アルミン「起きろエレン! さすがの僕もキレるぞ!!」(32)

――

グスタフ「何とか、大部分の巨人を町の隅に集めることに成功しましたが」

グスタフ「極力戦闘を避けたにも関わらず、約二割の兵を失いました」

ピクシス「失ったのではないぞ。兵は勝手に死んだわけではない」

ピクシス「ワシの命により、死なせたのじゃ」

グスタフ「い、いえ、あの……」

 

ピクシス「今こそ人類存亡の瀬戸際」

ピクシス「人類が生き長らえるためなら――」

ピクシス「ワシは殺戮者と呼ばれることも厭わん」

 

グスタフ「あの……二割の兵を失ったというのは、戦死ではなく逃亡……」

アンカ「しっ。いま司令に夕陽が当たって画になってるわ、この際黙っときましょう」

――

今回はアルミンが登場しない場面も多めなので
ちょっぴりスレタイ詐欺になりますー(^q^)

 
 ドゴオオオオォォンン!!
 
ミカサ「うっ……」 ピッ
 
 
 
 ドシャッ
 
 ガラガラガラガラ…
 
 
 
イアン「ハッ……ハッ……」ドタドタドタ
 
イアン「ハッ! アッカーマン!」
 
エレン『ウオオオオォォォッ!!』
 
ミカサ「くっ」
 
 ポシューン   キュルキュルキュル    ザッ
 
イアン「おい! アッカーマン、よせ! そいつから離れろ!」

リコ「そういうアンタも近付きすぎだ!」

ミタビ「リコ、お前も出すぎだ! みんなもっと俺ぐらい離れろ!」チマッ

リコ「アンタは離れすぎだ!」


ミカサ「エレン、私が分からないの!?」

ミカサ「私はミカサ! あなたの……家族!」

ミカサ「あなたはあの岩で、穴を塞がなくてはならない!」

エレン『……』ズズズ…

 
リコ「……作戦失敗だ」 カチャ カチャ

リコ「分かってたよ。秘密兵器なんて存在しないってことは」

 ッパヒュウウウゥゥゥゥゥゥム…
 

ミカサ「エレン、あなたは人間! あなたは――」

アッカーマン「よけろ、アッカーマン!!」

ミカサ「!」バッ

 ヒュッ   ドゴオォォォォンンンンン!!

エレン『グオオオォォォッ!!』 ズズーン

ミタビ「ぐあああああっ!!」

イアン「ミタビイイイィィィってお前なんで巻き込まれた」


エレン『……』

ズズ…  ズーンン……

 

ミタビ「なんだあいつ。頭の悪い普通の巨人じゃないか」

ミカサ「エレン……!」

  モブ「イアン班長ー!」

イアン「!」

  モブ「前方から二体接近! 10m級と6m級です!」

  モブ「後方からも一体、12m級がこちらに向かってきます!」

ミタビ「イアン、撤退するぞっ。あのガキ、トビラ塞ぐどころじゃねえよ!」

リコ「ああ。仕方ないが、ここに置いていこう」

ミカサ「くっ」 キッ

イアン「……」

ミタビ「イアン!」

イアン「まだ慌てるようなあわわわわわわ」


――

モブ中年「……精鋭班からの、赤い煙弾を確認」

モブ中年「封鎖作戦に、深刻な問題が発生したようです」

ピクシス「……」

モブa「……ううっ……無駄死にだ……仲間が……」

モブa「無駄じゃないですか……ううぅ……」

モブb「なんか途中から次々にバックレてたんだけどお前の仲間」

モブa「えマジすか」

 

モブ「おい、あれ見てみろ!」

モブ「なんだ、どうした?」

マルコ「失敗……したのか……?」

アルミン「……どうして。なぜだエレン!」 カラン

アルミン「ちょっとカツ入れてくる!!」ダッ ダダダダダダ

コニー「おいアルミンどこに行くんだ! ってうわ速い気持ち悪いくらい速い」

あいー(^q^)


――

モブ中年「ピクシス司令、早急に扉の防衛形態に戻すべきです。よろしいですか」

ピクシス「ならん」

アンカ「……精鋭班に撤退命令を」

ピクシス「いらん。引き続き、町の隅に巨人を引きつけよ」

ピクシス「精鋭班に関しては、現場に権限を委任しておる」

ピクシス「ただ腕が立つだけではない、人類の命運を託した精鋭の中の精鋭じゃ」

ピクシス「そう簡単に負けを認めることは許されんぞ」

ピクシス「死んでいった兵を無駄死にさせんために、誠意ある限り、足掻き通すことじゃ」

グスタフ「……」zzz

――

ミタビ「おい、ナニ迷ってんだ! 指揮してくれよ!」

ミタビ「イアン、お前のせいじゃない。ハナっから根拠の希薄な作戦だった!」

ミタビ「皆わかってる! 試す価値は確かにあったし、もう十分試し終えた!」

イアン「待てミタビ、まだ慌てるような時間じゃない」ブン ブン


ミタビ「いいか、俺たちの班は壁を登るぞ!」

ミカサ「」プッツン

イアン「待て!」

イアン「待て。落ち着けアッカーマン」

ミカサ「」ポイッ

サクッ

ミタビ「痛てええ”え”ええぇぇぇぇー!! ちょっちょっ何か刺さって」

イアン「リコ班、後方の12m級をやれ」

イアン「ミタビ班と俺の班で前の二体をやる」

リコ「なんだって!?」

ミタビ「おい今これ投げたの誰だよ!!」ピュー

イアン「指揮権を託されたのは俺だ! 黙って命令に従え!」

イアン「イェーガーを無防備な状態のまま置いてはいけない!」

リコ「くっ」

イアン「作戦を変える。イェーガーを回収するまで、彼を巨人から守る!」


イアン「彼は人類にとって貴重な可能性だ。簡単に放棄できるものではない」

イアン「俺たちと違って、彼の代役は存在しないからな」

リコ「あの出来損ないの人間兵器のために、今回だけで数百人は死んだだろうに」

リコ「あいつを回収して、また似たようなことを繰り返すっての!?」

イアン「そうだ」

イアン「何人死のうと、何度だって挑戦すべきだッ!」

リコ「イアン、本気なの!?」

イアン「ではどうやって人類は巨人に勝つというのだ!」

イアン「リコ、教えてくれ、他にどうやったらこの状況を打開できるのか!」

イアン「人間性を保ったまま! 人を死なせずに!」

イアン「巨人の圧倒的な力に打ち勝つには、どうすればいいのか!?」

リコ「――」ワーワー

イアン「――」ギャーギャー

ミカサ(私もエレンとこんな風に夫婦喧嘩したい)

ミタビ(さっき後ろから刃物投げたのこいつっぽいけど理由が分からん)ドクドク


イアン「――さぁ、どうする。これが俺たちにできる戦いだ」

イアン「俺たちに許された足掻きだ!」

ミカサ(話聞いてなかった)

ミタビ(やばい話聞いてなかった)

リコ「……そんなの、納得できない」

イアン「リコ!」

リコ「作戦には従うよ。あなたの言ってることは、正しいと思う」

リコ「必死に足掻いて、人間様の恐ろしさを思い知らせてやる」

リコ「犬死になんて納得できないからね……後ろの12m級は、私の班に任せて」

ミタビ(あれっ、いつの間にそういう流れに。なら俺も)

ミタビ「行くぞ! 俺たちは、前方の二体だ!」

イアン「ああ」

 

ミカサ「ありがとうございます、イアン班長」

イアン「正直に言おう。お前が怖かった。ただ怖かった。誰か死ぬかと思った」

――

ダダダダダダダダ…

アルミン(エレン、ミカサ、一体何が!!)

  コニー「は、速すぎる……アルミンには立体機動なんて要らんかったんや……」

――

ドックン…  ドックン…

エレン(……)

エレン(……あれ? オレは……)

エレン(今……何をしているんだ……座ってるのか……?)

エレン(何も見えないな……今日は何日だ……?)

 パアァァ――

エレン(ここは……?)

  ジャン『ノックぐらいしろよババア!!』

エレン(なんだ……ジャンの家か……)

エレン「いやなんでよ!?」バッ


エレン「!」

 

  カルラ『――』

  ミカサ『――』

  グリシャ『……』

 

エレン(なんだ……ウチか……)

エレン「……ふあああ……あ……」

エレン「寝よ……」

――

キュイイーン

スタッ

アルミン「エレン……!!」

アルミン「何をッ! しているんだッッ!」

アルミン「「エレン!!」」ブチッ


アルミン「そこのミカサ! 作戦はどうなった!?」

アルミン「ってあれ? ミカサー!?」
 

ミカサ「もう一回お願いします」

イアン「……恋人を守るためだからな」

ミカサ「家族です」

ミカサ(恋人。私とエレンが恋人)

イアン「もう行っていいか。ミタビが死にかけてる」

ミカサ「イアン班長。もう一回お願いします」

イアン「……」

イアン「恋人を守るためだからな」

ミカサ「家族です」

ミカサ(恋人を守る。私が守るのは、恋人であるエレン)
 

アルミン「ダメだ、まるで聞こえてない!」

アルミン「くそっ、やはりここは僕しかいないようだ!!」


エレン『……』

アルミン「上に乗ったはいいけど、エレンは一体どうなっているんだ!」

アルミン「作戦ほっぽらかして許せないぞ! 叩き起こしてやる!」

アルミン「起きろエレン! 起きろおおおぉぉっ!!」デュクシ デュクシ

アルミン「だめだビクともしない!」

アルミン「クッソーこうなったらこいつで突き刺してやる!」シャキーン

アルミン「ええっと、後頭部から、うなじにかけてぇー」

アルミン「縦10センチ! 横1メートル! ぐらい!!」

アルミン「とりあえずこの辺……この辺? それともこの辺か!?」

アルミン「あ、そうだ、真ん中、エレンは真ん中から出てきた!!」

アルミン「ってことは、そこをよければ死にはしないってことじゃないか!」

アルミン「くらえええッッ!!」ドスッ


エレン『ウグッ!! グアア!!』ガクガク  ビシシ


アルミン「ん!? 間違ったかな……!?」


アルミン「くらえええッ!」 ブスッ

アルミン「くらえええッ!!」 ブスッ

アルミン「くらえええッッ!!」 ブスッ


エレン『ウグアアアアアアァァァァ――!!』

ドゴゴゴゴォォン  ドゴゴッ
  ドゴッ  ドゴッ  ドゴオォォォン


アルミン「エレン、聞こえるか! しっかりしろおおおッ!!」

エレン「……」

アルミン「ここから出ないと、僕らみんな死ぬぞ!!」

アルミン「巨人の身体になんて負けるな!」

アルミン「使いこなせないんだったら僕と代われ!!」

アルミン「さぁ降りるんだ! パイロット交代だ! ほら!!」

アルミン「エレン、聞こえてるのか、エレン、交代だ! エレン!!」

エレン(……何か聞こえるけど……意味がさっぱり分からん……)


アルミン「とにかく早く、この肉の塊から出てくるんだ! おらっエレン!!」

エレン「……」

エレン(ここから出るだって? なんで……)

エレン(オレ今……眠いんだ……)

アルミン「エレン! 出て来い! 早く!!」 ドンッ ドンッ

アルミン「お母さんのカタキはどうした!!」ドンッ ドンッ ドンッ

アルミン「巨人を駆逐してやるんだろ!?」 ドンッドンッドンッドンッ

アルミン「お母さんを殺した奴が、憎いんだろ!?」ドンドンドンドンドン

エレン「……何言ってるんだ? アルミン」

エレン「母さんなら……ここにいるぞ……」

  カルラ『』ピース

 

アルミン「起きろおおおおおおおぉぉぉエレン!!」ドドドドドドドド

アルミン「起きて出てきて僕と代わって巨人を駆逐なんだよォォッッ!!」

エレン「だから……何言ってるか分かんねぇよアルミン……まじで……」


アルミン「――!!」 ドドドドドドドドドドドドドドドドンッ

エレン「おい……」

エレン「そんな一秒間に16発も窓殴ったら……」

ピシッ

エレン「!?」

アルミン「――!!」 ドドドドドドドドドドドドドd


ガシャアアアアァァァァンン パリィン  パリンッ


エレン「うわあああっ!?」

アルミン「うおっ!!」

エレン「は、入ってきた!?」

アルミン「何だここは!?」

アルミン「あ、おじさんおばさんお久しぶりです!」

アルミン「ってミカサはそこで何やってるんだ! 持ち場はどうした!?」

エレン「ナニコレどうなってんの!?」


アルミン「いやまずはエレン、君だ!」

エレン「えっ?」

 ヒュッ  パシーン

エレン「ぶふぇっ」ブー

アルミン「任務を放棄しておいていい加減にしろよ!」

アルミン「さすがの僕も危うくぶちぎれるところだったよ!!」

エレン「ま、待て……アルミン」

エレン「これは……どういう状況だ?」

アルミン「目を覚ませーっ!」

パシーン

エレン「ぶっ」

アルミン「とにかく今は外に出るのが先なんだよ! ほら!」

エレン「待て……お前のビンタ容赦ないから……これ鼻血出てるから……」ボタボタ

アルミン「毛布とかも要らないぞ! ほらァ!!」グイッ

エレン「ぐげっ」 グルグルグルグル   ドシャッ


アルミン「ほら、さっさと外に出るんだ! 出るんだよ!!」

エレン「ど、どうして外なんかに……」

エレン「……」

エレン「調査兵団なんかに」

アルミン「それ! それだろ! 外の世界に行くんだ!!」

アルミン「いつか外の世界に行って! なんかその……アレ!」

アルミン「炎のアレとか! 氷のアレとか! 砂のアレとかを見に行くんだよ!」

エレン「外の……世kぐえええっ」グイッ

アルミン「ほら出るぞ! こっから出るんだ!」

エレン「ま、待て、せめてドアから出て痛たたたたた破片散らばってるから!」

アルミン「言ってる場合かーっ!!」グイイッ

エレン「や、やめろ! 服が破けちゃうっていうかもうああっ!」ビリビリビリッ

アルミン「これでやっと外に出れる! まったく世話が焼けたもんだ!」

アルミン「あども、おじゃましましたー!!」

エレン「……オレってどうしてこの世に生まれてきたんだっけ……」


ようやく目を覚ましたエレン
肉塊から引きずり下ろされたエレン


無理矢理乗り込もうとするアルミン
やはり巨人を動かせないアルミン  激昂するアルミン


こうして生まれた名コンビ
巨人のエレン  強人のアルミン


彼らの快進撃のおかげで 
人類は 悲願のトロスト区奪還に成功する


しかしそれが成された時 すでに二人の姿はなかった
軍人としての役目を 果たした今
彼らの目指す先は 城壁の彼方 地平の果て


進めアルミン! 無二の親友エレンを連れて
ゆけアルミン! お前の器は壁の中では納まりきれない
あの広大な未踏の地へ! さあ行けアルミン! 行けーっ!!


終わり

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