安価で8レス物語 (90)


・安価3つでお題が決まってから、8レス完結の物語を書きます。

・1つの物語が完結したら、時間に余裕があれば、またもう1つ物語を書きます。

・トレーニングも兼ねて、まったり書いていきます

お題
>>2
>>3
>>4


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1399244891

スポーツ

人形

戦闘機

把握しました。

人形「私の大好きなスポーツの世界」

のタイトルで、書き終わり次第投下していきます。

トリップミスでした。
こちらのトリップで投下します。

#1#


アリス「お人形さん、今年はどんなお話を聞かせてくれるの?」


――金髪碧眼、足のない少女が目を輝かせる。
  年に一度の人形劇を期待する目だ。
  電動車椅子のバッテリーが切れかかって、錆びた蝶番のような音を立てている。
  後で取り替えなくては。


人形「はい。ご主人様。今年もたくさん遊んできました。その話をさせて頂きます」

アリス「まあ、楽しみ」

人形「――いつものように学業に励み、その放課後の出来事で御座います」


#私はゆっくりと語り始める。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


ミスティ「ハロー♪ 人形ちゃん♪」


#ミスティは私の幼馴染で、歌と運動と料理が得意な女の子だ。
 私と違って学校のアイドルのようで羨ましい。


ミスティ「私、部活入ったんだ。貴方は?」

人形「部活? 私、運動苦手だから……」

ミスティ「なにも運動部だけが部活じゃないのよ。私は『アサルトセル部』に入ったんだ♪」

人形「攻撃細胞(アサルトセル)……? 随分と剣呑な名前ね」

ミスティ「アサルトセルっていうのは、ネットゲームのタイトルよ。危険な部活なんかじゃないんだから」

人形「へぇ……やっぱり名前通り、戦ったりするゲーム?」

ミスティ「そんなところね。……そうだ。私これから部活なんだけど、見学しない?」

人形「うん」



#2#


#アサルトセル部の部室は、小奇麗なオフィスのようだった。
 だが異様な姿で鎮座している、2機の大型のBMD(ブレイン・マウント・ディスプレイ)がオシャレな雰囲気を壊す。
 これは、頭に直接接続してデータのやり取りをするヤツだ。
 私は最初から人形なので、インプラント手術は要らない。


#数人の男女と挨拶をすると、彼ら部員がアサルトセルについて説明を始める。


部長「アサルトセルっていうのは、AH社が発売したスポーツ系フライトアクションだよ。その手のゲームをやったことは?」

人形「エースコンバットは友達のを借りて遊んだことがあるわね」

部長「なら話は早い。アサルトセルはアメリカで大流行中のゲームだよ。生憎日本では流行っていないけど」

人形「なるほどねぇ……で、あのBMDを使うの?」

部長「そんなところさ」


#機械が軽い蒸気を吹きながら開く。
 BMDが中の男性を吐き出したのだ。
 男は悪態を付きながら、首に接続されたケーブルを外す。


部員「ふぅ……『ニンジャ』のヤツめ、アイツは次見かけたら殺す」

部長「物騒だね。そしてお疲れ様」

部員「そこの美女は誰だい?」

人形「見学者です。それに人形なので、生物的な性別はありませんよ」

部員「おいおい、口説いたつもりなんだが……」


「まあいい。で、お前さんは黒い機械を眺めてるだけで満足できるのか?」
「入りなよ。まさに次世代の体験ってヤツだ」

#3#


#上空。ご主人様の目の色のように澄み渡る青色。
 真下は海。空と同じ色。
 猛禽の翼が、どこまでも続く晴天を裂いてゆく。
 私はゲームの中にいる。


部長≪君が乗り込んだのは『ラプター』。何をしても強い優秀なステルス戦闘機だ≫

人形≪……なるほど、『方位280に旋回』と念じただけで旋回してくれるのね≫

部長≪覚えが早いね。さすが人形だ。君のコールサインは『チャッキー』だ≫

人形≪チャッキー了解。私の任務は?≫

部長≪敵輸送機の撃破だ。……ほら、ミニマップに表示された赤いターゲットがあるだろ。それを追って倒すんだ≫


#通常航行で輸送機に近づく。
 すると突如、ミニマップの敵影が増える。敵の飛行隊だ。
 

敵戦闘機A≪敵は一機だ。『レッドアーリマー』が最強部隊であることを思い知らせてやれ!≫

敵戦闘機B≪『ニンジャ』了解、祖国のために!≫

敵戦闘機C≪輸送機だけは死守するんだぞ。いいな?≫

敵戦闘機D≪死守? 殺して守るの間違いだろう? ハハッ≫

部長≪敵は4機か。ラプターには計8基のミサイルがある。敵の背後を取って確実に始末するんだ≫

人形≪チャッキー交戦(エンゲージ)≫

――――。

敵戦闘機B≪急旋回!! クソッ! 内蔵が持ち上がる……ッ!!≫

敵戦闘機A≪『ニンジャ』! 敵がお前のケツにピッタリつけてるぞ! 回避しろ!≫

敵戦闘機B≪やってる……畜生。いたぶりやがって……≫

部長≪敵機、ガンの射程内≫


#機銃のリズムに合わせ、敵の装甲がバリバリと裂けていく。
 海原の上を敵の機体が赤く燃え上がる。そして敵機が派手に沈没する。


部員≪おいおい、俺を倒したヤツを最初にガンキルしやがったぜ≫

人形≪撃破。ああ、敵を殺すのが気持ち良いのかもしれないわ。ミサイルなんて要らない≫

ミスティ≪貴方ってそんなにドSだったっけ?≫

人形≪いけないものに目覚めてしまったみたい……体のゾクゾクが止まらないの……≫





#4#


敵輸送機≪畜生! 畜生ッ!! 護衛は何をやってるんだ!≫

人形≪残るは裸のお姫様ね……ガンの射程内≫


――――。


部長≪チャッキー。よくやった。任務は終了だ。機械から出てくれ≫

人形「……ふぁぁっ。面白かったぁ……」

部員「おいおい……あの難ミッションを初見で、ミサイル無しで攻略するなんて……」

部長「ああ。彼女は素養の持ち主みたいだね……なあ、3ヶ月後に全国大会があるんだ、出てみないかい?」


―――――三ヶ月後。


実況「アサルトセルの全国王者に輝いたのは、なんと新人選手!! 『人形』選手です!!」

人形「さあ、跪きなさいッ、愚民ども!!」

#私のファンたちが一斉に盛り上がる。彼らは皆、私の下僕だった。

実況「ハハハ……いやあ。見事なプレーでした」

人形「当然。クイーンは1人、私だけなのだから」

実況「流石で御座います。女王様。さあ、こちらが賞金200万円です!」


――。


人形「アサルトセル全国大会、ザコしか居なかったわ。楽勝楽勝」

ミスティ「さっすが私の幼馴染だわ。賞金は何に使うの? 新しい腕とか?」

人形「何言ってるの? もちろん部員の皆で山分けだよ」

部長「……驚いた。君、奢り高ぶってるみたいだったから、てっきり独り占めにするものかと」

人形「勘弁してくださいよ部長。あのドSは盛り上げるための演出ですってば」

部員「じゃあSじゃないのか?」

人形「いや、ドSですけど。ああ……敵戦闘機を蹴散らすあの瞬間、たまらないわ……」

ミスティ「ねぇ……賞金の札束の間にこんな『名刺』が挟まってたんだけど……」

人形「『名刺』……? なになに……『AH(アフターヘブン)社』の社長、出薄 薪名(でうす まきな)……」

ミスティ「AH社って言ったら、アサルトセル作ったとこじゃん!!」

人形「そうだっけ? 裏に何か書いてある……」


「是非AH社本社を訪ねて頂きたい。大会優勝者と一度話がしてみたいのです」
「まずご連絡ください。お互いが会えるスケジュールを確認しましょう」

――アフターヘブン社社長   出薄 薪名





#5#


薪名「やあ。やっと会えましたね」

人形「えっと……本日はお日柄もよく……」

薪名「緊張しないで。……私はね。貴方に真実をお伝えしたいのですよ」

人形「どういうことですか?」

薪名「オンライン戦闘機アクション、アサルトセル。……これがただのゲームではないとすれば……?」

人形「えっ……」


「西暦2156年。火星のテラフォーミングが完了しました」
「新天地たる火星は、同時に紛争の温床でもあります」
「紛争が激化すると、すぐに戦闘員が足りなくなるので、無人機の技術がより進歩したのは記憶に新しいですよね」
「ですが高度で複雑化した戦場は、AIによる自動操縦ではまだ厳しいところがあります」
「だから、貴方のような優秀なパイロットが無線で操縦する必要がある」


人形「えっと……つまり。アサルトセルは、パイロット養成プログラムだったということですか?」

薪名「その通り。そして、貴方さえよければ、火星でパイロットをやって頂きたいのです」

人形「お断りします。私には、アリスというご主人様が居ます。年に一度しか会えませんけど、彼女のもとを離れるワケにはいきません」

薪名「アリス……。彼女の名前は、『アリス・マーガレット』ですよね」

人形「どこでその名を?」

薪名「彼女は『アメリカ・アフリカ・アジア火星連合(A3MU)』のアジア第3ブロックの所長です」

人形「そんなバカな。私は火星に行ったことなんてありませんよ!」

薪名「……彼女とどのようにして会話していたのか覚えていますか?」

人形「そんなの……当然……あれ……?」

薪名「彼女の家に行ってみなさい」


――――――。


人形「ご主人様……スケジュールにない訪問をお許しください……」


#彼女の家は、典型的な洋館だ。西暦2172年だというのに、まるで16世紀のような建築……。
 人の気配はない。
 彼女の部屋のドアを恐る恐る開ける。


人形「これは……」


#黒い機械がそこにあった。アサルトセルをプレイするのに必要な物と同じ――。
 ブレイン・マウント・ディスプレイ。
 繰り返しになるが、これは、脳に直接つないでデータのやり取りをする機械だ。
 
 ――全て察しがついた。
 私は毎年、時期が来ると、無意識の内にこの機械に入っていたらしい。
 そして幻影のアリスに、物語風でその1年の報告をしていた。
 そして会話データは保存され、火星のアリスに送られる。
 
 ご主人様なりの考えがあるのだろう。
 だが……。

 敵機を撃墜できなかったときのような痛烈な飢え。
 ご主人様に会いたい。




#6#


#火星。アジア第3ブロック 所長室


人形「『A3MUは、大規模油田を巡って現在イスラエル軍と交戦中』……ですか」

アリス「ずっと騙していて……ごめんなさい」

人形「――なぜウソをついていたんですか? 火星に居るなら、そう仰って頂ければ……」

アリス「……貴方には、火星に来て欲しくなかった。戦うことになるから……」

人形「戦ったとしても、無人機の操縦ですよね?」

アリス「遠隔操縦はもう信用できない時代になった」

人形「えっ……」


「ジャミング技術の進歩とジャミング回避技術の進歩は、まるでいたちごっこといったところで……」
「2156年から今年72年までは、『ジャミング不要論』が囁かれるほど、ジャミング回避技術のほうが常に優れていた」
「つい半年前、イスラエル軍が新たな電子戦兵器を開発して、わが軍の無人機20機が通信不能に陥る大事件が発生した」
「無人機は自動操縦で基地に帰還。結果、基地の場所がバレて基地を移転したばかりで……」


アリス「なんでのこのこと基地に帰る仕様にしたのか……16年も電波妨害を軽視してきた驕りとしか言いようがないわね」

人形「……妨害技術が進歩したから、直接操縦する必要があると?」

アリス「そうよ……けど、死んだら終わりよ。この基地には互換性のある機器が存在しないから、貴方の人格データは複製できない」

人形「撃墜されればそれで終わり。いいですね。燃えてきましたよ」

アリス「ふざけないで!! いい? 絶対に戦わないで」

人形「……分かりました。ご主人様」


#数日後。
 私は、次の地球行き定期船を待っていた。
 ご主人様に「ここは危険だから帰って」と言われてしまったからだ。
 談話室にて。


人形「へっへーん。私の勝ちだね♪ じゃあ君は私の下僕ということで」

兵士A「マジか、嬢ちゃん強いな。おい、だれかコイツにチェスで勝てるヤツはいないのか!?」

人形「さあ、次は誰が私の下僕になるのかしら?」


#唐突に鳴り響くアラーム。談話室が赤く染まった。
 そして数秒後、数度に渡って爆発音が鳴り響く。


アナウンス「敵襲!! 敵襲!! 水準2!! FK93迎撃システム破損、エンジニアは急行せよ!」

人形「爆発の方角……ご主人様の所長室がある場所だ!」



#7#


人形「ご主人様……ご主人様!!」


#ご主人様が赤い。血で染まっている……。
 爆発で吹き飛ばされ、体中にガラスや鉄片が刺さっている。


アリス「ああ……お人形さん……頼みがあるのだけど……」

人形「傷が開きます、喋らないでください!!」

アリス「格納庫に行きなさい……さっきのミサイルでパイロットが全員死んだ……」

「もうパイロットは貴方しかいない……。お願い、私の代わりにこの基地を守って……」


――――――。


人形≪管制塔、無事離陸した、指示をくれ≫

管制塔≪北北東に敵影が確認されている。追って撃破してくれ≫

人形≪正確な方位と高度は不明なのか? どんな敵を追えばいい!?≫

管制塔≪すまない、敵は電子戦兵器だけでなく、スパイも紛れ込ませていたようだ。すでに多くの施設が破壊されている≫

人形≪なぜ無線は通じるんだ?≫

管制塔≪半径2km限定の……まもなく断絶……≫ザーッ

人形≪はぁ……無線だけじゃない。HUDと、ミサイルのロック機能も破壊されてるぞ≫

人形「機銃しか使えませんってことね……」


―――――――。


「流石火星だ。重力が弱いから、少し吹かすだけで十分に加速される」

「……あのゲームは優秀ね。今実際に操縦しても、ゲームと錯覚してしまうほどに……」

「そしてあの油田が、イスラエルとA3MUの紛争の原因……」

「さて、敵はどこだ……ご主人様の仇を討つんだ」


#ミサイルアラート!! 私はフレアを撒いて急速旋回、無事回避した。
 垂直上昇機(VTOL)が多数、一斉に浮上して私を包囲する。
 全部で8機……。


敵戦闘機A≪飛んで火に入るなんとやら……。粗末な野犬狩りだ、しくじるなよ≫

敵戦闘機B≪ネザーゲート了解、FOX2 FOX2!! 躱されたッ!?≫

敵戦闘機C≪ネザーゲートの攻撃を躱すか……逸材だな≫

人形≪はぁ……下僕にもできない粗製パイロットね。400発ちょいの機銃だけで全員潰してあげる≫

敵戦闘機D≪バカなッ! 急に背後に現れたぞ! くそッ撃たれた! 俺の速度がどんどん落ちて……≫

人形≪メインスラスターだけ破壊したから、緊急脱出(ベイルアウト)しなさい≫

「貴方にも家族がいるんでしょ?」

……………。
…………。
………。
……。
…。




#8#


大佐「……機銃を全て撃ち終わったから不時着し、敵の基地に単身潜入したのか……?」

人形「結果はご覧の通り、貴方たちがジャミングで慌てふためいている間に、私が1人で基地を落としたの」

大佐「化けも……いや英雄(エース)とは、君のためにある言葉だろう。もしよければ本部の定例パーティに参加してくれ」

人形「アリス様が死んでいるんです。祝賀って気分じゃありません」

大佐「それと、是非我々の英雄として一緒に……」

人形「それもお断りします。定期船が来たら地球に帰ります」

大佐「そうか……君の意見を尊重しよう」


―――――――――――――――――――――――――――。


#地球、アサルトセル部の部室


ミスティ「――でさぁ。思うんだけど、やっぱりアサルトセルっていうのは、ゲームじゃなくてスポーツなんだよね」

人形「はぁ? 箱の中に入って機械に繋がれて、スポーツ要素皆無よね」

部長「いやいや、よく分かるよ。あんなスリリングな体験、他にはないからね」

ミスティ「でしょでしょ!? それに引き換えこの女王様は……」

部員「おいおい、女王様を悪く言うなよ」

人形「はいはい。そろそろお茶にしましょ。今日はシュークリームを焼いてきたのよ」

ミスティ「あれ……こんなところに名刺が……アフターヘブン社 出薄 薪名……今日の日付がサインしてある」

人形「ッ!? み、見せなさい」


「明日放課後、アリス邸を尋ねなさい。君にとって辛い場所かもしれないが、だが重要な人をそこで待たせよう」


―――――――――――――――――――――――――――。


人形「ご主人様……?」

アリス「正確には、アリスの人格を引き継いで、アリスを模した人形よ」

人形「出薄 薪名……アイツがご主人様を作ったんですか……?」

アリス「そうよ。とんでもないデウス・エクス・マキナね」

人形「彼に何のメリットが……」

アリス「彼はAH社の製品を売り込む格好で第3ブロックの復興に取り組んで、莫大な利益をあげたのよ」

アリス「きっとこれからもあの油田を理由に戦争が起こる。その度にAH社は儲け続ける」

アリス「貴方を送りこむことで、あの地域が泥沼の紛争地帯になることを予測していたとでもいうのかしら」

アリス「私をアンドロイド化することで蘇生したのは、軽い恩返しだとか何とか……」

人形「なんにせよ、またお会いできて…………」

アリス「あらあら。機械も泣くのね」

人形「ご主人様も……」

アリス「ええ……ずっと一緒よ」


END


以上で

人形「私の大好きなスポーツの世界」

の投稿を終了します。
感想や、物語上分からなかった点等ございましたら、どうぞ気軽にレスしてください。

次の物語は、16時ごろお題の募集を開始します。

追記

私の「詰め込み癖」が悪い方向に働いてしまった気がします。
とても8レスとは思えない文章量になってしまいましたが、ここまで読んで頂き誠にありがとうございます。



ちょっと早いですが。

次のお題
>>20
>>21
>>22

レズ

教会

折り紙



#1#


#スタンドグラスから差し込む日光と、仄かに揺らめく蝋燭のみが教会を照らす。
 教会のシスターが1人、大きな十字架の前に座り込み、震える手で紙を折ったりしていた。
 ラジオ越しに有名キャスターが語り掛けるのを、シスターの背後の女性が注意深く聞いていた。
 
キャスター
「有力マフィアグループ『マクガフィン』の一斉逮捕は目前です。
 現在もセントラルパークで大規模な銃撃戦が繰り広げられおり。容疑者の内2名が死亡しました――。
 付近での流れ弾に警戒するよう、ニューヨーク市警は注意を呼び掛けています」


シスター「その銃を下して下さい。お、お願いします……」

女「はぁっ……はぁ……。う、撃つわよ……」

シスター「止めて下さい……教会を穢したくはありません」

女「はぁ……?」

シスター「教会を血で汚すべきではないのです……」

女「うるさい……アンタに何が分かるのよ」

シスター「貴方は……被害者(ヒツジ)です……」





#2#


女「黙れよッ! 偉そうなことばかり――」

シスター「シーッ! 静かに。……聞こえますか?」

女「……ん? 何だよ」

シスター「警官隊がまもなく突入します」

女「ハハッ! 出まかせを……」


#「この教会を調べろ。こちらの方に逃げ込んだのは間違いない」
 「了解。合図で突入するぞ。容疑者は人質を取っているかもしれない。注意しろ」


女「ま、ま、マジかよ……」

シスター「私のローブの中、私の足元に隠れてください」

女「は……?」


#シスターは手に持っていた紙を折り畳んで、ポケットの中に入れた。


シスター「相手は警官です。シスターの体をまさぐるような真似はしないでしょう」



#3#


#勢いよく開け放たれ、5人の警官たちが飛び出してくる。
 彼らは口々に『クリア!』と叫びながら、あちこちにショットガンを構えたりしていた。
 一番太った男がシスターに歩み寄り、声をかける。


警官A「シスター、ここは危険です。退去してください!」

シスター「私はもうしばらく、ここで祈りを捧げております」

警官A「ニュースは聞きましたかな!?」

シスター「ええ、ですからなおのこと。弁護の機会も与えられずに死亡した2名の容疑者の冥福を祈るのみです」

警官A「そうですな……時として我々は、『殺すか』『死ぬか』の二択を迫られ、相手を殺してしまいます」

シスター「……大いなる父の導きがあらんことを……」

警官B「一通り捜索しましたが、容疑者はいませんでした」

警官A「うむ……シスター。ご迷惑をおかけしました。そしてありがとう」


#警官隊の全員が教会から出る。


シスター「――こちらこそありがとう。もう出てきて大丈夫ですよ」

女「どうも……シスターの股の下に隠れるなんて貴重な体験だ」



#4#


シスター「もう教会は危険です。窓から姿を見られる。こちらに納骨堂があります。付いてきてください」

女「……なあ、なんで助けてくれるの?」

シスター「言ったでしょう? 貴方が被害者(ヒツジ)だからですよ」


#シスターが彼女に見せた紙は、楕円状に折り畳まれていた。
 シスターは小さく「ヒツジに見えませんか?」と。
 納骨堂に到着。


女「……納骨堂ってさ、骨だらけの壁なのかと思ったけど、骨は壺の中みたいだし、結構きれいじゃん」

シスター「ふふっ……。これらの壺の中身は、汚い骨ばかりですよ」

女「どういうこと?」

シスター「ウチ、ギャング・マフィア御用達の教会なんですよ」

女「へぇ……じゃあ、私の夫も埋まってるのかもね……」

シスター「……もしよろしければ、貴方のことを教えてくれませんか?」




#5#


好きになった男がマフィアグループ『マクガフィン』の下っ端だった。
シャブをやりながら彼とセックスするのが好きだったし、彼はそれなりに稼いできた。
私は迷いもなく彼と結婚して、彼の金でクラブに通って乱交パーティを楽しんだり……。

けど……ここ最近の不況で収入は激減して、彼の焦りは目に見えたものになっていった。
「へへ……大きいヤマなんだ。コイツがうまくいけば、一生遊んでくらせるぞ!」
彼は翌朝、自分のペニスを口に突っ込まれた姿で発見された。

彼は何か仕事をしくじったようで、その責任は私に廻って来た。
『売り』は何度かやったことある。またそういうのだろうと思ってた。

けどマフィアのボスが言うんだ。
「パトカーを盗んで来い」ってさ。


――それで……成功したんですか?


ああ。
迷わず運転席と助手席の警官を殺し、死体をその場に捨てて走り去ったよ。
騒ぎになる頃には、もう回収場所の倉庫に到着していた。
それ以来、ボスは私を頼るようになっていった。

「リリー。上質なヤクを仕入れて来い」
……取引先がおとり捜査官で、銃撃戦になったっけ。

「リリー。勝手に仕事してるポン引きを始末しろ」
……あのポン引き、敵組織と通じてて、結局ホテル2棟爆破した。

「リリー。敵組織の幹部を暗殺しろ」
……逃げる途中に見つかって、重機関銃で武装した装甲車に追っかけまわされたな……。

と、そんな具合でね。


――よく生きてこれましたね……。

まあね。で、数年のうちにボスの右腕にまで上り詰めたのさ。



#6#


女「最後の仕事は、銀行強盗。けど、最後の最期でボスがしくじって、結局私は逃げるしかなかった……」

シスター「そして教会に逃げ込んで、私に匿われる、と」

女「そんなところだ……。で? お前さん、人に散々懺悔させておいて、自分は『謎の女です』ってか?」

シスター「そうですね。私のことも話しましょうか……そうですね。この紙は『折り紙』です」

女「『オリガミ』?」

シスター「オリエンタルな香りがするでしょう? ジャパンの文化だそうです」

女「お守りか何かか?」

シスター「これで『白鳥』を作ってみてください」

女「出来るわけないでしょ」

シスター「根性なしですね……ほら、この通り」

女「うわっ……すげぇ……あれ……そうじゃなくて、お前の身の上話が聞きたいんだけど」

「私ね、レズなんですよ」

女「うんうん。ん?」

―――――。

シスター「いや、ちょっと一歩下がるの止めてくれますか。もっと近づいてくださいよ」

女「いや、レズをカミングアウトされて、二人っきりのカタコンベだろ……? なんかさ……」

シスター「ええ。ちょっと引いちゃう気持ちはわかります。私もそうでしたから」

シスター「私がレズに目覚めたのは、ある日本人女性のパートナーの存在が大きいのですよ」

シスター「彼女は言葉巧みに私に近づき、私の心を解いていったのです」

女「何かお語りになっているようだけど」

シスター「茶化さないで!」

女「おお、悪い……」

シスター「……テレビが、同性愛者を笑いものにしています」


男の同性愛者はオネエ系で、女のはクレイジーサイコレズ。
なぜこうも社会は同性愛者を茶化すのか。


女「私に聞くなよ……」

シスター「答えは単純です『同性愛者を理解できないから』です」

女「分からないものが怖いってこと?

シスター「そうです。ならいっそのこと『笑い』で蓋をしてしまえばいい」

女「……私たちマフィアと、レズって似てるのかもな……」




#7#


女「一般人には、マフィアの暮らしぶりっていうのが理解できないんだ。だから『怖い』で蓋をされる」

シスター「暴論ですね。同性愛者が受けているのは迫害です。貴方たち犯罪者は、犯罪をするから怖いんです」

女「だが犯罪を犯さざるを得ないほど逼迫していたら?」


親がヤク中だから、ロクに高校も行けなかった。
で、高い収入を得るには大学を出る必要がある。
……私たち貧民は、産まれたときから犯罪者予備軍なんだ。
それ以外の生活では生きていけないほど困窮して、結局運命に逆らうことはできない。


女「行くところまで行って、もう後には引けないんだよ……」

シスター「……折り紙は、きちんと手順を守って折らなければ美しくなりません」

女「え……」

シスター「そして折り方を間違えるごとに、その肌に皺が刻まれる……折り紙と人間の生き様は、似ていませんか?」

女「折り目正しく生きろって事?」

シスター「そういうことです。そして、今ならまだ間に合います」



#8#


シスター「さあ、決断の時です。逃げるか、自首するか」

女「……逃げさせてもらうよ。刑務所は更生施設じゃないし、自首した所で私が殺した命は戻ってこない。償いにはならない」

シスター「ならどうやって償うつもりですか?」

女「いっそ、マフィアのてっぺんを目指したい。一番上に立って、影の世界から貧民が生きやすい世の中を作る」

シスター「そうですか……」

女「止めてくれるなよ、この生き方しか出来んのだ」

シスター「分かりました……貴方をしばらく匿ってもいいと思っていたのですが、それもオシマイです」

女「ああ。すぐ出ていくよ」

シスター「ええ、そうしてください……リリーさん。貴方と私が善悪の分水嶺ですね……」

女「ああ……」


――――――――――。


最後まで潜伏していた『マクガフィン』のナンバー2。リリー容疑者が射殺されました。

彼女は○○教会にて、シスターを人質に納骨堂に潜伏していましたが――。
逃走のために車を盗もうとしていたところ警官隊に射殺されたとのことです。

○○教会のシスターが、この件における有力な情報提供者として表彰されました。

「私は神の教えを守っただけです。彼女が回心できるよう説得したのですが、彼女は罪を認めようとしませんでした」


END




書き忘れていましたが、タイトルは

女「折り目正しく生きろって事?」

です。
30分ほど休憩してから次のお題に行きます。





お題
>>33
>>34
>>35

連続レイプ魔

非先進国

妊婦

わりと重くてワロタ。
今話を練っています。
日付変更までには完結させたいなぁ。



ジャック「世の娼婦どもに裁きを!!」



#1#



#2018年。イギリス ロンドン 冬。
 その晩は珍しく深く冷え込み、足元が見えないほどの濃霧で――。
 霧の原因は定かではないが、その一晩で8人の女性が死に、1人が重傷を負った。
 その刃傷から、警察はこれを殺人事件と断定して捜査を開始した。


警部「女性はいずれも首を掻き切られ、自分の臓物の隣に横たわっていた……か……」

女「腹を裂かれ臓物が摘出されたのは、死後のことだと断定されています」

警部「なお、いずれの女性の膣からも精液が検出されている」

女「精液のDNA検査が完了すれば、連続レイプ魔の逮捕も目前ですね」

警部「だと良いが……」

女「『刑事の勘』ってヤツですか?」

警部「そんなところだ……1人だけ生き残りがいたんだろ? そいつの話を聞きたい」


#大学病院


医師「決して首は動かさせないで下さいよ。それに、声は出ませんからね」

女「そんなんでどうやって会話しろってんですか」

医師「人並みの情があれば、安静にさせてやってほしいもんですが」

妊婦「……」

警部「……生き残りは『妊婦』か……」

女「そうだ! こうすれば話を聞けますよね!」


質問に答えて頂きたい。

「犯人の顔を見ていない」→3回まばたき
「犯人とは初対面」→2回まばたき
「犯人とは知り合い」→1回まばたき


妊婦「……」パチ

女「彼女、犯人の知り合いですよ」

警部「なるほど。回復したら詳しく聞こう。後ろで睨んでる先生がおっかないからな」

医師「……これ以上は体に障りますから」

警部「もちろんですとも。さ、巡査くん。行くぞ」

女「はい」


寝落ちしちゃいました……。
また時間が出来たら投稿を再開します。



おはようございます。
投稿を再開します。



#2#


#廃工場
 足のない妊婦と、肩まで金髪を伸ばした優男がいた。
 彼は、彼女の乗る車いすを押して、陽射しの温かい場所まで連れていく。


アリス「嬉しいねえ……ジャック。私の膨れたお腹に、兄さんとの愛の結晶が詰まっているんだ」

ジャック「ああ……子供には何と名付けようか」

アリス「ジャバウォック」

ジャック「それがいい……復讐だ。父さんを殺した娼婦どもを皆殺しにするんだ」

アリス「そうだね……ねえ、兄さん。……Hしよ……?」

ジャック「こんな場所でか?」


#スーツ姿の男が工場内に入ってくる。


医師「早く移動しろ。今朝病院に警察がやってきたぞ」

アリス「チッ……」

ジャック「あぁ……今すぐ行く。C4爆弾は?」

医師「C4じゃねえ。イギリスじゃPE4(※)って呼ばれてる」

ジャック「大した違いは無いんだろ?」

医師「いいや、大違いさ。国のプライドがある」

ジャック「……あの候補者たちは勧誘できたか?」

医師「『チャッキー』『リリー』……計画を説明したら、喜んで賛同してくれたよ。ヘリコプターの操縦主も見つかった」


(注※ PE4とは、イギリス軍で採用されている、C4爆薬と成分がほぼ同じプラスチック爆弾。
    起爆装置を作動させない限り、火にくべようがハンマーで殴ろうが決して爆発しない安定性をもつ)



#3#


#警察署 連続婦女殺害事件対策本部


ボス「――次!」

警部「被害女性は皆、売春婦だったとのことです」
  「被害者のうち1人は農家の娘であり、数か月前に肥料用のアンモニア水2トンを盗難されていました」

ボス「何か本件と確認が?」

警部「無いとも言い切れません。さて、続けますが――」
  「彼女たちの属する売春宿や犯罪組織を洗ってみた結果、今のところ関連性は確認できませんでした。以上です」

ボス「引き続き犯罪組織関係で調査を続けてくれ――次!」

女「被害女性の膣から検出された精子のDNAが、簡易検査ですが完了しました」
 「結論から言えば……サルの精子でした」

ボス「なんだと?」

女「実際には女性はレイプされていない可能性が高いです。殺す事だけが目的なのかも……」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――。


「我はジャック・ザ・リッパーなり」
「世の娼婦どもに裁きを!!」
――――――2018年 冬 イギリス大手新聞社に送られた、ジャック・ザ・リッパーの犯行声明より。


#大きな銀行 昼
 ジャックと医師とリリーは覆面を被り、ライフルと防弾チョッキで武装していた。


受付嬢「お次の方――えっ」

ジャック「騒ぐな!! 騒いでいいのは俺たちだけだ!!」

医師「おい!! クソッタレども、地面に這いつくばるんだ!!」

リリー「『チャッキー』早くハックしろ」

人形≪今やってる≫


#銀行内が阿鼻叫喚に包まれる。犯罪者たちの祭典だ。
 その後ジャックが地下金庫室へ行き、リリーが上階へと上がって行った。


医師「俺たちの目的は強盗だ! 静かにしてれば無傷で帰してやる!!」

人形≪警報装置と金庫のクラック完了。もうアイツら、通報しようとしても無理ね≫

医師「よくやった。だが客の携帯まではカバーできんのだろ? 警戒を続ける」



#4#


ボス≪レイプ魔を追うのは後回しだ。A地区の銀行が強盗の被害を受けている、現場に急行せよ≫

警部≪2号車了解。留意点は?≫

ボス≪ヤツら、警報装置をクラックしていた。おそらく高度に訓練された組織だろう≫


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――。


#大きい銀行の前。
 飛び立つヘリ。


警部「クソッ……遅かったか……」

女「天井に爆弾で穴を空け、ヘリで金庫を吊り上げて離脱……準備が良すぎる」

警部「ああ。恐らくはかなり周到な戦術家がいるんだろう」

女「空は特殊部隊に任せましょう。こと戦闘においては彼らのほうが優秀です」

ボス≪2号車! 警部、聞こえるか?≫

警部≪こちら2号車、どうぞ≫

ボス≪ヘリとは別に裏口からトラックが逃走。報道ヘリと協働で追走し逮捕せよ≫


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――。


#トラック逃走中


ジャック「あとどれくらいでディナータイムだ?」

人形≪報道ヘリがピッタリつけてる。報道ヘリと、パトカーに搭載されたモニターがリンクしてるわ。まずヘリを墜としなさい!≫

ジャック「簡単に言ってくれるじゃないか」

人形≪バカッ……! そっちは行き止まりよ!!≫

ジャック「おお、神よ……でも、わざと捕まるのも面白いかもな」


#ロンドンの袋小路、トラックを多数のパトカーが包囲して。


警部「もう諦めるんだッ! トラックの次は何で逃げる? スクールバスか?」

ジャック「私に抵抗の意思はない! さあ、どうぞ優しく手錠をかけてくれ!!」

女「警部、彼をテーザーガンで感電させてください」

警部「ああ」

人形≪大丈夫なの……ねえ!! 応答して、ジャック!!≫



#5#


#取調室


警部「金塊500キロとプラチナ500キロ。綺麗に盗もうとしたが金塊のほうは失敗したわけだ」

ジャック「そうだよ。捕まって悔しいねぇ……お前たちは悔しくないのかな?」

女「……」

警部「色々ゲロってもらうぞ。プラチナの所在、お前の属する組織、最終的な目的――」

ジャック「質問は1つずつだ。まずプラチナの所在だが、もうお前たちが気にする必要はない」

警部「なんだと?」

ジャック「次。僕の属する組織……僕たちは組織なんていう組織的な組織じゃない。ただの寄せ集めだ」

警部「寄せ集めが、強固な銀行のシステムをクラック出来るわけないだろ!」

ジャック「天才同士のワンマンショーだから実現できたのさ……現にワンマンショーだから、僕だけ捕まっただろ?」

警部「で、話を戻すぞ。プラチナの所在は?」

ジャック「だから言ったじゃないか。もう気にする必要はない」

警部「私たちの調査力を舐めるなよ」

ジャック「調査? その必要もない。今ここで暴露しよう。君の最後の質問。僕たちの最終的な目的――――それは虐殺だよ」

警部「ふざけるな。プラチナで人が殺せるのか?」

ジャック「僕が殺した8人の女性は、もうプラチナで殺すことはできないがな」

警部「はぁ? ……お前、自分をジャック・ザ・リッパ―だっていうのか!?」

ジャック「それは問題じゃない。古い伝承を使って娼婦を殺して遊んでいただけだ。ついでに警備を分散できて強盗も楽にできた」

警部「ゲスが……ッ! 」

女「プラチナで殺す……」

ジャック「どうやら頭の程度は、そちらの女性の方が優れているようだ」

女「警部ッ!! 殺された女性の1人が、数か月前にアンモニア水2トンを盗難されています」

警部「……ああ」

女「プラチナは触媒です。アンモニアをかけると……知識があれば、シアン化水素が作れます」

警部「シアン化水素?」

女「つまり青酸ガス。致死量の極めて少ない、強力な毒です」

警部「なんだと……? アンモニア2トンでどれくらい精製できる?」

女「あんまり詳しくありませんが……かなりの範囲が犠牲になります」




#6#


#警察署 連続婦女殺害事件対策本部


警部「銀行強盗の男が自供しました。彼が『ジャック・ザ・リッパー』で、連続レイプ事件を起こし陽動作戦を試みていた模様」

ボス「市街警備のために人員を割かせ、手薄になった銀行を襲ったのか……」

警部「時間がありません。プラチナは青酸ガスを精製するためのものです、至急、市民を避難させてください」

ボス「……更に詳しく追跡調査する。特殊部隊に厳戒態勢は取らせるが、だが市民への避難勧告の発令は出来ない」

警部「なぜすぐに対応できないんですか!?」

ボス「お前は新入りだったな……警察は市民を守る一方で、市民に叩かれる仕事だ。市民を納得させるための『確証』が必要だ」

警部「……ですが……」

ボス「『ですが』じゃないよ。その『確証』を探すためにお前がいるんだろ? さあ、行って来い」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――。


#拘置所、停電。


女「カメラとマイクは断絶した?」

ジャック「ああ。あと5分だけな。僕はどこに逃げればいい?」

女「夫を無事に帰すと確約しなさい」

ジャック「ああ。彼はネオナチ組織が預かっている」

女「具体的に話せ!! どこの組織の誰だッ!!」

ジャック「僕が案内するよ。僕は死んでも良い。けど君は困るんじゃないかな」

女「……」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――。


#路地裏


女「……」

アリス「その猿轡されてる女は?」

ジャック「カメラに映らない、人目に付かないルートを用意してくれた。優秀な女性だよ」

リリー「こいつも連れていくのか? これからも?」

ジャック「いや、拳銃を貸してくれ」

リリー「ほらよ」

女「!!」

ジャック「……お前の夫は僕がもう殺しちゃったから。無駄だからもう追ってこないで」


#2発の乾いた銃声。9mmの弾丸が、女の両膝を破壊する。





#7#


#下水道


医師「ふぅ……ジャックめ。損な役回りを押し付けやがって……」

人形≪文句言わない。あと5ヶ所よ≫

医師「青酸ガスを撒くためのホースを下水道に張り巡らす。で、何人死ぬと思う?」

人形≪ロンドン中心部から数えて半径10kmが潰れるわね。それだけじゃない。経済に与える影響も計り知れない≫

医師「盗んできたプラチナ500キロ。元からあった500キロ。アンモニアにしても合計6トンあるからな」

人形≪で。私が仕込んだ送風機で『死の霧』がロンドン中を循環する……これからもっと楽しくなるわよ≫

医師「ぶっ壊れた人形が……」

人形≪私からすれば、ぶっ壊れてるのは君たち人類だよ≫


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――。


#路地裏


警部「おい、巡査!! 足を撃たれたのかッ!?」

女「け、警部どの……」

警部「……静かにしてろ、今手当てする」

女「私は組織を売ったんです……夫を盾に脅されて、それで……」

警部「……止血は済んだ。大丈夫。パトカーで病院まで運ぶからな」

女「違います……もう間に合いません」

警部「?」

女「もう彼らは仕事を終えて、海か空かで高飛びしました。青酸ガスが撒かれることになるので、パトカー内の簡易ガスマスクを着けてください」

警部「彼らを止める術はないのか?」

女「もう終わったんですよ……この事件が終わり次第、私は警察を辞めます……」






#8#


警察機構の致命的な初動不備により……。
ロンドン中を青酸ガスが覆い250万人を越える死者が生じる。
これは青酸ガスの毒性のみでなく、ガスの可燃性による火災、暴動による死者もかなりの割合を占めていた。
また、王室もこの事件により後継者が途絶えた。
この事件は「9・11以来の惨事」として、『濃霧事件』と呼ばれることになる。

また、この事件によりイギリスは『信用』と『人材』と『王室』――3つの優位性を失うことになる。
一度失ってしまえば、人材はより待遇の良い環境へと流出していく。
イギリスが以後30年間に渡って「非先進国」と格付けられることになる要因であった。

濃霧事件から3年後――。


#郊外の大学病院
 6人部屋のうち、1つのベッドに女性が横たわっている。
 もう二度と手足が動くことはない。


女「……また、一緒に外を出歩きたいですね」

警部「もっと発見が早ければ、それもできたと思う……すまない……」

女「責めてるんじゃないんですよ。むしろお見舞いありがとうございます。……貴方はまだ警部を続けているんですね」

警部「ああ。あの事件で大勢辞めたからね」


#ドアが開く


医師「やあ。ヒルダさん。君の隣のベッドに新しい患者さんが入るのだが」

女「ええ。大歓迎ですよ」

元妊婦「どうも……」

女「貴方は……どこかで見たような……」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――。


ジャック≪僕たちはもう活動拠点をアメリカに移してしまったが、君にしかできない仕事がある≫

元妊婦≪首から下が不随の、あの元巡査の観察……≫

ジャック≪そう。10年きっちりやり遂げたら、君の子供を帰してあげるから――――≫


まあ、もう殺してるんだけどね。


アリス「『世の娼婦どもに裁きを』……模倣犯が現れたね、兄さん……」

ジャック「好きにさせておけ。娼婦を言葉通りに娼婦だと受け取っている以上、模倣犯の破滅は近い」


娼婦とは、減らせど滅びぬ人類のことなのだから。


END



ちょっと遅めの朝食を取りに行ってきます。
11時ごろお題の募集をしたいと思います。




>>51
>>52
>>53

母の日

竹箒

飛行

すみません。
急用が入ってしまったので、夜の投稿になります。

タイトルは

男「幼馴染(♀)が飛んだ」

です。

ようやく帰宅できました。
母の日が終わるまでに8レス書ききれたらいいな。
現在、構想のみがまとまっている状況です。



#1#


#2024年 5月11日 深夜
 都内マンション 14階 東京湾の潮風を受けた一室。
 男が絵を眺め、夫婦の静寂が続く。
 テーブルの上では、2つの琥珀色の海で小さな氷がたゆたう。
 ウィスキーは飲み干されることもなく、ゆっくりと温くなっていくのだろう。
 夫婦は同い年、24歳だった。


幼馴染「……なあ君。ボーっと絵なんて眺めて、どうしたんだい?」

男「んだよー。悪いかー?」

幼馴染「もちろん。悪くはないさ。君の横顔眺めているのも悪くない」

男「飽きないか?」

幼馴染「君に言われたくないさ。そもそも、自分の見た夢を絵にするなんて、君は物好きだね」

男「……この夢は、貴方との大事な夢なんだ」

幼馴染「けどそれは君の夢だろう? 私は知らない、感慨もない」

男「思い出を共有できないのが怖い?」

幼馴染「そうとも。君との間に、妙な疎外感を感じる。まるでこの絵の闇に隔たれたように――」


それは精緻な一枚の油絵――――。

絵の中の夜が降りてくる。
満点の星空。
月に照らされた私たち。
竹箒とカーネーションが印象的だった。




#2#


#2014年(10年前) 5月9日(金) 早朝
 埼玉県 児童養護施設 『碑文園』
 2人の年齢は14歳。この施設から中学校に通っていた。

和気藹々とした雰囲気で、30人程度の児童がいくつかのテーブルを囲む。
朝食は品のいい和食といった雰囲気で、鮭の切り身、味噌汁、漬物などがそつなく並んでいた。


職員「いただきます!」

一同「いただきまーす!」

幼馴染「佐藤君、おはよう」

男「ああ、うん……」

幼馴染「どうしたんだい? 元気がなさそうだね」

男「いいや、何でもないよ」

友「おーおー。仲のよろしいこって。お熱いね~」

男「べ、別にそんなんじゃねーし」

幼馴染「おやおや、否定されちゃったよ。悲しいねぇ」

友「こんな美人泣かせるなんて、お前男のクズだな!」

男「やかましいッ! ……悪い。静かに食わせてくれ……」

友「おっ……ごめん……」

職員「なんだ喧嘩か? 仲裁は必要か?」

友「いえ、悪いのは俺です……」




#3#


#同日
 埼玉県立中学校 放課後、広がる夕焼け


幼馴染「美術部は金曜日に何もなくて羨ましいね」

男「お前さん、練習のし過ぎには気を付けろよ?」

幼馴染「ああ。お気遣い痛み入る。じゃ、私は剣道部あるから」

友「おう。頑張ってこいよ」

男「お前、卓球部は?」

友「顧問が腰痛めたんだ。今頃、熱心な奴らは自主練やってるよ」

男「へぇ」

友「それよりもさ。お前が朝イラついてた理由分かったぜ」

男「え?」

友「鈴木さん(幼馴染)のこと、好きなんだろ。俺がお前らのこと囃し立てて、それが図星だったってわけだ」

男「いや、この苛立ちには別の原因があるんだが……」

友「おいおいおいおい。質問に答えてくれよ。好きなんだろって」

男「気になってはいるけど……は、恥ずかしいな。アイツには黙っててくれるか?」

友「もちろんだとも盟友よ。で、君に朗報がある。今週日曜日は何の日だと思う?」

男「5月11日……? 何の日だっけ?」

友「母の日だよ」

男「なんで母の日が出てくるんだよ」

友「裏山沿いの道路脇に、凄まじく急勾配な階段があって、上に誰も管理してない神社があるだろ?」

男「回りくどいな、結論から話せよ」

友「スマンスマン……結論。そこの神社は、母の日限定でオバケが出るらしいんだ」


あの子と一緒に肝試しをするんだ。
で、その怪談話に沿って俺がオバケ役をやって、お前たちを驚かす。
幼馴染の前で、カッコいいところ見せてやれ!!

結局母の日終了まで間に合いませんでしたね…。
また時間に余裕ができれば投稿します。


すみません、今週は予定が厳しいので、投稿は次回となります。



#4#


#母の日 朝 ○×神社

神社の境内には誰もいない。そこに信仰心がなければ、ただの打ち棄てられた廃屋だ。
鳥居には古びた竹箒が掛かっていて、雨のかからない場所には濃い埃が積もっている。
もう半年は誰も手を触れていないようだった。


友「いいか? 今は下見の時間で、決行は深夜だ。女はムードと心拍数で落ちる」

男「さすが10人の女に振られたヤツは言う事が違う」

友「見限るぞ」

男「スマン。続けてくれ」

友「神社の裏は断崖で、足を踏み外せば即死だから懐中電灯は手放すな。それから……」

・神社の西側、つまり右手には林が広がっている。その最奥部にある祠……通称「れいむさま」が肝試しのミソだ。
 祠中に護符の張り付けてある気持ち悪い祠さ。
 祠の手前の木にダミーの護符を張り付けた。これを剥がすんだ。

男「なぜ祠の護符じゃなくて、ダミーを剥がすんだ?」

友「婆様が言ってたが、ありゃ本物の祠だよ。なるべく触りたくない」

男「怖いな。別の場所で肝試せないのか?」

友「スリルが無ければ肝も冷えまい」

男「母の日限定って言ってたな?」

友「ああ……毎年母の日、この神社を中心として半径3km以内で、『首なし女』が目撃されている」

男「それをお前が演じて、俺が手に入れた護符で倒す、と?」

友「さすが盟友。察しが良い……質問は以上か?」

男「ああ」


―――――――――――――――――――――――――――――――。


#同日 深夜 ○×神社に至る階段の1段目

幼馴染「2人きりで飛び出してきてしまったよ……君も強引なんだね」

男「無断外出がバレれたら、しこたま怒られるだろうね」

幼馴染「クスクス……佐藤君に誘拐されたって言っちゃうよ?」

男「まあ、事実だし、いいぞ」

幼馴染「ふふふっ……で、こんな打ち棄てられた神社に、何があるんだい?」

男「僕の母さんの頭」

幼馴染「……へっ?」


僕が児童養護施設に預けられている理由。
それは、10年前の「佐藤一家惨殺事件」が原因だ。
僕の両親と妹は、押し入ってきた無精ひげの男に殺された。凶器はナイフ。単純だな。
――3日前、やつれた男が俺の前に現れてこう囁いた。
「お前の母親の頭は、○×神社に預けてある……! れいむさまの護符を全て解き、真実を見るのだ……!」


男「僕は、死んだ母親との決着をつけたい。あの怪しい男を通報するのは後回しだ」

男(……アイツが肝試しをこの場所に選んだのは、このことを打ち明けさせるためなのか……? なぜ知ってる……)

幼馴染「……話してくれてありがとう。そして頼ってくれてありがとう……。さ、行こうか」




#5#


#深夜。懐中電灯の明かりで、丸く縁取られた視界。
 それ以外は全くの暗闇である。風が一切なく、季節外れの蒸し暑い空気が淀む。
 枯葉を踏んで、男は階段を上り切った。○×神社が、朝とは違っておぞましい雰囲気で佇んでいる。
 1つの影が鳥居付近でうずくまっている。


幼馴染「誰か倒れてるぞ」

男「血まみれじゃないか! 何があった!!」

友「『妖怪』に撃たれた……そこの竹箒を取れ……」

男「くそッ! 血が止まらない、救急車を呼んでくれ!!」

幼馴染「私たちは電話を持ってない! ……最寄りの民家まで走って40分はかかる。当然、この田舎じゃ公衆電話も90分先の国道沿いのラブホ前だ!!」

友「……で、話は聞いてたか? 竹箒だ。血が流れ過ぎた……祠の前に輸血バッグがある。持ってきてくれ、俺はしばらく寝るぞ……」

男「待て! 寝るな! きっとそれはヤバい!!」

幼馴染「……いや、彼の言葉に従おう。輸血バッグが祠の前。で、竹箒が何だったっけ」

男「よく冷静でいられるね」

幼馴染「君も大概だよ」


―――――――――――――――――――――――――――――――。


#れいむさまの祠
 一面にお符の張られた、木造の不気味な、小さな祠がある。
 道中常に誰かに見られているような不快感があり、だがそれが事実であると直感した。
 祠の前に輸血バッグはないが、何か花が置いてある。
 竹箒をその場に落し、花を確認する。


男「白いカーネーション……母の日か……」

幼馴染「白いものは、死別した母へ送る花らしい」

男「ああ……僕の母は死んでいる。誂えたように合致した境遇と現状……」

幼馴染「何か聞こえないかい?」


がちゃり。がちゃり。がちゃり。
遠い音。金属音は、甲冑がうごめくもののように聞こえた。
思わず、音の鳴る方向へと懐中電灯を向けた。
案の定、西洋風の甲冑がそこに立っていた。
だがしかし、その姿には頭が無かった。首から上が無く、断面が闇に溶けている。


甲冑「ざ……」

男「や、やぁ……ジョギングにしては不便な格好だが……」

幼馴染「見て分からないのか? 明らかに異質、会話が通じるとはとても……」

甲冑「ザナドゥ……」

男「!?」

甲冑「ザナドゥ!!」


甲冑がこちらへ向かって突進してきた。
くそ、やってられるか。
僕は急いで竹箒とカーネーションを拾い上げ、幼馴染の手をとって走り出した。
なぜだかこの花が重要な気がした。

 



#6#


木々の間を縫うように走り抜ける。
こちらは軽装、相手は甲冑だ。その点において、体力差の観点から安心していた。


幼馴染「手を放してくれ、その方が効率的に走れる」

男「ああ」

幼馴染「……クソ。あの甲冑、多分金属じゃないね」

男「なんだって?」

幼馴染「どんどん距離を詰められてる。早すぎる……!」

男「!? ……畜生!! ここまでか!」


崖。神社裏まで来ていたらしい。
崖の底は、今は霧で見えないが、晴れていれば谷底が見えていたはずだ。
落ちて助かる場所じゃない。甲冑が40m圏内に入り込む。


甲冑「カルルルル……キャルルルルルル……」

幼馴染「これは直感なんだが……その竹箒、柄の部分に赤いボタンがある」

男「あ、あぁ……全て理解した。理解しちゃいけないんだろうけど……」

幼馴染「さあ、私の背中に乗って!!」


竹箒に跨った幼馴染の背中に抱き付くような態勢をとる。
そして崖を向き、幼馴染は柄の赤いボタンを押した。
爆音、轟音。勢いで手に持ったカーネーションが全て吹き飛び、花弁が舞う。
竹箒のブラシ部分の中心から、盛大に火を噴き、体が持ち上がる。
いや、火というより外見はレーザーだ。
とにかく僕たちは箒に跨って中に浮いている。あの崖を飛んでいる。

小さくなっていく甲冑の姿を見届け、ふと前を向く。
多量の瞳が浮いていた。
そこで、この物語についての記憶は終わる。


―――――。


白い空間


女「お目覚めですか」

男「……お母さん?」

女「貴方の幼馴染は、この晩の記憶を全て失う。でも、貴方は別」

男「え?」

女「私の名前を忘れないで、私は、貴方を監視している」

男「母の名は……」

――。



#7#


甲冑「ふぅ……春だというのに暑い夜だねえ」

友「そりゃ、あんたがそんな暑いもの着てるからだ。脱いで楽になりなよ」

甲冑「レディを脱がせる言葉としては最低ランクね。で、何立ててんのよ、噛み切るわよ!」

友「何って、そりゃナニを……」

甲冑「うっわ。サイテー」

友「おいおいおいおい。死んだ夫の鎧に籠った悪霊が何か言ってるよ。未練がましいねぇ」


――。


女「はいはい。喧嘩は止めなさい」

友「ハローマム。で、テストは合格?」

女「『魔法使い』も『巫女』も、それなりの経験を積めば、それなりの存在になるでしょう」

甲冑「あの直感力で大丈夫ですかね」

女「直感とは、生得的体質にあらず。経験によって鍛えることが可能です」

甲冑「なるほどねぇ」

女「ところで蛮の字、いい加減、頭をくっつけなさい」

甲冑「えー。デュラハンの良いトコ潰しですかー?」

女「つべこべ言わない。私たちの痕跡は遺さないに限ります」



#8#


#2014年


以上。僕たちがあの晩、経験したことの全てだよ。
翌日、あんなに血まみれだった友人が、無傷で戻ってきたときは驚いたよ。
なんでも、あの血と甲冑は、僕たちを驚かせるための手段だったということだ。
けど、君が箒に乗って空に飛んだ事実だけが現実離れしているんだ。


幼馴染「私が空を飛んだ? 信じられないね」


男「ああ。だから夢だって言っただろ」

幼馴染「けど……私が君に心惹かれていったのは、あの肝試し以来なんだ……その日何が起きたか覚えていないのに……」

男「思い出しすぎないで……『連れていかれる』から……」

幼馴染「『連れていかれる』……?」

男「幻想の世界は、足を踏み入れるべきじゃなく、むしろ遠くから眺めるのがいいんだ――――」

幼馴染「ファンタジー画家としての矜持?」

男「かもね」


END


次のお題で一旦このスレとしては区切り、またの機会にスレ立てさせていただきます。


>>69
>>70
>>71

暗器

1人の中年男が2人の女の子を妊娠させた

援助交際



死神「現世発閻魔行きデスガイド」



ちょっと眠気が限界なので、明日投稿します。
おやすみ。



#1#


永久に晴れる事なき曇天のもと、ゆったりと船は流れる。
死神は船を呑気な様子で漕ぎ、ちらと死者を見やる。

三途の河は、その者の業に応じて幅を変える性質を持つ。
この者の罪業はあまりにも深く……。


死神「こりゃ渡りきるのに5時間はかかるねぇ」

男「えっ。そんなにかかるんですか?」

死神「アタイからすれば、よくある距離なんだけど」

男「……すみません。私の恥ずべきところは、自身の業の深さを認めることのできない性質でして……」

死神「どうしたんだい?」

男「先程『そんなにかかるんですか?』と申し上げましたが、それは身の程を弁えていない発言で……」

死神「気にすることはないよ。さっき言った通り、よくある距離だから」


三途の川を含む黄泉の国全体は、時間の流れが現世と比べて『圧縮』されている。
現世の1秒が、黄泉の国の1年なのだ。

彼女は日本全土の死を担当している死神だ。
……前述の時の流れゆえに、彼女からすれば100年に約4人連れていけば済む計算となる。

彼女は死神だが死者をめったに運ばない。
三途の河の船頭をやらない日は、事務所で事務作業をしている。
閻魔が人を裁くのだが、その裁判1度のためには平均100枚の書類が必要となる。
それを全て彼女が用意する。

まず現世での行いをまとめた書類を閻魔に提出。
閻魔や他の職員のスケジュール調整などで、無駄に何枚も書類を書く。
裁判を受けた死者が天国に行くにせよ地獄に行くにせよ、相手方に『死者移送届』『裁判証明』『死者カルテ』などを送付しなければならない。
これでも仕事の一部にすぎない。

基本的に、黄泉の国の死者管理業務は、お役所仕事なのだ。
前述の時の流れゆえに、週休三日は確保されているのだが。



#2#


さて、話を戻そう。
休暇同然の死者運び。だが、暇過ぎていけない。
彼女はふと思いついたように、男に問い掛ける。


死神「ところで、もし差支えなけりゃだけど……お前さんの一生を聞かせちゃくれないかい?」

男「え、ええ。よろこんで……」


曰く。私は貧しい家の生まれでした、と。

「二歳の誕生日に父を亡くし、母も四歳のころ通り魔にあって他界です。
 引き取られた先の親戚方には疎まれ、住み辛い日々を過ごしました。
 ――皆が大学に入って当然という時代、私は中学校を出ると働き始めるよりほかになかったのです。
 まるで賽の河原に石を積み上げるように、レンガを床に敷き詰める仕事でした。
 私は生来、覇気のない、女のような顔をしていましたから、よく先輩方の慰み者になりました。
 女のいない職場でしたから、私は専ら、尻を出さなければ首にするぞ、と脅されていたのであります」

「もちろんのこと、土建の業界とて、男色の風潮のあるのは稀です。
 先輩方が男色家だったという一点のみで、私は辱めを受けてきたのです。
 私は排泄の穴を穢されるごとに、出世してやるぞと、屈辱をばねに独学で勉強をしていました。
 ……よって30に至るまで、私は女を知りませんでした」


死神「何を学んでいたんだい?」

男「歌と踊りです」

死神「へぇ。歌と踊り。昨今流行りのアイドルだか何だかというあれかい」

男「はい」


「私は自分の歌の才能を認識していました。
 天下をとれると確信し、実際に歌の天下を取りました。
 ……皮肉にも、あの土建屋での屈辱がきっかけで、男と女、同時に媚びる術を見つけたのです。
 性別を問わず人気を得るというのは難しいことで、私以外に誰も試みなかったことです」


死神「独自性により需要を確保したということかい?」

男「ええ。当時の私は、オンリーワンであることの誇りと、周囲に認められたという充実感で一杯でした」



#3#


「さて。
 アイドルになった理由のひとつは、「女性に好かれたいから」です。
 視線が集中すればおのずと価値が認められる、男も女も、価値あるものに興味を見出す。
 価値があれば、人気を得るチャンスが増える」


死神「お前さんは有名になりたかった」

男「有名になったんです」

死神「だが価値を高めることには1つ弊害があった。そうだろう」

男「ええ……」


「私に近づいてくる女性が皆、金の亡者か何かに見えたのです。
 当然です。私ではなく、私のもたらす経済効果を見て女性が近づくのです。
 その点で言えば、私に近づいてくる女性は、皆、サービスの見返りを求めるレストランと同等です。
 ……確かに、対価を払わずに女性を抱こうなど傲慢なる企みですが。
 ですが私は、私の『将来性』を対価に色欲を満たす気がなかった」


死神「……お前さん、一時期は黄泉の国でも聞く名だったよ。その点、将来性は成就されたということだね」

男「私を知っているんですか? では私の罪と没落も伝え聞いたことでしょう」

死神「お前さん自身の口から聞きたい。罪っていっても、所詮は相対的な評価機構だからね。罪が事実なのか、また、お前さん自身が罪の意識を感じているのか……」

男「……私の罪について語りましょう」


曰く。私は姦淫の罪を犯しました、と。


「『将来性』を対価に色欲を満たせないということは、別の何かによって購う必要があります。
 すなわち、金銭によって。
 30のころから50まで、私は未成年の娘を買っていたのです。
 確かに罪ではあります。ですが、その娘は、自ら望んで援助を求めて来ました。
 ……当時の私は、これが将来性を潰しうる選択だとは思っていませんでした。
 芸能界は歪んだ権力闘争の場です。
 メディアとも、ヤクザともつながりがあるので……女子高生と寝るくらいのことは、簡単に揉み消してくれるのです」


死神「なぜ未成年の娘を抱きたかったんだい? 例えば私のような、外見的に20代後半のように見える女は?」

男「私が未成年の娘を抱きたがるのは、単純に、打算性の有無です」

死神「打算」

男「そのくらいの年齢になってまいりますと、当然、結婚が視野に入ってきます」


「あくまで私が求めているのは色欲。セックスで人生設計を語りたくないのです。
 あくまでハリのいい体を抱きたいのであり、私以外の誰かを養うなど、終生考えることなどありませんでした。
 当然、避妊具は欠かせません。『このことは2人だけの秘密にしよう』などと歯の浮くような言葉を並べ、口止めも怠らず」


死神「随分自分勝手なセックスだね。アタイには20人の曾孫がいるけれど、皆、子を作る気がなければセックスはしない」

男「生殖機能を利用した商取引……利己主義こそ人間の本質です。貴方も死神をやっていて、よく理解しているでしょう」

死神「半分正解だね。人間っていうのは半分真っ白で、半分真っ黒なのさ。石器時代からこの国を眺めて出した結論だよ」



#4#


――――――――。

半分、白。
半分、黒。
だが人間とは灰色の存在ではない。
綺麗に分離した二種類の人種。

ただし異なる思考の終着点までもが、それで正反対とは限らない。
白も、黒も、同じ決着に至った。
全ては死の忘却の中に。

――――――――。


死神「お前さん。女子高生2人を買っているのも、妊娠させたのも、大々的に公表されたんだ」

男「……事実です。公表されたのも、2人を妊娠させたのも」

死神「何故だい。避妊具を欠かさなかったんだろう?」

男「『暗器』を仕込んでいたんです」

死神「『暗器』?」

男「極細の針の隠喩です。それでコンドームに穴を空ければ、妊娠することができます」


「彼女たちは鎹が欲しかったのです。
 膨らんだ妊婦の腹は、忌々しい社会的関係の楔です。
 私は、事務所に来て、どちらかとの結婚をせがむ彼女たちを見て、殺意が湧きました。
 マネージャーと彼女たちを車に乗せると、2人の妊婦を田舎の山奥で殺害したのです。
 当然、マネージャーに罪を着せてね。
 芸能界の皆は、口を揃えて言いました」

「あのマネージャーが女子高生2人を妊娠させたうえ、強請られた苦悩から殺した」

とね。警察も形式ばかりの捜査をしてオシマイです。


死神「ゲスいなぁ。よく思いつく」

男「常套手段です。当時の私の年収は約8億円。人の2、3と殺してでも維持すべきコンテンツです」

死神「……その後、お前さんは秘密を隠し通した。だが5年後に事務所が倒産し、後ろ盾を失ったお前さんは糾弾されることになる」

男「私が殺した2人のうち、1人が、当時弱小事務所の娘だったとは、思いもよらない事実でした」

死神「お前さんは裁判にかけられ、懲役20年の実刑判決を受ける」


「そう。殺された娘たちは、私たちを強請る前に、あの弱小事務所に証拠を預けていたのです。
 あの証拠のせいで私は没落しました。
 ……出所したころには、50億の資産が、賠償金と違約金、親戚方に毟り取られたのとで5億相当まで減っていました。
 出所時70歳だった私は、人目を避けるように、残りの5億で余生を過ごし、そして……。
 今、貴方の船に乗って、三途の河を渡っているところです」


男「どうですか? これが私の一生です」

死神「……反省はしている?」

男「実際のところ、どうなんでしょうか……ただ、閻魔様に全て委ねようかと……」

死神「……閻魔様の心労も考えることだね」



#5#


#――死神の時間で約11億年前。人間の時間で約35年前。
 三途の河に、いつものように死者が転がり込んできた。
 今回は女児だ。彼女を見るなり、その女児はわんわんと泣きだした。


死神「……落ち着いたかい?」

小学生「……うん」

死神「つまりお姉さんは死神なのさ。……痛かっただろう。でも、もう安心。もうゆっくりしていいんだよ」

小学生「……この川を渡り切ったら、お母さんに会える?」

死神「お母さんと同じ場所に行けるかは分からないね……」

小学生「地獄でしょ。大丈夫。きっと私も地獄に行く」

死神「……大人びた子だ。何で地獄に行くと思うのかな?」

小学生「子供なのに、子供を作ろうとしたから……」


「私はアイドルの○×さんが大好きで、追っかけてたの。
 ある日急に○×さんの方から声をかけてきて……ホテルに誘われた。
 初めては痛かったけど、でも……気持ちよくなってきた。
 余裕が出来てきた頃に、思っちゃったんだ……」


「家族が欲しい。家族になりたい」


って。


――――――――。


あの男が孕ませたのは、生涯でふたり。
彼はウソを付いている。
女子高生2人ではなく、小学生と中学生だ。


小学生は『白』だった。
妊娠の問題がマイナスとなって、『浄土行き』は望めないけれども。
だが、死の直前まで一切の『邪道』を考えず、清く翻弄されていたのが閻魔に評価された。
人間道への輪廻を命じられ、次も人間として生まれ変わるそうだ。


中学生は『黒』だった。
彼女も翻弄されていたのには変わりないが、その人格の芯には『邪道』が染みついていた。
針で避妊具に穴を空けた点。女児を道ずれに不貞の妊娠をした点。
事務所と結託して賠償金をせしめようとした点が悪く評価された。
彼女は修羅道への輪廻を命じられ、その後は人間道に格上げされた。



#6#


#――死神の時間で約11億年前。人間の時間で約35年前。
 黄泉の国換算で同年に2人の者が三途の河に転がり込むのは珍しい。
 「人間道の1秒=黄泉の国の1年」という換算式を適用すれば……。
 偶然、1秒以内に2人死んだことを意味する。


中学生「ねえ! もっと早く漕いでくださいよ!」

死神「うるさい子だねぇ……川から落としちゃうよ」

中学生「できないんでしょ? 私を運ぶのが貴方の仕事。なら落としたら始末書モノだね♪」

死神「……お前さんのことは、あの小学生から聞いている」

中学生「あー……もうサイアク。あいつ1人だけ死ぬ予定だったのに」

死神「どういうことだい?」

中学生「あのメスガキ、私に黙ってコンドームに穴開けたのよ」

死神「……」

中学生「信じらんないでしょ!? いくら○×様とはいえ、勝手に妊娠されたら困るに決まってんじゃん!」


良くいるのだ。
口を開けば妄言だらけ、自己保身の塊のような者。
彼らは大抵、死神だろうとお構いなしに「自分可愛い」の言葉を連発する。
大抵アタイは黙ってそれを聞く。

悪人同士の生存闘争に巻き込まれて死んだ小学生のことを考える。かわいそうに。
アタイは閻魔様の説教を思い出した。


「深遠なる黒に、白く高貴なものは打ち勝つことができません。
 なぜなら白とは『純粋』であり、黒の影響を一番色濃く受けてしまうからです。
 世界は常に、黒へと歩んでいます。黒が白を飲み込み、黒同士で潰し合う世界です」


閻魔様の言葉に、私はこう疑問を呈したことがある。


「どこまでも黒く染まっていく世界で、なぜ新たな白が生じるのですか」


すると閻魔様は微笑んで、自信たっぷりにこう言った。


「それこそ人間の可能性です。私は、人間のそういうところが大好きなんですよ」





#7#


#そして現在


死神「お前さん。嘘をついているね」

男「何のことですか?」

死神「本当に嘘をついていないと思っているのかい?」

男「……? 私は、全てありのまま語りました」

死神「そうかい……」


死後、霊魂を深く傷つけるようなトラウマを忘れてしまう現象がある。
彼の死んだ2014年においても、日本では小児性愛はタブーとされている。
都合のいいように記憶を歪めているのも、当然のことかもしれない。


死神「けど、忘れたところで罪と罰はついてくる。どうしようもない摂理だよ」

男「はい?」

死神「話題を変えよう。好きな食べ物は?」

男「……チョコレートパフェですかね」

死神「そうかそうか。じゃあそれがアタイの夕飯だ」

男「パフェを夕飯!?」

死神「ああ。三途の河を渡った者の好きな食べ物を、その晩食べて供物とするのがアタイの習慣なのさ」

男「いや、そうじゃなくて……普通パフェは、オヤツか何かだと思うんだけど……」

死神「あー……スマンね。アタイ非常識でさ。どの死神も奇人だと思わないでくれよ。おかしいのはアタイだけで……」

男「奇人ですか……」


「その名は私にこそ相応しいのかもしれません。
 私、なんで罪を背負っているのか理解できないんです。
 ひょっとしたら、根本的に真っ黒な悪人なのかも……」



#8#


閻魔「――開廷。罪状は『姦淫』『殺人』の物質的犯罪。および『傲慢』『放蕩』『謀略』の心理的犯罪。罪状を認めますか?」

男「はい」

閻魔「では物質的犯罪の方から審議に入ります。まず貴方が、当時小学生の女児と、中学生の女児を殺害した件について……」

男「ま、待ってください!! ……小学生と中学生……!?」

閻魔「貴方の記憶と食い違いますか?」

男「ち、違う……わ、わた……高校生だったはずだ! 法的に結婚できる年齢だったはず!!」

閻魔「……検察側よりも説得力のある資料を提出できますか? 度が過ぎれば、審判妨害罪が適用されますよ」

男「く、クソッ!! 年齢詐称だあのガキ!! 騙したな!! 呪われろぉおおおおおおお!!!!」

閻魔「――犠牲者二人のうち一人は、『応供』に値する聖者。貴方はそれを殺した……」


――――――――。

判決。『黒』。
無間地獄での服役を命じる。

――――――――。


#裁判所近くのカフェテリア。
 パフェひとつ頼む死神。


死神「……」

閻魔「こら。またサボりですか?」

死神「……能率がいいって言ってください」

閻魔「確かに、そこだけは評価しましょう」

死神「……白と黒ですか」

閻魔「?」

死神「そこにこそ、人間の限界が潜んでいるのかもしれませんね」


チョコレートパフェ。
チョコの茶色と、クリームの白が混じり合い、淀んだ中間色を生み出した。

だが。
白と黒の境界線だけは、誰にも踏む越えることができない。


人間が生き続ける限り――。


END



お付き合いいただきありがとうございました。

……いかがだったでしょうか。
もし許されるのであれば、少しアンケートをとってみたいと思います。

文章の書式は見難くないか。
話がまとまっているか。
詰め込みすぎていないか。

そもそも、面白いのか。

もし暇でしたら、どうぞ意見をお聞かせください。

最後の話だけどさ

無間地獄に落とす必要あったの? 『男』は捕まって裁判を受けて一応罪を償ったんだよね? 裁判長に賄賂を渡して減刑してもらったとかならともかく

乙!
刑期の件は、呪われろだの見苦しく叫んで精神の醜さを重ねちゃったからじゃない?


アンケですが
・見辛くはありません
・話は程よくまとめられてると思います
・面白いというよりは、惹かれます


>>84
説明不足でした。
無間地獄に落ちた理由ですが、『男』の、自身の罪への無自覚さが原因です。
裁判を受けて20年服役したとしても、罪を悔悟し、償うために善行を積む姿勢がなければ全くの無駄です。

閻魔による裁判は、『生前の善行』『死後の悔悟』という、ある種の情状酌量を重視します。
つまり、情状酌量の余地がなければ、相応の地獄に落とすということです。


☆『男』を査定する上でのマイナス要素。

①若い頃に男性からの性的搾取を受けたが、その反動で中年期に、小・中学生の女児を妊娠させてしまった。
 →性的搾取を受けたのに、性的弱者に共感することができず搾取する側に回ってしまった。
   「2人の女の子は援助交際だから、どっちもどっちでしょ」という意見もありそうだが、相手は小・中学生。
  当然分別もつかない年頃、妊娠することの深刻さに気づいていない年頃なので、大人として最低の対応だった。

②2人の若い妊婦を殺害してしまった点。
 →胎児も含め、同時に4人殺した計算に。
   示談等の手段は見いだせなかったのか。芸能界の圧力を使ってでも、殺すという手段は避けるべきだった。

③20年服役したのに、死後である#7#で「ひょっとしたら、根本的に真っ黒な悪人なのかも」と、未だに自分が悪人であることを確信していない様子。
 →無間地獄行きの主因1つめ。生前での20年服役でしっかり反省していれば、軽い地獄で済まされていたはず。

④殺した相手のうち、小学生のほうが『応供』に値する聖者だったこと。
 →無間地獄行きの主因2つめ。子供殺しはそもそも相手の可能性を奪っているので重罪。
  小学生にして聖者の域に達するほど善行を積んでいるということは、第二のブッダになりうるほどの逸材だった。
  聖者の夢を奪い、日本の思想的成長を阻害した罪は重い。

⑤ラストの「呪われろ」発言。
 →審判妨害罪の適用。閻魔の威厳に関わるので、無間地獄行きが後押しされてしまった。
  ④までのマイナス要素で留めておけば、最悪の事態は避けられた。


ちょっと長くなりましたが、以上です。


>>85
ありがとうございます。すごい励みになります!
書いている途中、ずっと「このレイアウトは見辛いんじゃないか」とか「冗長な展開じゃないか」とか不安になってました。
これからも自分の作風を探しつつ、頑張っていきたいと思います。

……長々と居座るのもアレなので、HTML化の依頼をしてきましょうか。
最後に皆さん。
お付き合いいただきありがとうございました!

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