穂乃果「センチメンタルな足取りで」 (7)


すれ違ってもわからないくらい、大人になった時に

今の楽しいこの時間が、『懐かしさ』に変わるのかな──なんて


そんなことを考えながら、みんなと歩いていた帰り道



いつも隣にいるから、それが当たり前すぎて

悩んだり笑ったりするこの日々が……

きっと、いつまでも続いていくような気がして


でも、そんなことを考えていたら

楽しいって思う今を、保存したい、残したいって

そんなような気持ちが、私の中に……初めて生まれたんだ

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うーん……


何度考えてもその、すれ違ってもわからないくらい大人になった頃が、全然想像できないや

だってやっぱり、ずっと一緒だって、思うから

そう、思うから……!



でも、見えないだけで本当は……少しずつ、みんな成長してるんだよね

そんなことはわかってる

種を埋めた場所からは、芽が出てきて、小さな葉っぱが、歌いだすように開いて……

そんなふうに、みんな──


ふと立ち止まって、街のほうを見てみたら

いつの間にか、街の色が季節に塗りかえられていっているような気がした

前に見た時よりも、少し遠くなっているような、そんな……

……ううん、気のせいだよね

振り返って、またみんなの方を向いてみる


良かった……いつものみんなだ


ふざけて走って転びそうになる凛ちゃんに


「危ないよー」


とか、


「急に走るから……」


って言う花陽ちゃんたちや……


「あっ、待って、どこか寄って帰らない?」


「また寄り道ですか……?」


「まぁまぁ、いいじゃない」


なんて会話をすることりちゃんたち


楽しそうに歩く、いつものみんな



木漏れ日の中……なんとなく


「みんなー!」


って、少し離れたところにいるみんなを呼んでみる

でもその声は、不意に吹いた強い風にかき消されて、みんなには届かなかったみたいで


なんだかその時、自分だけが、ここに取り残されたような……

今見ている景色が一瞬、切なさに染まったような……そんな気がした

そんな、センチメンタルな気分になりながら、ただボーっと立ち尽くしていると


「穂乃果ちゃーん!」


「早くしないと、おいていきますよー!」


って、私を呼ぶ声が聞こえて

フッと、我に返った


その瞬間、さっきまで散々考えてたことは、全部そこらへんに投げ捨てて

私は急いで、みんなのところへ駆けていく


「あっ、ご、ごめん! 待ってぇ~!」


なんて、言いながら──









終わり

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