ハルヒ「…………」キョン「よ、よう、ハルヒ……」 (38)


―――某月某日。授業で使用した水着を教室に忘れた私は、うす暗くなり誰もいない教室に一人向かっていた。
教室までもう数歩、というところで私は聞き覚えのある声が私の名前を呼んでいた。

一体なんで私の名前を?

そんな疑問が頭をよぎった時には、もう私は教室に足を踏み入れていた。そこで、私は見てしまった。

私の名前を呟き、
私の水着を被り、
私の机の上でブリッジをしながら
自分の性器をこすりあげている―――キョンの姿を。

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キョン「どう、したんだ……?こんな―――時間に」

キョンは額にひどく汗をかいていた。それは私に見つかった冷や汗なのか、それとも何かの運動したからなのか。

ハルヒ「別に、ただ忘れ物―――あんたの被っているその水着を忘れたの思い出して取りに来たのよ」

キョン「そ、そうか……」

私は率直に聞いてみた。

ハルヒ「―――で、なんでアンタは、私の水着を被って―――」

ハルヒ「―――私の机でブリッジして―――」

ハルヒ「―――その、股間のモノを触ってるのかしら―――?」

と。


キョン「―――――――――これは、」

キョン「これは、罰ゲームなんだよ」

キョンは真っ直ぐな目で私を見つめた。

ハルヒ「…………罰ゲーム?」

キョン「そうだ、罰ゲームだ。実は、谷口との遊びでな―――。恥ずかしながらそれに敗北した俺は、
罰ゲームとしてこんな事をやらされている訳だ」

ハルヒ「―――つまり、私は罰ゲームの似合う女ってわけ?」

少し、哀しかった。


だけど、キョンはそれを否定した。

キョン「―――いや、それは違うぞ」

ハルヒ「何が―――違うのかしら?」

思わず、語気が強まってしまう。

キョン「おまえは―――勘違いをしている」

ハルヒ「勘違い?それは―――何がかしら」

キョン「罰ゲームの、内容だ―――」

ハルヒ「どう―――違うのかしら?」

こんな言い方しかできない自分が、また少し嫌いになった。


キョン「罰ゲームの内容は、こうだ―――」

キョン「―――『自分の中で最も可愛いと思う女子の持ち物を使って、自分の思いつく一番相手にやって欲しい事をする』」

ハルヒ「――――――ッッ!!!」

私はキョンのその言葉に、ただ驚くことしかできなかった。
だって、キョンのその言葉を信じるとすれば、それは―――。

キョン「すまない、ハルヒ。罰ゲームとはいえ、お前の水着を汚してしまった。
罰ゲームの内容がいちばん可愛いだったから、俺にはハルヒ以外思いつかなかったんだ」

驚愕は確信に変わった。だけど―――そんな、まさか。
キョンが―――わた、私を可愛いって―――?


ハルヒ「―――別に」

ハルヒ「罰ゲーム、なんでしょ。どんな事してそうなったか知らないけど。やっぱり約束は、守るべきよ」

素直に嬉しいと言えない自分は、やっぱり嫌になった。けどそれ以上に、キョンの言葉が嬉しかった。

ハルヒ「どうせ、とろいアンタは谷口がその罰ゲームを提案するまで知らなかったんでしょ?どういう罰ゲームなのかを」

キョン「あぁ、恥ずかしいことにな」

ハルヒ「―――そう。なら、いいわ」

ごめんね、素直に許してあげるって言えなくて。


キョン「許して―――くれるのか?」

ハルヒ「別に、怒ってなんかいないわよ」

キョン「そうか。ありがとう、ハルヒ。やっぱりお前は最高だ」

どうしよう。顔が赤くなってるのが自分でもわかる。

ハルヒ「―――バカキョンに言われても何ともないわよ。それより、谷口の連絡先、教えてくれる?」

頑張って冷静ぶろうとする。逆回転しそうになる頭を精一杯正常に動かして、今一番すべき事をする。

キョン「いいけど、どうするんだ?」

ハルヒ「別に。ただ、谷口に協力してほしい事が出来ただけよ」

うん。ただ、谷口に協力してほしいだけ。

キョン「そうか。じゃあ、後で送ろう。そうだ、もう遅いし、一緒に帰るか」

ハルヒ「―――――――うん」

やっぱり、私のキョンは私にとっても優しい。大好きだよ、キョン


キョンに送ってもらって数十分後、私が仕度をしているとキョンからメールが来た。
件名には『谷口の連絡先だ』と書かれていた。キョンらしい。そう思うと、頬が少し緩んでしまう。
だけど、今は仕事が大事。そう言い聞かせて、谷口に電話をかける。

谷口「はい、もしもし?」

ハルヒ「あ、谷口?私だけど」

谷口「その声―――まさか涼宮か!?な、なんで俺の番号を!?」

ハルヒ「どうでもいいでしょ?それより、今時間ある?」

谷口「あ、あ、あるけど、なんだよ?」

ハルヒ「ちょっと手伝ってほしいのよ。あそこに来てくれる、あの―――」

私は、あまり知られていない人気のない工場跡に谷口を呼び出した。

ハルヒ「じゃあ、30分後。遅れたら承知しないわよ」

じゃあね、と私は通話を終えて、キョンの待ち受け画面に戻る。

ハルヒ「いってくるね、キョン」

私は携帯をしまい、家を出た。


さて、と。
私は工場の扉近くの物陰にカッパを着て身を隠し、谷口を待つ。
予定ではあと十分後にはつくと思ってたけど、意外に早く谷口は工場に来た。

谷口「す、涼宮ー?来たぞー」

コツコツと谷口の足跡が聞こえてくる。私はぎゅっとスタン警棒を握りしめた。

谷口「涼―――ごっ」

谷口が入ってきた瞬間、私はスイッチを押しながら谷口の頭部を殴りつける。
谷口はビクビクと痙攣しながら泡を吹いた。気持ち悪い。


出来るならここで谷口を始末しておきたかったけど、流石に重い。
しょうがないので物陰に谷口を縛り付けておいた。

ハルヒ「全く―――キョンに私の水着を着せるのは私との五番目の時にやらせようと思ってたのに。
なんでアンタとの罰ゲーム如きに先を越されるのよ。キョンが飽きちゃうじゃない。キョンが私を愛してくれないじゃない」

谷口の鼻の近くにシンナーを置いてイヤホンを付けさせる。イヤホンからは一定リズムで音の鳴るテープを流してある。

時計を見るともう11時前だった。

ハルヒ「早く帰らなきゃ」

私は工場を後にした。


昨日は谷口のせいであまり眠れなかった。
谷口のあの気持ち悪い様子を忘れる為にキョンの声を録音していたものを聞き続けていたら、
いつのまにか朝になっていたからだ。

ハルヒ「―――キョンはまだみたいね。キョンが来るまで、少し―――」

いつの間にか私は机に突っ伏していて眠ってしまっていた。


それからしばらく、学校では谷口の話題ばかりだった。
実行犯としてはうるさい事この上ないが、キョンの少し不安な顔を見れたので良しとする。
またキョンの表情ファイルが増えた……♪

それから数日後、私は学校にハンカチを忘れてしまった。


ハルヒ「―――おかしいな。教室で落としたのかな」

私はまた、うす暗くなり誰もいない教室に一人向かっていた。
教室までもう数歩、というところで私は再び聞き覚えのある声が私の名前を呼んでいた。

まさか、と思いつつも教室に足を踏み込んだ。そこで、私は見た。

私の名前を呟き、
私のハンカチで股間を包み、
私の机の上でがに股になりながら

自分の性器をこすりあげている―――キョンの姿を。


キョン「ハルヒ―――いつから、そこに?」

キョンは額にひどく汗をかいていた。それは私に見つかった冷や汗なのか、それとも何かの運動したからなのか。

ハルヒ「816番目の―――私からよ」

どうやら私は無意識のうちに自分の名前を数えていたらしい。

ハルヒ「――――――で」

頭を切り替え、私は率直に聞いてみた。

ハルヒ「これは一体、どういう事なのかしら―――?」



ハルヒ「これも―――」

ハルヒ「罰ゲームなのかしら―――?」

今度は一体。

キョン「違うんだ、ハルヒ。今回は、違う」

ハルヒ「どう―――違うのかしら」

だれが私のキョンを汚したの。


キョン「これは―――遺言なんだ」

ハルヒ「遺言―――?」

―――まさか

ハルヒ「それは―――誰の?」

キョン「もちろん―――谷口のだよ」

―――まさかまさかまさか

ハルヒ「谷―――口―――?」

―――キョンに―――ばれたの―――?


ハルヒ「―――何言ってるの?まだ谷口が殺されてるとは―――」

まだ、まだよ―――。まだ、わからない。

キョン「あぁ、勿論その通りだ。けど、前に谷口に頼まれたんだよ」

―――前に、頼まれた。

キョン「もし俺の身に何か起こったと思ったなら、ソレをやってくれってね―――」

ハルヒ「―――ソレが」

キョン「―――そう、コレだ」

思わず睨みつけてしまう。ごめんねキョン。


ハルヒ「つまり―――何?『もし俺がが死んだら涼宮のハンカチを股間に巻いて命の種を吹き込んでくれ』
そういう―――事かしら」

なんで私にやってくれないの。

キョン「―――いや、それは違うぞ」

ハルヒ「何が―――違うのかしら?」

キョン「おまえは―――勘違いをしている」

―――? どういうこと

ハルヒ「勘違い?それは―――何がかしら」

キョン「遺言の、内容だ―――」

ハルヒ「どう―――違うのかしら?」


キョン「遺言の内容は、こうだ―――」

キョン「―――『自分の中で最も可愛いと思う女子の持ち物を使って、その女子とやりたい事をする』」

ハルヒ「――――――ッッ!??」

え―――?それって、え―――?

キョン「すまない、ハルヒ。遺言とはいえ、お前のハンカチを汚してしまった。
遺言の内容がいちばん可愛いだったから、俺にはハルヒ以外思いつかなかったんだ」

それって、つまり、そういう事なの―――?

ハルヒ「―――別に」

ハルヒ「遺言、なんでしょ。どうしたそんな事遺言にしたのか知らないけど。やっぱり遺言は、守るべきよ」

―――だめ、にやけちゃう。こらえなきゃ―――!

ハルヒ「けど―――キョン。ホントに私ので良かったの?谷口なら、もっと他の女子のも―――」

キョン「いや、谷口も満足だと思うぜ。あいつは前から、ハルヒと俺が付き合えば世界はもっと素晴らしくなると言ってたし」

―――良くやったわ谷口。


キョン「あぁ、もし式を挙げた時には俺が幹事をやりたいとも言ってたな」

ハルヒ「そう、谷口が―――」

ハルヒ「まぁ、故人の願いは叶えてやるべき―――よね」

―――感謝しなさい谷口。自分の言葉にね。

キョン「許して―――くれるのか?」

ハルヒ「別に、怒ってなんかいないわよ」

ホント。今はキョンのその言葉で胸がいっぱい。

キョン「そうか。ありがとう、ハルヒ。知ってたけどお前は最高だ」

ハルヒ「―――バカキョンに言われても何ともないわよ」

ウソ。嬉しくて今すぐにでも抱きつきたい。

キョン「そうか。じゃあもう遅いし、一緒に帰るか」

ハルヒ「―――――――うん」


その日の夜。私は谷口を縛り付けている工場に来た。

谷口は数日食べ物どころか水も飲んでいないせいか目は虚ろで今にも死んでしまいそうだった。

ハルヒ「救急車は呼んだわ。ものの数分で来るでしょ」

谷口は反応しない。

ハルヒ「私の事は全部忘れなさいよ。誰かに言えば、今度こそ、よ」

ハルヒ「それと―――自分の言葉に感謝しなさい」


翌日、谷口は学校に普通に登校してきた。
いきなり消えていきなり現れた谷口に、クラスメイト全員があれやこれや聞いていたが、谷口は何も覚えてないらしかった。
それも演技ではなく、本当に谷口本人も何が起こったのか分からないという。
―――まぁ、そういう事もあるんでしょうね。
私は睡魔に負けて、眠りに落ちた。


その日の放課後。私は筆箱を忘れた為、またもやうす暗くなり誰もいない教室に一人向かっていた。
教室までもう数歩、というところで私は聞き覚えのある声が私の名前を呼んでいた。

私はほぼ確信を持ちつつも教室に足を踏み込んだ。そこで、私は見た。

キョン「ハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒハルヒ」シコシコ

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キョン「ハッ―――ハァッ―――ハァ―――ハッ!!??」

ハルヒ「――――――」

キョン「ハル、ヒ―――!?」




キョン「よ、よう、ハルヒ……」

ハルヒ「…………」




終わり

終わりです。皆さんご朗読ありがとうございます。

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