希「あの頃に戻りたい」 (68)

希「ごめんエリちまったー?」


絵里「いいえ、ちょっと前にきたばっかりよ」


希「いやー、ごめんな。上司がうるさくて」


絵里「大変そうね。事務だっけ?なんだか希っぽくないわ」


希「ホントそうなんよ。いやぁ、就職先間違ったかなー」


希「店員さーん、カシスオレンジくださーい」




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希「あ、手羽先もらうよ」モグモグ


絵里「ふふっ、希ったら」


希「ところで最近どうなん?」


絵里「最近って?」


希「もう、とぼけちゃってー。旦那さんよ旦那さん」


希「仲良くしてるん?」

絵里「そうねぇ、最近仕事が忙しいみたいだからあんまり話していないの」


希「そうなん?まったくあんな人にエリち任せるんやなかったよ」モグモグ


絵里「ふふっ、でも来月は連休取ってくれるみたいだから旅行に行くのよ」


希「おお、いいなぁ」


「おまたせしましたー」


希「お、ありがとなー」

希「それじゃあ乾杯しよかー」


希「って、エリちお茶なん?お酒はいいの?」


絵里「そう、ね。しばらくは控えようかなって」


絵里「できちゃったし……」


希「できたって何が……?」


絵里「……赤ちゃん」カアァ

希「………あ、そう……なん」


絵里「ええ、昨日検査で、ね」ウキウキ


希「………」


絵里「希?」


希「よーし!それじゃあ今日はエリちの分までウチが飲むよー!」


絵里「ふふっ、ほどほどにしなさいよ。明日も仕事あるんでしょ?」

――――――――――――――――


ガチャ


希「ふぇー………ただいまー………」フラフラ


希「うぇ……あかん……ちょっと飲み過ぎた……」


希「水………」ザー


ゴクゴク


希「ふぅ………」

希「エリちに赤ちゃん……か…」


希「皆の中じゃ、一番目やね……」


希「去年穂乃果ちゃんが結婚して、結婚してないのはウチだけになったんか……」


希「もう、どうしたんやろ……」


希「………明日も仕事で早いんや。寝よう」

ガチャ


トクトク


希「これ飲まんと寝れんようになったなぁ……」ゴクゴク


希「ぷはぁ……」


希「ひっく……」


希「あかん、まだ化粧落として……」


希「だめや……眠い…」ボフッ

希「ホント……なにやってるんやろ…ウチ…」


希「みんな幸せそうなのに……」


希「ウチだけ取り残されたような……」


希「どこで間違えたんやろ……」

希「結局、ネックレス渡せず仕舞いやったなぁ……」


希「いつまで大事に持ってるんやろ…‥」


希「もし……渡していたら、今と変わってたかな……?」


希「もう、どうでも……いいか…」

希「…………」


希「……戻りたい」


希「あの頃に戻りたい……」


希「音ノ木坂の……ウチが一番……輝いていた……あの頃に……」


希「もど……りた……い……」


希「すぅ………すぅ‥…」

――――――――――――――――
――――――――
――――――――――――


希「すぅ………すぅ……」スヤスヤ


「起きなさい。希」ユサユサ


希「う……ん……」


「早く起きて。とっくにバスは着いているわよ」


希「うん……ここは…」

絵里「あ、やっと起きたわね。早く降りるわよ。バスの運転手さん困ってるわ」


希「あれ……エリち…若い」


絵里「はぁ…?いつまで寝惚けてるのよ」


凛「希ちゃん早くきてー!すっごくいい景色だよー!」

ブウゥン…


希(なんなん……?ウチ確か家で寝ていたような…)


希(いや、それよりもエリちや凛ちゃん。それにみんな若い)


希(まるで音ノ木坂にいた頃みたいな…)


海未「いつも唐突ですみません。穂乃果がどうしてもと聞かないので…」


真姫「穂乃果の我儘なんて今に始まったことじゃないでしょ?もう慣れたわよ」

希(あれ…この会話昔聞いたような…?)


穂乃果「おおーっ!雪!雪だよ!雪山!」


ことり「綺麗……一面銀世界…!」


花陽「かき氷にしたら、食べれるかなぁ?」


凛「かよちんシロップないにゃ」


にこ「ツッコむところはそこじゃないでしょ」

希(ああ……思い出した)


希(これ、μ'sで活動していた頃に真姫ちゃんの別荘に遊びに行ったときやん)


希(夢なんか……それにしても随分とリアルやし…)


絵里「希」


希(いったいなんなんやろ……?)


絵里「えいっ」ビュン

希「うわっぷ!?」


絵里「いつまで寝惚けてるの?」クスクス


希「え、エリち……」


凛「ん?雪合戦?凛もするにゃー」ビュン


真姫「きゃあ!?」

真姫「な、なにするのよー!」


凛「油断大敵だよー」クスクス


穂乃果「おー!じゃあ穂乃果もー!」ビュン


ことり「きゃあー。やったねー穂乃果ちゃん」ビュン


海未「こら!まずは荷物を置いてからですよ!」

ワイワイ


希「なんなん……これ」


希「なんなんよ……?」ポロポロ


絵里「の、希どうしたの?痛かった?」


希「ううん、なんでもないよ……」


希「ただ、な……とっても嬉しいから……」


絵里「………?」

――――――――――――――――


希「ひゃっほーい!」


穂乃果「あははー!」


希(なんだろう。すっごく楽しい!)


希(心の底から笑ったのなんていつ以来なんかな?)




絵里「希の様子が少しおかしかったから心配したけど」


絵里「この調子なら大丈夫そうね」

絵里「っと……なんだか雲行きが怪しくなってきたわね」


絵里「そろそろ戻ろうかしら」


ことり「絵里ちゃーん!」


絵里「ことり、どうしたの?」


ことり「凛ちゃんと花陽ちゃん見てない?なんだかずっと見かけないんだけど」

穂乃果「凛ちゃん達ならちょっと前にあっちで見かけたよ?」


ことり「そうなの?」


絵里「そう、ね……。時間もいいし、そろそろ戻りましょうか」


絵里「凛と花陽は私と希で探すから、皆先に戻ってなさい」

希「え?ウチも?」


絵里「私だけにやらせるつもり?」


希「そ、そんなことは……」


絵里「じゃあ、決定ね」


絵里「にこ、海未。皆をよろしくね」


にこ「はいはい。温かいシチュー作って待ってるから早く帰ってきなさいよ」


海未「それでは先に戻ってますね」

希(凛ちゃんと花陽ちゃんを探す……か)


希(そんなことあったっけ?)


希(でもまぁ、夢なんやし……現実と違ってもおかしくはないか)


絵里「雲行きが怪しいわ。吹雪いてくる前に探しましょう」


希「そうやね」

――――――――――――――――


ゴォオオオオ


希「エリちー!」


希「どこにいるんー!?」


絵里「ここよー!希ー!」


希「ホント吹雪いてきたなー!」


希「先がなにも見えんよー!」

絵里「そうねー!」


絵里「凛たちが心配だわ!もう少し探して見つからなかったらレスキューに通報しましょう!」


希「っと、エリち足元気つけてな!」


希「なんか崖っぽ――――」ズルッ


絵里「希!?」ガシッ

希「エリ……ち…?」


絵里「う、くぅ……!」フルフル


希「エリち危ないよ。手放して?そうせんとエリちも落ちて――――」


絵里「バカ!放したら希が落ちちゃうじゃない!」

希「ウチは……もういいんよ」


希「もう……そろそろ起きて、現実を見なさいって神様が言ってるんよ。きっと」


希「それにエリち痛いやろ……?」


希「ほら、手を――――」


絵里「なに訳の分からないこと言ってるのよ!」


絵里「他人の事心配する前に少しは自分の事も考えなさいっていつも言ってるじゃない!」


希「エリち……」

絵里「もし、希の身に何かあったら……」


絵里「私どうしたら……いいのよ…?」


希「エリち……ウチ…」


絵里「早く……腕掴んで…上がってきなさい…!」


絵里「そろそろ…限界…!」フルフル

希「……うん」ギュ


絵里「上げるわよ……!」グイ


ズルズル


絵里「はぁ……はぁ……」


希「エリち……ありがとう」

絵里「もう、希は……」ハァハァ


絵里「もう絶対に放さないんだから…!」ギュ


希「え、エリち…!?」


絵里「これでもう大丈夫よ。もし落ちたとしてもふたり一緒だから」


希「堕ちる前提ってなんか嫌やね」クスッ


絵里「そうね」クスクス

ズルッ


のぞえり「えっ――――」


のぞえり「きゃぁああああっ!?」


希(たとえ夢だとしても……エリは…!)ギュ

――――――――――――――――


絵里「思ったより高くなくて助かったわ」


絵里「まさか、足場の雪ごと落下するなんて…」


絵里「希大丈夫……?」


希「うん……なんとか……」


希「でも……左脚が動かん。多分折れたかも……」

絵里「私を庇って……!?」


絵里「……とにかくこのままじゃ凍死してしまうわ」


絵里「捕まって。小屋か何か、とにかくこの吹雪をしのげる所探さないと」キョロキョロ


絵里「あれは………」


絵里「あそこに小さな洞穴があるわ……。行きましょう」


希「うん………」

絵里「ここなら、風も雪もある程度しのげるわ」


希「花陽ちゃん達無事かなぁ……」


絵里「まったく…また人の心配して。少しは自分の事も考えなさい」


希「そう……やね…」ハァハァ


絵里「脚大丈夫?」


希「うん………痛い…」

絵里「ちょっと見せて。服、脱がすわよ?」ヌギヌギ


希「つっ…!?」


絵里「ご、ごめんなさい!大丈夫?」


希「だ、大丈夫。少し…響いただけだから…」


絵里「それは大丈夫じゃないわよ」


絵里「………すごく腫れてるじゃない!すぐに応急措置しないと…!」

希「はぁ……はぁ……」


希「大丈夫や……ほら、雪あてて……こう冷やせば……」


希「いっ…!?」


絵里「無理しないで…!」


絵里「なにか……固定するもの……」キョロキョロ


絵里「あれは……!」

絵里「希、ちょっと待ってなさい」タッ


希「エリち……?」


希「待ってよ……ひとりにせんで……」


希「つっ………!?」


希「寒くても………感覚残ってるんやね……夢……なのに…」


希「はぁ……はぁ……」

絵里「希、丈夫そうな木の棒があったの。これで固定しましょう」


絵里「少し痛むかもだけど……我慢してちょうだい」


絵里「こう……気の棒で押さえて……私の髪留めで結びましょう」


希「はぁ……はぁ……」


絵里「少しは痛みおさまった?」


希「そう……やね、少しだけやけど……」

絵里「ごめんなさい……これくらいしかしてあげれなくて」


希「……エリち……お願いがあるんよ」


希「……ずっと傍にいてな」


希「エリちがいなくなって……すごく寂しかった」


絵里「ごめんなさい………」


絵里「約束するわ。これからはずっと傍にいるわね」ギュ

希「暖かいなぁエリちは…」


希「なんだか……ウチ幸せや」


絵里「この状況で……?」


希「うん…。とっても幸せ……」

希「………あれ?」


絵里「どうしたの?」


希「ポケットに何か入ってる…?」ゴソゴソ


希「これは……」

希(そっか……ウチ、この頃からずっと渡しそびれてたんか)


希(現実じゃ渡せなかったけど、せめて夢の中だけでも……)


希「エリち……その、こんな時になんやけど」


希「渡したいものがあるんよ」


絵里「…なにかしら?」


希「これ……」

絵里「これは……ネックレス?」


希「エリちの為に……用意したんよ」


絵里「ありがとう。とっても嬉しいわ」


希「好きやで、エリち」


絵里「ええ……私もよ」

希「likeやないよ?Loveやで?」


絵里「知ってるわよ」


希「そうなん…か。よかったぁ……」


希「ホント幸せやん……」ギュー


絵里「ええ、そうね…」ギュー

希「ウチ、このまま死んでもいいかも……」


絵里「私もよ……。希と一緒なら怖くないわ……」


希「嬉しいなぁ……」


絵里「………」


希「………」


希「なんか……眠たく……なって…」


絵里「そう…ね……」

――――――――――――――――
――――――――
――――――――――――


チュンチュン


希「んっ………」


希「朝……?」


希「なんや……夢やったんか…」


希「ってそうやん。夢の中で夢って自覚してたのに……」

希「なんかもう……余計に辛くなったよ」


希「…………でも」


希「夢の中で、やりたいことできて…よかった」


希「………朝ごはん食べよ」


ガラッ

絵里「おはよう、希」


希「え、エリち……!?」


絵里「朝食ならもうできてるわ。早く準備して食べましょう」


絵里「凛や穂乃果より遅くれるなんて示しがつかないでしょ」


希「え……?えっ……?」


希「あの……エリち…?いったい何を…?」

絵里「もう、何寝惚けてるのよ」


絵里「今日からアイドルグループμ'sの海外ロケでしょ?」


絵里「10時までに空港集合なんだから、ゆっくりできる時間は少ないわよ」


希「μ's…?でも音ノ木坂卒業した時に解散したんじゃ…?」


絵里「花陽たちが卒業した後、すぐに「再結成しよう!」って言いだした希じゃない」

希「ウチが……?」


希「でもエリち結婚して……」


絵里「結婚?私が……?」


絵里「なに言ってるのよ。私は希一筋よ」

絵里「本当にどうしたの?熱でもあるのかしら?」オデコピタッ


希「え、エリち……!?」


絵里「熱は……ないみたいだけど…」


希(って、エリちの首につけてるのって…)


希「エリち……そのネックレスは…?」

絵里「これ?あなたがくれたものじゃないの」


絵里「でもいま思い返すと、遭難中に告白ってどうなのよ」クスクス


絵里「あ、もしかして吊り橋効果っていうの狙ってたの?」


希「え、でも………」


絵里「っと、おしゃべりしてる暇はなかったわね」


絵里「ほらほら、朝食も冷めちゃうし早く顔洗ってきなさい」

――――――――――――――――


希「もぐもぐ……」


絵里「美味しい?」


希「うん……美味しいよ」


希「懐かしいような、でも食べ慣れたような……なんか不思議な感じや」


絵里「もう、毎日食べてるのに……なんだか今日は詩人ね」



希「…………」


希「夢や………ないんよね?」


絵里「夢?」


希「エリち、ウチのほっぺつねって!」


希「いや、やっぱつねんで!夢なら覚めたくない!」


絵里「ふふっ、なんだかあの雪山に行った時の事を思い出すわ」


絵里「あの時も寝惚けておかしな事言ってたわよね?」

絵里「まったく希は……」


絵里「私はいないとダメなんだから」チュ


希「………!」カアァ


絵里「さ、早くしないと本当に遅れちゃうわよ」


希「だ、だったらエリちだけ先に行ったらいいやん……///」


絵里「嫌よ。約束したじゃない」


絵里「ずっと傍にいるって――――」



おしまい

最後まで読んでいただきありがとうございました。
のんたんが可哀想なので、実は夢オチ………なんてことはありません。
>>1-11までが夢なのです。

次回はほのうみか、のぞまきの予定です。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年08月11日 (月) 02:37:24   ID: u4pU2DJO

のぞえりってやっぱ最高!
のんたんかわいいなぁ~♪

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