高峯のあ「ただいま、みく」 (17)

のあ「帰ったわ…」

のあ「みく?…みく、どこにいるの?」

のあ「そんなところに…」

のあ「ここは外界と区切られたひとつの領域…」

のあ「それを更に区切ることは日々を共有する間柄によいことではない」

のあ「…出て来なさい」


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のあ「………」

のあ「…ご飯も買ってきたわ」

のあ「………」

のあ「…現金ね」

のあ「みく、貴女のごはんは今日からこれよ」

『猫缶』

のあ「そんな顔をしないの」

のあ「他者の認識は自己の輪郭を改める」

のあ「猫の矜持があるならそれらしく扱われることになれるべきだわ」

のあ「ちゃんと貴女の好みを考えてお肉系よ」

のあ「………」

のあ「缶切りは明日買ってくるわ」


のあ「お風呂が沸いたわね」

のあ「入るわよ、みく」

のあ「暴れないの。部屋の中にいたからと言って汚れないわけじゃない」

のあ「貴女の清潔や健康にも責任を持つ…それが飼い主というものよ」

のあ「………」

のあ「そこまで嫌がられると少し傷つくわね」


のあ「…いいお湯だったわ」

のあ「ほら、みく。濡れたまま歩き回ってはいけないわ」

のあ「こっちへ来なさい、拭いてあげる」

のあ「…こら、だから歩き回らないの」

のあ「そういえばみく、こんなものも買ってきたわ」

『首輪』

のあ「これは所有の証…貴女が道に迷ったときに帰り道を示す導となるもの」

のあ「………」

のあ「…うん、似合っているわ」

のあ「アーニャが選んでくれたの。そう、彼女、また貴女に会いたいって言っていたわ」

のあ「…あまりあっちに懐き過ぎては駄目よ」

のあ「貴女の飼い主は私なのだから」

のあ「…電気、消すわよ」

のあ「ちゃんと寝床に入りなさい」

のあ「どうしてこっちに来るの」

のあ「…貴女の寝床は別にちゃんと用意しているでしょう」

のあ「………」

のあ「…仕方ないわね」

のあ「おやすみなさい、みく」


未央「おーおー、コイツが欲しいか~?」

猫『にゃー!にゃー!』

卯月「あれ、未央ちゃん。どうしたんですかその猫ちゃん?」

未央「いやあ、道歩いてたら懐かれちゃって遊んでたんだけどね。首輪みたらさ、実は…」

のあ「…来なさい。みく」

猫『にゃお!』ダッ

卯月「わっ……え? のあさんの飼い猫…なんですか?」

のあ「そう…日は浅い…けど、契約は正式になされている…」

凛「いやその…名前…」

のあ「これで覚えてしまった…最初に刻まれた記憶は容易に消せるものではない」

未央「いーじゃーん!確かにどこかみくにゃんに似てることあるし♪」


卯月「そうですね。みくちゃーん、こっちにおいで♪」

未央「ほれほれ、みく。未央ちゃんが遊んであげよう!」

凛「み…みく。こっちこっち…」

みく「にゃにゃ?誰かみくのこと呼んだかにゃ?」

卯月「あ、前川さん」

未央「前川さんおはよー」

凛「早いね。前川さん」

みく「………」

みく「……え?ひどくない?」

この後のあさんは猫の飼育法をみくにゃんにレクチャーされましたとさ。
おしまい。

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