伊織「今年もパンツの日がやって来た」 (42)


P「今年もパンツの日がやって来たな。パンツ見せて」

伊織「そんな、すんなりと見せられるわけないでしょ!」

※このSSは
伊織「パンツの日」の続きみたいなものです。
伊織「パンツの日」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1375455528/)



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1406905687


伊織「きっと去年の私は暑さにやられて、どうかしていたんだと思う」

P「大将、とりあえず、パンツ」

伊織「誰が大将よ!? アンタ、私の話を聞いてないの?」

P「これ、年に一回の恒例行事にしようと思うんだけど」

伊織「私には一切の得が無いし、楽しめるのはアンタだけでしょーが!」

P「とりあえず、スタンバってもらっても?」

伊織「スタンバらないわよ!! 私が恥ずかしいだけじゃない!」

P「じゃあ、俺が先に準備するね……?////」

伊織「キモイ! いそいそと床に寝転がるな!」ゲシッ

P「とか言いつつ、今年はスカートを履いてきてるじゃないか」

伊織「こっ、これは……」ピラッ


P「素直になれよ、伊織」

伊織「だからキモイってーの! 見せるわけないでしょ!」

P「やれやれ……だいたい、パンツなんかただの布じゃん?」

伊織「そのただの布を見ようと躍起になってるのはアンタの方じゃない」

P「そこで、考えたんだけど」

伊織「やめて、どうせロクでもないことでしょ?」

P「パンツ一枚しか穿いてないから恥ずかしいんじゃね、って」

伊織「……は?」

P「見せても恥ずかしくないレベルまで重ね着すれば……」

伊織「見せても恥ずかしくないんじゃないのか、と?」

P「Exactly(その通りでございます)」


伊織「つまり、パンツそのものをアンスコにするってこと?」

P「そう、アンダースコートの代わりにパンツを代用すれば或いは」

伊織「いや、アンスコだって、きちんと向かいあって見せるのは恥ずかしいわよ!」

P「この場合アンスコじゃなくて、あくまでもn枚のパンツなわけだが」

伊織「そんな姿、みっともなくて、なおさら恥ずかしいでしょ!」

P「機能的な意味ではアンスコだしパンツじゃないから恥ずかしくないもん!」

伊織「……それを見てアンタは満足できるわけ?」

P「なあ、伊織……何事もやってみないと分からないんだぞ?」

伊織「うっさい! 悟してるような感じで言うなっ! 余計に腹立つ!」


P「以上を踏まえた上で、ここにパンツ(未使用)がある」

伊織「踏まえるなっ!」

P「その数、三千枚。俺に支払われるであろうボーナス額を全部突っ込んだ!」

伊織「貯蓄しろとは言わないけど、もう少しマシなことに使いなさいよ」

P「もうこれで捕まってもいい、だからありったけを……!」

伊織「アンタはもう大人なんだからそこは我慢しなさいよ!」

P「実際、何枚穿けば恥ずかしくなくなる?」

伊織「問題の前提がおかしい!」

P「とりあえずさ? 二、三枚穿いてみよっか?」

伊織「穿かない! 何枚穿こうが恥ずかしいもんは恥ずかしいわよっ!!」


P「今穿ける人間だけでも穿いとかないとみんな駄目になりますよ!」

伊織「それは言ってほしくない言葉だわ。本当に」

P「ごめんなさい。じゃあ、このパンツ三千枚のことは一旦置いておこう」

伊織「そこに置いとかれても邪魔だからあとで退かしときなさいよ?」

P「俺が厳選したパンツ三千枚、伊織が持って帰るか?」

伊織「それだけあったら一生困らないだろうけど……」チラッ

P「どうぞどうぞ」ズズイ

伊織「自分の選んだパンツを穿いてるかもしれないって想像されそうだからイヤ」

P「そりゃするさ」

伊織「あっさり肯定すんな! 清々しいまでに、いかがわしいわねっ!」


P「それくらい許容してくれよ! 三千枚もタグを取るのは大変だったんだぞ!」

伊織「黙りなさい、この生粋のクズっ!!」

P「ありがとうございますっ!」

伊織「感謝すんな!」

P「あっ、そうだ!」ピーン

伊織「なに? まだ変態セクハラを強要するつもり?」

P「もし俺が不治の病や不慮の事故で、この世から去ってしまったら……」

伊織「な、なによ薮から棒に。そんな縁起でもないこと……」


P「伊織のパンツをお墓に供えてくれないか?」

伊織「今すぐ私の手であの世に送ってあげるから、そこへなおりなさい」

P「ありがとう、きっと俺は救われる……」

伊織「やめて! その、ぬっる~い眼差し!」

P「伊織に殺されるなら本望さ」

伊織「はあ、いっそ誰か、私を殺してくれないかしら。もう疲れたんだけど」

P「俺は、さ……パンツって、アイドルと同じだと思うんだ」

伊織「アンタ、よく担当アイドルを前にしてそんなこと言えるわね」

P「とても魅力的で、その姿にみんな憧れて……」

伊織「同等に扱ったら春香なんかアイデンティティ崩壊して一筋の涙を流すわよ?」


P「アイドルもパンツも普段の姿なんか、ほとんどの人が見れないのにさ」

伊織「パンツの普段の姿って何」

P「そのどちらも見られるなんて良い仕事だよなあ、プロデューサーって」

伊織「そんな不潔なこと、この事務所の中で言わないでもらえる?」

P「この業界に長く居たらラッキースケベは幾らでもあるからな」

伊織「やっぱり誰のパンツでも良いんじゃない。最低」

P「いや、違うぞ」

伊織「なにがよ」

P「そういうラッキースケベを享受できるのは物語の主人公だけだ」

伊織「は?」


P「俺は『水瀬伊織というアイドルの物語』の脇役だからな」

伊織「主役は私……ってこと?」

P「だから俺は主役に、パンツを見せてくださいと頼むことしか出来ない」

伊織「ちょっと感動して損した! 私の感動を返しなさいっ!」ポカポカ

P「ははは、痛い痛い」

伊織「はあ……どうしてこの日だけアンタはそんな風になっちゃうわけ?」

P「それは俺がまだ中学生の頃だった―――」

伊織「ああ、その回想は必要ないわ」

P「今日みたいに暑い日だった」

伊織「今日は随分と頑ななのね。続けるのね、分かった聞けば良いんでしょ?」


P「家に帰ったら、俺のおふくろが倒れててさ」

伊織「えっ……」

P「おふくろは、そのまま……」

伊織「アンタ、過去にそんなことが……」

P「それで、俺もオヤジもどうして良いか分からなくてさ」

伊織「そうでしょうね……」

P「でも、三日くらいしてから、このままじゃいけないって思った」

伊織「……うん」

P「とりあえず、おふくろの真似事から始めてみようって」

伊織「…………」


P「最初は掃除からしてみたんだけどさ」

伊織「……うん」

P「なかなか、おふくろみたいに上手くは出来なくて……」

伊織「…………」

P「部屋の掃除するだけで一苦労でさ」

伊織「うん……」

P「おふくろは毎日文句のひとつも言わず、こんな大変なことしてたのか、って」

伊織「…………」

P「それで、なんとか掃除を終わらせて、次は洗濯だよ」


P「洗濯なんか手伝ったことなんかなくて、ましてや自分でなんて、な……」

伊織「…………」

P「とりあえず、洗濯物が溜まってたから、適当に洗剤入れてさ」

伊織「うん……」

P「まだ全自動とかじゃなかったから、こまめに確認しに行ったりして」

伊織「……ふうん?」

P「脱水が終わるまで何十回、洗濯機を覗き込んだか分からないくらいだった」

伊織「その気持ちはなんとなく分かるかも」


P「それで、洗濯カゴに全部入れて、ベランダに出て」

伊織「…………」

P「シャツもズボンもシワシワのままハンガーに掛けて」

伊織「うん……」

P「干しながら、洗濯カゴを見たら、その中に見慣れないものがあってさ」

伊織「……?」


P「取り出して広げてみて分かった。それはおふくろのパンツだった」


伊織「…………っ!」

P「それを握り締めながら、帰ってきてくれよ、ってぼろぼろ泣いてさ」

伊織「…………」

P「ハハハ、恥ずかしいよな……」

伊織「そんなの……」

P「……?」

伊織「そんなの何も恥ずかしくなんかない!」ガタッ

P「伊織……」

伊織「帰ってきて欲しいと思うのは当たり前よ!」


P「だけどパンツを見て、だぞ……?」

伊織「私だって、アンタが居なくなったら……きっと……」ジワァ

P「……ありがとうな、伊織」ギュッ

伊織「ぐすっ……バカっ」ギュッ

P「それからかな」

伊織「……?」

P「パンツは大事な人の『生きてきた証』なのかもしれないって思うようになったのは」


伊織「生きてきた証……」

P「だから、パンツを見ればその人の全部が見れるんじゃないかな、って」

伊織「…………」

P「でも、やっぱり俺の考えは間違ってるのかもしれないなあ……」

伊織「ねぇ」

P「……?」

伊織「見たい? 私の……その、ぱ、パンツ……」

P「いや、やっぱり少なくとも嫌がってるのに無理やりってのは……」

伊織「そりゃ、恥ずかしいけどアンタなら……」ゴニョゴニョ

P「伊織……そんな、無理する必要は無いんだぞ?」


伊織「無理だってするわよ!」ドンッ

P「痛っ!?」ズテッ

伊織「ご、ごめ……」

P「……いたた、いきなり押すやつがあるか」

伊織「でもアンタが悪いんだからっ! 私は、アンタが……」ウルッ

P「伊織……」

伊織「だっ、だから……私のっ!『生きてきた証』を……!」ススス……

P「お、おい伊織……!? そんなにスカートを上げたら……」

伊織「しっかりその目に焼き付けなさい……!」プルプル

P「いっ、伊織っ―――!?」


―――DIAMOND Shine ヒカリカガヤケヒカ-リ-♪


伊織「!?」ビクッ

P「あ、すまん、俺のスマホだ!」ワタワタ

伊織「……もうっ」ホッ


ピッ


P「はい、もしもし……あっ、おふくろ?」


伊織「……っ!?」


P「ああ大丈夫、お盆は一日だけだけど帰るよ」

伊織「えっ」

P「いや、相手も居ないのにそんなこと言われても……」

伊織「…………」

P「はいはい、じゃあ、まだ仕事中だから切るぞ」

伊織「ちょっと」

P「なんだよ、おふくろのやつ仕事中は電話してくんなって……えっ?」

伊織「今の電話の相手は?」


P「おふくろ、だ……けど……?」

伊織「……生きてるの?」

P「そりゃそうさ?」

伊織「だって、さっき、そのまま……って」

P「ああ、虫垂炎でそのまま入院したけど一週間で退院したぞ?」

伊織「俺もオヤジもどうして良いか分からなくて……ってのは」

P「いや、おふくろに任せっぱなしだったからご飯とかさ」

伊織「…………」ワナワナ

P「なんとか近所の出前を片っ端から制覇してことなきを得たよ。ははは」


伊織「そう」


シーン……


P「ど、どうした伊織? とんだ邪魔が入ったけど、さっきの続きを―――」

伊織「きぇええええええええええぇぇぇぇぇっ!!」ゲシッ

P「ちょっ、スネ!? 痛っ、トゥーはやめて、トゥーは!」

伊織「…………」スタスタ

P「伊織、さん……?」

伊織「アンタをここから突き落として私もそのまま……!」ガラッ


P「待って、何で冷房効いてるのに窓を開けたんだ? 俺は何も嘘は……」

伊織「ウソ、オオゲサ、マギラワシイ……ウソ、オオゲサ、マギラワ……」ブツブツ

P「JAR●があるJAR●!? 今こそ我を助けたまえ、JAR●よっ!!」

伊織「大丈夫よ」グイグイ

P「何が!? あと窓際に追いやらないで!」

伊織「運が良ければ、また生きて会えるわよ。にひひっ♪」ドンッ

\ギャアアアアアアア/


――――――

――――

――


律子「全治三週間ですか。全面的にプロデューサーが悪いです」

P「面目ない……」

律子「まあ、転落時に伊織を庇ってくれたから今回は大事には至りませんでしたけど」

P「伊織に怪我は?」

律子「それが、かすり傷ひとつ無くて医者も奇跡だ、って」

P「そうか……良かった。本当に良かった」

律子「まあ、あとのことは私たちに任せて、しっかり休んでください」

P「すまん」


律子「それじゃ、私はこれで」スック

P「おう、よろしく」


ガララ……


P「ふう……長い盆休みになってしまったな」ボーッ


コンコン


P「ナースさんか? はーい、どうぞー?」


伊織「か、身体の様子は、どう……?」

P「伊織……そうか、お見舞いに来てくれたのか。ありがとう」

伊織「そりゃ、私にも責任が無いってわけじゃないし……」

P「今回のことは悪かったな」

伊織「それより身体は?」

P「まあ、大丈夫。流石に一人では動けないから里帰りは出来ないけどな」

伊織「そう。」

P「うん」


伊織「……あのとき」

P「うん?」

伊織「あの落ちたとき、私のこと守ってくれて、その……」

P「ああ、良いよ。元はと言えば、俺が……」

伊織「最後まで黙って言わせなさいよ!」

P「す、すまん」

伊織「まったく……。ありがとう、アンタのおかげでこれからもアイドルを続けられる」

P「俺のほうこそ、無事で居てくれてありがとう」


伊織「べ、別にアンタのために助かったわけじゃないんだからねっ!?」

P「お、おう……?」

伊織「あ、それと……」

P「どうした?」

伊織「私、ちょうどアンタが休む予定だった日がオフになったから」

P「えっ? スケジュールは二ヶ月先まで埋まってたはずだけど……?」

伊織「私、アンタが休む予定だった日がオフになったから!」

P「いや、だから、二ヶ月先まで埋まって」

伊織「アンタが休む予定だった日がオフになったから!!!!」

P「よ、良かった、な……?」


伊織「……しばらくしたら外出許可も出るんでしょ?」

P「まあ、そうだけど、車椅子じゃどこにも行けないよ」

伊織「だから、私がアンタに付き添えば実家に帰れるってことよね?」

P「そりゃあ、な…………えっ?」

伊織「こっ、光栄に思うことねっ!?」

P「いや、えっ?」

伊織「鈍いわねぇ、この伊織ちゃんが車椅子を押してあげるって言ってんの!」

P「いや、それは分かったけど……」

伊織「スーパーアイドル伊織ちゃんの介助に何か不満でも?」


P「最近さ、おふくろがうるさいんだよ、早く孫の顔を見たいって」

伊織「まあ、アンタも良い歳なんだし、親なんてそんなものでしょ?」

P「まだ分からないか?」

伊織「何がよ」

P「だから、一緒に里帰りするってことは、その……な?」

伊織「…………?」

P「俺の結婚相手と勘違いされるかもしれないってことだ」

伊織「ふうん…………」


P「それでも良いのか?」

伊織「~~~~~っ!?」カーッ

P(まあ、どう見ても未成年って分かるから勘違いなんかすぐ解けるだろうけど)

伊織「良いわ」ボソッ

P「えっ」

伊織「パンツ見せるのもアンタの親に顔を見せるのも大して変わらないし!」

P「いや、それは全然ちが……」

伊織「うっさい! 恥ずかしさでは大差無いわよ!」

P「いやいやいやいや」


伊織「私が決めたことに逆らう権利なんかアンタには無いんだから!」

P「エェ……」

伊織「そうと決まったら、早速準備をしなきゃ―――」



伊織「―――とりあえず、パンツ、よね? にひひっ♪」


                         おわり。

以上で投下終了です。ここまで読んで頂いてありがとうございました。

それでは皆様、良きパンツの日を。

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