ほむら「鹿目タツヤは私が必ず守ってみせる!」 (249)
まどかのおかげで魔法少女は魔女となる呪われし運命から解放された。
しかし、その代償として鹿目まどかという一人の人間はこの世界から存在した事さえも無かった事になってしまった。
彼女の存在を覚えているのは私、暁美ほむらだけ…。
…いいえ、忘れていたわ…もう一人いた事を。
タツヤ「まーろーか!まーろーか!」
ほむら「うん。上手に書けたね」
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詢子「ほむらちゃん、いつも悪いね。タツヤと遊んでもらって」
ほむら「いえ、いいんです。私が好きでやってる事ですから」
タツヤ「これみてー!はねー!」
ほむら「今度は羽をつけたんだ、上手に書けてるわ」
詢子「こうして見ると本当の姉弟みたいね」
ほむら「…」
何故だが、まどかの事を覚えている鹿目タツヤ。
血のつながった弟ゆえなのか彼女の事をおぼろげながらも覚えているようだ…。
対して、両親の方はまどかの事をまったく覚えていない。
存在した事さえ無かった事になっていたのだから、覚えていないのは仕方がない…。
覚えている私とタツヤの方がイレギュラーなんだ…。
詢子「ほむらちゃんを見てると私も娘が欲しいなって思えてくるわー」
ほむら「…鹿目さんの娘さんだったら凄く可愛い娘でしょうね」
詢子「もう!ほむらちゃんったらお世辞が上手いねえ!」
ほむら(本当に可愛い娘でしたよ…)
まどかの友達であった私、まどかと家族であった鹿目家の方々。
まどかの存在を覚えているタツヤのおかげなのか、奇妙な縁なのかわからないが、鹿目家と交流を続けている。
長い間、家族と一緒にすごしていない私にとって鹿目家とのふれあいは心休まるものだった…。
ただ、私のせいでまどかを失わせてしまったという罪悪感で鹿目家の人々と一緒にいる事が辛くなる事はある…。
詢子「そうだ!今日、うちで食べてかない?」
ほむら「そんな、悪いですよ…」
詢子「遠慮する事ないって!」
タツヤ「いっしょにたーべーよー!」
詢子「タツヤもああ言ってるしさ」
ほむら「それじゃあ…」
(ほむら!魔獣が現れた!直ぐに来てくれ!)
ほむら「せっかくのお誘いありがとうございます。でも、今日はちょっと用事があるので…」
詢子「そっかー…なら仕方ないね」
タツヤ「えええ!いっしょにたーべーる!!」
詢子「こらタツヤ!おねえちゃんを困らすような事言うんじゃないの!」
ほむら「ごめんね、タツヤ…。今度、おねえちゃんがお菓子持ってくるから一緒に食べよ!」
平和で安穏な人生を歩む事は私には許されない、何故なら私は戦う使命を帯びた魔法少女なのだから。
魔獣、魔女の代わりに新しい世界に現れた人類の脅威…。
QB「ほむら。ずいぶん早く来てくれたね。マミと杏子はまだだよ」
ほむら「すぐ近くにいたからね…」
ほむら(こんな近くに魔獣が出現したなんて…すぐに来て正解だったわ。鹿目家に危害が及んだかもしれなかった…)
ほむら「魔獣の数は?」
QB「二体、大きさは中程度のが一体と小型が一体だ」
ほむら「その程度なら私一人でも大丈夫そうね」
QB「二人を待たないのかい?3人で戦った方が安全だと思うけど」
ほむら「待ってられないわ(早く魔獣を駆除しないと鹿目家に危険が及ぶ可能性がある)」
QB「せっかちだね」
ほむら「近隣の住人の安全を考えての判断よ」
QB「ふーん、本当にそれだけかな?確実性を求める君にしては珍しい」
ほむら「余計な詮索はしてほしくないわ。無駄口叩く暇さえ惜しいのよ」
QB「わかった、これ以上聞かない事にするよ」
魔獣が出現する時に必ず出てくる瘴気のおかげで視界が悪い、まるで霧のようだ。
ほむら(前衛に小型の魔獣、後衛に中型の魔獣…まず先に小さく弱そうなのを叩くのがセオリーね)
魔獣「ウヴァアアアアアアア!!」
魔獣が唸り声を上げたのと同時に矢を撃った。第一射は防がれる、しかし最初の矢に気をとられている隙に小型の魔獣の後ろをとる。
ビシュッ!
魔獣「アアアアアアアア!!!!」
矢が魔獣の体を貫いた。まずは一体。
魔獣「グオオオオオオ!」
中型の魔獣が光線を発した。
ドッゴォオオンン!!!
炎上する。
魔獣「ゴオオオオオ!!!!」
ほむら「喜んでるみたいだけど、あそこで燃えているのは私ではなくあなたのお仲間の死体よ」
魔獣の背後を突いた。
魔獣「ヴァア!?」
弓を思いっきり引き絞り、そして離す。
桃色に光る矢が魔獣の体を突き破る。
魔獣「アアアアアアアアア!!!!」
二体の魔獣の体は崩れ落ちていき、その後にはグリーフシードが残っていた。
前の世界のグリーフシードと違い、小さな箱のような形をしている。
ほむら(意外とあっけなかったわね。もう少し時間がかかると思っていたのだけれど…)
QB「ほむら!後ろだ!!」
ほむら「え!?」
ピカッ!
直ぐに後ろを振り向くと一瞬、光が見えた。
ほむら(何?え?何が起きたの?い、痛い!背中が痛い!熱い!)
魔獣「ガアアアアア!」
私は魔獣の姿を見てようやく理解できた。さっきの光は魔獣の発する光線であり、それをまともにくらってしまったのだと。
魔獣「ヴァアアアアアアア!!」
ほむら(魔獣が近づいてくる!ヤバい!このままじゃ、やられる!)
マミ「ティロ・フィナーレ!」
ドッゴォオオンン!!
魔獣「ヴァアアアアアアア!!」
大きな光線が魔獣の巨体を吹っ飛ばした。
ほむら「はぁはぁ…遅いじゃないのマミ」
マミ「遅れたのは謝るけど、先走った暁美さんも反省しなきゃ駄目よ?」
ほむら「はぁはぁ…そうね、用心に越したことはないって事がよくわかったわ…」
マミ「酷い怪我!直ぐに治療しないと…」
ほむら「私の事より先に魔獣を倒さないと…」
マミ「友達の事より優先すべき事なんてないわ。それに…」
大きな槍がどこからか飛んできて魔獣の体を貫き、魔獣を絶命させた。私たちが会話している間にもう決着はついてしまったのだ。
杏子「一発でやられてしまうとは情けねえな!」
マミ「助けにきたのは私だけじゃないわよ」
マミ「佐倉さん、一発じゃないわよ。私が先にティロフィナーレで攻撃したんだから」
杏子「細かいなあ、一発でも二発でも情けない事にはかわらないだろ」
ほむら「ありがとう、マミ、杏子。本当に助かったわ。あなた達が助けてくれなかったら、死んでしまったかもしれない」
杏子「それにしても珍しいな、ほむらが後ろをとられるなんて」
マミ「そうよね、あの暁美さんが」
ほむら「その事なんだけれど…ちょっとキュウべえ!どういう事よ!二体じゃなくて三体じゃない!あなたの間違った情報で死ぬとこだったのよ!」
QB「僕は何も間違った事は言ってないよ。僕のせいにされるなんて心外だなあ」
ほむら「はぁ?」
QB「僕が魔獣の数を言った時は確かに二体だったんだ」
ほむら「じゃあ何故、三体目が?」
QB「急に魔獣が増えた。つまりほむらが二体倒した前後で一体出現したんだ」
マミ「そんな事ってあるのかしら?魔獣は二体以上で行動する事が基本。後で急に別の魔獣が同じ場所に増えるなんて事聞いた事ないわ」
QB「たまにあるんだよ。それでも滅多にない事なんだけれどね。まあ、ほむらは滅多に起きない不幸な事故にあってしまったとしか言いようがない」
ほむら「なんだか納得できないわ…」
マミの手のひらから放出される魔力が私の背中を包んでいく。
ほむら「いたた…」
マミ「…少し治療には時間がかかりそうね」
ほむら「すぐに戦う事はできそうかしら?」
杏子「お前はほんと真面目だよなあ、休む事を覚えればいいのに」
マミ「佐倉さんの言うとおりよ。こういう時ぐらい戦う事は私たちに任せて暁美さんは休んだ方がいいわ」
ほむら「休んでられないわよ、私たちは戦う事が仕事なんだから…」
杏子「仕事人間だねぇー」
マミ「美樹さんがいたら、短時間で治療できるのに…」
杏子「…」
ほむら「そうね…」
美樹さやか…円環の理に導かれてこの世界から消滅した魔法少女。
私たちの仲間…。
私たちは祝勝会という事でレストランに来る事になった。
杏子「く~!!美味い!戦いの後の一杯は最高だぜ!この一杯のために生きてるって感じだな!」
ほむら「リンゴジュースで大げさね。お酒じゃないんだから」
マミ「それに佐倉さんの場合、食べる時も『戦いの後のライス大盛りは最高だぜ!』って言うのに」
杏子「うるさいな~。こういうのは気分が大事なの!」
マミ「うふふふ」
マミ「こうしてみんなで食事をしていると、美樹さんの事を思い出すわ。昔は4人で魔獣を倒すと一緒に食事したっけ」
杏子「…そうだなー。あいつ戦いでは一番活躍しなかったのに、こういう場では一番はしゃいでたな」
ほむら「確かにあなたの言うとおりだけど、あなたのはしゃぎっぷりも負けてなかったわよ」
杏子「あたしはいいの!活躍してたんだから」
マミ「佐倉さん、美樹さんもちゃんと活躍してたと思うわよ。ほら、あの時なんか佐倉さんがピンチの時に助けてもらったり」
杏子「うー///あの時の事は言うなよ!」
ほむら(杏子、さやかが消えた時は落ち込んでいたのに、今では元気になったわね…)
ほむら(…)
私はどうかしら?まどかの事を引きずってる?
マミ「暁美さん、明日はちゃんと休む事よ。戦っちゃ駄目だからね!」
ほむら「…わかったわ」
杏子「あー少し目線反らした。こいつ戦う気満々だぞマミ!」
マミ「もう!暁美さんったら!どうして言う事を聞いてくれないの!」
ほむら「信用してくれないのマミ?」
マミ「うっ!(そんなうるんだ目で見つめないで!良心が痛んじゃう!)」
杏子「おい!そんな見え見えな演技に騙されんなよマミ!」
ほむら(ちぇっ!)
マミ「どうして、そう戦う事を望んでるの暁美さん?」
ほむら「別に戦いたいわけじゃないわよ。魔獣が出てこないならそれに越したことはないわ」
杏子「そうかな?なんか生き急いでいるように見える時があるよ」
ほむら「そんな事ないわ…」
マミ「なら私たちを頼って暁美さん!あなたは私たちの大切な仲間で、友達…。あなたを失うかもって思ったら辛いわ…今日だって私たちの助けが遅かったら死んでいたのかもしれないのよ」
ほむら「…その事は反省してる」
マミ「私たち魔法少女はいつか円環の理によって導かれ消えてしまう存在…。だけど、いつ消えてしまうかわからなくても、その消える時が来るまでできるだけ長く、一緒にいたい、生きていたい…私はそう思ってるわ」
杏子「…あたしも同じ事思ってるよ」
ほむら「私だって同じ考えよ…」
翌日
ほむら「何で着いてくるのよ?」
QB「マミに頼まれたからね、君が戦わないように監視してくれって」
ほむら「私が戦おうとあなたに損する事はないでしょ」
QB「そんな事はないよ。今の君は昨日のダメージが残ってる。そんな君を戦わせる事はきわめて危険であり、僕達の貴重な戦力を失ってしまう可能性があるってわけだ」
ほむら「新しい世界のキュウべえはずいぶんと優しいのね」
QB「また前の世界の話かい。君の話でいう前の世界の僕でも同じ事をしたと思うなぁ。なんたって前の世界の僕は魔法少女を魔女にする事が目的であり、魔女にする前に死なれちゃったら困るじゃないか」
ほむら「はいはい。結局どちらにせよ、私たちはあなた達の貴重な駒ってわけね」
QB「まあ、ストレートな言い方をすればそういう事だね」
ほむら「はぁ…本当にあなた達は正直ね」
QB「どこに行くんだい?」
ほむら「どこだっていいでしょ」
QB「この方向は…鹿目家だね」
ほむら「!」
ほむら「なんであなた、その事を知ってるのよ!」
QB「魔法少女のプライバシーをある程度把握するのも僕達の仕事だからね。普段、何をしているか、日常生活で何か問題はないか、それが及ぼす魔法少女への影響はどうかなどといったものを把握して精神面をケアするのも僕達の大事な役目だ」
ほむら「本当かしら?うさんくさいわ…何よりそんな事をされるのは不愉快ね」
QB「これも、魔法少女のデメリットの一つと思って諦めてくれよ」
ほむら「他のデメリットに比べたら、まあマシかしら…」
ほむら(後、少しで鹿目家に着く…タツヤはお菓子を楽しみにしてるでしょうね。今日は一緒に夕食できたらいいな…)
ほむら「!」
QB「ほむら!」
ほむら「わかってるわ、瘴気があたりに漂ってる…魔獣だわ」
ほむら「何でまた鹿目家の近くで現れるのよ!」
QB「マミ!杏子!聞こえているかい?見滝原の○○地区▽丁目に魔獣が現れた!直ぐに来て!」
マミ(わかったわ!)
杏子(○○地区▽丁目って言われてもわかんねえよ。もっとわかりやすく教えてくれ)
QB「杏子、マミと一緒にいないの?うん、わかった。えーと…君が美味しいって言ってたパン屋のすぐ近くだ!わかった?え?美味しいパン屋がありすぎてわからない?えーと、あれだよ。限定のクリームパンが売ってるところ…良かった!ようやく理解してくれたんだね。それじゃあ、すぐ来てくれ」
QB「二人をテレパシーで呼んだから、ほむらは避難…って何で魔法少女姿になってるんだい?」
ほむら「何でって戦うために決まってるじゃない」
QB「困るなあ、君は負傷中なんだ。今は戦わない方がいい」
ほむら「マミと杏子が来るのを待ってる間に、誰かが魔獣に襲われるかもしれないのよ!」
QB「その誰かってのは鹿目家っていう家族の事かい?」
ほむら「…誰でもいいでしょう。あなたが止めても私は戦うわよ」
QB「マミと杏子が止めても?」
ほむら「…ええ」
QB「やれやれ…止めても無駄だね。負傷中の君のためにアドバイスだ。積極的に戦わず、マミと杏子が来るまで時間稼ぎに徹する事をお勧めするよ」
ほむら「助言ありがとうキュウべえ。やっぱりあなた前の世界より優しい気がするわ」
ほむら「魔獣の数は?」
QB「小型が3体、そして大型が1体。正直、今の君のコンディションでは厳しい相手だ」
ほむら「本当にあなたの助言どおり動いた方が良さそうね」
QB「実は積極的に戦う可能性もあったの?この事を知ったら二人は怒るよ。特にマミは」
ほむら「ちょっと弱い相手だった場合にね」
ほむら「マミと杏子は何分で着くと思う?」
QB「おそらく10分ぐらいかな」
ほむら「了解。それまで持たして見せるわ」
ほむら(さて、どうしたものかしら…)
魔獣の動きに注視してみる…。
ほむら(こんなに近づいているのにまだ私の存在に気付いていない。珍しく鈍感な魔獣ね…。この魔獣の集団はみなある方角へ向かって移動している…。魔法少女を狙ってくるか、無差別に人を襲い建物を破壊しようとするのが通常の魔獣だ…。珍しいタイプなのかしら?)
ほむら(疑問点はあるけど、この魔獣の集団の特殊な行動を利用しない手はない)
魔獣の動きを予測し、先回りする。
ほむら(よっこらしょっと…、さてすぐに移動しないと…)
ドカーン!
魔獣が通った地面から爆発が起こり、火柱が上がった。
魔獣「ヴァアアアアア!!」
ほむら「よし!かかった!」
QB「地雷か。まったく君は本当に魔法少女らしくない戦いを得意とする魔法少女だね…」
ほむら「さっきの爆発でやられたのは…小型が2体。もう1体の小型には当たらず、大型は当たってもたいしてダメージ無し、さすが大型ね…」
さっきまで無警戒だった魔獣たちは、顔をキョロキョロ動かした。おそらく攻撃した者を探しているんだ…あっ!大型の魔獣が私が隠れている場所の方に顔を向けた!
ピカッ!!!
ほむら「くっ!」
魔獣から発射された光線により、鉄筋コンクリートでできた廃ビルの壁が一瞬で溶けた。
危なかった、すぐに逃げていなかったら当たってるところだったわ…。
それまである方角へ移動していた魔獣は私という攻撃者の存在に気付くと、一転して敵を倒す事に目標を変えた。
2体の魔獣が二度、三度と光線を発射する。
それを、二度、三度とかわす。
ほむら(普段の私ならこの程度の攻撃、回避するのは苦ではないわ。でも昨日、傷を負った今の私だと何度も避けるのは難しいかもしれない…もう少し距離をあけよう)
魔獣の攻撃が当たらないようジグサグに移動しながら後ろへ下がる。
ほむら「よし!この距離なら私が攻撃しつつも、回避行動に移れる余裕ができる距離だわ」
私の両手に魔力を集める。
弓と矢が生成された。
弓を引き絞り、矢を放つ!
魔獣「ガアアアアアア!!」
矢は小型の魔獣に当たった。
魔獣「ヴァアアアアアア!!」
大型の魔獣は怯まず反撃。光線が放たれた。
ほむら「危ない!」
ギリギリセーフ…なんとか避けれた。
QB「もう!危なかっしい戦い方をするなあ。僕に感情があったら悲鳴を上げてるとこだよ!」
ほむら(小型の魔獣は全滅させた…。でも、この大型の魔獣を一人で倒すのは今の私一人では無理ね…。当初の予定通り時間稼ぎに徹しましょ)
もう少し距離をとろうと、後ろへ移動する。
ほむら「さあ、来るなら来なさい。全て避け切って見せるわよ…マミと杏子も早く来なさい…」
ほむら「…あれ?攻撃してこない?」
驚いた事に魔獣は方向転換した。なんと、この状況で私に背を向け、別方向へ移動し始めたのだ。
ほむら「いったいどうゆう事なの?」
QB「僕にもわけがわからないよ」
ほむら「どこへ向かうつもりなの…え!?」
ほむら「あれは!!」
私の目にここにいるはずのない人間が映ったのだ。
タツヤ「…」
ほむら「タツヤ!!!」
ほむら「タツヤ来ちゃ駄目ええ!!!」
QB「行っちゃ駄目だほむら!」
キュウべえが何かしゃべった、でも何を言ったかわからない。
私はただ、タツヤを助けたい一心で走りだしていた。
ほむら(虚ろな目、まるで操られたマリオネットのようなふらふらした歩き方。タツヤに何が起こっているの!?そして、あきらかに魔獣はタツヤの方へ向って移動している!もう何なのよ!わけがわからないわ!)
魔獣「ヴァアア…」
ほむら(あの体勢はまさか、タツヤに向かって光線を撃つ気?)
ほむら「くぅぅう!!間にあえええええええ!!!」
魔獣の放った光線が瘴気で靄がかかった見滝原の町を照らした。
今日はここまで。次回に続きます。
果たして映画までに間に合うだろうか…。
わざとなのか知らんがキュウべえじゃなくてキュゥべえだからな
QB「煙でほむらがどうなったか見えない!ほむらは無事なの!?」
煙が晴れる。
ほむら「ハァー…ハァー…」
QB「ほむらもあの子も無事…いや、ほむらはだいぶダメージを負ったようだね…」
ほむら「くっ!」
ほむら(光線はなんとか避け切る事ができた…でもその後の爆発で負傷。あちこち痛いところだらけよ…何より昨日の背中の傷が開いたのが辛い…でも庇った甲斐もあってか、タツヤに大した怪我したところはなさそうなのが幸いね…)
魔獣「ガアア…」
ほむら(足にダメージを負ったのが痛いわ…こんな足でマミと杏子が来るまで持たせる事ができるかしら…)
ほむら(何を弱気になってるのよ暁美ほむら…こんなとこでやられちゃ、まどかに申し訳がないと思わないの?それに、あなたが頑張らないとタツヤは死んでしまうのよ?)
ほむら(あまり私らしくなくて、さやかが好きそうな言葉が思い浮かんだわ…)
ほむら「根性よ!根性で逃げ切って見せる!!」
魔獣「ウヴァアアアアア!!!」
魔獣から光線が発射された。
ほむら「くっ!」
タツヤを抱えながら避ける。
ほむら「痛ああっ!!!」
ほむら(足が、背中が、あらゆるとこが痛い!!でも、我慢よ!)
魔獣「グオオオオアアアアア!!!」
再び、魔獣から光線。
ほむら「それしかないの?あなたァ!」
私も再び、回避。
ほむら(痛い痛い痛い!我慢よ、私!まどかを救うため、同じ時間を何度も何度も繰り返した事に比べちゃへっちゃらでしょ?)
タツヤ「…」
ほむら(脈があるし呼吸もあるけど、タツヤは依然意識が不明。何でこんな事になってるのかしら?)
魔獣「ヴャアアアアアア!!!」
三度、光線。
ほむら「おっと!」
三度、回避。
ほむら(考え事してる余裕なんてないわね…)
グキッ!
ほむら(えっ!?足を挫いた?)
魔獣「ヴァアアアアア!!!」
QB「危ないほむら!!」
四度目の光線が放たれた。
ほむら「ふぅ…トレーニングしてて正解だったわ…」
私とタツヤは空中に放り出されていた。
QB「凄いよほむら!あのとっさで矢を地面に撃ち、その反動で回避するなんて!」
ほむら「よし、この調子なら逃げ切れる…」
QB「ほむら、後ろだぁ!」
魔獣「グアアアンン!!!!」
ほむら「えっ!?」
魔獣がもう一体?!
魔獣「ガァアアアア!!」
ほむら(やられる!)
マミ「パロットラマギカ・エドゥインフィニータ(無限の魔弾)!!!!」
杏子「とりゃあああああ!!!!」
無数の光線と無数の槍が私とタツヤだけを避けるように降り注いだ。
槍と光の弾丸を四方八方に受けた二体の魔獣は、肉体を保つ事ができず崩れ落ちてしまった。
ほむら「さすがね、二人とも…。攻撃力では断然負けてるわ…」
杏子「ほむら!また同じパターンで助けられやがって!」
ほむら「ごめんなさい、非常時だったのよ…」
マミ「とにかく暁美さんが助かって良かったわ…、何があったかは後でしっかり話してもらいますからね!」
ほむら「ええ…わかってるわ…」
マミ「その子を守るために戦ったのね…。本当は戦ってほしくなかったんだけれども、まあ仕方ないかあ…」
杏子「でっ、その子…えっと…鹿目タツヤだっけ?なんで、こんなとこまでこんな小っさい子供がノコノコ歩いてやってきたんだ?」
ほむら「それが、私にもまったくわからないのよ」
マミ「その時の状況を見てたんでしょ暁美さん?」
ほむら「ええ、まるで誰かに操られているかのような動き方をしていたわ」
杏子「誰かを操る…誰に操られたって言うんだよ?」
ほむら「あそこにいた中で該当しそうなもの…魔獣」
マミ「誰かを操る特殊な能力を持った魔獣なんて聞いた事もないわ」
杏子「仮に誰かを操る能力があるとして魔獣が何故そのタツヤを操る必要があるんだよ」
ほむら「…そうよね、たまたま近くにいたタツヤを操ったってだけかもしれないわ」
ほむら(…本当にたまたまかしら?最初、魔獣はある方角に向かって移動しているかのように見えた…そしてその方角にあるものといえば鹿目家…本当にタツヤが狙いなの?)
ほむら(…昨日も今日も鹿目家の近くに魔獣が現れた…これもたまたま?ほんとイレギュラーな事だらけね)
ほむら(イレギュラーな事といえば、急に魔獣が増えるという希少な現象が二度も起きた。イレギュラーな事だらけ…これは何かあるはず…)
タツヤ「…あうぅ」
ほむら「あっ、起きた!」
タツヤ「ほーむーら?」
ほむら「良かった!起きなかったらどうしようかなって思ったわ」
マミ「良かったわね暁美さん、タツヤ君」
タツヤ「あぅ…?」
ほむら「どこも痛いところがない?苦しいところは?」
タツヤ「??だいじょーぶーだよ」
ほむら「良かった…ありがとうマミ。あなたの回復魔法のおかげよ!」
そう言って私はマミに頭を下げた。
マミ「いいのよ、たいした怪我もなかったし。この子が無事なのは必死に守った暁美さんのおかげよ」
杏子「よっぽどその子が大事な存在なんだな、ほむら」
ほむら「ええ…」
翌日。
魔獣「ヴァアアアアアアアア!!!!!」
霧の濃い夜、数体の魔獣が現れ、魔獣の咆哮が轟いた。
QB「魔獣が現れた!」
マミ「暁美さんの予想通りになったわね」
杏子「タツヤって子の家をマークしてたら本当に魔獣が現れるなんてな」
ほむら「ここまで来ると偶然で、すます事はできなそうね…」
マミ「魔獣が誰か特定の人間を狙うって事あるのかしら?」
QB「前例は無いね」
杏子「つもる話は後回しだ!先にあいつらをブッ飛ばすぞ!」
マミ「言われなくたって!あっ、暁美さんはまだ怪我が治り切ってないんだから待機よ!」
ほむら「わかってるわよ…信頼されてないわねー」
QB(そりゃあ、昨日約束を破ったからねぇ…)
魔獣を退治するという仕事を終えた後、私の家で一連の事について話し合う事になった。
杏子「相変わらず殺風景な家だねー。ほむらー、何か食べ物なーい?」
マミ「はしたないわよ佐倉さん。それに今日は遊びに来たんじゃなくて会議をしに来たのよ」
ぐぅ~
えらく気の抜けた音がこの部屋に響き渡った。
杏子「…」
ほむら「…」
マミ「…仕方ないでしょ!まだ、晩御飯食べてないんだから///」
ほむら「カップラーメンぐらいならあるけど」
杏子「やった♪」
マミ「…およばれさせてもらいます」
ズルズルズル~
マミ「たまにはこういうのもいいわね」
杏子「マミのシーフード美味しそうだな。一口ちょうだい」
マミ「だーめ」
杏子「ケチ」
ほむら(なかなか話が進みそうにないわね…)
ほむら「この三日間、鹿目家の近くで魔獣が続けて出現したわ。同じ狭いエリアに何度も魔獣が出現する事ってあるのキュゥべえ?」
QB「滅多にない事だね」
マミ「それに今日も魔獣が途中で増えるという滅多に起きない事が起きたわ」
杏子「しかもあいつらは鹿目家の方角に移動しようとしていた、これも昨日と同じだ」
ほむら「鹿目家の近くに三日連続魔獣が出現する、途中で魔獣が増えるという現象が三日連続して起こる、魔獣が特定の人間の家を狙う…これは極めて異常な事態よ」
マミ「いったい何が起きているのかしら?」
杏子「とりあえず鹿目家って家族が危ないって事はわかる」
QB「いや魔獣が狙っているのは鹿目家という家族じゃない、おそらく狙いは鹿目タツヤだ」
ほむら・マミ・杏子「えっ!!?」
QB「ほら鹿目タツヤが魔獣の前に現れた事があっただろ?あれは操ったというより魔獣が呼び寄せたと言った方が正確だ」
ほむら「呼び寄せた?」
QB「魔獣はこの世界を正すという目的を持って動いていると言われている」
マミ「どういう事?」
QB「簡単に言うと、この世界に相いれないもの、イレギュラーなもの、存在してはいけないものを駆除しようという目的があるんだ」
QB「イレギュラーな存在とそのイレギュラーを消す存在、それは磁石のように引きつけ合う」
杏子「ちょっと待てよ、鹿目タツヤがイレギュラーな存在だって言うのかよ!」
ほむら「はっ!まさか…」
QB「ほむら、君にならわかるよね?」
鹿目タツヤ…この世界で鹿目まどかというこの世界には存在しない少女を知るもう一人の人間。
マミ・杏子「??」
ほむら「ちょっと待って!それじゃあ、私はどうなるの?私も世界にとって相いれない、イレギュラーな存在でしょ?」
QB「君が以前、話してくれたよね。鹿目まどかという少女の願いにより、この世界が生まれたと」
ほむら「ええ」
マミ「何の話をしているのかしら?」
杏子「ちんぷんかんぷんだ」
QB「君の話によると、鹿目まどかが前の世界を改変し新しい世界が生まれた時の様子を君は直接見て来た。そして、その時に君は鹿目まどかから多くのものを授かった。彼女が存在した事の記憶だったり、彼女の所有物(リボン)だったり、彼女の固有武器(弓矢)だったり…と色んなものをね」
『きっとほんの少しなら、本当の奇跡があるかもしれない。そうでしょ?』
私はまどかが別れる間際に言っていた事を思い出していた。まどかから受け取ったもの…まどかの思い出、まどかの武器、まどかのリボン…。キュゥべえの言うとおり彼女からの授かりものといえるものかもしれない。
QB「普通、君の話を全部信じるなら、その授かったものは存在するものではないはずだ。だって、まどかという人間の存在は過去、現在、未来から全て消えたはずなんだからね。君はその事についての解答を『奇跡』だと言っていたけど、そんなのは科学的根拠もない戯言(たわごと)だ」
ほむら「今のはとても腹が立ったわ」
QB「君の感情を傷つけてしまったなら謝るよ」
QB「話を続けるけど、ほむらが何故特別なのかを『奇跡』ではなく無理やりにでも理屈付けた結果、一つの推論ができた」
QB「ほむら、君が鹿目まどかという少女から記憶、所有物といった前の世界のものを新しい世界へ持っていく事ができたのは、その事自体がシステムに組み込まれているからじゃないだろうか」
ほむら「え!?」
QB「君の話によると、鹿目まどかという少女は概念となり世界のシステムは変更された」
QB「その時に、そのシステムの中で君だけまどかという存在を覚えていられる特別ルールが作られたんだ。まあ、なんというかわがままな創造主だねぇ。友達にだけ特別ルールを許すなんて」
ほむら「でも、タツヤも特別ルールの範囲内にある人間かもしれないじゃない!」
QB「たぶん、君の今までの言動や君が鹿目タツヤを特別扱いしている事、名字が一緒である事などから彼は鹿目まどかの弟なんだろうね」
ほむら「ええ、そうよ。弟だから、特別ルールが許されているって可能性もあるじゃないの」
QB「鹿目タツヤ以外の家族は誰もまどかの存在を覚えていないんだよ?何故、弟だけが?それに、君がまどかの友達だと言っていた美樹さやかも彼女の事を覚えていなかった。おそらくどの友人も彼女の事を覚えていないだろうね。特別に鹿目まどかの事を覚えている事を許されたのは、最後まで彼女についていったほむら、君だけなんだよ」
ほむら「でも…」
QB「完全に鹿目まどかの事を覚えている君と違い、鹿目タツヤはおぼろげにしか彼女の事を覚えていない。この事が君と違って鹿目タツヤは特別ルールの範囲外である事を示しているように僕は考えている」
QB「このままでは、鹿目タツヤは世界に相いれないイレギュラーとして魔獣に抹消される」
ほむら「…」
マミ・杏子「…」
マミ「…話はいまいち理解し切れなかったけど、こんなのただの推測でしかないわ!心配する事ないわよ暁美さん」
杏子「そうだよ!やっぱりたまたまだったんだよ。そもそも魔獣が鹿目家を狙ってたのだって、あくまで魔獣が移動してる方角にあったってだけで、本当は別の場所を目指してたのかもしれない」
確かに二人の言う事にも一理あった。だけど、私はキュゥべえの言う事の方が正しいように思えた。何故なら、私は存在を消す直前のまどかと会い、言葉をかわしたのだから。私だけが特別で、タツヤは特別ではないというのは説得力があった。
ほむら「解決方法はあるかしら…」
QB「前例にはない事だからね。彼の今の状況を解決する方法は今のところは無いと言っておこう」
ほむら「そんな!それじゃあ、タツヤはどうなるの!?」
QB「鹿目タツヤを死なせたくないと思うなら、彼をずっと監視して魔獣から守り続けるしかない」
ほむら「…そんなの無理よ!」
ほむら「私はいいわ!私はタツヤを守るためにずっと戦ってもいい」
ほむら「でも、タツヤの人生はどうなるの?ずっと、魔獣に狙われ続ける人生を生きなくちゃいけないのよ!まともな人生を歩めると思う?」
QB「通常の生活は送れないだろうね…。それと彼の安全と周りに被害が及ばないようにするため、隔離し監視するのが良いと思う」
ほむら「ふざけないでよ!あの子はまだ、生まれてから数年も経ってないやっとしゃべれるようになったぐらいの子供なのよ!そんな子を家族から離して、幼稚園にも学校にも行かせず隔離し監視しろですって?できるわけないでしょ!!」
QB「それじゃあ、君は鹿目タツヤの周りの人間に危害が加えられてもいいと言うんだね?鹿目タツヤがいるというだけで、彼の周りにいる人間が魔獣に襲われる可能性が増すんだ。君はその周りの人間も全て守り切れる自信があるのかい?」
ほむら「くっ…!」
マミ「暁美さん、キュゥべえの言う事なんて聞く必要ないわよ。私達も協力するから」
杏子「達って事はあたしも?」
マミ「当然でしょ、何か問題ある?」
杏子「…協力する事には問題はないけどさあ、あたしはキュゥべえの意見が正しいと思う」
ほむら「!!」
マミ「佐倉さん!」
杏子「…あたしだってほむらの意見に賛成したいよ…でも、現実問題、全ての人間を守り切る自信なんてない…その子にはかわいそうだけど隔離して監視するのが妥当な案だと思う、今のところは…」
ほむら「…確かに杏子の言うとおりかもしれない」
マミ「暁美さんまで!」
ほむら「少し考えさせて…」
確かにキュゥべえの言うとおり、隔離し監視した方が守りやすくなる。
タツヤの居る場所が固定されている方が私達も守りやすくタツヤの生存率はぐっと上がる。
隔離された場所にいれば、周りの人間に被害が拡大される事もない。
でも、タツヤは真っ当な人生を歩む事はできなくなる…。
それに私達が死んでしまったらどうなるの?誰か代わりの魔法少女がタツヤを守ってくれるの?
わからない…。
どうしたらいいの?
教えてまどか…。
次の日。
私達いつものメンバーは鹿目家をすぐ下に見渡せるビルの屋上で、タツヤを守るため見張っていた。
杏子「どうするほむら?」
ほむら「…」
杏子「黙ってちゃわかんねえぞ」
QB「杏子の言うとおりだよ、鹿目タツヤを早く連れ出さないと魔獣が現れるかもしれないよ」
ほむら「…もう少し待って」
マミ「仕方ないわよ、こういう事はなかなか決断できるものではないわ」
杏子「…まあ、迷うのも無理ないか」
ほむら「…ごめんなさい二人とも」
杏子「あっ、誰か出て来た」
マミ「タツヤ君と…お父さんかしら?」
ほむら「ええ、そうよ。庭で遊ぶみたいね」
マミ「お父さん、お仕事お休みなのね」
ほむら「いいえ、仕事はしてないわ」
杏子「えっ!失業中なのか!?」
ほむら「違うわ。お母さんの方が働いていて、お父さんは専業主婦をやってるのよ」
マミ「珍しいわね」
杏子「失業中とか、失礼な事言っちゃったな」
ほむら「私も初めその事を知って驚いたわ」
ほむら(そういえば知久さんが専業主婦だという事を知ったのは、新しい世界になってからだったな…)
ほむら(前の世界の時は、まどかに招待されて鹿目家でご馳走になったぐらいで、たいして付き合いはなかった)
ほむら(思えば新しい世界になってから、鹿目家との付き合いも長くなって、だいぶ仲が良くなった気がする…)
ほむら(最初は河原でタツヤと出会い、そこから彼らとの交流が始まった)
ほむら(公園でタツヤと遊んだり、一家の夕食にお呼ばれされたり、一緒にピクニックに行く事まであったっけ…)
ほむら「砂遊びか…楽しそうね…」
マミ「あっ、暁美さん…」
気づいたら涙が流れていた。
ほむら(タツヤをあの人達と離れ離れになんてさせたくない!詢子さんと知久さんを悲しませたくない!)
ほむら(でも、あの家族ができるだけ安全に生活するためにはタツヤを隔離するしかない!ねえ、私はどうしたらいいの…)
ほむら(私とタツヤがこの世界で出会うきっかけになった『まどかの記憶』…、あの時は奇跡のようだと思った)
ほむら(でも、今じゃタツヤとあの家族を苦しめる呪いとなっている…、こんな事ならタツヤがまどかの事を忘れていた方が良かった…)
ほむら(…うん?記憶を忘れさせる?)
ほむら「あっ、今思いついた」
マミ・杏子「えっ!?」
ほむら「ごめんなさい、ちょっとこの場を離れてもいいかしら?」
マミ「ちょっと、暁美さん!魔獣がタツヤ君を襲ってくるかもしれないのに、離れてもらったら困るわ!」
杏子「さっき言った『思いついた』って、この事態を打開する方法を思いついたのか?」
ほむら「ええ。でも、もしかしたらいけるかもってほどの不確かな方法だけど…」
杏子「なら行って来い!もしかしたらでも、成功するかもしれないんだろ?」
ほむら「ありがとう。それじゃあ、その間だけタツヤをお願い」
マミ「行っちゃった…」
マミ「もう、魔獣がたくさん現れるかもしれないのに暁美さんったら」
杏子「そのわりに嬉しそうな顔してるなマミ」
マミ「うふふ。だって暁美さん、久々に笑ってたんですもの」
杏子「ちょっと前までのしけた顔と比べて急に眼が輝きだしたからなー」
QB「マミ、杏子!魔獣の瘴気が出て来たよ!」
マミ「さあ、気合入れるわよ佐倉さん!嬉しい知らせを持って帰ってきた暁美さんが悲しい顔しないようにしないとね!」
杏子「わかってるよ!あいつにこの場を任されたんだからな!」
次回に続きます。
できるだけ映画上映日までに全部終わらせるつもりです(予定)
>>35キュウべえではなくキュゥべえだというのを初めて知りました。
今まで書いたSS、全部間違ってたよ…。
タツヤがまどかの絵を描いているのは動物や幼い子供にはまどかが見える事があるだけという公式設定がちゃんとあります
つまり家族だから覚えてるとかそんな訳ではないのでほむらとタツヤは決してまどかの記憶を共有してはいません
むしろ名前を聞いてどこか懐かしいと感じていたカーチャンの方がよほど奇跡的にまどかの記憶を持っていると言えるのではないでしょうか
「…それで○○高校の入試試験、上手くいくでしょうか?」
?「そうね…、なかなか難しい問題がそろっていて苦労してるあなたの姿が見えるわ」
「え!それじゃあ…」
?「でも、大丈夫。努力が必要だけど、きっと報われるわ。だから、頑張って」
「あ、ありがとうございます!やっぱり、私○○高校の受験受けます!」
?「うふふ。頑張ってね」
?「ふー、今日は次の人で最後かな…」
ほむら「噂には聞いていたけど、まさか本当に占い屋なんてやってるとはね、美国織莉子」
織莉子「あら、珍しいお客さん。あなたが来るなんて私も驚きよ、暁美ほむら」
ほむら「プライドの高そうなあなたが、こんな事に未来予知の魔法を使うなんて思ってもみなかったわ」
織莉子「生活のために必要なのよ。プライドだけじゃ食べていけないわ」
織莉子「それで何を占って欲しいのかしら?いえ、あなたの場合、占いなんて言葉でごまかす必要はないわね。何についての未来が見たい?」
ほむら「いいえ、私の未来を見てもらう必要はないわ」
織莉子「それなら何の用事で来たのかしら?ただ遊びに来ただけ?」
ほむら「まさか。あなたとはそんな仲でもないし。私がここに来たのはあなたが知ってるある情報のため」
ほむら「記憶や精神を操作する魔法少女がいるという話を聞いた事があるわ。その魔法少女の居場所を教えて欲しいの」
織莉子「…何故、私が知ってると?」
ほむら「あなたが、その魔法少女と交戦し撃退したという情報をキュゥべえから聞いた事があるの」
織莉子「キュゥべえもおしゃべりね…」
ほむら「で、その魔法少女の居場所を知ってるの?」
織莉子「ええ知ってるわ」
ほむら「じゃあその魔法少女は今どこに?」
織莉子「…ただで教えるってわけにはいかないわね。あなたとはそれほどの仲じゃないし…」
ほむら(やっぱりそうなるわよね…)
ほむら「わかったわ、報酬は払う。お金がいいの?それともグリーフシード?」
織莉子「ずいぶん素直なのね。差し迫った事態なのかしら…。何故あの子について知りたいのか気になるわ」
ほむら「…あなたには関係ない事でしょ」
織莉子「関係無い事はないわよ。あなたがあの子の魔法を利用して私達の敵となる可能性だってないわけじゃない。だから、ちゃんとした理由があるのか知りたいのよ」
ほむら「…わかったわ」
織莉子「…とてもじゃないけど信じられない話ね。この世界は改変された世界であり、その改変される前の記憶を知っているがために魔獣に狙われている少年がいるなんて」
ほむら「…やっぱり信じる事ができないわよね」
織莉子「確かに信憑性の薄い話だわ。でも、あなたが嘘を言っているとは思えない。話をしてた時のあなたの目は真剣で誰かを助けるために必死の人の目だった…」
織莉子「それに騙すなら、そんな突拍子もない話をするより、もう少しわかりやすい話の方がいいはず…」
ほむら「それじゃあ…」
織莉子「少し待っててもらえる?」
ほむら「ええ、かまわないわ」
織莉子(前の世界の話は信じれないし、真実かどうか確かめる術を持たない…でも、その少年の話は私の未来予知で確かめる事ができる…)
・
・
・
・
織莉子(霧がかかったかのように視界が悪い…魔獣の瘴気ね。あそこにいるのは暁美ほむらと小さな子供…彼が鹿目タツヤかしら)
ほむら「はぁ…はぁ…」
織莉子(暁美ほむら…ボロボロになってるわ)
魔獣「ヴァアアアアアアア!!!」
織莉子(魔獣が光線を発射した!)
ほむら「キャアアアアア!!」
魔獣「グゥオオオオオオ!!」
ほむら「やめてぇ…お願い…タツヤに手を出さないで…」
魔獣「ヴアアアアアアア!!!」
ほむら「タツヤぁあああああああ!!!」
・
・
・
・
織莉子「…」
数分間、織莉子は瞑想してるかのように目を閉じていた。途中、急に顔に汗を流し出し、そして目を開けた。
さっきの汗は冷や汗?
織莉子「…このままだとタツヤ君は魔獣に殺されてしまうわ」
ほむら「え!?そ、そんな!!」
織莉子(なんて悲痛な顔…。やっぱりその子を助けたいというのは嘘ではなさそうだわ…)
織莉子「大丈夫、未来は変える事ができる」
織莉子「教えるわ、あなたに記憶を操作できる魔法少女の事を。それも無償で」
ほむら「えっ?」
織莉子「無辜の子供を助けるためですものね。それぐらいお安いご用よ」
ほむら「ありがとう、織莉子!」
織莉子「その子、ちょっと気難しいところがあるから、あなたが頼んでも言う事を聞いてくれないと思うわ。だから、私がなんとか説得してみるから」
ほむら「悪いわね、何から何まで。それにしても気難しいってそんなに性格に問題があるのかしら?」
織莉子「常に他人を妬み、常に他人を見下し、他人は自分のために犠牲となるべきと考えてる女の子よ」
ほむら「いかにも悪者って感じの女の子ね。そんな女の子が住む場所っていったいどんな所なのかしら…」
織莉子「うふふ、怖ろしい伏魔殿に彼女はいるわ」
ほむら「ごくり」
私達は占い小屋を出て10分ほど歩き、電車に乗り、駅に着くとまた10分ほど歩いた。
織莉子「さあ着いたわよ」
ほむら「ワンルームマンションかよ!」
ピンポーン
「はーい!」
織莉子「ごめんなさい沙々さんのお友達の美国織莉子と申します。沙々さんはいらっしゃいますか?」
「ちょっと待っててね」
「まさか、あの子に友達が訪ねてくるなんて!今日は、赤飯よ!沙々ちゃーん!」
沙々「何ですかーママ」
「お友達よ」
沙々「友達?誰でしょ?」
ガチャ
織莉子「ごきげんよう、優木沙々さん」
沙々「ごめんなさい人違いです」
織莉子「ちょっと待ちなさい!何でドアを閉めようとしてるのかしら?」
沙々「あなたと友達になった覚えはないです!」
織莉子「最初、友達だって言って私に近づいたくせに」
沙々「あれは、あなたの記憶を操作して友達のふりをしてぶっ殺そうとしただけです!」
織莉子「でも、失敗したのよね。キリカのおかげで」
沙々「うるさい!計画は完璧なはずだったんだ!あの眼帯女が邪魔しなければ…」
織莉子「扉を閉めようとするのは止めて部屋に入れてくれないかしら。あなたに頼みたい事があるのよ」
沙々「嫌です!何の義理があって、あなたの頼みを聞く必要があるんですか!」
織莉子「沙々さん、あなた負けた時言ったわよね。何でも言う事聞くから命だけは助けてって」
沙々「そ、そんな事あったかなー?」
織莉子「あなたのこれからはどんな未来が待ってるかしらねぇ?円環の理に導かれるのはいつになるかしらぁ?」
沙々「止めて―!!!部屋に入れるからー!頼み事も聞くからー!未来予知で私の未来を勝手にしゃべるのは止めてくださーい!!」
ほむら(なるほど、未来予知にはこういう使い方もあるのね…)
優木沙々…魔法少女おりこ☆マギカの別編『symmetry diamond』に登場する魔法少女。
「ジュースとお菓子置いとくわね」
ほむら・織莉子「ありがとうございます」
沙々「ママー!こいつらにそんなもの要りませんよ」
「そんな事言っちゃいけないわよ沙々。せっかく友達が来て下さったんだから」
「ところで、お二人は沙々とどういう交友関係なのかしら?」
織莉子「えっ?えーと…沙々さんとは学校も違うんですけど、趣味を通じて友達になったんです。そうよね、ほむらさん?」
ほむら「えっ!…そっ、そうなんです三人とも共通の趣味を持ってまして」
「まあ!そうなの!いったいどんな趣味なのかしら?」
織莉子・ほむら「えっ!」
ほむら「えーと、げ、ゲームです!魔法少女になってモンスターを狩るというゲームにみんなハマってまして」
「まあ!そうなのー。それじゃあ、ゆっくりしていって下さいね」
ほむら「は、はい」
織莉子(ナイスフォロー!暁美ほむら!)
沙々「…それで、頼み事って何ですか?おそらくそこの黒髪ロン毛の頼み事なんでしょうけど」
ほむら(黒髪ロン毛…)
織莉子「ええ、そうよ。暁美ほむら、あなたが直接内容を話した方がいいかしら?」
ほむら「そうね、私がしゃべるわ」
ほむら「織莉子から聞いたのだけれど、本当に人の精神や記憶を操作する事ができるの?」
沙々「はい、できます。人だけじゃなく魔法少女、そして魔獣まで操る事ができます。私にかかれば世の中の意思を持つ者全てが奴隷ですよ」
そう言って、沙々という少女はニヤッと笑った。さっきまでの織莉子と沙々とのやりとりを見てるかぎりじゃ、織莉子の言う彼女の印象はかなり大げさだと思っていた。
だけど彼女の皮肉っぽいしゃべり方、他人を見下したような目、邪悪な表情から、私は禍々しいものを感じた。
ほむら「私の求めているのは記憶操作の能力よ」
沙々「なになにー?辛い過去を忘れたくて記憶を消して欲しかったりするんですかー?」
ほむら「…辛い過去じゃないわ。それはとても大切な記憶。だけど、それは覚えていてはいけないもの」
ほむら「鹿目タツヤという少年の記憶から、彼の姉鹿目まどかについての記憶を消して欲しいの」
沙々「この世界は改変された世界で、前の世界の記憶を持っているガキがいて、そのせいで魔獣に狙われてるっていうわけですね?」
ほむら「ええ」
沙々「ぷっ…ギャハハハハハハハハハハ!!!何それ!あなた、頭おかしいんじゃないですか?」
ほむら(信じてもらえるとは思ってなかったけど、ここまで笑われると滅茶苦茶腹が立つわ…)
沙々「織莉子さんも何で、こんな馬鹿の言う事信じてるんですか?ああ、織莉子さんも馬鹿なのかギャハハハ!!」
織莉子「私も改変された世界だとか、そこらへんの話は信じる事は難しいけど、タツヤ君に危機が迫っているという事、このほむらさんが誰かを助けるために必死になってるって事だけは信じる事ができるわ」
沙々「ふーん、お人好しですね織莉子さんも。まあ、未来予知の能力があるから、そのガキがピンチだって事は事実なんでしょうけど」
ほむら「どう思われてもかまわないわ。タツヤの記憶から、まどかについての記憶を消す事さえできれば何だっていいんだから」
沙々「長期の記憶消去となると時間がかかります。それでも記憶操作は永続的に続くものじゃないですよ。私が定期的にそのガキの記憶を弄れば話は別ですが。まさか、私にずっとガキのお守をしろって言うんじゃないでしょうね?」
ほむら「いいえ、一度だけでも消す事ができれば、もう二度と思い出す事はないと思うわ。本来なら誰も覚えている事ができないというのが世界の法則であるのだから、一旦でもタツヤを法則の範囲内に戻す事さえできれば、タツヤは法則の外を出る事は無いと思うわ」
沙々「そもそも、あなたが普通に前の世界の事について話してる時点で説得力ないんですよね」
ほむら「それは私だけが特別だからよ」
沙々「中二病かっつうの!」
ほむら「というわけで、今すぐ見滝原に行きましょうか。今も私の仲間がタツヤを守るために魔獣と戦ってるかもしれないわ」
沙々「ちょっと待って下さいよ。何、もう私がやると決まったみたいに話してるんですか?」
ほむら「引き受けてくれないの?」
織莉子「おしおきが必要かしら?」
沙々「わあ!待って下さい!待って下さい!確かに、引き受ける気ではいますよ。でも、無償っての嫌ですね。織莉子さんのお仕置きを回避するだけのためだったらモチベーションが上がりません」
織莉子「そんな事言える立場だと思って?」
沙々「思ってますよ。だって、私にかかれば、タツヤってガキの記憶を消す時に、私が好きなようにそのガキの精神や記憶を操作する事ができるんですよ。記憶を消した後、無事にそのガキを返して欲しかったら、私が満足する報酬を約束する事ですね」
ほむら「もし、そんな事をしてみればあなたも無事でいられないわよ」
沙々「わかってますよ。だから、私達みんなが無事でいられるかつ、利益を得る事ができるよう交渉しているわけです」
ほむら「何が望み?」
沙々「そうですねーグリーフシードを大量に欲しいですね」
ほむら「わかったわ、貯めてた分をあなたにあげる」
沙々「それと…土下座してくれません?」
沙々「土下座して頼んでくれないですか?そしたら依頼を引き受けますよ」
織莉子「ちょっと沙々さん、調子に乗りすぎじゃないかしら…」
沙々「ヒッ!」
ほむら「いいわ」
織莉子・沙々「え?!」
私はフロリーングに頭をつけ土下座をした。
織莉子「そんな事する必要ないわよ」
ほむら「私が床に頭をつけるだけでタツヤを救えるなら、何度だって土下座してやるわ」
沙々「ちっ!面白くねぇー!」
沙々(自分は偉いと思って踏ん反り返ってる奴が、悔しそうに嫌々やってるとこを見たかったのに、何だよこいつ…堂々としやがって)
沙々「ああもういいですよ。見苦しいだけで止めてもらえません?」
ほむら「それじゃあ、引き受けてくれるの?」
沙々「ああいいですよ、その代わりグリーフシードの数は奮発して下さいね」
ほむら「ええ、今まで貯めていたのが大量にあるから大丈夫よ」
沙々「ふん!」
ガチャッ
急に扉が開く音がした。
「それでねぇ、ほむらさん、織莉子さん、今日晩御飯食べてか…ってあなた達何してるの!?」
ほむら・沙々・織莉子「あっ」
沙々「な、な、何でもないですよママ!」
「何でも無い事ないでしょ!土下座してるのよ!」
ほむら「ち、違いますよ!そうだ、コンタクトレンズ探してるんです!そうよね?織莉子さん、沙々さん!」
織莉子「え?…ええ!もう、ほむらさんったらよくコンタクト落とすんですよ!」
沙々「そうなんですよー!ほむらさんはドジっ子なんだから!」
「えっ!そうだったの…ごめんねぇ、騒いだりしちゃって。コンタクトレンズって結構高価なんでしょ?私も探すわ」
ほむら「あっ!見つかりました。ご協力ありがとうみんな!あっ、それと晩御飯のお誘い嬉しいですが、ちょっと今から出かけるんで、また今度に」
「まあそうなの。沙々ちゃん、あまり遅くならないでね」
沙々「はーい!」
一方、見滝原では…。
杏子「くそー!どうなってやがるんだ!倒しても倒しても魔獣がどんどん現れやがる!」
QB「魔獣も鹿目タツヤの存在を消すため本腰を入れてるって事だろうね」
マミ「一体、一体はそこまで強くないわ。でも、こう次々と現れては体力が持たないわよ」
杏子「ほむらのやつ!お詫びに焼き肉食い放題でもおごって貰わないと割に合わないぞ!」
QB「また、魔獣の数が増えた!北に5体、東に3体、南に4体、西に4体だ!」
杏子「囲まれたってわけか」
マミ「ほんと佐倉さんの言うとおり、私も暁美さんに何かごちそうしてもらう物を考えさせてもらうわ」
杏子「それだけ、減らず口叩けるならまだ大丈夫だなマミ!」
マミ「当然よ」
マミ「佐倉さん!役割分担といきましょ。私が北と東の魔獣を倒すから佐倉さんは南と西ね」
杏子「オッケー!」
魔獣「グゥオオオオオオ!!!」
マミ「ティロ・フィナーレ!!」
マミのマスケット銃から放たれた光線が数体の魔獣を薙ぎ払った。
杏子「よし!あたしも…って南と西ってどっちだっけ?」
QB「…僕に感情があったら、呆れてるとこだよ杏子。あっちとあっちだよ」
杏子「う、うるさい///」
杏子「終わりだよ!!」
魔獣「ヴァアアアアア!!」
杏子の魔力により槍が巨大化した。その槍はまるで生き物のように動き、魔獣の体を貫く。
杏子「はぁー…はぁ…ちょっときついかな…」
マミ「キャアアア!!」
杏子「マ、マミ!!」
杏子はマミの元へ急いでかけよった。
杏子「大丈夫か、マミ!」
マミ「だ、大丈夫よ…」
杏子「大丈夫な事あるもんか!かなりの傷だぞ!後はあたしに任せて、マミは休め!」
マミ「ご、ごめんなさい…」
QB「来るよ杏子!」
魔獣「ヴァアアアアアア!!!」
魔獣から大きなエネルギーをともなった光線が放たれた。
杏子「こなくそ!!」
避けてしまえば、怪我をして動けないマミに魔獣の攻撃が当たってしまう。そう判断した杏子は魔力で結界を張り魔獣の光線を受け止めた。
ビキビキ…
杏子「えっ」
壁が割れるような音が鳴り、結界がひび割れていく。
杏子「耐えてくれー!」
パキーン!!
ガラスが割れるような音が杏子の耳に入った。
杏子「うわああああああ!!!」
結界は魔獣の攻撃に耐えきれず、崩壊した。
杏子「はぁ…はぁ…」
杏子(割れてしまったけど結界のおかげで、あいつの攻撃の威力を減退させる事はできた…。でも、ほとんど魔力が残ってない…)
杏子(それに加えて、魔獣の数はまだ3体。万事休すか…)
3体の魔獣は、じりじりと杏子へ近づいて行く。
杏子「ちくしょー!あきらめてたまるかよー!」
体力と魔力は杏子にほとんど残っていない。それでも杏子は上がらなくなった腕を無理やり動かして槍を敵に向けて構えた。
魔獣「ヴォオオオオオ!!!」
そんな満身創痍の少女に、魔獣はとどめを刺そうと光線を放った。
爆発音が響く。
杏子「えっ…何で魔獣が魔獣に攻撃を…?どういう事だおい!」
杏子に攻撃を加えようとした魔獣は、別の魔獣の光線を受け崩れ落ちた。
QB「なるほど、ほむらは彼女を呼んできたのか」
ほむら「魔獣まで精神操作できるなんて、怖ろしいわね…」
沙々「本当はガキの記憶操作だけだったんですからね!グリーフシード追加してくださいよ!」
ほむら「それは杏子に頼んで」
杏子「ほむら!…と誰?」
織莉子「後、2体の魔獣は私に任せて。オラクルレイ!」
織莉子の周りに浮いていた数個の玉から光が発し、その光はナイフのような形へと変化していく。
無数の光の刃が魔獣に降り注ぐ。
魔獣「グアアアアアアアアア!!」
一瞬にして二体の魔獣の身体はバラバラになってしまった。
杏子「遅かったじゃねえか!おかげでこっちはクタクタだよ!」
ほむら「ごめんなさい」
マミ「まあまあ。いいじゃないのよ佐倉さん、助かったんだから。それで、どうだったの?希望はありそう?」
ほむら「ええ」
杏子「良い顔してるじゃねぇか、ほむら。本当にこれはいけそうだな」
マミ「私達を助けてくれた二人が、タツヤ君を助ける鍵になる人なのかしら?」
ほむら「そうよ。二人に紹介するわ、美国織莉子と優木沙々よ」
織莉子「よしなに」
杏子「佐倉杏子だ、さっきはありがとな(こいつの帽子、バケツみたいだな)」
マミ「巴マミよ、よろしく美国さん。さっきは助かったわ、ありがとう。それにしても『オラクルレイ』ってあなたの必殺技かしら?凄く素敵だったわ」
沙々「雑魚さん達よろしく♪私のおかげであなた達雑魚の命が助かったんですから、大いに感謝するんですね」
杏子「なんだとこいつ!」
マミ「落ち着いて佐倉さん。沙々さんの言うとおり、この人たちのおかげで助かったんだから」
ほむら「沙々の固有魔法は『洗脳』。その力を使って、タツヤの記憶を操作するのよ」
マミ「なるほど、精神操作の魔法ね。その魔法を使ってタツヤ君の記憶を封じるなんて、考えたわね暁美さん」
杏子「それじゃあ、パッパとやっちまおうぜ」
ほむら「それが沙々の言う事だと記憶消去の魔法は時間がかかるみたいなの」
マミ「どのくらい?」
沙々「聞いて驚かないで下さいよ。なんとたった半日でガキの記憶から取り除きたい情報を消去できます」
織莉子「私の時も、それぐらい時間がかかったの?」
沙々「じっくり記憶をいじくらせて洗脳させていただきましたよ」
杏子「滅茶苦茶時間がかかるじゃねえか!」
沙々「何て失礼な事言うんですかこのチョンマゲは!精神操作なんていう高等な魔法、私だから半日ですませるんですよ!他のお馬鹿さんなら、1日以上かかるはずです!」
ほむら「ほんとなの?」
織莉子「他に精神操作できる魔法少女を知らないから比較できないけど、なんとなく胡散臭いわ…」
マミ「…となると、今回の事は長時間のミッションになりそう。その間、タツヤ君を狙う魔獣と戦う可能性が大ね」
杏子「ところで、ほむら聞きたい事があるんだけど」
ほむら「何かしら?」
杏子「もし記憶を消しても、魔獣がタツヤを狙うのを止めなかったらどうするんだ?記憶が蘇らないとも限らないだろ?」
ほむら「…その時は覚悟を決めるわ。タツヤを外界から隔離して、私が一生あの子を守る」
杏子「…そこまでの覚悟か。なら、あたしも覚悟を持って、今回の仕事を手伝ってやるよ!」
ほむら「あなた、魔獣との戦いでボロボロなのに大丈夫なの?」
杏子「昨日の傷が癒えてないお前の方がきついだろ。あたしの場合、食いもんたくさん食べて、グリーフシードを使えば体力と魔力は回復する」
マミ「佐倉さんの言うとおりよ。私達は仲間でしょ?あなたが困ってる時は必ず、力になるわ」
ほむら「杏子…マミ…ありがとう」
杏子「何泣きそうな顔してんだよ。そんかわり焼き肉おごれよな」
マミ「私はケーキバイキングね」
ほむら「ほんと…お礼しなきゃいけない事がたくさんあって大変だわ…」
そう言った時の私の顔は泣きそうで、嬉しそうな変な顔をしていたと思う。
本当に彼女達と仲間で良かった…。
必死に協力してくれる仲間のためにも、タツヤを救わなければいけない。
そう、強く心に誓った。
ほむら「さて、どこでタツヤの記憶を操作しましょうか。長時間に何回も魔獣と戦う事を考えたら、人里離れた場所の方が良さそうね」
織莉子「私の別荘なんてどうかしら?ここから電車で2時間のところに別荘があるの。田舎で、別荘の周りにはほとんど人家はないわ」
杏子「凄いな!織莉子って金持ちなんだ」
沙々「今じゃ没落した家ですけどね」
ほむら「それじゃあ、あなたの別荘にお世話になるわ」
マミ「となるとタツヤ君を連れ出さないといけなくなるわね…」
沙々「児童誘拐ですか!ほむらさん鬼畜ー♪」
杏子「こいつ、ほんと腹が立つな」
ほむら「…本当の事なんだから仕方がないわ。両親に無断で連れ出す事になるんだもの」
一家が寝静まる頃まで待ってから、私は鹿目家に忍び込んだ…。
本来ならすぐにでもタツヤを連れ出したかったが、見つかると騒ぎになるという判断から深夜を選ぶ事にしたのだ。
沙々の記憶操作の魔法も時間がかかるし、それならみんなが眠るまで待った方が良い。
それまで、ちょくちょく魔獣が出現する事があったが、幸い数は少なく、5人も魔法少女がいる状況では苦戦する方が難しいぐらいだった。
ほむら(人の家に忍びこむなんて、武器調達してた時の事を思い出すわ…)
夫婦の寝室に入る、もちろんタツヤもその部屋に両親と一緒に寝ていた。
夫婦は一緒のベットだが、タツヤだけ子供用の小さなベットである。
タツヤ「すぴー…すぴー」
ほむら(ふふ、気持ち良さそうに眠っているわ…)
詢子「ううん…」
ほむら(え!もしかして起きてる?)
詢子「知久…タツヤ…愛してるぞ…」
ほむら(ほっ…寝言か)
知久「タツヤ…」
ほむら「…」
この一家とのつきあいが長い私は、この夫婦がどれだけ一人息子を愛しているかという事を嫌というほどよく知っている。
だから、そんな愛するタツヤを少しの間だけでも、夫婦から引き離す事は辛い仕事だった…。
朝になって起きた時、タツヤがいないとわかったら、どれだけ二人は取り乱し、悲しむ事か…。
ほむら(やっぱり先に詢子さん達を記憶操作した方が良かったんじゃ…)
ほむら(いいえ、駄目よ!そんな時間はないわ!)
ほむら「詢子さん、知久さん、本当にごめんなさい…少しの間だけあなた達のタツヤを私に預けて下さい」
迷いを振り切り、私はタツヤを鹿目夫婦の元から連れ出した…。
今回はここまでです。次回に続きます。
応援レスありがとうございます。
>>71マジで!?
もしそれが本当ならこのSSは公式とは違うパラレルワールドという事にして下さい。
沙々「ぐー…ぐー…ママ…」
杏子「こいつだけ呑気に寝てて羨ましいよ…」
マミ「仕方が無いわ、この後タツヤ君の記憶を封じるという大変な仕事があるんですもの。睡眠をとらずにできる仕事ではないわ」
織莉子「杏子さん、マミさん、あなた達も寝てていいのよ」
マミ「いいえ、魔獣が出るかもしれないと考えたらオチオチ寝れないわ」
織莉子「うふふ、魔獣なら私一人でも十分よ」
杏子「ずいぶんと自分の強さに自信があるんだな、あんた」
織莉子「たいして強い魔獣が出る予感がしないだけよ…」
杏子「予感だけで信用できるわけないだろ。そもそも、あたしは織莉子、あんたを完全に信用したわけじゃない」
マミ「ちょっと佐倉さん、協力してもらうのにそんなの失礼よ。それに織莉子さんが私達と敵対する気なら助けたりしないわよ。ごめんなさいね美国さん」
杏子「あいにくあたしは、なかなか他人を信用できない達でね。おいそれと他人に背中を預けたりはしないのさ」
織莉子「確かに佐倉さんの言う事に一理あるわね…魔法少女で殺し合ったり、騙し合ったりするなんて珍しい事じゃないわ…私も経験した事あるし…」
マミ「ごめんなさい美国さん、佐倉さん本当は凄く良い子なんだけど、ちょっと人見知りするところがあって…」
ほむら「みんなお待たせ」
マミ「暁美さん!」
杏子「ほむら!」
ほむら「しーっ」
マミ・杏子「あっ」
タツヤ「すぴー…」
マミ「ごめんなさい…」杏子「ごめん…」
織莉子「くすくす…」
杏子「むっ…///」
織莉子「そういえばあなたに聞きたい事があったのだけれど」
ほむら「何かしら?」
織莉子「どうして私を信用する気になったの?」
杏子「!」
ほむら「そうね…タツヤを助けるためなら藁にもすがりたい気持ちだったってのもあるけれど…」
ほむら「あなたがあの時言ってたでしょ。『あなたが嘘を言ってない事はわかる。話をしてた時のあなたの目は真剣で誰かを助けるために必死の人の目だった』って」
ほむら「それと同じようにあなたの目も誰かを助ける事に喜びを感じる優しい人の目じゃないかって思っただけよ」
織莉子「そう…」
ほむら「いちお万が一の事も考えてるけどね。それは私が用心深いだけだから(それと前の世界での経験でね)」
織莉子「ふふ、それだけでも十分よ…ありがとう」
ほむら「何故お礼を言うの?」
織莉子「さあ何故でしょうね…うふふ」
杏子「織莉子、この仕事の期間だけはあんた信用する事にする…。ほむらがああ言うなら仕方がねえよ…」
織莉子「ふふ、暁美ほむらはだいぶ信頼されてるのね」
ほむら「何かあったの?」
マミ「うふふ。ちょっとね♪」
織莉子「さあ起きなさい沙々さん」
沙々「くふふふ…後、1時間…」
織莉子「あなたがどうやって、いつ、この世から姿を消すのか知りたいのかしら?」
沙々「はい!起きます!」
ほむら「キュゥべえ、あなたも起きなさい」
QB「おや、もう出発かい?」
ほむら「そうよ、織莉子の別荘へ行きましょうか」
こうして私達6人とインキュベーター1匹は織莉子の別荘へと出発した。
魔獣と戦う可能性を考えると、電車やタクシーは使えない。
そうなると足で移動するしかない。
魔法少女の身体能力をフルに稼働させれば、電車と同じく1時間で着けるだろう。
しかし、それは背中に背負う魔法少女でも何でもない普通の幼児であるタツヤと魔獣との戦いのために魔力と体力を温存する事を考慮しない場合である。
それらの事を考えて、結局私達は通常の人間が歩くスピードで移動する事となった。
出発した時間は深夜1時。
真夜中の旅行だ。
外伝キャラがいるのかよ
注意書きくらいしてくれ
歩いている途中、気づいた事があったので沙々に聞いてみた。
ほむら「歩きながら、『洗脳』の力でタツヤの記憶を操作する事はできないのかしら?」
沙々「できない事はないですけど、やっぱり止まって集中してやる方が時間はかかりません」
沙々「後、織莉子さんを洗脳した時は、魔獣と戦う事を避けストレスも無かったから上手くいきましたが、長い距離を歩くというストレスの貯まる行動をしながらしかも魔獣と戦う可能性があるという状況でするのはお勧めしませんね」
ほむら「わかったわ、結局、別荘に着いてからというわけね」
楽な方法は無いというわけか。
結局、近道を諦め、私たちは地道に歩き続けるしかなかった。
歩いて2時間が立った。
たった一つの電灯が照らす小さな公園。
その小さな明かりの中にポツンと置かれたベンチを見つけ、そこで私達は休憩する事となった。
ほむら「この近辺に魔獣はいるかしら?」
QB「大丈夫だよ、今のところは」
ほむら「今のところはねえ…」
沙々「あーしんど…」
杏子「やばい…ねむたい…コーヒーでも飲もうかな」
マミ「私も何か甘い物が食べたいわ」
織莉子「コンビニでも行って買って来たら?」
杏子「その間に魔獣が出たらどうするんだよ」
織莉子「大丈夫、出てこないわ」
杏子「また根拠の無い自信かよ」
織莉子「いいえ、私の固有能力よ」
マミ・杏子「え!!」
織莉子「私は未来予知の魔法が使えるの。私の予知によると、コンビニに買いに行ってるぐらいの時間なら魔獣は出ないわ」
マミ「凄いわ美国さん、未来予知なんて!その能力って漫画やアニメだとかなりの上位能力よ」
織莉子「そ、そうなの?(漫画とか見ないから、マミさんの言ってる事がよくわからないわ…)」
杏子「そんな事教えていいのかよ?」
織莉子「だってこの仕事の間だけかもしれないけど、仲間でしょ?信頼を得るためには自分の事を教えた方がいいかと思って」
杏子「そっか…。じゃあ、あたしも教えないとな。あたしは幻惑の魔法が昔、使えた」
織莉子「昔、使えた?」
杏子「使えなくなったんだ。何故かってのまでは教えないぞ」
マミ「私はリボンを生成する事ができるわ。長さも固さも自由自在なの」
織莉子「ありがとう二人とも。教えてくれて」
杏子「別にお礼なんていいよ。ただ、あんたが教えてくれたのに、こっちが教えないのはなんかフェアじゃないかなって思ってさ…」
マミ「ね、良い子でしょ」
織莉子「うふふ、本当ね」
杏子「はぁ!何言ってんだお前ら!べ、別に良い子とかそんなんじゃねえし///」
沙々「はいはーい!私は洗脳の魔法が使えまーす!」
マミ・杏子・織莉子(それはすでに知ってるよ…)
杏子「それじゃあ、あたしコンビニ行ってくるわ。何か買ってきて欲しいものとかある?」
ほむら「カロリーメイトが欲しいわ。味は何でもいいから」
織莉子「私は午後の紅茶が欲しいかな」
沙々「私も行きまーす!自分で見て決めたいんですー!」
マミ「私も着いて行くわ。沙々さんと同意見よ」
杏子「よし、ちょっくら行ってくるわ」
ほむら「あっ、それとタツヤのためにミルクとチョコレートもお願いしていいかしら?」
杏子「あいよ」
織莉子「…あの三人がいなくなると静かになったわね」
ほむら「…そうね。うるさいのが二人もいたものね」
QB「それじゃあ僕もちょっと席を外さしてもらうよ」
ほむら「えっ」
QB「草とか食べようかなと思ってね」
織莉子「食べれるの?!」
QB「僕らインキュベーターはエネルギーになるものなら何でもいいんだよ」
ほむら「…」
織莉子「…」
織莉子「二人になったわね」
ほむら「三人よ」
織莉子「ごめんなさい、タツヤ君の事を忘れてたわ」
織莉子「それにしても、ここまでこの子が起きなかったなんてね」
ほむら「ほんと、奇跡ね」
織莉子「あなたの背中がよっぽど気持ちよかったのかしら?」
ほむら「だったら嬉しいんだけれど…」
織莉子「あなたと一緒に魔法少女の仕事をする事になるなんてね」
ほむら「それはお互い様、私もそんな事があるなんて思ってもみなかったわ」
織莉子「最初に会ったのはいつだったかしら?私が魔獣が出現した事をキュウべえから聞いて、出現場所へ行った時にあなたがいたんだったわね…」
ほむら「そうだったわね…」
織莉子「急にあなたが『美国織莉子』って言ったからびっくりしたわ。初対面だったのに…」
ほむら「そりゃあ、驚くわよね…」
織莉子「しかも、凄く怖い顔で私を睨んでくるんだから怖かったわよ」
織莉子「これも前の世界での出来事が原因かしら?」
ほむら「さあ、どうかしら…」
織莉子「私が助けようとしたら、あなたは『あなたの助けなんていらない』って言って拒絶した…普通だったらそこで終わってたはずだったんだけれど、何故だかあなたに対抗心がわいて、気づいたらあなたより先に魔獣を倒してしまったわ」
ほむら「そして、私は激怒した…ここでも私の邪魔がしたいの?みたいな事言って」
織莉子「今思えば、最悪な出会いだったわ…」
織莉子「その後も、何回か魔獣との戦いで鉢合わせになって、決して助けあう事なく相手より先に魔獣を倒してやるとお互い意地になってたな…」
織莉子「今思うと、あなたの話を信じてみようという気になったのは、私があの時初めて会う前に、昔あなたと会った事があるかもしれないと思ったからなのかなあ…」
織莉子「ねえ、前の世界だと私とあなたってどんな関係だったの?」
ほむら「聞かない方が良い事もあるわ」
織莉子「あら怖い」
織莉子「…あなたの事、ほむらさんって呼んでいいかしら?」
ほむら「急に何で?」
織莉子「暁美ほむらって呼び捨てで呼ぶのもどうかと思ってね。今、思うと何でそんな呼び方してたのかしら」
ほむら「敵対してたからじゃない?」
織莉子「敵対してたってほどの関係ではないでしょ?」
ほむら(…してたわ、前の世界じゃ…あれは何周目の時間軸だったかしら…)
織莉子「もしかしたら、私達良い友達になれるかもしれないわね」
ほむら「だと良いんだけれど…」
ほむら(…あなたが未来予知の能力を持ってなかったら、まどかを殺そうとしなかったら、前の世界でもこういう関係になれてたかもしれないわね…)
ほむら「!」
織莉子「どうしたの?」
ほむら「ちょっとトイレに行きたくなってきて…」
織莉子「行って来たら?」
ほむら「でも、タツヤが…」
織莉子「タツヤ君なら私が面倒を見てるわ」
ほむら「でも…」
織莉子「寝てる子の面倒を見るだけなら大丈夫よ」
ほむら「わかった、タツヤの事をちょっとだけお願いね」
タツヤ「すぴー…すぴー…」
織莉子「うふふ、可愛い寝顔。こんな可愛い寝顔を見ているとキリカの寝顔を思い出すわ…」
タツヤ「ふわぁ~」
織莉子「えっ!?」
タツヤ「あぅ…」
織莉子(起きちゃった!?)
タツヤ「あれ…ママ?…パパ?」
織莉子(ど、どうしよう!)
タツヤ「おねえちゃ、だれ?…ここ、どこ?」
タツヤ「…うぅぅぅ…ぅあ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
織莉子(な、泣きだしちゃった!?)
タツヤ「あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
織莉子「えーと…あの、私は織莉子という名前で…ここは公園で…」
タツヤ「う゛う゛う゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁ!!」
織莉子「な、泣かないでタツヤ君!」
タツヤ「う゛う゛う゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁ!!」
織莉子「そうだ私には未来予知がある!私の未来予知!な、何かタツヤ君を泣きやませる方法を教えてー!!」
タツヤ「う゛う゛う゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁ!!」
織莉子「どうしよう…何もイメージが頭に浮かばない…」
タツヤ「あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
織莉子「あ、あきらめないで私!こんな事じゃ世界の救済はできないわよ!」
織莉子「そうだ!こういう時は…」
織莉子「べろべろべろばー!」
タツヤ「…」
織莉子(良し!効果はバツグンだ!)
タツヤ「う゛う゛う゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁ!!」
織莉子「…あれー?」
織莉子「第二射よ!あっぷっくぷー!!」
ほむら「…トイレから戻ってみたら何やってるのあなた?」
織莉子「ハッ!ほむらさん!お願い!助けて!」
ほむら「言われなくったって、そのつもりよ」
タツヤ「あ゛あ゛あ゛ぁぁ…あっ!ほむら!」
ほむら「よーし、よーし泣かないでタツヤ…」
私はそっとタツヤの頭を撫でた。
タツヤが泣いている時、知久さんがよくやっていた事をまねたのだ。
詢子さんの場合、『男なら泣くな』と言って厳しくするのだが、あまり効果が無い時が多いので参考にはしなかった。
タツヤ「…うん…なくのやめる…」
ほむら「タツヤ、良い子!良い子!後でミルクとお菓子あげるからね」
タツヤ「ミルク!おかしー!」
織莉子「凄い…すぐに泣きやんだ」
タツヤ「ほむら…ここどこ?ママは?パパは?」
ほむら「えーと…」
ほむら「ママとパパはちょっと用事があるのよ!だから、少しの間、私と一緒にいようね」
タツヤ「…うん!ほむらといっしょにいる!」
タツヤ「ほむら、このひとだれ?」
ほむら「このひとはね、織莉子っていうの。私の友達よ」
織莉子「友達…」
タツヤ「おりこ!おりこ!ほむらのともだち!」
織莉子「よろしくねタツヤ君」
タツヤ「うん!よろしく!あっぷくぷーのおねえちゃん!」
織莉子「え」
ほむら「よっぽどインパクトがあったようね。あっぷっくぷーって言った時は凄かったものね、だってあなたが口をタコみたいにして鼻の穴に指突っ込むなんて!」
織莉子「ほ、ほむらさん、その事はみんなに黙ってて貰えるかしら///」
ほむら「さあ、どうしようかなー?」
杏子「買って来たぞー」
ほむら「おかえり」
織莉子「おかえりなさい」
沙々「ゲッ!ガキンチョ起きてる!」
マミ「あらほんと」
タツヤ「だれ?」
ほむら「私の友達よ」
杏子「佐倉杏子だ。よろしくなタツヤ」
マミ「巴マミよ、タツヤ君」
沙々「…ふん」
織莉子「沙々さん」
沙々「わかりましたよ。優木沙々です」
タツヤ「よろしくー!きょーこ!マミィー!ささぁー!」
杏子「ほらタツヤ。ミルクとチョコレートだ」
タツヤ「ミルク!チョコー!」
ほむら「良かったわねタツヤ。後、ありがとう言わないと駄目よ」
タツヤ「うん。ありがとう、きょーこ!」
杏子「どういたしまして」
マミ「暁美さん、まるで本当のお姉さんみたいね」
ほむら「…///」
杏子「照れるなって」
マミ「暁美さん、頼まれていたカロリーメイトよ」
ほむら「ありがとう」
杏子「それと、タツヤのためにジュースとかお菓子とか買い置きしといたぞ」
ほむら「確かに長旅になる事を考えたら、買い置きは正解かもね」
織莉子「それに別荘はコンビニなんてほとんど無い田舎にある事を考えてもね」
ほむら「それにしても多すぎじゃない?」
沙々「こいつ、自分でも食べたいからって大量に買ったんですよ」
杏子「なっ!お前も、食べたいって言ってお菓子色々買ってただろ!」
沙々「それでもあなたほど多くはありませんよーだ!この食い意地張り女!」
杏子「何をー!」
タツヤ「けんかはだめー!」
杏子「えっ」
沙々「はっ」
タツヤ「けんかはだめ!なかよくってママとパパがいってたー!」
マミ「タツヤ君の言うとおりよ、仲良くしなくちゃ」
織莉子「うふふ、タツヤ君の方が二人よりも大人ね」
杏子「くっ…///」
沙々「うぅ…///」
ほむら「まあ、良いじゃない。これだけ大量にあればみんなで食べられるわ」
マミ「はい美国さん、午後の紅茶よ」
織莉子「ありがとう、あらマミさんも一緒!」
マミ「実は私も好きなのよ」
織莉子「もしかしたらマミさんと趣味が合うかもしれないわね」
マミ「お茶会やってるんだけど、今度美国さんも来てみない?」
織莉子「それじゃあ今度行ってみようかな…」
QB「ただいまー」
ほむら「おかえり、何か食べれるものあった?」
QB「雑草とか蛾とか」
杏子「ゲッ!そんなもの食うのかよ!」
沙々「まじひきますわー」
QB「君達、人間はそう言うけど、草や虫を食べる動物って割とポピュラーなんだよ。まあ、僕達インキュベーターはエネルギーを摂取できるなら何でもいいんだけれどね」
マミ「もうキュゥべえったら!言ってくれたらコンビニで買ってくるのに」
タツヤ「?だれとはなしてるの?」
ほむら「あっ、タツヤにはキュゥべえが見えないんだったわね」
マミ「えーと、妖精さんと話してるのよ」
杏子「こいつが妖精ねぇ…」
沙々「くふふ、色んな意味で笑えてきますよ…」
ほむら「さて、みんな集まった事だし、そろそろ出発しましょうか」
休憩を終え、私達は公園を後に再び織莉子の別荘へと歩行を開始した。
それまではまだ電灯やコンビニ、車などの光を見る事が多かったが、公園を出てから数十分経つと、山道に入り、そういった光は次第に姿を消していった。
あるのは、わずかにある電灯と星の光だけ…。
さっきまで歩いていた都市の中とは違った、まるで別世界を歩いてるかのようだ。
マミ「暁美さん、タツヤ君をずっと背負ってて辛くない?変わりましょうか?」
ほむら「大丈夫よ。それに、私が背負ってると寝てくれるけど、他の人だとぐずって寝てくれないみたいだし…」
タツヤ「すぅー…すぅー…」
織莉子「ほんと、真っ暗ね…」
杏子「どこまで続くんだよ…」
沙々「なんか帰りたくなってきました…」
QB「…!」
QB「みんな準備して」
マミ「魔獣?」
QB「そうだよ。小型が3体、中型が4体だ」
タツヤ「ほむら…なんかこわい…」
ほむら「タツヤ起きたの?」
タツヤ「あっちのほうから、こわいのがくる…」
ほむら(タツヤが魔獣が近くにいる事を感じている。それは本能的なものかしら…それともキュゥべえがこの前言ってたようにイレギュラーな存在とそのイレギュラーを消す存在は引きつけ合うから?)
ほむら「大丈夫よタツヤ、あなたは私が守るわ」
タツヤ「…うん!」
満面の笑みで私に頷いてくれた…。
こうまで私を信じてくれている事が、私はとても嬉しく、誇らしくさえ感じた。
ほむら(手に魔力を集中し、弓を…)
マミ「暁美さんは戦うのはできるだけ控えて」
ほむら「え?」
織莉子「あなたはタツヤ君を守る事に集中しなさい」
ほむら「でも…」
杏子「今回の任務を忘れたのかよ。タツヤを助ける事だろ?なら、それをする事に集中しないといけない奴がいる」
マミ「それに、この程度の数の魔獣を私達だけで倒せないと思って?」
織莉子「マミさんの言うとおり、あなた無しでも私達が負ける未来は予知できないわ」
沙々「まあ、私はあなたが戦おうが、戦わなかろうがどっちでも良いんですけどね」
ほむら「みんな、ありがとう…」
QB「ほむら、背後だけは気をつけて。また、前のように魔獣が増えるかもしれない」
数十分後、魔獣は全てグリーフシードへと姿を変えた。
流石、凄腕の魔法少女が揃ってるだけあって、ちょっとぐらいの数の魔獣では敵う相手ではない。
魔獣が前回の時のように、急に増える事もあったが、織莉子の未来予知のおかげで難なく対処できた。
敵である時は厄介な能力だと思っていたけど、味方だとこれほど頼りになる魔法少女はいないわ。
織莉子が少々サボり気味だった沙々を叱った後、私達は再び歩を進めた…。
見滝原の鹿目家から歩き始めて6時間が経った。
織莉子「見えたわ、あれが私の別荘よ!」
織莉子が指さす方向に洋風の屋敷が見える。
杏子「やったあああ!!」
もうすでに日が昇っていた。
沙々「はぁ…はぁ…シャワーあびたい、ママのごはんが食べたい、暖かいお布団で寝たい…」
6時間の歩行だけでなく、その道中何度も魔獣と遭遇し戦闘を行ったのだ、みんなかなり疲れている。
QB「流石に僕も、身体に疲労がたまってるね…何かエネルギーになる物を摂取して休息が欲しくなるよ」
それにしても深夜である事、途中田舎の山道を歩いた事、魔獣と戦闘を行ったと時間がかかる要素がたくさんあるとはいえ、こんなにも時間がかかるとは思わなかった。
マミ「まだ、やらなくちゃいけない事があるのに、なんかやり遂げたって気がしてくるわね…」
マミの言うとおり、こっからが本番だ。
タツヤ「…ふわぁぁ…」
ちょうど良く背中のタツヤが目を覚ました。
ほむら「おはよう。ついに到着よ」
今回はここまで。次回に続きます。
映画までに終われる気が絶対にしない。明日までとか無理。でも、諦めずに頑張りたい。
ほむらとタツヤは恋愛感情に発展させるつもりはありません。あくまで姉弟のような関係です。
>>124すいません以後気をつけます。
杏子「うん?玄関の方に誰かいるぞ」
織莉子「あれは!」
屋敷の玄関の方にいた人影がこちらに気づくと全速力で駆け寄ってきた。
キリカ「織莉子ぉおおおおおおおおおおおおおお!」
織莉子「キリカ!」
ほむら「呉キリカ!」
キリカ「おーいおいおい!!織莉子があまりにも遅いから、私は腐って果ててしまうとこだったよおおお!」
織莉子「泣かないでキリカ。ちょっとの間って言ったじゃないの。こんなに目にクマを作って…寝てないでしょ?」
キリカ「君が遠くにいるのに安心してスヤスヤとベッドで眠れるわけないじゃないかあ!!でも、良かった!今会えたおかげで私は死なずに済んだよ」
ほむら「何故、呉キリカが?」
織莉子「テレパシーで連絡し、先に別荘に行ってもらったのよ。キリカは、直ぐに合流したいって言ったけど、そうするとその分、時間がロスするでしょ」
キリカ「こんな事なら、一緒に占いに着いて行けば良かったんだ!!織莉子のために料理を作ろうとするからこんな事になったんだ!私の馬鹿!馬鹿!」
織莉子「そんなキリカ、私のために料理してくれたんだから馬鹿とか言わないで」
ほむら「相変わらずね、呉キリカ…」
キリカ「しかも憎っくき敵暁美ほむらが一緒だなんて、私は心配で心配で…」
呉キリカも美国織莉子と同じく魔獣との戦いの時に遭遇し、私と何回か先に魔獣を倒すかで凌ぎを削った事があったのだ。
織莉子「今はほむらさんと仲間なんだから、敵とか言わないであげて」
キリカ「織莉子がそう言うなら私は気にしないよ!暁美ほむら!君は今日から敵じゃない!」
杏子「なんだ、この頭がかっとビングな奴は…」
沙々「相変わらずまじひきますわー」
マミ「呉さんじゃない!」
キリカ「あれ!恩人じゃないか!」
マミ「お久しぶりね呉さん!まさか、美国さんと友達だったなんて」
キリカ「恩人、そこは違うよ!私と織莉子との関係は友達なんて単位で表現できるものじゃないよ!それはそうと、恩人も暁美ほむらと関係があったなんてね!」
ほむら「知り合い?」
マミ「前に呉さんが落とした人形を拾ってね」
キリカ「そっから巴マミは私の恩人になったのさ!何てったって、織莉子から貰ったプレゼントを拾ってくれたんだからね!」
マミ「そっから、ちょくちょくメールとかしてるのよね」
キリカ「織莉子の事だったり、料理とか色々相談に乗って貰ったりしてるんだ」
織莉子「へーそうだったの。世間って狭いわね」
ほむら「本当にそう思うわ…」
ほむら(改変前の世界でマミと呉キリカが交戦したという話を聞いた事があるけど、敵対した二人がこの世界だとこんな関係になってるなんて…縁ってほんと不思議ね…)
数時間の仮眠と休憩をしてから、タツヤの記憶を消去する事となった。
今、すぐにでも始めたかったが、沙々が休憩をさせてくれと言ったのだ。
事実、沙々だけでなくみんなも疲弊していたので、休憩せざるを得ない状況だった。
もちろん、魔獣が出現する事を考えて交代して睡眠をとった。
ほむら「さて、タツヤの記憶消去は屋敷の庭にある離れの小屋でするのが良いと思うのだけれど」
杏子「何でだ?」
ほむら「屋敷の中だと万が一、魔獣の攻撃を受けて建物が崩壊した時、屋敷が大きすぎるため中の人間は脱出しづらいし外からの救助も難しい。それと外の状況が把握しづらいわ。よって、離れの小屋が適切だと思うの」
織莉子「適切な判断だと思うわ」
マミ「私も同じく賛成するわ。暁美さんはこういうの得意よね」
杏子「あたしも良いと思うぞ」
キリカ「私は織莉子が賛成するならそれに従うだけだ」
沙々「まあ、いいんじゃないですか」
ほむら(これで決まりね…)
タツヤ「おおきな家がいい」
ほむら「え?」
タツヤ「おおきないえがいい!」
ほむら「駄目よタツヤ。わがまま言っちゃ」
タツヤ「やだ!おおきないえがいい!」
ほむら「駄目よ!あなたのためなのよ」
タツヤ「やだー!!」
ほむら(どうしよう、こんなとこでいきなり計画がつまづいちゃうの?)
ほむら(そうだ!知久さんが良くやってた必殺の手があった!)
ほむら「ケーキ買ってあげるから、ね!」
タツヤ「だめー!」
ほむら「じゃあ2個!」
タツヤ「やー」
ほむら「3個!」
タツヤ「…うん!いいよ!」
ほむら「ほっ…」
「ぷっ」
キリカ「くっwwwwあのいつもクール顔の暁美ほむらがww」
沙々「くふふふふwwwこれは受けますよww」
ほむら「…///」
織莉子「ふ、二人ともちょっと悪いわよ…」
ほむら(あなたも笑いこらえた顔してるでしょ…)
杏子「ケーキ買ってあげるから~…だってさ!あのほむらがwww」
マミ「ふふっ暁美さんでも、子供の前じゃあそう言う事言うのね」
タツヤ「なんでみんな、わらってるの?」
ほむら「さ、さあ、何ででしょうね…」
ほむら「コホン!さて、気を取り直して段取りの続きをやりましょう」
ほむら「沙々の記憶操作は長時間かかるため、魔獣との戦いは必至だわ。そこで、みんなの配置を決めようと思うのだけれど…」
杏子「ケーキ買ってくれるならいいよ」
沙々・キリカ「ぷっww」
ほむら「杏子、あなたが戦ってる時に後ろから矢が刺さるかもしれないわよ」
杏子「じょ、冗談だって!」
ほむら「まず小屋の中にはタツヤと沙々」
タツヤ「はいー」
沙々「はいはい」
ほむら「小屋の外の入口側の前衛に杏子、後衛には私がつくわ」
杏子「オーケー」
ほむら「小屋の外の裏側には前衛に呉キリカ、後衛にはマミでいいかしら?」
マミ「なるほど、小屋の表と裏の両側に接近戦が得意な人と遠距離戦が得意な人をそれぞれ配置するわけね」
キリカ「織莉子はどこなんだい?織莉子が近くにいないと私はやる気がでないよ」
ほむら「織莉子は小屋の近くにいて、未来予知で魔獣がどこから現れるか、戦況がどう変わるか、などの情報をみんなに伝える役をやってもらえる?」
織莉子「わかったわ」
ほむら「後、未来予知のための余裕を残しながら攻撃もお願い」
ほむら「それと、マミと杏子には小屋の周りに結界を張る役目もお願いしていい?」
杏子「任せときな」
マミ「絶対壊れないような結界を作るわよ」
ほむら「…この配置に問題があったり、修正すべきところは無いかしら?」
杏子「特にないな。」
マミ「異論はないわ」
沙々「まぁ、いいんじゃないですかー」
キリカ「問題あり!私が織莉子の近くじゃない!」
織莉子「ごめんなさいキリカ。少しの間だけ我慢して」
キリカ「君がそう言うなら私はどんな事でも我慢できるよ!」
ほむら「あなたはどう思うキュゥべえ?」
QB「何故、僕に聞く必要があるんだい?」
ほむら「あなたが私達の中で一番、合理的な判断ができる存在であると思っているからよ」
QB「今の戦力を考えるとこれが妥当だろうね」
ほむら「決まりね」
ほむら「休息も食事もとった。みんなにソウルジェムの濁りを取り除くためのグリーフシードを持たせた。タツヤのトイレをすませた…準備万全よね?何か取りこぼしはないか…」
杏子「大丈夫だよ。心配すんなって」
ほむら「だって、みんなの命がかかっているのよ?心配にもなるわ」
杏子「こんな事で慌てるなんてお前らしくないな」
杏子「タツヤを連れて、何度か魔獣と戦ってきたけど、全部勝ってきただろ?」
ほむら「そうなんだけれど…もしもの事があるかもしれないわ」
杏子「大丈夫だって、マミはもちろんあの織莉子もかなり強い魔法少女だ。キリカって奴はどれぐらい強いかわからないけど、あの織莉子が信用してるんだからだいぶ強いんだろうな」
杏子「もちろんあたしもちょっとやそっとじゃ、やられないぐらい強い魔法少女だって事はほむらも知ってるだろ?あたしは絶対に魔獣にやられたりしないし、魔獣をタツヤのとこまで近づかせるかよ」
ほむら「…あなたはいつも不屈の闘志を持って私を勇気づけてくれるわね」
杏子「な、なんだよ急に///」
ほむら「ありがとう杏子。おかげで憂いはなくなったわ。みんなでタツヤを守りましょう」
杏子「おう!それじゃあ、あたしは配置場所に行って来るよ」
ほむら「さて、そろそろ沙々に言ってタツヤの記憶を消去する魔法を発動させないと…」
マミ「暁美さん」
ほむら「どうしたのマミ?」
マミ「いえね、最近暁美さんずっと張りつめていたから、大丈夫かなと思って」
ほむら「大丈夫よ、杏子のおかげでだいぶ楽になったわ」
マミ「なんだ、それなら良かった…」
ほむら「マミ、私の事を心配してくれてありがとう。その気持ちだけで嬉しいわ」
マミ「そんな、ただちょっと暁美さんの事が気になってただけだから…」
ほむら「そうやって、私達後輩の事を気遣ってくれるあなたは、やっぱりいつまでも私の憧れの先輩だわ…」
マミ「と、突然どうしたのよ暁美さん///」
ほむら「何故かわからないけど、急に今まで思っていた事を言いたくなる時があるのよ」
ほむら「全部、終わったらみんなでお茶会をしましょう」
マミ「ええ。たくさん新しい友達もできたしね。それじゃあ、私は裏の方に行ってくるわ」
織莉子「二人とも良い友達ね…」
ほむら「織莉子…」
織莉子「前の世界では、存在を消したって言ってた鹿目まどかって子と4人でいつも一緒にいたのかしら」
ほむら「もう一人いたのよ…」
織莉子「え?」
ほむら「数か月前に円環の理に導かれて消えてしまったの…」
織莉子「そう…」
ほむら「美樹さやかっていう子で、とても明るくて元気な子だったわ。昔、その子の明るさが嫉妬するぐらい羨ましいと思う事もあったっけ」
ほむら「正義感が強く優しい子だったけど、たまに猪突猛進になって周りが見えなくなる事もあったわ…そのせいで私と対立した事や喧嘩した事もあった」
織莉子「…」
ほむら「でも、もし今さやかが生きていたら喜んで私を助けようとしてくれたと思う」
織莉子「本当に良い友達に恵まれたのね…」
ほむら「ええ、本当にそう思うわ…」
ほむら「あなたの未来予知ではこの作戦は成功しているのかしら?」
織莉子「聞きたい?」
ほむら「…正直怖いわ」
織莉子「…正直に言うとわからないのよ」
ほむら「え!?」
織莉子「あなたがタツヤ君を守ってる姿だけが見えるの」
織莉子「前に見た時はあなたはタツヤ君を守る事ができなかった…でも、今は違う。先が見えないのよ」
ほむら「何故なのかしら?」
織莉子「世界の法則に手を出すのよ?世界の法則から外れたタツヤ君を世界の法則に戻そうとする試みは、私達人間の及ばない世界という事じゃないかしら」
ほむら「私達は魔法少女なのよ?」
織莉子「それでも私達は神様じゃない。ここからは神のみぞ知る世界という事わけね」
ほむら「神様ね…神様がいようといなかろうと私は人事を尽くすだけよ」
私は、沙々にタツヤの記憶操作を開始するよう指示するため、小屋の中に入った。
タツヤ「びえ゛え゛え゛ええんん」
ほむら「どうしたの!タツヤ!」
沙々「急にこいつ泣きだしやがったんですよ」
ほむら「おトイレ?それともお菓子?何か痛いところや苦しいところでもあるの?」
タツヤ「ち゛がう゛…」
ほむら「それじゃあ、何?」
タツヤ「まろかとバイバイしたくない!!」
ほむら「!!」
沙々「くふふっ、ガキの癖に本能的なものなんでしょうか何されるか感づいているんですねぇ」
タツヤ「まろかとバイバイなんてやだああ!!」
ほむら「ごめん…タツヤ…」
気がついたらタツヤを抱きしめていた。
タツヤ「う゛わ゛ああああ!!」
ほむら「そうだよね…お姉ちゃんとさよならなんてしたくないよね…」
ほむら「本当にごめんなさい…私がちゃんとまどかを守り切る事ができていれば、こんな事にならなかったのに…」
タツヤ「…ほむら…なかないで…タツヤなくのやめるから…」
私もどうやら泣いてしまっていたらしい…。
ほむら「うん…私も泣くの止めるわ…」
タツヤに慰められるなんて恥ずかしいかぎりだ…。
沙々「ケッ!見てらんねェですよ」
ほむら「ごめんなさい、恥ずかしいとこ見せちゃって」
沙々「まったくです!」
ほむら「それじゃあ、始めてもらえるかしら?」
沙々「かしこまりです」
そう言うと沙々はタツヤの傍に寄った。
タツヤ「ひっく、ひっく!」
沙々「記憶の一部を失うのは辛いかもしれないけど我慢して下さいよ。これをやらないとママに会えなくなるんですから…」
タツヤ「ママに…やだ!」
沙々「じゃあ、我慢するんですよ」
タツヤ「うん!」
沙々「はぁっ!」
沙々が両手をタツヤに向けた。
沙々の魔力がタツヤに流れていくのが私にもわかった。
タツヤ「すぅ…すぅ…」
沙々「まずはガキを寝かせました」
ほむら「沙々…あなたがあんな事を言うなんて思わなかったわ」
沙々「…私にはママしか大切な人はいません。だから、ガキが母親と離れ離れになるかもしれないなんて、ちょっと可哀そうだと思っただけですよ」
ほむら「…そういえばまだだったわね沙々。ありがとう、今回の事で協力してくれて」
沙々「ふん、ちゃんと報酬のグリーフシードたっぷりくださいよ」
ほむら「わかってるわ」
沙々「それじゃあ、タツヤの脳から『鹿目まどか』の記憶を消去する作業を始めます」
ドッゴオオオオオオンンンン!!!
ほむら「えっ!?」
沙々「なっ、何の音ですか!?」
ほむら「あなたはタツヤの事に集中して!」
大急ぎで駆け出し扉を開けた。
扉の外で、私の目に映ったものは…
魔獣、魔獣、魔獣、魔獣、魔獣、魔獣、魔獣、魔獣、魔獣、魔獣、魔獣、魔獣、魔獣、魔獣、魔獣、魔獣、魔獣、魔獣、魔獣…
ほむら「なんて数なの!?」
ここら一帯を覆い尽くす、数えきれないぐらいの魔獣だった。
QB「大変だよほむら!百体以上の魔獣が姿を現した!!」
ほむら「百体以上ですって!?そんな数の魔獣、今まで現れた事はなかったわよ!」
ほむら「そ、それより今の爆発音は!?」
QB「魔獣の放った光線だ」
ほむら「被害状況は?みんな大丈夫なの!?」
QB「大丈夫だ、杏子の結界で受け止める事ができた」
ほむら「ほっ…良かった」
ほむら(いや、安心してる場合じゃない。それにしても何て数の魔獣なの!?)
今頃にして私は、世界の法則に手を出すという事がどういう事なのかを思い知ったのだった…。
ほむら「一旦、タツヤの記憶消去を中止にして、退却すべきか…」
QB「いいや、無駄だと思うよ。魔獣が多数出現したのはおそらく、タツヤを世界の法則の中に戻すという行為を行ったため。世界の法則に手を出すって事は魔獣たちにとって世界に反する行為のようだ」
ほむら「キュゥべえ、この事は予測できなかったの?」
QB「悪いけど魔獣に関しては僕達も分かって無い事が多いんだ」
ほむら「愚痴っても仕方が無いわね。今はこの現状をどうにかしないと…」
杏子「ほむら!早くこっちへ来い!小屋の周りにマミと一緒に結界を張らないといけないんだ!お前がいたら、張れないだろ!」
ほむら「わかったわ。あなたが結界を張ってる間は私が魔獣と戦う」
ここまでのことになるとは想定外だったが、悔んでる暇は無い。
今は、一体でも多くの魔獣の数を減らす事に集中すべきだ。
両手に魔力を集中、弓と矢を形成、弓を引き絞る…。
ほむら「ワルプルギスの夜と対峙した時のような脅威を感じるわ、でも…」
ほむら「鹿目タツヤは私が必ず守ってみせる!」
叫びとともに光の矢が魔獣の群れへ放たれた。
今回はここまで。
前回からだいぶ時間が開いてすいません。
映画のネタバレが怖くてネット断ちをしてました。
その間、書き貯めていたので、次でラストになると思います。
それにしても、映画を見た後、自分の書いたものを読みなおしてみると
ほむらとQBの違和感が酷い…
完全に別人状態。
やっぱ映画が始まるまでに全部書きあげるべきだった…
魔獣「グォオオオオオオオオ!!!!」
頭部に矢が刺さった魔獣が崩れ落ちる。
ほむら「次!」
次々と矢が私の手から放たれ、攻撃を受けた魔獣はグリーフシードへと姿を変えていった。
魔獣「ヴァアアアアアアアアア!!」
魔獣の反撃。
四方、八方から光線が発射された。
魔力で、常人以上に強化された脚が大地を蹴り、私を空中へと運ぶ。
魔獣「グァアアアアアアアアアア!!!!」
魔獣の攻撃は止まない。
間髪入れず、空中へ逃げた私に光線が放たれた。
背中に魔力を集中、羽を形成。
羽を動かし、なんなく空中を高速移動し光線を避けた。
ほむら「この羽は魔力の消費量が多いから、あまり使いたくないんだけどね…」
※ほむらの羽については、アニメ12話のビルから降りてくるシーン参照。ラストの黒い翼ではない。
今度はこっちが反撃とばかりに、上空から魔獣へ向けて大量の矢を放った。
魔獣「ガァアアアアアアアアアアアア!!!」
次々と魔獣が倒れていく。
ほむら(よしいけるわ!魔獣の数はとにかく多いけど、一体一体は今までのと変わらな…)
魔獣「グォオオアアアアア!!!」
ほむら「えっ!?」
いつの間にか、魔獣が私の目の前にいた。
ほむら「くっ!」
矢を放つ。矢は魔獣の顔に当たった。
その隙に離脱を図るが、魔獣は私の攻撃など意に介さないかのように私に近づき、羽を掴んだ。
ブチッ!!
ほむら「キャッ!」
羽の片翼が毟り取られた!?
ズドン!
バランスを失った私は地面に墜落した。
ほむら「うぅ…」
魔獣「シャアアアアアアアア!!!」
地面に這いつくばってる私に向けて、数体の魔獣から光線が放たれる。
ドッゴオオオオオオンン!!!
ほむら「え!?私、無事!?」
もうやられると思ったのに何故か無傷だった。
ほむら(何が起こったの?)
煙が晴れていく。
ほむら「こ、この光の玉は!」
複数の光の玉が私の周りを囲んでいたのだ。
織莉子「私の水晶玉は防御にも使えるのよ」
ほむら「織莉子!!」
織莉子「私だけじゃないわよ」
杏子「待たせたなほむら!小屋にはとびっきりの結界を張ったぞ!」
ほむら「杏子!」
杏子「うおりゃあああああああ!!!」
槍を手に杏子は魔獣の群れへ突っ込んだ!
杏子「ほらほら!槍の錆にしてやるよ!」
杏子の槍が次々と魔獣を薙ぎ倒していく。縦横無尽に動き回り、魔獣の群れを吹っ飛ばす様はまるで暴風のようだ。
ほむら「気をつけて杏子!通常の魔獣より速く、強力な力を持った魔獣がいるわ!」
魔獣「グォウオオオオオオオ!!」
さっきの魔獣が杏子の方へ飛び付いた。
杏子「うわぁ!速い!!」
魔獣「ヴァアアアアアア!!!」
魔獣の腕が杏子の身体に向けて高スピードで動く。
ガキン!
杏子「うぉ!危ねっ!」
とっさに槍で魔獣の攻撃を防いだ。
ほむら「流石、杏子ね…私とは接近戦の強さが違うわ」
そうは言ったものの、杏子も魔獣の攻撃を受けるだけで防戦一方だ。
次々と魔獣は自身の腕で杏子に攻撃を繰り出す。
魔獣「ヴァアアアアアア!!」
杏子「うわ!!」
杏子の槍が弾かれ、空へ飛んだ。
魔獣「グォオオオ!!」
杏子(や、やられる!)
魔獣「グォオオオ!!」
杏子「え!?魔獣の背中にたくさんの矢が!?」
ほむら「今よ、杏子!!」
杏子「うぉおし!とりゃああああああああ!!」
ズシュゥゥゥウウウウン!!
魔獣「バアァアアアアアアアア!!!」
杏子の渾身の一撃が魔獣を真一文字に叩き斬った。
杏子「はぁはぁ…危なかったよほむら…」
ほむら「お互いさまよ。所々、強い魔獣もいるみたいよ。そういう魔獣は単独ではなく協力して倒しましょう」
杏子「頼りになる味方がいて良かったよ」
ほむら「織莉子、裏側の方は大丈夫なの?」
織莉子「えーと…」
キリカ「鈍い!鈍い!鈍いよぉおお!そんなんじゃ、蚊だって捕まえられないね!!」
魔獣「ヴァアアアアアアアア!!!」
マミ「ティロ・フィナーレ!!」
ドッグオオオオオンン!!
キリカ「まさか恩人と私がこれほど相性良いとはね。まあ、織莉子には負けるけど」
マミ「呉さんの速度低下で魔獣の動きを鈍くし、それを私のティロフィナーレで撃つ!まさに、必殺のコンボね!」
織莉子「全然、大丈夫みたいよ」
魔獣「ガアアアアアア!!!」
織莉子の放った光の刃が魔獣を切り裂いていく。
杏子「大量破壊兵器を持ってるあっちがうらやましいよ」
魔獣「ギイイイイイイイ!!」
杏子の槍が魔獣を切り裂く。
ほむら「悪かったわね、ちまちました攻撃しかできなくて」
魔獣「グウウウウウウウウ!!」
私の撃った矢が魔獣の体を貫いた。
魔獣と戦い始めて1時間が経過した…。
杏子「これで、終わりだよ!!」
魔獣「ゲエエエエエエエエ!!」
杏子の槍が魔獣を貫いた。
ほむら「はぁ…はぁ…今ので最後…」
織莉子「やったわ…100体倒した…」
キリカ「こっちもヘトヘトだよ…もう果ててしまいそうだ…」
マミ「魔力がほとんど残ってないわ…でも、終わったのよね?」
QB「これで魔獣が鹿目タツヤを襲撃する事はなくなったと思わない方がいい。鹿目タツヤから鹿目まどかの記憶が消えるまで魔獣の襲撃は続くだろう」
ほむら「すぐに…グリーフシードで…ソウルジェムの濁りを浄化しましょ…」
マミ「魔獣がたくさんいたから、グリーフシードに困る事はないけど…」
ほむら「問題は体力ね…」
キリカ「はぁ…はぁ…私は織莉子が一緒にいれば、全然元気へっちゃらさ…」
織莉子「無理は禁物よキリカ…」
杏子「とりあえず食って体力回復させるしかねぇ!」
そう言って杏子はパンをガツガツ食べ始めた。
体力を回復するには休息以外だとそれしかないと思い、私達も食料を摂取した。
昨日、コンビニで大量に買ってて正解だったわ…。
QB「また大量の魔獣が姿を現した!」
それまで食べていたカロリーメイトを無理やり全部口に入れ、私はすぐに戦う体勢に入った。
夕日が見える、大地が血のように真っ赤に染まっていた。
もう5時だ。
ちょうど、昼の12時ぐらいに沙々がタツヤの記憶操作を始めたから、戦い始めて5時間も経ったのか…。
私達は何体の魔獣を倒したんだろう…。
500は超えてるかなぁ…。
グリーフシードは魔獣の数ほど出てくるのだから、十分すぎるぐらい足りている。
だけど、このままじゃ体力が持たない…。
杏子「はぁ…はぁ…」
キリカ「はぁ…はぁ…そんな程度で…倒れてるなんてたいしたことないな…佐倉杏子…」
杏子「うるせぇ…ちょっと休憩してるだけだ…」
ほむら「はぁ…はぁ…魔獣は次にいつ出てくる?」
織莉子「はぁ…はぁ…ラッキーなことに…私の未来予知だと一時間は出ないみたいよ」
ほむら「そう…魔獣も休みたいのかしら…」
マミ「グリーフシードで魔力を回復しないと…」
マミ「あれ?思ったより濁りが減らない!?」
ほむら「本当だわ」
織莉子「どうしたのかしら?」
QB「極度の疲労によるストレスが原因だ。ソウルジェムは魔法少女の精神に影響されるから、精神状態が良くないと濁りやすいし、浄化できる量も減ってしまうんだ」
マミ「どうしましょう?このまま戦い続けたら…」
杏子「大丈夫だ。グリーフシードは腐るほどあるんだ」
マミ「でも、このまま戦い続けたら、グリーフシードの浄化が追いつけない状態に陥るんじゃ…」
QB「そこまでの状態に陥らないとは思うよ。でも、気をつけて。定期的に濁りを浄化しないと、いざって時にグリーフシードが無くてアウトって事もあるから」
ほむら「キュゥべえの言うとおりね。ソウルジェムの確認と浄化を定期的にやりましょ。それと魔獣を倒す事より、自身の命やソウルジェムを優先する事」
日は完全に落ち、代わりに月と星が見えている。
もう8時だ。
ちょくちょく休憩があるとはいえ、戦い続けて疲労困憊だ…。
でも、もう少し。沙々は記憶操作に半日がかかると言っていたから、あと4時間ぐらいで…全てが終わる。
…あと4時間
…長いわ。
…11時。
杏子「しつこいんだよ!」
杏子の槍が魔獣を突き刺すが…
魔獣「ヴォオオオオオオ!!」
杏子「なっ!貫かない!?」
ほむら「杏子!」
ビシュン!
私の放った矢が魔獣の頭部を破壊した。
ほむら「大丈夫?」
杏子「はぁ…はぁ…大丈夫だ…」
ほむら(明らかに憔悴している…疲労で力が出ないんだ…)
私も同じだ、本来のコンディションなら10秒に矢を15発撃つ事ができるのに、疲労でたった5発しか撃つ事ができない。
織莉子「ほむらさん!杏子さん!右手の方から魔獣の攻撃が来るわ!」
ほむら・杏子「はっ!?」
私と杏子は右側から来た光線を寸でのところで回避した。
すぐさま、反撃。
魔獣「ブアアアアアアア!!!」
私の矢と織莉子の光の刃を受け、魔獣は崩れ落ちた。
織莉子「良かった…」
バタッ!
ほむら「織莉子!!」
突然倒れた織莉子の元へ私はすぐさま、駆け寄った。
ほむら「ソウルジェムの濁りが酷い…」
すぐにグリーフシードを取りだし、織莉子のソウルジェムを浄化する。
ほむら(織莉子は魔獣の動きを察知するために未来予知を連続使用している…それに私達表側だけでなく裏側のマミ・キリカ組までサポートしてるから負担がきつすぎるわ…)
不幸は重なるものなのか、織莉子が倒れた事により、私達の防衛体制に綻びが出始めた。
織莉子のサポートを無くした皺寄せはまず裏側のチームにきた。
キリカ「はぁ…はぁ…どうしたんだろ、魔獣の動きが速くなってきたような…」
マミ「違うわ、呉さん。あなたの速度低下が弱まってきているのよ」
キリカ「恩人、私の力を舐めないでよ…ちょっとの事じゃ私の力は弱まったりしない…」
マミ「いいえ、疲労により集中力が低下し魔力の精度が悪くなっているわ」
キリカ「くそ…たかが疲れぐらいで…」
魔獣「ヴァアアアアアアアア!!!」
速度低下という重りから解き放たれた魔獣の群れがマミとキリカに襲いかかった。
マミ「来たわ!」
ドゥーン!!ドゥーン!
マミの放った光の弾丸が数体の魔獣を撃破した。
キリカ「ヴァンパイヤファング!!」
キリカのかぎ爪が魔獣の身体を切り裂く。
魔獣「グォオオオオオオオ!!」
疲労困憊の二人では倒せる数は微々たるもので、魔獣の進撃を止める事はできなかった。
じりじりと結界の張った小屋へ魔獣の軍団は包囲を狭めていく。
魔獣「ヴァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
魔獣の群れは四方八方から次々と光線を発射した。
マミ「はっ!」
キリカ「危ない!」
光線の網をキリカはギリギリで回避し、マミは結界を張って防いだ。
だが、それにも限界がある。
マミ「キャアアアアアアアアア!!!!」
キリカ「うわぁあああああああ!!!!」
次々と色んな方向から放たれる魔獣の攻撃を回避し、防御するのはキリカの速度低下と織莉子の未来予知があればこそであり、その両方を無くした二人は魔獣の餌食になるしかなった。
マミ(聞いて暁美さん!)
ほむら(マミのテレパシー!?)
マミ(裏側の防衛ラインが突破されたわ!)
ほむら「何ですって!?」
ドッグオオオオオオオオオンン!!!
大きな爆発音が私の耳に入った。
小屋の裏側からだ。
ほむら「結界が破られたわ!」
杏子「何ィ!?」
ほむら「沙々聞いて!」
テレパシーで沙々に呼びかける。
ほむら「作戦は中止よ!結界が破られたわ!」
沙々(何ですっと!!)
ほむら「すぐにタツヤを連れて逃げて!!」
沙々(ちくしょー!あとちょっとなのに…)
ほむら「マミとキリカも退却よ!」
ほむら「杏子は織莉子を連れて逃げて!私は小屋の方を見てくる!」
小屋から沙々がタツヤを抱えて、飛び出して来るのが見えた。
二人とも無事な事にホッとした。
その瞬間、二人の後ろにいる魔獣が光線を発射しようとしているのが私の目に映った。
ほむら「危ない!!!」
ドッゴオオオオオンンン!!!
沙々「あっぶねぇええ!!ほんと助かりましたよほむらさん!!」
ほむら「沙々もタツヤも無事ね…」
ほむら(地面に矢を撃ちスピードを上げ、二人を捕まえ、その後、魔法で羽を作ってなんとか回避する事ができた…)
ほむら「でも、方向を考えずにとにかく高スピードで飛んだから、あらぬとこに来てしまったわ」
周りは森と草むらだらけ…山の中にでも落ちてしまったんだろうか…。
ほむら「みんな!聴こえてるなら返事して!!」
テレパシーで呼びかけてみる。
………返事が来ない。
ほむら「みんな!!お願い!私の声に応えて!!」
…10秒経過した。
マミ(…暁美さん…)
ほむら「マミ!!」
マミ(良かった、暁美さんも無事だったのね…)
ほむら「他のみんなは?」
マミ(呉さん、美国さん、佐倉さん、キュゥべえも一緒よ)
ほむら「良かった…」
マミ(何故か、魔獣が別の方向に行ってしまったおかげで助かったのよ)
ほむら「え!?」
ほむら(魔獣の狙いはタツヤ…という事は…)
沙々「み、見てください!周りが…」
私達は魔獣の群れに囲まれていた。
沙々「ど、ど、どうしましょう?」
ほむら「こうなったら、ここでタツヤの記憶操作の続きをするしかないわ。後、ちょっとって言ってたでしょ」
沙々「ええええええ!!!」
ほむら「逃げれるような状況じゃないわ。ならタツヤの脳からまどかの記憶を取り除ければ、魔獣の襲撃は止むかもしれない…」
沙々「そんなの希望的観測論じゃないですかー!もう、それしかないんでしょう!ちくしょー!やればいいんでしょ!やれば!!」
私は、タツヤの寝顔を見た。
タツヤ「すぅー…すぅー…」
ほむら(沙々の魔法で眠っているとはいえ、こんな状況なのに可愛い寝顔ね…)
ほむら(この顔を見ていると、力が湧いてくる気がするわ…)
タツヤの頭を軽く撫でると、私は魔獣の群れへ向かった。
魔獣「ヴァアアアアアアアアアアアアア!!!」
私の矢を受けた魔獣が一体、地に崩れ落ちる。
ほむら(少しでも、時間を稼ぐんだ)
もう一度、攻撃。光の矢が魔獣の身体を貫く。
ほむら(タツヤの脳からまどかの記憶が消える事さえできれば、タツヤは助かるかもしれない)
魔獣「グァアアアアアアア!!」
魔獣が光線を放ったが、私は難なく避けた。
ほむら(タツヤが生きる事ができるなら、私はどうなってもいい…)
ほむら(だからお願い…それまで持って私の体!)
もう一度、矢を放とうと腕を上げたが、矢は出てこなかった。
魔力が切れたんだ…。
魔獣「ズゥアアアアアアアアア!!!」
魔獣が光線を放った。
避けようと思っても、体がいう事を聞かない。
光線が私の身体を焼いていく。
私の身体は地に倒れた。
まどかだけでなく、タツヤも守り切る事ができなかった…。
ごめんね、まどか…あなたの弟を守る事ができなかった…。
ごめんね、タツヤ…あなたを守る事ができなくて…。
みんな、ごめんなさい…。
「あきらめないで、ほむらちゃん」
QB「ほむらと沙々の魔力を察知した。あっちの方角だ!」
杏子「待ってろよ、あいつら!」
織莉子「魔獣がうじゃうじゃいるわね」
マミ「そんなの関係無いわ!絶対に暁美さん達は助けてみせる!」
キリカ「見て!!あっちの山から光の柱が!!」
QB「とてつもない魔力だ!」
織莉子「桃色の光!?」
キリカ「なんだ!?何が起こっているんだい!?」
マミ「…なんだろう」
マミ「とても懐かしい感じが…」
杏子「前に会った事があるような、そんな誰かがあそこにいる気がする…」
桃色の光の柱が上がる場所から、大きな光が放たれた。
織莉子「何!?この光は!!」
キリカ「まぶしい!」
マミ「光が!!魔獣を溶かしていく!?」
杏子「何が起こってんだよ!?」
QB「わけがわからないよ!!」
「暁美さん…」
「ほむら…」
誰かが私を呼んでいる…。
誰だろう…?
「暁美さん!」
「ほむら!」
ああ、思い出したマミと杏子の声だ。
目を開けると、私を見つめる5人の少女の顔が見えた。
ほむら「みんな…」
マミ「良かった、暁美さんが目を覚ました!!」
杏子「心配しやがって、このやろう!」
マミと杏子の目が涙で滲んでいる…。
ほむら「え?私、生きてるの…?」
織莉子「そうよ。死んでもないし、円環の理に導かれてもいないわ。ここは天国でもない、私の別荘の中よ」
ほむら「魔獣は?たくさんいたでしょ?」
キリカ「何言ってんだよ、君が全部倒してしまったんじゃないか」
ほむら「え!?」
ほむら「そうだ!タツヤは?タツヤは無事なの?」
沙々「あそこでぐっすり寝てますよ」
タツヤ「すぴー…すぴー…」
ほむら「良かった…」
QB「それだけじゃないよ。タツヤから鹿目まどかの記憶を消去するのは成功したようだ。もう数時間経ってるけど、魔獣は襲ってこない」
ほむら「本当に…良かった…」
ほむら(それにしても、あの時、何が起こったんだろう?)
ほむら「私は魔獣にやられて倒れてしまったはずなのに、どうして私がたくさんいた魔獣を倒した事になってるの?」
QB「突然、桃色の光の柱が山の中から上がり、そこから周りの魔獣に向けて光が放たれたんだ。魔獣が全滅した後、桃色の光の柱が上ったところに僕らが行ってみると、君が弓を持って立っていた。沙々も君が魔獣を倒したって言ってたよ」
ほむら「全く記憶にないわ…」
QB「不思議な事があるもんだね。まるで、誰かが君を操って、魔獣を倒したみたいじゃないか」
ほむら「…まどか」
ほむら「まどかの声が聴こえた気がするの…」
ほむら「まどかが私に力をくれたんだろうか…」
QB「君の言うこの世界の概念となって少女の事か」
ほむら「あなたはこんな非科学的な事信じないわよね…」
QB「さあ、どうだろう。君達は鹿目タツヤを助けるために世界の法則に手を出したんだ」
QB「あの時は、あと少しで鹿目タツヤから鹿目まどかの記憶が消去されるかどうかの瀬戸際だった。つまり、世界の法則にもっとも近づいたという事。世界の法則となった鹿目まどかにもっとも近づいたというわけでもあるからね」
ほむら「私はまどかが助けてくれたって信じるわ」
ほむら「まどか…ありがとう」
この事件の記憶を沙々に消去してもらった後、タツヤは鹿目家に帰る事となった。
朝8時、鹿目家でインターホンが鳴って扉を開けると詢子さんがタツヤを発見した。
詢子さんと知久さんは大喜びしたのは言うまでもない。
詢子さん達はタツヤに今まで、どこにいたのかと問い質してみたが、タツヤはわからないとしか答えなかった。
鹿目タツヤという少年が両親の元から急に姿を消し急に帰って来た、という事件は怪事件として新聞の小さな欄に掲載される事となった。
数日後…。
マミ「はーい。紅茶とお菓子よ!」
杏子・キリカ・沙々「おおお!!!」
織莉子「この紅茶、凄く美味しいわ」
マミ「喜んでもらえて嬉しいわ」
私達はマミの家でお茶会をしていた。
杏子「キリカ!てめぇ、チョコ取りすぎだろ!!」
キリカ「私は甘い物が織莉子の次に大好きなんだから仕方がないだろ!!」
沙々「二人が喧嘩してる間に食べちゃいまーす!」
マミ「こうしてみんなで楽しくやってると、数日前に魔獣と激闘を繰り広げたのが嘘みたいに思えるわ…」
織莉子「今でも、魔獣と戦う事はあるけれど、あの時と比べたら平和そのものね」
ほむら「本当にそう思うわ…」
マミ「ねぇ暁美さん?」
ほむら「どうしたの?」
マミ「最近、ずっと私達との付き合いばかりじゃない?」
ほむら「友達はあなた達だけなんだから、何もおかしいとこは無いでしょ?」
沙々「ほむらさんは私達以外友達がいないんだ!ほむらさん、学校じゃ孤立してそうですものねぇ」
杏子・キリカ「お前もだろ」
マミ「タツヤ君の事件があって以来よ。こんなに暁美さんと遊ぶ回数が増えたのは」
ほむら「あの事件で、より絆が深まったって事じゃない?それともマミは私と遊ぶ回数を減らしたいわけ?」
マミ「そ、そうじゃないけど」
マミ「つまり私は、最近タツヤ君と遊んでないんじゃないかって言いたいの」
ほむら「ビクッ!」
マミ「キュゥべえから聞いたわよ。前はよく遊んでいたって」
ほむら「…」
織莉子「何かあったのほむらさん?」
ほむら「…何でもないわ」
マミ「何でも無いって嘘よね。暁美さん、何か悩み事でもあるの?たまに憂鬱そうな顔してる時あるし」
ほむら「…」
マミ「えええ!!あれから一度もタツヤ君と会ってないの!?」
ほむら「…うん」
織莉子「どうして?」
ほむら「…」
キリカ「黙ってちゃわからないよ、ほむら」
沙々「私が洗脳して聞きだしましょうか?」
杏子「どうせ、ほむらの事だ。タツヤだけでなく、鹿目家のみんなに罪悪感を感じてるとか、そんなんだろ?」
ほむら「そ、そ、そんな事ないわよ!」
マミ・杏子(これは、そんな事あるな…)
ほむら「だってタツヤの大切な姉まどかの記憶を私が消させたのよ!」
ほむら「ご両親だって、私が連れ出したせいで、悲しく辛い思いをさせてしまったし…」
杏子「何言ってんだよ!!タツヤを魔獣から守るためには仕方が無い事だろ!!お前はタツヤを守ったんだ。胸を張れ!」
ほむら「でも…」
キリカ「本当にめんどくさい考え方してるね、君は。大事なのは自分がどうしたいかだろう?」
沙々「私だったら罪悪感なんて何も感じず、会いたくなったら好きに会いますけどね!」
ほむら「…」
マミ「このまま会えなくなったら、暁美さんだけでなく鹿目家の方々も悲しい思いをすると思うわ」
マミ「暁美さんが鹿目家の方々に迷惑をかけた事を罪というなら、二重に罪を重ねてる事になるのよ」
織莉子「それにね、ほむらさん。罪を感じてるから会わないんじゃ、何も解決にはならないわ」
織莉子「会って鹿目家の方々を喜ばせるのが罪滅ぼしでもいいんじゃない?」
ほむら「…」
次の日
知久「久しぶりだね、ほむらちゃん」
ほむら「おひさしぶりです」
詢子「ちょっと聞いてくれよほむらちゃん!タツヤがいなくなった時の事を!すげえ大変だったんだから!」
ほむら「本当に大変でしたね…」
タツヤ「ほーむーら!絵みてー」
タツヤのスケッチブック…もう、まどかの絵は一枚も無い…。
ほむら「あら!」
スケッチブックを一枚、一枚めくっていると、ある絵が目に留った。
詢子「ほむらちゃんの絵じゃん!偉いぞタツヤ!美人に描けてる!」
知久「タツヤは将来画家になるかもしれないね」
タツヤ「えへへへ///」
ほむら「ふふ。本当に上手だわ…」
私は鹿目家に対してまどかの事についても罪悪感を感じていた。
だけど織莉子の言うとおり、今は、その分鹿目家を喜ばせる事が罪滅ぼしになるんだと思うようになっていた。
まどかも、その方が喜ぶだろう。
でも、本当は罪滅ぼしなんて関係なく、私が鹿目家の人々に会いたいだけなのかもしれない。
だって、今の私はこんなにも幸せな気持ちでいっぱいなんだから…。
詢子「今日は晩飯食べてかない?」
ほむら「えーと…」
QB(大変だ!魔獣が現れた!)
ほむら「すいません、今日は用事があるので…」
マミ(暁美さん!魔獣のことは私達に任せて!)
杏子(今日ぐらいはタツヤ達と一緒に飯を食えよな)
織莉子(私の未来予知だとあなたが戦う必要はないわ)
キリカ(織莉子がそう言ってるんだから、大丈夫だよ)
沙々(私の取り分が減るんでほむらさんは来ないで下さい)
ほむら(ありがとうみんな…)
ほむら「よく考えたら用事は明日でした。それでは、ご馳走になってもいいですか?」
詢子「おお!そうこなくっちゃ!今日は女同士で語りあかそうぜ!」
知久「それじゃあ、腕によりをかけてご馳走を作らないとね」
タツヤ「ほむらとごはーん!!」
終わり
これで、ほむら「鹿目タツヤは私が必ず守ってみせる!」は終わりです。
最後まで読んでくれてありがとうございました。
応援レスもありがとうございます。
自分の文章力の無さや無理やりな展開など色々反省すべきところはたくさんあるけど、
何より映画が始まるまでに終わらす事ができなかった事が痛かった…。
映画をふまえて、このSS読んでみるとほむらが誰これ状態。後、キュゥべえも。
映画に合わせて、少し内容を変えようかとも考えましたが、結局どう変えるか思いつかなかったので止めました。
時系列的にはTV最終回(永遠の物語ラスト)から叛逆の物語までの間の話orパラレルワールドだと考えてます。
最後に長々と言い分け、すいませんでした。
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