エイラ「宮藤が落ち込んでないか?」バルクホルン「なんだと!?」 (67)

芳佳「あ、いけない。インカム外し忘れてた。返してこなきゃ」

芳佳(また坂本さんに怒られちゃうよぉ)

『――でさ……な……』

芳佳(ん? 何か聞こえる……?)

シャーリー『まぁ――宮藤――は嫌いだな』

芳佳「え……」

ルッキーニ『――あたしも――きらーい』

エーリカ『あれ――みんな嫌いだったの?』

ペリーヌ『当然ですわね』

美緒『こら、全部聞こえているぞ。さっさと訓練を始めろ』

芳佳「……インカム、返してこなきゃ」

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滑走路

美緒「お前たち。私が聞いているところでよくも納豆が嫌いだの、苦手だの言えるものだな」

シャーリー「すいません」

ペリーヌ「あ、あれだけは、どうにも慣れなくて……」

ルッキーニ「味は別にいいんだけどぉ。ネバネバしゅるから」

エーリカ「だねぇ。ちょっとメンドくさいよねぇ」

美緒「あれがいいんだろう」

シャーリー「そういっても、リベリオンには無い食べ物だしなぁ」

美緒「好き嫌いをしていてどうする。あれは栄養価も高い。軍人にとっては――」

ルッキーニ「シャーリー、お風呂いこ!」

シャーリー「んー。そうだなー。行くか、ルッキーニ」

ルッキーニ「おぉー!!」

エーリカ「おなかすいたねー」

美緒「……」

ペリーヌ「わ、わたくしは聞いていますわ!! 少佐の納豆講義!!」

美緒「――でな、そもそも納豆とは」

ペリーヌ「はい!!」

芳佳「坂本さん……」

美緒「どうした、宮藤?」

芳佳「インカム……外し忘れてて……返しにきました」

美緒「そうか。確かに受け取った」

芳佳「はい……。それでは、失礼します」

美緒「宮藤……?」

ペリーヌ「なんだか、元気がないようにも見えましたけど」

美緒「訓練の疲れでも出ているのか?」

ペリーヌ「体力的な面ではまだまだですものね」

美緒「そうだな。まぁ、これからゆっくりと育てていけばいいだけだ。はっはっはっは」

ペリーヌ「……まめだぬきぃ……」

美緒「あぁ、そうだ。納豆についてはどこまで話した?」

ペリーヌ「ええと……。納豆の起源についてからだったかと」

食堂

芳佳「……」

リーネ「芳佳ちゃん、どうしたの? 全然、食べてないけど……」

芳佳「ああ。うん。ちょっと疲れちゃって」

リーネ「大丈夫?」

芳佳「うん。休めば平気だから」

リーネ「う、うん」

芳佳「はぁ……」

サーニャ「……」

エイラ「サーニャ、どこみてんだ?」

サーニャ「芳佳ちゃん」

エイラ「なんで宮藤を見るんだ? 私を見てくれ」

サーニャ「様子が変だから」

エイラ「宮藤がおかしいのはいつものこと――」

サーニャ「エイラ、怒るよ?」

エイラ「おい! 宮藤!!」

芳佳「あ、はい」

エイラ「元気出せ!」

芳佳「え?」

エイラ「お前が元気出さないと、サーニャが私を見てくれないんだ。だから、元気出せ」

芳佳「だ、大丈夫ですよ。私はいつでも元気ですから」

エイラ「本当だな?」

芳佳「は、はい」

エイラ「んー?」

芳佳「か、顔が近いです……エイラさん……」

エイラ「なら、いいけど」

芳佳「は、はい」

エイラ「いいか! 次、サーニャがいるところで溜息一つでもしたら、ビンタだかんな」

芳佳「えぇぇ!?」

エイラ「絶対だぞ!!」

大浴場

芳佳「はぁ……」

芳佳(私、嫌われてたんだ……。でも、どうして……?)

芳佳(納豆を毎回出すから? それとも、みんなの胸を見比べてランク付けしてるから?)

芳佳(それとも寝る前は必ず、シャーリーさんやバルクホルンさんやリーネちゃんの胸に挟まれることを妄想しているから……?)

芳佳「わかんないよぉ……」

バルクホルン「――み、宮藤か」

芳佳「あ、バルクホルンさん」

エーリカ「よっ。みやふじぃ」

芳佳「あ……」

エーリカ「なんで目をそらすんだよぉ」

芳佳「す、すいません。そんなつもりじゃ」

バルクホルン「どうかしたのか?」

芳佳「え? い、いえ……なにも……」

バルクホルン「そうか」

エーリカ「えっほ、えっほ」チャプチャプ

バルクホルン「こら、ハルトマン。風呂で泳ぐな」

エーリカ「いーじゃん。だれもいないんだしぃ」

バルクホルン「いいか、宮藤? どんなことがあってもハルトマンを規範にはするな」

エーリカ「なんだよぉ。私の良い所は盗んでいいぞーみやふじぃ」

芳佳「……」

バルクホルン「宮藤?」

芳佳「あ、はい。なんですか?」

バルクホルン「体調でも悪いのか?」

芳佳「いえ! そんなことはありませんよ!!」

バルクホルン「しかし」

芳佳「す、すいません!! 先にあがりますね!!」テテテッ

バルクホルン「お、おい」

エーリカ「どうしたんだろう?」

バルクホルン「宮藤……」

翌日 食堂

芳佳「……」

リーネ「芳佳ちゃん、芳佳ちゃん」

芳佳「え? あ、なに?」

リーネ「……元気、ないよ?」

芳佳「そんなことないよ」

リーネ「でも」

エイラ「……」

芳佳「私はいつも通りだから」

リーネ「そんな風には……」

エイラ「宮藤」

芳佳「エイラさん?」

エイラ「ていっ」ペチンッ

芳佳「あう」

リーネ「エイラさん!! いきなりなにをするんですかぁ!!!」

エイラ「全然、元気ないじゃないか。私に嘘ついたな?」

芳佳「う、うそなんてついてないです!!」

エイラ「私には嘘は通じないぞ」

リーネ「エイラさん!! 芳佳ちゃんに謝ってください!!」

エイラ「うるさい」ペチンッ

リーネ「きゃふっ」

芳佳「エイラさん!! やめてください!!! リーネちゃんは関係ないじゃないですか!!!」

エイラ「いいか。お前がさっさといつもの宮藤に戻らないとこうして被害は広がっていくからな」

芳佳「な……!!」

エイラ「次はそうだな……。ツンツン眼鏡かルッキーニ辺りを……」

芳佳「や、やめてくださいよ」

エイラ「なら早急に――」

芳佳「……失礼します」

エイラ「あ、こら。宮藤。どこに行くんだ」

リーネ「芳佳ちゃーん!! まってー!!」

エイラ「なんだよー。宮藤のやつ」

美緒「騒がしいぞ。何をしている?」

ミーナ「リーネさんが宮藤さんのあとを慌てて追っていったみたいだけど」

エイラ「私が宮藤をぶった」

美緒「……ほう? 相応の覚悟はあるのか、エイラ?」

エイラ「いや! 軽く!! 軽くだって!! こう優しく頬に触れる程度の力加減でぺちっとしただけで……!!」

美緒「冗談だ」

エイラ「少佐はいつも目が本気だから、冗談かどうかわからないな……」

ミーナ「宮藤さんに何かあったのかしら?」

エイラ「さぁ、肝心の宮藤がなーにも喋ってくれないんだ。明らかに落ち込んでるんだけどな」

美緒「疲れではないのか?」

エイラ「あーそうかもしれないけど」

ミーナ「1日ぐらいお休みをあげたほうがいいかしら?」

美緒「そうだな。少し検討してみるか」

エイラ「よろしく」

格納庫

芳佳「はぁ……」

芳佳(普段、優しくしてくれる分、陰でああいうことを言われていると……はぁ……)

芳佳(でも、考えてみたら、そうだよね。私、いつもシャーリーさんの胸とかいやらしい目で見てるし)

芳佳(そういうところで気持ち悪がられて……)

シャーリー「お、宮藤。こんなところでなにしてるんだ?」

芳佳「シャ、シャーリーさん!?」

シャーリー「さっき、リーネが泣きそうな顔でお前のこと探してたぞ?」

芳佳「そ、そうですか……」

シャーリー「ん? 表情が暗いなぁ。ほら、笑って笑って」グニーッ

芳佳「あにぃー」

シャーリー「あはははは。変な顔。あ、悪い。私が笑っても意味無いな」

芳佳「……すいません。リーネちゃんのとこに行きます」

シャーリー「あ、ああ。うん」

シャーリー「……どうしたんだ、あいつ?」

芳佳「リーネちゃーん」

美緒「宮藤。探したぞ」

芳佳「あ、坂本さん。どうかしたんですか?」

美緒「……私の目をじっと見ろ」

芳佳「え……」

美緒「ほら。もっと顔を近づけろ」グイッ

芳佳「あ……あぁ……あの……さ、さかもと……さ……」

美緒「宮藤……」

芳佳「……っ」

美緒「ふむ。顔が赤いな。熱でもあるのか?」

芳佳「え……?」

美緒「やはり、疲れがたまっているようだな。どうだ。1日ぐらい休暇を取るというのは?」

芳佳「い、いえ!! 私は大丈夫ですから!! 休暇なんていりません!!」

美緒「だが、疲れて倒れてれしまえば本末転倒だぞ」

芳佳「な、なんともないですからぁ!!!」ダダダダッ

食堂

ミーナ「そう。本人がそう言っている以上は、こちらとしても無理強いはできないわね」

美緒「そうだな……」

バルクホルン「いいか、ルッキーニ? シャーリーにいつも甘やかされているようだが、その半裸で基地内を徘徊するのはやめろ」

ルッキーニ「えー?」

バルクホルン「えーではない。整備班も目のやり場に困っているはずだ」

ルッキーニ「あ、中佐と少佐だぁ」

ミーナ「トゥルーデ、ルッキーニさん。珍しい組み合わせね」

バルクホルン「ルッキーニ少尉が中々服を着て寝ることを覚えないからな」

ルッキーニ「寝てるってばぁ。脱ぐのは暑いときだけぇ」

バルクホルン「脱いで寝るな。脱いで寝るなら部屋で寝ろ」

ルッキーニ「べーっ」

バルクホルン「この!!」

美緒「丁度いい、バルクホルン。宮藤のことで訊きたいことがあるのだが」

バルクホルン「宮藤? 宮藤になにかあったのか?」

バルクホルン「――確かに昨日の風呂でも様子はおかしかったな」

美緒「やはりか」

ミーナ「無理にでも休ませるべきかしら?」

ルッキーニ「芳佳だけじゅるい!! あたしもお休みほしー」

バルクホルン「お前はいつも元気が有り余っているだろう。もっと疲れるぐらいに訓練をしてからいえ」

ルッキーニ「えぇー?」

バルクホルン「だが、少佐。宮藤が休暇は必要ないと言った以上、押し付けるのはよくない。却って意固地になり、余計無茶をする可能性もある」

ミーナ「あら。貴方がいうと説得力があるわね」

バルクホルン「私とて過去の反省ぐらいはする」

美緒「ふむ。では、倒れるまで傍観するか?」

バルクホルン「何もそうは言っていない。ミーナ、備品等で必要なものはないか?」

ミーナ「え……。ああ、そうね。そろそろ買っておかなければいけないものもあるわ」

バルクホルン「そうだろう。買出しは宮藤にやらせたほうがいい。新人なのだからな」

美緒「そういうことか。ミーナ、何が必要か全員から訊いたほうがよさそうだな」

ミーナ「そうね。急がないといけないわね」

滑走路

芳佳「はっ……ふっ……はっ……」タタタッ

エイラ「……」テテテッ

芳佳「……なんですか?」

エイラ「なんでもない。しっかり走れ」

芳佳「はい……」タタタッ

エイラ「……」テテテッ

芳佳「ついてこないでください!!」

エイラ「私もランニングしてるだけだ」

芳佳「なら、私の顔ばかりみないでくださいよぉ!」

エイラ「宮藤の顔なんて見てないぞ。その向こうに広がる大海原を見ていただけで」

美緒「宮藤ー。エイラー。ちょっとこーい」

芳佳「あ、坂本さんだ」

エイラ「ほら、いくぞ、宮藤。私より少しでも遅れたら、今晩おねしょする呪いをかけてやったからな。急げよ」テテテッ

芳佳「なんでそんな呪いをかけるんですかぁ!?」

芳佳「買出し……ですか?」

美緒「ああ。行ってくれるな?」

芳佳「それは構わないですけど……」

美緒「一人では大変だろうから、あと二人か三人は一緒に行ってもらう。心配するな」

芳佳「は、はぁ」

エイラ「なに買ってもいいのか?」

美緒「予算の範囲内ならばな」

エイラ「難しいな」

芳佳「……」

エイラ「宮藤」

芳佳「あ、はい」

エイラ「私も買い出し、付き合ってやる。感謝しろ」

芳佳「はい。ありがとうございます」

エイラ「勘違いすんな。サーニャにプレゼントしたい物があるんだ。それを買いに行きたいだけだかんな」

美緒「同行者の一人はエイラか。いいだろう。宮藤、同行者はお前自身が決めていいからな」

食堂

シャーリー「それで、買出しを」

ペリーヌ「ちょっと宮藤さんに甘いのではなくて?」

サーニャ「でも、昨日から少し様子がおかしいのは確かですし」

ペリーヌ「そうかもしれませんけど」

ミーナ「まぁ、いい息抜きになればと思ってのことだから」

バルクホルン「同行者は決定済みなのか?」

ミーナ「いいえ。まだ一人も決まっていないわ。2、3人は一緒に行ってほしいのだけど……」

バルクホルン「仕方あるまい。ここは私が」

シャーリー「車の運転できんのか?」

バルクホルン「……」

エーリカ「おかしー!!」

ルッキーニ「あたしもー!!」

ミーナ「はいはい。それじゃあ、各自買ってきてほしいものをこの紙に書いて」

ルッキーニ「あい!!」

廊下

芳佳「でも、私でいいんでしょうか……」

エイラ「なにかあるのか?」

芳佳「だって……」

リーネ「よしかちゃーん!!」

芳佳「あ、リーネちゃん。どこにいたの? ずっと探してたんだけど、結局見つからなくて……」

リーネ「はぁ……はぁ……私も……ずっと……探してて……」

エイラ「宮藤はリーネ探しに飽きてランニングしてたぞ」

芳佳「ち、違います!! リーネちゃんならきっと見つけてくれるって思って、滑走路で走っていただけで……!!」

リーネ「そうなんだ。ごめんね」

芳佳「ううん。私のほうこそごめん」

「――で、宮藤は?」

「坂本少佐が探しているわ」

エイラ「ん? みんな食堂にいるのか?」

芳佳「行きましょう。リクエストを訊かないといけませんし」

「でも、本当に宮藤さんに任せていいんですの?」

芳佳「……!」

エイラ「どうした?」

リーネ「芳佳ちゃん?」

「何か問題でもあるのか?」

「考えてみてください。宮藤さんに買出しを任せれば、きっと余計なものを買ってきますわよ」

「あぁー。そうかもー。アレとかねー」

「そういえば、もう無いって言ってたよな」

「えぇー。じゃあ、私がいくー」

「ハルトマン。お前は私利私欲を肥やすために行く気だろう。許可はできない」

「はいはい。これは決まったことなの。宮藤さんを――」

芳佳「……」

エイラ「宮藤?」

芳佳「エイラさん、リーネちゃん……。私、用事を思い出したから、その……みんなのリクエスト、代わりに聞いておいてくれませんか? それじゃ」

リーネ「あ、芳佳ちゃん!!」

サーニャ「余計なものって?」

ペリーヌ「あの腐った豆のことですわよ」

サーニャ「あれは買出しで手に入るものなんですか?」

ミーナ「いいえ。納豆は扶桑からの物資補給でしか手にはいらないわ」

ペリーヌ「あ、そうなのですか」

エイラ「なんだったんだ?」

リーネ「さぁ……」

シャーリー「お。リーネ。宮藤はどうしたんだ?」

リーネ「用事を思い出したって……」

サーニャ「エイラ?」

エイラ「わ、私だって良く分からないんだ」

サーニャ「芳佳ちゃんを探してくる」テテテッ

エイラ「あ、サーニャ!! 私も行くぞ!!」

ミーナ「ちょっと!! もう、まだ何を買ってきて欲しいか聞いてないのに」

バルクホルン「私はどうするか……うーん……」

滑走路

芳佳「……」

芳佳(私って信頼されてないんだ。ううん、新人だし、嫌われてるし、当然だよね……)

芳佳(なんだか、急に寂しくなってきちゃった……)

芳佳「うっ……ぐすっ……」

美緒「宮藤、何をしている?」

芳佳「さ、坂本……さ……」

美緒「ん? 泣いているのか?」

芳佳「あ、いえ……これは……あははは……」

美緒「よし。私の服でその涙を拭うといい」ヌギヌギ

芳佳「えぇぇ!? そんな!! いいですからぁ!!!」

美緒「気にするな。はっはっはっは」

芳佳「気にします!!」

美緒「そうだな。急にここでの生活が始まったのだ。故郷が恋しくなるときもあるだろう。私もふと扶桑を懐かしむときがある」

芳佳「……」

美緒「だが、そういうときは扶桑の料理を味わうことでそういった物悲しさは払拭することができる」

芳佳「そうですか」

美緒「宮藤が来てからは、そういうこともなくなったがな。お前の出す扶桑料理は格別だ」

芳佳「ありがとうございます」

美緒「それで、同行者は決まったのか?」

芳佳「いえ……まだ……」

美緒「そうか。できるだけ早く決めてくれ。場合によってはシフトの変更もしなければならないからな」

芳佳「あ、あの!!」

美緒「どうした?」

芳佳「……暇な人でいいですから。そんな無理に同行してもらうのは気が引けますし」

美緒「ふむ。そうなると、参加できそうなのは、バルクホルン、シャーリー、リーネ、ルッキーニ、そして私だな。誰がいい?」

芳佳「一緒に行きたいって人がいれば」

美緒「なるほど。全員の意見を聞いてからというわけか」

芳佳「は、はい」

美緒「よし。聞いてこよう」

エイラ「あ、坂本少佐ー」

美緒「おお。エイラにサーニャか」

サーニャ「あの、芳佳ちゃん見ませんでしたか?」

美緒「宮藤なら滑走路にいるぞ」

エイラ「そうなのか。よし」

サーニャ「行こう、エイラ」

美緒「待て。少し訊きたいことがある」

サーニャ「でも、芳佳ちゃんなんだか様子がおかしくて……」

美緒「分かっている。それも少し関係していることだ」

エイラ「なんだ、少佐も気がついていたのか」

サーニャ「それなら、安心」

美緒「はっはっはっは。宮藤のことなら、いつもみているからな」

エイラ「で、話ってなんだ?」

美緒「ああ、買出しの同行者についてなんだが」

サーニャ「同行者?」

芳佳「……はぁ」

美緒「宮藤ー。きいてきたぞ」

芳佳「すいません。どうだったんですか?」

美緒「全員が行きたいと申し出た。やはりお前が決めてくれ」

芳佳「えぇぇ!?」

美緒「ああ。全員というのは文字通り、全員だ。大半はお前と買出しに行きたいというよりは、訓練をサボりたいだけだろうが」

芳佳「あ、そうですか」

美緒「で、どうする?」

芳佳「……えーと……エイラさんは決まってるんですよね」

美緒「そうだな。行きたいと言っていたしな」

芳佳「運転できる人も、必要ですよね」

美緒「私とミーナ、シャーリーが無難だろう。ハルトマンでもいいが」

芳佳「それじゃあ……」

美緒「遠慮なく言え」

バルクホルン「では、行ってくる」

エイラ「サーニャ、期待してていいからな」

サーニャ「うん」

リーネ「芳佳ちゃん、気をつけてね」

芳佳「うん。ありがとう」

エーリカ「一緒にいきたかったなぁ」

ルッキーニ「だよねぇー」

芳佳「ごめん……なさい……」

エイラ「……」

ミーナ「美緒。よろしくね」

美緒「わかっている。宮藤のことは誰よりも分かっているつもりだ」

ミーナ「そうね。同じ扶桑出身ですものね」

美緒「その通りだ。――では、いくぞ」

エイラ「おー」

バルクホルン「行ってくれ」

車中

エイラ「それにしても宮藤。どうして大尉なんだ? 私はリーネを選ぶと思ってたのに」

バルクホルン「どういう意味だ、エイラ? 私が選出されたのが不服なのか?」

エイラ「そういうわけじゃないけどさぁ」

芳佳「あ、えっと……。訊きたいこともあって……」

美緒「皆の前では訊けないようなことか?」

芳佳「は、はい。それでバルクホルンさんや坂本さんなら、きっと濁さないで本当のことを言ってくれるかなって……」

エイラ「本当のこと?」

バルクホルン「なんでも言ってみろ。ここだけの話にしてほしいというなら、そうする」

芳佳「……」

美緒「宮藤。もしや、怒られるようなことを訊くつもりか?」

エイラ「まぁ、大尉のほうが少佐よりも胸は――」

バルクホルン「黙れ」ペチンッ

エイラ「あにゃ」

芳佳「あ、あの……私って、みなさんにどう思われているんですか?」

美緒「どうとは?」

芳佳「えっと……その……。新人なので、足を引っ張っていることは自覚してます。それはいいんです。でも、私自身のことはどうなのかなって」

美緒「宮藤芳佳という人間をどう思っているか、とういうことか?」

芳佳「そ、そうです」

エイラ「変なことを聞くなぁ」

芳佳「す、すいません……」

バルクホルン「他人の評価が気になっている間はまだまだだな、宮藤」

エイラ「でも、宮藤ってバルクホルン大尉のこと大嫌いって言ってたよな」

芳佳「え?」

バルクホルン「宮藤、本当か?」グイッ

芳佳「ぐぇ……!」

バルクホルン「私のどこが気に入らない? 言ってみろ? すぐに直してみせる」

芳佳「そ、そんなこと……いってません……!!」

エイラ「大尉、ごめん。嘘」

バルクホルン「……そのような嘘をついて誰が得をするんだ? 言ってみろ!! エイラ・イルマタル・ユーティライネン少尉!!」

エイラ「あぁー。ゆるしてくれってー」

バルクホルン「許さんぞ!!!」

美緒「車内で暴れるな。バルクホルンも見っとも無いぞ」

バルクホルン「す、すまない。取り乱す必要もないのに取り乱してしまった」

エイラ「たすかったぁ」

芳佳「……」

美緒「宮藤。お前は他人からどう思われているのか気になる性質か?」

芳佳「そ、そういう……わけじゃ……」

美緒「……誰かから何かを言われたか?」

芳佳「え!?」

エイラ「どーせ、ツンツン眼鏡だろ? 気にすんなって」

芳佳「あ、あの……」

エイラ「あまり酷いこというようなら、私があのメガネにヒビでもいれてやるから。な?」

芳佳「あはは……」

バルクホルン「様子がおかしかったのは、それが原因か?」

芳佳「えっと……」

エイラ「少なくともリーネは宮藤のこと好きだぞ。あと、サーニャもまぁ、私の次に宮藤が好きみたいだ。いいか? 私の次だぞ?」

美緒「ああ。だろうな」

芳佳「それは嬉しいです……」

バルクホルン「ミーナやハルトマンも特に宮藤のことを嫌っているような節はない。むしろ、好意を持っているはずだ」

美緒「うむ。シャーリーやルッキーニからも宮藤に関しては何も聞かんな。ペリーヌはまぁ、多少厳しいことも言っているが、あいつも宮藤のことは認めている」

芳佳「ほ、本当ですか?」

美緒「お前は私たちなら容赦なく言ってくれると考えていたのだろう?」

芳佳「は、はい」

美緒「なら、そういうことだ。はっはっはっは」

芳佳「……でも……私は……」

エイラ「大尉は宮藤のことどう思ってるんだ?」

バルクホルン「ん? 私か? ……そういうエイラはどうなんだ?」

エイラ「な! 大尉、逃げるなよ。訊いたのは私だぞ」

バルクホルン「上官が聞き返したのだ。答えろ」



美緒「よし。それでは買出しと行くか。確か、リーネから聞いておいた店は……」

エイラ「大尉は宮藤のこと大好きなんだろー?」

バルクホルン「好きであることは否定しない!! だが『大』はつけるな!!」

エイラ「いいだろ。大好きってほうが嬉しいぞ」

バルクホルン「エイラはどうなんだ。宮藤こと、好きなのだろう」

エイラ「嫌いじゃない。それだけだ」

バルクホルン「好きか嫌いかで言えば、どちらだ?」

エイラ「答える義理はないな」プイッ

芳佳「あ、あのこんなところでケンカは……」

美緒「宮藤の言うとおりだ。バルクホルンも大人気ないぞ」

バルクホルン「何故、私ばかり……」

エイラ「やーい、やーい」

美緒「エイラもだ。全く」

エイラ「……はい」



美緒「ここか。よし、手分けして探すぞ。このカゴに入れてこい」

バルクホルン「了解」

エイラ「まずはサーニャへのプレゼントをー」テテテッ

芳佳「えーと……リーネちゃんは……紅茶……紅茶……」

エイラ「宮藤っ。一緒に探すぞ」

芳佳「あ、はい」

バルクホルン「こら。一人でも探せるだろ」

エイラ「別にいいだろー」

バルクホルン「よくない。任務は効率よく、だ」

エイラ「いくぞ、宮藤。大尉なんてムシムシ」

芳佳「そ、それは流石に……」

バルクホルン「待て!!」

エイラ「一緒に探したいなら、そういえばいいだろ」

バルクホルン「そ、そんなつもりは……微塵もない……が……」

エイラ「なぁー。宮藤?」

芳佳「なんですか?」

エイラ「いや……。なんだ。えーと……」

芳佳「エイラさん……?」

エイラ「誰に何を言われたのかは知らないけど、その、だな……。わ、私とサーニャは宮藤のこと気に入ってるからな」

芳佳「……」

エイラ「だから……あー……」

芳佳「ありがとうございます、エイラさん」

エイラ「勘違いすんな。サーニャから元気付けてやれって、言われているからで、別に私は宮藤のことは心配してなかったからな」

芳佳「はい」

エイラ「それだけ言いたかったんだ。ほら、探すぞ。サーニャへのプレゼントも探してくれ」

芳佳「……エイラさん」

エイラ「ん?」

芳佳「実は……聞いたんです……」

エイラ「なにを?」

芳佳「私のことが嫌いだって言っているのを……です」

エイラ「な……」

芳佳「それで、私、もうどう接していいのか……わからなくなって……それで……それで……うぅ……」

エイラ「あぁ、なくなよぉ」ナデナデ

芳佳「エイラさん……」ギュッ

エイラ「誰がそんなこと言ったんだ?」

芳佳「……ごめんなさい」

エイラ「ここまで言ったんだから、言えよ」

芳佳「ごめんなさい……」

エイラ「仕方ないなぁ」ナデナデ

バルクホルン「――何をしている?」

エイラ「大尉」

バルクホルン「私たちの任務を忘れたのか?」

エイラ「いや……それどころじゃないっていうか……」

バルクホルン「宮藤? どうした?」

芳佳「うぅ……」ギュゥゥ

エイラ「はいはい」ナデナデ

バルクホルン「そうか。外し忘れたインカムから宮藤のことを話しているのが聞こえてきたのか……」

エイラ「訓練中に話すことかって感じだけどな」

バルクホルン「全くだ」

エイラ「まぁ、でも、こんなことを言うのはツンツン眼鏡だけダナ。よし、宮藤。基地に戻ったら私がペリーヌの眼鏡をバッキバキに折ってやるから。もう泣き止め」

芳佳「うっ……でも……私がきっと悪いんです……だから……」

バルクホルン「宮藤が悪い?」

芳佳「理由もなく、人を嫌うってことはないはずですから……」

エイラ「心当たりでもあるのか?」

芳佳「……あの……えっと……納豆と毎回出したり……とか……」

エイラ「それぐらいで嫌う奴を私が嫌ってやるから安心しろ」

芳佳「あ、あと……あの……胸を……つい見てしまったりとか……」

エイラ「安心しろ。私なんてとりあえず揉んでるぐらいだから。宮藤が嫌われているなら、私も嫌われている」

バルクホルン「エイラ、それは慰めているのか?」

芳佳「エイラさん……」

エイラ「宮藤、いいか? そんなことを聞いたからって別に気にすることはないぞ。嫌いになってやればいいだけだ」

芳佳「そんなの……」

バルクホルン「宮藤の性格上、それはできないだろう。底まで沈んでいくだけだ」

エイラ「なら、どうするんだ? 宮藤を好きになれって命令するのか?」

バルクホルン「それで解決するならそうする。が、そういう問題ではないだろ」

芳佳「……」ギュッ

エイラ「……宮藤を泣かしたやつはとりあえず、痛い目にあったほうがいいと思う」

バルクホルン「同感だ」

芳佳「や、やめてください」

エイラ「宮藤はどうしたんだ?」

芳佳「私は……あの……みなさんのことが好きなんです……」

バルクホルン「ほう?」

エイラ「別に嬉しくないけど、その辺は詳しく聞かせろ」

芳佳「みなさんとっても優しくて、困っていればすぐに助けてくれて……。なのに、私のことを嫌いだったなら、ずっと迷惑だったんだなって……それで申し訳なくなって……」

美緒「こらー。お前たち。なにをやっとるかー。目的のものは見つかったのか?」

芳佳「さ、坂本さん……」

バルクホルン「少佐、聞いてくれ」

美緒「どうした?」

エイラ「宮藤のことを嫌いだと言ったやつがいるらしい」

美緒「……ペリーヌか?」

エイラ「そうだろうけど、宮藤が話してくれないんだ」

芳佳「あ、あの……」

美緒「ふむ。宮藤、気にするな。私から言っておく」

バルクホルン「少佐。だが、それでは根本的な解決にはならないだろう」

美緒「そうだが。人の感情だ。簡単にはいかないさ」

バルクホルン「それは、そうだが……」

エイラ「……よし、宮藤。こっちだ」グイッ

芳佳「え? なんですか?」

エイラ「いいから、いいから」

エイラ「この辺のでいいな」

芳佳「あ、あの、これは……? 枕……?」

エイラ「宮藤はみんなを好きでいたいんだろ?」

芳佳「はい」

エイラ「なら、みんなから好かれるようにならないとな」

芳佳「そ、そんなことは考えてませんよぉ」

エイラ「相手のことを好きでいる以上、やっぱり相手からも好かれていたいじゃないか」

芳佳「そ、そうですけど……」

エイラ「私だって、サーニャには私のことを好きでいてほしいし、私もサーニャのことは好きでいたいからな」

芳佳「わ、私は好かれたいというよりは、みんなの仲が良ければそれで……」

エイラ「分かってる。宮藤のそれは天然だもんな。人が勝手に集まってくるっていうか。だから、私もサーニャも……いや、サーニャもお前のことは好きなんだ」

芳佳「エイラさん……」

エイラ「まぁ、その、お前がそうやってがんばってる限りは、普通、嫌いになったりとかはしないはずなんだけどな」

芳佳「そんな……私なんて……」

エイラ「宮藤のことが嫌いだっていう相手にも全力でぶつかっていくところ、私は好きだぞ。私だったらサーニャの胸元に逃げるし」

芳佳「私はただ、よく考えてないだけで」

エイラ「とりあえず、この中から枕を選ぶか」

芳佳「どうして枕なんですか?」

エイラ「枕って以外と嬉しいものなんだ」

芳佳「そうなんですか?」

エイラ「枕一つで寝心地は変わるからな。それに私たちは軍人だ。よく眠れる枕があれば喉から手が出るぐらいに欲しいだろ?」

芳佳「そ、そうですね。シフトが変わると、寝る時間も全然違いますし」

エイラ「そう。朝起きて朝に寝ることだってあるんだ。だから、枕、というか寝具って重要なんだからな」

芳佳「わ、わかりました」

エイラ「真剣に選べよ」

芳佳「は、はい」

エイラ「お前の自腹なんだから」

芳佳「はい。えぇぇ!?」

エイラ「当たり前だろ。さてと、私もサーニャのプレゼントを選ばないとな。この枕がいいかなー」

芳佳「みんなの分の枕を……!! が、がんばらないと……!!」

美緒「……どうやら、エイラに任せておいてもよさそうだな」

バルクホルン「では私たちは当初の目的通り、買出しを済ませるか」

美緒「それにしても、宮藤が聞いたという陰口は本当なのか?」

バルクホルン「インカム越しから聞こえてきたと言ってた。それも訓練中だったそうだ」

美緒「……インカム? それはいつの話だ?」

バルクホルン「昨日のことらしい。宮藤がインカムを外し忘れて、それを少佐に返しに行く途中だったようだ」

美緒「……」

バルクホルン「少佐? 早くしないと日が暮れてしまうぞ」

美緒「……私もその場にいた」

バルクホルン「なに?」

美緒「確かに宮藤の名前は出ていたが……」

バルクホルン「少佐!! 何か知っているのか!?」

美緒「ふふっ……はっはっはっはっはっはっは!!! なるほど!! そういうことだったのか!!」

バルクホルン「ど、どういうことなんだ!?」

美緒「なんだ。いや、おかしいとは思っていた。宮藤を貶すような陰湿な者が501にいるはずがないからな!!! はっはっはっはっはっは!!!」

芳佳「エイラさん!! ルッキーニちゃんにはこのぬいぐるみみたいな枕はどうでしょうか!?」

エイラ「うーん。こっちのかぶと虫のほうが喜びそうだけどな」

芳佳「そうですか。わかりました」

エイラ「リーネには抱き枕とかいいんじゃないか? 確か、使ってただろ」

芳佳「あ、はい!! ハルトマンさんはどうしましょう……?」

エイラ「あー。好みがあるとは思えないけどなぁ……」

芳佳「バルクホルンさーん」

バルクホルン「――どうした?」

芳佳「ハルトマンさんってどんな枕が好みなんでしょうか?」

バルクホルン「聞いたことが無いな……。だが、あまりに寝やすいものは危険だ。今よりも起床が遅延するかもしれん」

芳佳「でも……」

バルクホルン「それよりも宮藤」

芳佳「はい?」

美緒「バルクホルン。ここで説明しても宮藤は納得しない。好きにさせておけ」

バルクホルン「だが、宮藤は自腹を切って皆の枕を買おうとしているのに……」

美緒「聞き間違いであったと私たちが言っても、宮藤は買うことはやめんだろ」

バルクホルン「……」

芳佳「あの……?」

美緒「なんでもない。それよりも土産ならすぐに選べ」

芳佳「は、はい」

バルクホルン「……仕方ない」

美緒「どこに行く?」

バルクホルン「買い物だ。私たちの任務は買い出しだからな」

美緒「そうか。好きにしろ」

エイラ「これでいいんじゃないか? 手触りもいいし」

芳佳「そうですね!! 次はシャーリーさんのを……」

エイラ「お! あった!! これでいいな!! サーニャの枕ぁ。ふふふ」

芳佳「エイラさん!! シャーリーさんって抱き枕のほうがいいですか!?」

エイラ「自分で決めろって。でも、まぁ、いいんじゃないか?」

芳佳「はいっ!!」

芳佳「なんだか……かさ張りますね……」

エイラ「枕だしな」

美緒「大丈夫か、宮藤? 半分ぐらいならもってやれるが」

芳佳「い、いえ……これは、自分の……買い物ですから……」

美緒「落とすなよ? 私の枕もあるのだからな」

芳佳「は、はい……」

バルクホルン「少佐。車を出してくれ」

エイラ「え? 会計はどうした?」

バルクホルン「全部済ませた。お前たちが余りにも遅いかったからな」

美緒「そうか。すまないな」

芳佳「あ、あの!! バルクホルンさん!! この枕……!! 全部買うんで……!!」ヨロヨロ

バルクホルン「会計は済ませたと言ったはずだ、宮藤」

エイラ「なに……」

芳佳「え? え? いえ、まだ、すんでませんよぉ!!」

美緒「分かった。ほら、宮藤。車に乗れ。ああ、バルクホルン。枕を包むものを貰っておいてくれ」

車内

美緒「忘れ物はないな?」

エイラ「おー」

芳佳「バルクホルンさん……」

バルクホルン「なんだ?」

芳佳「枕のお金は……?」

バルクホルン「……」

エイラ「まぁまぁ。宮藤、いいじゃないか」

芳佳「よ、よくありません!! これは私が買わないと意味がないんです!!」

バルクホルン「これで貸し借りはなしだ」

芳佳「な、なにをいって……」

バルクホルン「借りたものは返した。それでいいだろ」

芳佳「えぇぇ……?」

美緒「はっはっはっはっは。バルクホルン、宮藤が困っているぞ。以前、助けてもらったお礼だときちんと言え」

バルクホルン「……ふんっ」

基地 食堂

ミーナ「おかえりなさい、美緒。随分と遅かったのね」

美緒「色々とあってな」

芳佳「あの、お金は……」

バルクホルン「いいと言っている。上官の指示には従え」

芳佳「そんなぁ」

エイラ「大尉も意地悪だな。そういえば宮藤は引き下がるしかないのに」

芳佳「でも、この枕……バルクホルンさんにあげるつもりだったのに。これじゃあ、バルクホルンさん自身が買ったことに」

バルクホルン「そんなことはない。宮藤が選んでくれた枕だ。大事にする」

芳佳「いいんですか?」

バルクホルン「お前が真剣に選んでくれたことが嬉しいからな」

芳佳「……はいっ」

エイラ「素直じゃないんだな」

バルクホルン「うるさい」ペチンッ

エイラ「いてっ」

バルクホルン「私は素直に気持ちを述べた」

エイラ「本音はあれだろ? 宮藤へのお礼ができて嬉しいとかそういう――」

バルクホルン「ふんっ」バチンッ!!

エイラ「ナァー!!!」

ルッキーニ「よっしかぁー!! おっかえりー!!」

エーリカ「おかしはぁー!?」

芳佳「ありますよー」

ルッキーニ「やったぁー!!」

エーリカ「ありがとー」

芳佳「あ、あと……これ……」

ルッキーニ「にゃにこれ? おぉぉー!! 虫だぁー!!! かっちょいいー!!」

エーリカ「枕は頼んでないけど?」

芳佳「ひ、日頃、お世話になっているお礼です。受け取ってください!!」

エーリカ「いいの? 貰ったら、返さないけど」

芳佳「は、はい。返されたら、落ち込みます……」

エーリカ「ふわふわぁ。手触りもいいし……どこでも眠れそう……すぅ……すぅ……」

バルクホルン「寝るな、エーリカ」

ルッキーニ「よしかぁ!! ありがとう!! 大事にするね!!」

芳佳「うん」

シャーリー「お? なんだ、いい物貰ったなぁ」

ルッキーニ「みてみてー!! かっこいいでしょー!! にひひ」

シャーリー「こんなクッションがあるのか。すげーな」

芳佳「シャ、シャーリーさん」

シャーリー「ん?」

芳佳「ど、どうぞ」

シャーリー「……私にもか」

芳佳「はい」

シャーリー「ありがとう。宝にするよ」

芳佳「こちらこそ、よろこんでくれて嬉しいです。あ、ありがとうございます」

シャーリー「よし。早速今晩使ってみるか。よく眠れそうだ」

ペリーヌ「あら、おかえりなさい。宮藤さん」

芳佳「ペリーヌさん。こちらを」

ペリーヌ「なんですか? 枕……?」

芳佳「はい。是非使ってください」

ペリーヌ「……そうですわね。丁度、買い換えようと思っていた時期ですし。仕方なく使わせていただきますわ」

芳佳「あ、はい……」

ペリーヌ「ふんっ。……ありがとう」

芳佳「ペリーヌさん……。よかった……」

美緒「杞憂だったな、宮藤」

芳佳「え?」

エイラ「嫌いな奴から枕なんてもらっても、普通は気持ち悪がるだけだし、ましてやあんなに嬉しそうな顔はしないだろ?」

芳佳「エイラさん……だから、枕を……?」

サーニャ「おかえり、エイラ、芳佳ちゃん」

エイラ「サーニャっ!! サーニャのために買って来たぞ!! まくらぁ!! うれしいか? うれしいよなぁ? サーニャぁ?」

サーニャ「うん。ありがとう。嬉しい」

美緒「ミーナの分もあるみたいだぞ」

ミーナ「そうなの? でも、どうして?」

美緒「まぁ、宮藤の取り越し苦労だっただけの話だ」

ミーナ「よくわからないけど……」

美緒「はっはっはっは。気にするな」

エイラ「サーニャ、私の枕を抱きしめて、涎とかいっぱいつけて……えへへへ……」

芳佳「サーニャちゃん、これ……」

サーニャ「え?」

芳佳「私も選んだの。エイラさんのもあるけど、二つあってもいいかなって……」

サーニャ「芳佳ちゃん。ありがとう。うん、気持ちいい」ギュッ

芳佳「よかった。喜んでもらえて」

サーニャ「芳佳ちゃんからのプレゼントなら、どんなものでも嬉しいよ?」

エイラ「みやふじぃ!!! ごらぁ!!! お前!!! なに私の知らないところでぇぇ!!!!」

芳佳「えぇぇ!? 全員のを買えってエイラさんが言ったから買ったのにぃ……。エイラさんの分も……」

エイラ「あ、う……あ、ありがとう……。別に、嬉しくないけどな」

廊下

リーネ「これ、ホントにもらってもいいの?」

芳佳「うん。リーネちゃんは抱き枕のほうがいいかなった思ったんだけど……」

リーネ「うれしい。ありがとうね、芳佳ちゃん。この枕を芳佳ちゃんだと思って寝るよ」

芳佳「そっか。喜んでくれて嬉しい。……ん? どういうこと?」

美緒「宮藤」

芳佳「あ、坂本さん。どうしたんですか?」

美緒「ちょっとこい」

芳佳「はい」

美緒「んー……」

芳佳「あ、あの……顔が近いです……」

美緒「はっはっはっは。どうやら、もう疲れもなにもないようだな」ペチンッ

芳佳「あう」

美緒「ゆっくり休め、宮藤。明日からまた訓練だからな」

芳佳「は、はい。お休みなさい、坂本さんっ」

宮藤の部屋

芳佳(でも、本当に喜んでくれたのかなぁ……。疑うわけじゃないけど、ちょっとだけ不安だなぁ……)

『――が――み……』

芳佳「え……!? なにか聞こえる……!? あ……。どうして、耳にインカムが……?」

ミーナ『――宮藤さんからもらった枕、とても寝やすいわ』

美緒『これから先、安眠が約束されたようなものだな』

ルッキーニ『よしかぁー。ありがとー。これかっこいいし、寝やすいし、もうね、サイコー!!』

シャーリー『宮藤ー。あいしてるぞー』

芳佳「あはは……」

バルクホルン『み、宮藤……その……この枕……すごくいいな!! おやすみ!!』

エーリカ『みやふじぃ? これだけは汚さないようにするからー』

サーニャ『芳佳ちゃん。私はまだ夜間哨戒中だけど、今から寝るのが楽しみだよ』

エイラ『宮藤!! これ、想像以上に寝やすいな!! どうなってんだぁ!?』

リーネ『芳佳ちゃんの匂いがするよ! ありがとう! 大好きだよ、芳佳ちゃん!!』

ペリーヌ『宮藤さんにしては、いいセンスですわ。特別に、特別に。褒めてあげます』

芳佳「……」

美緒『宮藤。全員の声が届いたか?』

芳佳「はい……」

美緒『何も心配いらん。私たちは仲間、いや、家族のようなものだ。時にはケンカもする。しかし、心ではこうして繋がっている』

芳佳「は、い……ごめんなさい……」

美緒『何故を謝る?』

芳佳「ちょっとでも嫌われているんじゃないかって……疑った自分が……恥ずかしくて……それで……うぅ……」

美緒『そうだな。そこは反省しろ』

芳佳「はい!!」

エイラ『宮藤、元気になったか?』

芳佳「なりました!!」

エイラ『よしよし。なら、これでサーニャは私だけをみてくれるなぁ……』

サーニャ『そんなことないわ』

エイラ『サーニャ!? どういうことだ!! サーニャ!! 今、何か聞こえてきたぞ!!! いやだぁぁぁ!!!!』

芳佳「みんな、ありがとう」
                  おわり

>>52
美緒『何故を謝る?』

美緒『何故謝る?』

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