男「ここはどこだ?」 佐々木「閉じ込められたようだね」 (23)


男「くそっ、一体どうして……」

佐々木「ああ、どうしてだろうね」

男「気が付けば何もない部屋に佐々木と二人、閉じ込められていた。目の前には二つの扉がある」

佐々木「一人語りかい? 厨二病乙というべきかな」

男「う、うるせえ! とりあえず……」

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男「なあ佐々木、お前はどちらを選ぶ」

佐々木「私か……? せっかくだから赤い扉を選ぶとしようか」

男「どちらも赤いんだが」

佐々木「ふ、男よ。お前は色盲か?」


男「な……に……? まさか、なんらかのトリックで片方の色は違い、それを解明する事によって正解が解るのか!?」

佐々木「そうだったのか」

男「違うのかよ……それじゃどういう意味だ?」

佐々木「ああ、それはだな。右の扉は赤で、左は紅だと言いたかったのだ」

男「なん――だと――? そんな違いが……って知るかよ! 作った奴でも分からねえよんなの!」


佐々木「さて、この二つの赤の扉。結局どちらにしようか」

男「赤と紅の話は!? どっちも赤でいいのか!?」

佐々木「見分けが……付くのか――――?」

男「つかねえよ! なんで十数秒前の言動忘れてんだよ!」

佐々木「私は天才だからな。必要ない事は直ぐに忘れられるのだよ」

男「天才なのか……それは?」


佐々木「……風が吹いている」

男「風……!?」

佐々木「ふむ、これは……右の扉からだな」

男「なんだってっ……!?」

佐々木「まあ嘘だがな」

男「嘘かよ! なんでつまらねえ嘘つくんだよお前は!」


佐々木「男君、いっそ一度だな、扉を開けてみるのはどうだろう」

男「っ!? それは危ないぞ佐々木!」

佐々木「なんでだい? 人生とは挑戦する事と見たり、というじゃないか」

男「そうだっけ……? いやそうじゃなくてだな。もし、だぞ佐々木」

男「扉を開けたらそこから虎がとびだしでもしたらどうする? そういう類の罠かもしれん」


佐々木「ふむ……」クンクン

佐々木「とりあえず獣臭はしないな」コンコン

男「っ……この馬鹿!」

佐々木「ん、どうしたかな?」

男「もし……ノックした事で、なんらかのトラップが作動したらどうする気なんだ!」


佐々木「ほう」

男「もう大人しくしとけって!」

佐々木「ふむ……」

男「ほら、さっき部屋の隅でダンボール見つけたんだ。中に食べ物入ってたからさ」

佐々木「とりあえず食べて落ち着こう……か?」

男「あ、ああ。その通りだ」


男「中には……コンビニ弁当だな。これは」

佐々木「……そうだな。ところでそれには」

男「ん?」

佐々木「毒は入ってないのか?」

男「……そ、それもそうだな! どれ俺が毒味してみよう!」


男「モグモグ……うん、問題無いな!」

佐々木「そうか。それなら頂こうか」

男「えっと、これは俺が口付けたから……別のやるよ」

佐々木「いや、男が食べたのを貰おう」


男「……なんでだ?」

佐々木「ふっ、好きだから……ではいけないか?」

男「からかうなよ」

佐々木「本音だよ? そうだ君の唾液が付いたその箸も頂こうか」

男「っ……」

佐々木「どうした? 君に告白したんだ。返事を頂きたい」


男「ワザとか……佐々木」

佐々木「何が態と何だ? 思い当たる節が無いね」

男「っ……」

佐々木「睨むないでくれ。その様子だと、私の告白は失敗かな。君は私が嫌いだったようだ」

男「……いや、そんな事はないな」


佐々木「なら両想いだね」

男「……気付いてんだろ?」

佐々木「君の気持ちに気付いてるよ?」

男「……なんでそんなにふざけてられる? 怖くないのか……?」

佐々木「怖くないよ。私を誰だと思っているんだ」


男「いつ……気付いた」

佐々木「其れはだね、さっきだよ。キュンと気付いたんだ」

佐々木「君が『作った奴でも分からねえよ!』と言った時に先ずときめいた」

男「あんなの……ただのツッコミだろ?」

佐々木「そうだね。ただ切欠には充分だった」


佐々木「この気持ちに確信したのは、私が扉から風が吹いてると吹っ掛けた時だ」

男「っ……」

佐々木「君の驚きようは何か違った。そう、歓喜よりも絶望だった」

佐々木「そして、扉を開ける事に対しての異常な注意」


佐々木「きっとここは何処かの建物の一室だろう」

佐々木「外は唯の廊下が広がっている。出たら容易く逃げ出せるというのが露見してしまう」

男「気付いてたのか……」

佐々木「ここに私と君で二人きりになって閉じ籠ってたかったのだろう?」

男「……ああ、その通りだ。二人だけの世界を作りたかった」


男「気持ち悪いだろう? 告白する度胸もないからこうするしかなかったんだよ」

佐々木「ふむ……所謂、病んデレという奴だな」

男「え、ヤンデレ? 俺が?」

佐々木「実のところ私はだな、病んデレは大好物なんだ。度が過ぎた愛故、可笑しな事を仕出かす」

佐々木「けど其れは大変嬉しい事だと思わないかい?」


男「嬉……しい……?」

佐々木「そうとも。行為はどうあれ、其処まで人を愛するなど普通出来る事じゃあない」

佐々木「そして其れだけの気持ちをぶつけられて心が動かないような、見る目の無い女では無い」

男「え……な……まさか……」

佐々木「私から言わせるな? 勇気を振り絞ってくれよ」

男「佐々木……」

――
――――
――――――


<○○町の古い建物から10代の女の子の遺体が発見されました。

<絞殺されたような痕があり、死後一週間程経過しているようです。


男「佐々木が悪いんだよ……」

男「どうせ、俺をからかう気だったんだ。俺の想いを踏み躙って笑い者にする気だったんだ……!」

男「あんな奴……死んで当然なんだ……。けど安心しろ佐々木」

男「お前は永遠に俺の胸の中で生き続けるんだから――――」


...Fin.......


佐々木「……あれ、私死んだのか?」

佐々木「えー、解説しとくとだな」

佐々木「私は本当に男に惚れた。そして罪を改めると共に告白して欲しかったんだ」

佐々木「しかし男には其れが嘘だと感じてしまったらしい」

佐々木「大切なのは疑う精神より、信じる心……此れが出来なかった男の末路は幸せだっただろうか……」

佐々木「では読んでくれて有難う。また会える日を」

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