女「でりゃ」 (180)

初投稿。やり方間違ってたら言ってくれると助かる。

女「起きたね。君のお母様がご飯を作って待っている。早く行くんだ」

男「女、普通に起こせよ。何も飛び乗らなくたって…」

女「普通に起きたことは?」

男「……ないけどさ」

女「なら、僕が正しいことは証明された。僕は先に行くよ」

男「了解、あぁ腹がいてぇ」
 いつもの朝、いつもどおり女に起こされて、いつもどおり朝飯を食う。

 そして、母親に怒鳴られるようにして家を出て、学校に向かう。

男「しっかし、たるい…」

 根っからのダメ人間は承知済み。

 実際このままゲーセンにかけこもうかなとか、考えたりもする。

 しかし、そうするには厳しい人物が一人。


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女「やっときた」

男「しかたねぇからな」

女「……君はいつも変わらない」

男「わるかったな」

 家が隣、小中高すべて同じ、ついでにクラスも別になったことがないほどに一緒にいる女(こいつ)。

 勉強、運動は優秀そのもの、独特な口調を抜かせば、優等生なのは間違いない。

女「君のお母様にお目付け役を頼まれているからね、今日は寝ないように」

男「わーってるよ」

女「……」ジーッ

男「わかったわかったって、ちゃんとやるよ」

女「男は約束を守る人だから、信用するよ」

男「…うーい」

 これが、俺の日常。どこにでもあるような、それでいて非日常的でもある日々。

 変わらない、変わらない日々。




 夢を見ていた。色あせたノートを開くような古い記憶の夢。

 いつもの公園、いつもの遊具、そしてある日からいつものじゃない存在がいた。

 そう、いつの間にか当たり前のように女が砂場で黙々と砂山を積み上げていた。

 いつ気づいたのかもわからない、でも気づいて違和感があった俺は声をかけていた。

男『何作ってるの?』

女『お山……』

男『大きいね!』

女『うん…』

 多分、女は戸惑っていたんだろうけど、俺はそんなこと気にせずにまた公園の中を駆け回っていて。それで――。

 何かを思い出せないまま、映像(ゆめ)は暗闇に戻り、そして無意識からはっきりと夢を見ていたと自覚する。

 おぼろげになった記憶(ゆめ)のせいで、哀愁に似た気持ちを抱きながら、襲ってくる睡魔に身を委ねようする。

「……て」

 誰かが声をかけた気がした。でも、それはきっと夢を見ようとしているからだろう。少し覚醒しようとした意識がまた、暗闇の中に落ちていく。

「…か…ない」

 ズルズルと引きずられるように、俺はそのまま。強力な衝撃によって、強制的に目を覚まさせられた。

女「…おはよう」

男「……二日連続は、ない。さすがにやっちゃ駄目」

女「君が起きてくれるなら僕はここまで手荒なことはしないし、僕はこう見えても平均的に比べ体重は軽いほうだよ」

男「まぁ、多分軽いんだろうけど。人間そのものが腹にダイブしてきたらどうしたって重いんだぞ?」

 女はそういれて少し考えるような仕草をした後。

女「じゃあ、鉄アレイでも投げようか?」

男「そこじゃねぇ。怪我したらどうする」

女「ジョークだよ。ただ、君が起きないって言うなら、これ以上に手荒になっていくよというお話」

 おい、真顔で何恐ろしいこといってるんだ。

女「なんにしても時間だ。早く起きて、僕は先に行くよ」

男「わーったわーった。なんでもいいから降りてくれ、起きられないから」

女「…男、君のお母様がご飯を作って待っているから、急いで」

 そう言っている女の方が母親みたいだとは思ったものの、それは言わずにタンスに書けてある制服を手に取った。

 着替えおえて、母さんにどやされながら急いで朝食を腹に詰め込み、学校へ急ぎ目に向かう。

 今日も風が強い、公園の木々が波打つように枝を揺らしている。

男「(そういや…)」

 この公園は女とよく遊んだ場所だった。夢を見なければ、思い出すこともなかっただろう。立ち止まって見てみると今も、あの頃遊んだ砂場も何もかもが変わってはいない。

男「あいつ、好きだったよなぁ」

 走り回るより、砂場で何かを作って、ジャングルジムではしゃいでた俺に見に来るようにいつも呼んでた。すごいと褒めたらますますやる気になって作り続け、俺はその間そのまま走り回る。そんな感じで夕方まで過ごした。

 中学、高校と上がるにつれ、そんなこともなくなったけど、向かいに住む幼馴染みということもあって、今でも母さんに頼まれて起こしにくる。物好きな奴だ。

 そんなことを考えていると、学校からチャイムが聞こえて、俺は慌てて走り出して校門が閉められるギリギリに滑り込み、教室に入る。クラスメートの皆は、まぁいつも通り元気そうだ。

男友「よ~う、今日は遅刻じゃないんだな」

 そしてこいつもいつも通り馴れ馴れしい感じで話しかけてきた。この高校からの悪友で主に歳上にモテるレディキラー、こんなのがこの町じゃそこそこ名の知れた剣道の道場の息子。当然剣道部に所属。

 まぁ、普段はチャラいけど、根っこは真面目で部活動中は後輩に鬼と畏怖されてる。そこがまたモテるんだろうなぁ。

男「もう少し寝てから来たかったんだけどな」

男友「あぁ、通い妻に叩き起こイダイイダイ!」

男「ただの幼馴染みだっていってるだろ」

男友「腕を捻りあげながらな冷静にいうことか!」

 仕方ないので、離してやる。まぁ、いつものやりとりだ。

男友「あ~、いって~。手加減しろよ」

男「友人だから竹刀持てる程度に済ませてる」

男友「それ、友人にすることか?」

 そう言って両手をあげてやれやれと首を振る。何だったら首を締め上げてやろうか。

男友「お前さ、今ろくでもないこと考えたろ」

男「気のせいだろ、さて先生来るから席につけよ」

男友「そう言っても誤魔化され、ギャー!」

 さて、今日も退屈な時間を過ごすとしますか。

男友「脇腹に、どすっ、どすっていった…ぐふっ」

 何かを放っておいて、俺は自分の席についた。

メール欄に「saga」って入れよう。

 放課後を報(しら)せるチャイムが鳴る。身体を伸ばして、人心地つく。

 外はまだ夕焼けとは言えないものの、太陽が沈もうとしていた。その下では野球部なりサッカー部なりが準備運動を始めている。当然帰宅部な俺はこれから帰るだけだが、これといってすることはない。

 いつもならゲーセンに洒落込むところだが、今は母さんが帰ってくるし、街をぶらついて帰ったらどやされるだろう。どうしたもんかなと携帯を弄りながら考えてるうちに、いつの間にかクラスの連中も居なくなっていた。

男「ありゃ、ボーッとし過ぎたか」

 とりあえず、家に帰る道中のコンビニで立ち読みでもすることにして、鞄を持とうと手を伸ばす。

女「男」

 そう呼び掛けられて、顔をあげる。右の出入り口に、女はいた。

男「女か、どうした?」

女「ちょっと、話がある」

 いつもの無表情な顔とは違い、深刻そうな表情で、香は近づいてくる。

 こいつがこんな顔するなんて、よほど重大なことが起きたのだろうかと考えると、自然と身構えていた。

>>7 すまねぇ。入れておく。ありがとう。


女「…その…、ね」

男「どうしたんだよ」

 何を言われても、驚かないようにしながらも意識的に柔らかい口調で聞く。

女「………」

男「話さないとわからないぞ?」

女「…ごめんなさい」

 ジワリと手に汗がにじむ。本当に大変のことが起きた時、女はこんな感じになる。

男「どうしたのよ。幼馴染みだろ、聞くぜ?」

女「……ごめんなさい。その…、あとで家に来てくれる?」

男「…わかった」

女「ありがとう、じゃあ委員の仕事があるから」

 少し安心した様子で、足早に出ていった。それを見届けたあと、どっと疲れが押し寄せてきた。

男「また何か…、いや、考えるのはよそう」

 そして次にあいつの過去のことが、脳裏をいくつも駆け巡る中、俺もクラスから出た。

 重い足取りで家に帰ったのは、日も暮れて夜になった頃。コンビニで立ち読みしたが、ほとんど上の空で過ごしたせいだ。

 鍵を開けて家に入ってから気付いたが、母さんがいる様子はない。携帯を見ても、遅くなる連絡はなかった。仕事で忙しくても、そういう連絡は欠かすような人じゃないのに。放課後のこともあって、嫌なことばかり頭をよぎって仕方ないが、部屋に戻る。

 明かりも点けず、そのままベッドに横になって一息つく。今日は妙なことばかり起きる日だ。落ち着かないと、やってられない。

男「(それに、これからあいつの家に行かないとな)」

 どんなことがあっても驚かないよう心構えを決めながら、立ち上がろうとすると何かを踏んだ。確認するために明かりを点けると、そこには鞄が置いてあった。

男「あれ、そういや俺、鞄忘れて帰ってきた…、よな」

 手に取ろうとしたところで女に話しかけられて、そのまま出てきた。じゃあなんで鞄なんかあるんだ。心臓が静かに脈打ち始める。まるでホラー主人公にでもなった気分だ。

 理解できないことやら不安なことやらが、いくらなんでもたて続きに起こりすぎてる。

男「と、とりあえず着替えて行くか」

 動揺が隠せないままに、制服から私服に着替える。恐怖心ともつかない、異様な不安感を抱えたまま、外に出て向かいにある女の家を見る。明かりは点いていて、もう帰ってきているらしい。

「大丈夫、大丈夫だ。話を聞くだけだぞ。俺」

 言い聞かせるように呟いた後、香の家の玄関にあるチャイムを鳴らした。

男「…それで話って何だよ」

女「…うん」

 居間に通され、出された緑茶をすすりながら尋ねる。女は相変わらず言いづらそうにもじもじとした様子を見せていた。

女「…その、お母様は?」

男「家には…、いなかったけど」

女「…そう」

 母さんに関わる話なのか。事故やらなにやら想像したが、それなら身内の俺に連絡が入るはず。もっと違う、問題なのだろうか。

男「なんだ。母さんなんかしたのか?」

女「それはない。良くしてもらっているよ」

 きっぱりとそう言われて否定される。だよな、たまに娘と間違われるぐらい女を可愛がってて、喧嘩したところもないから仲たがいするなんてことも想像もできない。

男「じゃあなんだよ。あらたまってここで話すような用事なんだろ」

女「…何も聞いてないの?」

男「なに絡みでだよ」

女「…君の、お母様のことだよ」

夕飯前に軽くやるつもりだったが、まだここまでなのか。
食材いつ買いに行こう。


 少し記憶をたどる。ここのところ母さんも帰ってきてたし、それなりに規則正しい生活を送ってはいた。夕食とかは一緒にとってたけど、何か重要な話をしたかといえば、覚えがない。

 単純に自分が覚えてないだけって言うか、話半分に聞いてたかもしれないけど、女にも伝えないといけないような重要なことなら、さすがに聞いてる。

男「わりぃ、思いつかねぇ」

女「…お母様、一体何を考えているのかな…、頼りにしてもらえてるのかもしれないけど…」

男「おいおい、こっちは何もついていけてないぞ」

 ぶつぶつ言いながら困ったような様子でいる女に、俺は答えを催促する。さっきまでの恐怖心よりも、好奇心のほうが頭をもたげ始めていた。

女「……うん、約束は約束だから…」

男「おーい、聞いてるのかー」

女「男。何を言われても驚かない?」

 今までの表情が一転して、キリッとこちらを見据えてそう尋ねてきた。油断していたこともあって、身体が緊張する。

男「今更何に驚けってんだよ。言ってくれよ」

女「…あの、ね」

 一息置いて、女は答えた。


「――僕と一緒に、暮らさない?」

支援
香ってのは女の名前であってる?

>>13 合ってる。昔書いた原稿用紙1~2枚分ぐらいの殴り書きを広げて書いてるから、無意識にいれちゃったっぽい。一応女で通すよ。またあってもキニスルナ!


 言葉を理解するのに時間を要したのは、初めてはない。ただ、その言葉を理解して受けた衝撃は、たぶん人生の中で一番だった。

男「はいーーーーー!?」

女「驚かないって、言ったのに…」

 不満そうに言いながら、女は恨めしそうに俺を見ていた。

男「驚くなって言うほうが無理だぞ! というか、なぜそうなる!?」

女「…本当に聞いてないんだね。お母様、明日からイタリアに海外出張だそうだよ。だから、男をきっちり生活させるよう、仰せつかったの」

男「いろいろ待て、とりあえずあれだ、電話する」

 アドレス帳から電話番号を押す。しばらくして、通話コールではなく伝言メッセージが流れてきた。

母『はーい、母です。そうあなたの母でございます。こんなメッセージいらないか。悪いけどしばらく着信拒否するから、質問は一切受け付けません。女ちゃんのいうこと聞くのよー』

 すごく楽しそうな声と共に、メッセージは終わった。

男「あんの母親はー!!」

女「…男、落ち着いて」

男「これが落ち着いていらいでか!」

 ていうか、今日家に帰ってきてないのは、この話を避けるためだな。じゃないと帰ってこない理由がない。時計を見ると、時間は8時半を指していた。どうせ会社で寝泊りしてから出張に行くんだろう、急いで電車に乗り込めば、話も聞けるはず。

 そう思っていた矢先に、携帯から音楽が鳴り響く。メールを受信したようだ。誰だと思いながら開くと、件(くだん)の母親からのメールで、急いで開いた。

母『そろそろメッセージを聞いた頃だと思って連絡するけど、もう空港にいてそろそろ離陸するから会うことはできないわよ。それじゃあねー(^○^)ノシ』

 いろいろ手回しのいいというか。そうじゃなくてだな。

男「それじゃあねーじゃないわー!」

女「…だから、男落ち着いて」

男「若い男女を同じ屋根の下で暮らさせる親がどこにいるんだー!」

 想定したこととは違うけど、違う意味で問題が大きすぎた。というよりも、なぜこれを隠していたのか俺にはわからない。いつもなら、出張の時は普通に教えてくれたのに。

場面転換的にちょうどいいし、ちょっと食材買ってくる。(この後も考えなきゃいけないし)
ちょろちょろ書くと思うけど、本腰入れられるのは何時になるかなぁ。


女「…男、日ごろの行いのせいだよ」

男「なんだよそりゃー!」

女「最近、ゲームセンターに入り浸ったり、夜更けまで起きてて遅刻してたでしょう? このまま離れたら、また荒れた生活になるんじゃないかって、お母様が心配していたよ」

 思い当たる節がありすぎるので、クールダウンしてくる。そりゃあ、まぁ確かにここんとこ遊びほうけてはいたけど。

女「…だから、僕に白羽の矢が立った。僕なら君が言うことを聞くだろうということでね」

男「でもだ、だからって一緒に住む必要はなくはないか?」

女「僕がいちいち君は寝ているか確認してから、家に戻るのはさすがに手間だよ」

 手間といえば手間なんだろうけど、それでも倫理とか常識とかの問題はないのか。

女「…別に…、そう別にたまに泊まりに来てたじゃないか。それだけのことだよ」

男「それはお前、子供の頃の話だろう」

女「…じゃあ僕がそっちの家に行こうか?」

男「どっちみち同じじゃねーか」

 女にしちゃ勝手知ったる他人の家だろうし、どちらでもいいんだろうけど。

男「あのさ、いいのか。幼馴染つったって男と暮らすんだぞ?」

女「…男は家族のようなものだから」

男「あ…、うん。それなら、いいけどさ」

 その言葉に、どう返していいかわからず、そっけなく答えながら、了承してしまった。

 いや、どう答えていいのか。わからなかった。家族のいない女に、自分は家族だって言われて、どう答えるべきだったのかが。

戻った。でもまたすぐ消えると思う。


 また、夢だ。砂場(そこ)に子供の頃の女がいる。

 いつの頃からか、あいつはそこにずっといた。誰とも遊ぶわけでもなく、ただ黙々と砂をいじっていた。だから、気になったのかもしれない。

 俺は気付けば声をかけていた。無邪気な好奇心なのか、それとも一人ぼっちで寂しそうに見えたのか。どれにしても、きっと気まぐれだったんだろう、今の自分ではもう思い出せない。

 女が作っていたのは、それは本当に大きな砂山で、それ以外何の変哲もなかった。でも、幼心にこんな大きなものを作ったことに感心していた。

 俺はそのまま、またジャングルジムに戻って、それから――。

男「がふっ!」

 そして、そこそこなれた腹への衝撃と共に目が覚めた。目を開ければ、そこには相変わらずの様子で俺に座る女の姿があった。制服の上にエプロンを着て、おたまを持ってる。

女「…うん、起きてくれたね」

男「初日ぐらい優しくしてくれてもいいんじゃないか?」

女「まだ優しいほうだよ。これで起きなかったらおたまで頭を叩くつもりだったし」

男「さいですか…」

 あの後、俺は女の無言の圧力に負けて、1階にある使われていない和室を、寝室として利用させてもらっている。たった1週間、そう母さんが帰ってくる1週間だけ過ごすだけのことだ、そう言い聞かせて。

女「朝ごはんもしっかり食べさせるように言われてる。お母様にはお世話になっているから、約束を反故するわけにはいかない」

男「わーったわーった。着替えていくから待っててくれ」

女「…ご飯はできてるから」

 しっかり目覚めたのを確認したからか、素直に俺から離れ、部屋を出て行った。かくいう自分もしぶしぶと箪笥にかけておいた制服に袖を通して台所へ向かう。途中、朝ごはんのいい匂いが漂ってきて、懐かしい気持ちになった。

男「(…何がだろうな)」

 自分の母親が朝ごはんを用意していることを懐かしむような、そんな感じでもなくて、この家であったことそのもののような懐かしさ。そんなことを考えながら、テーブルにある椅子に座る。

女「来たね。用意してあるから食べて」

男「お、おう」

 テーブルに並んでいるのはコーヒー、トースト、目玉焼き、サラダ、まさしくザ・洋食版朝飯といったところだ。家では和食が多かったから、結構新鮮な気分だ。

 テーブルに置いてあったイチゴのジャムを手にとって、トーストに塗りたくる。

女「…そんなにつけて、身体に悪い」

男「姑みたいなこというなぁ」

 そのままかぶりつくと、甘酸っぱさが口の中に広がる。おいしい。

 トーストを食べていると、目の前で女がコーヒーにたっぷりと砂糖を入れていた。

男「お前もそれ、身体に悪いぞ」

女「…朝の糖分は重要だから」

男「怒るなよ」

 やり返されたからか、少し不機嫌そういわれてしまった。

よし、夕飯作ってくる。


男「ご飯ありがとな、夕食は俺が作ろうか?」

女「…ん、いいよ。全部私がやるから」

 今度は少し嬉しそう感じに答えてくる。いつもどおり素直なやつだ。

男「ご馳走様。俺が片付けるか?」

 いつも以上に時間の余裕があるし、居候するなら手伝いもしないとな。

女「…それも僕がやるよ。他にもすることがあるし、それに僕が先に出かけたら、君がサボらないとも限らない」

男「信用ないなぁ」

女「このことに関して、今は君の信用はないよ」

 しれっと言いやがる。つい最近の自分の素行の悪さには言い訳がつかないのでどうしようもないことだけれど。

男「わーったよ。じゃあ悪いけど、先に行くぜ」

 食器を台所に移して、いつもより早い時間に学校へと向かった。

名前を付けても許されると思うよ

なんで名前欄にID?入れなくていいと思うぜ

>>22 なんかアニメものでなければつけるイメージがなくてね。まぁ、今回はこのままでいいんじゃないかな
>>23 そうなのか、こういうとこの勝手がよくわからんでね。


 教室に入るとクラスメート達の姿がまばらだった。いつもより20分は余裕のある登校が、ここまで新鮮だとは思わなかった。

 いつの間にか家にあった鞄を机の横にかけて、ぼんやりと外を眺める。朝練が終わり始めたのか、グラウンドにいる連中がバラバラと本校舎に向かってきている。

男「(部活動…かぁ)」

 入ろうと思わなかったわけじゃない、でもどうしてか流されるように帰宅部となっていた。言ってしまえば、何か真剣にやりたいと思ったものがなかっただけでもある。

男友「おおう、俺はどうやら夢を見ているようだな」

男「薬のやりすぎは体を滅ぼすぞ?」

男友「えー、そっちいっちゃう。ま、いいや。どうやら本当だったみたいだし」

男「は?」

 何が本当だって言うのかわからないでいると、近づいてきた男友がボソりと耳元で。

男友「今、女と同棲してるんだろ?」

 そして、聞いた言葉に驚きながら、条件反射で男友の腕をひねり上げる。

男「え!? どういうことよ?」

男友「いでででで、驚きながら友人にすることかこれが!」

男「あぁ、すまん。構えていない間にお前が懐に入ってきたからつい」

 ゆっくりと拘束を解くと、男友は制服を払いながら。

男友「その言い方って俺限定っぽいよね」

男「当たり前やん?」

男友「ひどくねー?」

 両手を挙げて大げさに首を左右に振って、こっちを胡散臭い笑みを向けてくる。お前はいつからアメリカンになったんだ。

男「で、俺のプライベートを盗聴した罪は重いんだが」

男友「そんな悪趣味はねぇよ! ちゃんと真っ当なルートから情報仕入れたに決まってるやん」

男「ふーん、言い訳は聞こうか?」

男友「いや、明らかに手刀作られてそういわれて近づかれると怖いんですがね。つーか、落ち着け」

男「とりあえず、閻魔さんあたりになんていうかは決めたか?」

男友「すとーっぷ! てか言い訳すらできなくなってるし! てか、なんでお前鞄家にあったと思ってるんだよ!」

 そういえば、忘れたはずの鞄がなぜあったのかを、今更覚えてた。

男友「部活終わりにさー、俺も鞄忘れてるのに気づいて戻ったら、お前がフラッと出てきて声かけたんだけどお前上の空だったみたいで、気づかなくてさ。で、教室の中入ったらお前の鞄あるだろ? しかたねぇって持っていってやったんだぜ」

男「で、それがなぜ嘘をつくことに至ったんだ?」

男友「さっきから言ってることがおかしいと思うんだ。まぁ、お前ん家いったらお前のお母さんがちょうど出かけるとこでさ、渡した時に聞いたんだよ」

男「……あの人はほんっとうに、こういうとこは余計なことするよなぁ」ボソッ

 もしかしなくても、あの人は俺が困る顔するのが好きなのは知っているんだけども。

男友「なんかいったん?」

男「いーや別に。お前の処刑方法が決まっただけだ」

男友「何でお前は俺に対しては物騒なんだよ。女とどうせグハアアアア!」

 余計なことを堂々と言おうとしてくれたので、反射的に右手が男友の右頬を捉え、男友はそのまま吹っ飛んでいく。

女「おっと」

 その吹っ飛んでいった男友を優しくキャッチしたのは、教室に入ろうとした女だった。

女「二人とも、じゃれあうなら外でお願い。君達が暴れるとそれなりに手がつけられない」

男友「いや、俺はやられてるだけっていうか。いいや、とりあえずありがとう女」

女「やるなら夕方の河川敷でやるといいと思うよ」

男「そういう問題なのか」

女「うん」

 それだけいうと女は男友を離して、自分の席に向かう。

男友「女は優しいねぇ、どっかの誰かさんと違って」

男「俺が優しかったら気持ち悪いだろ」

男友「だな。とりあえず俺の疑いは晴れたろ?」

男「疑いも何もいらぬ嫌疑をかけられたわけだから、まぁ、記憶ふっとばす程度に殴るだけだ」

男友「おーい、女。今男とぎゃあああああああああああああ!」

 あれだな。やはり危険な芽は摘み取っておくに限るっていうよな。

男「男友、表に出ようか。久々にキレちまったぜ……」グリグリッ

男友「友人の頭を足で踏みながらいうことか!」

女「二人とも、そろそろ授業だよ」

男「うーい」

男友「ありがとう…! ありがとう…! 何か知らんけどありがとう女…!」

男「よし、昼飯だ」

 午前を終了するチャイムがなり、軽く体を伸ばす。

男友「おかしい、感謝している間に昼休みになっただと?」

男「お前、寝てたんだろ」

男友「せめて断言してくれないか。俺に彼女がいる体(てい)で」

男「女友~! 男友が罪を犯したぞー」

男友「え、ちょ!?」

 そう呼びかけると、廊下の向こうからドドドドドドッという音とともに。

女友(許)「呼ばれて参上仕った」

 仰仰しいとも言える堅苦しい台詞とともに、女友が教室に入ってきた。

男「不貞を働こうとした。裁いてくれ」

女友「うむ、詳細を」

男「許嫁のお前を差し置いて彼女を作ろうとした」

女友「……」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ

男友「よし! 俺は持病の突発性世の中から逃げたくなった病になった、アイキャンフラーイ!」

女友「許さん、待て!」

男「おーおー、恒例になってるねぇ。三階からの男女飛び降り事件」

 言ってて思ったけど、黒幕ってこんな気分なんだろうなぁ。

最初男友の許婚だから「女友(許)」でいいやと思い、いや、視点的に煩わしいかと修正したらしきれてなかったよ!


女「そして、そこにほくそ笑む男の姿があった」

男「心臓がドックンしたよ!? 気配を消して背後から話しかけるなよ」

 わりとひょっこりと側にいたりするから、本気でびっくりするんだよなぁ。

女「はい、渡せてなかったお弁当」

男「あぁ、悪い」

女「じゃあ、僕は消えるよ」

男「ほーい」

 そういって女が教室から出て行くのを見てから、自分も屋上のドアがある場所に向かう。

 ドアは昨今の問題からか、それとも昔からか鍵がかかっていて屋上には行けない。それは必然的に、人通りが少ないことを意味している。

 だから、俺はこの場所が好きだ。階段を上がったところから窓を通してグラウンドが見えるこの眺め。個人的には最高だ。

男「いただきますと」

 弁当の中は、ほめる意味で普通だった。卵焼きにミートボール、ちょっとしたサラダなど。どれもおいしい。

 本当に女は万能だ。勉強も運動も家事もできる、独特の口調さえ慣れてしまえば、いい嫁さんになる。

よし、九時になったら食器洗って風呂はいる。


男「…高校生の割に俺の思考はおっさんだよな」

 それも仕方ないと割り切ってはいるんだけど。もともと両親がほとんど家にいなくてカギっ子。家事自体は嫌いじゃなかったから、子供のころから全部やってて、そうしてると、なんか生活するっていう現実みたいなものが見えて、なんか冷めた考え持つ子供だった気もする。

 それと、親しくしてくれる男友みたいな友達もいるけど、基本的には独りでいるほうが気楽だ。

 育った環境みたいなもんだろうけど、時折無性に独りになりたい時があって仕方がない。今も、そんな感じだ。

男「世間に出た時大丈夫なんかな」

 誰に聞いてるんだと言えば、たぶん自分なんだろう。いわゆる自問自答。

 誰かがいることが苦痛というわけじゃない。でも、誰かが常にいるのは窮屈で仕方ない。

 なんつーか、一匹狼になれない猫みたいな、そんな感じ。

 だから、誰かに会いたくなって、弁当を片付けようとした。

女「いた」

男「女」

女「なんとなく探した」

 そう言いながら階段を上ってきて、俺の横に座る。

今日中には終わらないね。うん。ちょっと行ってくる。ていうか読み返せば読み返すほどミスがあってウガー!


女「おいしかった?」

男「まぁまぁじゃないか」

女「そ」

 そして、話すわけでもなくそのグラウンドが見える窓を二人でぼんやりと眺めた。

 誰かと時間を共有すること、本当はあまり得意じゃない。でも、女と居ると、あんまり苦痛も感じない。

 ただ、穏やかな時間が流れている。

男「そういやさ」

女「ん?」

男「よく、一緒に住もうと思ったな。お前しか家にいないのに」

女「男だったなら、問題ない。昔から行き来してたじゃないか」

 それもそうかもしれないけど。なんていうか。そうじゃない。言いたいことはそうじゃない。

男「それならいいけど」

 でも、なんというか、はっきりも言えない自分にちょっと苛立ちもある。

女「男は嫌なの?」

男「嫌ってわけじゃあないけども」

女「……そう」

男「そろそろ昼休み終わるな。行こうぜ」

女「うん」

 弁当を手に取り、俺たちは教室に向かった。

男「いよーっす」

男友「ぎゃー! 悪魔がきたー!」

男「なんだ、何かあったのか?」

男友「あんな目にあわせておいて何言ってるんだお前は」

 放課後、なんとなく帰りづらかった俺は、剣道部が使ってる部室に訪れていた。

男友「最近そうでもないけど、女友はマジで冗談通じないんだからな」

男「そうかそうか、じゃあ今後率先して女友を呼んでやろう」

男友「俺なんでお前の友達やってんだろうな?」

男「さぁ、物好きなんじゃないか?」

 それに、男友が女友とあんな感じにギャーギャーできるのが、本当はうれしいことを俺は知っている。

男「で、だ。今日は剣道部は自主ってこといいんだよな?」

男友「おう。まー、俺ぐらいしかこないけどなぁ。主将や先輩方も就職やら進学やらで忙しいし、大会も終わったとこだから、ほかのやつらはグータラしてるわ」

男「で、さすが次期主将は気合の入りが違うと」

男友「茶化すな。それに、家の事もあるし、俺にオフの時間はそうないんだよ」

 そう言いながら鋭く、すばやい太刀筋で男友は竹刀を振り落とした。

男友「で、来たってことは話があるってことだろ?」

男「誰かさんが教室で騒がしく聞きだそうとしたから、荒っぽい手段になったからな」

男友「わりぃわりぃ、久々にお前をいじれそうなネタだったもんだから」

男「たく…、じゃあ、ここの椅子借りるぜ」

男友「おう」

 壁に立てかけてあったパイプ椅子に腰掛ける。男友は、そのまま素振りの練習を始めた。
 そうしてるからって話を聞いてないわけじゃない。ただ、いつものことだ。

男「でまぁ、ぶっちゃけると俺もいきなりでどうしてこうなったのかっていうか、現実味がないんだよな」

男友「なんだ、相談なしだったのか」

男「そ。うちの母親から出張の話はなし、女も説明してくれてるんだろうと思ってたらしいけど、昨日メールで『多分私じゃ話聞かないから、女ちゃん説明お願いね!』ってメールが飛んできたってさ」

男友「そして、たまたまだろうけど俺が来て、とどめに同棲させる材料を作ったと」

男「お前のは面白半分で伝えだけだと思うぞ」

男友「家族そろって扱いひどくねぇか?」

 あの人は俺が困ればいいだけだし、俺が女に逆らえないの知ってるからそこさえ抑えればいいと思ってるはずだから、間違いなくついでだと思う。むしろ、まだ良い方に伝えたと思う。

男「そういう人なんだ、あきらめろ」

男友「はいよ。とりあえず、本人の意思抜き同棲ってことか」

男「そうなるな。嫌ってわけじゃないんだけどもさ」

男友「ストレートに言うが、重いってことだろ?」

 その言葉が、嫌に胸へとのしかかる感触がした。

男「そ、だな」

男友「俺は女とは親しいってわけでもねぇし、詳しいわけじゃないけど、ちらっと聞いた話でも俺にはきつすぎるわ」

男「……おい」

男友「怒るな。俺が哀れみとかそういうことで言ってると思うのか?」

男「…悪い」

 女が4歳のころ、両親が事故で亡くなった。それも女の目の前でだ。その後、一緒に暮らしてたおばあさんが育ててくれたが、中一の頃に肺炎をこじらせてしまいおばあさんも亡くなった。
 親戚中が疫病神とたらい回しにされそうになっているところを、うちの両親が駆けずり回って、女の遠縁に当たる親戚の小母さんが形式上引き取ってくれることになった。その小母さんはいい人で、何度か小母さんのいるとこに暮らさないかって誘ってたけど、思い出のある家から離れたくないといって、女は今の家で一人暮らししてる。

男友「まー、そう気構えなくていいんじゃないか?」

男「そーなんだろうけどさ」

男友「お前はぐちゃぐちゃ考えすぎ、1週間一緒に楽しく過ごしました。で、いいじゃん」

男「…あぁ、そうだな」

男友「わかったんなら、とっとと女の家行けよ。そろそろ練習の邪魔になってきた」

男「わーったよ。じゃあ、また明日」

男友「おう」

 パイプ椅子を畳んで壁にかけて、そのまま練習する男友に軽く手を振って部室を出た。

 そのまま帰路につき、玄関の引き戸を開いて中に入ると、おいしそうな匂いがしてきた。ちょっと食欲が湧いて、腹の虫もグーとなる。

 そのまま靴を脱いで、台所に向かうとエプロン姿の女がいた。

女「来たね。ハンバーグはもう出来上がる。ご飯とみそ汁を頼む」

男「お、おう」

女「どうしたんだい?」

 あんまり見たことない笑顔を見せられたら、そりゃあ慌てもする。

 なんて、言えるわけがないだろう。

 ひとまず、言われたとおりに女の隣でご飯とみそ汁を持ってテーブルに置く。

女「ふーむ」

男「どうしたよ」

女「…なんでもないよ。これが共同生活なんだなって、思っただけさ」

男「こっちは一応居候だからな、手伝えるところは手伝うさ」

女「ありがとう」

 もう笑顔もなくなって、普通の人からすると無表情にも見えるが、俺には嬉しそうに感じられた。

男「いただきます」

女「いただきます」

 食器を置く音、食べ物を咀嚼する音、食事に支配されているような感覚。

 いつもなら、テレビを見ながらだらだら食べるから、なんとなく新鮮な気分になる。

女「……おいしい?」

男「あ、あぁ。うん」

女「よかった。好みはお母さまから聞いていたんだけど、心配でね」

男「…そっか」
 
 そういや、ガキの頃、親に好きだって言ったな。ハンバーグ、なんか嬉しそうな顔してたっけ。

女「そうそう、後はオムライスとかカレーとか、子供っぽいものが好きなんだよね」フフッ

男「…それ全部、ガキの頃に好きだっていったやつだからなぁ」

女「なるほど、では今は何が好きなんだい?」

男「しょうが焼きとか、肉じゃがとかかな」

女「なるほど、確かに子供っぽいとは言いがたいものになってるね」

男「まー、さっき言ったのも別に嫌いじゃないよ」

女「そっか」フフッ

男「あー……、なんか水とかある?」

女「麦茶があるよ。淹れてあげよう」

 立ち上がり、後ろの戸棚からコップを取り出すために背を向けた女に気づかれないように、軽く深呼吸する。 

 なんでこう落ち着かないのかわかってる。女がこんなに笑ってるのを見るのが久しぶりすぎて、違和感しかない。

女「はい…、どうしたの男?」

男「いや、なんでもない。あと、ご馳走様」

女「うん、ご馳走様」フフッ

男「…先、風呂入れよ。俺が洗い物やるから」

女「え、構わないよ。男が先に入るといい」

男「お前ね。ここにきてやったのご飯と味噌汁を盛っただけだぞ? これぐらいせんと母さんにどやされるわ」

女「…そっか、そうだね。じゃあ、お願いする」フフッ

 無表情になったり、笑顔になったり、俺の心臓も忙しいが、あいつの表情も忙しく変わる。

 あいつは、この生活を楽しみ始めてるって事で、いいんだろうかな。あいつが、喜んでるっていうなら、まぁいいんだけども。

男「ま、いいや。なんにしても洗っちまおう」

 食器をすべて洗面台に移して、俺は蛇口をひねった。

男「ふいー」

 お風呂に浸かり、引いた布団の上に横になる。和室ってこともあり、なんか田舎の自分の爺さんの家に行った気分になる。昨日は動転しすぎて、そんなこと考えてる余裕もなかったな。

男「(まぁ、こんなことを後六日間続ければいいだけだよな?)」

 男友に言われたとおり、この生活をシンプルに楽しめばいい。それが多分、女が一番楽なはずだから。

男「だー…! これがあいつのいう考えすぎなんだってんだよなぁ」

 俺と女は幼馴染で、それ以上も以下もない。こういう生活になったら、まぁ、突かれもするだろうけど、それだってたいした問題じゃない。

 うん、こんなことを考えてる時点であれだな。

女「男、起きてる?」

男「おう」

女「入っていい?」

男「いいよ」

 なんだろう、こんな時間に。

 襖を開けてパジャマ姿の女が入ってくる。それと同時に、ふんわりと良い匂いも香る。

男「どうしたん?」

女「大したことはないよ。ただ、話がしたいと思ってね」

男「ふーん…。最近どうよ?」

女「いつもどおりだよ。君を朝起こして、学校行って委員の仕事をして。今は、君のお世話が増えたってところだけど」フフッ

男「…まぁ、あんまりそうならないようにするよ」

女「…うん、お願いするよ」

 少しだけ、女が暗くなったような気がした。

男「明日の夕飯、俺作ろうか?」

女「しばらく委員の仕事はないから、全部僕がやるよ」

男「いいのか?」

女「だって、男も家事はやってただろうけど、最近思い切りお母様に頼りきりで、いきなりやれって言われてこなせるとは思ってないから」

 痛いところをつかれる。まぁ、その通りなんだけど。

女「僕の心配をしてくれるなら、寝坊せずに学校行って、まっすぐ家に帰ってきて、夜更かしせずに過ごしてくれれば、安心するよ」フフッ

男「…まるで母親が二人いるみたいだ」

女「男はひどいこというなぁ。誰のせいでこんなことになってると思ってるんだい?」

男「いや、生活習慣が乱れてたのは認めるけどさ」

 だからといってこの生活が必要かは別だろうし、そもそも母さんの暴走のせいなんだけど。

女「認める、けど?」

男「いや、俺のせいだよ」

女「うんうん、素直なのはいいことだよ」フフッ

 いろいろともやもやするけれど、女が嬉しそうにしてるなら、それでいいよな。

女「ふあ~」

男「そろそろ寝たらどうだ?」

女「ん、君が寝たら僕も寝るよ」

男「いやいや、それまで起きてるつもりなのか」

女「君が寝てくれれば良い」

男「…俺は電気つけっぱで寝れないぞ?」

 なんていうか、多分寝ぼけて変になってるな、女。

男「女、もう戻って寝たほうがいいぞ」

女「うゆ。でも男を寝かせないと」

男「寝るから、信じろって」

女「……うん」

男「ほら、じゃあ俺は布団入って電気消すからな」

女「ん……」

 あ、これは本当にしないと出て行かないパターンだ。

男「ほら、布団入って、電気消したぞ。お前も部屋もどれ」パチンッ

女「う、真っ暗」

男「はよ、部屋もどれー」

女「ん」

 とりあえず、俺が寝る準備を見届けたから、素直に部屋を出て行く。

 いつもなら、まだ起きてる時間ではあるけど。

男「寝るか」

 俺はそのまま瞳を閉じた。

 また夢だ。なんで俺はこんなに夢を見ているのか。

 少し成長した女がいる。小学校に入った後ぐらいだろう。俺と手を繋いで歩いて、学校に向かってるみたいだ。

男「(……すげぇ、気恥ずかしいシーン)」

 でも、こんなことがあったのは確かだ。俺達は、本当に仲がよくて、兄弟に間違われるぐらいに。

 いつから、そうじゃなくなったのか。いや、そんなことは考えなくても、あの時からに――。

 映像(ゆめ)から黒へ、黒から白へ、そして白から見慣れぬ天井と視えるものは変わっていった。早く寝たからだろう、かなりの早起きだ。

 耳を澄ますと、包丁のトントンという音がわずかに聞こえてくる。女が朝食を作ってくれているのだろう。折角だし、とっとと起きて驚かしてやろう。

 制服に袖を通し、襖を開けると朝のひんやりとした空気が頬をなでる。心地よさに浸りながら、台所を覗く。当然ながら、女はそこでご飯の準備をしていた。

うん、これ完結するんかな?


男「おはよう」

女「え?」

 そりゃあ当然驚いた様子でこちらを、女は包丁を持ったまま振り返った。

女「び、びっくりした」

男「包丁こっち向けたら危ないって」

女「あ、あ、ごめん」

 相当な動揺っぷりである。すごい、懐かしい気分になってきた。

男「さすがにあんだけ早く寝かされたら目も覚めるっての」

女「そうか、素直に寝てくれたんだね」

男「まぁ、そんなとこだ」

 そうしないと、寝ぼけて暴走しかねないなって思っただけなんだけども。

女「ご飯は、ごめん。作り始めたばかりなんだ」

男「いいよ、待ってる」

女「ん、わかった」

 それからの二日間は何事もなく過ぎていった。もっとも俺が規則正しい生活を送っていたというだけなんだけど。

 男友も、いっそそのまま一緒に住んじゃえばいいんじゃねなどとのたまっていたので、首筋を思い切りついたらもだえたのでそれでいいとしよう。

女友「…できれば、男友について荒っぽいことはしてほしくないのだがな」

男「わーってるよ。ただなぁ、なんか誰かいる時は手が出てしまうというか」

 ただまぁ、その現場を見られた女友に軽く説教を受けている。なんだかんだといっても大切な許婚だから当たり前か。

女友「むぅ、女である私がお前達の関係に差し出がましく口を挟むのは、アレなのはわかっているんだがな」

男「アレでもコレでもねーよ。仲の良い悪友なのは確かだけど、あっちゃいけない関係に見えるってなら、大切の人の為だし、口に出すべきじゃね?」

女友「た、大切な人とはお前な」カアッ

 あらら、ここまで赤くなられるとはなぁ。

男「ただ、あいつが時と場合をわきまえないってのが今回の原因だから、そこんとこは理解してほしいな」

女友「…あの件か。まぁ、あまり広がるべきではない内容だな」

男「その点、女友は約束きっちり守るから、言いやすいけどね」

女友「約束を守るのは当然のことだろう。武道の家に生きる者として、当たり前のことだ」

 やれやれ、お堅いことで。でも、それがこいつのいいとこなんだよな。

女「……何してるんだい?」

男「うわ、びっくりした」

 いきなり背後から抱きついてきて、耳元でぼそりと言われて背中がぞわぞわする。

女友「ふむ、ちょっと男の男友に対する扱いがひどいと感じたので、苦情を入れていた」

女「ふーん。僕は見慣れたけど」

女友「…男、君は良い友人だと思ってる。ただ、度は過ぎないでくれよ」

男「善処するよ」

 というか、女いつまで引っ付いてるつもりだ。

女友「よろしく頼む。そのうち、例の件の話でも聞かせてくれ」

男「ぐふ、お前なぁ」

女友「許婚の軽い敵討ちぐらいしないとな。では失礼する」

 なんだかんだで食えないところがあるというか、嫌いじゃないけれどもね。

女「…ふーん」

男「どうしたよ」

女「…なんでもないよ。男友に対する君の対応のクレームでのお話だったんだろう?」

男「ま、そんなとこ。というかいつまで引っ付いてるんだ」

女「あぁ、楽だったからね。すまない」

 やれやれ、離れてくれたか。

女「…男」

男「どした?」

女「手のひらを見せてほしいんだ」

男「うん? まぁいいけど。手相か?」

女「ま、そんなとこ」

 出した右手を両手でつかみ、ジッと見ている。

女「感情線はわかる?」

男「一番上の濃い線だろ?」

女「そう、小指のエリアにある感情線の下にまっすぐとした縦線があると」

男「あると?」

女「ギャンブルで一発儲けられるらしい」

男「マジで?」

女「君にはないみたいだけどね」

男「えー」

 ちょっと残念。

男「でだ。そろそろ手を離してくれないか?」

女「あぁ、悪いね。男の手はわりとふんわりして暖かいからつい」

 そうやってゆっくりと手を離した。

男「…なぁ」

女「ん?」

男「なんか不思議な気がするんだけど」

 なんていうか、確かにそこそこくっついてきたりはするんだけど、今日はなんと言うか。変だった。

女「気のせいだよ」

男「…なんかあったのか? 聞くぜ?」

女「大丈夫。じゃあ、委員の仕事に戻るから」

 そそくさという感じで、女は教室から出て行った。

>>47の訂正。寝ぼけてきたなぁ。


男「でだ。そろそろ手を離してくれないか?」

女「あぁ、悪いね。男の手はわりとふんわりして暖かいからつい」

 そうやってゆっくりと手を離した。

男「…なぁ」

女「ん?」

男「なんか不機嫌な気がするんだけど」

 なんていうか、確かにそこそこくっついてきたりはするんだけど、今日はなんと言うか。変だった。

女「気のせいだよ」

男「…なんかあったのか? 聞くぜ?」

女「大丈夫。じゃあ、委員の仕事に戻るから」

 そそくさという感じで、女は教室から出て行った。

 女の家に帰ってからも、どこか女は不機嫌そうだった。

男「今日は何?」

女「しょうが焼きだよ」

男「そっか」

 取り留めのない会話が、なぜか続かないし、笑ってくれない。俺、何かしただろうか。

 そのまま食事をしてても、ただ食器の音がするだけで。すごく居心地が悪い。

男「うん、おいしい」

女「……」

男「そういえば、男友がこんなこと言ってたんだけど」

女「そうなんだ」

 もう、明らかだ。何かあったらしい。

男「なぁ、女」

女「……」

男「なんかあったろ、話してくれよ。家族みたいなもんだろ」

今更だけど、ボクっ娘ってこんな感じでええんかね?


女「男の家にはよくしてもらってる。でも、家族じゃない」

男「え?」

女「…すまない。男が悪いんじゃないんだ。少し、少し嫌なことがあってね。八つ当たりしてしまったんだ。寝れば、治るよ」

男「それならいいけどさ。何かあったら相談してくれよ?」

女「……部屋に行くよ。お風呂は先に入ってほしい」

 有無をいわさずに、女は自分の部屋に向かっていく。

 何度か記憶を振り返るが、俺自身が女になんかやらかしたってわけじゃないし、学校の中でトラブルでもあったんだろうか。

男「…ねえよな」

 女がトラブル起こすことはまずないし、嫌ってるってやつも聞いた事はない。何だろう。いったい。

 風呂に入り、そのままベッドに横になる。

 自然と考えるのは女のことで、悶々としていた。

 あいつは辛いことがあると、一人で抱え込んでしまう。それがいつも心配で。

 結局あいつが言ってくれるのを待つだけの自分、心底情けなく。

男「ふぅ…」

 家族じゃないというのは、本気じゃないだろうけど、少しだけショックではある。生まれてからずっと生きてきた奴に言われたんだから、当たり前のことだけれど。

 嫌な思考がグルグルしていると、ガラガラと玄関の扉が開く音がした。こんな夜更けに誰だろう。

 素直に考えて女がお風呂に入っている間に外に出て、戻ってきたってところだろうけど。それ以外だったら、いや、怖い。

 トントン。

 襖がそうやって音を立てて、心臓と同じように俺も少し飛び起きた。

よし、明日にしよう。



女「男、起きてるかい?」

男「お、おう」

 うん、よかった。ちょっと違う方向性のものを考えてたタイミングだったから、心臓痛いです。

女「入っても、構わないかな」

男「あぁ」

 女がうつむき加減で入ってきて、俺の前に座る。

女「すまない。さっきはひどいこといった。謝りきれることじゃないけれど、許してほしい」

男「なんかあったんだろ? いいよ、気にしてない」

女「うん、少し、少しだけ感情が止められなくなってしまった。普段ならどうとでもなるのに、今日は駄目だったんだ」

男「そんな日もあるさ。それにやっぱり、生活が少し変わったから、変化でピリピリしちゃうのかも――!」

 フォローしようと話していると、いきなり女が胸に飛び込んできて、そのまま布団の上に二人とも倒れた。そして、甘い香りとともに、鼻腔をくすぐったのは。

男「お、まえ。酒飲んだのか!?」

女「少しだけ、少しだけさ」

男「いや、この臭い明らかに少しじゃ」

女「君に謝る力がなくて、すまない。少し頼ってしまったんだ」

あとssの本文と雑談のレスは分けて書き込んだ方がいいと思われ
もし何かあった時にまとめサイトにまとめてもらえないゾ
(

ボクっ娘の一人称は僕ではなくボクな気が
まあ細かいことだからどっちでもいいかな

>>53 ありがとう。確かによくないな。ただまとめサイトに載るほど良い作品じゃないから問題ないとは思うけど
>>54 うーん、ボクがある種正当な正当なボクっ娘だとは思うんだが、キャラクター的に幼くなるから僕にしてる。

さて、書こう。

男「お前、昔から気にし過ぎだっての…」

女「すまない。わかっているつもりなんだが」
kそのまま、頭を胸にうずめてくる。俺はそのまま女の頭を撫でた。

女「…嬉しいな。僕が困っていると、君はいつもこうしてくれた」

男「なんだ、覚えてたのか」

女「…君は優しいな」

男「別に、普通じゃねーか?」

女「…だから困るんだけどね」

男「何がよ」

 さぁねと言った後、女は静かに笑った。少しだけ、ホッとする。

女「男、すまない。今しばらく、こうしていてくれないか」

男「いいぞ」

女「ん、ありがとう」

 しばらく頭を撫で続けていると、女から寝息が聞こえてきた。
 だから、俺もそのまま目を閉じた。

女「朝、か」 チュンチュンッ

 そうか、僕はあのまま寝てしまったのだった。側には、一緒に寝ていた男の寝顔があった。

男「……zzz」

女「男……、まだ寝てる?」

男「……zzzz」

女「…幸せそうだね」プニプニッ

男「…ん」

女「覚えてるかい、男。君と僕が、まだまだ小さくて、僕の家にお泊りに来た時のこと。目が覚めたら満面の笑みの君がいて、すごく、ドキドキした。そして、僕の手を引っ張ってご飯を食べて、そのまま遊びに出かけた。思ったんだ、なんで僕と君は家族じゃないんだろうってね」

 眠る男の髪を優しく撫でる。

女「男、君が僕を見てくれなくてもいいんだ。君が、幸せになっていくのを見届けること。それが僕の幸せ」

 そう、それが僕にとっての幸せなんだから。

女「君はよくいってくれたね、家族みたいなもんだって。だから、僕も家族として接するよ。君のことを…愛しているから」

男「…ふあ~」

 何か不思議な夢を見ていたような気がする。でも、思い出せそうにない。最近そんなことが多いな。

男「あれ、布団…。女がかけてくれたのか」

 起き上がって携帯を取り、時間を見ると8時過ぎだった。今日は学校休みだから、まだまだ寝ていたい気もするけど。

男「よくわかんないけど、女がああだった後だしな。下手な心配させられねーか」

 私服に袖を通して、台所に向かう女の姿はなくて、一枚のメモ用紙だけ置かれていた。

『今日、委員の仕事で朝はいない。ご飯は冷蔵庫に入れているから、温めて食べてほしい。お昼には戻れると思う。 女より』

 メモ用紙には、それだけしか書いていないのかと思ったが、右隅に小さく『すまない』とだけ書いてあった。

男「あー、ほんとあいつ気にしすぎなんだよなぁ」

 仕方ない、そんなつもりなかったけど、飯を食べたらあいつを迎えに学校行くか。

 学校に入ると、人の姿はまばらだった。運動系の部活はメインになる大会が終わったということもあるのだろう、あまり姿が見えない。

 ただ、これから大会が始まるが吹奏楽部の練習する音色が聞こえてきて、朝だって言うのに放課後の気分を味わっていた。

 女が入ってる委員が集まる部屋を覗いてみると、忙しそうにしている女の姿が見えた。まだ、終わる様子はなかったので、自分の教室に戻る。とりあえず、女にはメールで教室で待つとだけ送っておいた。

 しかし、本格的に暇だなぁ。何か本でも持ってくればよかった。

クラスメート(女)「あ、男じゃん」

男「うーっす」

クラスメート(女)「男ってなんか入ってたっけ?」

男「実は先生に呼び出しくらってな…」

クラスメート(女)「あー、最近遅刻多いからねー」

男「うん、ごめん。ジョークなんだ」

 なんで嘘つくのさとクラスメート(女)は笑った。

クラスメート(女)「それはそれとしてだね。私はなんでここにいると思う?」

男「補習だろ?」

クラスメート(女)「おおう、ストレート。まぁ、そうなんだけどさー」

男「お前は学校的に見れば素行が悪いからなぁ」

クラスメート(女)「はっはっは、やりたいことやってたら学校なんてこれないさー」

男「バンド、忙しいのか?」

クラスメート(女)「これでもウチラ人気あるんよ。私もこれでやっていきたいし、そしたら練習するしかないからさ。勉強の時間も惜しい」

 せんせーには悪いと思ってるんだけどさと、罰が悪そうに髪をかきながらクラスメート(女)はそういう。

男「ストレートに聞くけど、親御さんどういってるんさ」

クラスメート(女)「私末っ子でしょ? もう自由にやれやーっていう感じ。最初はすっごい反対してたけど、がんばったらわかってくれた」

 そのがんばって、がどれほど苦労したかはなんとなくわかった。

男「そっか、クラスメート(女)はすげぇな」

クラスメート(女)「そうかな?」

男「俺はいまだにやりたいことも見つからないしねぇ」

クラスメート(女)「…なんとなくだけど、本当は見つけてるんじゃない?」

男「うーん、なんで?」

クラスメート(女)「勘だから説明なんてできないって」クスクスッ

 こういうとこがよくわからないやつなんだよなぁ。

クラスメート(女)「そういえば昨日、女ちゃんに何見てもらってたの?」

男「手相のことか?」

クラスメート(女)「そ、私も女なので占いは気になるのです」

男「ギャンブル運があるかないかっていうやつだったぞ?」

クラスメート(女)「それはそれで気になるので、是非お教えいただければと」

 おう、すっげぇ目が輝いた気がするぞ。

男「えーと、感情線ってあるだろ一番上の奴。で、小指のあたりの場所で感情線より下に縦線があればそうなんだってさ」

クラスメート(女)「おおう、そもそも私は線が薄くてわからない!」

男「えー」

クラスメート(女)「ねー、あると思う?」

 右手の手のひらを見えるように向けてくる。近づいてじっくり見ると。

男「や、マジで薄い」

クラスメート(女)「でしょー、生命線とかあんのかって感じ」

男「うーん、悪いちょっと触るぞ」

クラスメート(女)「おっけー」

 じっくり見てみると、なんかそれらしい縦線が一本。あんまりにも薄いから保証がまったくないんだけど。

男「それらしいのが、ある、かな」

クラスメート(女)「おう、これは早速宝くじを買いに」

男「当たったら飯おごってくれな」

クラスメート(女)「外れた時に飯をおごってくれるなら考えるよ」


女「男…」

男「ぬわい! なんで背後から話しかけるかね?」

クラスメート(女)「女ちゃん、委員終わったの?」

女「ん、そんなところかな」

男「俺は無視ですか…」

 そう言っていると、女は背中にぴったりとくっついてきた。

クラスメート(女)「おー、お暑いですなー」

男「茶化すなっての」

女「男は暖かいからね。冷え性にはちょうどいい」

クラスメート(女)「…なるほど、男はホッカイロ君ですか」

男「扱いがひでぇ」

クラスメート(女)「じゃー、そろそろ戻らなきゃ。まったねー」

男「おう」 

 学校からの家までの帰り道、なぜか俺は女と手を繋いで帰っていた。

女「昔を思い出すね」

男「あー、まー。そうだな」

 俺としてはすごい気恥ずかしいのだけど。ただまぁ、なんか機嫌悪くなってたのが良くなってるから良しとしよう。

男「これから、スーパーに行くのか?」

女「そうだね。食材の買出しをしなきゃいけないから」

男「今日は何を作る?」

女「肉じゃがだよ」

男「うん、楽しみだ」

 ざあっと風が流れ、通り過ぎる公園の木々を揺らす。

女「……男、覚えてる?」

男「何を」

女「この公園でよく遊んだじゃないか」

 なぜか、ふてくされたかのように言う。

男「覚えてるよ」

女「本当に?」

男「お前が砂場で、俺がそこらへんで走り回ってただろ?」

女「ん、なんだ。ちゃんと覚えてんだね」フフッ

 思い出したのは、本当につい最近のことだけど。

女「あの頃は、楽しかったなぁ」

男「そりゃあ良かったな」

女「今も、楽しいには楽しいけどね」

 ぎゅっと、握っている手が強くなる。

男「どうしたよ?」

女「ん、あ、なんでもない」

男「本当に、大丈夫か?」

女「気にしないでいいよ。その、僕自身の問題だから」

 だから気になるっていうんだけど。

女「スーパーは僕一人で行ってくるよ。男は戻ってて、お迎えありがとうね」

男「あ、おい。行っちまった」

 本当に、どうしたんだろうな。あいつ。

 家に戻って、ご飯を食べて、家事手伝って、一応女はいつも通りになってて。

 でも、ずっと感じる違和感がひどくて、布団の悶々としていた。

男「(……言い出すのを、待つしかないのかな)」

 仕方なく、そう結論をつける。

 しかし、それにしてもなんでほかの奴といる時に引っ付いてくるのか。あれ、本気で困るんだよなぁ。回りも茶化してくるし。

 あいつは家族みたいなもんだから、別にいいんだけど、アレだから彼氏の一人もできないんじゃないだろうか。わりと、モテるって聞くからそういう相手いそうなもんだけど。

 そういうのに興味はないのかな。きっと。

 そんなことを取り留めなく考えながら、すっきりしないまま闇に落ちていった。

さて、そろそろいったん洗濯やらしてこよう。今日中に終わればいいけれど。

女『…僕は、ついに一人になっちゃったんだね』

男『馬鹿やろう! 俺と母さん達がいるし、小母さんだって良い人じゃねえか!』

女『僕は……人を不幸にするみたいだから』

男『あんのくそな親戚のいってることなんて放っておけよ! 縁切れて清々しただろ!』

 あぁ、あった。こんなことがあった。

女『いいんだ。もう、何もかも』

男『…よくねぇよ!』

女『男…』

男『お前は家族みたいなもんだからな! 家族は助け合うのが当たり前だろ、何があっても、お前を守ってやるから!』

 そうだ。だから、お前が変だと、俺は、すごく悲しいんだ。

 なぁ、女。お前は、いったい何を、悩んでるんだ。

女「…起きて」

男「んあ…、あれ?」

女「嫌な夢でも見ていたのかな。すごくつらそうな顔をしていたよ」

男「あ、あぁ…。多分な。ちっと忘れちまったけど」

 最近、夢で大切なことを忘れたり、思い出したり、疲れているんだろうか。

女「ん。それならよかったのだけれど」

男「まぁ、起こしてくれてありがと、夕飯だろ?」

女「うん、ちょうど出来たよ。食べようか」

男「なぁ」

女「ん?」

 本当は今じゃないんだろうけど、でも感情が先走る。

男「本当に、何もないんだよな?」

女「しつこいよ」

男「どうもそう思えないからだよ」

女「……僕が悪いんだ。それだけだよ」

 答えてくれない、か。

女「…でも、男が僕を気にしてくれて、すごく嬉しいよ」

男「ならいいんだけど」

女「男は男のことだけ考えていれば良い……。さぁ、ご飯を食べよう」

男「…あぁ」

 俺は、そんなに頼りないのか。女。

女「ふぅ」

 男とこの生活も半分を過ぎて、もう残りわずか。

 うん、この生活はすごく楽しいし、すごく嬉しい。だから、ゴムのボールを抑えるように隠してた気持ちが、今更反発してきた。

女「…男、心配させちゃったな」

 男は優しい。とても、優しい。男に自覚はないだろうけど、それで救われてきた人を、僕は何人も知ってる。だから、男の周りには自然に人がいる。

 そう、だから男が異性と仲良く話しているのは普通のことなのに、それを見てしまった僕は、どす黒い気持ちにまみれてしまった。

 いつも見慣れていたはずの風景、でも今は僕の家で一緒に過ごし、ご飯を食べ、他愛もなく笑ってすごせる日々。どこか、男を誰よりも独占しているようで、それがどこか安心で。

 わかってる、わかっているはずなのに、理解と気持ちが崩壊してる。

 僕が望むのは、ただ男が幸せになることだけ。こんな気持ちは、間違っているんだ。

 男には男の人生があるし、僕はもう十分に男やご家族様、そして叔母に救われた。これ以上望むのはお門違い。

 僕は男にふさわしくない。こんなにドロドロとした黒い感情がうごめくような人間より、もっとかわいげがあって、優しい人と結ばれるべきなんだから。

 僕は、ただそれを静かに見守っていけばいい。それが僕ができる恩返しみたいなもの。

女「明日は、がんばらないと」

 もしそんな光景を見たとしても、冷静に努めよう。

 休みが終わり、憂鬱な気分を引きずりながら俺は学校生活をすごしていた。昼休みを告げるチャイムが鳴り、女の作った弁当を食べ終えて、ぼんやりと窓から見える景色を眺めている。

男友「どうしたんだ」

男「…ん、あぁ、男友」

男友「ふぬけたな」

男「…かもな」

 やれやれという様子で、空いている隣の椅子に男友は座る。

男友「お前がそんなんだと、俺も刺激がなくて退屈なんだよ。どうせ、そのことなんだろ?」

男「お前にしては、上等な聞き出し方だな」

男友「どう考えてるんだよ」

男「俺って、そこまで信用ないのかな、ってさ」

男友「…俺から言わせれば、信用あるから、だろ」

 普段、部活での活動でしか見せない真面目な顔で男友はこちらを見ている。

男友「あいつは人に負担かけたがらないし、男だったらなおさらだろ」

男「まぁ…うん」

男友「そういう意味では急がなくてもいいんじゃないか? 整理つけたら話してくれるだろうさ」

男「そう願うよ。ありがとよ」

男友「なーに、しおらしいお前を見るっていうのも、新鮮なだけだからな」

 ニッと、いつもの笑顔に男友は戻る。

男友「あぁ、あとそれとなーく聞いて回ったけど、あいつがトラブルはなさそうだぜ」

男「そうなのか」

男友「だからまぁ、今のその状況にかかわる何かなんじゃねーか? たとえば風呂をのゴフガッ!」

男「お前さ、さすがに早すぎるだろその切り替えは」

男友「それお前がいうんか」

男「禁則事項プラス犯罪行為を噂を耳に入れるわけにゃいかないからなぁ」

 殴り倒した男友を起こすために近づく。

 

委員長「うー、重い。前見えな…キャア!」

男「危な―!&男友「ごふっ!」

 大量の書類を持って中に入ってきた委員長が、思いっきり男友の腹乗り上げ、バランスを崩して前に倒れるのを受け止める。

 バサバサと書類が舞い、勢いもあって支えられず背中から床に思いっきり抱きしめたまま背中を打ちつける。

男「いつつ、委員長大丈夫か?」

委員長「あ! ごめん! 怪我はない!?」

男「へーきへーき、それよか委員長に怪我あるとまずいよな、女だし」

委員長「うん、大丈夫。って、ごめん離れるね」

男友「お二人、できれば俺の心配も…、わりと素で痛かった」

男「そんなところで寝転がってるお前が悪い」

男友「お前がそれをいいますか」

 やれやれと、目線をあげると、そこには女の姿があった。

男「え?」

 俺の目に見えたのは、泣いている女の姿だった。

 女も俺が気づいたことがわかり、あわてたように走り去っていく。

委員長「どうしたの、男君」

男「いや、今そこで女が居て…」

委員長「え? あれ、いないよ? とりあえず離れるね。後、男友君大丈夫?」

男友「ついでかー、俺はやっぱりついでなのかー」

男「……」

 見間違いじゃない。

男「委員長わりぃ、ちょっと行ってくる」

委員長「え?」

 そのまま女が駆け出した方へ走る。

 学校中走り回ったが、結局女を見つけられず昼休みが終わった。戻ってきたら女が教室に居るんじゃないかという考えは、あいつの席が空席ということで裏切られた。

先生「でー、ここはTにおける接線を立てて、Tが求まる式を立てる。だからこの点とこの点とこの点が出るわけねー」

 授業の内容が頭に入ってこない。目に映るのは、いつも座ってるあいつがいる席だけだ。

男友「せんせー」

先生「なーに、男友」

男友「男にやられた傷がうずくんで、保健室いってもいいすかー?」

先生「ふーん…」

 なぜか、じっくりと男友じゃなくて、先生は俺をじっと見てから。

先生「いいわよー。男、一応あんた責任とって保健室もまで行ってあげなさい」

男「え?」

男友「お、頼むわー。わりと大ダメージなんで肩貸してくれー」

男「え、お前。ちょっと」

 どっちかというと俺はひきづられるようにして教室を出された。


男「お前、別に平気だろ!?」

男友「委員長プラス書類の重量で踏みつけられたとこ以外はな」

男「あ、それは大ダメージだったんだ」

男友「お前のは派手なだけで、ダメージないようにしてくれるからなぁ」

男「じゃない。それならなんでだよ」

男友「お前、俺の前の席じゃん? 上の空だったり、妙にそわそわ落ち着かないそぶりされると、こっちも集中できねぇっての」

 そのまま補助の必要もなく、男友は階段を下りていく。

男友「おら、一応怪我人の付き合いなんだからお前もこいよ」

男「あ、あぁ」

男友「まぁ、お前が保健室まで一緒に来て、それいこうどこに行こうが、俺は知ったこっちゃないけどな?」

男「」

男友「まー、先生も知ったこっちゃないから自己責任で頼むぞ?」

男「……ひとつ聞くけど、お前いつ先生と話した?」

男友「話してはねーぞ? メールだ」

男「そういう関係なのか? 女友が泣くぞ?」

男友「あの人は、うちの道場に剣道やってて、親父にしごかれてた人だよ。そういうことで連絡先も知ってるってだけ」

男「あぁ、それならいいんだけど。わりいな」

男友「何があったかわからんけど、とりあえず、あの時女いたんだろ? 俺気づかなかったけど」

 あぁ、といって俺は頷いた。

男友「思いっきり委員長抱きついてたし、お前も抱きしめてたからなぁ」

男「それが、泣く理由だったのかな」

男友「」

男「お前にはいったけどさ、俺は女が好きだよ。でも、あいつは多分俺を家族としてしか、見てないだろうし」

男友「…女も苦労するわけだはなぁ」

男「何がよ?」

男友「気にするな、学校中は探したんだろ?」

男「くまなくな」

男友「とりあえず学校に居たら連絡してやる。じゃあ、怪我人は保健室に行ってくる」

 はぁ、俺はいつもこうやって助けてもらってるな。情けなくなる。

男「しかし、どこにいるんだろうな」

 学校を走って飛び出し、いる場所を考えてみる。

 女の行動範囲は広くない、せいぜい近所のスーパーに行くぐらいで、家にいる。知ってる範囲で親しい友人もいない。

 なら。

男「公園、かな」

 まったくもって確証はない。けど、いるとすればあそこな気がする。そう思って、両足の力をよりこめて走り出した。

 公園に飛び入ると、そこには誰もいなかった。少しさびたジャングルジムにも、砂場にも人の気配はない。

男「まいったな、ここじゃないならどこにいるっていうんだよ」

 ここは小さい公園だ。人目見渡せば誰かがいれば気づける。

 それでも、いるんじゃないかとウロウロしながら、次にいそうな場所を考えて。

男「だめだ、思いつかねぇ」

 ありえるなら家だけど、そうじゃない気がしてならない。当てもなくどっかいったってんなら、もうどうしようもない。

 本当はあの泣いた姿も一瞬過ぎて、勘違いなんじゃないかって気もしてる。男友から保健室で寝てたぞーっていうメールが届くことを期待してる自分もいる。

 けど、やっぱり脳裏に焼きついてしまったあの泣き顔が、俺の頭が離れそうになかった。

男「あ、そうだ。電話すりゃいいじゃん!」

 動転してて浮かんでなかったけど、携帯を取り出して、女の電話番号にかける。

 数コールしても出る気配はなく、そしてなぜか後ろからバイブ音が聞こえてきた。

男「うひゃ!」

 首筋にひんやりとしたものが触れ、思わず声を出す。

女「サボりとは、いけないな」

男「…お前が言うのかよ」

女「…一応先生には早退すると電話で伝えておいた」

 妙なところだけは律儀だよな。

女「はい、ヴァンタのグレープ味。好きだっただろう?」

男「あぁ、悪い」

女「気にしなくていい。あそこのベンチに座ろうか」

男「あぁ」

 いわれるがままに、女についていく。何か言うこともなく、お互いにジュースの缶を開けて、一口飲む。

女「……すまない」

男「どうして泣いてたんだよ」

女「それは…、その、気のせいだよ」

男「嘘つくなよ」

男「いくらなんだって、泣くのは変だろ」

女「それは、あくびとかでたまたま」

男「あの状況で? そうだとしても何で走っていったんだよ」

女「……」

 女はしゃべろうとはしてくれない。それが、俺にはもどかしい。

男「俺は、そんなに頼りねぇか?」

女「違う! ……、違うんだ」

男「…でも、話せないっていうなら、俺は悲しい」

女「ただ、僕が僕の感情に振り回されてるだけなんだ」

男「どんな感情だよ」

 さらに問いただそうとすると、女は持っていた缶ジュースを投げ捨て、俺に抱きついてきた。

男「な、どうしよ」

女「を……ない」

男「え?」

女「男を、誰にも、渡したくない」

 さらに、どこにも行かないように俺を抱きしめる。

男「ど、どういう…」

女「男を僕だけのものにしたい、誰の目にも触れさせず、僕だけの、僕だけの存在に!」

男「それ、は」

女「怖いんだ。男が僕から離れていくことが、怖いんだ」

 そして、嗚咽をあげながら、女は泣き始める。

 俺はそれを優しく抱きしめてやることしかできなかった。

 女が泣き終えるのに、何時間も経ったような、自分にはそんな長い時間に感じられた。

女「すまない。本当に」

男「…いいよ」

女「僕は本当に救えない人間だよ。君がうらやましくて仕方ない」

男「なんでだよ」

女「君の周りには、多忙とはいえ家族がいる。それだけじゃなくて友人もたくさんいる。それに比べて、僕はどうだろう。家族はもちろんいない、親しい友人が君だけだ。君がいなくなったら、僕は本当に孤独になる。でも、皆に囲まれて笑っている君を見ていると、孤独な自分を比べてしまう自分がいるんだ」

 本当にひどい話だよと、自傷気味に女は笑う。

男「そうかな。いうほど友達っていうか、ただのクラスメートだぜ?」

女「それでも、そうやって話ができる人間がいる。ずっと嫉妬してるんだ。君に対して、僕はいろんな感情が織り交ざって、時折よくわからなくなる」

 男「いうほど親しいってわけじゃないぜ? まー、クラスの連中とはそれなりに話すけど、友人って言えんのはわずか出しさ」

女「君がそう思ってるだけだ。その、き、君はやっぱりモテるようだし」

 それは本気で覚えのない話だぞ。

女「…その顔は自覚がなさそうだね」
 
男「そんなら、彼女の一人でもとっくにできてるだろ」
 
女「……それとなく、僕が妨害していたとしたら?」
 
男「へ?」
 
女「わざと学校で抱きついたり、手をつないでみたり、そんな場面を見せられたら、略奪愛が好きな女子でもなければあきらめもつくだろう?」
 
男「お前、あれわざとやってたのか」

よし、トイレとシャワー浴びてくる。終わらせるぞー

女「…………それもあるし、でも君に触れてもいたかった。離れていきそうで、僕は怖いんだ」

男「離れるって」

女「男は優しい。とても、ね。その優しさが僕以外の女に向けられるのが、嫌で嫌で仕方ないんだ。僕は、もう嫉妬にまみれていて汚れている。君が幸福であることへの妬み、君がだれかに取られそうな恐怖、君を思うと、心が張り裂けそうになる」

男「……」

女「でも、いいんだ。僕は君を見守る。君が幸せになるのを、そっとね。この矛盾した気持ちを抱えて…」

男「…お前さ」

女「ん?」

 泣きそうなくせに、無表情を取り繕うたって、そうはいくか。

 ガキの頃からの付き合いだ、ある程度のことはわかる。

おーい。>>1がトイレ浴びるってよーw
えんがちょーーwww

 だから、俺は女を強く抱きしめた。

女「ど、どうしたんだい?」

男「お前は、俺がほしいんだろ」

女「……」

男「俺は、お前がほしい」
 
女「」

男「なら、こうすりゃいいんじゃないか」
 
女「ま、ま、待って!」
 
男「何をだよ」

女「ちょっと離れさせて、逃げないから!」
 
 まぁ、うん。無理強いはよくないよな。
 
 男が無理強いしなきゃいけないとこって、難しい。名残惜しいけど、離す。

>>90 おう、浴びてきたぞ

女「う、嘘じゃないよね?」

男「俺は、そこまで遊びなれてない」
 
女「こ、これ以上本気になってしまうよ?」
 
男「俺も本気だぞ」
 
 顔が真っ赤で、すごくかわいい。

女「だってほら、小学校時代同級生のアヤちゃんが好きって言ってたじゃないか」

男「それ、いくらなんでも古すぎないか?」

女「そのことだって、僕はかなり傷ついた!」

男「お前が俺を好きだって言わないからわかんなかったんだよ!」

女「好きなんかじゃない! 愛してるんだ!」

 おう、これは鋭いボディブロー。俺の顔も熱くなってきやがった。

男「お、お前。ストレートすぎるだろ!」

女「これぐらい言わないと、君が気づかなかったからじゃないか!」

男「俺はてっきり、お前は俺のこと家族としてしか見てないと思ってんだよ!」

女「家族だからって、あんなにベタベタくっつくわけないだろう!?」

 そういわれればそうなんだけれど。

男「ははは」

女「何がおかしいのさ!?」

男「いや、多分男友がやれやれ、ようやっとかとか、言いやがるんだろうなぁって思ったらおかしくなった」

女「え?」

男「俺達さ、多分、ずーっと昔から両思いってやつで、それぞれ勝手に相手は自分に興味ないって思ってさ」

女「……」

 そう、俺達はどうしようもなく似ているんだ。

男「それでさ」

女「うん」

男「俺達、これで晴れて恋人同士だよな」

女「……僕でいいんだね?」

男「お前じゃないと嫌だ」

女「男も、ストレートじゃないか」

 そしてようやっと、最近見てた笑顔が女に戻った。

パソコンが壊れた。死にたい。

携帯でかけるとこまでやるよ。

まぁ、学校にそのまま戻ることはなく、俺達はそのまま女の家の、俺が寝泊まりしてる和室で取り留めもなく話し続けた。

最近は当たり前になってたけど、ここんとこほとんど見ることが笑顔が、嬉しくてたまらなかった。
外は夕暮れになってきたのか、射す光が紅くなり、それに照らされる女が妖しく映える。それが俺にはたまらなく綺麗だった。

女「どうしたんだい、男」

男「女が、綺麗だからさ」

女「僕が?」

男「うん、綺麗だ」
そう聞いて、女は頬を赤らめる。

女「男が、そこまで口が上手いとは知らなかったよ」

男「そういうんじゃないっての」

俺達はそのまま学校に戻ることはなく、女の家に帰り、俺が寝泊まりしてる和室で取り留めもなく話し続けた。

時間はいつの間にか夕暮れ時になり、紅い日差しが女を照らす。その光景がたまらなく綺麗だ。

女「どうしたんだい、男?」

男「女が、綺麗だなって」

そう言われて、女は頬を赤らめて。

女「男が口が上手いとは知らなかったよ」

男「いや、本当に綺麗だ」

惹かれるように右手が伸び、女の頬を触る。

女「男」

男「何?」

女「男なら、構わない」

男「」

女「君がしたいこと、全て受け止める」

俺達はそのまま学校に戻ることはなく、女の家に帰り、俺が寝泊まりしてる和室で取り留めもなく話し続けた。

時間はいつの間にか夕暮れ時になり、紅い日差しが女を照らす。その光景がたまらなく綺麗だ。

女「どうしたんだい、男?」

男「女が、綺麗だなって」

そう言われて、女は頬を赤らめて。

女「男が口が上手いとは知らなかったよ」

男「いや、本当に綺麗だ」

惹かれるように右手が伸び、女の頬を触る。

女「男」

男「何?」

女「男なら、構わない」

男「」

女「君がしたいこと、全て受け止める」

俺達はそのまま学校に戻ることはなく、女の家に帰り、俺が寝泊まりしてる和室で取り留めもなく話し続けた。

時間はいつの間にか夕暮れ時になり、紅い日差しが女を照らす。その光景がたまらなく綺麗だ。

女「どうしたんだい、男?」

男「女が、綺麗だなって」

そう言われて、女は頬を赤らめて。

女「男が口が上手いとは知らなかったよ」

男「いや、本当に綺麗だ」

惹かれるように右手が伸び、女の頬を触る。

女「男」

男「何?」

女「男なら、構わない」

男「」

女「君がしたいこと、全て受け止める」

うおう、反映されてないと思って書き直したら連投やら変な状態に

とりあえず>>99で進めるよ

我慢なんて当然できるわけもなく、女の口を奪っていた。

女「ん……ふ」チュッ

女は恐る恐るという感じに、舌を差し込んでくる。だから、俺は絡めるように女の舌を舐めた。

女「んん、あ…」ジュルチュプ

女「ふ、ん……んく」チプジュプ

女「は…あ」

息が苦しくなってお互い少し離れる。といってもすぐ目の前で高揚し、瞳を潤ませる女の姿がある。
女「すごいね、君のこと以外、なにも考えられなくなる」

男「あぁ、俺もだ」

女「男、もっともっと君が欲しい」

男「あぁ」

女「その代わり、僕を捧げる。受け取って欲しい」

男「あぁ、全部くれてやる。その代わり、女は一生俺のもんだからな」

深く、深く繋がるためにもう一度ディープキスをする

女の子の匂い、舌先に感じる女の唾液、そして柔らかな身体。そのどれもが、俺を狂わせるように刺激してくる。

女「ふ……、は………ん」ブヂュルチュピッ

女も俺を離さないように後頭部に手を回して抱きしめてきてる。

女の中に俺を塗り込むように、舌先、歯茎、口内の至る所を舐めまわす。

女も俺から離れたくないように、俺の舌を追いかけ、絡みつく。

呼吸するのも忘れ、本当にまさぐり合う。

長い時間そうしていた気がして、名残惜しく口を離す。

女「はぁ…はぁ…」

男「はぁ…はぁ…」

お互い息をするのも忘れていて、ただ荒く息づかいする。

女「…脱ぐ、よ」

男「…っ!」

どうなるかわかっていたはずなのに、俺は思わず息を呑んだ。

衣擦れの音と共に、女の肌が露わになる。

和室、夕日の日差し、綺麗な肌、言葉にすればそれだけなのに、なんでこんなに幻想的なのか。女の一挙一動に目が離せない。

女「男、その、目が怖いよ」

男「あ、悪い。すげぇその、女が綺麗だから」

その言葉を聞いて、女は照れたように笑い。

女「やっぱり、君はスケコマシなんじゃないかな」

男「違うって、お前本当に綺麗だ」

女「…嬉しいよ」

バサリと、スカートが落ちる。

ブラとパンティだけになった女。

女「ねぇ、男」

男「ど、どした」

女「残りは、男が…、やる?」

男「」

言葉は出なかった。

女「その方が、男に求められてるみたいで、いいかなって…、ダメかな…」

男「や、やるよ」

女「…ありがとう」

女は背中を向けて、こちらに近づいた。
男「ここだよな」

ブラの金具部分を掴む。女は何もいわず、ただ赤くなっていたから、そのまま外した。

露わになった小振りな胸を、女は両手で隠す。

女「ごめん、やっぱり恥ずかしいものだね…」

男「いいよ、これからたくさん見れるから」

女「…うん」

ゆっくりと、両手をパンティに添えて。うわずりそうな声を抑えて。

男「腰、浮かせて」

女「ん…」

浮いたのを確認して、パンティをゆっくり脱がし、女を生まれた姿にした。

女「次は男の番、だね」

男「お、おう。脱ぐぞ」

女「待って、僕が、脱がせる」

そういってしばらく振り向かず、女は深呼吸した後、意を決したように胸から両手を外して振り向いた。

しっかりと見える乳房と、体制でわずかにしか見えない茂みが映り、全身の血流は加速していき、当然。

女「僕で、興奮してるんだよね?」

テントの張ったあそこを見ながら、恥ずかしさが折り混ざったように女は聞く。

男「今のお前に欲情しなかったら、男じゃない」

女「こんな僕でも、君を興奮させられて、嬉しいよ」

そう言いながら、俺のYシャツのボタンを一個ずつ丁寧に外していき、脱がす。
中のTシャツも丁寧に脱がし、そのまま胸板に頭を埋めてきた。

女「男の、良い匂いがする」

男「汗臭いだけだろ」

女「人には、そうかもしれないね。でも僕には、とても安らぐ匂いだ」

女、意外と匂いフェチなのかな。

女「それと、ここからとってもエッチな匂いがする」

男「おふ」

油断していたところに、服の上から股間を触られる。

女「すごく、硬い。それとピクピクしてる」

男「あんま触るな、その…、出そうになるから」

女「ん、わかった。僕も、僕に出して欲しいから我慢する」

ベルトを外し、そのままズボンごとトランクスも脱がされ、ビンといきり立つ俺自身が現れた。

女「すごい…、こんなになるんだ」

股間に顔を近づけ、クンクンと匂いを嗅がれる。

女「こっちはすごくエッチな匂い、頭がどうにかなってしまいそうだ」

男「あふっ」

亀頭にヌメリとして感触がはしり、変な声がでる。その匂いに当てられたのか、女がペロペロとなめ始めた。

女「男、気持ちいい?」レロッピチュッピチャッ

男「や、は。出ちまうよ」

女「…出して」プチュッチピッレロ

男「え?」

女「僕は、多分変態だよ。君にされることを想像して、何度も達した」ハムッチュルッレロッ

男「そ、うなのか」

女「その時に、君の精の味も想像した。だから、出して欲しい、僕の口へ」ジュポッジュルッジュジュッ

股間から立ちのぼる快感にあらがう術なんかない。

女にしてもらえているんだという意識も折り混ざり、高みはあっという間だった。

男「ふぅっ!」ドクドクドクッ

女「ん、んん!」

射精が自分でやるよりもやたらと長い。こんなに出るものだったろうか。

女「はー、はー、ん。ゴクッ」

そして、女は受け止めたそれを飲み込んだ。

女「不思議な味、でもイヤじゃない」

男「大丈夫か? 結構出しちゃったけど」

女「平気だよ、君がここに出すことを望むなら、幾らでも受け止めてあげる」

男「お、おう」

さっきまでの快感を思い出して、出したばかりのそこは、また硬度を高めていく。

女「また僕に欲情してくれたのかい?」

男「あぁ、今度は俺の番だな」

そのままゆっくりと女に押し倒す。

終わらせるか~と思ってたのに、なんでこのシーン書いてるんだろう

女の胸に吸いつくと、身体をピクリと震わせた。

女「…男」

切なげな声が頭に響き、吸いつくのに没頭する。

左手で空いた胸を揉み、右手はゆっくりと秘部を探る。

女「あ…、は」

普段、抱きつかれている時はあまり考えないようにしていた、その柔らかさに直で触れていることが頭を回らなくさせていく。

ただひたすらに、自分を染み着かせるように女の身体を弄る。

いつまでそうしていただろう。気付けば女がすごく息を荒くし、眼がトロンと熱を帯びていた。

女「激しすぎるよ、男」

男「わ、悪い」

女「僕、我慢できないよ。早く、きて…」

両手を差し出し、両脚をゆっくりと左右に広がる。

眼前に広がるそれは、人型の美しい花に見えた。

妖しいそれに招かれるまま、その中に身体を入れると、両手が首に巻き付いてくる。

女「…僕を、君のものにして」

耳元で囁かれたそれで、何かが途切れる音が、した。

男「はぁ、はぁ…!」

女「ん、く…、ふ!」

女のそこにあてがったそれを、躊躇なく突き刺す、前後する。

幻想に酔った頭と、快楽に支配された肉体が、理性を戻すことを許さない。

ただ、ひたすらに甘い蜜を貪るように、女を犯していく。

女「おと、こ」

男「はっはぁ、はっ!」

女「嬉し、いよ、男」

何かの声がする。

女「君の、ものに、なれたん、だね」

呆けた脳みそで見えたのは、泣いている女の顔だった。

急速に思考が戻り、身体が止まる。

女「どう、したの?」

男「俺、お前のこと考えないで…」

繋がっている部分を見ると、その証である紅い滴が流れ出ていた。

女「いいんだ、君が、僕の身体で気持ちよくなって、くれるなら」

男「…俺だけ、気持ち良くなっても、意味ねぇ」

腰を激しく動かしたくなる衝動を堪えながら、知識をフル動員して、首筋を舐めたり、わき腹をわずかに撫でてみたり、胸を優しくこねるように揉んだり。女が気持ちよくなるように、丹念に触れる。

女「ふ…、く、あ、は」

声に熱を帯びてきた気がする。

男「少し、動くぞ」

女「うん…」

ゆっくりと、自分ではじれるぐらいの速さで動かす。

女の中は気持ちいい、どう気持ちいいかなんて説明できないけど、暖かい。

男「どう、だ?」

女「ん…、あまり、ピリッとはしなく、なった」

男「気持ちよく、なろうな」

深くキスしてみたり、太ももを撫でてみたり、女が気持ちよくなるように頑張る

女「ん、すごい、男に大切にしてもらえてるの、はぁ、わかるよ」ハァッハァッ

男「当たり前だろ」ハァッハァッ

女「さっきの、んく、貪欲に求められてるより、こっちの方が幸せだね」ハァッハァッ

男「あぁ、もっと幸せになれ」ハァッハァッ

だんだん、腰の動きが早くなる。快楽にあらがえなくなる。

そうなっても、女は俺の全てを受け止めるくれる。

男「女、そろそろ…!」ハァッハァッ

女「いいよ、そのまま、僕に…!」ハァッハァッ

そして最後の最後の理性で、寸前に抜き出し、欲望を女にぶちまけて汚した。

眠いので今日はここまで。

とりあえず、完成だけはせんとなぁ

お互い、息を整えるのに、少しかかった。

女「中に出しても、よかったんだよ?」

男「俺ら学生だろ、そんな無責任な真似できるか」

女「君は、優しいね」

そう言って、笑う女の顔は、さっきまでの妖しい雰囲気とは違う、陽向に咲く花を思い起こさせた。

あの後、一緒にお風呂に入って、ご飯を食べて、今一緒の布団に寝ていた。

女「昔、よくこうやって寝たよね」クスクスッ

嬉しそうに、手を握りながら、女は言う。

男「一緒の布団には入ってなかっただろ?」

女「君が寝た後、こっそりと忍び込んで寝てたよ?」

そういや、目を覚ましたら女がすぐ横にいつもいた。寝相が悪いのかと思ってたけど、そういう理由か。

男「これからは、まぁ、堂々と頼む」

女「うん、でも明日からはまた別々だね…」

男「そんな顔すんなって、土日泊まりに来るからさ」

女「ん、楽しみにしてる」


女の柔らかい唇が頬にふれる。

女「…おやすみ」

男「…おやすみ」

なんだエロ書いちゃったのか

翌日、まぁ、無断で中引きした俺は、最近の素行もありこってりと絞られた。

ただ、それよりもキツかったのは、女が俺への感情を隠さなくなり、隙があればずっとベタベタくっつかれたことだ。

それ自体はすごく嬉しいことだったが、あまりの豹変ぶりに、男友が茶化し、女友は女良かったなと涙ぐみ、クラスメート(女)が抱きついてるとこの写メを撮りまくったり、とりあえず疲れる目にあった。

>>124
書かないと嘘な気がした。

そんなこともあり、本当は女の委員の仕事を待つつもりだったけれど、謝り倒して久し振りの我が家に帰ってきた。

男「(女を心配させないためにも、これからしっかりした生活をしないとなぁ)」

そう考えていると、俺の携帯がバイブした。見てみるとそこには。

母『は~い、元気してた?』

イラつくほどハイテンションな母さんからだった。

男「着信拒否した息子に何か用で?」

母『だって男は言っても聞かないだろうから、母は涙ぐみながら着拒したのよ?』

男「その声、完全に楽しんでやがったろ。まぁいいや、これから戻るの?」

母『あ、忘れてた。母さんね、悪いんだけど帰れなくなっちゃった、三年ぐらい』

男「はい!?」

かなり重要なことをサラッといいやがった。

母『あと、父さんも今近くで仕事してるから、ラブラブしてくるわ♪』

男「ちょ、いや親父いんの? じゃなくて、三年戻らないってどういうことさ」

母『そのままだけど、仕事だからまぁ、諦めて。引き続き女ちゃんと仲良く暮らすのよ~』

男「てか今更だけど若い男女を一緒に住まわせるって、どんな神経してるんだよ!?」

母『ん~、強いて言うなら、間違いが起きないかな~って』

男「ま、間違いって…」

この人は、本当に親としての自覚はあるんだろうか。

寝落ちかな?
こういうジャンルのSSはすごい好きだな。
完結まで頑張ってくれ

>>130
ファイヤーエンブレムやってたらこんな時間になったよ…



さて眠くなるまで書こう

母『ふ~ん、その反応はきっちりこなした後って訳だ。やるねぇ、このスケコマシ』

男「ち、違うから、そういうんじゃなくて…!」

母『ありがとう、その反応で確信したわ。滅多にいない娘(こ)よ? 大切にしないと、私があんたをしばくから』

男「……ホントを言えば、とんでもないことしたんじゃないかって思ってるのに、はぁ」

その言葉を聞いて、俺を諭すような優しい声で。

母『責任も取れないでやったんだから、当たり前でしょ?』

と言い放った。

男「そうだけど、てかあんたはそうならないかって言ったでしょ」

母『私は女ちゃんを養えるからね、でもあんたは女ちゃんを養えない。意味はわかる?』

男「わかんないよ、そりゃ俺だって女を守っていくけどさ。確かに今は働いてるわけじゃないし…」

母『まぁ、今度会う時にでも聞かせてもらうわ。じゃ、二人の将来のため、避妊とラブラブは忘れずに、それじゃあね』

言いたいことだけ言われて切られる。本当にあの人は。

いらだち混じりに携帯をベッドに投げて、そのままベッドに腰掛けると、部屋のドアが少し空いていて、その隙間から女がこちらを覗いていた。

男「…聞いてた?」

女「うん…」

少しばつが悪そうに女は中に入ってくる。

女「ねぇ、男。やっぱり、僕は嫌かな?」

男「え?」

女「今日、くっついてたらそれが嫌で先に帰っちゃうし、僕を抱いたことも、やっぱりとんでもないことだったんだろう?」

男「…こっちこい」

手招きすると、泣きそうな顔で女が横に座ろうとする。それを、俺は有無を言わせず抱きしめ、ベッドに倒れ込んだ。

男「俺は、お前じゃなきゃ、嫌だ」

女「男…」

男「けど、お前を抱いたことは、真面目にとんでもないことだって思ってる。俺らの将来、決めちまうことだからな。そりゃあ、その、お前の子供は欲しいけど、今の俺じゃお前と子供を守っていけるわけじゃないしさ」

女「ん、わかってる。わかってるんだ、でも今の僕はダメなんだ、君が僕を否定することを言われると、前は流せたのに、今はそうできない」

わかってはいるんだと呟きながら、ぐすぐすと子供のように泣きじゃくる。

男「女…」

女「男への感情がね、抑えられなくなってるんだ。幸せだと思っているし、男が意図して言ってることもわかるのに、不安な気持ちが膨らんでしまう」

ギュッと、その脆い愛しい存在を強く抱きしめる。

あってるのかは、わからない。でも母さんは女はそこまで強くないんだと、言いたかったのかもしれない。

男「女」

女「……」

男「お前は幸せになって、いいんだ。そして俺が、幸せにしてやる」

女「…うん」

男「きっと、怖いんだろ。幸せがまた消えてしまうことがさ」

女「うん……!」

男「俺はお前を裏切らないし、例え死んだとしても、幸せにしてみせる」

女「…軽々しく、言わないで」

頭を俺の胸に預けながら。

女「死んだら、会えなくなるんだよ? どんなに思っても、願っても、会えないんだよ?」

男「…みたいだな。俺は本当の意味で死ぬってことは知らない」

男「でも、それでも、俺が死んじまったら必ずお前の側にいてやる」

女「…本当?」

男「本当だよ。それに、それはあくまで俺が死んだ時の話。こんな、綺麗で可愛くて、頭もいい。性格も悪くないヤツと恋人になれたのに、死んでたまるか」

女「男…、恥ずかしいよ」

男「もっと言ってやろうか? こんないい女がカミさんになるんだ、世の中に自慢して回りたいぞ。俺とお前は世界一の幸せもんだってな」

女「……ふふ、男には敵わないな」

あぁ、ようやっと笑ってくれた。

男「恋人が悲しんでたら、笑って欲しいだろ?」

女「ん、そうだね。だから、君に要求がある」

男「なんだよ」

女「悲しませたバツとして、君からキスして欲しい」

そういうと女は眼を閉じ、キスを受ける体勢をする。

男「…おう」

あらためてこういう状況になると、こそばゆい気持ちになる。

女「…早く」

男「いくぞ」

そして、女の唇に触れた。

ゆっくりと離れると、少し不満そうな女がいた。

男「…どした?」

女「僕が望んでたのは、ディープキスだったからね。不満もあるよ」

男「いや、それはそんなしょっちゅうするもんじゃないだろ?」

女「僕は、ずっとしていたい」

そういって、今度は女の方から、ディープキスされてしまう。

女「……外では、ライトなキスでいいよ。でもお互いの家の中ぐらいは、こうやって濃厚に過ごしたい」

男「今日だってだいぶ濃厚だった気がするぞ」

女「ただくっついてただけじゃないか」

男「今までそうじゃなかっただろ、皆びっくりしてたぞ」

女「わかってる。でも恋人同士なんだから、あれぐらい普通じゃないか」

男「…お前、頼むからそれ以上に暴走はしないでくれよ?

女「頑張る」

まぁ、うん。ダメだ、惚れた弱みで強くいえなかった。

女「ふふふっ」

…でもこの笑顔で帳消し、ってことでいいよな。

これからのことは全くわからないけど、それでも、女がいればなんとかなるような、そんな気がした。


糸冬

あんまり〆っぽくないけど、一応ここで終わり。

軽く書くつもりが四日以上経過し、急いで終わらせようとしたもんだから、ちょいと消化不良気味に。

とりあえずボクっ娘は良いよねってことでおいらは逃げる


まぁ、余裕あったら改訂版か、男友編でも書こうかな

乙!
めっちゃよかった!

乙!
幼馴染は正義


消化不良なら後日談はよ

おはよう


>>143
ありがとん


>>144
その幼なじみが周りにいません

野郎はいるが


>>145
消化不良はどちらかというと、本編についてかな。

女の孤独の昇華とか、男と男友との関係がわかるやりとりとかね

もともと短期作成予定だったから、上記以外も軽くだけで省いたシーンもそこそこあるから、そういう意味での消化不良かな

まぁ、考えてた後日談はあるから、今日の予定すませたら書くよ

さて、ちょいと時間が取れたから後日談

のようなものでも書こう

緑茶と羊羹


女「…いい眺めだね」

男「うん、いい眺めだ」

鈴虫の音色が耳に心地いい。女の家の縁側に座って、女が淹れてくれた緑茶をすする。

男「……こうすんの、意外と初めてかも」

女「そうなんだ、僕はよくお婆ちゃんと眺めたんだ」

男「ふ~ん、ウチはこういう風流なことしてなかったなぁ」

切り分けられた羊羹を一口、うん、甘い。

女「……程よく、静かだね」

男「だな」

女「目をつぶると、この場所と一体になった気がするんだ」

男「どれ」

言われて、目を閉じる。わずかに感じる月明かりと、よりはっきりした鈴虫の音色。そして、風にのってやってくる金木犀(キンモクセイ)の香り。

それらを堪能していると、左肩に柔らかい何かがのる。

女「しばらく、こうするよ」

男「おう」

俺はそのまま目を閉じて、女の体温を感じながらこの場所と一体になっていた。

こんな感じに細かいのがつらつら続くだけだから、あんまり期待しないでね?

暴かれた秘密


女「男の浮気者!」

男「俺が悪かったよ…」

しかし、なんであんなに厳重に隠したはずのエロ本を見つけ出したのか。

女「僕というものがありながら、こんなものを見るなんて、ひどいじゃないか!」

男「あ~、それは一応、お前と付き合う前のでな…」

女「だとしても僕は捨てて欲しかったよ!」

男「捨てるに捨てられずだな。その、出てる人がお前に似ててだな」

あ、今よけいなこといっちまった。

女「僕に、似てるって…」

女は手に持ったそれをもう一度見直し、耳まで真っ赤にさせた。

女「その、えと、僕に見立てて、してたの?」

男「…言わせんでくれ」

女「うぅ、恥ずかしいよ」

男「とりあえず、俺はずっとお前一筋だってことだ」

ぶっちゃけそれしかエロ本ないし。

女「でも、ずっと前、押し入れの中の紙袋に大量のエロ本あったよね?」

男「あぁ、あったな。あれ、男友から女友にみつかって半殺しになりそうだからってことで預かったヤツ」

女「それで、してはないの?」

男「ない。まぁ、お前に似たのでは…、何言わせんだバカ」

この日1日、そういうことの質問責めにあった。

これより戦闘を開始する


女「やっ!」シュバッ

男友「ぎゃふっ!」ガスンッ

男「男友~、竹刀で全部の雪玉たたき落とせるまでは、コレ続くからな~?」ボッ

男友「いや、ちょ、一斉にとか聞いて、ぎゃあ」ガキンッ

女友「情けないぞ、男友」バヒュンッ

男友「お前も手加減ぐらい、ひぎゃあ!」ベキンッ

男友が、飛んでくるものをすべて払いきれるような動体視力が欲しいと言ったので、その特訓に付き合っていた。

女友「ふぅ、これで私の許嫁とは、本当に情けないぞ男友」

男友「いや、なんだかんだで運動神経ある奴らが、一斉に雪玉投げてきたら対処できねぇって」

男「まぁ、剣道は基本1対1(サシ)だからな」

男友「わかっててやるなよ!」

わかっててやるからいいんじゃないか。

女「男、寒いからくっついていい?」

男「おう」

男友「一仕事終わったみたいに、イチャイチャしやがるな!」

男「まぁ、こんだけ元気ならまたいけるだろ。女友、後は任せたよ」

女友「うむ、女に温かいものでも買ってやってくれ。ではいくぞ男友!」ズドドドドッ

男友「ちょ、どっからそのりょ、あばばばばば」

なんか凄い音が聞こえるけど、気にしないで学校に戻った。

怠惰マシーン


女「うにゅ~」

男「変な声出てるぞ」プニプニッ

女「つつかないで、撫でて欲しい」

男「対面にいるから撫でるには遠い」

女「じゃあこっちにきて」

男「こたつから出たくはない」

今日も深々と雪が降る。冷えもなかなかのものだ。

女「意地悪」

男「自分から来なさい」

女「ぬ~……あ、そうか」

何か思いついたらしく、コタツの中に潜り込んで。

男「ごふっ」

思い切り腹を頭突きされた。

女「ふぅ、ちょっと顔が熱かった」

男「お前なぁ」

頭突きで体が後ろに下がった隙に、太もものところに頭を乗せられたら。

女「これでコタツでぬくぬくしながら、男に撫で撫でしてもらえるだろう?」

男「わ~ったよ」

仕方なく頭を撫でててやると、女の寝息が聞こえてきた。まぁ、俺は仕方なくテレビを点けてぼんやりすることにする。

よし、ここまで。また家事やらに戻る

とりあえず、ネタが尽きたら後日談は終了ですわ

戻ってきたよと

4コマ的な後日談再開~、ネタがつきたらそこで本当に終いです

一富士、二鷹、三茄子


お賽銭を投げ入れ、手をたたいて願い事をする。今年も女と幸せに過ごせますようにと。

女「何、お願いしたの?」

男「いったらダメだろ」

女「ん、そうだね。でもきっと、同じだと思うよ」

男「おう」

しかし、寒さが身にしみる。何か暖かいものはないかな。

女「男、甘酒配ってるよ」

男「ホントだ。もらってこようぜ」

少し並んでから、甘酒を受け取る。

女「暖かいね」

男「おう」

ゆっくりと、甘酒を飲み干して帰路につく。

女「男」

男「ん?」

女「今年も、これからも、よろしくお願いします」

男「おう、俺からもよろしくお願いします」

そして差し出された左手を、そっと握った。

うん、今年の元旦の夢は、良い夢になるな。

ブラウンパウダー


男「…、なぁ、なんで今日は四六時中べったりだったんだ?」

女「ん、ちょっとまだ不安でね」

別に浮気するようなことは一切してないはずなんだけどなぁ。

女「先にお風呂にはいるといい、僕が片づけるから」

男「え、でも今日は俺の――」

女「いいから」

なぜか凄みを利かされて、しぶしぶ風呂に入る。

風呂場でいろいろ考えて、結局答えが出ないままあがる。

男「ふぅ、あがったぞ」

女「うん、ちょうど良かった。これを受け取ってほしい」

ハート型のラッピングしたものを渡された。

男「開けるぞ?」

女「うん」

ラッピングを解いてみると、中から箱より少し小さいハート型のチョコが出てきた。

男「あ、今日そんな日?」

女「やっぱり気づいてなかったんだね」

男「うん」

バカと、ふてくされたように言うと、抱きついてきて。

女「ホワイトデーは、忘れないでね?」

と囁かれた。

ブラウンシュガー2

女友「女、今年も無事にバレンタインデーを乗り越えられたら、ありがとう」

女「僕はお手伝いしただけだよ。そんな大げさなことじゃない」

女友「私にとっては重要なことだ。礼は尽くさねばならない。このイチゴストロベリーパフェカップとやらで良いか?

女「うん、それでいいよ。ありがとう」

女友はいつも堅い。そういう性格なのはわかるけれど、もっとフランクでも良いと思う。

…それにしともイチゴストロベリーって、なんなんだろう。

女「それで男友の反応は?」

女友「毒物がぁと叫ばれてな、腹が立って、羽交い締めにして無理やり食わせた。あ、食えるなんていいおったので、思いっきり殴ったら気絶した」

女「ん、そっか」

女友「第一許嫁の作るものを粗末にしようとするのは悪いと思わないか? いや、自分が不得手というのはあるし、気にしてるのに言われると悲しいというのはあるんだが」

女「気持ちはわかるよ。ただ少し、槍過ぎかなって、僕は思う」

女友を励ましながら、僕はイチゴストロベリーなるパフェが気になって仕方なかった。

始まり終わり

女「卒業式、終わったね」

男「そうだな。世話んなった先輩方もいなくなっちまうんだなぁ」

女「やっぱり、男は顔が広いね」

男「そうか? まぁ、女がそういうならそうか」

先輩達の顔を思い出し、借りはちゃんと返せたかなと思いを馳せる。

女「…僕も一人、委員の仲良くしていただいた先輩がいるんだ」

男「会わなくていいのか?」

女「ん、今は邪魔になっちゃうから」

意味深に微笑まれたが、意味はわからなかった。

女「ねぇ、男」

男「どした」

女「男は卒業したらどうするの?」

男「そのまま、地元で就職する」

早く自立して、女を支えて生きていきたいし。

女「…、ありがとう」

男「お前と、離れたくないしな」

女「ん、でも僕は待てるからね? どうしてもじゃなければ、大学に行っていいから」

男「わ~ったよ」

二人の母親


母「ですので、女ちゃんの入学費などは全部私達が持ちます」

小母「いえいえ、保護者の責任としまして、今後も私(わたくし)で全て負担いたします」

お互い一歩も引かない様子で、女の大学入試について話している。

暇があっても戻らないと言っていた母さんは、女が進学に悩んでるみたいだとメールしたら飛んできた。

小母さんはその母さんが全部面倒見るからと言う話に女は困り、小母さんに相談した結果、これまた飛んできた。

男「女」

女「え、あ、何?」

二人の様子を困ったように見守る女は、どぎまぎしながらこっちを見た。

男「お前にも、二人の母親がちゃんといるな」

女「う、うん」

男「少し、妬けるわ」

少なくとも、あの母親は、俺をいじめることが生き甲斐だしな。

小母「そこまでいうのでしたら、男さんの面倒もこちらで見させていただきますわ」

母「いえいえ、それこそウチで面倒見るべきことですし、女ちゃんはもう正式に我が家の一員ですから――」

やれやれ、この痴話喧嘩みたいな話しは、いつになったら終わるのやら。

しばし小休止。

この話について何か聞きたい人っているのかね?

ジメジメチャプチャプ


男「雨だなぁ」

女「雨だね。洗濯物が乾かないよ…」

男「仕方ないさ。この時期はこんなもんだ」

女「うん」

休みでこの豪雨、どこか出かける予定もパァだ。

女「男は雨は好き?」

男「あんまり好きじゃないかな」

女「僕は好きかな」

男「へぇ、なんでまた?」

女「男と、邪魔も入らず二人で過ごせるからね」

そういって、背後から俺に抱きついてくる。

女「男の匂いがする」

男「満足したら、離れてくれよ?」

女「満足できるかな?」

男「じゃあ好きにしなさい」

どうせ今日は何もできないんだし、女のしたいようにさせた。

向日葵咲く日溜まりの中


女「男、泳がないの?」

男「ぶっちゃけお前の水着姿見れればそれでいい」

女「もう…、折角きたんだから、海で泳ごう?」

男「おう」

照る太陽、冷たい海水、うんまさに夏だな。

そこにレモン色のシンプルな女の水着姿を見れたら、俺はもう満足です。

女「気持ちいいね」

男「あぁ、いい気分だ」

女「この後、どうしようか?」

男「とりあえず、海の家で焼きそばでも食って、おみやげ屋いって帰ろうぜ」

女「皆も誘えばよかったかな?」

男「二人っきりの方がいいくせに」

女「バレたか」

いたずらっ子のように、舌を出して女は笑う。

星空の華


打ち上げられる花火が、美しく夜空を埋める。

海の帰り道にたまたま見れて、少し幸運だ。

女「…後一ヶ月で一年経つね」

男「おう」

女「もう孤独とは思ってないけれど、やっぱり、君がいなくなる不安は、どうしても消えない」

男「ん」

強く握ってきた左手を握り返す。

男「お前、こんなに人の気持ち奪っといて、まだ心配してるのか?」

女「ごめん」

男「俺は、お前が嫌だって言っても一緒にいてもらうからな」

女「僕も、男がダメって言っても、地獄の果てまでついていくよ」

男「よっしゃ、じゃあ誓いのキスだ」

女「え? ん…!」

女の心配を吸い取るように、深く深くキスをする。

女「…はぁ、もう、君は強引だなぁ」

男「おう」

女「…男、僕は幸せだよ。今も、これからも」

そういって、優しいキスを仕返してきた。

ほい、4コマ的後日談終了

とりあえずさっくり付き合ってから一年間という感じです。

次は何書こうかな、男と女以外の登場人物のバックストーリー軽く考えてるから、それでもいいかな

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