魔法少女まどか☆マギカ [接触編] -始まりの物語- (19)


-序章-




“声”が、聞こえる。

顔も名前も知らない、聞いたこともない少女の声が。

声は一つだけではないようで、幾つもの声が重なり合い、光と共に流れていく。



まどか「……誰? 私を呼ぶのは……」



無数の声が、光の中に浮かぶ少女の体を突き抜ける。

その声は少女に何かを訴え、その光は少女の心を温かく包む。

その声、その光が、何人もの少女達の思惟の顕れだとは、まだ知る由も無かった。



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-第一章-


            *

この日、鹿目まどかは未知との接触を果たした。

罪無き人間を襲う魔女、そして、その魔女と戦う使命を帯びた魔法少女。

加えて、彼女自身は気付いてないが、宇宙から降り注いだ“意思”も。

そして、その“意思”は常に彼女を見守っている。

まるで、彼女に何かを訴えるように――。




            *


ベランダから覗く夜空は青く澄み渡り、幾つもの散りばめられた星々がきらきらと輝いている。

巴マミの日課――というより楽しみは、一日の終わりにこの美しい夜空を眺めることだった。



マミ「…………」



今日も、大切な二人の命を救うことができた――。

そう思うだけで、独りで戦う辛さも、悲しみも、大分和らいだ気がする。



キュゥべえ「やっぱり、ここに居たんだね」

マミ「キュゥべえ……」



白くふかふかした体表を持つ白い生き物が、赤く無邪気な眼球を見開きながら近づいてくる。



キュゥべえ「今日は良かったね。魔法少女の素質がある子を二人も見つけられるなんてね。これでもう、この街の魔女は大人しくなるんじゃないかな」

マミ「こらこら、あの二人が契約するなんて、いつ言ったのかしら?」



キュゥべえに選ばれたからには、どんな願いも叶えてもらえる権利がある――。

しかしそれは、終わりの無い戦いに身を投じることと同義であった。

それが、奇跡を願った魔法少女の対価であり、宿命である。



マミ「(……だから、私がどうこう口出しする問題じゃないのよ。あの子達が自分で考え、自分で決めなきゃいけないの)」



とは言っても、心の奥底では、自分と一緒に戦ってくれる仲間ができることに期待を寄せていた。

幼くして最愛の両親を亡くし、一時期は共に戦ってくれた魔法少女とも決別し、ずっと独りで生き、戦ってきた彼女にとって、二人の契約の話は願っても無いことだと言える。



マミ「……私は、鹿目さんと美樹さんを守るだけ。それで十分よ」



そう自分に言い聞かさないと、自分が自分でいられない気がした。




キュゥべえ「それにしても、君もよく飽きないね。そんなに星を見るのが好きかい?」

マミ「……あのお星様が、私たち魔法少女を見守ってくれているなんて、素敵だと思わない?」

キュゥべえ「やれやれ、またその話か。僕には、根拠もない言い伝えを信じることなんてできないよ」

マミ「キュゥべえったら、夢が無いのね」

キュゥべえ「力尽きた魔法少女がどうなるのか、確かに僕もわからないよ。そういった点では、なかなか興味深い話だけどね」



その“伝説”は、魔法少女なら誰もが知っている。



?魔を使いし少女潰える時、その魂は天に昇り、星となりて現世を見つめん?



要するに、力尽きた魔法少女の魂は天に召されて星になり、遥か宇宙の彼方から現世を見守り続けるという意味である。

巴マミも含めて多くの魔法少女は、自分たちが何者なのか、そして、自分たちが戦ってきた魔女の正体を知らない。

だから、誰にも気付かれず、いつ命を落とすかわからない身の上で自分の死後を考えた時、そういうロマンチックなお伽噺を、つい信じてみたくなるのは仕方の無いことだろう。



>>13の修正


キュゥべえ「それにしても、君もよく飽きないね。そんなに星を見るのが好きかい?」

マミ「……あのお星様が、私たち魔法少女を見守ってくれているなんて、素敵だと思わない?」

キュゥべえ「やれやれ、またその話か。僕には、根拠もない言い伝えを信じることなんてできないよ」

マミ「キュゥべえったら、夢が無いのね」

キュゥべえ「力尽きた魔法少女がどうなるのか、確かに僕もわからないよ。そういった点では、なかなか興味深い話だけどね」



その“伝説”は、魔法少女なら誰もが知っている。



“魔を使いし少女潰える時、その魂は天に昇り、星となりて現世を見つめん”



要するに、力尽きた魔法少女の魂は天に召されて星になり、遥か宇宙の彼方から現世を見守り続けるという意味である。

巴マミも含めて多くの魔法少女は、自分たちが何者なのか、そして、自分たちが戦ってきた魔女の正体を知らない。

だから、誰にも気付かれず、いつ命を落とすかわからない身の上で自分の死後を考えた時、そういうロマンチックなお伽噺を、つい信じてみたくなるのは仕方の無いことだろう。



キュゥべえ「まあ、僕としては、伝説の中に語られるもう一つの言い伝えの方が気になるんだよね」

マミ「全ての魔女を倒し、世界を救うと云われている、“イデ”の力を持った少女と“巨神”のこと?」

キュゥべえ「そうさ。あの有名な《ワルプルギスの夜》については、過去に何度かその存在が確認され、数多くの文献も残っている。僕もそれは認めるよ。けど、“イデ”と“巨神”については、魔法少女に伝わる大昔の旧原典以外には、どこにも記されていないんだ。そもそも、“イデ”と“巨神”が一体何なのか、それらはこの世界に存在し得るものなのか、誰も見たことも無いしわからないんだからね」



“イデの力を借りたる少女現れる時、巨神目覚め、悪しき魔女を討ち滅ぼし、世界を浄め、天の星に還り、善き心来るを待つ”



この一文は余りにも有名で、《ワルプルギスの夜》と並ぶ魔法少女二大知識の一つである。

どんな魔法少女でも、何かしらの方法でこの伝説を知り、口伝という形で語り継ぐ。

その伝説を聞く魔法少女の中には、イデと巨神の力を崇拝し、魔女との戦いにおける希望の拠り所として神聖視する者もいる。

そこまで極端ではないけれども、巴マミもその伝説を信じてみたくなった一人である。



マミ「イデと巨神……。伝説の通りなら、あの《ワルプルギスの夜》も倒せるほどの力があるのかしら」

キュゥべえ「全ては謎のままだ。《ワルプルギスの夜》と違って、実例が無いものは僕でも確認の仕様が無いよ」



つまらない物言いをする生き物を一瞥した後、再び視線を夜空に戻す。



マミ「(今日も、綺麗ね)」



“伝説”は、既に始まっていた。

そして、その始まりの地である宇宙を、星空を、巴マミはいつまでも見ていたいと思っていた。

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