上条・士道「「とある緋弾のソードアート・ライブ」」キリト・キンジ「「その1」」 (969)


とある魔術の禁書目録、
緋弾のアリア、
ソードアート・オンライン、
デート・ア・ライブ、
四作品のクロスオーバー作品です。

ん?何故この四作品かですって?主人公が似てるからです。

では始めます。

ちなみにまた、やり直しスレです。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1406037623

では三度目のやり直し投稿、いきます



序章:英雄の選別

プロローグ act.1〈ソラリス〉









 〈ソラリス〉は悩んでいた。

 目の前に浮かぶ画面を見ながら。

 〈ソラリス〉は考えた。

 多数ある画面の中で誰が一番、自分の計画に最適な〈英雄の火種〉かと。

 魔王から姫を幾度も護った赤い英雄。

 音速を超える風の具現者。

 海賊王を目指す少年。

 自らの推理で真実を導く小さな探偵。

 滅竜の魔法を使い竜の居場所を探す少年。

 鋼の手足を持つ錬金術師の少年。

 地球侵略を企む緑色の宇宙人。

 困ってる者を見捨てられないおかしなダークヒーロー。

 両目に特殊な蛇を宿した少年。

 最高の相棒と共に世界一を目指す少年。

 巨大な民を狩る狩り人。

 空を舞う黄金の英雄。

 巨大なる宇宙の兵団と神に立ち向かう6人のヒーロー。

 護るべきものへの愛以外の感情を失った劣等な魔術師。

 最悪の結末を避けるため、覇王の元で歴史を変えようとする高校生。

 怪盗に妖怪、霊界探偵にシャーマン、更には宇宙人やロボットまで。

 様々の人物の姿が映し出される中、〈ソラリス〉は決めた。

 この4人にしようと。


──1人。その右手にあらゆる幻想を殺す力を持つ少年。

──1人。あらゆる「不可能」を「可能」へと変える少年。

──1人。精霊たちの「絶望」を「希望」へと変える少年。

──1人。電脳の世界で全てを護るべく剣を振るう少年。


 〈ソラリス〉は笑った。

 これから始まる祭りを予感し笑った。

──全ては、これからだ


──上条当麻は良くも悪くも「いつも通り」だった。

 朝ご飯にインデックスのリクエストのパンケーキを焼いてあげたというのに、サイズもできるだけ同じになるように気を付けたのに「オティヌスずるい!」と言われ、退院後始めての学校で「上条ちゃんは休みすぎです!よってこれから一ヶ月、ずっと補修です!」と担任の小萌先生からラブコールを受け、帰りが遅くなったと思えば第三位やら第五位やら第七位やらイギリス清教やらロシア清教から追いかけ回され帰りが遅くなり、インデックスに噛みつかれるという良くも悪くも「いつも通り」だった。

──遠山キンジは良くも悪くも「いつも通り」だった。

 起きたら白雪に夜這いされており、それを見たアリアが勘違いしてガバメントを乱発し、慌てて家を飛び出しそのまま学校へ直行、朝あったレキに挨拶すると「……」と無言の圧力をかけられ、教室に入れば白雪に入れ知恵したと思われる理子、更に武藤にからかわれ、それに乱入して勝手にキレたアリアのガバメント乱発にまた巻き込まれるという良くも悪くも「いつも通り」だった。

──桐ヶ谷和人ことキリトは良くも悪くも「いつも通り」だった。

 学校が終わってからエギルの店に集まり作戦会議をした後、聖剣エクスキャリバーを手に入れるためのクエストを受け、なぜかALOの危機を救うことになり、なんだかんだで邪神たちを救い、シノンにいじられ、他の女性陣とクラインからジト目で見られ苦笑するという、良くも悪くも「いつも通り」だった。

──五河士道は良くも悪くもいつも通りだった。

 学校へ十香、耶倶矢、夕弦らと一緒に登校し、他の男子からジト目で見られ、クラスにつくと十香と折紙が自分を挟みながら喧嘩を繰り広げ、巻き込まれ、また男子・及び女子達にジト目で見られ、家に帰ったら四糸乃や美九、七罪がおじゃましていて、ぎゅうぎゅうの中で夕食を食べていると折紙が突入し、また喧嘩になるという良くも悪くも「いつも通り」だった。

 皆が皆、今日という一日だけは、良くも悪くも「いつも通り」だっ

──バキッ


バキッ、と何かが壊れた。

ベキっ、と何かにひびがはいった。

バラバラ、と何かが崩れていった。

ガラガラ、と何か落ちていった。

パキン、と何かがガラスのように割れた。





上条「は………」

 上条当麻は我ながら素っ頓狂な声を出したものだと思いながら、その声を出さずにいられなかった。
 確かに上条はほんの一瞬、瞬き一つする前は自分の部屋で洗い物をしていた。
 インデックスとオティヌス、三毛猫(オティヌスを見ながら目を爛々としていたが)は仲良くテレビを見ていた。
 それは間違えなかった。
 変えようのない事実だった。
 だが今、上条の目にはインデックスも三毛猫も自分の部屋を見えなかった。
 暗闇。その場所をそう呼ぶのは相応しくないかもしれない。いや、そもそもここは『場所』ですらない。あえて言うなら、本当に何も見えない世界。
 この言葉が一番似合うような空間に上条はいた。

 そして、上条はこの空間を知っている。

上条「……暗黒の位相…ッ」

──全てが滅んだ後、訪れる暗黒の世界。

 上条の全身からどっと、嫌な汗が噴き出す。

オティヌス「間違いないな」

 と、頭の上から声が聞こえてきた。
 そこにはわずか15センチほどの少女がちょこんと仁王立ちしている。

上条「オティヌス……」

オティヌス「無事か?上条」

上条「オティヌス!!ここって──」

オティヌス「ああ、間違いなく〈暗黒の位相〉。私が世界を滅ぼした後にできた位相だ」


 信じたく無かった。
 できれば嘘であって欲しかった。
 しかし足元の少女はこんな時に嘘をつくような性格ではないことを上条は知っていたし、
 何より、

 その顔は苦痛に歪んでいた。


上条「……ッ。どういうことだ!?まさかまた誰かが『主神の槍』(グングニル)を──」

オティヌス「それは無いだろう…もし完全な『主神の槍』を使えば魔神としての殆どの力を失った私が無事でいられるはずが無い。もし人間用にカスタムした物を使おうとしてもそれには魔道書図書館が必要だ。彼女にそんな素振りは一切無かったしな」

上条「じゃあ誰が一体こんなことを!!」


「──〈ソラリス〉さ」



上条・オティヌス「「!!」」

 突然の声に2人は背筋を震わせ、そして後ろへ振り返る。
 そこには男がいた。
 つんつん頭の白い髪と冷酷そうな切れ長の青い瞳をした30代の男が。
 一見、どこにでもいそうな会社員のようにも見えなくない。
 しかし上条には分かる。何度も死線を、そして様々な人間を相手にして来た上条には分かる。

──こいつはヤバイ。

オティヌス「──貴様は誰だ?何故無事でいられる?」

 上条の頭の上で仁王立ちしたオティヌスは、男に向かって静かに問う。
 すると男はオティヌスを一目し、少し驚いたような顔をしてから言葉を返す。

「…それはこちらのセリフだろうな。キミは精霊か?こんな精霊は見たこと無いがね」

オティヌス「残念ながら私は精霊などという可愛げのある物ではない。私は魔神。魔神オティヌスだ」

「魔神?………オティヌス……オーディーン」

 男は少し考えるかのような表情をすると、思い出したかのように顔を上げる。
 オーディン。北欧神話の中でもトップの存在で又の名を──オティヌスとも呼ばれる。

オティヌス「ほう繋げられるか。博識だな」

「目指していることに神話が関係していてね。一通り調べたことがあるんだよ」

 不敵に笑う男。上条にはその笑みがまるで兎を嘲笑しながら追う、狼の冷徹な笑みに見えた。

オティヌス「成る程……で、お前の番だが」

「ちょっと待ってくれ。少年、キミは誰だ?」

 そう言うと男は上条のことを人差し指で指差す。

上条「お、俺?」

「そう、君だ。見たところただの高校生のようだが…」

上条「……俺の名前は上条当麻だ」

「カミジョウトウマ、か……私はアイザック・レイ・ペラム・ウェスコット。DEM社の代表取締役をしている。よろしく」

 にっこりと微笑むアイザック。しかしそれに友好の証を上条は微塵も感じ取れなかった。
 しかしDEM社とは何だろうか。この男はその会社のトップに立つ者らしいが。

オティヌス「……で、元魔神の私やコイツはともかく、なんでただの人間らしきお前が無事でいられるのか聞かせてもらおうかアイザック」

アイザック「さぁね。私とてこんな空間に来るのは初めてなんだ」

 即座に肩を竦め首を横に振るアイザック。その様子を見て上条は、どうやら本当に何も知らないと見ていいだろう、と判断する。

アイザック「ただわかっているのは、ここが世界が終わった後の果てであること。それと…」

 と、アイザックの言葉が止まる。その目線の示す先を見るために上条とオティヌスは後ろへ振り返る。

アイザック「──どうやら無事なのは我々だけではないことだ」

──少年がいた。

 黒髪の鋭い双眸をしたブレザー姿の少年が。

──少女がいた。

 ピンク色のツインテールにまるでツノみたいな髪留めをした可愛い少女が。

──少女がいた。

 ストレートの黒髪を足元ぐらいまで伸ばしオレンジ色の尻尾を生やした。

──少年がいた。

 少し痩せ気味の黒のマントを羽織った少年が。

──少女がいた。

 長い黒髪と大きな黒目を持つ小さな少女が。

──男がいた。

 屈強な、正に戦士と呼べるような落ち着いた雰囲気の男が。

──少年がいた。

 中性的な顔立ちをした優しそうな双眸の少年が。

──少女がいた。

 夜色の髪と水晶の瞳が特徴的な美しい少女が。

──人間がいた。

 見た目は男性にも女性にも、老人にも子供にも、聖人にも罪人にも見える人間が。

キンジ「な……んだ。ここは……」

アリア「あたしたち……さっきまで教室にいたわよね…」

孫「フ、フハハハハ。面白い!面白いぞ!こんな面白いことは生まれてこのかた、数えられるほどしかあるまい!」


キリト「──ア、アスナ?ど、どうなってるんだ」

ユイ「パパ。なんだか……怖いです」


士道「──こ、琴里!?折紙!?四糸乃!!耶倶矢、夕弦!!美九!!」

十香「な、なんなのだここは…シドー。なんだか嫌な感じがする場所だ」


ヒースクリフ「ふむ……これは興味深いな」

アレイスター「まさかここまで計画が進んでいたとは…驚きだよ」


キンジ「こ、猴ッ!!」

アリア「ッ!!」

キリト「──ヒースクリフ!?」

士道「おまえはっ!?」

十香「貴様何故ここに!?」




孫「まぁそう気張るな遠山。私は別にお前らを取って食う気もないし、まだ殺し合う気もない。第一、ここでは上手く「緋弾」の力が働かんようだしな」

アリア「……判断材料は何にも無いけど…今はその言葉を信じるしかないようね…」

キンジ「ああ……つうか、お前日本語喋れたんだな…」

 構えたベレッタ、二丁ガバメントを降ろし、改めて猴──中身は孫であることを彼らはまだ知らない──のことを正面から見据えるキンジとアリア。

孫「可のようなこと、この五十六億という永き歴史でも始めてのことだろう!お前たちは可のような出来事に立ち会っているのだぞ!」

 そう言いながらくるくると回り始める孫。見た目は可愛いが「あんな物」がキンジの弟を貫いた後なのだ。気は抜けない。




キリト「ヒースクリフ──いや茅場明彦。なんであんたがここにいるんだ?」

ヒースクリフ「私に聞かれてもね。君たちはここに来る前の記憶があるようだが、私にはまったくここまでの記憶がないのだよ」

キリト「…というと?」

ヒースクリフ「SAOの最期でキリトくん、君とアスナくんと会話を交わしたことは覚えている。キリトくんとどこかで、一度再開していることもうっすらだが覚えている。それ以外の記憶がないのだよ」

キリト「……」

 ヒースクリフの表情をキリトは伺うが、それだけでは何もわからない。ここはこの男の言うことを信じておくしかないだろう。

キリト「──また、会えるとはな…」

ヒースクリフ「私も驚いたよ」




十香「おのれ!シドーには指一本触れさせんぞ!」

 夜刀神十香はそう言うと、その身体が淡く輝き、光のドレスが顕現した。
 ──霊装。精霊を精霊たらしめる要素の一つにして、最強の鎧である。
 次いで十香の右手に天使〈鏖殺公〉を顕現させ、その切っ先をアイザックへ向ける。

アイザック「おやおや〈プリンセス〉。いきなりそんな物騒な物を向けないでくれないか」

 アイザックは不敵な笑みを浮かべながら士道と十香に目を向ける。

十香「黙れ!前はよくもシドーにあんなことを…」

士道「落ち着け十香!こんなところで暴れたらあいつの思うがままだ!」

 五河士道は慌てて止める。この世界は何が起こるかわからない。もしアイザックが仕掛けた罠なら迂闊に動いてはならない、と考えたのだ。

オティヌス「あいつも──魔神なのか!?……いや、それにしては感じる力が魔力とは違う……一体奴は…」





 上条当麻がうろたえていた時だった。

 遠山キンジが孫を睨みつけていた時だった。

 桐ヶ谷和人ことキリトがこの状況を理解しようとした時だった。

 五河士道が慌てて十香を止めていた時だった。



──バキッ




バキッ、と暗黒の位相が壊れた。

ベキっ、と暗黒の位相にひびがはいった。

バラバラ、と暗黒の位相が崩れていった。

ガラガラ、と暗黒の位相が落ちていった。

パキン、と暗黒の位相がガラスのように割れた。

 ──その様子を見ていた者がいた。

 かつてアレイスターが砕いたはずの、

 暗黒の位相と薄皮一枚で隔たっている、「もうひとつの位相」。


「──この「亜空の位相」へただ1人乗り込むとは…。流石だ、アレイスター・クロウリー」

 そこで、全ての元凶でもあり、全ての始まりである〈ソラリス〉は、小さく笑った。
 彼の目の前には「人間」がいる。

アレイスター「……あの黒の世界の座標を十進歩で変換するのに比べれば簡単なものだったよ」

「いってくれるねェ」

 アレイスターは後ろからの声に、少し振り返る。
 少年がいた。右目に星型の刺青をし、二股の帽子を被った少年が。

「……『道化』、か。魔神どころか魔術師にもなれなかった君が何故ここにいる?」

道化「ギャハハ!言うじゃないの!「最高にして最低の魔術師」……アレイスターさァん?」

アレイスター「…」

 アレイスターという「人間」の顔が一瞬、「不快」そうに歪む。

ソラリス「まぁまぁ。彼は僕と手を組んでくれているだけです。」

 その2人の間に割り込むかのようにして〈ソラリス〉は2人を鎮める。

アレイスター「……さて、そろそろ教えてもらうか。君が目指す「力」について──」

 その時だった。

バリン

 アレイスターの右腕にヒビがはいり、みるみるうちにそのヒビは肩、身体、両足、左腕、そして頭にまで及んでくる。

アレイスター「おやおや、どうやら強制的に「再構築」されるようだな。…残念」

 するとアレイスターの身体がボロボロと崩れ去っていく。それはまるで大岩が石に、石が砂利に、砂利が砂になるかのような光景だった。

ソラリス「まぁあなた方の世界は1度崩壊してますから、ある程度「軸」に近い人間は再構築されても違和感を持つでしょうが…ってもう完全に「分解」されましたか…」

道化「ったく面白いヨネー。「世界」ってのはサ。あんな奴がワンサカいるんだロ?ホント面白いのサ。──ところでパトの野郎は?」

ソラリス「もう「波導石」を持って、行動してるよ。全く…あの男の執念には脱帽するものがあるね」

道化「アハハハ。違いなイ」

ソラリス「さ、て、と…始めますかね」

 次の瞬間。

 亜空に侵入した2人の「愚か者」に、破滅の火が襲いかかった。



そして、「理解」され、「分解」された四つの世界は──

一つの世界へと「再構築」される。


今回はここまでです。

……けど一度やると決めた手前取り下げるわけにはいかないんですよ…。

けど!

今度こそはプロットを立ててきたので!成功させてみせます、必ず!!

どうも。久しぶりに見たハガレン(2期の方)のアニメのホーエンハイムの最後の言葉と第三惑星の奇跡を見て号泣していた常盤赤色です。

では投下します。

「………ま」



「…………うま」


「…………」


「とうまっ!!!」

上条「……う、うにゃ!?」

 突然、耳元で響いた声に反応して、上条当麻は目を覚ます。
 起きたばかりの寝ぼけ眼をこすりながら、顔を上げると、そこには純白の修道着をまとった少女、インデックスが頭に飼い猫のスフィンクスをちょこんと乗せながら睨んでいた。

インデックス「とうま!!いつまで寝てる気なの!?もうお腹がペコペコで背中とくっついちゃいそうなんだよ!」

 と、浴槽に顎をのせながら、頬をぷくーっと膨らませるインデックス。
 ようやく目が覚めてきた上条は慌てて携帯電話を取り出し時間を確認する。

上条「げっ!もう8時かよ!」

インデックス「そうなんだよ、とうま!!早くごはん作ってよ!」

 念のために言っておくが、今日は土曜日で、特に上条は何の用も無い。朝8時という時刻はそれほど慌てて起きる時間じゃないかもしれない。
 だが、この居候(インデックス)にとってはそんなものはお構いなしだ。平日だろうが休日だろうが、朝早かろうが何だろうが、お腹がすけば上条に容赦はしない。

上条「分かった!分かったから今にも噛みつきそうに歯をギラつかせるな!!話せばわかる!!」

 このパターンはインデックスに噛まれるパターンだと今までの経験から予測した上条はすぐさま浴槽から立ち上がり、風呂場から急いで避難する。

オティヌス「む、おはよう。上条」

 そのままキッチンへと入るとリビングのコタツの上から新聞を広げ読んでいる、15センチほどの少女から話しかけられる。オティヌスだ。
 服装は無地の長袖シャツにGパンというものになっている。コタツの横には彼女が使っている布団がきちんとたたまれ、ちょこんと置かれていた。ちなみに服も布団も、上条のクラスメイトの姫神の作品だ。

上条「おお。おはよう、オティヌス……お前、それどうやって広げたんだ?」

オティヌス「簡単だ、禁書目録に広げてもらった」

上条「あ、成る程」

 オティヌスが上条家に来てから早2週間。今では彼女もすっかりインデックスとも仲良くなり、上条としては嬉しい限りである。スフィンクスとはまだ若干距離があるが。

上条「悪いな、朝飯遅くなって。何か食べたいものとかあるか?」

インデックス「ハンバーグ!」

上条「朝からそんなヘビーなものは食べれません」

オティヌス「却下」

インデックス「えへへ。冗談なんだよ。ホットドッグが食べたいんだよ!」

オティヌス「あれか。ロールパンを縦に切ってウィンナーを挟んだ…あれなら私も賛成だ」

上条「よし来た。んじゃ、まずはパンに切り込みいれてから…」

インデックス「ごちそうさまでした!」

 ロールパンを使ったホットドッグを16個、平らげたインデックスは、元気良く手を合わせると「ごちそうさま」を口にする。

上条「……念のため昨日コンビニで2袋買ってきといてよかった…」

オティヌス「相変わらずすごい食欲だな…16個ペロリと平らげたぞ」

 半ば呆れながら、上条とオティヌスは皿を重ね始める。
 ちなみに一袋に入っていた個数は6個。それウィンナーと共にを半分に切って計24個の一口サイズのホットドッグを作ったので、実にインデックスはその3分の2を1人で口にしたということになる。
 体が小さなオティヌスは1個、上条は7個と2人の食べた数を足してもその2倍は食べていることになる。相も変わらず、すごい食欲だ。

上条「ホントお前は少しくらい「遠慮」って言葉を知った方がいいぞ…」

インデックス「それは朝ごはんを遅れたとうまが悪いんだよ!まったくも~!」

オティヌス「禁書目録、上条には上条の事情があるんだよ。そこんところを分かってやれ」

 流石は人の何倍も長く生きている元魔神である。大人だ、と上条は素直に感心していた。

インデックス「って言ってもねオティヌス。とうまがたびたびわたしのごはんを忘れて、自分だけ美味しい物を食べてるのも事実なんだよ!」

 しかしすかさず反論してくるインデックス。上条はすぐさま否定しようとするも、実際に当てはまるところもあるのも事実だ。思わず「うっ」と声を漏らす。

インデックス「もっととうまがわたしのごはんのことを忘れないで、文句も言わずに作ってくれると嬉しいんだよ!例えばクラスメイトの女の子みんなが自分の料理を食べたそうな目をしていたら、何も言わずに作ってくれるくらいに──」



士道「ぶえっくしょい」

十香「む、シドー。どうした?風邪か?」

士道「いや、なんでもない。ただのくしゃみだよ」

十香「そうか…それなら早く昨日デパートで貰ったクジでクジ引きに行こう!!今回も大当たりが引ける気がするぞ!!」

士道「はは……いくらなんでもそれは──」


──10月26日。天宮市商店街。


「──大当たり!!」

 カランカランとなる鐘の音と横にいる十香からの 「シドー!やったぞ!大当たりだぞ!」という声を聴きながら、五河士道は後ろに貼ってある賞品ボードを目にした。

「おめでとうございます!1位はなんと、学園都市特別見学会の特別招待チケット4名様!!」

 学園都市。
 士道も耳にしたことならある。たくさんの教育機関が密集した科学の街で、その中と外とでは30年近い科学技術の差があると言われている街だ。

十香「シドー!学園都市がどこだかは知らないが、面白いところなのか?」

士道「う?ん。俺も詳しく知ってるわけじゃないけど…ん」

 と、士道は手渡された4枚のチケットを見ながら呟いた。

士道「十香は学園都市に行きたいか?」

十香「シドーが行くというのなら私もついて行きたいぞ!」

士道「あと1枚は琴里の分として……」


士道「──残り1枚で誰を誘えばいいんだ?」

琴里「面倒なことになったわね」

 夕食後、士道がこのことを琴里に話すと、帰ってきた第一声がこれだった。

士道「…やっぱりそうだよな」

 机の上に置かれた4枚のチケットを見ながら士道は苦笑する。

琴里「士道と一緒に旅行。そんなことを言ったら十香も、四糸乃も、耶倶矢も、夕弦も、美九も、七罪も、行きたいって言うに決まっているわ。もしその中で「2人だけ」ってなったら他の行けない4人が不機嫌になるのは間違いなし」

士道「どうしたものか…」

 実際、前にも似たようなことが天央祭のミスコンでもあったその際はうやむやになったおかげで誰も不機嫌にならなかったが今回はそうは行かないだろう。

琴里「ったく。なんでこんな物引いてくんのよ馬鹿」

士道「いや、俺に言われても」

琴里「……仕方ないわね」

 そう言うと琴里はポケットからタッチパネル式の携帯電話を取り出して、電話を掛ける。

神無月『司令ですか?』

琴里「神無月」

 電話を掛けた先は神無月恭平。〈ラタトスク〉の副司令で琴里の右腕でもある男だ。

琴里「至急、学園都市特別見学会の招待券を5枚揃えて。どんな手を使ってもね」

神無月『了解しました』

琴里「あと見学会の時には学園都市の上空に〈フラクシナス〉を配備したいんだけど…できる?」

神無月『〈フラクシナス〉はあそこの科学技術とほぼ同じレベルで作られていますが…上空2万6千メートルが限界でしょうか』

琴里「それでいいわ。任せたわよ」

ピッ

士道「?5枚って…」

琴里「後1枚は令音の分よ。引率が必要でしょ」

士道「あ、ああ。そうだな」

 〈ラタトスク〉の解析官である村雨令音はこういう旅行なんかのイベントに必ずついて来る女性だ。付き合いは長いのに今だに士道を「シン」と呼んでたりする。

琴里「そうと決まれば準備しなくちゃね。行くのは11月3日からでしょ?」

士道「ああ。1日から大型連休だし一週間かけて学園都市の様々な場所を巡るらしい」

琴里「そう。なら明日土曜日は買い物に行かなきゃね。付き合いなさいよ」

士道「おう。了解」

 手を上げる士道。

琴里「そういえば風呂沸いてたわよ。先、入ってきなさい」

士道「ん。じゃあ遠慮なく」

 そう言うと椅子から立ち上がり、士道は風呂場へ向かった。  それを見送った琴里は、口の中に新しいチュッパチャプスをくわえ、もう一度携帯電話を取り出す。

琴里「令音?」

令音『琴里か』

琴里「すぐに調べて欲しいことがあるの。学園都市の──特別見学会について」

令音『……気になるのか』

琴里「先月の25日に世界中で感知された謎の霊力反応。それに外部の人間を決して寄せ付けなかった学園都市の、いきなりの特別見学会。偶然にしては出来すぎているわ」

令音『──了解した。できる範囲内で調べておこう』

琴里「……しかし、ほっんとあいつもそろそろ女の子が不満にならないように言いくるめるスキルと女の子に対する度胸くらい持って欲しいわね…言葉で女の子の事を自在に操れる…いや、それは求めすぎ──」


キンジ「ぶえっくしょん」

アリア「なによ?あんた風邪?」

キンジ「いや……気にすんな。ただのクシャミだ」

白雪「キンちゃん、季節の変わり目だからホントに風邪かも。ちょっと熱測ろう」

理子「むっ!ゆきちゃん!おでこで熱を測るつもりですな!!じゃあ理子も測る測る!!」

レキ「…………」

アリア「ちょっとあんたたち!ちゃんと仕事の説明聞きなさい!!」



──10月24日。東京武偵校第三男子寮。

アリア「コホン……じゃ、気を取り直して説明するわよ」

 二丁拳銃を出してとりあえず場を収めたアリアは無事にガバメントをケースに戻した。ホッ、と息を着くキンジ。
 午後5時26分。今、キンジとレキ東京武偵校第三男子寮にあるキンジの部屋にてバスカービルの面々に、2人が東池袋高校に転入している内にバスカービルが受けた、ある「厄介な仕事」の説明を受けていた。

アリア「依頼主は武偵校のスポンサーの1人、並河(なみかわ)製薬会社の経営専務。本人の頼みで名前は伏せておくわ。依頼内容は並河薬品会社の学園都市支部の内部調査──」

キンジ「内部調査?」

 並河製薬会社と言えばキンジも聞いたことがある。ここ数年で急成長している製薬会社で、数ある東京武偵校のスポンサーの内の一つ。更にその代表取締役は武偵連盟の理事会員をしているという。

理子「元々、あの会社は数年前まで中小企業で事業規模もたいしたこと無かったんだけどね、かといって歴史が浅いってわけじゃなくて発足は戦後だったらしいよ」

キンジ「…確かにあの会社を聞くようになったのもここ数年だしな。けど、それがどうしたんだ?」

レキ「……」

 並河製薬会社についてそこまで詳しいことはキンジもレキも知っているわけでは無いが、別に長年続いている企業がここ数年で急成長することなど、珍しくもなんとも無い。会社など経営者が変われば当然良くもなるし、悪くもなる。

 しかしここでの問題は、その急成長への道筋が法に従った方法か、法に背いた方法か。ということであった。


白雪「うん。でも並河製薬会社の中で会社が急成長した理由についてある噂が流れているんだって」

キンジ「噂?」

レキ「……?」

アリア「──生物兵器よ」

と言うわけで今日はここまでです。

では投下します。

レキ「………!」

キンジ「……まさか」

 物騒な言葉に思わず絶句する2人。
 にわかには信じがたい話である。

アリア「依頼主も最初はただの噂だと思ってたらしいわ──けど、火の無い所に煙は立たないって言うし、調べてみたらしいわ。そしたら──」

理子「ここ数年、社長と一部の上層部、そして学園都市支部が極秘のプロジェクトを行っていることが判ったんだって~」

白雪「並河製薬会社は一つ一つの部署が独立した形で、特に研究・開発部は社長自ら指揮をとっているんだって。今回の依頼主は営業部の専務だから開発についてはあまり知らないらしいの」

キンジ「専務すら知らないプロジェクトか……けど極秘プロジェクトがあるってだけじゃ生物兵器を作っているって理由にはほど遠いぞ」

アリア「そこで問題になるのが支部があるのが学園都市ってことなのよ」

 学園都市。その都市の名前はキンジでも知っている。様々な教育機関が集まった科学の街である。確か東京武偵校の最大スポンサーだったはずだ。

アリア「学園都市。東京西部の多摩地域に位置し、東京都のほか神奈川県・埼玉県・山梨県に面する完全な円形の都市。総面積は東京都の3分の1を占める広さを持つ。総人口は約230万人で、その8割は学生というまさに学生の街よ」

 手元にある資料を読みあげるアリア。

アリア「学園都市の内と外じゃ科学技術に2、30年の隔たりがあるって話よ。それに、あの街のセキュリティーはそこらの研究機関とは比べ物にならないわ」

理子「並河製薬会社の社長さんはそこに独自の研究施設を持っているんだけどね。その研究施設、学園都市外との連絡手段が月1の製品出荷のトラックだけなんだって~。並河製薬会社は学園都市にて薬の販売が認められてるわけでも無いし、セキュリティーは確かに凄い科学技術も進歩してるけど、逆に言えば製品の出荷がしにくいあの街に社員にも隠すようにして作られた謎の施設!理子には怪しい匂いがプンプンしてならないんだよねー」

 言われてみれば、確かに怪しい。

 学園都市に施設を持つには土地を借りるためや何やらで都市側に払う莫大な費用がかかるらしいし、その割りには学園都市で販売できるわけでもなく、完成した製品を運び出すだけでもこれまた費用がかかる。明らかにメリットとデメリットが釣り合わない。
 キンジは知らないが現に学園都市と協力関係にある企業や都市は、そう言ったことを理由に学園都市内に研究施設を作ることは殆どない。あるとしても学園都市の技術をいち早く大元に伝えるための小規模な研究施設くらいだ。

 だが、殆ど陸の孤島と化している街のセキュリティーで人目を避け、その維持にかかる莫大なコストを度外視できるレベルの製品を作っている、そう考えればこの研究施設に意義が見出すことができる。

白雪「万が一、公的機関に依頼を調査して黒だったら会社が受ける被害は計り知れない──そう考えた専務は武偵校に調査を依頼することにしたんだって」

キンジ「なるほど……一応、話の筋は通っているな…」

 もしも本当に生物兵器が作られているとしたらほっておくわけにはいかない。この依頼を受けたアリアの判断は正しいだろう。

アリア「人数は最高でも10人以下を予定してるわ。リーダーは私。私たちバスカービルメンバーが潜入するとして逃走用の「足」と本部の連絡係、待機要員を他に集めるつもりよ。これで説明は終わり。判った?」

レキ「はい」

キンジ「久しぶりの任務だ。役に立てるかどうかはわからんが全力を尽くそう」

 うなづく2人。これでバスカービル全員の意思は一致した。

アリア「まずは問題の研究施設に乗り込むわ。その上で白なら良し。万が一黒だったらそれ相応の対処をしなければならないわ」

 と、なれば問題は学園都市に乗り込まなければならないことだ。あそこのセキュリティーは本当に凄まじい。
 以前、武偵校が追っていた元武偵の犯罪者が、学園都市に乗り込もうとし、逆に学園都市にコテンパンにやられたのは武偵校でも語りぐさだ。

アリア「さて、どうしたものか…」

理子「と~こ~ろ~で~キーくーん?武偵校にいない間、レキちゃんと何があったのか根掘り葉掘り聞かせてもらいたいんですけどね~」

キンジ「何って…何も無かったけど?」

アリア「…………あんた何で目を逸らすの」

キンジ「何言ってんだよ。何も無かったよ」

理子「レキちゃんどうだったの~」

レキ「……」

キンジ「なんでそこで無言っ!?」

白雪「私はキンちゃんのことを信じるよ!!キンちゃんのこと……」

キンジ「いやいやいや!何も無かったからな!!本当だからな!な、レキ!」

レキ「………………」

キンジ「だからなんでそこで無言っ!?」

アリア「あんたねぇ………………私たちが心配していたときに何やってたのよ…………」

キンジ「えっ…………」





 何が割れる音やら何が倒れる音やらが錯乱する部屋のベランダに腰掛けながら、玉藻は呟いた。

玉藻「あやつももうちょい女子(おなご)の扱い方に慣れてもらわんとな……前の遠山侍みたいに……。いっそ1日での連続の逢い引きでもさせてみるかのぉ──」




キリト「えっきし」

アスナ「あれキリトくん風邪?」

キリト「いや……そもそもダイブしてるんだから風邪は関係ないと思うけど……」

アスナ「大分寒くなってきたから、気をつけなきゃ。キリトくん、免疫なさそうだから」

キリト「あはは……」

アスナ「それじゃ試合頑張ってきてね」

キリト「おう」


──10月27日。ALO内、新生アインクラッド15層。

オンラインゲームALO内の天空にそびえ立つ新生アインクラッドの15層にて、ある大会が行われていた。
 魔法や弓が使えるALO内だが、1番人気の使用武器はやはり剣や槍が多かった。
 この大会はその剣のみ使用の大会。
 言わば、剣術大会と言えよう。

 そしてこの大会の決勝、ここまで勝ち進んで来た男は勝利を確信していた。

 男が得意とするのは空中戦。相手の上を取り、確実に一撃で仕留める戦法を使う男だった。
 簡単な戦法だ。スキルを地面目掛けて使って目くらまし。その土煙でできた相手の隙を突いて確実に仕留める。

(地上での猛攻のせいでなかなかチャンスに恵まれなかったがもう大丈夫!これで──仕留める!!)

 男は勝利を確信していた。この一撃で仕留められると。
 頭上は人間にとっての最大の死角。ましてや目くらましされ相手の位置すら分からない相手の攻撃を受け止められるわけがない。

 しかし男は考えてなかった。

 頭上が死角になるのは

「なっ……!」

(いない!!?)

 宙にいる自分も同じだと。

ズドォォォォォン!!

──11月1日。ダイシー・カフェ。

「「「「カンパーイ!!」」」」

 複数のジョッキの音が貸し切りのダイシー・カフェに鳴り響く。

クライン「いやーまさか空中戦術使いの上を取るとは…さっすがはキリト!期待を裏切らねぇな!」

キリト「…お前は俺にどういう期待をしていたんだ、クライン」

 肩を叩いてくるクラインにキリトは呆れる。確かに決勝の相手は空中戦に強かったらしく上を取られたことが無かった。だからこそあの状態で勝つことが出来たのだろう。

アスナ「キリトくんらしいじゃない。そういうとこ」

エギル「で、肝心の賞品は何処なんだ?」

キリト「急かさなくてもここにあるよ。エギル」

 するとキリトは、バックの中から6枚のチケットを取り出す。

リズベット「それが学園都市へのチケットね?!あたしも?らい!」

シリカ「あ、リズベットさんずるいです!私も!」

アスナ「2人とも、焦らなくても人数分あるわよ」

直葉「そうそう。アスナさんの言う通り。ちなみに私はもうお兄ちゃんから貰っちゃいました!」

クライン「しっかしエギル。オメェホントにいいのか?いくら俺が連休中仕事ないからとは言え…前に行きたいって言ってただろ?」

エギル「行きたいのはやまやまなんだが、店もあるしな」

 エギルの言葉に「そうか…」と納得するクライン。エギルとしても学園都市へのチケットは欲しい物だろうが、店と彼女をほっとくわけにもいかない。

クライン「だけどよぉキリの字。学園都市って結構危ない噂もあるんだろ。第三次世界大戦にグレムリン。間違いなく騒動の渦中にいるような街だぜ?」

キリト「確かにそうだけど…あの都市の科学技術は凄いからな。何か参考になることもあるかもしれないし、ちょうどいいと思うんだ」

クライン「…そうか」

 「んじゃあ皆さん!明後日、東京駅に集合ですよー!」と言うクラインの声に「「「「はーい!」」」」と答える女性陣。それを横目にしながら、キリトはふと思った。

キリト(そういや学園都市は外部からの人間を極力受け付けないようにしてるのに…なんで特別見学会なんて組んだんだろうな…)

 そんなことを考えながら後ろを見ると学園都市について話しているアスナや直葉、シリカやリズベットの姿が見えた。どうやら、学園都市訪問を楽しみにしてるようだ。

キリト(ま、…いっか)



まずは「交わり」。

──奇妙な運命に駆り出された4人の主人公

──魔術が

──科学が

──精霊が

──武偵が

──緋弾が

──剣士が

──妖精が

──交差する時





物語は始まるっ!!



 ──その場所は、空の上、地上の山脈すら小さく見えるほどに高い場所だった。
 彼らは知らない。その場所がかつて『ベツレヘムの星』という、巨大な空中移動要塞の中央、白のような『本体』が鎮座していた場所のだということを。
 「右方のフィアンマ」という人物の『救済』が、『幻想殺し』によって壊された場所だということを。
 

『──今のが、貴方達が見たという『映像』を繋げて、実際に目に見える物にしたものです』

「…………一つだけいいか?」

「なんなのだ?」

「……俺様はもうちょいかっこいいだろ!もうちょい爽やかなイケメンっぽくあべしっ!!?」

「うるさいぞ。三代目」

「その読み方も辞めてくんない!!俺様には稲荷・D・智樹っていう、正式に襲名した名前があるんだよ!!ディエゴ家舐めんな!!」

「んだ!んだ!」

「先生の言うとおりだ!」

「どうでもいい」

「私も同意見だね」

「…っていうか、僕、ドラムなんて出来ないんですけど…」

『これが予知だなんて誰も言ってませんし、ま、あくまで気になったっ言われたから、あなた方の記憶をデータ化して繋げたわけで』

「けどこの出来事は実際に起きているのよね?」

『ええ。現にこの四つの世界は『錬成』さちゃいましたし、五河士道は福引で、桐ヶ谷和人はつい七時間前に大会で優勝して、学園都市特別見学会のチケットを手に入れてますし』

「──これまで来たらこの映像が予知って信じざるを得ないわね…」

「とりあえず俺様はこの因幡一馬って人物に、アイラックは四葉圭助に化けとくか…アーク、この2人どっかに拉致ってくれる?」

『分かりました。18時間後にメールでそれぞれの会社側から因幡一馬と四葉圭人に有給を取るように偽の連絡。その後、智樹さんとアイラックさんが因幡一馬と四葉圭人としてそれぞれの会社に乗り込んでください。因幡さんと四葉さんには、それぞれ家族で温泉旅行でもプレゼントしておきます』

「サンキュ。それじゃ、シノ、イノ。変装用のマスクや衣装作るから手伝え」

「「了解だ!!先生!」」

『この2人の顔のデータは貴方の部屋に送っておきました』

「相変わらず仕事早いな。あんがとな」

「んじゃ、僕の採寸も必要みたいだし、僕も行くとするよ」

「オイ、翠。とりあえず俺がドラムの使い方くらいは教えてやる」

「は、はい…」

「まっ!ヴィランくん!教えるのはいいけど若い衝動を爆発させて翠に襲いかかるなんてバゲシッ!?」

「黙れこの変態腐女子科学者が。大体、俺がこいつに発情するわけねぇだろ」

「こんなに可愛いのに!?」

「ちょ…キーナさん辞めてください!ひゃ…ちょ!!そこっ……らめぇ…っ!」

「おや?私のメイド兼助手であるキミが!ご主人様に「やめて」と!?礼儀をしらんメイドにはオシオキが必要なようっぎゃぁぁぁ目がぁぁぁぁ!!!」

「『セクハラ、ダメ、絶対』」

「このッ……アークなんか私に作られた存在のくせ偉そーに………」

『──とにかく…桐ヶ谷和人や五河士道、遠山金次を見て、「中々の逸材」とか「女装しての絡みもイケる」「可愛いは正義」とか鼻息荒くしながら悦を漏らす人には、今回はサポートに回ってもらいましょう』

「賛成だな」

「私もだ」

「ええっ!!?そんなー!!」

『ま、自業自得ってことで』

今日はここまでです。







『では…各自、"作戦"の為に、全力を尽くしてください』





どうも、明日から那須への旅行だというのに排水管が壊れて大変な目にあった常盤赤色です。

今回はそれぞれの時間軸や学園都市に訪れる人物たちについて説明しておこうと思います。

〈とある魔術の禁書目録〉

時系列:上条がオティヌスをそげぶして、学園都市に帰還して2週間後。ちなみに上条は退院してから2日。

〈緋弾のアリア〉

時系列:孫との接触と修学旅行2の間。キンジとレキが武偵校に帰ってきてすぐ。

〈ソードアート・オンライン〉

時系列:キリトがGGOへダイブする数週間前。

〈デート・ア・ライブ〉

時系列:七罪攻略数日後。折紙が2日前に転校することを学校側に告げる。

ここからは第一章で、学園都市に訪れる人物たちです。

学園都市特別見学会招待者
・遠山キンジ
・神崎・H・アリア
・星枷白雪
・峰理子
・レキ
・ジャンヌ・ダルク
・エル・ワトソン
・武藤剛気
・不知火亮
・中空知美咲
・平賀文
・桐ヶ谷和人/キリト
・結城明日奈/アスナ
・桐ヶ谷直葉/リーファ
・綾野珪子/シリカ
・篠崎里香/リズベット
・壺井遼太郎 /クライン
・五河士道
・夜刀神十香
・四糸乃
・五河琴里
・八舞耶倶矢
・八舞夕弦
・誘宵美九
・七罪
・村雨令音

・遠山金一/カナ(イ・ウー時代からの知り合いであるからの依頼で極秘裏に学園都市へ潜入)

・折紙鳶一(理由?言わなくても分かるでしょ)

・時崎狂三(第二の精霊を探して学園都市にあるDEM社の特別研究所に潜入)

今回の更新はここまでです。

では。

>57
折紙鳶一じゃなくて鳶一折紙

>>60

あ…………


訂正:折紙鳶一では無く鳶一折紙。

すいません…。

大変お待たせいたしました。

それでは投下します。














──11月3日。9:52。東京駅、丸の内駅舎付近。



リズベット「う?ん!着いた!東京駅!」

 ALOの鍛冶屋のレプラコーン・リズベットこと篠崎里香は終点の東京駅で電車から降りると、満員電車で凝り固まった体をめいいっぱい伸ばす。
 現時刻は10時少し前くらい。バスの発進時間は10時半だから、急げば十分間に合うだろう。

シリカ「──けど、連休だからかすごい人でしたね。人に酔いそうだった…」

 その後ろではALOのビーストテイマーのケットシー・シリカこと綾野珪子が少しぐったりした様子で立っていた。
 それを見て苦笑するリズベット。確かに今日は連休中だからかバスも電車もすごい人だった。事実リズベットもシリカほどではないが、少し人に酔った感がある。

リズベット「まぁ学園都市行きのバスの中ではゆっくり休めそうだし」

シリカ「けど、学園都市ってどんなところなんでしょうか…やっぱり『科学の街』って感じなのかな?」

リズベット「ロボットとか普通にいるんじゃない?あと車が空飛んでたり」
        そ  れ
シリカ「流石に空飛ぶ車は無いと思いますけど…確かにロボットは──」

 改札口を抜け、地上に出る為のエレベーターに乗りながらそんな会話をする2人。

リーファ「あ、おーい!シリカさん!リズベットさん!」

 2人が学園都市についての様々な憶測を飛び交わしていると、待ち合わせの場所、東京駅内にあるショッピングセンターの入り口が見えてきた。
 見ると入り口脇のベンチには既に、キリト、アスナ、リーファ、クラインの4人が待っていた。どうやらリズベットたちが一番遅かったらしい。

リズベット「ごめんね?遅れて、電車凄い人でさ」

キリト「待ち合わせまでまだ十分に時間あるし、謝ること無いだろ?」

ユイ『そうです!パパの言う通り!』

 キリトが持っている携帯端末からユイの声が響いてきた。恐らくは端末についたカメラから現実の様子を見ているのだろう。

シリカ「ユイちゃんもありがとう」

クライン「それじゃあ皆さん揃ったことですし!学園都市への5泊6日の旅!存分に楽しみましょう!!」

「「「「おー!!」」」」







──同時刻。東京駅日本橋口付近。





十香「おお!!すごいぞこの建物!まるでお城のようだ!」

 東京駅の丸の内駅舎を見ながら十香が感嘆の声を上げる。
 今、士道たち一行は学園都市行きのバスが待っている東京駅にいる。
 東京駅といえばレンガ造りの丸の内駅舎が印象的な駅だ。士道や琴里、美九、令音などにとってはテレビなどでも見慣れた物だが、十香や四糸乃、よしのん、耶倶矢、夕弦、七罪などの精霊たちにとっては面白いものらしく、目をランランと輝かせて丸の内駅舎を見入っている。

四糸乃「お、おっきいです…」

よしのん『すっごいね?』

耶倶矢「ほ?。中々良い建物ではないか」

夕弦「同感。まるでこの前やったゲームのダンジョンのようです」

七罪「へ?。こんな建物もあるのね」

 思い思いの感想を彼女たちがあげていく中、士道は別の場所へと目をやっていた。

七罪「ん?どうしたのよ士道。可愛い女の子でもいた?」

士道「いや。そういうわけじゃないんだけど──」

 士道が一行とは別の場所を見ているのに気づいた七罪が声をかけてくる。一瞬、「可愛い女の子」の部分で令音以外の目に猛禽のごとき眼光が灯るのを感じたが、士道が否定するとその気配も消えた。

 ちなみに今の七罪は大人バージョンの七罪だ。
 理由は七罪のメンタル面の弱さにある。
 通常の彼女は、少しでも嫌な事を考えたり想像しただけで簡単に霊力の逆流が起こってしまうため、変身能力が使用可能になってしまう。 その状態でテンパって自身が変身、もしくは他人を変身などさせてしまっては大変面倒なことになってしまう。
 こうして見学会中は大人モードで行動できるようにしたのだ。

士道「もしかして……あれじゃないかなと」

琴里「主語がはっきりしてないわよオタンコナス」

士道「あれのことだよ」

 士道が指差す方向に目を見やる一同。

 そこには通常の物とは違う流線型の形をした、天井が開けた銀色のバスが止められていた。

十香「おおお!なんだ!?このバスは!ものすごくかっこいいぞ!!」

士道「え~と……何だっけこのバス。テレビ番組とかで見たことあるんだけど……」

令音「確か……オープントップバスだったかな」

琴里「なんか目立つわね……形も色も」

 オープントップバスは開放感と眺望を確保するために屋根の一部または全部を取り払ったバスのことでオープンカーの一種と考えられる。 日本国内各地でも一般客の乗車できるオープントップバスの運行が開始されており、誰でもテレビで見たことがあるバスだ。2020年の東京オリンピックでも観光バスの一つとして外国人客に多く利用されていた。

四糸乃「送迎バスの乗り場もここみたいですし…本当にこのバスみたいですね」

よしのん『よしのん、なんだか緊張してきたよ~』

「む!もしかして学園都市特別見学会の参加者の方々ですか!?」

 珍しいタイプのバスをじろじろ見ていた一行は、ふと後ろからかけられた声に全員振り返る。
 そこにはストレートの金髪・碧眼の士道と同じくらいの少女が愛想のいい笑みを浮かべながら立っていた。着ている制服は修学旅行やツアー旅行などでよく見られるバスガイドの制服だ。

耶倶矢「質問。あなたはどちら様ですか?」

智恵「わたくし!今回の学園都市特別見学会のバスガイドを務めさしていただきます、因幡智恵と申します!!」

 そう言いながらくるくると回り始めた少女。どうやらこの少女が今回、士道たち一行を学園都市へナビゲートするバスガイドらしい。

智恵「よろしくね~☆」

十香「うむ!よろしくなのだ!」

智恵「バスに乗るのはもうちょっと待ってくださいね!!運転手が車内点検してますから!あ、おにーさん!荷物の詰め込み手伝いますね!」

士道「あ。ありがとうございます」

智恵「いえいえ。仕事ですし。しっかしおにーさん荷物多いね~。ハーレムだったはいえ大変だったでしょ」

士道「ハハハ……」

 バスガイドからの感心の言葉に、士道は思わず苦笑する。東京駅までは車を令音が運転してきたが、駐車場からバス停までは9人分の殆どを士道1人で運んでいたのだ。距離は短かったが流石に少し疲れたのも事実だ。

十香「私は何度も自分で持つと言ったのに…」

士道「いいよ、いいよ。これくらいは俺が持つって」

智恵「………………………チッ」

士道「?」

智恵「なんでもないですよー」

十香「?」

美九「……ん、もしかしてアレも今回の参加者ですかねー?」

 士道とバスガイドが荷物を詰め込むのを見ていた美九が、あらぬ方向に目をやる。それにつられて最後の荷物を詰め込んだ士道たちもその方向に目を見張る。
 そこには、

リズベット「おお~凄いバスだね~」

シリカ「なんか近未来的ですね…」

リーファ「なんだっけこのバス…見たことあるんだけど…」

ユイ『オープントップバスですね。観光バスによく使われているバスです』

クライン「ほ~、やっぱユイちゃん物知りだな~。しかし、かっけぇな。このバス」

アスナ「まずは荷物積み込みましょ」

キリト「あ、俺とクラインとでやるから先乗ってくれよ」

アスナ「え、いいの?」

クライン「アスナさん。こういう力仕事は男の仕事ですからね。か弱い女の人にやらせるわけにはいきませんよ」

リズベット「んじゃ、2人とも頼んだわよー」

リーファ「よろしくね。お兄ちゃん」


シリカ「──あっ、あれって他の参加者の人たちじゃないんですか?」

 一行がバスに近づくにつれ、バスの周りの人影も見えてきた。どうやら既にバスに乗り込もうとしている参加者たちの様だ。

リズベット「うわっ。こっちの男女比も凄いけどあっちはもっと凄いわよ。一対八とか完全にハーレムじゃない」

クライン「んだとっ!?誰だっ、キリト以外にそんな美味しい環境にいる奴は!?」

シリカ「……なんだかあの男の人。ちょっとキリトさんに似てません?」

キリト「へっ?」

リーファ「お兄ちゃんに?」

アスナ「あ、ホントだ。細身なところとか、ちょっと頼りなさそうなところとか、一歩間違ったら女の子と間違われそうな顔立ちとか」

キリト「……アスナさん…。俺、何かしましたっけ…?」

リズベット「言われてみればそうかもね~。このメンバーにクラインがいなかったら完全に同んなじだわ。特に中性的な顔立ちが!」

キリト「オイ!リズベット!?」

リーファ「お兄ちゃん昔っから女の子に間違われること多かったもんねー。よく服買いに行ったら「姉妹で同じ服はどうですか」なんて」

キリト「リーファまで……」

クライン「ハッハッハッ。昔はキリの字にも可愛いところがあったってことだな」

 最後に放たれたクラインの一言を間髪入れずに足を踏むことで、キリトは(物理的に)黙らせる。


美九「私たちも大概ですけど、あっちの団体の男女比も中々ですよね~。2倍の差があるますもん」

七罪「ホントね……ぷっ。ねぇ、あの真ん中の男の子、士道に似てない?」

士道「俺に?」

耶倶矢「おおっ!確かにな!体つきが細いところとか!」

夕弦「同感。夕弦も同じ意見です」

琴里「なんか頼りなさそうなところとか」

士道「オイ」

十香「確かに士道と同じで優しそうな感じがするぞ!」

士道「十香……」

美九「あと……なんか女装とか似合いそうですよねー」

七罪「あ、それ。私も思った」

四糸乃「私も……ちょっと」

士道「………」

美九「もう一度見たいですねぇ…士織ちゃん」

士道「待て美九。そう言いながらうちの学校の女子用制服を取り出すな。落ち着け。それとお前なんでうちの制服持っているんだ?」

美九「もちろん、いつでも何処でもダーリンを士織ちゃんにメイクアップさせるために…」

士道「やらないからな!もう女装はやらないからな!!」

 声を荒げる士道。と言っても、バスガイドや通行人に聞かれないためにできるだけ静かな声で、だが。

七罪「私も見たいわー。ま、最も私の力があれば自由に士道の姿を変えられるんだけどね…」

士道「すいません、ホントやめください。もう女の子はこりごりです」

琴里「何言ってんのよ。何度でも必要だったら登場してもらうからね。士織ちゃんには」

士道「うう…ホントご勘弁を…」



リズベット「あ!そうだ!今度キリトくんの女装大会とかしない?私たちがプロデュースしてさ!」

キリト「はぁ!?」

アスナ「え……それは流石に…アリね」

キリト「ちょ!?アスナさん!?」

シリカ「それは流石にキリトさんが……」

リズベット「シリカは見たくないんですか~キリトくんの女装姿」

シリカ「うっ……」

キリト「シリカ!そこは否定してくれないか!?」


リーファ「昔は親戚のお姉さんとかにふざけてさせられてたけど、今も結構いけるんじゃない?」

キリト「頼むから黙ってくれ。頼むから」

クライン「………さっきから思ってんだが、それって誰得なんだよ、キリの字」

キリト「俺に聞くな!!」

アスナ「キリトくん、中性的な顔立ちだから絶対似合うって!ね!」





十香「そうか…そうだったな。またシドーが女の子になりたがっているなら、私はいつでも手伝うぞ!」

士道「え、その勘違いまだ続いていたのかよ!?」

よしのん『もうホントに上付けて、下取っちゃえよ士道くん。そっちの方が需要あるって』

士道「もうその話題はやめてくれ……本当に……」

美九「あ~。もう一度見たいですね士織ちゃん。神様、どうか私にもう一度お恵みを──」







             女装
キリト・士道「「もう──そ れについて話すのはやめてくれ!!」」





  ──2人の少年の悲痛な叫びと

  ──他の面子の堪えきれなくなった笑い声が重なったのは

──ほぼ同時だった。

はい。というわけでお久しぶりです。那須の高原で思いっきり夏休みを堪能した後、超電磁砲10巻、デジモン新作、実写るろうに剣心などでエキサイトして小説執筆が遅れてしまった常盤赤色です。え、夏休みの宿題やってないだろ?マサカ。

で、完全に男の娘キリトと士織ちゃんネタにしました。あの2グループをくっつける時どんかシチュエーションにしようかと悩んでいた時、「あ、もうネタ的な出会いで良くね?」、とおかしな方向に持って行きました。どうしてこうなった。

ま、そういうわけでこっから先はちゃんと週2更新していこうと思います。

では。

あ、忘れてた。

琴里ちゃん。誕生日おめでとうね!

以上。

こんな時間からですが投下します。

では。


  ──11月3日。10:20。学園都市第七ゲート付近の地下街。

 連休中だと言うのに人通りが全くない地下街を歩きながら遠山キンジは、武偵校地下にある地下倉庫を思い出していた。
 11月3日。ある人物の手引きにより無事に学園都市に潜入した、武偵校の並河製薬会社調査チームは、潜伏先の空き店舗へと案内されているところだった。

アリア「──まさかあんたが学園都市への潜入の手伝いをしてくれるなんてね」

「そりゃーイギリス教会はイ・ウー殲滅をイギリス皇室から無理矢理押し付けられていたからなー。更にお前らは眷属側につこうとしていたリバティー・メイソンの連中を押しとどめてくれた。イギリス国内の2大勢力がそれぞれ別勢力についちまってはイギリスって国自体に大迷惑らしいし……ま、俺はそんなこと知ったこっちゃないがな」

理子「に、しては『必要悪の教会』は『戦役』に不参加だけどねー。ツッチー」

 バスカービルの前を歩く少年──極東戦役の宣戦会議にて『必要悪の教会』及びイギリス清教の「不参加」を告げに来た1人・土御門元春は、見た限りでは人の良さそうな笑みを浮かべながら、振り返った。


土御門「それは仕方ないにゃー。ただでさえバチカンやロシア清教と仲違いしかけていたあの状況で『戦役』なんかに参加したら、その時点で確実に学園都市を巻き込んで第三次世界大戦が起こっていたからな~。……ま、結局起きちまったから同じだけどな」

キンジ「しっかし第三次世界大戦に『グレムリン』の騒動だろ?一応その時だけはどの組織も何もしてこなかったけど、よくまだ続ける気になったよな」

ジャンヌ「極東戦役は国家元首でも迂闊に止めることは出来ないからな」

ワトソン「何せ参加するのはそれぞれの国の皇室・王室や国家元首に口出しできるレベルの組織ばかりだからね。第三次世界大戦の時と『グレムリン』の時は、全ての組織が休戦した方がいいと判断したから、つかの間の休戦が実現できたけど、始まったからには中途半端な状況で辞めることはできない」

キンジ「ったく……どうしてこうなったんだよ…………って、俺のせいか…ハァ」

レキ「はい」

ワトソン「よくわかってるじゃないか、トオヤマ」

土御門「その通りだにゃー。元々はキンジっちがシャーロック倒しちゃったから、こんなことに──おっと、この会話はここまでにしておこうか」

 土御門が会話を打ち切った理由は直ぐに分かった。本部が見えてきて、そこに先に来ていた武藤や不知火たちがこちらに向かって来たからだ。


不知火「運んできた機材なんかはもう配置しておいたからいつでも動けるよ」

キンジ「サンキューな、不知火」

 本部は地下街の空き店舗だが、電気も水道も通っている上、台所まである。そこまで汚れたり、荒れたりもしていないし、安いだけが売りのようなホテルよりかは立派に人が泊まれる環境が揃っていた。
 各々持ってきた折りたたみ式の椅子やら床やらに座る一行。ひとまずはここに潜入調査時の本部にし、一行は近くのホテルに泊まる予定だ。ホテルを本部にして潜入調査をしてしまっては、もし逆探知などで連絡や指示をしている場所がばれたさい、一般人を巻き込むことになってしまう。だからわざわざ本部と潜伏先を別々にしたのだ。

武藤「しっかしまさか本部が地下街の空き店舗とはなぁ。見つかったりしないのか?」

結標「そこんとこは安心していいと思うわ」

 「座標移動」で機材運びを手伝っていた結標淡希、そして海原光貴も会話に混ざる。
 ちなみに土御門・結標・海原たちのことは武藤たちには学園都市にいるイギリスの組織の構成員で、その組織がアリアの知り合い説明しておいた。あながち間違いでもないだろう。

海原「ここら一体は前までは私たちのような暗部の小組織が隠れ家として使っていましたので、ここら一帯は今でも立ち入り禁止区域になっているんですよ。まぁ、近くに解放されるみたいですが」

土御門「それにこの地下街なら調査が失敗して撤退するときも隠れる場所も豊富だし、追っ手を巻くことも可能だ。なんなら結標もつけるぞー」

結標「私はいつからハッピーセットについてくるオマケみたいな扱いになったのよ」

海原「私も右に同じです」

土御門「つれないにゃー」

アリア「別にいいわ。っていうか手伝った方が邪魔になるわよ。これは武偵校への依頼。部外者をホイホイ巻き込むわけにはいかない」

 それを聞いて少し苦い顔をする土御門。その反応に少し違和感を持ったキンジだったが、その違和感は発せられた白雪の言葉で遮られた。


白雪「それよりも本当に学園都市の学生は超能力を持っているですね……驚きました」

土御門「ま、大半は俺みたいな低能力者や無能力者が殆どだがな。結標のような大能力者は珍しいんだ」

武藤「へ~」

平賀「能力を得るには確か脳をいじくりまわさなくてはいけないのだ。本で読んだことがあるのだ!」

キンジ「そ、そうなのか?」

土御門「あながち間違いってないにゃー」

不知火「ってことは、白雪さんのような天然の能力者とは違うだね」

結標「私たちの街ではそのような能力者を『原石』って呼んでいるわ。判明している限りでは世界で50人くらいって聞いたけど……」

エツァリ「どうやら、それよりも数は多いようですね」

理子「はい、りこりんからしつもーん!私たちでいう超能力者と学園都市の超能力者ってどう違うの~?」

土御門「東京の武偵校とかでは習わないのかにゃー?あそこにも超能力関係の学科はあるんだろ?」

アリア「あたしはイギリスにいるころから超能力者の事件に立ちあったことがあるからともかく…日本では超能力者による事件は少ないから。あまりSSR以外は超能力について知らないのよ」

海原「なるほど」

アリア「調査対象の障害に超能力者がいることも考えられるからちゃんと説明した方がいいわね…お願いできる?」

土御門「お安い御用だぜい」

土御門「簡単に言えばおまえらの言う超能力っていうのは、魔術と超能力の中間みたいもんなんだぜい」

キンジ「魔術……?」


 久しぶりに聞いた胡散臭い単語にキンジは反応する。

土御門「例えば学園都市製の超能力はさっきも言ったように一度、能力のレベルが決まっちまえばレベルアップは相当難しい。それに身につけられる能力は基本一つしかないしな。それを応用すれば色々な現象を起こすことができるがな」

レキ「……」

ワトソン「僕たちの知っている超能力も基本1人一つの能力しか身につけられない。しかしそれはやろうと思えば誰にでも身につけられるモノだし、レベルアップも可能だ」

武藤「……それって聞いた限りじゃ俺たちの知ってる超能力の方が使い勝手が良くないか?」

アリア「確かにこれだけ聞けばそうかもしれないけど……白雪も然り、私たちが知ってる超能力は消耗が激しいのよ。全力で使い続ければ数分と持たないわ」

結標「逆に学園都市の超能力は消耗は殆ど無いに等しいから、長時間フルに使い続けることが出来るのよ」

不知火「成る程ね。効率は学園都市の方がずっといいってことか……それよりもワトソンもよく知っているね」

ワトソン「あ、ああ。前の武偵校で習ったことがあるのさ」

不知火「……そっか」

平賀「よくわかったのだ!説明ありがとうなのだ!」

 深々と頭を下げる平賀を見て「やっぱロリは最高だにゃー……」という土御門をほおっておいて、キンジは素朴な質問をした。


キンジ「結標さんは確かレベル4だったよな?」

結標「ええ」

キンジ「それより上っているのか?」

土御門「いるぜい。7人だけだがな」

理子「あ!りこりん知ってる!学園都市のレベル5でしょ!!」

海原「そうです。この7人は他の能力者とは一線を画しています」

 驚くキンジ。ここにいる結標淡希という人物の能力は先ほど見たが、それでも驚いたものだ。それとは格が違うとなると、もう想像もつかない。

武藤「──興味あるな。どんな連中なんだ?」

理子「聞きたい!聞きたい!」

平賀「私も聞きたいのだ!」

 その7人に興味を持ったのはキンジだけでは無いようだ。アリアやジャンヌたちも、興味ありげな顔をしている。

土御門「──やれ『学園都市230万人の頂点』やら、やれ『人格破綻者の集まり』だの言われてるが、俺にとっちゃあどっちも違うな。ありゃ──」

 たっぷりと間をつけて、土御門元春は言い放った。


土御門「ただのバケモンだ」

どうも。昼間寝過ぎてこんな時間でも目がらんらんとしている常盤赤色です。目~だ~ま~がらんらん、バイ○ンマン。

今回はここまでです。

では。

一様指摘しとくけど土御門くんはロリコンやなくてシスコンやで

>>93

旧訳の14巻冒頭でロリがどれだけいいか熱弁してたで。少なからずそっちの気もあると思う。

では投下いきます!

では投下いきます!

では、投下いきます!


智恵「──え~。改めまして!わたくし、今回の学園都市特別見学会バスツアーのバスガイドをいたします、因幡智恵と申します!皆様の楽しい学園都市旅行をサポートするため、未熟者ですが全力を尽くしますので、どうかよろしくお願いします!」

 バスガイドの自己紹介に、拍手する学園都市特別見学会参加者たち。
 学園都市特別見学会の参加者を乗せた観光バスは、東京駅から学園都市へと向かっている最中だった。
 参加者たちは皆、滅多に味わえないスカイホップバスの開放感を、写真や動画にして思い出に残している。子供なんかは、はしゃいで外の景色を見ていた。やはりスカイホップバスそのものが珍しいのであろう。

 と、テンションの高い雰囲気に触れても、この2人のテンションは最初っから最悪だった。

士道・キリト「「はぁ…………」」

 通路を挟んで隣り合った席で、同時にため息をつく五河士道と桐ヶ谷和人・通称キリト。この2人だけはまだ学園都市についたわけでもないのに、猛烈な(精神的な)疲労感が漂っていた。

アスナ「もう。なに、あれくらいで落ち込んでるのよー」

十香「シドー、せっかくの楽しい旅行なのだぞ。楽しまなければ…」

 そんな2人を元気付けるのはそれぞれの隣に座っている十香とアスナだった。
 おおよそ30分前。バスの目の前でお互いの女装姿について弄られていた少年2人は、見事に被った一言が原因で、更に弄られることになってしまったのだ。
 本人以外たちにとってはそのことは完全に笑いのネタだったが、2人にとっては笑われることになった苦い思い出でしかなく、唯一の利点はお互いの一行に共通の話題ができ、すぐに打ちとけることができたくらいだろう。

キリト「そ、そうだな。悪い、アスナ」

士道「──確かに楽しまきゃ損だな…。ごめんな十香」

 しかしこのまま不貞腐れていても既に起こってしまったことだ。どうしようもない。
 なにより滅多に経験できない体験ができる旅行なのだ。十香が言ったとおり、楽しまなければ損ってものだろう。

クライン「そうそう。そう根に持つなよお二人さん」

キリト「お前が一番面白がっていたよな……」

士道「……」

クライン「それに関してはホントすまなかっ……ぷぷっ」

 前の席のクラインの後頭部に手刀を打ち込むことで黙らせたキリトは、改めて士道たち一行の方に向き直した。

キリト「──遅れました。桐ヶ谷和人です。どうもよろしく」

 そう言って右の手のひらを差し出すキリト。士道はその手のひらに自分の手のひらを重ね、お互いにお互いの手を握り合った。

士道「五河士道です。こちらこそよろしく」


 2人のやり取りがきっかけとなり、一行はお互いに自己紹介を始める。

アスナ「結城明日奈です。よろしくお願いします」

十香「夜刀神十香だ!こちらこそよろしく頼む!」

リーファ「桐ヶ谷和人の妹の桐ヶ谷直葉です。いっしょに旅行、楽しみましょうね」

琴里「五河琴里よ。私も士道の妹なの。同じ妹同士、仲良くしましょ」

シリカ「綾野珪子です。よろしくお願いしますね」

四糸乃「よっ、四糸乃です……どうもよろしく」

よしのん『よしのんだよー!よろしく!』

リズベット「可愛いパペット人形ね。篠崎里香よ。よろしく」

耶倶矢「我は八舞耶倶矢だ。よろしく頼むとしよう!」

夕弦「紹介。八舞夕弦です。よろしくお願いします」

クライン「壷井遼太郎です!よろしくお願いしっす!」

美九「誘宵美九でーす☆よろしくお願いしまーす!」

七罪「七罪よ。6日間、よろしくね」

令音「村雨令音だ。よろしく頼む」





──まずは、剣士と精霊が交差する。





──自己紹介からおよそ30分後。

シリカ「ってことは、本当に美九さんって、あの「誘宵美九」なんですか!?」

美九「ばれてるなら仕方ありませんね。ホントですよー」

リズベット「マ、マジでっ!?私、顔見たことないけど曲聴いてて、ファンだったのよ!良かったらサインなんかお願いできたら……」

美九「いいですよ」

リズベット「いよっし!」

リーファ「あっ、私も私も!」

 髪型をポニーテールに変え、伊達眼鏡を掛けていた美九だが、流石にまじかで見られるとばれてしまい、"他のお客さんに知られないようにしてくれるなら"という条件をつけて、サインを書くことになっていたのだった。
 ちなみにキリト、アスナは「誘宵美九」について何も知らなかった。まぁ聞いたところ、キリトは元からそんな物に興味を持つような人間じゃないらしいし、アスナはいいところのお嬢さんで、あまりそういうことに疎いとのことだった。
 前に士道の友人の殿町宏人が「美九たんを知らないようなヴァカは、同年代に士道だけ」とか言っていたが、案外間違っていたようだ。今からでも土下座して尻からスパゲッティを食ってもらえるだろうか。


智恵「では皆さん!前方をご覧ください!!」

 と、携帯で「殿町宏人」の名前を探していた士道は、バスの前方から響いてきたバスガイドの声で、顔を前へと向けた。


智恵「え?この壁の向こう側が学園都市となっています。面積はおよそ東京都の約三割!人口230万人、内八割が学生という正に総合教育機関の結晶とも言える街となっています!」

十香「おお!士道、見ろ!あのゲート、ロボットがいるぞ!!」

士道「おお、ホントだ!まるでドラム缶みたいだな…」

 見るとゲート付近の道路にいくつかのドラム缶型ロボットがうろついていた。正面にカメラがついている。
 ロボット技術は進歩しているとは言え、まだ街中で見かけることは少ない。精霊である十香たちは勿論、士道やキリトもそのロボットに目をやっていた。

シリカ「バスガイドさん。あのロボットは?」

バスガイド「いい質問ですお嬢ちゃん。彼らは学園都市の清掃用ロボットたちです!」

キリト「清掃用ロボットねぇ…」

クライン「学園都市にはこんなのがウヨウヨいんのか」

智恵「清掃するだけではなく警備や治安維持のための、いわば動く監視カメラ、というわけですよ」

リズベット「学園都市の技術は2、30年進んでいるって噂かと思っていたけど……あんがい間違いじゃないようね」


「見て見てーおいぬさんのロボットだー!」

 子供の声につられて窓の外をキリトが覗き込むと、そこには銀色の犬ともジャガーなどの肉食獣とも取れる四足歩行の獣がうろついていた。

アスナ「流石学園都市ね…動きがすごい滑らか」

キリト「ああ」

 その歩行は本物の生物のように滑らかだった。学園都市の外部ではこんなにも動きに滑らかさは出せまい。

七罪「バスガイドさーん。あれも学園都市のロボットなんですか?」

智恵「私もあまり見たことはありませんが…あ、そうそう。大覇星祭の時に一度見た覚えがありますね」





 そんなこんなしている内にバスはゲートをくぐり──ついに学園都市へと入った。



………ピリッ

 ゲートを潜ったその瞬間、琴里は妙な感覚に襲われた。体に微弱な電気が走る──そんな感覚に。

琴里「………………?」

琴里(今のは……………?)


十香「おおお!!ここが学園都市か!!」

耶倶矢「見ろ夕弦!飛行船があるではないか!飛行船!」

琴里「電信柱が見当たらない変わりにあちこちに風車があるわね…」

リーファ「思っていたよりかは普通の町並みですね…もっと近未来的だと思ってたけど」

 ここにいる者が見たことがある学園都市とは、テレビ局にて配信された、大覇星祭のときの学園都市だけだ。その時も公開されたのは生徒の競技や、学園都市のほんの一角でしかない。
 初めて見る学園都市に、参加者たちは皆、騒いでいた。

智恵「はいはーい!皆さん!ちゅうもーく!!」

 ここで乗客たちの意識は、もう一度バスガイドへと向けられた。

智恵「バスがホテルに到着してからは、自由行動とさしていただきます!大きな荷物は我々があらかじめホテルに預けておくので、昼食を取るもよし!見学するのもよしです!ただし、マップにも載ってるように第二と第一0、第二三学区と第七学区の「学び舎の園」は立ち入り禁止学区なのでくれぐれも注意してください──」


──11月3日。12:30。学園都市第六学区。



上条「…なぁ?。ハンバーガーで手を打たないか?インデックス、オティヌス。割引券が溜まっているしよ」

 第一一学区を公園沿いの通りを歩きながら、ツンツン頭の少年・上条当麻は隣を歩く白い修道着を着たシスター・インデックスと、自分の頭の上にちょこんと座る元魔神・オティヌスに恐る恐る聞く。
 すると2人はそれぞれの位置から上条を睨みつけた。

インデックス「ダメだよとうま!夕べはとっても、とーってもひもじい思いをしたんだから」

上条「仕方ないだろ、土御門に呼び出されて、何かよく分からん荷物運び手伝わされたんだから」

オティヌス「ほほう。貴様にとってはか弱い我々の食事より、あの胡散臭い金髪サングラスとの約束の方が大事だと言うのか」

 思わず「うっ…」と息を詰まらせる上条。確かに彼女たちの晩御飯を作らずに出て行ってしまったのは事実だ。上条はそれは悪いと思ってるし2人にも謝った。
 しかしこれだけは譲れない。このままでは初めてアリサと出会った時の二の舞になってしまう。だから今回は上条は引かなかった。

上条「と、とにかく、今回はダメだ!!」

インデックス「前にも言ったけどね、とうま!ご飯を忘れられるとね、存在そのものを忘れられた気分になるだよ!ね、オティヌス、スフィンクス」

オティヌス「うむ、禁書目録の言う通りだ」

 うなづくオティヌス。スフィンクスも、その通りですよ、ご主人!と、言うかのようにインデックスの服の中から顔を出す。


 その後、激しい論争の上、先に折れたのは──

上条「あ……あーもーわかりましたよ。好きなだけ食え」

 ──もちろん、上条だった。

オティヌス「おお!」

インデックス「本当だね!とうま!」

上条「ああ。上条さんに二言はねーよ」

 と、これから待つごちそうにインデックスが喜んでいると目の前の公園に目がいく。
 そこではなにやらお祭りのようなイベントが行われており、野外ステージではバンドによるライブの最中だった。

インデックス「とうま!手始めにたこ焼きが食べたいんだよ!」

オティヌス「わたしは焼きそばが食べたいぞ!上条!」

上条「はいはい。仰せのままに」

 と、屋台を求めて公園に入った3人はそこである一団と出会う。

始めましての人は始めまして。お久しぶりの方はお久しぶり。というわけで常盤赤色です。

今回はなんか調子が悪くて、重複してしまいました。すいません。

余談ですが昨日更新出来なかったには理由があります。アニメWORKING!!3期にはしゃいでました。はい。ものすっごい自分勝手な理由でしたね。すいませんでした。

では。

乙です

SAOチーム、リアルなのにキャラネームなのか?

オティヌスが上条呼ぶときは「人間」じゃなかったっけ

もしかして前スレの文章少し改変してるの

>>117
ありがとうございます

>>120
自己紹介はちゃんとリアルでの名前にしました。文章内での名前がキャラネームなのは、そっちの方が読者に分かりやすいと思ったからです。

>>122

数ヶ月立って、ちゃんと名前で呼ぶようになった、と俺はそんな感じで考えていました。
違和感があったらすいません。

>>124
はい




えーどうも、常盤赤色です。今回はお知らせがあってきました。

実は今週、葬儀がありまして、それでその準備やら後片付けやらで一週間が終わってしまったのです。

当然、執筆する暇も無く。

というわけで今週はもちろん、そして来週の更新も無いかもしれません(まだ次回のストックが十分ではないため)。

私事でこの小説を楽しみにしてくれている読者様を待たせること、大変お詫び申し上げます。

そしてこれからも是非、この小説を宜しくお願いします。

では。


黒子「げっ」

佐天「あっ、上条さんじゃないですか」

 そこにいたのは上条も見知った顔。御坂美琴の友人である白井黒子・佐天涙子・初春飾利の3人だった。
 なんだかんだで会うのは久しぶりである。上条がオティヌスの一件で入院している時は何度かお見舞いに来てくれたこともあった。あの時貰った手作りのクッキーはとても美味しかったことを覚えている。

上条「やっ。入院中はお見舞いに来てくれてありがとな。クッキー、美味しかったよ」

初春「いえいえ、ありがとうございます。クッキーの感想は御坂さんにも言ってもらえると嬉しいんですが…」

上条「御坂にか?了解、今度会ったら言っとくよ」

 右手を挙げて、了承の意を示す上条。何故か初春・佐天の口から"よしっ!"という言葉が聞こえた気がしたが、別に気にすることでもないだろう。


佐天「あ。インデックスちゃん、オティヌスちゃん、久しぶり!」

インデックス「久しぶりなんだよ!」

オティヌス「久しぶりだな、3人とも」

 ちなみにインデックスやオティヌスもこの3人とは顔見知りである。「魔術」に関して何も知らない3人には2人のことは「学園都市に勉強のために来たイギリス清教のシスター」と「特殊な能力により、身長が縮んでしまったイギリス清教の関係者」と言い、上条はイギリス清教の知り合いから2人を押し付けられたと説明しておいた。あながち嘘でもないし──まぁ少し疑られたが──美琴のフォローもあり、ことなきを得た。

オティヌス「……ところで、お前」

初春「へ?なんですか?」

オティヌス「…その手にしたピンク色の物体はなんだ?あんまり美味しそうには──」

インデックス「美味しそうなんだよ!」

オティヌス「──見えな…へ?」

初春「ああ。これ?これ、いちごもんじゃって言って、あそこのもんじゃ焼き屋さんで買えるですよ」

インデックス「ほぉー。食べたいんだよ!」

黒子「…………その子の感性もアレですわね」

上条「食べ物以外に関しては普通なんだけどな……」

インデックス「とうま、とうま!早くご飯にしよ!ほら!」

オティヌス「…………いちごもんじゃという物は流石に嫌だが、普通のもんじゃという物には食べてみたい。私もあれからにしよう」

 インデックスに腕を掴まれ、無理矢理もんじゃの屋台に連れて行かれる。
 祭りの屋台の食べ物といえば安くて美味い物が多い。上条のスカスカなお財布にも優しく、インデックスも満足してくれる。これなら上条も泣くこともないだろう。


──と甘い希望を持っていたのが間違いで。

上条「…………」

オティヌス「おい上条!しっかりしろ!」

初春「だ、大丈夫ですか?」

 30分後、ベンチにはすっからかんになった財布を見て呆然となっている上条・両手に屋台の食べ物を大量に抱え込み、ソースやらマヨネーズやらで口を汚した幸せそうな顔のインデックス・そして呆然としている上条を見て、上条の隣であたふたとするオティヌス・飼い主と同じで日向で気持ち良さそうに寝ているスフィンクス、と、それぞれ全く違った表情をした3人と1匹が座っていた。

佐天「上条さーん。しっかりしてくださいよー」

黒子「しかしあなたの胃袋はどうなっていますの……?あんな量がこの身体のどこに……」

インデックス「ふぉい?」

 涙を浮かべながらあらぬ方向に目を向ける上条を見て、初春と佐天は本気で心配し、黒子も少しばかり同情していたであった。

上条「……お前さ…もうちょい自重とかいう言葉を知ってくんない…………」

インデックス「ふぁいに?(なぁに?)」

上条「…………」

 言葉も出ないとは正にこの事である。もう当たり前のことすぎてため息ですら出ない。


上条「…………ああ……不幸だ」

オティヌス「む、どこに行くのだ?」

上条「コンビニにゴミ捨ててくる……」

 もう何度言ったか分からない言葉を吐きながら、隣に置かれたビニール袋をはみ出しているパックや紙袋を、公園とは大通りを挟んだコンビニのゴミ箱まで捨てに行く上条。ついでにATMからすっからかんになった財布を補給することを考えながら、大通りの信号を渡ろうとすると、

「お嬢ちゃん、こんなところでなにしてるんだい?」

上条「……」


 見るからにガラの悪い4人の男が、1人の少女に絡んでいるのを目撃した。
 普段からの、多種多様に渡る様々な相手との喧嘩の経験から、当麻は、直感で彼らが今は崩れたスキルアウトの連中であることを見抜く。

 少女の背丈はインデックスと大差なく、オレンジに似た明るいの茶髪と宝石のように澄んだオレンジ色の眼が印象的だった。
 ショートカットの上に、自身の顔ほどもある麦わら帽子を被った少女は、話しかけてきたスキルアウトの男たちに対して、困惑しているように見えた。

少女「おじさんたち、誰?」

「オイオイ、おじさんは酷いなぁ。お兄さんって呼んでくれないかな?」

「怪しいもんじゃねぇよ。それよりもお嬢ちゃんは一体何をしてるんだい?」

少女「──友達と一緒に街に来たんだけど、はぐれちゃって」

「なんなら俺たちが友達探してって風紀委員に届けておくからさ」

「一緒に遊ばない?美味しい物でも食べてさ」

少女「美味しい物?うーん…………」

上条「…………」

 青になった信号を渡りながら周りを見渡す上条。


 さて、こういう状況にあった場合、大抵の人間がすることは、我関せずと傍観を決め込むか、できたとしても警察に連絡を入れることくらいだろう。
 前者はともかく、後者の選択は一般的に見れば正答に近い行動である。 普通は誰だってそうするだろう。現に、少女の周りの人間はそうしていた。

 だが、上条にとっての正しい選択肢はそれではない。


 上条当麻は不幸な人間である。

 子供の頃は「疫病神」と言われて何度も命に関わるような出来事を見世物扱いされ、学園都市へやって来ても不幸は止まらず、酷い時は3日に1回は死にかけている。

 それ故か。上条は人の不幸に対して敏感である。自分が不幸だからこそ、そのような不幸を他人が味わっているのが我慢できないのだ。
 今までも上条は、誰かの不幸を何度も目撃している。そんな時、彼は自分に災難が降りかかることを承知しながらも、必ず、その不幸に介入してきた。
 大怪我なんて何百回もした。死にかけたことも一度や二度ではない。たった一度だけだが、自分の行為を後悔したこともある。
 ただ「許せない」。目の前の、不幸に堪えてる人、不幸を我慢している人を黙って見ていることを許せない。

上条「おーい、探したぞ」

 その気持ちを糧に、今日も上条当麻は理不尽な「不幸」を壊すため、右の手を強く握る。


少女「えっ、お兄ちゃんは……?」

「あぁ!?誰だよお前!」

上条「この子の知り合いだよ…嫌だなぁ。忘れられちゃうなんて上条さん、ちょっとショックですよ」

少女「え……」

「何だぁテメェ?なんか文句でもあンのかよ」

上条「…………はぁ」

 元からダメ元だったが、やはり「知り合いのフリして自然にこの場から連れ出す作戦」は成功しなかった。まぁ当たり前だろう。

上条「ったく…お前たちもこんな小さな子を相手に何やってるんだよ」

「このっ……!せっかくのところを邪魔しやがって」

「おい、こいつイタイ目合わないとわからんらしいぜ」

 痛い目に会うのは嫌だが仕方が無い。ここは自分が不良を引きつけて、少女を逃がすことにしよう。

「ナメタ真似したお前が悪いんだよ。まぁ殺しはしないから安心しな」


上条「──俺がこいつらを惹きつけるから。そのうちに逃げろ」

少女「…………」

上条「分かったな?」

 「やれるもんならかかってこいよ」。上条が、そう不良達を挑発しようとした。




 その時だった。



少女「…………プッ、アハハ」

上条「へっ?」

「あ?」

「何だ?」

 突然、少女が笑い始めたのだ。

少女「プフフ……あ、ごめんね。「俺がこいつらを惹きつけるから、そのうちに逃げろ」って、なんかあの人にそっくりで」

上条「…………」

 なんでだろう。先ほどまでは幼い少女という感じっていうか世間知らずな感じがしていた上条は瞬きをしてしまった。不良たちも同じ様でポカンとした顔をしている。

少女「子供だと思って誑かしてきたバカほどじゃないけど、あなたもそうとうなバカだね。ぷふぅ」

 どうやらこの少女、今まで小さな幼女のフリをしていたようだ。猫かぶりとはこういうことを言うのだろうか。

「…………オイ、バカって誰のことだ?えぇ?」

「ガキだから手を出さないとか思ってんだったら大間違いだぞクソガキ」

 なんにせよ、少女の発言が気が立っていた不良たちの更なるイライラの原因になったのは間違いない。これでは上条の作戦が台無しだ。

少女「まぁとりあえず」

 少女はそう言いながら、手を高く振り上げる。
 まるで、何かを引っ張るかのように。

 直後、

 ミシッ、という音と共に、コンクリートに放射線状の亀裂が入り込む。それも一箇所ではない。二箇所、三箇所、四箇所……全部で六箇所。

「………………へ?」

 不良を取り囲むようして出来たのその亀裂は、次第に盛り上がり──

メキッメキッメキッ!

 巨大な植物の蔓が、コンクリートを突き破って出現した。

「「「「ぬ、ぬあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」」」」

 突如現れた植物の蔓は逃げようとする不良たちを、的確に、迅速に巻きついてきた。蔓に巻きつかれた不良は必死でもがくも、蔓の一つ一つが大木の根ほどもあるため、振りほどくことはできず、蔓に巻かれていく。


上条「えっ…………えっ?」

 あっという間に4人の不良は、蔓に身体上を巻きつかれ、身動き一つ取れなくなった。
 突然の出来事に、頭がまったくついていかない。上条は一部始終を、呆然と眺めることしかできなかった。

少女「──さてと…大丈夫?おにーさん」

上条「へっ?……あ、ああ」

 少し目線を下げると、そこにはやはり年相応の幼い少女がいた。

上条「俺は大丈夫だけど……こいつらは」

少女「安心して。絞め殺そうなんて気はないし。ま、暫くこのままでいてもらうけどね」

「「「「た、助けてくれ……」」」」

 確かに逃げられない程度にはきつく縛られているが、怪我などは無いようだ。

上条「そ、そうか。一応警備員に連絡しとくか……」

 ズボンのポケットから携帯電話を取り出し、警備員に連絡する上条。後は警備員がどうにかしてくれるだろう。この蔓を解くのには苦労しそうだが。

上条「…………これでよしっと。じゃ早々にここから退散するか」

 取り調べまで受けていたらインデックスとオティヌスが何をされるか分からない。ここはコンビニのゴミ箱にゴミを捨て、早々に立ち去るとしよう。ATMは別の場所ですればいい。

上条「それじゃ、俺は用事があるから。後は今から来る警備員の人たちがなんとかしてくれるだろ」

 ゴミ箱にゴミを突っ込み、もう一度信号を渡る上条。
 後は警備員がなんとかしてくれるだろう。


上条「…………で、なんでついてくんの?」

少女「私、あなたに興味持っちゃった」

上条「は、はい?」

少女「あ、勘違いしないでね。LOVEってことじゃないよ。ただね」

 信号を渡り終えたところで、少女は上条の前に回り込む。

少女「そっくりなの。私の大切な人に。だから興味あるの。あなたに」

上条「いや……そんな…」

少女「どうせ私の友達も、私のこと探さないでこの街を堪能してると思うから。私も楽しみたいの」

 それは酷い友達である。

少女「やっぱり現地の人に案内してもらった方が面白そうだからね」

上条「だからって──」

「とうま!」

 ここで聞き覚えのある声に上条は振り向く。インデックスと、その頭に乗ったオティヌスだ。
 そして少女を見た2人の顔が、みるみるうちに怪訝になっていくのを見て、上条の額から嫌な汗が出てくる。


オティヌス「…………妙に戻るのが遅いから気になって来てみれば…また厄介ごとに首を突っ込んだなお前」

上条「うっ……」

インデックス「……とうま?」

 こちらをジロリと睨んでくる居候2人にたじろぐ上条。このままでは間違いなく上条の身体の何処かにインデックスの歯型がつくことになる。

少女「…………ぷっ、ぷははは」

 その様子を見て、再び笑い出す少女。いきなり笑い出した少女に、上条を噛もうと口を開けたインデックスも、インデックスに噛まれると身構えた上条も、インデックスの頭に仁王立ちしたオティヌスも、少女に顔を向ける。

インデックス「な、なに?」

少女「あっ。ごめんね。やっぱりそっくりでさ。あの人に」

オティヌス「あの人……?」

少女「ねぇねぇシスターちゃん、小人ちゃん。お願いがあるの。私に学園都市を案内してくれない」

 インデックスの手を掴み、顔を近づける少女。いきなり顔を近づけられたインデックスは少したじろぎ、後ろへ一歩下がる。


オティヌス「え……いや」

少女「お願いっ!」

 顔を見合わせる上条とオティヌス。この少女、どうしても上条たちに学園都市を案内して欲しいらしい。理由はともかく、こんな少女の頼みを無下に断るのは良心が痛む。が、インデックスの機嫌が──

インデックス「…………いいんだよ」

上条「!!」

少女「ホ、ホント!?」

インデックス「その代わりなんだけどさ」

 と、インデックスは自分の右手を掴んでいる少女の手に、自分の左手を重ねた。


インデックス「私と、友達になって欲しいんだよ」


 その途端だった。
 少女の顔が太陽のように明るくなる。

少女「なるなる!もちろんだよ!シスターちゃん!!」

インデックス「シスターちゃんじゃないよ。私にはちゃんと「インデックス」っていう名前があるんだよ」

少女「分かった!よろしくね!インデックスちゃん!」

 インデックスの手を掴みながらぴょんぴょんと跳ねる少女。インデックスから友達になろうと誘われたのが、よっぽど嬉しかったらしい。


上条「いいのか?インデックス」

インデックス「うん。それにね、この子となら、すごくいい友達になれる気がするんだよ」

 インデックスの表情も明るい。なんだかんだで彼女には同年代の友達というのが少なっかった。彼女も、友達になってくれると即答してくれた少女に、嬉しかったのだろう。

オティヌス「……分かった。私はあまり役に立てないかもしれないが学園都市を案内してやるとしよう。それと、私を「小人ちゃん」とは呼ぶな。オティヌスと呼んでくれ」

少女「うんうん!オティヌスちゃんも宜しくね!」

オティヌス「……ちゃん付けもよして欲しいんだが……」

 早くもインデックスとオティヌスは少女に打ち解けたようだ。やはり性別が一緒だからだろうか。
 とりあえずは自己紹介からしよう。学園都市を案内するならばお互いのことを知っておいて方がより楽しめるはずだ。


上条「俺の名前は上条当麻だ。よろしくな。えー…………と、名前まだ聞いてなかったな」

少女「私?私はね」


イブ「──イブ。イブっていうの。よろしくね」



第二話
「幻想殺しと橙茶色の少女」
 終


というわけで、おはこんばんちわ。常盤赤色です。

いよいよオリキャラがストーリーに関わり出しました。この作品において、イブたちは重要なキーパーソンとなります。

イブですが、見た目はウルトラ怪獣擬人化計画のゴモラちゃんを、もう少し髪を長くした感じに考えてください。ネタバレになるのでキャラについての説明はまだ出来ませんが、彼女も、インデックスや十香のように中々ハードな人生を送っている子です。図々しいですが見守ってやってください。

先週、今週は私事で更新できず、本当に申し訳ございませんでした。色々大変なことがありましたが>>1は元気です。

これからも応援、よろしくお願いします。

では。

乙です


『とある』と『SAO』は分かるが他の作品はわからん

デート・ア・ライブと緋弾のアリアやな

乙したー


出てる作品ほぼ網羅してるから期待したいけど慎重に進めて欲しいお願いします
スレ三回目だし

>>151 >>152 >>153

ありがとうございます。

>>154
ありがとうございます。慎重に進めて行きたいと思います!

士織ちゃんハヨハヨ じゃあないと>>1を掘っちゃうぞ(ハート)

>>156

ふっ。>>1は男ですよ掘るなんて……あ、士織ちゃんが許容範囲内なら大丈夫か……すいませんまだ時間かかるんでもうちょいまってください掘るのはやめてぇぇぇぇぇぇぇ!!(土下座土下座土下座土下座土下座土下座)



……どうも。常葉赤色です。

さて、今回は皆さんに重大なお知らせがあります。

それは










パソコンぶっ壊れて貯めてたssのデータがパーになりました……。

幸い、大まかなあらすじやプロットはiPhoneにもいれてあったので事なきを得ましたが……完全に書き直しとなってしまいました。
なので、今週からは正式に一週間一話更新とします。二話更新はストックが溜まるまでお待ちください。

皆様に多大な迷惑をおかけすること、本当に申し訳ございません。

俺は帰ってきt(スレを見渡して)………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………。









お前らやりたい放題にも程があるだろうがァァァァァァァァァ!!!

なんで俺が犯される方向に向かってんの!?お前ら女にモテないからって迷走どころか崖に向かってLet’goしてんじゃねーよ!地上200メートルから真っ逆さまだよ!こっちは体育祭、文化祭とリアルで忙しい中、少ないけど更新しようと必死で執筆してんだぞ!それをお前らはボルグ・ゲイだの二刀流だのレッドポーションだの天元突破だのふざけるなァァァァァァァァァ!!だいたい>>1は男の娘でもショタでも無いからな!身長175cmだからな!お前らより高いんじゃねぇの!?あ?顔の出来?普通じゃボケェ!!(友人談)

あとな!俺はどっちかって言うと攻めだ!

ハァハァハァ……と、ともかく、今日の夜には少しだけど更新できるはずだから…待ってて…。



………あと、いつからこのスレはホモスレになったんだ……。……はぁ、不幸だ。



──11月3日 13:54


 ファミレスことファミリーレストランは、家族連れに対応した業態ともされ、その料理の幅は老若男女に添ったものが提供される。
 また、多くの客に同時進行で食事が供されるように、広い店内が特徴的であり、料理の価格帯は概ね大衆的で、質と量共に低価格で満腹感が得られる傾向が強いものとなっている。
 もちろん学園都市にもファミレスは多数ある。しかし学園都市のファミレスに家族連れの客は少ない傾向にある。学園都市の殆どの生徒が寮での一人暮らしだからだ。そのため、学園都市のファミレスに訪れる家族連れと言えば大体が兄弟、もしくは姉妹ということになる。
 むしろ学園都市のファミレスは生徒が級友と共に駄弁るためにある、と言っても加減ではないだろう。大体の生徒たちは奨学金がそこまで無い故、単価の安いファーストフード店かファミレスで外食を取るからである。
 その辺は仕送りや、依頼解決での報酬などで金銭面が安定しない生徒が多い武偵校でも、事情は似ているだろう。
 かたや修正の使用がない人格破綻者のレベル5が入り浸り、かたや拳銃刀剣を所持した武偵校生が入り浸ったりと、ファミレス業界もかなり厳しいものがあるのであろう。……たぶん。

打ち止め「っていうかあなたって、ファミレス来てもコーヒーしか飲まないよね。ってミサカはミサカはあなたのあまりのコーヒー好きに呆れてみたり」

 第七学区の駅周辺のファミレス。常盤台の超電磁砲や、「アイテム」のメンバーが利用するこの場所で、一方通行、打ち止め、番外個体の3人は少し遅めの昼食を取っていた。

 いつも通り──というか飲み物といえばコーヒー以外を頼んだ姿が見たことがない一方通行に呆れているのは、その正面でお子様ランチ(おもちゃ付き)のエビフライを口に加えた少女、打ち止めである。

番外個体「確かにね~。こんだけコーヒー飲んでるといつの間にか体が黒くなったりしないのかな~。なんて」

 その隣でカルボナーラを口にしている打ち止めと同じ顔をした高校生くらいの少女、番外個体も同じように呆れた。彼女の場合、からかいの意味が大きいだろうが。

一方通行「別に俺が何飲もうと食べようと俺の勝手だろうがよォ……ったく」

 そして連れ2人に呆れられながらもそれを咎めないこの少年が、学園都市に7人しかいないレベル5の第一位、学園都市能力開発の頂点に立つ男──一方通行(アクセラレータ)である。

 灰色や白に近い配色の髪色。赤い瞳。中性的な体格と、能力者が多い学園都市の中でも目を引く容姿をしているが、一番に目を引くのはそこでは無かった。




──眼。


 まるで獣の様な獰猛かつ鋭い眼。その細く頼りない身体つきや右側に置いてある杖とは対象的な眼光を彼は放っていた。

 それもそのはず。彼が今まで体験して来た出来事は──少なくとも平凡な人生の中では──想像もつかないほど、残虐で、悪意的で、救い様のないものばかりである。常人ならばまず発狂間違いなし、の。

 「学園都市第一位」。その名は同時に、学園都市の闇に最も近い能力者であることも意味していた。

一方通行「それによォ。好き嫌いのことでおめェらにとやかく言われたくねェンだが」

打ち止め「うっ……ってミサカはミサカは思わぬ反撃に出た一方通行にうめき声を出してみる…」

 言葉を詰まらせる打ち止め。

 彼女は他の妹達に比べ、全体的に精神年齢が傾向にある。

 元々打ち止めは妹達の反乱防止装置として作られたため研究員たちが掌握しやすいようにわざと身体も精神も幼くして作られているのだ。
 子供というのは周囲の影響を受けやすい。他の妹達に比べて彼女の感情が豊富なのや個性があるのはその理由があるからだろう。
 その為、打ち止めも段々と「好き」「嫌い」の区別ができてきたのである。

番外個体「ちょっとちょっと。ミサカの場合のはこの子の性なんだからしょうがないじゃん。一緒にしないでよね」

 苦笑いする打ち止めとは対照的に余裕がありそうな顔を見せる番外個体。
 番外個体はミサカネットワークの一部、悪意的な思考や感情を強く抽出する特徴がある。それは勿論、食べ物に対しての「嫌い」という感情も取り出してしまうということだ。

 だから食事中の打ち止めの「食べたくない」という感情を強く受け取ってしまうというのだが……。

一方通行「オイ打ち止め。お前「トマト」って嫌いか?」

番外個体「(ビクッ)」

打ち止め「?ううん。トマトは普通に食べられるよ。ってミサカはお子様ランチのミニトマトを口にして証拠を見せてみる」

 お子様ランチの、よくある飛行機型のプレートからミニトマトをフォークで刺し、そのまま口に入れる打ち止め。表情を見ても無理して食べているとは思えない。

番外個体「……」

一方通行「さっきオメェ、自分の好き嫌いが打ち止めの感情によるもンだって言ってたよなァ。じゃあオメェ、なんでトマト残してンの?」

 一方通行の指差した先。そこにはカルボナーラについてきたサラダ、その皿に一つだけ残っているトマトがあった。

番外個体「そ、それはアレよ。今、昼ご飯とか晩ご飯食べている妹達がいて、その感情が私に来てるんじゃ無いの?妹達なんて1万人以上いるんだし、不思議じゃ……」

打ち止め「──確かに今ご飯を食べている妹達はいるよ。けど、今、ご飯を食べてる妹達の中でトマトが嫌いな子は1人もいないよ。ってミサカはミサカはネットワークを通じて得た情報を一方通行にリークしてみたり」

番外個体「げっ!打ち止め!?」

打ち止め「いつもからかっているお返しだよ。ってミサカはミサカは心の中でほくそ笑んだり」

一方通行「声に出てるぞ。ま、なンにせよお前のトマト嫌いが発覚したわけだなァ(ニヤァ)」

番外個体「(こ、こいつら楽しんでやがる……)」

 これが因果応報というやつか。普段から2人の体格や性格をからかっている番外個体への、2人からの細やかな復讐というわけだろう。


……というわけで、ここの奴らの妄想で犯されまくられた>>1こと常盤赤色です…。どうしてこうなった…。

ホント、ガチホモだけは許容範囲外なんだよ……。やめてくれよ、もう……。

ま、来週も更新出来る様に頑張りますので…宜しくお願いします。

………では。

どーも>>1こと常盤赤色です。
実の話、先週の土日の文化祭、そして今週土日に祖母の四十九日で実家の福岡に帰る準備のため、まったく執筆が出来ていませんし、恐らく今週の土日も更新は無理だと判断しました。無理に更新してもあれなので。
夏休み後半の突然の葬式から始まり、私事で更新スピードが大変ダウンしてしまいましたが、この用事が終わればとりあえず一区切りがつきますので、待っていてください。読者の皆様には大変なご迷惑をお掛けしてすいません。
そして、引き続き、「とある緋弾のソードアート・ライブ」をよろしくお願いします。
では





 いっそトマトが嫌いなことを認めてしまうか。いや。それでは今日の夕食には強制的にトマトが出てくることになる。そしてあの熱血教師黄泉川のことだ。番外個体のトマト嫌いが発覚すればどうやっても治そうとするに違いない。トマトを食べればいいと言われたらそれまでだが、それが出来たら今頃苦労はしていないだろう──。
 どうやってこの窮地を抜け出すか。番外個体がこの問題を解決するために頭をフル回転させていた時だった。

一方通行「ン……」

 一瞬、何かに反応した一方通行はポケットから携帯電話を取り出す。どうやら誰からか電話が来た様だ。

一方通行「……電話だ。すぐ戻る」

 不意に杖を取り席を立ち上がる一方通行。そのまま足を引き摺りながらトイレへと向かう。
 何にせよ助かった、と心の中で安堵した番外個体と、滅多に出来ない番外個体いじりを邪魔され少しだけ不機嫌になった打ち止め。2人は全くの反対の心境を抱きながら、一方通行の背を見送ったのだった。





──11月3日。13:06


リズベット「──ごちそうさまー。いやー美味しかったねー!」

十香「そうそう!特にこのパエリアなどは絶品だったぞ!」

 学園都市に来てからおおよそ1時間半。一行は、クラインがこの日のために学園都市在住のMMO内の友人にリサーチしていた第十四学区のレストランへと来ていた。
 第十四学区はその特性上、外国料理の専門店が多く、留学生だけではなく他の学区の学生達も利用しているのでいる。値段は普通のレストランよりは少し高めだが、それで現地と変わり無い食事を堪能できるのである。


士道「壷井さんありがとうございます。俺たちに店のこと提案してくれて」

クライン「いやいや!イイってことよ」

 礼を言う士道に対し、何でもないという風に手を振るクライン。
 士道たちにしてみれば少しばかりの前調べしかしてない街で、こんなに美味しい店を紹介してして貰ったのだ。感謝するのは当たり前だ。

キリト「クラインは見た目とは違って結構気が効くからな」

クライン「おいそこ。一言余計だぞ」

琴里「そういえば、貴方達って壷井さんのことを「クライン」とか、直葉さんのことを「リーファ」とか呼ぶけど……それって何なの?あだ名?」

 店員が下げやすいように食べ終えた皿を整理していた琴里は素朴な疑問を投げかける。
 確かにキリト達のグループは、他にも「キリト」や「リズベット」、「シリカ」とお互い呼び合っていた。結城だけは下の名前で「明日奈」というのは分かるが、他のメンバーのあだ名は本名とはとても関係するとは思えないものばかりだ。


 そう気になったのは士道だけではないらしく、十香達もキリト達のグループに顔を向けていた。

シリカ「あ、これはですね……」

リズベット「私たち、VRMMOの中で知り合った中なのよ。それでリアルでもあだ名感覚で呼んじゃうのよ」

 士道は、成る程、と納得した。
 VRMMOは今や幅広い層のプレイヤーが存在するオンラインゲームである。士道は似たようなものにあまりいい記憶があるからしたがこと無いが、ゲームの中からリアルでの付き合いを持つ人達も出てきてもおかしくはない。

令音「ああ、成る程……それでつい、ってわけですか」

アスナ「そういうことです」

 他の皆もそれぞれが納得したような顔を取っていた。
 人の呼び名というものは一度定着すると中々変えられないものだ。それはリアルでもバーチャルでも同じなのだろう。

令音「──?シン、どうした?私の顔に何かついているのか」

士道「あ、いや。何でもないです」

 慌てて手を振る士道。


リーファ「そう言えば琴里さん達はこれから何処に行くんですか?私達は第六学区のショッピングセンターに向かう予定なんですけど」

琴里「ん。私達?私達も第六学区に向かうつもりよ。行くのは遊園地だけど」

 そう言うと琴里は、バッグの中から、ラタトスクが事前に手に入れてた学園都市の遊園地のパンフレットを取り出した。
 ラタトスクが調べた学園都市の観光名所の中で、一番精霊達に好評だったのが、この遊園地。学園都市の科学力でしか実現しなさそうな、他の遊園地には無いアトラクションの数々が、精霊たちの興味を引いたのだ。

リズベット「へー。改めて見ると色々と面白そうなアトラクションがあるわねー」

キリト「今日は行けないけど……どうせ一週間いるんだしな。他の日に行ってみるか」

 どうやら琴里が見せたパンフレットにキリト達も興味を持ったらしい。パンフレットには学園都市にしか無さそうなアトラクションの写真や説明が大きく掲載されていた。どうやら学園都市の外部からの観光客向けに制作されたものらしい。

令音「それでは時間も時間だし……途中まで一緒に行きましょうか」






 それからおよそ1時間半後、キリト達一行と別れた士道達一行は、第六学区の遊園地に到着していた。
 一行はラタトスクから渡されたチケットを持ち、列に並ぶ。
 園内への入り口には休みとあってか列が出来ていたが、そこまで時間もかかることもなく園内へ入ることが出来た。

七罪「おお……ここが遊園地……」

よしのん『ね、言ってた通り凄いところでしょー!』

 そういえば、このメンバーの中では七罪だけが遊園地に来たことが無かったはずだ。十香、四糸乃、よしのん、八舞姉妹は夏休みに東京の某有名な遊園地に士道たちと遊びに行ったことがあるので、今回で2度目となる。

七罪「おもしろそうなところね……」

耶倶矢「くくく。そうであろう、そうであろう。特にあの壮大な城など我の一押しだな!」

 と、耶倶矢が指差す方向には、その某有名遊園地の正面にある城にそっくりな建築物がそびえ立っていた。

士道「おおー。なんかノイシュヴァンシュタイン城にそっくりだなー」

美九「ホントですねー。もしかしたらあのネズミもいたりして」

士道「ははは。まさか」

(とある3期発表無しと聞いて)
ウゾダドンドコドーン!


……というわけで常盤赤色です。畜生めー!!
畜生………デトアラ、SAO、デュラ、WORKINGと完全に俺のアニメウェーブはノってたのに……畜生。
なんで禁書3期じゃないんだよー!


と禁忌のマグナを片手に机を叩く作者でした。
では。

★だけの正直邪魔

短いの誤魔化そうと数レスに別けてる? 時間だけとイミフ

>>219 >>220
すいません。スレ数稼ごうとしました。以後、気をつけます。

今週の更新は10月13日月曜日を予定しています。台風来るので日曜はベランダの整理しなくてはいけないので。
皆さんもくれぐれもお気をつけて。SNSで有名になりたいからと言って命に関わるようなことはやめてくださいね。
では。

すいません。急な用が出来たので更新は明日夜にします。本当に申し訳ございません。

………どうも。>>1です。

こんな時期に風邪をひいてしまいました……辛いよぉ…。治り悪いし。

来週はテストもあるし……辛いよぉ…。

そして再来週は親戚の結婚式で鹿児島に……。

小説ストックが禄に書けてない現状…。

というわけでしばらく更新をおやすみにします。

とりあえず再来週には更新を出来るように頑張ります!

それではしばらくの間、お別れを。

では。

──ククク………我はこの混沌の地にそびえる王。我こそは帝王。我はもう一度帰ってきたん(ry


はい、冗談はほどほどにして投下いきます。


──11月3日 14時32分


 第六学区にある学園都市内唯一の遊園地「ウィスト・ランド」は面積49万平方メートル、国内から見ても最大級の面積を誇る遊園地である。

 出来たのは2年前と最近で、開園当時から学生が多い学園都市にあること、学園都市の技術力を用いた最先端のアトラクションが外部の人間の興味も引いたこと、そして学園都市の学生ならば年齢問わず年に1度訪れれば無料で年間パスポートを手に入れられその後一年間の入場料は0となるという破格のシステムが人を呼んだ。

 それにより集客数はこの2年前で既に670万人、つまり単純計算で年に学園都市人口の8割が年に2回、この遊園地に来るのである。

 これは千葉県にある毎年2700万人近くいう桁外れな集客力の遊園地に負けず劣らずの数字である。

 ちなみに園内のスタッフの多くはこの遊園地を運営している学園都市の企業の特別な審査を受けた、外部の遊園地などでスタッフを勤めていたプロばかりである。一部のショーなど能力者が必要なアトラクションは園内に訪れた際の飲食の半額などのアルバイト割引などで学生アルバイトを雇用している。

 収入は同じ規模の遊園地に比べれば立地的な問題もあり低いが、学園都市の技術力や能力者を使うことでアトラクションやショー、着ぐるみなどに掛かる全体の管理費などのコストを、外部の遊園地の5分の1以下に抑えられることで収入は大きく支出を上回っている。来年には新たなアトラクションの建設を2つ計画するなどの余裕もあるくらいだ。


 園内は5つのエリアと1つのアトラクションに分割されており、それぞれのエリアには設定されたそのエリアのテーマを元に作られたアトラクションが集まっている。

 園内に入ればまず通る、グッズを扱うショップやレストランが立ち並ぶ商店街「ミーン・ストリート」。

 海や水のアトラクションを扱い、水流操作系の能力者と学園都市の技術によるダイナミックなショーが目玉の「シー・ベンチャー・ランド」。

 地下合わせて全高100メートルの巨大な洋館の中に、ウォークスルーからシアター、洋風、和風など数々の趣旨のお化け屋敷が詰まったホラーエリア「ホラー・ロンサム・マンション」。

 カヌーやジャングルクルーズなど自然をテーマとして扱ったアトラクション、動物との触れ合いを楽しめるアトラクションもある、高さ300メートルの人口山のエリア「ジャンク・マウンテン」。

 学園都市の最新技術をふんだんに使い、更なる未来の学園都市をモチーフにした「トゥモロー・アカデミック・タウン」。

 そして、この遊園地のシンボルである「ライト・ビューティ・キャッスル」。

 以上の5つのエリアと1つのアトラクションからなる「ウィスト・ランド」。そのメインエントランスにあるチケットブースには連休中とはいえ初日の午後だというのにそれなりの列が出来上がっていた。


 同時刻、キリトたちと別れた士道たち一行は遊園地の目の前に止まったバスを降車していた。

十香「ここが「ウィスト・ランド」か……」

琴里「へぇ〜。思ってたのよりしっかりした遊園地ね」 

よしのん『楽しそうな場所だね。ワクワクしてるよ、四糸乃』

四糸乃「私もです。よしのん」

 「Welcome the Wist Land」の文字が書かれた門を通りながら遊園地の中へと入る一行。ここから先は遊園地という、他とは全く違う世界である。思う存分楽しまなくては。

令音「あれが入り口か……みんなチケットを配るぞ」

耶倶矢「むむ、これが楽園への招待状か……大事にせねばな」

 令音が配ったチケットをそれぞれ受け取ると一行はメインエントランス前に出来たちょっとした列に並ぶ。

 このチケットはラタトスクが事前に購入していたパークチケットで、これを使えばチケットブースに並ぶことなく園内へと入場することができる。ちなみにこの遊園地、事前のチケット購入は出来ないはずだがそこはあのラタトスクだ。あの手この手を使って、最悪脅しでもしてでもこのチケットを手に入れたのであろうことが士道の頭には容易に浮かんだ。

 メインエントランスにいるスタッフにチケットを提示し、ターンスタイルのゲートを抜けていく一行。その先はまさに外とは別の空間となっていた。


七罪「へぇ〜。遊園地ってのは聞いたことあるけど、こんな感じなのね」

 メインエントランスを抜けると道はそのまま桟橋に繋がっており池を超えると正式に園内、という形になっているらしい。

 顔を上げると真正面には「ライト・ビューティー・キャッスル」がそびえ立ちその美しいは城は、ここから先は別の世界であることを来園者たちに感じさせるに十分だった。

琴里「そういえば七罪は遊園地に来るの始めてだったっけ?」

 十香や四糸乃、八舞姉妹は夏休みに1度士道と共に千葉にある遊園地に訪れているし、精霊達の中では唯一、七罪だけが遊園地に来たことがないのだったことを思い出す。

七罪「そうね。どんなところかは何回か聞いたことがあるけど、実際に来てみるのは始めてだわ。ま、面白いかどうかは分かんないけどね」

美九「色々なアトラクションがありますから、七罪さんも楽しめますよ」

 桟橋を渡り切ると一本道となる。脇にはショップが立ち並び、この遊園地のマスコットの人形や様々なグッズがショーウィンドウに飾られていた。それらの飾り物を見ながら、一行は夢の国を進んでいく。


十香「む。あれのカエルはなんだ?」

 「ミーン・ストリート」を半分ほど進んだところで写真撮影をしているカエルのマスコットを見つけた十香。デフォルメされたヒゲのついたカエルはやってきたカップルとピースをしながら写真を撮られていた。

夕弦「回答。どうやらこの遊園地を運営している会社のマスコットで、「ゲコ太」というキャラクターみたいですね」

耶倶矢「ほほぅ、中々可愛げのあるキャラクターだな」

 メインエントランスで貰ったパンフレットを開く夕弦。そこにはマスコットの簡単な紹介も写真付きで掲載してあった。この遊園地の管理・維持を行っている会社のマスコットらしく、他にはケロヨン、ピョン子という名の、同系統のマスコットも園内にはいるらしい。

十香「へぇ……シドー!写真を撮るぞ!四糸乃や琴里達も来い!」

 見るとちょうどカエルのキャラクター「ゲコ太」が写真を撮っていたカップルがいなくなり手が空いたところで、耶倶矢と夕弦がすぐ様その次の写真撮影の順番を獲得していた。

琴里「もぉ……仕方ないわね」

 琴里も仕方なさそうにマスコットに近づいて行く。しかしその目が「ゲコ太」に釘付けになっていることには士道すら気がつきはしなかった。

士道「あちゃースタッフいないな…」

令音「ん、仕方ない。私が撮ろう」

よしのん『えー。令音さんも一緒に撮ろうよー』

 よしのんが言うように本当なら令音も一緒に撮るべきなのだが、タイミングが悪く先ほどまでいたスタッフがいなくなってしまっていた。本来なら写真を撮るべきはずのスタッフがいないのであれば誰かが抜けて写真を撮るしか方法は無い。

令音「仕方ないだろう。また後で別の場所で一緒に……」

「──あの」


 その時、令音に話しかけて来たのは先ほどマスコットと写真を撮っていたカップルらしき2人の男女の、ボサボサの茶髪にジャージとジーパンというデートという状況にはとてもそぐわないラフな格好をした男性の方だった。

令音「?」

「良かったら俺が代わりに撮りましょうか?」

士道「いいんですか?」

 彼は恐らくデート中である。士道が言った「いいんですか?」はもちろん代わりに写真を撮ってもらっていいのかという意味もあるがデート相手の女性を待たせてもいいのか、という意味が強い。

 男性も先ほど2人で写真を撮ってるところを士道たちが見ていたからか、その真意を感じ取ったらしい。

「ああ、大丈夫っすよ。連れの方も写真を撮るの変わってあげなよ、って言ってましたし」

 どうやら彼女も承諾しての行動らしい。そうなればこちらも遠慮なくその好意に甘えさせてもらおう。

令音「なら、頼む。すまないな」

「いやいや。これがシャッターであってますよね」

令音「ああ」

 男性にデジカメを渡すと、既にマスコットの回りにスタンバっていた十香たちの中に士道や令音も加わる。マスコットを加えて10人とだいぶ大所帯だが、なんとかカメラに収まることはできたらしい。

「ハイ、チーズ!」

 男性の掛け声と共にデジカメのシャッター音が響いた。


☆★☆

 無事に写真撮影を終えた士道たちは写真を撮ってくれた男性にお礼を言い、その場を離れた。

 行きのバスの中で行くエリアやアトラクションについて話し合ったが、とりあえず明日もこの遊園地には訪れる予定なので、今日は夜のパレードまでこの遊園地を楽しむことになっている。

 時間も考えて、明日行われる3つの大きなショーのうちの一つの下見、そして比較的アトラクションが他のエリアより少なくこの時間からでもエリア全部のアトラクションを乗れそうな「シー・ベンチャー・ランド」に向かうことに決定していた。

 一行は「ミーン・ストリート」を抜けるとそこから西側の2つのエリアへと繋がる橋を渡り、そこから目的のエリアに入る。

 途中、大航海時代をモデルにしたアトラクションが密集した街「パイレーツ・ボヤージュ」にて行われていたハロウィンを記念したエリアごとのコスプレのイベントに食いついた耶倶矢と夕弦が、借り物の海賊服のコスプレを見せた時は2人の容姿の良さとノリの良さが合間って、まるでマスコットとの記念撮影のように列ができてしまい大変なことになったりしたが、なんとか無事に「シー・ベンチャー・ランド」に一行は到着。

 到着した後は水中を透明なチューブで巡るジェットコースター「スケルトンパイプ」や、乗り込んだボール型のライドが水流によって打ち上げられる「ハイドロポンプ・ジェット」などのアトラクションに乗り、始めてアトラクション乗る七罪や絶叫系が苦手な四糸乃、琴里の悲鳴、そして十香や八舞姉妹、士道の叫び声が何回も「シー・ベンチャー・ランド」に響き渡った。


──11月3日 17時28分


士道「──ん。あそこ、これからショーやるのかな」

 「シー・ベンチャー・ランド」と遊園地の中央にある広場「キングダム・プラザ」のちょうどエリア同士が密接した場所にいた一行はそこで人だかりが出来ている簡易ステージを見つけていた。

 「キングダム・プラザ」の中央に設置されたそのステージの周りには少数だが徐々に人だかりが形成されていき始めており、これから、何かあそこで始まるという雰囲気が醸し出されていた。

令音「……どうやら6時からあそこで仮装大会を行われるらしいな」

 手持ちのパンフレットに載ったイベント表を見ながら士道たちの疑問を解く令音。

 令音の説明では、「なんらかの仮装さえしていれば」誰でも参加が出来るイベントらしく、来場客の飛び込み参加だけでは無く、イベント中のスカウトマンによる観客の指名参加という物もある、いわゆる参加型のショーらしい。

 ハロウィン期間限定のイベントで、参加者にはプレゼントもあるという。現にステージの周りには様々な格好をした来場客たちがスタッフに話しかけ、ショー参加のために案内されていた。

 それを聞き反応を示した2人がいた。耶倶矢と夕弦だ。


耶倶矢「ほう──我らが海賊皇帝の姫姉妹(パイレーツキング・オブ・プリンセスシスターズ)の参加を許すとはな……愚かな」

夕弦「同意。コスプレでの成り切り勝負は、第八七試合で経験済み。夕弦と耶倶矢の実力は間違いなしです」

七罪「えっ、参加するつもりなの?」

 独特なポーズで意気揚々と参加する旨を述べる八舞姉妹に驚く七罪。元の性格が引っ込み思案な彼女にはとてもでは無いが好き好んであのような人の目を引くイベントに参加するのか理解出来なかった。

琴里「……やる気をくじくようでごめんだけどこのイベント、優勝は無いわよ」

八舞姉妹「「えっ」」

 が、琴里が次に放った言葉に出鼻を挫かれる2人。士道がパンフレットを覗くと、確かにこのイベント。参加してコスプレを見せるだけで大会では無いようだ。

よしのん『午前中に大会型式のイベントはあったみたいだね。しかもこっちは上位10名は午後のパレードに出れるんだって』

耶倶矢「なん……だと……」

夕弦「落胆。そちらに出れば良かったです……」

 更によしのんの言葉で目に見えるように落ち込む2人。士道はそれを見ながら苦笑しながら宥める。


士道「午前中のイベントなら仕方ないよ。どうせ明日も来るんだし、その時参加すればいいじゃないか」

耶倶矢「それもそうだな。見ておれ……明日の舞台は我ら八舞が掌握するのだ」

夕弦「肯定。夕弦と耶倶矢に死角などは存在しません」

 どうやら無事に気を取り直してくれたらしい。……この2人、ノリがいいんだか、騙されやすいんだかたまにわからなくなるが。

 そうして一行がもう一度移動を開始しようとした時だった。

美九「…………あれ?」

 美九がある一方を見て静止する。

士道「?どうした?美九」

 あらぬ方向を見て動きを止めて美九を不思議に思い話かける士道。その声に気づいた美九はすこし悩んだ素振りを少し見せ、直後になんでもないように笑いかけてきた。

美九「いえ……なんでもありません」

士道「?ならいいけど……」

 なんでもなさそうに笑いかける美九を不思議に思いながら、士道は再び歩き出そうとする。

「──あのー。ちょっと君いい?」



どうもお久しぶりです!常盤赤色です!
風邪も治りテストも色々な意味で終わり、ようやく一息ついたところです。ホントに辛かったわぁ…。この作品のオリキャラ担当の古い友人やリア友に感謝です。

前回の>>216の部分だけ無かったことになってますので悪しからず。

pixivにもこのssの投稿を始めました。何か違うところあるわけではないですが、そっちもよろしくです。

次回はいよいよ皆さんお待ちかねのあいつが出てきます。可愛さを作者の文章力で表現することができるのか……!まぁご期待ください。

では。


訂正>>251
指摘されて気づきましたが「あいつ」じゃなくて「あの子」の方が適切でしたね。申し訳ございません。

美九たんの口調が違う・・・・・・












よろしい、ならば>>1の初めては私がいただく!

>>254
やめてどんなところか指摘してくれれば次回から気をつけるから、ちょ、まっ、らめ(ry

美九の口調は間延びする
たとえばまあこれも原作でコロコロ変わるが「ありがとうございます」は「ありがとうございますー」だったり
だいたい語尾は「ー」か「ぁぃぅぇぉ」で終わるよ。延びないときも勿論あるので原作七、八、九巻あたりが参考になるはず

マジレス失礼がんばってください!

>>259
いえいえありがとうございます。このスレは通常がふざけすぎですからたまのマジレスがいいんですよ。本当にありがとうございます。


では短いですが投稿いきます。



 その人物は「美しい」と「可愛い」の両方を兼ね備えていた。
 
 流れる青がかかった黒色の長髪からは朝日を反射する水滴のように神秘的な輝きを放ち、ほのかに香る椿の匂いがステージ裏のスペースに吹き抜けた風によってなびいた髪とともに辺りに広まる。

 その唇はほのかなピンク色をし、静かな華やかさを備えた一対の瞳と共にナチュラルメイクが施された顔に不思議な色香と魅力を感じさせた。

 年頃の少女の身長にしては長身な彼女だが頭につけた青いカチューシャには花が、ヘアピンには小さなクローバーの飾りが付いており、身に纏ったプリンセスドレスとその端正な顔立ちも相まって、その可愛らしさ、そして美しさを際立たせていた。

 正に今蕾を開いたばかりの花のような少女だった。「美しさ」「可愛いさ」の中間的にいながらその両方を持っているような。彼女を見れば10人が10人、紛れもなく美人、もしくは美少女と答えるだろう。


 そんな周りを魅了する華やかな見た目とは裏腹に、彼女の気分は憂鬱そのものであった。
 何故こんなことになってしまったのだろうか。

 彼女はステージ裏の準備スペースで悩み、そして後悔していた。

 場の雰囲気に乗せられて即座に断らなかったからだろうか。それとも「嫌だ」という気持ちを相手に伝えなかったからだろうか。

 …………いや。あの状態ではどんな手を尽くしてもこの結果は避けられなかっただろう。多勢に無勢という言葉があるが、あそこでは何かもっと恐ろしい物の片鱗を味わった気がした。

 女子とは恐ろしいものだ。「おもしろそうなこと」を見つけた時の彼女たちの行動力はそれは凄まじいものがある。

 純粋な気持ちは、それがどんな物であろうと巨大な力を生み出す。それを改めて再確認することとなった。本音を言うとこんな形で再確認するとは毛頭思ってなかった

 そんな事を考えながらもう一度自分の服装を見、彼女──いや彼はあれから何度目か分からないため息をほぼ無意識につく。

──事の発端は今から30分ほど前に遡る。



★☆★



 日本には古来より「男の娘」というジャンルが存在する。

 「男」の「娘」と書いて『おとこのこ』。『おとこのむすめ』という読み方も出来るが、一般的な読み方はそうではないので注意して欲しい。

 これは近年作られた造語で、生物学的には男でありながら、女子のように可愛い外見を持つ者、それも女性と言われても違和感の無いレベルの者を指す。また、女装の完成度が異様に高いことでその他の人物の性別の判断を狂わせる男性も、これに値いするだろう。

 明確な発祥の分からない言葉であるため、その定義は曖昧である。例えば、この言葉に当てはまる年齢の大半は10代前半かそれ以下の少年、いわゆる「ショタ」だが、10代後半からそれ以上の年齢の「男の娘」も、もちろん存在する。人によってその判断基準は様々だろう。

 昨今の妄想力逞しいオタク達によって生み出されたこの言葉だが、意外にもその起源は古い。有名な物では日本最古の歴史書である「古事記」に記された英雄、日本武尊(ヤマトタケルノミコト)による熊襲武尊(クマソタケル)兄弟の暗殺劇がある。

 古事記によると景行天皇の皇子である彼──もしくは彼のモデルとなった人物──は、女装し、宴会をおこなっていた熊襲兄弟の寝所に忍び込み、そのまま色仕掛けでこの2人と接触。そして油断した2人を隠し持った武器で討ち取ったのである。その際に「タケル」の名を熊襲兄弟の弟の方、タケルより献上されたと記述されている。

 他にも日本には武蔵坊弁慶を討ち取るために女装した牛若丸、南総里見八犬伝の犬塚信乃と犬塚毛野などの例がある。海外の伝記や神話にもその例は尽きないと言えるだろう。

 このように女装した美男子「男の娘」という創作のジャンルは古来より世界中に存在していたと言えよう。

今回はここまでです。もう言わなくても分かりますよね。あの子です。

それではまた。あ、来週は親戚の結婚式があって更新が出来ないのでそこのところよろしくお願いします。

では。

士織ちゃんキターーーo(^∇^o)(o^∇^)o>>1の純潔は暫く守られたな

クロメーテルさんも出しましょうよ

乙です

>>265
士織ちゃんはもう一度出てくる予定です。その時はキリ子ちゃんも出てきますよ(ゲス顔)。

>>266
一章はアリアの時間軸的な問題でクロメーテルさんは出てきませんが…二章で出す予定です(ゲス顔)。

>>267
ありがとうございます。


今週の更新は>>1の都合があるのでありません。
来週までお待ちください。
引き続き、このssをよろしくお願いします。
では。

…どうも。テストが色んな意味で終わり、終わった次の日に今年3度目の風邪ひいて気分が最高に悪かった>>1です。
ここ二週間ほどテストと風邪で連絡すらできなく、申し訳ございませんでした。もう2014年の終わりも近いので、今後の予定を述べさしていただきたいと思います。

さて、今後の予定ですが。
「とある緋弾のソードアート・ライブ」は新年の第一日曜日(1月4日)を除き、休みなく投下するつもりです!デトアラ劇場版の公開時期も決まったし今後もがんばっていきます!
まだまだ未熟者の半端者ですが、これからもよろしくお願いします。
それでは来週の日曜日にまた。では。

デート・ア・ライブはゲームの新作も出るみたい(12月19日発表)ちなみに映画のヒロインは万由里って名前だぜ

>>1は映画見に逝くのかな

>>279
夏まで全力でスタンバっています。


非常に短いですが今週の更新です。時間と集中力が欲しいぃ。
どうぞ

「──あのー。ちょっと君いい?」

 その時だった。士道がそう話しかけられたのは。

 声の主を探す為振り返る士道と美九。

 そこにいたのは1人の女性。士道より頭一つ高い、令音と同じくらいの年代の女性だ。長い髪を背で無造作に一纏めにしており、その顔にはマンガに出てくるようなグルグルとした模様が浮かんだ、牛乳瓶の底のようなレンズの眼鏡を付けていた。

 眼鏡だけではなく、スタッフ用の制服も袖やズボンの丈が明らかに短い。そもそも服がまったく着こなせてない。元は良さそうなのに、こういうのを残念美女というのだろう。

士道「…………あのー。なんでしょうか」

 妙に鼻息の荒いことに引きつつも、律儀に返事をする士道。美九も「こんにちわー」と挨拶をしている。こちらはあまり引いてはいないようだ。

「────いい」

士道「は?」

 眼鏡と伸びた前髪で見えない表情から放たれた言葉に思わず眉を寄せる士道。相変わらず鼻息は荒く、そろそろ警察に連絡されても仕方なさそうな状態だ。いや。学園都市に警察はいないので風紀委員か警備員だが。

「──うん!君なら文句は無いだろう!」

 女性はそう言うと手を伸ばし…………ガシッ。

士道「へっ」

美九「え」


 刹那、女性の小脇に士道は瞬間移動していた。速い。何が起こったのか、自分がいつ地面に平行になったのかも分からなかった。というかまるで状況が読めずきょろきょろと視線を周囲に巡らせる士道。

「はいレッツゴー!!」

 そして女性は小脇に士道を抱え、そのまま駆け出す。

士道「え、あ、ちょ!?」

美九「だ、だりーん!?」

 状況が飲み込めないまま攫われる士道。美九もそれは同じで呆然と士道が攫われるのを見ることしかできなかった。みるみる美九の姿が遠ざかっていく。


十香「──貴様!シドーをどうする気だ!!」

士道「十香!」

 と、そのまま疾る女性の前に足止めするかのように立ち塞がる影があった。十香だ。どうやら事を察知し、引き返して士道奪還のため駆けつけたらしい。

 ヒールを履いてるにも関わらず音も無く、とにかくものすごい速さで向かってくる女性から士道を取り戻そうと構える十香。だが──

「あ、ついでにゲット」

 気がつけばスライディングしながら──滑り込むように十香は脇に抱えられ、そのまま士道と同じくように連れ去られていた。

十香「なっ……」

士道(な、なんという機動力……!)


 人知を超えた存在である精霊の十香ですら奇声を上げたそれに反応することができなかった。精霊以上の恐るべき機動力だ。

「あーさっきの子も捕まえてくればよかったけど……ま、いっか」

十香「このっ……!おい離せ!くそ!」

士道「ちょ、なんなんだよあんた!って力強いな!」

 小脇に抱えられた2人は必死にもがくものの、まるで脱出できそうにない。思春期の男子でそれなりに力もある士道はおろか、十香ですら何もできない始末である。
 
 後ろを振り向けば琴里や他のメンバー達が必死にこちらを追いかけている姿が見える。しかしあまりに女性が速いため、その距離はみるみる開くばかりである。


十香「こ…………のっ!」

士道「待て十香!鏖殺公(サンダルフォン)はやめろ!シャレにならん!」

十香「だが…………!」

 天使を使おうとする十香を慌てて止める。ここがいくら自分たちの住む街とは違うとはいえ、天使なぞを人に使えば、ややこしいことになるのは目に見えている。

 その様子を遠目に見ていた琴里は小さく舌打ちするとポケットから携帯電話を取り出し、緊急のコールをする。
 相手はもちろん、琴里たちの上空で待機している、フラクシナスだ。

琴里「神無月、見てる?」

神無月『はい司令』

琴里「なら説明しなくても分かるわね。どんな手を使ってもいいわ。あの女を足止めしなさい──」

 こうなればなりふりは構ってられない。もしかしたらあの女性は士道と十香の「力」のことを知ってあの行動を起こしているのかもしれない。そうなれば──

 と電話で指示を出していた琴里だったが、ふと、ある物に気づく。

 ミーン・ストリートに並ぶ商店街の屋根の上。その上を何が疾る。


 人だ。

 士道と同じくらいの年代の少年だ。

 それが屋根の上を疾りながら、こちらへと向かってくる。遠目からでもその異常なスピードが見て取れた。思わず立ち止まりそうになる琴里。

 少年が走るその先にあるのは屋根の端。「ミーン・ストリート」と「キングダム・プラザ」。その境界線で屋根は途切れている。

 少年が屋根の上の最終地点に来た次の瞬間──

琴里「はっ…………」


 飛んだ。

 飛んだのだ。
 ,,,      ,,,
 跳んだのではない。飛んだのだ。

 琴里が素っ頓狂な声を上げるにも仕方ないだろう。少年は屋根の上から幅跳びのような体制で50メートルは離れていようこちらまで飛んでくるのだ。

 否。

 正確には。

「──何やってんだよ椿ーー!」

「あ、ソウちゃおごっ」

 士道と十香を脇に抱え疾走する女性に向かって。

 琴里がそれを理解したのは少年の蹴りが女性の顔にクリーンヒットした後であったという。

今日はここまでです。

先ほどまで銀魂アニメ復活の報を聞き、歓声をあげていましたwww「完結編」と劇場版銘打っておきながら堂々とおわるおわる詐欺とは…銀魂だから、許されるwww

来年はデトアラ劇場版も緋アリaaのアニメもありますし>>1的にはもうウハウハですね!

では。

(年末年始特別企画)
とある緋弾のソードアート・ライブ外伝

学園都市・ラタトスク主催「年末年始スペシャルレースin学園都市&武偵校&天宮市」&「とあひだ女装コンテスト」開催!!

全ては>>1の弟の一言から始まった…。「兄ちゃんの二次小説で○ーバルファンタズムのレースやったら面白くない?」。
あの狂乱の宴がとある緋弾のソードアート・ライブで蘇る!
そして、以前より要望の多かった主人公ズの女装を先行公開!
舞台は学園都市・東京・天宮市!キャラ崩壊?設定無視?そんなこと知ったこっちゃねぇ!
年末年始だけの特別な宴!乞うご期待!



※マジでやります






──2014年

この年も様々な出来事が世を賑やした。

ゴーストライター・STAP細胞・野々村・チェックメイト・3Dプリンター・羽生選手・妖怪ウォッチ・アナと雪の女王・集団的自衛権………。

そして…鎌池和馬&「とある魔術の禁書目録」10周年、アニメ「デート・ア・ライブ」2期&ゲーム第二弾発売、「緋弾のアリア」シリーズ累計発行部数500万部突破、アニメ「ソードアート・オンライン」2期&ゲーム第二弾発売………。


実に様々な出来事が起こり、実に様々なことを知ることができた一年間だったじゃないだろうか?

──そして来たる2015年

「デート・ア・ライブ」劇場版公開&ゲーム第三弾制作、「緋弾のアリアAA」アニメ化、「ソードアート・オンライン」ゲーム第三弾発売決定──。

これまで起こったこととこれから起こること──。

それらを振り返り、思い描く年末年始。

──2014年末・2015年始特別企画

「とある緋弾のソードアート・ライブ」
特別編

「四世界合同グランプリ」

「四世界合同女装グランプリ」

──さぁ、このふざけた狂宴の祭りを始めよう。



──2014年年末。学園都市第七学区のとある場所。

 年末。それは1年を締めくくる、年の終わりを指す。その前には、非リア充達が血の涙を流すクリスマスという行事があり、「師が走る」という意味の師走に恥じない、1年で1、2を争う多忙な時期である。
 この時期には会社やその他の付き合いでの忘年会が多発。友人や同僚、上司や部下との付き合いで、疲れが溜まっている者も多いだろう。
 しかし、冬の冷気を大きく上回る熱気が登る2大イベントが、今年、都市圏にはある。
 一つはもちろん冬コミである。毎回のようにルールを守らない徹夜組、始発から大急ぎで走る始発組、グッズや希少な物品の争奪戦。その熱気は冬だというのに汗をかくほどのものである。まさに首都圏冬の大イベントといってもいいだろう。
──そして今年はもうひとつ。

「学園都市主催・Winter GP」

──学園都市・東京・天宮市を巡る、大グランプリである…。

土御門「──さぁー!!やってまいりました!!学園都市主催によって行われる、学園都市Winter GP!!最悪最速の光速バトルはここ、学園都市第七学区特設コースからお送りしますにゃ!それでは解説とゲストの紹介とをさせてもらうぜい!」

☆「学園都市統括理事会理事長のアレイスター・クロウリーだ。解説をやらしていただく。今日はよろしくお願いするよ。」

かなめ「はいはーい!ゲストの遠山金女でーす!よろしくお願いします!」

土御門「そして司会は、「人生と書いて妹と読む」さんこと、土御門元春がお送りするにゃー!しっかし凄い熱気ですなー。アレイスターさん」

☆「今日は特別に外部の人間もこのレースを観れるようにしてあるからね。噂では先日のあった冬コミというイベントには及ばずとも、それにひっする人数が集まっているようだよ」

土御門「な、なんと……冬コミ並みとは…。恐れ入ったにゃー」

かなめ「ちなみに、冬コミで徹夜だなんて非合理的なことはしないようにねー!別にお兄ちゃん以外がどうなろうと知ったことないけど」


昨日の更新中にアクシデントがあったため、更新の続きを今からおこないます。申し訳ございませんでした。




耶倶矢「ククク……。我らは風の具現者なるぞ?そんな我らが八舞姉妹に「速さ」で勝負を挑むとは片腹痛し!」

夕弦「同意。それに加えて私たちは毎日マリ◯で全世界のプレイヤーと勝負をしています。しかも、そのおかげでレートは5000をゆうに越えてます。負ける確率は0かと」

士道「いや…ゲームと現実のレースじゃかなり違うんだと思うんだが…それでも確かに耶倶矢と夕弦は強そうだな」

十香「耶倶矢、夕弦!勝負とあれば私も負けるわけにはいかない!頑張るぞ!シドー!」

士道「お、おぅ(やけに気合が入っているな。……それほどまで勝ちたいってことか?)」

キンジ「──む………士道たちじゃないか。久しぶりだな」

士道「あっ、キンジ。そういえばお前も参加してたんだな。組んだ相手はやっぱりアリア?」

アリア「やっぱりって何よ。やっぱりって」

十香「おお!アリア、久しぶりだな」

士道「他には誰が参加してるんだろうな」

アリア「聞いた話じゃ理子はレキは不参加らしいけど……そういえばリサが誰かと出るって言ってたわね…」

キンジ「何っ。本当か?……俺は金三と兄さんが参加するとは聞いたが…」

夕弦「質問。キンジさんはお兄さんがいるのですか?」

キンジ「ああ。兄が1人、弟が1人、あとあそこでゲストをしてるのが妹だ。弟と妹は……まぁ義理みたいなもんだがな……」

士道「へぇ〜。義理の妹ね…」

琴里「どっかの誰かさんみたいね」

キリト「おっ、士道にキンジじゃないか」

耶倶矢「黒の剣士に「幻想殺し」か。お前らも参加するのだな」

上条「ああ。俺はインデックスと組むぜ」

キリト「俺はアスナとだな」

アリア「他にも一方通行やアイテムが参加するって聞いたけど…」

上条「ああ。ほら、あそこにいるだろ?」

十香「む、本当だな。ところで、私たちは何に乗ればいいのだ?」

士道「そういえばそうだな…マシンはどこにあるんだ?」

土御門『え〜。マシンは厳正なくじ引きで決定します!』

キンジ「く……くじ引き」

上条「上条さん、お正月のくじは大凶以外引いたことがないのですが…」

士道「まぁ……頑張れ」


土御門『それではくじ引きも終わりましたし……選手紹介に移りましょう!』


『キリト&アスナ組!マシンはオートバイ「スターバーストリーム」!』

キリト「お、バイクは運転してるから手に馴染んでいるな。これはいいの引いたかも」

アスナ「頑張ろうね。キリト君」


『続いてリサ&メヌエット組!高級黒塗り「ジェヴォーダン・アームチェア」!』

リサ「今日はよろしくお願いしますね。頑張らさせていただきます」

アリア「ってメヌ!?あんたも参加するの!?」

メヌエット「お姉様。あれは私が手に入れるので安心してください」

キンジ「そういやお前ら仲良かったな……ん?あれって?」

アリア「ななななんでもないわよ!バカキンジ!」

リサ「ご主人様。今日限りはご主人様に対決することになりますが、不肖のメイドをお許しください…」

『お次は金三&軍覇組!マシンは暴走番長「ヒステリアセブン」!』

金三「俺らが絶対一位だぜ!!悪りぃな兄貴!こいつとなら兄貴にも負けるわけがねぇ!」

削板「こんじょぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


上条「……うわぁ…」

キンジ「派手好きと根性好きが混ざって恐ろしい化学反応を起こしているぞ…」

一方通行「冗談にならねェ馬鹿2人が組むなンて冗談じゃねェ」


『どんどん行きましょう!一方通行&打ち止め!外車「ブロックアウト」!』

打ち止め「絶対一位取るよー!ってミサカはミサカは張り切ってみたり!」

一方通行「めンどくせェ…」

『さぁー!士道&十香組はママチャリだー!』

士道「なんでこんなんあるんだよ!?」

十香「行くぞサンダルフォン!」

士道「って名前付けてるし…」

『おぉーと!カナ&パトラ組!クラッシックカーのハネムーン号を引き当てたー!』

パトラ「フフフ…我らにはちょうどいいマシンじゃな。行くぞ、カナ」

カナ「キンジも頑張りなさい。私たちを抜かせるものなら、ね」

士道「……………お兄さん?」

キンジ「皆まで言うな」


『浜面&滝壺組が引いたのは装甲車「アイテムカー」!』

浜面「よっしゃ!馬力も中々あるし、いけるぞ滝壺!」

滝壺「がんばろう、はまづら」


『キンジ&アリア組!馬車「ホームズ&ワトソン号」!』

キンジ「馬車か……馬車ジャックなんてないよな…」

上条「なんだお前。ハイジャックにでもあったことがあるのか?それくらいなら上条さんにも──」

キンジ「………ハイジャックだけではなくチャリジャックにバス、タンカーと……」

上条「──ごめん。もういい」

キンジ「お前の言葉を借りる様で悪いが……不幸だ」

アリア「何よ、2人して元から暗い顔を更に暗くして」

「「余計なお世話だ!」」

アリア「なんでもいいけど絶対勝つわよ。メヌエットもいる以上、どんな手を使ってもね」


『さぁー!八舞姉妹が引いたのは犬ぞりだー!』

耶倶矢「……フフフ、いいハンデだ。これくらいのもの、王たる我らなら笑って過ごしてやろう」

夕弦「同意。これくらいのハンデがなければ、面白くありませんゆえ」

士道「お前ら………」


『そして上条&インデックスは──』

インデックス「とうま!ここは神の加護がまるでないとうまより、私が引いた方がいいんだよ!」

上条「ああ。頼む」

インデックス「んしょっと……これにしよっ!」

ガサガサガサ、ガサッ

インデックス「………とうま、何これ」

上条「ん…………「いんでっくちゅ」?」

『「いんでっくちゅ号」!』

上条「遊具っ!?」

インデックス「なんで遊具なんて出てくるの!?………って、とうま。これ……」

上条「?どうした?」

インデックス「………100円いるよ」

上条「しかも金がいるのかよっ!?不幸だぁぁぁぁぁぁぁ!!」


『そしてそして!最後は美琴&黒子選手!機種はレーシングバイク「レールガン」!』

黒子「ぐふふふふ……あれを必ずや手に入れお姉様と……」

御坂「…………優勝してあれを手に入れたら…あいつと…」



士道「……なんか怖い」

土御門『さーて!11組全車がグリッドに揃いましたがアレイスターさん!大混戦が予想されますね!』

☆『まぁ、学園都市の科学力があればどうにでも出来るが、安全運転だけは心がけておいてくれ……まぁ少し面白くなるようにしといたけどね……』

土御門『ふーん……って、え?』

☆『あ、いや、私じゃなく彼がだね……』

土御門『彼?』



アリア(何としても勝つわよ…)

黒子(お姉様との……)

リサ(ご主人様との……)

アスナ(キリトくんとの……)

メヌエット(キンジとの……)

十香(シドーとの……)

滝壺(はまづらとの…)

パトラ(キンジとカナの仲良しこよしを見る為にも……)

八舞姉妹((士道との……))

御坂(あいつとの……)

((((温泉旅館個室お泊まり権を得る為に……!))))


ゾクッ

「「「「!!?」」」」


──司会席。マイクのスイッチOFF。

土御門「青髪ピアスの奴がそんなことを……」

☆「うむ。どうせなら選手たちにもっとやる気を出してもらおうとね。MVPに付けて女性陣に知らせたんだ。あ、禁書目録と打ち止めにはそれぞれバイキングの食べ放題食事券&賞金で釣ってあるけどね」


上条「食べ放題食事券と賞金!?」

インデックス「そうなんだよ!だから絶対に優勝しなきゃ!」


土御門「……なるほど。それで妙な殺気があったのか…」

☆「そういうわけだ。くれぐれもこの事は他言無用で頼む」

かなめ「………?あのー?どうしたんですか?そろそろグランプリ始めないと…」

土御門「む、了解だにゃー(この子には教えない方がいいな……なんか更に酷いことになりそうだ)」

今回はここまでです。次回からはいよいよレースが始まりますので、お楽しみに。

では。

あ…なんか自然に腰が>>1の穴に吸い寄せられるぅぅぅぅぅ

そういや電撃文庫の「やがて魔剱のアリスベル」って緋弾のアリアと同じ世界観なんだっけ

つうことは電撃文庫の三つの世界観がコラボしてるってことになるね

面白い

>>311
ナニイッテンダフザケンナ!

>>312
確かにですね。まぁアリスベルキャラは恐らく出てこないかと思います。これ以上は無理ですwwwwww

>>313
ありがとうございます!これからも精進します!



………さて。いよいよ2014年も終わりが近づいてきました。今年は色々なことがあり、色々なことが知ることができました。
来年も>>1と「とある緋弾のソードアート・ライブ」をよろしくお願いします!
あ、あと新年は1日に挨拶を、3日に新年初更新を行う予定です!
では、今年最後の投下です。どうぞ。


土御門『さぁー。いよいよです……。学園都市&天宮市主催グランプリ。チェッカーを受けるタッグは誰か!?シグナルが赤から………………』



……………………

………ピ

……ピ

…ピ


土御門『──青に変わるッ!各車一斉にスタート!!』


土御門『──おおっとものすごいスピードで戦闘に躍り出たのは…………金三&軍覇組!』

金三「へっ。レースとなれば俺の前は……何人たりとも走らせねぇ!」

キンジ「あいつ…」

金三「悪りぃな兄貴。今回ばかりは俺に運が向いてるようだ……。行くぜ軍覇!」

削板「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!根性ぉぉぉぉぉぉ!!」

土御門『更にスピードを上げる「ゴールドセブン」!独走状態だー!!』

金三「こりゃ……貰ったな…。お、カーブか。軍覇、どうする?」

削板「根性で曲がる!」

金三「だな!カーブごときで俺たちのスピードを緩められると思うなよ!」


一方通行「………なァ、打ち止め。知ってっかァ」

打ち止め「なーに?ってミサカはミサカは質問を質問で返してみたり」

一方通行「ドラッグマシンってのはなァ──」




一方通行「──まがれねェンだよ」



ドカーン!!


土御門『おおーと「ゴールドセブン」そのスピードを維持したまま突っ込んだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!そして大炎上!!しょっぱなから大波乱ですね!』

☆『あのマシンでは設置された壁に耐えられないからね。ま、事後処理に金はかからないし、あの二人だから「ランサーが死んだ!」ってことにはならないだろうけど』

土御門『……やっぱこいつ。カーニバルファンタズム見てこの企画思いついたんじゃ……』


土御門『レースは序盤から荒れ模様……おっと士道・十香組がまだスタートしてない!一体どうしたのかにゃー?』


士道「ど、どうしたんだ十香?早くスタートしないとただでさえハンデがあるのに………」

十香「──シドー」

士道「ん」

十香「……自転車とはどうやって運転するのだ?」

士道「そこっ!?」


土御門『──どうやら自転車の漕ぎ方がわからなかった模様!これは手痛い!!』

かなめ『あちゃー。あれじゃ十香たちは駄目かもねー』

土御門『………しかしお前ら金三のこと心配してないのか?結構凄い爆発だったが……』

かなめ『ああ。あれじゃあお兄ちゃんは死なないから』

土御門『成る程にゃー………さて!レースに戻りましょう!現在首位は「ハネムーン号」と犬ぞり「ラファエル」!そして、「アイテムカー」。その後に「ブロックアウト」「ホームズ&ワトソン号」「ジェヴォーダン・アームチェア」「スターバーストストリーム」「いんでっくちゅ号」の順で他の車両が追いかける形となっている!』

琴里「がんばりなさいー!士道ー!」

美九「だーりーん!」

四糸乃「み、皆さん頑張ってくださいー!」

よしのん『がんばだよー!』

七罪「──あれ?そういえば折紙ちゃんは?」


浜面「ぐっ……あの犬ぞりとクラッシックカー、運転手がいい腕してるな…」

滝壺「そうなの?」

浜面「ああ。犬ぞりでこの車と並べる時点で運転手の度量が見える。クラッシックカーだって相当性能はいいけど、こっちには劣ってるからな……こっちだって危険な状況での運転は慣れっこなんだ…負けてたまるか。次のコーナーで貰う!」


土御門『さぁ……第二コーナーだぜい!全車両が一斉に……通過した!!』

浜面「よしっ!クラッシックカーからは貰っ………ってあれ?」

滝壺「?」

耶倶矢「むっ?あれっ?」

夕弦「困惑。クラッシックカーはどこ………あ」

土御門『………にゃー?ハネムーン号の姿が見えないが……。おおーっとハネムーン号!曲がり角を逆方向に曲がったぜい!どういうことか!?』

パトラ『この車、気に入ったから貰って行くぞー!妾とカナはすでにゴールインしているのでな。オホホホ』

滝壺「………成る程。勝ち組」

浜面「いや誰もそんなうまいことは言ってないからな!」


カナ「というわけで、今日の夜はホテルでクロメーテルを見るためにも準備しなくてはならないから。楽しみにしててね、キンジ」

キンジ「ちょっと待てカナ今なんて」

アリア「それよりあいつら。なんでレースから離脱するのに賞品のことを──」

パトラ「──というわけで頼んだぞ」

「「「了解!!」」」

キリト「うおっ!デコトラ!?」

アスナ「って乗ってるのってあれ……」


白雪「アリアー!」

アリア「白雪!?」

理子「キーくん久しぶりー!」

レキ「……」

キンジ「理子!?レキ!?それにハイマキ!」

一方通行「……どォなってンだァ」

上条「なんであいつら……」

※この後は瞬き信号でのやり取りです。

白雪「──ホテルのチケット」

アリア「!!」

理子「まさか私たちが知らないとでも思ってたのー?(ま、パトラに教えてもらはなければ気づかなかっただろうけどね)」

レキ「……ずるいです」

アリア「あ、あんたたち……」

白雪「………フフフ…キンちゃんの始めては私が貰うって決めてるだからね……フフフ」

理子「悪いけど先取りはさせないよ」

レキ「……キンジさんは私たちウルスのものです」

アリア「な、ナニイッテン」

※瞬き信号での会話終わり

キンジ「……おい。どうしたんだ、アリア」

アリア「へっ、へっ。な、なんでもないわよバカキンジ!!」

キンジ「おい車上で風穴はやめろ!馬も暴れるしシャレにならん!」


インデックス「ちょ!とうま!なにやってんだよ!このままじゃ追いつかれるだよ!」

黒子「お姉様!早くしないと追いつかれますのよ!」

上条「もう財布が空だ!」

御坂「もうこれ以上スピードがでないのよ!」

インデックス「えー!!」

上条「御坂!黒子!どうやら一緒に脱落のようだな!」

黒子「はぁ!?貴方たちなんかと脱落なんてあり得るわけないですわ!行きますわよ!お姉様!」

御坂「えっ!ちょっ──」

ヒュン

上条「この野郎!空間移動しやがったなー!ずるいぞー!」

インデックス「そんなことよりとうま!追いつかれ………うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

上条「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!不幸だぁぁぁぁぁ!」

ギュルルルルルルルルル……バキャ

理子「ごめんねー。カミジョーくん、インちゃん」

白雪「フフフ……さぁ行くよ…アリア」

今回はここまでです。それではあと数時間。良いお年を。
では。

皆様あけましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします!
今年も精進目指してがんばります!

──はい。それが言いたかっただけです。
では。

面白かった

今年一年お疲れ様です

今年じゃなかった恥ずかしwwwwwwww

乙です
今年も完全受けな>>1をみてニヤニヤしますね♪

これ終わりまでちゃんと構想

考えてるんですか

>>326
ありがとうございます!

>>327
全然恥ずかしく無いですよ!コメントありがとうございます!

>>328
ナニイッテンダフザケンナ!

>>329
安心してください、ちゃんと考えています。

では投下いきます。

土御門『──さぁ、レースも中盤!ここで白雪、理子、レキ、ハイマキのデコトラがトップを取ります!後続には白井の空間移動をちょくちょく使い他を離していく御坂・白井ペアが続きます!やはり空間移動のアドバンテージは高いようですね』

☆『今回、空間移動は半径50m内、最短1分の間隔を開けなければ反則となっている。しかし「レールガン」の性能は低いわけでは無いからね。他の追随を許さないのは当たり前だろう。しかしトップのデコトラの前には中々出れないようだね』

かなめ『成る程…他の人たちはいかにこの2チームを抜くかに勝負の分かれ目がかかってるんだね……お兄ちゃん頑張れー!』

土御門『学園都市を抜け、現在は天宮市の山岳地帯を走る選手たち!番狂わせはなるのか!目が離せませんね!』



──


一方通行「チッ……こンな時ばかりはテレポート系の能力者にアドバンテージがあンなァ」

浜面「けどいくらなんでもあのデコトラ速すぎないか!?そんなに性能差はないはずだぞ!」


理子「くはー!効くねーゆきちゃん家の交通安全お守り!」

白雪「護符っていうんだよ。この日のために入念に本家で念を込めたんだから……グフフ」


メヌエット「超能力(ステルス)を使った護符……中々革新的な案ね」

アリア「ってか白雪、なんか黒いオーラ的な物を感じるんだけど……」

キンジ「ここのところ原作で出番が無いからストレス溜まってたんだろうな……黒雪怖え」

理子「アリアも他のみんなもたいしたことないねー!このままゴールいけるよ!」

レキ「………」

白雪「もうすぐだよ……キーくんとのあんなことやこんなこと……あれ、レキ?どうしたの?」

レキ「……来ます」

ヒュー……

──ドン!

白雪「──きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

理子「うわぁぁぁぁぁぁぁ!?」

レキ「……」


夕弦「困惑。一体何が……ぐっ!」

耶倶矢「きゃっ!?」

土御門『おおっーと!ここで犬たちがストップ!犬ゾリが止まってしまった!どうした!?八舞姉妹チーム!』

耶倶矢「ちょ……どうしたというのだ眷属共!このっ……う・ご・き・な・さ・い・よー!」

夕弦「交代。ムチ使いなら突然の自体に言葉遣いを乱す耶倶矢より私の方がうまいです。ここは私にっ!?」

耶倶矢「ギュウ!」

土御門『そのまま犬ゾリがUターン!一体どうしたー!?』

耶倶矢「じ、じだがんだ……もー!どうなってるのよー!!」

夕弦「疑問。一体何が………ん?耶倶矢、この匂いは──」


一方通行「あいつらどォしたンだ……打ち止め、どォしたァ?」

打ち止め「もの凄くいい匂いがするって、ミサカはミサカは思わずヨダレを垂らしそうになりながら報告してみたり」

一方通行「匂ィ?………ホントだなァ。こりゃァ……あのヘリからかァ」

土御門『どうやらヘリから発せられる肉の匂いに惹きつけられてるようだ!参加者たちも思わず反応するような強烈な焼ける肉の匂い!犬たちにはたまらないのは分かるが…あのヘリは一体…?』

ドン!ドカン!

理子「また!?」

白雪「ど、どこから砲撃が……」


キリト「今の轟音……もしかして──」

アスナ「──キリトくん!あれ!」

滝壺「……はまづら、アレ」

浜面「あれって……」

リサ「もしかして……」

「「「「戦車ぁ!?」」」」

ドン……ドカン!!

理子「う……きゃぁぁぁぁぁぁぁぁあべしっ!」

白雪「キンちゃんんんんんんんん………きゅう」

レキ「…………いたっ」

土御門『デコトラ、戦車による砲撃によりスピン!そのままコースアウトして森に突っ込んだ!選手は無事のようだがレキ&ハイマキを除き気絶したようだ!これは復帰は難しいだろう!しかし誰が……』

アリア「……ねぇ…キンジ。あの金色の「根性」って書かれた悪趣味な戦車って…」

キンジ「もしかして………金三!?」

浜面「ナニィ!?ってことは第七位のチーム!?アレは序盤で──」

滝壺「……きんじの言う通りみたいだよ、はまづら」


金三「そのとーり!だぜ!兄貴!」

軍覇「カッカッカッ!こんなに根性あるやつとやれるだなんて最高だな!」


浜面「うそん……」

一方通行「……見事にバカ2人が復活してンなァ」

黒子「戦車は普通最低四人以上で運転するものでは……」

メヌエット「どうやらG3が運転、削板軍覇が方向指示と砲撃をおこなってるとしか思えないわね」

リサ「日本のミラクルパワー「コンジョー」でそんなことが……」

キリト「あんなバカみたいなことできるのはあの2人だけだ……」

キンジ「もしかして……さっきのヘリもアンガスやマッシュの仕業か!」

金三「さぁな。そんな知らないヘリのことを言われてもよ」

アリア「あくまでシラを通すつもりね…アイツ」

浜面「いや!そもそもアレはあいつらのマシンじゃないだろ!その時点でアウト──」

アリア「何よあんた。ルール読んでなかったの?」

浜面「へ?…………あ」


土御門『そう!マシンが走行が不可能に成る程破損した場合!1度スタート地点に戻りさえすれば抽選で新しいマシンが配布されるんだぜい!』


アスナ「そして新しいマシンを貰った後、ショートカットしてここまで来たってこと?」

キリト「そうだな。それが正解みたいだ」

打ち止め「無茶苦茶すぎる……ってミサカはミサカはあまりの無茶振りに呆れてみたり」

金三「というわけで……俺たちの前は誰にも走らせねぇぜ!たとえ兄貴でもな!軍覇!」

削板「任せろ!発射!」

ドンドカン!ドンドカン!

浜面「げっ俺たち!?…ぐわっ!!」

滝壺「きゃ」


リサ「こ、こちらに来ます!……きゃ!」

メヌエット「ぐっ……これはマズイわね」


土御門『発射させられた2発の砲弾が浜面・滝壺組とリサ・メヌエット組に命中!装甲車である浜面・滝壺組はなんとか立て直すも、リサ・メヌエット組はダウン!これはマズイにゃー』

☆『そこらへんの事後処理は学園都市の科学力でどうにでもできるが……成る程。これは少々やっかいだね』

土御門『そして前方でも動きが!放たれる砲弾に他のマシンが右往左往する中、一方通行・打ち止め組が前方に出て行く!』


御坂「あ!あんた!反射してるでしょ!ずるいわよ!」

一方通行「ハッ。知るかよォそンなこと。能力使おうが何しようが勝手だろォ」

アリア「迎撃するわよ!行きなさいキンジ!」

キンジ「素手の俺に何をしろと!?」

アリア「あんたならどうにでも出来るでしょ!」

キリト「ありえるから反論出来んな…」

キンジ「キリトまでっ!?」

土御門『山岳地帯を抜け、いよいよレインボーブリッジが見えてきたー!レースもいよいよ終盤だぜい!』


浜面「くっそ……こっちばっか狙いやがって…。もうマシンがもたねぇ!」

滝壺「…はまづら、くる!」

浜面「くっそぉぉぉぉぉぉぉ!」

ドンドカン!!


フレメア「にゃー。はまづら負けちゃったにゃー」

服部「ありゃ仕方ないだろ」

垣根「無茶しますね。第七位は相変わらず」

絹旗「まー浜面にしては超頑張りすぎた方でしょうね。帰ってきたら拍手で迎えてやりましょう」

麦野「ったく、わざわざ応援に来たのに負けやがって」


土御門『さぁ残るはキリト・アスナ組、キンジ・アリア組、一方通行・打ち止め組、御坂・黒子組、金三・軍覇組だぜい!一体誰が勝ち残るか!』

☆『もうすぐレインボーブリッジだね。ゴールの武偵校までは目と鼻の先だ』

かなめ『お兄ちゃん!あと少しだよ!頑張れ!』

土御門『この子はホントにお兄ちゃんLOVEだにゃー。俺の妹ももっと俺LOVEだったなー……おっと。願望はここまでにして…さぁ!レインボーブリッジに差し掛かるぞ!』


キンジ「あいつらよく弾が尽きないな……このまま追いつけないぞ!」

アリア「分かってるわよ!あいつらさえどうにかすれば………?」

キンジ「?どうした?アリア」


金三「……ぐっ、やっぱり足が遅いと中々抜けねぇな……どした?軍覇」

削板「いや、なんか飛んでくるなと思ってよ。ほら、アレ」

金三「お、確かに……あれ、今なんか打って──」

ドン!ドン!ドン!

金三「あ?」

削板「んあ?」

ベキっ、ベキベキベキ……ボゴッ

ボチャーン!!

キリト「なっ…………」

黒子「お、落ちましたのよ……」

土御門『な、なんと!謎の砲撃によりレインボーブリッジのコンクリートが崩壊し穴が!!そしてその崩壊に巻き込まれる戦車が東京湾に落ちた……ありのままを話してるが何を言ってるか自分でもわからなくならなそうな光景だにゃー……』


御坂「何よ!次はどこから……」

黒子「お姉様!あれをご覧に!」


一方通行「ありゃ……なンだ?」


琴里「あれは……顕現装置!?」

美九「もしかしてあれって……」

七罪「その、まさかのようね…」


アスナ「あれ、折紙ちゃん!?」

「「「「ぇぇぇぇぇぇぇ!?」」」」

土御門『以外や以外!鳶一折紙、顕現装置を駆りまさかの参戦だ!』

アリア「ちょ、顕現装置での参戦ってありなの!?」

折紙「大丈夫。関係ない」

キンジ「いや関係なくねぇ!」

折紙「ホテルチケットは私が手に入れる。そして士道との子作りをさせてもらう」

キリト「──まて、聞き捨てならない単語が出てきたぞ。ホテルチケットって何だよ……」

アスナ「キ、キリトくん!前向かないと危ない!」

キリト「あ、ああ。すまん」


土御門『さぁ!レースもいよいよ大詰めです!』

かなめ『このまま何もなく終わる……なんてないだろうね。お兄ちゃんに限って』

土御門『さぁ!トップで最終コーナーを抜けるのは………キター!全マシンほぼ横一線!しかし折紙、一方通行組、御坂組がわずかにリードか!?他の2機がもがけていない!』


折紙「…チケットは貰う」


一方通行「チッ…このままじゃ抜かせねェな」

打ち止め「ガンバレー!ってミサカはミサカは頑張るあなたを応援してみたり!」


御坂「行くわよ!黒子!」

黒子「はい!あのゴールはすなわち!お姉様とわたくしの愛のゴールぶべっ!」

御坂「ふざけてないで行くわよ!」

黒子「わたくしとしては大真面目ですのに」


アスナ「キリトくんがんばって!あともう少しだから!」

キリト「ああ!任せろ──」


アリア「あともう少しよ!お爺様の名前を持つんだったらもうちょいがんばりなさい!」

キンジ「必死なのは分かるが馬なんか蹴るなよ──」

「「!」」

アリア「ど、どうしたのよキンジ。急に後ろなんか振り向いて……」

アスナ「……えっ、あれって……」

土御門『あ、あれは…………………』

☆『ほほぅ』

かなめ『へっ!?』

土御門『いんでっくちゅ号とサンダルフォン号だぁぁぁぁ!!』

「「「「なっ、なにぃ!!?」」」」

折紙「うそっ。あの二組は序盤で……」

キリト「士道たちなんてろくにスタートも切れてなかったじゃないか!?どうして……」


士道「簡単さ……十香が………自転車の漕ぎ方をマスターしたんだ!」

十香「行くぞぉぉぉ!サンダルフォォォォォォン!!」


アリア「はぁ!?何よそれ!?」

キンジ「じゃあ上条たちは……!?」


上条「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

チャリンチャリンチャリンチャリン!

上条「今月の奨学金をおろしてきたんだ……インデックス、オティヌス!今日からご飯は……白米ときゅうりとこんにゃくだけだぁぁぁぁ!!」

インデックス「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」


オティヌス「なんで私まで巻き込まれなくてはならんのだ!?」

神裂「少々ふざけ過ぎでは…」

ステイル「アレで本人たちは本気だから、もっとタチが悪い」

土御門『さぁーまだわからないこのレース!いんでっくちゅ号、サンダルフォン号ものすごいスピードだ並ぶ並ぶ並ぶ全機横一線!!』

アリア「こうなれば……キンジ!馬に飛び乗って背中のそれ!抜きなさい!」

キンジ「!!」


アスナ「!キリトくん!剣抜いて!」

キリト「分かってる!」


士道「十香!サンダルフォンだ!」

十香「わかった!シドー!」

「「「「なっ……!」」」」

土御門『ここで三機が一斉に剣を……こ、これは……剣の長さで距離を足す気だにゃー!!』

上条(マズイッ……!)

クライン「キリの字行けー!!」

直葉「おにーちゃーん!」

シリカ「ちょっと汚くないですか…あれ」

リズベット「いいのよ!そんなの!」

シノン「キリトー!」

ユイ「パパー!!ママー!」


アリア・アスナ・十香
「「「このまま……」」」

キンジ・キリト・士道
「「「勝つ!!」」」

御坂「ぐっ……とどけっ…!」








上条「──お前らが」


上条「お前らが、そんな手を使ってまで勝ちたいだなんて思ってるなら……」

「「「「!!」」」」

上条「そんな手を使って、勝てるだなんて、そんな幻想を抱いているのなら……まずは……」









上条「その幻想をぶち殺す!!」


グッキャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!





土御門『──ゴール!!』







──うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!



土御門『なんと…………四機同時ゴール!!スクラマ・タスク、エクスキャリバー、サンダルフォン、そして竜王の顎が同時にゴール線を切っています!というわけで制したのは……上条・インデックス組!キリト・アスナ組!キンジ・アリア組!士道・十香組だ!!』

☆『ま、大した事故もなくてよかったよ……珍しいものもみれたしね』


──これにより、レースは終了した。しかし忘れてはならない。ここに一つ、チケットが残る……。
狂乱の宴はまだまだ続く…。

今回はここまでです。
でさ。

では投下いきます。


──レース後


「「「って待てやゴラー!」」」

上条「う、うおっ!なんだよ、いきなり」

キリト「何ってこっちのセリフだ!今のなんだよ!?ドラゴン出たよな!?ドラゴン!!」

士道「そんなもの出るなんて聞いてないぞ!反則とかそんなレベルじゃないだろ!!」

キンジ「なんでそんな人間離れした奴とレースなんてしなければならないんだよ!!」

上条「(ミサイルを素手で軌道変えるようなやつをはたして人間と呼べるのか謎なんだけど…)そういや腕千切れたわけじゃないのに何で出たんだろうな」

キリト「現実で腕千切れるってことがもう許容範囲外なんだけど……」

士道「流石、地球を救った英雄は違う……」


キンジ「──なぁ、それより…」

アリア「げっ…なんで来るのよ!アンタ達!」

白雪「──キンちゃんは…キンちゃんは泥棒猫なんかに…」

理子「そんな簡単に諦めるわけないだよねー。こっちも」

レキ「……」

かなめ「ふふふ……私の知らない場所でお兄ちゃんの取り合いしてたんだぁ……非合理てきぃ」

リサ「ご主人様の夜のお供をするのもメイドの役目……ここばかりは誰であろうと譲れません!」

メヌエット「あらあら……いつのまにか面白いことになっていたようね。私も参加させてくださいまし」

アリア「メヌ……これ、あんたの仕業でしょ…」

メヌエット「ふふ。なんですかお姉様。決めつけは良くありませんよ」



インデックス「ちょっと!とうまを賞品だなんて聞いてないよ!?」

オティヌス「ったく。誰だ、そんなふざけた賞品を用意したやつは。そしてお前らはそれで何をしようとしていたんだ」

御坂「う、うるさいわね!私があいつと何しようと勝手でしょ!?」

黒子「もちろん、お姉様と甘い蜜のような夜を過ごすためグベッ!?」

滝壺「…電気はやりすぎ」

五和「な、なんでそんなアイテムのことを教えてくれなかったんですか……」

神裂「だいたい、そんなものの為にこのレースは組まれてたんですか…って五和!?」

姫神「そんなものがあったなら、私も参加してた」

打ち止め「むー。私たちに賞品のことが知らされないのは少しムカつくかも。とミサカはミサカは少しほおを膨らまして怒ってみたり」

番外個体「そーかもねー。私もそれ、欲しいし」

御坂妹「同意します。とミサカはミサカは首を振りながら同意の意を示します」

御坂「なんでアンタ達まで湧いてくるのよ!」

すいません緊急の用ができたので、明日の朝にあげ直します。申し訳ありません。

大変お待たせいたしました。更新の続きいきます。


琴里「はぁ?温泉旅館個室にお泊り券?そんなのが賞品になってたわけ?」

折紙「そう。だから十香。あなたに士道を渡すわけにはいかない」

十香「な、何だそれは!!私はそそそそんなもの、知らないぞ!」

四糸乃「十香さん……」

よしのん『こりゃ間違いなく黒だねー』

耶倶矢「むぅ…そんなものがあったとは……一生の不覚としか言いようがないな」

夕弦「同意。士道は私たち八舞姉妹の共有財産だというのに…」

美九「ずるいです十香さんだけー!それなら私も参加したのにー!」

七罪「確かに、士道を自由にできるってことだしね……」

真那「兄さまは自由にさせねーでいやがりますよ夜刀神十香」

十香「だ、だから違うと言っているだろう!」


アスナ「──あ、あの…みんな?」

リズベット「アスナさんは一体キリトくんと2人、温泉旅館の個室で何をしようと考えていたんでしょーねー?」ガシッ

シノン「根掘り葉掘り聞かせて貰おうかしら?」

アスナ「そ、そんなやましい気持ちは……」

シリカ「リ、リズさん?シノンさん?」

リーファ「ちょっと落ち着いて──」



キンジ「──アレはどういうことだ?」

「「「………さぁ?」」」


一方通行「──あいつらが何話してるかは知らねェが……結局判定はどうなったンだァ?」

浜面「聞いた話じゃビデオ判定に持ち込まれたって……」

士道「あ、そ……って足怪我してるぞ!」

浜面「骨折だよ骨折……」

上条「そ、それは災難な…」

キリト「……で、結局あそこはなんの話をしてるんだ?」

金三「さーな。さっきから「温泉旅館」とか「個室」とかは聞こえるけど」

キンジ「やっぱりお前は無傷か……って削板は?」

金三「あいつなら「誰かが俺を呼んでいる!」とかいいながらどっか言ったぞ」

キンジ「あいつそのうち、マントで空飛びそうだな」


『ピンポンパンポーン』

一方通行「とか話してるうちに終わったようだなァ。ビデオ判定」

キンジ「結局誰が優勝なんだろうな」

女性陣「「「「ゴクリ…」」」」

土御門『えー……ビデオ判定の結果を発表するにゃー』

「「「「……」」」」

土御門『──てっとりばやく言うにゃー。上条&インデックス組、士道&十香組、キリト&アスナ組、キンジ&アリア組が同率一位だにゃー』

ザワザワザワザワ……

インデックス「やったんだよ!とうま!これで食事券と温泉旅行は貰ったんだよ!」

上条「これで損した分取り返せるな……って温泉旅行ってなに?」


アリア「ふん。当然の結果よ」

キンジ「同率だけどな」


士道「とりあえず良かったな、逆転できて」

十香「う、うむ。そうだな、シドー」


キリト「──で、温泉旅行ってなんの話だ?アスナ?」

アスナ「あ、それは──」

土御門『──なんだけど…』

「「「「?」」」」

土御門『……さっきのレインボーブリッジの破損が思ったより大きくってな……修復の間の交通規制やそれなによって起きる渋滞やなんやらの費用で……温泉旅行の費用が足りなくなるんだぜい…』

「「「「へ……」」」」

土御門『大会資金じゃ足りなくなって…賞品の件は……残念ながらなしってことで…』

「「「「ええ!?」」」

アリア「ま、待ちなさいよ!何!?無しってこと!?」

十香「そんな!!」

折紙「……残念だったわね」

十香「なっ……貴様のせいだろうが!」

上条「ああ……不幸だ」


土御門『そういうことぜい………ま、やりすぎた責任は取ってもらうがにゃー』

金三「責任……?」

アレイスター『ようは君たちは流石にこの大会、「やりすぎた」ということさ。無駄になった大会費用を回収する為にもこれから行われるある大会に参加してもらうよ』

白雪「ええっ!?」

一方通行「大会ルールには反してなかっただろうが」

浜面「そ、そうだぞ!」

アレイスター『それを考慮してもやりたい放題だ……なにより視聴者や読者がこれを望んでいるから仕方ないだろう』

キンジ「……?待て、視聴者や読者が何を望んでいるんだ?」

理子「それは気になるねー。一体理子たちは何をすればいいの?」

土御門『いや、やるのは男性陣だにゃ』

「「「「はぁ?」」」」

上条「なんでだよ!上条さんたちは問題になるようなこと、ほぼ何もやって無かっただろうが!」

土御門『カミやん、それはしょうがないぜい。視聴者や読者が望んでいることがお前ら関係だからな…』

士道「?どういうこと?」


アレイスター『女装だ』

「「「「………………………はい?」」」」

土御門『だから女装大会に参加してもらいたいんだぜい』

キリト・士道・キンジ「「「……」」」

ダッ

上条「あ、逃げた」

アレイスター『確保しろ』

ガシッ
ガシッ
ガシッ

キンジ「グッ…カナ!?パトラ!?」

カナ「ごめんね。キンジ。私も個人的にクロメーテルが見たいの」

パトラ「カナとクロメーテルの仲良しこよしは見れないが……まぁ、クロメーテルが生で見られるならよしとしよう」


キリト「ク、クライン!?」

クライン「悪りぃなキリの字。パソコンの秘蔵フォルダが人質に取られててな……怨むんだったら奴らを怨んでくれ」

キリト「おまっ…!」


士道「だ、誰が……って神無月さん!?」

神無月「すいませんね士道くん。協力してくれたら司令の秘密の写真を貰えると聞いたらつい……けど安心してください。私も参加しますから」

士道「いやその情報はいらないです…」

上条「……ま、なんか知らんが頑張れよ」

浜面「じゃあな。俺、病院行かなきゃならないし」

一方通行「おい待て。逃げンな」

上条「逃げる?公式で女装させられてる遠山やキリトはともかく、俺らが女装させられるわけないだろ?」

浜面「そうそう。大体、俺らが女装したって、目の毒にしかならないぜ?誰得だっての」

上条「そういうわけで」

浜面「じゃ」

ガシッ
ガシッ

上条「あははははなんで上条さんの腕を掴むのかなってかなんでいるのかなトールくん?」

トール「なんてことはねぇよ……道連れは1人でも多い方がいいだろ?」

上条「お前も出んの!?おい待て待て待て!大体上条さんが女装だなんて似合いもしませんよ!?目の毒ですよ!?」

トール「安心しろ。聞いた話じゃお前、ネットじゃ女装して「上嬢さん」って名乗るssもあるみたいだし。似合わなくても道連れは欲しいし」

上条「なんの冗談ですか!?それ!ちょ離せ!!」


浜面「………麦野は俺の女装が似合うとでも思ってるのか?」

麦野「いや?キモくなるのは容易に分かるけど?」

浜面「ならこの手を離してくれないか?そして俺を見逃してくれないか」

麦野「──けど暇つぶしにはちょうどいいし」

浜面「………」


一方通行「諦めろ。逃げることなんてできねェンだからよォ」ニヤリ

上条・浜面((こいつ……))


金三「……あ。もしかして俺もか」

一方通行「当たり前だろォ」

金三「ったく…しょうがねぇな…」

キンジ「……なんでお前らそんなに思い切りいいんだよ…」

一方通行「もう疲れてんだよ。こっちは」

金三「面白そうだし別にいいだろ、ポジティブに考えろよ、兄貴」

一方通行・金三「「それに逃げても無駄だろうし」」

キンジ「お前ら………」

土御門『では会場の方に移動するにゃー』

キンジ「おいちょっと待て考え直せー!!」

士道「無茶苦茶すぎるだろー!」

キリト「せめて納得のいく説明くらいしろー!」

上条「不幸だぁぁぁぁ!」

浜面「なんで俺までぇぇぇ!?」


女性陣「「「「………」」」」

十香「……なぁ、どういうことだ?」

女性陣「「「「………さっぱりわからない…。」」」」

今回はここまでです。次回からは女装大会とさせていただきます。

昨日ポケスペのサイン会行ったのですが……抽選で外れてしまいました…。初めて池袋行けただけでも嬉しかったんですけどね。
あと最近ウホッな会話が多いです。少しは自重して……。

では。また次の更新で。

投下行きまっせー!


──さて、ここで一つ質問をしよう。

『こんな可愛い子が、女の子なわけがない』。

 この言葉に違和感を、あなたは持つだろうか?

 もし、あなたが頭を縦に振るのなら、あなたは『女装少年』や『男の娘』というジャンルに対するある程度の知識があるということになるだろう。

 そして頭を縦に振るものは多いだろう。いまやこの二つのジャンルは日本に、世界に広まっている。一部の人間にとっては「常識」とも取れるものだろう。

 現に様々な物語の主人公が女装をし、ヒロイン勢をものともしない美しさ、可愛さを持つ『男の娘』へと変貌している。

 もちろん、『男の娘キャラ』や『ショタキャラ』のようなキャラクターを愛してやまないものも大勢いる。しかし、普段はかっこいい・男らしい主人公が女装し、もじもじと恥ずかしがる男の娘と変身するのも妙な高揚感があるものだ。

 『男の娘』に限るが──もはや男のトイレシーンやパンチラを男も誰得と言えなくなった。それが今の時代である。

──そう。彼らのように──


       学園都市 某所大ホール

土御門「──さぁ、学園都市の紳士淑女の皆様!大変お待たせしたぜい!この日、この大会の為にわざわざ集まった猛者たちよ!…………女装が見たいかー!!」


──ウォォォォォォォォォォォォォ!!


土御門「ショタ女装が見たいかー!!?」


ウォォォォォォォォォォォォォ!!


土御門「男の娘が──見たいかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」


ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォワァァァァァァァァ!!!!


土御門「よーし!それじゃあ行くぜい!学園都市某大学開催、第一回女装コンテストォォォォォ!!」


土御門「正に公式が病気としか言えない大会その2!会場の熱気と狂気に当てられて少し自分がおかしくなった気すらする、そんな不肖土御門元春がグランプリから続き司会をやらしてもらうぜい!そして解説はもちろん──」

カナ「カナでーす。今日はよろしくね、土御門君」

土御門「おお……男と分かっていても惚れそうになるとは……流石はカナさんだぜい…」

カナ「ウフフ。ありがとう」

土御門「──さて!いつ、どこで、何の為、誰が開催したのか全く不明なこの大会!しかしこの日の為に集まった紳士淑女の皆様にとって、そんなことは些細すぎる問題だ!おーっと!もう「早く始めろ」との野次が飛んできてるぜい!ここでダラダラと時間を消費しても仕方ないし、それではいよいよ大会スタートさせていただきますにゃ!それでは!エントリーNo.1の方からご入場いただきましょうか!」


土御門「エントリーNo.1!ラタトスク一の美男子にして変態紳士!神無月恭平ー!」

カナ「………流石に道に入ってるわねー」

土御門「会話の端々からかつてオカマバーに勤めていたような感じの神無月さん。元がいいせいか妙に似合っているのが腹立つぜい」

カナ「コラ。彼の変態としてのプライドに失礼でしょ」

土御門「そんなものはへし折って振り回した後捨てた方がいいと思う──」

ガゴンッ!

カナ「──あら、落ちたわね」

土御門「尚、審査員が「これ以上見るに堪えない」と判断した場合は、お手元のスイッチで強制的に落とすことが出来るように作られてるにゃー」

カナ「落ちる寸前、彼が笑ってるような気がしたけど……気のせいじゃないでしょうね」

土御門「ちなみに今、スイッチを押したのは五河琴里みたいです。これ以上、身内の恥を晒したくなかったのではないでしょうか」

カナ「彼女、頭を抱えてますからね」


土御門「それではここで簡単に審査員の説明をさていただきます!審査員は4名!五河琴里さん、パトラさん、誘宵美九さん、食蜂操祈さん。以上の方々だぜい!」

カナ「では続きましてはエントリーNo.2。アイテムの逆紅一点、浜面仕上さんです!」

ガゴンッ!

土御門「おおっとこれは厳しい判定」

カナ「これはパトラね。彼女、女装した男の娘も許容範囲内だけどむさ苦しいと砂人形で即殺すから」

土御門「いやはや、ターンすらさせてもらえませんでしたね」

カナ「先ほどの神無月さんがワンピースなのに対し、こちらは着物でしたね。チョイスは良かったのですが…後で何が悪かったのかちきんと教えて差し上げるので、その格好のまま私の控え室まで来てくださいね」

土御門「女装とはいえ、こんな綺麗なお姉さんと個人授業とは……羨ましい限りですな」


土御門「さぁさぁいよいよ本命の登場です。エントリーNo.3。学園都市最強の怪物も今日限りは可愛いウサギに、鈴科百合子!」


ォォォォォォォォ!


土御門「これはレベルが高い!普通に可愛いぜい……」

カナ「一方通行──もとい鈴科百合子さんは小柄で細身な体型ですしね。目つきの鋭さを前髪を少し長めにすることで誤魔化し、セーラー服という王道で攻める……確かにこれはレベルが高いわね」

土御門「無事に渡り切りましたね。審査員の皆様も眼福という感じです」

カナ「あれは流石のパトラも認めるでしょうね」


土御門「続きましてはエントリーNo.4。いまやネットを騒がせる程の人気!正にアイドル!五河士織ちゃんです!」


ウォォォォォォォォォォォォォ


カナ「──成る程。パトラが彼女を見たがるわけがよく分かるわ。制服姿に手を少し出したセーター。そしてスカートを抑えながら震える姿……確かにクロメーテルとは逆のベクトルの『男の娘』ね」

土御門「本人からしてみれば恥辱以外の何物でもないからか、顔を真っ赤にしてるのも、有る意味で誘ってるようにも見えますにゃー」

カナ「これは落とされるわけがないわね」


土御門「お次は2人纏めてご登場いただきます!エントリーNo.5&6!クロメーテル&シロメーテル!」


おおおおおおおおおおおおおっ!!


土御門「これは……先ほどの鈴科や士織が可愛い方面だったのに対して、こっちの2人は美しいという感じだにゃー」

カナ「黒と白。二つの色メーテルというのが同じような、されどまったく違うような、そんな幻想的な美しさを醸し出しているわね」

土御門「これならハリウッド女優と間違われて当然だ……」

カナ「──金女を男装させて、兄弟全員でプレイってのも……ありかも(ボソッ)」

土御門「?何か言ったかにゃ?」

カナ「あ、いや。なんでもなくてよ。おほほほほ」

土御門「?」


土御門「いよいよ終わりが近づいて来ました……エントリーNo.7!MMOを沸かせる黒の剣士!キリコちゃんの登場です!」


ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!


カナ「………成る程。正に「女剣士」って感じわね。あんな子が光剣を美しく振るえば、そりゃファンが着くわね」

土御門「その意思の強そうな顔を、自分の前では甘える猫のように躾けたい……青髮のやつが言ってたことも理解できる……」

カナ「当たり前のように無事に通過ね」


土御門「さぁ!いよいよ最後!エントリーNo.8!その名を世界に轟かせる、上嬢当子ちゃんのご登場だにゃー!」


──ウォォォォォォォォォォォォォ!!


カナ「──正統派美少女。彼女にはそれがしっかり当てはまるわね…」

土御門「しっかし……思わぬところにダイヤの原石って転がってるもんなんだにゃー。カミやんがこんなに女装が似合うとは……」

カナ「彼、ここのところショタ化していると聞くしね。これはいいものが見れたわね。眼福だわ」

土御門「──さぁ!これにて女装大会は閉会とさせていただきます!大変ありがとうございました!」


       風紀委員 第一七七支部

初春「──あれ、白井さん。その写真はどうしたんですか?」

 一仕事終えパソコンの前から立ち上がった初春は、ほり固まった体を伸ばすとともに、机の上に置いてある1枚の写真に気がつく。

黒子「ああ。それですの?」

 机の上に飲んでいた麦茶を一旦置いた白井の手には、複数枚の写真があった。その写真に写った人物を見て、初春は全てを察する。

初春「また御坂さんのこと、盗撮したんですか?」

 そう。写真に写っていたのは白井の一方的な思い人である御坂美琴の姿であった。目線や写真に写った彼女の表情から確実にカメラについては気づいてないことくらいは、誰にでも分かるだろう。

黒子「むっ。違うですの!これはわたくしが撮ったのではなく、ムッツリ照会に──」

 ──その机に乗せられ4名の、有る人物の写真。

 初春が見とれるような可愛さ・美しさを持った彼女ら4名の写真が──

 新たな騒動を起こすことを、まだ魔神すら知らない。

今回はここまでです。次回からは通常の更新にしていくので、これからもよろしくお願いします。
では。

どうも、常盤赤色です。では第6話「士織ちゃんの受難」の続きいきます!


「お前は何をやっているんだ……」

「いやー。ごめんごめん。つい、理性のブレーキがはずれたっていうか……」

 椅子に座っている士道一行の目の前で、先ほどの女性が他の女性に正座させられ反省を促されていた。しかし頭を抱えるスタッフの女性に対し、加害者の女性はケロリとしている。反省してるかしてないかを見てくれだけで見れば、間違いなく「否」だろう。

「全く……お前は相変わらず…。一歩間違えたら警察に捕まってもおかしくないんだぞ。もう少し考えて行動しろ」

 そう言いながらため息をつく女性。話によるとこの女性はステージのキャストチーフらしく、ここの責任者としてキャストを纏める立場らしい。

「めんごめんご。霙ちゃんの助けになりたくてさー」

「お前は高校時代からそんな感じだな……君達、本当にすまなかったな。この馬鹿が迷惑をかけて」

 そう言って頭を下げるキャストチーフの女性。正座してる方の女性もそれに釣られて土下座する。

「ホントごめんね。この通り!だから許してくれない?」

士道「いや……まぁいいですけど」

 土下座して謝ってまで許さないほど、士道たちもしつこいわけではない。


 この場合、士道たちが一番危惧していたのは彼女たちがDEM社やASTの関係者ではないかというところだが、どうやらそれは無いらしい。まだ完全に可能性が消えたわけではないが、ひとまずここは安心していいだろう。

 士道が横に振り向くと琴里もそう判断したようだ。一旦、フラクシナスに通常通りの体制に戻るようにインカムを通して小声で神無月に伝える。

琴里「──一つ聞きたいことがあるんだけど、いいかしら?」

「あ、イイっすよ」

「お前は黙ってろ。ややこしくなる」

 琴里の問い掛けに答えようとしたのは白衣の女性だったが、それをもう一方の女性が止める。口を膨らまして不満を示した女性だったが「正座を解いてよし」と言われると、素直にそれに従った。

琴里「なんで士道を攫おうとしたのかしら?」

 やはり、と士道は頭の中で呟く。そこばかりはちきんと説明してもらわなければ、この場にいる士道たちも、この一連の事態を見ているフラクシナスの職員たち全員も納得しないだろう。

「ああ、それ?それはね」

「お前は黙ってろって言っただろ」

「えー。私がやったことだよ?霙ちゃん、理由分かるの?」

「お前の考えなんて手に取るように分かるわ」

 そう言いながら女性は頭を掻く。


 ものすごい美人である。出るところは出て、しまるところはしまっているモデルも羨みそうなモデル体型は令音を彷彿とさせるが、こっちはもっと「できる女性」という感じを匂わせていた。雰囲気からして、さぞ部下に慕われ上司なのだろう。

 と、見惚れていることに気づいて慌てる士道。女性と一緒に旅行してるのに他の女性に見惚れるだなんて失礼にもほどがある。周りを見渡すが、誰も士道が女性に見惚れていたことには気づいてないらしい。とりあえず息を吐く。

「お前、今から始まるイベントの特別枠を探していたんだろう。大方私がいい奴がいないか、と言っていたのを盗み聞きしていたのだろう。で、その枠に良さそうな少年を求めて徘徊していた……違うか?」

「おお!流石霙ちゃん!あったりー!」

「はぁ……ステージ周辺に徘徊する怪しい女性がいると本部から連絡が来たから慌てて総司を急行させたが……予感が的中するとはな」

 どうやら、士道を攫おうとした女性は今から行われるイベントに士道を参加させたかったらしい。それなら口頭できちんと理由を話せばいいのに……。と一行の誰もが思っただろう。

十香「それなら何故士道を攫おうなどとした?しかも私まで」

「あ、それはね──」


「姉さーん」

 まるで女性の話を遮るように備品室に入る人物がいた。見れば先ほどこの女性を取り押さえた少年が扉を開け、中に入ってきた。
 超人的な身体能力を見せたこの少年──キャストチーフの女性の話によると学生のアルバイトで、能力者らしい。なるほど、学園都市の能力者なら先ほどの跳躍も納得できるだろう。士道たちはその説明に、なんの疑問も抱いていなかった。

 ──しかし一人だけ、妙な不安を頂いている人物がいた。本人もあまりに小さな違和感を気づいてない、が。

 それに気づかないことが後にどう影響するのか──この時点では誰も知らない。

「もうイベント始まりますよ」

「──ああ。そうだったな」

 腕時計を見て時間を確認してみると、確かにイベント開始まで残り10分を切っていた。彼女がキャストチーフである以上、これ以上ここにいるわけにはいかないだろう。

「すまない。これ以上は……」

美九「あの、最後に一ついいですかー?」

「む、何かい?」

 パイプ椅子から立ち上がった女性を机のちょうど正面に座っている美九が呼び止める。最後に一つだけ、質問があるようだ。

美九「イベントにおける特別枠ってなんですかー?」

「ああ、それか」

 そういえば女性が士道を攫った理由に「イベントの特別枠が──」という話があった。美九は恐らくそこが気になったのだろう。


「このイベント、パークを訪れたお客さんの中から一人、特別な衣装で参加してもらうというものがあるんだ。ところが今回はことごとく断られてなぁ……いくら困っているといえどこいつのような行動に出るやつはこいつ以外いないが」

 それで困って女性はあの様な行動に出たらしい。いや、それでもあんな行動を取るとは予想できないだろうが。

「そういうことだ。この話は──」

士道「──あの」

 ここで士道が言葉を挟む。一同の目が、士道に集まる。

士道「──よかったら参加しましょうか?」

「え!ホントもがふが」

「……いいのかい?」

 士道の言葉に反応した女性の口に手を被せながら、目を向けるキャストチーフの女性。士道はそれにうなづくと、他の皆にも同意を求める。

士道「別にいいよな?」

十香「シドーがいいというならいいぞ!」

四糸乃「困ってるみたいですしね」

よしのん『士道くんの好きにしなよー』

琴里「いいんじゃない?別に時間が無いわけでも無いし」

耶倶矢「いいだろう。共通財産といえ、それくらいの自由なら許すくらいの器はある」

夕弦「同意。士道が参加したいのならそうすればいいのです」

美九「だーりんのカッコいい姿も見たいですもんねー」

七罪「いざとなれば私の能力使えばいいもんね」

 皆、士道の考えに乗ってくれたらしい。顔をキャストチーフの女性に向け直すと女性は複雑な顔をしながら再度尋ねてきた。


「本当にいいのかい?」

士道「ええ、いいですよ」

「──いや、しかし」

「もー霙ちゃんしつこいぜい!本人が良いって言ってるからいいじゃん!」

「あのな──」

 なおも苦言を漏らすキャストチーフの女性。流石にここまで苦言を漏らすと何かあるのだろうか、と士道が勘繰る前に女性から再度同意を求められた。

「ねぇ、いいんでしょ?」

士道「え。はい」

「……分かった。ではお願いするよ」

 そう言った瞬間、士道と十香を攫った方の女性がものすごい勢いで部屋を飛び出て行った。先ほどといい、精霊である十香達も唖然とするものすごいスピードだ。

 と、十秒もせずに、部屋に戻ってきた。戻ってきたのだが。そこには一つ違う点が。


士道「…………あれ?」

 もしかして自分はものすごい思い違いをしていたのではないか。自分が選択したそれは、もしかしたら途方なく悪手なものだったではないのか。なんて考え出す士道。頭の中に警戒音が鳴るというのはこういうことなのだろう。

 女性が先ほどと違う点──それは彼女が先ほどは無かったドレスを手に持っているからである。

士道「あ、あの…………それは?」

 恐る恐る尋ねる。どうかこの嫌な予感が的中しないで欲しい。これを自分が着る、などという予感など、当たるわけがない。そう思いたい。

 しかし現実は無情だった。

「やだなぁ!君がこのコンテストで着る衣装だよー!私の五日間徹夜の自信作!」

 死刑宣告とは、なにも首吊りや電気椅子だけではない。精神的に大きなダメージを負わせるものも充分に該当するだろう。

士道「…………あ、あの」

「──やはりこのことを知らずに了諾したのか」

 少し涙目で顔を向ける士道に、女性は半分呆れ気味に応えた。

「うちのは少し特殊でね……このイベントでは毎日、誰か一人でも女装のお客さんを出すことになっているんだ」

士道「そ、それって……」

「このイベントの特別枠とは女装のことだよ」

 途端に横から異様な視線を感じ、身震いする士道。

士道「み、みんな?目が怖いぞ……」

 異様な雰囲気を察して動こうとするも、後ろから2人のスタッフに羽交い締めにされる。

「ほらほら移動するよー。ソウちゃんそっち持って」

「あいあい」

士道「ちょ、ちょっと待ってください!服のサイズとか化粧とかどうするですか!?」

「んー?どっちも学園都市の科学力でどうにでもできるから心配しないでー」

士道「いや!そこのところを詳しく……」

七罪「安心しなさい。士道のあられもない姿はちゃんとデジカメに押さえておくから」

美九「私、家宝にしますー!」

士道「いやしなくていい──ちょ、待っ、待ってぇぇ!!」

 そのままズルズルと連行されていく士道を見ながら、琴里たちは席への移動を始めた。

琴里「さ、士道の勇姿を見に行くわよー」

 後は言わなくても舞台裏にいる美少女までのプロセスは分かるだろう。

──かくして、学園都市に謎の美少女「五河士織」が初上陸したのである。

どうも>>1です。ようやく本編に戻ってきました。

今週は特に何もないのでこれで終わります!強いて言うならゼスティリア欲しい!(願望)

では。

上条とキリトは知ってるけど他の主人公知らんな
このラノ上位にはいないけど人気なキャラなの?

>>394
キンジ=緋弾のアリアの主人公
今年の春にスピンオフがアニメ化
士道=デートアライブの主人公
何か映画化するっぽい

人気はぶっちゃけ知らない

>>1
アニメ一期しか見てないけどデートアライヴの士道って原作でも女装したの

なんかピクシブに士道の女装姿が結構あるんだけど

>>394 >>395
緋弾は累計500万部、デートは累計200万部突破してるのは確かです。
どちらもアニメ二期やスピンオフアニメ化してますし、それなりに有名だと思います。

>>396
してます。アンコールでもしています。作者が気に入ってますし。詳しくは読んでみてください。

男嫌いな精霊美九を攻略する為に女装させられた姿其れが士織

デート・ア・ライブはゲーム夏に発売の入れたら三作も出してるし映画化やマンガ化してるから結構売れてるんじゃない、ファンタジア文庫の主力だし

>>398
説明がド下手な>>1の代わりに説明、ありがとうございます。


じゃあ投稿、いっきますよー!


士道「はぁ…………」

 イベント終了後、ものすごい勢いで控え室に戻り、そのまま服をドレスから男物の物に着替え化粧を落とし、「五河士織」から戻った士道は、ため息を吐くとそのまま備え付けてあったソファに座り込んだ。
 何度も「士織ちゃん」になったことはあるが、ここまでの大観衆の目に晒されるのは天央祭のあのステージ以来だろう。「もうあんなことはないだろうと思っていたのになぁ……」と小さくぼやく。

「イベントは大盛況だったよ。本当にありがとう」

 声がした方に顔を動かすと先ほどのキャストチーフの女性が控え室に入ってきていた。先ほどまで後片付けなどの指示をキャストにしていたが、どうやらひと段落したようで今は片手に缶コーヒーを握っていた。

士道「いえいえ。お役に立てて良かったです。……」

霙「霙(みぞれ)でいいよ。士織ちゃん」

 「霙さん」と呼ばれた士道に呼ばれた女性は意地悪く笑いながらその名を呼んだ。

士道「できればその名前は……」

霙「呼ばれたくない、だろう。分かっているさ」

 苦笑いで返した士道の反応を見て、また意地悪い笑みを浮かべる霙。どうやらいいように弄られているようらしい。


霙「君を見てると高校時代の弟を思い出すな……」

士道「俺に似てる?」

 士道に妹はいるが、兄や姉という年長者の兄弟はいない。従兄弟には年長者が何人かいるが会うのは年に一度か二度程度だ。
 自分に姉がいたらこんな感じなのだろうか……と考えていた矢先だったからか、「自分に似ている」という弟の存在がついつい気になる。

霙「ああ。君に似て中性的で女装が似合っていてな。小さな頃は私の妹と先ほどの女──椿というが──に弄られていたよ」

士道「…………」

 思わず無言になる士道。正直自分もそのせいで苦労しているところが似ているという霙の弟に、密かに同情してみたりする。(女装による)苦労人というのはどうやら士道だけではないらしい。

霙「もちろんそれだけじゃないぞ。意思が強そうな瞳なんかも似ているしな」

 霙によるフォローが入るが女装に続く女装弄りに精神的に疲れていた士道は「はぁ」と力なく返事をするだけだった。

 と、2人の視線が扉の方へと向けられる。扉を開けて入ってきたのは琴里だ。

琴里「いつまで待たせるのよ。そろそろ行くわよ」

士道「おう。それじゃあ」

 琴里と共に控え室から出ようと立ち上がる。霙から呼び止められたのはその時だった。

士道「これは?」

 渡された封筒の中には何枚かのチケットらしきものが入っているのがうっすらと見えた。

霙「ああ。明日のコスプレパレードの参加券だ。本来なら明日の午前中の大会に出なければいけないが特別に。是非「士織ちゃん」で参加してくれ」

琴里「あら、良かったじゃない。士織ちゃん」

士道「…………」

霙「──というのは嘘だ。入っているのは園のレストランの割引券さ。是非明日来た時使ってくれ」

 半眼で睨んでくる士道を見て、笑いを堪える霙。完全におもちゃにされている──士道がまた、ため息を吐くのも必然とも言えよう。

霙「参加してくれたお礼だよ。今日は本当にありがとう」






霙「──精霊の力を持つ、なんて聞いたからどんな子かと思ったが、全然意識すること無かったな……ただの高校生だ」

 士道たちが去り、イベントの片付けも終わり、一旦の静寂が訪れたステージの舞台裏で缶コーヒー飲みながらそんなことを呟く霙。その隣で椿がココアの飲みながらうなづく。
 2人とも先ほど着ていたキャスト用の制服では無い。椿は白衣、霙は私服へと変わっていた。

椿「ただの高校生じゃないよー!あんなに女装が似合う子、中々いないよ!」

霙「…………確かにお前の好みだったかもしれないが。だと言っても勝手な行動をやめて欲しいな。シグムンドの奴も言ってただろう?お前は後先考えなさすぎだ、と」

 興奮する椿に呆れ、注意をする。最もこの光景は彼らが高校時代からまったく変わらないものだが。変わらないは聞こえがいいが、成長しないと言っても過言ではない。

椿「むー。反省しますよ反省しますよ。それよりどうすんの?彼らを」

霙「どうせこのまま接触するだろうさ。彼らはね」

 そう。もうすぐ彼らは交わり合うだろう。彼らの奇妙な因果はもう今からでは自分たちには変えられない。こんな風にしようとした本人にさえも、変えられるものではない。

霙「だったらあの子たちの関係を良好にするのが、私たちの役目だ。大人である私たちの、な」

椿「そんな建前より、私は自分のために動くからねー。目指せ!士織ちゃんの再度の爆誕!」

『妄想によだれを垂らしながら盛り上がってるところすいませんが、動きがあったのでご報告します』

 霙の携帯電話からそんな声が発せられたのは2人がそれぞれの飲み物を飲み干し、近くのゴミ箱に捨てた時だった。椿の方を見ると彼女の携帯電話からも、声は聞こえてくる。
 一気に2人の顔つきが──最もその変化は2人をよく知る人物くらいにしか分からないような微細なものだが──鋭くなる。

霙「──どこだ?」

『EU武偵連盟からです。連中の派遣したエージェントが学園都市行きの飛行機に乗り込みました。神崎アリアへの連絡も、おそらく今夜中に済まされるかと』

椿「アリアちゃんへの接触はできそうなの?」

『はい。同時に彼らとの接触も予定通りに決行します。薔薇十字団のメンバーもすでに動いているみたいです』

 先ほども言った通り、もう賽は投げられた。自分たちには彼らの奇妙な因果をもうどうにも出来ないだろう。
 しかし変えられないからと言って何もしないわけにいかない。自分の弟が、そうしたように。

霙「──さて、どうするかな。あいつなら」




11月3日 PM6:30

           学園都市 第六学区 
           「ウィスト・ランド」

インデックス「うわぁー!!おいしそうー!」

 「目は口ほどに物を言う」ということわざがある。情のこもった目つきは、言葉で説明するのと同様に、相手に気持ちが伝わるものだ。という意味だ。
 このことわざから分かるように目という物は時に相手の意思を読み取ることも、時に鋭い眼力を発し相手を怯ませることもできるものなのだ。自然界には相手を威嚇するために目のような模様を持つ生物、植物も多く存在する。
 テーブルに置かれた料理の数々を見つめるインデックスの目はまるで光り輝いているようだった。あの第五位のような目つきといえば、分かりやすいだろうか。

インデックス「ほらほらイブも!遠慮なく食べていいんだよ!」

 「お前が払うわけじゃないだろ……」の声は上条のもの。その声は心なしか力が無い。
 それもそのはずであろう。3回。すでに今日、3回上条はATMへと足を運び、預金を下ろしてきたのである。


上条(今月は入院費とかでただでさえ厳しいってのに……)

 しかも来月は師走。「師が走る」ほど忙しい12月である。クリスマスや大掃除、大晦日などイベントが続く。このままでは一年で一番忙しく、出費が激しいこの月はとてもでは無いが乗り越えられない。

イブ「うん……けどインデックスって凄い食べるんだね…」

インデックス「ふぅん?(うん?)ほぉう?(そう?)」

 2尾の海老フライを口に咥えながらの為、何を言ってるいるのか若干聞き取りづらい。マナーにうるさいものがこの場にいれば口を酸っぱくして注意するだろう。

オティヌス「お前もそろそろ自重しろ……見ろ、コイツがぶつぶつと家計のことについて呟きだしたぞ」

 オティヌスが指差す方を見ると、「──奨学金を全額下ろせば……いや、それでも無理だ……。年末は実家に帰るしか……補習があるから無理──」と生気のない目でぶつぶつと呟く上条の姿があった。ここまで追い詰められてる姿を見ると流石にかわいそうである。


イブ「あの──やっぱり私が払った方が」

上条「え──いやいや!そこは……ねぇ」

 イブの申し出でようやく目に光が戻る上条。
 上条における彼女の印象は「かなりしっかりしている」、であった。比較対象はインデックスだが──自分でちゃんと入園料も払ったし(上条が払ってあげると言ったにも限らず)、なんと食事も自分の分のみならず上条の財布事情を察し奢るとまで言い出したのだ。そこは上条も譲れないものがあったので引かなかったが。

インデックス「そうだよ!とうまが払ってくれし。どんどん食べればいいんだよ!」

 「お前は少し自重してくれ……」という上条の視線も、インデックスは素知らぬ振りである。
 と言っても、今回のそもそもの非は上条にある。数週間の入院中にも病棟を抜け出したし、退院した翌日にあの騒動だ。2人を放置したからこそ強く言えないである。
 しかしそろそろ(金銭的な意味で)限界を察した上条が暴食を止めようとした、その時だった。


浜面「あれ──やっぱそうか!なんか懐かしいな!」

上条「…………浜面!おお!久しぶり!」

 そこに現れたのは、滝壺理后とのデートで「ウェスト・ランド」を訪れていた青年──浜面仕上であった。

浜面「なんだよ。お前も来てたのか。あ、同席いいか?」

上条「いいよ!いいよ!いやー本当、何週間ぶりだろうな!」

 上条と同じ席に座る浜面と滝壺。どちらもいつも通りのジャージやTシャツと、とてもお出かけに適した服装では無いが、2人ともそんな感じだからか妙なバランスが取れている。

滝壺「そんなに立っていないはずだよ。2人とも」

上条「それでもここのところ色々あったからなー!なんかメチャクチャ懐かしい気がするわ」

浜面「それな!──あ、ありがとうございます」

 メニューを店員から受け取り、注文を選ぶ2人。こう見るともう完全にできてるカップルである。


オティヌス「──上条。なんだこいつらは」

イブ「?上条くんの知り合い?」

 横からの疑問はオティヌスとイブのものだ。そういえばなんだかんだでこの2人とは初対面である。

浜面「ん、誰の声──ってうおっ!なんだ!?そのちっちゃい子は?後そこの子も」

滝壺「お人形さんみたい……」

 オティヌスを始めて見た2人はここ数週間で3人が慣れた反応を見せる。予想していた反応だ。

上条「こっちはイブ。縁あって学園都市の案内をしていたところなんだ」

 同時にぺこりと頭を下げるイブ。浜面の漏らした「相変わらずあのスキルは健在か……」という呟きは誰の耳にも入らなかった。

上条「で、こっちは──」

オティヌス「上条」

 オティヌスが顔を上げてこちらを向いてくる。その目は鋭い。おそらく、「目の前は事情を話してもいい人間か」を聞いているのだろう。
 あの一件以来、事情を話した人間は何人かいる。しかしどれも、御坂美琴や一方通行、神裂火織、土御門元春などのあの事件に関わった人物だけである。もちろん見舞いに来た青髪ピアスなどの友人や自身の父親や母親には言っていない。
 なるほど確かに事情を伏せた方がいいだろう。何よりここには知り合って間もないイブもいる。事情は話さない方がいいだろう。
 「特殊な能力により身長が低くなってしまった能力者」などとなんとか適当に説明をしたところで、いつの間にか注文していたインデックスの追加の皿が来て、またも上条は頭を抱えるのであった。

上条「インデックスさん。もう勘弁…………」

インデックス「やだ」

少し短いですが今回はここまでです!

この前クロメーテル女史のイラストをPixivにあげたが一向にクロメーテル女史のイラストが増えない。解せぬ。

と、まあこんなところで。では。

乙です

>>1
>増えない
なら>>1が女装して先駆者になるのじゃ

>>410
ありがとうございます!

>>411
…………正気か?


では投下いきます!今回は1万文字越えしてしましたしたがいきますよ!



1,


 御坂美鈴が狙われたあの出来事が起こったのは10月3日だから上条当麻と浜面仕上は出会ってからまだ1ヶ月しか経っていないことになる。いや、あの時はお互い「敵」として顔を合わせただけなので、本格的に「知り合い」となったのは11月5日ということなる。まぁこれを言い出すと上条がインデックスと出会ってまだ半年しか経っていないし、オティヌスとも(あの数万回に及ぶ殺戮の間に経た時間はないことにして)3週間しか経ってはいないのだが。
 だから年代は近いといえど、まだ知り合ってから数週間しか──しかもお互いに顔を合わせたのはその内の半分にも満たないかもしれない──経っていないにも関わらず、同じクラスに所属して友人になって三ヶ月経ったような気軽さをお互い持てるのは、単純に2人の性格が似ているからかもしれない。

滝壺「すごい量」

浜面「うっわ長いなー……。どんだけ食うんだよこの子は」

 料理の注文をウェイターにすませた浜面と滝壺が驚嘆しているのは伝票入れに収まらず、まるでとぐろを巻く蛇のような状態になっているレシートだ。しかもそれが2、3枚も重なって入っている始末である。

上条「でも、これよりも多いこともあったんですよねー……」

浜面「これよりも……?」

 上条が言っているのはアリサと出会った日、アリサがオーディションに受かった日の、ファミレスでのレシートのことである。あの時、あのレシートが上条の家計に与えた傷跡はマリアナ海溝とは言わずとも、伊豆・小笠原海溝ほどに深い。まぁそれは毎度のこと(中にはマリアナ海溝ほどの傷跡もちらほらある)と言ってしまえばそれまでなのだが。

浜面「大変だなぁ……お前も」

上条「分かってくれてなによりざんす」

 2人とも常人から見れば(女性運以外は)運がないと言われるような事態が日常的に起きている人物である。この辺も2人の馬が合う理由なのだろう。
 ちなみに話題の中心に1番深く関わるインデックスはというと、未だにオーダーをしゴリゴリと上条家の家計に与え続けていていた。いい加減泣きたくなる上条である。


上条「はぁ……そういや俺、まだ何も食ってないわ」

イブ「そういや、上条くん昼も何も食べてなかったよね……」

 ここで昼も何も口にしていないことに指摘されてようやく気づく自分に、また泣きたくなる上条。精神的なダメージで意識してなかったからか、気づいてようやく、自らの空腹を自覚する。
 伝票を見る。この量なら今更増えても、何も変わりはしないだろう。寛容になった、というよりもうインデックスの暴食を止めるのを諦めた上条は、素直にオーダーしようとメニューに目を通し、1番安い普通はのハンバーグセットを頼むことにする。
 ちなみに「ミーン・ストリート」の「ライト・ビューティー・キャッスル」側に位置するレストランのテラス席に、上条たちは座っていた。最大12人座れる大きな丸テーブルだ。上条たちが4人でこの大きな席座っていたのは、単に席が埋まっていて他に空いてなかったからだ。浜面たちが混んでいる店内で、テラス席で座ってる知り合い(上条たち)を見つけたのはちょうどよい偶然だった。
 テラス席から夜のパレードが食事しながら観覧できるからか、店はかなり混んでいた。ちらほらと休日だからか学生の姿も多く。学園都市には少ない家族連れの姿も、ちらほらと見える。
 近くのウェイターを見つけた上条だったが、そのウェイターが別の席の客についたことで呼び止めることができなくなった。
 そして上条たちの話題は目についた、先ほどウェイターを呼び止めたテーブルの構成いてのものとなる。

オティヌス「ああいうのを「ハーレム」というのだろうな……」

 オティヌスの一言に静かにうなづく滝壺と浜面。何せ男子1に対して女子8という正に「ハーレム」と呼ぶにふさわしいメンバーである。浜面が所属している現「アイテム」も男女比は1:3で、世の中の男子かは見れば羨みと嫉妬の目で見られるレベルだが、それとは比べ物になるまい。
 だが1人だけ、これに匹敵するハーレムを形成したことがある人物がいる。

上条「……上条さんも出会いが欲しい」

 「お前が言うか」。と浜面は心の中で突っ込みを入れる。以前、浜面は酔った上条が女子を行く先々で引き連れていきハーメルンの笛吹き男状態になっていたことを知っている人物である。自分が言うのはまだしも、上条が言うのはお門違いすぎると、浜面は思ったのだ。まぁ、彼もそんなことを口にしていれば他の人物から「お前が言うな」と言われていただろうが。

浜面「しかし、すごい可愛い子ばっかりだなぁ……」

 その瞬間心から漏れ出てしまった言葉に「しまった」と浜面が思った時には後の祭り。不意に後ろから殺気を感じた浜面の背中に嫌な汗が流れていく。

 ギギギ、と油が切れたブリキのかかしのように後ろへ振り向くと、そこには静かに微笑む滝壺がいた。後ろからどす黒いオーラが見えなくとも感じられることが無ければ、浜面は見惚れていたかもしれない。が、そこにいた怒りの化身に、浜面は見惚れている余裕など持てなかった。
 確かにあの席にいる女性たちは滝壺の目から見ても「魅力的」としっかり分かるような子ばかりであった。夜色の髪色と水晶の瞳を持つ活発そうな少女を始めとして、左手にウサギのパペットを持つ小柄な蒼玉の瞳の少女。口にチュッパチャプスを加えた赤色の髪を黒いリボンでツインテールにしている少女。瓜二つの顔をしながら雰囲気と体型がまったく違う双子らしき2人の少女。紫紺の髪の背の高い少女の声は離れているここまで透き通って聞こえ、その隣にいる絹のようなモデル顔負けのプロポーションの女性は、一般よりも遥かにスタイルがよい(本人は自覚してない節があるが)滝壺を嫉妬心を抱かせるほどだった。更に隣にいる女性は他の少女たちに若干劣るものの、それでも目の下のクマを除けば外見は全てがパーフェクトと言えるものだ。
 浜面が見惚れるのも分かりはする。だが、それはそれ。これはこれである。
 「怒」のオーラを巻き上げる滝壺に対して浜面は何回も頭を下げるしかなかったのであった。

上条「上条さんもあんな子たちに囲まれたいですなぁ……」

 ちなみに上条のこの発言は、暴食を続けるインデックス。それを見ながら呆れるオティヌスとイブ。そして「すいっません!」を連呼する浜面とそれを笑顔で、冷ややかな目線で見下す滝壺の耳には届かなかった。もしもこれがインデックスやオティヌス、ここにいない御坂美琴や神裂火織、五和、食蜂操祈などに聞かれていればと考えると血の気が引くが……あいにく上条当麻にそういうこと関係の思考力は無いし、彼女らには聞こえてはいないので別に危惧するようなことではないだろう。

 ウェイターが上条たちの席に近づいてきた頃には、滝壺の怒りも、一応は落ち着きを見せていた。

「お客様、お待たせいたしました。ご注文を」

上条「ハンバーグセットを一つ、ドリンクバー付きでお願いします」

「ハンバーグセットですね?かしこまりました。ドリンクバーはあちらにございます」

 この店のセットにはドリンクバーが付けることができる。もちろん浜面が注文したステーキセットにも、滝壺が注文したキチン南蛮セットにも付けることができ、2人はこれを追加した。浜面の手元にあるコーラも滝壺の手元にあるオレンジジュースもそれである。ちなみに注いできたのは浜面。日頃「アイテム」のドリンクバー係を務めている(押し付けられている)彼だが、今は滝壺とのデート中である。デート相手の女性立たせるわけにいかないと、自主的にドリンクバーに向かうのは当たり前、と彼の中では考えていた。
 それはともかく(閑話休題)。

上条「じゃあドリンクバーに行ってきますよー」

インデックス「あ!私も行く!」

イブ「私も行きます!」

 ドリンクバーに行こうと立ち上がった上条についていく形でインデックスとイブも立ち上がる。空になったメロンサイダーのコップを持つインデックスと少し残っていたサイダーを飲み干し、上条と共にドリンクバーに向かう。

オティヌス「気をつけろよ」

 ドリンクバーに向かうのに何を気をつけるのか。と上条は言い返そうとしたが、今までのことを思い出して、「何もなかった」ことの方が少ないことを思い出し、素直に「分かった」と返事することにしたのであった。



2,


令音「シン。七罪は何がいいと言っていたかな?」

士道「七罪ですか?確かソーダだったと思いますよ」

 ドリンクバーにてそんな会話を交わしながら士道と令音の2人はメンバーから頼まれた種類のドリンクを次々とコップに注ぎ、トレーの上へと置いていく。
 琴里やよしのん、七罪の指摘、「こういうことは男子がやるものだ」と言われた士道だったが、流石に8人分の飲み物を1人で運ぶというのを難しいということで令音と共にドリンクバーへと来ていたのであった。
 ところがドリンクバーへと来ると大量のドリンクを運ぶためにとトレーが置かれていたのであった。これなら1人で運べる、と申しつけた士道に令音から帰ってきたのは「せっかくここまで来たし、運ぶのはともかく注ぐことくらいは手伝おう」というものだった。9人分の飲み物を注ぐというのは別に疲れはないが、何分時間がかかる。今はもう一台横に空いているし、士道たちの後ろに誰も並んではいないが、時間をかけるよりかは早く注いで戻るほうがいいだろう。そうして士道と令音は分担してそれぞれの飲み物を注ぐこととなったのだ。
 すでに十香、琴里、耶倶矢、夕弦、四糸乃、そして今の会話にあった七罪の分の飲み物は注ぎ終わってる。残りは美九、そして士道、令音本人のものであった。
 美九の分を注ぎ終わった士道は、隣の令音が自分の分のウーロン茶を注いでいるのを横目で見ながら、自分の分のコーラを注ごうとちょうど二台のドリンクバーの機械の真ん中に置かれたコップ置きに置かれたコップの1つに手を伸ばし──そのコップに別の人物の手が伸びたのを見て、動きを止める。

 顔をコップから少しあげると、自分と同年代の、自分が目に付いたのと同じコップに手を伸ばし動きを止めている少年の顔が見えた。ツンツン髪が特徴的な、自分より少し背が低い少年である。後ろにいるシスター姿の少女と橙茶色の少女は連れであろうか。

 士道が初対面の人間の外見を頭の中で整理していたように、上条も目の前の少年の外見を頭の中で整理していた。青みがかかった髪色をしたが、青髪ピアスとはまったく違い顔は中性的で、背も青髪や土御門ほどではなく上条より少し高い程度だった。
 そんな初対面の相手に関する感想を抱きながら、2人がお互いに「どうぞ」と、コップを譲り合う。

 正にそんな時だった。

「ふぇ?」

 上条の後ろ、カウンターの辺りからそんな声がした。普段ならそんな声に反応などしないだろうが、何故かその声に上条は反応する。
 後ろへと振り返る。インデックスの更に後ろにいた顔も知らない小学生くらいの少女がの手が──何者かに引きづられる。

 続いて一発の銃声が鳴り響いた。

 突然の銃声に店内は静まり返る暇なく、パニックに陥った人たちの騒ぎ声が埋め尽くされる。
 上条や士道たちも一瞬硬直する。が、悲しかな。彼らはこのような事態に経験で慣れていた。すぐに気を取り戻し、それぞれ騒ぎの中心から離れながら喧騒の騒ぎの原因となった連中を捜しだす。
 上条がインデックス・イブ、士道が令音とともにテラス席に出る頃には連中はすぐに見つかった。自分たちから名乗り出したのである。

「黙れッ!!」

 再度の銃声。「黙れ」の一言と、銃に対する恐怖心が作用し、喧騒から一気に場が沈黙に移り変わる。
 そこで上条はこの騒ぎを起こした連中が4人組の男だということを知る。銃を放ったのは片方のヒョロリとした男。少女の手を引き人質としてとったのはもう片方の茶髪の男だった。その他にもこの中では1番背が高くぽっちゃりとした体型の男、大きな2つのスーツケースを持ったスキンヘッドの男がいた。痩せ型の男の拳銃その場にへたり込んでいる2人の女性に向けられた。彼女たちも人質にされたようだ。全員の共通点として口に布を巻いていることが挙げられる。


「全員、この店内から出て行け!店員も含めて、全員だ!」

 先ほど叫んだ茶髪の男の再度の叫び声と3発目の威嚇の銃声が、周辺いた人物が我先と店内へと逃げ出すという結果につながる。その人の波には士道たちも逆らえず、テーブルから立ち上がった十香たちと共に店外へと追い出される。

「──ほらっ!さっさと出せ!」

 この声は別の男の声だった。どうやら人質の1人の女性から痩せ型の男が何か取り上げようとしている。今にも泣き出しそうな顔で急いで女性が取り出したのは携帯電話であった。
 最新式の携帯電話を受け取ったのは銃を持った男ではなく、茶髪の男でその男は携帯電話を何度か弄った後、結局使い方が分からなかったのかスキンヘッドの男に渡す。男はそれを受け取ると、少し迷ったそぶりをしたものの、すぐに携帯電話を使い、何処かに連絡したらしい。

「──そうだ今すぐ逃走用の車を用意しろ。いいな。1時間だ。1時間待ってやる」

 逃走用の車を恐らく風紀委員、もしくは警備員に要求したらしい。「ミーン・ストリート」には店内を囲むように店内から逃げた人物や騒ぎに駆けつけた遊園地内の警備員(当然、警備員(アンチスキル)とは何の関係もない、遊園地の運営側が雇っている警備員である)、野次馬による人垣ができており、上条たちはその最前列、士道たちはその後ろにいたのである。
 騒ぎの中、琴里が耳に手を当てながら舌打ちする音が士道の耳に届いた。

士道「琴里?」

琴里「付いてないわね。あいつら、近くの銀行で強盗騒ぎを起こした連中らしいわね」

 この情報を聞いたのは上条たちもだった。士道たちにとっては銀行強盗など馴染みのないもの。しかし、学園都市にはこのような能力を使った犯罪は日常茶飯事である。
 すぐに滝壺が手元の携帯電話で今日起こった事件について調べる。確かに、この近くの銀行で3時間程前に銀行強盗が行われている。

浜面「恐らく金を奪うことには成功したけど、逃走に失敗して、ここに逃げ込んできたのか……!」

オティヌス「迷惑にもほどがあるな」

 オティヌスの言っていることは恐らくここにいる被害者全員の総意だろう。楽しい時間を遊園地に逃げ込んできた銀行強盗にぶち壊されるとは。

令音「とりあえずここを離れよう。彼女たちも心配だが、我々の身の安全の確保が先だ」

 令音に言われて、その場から離れようとする士道一行。人質となった女性を助けたいと思う気持ちはあるが、この場で精霊の力など振るうことなどできない。仕方ないが、結局は赤の他人で、しかも自分たちはこの都市の住人ですらない。あとは風紀委員や警備員がうまくやりくりしてくれるだろう。
 しかし、士道一行はその場から離れることができなかった。

四糸乃「……し、……しどう……さん」

士道「?どうした?四糸乃……!」

 急に自分にしがみついてきた四糸乃のことを見た士道は戦慄する。目に涙を浮かべ、体をふるふる震える四糸乃の左手にはあるはずの──よしのんの姿が無かったのである。



3,


琴里「まさか…………ッ!」

 事態に気づいたのは士道だけでは無かった。よしのんが四糸乃の手から離れたことに気づいた琴里や令音も目を動かし──よしのんの姿を見つける。
 よしのんはテラス席の、士道たちが座っていたテーブルのすぐ近くに転がっていた。大方、先ほどの人の波の所為で四糸乃の手から離れてしまったのだろう。

四糸乃「あ…………あ…………よ、よしの……ん……」

十香「む?四糸乃!大丈夫か!?」

七罪「ちょっとどうしたの!?顔が真っ青なんだけど!」

 今は何とか耐えているようだが精神が不安定になっているのは目に見えていた。このままではいつ暴走するかわからない。

士道「ぐっ……」

 咄嗟に取りに行こうとした自分を士道は自制する。今不用意に動けば、店内に籠っている強盗も刺激しかねない。強盗たちが外から丸見えなように、テラス席は強盗に丸見えなのだ。最悪、自分の身だけでなく人質の身も危険となる。

令音「──まずいぞ」

 その声に反応して横へ振り向く、四糸乃がガタガタと震え出していた。間違いなく限界だ。なんとか四糸乃を鎮めなければ、そう思い士道が口を開こうとして──それよりも先に口を開いた人物がいた。

上条「おい?大丈夫か?」

 上条だ。部外者の上条から見ても四糸乃の状態はとても「普通」とは言えない。何も知らない者から見れば発作か何かの病気にも見えた。

四糸乃「よっ、よしのん…………」

上条「ん?…………なるほど。あれか」

 だが四糸乃の呻き声と、彼女が持っていたパペットが無いことに気づいた上条は辺りを見回し、よしのんを見つけ出した。そしてこの少女の状態が、あのパペットが離れたことによるものだと、理解した。

上条「…………よし、分かった。俺が取ってくる」

士道「なっ……!?」

 しかし続く上条の言葉は、士道にとっても琴里にとっても、もちろん令音にとっても予想外のものだった。
 目の前のこの少年は今なんと言った?「なんとかしてよしのんを取り戻さなくては」という気持ちでは誰にも負けないつもりの士道すら躊躇った行為を、平気で「やる」と言い出したのだ。

琴里「……まさか本気とか言い出さないでしょうね」

 疑い深く、否、本気だとはとても信じずに発せられた琴里の言葉は、上条がはっきりと「本気だ」と口にすることによって返された。間違いなくこの少年はよしのんを取りに行くつもりだ。


琴里「ちょっ……!正気!?」

上条「なーに。気づかれなければいいんでせうよ……」

インデックス「ん……とうま?どこ行くの?」

オティヌス「おまっ……おい!どこに行く!」

 そう言いながら匍匐前進で前へ進む上条。慌てて引き止めようとする士道だったが、時はすでに遅かった。
 士道がよしのんを取りに行けなかった最大の理由は、「人質がいる」である。もしも人質がいなければ士道も上条と同じ行動を取っていただろう。しかしそれは仮定の話だ。人質がいる以上、うかつに手出しができなかったのが士道だった。

(こいつ……何考えてん──)

「何やってんだテメェ!」

 当然、ピリピリとして周囲に最大限の注意を向けていた強盗に見つからずに済むわけもなく。匍匐前進で進んでいた上条を見つけた痩せ型の男は威嚇射撃として上条に向かって発砲する。どこからか、悲鳴が上がる。
 幸いにして上条に弾は当たることなかったが上条はこれ以上進めなくなる。

上条「…………」

「何やってんだって聞いてんだよ!オラ!立って、腕組んでこっち来やがれ!」

 男が叫び声を上げる。上条は何も言わずに立ち上がると、手を後ろに組む。
 琴里は心の中で舌打ちする。よしのんを取りに行こうとした見ず知らずの少年は新たな人質になるし、先ほどの銃声は敏感な四糸乃の精神状態を更に不安定にさせた。このままでは四糸乃が暴走のは目に見えている。
 事態は最悪だ──それが士道や琴里が抱いた共通の思いだった。

 皆さんは「見えないゴリラ」というものをご存知だろうか。これはとある心理学者が行った実験に付けられたタイトルである。初めに、見る側には「白いユニフォームを着たチームがバスケットボールを何回パスしてますか?」という指示が出される。すると白いユニフォームと黒いユニフォームを着たそれぞれ3人のチームが、エレベーターホールらしきスペースで何回もパスをしあう動画が流される。それぞれのチームが入り乱れながらパスするためパスの回数を数えるのは難しく、何とか数え終わったのち、こう聞かれる。「あなたはこの動画の最中に、2つのチームの間にゴリラが横切ったのに気づきましたか?」と。そうして見る側の多くはこう言うのだ。──気づかなかった、と。

 これからも分かるように、人は1つの作業、または対象に注意を向けていると予期せぬ事態に気づく可能性は低くなるものなのだ。これは先ほどの実験からも示される、事実である。
 現在、強盗も人質も傍観者も、その場のほとんどの注意が上条へと向けられていた。これは先ほどの実験でいう、「白いチームに注意を向ける」のと同じ状態であった。

 ──だからだろうか。強盗たちは自分たちの後ろに現れた少女が、人質を彼らの手の内から空間移動(テレポート)させたのに気づくには、ワンテンポ間があった。

「なっ……!お前!」

 最初にそれに気づいたのは小さな少女を抱えていた茶髪の男だった。後ろにいきなり立っていた少女を見て、驚き後ずさる。しかしそれは少女がいきなり現れたことに対する驚きだけではなかった。

「──類人猿にしては中々頭を使った作戦でしたわね。まあ及第点くらいは付けますわよ」

 そう言いながら白井黒子は、自分に拳銃を向けようとした痩せ型の男が振り向く前に空間移動で絶妙の位置に移動し、男の後頭部に飛び蹴りを食らわせた。

「かはっ……!?」

 いくら非力な女子中学生とは言え、日々風紀委員として心身ともに鍛えている黒子の蹴りは、とてもでは無いが運動が得意とは言えない男の意識を奪うには十分すぎるものだった。


「くっ、くそっ!」

 逃げ出すスキンヘッドの男。傍観者から新しい人質を調達しようと考えた末の行動だったが、その目論見は打ち砕かれる。

浜面「させねぇ……よ!」

 前に立ち塞がったのは浜面だった。何の武器も持たない、しかも何の能力も発動させてない──恐らくは無能力者の少年に負けるわけがない。と強能力者の男は判断し、己の能力を発動しようとする。
 しかし立ち塞がったのは只の無能力者ではない。何の能力も持たず、実際に超能力者を下した唯一の無能力者なのである。何より能力にかまけ何の努力もしなかった末に能力開発の壁に阻まれ自暴自棄になったこの男と、一時は自暴自棄になりながらもそれでも立ち上がり、日々何かを守るために己の特技(その多くはピッチングや偽造パスポートといった人に誇れないようなことが多いが)を磨き、スポーツ選手のようなトレーニングを積んでいた浜面とでは、能力の有る無しを含めても、立っている場所が違った。
 向かってくる男をこの前手に入れた伸縮式の警棒を使って能力発動前に無理やりねじ伏せる。
 もがく男だったが、身体能力の差が違うため、その足掻きは全くの無駄となった。



黒子「──これで残り1人ですの。大人しく自首した方が身のためですけど?」

 ふっくら体型の男を金属矢で地面に縫い付け、黒子は最後の1人と向き合う。それは黒子にも見覚えがある人物だった。

黒子「──ご無沙汰ですわね。能力は確か……絶対等速でしたかしら?」

絶対等速「ぐっ……」

 約一年前になろうか。黒子がまだ風紀委員なりたての頃にある事件にあった。その事件は彼女に風紀委員としての自覚を、そして相棒との絆を作り出すという重要な彼女のキーポイントであり、今も彼女には印書深い出来事であった。
 その時に相対した能力者──それこそが今も再び相対している『絶対等速』の男なのだ。

黒子「あれから一年……懲りずに銀行強盗とは、まったく成長してないですのね、あなたは」

絶対等速「なにっ!」

 この一年、色々なところで成長してきた黒子にとって、目の前の男は一年前からまるで成長してなかった。同じように銀行強盗を働き、同じように失敗し、同じように、黒子と相対していた。

黒子「大人しくお縄についた良いですの。それとも、今度こそわたくしにブチのめされたいのですか?」

 男はここに来てようやく気づいた。目の前の少女は、一年前に自分に立ち塞がったひよっこ風紀委員ではない。人物は同じ、それだけは同じ。それ以外は能力も精神力も身体能力も別人のような成長を遂げていることに気づく。

 勝てない。

 男はそう自覚した。今の自分では──一年前とまったく同じで成長などできていない自分では、この娘には勝てないことを。
 そのままうな垂れた男は──ポケットにしまってあったビー球サイズの鉄球をおもむろに、黒子とはまったく逆の方向に投げ出した。


黒子「!」

 自分に能力が来ると確信していた黒子は、まったく逆の方向へと向けられた能力の牙に一瞬、本当に一瞬、反応が遅れる。
 まったく同じ速度で進む鉄球はある一点に進んでいた。
 そこには──。

黒子「類人猿!!」

 泣きじゃくっていた少女にパペットを渡す、あの類人猿(上条)の姿があった。
 まったく同じ速度で、銀行の防弾シャッターを軽々と貫く鉄球が、上条の背中に襲いかかろうとする。
 対して上条が取った行動は簡単なものだった。

 振り向き、右手を突き出す。

 その右手に鉄球が触れた瞬間、能力を解くかそれ自身が壊れるまでは止まらないはずの鉄球は、防弾シャッターすら破壊可能なはずの鉄球は。

 右手に触れた瞬間、いとも簡単に重力によって地面に落ちた。

 そして、それを見て唖然とする絶対等速の男を黒子が取り押えるのは、ほぼ同時だった。

黒子「器物損害および強盗、そして暴行未遂の現行犯で……拘束します」

 その声は同時に、この事件の解決を意味するものだった。



第七話「レストラン・パニック」

というわけで第七話、いかがだったでしょうか?絶対等速は中々お気に入りのキャラなのですが出すような場面もないので、ここで打ち込んで見ました。あの能力って結構強いもんな……。

明後日は「とある魔術のヘヴィーな座敷童が簡単な殺人鬼の婚活事情」(長ェ)の発売日ですね!作者は近くの本屋で1日早く置いてあるのでそこで買うつもりです!めっさ楽しみです!

というわけで今回はここまで!では、また来週。

乙です



>>1よ流行らせたいなら狂気に身をゆだねホモベイターに革新するのだ!! さぁ僕と対話(意味深)しよう

>>425
ありがとうございます!

>>426
だが断る。

では更新、いっきまっすよー!








1,







四糸乃「あっ、ありがとうございます!」

よしのん『ありがとねーおにーさん』

 小柄な体を90度以上曲げて礼をする四糸乃と、その片手で四糸乃ほどではないがちゃんと礼をするよしのん。礼の相手はもちろん、よしのんを取り返すために飛び出した上条だった。

上条「どういたしまして」

 あの時、上条は人混みの中で偶然白井黒子と出会っていた。士道が四糸乃がよしのんを落としたことに気づくほんの少し前だった。
 風紀委員の彼女は「空間移動」という能力を持ち、立て籠もっている犯人たちに気付かれずに近づくには一瞬で済む。しかしそれは、犯人が人質を取っていなければの話だ。犯人のうちの1人くらいは「空間移動」の直後に倒すことはできても、人質3人を同時に救出するにはある一点に犯人たちの気を逸らさなければ無理だ。

黒子『どうにかして犯人たちの気を一点に引き付けられれば……』

 白井がいることに気づいた上条は、その呟きを聞くとすぐに行動に移した。後の説明はいらないだろう。よしのんを取るために飛び出ることで、ただでさえ周囲の行動に敏感になっている犯人たちの視線を引き付ければ、後は白井が「空間移動」で人質を安心なところに飛ばせばいい。

黒子「まったく……頭を使ったのはいいですけれども、あまりいい手とは言えませんのよ」

上条「ああ。そこはすまん」


黒子「猿人類とはいえど一般人。このようなことに手を出すのはよした方がいいですわ」

 それができればどれだけいいか。と上条当麻は頭を掻きながら、心の中でそんなことを思う。

黒子「……まぁ今回はあなたのおかげでスムーズに事件が解決できましたし、癪ですけど、一応お礼は言っときますわ。ご協力、感謝します」

 しかし上条の行動が今回の事件の早期解決に繋がったことは事実だ。風紀委員として、そこは協力を感謝しなければならない。
 まさかお礼を述べられると思ってなかった上条は面食らうが、すぐに「どういたしまして」と口にした。

初春「白井さん!警備員への犯人グループの引き渡し、完了しました!」

 近付いてきたのは白井と同じ「風紀委員」の初春飾利、先ほどまで白井・初春と共に行動していた佐天涙子、そして犯人の1人を取り押さえたことで事情聴取中だった浜面。
 そしてもう1人。

上条「あれ?黄泉川先生?」

黄泉川「お、そういうお前は月詠先生のところの上条当麻じゃん」

 上条の通うとある高校の体育教師にして警備員第七三活動支部所属の巨乳の美人、黄泉川愛穂であった。同僚の「シリアスをコミカルに解決する」という評価からも分かるように、その乳も含めていろいろとんでもない人だが、人柄は良いし、学校先生として厳しいが、真摯に接しているからか生徒たちから慕われている。ちなみにあらゆる料理を炊飯ジャーで作るという習癖があるが、それは上条は知らないことだ。
 それにしても、なんだか妙に楽しそうに上条たちには見えるが…。

黄泉川「もしかして人形を取るために前へ飛び出した少年って……いやーこりゃ知らないところに知らない縁もあったもんじゃん!」

 そう言うと隣に浜面の背中をバシバシと叩く黄泉川。何に対してかは分からないが全体的にテンションが高い彼女に対して、浜面はうんざりとした顔をしていた。

黄泉川「まっさか隣のクラスの問題児とこの悪ガキが知り合いとは!知り合いが知り合い同士ってなんだか感慨深いじゃん!」

浜面「だぁぁーなんだよ!もう!さっきからニヤニヤニヤしやがって!俺の何が可笑しいんだよ!?」

 「別に何でもないじゃん」と言う黄泉川に問題児認定された(まぁ彼の日頃の行動から言えば妥当としか言いようがないが)上条と悪ガキ(こちらも妥当だろう)浜面は首を傾げるばかりだった。

黄泉川「本当なら危ない行動取ったし、こってりと支部の方で搾り取りたい気分だけど今回は見逃すじゃん」

 結局、終始テンション高めだった黄泉川はそう言うと気分がよさそうに去っていったのであった。








2,







鉄装「──なんか気分良さそうですけど、どうしたんですか?」

 犯人グループを護送する車の中、黄泉川の警備員同僚である鉄装綴里はそんな疑問を投げかけた。

黄泉川「んー。……卒業した生徒が立派なスーツ着て仕事に向かっている立派な姿見た感じの気持ちを味わったじゃん」

鉄装「?」

黄泉川「着ているのは相変わらずのジャージだし、立派とは程遠い姿だったじゃんけど」

鉄装「??」








3,







上条「あ。インデックス、オティヌス。待たせた……ってぎゃー!?なんで噛み付く!?心配かけたからか!?それについては謝る!謝るから噛みつかないでー!」

インデックス「──せっかくの料理が台無しになっちゃったんだけど!」

上条「何故それをわたくし上条当麻に当たるですかインデックスさんー!?」

オティヌス「諦めろ。ごちそうが台無しにされて気が立っていて、私にもどうにもできん」

 いきなり噛みつかれ痛みに悶絶する上条、その頭頂部に噛みつき右往左往する上条から振り落とされないようにしっかりしがみつくインデックス、それを避難していたイブの頭頂部で呆れながら見るオティヌスを見ながら、琴里は考えていた、

琴里「──上条当麻……」

 頭をシスター服の少女に噛みつかれ必死に離そうとする目の前の少年。琴里はこの少年をどこかで聞いたことがあるのだ。
 記憶を探るが、肝心の「どこ」が思い浮かばない。確実にどこかで聞いた名前なのだが──。

十香「む?琴里、どうした?」

琴里「え?」

 いつのまにか難しい顔になっていたらしく、気づいたら十香が琴里の顔を覗き込んできた。
 記憶があやふやということは特にラタトスクやフラクシナスに纏わる機密事項ということでないことは間違いない。十香たちに伝えてはならないようなこと──例えば、考えたくもないが「士道の最悪の状態」──については忘れるわけがない。琴里は元々記憶力はある方だし、それでも曖昧だということは覚えておかなくても特に問題が起こらないということだろう。
 しかし、万が一、そのことが自分が忘れている重大なことだとしたら──と考えると、琴里はこのことを十香に言えなかった。
 だからこの時出された助け舟は都合が良かったし──なにより、少し驚く内容だった。

美九「琴里さんもあの人の顔を見つめてますけどー、同じことを思ったんですかー?」

琴里「同じこと?」

美九「あの人、なんかだーりんに似てませんー?」

 「え?」というのは十香と琴里の声。十香は近くでこのメンバーを代表して令音と共に事情聴取を受けている士道の顔を凝視すると、今度はようやくインデックスから解放され地べたに座り込んだ上条の顔を凝視し、それを交互に行う。

十香「……似てないぞ?」

美九「顔じゃないですよー」

 「魅力ならだーりんの方が何倍もありますからねー」という美九の話を聞いていたのは十香と琴里だけではなく、四糸乃、よしのん、耶倶矢、夕弦、七罪たちも会話に参加してくる。


耶倶矢「むぅ……彼の者のどこが士道に似ておりのだ?」

夕弦「同上。夕弦もどこが似ているのか分かりません」

七罪「うーん……士道君と似てる、ね…」

四糸乃「それ、分かる気がします…」

 十香や琴里のように疑問を投げかけた耶倶矢や夕弦、七罪に対して、美九と同じ反応を示したのは四糸乃だった。

よしのん『むぅー?四糸乃、美九ー。どの辺が士道君と似てるの?』

四糸乃「なんだろう……感じっていうかのかやな……雰囲気っていうかな……」

美九「私も四糸乃さんと同じ感想ですぅ。なんか似てるんですよね、だーりんと」

 言われてみれば、とうなづく。確かに見た目のタイプは真逆なのに、何故か似ている。指摘されるとそれが分かってきた。明確には分からないが、それでも、何か似ている気がする。

十香「確かに、士道みたいに安心できる……そんな感じがしなくもないぞ」

琴里「確かに……無茶して飛び出す姿も似てたわね」

 それは、あるいは迫害され、あるいは絶望し、あるいは助けを求めていた彼女たちだから感じたことだったのかもしれない。士道が、親に捨てられ絶望を味わいそれ以来、絶望に敏感になったのと同じように。彼女たちも、味わったものに敏感になっていたのかもしれない。

 ──彼すら忘れてしまった。「救えなかった」という絶望を。




士道「──大丈夫か?」

 事情聴取から解放された士道と令音だったが、目に入った少年の凄惨たる姿を見て、思わず呟いていた。

上条「全然大丈夫じゃないでせう」

浜面「凄い噛まれ方だったな……歯型できてないのは幸いだな」

 おじいちゃんのように力なく震える(痙攣している)上条に苦笑しているのは浜面だ。女性からの理不尽的な攻撃が偶に下るのは身を持って分かるし、なによりこの彼は浜面視点からでも男女含めて恨みを買うようなことが多すぎる。前のハーレム状態を思い出しながら「ざまぁみろ」とは思わなくも、少しいい気味と思ったのは浜面の心の内だけに留めておけばいい真実だ。
 ──ちなみに浜面の方も人から見れば、上条とは50歩100歩なのだが…本人はそれに気づいてはいない。

士道「──俺からも礼を言わせてもらうよ。ありがとう」

上条「いいでせういいでせう。俺が好きでやったことだから」

 手を上下に振りながら、本当に何でもなさそうに振る舞う上条を見て、士道は何となく察することができた。
 この少年も、恐らく士道と同じで「この子の笑顔が見たい」という理由で飛び出しているのだろう。士道が持つ欲と同じ欲を持って行動して、それが得られるから頑張ることができる。だから「自分の好きでやっている」などと言えるのだ。
 この少年は士道以上に様々な物を積み重ねてきたに違いない。失ったり、崩れたりしても、それでも前に突き進んできた──そんな感じが士道はした。本当に、何となくだが。

士道「俺は五河士道。お前は?」

上条「ん?俺?上条当麻っていうけど」

士道「じゃあ──よろしく、上条」

 地べたに大の字に転がっている上条に伸ばされた士道の左手。それを一瞬惚けた顔で見た上条は、笑いながらその手を左手を握り返した。手を引っ張られ、立ち上がる。

上条「こっちもよろしくな」

士道「ああ。あんたは?」

浜面「俺は浜面仕上ってんだ。よろしくな…五河だっけ」

士道「ああ──ってあの時の!」

 浜面も自己紹介し、その顔を見て士道は思い出す。この少年、ゲコ太との記念撮影を代わりに撮ってくれたあの時の人物で間違いない。
 浜面の方もそれに気づいたらしいく、唯一現場を知らない上条が、気安く接する2人を見て首を傾げるのだった。

士道「さっきは本当にありがとうな。助かったよ」

浜面「いやーなんのなんの。あれくらいお安い御用よ」

 こうして同年代の少年3人はお互いに顔を見合わせた。
 ──かたや第三次世界大戦を終結させ、かたや超能力者の第四位を無能力でくだし、かたや人知を超えた存在である精霊を救っているという、「普通」とは言いづらい少年たちだが、ここではそんなことは関係ない。ここでは、それぞれの日常を生きる「普通」の少年として、お互い接していた。


 だからか。馴染みのが早く済んだ士道に対して、浜面は真面目な顔でこんな事を聞いていた。

浜面「なぁ、五河?」

士道「な、なんだ?」

 同い年ですぐに打ち解けたとはいえ、まだ知り合って間もない少年がいきなり険しい顔になったのを見ては驚く。何があったのか気になるのは当たり前であろう。何か相手側に不可解な気持ちをさせるようなことをしてしまったか?などとついつい嫌な想像をしてしまう。
 だが浜面から投げられた質問は、士道の予想を大きく外れるものだった。

浜面「──どうやったらあんなハーレムエンドみたいな状態が作れるわけ?」

士道「……はぁ?」

 真面目な顔とくだらない質問のギャップに、素っ頓狂な声を上げる士道。ハーレム?なんでそんなことを聞いてくるのか?
 しかし、この場でそれをくだらない質問と思ったのは士道だけだったらしい。

上条「そうそれ!しかもあーんな可愛い子たちと一緒にって……上条さん羨ましいすぎて嫉妬するレベルですよ…」

浜面「俺的にはあの中だったらあの双子の胸が大きい子かなー。大人しそうだし、中々好みをついているしなー」

上条「上条さん的にはあのオネーサン2人!上条さんの好み、寮の管理人のお姉さんにはまりそうだし、巨乳だしなー!クマなんてそんなのステータスの一つですらあるし!」

士道「…………」

 シスター少女と妖精のようなちびっ子少女、橙茶色の麦わら帽子少女を引き連れている少年と可愛い彼女持ちのリア充に言われたくないな……、と士道は自分のことを棚に上げてそう思った。
 確かに十香達のレベルが高いのは十分に理解できる。しかし彼らの周りにいる彼女たちのレベルも精霊の彼女たちに負けず劣らずだ。シスター少女は小動物を思わせるような子だし、逆に妖精のような少女は小さいにも限らず、なにか威厳のようなものを感じる。麦わら帽子少女のアメシストのような瞳はまるで宝石のようだ。浜面の彼女もジャージ姿でも見栄えするような、間違いない美少女である。

上条「上条さんもモテたいですなぁ……ああ、出会いが欲しい」

 どの口が言う、どの口が。と、これには士道も呆れ果てた。
 しかし呆れたのはほんの一瞬。何故なら、背中からものすごい剣幕の何かが近づいてくるのを士道は感じたからだ。正確には近づいてくる者の標的は士道では無く、上条と浜面のようだが。

上条「だからさー。そのスキルを是非伝授させていただきたいですよ!わかるでしょ!」

 士道にすらわかるのに、この2人の少年は近づく鬼に気づきもしないらしい。気づいていないとはいえ、この場面でこんな火に爆薬を突っ込むような真似をするのか。なんなのか。馬鹿なのか?

浜面「頼むよ!師匠って呼ぶからさ!な!な!」

 更に強くなった殺気に背中を嫌な汗が伝う。それでも気づく素振りがない馬鹿2人を「おい!」と窘めようとした士道だったが、今度は右から爆薬が投げ込められる。浜面にとっては、背中から同時に刺されそうな危なっかしい上条産ハーレムより、うまくバランスを取ってやっている(ように見える)士道産ハーレムの方が魅力的らしい。勿論、そんなこと士道は分かりはしないし、分かったところで後ろに臨戦態勢で控える少女たちをどうにかすることはできない。

上条「だか……あ」

浜面「ハッ!?」

 気づいた時には時すでに遅し。肩を万力のような力で捕まれ、その後、「ウェスト・ランド」に2人の少年の叫び声が響き渡ったのは言うまでもない。








4,







オティヌス「すまんな。こんな馬鹿の為に付き合ってもらう羽目になるとは……」

士道「い、いや……」

 「ウェスト・ランド」から少し離れた繁華街。遊園地で白井たちと別れた五河士道、夜刀神十香、四糸乃、よしのん、五河琴里、八舞耶倶矢、八舞夕弦、誘宵美九、七罪、村雨令音たちはインデックス、オティヌス(onインデックスの頭)、イブ、滝壺理后と共に歩いていた。何故共にこんなところを歩いているかというと、士道と十香、令音と滝壺のそれぞれの肩を借りながら、歩いているというよりかは引きづられている満身創痍の2人は、言わずもがな上条と浜面である。
 毎回、精霊攻略時に死にかけているとはいえ、士道にカマエルの自動回復能力があるからできる芸当である。浜面は滝壺一人の攻撃だったから満身創痍で済んだものの、上条の場合は明らかにオーバーキルだったはず。それなのにもうフラフラとだが歩くことができる打たれ強さに、士道は舌を巻いていた。もしかしたらこの少年、自動回復能力を持つ自分と同じくらいの打たれ強さを持っているのではないか?と考えた士道だったが、流石にそれはないだろうと首を横に降るのだった。だいたい聞いた話ではこの少年は無能力者。能力無しで回復能力持ちの士道と同じ耐久なんてそれこそ化け物だ。

美九「よしのんさんを助けてくれましたしぃ。それの恩返しだと思えばいいですよー」

 そんなことに思考を巡らせている士道の横でオティヌスのため息に答えたのは美九だ。
 そう言われて多少は気が楽になったからか、「そうだな」とオティヌスは答えていた。

美九「……それにしても可愛いですね…インデックスちゃんも、オティヌスちゃんも」

オティヌス「へ、へ?」

 しかし突然目付きが豹変した美九を見て、オティヌスの額を小さな汗が流れる。インデックスも背筋に冷たいものを感じたらしく、ビクッと震えた。

美九「インデックスちゃんは銀色の髪はまるでシルクのよう……瞳はサファイアみたいな綺麗な緑ですし、かすかに甘い、いい匂いが……」

オティヌス「お、おい?」

美九「大和撫子も好きですけど、西洋系はやっぱりいいですね……オティヌスちゃんの衣装なんか……ハァハァ……もう、誘ってるとしか……ハァハァ」

インデックス「み、みく!?なんか身の危険を感じるだけど!?」

 瞳に危ない光を灯し、暴走を始めた美九の目の前で思っ切り後ずさるインデックスとオティヌス。暴走はなんとか士道が「どうどう」と宥めることで落ち着いたが、それでも、インデックスとオティヌスの美九との距離は先ほどより若干開いたままだった。
 その逆側、士道とは上条を挟んで隣にいた十香が残念そうに呟いた。

十香「……しかし、せっかくのパレードが無くなってしまうとは…楽しみだったのに」

滝壺「はまづらとロマンチックに過ごすつもりだったのに……残念」

 十香の隣で、令音とともに浜面を運んでいる滝壺も同調した。どうやら2人の会話の内容は中止となってしまったパレードに関することらしい。美九を落ち着かせながらも、士道の耳にもこの会話は届いた。

 開催が予定されていた夜のパレードだが、レストランでの事件が影響してか、急遽中止ということになってしまったのだ。まぁあれだけ騒ぎになっていたし、これを整理してパレードをやるのは時間が足りなかったらしい。上条と浜面がちょうどフルボッコにあってる最中、早い段階でパレード中止の放送が流れていたのだ。
 パレードを楽しみに待ち望んでいた十香や四糸乃、八舞姉妹たちもそうだが、浜面とパレード後の花火を見ながらロマンチックに過ごすことを計画していた滝壺も、目に見える落胆を見せていた。パレード後の花火も同様に中止となっている。


 ちなみに放送が流れる前の段階で浜面は瀕死寸前だったので、どちらにせよロマンチックな空気なんて作れないのじゃないか。と士道を思うが、口には出さないに越したことはない。

琴里「明日も来るんだし、またその時見ましょう。諦めなさい」

浜面「滝壺、また明日もいくか……?」

 十香を慰めた琴里の声に反応したのか、令音と七罪に肩を借りていた浜面が意識を取り戻す。自分たちの方を見ると上条もいつの間にか意識を取り戻していたらしい。足取りはまだおぼつかないが「もう大丈夫」と言って、自分の足で歩き出した。

滝壺「……うん。また明日行こう。はまづら」

 あまり感情の起伏に富んでいない笑顔だったが、それでも笑顔に違いはない。浜面にとっては「滝壺の笑顔」というだけで、明日も頑張る原料となるのだ。
 上目遣いで肯定を示してきた滝壺に、浜面も笑顔で「おう」と返してきた。
 「いいカップルだな」はこの場の誰もが思ったに違い無い。





イブ「──じゃあ、私はここで」

インデックス「うん、またね」

 駅に向かう一行と、歩いていける距離に家があるというイブはここで別れることになる。インデックスは名残惜さそうだが、別に遊びに行けない距離では無いのだ。また一緒に遊びに行けばいい。

イブ「今度は私の家に来てよ。おっきいお風呂もあるし、インデックスが目を輝かせそうな、美味しい料理をいっぱい作ってくれる人もいるよ」

インデックス「美味しい料理!?行く行く!」

 「美味しい料理」というキーワードに反応したインデックスを見て、苦笑する上条も呆れるオティヌス。目の前に並べられた豪勢な料理を想像して目を輝かせるインデックスの姿は微笑ましかったし、なにより「十香、よだれ」と言われてハッとなる十香に、一堂から小さな笑い声が湧いた。

イブ「良かったら十香ちゃんも来る?」

十香「い、いいのか!?」

イブ「うん。次遊べるのはいつになるかわからないけど……その時にはあいつも帰ってくると思うし」

 インデックスと同じように目を輝かせる十香を微笑ましそうに見たイブは、最後に上条、そして士道に目を向けた。

イブ「最後に、上条くん。五河くん。あと浜面さんも」

上条「ん?」

士道「へ?」

浜面「?」

 いきなり呼びかけられ首を傾げる男子組3人。その反応を面白がってか、イブは笑いながらこう続けた。

イブ「くれぐれも1人で無茶はしないでね。あなたたちには横や後ろを任せられるような人がいるんだから」

「「「?」」」

イブ「ふふっ。それじゃあ……またね」

 そう言うと、麦わら帽子からはみ出た橙茶色の髪を風に揺らしながら、少女は去っていった。







 この日、神崎アリアを除く、遠山キンジ、星枷白雪、峰理子、レキ、ジャンヌダルク30世、エル・ワトソン、武藤剛気、不知火亮、平賀文、中空知美咲のメンバーは、学園都市での食料調達の為、街中を歩いていた。ちなみに、いつもの武偵高制服ではなく、学園都市内で調達した私服に着替えている。

不知火「神崎さんは何でこなかったの?」

キンジ「さぁ?重要な連絡があるとか言ってたけど」

ワトソン「重要な連絡?なんなんだろうね」

 学園都市ショッピングを満喫した結城明日奈/アスナ、篠崎里香/リズベット、綾野珪子/シリカ、桐ヶ谷直葉/リーファ、ユイと、それに振り回されて少し疲労の色を見せている桐ヶ谷和人/キリト、壷井遼太郎/クラインは夕食を終え、駅へと向かっている最中だった。

ユイ『お買い物、いっぱい買えましたね!ママ!』

アスナ「そうねーユイちゃん。そう言えば明日は遊園地に行くの?」

キリト「とりあえずホテルに帰ってから決めないか……荷物が重いんだよ」

 「ウェスト・ランド」を不燃焼とはいえとりあえず満喫した五河士道、夜刀神十香、四糸乃、よしのん、五河琴里、八舞耶倶矢、八舞夕弦、誘宵美九、七罪、村雨令音は上条たちのグループと共に、駅までの道を共にしていた。

 そして、上条当麻、インデックス、オティヌス(on上条の頭頂部)、浜面仕上、滝壺理后は士道たちと共に夜の学園都市を歩いていた。

十香「シドーのオムライスが一番だ!あんなふわふわで中がトロットロのオムライスはシドーしか作れん!」

インデックス「いーやとうまのとんかつが一番なんだよ!やわかいお肉と衣の黄金比が最高って決まってるんだよ!」

琴里「あなた達ね……」

オティヌス「確かにこいつのとんかつは美味しいがな……だからって」

上条「あのさ……嬉しいんだけど」

士道「喧嘩はやめよう……な」

 どちらの料理が美味しいかを喧嘩している2人を、嬉しさの混じった微妙な気持ちで宥める上条と士道。そんなこんなしてる内に十字路に差し掛かる。


 この時──キンジたち武偵高の一同が右方から、キリトたちALOのメンバーが左方から歩いてきていた。

 前提条件として、士道たちとキリトたちは同じバスで学園都市に訪れているため知り合いである。そのため、ちょうど十字路の中央に差し掛かった時、お互いの存在を認知した。

七罪「あれ?あれって……」

リズベット「あ!あれ五河くんたちじゃない?」

 それに釣られてキリトたちの方を見たのが士道たちと行動を共にしていた上条たちだ。いきなり何かに反応した士道たちも見て、言い合いの最中だったインデックスと十香も「え?誰?」と「おお!シドー!キリトたちがいるぞ!」と両者それぞれの反応を示した。

 ここで上条の不幸が発動する。

 十香のすぐ近くにいた上条は、キリトたちの元へ走り出そうとした十香に、偶然に突き飛ばされる形になってしまう。今は力を抑え込められているとは精霊の力だし、何より突然の事だったので、上条はバランスを崩して後ろに仰け反る。哀れ上条の頭上にいたために巻き込まれるオティヌス。

上条「おっとっと!?」

オティヌス「ど、どうした!?」

 もしこの場に上条だけがいたならば上条が後ろに倒れて終わりだったかもしれない。しかしその場に、鈍臭さでは有名な中空知が通りがかったのが、更に上条の不幸を加速させた。

中空知「え…ええええー!?」

上条「ぬおっ!?」

オティヌス「ギャッ!」

 なんか踏ん張った上条だったが、突然倒れ込んできた人物に中空知が対応できるわけもなく。しかも何故か上条に、変に避けようとしてバランスを崩した中空知が倒れ込んでくるという結果を生み出した。ちなみに頭上から投げ飛ばされるオティヌスを無事にキャッチしたのは令音だった。

浜面「っておい上条!?」

キンジ「中空知!?大丈夫か!?」

 そしてそこはみなさんご存知、上条当麻。ただ倒れるだけではその手には中空知の基準より若干大きめの胸が、しっかり収まっていた。

上条「ん……なんだこれ……マシュ」

中空知「きききききき、きゃーっ!!」

上条「ぶべらっ!?」

 そしてビンタされる。理不尽だがいつも通りである。ついでに中空知がどいた上条の頭上に仁王立ちしているインデックスもいつも通りである。

上条「い、インデックスさん?……これは不可抗力……」

インデックス「とーうーまー?」

 そして立ち上がった中空知が思っきり抱きついてきて、胸の感触が押し付けられたのも、ある意味キンジらしいことだった。

キンジ「なっ、中空知!?」

中空知「キャッ……!?」

 幸いなことに倒れて荷物を落とした中空知の物にも、抱きつかれて体を強張らせるキンジの物にも、割れるような食材が入ってなかった。
 ヒスるのを必死に抑えるキンジと今にも飛びかかりそうなインデックスと距離をとる上条と、場がかなり混沌としてきている。

 騒ぎに気づいて、正反対の位置にいたキリトたちも「なんだなんだ」と近づいてきていた。


 ──その、瞬間だった。





『我が礎の杖を使い、ここに命じる──』




インデックス「!?」

上条「……?インデックスさん?」

インデックス「……見たこともない召喚式……!?とうま!!」

 10万3000冊の魔導書を記録する、魔導書図書館たる彼女は瞬時に、異変を察知し、叫び声を上げた。





『地獄の三つ首の番犬よ──
黄泉の冷気を纏て──
天元せよ──
冷気纏し巨狼(ケルベロス)』




インデックス「魔術師だよ!」

上条「何…!?」

 突然の来訪者を告げるインデックスの叫び声と同時に、十字路には、巨大な氷の魔狼が出現していた。







 さぁ、始めよう。

 決して交わるはずがない者同士が集うこの世界にて、何かを成してきた主役たちが交わる。

 理も法則も定説も無視したこの世界にて起こる、一度限りの物語。



 全ては、ここから始まる。





第八話「さぁ、定説と理を覆せ。主役たち」 完

というわけで第八話、いかがでしたでしょうか?いよいよ本格的に物語が動いてゆきます!…ここまで長かったなぁ…。

今週は特に書くことないのでこれにて!また来週お願いします!
では。

>>1よ、よしのんは四糸乃以外は呼び捨てにしないぞ基本◯ちゃんかくん、令音はさん付けだったかな?

3月に発売の書き下ろし付きのデート・ア・ライブ資料集デート・ア・ライブマテリアルと、別冊と短編あるドラマガを購入して確認してみたらどうだい(ステマ

>>442
ご指摘ありがとうございます。分かっていたのですが、抜けてしまっていましたね。以後、気をつけます。
あとステマありがとうございますwww

>>423
ありがとうございます!

投下いきますよんっ!せいっ!



1,







 上条当麻が目の前に現れた3メートル長の巨狼を相対するよりも前に、彼の首根っこを引っ張った人物がいた。

上条「ぐえっ!?」

 遠山キンジに引っ張られ首を絞められた鶏のような変な声を出した直後、上条が先ほどまでいた場所に、振りかぶられた小型の斧──といっても氷の巨狼から見たら小型というもので、上条と同じくらいの大きさがあるが──のような物が突き刺さる。小規模なクレーターができていたことから見て、突き刺さるというよりかは叩きつけられたと言った方がいいだろう。氷でできているが、形状は北アメリカのインディアンが使う斧、トマホークに似ていた。

キンジ「なんだ、こいつ!?」

白雪「キーくん気をつけて!超能力の可能性がある!」

 白雪は刀を、他の者たちもそれぞれの武器を構えている。キンジも懐からベレッタを取り出した。

 突然の強襲。しかしキンジには心当たりがあった。製薬会社が雇った学園都市の能力者。目の前に立つ巨狼が、その能力者によって作られた可能性が武偵校の一同の頭をよぎる。

 獣人のような体型をとった氷の巨狼は、ゆっくりと振り向き、再度トマホークを構える。その標的は先ほどと同じ上条だ。

武藤「──おい!来るぞ!」

 振り下ろされたトマホークは近くにいるキンジや中空知を巻き込むような勢いで放たれた。
 もう一度、近くにいた上条の首根っこを引っ張り避けようとしたキンジだったが、当の上条がキンジを庇うような形でトマホークの前に踊り出したのには、少なくとも「なってはいない」キンジでは反応できなかった。

キンジ「なっ!?」

 瞬時に巨大なトマホークに押し潰される少年という最悪の想像をしてしまう。あの威力だ。人などまるで粘土のように簡単に潰されてしまう。

 が、そんな最悪の予測をする必要は、無かった。

 「幻想殺し」。上条の右手に宿るそれは、相対したものが、天使によって放たれた致死量の攻撃だろうと緋弾の力によって放たれた装甲を紙屑のように貫くレーザーだろうと、異能の力であれば全て無効化する。

 結果は単純なものだった。

 降りかぶられた右拳。常人の右腕など簡単に砕くはずの氷のトマホークが、右拳と接触した瞬間、弾け飛ぶ。


ジャンヌ「なっ……」

 この場で上条の右手のことを知ってる人間はインデックスやオティヌス、浜面仕上だけである。それ以外の人間にはまるで、「上条の右拳が氷の斧を砕いた」ように見えたのだ。

 ジャンヌは氷の超能力者だ。実力はイ・ウーの中では最弱だったが、裏社会に関わる者としてはそれなりの実力者であることは自負していた。そんな彼女から見ても、あの氷は相当の強度を誇るものだと分かる。「銀氷の魔女」などと呼ばれている自分と同等の氷の超能力……いや、それ以上の可能性の方が高い。

 その氷を、まるで水風船に画鋲をさしたように弾け飛ばした上条にその場のほとんどが絶句していた。もちろんここは超能力開発の先進都市、学園都市だ。上条が何らかの能力を使ったという可能性も考えたが、それにしたって氷を弾け飛ばすなどデタラメだ。

十香「──むっ!!来るぞ!」

 しかし相手側にとって、それは想定内だったらしい。

 今度は左手に、瞬時に氷のトマホークが形作られ握られる。

 標的は先ほどと同じく上条。そのまま構えられた左腕は、上条が右手を突き出すより前に再び猛攻を開始する。

インデックス「ISICBI(刃の切れ味は己へ向かう)」

 ただし、自分の片腕に、だが。

クライン「な、なんだ!?」

 目の前で繰り広げられる、ありえない、荒唐無稽な光景に唖然とするキリトたち。精霊や超能力というものにある程度精通している他の面々でも驚嘆とするものなので、彼らの衝撃は計り知れなかった。何せ、氷の巨狼などといった、ゲームでしか体験したことがなかった光景が、目の前の現実で繰り広げられているのだから。

インデックス「MBFPADCOG(両脚を平行に配置し重心を崩せ)」

 そんな彼らを置いてく形で、場面はどんどん進んでいく。標的をインデックスに変更した氷の巨狼は、インデックスに手を伸ばそうと身を乗り出す、左腕を振り上げ一撃を加えようとしていた。

 しかし、突如巨狼は自らの両脚を同時に踏み込んだ。もちろんそんなことをすれば重心が崩れるに決まっている。氷の巨狼はそのまま、前に街路樹を押しつぶしながら倒れこんだ。

 「強制詠唱(スキルインターセプト)」。「ノタリコン」という暗号を用いて術式を操る敵の頭に割り込みを掛け、 暴走や発動のキャンセルなどの誤作動を起こさせるという『魔力を必要としない魔術』で、インデックスの必殺技である。これを使ってインデックスは巨狼の行動を狂わしたのだ。

インデックス「とうま!こいつはギリシア神話に出てくる「ケルベロス」を概念にして召喚する、一種の使い魔だよ!氷を用いてこの世に現界してる!」

 目の前で起き上がろうとする怪物を前に、インデックスと上条はまるで苦でないような闘い振りを見せていた。悲しいことに、この2人にとっては正体不明の魔術師に襲われるというこの光景も日常の一部なのである。

上条「ステイルのアレみたいなもんか?じゃあこいつを右手で触れてもまた再生するのか」

 自ら砕いた巨狼の右腕が徐々に再生してるのを見て、上条はステイルが使用する魔術、「魔女狩りの王(イノケンティウス)」を思い出す。炎の塊と氷の塊と対極的だが、突撃してくる時の威圧感や瞬時に再生できる点など、似通ったところが多い。

インデックス「いや……「魔女狩りの王」のようにルーンの刻印を使ってるわけじゃないから。多分、とうまの右手を押し切るだけの再生能力はないと思うよ」

 確かに右腕が再生はしているが、インデックスの見立てでは「魔女狩りの王」のように「幻想殺し」の消去能力を上回る再生能力はないとのこと。

インデックス「周囲の水分を冷却して氷を修復してるみたいだけど……とうまの右手を押し付け続ければ」

上条「いける……ってわけだな」

浜面「お前ら何言ってんの!?」

士道「訳がわからん…」

 全く付いていけない他の面々を置いてきぼりにして、上条が駆け出す。狙いは敵の体そのもの。そこにか「幻想殺し」を押し付けば、それで終了(チェックメイト)だ。


インデックス「BEF(両脚を交差)TTNATWITOD(首と腰を逆方向に回転)」

 ようやく立ち上がった巨狼に再び強制詠唱を仕掛けるインデックス。直後に巨狼の動きが狂い始める。まるで油が切れたブリキのおもちゃのような、何かに操られながら必死に抗うような、不自然な動きを小刻みしながら行おうとする巨狼。動きさえ止めれば、後は氷の巨狼に向かっている上条の右手が、その存在をかんたんに消す。

 「強制詠唱」を使い10万3千冊の魔導書を持つインデックス。対異能に置いてはジョーカーのような強さを持つ「幻想殺し」。この2人がタッグを組んだとして、出し抜ける魔術師はそうそういないだろう。

 しかし。


 今回、上条が相対している魔術師は「そうそういない」の中の一人であった。


2,







四糸乃「へ…………」

七罪「?どうしたの、四糸乃」

 四糸乃の声にいち早く反応したのは、隣にいた七罪だった。四糸乃が後ろに見ているのに気づき自分も振り返り、四糸乃が絶句した理由が分かった。

 一言で言えば「ガラスのような体を持った狼」。それが今、目の前で上条たちと相対しているものと違う点はあちらが獣人のように二足歩行しているにも限らずこちらは4足歩行であること。サイズが普通の狼ほどのものであること。そしてもう一つ。体の半身はダイアモンドを発生させるほどの冷気を纏っているのにも限らず、その中央を境にして、もう半身は轟々と燃え盛っている。

 まるで、黄泉の冷気と地獄の猛火の両方を纏ったような。その姿はまさに冥界の使い。

 士道たちもその存在に気づいたのだろう。後ろを振り向き目の前に表れた狼に警戒している。七罪は横目で、鏖殺公を天現させようとする十香を抑えつける琴里の姿を伺えた。この場には精霊とは全くの無関係のキリトや上条がいる。後先考えずに力を使うのは得策ではないだろう。

 しかし、十香の意思に関係なく、鏖殺公は天現する。

十香「なっ……!?」

 動揺する十香。士道も眼を見張る。精霊は精神状態が不安定となれば霊装や天使を一時的に使用できるようになる。現に十香は限定霊装を纏い、その手には鏖殺公が握られていた。

 それだけならば、十香の精神状態が不安定となり、天使と限定霊装が天現してしまったと説明がつく。

 だがそれだけではない。

 異変が起こったのは十香だけでは無かった。四糸乃、耶倶矢、夕弦、美九、七罪。琴里を除く精霊たちが十香と同じ瞬間、限定霊装を纏い、十香と同じ瞬間、天使を天現されたのだ。

耶倶矢「なにぃ……!?」

夕弦「困惑。一体どうして……」

美九「あれー?あれれー?」

 本人たちの反応を見ても、これが意図して起きたものではないことが分かる。明らかに、自分の意思や精神状態とは関係なしに天使が現れたとしか思えない。

 琴里はすぐ様インカムを小突く。クルーからの回答はすぐに来た。

『感情値は安定しています!精神状態は乱れてません!』

琴里「ならどういうことよ……」

 残る可能性は精霊たちが自分で天使を使用可能としたとしか考えられないが、彼女たちの動揺がそれを否定していた。

 では一体何故?

 騒然とする琴里たちの思考は、こちらに向かって走り始めた狼によって強制的に打ち切られてしまう。






 上条は駆ける。

 根元から折れた街路樹を乗り越え向かう目標は倒れ込んだままの巨狼。そいつの巨大な体のどこかに、この右手を押し付ければ、全てが終わる。そう思い突っ込んで行っていた。

 同時に、突如士道たちで出来ていた人垣を飛び越えた狼が上条向かって来る。半身の炎を靡かせ、もう半身の足がついた場所を凍らせながら、上条目掛けて。

 それを見たインデックスが「強制詠唱」を唱えようとする。アレも目の前の狼と同じ使い魔の類と判断しての行動だった。

 それを邪魔するかのように、インデックスの頭上で突如、閃光が弾けた。

インデックス「キャッ!?」

 閃光は別に失明するほどの光量ではなく対したものでは無かったが、不意打ちで目の前にフラッシュのような閃光が弾けたことで、インデックスはよろめいて、倒れ込む。

浜面「おい!大丈夫か!?」

 倒れかけたインデックスを間一髪で受け止めたのは浜面だ。頭上にはいつの間にか避難したオティヌスがちょこんと乗っており、いつも乗っている者となんとなく髪型が似ているからか妙なフィット感を見せていた。

インデックス「う、うん大丈夫なんだよ」

 別に驚いてよろめいただけであり目がおかしくなっているなどといったことは無かった。となると、やはり先ほどの閃光はインデックスの「強制詠唱」を邪魔するためのものに違いない。


 インデックスがそう考え、上条の安否を確認しようとした時だった。「へ?」という間抜けな声が自分の声から出てくる。

 理由は単純。浜面の手から抜け立ち上がろうとしたインデックスの顔面に背中があったからだ。上条の。

インデックス「ぐぇ」

 上条の背中が思い切り倒れ込み、その後ろにいたインデックスもその背中に押し倒される形で地べたに倒れる。今度は浜面も受け止めれなかった。地面のアスファルトと上条の背中とのクッションとなるインデックス。

上条「あいてててて……ってインデックス!?」

 インデックスをクッションとしたおかげで衝撃が少なくすぐに起き上がった上条だったが、まさか自分(の背中)がインデックスを押し倒していたとは思ってなかったらしく、慌ててインデックスの上から退く。

 鼻を中心に顔を真っ赤にしたインデックスだったが、幸い気は失って無く、そのままムクリと起き上がった。

インデックス「とうま」

 底冷えするような声で名前を呼ばれ、思わず背筋を伸ばし「起立」の姿勢となる上条。

インデックス「痛いんだけど」

上条「え、あ、いや。俺もなんか乱入してきた狼に突き飛ばされてね」

インデックス「痛いんだけど」

上条「いや痛みなら俺も十分味わっているわけですよ、は」

インデックス「痛いんだけど」

上条「有無も言わせない気っ!?」


 この現状で夫婦漫才をするな、と思ったのは決してオティヌスだけではあるまい。





 なんとかインデックスを宥めながら上条は横目で巨狼と、自分を突き飛ばした狼を見た。

 体格差は圧倒的な二匹の獣がお互いを威嚇し合っている。膠着状態になっているということだ。

 先ほど、横から乱入してきた狼に上条はまったく反応できなかった。

 あらゆる異能を打ち消す「幻想殺し」や、色々な異形な存在と会ってきた異形の者から「不死者や吸血鬼を超えている打たれ強さ」と言われる頑丈さ、数百億を有に超える数の世界による攻撃を耐え抜く精神力を抜けば、上条当麻は普通の──それでも普通ではないかもしれないが今はそこは言及しないでいただきたい──高校生である。どこぞの武偵のように銃器も使えないし、高い反射神経も持ち合わせていない。

 だからあの狼は、その牙で上条の身体を噛みちぎることも燃え盛る半身で上条に火を浴びせることもできたはずである。上条はまったく狼が近づいてくることに気づかなかったのだから。

 結局、狼がしたことは上条の身体を氷の半身で突き飛ばすことだけだった。そのせいで服の一部が凍っているが、上条自身には何の怪我もない。

 まるで、獲物を横取りするような乱入の仕方だったと、上条は思う。


 そんなことを上条が考えていた内に、膠着状態は解けていた。先に氷と炎を身に纏った狼が巨狼に襲いかかったのだ。

 が、激突は無かった。

 飛び出した狼は2つに別れた巨狼の間を、何も無く通り過ぎただけだったのだから。

浜面「……は?」

 文字通り真っ二つになった巨狼の真ん中を通り抜ける狼。そのままただの氷の塊となった巨狼が、ガラガラと崩れていった。

 そんな中、上条は崩れた巨狼の向こう側──宙を舞い着地した狼の傍に誰かがいることに気づいた。





ワトソン「……明らかに、おかしいよね」

 最後尾に戦闘が満足にできない平賀や中空知を庇う形でいたワトソンは、怪物が一閃され倒されるという一応の結末を見せたからか少し余裕を取り戻し、周りを見渡しながら呟いた。

 ワトソンの周りにいる武藤や不知火も、それにつられて騒ぎの間には気づかなかったあることに気づいた。

武藤「こんな騒ぎだっていうのに、全く人が駆けつけてこねぇ……」

 現在、十字路の中央にて上条とインデックスが怪物と相対しており、北側の地下通路の方面への道にはキンジたちが、南側の駅へと向かう道にはキリトたちが、そして西側の「ウェスト・ランド」方面への道には士道たち面々が纏まっていた。


 しかし、それぞれの道には見える範囲で全く人通りがない。もう陽は落ちているとはいえ、この十字路に差し掛かるまで何人かにキンジたちはすれ違っている。しかもここは駅周辺だ。それなのに、ここには彼ら以外の人の気配はまったくなかった。これだけの大騒ぎが起こっているにも限らず、だ。今まで気づかなかったが不自然すぎる。

白雪「人払いの結界……もしくはそれに似たものが貼られているのかも」

 その疑問に答えたのは白雪だった。が、貼られているのはただ、特定範囲へと立ち入りを限定するだけの人払い結界ではなかった。

 人払い結界は簡単に言えば認識阻害とも言える術式の一種である。無意識下に干渉しその場所への興味の認識を逸らしたり、その場所への居心地を悪くする認識を意図的に形成することで、人払い結界は完成する。だが、この結界には、もう一つの効果があった。目の前にどんな化け物が出ても、それに立ち向かう者がいても、それを客観的に捉え、「逃げる」という考えを抱かせないという認識阻害結界。こんな光景に巻き込まれたことなどないキリトたちが逃げようとしないのは、そういう理屈だった。

 それでも、ある変化が起こったことは分かった。

ジャンヌ「──何か来るな」

 徐々に近づいてくる何かに気づき後ろを振り返るキンジたち。目の前でまたもや新たな怪物が登場しないか気を張りながらも、後ろから近づいてくる存在にも注意を向ける。

 しばらくすると暗闇に一つの光が見え始めた。徐々に街灯が照る場所と近づいていたそれは、街灯の明かりに晒されて、初めて正体を見せた。

キンジ「ワゴン車?」

 それはどこにでもあるタイプのワゴン車。それがこちらに向かってきてることを、キンジたちは理解した。

武藤「トヨタのハイエースワゴンか?」

 ベージュメタリック色のワゴン車は、本来なら自転車を除く車輌は走行禁止のはずの歩道を、猛スピードで真っ直ぐとこちらへと向かっていた。そのまま横向きに駐車する。

アリア「緊急事態よ!早く乗りなさい!説明は後!」

 運転席の開けられた窓から聞こえた、聞き覚えのあるアニメ声に、一同は有無を言わずに乗り込むのだった。






「間一髪……かな」

 狼のそばで刀を鞘に収めた少年はそう呟いた。肩の辺りで馬の尻尾のように纏めた滑らかな黒髪と中性的な──いや、もう女性的と言っても差し支えない──顔が特徴的な線の細い少年だ。黒衣・黒袴という服装をしていても、やたらと目立つ雰囲気を持つ少年だった。

「それは間に合わなかった方のだろ。逃げたぞ、あいつら」

 士道たちの後方から声がした。振り返るとそこには男がいつ間にかいた。紅い外套を着た男だ。外套と同じ紅い色をした瞳と髪色はそれだけで印象に残る人物だ。丸眼鏡を掛けているが、猛禽類のような鋭い目付きを緩和することは無かった。何となく上条の脳裏にステイル・マグナスの姿が思い浮かぶ。彼のように喫煙をしている様子はないが。

「ま、いいじゃん。仕方ないよ。俺らの目的はこっからどうやって最悪の事態を回避するかだもーん」

 次に声がしたのは刀を持った少年の側からだった。視点を変えると、そこにはいつの間にか青年が立っていた。一目でただの青年では無いと分かる。黒いスローチハット・ドミノマスク・マントという出で立ちは、まるで怪盗のような姿だった。それも、サマになっている。

「ま、それもそうだが……今、ここで決着を付けるに越したことはないんじゃないか?」


上条「お前!?」

 続いて出てきた影は上条にも見覚えがある人物の物だった。肩にまである真っ赤な髪に右目の下に入ったバーコードの刺青。ピアスが満載の耳にくわえ煙草。香水臭いと着ている神父服以外神父の要素など全く無い男。上条よりも身長も高い上に大人びているため、これで14歳だなんて言われても目を疑うだろう。大事なことだから二度言っておく。これで14歳なのだ。この未成年なのに喫煙している極悪神父は。

ステイル「……なんだ。お前がいるとはな」

「あれーステイル?もしかしてやきもちかにゃー?カミやんに」

ステイル「ぶっ殺すぞ」

 そしてもう1人の知っている影は、上条・青髪ピアスと共にバカ三人組「デルタフォース」の1人として認定されている、上条のクラスメイトにしてお隣さん。そして水と油の関係である科学サイドのトップたる学園都市と魔術サイドの一角たる必要悪の教会を掛け持ちする多重スパイ。サングラス金髪のアロハシャツを着たシスコン軍曹、土御門元春だった。

上条「土御門!?」

土御門「やーカミやん。しかしまたカミやんは面倒なことに巻き込まれたな。いやー流石はカミやん」

 なんか妙な関心の仕方をされている気がするが、今はそんな場合では無かった。学園都市在住の学生である土御門はともかく、何故ステイルがこの学園都市にいるのか。


「おい!早くそこを離れろ!!上条当麻!」

 そう質問しようとした上条だったが、その質問は新たに現れた声によって掻き消された。

 青年だった。ボサボサの髪は浜面の黒髪バージョンのようだが細身ながらガタイは浜面よりも良く、一目で鍛えていると分かる。軍隊の兵隊というよりも喧嘩慣れしていると感じのガタイの良さだったが。

 いや、待て。離れろ?

インデックス「とうま!!」

 インデックスの叫び声がすぐ後ろから聞こえた気がした。思わず振り返るとして、そしてそれが目に付いた。


 まるでゲル状の、スライムのような物体が目に前に広がり、自分を包もうとしており、飲み込まれそうに──


上条「!!?」

 直後、上条を襲ったのは本日2度目となる首の圧迫。またもや誰かに服の首元を引っ張られ、抱きかかえられたと気づいたのは大分後だった。しかもお姫様抱っこ。圧迫感から解放され落ち着いた脳が、大覇星祭の出来事を思い出す。

「大丈夫か?」

 地面に優しく降ろして貰い、初めて自分をお姫様抱っこしたのが女性であると気づいた。同時になんだか微妙な心境になったのはここだけの話だ。まぁ、自分より低い背丈の女性に逆お姫様抱っこされたら、世の中の殆どの男性は微妙な心境になるだろうが。

 黒マスクで口を覆っているからか表情は伺いにくいが、凄い美人であるのは間違いない。上条はタイプでは無かったが、それでも平時であれば見惚れるにはそう時間はかからなかっただろう。

 が、それ以上に目の前の事態に目を見張った。


 辺り中にゲル状のタコやイカの触手のようなものが蠢いている。まるでどこぞのRPGで出てきそうなクラーケンや海魔のような触手だった。

 普通ならここで女性陣の触手シーンなどが出てくるのだろうが、インデックスは先ほどの巨狼を真っ二つにした少年と触手を次々と灰しか残らない勢いで燃やしているステイルがガードしているし、滝壺は彼女の騎士である浜面がガッチリ守る。士道たちの連れに至っては自分の身だけでなく、近くにいた一般人まで守っている始末だ。彼女たちの着ている服がまるでコスプレ衣装みたいな物に変わっていることに、ここで上条は気づいたが、今はそこに言及している暇などない。何故ならこちらにもゲル状の魔の触手は迫ってきている。

上条「なんだよこの量!?」

 しかも他と比べて圧倒的にこちらによってくる触手の数が多い。上条の触手プレイなど誰得とかそういうレベルの話ではない。ただの汚物だ(一部の人間を除く)。

 その内の一つが上条に真っ直ぐ伸びていく。本能的にその危機を察知し右手を突き出した上条だったが、触手は右手に触れるか否かのところで急に上へと直角に曲がった。右手の上の虚空でまた直角に曲がりそのまま上条の眼前に迫るが、銃声と共に、ゲル状の触手は力なく落ちていった。

上条「土御門か!」

土御門「気をつけるぜいカミやん。こいつらの狙いはカミやんにゃー」

 銃声の主は土御門だ。手に握ったチャカを2、3発立て続けに放ち、触手を次々と落としていく。上条を逆お姫様抱っこした少女も、懐に持っていた小太刀を振るい、まるでどっかの無双ゲーのようにバッサバッサと切り裂いていく。


 いや、そんなことはどうでもいい。今、土御門はなんと言った?狙いは自分?

「紅ちゃーん。こいつらなんだにゃー?」

「……分からない。あと、気安く呼ぶな。土御門の青二才」

 「紅」と土御門に呼ばれた少女は、一瞬不愉快そうに眉をひそめたものの、質問に簡潔に答えた。「分からない」。これが土御門に帰ってきた答えだった。

上条「あの氷のでっかい狼が溶けてこうなったのか……?」

 見れば触手の発生源はあの巨狼の残骸からだ。間違いなくあれが原因には違いない。

上条「近づければ……」

土御門「やめた方がいい」

 右手を見つめる上条に、釘を刺したのは土御門だった。いつになく真面目な口調の彼に、思わず顔をしかめる上条。それがいつもの土御門らしくない、と思ったから来たものには違いない。

土御門「2度目になるが奴らの狙いはカミやんにゃー。カミやんが突っ込めば敵さんの思う壺だし──それに」

 土御門で目線である場所を示す。無意識にそこへと目線を向ける。何も無い虚空に目を向ける上条だったが、次の瞬間には変化が訪れていた。

 触手の発生源の上空。そこを先ほどの小型の狼の氷と炎の境界線のように、真っ二つになった巨狼の真ん中に出来ていた空間のように、そこを右と左と分けた、ちょうど真ん中の線。

 まず──右で閃光が爆ぜた。爆発した閃光の正体は雷撃だった。雷撃は正確無比に、一つの慈悲もなく、触手たちを撃ち抜いていく。周りにいた士道たちや一般人、インデックスや浜面たちを避け、その周りにいた触手たちは一瞬で灰へと還る。

 そして──左で今度は本物の爆発が起きた。硝煙の臭いを辺りにばら撒きながら、そこには、まさにアメコミさながらのパワードスーツのような物を纏った鋼鉄の戦士が立っていた。子供なら誰もが憧れるようなヒーロー。それが爆煙の中で悠然と伸びをしている。

 そしてもう一人。

 茶色の艶やか(あでやか)、かつ艶やか(つややか)な髪を靡かせ、月をバックに降り立つその姿はこの世のものと思えない。アメシストの瞳とその身に羽織った紫のマント、そして頭に被った麦わら帽子がなんとも幻想的な──

インデックス「──へ」

 インデックスの声と共に宙から降り立ったその少女は、ひらりと一回転するとインデックスの顔を見て、くすりと笑った。

 そう。間違いなく見た目の年齢が上がっている。インデックスと同じくらいの身長も今や上条に追いつくほどになっていた。けど。確かに。

インデックス「──イブ?」

「案外早い再開になっちゃったね。インデックス」

 笑う様も1つの絵画になりそうな美貌を持った少女は、傍に近寄ってきた紅の召喚士と鋼鉄の戦士の存在を確認しながら──何がなんだか分からない面々に、静かに、告げた。


「──ようこそ」


 今一度言うが、これは定説と理を覆す物語。

 しかし、まずは掘り固まった虚像の真実を、何者かが崩さなくてはいけまい。


「私の名はイブリース。あなた方にお願いと真実を語るためにきました」


 歯車は噛み合い始めた。

 もう、引き返せない。


 色彩が、崩れだした。







第九話「色彩の崩壊を告げる悪魔の王」 完

というわけで、第九話、いかがでしたでしょうか。初めての戦闘描写に思った以上に苦戦しましたが、なんとかできましました…ふぅ。疲れた?

ってなわけで今日はここまで。では!

それじゃ今週も張り切っていきましょー!!あ、話数が改変して繰り上がっておりますので、そこだけはよろしくお願いします。

ではでは。



1,







学園都市某所 キャンピングカー内

 以前、上条当麻は池服に訪れたことがある。

 この文だけを見れば何の変哲も無い文だろう。池袋は日本の中でもそこそこ有名な都市の一つだし、学園都市と池袋は外壁を挟んで近場と言ってもいい距離にある。外出の申請をちきんと提出していれば行くことに不思議はないだろう。

 が、この場合の池袋には、前に『異世界の』と付く。

 土御門、青髪ピアスの3人で池袋に出掛けたあの日。上条は池袋である2人組の男女に出会ったのだが、その時見せられた『アレ』には驚かされたものだ。脳髄に電撃が走った、とも言ってもいいだろう。

 何故、上条がそんなことを思い返しているというと。

「ほい、持ってきたぞい。9巻までとアンコール3巻」

紅「──こっちは4巻までとプログレッシブ3巻だ。5巻以降は駄目だったよな」

椿「うん。そこ置いといてー。あ、超電磁砲みたいな漫画版は持ってこなくていいよ。余計話がややこしくなるから」

「了解だ」

紅「了解した」

 紅色の髪色の男と上条を逆お姫様抱っこした少女が持ってきた、本が上条たちの目の前に置かれる。置かれた本は表紙にアニメ調のイラストが描かれた、所謂ライトノベルと呼ばれるものだ。主にティーンエイジャーをターゲットとしたこれらは、上条や士道も読んだことがある。電撃文庫やファンタジア文庫という名前もクラスの友人との会話で耳に入っている。

 いや、そんなことはどうでも良くなる衝撃が上条を除くその場の全員の中に走っていた。

 皆が驚くのは当たり前だろう。

 何せ机に置かれた数々のライトノベル。その表紙には──

十香「……見ろ、シドー。やっぱりこれは私じゃないか?」

 紛れもなく、自分たちと似た服装をした人物が描かれていたのである。

 「とある科学の超電磁砲」「ソードアート・オンライン」「デート・ア・ライブ」と題名のそれらには、自分を二次元キャラにデフォルメしたようなイラストがかかれていた。

霙「えーと……「とある魔術の禁書目録」新約の10巻までとSS2巻を持ってきたぞ」

椿「りょーかいりょーかい」

 追加されたものを見て目を見開いたのはインデックスやオティヌスたちだ。そういえばあの時上条と共に訪れた土御門は他の時間の土御門だったはずである。しかし結局ちゃんとした事情を説明され、文庫本を見たのは上条だけだつたし、驚いて当たり前だろう。

 自分たちが載っている小説の表紙をまじまじと穴を開けるように見つめる一同。

 十字路での会合を終えた一同が半ば強制的にキャンピングカーに連れ込まれてすでに10分ほど。

 「色々困惑していると思うけど、とりあえず簡単な話はキャンピングカーの中で。ほら入った入った!」と言う椿の言葉でキャンピングカーに入れられた上条当麻、インデックス、オティヌス、土御門元春、ステイル=マグヌス、浜面仕上、滝壺理后、五河士道、夜刀神十香、四糸乃、よしのん、五河琴里、八舞耶倶矢、八舞夕弦、誘宵美九、七罪、村雨令音、キリト、アスナ、リズベット、シリカ、リーファ、クライン、そしてキリトの携帯電話に入っているユイ。ちなみに、精霊たちは先ほど無理矢理纏わされた霊装を解いていた。

 が、「ウェスト・ランド」で出会った2人の女性がなぜここにいるのかを士道たちが問い詰める前に、「今からここで話すことは他言無用でね。関係ない人に聞かれたらまずいから」という言葉と共に、近くに止まったワゴン車から次々と大量の文庫本が運ばれてきたのである。

椿「さーて……こんなもんかな。話を簡潔に済ます為に悪いけど遊馬──と──沢ちゃんの方法借り……あれ、そういやこの時空の上条くんは異世界の池袋について覚えているって前提でいいんだよね」

上条「え、ああ……」

 士道たちと「ウェスト・ランド」にて出会ったはずの女性、椿キーナは机に置かれた文庫本を整理にしながら話題を振ってきた女性に、上条はうなづく。ちなみに聞いたことがある名前が聞こえた気がしたが十香のくしゃみ(二回連続)でよく聞こえなかった。

椿「じゃあ言っとくけど一巻は見せないからね。私もあくまでこの件には関わっているけど、チミの今までのことには傍観者として接するからね。私に、チミの人生を変える権利はないから」

 「よし」と机に綺麗に並べられた文庫本を満足そうに見ながら、かつて2人の男女が上条に言ったことと似たようなことを言う椿。

キリト「これ……読んでもいいんですか?」

椿「いいよー」

 恐る恐るという感じで聞いてきたキリトに対してあっけらかんと答える椿。許可が下りた瞬間、一番先に文庫本に手を伸ばしたのは先ほどから興味津々に見つめていた十香だった。

 それにつられて、その場の皆(上条とオティヌス、椿、霙、紅に赤髪の人物、何故か大人なびた姿になっているイブ以外)の全員が手近の一冊に手を伸ばし、パラパラとページを捲ってみた。

 そして──


「「「「なっ……なんだこれ!?」」」」

 本を読んだ全員の声が見事に被った。

 小説の中に自分の名前または隣に座っている者の名前もしくは知人の名前を見つけ、文章を読み進んだところ、自分自身がもしくは相手が過去に経験した事が小説風に記されていたのである。

土御門「にゃー!?なーんでこの本に『御使堕し』について所狭しと!?」

ステイル「……これは三沢塾の事件か」

浜面「え、これ服部じゃ……これは駒場!?ってかなんでATM強奪の時のカーチェイスが書いてあんの!?」

滝壺「これ、はまづらと学園都市を抜けてロシアに行った時のことじゃ……」

士道「こ、これ何!?ストーカーの日記とかそんなレベルの話じゃないぞ!……もしかして折紙──」

琴里「鳶一折紙でもここまで士道の行動を把握できないでしょ……」

十香「シドー!なんでこれにはデェトのことがこんなに書いてあるのだ!?」

四糸乃「え……こ、これってよしのん」

よしのん『……間違いなく私たちとシドーくんの出会いだよねこれー』

耶倶矢「む?むむむ?むむむむむ?」

夕弦「困惑。何故耶倶矢との対決についてもここまで詳しく書かれているのでしょうか」

美九「あ、あれれー?なんでこっちにはだーりんのマネージャー体験の話がまじまじとー?」

七罪「なっなっなっなによこれぇ!?」

令音「………………」

キリト「な……第一層のボス戦じゃないかこれ!?」

アスナ「これってALOでのことよね……?」

シリカ「えっ。もしかしてキリトさんと上層のクエストに行った時のことじゃ……」

リズベット「これってSAOの……第二層のボス戦……?」

リーファ「な、なんでお兄ちゃんとALOで初めてあった時のことが……」

クライン「お、おい!この本にキリの字とヒースクリフの野郎の決闘について詳しく書いてあるぞ!?攻略の時に加わっていた帰還者が書いたのかこれ?」

ユイ『これは……パパとママと会った時の……』

 「驚き」という反応をそれぞれの形で表す彼らたち。恐らく、池袋でこれを読んだ時の上条もこれと同じ反応を示したに違いない。

「アカシックレコードって知ってるか?」

 赤い髪の問いかけに答えたのはオティヌスだ。

オティヌス「知っているが……それがどうした?……まさかこれがそれとでも?」

「そのまさかだ」

 驚きを露わにする元魔人の少女。上条の上にいる彼女は本を読むことは出来ないが、それでも文庫本の一冊の表紙に自分を鏡に写したような少女が写っていることは分かっていた。

インデックス「え!え!ひょうかとのことも……あれ、なんで取り上げるの!?」

 ある一定程度読んだ後、「とある魔術の禁書目録」については全てが無理矢理回収されていた。

椿「いやー、これ以上読まれると色々と面倒くさいことになるんですよ。そりゃ因果律とかよく分からない物が働いてこの出来事が無かったことになるとしても危ない橋は渡りたくないわけで」

オティヌス「?」

 首を傾げる彼女たちや浜面と滝壺のカップル、ステイルだが、彼らは「上条の記憶にまつわるある事」を知らない。上条がそれを懸命に隠していることもあって、知っているのは極一部の人間だからだ。しかしこれにはそれに繋がるヒントが、あるいは答えが転がっているのだ。

 また、彼らがどの時点での彼らなのかよくわかっていない。もしかしたら、彼らがこれから起こることを知ってしまう可能性すらある。これ以上見せるのは得策ではない。椿はそう判断したのだ。

 次々と「とある魔術の禁書目録」以外にも勝手に文庫本を取り上げしまい始めた椿と逢沢霙(あいさわみぞれ)を尻目に、赤髪の男が自己紹介を始めた。

「クリム=コードネスダイクというものだ。よろしく頼む」

 頭を下げる青年を衝撃冷めぬ中で見つめる一同。あの本は何なのか。「アカシックレコード」という言葉の意味を知っている者は真意に辿り着きつつあったが、それでもまだ衝撃は抜けなかった。


 この青年の素性なんてどうでも良くなるほどに。

クリム「今回の出来事について、察しがいい奴はすでにあることに気づいていると思う」

上条「……」

オティヌス「……」

クリム「まぁ気づいていたとしても、知らない奴には説明しなければならないから、色々と話すがな」

 そんな前振りの後、青年による説明が始まったが──半信半疑というよりも疑いの方が圧倒的に多い出鱈目すぎる内容だからか納得するものは3人を除いていなかった。

クリム「多重宇宙(マルチバース)というものを知っているか?この世界以外の無数の世界が存在していて、そこではここでの自分と少し違う自分が存在しているというやつだ」

「例えば学園都市に住んでいない上条当麻がいる世界。五河士道が精霊の力を封じ込める力など持っていない世界。桐ヶ谷和人がSAO事件に巻き込まれてない世界。それぞれの性別が違う世界。誰かの年齢がもっと若い世界。逆にもっと年を食った世界。もちろん、お前らがいない世界だってある。まぁ異世界って言われるうちのほとんどが「一人も存在するものが被ることのない世界」だけどな」

 一度区切り、話をさらに続ける

クリム「今、お前らがいた世界は無理矢理くっつかされている状態だ。まぁトンネルなんかで無理矢理に「道」が出来たわけじゃないだが……とにかく、ここにいるお前らは本来なら合わない世界の住人同士ってことさ。」

令音「……ようするに君達はこの世界が私たちがいる世界と異世界だと言っているのかね?」

クリム「少し違うな」

 令音の確認に、補足を加えるクリム。

クリム「正確には「融合」したのさ。直接的な原因は色々あるが」

キリト「ん、んなデタラメな──」

 大半は納得出来ない。そもそも何を話しているのかさえ理解できない。それは当たり前なのだが、ここにその大半に当てはまらない人物が、少なくとも3人はいる。

クリム「上条当麻。インデックス、オティヌス」

 その3人の名前を呼び、クリムはさらに話を続けた。

クリム「お前らは知っているはずだ。この世界とは別に広がる世界のことを。2つの世界を繋ぐトンネルの発生。世界樹に連なる世界に住む者達の会合。この世界とは、理、法則、定説の全てが違う世界が存在し、そこで誰かが生きていることを」

 そう。上条たちはこれと類似している出来事を何回か経験している。一つは異世界の池袋との間にできたトンネルにより学園都市とその池袋で起きた2つの騒動。もう一つは1人の悪戯好きの神によって起こされ、結果的に死者の国を統べる1人の女神と1人の海の女神を救った一度限りの物語。

 そこで上条たちは出会っている。首から上が無いライダーに。バーテン服を着た池袋最強の喧嘩人形に。眼鏡をかけた妖刀を身に宿した少女に。裏から全てを操ろうとする「人間愛」の塊の情報屋に。「捻れ」など気にせずマイペースに奇跡を謳歌する2人の男女に。

 核兵器にも耐える究極の兵器を破壊して回っている者たちに。神の敵を葬り去る戦乙女と少年に。妖怪に好かれる性質を持つ少年やその少年の周りにいる妖怪たちに。世の不条理(Adsurd)に振り回されながら残忍な事件に挑んだ者たちに。生粋の殺人鬼との殺し合いに生き延びた者に。神格の上の未踏のさらに奥、その頂点に立つ少女とその少女が異常な愛を捧げる少年の影に。

 そしてキリトにも、一つだけ心当たりが浮かんだ。新型フルダイブ実験機のテストダイブ。そこで闘ったあの銀色の翼を持った戦士は、もしかしたら異世界の住人だったのではないか──と。

琴里「……ありえない。と言いたいところだけど──一つだけ心当たりがなくも無いのよね」

 そして琴里にも、そのような経験は無くとも一つだけ心当たりとなるものがあった。先日の謎の霊力反応。説明が付くことのなかったそれも、もしかしたら彼が言うそれが原因かも知れない。

 そして彼が最後に放った言葉は、上条たちが経験し──かつて一大の騒動となったことに同等するものだった。

クリム「現在……世界同士の均衡はお互いが混じり合わないようにギリギリのバランスで保っている。例えば──2つの世界の定義やあり方はかなり違うのだが──異世界の吸血鬼たちが「吸血殺し」という存在に近づかないようになっているだとか、イギリス王室に血が繋がってないはずの王子や姫の関係だとか。それこそ国の大統領や総理大臣や王、組織のトップとかな。色々辻褄が合わないことを無理矢理抑えつけてるような状態なのさ」

 そして一拍置いて、続きを話した。


クリム「だから──この現象を押しとどめて、なんとか形としている存在が瓦解すれば、一気にこの世界の融合は進んでしまうということさ。例えば──「幻想殺し」とかな」


2,







数分前 学園都市 「窓のないビル」

『──ようするにどういうことだい?』

『まぁこれは前座にすぎないってことさ。君んとこの魔神ちゃんが何万回も世界【フィルター】をかけて作り替えたり、あるいは君が【世界の薄皮】をベリベリと破いちゃったり、五河士道が『鳶一折紙』という在り方を根元に近い部分から変えてしまったり、緋緋神に瑠瑠神に璃璃神が本格的に動き始めたり、あるいは『アリス』なんて存在が生まれたり……ありとあらゆる偶然が働いて起こった今回の融合なんだけど、最終的にしっかりした形にしちまったのはソラリスのやつなんだよね』

『──改めて聞くが、君達『保存機関(アーカイブ)』の目的はソラリスのやろうとしている変革を止めることであっているかね?』

『──あいつは変革なんて言って邪魔な連中を潰しているだけさ。現に世界を融合させて得ようとした結果が得られなかったら、その原因となった、色々な意味で邪魔な少年を潰そうとしている。更に、そのためにレベル5の少年少女がどうなろうと知ったことじゃない。自分の目的に心酔して、尚且つそれを他人にも押し付けて、しかもそれが自己欲じゃなくて世界のためなんて思ってる分、君のところの科学者たちよりタチが悪いよ。……君のところには、いそうだけどなそういうの』

『結果的に自分がみんなを救うから別に死のうが絶望しようが地獄に落ちようがいい──か。彼らしい』

『ま、少々おいたがすぎる気はするけどね……』

『確かにね。まぁこちらはこちらでなんとか対策を立てよう』

『君、今大火傷で動けねぇだろう?君の子飼いのゴールデンレトリーバーがいれば話は別だが、彼とて内部と外部同時に相手取るのはさすがに難しいだろ。ただでさえ奴さん、統括理事会の名前も使ってるのに』

『こちらもまだ打てる手が残っているというわけさ。君達の手も借りることになるだろうけどね』

『持ちつ持たれつというやつだな。ま、精々君の逆鱗に触れないように上手くやるさ』


3,







椿「ま、これについては知っておいて欲しい、くらいのことって考えて置いて。確かに世界の融合も止めなきゃならないけど、本題は別にあるんだよねこれが」

 彼らの困惑を、一度打ち切る声。声の主はこの場の全員が質問攻めにしたいはずである椿であった。

 インデックスや令音に魔術や精霊についての講義を受け、今一番混乱しているはずのキリトたちも、その声に反応して一旦「非日常なもの」への認識作業を停止した。

椿「じゃ。これから先はツッチーにお願いするよん。お願いねー」

土御門「了解だぜい、椿さん」

 いつの間にこんなに仲が良くなったのだろうか。そう思う上条だったが、これから話すことが自分に深く関わることだと理解し、話に集中することにした。

土御門「さっきカミやんには言ったが、今回の奴さんの狙いはカミやん──正確にはカミやんの右手にある「幻想殺し」にゃ」

 「幻想殺し」についての説明は全員が受けたのだが、説明の直後から十香たちが右手をじろじろと見る視線を感じ、上条は妙に居心地悪いのであった。

オティヌス「禁書目録や私じゃないのか」

土御門「そうなんぜよ。その理由については後々話すとして、今回の事件には主に二つの大きな組織が関わっているんだにゃ」

 前置きと共に人差し指と中指を立てる土御門。

土御門「一つはヨーロッパ武偵連盟。連中の言い分は「学園都市の科学者たちの非道な実験の研究材料とされている子供たちの救出」らしい」

琴里「胡散臭いわね」

 率直な意見を投げかける琴里。学園都市には闇がある。それは彼女も知ったことだが、だからと言って今更、大人面して「救出」などと言われても胡散臭いだけだった。

土御門「……確かに学園都市には闇があるのは認める。だが、だからと言ってこの学園都市の問題は学園都市に住む俺たちの問題なんだ。外部の連中に手を出して欲しくないし、今まで見て見ぬフリをして置いていけしゃーしゃーと「助ける」と言われてもとてもじゃないが受け入れられない」

 「ま、椿さんの話じゃ元々違う世界のまったく接点の無い二つの組織らしいがにゃー」と付け加える土御門。上条や浜面、滝壺を似たような気分であった。

琴里「──けど、それは貴方たち学園都市の問題でしょう?私たちには関係ないわよね」

 しかし、彼女たちは学園都市の外部の人間である。はっきり言って何故自分たちがそんなことを聞かされているのかがわからない。「聞いたらもう戻れない」などと理不尽なことを言う者たちには見えなかったが、それでも琴里は警戒を解くことは無かった。

士道「──おい、琴里」

土御門「あ、いいにゃいいにゃ。本当のことだし。ま、本当にまるで関係なければ言えるんだけどにゃー」

令音「……どういう意味だい?」

 意味深な土御門の言葉を聞き、意識を集中する琴里と令音。

 精霊という人知を超えた存在を守る側にいる彼女たちにとっては、その力で何かをしようとして精霊を求めるような連中には、到底気を許すことはできない。

 厄介ごとに巻き込まれ、相手の都合で士道や精霊たちを傷つけることなど、自分たち『フラクシナス』がさせるわけがないからだ。

 だからフラクシナスの中でもトップの位置にいる少女と女性は気を張り、次の言葉を待っていた。

 そしてそれはキリトたちにも言えることだった。何故このような「魔術」だの「精霊」だの訳がわからない事態に自分たちが巻き込まれなくてはならないのか。それをそろそろ理不尽に感じ始めていたところだった。

 それらの視線を一点に受けながら、それでも飄々とした態度を変えずに土御門は言い放った。

土御門「いや何。もう一つの組織がDEM社で、学園都市にいる『幻想殺し』を使って何かしようとしている。そして相手方がこの学園都市内でレベル5を巻き込んだ戦争を仕掛けようとしている──ってだけだ」

「「「「!!」」」」

 DEM社。士道たちにとっては最も聞きたくない会社の名前であるが──。それよりも「戦争」というキーワードが彼らを震わせた。

 奇しくも、第三次世界大戦が終わってまだ日も浅い。彼らも「戦争」というキーワードに少し敏感になっていた。

上条「おい!どういうことだ!?この学園都市で戦争って!?」

ステイル「連中はなんとしても「幻想殺し」を手に入れたいようでな。より捉えやすくするため先ほどの「学園都市の罪を世に知らしめる」というお題目を掲げて、学園都市に突っ込もうとしているらしい。表向きの指令は「学園都市のモルモットとなっているレベル5の7人ともう1人の重要人物の保護」としてな」

土御門「そして連中は攫いやすくするために──学園都市に精霊やVRMMOすらも巻き込む、戦争には及ぼないかもしれないが、それ匹敵する大規模な闘いを起こそうとしているってことにゃ」


4,







同時刻 学園都市 とあるホテルの一室

アリア「──というわけよ」

 学園都市にある大規模なホテルの一室に、現在武偵校の面々はいた。普通のホテルよりもグレードも高いこのホテルの、更に通常より広い一室に性別体格髪色肌色が違う同年代の少年少女が集まっていた。同年代以外はまるで違う見た目の彼らだが、もう1つだけ共通していることがある。

 そのいきなりの真実の告白からか……全員がいい顔はしていなかったことだ。

ワトソン「……はっきり言って納得できないね」

『騙したことに関しては本当に申し訳ない。謝ろう』

 と、アリアの携帯電話から1人の男の声がした。

 キンジたちは先ほどまで知らなかったが──その声こそアリアに、しいては武偵校に依頼を入れた、まったく存在などすることのない虚偽の製薬会社の専務であった。

『これは極秘の任務だったのだ。それに元から本当の目的を話したら、君たちが学園都市に入りずらくなると思い──』

武藤「そこじゃねぇんだよオッさん」

 静かな呟きは武藤からの物だった。彼はそのまま、この場の全員の言葉を代弁するかのように、電話の相手に話を続けた。

武藤「武偵の間じゃ罠はハメられる方が間抜けって言われているし、嘘っぱちの会社に気づかなかった俺らにも責任はあるっちゃある」

 「けど」と前置きしながら更に続ける武藤。

武藤「俺らが納得出来ないのは、その本当の依頼ってやつについてだよ」

 一呼吸付き──そして武藤は問題の部分について物怖じせず言い放った。

武藤「なんで俺が──学園都市のレベル5なんてのを誘拐するなんてことしなきゃいけないんだよ」




 色々なことを知った。学園都市外部の者たちが、わざとこの日に合わせて学園都市に誘われたこと。「敵」が東京にある武偵校の武偵に嘘の依頼をし、その手引きを必要とされた最中にヨーロッパ武偵連盟の動きを察知したイギリス清教が土御門に武偵たちの動きを監視させ、必要悪の教会からステイル、追って様々な人員を──それこそ神裂火織すらも──送りこもうとしていること。連中の狙いはあくまで「幻想殺し」だが、中にはどさくさに紛れてレベル5や精霊という戦術級の力を攫おうとしている者もいること。そしてVRMMOを使って、更に場を混乱に貶めようとしていること。

 そして「敵」の一部が統括理事会の1人に化け、レベル5に「自身と自身の大事な物を「保護」の名目で狙う連中がいる」と。

土御門「恐らくあの十字路の出来事すら、レベル5からあそこにいた武偵たちへの戦線布告ってことにされているだろう」

 それを言われている上条の脳裏に自分の服のフードを引っ張って助けようとした少年と自分に倒れこんできた少女の顔が思い浮かぶ。あの騒ぎで細部までは覚えてないが、それでも自分と歳がまるで変わりのない少年少女が武器を持った戦闘のエキスパートの卵(どころか大人に混じって修羅場を乗り越えているものもいるが)だと知り、自分のことを棚に置いて驚いた。

浜面「じゃあなんだ!?麦野たちは攫われるかもしれないってことかよ!?」

 それに何よりも反応したのは浜面と滝壺だ。彼らは『アイテム』という組織に所属しているが、同僚である麦野沈利も、「原子崩し」と言われるレベル5の超能力者である。

滝壺「そういうことになる……」

 多分、麦野は襲いかかってくる敵を間違いなく返り討ちにしようとするだろう。更に今回は自分たちが彼女の「戦う理由」になっているやも知れない。彼らは数少ない麦野沈利という女性の友人でもあるのだ。

 麦野の実力は一度相対した浜面も重々承知だ。しかし、同時に彼は、武偵という存在の中に過激な者がいることや、DEM社と呼ばれる存在が国すら動かすことのできる大きな存在であることも知っていた。更に、非合法な実験や人命を犠牲にするのを厭わない、学園都市の闇と同じ面があることを。

士道「……これは黙って見過ごすわけにはいかないな」

 そして、連中の手引きで学園都市に誘われた彼らも、この話を聞き完全に部外者だとは言えなくなってしまった。

キリト「──けどVRMMOを使ってって──どういうことだ?」

 その都度に精霊や魔術についての説明を受け、混乱し続ける頭の片隅に浮かんだ疑問をキリトは投げかけた。


椿「ねぇキリトくん」

 突然に話題を振られたキリトは椿の顔を見て──続く言葉に絶句した。

椿「キリトくんはPISって知ってる?」

 ──へ?
 聞き覚えがあり、それが何か分かっているからこそ、「それ」の真意を理解した時に最初に浮かんだのが「ありえない」という思いだった。

キリト「……嘘だろ。もしかして、それで──!?」

 しかし、少年の目の前にいる科学者は少年の理解などの範疇に入る人物では無かった。

 椿キーナ。クリム=コードネスダイク。逢沢霙。イブ。そして先ほどの黒髪の剣士や鋼鉄の騎士。彼らは「とある魔術の禁書目録」の世界の住人でも、「ソードアート・オンライン」の世界の住人でも、「デート・ア・ライブ」の世界の住人でも、ましてや「緋弾のアリア」の世界の住人でもなかった。

 まだ上条たちは知らない。この4つ以外にも融合に巻き込まれた世界があると。

 だからこそ、彼女はキリトの理解の範疇を超えた。

椿「見てみたくない?ゲームがリアルを超えるってやつをさ」

 しかし最後の台詞はクサかったな。とみんな少しは思ったが口にはしなかった。








第九話「アカシックレコード」 完

というわけで第九話!いかがだったでしょうか…電撃vsようやく買ってそのまま変なノリで書いたらこうなりました。テンションって怖いな…。

どーでもいいですが。いい加減誰かクロメーテル女史のイラスト描いてくださいよぉ!!もぉ待ちくたびれてんですよぉこっちはぁ!!

…少子取り乱してしまったようですね。お見苦しいところを申し訳ない。

ではまた来週ー!!バイビー!

2015年 3月 1日
来週からテストのくせに電撃vsの下着イラストと禁書vsデュラに興奮してまるで勉強に手を付けない常盤赤色

乙です


vs電撃でふと思ったんだけど>>1ってデュラとか読んでんの
あとテスト頑張ってください

1乙

>>472
ありがとうございます!

>>473
ありがとうございます!

デュラララは最近はまり始めましたね。アニメも原作も見ています!

>>474
ありがとうございます!

じゃ、今日も元気にいきましょ!



1,







 フィジカル・インフォメーション・システムについてキリトが興味を持ち始めたのは、「ザ・シード」をエギルの手を借り回線の太い世界中のサーバーからダウンロードできるようにした、ちょうどその頃だった。

 物質のデータを現実世界に投影し、現実にあるものとして実体化することのできるこのシステムは、理論上の実現可能性が学会へ発表されているものの、実用化に至ることはないと言われてきた技術である。

 その大きな原因は、実体化のもととなるエネルギー資源が、現在の自然環境下では圧倒的に不足していることが指摘されている。

 もし、質量を持った物質を無から生み出すには、1グラムにつき町一つを一瞬で滅ぼすことのできる核爆弾に相当するエネルギーが必要不可欠なのだ。現代の科学ではそれほどまでの膨大なエネルギーを、完全にクリーンな方法で扱うことは不可能である。

 そのため理論は10年以上前にも出来たにも限らず、長いこと宙ぶらりんになっている技術なのだ。

 ──のはずだった。

キリト「…………マジか」

 自分の手のひらを動かしながらキリトは小さく呟く。初めは実感がなく小さかった動揺が徐々に大きくなる。

キリト「マジか」

 いつもの感覚で、メニュー画面を開いてみる。実際に視界に現れたそれを選択し手に現れた重みに対して、キリトの目が輝いているのに、アスナは気付いた。

キリト「──マジなのかぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 少年の雄叫びは、夜の学園都市に響き渡る。

 現在キリトは黒いコートを着、手には1振りの黒剣が握られていた。

 その姿はまるで──SAO攻略法にて猛威を振るい、事件収束の立役者となった伝説のソロプレイヤー「黒の剣士」そのものだった。

クライン「す、すげぇ……本当に現実に、SAOのキリトが出てきやがった…」

 絶句しているのはクラインだけではない。VRMMOは確かに現実に近い感覚を得ることができるシステムだ。視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚。あらゆる感覚を脳に直接送ることでVRMMOは現実とほぼ同じような擬似の世界と化したのだ。

 しかし、これはVRMMOとは次元が違う。

キーナ「自分の体を核として情報体の装備やステータスを上乗せするって感じだけど……ま、そう深く考えないで」

 そう言うのは自称このシステムの開発者というキーナである。先ほどはキャンピングカーに置かれたパソコンに向き合い、何かのデータを打ち込んでいた彼女だが、いきなり「もう、キリトくんのアバターデータをPISの範囲内に取り込んだから、これ付けていつもの感じでメニュー画面つければ大丈夫だよー」とゴーグルのような物を渡されたときは、まだ半信半疑だった。

キーナ「痛みはダメージ換算されるからある程度軽減されるよ。HPバーは出てるでしょ?」

キリト「あ、はい」

キーナ「なら大丈夫だ。いやーキリトくんのSAO時代のデータを復元するのにはかなり時間がかかったよ」

 何でもないようにとんでもないことをさらりと言う白衣の女性にキリトは驚きを隠せないでいた。

 と言っても、学園都市やフラクシナスの不思議技術を毎日のように体験している上条や士道、そもそも、これがどれだけすごいことなのか理解できてない十香たちの反応はキリトたちよりは薄かったが。

キリト「……エネルギーはどうやって?」

 PISを知る者なら誰もが「エネルギーの問題点」については知っている。ましてや、人の体を安定的に投影できるほどのエネルギーとなると、それはおそらく昨今のエネルギー問題を軽く解決できる代物となろう。少なくともキリトは、そんなエネルギーが発見されたなど聞いたことはない。

キーナ「キリトくんの世界じゃ、まだ無理だろうね…学園都市だから出来る芸当なんだよ」

 回転チェアで体をキリトたちからテーブルに向け、パソコンを操作するキーナ。

キーナ「学園都市のAIM拡散力場については、簡単に説明したよね」

アスナ「能力者が無自覚に発してしまう微力な力のフィールド──でしたっけ」

 その辺りに疑問を持っていたのはアスナやクラインたちも同じようで、気になってキリトとキーナの会話に参加してきたようだ。当の白衣の科学者は「正解!」と言いながら再びキリトたちに向き合い、説明を始める。

キーナ「例えば体温は炎系の能力者が、生体電気は電気系の能力者が、力なんかは身体強化系の能力者が…ってな感じでね。AIM拡散力場で1人、人間を作ることもできるわけよ」

 これは事実だ。現に上条とインデックスは「彼女」と出会い、お互い友人として上条たちは「彼女」の、「彼女」は上条たちのピンチを救いあっている仲である。

 「風斬氷華」という少女を脳裏に浮かべながら、上条とインデックスも特に聞く必要のない説明に聞き耳を立てていた。


キーナ「元から人間が核となってるし、後はパラメーターや装備なんかを身体に覆う殻のような形にして、武器を投影すればいいだけ。そうなればAIM拡散力場とそれなりのエネルギー結晶体を使えば、いくらでも作れるわけよん。人1人を作れるような力を持つ力場だし、質量を持った武器を作るなんてそう難しくないよ。難点といえば学園都市でしか安定して使えないことだけど、それを考慮しても使い勝手の良すぎるシステムだしね。なおかつAIM拡散力場の一部を借りてるだけだし、大元は微弱なエネルギー結晶体に依存しているからなんの影響もないって寸法」

十香「…………シドー、どういうことだ?」

士道「すまん十香。俺も何を言っているのか分からん」

 キリトも何を言っているか分からなかったし、おそらくこの中にキーナの説明を理解できたものはいなかっただろう。

キーナ「ま、違う世界には不可能を可能とするような便利なエネルギー結晶体と力場があるとか、そう考えてくれればいいよ」

 ケラケラと笑いながら簡潔に纏める。理解はできないが、そう言われれば納得せざるを得ない。なにせ、自分たちはまだそれぞれの世界を完全に知ったわけではないのだ。

 「ともかく」と目を向けられたキリトは、指を指された自分の体を見ながら、キーナの言葉に耳を傾けた。

キーナ「キリトくんたちは現実ではただの非力な人間だけど──ゲーム内では敵なしの「黒の剣士」や「バーサーカーヒーラー」なんだから。これさえあれば」

キリト「……確かに、戦うことくらいはできそうだな。…ってか、俺やアスナの異名もあの本に載ってたのか?」

 キリトの質問だったが、「私もやりたーい!」「私もやりたいです!」「俺も俺も!」と名乗り出る自身の仲間の声によって掻き消されていた。自分でも分かるくらいテンションが高くなっているので、彼らのこの反応は仕方のないのだろう。

上条「痛みが軽減ですか……上条さんもやってみたいですな」

 そしてキリトの仲間以外に名乗りを上げたのは、「痛みの軽減」に釣られた上条であった。

 この前の事件で規格外の化け物から15発拳を貰った上条。ここのところ怪我しては病院送りになるばかりなので、痛みの軽減は夢のようなアイテムに違いない。

キーナ「いーや、流石に幻想殺しの再現は無理だよー。ってことで上条くんは無理なんだー。ごめんね」

上条「あ、そうなんでせうか…」

 が、どうやらその夢は叶わなかったらしい。上条にとって「幻想殺し」は大事な力の一つだし、これがあるから出来ることも多い。流石に引き換えに失うのは避けたほうがいいのは間違いない。

 よくよく考えてみれば、これを手にしたらいつもの倍の痛みが来るとか、自分の場合、結局は軽減されてもいつもと同じことになるに違いない。このようなことが平気で起こるのが、上条当麻の「不幸」なのだ。

 仕方なく諦めることにした上条。そんなことを思う時点で、人生には諦めていないが自分の幸福については既に諦めている節があるのだが、それを指摘する者は誰もいない。この場にいるほとんどが、上条の「不幸」に関してよく理解していない人物なのだ。

キーナ「んじゃ。とりあえずアスナちゃんたち全員分、やってみますかね」

 紅に人数分用のゴーグルに似た装置をもう一台のワゴン車から取り出してくるようにと言いながらキーナは、再びパソコン内に何かを打ち込み始めるのであった。


2,







 キリトに続いて現れた血盟騎士団副団長「閃光」のアスナやギルド風林火山のギルドリーダークラインの興奮がようやく冷めたころ、浜面は話題を切り出した。

浜面「──で、世界的にも有名なDEM社はこの子たち精霊という存在を狙っている組織って裏の一面もあるってことは分かったけど……そもそも精霊ってなんなんだ?」

 至極まっとうな質問を向けられたのは、十香たち精霊だった。先ほどから多用されている単語だが、そもそもそれが何なのかをこの場にいる半数は理解していなかったのである。

 本来ならば、士道にもしたようにそれらの説明は、精霊との対話による空間震災害の解決を目的として結成されたラタトスク機関を代表して、琴里または令音がするべきことなのである。ところが、琴里はまだ精霊についての詳しい説明をするか、判断を下せていなかったのである。

士道「…………」

 その理由は士道にも分かった。

 彼女たち精霊の大部分は、士道に会うまで周りに「否定」され続けてきた少女たちだ。特に十香や四糸乃、七罪はそれによって得た傷跡は深い。今は面影もないが、十香などは士道と会うまでASTの攻撃に晒され続けていたので自分による人間を全て敵と認識していたくらいだ。

 士道はそんな彼女たちを肯定した。しかし、人が全員、士道のように彼女たちの存在を肯定するような人物ばかりではないのだ。

 もし話したら──十香たちに漂う不穏な空気からは、また否定されるのではないかという、不安が色濃く感じられたのである。

オティヌス「安心しろ」

十香「へ?」

 いきなりのオティヌスの言葉に狼狽えたのは十香であった。オティヌスは柔らかい笑みを浮かべながら、それを言った。

オティヌス「別にお前らがなんだろうと、少なくとも私とこいつらはお前らのことを否定なんてしない」

 15センチほどしかない少女の言葉には、全てが詰まっていた。何せここにいる1人の少年は本気で彼を壊そうとした自分を「ただの女の子」といって救おうとしたほどのお人好しの馬鹿なのである。だから、かつて自分と同じように1人を除いて世界の敵意に否定されただろう少女を見ながら、その1人と敵意をほんの少し上回る世界の善意に救われた元魔神の少女は笑った。

オティヌス「だから、大丈夫さ」

 オティヌスの言葉を聞き、周りの皆の顔を見て、十香たちの不安という雰囲気が払拭されたのを確認した琴里は口を開いた。

琴里「──説明するわ」

令音「……いいのか?琴里」

 令音の問いかけには、ラタトスク機関の最高幹部連たる円卓の許可なしに部外者に精霊についての情報を提示することも含まれていた。

琴里「このような緊急事において全指揮権はフラクシナスの司令である私にあるわ。私の判断なら文句は無いでしょう」

令音「……そうだな」

 フラクシナスの一癖どころか癖しかないメンバーを纏めるその実力は令音がよく知っている。何より、令音もこの者たちなら話しても大丈夫だろうと判断していた。

 令音の納得したうなづきを見た琴里は、その口から精霊についてのことを語り出したのだった。


インデックス「──つまり精霊っていうのは絶大な戦闘力を持っていて、こっちの世界に来る時に空間震を起こすってこと?」

琴里「そういうことよ」

インデックス「ふーん」

上条「へー」

浜面「そうなのか」

琴里「………………………………って、それだけ?」

 インデックスの確認にうなづいた琴里だったが、その後のメンバーのあっさりしすぎた反応に少し驚きを感じ得てしまった。説明が終わった後に帰ってきた返事が返事だけに、士道や十香たちも目を白黒している。

上条「え……いや。なんか深刻そうな顔してたし、もっとめちゃくちゃな話が来ると思っていたから……」

浜面「ま、多少驚いたけど」

 次に帰ってきた返事に、琴里たちは本当に驚いた。「多少」?この話に得る驚きが多少なのか?

土御門「べーつにそんな否定なんかするわけないにゃー。ってか、多分俺の知り合いなら否定する方が少なくないと思うぜい」

上条「青髪の奴なんか絶対歓喜するだろうしな」

 「ほらな?見たことか」と言わんばかりのオティヌスの顔を見ながら、今度はキリトたちの方に目を向ける琴里。

キリト「うーん……なんかいきなり現実に「魔法」があるだの、「精霊」がいるだの言われて……頭が混乱しているのかなぁ」

 力無い笑みを浮かべながら、それでもキリトは、はっきりと言い放った。

キリト「けど……別にそんなのでお前らを否定とかしないよ。なぁ?」

アスナ「うん。そうよね」

リズベット「まぁねー」

リーファ「実感湧かないしね……」

シリカ「空間震も、起こしたくて起こしてないんだったら、十香さんたちに非はないですよ」

クライン「ま!美少女だしな!」

 最後のクラインの言葉に隣にいたリズベットからのチョップが入ったのは言うまでもない。

土御門「ま、俺っちも青髪ほどじゃにゃいが、包容力はある方だぜい。義妹ならなお可だぜい!」

 この時の彼の唯一の失敗は、「義妹ならなお可」という言葉に僅かながらに反応した士道、琴里、キリト、リーファのことを見逃したことだろう。

琴里「──ともかく……本当に」

インデックス「うん」

 琴里の確認よりも答えを出したのはインデックスだった。そして、彼女はそれを口にした。

インデックス「それに、別にそんなことで私はとおかたちのことを嫌いになったりしないよ」

 最後の言葉が、トドメだった。

十香「──本当か?」

インデックス「本当だよ」

 初めは純白のシスター服を着たインデックスから。

四糸乃「本当ですか?」

滝壺「本当」

 次は僅かに微笑みを浮かべながら滝壺が。

七罪「本当に?」

アイ『本当です!』

 最後は机に置かれたキリトの携帯の中から。

 彼女たちを見ながら、士道は以前どこかで読んだ小説の一文を思い出した。正確には後書きで、作者が述べた一文だったが、それを書いた作者の名前も、本の題材も内容も覚えていないにも関わらず、それだけは士道は鮮明に思い出せた。

 ──世界は険しくて、敵意や憎悪なんてたくさんあって、でも全部合わせるとちょっぴり善性の方が多いよね、という希望の残る物語。

 やはり──世界は、人は精霊を否定する者よりも、受け入れる者の方が多い……のかもしれない。

 ここにいる彼ら以外にも、きっと。

十香「そうか…………ありがとう」

 先ほどまでの顔が嘘のような眩しい笑顔を浮かべ、十香はそう言った。

上条「しかし……「精霊の力を封じ込め尚且つそれを使える力」って、あんた凄いな」

士道「え、あ、俺?」

 唐突な話題の振りに驚きながらも返事だけはする。

士道「いや……まぁ」

上条「上条さんもそういう能力が良かったですなぁ。この右手のせいで不幸だから……」

土御門「何言ってんだぜい。カミやんには「一流フラグ建築士」という最上すぎる能力があるじゃないかにゃー」

上条「え、何その流れ」

 実際には土御門の前にいる士道も「一流フラグ建築士」と呼ばれるような存在なのだが、1万人近くの少女や魔神なんかとフラグを建てる上条とは格が違うと、土御門はそう理解していた。

クライン「そういやさ」

 と、ここでクラインが1つの口を疑問にした。ほんの興味本意で発言したことだった。

 タイミング的には「最悪」、とも言えるような質問を。

クライン「精霊の力を封じ込めるっていうけど……どうやって封じ込めてんだ?」

「「「「……」」」」

 場が、沈黙に支配される。

 士道側の人物の大半(美九や七罪など一部除く)が素の表情で黙り込んだ。

クライン「……あれ?俺、なんかマズイこと聞いちゃった?」

四糸乃「い、いや。大したことじゃないです。大したことじゃ……」

 なぜか急によそよそしくなったメンバーを見て、首を傾げる。

 その答えは場の雰囲気をぶち壊すという代償を伴って帰ってきた。

七罪「接吻よ」

「「「「え?」」」」

 七罪の一言にその場のほとんどのメンバーが固まった。接吻。難しい言い回しだがそれはつまり──。

アスナ「……キス、ってこと?」

七罪「そうよ。しかも口付けで」

士道「おい七罪!?」

「「「「……」」」」

 場の沈黙と視線が一点に集まる。

 自身にまとわりつくような視線を感じた士道は慌てて弁明をした。

士道「いや、これはだな!」

土御門「……初対面の相手に言うのもあれだが。そりゃーちょっとあれじゃないかにゃー」

クライン「キスって。しかも口付けってさ。こんな可愛い子としかも複数と。罪悪感とかないわけか?」

士道「……しょうがないだろ!これしか方法がないんだから!」

 ちなみに上条と浜面がこの話題に飛びつかなかったのは、下手に手を出せば床に転がることになるのは自分たちだと分かっていたからだ。触らぬ神に祟りなし。考え無しで行動できるほど、自分たちはまぬけではない。

 「キスとかいいな」「しかも複数の子とか羨ましすぎる」とか言った時には、自分たちは死体となって、翌朝のニュースを賑わすこととなるだろう。

滝壺「……はまづら?どうしたの?」

浜面「なんでもないぜ。滝壺」

インデックス「とうま?何考えてるの」

上条「なんでもないよ。インデックス」

 そんなギリギリの綱渡りと錯覚しそうな感覚を持ちながら、上条当麻と浜面仕上は微笑んで見せた。

3,







 話は少し前に遡る。

 キリトたちがPISに興奮していた頃、別の場所で、別の少年たちに動きがあった。

 学園都市最高峰の7人の能力者たち。レベル5。

 その中でも、理解不能な能力を先天的に持ち合わせた「原石」と呼ばれる存在の中で、レベル5認定された唯一の超能力者がいる。第七位とレベル5の中での序列は一番下であるが、これは能力の応用性を指すものであり、実力は序列には関係しない。

 通称「ナンバーセブン」。削板軍覇。

 白ラン、鉢巻、旭日旗のTシャツという一昔前の番長のような格好をしたこの少年は、何かと事件に首を突っ込む性格と性質を持っているのだが──その日はとくに何もなく(本人にとってはつまらないと取れるのだが)小腹が空いたので偶然通りすがったパン屋でパンを買うことにしていた。

「いらっしゃいませー」

 カウンターにいる青髪糸目の少年を一目しながらカレーパンやメロンパンなどめぼしいパンを幾つかトレイに乗せる。

「480円になりまーす」

 なんとなく適当な感じがする接客だったが、削板はそんなことも気にせず、500円玉をポケットから出し、お釣りを受け取った。

「ありがとうございやしたー」

 店を出て、削板はパンを袋から出して食べながら夜の学園都市を歩いていた。

削板「……なんか根性のあるようなことはねーのかな」

 無意識に口から出た言葉。ようするに「暇」ということだ。

 あの、手から龍を出した少年や、自分を完膚なきまで叩きのめした男のことが思い出された。彼らはかなりの根性を持った者たちだ。いずれ合えば、手合わせを願いたいと削板は考えている。

 そんなことを考えながら食べ歩きしていた削板だったが、ふと、携帯電話が鳴っていることに気づいた。

削板「お?」

 学園都市では中々聴くことのない演歌のメロディーが流れる携帯電話に浮かぶ相手の番号は知らない物だった。メールである。

削板「…………」

 このような時のメールは大体が統括理事会のインテリによる根性のない文だと、削板でも察しが付いていた。前に「上条当麻」とかいう少年の殺害依頼についても、あまり削板は好印象を持つことはできなかった。そういえばこの名前、あの、手から龍を出す少年の名前も「カミジョー」だったが、同一人物だったのだろうか。根性があった奴だったから、もしかしたらそうかもしれない。

 脳裏にそんなことを浮かべながら、メールを開いた削板が、携帯電話にメールを表示させ──

削板「?」

 そのメールには「全レベル5に対する警告と忠告」と書かれた、削板を含むレベル5全員にそれぞれ別の時間帯に送られたメールであった。

4,







キンジ「……で、あんたは俺的に何をさせたいんだ?」

 ヨーロッパ武偵連盟の重役と名乗る男──もっと言えば自分達に依頼してきた有りもしない製薬会社の専務からアリアに連絡が来たのはキンジたちが出掛ける前だったらしい。

 「大事な話だからまずは仲間をどこか別の場所にやってほしい」という自分達を騙した男の指示に、初めアリアは従う気はさらさら無かったようだ。半信半疑の半疑すら無かった。しかし、その男から出てきたある人物の名前を聞き、従うざるを得なくなったらしい。

 神崎かなえ。アリアの母であり、現在世界的犯罪組織イ・ウーの冤罪を被せられ服役中の女性である。高裁判決・懲役536年。彼女事実上の終身刑を言い渡されているのだ。

「この依頼に成功すれば、彼女の大幅な厳刑に成功するかもしれない」

 母親を救うために死に物狂いとなっているアリアには、それも見逃すことができない糸の1つだった。実際に相手がヨーロッパ武偵連盟の重役と裏付けも取れた安心感も作用して、アリアはその男を半信半疑程度には信じてみようと考え、何か起こればすぐに行動が起こせるように待機して会話に応じたらしい。だからキンジたちが襲われた際もすぐに行動することができたのだ。

『資料はFAXで送った。君たちにしてほしいの「学園都市の闇の解明」だよ』

「「「「……」」」」

 資料の一部見ながら、キンジはある一枚の写真を見る。

 そこに写っていたのは白髪で細身の少年の目の前に、人間の形を成していない、血だらけの少女の死体が転がっている姿だった。高校生とはいえ、武偵という死と隣り合わせることの多い彼らでも、さすがにその写真を見たときには吐き気を催した。

『そこに書いてある『置き去り』を使った人体実験、『絶対能力進化』計画、交渉人を使ったDNAマップの詐取、エクステリア計画──それらを辿れば、全てが学園都市の上層部に辿り着く』

アリア「じゃあ何?あんたはここに乗った「一方通行」とか言う奴を捕まえて、クローン一万人近くを殺した罪をきっちり裁きたいとでも言うの?」

 『そうじゃない』という男の否定がアリアの携帯電話から向こう側から返される。

『我々の目的は彼らを「救う」ことだよ』

不知火「救う……?」

 不知火の疑問形の返しを聞き取ったのか、男はご機嫌に話し続けた。

『そう。彼らも学園都市の科学者──「大人」たちに利用されているだけなんだ。彼らも気づかずにモルモットとして。そこに彼らは気づいていないんだよ』

 そこでようやく、キンジはこの男がやろうとしていることを完全に理解した。

『我々の目的は彼らを救い、学園都市の闇を世間に公表することだよ。そのために、君たちに彼らを保護して欲しいのだ。これは最早学園都市だけで片付けられる問題ではないのだ』

キンジ「…………」

 資料の中には明確な証拠とともに、学園都市が推奨しているという生物兵器や人体実験についても詳しく記述されていた。偽の依頼とも精通する箇所である。

 確かに、この話が本当ならば、大変なことになるだろう。

『もちろん危険な依頼だということは分かっている。東京武偵校とはすでに話は付けてある。報酬も、我々が用意できる範囲ならなんでも提供しよう。もちろん、神崎かなえの厳刑も可能だ』

 『どうかよろしく願いたい……』と締め括り、携帯からの声が沈黙する。

 しばらく思案した後、キンジは同じように思案してる顔になっているアリアの顔を見た。

キンジ「アリア……俺はこの依頼、受けてもいいと思う」

不知火「僕も……遠山君と同じだ」

 キンジが投げかけた率直な意見は、どうやら不知火も同じものだったらしい。

武藤「……俺もだ。最初は騙してたことに苛立ちが無かったって言ったら嘘になるが、どうや事情があったみたいだしな」

 武藤も続く。それに続いて、白雪や中空知も賛同し始める。

 軽く目を瞑り、黙考するアリア。

アリア「──わかった。その依頼、受けるわ」

 反論する者はいなかった。

『!!……そうか。ありがたい』

理子「あのさー」

 携帯からの声に続いて発言をしたのは、今まで場を見守るだけだった理子であった。

『?』

理子「レベル5は7人って聞いたけど…1人多いよね?」

『ああ。成る程』

 確かに、ページの一番後ろにある保護対象者のリスト。そこにある名は全部で8つだが、土御門に聞いた話ではレベル5は7人のはずである。

 記されている情報は8人分。

 第一位。本名不明。能力名『一方通行(アクセラレータ)』。運動量、熱量、電気量、光といった、あらゆるベクトルを観測し、操る能力者。ありとあらゆる攻撃を自動的に跳ね返すことが可能。また、それらは超能力(ステルス)や魔術にも干渉可能。

 第二位。垣根帝督。能力名『未元物質(ダークマター)』。『この世に存在しない素粒子』を生み出し、操作する能力者。確率など、物質法則全体を乗り換えることができる。現在は体を『未元物質』で代用し、カブトムシのストラップの姿に普段は擬態している。

 第三位。御坂美琴。能力名『電撃使い(エレクトロマスター)』。電気系統最強の能力者で十億ボルトもの出力を誇る電流や電磁波を観測し、操る。コインをローレンツ力で加速させ、音速の3倍以上のスピードで打ち出すその様から、通称『超電磁砲(レールガン)』と呼ばれる。

 第四位。麦野沈利。能力名『原子崩し(メルトダウナー)』。本来、『粒子』または『波形』どちらかの状況に応じて示す電子を、その2つの中間である『曖昧なまま』の状態に固定し、強制的に操る能力者。操る電子を白く輝く光線として放出し、絶大なる破壊を撒き散らす、正式な分類で『粒機波形高速砲』と呼ばれるものを使用可能。

 第五位。食蜂操祈。能力名『心理掌握(メンタルアウト)』。学園都市最強の精神系能力者。記憶の読心、人格の洗脳、念話、想いの消去、記憶改竄、意思の増幅、思考の再現、感情の移植など精神に関することならなんでもできる、十得ナイフのような能力。ただし、動物は対象外。

 第六位。藍花悦。能力名不明。年齢性別外見能力全てが不明。しかし、『第六位』を名乗る少年が居る模様。この少年から第六位にたどり着くことも可能と判断されたため、この少年を保護対象とし、情報を提供する。

 第七位。削板軍覇。能力名不明。通称『ナンバーセブン』。『原石』と呼ばれる自然に目覚めた能力者の1人。その能力の原理は全くの不明で本人も大雑把にしか把握しておらず、そもそも超能力者に分類していいのかも本来は不明。

 最後に「人口230万人の学園都市に7人しかいない最高レベルの能力者」「1人で軍隊と闘えるほどの力を有する」「レベル5の順位は、戦闘能力や演算力ではなく「能力研究の応用が生み出す利益」が基準とされている」「学園都市の内申書曰く『三位以外の能力者は人格破綻者』とのこと」と書かれた更に下。そこにはもう一人の人物の顔写真と、名前が書いてあった。

『彼こそが、学園都市が『無能力者』の蓑を被せてでも守っている、学園都市が推し進めている計画に根幹から関わっている能力者。いわば学園都市の一番の被害者だ』

 その名を、この部屋にいた誰かが、無意識に呟いていた。

「──上条当麻」

 『幻想殺し(イマジンブレイカー)』という右手を持ち、ありとあらゆる異能の力を消し去る能力を持つ、自分達より一つ下の高校一年生の少年。

『彼だけは……必ずや「保護」しなくてはならないんだ』







第十話「PIS」 完

というわけで十話、いかがだったでしょうか!ここでSAOの参戦理由ともなったPISシステムが登場しました!

元々これは「男子高校生のハレルヤ!」というラノベ三巻に出てきたシステムでして、これ見たとき「あれ、これ使えば黒の剣士が現実世界で暴れ回ることできなくね?」と思ったのがきっかけでした。この設定はアクセルワールドやログ・ホライズンにも使えそうで、非常に使い勝手がいいです。

ではまた来週!バイビー!

2015年 3月 8日
明日の保険のテストに出てくる欲求5段階がマズローなのかマグローなのか迷い、普通考えればマグローとかないよなと自己嫌悪に陥ってる常盤赤色

今週の投稿ですが、>>1が鼻炎でダウンした為、休ませていただきます。更新を楽しみに待っていてくれた方々、本当に申し訳ございません。

これからも、不肖>>1と「とある緋弾のソードアート・ライブ」をよろしくお願いします。

2015年 3月 15日
鼻炎でダウンして鼻のかみ過ぎで鼻を真っ赤して鼻セレブの購入を考えている常盤赤色

不肖>>1ただいま復活!お待たせしました!

少し早い時間からとなりますが、レッツらゴン!投下します。では。


1,







 レベル5へと向けられたメッセージ。しかしその反応は全員が一貫し「何だこれ」というものであった。

一方通行「なンかまた面倒くせェことになってンな……」

 とある繁華街のファミレスでそのメールを見た第一位は舌打ちをし、

垣根「…まぁ気にしとくに越したことはないでしょうか」

 真っ白な第二位は戸惑いながらも護るべき存在の少女のことを思い浮かべ、

御坂「ってかこのメール。どこ発信よ。統括理事会?……一応調べてみようかしら」

 常盤台にいた第三位は念のためにと情報を集めるべくその日は朝から街へと出て、

麦野「ったく。ま、来たら返り討ちにすりゃいいだけか」

 いつものファミレス(一方通行がいるところは出入り禁止となっているのでそことは別の場所である)にいた第四位はまったくそのメールを気にも止めず、

食蜂「ふーん。それにしてもこのメール、偽装力がプンプン感じられるのよねぇ☆」

 第三位と同じ常盤台にいた第五位は瞬時にそのメールが統括理事会の偽物からの物だと察し、

「…………」

 どこにいるかも分からない第六位は特に何の反応もせず街へと溶け込み、

削板「おもしれー。根性がある奴が来ることを望むぜ」

 規格外の第七位は部外者の来訪に心躍らせてすらいた。

 仮にも彼らはレベル5。協力すれば一国などケロリとした顔で相手にできる化け物たちにとって、そのメールは「嘘ならそれでよし。もし本当なら迎撃すればいいだけのこと」程度の物だった。

 それに加え、皮肉にも「学園都市統括理事会」の名が彼らのメールに対する信用度を大きく下げていた。何せ、第一位はついこの前「統括理事会」の名前を使った偽物に騙され、まんまと1人の人間を殺しかけたばかりだし、そもそもレベル5のほとんどが、統括理事会を始めとする大人たちが、自分たちを実験動物のように見ていることを知っている。親船最中のような善意的な人物もいることは知っているが、だからと言って統括理事会そのものを信用できるわけがない。

 第二位と第三位は念には念を入れ事実を調べるつもりのようだが、他のレベル5にはそんな気も起きなかった。彼らにとってのこのメールはその程度のものということである。


 話を戻そう。場面は上条当麻、五河指導、桐ヶ谷和人たちの会合と武偵校のメンバーが依頼を受注した翌日へと移る。

 11月4日。9時32分。学園都市第二十三学区。学園都市在住の学生にも内部構造が分かっておらず空軍などの兵器製造施設としても有名なその場所で、自身の5倍もありそうな高いカーボンの壁を見上げながら遠山キンジはある場所へと向かっていた。

 キンジだけではない。神崎アリア、星枷白雪、峰理子、レキといったバスカービルのメンバーも共にいる。平賀文、中空知美咲は現在アリアがチェックインしたホテルの3室の中の1つで待機しており、ジャンヌ・ダルク30世、エル・ワトソンは戦闘に不向きな彼女たちの安全を確保するため残っている。武藤と不知火は事情があって、現在は学園都市を脱出し武偵校へと帰還していた。

 キンジたちがこの壁の向こう側にある物に用があるのは、もちろん学園都市におけるレベル5+αの「保護」に関係することである。

 デウス・エクス・マキナ・インダストリー。それぞれの頭文字を取り、通称DEM社と呼ばれる大企業の学園都市研究技術局が、ここに建てられている。キンジたちはこの中に用があるのだ。

 DEM社は様々な分野を手掛けており、その中でも顕現装置(リアライザ)と呼ばれる「科学技術を持って「魔法」を再現する技術」においてはシェアの大半をこの会社が握っており、各国の軍部にも提供されているという話だ。

 そして、今回の依頼においてはヨーロッパ武偵連盟と共に依頼主として重要な意味を成しているのである。

 ヨーロッパ武偵連盟とDEM社から東京武偵校へとされた依頼。

 その依頼の詳細な説明をDEM社が学園都市の支部にて行うので、依頼を受注したそれぞれの代表者がここに集まってということである。

 相手は学園都市。国家規模の力を持つ都市である。そのため外部よりいくつかの組織が依頼を受注したとキンジたちは聞いていた。


 守衛門にて頭と体にゴテゴテのアーマーを着た守衛に近づいていく。警戒したような雰囲気を醸し出していた守衛だったが、すぐさまアリアが昨日のうちに武偵手帳とここに来た旨を伝えると、守衛は警戒を解いてくれた。

理子「なーんかすっごい物つけてるけど、なんなのそれ?」

 彼らが頭につけているラグビーボールのような機械が気になったのか、理子がまじまじと見る。頭頂部と目を完全に隠したその機械は、学園都市に住んでいないキンジたちにとって、もちろん異様なものだった。こんなのが街にいれば目立つのは間違いないだろう。

「悪いね。企業秘密だ」

理子「えー。ケチー」

 つっけんどんに答えた守衛に対し口を尖がらせる理子。彼らにも「守秘義務」というものがあると考えればあたりまえの反応だが、理子は気に入らなかったらしい。

理子「ま、いいや。その……エレンさんだっけ?に聞けばいいし」

 理子が名前を口にしたのと、その名前の人物がアリアたちの目の前に現れたのは、単なる偶然なのだろう。

 ノルディックブロンドの長髪にスーツを着こなした「大人の女性」を絵に描いたような女性は周りにいた守衛が目にした瞬間、起立の姿勢になったことから、恐らく相当この企業においては重要な地位についている人物なのであろう。

 キビキビとした態度でキンジたちに礼をした後、その女性は自身の存在を明かした。

エレン「遠山金次さん、神崎・ホームズ・アリアさん、星枷白雪さん、峰・理子・リュパン4世さん、レキさんですね。初めまして。私はデウス・エクス・マキナ・インダストリーの社業務執行取締役アイザック・ウェストコットの秘書を務めております、エレン・M・メーザスと申します」

アリア「そう……あなたがDEM第二執行部部長のエレン・M・メーザスさんね」

エレン「はい。私が世界最強の魔術師、エレン・M・メーザスです」

 態度を崩さずに堂々と自分を「世界最強」と言ったその女性の絶対的な自信に、キンジたちは少し呆れ、守衛たちは脱帽するのであった。

 ──彼らは知らない。目の前の女性がビート板がなければ25メートルをろくに泳げない上、これが人類の限界なのだと明後日の方向に思い込むような人物であることを……。


 エレン・M・メーザスに連れられ、会議室のような一室に通されたキンジが驚いたのは、単純にいるとは思わなかった身内がいたからである。

ジーサード「お、兄貴じゃねーか。なんだ。兄貴も参加してたのかよ」

金女「あ、おにーちゃん。久しぶりー」

 そこに座っていた遺伝子学上の自分の弟と自分に抱きついてきた妹を見つけ驚きを露わにしたのは、キンジだけではなかった。

キンジ「おまっ……ジーサード!?」

 ジーサードとジーフォース。──和名は遠山金三と遠山金女。アメリカ政府の機関ロスアラモス・エリートにより生み出された「人口天才(ジニオン)」にして、キンジの父・遠山金叉の遺伝子を50パーセント受け継いでいる、キンジの遺伝子的な弟と妹である。

 しかし、彼はここにいてはいけない人物のはずだ。

アリア「あんた……ついこの前、胸に穴が空いたって聞いたけど」

ジーサード「あ?ああ。もう元通りだよ。ほれ」

 キンジが驚いていて酸素が足りない金魚のように口をパクパク一番の理由は、ジーサードがつい先日、猴の如意棒という名のレーザーによって胸に穴を開けられたことが大きい。まだこんなに動ける体ではないはずなのだ。ジーサードは。

 ジーサード自身が指で指してきた場所を見て、確かに傷口が塞がっていることに気づき、心配したこちらが馬鹿だったような、しかし弟の無事に安心したような、複雑な気持ちに陥る。

 そして、見知った顔がもう一人。

キンジ「………………カナ」

カナ「久しぶり、キンジ」

 何故、彼──いや、今は彼女だが──がここにいるのか。十中八九キンジたちと同じ理由だろうが、それ以外にも聞きたいことはキンジには山ほどあった。

ジーサード「カナも俺も……兄貴と同じ理由だよ。ここに来たのは」

白雪「……どうやらそうみたいだね」

 なんにせよ……奇妙な形でまた、遠山兄弟が全員、集まることになったのには変わりないだろう。

 それぞれが、お互い微妙な心境なのか話を切り出せないまま──もう一度現れたエレンに促され、各々が席に着くこととなった。


 その後、エレンが部屋に連れてきた短髪白髪の少女を交え、エレンが代表として今回の依頼の説明を始めた。

エレン「まず今回の依頼を受けていただき、社長に変わりお礼を申し上げます」

ジーサード「いいよいいよ。そんなもん」

 机の上に足を乗っけるという、失礼極まりない態度で返すジーサード。

ジーサード「無駄は省いてよ……本題に入ろうぜ」

エレン「分かりました」

 あくまで機械的にジーサードに対処するエレンに「大人の余裕」を感じながら、依頼の本質に集中する。

 ──キンジたちは知らない。ここにいる女性が「大人の余裕」どころか、好物を馬鹿にされたという理由で部下に恐ろしい制裁を与える、子供っぽい人物であることを……。

エレン「今回の依頼についての詳細の内容についての、資料をお渡しします。今回この場におられない方々の分も、申請していただければご用意できます」

 そう言うエレンの声と同期するように、20枚ほどのコピー用紙の束を渡し始めたのは短髪白髪の少女だった。

 彼女もDEM社の職員らしい。おとなしい感じの少女に見えるがまるで鋭い刃を隠しているような、心情が読めない雰囲気はなんとなくレキに似ている気がした。目付きや雰囲気から単なる表の人物とは思えない彼女も、エレンが率いるというDEM社第二執行部の魔術師なのであろう。

「……なんでしょうか」

キンジ「ん、いや。なんでもない」

 どうやら視線に気づかれたらしく、自分に目を向けてきた少女に手を振るキンジ。右と左の両方から相当な目力で睨まれた気がするのは気のせいではないだろう。

エレン「……では、まずは各能力者の詳細な説明から……」


ジーサード「おっと待った」

 始まろうとしていたエレンによる学園都市のレベル5についての説明。今回、それぞれ依頼を受けた武偵校、ジーサードリーグ、カナの代表者がここに集まっていたのは、依頼における「保護」の中に名前が入っている8人の人物の説明及び担当するレベル5を決めるためである。そのため、キンジたちが受け取った簡素な資料では詳細が伝わらないため、ヨーロッパ武偵連盟と同じ依頼主となっているDEM社の学園都市支部に足を運んだのである。

 それを止めたのは、資料の数ページ目の部分を開いていたジーサードであった。

ジーサード「この第七位……削板軍覇っていうのは俺に任せてくれねぇか」

 ジーサードが示すページ。そこには学園都市第七位のレベル5、『ナンバーセブン』削板軍覇の顔が写っていた。

エレン「……対処する能力者への作戦等は後々立てるつもりですが……別にいいですけれども、どうしてなのですか?」

ジーサード「なに、こいつとはちょっとした因縁があってよ」

 飄々と話すジーサードだが、キンジは、彼の目が生き生きとしていることに気づく。ジーサードが相対するのを楽しみにしていることがまじまじと分かる反応だった。ジーサードをそれほどまでに反応させる相手ということになる。となると因縁という言葉が気になるが──。

キンジ「なんだよ。因縁って」

ジーサード「なーに。兄貴が知るようなことじゃねーよ」

 やはりはぐらかされた。まあこの男のことだから「以前闘った因縁」とか「闘ってみたい相手」とかそんなところなんであろう。

エレン「分かりました。では、これより学園都市の超能力者、レベル5についての説明に移させていただきます。まずはお手元の資料の──」


3,







アリア「──本当に無茶苦茶ね」

 レベル5の個々の能力。それを聞いた一同の感想を代弁するかのようにアリアが呟いた。

理子「物理法則を曲げちゃうのが最低でも2人。10億ボルトの電流を操るのが人が1人。装甲を貫く破壊兵器をバンバン撃っちゃう人が1人。原理不明の能力を操るのが2人……。こりゃーいくらなんでも詰んでない?」

 物理法則を曲げるだなんてのがいるだけでも、キンジたちの予測を超えている。

 確かに相手はただの人間だ。今まで通り殴れば血も出るだろうし、銃で撃たれたら血だって出るはずだ。

 が、そこまでのプロセスが難しすぎる。『一方通行』の能力者などはあらゆる攻撃、あらゆる自身の運動を能力でどうこうしてきたからか打たれ弱いことが指摘されたが、そこまで辿り着く方法が不明だ。資料には、これまで彼らと闘った者たちが対処した方法も記されていたが、ぶっちゃけキンジに使えそうな方法はないに等しい。

 レベル5。キンジはこの者たちとどう相対するかで、この依頼の成功か失敗かが決まると思っていた。

金女「あ、私から一ついい?」

 思考の渦の中で、金女の声が聞こえた。どうやらエレンのうなづきという承諾を得た彼女は、その口からキンジの思考の中から消えていた「とある名」を出す。

金女「カミジョウトウマって……あのカミジョウトウマ?」

 上条当麻。レベル5以外で唯一の保護対象者。未だにエレンの口から説明がされておらず、ヨーロッパ武偵連盟が「一番の重要人物」としていた少年。

キンジ「あのって……有名人かなんかなのかそいつ」

 ここでキンジは真っ当な疑問をしたはずだった……が、周りの反応(バスカービルのメンバー以外)から、この質問が場違いな物だったということに気づいた。

ジーサード「おいおい知らねえとは言わせねぇぞ兄貴」

 きょとんとした顔をしているキンジに呆れるジーサード。どうやらそれほどのビックネームだということには気づいたが、キンジにはそのような名前など聞き覚えがない。


ジーサード「マジかよ……。カミジョウトウマっていや第三次世界大戦にグレムリンの一件の中心人物だぞ」

キンジ「はぁ?」

 ジーサードが言い出した言葉に素っ頓狂な声を出してしまうキンジ。第三次世界大戦、グレムリンの一件。どれもここ最近で起こった、歴史に名の残るような大事件である。それくらいはニュースで聞いたり映像を見たことがあるが、それの中心人物だと言うのだろうか。このツンツン髪の少年が?

アリア「………………あっ」

 困惑するキンジに続いて素っ頓狂な声を上げたのはアリアだった。

アリア「思い出した……!どこかで聞いたことがあると思ったんだけど……英国でのブリテン・ザ・ハロウィンにも関わってたんじゃ」

 ブリテン・ザ・ハロウィン。アリアの故郷イギリスで起こった第二王女キャーリサと英国の三派閥の内の一つ騎士派によるクーデター事件。ちょうど、キンジたちがジーサードの一件でゴタゴタしていた頃の出来事で、これも後世の歴史に名を残しそうな大事件である。

カナ「その通りよ」

 その答えを言ったのは沈黙を貫いていたはずのカナであった。一同の視線がカナに移る。

カナ「そこに載っている「絶対能力進化」計画を、学園都市最強の能力者「一方通行」と相対して敗北させることで頓挫させたのも彼。ブリテン・ザ・ハロウィンにおいて王室派や清教派と場の収集に尽力したのも彼。第三次世界大戦の裏で動いていた黒幕に突っ込んで行ったのも、グレムリンの一件に深く関わり、そして六十億人を相手にして魔神オティヌスの罪を全うに清算させるために闘ったのも彼よ」

理子「あー!!」

 ここまで来て叫んだのは理子だ。例の「上条当麻」の写真を見ながら、奇声を発している。

理子「そういやこの子、確かデンマークの一件に映っていた、ツンツン髪の少年じゃん!」

 そして聞き逃せない一言を発した。

 反射的に資料の中の彼の写真を見やるキンジ。確かに、その出で立ちはあのデンマークにて魔神という1人の六十億人に押しつぶされそうになっている少女の自殺を叱咤し、救おうとした者の姿と似ていた。

白雪「ほんとだ……なんで気づかなかったんだろう……」

レキ「……」

 白雪やレキもそのことに気づいたらしく、絶句しているのがよく分かる。

キンジ「こいつ……そんなに凄い力を持った能力者なのか?」

ジーサード「「幻想殺し」って言ってな」

 キンジが漏らした一言を拾い上げるジーサード。視線は再びジーサードへと集まる。

ジーサード「どうやら、右手のひらに触れたあらゆる異能の力を打ち消す能力を持つらしい。超能力も、超能力(ステルス)も、魔術も、顕現装置によって再現された魔法も。俺を貫いたあのレーザービームすらもかき消せるんじゃねぇか?」

キンジ「猴の如意棒を……!?」


 キンジは絶句する。つい先日見たばかりの光速の一閃。あれは間違いなく必殺の一撃で、キンジにはまだ攻略法すら見えていないのだ。それを右手が触れるだけで防ぐことができるとは……。

 しかしキンジは、まだ上条当麻という人物を完全には理解できていなかった。

キンジ「けど……そいつが打ち消せるのは異能の力だけなんだろ?あいつ自身は特に戦闘訓練もしていないって言うじゃないか。だったら俺やジーサードが当たれば簡単じゃないのか?」

 資料から見れば、彼はキンジたちのような荒事に日々まみれた武偵ではない。銃の使い方も知らないだろうし、素での戦闘能力は素人に違いない。

 それにジーサードは「ハハッ」と薄い笑いを浮かべる。

ジーサード「……あいつがただ右手に変な能力を持ってるだけの存在なら、あるいは今の世界は随分と違ったんだろうな」

キンジ「は?」

 今の世界は随分と違う?どういうことだ?この少年は銅像が立つようなことをなんども

カナ「他に数点、彼には突飛つすべき点があるわ。その異常なまでの「打たれ強さ」……ただの一般人が風速120メートルの暴風に吹き飛ばされ、風力発電の支柱に激突して、立ち上がれると思う?」

「「「「…………」」」」

 今度こそ、本当に絶句した。

 スケールがでかすぎて完全には理解できないが、それでも自分がヒステリアスモードになってようやく抜け出せるような危機にその少年は遭い、それに遭いながら立ち上がったということになる。もちろんキンジだってそんな激突の仕方をすれば立ち上がれまい。それ以前に死んでもおかしくない重症になるのは間違いない。

カナ「更に……彼は人の心を解きほぐすのを得意としているのよ」

ジーサード「猜疑心、復讐、諦め……今まで、そいつは様々な敵と闘ったらしいが……その多くが何かがねじれて暴走してる連中だったらしい」

キンジ「……」

 自分とは正反対だな。とキンジは思った。キンジの場合立ち向かってくる敵は、何かが狂っているわけでもなく、ただ単純に闘うためにくる連中ばかりだ。おそらく、自分が今まで乗り越えてきたものとは、まったく別種の方法が必要となってくるのだろう。

カナ「彼の一番の力はそのねじれを解くことにあるのよ。一つ一つ、慎重に強敵の心の中の憎悪を解いていく。だからかしら……彼を損得ではなく感情で助けようとする人間は多い」

ジーサード「上条勢力って言ってな」

 「勢力」だなんて大仰な言葉を一笑に付すことは、すでにバスカービルの面々にはできなくなっていた。

ジーサード「学園都市のレベル5、必要悪の教会、魔神……ウチの大統領も面識あるっていうから相当なもんだろ」

レキ「大統領……アメリカのロベルト・カッツェ大統領のことですか」

 そういえばジーサードは何回か大統領のシークレットエージェントを勤めたこともあると聞いている。もしかしたら、個人的な繋がりというものを持っているのかもしれない。

金女「他にもイギリスの王室派とも利害の一致で協力関係になれるらしいから、どれだけめちゃくちゃな人物が分かるでしょ?」

 レベル5。今回の依頼に置いてこの存在が重要な位置を持つことには変わりはない。


 しかし、「上条当麻」という存在も、それと同等以上の位置を持つことを、キンジたちは理解した。


キンジ「まさか……俺以上に色々なことに巻き込まれている高校生がいるなんてな…世界は広いな。超人ランクもさぞかし高いと見た」

ジーサード「あ、ちなみにあいつは「幻想殺し」と耐久力以外はいたって普通だし負けることも多いから超人ランクには名前はねぇからな。どっちかっていうと身体能力なら兄貴の方が化け物だぞ」

キンジ「……」

 黙るしかなかった。


4,







 大分寒くなったなと考えながら遠山キンジは学園都市を歩く。

 その後、依頼に関わる者同士、改めて自己紹介をし(といってもキンジにとっては身内ばかりだったので自己紹介と言えばエレンの部下であるという鳶一折紙という少女くらいだったが)、現在はホテルへと戻っていた。ジーサードやカナも、それぞれの潜伏先へと戻っている。

 とりあえずの動きは決定した。依頼の決行は今夜0時ジャストに行われることになっており、すでにキンジたちの装備は整えられている。いささか時間が足りなすぎる気もするが、学園都市の統括理事会が嗅ぎつけてくるかろしれないリスクが増えるとなると、迅速な行動をしなければなるまい。

 今回の依頼において協力態勢を取っている2つの組織。今回はそれぞれの組織両方による依頼となっているが、2つの組織が収集した受注した対象者や組織には違いがある。

 主にDEM社には個々の実力が高い者たちが集められた。キンジやジーサード、カナは言わずもがな超人ランクに名を連ねていたり、Sランクの武偵、DEM社が率いる第二執行部の精鋭などの個人で学園都市の能力者を相手取ることができるような者たちが集まった。

 対して、ヨーロッパ武偵連盟が収集したのは個の能力が高い者や組織ではなく、群として完成された組織らしい。資料によるとプライベーティアとかいうロシアの組織に所属していたものや、「脱落者(ドロップアウト)」とか言う学園都市内の組織がそれらしいが、資料に載っていた以上の詳しいことは知らない。

 ともかく作戦は動き始めた。キンジたちも、武偵校に向かった武藤や不知火たちが戻り次第、行動を開始する。

 ジーサードが率いるジーサードリーグが食蜂操祈と彼女が率いる能力者たち──派閥というらしい──と削板軍覇を担当する。第七位はもちろんジーサードが志願したのだが、第五位を彼らが相手にすることになったのは人間ではないジーサードの部下がいることと、彼らが有する先端科学兵器がよく刺さることが理由となっている。

 カナは個人での依頼の受注ということなので、相手にするのは御坂美琴1人だ。学園都市に匹敵する科学技術を持つ先端科学兵器やDEM社の顕現装置にはもちろん電気系統も存在する。あらゆる電流を自在に操る能力者にとってそれらは悪手すぎる。そのため、カナが彼女を担当することとなったのだ。10億ボルトの電撃を放つというとてつもない相手だが、あのカナのことだ。心配は無用だろう。

 物理法則を無視できるという一方通行と垣根帝督。説明も理解もできない彼らに対抗するには、同じ説明も理解もできない力でなければならない。彼らを相手にするのは「精霊」という能力者以上の化け物と相対するだけの性能を誇る顕現装置を操る魔術師たちだ。知り合いですらない短すぎる付き合いだが、任せても安心できるはずだ。

 ──例え相手が、人体実験や科学兵器を生み出しているという、黒い噂の絶えない企業でも。

 そして、キンジたち武偵校の面々が相手にするのは麦野沈利、及び彼女がリーダーを務めるという「アイテム」という小さな組織だ。レベル4が2人。その内の1人はどうやら第一位の演算力を植え付けるという内容の研究の被験者らしく、防御力の一点のみなら第一位にすら匹敵するという話だ。残りの1人は無能力者だが、こっちは手先が器用で車の鍵開けや爆弾の解体などはお手の物、更には学園都市の科学技術で作られた様々な兵器を使いこなすことも可能らしい。単体での戦闘力も「そこらのスポーツ選手と同じことをやっていた」らしく、麦野沈利ほどの実力者ではないとはいえ油断はできないだろう。

 そして正体不明の第六位。彼──もしくは彼女──を探すには物量による情報収集が物を言うという話なので、ヨーロッパ武偵連盟が依頼している組織たちが、スキルアウトや風紀委員、警備員と共に対処するという話だ。

「学園都市のレベル5はほとんどが人格破綻者との話です。統括理事会が我々のことを察しているとなると、戦闘になるのは必須でしょう」

 エレンが言っている通りとは思わないが、話し合いでどうこうできる相手かは会ってみなければ分からない。しかし、もし昨日の襲撃が彼らによるものなら、戦闘は避けられないだろう。

アリア「うーん…………」

 そうなことを思案していたキンジの横で唸っているのはアリアだ。キンジはそれに気づかなかったが彼女の眉間にはシワがよっており、エレンから渡された資料のあるページに視線を集中していた。

レキ「……どうしたんですか?アリアさん」

 いち早くアリアの表情に気づいたのはレキ黙った。なんだかんだでこの面子の中で2人の付き合いはかなり長い。コンビを組んだことも多いし、お互いの微細な表情の変化くらいはすでに読み取ることはできるくらいの関係になっている。

アリア「──この顔、どっかで聞いたことがあるのよね」

レキ「…顔?」

 アリアが呼びさす資料に書いてある、ある人物の名前を覗き見るレキ。

 主に学園都市の組織だという「脱落者」についての情報が載せられたそこには、こう書いてあった。


 「脱落者」メンバーの6人の内の1人。白髪の30代くらいの男性だが、はっきり言って目がイっている。どっからどう見ても危険人物だが、隣の醜悪な老人の写真が作用しその見た目の危険度は薄れている感じがする。

アリア「どこだったかしら……」

 アリアは結局辿り着けなかった。

 もしもここで気付いていれば、この依頼が前提から覆るようなことにも限らず。


 ──コードネーム「アルベリヒ」。


 かつての、ある人物の宿敵。







第一一話「超人を唸らすただの人間」 完

ってなわけで第一一話、どうでしたでしょうか?次回からは病気で休まないよう、体調管理にも気をつけていきます!

では、また来週。……になるかな?

2015年 3月 22日
境界線上のホライゾンとストライク・ザ・ブラッドのアニメ視聴中の常盤赤色

乙ー

改めて上条ちゃんって異常だよなぁ・・・

乙です

乙 士道の名前が指導になってるぞぃ


デートの映画の前売り券四月に発売するけどペア券じゃないと特典付かないらしい…畜生!!

新訳10の上条

・白翼モードで突撃してくる一方通行を受け止める為に、
 自分の右拳に石を叩きつける&肩が外れかける。
・「晩餐の魚」で2回ぐらい肩が外れる。
・聖人から後頭部を殴られて気絶。
・音速移動する聖人を転ばせる「石」になり、
 脇腹の骨がメキメキメキィ!と折れる。
・上空1500メートルから落下
・針葉樹の枝が太ももに突き刺さる。
・ガソリンスタンドの爆発に巻き込まれる。
・200メートル級の巨人とたわむれる。
・アメリカ軍の兵士から後頭部を殴られる。
・美琴ちゃんからマウントでボコボコにされ、
 渾身のビリビリ攻撃を受ける。
・「主神の槍」の爆発に巻き込まれる。
・インちゃんからガブガブ噛みつき。
・背にしている太い針葉樹が折れるほど、
 聖人パワーで血袋になるほど殴られる。
・全能トールから急所パンチ連発。
・オティヌスの「弩」を右拳で受け止めて
 指や肩の関節がメキメキボキボキィッ!!!!
・その他、描写されない細かいダメージいろいろ。

「幻想殺し」と耐久力以外はいたって普通と言うが上条さんにはまだ「前兆の感知」と「竜王の顎」というスキルがあってだな…

遅れましたが、感想を。とってもイイです!
かまちー作品のコラボ小説ネタを使ってくれてうれしい。
あと、─世界は険しくて、敵意や憎悪なんてたくさんあって、でも全部合わせるとちょっぴり善性の方が多いよね、という希望の残る物語
というかまちーのあとがきの中でも特に心に響いた文をだしてくれてありがとうございます。いいですよね…
たくさんの作品のキャラもみな光っていて、読んでいて楽しいです。
これからもがんばってください。応援しています

面白い

期待

>>1のお尻にそげぶ

>>511
乙ありです。上条さんが異常って否定できない辛い。

>>512
乙ありです。

>>513
乙&指摘ありです。

>>514 >>515
本当に何なんでしょうね上条さん。

>>517
ご丁寧な感想ありがとうございます!これからも不肖の>>1ですが、どうぞよろしくお願いします!

>>520
ありがとうございます!

>>521
ありがとうございます!

>>522
でやがったなステルスホモ!貴様の好きには(ry


こんな時間からですが更新いきたいと思います!では。


1,







 キンジたちの会合が終わったちょうどその頃。学園都市では別の交わりが始まったところだった。

「「げ」」

 学園都市の一角。どこにでもあるコンビニの内の一店。その店には今現在他の店とは決定的な大きな差異があった。

 レベル5の内の2人──第三位の御坂美琴と第四位の麦野沈利がいることだ。

 コンビニの雑誌コーナーにて週間の漫画雑誌を立ち読みしていた美琴が偶然にも入り口に目を向けたタイミングで店の自動ドアを潜った麦野。お互いの顔を目視した瞬間嫌そうな顔したのも仕方のないことだろう。この2人、多少の因縁があることを知るものは少ない。

絹旗「?どうしたんですか麦野……あ、超電磁砲」

 突然入り口にて停止した同行者を不思議に思った絹旗最愛も麦野の目線の先へと目を向け、停止した理由を見つけた。

 「アイテム」という小さな組織と御坂美琴が交戦したのはおよそ3ヶ月前というところだろうか。妹達のことを1人で背負い壊れかけていた美琴と、「絶対能力進化」計画に関連した研究所の1つの警護を依頼されていた「アイテム」。両者とも激突したときとは心境も環境も数ヶ月の間で随分と変わっているが、それでもお互い、顔を合わせたくない相手には違いない。

 だったらどちらかが無視を貫いて店を出ればいいのだが、どちらもこのコンビニに、正確にはコンビニの雑誌コーナーに用があって来店しているのである。目的の物は他の店にも売っているかもしれないが、ここから一番近いコンビニに向かうとなると、本来のこの周辺に来た目的に間に合わなくなる。

 見た目だけなら文句無しの美少女と美女がお互い見つめ合っているとなるとどこぞの漫画描きが見れば迷わずネタにされそうな構図だが、どちらも嫌そうな顔をしているので台無しだった。


 結局、先に口を開いたのは麦野だった。

麦野「──コンニチワ」

御坂「…………コンニチワ」

 片言での挨拶で済ませ、相手を無視する方向に麦野は決める。幸い、お目当の雑誌はすぐ見つかったし、すぐさまこの店を出れば気まずい空気からは解放されるだろう。待ち合わせの時間まではまだあるが、元々ここでなく近くのカフェにて時間を潰す予定だったのだ。何の問題も無い。

 が、麦野がそうであっても、御坂はそうではなかった。

御坂「…………あんたも、あのメール来たの?」

麦野「あ?」

 雑誌が置いてある棚の関係でどうしても御坂の真横に来なくてはならなかった麦野は隣に立った瞬間、突然話しかけられた。普通ならいきなり「メール」の話をされてもわけがわからない。しかし、麦野には1つ心当たりがあった。

麦野「……「あの」メールか」

御坂「その反応を見ると、あんたも……」

絹旗「?超顔をしかめて何の話ですか?」

 隣の麦野の反応、更に隣の絹旗の反応からあのメールが自分だけではなく、他のレベル5にも届いているらしい。御坂と麦野だけに送っていたと考えるとなると、御坂と他のレベル5が顔見知りですらなく、お互い情報交換することがないと断定することになる。確かにこの学園都市で他のレベル5に会う確率はかなり低いが、だからと言って0ではないのだ。もし、これが統括理事会を名乗るだけの人物となればそのくらいは予期して当然だろう。

 どうやら、「全てのレベル5に向けて」という言葉は信じていいようだということはわかった。少なくとも、今回事態に巻き込まれたのは自分だけではない模様だ。

御坂「…………どうする気?」

麦野「どうって……別にすることなんてねぇよ。あのメールが本当かどうかなんて知ったことじゃないからな」

御坂「もし、あのメールが本当だったら……」

麦野「それだったら簡単だ。私たちを狙うんだったら腕の一本や二本じゃすまないことくらいはわかってやるんだろうよ」

御坂「…………」

 確かに、軍隊と戦うことができると言われているというレベル5と戦うとなるとそれなりの兵力は持ってくるはずである。それでも所詮は外部の技術だ。左にいる女なら少なくとも全員が腕の一本や二本は消し飛ばすくらいのことはするだろう。自分も、その程度の相手に負ける気はない。

 しかし、それでもあのメールの内容は無視することはできなかった。


御坂「けど……大事な人を巻き込むわけにはいかないの。できれば、私は穏便に済ませたいのよ」

 もちろん、自分だけが狙われていると聞けば喜んで敵を返り討ちにするし、こんなメールここまで気にかけることもしなかっただろう。それは大事な人が狙われているとなれば大きく翻る。

 自身の大切な友達を、妹達を、巻き込みたくない。

麦野「だったらお前はお前で好きにすればいい。さっきも言ったけど私は知ったことじゃないからな」

 ただしその考えは御坂の物で、麦野は全く違う考えをしていた。

 確かに、彼女にも失いたくない物はある。しかし自分の身を守れるのは結局のところ自分のみなのである。もし、外部の組織ごときにやられたらそれはそいつが弱かっただけなのである。

 麦野沈利は丸くなった。しかし、彼女の本質事態に変化はない。

 もっとも、それは本人がそう思っているだけかもしれないが。

 なんにせよ、麦野は御坂の事情なんて自分の事情に組み込む気は無かった。赤の他人がどうなろうとどうでもいい。

御坂「……あんたが暴れると私の知り合いに危害が及ぶかもしれないって言ってんだけど」

麦野「だからそんなん私の知ったことじゃないって言ってるだろ?」

 御坂も予想していた答えだったが、だからと言ってここで戦って相手の考えをねじ伏せたところで何も変わらないだろう。もし、この女が暴れることで友達や妹達に危害が及ぶなら、その危害を未然に防ぐのが自分の役目だ。

 それにまたあいつを自分の事情に巻き込んで怪我をさせるわけには──

(…………ってなんでそんなこと思ってんの私)

 知らず識らずの内にあの馬鹿の顔を勝手に思い浮かべた自分に気づきあたふたとする御坂。佐天や初春辺りが見れば微笑ましい目で見られるのだろうが、あいにく今隣にいたレベル5とレベル4は御坂の挙動不審な動きにまったく気がついてなかったようだ。

麦野「そういうわけだ。分かったらここでおさらばだな。私たちが手を組んだって碌なことにならねぇ」


 そんなことを言いながらお目当のファッション雑誌を手に取りレジへと向かう麦野。「ちょっとちょっと。無視ですか?超無視ですか?さっきから何話してるのかって──」と麦野の背に非難を浴びせ続ける絹旗も、それに続く。

 本来ならそこでレベル5の第三位と第四位の短い会合は終わっていたのだろう。お互いがお互いに複雑な物を抱きながら応じた彼女たちだけの会話はここで打ち切られ、また彼女たちはそれぞれの日常や非日常に帰っていく。

 ここで、1つの異常がコンビニの店内へと転がり込んできた。

 開く自動ドア。別になんの変哲も無い光景だった。コンビニの入り口は自動ドアなのだからセンサーに人が近づけば自動ドアが左右にスライドし、開くのは必然というか世界の理と言えよう。様々な技術が発達した学園都市だが、このような日常に関わる技術は一部を除いて外部とあまり変わりないのが現状だったりする。

 開いた自動ドアだが店内に入る影はない。これもありえなくもない光景だろう。自動ドアはセンサー式なので入り口を横切るだけで開く場合もある。コンビニ前の歩道は広いがコンビニ前を横切る歩行者もいよう。これも日常的にはありえなくない光景だ。

 ただし、人が入ってこなかった代わりに入ってきた物があった。

 それはフローリングの床をコロコロと転がり店内へと入ってくる。楕円状の凹凸があるそれは、一方にレバーのような物が取り付けられておりその形は御坂や麦野、絹旗にも見覚えがあるものであった。

 手榴弾。その単語を御坂が思い浮かべた頃には──


2,







 茅場晶彦の「真の異世界の創造」という渇望を具現化するため行われ、4000人近い死者を出した狂気のデスゲーム、SAO事件。その死者の内の40分の1を超える数を殺害した、とあるPK集団がいたことを知るのは、一部の人間だけだ。

 その名はラフィンコフィン。名の意は「笑う棺桶」。ゲームオーバーが現実での死を意味するSAOにおいて、PKを快楽の手段として行ったSAO最悪最恐の殺人ギルドだ。その凶悪性から当時SAOの攻略に当たっていた「攻略組」有志50人による捕縛隊が組まれ戦闘となり、討伐隊11名、ラフコフ側21名という最悪の結果を残して壊滅。その出来事はキリトやアスナ、クラインといった殲滅作戦に参加した者たちにとって最悪の出来事となり、その記憶に刻まれることとなる。

 事件から一年が経とうとしている今でも、その禍根は攻略組、ラフコフ組、両方の帰還者に深く根付いている。後ほど起こる死銃(デスガン)と名乗るプレイヤーによってGGOにて起こる一連の騒動も、ラフコフの幹部であった2人の人物が中心となり起こされたことで、禍根の一つと言っても過言ではない。

 そして、POHの誘惑・洗脳により狂的なラフコフのメンバーになったものも少なくない。

 今回編成されたプライベーティアのメンバーの一部は、まさにそれだ。

 SAO事件を引きづり、未だに手に染み付いた仮初めの、相手の命を奪う感触を忘れられず、しかし舞い戻った現実の世界ではそれが容易にできなくなってしまった、快楽のやり場のなくなった彼ら。そんな彼らにとって今回の誘いはまさに極上の禁断の果実だった。

 元々プライベーティアは「一方的に人殺しがしたい」のただ一点のみを持つ軍隊経験が有る者で編成された連中である。人殺しを快楽の手段とする元ラフコフのメンバーが彼らに馴染むのに、時間はいらなかった。

 出会って2日。もはや彼らは歴戦の戦友のような仲へとなっていた。

 ──人を殺す。ただのその快楽の前には。





「うわっ……すげぇ威力だなこりゃ。しかしこんなんで学園都市のレベル5がやられんのかよ。バケモンなんだろ?あいつら」

「レベル5って言っても体は生身らしいしな。流石に不意打ちでこれはな。ってか、本当ならこんな爆薬とかじゃなくて直接ヤりたいんだけど……」

「やめとけ。殺し合いの先輩が教えてらやるけど、ギリギリの殺し合いがしたいなら諦めろ。向かったところで一方的にノされるのがオチだ」

 狂気に顔を歪める者。淡々と「殺し」を遂行しようとする者。なんでもないように、仲間内で会話をする者。そんな彼らが逃げ惑う一般人が大勢いる原因となった、爆音が響き黒煙を上げ続いているコンビニを取り囲んでいた。

 その連中の服装はバラバラだ。まるでどこぞの傭兵のように重火器を体に纏った奴。それとは正反対的に剣やナイフなどの刃物にローブやマントという、どこかのゲーム内のような格好をしている奴。後者には、体のどこかに特徴的な「笑う棺桶」のタトゥーが入れられていた。

 まるで服装の主旨も時代感も違う一団。その十数名には共通することは──誰もが、この状況を、「人殺し」を楽しんでいることだった。

「しかしラッキーだったな。まさかこんなに早く対象が見つかるとはな。さっさと終わらせて、これから来るっていう風紀委員とか警備員とか言うやつで、思う存分楽しもうぜ」

「そうだな……ってか。ギルマスやザザたちも惜しいことしたなぁ。……こんなに楽しめそうな場を用意してくれるって聞いたら喜んで参加してきただろうに」


「ギルマスって……POHってやつのことか」

 すでに意気投合した彼らは、元ラフコフメンバーから彼らを束ねたギルドマスター、POHの話は聞いており、その存在について知っていた。

 POH。ラフィンコフィンの創設者であるギルドマスターにしてSAOで最も猛威を振るったPK。ユーモラスなキャラクターネームとはかけ離れた、冷酷で狂気的な思考を持った殺人鬼であり、美貌とカリスマ性を持った悪のカリスマである。彼が犯罪者プレイヤーに行った誘惑・洗脳は凄まじく、未だにPOHをまるで信仰団体の教祖のように崇める元ラフコフメンバーもいるほどだ。

「ああ。ギルマスは連絡取れなかったからしょうがないけどよ。ザザの奴は確か何か準備があるとか言ってたな。……そういやジョニー・ブラックの奴も」

「どうでもいいけどよ。そろそろこいつ、嬉しすぎて腰砕きになりそうだぞ。ヨダレも垂らして相当やばいな」

 少年から中年まで、大小様々な男たちの中で年長者の部類に入る1人がへたり込んだ自分よりふた回りも下だと思われる少年を見る。自分たちも今の感慨を深く感じてはいるが、少年は完全に高揚した顔でヨダレを垂らしながら笑っていた。常人から見れば完全に狂気に支配された笑みだったが、彼らにとっては態度に表してないだけで、内心同じ感じなだけにすぎなかった。

「あぁ。そいつかなりギルマスにゆっくりと教育されてたからな。久々の感覚で快感が過ぎたんだろ」

「けどよー。これ、死んでないよな?死んでたら貰える金が半減するわこの後の殺しができなくなるわで面倒なんだけど」

「うーん。大丈夫じゃないの?」

 人の命をまるで食事するかのように簡単に自らの快感に食い潰すことができる彼らにとって、これからできる快楽の吐き場が無くなることは死活問題に等しい。そのくせ、「ダイヤノイド」の壁でも簡単に破壊できるという火力の手榴弾を後先考えず投げ入れたことも、彼らが快楽を後先考えず先に置く、すなわち狂っているという証明になるのだろう。

 近くにいた男が腰砕きになった少年を立たせようと手を差し伸べた。

 同時に2度目の爆煙が上がる。

 先ほどと似た爆煙は一瞬手榴弾の物にも見え、男たちの1人は身内がまた手榴弾を投擲したのかと思った。

 が、元軍隊の男たちは気づく。今の爆煙には1度目と違う箇所があると。正確には、戦場で彼らは慣れっことなっていたあの、硝煙の臭いがしないのだ。


 そしてその理由は明確に示された。

「ッ…………ギャァァァァァァァァァァァァァァ!?」

 突然隣から聞こえてきた叫び声に反応し、剣とナイフを構えていた少年も、腰砕きになっている少年に手を差し伸べた男も、その声の主を探し、そしてそれを目視した。

 声の主はすぐそこにいた。自分たちと同じプライベーティアのメンバーである男。

 第一の爆破からずっと沈黙を続けていた男の右腕がなかったのだ。

「え…………」

 腕が消えたことに気づかなかった。男が絶叫したのはどちらかというと、腕が弾け飛んだ際の痛みによるものではなく、突如右腕が無くなっていたショックによる混乱と恐怖によるものだろう。あまりの高温で傷口が完全に炭化し、余計な出血はない。そもそも出血しない体だが、それでもその傷口の異常さは数々の戦場を渡り歩いてきた男たちだけではなく、医者志望でもなく人体の勉強などしたことのない少年たちにも見て取れた。

麦野「……チッ」

 それに続いて発せられた舌打ちは爆煙の中からだった。しかし野太い軍隊崩れの野太い声でもPKという行為によって狂った少年の声変わりしかけの声でもない。

 握り拳大の閃光を周りに滞空させながら爆煙を切り裂き現われたのはもちろん、学園都市最強の能力レベル、レベル5の1人麦野沈利。

麦野「もう金払ったのに雑誌がボロボロで読めねーじゃねーか。弁償してもらおうにも店側の過失じゃねーし。レジから金取るわけにもいかないし、そもそも壊れたしよ……」

 確かに、ここにいる彼らのいた場所も十分な地獄と言える場所だっただろう。戦場とSAO、まったく趣は違うものの、そこで狂気を維持できてきた彼らは十分な異常者なのだろう。

麦野「それじゃ、おめーらが弁償してくれるって感じでいいんだよな?ええ?」

 まぁ、それすらも狂気渦巻く学園都市の暗部からすれば、生暖かいぬるま湯に過ぎないのだが。


3,







御坂「……ったく。普通こんな街中で手榴弾ぶっ放すなんて考えられないわよ」

 爆煙の中から麦野に続いて出てきたのは御坂美琴と絹旗最愛。御坂は背後に店内の店員やお客さんを守りながらの登場である。

 突然に投げ込まれた手榴弾による爆煙を店の前方のみに留めることができたのはレベル4以上の能力を持つこの3人のおかげである。御坂が磁力を使い手榴弾を誘導。その意図を察知した麦野沈利と絹旗最愛がそれぞれの能力、「原子崩し」と「窒素装甲」を使い壁を作成。自分たちの身を爆煙から守ったのだ。御坂と他の店内にいた者たちはついでという形で守られた結果となる。

絹旗「何言ってんですか。不意打ちは上等手段ですよ。まぁコンビニにいる客ごと対象を抹殺しようとする超イカレ野郎はあんま見たことありませんが」

 「あんま」ということは見たことがあるのか。と突っ込む御坂だった。口で言っても何にもならないし心の中で、だが。

 そんな事はともかく、と目の前の惨状を確認する──が、御坂はその惨状を見て眉をひそめた。

 ある程度の悲惨な惨状は覚悟していた。なにせ相手はあの第四位だ。先ほども思ったが、相手が腕の1、2本で済まされるとは思ってはいない。御坂は爆煙から出れば、麦野の周辺に手榴弾を投げ込んできた連中の惨たらしい末路が広がっていると考えていてさえいた。

 ところが麦野の周りにあるのは、先ほど御坂が読んでいた漫画雑誌ほどの大きさの鉱石がゴロゴロと転がっている姿だった。死屍累々とした環境見せられずにすんでホッとしたが、それでも場が異常なことには変わらない。

 店内にいた人たちを一先ず逃し、会話に参加することにする御坂。本当ならあまり一緒にいたくない相手であるが、今は協力した方がいいだろう。同じ判断を下したのか、麦野も何も言わなかった。

絹旗「ちょちょ。何ですかこれ。超どういう状況か分かんないですけど」

 麦野に問いかける絹旗。しかし麦野もさっぱりという顔をしたところ、場がどうしてこうなったのか理解できてないらしい。


麦野「私だって分かんねぇよ」

 鉱石を一つ拾い上げ、観察する絹旗だったが、別に彼女は鉱石系に詳しい科学者ではない。この鉱石が異常な大きさということがなんとなくわかるだけだった。

麦野「腕弾いたのはいいんだけど、そしたらなんかいきなり消えちまって。それだけ」

御坂「消えた?」

 御坂もこれまで様々な敵と戦ってきた。あの馬鹿ほどでは無いが、見てきた世界も常人よりかは随分広いとは思っている。

 しかし突然消える敵とは中々戦ったことはない。いや、「空間移動」系の能力者と対峙したことがないわけではない。

 しかし、いくら彼女が知る白井黒子でも、腕を消された恐怖とパニック状態で、正確な演算が行えるとは思えない。それに加えて相手は恐らく外部組織だろう。現にあの手榴弾は外部によって開発されたものだった。それならば彼らが能力者という推測は立たない。

 では一体、彼らは……。

絹旗「しかし、なんで初めから能力を使ってあの手榴弾を使えなくしようとしなかったんですか?この質問、麦野も超該当しますけどね」

御坂「ああ。そこ?」

 思考にふけっていた御坂は、絹旗の声に反応して顔を上げた。

 絹旗の言う通り、彼女たちの能力なら不意打ちの手榴弾でも使用不可能に簡単にすることができただろう。

 しかし、それをしなかった。ということはそれなりの理由があるというわけだろう。

御坂「流石に狭いコンビニの中であんなのに追い込まれたら戦いにくいしね」

絹旗「ん?あんなの?」

 首を傾げる絹旗。何のことだか分からないので当たり前であろう。

 すると「あんなの」という御坂の指が何かを指していることに気づく。ふとそこへ振り向いてみて、驚いた。

 視界を、白い何かが覆っていた。

 目の前にそびえ立つ巨大な骸骨。日本の古い妖怪で「がしゃどくろ」という妖怪がいるがそれと似たものだと思えばいい。アインクラッドにてキリトたちが戦った第75層のボス、ザ・スカル・リーパーとは違い、完全に人型の巨大な骸骨が空中歩道へと身を乗り出していた。

 その大きさ、およそ12メートル。十分な巨体と言えよう。

絹旗「……なんですか、これ。リアルな骸骨メカとか製作者のセンスが超問われるんですけど……」

御坂「これ、機械じゃないわ」

 いきなり乱入してきた巨大骸骨に嫌そうな顔をする絹旗の、間違いを訂正する御坂。

絹旗「え?ロボじゃないんですか?これ」

御坂「電気系能力者なら機械系統がないことは分かるわよ。もちろん、あいつだって分かってるんじゃない?」

 横目で麦野を見る御坂。反応からすればこれをちゃんと察知していた、と見てOKだろう。

御坂「で、どうするの」

 目の前を覆う巨大骸骨。それを正面に添えながら、御坂は横に立つもう一人のレベル5に疑問を示した。

麦野「だからさっきも言っただろ」

 手を振り上げてきた骸骨に構える御坂に対して、面倒くさそうに答える麦野。伸びをし欠伸すらしているが、彼女がやることは最初から決まっていた。

麦野「返り討ちにする。それだけだ」

御坂「いいわね。気に入ったわ。乗ってあげる。それ」

 こうして

 学園都市のレベル5、電気系能力者最強の2人が手を組むこととなった。


 同時刻。

 一方通行は昔の「グループ」のアジトの一つの跡である無人の地下街にいた。

 その周りに転がるのは同じ時刻に麦野の周辺に落ちた鉱石と同じもの。そこにあるはずのものは一方通行に不意打ちを仕掛け腕や足が外されたはずの無様な男たちの姿だが、それはこの場にはなかった。いや、忽然と消えたと言った方がいいだろう。

一方通行「どォなってン──」

 反射を切り、一先ず杖で鉱石を突いていた一方通行だったが、その目の前に新たな敵が出現する。

 突如現れたそれは、まるで何かのRPGゲームのボスとして出てくるような、モンスターと言える存在だった。

 目の前にそびえ立つ巨大な斧を振り被る獣人を見つめながら、一方通行はため息をつきながら言い放った。


 一言、「めンどくせェ」と。


 直後に

 圧倒的な力の暴力があった。





 さらに同時刻。

 垣根帝督──正確には、垣根帝督の「優しさ」が表面化した個体であるカブトムシ05は同じように、しかし他の面子よりかは十分に生温い方法で襲いかかってきた連中を撃退していた。──まぁそれすらも、撃退された面々にとっては十分、トラウマものだっただろうが。

フレメア「にゃあ?カブトムシさん、どうしたの?」

 彼らを撃退した路地裏から陽の当たる歩道へ出る。そのまま少し歩き図書館へと戻るとどうやらお手洗いに行っていたらしく、友達との席を外していたフレメア=セイヴェルンがこちらに気づき、寄ってきた。

 その顔に少しの不安があることを察知し、カブトムシ05──垣根帝督は笑顔でその不安を和らげることにした。

垣根「いえいえ。なんでもありませんよ」

フレメア「そうなの?大丈夫?」

垣根「はい。大丈夫ですよ。だからあなたも、早く友達のところへ戻ったほうがいいです」

フレメア「うん。分かった、にゃあ」

 そう言うとテコテコと級友のアズミという少女の元へと戻るフレメア。その背を見送って、垣根は再び外へと出た。

垣根「まったく……図書館ごと駆動鎧で襲おうと準備していた時は流石に驚きましたよ……」

 しかしあのカマキリを模した駆動鎧、どこかで見たことがある気がするのだが──それは今はいいだろう。

 今思考を向けるべきは襲いかかってくる敵に。守るは、あの少女、自分やあの少女がいたいと思う平穏な日常。

 自ら生み出した自分の分身(カブトムシ)たちから入る情報を纏めながら、垣根帝督は歩いて行った。

 学園都市の持つ闇を、何の考えも無しに解体しようとする者たちの、魔手の中へ自ら。


削板「超すごいパーンチ」

横須賀「だからそれはやめプギャァァァァァァ!?」

 またまた同時刻。学園都市のどこかにある公園にて、他のレベル5と同じく削板軍覇も襲撃を受けていた。

 まぁそれは一方通行や垣根帝督を襲った連中とは何の関わりもない、モツ鍋さんもとい内臓殺しの横須賀にだったが。

横須賀「ち、ちくしょう……第六位のヤローの仕事中に偶然見つけて、ここであったが100年目って感じでやろうとしたのに……相変わらずの馬鹿だしこいつ」

削板「お、意識あんのか。やっぱお前根性あるよな」

 既にリベンジマッチは50を越えただろう。前は「すごいパーンチ」一発でビブルチされていた男が数ヶ月で十発まで耐えれるようになり、「超すごいパーンチ」一発で意識が沈んでいたのが数週間くらいで一発くらいなら意識を失わなくなったのは、大した成長といえよう。が、いくら意識があるとはいえ立ち上がれなければ意味がない。

削板「ほら、手ェ貸すぞ」

横須賀「虚しくなるからやめろよって毎回言ってんだろ……」

 口では悪態を付きながらも差し伸べられた手を握るモツ鍋さんもとい横須賀。昔の彼なら手を引っ叩いていただろうが、削板軍覇に殴られてから、彼も随分変わったということであろう。

横須賀「……で、これはどうするんだ?」

 ちなみに、削板vs横須賀のタイトルマッチだが、その前にひと騒動があったことを知るのは、もちろんこの2人だけで有る。

 確かにモツ鍋さん、もとい横須賀は削板軍覇に一回も勝てた試しはない。しかし彼も随分と修羅場をくぐってきたものである。あれくらいの連中なら素手で返り討ちにすることができた。

 無能力者は弱い。それは否定はできないが、彼のように努力をし成長する無能力者だって大勢いるのだ。

 それはさておき、目の前にゴロゴロと転がる鉱石を見ながら、横須賀は解いた。襲いかかってきたのを削板と一緒に撃滅したらこうなったのだが、これを一体どうするのかと。

 少し思慮してから削板軍覇は「ポン」と手を叩いた。嫌な予感がした横須賀だったが、それを何とか抑え込む。

削板「あんな根性ねえふやけたようなやつじゃなくて根性ある鉱石にするからよ。まず殴って形を」

 前言撤回。なんの危機感もないバカにツッコミを入れることとした横須賀であった。






 こうして歯車は回り始める。

 気づけば、誰も止めれないほどの速さになり

 ガタゴト、ガタゴトと……






第一二話「本物の地獄に住む狂乱者たち」完

というわけで第一二話、いかがだったでしょうか?1日遅れの更新となり申し訳ありませんでした。以後も気をつけます。

では今回はこれにて。またステルスホモが湧いてくるのか……。

2015年 3月 30日
SAOロストソングとpsvitaが欲しいのに財布がすっからかんのかんで「ぐぬぬぬぬ…」ってなってる常盤赤色

乙です

エレン・M・メイザースねw
というか科学の力で魔法を再現ったって原理は科学なわけだし、随意領域で物理法則もねじ曲げられる顕現装置は右手で対抗できないんじゃあ…
とはいえ乙

新刊の麦野さん

・はぁ?ダイヤノイドから脱出できない?原子崩しで穴を開けるわ。
・穴が再生する?そんなら再生の”限界”まで撃ち続けるわ。
・サンジェルマン「やぁお嬢さん、ちょっと大人しくして 「[ピーーー]や。」
・サンジェルマン「まったく手荒いなぁ…爆発で死 「お前が[ピーーー]や。」
・え?こいつ操られた一般人なの?まぁ操られる方も悪いから[ピーーー]わ。
・高速で飛んでくるダイヤモンドの槍?義手でキャッチして握り潰すわ。
・親友であるフレンダの死を乗り超えて覚醒した加納神華?
 いやまぁ目の前にいると邪魔だからとりあえず原子崩し撃つわ。
・地球が圧縮される重力爆弾?めんどくせぇから原子崩しで消すわ。



麦野さん本当にブレなくて読んでて気持ちよすぎる…。

SAOロストソングが欲しい?
ロストするのは貴方の貞操ではないかね

>>538
乙ありです!

>>539
指摘ありです。確かにエレンの名前間違って打ってましたね、すいません。
顕現装置については確かに原理は科学的な物ですが、起こる現象が異能なので「幻想殺し」が対処できるとか……そんな感じで考えてます。どんな風に対抗できるかは本編で書ければ。

>>540
それデビさんのトリガーハッピーエンドの感想のやつですよねwwwあのサイト好きなんですよ。むぎのんは確かにぶれなくていいですよね。

>>542
………うまいこと言ったとか思ってないよね?


では今週の更新行きましょう!


1,







 上条当麻を狙う謎の組織の動きを察知したのは、何もアレイスター・クロウリーやイギリス清教だけではなかった。

 現実の世界「現世」とは時も場所も理論も乖離した場所がある。これは過程ではなく真実の話だ。現に、そこ「隠世」にはとある存在達が現実の世界で起こり始めている出来事を静観していた。


 魔神。


 人の身にして魔術を究めた末に、神の領域まで到達した者たち。禁書目録(インデックス)の10万3千冊の魔導書を全て活用しようやく行き着くことができる、世界すら自由に歪め、世界すら受け付けない存在。

 オティヌスを除いた様々なあらゆる宗教のあらゆる魔神たちで構成された真・グレムリンと呼べる存在。ゾンビの理論である「鏡合わせの理論」でレベル無限・残機1からレベル999999999999999999……・残機無限とすることでとりあえず「現世」に乗り込んめる状態となり、遂に行動を起こし始めた彼らは現在──とある場所に閉じ込められていた。

 無論彼らは魔神。そもそも「戦う」という思考を必要としない、その力を考え無しに振るうだけで世界を自由に歪めることのできる存在だ。本来なら彼らを封じ込めることができる存在などいないはずなのである。


 彼らが住む、「とある魔術の禁書目録」の世界には。








僧正「厄介じゃのう」

 しわがれた老人の声が響いた。杖と紫の法衣を装備したその老人を一言で表すなら、なんと言っても「木乃伊」だろう。

 網目のように刻ませた多くの皺、焦げ茶色の肌、死体というか水分を完全に失ったその姿はまさしく木乃伊と呼ぶに相応しいものだった。

娘々「まったくだよねー。あーもうやになっちゃう」

 僧正と呼ばれるその魔神に答えたのは、娘々と呼ばれる魔神だった。

 これまでかというほど青白い肌、丈の短い白いチャイナドレス、満州民族の帽子を被り額に「符」を貼った姿は、どちらかというとチョンシーを彷彿させるものだが、この少女の正体は尸解仙と呼ばれる不老不死の仙人である。

僧正「『ソラリス』のやつ……私等が邪魔だからと言ってあの場面で無理矢理介入してくるか?」

ネフテュス「彼のことだから、より確実に事を進めるために私達の弱体化を見事についてきたというところでしょうね。その上、時空軸の歪みでアレイスターは私達にやられた大火傷の修復中まで逆戻り。見事に私達とアレイスター両方を封じ込めることになったわけね」

 そしてもう一人。ネフテュスというその魔神はチョコレート色の褐色肌を包帯で覆っている銀髪の美女である。オッドアイの瞳を持っているが、その瞳の色は気まぐれにコロコロと変わっていた。

 ゾンビの理論で「現世」に現れた魔神たち。その理論を組み立てたゾンビがすでに撃退され、激昂して襲いかかって返り討ちになったと思っていたアレイスターが実は自分たちのステータスさえ持ち帰れば良かったとあの時の相対の本当の目的を知った彼らはアレイスターに埋め込まれた術式で弱体化を余儀なくされていた。本当ならこの程度のもの、異界の技術なので苦戦はするだろうが脱出するのは容易にできるだろうが、今の彼らには無理である。

 隔離された彼らは自らが大切にしていた上条当麻の動向を、今や静観するしか無くなっていた。

娘々「ゾンビも行方不明だし。ほっんとに無限の退屈ってのも死にたくなるよねー」

 伸びをして退屈さをアピールする娘々。彼らは長きに渡り「隠世」にいたが、この空間はそれ以上に何もできないし、何もない。僧正もネフテュスも退屈も過ぎると死にたくなるというのには同意できた。最も、彼らは死ぬことなどできないが。


僧正「…………で、お主は一体何をしに来たのじゃ?」

 そして真っ先にそいつについて指摘したのは僧正だった。もちろんネフテュスや娘々も気づいていたことだが、わざわざ一番最初に口に出した辺り、僧正が「未だに悟りが開けない」と娘々に馬鹿にされるのも仕方ないだろう。ついさっきもアレイスターを散々小馬鹿にして煽った挙句のあの展開である。小物臭がしても仕方なかった。

「あらあら。気付いていらっしゃったのですね?」

 そして、それはそんな僧正の呼びかけに応えた。

 闇という言葉で表されないような漆黒の中から現れた彼女を見て、僧正たちは眉をピクリと動かした。

 少女は美しかった。黒髪を左右非対称のツインテールにし、赤と黒を基調としたゴスロリのようなドレスを着た少女のオッドアイの左目は金色の時計の文字盤となっていた。

 ドレスと良く似た日傘を持ちながら優雅に現れた少女は、まるで淑女のようなお辞儀をし、同じ人外でありながら自分たちのスペックを大きく超えた存在である魔神たちに挨拶した。

 少女の名前は時崎狂三。「最悪の精霊」と呼ばれる、五河士道がデートしながらも唯一力の封印を未だに逃している精霊。

 まるで「対等の存在」のように挨拶してくる狂三に対し、娘々は唾と共に吐き捨てる。

娘々「舐められたねー。いくら弱体化したからといってもあんたら「精霊」みたいな陳腐な存在に遅れをとるのは流石にないって。自分で過去も変えられないように存在にさ」

狂三「うふふ。それは今は受け流しておきますわ。お互いこの場での闘争は避けたいでしょう?」

 アレイスターを散々煽ってあの仕打ちを受けておきながら、まだ煽るとは成長しない連中だな、と狂三が思ったのも真実だ。まぁ、彼らは魔神というすでに完成された存在である。もう成長する必要がないそんな存在に成長意欲なんてあるわけがないだろうが。


狂三「それに、ここから出られないあなた方と違い、私はここを自由に行き来できますのよ」

 とは言え、痛いところを突かれ少しムカッとしたことも真実だ。だから少し煽り返してみる。

 本来ならこの時点で彼女の存在はこの世界から消されていただろう。しかし弱体化した上に閉じ込められた無力な魔神など、今の狂三にとっては恐るるに足らない存在──は流石に慢心しすぎであるが、それでも1対1なら倒せなくもない相手であった。

 現に、煽っておきながら手を出してこないことからいくら慢心が服を着ているような存在とはいえ相手方がそれくらいは考えるほど追い込まれているということは分かった。

ネフテュス「…………で、結局あなたは何をしに?」

 無視することはできないと判断し、ため息を吐いてのちに本題に入ってきたネフテュスに対して、狂三は静かに告げた。

狂三「少し……教えて欲しい事がありますの」

僧正「ほほう。なるほどな。さて、なんのことかな」

 ケタケタと笑いながら応えた僧正。彼が笑うとどこぞのホラー映画より怖い図となるが、別にそんなことで怖がるような人物はここにはいない。

 狂三はそんなくだらないを考えながら──そんなくだらないを考えるほど余裕がある自分に驚きながら──本質を口にした。

狂三「決まってますの」


「今回の騒動の元凶……『ソラリス』と呼ばれる彼の正体と目的。その彼とあなた方、そして『ファントム』の関係性ですわ」


2,







 起きたら全てが終わっていた。

 言葉の通りである。自分が動けなかったり寝たりしていたら、いつのまにか全て終わっていた。具体例を述べるなら常盤台の生徒がクリスマスイヴに寮から抜け出そうとしたら寮監先生から首をコキャッとされ失神し、起きた時にはクリスマスが終わっていたという感じだろうか。

 そして、自分ほどこの言葉が似合う奴はいないだろうと少年は思っていた。

 少年は学園都市の暗部に潜む小組織のメンバーだった。「メンバー」。小さな組織の上、同じ所属員同士の仲は決して良好と言えなかった。それに加え学園都市の上層部からの圧力や制御もあった。それでも、それなりに充実した日常を生きていたのだ。BLAUとの出会いなども今となってはいい思い出。彼とは数回限りの顔合わせだったが、表の人間の中では少年がとてつもない好印象どころか尊敬の眼差しをも持てた数少ない人物の一人だ。そういえばあの時共にBLAUと会ったスキンヘッドとハリ頭は元気にしてるだろうか。

 閑話休題(それはともかく)。そんな感じで平和とは言えなかったが、それなりに楽しみを見出すこともできる毎日を生きていたのだ。

 あの、10月9日の暗部の抗争が起こるまでは。

 あの日、衛星の地上アンテナ破壊を行うために第二三学区に訪れた一方通行を足止めする役割を「メンバー」のリーダーである「博士」から頼まれた彼は一方通行と相対した。

 相手の弱点は調べ、どうすれば自分の能力でそこを付けるのかも知っていた。

 負けるつもりは無かった。

 しかし、冷たい地面へと倒れ動かなくなったのは自分の方であった。

 結局、一方通行が手加減したのか、無意識に自分の能力──相対した時一方通行が命名していたが、「死角移動」とでも言うべきか──が発動したのかは知らないが、彼はとりあえず生存し病院へと担ぎ込まれることとなった。

 そこから彼は完全にこの街の流れから置き去りにされることになる。

 起き上がった時に1番最初に目に入ったのが病院の白い天井だけならどれだけ良かったか。ドレス姿の少女。自分たちと同じ暗部の組織であの日敵対していた「スクール」の一員がそこにいた時は自分は「メンバー」から「スクール」に身売りされたのではないのかと思った。「博士」やあの魔術師とか呼ばれていた少女なら敗北した自分に興味すら持たないでほったらかしにするだろうが、馬場の奴なら他の暗部組織に追い詰められたら他の構成員の身などそれこそ簡単に売るだろう。起き上がっていきなり覚悟を決めることとなった自分の身を怨んだものだ。

 が、ドレス姿の少女からもたらされた情報は自分以外の「メンバー」の構成員がいなくなったという、実質の「メンバー」壊滅というものだった。

 「博士」は垣根帝督と相対し敗北、死亡。魔術師と呼ばれた少女は「グループ」と相対し敗北、その後の動向は不明。馬場は彼が「避暑地」と呼んでいたシェルターに閉じ込められたのち、行方不明になったという。あの男のことだ。「閉じ込められた」という事実の前に向こう一年は生きていけることを忘れパニックになり、最悪自殺していても不思議ではない。まあ自分が同じ状況に陥ればパニクらないのかと聞かれれば何も言えないが。

 そうして壊滅した他の組織「アイテム」「スクール」「ブロック」の残党勢力が統合された新勢力に所属することとなった少年。まだ重症だったのですぐさま合流というわけにはいかなかったが、また暗部での地獄のようなくそったれな日常が始まるのかと思っていた。

 ところがいざ動けるようになった矢先に暗部は解体。

 噂によれば一方通行のやつが学園都市との何らかの交渉をしたとのことだったが、詳しいことは知らないまま少年は暗部という闇から無理矢理解放された。

 本当に、何もかもが病院のベッドで寝てる間に終わってしまったのだ。






 自分の近況を振り返って、少年──査楽はため息を自然についてしまっていた。

 学園都市のとある公園。午前10時を過ぎた公園は近隣の住人の憩いの場と機能し始めおり、そんな優しい雰囲気が広がる公園のベンチに腰を落とした査楽。1人で公園のベンチに寂しく座るなど悲しいにもほどがあるが、どちらかというと今の彼にはそっちの方が断然よかった。

「あら。ため息なんかついてどうしたの?」

 横からかけられた声に反応し、あなたのせいでもあるんですよ。と言う言葉をグッと飲み混んで査楽は顔を上げた。

 本来、こんな美少女が隣に座っているなど余程のご褒美に違いない筈だ。だが、それは普通ならともかく、この少女だけには当てはまらないものだった。

 「心理定規」。自身の能力をそう名乗ったドレス姿の少女とは、今や何だかんだで腐れ縁となってしまっていた。

 彼らが所属した組織は、ほとんどのメンバーが死亡、もしくは行方不明となっている。シュチトルと砂皿緻密はとりあえずの生存が確認されているが、どちらも新規メンバーだったり雇われだったりと組織内での付き合いはない状態だ。

 そのあと再編成された新暗部組織も、名前をつけるより前にほどなく解体。その構成員たちも絹旗最愛は元所属していた組織「アイテム」が新生したとのことでそちらに行き、学園都市に対する反逆行為によって廃棄されるか暗部によって使い潰されるかの瀬戸際だった手塩恵未は生き残り、表の顔である警備員に専念。他の暗部の組織も1人を覗き新生した「アイテム」、1人も脱落者を出さなかった「グループ」しか原型を止めておけなかった為、心理定規と査楽は宙ぶらりんな状態になってしまったである。

 査楽にしてみれば元々同じ暗部の小組織で、敵対すらした組織の構成員となんで行動を共にしなければならないのか、と思っていたが相手がしつこく(恐らくはこちらの反応を面白がってだと思う)こちらに接してくるので、いつのまにかどうでもよくなっていた。


査楽「別になんでもないですよ……そういうあなたは先ほどから携帯をいじくって何か読んでいるみたいですが、何を読んでいるのですか?」

 こっちも見ずに「どうした?」と携帯電話をいじくりながら言われてもまったく嬉しくないと査楽は思いながら、心理定規が先ほどから見てる携帯の画面を覗き見る。どうやら何かのサイトらしいことは分かることが、見たことのないものだった。

心理定規「ああこれ?都市伝説とか噂話を集めるフォーラムよ。ここのサテンドレスって人の流す情報を面白いから、ちょっとチェックしてるのよ」

 こちらに画面を見せてくる心理定規。サテンドレス、と聞くとこの少女のドレス友達か何かとかどうでもことを考えたが、どうやらこのSNSだけの付き合いらしい。見てみると様々な都市伝説の噂話が次々に書き込まれていた。

査楽「……『異世界を繋いだ地下トンネルの話』『消えた脱ぎ女』『怪奇!首から上がない首無しライダー』『学園都市の夜空に響く「とおりゃんせ」の謎』『路地裏を救う救世主カブトムシさん』……なんですかこれ」

心理定規「そこらへんは今、旬の話題ね。地下トンネルと首なしライダーは少し前の話だけど」

 バカバカしい。と査楽は素直に本音を吐いた。このような都市伝説は、あくまで人の口で作られた噂話に過ぎない。大抵こんなものにここで語られるような夢いっぱい希望いっぱいの真実などなく、その柱となっているのはドライで冷たい現実なのだ。

 その反応にムッとしたのか心理定規はとっておきを取り出した。


心理定規「ちなみに、今一番の旬がこれ。『能力を消す能力を持つ男?上条当麻』についてね」

査楽「上条当麻……?」

 聞いたことがある名前の気がした査楽はその名前を聞いた場所を記憶の中から引っ張り出そうとし──そして思い出した。

査楽「ああ。『夜の街を駆け巡り、握った拳で並み居る猛者をなぎ払い、気にいった女は老いも若きも丸ごとかっさらって、草の根一本残さない』。学園都市最強の能力者を倒したというあの上条当麻ですか」

 そういえば路地裏でそんな話を聞いたことがある。ある時は学園都市最強の第一位をねじ伏せ、ある時は学園都市第三位の能力者の強気な態度を崩し自らに惚れさせ、ある時は暴れていたスキルアウトを拳一つで壊滅させ……ともはや路地裏の噂話では噂に噂が重なり神話にすら達している「上条当麻」の都市伝説。どこまでが本当かは分からないが、少なくともあの第一位が敗れた相手らしいということは真実と言われている。

心理定規「超能力者を倒した無能力者といえばもう一人、第四位が2度も敗れた元スキルアウトのリーダーとかも有名だけど、こっちは別格なのよね」

 ちなみに、実は心理定規は第四位を破ったのが誰だか知っている。

 あの時ボロボロになっていた滝壺利后を守るために戻ってきた無能力者。その後新生「アイテム」の正規要員となったという彼が恐らくその噂の人物だろう。殺し合いをしたはずの麦野沈利とどうやって元の関係の修復どころかそれ以上の関係に成り上がったのかは知らないが、とんでもことをやってのけた男には違いなかった。

査楽「まぁここに書いてあることの殆どが単なる噂話でしょうがね……しかし、実際に一方通行を破ったのは事実のようですね」

 そこには『ブリテン・ザ・ハロウィンでイギリス皇室の第三王女を守った1人が上条当麻』『第三次世界大戦を終結させたのも上条当麻』『学園都市にヒーローたちが集まって暴れたのを止めたのも上条当麻』『グレムリンを倒したのも上条当麻』『デンマークの一件で、オティヌスを救おうとしたのも上条当麻』などと根も葉も無さそうなことがつらづらと書かれていた。

 馬鹿馬鹿しい。もし本当にそんな60億なり70億なり世界中の人を救える救世主のような人間がいたなら、あんな悲惨な暗部組織の衝突など起きなかっただろう。

 それにそんな人間がいたのなら、そいつは「救えなかった、失われた全ての命に対する責任」を問われることにもなる。極論、「お前がいなかったからあいつが死んだ」「お前が救いに来てくれなかったからあいつが不幸になった」という暴論すら可能になるのだ。もし自分がそんな立場に立てば、メンタルなど砂上の楼閣のようにあっという間に崩れ去るだろう。

 あくまでドライに上条当麻の噂話を判断する彼も、やはり元暗部の人間というところだろうか。


 と、ここで見ていた携帯の画面が切り替わる。電話の受話器のマークが出たことから、どうやら誰からか連絡が掛かってきたらしい。画面を収納し、ボタンを押し通話に応じる心理定規。

心理定規「はいはーい」

『心理定規か。査楽のやつもそこにいるのか?』

 わずかにだが聞こえてきた声は査楽にも聞き覚えがあるものだった。鈴を転がすようなこのような美声の持ち主に査楽は心当たりがある。

心理定規「あ。あなただったのね。えー名前は確か……」

シルバークロース『シルバークロース=アルファだ。いい加減覚えてくれ』

 第三次世界大戦後に結成された組織「新入生」の一員として学園都市の上層部に一方通行・浜面仕上を「大きな一つの殺害対象」として認識させようと暗躍した1人。シルバークロース=アルファ。端正な顔立ちと長髪という非の打ち所がないイケメンながら、様々な駆動鎧の「コレクション」を使った「真正面からの力押し」を得意とする青年。

 元々「新入生」は暗部解体の折に「解放ではなく暗部に留まることを望んだ者」たちが集まった組織だったが現在ではその新入生も解体され、その後も紆余曲折あり彼はこうして査楽&心理定規の腐れ縁の1人なってしまっていた。もちろん、本人の意思など関係なく。

査楽「いますけど……何の用ですか?」

シルバークロース『なに。『脱落者』について頼まれていたものが出来たのでな』

 自分の名前を呼ばれた査楽も会話に参加したところで、携帯にメールが着信したのを表すバイブの振動が伝わった。どうやら例のが届いたらしい。

 携帯の通話をスピーカーに設定し、そのまま収納していた画面を出す心理定規。出てきた画面を操作しメール欄からそれを引っ張り出した。


心理定規「…………うん。頼んでいたものね。ありがとう」

シルバークロース『大変だったんだからな。いくらあのスキルアウトの忍者やくノ一の子が手伝ってくれたとはいえ、統括理事会が把握していないような連中だから、情報を手に入れるので手一杯だった』

心理定規「分かってるわ。このお礼は、いつか精神的に」

 彼女が精神的になんて言うとそういうこと(実際にしたことがあると査楽は睨んでいる。本人は肯定してないが)だと思ってしまう。が、通話口のシルバークロースは詰まらなそうに『ま、期待はせんわ』と言い放った。この男、そのようなことに興味はないのだろうか。

 ──と、頭の中でそんなことを思うところ、ちゃんと査楽も思春期の男子であった。

シルバークロース『じゃ。こっちは黒夜と合流でき次第動く。あの忍者やくノ一もすでに動いているらしいから、何かあったらそっちに連絡を取るといい』

心理定規「オーケー。じゃ、今夜ね」

 こうして通話を切り、心理定規は携帯をしまい込む。査楽の方も「やれやれ……」という感じでゆっくりと腰を上げた。

査楽「まったく……」

 自らの携帯を取り出し、メール欄を確認する。先ほどまでマナーモードにしていたからか気付かなかったが、自分の物にも先ほど心理定規に届いた物とまったく同じ内容のメールが届いているはずだ。

 メール欄でそれを確認し、査楽は歩き出した。いつの間にか立ち上がっていた心理定規もそれに続いて、2人は公園から出た。

 やはり自分たちにこのような明るすぎる場所は似合わないかもしれない。

 そんなことを思う査楽。右手に歩いている少女が同じことを思っているかは分からないが、いつまでもあのような日が照る場所にはいられないような存在であることは確かであろう。

 一方通行が「表」に慣れたように、彼らもある程度「表」でその存在が認められるように過ごしてきた。

 しかし、自分はどう足掻いても日陰者という過去から逃れられないかもしれない。だが、それはそれでいい。

 査楽は同時に、ある少年の顔を思い出していた。

 馬場芳郎。

 かつて同じ「メンバー」に所属した構成員の1人であり、今の今まで動向がはっきりとしていない、行方不明だった人物。

 査楽の手には、今の彼のいる場所についての情報があるはずだ。

 『脱落者』。

 どういう組織か完全には知らない。それが学園都市のあらゆる抗争によって敗北した敗者たちの集まりであること、構成員が皆、学園都市に強烈な憎悪を持っていること、それさえ分かればいい。

 博士というリーダーがいなくなった今、別に学園都市の為に動く必要などない。

 だからこれは査楽や心理定規の個人的な意思や考えによるものだ。

査楽「さて……行きますかね」

心理定規「面倒くさいけどね」

 こうして、彼らは今一度「学園都市の暗部」へとを姿を消す。


 この日、学園都市にいる全ての元暗部が動き出すことになる。ある者は己の野望のため。ある者は己が守る者を守り通すため。ある者は個人的な問題のため。ある者は死んだ仲間が最後までやり遂げようとしたことをやろうとするため。


 そして──


3,







 同時刻。

 遠山キンジたちの元に間宮あかりたちが到着する。

 そして同じタイミングでもたらされた情報により、彼らは準備もままならないまま事態を解決するために動き出すことになる。





 同時刻。

 学園都市の重要施設にて、ほぼ同時にテロが起こる。

 その中には警備員本部や学び舎の園もあり、それらに対して警備員や風紀委員が鎮圧のため動き出すこととなる。

 そして、学び舎の園にて集まっていた白井黒子、初春飾利、佐天涙子。常盤台の図書室にて集まっていた食蜂操祈をトップとする派閥もそれらに巻き込まれていく。





 同時刻。

上条「……なぁ。いくら何でも遅くないか?」

浜面「確かになぁ……」

 電話で呼びつけた相手が、まさか近くのコンビニで顔合わせしただけではなく共闘して襲い掛かってきた化け物を相手に暴れているとは梅雨知らず、上条当麻と浜面仕上、そしてどうしても付いてくるといって聞かなかった滝壺利后はデパートの屋上にて柱に寄りかかって待ち人を今か今かと待っていた。

 しかしそれにも限界がある。それを知らせるかのように上条の携帯に一通のメールが入った。インデックスからだ、

上条「……どうやらイギリス清教の連中が空港についたらしい…。俺もう戻らなきゃいけないかもな」

浜面「だったらすぐ戻っとけよ。その……イギリス清教だっけ?そういう奴らに会わなきゃいかないんだろ?あいつらは俺たちが待ってるから」

 フラクシナスの不思議技術を使えば、最悪ここからで2秒足らずの内にフラクシナスに行ける。現在、士道を始めとする天宮市組、キリトを始めとするALO組、キーナを始めとする異世界組とともにインデックスやオティヌス、土御門とステイルもあそこにいる状態だ。イギリス清教に対してはフラクシナス側から協力の打診が土御門を通してされたらしい。「精霊」という存在についての説明は現地にて行うとしていたが、今回来ると聞いたのは神裂たち天草式やアニェーゼ部隊の面々と聞く。彼女たちなら「精霊」という存在についても受け入れてくれるだろうから心配は特にいらなかった。

 それでも出来るだけ顔見知りの人物がその仲を取り持ったほうが良かろう。ってか土御門が「前のことの説明も兼ねてみんながカミやんに逢いたがったてるから、来たほうがいいぜい」と言っていたからとりあえずフラクシナスに帰ったほうが良い。前のことの説明というと十中八九オティヌスとの件だろうから説明が面倒くさいことになりそうだが。

上条「そうか?それなら頼んでもいいか」

滝壺「大丈夫。超電磁砲とも顔見知りだし」

 その顔見知りとはお互い潰し合いをした中での顔見知りということだが、そんなことを知らない上条は「分かった。それなら頼む」と言っていきなり消えてしまった。どうやらフラクシナスに回収されたらしい(ちなみにバリバリ人目についていたがそこは天下の学園都市。別に何も怪しまれてもない……はずである)。

浜面「……それにしても、おっせーな」

滝壺「おそいねー」

 こうして、彼らはその後数分、来ることのない待ち人を待つこととなったのである。






 同時刻。

「ヒョッヒョッヒョッ。これは面白いことになってきたものだねぇ」

 学園都市の一角にある廃工場。そこの二階にある一室にて、老人の笑い声が響いていた。

 温厚そうな老人風の喋り方をする彼は、しきりに画面に何かを打ち込み、その合間に笑い声を挟みながら過ごしていた。

「……チッ。クソジジイが…」

「そう言わないでくださいよ。私は彼よりも年上ですが、見た目の醜悪さならあなたの方が断然勝りますよ」

 部屋にいるあと2人の人物の声が老人の声に変わり響いた。どちらも30代ほどの男性の声だ。一方の声の主にたしなめられた人物は、何かを言いかけたが、それを飲み込む。なんの備えもしてない今の自分では目の前の男に敵わない。実力も何もかもが。

 だからそれを取り戻すためにこの組織に参加したのだが。

 そんな中部屋に一つしかないドアが開かれ、3人の視線がそちらへと向けられる。

「何をやっているんですか。時間ですよ」

 入ってきたのは男たちよりも若い、少年だった。少し「ふくよか」と表現した方がいい少年の顔には、貼り付けの笑顔が浮かべられていた。その後ろには陰気そうな少女もいる。

 彼らは『脱落者』と呼ばれる組織の主要人物たちだ。

「それじゃあ……実験開始と行こうかなぁ」

 リーダー格の老人の声に従い、2人の男も動き出した。


 全ては失った物を取り戻すため。そして「復讐」。


 ──この日、学園都市にて最悪の復讐者たちが暴れ出した。





 同時刻。

 全ての人を巻き込み事態が動き出す。

 それは──







第一三話「元暗部の奴ら」完

ってなわけで第一三話!如何でしたでしょうか。

今作では時空改変の影響によって、原作では確定してない不明瞭な部分が勝手に確定していることになっています。例えば「手塩恵未の生存の確定」や「馬場芳郎があの状態から無事脱出できた」など。そこらへんはご配慮ください。

では今日はこんなところで!また来週ー!

2015年 4月 5日
YouTubeでSAOのキャラソン調べてたら今頃死銃のキャラソンがあることを知って驚いた常盤赤色

乙です

>>1もデビさんのサイト知ってたか!
でもあの人すぐチ・・ポがどうとか言い出すからたまに幻滅しそうになるwwwwww

>>1のケツに突っ込んでやればいいのに

このスレまとめられて居たぞ

>>1は上条さん並みにフラグを立てる…ただしウホッなアッー的なフラグのみ

フレンダ
半蔵
近江朱里
土御門
この辺が一番武貞っぽい

実は>>1が痔で半蔵がケツに手裏剣投げる系か

砂皿とかもな、ステファニーはともかく
後は雲川鞠亜も

なあ・・・インテリビレッジ二ヶ月連続発売・・・

これで7ヶ月連続敢行ってことになるが精霊よりも魔神よりも鎌池さんが一番化物だって!

>>560
>>561
いや武貞の定義って何だよ
俺の中の武貞の定義は偉人の子孫なんだが

ていうか鎌池働きすぎだろ月刊鎌池かよ 少し心配になってきたぞ

しかも @で
鎌池和馬小説講座
ヘビィーオブジェクトアニメ打ち合わせ
解離性ミリオンアーサー
10周年記念ツイート

鬼だろ
鎌池の前に絵師が過労死するわ

>>1
デート・ア・ライブの前売り券買ったけど特典薄かったゼ。

>>557
乙ありです。

>>558
いつも楽しみにして読んでますよー。あと、なんでそこでホモネタ?

>>559
そげぶ

>>560
どこぞのジャンプ好き痔忍者じゃないですよ俺は。

>>561
彼らは武偵として外部でもやってけそうですよね。

>>562
月刊かまちー……まさか本当に実現しかねないよ……。

>>563
武偵の中の異常な偉人の子孫率。

>>564
普通なら無理よい……だが知っての通りかまちーは体の構造が異形なんだよい。…それがこの結果を生んだのか…?(悪ノリ)

>>565
かまちーほんとどこで休んでいるんだろう……。

>>566
デート券買う相手がいない……。

昨日は寝落ちしてしまったので今日行きます!ではでは!


1,







 戦徒(アミカ)とは先輩の生徒が後輩の生徒とコンビを組み、1年間指導するという武偵校に存在する二人一組(ツーマンセル)特訓制度であり、間宮あかりは神崎アリアが、風魔陽菜は遠山キンジ、佐々木志乃は星枷白雪が現在育成している戦妹(アミカ)なのである。

 今回の依頼において、早急な人員の補給を必要としたアリアは、実力もあり、信頼できる自分の戦妹と、その仲間たちを呼び寄せることにした。彼らには実戦の経験もあるし、今回の任務は彼らにとっても、いい経験になるかもしれない。もちろん、その役割はあくまで「バックアップ」だが。

 アリアに直々に指名された武偵校のメンバーは間宮あかり、佐々木志乃、火野ライカ、島麒麟、乾桜、風魔陽菜の6名である。高千穂麗や夾竹桃も視野に入れられてたが、チーム内の雰囲気の安定や彼女たち自身が別の依頼を受けているなどの理由で不在だったため、残念ながら彼女たちには声をかけることはなかったというわけだ。

 武偵校を通じてアリアの指示を受けた彼女たちは、上級生に頼りにされたのを内心では喜び(特にあかりの喜びようは尋常ではなかった※ライカ談)同時に、先輩たちが手こずっているという依頼に、自分たちがどう役に立てるのか不安になりながらも、武偵校にて出来る限りの準備を行い、来るべき時の備えを進めていた。

 同時に、キンジたちはキンジたちで、武偵校にて必要な物資と共に待機していた彼女たちを武藤と不知火が回収しに行き、残った内のバスカービルのメンバーはDEM社での会合に臨んでいる。


 そしてことは起こった。


 プライベーティアの一部の暴走。彼らによって引き起こされたというテロ行為により、学園都市は既に騒乱の渦が出来上がり始めていた。

 これは流石のDEM社も予測の範囲外だったらしく、掛かってきた電話口の後ろからはドダバタと何かが行き交う音が聞こえている。大方、予定よりも早く動くことになった魔術師やDEM社の職員たちが大慌てで調整を行っているのだろう。

 それは自分達にも言えることだ。

 何せあの会合の後、ホテルに戻ってきたとほぼ同時にこの連絡である。碌な準備など出来てはいなかった。

 準備と言っても装備面での準備は特に問題ない。迅速な行動を必要とする武偵ならこれより酷い装備で事件に当たったことなどアリアほどになるといくらでもあるし、武藤たちが武偵校から物資を運んできたおかげで、その面ではまるで問題はなかった。

 問題は精神的な面。

 要は心構えである。急な戦闘に慣れている自分達はともかく、1年生たちは来ていきなり碌な学園都市に対する情報も無いまま戦闘に巻き込まれることとなる。

 念のため、武藤が運転する車の中での依頼内容についての詳細な説明や学園都市の地形についての情報は一通り済ませてある。心構えも彼女たちのことだ。いくらかは出来ているだろう。


 しかし、悪いことは立て続けに起こりやすい。

 それを裏付けるかのように最大の問題があかり達がホテルにもうじき着くという連絡が入ったと、中空知が言った直後に起こった。

レキ「……アリアさん、緊急事態です」

アリア「──!どうしたの」

 アリアやキンジ達が状況の判断の為、ジーサードリーグを始めとするあちらこちらから情報を連携し集めている間、窓の近くにて愛用している狙撃銃ドラグノフを抱えながら体育座りしていたレキが突然立ち上がり、アリアに何かを訴え出た。

 もちろん、アリアやキンジ・白雪や理子がもたらされた学園都市内の情報を整理して起こっている事態に対する自分らが取るべき行動を模索し、中空知やジャンヌがジーサードリーグやDEM社と通信を行い情報収集を、ワトソンと平賀が装備の調整を行っている間、ただ何も考えずに座っていたわけではない。

 レキが窓際で座っていた理由は、何かホテルに異常が起きた時、迅速に対応する必要があるからである。

 暗部の小組織にはメインとなる構成員の他に、後片付けや運転、隠れ家の整理など彼らのサポートをする下部組織があったという。今は解体されたというが、もしかしたらそれらの元構成員と「アイテム」のメイン構成員に繋がりがある可能性もある。事実、浜面仕上という「アイテム」の構成員の1人は、元下部組織の構成員だったという。

 ここは学園都市。未知の技術が跋扈する都市だ。どこからどう自分たちの情報を盗み取られるかは分からない。

 アリアたちの部屋からなら窓からホテルの正面玄関を見通すことができた。そこでこの面子の中で一番視力の良いレキが、ホテルに何か異常が起こらないかを見張っていたのである。もちろん、搬入口や裏口など他にも出入り口はあつたので、そこには通信機を仕掛け、中空知の耳による防衛戦を張っている。彼女の耳なら僅かな異変の音も聞き取れるだろう。

 そしてレキが異常が起こったことを知らせてきたということは、もしかしたら既に「アイテム」が自分たちのことを嗅ぎつけその対処に動いたのかもしれない。

 場に、一抹の不安が過る。

 ただでさえ、依頼主であるヨーロッパ武偵連盟への猜疑心が強くなっている状態なのである。彼らが、こんな不始末を起こすような不安がある組織をそもそも雇うわけがない。もし、彼らがこの事態になることを予測して、それでこちらを嵌めているとしたら。という憶測が過る。何せ連携をしているはずのDEM社ですら、プライベーティアについて詳しくは知らず、今回の事態について大騒ぎしている状態なのだ。根も葉もない憶測だが、それ以外に考え用がないのは確かだった。

 それを裏付けるかのように、部屋に駆け込んでくる者の影があった。


あかり「アリア先輩!」

 アリア以上の低身長に・それに見合った幼児体型・八重歯・ツインテール・アホ毛というなんとなくアリアと共通する要素が多い、キンジたちより1つ年下の武偵校1年生の女子生徒。

 部屋に飛び込んできたのは間宮あかり。アリアが現在育成している戦妹であるDランク武偵だ。どうやらホテルに異常が起こる前に中に入ることに成功したらしい。

アリア「あかり!よく来たわ──」

あかり「先輩!大変なんです!」

 即座に、あかり達の身に何かあったのに気づく。見れば、部屋に入ってきたのは彼女だけだ。一緒に来たはずの他のメンバーや迎えに行った武藤や不知火がいない。

アリア「落ち着きなさい。どうしたの」

 アリアが語尾を和らげながら、あかりを落ち着かせようとする。「武偵としてのパートナー」としての面しかほとんど知らないキンジは、「戦姉」としてのアリアを見て少し驚きはしたが、確かにアリアは年下に対しては面倒見がいい面がある。これも彼女の姿の1つなんだろう。

 そんな思考をチェンソーで断ち切るように、あかりの発した言葉は場に緊張を与えることとなった。

あかり「地下駐車場にて武装した連中が進入してきました!今、武藤先輩と不知火先輩が志乃ちゃんやライカちゃん達と一緒に応戦している状況です!」

 やはりか。苦虫を潰したような顔をするアリア達。

 恐らくは敵の狙いは自分達。学園都市の何らかの組織による襲撃だろう。ホテルを狙ったテロ行為の可能性も無きにしも非ずだが、タイミングが良すぎる。これは、学園都市側による何らかの妨害工作と判断してもいいだろう。

 アリアは心の底で舌打ちをした。

 ヨーロッパ武偵連盟に対する疑念も浮かび上がったこの場面で、無理矢理彼らの思惑通りに動かされるようになってしまったことに。






 そしてもう一つ動き出す集団がいた。

 イギリス清教。必要悪の教会。

 対魔術の戦闘に於けるプロフェッショナル達が、科学サイドの総本山たる学園都市に入ってきていた。

 彼らの標的は『ソラリス』と呼ばれる存在。

 「彼の存在を、必ず捕えよ」という、最大主教直々の命令を下され、動いた戦力は少しでもイギリス清教について知っているものなら絶句するほどのものであった。

 まずは『聖人』神裂火織。彼女が投入されるだけでも敵が只者では無いことが伺えた。なにせ世界に20人しかいないという聖人の中でも指折りの実力者。それが神裂火織なのである。それが投入となれば相手はただのフリーな魔術師やそこらの魔術結社でないことは明白であった。

 それに加え、天草式とアニェーゼ部隊という大きな戦力も導入されたと聞いた時のフリーの魔術師の驚きようといえば、言葉にすることはおろか表現できるものではないだろう。何せどちらも並みの魔術結社なら相手にならないような強大な勢力である。

 対魔術師の戦闘なら右に出る者も組織もいないとされる必要悪の教会。

 その中から選抜された、それこそ並みの魔術結社なら1つか2つは軽く潰せそうな大隊は現在、科学の末を集めたような巨大空中艦の中へと招かれていた。






神裂(……やはり、こういう場所は慣れませんね)

 ステイルと土御門の後を続く形でフラクシナスの中を案内されていた神裂はそんなことを考えていた。

 機械が苦手な(機械音痴な)神裂やアニェーゼ部隊の者にとって、周りを機械的な壁で囲まれている状況というのはあまり心許ないものであった。壁ならレンガや木などの自然物で作られた物の方が断然落ち着くし、ここの壁には何か迫ってきそうな感じの圧迫感があった(もちろん、それは神裂達だけでフラクシナスの職員は何も気にしせず廊下を行き来しているのだが)。

 先ほど通された艦橋の大部屋もモニターやら何やらの機械があって、妙にそわそわしてしまい、突如現れた上条が「いやー右手が影響しないでテレポートできる日が来るとは……って神裂?どうしたんだ?」と心配されてしまったほどだ(その間、五和からの目線が急に厳しくなった気がした。気のせいだろうか?)。そこについては幸運とも言える点だが。

神裂(……それにしても「精霊」ですか)

 そのような存在がいるということは小耳に挟んだことがある。しかし、ここ最近精霊が現れるのは日本の天宮市が多いらしいので、実物を見たことはなかった。

 この艦の長だと言うピンクのツインテールの少女から自分たちが知らないようなことも加えられて「精霊」というものについて説明されたが、正直神裂は彼女達の存在について聞かされてもそこまで「特別な存在」と認識することはなかった。

 元々自分が「聖人」などという特殊な存在だからだろうか。彼女達のような力の持ち主がその力故に苦労し、苦難する気持ちは痛いほど分かる。なにせ、かつての自分もそうだったからだ。

 そのピンクのツインテールの少女も精霊との話だったが、どこからどう見てもただの少女であった。彼女たちが、聞いていた「世界を滅ぼしかねないような存在」とはとても思えない。

 何より、彼女たち自身がかつて──人間たちに悪意や敵意しか向けられてなかった時──助けを求めていたというのは神裂にとっても聞き逃せないものだった。

 「Salvare000」。意は「救われぬ者に救いの手を」。

 神裂の魔法名であり、天草式のモットーとも言える言葉である。自らが起こしたくもない災害を起こし、まるで台風か何かように扱われるのは、辛かったことであろう。自分も、「聖人」という力が周りに受け入れられていなければ同じようになっていたかもしれない。

 もちろん、彼女らの辛さなど自分には分かりもしないし、彼女達は既に、1人の少年が命懸けで救い出した後であった。しかし、何か助けになりたいと思ったのは事実だ。

神裂「…………」

建宮「女教皇様?」

 くすりと笑った神裂に横で歩いていた建宮が不思議に思い首を傾げた。

 命懸けで世界から拒絶された少女たちを助けた少年。まだ顔を合わせていないが、この艦にいるという少年。

 さぞ、あのツンツン髪の少年と気が合うのではないだろうか。






 精霊たちがどうしても、ということでフラクシナスのバックアップの元、午前中のみ学園都市の施設で少し遊んだ士道やキリト達。1時頃に琴里がイギリスから来るというあのステイルという赤髪の神父や土御門という金髪グラサンの少年の仲間と会って話すというので共にフラクシナスに戻ってひと段落した後、遅めだが昼食を取ることにした一同はフラクシナスの食堂に向かったのだが。

キリト「……なんか…すごいいるな」

リズベット「ええ……」

 下手な学校の食堂より明らかに大きなフラクシナスの食堂の席は、シスター服を着た少女やフラクシナスの職員やよくわからない人やらなんやらで埋め尽くされていた。

 部屋を見渡せば皆それぞれで思い思いの食事をしており、例えば野菜やパンなどの簡単な物──悪く言えば質素な物しか取っていない背の高いシスターから、ミートボールがゴロゴロ乗ったスパゲッティを嬉しそうにかきこんでいる幸せそうなおさげの少女、それらの洋食とは打って変わって焼き魚に白米に味噌汁と「日本の朝食」と言うべき和食を食している肌が露出しまくっている女性など、取っている食事は十人十色だった。令音や神無月なども地味に混ざっており、中には食事を摂らず机に座っているだけの褐色のゴシックロリータを着用した女性などもいる。なんとなく士道は、その服装から狂三を思い出していた。

 入り口近くでしばらく固まってしまった一同。大人数で場に固まるとなると当然入り口を塞いでしまうわけで。

五和「あ、あの」

士道「あ、すいません」

 おとなしめの、二重まぶたが特徴的な少女の邪魔になってしまったらしく、慌てて入り口を開ける士道たち。そのまま入り口にて突っ立っているのも何なので、流れに乗って神無月・令音がのみが座って、他の席が空いている大テーブルへと座ることとなる。


 そしてすぐに頼んでもいないのにスパゲッティが運ばれてきた。

キリト「……あれ?」

 おさげのシスターが食べていたのと同じ肉団子がゴロゴロ転がっているスパゲッティである。とても、美味しそうである。

シリカ「あのー……これは?」

 恐る恐るといった体で、シリカがスパゲッティを差し出してきた女性に目を向ける。

 修道服の上からでも分かる豊かな胸が、シリカや耶倶矢はおろか、アスナやリズベットが嫉妬するにも十分な物で今風のショートの金髪をしているのにも限らず、妙におっとりとした雰囲気の持ち主だった。

 オルソラ=アクィナス。彼女も、上条に救われた者の1人である。元々はローマ正教の教徒だったが、紆余曲折あって現在はイギリス清教に改宗している。

 そんな彼女はニコニコしながら、更にスパゲッティを人数分置いていく。

オルソラ「皆様、お腹が空いていると聞いたので、ちょうど人数分より多く作っていたのが幸いでございました」

 確かにお腹が空いて食堂に来たのは真実だが、なんと言うか準備がいいと言うか。

 まぁ十香のお腹が先ほど連続して鳴ったことも事実だし、前に出されたスパゲッティが美味しそうなのも事実だ。冷めるといけないので、オルソラに勧められるるがまま『いただきます』と料理を口にした。

士道「……むっ!うまい!?」

十香「士道!凄いぞこのスパゲッティ!!ものすごく美味だ!」

直葉「美味しい……私たちが作るのより1000倍は美味しんじゃ……」

クライン「ふぉぉぉぉぉぉぉぉ!こりゃうめぇー!」

 感嘆する一同。いつのまにか横に座って同じようにスパゲッティを差し出されている令音が「ちなに今並べられている料理、大半が彼女によるものだ」と言ったことで、更に衝撃が皆を襲った。

 是非レシピや作り方を知りたいものだ。と士道は純粋に思った。

オルソラ「作り方を説明した方がいいでございますか?」

 その願いが通じたのか否か。オルソラ誘い入れに乗ったのはアスナや直葉たちだった。ちなみに男性陣3人の中では士道が1人だけ立候補していた。「……さすが士織ちゃん」という声がどこからとも無く上がった気がしたが、気のせいということにしておいた。

 ……彼らが本格的に事件と絡み始めるのは、この昼食後になる。


2,







 キンジたちが無理矢理事件に巻き込まれ、士道やアスナたちがオルソラによる臨時の料理教室を受けている頃、学園都市の各地で騒ぎが起こり始めていた。

 プライベーティア。『脱落者』。

 学園都市にて暗躍する2つの組織により、事態は悪化と拡大の一途を辿っていた。





 本当に何度も世界を救った掛け値無しのヒーローである上条。科学サイドと魔術サイドという2大勢力のどちらの深淵にも近いところにいるという立ち位置を持つ土御門。

 一般人はおろか、武偵ですら口を開き驚きを露わにしそうな経歴の持ち主である2人だが、彼らが通う「とある高校」においては、「ただの高校生」「バカ3人組のうちの1人」という立ち位置だった。

 「デルタフォース」も呼ばれるバカ3人組。その内、地球を救ったヒーローや両サイドをハシゴする多重スパイと肩を並べる存在。

 それが青髪ピアスと呼ばれる少年だった。






 その日、青髪ピアスは街中を何の目的も当てもなくぶらりと歩いていた。

 本来なら今日はせっかくの連休中である。友人である上条や土御門辺りを誘ってナンパでもしながら歩こうと思っていたのだが、何故かどちらにも断られしまったのだ。

青髪ピアス「むぅ……なんかカミやんもツッチーもここのところずっと学校休んどったし、ノリ悪いなぁ」

 本人達曰く「重要な用がある」との事だが、一時期まったく学校に来なかった時期もあるし、何かあったのではないだろうかと思う青髪ピアスだった。

 しかし今重要なことは別に2つある。1つは乗ってこないそれはそれで1人でナンパしようと街を出たものの、誰も捕まらないこと。せっかくの連休だということで楽しみに飛び出したというのに、未だにナンパ成功どころか、ナンパアタックすることすらできてない始末だった。

 遊園地である「ウェスト・ランド」でも行けば誰かしら出会えるだろうが、さすがに1人で遊園地は青髪でもキツイものがある。もちろん虚しくなるからだ。こういう時に友達となら、喜んで特攻することができるのだが。

 まぁこちらはこれからが本場だ。もう少しすれば繁華街に入るし、そこなら女子の1人や1人、見つかることは間違いないと判断していいだろう。

 そしてもう一つは

青髪「……なんか今日は街に風紀委員が少ないなぁ」

 ──街を彷徨き始めておよそ1時間。未だに職務質問に会っていないというこの状況だった。

 普通なら職務質問にかけられてないこの状況を異常など「は?」と言われるような可笑しなことであったが、青髪ピアスにとってはなんら可笑しいところはなかった。

 何故なら彼の職質回数は今年度──つまり4月から11月までの間にすでに40回を超えているからだ。

 要は週に1、2回は職質されていることになるのである。彼は。

 そんな彼にとっては職質はほぼ日常茶飯事なことである。大抵、1人で街を歩いていれば1時間以内には99%を超える確率で職質される。友人と一緒に歩いていてされた時だってあった。

 それが何故か今日は今のところ職質どころか風紀委員すら見かけていない。女性による職質なら彼にとってはご褒美になるのだが……(ショタでももちろん可)。


 まぁされないならされないでいいだろう。風紀委員も忙しいのだ。たまたま別件で本部だか支部に帰っているのだろうと青髪ピアスは考えることにした。

 と、視界にちょうどバーガーショップが入ってきたことにより小腹が空いてきた感じがしてきた青髪ピアス。時間的にもちょうど飯時だし、ここいらで午後のナンパに備えて腹ごしらえをしておくのもイイだろう。

 そう思った青髪はそのバーガーショップに入っていく。店内は程よく混んでおり、1人でも座る席があるかどうか分からないほどだった。

 とりあえず席を先に取るか、注文をしようか店先で立ち止まった青髪ピアス。

 すると

吹寄「あれ?青髪じゃない」

青髪「ん?」

 テラス席の中の一席。そこに一人ぽつんと座っていた知り合いから話しかけられた。

 吹寄制理。上条や青髪と同じ「とある高校」に通う彼らのクラスメイトで、レベル0の少女だ。一流フラグ建築士である上条のフラグ建立をやすやすと無力化する、1年7組対上条の最後の砦である(ちなみによく学級委員と間違われることがあるが、彼女は大覇星祭実行委員であり、上条のクラスの学級委員は青髪ピアスである。あしからず)。

青髪「おお、委員長やないか。しかし珍しいなぁ。健康オタクの委員長がハンバーガーとは」

 吹寄はクラス内の誰もが知っている健康オタクである。たまに通販で買ったという「ホントにこれ健康にいいのか?」という物を持ってきたり食したりしてるが、それでもあんまりこういう店に来るイメージは無かった。

吹寄「まぁね。ファーストフード店は行かないけど、ここはちゃんとしたところだから」

 確かにこのバーガーショップ、店前に置かれた品が載せられた看板を見てみれば値段が普通のハンバーガー主体のファーストフード店よりはかなり値段が高めである。少し青髪の財布にはキツイ物があった。

 材料の産地まで書かれているから相当である。どこぞの常盤台のお嬢様あたりが通っていそうな店だった。──まぁ本物ももっと「隠れた名店」的なところへ行っているのだろうが。

 知り合いを見つけたのはいいが財布事情に厳しい店だ。退散するべきかと青髪ピアスは考えてたりしている。

吹寄「ちょうど良かったわね。あんたも手伝いなさいよ」

青髪「?手伝うって何をや?」

 それを見越していたのか顎で何かを指す吹寄。見るとバーガーショップの中からトレイに乗せて何か大量の物を持ってきている一団がいた。

 見ればそれは──

青髪「小萌先生に、姫神ちゃんに……そこの赤毛ツインテールもどきちゃんは誰?」

結標「……なんか知らないのが一人増えているだけど」

小萌「あれ、青髪ちゃんじゃないですかー?どうしてここに?」

姫神「……重い」

 トレイに大量の多種多様のバーガーを持った3人の女性。

 上条たちのクラスの愛すべき合法ロリ担任、月詠小萌。以前上条に助けられた1人である天然の能力「原石」の持ち主、姫神秋沙。それに小萌の家にお世話になっている結標淡希だった。






青髪「──ふむふむ。ようは姫神ちゃんが貯めに貯めたここのクーポンの消費に委員長と小萌先生が呼ばれて、で、小萌先生宅に居候しているという赤毛ツインテールもどきちゃんも誘われたってわけか」

姫神「…そういうこと。クーポンの使える期間が明日までだったから。無駄にしたら勿体ない」

 「なるほどなー」と言いながら次のテリヤキバーガーを包み紙から出し、口にする青髪ピアス。見た目はそこらのファーストフード店の物と変わりないし、青髪ピアスの舌には別にこれと言って違いが分かるわけでは無かったが、美味しけりゃなんでも良かった。

 現在、5人は計36個のバーガーへとアタック中であった。1人頭大体7個という計算だが、男子である青髪もいるしギリギリいける量だろう。全部同じ種類のバーガーではないので、飽きが来ないのもあるから大丈夫そうだ。

 ちなみにこの状況、俗に言うハーレムというもので青髪自身「春やー!春が来たんやー!」と叫んだら、思い切り吹寄に腹パンさせられた。何故だ。

 しかし状況維持には成功できているので、どっちみち青髪には美味しい状況に違い無かった。

青髪(すまんなカミやん、ツッチー……俺はお前らを越えていく!)

結標「……なんでこいつ、さっきからニタニタしてるの?」

吹寄「深く考えないほうがいいわよ。どうせ気持ち悪いことは間違いないんだから」

 結標としてはいきなり小萌に声をかけられ、暇だったから来てみれば、以前小萌の家に訪ねてきたのが何度かあったので一応顔見知りという程度の人物のクーポン消費に手伝わされることになり、その上こんな変態を絵に描いたようなヤツまで出てくる始末だ。ため息が出そうだった。

 ちなみに今日の結標はいつものような桃色の布で胸を隠しただけの上半身にブレザー目立つ格好ではなく、悪目立ちのしない私服仕様だ。サラシなどつけていたら青髪からもれなく変な名前で呼ばれていただろう。「赤毛ツインテールもどき」もどっこいどっこいだが。

青髪「何言ってるや!ボクぁ目の前にナイスバディな社長秘書風の眼鏡熟女と幸薄系北欧ブロンド美少女が居たら、母子に見えようとも『姉妹で観光ですか?』とお世辞を言いつつ脳内ではその2人がボク自身の姉と妹だったらと妄想する事でパラダイムシフトからパラダイスシストするぐらいには空気読める男なんやで?だから気持ち悪いとはなんぞや!」

吹寄「どっちみち気持ち悪いことに変わりは無いじゃない。ってかあんた上条や土御門とは別ベクトルで気持ち悪いわね……」

青髪「そりゃぁカミやんは管理人のお姉さん、ツッチーは妹属性という貴賎を設けてるからなあ。けどボクは属性に貴賎は設けへん!なんせボクぁ落下型ヒロインのみならず、義姉義妹義母義娘双子未亡人先輩後輩同級生女教師幼なじみお嬢様金髪黒髪茶髪銀髪ロングヘアセミロングショートヘアボブ縦ロールストレートツインテールポニーテールお下げ三つ編み二つ縛りウェーブくせっ毛アホ毛セーラーブレザー体操服柔道着弓道着保母さん看護婦さんメイドさん婦警さん巫女さんシスターさん軍人さん秘書さんロリショタツンデレチアガールスチュワーデスウェイトレス白ゴス黒ゴスチャイナドレス病弱アルビノ電波系妄想癖二重人格女王様お姫様ニーソックスガーターベルト男装の麗人メガネ目隠し眼帯包帯スクール水着ワンピース水着ビキニ水着スリングショット水着バカ水着人外幽霊獣耳娘まであらゆる女性を迎え入れる包容力を持ってるんよ?たとえ相手が局地的災害を起こす人災少女だろうと月光を浴びるとリアル狼男に変身してしまう呪いにかかった少女でも友達の復讐を掲げてお門違いの八つ当たりをするショタでも美味しくいただけるんや!おとなし目のドジっ子だと思ったら二重人格で、猿の尻尾生やしながらレーザー打ってきた?それがどうしたごっつぁんです!!」

姫神「悪い意味で凄い。悪い意味で。大事なことだから二回言った」

小萌「あの青髪くん?明らかに女性じゃないのが一個混じってるですがそれは……」

 呆れる他3名だったが、1人「ショタ」という青髪の言葉に反応した者がいた。

 言わずとも分かろう。学園都市のレベル4の「座標移動」の能力者。「グループ」の一員。そんな肩書きを持つ少女、結標淡希だ。

 訂正する。目の前の糸目の青髪とは素晴らしい同士になれるかもしれない。今日は素晴らしい日だ。

 そんなことで彼に人目も降らずランドセルと小学生の制服の素晴らしさについてどれだけの知識と情熱があるか確かようと、口にしていた海老カツバーガーをトレイの上に置く。

吹寄「────?」

 吹寄が何かに気付いたのもその時だった。

小萌「?吹寄ちゃんどうしたのですか?」

 急に虚空に目線を向け始めた吹寄に、小萌が心配そうに語りかける。青髪や結標、姫神も吹寄に目を向けた。

 と、全員がそれに吹寄と同じく気付いた。

結標「…………歌?」

 それは歌だった。周りに座ってバーガーを食べていた人や通行人も顔をしかめ虚空を見ていることから、自分たちの難聴や空耳ではないことは確かだ。

 更にそれは

姫神「『とおりゃんせ』……?」

 そのメロディーは江戸時代に成立したわらべうた。野口雨情による作とも伝えられる『とおりゃんせ』に聞こえた。

 鼻歌のような歌声は宙に静かに響き渡る。

 しかし、それには一つ、子供の頃やどこかで聞いたあの歌とは違うところがあった。

青髪「……あれ?この歌、歌詞違うくない?」

 その歌は──







第一四話「暴走と流動」完

どうだったでしょうか。

今日はこれから鈍器を読書するための臨戦態勢になるので、今日はここまで。ではまた。

2015年 4月 13日
鈍器(ホライゾン)を読みながら眠たくなってきている常盤赤色。

乙です

乙 ペア券は何か二人分だから相手が居なかったら二回見れるらしいぞ、まぁ特典微妙だったけど
>>1はオホモ達と行けばいいんじゃあね?

士道の料理への探求は最早家事が得意な高校生レベルを超えてる

ファントム「僕と契約して精霊になってよ!」

須郷に霊結晶をつかった!
おや?すごうのようすが・・・?

「俺は!人間をやめるぞ!!キリトォ――ッ!!!」

おめでとう!すごうはオベイロンにしんかした!

「URYYYYYYYYY!!!前立腺がコリコリしてるぞ>>1!!!」

どうでもいいけどsageてくれ

7巻の上条さん・ビルとビルの間に両手両足をつけて、そのまま5階の高さまで登る。
・(信念を失った)土御門の反則攻撃を全て回避して撃破する。
・恋査による第一位「一方通行」の烈風が叩きつけられる前に間合いを詰める。
・恋査による第二位「未元物質」の翼を粉々に粉砕する。
・恋査による第三位「超電磁砲」のコインが射出される前に拳を叩いて軌道を変える。
・恋査による第四位「原子崩し」の閃光を身をかがめて回避する。
・恋査による第五位「心理掌握」のリモコンを構える前に蹴り飛ばす。
・レオタード姿のヒーローに速攻で蹴りを叩き込んで戦闘不能にする。
・その他のヒーローには、すれ違いざまにラリアットを食らわせて進んでいく。
・1000人のヒーローを吹き飛ばした一方通行の突撃から、超至近距離で避難する。
・音速以上の速度でぶつかり合う恋査VS垣根帝督の戦いに突っ込む。
・音速以上で突撃してくる「白翼」状態の恋査にカウンターパンチをお見舞いする。

ドジっ子だと思ったら二重人格で、猿の尻尾生やしながらレーザー打ってきた?それがどうしたごっつぁんです!!


マジかよ、そんなんおるんかいアリア?

20キロ圏フッ飛ばす空飛ぶドラム缶少女に比べたらマシじゃね?

禁書で一番チートなのは寮監様だと思う

そういえ士道って子供出来るみたいだな

青ピの台詞で笑った
今緋弾の十四巻読んでる俺にはタイムリーなネタだ

面白い 青ピぶれねえな

そういやこの四人の主人公チートキャラいないから動かしやすいな

>>580
乙ありです

>>581
オホモ達なんていねーよ!
後士道くんの家事スキルは小鳥遊くんに匹敵すると個人的に思う。

>>582
キュ◯べえ「それは僕の専売特許だよ!」

>>583
オチが最悪だな!おい!?

>>584
本当それな

>>585
変わらない君が好き。
麦のんは触れなくて、いいキャラだわ……。

>>586
リアルガチムチ狼男に変身しちゃう子もいるぞ!白髪の可愛い子!

>>587
ま、まぁそうですな……

>>588
あの人の戦闘力は異常。

>>589
…………え。それなんて番外編。ちょっとー!チェックしてねぇよ!

>>590
青ピは間違いなく言うと思って、書きました。

>>591
青ピは間違いなく(ry
こういうクロスオーバーものは作品内チートの主人公でも苦手な相手を選んで出せるから、チート主人公がチートにならないのが面白いですね。お兄様でも、さすがにSNのセイバーとかバーサーカーとかだとさすおにできないだろうし

>>582
実力ありすぎると使いづらくなるのはよくありますね。こういうクロスオーバーものだったら、更に世界の物理的ランクが一段上の奴らをぶつければいいですけど。ねーちんにホライゾンの武神とか……あ、駄目だ。四神とか特務クラスじゃないと絶対ねーちんが勝つわ。

>>583
ホントそれな

>>584
買いたいです!(願望)

>>580
乙ありです

>>581
オホモ達なんていねーよ!
後士道くんの家事スキルは小鳥遊くんに匹敵すると個人的に思う。

>>582
キュ◯べえ「それは僕の専売特許だよ!」

>>583
オチが最悪だな!おい!?

>>584
本当それな

>>585
変わらない君が好き。
麦のんは触れなくて、いいキャラだわ……。

>>586
リアルガチムチ狼男に変身しちゃう子もいるぞ!白髪の可愛い子!

>>587
ま、まぁそうですな……

>>588
あの人の戦闘力は異常。

>>589
…………え。それなんて番外編。ちょっとー!チェックしてねぇよ!

>>590
青ピは間違いなく言うと思って、書きました。

>>591
青ピは間違いなく(ry
こういうクロスオーバーものは作品内チートの主人公でも苦手な相手を選んで出せるから、チート主人公がチートにならないのが面白いですね。お兄様でも、さすがにSNのセイバーとかバーサーカーとかだとさすおにできないだろうし

>>582
実力ありすぎると使いづらくなるのはよくありますね。こういうクロスオーバーものだったら、更に世界の物理的ランクが一段上の奴らをぶつければいいですけど。ねーちんにホライゾンの武神とか……あ、駄目だ。四神とか特務クラスじゃないと絶対ねーちんが勝つわ。

>>583
ホントそれな

>>584
買いたいです!(願望)


ってなわけで先週は更新できなくて、ホッントすいませんしたァァァァァァァァァァ!いやちゃんと理由があるんですよ!?ホライゾン読んでたら一週間何にもできなくて!くそっ!なんなんだあの厚さは!一瞬間かかって2巻の上から4巻の下までしか読めないっておかしいだろ!2巻の下が厚さ千ページ超で、続く3巻上(700ページ超)が薄く感じちゃったよ!完全に本の厚みの感覚が麻痺しちゃってるよ!

……いや本当すいません。本当なんです。

ま、気を取り直して今週の更新行きましょう!では、れっつらごん!


1,







 覆い被さるように動いてきたゲル状の何か。両手で持てるほどの大きさだったそれは、すぐに形状を広く、厚さを薄くし、網目の無い網のようになり相手を捕らえようとする。

 「面」を重視したその動きは、相手を覆えば確実にスライムの粘着性により動きを封じるだろう。

 しかし、薄くなるということは弱点を晒し出しやすい。

 スライムの塊、その中心に見える鉱石のようなものを打ち抜き、麦野沈利は舌打ちをしながら、ついでに後ろから襲いかかってきた緑色の醜悪な面をした化け物を「原子崩し」でなぎ払った。

麦野「ったく……折角この前買ったばっかのおニューの服までダメにしやがって。どこまで人のモンに危害加えりゃ気がすむんだ?」

 ALOにおいては『ゴブリン』と呼ばれるそれらを一撃で数体ほど打ち抜き、文字通りの愉快なオブジェへと変えていきながら、麦野沈利は路地裏からとりあえず大通りに出た。

 スライム状の残りカスを服から取り除きながら歩いてきた路地裏を除く。そこには先ほどまであった現代アート風味のオブジェと化したモンスターたちの死骸はもはやなく、なにやらおかしな鉱石がゴロゴロと転がっている状態だった。

 先ほどの巨大骸骨の四肢が「原子崩し」によって分担され、御坂の「超電磁砲」で吹き飛ばした後からこれの繰り返しである。ここの実力はまるで低いゴブリンやスライム状の生物たちが、100体単位でこちらに斧やら剣やらを向けてくるので、それを「原子崩し」で一掃する。

 だがスライムはどうしても「原子崩し」で攻撃するとゲル状の物が飛び散ってしまう。それらもしばらくするとモンスター本体と同じように光となって消えるが、消える前は感触もあるし、「服についた」という事実だけで気持ち悪くなりそうだった。

 ともかく一息ついたというところで、麦野はある事に気づく。

 ……そういや第3位や絹旗と逸れたようだな。

 あの物量で乱戦になった際、ごちゃ混ぜになりそれぞれが離脱してしまったようだ。思えば最初に襲われたコンビニから随分と離れてしまっている。

 ……ま、あいつらが死んだらそれはそれだが。

 死んだら、結局はそいつが弱かっただけである。そんな他人のことなんか知ったことないので、とりあえずこれからどうしようかと考える。

 一応、浜面から呼び出され待ち合わせはしていたものの、この騒ぎでは今から待ち合わせ場所に行ってもいない可能性の方が大きい。

 ……なにより、戻るの面倒くさいしな。

 そんなことを考えていれば近くに誰かが近づいてきていることに、麦野は気づいた。

 麦野ー、と呼ばれる声に反応すれば、通りの、麦野の右側から絹旗が駆けつけてきた。体には特に傷や負傷の痕はなく、何事もなくあの場を1人で対処したことが分かる。

麦野「……超電磁砲はどうした?」

 駆けつけてきた絹旗に麦野は問う。が、

絹旗「ん、別れたみたいだけど……ま、超電磁砲のことだからどうせ無事だろうけどね」

 それについては麦野も同意だ。仮にも自分よりも高い階級に位置付けられているレベル5である。あんな雑魚相手にやられるようなタマでは無いだろう。

 これからどう動くか。それを判断するためにもまずは自分たちの状況を確認しようとした麦野の耳に、1つの声が響いた。

 否。それは声ではなく歌であった。

絹旗「……『通りゃんせ』?」


麦野「…………」

 それは同時刻、青髪ピアスや姫神たちも聞いていたであろう物と、同じ物であった。

 女の声で歌われる、少し歌詞が違う「通りゃんせ」。

 その歌声は聞き惚れるようなもので

絹旗「…………綺麗ですね」

 無意識のうちにそんな声が出ていた。

 やがて歌は終わり、声は途絶える。しかし尚、その余韻は切れることはなかった。

 今のは一体何だったのだろうか。

 その答えを求めるためか、はたまた何と無く空を見上げてみただけか。

 ともかく、空を何の気なしに見上げた麦野は、偶然にもそれを見つけることになった。

麦野「──おい。ありゃ何だ」

絹旗「?」

 見上げる麦野の視線の先、そこに質問の意図があると判った絹旗は、その視線の先へと自分の視線を向けた。

 雲だ。そこにあったのは冬初めの肌寒くなってきた空気の元、どこまでも高い空に浮かぶ白い薄い雲。どこにでもあるような風景だ。

 問題はその形だ。

 丸で何かから退くように、急激に雲の形が変わっていっていた。

 あるものは掻き消え、あるものは吹き飛ばされ、あるものソフトクリームのような形を急速に崩しながら、全てが何かを覆うかのように横に長い楕円状に変形していく。

 それはまるで、何かから雲がどこうとしてるかのように。

麦野「ありゃ……」

 ……なんだ?


2,







 削板軍覇は横須賀を安全な場所にまで背負っていった後、学園都市のビルからビルを飛び移りながら現状を見ていた。

削板「こりゃひでぇな……」

 学園都市の各地で何らかの異常が起こっていると思われる煙や、騒音がよく分かる。

 どこもかしこも風紀委員や警備員、もしくは巻き込まれた一般人が、あるいは負傷し、あるいは度重なる不条理な攻撃から身を隠すことしかできていなかった。

 出来るだけその場に突っ込み、敵を殴って場を沈めていく。が

削板「騒ぎの場が多すぎるなおい……!」

 場を収集しても、すぐに別の一団が現れ、また別の戦闘が起こり出す。

 銃を持った傭兵のようなものから、剣やナイフなどで闘うどこぞのRPGの剣士のようなもの。明らかに人外な化け物まで。削板的にはもっと根性がある相手を願っているところだが、そんな高望みをしている暇すらない。

 何より、敵を倒しても、その体は結晶となって消えるだけというものだった。

削板「……」

 燻っている。

 敵が己の肉体を持って、何らかの意思の元に戦っていたのなら、まだ「根性がある」として賞賛出来ただろう。

 だが、あれは確実にそうではない。化け物の動きはまるで幽鬼のようで、明確な意思を持っていないことは明らかだし、人間の方も、まるでゲームでもしてるようだ。殴っても感触が薄く、それらはすぐに訳のわからない変な鉱石へと変わってしまう。

 要は根性が感じられなかった。

削板「……っ」

 ビルの上から一気に跳躍し、コンクリートの公道へと着地する。自分の周りの道路にクレーターが出来上がるが気にしない。

 すぐさま右足でコンクリートの地面を強く踏み込む。体を丸めて放たれたその様はまるで砲弾のようにして自らの体を打ち出す。銃撃戦を繰り広げていた警備員、男達の両方が惚けた目線を向けていたのが見える。

 まずは1人。突っ込んだ勢いで削板は体を男の懐へと激突させた。いきなり現れたこちらに惚けていた男は、銃器を構えることもできずに吹っ飛ばされ空中を5回転くらいしながら路面に激突した。

 男を壁にして勢いを消した削板は慌てて銃を構える動作を取っていた右斜めの男に拳を叩き込む。

 一撃。

 その一撃で男が吹っ飛ばされ、近くのビルの壁に大の字を作ってめり込む。

削板「…………と」

 その場で宙返りすると自分がいた位置に銃撃が加えられた。

 後方宙返りで落下しながら、斬りかかろうとしていた男の顔面を踏み砕き、そして

削板「──すごいパーンチ」

 残り全ての敵を吹き飛ばした。


 まるで嵐のようにその場の全てを吹き飛ばした削板は再び跳躍する。

 ビルの窓際や壁を走って一気に屋上まで駆け上がる。その後は先ほどまで同じように、ビルの縁から縁を飛び移ることを始めた。

 飛び移る際に一度下を見てみる。

 するとそこには先ほどから嫌というほど繰り返されていた景色が、性懲りもなく広がっていた。

削板「……ちっ」

 謎の鉱石が転がっている。どういう方法かは見当がつかないが、変わらず学園都市を襲っている相手の体は偽物のものであるらしい。

 今は対処したが、恐らくまたあの戦場にはすぐに別の一団が出てきて、警備員や風紀委員を襲い始める。それを退けたとしてもまた来るだろう。まさに無限ループだ。

 ……せめて根性があるやついねぇのか……!

 飢えている、と自分でも感じる。倒す気が乗らない敵を延々と倒すことは最早作業だ。それではただ辛いだけだった。

 せめて、1人でもいい。誰か自らの本当の肉体で、拳を握ってかかってくるやつはいないのか。

 ビルが途切れ、コンテナへと大跳躍しながら削板は視線を泳がせる。誰か、根性に飢えている自分を満足させてくれるようなやつはいないかと。

 と、コンテナから風車へと跳躍した時、それを見つけた。

 今までの男達とは明らかに違う一団だ。老人や子供、外国人もいた。1人、狐の尻尾的なものが生えているのがいたが、尻尾が生えるとは大した根性だ。根性に男も女も老人も幼児も関係ない。

 集団はコンテナとコンテナの間で何らかの話し合いと準備をしていた。後ろにある扉が無造作に空いている廃工場から黒人が1人出てきて彼らに合流したので、そこがアジトかなんかなのだろう。

 なんの集団かはわからないがマシンガンやら持っている時点でろくなのではないだろう。だが、削板は

削板「──おもしれぇ……」

 一団の中の1人の少年。自分と同じくらいの年代のド派手な特攻服を着た少年と目が合った。

 削板は理解する。

 あれは間違いない。根性がある目だ。

 自分が、望んでいた相手だ。

 今までの敵とも言えない相手への憤りや、根性も何も持たずに暴れるだけの相手への燻りは瞬時に忘れられ、喜びが満たされる。

 続いてこちらに気づいた他の面子を退けながら、その相手は正面に、自分に向かって立つ。

 一瞬で削板の表情が笑みへと変わった。

 風車から直接、地面へと飛び立つ。相手へと、最高の一撃を加えるべく。

 砂利の上に降り立つと同時、踏み込みにより砲弾のように自らを打ち出す。砂利を踏み出すのは本来なら幾分か踏み込みが甘くなる可能性があるが、そんなことは削板には関係が無かった。

 できる限り最大限の踏み込みによって打ち出された。

 行動は単純だ。踏み出した勢いを拳に乗せ、相手を穿つ。単純な話である。

 ただ、それら全ての行為を、音速以上のスピードに乗って行えば、それは弾丸以上に恐ろしい立派な凶器になる。

 ロケットスタートの要領で削板のスピードは一気に音速を超えた。そこから打ち出す一撃は届けばあらゆる壁や防具を容易く吹き飛ばし、あらゆる武装を破壊するだろう。

 それに対して、少年が取った行動もまた、単純だった。

「…………」

削板「──え」

 右に避けたのだ。音速以上の勢いを乗せ突き放たれた拳を。同じ音速以上で。右に。

 生じた結果の末、削板の体は伸びきっていた。なにせ相手に叩き込むために、右拳を突き出し右腕を伸びきった状態にしていたのだから。さらに体はスピードに乗るために前傾姿勢となり、修正が効きづらい。

 ようは、隙を作ってしまった。

 ほんの一瞬の隙だ。常人なら瞬間的すぎて知覚することすら苦難だろう。

 が、実力者同士の戦いではそれが敗北へと繋がる明確な隙へとなる。

 前へと伸びきった右腕。本来なら自らの拳が叩き込まれていただろう相手がいた場所を見据えていた削板の顔が一瞬、右を向いた。

 直後。その顔面に「流星(メテオ)」が叩き込まれる。


ツクモ「ジーサード様!」

 突然飛び込んできた敵をジーサードが「流星」でいつの間にか迎撃していたのに気づいたジーサードリーグの者たちは、急いでジーサードに駆けつけようとした。ツクモやロカ、アトラスやコリンズも同様だ。金女とアンガスも一歩踏み出した。それをジーサードは

ジーサード「──来るな!」

 一括。その理由は。

ジーサード「……まだ終わっちゃいねぇよ」

 ジーサードの一言ともに、ツクモは見た。ジーサードの「流星」を完全に顔面に直撃させられた相手が、まるでなんでも無かったかのようにひしゃげたコンテナから立ち上がるのを。

コリンズ「なっ………」

 コリンズが呻くのが聞こえた。恐らくこの場の全員は同じ心境では無いだろうか。もちろんツクモもそうである。

 元々、ジーサードリーグの多くの者はジーサードを殺すために派遣され、彼に退けられ、その末にジーサードというアメリカ、否、世界でも屈指のカリスマ性の持ち主の元に就くことを選んだ人物たちだ。ジーサードの拳の恐ろしさはその場のほとんど全員が体に染み付いている。本当に痛いほど分かる、というやつである。

 ……なのになんで立っているんだ!?

 相手は呑気に首を鳴らしてすらいる。一瞬余裕があることを見せつけてきたのかと思い、苛立ちの感情が出たが、すぐさま別の物が目に入ってきた。

 それは

 ……笑み?


 削板は自らの根性を叩き直すために、自分の両頬を思い切り引っ叩いた。

削板「──よし」

 はっきり言おう。舐めていた。

 どうやらこちらの根性が足りていなかったようだ。それは相手の根性に対して一番失礼なことだし、何より、相手を侮辱しているのと同じだ。

 目の前の少年を見据える。

 少年は自らの仲間らしき者たちを後ろに下がらせながら、こちらも同じように見据えてきていた。

 ……仲間を庇うとは、やっぱり根性があるな……!

 この男はただ自分の力に自信を持つだけの男ではない。仲間を遠ざけたのは自身の戦いに介入させない為もあるだろうが、何より敵が仲間たちを標的にしてこないように、敢えて自分が前に出たのだ。

 仲間を庇い、その仲間たちが男の力を信頼しているが故に下がる。これが根性がある以外に何という。

 腑抜けていたのは自分かもしれない。確かに最近、横須賀以外に根性のあるやつと戦うことが無かった。根性が抜けていたかもしれない。

 体に熱がこもるのが分かる。いい根性の入れ具合だ。前に出会ったドラゴンを出してくる根性あるやつのことや、自分が手も足も出せず敗北させられた根性のあるやつのことを思い出す。

 自然に口は笑みを描いていた。

削板「おもしれぇ…………」

 凹んだコンテナから離れて、目の前の男に近づいていく。目の前の男もそれに応じるかのように、こちらに近づいてくる。

削板「──俺は削板軍覇。オマエは?」

ジーサード「ジーサードだ」

 こちらの問いに答えたその男は、

ジーサード「まさかご所望していた相手が自分から殴りかかってくるとは思わなかったが……まぁいい」

 相手もこちらに応じてか、はたまた自然になのか。どちらかは分からないが相手も笑い出す。

 こちらとの戦いを楽しみにしている、そんな笑みだった。

ジーサード「安心したぜ。最初に殴り飛ばされた時は拍子抜けしかけたがな」

削板「何言ってやがる」

 煽ってるのかは知らないが、煽っているならそれで乗ってやってもいいだろうと削板は思った。

削板「あの時は恥ずかしいことに根性が足りなくて腑抜けていたからな。──そう、言うならば……全力じゃなかったな」

ジーサード「お?奇遇だな。俺もあの時の「流星」は本気じゃなかったぜ」

 「流星」。それが先ほどのパンチの正体らしい。確かに「らしい」技名だ。あの衝撃はまるで隕石のようだったから。何より根性が入っていて、かっこいい。

削板「そうだな……俺は五割だったな」

ジーサード「へぇー。俺は25%だった」

削板「いや、間違えた。一割だったわ」

ジーサード「ああ、5%だな!」

削板「じゃあ0.5割!あんなヘナヘナな根性のパンチなんて、パンチじゃなくてただ拳を突き出しただけだからな!」

ジーサード「0%だな!0%!ハハ!こちらは力すら出してねぇ!」

削板「じゃあマイナスだ!マイナス!」

『何を締まらない張り合いしてんだあんたらは!!』

 部外者からツッコミが入ったが気にしない。

ジーサード「なら!」

削板「こっからは根性込めて!」

『全力で!』

 直後に。

 放たれた音速の2つの拳が。

 交錯する。


3,







 御坂美琴は裏路地にて止めどない戦闘を繰り返していた。

 敵の一体一体は大したことのない敵だ。だが、数がとにかく多い。それはもうゴミ屋敷のゴキブリのようにわさわさと出てくる。

御坂「──ああああもう!しつこいちゅーの!」

 一気に電撃で焼き焦げさせる。波のように迫ってきた雑魚たちはそれこそ一撃で例の鉱石へと変わっていく。現に、御坂の周りには両手で抱える程度の鉱石がゴロゴロと転がっていた。

 だが範囲が足りない。目の前に迫る一団を倒しても倒しても、後ろから次々と補充が成される。そしてもう一つ分かるのが

御坂「こいつら……痛覚がないっての!?」

 最初に対人間様に調節した電撃を今襲い掛かってきているRPG調のモンスターとは違う、銃を持ったり剣を持ったりで統一感がない連中に当てたときだった。

 いくら調節したとはいえ、一撃で人間を失神させることができる電撃(あの馬鹿は例外)を、食らって、相手は怯みはしたものの、立ち向かってきたのであった。

 ……並みのスタンガンは軽く超えてたのは確かよね……。

 また砂鉄の剣で牽制を行っていたときもだった。相手の一部は砂鉄の剣に刻まれ、腕が吹っ飛ばされるのも厭わず、笑いながらこっちに向かってきていた。あの時は流石に寒気がしたものだ。

 何より

 ……なにしても血が出ないなんて、明らかに人間の体じゃないもの……!

 ある程度ダメージを食らった敵は倒れはするものの、すぐに足元に転がっているのと同じ変な鉱石を残してまるで体が砕けるように消え去る。

 今は人間相手ではないから無意識の手加減も無く全力の攻撃ができるが、このままいつか数で覆される。

 虎の子の超電磁砲もあるが、ポケットにあるコインは今日補充するつもりでそこまで数が多くないのが現状だった。残り8個。そんな超電磁砲を使う場面もないだろうが、雑魚相手に使っていざという時にコイン切れなど洒落にならない。

 砂鉄の剣はコンクリート上では作れず、使い勝手のいい大きな範囲攻撃が軒並み封じ込まれられた感覚だ。相対ならともかく、物量戦では押し切られる可能性がある。早々にケリをつけなければならなかった。

 更には、それらを関係ないように敵は止めどなく襲い掛かってくる。

 そろそろこの状況を覆す一手を撃つべきだろうか、と御坂が思ったときだった。

 前面の敵が全て薙ぎ払わたのである。


御坂「なっ……!?」

 まさに一閃。そんな一撃だった。

 その場を埋め尽くしていた化け物たち全てが地面と垂直の一閃に断ち切られ、鉱石となって消えていく。

 裏路地を埋め尽くすかのようにいた化け物たちが一瞬で、御坂ですら手こずったほどの物量が全ていなくなっている。

 残ったのは鉱石と相対する2人の人物。

 1人は突然の介入に驚きを隠せない御坂。そして一方は巨大な一振りの大鎌を構えていた。

 芳醇な香りを放つ良質のウィスキーを思わせる済んだ茶髪の綺麗な三つ編みと、絹のように白い肌、華奢ながらも肉付きはよくモデル裸足の力強さと凛々しさ、そして儚さを感じさせる容姿をしているその女性が大鎌を持つその姿は、美しさもあれど、何故か死神のように御坂は感じた。

御坂「──これ……あんたがやったの?」

「ええ」

 目の前の美人はうなづく。まるで動作一つ一つで絵になるような優雅さと妖艶さを兼ね備えている。プロポーションを見ても、確実に女性として御坂は敗北していると認めた。特に胸とか。

 ……こ、これからが大事だから!これからが!

 自分が変な動きをしたことが相手に暴露たらしく、女性は「キョトン」と可愛く首を傾げていた。

 話題を変えなければ。

御坂「あ、あんたが学園都市の暗部を外部にさらけ出そうとか馬鹿げたことしている連中なの?」

 相手がうなづくがまぁこれは分かっていたことだ。このタイミングで大鎌なんて物騒な物を持って登場するなど、十中八九レベル5たちに警告が成された「学園都市の闇の解明」を目的に動く連中の1人に違いない。

 だから御坂は女性にこう告げた。

御坂「やめときなさい」

 女性の表情が、少し変わった気がした。構わず続ける。

御坂「学園都市の暗部は深いわ。部外者がその全てを知ろうとしたって、学園都市の闇に潰されるのがオチよ。貴方だってこんなことで怪我はしたくないでしょ──」

「ヨブ記8章3節」

 突然発せられた声に、御坂の言葉が中断される。御坂が目線を向ければ、彼女は続きを言い出した。

「──神は公義を曲げられるであろうか。全能者は正義を曲げられるであろうか」

御坂「──何?聖書?」

 科学主義の学園都市で聖書の復唱とは、随分と物好きな人間ね、と御坂は呟こうとするが、その言葉もまた中断された。

「──クローン2万体を殺して絶対能力を作り上げようとしたあの計画は、善悪の解釈だけで問えば正しい行いだったかもしれないわね」

御坂「!…………ッ」

 間違いない。この人はあの狂った計画のことを知っている。

 それを知って、尚動いている。

 御坂の脳裏にある少年の顔が浮かんだ。自分の命一つで、全てを解決させようとして壊れていた自分に「心配した」と言ってくれ、自分のやり方を否定してくれた少年を。

「だけど──私が受け継いできた『義』が、それを納得させてくれないのよ。
 善悪なんかじゃない。そんな人を助けるのが、私の夢だったから。
 ちょっと迷ったりしたけど、弟に教えられてね。今はそれをもう一度目指せるようになったの」

 ……この人もあいつと同じ。

「この街の闇が深いことは分かっているわ。だから──力を貸してくれない?」

 この学園都市の闇を晴らすための力を、と女性は締めくくった。

 確かに、悪い話ではない。

 もしかしたら、この学園都市の闇を晴らすことが、本当に可能かもしれない。

 この騒ぎも彼らによる物かもしれないが、先ほどから襲い掛かってくる化け物を彼女が大鎌を使ったり、何故かはわからないが彼女の後方で砂が盛り上がり壁が作られることで対処している事から、そうではない可能性だって捨てきれない。

 そしたら、あの子たちのような子たちを、救えるかもしれない。

 だから御坂は──

御坂「──ごめん。それは……無理よ」

 それを拒否した。


 ……拒否した!?

 カナは内心の驚きを隠せなかった。

 彼女がこの学園都市から負わされた傷は大きい。それは心の中に残り、憤りや怒り、後悔へと変わっているはずだ。

 この子は学園都市の闇を晴らすことを望んでいる。そう思っていた。

 だから何故拒否したか、その理由がカナには一瞬分からなかった。

 だが

御坂「別に学園都市の闇を見て見ぬふりしていようとか、そういうことじゃないわ」

 結論を出す前に、彼女から先に結論が出されてきた。

 それは

御坂「確かに──学園都市の嫌なところを私は許せないわ。能力者を実験動物みたいに見ている、そんなところを」

 だったら、と言おうとしたが、それを御坂に遮られる。

御坂「けど。あなたたちのやり方じゃ、学園都市を悪戯に傷つけるだけだわ。今の騒ぎがあなたたちの仕業じゃないにしてもね」

 一瞬、この騒ぎを起こしているために信用が無いのかと思ったが、相手はこちらの所為ではない可能性もちゃんと見ているらしい。

 ……頭の良い子ね。

御坂「この街に来たから会えた大切な人がいて、その出会いが私の宝物なのも本当なの。
 多分この問題は、私たち学園都市の人間たちでどうにかしなきゃいけない問題なの。少しずつでいい。私を助けてくれたり、私が助けたいと思ってくれた人たちと、少しずつ変えていけば。
 ──ある人が、そう言ってくれたの」

 納得した。

 彼女を救うような人間が、学園都市には大勢いるのだと。

 ……彼女はこの街に傷を負わされたけど、彼女の傷を癒してくれたのも、この街だったということね。

 そして、目の前の少女は最後にこう言い放った。

御坂「それに、あの実験で失われた1万人以上の命は、学園都市だけの罪じゃない。私の罪でもあるのよ」

 だから

御坂「私は私の罪から逃げたくない。一生この罪を背負うことになっても、それでも、逃げたくないの」


御坂「これは私たち学園都市の人間が背負うべき問題。だから解決は私たちの手でしたいの。それが自分勝手な考えでもね。
 力づくで連れて行くならそれでもいいわ。けど──力限りの抵抗はさせてもらうわよ」

 御坂は構える。言いたいことは言い切った。ここからはお互いの信念や考え方を、文字通りぶつけ合う場面だ。

 敵は未知数。能力者でないことは確かだが、何せここのところ、外部からでも理屈のつかない技術があることを知った。振るう大鎌が目で終えないなど、油断できるような相手ではないだろう。

 相手が大鎌を指先でバトンのように回す。それに対してこちらもいつでも動けるように、電磁波によるバリアと電撃をいつでも放てるように準備する。

 狙うは金属棒で構成される大鎌だ。あれを磁力で奪い取る。奪い取れなかったとしても、磁力で引き寄せれば相手の動きの阻害にはなるだろう。そこで隙さえ作れば、確実に電撃を通すことができる。

 一気に空気が締まる感じがした。間違いなくこの相手は強い。

 そして、遂に──

「じゃあ……ちょっと学園都市を行き来して喉渇いちゃったし、お茶でも飲まない?」

 分割した大鎌の金属棒の一つの蓋を回し、中からお茶を取り出した。


御坂「………………は?」

「パトラー」

パトラ「おお、カナ。なんじゃ?」

 御坂が素っ頓狂な声を出すと同時、路地裏に1つの影が現れた。

 砂で作られた犬の顔をした人形が担いだ砂の神輿の上の、砂の玉座に乗りながら現れたのはツンと高い鼻に切れ長の目、おかっぱ頭の中東美人だった。

 まるで古代エジプトの王女のような格好をした彼女は、砂の人形たちが膝をつくと、優雅に神輿から降り、カナと呼ばれた女性に近づいた。

カナ「お茶が飲みたいんだけど、パトラも緑地飲む?」

パトラ「お茶か……そういえば妾も少し喉が渇いたな。だが持参のカルカデがあるので、そちらを飲むとしよう」

 パトラ、というらしい女性が指を鳴らせば、砂の神輿の中から1つの砂の人形が現れ、彼女に水筒を渡した。蓋がカップになるタイプの水筒を2人ともそれぞれ開け、水筒の中身をすすぎ、共に飲んだ。どちらも飲む姿も絵になる美人だ。絵を1億で売られていても、買おうとするものがいるだろう。

 ……いやそうじゃない。

御坂「あ、あの?」

カナ「美味しいわね」

パトラ「美味しいのう」

御坂「ちょ、ちょっと!?」

 優雅に路地裏でティータイムなどやっている貴婦人2人に狼狽える御坂。すると貴婦人らしき何かである2人は


パトラ「なんじゃ。今は妾とカナが喉を潤している最中ぢゃろうが。気を利かせい」

御坂「えっ……何?私が悪いの!?」

パトラ「当たり前じゃ。カナ、どうぢゃ?カルカデ、飲むか?」

カナ「確かエジプトの良質なハイビスカス・ティーだったわね。是非もらうわ」

パトラ「うむ。安い下賤の品ぢゃが、安さに似合わず上質での。そのかわり、カナも妾に緑茶をくれ」

カナ「いいわよ」

 ……だ、駄目だ。流れについてけない……。

 お互いのコップに緑茶とカルカデを注いで、コップを交換して飲んでいる。偉く妖艶であるが、わざわざコップを交換するのには何か理由があるのだろうか。

 ……これ以上は考えるな。考えるな!

パトラ「……ふう。緑茶も美味しいのお」

カナ「うん、美味しいわね」

御坂「そ、そろそろいいかしら?」

 いい加減こっちが可笑しくなりそうだったので本題に移させてもらう、それは

御坂「え、何?今の流れ、完全にやり合う流れだったわよね?」

パトラ「何言っとるんぢゃ。カナがお前みたいな小娘、相手にするわけなかろう」

 なー、カナ、と言っているパトラからは何となく黒子がこちらに向けてくるのと同じ雰囲気が感じられたが、考えるな。

御坂「……え?何?あの受け答え何だったの!?」

カナ「ごめんなさい。ちょっとそちらがどういう人なのか測るため、わざとあんなこと言ったの。ごめんなさい
あ。あの計画についての個人的な見解は本心からよ」

 ……測られた!?と驚愕する。が、同時に疑問が浮かんだ。

御坂「何の為に!?」

カナ「言ったでしょう?力を借りたいって」

 学園都市の暗部を公表するために力を貸して欲しいというだろうか。それなら断ったはずだ。

御坂「だから私は」

カナ「違うの」

 それを否定したのはカナだった。そして彼女は、こう続けた。

カナ「この街で行われようとしていることから、約240万人を救うために力を借りたいの。御坂美琴さん」

御坂「…………?」







第一五話「超電磁砲vsサソリの尾」完

いかがでしょうか。いやー、一度やってみたかったんですよねー。タイトル詐欺。

とりあえず今週中にホライゾンの最新刊まで到達して、更新していけるようにしていきたいと思っている所存です。あれ、圧倒的な物量と比例してめちゃくちゃ面白いからな……全裸の「夢を叶えに、──行こうぜ皆」とか超震えたし…川上めぇ……!

では今週もこんな感じで。来週もよろしくデース!ハットンの真似じゃ無いよ!

2015年 4月 26日
虐げられキャラ好きなので、点蔵が意外と好きだったりする、ホライゾン4巻下を読む常盤赤色。

乙です

>>1の尻門を突抜け乙カリバー

夏にでるゲームに士道をパパって呼ぶキャラが出るよ

御坂って精神状態のバイオリズムで能力値がえらい変動するよね

バイオリズムMAXの時は聖人と殺し合いできるんだが

神裂「私の超人ランクは53万です」

バトルマニア同士トールとの絡みも見たいな、ジーサード
きっといい経験値になるだろう

ひめがみに霊結晶をつかった!
おや・・・?ひめがみのようすが・・・?

おめでとう!ひめがみはメインヒロインにしんかした!

来月発売のデート・ア・ライブの新刊で士道が暴走して日本がヤバいんだぜ

>>1に霊結晶を使った、>>1はウホッイイオシリになった

>>611
乙ありです。

>>612
乙カリバーは貰うが尻門は織天覆う七つの円環で守らせてもらうぞ……!
あ、それは買うつもりですええ。

>>613
確かそうでしたよね。レベル6御坂はハンパ無かったし

>>614
それだと逆に弱くなりません?

>>615
トールも出す予定ですが……ああ、ジーサードと闘わせるのもありだったなぁ……

>>616
メインヒロイン(優遇されるとは言っていない)。

>>617
一体士道どうなるのか……いやならねーよ!

一日遅れですがいっきまーす!ではでは。

>>611
乙ありです。

>>612
乙カリバーは貰うが尻門は織天覆う七つの円環で守らせてもらうぞ……!
あ、それは買うつもりですええ。

>>613
確かそうでしたよね。レベル6御坂はハンパ無かったし

>>614
それだと逆に弱くなりません?

>>615
トールも出す予定ですが……ああ、ジーサードと闘わせるのもありだったなぁ……

>>616
メインヒロイン(優遇されるとは言っていない)。

>>617
一体士道どうなるのか……いやならねーよ!

一日遅れですがいっきまーす!ではでは。


1,







 男達の多くはと様々な国にて軍事機構に所属していた。アメリカ・ロシア・中国……日本のSATのような特殊部隊の隊員だったものもいる。

 国籍・人種・年齢も様々な男たちだが、彼らが元軍人や元警察官であることの他に、もう2つだけ共通点がある。

 一つは、彼らがそれらの職業についた理由が元からそうだったのか、その職業についてそうなったのかは知らないが、人殺しを愉悦の一種として楽しんでいること。

 もう一つは、彼らがその末に所属部隊の中で問題を起こし、退役させられた身であることだ。

 「できるだけ一方的に人を殺したい」という者たちで形成されたプライベーティアの中でも、実際に一般人に手をかけたり、愉悦に身を任せ軍規を超えた異質な存在。

 現在、学園都市ロワイヤルホテルを襲っていたのはそんな連中であった。


「Fuku!What is it!?(くそっ!どうなっていやがる!?)」

 男は装甲車の裏に隠れながら叫んでいた。男は元アメリカ海軍の特殊部隊であるNavy SEALsに所属していた軍人であった。最終的な階級は二等兵止まり。

 将来を約束されていた彼だったが、作戦中に元々あった殺人欲が爆発。一般人を一人殺害してからは歯止めが効かなくなり、合計3人を殺した末に、問題になることを恐れた上官から、無理やり退役させられたのだ。

 「戦場」という絶好な欲望の吐きどころと相手を一方的に攻撃することができる武器を取り上げられ、人殺しをして捕まるのを恐れた小心者の男は、欲望を吐けずに日々を過ごしていた。

 だからこのプライベーティアのことを同じような境遇の退役軍人の知り合いから聞いた時は、まさに楽園を見つけたとも思った。

 最新式の装備を渡され、相手を一方的に嬲り殺しにできる。その上高額な給料までで、罪にすら問われない。正に自らの天職と男が思うのは必然であった。

 早速ネットから応募し、「プライベーティア」という組織に参加することとなった男は、良き仲間、志を共にする同志と出会い、絶好な気分であった。

 そして男は学園都市に至った。プライベーティアに下されたのは「学園都市にて暴れ、能力者や警備員を引きつけ釘付けにする」とのことだった。「作戦中にいかなる犠牲を出しても問題ない」との許しも得た。

 作戦の詳細も伝えられ、装備も、学園都市ほどではないといえアメリカやロシアの最新式のものが渡された。一部の者たちには鉱石のようなおかしな物体が渡されていたが、別部隊の者だと聞いたので詳しい説明はされなかったし、知ろうとも思わなかった。

 学園都市最強のレベル5とやらは雇われた武偵やら魔術師やらなんやらが相手にするということだし、今回も一方的に愉悦を楽しめるはずだったのだ。

 だったはずなのに。

 なのに。

「Why……?……Why this guy is!?(なぜ……?……なぜこいつがここに!?)」

「決まってンだろ」

 装甲車の裏、銃撃が飛び交い銃声により他人の声など聞こえないはずの中、それは声をかけてきた。

「クソッタレな野郎どもの掃除に、ワザワザ出向いたンだよ。単純だろ?」

 直後

 力の暴力が男を襲った。


2,







 アリア・レキ・ワトソン・ジャンヌはホテルの階段を駆け下り、急ぎ激戦が行われている駐車場に向かっていた。

 現在、アリアたちは2チームに分かれ行動している。

 アリアたちは地下駐車場にて襲われている武藤たちの救援が目的だ。恐らくは学園都市の何らかの組織が強襲したに違いない。もしくは自分たちへの依頼が「罠」であるかの可能性もあるが、急行しなければならないのには変わりない。

 キンジ・白雪・理子・中空知・平賀・あかりはホテルの従業員や宿泊者の避難誘導を行っている。武偵手帳の徽章を見せ、ホテルの従業員に避難の要請をしたところ、どうやらホテル近くに、空間震用に建てられた地下シェルターがあるらしく、そこに行けば地下通路から学区外の警備員の詰所まで避難できるとのことだった。そのためには正面入り口の連中をどうにかしなければならないが、そこはキンジたちのことだ。どうにかしてくれるだろう。

 階段を下り終え、ようやく地下の駐車場に辿り着く。密室であり隔離させる可能性のあるエレベーターを使うわけにはいかなかったので、随分時間がかかってしまった。

 ……大丈夫かしら……!

 階段の扉の周りに膝をつきスタンバイ。他の皆と顔を合わせ、アリアの合図で突入することになる。

 扉越し、かなり大きな銃声も聞こえてくる。相当酷い状況になっているのだろう。

 全員が持ち場についたのを確認する。

「行くわよ……3、2、1、GO!」

 扉を開ける。突入する。


 状況はアリアが思っていた通りでもあり、しかし違うものだった。

 確かにそこは、銃声が鳴り、銃弾が飛び交う戦場であった。武藤や志乃たちは、彼が乗ってきた装甲車に身を隠し、敵の攻撃を凌いでいた。扉を開けた瞬間、銃弾が飛んでくるほどなのだから、更に駐車場の奥にいる武藤たちはかなり苦しい闘いを強いられていた。

 しかし、押されているのは襲撃した男たちの方だった。

 男たちはこちらに銃撃を加えてくる。人数も救援に来たこちらより遥かに多く、武器も、見ただけだがアメリカやロシアの軍事機関で使われている最新式だ。明らかに戦力的にはこちらが何歩か遅れている。

 だがその多くの兵力は、武藤たちの元に届いていない、否、向いてすらいないのだ。

 何故、とアリアが思った時にはその答えが明確にされた。

 男たちの後方、何かが近づいてきているのが分かる。どうやら男たちの多くは、そちらに戦力を割かれ、こちらに対応するのがやっとの状況だった。後方を押され、まだ彼らが戦場を保持できているのは、こちらの人数の不利からだろう。

 ……ならば私たちが参戦すれば、戦場を一気に瓦解することができる!

 それを確認したアリアは他の3人の顔を見る。3人とも、アリアの意思は汲み取ったらしく、真剣な表情で返事を返してくれた。

 ならば行こう。

 相手の射撃の一瞬の隙、それを狙ってアリアたちは一気に戦場を駆け抜け武藤たちの元へと向かった。


 キンジは正面入り口方面へと振り向いていた。

 異常に気づいたのは3階ホールにて宿泊客の点呼を従業員と行っていた時だ。それまで宿泊客がパニックを起こさないように気を使って避難の準備を進めていて、とりあえずの避難準備が済んで気が緩んだ。と言っても、対人スキルが低すぎるキンジは従業員が宿泊客に対してする手慣れた対応を手伝っていただけだったが、それでも20以上ある階を右往左往して疲れがあったのは事実だ。

 だからだろうか。一瞬気を抜いた時、ようやくそれに気づいたのである。

 それとは

 ……銃声?

 かすかだが間違いない。どこかから乱発される銃声が聞こえくる。

 おそらくは正面玄関だろう。強襲により封鎖されたのは出入り口、駐車場、裏口の三箇所だ。一番激しい動きがあるのは駐車場だろうが、もちろん駐車場でいくら派手な銃撃戦が繰り広げられていようと、キンジの耳に届くわけが無い。裏口もここからでは遠い。だから音の音源は正面玄関しかないだろう。が、

 ……なんでだ?

 この疑問を抱いた理由は簡単だ。現在、出入り口には防壁が降りていると従業員が言っていた。早い段階で異変に気付いた従業員が、機転を利かせて作動させた物で、銃弾ではビクともしないとのことである。

 これが襲撃当初のことなら、敵がシャッターをどうにかしようとして銃を乱射するのは分かる。しかし、もう襲撃からかなり時間が立っているのだ。相手がいくら狂っていたり、馬鹿でも、今更シャッターを壊そうとしたところで、弾の無駄になることくらいは分かっているはずだ。

 ……こっちから開くのに待ちくたびれて、なりふり構わずなったのか?

 分からない。だからキンジは

あかり「ちょっと、遠山先輩!?どこに行くんですか!?」

キンジ「少し4階に行って出入り口を見れる窓に行ってくる!何が起こっているのか確認するだけだからすぐ戻るから!」

白雪「ちょっ、待って!わ、私も行くから!」

理子「あー!抜け駆けしてずるいー!」

 後ろから白雪を引き連れながら、非常用階段を一階分登っていく。すぐに4階へと辿り着き、扉を開け放つ。

 4階。確かアリアから緊急時のためにホテルの階ごとの間取りを確認していたから知っていたが

キンジ「4階のレストランからは正面出入り口を確認できるはず……」

 エレベーターホールを駆け抜け、客もウェイトレスもいない無人のレストランへと入る。L字型のレストランの、西側の窓が目的の場所だ。

 正面入り口から見て左上の窓から、状況を目視する。

 果たして

キンジ「……!!」

 正面玄関。窓から見えるそこには、先ほどまでホテルを封鎖して囲んでいたテロリストたちが倒れ伏していた。

 どいつも無事と言える体ではない。あるものは腕が明らかに曲がるはずのない方向に曲がっており、あるものは足がおかしな形に変形しており、あるものは首が曲がり血の気がなく、あるものは腕が潰れており、あるものは鼻がなく、あるものは、あるものは

白雪「……ッ!?」

 白雪が息を飲むのが聞こえた。悲鳴を上げなかっただけでも武偵としては上出来だろう。キンジだってこんな酷い光景を間に当たりにしたのは初めてなのだ。いくら武偵とはいえ、まだ自分達は学生。一般人よりは血生臭い光景に慣れてるとはいえ、生理的な嫌悪は取り除けない。

 その時、キンジは正面玄関周りに、一箇所だけ白いところがあることに気づく。

 髪色だ。真っ白な、アルビノの髪。それが正面玄関に横転した装甲車を片手で元に戻して、乗り込んでいく。

キンジ「あれは……!」


3,







 ぶつかり合った拳は、その威力を凌ぎ合い、余波で放ったもの同士を宙に弾き飛ばした。

 ジーサードは宙を舞いながら体制を整え、砂利の上に着地する。不安定な足場での闘いだが、そのようなことはこの勝負の勝敗に左右は及ぼさない。

 目線を削板、というレベル5の第七位に向ける。そこには両足で着地して自分と同じようなヤンキー座りになっている削板が、こちらを見据え返していた。

 距離を一気に詰めるべく、強く踏み込みを入れ今一度激突する。

 削板もこちらに突っ込み、二度目の激突が繰り出された。

 二度目の拳のぶつかり合い。1度目は削板が弾き飛ばされ、先ほどは互角だったが

 …………ぐっ!

 今回はジーサードが負けた。

 数歩下がる削板に対し、大きく跳躍し距離を取ることになるジーサード。はたから見ればジーサードが距離を取ったようにも見えるが、今の跳躍は衝撃に身を任せてあえて後ろに流すためものだ。要は、当たり負けしたのだ。

 3度のぶつかり合いでお互い1勝1敗1引き分け。これで拳による対決はタイ。最初の激突と等しく、お互いに余計な勝ち負けは無くなった。

 ……本当におもしれぇな!

 あの時、学園都市へと逃した相手を横取りされた時。

 自分達でも手こずった相手を、ジーサードリーグからの攻撃で疲弊していたとはいえ、1人でトドメを刺したというレベル5の第七位。

 それを聞いた時から、1度目を合わせてみたいと、あわよくば闘いたいと思っていたが

 ……ここまで都合よくいきすぎると、怖いくらいだな!

 闘いたかった相手が、相手から闘いを勝手に挑んできた。

 学園都市の騒動、プライベーティアの暴走。その出処に、なんらかの形で自分達の依頼が繋がっている。連絡により、キンジたちバスカービルのメンバーも襲撃を受けているとのことだ。

 そして、自分達が動こうとした絶妙のタイミングで、軍覇による強襲で動きを止められてしまった。

 あまりにもこの騒ぎは出来過ぎている。

 もしかしたらこの依頼自体が仕組まれているかもしれない。この裏で誰かが、己の目的のため、自分達を操って己の都合のいいように動かそうとしているのかもしれない。

 だが、それがどうしたというのだろうか。

 もしこの騒動に黒幕が居たとしても、それならばそいつに、自分達がそうそう簡単に思い通りにならないことを、物理的に教えるだけである。

 何より、そんなことを考えている暇などない。今は目の前の相手と、死力を尽くして闘うのみである。

 レベル5の第七位。「ナンバーセブン」と呼ばれる原石。

 遠山金叉の遺伝子により生み出された人工天才。アメリカという国自体に影響を及ぼすジーサードリーグのリーダー。

 そんな柵や立ち位置は無くし、今はただのバトルジャンキーとして。

 ……ぶつかり合おうぜ!

 4度目の激突が、起こった。


4,







琴里「じゃあ……始めましょうか」

 フラクシナスの艦橋にある会議室。そこにてラタトスク、必要悪の教会、そしてもう一つの、合計3組織による会合が行われ始めていた。もちろん士道も同席している。

琴里「フラクシナス司令官の五河琴里よ。今回はよろしくね」

神裂「必要悪の教会所属、元天草式十字清教女教皇、神裂火織です。今回は必要悪の教会の代理の代表としてこの会合に臨ませてもらいます」

椿「椿・キーナだよ。この会合にこの両組織に参加して貰って本当に嬉しく思う。ありがとうね」

 現在、艦橋にはこの3名以外にもステイル、インデックス、土御門、アニェーゼ、建宮などの必要悪の教会の主要メンバー、神無月や令音を始めとしたフラクシナスのサポートメンバー、椿以外の今回の騒動について詳しく知る組織のメンバー、そして上条やキリトたちがいる状態である。

 会議室内に置かれた、よく刑事ドラマで警視庁の上層部のお偉いさんが囲って会議をしていそうな机にはドアよりの席には士道たちどの組織にも関わりはあるものの、属してはいないメンバーが奥側の両サイドには必要悪の教会とフラクシナスのメンバーがお互いのサブメンバーを背後に立たせながら座り、そして必要悪の教会の隣に椿が座り、その後ろには昨日上条をお姫様抱っこしていた忍者っぽい少女と、クリムゾンとか言う赤髪のローブの少年が佇んでいた。

琴里「まぁ、簡単な挨拶はここまでにして……本題に入りましょう」

 口に含んでいたチェッパチャッパスを無造作に置かれていた皿に置いた琴里は、椿を見据える。

琴里「聞きたいことは簡単よ。貴方たちは何?どうして私たちのここまで知っているのかは分かったとはいえ、何故そのような本があるのか。それと」

椿「さ、流石に一気に聞かれると、お姉さん困っちゃうなー」

 苦笑いしながら、宙に何かを浮かび上がらせる椿。一瞬、琴里たちが身構えるものの、浮かび出されたのはなんらかの表示枠だった。まるで漫画やアニメで空中に出されるようなものである。

椿「大丈夫だよー。そんな物騒なものじゃないから」

 椿がヘラヘラと笑いながら返すが

 ……まだこの人たちが何者か、俺たちは何も知らない状況だもんな。

 昨日はあの本のショックが大きすぎて気になることは無かったが、考えてみれば疑問に思う節を盛りだくさんだ。

椿「……設定完了と。じゃあそれらの説明については必要悪の教会にはしたけど聞いていないメンバーも多いし、改めて説明しようか」

 と、椿はその表示枠を自分向けから反転して、こちらに向けてきた。

 そこに写っていたのは、眼鏡をかけた聡明そうな青年。少しボサボサの髪をした青年は、こちらに一礼すると

『初めまして。「葉の涙(リーブティア)」にて円卓会議書記長を務めさせていただいている、賀川五木と申します』


琴里「リーブティア?」

 また増えた新たなキーワードに、琴里は怪訝な顔をする。それを見て苦笑しながら、椿は琴里に言葉を投げかける。

椿「そこについてはおいおい説明するとして……まずは、『世界』について知っておいて貰わなきゃ、話しが進まない」

オティヌス「世界……それはいわゆる、異世界というやつについてか?」

 しかし椿の言葉に返してきたのは琴里ではなく、オティヌスである。

 異世界。確かに通常なら聞きなれない言葉だろう。しかし

オティヌス「異世界については私も知っているぞ。これでも一時は魔神だったからな」

琴里「私たちもそれについては同等ね。元々精霊は隣界と呼ばれる異界の存在。異界についてはある程度の知識はあるわ」

 自分達が平和的に対処しようとしている精霊は、本来なら異界の存在である。この世界とは法則や理が違う、まったく別の世界があることは知っている。

 それを聞き、椿はウンウンとうなづきながら

椿「確かに、異なる世界については君たちは知識を知り得ている」

 と、一息入れ、椿はこう尋ねてきた。

椿「なら……世界はどれだけの数があるか知っているかい?」

 場が静まる。このような事態に会ったことなど殆ど無いキリトたちは、とっくに話しについて行けてないだろう。

 当たり前である。琴里ですら話しについて行くのがやってとであるのだから。

琴里「その物言い……まるで世界がいくつもあると言っているようね」

賀川『正解です』

 ここで、宙に浮かんだ表示枠から、回答がでてきた。

賀川『正確には無数……世界の数は今尚増えて行っていると考えてよろしいかと』

クライン「ちょ、ちょっと待てよ」

 ここで会話を止めてきたのはクラインだ。彼は自信に突き刺さる目線に、少し怖気ながらも

クライン「じゃあなんだ?俺たちの世界は無数の中の一つで、その他にも様々な世界があるってことか?」

賀川『その通りです』

クライン「た、例えば俺がモテモテな世界とか、俺が金持ちな世界とかもか?」

 場の空気が一瞬に白けた。クラインもそれは自覚していたみたいで慌てて弁明に入る。

クライン「いやだって気になるだろ!例えばキリの字がハーレム形成しないで、俺が作ってる世界ってのもあるわけで」

キリト「おい」

 キリトが睨むもののまったく怯まず、クラインは続けた。

クライン「ほら、よくあるじゃん!そういうの!」

上条「ん、ちょっと待て……」

 ここで何かに気付いたのか、頭に手を当てたのは上条だ。琴里は半ば呆れながら

琴里「どうしたのよ?」

上条「いやさ……その理論でいくと……上条さんが幸せに管理人のお姉さんとイチャラブしている世界もあるってことじゃね!」

 ある意味予想通りで関心した。士道もかなり恋愛関係には鈍感だと思っていたが、こいつほどでは無いだろう。インデックスやオティヌス、神裂やアニェーゼたちが殺気を交えて睨んでいるのに気付いていないのだろうか。


上条「うぉー!こっちはこっちでいいけど、そんな世界があるとか考えていると何か分からんが心の支えになってくるぞー!」

クライン「だろだろ!?」

令音「どこが支えになるんだ?」

 令音が冷静に突っ込んでくるが、興奮している馬鹿2人には通じないようだ。土御門もやれやれ、と首を振りながら

土御門「カミやん、おみゃーどの口が言っとるだぜい。どの口が。そんな今以上にカミやんがリアリアしている世界なんてこっちから願い下げ……」

上条「いやー。多分土御門がメイドの国に行って、クーデターを起こして、軍師になって薄幸メイドを女帝にしている世界線も」

土御門「ビバ!異世界!」

 馬鹿が一人増えた。いい加減面倒くさくなってなったのか、うんざりしたステイルが実際どうなのかと聞けば賀川は顎に手を置いて、こう言った。

賀川『それは……無いですね』

 何かが崩れ落ちる音がした。見れば、自身の左側、キリトの隣にいる一番ドア側に近い席の男や正面の金髪グラサンの男が机に突っ伏していた。斜左前のツンツン髪も同様である。

 そんな2人の様子を見て、慌てて表示枠越しの青年が訂正した。

賀川『あ、いえいえ。多分お三人方が言っているような世界はあるかもしれないし無いかもしれませんが、今話題に上がっている世界とは違うものなんですよ』

リズベット「?違うって、どう違うの?」

 多くの者の疑問を代弁する形で、口を開くリズベット。彼女の疑問に引き続き、青年が答えた。

賀川『壷井さんや上条くんが言ったような異世界は、あくまで『選択の違い』によって分岐しただけの世界なんですよ。
 例えば、根本的なところがまったく違うように見えても、それはAかBの選択で、AではなくBを、もしくはBではなくAを選んだ。
 それだけの違いの場合によって別々の物となった結果が壷井さんや上条くんが言う『異世界』です。対して、僕たちが今話題に挙げているのは、根本的に違う『異世界』なんです』

士道「……すいません。具体的な違いをお願いします」

 士道が間を挟んでくるが、これは仕方ないだろう。

 ……士道も士道なりに、ちゃんと考えているんでしょうしね。

 なにせ今回の一件にはDEM社も関わっている。この街にいる以上、もはや自分たちが知らぬ存ぜぬで貫き通すわけにはいかない。現に、この瞬間にも次々と学園都市の被害は拡大していっている。

 ……だからこそ、この会合は重要なのよ。

 士道の言葉に頭の中で言葉を整理していたのか、思考している風だった青年が、顔を上げた。

賀川『僕らが今挙げている『異世界』とは、そもそも同じ人間が存在していない。ある世界にいる人間は別の世界には存在しない。それが僕たちの言っている『異世界』なんだ』

 一息。

賀川『そして僕たちが言っている世界の数は日々増えている。それも無限に』

椿「それらの中には本当に様々な世界があるんだよ。
 再び人類をやり直させるために一から歴史をやり直している、私たちの時代から遠い未来の時代の世界。
 魔法という技術が科学的に成り立っていて、それにより世界の調和がギリギリ保たれている世界。
 魔術が無い代わりに女性のみが動かせるある技術が世界のパワーバランスを担っていて、女尊男卑となってしまっている世界。
 願いを叶える万能の器を巡って、古今東西万夫不当の英傑たちが召喚され、魔術師と共に争う世界。
 もともと日常の垣間に存在する異常を、とある存在が無自覚に発現して、歪められている世界。
 他にもたくさん、それも数え切れ無いほど。世界は数多く存在するんだよ」

神裂「一ついいでしょうか」

 ふと、という感じで手を挙げたのは神裂だった。彼女は椿を見据えると、話し出す。

神裂「今回の一件。私たちはあなたたちが何らかの方法で話をつけた最大主教から命じられ、抽象的にしか説明がなされず疑問に思っていたことが多かったです。それはその一つなのですが……」

 一度区切りを入れ、神裂は椿に向かって言い放った。

神裂「我々の世界と同一人物がいない4つの世界が一つになったのなら……おかしくないでしょうか」

 一瞬、何のことかと思い、そして同時に気付いた。

 そうだ。

 今の話を鵜呑みにするとおかしいところが一つ出てくる。明らかに辻褄が合わない、合ってもならない箇所が一点。

 それは

琴里「…………人口ね」

神裂「そうです」

 琴里の言葉にうなづき返す神裂。

神裂「私たちがいた世界には、少なくとも60億の人間が地球上にいたとしましょう。他の世界がどれだけの人口かは知りませんが…それらを全て足して、総人口が約60億人というのは、いくらなんでもおかしくはないでしょうか」


 場が、静まり返る。

 上条は息を呑んだ。

 確かによく考えてみればおかしい。現在の地球の人口は60億ということは上条でも知っている。

 が、それは4つの世界が、1人も同一人物がいない世界が一つになって生じた結果だ。何故なら、今がその状態だからだ。

 もし、一つの世界が60億の人口だとしたら、

 ……残りの180億の人々はどうなったんだ?

 それは、もしや

 ……あの世界で、辻褄合わせの為に「いなかったことにされた」俺と同じように……!

椿「安心して……っていうのはおかしいかな」

 「あれ」を思い出し、大粒の汗を流していた上条だったが、その不安を知ってか椿がこちらを向きながら物色してきた。

椿「確かに、元々4つの世界にはそれぞれ60億近い人々が生きていた。けどね。合成されたと言っても、世界の数が減ったわけじゃないの」

上条「は……?」

賀川『先ほど、世界は今尚無限に増え続けていると言いましたね』

 一息。

賀川『けど、一度できた世界は消えることはないのです。世界の数は増えることはあっても、減ることはないのですよ。
 それに、世界の合成と言っていますけど、正確には世界を一つにまとめた物を、再分割したようなものですが……』

椿「ようは、4つの世界にいた合計180億近い人々が、4つの世界に改めて再分割されたってわけ。「魔術」や「精霊」。そういう他の世界には無かった独自の理を全て足したような4つの、世界の合成物にね」

ステイル「ようするに……我々の世界の特異的なものが合成されたが、世界の数は減らないから、その世界は再び元の数に分けられて、その際、その世界に住んでいた人々も、4つの世界に改めて振り分けた、と?」

椿「そういうことよ。出来るだけ辻褄が合うように、人の輪が繋がっているものたちを一つの世界に纏めてね。だから貴方たちの親族や友達、親しい人たちは皆この世界にいるわ。忘れたり、いなかったことにはなっていない。
 そして世界が持つ矯正力によって、全てが都合よくできるように歪められている。それぞれの世界の大統領や国際的な組織のトップが……」

キリト「……すまん、まったく意味がわからん」

直葉「わ、わたしも……」

クライン「世界が合成とかそこからもうついて行けてねぇよ」

 眉を顰めたキリトが諦めた体で言い出したのを皮切りに、直葉やクライン、主に学園都市外からの来訪者たちから理解が追いつかないと不満が出てくる。かく言う上条も何が何だかさっぱりだ。

 ……こういうことに慣れてはいるけど、知識については俺も門外漢だしな。

椿「むむ……確かに説明難しい言い回しになっちゃったかもな……」

 考えすぎて頭痛がしそうな説明だとは、説明している側も自覚していたらしいのが幸いだ。と、ここでアニェーゼが手を上げてきた。

アニェーゼ「なんとなく分かりはしましたが……例えば必要悪の教会を主体に言えば、この世界に必要悪の教会は最大主教を始めとする主要メンバーが集められています。その場合、他の世界では必要悪の教会というのは無くなっているのですか?」

賀川『おそらくですが……そもそもイギリス清教という枠組みそのものが無くなっていると思います。
 多分、これから先の説明は、この事態を引き起こした組織の核心についていくことになると』

オティヌス「そう言えば……世界を合成したと言ったな?おそらく私が世界のフィルターを散々弄ったせいだろうことは察しがついているが……それをして何がしたいんだ?そいつらは」

 なんか軽く今回の騒動の一因であることを明かしたような気もするが、そこは深く考えない方がいい。考えたら

上条「くっ!頭が……」

十香「ど、どうしたカミジョー。大丈夫か?」

 心配されたので「あ、ああ。大丈夫だ」と笑って返す。

 ともかく自分の頭の上にいるオティヌスが投げかけた疑問については、上条も同じことを思っていたところだった。

 そして、この中でその答えを知るであろう2人の人物を見る。

椿「そうだねぇ……あえて言うなら『実験』……かな?」

オティヌス「実験?何のだ?」

賀川『彼らが『平均化の魔術』と呼ばれるものです』

 オティヌスの問いに答えた賀川は視線を、自分たちに向けながら言った。

賀川『世界からあらゆる『異能』を消し去るための魔術です』




第一六話「平均化」 完

ってなわけで第一六話、いかがでしたでしょうか。説明パートは書くのが難しいから、ギャグパートとバトルパートだけ書きたい…。

ではまた日曜日に。チャオ!

2015年 5月 4日
ゼノブレイドクロスで最初のステージからレベル30代がウヨウヨしていて死にまくっている常盤赤色。

乙です

>>1を貫き覚醒させてやる限界を超えた天元突破乙ギガドリルブレイク


士道が肉体的にも士織ちゃんにならないかな…ぶっちゃけ士織ちゃんがドストライクで好み……だが男だ

マリアンに改造して女体化してもらえばいいじゃん

女体化士織状態で霊結晶って使えるんだろうか
サイボーグ少女の恋査や少女形態とった垣根マターでも使えるのか疑問ではある

まぁ士道は七罪を封印したから士織に変身できるんだけどね

ラインバレルが終わってさみしい…>>1は何か愛読してる漫画小説は何?

この作者俺の読んでる本の層が被りそう

ジーサード生身なのに凄い

ジーサード含めて緋アリのキャラは非異能力者が強い世界だからな

あと禁書も

禁書は異能の火力は高いが素の身体能力は常識的だぞ

上条さんは自力で魔術解析してインデックスの出番奪ってるけどね

>>1よ貴公が投下するまでクンカクンカしてやる

>>631
乙ありです。

>>632
やる気満々マン!?士織ちゃん女体化か……いいね!(グッ)

>>633
あれは目がやばいからな……。

>>634
個人的には使えると思う。恋査と垣根マターはなんか無理っぽい。

>>635
まぁね。いつでも士織ちゃんになれるし。
漫画?銀魂とか好きだよ。

>>636
そう?まぁ手広く読んでるしね。

>>637
まぁ人工天才ですし……

>>638
能力?物理で対抗だ!ってやつだもんな。

>>639
禁書は逆な感じが……聖人とかかなり不遇だし。

>>640
上条さんの戦闘時の間の鋭さは半端無い。

>>641
俺の匂いなど嗅いで何が嬉しい?

>>632
そ・れ・な!!

ってなわけで今週もいっきまーす!


1,







インデックス「『平均化』の魔術……?」

 インデックスは10万3千冊の魔導書を脳内に記憶している、文字通りの魔導書図書館である。

 対魔術師戦となればそれらを総動員し、相手の魔術の特性や弱点を瞬時に割り出すことが容易に出来る。もし仮に、アレンジされた物や、完全に新しく生み出されたオリジナルの物でも、大抵は解析が可能だ。現に、彼女は異世界での会合の際にも、その能力で味方のサポートを行い、敵の特性を見抜いていた。彼女の能力は、異世界の魔術にも通用する物なのだ。

 しかし、そんな彼女にも『平均化』の魔術など、聞いたこともないし、見当もつかなかった。

インデックス「私の中の10万3千冊にもそんな魔術はない。それはどんな魔術なの?」

オティヌス「私も見当はつくが、確信がない。聞かせてくれ。その魔術はどのような効果を持つ?」

 オティヌスですら確信が持てない物だというと相当の物だろう。もちろん魔術に対してはエキスパートというレベルを通り越している自分やオティヌスが匙を投げるほどの物なので、上条やキリト、フラクシナスの面々はおろか、必要悪の教会の面々にもどのような物かは見当がつかないだろう。

賀川『そうですね……簡単に言うならば』

 と、賀川の目線がキリトに向けられる。彼はキリトを見ながら

賀川『桐ヶ谷くん』

キリト「あ、はい。俺……ですよね?」

賀川『はい』

 うなづくと、賀川はキリトに一つの問いをした。

賀川『桐ヶ谷くんにとって、魔術というものは馴染みあるものですか?』

キリト「え?いや……ゲームとかでは魔法は出てきますけど。ALOにも魔法は出てきますし」

賀川『あ、すいません。聞き方が間違っていましたね』

 恐らく、彼が聞きたいのは「魔術」という単語自体ではなく

賀川『魔術という現象……それによって現実におこる現象について、あなたは馴染みがあるのかと』

キリト「……いや。少なくとも、俺はここに来るまで、魔術なんてものが現実に存在することも知らなかった」


 ……そういうことか。

 賀川の質問に隠された意図。それにインデックスは気付いた。それと同時に、「平均化」の魔術がどのようなものかがはっきりした。

 それは

賀川『そうです。桐ヶ谷くん達