美緒「……違う。こうするんだ」バルクホルン「こ、こうか……?」 (56)

―501基地 廊下―

ペリーヌ「どこにいるのかしら……」

芳佳「ペリーヌさん、なにしてるの?」

ペリーヌ「別に。宮藤さんには関係ないですわ」

芳佳「そんなふうに言わなくても……」

ペリーヌ「……少佐。坂本少佐に用事があるだけですから」

芳佳「坂本さんならさっきバルクホルンさんと一緒にいるの見たけど」

ペリーヌ「それを先に言いなさいっ」

芳佳「そんなぁ」

ペリーヌ「それで、どこで見かけたの?」

芳佳「丁度、バルクホルンさんの部屋の前辺り。私も坂本さんに用事があるから、一緒に行こう」

ペリーヌ「どうしてわたくしが貴方と? そもそも坂本少佐にどんな用事があるというの?」

芳佳「明日の訓練のこと聞きそびれてたの思い出したの。そんなことより、ほら、ペリーヌさん」ギュッ

ペリーヌ「こ、こら。引っ張らないでくださいな」

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芳佳「ペリーヌさんは坂本さんにどんな用事があるの?」

ペリーヌ「宮藤さんに言う必要はないですわ」

芳佳「ひどーい。私は言ったのに」

ペリーヌ「……わたくしは飛行技能のことで聞きたいことがあるだけですわ」

芳佳「そうなんだ。ペリーヌさんって勉強熱心だよね。尊敬しちゃうなぁ」

ペリーヌ「ふ、ふんっ。褒められても嬉しくないですから」

芳佳「あれ? 坂本さん、いない」

ペリーヌ「宮藤さん……?」

芳佳「ホントに見たから!! もしかしたらバルクホルンさんの部屋にいるのかも!!」

ペリーヌ「本当ですの……?」

芳佳「絶対にいるよ!!」

ペリーヌ「はいはい。では、扉でも叩いてくださいな」

芳佳「うん。バルクホルンさ――」

『少佐。ここからどうしたらいいんだ?』

ペリーヌ「あら、どうやら一緒にいるみたいですわね」

芳佳「ほら。私の言ったとおり」

ペリーヌ「自慢するようなことですの?」

美緒『……こうだ』

バルクホルン『なるほど……。難しいな』

芳佳「何してるんだろう?」

ペリーヌ「取り込み中かしら……。それでしたら時間を変えて……」

美緒『ほら、やってみろ』

バルクホルン『ああ……。ふっ……ふんっ……』

美緒『……なっていないな。こうだっ』

バルクホルン『おっ……んっ……。さ、流石だ……』

芳佳「……?」

ペリーヌ「……!!」

バルクホルン『こうか……! ふんっ……んっ……!』

美緒『……違う。こうするんだ。はっ!! ふんっ!!!』

バルクホルン『おぉ……。こ、こうか……?』

美緒『よし……。よくなってきたな』

バルクホルン『はぁ……はぁ……』

芳佳「部屋で訓練でもしてるのかな?」

ペリーヌ「は……あぁ……あぁぁ……」

芳佳「ペリーヌさん、どうしたの?」

ペリーヌ「あぁぁぁ……!!!」

芳佳「ペリーヌさん?」

ペリーヌ「いやぁぁぁぁ!!!!!」ダダダダッ

芳佳「え!? ま、まって!! ペリーヌさん!!! ペリーヌさん!!!」


美緒「――誰だ?」ガチャ

バルクホルン「誰か居たのか?」

美緒「いや。もういないようだ。気のせいだったかもしれないな」

バルクホルン「それより少佐、続きを頼む」

美緒「はっはっはっはっは。そう焦るな。私は逃げはしない」

バルクホルン「な、なにを言っているんだ」

―格納庫―

シャーリー「ふっ!!」ドガッ!!!

エーリカ「つっ……!! やぁ!!」バキッ!!!

シャーリー「ぐっ……。やるなぁ、ハルトマン」

エーリカ「にひぃ。そういうシャーリーだって」

ルッキーニ「にゃはー。どっちもがんばれー」

リーネ「え!? え!?」

ルッキーニ「リーネ、どしたのー?」

リーネ「ル、ルッキーニちゃん、シャーリーさんとハルトマンさんが……!!」

ルッキーニ「殴り合ってるねー」

リーネ「と、とめないと!!」

ルッキーニ「とめるの? リーネがとめたいなら、とめれば?」

リーネ「ルッキーニちゃんも一緒にとめて!!」

ルッキーニ「えー? シャーリーも楽しそうに訓練してるからいいじゃん」

リーネ「そういうわけにも!!! ……訓練?」

シャーリー「悪い悪い。驚かせたか?」

リーネ「びっくりしましたよ。喧嘩でもしてるのかって……」

シャーリー「ハルトマンとケンカになんかならないよ。こっちがケンカ売ったとしても多分買ってくれないだろうし」

エーリカ「そんなことないよー。私、売られたケンカは値切ってでも買うから」

シャーリー「嘘つけよ」

リーネ「でも、どういう訓練なんですか?」

シャーリー「インファイトの訓練。ネウロイを素手で倒す戦法っていうのも確立してきているらしくてね。実験がてらハルトマンと一戦交えたわけさ」

リーネ「はぁ……。でも、傍から見てると本当に喧嘩みたいで。お二人とも凄く真剣でしたから、なんというか、怖かったです」

シャーリー「そうか?」

エーリカ「だから、ヘッドギアぐらいつけるべきだって」

シャーリー「顔は殴らないからいいと思ったんだけどなぁ」

エーリカ「見た目の問題だよ」

ルッキーニ「あたしはつけないほうが好きだけど。ボクシングみてるみたいでかっこいいしぃ。シュッ! シュッ!」

シャーリー「だよなぁ。やっぱり、なんでも本物っぽいほうが気持ちも引き締まるし」

エーリカ「えー? 私はそんなことないけどなぁ……」

リーネ「もしかして他の人もこういう訓練しているんですか?」

シャーリー「さぁ、どうだろうな。少佐はずっと前からやってるけど、バルクホルンや中佐はしてるのか……?」

エーリカ「ミーナはやってないんじゃない? トゥルーデは訓練するまでもないと思う」

シャーリー「そうだな。あいつ銃器でぶん殴ってるもんな」

エーリカ「そうそう。銃器持たなくてもぶん殴るけど」

シャーリー「確かに」

リーネ「ルッキーニちゃんは?」

ルッキーニ「あたし? あたしも殴るとか蹴るとか好きじゃないから」

リーネ「そうなんだぁ。なんだか安心」

ルッキーニ「あたしは遠くから射撃するか、特攻するのみだもん」

リーネ「特攻……」

ルッキーニ「ねっ。シャーリー?」スリスリ

シャーリー「おう。ルッキーニは私がぶん投げてやるから安心しろ」

リーネ「……考えてみれば、弾薬が尽きたときには必要な技術ですよね」

エーリカ「まぁ、絶対に必要ってわけでもないけど、あると生存率は上がるからね。リーネもやってみる?」

リーネ「わ、私も殴る蹴るは好きじゃないですから」

ルッキーニ「じゃあ、ボディプレスだ」

リーネ「ど、どういうこと?」

ルッキーニ「リーネのボディプレスでネウロイも一撃だー!!」モミモミ

リーネ「ひゃぁ!! やめてぇ!! ルッキーニちゃぁん!!!」

シャーリー「よし、誤解もとけたし、ハルトマン、続きやるぞ」

エーリカ「やるのぉ? メンドーだなぁ」

シャーリー「いくぞ!! おらぁ!!」

エーリカ「よっ。はぁ!!!」

ルッキーニ「はじまったー!」

リーネ「はぁ……。インファイトかぁ」

ルッキーニ「やっぱりリーネも興味あり?」

リーネ「あ、う、うん……。私は接近戦をするようなことはあまりないけど、だからこそ接近戦を強いられる状況に陥ったときは怖いなって」

ルッキーニ「だったらぁ、リーネもシャーリーとボクシングしたらいいじゃん?」

リーネ「む、むりだよぉ。シャーリーさんもハルトマンさんも強いから……。でも、芳佳ちゃんやサーニャちゃんとなら……」

―通路―

芳佳「ペリーヌさーん!!」

芳佳「……どこ行っちゃったんだろう」

ミーナ「ペリーヌさんを探しているの?」

芳佳「あ、ミーナ中佐。そうなんです。見ませんでしたか?」

ミーナ「見てないわね。ごめんなさい」

芳佳「そうですかぁ……。どうしちゃったんだろう」

ミーナ「何かあったのね?」

芳佳「はい……」

ミーナ「話してくれる?」

芳佳「それがよく分からないんです」

ミーナ「わからない?」

芳佳「坂本さんに用事があったので、ペリーヌさんと探していたんです。それでバルクホルンさんの部屋から坂本さんの声が聞こえてきて――」

ミーナ「へぇ……。トゥルーデと美緒が一緒だったの……?」

芳佳「え? あの……そ、そうですけど……?」

ミーナ「どんなことを話していたのか、わかるかしら?」

芳佳「え……あの……」

ミーナ「答えなさい」

芳佳「ひっ……」

ミーナ「いえないの?」

芳佳「あ、えっと……その……バ、バルクホルンさんが……坂本さんに何かを教えてもらっていたみたいで……」

ミーナ「そう? それで?」

芳佳「バルクホルンさんが「こうするのか?」って、でも坂本さんは「違う、こうするんだ」って……」

ミーナ「あら、そう」

芳佳「そのあとは、バルクホルンさんの荒い息遣いがきこえて……」

ミーナ「……」

芳佳「そ、そこでペリーヌさんが走り去って、私もペリーヌさんを追いかけて……」

ミーナ「ありがとう。宮藤さん。今から坂本少佐とバルクホルン大尉のところに行ってくるわ」

芳佳「あ、あ……はい……」

ミーナ「ふふ……ふふふ……」

―食堂―

ペリーヌ「ぐすっ……うぅぅ……」

エイラ「……なんだ、あれ?」

サーニャ「わからないわ。私が食堂に来たときからペリーヌさんはああしていたから」

エイラ「ま、どうでもいいか」

サーニャ「エイラっ」

エイラ「しゃーねーなぁー。おーい、ペリーヌ。なんかあったのかー?」

ペリーヌ「うぅ……うぅぅぅ……」

エイラ「応答がないな。異常なしってことで」

サーニャ「……私が訊く」

エイラ「あぁ。冗談だってー」

サーニャ「ペリーヌさん、私でよければ相談にのります」

ペリーヌ「サーニャさん……」

サーニャ「なにがあったんですか?」

ペリーヌ「そ、それが……少佐と大尉が……」

エイラ「……ホントかよー?」

ペリーヌ「会話から察することができるでしょう?」

エイラ「でも、大尉と少佐だろ? ありえるか?」

ペリーヌ「ありえる、ありえないの問題ではないですわ!! わたくしと宮藤さんがこの耳で聞いたのですから!!」

サーニャ「ペリーヌさん、落ち着いてください」

ペリーヌ「この……耳で……うぅぅ……」

エイラ「ペリーヌ……」

ペリーヌ「もうおわりですわぁぁぁ……!!! あぁぁぁぁ……!!!」

サーニャ「どうしよう?」

エイラ「大尉と少佐がなぁ……。勘違いじゃないのかぁ?」

サーニャ「勘違い?」

エイラ「例えば、部屋で訓練してたとか」

サーニャ「訓練ならもっと広い場所ですると思うけど……」

エイラ「それもそうか。なら、ペリーヌの言うとおり、大尉と少佐は……部屋で……あんなことやこんなことを……?」

サーニャ「この話、私たちだけの秘密にしておいたほうがいいかも」

芳佳「あ、ペリーヌさん!!」

ペリーヌ「み、宮藤さん……」

芳佳「聞いて!! ミーナ中佐の様子がおかしくて……!!」

ペリーヌ「はい?」

エイラ「宮藤。ミーナ中佐がどうしたんだ?」

芳佳「エイラさん、サーニャちゃん!!」

サーニャ「もしかして病気を……?」

エイラ「それなら宮藤の魔法でなんとかしてくれ」

芳佳「違うんです!! 坂本さんとバルクホルンさんのことを話したら――」

エイラ「お前!! よりにもよって中佐に喋ったのかよぉ!?」

芳佳「えぇ!? ダ、ダメでしたか!?」

エイラ「ダメっていうか……なんていうかぁ……」

サーニャ「エイラ、何がダメなの?」

エイラ「ほら、中佐と少佐は仲がいいだろ? 結構、そういう話には敏感らしいってことを前に中尉から聞いたことがあってぇ」

サーニャ「そういえば私も聞いたことがあるわ。あ、それなら芳佳ちゃんが話したことでミーナ隊長は……」

ペリーヌ「……なんの話をしているんですの?」

エイラ「お前には関係ないから。気にするな」

ペリーヌ「あやしいですわ……」

芳佳「サーニャちゃん、私の何がダメだったの?」

サーニャ「説明するのが難しいけど……つまり……」

芳佳「うん」

サーニャ「今、三角関係が出来上がっていると思う」

芳佳「三角関係……!? って、どういうこと?」

サーニャ「えっと……」

エイラ「つまり、中佐から少佐へ矢印を書くだろ?」カキカキ

芳佳「この矢印はどういう意味なんですか?」

エイラ「色々あるんだ。で、少佐と大尉にも矢印を書くだろ。大尉と中佐にも矢印を書く」カキカキ

芳佳「この矢印の意味がわかりません!」

エイラ「色々あるんだ」

サーニャ「この矢印は片思いで、こっちは両思い、ここが友達とか……?」

芳佳「よく分からないけど、複雑だね」

サーニャ「うん。複雑」

ペリーヌ「わたくしの矢印も追加してくださいな」

エイラ「お前は蚊帳の外だろ」

ペリーヌ「……」

エイラ「あ、ちが……」

ペリーヌ「あぁぁぁ……!!! やっぱり……やっぱりぃぃ……!!! しょうさぁぁぁ……!!!! おしあわせにぃぃ……!!!」

エイラ「あぁ……なくなよぉ……」

芳佳「エイラさん、このことは秘密にしておいたほうがいいですか?」

エイラ「そのほうがいいんじゃないか? 下手に騒がれても当人たちは困るだろうし」

サーニャ「うん。私たちが踏み込んでいいことじゃないと思う」

芳佳「でも、もし私の所為で坂本さんとミーナ中佐の仲が悪くなったら、いやだなぁ」

エイラ「遅かれ早かれこうなってたと思うけどな」

芳佳「はぁ……」

サーニャ「芳佳ちゃんの所為じゃないわ。気にしないで」

―バルクホルンの部屋―

バルクホルン「はぁ……はぁ……少佐……」

美緒「もう少しだ。頑張れ」

バルクホルン「わ、分かった……!!」

美緒「やめるか?」

バルクホルン「何を……いう……!! ここまできたんだ……最後まで……やる……!!」

美緒「それでこそバルクホルン大尉だ。では、見せてくれ」

バルクホルン「はぁ……はぁ……ふぅー……。いくぞぉ!!!」

ミーナ『坂本少佐。バルクホルン大尉』

美緒「な……!?」

バルクホルン「ミ、ミーナか!?」

ミーナ『……何をしているのかしら?』

バルクホルン「ミーナ。少佐はいない。勘違いだ」

ミーナ『開けなさい。無理やり開けてもいいけれど?』ガチャガチャ

美緒「くっ……」

―格納庫―

シャーリー「はぁー。良い汗かいたなぁー」

エーリカ「シャーリー、がんばりすぎー。もうつかれちゃったー」

シャーリー「でも、気持ちよかっただろ?」

エーリカ「……まぁね」

シャーリー「また、やろうな」

エーリカ「気が向いたらねー」

ルッキーニ「おつかれー、シャーリー!」

シャーリー「おー。応援、サンキュー」

ルッキーニ「ハルトマン中尉もおつかれー。かっこよかったよ」

エーリカ「かっこよくてかわいかった、の間違いじゃない?」

ルッキーニ「にゃははは。うん! かっこよくて、かわいかったー」

エーリカ「だろー?」

シャーリー「あれ、リーネはどうしたんだ?」

ルッキーニ「芳佳を探しにいったみたい。芳佳とならボクシングしてもいいんだって」

―通路―

芳佳「はぁ……。私、悪いことしちゃったのかなぁ……」

サーニャ「大丈夫だから」

エイラ「そうだぞー」

芳佳「……」

サーニャ「エイラ、ペリーヌさんのこと見ていなくて平気かしら?」

エイラ「いいだろ。今は1人のほうがいいだろうし」

サーニャ「そういうものなの?」

エイラ「そういうもんだって」

リーネ「芳佳ちゃーん」

芳佳「あ、リーネちゃん」

リーネ「サーニャちゃんとエイラさんも一緒だったんですか。丁度よかった」

エイラ「なにが?」

サーニャ「どうかしたの?」

リーネ「実はね、お願いがあるの」

芳佳「インファイトの訓練?」

リーネ「うん。さっきシャーリーさんとハルトマンさんがしているのを見て、私もそういうことをしておいたほうがいいかなって」

エイラ「シャーリーや中尉やともかく、リーネには必要ないだろ。お前の能力を考えれば、前衛よりも後衛向きだし」

リーネ「だけど、ずっと後ろにいるからそういう状況にはならないという保障はないですから」

エイラ「まぁ……」

芳佳「リーネちゃん、そんなこと考えてたんだ。すごいね」

リーネ「ううん。私もさっき思っただけなの。それでね……」

芳佳「よし! やろう!!」

リーネ「いいの!?」

芳佳「勿論。リーネちゃん、一緒に訓練しようよ」

リーネ「ありがとう、芳佳ちゃん!!」

エイラ「危なくないか? 殴りあうんだろ?」

リーネ「ちゃんと防具もあるみたいですから」

エイラ「ふぅーん。サーニャはどうす――」

サーニャ「やるっ。やりたいっ」

リーネ「サーニャちゃんまで……。うれしいな」

サーニャ「嬉しいわ。誘ってくれてありがとう」

エイラ「私も参加するぞ。そんな危ない訓練を新人と一緒にサーニャがやるなんて看過できないからな」

リーネ「ありがとうございます、エイラさん」

芳佳「早速やってみよっか」

リーネ「これからするの? 勝手にやって怒られないかなぁ」

芳佳「訓練だから大丈夫だよ」

エイラ「怒られることはないだろうな」

サーニャ「早くやってみましょう」ギュッ

リーネ「ちょ、ちょっと、サーニャちゃん」

サーニャ「みんなと訓練っ」

芳佳「サーニャちゃん、すごく嬉しそうですね」

エイラ「夜間哨戒の関係で複数人と訓練する機会があまりないからな」

芳佳「それで……。よし! それなら益々がんばらないといけないですね!!」

エイラ「だな。私もやる気だすか」

―食堂―

ペリーヌ「うぅぅぅ……」

ペリーヌ「うぅ……」

ペリーヌ「……なんだか、少しすっきりしましたわ」

ペリーヌ「お水でも飲みましょうか」

ルッキーニ「とー!! ごはんはー!?」

ペリーヌ「まだに決まっているでしょう?」

シャーリー「缶詰とかパンぐらいならあるだろ」

エーリカ「だよねー。たべよー」

ペリーヌ「ちょっと。食事の時間まで待てませんの?」

エーリカ「別にいーじゃん。それとは別腹だからさ」

ペリーヌ「そういうことではありません!!」

シャーリー「結構、激しい訓練をしたんだよ。見逃してくれ。な?」

ペリーヌ「もう……。シャーリーさんは大尉としての自覚がなさすぎますわ」

シャーリー「ペリーヌ・クロステルマン中尉、ありがとうございまーす」

ルッキーニ・エーリカ「いただきまーす!!」

ペリーヌ「どんな訓練をしていたのですか?」

シャーリー「インファイトだよ。ほら、ネウロイも素手で倒す時代になってきてるから」

ペリーヌ「それは確か……502と504にいる……」

シャーリー「そうそう。素手でもネウロイを倒す戦術っていうのがあることを聞いたからな」

ペリーヌ「あの、それはミーナ中佐は否定的だったはずですけど。危険すぎるからと」

シャーリー「……へ?」

ペリーヌ「ハルトマン中尉は知っていたのではなくて?」

エーリカ「え? そーなの?」

ペリーヌ「はぁ……」

シャーリー「誰からそのこと聞いたんだ?」

ペリーヌ「坂本少佐からですわ。少佐の戦闘スタイルも似たようなものですから、よく苦言を呈されていると言っていました」

シャーリー「そうなのか。少佐とバルクホルンはインファイトを好んでたし、てっきりミーナ中佐公認だと思ってたんだけど」

ペリーヌ「技術や近接戦闘向きの魔法があれば別ということではありませんの? 坂本少佐とバルクホルン大尉の場合はそうしたほうが……ほう……が……うぅぅ……」

ルッキーニ「あにゃ!? ペリーヌ、どうしたの!? パン、たべりゅう?」

ペリーヌ「あぁぁ……しょうさぁぁ……!!!」

ルッキーニ「ペリーヌ、なかないでー。パンあげるからぁ、ジャムもあるよー。ほらー、ぬったげるからぁー」

シャーリー「ハルトマン、知ってたろ?」

エーリカ「知らなかったって。知ってたら私がシャーリーに付き合うと思う?」

シャーリー「そうだな……」

エーリカ「まぁ、付き合うにしてもミーナの許可をもらってからだね。見られたとき何を言われるかわかんないし」

シャーリー「はぁー。見られる前でよかったなぁ。もしかしたら営倉行きになってたかもしれないぞ」

エーリカ「もー。やめてよー。ミーナを怒らせるのだけはさぁ。怖いんだぞぉ」

シャーリー「わかってるよ。中佐の怖さを知らないのは宮藤とリーネぐらいだろ」

エーリカ「あとサーにゃんかな」

シャーリー「サーニャも知ってるとは思うぞ。それはそうと次やるときは中佐に話を通してからになるな」

エーリカ「だねぇ」

シャーリー「あとでリーネにも言っとくか」

ペリーヌ「うぅぅ……はむっ……はむっ……しょっぱいですわ……涙の味がします……」

ルッキーニ「ジャムもっとつけるから!! これで甘いよ!! ほらほら!!」

―滑走路―

芳佳「これをつければいいんだね」

リーネ「うん。でも、顔を狙うのは危ないから……」

芳佳「顔は殴れないよ。リーネちゃんの顔にもしものことがあったら大変だもん」

リーネ「芳佳ちゃん……」

サーニャ「ふーん……!!!」グググッ

エイラ「サーニャ、そのヘッドギアちょっと小さくないか?」

サーニャ「でみょ……こりょぐふぁい……きふくふぁいふぉ……!!!」グググッ

エイラ「サーニャ、顔がすげえ面白いことになってるからやめてくれー」

芳佳「で、どうしたらいいのかな?」

リーネ「エイラさん、何か知ってますか?」

エイラ「ああ、受け売りでいいなら」

リーネ「受け売り?」

エイラ「知り合いに接近戦好きのやつがいてさぁ」

サーニャ「ふぅーん……!!! あ、はいった」

エイラ「パンチはこう」シュッ!!

芳佳「こうですか?」

エイラ「ダメだな。こんなパンチじゃ、アリも倒せない」

芳佳「あ、ありも!?」

エイラ「いいか? パンチは腕力だけじゃないんだ。全身を使って、打つんだ!」シュッ!!

芳佳「おぉー」

リーネ「こう?」

エイラ「違うってー。手に力をいれんな。手の力は抜け。手に力が入ってると速度が出ないし、腰に力もはいらないだろ?」

リーネ「む、むずかしいんですね」

サーニャ「えいっ。えいっ」シュッシュッ

エイラ「な? サーニャは可愛いだろ?」

サーニャ「えいっ! やっ!」

エイラ「右でパンチするときは、まず左肩を前に出して、体を回転させて右肩と右腕を出すんだ。このとき足は地面につけとけよ。絶対に浮かせるなよ。絶対だぞ」

芳佳「こう、です、か!」

エイラ「ダメだ。腰でうつんだ。腰で」

芳佳「ふんっ!! はっ!!」

エイラ「ほら、どこ狙ってんだよぉ」

芳佳「はぁ……はぁ……。エ、エイラさん相手じゃ……あたらないですよぉ……」

エイラ「だらしねーなぁ。次、リーネ」

リーネ「お、お願いします」

エイラ「教えたことを守っていれば、大丈夫だかんな」

リーネ「はい!! いきます!!」

エイラ「こいっ」

リーネ「はっ!! ふんっ!! えーいっ!!」

エイラ「ほっ。よっ。はっ」

リーネ「はぁ……はぁ……あ、あたらない……」

エイラ「リーネも全然ダメだな。次、サーニャ」

サーニャ「いくわ。――えいっ、やぁ、とぉ」ペチンペチンペチン

エイラ「うわっ。うぇ。ほぇ。サーニャのパンチはスゴイナー」

芳佳・リーネ「「……」」

サーニャ「エイラ」

エイラ「いや、本気で避けようとしてるけど、サーニャは才能がありすぎて」

サーニャ「違うわ。向こう」

エイラ「ん?」


バルクホルン「こっちだ、少佐。向こうなら誰にも見られることはないはず」グイッ

美緒「待て、バルクホルン。こそこそとする必要は……」

バルクホルン「途中でミーナに見つかった以上は仕方ないだろう。私は最後までやりたいんだ」

美緒「全く、誰かに見られていなければいいが……」


芳佳「(あの、リーネちゃん?)」

リーネ「(なに?)」

芳佳「(どうして私たちが隠れなきゃいけないの?)」

リーネ「(な、なんとなく……)」

エイラ「(ペリーヌの言ってたことは本当だったんだな……)」

サーニャ「(ええ……。森の中へ行くみたいだけど、何をするのかしら……)」

―食堂―

ミーナ「――坂本少佐!!! バルクホルン大尉!!!」

ペリーヌ「むぐっ……!?」

エーリカ「うわぁ!?」

ルッキーニ「うにゃぁぁ!!!!」

シャーリー「中佐!? い、いきなりどうした!?」

ミーナ「ここにもいない……。上手く逃げられてしまったわね……」

エーリカ「ミーナ、なんか怒ってる?」

ミーナ「え?」

エーリカ「おぉ……!! マジのときのミーナだ……!!」

ミーナ「……ペリーヌさん?」

ペリーヌ「ふぁ……ふぁい……?」

ミーナ「まだ食事の時間ではないはすですが、その口の周りにびっしりついているジャムはなんですか?」

ペリーヌ「ふぉ、ふぉれふぁ……ふっふぃーふぃふぁんふぁ……」

ルッキーニ「あわわわわ……!!」

ミーナ「……」

ペリーヌ「んぐ……。あ、あの、これは……!!」

ルッキーニ「ペリーヌが泣いてたからぁ!! 甘いジャムで元気になってもらおうとしただけでぇ……!!」

ミーナ「……」

シャーリー「ルッキーニは悪くない!! 勝手に食べたのは私とハルトマンだから!!」

エーリカ「えー!? シャーリーが誘ったんだから、シャーリーが責任とってよぉ!!」

シャーリー「お前、ずるいぞ!!!」

エーリカ「こればっかりは無理だから……!! ごめん、シャーリー……!!」

シャーリー「お、おまえ!! 頼むから一緒に怒られよう!! な!?」

エーリカ「やだやだ!!」

ミーナ「……」

ペリーヌ「中佐……そのぉ……あのですね……」

ルッキーニ「ペリーヌが坂本少佐とバルクホルン大尉のとこで泣いちゃって!! それでね……あのね……あにょ……うえぇぇぇん……!! ごめんなさぁぁぁい!!!」

ペリーヌ「ル、ルッキーニさん!! 泣いてもしかたないでしょう!?」

ミーナ「坂本少佐とバルクホルン大尉のことって、なにかしら?」

ペリーヌ「ひっ……!?」

ミーナ「答えてくれる?」

ペリーヌ「あ……あ……」

ミーナ「どうしたの?」

ペリーヌ「さ、坂本少佐とバ、バルク、ホルン大尉が……その……」

ミーナ「……」

ペリーヌ「バル、クホルン、た、大尉の……お、部屋で……あの……よからぬことを……して、いたような……」

エーリカ「よからぬことってなに?」

シャーリー「ペリーヌ。詳しく話してくれ」

ペリーヌ「ちょ、ちょっと!! お二人とも!! 状況を考えてくださいな!!!」

ミーナ「……よからぬこと。そう……よからぬことね……。そうでしょうね……。わざわざ、部屋でやっていたんですから……」

エーリカ「ミーナが怒ってる原因は、それか」

シャーリー「少佐とバルクホルンは何やってたんだ?」

ペリーヌ「そ、それは……その……」モジモジ

ルッキーニ「うぇぇぇん!! 勝手にパンと、かんぢゅめ、たべて、ごめんなさぁい!! うぇぇぇん!!」

―森―

バルクホルン「ここなら邪魔も入らないはずだ」

美緒「バルクホルン、お前の熱意は分かるし、私もそれに応えてやりたい気持ちはある。だが、やはりミーナの理解を得てからにしないか?」

バルクホルン「ミーナが許可をくれるとは思えないからこそ、私はこうして個人的に……」

美緒「しかしな……」

バルクホルン「少佐っ」

美緒「な、なんだ?」

バルクホルン「今はミーナのことは忘れてくれ」

美緒「それは……」

バルクホルン「私には少佐が必要なんだ。私の我侭をきいてほしい」


リーネ「(うわぁ……。こ、これって……!! これって……!!)」

エイラ「(おぉぉ。これはあれだな。うん。あれだ。間違いないって)」

サーニャ「(緊張してきた……)」

芳佳「(バルクホルンさん、そんなに坂本さんと訓練したかったのかなぁ)」

美緒「お前にそこまで言われては断れないだろう」

バルクホルン「少佐……」

美緒「卑怯な頼み方だな、バルクホルン。どこで覚えた?」

バルクホルン「少佐が悪いんだ。こういう頼みかたでないと、貴方は応えてくれなさそうだったからな」

美緒「そうか。それはすまなかったな」

バルクホルン「……」

美緒「……」

バルクホルン「あ、あの……。は、始めようと思うんだが……」

美緒「そうだな。時間はかけられないからな」

バルクホルン「頼む。部屋での続きを……」

美緒「分かっている。もう少しこっちにこい」

バルクホルン「ああ……」


エイラ「(ここからじゃよくみえないなー)」

リーネ「(エイラさん、これ以上はダメですよ。戻りましょう?)」

エイラ「(ここからが見所だろ。なにいってんだよ、リーネ)」

バルクホルン「こうだったな」

美緒「そうだ。そして、ここを握る」

バルクホルン「こうか?」

美緒「まだ肩に力が入っている。力を抜け」

バルクホルン「しょ、少佐に教えてもらうと、何故か緊張して……」

美緒「お前らしくもない。私のいうとおりにやれば問題ない。深呼吸しろ」

バルクホルン「ふぅー……」

美緒「そうだ。それでいい」


エイラ「(なにやってんだ……? 全然みえねー)」

リーネ「(エイラさん! やめましょう!! もういいじゃないですか!!)」

エイラ「(いいところなんだから邪魔すんな)」

リーネ「(邪魔してるのは私たちですよぉ)」

サーニャ「……」ドキドキ

芳佳「あのー!! 坂本さーん!! バルクホルンさーん!! 私たちも混ぜてくださーい!!」

エイラ・リーネ「「……!!!」」

美緒「なに……?」

バルクホルン「宮藤か?」

エイラ「バッカ!!! 宮藤ぃ!!!」グイッ

芳佳「むぐぅ!?」

リーネ「よ、よよ、芳佳ちゃん!!!」

サーニャ「すみません……」

美緒「誰の邪魔も入らないのではなかったのか?」

バルクホルン「すまない」

エイラ「いやぁ、私たちはすぐに離れるから……」

リーネ「坂本少佐とバルクホルンさんはどうぞ、ごゆっくり……」

バルクホルン「見られたものは仕方ない。こっちにこい」

エイラ「え!? いいのか!?」

リーネ「そ、そんな!! こ、心の準備が!!」

サーニャ「何をするんですか?」

芳佳「わーいっ。坂本さーん、バルクホルンさーん」テテテッ

美緒「そのまま一気に振り下ろす」

バルクホルン「ふっ!!!」ブンッ!!!

芳佳「やー」ブンッ

エイラ「……あれ?」

リーネ「これって……」

サーニャ「とー」ブンッ

美緒「そんな感じだ。やはりバルクホルンは飲み込みが早いな」

バルクホルン「少佐の教え方が卓越しているからだ」

美緒「謙遜するな。はっはっはっは」

エイラ「少佐、大尉に剣の振り方を教えてたのか?」

美緒「ああ、そうだ。バルクホルンがどうしても私の、いや扶桑の戦闘技能を学びたいといってきてな」

バルクホルン「扶桑の武術は洗練されているからな。身につけることができれば、様々な応用もできる」

芳佳「すごいですね、バルクホルンさん。十分強いのにまだ強くなるために努力してるなんて」

バルクホルン「私はまだまだ少佐から学ぶことは多い。あまり買い被るな」

エイラ「なんで、隠れるように訓練してたんだよ? 堂々と訓練したらいいじゃないか」

美緒「それは……な……」

バルクホルン「……」

リーネ「なにかあるんですか?」

サーニャ「やー」ブンッ

ミーナ「――ここに居たのね」

サーニャ「……!!」ビクッ

芳佳「ミーナ中佐……」

美緒「早いな、ミーナ。さては魔法を使ったか」

ミーナ「貴方たちが窓から逃げたから、致し方なくね」

バルクホルン「ミーナ……」

ミーナ「……」

エイラ「修羅場か……?」

リーネ「ど、どうなんでしょうか」

サーニャ「芳佳ちゃん、怖いわ……」ギュッ

芳佳「わ、私も……」ギュッ

ミーナ「言ったはずです。インファイトの訓練は許可しないと」

美緒「宮藤にはいつも早朝に木刀を握らせているが?」

ミーナ「あれは基礎的な体力作りのためでしょう。バルクホルン大尉が学ぶとなれば話は別です」

美緒「何が別なんだ?」

ミーナ「接近戦を想定した訓練にしか見えません」

美緒「だから、それなら早朝の鍛錬についても咎めるべき――」

バルクホルン「少佐。もういい」

美緒「バルクホルン……」

バルクホルン「ミーナの理解を得ようとは思っていない。だから、私は少佐に頼んだ」

ミーナ「どうして勝手なことをするの? 私は貴方のためを思って……」

バルクホルン「分かっている。だが、少佐の戦闘技術は本物だ。学ぶべきところが多い」

ミーナ「ええ。坂本少佐には幾度となく助けられてきたわ。でもね、それは坂本少佐だからなの」

バルクホルン「技能を吸収できれば問題ない」

ミーナ「貴方やハルトマン中尉ならできるわ。ルッキーニ少尉もできてしまうでしょう。でも、できないウィッチのほうが多いの」

芳佳「もしかして……」

ミーナ「今後、その技能に、或いは戦闘スタイルに憧れを持つウィッチが現れるかもしれない。それはとても危険なことよ」

バルクホルン「才能の有無を見分けるのは私たちの役目だ」

ミーナ「そういうことじゃないの」

美緒「真似をされるのが怖いのだろう。私が散々聞かされた理由だ」

エイラ「真似って、私たちが少佐や大尉の戦いかたを真似るってことか?」

リーネ「そんなの絶対にできないですよ」

ミーナ「それでもその戦闘スタイルが蔓延するのは看過できないの」

サーニャ「エイラ、もしかして……」

エイラ「素手でネウロイと戦ってるウィッチが最近でてきてるからなぁ」

サーニャ「ええ……」

ミーナ「個々の生存率を下げてしまうような戦闘訓練なんて許可できるわけないでしょう」

バルクホルン「この際だ。言わせてもらうが、ミーナは心配しすぎだ。リーネのようにできないことはできないと皆は理解している。何故、私たちを信用できないんだ」

ミーナ「だから……」

バルクホルン「仲間を悲しませるような戦い方をする者はもういないはずだ」

ミーナ「それは……でも……」

芳佳「あの、いいですか?」

美緒「なんだ、宮藤?」

芳佳「私はできれば坂本さんみたいに刀で戦ってみたいとは思います」

ミーナ「ほら!!」

バルクホルン「宮藤!!」

芳佳「でも、坂本さんは絶対に真似をするなって言ってくれます」

ミーナ「……!」

芳佳「私が許可するまで私の真似はするなって、いつも言ってくれています。どうしてかなって思ってましたけど、ミーナ中佐が言ってたんですね」

ミーナ「美緒……」

美緒「まぁ……あれだけ言われたな……」

芳佳「だから、絶対にそんなことはしません。信じてください」

ミーナ「……トゥルーデも同じことを言われているの?」

バルクホルン「当たり前だ。それに私自身も生半可な技術で戦闘しようとは思っていない。少佐から合格点をもらえるまでは自信のつけようもない」

ミーナ「そう、なの……」

美緒「すまん、ミーナ。お前の気持ちも分かるが、私としてもバルクホルンが納得するまで教えてやりたい。どうか理解してくれないか」

ミーナ「……わかりました」

バルクホルン「ミーナ……!」

ミーナ「ただし、坂本少佐から許可が出るまでは絶対に、絶対に、戦闘でその技能を試そうとはしないこと。いいですね?」

バルクホルン「了解」

ミーナ「坂本少佐も丁寧に教えて。甘い評価もしないで」

美緒「するわけがない。バルクホルンの命に関わることなら尚更だ」

ミーナ「お願いね」

美緒「任せておけ」

ミーナ「はぁ……。任務もあることを忘れないように」

バルクホルン「ああ。ありがとう、ミーナ」

ミーナ「いいわよ」

芳佳「よかったですね!! バルクホルンさん!!」

バルクホルン「そうだな。宮藤の一言が大きかったかもしれないな」

芳佳「そんなことないですよ。バルクホルンさんの熱意が伝わったんです」

バルクホルン「そうか」

エイラ「あー……。なんか恥ずかしくなってきたなぁ……」

リーネ「はい……」

美緒「何が恥ずかしいんだ?」

エイラ「え!? いや、こっちの話」

リーネ「き、気にしないでください!!」

美緒「そう言われると気になってしまうな」

サーニャ「あの、私にも是非教えてください」

美緒「サーニャも近接戦闘に興味があるのか?」

サーニャ「はいっ」

美緒「はっはっはっは。分かった。必ず教えてやる。いや、バルクホルンから学んでもいいだろうがな」

サーニャ「どういうことですか?」

美緒「バルクホルンに全てを叩き込むつもりでいるからだ」

サーニャ「全てを……」

バルクホルン「少佐」

美緒「はっはっはっは。これは秘密だったか。すまん」

芳佳「……」

バルクホルン「どうした、宮藤?」

芳佳「……すみません。私たち、戻りますね」

バルクホルン「なに?」

芳佳「いこっ、リーネちゃん」

リーネ「芳佳ちゃん?」

芳佳「エイラさんもサーニャちゃんも」

エイラ「お、おい!! なんだよぉ!?」

サーニャ「私、もう少し……」

芳佳「いいから」

美緒「……行ってしまったな」

バルクホルン「気づかれたか」

美緒「別に隠すようなことでもないだろう」

バルクホルン「そうか? 貴方が引退を考えて、私に技術を引き継がせようとしていることは、士気に関わると思うが」

美緒「我が501がその程度で士気が下がるとは思わないがな。さぁ、バルクホルン!! 訓練だ!! 訓練!! はっはっはっは!!!」

―格納庫―

エイラ「宮藤、急にどうしたんだよ?」

芳佳「……なんでもないですよ。それより、エイラさん! 訓練の続き、しましょう!! シュッ! シュッ!」

エイラ「お前なぁ、ミーナ中佐に許可をもらったほうがいいだろ。中佐はあんまり良い顔してなかったんだし」

芳佳「それもそっか……」

サーニャ「パンチを打つ練習もダメかな?」

リーネ「近接戦闘の訓練になっちゃうから」

ミーナ「貴方たち」

エイラ「うぇ!? ちゅ、中佐、いたのかよぉ」

ミーナ「してもいいけれど、見えないところでやりなさい」

リーネ「ええと、いいんですか、ダメなんですか?」

ミーナ「それは貴方たちが判断しなさい。以上。解散っ」

リーネ「えー!?」

芳佳「難しいね……。どうする?」

サーニャ「そうだっ」

―通路―

ミーナ「はぁ……。今日はなんだか、いつも以上に疲れた気がするわ」

エーリカ「ミーナっ!!」

ミーナ「どうしたの?」

エーリカ「……よかった。ちょっと機嫌なおってるね」

ミーナ「なに?」

エーリカ「ルッキーニ、今なら大丈夫だって」

ルッキーニ「うぅ……」

ミーナ「ルッキーニさん?」

ルッキーニ「あにょ……パンと缶詰……食べたこと……」

ミーナ「……今後は勝手に食べないように。いいですね?」

ルッキーニ「あい」

ミーナ「よろしい。許してあげます」

ルッキーニ「にゃはー!!! ありがとー!!!」ギュッ

ミーナ「こら。抱きついていいとは言ってませんよ」

シャーリー「よかったなぁ、ルッキーニ」

ルッキーニ「うんっ!!」

シャーリー「そうだ、中佐。私からもお願いしたいことが」

ミーナ「……その前に勝手に食料を食べたことを謝罪するほうが先ではないかしら、シャーロット・E・イェーガー大尉?」

シャーリー「いぃ!?」

ミーナ「……」

シャーリー「す、すみません……」

エーリカ「……」コソコソ

ミーナ「エーリカ・ハルトマン中尉!!!!」

エーリカ「はいぃ!!!」

ミーナ「何か言うことは!!!」

エーリカ「勝手に食べてごめんなさいであります!!!」

ミーナ「もう少し規範となる行動を心がけなさい。いいですね?」

シャーリー・エーリカ「「了解!!」」

シャーリー「(インファイトの訓練のことは当分許可貰えにいけないな……これは……)」

―通路―

ペリーヌ「ふんふふーんっ」

ペリーヌ「(あー、少佐と大尉が部屋でやっていたのがただの訓練だったとはー。うふふふ。わたくしの早とちりでしたのねー)」

ペリーヌ「背中に羽がはえたようですわー」

ペリーヌ「あ、そうだ。エイラさんとサーニャさんにも説明しておいたほうがいいですわね」

ペリーヌ「お二人もきっとつまらない勘違いをしていらっしゃることですし。おほほほほ」

ペリーヌ「エイラさんは部屋にいるかしら」

『違うって。そうじゃないんだ』

ペリーヌ「エイラさんの声。在室のようですわね。よかっ――」

『でも、エイラさんの言うとおりにしてますよ?』

ペリーヌ「(宮藤さん?)」

『もっと腰を使えっていってんだろ』

『こ、こうですか?』

『もっと腰をいれろっていってんだろ。私を満足させるまでにどれぐらいかかるんだよ、宮藤』

ペリーヌ「……!?」

リーネ『エイラさん、私はどうですか?』

エイラ『リーネも全然、ダメだな。なんだよ、それー』

ペリーヌ「リ、リーネさんまで……!?」

サーニャ『エイラ、私は?』

エイラ『見せてくれ』

サーニャ『ふんっ……ふんっ……えいっ……』

エイラ『おぅ。うぇ。あぅ。いいぞー。サーニャ、サイコーだー』

ペリーヌ「はぁぁ……!!? こ、これはぁぁ……!!」

芳佳『エイラさん、サーニャちゃんばっかりじゃないですかぁ!!』

リーネ『そうですよぉ』

エイラ『わかったわかった。ほら、かかってこい』

ペリーヌ「4人で……エイラさんが3人を……あぁぁ……!!! 不潔ですわぁぁぁ!!!!」ダダダッ

エイラ「なんだぁ?」ガチャ

エイラ「……気のせいか。おーい。次、正しいキックのやり方教えてやるからなー」

芳佳・リーネ・サーニャ「「はーい」」

―格納庫―

バルクホルン「少佐。もう一度、確認させてくれ。握りはこうでいいのか?」

美緒「ああ。こうして」ギュッ

ペリーヌ「しょうさぁぁ!!」

バルクホルン「ペリーヌ?」

美緒「なにかあったのか?」

ペリーヌ「うぅぅ……しょうさ……ぁぁぁ……」

美緒「どうしたんだ?」

ペリーヌ「エイラさんたちが……エイラさんたちがぁ……」

バルクホルン「エイラたち?」

美緒「エイラがどうした?」

ペリーヌ「部屋で……部屋で……なにか……こう……よからぬことを……」

美緒「よからぬこと?」

バルクホルン「行ってくる」

美緒「あ、おい。バルクホルン。どうせ、訓練か何かだろう?」

―食堂―

シャーリー「あっはっはっはっは」

ペリーヌ「わ、笑わないでください!!!」

シャーリー「いや、だって、一日に同じ勘違いを二度もするか、ふつー」

ペリーヌ「だってぇ!!」

エイラ「失礼なやつだなぁ。私がそんなことするわけないだろ。サーニャは別だけど」

芳佳「楽しかったねー」

リーネ「うん。サーニャちゃんも喜んでたし。やってよかったねー」

美緒「人騒がせなやつだな」

バルクホルン「私たちもだと思うがな」

美緒「ふっ……そうれもそうか……」

バルクホルン「明日も頼めるだろうか、少佐」

美緒「無論だ。まだまだ合格点は出せんぞ?」

バルクホルン「望むところだ」


おしまい。

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