【ギャルゲー】艦隊これくしょん 反撃の鎮守府 LOST COLORS【安価】 (177)

注意点
割合としては艦これ9.9ロスカラ0.1
というよりは主人公の彼もいろいろと設定をいじっているのでもはや別物
形式がロスカラに似てるってだけのもの

ルール
ステータスは各キャラの主人公に対する好感度のみ。これはマスクステータス
。安価の頻度は少なめにできればいいなぁ……
六人の艦娘とイチャイチャしようって話。正直見切り発車だから問題とかいろいろあると思うけどおつきあいください


それでは……

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1401253472

「ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ」

僕は走っていた

逃げるために

なにから逃げるために?

「ハァッ、ハァッ、ハァッ、ク……ハァッハァッ……」

わけもわからずがむしゃらに足を回す

ここがどこなのかも、わからない



水しぶきが舞う

雷鳴がこだまする

風が吹き付ける



「こ、ここ、は」

「ここなら、身を隠せる場所は……」

ダメだ、意識が……

ーーしだー

ーーーーーてば

なにかががくる、何か、恐ろしいものが

早く、逃げなくちゃ……



逃げなければ……



??「だから言っているじゃないか、いま我々がここを抑えなければならないという時に、まだここに提督は着任しないのか!」

??「言っても無駄だってー。お偉いさんがたは私たちのいうことなんて耳かしてくんないよー?」

??「忌々しいっ」

ガコン……

??「あれ?今そこで音したよね」

??「ん?あぁ、ドラム缶の影か。なんだ、魚でも打ち上げられたか」

??「なんだろー」



??「へ?人間?」

??「なに?」

なんの夢かもわからない夢を見ている

これはなんの夢だ

ただただシロとクロが入り乱れるモザイクのような世界、代わり映えのない景色

「テートク……」

僕を呼んだのは誰だ?

そこにいるのか?

そして赤い光が輝いて……



「!!」



「ここはどこだ……?」

そこは、見覚えのまるでない場所だった
白塗りの壁に、いくつかの装飾品、豪奢な机……

??「あー!起きたのです!」

響く声。見てみると、小さな女の子がいた

茶色い髪に……セーラー服か?を着た可愛らしい子だ

??「どこか痛むところはないのですかー?」

「え、あ、あぁ……うん」

??「ならいいのです!少し待ってて欲しいのです!皆呼んでくるよー!」

パタパタと元気良く部屋から出て行ってしまった。状況はなにひとつわからないままだ

??「体の具合はいいの?」

「ああ、問題はない」

腕や足に多少の訛った感覚はあるけれど、さして問題でもない

??「良かったのです!じゃあ、お体の調子も良さそうだし、みんな自己紹介するのです!」

それはありがたい、なんと呼べば良いかわからないのは不便だった。

電「私は駆逐艦の電なのです」

イムヤ「潜水艦の伊168。イムヤでいいよー」

阿武隈「重巡の阿武隈」

鈴谷「同じく重巡の鈴谷だよ、ヨッロシクー」

榛名「金剛型三番艦、榛名です」

武蔵「……大和型、武蔵だ」

それぞれ格好が格好なのでスルスルと頭の中で姿と名前が一致した。非常にわかりやすい

榛名「貴方は、私たちの鎮守府のドッグで倒れてたんですよ」

「自分がか?」

鈴谷「そうそう、変なボロボロの服きてね。今時船で沖にでたらそりゃーやられちゃうよ」

船で……沖に?自分が?

イムヤ「ところで、そっちの名前も聞いていい?このままだと呼び方がわからないし」

電「漂流者ーって、よんじゃうのですよー?」

「自分、自分は……」



「……誰、だ?」

武蔵「ん?」

「自分は、誰なんだ……?」

重巡?

>>15
やべぇまちがえた阿武隈さんは軽巡だった


「名前、名前は……ダメだ、わからない」

阿武隈「え?まさか記憶喪失ってやつ?」

鈴谷「あー、こないだ映画で見たよ。頭をゴツってやっちゃって思い出が飛ぶアレでしょ」

電「はわわわ!た、たいへんなのです!お医者さんー!」

イムヤ「へー、ほーん、はーん、ふーん」

なにやらみんなそんな僕に様々な形で興味津々のようだ。ジロジロ見てくる168や、慌てて駆け回る電
ただ二人を除いて

榛名「……あの、失礼だとは思いますが……それが、嘘ではないと、証明はできますか?」

「え?」

武蔵「こちらも、軍という体裁をとっている以上、怪しい人物を放っておくわけにもいかないのでな」

なるほど、確かに最もだ。彼女たちはいかに愛らしい姿をしていても、軍人なのだ。こんな見るからに怪しい人物を野放しになどせず、普通は憲兵に突き出すなりなんなりするだろう

武蔵「まぁ、この鎮守府に潜入だなんだのは、ほとんど意味はないがな……」

それは、どういうことだろう?

武蔵「隠すことでもないから言ってしまうがな、この鎮守府は機能していないんだ」

鈴谷「そーそー、鈴谷たち、一回たりとも進軍してないもんねー」

どういうことだろう。各国の外交手段を完全に断ち切ってしまった深海棲艦を少しでも多く、早く倒すため、艦娘はそこらじゅうで引っ張りだこのはず。その艦娘が属する鎮守府が、機能していないとは……

電「……提督さんが、ここに着任する直前に、亡くなられてしまったのです……」

「!」

なるほど、先ほどの書類の通りだったらしい

鈴谷「提督がいなくちゃ、なんもできないもんねー、鈴谷達さ」

イムヤ「そうそう。せっかく最前線の特殊作戦部隊として私たちが集められたのに、もう3ヶ月も放置されてるし」

武蔵「つまり、外見だけのハリボテで、資材も新型武装もないこの鎮守府に潜入してもまるっきり無駄骨ということだよ」

武蔵は大きくため息をついた。辛いのだろう、目の前に海があり、その先に敵はいるのに、手を出せない現状が

榛名「……必要最低限の物資は届きますし、ここには少人数しかいないので生活はできますけど、それはまさに生きているだけの姿、艦娘としての誇りが、傷つきます……」

「なるほどな」

武蔵「お前が怪しいというのも、正直どうだっていいんだ。行ったとおり、ここにはなにも見ると頃など、ないのだからな……」

「……だが、不穏分子をここにおいておくわけにもいかないだろう、さっきの口調だと、物資もギリギリ見たいじゃないか」

武蔵「ん?あぁ」

「では、自分はなるべく早くここをでて行くことにする。君たちには恩があるが、それを返す力は自分にはない。ならばなるべく迷惑をかけたくはない」

阿武隈「え……?」

鈴谷「え?い、いや別に、そこまでいってないっしょー」

榛名「そ、そうです。出て行くなんて、当てはないのでしょう?」

「だが、ここに自分がいてもなにもできることはないと思う」

イムヤ「でも、野たれ死にしに行くようなのを黙って送り出すのはねー……」

電「……あ、あの!」

そのとき、顔をしかめていた電が大きな声を出した。みんなの視線が彼女に集まったが、何か言いたいことがあるのだろうか

電「え、えと……こ、この鎮守府に、いて欲しいのです!」

「え……?」

武蔵「ふむ……」

武蔵「それはなぜだ?電」

武蔵が姿勢を屈め電と目線の高さを合わせる

電「こ、この鎮守府は、皆皆、退屈そうで、辛そうな毎日をおくってるんです。でも、新しい人がここにいてくれれば、きっと新しい楽しいことが起きてくれるのです!それに……この人は、きおくそうしつのせいで一人ぼっちなのです、そんなのはさみしいのです……」

優しい、子なのだろう。それも突き抜けて……
素姓もわからない自分のことも気にかけているし、他の艦娘の皆が辛そうな日々を過ごすのを見るのが嫌だったのだろう

武蔵「……フッ、出そうだが、異論あるやつはいるか?」

阿武隈「ないよー」

鈴谷「意義なしー!」

イムヤ「うん、確かにいい刺激かな」

榛名「皆さんがそれで構わないのなら、私も」

武蔵「うむ、では……お前はどうだ?ここをでていくか、それともここに残るのか」

電「……」

まいったな……自分はどうやらこの子がいましているような、不安そうな目にとても弱いらしい

「ありがとう……じゃあ、お世話になる」

電「! はいなのです!」

パアッと輝くような笑みを彼女が浮かべた

鈴谷「それじゃーまず、仮の名前を決めないといけないよねー」

阿武隈「だね、あんたとかお前とかあなたとかじゃ、よくわからないもんね」

イムヤ「じゃあクヴォレーなんてどぉー?」

と、いきなりななしの自分に対する命名合戦が始まってしまった

武蔵「名前?それこそ仮なんだから適当でいいだろう……太郎、どうだ?」

鈴谷「いまどきないってー。いまどき風ならスザク君とか?」

阿武隈「DQNネームじゃん。普通の名前にしようよ、ミサコとか」

榛名「そ、それは女性の方の名前では……」

電「んーと……あ!」

その剣幕を横で眺めていると、突然電がパッとひらめいたような表情をした

電「ライ!ライってどうなのですか?」

武蔵「ライ?」

電「雷お姉ちゃんの名前を、別の読みにしたのです!」

鈴谷「ライ、ライ……うん、なんだろう、すごくぴったりな感じだね」

阿武隈「確かに……うん、ライ。いいね」

イムヤ「むー……ま、たしかになんかすごくいいね」

榛名「決まりですね」

武蔵「あぁ。電が名付け親だな……というわけで、ライ。不自由も多少あるが、私たちの鎮守府は、お前を歓迎するぞ」



ライ「……あぁ、ありがとう」

今更だけどロスカラ知ってる人いるか不安になるネー



そして自分はここにとどまることとなった。部屋は提督室を使えと言われたが……その鎮守府の長となるものの部屋にこんな怪しい自分を住まわせて構わないのだろうか……

ライ「……それにしても」

この辺りの海域の地図と、コマがおかれた机がおかれている
この鎮守府の位置には黄色のコマ、他の各鎮守府の位置には緑のコマ、そして……

ライ「多くの海を占めている赤のコマは……」

考えるまでもない、この周辺海域のほとんどは、深海棲艦によって侵略されているのだろう。だとすれば戦況は絶望的と言ってもいい

このまま人類は再び海に戻ることができなくなってしまうのだろうか



ライ「考えていても仕方が無いか」

全く持って無関係、という問題ではないが。自分にはどうすることもできない。嫌な考えを頭から払拭し、体を馴らすためにこの鎮守府を歩き回って見ることにした

行き先を選択>>24
提督室-電
食堂-鈴谷 阿武隈
港-榛名 168
工廠-武蔵

工廠

ーーー工廠

道がわからなくて、防衛の関係上地図が貼ってあるわけもなく、フラフラと歩いていると、一部が海につながっている工場……工廠にたどり着いた

ライ「広いな……」

もっと色々な鉄材や道具が散乱しているイメージがあるのだが、この工廠には薄く積もった誇り以外はほとんど目に付くものがない

まるで、新陳代謝を行わない、死んでしまった動物のようだ

武蔵「ん?ここでなにをしてるんだ」

ライ「!!」

突然の声に驚き振り向くと、武蔵がいた。入り口からの死角にいたのか、さっぱり気がつけなかった

武蔵「そんなに驚かなくてもいいだろう。私がここにいてはおかしいか?」

ライ「いや、そんなことはないが……」

武蔵「……不思議だろう。まるで荒波に何もかもをさらわれてしまったかのような工廠だ。ここに来た当初からずっとかわらない」

武蔵は遠い目をして工廠の奥に続く海へ視線を向けた。外はもう暗く、雲も張ってすっかり夜になっている

ロスカラとか懐かしい
R2は来なかったね…
まだ待ってる人いるのかな

武蔵「もう、一年も前になってしまうがな?ここにくる予定だった提督が、逝ってしまったのは……」

どさっと腰をおろして武蔵は、遠い目をして語り出した……

武蔵「正確な日付はわからないが、途中で陸地近くにいた深海棲艦の攻撃を受けて、死んでしまったそうだ。仏は発見されなかったらしいが……そりゃそうだ。艦砲射撃を直撃させられればな……人間など、チリになってしまう」

目を伏せてかたる武蔵。何時の間にやら取り出したのか、風変わりなショットグラスに日本酒をついでいる

武蔵「お前も飲むか?猪口は一つしかないが」

ライ「自分の年齢が二十歳を超えているのかわからないが……」

武蔵「細かいこたは気にしなくていい。飲むか?飲まないのか?」

これは暗に酒をやるから話に付き合えと言われているのだろう。どうするか……

△『じゃあ、いただきます』
×『不安なので、やめときます』

>>31

△『じゃあ、いただきます』

>>28 俺様はまだ諦めちゃいないぞ


ライ「じゃあ、いただきます」

武蔵「そうこなくてはな。他の艦娘は榛名以外飲めないし、榛名は下戸だし……付き合ってくれるなら嬉しいよ」

隣に腰をおろし、グラスを受け取る。大きな一升瓶から、月明かりのような透明さの雫が注がれる

武蔵「んっと」

ライ「どうも」

それを一瞬の躊躇の後、一気に喉に流しこんだ!



ライ「美味しい……」

武蔵「なんたって秘蔵の酒だからな、感謝してくれよ」

グラスを返すと、それにすぐに酒をついで武蔵はどんどんそれを流し込んでゆく……ウワバミなのだろうか……

武蔵「先も言ったが、ここは特殊な鎮守府として建設された。我々六人の艦娘専用の鎮守府だ」

ライ「いったい、なぜそんな鎮守府を?」

武蔵はまたグラスの中身をクイッと飲み干した

武蔵「この海域周辺には……今はもう密集しすぎていてよくわからんが、かつては深海棲艦の発生地点と考えられる場所があったんだ」

ライ「え?」

それが本当ならばすごいことだ。そこを叩けば延々と湧き続ける深海棲艦の増殖を食い止めることができる

武蔵「そこで本営はココを作ることを決定した。そして、最初から私や榛名達のような強力な艦娘を配備し、そこを叩く作戦を計画した。そしてこの鎮守府が完成したのが、一年と少し前、私たちが配備されたのもそのころだ」

ライ「しかし、くる予定だった提督が死んでしまったと……」

武蔵「そうだ。どこもかしこも人材不足で、ここに新たに提督を派遣する余裕などない。ここはまさにハリボテだ……」

何時の間にやら瓶の中身をはんぶんにへらしてしまったようだ。少し頭がクラクラする

武蔵「む?少し強かったか?すまん」

ライ「いや、気にしなくていい……すこし、ぼーっとするが」

武蔵「あまり無理はするな、お前は病み上がりなんだからな。部屋に戻って休め」

ライ「あぁ、そう、させてもらう……」

ふらつく足で立ち上がり、自分は工廠を後にした

武蔵「久々に誰かと飲めて楽しかったぞー」

後ろからかけられた声で酒を飲んだことを後悔はせずにすんだ




行き先を選択>>36
提督室 鈴谷 168
食堂電
港 榛名
中庭 阿武隈

食堂

なにやらいい香りがして、それにつられてフラフラと歩くと、少し広い部屋にでた。テーブルと椅子がたくさんある。明かりはついていないが、ここは食堂らしい

一箇所だけ明るいところからその香りがする、近づいて見ると……

電「ふーん、ふんふんふーん……」

ライ「電……?」

電「はわっ、ライさんなのです」

フライパンの上でなにやら焼いている電の姿があった

ライ「それ、何を作ってるんだ?」

電「えへへ、お腹空いちゃったから、ホットケーキ作ってるのです」

少々不恰好だが、良い焦げ目のついたホットケーキだ。よく見ると隣の皿には既に二枚焼きあがっている

電「あとは、蜂蜜とバターで……完成なのです!」

そして出来上がったホットケーキは浸るほどにかかった蜂蜜とバターの香りが食欲を誘う。見ているだけでお腹が空きそうだ

電「ふふーん、あげないのですよー。これは電が本で作り方覚えて、始めて上手にできたやつなのです」

ライ「そうなのか……それは確かにもらうわけにはいかない」

電「あ……で、でも一口だけならいいのです。はい、あーん」

ライ「え、えと……」

△『あ、あーん』
×『無理をしなくてもいい』

>>41

『無理をしなくてもいい』

ライ「無理をしなくてもいい」

電「無、無理なんてそんな」

ライ「電が始めて作ったホットケーキなんだろう。自分で食べるべきだ。それで美味しかったら、また今度自分に作ってくれないか?」

電「……わかったのです。明日特大のホットケーキをみんなに作ってあげるのです!」

そういうと勢いよくホットケーキを食べ始めた。その食べっぷりに思わず頬が緩む

ライ「……しかし、補給艦がいないと自分で作らなくてはならないのか、不便だな……」

電「自分で作るのも楽しいのです!……でも、やっぱり補給艦さんはいて欲しいのです……」

提督のいない鎮守府では、補給艦の申請を送ることもできない。ゆえに彼女たちはすべてを自分でやらなければならないのだろう、艦として生きる意味もないままに……

少し、心が痛んだ

行き先>>44
提督室 榛名 168
港 鈴谷 阿武隈

このライはギアスは使えないのかな
あのゲーム好きだったし全力で支援

>>45
使えない。ギアスないからね、当たり前ですね、悲しい。でも代わりのものは考えてある





歩いていると外にでた。外観を眺めて見ると、案外小さな鎮守府なのだとおもわされる。海から見つかりにくいため?いや、おそらくは節約のためなのだろうが……

鈴谷「あれー?ライちゃんじゃん。おっすー」

阿武隈「外まで来てどうしたのー?」

すると、鈴谷と阿武隈の二人が声をかけて来た。二人ともビニールのふくろを持っている。

ライ「こんな遅くに外にでてたのか?」

鈴谷「うん。買いもの行ってたの。チョコ食べるー?」

そういって、鈴谷は甘そうなお菓子を取り出した。歯を磨かないと一日で虫歯だらけになってしまいそうだ

阿武隈「私はこっち」

阿武隈は女性向けの雑誌を取り出した。なるほど、彼女たちは好きそうなものだ

ライ「やはり、こう言った娯楽品が必要なのか」

鈴谷「うん、やっぱ暇だもんここ。あーぁ、他の鎮守府に移れたらなぁ……」

阿武隈「仕方がないよね、ここはいろいろ事情がある立地だし……」

ライ「立地……深海棲艦の発生地点という、やつか」

鈴谷「あぁ、聞いたんだ。うん、それ。その位置がわかったら、その時は私たちも出撃が許可されるんだ」

阿武隈「多分沈んじゃうけどね……」

ライ「なに?」

阿武隈「だって、敵の本拠地みたいなものだよ?そこに突撃したら、せいぜい数時間の囮にしかなれないよ……」

唯一残された、出撃の可能性……それすら、死への行進しか残されていない……それは、どれほどの絶望なのか

鈴谷「支給されるおかねはすくないけどさ、少しでも遊んでないと、やってられないよ……」

阿武隈「うん……正直言って、早く楽になりたいな」

……

そういって、二人は歩いて行ってしまった

他の鎮守府に逃れることもできず、提督がいないために何もかもをすることができない

自分に、何かできることはないのだろうか……

ライ「ふぅ……」

いろいろ歩き回って疲れてしまった。おそらくずっと眠りっぱなしだった身体は、まだ筋肉が強張っている
鈍痛が走る体を引きずり、与えられた提督室に戻った

榛名「あっ、戻られたのですね」

イムヤ「おかえりー」

ライ「榛名と、イムヤ、だったかな?」

提督室には二人がいた。机にある書類と地図の前で、なにやら会議をしている……のか?

榛名「あぁ、気にしないでください。いつなにが起きてもいいように、現在の敵の分布図を確認していただけです」

ライ「そうか……マメなんだな」

イムヤ「他にやることもないからね……」

榛名「紅茶でも、入れましょうか?腕には少し自信があるんです」

ライ「いや、気を使わなくても……」

イムヤ「あ、じゃあおねがいー」

榛名「ふふ、じゃあライさんのも一緒にいれますね」

ライ「……あぁ、じゃあ、お願いする」

何だかんだで押し切られてしまった
小さな水音と、仄かな香りが漂ってくる……



榛名「はい、できました。どーぞ」

イムヤ「ありがと。ふぁ、相変わらず美味しい」

ライ「すごいな……」

その味は、紅茶には疎い自分でも相当なものだとわかる

榛名「ふふ、久しぶりに新しい人の感想を聞けました」

ニコニコと笑う榛名に少し気恥ずかしくなり、紅茶を一気飲みしてしまった

しばらくは無言で紅茶の味を楽しんでいたが、思い出したかのように榛名が、問うて来た

榛名「そういえば、ライさんはこの鎮守府を見て回ったのですよね?覚えることはできましたか?」

そう言われて、今日一日歩き回って見た道を思い出して見る。工廠、食堂、港へとゆく道、それらは思い出すことができる。しかし、他はそもそも向かっていないのでわからない

ライ「おそらく、この鎮守府の内部構造はそれほど理解できていない。そこまで大きな建物でもなさそうなんだけどな」

イムヤ「あー、じゃあ案内してあげよっか」

ライ「え?」

イムヤ「しばらくはここで過ごすんでしょー?だったらここは迷わずに歩けるようになった方がいいじゃん」

榛名「そうですね。トイレの位置がわからないなんて、大変ですよ?」

ライ「ふむ……」

そう言われると不安になってくる。警備の問題上地図もなく道も複雑な鎮守府内で迷うと、骨が折れそうだ……

ライ「じゃあ、お願いしたいんだが……」

イムヤ「うん、じゃあ誰がいいか選んでよ」

ライ「え?」
榛名「へ?」

え?今乗ってそういう感じだったのか?てっきりイムヤが案内してくれるものかと思っていたが……

イムヤ「それでもいいけどさ?どうせなら自分のお気に入りの子に案内してもらいたくない?」

榛名「な、なにを言っているのイムヤ?」

急にそう言われても……そうだな……

艦娘六人から一人選択>>51

おっと、安価ミス。>>54に変更

あぶくま

阿武隈かぁ……欲しいなぁ……



ライ「阿武隈、かな」

イムヤ「ほう、お目が高い」

榛名「ライさんも普通に受け答えしないでくださいよ……」

いや、そう言われてと、言えと言われたから言っただけなのだが……

イムヤ「して、なぜ阿武隈に?」

ライ「いや、本当になんとなくなんだけど……なんていうんだろう。直感?」

おそらくは神の気まぐれで自分の思考回路にイタズラを……いやいや、自分はなにを考えているんだ

イムヤ「そういうことなら明日イムヤから阿武隈に案内するように言っておくねー」

榛名「私が案内してもいいんですけど……」

イムヤ「お、なになに?榛名はライに興味津々?」

榛名「い、いえ、そうではなくて……」

チラッとこちらを見る榛名。まだ警戒心が抜け切っていないのだろう。当然だ……

ライ「言っても簡単には信用できないとは思うけど……自分は、ここの不利益になるようなことはしない。約束する」

榛名「はい……」

表情から不安はぬぐいきれていない。果たして彼女の心を開くことはできるのだろうか……

夢……だろうか

昨日も、同じ夢を見ていた気がする

どこか暗くて、静かなところで、私は佇んでいた



目の前に、人が現れる
誰だろうか……



ライ「……どうやら、夢はいいところで目が覚めるらしいな」

コンコン

ライ「?」

ドアをノックする音だ。体を起こすと昨日よりは幾分か軽くなっている
返事をして、ドアを開けて見た

阿武隈「おはよう。よく眠れた?」

阿武隈だ。一体なんの用事なのか……あ

ライ「あぁ。ところで、イムヤから聞いたのか?」

阿武隈「うん。あたしに案内して欲しいってね断る理由も用事もないし別にいいかなーって」

ライ「ありがとう、助かる」

阿武隈「うん、じゃあ今日一日はあたしが案内してあげるね」

そして、今日自分は阿武隈に鎮守府を案内してもらうことになった
これ以上手を煩わせないように、一回で覚えてみせる

行き先を選択>>58
※本日残り三回
提督室 阿武隈 榛名
食堂 阿武隈 電
港 阿武隈 イムヤ
中庭 阿武隈 武蔵
工廠 阿武隈 鈴谷

中庭

ーーー中庭

ライ「……ここは、昨日こなかった場所だな」

阿武隈「そうなの?ここは鎮守府の中心にある中庭。ほら、そこにある門から港にもつながってる」

ライ「花が多いな……」

阿武隈「うん。手入れもしてるしねー。天気のいい日は、ここでぼーっとしてるんだよ」

ライ「手入れって……阿武隈がか?」

阿武隈「うん。時間はたくさんあるから……とはいっても、素人仕事だから、そんなに綺麗にはできないけどね」

そういうことをする外見には見えないが……暇ということは、人を変えてしまうのだろう。暇であるということが、人にとって一番の苦痛でもあるらしい

武蔵「ん?今日は二人組みで行動か、阿武隈」

阿武隈「あ、武蔵。おはよう」

武蔵「あぁ、おはよう。いいところだろうここは。阿武隈が整えてくれてるおかげだ。花壇の花が綺麗だ……」

ライ「ああ、見事だと思う」

阿武隈「そ、そうかな……」

咲き誇る花たちは、色鮮やかなものこそ少ないが、一輪一輪が力強く根付いていることを感じさせてくれる
褒めて見ると、阿武隈は照れ臭そうに頬をかいた

武蔵「ところで、なんでこんなところに?」

ライ「あぁ、今この鎮守府内を阿武隈に案内してもらっている」

武蔵「なに?初耳だ」

阿武隈「え?そうなの?」

どうやらイムヤはこのことを阿武隈以外には伝えていなかったらしい

武蔵「ま、別に報告しなくても問題ないのだがな。みられて困るものなどないのだから」

あっさりと認められた。それもこの鎮守府の事情ゆえなのだろう

武蔵「しかし、何故阿武隈が案内を?」

阿武隈「イムヤにそう頼まれたのですけど……」

ライ「自分が、阿武隈に案内して欲しかったんだ」

阿武隈「なー!?」

武蔵「む?」

いった途端に、二人とも反応した。何かおかしなことを言っただろうか……

阿武隈「な、な、な、なにいって」

武蔵「なんだ、阿武隈に気でもあるのか?」

阿武隈「武蔵ー!?」

ライ「なんとなくだ」

阿武隈「……」

武蔵「くっくっくっ……面白いやつだ」

わけがわからないうちに面白いやつ扱いされてしまった。一体なんだというのか


行き先を選択(本日残り2階>>62

提督室 阿武隈 榛名
食堂 阿武隈 電
港 阿武隈 イムヤ
工廠 阿武隈 鈴谷

提督室

阿武隈に、提督室の周辺を細かく案内してもらった。
自分の部屋の近くだが、なにやら細かい分岐がたくさんあり、トイレも妙なところにあった。近くではあるがわかりにくい……

阿武隈「この辺りはもういいかな?」

ライ「ああ、大丈夫だ」

阿武隈の案内は、とてもわかりやすい。重要な覚えやすい分かれ道をしっかり教えてくれるからだろうか。

阿武隈「少し疲れたなぁ……休まない?」

言われて見ると、確かに今日は朝はやくから阿武隈にずっと案内をさせていた。広くはないが曲がることが多いこの鎮守府では、それだけでもかなり疲れてしまうだろう

ライ「あぁ、気を使わなくてすまない……自分がお茶をいれよう。提督室で休もう」

阿武隈「あ、じゃあお願いします……」

そうして提督室に向かったのだが……



榛名「あら?お二人とも、もうおかえりですか?」

そこには、三角巾を頭にしめた榛名がいた

阿武隈「榛名、なにやってるの?」

榛名「昨日の会話で、この部屋はしばらく留守になると思ったので、掃除をしておこうかと」

傍に携えた箒、塵取りで、そのセリフに嘘はないことがわかる。だが、机の上にまとめられた大きい封筒から、ただ掃除していたわけではないと思わせるには十分だ……ただ、その封筒は、薄い

ライ「わざわざありがとう。これで昨日以上に気持ち良く眠れそうだ」

榛名「い、いえ、そんな……」

少し申し訳なさそうな顔をする榛名。年長者としての責任が、自分への警戒感を強くするのだろう。少し、申し訳なく思う……

ライ「昨日のお礼も兼ねて、僕が紅茶をいれよう。二人とも、座っていてくれ」

榛名「え、で、でも」

阿武隈「あ、じゃあおねがい」

榛名が言い切る前に、既に体は動き出していた。茶葉に対して適切な方法で、自分は紅茶をいれる……

ライ「どう……だい?」

静かに紅茶を飲む二人を前に、自分は妙に緊張していた。たとえ少ししか労力がかかってないとしても、誰かに自分の作ったものを食される、というのはとても緊張する

榛名「……こ、これは……」

阿武隈「うわー、これすごく美味しい。榛名と同じくらいかも」

偽りない表情の阿武隈の賛辞を聞き、ほっとする。どうやら恥ずかしくはないものを出せたようだ

榛名「あ、あの、この紅茶のいれ方をどこで……?」

ライ「どこでって……」

そう言われても困る。こっちは知っての通り記憶がない。この紅茶の入れ方も、こうかな?と考えながら適当にやったものなのだ

榛名「そうですか……」

そう答えると榛名は少し残念そうな顔をした。一体なんなんだ……



そのあとは、当たり障りのない会話を三人で交えた
榛名は少しぎこちなかったが、二人の話は自分にとってはとても新鮮で、面白かった


行き先を選択>>64
食堂 阿武隈 電
港 阿武隈 イムヤ
工廠 阿武隈 漫

食堂の付近は割とシンプルな構造だったが、昨日歩いた時にはわからなかった道が、工廠などに続いていたことに驚かされることになった。なんて複雑な形状の鎮守府なんだ……

阿武隈「あれ?なんかいい匂い……まだお昼だけど」

ライ「昼の時間なら、普通じゃないか?」

阿武隈「んー、私たち生活リズム崩れまくってるから、みんな食事のタイミングもバラバラなんだよね……」

ますます不安になってくる発言だ……
そう思いながらも、食堂の戸を開いてみる

電「うん、しょっ、うん、しょっと……」

阿武隈「電?なにやってんの……って、それ、は……?」

電「ホットケーキなのです!」

たいそう大きな皿を少し大袈裟に皿を運んでいると思しき電がいた。しかし近づいて見ると……

阿武隈「そ、それが、ホットケーキ……?」

電「なのです!」

ライ「半径、35サンチはあるな……しかも、三段」

訂正だ……このサイズのホットケーキを運ぶとなると、電の体格では辛すぎるだろう……というより、どうやって作ったんだ

電「これならみんな、喧嘩せずに好きなだけ食べられるのです!」

阿武隈「あ、あははー……」

無邪気に笑う電と引きつった笑の阿武隈。対比がなかなかにシュールな感覚をそそるが、ここはどうするべきか……

△ みんなを呼んで食べようか
□ さすがに作りすぎだよ
○ 一口いいかな?
>>67

> ○ 一口いいかな?

ライ「とりあえず、一口いいかな?」

電「はい!ライさんには最初の一口をあげるのです!」

阿武隈「え、なんで?」

電「昨日は、我慢させてしまったのです……」

電はテーブルの上の巨大なそれに包丁をいれた。一段一段が妙に分厚く、おまけにその合間に生クリームまで挟まっているから余計にすごい……二日はこれだけで生活できそうだ
切り分けられたそれは、一口というよりはホールケーキの一切れだ

ライ「いただきます」

フォークで、一口かじってみる……

ライ「うん……おいしい」

見かけの大味さとは裏腹に、ふんわりとした生地と、ちょうどいい量の生クリームが次の一口を誘う

電「よかったのです。昨日よりもっと美味しくできたはずなのです!」

阿武隈「あー……あたしも、いい?」

電「もちろんなのです!」

阿武隈「じゃ、じゃあ……んー!おいしー」

電「やったのです!」



そのあとは三人でケーキをつつきながら談笑をした。三分の一がお腹に入った頃に、電は残りは他の人の分とケーキを取り上げてしまった



もっと食べたかったな……

ライ「で、最後がここか」

鎮守府の内部を阿武隈にあらかた案内してもらい、ここで最後、と連れてこられたのが、鎮守府外にあった小屋だ

ライ「ここはいったい……?」

阿武隈「物置」

ライ「へ?」

阿武隈「だから、物置。この鎮守府ができる前からここにあってさ。持ち主もいないし、邪魔でもないから壊さずにそのまま利用してるの。」

ライ「そうか……」

阿武隈「まぁ、大半のものはドッグの中に格納できるし、ここにはそれこそ本当に不要なものしか入らないかな」

ライ「なるほどな……」

阿武隈「というわけで、これで案内終わり。どう?参考になった?」

ライ「あぁ」

彼女の案内のおかげで、この鎮守府の内部や周辺などの地形をしっかり覚えることができた。これなら迷うこともないだろう。

阿武隈「じゃああたしは戻るけど、ライはどうする?」

ライ「……もう少しこの辺りを見ていく。鎮守府は視界に映るし、迷うことはないはずだ」

阿武隈「そう?じゃあ先に戻るね」



そして、一人になった。今日は風が冷たい……小屋の影に身を隠す。海の側はやはり冷える……



ふと、小屋の窓から中を覗いてみる。本当になんとなくだ。あるいは偶然か。その中に……ほとんどのものが埃をかぶってる中で、一つだけ妙に綺麗なものがあった

ライ「あれは……」

気になって、小屋の中に入りそれを拾う

ライ「すごい埃だな……おまけに暗い。外で見るか」

それは、紙袋だった。多少薄汚れているが、この分なら中身は大丈夫だろう

ライ「……」

興味本位で開いてみると、中には上質な素材をつかった軍服が入っていた

ライ「これは……」

おそらく、ここに着任する提督の着るものだったのか……それを本当に不要だから捨てたということは……彼女たちは薄々感づいているのだろう

ライ「これ、どうするかな……」

ゴミとして捨てられたものだが、新品同様のこれをこのまま捨てるというのは勿体無いし……

ライ「装飾と帽子がなければ反応もされないかな」

何しろ私物が全くない自分だ。着れる物も提督室にあった黒いシャツとズボンしかない。金がないから買うこともできない。
それに、あの鎮守府の財を使い私物を揃えるのはなんとなく抵抗がある

ライ「うん、もらってしまうか」

使える物は使おう。そう決めて、その紙袋を再び閉じて、鎮守府に帰ろうと……した時だった

ザプン

ライ「……?」

さきほどから聞こえる波の音まじって、微かに不思議な音が聞こえた
なんというか、固形物が水から飛び出たような……

ライ「あの、岩場、か?」

不思議な音は岩場の影から聞こえた……

△ いってみるか
× 気のせいだろう

いってみるか

やべぇ安価先忘れてた。このままいく、ごめんね。ありがとう>>71

ライ「いって……みるか」

波打ち際にある、少し大きな岩に近づいてみる。音はなにも聞こえないが、そこには、『ナニカ』の気配がした

ライ「……」

後ろから、こっそり覗いて見る。そこには……

http://i.imgur.com/HhrMsKg.jpg

白と黒だけで作られた身体に、ただ二つだけエメラルドグリーンの瞳が光る女性が佇んでいた
その肌色は、まるで色素が抜け落ちたかのような……色を、失ったかのような

ライ「……」

???「……?」

チラッと、その女性がこちらを見た。目線が絡み合う……しまったと思う。この状況は、自分が不審者だと公言しているような物だが、そうではなく……

頭の中で、警鐘がなる。危険だ、危険だ、危険だ……



スッと、ソレが手を延ばして来た。まるで、失われた色を、奪いにくるかのように

ライ(マズイ、マズイマズイマズイマズイ!!)



瞬間、何かが弾けた

ライ「私に触れるな!!」

叫びが響き、海に飲み込まれてゆく

僕の眼前まで迫った紙のように白く、水滴のついた手はゆっくりと引かれて行く。

みれば、先ほど彼女の中で唯一白黒ではなかった、エメラルドグリーンの目が……真っ赤に染まっている

???「……フフ」

そして、少しだけ微笑んだあとにソレはゆっくりと後ずさりし……海に、消えてしまった



ライ「あれは、あれ、は……」

もうなんとなくわかった。なぜすぐに反応して逃げ出さなかったのか不思議なくらいだ

自分は、深海棲艦に生身で遭遇したのだ。そして、本来なら自分はここで、死んでいるはずだ
深海棲艦は、人間を食らうのだから……

だが……なぜ見逃した?



ただただ自分は立ちすくんでいた。取り落とした紙袋に、海水が染み込んだ

電「おはようなのです!」

扉を開けるとニコニコと笑う電がいた

ライ「あぁ、おはよう……どうしたんだ?」

電「昨日、阿武隈さんに鎮守府の案内をしてもらったって聞いたのです。でも、阿武隈さんは一つだけ忘れてる場所があるから教えに来たのです!」

ライ「そうなのか?」

鎮守府にありそうな施設は、昨日のですべてだと思ったが……

電「ついてきてほしいのです!」

ライ「あ、まってくれ」

元気良く駆け出す電を思わず自分は追ってしまった。中にはまだ作業中の服があるのに……



電「ここなのです」

そういって連れてこられたのは……

ライ「あ、あぱーと?」

電「艦隊寮なのです。みんなここで二人一組で寝てるのです」

そこには、なんか壁に電気メーターやらがついた扉がみっつならんでいた。ご丁寧に錆びた階段がついており、二階にも同じように三つの扉が並んでいる

ライ「部屋は六つあるのに、なんで二人で使ってるんだ?」

電「そのほうがたのしいのです!あとは節約なのです」

ライ「そ、そうなのか……」

予想よりも、ここ貧乏なんだな……自分のことは自分でやらなくては

しかし、阿武隈には自分をここに案内したくはないという意図があったのではないか。彼女はそういうところしっかりしてそうだし……

阿武隈「ふぁーぁあ、よくねた……うぇー、あたまぼさぼさ」ガチャボサボサ

ライ「……」

阿武隈「はやくかおあら……」

電「おはようなのです!」



阿武隈「ああぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁあああああああ!!!!!?!?!?!!??!ライ!?ライナンデ!?」

ライ「やはり自分はここにこなかった方が……」

電「なんでなのです?」

あとで阿武隈によく謝っておこう……しかし、寝起きはあんがいだらしないんだな。髪とか、服装とか



阿武隈「なんで朝からここにいるのー……」ブー

ライ「電がここに案内してくれたんだ。昨日阿武隈がここには連れてこなかったって」

阿武隈「あーそー、ごめんねー……あーもー、さいあくー、こんな姿をよりによってライにー……」

鈴谷「えーなになにー?阿武隈はライっちにご執心ー?」

阿武隈「そんなんじゃないってもー……おとこにみられるのはやだーってことー……」

確かに、女性としてあの姿をみられるのは苦痛以外の何物でもないのだろうな……

ライ「本当にすまなかった。朝だし、配慮が足りなかったよ……」

阿武隈「いーけどさー、べつにいーけどさー……ああぁぁーんもーーーー……前髪も整えてないのにー」

紅茶をブクブクとストローであわ立てている阿武隈はもうみるからに不機嫌だ。隣の鈴谷はニヤニヤ笑ってるし……どうすればいいのか

鈴谷「あー……そういえばさ、今日ここがガラ空きになるって知ってる?」

ライ「え?」

唐突な、鈴谷の問いかけ

ライ「ガラ空き?どこが?」

鈴谷「ここ、鎮守府」

ライ「ガラ空きって、どの位?」

阿武隈「一隻以外全部」

ライ「なんで?」

鈴谷「私らは資材とか資金とかを全部自分で受け取りにいかなきゃいけないの。だから、お昼過ぎに五隻で艦隊くんで近くの施設に受け取りにいかなきゃいけないの。ドラム缶積んで」

ライ「……」

普通そういうのは地上の流通ルートとか輸送艦とか使うだろうに、ここは本当にひどいな……

ライ「そうか……で、誰が残るんだ?一隻以外って一隻は残るんだろ?」

鈴谷「うん。えーと今回は……」

六隻から一隻選択>>83

あぶくま

やばいぜ、阿武隈ルート一直線だぜ、テンション上がるだろ



鈴谷「阿武隈だねー」

阿武隈「なっ……ぁ……?」

ライ「……」

常々、偶然とは怖いものだと思い知らされる

阿武隈「……鈴谷、変わって」

鈴谷「えーやだー、向こうでお洋服買いたいしー。前回私が留守番だったじゃーん」

阿武隈「な、なら今回は万全をきして六隻で」

鈴谷「ライっちだけ残すの?武蔵と榛名が許すわけないじゃん」

阿武隈「あう……」

鈴谷「そもそも防衛のために一隻残すのに。それが形式だとしても」

阿武隈「あうあうあうあうあう……」

流石に、こんなことがあったあとで二人になるのは、気まずい……



不安なまま、僕たちはお昼過ぎの時間を迎えるのだった……



選択>>88
オート
マニュアル

マニュアル

マニュアル、か……

ところでロスカラって模擬戦めちゃくちゃ難しかったよね



お昼過ぎ、空腹も埋めたところで提督室に戻り、数冊置いてある本を読む。娯楽本ではなく、なにやらホロコーストめいた戦績の書かれた書籍だが……これを榛名は片付けなかったのか

阿武隈はいない。『形式上』見張っていろと武蔵に言伝をもらっていたが、顔を合わせたくないらしい。正直こっちも気が楽だ

彼女が嫌いなわけでは決してない。むしろ親しみやすいいい子だと思う。ただ、朝のあんな出来事のあとでは……



ツーツー……ツツー……

ライ「ん?」

その時、机の上においてあった通信機がなり出した。輸送に出かけた五人からか?



いや、待て。この通信は、おそらくモールス信号だ……文面は……



タスケ ヲ モトム

ライ「!!」

自分でも驚く速度で、無線機を掴み取る。繋がれ、繋がれ、繋がれ……

『つ、つながった!!此方、××鎮守府所属第2艦隊所属曙!カムラン半島にて敵と交戦!救援もと……きゃあ!!』

ライ「どうした、どうした!?此方ーー鎮守府!!どうした!!」

無線が、つながらなくなった……



すぐにそこから飛び退き、広げられている海図に目を通す
カムラン半島……この鎮守府から出港すればすぐに到着することができる

だが、こちらが出せる戦力は軽巡一隻しか……



まて、なぜ自分はこんなことをしている?自分はここの提督ではない、こんなことをするべきではないしてはいけない

だが……

ライ「……阿武隈、緊急事態につき提督室にきてくれ」

鎮守府内に呼びかけるマイクを使い阿武隈を呼び出した

阿武隈「それ、本当?」

ライ「本当だ……数分前にここの無線機に連絡がきた。おそらく一番近くにいる『救援できそうな場所』に届く無線だろう。それを、キャッチした。あの様子だと、およそ長くは持たないだろう……」

最初は気だるげだった阿武隈も、事情を話すと顔つきが変わる。これが、例え放置されていたとしても、艦娘の戦闘に対する思考の切り替えだ

阿武隈「なら、助けにいかなきゃ!一番早くいけるのは私たち……ぁ……」

ライ「そうだ。今、ここには、君しかいない」

ライ「おまけに、うっかり僕は受け答えしてしまったが、ここは、『提督無き鎮守府』だ。提督の指示がない限りは、よほどの例外がなければ出撃は許されない」

ライ「……そうだ、自分たちにはどうしようも無い」

阿武隈「そん、な……」

阿武隈の表情に影が落ちる。
すぐそばに苦しむ艦娘がいるのに、助けにいけない。無力な自分を、呪っているのか……

ライ「そうだ。なにもできない。その上で問う」

阿武隈「え?」

ライ「……自分が責任を負う。自分が作戦を練る。あとで阿武隈に罰が下ろうものなら自分が死んでも身代わりになる。絶対彼女たちを助け出す作戦を作り出して見せる、だから
……」



ライ「私に指揮を任せて、出撃してみないか」

燃え上がる闘志を感じる

それは、内から?外から?それとも両方か?

そうだ。艦娘の彼女の内に眠る誇りは、こんなことを認めやしない

『救える者を救わない』という暴挙を決して ーーー!!

阿武隈「……インスタント提督、私の命を、預ける」

ーーーTURN.1
「アンブッシュ オブ ザ カムラン toディープシーシップスレイヤー」ーーー



阿武隈一隻だけで出撃して、もうすぐにカムラン半島海域にはいろうとしている……

自分は今、提督室だ。海図の前に立ち、定期連絡に合わせて海図の上のコマを動かす

この短時間作戦は下手すれば三時間足らずで終わる……やるか、やられるか、どちらにしろ一瞬だからだ

ライ「そろそろ、救援ポイントに到着するはずだ。注意してくれ」

阿武隈『了解!』

返事を聞き、再び意識を海図に集中させる……

頭の中に、立体の海図が浮かび上がってきた。カムラン半島、任務内容はおそらく敵艦隊の迎撃……すると、『駆逐艦隊がおよそ劣勢になりにくいポイント』は……『そのための敵の戦力』は……

思考が積み重なり、可能性を絞ってゆき、そして、答えが導き出される

ライ「阿武隈、救援対象の艦隊に何隻いるかはわからないが、敵はおそらく軽巡二隻は覚悟した方がいい。そして、随伴している駆逐艦も一隻は確実だ」

阿武隈『三、四隻はいるってこと?こっちは下手すれば私含めても二隻なのに……』

ライ「大丈夫だ……最初に二隻沈められる」

阿武隈『本当に?』

ライ「ミスしなければ」

阿武隈『うわ、すごいプレッシャー……』

阿武隈のコマが海図の×印のポイントに乗った。ここだ、ここが要だ

ライ「取り舵いっぱい、敵の後方に全砲門を展開して回り込む」

阿武隈『へ?敵影なんてまだ見えないけど……』

ライ「おそらく残り数分で会敵だ。向こうから見えない位置をとる。そしてーーー反撃が遅れる位置どりを、だ」

この作戦は、何よりもスピードが命だ。不確定要素は多いが、この方法で行くしかない

阿武隈『う、うわ、本当にーーーあ、っと。敵を視認しました!』

ライ「救援対象は?」

阿武隈『二隻見える……でも、もうボロボロ……敵は、えっと……本当に軽巡二隻に駆逐が一隻、すご……』

完璧に予想通りだ。そして、こちらから敵を視認したということは……

ライ「気をつけろ、敵にも見られている。今は艦尾を向けているだろうが、すぐに此方に向かってくるぞ!」

阿武隈『え、えとえと、えと、じゃあ!』

ここで実践慣れしていない阿武隈は混乱してしまった……が、それはつまり『此方の指示』にすぐに従うということ……
そうだ、この作戦は何よりも速度が命!

△ 魚雷打て!
□ 敵が側面を見せたら一斉砲撃!
○ 速度を生かし囮になれ
>>95

ライ「角度を直撃コースから左側15度にそらし全弾発射!」

阿武隈『うえ、うえ、えーと、は、発射!!』

無線機越しに魚雷の射出音が聞こえた……

阿武隈『って、え!?直撃コースからそらすの!?なんで!?』

そうだ、これでいい。突如背後を取られた敵は此方に側面を向け、砲撃を心みるだろう

阿武隈『あー!当たらないよー!次弾装填間に合わないよー!』

大きく反時計回りに回り込みほぼ真後ろに回り込む阿武隈にたいし、敵はどう動く?当然、面舵いっぱいに回し、時計回りに此方に向かおうとする。そうすれば、敵は二隻で同行戦の形を取り、火力で勝てるからだ

阿<イタイ
I\ドカンドカン
敵敵<ユユー



しかし、敵が舵を回し、船が旋回して、移動し始めた頃、そこには何が迫っている?

阿武隈『あーもーダメだ!あの駆逐艦もろともあたしは沈んじゃうんだー!』

とうぜん、『弾速のおそい魚雷』が、置かれなようにそこに待ち構えている

阿武隈『くそー!恨む!恨むよラ……』

無線越しに、持つ列な爆発音が響いた……思わず口元が緩む……

海図の上のコマを動かした。軽巡二隻は、虫の息……ならば後は本来の目的を達するために何をするべきか

おっと誤字、持つ列じゃなくて猛烈ね。あと真ん中当たりのチンケな図は想像図でまだ一発も被弾してないから安心してね

阿武隈『あ、た、た、大破!敵軽巡二隻大破!』

ライ「よし!」

情報が増えれば増えるほど、頭の中には鮮明な戦闘海域の光景が浮かんでくる。敵の表情一つまで見えるようだ

ライ「そいつらはもうロクな攻撃はできないだろう、敵駆逐艦を牽制し、救援対象の作戦海域離脱を援護してあげるんだ」

阿武隈『了解!』

さっきの指示で信頼を得たのか、迷いのない返答が帰ってきた。勝てる、勝てるぞ……

阿武隈『そこの二隻、雑魚は私がやるから急いで逃げて!』

『ご、ごめんなさいッ!』

『救援、ありがとうございます!』

後は、彼女たちの離脱を確認するまでだが、まだ油断はできない……駆逐艦は、その速力が脅威なのだ
おそらく敵は、一隻だけでも落とそうとやっけになるだろう。深海棲艦とはそういうものだ

ならば、阿武隈に出すべき指示は……

△ 救援対象のそばにつき敵から守る
□ 駆逐艦に弾幕をはり釘付けにする
○ 軽巡にトドメをさす
>>98

ライ「魚雷の数は?」

阿武隈『のこり五発!装填完了!』

ライ「軽巡を仕留めるんだ、何をするかわからない」

阿武隈『了解!ってー!』

轟沈寸前の軽巡に対し、阿武隈は魚雷を放つ。機関部が爆発四散した船では迎撃も回避もできないだろう。これで不安の目は……



なんだ?何か、違和感が……!!?

ライ「阿武隈!!全速前進!!急げ!!」

阿武隈『うぇ!?』

そうだ、忘れていた、まだ無傷の敵の存在を!

阿武隈「あ、やば!敵の駆逐艦が!」

マズイ、大破した駆逐艦では敵に追いつかれてしまう。そしたら……

阿武隈「くっ……相手はこっち!かかってきなさい!」

ダメだ、深海棲艦は弱った二人を優先して狙ってしまう。阿武隈が追いつくまでもってるかどうか……

ライ「どうする、どうする」

海図に目を走らせコマを頭の中のイメージ通りに配置させる。何か手は、手は……

……これは、どうだ!?

△ 『敵の甲板めがけて撃て!』
○ 『敵の側面を狙って撃て!』
>>102

ライ「何もしないよりはましだ!阿武隈、艦砲射撃の準備は!?」

阿武隈「し、主砲なら……でも当たる!?敵はキミの悪い動きする駆逐艦だよ!?」

ライ「それでも何もやらないよりましだ!左舷複砲の争点をしながら主砲で足止め、あわよくばそのまま直撃させてしまえ!」

阿武隈「わかった!やるよ!やればいいんでしょ!」

そしてすぐに炸裂音が響き渡る

阿武隈『クッソー、外した!甲板ズタボロにしてやろうと思ったのに!』

ライ「泣き言の前に第ニ撃を早く!」

このままじゃ、救援対象が……
くそ、所詮こんなものか、付け焼刃の戦力は土壇場で通用しないのか……

いや、私が泣き言を言ってどうする。諦めるな、顔をあげればそこには希望があるはずだ!

魚雷は弾切れ、武装は主砲20.3サンチ泡と副砲の14サンチ単装泡……

これだけで、どうすれば



まて、まだ一つ、手がある。此方にはまだ、武装がある。
こっちには、阿武隈の他にも味方がいるのだ
無線機を手にとり、阿武隈に指令を出す

△ 敵の進行方向に打ち込み足止め
× 敵の周囲に打ち込みルートを固定させる
>>104

おっと安価ミス。>>106

×

ライ「阿武隈、当てなくてもいい。駆逐艦の周囲に弾幕を貼って、敵駆逐艦の移動ルートを正面に固定させるんだ」

阿武隈『当てなくてもいい?なんでまた』

ライ「いいから!弾が尽きるまで射撃を継続してくれ」

阿武隈『あーもー、わーかーりーまーしーたー』

よし、阿武隈の連装砲なら敵の異動先を『正面に』固定させることは不可能じゃない。そして……

無線を、阿武隈とは別のものに合わせる。それは先ほど此方に無線を送ってきた相手……

曙『何よこのクソ忙しい時にこのクソ提督!!』

……く、クソ提督?

ライ「すまない、自分は提督ではないのだが……」

曙『へ?あ!ご、ごめん、もしかして増援を送ってくれた……』

ライ「そうだ。此方で指示を出して軽巡は仕留めたが、駆逐艦をやり損なった。君たちの力を借りたい」

曙『いやでも、こっちはもう轟沈寸前だし、弾もあまり……』

ライ「大丈夫だ。必ず君たちに仕留めさせてみせる」

曙『……どうする気よ』

ーーー

阿武隈「あーもー、まてこらー!」

イ級「ゲゲゲ……」

阿武隈(マズイ、もうすぐ敵の射程にあの駆逐艦たちが入っちゃう。当てなくてもいいって言ってたけどこれじゃあ)

阿武隈(……! 駆逐艦が左右に散開した?)

ーーー

曙「お見事、ね。敵は軽巡の砲撃で『真正面』にしか進めない」

曙「潮、聞こえる?このまま敵艦を挟んで借りを返してやるわよ!」

潮「わ、わかったよ曙ちゃん!」

曙(そう……左右に散開した私と曙で敵を挟む。敵も無論方を向けてくるけど、あらかじめその方角に砲門を向けていた私たちの方が……)

曙「おっそいのよ、このクソ化物艦めーーー!!!」ズガン

阿武隈『仕留めた!敵を全滅させた!やった!やったよライ!!』

ライ(……なんとか、なったか)

一気に力が抜けて、筋肉が弛緩した……無線機からはしゃぐ阿武隈の声が聞こえるが、正直くたびれてそれどころじゃない

ライ(でも、もう一つ指示を出さなきゃな……)

無線機を再び掴み、阿武隈に指令を出す。二人を鎮守府に送り届けて差し上げろ、と

阿武隈『了解!この辺りに敵はもう、いなさそうだけど油断は禁物だもんね……それと、さ』

ライ「どうした?」

阿武隈『……その、あり、がとう……すごかったよ、指示』

プツンと無線がきれた。少々身勝手ではなかろうか……

今度こそ終わった……何とか立ち上がって椅子に深く腰掛ける

ライ(自分はこの仕事向いてないみたいだな)

今回は奇跡的にうまく行ったが、次はわからない、第一、こんな責任重大な仕事を長く続けられる気がしない

ライ(どうしようかな……)

今更ながら鎮守府<ここ>にいるのがまずい気がしてきた。まぁ、五人が帰ってきたらなんか追い出されそうな気もするが……

ライ(ほんとに……どうしよ……かな……)

あぁ、明日からの寝床はどうするか、とか考えている内に、疲れた農みそはかつどうをやめてーーー

ねむりにおちた

ーーーTURN1 ENDーーー

ーーー

榛名「……」

ライ「……」

阿武隈「えっと……その……」

榛名「何を、勝手にしてるんですか」

ライ「すまない」

榛名「何を勝手にやったか聞いてるんです」

阿武隈「あ、あう……」

武蔵「……はぁ」

今自分は、提督室で榛名に問い詰められていた。当然だが
権限なしに勝手に艦を出撃させたのだ。こうもなろう

ライ「今日中にここを出ていくつもりだ」

榛名「それで済むと思ってるんですか」

阿武隈「そ、その、榛名……」

榛名「阿武隈、あなたもよ」

阿武隈「うぅ……」

武蔵「榛名、少し落ち着け」

榛名「ですが!」

武蔵「今回のこれがヘンテコな理由をなら今ここで私がこいつをぶん殴ってるが、今回はいろいろ特別だっただろう」

武蔵がたしなめてくれるが、榛名が怒るのはもっともなのだ。今回の件で彼女たちにかかる迷惑は計り知れないものだろう……

武蔵「まぁ、確かにやりすぎ、だな。きもちはわからんでもないが、ここは、別の鎮守府に連絡をいれて救援を送らせるべきだった……間に合わなかったとしても、な」

少しだけ顔を歪めて武蔵はつぶやく。そうだ、それが正しい対応だし、実際そうしようと思った。だが……抑えられなかったのだ。己の中の昂りを

榛名「私だって、見捨てるなんてことはしたくありません、でも……これで余計私たちの立場が悪くなったら……」

ライ「……本当に、すまなかった」

武蔵「まぁまぁお互い少し落ち着け。ライについては今私たちが処罰だなんだという段階じゃないだろう。そのうち電報か何かがくるからそれまでおとなしくしてろ」

榛名「わかり……ました」

武蔵「ライも、しばらくはこの部屋でおとなしくしてろ。いいな?」

ライ「勿論だ」

武蔵「よし……それから阿武隈、お前は私の部屋に来い」

阿武隈「は、はい……」

全員が部屋から出て行き、一人取り残される
すっかり夜も更けた鎮守府。明かりはついているが、気分は重かった
自分のしたことは、本当に正しかったことなのか……

葛藤が心の中に生まれれば、それが育つのは簡単だ。あっというまに胸の内を圧迫し始めるそれは、後悔か、それとも……恐れか

ライ(自分のような、何もないやつが誰かを助けるなんてことは、おこがましいじゃないのか……)

マイナスがマイナスを呼ぶ。それがプラスに変わることはない、だが、どちらにせよ今の僕には待つことしかできないのだ

ライ「寝る、か……」

まだ眠くはないが、横になれば余計なことは考えずに済む。布団に潜り込み、体を丸める



しかしその日、結局よる遅くまで自分は眠ることができなかった

ーーー四日目

朝日が目に染みる。顔に直撃する太陽光を感じて体を起こした

ライ(お腹、空いたな)

そういえば、結局昨日のいざこざがあったからか夕飯を食べずに寝てしまった……腹の中に空腹の嘆きがとぐろを巻いて居座っている

ライ(しかし、ここ出てもいいのか?)

自分は今この部屋に閉じ込めらている立場だ……流石にここの外を出歩くのは……

そう思った時だ。部屋のドアがノックされたのは

ライ「? はい」

艦娘を一人選択>>113

武蔵

トリップ付けたらどうだい
成りすまし荒らしされかねんぞ

早いな……

武蔵「よう。調子はどうだ」

部屋に入ってきたのは武蔵だ。傍には何やら不思議な香りのするお盆を持っている

武蔵「お前のことだからどうせ飯を食うのも躊躇すると思ってな。持ってきてやったぞ」

ニヤニヤと笑いながら差し出されたお盆の中身は……なんというか……とにかく不思議だった。白いご飯に、沢庵……そして、この透き通るサファイア色の透明な……スープ?ジェル?と……クトゥルフめいた形の……焼き……さか、な?

武蔵「飯を食べてないことを阿武隈に教えたらな、私のせいだーとか喚きながら一生懸命作ったのがこれだよ。食べてやれ」

<ムサシー!その生ゴミ食べさせちゃダメー!やめてー!作った私でさえ食べられないんだからー!

ライ「……お百姓さんに失礼だしな、いただこう」

武蔵「素晴らしい」

ヤメローという喚きが響く中そのスープを少しすすってみた

……うん、不思議な味だ。白いご飯に合わせて、沢庵を放り込み汁で流し込む……昨日食べた朝食とは一味も二味も違う

続けて、焼き何かの身をはしでほぐしてみる。妙に汁がにじみ出てくる……食べる

……不思議だ。二口目を食べてもやはり不思議だ。
そのままいくら食べ進めても疑問が溶けることはない

武蔵「……お前、それ食べられるのか?」

ライ「不思議だけど、食べられるぞ」

武蔵「……お前の嫁になるやつは幸せだよ」

ライ「?」

褒められた、のか?よくわからない。そのまま、扉の外から叫びが響く中の朝食を自分は終わらせた

>>114マジかよ鳥つけるわこれね↑


そのあと、突入してきた阿武隈がごめんねごめんねと頭を下げたあとになんと武蔵にアイアンクローをかましてそのまま引きずっていった。あのパワーがあれば昨日の深海棲艦も一撃で殴り倒せたのではないだろか……

とにかく、腹も膨らました自分は、届くと言われた電報を待ち、ひたすら待つ
部屋におかれたよくわからない書物にも目を通し、待つ、待つ
たまに伸びやあくびをして、待つ、待つ、待つ

と、とつぜん電話がなり始めた。無線機とは別におかれた、無骨な黒電話だ
自分が出てもいいのだろうか……昨日の件もあり迷いが生じる

しばらく迷っていると、音はならなくなってしまった。居留守した罪悪感が募る。しかし
……

それから数分おきに電話はひっきりなしにかかってくる。流石に、少しうるさい
もしかしたら電報が届いたことを知らせる彼女たちからの連絡かもしれない。少し気が引けるが、自分は受話器をとった

ライ「はい、もしもし」

『やーっとつながった!もう、早くでなさいよねっ!』

聞き覚えのある、この声は……

ライ「昨日の駆逐艦の、曙、だったか?」

曙『そうよ!あんたこそその声は、昨日の提督もどきね』

ライ「もどき、確かに……ところで、何のようだい?ここの艦娘に何か用事が?」

曙『まぁそれもあるけどさ、その……ぉ……う、潮がお礼が言いたいって!』

???『ええ!?』

何やら電話の向こうでもめているが……

ルートブンキ……?いえ、知らない子ですね(ガツガツ

『あ、えと、お電話、変わりました。潮です』

ライ「潮……昨日の駆逐艦、だよね?」

潮『はい、あの……昨日は、本当にありがとうございました』

少しおどおどした声でしかし、しっかりとお礼を言われた

ライ「……自分は、お礼を言われるようなことはしていない。体を張って君たちを助けたのは、阿武隈だ」

潮『阿武隈さんには、昨日たくさんお礼を言いました。でも、提督さんにもお礼を言いたくて』

ライ「……いや、此方こそ」

潮『え?』

彼女たちの言葉を受け、少しだけ気持ちが楽になった。彼女たちは、自分と阿武隈が行動したから、今こうして話をしていられるのだ

ライ「いや、なんでも……」

潮『え、ええーと……じゃあ、曙ちゃんにかわりますね』

曙『え?ちょっ……え、えーと、まあ、そのなんだ……ありがと!以上!』

ガチャ!と電話はきれてしまった。最近は唐突なガチャ切りが流行っているのか……



そしてまた、しばらく暇な時間が続いた。少し眠くなってきてしまった。外は相変わらずいい天気で、柔らかな日差しが差し込んで……

そして、窓から覗ける海をみて、思わず自分は目を疑った

ライ「なっ……!?」

???「……」

そこには、遥か遠くに、しかし確実に、こちらを凝視するあの深海棲艦の姿があるのだ

http://i.imgur.com/CCANNPr.jpg

なぜだ、何故鎮守府のすぐそばに……まさか襲撃にきたのか、マズイ、マズイ……

脳みそが汗でふやけてまともな思考ができなくなっていく。逃げ出したくとも、遠くで煌めく瞳に凝視され、体が動かない。筋肉が強張り胃の中身を吐き出しそうになる
このままでは、マズ……



コンコンコン

ライ「!!!」

しばらく気がとんでいたのか、いきなり響いたノックの音に心臓が破裂するほどびっくりした。
窓の外に、やつはいなくなっている……

夢、だったのか?

ガチャ

榛名「……いるなら返事をしてください、勝手に出歩いているのかと思いました」

ライ「……すまない」

入ってきたのは榛名だった。彼女が一体なんのようだろうか

榛名「……届きました、あなた宛に、電報」

ライ「!」

榛名「勝手に人宛のものを読むほど悪趣味ではありません」

そう言って手渡された封筒にはーー鎮守府当て、としか書かれていない。しかし、確かにこの鎮守府に今届く電報など、自分宛以外にあり得ない

榛名「本部からのものです。それに従ってください」

さて、どうなるか……牢屋入りか、はたまた極刑か、少なくともこの鎮守府にいられなくなることは確実だ

覚悟して、封を開いてその文字を読み進めた

ーー鎮守府ノライニ関スル処分

今回ノ件ニ関スル犯罪行為ヲ全テ功績ニ免ジ不問ト処スル
マタ、ライニ特例トシテ少佐階級及ビーー鎮守府ノ提督ノ職務ヲ命ズル

ーー元帥 射榴瑠 慈 舞理谷亞



ライ「……は?」

内容が、よく理解できない。ていうか、なんでこの電報ご丁寧に元帥の写真が貼ってあるんだ。ていうかなんだこの元帥。この髪のロールから魚雷でも撃つつもりなのか

というより、なんだ?少佐?自分が?提督?自分が?

わけが、わけがわからない

榛名「なんと書いてありましたか?」

ライ「……よんで、みて、くれ」

自分の目が信じられずそれを榛名に手渡す。次第に読んでいる榛名の顔が驚愕に染まって行き……

榛名「エェェェェェエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!?ナンデ!?ナンデ!?」

マッポーめいた叫びが鎮守府に木霊した……

※参考資料
付属してきた射榴瑠元帥のありがたい写真
http://i.imgur.com/Awh40ir.jpg



ライ「……と、いうわけだ」

鈴谷「え、すごーい!よかっじゃーんライ。いら、ライ提督?」

168「すごいなー……これで私たちもついに貧乏生活脱出?」

電「こ、これで私たちにも司令官さんが!やったー!やったー!」

榛名「これは、無邪気に喜ぶようなことじゃ……」

自分たちは全員食堂に集まり、この事項に対する報告を行っていた。自分が提督についた際の今までとの変更点である。

一つ目は、資材の運搬は自動的に、毎日行われるようになる
二つ目は、与えられる給与が今までより上がる
そして三つ目は、これからは自分が指示さえすれば、出撃できるようになることだ

阿武隈「本当!?これからは毎日でも出撃できるの!?やったーーー!!」

武蔵「……ふむ」

このことで、電、鈴谷、168、阿武隈は無邪気に喜んでいるが、榛名と武蔵、それに自分はこれに対して不信感をぬぐいきれない

ライ「話が、うますぎる……」

武蔵「確かにな」

……比叡が、比叡が……
憂さ晴らしで投下させてもらう




今回の件は、不振な点が多い。自分の功績に免じて罰を免除するなどあり得ないはずなのだ

武蔵「まあ、なんとなく今回お前が提督に任命された理由もわからなくもないが、な」

榛名「どういうことですか?」

武蔵「どこもかしこも、人手不足なんだ……だから、今回のお前の戦績を見逃さなかったんだろう」

ライ「人出、不足?」

鈴谷「あー、最近は鎮守府が直接攻撃されることも珍しくはなくなったもんね」

イムヤ「沿岸部はもう超絶危険地帯だよねー」

聞いてみれば、勢いをましに増した深海棲艦は、一年まえから見える範囲ならば地上にも攻撃を開始し始めたらしい。沿岸の集落は壊滅、危険地帯真っ只中の鎮守府は警備こそ多くなったものの、散発的な襲撃に被害が激増、人々は内陸部に追いやられているらしい

ライ「それで、自分を……」

武蔵「猫の手も借りたいところに、虎の手が湧いてでた。なんとしてでも飼いならしたいのさ」

榛名「そんな……」

電「司令官さんがすごくなかったら、提督に離れなかったんです、地震を持っちゃうべきです!」

電はそういうが、自分にこんな責任重大な職務が務まるとは思えない。だが……

ライ「あなた方への恩を返せる機会だ、見逃すわけにはいかない」

鈴谷「へ?」

誤字の塊だなおい……
訂正
電「司令官さんがすごくなかったら、提督にはなれなかったんです、自信を持っちゃうべきです!」

ライ「自分がここに務める限り、資材はここに運搬されるし、給与も増える、出撃もできる。君たちにはいいことづくめなはずだ。それに、戦果をあげればさらに待遇も良くなる。自分をここなおいてくれた恩は、ここで返すべきだ」

むしろ、これ以外に返す機会などあろうはずがない

鈴谷「うーん……面倒臭く考えすぎじゃない?」

鈴谷「別に誰も迷惑って思ってなかったしさ、そう気負われると、逆に気を使うっていうかさー」

阿武隈「確かに……」

鈴谷にそう反論を受ける。

ライ「しかし、自分には今これしか」

武蔵「気負いすぎなんだ、お前は」

ポンと、頭に暖かいてが置かれた

武蔵「少しは気を楽にしろ。記憶がなくて焦るだろうが、急かすやつなど誰もおらんだろう?」

強引にわしわしと髪の毛をかき回される。少し痛いけど、じんわり伝わる熱に、なんでか少し、ホッとした



行き先を選択>>134
提督室 電
工廠 鈴谷
中庭 イムヤ
沿岸部 ???

工廠

提督の任に突如つかされて、実感がわかないまま、自分は提督室でぼーっとしていた。就任するのに収める必要がある書類はすべて終わらせてすでに郵送させてしまった。やることがない

提督「見回りでも、してみるか」

今後は様々な施設に自らの手で整備を行き渡らせなければならない。どこがダメでどこがいいのかも確認するために、改めて鎮守府内をみて回ることにした

ーーー工廠ーーー

ライ「相変わらず、寂しいところだな」

近代化改装や建造などでずっとけたたまし筈の工廠も、わずかな火花さえ起きない冷え切った鉄の広場だ。ここから自分がここを変えていかなければ……

鈴谷「あれ?なにしてんのー?」

突然の声に振り返ってみると、工廠の入り口に鈴谷が立っていた。少し遅れてここにきたのだろうか

ライ「いや、提督としてここで職務を行うのなら、改めてここを見回りして、現場の把握に」

鈴谷「かたっくるしいなーもー」

言ってる途中で鈴谷が声をあげ、背中に回り込みタックルをかましてきた

ライ「わっ……一体なんだ」

鈴谷「せっかく就任初日なんだしさ、そういうめんどくさい事明日にして今日は派手に遊ばない?」

ニマニマと笑いながら誘ってくる鈴谷には、どこか妖しい魅力が漂っている

ライ「そういわれても」

鈴谷「頭硬いよー?ライは私とおない年くらいなんだからさっ、少し遊んだ方がいいって」

そういう、ものなのだろうか、なんだかいいように流されている気がするが……

△じゃあ行こうか
×こんどな、こんど
>>138

kskst

安価舌で×をば



ライ「こんどな、こんど」

鈴谷「えー、ノリ悪ー、石頭ー、おじいちゃんヘアカラー、幻の美形ー」

鈴谷は口を尖らせブーブーと悪口を垂れ流す……最後のはなんだ?嫌味か?

ライ「そうはいっても、この鎮守府をしっかり把握するのは大事な事だし、第一、遊ぶって何をするつもりなんだ」

鈴谷「そりゃー街に繰り出してさ、カラオケとかーボーリングとかー」

ライ「お金、あるのか?まだ上がった給与は与えられてないだろう」

鈴谷「あ」



鈴谷「……お金、かして?」

ライ「自分も持っていない」

鈴谷「あーーーんもーーーーー!!」

駄々をこねられても困るのだが……

ライ「だからこんど……そうだな、今週末にはここに給与が与えられる。そしたら出かけよう」

鈴谷「……約束する?」

ライ「あぁ」

鈴谷「なら、いっかな!今日は勘弁してやんよー」

ポスポスと肩を叩いたあとに宥然と鈴谷は去っていった。しかし、鈴谷は工廠に何をしにきたんだ……

行き先を選択>>145
提督室 電
中庭 イムヤ
港 阿武隈
艦隊寮 榛名 武蔵

艦隊寮

ーーー艦隊寮ーーー

ライ「ここも、整備してあげないとな」

この上なく無駄に高い完成度で再現された艦隊寮はまさにボロアパートのような外見だ。今後は金銭の心配も少しずついらなくなるだろう、ここにも手を加えなくては……

ライ「そういえば、中はどうなっているんだろうか」

勝手に入るわけにはいかないが、せめて部屋の状況を把握したい。トイレや風呂はどうなっているのか……

武蔵「ん?何をしている?覗きか」

すると隣から武蔵に声をかけられた。格好をみるに、先ほどまで部屋にいたのだろうか

ライ「改めて鎮守府内を見回りして、改装が必要なところを探してるんだ」

武蔵「ほぉ、提督業が板についてるじゃないか」

ライ「だが、ここに限っては中の間取り等がわからないから、どう改装すればいいのか……資料もなぜかないし」

武蔵「ん?ここも改装するのか?」

ライ「え?あぁ……まぁ、みてくれは良くないだろう」

武蔵「んー……みればわかるかな。ちょっと一緒に来い」

ライ「うわ」

武蔵に引っ張られた。ずかずかと一つのドアの前に立つ。そして……

武蔵「榛名、邪魔するぞ!」バンッ

榛名「へ?武蔵?えぇ!?ラ、提督!?ナンデ!?や、やぁ!中に入ってこないでくださいーーー!!」

強引に連れ込まれてしまった……これは自分は悪くないと思う、というより、自分が悪くてたまるか

榛名「ううぅぅぅ……片付けもしていない部屋を提督に見られるなんて」

ラオウ(イメージよりも割とものがごちゃっとしてたな)

武蔵「ここが便所でここが風呂だ。そして見ての通り台所はない。食堂で取るからな、でここが物置で」

榛名「やめてぇ!」

ライ「なるほど、外見はともかく内装は意外としっかりしている。これなら外を少しいじるだけで良さそうだ」

榛名「何で普通に議論しているんですかぁ……」メソメソ

ライ(流石に無神経すぎたか)

武蔵「気にするな、この小物全般は阿武隈のものだろ」

榛名「それでも男の人に部屋を見られるのは抵抗があるんです!」



ライ(今、またしても阿武隈の事で地雷を埋めてしまった気がする。自分で踏み抜かないように気をつけよう)


行き先選択>>151
提督 電 イムヤ
沿岸部 ???

沿岸部

本当だ、ラオウいた。ラオウが提督になるSS書き溜めしてたからね、仕方ないね



夜も更けた頃、再び自分は沿岸部近くの倉庫にきていた。ゴミの回収も資材運搬と同時にお願いしたので、ここがゴミ満載の小屋である事はなくなるだろう、多分

ライ「……やはり、冷えるな」

春から夏に変わりかけてきたとはいえ、やはり夜になると海の近くは寒い。軍服は厚手でしっかりしているが、露出する首や手は今にも凍りつきそうだ

ライ「……ん?」

何となく違和感を感じて倉庫の中身を懐中電灯で照らして覗いてみると、再び真新しい紙袋がある。まだ何か捨てていなかったものだろうか……無性に気になり、中を見てみる

ライ「勲章……か?」

奇妙な勲章だ。華やかさはなく、白と黒だけで作られたもの。異様なほどに立体感がなく、まるで紙のように薄く感じる

ライ「……誰の、ものだ?」

この鎮守府では、勲章をもらうような武功をあげるようなものはいなかったはず、提督は無論、艦娘たちにも……

しかしその勲章が異様に気になる。調べてみようと思い、ポケットにしまいこんだ。

ゴミ回収の確認もすんだ。そろそろ戻るか……

???「……」
http://i.imgur.com/EPbdfxJ.jpg

ライ「なっ……!」

そして振り向いた瞬間、すでに眼前にいたのだ……例の深海棲艦が……

何故だ、何故こいつは殺しもしないのに自分につきまとう……そもそもこいつは何故陸に上がっているんだ。陸にはこれないはずではなかったか……

しかし、よく見てみると艤装を外している。なるほど、攻撃に必要な艤装がなければ侵略はできない

であっても危険には変わりない。そもそもこいつらと人間では、基礎的な筋力でまず圧倒的な差があるのだ

ライ「……何が、目的だ」

???「……?」

首を傾げる深海棲艦。そもそも言葉は伝わっているだろうか

ライ「こんな寂れた鎮守府に、それも提督になる以前から自分に接触してくる、目的は何なんだ」

そうだ、以前からこれが疑問だった。何故攻撃をしかけてこないのか、それが気になって仕方がなかった

???「そのうちわかる、テートク」

始めて聞いたこいつの声は、想像とは違い鈴のように透き通る声だった。眼前にあった顔をどかし、ゆっくり海の方へと歩いて、消えていった



ライ「なんなんだ……いったい」

わけもわからぬまま、混乱を引きずったまま、自分は鎮守府へと戻った

五日目……

ライ「うん……資材が増えたな」

昨日と今日輸送されてきた資材の資料をみる。武装開発はもちろん建造も行えるほどに溜まっていた。もちろん出撃だって何回も行える

榛名「ならばいよいよ、出撃ですか」

指令室に書類を届けにきてくれた榛名が目の中で闘志を燃やす。やはり艦娘とは、勇敢なものだ

ライ「あぁ。この鎮守府近海に生息する深海棲艦を叩く」

榛名「ついに、待ち望んでいた実戦が……」

ライ「今回の作戦を練る。他の五人を呼んでくれ。公式での初出撃だ、今後のためにも失敗は許されない」

榛名「わかりました……実力、見極めさせていただきます」

ここで華々しい勝利を飾れば、彼女も少しは自分に心を開いてくれるかもしれない
大事なのは、信頼関係だ。どんなに優秀な戦士と指揮官がいても、互いを疑りあっては戦果など残せるはずもない

ライ「……絶対に勝ってやる」

窓から覗ける海を見渡す。この海域にいるであろう『あの』深海棲艦を無意識のうちに……私は探し始めていた

ライ「この海域は、浅瀬に暗礁地帯があり非常に危険だ。この位置に追い込まれないよう、逆に敵をここに追い込むように六時の方角から敵を弾幕で奥へ奥へ押し込んで……」

阿武隈「ふんふん……」

電「なるほどなのです……」

鈴谷「……」ジー

イムヤ「……」ジー

ライ「この海域では強力な深海棲艦はあまり発見報告がない。過信はできないが……前半戦は武蔵と榛名が前にでて後ろから他三隻で援護、イムヤは少し離れた位置で待機、戦闘が開始されたらそれに乗じ魚雷で敵を……」

阿武隈「なるほど……」

武蔵「……」ジー

榛名「……あの、阿武隈」

阿武隈「ん?なに?」

榛名「こんなことを、作戦会議中に聞くのは気が引けるのだけれど……なんで、その、提督の隣に寄り添うようにして話を聞いてるの?」

ライ「ん?」チラ

阿武隈「ふぇ? ……うぇあわわわわ!!!」バババ

言われて左を見てみれば極めて至近距離に阿武隈の顔があった

鈴谷「いやー、真剣に聞いてたねー、阿武隈はもうライにメロメロー?ヒュー!」

阿武隈「そ、そそそそんなんじゃないし!」

イムヤ「いやいや、そんなんじゃない相手にあんな顔近づけないよ、ユー認めちゃいなヨー」

阿武隈「さ、ささ作戦会議中になにいってんの!?私は真面目に聞いてただけで……もー!ライ提督もなんとか言ってやってよー!」

いきなり話を振られた、なんとかって……

△ 確かに、真面目に聞いて欲しいな
×まんざらでもない
>>161

×

ライ「なにかって、感じたこととか?」

阿武隈「そう!ビシッと言ってあげて!」

ライ「まんざらでもない」

阿武隈「」

鈴谷「お、おぉー……」

イムヤ「ひ、ひえー」

武蔵「ぐっ……くふふ……」

榛名「ま、まぁ……///」

電「?」

阿武隈「な、な、ななな、そ、そーじゃな、そーじゃななな……///」

ライ「阿武隈のような子から親しく思われているなら、悪い気はしないな」

阿武隈「ななななな、なー!!もーばかー!そーじゃなくてー!」

鈴谷「怒らない怒らない」

イムヤ「まんざらでもないまんざらでもない」

武蔵「あっはっはっは!春真っ盛りだな!!」

榛名「……///」

阿武隈「」

電「えーと……作戦会議はどうしたのです?」

ライ「あっ」

阿武隈「はうはうはぅうぅうぅぅー……///」

武蔵(悶え転げてるな)

なんだかんだで会議終了

ライ「出撃時刻はヒトフタマルマル、それまでは各自出撃に備えて待機せよ、以上!」

武蔵「了解」

榛名「了解しました!」

電「了解なのです!」

鈴谷「りょうかーい」

イムヤ「うん、わかったー」

阿武隈「りょ、りょ、りょうかい……」



ライ(出撃までまだ時間があるな……すこしで歩くか)

行き先を選択>>165
提督室 榛名
工廠 イムヤ
食堂 電
中庭 阿武隈
港 武蔵
艦隊寮 鈴谷

食堂

ライ(そういえば、朝からなにも食べていないな……)

空腹で頭に栄養が回らないのは、死活問題だ。一瞬の戸惑いが彼女たちの命に関わる

ライ(腹六分目まで何か食べるかな……)



食堂には未だに補給艦の役割を果たすものはおらず、自分で作らなければならない。昨日届いた資材の中から保存食の乾パンと干し肉があった。水を汲み、それらをテーブルにおき席につく

ライ「いただきます……」

我ながら質素な食事だが、実際のところ食べるものを選ぶような余裕はない。このあとの作戦のことで頭がいっぱいだからだ

電「あれ?司令官さん?」

声をかけられたので振り向いてみると、そこには電がいた

電「ごはんなのですか?」

ライ「あぁ、空腹は大敵だ……電は?」

電「朝はお腹いっぱい食べたのです!」

ライ「そうか、ならいいな……電は、出撃は始めてだな」

電「はいなのです!」

ライ「……怖くないのか?」

電「……ちょっとだけ」

電「でも、みんなを助けるためなら、勇気が出るのです!」

ライ「……そうか」

この子は、もしかしたらこの鎮守府で一番強い子なのかもしれないな……

ごめんなさい……比叡がカワイイからほったらかしにしてました。比叡カワイイ



ヒトヒトサンマル……作戦開始30分前

提督室で、自分は海図を見つめていた

ライ「……この、地形は」

自分は、この地形を、知っている
いま海図でみたから、ではない。この地形の特色、危険地帯、有効な戦法、すべてが頭の中に収まっている

ライ「……自分は、一体、何者なんだ……」

考えても仕方がないこと、だが、考えずにはいられない、なぜ自分は、こんなことを知っているのか……



ライ「……時間か」

考えている内に、時間は何時の間にか10分前に迫っていた。
考えることはあとでできる……今はただ、彼女たちを生き残らせることに全力を費やす

私の、初となる艦隊指揮が、はじまる……

オート
マニュアル
>>169

おーと



ライ「……みんな、準備はいいな?」

阿武隈「はいっ!」

武蔵「あぁ」

電「なのです!」

ライ(こっちはいいけど……)

榛名「負けられない負けられない負けられない負けられない」ブツブツ

鈴谷「あ、う、え、と、が、がんびゃりゅ!」ガチゴチ

イムヤ「んー……」ゴシゴシ

ライ(こっちはひどいな……気負いすぎ、緊張しすぎ、緊張感なさすぎ……)

ライ「阿武隈」

阿武隈「うぇっ、な、なに……です、か?」

ライ「実戦の空気を最も良く知っているのは、君だ。君を旗艦とした編成とする。うまくみんなをまとめるんだ」

阿武隈「わ、私が!?え、えと」チラ

武蔵「ん?なんだ?」

阿武隈「い、いや、その、頑張ります!」

ライ「頼んだぞ」



TURN2
エクステンドレンジ

ライ「……」

感じるのは、磯の香り波の音、そして潮風

ライ「……なんで、私も出撃しているんだ」

甚だ、疑問である

武蔵「おや?艦娘は戦闘に参加させて、自分が危険なのはイヤか?」

ライ「そうじゃない、出撃そのものは構わないが、戦力にならないと言っているんだ」

榛名「確かに……」

私が今乗り込んでいるこの船は、通称PUKAPUKA丸。正式名称は……たしか…。忘れた
PUKAPUKA丸には艦娘が扱う艤装を生体ユニットによって搭載した、『艦』のまま深海棲艦に対抗するためのものだ。そして、操縦に関する一切合財を一人で行うことができる

……しかし、艦娘とは違うところもある。まず第一に、人型ならではの利点、急速旋回を行うことができない
艦娘は、曲がりたいと思った時にすぐ曲がれるが、PUKAPUKA丸はあくまで普通の艦であるため、舵をきってから時間をおかなければ旋回を開始しないのだ

第二に、そもそも人が乗る必要がある船は危険なのだ。人間を食らう深海棲艦は真っ先にこの船を狙ってくる。それが他の船の陣形を崩す原因にもなりうる



だが……それは逆に考えれば、敵の狙いを集中させる最高のおとりであるということ

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