照「私に妹はいません。…お姉ちゃんならいますけど」 (84)

「カン」

TV画面越しにそう言い放った彼女の手がゆっくりと王牌へと伸び、牌が手元で心地よく跳ねた。

「――ツモ。嶺上開花・断幺九・赤1…4000オールです」

『決まったあああああぁっ!白糸台女子、大将の宮永照の満貫ツモ上がりで2年連続の全国制覇を

成し遂げました!』

『…恐ろしい高校生がいたもんだな。…レベルが違う』

『と、仰られますと?』

『そもそも槓材の2sでツモ上がっている。上家が切った5sもスルーしている』

失意の中呆然としている対戦相手の三人を尻目にすると、彼女は一礼してその場を後にした。

『…大将戦開始時の得点と現在の得点を比べてみろ』

『はい。えー…どれどれ… …こっ、これは…!?』



「宮永選手!ご優勝おめでとうございます!!」

「得点の移動が多かった戦いになりましたが、終わってみれば如何でしたか?」

彼女は自分に向けられたカメラとマイクに向かって若干オドオドしながら応対する。

「ええ…っと…得点を!先輩や菫ちゃんが稼いでくれた得点を私は引き継いだだけです!」



『全校……±0…』

『…化物だ』



――彼女こそ高校2年生において高校生最強とされる、宮永照

私、宮永咲の姉であり、妹である――

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1401632944

記者『…では、改まして、白糸台の2年連続のご優勝おめでとうございます!』

選手一同『ありがとうございます。』

記者『宮永選手!二年連続の大将という大役を見事果たしきりましたが、今のお気持ちは?』

照『ええっと…』

菫『すみません、こいつは相変わらず口下手なもので…』

記者『あっ、そうでしたね』

照『ごめんなさい…。どうにも、注目されることは苦手で…。…そうですね、応援してくださった方々、部員のみんな、お姉ちゃん、お父さん、お母さん、お姉ちゃん…沢山の方々に感謝したいです』

記者『あれ?宮永選手、お姉さんがいらっしゃったんですか?それは初耳ですね』

菫(アホ!)ボソボソ

照『あああぅ、すみません!妹です!』

界「はっはっは。菫ちゃんはいつもフォローしてくれてるな」

咲「…そうだね」

界「何処行くんだー?これから決勝戦のハイライトやるんだぞー?」

咲「本人に聞くからいい」

界「かぁーっ!相変わらず仲のいい姉妹だねぇ」



『宮永監督!最後に来年の白糸台について一言!』

『当然、三年連続の優勝を狙います。照、菫は勿論のこと、来年2年生の子にも優秀な子がいますので』



界「………」

PLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLL

照『はい、宮永照です』

咲『な・に・や・っ・て・る・の?』

照『…はわぁっ!お姉ちゃん!』

咲『…私と二人きりの時以外そう呼ぶのは禁止って言わなかった?見たよ、決勝戦とインタビュー。姉って…』

照『いや…うん……ごめんなさい』

咲『いい加減その癖を直したほうが良いよ、咲。咲は今や全国で一番有名な高校生なんだから。下手な対応して変な勘ぐり入れられるとまずいよ』

照『うん…そうだね…お姉ちゃんにも迷惑かけちゃうもんね…ごめんね?』

咲『…………キ』

照『…え?』

咲『今度咲が私のためにおいしいショートケーキを作ってきてくれたら許してあげる♪』

照『出たー!お姉ちゃんのショートケーキ好きー!』

咲『咲だって好きなくせにー!』

期待続けろ!!

>>5
ありがとうございます。初投稿なんで間隔が分からんのですが3分に1レスくらいでいいんですかね?

照『じゃあ、そろそろ電話切るね?』

咲『…咲』

照『ん、どうしたのお姉ちゃん』

照『ははーん、さてはショートケーキだけじゃ足りないからチョコレートケーキも…』

咲『ちゃんと、麻雀楽しんでる?』

照『………え?』

咲『…麻雀、辛くない?望まない打牌を強いられてない?』

照『な、何の事かな?』

咲『あんな麻雀、咲らしくない…』

照『そ、そんなことないよ?』

咲『………咲がそういうなら良いけど。何かあったら私に相談してね?』

照『……うん。ありがとう、お姉ちゃん。じゃあ、またね』

咲「…」

咲「…嘘ばっかり」

照「…」

菫「電話、終わったのか」

照「菫ちゃん」

照「……どうやらお姉ちゃんにはバレちゃってるかもしれない」

菫「…」

照「……それでも、私は…」

菫「…分かってるよ。フォローは私に任せろ」

――事の発端は、幼少期、私の8歳の誕生日に、実家が火事によって全焼してしまったことがきっかけである。

当時二個下の妹・咲と私は、容姿・癖・特徴がとてつもなく似通っていた。

入れ替わろうと思えば、例え両親たちですら私たち二人を区別するのは困難に近い。

そんな中起きた火事による全焼。私たち二人は無事救出されたが、パニックのあまりずっと混乱状態に陥っていたらしく、母親の「照はどっちなの!?」という問にも答えられなかった。

それまで家族間で年中行事として行ってきた麻雀の成績からして、強い方が照だろうという母親の

強い主張の元、混乱状態の中私たち姉妹は麻雀をやらされたらしい。なんて親だ。



結果は咲が圧勝だった。

その後咲はその場で刺青を入れられ、宮永照として以後人生を歩むこととなってしまう。

そして私もまた、宮永咲としての人生を歩むことを余儀なくされる。

当初はとにかく二人で両親に詰め寄った。

――どうして信じてくれないの、私が咲/照なのに。

だが頑なに母親の返事は決まって、

――あなたが照で、あなたが咲。間違いないわ。麻雀で分かったんだもの。

主張が通らないとなれば、自分たちがその場に適応するしかない。

幸いなことに、咲と私は幼少期から今日に至るまで、とても仲が良い姉妹で、二人共がお互いの事をとにかく大好きであると断言できる。

自分が大好きな姉/妹になれるのであれば、それで良いかと二人共が納得してしまった。

こうして、姉なのに妹、妹なのに姉、といった奇妙な姉妹関係が成立。私は宮永咲として、清澄高校に門戸を叩くこととなる――

>>6
書き溜め有りなら好きにバシバシ行っていいよ。規制ないし。
即興ならごゆるりと。

京太郎「おーい、咲~」

咲「おやその声は京ちゃん」

須賀京太郎。中学校からの男友達。ちょくちょく私の貴重な昼休みの読書タイムに乱入してくる。

京太郎「レディースランチ食べたいからまた前みたいに頼むわ!」

咲「まーたー?」

モブ「おー京太郎、また咲ちゃんに世話してもらってるのか。よっ!ご両人!」

咲「嫁さん違うかなー…さ、京ちゃんさっさと行くなら行くよ」

>>10
ありがとうございます。溜めはありです。とりあえずこのペースで投下してみます。

京太郎「……」

咲「京ちゃん。ゲームをしながら食事はしないように」

京太郎「ったく相変わらずお節介焼きだなぁ咲は。それにゲームじゃねーよ。麻雀だよ、麻雀」

咲「…麻雀、やるの?」

京太郎「おう。部活にも所属してるんだぜ?まだ所属したてだけどな…っと、カン!」

咲「…え?」

京太郎「リンシャン…ならず!…ーってリンシャンの牌で打ち込んだー!くそがあああああああ」

咲「京ちゃん」

京太郎「なんだよ咲、今良いところなんだかr」

咲「京ちゃん」ガシッ

京太郎「………はい、なんでしょう咲さん」

咲「あのさ、何でそこでカンするの?面前を崩した挙句リンシャンで打ち込みとか咲が見たら泣くよ?」

京太郎「んん?(咲ってお前だろ?)」

咲「この局面でカンして嶺上開花出来るのは咲くらいだから。咲に百回謝って」

京太郎「は、はい…ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさ」

咲「大体からしてカンって言うのはあんな可愛い咲だからやって許されることで………」

咲「分かった?」

京太郎「はい…(こいつってこんな自分のこと推しまくるタイプだったっけ)」

京太郎「それにしても、咲がこんだけ麻雀に詳しいとは思わなかったぜ」

咲「…まぁ、ね」

京太郎「放課後、一緒に麻雀部に行ってみないか?たまーに集まり悪いと面子足りなくてよー」

咲「んー…」

正直な話、この高校に麻雀部があるというのが眉唾物である。去年の長野の県大会のデータは見たが、清澄は無参加だったはず。

そもそも長野において麻雀で全国目指すなら風越に行ってる。

そして私は今年に限って言えば例え入部したとしても全国を目指す気は今のところはない。来年からならいいけど。

咲(…まぁ、一般高校生のレベルというものも知っておきたい)

咲「良いよ、行ってあげる」

京太郎「おお、流石咲!俺以上に食べる大食漢のくせに、昼飯も食わずにあんだけ嶺上開花について深く講釈垂れただけあるぜ!」

咲「…私は女だからね?京ちゃんがお望みとあらば、もっともっと話してあげようか?」

京太郎「もう勘弁してください」

元ネタはある?
俺は「ノノノノ」を思い出した。

――――放課後

京太郎「ようこそ、お姫様。我が部活へ」

咲「………ふ~ん」

咲「もっと狭いかと思った」

優希「部長が生徒会長なだけあって、色々手回しがされてるんだじぇ!」

タコスを片手に私の独り言に陽気に突っ込んできた。この娘が部員の一人か。

優希「自己紹介が遅れたじぇ!片岡優希!人呼んでタコスの化身!以後宜しくだじぇ!」

京太郎「誰が呼んでんだよ」

優希「何だと!この犬!」

咲「宜しくね、片岡さん。私は宮永咲です」

優希「咲ちゃんか!良い名前だじぇ!」

咲「!!…そこに気付くとは…やはり天才か…」

>>17
一応オリジナルです。刺青云々はひぐらしの影響っちゃ影響かもしれません

和「すみませんね、騒がしい面々で」

咲「どうもこんにち…は…?」

おかしい部位がある娘が話し掛けてきた。認めん。何だそのおもちは。

和「原村和です。宜しくお願いします」

優希「和ちゃんは凄いんだじぇ!インターハイミドルの優勝者なんだじぇ!」

和「たまたまですよ、優希」

咲「へぇ~(インハイ王者の方が凄いけどね)」

京太郎「何はともあれ、面子も4人いるし早速やりますか!」

>>20
×インターハイミドル
○インターミドル

咲と京太郎が関わったのは中学校からだからこの世界線の京太郎は本物の先とは面識なし?

東1局 親:優希

和「宮永さんは普段は麻雀をされてるんですか?」

咲「いえ。いも…姉が帰省する時にたまーに打つくらいですね」

京太郎「お、何だ。あんだけ語っといてその程度か?」

咲「安心して、京ちゃんより間違いなく打てるから」

優希「お喋りはそこまでだじぇ!リーチ!」

咲「…」タン

和「…」タン

京太郎「はえーよ!5巡目じゃねーか!」タン

優希「ロン!リーチ一発七対子!9600!」

京太郎「ぐああ交通事故おおおおおお」

咲「そうでもない」

和「え?」

咲「片岡さんの中張牌連打からのリーチに一発で場0の北を打った京ちゃんが悪い」

京太郎「シビアすぎるー!」

>>22
ないです。アニメだと幼馴染なんでしたっけ?原作基準ということで

東1局1本場 親:優希

優希「流石私。リーチ!」

京太郎「また5巡目かい!」

和「優希は東場は強いんですよね。たまたまなんでしょうけど」

咲(…たまたま、ねぇ)

優希「ツモ!メンタンピンツモ赤!4100オール!」

京太郎「ぐあああつええええ飛ぶと焼き鳥で終わるうううう」

和「まだ始まったばかりですよ」

咲「…焼き鳥!?」

京太郎「結局優希の東場で稼いだ点を誰も上回れずかー」4着

和「席順で3着ですか…こういうこともあります」3着

咲「はらみ…」2着

優希「公式戦が東風なら私の独壇場だじぇ!」

京太郎「場変えはどうする?」

和「せっかくだしやりましょうか」

東1局 親:和

優希「東場は私の時代!リーチっ!」

和「通しません。11600です」

優希「だじぇええ」

京太郎「とにかくまずは上がりたい…」

咲「ハツもほしいね」

京太郎「特急券だからな…」

京太郎「またラス…」4着

優希「南入すると力が入らないじぇ…」3着

咲「かわがいいなぁ」2着

和「割と河に萬子が安い局が多かったですからね」

久「んーよく寝た、ってあら。知らない娘」

咲「おたふく…ムーミン…って生徒会長!?」

優希「部長が生徒会長って、さっき説明したじょ…」

咲(咲っていい名前だねしか覚えてない)

久「今どんな感じなの?」

和「現在オーラス、優希が微差でトップ目ですが須賀君以外は目ありです」

京太郎「はっきり言ってくれるぜ…」タン

久(あら、無警戒の須賀君から宮永咲…っていうのね。宮永さんのトップ確の上がり牌だわ」

咲「ねぎま…」

久(スルー!?)

和「…ツモ。2000・4000。これでマクリですね」

京太郎「ふええ…もうどうにでもしてください…」4着

優希「満貫親っ被りで3着だじぇー」3着

咲「てばさき…」2着

久(この娘…)

咲「…それじゃ、生徒会長が起きて面子が足りたみたいですし今日はこのへんで…」

京太郎「おーう、またなー!」

優希「咲ちゃんまた打とうなー!」

バタン

久「あんたたち…舐められてるわよ?」

和「はい?」

久「さっき彼女はトップ確定の上がり牌を見逃しているわ」

京太郎「どれどれ…ってマジだ」

優希「でもそれが事実だとして、見逃す理由はなんだじぇ?」

京太郎「たまたまじゃねーの?」

和「いえ…須賀君が優希に9600を打ち込んだ時の指摘や点棒と牌の扱いからして彼女は麻雀に打ち慣れている…そんなオカルトありえません」

優希「結構甘い牌を鳴かせてくれたけど…」

久「打ち込みはあったの?」

京太郎「咲が振り込んだのは…」

和「なかったような…」

久「…上がりは?」

優希「なかったと思う…」

久「じゃあ何?上がりも振り込みもない焼き鳥状態で2着*3ってこと?」

京太郎「焼き鳥…あっ!」

咲「はらみ」

咲「ハツ」

咲「かわ」

咲「おたふく」

咲「ねぎま」

咲「てばさき」

店員「6点の品がお二つずつで1200円になります」

咲「はーい」

京太郎「…ということだと思います、多分」

優希・和・久「…………」

久「つまり、たくさん食べる子である宮永さんは昼食を抜いてしまっていて」

優希「空腹が限界を越えている状況で犬の『焼き鳥』という言葉に反応」

和「それ以降はずっと焼き鳥のことだけを考えて麻雀していたと…」

四人「…………」

優希「そういえば初めの東1局以外誰とも咲ちゃんと会話してないじぇ…」

和「かわとハツって…そっちの…」ガクッ

京太郎「昼飯食べてない状態で俺が焼き鳥なんてことを言ったから…」

久「どんだけお腹すいてたのよ…焼き鳥のことしか考えてないって…」

久「ていうかそんな極限状態?で打ってやきと…ノーホーラで全部2着ってどういうことなの!」

和「SOASOASOASOASOASOASOASOASOA」

優希「和ちゃんが壊れたー!」

久「須賀君!明日も宮永さん連れて来なさい!ちゃんとお昼食べさせて!」

京太郎「はいいいいいい」

咲「ただいまー」

咲「遅くなってごめんね。おかずは焼き鳥5種類買ってきたよ」

咲「…お父さん?いないの?」

ガタッ

咲「なんだ、いるんならちゃんと返事してね?」

咲「まったく、電気もつけずに何してるんだか…」

宮永母「…久しぶりね、照」

咲「………お母さん!?」

ちょっとシャワー浴びてくるので席外します。すみません

咲「………どうしてここに。…いや、それよりも今、私のことを…」

宮永母「お父さんと咲なら食事に行かせたわ。私がわざわざ長野まで来たのは、家族団欒をするためじゃない。あなたに話があって、わざわざ来たのよ」

咲「咲のことも…。…やっぱりお母さん、私たちのことを…」

宮永母「初めから知ってたわよ。当たり前じゃない。」

咲「どうして!?」

咲「どうして知ってたなら、私たちの話を聞いてくれなかったの!?」

宮永母「………うるさい子ねぇ。やっぱり、咲が照で良かったわ」

咲「………っ…!」

宮永母「理由は簡単。あなたより、咲が、圧倒的に強かった。たったそれだけよ」

咲「…たった、それだけの理由で?」

咲「それだけの理由で!今!咲が!!」

咲「打ちたくもない強要された麻雀を打たされていると言うの!?」

宮永母「…あらあら、涙まで流しちゃって。」

咲「……答えて!」

宮永母「伊達に仲が良い姉妹じゃないわね。妹のことを思ってかしら?泣けるわね~」

咲「……っ、このっ…!」

宮永母「ええ、そうよ。この前の全国大会の打ち方の指示は、当然監督である私の指示」

宮永母「『対戦相手が今後二度と白糸台に歯向かう気力を持たないように、全校の点棒移動を±0にして大将戦を締め括る』」

宮永母「ただ単に戦って点棒を削るなんて、今の咲の実力からしたら当たり前すぎてつまらないでしょう?」

宮永母「だからそう指示した。そしてそれだけの力を、咲は持っている」

咲「…………」

宮永母「そんな怖い目で睨まないでよ。実の娘とは言え、今にも殴りかかってきそうで怖いわ」

咲「…………」

宮永母「私だって、あの火事の日までは、…照。あなたの方が咲よりもずっと強いと思っていたのよ?」

宮永母「だから、どちらが照なのか麻雀で確かめるつもりだった。それが確実だと思ってた」

宮永母「でも―――」

咲「……咲の方が実際は圧倒的に強かった、でしょう?」

宮永母「そういうことよ。知らなかったわ。咲があそこまで強いなんて」

咲「………咲の性格からして考えれば、私や元プロのお母さんの体裁を保つために手を抜くのは分かりきってる」

宮永母「そうね。…あれほど麻雀には本気で取り掛かれと言ったのにね」

宮永母「でも、これは私にとっては好都合だった」

宮永母「極限状態においての麻雀に手加減も何もない。ただ一つの意志で打牌するだけ。あの時の咲は、一刻も早くこの対局を終わらせたい。ただそれだけの意志で麻雀をしていた。そしてその極限状態の麻雀で、私は確信した」

宮永母「『この子はいずれ世界を奪える。私が、届き得なかった高みに』」

宮永母「だから、あの子を照にした。代わりに、あなたが咲になった。たったそれだけのことよ」

咲「…………」

宮永母「…まだ何か言いたそうね?けれど、私の説明はこれで御終い。本題に入らせてもらうわ」

咲「………これ以上の話があるというの?」

宮永母「ええ、重要よ。…照。今からでも良いわ。今すぐ白糸台に転校しなさい」

咲「………………は…!?」

宮永母「あれだけ大見得を張ったけどねぇ。やっぱり三年生のレギュラーが二人なのはキツいわ。戦力不足は否めない。そこで考えたのが照、あなたよ」

宮永母「あなたが今空いてる1枠に入れば、咲には及ばないまでも、良い戦力補強にはなるわ」

咲「…………」

宮永母「白糸台の宮永姉妹として全国大会で名を残せれば、私の名も上がるし、あなたたちもプロ球団に入ってからが色々と楽よ?」

宮永母「あなただって咲と毎日会えるし、こんな長野で燻っていても仕方ないでしょう?さ、ここに編入の手続きの紙もそこに用意してあるから、後はあなたが名前を書くだけ」

私は無言でテーブルに添えてあった、白糸台高校部の編入届けに手を伸ばす。

咲「…………」

宮永母「あら、決断が早くて助かるわ。もっと説得には時間がかかると…」



ビリビリビリビリッ


母の言葉を遮ったのは、勢いよく破られ宙に舞う、その編入届けだったモノだった。



咲「私はあなたの道具じゃない」

咲「良くわかった」

咲「お母さんが私や、咲のことをどう思っているのか」

咲「………お母さんは、私と咲を、自分の願いを叶えるための道具にしか考えていないんだね」

咲「そして、何故咲が何も言わないのか」


咲(…私が、考えている以上に)

咲(……咲は、照になってしまっていたんだ)

咲(………長女である自分が母の言うことを聞かないのはまずい)

咲(だって、その火の粉を自分で食い止めなければ)

咲(……その火の粉は妹である私に降りかかってしまう)

咲(………ずっと、ずっと。…私は助けられてきたんだ。咲に)


咲(…今度は、私が咲を助ける番)



咲「……お母さんが強要するようなそんな不自由な麻雀、絶対に間違っている」

咲「笑顔が世界一可愛い咲が、顔を曇らせながら苦痛な麻雀を打つなんて、見たくない」

咲「だから私はここであなたに宣戦布告する」

咲「私が、必ず――」

「白糸台を倒し、咲を救う」

宮永母「……ここまで馬鹿だったとは思わなかったわ」

宮永母「良かったわ。こんな馬鹿を白糸台のレギュラーに推薦することなんて出来ない」

咲「バカで結構。私がバカな妹だったから、咲が今まで苦しんできたことに気付かなかった」

咲「でもそんなバカな妹だからこそ、こんな無茶が出来る」

宮永母「…もう話をするのも疲れたわ。つくづく咲が照で良かったと思うわよ」

宮永母「それに万一白糸台を倒したとして、それが咲のための何になるの?」

宮永母「高校時代の不敗の成績に傷こそ付き、良い事なんて何も――」

咲「咲にとって何がいいことなのか。それを決めるのはあなたじゃない」

宮永母「……これ以上何を喋っていても無駄なようね」

宮永母「良いわ、見せてもらうじゃない。あなたが白糸台を倒すところとやらを」

宮永母「じゃあね。あ、咲の電話番号は変更させるわ。馬鹿なハエにたかられると迷惑だから」

母が玄関の扉を開けて出ていくのを確認すると、すぐさま携帯電話を取り出しから電話する。

もちろん、電話する相手は決まっている―

『……はい、もしもし。お姉ちゃん?』

『…ごめんね』

『………え?』

『…咲が苦しんでるのを、今の今まで気付かなった』

『……そっか、バレたか。…良いよ、お姉ちゃん。だって、私もお姉ちゃんなんだから…』

『私は白糸台には編入しない』

『…だろうね。だって』

『『バカな妹だから』』

『『……プッ、アハハッ』』

『…待ってるよ、お姉ちゃん』

『…うん……またね』

――――翌日、放課後

久「あら、宮永さん。丁度良かったわ。もう一度きちんと麻雀を見せて欲しいと思うんだけど」

咲「そのつもりで来た。面子は?」

和「宮永さんで丁度4人目です。こちらの方が2年生の染谷まこさん」

まこ「ふーん…あなたが噂の宮永さんか。よろしくな」

咲「やる前に一言だけ」

咲「私は今色んな感情が頭の中をグルグル回ってるせいで困っている」

和「…だから、満足な麻雀を打てないということですか?」

咲「違う。全く逆」



咲「この憂さ晴らしに巻き込んでしまって申し訳ない」ゴッ

記者「すみません、麻雀WEEKLYの記者のものですが、照さんにご質問宜しいですか?」

照「はい、構いませんよ」

記者「以前、全国大会の終了後のインタビューで、照さんがお姉さんの話をしたと思うのですが…」

菫(…もう嗅ぎ付けてきたか…全国ネットでの発言だし仕方ないが…)

菫「すみません、その話はこいつの勘違…」

照「良いよ、菫ちゃん」

菫「……そうか。なら私は何も言うまい」

記者「そうですか、では妹か、姉、どちらにしても血の繋がった姉妹がいらっしゃるということですね?」



照「私に妹はいません。…お姉ちゃんならいますけど」

久「……5半荘連続トップ…」

まこ「……こりゃぁ、規格外の1年生じゃのう…」

和「」

優希(遅れてきて良かったじぇ…)

京太郎(咲の奴、こんなに麻雀強かったのか…)

咲「…お願いがある」

咲「世界で一番大事な人の笑顔を救うために、私を清澄高校麻雀部に…入部させてほしい」



to be continued...

以上が、照が清澄高校麻雀部に入部するまでの触りです。読んで頂き、ありがとうございます。
長野大会決勝までを書き上がったら別スレで書こうかと思います。

基本的には、咲⇔照なのと白糸台の監督が宮永家の母であること以外は原作に準拠した内容になっております。
ただし、咲さんの雀力がとんでもないことになってしまってます。
これこそ咲が、照に被害を飛び火しないために被ってきたあれこれの一つです。

ちょっとしたらおまけの体験談を投下していきます。そちらもお暇でしたらどうぞ。

焼き鳥は塩皮

おまけパート ※実体験談
咲「私はパチンコはやらない。…でも咲がなるなら打たないわけにはいかないな」



咲「何でも咲がパチンコ化したらしい」

咲「パチンコは生涯、友人に唆された海物語2000円しかやったことがないが」

咲「新規作画や新曲やらあるなんて…打つしかないかな?かな?」

咲「麻雀部の皆は私がゴッ倒したせいで」

久「」

和「」

優希「」

まこ「」

咲「この死屍累々」

咲「帰りに見に行ってみよう」

咲「む、この無駄に馬鹿でかく騒音を撒き散らしてるのがパチンコ屋さんか」
(※個人の意見です)
咲「それじゃ入ってみるか」

店員「すみませんお客様…」

咲「はい?」

店員「18歳未満の高校生の方ですよね?ご退店願えますか?」

咲「高校生1年生だけどもうすぐ18歳になりますよ?」

店員「いや…そういうことでなくて…」



咲「追い出されてしまった」ガックリ

咲「どうやら制服がまずかったらしい」

咲「私服なら大丈夫なのかな?」

店員「イラッシャイマセー」

咲「余裕だった」

咲「いいのかそれで」

咲「しかし…このタバコ臭さは…」

咲「雀荘行ってるから慣れてるとかじゃなくてきつい」

咲「おっ、これかな?」

咲(新台導入コーナーとかで3台中2台が埋まっている)

咲「えーと…お金はここに入れれば良いのかな?」

大沼「お嬢ちゃん」

咲「はっ、はい(隣の人に話し掛けられた)」

大沼「座って左側の方にお金は入れるもの。それだとワシの台に球が出てしまうよ」

咲「あ、そうなんですか。ありがとうございます」

咲「おー。球が出てきた」

咲「これをハンドルで動かすと…」

咲「おおー。球が跳ね飛ばされていく」

咲『右打ちしないでね』

咲「おお!咲が!喋った!!」

咲「…で右打ちって何?」

大沼「盤面の右半分には指示がないと打っちゃいけないんじゃよ」

咲「なるほど」

咲「何となくわかってきた」

咲「上皿?にある球がなくなったら貸出ボタン。それで球が出てくる」

咲「後は当たるまでぼんやりハンドルを握りながら液晶を見てればいい」

咲「…しかし」

咲「この台全然音が聞こえないんだけど」

咲「右隣のお爺ちゃんと一向に目線を合わせようとしない左隣の台の音は聞こえるんだけど」

咲「ん、何か海底ボーナスとかいうのが当たった」

咲「なるほどこれで右打ちとかいうのを使っていいのか」

咲「全然音が聞こえてこないけど」

咲『下皿がいっぱいだよ』

咲「え?」

咲『下皿がいっぱいだよ』

咲「ちょ、咲。お姉ちゃん頭の処理が追いつかないのに同じセリフ言うのやめて」

大沼「そこのボタンを押してやると出てきて下皿に溜まってる球が出せるんじゃよ」

咲「ふんふむ」

咲「サクッと終わってしまった」

咲「隣のおじいちゃんの台が当たってGlossyが聞こえる」

咲「一向に音が聞こえない…」

咲「この球がなくなったら帰ろうかな」

咲「ん、生徒会長からのリーチとやらで当たった」

咲「隣もほぼ同時に当たった」

咲「つまり3台中3台共が当たっていることになる」

咲「しかし」

咲「私の台は全く音が出ない」

咲「悲しい」

咲『下皿がいっぱいだよ』

咲「え?」

咲『下皿がいっぱいだよ』

咲「下皿0で上皿が溢れんばかりに詰まってるんだけど…」

咲「え、これどうすれば良いの?」

咲「店員さーん」


店員「はいだし!」

咲「何か言われてるんですけど…」

店員「少々お待ちくださいだし!」

咲(良く分からないが何かをしていることだけはわかる)

店員「治りましたし!後、箱に球が一杯になったら呼んでくださいだし!新しいのと取り替えますし!」

咲「ありがとうございます(この人すごく良い人)」

咲「この台大当たり中に咲が無双しすぎてる」

咲「味方側がツモれば大当たり継続とかなんとか言ってるけど」

咲「味方のターンに『ここは私に任せて』といって乱入するのは勿論」

咲「相手のターンにも乱入して牌をツモっていく…」

咲「咲…ツモ順くらい守ろう…」

咲「あと何か私が今週の助っ人キャラとかで出てくるけど」

咲「咲と私のタッグとか無敵すぎる」

咲「そして全く、相変わらず歌が聞こえない」

咲「結局4連で終わっちゃった」

咲「でもたくさん出たから満足」

咲「お腹も空いたしお菓子に替えて帰ろう」

咲「音が全く聞こえなかったのだけが残念」
(※大当たり中は音量いじれないらしい)



「……行ったか、非常に危ないところだった」

界(なんでパチンコ屋で娘と遭遇しかねにゃならんのだ…)

咲(…バレてるよ、お父さん)



カン!

終わりです。雀荘フリーデビューした時の100倍緊張しました
こんなきちんと説明してくれるわけじゃなく、隣の人はジェスチャーでしか教えてくれませんでした

もうなんか当たっててもあたふたあたふた
咲さんに怒られてあたふた
隣は当たったと思ったら単発で怒ってらっしゃってあたふた

二度とやりたくない(断言)

読み直したらHTML化?依頼してみます。遅くまでお付き合い頂きありがとうございました。

スレタイで最初咲照姉妹が逆になって咲が姉になって照が妹で最強姉咲を照が倒す話かと思ったがある意味そうだった
入れ替わり、刺青、親さえも気づかない瓜二つの容姿…うん、完全に園崎姉妹やな…
ただ母親が魔法少女なのは無印のプレシアで再生されるな

母親に実は「照」という文字があり「照」とは代々宮永家では強者に与えられる名前だとか
だけど母親は「照」という文字がありながら最強プロにはなれなかった落ちこぼれの烙印を押された
それ故に「照」という名前に思い入れがあり最強のプロに育て上げるために「照」と長女につけた
だから照=強者って思ってるために照(本物)より咲が強かったから咲を照(偽物)に仕立てあげた的な?

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