まどか「ネコみたいなのを飼うことになった」 2スレ目 (359)

前スレ まどか「ネコみたいなのを飼うことになった」
まどか「ネコみたいなのを飼うことになった」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1369790871/)

SSwiki より

ある日、鹿目まどか(10)はネコのような生き物を拾う。
両親を説得して飼うことを決めたのだが・・・。



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1398855161

「まどか。まどか…」

耳元でふわっとわたしを呼ぶ声がしました。

なんだかこそばゆくって、不思議と心地良かったです。

まどか「ん……んん?」

その声に反応して目を開けると、何か小さい黒い影が目の前を飛び越えていくのがわかりました!

私は思わず手元にあった毛布を手繰り寄せます。

まどか「わっ!!」

そしてそれは、わたしの布団の上に着地して軽くお腹のあたりが抑えつけられました。

「やっと起きたわね。ずっと待っていたわ」

わたしはその声の主を確認しようと、今一度眠たい目をこすって身体を起こしました。

すると目の前には、ネコミミ姿の小さな……女の子のような、ネコのような…そんな子がいたのです。

思わずドキッとしてしまいました。

わたしはその子のことをよく知っていました。

人の言葉を喋っていること。そのことを除けば……。

まどか「ほむ!?」

ほむにゃん「ええ。あなたから見たらそうなのかも知れないわね」

ほむが喋っている。そんな驚きを隠せません。

何故? なぜ突然!?

まどか「喋れるってことは、今はほむらちゃんなんだよね…?」

するとほむらちゃんは、何故か暗い顔をしました。

ほむにゃん「まどか。わたし、あなたに伝えなければならないことがあるの」

まどか「えっ……?」

ほむらちゃんが見せる悲しげな顔…。
それを見て私は背筋が凍るような……悪寒が走ったのです。
まさか。


ほむにゃん「いままでありがとう。 わたし、あなたに会えてよかった…」

ほむらちゃんは顔を伏せて、私に背を向けました。
そして布団から高く飛び上がって、部屋の隅の窓を目指します。

まどか「待って! 待ってほむらちゃん!」

ベッドを蹴って、わたしはほむにゃんを追います。


でも、わたしが窓に寄る頃にはもう彼女の姿はなくて…。
外には、緑に溶け込む家々が広がっているだけ。


わたしはそのまま膝をついて、崩れ落ちてしまいました。
外からは春の訪れを感じさせるような、桃色の花びらがひらひらと風に揺られて舞っています。
なのにわたしの心はどこまでも深く沈んでいくのでした。

……ほむらちゃん……わたしを置いて行かないで…。



「おい、おきろ。起きろって!」

誰かが呼んでる。

「まどかー」

でも、どうでもいい……。
もうほむらちゃんに会えないぐらいならわたしは…。


………
……


「まど…かっ!」

え?

ほむらちゃんの声がする。




目を覚ますと、そこにはわたしを心配そうに見下ろす二人。



そしてほむにゃんの姿がありました。

わたしはたまらなくなってほむのことを抱きしめました。


まどか「ほむっ!」

ほむにゃん「まどっ…かっ!

私の名前をたどたどしく呼ぶ声が聞こえてきました。

ぬくもりを感じて、まだおぼつかない両手でほむにゃんを抱きしめました。
夢の中のように流暢な声で喋ったりしません。
わたしはそれを確かめて少しだけほっとしました。


杏子「ははっ、思った通り怖い夢でも見たんだな」

さやか「だいぶうなされてたけど大丈夫?」

まどか「……うん。大丈夫だよ」

杏子「顔でも洗って落ち着いて来なよ」

杏子ちゃんにありがとうと返事をして、ほむを抱えたまま備え付けの洗面所へと移動しました。



洗面所のドアを閉め、息をついて壁を背にもたれかかります。


ほむにゃん「まど…か?」

まどか「……」

鏡に映ったほむにゃんを見つめ……両腕でそれを強く抱きしめました。


あの夢は…きっと近い将来のこと。

ほむらちゃんはいつか未来へと。

小学校の冬休みを利用してわたしたちは雪山に旅行に来ていました。
さやかちゃん、マミさん、杏子ちゃん。それからパパとママ。
そして鏡に写っているこの子は、ほむにゃん。


小学校の帰り道に、ダンボールで隠れながらわたしについて来て、いろいろあってうちで飼うことになったのです。

実は人間の女の子で、未来からやってきたというのだからびっくり。

わけあってネコの姿に変身してしまっているのですが、たまに人間の姿に戻ることもあります。

でもまだ数えるほどしか、人間になったほむらちゃんとはお話したことがありません。

もっとお話してみたい、出来れば一緒にお出かけしたり、ご飯を食べてみたいと思っているのですが普段はこの通り。

まどか「はぁっ…」

ほむにゃん「まど…かっ!」

ほむが私を叱咤するように名前を呼ぶと、『ありがとう』と頭をなでてあげます。

この姿でも十分可愛いので大好きなのですが……。

洗面台の方に歩いて左手でほむを抱えながら水道にむかって手を伸ばします。

蛇口の上にある水色のボタンを押すと、腕の中にいたほむが飛び出して、洗面台のくぼみに着地するのでした。

ほむにゃん「にゃ!」

よよよ、と恐る恐る顔を水にむかって突き出すのですが……。

ほむにゃん「にゅーーー」

いつもと違って水の量と勢いが強いせいで、両目を><の形にさせて、肉球で目をこすっていました。

まどか「無理しなくていいんだよ。ほら、おいで」

わたしが両手で水をすくって、ほむの目の前にそれを差し出してあげると「にぁあ!」と嬉しそうな声を漏らして顔面をそこに浸すのでした。

ブルブルと首を振って、水をはじくとわたしは左手でほむを持ち上げて、私はタオルで顔を拭いてあげました。

まどか「ふふ、目が覚めた?」

ほむにゃん「ほむ!」

元気よくほむが返事すると、私もほっとしました。


いつも通りの朝にほっとしながら、私も顔を洗って洗面所をでました。

さやか「マミさん、大丈夫かな」

杏子「まあよっぽどのことがない限り大丈夫だと思うけど…」


そういえば、マミさんがまだ帰って来てないんだった。


スキーをしていた時に、マミさんが行方不明になってしまったそうで、
滑り落ちていくのを見たというパパが探しに行ったというのを、ママから後で聞きました。



今頃どうしているのか、心配です……。

ここまで書きました。

順番が前後してますが、前スレの続きをこの後から書こうと思います。
予期せぬ事態ゆえご容赦いただければ幸いです。

またスレタイを考えていたら、誤投稿してしまいました。
その後もスレタイを考えていて投稿が遅れました。

~昨晩 マミ~




わたしは気が付くとその人の手を再び掴んでいた。

マミ「入りませんか?」

知久「え?」


知久「でも――それは……」

予想していなかったのだろう。開いた口が塞がっていない。

当然だ。私自身が一番驚いている。
そして、心臓がドクドクと激しい音をたて鳴り響いていた。

マミ「……風邪をひくといけないから」

知久「巴さん……」

おじさんと私のスキーウェアは、入り口のあたりに吊るしてある。

その中に着られるものだから、コートのように暖かいものではなかった。

二人共セーターのようなものを着ているだけで……。

知久「じゃあ、お邪魔しようかな」

おじさんは私の右隣にやってきた。

マミ「あの…毛布どうぞ」

知久「ありがとう。でもいいのかい? ぼくも巴さんも汗をかいたはずだけど」

そうだ…。スキーの後でお風呂入ってないから…。

マミ「でも、鹿目さんのお父さんが風邪をひくよりはずっといいです」

知久「そっか…」

おじさんは複雑そうに笑っていた。

私のような子供が気遣いをしていることが、珍しいのかも知れない。

あるいは、両親がいないという子供という境遇を知っているから、いろいろ思うところがあるのか……。


友だちから親がいないことを『可哀想』と言われたことがある。

実際わたしも辛かった。

両親のことは慕っていたから、思わぬ事故で失くしてしまったことを悔やまない日はない。


親を失くしてしまった可哀想な子。

周囲からそんな目で見られることはもう慣れた。

それは構わない。

不幸な事故に会ったのは事実だし、同じ年頃の子に比べればわたしは不遇に違いないのだから。

だけど……自分が同情されるたびにある気持ちが募っていくのを抑え切れない。


『後悔』

同情してもらえるといってもそれは人によって違う。

ただわたしのことを可哀想な目で見てくる担任の先生。

この人はまだいい。

でも…

忙しいからと断っても、積極的に遊びに誘ってくれるクラスの女の子。

何かと親切にしてくれて、いろいろ差し入れをしてくれる近所のおばさん。

わたしの境遇を知って、優しくされる度、優しい言葉を投げかけてもらうたび…。

その人達に噛み殺して口に出せない言葉があった。


「あなたに優しくしてもらう覚えはない」 と。


わたしは、事故が起きた時"わたしだけ"を助けようとした。

命の危機に直面した場面で、頭の中はただ自分が助かりたいという想いしかなかった。


夢に見ることがある。


転倒して已に原型を止めない車内を必死にこじ開けようとするお父さんの姿。

そこからわたしに逃げるようの名前を呼び続けるお母さんの声。


その記憶が本物か、わたしの罪の意識が創りだした幻なのかは分からないが…。

それでも、自分たちだけ助かろうとするような人たちでなかったのは確かだ。

わたしは助かった。

自分の祈りで、自分自身を救うことを選択した。

だからこうして今もなお生きている。

……生き残ってしまった。

そんなものだから、両親に対する引け目は消えない。

優しかった二人のことを想う余裕がどこにもなかった自分が悔しくて……。

わたしがもう一度命の選択を迫られることがあれば、他人を思いやることができるのか。

命がけの戦いをしている今、再び佐倉さんや他の誰かがピンチになった時……。

あるいは暁美さんのいう四年後に訪れるというワルプルギスの夜が来た時。

わたしは自分の命をかける覚悟ができるのか?

この先本当に勝てないような相手が現れたとき…わたしはあの時と同じ選択をするんじゃないか?

結局わたしは自分のことしか……。

知久「巴さん?」

隣にいる、おじさんがわたしを心配そうに見つめていた。

気づいたら涙がこぼれていたのだ。

わたしは平気です、と強がって笑った。

知久「……」

彼はそれ以上何も言わず黙ってしまう。

また困らせてしまった…。困らせてしまったことを後悔した。


横顔を見ると、まっすぐどこかを見つめているようだ。凛とした顔で。

いつもの優しそうな雰囲気とはどこか違う…無機質な目。

30の要望に答えて、時系列をさかのぼってそういうの書いてみました。
外伝だと思ってもらって読んでもらえればと思います。


今日は日曜日。久々にほむにゃんと二人でおでかけです!

家を出て肩に乗っているほむに聞きました。

まどか「どこか行きたいところはある?」

ほむにゃん「にゃーー!」

うーん。何言ってるんだろ。わからないや。
とりあえず適当に歩いてみようかな。

ほむにゃん「ほむ!ほ、ほむ!ほ!」

またテレビの影響で新しい踊りを踊ってる。
このまえは大福のCMだったけど、今日はアイスのCMだ。

んん。アイスが食べたいって、さりげなくアピールしてるのかな。

まどか「そうだね、今日は暖かいし、アイスもいいかも」

ほむにゃん「ほむ!!」

嬉しそうに私のほっぺに顔をすり寄せてきます。


……熱い。
まあいっか。可愛いし。


坂道をゆっくり登っていくと、さやかちゃんとお友達になったときに初めて連れてってもらった駄菓子屋さんがありました。
そこでアイスキャンディーを2つと、あめ玉を買って近くの公園のベンチに腰を落ち着けます。

まどか「溶けないうちに早くたべちゃおうね」

ほむにゃん「ほむ!」

まどか「冷めたくて美味しい」

アイスを食べ終えて、棒をゴミ箱に捨てて、またベンチにすわっているとぽかぽかな陽が気持ちよくってほかほかした気分になってきました。

ほむにゃん「ほわぁああ」

ほむが大きい口をあけてあくびをしているのを笑いながらみてると、わたしも釣られて……。
なんだか眠いなぁ……。

風が気持ちいい。

ん……。
寝ちゃったのかぁ。

まぶたをこすって辺りを見渡します。
陽がまだ高くにあったので、まだそれほど時間が経っているわけではない様子。

まどか「あれ、ほむは?」

ベンチにも、頭の上に手をおいてもほむはいません。

どこにいっちゃったのかな。

「にゃー」

するとベンチの背後から、ネコの鳴き声が聞こえました。
それもひとつ、ふたつじゃありません。


気になって背後を確認すると、奥の茂みの中。
ほむがたくさんのネコたちに囲まれるのがわかりました!

まどか「うわぁ、すごい!」

こんなたくさんのネコ見たことがありません。

みんな野良猫なのか…な。

すごくちっちゃい!
うぁああ。可愛いなぁ…。
撫でてみたいな。


そう思ってほむたちに近づくと、なんだか様子がおかしいことに気づきました。

みんなわたしには目もくれず、ほむにゆっくり詰め寄っていくのです。

ほむはブルブル震えていて、徐々に後ろにある大きな木に追い詰められていきます。

もしかしてみんなに何か悪いことをほむがしちゃったのかな?

くびをかしげていると、
その中の一匹のにゃんこが、ほむにむかって進み出て、「にゃあ~」と身体をすり寄せにきます。
しかしほむは縮こまって、ブルブルと震えながら黙っているだけです。
そして一匹、また一匹とほむに近寄って、身体や顔をすり寄せて、
子猫たちはなんだかほわほわしているのでした。

な、和むなぁ~。


ほむにゃん「にゃにゅにぇにぇ~(助けて)」

まどか「……」

わたしは遠くからその様子をじっと見ていると

ほむが泣きそうになっているのでなんだか可哀想になってきました。

~マミ~

マミ「匂いがするわっ!」

杏子「え、どうしたんですか、突然」

マミ「もふもふちゃんがわたしに助けを求めている匂いがするって言ってるのよ!」

杏子「……」

はっ! 数秒前の記憶がない…。

あれ、なんでわたし佐倉さんの肩を掴んでるの?
しかも「うわぁっ何言ってるんだこの人」みたいな目で見られてるし?

マミ「佐倉さん、わたし何か変なこと言ったかしら?」

杏子「いや、その……匂いってなんですか?」

マミ「匂い?」

杏子「もふもふちゃんがどうとか言ってたんですけど…」

そ、そうだ。

今もふもふちゃんが私を呼んでる気がしたの!

思わず取り乱して変なこと言っちゃったみたいだけど、早く助けに行かないと。

マミ「佐倉さん、暁美さんのピンチよ!」

杏子「え。なんでそんなことがわかるんですか」

マミ「え、えっと…彼女ソウルジェムの波動が弱まって……」

う、うわぁ、下手な嘘ついちゃったぁ。

どうしよう。

杏子「やっぱマミさんてすごいっ! アタシにはまだ全然わかんないです」

佐倉さんは目をキラキラさせていた。

杏子「それじゃあ、さっさと出かけましょうよ! アイツが苦戦してる魔女とやらを二人でぶっ倒しに」

マミ「ええ…そうね…」

どうしよう。
嘘だって言いづらい雰囲気になっちゃった。

~まどか~

ほむにゃん「まど……か!」

ほむがわたしの名前を呼ぶとわたしは、たまらずほむに近寄っていきました。

そして、わたしの存在に気づいたほむは目を輝かせてこちらを見つめています。

はいはい、と笑顔で近寄っていく……。

ほむがわたしめがけてジャンプしてきます。

しかし……

「にゃぁあああああ」

子猫たちがほむにゃんの足に捕まって……
それはまるで子猫の橋のようなものが出来上がっていたのです。

大きい!

まどか「!?」

その橋は跳躍したほむにゃんを先頭にわたしめがけて倒れて来ます。

が、あまりの突然の出来事にわたしは驚いて避けることが出来ませんでした。

そしてほむの頭がわたしの頭に直撃して……。

痛みと共に、足が崩れてしまったのです。

でも、だんだん周りの景色がはっきりしてきます。

「にゃぁ~」

「にゃぁ~」

ネコ? 

にゃんこたちの声が、わたしの意識を喚び起こそうとするのです。

ドドドドドドドドッ

えっ?

急激にジェットコースターから落下するような感覚に目眩がして…。

気が付くと、さっきまでいた茂みに倒れていました。

陽気な春の日差しと、青空。

そして何か夢を見たような、後味の悪さが残っています。

気のせいか心なしか周りの風景が違って見える気がする……。

それなのに、何がおかしいのかわからないのは頭がぼぉっとしてしまうせいでしょう。


「にゃぁ」

えっ!?

一匹のにゃんこが、わたしの空を塞ぎました。

しかし…その相手はにゃんこと呼べるような可愛いものではなく、

わたしの視界を覆ってしまうほど大きなネコだったのです。

まどか「にゃぁあああああ!!」

わたしが悲鳴を上げると、次の瞬間そのネコは空中へ重力が反転したかのように落ちていきました。

やがてその子は空中で止まって、まるでクレーンゲームに釣り上げたぬいぐるみのように、ぐたーっと頭を垂れるのでした。


「大丈夫?」

その声は聞き覚えのあるものでした。

ほむらちゃん!いつの間に元に戻ったの?

思って起き上がると、わたしはネコの大群に囲まれていることに気づきました。

しかも、さっきまで子猫で可愛かったはずの子たちが、
自分の身体よりちょびっと小さいぐらいの大猫に化けているのです!

やだ、怖いよっ! 可愛いけど、大きいとかえって怖いよ!!

わたしは必死でほむらちゃんを探しました。

助けて! どこ、どこなのほむらちゃん。

ほむら「まどか、こっちよ!」

ふわっ!

やだ、身体が浮いて

まどか「にゃぁああああああああああ」

わたしが二度目の悲鳴をあげると、
自分の声がいつもとおかしいことに気づきました。

でも、そんなことを考えている余裕がなく、
わたしの身体が宙に投げ出されてしまったのです。

手足をバタバタさせているのですが、いつまでたっても落ちません。

そこでわたしは目を開けて…。


ほむらちゃん!

目の前にはほむらちゃんの顔がありました。

しかしわたしの知っているほむらちゃんとは違い、
顔がとても大きかったのです。

びっくりして、またあたふたしていると…。

ほむらちゃんが息をのんで口を開きます。

ほむら「まどか、落ち着いて。気を確かに持ってね…」

ほむらちゃん?

わたしのバッグから手鏡を取り出して、それをわたしに向けます。

そこには、ほむにゃんのように、
さっきまで着てた服に身を包んだ
猫耳としっぽの生えたわたしの姿がありました。


まどか「にゃぁああああああああああ!!」

寝ます…。
つづきまた直ぐ書きます。
あまり長くならないと思いますし、
知久マミもちゃんと書きます。
いきなり変な展開をやっちまってすいません。

さっきから何かおかしいと思ってたけど、そういうことだったの?

え、えええええ!

なんで、なんで。どうして!

ほむら「さっき、頭をぶつけた時に…もしかしたら魔女の呪いがあなたに……。
     ネコがたくさんいたことも何か関係があるのかもしれないわ」

魔女? いや何がなんだかわからないけど、こんな姿になっちゃったのは、そのせいなの?

あ…なんか頭の中が急にまとまらなくなくなってきた。

あれ…。

わたしって一体誰だったっけ。

~ほむらside~



まどにゃん「にゃ、にゃ!にゃん!!」

ほむら「まどか!まどか!くっ。なんてこと。

    
    …何言ってるかさっぱりわからないわ。 

    なんとしても元の姿に戻してあげるからっ

そうだ! 荒っぽいけれど、さっきみたいに勢い良くぶつかれば!」

まどにゃん「ほむ……らちゃ!」

ほむら「!?」


しまった、動揺して思わず放してしまった。

まどかはうまく着地出来ずに地面にたたきつけられる。

ほむら「ま、まどかっ!」

まどかの瞳に涙が滲んでいるのがわかった。

まどにゃん「グス、グスッ」

わたし、なんてことを!

ほむら「だ、大丈夫!? 」

まどにゃん「にゃぁあああああ」

膝を折ってまどかの膝元を見ると、足を擦りむいていた。

わたしは慌ててまどかを抱きかかえて擦りむいた膝を確かめ…。

ほむら「病院! いえ、獣医にみせるのがいいかしら。まどか大丈夫っ!?」


まどにゃん「すん…すん…」

ぽろぽろと涙をこぼしている。

痛みと、ネコになったのがあまりにショックなのか……。

なんにしても、このまま頭突きで荒療治するのは得策ではなさそうね……。

マミ「見つけたわ! もふもふちゃんのソウルジェム反応はこっちね!」

うわぁ…面倒臭いのがやってきた……。

背後を振り返ると、目を輝かせている巴マミと息を切らせた杏子の姿があった。

マミ「あれ、もふもふちゃん……? 今日は暁美さんに戻ってるの?」

ほむら「悪かったわね。 あなたは杏子とお散歩かしら?」

杏子「そんなふうに見えるかよ! アンタが魔女にやられてるって聞いたから、飛んできたんだっつうの!」

ほむら「魔女? アタシが? なんでそんな話になってるのかしら?」

杏子「だってマミさんがアンタが危ないって…」

マミ「ああああああ。あ、暁美さんは無事だったのね!よかった。よかったわ!」

杏子・ほむら「……?」


マミ「ところで、今日は暁美さんは一人なのかしら?」

マミは辺りを見渡すが、わたし一人でいるのが珍しいようだ。

ほむら「え、ええ。悪いかしら?」


とっさにまどかを両手で背後に隠したのだ。

まどかを見せれば、どんな反応をするかわかり切っている!

まどかの気持ちなどお構いなしにもみくちゃにするに違いない。

マミ「変ねぇ……」

ほむら「な、何が変なのかしら?」

マミ「いえ、わたしの気のせいだと思うけど…匂いがしたの。

    かわいい匂いが……」



な、何なのよこの人…。

わたしは冷や汗が流れるのを止められなかった。

一歩間違えたら、自分がマミに捕まっていたかもしれないこともそうだけど、

どこまで本当かはわからないにせよ、嗅覚でその存在を嗅ぎつけてくると言うのだ。

恐らくこの人ならやりかねない…。

やはりまどかを見せるわけにはいかなかった。

マミ「あら、暁美さん。夏はまだだというのに、随分汗をかいているのね。わたしが拭いてあげるわ」

ほむら「い、いいえ…遠慮しておくわ」

一歩後ずさって、首をふる。

マミ「うふふ、遠慮しないで」

やめてって言ってるのになんなのよ!

やっぱりわたしはこの人が苦手だ!

その時背後――両手が突然軽くなった。

そして、その重みは肩へと乗り……

両手を広げて巴マミに向かって堂々と胸を張る!

まどにゃん「ほむ、は、まど、の、もの、にゃぁああああああああああああああ」

わたしの冷や汗は滝のように流れていく。

当然マミは目を輝かせていた。

マミ「暁美さん!」

手を握られる。

ほむら「は、はいっ!」

マミ「この子をわたしにちょうだい! いいわね。ありがとう!」

ああ、変なスイッチが入っている。

こうなることはわかっていたが……。

杏子「あれ、こいつもしかしてまどかじゃねえのか?」

マミ「あら…本当だ」

た、助かった。

杏子「アンタたち逆転してんじゃん。 何があったんだよ?」

ほむら「実は……」

わたしは事情を二人に説明した。

ほむら「というわけなのよ」

杏子「そんなことがあるのか。厄介だな…」

マミ「それは困ったことになったわね」

約一名全然困った顔をしていないのが気になるが…。

まどにゃん「グス…グス…」

まどかの頭を撫でた。

ごめんね、まどか。

わたしのせいでこんな姿に…。

マミ「待ってね。わたし絆創膏持ってるから」

まどにゃん「にゃ?」

片掛けのバックから、絆創膏を取り出してまどかの膝に貼り付ける。

まどかは暴れない。この人の本性をまだしらないのだ。

わたしなら上からマミの頭につばを吹きかけているだろう。

ほむら「え、ええ…ありがとう」

マミ「うふふ、気をつけてね」

なんでよ!なんでわたしが
悪いことをした気分になっているのよ!

まどにゃん「……」

まどかは巴マミをじっと見つめている。

まどにゃん「まみ…さっ!」

ほむら「あっ!」

マミ「え!」

まどかは巴マミの肩に飛び乗った。

まどにゃん「ありにゃと! まみ…さ!」

両手を合わせてにっこり笑うまどかの笑みを、巴マミは呆然と見下ろした。

そして、唇を歪め、ガクリと首をたれると……

マミ「うぅぅぅうぅぁあああああああああああああああ」

突然公園をマミは飛び出して行く。

杏子「マミさん! ま、待ってよ!」

マミ「ああああああああああああ」

杏子「マミさーーーーん」


忙しい人ね…。

マミが飛び出していく勢いで、まどかは宙に投げ出されて、わたしはそれを両手でキャッチしていた。

ほむら「とにかくあなたに大事がなくてよかったわ」

まどにゃん「にゃあ!」


まどかを肩に載せて、とりあえず散歩の続きにでかけることにした。

ほむら「足はもう大丈夫?」

まどにゃん「にゃっ!」

短く返事をする。

まあ何かのきっかけでまた元に戻ることもあるだろう。

ちょっと息抜きに遊ぶぐらい構わないかしら。

ほむら「どこか行きたいところとかある?」

まどにゃん「にゃ……」

まどかは頭から肩の上に降りてくる。

ほむら「わたしは特にないけれど…」


でも、困ったことにまどかの家には帰れない。

わたしはまどかの両親に面識がないし、何よりあなたの娘がネコになりましたなどと口が避けても言えないからだ。


そして事件は起こった。

角を曲がった出会いがしらに、休日出勤をしていたはずのまどかのお母さん『詢子さん』とぶつかってしまったのである。

詢子「いてて。あ、ごめん。急いでたもんで…」

ほむら「……」

まずい。非常にまずいわこの状況。


面識がないとはいえ、ほとんどネコの時と顔が変わらないことを知っている。

何よりまずいのが自分の娘がいまどんな状態になっているのか。

わたしはそれを説明することができない……。

となれば、取る行動はひとつ。

面識がないとはいえ、ほとんどネコの時と顔が変わらないことを知っている。

何よりまずいのが自分の娘がいまどんな状態になっているのか。

わたしはそれを説明することができない……。

となれば、取る行動はひとつ。

ほむら「す、すいません。ぼぉっとしてたもので」

地面に寝転がっているまどかを素早く拾いあげて、その場を立ち去ろうと踵を返した。

が。

詢子「待ちな…」

肩を掴まれる。

ビクッ! な、何!?

とりあえずここまで書きました。


~まどほーむ~


詢子「いや~、今日はちょうど仕事が早く終わったんで、慌てて帰ってきたんだけどね」

キッチンのテーブルにわたしと詢子さんが向かい合って座る。

頭のうえにはもぞもぞと動くまどかが乗っていた。

詢子「しっかしびっくりしたわ。アンタうちで飼ってる猫にそっくりなんだよね。
   娘に会わせてあげたいわ~。きっと喜ぶって」

ほむら「はぁ……」

詢子「にしても、なんの因果かな。アンタもネコみたいなのを飼ってるだなんて」

あたまの上のまどかを見上げて詢子さんは笑う。

詢子「それ、うちのにゃんこと同じ種類かもな。私はてっきり突然変異でうちのだけじゃないかって思ってたけど、世界って広いんだなぁ」

知久「はい、どうぞ。お昼ごはんできたよ」

鳥の唐揚げとご飯。それにこの家の庭で採れたと思われるサラダがテーブルに置かれた。

おじさんはメガネを左手で直しながら、右手で頭の上のまどかを撫でる。

知久「ほむより大人しい子だね」

ほむら「……」

知久「なんだかまどかに似てるような気もするなぁ…」

詢子「まどか? 言われてみれば確かに」

まずい……おばさんはともかく
このメガネ…じゃなかった…
まどかのお父さんはなんか気づいてる気がする。


知久「どうぞ召し上がれ」

ほむら「い、いただきます。うわぁ、この唐揚げ美味しいですね…」

知久「うん。君、好きだと思ったから!」

おじさんはまどかの頭を撫でながらにこやかに笑っている。


わたしは居心地が悪くなってコーヒーを口に含んだ。

詢子「ん? どういうこと?」

知久「いや、だってほむが初めてうちに来た時はこれを美味しそうに食べてたからね~」

ほむら「ぶーーーーーっ」

思わず口からコーヒーを吹き出してしまった。

詢子「おいおい、大丈夫かい?」

知久「大変だ。折角の服が汚れてしまったじゃないか。これはお風呂に入って乾かしてもらうしかないねー」


絶対わざとやったでしょ!

ていうか、まずい。

完璧にバレてるじゃない。


~お風呂~

脱衣所でコーヒーのかかった服を洗濯機に入れ、まどかを抱いたままシャワーの蛇口をひねる。

冷たい…。

ほむら「はぁ…どうしてこうなったの……」

頭を冷やしながら考える。



まどにゃん「ほむ! ほむ!」

元気出せっていってるのかしら?

ほむら「大丈夫よ。あなたのことはちゃんと元に戻すから」

まどにゃん「にゃあ!」

まどかを見て少し元気がでた。


そうだ。シャンプーしてあげよう。

液をこすって泡を立てると、自然とわたしの膝の上にまどかが登ってきた。

ほむら「よしよし、じっとしてなさい?」

頭を掻いてあげると、反転してこちらを見上げてきた。

ほむら「……」

まどにゃん「にゃっ?」

もふもふ…。

ほむら「なんでもないわ」

危ない…。

われを忘れてしまうところだった。

まどかが可愛いということは知っているつもりだったが……。

でも後でまどかにわたしがしたことは伝わってしまうのよね。

まどか「ほむ?」

ほむら「くっ……」

わたしは巴マミじゃないのよ。

何よ。もふもふって。

どうしてそんな言葉が頭に浮かぶの!


お風呂から上がって、代わりの服を用意されるとしばらくまどかの部屋で遊んでいて欲しいと言われた。

ほむら「結局おじさんは、わたしのことを問い正すつもりなのかしら?」

気づいてて知らないフリをしてるのが怖いのだけど…。

まどかはベッドの上でぴょんぴょんと飛び跳ねていた。

まどにゃん「にゃああ!」

遊んで欲しそうにこちらを見つめている。

わたしは周りを見回した。

当然だけど部屋にはわたしとまどかの二人しかいない。

ちょ、ちょっとぐらい遊んであげるだけだからいいわよね?

ほむら「……」

遊んで欲しそうにこちらを見つめている。

わたしは周りを見回した。

当然だけど部屋にはわたしとまどかの二人しかいない。

ちょ、ちょっとぐらい遊んであげるだけだからいいわよね?

ほむら「……」

ベッド上に腰かけると、まどかはぴょんぴょん跳ねながら膝の上にのってきた。

まどかは信じられないほどに軽い。

ほむら「え、えっと…」

自分がネコだった時の記憶を頑張ってたぐり寄せる。

だけど、何故かドキドキして思い出せなかった。
なんでこんなに胸が…。

わたしはまどかの顎の辺りを人差し指でなでた。

まどにゃん「にゃ!」

あ、しっぽも耳がぴんってなってる。緊張してるのかな?

面白い……かも。

さらにくすぐるように指を動かすと、まどかは首を左右に振ってブルブルと震えていた。

かわいい…。

ほむら「ほらほら、お腹はどうかな?」

お腹はいつもわたしが触られて喜んでいるところだ。

まどにゃん「にゃ~~~」

あっ。目を閉じて和んでる。
気持ちいいのかな?

つん、つん。と指でお腹をつつくとほーっと息をはいている。

ほむら「……」

今度は耳に触れてみた。

まどにゃん「にゅっ!?」

すると急に毛を逆立てて、素早い動きで毛布の中に逃げ込んでしまった。

そんなにくすぐったかったのかしら?


ほむら「まどかー?」

布団から出てくるように両手を前に伸ばす。

ちょっとだけ顔を出して、ぷるぷる震えていた。

ほむら「!?」

可愛すぎる…。


私は身体を倒してベッドに倒れた。

まどかはちらちらとこちらを気にしていた。

ほむら「はぁっ…こんなことしてていいのかしら…」

まどにゃん「ほ?」

まどかは恐る恐るこちらにむかってきた。

ほむら「……」

わたしの手の届く距離にやって来きたので左手を伸ばして今度は普通に頭をなでた。


落ち着くわね…。

わたしはこうやってなでられるの好きだったけど、まどかはどうなんだろう?

逃げないところを見ると、嫌がってはいないはずよね。

抱っこしたいなぁ…。

書き溜めてまた後で書きます。

まどか「ほ?」

わたしがなんだか切なそうにまどかを見つめていると、

まどかは心配そうに距離を詰めてくる。

もう片方の手で抱き寄せたい…。

けど、この記憶は残ってしまう……。

わたしは人間にもどった時に…。

変なやつだって思われる…。

ほむら「……」



まどにゃん「ほむ、ほむ、にゃあ!」

ほむら「っ!!」

まどかが…まどかがわたしに擦り寄って…。

まるでもっと遊んで欲しそうに顔をすりすりさせてる!


ほむら「っ……」

わたしはたまらずまどかを抱きしめた。

あまりにもその姿が愛くるしくて……黙っていられるわけがなかった。

まどかっ…まどかっ…。

ごめんね、こんな姿にしてしまって。

わたしのせいで…こんなっ!

でも今だけはっ…

今だけは私の胸の中にいて…。

ほむら「まどか…」

まどにゃん「ほむぅ……」

あったかいなぁ…。

ほむら「このままずっとこうしてられたらいいのに…」

まどにゃん「っ……」

ほむら「まどか…?」

突然まどかは泣き出してしまった。

なんで……どうして……。


あれ…世界が…歪んで…いく。

~まどホーム 深夜~



微睡みから抜けると、

私はそこが自分のベッドの上ということがわかりました。


「やっぱり夢だったんだ」

目の前にはほむがぐっすり寝てる。

涙が止まらない。

夢だと分かっていても、ほむらちゃんが私にすがって抱きしめてくれたこと。

なんていい夢だったんだろう。

どうして覚めちゃったの…。

わたしはずっとあの中にいたかったのに…。

夢の中で、わたしは半分ほむらちゃんになってた…。


本当にあるんだ。

好きな相手に自分自身がなれる夢って…。




どれだけほむらちゃんのこと考えてるの…わたし。

でも……嬉しい。



大好きなほむらちゃんが夢に出てくるだけでもうれしいのに…。


そのほむらちゃんになっちゃってるなんて。


それだけわたしはほむらちゃんのことを…。



また胸が苦しくなってきた。

わたしが勝手に創りだしたほむらちゃんの姿だけど…。

あんな風に普段私のことを想って…心配してくれてるのかな?

ちょっとしたことで不安になったり、慌てたり…一生懸命になったり…。

そんなに悩まないで、心配しなくて大丈夫だよって

わたしが逆に心配になっちゃうぐらい、私のことを考えてくれてるなんて…。


なんて"都合のいいほむらちゃん"を想ってたんだろう。

そんなことをわたし…考えてるのかな?

ずっとわたしのことばっかり見てて欲しいって…。


でもそんなことばかり考えてたら。

ほむらちゃんに知られたら嫌われちゃうかも知れない。

心配してくれることも嬉しかったけど…。



わたしのこと可愛いって…思ってくれた。



後でわたしにバレるのが恐くて、

中々抱きしめられないほむらちゃん…。

恥ずかしいって気持ち…
すごくほむらちゃんらしい気がする。


ぐすっ…ぐすっ……。
いけない…また涙が。


もし。

もしほむらちゃんがあんな風にわたしのこと想ってくれるなら…。

抱きしめてくれるなら…。



ぐっすり寝てるほむにゃんを見ました。

わたしはゆっくりそのおでこと、わたしのおでこをくっつけます。


でも、わたしはわたしのままでした。


やっぱり勢いよくぶつからないとダメなのかな。

それとも、夢の中だけなのかな。

もう一度あの夢が見れないかな…。

せめてほむらちゃんが夢に出てきたらいいな。


そう思いながらわたしはまぶたを閉じました。

でも、今日は落ち着かなくて、きっと眠れないだろうという予感がしました。





外伝 「ネコになりたい」 完

ここまで書きました。

1です。
23 の続き投下します。

知久「さっきの話には続きがあるんだ」

さっきの話。

それはおじさんの家族に関することだった。


知久「父が保育士になることを褒めてくれた日、結局あの時父は、母親の説得に手を追われることになった」

知久「母は泣いていたから二階に上がるように言われて、それっきり眠ってしまった
 父に会ったのはそれが最後だ」

マミ「え…?」

知久「早めに出勤した父は不慮の事故で、帰ってこなかった」

マミ「不慮の事故って……まさか……交通事故ですか…」

脳裏に、あの日の出来事がよぎった。
自動車から漏れるガソリンと焦げる煙の匂い。

知久「そう。そうだ。夕方に…ちょうどぼくが担任から父について聞かされているときのことだ」

マミ「……」

知久「話したと思うけれど父は厳しい人だった。ほとんど笑ったのを見たことがない」

知久「叱られることはあっても、口に出して褒められたことはほとんどなかった」

知久「そんなものだから、父に認められた時に戸惑ってしまった」

知久「幼稚園の先生を目指せることを喜んだというよりも、許されたことに驚いてしまって……お礼のひとつも言えなかった」

おじさんはそれを言うと、黙々と立ち上がって吹雪で震える入り口の扉を見つめていた。

知久「ぼくは父のことが苦手だった。何かと口うるさかったし、それに逆らうだけの勇気もなかったから素直に言うことを聞くしか出来なくて……でも、あのとき……幼稚園の先生になりたいと話したとき、初めてあの人が笑っているのを見た」

マミ「おじさんは、自分のお父さんのことどう思ってたんですか?」

知久「どうだろうね。父の言いなりに生きている自分が嫌になることもあったけれど、いざいなくなるとまるで広い海に放り出されたような気分になってしまった。あの人の背中を目指していたわけではないけれど、ぼくが暗い道を歩いていく中で、灯りを照らしてくれるように、そこにいるだけで安心する存在だったということに、いなくなって初めて気づいた」

知久「あの人が『よかった』と、笑った顔は今でも夢に見ることがある。
   自分が初めて選んだ道を喜んでくれたことが嬉しくて……それでも…」

マミ「……後悔しているんですか?」

お父さんに「ありがとう」と言えなかったことを。

わたしのように…。
何も出来なかったことを…。
何も出来なかったことをこの人も後悔しているのか…。

知久「時間が経つと、中々覚えてられないものだよ。
   ぼくにとって父の死がそれほどのことでしかなかったのかもしれない。
   確かにあの人が死んで動揺していたけれど、
   ぼくはただまっすぐ生きていくことしかできなかったから…」

おじさん少し緩んだ顔で言葉に温度と優しさを込めわたしを見た。

知久「父の面影を忘れてしまっても、たとえ深く覚えていたとしてもぼくは最後に父の笑顔を見ることができた。
   あの人が本当はどういう人だったかということか知ることができた…。
   それだけで十分だと思うよ。
   口うるさいお小言に付き合ってきたけれど、
   父はぼくに人形みたいな人間になって欲しいと望んでいたわけじゃないことがわかった。
   自分の意志で歩ける人間になって欲しいと望んでいたのだと知れたから」

マミ「……」

知久「巴さんが今はもういない人のことをどう考えるかは、ぼくらがどうこう言うべきことじゃないけれど、
   一生懸命生きていたらきっとどんどん遠くなることだけは確かだと思う。
   もしかしたら顔も思い出せなくなるかもしれない。
   でも、それでいいんだと思う」

マミ「いいんですか? 忘れてしまっても…?」

知久「顔が浮かばなくても、どんな人だったかって覚えてる。それだけでいいんだと思う。
   ぼくたちは親を見て大人になる。
   同じような人間になりたいと思っても、反対に同じような人間になりたくないと思うことも
   ぼくたちの自由に選ぶことができる。

   それが親からの一番の贈り物だよ。
   ずっと付き合ってきた家族を見て、どんな人になろうか選べるんだからね」

マミ「っ……」

どんなに大切に想っていても……。
自分だけを助けてしまった償いとして、
せめて存在だけは忘れないでいようと思っていた。

それでも、だんだん遠くなる。置いてきぼりにされている寂しさが拭えない。

写真を見れば顔は思い出せるけれど、記憶の中から薄れていくものがある。


優しくてかっこよかったお父さんの声。

お母さんが作ってくれた手の込んだスープの味。


どんなものでも、二人のことを覚えていたかった。

それぐらいしかわたしに出来ることがなかったから。

わたしの中からお父さんもお母さんもいなくなってしまったら、

誰が二人のことを覚えてくれるだろうか…いや、きっとそんな人はもういない。

マミ「わたしは覚えてなくちゃいけないんですっ! 
   わたしだけは、お父さんのことも、お母さんのことも!
   だって、わたしは…わたしは…」

二人を見捨てて生き残ってしまったから。

知久「……巴さんのご両親は幸せだね。ぼくの父よりずっと。
   こんなに想ってもらえて……。
   少しはぼくも君を見習うべきなのかもしれない。
   
   でもね。巴さん。
   ぼくがもし死んで、まどかに顔を忘れられたとしても薄情だなんて思わないよ。

   それよりも、これからどんな子と出会って、どんな選択をして、どんな人間になっていくかが楽しみで…。
   それがぼくが生きた証になるんだ。
   あの子がぼくたちの夢であるように、君もきっとね…」

涙が止まらなくなった。


何度も夢に見た。

逃げろ! 逃げて!という二人の声を。

今ではもう定かではない、二人が逃げろという声を何度も聞いた。


わたしは……あの二人を忘れたくなかったんだ。

思い出の人にしたくなかったんだ。


帰ってこないとわかっていても、それがどれだけ愚かなことだとわかっていても

自分を責めることで、自分を痛め続けることで

二人のことを覚えていられるのなら。

それでもいいって…。

いずれあの二人がわたしを迎えに来てくれる。

遠くない将来、お母さんとお父さんの元に行ける。

生きたいと願う反面で、二人に会いたいという気持ちは膨らんで……。


でも、それは弱い心で。

魔法少女として生きていくにはあまりにも弱すぎる…。

死が身に迫った時に軽くあきらめがついてしまう……。

二人が何を望んでいるか、それがわかっていても…。

わたしはそこを踏み越えていくだけの強さがなかった。


しばらくわたしは涙が止まらず、嗚咽を漏らしていた。



おじさんは何も言わず、何も聞かず、わたしの横に座っているだけだった。

燃える焚き火の赤が眼鏡に映っていて、
その眼差しはまるでわたしのお父さんのように見えた。

お父さんならこんな時、慰める言葉をかけて、頭を撫でてくれたと思う。

でもそうしないのは、わたしが他人だからではないような気がした……。


鹿目さんのお父さんが、自分の父親から見てきたものをわたしは感じたのだ。





わたしはいつの間にか泣きつかれて、眠ってしまった。

ここまで書きました。

どうやっても面白く出来る気がしなくて、気分転換にいろいろ書いてて遅れました。

ちゃんと後先考えて話の展開書くようにします。

とはいえ先の展開全く考えてないので、
何か希望があれば教えて下さい。

↑まずはさやにゃんのイメージください。

~一方そのころ ほむにゃん~


ん……。

また。この感覚は……。

目を開けて両手を確かめてみる。
小さくて丸い肉球がそこにあるだけで、わたしの本物の手足はそこにはなかった。
やはり姿は戻っていない。

さやかの顔と性格の猫なんてキモすぎて蹴り殺しちゃいそう

ほむにゃん「……」

隣からはまどかのすぅすぅという寝息が聞こえてくる。
まだ夜中なんだろう。可愛い寝顔を見て心を落ち着けると、外に目をやった。


スキー場で、巴マミの行方が知れず、まどかたちは彼女の帰りを待っているばかりだ。
身体を起こして、跳躍した後、二重窓の手前に着地する。

>>162
屋上

ほむにゃん「にゃにゃ……」


そうだ。喋れないんだった。

まあどうせ独り言だから誰も聞いていないのだけど、声が思うように出ないというのはもどかしいものだ。

激しい吹雪が窓を打ち付けている。

外に出て風にあたろうかと思ったが、これでは屋根の上に登ることもできないだろう。

せっかく意識が戻ったというのに。

幸いなのは巴マミの影に怯えなくても平気ということぐらいだ。

しかし夜中にこれでは、しゃべり相手もいないから結局何もすることがない。

ぴょんと、窓の側から離れて布団の上に降り立つと、ぐーぐー寝息を立てている杏子の横をすり抜けて、まどかの元へ帰ろうとする。
しかしわたしの背後でもう一人が起き上がる気配を感じた。

さやかが起き上がり……どうやら部屋の中にあるトイレにいくようだ。

暗くて、わたしの存在には気づかなかったようだ。

……そうだ。

暇だし、彼女に話し相手になってもらおうか。

トイレのドアノブに手を伸ばす彼女にテレパシーを送る。

『こんばんわ』

さやかは動きを止め、耳を疑うように辺りを見回した。

『ここよ』


彼女の足元に歩いていく。

さやか「……っ」

しかし暗いせいかわたしの姿が見えないようだ。

さやか「あはは、アタシったら何か寝ぼけてんね」

努めて明るい声で笑ってみせるが、ノブをつかむ手はブルブルと震えている。


なるほど……。

合点がいって、彼女が何を考えているのを理解した。

これは……少し興味があるわね。

怯えたさやかがどのような行動に出るのか。

わたしを目の敵にしてくるさやかが怯える姿を見たくなった。

さやか「さぁ~てさっさと済ませちゃいますかねえ」

ドアを開けて中の電気をつけると、わずかにこの部屋の中にも明かりが漏れてくる。

トイレの電灯は薄暗く、運が悪いことにいつ切れてもおかしくない状態だった。


さやか「っ……」

さやかはそれを見て押し黙る。

入っていくのを躊躇っていると、近くにあるこの部屋の灯りのスイッチに手を伸ばそうかを考えているように見えた。

しかし灯りをつければ寝ているまどかたちが気づいて何かあったのかと騒ぎになることだろう。

それを思って躊躇っているように見えた。

さやか「……」

彼女は後ろをふりむいて二人の左右を見比べていた。
どちらかを起こして付き添ってもらおうとしているのだろうか?
尿意が近いのか、焦りの表情が伺える。

結局彼女は数秒考えた末に、奥で寝ている方を選択した。

さやか「ねえ、ちょっと起きて……起きてってば」

杏子「……」

さやか「くぁーー。こいつまどかと同じで、一度寝たら起きないタイプ? しょうがないなぁ」

杏子「なんだよ。人がせっかく気持ちよく寝てるってのに。トイレぐらい一人で行けっての!」

さやか「ア、アンタ。もしかして見てたの?」

杏子「なんだ、本当にトイレなのかよ」

彼女が呆れたように眠そうな目を擦ると、さやかは恥じらう様子より焦りを見せながら杏子の手をひく。

さやか「いいから。ちょっとだけ。ちょっとだけトイレの外で待っててよ」


杏子は半分寝ているようで、おぼろげな意識でさやかに連れられていくのだが、当のさやかは悪びれる余裕もないほど焦っている。
よほどトイレが近いのだろう。

さやかが入る前に半開きになっているトイレの入り口からこっそり忍びこむと、わたしは便器の後ろにある棚のトイレットペーパーの束の裏に身を隠した。

さやか「……誰もいないよね」

薄暗い室内を最終確認して、恐る恐る室内に入ってくる。

思わず中に隠れてしまったが、よく考えればここで待ち伏せる意味はあっただろうか。

彼女個人にそこまで恨みがあるわけではない。

ただの興味本位で少し驚く姿が見たかったのだが、少々やり過ぎただろうか。

というか、他人の排泄に立ち会いたいという特殊な趣味はなかった。

この状況……。どうしてこうなってしまったのだろう。

わたしがもやもやしていると、「あれ?」という声が聞こえた。

さやか「その尻尾…もしかして、アンタ……?」

ほむにゃん「っ!?」

しまった。見つかってしまった。
とんだ失態だ。

さやか「どうしてこんなところに…いやいや、それどころじゃなかった」

彼女はパジャマの下に手を当てながらこちらを見つめている。

さやか「あ、あのさ…。アンタはわたしのこと嫌いかも知れないけど、ちょっとだけでいいからこっち来てくれない?」

ほむにゃん「にゅっ……?」

隠れていたトイレットペーパーの隙間から飛び出して、彼女の肩に乗った。

さやか「あ……、えっと……噛まない?」

ほむにゃん「ほむ」

頷くとほっとした顔で腰を落ち着けた。

それでもまだ手がブルブル震えているのがわかった。
やはり悪いことをしてしまったという気がして胸が痛い。

さやか「ごめん、ちょっとだけ…抱いてていいかな……?」

さやか「ごめん、ちょっとだけ…抱いてていいかな……?」

わたしはどうしていいかわからず、彼女の伸ばす右手に逆らわなかった。

結局彼女の胸の中で過ごすことになったという奇妙な経験をすることになってしまった。

さやかに別段興味があったわけではないが、怖がりで可愛いところがあるのだということを知るところとなる。

だが震える手に抱きしめられるのを拒絶するどころか、心地良いと思えたのは彼女にそんな一面があったことを知ったせいなのかもしれない。

さやか「ありがとう……」


わたしは黙ったまま頷いた。

礼を言われる筋合いはかなった。

↑礼を言われる筋合いはなかった。 の間違い

~翌朝 まどか視点~

洗面所で顔を洗った矢先、杏子ちゃんはわたしを見て首をかしげながら訪ねました。

杏子「そういや昨日の晩、起こされた気がするんだ……まどか、アンタあたしのこと起こした?」

まどか「え? なんのこと?」

杏子「まどかじゃないってことは、さやかか?」

さやか「え、あはは。な、なんのことかな?」

杏子ちゃんに汗をかきながら返事をするさやかちゃん。
何かあったのかな?

杏子「まあどっちでもいいけどさ。トイレぐらい一人で行ってくれよな」

するとさやかちゃんの顔がかぁっと赤くなっていました。
なるほど、そういうことかと納得するとわたしはさやかちゃんをフォローしなくちゃと思いました。

まどか「ここのトイレの電気暗かったから、夜中だと怖いんだよね」

さやか「……それだけじゃないんだよ」

しかし、わたしのフォローは虚しく空回りすることになりました。
さやかちゃんが何か言いたそうにしているのですが、それ以上何も言わないのでわたしたちは無理に聞かないことにしました。

ほむにゃん「ほむ! ほむ! ほっ!」

ほむがベッドの隅の座布団の上でぴょんぴょんはねていると、さやかちゃんの顔が少し明るくなったような気がしました。
そしてほむに近寄って、ニヤニヤしながら後ろから抱きつきました。

まどか「え、さやかちゃん!」

さやか「大丈夫ゆうべ仲良くなったんだよねーーー」

さやかちゃんが余裕そうな顔で、わたしに笑顔を向けると……。

がぶっ!

さやか「いでぇええええええええ。なんでぇええええええええ」


ほむは当分さやかちゃんのせいで機嫌を損ねたせいか、いつにも増してさやかちゃんから離れませんでした。

ここまで書きました。

お漏らしが見たかった人はごめんなさい。

ほむにゃん、バレンタインデーにチョコを贈る


詢子「おっ、この匂い。もしかして、まどか?」

ママが嬉しそうに側にやってくると、鍋に火を通しているドロドロとしたものを見て私の肩をたたきました。

詢子「そっか。明日はバレンタインだもんね。まどかもチョコレート作ってるんだ」

まどか「うん。パパから簡単に作り方を教えてもらったんだよ。さやかちゃんと、仁美ちゃんと、杏子ちゃんと…」

詢子「なるほどね~。で、本命は誰なんだ?」


まどか「ほ、本命なんて。わたし、好きな人なんていないよ……」

詢子「ふふ、わっかりやすいね~。まあ頑張りなよ」

そういってママは台所から出て行きました。

ほむにゃん「ばれんにゃいん?」

今度は側にいたほむが頭の上に乗ってきます。

まどか「うん。バレンタイン。みんなにチョコレートを配る日なんだよ。お世話になってる人や好きな子に、あげるの。ほむにもあげるね!」

ほむにゃん「にゃあ!」

嬉しそうに返事をすると、肩から飛び降りてどこかへ行ってしまいました。


~翌日 ほむにゃん~

お外はまだまだ寒いです。

でもほむにゃんは平気。ふかふかの毛があるから寒さもへっちゃらです。

トテトテと一人でお散歩に出かけるのには理由があります。


「ほ、本命なんて。わたし、好きな人なんていないよ……」

「ふふ、わっかりやすいね~。まあ頑張りなよ」

大好きなまどかがチョコを渡したい相手がいると聞いて、黙っているわけにはいきません。

まどかのハートを射止めるほど素敵なチョコレートを自分がプレゼントして、びっくりさせようと思ったのです。

ほむにゃん「ほ、ほ! ほむ、ほっ! ほむほ、ほ!」

テレビでやっていたお歌を歌いながら、チョコレートを求めてさまよい歩きます。

テレビでやっていたお歌を歌いながら、チョコレートを求めてさまよい歩きます。

寒いせいか、大きな道路に出なければほとんど人には見つかりませんでした。

いつもパパと一緒に行ってるスーパーまでやってきました。

ここでアイスやお菓子を買えることを知っていたからです。

こそこそ…… こそこそ……。

見つからないようにする理由は、マミのように騒ぎ立てる人間が中にはいるかもしれないと思ったからです。

人目を忍んで、お菓子売り場まで行きます。

ほむにゃん「だらぁ~」

バレンタインデーということで、数多くのチョコレートが棚には並んでいました。

思わずヨダレが出てしまいます。

その中の一個、特に大きな箱に包まれているものが飾られていて、透明のボックスにその中身が見えるようになっています。

ほむにゃんはこれだ!っと思いました。

棚によじ登ると、箱の上に難なく到着。

そして左手にある盾をセットして、チョコレートを中にしまおうとします。

その時まどかの顔が浮かびました。

『こら。スーパーで欲しいものがある時は、ちゃんとお金を払ってからじゃないとダメなんだよ!』

以前まどかとスーパーに来た時にお菓子コーナーで怒られたのをほむにゃんは思いだしました。

ほむにゃんはどうしよう、どうしようと右往左往していたのですが、結局悪いことをしたらまどかに嫌われてしまうんじゃないかと恐くなって、諦めることにしました。

ほむにゃん「ほむぅ……」

スーパーを出て、悲しそうな目で空を見上げるほむにゃん。

まどかは自分にチョコをプレゼントしてくれると言いました。

まどかの手作り。とても楽しみです。

でも、自分は驚かせるどころかチョコレートの一欠片すらプレゼントすることが出来ません。

ほむにゃん「ひぐっ……ひぐっ……」

でも諦めるわけにはいきません。

まどかに喜んでもらうために、ほむにゃんはひたすらチョコレートを探して歩き続けました。

やってきたのは隣町の風見野にあるケーキ屋。

ほむにゃん「にゃあ!」

オッサン「……」

コックさんの着てる白い服。ケーキのショウウィンドウの先にいるのは、背の高い怖そうなおじさんでした。

会うのは三度目です。

ほむにゃん「にゃぁあああああ!」

オッサン「……」

おじさんは冷たい目でほむにゃんのことを見下ろします。

ほむにゃん「ほむ、に、ちょー、ちょーにゃい!」

オッサン「……」

おじさんはお店の奥へ無言で入っていきました。

ほむにゃん「にゃ……」

もしかして、機嫌を悪くしてしまったのかなぁ。

ほむにゃんが頭を垂れ、お店に背を向けて歩きだすと、後ろから「おいっ」という声がしました。

振り向くと、茶色いスポンジのようなものが空中を舞っていたので、ほむにゃんはそれに反応してジャンプします。

ほむにゃん「にゃあ!」

次の瞬間にはそれを口でキャッチして、もぐもぐと食べてしまったのです。

おいしい! それはチョコレート味のケーキでした。

続き書いてます。
寝なければ投稿します。

オッサン「……」

おじさんは見事にジャンプしてキャッチしたほむに感心するように見下ろしていました。

もう一度ほむにゃんはおじさんを見るとお皿の上にある、一口サイズのケーキを高く投げてきます。

オッサン「フン!」

ほむにゃん「にゃあ!」

またほむにゃんは飛び上がり、それをキャッチしました。

もぐもぐ……。

オッサン「……フン!……フン!フン!」

ほむにゃん「ほむ! ほむ!ほむ!」

おじさんが連続してケーキを投げると、まるで分身したかのように素早く動いてそれを次々に口の中へ吸い込んでいくのでした。

おじさんは次第に疲れがたまり、肩で息をするようになっていました。

一方ほむにゃんはブクブクとおなかが膨れ上がっています。

するとケーキ屋のまわりに人だかりが出来ていました。


「なんだ、なんだ?」

「ケーキ屋さんところで何か面白い見せものやってるんだって」

「なんだあのネコみたいなの!」

ぞろぞろと人が集まってきました。


「なんだ、なんだ?」

「ケーキ屋さんところで何か面白い見せものやってるんだって」

「なんだあのネコみたいなの!」

ぞろぞろと人が集まってきました。

そこへお店の中から一人の女性が現れます。

女性「この子に餌をあげてみたい方はいませんか? 今なら1かけら50円です。どんな遠くへ投げても、この子は必ずキャッチできます」

おじさん「おいっ!」

咎めるおじさんを制して、いいからいいからとケーキのカケラの乗ったお皿を差し出しました。


「面白そう! 1つちょうだい」

女性「どうぞ!」

群衆の中の一人の男性が振りかぶって遠くに投げると、ふわふわとしたカケラにむかってほむにゃんが高く飛び上がります。

ほむにゃん「にゃぁあああああ!」

大きくなったお腹をもろともせず、大ジャンプでキャッチすると周囲から歓声があがりました。

「すげーーー!」

「かわいい!」

「俺もやる!一個くれよ!」

みるみるうちに女性の周りに人だかりが出来てきました。

おじさんは渋い顔をして店の中に入っていくのが見えましたが、目の前で飛び交う美味しいケーキを無視することは出来ませんでした。

夕方になる頃には、お店のケーキはほとんど売れていました。

ほむにゃんが全部食べたのではなく、興味をもったお客さんたちが買っていったのです。

女性「ありがとう。あなたのお陰で、いっぱい余ってたケーキがこんなに!」

ほむにゃん「ほ、ほむ…」

女性「あらあら、食べ過ぎちゃったのね」

ゲップして吐きそうになっているほむにゃんのお腹を押さえます。

女性「ところで、あなたほむらちゃんよね? どうしてこんな姿になってるのかしら?」

ほむにゃん「ほっ!?」


ほむにゃんの姿を見破ったこの女性。たしかさやかの叔母さんでした。

ほむは必死になってブルブル首をふります。

ほむにゃん「ほむほむほむほむ」


女性「いいわよ、そんな隠さなくても。見たまんまじゃない。何があったの?」

ほむにゃん「ほむぅ……ほっ…ほ!ほむ!ほ!」

女性「ふん、ふん、なるほど…なるほど…」

ほむにゃん「ほむ!ほ!ほ!ほほほ!にゃぁ!」

女性「そう。それは大変だったわね」

ほむにゃん「ほむ!」

女性「とりあえずこれ、今日のお礼だからとっておいて」

ほむにゃん「ほむ!」

女性からほむにゃんの身体と同じぐらいの箱を手渡されました。

女性「今日はバレンタインデーだから、チョコレートケーキ。あの人の手作りだけど、味は保証するわ」

ほむにゃん「ほほほ、ほ!」

両手をあげて、チョコレートケーキの箱が落ちないようにトテトテとゆれるほむにゃんを見て、彼女は笑いながら見送っていました。


すると店の奥からおじさんが現れました。

おじさん「お前にはあいつが何を言ってるかわかったのか?」

女性「いいえ。でも可愛いってことはわかったわ」

おじさん「……」

女性「また来てね~~!」

おばさんが笑顔で手を振っているのですが、必死にケーキを運ぶほむにゃんはその声に返事をすることはできませんでした。

道行く人達がケーキの箱がひとりでに歩いているのを見て、驚きの表情でそれを見下ろすと、下にはネコのような何かがいるのです。

ほむにゃん「ほむほむほむほむ! ほー!」

(なんだろう、あの生き物)

(あ、落としそう…大丈夫かな?)

(かわいい…。どこに行くんだろう?)

(あのおっきな箱はなんだ?何が入ってるんだ?)

道行く人々の視線を釘付けにするほむにゃんはみんなのアイドルでした。

ふらふらと不安定な足取りでケーキを運ぶそれを認めると、頑張って、頑張ってと応援する眼差しに変わります。


鹿目の家に戻るころには、日も暮れてクタクタになっていました。

そんなほむにゃんの帰りを玄関で心配そうに待っている女の子。

チョコを両手で抱えて不安そうな顔を浮かべているのは大好きなまどかでした。

棒になった両足をその顔を見て駆け出します。

ほむにゃん「まどっ……かぁ~~!」

ケーキを一旦その場に置いて、まどかにむかってほむにゃんは高く飛び上がりました。

まどか「どこ行ってたの!心配してたんだよ」

ほむにゃん「まど……か!」

やっぱりまどかの側が一番です。

そしてプレゼントを持って帰ってきて、彼女に喜んでもらえることが何より嬉しいのでした。

ほむにゃん「ほむ、ほ!」

そう思って背後のケーキを指さそうとした矢先…

一台の車が家の前を颯爽と駆け抜けていきました。

ブーン!

ほむにゃん「にゃぁああああああ!」

ちょうどそのケーキはタイヤの上を通過し、チョコレートは……。

そこにはぺったんこに潰れたケーキの箱だけが残っていたのです。

まどかの胸から飛び出して、車に惹かれたケーキの上にゆらり、ゆらりと歩いていくのですが……。

とても食べられそうにはありませんでした。

がっくし。その場にほむにゃんは崩れ落ちてしまいます。

まどか「ほむ? もしかしてそれってわたしに…?」

せっかくまどかに食べてもらおうと思って、一生懸命運んできたケーキ。

何時間もかけてとなり町から運んで来たのに……。

一瞬で台無しになってしまったのですから、とても立ち直れそうにありませんでした。

しっぽをコンクリートに垂れて、グスッグスッと涙がこぼれ落ちていきます。

とりあえずここまで書きました

まどか「そっか…ほむもチョコを渡そうとしてくれたんだね」

まどかが近寄ってくると、膝を折ってほむにゃんの頭を撫でます。

まどか「潰れちゃったね…」

ほむにゃん「にゃぁ……」

切なそうな声を出すほむにゃんを見て、まどかは何か元気にしてあげられる方法はないかと考えます。

まどか「そうだ!」

そしていい案が浮かんだのか、ほむにゃんを両手で抱いて家の中へ入っていきました。

冷蔵庫の中から、昨日の余り分のチョコレートを取り出します。

鍋に入っているそれを解凍して……。

まどか「今度は一緒に作ろう」

ほむにゃん「にゃあ!」

鍋でドロドロになったチョコレートをほむにゃんがセットした型の上にまどかが入れて……

それからまた冷やすために冷蔵庫の中へ。

ほんのすこしだけだけど、まどかと一緒にチョコを作れたことが嬉しいのでした。

まどか「できたら、二人でたべようね」

詢子「お。チョコか。昨日作ってたんじゃないの?」

まどか「今度はほむの分。ほむがわたしにくれる分を作ってたんだよ」

詢子「そっか、そっか。ところでまどか。ちょっとアンタに手伝って欲しいことがあるんだ。10分ほど付き合ってくれないか?」

まどか「ママが私に頼み事なんて珍しいね。いいよ。じゃあほむ、ちょっとまっててね」


するとまどかはママと隣の部屋へ行きました。


取り残されたほむはぼんやり冷蔵庫の前で待っていました。

そういえば、まどかは誰にチョコレートを渡したんでしょうか?

さやかの顔が真っ先に思い浮かびました。

ほむにゃん「しゃーーーーーー!!」

ギラリと睨みその妄想の中のさやかをぐちゃぐちゃにします。

マミや杏子にも渡すと言っていました。

杏子なら甘い食べ物は喜びそうだなぁと思いました。

その他にも誰かにチョコレートを渡したのでしょうか?

『バレンタインていうのは好きな人にチョコレートを渡す日だよ』

ほむにゃん「にゃあっ!?」

好きな子に告白をしたり、チョコを渡したりしたのかもしれない?

ほむにゃんは気が気でなくなって、台所を駆け巡りました。

その時……。

体中が熱くなって……何か奥から別の意識が沸き起こるのでした。

戻る…!!?もう一つの自分がそう直感した時、意識が薄れると共に、身を隠すためにトイレの方へとむかっていくのでした。

~ほむらside トイレ~

ほむら「はぁ……はぁ……」

何度体験しても慣れないが、今日は特に気分が優れなかった。

盾から着替え用にまどかから借りた服を取り出して、状況を整理する。

姿が戻るのは旅行に出かけた雪山以来だ。

あれから1ヶ月は経ったか。 人に戻る周期が早くなったとはいえ、未だに安定してこの姿を保てない。

いい加減この家を出てまどかを振り回すのをやめようと決意したのに、これでは心もとない。

だが、出ていく算段はもう整っている。

あの風見野にあるケーキ屋の女性――美樹さやかの叔母さんだったか。

彼女はネコ姿になった私の正体を一発で見破り、それでもなお歓迎してくれているように見えた。

ならこのまま出ていっても……。

でもわたしがネコに戻った時またこの家に戻ってくるのではないか?

今までの行動を分析するに、ずっとまどかの側を離れようとしない。

そもそも私がこの家に来たのだってあの姿の時にまどかを見つけたからではなかったか。

だとするとネコの意識の時に自我が保てなければ、この家を出る意味はほとんどないということに。

変身は未だに不定期、意志とは関係なく訪れるものだ。

今のわたしにはコントロールすることが出来ない。

ほむら「どうしたものかしらね……」

私がこの家を出なくてはいけない理由などないのだが、美樹さやかの言うとおりまどかの優しさに甘えるのも気が引ける。

それにこうやって人間の姿に戻った時に所在がなくて困ることも難点だ。

万が一まどかの家族に見つかった場合に私の身元を証明する手段がないことも問題なのだが…。


でもネコでいるのであればこれからもまどかの側にいられる…。

それならそれで……。まどかだってわたしのことを。

まどかだってそれを望んでいるんじゃないの?

わたしだって……。ずっと…。


あれ……。


――もしかしてずっとわたしがこのままでいたいだけなんじゃ。

すでに何度か人の姿に戻ることができている。

にも関わらず、人でいる時間よりもネコでいる時間の方が長いというのは何かわたし自身に理由があるのではないか?

居心地の良い日常に慣れてしまって、まどかの側にいることを知らず知らずのうちに望んで、呪いを解くことを自ら拒んでいるという可能性はないか。

――この身体が呪いを受け入れているということは……。

ほむら「っ……」

ありえない話ではなかった。


何もかも忘れて、彼女の側にいられたらどれだけ幸せだろうと考えたか知れない。


『それって、あんたはまどかの優しさにつけこんで、そばに置いてもらってただけじゃないの?』

そんなこと誰よりわたしがわかっている。

ネコが好きだってことも、一人きりのネコを放り出すことが出来ないことだって。


ほむら「このまま……」

このままでは、いつかわたしは呪いに侵されるかも知れない。

魔法少女であることも、人であることも忘れ……。


――そんなことが許されるのか?

わたしは……わたしなのに。

まどかを守るから、わたしなのに。

口の中から鉄の味がした。

トイレを出て、周囲の様子を確認するとまどかの部屋へと向かった。

暗がりの部屋に明かりをつけて、所在なく彼女のベッドの上に腰をおちつけ、天井を仰いだ。

見滝原に一人で家を構えていたわたしの部屋とは違い、彩りとふわりとした匂いが心を安めてくれる。

既に半年以上ここにいるが、一人でここに入ったことはない。

このままここにいては、あの子にすがって生きていくことになるだろう。

まどかを護れる自分になることを願ったはずのわたしが、再びまどかにすがって生きていこうとしている。

呪いを受け入れるとはそういうことだ。

そんなのわたしじゃない…。

まどかを救うことだけを願って戦うことを運命づけられたのがわたしなのに…。


だけど……。

『おいで、ほむ!』

『どこ行ってたの!心配してたんだよ』

ふり積もる優しさが……笑顔が……。わたしには必要だった。

一度手に入れたぬくもりを、手放したくないっ!

誰に咎められることがあろう?



わたしさえ認めてしまえば……

のままわたしがネコであることを受け入れれば…。

どんな形でもわたしを必要としてくれ、抱きしめてくれたことが嬉しかった。

わたしが好きだったまどかはたとえ4年前であっても、何も変わらず……守るに値すべきもので。

人でも魔法少女でもない自分が生みだしてでも、

たとえ彼女の友だちでなくなったとしても……。


ほむら「まどか……」


こんなわたしでもあなたは……。


その時彼女の机の上に目がいった。

丁寧に包装された箱がそこに置いてあり、それが何なのか気づくまで時間はかからなかった。

本命のチョコレート。

学校で渡せなかったのだろうか?

まどかが誰かに向けて作っていたのは知っていたが、その相手までは知り得なかった。

ほむら「勇気が出なかったのね……」

そのときのまどかを想うと切なくて、でも控えめなまどからしいような気もして、笑みがこぼれてしまった。

包みを手に取ると、このチョコを受け取るはずだった相手が少し羨ましくなり胸が詰まる。

せめてその相手がまどかを幸せにしてくれればと思った。

まどか……。もういいかな?

何度もあなたが死ぬところを見てきて、あなたが救われることだけを祈って魔法少女になった。

だけど。わたしは……わたしじゃなくてもあなたを守りたいという想いはきっと変わらない。

ネコになって自我を失くしても…。あなたを見つけることができた。


コンコン…。

その時部屋のドアがなった。

まどか? 


――せめて最後にお別れを言おう。

そして誓おう。 ずっと側にいると。


ほむら「あ……」

扉が開くとわたしの想いとは裏腹にそこに現れた人物は全く予想にしていない人がいた。

ここまで書きました。

ほむら「あ……」

わたしの想いとは裏腹にそこに現れた人物は全く予想にしていない人が立っていた。



知久「こんにちは」

まどかのお父さん……。

自分がまどかの服を着ていることを思い出した。

ほむら「あの……わたし……」

焦るわたしとは対照的に、おじさんはネコを見るような穏やかな目でこちらを見ていた。

ほむら「……」

お陰でわたしも少し落ち着きを取り戻した。

ほむら「…すいません…わたし…」

知久「いや、多分わかってるからいいよ。ほむなんだよね?」

やはり、バレていたのか。

知久「いつもまどかがお世話になっているね」

ほむら「わたしこそ…その……いつも…」

こんな形でまどかの家族と対面することになると思わなかったから思うように言葉が出て来なかった。

知久「一度声を聞いてみたいと思っていたから良かったよ。可愛らしいお嬢さんだけど、君は本当は人間なんだよね?」

ほむら「それは……」

ネコでもなければ人間でもない。

そしてさっきまで魔法少女であることさえ放棄しようとして、本物のネコになろうとしていたなどとは言えなかった。

頷くことが出来なかったわたしの意図を汲み取ったのか、彼は何かを悟ったように頷いた。

知久「そっか…。女の子なら良かったんだけど。ちょっと残念だね」

ほむら「あの、わたし別にまどかに悪いことをしようってわけじゃなくて…」

知久「…いや、それよりも聞きたいことがあるんだ。君はもうすぐいなくなるというのは本当かい?」

ほむら「どこでそれを?」

美樹さやかか…あるいはまどか本人から聞いたのか?

知久「巴さんが教えてくれたんだよ。自分の家に帰るのかなって思っていたんだけど」

ほむら「……わたしに帰る場所なんてないです」

知久「…帰る場所がない?」

ほむら「遠いところから来たんです…。帰ることが出来ないぐらい遠いところから…」


知久「…そっか」

神妙に頷く彼は、先ほど人ではないということを確認したことを噛み締めているように思えた。

わたしをまどかと引き離すだろうか?

ほむら「お願いがあります。 わたしはもう二度とこの姿に戻ることはないと思います。どうか、まどかの側にいさせてもらえないでしょうか? 彼女に害を加えないと約束します」

知久「戻らない? もうその姿に戻らないってことかい? ほむにゃんのままで?」

ほむら「ええ…ですから今まで通り」

知久「それはまどかががっかりするだろうね」

ほむら「がっかり?」

知久「ああ。とても落ち込むと思うよ…」

するとおじさんは悲しそうな顔をして、机の上に置いてあったチョコレートを手にとった。

知久「ぼくが渡すのはルール違反だってわかっているけどね。でも、君は何も知らずにこのままいなくなってしまいそうだから、知っておいてもらいたいことがある」

ほむら「え?」

『ほむらちゃんへ』

おじさんが持ち上げたチョコレートの下には、わたしの名前が書いた手紙が置いてあった。

ほむら「これは…わたしに?」

どういうこと。だってこのチョコレートはまどかが好きな子に…。

わたしの思い過ごしか、勘違いだろうか?

知久「中身までは読んでないけれど、それは君の名前だよね? 読んであげてくれないかな?」

頭の中がぼんやりしてはっきりしない。
なぜか胸のおくがじわじわして熱い…。

だってまどかは…わたしには何も…。

でもどう見てもこれは……。

 ほむらちゃん。 こんにちは。
 
 これを読んでいるということはもうわたしの気持ちが分かっているのだと思います。
 
 ごめんね。びっくりしたよね。ごめんね。

 
 
 きっと困らせてしまうってわかってても、ほむらちゃんにはいつか知って欲しかったんです。

 
 いつかほむらちゃんが未来に帰ってしまうって。
 
 いなくなって、もう会えないかもって。そう思っただけで辛くて。
 
 だけどほむらちゃんにはやっぱり帰るべきところがあるんだって、
 
 それは仕方ないことなんだって思うことにしました。
 
 わたしにも大事な家族がいるように、ほむらちゃんにだって大切な人がいるはずだよね。

 
 
 いつかまたほむらちゃんに会えるのかな?

 
 その時はわたしのことを覚えててくれるのかな?
 
 またお友達になってくれるのかな?

 
 
 何年かかっても構いません。

 
 たとえ5年でも10年でもほむらちゃんに会えるなら。
 
 寂しいけれど、それまでちょっとのお別れです。

 
 
 でもね。

 
 いつか出会った時。ほむらちゃんが会うわたしが、ずっと今と同じ気持ちでいられたら。
 
 その時はまたわたしの話を聞いて欲しいです。
 
 きっと何年経っても変わらないと思います。
 
 大好きです。
 


可愛らしい文字の最後は、涙で滲んでいるように見えた。

ほむら「これを……まどかが?」

知久「ぼくはてっきり君がいなくなってしまうから、最近まどかが落ち込んでいると思っていたんだ。

   だけど、多分それだけじゃないんだろうね。
   
   確証が得られなかったけど、昨日チョコレートを作る姿を見ててやっとわかったよ。
   
   まどかは本気だと思う」


わたしは…今までずっとまどかの側にいた。

なのに、何も…何一つ見えてなかったというの?

わたしはおじさんの前だというのに…。


①涙が止まらなくなった。

②顔が真っ赤になった。

さあ、どっちがいいですか?(ED分岐)

好きって…。

それは、わたしのことを友だちとしてという意味ではなく…。

想いを寄せてくれているということよね?

嘘…。うそ。そんな。どうしてまどかが。あの子がわたしのことを好きになる理由なんてないはずなのに。

顔が熱い。

知久「よかった。人間じゃないっていうから、心配していたけれどそういう顔もするんだね」

ほむら「からかわないで下さい」

わたしは両手で顔を抑えて俯いた。

ほむら「おじさんはいいんですか?だってわたしは……」

知久「ちょっと複雑な気分だね。まあ、君が男の子だったらもっと嫌だった思うけど…

   でもその様子だと君も悪い気はしてないみたいだね」

ほむら「わたしはそんなんじゃ……だいたいまどかだって女の子なのに……」

これを書いたまどかのことを思うと顔があげられなかった。

まだ胸の奥がじんじん鳴ってる。

いったいいつから?どうしてわたしなんかを?

頭の中が堂々めぐりになってしまって何も考えられない。

それは……わたしだってまどかのことを好きだけれど…好きだけど…。


心臓の音がバクバクいって、体中が熱くなって…。

このまま倒れてしまうんじゃないかとさえ思えた。

とりあえず、手紙を折って元の位置に戻すことにした。

知久「戻しちゃうのかい? チョコレートは?」

ほむら「……まだ気持ちの整理がつかなくって…」

知久「なるほどね。じゃあ、まどかには何も言わずに、ほむにゃんに戻っちゃうってことかな?」

ほむら「あ……」

ネコになろうとしていたわたしの決意がゆらいでいる。

ずっとまどかの側にネコとしているという決意が…。

ほむら「そ、その…わたし……失礼します!」

どこにその気持ちを向けていいかわからず、とりあえず足を窓に向けて走りだした。

知久「ほむらちゃん!?」

まどかの部屋から非常識な飛び出し方をして、そのまま屋根の上に登って体育座りをした。

真冬の低気圧のせいで身体が冷えるが、顔が熱くてちょうどよく頭が冷やせるのではないかと思う。

手紙の文面が頭に浮かんだ。


『きっと何年経っても変わらないと思います。大好きです』


ほむら「っ!?」

左手でまた熱くなる顔を抑える。全然熱を冷やせそうになかった。

涙が出てくる……。

まどかはわたしが未来に帰ってしまうと思っていたんだ。

未来に帰る手段があればそうしたかも知れないが、今はそんなことを私自身が望んでいなかった。

あの手紙に描かれていたことが本当だとするなら、一人にしておくことはわたしにはできない。

ネコになることも…わたしには……。

だけどまだまどかには会えない。

私の心の準備が…とてもできない。

~まどか視点~

バレンタインのあの日以来、わたしはほむにゃんを見ていません。

もちろんほむらちゃんも。

いなくなった日は、夜も寝ないであちこち探しまわりましたが、結局見つかりませんでした。


結局わたしは、ほむにも、ほむらちゃんにも手作りのチョコレートを渡すことができませんでした。

想いを伝えることもできなかったのです。


でもパパが何故か訳知り顔で、きっとまた会えるからとわたしを慰めてくれました。

会えるとは何年後の話でしょうか?


ほむらちゃんを困らせてはいけないと思い、強がりを書いてしまいましたが……。

本当に何年も待てるのでしょうか?

たった一週間だけでも、もう何日もほむらちゃんに会っていない気がします。


いつかわたしを逢えに来てくれる日がくるのかな?

そんなことを考えながら次の日曜日を迎えると、さやかちゃんから電話がかかってきました。


さやか「もしもし、まどか? まだ落ち込んでんの?」

まどか「さやかちゃん…えっと、どうしたの?」

さやか「その声じゃ休み前と変わらないみたいだね。よしよし!さやかちゃんが慰めてあげよう!」

まどか「そっか…。うん。ありがとう」

さやか「まあそれはさておき、今出て来れる? アンタに見せたいものがあるんだけど」


なんだろう。

待ち合わせの場所に歩いていくと、バスに乗りました。

まどか「となり町まで? 見せたいものってなに?」

車窓から景色を見るさやかちゃんはなんだか嬉しそうに答えました。

さやか「見てからのお楽しみだよ」



風見野のバス停で降りると、しばらく歩いて住宅街へと入っていきます。


すると何やら甘くていい匂いがしてきました。

さやか「まどかには話したっけ? うちの叔父さんがケーキ屋をやってるんだ」

まどか「初耳だよ。もしかしてケーキ食べさせてくれるの?」

さやか「まあ、それもあるけれど。 ほら」

さやかちゃんが指さすと、そこには…。

まどか「っ……!?」

ケーキ屋の売り子をやっている彼女の姿を見て、言葉を失いました。

慣れない手つきでケーキを掴んで、お客さんにケーキを渡しているのはまぎれもなくほむらちゃんでした。

どうしてこんなところにっ!?

~ほむら視点~

まどかの家を出てから1周間が過ぎた。

美樹さやかの親戚がやっているというケーキ屋に押しかけて、こうして手伝いをするようになったが…。

オッサン「おいお嬢、ケーキ潰すなよ!」

ほむら「わかってるわ」

思っていたよりもスパルタだった。

今まで働くという経験がなかったこともあるが、自分が社会に対して役割を果たしているのが不思議な気がしてならなかった。


~数日前~

あれからネコの呪いは絶えることなく私を困らせていた。

日中は人の姿でいられることが多くなったが、夜になると未だにネコになってしまう。

どこかにまどかに甘えたいという想いが私の中に残っているせいだろうか。

行き先を教えていないはずの巴マミはさも当然のように私の居場所を特定して、夕方になるとケーキを買いにくるのだ。

マミ「こんにちは暁美さん。もうすぐお仕事上がりよね?」

ほむら「……」

マミ「チーズケーキひとついただけないかしら?」

ほむら「350円になります。買ったら、さっさと帰ってもらえないかしら」

マミ「あら、そうも行かないわ。もふもふちゃん。鹿目さんの家に帰ろうとしたら止めて欲しいといったのはあなたでしょう」

満面の笑み。 頭が痛くなる。

未だに私は身体のコントロールが効かないので、ネコになった時にまどかの家に帰ろうとするだろうと思っていた。

予想は確かにあたり、ケーキ屋を抜けだしてまどかの家を目指した。

だがそんな私をどこで見張っていたのか知れない巴マミに拘束されて、犬のような首輪をはめられてしまった。

常人には見えないそれは今も私の首周りにあり、ケーキ屋の周囲1km以上先には出られないようになっている。

夜になると性懲りもなくまどかに会いに行こうとする私を、巴マミが捕まえてこのケーキ屋に運んでくるのだ。

お陰でこの家の店主や奥さんとはすっかり顔なじみになってしまった。

たまに夕飯を一緒に食べていくこともある。

マミ「私の家に連れて帰らないだけ良心的だと思うけど……もう少し心を開いてもらえないかしら? わたしはあなたともお友達になれればいいと思っているのよ。暁美さん?」

ほむら「それはありがたいのだけど、どうしても身体がいうことを効かなくて」

マミ「はぁ…これでもできるだけ冷静さを保つようにしてるの……まだダメなのかしらね」

マミ「鹿目さんにはまだ会わないの?」

ほむら「……」

ひと通り現状をマミにも説明はした。なぜ私がこのケーキ屋に移り住むことになったのかも。

今まで通りまどかの家にネコの姿で住むことも考えたが、いつまでもまどかに甘えていては呪いなんてとけないだろうと思ったのだ。
何より、わたしはまどかの気持ちに戸惑ってしまった。

確かにわたしはまどかのことが大好きで、彼女さえ生きていれば他に何もいらない。

ほむら「別に会わないと心に決めているわけではないわ。

    どう考えてもわたしはあの子のことが好きだもの。

    ただわたしの知っているまどかというのはあの子よりもう少し大きくて……。

    だからと言ってあの子の気持ちを無碍にするつもりはないけれど、それでもわたしが守ろうとしたまどかとは違うものだってことを考えていたの。

    あの子はわたしを好きだと言ってくれたけれど、わたしが見ているのは、4年後に出会うはずのまどかの面影。

    きっとその温度差はいつかどこかで出てくると思う」


マミ「暁美さん……」

ほむら「だけどわたしだってあの子と半年以上いて何も感じずに過ごしてきたわけじゃない」


ネコの姿になったときに見せるまどかの笑顔は、わたしが今まで知り得ないものだった。

ゴロゴロと甘えるわたしを快く撫でてくれて、

いつでも温かく迎えてくれるまどかは、

あどけなくてもわたしの知っている通りのまどかだった。

4歳も年下の少女にわたしは"まどかを求めて"甘えていた。

ネコであろうが、人であろうがあの子は確かにその期待に応えてくれる。

それは人としてほとほと不徳の致すところであろう。

そんな自分を卑下し、恥じる気持ちがありながらもやはり叶わないのだ。

こうやって離れて暮らしてみて自分の気持ちがわかった。


どんなに恥ずかしくても、照れくさくても、あの子を日常の中に求めている自分の気持ちに嘘はつけない。

ほむら「でも、しばらくこうして距離をおくのは悪くないかも知れない」

わたしがあの子を想っている分だけ、

まどかだってわたしのことを考えてくれているのかと思えば。



時間を重ねる度に離れていった距離さえもいつか埋められる気がする。

~ケーキ屋 今日~

オッサン「おい、お嬢。休憩入っていいぞ。それとお客さんが来てる」

ほむら「ありがとうございます」

客?誰だろう。 巴マミなら、マスターは"巴さん"と呼ぶはずだった。

奥の調理場に戻ると美樹さやかの姿が見えた。


さやか「その服、だいぶさまになってきてるじゃん? んっ?」

冷やかしにきたのだろうか?

ほむら「お客ってあなたかしら? 悪いけど台所でお昼を取らせてもらうわ」

さやか「ああ。アタシはお昼から一緒に働くからよろしくね」

わざわざそれをいいに来たのだろうか? どうも腑に落ちない。

さやかはクスクスとわたしのことを見て笑っているような気がした。

気味が悪いのでその場を去った。

調理場から家宅の廊下に繋がっている。

そこを抜け、わたしは奥の台所に向かった。

叔母さんが作ってくれたお弁当を見つけて、冷蔵庫からお茶を取り出す。

まどかの家で食事をしていた光景が頭に浮かんだ。

ほむら「まどか……」


そうつぶやいた刹那――何者かが廊下の方から走って来る。

わたしを目指して、まっすぐに。

まどか「ほむらちゃんっ!!」

振り向く間もなく後ろからその体重を受け、両手がわたしを離すまいと抱きしめていた。

ほむら「まど……か?」

まどか「よかった、よかったよ。もう未来に帰っちゃったのかと思ったよ!」

背後から涙が伝わる。ぬくもりが伝染したかのように私の涙腺を緩ませた。

ほむら「ぅうっ……」

まどか「ほむらちゃんっ?」

まどかの両手を握り――その手に涙をこぼした。


ごめんね。勝手にいなくなっちゃって。

あなたの気持ちを知って、どれだけ心配するかだってわかっていたのに。

勇気を出して想いを形にしようと、手紙まで書いてくれたのに。

――だけど、わたしだって同じ気持ちだったんだよ。

きっと面とむかっては声に出せないぐらい恥ずかしくて。

顔も見れないぐらいに照れくさくて。

こうやって泣くことしか出来ないだろうと思ったから。

体中が熱くなって……私の手足はみるみるうちに短くなり、まどかの腕をすり抜ける。


変身していくわたしをまどかは見下ろして、懐かしそうに涙を流していた。

そして両手を広げて、私を迎えてくれる。

まどか「ほむっ! おいでっ!」

いつも通りのまどかだった。


まどか。わたしもあなたと同じ。

面と向かって言葉にするのは躊躇ってしまう。

あなたが手紙を書いたその理由はきっとそれが精一杯の勇気だったからだよね?

伝わらなくてもいい。でも伝わればいい…。

あなたはまだ知らないのよね? 

わたしがあなたの気持ちに気づいているということに。


わたしは、"わたしの意志"で床を蹴って大きく飛び上がった。


ほむにゃん「まど……かっ!」

まどか「ほむっ!」

再びまどかはわたしを抱きしめてくれた。




ほむにゃん「まど……かっ……すき!」

まどか「っ!?」

その一言を聞いてまどかの両腕が一瞬緩んだ。

ほむにゃん「すき! まど…か!」

まどか「うん……。

    うんっ! わたしもだよっ!」


そして再びまた強く私を抱きしめた。

ごめんね。まどか。

あなたの気持ちに、こんな形で返事をすること。

だけどわたしもまだ伝わらなくてもいい。


いつかなんの臆面もなく、この気持ちが言葉に出来る日がくるまで。

それまでもう少し、わたしのお友達でいて欲しい。

②√完。

できました。
修正終わったら投稿します。
3時までには出来るとと思います。


①涙が止まらなくなった。


ごめん…ごめんねまどか。

わたしのことをここまで想ってくれていたのに、全然きづかなかったなんて。

あなたはずっと猫でいる私を愛してくれているものだと思ってたの。

だから猫になれば――ずっとわたしを愛してくれると。


でも……。


 きっと何年経っても変わらないと思います。
 
 大好きです。


あなたはこんな私を好きだと言ってくれるの?

それが本当の気持ちなの?

猫でもない、こんなわたしを――あなたは。

最近元気がなかったのは――そういうことなの?

たしかにわたしはあなたの家から出るとは言ったけど――。

あなたは未来に帰ると思っていたのね。

ちゃんと教えてあげていれば、そんな想いをすることもなかったはずなのに。



スキー場で私の胸の中で泣いていたまどか。

きっと好きだという気持ちを口にすることも出来ずにずっと堪えていたんだ。


そうだよね。言えないよね……。

わかるよ。まどか。

だけど嬉しい。

どんな形でも自分の気持ちをこうして目に見えるものにしてくれたこと。



何より――。


あなたが"わたし"を選んでくれたこと。


甘えたいという弱さを持ったわたしではなく……

本当の私を好きだと言ってくれたこと。

それならもう、わたしは迷ったりしない。


まどか。わたしはあなたを守る。


あなたにもらった気持ちを、わたしは――私の愛で返す。

こんな呪いなんて、断ち切ってみせる!!


深呼吸して目を閉じ、精神を集中させた。

智久「ほむらちゃん?」

すると突如、背後から何か白いホログラムのようなものが湧き出てくる。

智久「なっ?」

完全にそれが身体から出ると、わたしの身体に渦巻いていた不吉な何かが取れたような……。

知久「これは…猫?」

ついに呪いがその姿を現す。

数秒後、猫のホログラムは水蒸気のように空気に散っていくと、部屋のなかは静寂に包まれた。

知久「いったい何が…」

ほむら「変なことにつきあわせてしまってごめんなさい」

ほむら「でも、もう安心してくださいもう何も起きたりしませんから」

彼は現実にありえないものを見たことで口が塞がらなくなっていた。

わたしはそっと微笑んでおじさんを見上げた。

そしてその視線は空中から私の身体へと向けられていく。

知久「あれ、ほむらちゃん? からだが…」

ほむら「えっ!?」

わたしは両手を見つめると、透けて床のカーペットが見通せた。

ふわりと柔らかな感覚に包まれると、綿菓子のように重みが希薄になり――。

猫になる時はぼんやりと意識が消えていくが、今はそれにも増して強く……。

智久「ほむらちゃん!? どこ?いったいどこにいったんだ?」

なんで…。

呪いが解け、ようやく安心してこの世界のまどかを守れると思っていたのに。

ああ――思い出した。この感覚は覚えている。

まどかと一緒にお風呂に入ったときだ。わたしの手が白く透けているのが見えた。

この世界から消えてしまう予感を感じたことがあったが……。


まさか――わたしはこのまま消えてしまうの?

なんで?どうして私が消えなければいけないの?

まどかはわたしを必要としている。ほかならぬこのわたしを。

これから彼女に会って、その肩を抱き寄せなければならないのに!

わたしも同じ気持ちだと。ずっとあなたのそばにいたいと!

その気持ちを伝えなければ!



『その必要はないわ』


誰?

どうし…て。

せめて。

せめて、無慈悲な現実とは無縁でいられるよう。

インキュベーターの手から彼女をまも――。


『インキュベーターは現れない。もうあなたが気に病む必要はないと言っているの』

脳裏の反芻する声は重々しく、腫れ物がある喉から発せられたように過摩れていた。

男のものとも、女のものとも――この世のものとも判別のつかないその声の主は続けた。


『インキュベーターにまどかは渡さない――彼女はわたし……わたしだけのもの…』

ギィィィィという空間が避けるような音がして――私は時を遡る感覚を思い出した。

私はすでに身体の大半が消滅していた。

まるで自分が何か別の者に乗り移ったかのような気持ちの悪さで時空間の壁に背中を押されている気分だ。


ほむら「ん……ここは?」

吐き気をもよおすような時間移動を終えたとき、見覚えのある異質な空間の中に閉じ込められていた。

そこにいたのは見覚えのある魔女。

私に猫の呪いをかけて過去へと時間を移動することになる原因をつくったあいつ!

魔女と対峙しているのは既に呪いをかけられた私――ネコがだんだんと追い詰められていくのだ。


そうだ――。わたしはこの魔女に勝てないと思ったから、時間を…。

猫の魔女は強敵だった。わたしは仕方なくこの時間を巻き戻すことを選択したはず。


あれ……何か大事なことを忘れているような気がする。

何だ? このもどかしさ。

不吉な予感を、思い出さねばいけないことなのに、思い出してはいけないと本能が訴えかける。


徐々にネコになったわたしは追い詰められて最後の手段に出る。

歩が悪過ぎると判断するや盾を掲げて、時間遡行の魔法を使おうとした――その時。

力が暴走を始めた。

ほむら「なっ……」

わたしはただ4年前までタイムスリップしていたものだと思っていた。

思い込んでいた。それが私の記憶にある、この日の出来事。

だが。

事実は違った。

暴走した魔力は急激な速度で私のソウルジェムを蝕んでいくのだ。

ほむにゃん「にゃっ!?」

禍々しい光が暴走を始めると、パリンという何かが割れるような音が響き――。

それと同時に、時間転移の光が全てを飲み込んでしまった。



そして魔女の歪な空間から、時空の狭間へと変位すると、またあの声がわたしに語りかけてきた。

『これが真実よ。呪われた身体で無理に時間を戻そうとして、魔力を使い果たした』

ほむら「わたしはいったいどうなったの?」

『あなたならわかるでしょう? ソウルジェムが汚れきったとき、どうなるのか』

まどか「いや、それは……そうだけど。でも、わたしは魔女じゃない――わたしはまだ…」

『あなたは、わたしが猫の魔女から呪いを受け呪いを媒介にして、暁美ほむらの記憶と肉体を与えたもの。

 呪いが消えた今。あなたという存在は完結しようとしている』


ほむら「記憶と肉体? そんなことができるなんてまるで――あなたは…」

神のようだ。

『そうね。 あなたが思っている通りかもしれない。

 ありとあらゆる時間の流れを見通すことができるし、そして時の流れを戻して干渉することさえも……』
 
ほむら「あらゆる時間に干渉?」

『でも残念なことが二つあるの。
 
 ひとつはわたし自身が、今のあなたと同じように実体をもたないということ。
 
 時空間にいることは出来ても、その中に閉じ込められていているだけで具現することはできない。
 
 あなたみたいにまどかに触れたりすることも、二度と叶わない』
 
ほむら「……」

『もう一つは、わたしは神などという高尚な生き物ではないということ』

時空間の中に、実体こそ持たないが不吉で淀んだ色の濁流が密集してくる。

ほむら「なっ!?」

幾重にも重なった呪いの泥が、川の中からその顔を出した。

『おかえりなさい、わたしの使い魔。あなたは最高の役目を果たしてくれたわ!』

ドロドロの黒い塊が、私の下半身を飲み込みその流れに圧され身動きがとれなくなってしまった。

使い魔?

使い魔と言ったか?

私たち魔法少女は魔女が使役する怪物のことをそう呼んでいたが……。

ほむら「……あなたは!?」

『そう。魔女。 あなたの記憶から生まれ、この世に呪いと絶望をまき散らす存在』

ほむら「ぐっ…うっ……」
 

実体をもたないはずの魔女。魔女の空間ではなく、時空間の中をさまよい続けているのが私?

なんてことなの。 わたしは…こんな……こんなことって。

ほむら「あなた、時間の流れに干渉出来るといったわね? その力で一体何をしたというの?」

『大したことはしていないわ。 ただあなたに肉体と記憶を与え、4年前の見滝原にあなたを送り込んだだけ』

ほむら「何のために? まさかまどかの悲しむことをするためではないでしょうねっ!?」

『別にあの子に害を加えるためではないわ』


ほむら「おかしいことはまだある。どうして理性を保っていられるの!? わたしの知っている魔女はこうして話が出来るような相手ではなかったはずよ」

『…そうね。 魔女…というには私はまだ若すぎるのかも知れない』

どういうこと?

『時間移動の魔法そのものは発動したのよ。グリーフシードに変化したはずのソウルジェムは一度その輝きをとりもどした』

ほむら「じゃあ、あなたはまだ……」

『でも、結局わたしの意識そのものが侵されてしまった。
 
 完全な魔女とならずとも、人格だけが中途半端に残ったなりそこないの魔女。

 それがわたし』

ほむら「……そんな」

結局まどかを守ることができなかったんだ……。

いずれは完全に魔女に成り果て、わたしはこんなところに取り残され……

まどかはこれから4年後ワルプルギスの夜から町を守るために…。



ほむら「う……なんのために……こんな……今まで……」

全てが無駄だったのだ。

まどかを守りたいと思ったことも。

彼女と過ごした日々も消えてしまう。

こんなことなら――呪いを受け入れてネコになってしまえばよかった。

『大丈夫。彼女は契約なんてしない。ワルプルギスの夜も訪れない』



何を言っているの?


『あなたがいた4年前の見滝原で、一度でもインキュベーターが現れたかしら?』


インキュベーター?

確かに言われてみれば奴は一度も姿を見せていない。

ほむら「けどそれは……」

4年後まで彼女と接触しなかったまどか本人とは接触出来なかったのではないの?

いやよく考えればその理論は矛盾が多く孕んでいる。

そもそもこの世界ではまどかと出会っていない私がまどかと接触していることで、昔とは違う道の流れを進んでいるのだ。

わたしという異物が存在していた以上、過去では起こり得なかった出来事が起こり得たとしておかしいことはない。

小学生のまどかと契約を結び魔法少女になってしまう事態だって十分考えられる。

この世界のまどかが魔法少女になる才能が全くないのであればいざ知らず、あれだけの才気を放つのに取り入ろうとしない理由はいったい……。

『それはインキュベーターが私の存在に気づいているからよ』

ほむら「どういうこと?」

『わたしは何度もあの時間軸に干渉して、時間を巻き戻してきた。

 あなたを含めた全員が、何度もあの時間を何度も。
 
 あなたの時間遡行の魔法はあなた自身しか記憶が残らないものだったわよね?
 
 でも、わたしが行った時間を戻すという行為は違う。
 
 効果があなたを含めた全員に及ぶから、本来は誰も記憶を継承することができない。
 
 ただし、例外がある。
 
 中には時間操作の流れを自覚できる生き物もいるということ。
 
 時間遡行の因果関係のある者――つまりまどかに何かしたら、記憶が残っている可能性が高い。
 
 とりわけ奴らはそれに敏感だった。
 
 インキュベーターは私のような存在がいることを認知し、まどかから手を引いたのよ。
 
 契約しては時間を戻すというイタチごっこから抜け出すために』


インキュベーターにまどかは触れさせないと言ったが、そういうことだったのか。

ほむら「じゃあ、もうまどかが契約することはないのね?」

『もちろん。さらにあなたが登場したことで、4年後の見滝原とはまた違った時間を歩もうとしている。

 ワルプルギスの夜が現れたとしても、彼女たちが町を守れる可能性が生まれた。
 
 そもそもワルプルギスの夜が現れないかもしれない。
 
 いなかったはずの人物がそこへ現れるということはそれぐらいの変革をもたらすことになるだ。
 
 あなたのおかげよ。あなたのお陰でまどかは救われる。
 
 そしてこれから何か不都合があればわたしの力でなんとかする。
 
 わたしは彼女の人生を人として全うさせる。まどかは誰にも触れさせはしない』
 

ほむら「……そうだったのね」

消えかかっているわたし瞳から涙が滴り落ちると濁流のドロドロが澄んだ透明色に変わっていき、ゆっくりとわたしを包み込んでいく

わたしの成してきたことにはきちんと意味があったんだ――。

やっと――やっとまどかを守ることができた。


『さあ、一緒に見守りましょう。

 おかえりなさい――わたしの使い魔 あなたは本当によく頑張ってくれた』




わたしの意識はその川に溶けていき、水のようにゆらゆら流れていく中で、


これからの見滝原の姿が見えてきた。

1年後――



インキュベーターは現れない。

ちょくちょく他の魔法少女とは契約しているようだけど、まどかだけは避けているようだ。

数日はまどかはわたしがいなくなってショックを受けていたが

わたしのいない日常にも慣れ、以前のように笑うようになっていた。


この年、まどかの弟が生まれる。

ご両親と一緒にお世話をしようと頑張るまどかは

きっといいお姉さんになれるとだろうと思った。

2年後――



未だまどかの元にあいつは顔を出さない。

魔女は数えるのを諦めるほど時間を巻き戻したらしい。

さすがのインキュベーターもうんざりしたのだろう。


相変わらず弟の面倒見がよく、

思った通り良いお姉さんになっていた。


少しずつわたしと出会ったころの面影を取り戻していくのが切なかった。

3年後――



まどかは小学校を卒業して、中学生になった。

あどけない面影を残したまま、日々あの日のまどかに近づいていく彼女を見て不思議な懐かしさと、不安がこみ上げてくる。


未だにまどかは契約をすることがないが安心はできない。

1年後にはワルプルギスの夜の夜がやってくる。何事も無く乗り越えて欲しい。


そしてまどかは年の終わりからカレンダーをよく見るようになった。

何かを待ち望むような目は日に日に輝きを見せたが、一体何を期待しているのだろうか。

4年後――


ついにまどかは中学2年生になった。あの頃のまどかだ。

既にわたしは呪いとともに身体の大半が失ってしまったが、震え上がるような感動でいっぱいになった。


いよいよ決戦の年だ。

巴マミや佐倉杏子の生存も確認して、美樹さやかがそこに加わっており、

なんとか町を守り通せるだろうかと心配していたが……。


結局ワルプルギスの夜は現れなかった。


魔女の言ったとおり、わたしの存在のせいで因果が変わったことが原因だろう。

誰一人命を落とすことなく年を終えることができた。


そしてまどかは何かとカレンダーを気にしている。何をそんなに待ち望んでいるのだろうか?

何にしてもよかった。

わたしの想いは無事果たされたのだ。

呪いの残りカスの意識はそこで終わりを迎えたのだった。


――願わくばこれからもまどかが幸せな人生を歩んでくれることを。



『お疲れ様。 本当にあなたはよくやってくれたわ。 ありがとう……』

翌年。


鹿目まどかは桜の散る見滝原中学校の校舎の裏側に一人でポツンと立っていた。

春風の向こう側から卒業を惜しむ在校生たちの声や、新たな門出を祝福する声が聞こえてくる。

その中に自分だけ一人取り残された感覚に打ちひしがれ、親友の美樹さやかと志筑仁美も自分とは違うその中にいるのではないかと思うとさらに切なくなった。

この場所に呼び出したのは、同級生の男子生徒だった。

園芸部の部活仲間であったが、この次期にこの場所に呼び出されることが何を意味するのか、彼女にも理解できた。

生まれて初めて受けるかもしれないであろう愛の告白。

いつか自分も誰かに好きだと言われる日が来るのだろうかと夢見ていた日々が懐かしい。


――またあの頃に戻れるのかな。

もしほむらちゃんと会えたら……わたしもきっと。

空を仰ぐまどかのことを遠くから見つめる少年が、体育館の陰から怖じながら一歩、一歩と踏み出していく。

――またあの目をしている。鹿目まどかを見て胸が締め付けられた。

友人の前ではいつも明るく振る舞っているが、朝学校に来て花壇でじょうろを持っている彼女の物憂げな表情を彼は幾度となく見ていた。

その二面性にどこか惹かれるものがあり、放っておけずいつしかまどかのことを目で追うようになっていたのだ。


自分の想いが恋と呼べるものなのか疑問がありつつも、夜に彼女のことを想うと切なくて枕を抱える日々が続いていた。

今日はそんな悶々とした夜を終わらせようと一歩踏み出したのである。

息を飲み込んで、彼女に声をかけた。


「卒業おめでとう。鹿目さん」

声は震えていないだろうか? いつも通り彼女と話せているだろうか?

まどか「……うん。卒業しちゃったんだよね。わたしたち」

浮かない顔で彼女は寂しそうに笑った。

彼の不安はそこで終(つい)えた。

彼女の悲しげな網膜に自分の存在など映っていないことがはっきりと理解できたからである。

何を言っても希みがないことを知ると、さすがに気が滅入りそうになった。

だが自分も男である。ここで何も口にせずに引き下がるわけにはいかない。

「やっぱり、鹿目さんもずっと中学校(ここ)にいたかったの?」

まどか「…そうだね。さやかちゃんとはこれからも同じ高校にいけるけど、仁美ちゃんやクラスのみんなや先生とはお別れしなくちゃいけないし。それに――」

彼女は何かを言おうとして言葉を飲んだ。

知りたい。何故彼女がそんな悲しそうな顔を時折みせるのか。


そして、気がついた時には自分の妄想を口にしていた。


「鹿目さんは誰を待っているの?」

まどか「えっ?」

「あ……ごめん。ぼくはずっと鹿目さんのことを見てたから……」

そして自分の想いを寄せていることすら口走っていて、涙がでてきた。

「鹿目さんのことが好きです」

まどか「……うん。ありがとう」

鹿目まどかは恥じらいもせず、彼に視線を移して困ったような顔をして笑った。

こうなることは分かっていたが、やはり心にズキズキと響くものがある。

叫び出したい気持ちを抑えて彼は一礼してその場を去った。

結局彼女が何を想って悩んでいるのかは聞けずじまいだった。

「鹿目さんは誰を待っているの?」

彼のその言葉が――。好きですという言葉以上に脳裏の中で反芻した。


――そう。わたしはずっと待ってるんだよ。


中学に上がった時、一つ上に巴マミがいることを知り、久々にほむにゃんの話で盛り上がった。

そのときにマミからほむにゃんが消えた四年後に再び現れるかも知れないという話を聞く。

何年先になるかわからない……それこそ十年先かも知れないと思っていたまどかにとってこれ以上の吉報はなかった。

あと一年後、ほむらに会える。

その知らせを聞いた夜は眠れなかった。


ほむらは自分のことを覚えてくれるだろうか?

父、知久が言うにはバレンタインの時に書いた手紙を読んだというが、一体彼女は何を想ったのだろう。

自分を異常だと、変だと思わってなかっただろうか?

ほむらは涙を流しそのまま消えてしまったのだという。

涙の意味をずっと考えていた。


その経過は理解できないが、その手紙を見て未来に帰ってしまったのだとしたら――。

――もう一度ほむらちゃんに会いたい。

巴マミの予言ははずれ、結局ほむらに会えないまま中学生活を終わってしまった。



それでも……。



わたしは待ち続ける。

何年でも……何十年でも。



            大好きだよ。 ほむらちゃん。


                              おしまい

魔女・設定資料
https://www.dropbox.com/s/mod7emf03ebat7d/homumajo.txt
286の要望に応えて作ったものです。内容補完にどうぞ。

終わりかな?

バッドエンドと聞いてびびってたが
切ない系でそこまで後味は悪くない…気がする
現れない待ち人を一生待ち続けるとか切なすぎるし幸せじゃないから
このあとデビほむが放っておけずに現れるとか妄想しておこう

>>310
まどか「いや、それは……そうだけど。でも、わたしは魔女じゃない――わたしはまだ…」
×まどか→○ほむら

彼は何者なのか

叛逆以降まどほむほのぼのは不足気味だったから楽しませてもらいました
乙です

乙です
ほむねこはほむらちゃんの記憶を焼き付けた使い魔だったのか…

>>337
結構バッドエンドかも知れません。
ほむにゃんだった方のほむらになんらかの何かが起きて再会する展開も考えましたが、これで終わらせていただきました。

>>338
中なんとかさんと、上なんとかさんじゃないことはたしか。

>>339
ラストほのぼのじゃなくてごめんなさい。
書き始めは本当にゆるい話にするつもりでした。

>>338
誰でもいいんじゃないかと…

おつおつ
終わってみるとさわかちゃんが警戒した事は大体合ってたな
ほむらは偽物の使い魔だったし、まどかは癒えない傷を負った
まあまどかの幸せはこれからさやかやマミさんといった周りが頑張るだろうし、消えたほむらの使い魔も満足そうだし
ある意味ハッピーエンド?

>>341
そうですね。先週使い魔ということに決まりました。

>>343
なかざわくんっ!!

>>344
>消えたほむらの使い魔も満足そうだし

作中ではほむら魔女の黒い部分を描いてないだけで、
もう一つの目的であるまどかの愛を独り占めすることだと知り、
最後のまどかの姿を見れば、激怒すると思います。
まどかが生存しているからハッピーエンドと言えなくはないですが。

乙かれさま
また何か書いてね
ケーキ屋で働くほむにゃんとかさ

今度は最後までほのぼのしたまどほむをお願いします!!

だからカマキリはまどほむ嫌いだから書かないっての

>>346
いいですね。②の続きは楽しそうな感じがします。

>>347
これでも精一杯ほのぼのさせたんですけど。
ごめんなさい。力不足です。

>>348
好きですよ。まどほむ。

ほむ家族って完結した?

>>350
完結してないです。こんなことやってるので、全然進みません。

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