とある一位の綿流し (737)

禁書×ひぐらしSSです

キャラ崩壊には気を付けますが気づいた方は指摘下さい

圭一の立ち位置に一方通行を起用してるので圭一が出てきません

圭一ファンの方すまぬ…すまぬ


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1358897860

祭囃しまでやるの?

一乙

前スレのアドレスがケータイ用か何かになってるから貼っておこう
とある一位の鬼隠し

前スレの最後で一方通行がレナたちを反射できなかったのは何でだ?
にしても最後一方通行が壊れた時黒翼が出て雛見沢壊滅エンドかと思ったぜ

しかしとある第二位の綿流しにはならなかったか……実は少し期待してた俺

冷蔵庫なら俺の隣で稼動中だよ

誰か心理掌握つれて来い

茜テスト投下は明日

こんばんわ!投下に来ました

目標を言うとこのスレは余裕を持って終わらせます
前スレの最後の方とか小学生の学期末かよ!って程詰め込みましたし…

レスありがとうございます!
相変わらずな駄文ですがよろしくお願いしますm(__)m

>>2予定では祭り囃し+後日談をやる予定です
ただ暇潰しと目明かしはやる予定ないですが…

>>5ありがとうございます!ケータイ書き込みなんでパソコンのURLが分からないので本当に助かります!

>>6反射が効かなかったのは精神論です。スミマセン。一応弁解すると原作三巻で御坂が無意識に雷撃の槍の電流を下げてしまったことから本人の精神状態も能力に影響出るのかな~と
…何言ってんだ俺?
まぁ一言で言うと自己解釈です。ごめんなさい

>>7冷蔵庫の中にはカブトムシが山ほど詰まってるんですねw

>>9確かにあの娘が雛見沢に来るとどうなるんだろ?
感染したら周囲の人間にも感染するのかな?

それでは一発目の投下です

興宮

日曜日通り沿いにある小さなおもちゃ屋でその歓声は聞こえてきた
店内では10人近い子どもがテーブルを囲みカルタを興じている


「次読むよ~。『必要悪の教会の天才魔術師ステイル=マグヌスとは僕の事さ!』"ね"だよ~"ね"」


丸眼鏡にちょび髭額にはバンダナを着けた40は過ぎているだろうおっさんが小さな札に書かれた文字をスラスラと読み上げる


「これだぁぁぁぁ!」


パシッーンと乾いた音が響き絵札が宙を舞う
その絵札を器用に中指と人差し指で捉え彼女は晴れやかな笑みを浮かべる

「さすが魅音ちゃん!だけどもうちょっと優しく札取れないかな~…」

魅音「甘いよーおじさん。カルタは戦争なんだよ?ヤらなきゃヤられる。そんな事も知らずによくおもちゃ屋の店長やれるよね~」

店長「いやいや…小さい子もいるし」

魅音「小さいね~?少なくともうちの沙都子と梨花ちゃんはそんな事言ってたらすぐ寝首掻きに来るから手は抜けないよ」


取った札でパタパタと扇ぎながらチラッとテーブルの反対側に座っている二人の小さな小学生くらいの女の子を見る


沙都子「なぁ~んの事でございましょうね~?」

梨花「ぼく達は幼い気な女の子なのですよ。にぱー」

魅音「どうだかね~?」

店長「ははは。じゃあ次読むよーえーと…『とりあえず、だぁ?
──テメェは、インデックスを助けたくないのかよ?
テメェら、ずっと待ってたんだろ?
インデックスの記憶を奪わなくても済む、インデックスの敵に回らなくても済む、そんな誰もが笑って誰もが望む最っ高に最っ高な幸福な結末〈ハッピーエンド〉ってヤツを!
ずっと待ち焦がれてたんだろ、こんな展開を!
英雄〈ヒーロー〉がやってくるまでの場つなぎじゃねえ!
主人公が登場するまでの時間稼ぎじゃねえ!
他の何者でもなく他の何物でもなく!
テメェのその手で、たった一人の女の子を助けてみせるって誓ったんじゃねえのかよ!?
ずっとずっと主人公になりたかったんだろ!
絵本みてえに映画みてえに、命を懸けてたった一人の女の子を守る、そんな魔術師になりたかったんだろ!
だったらそれは全然おわってねえ!!
始まってすらいねえ!!
ちっとぐらい長いプロローグで絶望してんじゃねえよ!!
───手を伸ばせば届くんだ。
いい加減に始めようぜ、魔術師!』」

「あ!あったこれだ!」


ぽやんとしたちょっと小太りの少年が自分のそばにあった一枚を手に取り確認する
しかしその絵札にはツインテールで中学生らしき女子がビシィッ!と左肩の腕章を見せつけドヤ顔をしている絵が描かれていた
ちなみに札の右上には"風"と書かれおりしっかりと"ジ"とルビまで書かれている


沙都子「おーほっほっほ!残念でしたわね~?"と"はこちらにありましてよ~岡村さん?」


いつのまにか右手に持っていた絵札を見せつける沙都子
その手のひらサイズの絵札にはツンツン頭の少年が右手で破壊光線の様なものを受け止めておりご丁寧にびっしりと全ての台詞まで書かれてある
その製造会社の本気が伺える絵札を見て岡村と呼ばれた少年はへなへなとへたれこみ何やらうわ言を言い出してしまった

梨花「沙都子のトラップは素人には厳しすぎますから落ち込むことないのですよ?岡村」


へこんでいる岡村の頭を優しく撫でる梨花
岡村の顔がみるみる赤くなっていく


梨花「二人で一緒に頑張りましょうです。ふぁいとおーなのですよ」

岡村「古手さん…おー!」


右手を上げる梨花に続き岡村も顔を真っ赤にしながら右手を突き上げる


魅音「で。梨花ちゃんはついに自分の三人目の味方を着けて沙都子はトラップを自在に操ってる訳だけれどもこれでもただの幼い気な子供かな?」

店長「えっ…と…次。読むね『……私だって好きでこんな格好を……ワシリーサ殺す…』」


スパパーン!!


音だけが店内に響く
カードがあった箇所から白い煙が上がってるように見えるのは見間違いであってほしい


「はぅ~っ!この子かぁいいよぉ~!お持ち帰りぃ~!!」

魅音「おじさん……レナにはもっと優しくって言わなくていいの…?」


人外の反応速度を見せて現在カルタに超速頬擦りをしているレナを指差し魅音が言う

店長「」

沙都子「これは…完全に呆けてますわね」

梨花「かぁいいモードのレナは神の奇跡までも味方に着けますからこれも仕方ない事なのですよ」


放心状態の店長の頭を撫で始める梨花


沙都子「梨花がついに店長の陥落を始めましたわ…」

魅音「く~っやるね!だけど賞金は渡さないよ!」

沙都子「賞金もなにも元々魅音さんの自腹じゃありませんの」

梨花「…10万円もあればタバスコや豆板醤買い放題なのですよ」

沙都子「?梨花はそんな辛いもの好きでしたっけ?」

梨花「みーにぱ~☆」

レナ「でも全員に参加して貰いたくて思わず自腹切っちゃう魅ぃちゃんはかぁいいと思うな!」

魅音「!?~っ!何言ってんのさ!レナぁ~!!」

レナ「ふふふ。誰の事かな。かな?」

魅音「あ~もう!おじさんいつまで呆けてるのさ!早く次の札読んでよ!」

店長「え!?あ…あぁごめん!えっと…次は」

レナ「ふふふ。魅ぃちゃんかぁいい☆」

魅音「~っ!」

店長「?はいはい読むよ。『毛布を毛布を返して返してー!ってミサカはミサカは──』」


「打ち止めァァああああああああああああああああああッ!!」


店長の声を無視して店内に学園都市第一位の声が響き渡った

今日はこれまでです
テッテレーン>>1は茜を手に入れた!
次は土~日に来れればと
読んで下さった方はありがとうございました
それではノシ


暇潰しは物理的に無理だし、目明しは詩音側じゃなきゃ意味ないからなくて十分
と、クロス考えた事ある俺が言ってみる

何そのカルタちょっと欲しい
しかしていとくんの数ある名言がないだと……

           ミ\                      /彡.   / ̄\
           ミ  \                   /  彡   | じ |
            ミ  \               /  彡..     \_/

             ミ   \            /   彡
              ミ   \         /   彡
               ミ    \      /   彡
                \    \   /   /
    ミ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\  |  |  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄彡

     ミ____        \  |.  .| /        ____彡
           / ̄ ̄\|´ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄`i|/ ̄ ̄\

          /   / ̄|               || ̄\.   \
        /   /   |〕   帝凍庫クン   .||   ´\   \
       /    │   ..|              ||    |     \
     /    /│    |___________j|    |\.     \
     彡   /  │  ./..|   -―- 、__,        |ト、  | ´\    ミ
      彡/   │ ../ |   '叨¨ヽ   `ー-、  || \ |    \ ミ

            │ / ..|〕   ` ー    /叨¨)  ..||   \|     
    r、       |/   !         ヽ,     || \  \      ,、
     ) `ー''"´ ̄ ̄   / |    `ヽ.___´,      j.| ミ \   ̄` ー‐'´ (_
  とニ二ゝソ____/ 彡..|       `ニ´      i|  ミ |\____(、,二つ
             |  彡...|´ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄`i| ミ |
             \彡 |               .|| ミ/
                       |〕 常識は通用しねぇ  ||
                  |             ..||
                  |___________j|

>>1新章乙 ここから先は一方通行?

一方さん禁断症状ェ…

「お」で俺の未元物質に、常識は通用しねえ
「ぎ」で逆算、終わるぞ
「け」で結局テメェは俺と同じだ。誰も守れやしない
「い」で異物の混ざった空間。ここはテメェの知る場所じゃねえんだよ

とりあえずこんなとこか

こんばんわ!投下に来ました

前回たくさんのレスありがとうございます


>>22ありがとうございます。そう言ってもらえると助かります

>>23ていとくんの事を完全に忘れてた俺。新訳6刊大活躍したのに完全に忘れてた俺\テイトクーン/

>>24帝凍庫の"て"でどうですか?

>>26残念ながら先の見えない一方通行です(^_^;)

>>27本人なりに寂しいんですよ。きっと

>>28全てドヤ顔で言ってる姿が簡単に想像できるのにどうして忘れてたんだ俺は…\テイトクーン/


それでは投下

店長「いやぁ~みんなのお陰で今日は凄い盛り上がったよ」


日が傾き始めた興宮の町並みの中おもちゃ屋の店長が頭を下げてくる


魅音「なぁ~に言ってんのさおじさん。こっちも日頃の修練を観衆にお見せするいい機会だったしね!」

沙都子「唯一の心残りは魅音さんのバイトさえ入っていなければ今ごろ10万円は私の財布の中でしたのに…」

一方通行「いいよなァ脳みそ空っぽなガキは」

沙都子「なぁんですってぇ~!」

梨花「きっと賞金を払うのが惜しくなったのです。最初からバイトで中断する気だったに違いないのですよ、にぱ~☆」

レナ「……魅ぃちゃん」

魅音「んななな何の事か…お、おじさんには全ぇ~然!分かんないなぁ~あははははは!」

店長「はははは。あっちょっと待っててくれるかな?」


それだけ言うと店長は小走りで店内に戻り紙袋をいくつかぶら下げてきた
それを一つ一つ手渡していく


店長「はい。これお駄賃代わりに大したものじゃないけど持っててよ」

魅音「えぇ!?善郎おじさん!私にはないのぉ?お駄賃ー!」

店長「親戚にはなし」

魅音「ぶーっ!ぶーっ!」

沙都子「あらあらあら!」

一方通行「魚をおろした時に付着した残り身がどォした沙都子」

沙都子「違いますわよ!お人形さんですわ!」

一方通行「人形?」


見るといつのまにか開けていたのか沙都子の腕の中には小さく可愛らしい人形がいた


レナ「わ!!これもかぁいい~…!!お持ち帰りしていいの!?本当に…!?」

梨花「……みぃ☆」


気づけばレナも梨花も袋から出し嬉しそうに抱き抱えている

嫌な予感を覚える一方通行

恐る恐る紙袋に手を突っ込んで中を確認してみる

一方通行「……マジかよ」


出てきたのは予想通り他のメンバーが貰ったのと同じような小さく可愛らしい人形だった
ただ豪華なドレスと白い髪赤い目が特徴的な人形である

誰かに似てるとは言わないでほしい


一方通行(捨てるわけにもいかねェよなァ…)


ならば学園都市に戻った時打ち止めにでもやるか
と一方通行がため息を吐いて紙袋に戻そうとした時一方通行は妙な視線に気づいた

レナ、沙都子、梨花の目が人形に釘付けになっている

一方通行(………)


試しにそのまま袋に戻そうとした所その視線はさらに強くなり気のせいか負の念が増しているようだった


一方通行「……どォしろってンだよ?」

魅音「まぁ少なくとも道っちゃんが持ってたら明日には雛見沢における一方通行のプロフィールに変態が追加される事になるね」

一方通行「…明日にかよ」

魅音「雛見沢ネットワーク舐めちゃいけないよ?」


一瞬魅音にでも押し付けようかと考えた一方通行だったが思い直してレナに向かって人形を放り投げる

レナ「えぇ!!?くれるの!?レナに!?ありがと~~~!!」

一方通行「お前にやらねェと夜道が怖いからなァ…人形欲しさに襲われたくねェ」

魅音「あっはっはっは!違いない違いない!」

一方通行「梨花ちゃンには悪いが俺も命は惜しい。沙都子は気に食わねェから論外。魅音にはこういうのは似合わねェだろ」

魅音「へっへっへ、わかってんじゃん!私さ、どーして男に生まれなかったのかなーって思う時あるよ!」


予想通り、なんですってぇぇぇ!と叫ぶ沙都子を無視して一方通行は魅音との話を進める

一方通行「せいぜい次生まれるときは性別間違えねェよォに気をつけとけ」

魅音「あははは!来世では私が男で道っちゃんは女の子かもねぇ?名前は百合子ちゃんかな?」

一方通行「恐ろしく笑えねェ」


魅音の快活な笑いが再びオレンジ色に染まり出した興宮の町並みに響く
ひとしきり笑った後魅音は一瞬少し寂しそうな表情を見せる


魅音「……じゃ、名残惜しいけどおじさんはここで。またね。みんな」

一方通行「あァ、また月曜だ」

レナ「じゃあね~魅ぃちゃん!」

沙都子「今日の続き楽しみにしてますわよ!」

梨花「バイト頑張ってくださいなのです」

自転車に跨がった魅音の姿が徐々に小さくなっていく


レナ「行っちゃったね…」

一方通行「俺たちも帰るか…?」

梨花「みー。僕と沙都子はお夕飯の材料を買いに行かなきゃならないのです」

沙都子「あぁぁっ!そういえば今日はお肉の特売の日でしたわ!急ぎますわよ!梨花!」

梨花「ということなのでお先に失礼しますなのです」


言うが早いか沙都子と梨花も自転車に跨がりあっという間に見えなくなってしまう

レナ「ごめんね?道行くん。レナもちょっとこれから用事があるの」


申し訳なさそうにレナが手を合わせる


一方通行「マジかよ…テンション下がっちまうな」

レナ「ホントにごめんね?」

一方通行「……気にするこたァねェよ。また月曜だ」

レナ「うん!人形ありがとね!バイバ~イ!」


手を降るレナ
一方通行も左手を上げて応える

一方通行「……飯でも食って帰るか」


レナの姿も見えなくなって帰路の道を歩き出す一方通行

そういえば復路にファミリーレストランがあったのを思い出す
せっかく興宮まで来たのだ。久しぶりに夕飯ぐらい楽してもいいだろう


一方通行(アレか…)


しばらく歩いているとエンジェルモートとポップなロゴで書かれた看板が目に入ってきた

駐車場へと目をやると車は結構止まっており中々混んでるという事が見受けられる


一方通行(最悪相席でも構わねェか…)


妙に県外ナンバーが多いのは気になったが一方通行は無視して店内に入っていった

今日はこんなもんです

読んで下さった方はありがとうございました

次回投下は火~水になります

それではノシ

さすが>>1、読ませてくれるな。

顔色を読めない第一位に涙…

早速条件満たすあたり流石第一位だな
しかし鬼隠しのように一方通行が症候群に罹るならともかく
今回は詩音だからなぁ……一方通行をどうにか出来るビジョンが見えない

捕まりそうにないよな

電池切れor押す前に捕まる

神拳

なんかのハプニングで充電不十分→捕まるはありそうだ

>>1
質問
上条さんは出てきますか?

上条さんが出てきたら一方通行がそげぶされて事件を解決できるな

ウィルスは無理じゃねーの?

ウィルスは無理でも暴れた一方さんを冷静にさせることはできるんじゃないかなーって思ったり

こんばんわ!
投下にきました
いつもレスありがとうございます!

>>41原作にはもっと色々と連想ゲームだったりしましたが別に書かなくても良いかな?と思ったんで興宮での部活→エンジェルモートってな具合にカットしましたから。アニメがそうだったかな?

>>42>>43>>44>>46幾つか案がありますが詳しいことはまだ決めてません…

>>45詩音は何者ですかww

>>47上条さんは本SSではたぶんありません。絡ませたとしてもチラッと出て本編には全く影響無いと思います。スイマセン

>>48>>49>>50上条さんでも症候群は無理って事にしてます。
病気のカテゴリなんで
ただ羽入は分かりませんどうなることやら…

今日の投下量はホント少ないですごめんなさい

それでは投下

「いらっしゃいませ。エンジェルモートにようこそ」


ファミレスの定型文の言葉で迎えられた一方通行はウェイトレスに視線を移して言葉を失う

その服装ははっきり言って異界の様な服装だった
バニー服のような黒の体のラインがくっきりと分かる挑発的な服にこれでもかと短くしたミニスカートを着けたような物だ
胸元から太ももまでやたらと露出が凄い
しかもミニスカートはばっくりと前と後ろが開かれその中が丸見えなのである

店内の様子を一言で表すなら異界である

見ると甘い香りが漂う店内には目の前にいるのと同じキテレツな格好をしたウェイトレスが多くおりまるで
まともな格好をしている自分がおかしいのでは?
と妙な錯覚を一方通行は覚えるほどに店内は外の世界と分離されていた

ふいに呆気に取られている一方通行の前でウェイトレスが小刻みに震えだす

ウェイトレスの異変に気づいた一方通行が再び前を向いた

その時だった


「セぇぇぇェェェェロリたぁぁぁぁあああん!!!!!」


不名誉な叫びが聞こえかと思った瞬間一方通行の虚弱な体が吹き飛ばされ二重ドアの間に押し倒される


一方通行「!?!?!?何しやがるこ─」


自分を押し倒した上に現在進行形で胸に頬擦りまでしているウェイトレスを睨み付ける一方通行だったが急に言葉が止まった

彼女の顔に見覚えがある

厳密には彼女と同じ顔に二万人ほど心当たりがある


一方通行「………妹達か…?」


恐る恐る口に出した台詞を受け頬擦りを繰り返してたウェイトレスはバッと顔を上げ涎を垂らした満面の笑みで答える


「ハイ!漏れは通称セロリたんの性奴隷!自称セロリたんの肉便器!またの名をミサカ20000号と言います!!セロリたん抱いてください!!!」


理解できない場所
理解できない状況
理解できない人物
理解できない服装
理解できない言葉
理解できないテンション

全てに置いていかれた一方通行のエンジェルモートデビューの瞬間だった

とこれ含めてたった5レス…

あんまり少ない気がしますが書き溜めの都合上本日は以上です

お詫びと言ったらなんですが次は明日にも投下します

次の投下は一旦、一方通行から離れます

それではノシ


MNWに入り浸るのをやめて修行中だったのか
修行先がアレ過ぎるがww

興宮市在住ミサカ…

海原アタリが常連の県外客か?

おはようございます
投下遅れてすみませんm(__)m

>>78変態ですから

>>79店のブラックリストに登録されてます(笑)

それでは投下

一方通行「で。お前何?」


ベクトル操作で頬擦りをし続ける変態を強引に引き剥がしそのまま首根っこを掴んで店内の奥の席まで引き摺って行った一方通行は目の前の席に変態を正座させ尋問を開始した

余談だが引き摺ってる最中もその変態は
「おぅふっ!?セ…セロリたん!そちらはトイレしかありませんよ!?ハッ!?まさか漏れのあられもない制服姿に持ち前のセロリンが血流操作不可に陥ってトイレで漏れを相手に再演算するつもりですか!?ありがとうございます!」
など喚き散らし客は勿論同じウェイトレス達からも悪い意味で注目の的となっていた

20000号「ナニと言われましたらセロリたんのナニを突っ込んで欲しいただのミサカですが」

一方通行「あー…うン。悪ィ。俺の聞き方がマズかったな。一つ一つ聞いていく。まずここはどォ言う店だ?」

20000号「見たまま可愛い女の子が可愛い制服を着けて働くただのファミレスで、ミサカとセロリたんが初めて結ばれる運命の交差点です」

一方通行「………悪ィ突然耳鳴りがしてなァ。後半聞き取れなかっ─」
20000号「セロリたんと結─」
一方通行「言い直さねェで結構だ」

20000号「魂で直結してるって事ですね!肉体でもしませんかセロリたん!」

一方通行「………遠慮しとく。それに一応正しとくが繋がってンのはミサカネットワークとだ」

自然とため息が一方通行の口から溢れる
頭が痛くなってきたのは気のせいであってほしい


一方通行「次の質問だ。なンでお前がここに居やがる?」

20000号「光があるところに必ず影があるようにセロリたんの居るところに漏れはいます」

一方通行「…………あァ、そォ。次だ…お前がこンな店で働いてる理由は?」

20000号「セロリたんに貰われる際の花嫁修行に。給料もいいですし」

一方通行「後半が本音だと俺は信じるぞ。調整とかはどぉしてンだ?」

20000号「セロリたんのツンP……いえ、雛見沢にある学園都市の協力期間にですね…」

一方通行「ちょっと待て。オイお前今なンつった?」

20000号「いえ、なんでもありません。ありがとうございます。ハイ」

一方通行「何が、ありがとうございます。だ!洗いざらい吐きやがれ!この痴女がァ!!」

20000号「公開言葉攻めプレイとはセロリたんも好きですねぇ?まぁ漏れにはご褒美ですけど。もっとなじって下さいぃぃぃぃ!セロリたぁぁぁぁん!!」

一方通行「こォ…のクソあまがァァァ…!!」


一方通行の額に青筋がいくつも浮かぶ
いっそ殴り飛ばしてしまいたい一方通行だったが目の前にいるこの変態にはただのご褒美でしかないのだろう
恐るべき変態である

一方通行「はァ…もォなンだっていい…オラ行け二度と戻ってくンな」

20000号「グフフフ…あれほど漏れの初めてを奪って起きながら今度は放置プレイですか?
ありがとうございます!
と漏れは立ち去り…ひゃう!
…正座してたから足が痺れ…んふ!
さすが第一位計算だかひぅ!
…な、なんか興奮してきました
……うっ……ふぅ」


ビクビクと体を震わせながら立ち去る変態
ようやく視界から完全に消えてくれたのを確認して一方通行は悪夢を振り払うかの様に頭を振ってからメニューを開いた

変態全開で今日は以上です
読んでくれた方はありがとうございました
次回は木~金に投下にきます
それではノシ



だめだ…このミサカなんとかしないと
いや手遅れか

これをシスターズ特有の無表情レイプ目でまくし立ててる姿を想像すると異様すぎてヤバイww

以外に、ひぐらしに似合うキャラやな。

こんばんわ!投下に来ました
レスありがとうございます。凄く励みになってます

>>88雛見沢症候群にすらかかりそうにない変態ですからね

>>89しかもエンジェルモート制服ですから

>>91基本多数の変態が生息してますからね。メイド服きた一方通行を捕まえようと監督と手を組む姿が目に浮かびます


それでは投下

一方通行(甘いもンばっかじゃねェか…)


目の前にあるメニューは特製ケーキだのパフェだのと甘いもののオンパレードである
何かまともな夕食になるものはないかと探してみるとメニューの端にABCとランチセットがついでの様に書かれていた


一方通行(あの変態が取りに来るんじゃねェだろォな)


恐る恐るベルを鳴らす
少し立ってやはり際どい制服を着た店員がオーダーを取りに来たが危惧していた変態ではなかった


一方通行「Aセット一つだ……いや…ちょっと待て。この特製ブレンドコーヒーも頼む」

顔色一つ変えずに注文する一方通行
変態騒動のせいで妙にこの店内に広がる異空間に慣れてしまったのが悲しい

しばらくすると先にAセットが持ってこられた
手も合わせないで口に入れる一方通行
味は普通。美味くも不味くもない一般的なファミレスの味だ
ある程度食べ終わり一息入れようと一方通行はコーヒーを探す


一方通行「あ?」


注文してたはずのコーヒーはまだ届いていなかった
店内を見渡すもそれらしい物を運んでいるウェイトレスは見当たらない
若干苛立ちながらも近くに居たウェイトレスを呼び止める

一方通行「悪ィ。さっき注文したコーヒーがまだ来てねェンだが」

「あ…も!申し訳ございません……その、すぐお持ちしますので…!」


呼び止めたウェイトレスは相当の新米だったらしい
おたおたとなりながらも厨房の方へ駆けていく姿は凄く危なっかしかった
何故か妙に悪い気になってしまう一方通行
しばらくすると先程のウェイトレスがコーヒーを片手に持ってきた

「あの…た!大変お待たせして申し訳ございませんでした…」

一方通行「いや、言うほど待っちゃいねェよ。どォもな」

「あ…!いえ…あのごゆっくりどう──」

そこでいきなりウェイトレスの口が止まる

何かと思い顔を上げた一方通行もとっさに口を開く事が出来なくなった

互いに見つめ合ったまま口を開いた方が悪いような沈黙が二人の間に流れる


一方通行「………魅音、か…?」


堪えきれなくなった一方通行が恐る恐る口を開く


魅音「み、みみみみみ道っちゃん!?!?」


急に恥ずかしくなったのか魅音は勢いよく後ろを向いてしまう
どんな表情をしてるかは定かではないが耳を真っ赤にしてる所を見ると相当恥ずかしいのだろう

一方通行「………お前バイトとか言ってたよなァ?」

魅音「う…ん。ここおじさんの店だから…」


その弱々しい物言いは一方通行に今のこの状況を確認させるには充分だった
日頃"モヤシ"コミュ障"ミッフィー"ガリガリ君"性欲旺盛シロウサギ"など言われ部活で散々な目に遭わされてた恨みが沸々と込み上げてくる


一方通行(イイネ!イイネ!最ッ高だねェ!!愉快に素敵な恩返しタイムの始まりといくかァ!!)


一方通行の顔にこの場に似合わない凄惨な笑みが浮かんだ

一方通行「つゥか普段は男勝りな魅音さンがこンな服に興味あるとはなァ?」

魅音「えっ!?そ…そそんなこと…」

一方通行「オイオイ否定とかしてンじゃねェよ。この店のコンセプトぐらい見りゃ分からァ」

魅音「あ…ぅ…」

一方通行「まァ、いいンじゃねェか?お前が好きでやってることに俺が口出しするのもなンだしなァ?」

魅音「だから…す、好きでなんて…」

一方通行「待てよ…?確か学校のロッカーに詰まったスクール水着や猫耳首輪に尻尾、メイド服、堕天使エロメイドや大精霊チラメイドを始めとしたその他コスプレの数々は罰ゲームとか言いつつ実はは自分が着たいだけなンじゃねェか?」

魅音「ち…違……」

一方通行「オイオイ勘弁してくれよ…イチイチお前の趣味でお持ち帰られる危機に瀕しているこっちの身にもなれってンだ」

魅音「違…あの…えっと…」

一方通行「ン?愉快な事思いついたなァ?物は試しだ。俺がそのまま持ち帰ってやりゃァ少しはこっちの気持ちも理解出来ンだろ」

魅音「ひ…!や、や…」

一方通行「あはぎゃは!おオオオオ持ち帰りぃぃぃぃイイイイイイイイイイ!!!!!」

魅音「いやぁぁぁぁ!!!」


テンションが明後日の方角へ音速の三倍で飛んでいく一方通行

魅音の悲鳴が実に心地よい

一方通行「クカカカ。まァ、今日はこンぐらいで勘弁しといてやらァ」


上機嫌に笑う一方通行
見ると目の前の魅音は縮こまり顔を真っ赤にしながら目に涙を浮かべ小刻みに震えている
その怯えた小動物の様な姿は普段の彼女からはとても想像がつかない
それほど恥ずかしいのだろう

無論、後日の復讐が恐ろしいのだが


一方通行「しかしまァ、お前のバイトがこンなとこだったとはなァ?」

魅音「………あ…の、ち…が」

一方通行「レナに知られたら面倒…つゥか終わりだぞ?冗談じゃなくお持ち帰りだ」

魅音「ちが、ち……違うんです」

一方通行「あとせっかく似合ってンだからもっと堂々としたがいいぞ」

魅音「あの…だから…違うんです!」


喉に詰まった言葉を吐き出すように魅音が言う


一方通行「………違う…?」


意を決した用に立ち上がり一方通行の方に向き直る魅音




「私…………園崎魅音じゃないんです!!」



な、なんだってぇー!(笑)

とか茶番をやりつつ以上です
お見苦しい文ですが見てくれた方はありがとうございました

次は土~日の投下になります

でわまたノシ

魅音と詩音の入れ替わりはややこしくて一部忘れちまったぜ
これは本当に詩音でいいんだっけか

しかしロシアで、発覚すると国際問題になるレベルのスパイをあっさりと見破った一方通行なら
魅音と詩音の入れ替わりも一瞬で見抜きそうで困る
一方通行曰くそんなスパイでさえ「細かい仕草や特徴を観察すりゃ自然と見つかる」らしいからなw

一卵性を多数見てきた、第一位の観察力や如何に。

俺には無理だ…

眠いですが投下にきました
レス感謝です
>>104ここは魅音です

>>107クローンだから妹達の方が区別つき辛いと思います


それでは投下

一方通行の目が点のようになる
何を言っているか理解出来なかった


一方通行「オイオイ…つく嘘くらい考えろよ…それともなンだ?新手の冗談か?だとしたら笑えなくもねェな」

「冗談とかではなくて…ごめんなさい。言いそびれちゃって私、園崎詩音っていうんです…魅音は私の双子の姉なんです」


そのあまりにも無理のある言い分に今度は目を丸くする一方通行

とりあえず詩音と名乗った彼女をマジマジと見つめる一方通行


一方通行(……どォ見たって魅音だろ…なにやりてェンだこいつ…?)

あまりにもバレバレな言い訳に本気で彼女の将来が心配になってくる

しかし当の彼女は頼むから信じてくれとばかりな目をしている


一方通行「……詩音…?」

詩音「はい……そうです。一卵性の双子なんで見分けつく人少ないんですよ」


一卵性の双子くらい一方通行も知っている
大雑把に説明すると受精卵が二つに分裂するため遺伝子構造が同じになり基本的に同性で顔、体格ともに非常に似る双子の事だ

妙な雑学を使ってまで双子と言い張る彼女に対して一方通行の中にちょっとしたイタズラ心が生まれる

一方通行「でも初対面とは思えねェ反応したよなァ?」

詩音「そ…それは……い、いつもお姉が話してる人だから…知ってたわけで……あの!お姉がいつもお世話になっております!」


赤い顔のまま頭を下げる詩音


一方通行(コイツ…意地でも双子貫くつもりかよ…)


こうなるとどれだけ揚げ足を取ろうが彼女は自分を魅音とは認めないだろう


一方通行「なるほどなァ……だったら悪かったな」

詩音「い、いえ……分かっていただければ」

一方通行「お前はこの仕事始めてなのか?随分慣れてねェみてェだったが」

詩音「ホールの方はそうなんです。ミサカさんと言う方が指導に着いてくれるはずだったんですが…何か今日とんでもない事をしでかしたみたいで…普段は完璧少女なんて呼ばれてる方なのに」

一方通行「あいつが完璧ねェ…」

詩音「あれ?知り合いなんですか?」

一方通行「ちょっとな」


厳密には少し違うのだが適当にそう答えておく一方通行
ただ彼女が完璧だとはどうしても思えない
相当外面がいいのだろう

詩音「そういえば道っちゃんは学園都市出身でしたね。あのもしかしてミサカさんも…?」

一方通行「そンな所だな」

詩音「だったらだったら!もしかしてミサカさんも双子なんですか!?ほら学園都市のCMでそっくりな娘がビリビリしてるじゃないですか!」

一方通行「まァ…似たようなもンだ」

詩音「うわぁ~なんか雲の上って感じの先輩だったけど少し親近感が出てきました」

一方通行「そォかあンまネットとかにアイツらの事書くンじゃねェぞ。極端な話学園都市出身ってだけで誘拐とかもあるからな」

詩音「誘拐!?」

一方通行「そォなったらなったで書き込んだお前もブタ箱行きだからよ。こっちのインターネットの匿名書き込みなンざ学園都市には筒抜けだからな」

詩音「噂には聞いていましたけど恐ろしい所ですね。分かりました私も警察のお世話になるのは避けたいですし」

一方通行「………悪ィな」

詩音「いーんです。と言うかぶっちゃけ雛見沢と興宮にはネット回線よりイノシシの方が絶対多いですから。私も普段使いませんし」

一方通行「ハッ。違いねェ」


良くも悪くも田舎なのだ
それならばあまり心配もいらないだろう

鼻で笑ってコーヒーを一口啜ると詩音がクスクスと笑いだした

一方通行「ンだよ?」

詩音「いえ、すみません。なんか道っちゃんって想像と全然違うなぁ~って」

一方通行「……どンな奴だと思ってやがった?」

詩音「最初見たときは結構活発な人かと思ってました」

一方通行「……そりゃまた俺と真逆なキャラだな」


初対面であはぎゃはをしてしまえば無理もないか。と一方通行は頭を掻く

一方通行「そォ言うお前こそ魅音と同じ顔してるとは思えねェ性格してンな」

詩音「え!?…そ、そうですか…?」

一方通行「あァ、その制服も魅音には似合わねェだろォがお前には似合ってンじゃねェか?」

詩音「え、………それって……あの、」


詩音の顔がレナがよくするようなぽーっとした遠い目になり真っ赤になった


詩音「ど、…どういう意味……です、か…?」

それは一方通行の知る魅音という子の示す反応ではなかった
本当に詩音という別の人物と話している錯覚を覚える

その時先輩ウェイトレスが手を振っているのが目に入った


「園崎さ~ん、R入っちゃっていいですよ~!」

詩音「あ、は、はい!」


休憩の知らせを受けようやく詩音は我に返る


詩音「それじゃ、私はここで。噂の道っちゃんと話せて楽しかったです」

一方通行「あァ、魅音と勘違いして悪かったな」

詩音「べ~。私、今日いじめられたこと、お姉にチクりますから!部活で仇取られちゃって下さいね~」


聞き捨てならない台詞を残し詩音は奥に消えていった

ため息を吐いて一口コーヒーを啜る一方通行

普段は強気で男勝りな魅音の貴重な一面を見ることが出来た気がする
明日、学校で追求してやろうとも思ったが少し考えて止めることにする


一方通行("詩音"に免じて許してやらァ)


残りのコーヒーを口に流し込み一方通行は静かに席を立ちレジへ歩いて行った

今日は以上になります
読んでくれた方はありがとうございました
次の投下は恐らく火曜ぐらいかと

眠いので寝ます
それではノシ

この暖かな光景をじわじわ蝕むのが「ひぐらし」

>>1乙、 そして良いクロス、面白い…



>>121

20000号が逆に雛見沢を侵食する
こともあるんだぜ

バイト前にチロッと投下します
昨日は来れずにスミマセンでした

>>121自分で嫌になるほどの駄文具合ですからそう言ってもらえるとホント幸いです
>>122
20000号症候群疑心暗鬼に陥り雛見沢住民が一方通行をペロペロ(笑)

それでわノシ

「あれ?お帰りですか?セロリたん」


レジに向かうと20000号がいた
待ち構えていた
エンジェルモートの変態があらわれた!


一方通行「……まァな」

20000号「名残惜しいですが仕方ありません。今の漏れは店長にガチ説教くらってクビのピンチですから…」

一方通行「自業自得だ」

20000号「あぁ…目の前にセロリたんがいるのに漏れは視姦しか出来ないなんて…いや、でもそういうプレイと考えれば……ぐっふっふ…」

一方通行「堪能してねェでさっさと済ませろ」

20000号「……ふぅ。ランチセットのAと特製コーヒーで850円ですね。セロリたん」

一方通行「千円から頼む」

20000号「かしこまりました。150円のお釣りですねセロリたん」

一方通行「あァ、手渡さなくて結構だ。レジに置いとけ」

20000号「え…そ、そんな…セロリたんは漏れに触りたくもないっていうのですか…?」

一方通行「脂汗で千円湿らせてたヤツが何言ってやがる」


飽きれ声で言われ急いで変態はレジに置いてあったペーパータオルを取り手を拭く

20000号「拭きました!拭きましたよセロリたん!お釣りを受け取って下さい!!」

一方通行「………遠慮しとく」

20000号「何故ですか!?漏れはあくまで仕事としてセロリたんの手に触れるだけで決して他意は!」
一方通行「だからそォゆう台詞は涎と全身の震えを抑えてから言えってンだ」

20000号「チッ」

一方通行「お前今、客に向かって舌打ちしやがったな」

20000号「……お釣りは150円になりまーす」


そそくさとレジに置かれた150円を変態の動向に注意しながら受け取る一方通行

そのまま踵を返し外に向かう

押しボタン式の自動ドアの前まで来たときふと一方通行は足を止めて振り返った


一方通行「オイ20000号」

20000号「どうしましたか!?セロリたん!トイレなら清掃中と札を掛ければいつでも使えますよ!」


妙な期待を寄せる変態を完全に無視して一方通行は四つに折った小さな紙切れをを彼女に投げる

両手で受け取った20000号が紙切れを広げるとそこには雛見沢から始まっている見慣れない単語と11文字の数字の羅列が走り書きされていた


20000号「セロリたん…これは…?」

一方通行「家の住所と俺のケータイ番号だ。何かあったら連絡入れろ」

20000号「え…!?」


予期せぬその言葉に20000号の口が止まり顔がみるみる赤くなっていく


一方通行「一応、知らねェって仲でもねェからな。困ったことがあったらいつでも頼ってこい」

20000号「ぇ…あ、……はい…。…ありがとうございます…セロリたん…」


顔を赤らめてモジモジしながら言う20000号

それを見て一方通行は静かに笑いエンジェルモートを出て帰路についた

余談だがその後ミサカネットワーク内で今からおよそ12時間後に


"セロリたんから通い妻認定受けました。グッフィッフィッw"


という書き込みがありミサカネットワークは炎上した

本日は以上。6時からバイト

でわでわノシ

20000号が乙女……と思ったら炎上させてんじゃねーよwww

一方さんイケメンやでぇ…

乙!
いかん、電話番号はともかく住所は夜這いされるぞww

これは打ち止めが連れ戻しにくるレベルwwww

こんばんわ
投下に来ました

>>132一応12時間は乙女モード入ってたんです。スレ余ればおまけで書こうかな

>>133ツンデレなだけです

>>134戸締まりは完璧です

>>136ネットワーク越しからの制裁と上位命令文による情報の開示が求められましたが不屈の変態パワーで乗りきりました(笑)

それでわ投下

調理実習

おおよそ学生にこの言葉を知らないものはいないだろう

憧れの先生や先輩、好きな人に手作りのクッキーを焼いてきたり
クラスのアイドルが誰にクッキーをあげるかを男子は血眼で議論したり
ガキ大将的地位の男子が家庭科の先生を独占したり
地味な生徒が圧倒的なまでの料理スキルを発揮したり
見映えの悪い料理でクラス中の笑いを取ったり
料理が全く駄目な生徒が居心地悪げに調味料の計量と皿洗いに精を出したり

と良くも悪くも記憶に残る上に文化祭や運動会と違いたびたび行われる物だ

無論、雛見沢分校にもそれはある

しかし雛見沢分校でいう調理実習は一般のそれと少し違った

まず間借りしている営林署の人らへの日頃の感謝の証として作った料理をご馳走する事
作る料理は大抵カレー系列という事
そして調理実習とはいえ魅音率いる部活メンバーにかかればルール無用な部活の一環になる事だ


そんな中、一方通行は絶望的な状況に立たされていた

食材は切った
そんなことは全く問題ない

調味料など諸々の計量は住んだ
一分の狂いもない自信がある

しかしそこまで終わって一方通行は調理台の前に立ち尽くしていた

一方通行の前にある調理器具は二つ

一つは炊飯器
この器具については一方通行は既に極めていた
雛見沢に来るにあたって達人黄泉川直伝の炊飯器調理法の教えを受けた一方通行は先日ついに師範代レベルと言われる揚げ物をマスターしたのだ

米を炊くのは勿論カレーなど文字通りボタン一つ押すだけで後は寝てても相当なレベルの物を作れる自信がある


もう一つは鍋
問題はここだった。率直に言うと一方通行は鍋を使ったカレーを作れない
というより鍋を使った料理など一品も作れない
お湯を沸かす事ぐらいは可能だろうが…
炊飯器を使わせれば現在黄泉川の次いで世界2番目の実力者一方通行もフライパン、鍋など他の調理器具に関しては赤子同然の腕なのである

つまりはこういうことだ

最低でも炊飯器二つは欲しいカレーという料理に支給されたのは炊飯器一つに鍋一つ

一方通行にはカレーを作るかご飯を炊くかしか残されてないのだ

ちなみに鍋を返すから炊飯器をもう一つ追加で欲しいと担任の知恵に申し出た所


「一方くん……あなたは…カレーという料理を…馬鹿にしてるのですか…?」


と般若笑顔で言われ続けて


「どちらにせよ、クラスみんなの分で炊飯器はもう残ってないんです。諦めて鍋で作りなさい!」


なんて言われ現在に至ってる

一方通行「やるしかねェよなァ…ったくよォ…」


使えない鍋を戸棚に戻し一方通行は一台の炊飯器をマジマジと見つめる


沙都子「道行さ~ん?カレーはお鍋を使わないと出来上がりませんわよ~?」


小馬鹿にした沙都子が後ろから挑発してきた


一方通行「他人の事よりお前はどォだってンだ?ちゃンと包丁は握れンですかァ?」

沙都子「ご心配なく。低学年は班でやりますから。梨花さえいれば道行さんなんて敵ではありませんわー!!」

一方通行「つまりお前は役立たずって事だな」

沙都子「ふ、ふん!勝てば官軍でございますわよ!」

梨花「沙都子は何もしないのが一番の手伝いなのです☆」


慣れた手つきでジャガイモを薄く長く切りながら梨花が笑顔で近寄ってくる


梨花「へびさんなのですよ。がおー」

一方通行「蛇が"がおー"ねェ…」


切った皮を一方通行に差し出す梨花
一方通行が眉を潜め何かあるのでは?とマジマジと皮を見つめていると、トテトテと梨花は自分の調理台に戻っていった


一方通行(ゴミ押し付けやがったな…)

ため息を吐いて一方通行は再び目の前の食材と炊飯器に向き合う

さすがに学園都市の炊飯器と違い必要最低限の機能しか着いてない上にいったい何年前のかも検討もつかない炊飯器では一台一品が限界だろう

となれば必然的にカレーを作る方が得策だ
クラスメイトの年頃の男子を買収すればご飯など簡単に手に入るだろう


その時だった

教室の一角が少々ざわつき出す

一方通行が目を向けて見るとそこは魅音の調理台からだった

一方通行(鍋でも爆発させやがったのかァ?)


魅音ならやりかねないと彼女の調理台に向かう


一方通行「何があった?」


魅音の近くで作っていたレナに尋ねる


レナ「あのね?魅ぃちゃんのカレーが凄いんだよ。だよ!」


興奮しながらレナが語る
一方通行も覗いてみるとそこにはカレーに使うとは思えない色鮮やかな野菜やら見たことの無いスパイスの数々、そして見るからに高そうな国産和牛の肉まで用意されていた

他のテーブルとの食材レベルが明らかに月とスッポンである

一方通行「お前……これ」

魅音「へへーん!驚いた?実は行事予定見てから事前に準備しといたんだよ!」


誇らしげに言う魅音は現在ボールを使いミンチ肉と微塵切りにした幾つかの野菜をこねていた


一方通行「それはなンに使う気だ…?」

魅音「ん~?道っちゃんも少しくらいは分からない?ハンバーグ作ってるんだよ!ハンバーグ!」

一方通行「……フェアだとは思えねェな」

魅音「勝てばよかろうなのだ!」

一方通行「明らかに公平さに欠けてンだろ。いいのかよ?」


審査員の担任の知恵と副担任の芳川に尋ねる


知恵「おいしいカレーであればなんだって構いません☆」

芳川「私も美味しく食べれたらなんだっていいわよ?」

一方通行「はァ…言うと思ったぞクソが…」


魅音の席から離れる一方通行
ついでにレナの鍋も確認する


一方通行「お前のは言うまでもなく完璧なカレーだよな…」

既に煮込んでる段階まで進んでいるレナに諦めたように一方通行は話しかける


レナ「えへへへ~レナのお家のカレーは水を使わないの」

一方通行「水を使わない?」


炊飯器調理法を駆使する一方通行にはにわか考えられない言葉だった
高圧力の蒸気が旨味を食材の芯から引き出し更に表面に閉じ込めるのが炊飯器調理法の真髄
鍵となるのは水なのだ


レナ「玉ねぎとか野菜の水分で作ってるんだよ♪本当は一晩かけてじっくり煮込みたいんだけどね…はぅ」

一方通行「……そこまでやンのかよ」

レナ「部活だからね。魅ぃちゃんも梨花ちゃんも強敵だし負けられないんだよ。だよ!」

一方通行「…俺を除外するとは中々ユーモアのセンスがあるじゃねェか…レナちゃンよォ…?」

レナ「あはははは…道行くんも頑張ってね☆」


苦笑いをするレナに返す言葉もなくなり一方通行はトボトボと自分の調理台に帰る
その背中からは妙な哀愁が漂っていた

今日はここまで次回は水曜

読んでくれた方はありがとうございました

それでわノシ

一方通行「クソッタレが…目に物見せてやらァ…」


あらかじめカレー用に切っていた食材をベクトル変換でさらに細かく刻む
魅音はハンバーグも作っていた
つまりカレーでさえあれば形は何でもいいのだ

一方通行は炊飯器に米、水、油、切り刻んだ食材とカレー粉を適量入れかき混ぜる


一方通行(後はスイッチを入れるだけでカレー炊き込みご飯へ一方通行ってなァ!)


炊き込みご飯など黄泉川式炊飯器調理法でもなんでもない
つまりマスターしていて当たり前の炊飯器を使った料理なのだ


五分足らずでベクトル炊飯器調理を終えた一方通行の所に再び沙都子がやって来た

沙都子「…ご飯しか作っておりませんの?」

一方通行「……余計な世話だ」

沙都子「土下座で頼めば梨花のカレーを少々分けてあげてもよろしいですわよ??」

一方通行「お前に土下座するくらいなら俺は罰ゲームを選ぶな」

沙都子「プライドなんかの為に勝負を捨てるようじゃ勝利の女神は一生微笑みませんわよ?」


一方通行「プライド捨ててまで特製塩入りカレーなンざ食いたくねェからなァ?」


ビクビクッと沙都子の肩が大きく揺れる


一方通行「気づかねェとでも思ってンのか?お前の魂胆なンざ話しかけてきた時点で見え空いてンだよ」


逃げるように去っていく沙都子
追いかけ回す気も起きなかった一方通行からは深いため息が溢れるだけだった

少ないですが以上になります
スマホは書き込みの表示遅いから書き込めてるか不安です
近日中にまたきます。それではノシ

炊飯器でステーキ作ったらうまそうだな…

炊飯器でローストビーフ作れるんじゃね?
炊飯器でラーメンとかも美味そうだな

乙です。
しかし前スレから誰も触れないが、監督とアレイ☆の声については禁忌なのか?

こんばんは。投下にきました

>>165>>166ここの黄泉川さんはフォンダンショコラを炊飯器で作れます

>>167マジですか!?冥土返し(ヘヴンキャンセラー)に助けられた人とメイドインヘヴンを使う人共通点はありましたね

それでは投下

知恵「皆さーん。営林署の方々が来ましたよ?!早く食べましょう!カレーを早く!!」


一方通行「あのテンションは一体どっから沸いて出てンだろォな…?」

魅音「迸るカレー愛からだとおじさんは見てるけど」

知恵「はいは?い!皆さんカレーの用意は出来てまか??
……一方くん…どうやらお鍋が見当たりませんが…?」


ギロリと冷たい視線が一方通行を射抜く
ゴゴゴゴゴゴ
という擬音が聞こえてくるのは気のせいであってほしい


魅音「ヤバいよ道っちゃん。なんか適当に思い付いたカレーの誉め言葉を言ってみた方が良い…!」

一方通行「適当って、ンないい加減で大丈──」

言い終わる前に一方通行の耳の真横を何かが横切る
一方通行の髪がパラパラと宙を舞う
振り返って見るとそこには 三本のスプーンが壁に直立して突き刺さっていた
ちなみに丸い部分がである


一方通行「食いもンの完成形はカレーだな。間違いねェ」

知恵「アハッ☆当たり前です。
一方くんもカレー信者だったんですね?」

一方通行「ハヤシライスみてェな異端の食いもンこの世から消えてしまえば良い」

知恵「さすがです!一方くん!そこまで理解しているとは先生は感激です!!」


気づけばハヤシライスまで否定していた一方通行
決して知恵に恐れをなしたからではない
たぶんない

知恵「さぁ!皆さんおまたせしました!カレーが食べられますよ!カレーが!!」

魅音「先生!トップバッターは委員長の私が行きます!」


ビシッと手を上げて魅音が言う


知恵「さすがです園崎さん!トップバッターは任せます!園崎さんのカレーはどんなカレ?♪」

魅音「それは食べてみてから判断してください!私のカレーはこれだぁぁぁああああ!!」


どこから持ってきたのか高級レストランで使われるような銀蓋を開き自らのカレーを取り出す魅音

審査員を含めクラス中が感嘆にどよめく

中からはカレーの他にみずみずしく色鮮やかなサラダと食欲をそそられるデミグラスソースが光るハンバーグ
さながらコース料理の様な豪華さで、もはや芸術と呼べる出来だった

レナ「す、すごいすごい!魅ぃちゃんすごい!!」

部活メンバーではレナだけが歓声をあげる
残りの沙都子、梨花、一方通行は言葉を出す事も出来なかった
まるで食べる前に勝負が決してしまったかのようだった


「う、うまい!」


最初に一口だけ口に入れた審査員の一人が声をあげる

サラダとハンバーグに目を奪われがちだが当然、高級食材をふんだんに使ったカレー自体も美味しくないわけ無いのだ

みるみる内に審査員達は自らの皿を空にしていく


一方通行「…やられたな」


一方通行は呟かずにはいられなかった

トップバッターには様々なメリット、デメリットがある
まずは全ての審査対象の基準になってしまうのだ
少しでも劣ると感じられると下がるしかないのだが
逆に言えば圧倒的な実力を示せば後進を霞ませることが可能なのだ
またこれは料理対決。審査員が最も空腹を感じてる時に食べさせる事が出来る
空腹を最大の調味料とする事が可能なのだ

さらに審査員の腹を満たす様なボリュームあるサイドメニュー

これを全て計算していたのだろう魅音がニヤリと一方通行達に目を向ける


梨花「…次の人は相当のプレッシャーなのですよ…」

沙都子「私達は三番手を希望いたしますわ!」

一方通行「……俺は最後だな。レナ…次、行けるか?」

レナ「う?ん…いいよ?レナも自信あるし早く食べてもらいたいもん」


笑顔で言って自分の鍋を取りに行くレナ
入れ替わって審査員達を見事完食させた魅音が悠々と戻ってきた


魅音「おんやぁ??次はレナなんだ??」

一方通行「ダム現場に埋めちまいたい程に余裕だなァ魅音?」

魅音「いや?…そうでもないかもよぉ?おじさんがトップを選んだのは案外レナに先を越されないためだったりすしぃ??」

沙都子「??レナさんに?」

魅音「……まぁ、見てなって」


眉を寄せる沙都子と一方通行だが梨花はこれまでに無い真剣な表情を見せ魅音に至っては一世一代の大勝負の最中のような顔をする


「実に深い味わい見事である!」

校長渋く豪胆な声が唐突に響き渡った
見ると他に審査員も絶賛しながらスプーンを口に運んでいる


魅音「あちゃ?…これじゃ空腹補正あんまり意味無いかな?」

沙都子「あ゛あ゛あ゛ぁぁ!!読みを誤りましたわ?」

一方通行「ざまァねェな沙都子。せいぜい俺の前でレベルを下げといてくれ」

梨花「道行は僕達を馬鹿にしすぎなのです。伊達に二人で暮らせている実力を見せつけてやるのですよ」

一方通行「別に俺は梨花ちゃンをなめてる訳じゃねェよ。沙都子をなめてンだ」

沙都子「い゛ーだっ!私達の実力を見せて差し上げますわ!」

一方通行「"私達"じゃなくて梨花ちゃンの実力だろォが」

沙都子「ふん!行きますわよ梨花ぁ!」


審査員席に向かう沙都子

大見得切っただけあって魅音やレナ程とはいかないが梨花のカレーも中々好評だった

これで小さい子補正が付くのだから充分侮れない


一方通行「さて、最後は俺か」

魅音「そういや道っちゃんの机炊飯器一つしか置いてないケド何作ってたの?」

一方通行「まァ見てろ」


一方通行が炊飯器片手に審査員席の前に行くと審査員達は訝しげに眉を寄せる
知恵に至っては般若顔でスプーンを握りしめ震えていた


知恵「一方くん…?先生は言いましたよね…?……カレーは鍋で作る物だ。……って…」

一方通行「頼むからその手のスプーンを下ろしてもらえねェか。料理すら出せねェ」

芳川「もっとも本音を言わせて貰えばもうお腹いっぱいだから勘弁して欲しいのだけれど」


審査員の誰もが(どこぞのカレー魔人以外)思ってはいたが口に出せないでいたことをサラリと言ってしまう芳川

無論、一方通行もそれぐらい理解していた

だからこそ一見不利としか思えないトリを名乗り出たのである


一方通行「悪ィがこっちも罰ゲームがかかってンだ。俺ので最後だから四の五の言わずさっさと食え」


炊飯器を開けると中からほのかなカレーの匂いが漂ってくる


校長「なんと!炊き込みご飯であるか!?」


他の審査員らも顔を見合わせざわつき出した

一方通行の口元が僅かに上がる

そもそも料理対決の審査基準はいくつか存在する

まずは味
大前提となる採点基準だが空腹の度合いや審査員の好みに大きく左右される難点がある
恐らく味に関しては今のところ魅音とレナがトップだろう

次に見た目
これに関しては審査員達の評価に大きな差は出にくい
ましてや盛り付けが単純なカレーでは尚更だろう
強いて言えばコース料理さながらの演出を見せた魅音が最も評価が高いだろう

そして最後が意外性だ
一方通行がトリを選んだ理由はここだった
ただでさえ印象に残りやすいトリに炊き込みご飯という異色のメニューを振る舞う事で審査員の気を引こうとしたのだ
さらにこれまでカレーを食べ続けてきたせいで正直飽きが来ていた審査員の心を掴む

しかも

知恵「ん…最初はルゥの無い炊き込みご飯など断じてカレーでは…と思いましたがこの香りと絶妙なピリ辛さ…確かにカレーですね!美味しいです!!」


炊飯器を使わせたら世界第二位の料理人一方通行が作った炊き込みご飯なのだ

一見トリを飾る色物メニューとしか思えない炊き込みご飯も当然、味はかなりのレベルにまで達している

前世はカレーだと噂されているカレーの鬼が認めただけあり今まで散々カレーを食べてきた審査員達もあっという間に自分の皿を空にしてしまった

こうして、調理対決はトップが一方通行と魅音、次点にレナ、最下位に沙都子、梨花の低学年チームという大人げない結果に終わり一方通行は難なく罰ゲームを回避できたのだった

そのはずだったが


一方通行「……これは一体どォいう状況かなァ……?」


調理台をあらかた片付けいざ昼食を取ろうとした一方通行は自らの炊飯器を開け思わずそう呟いた

こめかみに浮かんだ青筋がピクピクと痙攣する


魅音「どったのさ?道っちゃん」


ひょっこりと食べ終えた食器を片付けていた魅音が顔を覗かせるとそこには綺麗に空となっている炊飯器が静かにあるだけだった

すっからかんである

無論、一方通行は一口も食べていない


一方通行「s …サ…沙都子ォォオオオ!!」


その怒りの叫びに梨花と談笑しながら皿を洗っていた沙都子の肩がビクゥッと強ばる


一方通行「随分、愉快で素敵なサプライズじゃねェかァ…アァ゛!?
お返しにそのどォしよォもなく腐った頭ン中のビチクソみてェな異物取り出してやンよォォオオオ!!!」


一瞬で沙都子の前に移動し逃げようとする彼女の頭を鷲掴みにする

勿論、電極は切り換えており万力のような力が彼女の頭蓋骨を襲う


沙都子「痛い!痛い!!だいたい何の話ですの!?私はずっと梨花と──」

一方通行「つまンねェ言い訳考える暇があンなら素直に謝罪しやがれェ!」


バチン!!

問答無用で沙都子の眉間にその気になれば地球の公転エネルギーさえ上乗せできるデコピンが炸裂される

その結果…


沙都子「びえええええん!私じゃありませんのにぃー!道行さんのバカァァァ!!」


ガチ泣きを始めてしまった

どうせまた生意気な事でも言ってタライでも落としてくるのだろう
とばかり思っていた一方通行は予想外に泣きじゃくる沙都子に目を丸くする
なぜだか嫌な汗が出てきた気もした


梨花「……道行。沙都子はずっと僕とお話ししていましたよ?」

一方通行「……」

沙都子「私は何もしておりませんのにぃぃぃ!本当ですのにぃぃぃ!うわぁぁぁああああああん!!」


クラスメイトからは
"泣かせたー…"
とばかりの視線を向けられる

更に担任の知恵まで走ってきた


知恵「コラ!一方くんまた何もしてない沙都子ちゃんをいじめて!謝りなさい!」

一方通行「はァ!?普段の行いからこのガキが人の飯を消したに決まってンだろォが!
それともなンだァ?先生ェには犯人に心当たりがありますってかァ?」


教師には答えづらい質問で反論する一方通行

自分でも悪どいと感じるがこんな理不尽に昼食を奪われ納得が行くわけ無いのだ

完全に八つ当たりな反論に知恵はポカンとした顔になる


知恵「あれですね。とても美味しかったので先生が参考に食べちゃいました☆」


『何してんの?あんた…』と言わんばかり沈黙が教室に訪れる

なぜだか怒りよりも妙な悲しみが一方通行に沸いてくる


一方通行「……ありったけ、全部か…?」

知恵「はい♪気づいたら空になっちゃってました☆」


テヘペロ☆という擬音が似合いそうな笑顔で言い放つ知恵

返す言葉も見つけられない一方通行の肩に優しく手が乗せられる

そこにはいつの間に泣き止んでいた沙都子が慈愛の顔を浮かべ立っていた

今度は一方通行が泣きたくなった

まさかの書き込みミス
ヤバい死にたい
とりあえず以上です
次回は日?月にでも

一方通行「俺は死ぬ…」


帰り道

昼食を悲しい事情により抜かす事になった一方通行は死 にかけていた


レナ「ほらやっぱり水だけじゃ足りなかったんじゃないかな。かな?」

魅音「言わないであげなよ、レナ。どや顔で
『俺は向こうでは一日缶コーヒーの日もあったンだ。水だけでもなンとかならァ 』
とか言ってたぶん見てらんないよ」

レナ「雛見沢で水でなんとかなるわけ無いのにね?」



クスクスと笑う二人に心底一方通行も同意する

そもそも寝てふらついて気が向いたら適当な実験施設に行きバイト感覚で実験協力をしていた学園都市生活と
朝から放課後までくたくたになるまで騒ぎに騒いでいる雛見沢では消耗している体力がまるで違うのだ

水のみで一日持つはずない


レナ「きっと夕飯は凄く美味しいよ?」

一方通行「それまで俺の命が持てばな…」

魅音「家にカップ麺とかの買い置きはないの??」

一方通行「……こないだ切らした。そもそもあまり買わねェしな」


そんなことを話しているうちに気づけば魅音の家に続く分かれ道まで来ていた

魅音「じゃ、おじさんはここで。今日もバイトだよ?」

一方通行「ウェイトレスってやつも大変なンだな」

レナ「え!?魅ぃちゃんウェイトレスさんやってるの!?どこのお店かな!?はう??!!」



半分ほどかぁいいモードになったレナが目を輝かせる


魅音「ち、違う!違う!ウェイトレスは詩音!!おじさんはおもちゃ屋の店番だよ!」


慌てて否定する魅音
更に一方通行に援護を頼むとばかりな目で見つめてくる


一方通行「……あ?…アレだ。ありえねェ程似てるから間違えちまった」

レナ「?詩音って誰かな?かな?」


魅音が氷のように固まり大粒の冷や汗が滝のように流れ出る


一方通行「あァ、詩音っつゥのは魅音の双子の妹でなァ。外見は瓜二つなンだが性格が正反対の乙女なヤツがいンだよ」

魅音「みっみっみっ道っちゃあ?ん 」


顔を真っ赤にさせる魅音を見て思わず笑ってしまう一方通行


レナ「ふーんそうなの?レナ会ったことないなぁ…魅ぃちゃん家行っても会った事ないよ?」

魅音「えっと…その知ってるでしょ?私は婆っちゃの家に住んでるから。詩音は興宮で両親と住んでるの」


あたふたしながら答える魅音


レナ「ふーんレナもいつか会ってみたいなっ」

魅音「わ?!じゃおじさんはもう行くね!またねレナ、道っちゃあ?ん!!」


逃げようにバイトに向かう魅音


レナ「魅ぃちゃん何だか可愛かった。何でかな?何でかな?」


魅音の走り去った後を見まもりながらレナは可笑しそうにクスクスと笑っていた

上条「不幸だ…なんでこんなカスカードばかり…」

魅音「なに言ったって配り直しはしないからね?限られた条件の中で勝利を掴むのが大富豪もといトランプの醍醐味だからさ~」

上条「いや…上条さんは配り直した所で今より悪いカードが来る未来が簡単に目に浮かびますから…シクシク」

沙都子「男の人がメソメソメソメソとそんな事ですから運が逃げていくのですわよ!」

レナ「駄目だよ。沙都子ちゃん追い討ちかける様な事言っちゃ…」

梨花「頑張って頑張って沙都子を見返してやろうなのですよ」ナデナデ

上条「梨花ちゃんはどこまでも天使だよなぁ…未来の旦那さんが羨ましいですよ」

梨花「み~にぱー☆」

魅音「ま、いくら気張ろうと最下位は決まってるような物だし意味無いかもね~」

沙都子「気楽に当麻さんのスクール水着姿を期待しときますわ~!」

レナ「当麻くんのスクール水着…はぅ~!お持ち帰りしていいかな~?かな~?」

上条「お前ら…いいぜ、お前らが相変わらず不幸な上条さんが罰ゲーム受けるって思ってんならまずはそのふざけた幻想をぶち殺してやるよ!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


上条「ふふふ…不幸だぁぁあああ!なんで魅音と沙都子に7渡しと5飛ばしが集中してるんでせうか!?」


魅音「そんな事言われてもね~?おじさんは5を出してるだけじゃん」

沙都子「私もいらない7を消費してるだけですわよ?」

上条「なんで一枚ずつ出すんでせうか!?上条さんの雑魚カードが増えるばかりでちっとも減らないんですのことよ!?」

梨花「かわいそかわいそなのです。それキングのダブルなのです☆」

レナ「梨花ちゃんってたまに容赦ないよね…」

魅音「おじさんはパースー」

上条「くぅ~…これでパスしたらまた魅音さんに飛ばされる未来が待ってるんでせうね」

沙都子「どちらにしろ私は安泰ですわね。当麻さんのカードはカスの集まりですし」

上条「うおおおおお!背に腹は何とやらだ!行け上条さんの 切り札1のダブルで縛りだああああ!」

レナ「レナはパスかな~…」

梨花「当麻出していいのですよ?」

上条「6の革命でゲンコロ」

魅音 レナ 沙都子 梨花「!!?」

上条「ハーッハッハッハ!魅音!上条さんのカスカードを捨てさせなかったなぁ?沙都子!上条さんにカードを渡し過ぎたなぁ?遂に上条さんは下克上をしたのですよ!」

魅音「そんな…おじさんとしたことが」orz

沙都子「私が策に溺れますなんて…」orz

レナ「どうしよ…はぅ」

梨花「僕はなんとかなりそうなのです」

上条「この勝負はもらいましたよ!まぁでも諦めなければ勝てるかもなぁ?なんせ上条さんは不幸なんだ。ラッキーだったらお前ら勝てるぜ?」


決め顔の上条当麻だがこの20分後女子スクール水着を纏った自身の叫びが教室に響き渡りそのまま帰宅する羽目になるのを彼は知らない

小ネタは以上です
半角~違和感ありませんかね?
大丈夫なようなら次回からは~にします
それではノシ

>>1のレスの~(と思われる記号)は化けてるんだけど、他のレス(213や214)の~は正常に表示される謎
何が違うのか

読み返して更に気づいたことを言うと、>>1の投下レスである>>12の『~』は化けてないし、最近だと>>148でも化けてない
>>169のレスから化けはじめた
その間になにか変えた?
もしくは『~』じゃなくてなんか別の機種依存記号とか使ってない?

大変お待たせしました

リアルが忙しすぎて投下に来れませんでした

休憩中に投下です

「ヤッホー!道っちゃん居ますぅー?」


ドアの向こうからは聞き覚えのある声が聞こえてきた
ただその口調は一方通行が予想した人物とは違う物だった


「はろーんです道っちゃん。昨日ぶりですね」


ドアを開けるとそこには詩音が手を後ろに組んで笑顔で立っていた

髪を下ろして妙に丁寧口調な所と本人が昨日ぶりと言ってるのを見ると今は詩音で間違い無いのだろう


一方通行「……詩音、か」

詩音「あー?道っちゃん、今お姉と迷いましたね?」

一方通行「呼鈴を連打するよォな非常識な奴は魅音くらいしか知らねェからな」

詩音「えっ…と……双子ですから根本的な所で似ちゃってるんですよ!きっと!!」

一方通行(もォちょっとマシな言い訳を思い付かなかったのか)


小さいため息が漏れる


一方通行「で、何の用だ?」

詩音「あ!そうでした道っちゃん聞きましたよ?お昼は散々だったらしいですね?」

一方通行「…冷やかしに来たのか?」

詩音「む?…そんなこと言うならあげませんからねぇー?」

一方通行「あげる?」

詩音「じゃーん!そんな哀れな道っちゃんに差し入れ持ってきましたー!」


後ろに回していた手から小さな弁当箱が出され差し出される

詩音「お姉が夕飯作りすぎちゃって余ったの詰めてきたんですよ」

一方通行「悪ィな」

詩音「いえいえ。お礼はお姉に言ってあげてください」

一方通行「魅音にか……待て…?アイツの事だから中にタバスコとか裁縫針とか入ってねェだろォな?」

詩音「もぉー!入ってませんよ!さすがのお姉でも裁縫針なんて入れませんッ!」

一方通行「どォだろォな……変に心当たりがあるンだが」

詩音「そんなこと言ってるならいいでーす。もう自分で食べちゃいます」


可愛らしくむくれながら渡した弁当を引った来る詩音


一方通行「悪い冗談だ。頼むから持っていかないでくれ」

詩音「そこまで言うなら返して上げます。弁当箱はお姉にでも返しといてください」


それじゃ。と片手を上げて玄関を去ろうとする詩音


一方通行「ちょっと待て」

詩音「どうしたんですか?道っちゃん?」


詩音が振り返って見ると気まずそうに顔を背けてる一方通行の姿があった


一方通行「その…なンだ……ありがとォ……な」


表情までは見えないが耳まで真っ赤にさせている一方通行

相当恥ずかしいのだろう


詩音「ぷっ……アハハハハハ!なんですかそのキャラは!」

一方通行「ッ!?るせェッ!帰ンならさっさと帰りやがれェ!!」

詩音「言われなくても帰りますよー。あとさっきの素敵な一言はお姉に言ってあげてください」

一方通行「二度と言うかァ!とっとと失せろォ!!」

詩音「あははは。それじゃです道っちゃん」


静かに戸が閉まり詩音の姿が見えなくなる


一方通行(なに柄にもねェことやってンだろォな俺は…)


小さく息を吐いてリビングに向かい弁当の包みを開ける

中からは一方通行の好物である肉料理を中心としたおかずと鶏そぼろまで乗せられたご飯も敷き詰められている

とても有り合わせを詰めてきた物とは思えない


一方通行「…うめェな」


一方通行にしては珍しく素直に味を誉める

それが本当に弁当の味からかそれとも空腹によるものかは定かではなかった

ただ彼女の好意が純粋に嬉しかった


一方通行「……待てよ?なンであいつは詩音で来たンだ?」


妙に引っ掛かったが特に気にも止めず一方通行は弁当を頬張った

久々の投下と言うのにレスありがとうございました

相変わらず忙しいですがちょくちょく投下していきます

一方通行「なにやってンだ…俺は…」


興宮エンジェルモート前一方通行は先日の弁当箱を片手に佇んでいた


一方通行(詩音は魅音に返してくれとか言ってたけどなァ…)


やはり詩音の時に返しておくべきだと思う


一方通行(調度あの変態の様子見にもなるしな)


取り繕うような一方通行だがこれは"エンジェルモートの制服をもう一度見てみたい"とかではない

……決してない


一方通行(うだうだ考えるくらいならさっさと入っちまったがいいな)

ガン…

店に入ろうと歩きだそうとした時、一方通行の左足に少し重めの衝撃が走った


一方通行「……あン?」


見るとそこにはスローモーションで倒れていくバイクの群れがあった


ドガラシャアアアン!!


一方通行(……構わねェか)


知らん顔で歩を進める一方通行

丸くなったとはいえ基本自己中心的な人物なのである


「何やってんだ!んなろぉぉおおお!!!」

一方通行「ア?」


見るとそこには前時代過ぎる髪型をした三人の不良がいた


一方通行(まだ居たンだな…ンな牛の糞みてェな頭の奴)

リーゼント不良「ア?じゃねぇだろぉ!おぁあン!!?」


雑なリーゼント頭の不良が一方通行の襟首を掴んで凄んでくる


モヒカン不良「んべれのボケってばらァーーー!!!」

ドレッド不良「ラリルレレロラァァアアア!!?」


アホみたいに周囲の物に八つ当たりしだす不良達

頭に血が上って見えてないのか倒れてしまったバイクにまで八つ当たりしている


モヒカン不良「?☆*⊇∠〓ξД‰⊂(^ω^)⊃ヴÅφЮЩФヰ!!!」

ドレッド不良「=?⊇⊂∀≡∫≫κιゑヴ★△Δ◯¶Ψξχρ」


一方通行(…何語喋ってンだ?コイツら…)


リーゼント不良「まぱらみあンってねぞぉ!らぁァ!!!」


痺れを切らしたリーゼント不良が一方通行の襟首を掴んだまま拳を大きく振り上げる


一方通行「はァ…」


明らかにヘッダが足りてないと思われる言語の翻訳を諦めた一方通行は小さく息を吐いて細い指を喉元に運んだ


「やかましいんだよッ!!クソボケ共がッ!!!」

以上になります

休憩終わるのでそれでわノシ

仕事で指に怪我を負いテンション最底辺ですが気晴らしに投下に来ました

明日病院には行きますがマジで憂鬱です
ですが投下

その声は唐突に響いた

目を向けるとそこには鬼気迫る表情を浮かべた詩音の姿があった


詩音「私の目の黒いうちに失せな!!」

モヒカン不良「んならテメェー!?」

詩音「道っちゃん置いてとっとと失せなつってんだッ!!!」

リーゼント不良「んのアマァッ!」

ドレッド不良「o女p女pa女i!!」


不良達の注意が完全に詩音に移る


一方通行「チッ…ビチクソ共がァ!」

電極を跳ね上げ瞬時に不良と詩音の間に移動する


リーゼント不良「おんモヤシぐぁッ!退かんかいぃッ!!」

一方通行「あ?口から排気ガスぶちまけてやがる埋め立て地に行きそびれたどォしよォもねェゴミ共が…ダム現場に棄てて貰いたい奴から前に出なァ?」


一触即発の空気がその場を支配する

ふと、二組の老夫婦が一方通行らに近づいて来た


一方通行「チッ…」


一方通行の口から舌打ちが漏れる

一方通行は雛見沢に来るにあたって 自らの能力を無闇に人前で使わない様にとしている

理由は学園都市の機密を外部にあまり漏らさないのもあるが一つ加減を間違えたら無関係な人を巻き込みかねない能力について彼なりに自重しているからだ

どこか人の居ない場所か適当な路地へ連れ込んで血祭りを上げてやろうかと辺りを見渡す一方通行

しかし通りには騒ぎを駆けつけてきた野次馬だろうか先ほど以上に人が出てきていた


一方通行(何が…起こってやがる?)


ただの野次馬だったらまだ分かるが明らかに様子がおかしかった

通りに出ている人ら全員の目に明らかな敵意が宿っている

ふと先ほどの老夫婦が一方通行の隣に並んだ

さらに、帰宅中のサラリーマン、小学校低学年くらいの女子二人、買い物帰りの婦人、商い中であろう店の主人などが出てきて不良らを囲む


モヒカン不良「ンならぁ!?お前らおぉッ!!?」


異常事態に気付いた不良らも声を張り上げるがそんなのもお構い無しに一人また一人と不良らを囲む輪は増え大きくなっていく

気づけば30人くらいの老若男女が不良らを囲み無言の敵意を向けてる状態だった

今日はここまでになります

次の投下は日曜にくるかもです

それでわノシ

「はいはーい。どうしたのかなー?」


唐突に呑気な声が響いて太った大柄の男を筆頭に幾人かの警官が集団に割って入ってきた


詩音「大石…警部」

大石「いやいや園崎のお嬢さん。相変わらずお勇ましい」

詩音「それ恐喝の現行犯です。とっととショッピいちゃって下さい」

リーゼント不良「んあッ!?このガキが悪ぃんだろぉがァッ!」

大石「ハイハイ、君達はちょっと署でお茶していきません?ほれほれ遠慮せずに」


喚き散らす不良らだが警察官ら相手に抵抗もむなしく無理矢理引きずりパトカーに詰め込まれていく

哀れドナドナ状態の不良らを睨みながら電極を戻す一方通行

大石「おケガはありませんか?」

一方通行「俺があンな連中にかすり傷一つ受ける訳ねェだろ」

大石「んっふっふ…こちらも随分お勇ましい 。それでは皆さん"良いお年を"」


皮肉気味に呟き大石はパトカーに乗り込み去っていった


詩音「おっしゃー!一丁上がりだねー!!」


今までの気迫が嘘のようにパチンと指をならし詩音がガッツポーズをする


「大丈夫かぁ?芳川先生とこの坊主!」

「次からは相手見て喧嘩売りなさいね?」

一方通行「お、おォ…」


見も知らない大人達に気安く話しかけられ頭を乱暴に撫でられたり肩に優しく手を置かれたりされる一方通行

そのままその場にいたほとんどの人間に心配の言葉などをかけられる


詩音「災難でしたねー道っちゃん」

一方通行「なンだってンだ一体…」

詩音「まぁ立ち話もなんですし店の中でお話ししません?」

詩音「はい。コーヒーです」

一方通行「あァ、すまねェな」

詩音「それにしても危なかったですねぇ?喧嘩売る相手ぐらい選んでください」

一方通行「あンなゴミ共10秒もかからねェで病院送り出来るンだけどな」

詩音「ハイハイそう言う冗談は良いですから」

一方通行「……言ってくれるじゃねェかァ…」

詩音「雛見沢でみんなに会ったらちゃんとお礼言ってて下さいね」

一方通行「つゥかそれだ…さっきの人だかりは…?」


あの集まった老若男女
普通の野次馬とは明らかに違うまるで自分達も当事者かのような敵意
味方になって貰って失礼極まりないのだが正直一方通行は気味が悪かった


詩音「そういえば道っちゃんは雛見沢に来てまだ日も浅いんでしたね。あれみんな雛見沢の人達なんですよ?」

一方通行「どォしてンな事言えンだよ?」

詩音「雛見沢の人は結束が凄いんです。一人の敵は全員の敵。村人が困ってたら助けずにはいられない。そんな住民性なんです」

一方通行「俺は困ってなかったがな」

詩音「そーゆう強がりはどうでもいいんです。困ってる様に見えたから力になる。とてもありがたい事じゃないですか?」

一方通行「……かもな」

詩音「昔から雛見沢って廃村の危機に遭うんですよね。その度にみんなで戦って存続を勝ち取ってきた歴史の名残なんです。例えば──!」

詩音「雛見沢ダム計画って知ってます?」

\(^o^)/ヤッテシマッタ
2レス分まとめて投下してしまった…orz
これだからスマホは…
今日の所は以上になります

前回沢山のレスありがとうございました
つたない文章ですが頑張っていこうと本当に思いました

次回は水曜までには
それでわノシ

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一方通行「ンな事があったンだな」

詩音「はい。だから引っ越して来た道っちゃんにも同じようにするんです仲間ですから」

一方通行「仲間、か…」


悪くない。と感じる一方通行

思えば学園都市にいる時の自分は人との関わりなど持つべきではないと考えていた
敢えて距離を置き誰も関わりなど持とうとすら思わない無敵の存在になろうと試みた事もあった
世界を拒絶し反射していた

そうするしか無いと諦めていた

詩音「そう!道っちゃんも仲間なんですから誰かが困ってたら助けてあげてくださいねっ!」

一方通行「…あァ、そォだな」


静かに噛み締めるように頷く一方通行


詩音「じゃ私がピンチになっても助けてくれますよね!?早くピンチにならないかなぁー☆」

一方通行「魅音の場合ヤバくても自力で解決するだろォが」

詩音「えっ!?あ、あの…私…詩音…」

一方通行「あ、あァ…そォだったな悪ィ…」

詩音「んもー…道っちゃんってばお姉の事女の子だって思ってないでしょ?」

一方通行「……ンな事ねェぞ…男ってンなら容赦なくどつき倒してンよ」

詩音「んーそうですね…例えばですよ?お姉と私が共にピンチで…うん!崖にぶら下がってるとします。さぁどっちを助けます?」


イタズラっぽい笑みを浮かべて問いかける詩音


一方通行「両方だな」

詩音「即答した所悪いんですがダメです。もし両方助けようとしたら道っちゃんが落ちちゃいます」

一方通行「なら問題ねェな両方助ける」

詩音「ダメですよ!道っちゃんが死んじゃいます!」

一方通行「悪ィが崖から落ちた程度で俺は死なねェンだよ。それに──」


一方通行「お前らの為なら俺は死ンだって構わねェ」


詩音「えっ…!?」


自分の手にしていたコーヒーを落としかける詩音

一方通行「魅音には内緒だけどな、俺はこれでもアイツには感謝してンだよ。昨日の弁当も含めてな」

詩音「そんな…弁当くらいで…道っちゃんは大げさですよ…」


顔を真っ赤にさせゴニョゴニョと呟く詩音


一方通行(ンな顔赤くさせりゃァ詩音名乗ってる意味ねェだろ…)


小さく溜め息をつく一方通行
時折出てくる彼女の詰めの甘さが妙に面白い


一方通行「なら俺はもう行くな」

詩音「あっ…はい!この割引券使ってください♪タダになるんで☆」

一方通行「あァ悪いな」

詩音「また来てくださいね♪」

一方通行「気が向いたらな」


手を上げエンジェルモートを去っていく一方通行
仕事に戻る詩音の顔は少し寂しそうにガラスドアに映ったが一方通行は気づくことがなかった

今日はここまでです
読んでくださった方ありがとうございました
次は土曜にでもこれればと思います
でわでわノシ

さて次話ではK1が詩ぃ魅ぃ同時に出くわすわけだが

少しですが投下に来ました

>>273さんすみません。そのシーンは書いてはいますがだいぶ先です。今回はデートに誘われるシーンとレナの意味深な台詞のシーンになります

休憩中の投下なんで2回に分けますね
それでわ投下

その日の夜…

働かない保護者芳川に一方通行は皿洗いを押し付けられていた

ちなみにその芳川といえばソファーに寝っ転がりスナック菓子を頬張りながらバラエティー番組をつまらなさそうに見ている最中である


プルルルルルル…


ふと電話の音が鳴り響いた


芳川「一方通行?電話。早く出て?」

一方通行「ふざけンな!!お前の手が空いてンだろ!」

芳川「私はアレよ…アレだから……」

一方通行「ンの糞アマァ…」

芳川「ほらほらもしも最終信号だったらどうするの?真っ先に貴方の声が聞きたいんじゃない?」

一方通行「チッ…」


皿洗いを止め電話機の前まで向かう一方通行


芳川「チョロいわね」


居間に一人になった芳川はスナック菓子に手を伸ばしながらボソッと呟いた

一方通行「もしもし」

『あ、園崎ですけど道行くんいらっしゃいますか?』


一方通行「俺だが魅音か?部活の夜戦ってならパスだぞ」

『えっ…じゃなくてあの…詩音です』

一方通行「詩音!?どっちにしろこンな時間になンだってンだ?」

詩音『実は明日エンジェルモートでデザートフェスタってのがありまして、味見をしてもらうモニターを抽選で募集しているんです。本来ならクジで決めるのですが道っちゃんモニターになりませんか?』

一方通行「俺はそもそも甘いもンは得意じゃねェンだがな」

詩音『そこをなんとか…!それに少しバイト終わってから付き合って欲しい事もありますし!』

一方通行「……コーヒーは飲み放題なンだろォな?」

詩音「ハイ!それならモニター当選者に名前加えておきますね!それでわ!」

一方通行「あァ、また明日な」


魅音と詩音同じ人物でもここまでやり取りが違うそんな不思議な感覚も一方通行は悪くないと思い始めていた

今の投下はここまでです
10時過ぎには再開できると思います
それでわノシ

再開します

翌日帰路


レナ「なーんか魅ぃちゃん最近変なの」

一方通行「変?」

レナ「明るいっていうか、浮かれてるっていうか」

一方通行「アイツが明るくて浮かれてンのはいつもの事だろ?」

レナ「そうだけど…なんかそうじゃなくて…道行くんは何か知らないの?」

一方通行「さァな…」

レナ「ふーん、魅ぃちゃんがご機嫌ならレナも嬉しいよ☆」

一方通行「そォかよ」


両手を広げとても嬉しそうにくるくると回るレナ
そんなレナを見て一方通行はつられて微笑んでしまう


レナ「でもね」


唐突にレナの踊るような回転がピタり止まり声のトーンが普段の1オクターブ下がる




レナ「魅ぃちゃん傷つけられたの」


一方通行「は…?」


突き刺さるような視線を向けてくるレナ


レナ「初めはあんまり気にしてないふりをしてたけど…怪我みたいにだんだん腫れてきた
ジンジン腫れてきた
とうとう痛みがこらえられなくなって…夜中に目を覚ましてレナに電話してきた
…魅ぃちゃんは泣いてた」


気づけば怪訝な空気がその場を支配していた


一方通行「ま、待て…レナ。なんの話だ…?」


心当たりが全く思い浮かばない一方通行
確かに小さな茶化し合いはこれまで幾度となくあったがそこまで傷付ける様な事は言った記憶はない

恐る恐るレナの真意を尋ねる

レナ「何の話?レナは何か話してたかな?かな?」


パッと表情を戻し首をかしげるレナ
空気一変し元に戻る


一方通行「おい、とぼけンじゃねェ。今お前は…」

レナ「知らない知らない知ぃらなぁーい☆レナはなんにも知らないよぉ~はぅ~~~~…」


またもくるくるとレナは回りだす
次第に気持ち悪くなってしまったのかふらふらと塀に手をついてうずくまってしまった


レナ「はぅ~~…目が…回ってぇぇ…」

一方通行「……アホくせェ…大丈夫か?」

レナ「だ、だめ…気持ち悪いかも…はぅ……」


とりあえずレナの調子が戻るまで背中を擦ってやる一方通行

その後も何気ない話をするだけだった
結局帰り道レナの話かけた意味深な話を聞き直す機会は訪れなかった

最後のレスの半角?はただの入力ミスです
Vitaからの書き込みだったんでミスりました
脳内補正お願いします

次の投下は火曜ぐらいにでわまたノシ

すみません遅れました…
今回からエンジェルモート攻防戦です
頭良くて運動神経良くて顔もいいK1に嫉妬しつつ投下

一方通行「なンだってンだこの状況は…?」


エンジェルモートの前まで来た一方通行は店のガラスドアの前でまるでゾンビのように群がる男共を見て思わず呟いた


一方通行(確か今日は抽選で当たった人間の貸し切りだったろォが)


疑問に思いつつも電極を切り換えて人混みを押し退け店に入ろうとする


「あ、あんた…当選者なのか!?中に入れるのか!?」

一方通行「あァ?」


見も知らない男が鼻息荒く一方通行に話しかけてくる


一方通行「だとしたらどォだってンだ?」

「頼む!チケットは四名様まで入れるンだ!ぜひ俺をぉぉおおお!」


男の言葉を筆頭に人混みから『俺をッ!』『イヤ拙者を!』『我輩をお頼み申す!』と声が上がる


一方通行「なら問題だ。
4以上の全ての偶数は、二つの素数の和で表すことができる
これを5分以内に証明した奴と入ってやるよ」

「ほ、本当か!?ちょっと待ってろぉぉおおお!」


言うが早いか早速携帯を片手に血眼で計算し出す男たち
そんな男たちを無視して一方通行は踵を返す


一方通行(猿共が…解ける訳ねェだろ。死ぬまでやってろ)


早々に見限って店に入る一方通行

「セェェェええええロリとぅわぁぁぁあああん!!!いらっしゃいませー!!!」


店内に入ってきた瞬間、瞳を輝かせ涎をたらしたウェイトレス姿の変態が一方通行に飛び付いて来た


一方通行「反射」

「うぶくァッ!ありがとうございます!」

一方通行「……お前も相変わらずだな20000号」

20000号「セロリたんこそ相変わらずのセロリたんですねぇ!舐めてもいいですか?」


生唾を飲み込む20000号。目が捕食獣と変わらない


一方通行「ふざけた事ヌカしてンじゃねェ。さっさと案内しろ」

20000号「はい……こちらです」


心底残念そうに20000号は窓際の席に一方通行を案内する

一方通行「なんつゥか…今日の客は凄まじいな…」


店内の様子を見て一方通行が口をこぼす

店内は大きいお兄さん達でひしめき合っており普段よりもかなり濃い空気で満ちていた
もちろん濃い空気と言ってもマイナスイオンたっぷりの爽やかさ溢れる空気などではなく
いい年した大人の男共の荒い鼻息である


一方通行「おまえみてェな奴らの巣窟になってンな。ここは…」

20000号「さすがにそれは漏れも傷付きます!漏れが覚醒するのはセロリたんの前だけですよ!
そうだ!セロリたん!!セロリたん限定メニューのミサカ盛りもありますよ!
今なら特別サービスで漏れをセロリたんがお好みでトッピングするサービスも付いてきます!!ハァハァ…」

一方通行「俺を見たら所構わず発病する辺りおまえの方が重症だよな」

20000号「それは漏れはセロリたんの性奴隷ですから当たり前です」キリッ

一方通行「お前と話してると冗談抜きで頭痛くなるンだが…」


テーブルに両肘をのせ一方通行は頭を抱え込んでしまう

その時だった

今日はここまでになります
エンジェルモート攻防戦とか言いながらただの変態回でしたね…すみません
次の投下は金曜にでもそれでわノシ

深夜になりましたが投下に来ました
全国の清麿さんゴメンナサイ
ウンコティンティンは結構好きでした
それでわ投下

ガシャーン!!


唐突に盛大な音が響き何事かと一方通行が顔を上げてみるとウェイトレスの一人が転んでしまい見事に客の股にオーダーをぶちまけていた


「す、すすすみません!!…お召し物は…その…!」

「何て事するナリかー!?某ジーンズ専門店で1800円もしたズボンが生クリームでベトベトなりよ?…ハァハァ♪」


だらしなく太った丸眼鏡でニキビ面の男が鼻息荒くどこか嬉しそうに抗議している


20000号「あちゃ?またですか」

一方通行「また?」

20000号「アレですね…故意に足をかけてるんですよ」

一方通行「ワザとやってるって言ってンのか?」


20000号「メインの人やセロリたんのペットの漏れは鉄壁のガードでディフェンスしてますから」

一方通行「そォかい。そりゃァよかったなァ」

20000号「と言いつつも内心はホッとしてますよね?元気ハツラツなセロリたんの野菜スティックと違って」

一方通行「あンま舐めた口叩いてっとあのクソ豚の胸ン中にベクトルシュートしてやっても構わねェンだぞ?」

20000号「それだけは止めてください!ミサカが悪かったです!調子に乗りました!はい!!」



手を合わせて頭を下げている20000号を無視して一方通行は再び騒ぎが起こっているテーブルの方を見る


一方通行(……あァ?)


ふと絡まれてるウェイトレス目をやるとその顔に一方通行はに見覚えがあった

というか絡まれてるのは詩音だった


一方通行(アイツも哀れだな)


心底同情するが別段首を突っ込もうとは思わない一方通行
言っちゃ悪いがあたふたしてる様が中々面白い


「こーなったらウェイトレスさんが誠心誠意フキフキするのが相場でございまするよぉぉおおお!!」

詩音「えっ!!?」


股にデザートを付けられた男と同じ卓に座っていたガリガリに痩せた出っ歯の男が声を高くしガッツポーズをして立ち上がった

その声に反応するようにあっという間に店内に「フッキフキ」コールが沸き上がる


詩音「そ…そんな…」


哀願するような目で周囲を見渡す詩音
しかし四面楚歌
客達はフッキフキと叫び続けており接客業で立場が弱いのか他のウェイトレスは申し訳なさそうに頭を下げている

「仕方ない事でござるなぁ…ハァハァ♪おズボンこのままな訳にはいかなブフッ!?」


突如ケーキが飛んできて鼻息を荒くしていた男の顔面に直撃する

フキフキコールが止み不穏な沈黙が店内に漂った


一方通行「やっぱ甘いもンはねェな。ゴミ見ながらだと尚更あり得ねェ…どォして女共は目ェ輝かせて食うのかねェ…」


かったるそうに席を立ち杖を使わず詩音の方へ歩いていく一方通行


一方通行「下がってろ」

詩音「えっ…でも道っちゃん…」

一方通行「引っ込んでろつってンだ。ついでにその顔どォにかしろ。なンだァ?涙目になってンぞ」


意地悪くニヤッと一方通行は笑う

詩音は顔を真っ赤にさせ店の奥に消えていった

今日はここまでです
次回は月曜エンジェルモートに挽き肉ができてるかは検討中です(笑)
それでわノシ

投下だぜ!イェェェェェアアアアアアァァァァァァッッッ!!!!!!!

PM2.5と暴風に舞上げられた埃により喉が使い物にならない>>1の魂の叫びで投下に来ました

最底辺のテンションは強引に持ち上げようと思います
∠( ゚Д゚)/イエエエエエエエエエエエガアアアアアアアア!!

でわ投下

「な、何するナリかぁー!」


しばらく呆気に取られていた男だったが詩音が店の奥に去っていったのを見て我に返ったように一方通行に詰め寄り出した


一方通行「あ?ケーキぶつけてしまった事かァ?狙った訳じゃねェンだ悪ィ悪ィ」

「そっちじゃないのでございまするよ!よくもフキフキを!彼は被害者なのですよー!」


周りの客も同調し一方通行を責め立てる


一方通行「オイオイ豚共が吠えンじゃねェよ。被害者だァ?まるでテメェらが人間みてェに…ナマ言ってンじゃねェぞ家畜共が」

「な、なんという態度!これはお仕置きが必要であるなぁ!?皆の衆!!?」


オォー!と店内に歓声が響く

「成敗!」


無数の男達の拳が一方通行を襲う


ピキーン


「ぐあぁぁぁ!余の腕が…腕がぁぁあああ!!」

「ギヒィィィイイイ!?一体何事でありますかぁぁぁ!!?」


一方通行に殴りかかった男達全員が逆に吹っ飛び自分の腕を押さえ悶絶する


一方通行「おーおー。やっぱ豚共は鳴いてるのが一番似合ってンなァ?」

「おのれ!こんな事して良いと思っているナリかぁ!?」

一方通行「ギヒッ…いいねェ。最近刺激ってのが全然無くてよォ…不良ン時は不完全燃焼だったからなァ?あンま期待は出来ねェが楽しませてくれよ?」

「ひ、ひぃッ!…!?」


凄惨な笑みを浮かべる一方通行に男達はガタガタと震え顔は青ざめていく


一方通行「安心しろ殺しゃァしねェ…それにそォだなァ…なンだったら見逃してやってもいい」

「えっ…?えっ!?」


青ざめていた男達の顔に安堵の色が浮かぶ


一方通行「なンてこたァ無い。この店から出ていきゃァいいだけの話だ」

「ほ、本当でござるか…?」

一方通行「当たり前だろ。なにが悲しくてお前ら屠るために一旦店出て入店出来なくならなけりゃならねェンだ」

その一言で再び男達の顔から血の気が引いていく

一方通行の言った通りだった

店内の自動ドアには退出時に嫌でも目に入るように貼り紙されており『途中退店はチケット無効とさせていただきます』と書かれている

無論、闇相場で十数万円はするチケットを手にいれた猛者達は途中退店など考えられない


一方通行「出るならさっさと行きやがれ。まァここに残った所で待ってるのはスーパーの肉コーナーだけどなァ…それに」


男達の紫色に腫れ上がった腕をチラリと見る一方通行


一方通行「見たところ複雑骨折は確実だろォな。さっさと病院行って手当てしねェとその腕使いもンにならなくなるぞ」


その容赦ない一言は躊躇っていた男達を諦めさせるのに充分だった

よれよれと立ち上がり一人また一人と店を去っていく
中には涙まで流してる者もいた


無理もない
高い金を出してやっと天国のような空間に行けたのに
そこに居たのは白い悪魔だったのだ


すっかり静かになってしまった店内をやってしまったとばかりに一方通行は見渡す

客数は騒ぎの前のおよそ3割程にまで減っていた


20000号「さすが漏れのご主人様ですねセロリたん!
ハッ!?ということは敢えて絡まれていたらセロリたんのウルトラ紳士な
『俺の女に手を出すな』
をして貰えたのに漏れとしたことが…」


ワナワナと震えガックリと膝をつく20000号
静かになった店内がより悲しさを演出させる


一方通行「あー…20000号」

20000号「なんですか?セロリたん抱いてくれるんですか?」


よほどショックなのだろう。切り返しのセクハラにいつもよりキレがない


一方通行「ツレを呼びたいンだが構わねェか?」

20000号「あ、はい。お名前を教えて貰っていいですか?」

一方通行「竜宮レナ。北条沙都子。古手梨花」

20000号「全部女の子ですね…」

一方通行「ンだその含みのある言い方は?」

20000号「ミサカの事は遊びだったんですねぇぇえええ!」


ブワッと顔を崩し両手で顔を押さえて走り去っていく20000号


一方通行「どこから突っ込みゃ良いか分かンねェ…」


呆れた目で店の奥を眺めながら一方通行はポツリと呟く


20000号「漏れの[自主規制]に突っ込むべきですよ!セロリたん!!」

一方通行「復活早ェなァ!お前!!」

皆さん心配の言葉や待ってるなどの言葉感想の言葉などありがとうございました
病気の身には凄い支えになりました
そして木曜来れずすみませんでした
8割程回復したので今日から投下再開します
でわ投下

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ーーーーー
ーーー



沙都子「で?本当は何を企んでおりますの?」

一方通行「はァ?」

沙都子「道行さんがこーゆーのに私達を誘うなんてまずあり得ませんわ!」

一方通行「…ひでェ言い草だな」

梨花「道行の事だからきっと
『アイツらが見てないからウェイトレスさんを堪能しておォォォ持ち帰りィィィィ!!』
とか考えてたに違いないです」

一方通行「……レナと一緒にすンじゃねェ」

レナ「ひ、酷いよっ道行くん!レナだってそんなことしないもん!!いくらウェイトレスさんがかぁいいからってお持…おもももも…!!」

一方通行「ハァ…コントかお前は…」

沙都子「前から思ってましたけどお持ち帰りしていったい何するんですの?」

梨花「沙都子は子どもだからまだ分かんないのですよ」

沙都子「?」

レナ「それで何で道行くんはレナ達を誘ってくれたのかな?かな?」

一方通行「……一人でファミレスっつうのもねェと思っただけだ」


無論、打ち止めらと出会う前は同じファミレスに三食一人通いしてたダイヤモンドメンタルの一方通行にとって今更なんとも無いのであるが

客の大半を追い返しイベントなのに店内の雰囲気を凍らせた罪悪感で呼んだとは口が裂けても言えないのでそういう事にしておく

沙都子「まぁいいですわせっかくの食べ放題ですし…早速部活と行きますわよー!」

一方通行「魅音がいねェじゃねェか?」

沙都子「いるじゃないですの?ほらあそこ」


そう言って沙都子はオーダーを運んでいる詩音を指差す


一方通行「アレは詩音つってな魅音の双子の妹だ」

沙都子「詩音?髪下ろした本人じゃございませんの」

一方通行「………」

梨花「沙都子。詩音はホントにいるのですよ?」

レナ「そう言えばこないだ魅ぃちゃんが言ってたね。『興宮に住んでる妹がいる』って」

沙都子「ふーん…お二人が言うなら嘘じゃありませんわよね…」

梨花「にぱー☆」

一方通行「…ありがとよ」

梨花「にぱー☆」


優しく梨花の頭を撫でてやる一方通行
二人のフォローが実に有難い
詩音=魅音は突っ込んだら敗けである


一方通行「なら部活はパスだな」

沙都子「いや!ここはやるべきですわ!」

一方通行「…心底めンどくせェが…一応理由は聞いてやる」

沙都子「魅音さんが居ないからこそここで各自レベルアップして吠え面かかせてやるんですのよ!」

梨花「一理あるのです」

レナ「レナも賛成かな。最近魅ぃちゃん絶好調だし」

沙都子「道行さんはどうしますの?やりますの?やりませんの?」


三人の視線が一方通行に集まってくる


一方通行「ったく…やりゃァいいンだろやりゃァ…」

沙都子「始めからそう言っとけばいいんですわよ」


一方通行(どォせ断ろォが多数決とか言い出すンだろォが)


ため息代わりにコーヒーを口に流し込む


一方通行「…で、何すンだ?トランプとか持って来てンのか?」

梨花「持ってきて無いのですよ」

一方通行「じゃァ何やンだよ?」

沙都子「デザート食べ放題なのですよ!?決まっていますわ!」

一方通行「…待て」

レナ「やったぁ!レナ甘いもの大好きだからね負けないんだよ!だよ!」

一方通行「ちょっと待て」

梨花「れっつ大食いバトルなのです」

一方通行「待て言ってンだろォが!」

レナ「?どうしたのかな?道行くん?」

一方通行「どォしたのかな?じゃねェ。お前ら俺が小食な事知ってて言ってンだろ」

沙都子「道行さんは育ち盛りじゃありませんこと?」

梨花「それに僕たち子どもの食べる量なんてたかが知れてるのです」

レナ「レナもあんまり食べると太っちゃうから」

一方通行「………」


確かに言われてみればその通りな気もする
普段の弁当もヘルシーに作られている所を見るとあまり多く食べるとは思えない
それに二人は一方通行よりかなり年の離れた女の子

一位にはなれずとも罰ゲーム回避は容易いかも知れない


一方通行「分かった。やってやろォじゃねェか」


しかし一方通行は知らなかった

彼女らの弁当は肉満載の一方通行の弁当に合わせて敢えてヘルシーに作られている事を
さらに世界遺産に登録されてもおかしくない様な田舎、雛見沢に住む子どもは運動不足とかけ離れているためダイエットなど必要ないことを
そして甘いものを目にした女子に性別も年の差も関係ない事を

本日の投下しゅーりょォー
結構多めに投下しちまったがこの調子で書き溜め足りンのかねェ
まァ、どォでもいいかァ

<割愛☆>

「何で…何でこんな無茶な投下を実行したの…?」

『あァ?なンだァイキナリ』

「答えて!あれだけの投下量で書き溜めの少なさ把握してない訳じゃ無いんでしょ!」

「こんなイカレた投下を実行した理由は何!?」

「書き溜めを増やす自信でもあった訳!!?」

『理由?理由ねェそりゃあ』

『一周年記念でテンション上がってたから』

「」

『昨日でSS始めて1年になンだよ。そンでテンション上がっちまって。なンど失踪したくなったか…お前もSS 書いてりゃ分かンだろ?』

「何よ…それ…イッシュウネンキネン?テンション上がった…?そんな…」

「そんな事でっ…アンタはっそんなッ!」

「そんなモノのために書き溜めを潰したのかァァァアアアアア!!!!!」


ハイ!茶番!\(^o^)/
次は月曜から火曜
でわまたノシ

一方通行「ちくしょォ…」


女子三人に惨敗した一方通行はテーブルに項垂れながら弱々しく呟いた


レナ「ほらコーヒー持ってきたよ?」

一方通行「…あァ」


ドリンクバーから戻ってきたレナが一方通行にコーヒーを差し出す
今現在一方通行が呻いているテーブルにはレナしかいない
沙都子と梨花は店側に罰ゲームの交渉をしに行っている

腹も重たいが気も重い一方通行


レナ「沙都子ちゃん達遅いね…」

一方通行「……出来れば帰ってこねェでいいンだがな…」

レナ「あはははは。それは駄目だよぅ?罰ゲームでかぁいくなった道行くんをレナがお持ち帰りするんだからぁ?はぅ?!」


トローンと表情を崩しかぁいいモードの片鱗を見せるレナ

言葉にしがたい悪寒が一方通行を襲う


20000号「それはさせません!セロリたんは漏れがお持ち帰りますから!」


レナがお持ち帰りの一言を発すると仕事をしていた筈の20000号が唐突に話に割って入ってきた


一方通行「どこから沸いてきやがった」

レナ「だっ…駄目だよ!道行くんはレナが持ち帰るんだから!!」

20000号「いいやッ!それは駄目です!セロリたんは漏れのご主人様ですから!どうしてもと言うなら漏れも一緒に!!」

レナ「ならあなたも一緒にお持ち帰りぃぃいいいい!!」

20000号「お持ち帰RYYYYYYY!!」

一方通行「………なンだコイツら…?」


狂人かぁいいモードのレナと変態20000号が共鳴した瞬間だった

20000号「あ、それはそうとセロリたん…」


20000号の表情が先程と打って変わって真剣な物に変化する


一方通行「何かあったのか?」

20000号「呼んだ女の子二人が幼女とはさすがはセロリたん!!漏れは浮気には簡要ですよ!」

一方通行「ブチ殺されてェのか恥女?」


真剣な話を期待していただけに苛立ちが隠せない


20000号「ですが…少しでも漏れを蔑ろにしたり本気になったりしたら…殺しますから」

一方通行「怒りゃァいいのか呆れりゃいいのか分かンねェ…そもそもお前はンなキャラじゃねェだろ」


明後日の方向に猪突猛進していく20000号にうんざりしながらも変態のアイデンティティーが崩れ始めた20000号に一方通行はとりあえず突っ込んでおくことにした

レナ「あ!そういえば道行くん」

一方通行「………ようやく目ェ覚ましやがったか」

レナ「そちらの方は知り合いかな?かな?」

一方通行「………」


咄嗟に答えが出てこない
そもそもこの個体は何と名乗ってこの店でバイトしてるのだろうか?
どういった関係という事にするか?

一方通行は何も考えていなかったのだ


20000号「漏れですか?漏れは御坂というものです。セロリたんの嫁です」

レナ「よ、嫁!!?」

20000号「はい!それはもう毎日毎日大人の運ドバッハァッ!」


一方通行の右ストレートが容赦なく20000号の鳩尾を襲う


一方通行「ただの腐れ縁だ」

レナ「あは、ははは…そうなんだ」

20000号「お…おぉォ…そ、それではごゆっくり…」


随分効いたのか20000号はそれだけ言ってよたよたと力なく店の奥に戻っていった

やっちもうた…
例によって?は伸ばす波線に脳内変換よろしくお願いします
自分でこう言うのも何ですが今日は恥文が目立つ内容だと思います
分かりにくかったらすみません

場面の移り変わりや閑話休題が今のところの課題なんで努力中です
アドバイスは随時受け付けてますのでよろしくお願いします

次回の投下は木曜から金曜
でわまたノシ

投下に来ました

今日でエンジェルモート編はラストになります

それでわ投下

一方通行「ったく」

レナ「道行くんだいぶ好かれてるね?」

一方通行「はァ?馬鹿にしてるだけだろ実際…」

レナ「………」


呆れたようにため息を吐くレナ


レナ「ねぇ?道行くんは魅ぃちゃんの事どう思う?」

一方通行「どォしたいきなり?」

レナ「いいから答えて」

一方通行「……悪くねェダチだ。親友みてェなもンだと思ってる」

レナ「……じゃあ詩ぃちゃんは?」

一方通行「……魅音とは真逆な女の子女の子してるヤツ」

会話が止まった
重苦しい沈黙が二人の間に流れる


レナ「……そうかな?そっくりだと思うよ?」


その一言は普段のレナとは明らかに違った責めている様な口調だった
顔は笑っているが眼差しは真剣なものだった


一方通行(やっぱり何かしちまったのか…)


思い当たる節は無いのだが直感的に悟る一方通行


一方通行「…レナ、お前今日言ってたよな?『魅音が傷つけられた』とか、アレ…俺の事だろ?」


レナは何も言わなかったが無言の肯定だと一方通行は受け取る

一方通行「正直に言ってくれ。俺の何がアイツを苦しめてンだ?」

レナ「……別に道行くん一人が悪いとは思わないかな…考え方によっちゃ魅ぃちゃんにも責任はあるし…」

一方通行「分かンねェ…レナ、頼む教えてくれ。アイツとは禍根なンざ残したくねェ」

レナ「……うん…それは道行くんの本心すぎる本心だと思うよ?」


優しく慰めるようにレナは頷く


レナ「でもね?…いや、だからこそ道行くんは自分で考えて、気づいて魅ぃちゃんに謝ったがいいと思うな。ゴメンねレナ意地悪で」

一方通行「……いやンな事ねェよ。お前の言う通りだ」


本当に反省しているのなら他人任せはいけない

レナ「それにしても本当に沙都子ちゃん達遅いね!」


この話はこれでおしまい!とばかりにレナは強引に話題を反らした


一方通行「……いっそのこともォ帰っちまってもよくねェか?」

レナ「さすがにそれは…」

一方通行「ったく、冗ォ談だっての」


半分ほどは本気だったが…


沙都子「お待たせしましたわ!」

梨花「ようやく話がまとまったのです」

レナ「お疲れ?罰ゲームはどうなったのかな?かな?」

一方通行「どォせ後日部活でっつうオチだろ?」

梨花「道行は今からスタッフルームに直行なのです」

一方通行「は?」


嫌な一筋の汗が一方通行の頬を伝う


沙都子「1時間きっちり働いてもらいますわ!」

梨花「制服もちゃんと用意されてるのですよ」

一方通行「……特売に行かなきゃならねェンだった…」


そそくさと逃げ出そうとする一方通行
その腕を沙都子と梨花がガッチリと掴む


沙都子「特売は今から1時間半後ですわよ?」

梨花「観念するのです」

一方通行「ふざけンな!どォして俺がこンなとこで羞恥プレイまがいの罰ゲームやらなきゃならねェンだ!!?」

沙都子「?羞恥プレイ??」

梨花「沙都子も大きくなればその内分かるのですよ」

一方通行「それに俺は杖なしじゃロクに歩くことすら出来ねェンだぞ!どォ接客やれってンだ!?」

梨花「その点はスタッフルームで説明するのです」

沙都子「さぁさぁ!観念するんですわ!」


抵抗する一方通行をふたりはぐいぐい引っ張る


一方通行「ケッ!やれるもンならやってみろ!ガキ二人に引きずられる程俺は落ちぶれちゃい─あがッ!?」


しかしその瞬間一方通行の体がソファーから引きずり下ろされた

見るとかぁいいモード百パーセントの下手すると野生の熊より危険なレナがそこに居た


レナ「はぅ♪」


そのまま細い指が一方通行の電極へ伸びる


一方通行「レ、レナ…?じょ…冗ォ談、だよな…?」


聞こえてない事が分かっていてもかぁいいモードのレナに問いかけてしまう


レナ「はぅ☆新ネタだよ♪だよ♪」


一方通行の顔から血の気が引いていく

途端に一方通行の正常な思考はブラックアウトしエンジェルモートに超能力アイドルYURIKOが降臨した

本日はここまでですね
次回からは詩音と魅音の遭遇編です
相変わらずの亀ですが次は日曜から月曜にでも来ようかと
それでわノシ

深夜ですが投下に来ました

投下の前に少し小ネタをどうぞ


超能力アイドルYURIKO

スリーサイズ 学園都市のトップ機密♪
体重 アナタの理想にベクトル変換☆
身長 160?後半☆

学園都市出身の正体不明のアイドル
ファンからの連絡は一切つかず常にゲリラ的に活動している
そのあまりにも一方的な活動にファンからは無条件で癒しを差しのべてくれる一方通行の女神と称えられている
またゲリラライブを撮影したファンは漏れなく帰り道白い悪魔に襲われ病院送りにされるという情報も流れている
現在確認されてる楽曲は『みんなのハートに一方通行→』『あなたの本音をベクトル変換↑↓』『マイぶらっくエンジェルゆりこたん』『右手が触れ合い血流操作///』などが確認されてる
現在MNWのみでの有料配信が秘密裏に行われてる

それでわ小ネタはここまでで投下

詩音「お疲れ様でーす」

一方通行「疲れるも何も俺は別に何もしてねェンだけどよ」

詩音「え?あの歌ってたのって…?」

一方通行「人違いだ」

詩音「でもそっくりでしたよ?」

一方通行「……双子の妹なンだ。百合子つって昨日呼ンどいただけだ」

詩音「へ?本当ですか??」


一方通行(人のこと言えねェだろお前は……)


詩音「まぁいいでしょ!ほら行きましょ道っちゃん♪」


詩音は一方通行に腕を絡め先に歩き出す


一方通行「オイこら!こっちは杖ついてンだぞ!引っ張ンじゃねェ!!」

詩音の用事はウィンドウショッピングも兼ねた興宮の案内だった

適当にぶらついてアクセサリーショップや服屋、さらには隠れた名店や安くしてくれる肉屋まで案内される


一方通行「結構ォお前の親戚がやってる店ってのも多いな?」

詩音「興宮は園崎家の庭みたいなもんですからねぇ。エンジェルモートも叔父さんがやってますし、これから行くおもちゃ屋も親戚ですよ?」

一方通行「おもちゃ屋?」

詩音「もう見えてますよ。あそこの店です」


詩音が指を差した先を見るとそこには数日前カルタ大会が開催されたおもちゃ屋があった

そのおもちゃ屋のショーウィンドーに小走りで駆けていき手招きする詩音

詩音「道っちゃん早く早く♪」

一方通行「この杖が見えてねェのか……ったく…」


一方通行がショーウィンドーに向かうと中には精巧に作られた西洋人形が陳列されていた


一方通行「この人形がどォした?」

詩音「えぇー?可愛くないですかー?」

一方通行「……男の俺に同意を求められてもな。正直どれも大して変わらねェと思う」

詩音「そんなことないですよ!あのオトコ女のお姉ですら可愛いって行ってましたから!」

一方通行「魅音がねェ…」

詩音「特にほら、あのドレスの人形いいですよね!」


詩音はふわふわしたドレスを着た白髪赤眼の人形を指差して目を輝かせる

一方通行「……ありゃ、確かカルタ大会の時貰った…」

詩音「…らしいですね」


ポツリとだがはっきりと呟く詩音


詩音「どうでした?とっても可愛いかったでしょ?」

一方通行「俺が人形に可愛いとか言うキャラに見えンのか?」

詩音「じゃあそのお人形どうしちゃったんです?」

一方通行「持ってたところで邪魔にしかならねェから…やった」

詩音「…誰にですか?」


その言葉を聞いたとき一方通行の脳裏にカルタ大会での出来事が鮮明に蘇ってきた

──魅音にはこういうのは似合わねェだろ

──せいぜい次生まれるときは性別間違えねェよォに気をつけとけ


一方通行(まさかな…)


"魅ぃちゃん傷つけられたの"


レナの言った一言が一方通行の胸に突き刺さる


一方通行「……っ…欲しかったのか…?コイツが」

詩音「えっ…!?あ、あの…その…」

一方通行「ったく、欲しいってンなら遠慮なンかすンじゃねェ。悪ィな気が利かねェで」


ワシャワシャと乱暴に髪を撫でてやる一方通行
詩音の顔が茹で蛸のように真っ赤に染まる


一方通行「買ってやる。あの時の謝罪と日頃の礼だ。魅音には色々世話になったからな」

詩音「わ、私…詩─」
一方通行「いいンだよ。もォその設定は」


詩音、もとい魅音の腕を強引に掴み店に入る

カランカランとベルの音が響き店の奥から『今いきまーす!』と声が聞こえ


一方通行の頭に真っ白な空白が生まれた

自分の中でキリがいいから今日はここまでです

次回は水曜から木曜にかけて投下に来ます
それでわノシ

こんばんわ投下に来ました
アウトブレイクの影響でひぐらしSS増えてほしいですね
それでわ投下

理解が追い付かない一方通行
状況を冷静に整理していく

今、自分と一緒にいるのは自らを詩音と名乗ってる魅音

そしてその魅音に人形を買ってやろうとしたらもう一人魅音が出てきたのだ


互いの顔を見つめたまま茫然自失となるおもちゃ屋に居た魅音と一方通行
ただ一人、共に店に入った"詩音"だけが笑いを堪える様な顔をして一方通行の腕に両腕を絡め体を刷り寄せてくる


一方通行「お、お前ら…クローンだったのか…?」

魅音「え?」

詩音「はい?」


それが学園都市最高の頭脳の持ち主の出した答えだった

詩音「あっはっは。クローンって道っちゃん流石にあり得ませんよぉ!」

魅音「し、ししし詩音!?これってどういう…!!?」


ガクガクと震えながら魅音は詩音と一方通行を交互に指差す


詩音「えー?お姉がお気に入りの道っちゃんが気になったからデザートフェスタに招待したんです。そしたら道っちゃん"初対面"なのに客に絡まれてる私を助けてくれて…」

魅音「ええぇぇえぇえええ!!?」

一方通行「ハァァァアアア!!?」


ワザとらしく髪をいじり頬を染めながら言う詩音に一方通行と魅音は揃えて声をあげる


一方通行「初対面ってお前!弁当ォくれたろォが!?不良ン時、首突っ込んで来やがったろォが!?」

詩音「知りませんよぉ?なんの事ですかぁ?」


首をかしげながら面白そうに舌を出す詩音


一方通行「魅音!お前昨日電話したよなァ!?」

魅音「しっ知らないよぉ?…何のコトッ!?」

詩音「あーっ!ハイ!それ私です!ハイッ!!」


泣きそうになりながら首を振る魅音とは対照的に詩音は顔を明るくしてビシッ!と手をあげる

一方通行(って事はなンだァ…?昨日まで詩音とか言ってたのは魅音で…)


顔を真っ赤にさせ涙目でプルプルと震える双子の片割れにチラリと目をやり


一方通行(今日デザートフェスタに誘ってきたのは正真正銘魅音の双子の妹、詩音だったってのか!?)


続いて他の二人の反応を楽しむようにニマニマ笑うもう一人の双子の片割れにも目を運ぶ

そう言えば梨花が
『詩音は本当にいます』
と言っていたのを一方通行は今更ながらに思い出した

一方通行(つまりあの一言は気ィきかせたとかじゃなくて単に事実言ってただけだってのかよ!?)


詩音「ささ、店員さーん。早くショーウィンドーの人形包装しちゃって下さーい。大好きな人からのプレゼントなんでリボンも忘れないで下さいねぇ☆」

魅音「うぅぅ…ぅぅう……道っちゃぁ…ん…なんで?」


鼻声でショボショボと包装を始める魅音


一方通行「俺に聞くな…俺だって、混乱してンだ」

詩音「ハイありがとーございまーす!それじゃお姉元気だしてくださいねぇー!! 」


人形を受け取った詩音は強引に一方通行の腕を引っ張り高笑いをしながら店を去っていった

本日は以上になります
次は土曜から日曜にかけて来ます
でわまたノシ

実際クローンが学園都市にいるし関わりも深いからなw
それと今更かもしれないけど一方通行の二人称は絶対に「お前」じゃなくて「オマエ」だよ

>>438うわぁぁぁぁあああああ!!!
マジでかぁぁああああ!?!?
恥ずかしいィィィィ!今後から気を付けるとして、とりあえず"お前"は"オマエ"に脳内変換お願いします

昨日の深夜に投下しようと思いましたが疲れて寝ちまったんで朝から投下です

でわ投下

6月16日金曜日 朝



レナ「ごめんね?道行くん。魅ぃちゃんがね昨日までの事は全部忘れてほしいって」

一方通行「……確かにありゃなァ」


自分でも確かに小っ恥ずかしい事をしたと一方通行は顔を背ける


レナ「忘れてくれたら明日からはいつも通りに出来るからって」

一方通行「そンな短期間で大丈夫なのか?」

レナ「魅ぃちゃんあぁ見えて切り替え早いから心配ないと思うケド…とりあえず今日は魅ぃちゃんにはレナが付いてるからそっとして置いてあげて欲しいな?」

一方通行「……あァ」

レナ「ごめんね?」

それだけ言ってレナは去っていく

この様子じゃ今日の部活は中止だろう

溜め息を吐いて窓の外をぼんやり見ていると梨花と沙都子が一方通行の席に近づいてきた


沙都子「全く何がありましたの!?魅音さんも道行さんも今日は心ここに有らずって感じですわよ!」

一方通行「……沙都子ォよくンな難しい言葉知ってンなァ…こっち来いアタマ撫でてやる」

沙都子「あたりまえですわ!私を誰だと思っておりますの!?」


自信たっぷりに胸を張る沙都子
ちょれェと思いつつも手を伸ばし一方通行は叩く様に頭を撫でる

梨花「道行も魅ぃも一杯お勉強しましたのです」

一方通行「……うるせェマセガキが…」

梨花「にぱー☆」

沙都子「お勉強?道行さんと魅音さんが??」

一方通行「沙都子もっとこっち来い。もっとアタマ撫でてやンよ」

沙都子「??」

梨花「沙都子も大人になれば分かるのですよ」

沙都子「???」


訳が分からないと言いたげな沙都子の頭を一方通行と梨花は予鈴がなるまで撫で続けた

6月16日 木曜日

一方通行「ヘェ頑張ってンじゃねェか…」


古手神社では数日後に控えた綿流しの会場設営が行われていた

部活も中止でレナも魅音に付きっきりの状態なので一方通行は暇潰しがてら帰り道古手神社に足を運んだのだった


「おー芳川先生とこの坊主じゃねぇかぁ!なんだぁ?手伝いかぁ!?」

「ガハハハ!モヤシな小僧に力仕事はやれねぇだろうよぉ!ちったぁ肉付けて出直しなぁ!」


名前すら覚えてない村人に軽いコンプレックスを刺激され一方通行のコメカミが引くつく


一方通行「テントの骨組みはどこだ?」

「あぁ?アソコん倉庫ん中ば詰まっとるが?」

一方通行「モヤシかどォかよく見てろ」

近代的な杖を隅に立て掛け一方通行は倉庫の中に入って行き、テントの骨組みをまとめていた紐に中指を引っ掻けドヤ顔で出てきた

まるでコンビニのレジ袋を引っ掻けているかのような手軽さに村人達の開いた口は塞がらない


一方通行「で、どこの誰がモヤシだって?」

「お、おおおおお!!やるじゃねぇかぁ坊主!見かけによらねぇなぁ!」

「この調子で頼んだぜぇ!働いた後のビールは格別だかんなぁガハハハハハハ!!」


一方通行(調ォ子いい奴らだな)


とは言うものの村人の一員になってきたと感じ別段悪い気もしなかったが

一方通行「こンなもンか…」


あらかた力仕事を片付けた一方通行は切り換えてた電極を元に戻し木陰に腰を下ろした

夕暮れの冷えた風が頬を掠め心地よい


一方通行(……結構充電喰らったな)


「麦茶飲みます?」


不意に目の前に紙コップが差し出される
顔を上げるとそこには昨日大騒ぎした双子の片割れがハニカミながら立っていた

やっちもうた…
>>440で金曜とか書いてましたが木曜日に変更お願いします
最近脳内変換多発して申し訳ないです

次は火曜から水曜にでもそれでわノシ

一方通行「……詩音か」

詩音「ありゃ?今日は分かったんですね」

一方通行「魅音の方は今日ショックで寝込ンでるからな」


冗談めかしながらやや責めるように言う一方通行


詩音「ふーんだ。勝手に私の名前使うからですよー」

一方通行「……たく。姉妹だってンなら仲良くしろよ?」

詩音「あはははは。別に悪いって訳じゃ無いんですよ?」

一方通行「良くはねェのかよ」

詩音「うーん…そゆことじゃ無くてですね…
ほら?私達って家とか色々特殊じゃないですか?」

一方通行「……そォだな」

詩音「だからあんまり姉妹って感じもしなくて、何て言うか友達?みたいな雰囲気って言うか…
でもやっぱり見た目は瓜二つで双子の姉妹だけど他の姉妹だとは違うような……
アレ?何言ってるか分かんなくなっちゃいました」


えへへへと照れたように笑う詩音

でもそれは恐らく仲は良いのだろうと一方通行は思った

同じ遺伝子まで持って遠い存在

ふと一方通行の脳裏にかつてクソ以下の実験のために作られた彼女らを"妹"と呼び目の前に立ち塞がった超能力者が浮かび上がった

仲が良いとか悪いとかその尺度では表せないいざとなったら互いの命も差し出せるそんな関係

近すぎて遠くけれど手放せない大切な距離

一方通行「やっぱそりゃ仲良いンだろォよ」


となればかつての自分は身勝手にその関係を壊そうとしたのだ
被害者、加害者云々の前にやはり"姉"である彼女には一回きちんと頭を下げておくべきなのだろう


詩音「あは、はははは。この歳になって人に仲良し姉妹だと言われるとかなり恥ずかしいですね…」

一方通行「てかやっぱ姉妹だな。黙ってりゃそこそこなのに言動が残念仕方ねェ」


顔を赤らめる詩音にクックッと笑いながら一方通行は嫌味を告げる


詩音「なんですかぁー!黙ってたらって!!そーゆう道っちゃんこそ女の子の格好したら相当可愛いのに
!あー勿体無い勿体無い」

一方通行「…コロス」

詩音「えー私こう見えても運動神経いいですよ?モヤシな道っちゃんに捕まえられるんですかー?」


ブチと何かが切れる音が一方通行のコメカミ辺りから響いた


一方通行「取っ捕まえて綿流しの人柱にしてやらァ!!」

詩音「きゃー!変態が追っかけてきますぅー!」

一方通行「五臓六腑七里にばらまいて八つ裂きにされてェみたいだなァ!!」


ギャーギャーと騒ぎながら一方通行が追い付き伸ばした手を詩音はヒラリとかわし続ける


カシャッ!


一方通行「あァ?」


唐突に響いたシャッター音に二人の動きがピタリと止まる

目の前にはカメラを構えた大柄でメガネをかけた男性と二人のやり取りを見て微笑んでいる知的そうな女性がそこにいた

詩音「あーっ!富竹のおじ様と鷹野さんじゃないですかぁー!詩音でーす。二人しておデートですかぁー?」

富竹「デートって…あはははは照れるな」

鷹野「くすくすくす。まぁそんな所かしらね」


顔を赤くする富竹を見て笑う鷹野そして鷹野に笑われ富竹はさらに顔を赤くする


詩音「うわぁ、道行さんやお暑いですねぇ」

一方通行「ノラねェぞ」

詩音「ちぇ…ノリ悪いですよ」


いじけた様子で小石を蹴る詩音
カシャッ!とその姿も富竹はカメラに収める


富竹「そういう二人こそ夫婦漫才にしか見えないよ。やぁ、道行くん久しぶり」

一方通行「頭沸いてンじゃねェか?それとオマエはシャッター切らなきゃ会話に参加出来ねェのかよ」

富竹「シャッターチャンスだ!」


カシャッ!


一方通行「いきなり撮ンのは止めろつってンだろ!」

鷹野「うふふふ。ごめんなさいね?ジロウさん引っ込み思案な所あるから」

詩音「いきなり撮られると命を吸い込まれる気がするんですよねぇ?道行さん」

一方通行「しつけェぞ。学園都市出身の俺がンな昭和の爺くせェこと言うわけねェだろ。そもそもいつの時代だ」

詩音「えっ?だって今、昭─」

一方通行「寝ぼけてンのか。合わせてンのはコッチにだ」

詩音「え?合わせる?」

一方通行「あ?俺も何言ってンだ?」

詩音「……」

一方通行「……」


二人して仲良く首をかしげる
数秒前の会話がうまく思い出せない

富竹「シャッターチャンスだ!」

詩音「わ!?どうしたんですか?いきなり」

富竹「あ、ごめんごめん。なんかいきなりフラッシュたいて写真を撮らなきゃいけない衝動に刈られて」

一方通行「オマエ町中でそれやったら通報物だからな」

富竹「あははは…冗談キツいよ」

詩音「割りと本気で心配ですけどね」

富竹「あははは…」

鷹野「くすくすくす。なんだか一方君って意外とブラックジョークが好きなのかしら?」

一方通行「別にそォいう訳じゃねェ」

鷹野「あら?でもさっきも言ってたじゃない?『取っ捕まえて綿流しの人柱にしてやる』って」

一方通行「それがどォしたってンだ?」

確かにあまり良い類いの冗談とは呼べないがブラックジョークと言われる程悪質なものとは一方通行は思えなかった


富竹「あれ?もしかして一方君知らない?」

一方通行「あァ?」

詩音「まぁ知らなくても無理はないと思いますよ。道っちゃん雛見沢に来て日が浅いですし、お姉たちもあんまりこういう事は話したがらないでしょうから」

富竹「……かもね」


富竹が失笑する


一方通行「おい、オマエらさっきから一体何話してンだ?」


詩音と富竹は押し黙って困ったように互いの顔色をチラチラと確認し合う
その様は本当に話して良いかとアイコンタクトを取っている様に一方通行には見えた

鷹野「くすくすくす。ねぇ、一方君は雛見沢は好きかしら?」

一方通行「少なくとも嫌いじゃねェ」

鷹野「そう。でもこれから話す事を聞いたら嫌いになっちゃうかも。……それでも聞く?」


その一言が忠告だと一方通行にはすぐ理解できた


一方通行「かまわねェ。…教えてくれ」


けれど引くに引けない
好奇心に逆らえない自分が正直情けない一方通行だった

一方通行の返答を聞いて富竹は軽い苦笑いを浮かべ詩音は影のかかった顔をして俯いた


鷹野「ふふ…じゃあ一方君、早速だけど……祟りって信じる?」


夕闇に延びた影が不自然に揺らいだ

そんな気がした一方通行だった


6月17日 金曜日


魅音「ねぇ、道っちゃんは明後日の綿流しどうするの?」


レナが用事があるらしく珍しく魅音と二人での帰り道
ふと彼女はそんな事を尋ねてきた


一方通行「あ?どォしたいきなり」


特に意識もせずいつも通り一方通行もぶっきらぼうに答える

昨日1日を経て魅音はすっかり元の調子を取り戻していた
具体的に言うと登校して席に着いた一方通行に
『おッはよー!道っちゃん今日もアッツイねぇーっ!』
といきなり抱き付いて来て一悶着起こしたほどに平常運転だった

魅音「あ、いや昨日道っちゃんが綿流しの会場設営の手伝いに行ったって聞いたから綿流しどうするのかなー?って」

一方通行「まァ、俺も村の一員だからな。顔ぐらいは出す予定だ」

魅音「あ、それなら部活メンバーで回らない?」

一方通行「アイツらとか?」

魅音「そ!綿流し四凶爆闘って言ってね私たちで祭りの屋台を荒らし回ってやるんだよ!!」

一方通行「……何やってンだか」

魅音「あ!今年は道っちゃんも参加するから五凶爆闘だね!」

一方通行「誰も参加するとか言ってねェンですがねェ?」

魅音「えぇ!?道っちゃんやんないの!?」

一方通行「だりィしきちィしめんどくせェ」

魅音「そんな体育の後の数学みたいな気分なんだ!?」

一方通行「オマエ毎週水曜の四限ンなテンションなンだな…どォりでどこからともなくイビキが聞こえるわけだ」

魅音「えぇ!?ウソ…おじさんイビキとか掻いちゃってる…?」

一方通行「いやオマエじゃねェけどよ」

魅音「はぁ!?じゃあなんでおじさんにそんな事言うのさ!?」


顔を真っ赤にして怒る魅音


一方通行「まァ結構ジャーキングはしてるがな」

魅音「ジャーキング?」

一方通行「寝てる時にビクッってなるアレだ」

魅音「ギクゥッ!!」

一方通行「あと随分と涎たれてンな。その度にレナが拭いてやってンだぞ?」

その一言に魅音の顔が青ざめていく


魅音「道っちゃん…それも冗談だよね…?いつもの一方通行なブラックジョークだよね…?」

一方通行「は?さっき冗談言ったらキレて来たのはソッチだろ。なンでこのタイミングで俺が冗談言わなきゃならねェンだよ」

魅音「うわぁァァァああああああ!?!?道っちゃんのバカァァァアアア!!」


ダダダダダと一気に駆け出していく魅音


一方通行「…面白れェヤツだな」


既に小粒ほどの大きさでしか見えなくなった魅音を見て一方通行はポツリと呟いた

先日の一件で意外と脆い魅音の一面を見たからかいつも以上にからかってしまう一方通行だった

なんか思った以上に進みが悪い+書き溜めが進みませんが今日は以上になります
次回の投下は木曜日から金曜日にかけて来ます
でわまたノシ


一方通行「さて、追っかけますかねェ…」


首元に手をやって足下の土を蹴り車並みの速度で追う一方通行

話はまだ終わってない
少なくとも彼女の機嫌を直さねば後が色々と面倒なのだ

さすがに速度が速度なのでしばらくしない内に魅音に追い付き進路を塞ぐように回り込む


一方通行「ったく、落ち着け。オーバーリアクションはレナの特技だろ」

魅音「うわっ!?道っちゃん!あは、あはははは…」

一方通行「はァ…おら、話戻すぞ」

魅音「え?何の話してたっけ…?」

一方通行「オイオイ…祭りを部活メンバーで回ろォって話だろォが。それともお前の居眠りについてまだ話したいか」

魅音「ソッチはもう良い!もう良いから!」

一方通行「分かってンよ。話、進まねェだろ」

魅音「ゴ、ゴホン!……で、道っちゃんは行くの?」

一方通行「一人で回っても暇だしな」

魅音「そうこなくっちゃ!いやぁー良かったよ。道っちゃん祭りとかあんまり大人数で行きたがらない様に見えたから!やっぱり全員で回ったが楽しいしね!!」

一方通行「否定はしねェよ。二重の意味でな」

魅音「……それに一人っきりだったら色々危ないし」


ぼそっと聞こえるか聞こえないかの声量で魅音が呟く
聞こえないなら聞こえなくても良いとばかりに呟いたのだろう
しかし一方通行の耳にはしっかりとその一言は届いていた


一方通行「危ない?」


おそらく先日鷹野に聞いたオヤシロ様の祟りの事だろうが敢えて何も知らないように一方通行は尋ねる

魅音「あ…えっと、ほら!祭りには警察やヤンキーとかも来るからさ気の短い道っちゃんが騒ぎでも起こしたら大変だなぁーって…あはははは…」

一方通行「……なンだそりゃ」


気まずい沈黙が訪れる
気づけば魅音の家にまで続く分かれ道にまで辿り着いていた


魅音「じゃ、おじさんはここで。綿流し楽しみだね!」

一方通行「あァ、祟り起こらねェならいいな」

魅音「え…?」


魅音の表情が固まる
ひぐらしの鳴き声だけが二人の間を通り過ぎて言った


魅音「道っちゃん…今なんて…?」

一方通行「オヤシロ様の祟りなンざ起きなけりゃいいなって言ったンだ」

魅音「なんで……道っちゃん…」


驚きを隠しきれて無い魅音
無理もない
敢えて今まで黙っていたのだ


一方通行「昨日設営に言ったときに聞いただけだ」

魅音「そう…なんだ……ごめん、隠してて…道っちゃんを怖がらせたく無かったし雛見沢嫌いになってほしく無かったからさ…」


俯いて告げる魅音
その真意が分からない一方通行でもない


一方通行「ったく、どいつもこいつも…余計な心配してンじゃねェ。お前ら女やガキならイモるかもしれねェが大の男が祟りなンぞにビビる訳ねェだろ。そもそもンなもン信じてねェしな」


魅音の頭を叩くようにポンポンと撫でる一方通行

魅音「許して…くれるの?」

一方通行「許すも何も始めから怒ってすらいねェよ。好意から黙ってた事ぐらい分かっからな」


その一言で魅音はパッと表情を輝かせた
やれやれとばかりに一方通行は短くため息を吐く


一方通行「ほら、帰ンだろ?早くしねェと暗くなっちまうぞ?」

魅音「あ、うん!なら道っちゃん綿流しでねぇー!」

一方通行「あァ、またな」


手を振って走っていく魅音
その背中が見えなくなるまで見守って一方通行はひぐらしの声が響くすっかり涼しくなった暗みがかった帰路を再び歩き出した

今日はここまでになります

祟りの話はカットしました
前スレでやったし長くなるんで

次は日曜から月曜にかけて来ます。でわまたノシ


6月19日 日曜日 綿流し当日


魅音「綿流し五凶爆闘はっじめっるよーっ!!」

レナ沙都子梨花「「「おおーっ!!!」」」


祭の人混みの真ん中で威勢の良い声が響き渡った

周囲の視線が彼女達に一気に向けられる


一方通行「……テンション立っけェなオマエら…」

魅音「なにぃー?そーゆう道っちゃんのテンションはいつもより低いじゃん」

一方通行「どっかの誰かさンが家にまで押し掛けて
『ヤッホー!道っちゃんに似合う女物の浴衣持ってきたよーっ!』
とか言う意味不明なボケしなかったら今ほどテンション低くは無かったンだけどな」

レナ「道行くんの浴衣姿……はぅ♪」

沙都子「落ち着いてくださいましレナさん。ほらこの指何本に見えまして?」

レナ「はぅぇ?3本だけど?」

沙都子「良かった。まだ正気ですわ」

梨花「沙都子が看護婦さんみたいなのです。意外とナース服が似合いそうなのです」


ナース姿の沙都子を思い浮かべてしまうレナ
そのまま暴れる沙都子を抱え上げて持ち帰ろうとする


一方通行「バカ共は放っといてだ。今日のルールはどォすンだ?」

魅音「今日は点数制ね!各屋台で何かしらゲームをして1位は5点ビリは1点って具合で最後に総合得点の一番低い人はスペシャル罰ゲームと言うことで!!」

一方通行「上ォ等ォだ。公衆の前で"園崎魅音の大爆笑一発芸百連発"披露させてやるから覚悟しとけ」

魅音「へぇ?言うじゃん…そんならおじさんは"YURIKOの浴衣ゲリラライブ─高鳴る鼓動がアクセラレート♪─"を開催させてあげるね?」

一方通行「ンだとォ!?」

魅音「何?ヤル気ぃ?」


目線で火花を散らす二人

なんだかんだ言ってもやはり祭りで興奮している一方通行だった

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魅音「じゃ、奉納演舞もあと少しで始まるから名残惜しいけど次で部活はラストにしますか」


手首に着けた腕時計を見ながら魅音は呟いた

祭りもいよいよ終わりを迎えようとしている
30分もすれば奉納演舞を告げる太鼓が叩かれ梨花はこの場を離れることになるのだ


一方通行「最後ってのは仕方ねェが何やンだ?」

レナ「屋台もほとんど回っちゃってるしね」

梨花「僕はあんまり長引かないのがいいのです」

沙都子「そうですわね。梨花の演舞も最前列で見ておきたいですし…」

魅音「安心しな沙都子、梨花ちゃん。最後の勝負はすぐ終わるのにするつもりだから」

レナ「えっと…何するつもりなのかな?かな?」

レナに聞かれ魅音はゴホンとワザとらしく咳払いをした

他の部活メンバーは皆、顔をしかめお互いの顔を見合わせる

こういう演説風になった魅音は限りなくめんどくさいのだ


魅音「えー…部員諸君はこれまで各々の知力、体力を尽くし部の一員に恥じぬ勝負を見せてくれた!私、園崎魅音は部員諸君を誇りに思う!」


一方通行「いつになく長そうだな…」

沙都子「この時間が一番無駄ですのに…」


暑く語る魅音に気づかれないようコソコソとやりとりする沙都子と一方通行

魅音の演説はまだまだ続く

魅音「今日、私は確信した!諸君ならば地獄の猛暑と名高い雛見沢の夏も乗り切ってくれると!」


梨花「雛見沢は山間部だから夏は意外と過ごしやすいのですよ…」

レナ「あんまり突っ込まない方がいいよ…なんか魅ぃちゃん格好いい事言おうとしてるから…」


ぼそりと呟く梨花を小声で指摘するレナ


魅音「しかし!乗り切るだけでいいのか!?夏は乗り切る物ではない。楽しむ物なのだ!!」


一方通行「なァ、なンでアイツはあンなテンション高ェンだ?」

レナ「魅ぃちゃんね、今年受験生なの。夏休み終わったら勉強地獄が待ってるから」

一方通行「普通は夏休みだって勉強地獄のハズだろ。ただでさえアイツの学力は残念なのに」

レナ「うーん…魅ぃちゃん元は頭良いから本気で勉強したら大丈夫じゃないかな?」

一方通行「アイツの場合躊躇なく裏口使いそうな気もするがよ」

レナ「あはははは…それはないと思うな…………たぶん」

一方通行「タメが長ェぞ」


そんな会話を繰り広げている二人を無視して更に魅音は続ける


魅音「でわ!夏を楽しむには何が必要か!?知恵?確かに重要だ…体力?確かに必須だ…しかし!」


梨花「沙都子。そろそろお醤油が切れるので買って来なきゃ行けないのですよ」

沙都子「そうですわねぇ…暑くなって来ましたしお豆腐が美味しくなる季節ですから近日中に買ってくるか罰ゲームで買って来て貰うかしませんと…」

梨花「豆腐は大好きなのですよ。調理は楽だし涼しくなるしで大賛成なのです」

沙都子「そう言えば未開封のお豆腐が冷蔵庫に入っていましたからお醤油を補充出来たらまとめて食べましょう」

梨花「豆腐は痛みやすいですからどちらにせよ早く食べてしまいたいのです」


そんな二人が夕飯トークを続ける中魅音の演説は更にヒートアップしていく


魅音「せっかくの天体観測、曇ってたらどうだ!?
花火大会に雨が降ったらどうだ!?
川に行って増水していたらどうだ!?
そう!夏を楽しむために最も必要なのは──運なのだ!」


たっぷりと溜めて魅音が自信満々に言い放つ

レナ「……レナなんとなくだけど魅ぃちゃんのしたいお店分かっちゃったかも…」

沙都子「奇遇ですわねレナさん私もですわ…」

一方通行「つーか分かり安過ぎンだろ…」

梨花「僕は時間がないから早く移動したいのですよ…」


レナと沙都子と一方通行は呆れたように梨花は本当に時間がないのか困ったように言う


一方通行「なら先に向かっとくか」


梨花の一言を聞いて溜め息と共に一方通行は提案する

沙都子「え?いいんですの?魅音さんはまだ…」

一方通行「構わねェだろ。それともなンだ?オマエはまだあのいつ終わるか分からねェ不毛な演説に付き合いたいのか?」


沙都子がブンブンと首を振る


レナ「なら魅ぃちゃんには悪いけど向かっちゃおうか?」


レナの一言でチラリと熱く語り続ける魅音に目をやり一方通行らは歩を進めた


5分後


魅音「で、あるからして我々は夏を征するために…………くじ引きで雌雄を決する必要があるのだ!!」


6月の温度より熱く語っていた演説は終わり続けざまに祭囃子を掻き消す驚愕の声が響き渡った

本日は以上です
ちょっとリアルが込み合って次の日曜くらいまで投下は来れそうにありません
個人的事情で申し訳ありませんがご了承ください

魅音「ひどいよみんなぁー!何で置いてくのさぁー!!」

一方通行「お前の無駄話が長ェのが悪ィンだろ。今時校長でもあンな長くは話さねェよ」

沙都子「ちなみに私達はお先に引かせてもらいましたわ。もうあまり時間がないから早く引いてくださいまし」

魅音「くぅぅ…他のみんなの戦績は?」

梨花「かぁいいモードのレナが特等を引いて道行が二等で僕は四等、沙都子は五等でした」

レナ「ほらほら!魅ぃちゃん見てぇ??!おっきなクマさんレナが選べたんだよ?!はぅ??!!」

魅音「あぁ、うん。良かったねレナ」

沙都子「ほらほら早く魅音さんも引いてくださいまし。早くしないと梨花の演舞が始まってしまいますわ!」

魅音「うぅぅ…あんまり急かさないでよ…こーゆーのはタイミングが重要で…」

一方通行「御託並べる暇があンならさっさと引け」

魅音「いてて…分かったよ、取れば良いんでしょ取ればー!」


一方通行に頭を叩かれた魅音はしぶしぶ一枚手に取り屋台のオヤジに渡す


「あー…残念だったなぁ…魅音ちゃん。ほれ残念賞だ」


屋台のオヤジはニカッと笑い魅音にうちわを手渡した


魅音「えぇ!?嘘でしょー!オヤジこのくじ当たり入ってんのー!?」

「入ってっからレナちゃんと芳川先生ん所の坊主は豪華景品当ててんだろ」

魅音「くぅぅ…おじさんとしたことがチャンスを見逃すとは……」


奥歯を軋ませる魅音
相当悔しいのだろう
左手に握っていたスチール製の缶ジュースがグシャグシャに潰れていく

梨花「魅ぃ、そろそろ僕は行かないと本当に危ないのです」


パタパタと巫女服の袖をはたつかせて梨花が告げる


魅音「あ、ごめんね時間かけて。しっかり頑張るんだよ!」

レナ「頑張ってね!梨花ちゃん」

沙都子「練習通りやったら失敗なんてあり得ませんわ!」

一方通行「しっかりな」


それぞれの激励を受け満面の笑みを浮かべ人混みの中へ消えていく梨花


沙都子「じゃ、私達も場所取りに行きませんこと?」


奉納演舞が近付くにつれ増えてきた人混みを見て沙都子が尋ねる

レナ「じゃあ私と沙都子ちゃんでいつもの場所取っとくから魅ぃちゃんは道行君の案内よろしくね!」


沙都子とレナも走って人混みの中へ消えていく

その場に残された一方通行と魅音

人混みの賑わいと祭囃子の音が二人の間を通りすぎていく


魅音「あは、あはははは。そんじゃ、おじさん達もレナ達追いかけますか」

一方通行「……ちょっといいか?」

魅音「うぇ!?」


照れ臭そうに笑い歩き出そうとした魅音の手首を掴み強引に引き止める一方通行

予想だにしていなかったその行動に魅音は妙な声をあげてしまう

魅音「なななんなのさ道っちゃん!?早く行かないともっと人増えるよ!?」

一方通行「……ほらよ」


掴んでいた魅音の手首を離しズボンのポケットから何かを取り出して彼女に放り投げる

条件反射的に両手でキャッチする魅音


魅音「うわっ!…これって…?」


一方通行が投げたのはペンダントだった

シルバーのチェーンに滴型で澄んだ翠色のペンダントでどことなく高級感の漂うものである


一方通行「さっきのくじ引きで当たったヤツだ
レナはこォいうもンよりかぁいいヤツの方が喜ぶだろォし
沙都子と梨花ちゃンにゃァまだ早ェだろォからオマエにやるよ」

魅音「え…いいの?おじさんこういうのあんまり似合わないよ…?」

一方通行「いらねェってンならオマエから誰かにやりゃいいだろ。俺はもォオマエにやってンだ好きにしろ」


顔を赤らめて言う魅音に一方通行は素っ気なく答える

満更でもないような彼女の様子に一方通行は微かに頬を緩め静かに息を吐いた

しばらくボーとペンダントを眺めていた魅音を見かねたように一方通行は彼女の頭に手を置く


一方通行「ほらさっさと行くぞ。ただでさえコッチは杖無しじゃ歩けない身なンだ。進めなくなる前にさっさと行くぞ」

魅音「う、うん!ほらいこ道っちゃん!!」

一方通行「オイコラ!!あンま引っ張ンじゃねェ!杖が見えねェのか!オイ!!」


心なしか今日一番元気に見える魅音は強引に一方通行を引っ張って人混みの中を突っ切って行った

一週間ぶりの投下にしては少ない気がしますがキリがいいので本日は以上になります
長らく空けてすみませんでした

ちょっと夏場は忙しいので投下は週2のペースに落ちそうです
その代わり密度は少しでも濃くしようと頑張りますが次回は木曜までには来ようと思いますそれでわノシ

結局、通行君なの?道行君なの?

はい。どうも皆さんお久しぶりですミサカ17330号です
と言っても誰もミサカの事なんて覚えてませんよね
…ドウセミサカナンテソノテイドノカチノナイソンザイデス

今日は>>510さんの突っ込みによりダイナミック布団かぶりに入った>>1の代わりにミサカが投下に駆り出されました

…ミサカノデバンハマダサキデスノニ

布団の中から聞こえた>>1の嗚咽混じりの鼻声を聞く分には
"ミチユキ"を変換したら"道行"と一発で出て"通行"と勘違いしてしまったそうですとミサカは報告します

前スレから含めてナニ1年近く勘違い続けてんだ
と呆れるばかりですがどうか温かい目で脳内変換してやってください
とミサカは何で>>1の尻拭いをミサカがしなきゃならないのだと内心ビッグバンテラおこサンシャインヴィーナスバベルキレキレマスターになりつつ誠心誠意お願いします

補足を申し上げますとこのスレでの一方通行は"ヒトカタミチユキ"という名前で雛見沢の住人に名乗ってることにします
前スレでは"イッポウミチユキ"という事にしてましたが知り合いから分かりずらいと言われたので有名所の"ヒトカタ"でいいかなと思ったらしいですとミサカはストレス解消に>>1の心情を吐露します

それでわ勝手な事を多数お願いして申し訳ありませんが投下を始めますとミサカは報告します



一方通行「…全然見えねェな」


結局機動力の低い一方通行は多すぎる人垣に阻まれ魅音とはぐれてしまっていた

ちなみにはぐれた際に能力使用モードに切り替えたのだが魅音の姿は既に見えなくなっており仕方なく人混みから抜け出し見えるポジションを探している最中なのだ


一方通行(ここでも見えねェとなると木にでも上ってみっか…)


煩わしそうに息を吐いて電極に手を当てる

その時だった

トントンと一方通行の肩に軽い衝撃が走った


一方通行(詩音か…)

振り向くとそこには髪を下ろした双子の片割れの姿があり一方通行はそう判断する


詩音「こんにちは通っちゃん。こんな所でなにやってるんですか?」

一方通行「うるせェ。なンでもいいだろ」

詩音「あ!もしかして演舞を見ようとして人垣に弾かれちゃったパターンですか?まぁモヤシで杖ついてる通っちゃんなら無理もないですね」

一方通行「喧嘩売りに来たのかオマエは?」


額を痙攣させながら言う一方通行

あながち間違ってないから怒るに怒れない


詩音「え?違いますよー。いい所見つけたから教えてあげようかなぁって思って」

一方通行「あ?」

詩音は興宮に住んではいるが一応雛見沢出身の人間だ
穴場でも知っているのかもしれない


一方通行「案内しろ」

詩音「やりぃー!分かってますねぇ通っちゃん!」


なぜかテンション高く強引に一方通行を引っ張っていく詩音

こういう所はやはりそっくりだと引っ張られながら一方通行は思った


詩音に連れてこられた所は人っ気のない厳かな雰囲気を持つ建物がある場所だった


詩音「通っちゃん隠れてください!」


唐突に詩音は一方通行を草影に引きずり込んだ
たくさんの小枝が一方通行の肌を掠める

一方通行「いッてェなァ!何しやが──」


一方通行の口が詩音の手で押さえられる


詩音「しー…静かにしてください。バレたらどうするんですか?」

一方通行「……バレる?」

詩音「ほらアソコ… 」


そう言って詩音が指差した先には二人の男女がいた
建物の正面で人目を気にするかのようにコソコソと何かをやっている


詩音「富竹のおじ様と鷹野さんですよ。相変わらずお熱いですねぇー」

一方通行「はァ!?」

詩音「静かにしてください。それにしてもこんな人目につかない場所で何ヤるんですかねー?」


どことなく下品な意味合いを含ませて詩音はクスクスと笑う
そんな詩音を視線だけで人を殺せるような目で睨む一方通行


一方通行「くだらねェ。俺は戻るぞ。何が悲しくて演舞見れねェで盛ってる猿共見なきゃならねェンだ」

詩音「えぇー梨花ちゃまの演舞なんて毎年見れるじゃないですか!そんなものより今しか見れない大人の過ちの方が貴重ですって!」

一方通行「……オマエ祟られても知らねェぞ?」

詩音「そんなもの信じてませんもーん」


「シャッターチャンスだ!!」

やいのやいの騒ぐ二人が目映い光に照らされる


詩音「あちゃー…さすがにバレちゃいましたか」

鷹野「ふーん二人ってそういう関係だったのね」

富竹「一方くんもスミにおけないねぇ」

一方通行「これがそういうのに見えるってならオマエは一生メジャーデビューは出来ねェだろォよ」

鷹野「ふふふ照れちゃって私達の事は気にしなくて結構よ?」

詩音「あはははは。そーいう訳には行きませんよーおじ様今、祭具殿の南京錠弄っていませんでした?」


詩音のサラッと言った一言で富竹と鷹野の顔から笑顔が消える

そして訪れる僅か数秒ほどの沈黙

この妙な間が詩音の言ったことが正しいと一方通行に確信付けた

富竹「……あはははは、バレちゃあしょうがないなぁ。僕達が祭具殿に忍び込もうとしてたのは内緒だよ」

一方通行「盗人猛々って言葉知ってるかァ?富竹くゥン?」

鷹野「やぁね。盗人なんて物を盗む人の事でしょ?私達は中を見てみたいだけよ?」

一方通行「中?」


そう言えば先程から"祭具殿"とこの建物は呼称されていたのを一方通行は思い出した

しかし見たければ神主にでも許可を取ればいい
わざわざこんなコソ泥の様な真似をする必要もないのだ


鷹野「訳が分からないって感じね…いいわ説明してあげる……ここは"開かずの祭具殿"と言って祭具を祀っている神殿なの」

詩音「私も詳しくは分かんないんですけど確か古手家以外の人間は穢れを持ち込むから立ち入り禁止の聖域とか…」

一方通行「つーことはよォ泥棒じゃなくても充分アウトじゃねェか」


乾いた笑いを浮かべる富竹
反論の余地無しと言った感じだ


鷹野「フフフ。私ね村の出身じゃないけど雛見沢の昔話や伝承を趣味で研究してるの」

一方通行「その知的興味の答えがこの倉庫の中にあるから人の目が演舞に注がれてる内に入っちまおうって訳かよ」

鷹野「ご名答。察しが良くて助かるわ」

一方通行「どいつもこいつも…研究者ってヤツは考えるこたァ誰も変わらねェな」

鷹野「ん?どういうことかしら?」

一方通行「なンでもねェよ。どちらにせよくだらねェの一言に尽きるがな」


目的のために手段を選ばない

やはり一方通行には研究職の人間は好きになれなかった

鷹野「ふふ…くだらないかどうかは見てみないと分からないじゃない?」


どこか誘惑的に鷹野が笑う


一方通行「オマエ…」

鷹野「やっぱり察しが良いわねぇ。ねぇ、一方くん詩音さん二人もせっかくだし一緒に入ってみない?」

一方通行「断る」


即答する一方通行

なぜこの女の好奇心を満たすために危ない橋を渡らなくてはならないのだ


詩音「えぇー!?見てみましょうよー!面白そうじゃないですかぁー!?」


そんな一方通行の意も介さず詩音は好奇心のままに告げる

一方通行「世の中には入り込ンじゃならねェ一線ってのがあンだよ」

詩音「とかなんとか言って本当は怖いだけなんじゃないですかー?」


その時一方通行の眉が一瞬吊り上がったのを詩音は見逃さなかった

内心ほくそ笑みながら詩音は続ける


詩音「かーっ!チキンですねぇー!いいですよっ私だけ見て来ますか
ら!チキンな通っちゃんは物陰でぷるぷる震えてりゃいいんです!」

一方通行「……面白れェ冗談だ」

詩音「どーしたんですかぁ?ビビって声が震えてますよぉ?」


その挑発で一方通行のコメカミ辺りから何かが切れる鈍い音が聞こえた

一方通行「ナマ言ってンじゃねェぞォ!この腐れビッチがァ!!」

詩音「ほぉー?言うじゃないですか…泣き喚いても助けてあげませんよ?」

一方通行「……この一方通行が泣き喚いて助けをこうゥ…?イイネッイイネッ最ッ高ォだねェッ!最ッ高ォにセンスのある冗談じゃねェか!」


カコココキカカクケケケキココカキクケカクケケケケケカカカーーーー!!
と狂笑を上げる一方通行にドン引く一同
呆気に取られながらも鷹野は祭具殿の戸を開ける


鷹野「な、なんかよく分からないけど話はまとまったようね。それじゃ行きましょうか。鬼ヶ淵の過去を知る開かずの祭具殿ツアーへ」

詩音「なに気持ち悪い笑い声あげてんですかぁー!そんなに怖いならお姉さんが手を繋いであげますよ?」

一方通行「クケ…キキキキ…止めといた方が賢明だと思うぜェ?うっかり血風船作っちまったら責任取れねェからなァ?」

富竹「まぁまぁ二人とも少し落ち着こう。誰かに知られたらマズいからね?」


鷹野を無視してヒートアップしていく二人を富竹はなんとかなだめる


富竹「じゃ、くれぐれもあんまり騒がないように。一応僕は外で見張って置くから楽しんでおいでって鷹野さんそんな所でなにやってるんだい?」

鷹野「…なんでもないわよ」


祭具殿の戸の前で膝を抱えてた鷹野は一言だけそう答えた

今日はここまでとミサカは報告します

次の月曜までには>>1のメンタルも回復すると思いますのでしばしお待ちください

それでわとミサカは手を振りつつ別れのあいさつを終了しますノシ

>>522 すでに症候群レベル5発祥か?

目明し編やらないってことは、この綿流しに一部目明しを取り入れるってこと?
それとも単純に目明しは全カット? いや普通に考えればどう考えても後者だけど
できれば目明し編の一部も取り入れてほしいな

>>526
言い難いが一方通行はコレがデフォだ。

ってか「踏み込んじゃならない一線」って理解してるなら一方通行はどんなに挑発されても無視するとは思うがな
怖いのかって言われたら「ハイハイ怖い怖い、ンじゃ怖いンで演舞見に行きますねェ」とか言いそう

祭具殿は暗闇に支配された空間だった

中は埃っぽく淀んでいて湿った空気が不快感を増幅させている

そんな中唯一の灯りは鷹野の手にしているランタンでそれを便りに三人は探索を進めている


一方通行「……面白れェツアーたァ言えねェな」


時折ランタンの灯りで映し出される大型の大工工具の様な祭具の数々を見て一方通行の口から思わずそんな言葉が漏れた

明らかに不快感を表して出た言葉に鷹野が楽しそうに反応する


鷹野「あら、どうしてそう思うのかしら?とても興味深いのだけれど」

一方通行「ヘェ…イイ趣味してンなァ?拷問道具にンな面白れェ感想並べられる時点で普通じゃねェよ」


皮肉をたっぷりと込め一方通行答える

鷹野「あら?一方くんには分かるのね。凄いじゃない」

一方通行「褒められる様なことでも褒める様なことでもねェだろ」

鷹野「くすくすくす…確かにそうかもね」


鷹野の賛辞を吐き捨てる一方通行
先程から小バカにされてる感がいなめない


鷹野「でも少しは興味ない?なんで人里離れた寒村の神社にこんな禍々しい拷問器具の数々が保管されてるか?」


一方通行の眉がピクリと上がる

正直、一方通行も気になっていた所だった
下手したらオヤシロさまの祟りとも
繋がりかねない雛見沢の暗部
そんなものを知ってなんになるというのだ


鷹野「ふふ…一方くんは本当に雛見沢が好きみたいね?少し面白い昔話教えてあげるわ」


そう言って鷹野はランタンを床に置き鞄からスクラップ帳を取り出した


──昔々、鬼ヶ淵と言う村に底無し沼がありました

──ある日のこと突如沼から鬼が現れ平和に暮らしていた村人に襲いかかりました

──村人は次々に現れる鬼たちにどうする事も出来ずただただ恐怖に震えて毎日を過ごしていました

──そんな時、神さまが「オヤシロさま」が降臨しました

──オヤシロさまは鬼たちを鎮め人の姿を与えて共存させてあげました

──そして人と鬼との共存は進みいつしか鬼ヶ淵は半人半鬼の仙人の住む里として麓の人々に崇められるようになりました

──そしてオヤシロさまも地上にとどまり末永く村を見守りました

一方通行「それとここにある物にどンなの関係があンだよ?」

鷹野「ふふふ…あんまり焦らないで。面白いのはここからなんだから」


ふたたび鷹野の話に聞き耳を立てる一方通行
鷹野が話を続けようと息を吸った

その時だった

唐突に詩音が振り返り後方の闇の奥を何かを確認するかのように凝視する


一方通行「!……どォした詩音」


首元に手を置き声を殺して一方通行は尋ねる


詩音「あ、いえ……気のせいです」

一方通行「ビビってンのはオマエじゃないンですかァ?」

詩音「何言ってるんです……通っちゃんだって顔色悪いですよ?すみません鷹野さん続けてください」

鷹野も一応暗闇に目を向けて見るが何もないのを確認すると咳払いをして切り出した


鷹野「実はね村を襲った鬼たち。鬼は鬼でも"人喰い鬼"だったの…
その血は村人の体に脈々と流れていてね……
時折、どうしても人間が食べたくなってその度に麓の村に押し寄せては"鬼隠し"をしたらしいわ」

一方通行「鬼隠し?」

鷹野「平たく言うと鬼たちによる誘拐行為よ。人里に降りてきた鬼たちが哀れな生け贄を力尽くで拐って行ったんですって」

一方通行「……オヤシロさまってのは何やってやがる?ンなもン鬼と何も変わらねェだろ」

鷹野「くすくすくす…勿論オヤシロさまも了承してたわよ
そもそも鬼たちはオヤシロさまの決めた人間以外は誰も拐わなかったらしいから」

一方通行「狂った話だな」

鷹野「ふぅん?そんな感想なんだ」

一方通行「神サマ語ってンのなら誰も傷つかねェですむハッピーエンドってヤツを用意してみろってンだ
それを関係のねェ人間犠牲にして解決を図るってこたァよォ…
オヤシロさまっつうのは神サマっつうより悪魔に近いんじゃねェか?」


一方通行の考えに驚いたように鷹野は目を丸くする


鷹野「なるほどね…神より悪魔か…クスクスクス…面白いわね。確かにそうかも…」

詩音「あの…通っちゃん」


詩音がスッ…と一方通行に身を寄せてきた
見ると詩音は顔面蒼白になっている


一方通行「オマエ、マジで顔色悪ィぞ。外で休ンだが良くねェか?」

詩音「そんなことよりも通っちゃん!ここ以外で二度と…!二度とそんなこと言わないでくださいよ…!本当に消されちゃいますから…!」

一方通行「あ、あァ…分かったから落ち着け」


息を切らしながら告げる詩音を一方通行は必死になだめる

こんなに怯えた彼女を見たのは初めてだった

それほど雛見沢の人間にとってオヤシロさまというのは神聖な存在なのだろう


詩音「絶対ですよ…!約束してください…!」

一方通行「分かってる。二度と言わねェから安心しろ」

鷹野「でもほんとに顔色悪いわよ?看護婦として無理は進めないわ」

詩音「そうですね…ごめんなさい通っちゃん…私ちょっと外の空気吸ってきます」

一方通行「なら俺のスマホのライト使ってけ。足下気を付けろよ」

詩音「はい…ありがとうございます」


一方通行から受け取ったスマホのライトで周囲の様子を確認しながら詩音は去っていった

鷹野「大丈夫かしら…詩音さん。ちょっと刺激が強すぎたのかしらね」

一方通行「外には富竹もいるし大丈夫だろ」


それもそうね。と鷹野も同意し再びスクラップ帳に目を落とした


鷹野「えっと……どこまで話したかしら?」

一方通行「鬼隠しはオヤシロさまが決めた生け贄だけを拐って行くって所だ」

鷹野「そう言えばそうだったわね
そうやって拐ってきた生け贄を美味しく頂くためその日の夜には──"綿流し"の儀式が開かれていたらしいわ」

一方通行「綿流し…?綿流しってのは布団を供養する祭りだろ?」


一方通行の反応を楽しむように鷹野はクスクスと笑う

ひとしきり笑い終わって口元を歪ませ鷹野は告げた

鷹野「ねぇ魚の臓物の事…なんて言ったりするかしら?」

一方通行「!…そォいう事かよ。拷問道具ってより処刑道具って感じだな」

鷹野「クスクスクス…正解よ。しかもこの話、完全なおとぎ話って訳でもないの」

一方通行「鬼やオヤシロさまが実在するって言いてェのか?」


馬鹿らしいと言わんばかりに一方通行は言う


鷹野「まさかそんな現実的でないことなんて言わないわよ。この記事を見て?」


スクラップ帳の付箋がついてあるページを一方通行に見せる


一方通行「鬼ヶ淵村ニテ惨殺死体発見…全身ノ皮ハ剥ガサレ、頭部ノ一部ハ欠損。四肢、臓物ハ裂カレ臓物の一部ハ行方不明……」

鷹野「これは明治の終わり頃の記事でね。一説には昭和初期くらいまではこの無惨な風習は続いていたそうよ」

一方通行「で?それ聞いて俺はどォ反応しりゃいいンだ?」

鷹野「あら?意外に怯えないのね」

一方通行「実際に昭和初期まで続いていたとしてもだ。それは鬼ヶ淵の時代であって今の雛見沢には何の関係ねェだろ」

鷹野「……毎年綿流しの日に一人が死んで一人が行方不明になる」


オヤシロさまの祟り

直感的に鷹野の告げたい事が一方通行の脳裏に浮かぶ


鷹野「行方不明者はどうして見つからないのかしらね…?」


一方通行が息を飲んだ

その時だった
ギィイイィイィィという怪音が突如殿内に響く

二人は反射的に音がした方を睨んだ


「あっはっは、驚かせちゃったかな?」


入ってきたのはランタンをかざした富竹だった


一方通行「どォしたいきなり」

富竹「いやね、なんかドタンバタンって飛び跳ねるような音がしたからね
何か壊したんじゃないか心配になっちゃって……まぁ気のせいだったみたいだね」


気恥ずかしそうに頭をかく富竹


富竹「どっちにしろもう演舞も終わったからそろそろ出ないと危ないよ」

鷹野「ホント?楽しい時間は早く過ぎちゃうわねぇ…」


名残惜しそうに鷹野はそこら中に飾られた処刑道具をカメラにおさめ始める


富竹「どう?面白かったかい?」

一方通行「……胸糞悪くなっただけだ」

富竹「まぁ、それが普通だろうね。詩音ちゃんが表で待ってるから早く行ってやったらいい。鷹野さんは僕が見てるから」


富竹に言われ詩音が外にいるのを思い出す一方通行

意外に小心者だった彼女をこんな建物の前で一人にしておくのはマズい


一方通行(よくも大口叩けたもンだなアイツは…)


内心ほくそ笑みながら一方通行は外に向かい歩き出した

今日はここまでです

というか>>540の一方通行の台詞ですが昭和では既に雛見沢でしたよね…投下してからミスに気づきました…
まぁ一方さんは昔の事だ今は関係ねェ。的な事言いたかっただけです

それと>>527さんの要望ですが詩音視点はラストまで難しいと思います
やっぱり原作と変わらないし緊張感が薄れると思うんで…やれて地下祭具殿ぐらいです
少しネタバレになりますが原作での刺されるシーンは無いんでそこに至るまでの妄想姉妹喧嘩とかも無いんです
妄想姉妹喧嘩期待してた方には申し訳ない限りですが…

次は木曜に投下に来ます。次で綿流しの祭りはラストです。それでわノシ

一方通行「大丈夫か?」

詩音「あ…戻ってきたんですね」

一方通行「演舞も終ったみてェだしここらが潮時だろ。ンな事よりオマエは何ともねェのか?」

詩音「まぁ…なんとか……外の空気とか吸ったらだいぶ楽になりました。あははは…埃っぽい空気とか私ダメかも知れないですね」


コホコホとワザとらしく咳込んで詩音は笑みをうかべる


一方通行(この様子なら問題なさそうだな)


詩音「そういう通っちゃんは良くヘーキでしたね?」

一方通行「……そォでもねェよ、胸糞悪ィったらありゃしねェ」

ぶっきらぼうに答える一方通行

別段、処刑道具自体にはたいした感想も抱いていなかった

ただ雛見沢の過去が一方通行を苛立たせていた
確かに過去は過去、今の雛見沢には関係無い話なのだがどうにも釈然としない
例えるなら快適に暮らしていた家が実は事故物件だったといった具合なのだ

いい気分がするはずもない


詩音「あっ!これありがとうございました」


そう言って詩音は出る際に借りたスマートフォンを一方通行に帰した


詩音「じゃ私はこれで。今夜の事は二人だけの秘密ですよ」

一方通行「言い方がイチイチ気に食わねェが賛成だ」

祭具殿破り

この事が表沙汰になれば下手すれば村中の敵に回されかねない

その上オヤシロさまの祟り

無論祟りなんぞ信じてはいないがその最有力候補は今夜祭具殿に踏み込んだ自分たちなのだ


詩音「なーに固まっちゃってるんですか!冗談ですよー!」


快活に笑う詩音

真剣に受け止めた自分が馬鹿らしくて杖を握った手がプルプルと震える


詩音「……それにしても本当…あの音はなんだったんですかね。不愉快というか、気味が悪いというか…」


ポツリと何気ない感じで詩音が呟いた

一方通行「あ?なンだァいきなり…?」

詩音「音ですよ。音。ドタンバタンってうるさかったじゃないですか?」

一方通行「はァ!?」


きょとんとした顔で固まる二人

祭囃子の音が随分と遠くに聞こえた気がした


一方通行「悪い、詩音。最初から言ってくれ……何がうるさかったんだ?」

詩音「え…?何って…音ですよ…ぇ……気にならなかったんですか…?」


話が急に噛み合わなくなった
質問に質問で帰す二人

互いに冗談を言ってる風には見えない

一方通行「もう一度聞くぞ……音がしたって何の事だ…?」

詩音「ドタンバタンって…どこか遠くの板の間で子供が跳ねてるような……気にならなかったんですか…?」


風が吹く
生暖かい嫌な風が通りすぎていく


一方通行「……気になるも何もンな音いつ聞こえたンだ?俺には何も聞こえてねェぞ」


そう。聞こえてない

仮にも祭具殿に侵入していたのだ
一方通行としても周囲の様子には細心の注意を払っていたのである

物音ひとつ聞き逃すなんてありえない


詩音「聞こえてないって…バカ言わないでくださいよ…
鷹野さんが昔話を話始めた辺りからだんだん聞こえだして通っちゃんのあの言葉言った時なんてホント酷かったんですから…!」

必死に説明する詩音

その真剣さに一方通行は否定の言葉を返す事ができなかった

押し黙る二人。木々のざわめきが嫌に大きく聞こえた


詩音の言ったことを反芻する一方通行


──あの言葉

──恐らくオヤシロさまを悪魔呼ばわりしたアレだろう

──そう言えば詩音の様子が急変したのはあの発言の直後だった


一方通行(つまり詩音はうるさかったっていう"音"が嫌で出ていったのか…!?)


急に心臓が跳ね上がったかのような感覚が一方通行を襲った

その時だった

詩音「なぁーんちゃってぇー!!ジョーダンですよー!」


ペロッと舌を出して笑う詩音

一方通行「」


言葉が出てこない

代わりに沸々と奥底から怒りが沸いてその生意気に出した舌を切り落としたい衝動に刈られる一方通行


詩音「それじゃ、道っちゃん私はこれでー」


一方通行の怒りを察したのか詩音は逃げるように去っていった


一方通行「…ったく、何だってンだ一体…音なンざ」


溜め息と共に一方通行は人波に向かい歩き出す

──どこまでも詩音に乗せられる自分が情けない
──祭具殿の中は物音ひとつ立ってなかったのだ


一方通行(おおかた途中でリタイアした言い訳程度の脅かしだろ…)


──音なんて聞こえてない
──音なんて


『ドタンバタンって飛び跳ねるような音がしたからね』


ハッと祭具殿の方を振り返る一方通行

──確かに富竹もそう言った
──あの場で最も中立的な立場にあった富竹がだ…

──富竹には聞こえていたのだ。遠くの板の間で子供が跳ねてるような"音"が


一方通行(だとすれば"音"は本当にあった…?)

その時、唐突に何者からか背中に飛び付かれバランスを崩し一方通行は俯せに倒れ込んだ

速やかに顔を上げ電極に手を伸ばす一方通行


「通行ーっ!見ぃーつけたっなのです!」


飛び付いて来たのは梨花だった
見ると魅音とレナも一緒にいる


魅音「はー、やっと見つけた。あとは沙都子かぁ」

レナ「今年はみんなはぐれちゃったね。来年から合流場所決めときたいな。はぅ」

魅音「だよねー。やっぱり祭は最後まで皆で楽しみたいしね」

梨花「通行はボクの演舞はちゃんと応援してくれましたか?」

一方通行「あァ…頑張ってたじゃねェか」

多少後ろめたく感じながらも当たり障りのない感想を答える

一方通行の答えを聞いて梨花はげんなりと小さく俯いた


梨花「でもちょっと失敗しちゃったのです…」


梨花の様子に一瞬、肝が冷えた一方通行だったが静かに笑い梨花の頭をポンポンと撫でた


一方通行「それでも俺達にはオマエの努力は伝わってンだ。来年、また頑張りゃイイだろ」

梨花「みー♪」


その一言で梨花は元気付けられたかのように笑ってくれた

とりあえず一方通行は安堵の表情を浮かべる


レナ「ねぇ、通行くんはワタもらって沢に流したのかな?かな?」

一方通行「いや、まだだな。めんどくせェ…やらなきゃ駄目か?」

鷹野の話を聞いてあまり気の進まない一方通行

それを聞いて他の三人は目を丸くする


レナ「だ、ダメだよ!やらなきゃ! 決まりなんだから!」

魅音「ほら、バカなこと言ってないで行くよ通っちゃん!」


魅音に強引に腕を掴まれ一方通行は引っ張られていく


魅音「そういえば通っちゃん…」

一方通行「あ?」




魅音「詩音に会わなかった?」


引っ張られていた一方通行の足が止まった
それにつられて魅音も足を止め振り返る


一方通行「いや…見てねェよ」


苦し紛れの嘘だった


魅音「ふーん…そうなんだ」


その返答は一方通行には何故か意味深に聞こえた

道っちゃんが言うならそういう事にしておこう。と言いたい様な返答

まるで詩音に会ってることも祭具殿に入ったことも既に全部知ってるような口振りにも聞こえた


一方通行「……どォしたいきなり?」


冷や汗が一方通行の背中を伝う


魅音「別に、ただ詩音が来てるって聞いたからまた迷惑掛けてないかなぁー?って
まっ!アイツの事なんてどうでもイイか!
ほら、行こ通っちゃん!」


いつもの明るい笑みに戻る魅音
そのまま一方通行を引っ張って沢の方へ下りていく

だが彼女の呟いた『別に』という一言が一方通行の頭に重くのし掛かっていた

本日の投下は以上です
長かった綿流しの祭りも終わりようやく話が動きだそうです
チンタラの亀進行ですみませんでした

次は月曜に来ます。でわまたノシ


6月20日 月曜日


レナ「問五できた!通行くんこれで合ってるかな?かな?」


机を合わせて勉強していたレナはノートを広げ一方通行に尋ねてきた


一方通行「……」

レナ「あー…」


レナが見ると一方通行は頬杖をついて目をうつらうつらとさせている

昨日の夜は熟睡した一方通行だったが未だに祭の疲れは抜けていない様だった


レナ「ねぇねぇ通行くん…起きて?」


やさしくレナは一方通行の肩を揺さる


一方通行「ァ…?悪ィほら見せてみろ」

重い瞼を上げノートを受け取った一方通行は虚ろな目で答案を眺める


一方通行「……いいンじゃねェの」


一通り答案を眺めた一方通行はなげやりにそう答えダルそうにノートを返し本格的に腕を組み睡眠に入ろうとした


レナ「ねぇ、通行くん一回外で顔洗って来たがいいと思うな?」

一方通行「……余計な世話だ」

レナ「でも一応授業中だし…」

一方通行「残り五分になったら起こしてくれ。オマエの答え合わせも含めて余裕で終わる」

レナ「えぇ!?通行くんダメだよぉー!」

困り果てているレナを他所に寝息を立て始める一方通行の頭に数本のチョークがポカポカと当たった

一方通行が目を開けるとそこにはにっこりと笑って青筋を浮かべている芳川の姿があった


一方通行「うぜェ…」


小声で呟きそのまま覚束ない手付きで電極を切り替えて再び顔を沈める一方通行


芳川「へぇ、いい度胸してるじゃない」


少し自習しててね。と言うと芳川は笑顔のままスマートフォンを手にして教室を出ていった

初夏とは思えない寒気が教室に漂う

一方通行の代理演算が切られ芳川の右ストレートが炸裂したのはそれから5分後の事だった


一方通行「あの糞年増考えらンねェ」


芳川渾身の右ストレートがクリーンヒットした一方通行は外の水道に顔を洗いに来ていた


一方通行「クソ…口の中切れてンじゃねェか」


というか言われるがままに代理演算を切る打ち止めにも腹が立つ

問い詰めても
『芳川の巧みな話術で踊らされていたのだぁー!ってミサカはミサカは都合のよい言い訳をしてみる!』
とか言い出すのだろう

一方通行の胸中にささやかな復讐心が芽吹いてきた


一方通行(夏、戻っても土産は無しだな)


「やっぱ通っちゃんは外の水道選んだかぁー」

一方通行「あァ?」


ふと後ろから声をかけられる
一方通行が振り向くとそこにはカバンを下げた魅音の姿があった

よく見るとその顔は若干赤くなっている


魅音「へへー、外の方が気持ちーからねぇー」

一方通行「オマエも顔洗いに来たのかよ」

魅音「うんにゃ。おじさんは早退。なんだか頭ガンガンしてさ」

一方通行「…バカは風邪引かねェはずだがな」

魅音「へへへ…実はさ、昨日の夜ちょいっと」


クイっと魅音はお猪口を飲むような仕草をする


一方通行「そンなもンだと思ったぞ。二日酔いで早退とかしてンじゃねェ」

魅音「へへ、今日は勘弁してよ」

一方通行「ま、気ィつけて帰れ。途中用水路とかに落ちねェよォにな」

魅音「りょーかいー。また明日ねー!」


互いに手を振り一方通行はバシャバシャと生温い水道水で顔を濡らした


魅音「あ、そう言えば通っちゃん…」


ふと魅音は足を止め思い出したかのように話しかけてきた


一方通行「オマエまだ居たのかよ」

魅音「ちょっと聞きたいことがあってさ」

一方通行「…オマエと違ってこの後授業出なきゃならねェンだ。手短に話せ」

魅音「うん、直ぐ済むからさ…。昨日の夜、…富竹さんと鷹野さんに会わなかった?」

一方通行の動きが止まる

急に体が重くなり生温い嫌な水が頬を伝ってピチャリと音をたてた


一方通行「……会ってねェよ」


動揺を表に出さず否定する

なぜ今魅音がその二人の名を口にするか分からなかった


魅音「そう…じゃもう一つ質問。同じく昨晩─」


魅音「詩音に会わなかった?」


流したままにしている水の音が嫌にはっきりと聞こえた


一方通行「それ、昨日も…聞いたぞ?会ってないつったろ」

富竹に鷹野、そして詩音。昨日共に祭具殿破りをした三人だった


一方通行(まさかコイツは忍び込んだ事知っているのか?)


魅音「アレ?そうだったけ…?」


魅音の口調から重苦しい雰囲気が消えて記憶を探るような間の抜けた物に変わる

一息ついて顔を拭く一方通行


一方通行「飲みすぎで記憶なくすとか洒落になンねェぞオマエ」

魅音「あははは、そんなんじゃないよぉー」


照れたように笑って誤魔化す魅音
気付けば普段の魅音そのままだった

顔を拭き終わった一方通行は教室に向かおうと振り返る





魅音「今日、改めて聞いたら違う答えが返ってくると思ってね?」




一方通行は息を飲んだ
再び体が鉛のように重くなり杖を握ってる感触は消え足下が闇の中へ落ちていってる様な感覚を覚える

拭き取ったはずの水滴が頬を伝って波紋を作った


魅音の目には何かが宿っていた
不気味に薄暗く淀んだ不吉な目
そんな瞳が一方通行をじっと捉えていた


一方通行「…どォしてそォ何度も聞きやがる?」

魅音「大したことじゃないの。ただ昨日の夜の四人を悪く言う人達が居てね…?」


その一言に一方通行は戦慄する


一方通行(なンで…コイツは知っている…?)


少しでも隙を見せたら命取りになる暗部の世界に身を置いていた一方通行だ
少しでもこちらを伺う視線があったら気付かない訳がない



"ォやシロサま"


一方通行の脳裏にそんな単語が浮かび上がるも一瞬で否定し霧散していく


一方通行「……俺や詩音、鷹野と富竹をか…?」

魅音「うん。でもね、通っちゃんがそんなことするって私思ってないから確認しとこうって」


包み込む様に魅音は一方通行の後頭部に手を回す
淀んだ目を浮かべた彼女の顔がどんどんと近づいてくる


魅音「……通っちゃんは昨日の祭りで富竹さんにも鷹野さんにも、…そして詩音にも会わなかった。……そうだよね?」


耳元で告げる魅音

その囁きは一方通行には『そういう事にしといてやる』としか聞こえなかった

つまり"他の誰かに同じことを聞かれても知らぬ存じぬを通せ"とそういう意味が込められていた


一方通行「あァ…」


一方通行の喉からは絞り出したような声しか出てこなかった

その返答を聞いて安心したとばかりな柔和な笑顔を魅音は浮かべる


魅音「良かった…!みんなに言っとくね。通っちゃんは何にも悪いことには加わってないって」


それだけ言って魅音は去っていった

体の感覚が甦るも途端に力が抜けて倒れそうになる一方通行
気付けば嫌な汗が全身から出ていた

騒がしく鳴く蝉の声が耳に入りようやく我に帰る


一方通行(なにやってンだ…俺は)


忌々しげな舌打ちがこぼれる

それは後悔や反省からの思いではなかった

学園都市最強の自分が魅音の表情に面食らってしまった事への軽い憤怒だった

学園都市最強なのだ
仮に襲われたとしても返り討ちに出来ないわけがない

安いプライドが一方通行を苛立たせていた


一方通行(まァそれも心配いらねェよな)


魅音はみんなに言っておくと言った

『何にも悪いことには加わってない』と

魅音がちゃんと伝えているのなら警戒することは何もない


一方通行(待て、みんなって……誰だ…?)


魅音の帰っていった方を呆然と見つめる

詩音や富竹が聞いていたと言う"音"
知るはずもない昨日の出来事を知っていた魅音
魅音の言う『みんな』

言い様の無い不吉な予感が一方通行の胸中に渦巻く

結局、一方通行が教室へと戻ったのは校長の鳴らすベルの音を聞いてからだった

今日は以上です
次は木曜の深夜くらいになります
それでわノシ

大変お久しぶりです
永らく空けてすみませんでしたm(__)m
夏の仕事がようやく一段落したんで投下に来ました
でわ投下

帰り道、一方通行のスマートフォンに着信が入った
番号だけしか表示されていない通知に首をかしげながらも通話画面をスライドさせる


『やっほー!通っちゃん詩音でぇーす!!』


一方通行「……オマエなンでこの番号知ってやがる?」


一方通行は詩音に自分の番号を教えた記憶はない
というより雛見沢では一方通行の番号を知ってる人間なんて本の数人しかいない

しかも番号を教えているにも関わらずいつも家の方にかかってくるのだ


『いやぁー、実は昨日スマートフォン借りたときにチョイっと』

一方通行「常識ってのが麻痺してンじゃねェか?オマエは…」

『あと他にも色々見ちゃいました!テヘッ☆』

一方通行「麻痺どころか所々頭ン中壊死してンだろオマエ…」

『カメラにたくさん撮られてたアホ毛がぴょんぴょんしてるミサカさんそっくりな子って誰なんですかぁー?』

一方通行 「…オッケーェ……今すぐオマエの死滅した頭から生えてる苔みてェな髪を根絶やしにしてやるわ…」


コメカミがひくつく一方通行

電話越しにニヤニヤ笑っている詩音の姿が鮮明に思い浮かぶ


『へぇー。ロックの掛かった"風景写真2"には何が入ってるんですかぁ?』


沈黙が訪れる

涼やかな風が通り抜けていったが一方通行の額からは一筋の汗が落ちていった


一方通行「……俺が悪かった」


『あははは、分かればいいんですよー!分かれば!まぁその話はまた今度する と言うことで。通っちゃん今日これから会えません?』

一方通行「……興宮まで来いってのか?」

『すみません。いきなり…でも真面目な話しがあるんで』


先程とはうって変わって電話の向こうからは思い詰めたような声が聞こえてきた

小さなため息が口から漏れる


一方通行「…分かった。今から向かうがどこで待ち合わせすンだ?」

『うーん…図書館なんてどうです?ゆっくり話せますし、涼しいんで』

一方通行「分かった。直ぐ向かう」


電話を切る一方通行

正直な話、一方通行としても詩音には幾つか聞きたいことがあった

自分達の事を疑ってる連中がいる最中、詩音と会うのは早計な予感もするが会うのは興宮なので問題はないだろう

軽く周囲を見渡した一方通行は電極を切り替え雛見沢を後にした

とりあえず今日はここまでですね
久々来た癖にたったこれだけかよ!とか思う方も沢山いると思いますがこれからはまた定期的に来れるよう努力致しますのでご理解ください
次の投下は今週中には来ます
でわまたノシ

一方通行「さすがに早く着き過ぎたか…」


一応、興宮の図書館に着いた一方通行だったがもうかれこれ10分ほど待ち惚けしていた


「おや?これは一方さんじゃありませんか。奇遇ですねぇ」


突然んっふっふと嫌らしい笑みを浮かべた太った中年の男が話しかけてくる

その顔に一方通行は若干見覚えがあった


一方通行「確か…大石つったけか?」

大石「んっふっふ。覚えてくれといて嬉しいです」


そう。いつかの不良の時の刑事だった


一方通行「で、刑事が俺に何の用だ?」

大石「いやいや、ただ知ってる顔があったから声をかけただけですよ。お暇そうでしたし」

一方通行「…待ち合わせしてるだけだ」

大石「へぇ、どなたとですか?」

一方通行「……誰でもイイだろ」


ぶっきらぼうに答える
一瞬、大石の目が刑事の目になったのを一方通行は見逃さない

緊張を含んだ沈黙が流れる


大石「んっふっふ。デートでしたら羨ましい限りですなぁ!最近何かお変わりは?」


豪快に笑い飛ばして次の質問をする大石
昨日の件もあってかどことなく事情聴取のように一方通行は感じた


一方通行「暑さで頭が溶けちまいそォってぐらいだな」

大石「なっはっは!このくらいでバテちゃこの夏、乗りきれませんよぉ?若いんだからしっかりしないと!」

一方通行の背中をバシバシ叩く大石

一見すればただの世間話だが二人の間に流れる空気はそんなに軽いものでもなかった


「アレ?通っちゃんもう来てたんですかぁー!?」


それまでの空気を吹き飛ばして詩音が駆け寄ってくる
顔を輝かせてやって来た彼女だが一方通行の陰からヌッと大石が顔を出すと一変、あからさまに嫌な表情に変わる


詩音「げっ…なんで大石さんがいるんですか…」

大石「んっふっふ。詩音さんお久し振りですねぇー」

詩音「大石さーん…私これから通っちゃんとデートするんですけど」

大石「ほぅ。これはとんだお邪魔を…一方さんもヤり手ですねぇ?園崎姉妹相手に二股とは…」


ニヤリと笑いワザとらしく感心する素振りをする大石
その一言に詩音の顔は固まる

一方通行「何、笑えねェ冗談ほざいてンだ」

詩音「あっごめんなさい。通っちゃん私、今から用事でしたぁー…」

一方通行「はァ!?」


言うが早く詩音はくるっと百八十度向きを変えスタスタと足早に去っていってしまった


大石「あらら…行ってしまいましたね…なんかすみません一方さん」

一方通行「いってェ…こりゃ何の真似かなァ…大石クゥン?」


悪びれる様子もなく白々しく言う大石に電極こそ切り替えてないが本気の敵意を一方通行は向ける


大石「いえいえ、ご忠告ですよ。二股は感心しませんからねぇ。特に相手が園崎家では」

一方通行「だから違ェつってンだろォ!」

大石「事実そうだったとしても周りがそうしてくれないんですよ」

一方通行「…関係ねェだろ」

大石「園崎家はこの辺りでは名家なんで悪い噂が立てばあなたに良い事はない、と言ってるんです。ヤクザに目をつけられたくないでしょ?」


最後は少しおどけた感じで大石は尋ねる
反応を返さない一方通行
それを見て大石はふっと息をはいた


大石「まぁ煮え切らない態度は悪い結果しか生みませんよ。年長者からの助言です」

一方通行「そりゃご苦労ォなこった」


それだけ言って一方通行はその場を去ろうとする


大石「おやおや冷たいんですねぇ?せっかくこっちが時間を割いて会いに来てると言うのに」

一方通行の足が止まる
振り返るとそこには既に刑事の顔になっている大石の姿があった


一方通行「…よォやく化けの皮剥がしやがったな」

大石「いくつか質問にお答え願えますか?」

一方通行「…結局そォすンなら最初から回りくどい質問とかしてンじゃねェ」

大石「はて?何のことですかねぇ…?」

一方通行「チッ…やるンだったらさっさとしろ」

大石「…昨日の綿流しの晩、富竹ジロウさんと鷹野三四さんにお会いしていませんか?」


先程の会話では考えられないほどドスの効いた声で大石は尋ねてきた

心臓の鼓動が僅かに早くなる一方通行
なぜ大石までにその事を聞かれるのか分からなかった
万が一見られていたとしても噂が回るには早すぎる

一方通行「……さァな。すれ違うくらいはしたンじゃねェか」

大石「へぇ、そうですか?まぁあまり面識はありそうにないですからね」


曖昧な回答にあまり納得してない様子の大石
手帳に何かを書き込みながら時折横目で一方通行を睨んでいる


大石「じゃあと一つ質問します。同じく昨晩、詩音さんにお会いしませんでしたか?」

一方通行「アイツは興宮に住ンでンだろワザワザ雛見沢でやる祭りに─」
大石「来てましたよ」


一方通行の言葉を遮る大石
言い訳は許さないと言った感じの目をしていた


大石「詩音さんは祭りに来ていました。何件か目撃情報もあります。それを踏まえて一方さん、昨晩詩音さんにお会いしてませんか?」

一方通行「…魅音と瓜二つだからな。見間違えたってのも考えられるし確かなことは言えねェ」

大石「なっはっは!そうですか、そうですか…」

何が面白かったのか答えを聞いて笑いだす大石

いきなり笑いだした大石に一方通行は眉を寄せる


一方通行「聞きてェ事はそれだけだろ。じゃァな」


その時唐突に大石は踵を返し帰ろうとした一方通行の腕を掴んできた

掴まれた腕に鈍い痛みが走る


大石「そんなわけないでしょう?いい加減にしてください一方さん」


刑事らしく厳しい視線を大石は向ける
この手の視線に慣れている一方通行は同じように露骨に敵対心を込めた視線を大石に向けた

緊迫した空気が二人の間に漂う


大石「どちらも覚えてない。…ですか」


どこか落胆したかのように溜め息をして掴んでいた手を離す大石


大石「参考までに。あなた全員とお会いしてますよ。祭具殿近くの茂みではしゃいでるの私、見てましたから」

一方通行「!」


ニィ…と笑って大石は去っていく
一方通行はその背中を呆然と見つめていた


……いや、アレだよ。一週間後にキンクリしようとしたらメイドにインしてヘヴン状態になって気付いたら三週間たってただけで別にモンハンにはまってたとか禁書の新刊読んでたとかじゃないから

うん。ごめんなさい。失踪はしないです。ほんとうに申し訳ありませんでした

一方通行「チッ…!」


大石が去って行ったのを確認してから一方通行は忌々しげに舌打ちをする

確かに祭具殿に入る直前から詩音が音を聴いたと言うまでは警戒を緩めていなかった
つまり富竹と鷹野に見つかった場面を大石は見ていたのだろう
そして祭具殿に出入りする所は見られていなかった


一方通行(じゃァなンでアイツはあたかも祭具殿に入ったのを知ってるかのように聞きやがった…?)


考えられる可能性を模索する

祭具殿に入ったのを証明する手段はないか?

一つは言うまでもなく出入りする所を押さえる事だろう
写真や動画でもあれば確定である

一方通行(…写真?)


そういえば富竹はやたら撮っていた

何気ない日常会話も
祭りの様子も
そして恐らく祭具殿も

鷹野に言われ撮らされていたに違いない

そしてその写真が外部に漏れたら鷹野のように祭具殿の内部にある物にある程度憶測の付く者なら分かる

祭具殿に侵入したと分かってしまう


一方通行(イヤ…ありえねェだろ)


この仮定には欠陥が多すぎる

まず大前提で写真が外部に漏れていないといけないのだ
祭具殿に入ることの危険性を重々承知してた富竹が内部の写真を漏らすとは考えられない

ならば鷹野が面白半分で外部に見せた可能性もある
人を茶化すのが好きな彼女の性格ならあり得るかも知れないがそれにしてはやはり情報の回りが早い
いくら彼女でも警察関係に直接見せたなんて馬鹿な行動はしないだろう

だとすれば…それこそ富竹や鷹野に何らかのトラブルがない限りありえない


一方通行(…待てよ?)


祭具殿での鷹野の言葉が浮かび上がる


『綿流しの晩に一人が死んで一人が行方不明になる』


別れ際詩音の言わんとしてた言葉が脳裏を掠める


『祟りの最有力候補は忍び込んだ四人』



その時一方通行のスマートフォンが震え着信を告げた

押し黙ったまま画面を見ると無機質な電子文字で詩音と浮かび上がっている


一方通行「…俺だ」

『あっ…すみません通っちゃん。さっき逃げちゃって』

一方通行「気にすンな。それより話って何だったンだ?」

『はい…実は通っちゃん……あの後…富竹さんと鷹野さんに会ってませんか?』


あの後…恐らく祭具殿に入ったのを指すのだろう
そしてその質問が電話のかかってくる直前に抱いた予感を確信に近づけた


一方通行「……会ってねェ…オマエまで何だってンだ?」


聞いてくるという事は何らかの情報を持っているはずだ

今日一日で散々聞かれた質問に若干の苛立ちを覚えながらも一方通行は聞き返す

『実はですね。通っちゃん…富竹さんと鷹野さんが…殺されたそうです』

一方通行「…そォかよ」


苦虫を噛み潰したように一方通行は呟く


『アレ?意外に驚きませんね。もしかしてもう知ってました?』

一方通行「……いや、何人かに同じような事聞かれてっからなァ…ある程度は予想済みだ」

『そうですか…私も何人かに聞かれました』


電話の向こうの声はうんざりしたような様子だった
相当彼女も詰問されていたのだろう


一方通行「で、殺されたつったな?死因とかは分かるのか?」

『はい…お父さんが話してたのを聞いたんですが……
富竹さんは喉を掻きむしっての自殺
鷹野さんは岐阜の山中で焼死体になって発見されて自殺か他殺かはまだ分からないらしいです』

一方通行「なっ!?…ンな自殺ありえねェだろ…」

耳を疑う一方通行

二人が死んだのは予想していたがこのような死因は完全に予想していなかった
自殺はありえない
普通死ぬなら楽な方法を取るはずだからだ


『私だってそう思いますよ。こんなの普通じゃない。これはきっと……オヤシロさまの祟り』


詩音が確信付ける様に電話の向こうから告げる
反論したい一方通行だったがこの時ばかりは二人の死因がそれを許さなかった


『通っちゃん…ちょっと変じゃないですか?』


押し黙ったままでいる一方通行に不安そうに詩音が喋りだす


一方通行「変って何がだ?」

『オヤシロさまの祟りです!例年は一人が死んで一人が行方不明になってるのに…!』

一方通行「今年は二人が死ンでいる…」


確かに詩音の言う通りだった
二人が死んでいる
犠牲者が二人というのには変わりがないが本質的なのはそこじゃない
隠す気があるなら埋めるなり沈めるなりできたはずだ
しかしそれをやってない

詩音の言いたいことが一方通行にも伝わる

一方通行「……生け贄になって消えるのは俺達二人ってわけか」


詩音は何も返さなかった
その沈黙が正解だと告げている


一方通行「…とにかく今からは極力一人での外出は避けるこった。出来るだけ信頼のできる人間と行動を共にしろ」

『…はい、ありがとうございます。……あのこれからは毎日電話しません?情報交換はした方がいいだろうし互いの無事も…』

一方通行「……まァそォだな」

『それでは今日はこの辺で…通っちゃん気をつけてくださいね』

一方通行「互いにな」


電話を切る一方通行

興宮の町ではいつもと変わらない日々の営みが忙しなく流れている

そんな中、一方通行は雛見沢へと続く山道までゆっくりと歩き出す

いつしか夕日の最後の光は降りてひぐらしの声がどこからともなく響きはじめた

今日はここまでになります
一方さんは下手に頭が回るぶん綿流しは書きづらいです
ある程度の憶測、推理は立てちゃうからK-1みたいにあまりパニクったり塞ぎ混んだりしないし
その点、頭が良いぶん一度たどり着いた結論は揺るがないんで疑心暗鬼無双の鬼隠しはやりやすかったんですが…

次回の投下は未定です。二週間内に来れたらな…と
それでわノシ

6月21日 火曜日


快眠とはよべなかった
寝れなかった訳ではないが久しぶりに一晩中気を張り続けた夜だった

気だるい身体を無理矢理起こし虚ろな目で一方通行は通学路を進みレナと合流する


レナ「おはよ。通行くん今日も寝不足?」

一方通行「……そンなとこだな」

レナ「あんまり授業中ぼぉーとしてるとまた芳川先生に殴られるよ?」

一方通行「生徒に手を上げる時点であの女は教師失格なンだよ」

レナ「きっと身内だからだよ。魅ぃちゃんを起こす時とかは教科書の角で頭叩いてるだけだし」

一方通行「それを世間じゃ差別っつうンだ。教育委員会に訴えてやる」


眠たそうに毒づく一方通行にレナは苦笑いで答える

普段通りの何気ない会話
平穏な通学路の畦道

命を狙われてる可能性もあるのだが何も変わってるようには思えない朝の風景がその事実を一方通行から少しばかり忘れさせてくれる

話してる内に魅音との待ち合わせ場所に付いた


魅音「あー…二人ともおはふはわぁぁ…」


挨拶の途中で大きな欠伸が出てくる魅音
見れば目の下には大きなクマまで出来ていた


レナ「うわぁ…魅ぃちゃんはもっと眠そうだねぇ」

魅音「寝たのが3時過ぎだからね…」


げっそり疲れた様子で魅音は答える


一方通行「何やってンだか…大方、漫画でも読ンでたンだろ?」

普段通り、いつもと変わらぬように馬鹿にしたかのように一方通行も返すが二人からは何の反応も返ってこなかった


レナ「……あれやっぱり村長さん…見つかってないの…?」

魅音「……うん」

一方通行「あァ…?」


深妙な顔をして話す二人
何の事を話しているのか一方通行には分からなかったが二人の面持ちから軽口や冗談で言ってるのではないということは読み取れた


一方通行「ちょっと待て…村長が見つかってないって…どォいう事だ…?」

レナ「実はね。昨日の夜から村長さんが家に帰ってきてないの…」

魅音「一晩中探しても見つからないから今朝から警察の人と一緒に探してるんだけど…時期も時期だしね」


心配そうに互いに顔を見合わせるレナと魅音


一方通行(なンで村長が…?祭具殿破りとは何の関係もねェだろ…)


納得がいかない
消される理由は無いはずだ

それどころか消される優先度でいったら明らかに一方通行と詩音の方が高いのだ

それまでの空気とは一変して互いに重苦しい雰囲気を纏わせながら学校につく

クラス内も村長の話題で持ちきりだった

学校に着くやいなや相当眠かったのか魅音はすぐさま机の上に突っ伏し腕の中に顔を埋める


レナ「魅ぃちゃん昨日相当頑張ってたらしいから今はそっとしておいてあげよ?」


レナの一言で教室全体は若干静かになった
一方通行もこれを期に仮眠をとろうと腕の中に顔を埋め目を閉じる

そんな中、クラスメイトが話してた去年の失踪事件の話題が取り立てて一方通行の耳に入ってきた


「なんか去年の悟史くんみたいだね…」

「悟史くんの時も村中で探し回ってたよね…」

「でも悟史くんは家出だったんでしょう?」

「なんか名古屋駅で新幹線に乗るところを地元の警官が見てたんだって…」


話が行方不明から家出に流れ出した辺りで興味が尽きたのか一方通行の意識は次第に遠退いてゆきホームルームが始まるまで目を覚まさなかった

たった4レスという少なさだが許せサスケ
キリがいいし眠いのだ!

相変わらずの不定期投下になって眠ぃ…じゃない申し訳ないのですが…さすがに眠……い。ということでは無くて!少ないので今週もっかい来ます
必ず来ます!
絶対来ます!
眠りにかけて来ます!

それではまた近いうちに!
この眠りが永眠じゃないことを祈って!ノシ

あぁ…課長。僕はもう疲れたよ…なんだかとっても眠いんだ…

課長「寝る暇あるなら死ぬ気で働け」

昼休み


一方通行「…日直ってのは結構だりィンだな」


日直となっていた一方通行は花壇に水やりをしに来ていた

雛見沢分校の花壇は無駄に広くその一部は知恵のカレー菜園と化している
その広い花壇をジョウロで水をやらなければならない

杖をついている一方通行はそんな力仕事もう片方の日直に今まで任せていたのだが今回のペアは梨花よりも小さい女の子
さすがに任せるわけにもいかなく観念して重いジョウロを片手にふらふらしながら水道と花壇を何往復もしているのである


一方通行「後は裏のカレー畑だけか…完全に公私混同だろ。教育委員会は何やってンだ」


まったく意味がないであろう愚痴を忌々しげに呟く一方通行
容赦なく照りつける夏の日差しが苛立ちを加速させていた

一方通行(つゥか本当に教育委員会はこの学校の存在を把握してンのか?)


割りとどうでもいい疑問が頭に浮かぶ
そのせいか目の前に歩いてきてる少女の存在に一方通行は気付かなかった


「みぃ!?」


コツンとぶつかり一方通行は少しバランスを崩す

我に返って前を見るとそこにはぶつかった自分の額を擦ってる梨花がいた


一方通行「わ、悪ィ。気付かなかった…」

梨花「みー…僕も余所見していたのでお相子なのですよ♪」


その姿は全身擦り傷だらけでよく見れば所々血も滲んでいた

一方通行「オイ!何があった!?」

梨花「みー。こんなのなんともないのですよ。ちょっと転んじゃっただけなのです」


目尻に溜まった涙をぬぐいながら梨花がにぱーと笑う


一方通行「なンともねェワケねェだろ。すぐ保健室に」


一方通行はジョウロを下ろし首元に手を運ぶ
ふと梨花が一方通行を遮るようにその手を掴んできた


梨花「本当に大丈夫なのですよ。それよりも通行…」


一回、口をつぐむ梨花
心なしか掴まれてる手に力が入った様に一方通行は感じた


梨花「お祭りの夜に…何か悪いことをしませんでしたか?」

覗き込む様に梨花は問いかけてきた

咄嗟に何と答えれば良いか分からなくなる一方通行

小さい梨花まで知ってるということは既に村中に知れ渡っているという事だろう
そんな状態で嘘をついてどうなるのだ?
かといって真実を語るわけにもいかない

デモ本当ノ事ヲ話シタガ楽ニナルノデハ?


一方通行「ッ!」

梨花「みぃ?どうしたのですか?」


自然と脳裏に過ぎ去っていた考えに息を飲む

梨花の目から悪意は感じられなかったがやはり一方通行は正直に話そうとは思えなかった


梨花「通行。神社の境内の裏から少し行った所に祭具殿という大きな倉庫があるの知ってますですか?」


押し黙ったままでいる一方通行にふと梨花が問いかける

知らないわけがない
むしろ知らなくていいことまで知っている事実に照り付ける日射しとは対照的に冷たい汗が一方通行の背中をつたった


梨花「お祭りの晩、そこに4匹の猫さんが忍び込んだのです」

一方通行「猫?」

梨花「そう猫さんなのですよ。でも中には猫さんが怖がるものがたくさん置いてあって一目散に逃げ出した猫さんはガタガタブルブルにゃーにゃーです」

一方通行「……その猫がなンだってンだ…?」

梨花「みぃ?猫さんは猫さんなのですよ。にゃーにゃー」


その問いかけに首をかしげくいくいっと招き猫のように可愛らしく手首を動かして梨花は笑う


一方通行「…で、その猫はこれからどォなンだ?」

梨花「?猫さんは猫さんだからにゃーにゃー鳴いてるだけですよ?」

一方通行「はァ!?」


またもはぐらかされる
肝心な所ではぐらかされ続け一方通行の胸に徐々に苛立ちが募っていく


一方通行「なンにもねェはずねェだろ…!現にあの晩忍び込ンだ二人は─」


最後まで吐き出しそうになった言葉を一方通行は寸前で飲み込む

梨花の大きな黒い瞳が一方通行の心境を伺うかのように覗き混んでいた


梨花「………富竹と鷹野ですか?」

重い沈黙を破って梨花が口を開く

心臓が大きく脈を打った一方通行だったがその口調は責めるというより穏やかな安心させるようなものだった


梨花「あの二人は気にしない事ですよ。仕方ないことなのです。それよりも─勘違いの犬さんなのです」

一方通行「……犬?」

梨花「本当はそんなに悪いことじゃないのに『猫はとても悪いことをした、許さない』って言ってすごく怒ってる勘違いの犬さんがいます」

一方通行「猫は謝って許してもらえねェのか?」

梨花「みぃ…僕はちゃんとごめんなさいしたらそれでいいと思うのですよ…?でも犬さんは……」


しょぼんと俯く梨花
言いたいことを察した一方通行もそォか…と短く呟くしかできなかった

梨花「で、でも僕は猫さんの味方ですよ!可哀想な猫さんは僕が守ってあげますです!」


手をパタパタと振りながら一生懸命に言う梨花に思わず一方通行の顔も破顏してしまう


一方通行「そりゃ頼もしいな」

梨花「じゃ僕はお先に教室に戻っとくのですよ。通行、水やり頑張ってください」

一方通行「あァ、オマエも怪我してンだ。ちゃンと保健室によっとけよ」

梨花「みぃー♪了解なのです」


ピシッと敬礼し校舎に戻っていく梨花
やれやれとばかりに息を吐いて地面に置いたジョウロに手を伸ばす


梨花「通行」


再び聞こえた彼女の声に振り向くとそこには先程会話した少女とは思えないほど険しく厳しい目を浮かべた梨花が数メートル先に立っていた


梨花「勘違いの犬さんが猫さんに噛みつこうとしたら"ちゃんと"教えてくださいね?」


それだけ言って梨花は去っていく

夏の日差しが体温を上昇させ汗と共にまとわりつく不快感は一向に引く様子はなかった

うん、かかりそうですね5年…
いや、5年も立てば僕のしがない文章力も少しは上昇するだろうし
綿流しはやっぱり動かし辛いんです

次回は例のごとく未定ですが出来るだけ早く来れればと
それではノシ

一方通行のスマホに昨日約束した通り詩音からの着信が入った

互いに二、三言挨拶を交わして本題にはいる


『私、やっぱり…監視されてるみたいです』

一方通行「……本当か…?」

『はい。気のせいかもしれませんが…』


この状況で確証のない話を信じろと言われても無理があるのだが一応心に止めておく事にする一方通行


一方通行「状況が状況だからな。気を張ってて損はねェだろ」

『…はい。それからお姉になんか様子が変な時とか無かったですか?』

一方通行「魅音にか?」

『はい…実は私、お姉に祭りの晩の所在を問いただされまして』

一方通行「オマエもか…」

『はい…なんとか誤魔化したんですけど……それ以降お姉の様子はおかしいです』


昨日の詰問してきた魅音の姿が脳裏に浮かぶ
記憶に新しい深く不吉に淀んだ瞳がはっきりと蘇る

『通っちゃん園崎家が雛見沢に強い影響力を持ってるのはご存知でしたか?』

一方通行「あァ、大石がンな事言ってたな」

『はぁー…大石さんですかぁ…』


うんざりしたような声が向こうから届いてきた


一方通行「どォかしたのか?」

『いえですね、大石さんは連続怪死事件を園崎家を中心とした村ぐるみの犯行だと疑ってるんです』

一方通行「…そりゃどォいう意味だ?」

『園崎家はダム戦争の時中心となって運動してたんです。それこそデモや裁判だけでなく建設現場の機材を盗んだり壊したり関係者への脅迫、果ては建設大臣の孫の誘拐までしたって噂です』

一方通行「なるほどな」


昔から黒い噂の絶えない村の名家
毎年繰り返されてる不審死も疑われて仕方ないのだろう

『もちろん、真偽の方は分かりません。園崎家は秘密主義ですから本当にヤバイ話は一部の人間しか知りませんし』

一方通行「……魅音は関わってンのか?」


ふとそんな質問が口からこぼれた


『知らないことはないと思います。園崎家の次期頭主ですから』

一方通行「そォか…」


詩音の意見はもっともだろう

次期頭主に知らされていない訳がない
そしてそれを魅音は黙認している


一方通行(いや、詩音の言ってることは憶測だ……アイツは明るくて熱い最高の──)


認めたくない
普段なら真っ先に切り捨てるはずの感情論が詩音の話を信じさせずにいる


『通っちゃん?』

一方通行「あ?あァ…気を付けることにする…」


しばらく黙っていたのを不審に思ったのか声をかけてきた詩音に納得のいかないまま一方通行はとりあえずで返事をする

そんな返事でも満足したのか電話の向こうからは良かった…と小さく聞こえてきた

『あ、それで通っちゃんの方は?雛見沢で何か変わったこととか無かったですか?』

一方通行「俺自身には特にねェな…雛見沢では村長がいなくなったって事ぐらいだな」

『ぇ…?』

一方通行「つっても村長と俺らに接点なンざそォはねェし深く考える必要は」
『なんで…?』

一方通行「はァ?ンな事コッチが」
『なんでそれを先に言ってくれなかったんですかーー!!』


一方通行「るっせェなァ!どォしたいきなンだってンだ!?」

『どうしよ…通っちゃん…どうしよ…』

一方通行「落ち着け。何が合ったか言ってみろ」

『私…言っちゃったんです…村長さんに、
公由のおじいちゃんに祭具殿に入ったこと言っちゃったんです!』

一方通行「オマエ…!」

『ごめんなさい…私耐えられなくて…!』

一方通行「まァいい…で、村長は鷹野達の事を知ってたのか?」

『ヒック…はい…怖くて、あの二人が祟りで死んだから…生け贄にされるんじゃないかって…でも…!』

『公由のおじいちゃんは怒らなかった…詩音ちゃんが反省してるならそれでいいんじゃないかって…オヤシロさまの祟りに遭うもんかって…にっこり笑って任せなさいって言ってくれた…!』


詩音の嗚咽が耳に入ってくる

何と声をかければよいか一方通行には分からなかった

詩音と村長の関係なんて知らない

ただ、ただ一つ言えることは不安で押し潰されてしまいそうな彼女にかけられた『大丈夫』という言葉がどれだけの励ましになるか

そしてそんな励ましてくれた人が消えた
それは詩音にとって果たしてどれほどのショックになったかはいくら一方通行でも容易に想像がついた

『わたしの…ヒック……せいです……ウック…わ、私が…話したから』

一方通行「よせ。オマエのせいじゃねェだろ…自分を追い詰めンな」

『いいえ!!私のせいなんです!だって打ち明けてすぐなんですよ!?
打ち明けて大丈夫って言ってくれたその晩に消えてしまった!!
話すんじゃなかった!私が話したから…打ち明けたから殺されてしまった!!』

一方通行「落ち着け!冷静に考えろ!知ったから殺されるってならまずは俺達から消すはずだろォが!」

『違います!』

一方通行「はァ?どォ違うって─」

『私たちを最後に殺す気なんです!!』

一方通行「は?な…何言って…!?」

『一思いに殺さないで…親しい人から順々に消していって散々悲しい思いをさせてから殺す!そういう狙いに決まってるんです!!』

ヒュッ…と空っぽの空気が喉を通る
そんなわけない!と反論しようとした一方通行だったが咄嗟に口が止まった

あり得なくはない
この村では考えられることだ
親しい者から順に殺す
ならば芳川やレナたちも危ない

一方通行の中にようやく危機感が本格的に芽吹き出した

電話の向こうの詩音はすすり泣きながら『私が打ち明けたから…知ってしまったから』と呟いている


一方通行(とりあえず芳川には注意を促しとくか…)


しかし何かが引っ掛かる
レナ達は毎年の事だ。取り立てて声をかける必要はないだろう
この時期の身の周りの注意くらい言われるまでもないだろう


一方通行(レナ達…?)

──知ったから消されてしまった
──話したから殺されてしまった

ぞわり…ぞわり…と言葉にできない不吉さが背筋を這い上がってきた

その予感を掻き消そうと一方通行は思考を巡らせる


一方通行(大丈夫だ…俺は誰にも話していない。芳川にも…レナにも、沙都子にも、梨花ちゃンに、も…?)


今日の昼休み

はっきり打ち明けてこそないが確かに…

話シタ

一方通行「くそったれが…」


こぼれた言葉は蚊の羽音の様だった


『ぇ…何か言いました…?』

一方通行「悪い、急用が出来た…今日はここまでだ…」

『そうですか……じゃあまた明日です…』


電話が切られる
無機質なトーン音とは対照的に心臓は激しく脈打っていた


一方通行(大丈夫だ大丈夫だ大丈夫だ…詩音の言ってることは憶測だろ?どォせ明日の朝にはケロッと誰よりも早く教室にいるに決まってる…)


必死に自分に言い聞かせる一方通行

しかし言い聞かせれば言い聞かせる程第六感的な本能はガンガンと警鐘を大きくさせた

一方通行「チッ……クショオガァァアアア!!」


電極を跳ね上げ一階に向かう一方通行

冷蔵庫に貼られたクラスの連絡網を引ったくるように手に取り書かれた梨花の家の番号を素早く入力する


一方通行「……出ねェ…」


しばらく鳴り続いたコール音から留守電に切り替わった所で呆然と呟く一方通行

再度発信履歴から同じ番号に発信する

やはり出ない

機械的なコール音が募っていた不安を確信に変えていく


一方通行「クソがァ!!」


十数回に渡ってかけ続けた所で一方通行は忌々しげに床を蹴った

無造作に放置していた連絡網を再び手に取りレナの家に電話をかける


『もしもし、竜宮ですが…』

一方通行「レナか!?」

『その声は通行くん?……レナ寝る所だったんだけど…』


欠伸を堪えたような声でレナが言う

一方通行「……悪い。梨花ちゃンの家の場所知らねェか…?」

『梨花ちゃんのお家?こんな時間にどうしたのかな?』

一方通行「……オマエには関係ねェ」

『もしも急用とかだったら明日の朝一番にしたがいいと思うよ。もう寝てるだろうし』

一方通行「時間がねェ…」

『ねぇ、もしかして梨花ちゃんに何かあったの?』

一方通行「…ンな訳ねェだろ…!」

『…じゃあレナも梨花ちゃんの家の場所教えないよ?』

一方通行「はァ!?くだらねェ意地張ってねェでとっとと教えろ!」

『だって通行くん言ってることメチャクチャだよ?だよ?
何もないのにこんな時間に梨花ちゃんの家教えてくれとか常識的に教えられないよ』

一方通行「ッ…」

『もしも梨花ちゃんに何かあったんだとしたらレナも心配だしちゃんと話してくれないとイヤかな。もうなんにも出来ず後悔するのはやだもん』

一方通行「…………アイツが危ないかもしれない」

『…なんでそう思うのかな?』

一方通行「…言えない」

『…そう、まぁいいや。電話はしたの?』

一方通行「十回以上はやってる…さすがに起きるだろ」

『うん…梨花ちゃんの家はとても狭いから寝てても梨花ちゃんか沙都子ちゃんかのどちらかが気付かないわけないもんね』

一方通行「沙都子…?アイツら同じ家に住ンでンのか…!?」

レナ「うん。知らなかったの?でもこの話は後でね!二人の家は古手神社境内から少し離れた所にある小さな二階建ての小屋だよ!」

一方通行「!すまねェ…俺は直ぐ向かう…!遅くに悪かったな」


レナの返事を待たずに電話を切った
すぐさま電極を切り替え古手神社へと向かう

レナは沙都子と梨花は一緒に住んでいると言った

最悪の想像が一方通行の脳裏によぎる

初夏だというのに空気は冷たく虫の声一つしない暗い夜道を照らす月は異様に高かった

深夜の古手神社は先日の祭りの賑わいからは想像がつかない程に閑散としていた


一方通行「…チッ。レナからもっと詳しく場所聞き出しとくべきだったな」


しかし今さらかけ直す様なことは出来ない
『自分も探す』なんて事を言い出さないように後日うるさく言われるのを覚悟であのような切り方をしたのだ
自分達の問題にこれ以上他人を巻き込んではならない


一方通行「確かレナは境内から少し離れた所にある小さな二階建ての小屋つってたな」

少なくとも来た道にはそのような建物は見当たらなかった

ならばと一方通行はぐるりと周囲を見渡す


一方通行「……しらみ潰しに探すしかねェか」

しばらく周囲を散策するとレナの行った通り小さな小屋が見つかった

一階は物置でその上に無理やり住居スペースを増築したかのような雑な作りでお世辞にも365日寝泊まりするのに快適とは言いがたそうな小屋である


一方通行「…ここに住んでるってのか?」


にわかには信じられなかった一方通行だったが今はそれどころではない

バンバンと乱暴に閉じてあるシャッターを叩く


一方通行「オイ!ガキ共ォ!!今すぐ出てきやがれ!!」


はたから見れば完全にアウトな台詞を一方通行が叫ぶ
かなり騒がしくしているつもりだが一向に出てくる気配はない

一瞬の静寂が流れる
あまりに静まり返った小屋からは人の気配すら感じられなかった

しばらく周囲を散策するとレナの行った通り小さな小屋が見つかった

一階は物置でその上に無理やり住居スペースを増築したかのような雑な作りでお世辞にも365日寝泊まりするのに快適とは言いがたそうな小屋である


一方通行「…ここに住んでるってのか?」


にわかには信じられなかった一方通行だったが今はそれどころではない

バンバンと乱暴に閉じてあるシャッターを叩く


一方通行「オイ!ガキ共ォ!!今すぐ出てきやがれ!!」


はたから見れば完全にアウトな台詞を一方通行が叫ぶ
かなり騒がしくしているつもりだが一向に出てくる気配はない

一瞬の静寂が流れる
あまりに静まり返った小屋からは人の気配すら感じられなかった

一方通行「ゥオォッラァ!」


能力を使って引き戸を蹴り破る

雑な演算のせいで大破した引き戸に目もくれず二階に向かう


一方通行「沙都子ォ!梨花ァ!居るなら返事しやがれェ!!」


片っ端から電気をつけ風呂場やトイレ、果ては押し入れの中まで念入りに探す

しかし居ない

間に合わなかった事実が槍のように容赦なく一方通行の心に刺さる


一方通行「クッ…ァアァァ゛ァ゛!!」


当たり散らしたい衝動を抑えて激昂する

一方通行(落ち着け…冷静になれ…考えるのを止めるな
……まだ死んだって決まったワケじゃねェだろ
あるはずだ…アイツらの居場所のヒントが必ず…!)


フラフラと靴箱に向かうそこにはこの時間には普通あるはずの二人の外履きが無かった

ふと居間に目を向けるそこには見慣れたランドセルが二つ。中身は今日の時間割のままだった

また先程確認した風呂場の様子を思い出す。洗濯篭には見慣れた二人の制服があったはずだ

階段を降り下の物置に向かいそれから小屋の周囲を一周する

沙都子がいたずらに作ったトラップは何個か見付けたが二人が興宮など少し遠出する時に使用する自転車は見つけられなかった

その時、一方通行の体がライトに照らされる


「あれ?もしかして通行くーーん!?」


振り返るとそこには懐中電灯を片手にこちらに走って来ているレナの姿があった


一方通行「レナ…!?オマエ…どォして来てンだ!!?」

レナ「それはこっちの台詞だよ…!みっ…通行くんまさかっ…一人でこんなところまで来たの!?」


レナが息を切らしながら厳しい口調で一方通行を責め立てる
その理由が分からないでもない一方通行だったがそれは目の前にいるレナにも同じことが言えるはずだ


一方通行「そォいうオマエは」
「うぉーーい!待ってよレナぁー!!」


当然の疑問を口にしようとしたところでレナの後方から声が聞こえもう一つのライトが目に入ってくる


レナ「あ、…忘れてた。ごめーん!魅ぃちゃぁーん!!」

一方通行「魅音だと…?」

長期落ちしてた間少し書き溜めできたので投下します
ようやく今の生活サイクルにも慣れてきたところなので
それでわ投下

もっとも警戒するようにと言われていた彼女の名前が出てきて一方通行は目を大きく見開く

先に行ったレナに追い付こうとよほど急いで走ってきたのだろう
近づいてくるやいなや彼女は膝に手をついて肩で息を始めた


魅音「ヒぃ…ヒぃ…まったく、速いよレナぁ。いくら怒ってるからって…」

レナ「ご、ごめーん魅ぃちゃん…」

一方通行「どォしてオマエが居やがる…?」

レナ「あ、レナが呼んだの。魅ぃちゃんこういう時頼りになるから」

魅音「で?通っちゃんは何で梨花ちゃんが危ないって思ったのさ?」

魅音の一言で我に帰る一方通行
完全に失念していた
魅音の存在よりも優先すべき事が確かにあった


一方通行「……アイツらが居ねェ…」

魅音「え…?」

レナ「そんな…!?」

魅音「や、でもこの時間じゃん?実際、入ったわけでもないのに…寝ていて気づかないだけとか…」

一方通行「入ったから言ってンだ。ドア壊してな…」


一方通行の一言を聞いてすぐさま二人は小屋の中に駆け込んでいく
重い足取りで一方通行も再び二階に向かう

沙都子と梨花の不在を確認したのか先に部屋にあがった彼女らの顔はすっかり青ざめていた

一方通行「…まだ決まったワケじゃねェ
家が荒らされた痕跡は無い。
アイツらは学校から戻ったあと着替えて自転車で外出してやがる
──アイツらが行きそうな場所知ってるか?」

レナ「レナ村の連絡網当たってみるね!」

魅音「ならあたしは古手家の本家の方見てくるね!行くよっ通っちゃん!!」

一方通行「ゥおッ!?」


言うが速く魅音は一方通行の手首を掴み飛び出していく

一方通行「待て!待て待て待てッ!あンま引っ張ンな!どこ向かってやがる!?」

魅音「どこって梨花ちゃんの実家だよ!もしかしたら帰ってるだけかもじゃん!!」

一方通行「………」


魅音に変わった様子はない
彼女らしく本気で二人の身を案じている

しかしだからこそ昨日のことが信じがたい
アレが魅音とは思えない

しかし彼女の隠された一面についてはつい綿流し前の先日、一悶着あったばかりだ

元からの先入観は捨てておくべきなのは一方通行も分かっている
分かってはいるのだが…

魅音「見えたよ!通っちゃんあそこ!!」


魅音の声に反応して一方通行も我に帰る
彼女の指差す先には中々大きい日本屋敷がただずんでいた
しかし


一方通行「人の気配は無ェだろ…!」

魅音「でも見てみないと!通っちゃん鍵空いてる?!」

一方通行「…駄目だな」

魅音「オーーイ!!沙都子ぉ!梨花ちゃぁーん!いるぅーー?!!」


バンバンと玄関を叩いて叫ぶ魅音だが中からはなんの反応も返ってこない


一方通行「チッ……力ずくで入るか?」

魅音「いや、止めとこう。それよりレナが心配だし戻ろ。いくら家の中っていってもね安心出来ないじゃん」

一方通行「確かにな。これ以上関係ねェやつ巻き込むわけにも行かねェだろ」

魅音「え…?それってどういうこと?」

一方通行「オヤシロさまの祟りだ」

静かに告げる
何か反論が帰ってくるかと思ったが魅音もある程度感ずいているのだろう
何も答えず押し黙ったままでいる彼女に一方通行は続けて語る


一方通行「分かってるだけでも村長が行方不明だ。それに梨花ちゃンの所在も掴めない。今年は御三家が狙われてる可能性もあるオマエも充分気を付けろよ」


敢えて祭具殿破りの関係者の名は伏せて告げる
魅音の反応が気になったが彼女は
「うん…気を付けるね」
と不安そうに答えただけだった

魅音を横目で睨みながら一方通行は続ける


一方通行「……だとしたら分からねェのは沙都子の所在だ。…こォいう言い方はなンだがアイツが巻き込まれる理由は無いだろ」


それだけ言って魅音に背を向け先に来た道を引き返す一方通行

この夜だけで随分充電を喰ってるので帰りは電極を戻し本家に置かれた竹ぼうきを杖代わりに歩いていく





魅音「……呪われてるんだよ」



ぼそっと何かを堪えるように絞り出された信じられない一言が突然後方から聞こえてきた


一方通行「…魅音、…今……何つった…?」



魅音「呪われてるって言ったの」




聞き間違いだと淡い期待を抱いて訪ねた一方通行を崩れさせるように彼女はハッキリとその言葉を口にする


一方通行「ッ……オマエ…!」


食って掛かろうとした一方通行だったが魅音の顔を見て思わず言葉が止まる
それは彼女が先日見せた表情そのものだった

いや暗がりでよくは見えなかったがその瞳には前以上の感情の色が見てとれた
といっても明るい色ではない
深く淀んで怒りと憎悪が蠢き合いぐつぐつと煮えたぎっているように見てとれた

魅音「北条沙都子はね、オヤシロさまの祟りを一身に受けた呪われた子なの」


立ち尽くす一方通行に魅音はゆっくりと近づいてくる
じゃり…じゃり…と踏みしめる地面の音が嫌に大きく聞こえた


魅音「公園の展望台から転落死したのは味噌っかす扱いしてた冷たい両親だけ…あの子を虐めてた叔母は滅多打ちにされ殺された」


魅音の眼で煮立っている憎悪がいっそう大きくなる
魅音は既に目と鼻の先まで来ていた


魅音「…あの子を庇っていた悟史くんもあの子の誕生日に消えてしまった!
警察は家出だって決め付けたけど悟史くんは逃げ出すような人じゃなかった!!」


それまで恨めしそうに淡々と語っていた口調が次第に激しくなっていく

辺りのひとけの無さと魅音の豹変具合に今更ながら気付いた一方通行は電極に手を伸ばす
しかしヌッと伸びてきた彼女の手に腕を掴まれ遮られてしまう

魅音「いつも妹のために頑張ってたのに…!
なんて可哀想な悟史くん!
なんて報われない悟史くん!!」


魅音の掴んだ手に徐々に力が加わっていき鈍い痛みが一方通行の腕に生じていく


魅音「どれだけ恩知らずなあの子!あの子は呪われた子!!
あの子に近づけば祟りで死ぬか消されるか!!
あの子に安らぎなんてあるものか!!!」

一方通行「魅音!」


あまりの言い草に声を荒げるも魅音の様子が落ち着く気配はない
それどころか狂ったように一方通行の胸ぐらを掴み乱暴に揺さぶってくる


魅音「梨花ちゃんが消えたのも沙都子のせいだ!!
あんな恩知らず消えて当然なんだよ!!
違いない!違いない!!違いない!!!違いない!!!!」














不意に二人が懐中電灯の光に照らされる
見ると三つほどの光がこちらに向かい走ってきていた


「うぉおーーい!梨花ちゃま達は居たかぁあーー!!?」


声は野太く村の大人たちのものだった
レナから電話が来て駆けつけたのだろう


魅音「こっちには居ないみたいですーー!」


魅音が大声で答える
目の前にいるのは間違いなく見知った園崎魅音だった


一方通行(ならさっきまでのアイツは…?)


誰しも裏表がある
しかし先程の彼女の様子はそんな生易しいものではなかった

心の底から憎んでいると容易に想像がつくほどの剣幕
取り憑かれたような豹変ぶり

しかしどれほど目を逸らしても人違いだと信じたくなる程に呪詛を叫び続けた魅音は間違いなく目の前に居たのだ

深夜の雛見沢に二人を呼ぶ声が響き渡る

あれから大人たちの人数は続々と増えていき30分もたつ頃には村中の大人が出てきてるのではないかと思う程の大捜索が行われていた

しかし一向に二人は見つからない

一方通行も手がかりになる情報を再確認したが二人が夕飯の直前まで家に居た事ぐらいしか分からず居場所の検討も付かなかった

何の手がかりも掴めず時計の針だけが異様に速く進んでいく


一方通行「……クソッ…たれが……」


集団から外れて独り佇む一方通行は苦々しげに呟いた

自分の無力さがどこまでも腹立たしい
全てにおいて後手に回っている
関係のない人間を巻き込んで未だ敵の手がかりすら掴めてない


一方通行(いや…一人いるだろ…)

園崎魅音

詩音からも注意しとくように促された園崎家時期頭主
詩音も言った通り明らかにここ数日の彼女の様子はおかしい

なんらかの形でこの一連の騒ぎに関わっているのは明らかだ


一方通行(ンなことは分かりきってるこったろ!)


しかしどこか後ろめたい

明るく前向きで嫌にでも自らのペースに巻き込んでいく魅音
どこまでも我を通す癖に茶化されると直ぐに顔を真っ赤にさせるほどの気恥ずかしがりやな魅音

頭の中の魅音像が明白な事実を頭ごなしに否定してしまう


一方通行(……だからってこのまま放っとくってのか)

富竹と鷹野が死んだ
村長、そして梨花と沙都子までが行方不明だ
周囲の綿流しの晩とはまったく関係のない人間にまで巻き込まれていってる
これ以上の被害者を出すことは許されないのだ


一方通行「やるしかねェのか…」

「何をやるのかな?かな?」


低く静かに漏らした一言に返事が帰ってきたのに驚いて振り向くとそこにはレナの姿があった
懐中電灯に照らされたレナは安心させるような安らかな笑顔を浮かべている


レナ「通行くん、すごく思い詰めた顔してるよ?」

一方通行「……どォした?」

レナ「あ、うん。なんか子ども達はもう帰りなさいって話になってね。婦人会の人達が味噌汁作ってるからそっち行こ?」


ニコリと笑って優しく言うレナ
その優しさが容赦なく胸に突き刺さる

一方通行「ンな気分じゃねェ。ほっとけ」


行く気がないのを物語るかのようにその場に座り込む一方通行
夜風に冷やされた夏草がひんやりと一方通行を冷まさせていく


レナ「……ねぇ何があったか教えてくれないかな?レナ相談にのるよ?」


優しい声音で語りかけながらその隣にレナも腰を下ろす
突然の行動に面食らった顔をした一方通行だったが直ぐにその顔を険しい物に戻した


一方通行「……駄目だ」

レナ「その理由も…?」

一方通行「…言えねェ」

レナ「なんで?教えてもらえないかな?かな?」

一方通行「……言ったらオマエも消される…!」


手元の草を握りしめる
弱々しく言葉にしたそれは一方通行にはらしくない発言だった
守れる自信がない
巻き込ませても守ってやれる自信がない
巻き込ませないのが唯一、一方通行が仲間を守れる手段だった


レナ「大丈夫、レナは消えないよ」

一方通行「ッ…保証はねェ」

レナ「うん、でも消えない。絶対に」


握っていた拳を包むようにレナの手が重なってきた
優しく温かでけれど励ますようにしっかりとその重みが伝わってくる
安心も保証も何もない一言だったが不思議と胸に淀んでいた嫌な感覚は軽くなっていた

レナと共に集団に戻る
戻ってきた一方通行らを見つけた魅音がこちらに駆け寄ってきた


魅音「どう?なんか手がかり見つかった!?」

レナ「…ダメ、色んなとこ見てみたけどなんにも…」

魅音「そう……二人とも大丈夫だった?なんか見張られてたり着けられたりした感覚はなかった?」


後半少し声を押さえて魅音が尋ねる
その行動は実に仲間想いの彼女らしい


一方通行「いや、心配すンな」

レナ「レナもなんともなかったよ」


そう…と短く呟き魅音は胸を撫で下ろす


「いやいやぁ皆さん連日の捜索ゴクロー様です」

突然野太い声が響き人の輪を割って大石が入ってきた
途端に空気が冷たくなる
嫌悪感を抱いた視線が容赦なく大石に向けられた


一方通行「……警察の方はどうなってンだ?」

大石「大丈夫、大丈夫。ちゃあんと探してますから」


あしらうように笑う大石
鼻につく笑いが一方通行に苛立ちを募らせていく


大石「それより若い人達がこんな遅い時間まで外にいるのは感心しませんねぇ…明日学校でしょ?夜道は物騒ですし皆さんお送りしますよ」

一方通行「……ンな事よりやることがあるだろォが…!」

大石「そんなことでもこれ以上失踪者を出さないためには皆さんの安全は最優先事項なんですよ」

一方通行「ッ…!」

大石の言っていることは正しい
この状況ではいつ新たな行方不明者が出てもおかしくないのだ
捜索も大切だが防犯も大事なのだろう


魅音「…通っちゃん悔しいけど大石の言う通りだよ」

レナ「うん…今日は一回出直そ?」

一方通行「チッ…」


舌打ちと共に渋々頷く一方通行

大石に連れられ魅音とレナと一方通行は車に乗り込む


大石「竜宮さんと一方さんは家が近所なんですよねぇ。送る順番は魅音さんから先でよろしいですか?」

一方通行「ンなのもン好きにすりゃイイだろ」

大石「んっふっふ。ではそうさせていただきますよ」


含みのある笑いをしたあと大石はエンジンをかけ車は雛見沢の闇のなかに消えていった

なんか投下ペースがクソな自分が全面的に悪いのにフォローしてくれてる人がいてとても感動しました!

五月も忙しいみたいなんでいつ投下出来るか分からないのですが自分が生存報告だけで投下しないっていうのが嫌いなタチの人間ですから
生存報告含めの投下を一ヶ月内に納めていきたいと思ってます
いろいろ不快に思われる方もいると思いますがここで予め謝罪しておこうと思います
すみませんでした

帰りの車は誰もが無言だった
まずは園崎家の玄関で魅音が降り次に女子ということでレナの家、最後に一方通行の家に着く直前で大石は唐突に車を停めた


一方通行「なンの真似だ?」

大石「少し残念なお知らせが入ってるんですよ…」


ため息混じりに大石が切り出す
鼓動が少し早くなる一方通行
途端に脳裏に梨花と沙都子の姿が浮かび上がってきた
『実は死体で見つかりました』
なんてイメージが勝手に出てくる


大石「富竹さんと鷹野さんが死体で見つかったんですよ」


あの二人には悪いが一方通行は正直に安堵した
殺され方に疑問こそ残るが今はそれどころではない

大石「あれ?あんまり驚きませんね。もしかしてもう知ってました?」

一方通行「あァ」

大石「ではお二人の死因も…?」

一方通行「知ってる。ンな事よりも行方不明者の方はどォなってンだ?」

大石「…いいですよ。ホントは駄目なんですが特別です」


運転席の明かりをつけて大石はメモを取り出す


大石「まずは村長の公由さんですが昨晩の村の会合からの消息が分かりません。それまでの行動は完璧につかめていますからね。
知ってました一方さん?村長さんって誰にも内緒で痔の病院に通ってたんですよ?」


一方通行「くだらねェ糞の役にも立ちそォにない情報をアリガトよ」

大石「なっはっは!それでその泌尿器科に行く前はずっと家に居られたみたいですね。家族の方から証言は取れてます」

どうでもいい。というのが一方通行の本心だった
しかし微かな違和感が胸の奥に引っ掛かる


一方通行「………………………………待て、興宮では泌尿器科にしか行ってないのか?」

大石「そのようですね。終わったのが村の会合に間に合うか間に合わないかのギリギリの時間だったようで治療後はすぐに雛見沢に戻られてますよ」

一方通行「途中どこかに寄ったりは?」

大石「それはないでしょう。病院の会計時間と村の会合に村長さんが顔を見せた時間は興宮から雛見沢までの車を使った移動時間と大差ありませんでしたから」

一方通行「…その日、公由家に来客は?」

大石「回覧板を持ってきた村人が一人。村長が出ていってからは一度も」


数時間前の電話の内容を思い出す
『打ち明けたその晩に消えてしまった!』
あの時詩音は間違いなくこう言った

だとすれば矛盾が生まれてくる

一方通行(アイツは、詩音は…いつ打ち明けたンだ…?)


村長はこの雛見沢で誰にも知られずに泌尿器科通いをしていた
身内にも内緒にしていたのだから詩音にだって打ち明けてはいないだろう
そして会合に向かう途中も詩音とはあっていない
その時詩音に祭具殿のことを聞かされていたのなら会合所までの移動時間が大幅に延びていたはずだ
となれば詩音は昼間公由邸を訪ねるしかないのだが家族の証言から来ていないことが分かる
仮にも自分の家の家長が行方不明なのだ。家族が嘘の証言を吐いてる可能性は排除して構わないだろう

となれば詩音が村の会合に参加している限りでしか村長には打ち明けられなくなる


一方通行「……昨日の会合に詩音は参加していたか?」

大石「はい?」


一方通行の問いかけた質問に大石は眉をあげて問い返す
数秒の沈黙が車内を満たした

大石「一方さん…貴方の質問に答える前にこちらからも幾つかお話ししたい事があるのですがよろしいですか?」

一方通行「?…言ってみろ」


突然の大石の反応に眉をひそめながらも一方通行は承諾する


大石「……一方さん、園崎詩音に最後にあったのは何時ですか?」

一方通行「綿流しの翌日、あン時が最後だ」

大石「あの時は待ち合わせをされてましたよね?どんな用で待ち合わせてたんですか?」

一方通行「アイツが相談してェ事がどォとか言ってたな」

大石「それは──祭具殿に忍び込んだ事と関係ありますか?」

一方通行「!? …何言って」
大石「隠さなくても結構です。もう全部知っちゃってますから」


ニカッと笑う大石に一方通行は舌打ちで答える

一方通行「さァな?あン時はどっかの空気の読めねェ公僕が邪魔してきたからな」

大石「んっふっふ。今思えば本当にお邪魔して悪かったと思いますよ。……一方さん、祭具殿の中には何があったんですか?」

一方通行「……別に大したもンは入ってねェよ」

大石「はい?覚醒剤とか重火器の類いは…?」

一方通行「無かったな。あったもンって言りゃオヤシロさまの御神体と大昔の祭儀具ぐらいだ」

大石「そんな…ではなぜ六人も……?」

一方通行「行きすぎた信仰心ってのは人殺すのに充分な理由になっからな。現に第三次世界大戦なンざ良い……」


一方通行の口が止まる
大石の一言を頭のなかで反芻させる


一方通行(被害者が……六人?)

富竹、鷹野、村長、梨花、沙都子
大石の話からはこの五人の他にもう一人犠牲者がいるらしい


一方通行「六人ってどォいうことだ?死んだのが富竹と鷹野、行方不明者は村長と梨花、沙都子だろ」

大石「………………一方さん、詩音さんは会合には来てません」


神妙な顔をして口を開いた大石はしばらく前に尋ねた質問の答えを口にした
一方通行にざわざわ…と名状しがたい不安感が背筋を刷り上ってくる


大石「詩音さんは失踪しました…綿流しの翌日、あなたに会いに行ったきり行方不明なんです」

一方通行「な、……何言って…やがる?」

大石「やっぱり知らなかったんですね。すみません最初に言っとけばよかったです」


今現在大石が話してる内容が半分も頭に入ってこない一方通行
大石の話からは図書館前で会ったのを最後に失踪しているらしい…
しかし電話は毎晩のようにかかってきた…


一方通行(なら……あの電話は、誰がかけてきやがった…!?)

大石「一方さん 、もう一度聞きます。あなた以外のすべての人間が消されました……本当に祭具殿には何も無かったんですか…?」

一方通行「あァ……」

大石「そうですか…すみませんね、なんか立て続けに話しちゃって」


呆然と答えた一方通行に少し残念そうにしながら大石は再び車を発進させる

少し走らせるとすぐに一方通行の家の前に着いた


大石「それでは。今日は本当に遅い時間までありがとうございました。ゆっくり寝て考えて思い当たる節があるなら連絡ください」


無言で車を降りる一方通行に呼び掛ける大石


大石「一方さん、あなたと他に忍び込んだ三人に大きな違いが無いなら次に危ないのは間違いなくあなたです。十分に注意してくださいね」


その呼び掛けに答えることもせず一方通行はふらふらとした足取りで玄関のなかに入って行った

という感じで生存報告がてらの投下です
待ってるコメントありがとうございます!読み返して励みにしてます!
仕事の休み時間にちょくちょく書いてるんで相変わらず更新遅めになりますがご容赦ください

それでわノシ



6月22日水曜日


一方通行は昼過ぎに目を覚ました
ぼんやりと昨日の大石の話を蘇らせる

詩音はすでに失踪しているらしい
それも綿流しの翌日、図書館で会ったのを最後に
しかし毎晩詩音からの電話はかかってきた
もしかしたら警察の目の届かないところにでも身を潜めている可能性もある


一方通行(まずはアイツが本当に失踪したか確かめねェとな)


失踪の件が一方通行から証言を得るための大石の作り話という線も考えられる


重い足取りで階段を降り眠気覚ましに缶コーヒーを啜る

一方通行(あ?ンだこりゃァ…?)


テーブルの上においてあった一枚の紙を手に取る
そこには
『妹達の調整用装置で不具合が発生して学園都市に戻ることになったからあとよろしく』
と確かに芳川の筆跡で走り書きがされてあった

しばらく無言で書き置きを見ていた一方通行だったがふと着信履歴から芳川に電話を掛ける


『あら?起きたのね』

一方通行「今どこにいる?」

『あとちょっとで学園都市に入るところよ。心配ないわ』

一方通行「自己保身の塊みてェなやつを心配してなンになンだ。戻ってくンのはいつぐらいになる?」

『良ければ三日ぐらい最悪で一週間って所だと思うわ。そっちはよろしくね』

一方通行「…あァ。任せろ」

『そう…なら安心ね。そういえばあの子達に何か伝言はある?保護者さん』

一方通行「クソニートの面倒は骨が折れるだろォがよろしく頼む。とだけ伝えといてくれ」

『ふふふ。ちゃんと伝えとくわね』


電話が切れる
缶に残ったコーヒーを一気に喉に流し込む


一方通行 (いい加減甘ったりィ理想像なンざここまでだ)


真実を知ったところで間違いなくそれはハッピーエンドなんかではないのだろう
きっと誰もが傷つく結果になる
芳川も知恵も魅音もレナも他のクラスメイトも。そして一方通行自身も誰も望まない結末になるだろう

それでも真実を暴かなくてはならない
大石達に頼らず自らの手で


一方通行(それがこのクソッタレな惨劇の幕を開けた俺の責任だろ)


財布とスマホをもって家を出る
口の中に残ったブラックコーヒーのしつこい苦味がこの事件の真実を物語ってる様だった

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