キョン「タイムリープ?」 (123)

サンタクロースをいつまで信じていたか、なんてのは他愛の無い世間話にも満たないようなどうでもいいような話だが、サンタクロースなどという想像上の赤服じいさんを信じていなかった俺も、この北高に入ってから随分考え方も変わってしまった。

宇宙人、未来人、超能力者、果ては神様にまで出合い、何度かそいつらのせいで死にかけたお陰で、とうとう空とぶソリの存在をちょろっと信じるようになった二年の12月。

去年とは違い、我SOS団名誉顧問であらせられる鶴谷さんのご好意により、別荘を借りてクリスマスパーティーをする運びとなった。

そのパーティーの終わりにハルヒがボソッと呟いた。

今思えば、これが元凶だったと思う。

だけどな、ハルヒ。

それは簡単なことだったんだよ。

「みんなとずっとこうしていたい」なんて。

何でこんなややこしくしちまったんだよ。


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クリスマスパーティーも終わり、正月のイベントまでの束の間の休息を惰眠を持って過ごそうと思っていた朝。

何故かセットしてあった目覚まし時計を止め、再び微睡みを堪能しようとした矢先、

妹「キョンくーん!」

キョン「ゴフッ!」

妹「キョンくん、起きないと遅刻するよ」

キョン「遅刻って、今は冬休みだろ。それとボディプレスは止めなさい」

妹「寝ぼけてるの?今日は入学式だよ?」

キョン「は?」

妹の言っている意味も分からず、されるがままの状態で家を出た。

昨日まで雪が降っていたにも関わらず、目の前では桜が咲いている。

こんな現象、去年の映画作成以来だ。

そうなると、やっぱり今回もハルヒが何かしたのか?

何がどうなっているかはわからないが、とりあえず学校に向かう。

校門に入学式を知らせる看板があった。

そこに書いてあるのは俺が入学した年。

間違いない。

俺はハルヒと出会った日に戻ってしまった。

二度目の眠気を誘う怪音波を放つ入学式を終え、あの時と同じように当たり障りの無い自己紹介をする。

そして、生涯決して忘れられない台詞を待つ。

後ろで椅子から立ち上がる音が聞こえた。

ハルヒ「東中出身、涼宮ハルヒ。ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者が居たら私の所に来なさい。以上」

おもむろに後ろを振り向く。

そこにいたのは、見間違いようのない我らが団長、髪の長い涼宮ハルヒ本人だった。

キョン「なぁ、しょっぱなの自己紹介のあれ、どのへんまで本気だったんだ?」

ハルヒ「あれって何」

キョン「この中に宇宙人~ってセリフ」

ハルヒ「あんた宇宙人なの?」

キョン「違うけどさ」

確証は無いが、俺は異世界人枠なのかも知れないがな。

それとも未来人かな。

ハルヒ「だったら話し掛けないで。時間の無駄だから」

キョン「そうかい。そういえば、昨日と髪型が違うけど、宇宙人対策か何か?」

ハルヒ「何でわかったの?」

キョン「入学式の次の日に髪型を変えるなんて珍しいと思っただけだ。あとは勘」

勿論答えを知っていたからだ。

ハルヒ「私曜日毎にイメージがあると思うのよね」

前回と同じ曜日理論を聞き流す。

ハルヒ「あたし、あんたとどこかであったことがある?ずっと前に」

キョン「さてね」

否定は出来ないさ。

この時、一つ失念していた事があった。

ハルヒよ、いくらなんでも指摘された翌日に髪を切ることは無いだろ。

もうポニーテールが見れないじゃないか。

1週間ほどハルヒと少しだけ話す日々が続いた。

そろそろSOS団が恋しくなってくる。

キョン「部活巡りしているって本当か?」

ハルヒ「ええ」

キョン「何でまた」

ハルヒ「面白い部活があるかも知れないじゃない」

キョン「それで結果は?」

ハルヒ「いまのところ全滅よ」

キョン「でも無いなら作ればいいんじゃないか」

ハルヒ「作る?そうね!その手があったわ!」

瞳に光を宿し、机を叩いて立ち上がる。

そのまま、教室の外へ駆け出そうとするのを手で制する。

ハルヒ「何よ」

キョン「ヤル気になった所で申し訳ないが時間切れだ」

ハルヒ「ハァ?」

チャイムがなり、岡部が入ってくる。

キョン「続きは次の休み時間に」

ふてくされながらも席につく。

これで気弱な英語教師と俺の健やかなる睡眠時間は守られたな。

次の休み時間、ハルヒにネクタイを捕まれ、そのまま屋上一歩手前の踊り場まで連行される。

強気なハルヒには慣れているが、今回もカツアゲされている気分だ。

ハルヒ「協力しなさい」

キョン「部活作りにか?」

ハルヒ「そ。私は部室と部員を確保するから、あんたは生徒会への書類ね」

キョン「了解」

ハルヒ「殊勝な心がけね。設立したら雑用係に任命してあげるわ」

俺をその場に残して、ハルヒはどこかに行ってしまった。

まったく、これだけ尽力しても、副団長はおろか、平団員にさえなれないのか。

世知辛いねぇ。

放課後、またもやハルヒに引っ張られてやって来たのは勝手知ったる文芸部室。

ここには長門がいるはずだ。

不意に去年(客観的に考えれば今年か)のクリスマスの事が思い出される。

果たして、ここにいる長門は俺の知っている長門だろうか?

ハルヒ「何してんのよ。さっさと入るわよ」

キョン「ああ」

軽くノックして開ける。

中には机と本棚と椅子、そしてそこに座っている長門だけだった。

何らへんてつもない文芸部室が、そこにあった。

ハルヒ「これからこの部屋が我々の部室よ!」

キョン「文芸部室って書いてあったけど、勝手に使っていいのか?」

ハルヒ「文芸部は今年の春に全員卒業して部員ゼロ、新たに誰かが入部しないと休部が決定していた唯一のクラブなのよ」

キョン「ということはこちらにいらっしゃるのがその」

ハルヒ「そ。その子がいいって言ったの」

キョン「ええと、」

長門「長門有希」

キョン「長門さんとやら、こいつは勝手に文芸部の部室を使おうとしているぞ」

長門「構わない」

いまのところは前と変わりの無い長門だ。

ハルヒ「ま、そういうことだから。これからは放課後、この部室に集合ね。来ないと死刑だから」

4、 次の日、来ないと死刑というどこぞの暴君並の刑罰を言い残してどこかに消えたハルヒの言いつけ通り部室に行く。

中に入ると長門が一人で本を読んでいる。

今となっては、これが当たり前だと思っているけど、昔はこの間が居たたまれなかったなぁ、等と考えていると部室のドアが勢いよく開かれた。

ハルヒ「やあごめんごめん!遅れちゃった!捕まえるのに手間取っちゃって!」

みくる「なんなんですかー?ここどこですか、何で、かか、鍵を閉めるんですか?いったい何を」

ハルヒ「黙りなさい」

みくる「ひっ」

傍若無人なハルヒと麗しのマイエンジェル朝比奈さん。

ああ、前と同じような光景だなぁ。

ハルヒ「紹介するわ。朝比奈みくるちゃんよ」

キョン「明らかに怯えてるが、一体どこから拉致して来たんだ?」

ハルヒ「拉致じゃなくて任意同行よ。二年の教室でぼんやりしているところを捕まえたの」

キョン「何でまたこの人なんだ?」

ハルヒ「見てごらんなさいよ!めちゃめちゃ可愛いでしょ!」

キョン「お前はこの朝比奈さんが可愛かったからってだけで連れてきたのか?」

ハルヒ「他にも、ロリ巨乳てのもあるけど、そうよ。こういうマスコット的キャラも必要だと思って」

あまり肯定したくは無かったが、今は肯定せざるを得ない。

ハルヒ「ところでみくるちゃん、あなた他に何かクラブ活動してる?」

みくる「あの………書道部に…」

ハルヒ「じゃあ、そこやめて」

みくる「ふぇ!…そっかー……。わかりました」

相変わらずお早いご決断で。

みくる「私、文芸部がどんなことするのか知らないんですけど……」

ハルヒ「ああ、いい忘れてたわね。ここは文芸部室だけど、あなたが入るのは文芸部じゃないから」

キョン「あなたが入らされるのは、ここにいる涼宮ハルヒが新たに作り出す名称不明の団体ですよ」

ハルヒ「名称ならたった今決めたわ。その名もSOS団よ!」

訳がわからないと思っていたこの名前も、かれこれ二年近く言われつづけるとこの名前以外受け付けなくなってくる。

もっとも、どんな場所にいようとハルヒが名付けるなら、この名前以外は無いだろうけどな。

5、 ハルヒ「コンピューターが欲しいわね」

朝比奈さんも加わり、古泉が来るまでのほほんとしているか、などという甘い考えはその一言でうち壊された。

断じて忘れてた訳じゃないさ。

ただ、楽しみなことが先に控えていたり、とてつもなく大きなイベントがあったりすると、普段なら結構大きいイベントもちょっと思い出しづらくなるもんだろ?

つまり、何が言いたいかと言うと、対策考えるのを忘れていました!

このままじゃ朝比奈さんの胸がコンピ研の部長に揉まれちまう。

ハルヒ「情報社会なのにパソコンの一台もないなんて、由々しき事態だわ」

その考え方が由々しき事態だよ。

この時期じゃ、まだ長門を貸し出す訳にはいかないし、出来ることなら近所付き合いは仲良くやっていきたい。

ハルヒ「というわけで、パソコンもらいに行くわよ。キョン、みくるちゃん、着いてきなさい」

もうタイムアップかよ。

仕方ない、コンピ研の皆様にはいろいろ諦めてもらおう。

キョン「おい、ハルヒ。どこに連れてく気だ」

ハルヒ「コンピューターと言ったら1つしかないじゃない。はい、これ」

ハルヒからカメラを受けとる。

キョン「隣のコンピ研に行くのか?」

ハルヒ「そうよ」

キョン「朝比奈さんを連れていくのは、朝比奈さんがセクハラされるのをこのカメラで納める気じゃないだろうな」

みくる「ふぇぇ!」

ハルヒ「あら、キョンの癖に冴えてるじゃない」

万事休すか。

何か無いかと、前回の記憶をひっくり返して探る。

そういえば、ハルヒが・・・そうだ!

キョン「ハルヒ、ちょっと耳を貸してくれ」

ハルヒ「何よ」

キョン「いいから」

ハルヒに今思い付いた案を耳打ちする。

ハルヒ「それ良いじゃない!私もみくるちゃんをあんな奴等に触らせるの、どうかと思ってたのよね」

俺の案が通った。

朝比奈さんに向けてサムズアップをする。

朝比奈さんは戸惑いながらも軽く微笑んでくれた。

ハルヒ「たっのもう!」

俺達を連れてコンピ研の中へ入る。

当然ながら、どよめくコンピ研部員。

ハルヒ「部長は誰?」

部長「僕だけど」

朝比奈さんを連れて、ずかずかと部長さんに向かうハルヒに対し、俺は入り口に陣取る。

部長「何か用かな」

ハルヒ「パソコンを1台ちょうだい」

部長「ちょうだいって、ここにあるパソコンは部費だけでなく部員達の自費で買っているんだ。君たちもパソコンが欲しいなら、お互いに出しあって買えばいい」

ハルヒ「そう。どうやってもくれない気ね。なら、こっちにも考えがあるわ。キョン!」

ハルヒの掛け声によって、ブレザーを脱ぎ二人に向かって投げ、廊下に出る。

その間に、ハルヒが朝比奈さんの髪をグシャグシャにして押し倒す。

みくる「ふぇっ!」

俺がカメラを構えるのと、ハルヒが朝比奈さんにブレザーを掛けるのは同時だった。

ハルヒ「みくるちゃん、顔だけこっち!」

ハルヒの声にしたがった朝比奈さんを撮る。

この間、コンピ研の部員達はみんな茫然としていた。

それによってできた画像がこちら。

ドアの中に見えるのは、グシャグシャな髪で大きめのブレザーによって中に服を着ているか判断できない女生徒。

それを取り囲む男生徒達。

端には数台のパソコン。

平たく言えば、コンピ研の部室でレイ○された女子と犯人等。

因みにハルヒはギリギリで写らない場所に隠れている。

ハルヒ「はいOK!」

その声で我に返ったコンピ研部員がざわめく。

朝比奈さんは何が起きたかまだわかってない。

部長「何がしたかったんだい?」

ハルヒ「わからない?あのカメラには、あんたたちがこの子をレイ○したように見える写真が撮れてるの。さあ、どうする?」

そんな訳無い、みたいなことを言っていたまわりの部員達も、朝比奈さんの様子を見て絶句する。

ブレザーの下は何も身に付けておらず(実際はちゃんと制服を着ている)、整っていない髪に極めつけは、急に押し倒されて頭でも打ったのかわからないが、今にも泣きそうな顔。

この偽状況証拠を撮られたのだ。

すでに逃げ道は無い。

部長「・・・何が目的だ」

どうにかして絞り出した声。

俺のせいでもあるんだが、同情を禁じ得ない。

ハルヒ「最初に言ったでしょ?パソコンちょうだい」

部長「持ってけ泥棒!」

ハルヒ「じゃあ、最新機種はどれかしら?」

部長「お前は・・・、それだ」

カメラを指差すハルヒを見て、仕方なく従う。

しかし、そこにあるのは最新機種ではない。

ハルヒ「昨日、電気屋さんから一覧貰ったんだけど、それには書いてないわねぇ。あ、これだ」

部長「そそれは先週買ったばかりの」

ハルヒ「カメラカメラ」

部長「チクショウ!」

その後、コンピ研からパソコンを強奪したハルヒは、例の如く設定などをすべてコンピ研にやらせた。

一方俺は、未だに何があったのかわかってなかった朝比奈さんに、何も説明せずブレザーだけ返して貰った。

6、 昨日帰る前に、ハルヒからホームページを作れとの勅命を承っていたため、昼休み、弁当片手にホームページ作りに勤しむ事となった。

2回目であるので、対して苦労することも無く完成した。

キョン「なぁ、長門。何か書きたいことでもあるか?」

俺が来るよりも先に居た長門に声を掛ける。

長門「無い」

キョン「そうか」

予想通りの返答だったので、大した気概もなく返す。

そのままのんびりと過ごしていると予鈴が鳴った。

長門「これ」

いつの間にか隣にいた長門が本を差し出して来る。

キョン「貸してくれるのか?」

長門「読んで」

キョン「わかった。ありがとな」

それだけ言うと長門は部室を出てしまった。

適当にページを捲り栞を見つける。

そこには、『午後7時に光陽園駅前公園にて待つ』と書かれていた。

これで長門が宇宙人であるのはほぼ確定だ。

若干にやけながら、部室を後にした。

放課後、長門と朝比奈さんがすでにおり、先に出ていったハルヒを待っていた。

そういえば、バニーって今日だったよな、なんていうのを思いだし、どうにか無事にやり過ごす方法を考えていると、またもや扉が急に開かれた。

ハルヒ「遅れてごめーん!」

謝罪はいいからもう少しゆっくり開けてくれ。

キョン「その手に持っている袋はなんだ?」

ハルヒ「これはね、ジャーン!」

ハルヒが持っていた二つの袋の片方からバニーを取り出す。

ハルヒ「あとこれ」

もう一つの袋からチラシを取りだし、俺達に一枚ずつ渡す。

内容は不思議を募集するものと昼作ったホームページのアドレスだ。

キョン「バニーを着てこれを配る気か?」

ハルヒ「そうよ。でも、高くて2着しか買えなかったから、私とみくるちゃんだけね」

みくる「私もですかぁ!」

ハルヒ「着替えましょうね」

すがるようにこっちを見る朝比奈さん。

ごめんなさい、欲望には逆らえません。

静かに部室から出る。

中からは脱がそうとするハルヒと、必死に脱がされまいとする朝比奈さんの声。

正直、たまりません。

ハルヒ「良いわよ」

中に入ると、うさぎが2匹。

キョン「ハルヒ」

ハルヒ「どう?」

キョン「グッジョブ!」

ハルヒ「でしょ!みくるちゃん可愛いもんね。じゃあ、私たちビラ配りに行ってくるから」

キョン「待て待て待て。その前にこの衣服を畳んでいけよ」

ハルヒ「あんたがやっときなさいよ」

キョン「下着とかあるのに俺にやれと?」

みくる「見ちゃダメです~!」

ハルヒ「しょうがないわね。さっさと終わらして行くわよ」

キョン「教師に捕まらないようにな」

衣服をバニーが入っていた紙袋に入れ、朝比奈さんを連れてハルヒは駆け出して行った。

朝比奈さんがまるでドナドナされる子牛のようだった。

南無。

数十分後、壊れないドアの強度に感心するほどの勢いでハルヒと朝比奈さんが帰ってきた。

ハルヒ「みくるちゃん、隠れて!キョン、あとよろしく!」

それだけ言ってハルヒは清掃道具入れのロッカーへ、朝比奈さんは長机の下に隠れてしまった。

一体何が起きたんだと考えていると、ドアがノックされた。

キョン「はい」

先生「失礼する。ここにバニーガールの二人組が来なかったか?」

ああ、ハルヒに頼まれたのはこれの事か。

キョン「来てませんが」

先生「そうか」

部屋の中を見回している。

先生「ん?そこにカバンが二つ余分にあるが、一体誰のだ?」

カバンに目をつけるとは、中々目敏くいらっしゃる。

どうしようか?

いっそのことハルヒだけ生け贄に捧げるか?

いや、そうすると朝比奈さんまで見つかる可能性がある。

長門は相変わらず本を読んでいるし。

そうだ。

キョン「そこの鞄は一年の朝倉と、ええと、長門。喜緑さんて何年だっけ?」

長門の目が僅かながら見開かれ、一瞬だが返答に詰まった。

長門「二年」

キョン「その二年の喜緑さんの物です。二人は今用事があって席を外しています」

先生「そうか。邪魔をした」

それだけ言うと部屋から出ていった。

ハルヒ「キョン、よくやったじゃない。みくるちゃん、もう大丈夫よ」

キョン「どうも」

ハルヒ「ビラ配り終えてないけど、また見つかったら面倒だし、さっさと着替えますか」

その後、二人が着替えてその日は解散となった。

夜、7時前に長門に指定された公園に着くと、すでにベンチに座って待っていた。

キョン「よ、待たせたか?」

長門「来て」

長門の後についてマンションに行く。

ここに来るのも何回目だろう。

ことある度に長門にお世話になっている気がするな。

長門「座って」

言われるまま机の前に座り、出されたお茶を飲む。

そこから長門による統合情報思念体の説明を受けた。

長門「それが私がここにいり理由。あなたがここにいる理由。信じて」

それに答えず、長門の後ろにあるドアを指差す。

キョン「そこに俺と朝比奈さんは居るか?」

長門「……どうして?」

キョン「実はな」

今度は俺の今までの経験を話す。

長門「それはタイムリープと言われている」

キョン「タイムリープ?」

長門「朝比奈みくるも行うような人体を含めた時間移動をタイムスリップ。対して、記憶だけの時間移動をタイムリープと呼ぶ。しかし、タイムリープは不可能とされている」

キョン「何故?」

長門「主に、座標の設定が出来ないため」

キョン「そうか。でも、俺がそうなったのは、やっぱりハルヒか?」

長門「そう」

不思議な体験には慣れているが、またややこしい事になってしまった。

テストが楽なのが唯一の救いだよ。

キョン「そういえば、朝倉と喜緑さんに口裏合わせてくれるように言ってもらえないか?」

長門「了解した」

キョン「ああ、それと……」

最後にもう一つ頼み事をして、マンションを後にした。

ハルヒ「ほらほら、観念しちゃいなさいよ」

みくる「いやぁ、ダメですー!」

放課後となり、掃除をしてから部室に向かうとハルヒの声と朝比奈さんの悲鳴が聞こえてきた。

入りたくなる気持ちをグッと押さえて、ある程度静かになるのを待つ。

ドタバタと騒ぐ音が聞こえなく鳴ったので、少し大きめにノックをする。

ハルヒ「入って良いわよ」

中に入ると、泣きべそをかいたメイド服姿の朝比奈さんとドヤ顔で見てくるハルヒ、気にも止めず本を読んでいる長門がいた。

ハルヒ「どう?」

キラッキラとした笑みを向けるハルヒ。

朝比奈さんを見る。

俺にとっては見慣れた服装だが、涙目でこちらに視線を向ける姿は初々しく懐かしく感じる。

この気持ちを一言で言うなら、

キョン「凄くそそるものがあるな」

ハルヒ「でしょ!やっぱり、私の目に狂いはなかったわ!あー、ホント可愛いわね!トリャー」

それだけ言うと、朝比奈さんの上にのしかかり耳を噛んだり、胸を揉んだりと、背景にとある花が咲き乱れそうな状況にしてしまった。

みくる「見ないでくださいぃ…」

ハルヒ「隠しちゃダメよ。そうだ、キョン。そこにあるカメラでみくるちゃんを撮りなさい」

みくる「ダメですぅ!」

朝比奈さん、すいません。

団長命令と欲望には言いなりになるしかありません。

そのまま撮影会へと移行する。

ギリギリR指定に入らなそうな場所で、無理矢理止めた。

その後、ネットに配信するとか言う愚行を犯しそうになって居たが、これもネットの怖さで諭した。

納得してはくれたものの、終始不機嫌だった。

古泉、頑張れ。

ゴールデンウィーク。

俺が教えなかったから思い付かなかったのか、はたまた、何か理由があったのか、ハルヒに何もされずにゴールデンウィークが終わった。

久しぶりにのんびりとした連休を取った気がする。

そして、連休明け。

そういえばこの日のハルヒの髪型を見て、声を掛けたのが始まりだったんだな、なんてことを思いだし学校に向かう。

教室に入ると何故だか騒がしかった。

ハルヒ「キョン、聞いた?」

挨拶より先にハルヒに問われる。

キョン「何をだ?」

ハルヒ「九組に転校生が来るんですって!こんな変な時期に転校なんて、謎の転校生に決まっているわよ!」

古泉も早めに来たか。

これで最後のピースが埋まるな。

キョン「そうかい」

ハルヒ「これはもう我がSOS団に入れるしか無いわね」

キョン「無理矢理は止めとけよ」

ハルヒ「うっさいわね」

そこで担任が入ってきて、話は一時中断となった。

ホームルームが終わると、ハルヒがロケットのように教室を出た。

確かめるのはハルヒに任せて一限の用意をする。

チャイムギリギリにハルヒが戻ってきた。

キョン「どうだった?」

ハルヒ「んー、あんまり謎っぽい感じはしなかったわね」

キョン「男?女?」

何気無しに質問する。

ハルヒ「遠目だったからあまりわかんないけど、変装してなかったら女の子ね」

なんだと!

あまりのショックに呆然としているとチャイムがなった。

休み時間、どうにか一目見ようと九組を目指すが、野次馬に阻まれ見ることは叶わなかった。

見たやつらに聞くと可愛い活発そうな子、だと言っていた。

どうやっても古泉には結び付かない。

諦めて放課後になるのを待つ。

放課後、またもやダッシュで出ていったハルヒを放っておいて部室に向かう。

このタイミングの転校だから、やはり機関だと思うが、それにしては古泉で無いのに納得がいかない。

こうなったら、後で長門と共に聞きに行くか。

長門が入れば、例え異世界人でも大丈夫だろ。

部室でそんな事を考えながら待つ。

ハルヒ「ヘーイお待ち」

もっと静かに開けろとか、扉が壊れるだろとか、いつもなら真っ先に出てくるはずの考えが全く出てこなかった。

ハルヒ「一年九組に転校して来た即戦力の転校生!その名も!」

どうしてお前がここにいる?

橘「橘京子です」

橘京子!

今回はここまでにします

>>6 下から4行目
×岡部○先生

ハンドボールバカは体育教師だよ

それでは始めます

、ハルヒ「そこに可愛いのがみくるちゃん、本を読んでいるのが有希、あとそれがキョンね」

ハルヒが何か言っているが、全く頭に入って来ない。

どうなっていやがる。

朝比奈さんをさらった組織の一員が、何故敵対する機関の代わりにここにいる?

京子「入るのは良いのですが、ここは何をする部活なのですか?」

まさか、機関が負けたのか?

いや、まだ決めつけるのは早計だ。

ハルヒ「それは宇宙人、未来人、異世界人、超能力者と共に遊ぶことよ」

とりあえず、向こうの出方を見てからだ。

いきなりこちらに害を為すことは無いだろう。

京子「なるほど。流石は涼宮さんですね」

全く、訳がわからないぜ。

帰り際、長門に知らせるべきかそれとも先に仕掛けてくるのを待つか考えていると、橘京子がこっちに来た。

橘「涼宮さんに見つからないようにして、校舎裏に来てください」

耳元でボソリと呟かれた。

そっちのコンタクトが先だったか。

長門に頼んだのは出来ている。

閉鎖空間の中に入らなければ大丈夫だろ。

部室を出てから、ハルヒに見つからないようにして校舎裏に行く。

そこにはすでに橘京子がいた。

こちらを見つけると、一般的な女子高生とは思えないスピードで向かってきた。

チクショウ、勘が外れたか。

どうにか逃げようとするが、想像以上に速い。

橘「キョンさーん!」

キョン「えぇぇえ!」

抱きつかれた。

そのまま鯖折りとか、背中にナイフが刺さっているとかじゃない。

普通に抱きつかれた。

キョン「キョンさん覚えてますか?橘京子です!あの時はありがとうございました!」

ええい、まくし立てるな、訳がわからん。

古泉「ほら京子。驚いているからまず説明を」

橘「あ、いっくん」

は?

現状を理解出来ず、ツッコミを放棄していたらツッコミ所がさらに増えた。

古泉「京子は離れて。どうもはじめまして。それともお久しぶりですか?古泉一樹です」

キョン「ちょっと待て、待ってくれ。何がどうなっている?」

古泉「何とは?」

キョン「まず第一に、お前らは敵対する関係なはずだろ。なんで一緒にいる」

橘「それはキョンさんのおかげなのです!3年前のこと、覚えてませんか?」

キョン「3年前?それは、ハルヒがお前らに能力を与えた事か?」

古泉「ほら、やはりあの彼は、今までの彼ではなく、未来の彼のようですよ」

橘「いっくんの方が正しかったのですか」

キョン「二人で喋ってないで説明してくれ。3年前のことって一体なんなんだ?」

古泉「それはですね、3年前、僕達が機関と組織の争いの中、何処からか『涼宮ハルヒの鍵』と名乗る人物が現れて、僕達の考えを改めるような発言をしたのです。それを機に僕達は互いに歩み寄り、今は企業として二人を観察しています」

キョン「その発言って?」

古泉「それは秘密です。いずれ貴方が言うのですから、その時までに考えておいてください」

キョン「じゃあ、今二人は」

橘「企業の同僚なのです」

つまり、機関が組織と合体して企業になったことで、送り出して来たのが古泉から橘に代わっただけか。

古泉「所で貴方は3年前の事を知らないんですよね」

キョン「ああ、今初めて知った」

古泉「では、何故涼宮さんから能力を与えられたことはおろか、敵対していたことまで知っているのですか?」

キョン「それはだな…」

この前長門にしたのと同じ説明をする。

古泉「なるほど。つまり、異世界人枠はあなたの物、という訳ですか」

キョン「まぁ、そうなるな」

橘「異世界人なのですか!スゴいです!流石はキョンさんなのです!」

橘がピョンピョン跳ねている。

小動物のような可愛さを感じる。

朝比奈さんをチワワとするなら、橘は豆柴かな。

詳しく知っているわけではないが。

キョン「異世界人って、そんなにスゴいのか?お前らだって超能力者なんだし」

橘「スゴいですよ!企業では、宇宙人、未来人、魔法使い、内なるもの等々のグループが存在することは知ってますが、異世界人はキョンさんだけなのです!」

キョン「そうなのか?」

古泉「神人を人としないのであれば、ですけどね」

キョン「そうなのか」

古泉「ということで、我々はあなた方に危害を加えない。もっと言えば、協力する立場なので、他の二人に聞かれたらそう答えてください」

キョン「ああ、わかった」

古泉「それと」

古泉が耳に顔を寄せる。

古泉「京子を悲しませたら、ただじゃおかねぇからな」

キョン「ひぃ」

誰だ今のは?

ドスを聞かせた脅しを言ったのは、まさかあの古泉ではないよな。

古泉「そういうことで」

キョン「もしかして、お前たちそういう関係なのか?」

橘「いっくんは近所のお兄ちゃんみたいな感じです」

古泉「京子は妹みたいなものですよ。僕達の、ね」

古泉の応えに冷や汗を感じながら、その日は別れた。

金曜日。

明日はゆっくり英気を養って、そろそろ来るはずの怒涛のスケジュールに備えるか、なんてことを考えながら部室でのんびりとお茶を飲んでいると、ハルヒがいきなり立ち上がった。

ハルヒ「第一回SOS団ミーティングを始めます」

さっき建てた予定は音を立てて一気に崩壊した。

ハルヒ「昔の人は果報は寝て待てと言いました。でも、今の時代そんなことじゃダメなのよ!と、言うわけで、明日不思議探索をするわよ!明日の九時、駅前に集合。良いわね!」

ハルヒの言うことに関しては、ノウとは言えない三人娘。

俺も反対する気は無いので、賛成一、反対零、棄権四で第一回不思議探索が決定した。

別に賛成でも良かったが、奢りは辛い。

出きるだけ早く出て奢りを回避するか、諦めて奢るか悩んでいるとその日の部活は終わった。

その悩みも無駄になってしまった。

一応1時間前を目指したが、春眠暁を覚えず。

気づいた時には、すでに8:30を回っていた。

いいさ。

第一回の奢りくらい甘んじて受けよう。

ハルヒ「遅い!罰金ね」

10分前に着いたにも関わらず、最後に来たので喫茶店で奢る事となった。

わかっていたとは言え、やはり理不尽極まりない。

くじ引きで午前の部の組分けをする。

結果は、俺と朝比奈さん、ハルヒと長門に橘。

デートではない、とハルヒに釘を刺され適当に散歩する運びとなった。

その途中、河川敷にあるベンチに座り、朝比奈さんの話を聞いた。

ついでに俺のことも話しておく。

案の定、朝比奈さんは鳩が豆鉄砲を食ったかのように驚いた。

朝比奈さん(大)もそれくらいは話して置けば良いのに。

午後になると、長門と朝比奈さんの入れ代わりとなった。

一応不思議でも見つけて置けば良かったが、図書館に不思議などはなく、時間内に長門の図書カードを作ったりするだけにとどまった。

最後にまた喫茶店に集合して結果を話す。

もちろん成果は無しだ。

ハルヒ「解散」

それだけ言い残して、不満たっぷりありそうに帰ってしまった。

俺たちも仕方がなく帰路につく。

企業の方々、迷惑おかけします。

それは唐突に現れた。

予測していなかったと言えば嘘になる。

しかし、前回よりも早く、そして、少し軌道修正しているので、もしかしたら今回は無いんじゃないかな、なんて甘い希望も抱いていた。

そんな希望も残念ながら打ち砕かれた。

やっぱりこうなってしまったか。

もう一度目の前の下駄箱を開ける。

そこには内履きと共に、ノートに書いた手紙があった。

中身は放課後、教室に来てください。

宛名も書いてない簡素な手紙。

だが、誰からなんて書かれてなくても分かる。

朝倉涼子。

情報統合思念体の対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインターフェース急進派。

俺を2回も殺そうとした奴からだ。

谷口「よ、そんな所で固まってどうした?まさかラブレターか?」

キョン「谷口か。とびっきりの美少女から、最後に目にするのは私にして、っていう熱烈なラブレターをもらってな」

谷口「なんだそりゃ!結婚してくれって事かよ」

実際は大人しく殺されて、だけどな。

何故か狼狽えている谷口を適当にあしらい、教室に行く。

既にハルヒが後ろの席に座っていた。

一昨日からの今日だから機嫌が悪い。

軽く視線を回すといつもと代わらない朝倉がいた。

覚悟を決めるか。

朝倉「遅いよ」

ハルヒのいない部活を途中で抜け出し教室に行くと、真っ赤に輝く中に朝倉がいた。

もしもこれが単純なラブストーリーなら、この雰囲気は最高のシチュエーションになることだろう。

単純なラブストーリーなら、な。

キョン「お前か」

朝倉「そ、意外でしょ」

キョン「残念ながら予想通りだったよ」

朝倉「それならもっと早く来ても良かったのに」

可愛らしくむくれている。

谷口の評価をもう一段階上げてもいいかもしれない。

キョン「そうだな。次があったら案の一つにいれておくさ」

朝倉「そこは真っ先に選ぶべきじゃないの?」

キョン「それでなんの用なんだ?」

朝倉「ちょっと聞きたいんだけど、人間はさあ、よく『やらなくて後悔するよりも、やって後悔したほうがいい』って言うよね。これ、どう思う?」

キョン「よく言うかどうかは知らないが、言葉通りの意味だろうよ」

朝倉「じゃあさあ、たとえ話なんだけど、現状を維持するままではジリ貧になることは解ってるんだけど、どうすれば良い方向に向かうことが出来るのか解らないとき。あなたならどうする?」

キョン「まずは良い方向への模索だな。見つかるまでは我慢する」

朝倉「そう?とりあえず何でもいいから変えてみようと思う方が多いんじゃない?どうせ今のままでは何も変わらないんだし」

キョン「それもあるかもしれないが、それは最終手段だな。今より悪くなる可能性もある」

朝倉「もうその地点なのよ。上の方にいる人は頭が固くて、急な変化にはついていけないの。でも現場はそうもしてられない。手をつかねていた らどんどん良くないことになりそうだから。だったらもう現場の独断で強硬に変革を進めちゃってもいいわよね?」

キョン「あまり良くは無いんじゃないか」

朝倉「何も変化しない観察対象に、あたしはもう飽き飽きしてるの。だから……」

どうにかして思い止まるようにしようとしたが、やはり無理だったか。

仕方がない。

ナイフがいつ来ても良いように、足を軽く曲げ朝倉の右手を見る。

だから、この時朝倉がどんな顔をしていたか見ることは出来なかった。

朝倉「私と付き合ってください!」

キョン「・・・・・はい?」

空間が凍結した。

朝倉「返事は?」

キョン「え?いや。は?ちょっと待ってくれ」

今、朝倉はなんて言った?

ワタシトツキアッテクダサイ?

私と付き合ってください?

待て待て待て、そんな訳無いだろ?

長門よろしく、情報統合思念体特有の超高速呪文がたまたまそう聞こえただけだな。

いや、でも返事って言っていたよな。

呪文で返事がいるのか?

まさか操る呪文とかか!

適当に体を動かすと全部思い通りに動く。

ならば、この空間の隔離なのか?

しかし、窓の外には真っ赤な夕焼けと廊下が見える。

他に呪文で操る物は思い付かない。

もしかして呪文じゃない?

じゃあ、そのままか?

ワタシトツキアッテクダサイ。

わたしとつきあってください。

私と突きあってください。

これか!

つまり、一方的ではなく血肉沸き上がる白兵戦がしたかったのか。

キョン「朝倉よ。残念ながら俺は刃物を一本も持ってないぞ」

朝倉「え?」

キョン「どうしても突きあいたいなら、ナイフか何かを一本よこせ」

朝倉「ええと、キョンくん?違うとは思うけど、まさか刺突の方のつきあうのことを言っているんじゃないでしょうね」

キョン「違うのか?」

朝倉「違うわよ!」

キョン「ならやっぱり超高速呪文か!」

朝倉「それも違う!」

キョン「俺を殺してお前も死んで、二人で誰かに取り憑くとか?」

朝倉「あなた、わざとでしょ」

責めるようなジト目を向けてくる。

キョン「わざともなにも、他の選択肢が思い付かないんだが」

朝倉「何でよ。あなたは枯れた仙人な訳?」

キョン「俺が仙人ならお前は女神か?」

朝倉「本当に口は達者なんだから。もう良いムードが台無しじゃない」

キョン「夕焼けと血で真っ赤に染まりたかったのか?」

朝倉「何で私を、そんなに猟奇的な人物に仕立てあげたいのよ」

キョン「仕立てあげるもなにも、俺のお前に対するイメージはまさしくそれなんだが」

朝倉「もう前回のわたしのことは頭から消し去ってよ」

キョン「何?お前は俺がタイムリープしてきたことを知ってるのか!」

朝倉「当たり前でしょ。いくら情報統合思念体が一枚岩では無いとは言え、最優先事項である涼宮ハルヒ関係の情報はすぐに回されるわよ」

キョン「え?つまり、どういうことだ」

朝倉「あなたを殺そうとしてたら、私は長門さんに消されちゃうから違う案で行こうと言うことにしたのよ」

やれやれとでも言うように両手を肩の高さまで挙げる。

朝倉「大変だったのよ。あなたを殺そうとするから先に消そうとか、いっそのこと別の人格に組み替えようとか。どうにか、今後あなたに危害をくわえないことと、情報操作を使えなくすることで手打ちになったのよ。今の私はただの少女よ」

キョン「要するに[ピーーー]ために呼び出した訳じゃ無いと」

朝倉「そ。私がそんな人間じゃないってわかってくれた?」

キョン「ああ。だがそういうことなら何故呼び出した」

朝倉「あなた、本当に高校生?」

キョン「当たり前だ」

朝倉「色眼鏡無しでこの状況をみたら分かるでしょ」

下駄箱の中の手紙、放課後の教室、付き合ってくださいの一言。

キョン「まさか!」

朝倉「ようやくわかってくれた?」

キョン「果たし状からのタイマンか!」

ギャグ漫画みたいに朝倉がずっこけた。

残念なことに、計算し尽くされたギリギリの角度でパンツが見えない。

朝倉「どうしてそうなるのよ!告白以外無いじゃない」

キョン「私は宇宙人ですと?」

朝倉「バカじゃないの!愛の告白に決まっているじゃない!恋人関係の付き合うよ!」

ハルヒが乗り移ったかのようにまくし立てる。

キョン「まぁ、落ち着け。そんなに怒鳴り散らしていたらせっかくの美人が台無しだぞ」

朝倉「あなた、やっぱりわざとでしょ!」

キョン「はは、なんのことだか?」

朝倉「白々しい真似しないでよ!私をからかって楽しいの?」

キョン「ああ」

朝倉「もう!それで返事は?」

キョン「別に特別なことなんてやってないぞ」

朝倉「いつの返事よ!」

キョン「お前がハルヒと喋る方法聞いた時の」

朝倉「いつのよ!今回はそんなの聞いてないわよ!」

キョン「あれは前回だったか」

朝倉「それで、告白の返事は?私と付き合ってくれるの?」

キョン「どこへ?」

朝倉「そんなありきたりなボケはいらないから」

キョン「答えなきゃ、ダメか?」

朝倉「女の子に恥をかかせる気?結果はどうあれ宙ぶらりんな状況はキツいのよ」

キョン「わかった。正直に言うぞ。今はお前と付き合うのは無理だ」

朝倉「そう」

教室から出ようと駆け出した朝倉の手を掴む。

朝倉「話してよ」

キョン「最後まで聞けよ。ぶっちゃけお前に二度刺されたし、いきなり後ろに現れて首にナイフ突きつけられたこともあったから、お前に恐怖を感じられずにはいられない」

朝倉「そ。もういい?離してよ」

キョン「だからさ」

手を引っ張ってこっちを向かせる。

堤防は既に決壊寸前だった。

今一度深呼吸する。

キョン「だから、お前を、今のお前をちゃんと、色眼鏡無しで見られるようになるまで、待ってくれ。返事はそれからでいいか?」

朝倉が一瞬目を丸くして吹き出した。

朝倉「アハハハハハ、なによそれ。前じゃない今の私を見たいって言うの?」

キョン「悪いかよ」

朝倉「悪くは無いわよ。でも、最初の方のくだりは余計だったかな」

キョン「そりゃすまなかった。イメージが先行しちまってたからな」

朝倉「許して欲しかったら、早く今の私に慣れてよね」

キョン「善処するさ」

二人して笑う。

最初に気を張っていたのが馬鹿みたいだ。

谷口「wwawwawwa忘れ物~」

キョン「あ」

谷口の存在をすっかり忘れていた。

谷口「お邪魔しました」

中に入りもせず帰ってしまった。

朝倉「どうする?明日クラスで噂になったら」

キョン「どうしょうもないだろ。機関の、いや今は企業だったか。企業の人達の奮闘に期待するさ」

朝倉「他人任せなのね」

キョン「俺はなんの力も持たない異世界人だからな」

翌日のことは気にせず、二人で笑いあった。

今回は以上です

誤字脱字設定間違いなどは気にしないようお願いします

今回は短めですが始めます

谷口「昨日のあれはなんだったんだよ」

既にそこまで苦では無くなった坂道の途中、後ろからラリアット気味に肩を組まれて耳打ちされる。

朝っぱらから顔を近づけるな、気色悪い。

キョン「昨日のあれってなんだ?」

谷口「とぼけんなよ。昨日朝倉と放課後残って喋っていただろ」

キョン「あれはな」

そこから校門につくまで、ハルヒがクラスに馴染めないのをどうすればいいか、と相談を受けた等という嘘八百、事実無根の話を俺の技量の許すまま壮大に語った。

その結果

谷口「朝倉はすげぇいい奴だな。キョン、お前も見直したよ。よし、何かあったら俺も手伝ってやるぞ!」

とまでいうほどまで信用された。

こいつチョロいな。

谷口のうざったい宣誓を聞き流し靴を履き替えようとすると、何かが手に当たった。

中を見ると小さな封筒があった。

見つからないよう急いで鞄の中に入れる。

教室に行く途中、トイレで確認する。

内容は昼休みに部室に来てください。

差出人は勿論、朝比奈さんだった。

手紙を鞄に戻し教室に行く。

朝倉「あ、やっときた」

教室前の廊下に朝倉がいた。

朝倉「谷口くんに朝あったみたいだけど、どうだった?」

キョン「ハルヒがらみの相談を受けていた、と言ったら信じてくれたぜ」

朝倉「じゃあ変な噂される心配は無いわね」

キョン「昨日のはそうだが、今の状況はどうだかわからんぞ」

朝倉「いっそのこと、抱きついて教室に入ろっか?」

キョン「やめてくれよ。いつナイフで刺されるか冷や汗もんだぜ」

朝倉「あら、理由はそれだけ?」

キョン「ハルヒに見られたら世界の危機だ。もっとも、お前らはそれが狙いだろうけどな」

朝倉「正解。賞品として今回は抱きつかないであげましょう」

キョン「立場的には喜ばしいが、男としては悔しいな」

朝倉「嬉しいことを言ってくれるわね。あ、私仕事があったんだ。それじゃあまたね」

それだけいい残して何処かにいってしまった。

委員長は面倒そうだな。

教室に入ると不機嫌なハルヒが目に入った。

そう言えば昨日不思議探索で歩いた道を、一人で探し回ったんだったか。

御苦労なことで。

ハルヒの不機嫌オーラを背中にひしひしと感じながら午前の授業を終えた。

昼休みになり、そんなオーラから逃げるように部室に行く。

身なりを整え、軽くノックする。

ちょっと待ってから開けると、まだ誰もいなかった。

朝比奈さん(大)の為にお茶でも淹れるべきかなどと動こうとしたその時

???「ホールドアップ」

聞き慣れた声と共に、後頭部に何かを突きつけられた。

キョン「え?ちょ!」

???「ハァイ、久しぶり。元気にしてた?」

キョン「朝比奈さんですよね?」

聞き慣れぬ口調に驚きながら尋ねる。

みくる(大)「その名前を呼ばれるのはいつぶりかしら?今じゃもっぱら、デスブライドって呼ばれているけどね」

キョン「用件は何ですか?」

みくる(大)「あら。意外と冷静なのね。もっと騒ぎ立てると思っていたのに」

キョン「自分でもそう思いますよ。あれを見つけるのがもう少し遅かったら、どんなに取り乱していたことだか」

顎であるものを示す。

それは

キョン「顔真っ赤ですよ。朝比奈さん」

いかにも恥ずかしそうに顔を赤らめた朝比奈さんが写っている鏡だ。

みくる(大)「見ないでぇ…」

振り向くと顔に手を当ててしゃがみこんでいた。

キョン「大丈夫ですか?」

みくる(大)「気付いていたなら早く言ってよ。結構恥ずかしかったんだから」

キョン「そのわりにはノリノリでしたよ」

みくる(大)「それ以上言わないで!もう顔から火が出そうなんだから」

朝比奈さんが意思疏通もままならないほど悶えているので、五分ほど待った。

キョン「落ち着きましたか?」

みくる(大)「ええ。おかげさまでね」

キョン「それで、さっきのは一体なんだったんですか?」

みくる(大)「だって、キョンくん全く驚かないんだもの」

キョン「はい?」

みくる(大)「何か不思議なことにあった時、いっつも私と橘さんが驚いて、キョンくんは全然動じなかったから驚かして見たかったのよ」

キョン「さっきのはかなり驚きましたよ。まさか朝比奈さんがあんなことをするとは思いませんでしたから」

その2倍くらい可愛さがあったけれど。

みくる(大)「落ち着いているように見えたのは気のせいだった?」

キョン「前の2年で顔に出づらくなっただけですよ。それで、今回はどのような用件ですか?」

みくる(大)「それはね」

キョン「それは?」

朝比奈さんのただならぬ雰囲気に息を飲む。

みくる(大)「ああ!もう時間だわ!キョンくんこれだけ覚えておいて!人魚h」

そこまで言って姿が掻き消えてしまった。

キョン「・・・・え?」

時をかける少女は疑問だけを残して帰ってしまった。

訳のわからない未来人の来襲と残された人魚と言う言葉に頭を悩ませていると、午後の授業が終わってしまった。

放課後は平常運行の内容だった。

ただ、古泉の代わりに橘とオセロをやると、実力が伯仲するほどだった。

しかも、企業の人はもっと強いと。

古泉が俺より強いとでも言うのか?

部活終了後、家の前まで来ると噂の古泉がいた。

キョン「何か用か?」

古泉「少し来てもらいたい所がありましてね」

キョン「閉鎖空間か」

古泉「まぁ似たような場所ですね。こちらに」

古泉に導かれるまま車に乗る。

古泉「一応お聞きしますが、涼宮さんのことはどこまで知っていますか」

キョン「全知全能の力をもっていて、お前たちに力を与えた我らが団長様だ」

古泉「佐々木さんのことは?」

キョン「ハルヒの力を引き継ぐことの出来る俺の親友」

古泉「これは重畳。補足はいりませんね。」

キョン「話は変わるが、お前オセロは強いか?」

古泉「オセロに関わらず、一般的なボードゲームなどは多生の心得がありますが、それが何か?」

キョン「前のお前はボードゲーム関連がほとんど弱かったからな」

古泉「なるほど」

納得するように手を打った。

キョン「何がなるほど、なんだ?」

古泉「もうすぐ目的地に着きますから、そしたら教えますよ」

車を降りると、20階ほどあるビルがあった。

キョン「これは?」

古泉「企業の本社です」

機関の本拠地がどんな所だったかは知らないが、これより凄かったということはないだろう。

企業というだけあってしっかり稼いでいるんだな。

古泉「どうぞ中へ」

ロビーに入ると会社と言うよりは、高級ホテルじゃないかと疑いたくなるような内装が広がっていた。

古泉「ここと客室はお金をかけてますから」

キョン「まるで心を読んだようなタイミングで言うんだな。新しく読心術も習得したのか?」

古泉「慣れですよ」

キョン「慣れってハルヒか?」

古泉「さあ、どうでしょうか?ではこちらへ」

導かれるままエレベーターに乗ると、古泉が鍵の掛かった扉を開け中にあるKとだけかかれたボタンを押した。

エレベーターはどんどん下がって行き、右端のB3を越えても止まらない。

キョン「どこまで下がるんだ?」

古泉「地下5階です。着きましたよ」

キョン「・・・・は?」

扉が開くと、そこは別世界でした。

古泉「ようこそ、閉鎖的空間へ。どうしたのですか?早く出ないと閉まりますよ」

キョン「あ、ああ」

一体目の前にあるこれらはなんなんだろう?

脳がそれの存在を処理しない。

「「「「ウォォォオオオ!!!!」」」」

古泉「既に始まってしまいましたか?早く行きましょう」

訳もわからず古泉に着いていく。

そのまま舞台のような所の裏に行き、スタッフぽい人の誘導でよくわからない台に乗せられる。

司会「続いて、機関サイド。倒した敵は数知れず、落とした人は星の数!リサールウェポン、森園生!!」

外から割れんばかりの歓声と求婚の声が聞こえる。

司会「この男に出来ないことはない。完全無欠、経歴不明の紳士!新川!!」

森さんのと声量は同じだが、黄色い声の割合が違う。

それにしても経歴不明なのに企業に勤めて良いのか?

新川さんって一体何者?

司会「トリを飾るはこの男。企業設立の立役者。誰が呼んだか我等が兄貴!古泉一樹!!」

地震が来たのか?

そう思わせられるほどの大歓声だ。

古泉って結構上の立場なんだな。

司会「そして、何と今回はスペシャルゲストをお呼びしております。企業の原点はこの男。名前呼ばれず幾星霜。匿名希望!ジョン・スミス!!」

俺が立っていた台が上がっていく。

左には元機関の三人、右にはおそらく元組織の三人、そして、前には約100人の人がいた。

何故か先ほどのような歓声は無く、全員からの拍手で迎えられた。

古泉以外の壇上の代表5人には、握手まで求められた。

司会からは何か一言とマイクを渡された。

ひとまず深呼吸。

キョン「これは一体なんなんだ!!」

静まった会場でいち早く動いたのは司会者だった。

司会「それでは、ジョンスミスさんへの説明も兼ねて、この会の趣旨を確認いたしましょう。まずこちらをご覧ください」

画面に映し出されたのは、先ほど廊下に貼られていた物とほぼ変わらない写真。

この写真がハルヒや佐々木の物なら納得いったさ。

機関であっても企業であっても、やることは変わらず二人の監視と閉鎖空間の破壊。

その対策会議をするなら大いに結構。

俺も微力ながら助力させて貰おうじゃないか。

けどな

司会「これは三年前。機関と組織の合併の為の初めての全体会議にて、京子ちゃんが緊張のあまりマイクに勢いよくヘッドバットをかました写真です。この後のカミカミのスピーチを聞いて骨抜きになった人も多いでしょう」

なんで橘なんだよ!

今回は以上です

一日開いてしまいましたが始めます

数時間に渡る企業による橘を愛でる会は、全員から俺への『悲しませたらわかっているよな?』という恐喝で幕を閉じた。

まるで催眠商法だ。

もう少し長く居たら橘信者になるところだったぜ。

帰りが遅かった事について、あれこれといろんなことを聞いてくる妹をあしらい、さっさと寝床に入る。

橘のおかげで、超能力者サイドも随分安全になっていたな。

俺に対しては少しばかり物騒だけども。

これで今回は朝比奈さんがさらわれることもないか。

まどろみの中、後はどんなことがあったか考える。

あ、古泉にボードゲームが強い理由を聞くのを忘れてた。

その日は、朝からハルヒの機嫌が悪かった。

ベタベタと絡んでくる橘と朝倉を、妹と同じ対処をしたのが悪かったのかもしれない。

あるいは、バニーに着替えたハルヒに何も言わなかったせいかもしれない。

はたまた、朝比奈さんがお茶をこぼしたからというのも考えられる。

けれども、一番の理由はやはり、不思議なことが無かったからだろう。

瞼を開けると、そこは閉鎖空間だった。

あわてふためくハルヒを落ち着かせ、学校を散策する。

案の定、外との繋がりは断たれていた。

一旦部室に行ったあとハルヒは俺に待機を命じ、一人で探検しに行ってしまった。

お茶を淹れ一息つくと、窓の外に赤い玉が見えた。

古泉「やあ、どうも」

キョン「古泉か」

古泉「我々の恐れるべき事態が始まってしまいました。あなたはこの事を知っていましたか?」

キョン「ならないように気を付けてはいたんだがな」

古泉「だからそんなに落ちついていられるのですか」

キョン「いや、前回もこんな感じだ」

古泉「そうですか。京子からの伝言です。私のせいです、と。そして企業一同から」

一瞬、赤い玉が大きくなった。

「「「「「「覚えていろよ」」」」」」

不気味な合唱と共に古泉が消えた。

あいつ恐怖を植え付けるだけに来たのかよ。

一応前回と同じようにパソコンの電源をつけてみる。

YUKI.N>みえてる?

よかった。

こっちは正常だ。

KYON>ああ

RYOKO.A>キョン君、大丈夫?

朝倉もいるのか。

YUKI.N>もう一度こちらに回帰することを情報統合思念体は望んでいる

RYOKO.A>もちろん私と長門さんもよ。それにまだ返事をもらってないし

KYON>どうすりゃいい?

YUKI.N>その答えをあなたは既に知っている

KYON>それしか無いのか

RYOKO.A>男なら覚悟決めなさいよ

なんと横暴な話だ。

YUKI.N>また図書館に

RYOKO.A>返事まってるから

そこまで表示してパソコンの画面が消えた。

答えは既に知っている、か。

確かに、ここから出るには前と同じようにハルヒにキスをすれば出れるだろう。

また、ベッドの上で悶えれば済む話だ。

ただ、朝比奈さん(大)の残した言葉が引っ掛かる。

白雪姫ではなく、人魚。

もしかしたら、人魚姫なのかもしれない。

それを無視していいのかどうか。

急に窓の外から青白い光が差し込む。

チクショウ、もうお出ましか。

ハルヒ「キョン!なんか出た!なにあれ怪物?蜃気楼じゃないわよね、宇宙人かも!それか、古代人の発明した兵器が現代に蘇ったとか」

キョン「出るぞ」

ハルヒの手を掴み走り出す。

いろいろ言ってくるがそれら全て聞き流し、打開策を考える。

だが、何とかの考え休むに似たり。

何も思いつかん。

キョン「元の世界に戻りたいとは思わないのか?」

ハルヒ「え?」

キョン「ずっとここにいるわけにもいかんだろ。腹が減っても飯食う場所もなさそうだし」

ハルヒ「不思議だけど何とかなりそうな気がするのよ」

キョン「SOS団はどうするんだ」

ハルヒ「いいのよ、もう。私自身がとっても楽しんでるし。不思議なことを探す必要もないわ」

キョン「俺は戻りたい。こんな状態に置かれて発見したよ。俺はなんだかんだ言って、今までの暮らしが好きだったんだな。あほの谷口や国木田や朝倉も。朝比奈さんや長門に橘も」

ハルヒ「何言ってんの」

キョン「俺は連中とまた会いたい。まだ話すことがいっぱいあるんだ」

ハルヒ「あえるわよ、きっと。明日になったら太陽だって昇ってくるわよ。私にはわかるの」

キョン「そうじゃない。元の世界のあいつらに俺は会いたいんだよ」

そこまで言うとハルヒに腕を払われた。

ハルヒ「意味わかんない・・・あんただってもっと面白いことが起きてほしいと思ってたんじゃないの」

キョン「思っていたとも。あのな、ハルヒ。お前が知らないだけで世界は確実に面白い方向に進んでいたんだよ。そして、これからも進んでいくんだ。俺が保証してやる」

ハルヒ「なんなのよ、それ。私が知らないだけで世界は確実に面白い方向に進んでいた?そんなの、私が知らなかったら、何の意味もないじゃない!」

どうなってやがる!

ここでハルヒにキスをすれば、元の世界に戻れるはずだったのに。

ハルヒ「やっぱり私はちっぽけな存在なのよ!自分から探したのに、結局私は蚊帳の外・・・。やっと不思議な体験ができたっていうのに。それなのに!」

ハルヒの叫びに応えてか、神人がこちらに向かってきた。

いや、こちらというより俺か。

ハルヒ「ねぇ、キョン。あんたは面白い人生を送ってきたのよね。こんな私にとってはとても不思議なことも、あんたにとっては日常なんでしょ。だからそんなに落ち着いて・・・」

ハルヒが俺の胸倉をつかんでくる。

その目は決壊寸前だ。

ハルヒ「どうして?どうして私じゃなくてあんたなのよ。教えてよ。教えなさいよ!」

キョン「ハルヒ・・・」

見つめてくる瞳から目が離せない。

どうして俺が不思議な目に遭うのか、俺だって知りたい。

お前の方がよっぽど不思議だ。

だけど、こいつが求めているのはそんなことじゃない。

人魚姫。

人間に恋して泡になって消える少女の話。

それはこいつと同じじゃないのか。

不思議を求めて探す少女。

話通りに行くなら、ここで消えてしまうのか。

そんなことさせてたまるか!

ハルヒの両肩に手を置く。

これを言ったら全てが終わってしまうかもしれない。

もっと変な世界になってしまうかもしれない。

それでも俺はこいつを人魚姫になんてさせねぇ!

キョン「ハルヒ。一つだけ教えておいてやる」

ハルヒ「何よ」

キョン「俺はジョン・スミスだ」

ハルヒ「うそ・・・。あんたが、あの?」

こんな驚く顔を見たのは、消失ハルヒに同じことを言った時以来か。

キョン「あとは元の世界に戻ったら教えてやる。だから、とっとと目を覚ましやがれ」

やっぱりこいつには白雪姫がお似合いだ。

キョン「ウグァ!」

突然の衝撃に驚いて目を開けると、いつもの見慣れた天井だった。

キョン「戻ってきたのか?」

部屋の中を見回しても窓の外を見ても灰色の景色ではなく、いつもと変わらない風景が広がっていた。

どうやら不思議だらけの世界にはならなかったようだ。

睡魔を押しのけて学校に行くと、すでにハルヒが座っていた。

キョン「よう、元気か」

ハルヒ「どうかしら。よくわからない夢を見てね、それがあまりにもリアルだったからちょっと困っているの」

キョン「そうかい」

あのことを言ってなかったから少し残念なことになっちまったな。

キョン「なあ、ハルヒ」

ハルヒ「何よ」

キョン「戻ってきたからもう一つ。実は俺、ポニーテール萌えなんだ。入学式の次の日のポニーテール、反則的に似合っていたぞ」

ハルヒ「うそ、まさかあんた・・・・。いや、いいわ。不思議は自分で見つけないとね」

ハルヒが鞄からゴムを取り出し、髪を括った。

ハルヒ「どう?」

キョン「ああ、似合っているぞ」

そのあとのことを少しだけ話そう。

放課後、部室にてみんなから今回のことに関していろいろ言われてしまった。

朝比奈さんと橘に至っては泣きながら抱き着かれた。

それをハルヒに目撃され、二人とも慌てたけど閉鎖空間が発生すようなことは無かった。

帰り道、みんなと別れた後、突然走ってきた車に押し込まれた。

中にいたのは、古泉を含めた企業の方々。

その目はまるで鬼のように開かれていた。

古泉が俺のポケットから携帯を取り出し、何か操作をしていた。

後になって知ったがハルヒに『ブス』とだけ書いたメールを送っていた。

お前たちはもう一度世界を危機にさらすつもりか。

車のまま閉鎖空間に飛び込んだ。

そして俺を残してそのまま去ってしまった。

覚えていろよ、とはこれだったか。

周りに多くの神人がいたが、どうにか切り抜けた。

長門から対朝倉用格闘プログラムを組んでもらって本当に良かった。

無事閉鎖空間から脱出したあと、企業の人から次こうはいかないぞと脅された。

この人たちはどれだけ橘が好きなんだか。

家に帰る途中の踏切で、突然朝倉に呼び止められた。

今回の騒動のあらましを説明して別れようとしたら後ろから抱き着かれた。

喉にボールペンを突きつけて。

お前は前のお前を思い出させたいのか?

トラウマだからやめてくれ。

そして、今。

俺はいつもの駅前に一人でいる。

これから第二回不思議探索パトロールがある。

やっぱり今日はハルヒと二人きりだ。

どうせ早く来ても、金がないとか言われて奢らせられることになるんだが、今回は先に来ないとな。

人ごみからハルヒが来た。

俺を見つけるなり不機嫌そうな顔で向かってくる。

その表情は俺に負けた不服からか、それとも出席率を嘆いてか。

どちらにしろ、その顔はこれからも見ることになるんだけどな。

溜息をついて退屈だと言ったり、輝きが消失することなく暴走したり、動揺したと思ったら陰謀だと憤慨したり、記憶が分裂して驚愕させられたり。

これからもいろいろあるが、戸惑うことなくお前の無茶に付き合ってやるよ。

まずはその不機嫌面を変えるために不思議な話でもしようか。

無口な宇宙人とうっかり屋な未来人とお転婆な超能力者の話。

それとも、無口な宇宙人とうっかり屋な未来人とにこやかな超能力者の話にしようか。

あ、傍若無人な神様と事なかれ主義の一般人というのもありかもな。

   






???「結局橘さんからの接触は無しか。くつくつくつ、今回は僕から動くべきかな。なあキョン」







                           To Be Continued?

以上でひとまず終わりになります。
これからですが、原作基準で溜息に行くか、時系列的に退屈に行くか、または完璧なオリジナルに行くか考え中です。
書くのもここか新スレかも考えていません。
ここまでありがとうございました。

レスありがとうございます
ここで書くことを決めましたが、続きはまだ書いてないので先になります
お待ちください

二か月ぶりになってしまいましたが『退屈』始めます

やはり俺よりも涼宮ハルヒの方が憂鬱だったSOS団発足記念日は春真っ盛りのことであり、溜息ではなく驚嘆の声の出た自主映画撮影にまつわる出来事は秋になってのことだった。

その間半年間、前回よりは楽だと思っていたがそんなこともなく、こりもせず様々な事件に巻き込まれてしまった。

俺の正体をばらさないほうが良かったのかもしれない。

頭の中が愉快なことで満たされていないとろくでもないことを考える、というハルヒの習性はもう身に染みてわかっていたのにここまで振り回されるのはどういうことだろう。

理由はわかりきっている。

前回に比べて不確定分子が増えてしまったからだ。

不思議なんてSOS団のみでお腹一杯なんだ。

頼むからこれ以上増えないでくれ。

そんな退屈だなんて思う暇のない怒涛の日々紹介したい。

まずは、前回の比ではない疲労を感じたあの野球大会から始めようか。

六月のある日、SOS団のアジトにて涼宮ハルヒが、甲子園のくじを引いた野球部のキャプテンのような溌剌さとともに高らかに宣誓した。

「野球大会にでるわよ!」

ああ、もうそんな時期なのかと一人納得する。

まさに光陰矢の如し、だ。

そんなことを思っているのはもちろん俺だけである。

My sweet angel 朝比奈さんはナース服――――もちろんハルヒの命令である――――を着て、絶句している。

長門はいつもと変わらない無表情で本を読んでいる。

橘は一人楽しそうにハルヒの持っているチラシを見ている。

何か起きたら企業が苦労するのをわかっているのだろうか。

キョン「で、その野球大会とやらにSOS団総出で出場するのか?」

ハルヒ「よくわかっているじゃない。我々の存在を世に知らしめるチャンスだわ。いいアイディアでしょ?みくるちゃん」

みくる「えっ?ええ!ででも・・・・」

ハルヒ「何かしら?」

朝比奈さんそいつがそんな顔をして提案してくることには、反論しても無駄なのは俺が良く知っています。

諦めてください


ハルヒ「あたし負けるのは大っ嫌いだから!狙うのは優勝よ!いいわね!」

そう言い残して一人でグラウンドに乗り込んでしまった。

怒涛の展開に取り残される三人娘。

まだハルヒの奇行にはなれないからか。

とりあえず三人を動かしグラウンドに向かう。

まあ、ちゃんと用意すれば野球大会もいい運動になるだろ。

伊達に一万回以上バッティングセンターに行ってないことを見せてやろう。

記憶は無いけどな。

グラウンドに行くとハルヒが用具用意していた。

練習場を追い払われた哀れな野球部員にはご愁傷様としか言う他ない。

ハルヒ「そういえば、面子が足りないわね」

普通は、まずそこから始めるべきじゃないのか。

橘「私のバイト仲間に野球好きの人がいっぱいいますよ」

ハルヒ「じゃあ、それで。でもあくまでSOS団だから呼ぶのは、三人までにして」

橘「了解です」

みくる「あの、わたしのともだちでよければ・・・・」

ハルヒ「決定ね。大会は明後日だから」

みくる「ひぇぇえ」

ハルヒ「づべこべ言わない!まずは千本ノックね!」

ハルヒがバッターボックスに行った。

最初と言うが、千本もしたら日が暮れちまう。

そんなこと思っても止められるはずもなく、千本ノックが始まった。

橘はたまにミスるが意外としっかり取っており、長門は自分に直撃する玉のみを取っている。

朝比奈さんは案の定グローブを被って蹲っているので、カバーに入る。

そんなのをずっと続けていられる訳も無く、とうとう朝比奈さんにボールが当たってしまった。

俺も疲れがかなり溜まっていたので、朝比奈さんを保健室に連れていくといって抜ける。

ハルヒがなんか叫んでいるが、聞こえなかったことにしよう。

企業のみなさん、頑張ってください。

保健室に行く途中、朝比奈さんが話かけてきた。

みくる「きょんくん、私と仲良くしたら・・・」

キョン「たぶん大丈夫ですよ。その時は不思議なものでも探しますよ」

みくる「でも・・・・」

キョン「苦労はいろいろしましたから。朝比奈さんはもう帰っても大丈夫ですよ。ハルヒにはうまいこと言っておきますから」

みくる「ありがとう」

朝比奈さんの笑顔が見れるなら、これくらいなんてことはない

橘「あ、お帰りなさい」

保健室から戻ると、長門と橘がネットの外にいた。

グラウンドではハルヒが野球部に向けてノックをしていた。

しかも、宣言した場所にねらって打つというおまけつきで。

それでいいのか野球部。

キョン「おう。あいつはまだやり足りないのか」

橘「そうみたいですね。先ほどからあの感じなのです」

キョン「たぶん千本終わるまでやるんだろうな」

ハルヒが汗を拭って止めるまで付き合った。

古泉みたいに数えてないから正確にはわからんが、千本やりきったんだろう。

今度はマウンドに立ち、投げ込みをしている。

その体力の10分の1でも朝比奈さんに分けてやれ。

今日はここまでです
次回は未定ですが、今回のような二か月なんてことはないです

皆さんどうも!今回紹介するオススメのSSはこちらです!!


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皆さんのこと、お待ちしております!!

闇条「待ってるぜ!」

フレンダ「待ってるって訳よ!」

それではまた会いましょう!

約二週間ぶりとなってしまいましたが投下します

二日後の日曜日、俺たちは市営のグラウンドに集合した。

真面目なトーナメントの中で、ちゃんとしたユニフォームを着てないチームはやはり俺たちだけだった。

場違いなことこの上ない。

我らがSOS団のメンバーは10人。

未来人、宇宙人、超能力者、異世界人、神という人外魔境のSOS団。

朝比奈さんが連れてきたSOS 団名誉顧問(予定)の元気印鶴屋さん。

組織から元機関組の古泉、森さん、新川さん。

なぜかやってきた宇宙人朝倉涼子。

こうやって見ると去年とは違い、そうそうたるメンバーだ。

自分でいってなんだが、とうとう一般人の枠からはずれちまったな。

古泉「どうも、お久しぶりです」

懐かしいにやけ面が近づいてくる。

キョン「そうだな。ところでなんで機関組なんだ?和解したとはいえ、組織の方を連れてくると思ったんだが」

古泉「それはこの前のキソ会のせいです?」

キョン「キソ会?」

古泉「機関組織対抗大会の略です。最初の方は敵対していたのがいきなり一つの企業として出発するのは難しいので、他のことで敵対しようと考えました。それがキソ会です」

キョン「それで機関組が勝ったから三人が来たのか」

古泉「ええ、第37回運動の部でこの三人を含む機関組が勝ちました」

キョン「なるほどな」

企業もうまくやっているんだな。

まあ、そこよりももっと気になることがある。

朝倉「呼んだ?」

後ろから急に朝倉が顔を出した。

キョン「うお!急に現れて何を言う。お前は読心術でも習得しているのか」

朝倉「もうそんなことはできないわよ」

キョン「ツッコミ所がある気がするが、それよりどうしてお前がここにいる?」

朝倉「私が言ったこと忘れたの?」

キョン「本気だったのかよ」

朝倉「何よ。もとはといえばあなたからじゃない。それにいつまでも殺人鬼って印象は嫌なのよ」

キョン「こんなことで覆せるほどお前の印象は甘くないぞ」

朝倉「わかっているわよ。小さいことから一つずつってこと」

キョン「つまり、これからもイベントごとに顔を出す気か」

朝倉「そういうこと。だからよろしくね」

キョン「はいはい」

ハルヒ「ちょっとキョン!話も聞かずに何やってるのよ」

外部組と話していると、ハルヒに腕を引っ張られた。

キョン「すまんすまん。で、なんだ?」

ハルヒ「これ」

突き出されたのはあみだくじ。

今回もこれで打順とか決めるのか。

ハルヒ「あとはあんただけだから」

あみだくじの結果、我らが『チームSOS団』のスターティングメンバーが決まった。

一番、ピッチャー、涼宮ハルヒ。

二番、ライト、橘京子。

三番、センター、長門有希。

四番、セカンド、俺。

五番、レフト、新川さん。

六番、キャッチャー、古泉一樹。

七番、ショート、森さん。

八番、サード、鶴屋さん。

九番、ファースト、朝倉涼子。

応援、チアガール、朝比奈さん。

綺麗に前半SOS団、後半助っ人連合に分かれたな。

それにしても、朝比奈さんがベンチでよかった。

これで前回より楽が出来る。

朝比奈さんが悪いって言っているんじゃありませんよ。

そちらに居てくれるだけでこちらのテンションが上がりますので。

相手はヤル気満々の上ヶ原パイレーツ。

服装からして意気込みが違う。

あの違法なバッティングはしないと思うから、お手柔らかにお願いしたいものだ。

今回は以上です
また次回は未定となっています

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