰も今日会ったのがお前たちだけなんて一言も言ってない。その失望は取り消せ」


長門「…では誰と会ったのだ?」

長門「鎮守府のご近所様に敵性の人間などいない、挨拶を返してくれるほど善良なひと揃いだぞ」


提督「…おれ達が思ってるほど、ご近所様ってのは狭いものじゃないのかもな。海に近いも遠いもないなら、尚更」


長門「遠い…ご近所様で、敵? …??」


提督「正直本当のこと言っても信じてもらえん。全部忘れてくれ」


長門「なんだ、水臭いぞ。私と貴方の仲に隠し立てなどいらない、そうだろう?」


提督「そうだな。…でもなんかこれは方向性がおかしいというかトンチンカンというか」


長門「方向性の違いなんて今までに幾らでもあったじゃないか」

長門「それとも何だ、もしや深海棲艦が砂浜に流れ着いたりして提督は"いーてぃー"ばりの交友関係になったとか?」

長門「なーんてまさか! いくら提督でもそんな――」


提督「…」


長門「…」



長門「えっ」



長門「提督殿よ。貴方には昔から驚かされてきたが、今日もまた驚かされてしまったぞ」


提督「そいつはいい、大道芸人にでもなろうかな。まだ林檎なら潰せそうだ」ハァ


長門「…今度の提督の友達は深海棲艦か。胸はそこまで熱くならないな…」

長門「意思疎通の面で苦労しなかったのか? 会話すらマトモに出来るとも思えないのだが…」


提督「ヘタしたら人間より人間味がある分には対話が可能だった」


長門「なんと」


提督「日本語もちゃんと話せるようだ」

提督「…声が口の動きと合致してるはずなのに、音源の方向が掴めんような。得体の知れん違和感はあったが」


長門「…むむ。興味深い」


提督「…長門、お前驚いたって言ってる割にはそこまで驚いてるように見えんぞ」


長門「"ひと"というのはだな提督。驚きすぎると冷静を極めてしまう場合が多い。突発な驚愕に身体が追いつかないのだ」


提督「そうか。お前も十分に"ひと"らしくて、おれは嬉しいよ」


長門「ちなみに艦種は。まさか空母級戦艦級の類ではないはずだ」アッハッハ


提督「ヲ」


長門「えっ」


提督「南の方の…"戦姫"」


長門「えっ」

長門「南方棲戦姫…だと? 馬鹿な、そいつは確か…」


提督「ああ、お前の言いたいことは大体分かる」



提督「あの姫は、過去の作戦で撃沈されていたはずだったな」



長門「当時のことは資料を洗えば自ずと答えは出る。…提督の話が本当なのだとしたら」

長門「深海の中枢核が復活している、ということになってしまうぞ」


提督「深海事情を陸の人間が掌握するのは無理だろうが、そう考えるのが妥当かも分からん」

提督「尤も、その作戦におれ達は参加してなかった。…時期が時期だったし」


長門「…語るのは記録のみ、か」

長門「貴方が嘘を吐くとも思えない。しかし、真実だと割り切るのも簡単ではないと思う」


提督「そうだろうな。だからおれは"信じてもらえない忘れてくれ"と言った」

提督「何だ、隠してもどうにもならんから、いっそ全部話した方がよかったのかも知れんな。真偽は別として」


長門「…元帥へ進言してはどうだ。過去の作戦海域をもう一度掃海も兼ねて査察すべきと」


提督「そうだな。おれも鳳翔に書簡を頼むつもりだった。…しかし文字で伝えられることにも限界がある」

提督「あの爺さんの下へ直接出向くか、電話を繋ぐことになるのは確定だろうな」


長門「あと確認しておくが提督。…貴方はその姫と仲良くなってしまったのか?」


提督「主観じゃ判断しがたい。"トモダチ"とやらの基準は知らん」

提督「…その姫が本当に敵なのか。そう訝しんでしまった程には、おれは絆されたのかもな」


長門「…そうなのか」



提督「それとだな。話が少しズレるが、一つお前に聞きたいことがある」


長門「…なんだろうか」


提督「陸でも海でも、通話の混線は多々あることだ。今現代においても」

提督「長門。混線相手――深海棲艦勢の声に、最近何かしらの変化はなかったか? 昔はあって、今はないものだ」


長門「今は…ないもの? ……」ウデクミ

長門「……そういえば。"怒声"、いや、"唸り声"…か? むぅ、思い返すと妙な節が…」


提督「…妙な違和感はお前も感じてるらしい。鳳翔と暁も同じことを感じてる。"昔とは違う"、"何かがおかしい"」

提督「そして、この疑問は最近になって一部の艦娘が訴え始めた。…ちょうど、"あの頃"を生き抜いた艦娘が」


長門「…」

長門「時を経て、深海棲艦も変わってきたと?」


提督「割り切るしかない。…ただ深海側も何かがおかしくなってるのは確か」

提督「そうでなかったなら、人間のおれにあんな友好姿勢を見せはしないはず……」


長門「…罠の可能性は。手篭めにした後、全てをひっくり返しにくる算段かも知れないぞ」

長門「貴方の目を誤魔化すことなど早々出来はしないと思ってはいるのだが…」


提督「買い被ってくれるな。おれだって騙されることもある」


長門「…どうだったかな」

長門「…やれやれ、今後は出撃の度に言い知れぬ疑問を抱かなければならないようだ」


提督「済まんな。100%おれのせいだ」


長門「聞いてしまった私の責任もある。五分五分ということにしよう」

長門「後で記録を棚から借りてもよろしいか、追いつかないなりに私も考えてみたい」


提督「構わんぞ。満足するまで考えろ」


長門「満足は…まあ多分無理かもしれないな」ハハ

長門「しかし提督。…貴方は昔の敵を今の仲間にしていく癖でもあるのか」


提督「明日、皆敵になってしまわないことを祈るのみだな」


長門「思ってもないことを…」ハァ



長門「えーッ!?」


提督「…身体が追いついたらしい」



――


提督「…」スパー


長門「…窓から顔を出してなにやってるのかと思ったら、葉巻か」

長門「喫煙は止められないのか。そろそろ健康に響いてくる頃合だぞ?」


提督「癖になってる。直そうと思って直るものでもなさそうだ」

提督「おれは自分が吸いこそすれ、喫煙の勧誘も助長もしない。よっぽど質のいい喫煙者だと思わんか」


長門「思わないな。吸ってしまっている時点で違いなどない」


提督「そうだな」


長門「電子葉巻とやらはどうしたのだ。そっちの方が害も少ないというではないか」


提督「引き出しにしまったままだ」


長門「宝の持ち腐れだな。…そもそも宝と呼べるような代物でもないが」


提督「まあそう言うな長門。大切な愛娘から貰ったモノだ、使うのは何処かもったいなくて気が引けてしまう」


長門「どの口が言う」


提督「この口が言う」


長門「はぁ…。…で、その大切な愛娘は、貴方にそれを使ってもらうことを幸せに思うのでは?」

長門「そして少しでも貴方に長生きして欲しいから、それを渡したのではないのか?」


提督「そうかも知れんな。優しいモンだ、本当に」


長門「私としても貴方には長生きをしてもらいたい」

長門「この戦いが終わっても終わらなくても。…終わって、"私達"が消えてしまったとしても」


提督「縁起の悪いことを――いや、むしろ縁起は良いのかもな」


長門「そうだ。…貴方はそうやって割り切ることの出来た、強いひとだ」



長門「"艦娘"の解体に伴う、その記憶の消失――私達艦娘は、それを予め伝えられていた上で、戦うことを選んだ」

長門「…平和の、為に」


提督「…」フゥー


長門「過去の私は、己が戦うことの意味を見失っていた。…貴方が私に、戦う理由をくれた」


提督「…ほう。そいつは悪いことをした、おれはお前に何を背負わせてしまったのか…」


長門「はは、茶化さないでくれ。貴方には感謝してもしきれないんだ」

長門「…だから、怖いんだ。仲間と過ごした記憶が、貴方と過ごした記憶が消えてしまうのが」

長門「平和を心から望んでいるはずなのに、…私はその平和の到来を恐れてしまっている」


提督「…どうした、天下のビッグセブンのお前が、今になってそんなことを怖がってるのか?」


長門「生憎と、一人の"ひと"、女として生まれてしまった。…一丁前に臆病さ」


提督「へえ。女ってのは忘れるのを特技にしてるもんだと思ってた」


長門「…提督よ、貴方は鳳翔以外に女性との交際経験はあるのか?」


提督「ない」


長門「だというのに…ふむ、やはり私達の見えないところで苦労なさっているようだ」


提督「…待て、鳳翔に告げ口は絶対に駄目だぞ。これはフリじゃない、本気と書いてマジと読む部類のアレだ」


長門「分かっている。そんな必死にならなくても大丈夫だ」ハハ



提督「…たとえ眼が潰れても、その眼で見た景色は消えんぞ長門」


長門「…」


提督「亡失は痛みを伴う。お前の恐怖が分からんわけではない、怖がるなとも言わない」ゴキゴキ

提督「だが辛気臭い話はここまで。考えたところで明瞭な答えなんて誰にも見えん」


長門「…そうか。そうだな」

長門「見えないことを考慮しても仕方がない。…今は今のことを考えなくては、な」


提督「…まあ何だ。もしお前たちがいなくなったなら、おれはきっと泣くだろうなぁ」


長門「…またそうやって悲しいことを言う」


提督「いや、割り切っちゃいるぞ。…割りきっちゃいるが、いざそうなったらと思うとやっぱりな」

提督「…不味い、お前のこと笑えない。おれも十二分に臆病だ、どうしよう」


長門「…はは、それはそれは。なんだか嬉しいよ」

長門「それだけ貴方は、私達を想ってくれているのだと。安心できる」


提督「そいつはよかった。艦娘に安心してもらえる、提督としては鼻が高いもんだ」

提督「ではそんな提督から、最後にお前にひとことを授けよう」


長門「ああ。…なんだ?」


提督「お前たちが消えても、お前たちがお前たちとして生きた証なら、おれが用意する」



提督「…だから、おれの為には戦うな。お前たちの為に戦え。今までも、これからもだ」


長門「…」

長門「…っ、ひとことになってない…それじゃ二言三言じゃないか」


提督「がはは、こりゃ失礼した」スタスタ


長門「…提督」


提督「ん」


長門「…ありがとう」


提督「ああ」ガチャ


…バタン



長門「…」フー

長門「…そうだったとしても、貴方は鳳翔との契りを交わしていたのだったな」

長門「鳳翔も、それを知っての上で、貴方と」



長門「…」


長門「…ふふ。なんとも、底の見えないひとだよ。貴方達は」



――十数分後。鎮守府、廊下。



提督「…」フロアガリ-ン

提督「…はぁ」


暁「しれーかん」


提督「ん、暁」


暁「本日もお日柄よく、なのです」ペコリ


提督「…」チラ


窓外<曇り


提督「…、そうだな。一応今日は大安か友引だったはず。間違ってない…もう夕時だが」


暁「ともびき?」


提督「気にするな」



暁「…」バサバサ


提督「…暁。それ、おれが羽織ってたやつか」


暁「うん。こたつの脇に畳んであったからせしめてきたわ」


提督「…おれの中古なんてせしめるに値しなさそうだ」


暁「でもまだあったかかったの。価値なんてそれだけで十分でしょ」


提督「暖かかった? 妙だな、おれが羽織ってからそこそこ時間は経ってるはずなのに…」アレ?


暁「もしかして司令官、返して欲しいの? …ならしょうがないっ、暁はレディーだから譲ってあげるっ!」ハイ


提督「心遣い感謝する。気持ちだけ受け取っておくとも」


暁「…遠慮はかえってレディーに失礼」ムー


提督「かも知れん。それでもレディーに風邪引かれちゃ男失格、ここは退いておけ」


暁「…むぅ」



暁「…あと司令官。なんだか疲れてるように見えるけど、だいじょうぶ? あとおふろ入ってきたのね」


提督「流石レディー。おれ様の調子はお見通しらしい」


暁「…」ムスッ


提督「言っとくがお前さんのことを馬鹿にしているわけじゃない」


暁「…白々しいもん。なによ"おれ様"って、やっぱり暁のこと馬鹿にしてる…」ムー


提督「悪かった悪かった。勘に触ったなら謝る」

提督「だがお前さんの心配は嬉しかった。それは本当だ」ヨシヨシ


暁「頭をなでなでしないで…って、……あれ?」

暁「…どことなく撫でる手が弱々しいわ司令官。ほんとにだいじょうぶ?」


提督「なに、自分に苦行を科せ過ぎただけだ。がっはっは…」プラーン


暁「…??」



暁「…」トテトテ

提督「…」スタスタ


暁「…あ」

暁「司令官! 見て見て、窓の外!」


提督「ん? …おお、雪がちらついてるな。まだまだ寒気は続いてるようだ」


暁「司令官の兄弟が長生きするわ!」


提督「はは、そうだな。一、二週間長生きできてあいつも満足だろう」

提督「…しかしそれだけの間、おれ達は寒さに喘がなければならんということだ」ブルッ


暁「…うん」ブルブル


提督「…と言うか暁。こんな寒いのにどうして炬燵から出てきた?」


暁「…暖かさにずっと甘えてちゃいけないのかなぁって、思っちゃって」


提督「そこは別に遠慮しなくていいところじゃないのか」


暁「でも炬燵が実は体にわるいってことぐらい知ってるもん」

暁「ひとが"良い"って感じるモノは、大抵ひとにとって悪いモノだし」


提督「甘えすぎはひとをダメにする…まあその通りだな」

提督「何所ぞの鎮守府じゃ"提督"をダメにした艦娘がいるらしい。なんでも母性と包容力が強すぎたとか」


暁「へー…」

暁「…大変だわ司令官。赤の他人だとはぜんぜん思えない」


提督「…そうか」



暁「司令官」トテトテ


提督「なんだ」スタスタ


暁「どこ行くの?」


提督「さぁ。…このまま歩いていけば、台所には出るんじゃないか」


暁「特に行くアテは無いのね」


提督「動いてる方が寒くない。だからおれはただ歩くだけだ」


暁「今ならたぶん炬燵も空いてるとおもうけど」


提督「ふ、分かってないな」


暁「え?」


提督「おれは炬燵無しで今季を乗り切ってみせよう。お前さん達はゆるりと炬燵に甘んじるがいい」ガハハ


暁「…司令官。自分がものすごく意味の無い意地の張り方してるって、思うことない?」


提督「まさか。おれの言葉にはいつだって意味がある。自負もしてる」


暁「うん、自覚無しとは恐れ入ったわ。流石司令官」


提督「あ、お前さん今おれのこと馬鹿にしたな?」


暁「おかえしよ。ぷんすか」



――台所。


提督「うぉ、不味い。珈琲の期限がもうすぐだ」ゴソゴソ


暁「そもそも此処でコーヒー消費できるのって何人だった?」


提督「さぁ、天龍も長門も飲めるだろうし、半分以上だったかな」

提督「金剛の奴は夏に飲んでたはずなのに"そんなの飲むワケないデース!"って全力否定してた。何があったんだろう」


暁「そうなの? 暁、その時の記憶はあんまり無いわ…」


提督「…見たところ、残るはコップ二杯分ほど。どうしよう暁」


暁「…どうしましょ。あ、暁はとくだん問題ないから消費してあげてもいいんだからね!?」ミエハリ


提督「本当か。じゃあ二杯分よろしく頼む」コポコポ…


暁「任せなさ…って、しっ、しれーかんのばか! 二杯なんて飲めるわけないでしょっ!?」


提督「だって暁は特段問題ないって言ったじゃないの。なら問題ないお前さんが飲み干すに限る」


暁「~っ!!」


提督「それとも何だ、問題なくても二杯は飲めない理由があるのか? おいおい、そりゃ十分に問題アリというモノだ」


暁「そ、それは…」



ガチャ


提督「…よし、暁。苛めて悪かった…苦しみは二人で分かち合おう」


暁「うん…っ」


提督「…角砂糖何コがいい?」


暁「さん…いや、二コでいいわ」


提督「え、二コ? …随分と冒険するな、大丈夫か? おれ四コだが…」ヒョイヒョイ


暁「…やっぱり三コでお願いします」


提督「…」チビ

暁「…」チビ


提督「…」

暁「…」



暁「司令官、ダメ。おもむろに砂糖に手を伸ばしちゃダメ…! また血圧あがっちゃう…っ!」


提督「止めてくれるな暁…ッ、おれがこの黒い悪魔を殺すにはこの白が、この白が必要だッ!」


暁「めを覚まして司令官…、こんなの一コ程度じゃ攻略なんて出来ないわっ。量がかさむいっぽうよ!」


提督「なら何だ…無様な醜態を晒してでも、血反吐を吐いてでもこの黒を飲み干さなきゃならんのか!?」


暁「そうよ…それでも暁たちは、向き合わなきゃいけないの。立ち向かわなきゃいけないのっ!」

暁「黒から逃げても白には染まれない…夜から逃げちゃ、朝はぜったいに来ないわっ!!」ガッ


提督「…おい、暁? お前、何をして」


暁「…暁が、しょうめいしてみせる。暁がこれを飲み干せば、きっと司令官も…っ」カタカタ


提督「やめろ暁! 苦行に自分から足を突っ込むことは無い! そんなことをしてもおれは何も嬉しく――」


暁「司令官」


提督「…ッ」


暁「…先に、行ってる」ニコ

暁「」グイッ


提督「…!!」


暁「…」ニコ


ドシャ


提督「暁ぃィいいッッ!!!」



提督「暁…しっかりしろ、おいっ!」ダキアゲ


暁「…こほっ、しれいかん。ごめん、…全部は、むりだった」


コップ<【残】2/3


暁「…暁ってば、いつも中途半端…」

暁「身の丈に合わないことばかりして、ちっぽけなくせに背伸びしてばかり…」


提督「何を言ってる…お前の勇気はおれ以上だ。ちっぽけなわけがあるかッ!」

提督「今おれの眼に映っているもので、今のお前以上に大きなモノは何も無い…ッ」ギュ


暁「…ありがと、そんなこと言ってくれるの、しれーかんだけっ…」キュ



鳳翔「…えぇと。牛乳なら冷蔵庫にありましたよ?」



提督「…どの辺りから見てた?」トポポ


鳳翔「二人で分かち合おうとなされていた辺りから」


暁「」ゴキュゴキュ

暁「」プハッ

暁「暁はこの辺で失礼するのです」ソソクサ


提督「待て待て。何をそんなに急いでる」ガシ


暁「ぎゃくに急がない理由がどこにあるって言うのよっ!」カオマッカ

暁「顔の火照りを炬燵でごまかしてくるっ…!」トタトタ


提督「…お、おぉ」


戸<バタムッ!!



提督「…余程恥ずかしかったらしい」グビ


鳳翔「貴方様はそうでもない様子です」


提督「ん、恥を捨てなきゃ演技なんて出来ん。…珈琲だけは演技とか差し引いても飲める気しない」ニガテ


鳳翔「暁ちゃんにしろ夕張ちゃんにしろ妙に演技派なのって、貴方様が原因じゃ?」


提督「何のことだかな。こんなおれの何処が演技派に見えるのか、逆に教えて欲しいもんだ」

提督「それに、だとしたらおれに毒されたと宣言してたのは、一体何処の誰だった?」


鳳翔「…さぁ、何処の誰のことだか。検討も付きません」フフ


提督「なるほど。…おれの持論は正しかった」ボソッ