ベルトルト「僕の世界と」ユミル「私の色」(300)

二作目。
そこまで全色盲に詳しくない
「途中からなんねーよ!」等の文句があったらすいません
決して貶しているわけではないので。
では投下

僕は目が見えない。

…と言っても、見えないのは色だけだ。

全ての物が白黒に見える。

でも生まれつきそうな訳じゃない。

色が見えなくなったのは…五年前、壁を壊した日からだ。

取り敢えず内地の医者に診てもらったら、僕は「全色盲」という病気にかかったらしい。

それに、数万人に一人という確率でしかかからないから、前例も無ければ治療法もない。

だから僕はこれまでの記憶を頼りに、色を思い出すしか無かった。

生活に特に支障は出ないが、ライナーやアニには打ち明けている。

白黒の世界でも、やっぱり二人は頼りになる。

…あ、白黒以外にも、一つだけ見える色がある。








血の色。


五年前のあの日から、血の色だけが瞼の裏に焼き付いて離れない。

これだけはどうしても、ライナーとアニに言う気にはならなかった…。

白黒の中に一つだけ浮かぶ、血。

瞼を閉じれば思い出してしまうから、僕は最近不眠症に悩まされていた。

もうすぐ夜明け。

まだ早いので、誰も起きてこない。

言わば僕だけの時間だ。

こういうときにするのは、色を思い出すことだった。

目の前にある枕は…白、だ。

じゃあベッドを支えている骨組みは木で出来ているから…濃い茶色、かな。

僕の目には濃い灰色にしか映らないけど。




トンッ

ベルトルト「…ん?」

隣で寝ている彼が転がってきた。

珍しいな、寝相はいい方なのに。

故郷のことで不安なのかもしれない。

…不安なのは僕もだけど……。


ベルトルト「君の髪の毛は…ひよこみたいな黄色、だったかな」

小さい頃、ライナーがアニやべリックにひよこ頭と馬鹿にされていたのを思い出した。

ひよこ…昔は故郷にいっぱいいたな。

…帰りたいな。

……………顔を洗いに行こう。

ベッドから静かに降り、廊下に出る。

考えている間に太陽が出てきたようだ。


空が白い。

窓から見える空は晴れている…多分。

空は青かったんだっけな。

そういえば、アニの瞳も青色だった気がする。

…あれ、どんな青色だっけ。

確か空みたいな青色だったと思うんだけど……



…空ってどんな青色をしていたっけ。

ああ、またこれか。

幼い頃の記憶には限界がある。

僕は色を忘れ始めていた。


訓練兵三年目になってから特に酷かった。

血の色はあんなに鮮明に思い出せるのに

どうしよう。また、僕の世界から色が消えてしまう。

ああ、やだ、怖い、怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。



エレン「…ベルトルト?」




ベルトルト「…あ、や…あ、エレン………」

エレン「どうしたんだ?具合でも悪いのか?」

心配そうに聞いてくる。

…よほど酷い顔をしていたんだろうな、僕は。

ベルトルト「…ううん、何でもない」

エレン「…?そうか、じゃあな」

ベルトルト「うん…」

エレンが起きていると言うことは、もうすぐ皆起きてくるだろう。

早く顔を洗って準備をしなくちゃ。

今日は対人格闘だったな…


―――――――――――――

―――――――

―――




キース「それでは、各二人ずつペアを組んで訓練を開始しろ!」

一同「「「「ハッ!」」」」




ベルトルト「あ、ライナー…」

ライナー「あ、悪い…クリスタと約束してるんだ。すまないが、他の奴と組んでくれないか?」

ベルトルト「…そっか、大丈夫だよ」

困ったなあ、ペアがいない。

アニ…は、エレンとか…

マルコや、アルミンも他の人と組んでる。

後は、話したことも無いような人達…




ユミル「よお、ペアがいないなら私とやらねーか?」

ユミル、か。

そういえば、ペアを組んだことなかったな…

ユミル「…おい?」

ベルトルト「!っあ、ごめん…いいよ」

ユミル「すまねーな。私のクリスタがお前の相棒に取られちまってよ」

ベルトルト「ああ…ごめんね」

ユミル「謝んなよ、お前のせいじゃない…っと、じゃあ私がならず者をやるぞ」

ベルトルト「うん」

ユミルが木剣を構えて僕に向かってくる。

真っ正面から向かってきたと思えば、地面を蹴って方向を変えた。

その様子から見るに、素人ではなさそうだ。

…まあ避けれるんだけど。

見てて思ったけど、ユミルって手が綺麗だな。

指がスラッとしてる。

顔もそんなに悪くない…コニーはどうしてブスって言うんだろう。

でも、目は苦手だ。

心を読み取られてしまいそうで、何か怖い。

…ただそんな目でも色が見えてるのかと思うと、少し羨ましい。

ベルトルト「あっ…」

ユミル「ん?」

ベルトルト「髪留め、落ちたよ」

ユミルのだろうな。

拾ってみて、ドキリとした。







色が、見える。

くすんだ赤色。

見えるってことは、血の色と認識しているのだろうか。

古くなって錆びた血の色に似ている。

気にしてはいなかったが、こんな髪留めを使っていたのか。

ユミル「…?早く返せよ」

ベルトルト「あっ、ご、ごめんね。はい、どうぞ」スッ

ユミル「…おう、ありがとな」

髪留めを長く見すぎたのか、ユミルから鋭い視線を感じる。

ちょっと、怖いなあ…。

―――――――――――――

―――――――

―――




サシャ「やっとお昼です!!コニー!パァンください!!」

コニー「やらねえよ!お前はじっとしとけ!!!」




ライナー「はは、元気だなあいつらは」

ベルトルト「…そうだね」

ライナー「あ、対人格闘の時はすまんかったな…」

ベルトルト「…ううん、平気。ユミルと組んだし」

ライナー「ユミルとか…珍しいな。あ、そういえばクリスタと飯を食う約束をしたんだが…いいよな?」

ベルトルト「…うん、いいよ」

最近、僕が色を忘れていくより早く、ライナーは使命を忘れている。

クリスタの話をすると、特に…。

それに兵士のライナーは僕の病気のことを知らない。

色のこと以上に、君のことが心配だよ………。

クリスタ「あ、ライナー!こっちの席だよ」

ライナー「おう、すまんな」

ユミル「げ、お前も食うのかよ…お、ベルトルさん」

ベルトルト「…?やあ」

ユミル「んー…まあ、ベルトルさんも一緒ならいいか。座れ」

クリスタ「もう、ユミル!そんなこと言わないの。ごめんね?二人とも」

ライナー「ああ、いや大丈夫だ」ストン

ベルトルト「…ははは」ストン

クリスタ「ライナー。さっきは対人格闘付き合ってくれてありがとう!」

ライナー「ん、あ、いや、あれくらいならいつでも付き合うぞ!」

クリスタ「本当?じゃあ次もお願いしようかな…?」

ライナー「!!お、おう!全然構わん!!」

ベルトルト「…」モグモグ

ああ…完全に兵士モードだよ。

次の会議までに戻せるかなあ…アニも協力的してくれたらいいのにな…。

ユミル「…なあ、ベルトルさん」モグモグ

ベルトルト「な、何?」モグモグ

ユミル「さっき、私の髪留めをじっと見てたが…何かあんのか?」モグモグ

ベルトルト「!!」

やっぱり、不審に思われてる…。

どうしよう、悟られないようにしなきゃ。

ベルトルト「え、あ…いや、綺麗な装飾だな、と思って…」オドオド

血の色をしている、なんて言えるわけがない。

ユミル「…まあ、お気に入りなんでな」

ベルトルト「……へえ」

気に入ってるんだ…。

じゃあそれは、ユミルが気に入っている色、ということになるのかな。

血の色、なのに。

ユミル「…なんだ、私がこんなのを気に入るのがおかしいか?」

ベルトルト「あ、ううん…そういうわけじゃなくて」

ユミル「じゃあ何だよ」

ベルトルト「………何でも、ない…」

ユミル「はっきりしねえな…」

ベルトルト「はは…」

はっきりしない、か。言われ慣れてきた言葉だなあ。

そりゃだって、僕の目の前に広がるのは白と黒で表された濃度しかわからない、曖昧な世界だから。

…人によっては「白黒はっきりしてる」とも言うのかもしれないけど…。

そんな世界でも、唯一血の色が見えるのが救いかもしれない。

血が救い…なんて、おかしいかな……?

ライナー「ベルトルト、次の座学に遅れるぞ。食べ終わってるんだろう?」

ベルトルト「あ、もうそんな時間っ…?ちょ、ちょっと待って…!」アセアセ

ユミル「んーじゃ、私達はもう行ってるなー」

クリスタ「あ、待ってユミル!じゃあ二人とも、先に行ってるね!」

ライナー「ああ」

ベルトルト「ごめんねライナー。すぐ片付けるね」

ライナー「いいって、ゆっくりやれ」

食器を片しに行く。

大急ぎで片付けたこともあってか、座学の時間には間に合った。

席に着いたら、前方の方にユミルがいた。

…やっぱり、あの髪留め…血みたいだな。

何故あんな色を気に入るのか、少し理解が出来なかった。

もしかして、誰かからもらった…とか、そういうものなのかな?

ユミルとあんまり話したことがないからなあ…。






その後の教官の話も頭に入らず、僕は髪留めとユミルのことをずっと考えていた。

夕食も終えて、気付けば消灯時間の数分前だった。

夜は、窓から空を見るのが日課になっている。

空に色が映し出されて無いからだ。

ライナー「よ、また空見てんのか」

いつの間にかライナーがベッドに登ってきていた。

さっきまで同室の人達と話していたはずなのに。

ベルトルト「…うん、落ち着くんだ」

ライナー「そうか…お、星が出てるな」

ベルトルト「そうだね」

ライナー「なあ、ベルトルト」

ベルトルト「…何?」

ライナー「俺達は夜の間だけ、同じ空を見てられる」

ベルトルト「…うん」

ライナー「いつか、昔のように青い空を…また三人で見たいな」

ベルトルト「………うん」

三人、か。

僕の世界に色が戻ったら、アニの空のような瞳がまた見れるのだろうか。

血の色以外も、見れるのだろうか。

…故郷に、帰れば。

今日の分終り
続きはまた


続き期待しとるよ

乙です

ああ、もう次の話できたんだネ、楽しみだよ
淡々とした独白が色がわからないのをより際立たせてるね

信炎彈の色が見えないって大変そうだなぁと思いつつ描写がすごく良かったのでそこのところはどうでもいいな、乙!

>>26,>>27
ありがとう

>>28
考えてなかった…
まあライナーに見てもらうからいいや!!

今日の分投下ー

アルミン「二人とも、まだ起きてるの?」

ライナー「ん?ああ、アルミン。どうした?」

アルミン「いや、もう消灯の時間だから…灯り消して良いかな?」

ベルトルト「あ、いいよ。ごめんね」

アルミン「ううん、大丈夫。それじゃあお休み」

ライナー「おう、お休み」

ベルトルト「お休み」

…今日は眠れるかなあ………。

無理矢理瞼を閉じてみる。

夥しい量の血がすぐ浮かんでくる。

我慢だ、我慢…







真っ白な部屋の真ん中で、僕は一人立っていた。

足を一歩踏み出すと、何かが壊れたような音がした。

前に進もうと手を動かすと、動かした分だけ何も無いはずの空間から血が溢れた。

何、これ。

手を見れば血がべっとり付いている。

いくらぬぐっても全然取れない。

薄く灰色がかかった自分の手にこびりついた赤色。

何なんだよ、これ。

ふと目線をずらすと、五年前に見たあの景色

壁の上から覗いた壁内の全貌

所々赤色が散っている以外、色の無い無機質な景色だ。







「目標目の前!超大型巨人!」



…え?何で、皆そんなところに

危ないよ…

エレン「駆逐してやる…」

なん、で

アルミン「酷いよ、信じてたのに」

僕を

ミカサ「あなたは許さない」

そんな目で

クリスタ「そんな…嘘、なんだよね?」

見るんだよ


ユミル「…」

誰か

サシャ「裏切るなんて…」

誰でもいい

コニー「全部嘘だったのかよ!?」

助けてくれ

ジャン「出てこいよ…削いでやる」

アニ、は…?

アニ「あんたはもう、仲間じゃない」

何、で…?

ラ、ライナー!守ってくれ…!!









ライナー「じゃあな、裏切り者」



ザシュッ











ベルトルト「うわああああああああああ!!!」ガバッ



夢…?

手に血は…付いてない

うなじも…削がれてない

良かった、夢だ。

ベルトルト「…っは…はあ……は、あ」

まだ、誰も起きていない。

深夜か…月が高い。

あれ…ライナーがいない?

あ、いた…少し離れてる。

夢見の悪さも手伝ってか、僕の身体は転がりまくってもうすぐベッドから落ちそうな所まで来ていた。

…喉が張り付いて気持ち悪い。

水でも飲みに行こうかな…。






食堂へ向かうと、先客がいたようだ。

ユミル「よお、ベルトルさん」

ベルトルト「やあ。深夜にうろついて大丈夫?」

ユミル「その言葉、そっくりそのまま返すよ」

…笑っているのだろうか。

暗くてあんまり良くわからない。

ベルトルト「見廻りが来る時間帯は把握してるから…」

ユミル「ほー…流石暫定三位様だな」

ベルトルト「そんなことないよ…」

ユミル「謙虚も上位の秘訣か?」

ベルトルト「あはは、どうだろうね」

ユミル「さあな…。お前、眠れないからここへ来たんだろ?」

ベルトルト「…夢見が、悪くて」

ユミル「…偶然だな、私もだ」

…ユミルも?

ベルトルト「そうなの?」

ユミル「ああ…胸糞悪い夢だったな」

ベルトルト「そっか…僕もそんなところ、かな」

ユミル「お互い辛いな。せっかくの休日だってのに」

休日…?今日って休日だったっけ…?

ベルトルト「え、休日…?」

ユミル「座学の時教官が言ってたろ?…聞いてなかったのか」

ベルトルト「…聞いてなかった………」

ユミル「珍しいな」

ベルトルト「ちょっとボーッとしてて…」

ユミルの髪留めのことを考えてたから…

ベルトルト「あ、そういえば髪留めしてないんだね?」

血の色、の。

ユミル「あ?そりゃ寝てたんだからしてるわけねえだろ」

ぐ…正論だ…。

まあ…そりゃそうだよね。

ユミル「そんなにあの髪留めが気に入ったのか?」

ベルトルト「えっ!?」

…あ

ユミル「えっ!?ってなんだよ」

まずい。否定したら面倒くさいことになりそうだ。

ベルトルト「えっと…あ、そうなんだ。綺麗だから…」

ユミル「…」

ベルトルト「あと、それと…ユミルに似合うから、かな…?」アセアセ

ユミル「…ふーん……」

うう…視線が痛い…。

最後のは無理矢理過ぎたかな………。

ユミル「…ま、そんなに気に入ったんなら貸してやってもいいぜ?」ニヤッ

意地悪そうに言う。

…やっぱりその目には何でも見えてるんじゃないかなあ。

ベルトルト「ええ…遠慮しとくよ」

ユミル「つけられるところが無いもんな」

ベルトルト「人をハゲ呼ばわりしないでよ…」

ユミル「ハゲなんて言ってねえだろ」

ベルトルト「そうだけど…」

ユミル「それよりお前、水でも飲みに来たんじゃないのか?」

ベルトルト「…良くわかるね」

ユミル「私もそれで来たからな。ほら、私のやるよ。飲みかけだけど」

ベルトルト「え、いいの?」

これって、あの…

ユミル「間接キス、だとか思ってんじゃねえよな?」

ベルトルト「!!」カアアア…

何でわかるんだよ…!

ユミル「気にせず飲め」

ベルトルト「や、でも、女の子、だし…僕だと嫌かな、と思って」

ユミル「あ?嫌なわけねえだろ」

ベルトルト「へ?…いや、あ、えっと、え?」

ユミル「?いや、別に嫌う理由が無いだろ」

何だよそれ…。

僕じゃなかったら絶対変な勘違いしちゃうよ…。

ベルトルト「…ま、いいや。ありがとう…」ゴクゴク

ユミル「おう。あ、ベルトルさん…今日って何か予定はあるか?」

ベルトルト「え?うーん…」

ライナーに街へ行こうと誘われた。

でもそれってエレン達もいるんだよな…。

また壁を壊す日まで、馴れ合いは避けたい。

情が移ってしまう…。

ベルトルト「資料室で卒業前のテストの勉強、かな」

ユミル「…じゃあ私も付き合っていいか?」

ベルトルト「いいけど…ユミルは予定ないの?」

ユミル「クリスタが服を買いに街へ行こうって…。でもあいつ選ぶの長いから行きたくない」

ベルトルト「なるほど…」

確かにクリスタの服選びは長そうだ…。

色とりどりの服を何回も試着するんだろうな。

色…とりどり…

ユミル「じゃ、朝食終わったら資料室な。私はもう一眠りしてくる」ガタッ

ベルトルト「あっ…うん、お休み」

ユミル「お休みー」スタスタ

ユミルと勉強か…。

ちょっと怖いけど、普段はさっきみたいに喋らないから少し楽しみかも。

勉強の時は髪留めつけてくるかな…?

血の色は見たくもないはずなのに、ユミルの髪留めは何か違うみたいだ。

何故ユミルがあの髪留めを気に入っているか知りたい気持ちもあるけど。

朝食の時間まで大分あるなあ…。

どうせ眠れないのだから、本でも読もうかな。

以上今日の分終わりー

最近来れて無くてすいません…
レスありがとう…歓喜

投下しまーす










ベルトルト「…」ペラッ

マルコ「…ん…んん、あれ」

ベルトルト「…やあ、おはようマルコ」

マルコ「ベルトルト…早起きだね」

ベルトルト「変な夢見ちゃうから寝れなくて…」

マルコ「そっかあ…今日が休日で良かったなあ」

ベルトルト「…そうだね。君達は街へ行くんだろ?」

マルコ「うん。ベルトルトは何かするの?」

ベルトルト「あー、次のテストの勉強でもしようかなって」

マルコ「おお…流石ベルトルトだね。偉いなあ」

ベルトルト「…そんなことないよ」

マルコ「遠慮しなくてもいいのに…あ、その本僕も読んだことがあるよ」

ベルトルト「そうなの?」

マルコ「うん!僕も結構本読む方だから」

ベルトルト「そういえばそうだったね」

マルコ「あ、じゃあ目を通すだけでもいいからこれも読んでみて」スッ

ベルトルト「?ありがとう」

マルコから渡されたのは小説だった。

読んだことの無いような話だ。

あとで読んでみようかな…。

マルコ「読み終わったときに返してくれれば良いよ。あ、感想も聞きたいな」

ベルトルト「うん、わかった。借りておくね」

マルコ「ふふ…あ、もうすぐ朝食の時間じゃないか。ジャン、起きて」ユサユサ

ジャン「…ん、だよ…マルコぉ………」ゴロン

マルコ「今日街に行くんだろ。そろそろ起きなよ」

ジャン「あ、そうか…さんきゅマルコ」

街、か。じゃあライナーも起こしてあげないと。

ベルトルト「ライナー」ユサユサ

ライナー「………どうした、ベルトルト」

ベルトルト「朝ご飯の時間だよ。早く行こう」

ライナー「…む、そうか。すまん」

ベルトルト「いいよ。行こう」







食堂は休日だからか少し空いていた。

自分の朝食を運び、席に着く。

扉の方に目をやると、僕より遅く彼女はやってきた。

ユミルだ。

目が合う。

「資料室でな」

…って言われてる気分だ。

ライナー「どうした?早く食おう」

ベルトルト「…うん。…いただきます」









ライナー「…っし。じゃあ俺は街に行ってくるが…本当にお前は良いのか?」

ベルトルト「…うん。やりたいことがあるからね」

本当は君も行かせたくないよ…。


ライナー「そうか…。まあ早めに帰ってくるな」

ベルトルト「うん、行ってらっしゃい」

ライナー「おう、行ってくる」スタスタ

…さてと、僕も資料室行こうかな。

ユミルはまだ食べてるけど、先に行って準備してよう。

食堂を出て廊下を歩くと、突き当たりの角を目指す。

同期の人達とすれ違う。

名前も知らない人達だけど、皆楽しそうに笑っていた。

僕なんか…僕らなんかとは違う。

本当に楽しそうだ。

いつかその笑顔も皆僕が潰してしまうのだろう。

真っ赤な血で汚すのだろう。

でも僕にはそれしか見えないんだ。

君達の苦痛に歪んだ顔なんて、モノクロの背景でしかないんだよ………。




角を曲がり、資料室へと繋ぐ廊下を急ぐ。

ここら辺はあまり人が通らないのか、少し埃っぽい。

ドアを開けて中に入ると一段と埃っぽい匂いがする。

…今度掃除しようかな………。

椅子に積もった埃を払って座った。

真っ白な日差しが当たって丁度良い暖かさだ。

そうだ、ユミルが来るまでマルコに借りた本を読もう。

確か小説だったっけ。

―――――――――――――――――――――――――

『少年と少女の色』

どんな物にも鮮やかな色がある世界で

たった一人

たった一人だけ、色を持たない少年がいた。

真っ黒な髪の毛に真っ白な肌。

服でさえも真っ黒だった。

少年は周りに化け物扱いされるのを怖がり、自分から周りと距離を取るようになった。

「自分は皆と違う」と自分に言い聞かせて。

そんな暮らしが何年か続くと、流石に少年も限界だった。

心がボロボロになった少年は、「仲間が、友達が欲しい」と思うようになった。

だが心の中に別の自分が現れては、「無駄だ、やめておけ。傷つくだけだ」と言った。

「何で、独りなの?」

そう、声をかけられた。

少年は驚き、しばらく声が出せないでいた。

少年に声をかけてきたのは、周りのどんな人よりも色鮮やかな、笑顔の可愛らしい目の赤い少女だった。

「あ、ごめんね。驚かせるつもりはなかったの…ええと…友達に、なって…くれ、ないかな…?」

「………」

「あ、ああ…ごめんなさい。いきなり迷惑だったよね…」

「ま、待って!!!」

少女が立ち去ろうとして、少年はやっと声が出せるようになった。

「驚いただけだ…あ、その、良かったら…こちらこそ、友達になりたい、な」

「本当に!!?」

少女のは大きな赤い目を更に大きくさせ、輝かせた。

少年はこんなに喜んでもらえるのは想定外だったので、また声を出せないでいた。

「じゃあ、あなたのこと教えてくれないかな」

「僕の、こと?」

「そう。名前とか」


名前など、与えてもらったことがなかった。

自分の情報を一切持っていなかったのだ。

「あの…ごめん、僕、自分の名前…知らなくて」

「そうなの?…私が、つけてもいいかな?」

「…つけてくれるなら……何でもいいよ」

「…じゃあ、あなたの名前は…」




―――――――――――――――――――――――――





ユミル「待たせたな、ベルトルさん」

ベルトルト「…ユミルか。別に待ってないよ」

ユミル「そうか?じゃあさっさと始めようか…」

ベルトルト「…うん」

ユミルもユミルでタイミング悪いなあ…

続きは後でいいか…。

ユミル「範囲ってどれくらいだっけ?」

ベルトルト「えと…教本の、ここからここまで…じゃなかったかな」パラパラ

ユミル「あ、そこか。確か他の文献を読んだ方がいいって教官が言ってたな…」

ベルトルト「そうなの?」

ユミル「ここにあるはずなんだが…あ、あった。ベルトルさん、そこの三段目の茶色い本を取ってくれ」

ベルトルト「…えっと…………」

え?茶色??

どれも似たような濃さで全然わからない……。

どうしよう……バレるか、変な奴だと思われるだろうな…。

ああ…ライナーがいれば………。

ユミル「………ああ、悪いな。三段目は茶色の本がたくさんあった…。すまん、これだった」

…何だ、いっぱいあったんだ……。

ベルトルト「そ、そっか。ごめんね」ホッ

ユミル「いやいいって。ほら、やろうぜ」ガタッ

ベルトルト「う、うん…」ガタッ

以上今日の分終わり…
毎回少なくてすまん

これ好き

マルコは気付いてんのかな

うわああ随分空けた。
支援マジでありがとう

>>68好き…だと…
ありがとう。マルコは一応知らない設定
偶然だよ…御都合設定だよ…

投下

ユミル「………」カリカリ

ベルトルト「………」ペラッ カリカリ

沈黙が続く。

普段話さない分、こういうときにする会話がおもいうかばない。

…やっぱりわざと距離を取ろうとするとこうなるよな。

本当…ライナーが羨ましい…。

ユミル「なあ」

ベルトルト「な、何?」ビクッ

ユミル「この陣形、どういった時に使うもんだったっけ?」

ベルトルト「…あ、ああ…これは壁外遠征の時、奇行種に遭遇した場合の陣形で…
      テストだとこういう風に出るかも」カリカリ

ユミル「あー…分かりやすいな…。流石ベルトルさんだ。ありがとな」

ベルトルト「…お礼、言えたんだ………」

ユミル「あぁ?」

うわ、つい考えたことが…。

ベルトルト「う、あ、ご、ごめん!!そういうつもりしゃなくて…その…えっと…」

ユミル「…なんかベルトルさんの、私に対しての評価がここ何日かでわかってきた気がすんな。
    私はありがとうとか…普通に言うぞ?前も言ったし」

ベルトルト「いや、あの…本当に…ごめん…。つい」

本当に、つい。

ユミル「…まあそう思ってるのはベルトルさんだけじゃねえだろうしなー。私は気にしないからいいよ」

ベルトルト「…すみません……」

ユミル「もういいって…謝るな鬱陶しい」ハァ

う…鬱陶しいって…言われた………。

軽くショックだ。

…あれ…?

何で、ショックなんか…。

誰に言われても、傷ついたりすることなんて無かったのに。

すごく、すごく邪魔な感情だ。

でも、何だろう…。

経験したことの無いような気持ちだ。

ユミル「謝罪の次は考え事か。案外忙しい奴だな」ケラケラ

ベルトルト「っ…、ごめん。勉強しよっか…」

ユミル「おう」
















ユミル「…あー、疲れたな。休憩しないか?」

ベルトルト「そうだね…もうすぐお昼の時間だし…。お昼食べに行く前に休憩しよっか」

あの後、ずっと沈黙していたので勉強も進んだ。

でも、会話が無かったのは少し残念かな…。

少しだよ、ほんの少し。

ユミル「ああ…。くっそー、こんな天気いいのに…クリスタの服選びさえ無けりゃあな…」

ベルトルト「…ユミルも、街に行きたかったの?」

ユミル「まあ…休日だしな。ぶらぶらしに行きてーなー」

ベルトルト「…そっ、か」

僕だって本当は皆と街に行きたかった。

でも使命のためには距離を置かないといけないから…。

目のことも、あるし。

何より、殺すときに躊躇ってしまう。

それだけは絶対に避けたい。絶対に。

…生まれ変わったら、とかだったら許してもらえるかな。

ユミル「じゃあさ」

ベルトルト「ん?」

ユミル「今から行かないか?街」

…え?

ベルトルト「い、今から?」

ユミル「おう。勉強もほとんど終わってるし、昼飯ついでにぶらぶらしようぜ」

ベルトルト「え?えっ……と…え?あの…」

ユミル「否定しないのは肯定とみなす」ガシッ

ベルトルト「え」

ユミル「ほら、行くぞベルトルさん」グイグイ

ベルトルト「ちょっと待っ…」

ユミル「行かないと休日なのに一人で勉強してる根暗腰巾着って広めるぞ」

ベルトルト「………行くよ…」

―――――――――――――

―――――――

―――





ユミル「なあ。あんた何が食べたい?」

ベルトルト「…何でもいいよ」

あーもう、僕の馬鹿…。

断れば良かったんだ。

皆と街に行くより女子と街に行った方が問題になるに決まってる。

しかも二人で…。

噂になれば目立ってしまうしな…。

ユミル「じゃあ適当な食堂でも入るか」

ベルトルト「…うん」

食堂に入る前に同室の誰かに出会わなきゃいいけど。

ユミル「あ、あそこでいいか」

そこは少し裏道に入ったところの、珍しい食堂だった。

こんなとこにあったんだ…。



カランカラン

店員「いらっしゃいませー」

ユミル「そこ座るか。ほい、メニュー」ガタッ スッ

ベルトルト「あ、ありがとう」ガタッ

本当…食べるものは何でもいいんだけどなあ。

訓練兵団に入ってから、食事なんて栄養摂取のためだけだと思うようになったし。

まあ適当なものでも選ぶか…。

ベルトルト「!」

ぎょ、餃子定食……!!

壁内にも餃子ってあったんだ!

食べたいな…。

でも、何でもいいって言った手前言い出しづらい…。

ベルトルト「…」ジーッ

ど、どうしよ…。

ユミル「…」

ユミル「」ハァ

ユミル「すいませーん。餃子定食二つ」

店員「かしこまりましたー」

ベルトルト「!!あ、えっと」

ユミル「お前さあ、頼みたいなら言えよ。ガキか」

ベルトルト「う…」

ユミル「意志がねーとか言ってたらしいけどよ、メニュー頼むくらいの意志は持てよ」

ベルトルト「ご、ごめん」

ユミル「そのすぐ謝るとこも気に入らねえ」

ベルトルト「うう」グサッ

ユミル「まあ、なんだ。あんま遠慮しなくていいんだぜ?お勉強会した仲だしな」ケラケラ

ベルトルト「そ、そうだね…ごめん」

ユミル「ほらまた」

ベルトルト「あ…こればっかりは、直らない…かな」

ユミル「…まあしょうがねえかー」ハァ

ベルトルト「…あはは…」

あー、どうしようこれ。

もう馴れ合いの域を越えてるぞ。

すごく駄目なやつだ…勉強会した仲とか…言われちゃってるし…。

今から素っ気ない態度でも取るか?…いや、冷たい奴だと思われるかな…。

…待てよ


何で、ユミル相手に冷たい奴だと思われるのを怖がってるんだろう…………。




店員「お待たせいたしました。餃子定食です」ゴトッ

ベルトルト「」ハッ

ユミル「どうも」

ベルトルト「あ、ああ…もう運ばれてきたんだ」

ユミル「おう。さ、食っちまおうぜ」

ベルトルト「う、うん…いただきます」

ユミル「いただきまーす」

ベルトルト「…ん、おいしい」モグモグ

ユミル「肉入ってねえな」モグモグ

ベルトルト「しょうがないよ…でも野菜いっぱいでおいしいよ」モグモグ

ユミル「んー、まあそうだな。うまい」モグモグ

餃子なんて、随分久しぶりだ…。

故郷ではよく食べたな。

ユミルも美味しそうで…良かった。

餃子の色が思い出せないのが少し残念だけど。





ユミル「ああ…お腹いっぱいだ…」

ユミル「うまかったなー」

ベルトルト「…うん、美味しかった」

少し故郷のこと思い出して涙目になっちゃったな。

気づかれてないといいな…。

ユミル「どっか行くか?」

ベルトルト「ん…何処でもいいよ」

ユミル「じゃあ…そうだな、足りないものがあったんだ。買い物に付き合ってくれ」

ベルトルト「…いいよ、行こうか」

これ以上彷徨いたらバレてしまうのに、行きたいと思う自分がいる。

あー…やめておけばいいのに…。

まるで自分じゃないみたいだ。

その後、僕はユミルに続いて食堂を出た。

気にしてなかったけど、そういえば今日も髪留めしてるなあ…。

ユミル「…何見てんだ」

ベルトルト「へっ!?…あ、ごめん………」

ユミル「まーた髪留めか?本当、何なんだよ…そんなに珍しいか?」

ベルトルト「え…えっと…何か、今までに見たことない感じだから…その…やっぱ、気になる…かなって…?」

ユミル「何で疑問系なんだよ」

ベルトルト「ぼ、僕もわからないよ…」

ユミル「あーそうかよ」フフッ

ベルトルト「!」

笑った…?

ユミル「今度は何だ」

ベルトルト「…ユミルが笑ったの、初めて見た…なあって」

ユミル「な…!うっせえ、早く行くぞ…」ザッ

ベルトルト「ま、待ってよ!!」

ユミルが小走りになる。

それに合わせて彼女の髪と、髪留めが揺れる。

僕の知っている色を、他の人が身に付けていると酷く安心する。

何でだろう…ユミルだと余計に、そんな気がするんだ。

血の色でこんなに安心するなんて、初めてかもしれない。












ベルトルト「…こんなに買うなんて聞いてないよ…?」ドッサリ

ユミル「いやー、ベルトルさんが荷物を持ってくれるからつい、な」ヘラヘラ

ベルトルト「酷いや…」

ユミル「ま、私はまだ少ない方だ」

ベルトルト「え、嘘?これで!?」

ユミル「考えてみろ。クリスタは服選びが長いんだぞ。それに続き日用品選びにもきっと時間がかかる」

ベルトルト「う、うわぁ…」

ユミル「…今日はやっぱりクリスタと行かなくて良かったな」

ベルトルト「そうだね…」

女子って大変なんだな…。

ベルトルト「…ん?」

ユミル「何だ」

ベルトルト「…あれ、ライナーじゃない…?」

ユミル「ん…」

数人の人と楽しそうに話す大柄な体格の人。

あれくらいの人はそうそういない…後ろ姿だが、彼と見て間違いないだろう。

ユミル「おう、ありゃライナーだな…声掛けたいのか?」

ベルトルト「いや…逃げるよ」グイッ

ユミル「は?何でだよ」

ベルトルト「…ライナーだよ?絶対色々聞いてくるに決まってるだろ」

ユミル「…あー…納得」

ライナー「…!よう、ベルトルト!…とユミル?」

ベルトルト「ほら!!逃げるよっ!!!」ダッ

ユミル「お、おい!待て!」ダッ

ライナー「あ!おい!何故逃げる!!」

エレン「ライナー?ベルトルトがいたのか?」

ライナー「あ、ああ…でも逃げちまった」

ジャン「ユミルもいたんだろ?大方、ライナーにニヤニヤしながら理由を聞かれるのが嫌で逃げたんじゃねえか?」

マルコ「よせよジャン…」

コニー「?何でライナーに聞かれたくねえんだよ」

アルミン「コニーは黙ってようね…」

―――――――――――――

―――――――

―――




ベルトルト「…っは……はあ……は、…あ」

ユミル「…は…はあ……ふう………」

ベルトルト「ああ…完っ全に見られた………」ズーン

ユミル「心中察するが…ここまでくる必要はあったのか?」

ベルトルト「…ジャンとかもいるから、一応」

ユミル「あー………」

ベルトルト「でも、ごめんね…走らせちゃって。疲れたでしょ」

ユミル「いや、これくらい何ともねえよ…
    だが、私と街に出たぐらいの理由、聞かれたって何ともないだろ」

ベルトルト「ライナーは思い込みが激しいんだ…
      説明したって彼の美味しい方向にしか持ってかないはずだよ」

ユミル「ほう…じゃあ、ライナーがこの前、ベルトルさんはアニの方をチラチラ見てるってのも…
    ライナーの思い込みか?」ニヤ

ベルトルト「な、何それ…!!本当にライナーが言ってたの!!?」

ユミル「ああ。ちょっと前にな」ニヤニヤ

ベルトルト「そ、それは心配だからで…」

ユミル「…心配?」

あ、…関係を悟られては不味いな…。

ベルトルト「こ、この前、彼女が転ぶとこ見たから…また転ばないか心配で」

ユミル「…そうか、いやー意地悪して悪かったなー」ヘラヘラ

ベルトルト「ほ、本当だよ…取り敢えず、ライナーが関わるとろくな事が無いから…
      僕とあんまり居ない方がいいよ…」

君の為にも…僕の為にも。

ユミル「はあ?何だよそれ。そんなこと言われてもな…私はそんなの気にする方じゃねえし」

ベルトルト「で、でも…」

ユミル「あれか、ベルトルさんは私なんかと居たくないってことか?」

ベルトルト「!!ち、違うよ…」

むしろ、君とは一緒に居たいんだ。

…何でかわかんないけど。

ユミル「…私は、ベルトルさんに興味がある」

ベルトルト「…え?」

ユミル「もう三年にもなるのに、まともに話したのがここ数日だぞ?
    何でこんなに話さなかったかなーとか興味が出るに決まってるだろ」

ベルトルト「…あぁ、そういうこと………」

一瞬、変な期待しちゃったよ………。

……馬鹿みたい。

今日の分終了。毎回少なくてしかも遅くて本当申し訳ない

今回も面白かった
>>97
自分のペースでいいですよー

ベルトルト「…とにかく、もう帰ろう?必要なものも買ったし…」

ユミル「…そうだな。話したいことはあるが…それは帰ってからでいい」

ベルトルト「?…うん。あ、荷物はこのまま持つよ」

ユミル「おう。悪いな」

僕達は歩き出した。

でもさっきの事があったからか、それ以上の会話は無かった。

ユミルの話したいことって何だろう…?

それよりも、ライナーの質問攻めが心配だな…。

うまい言い訳を今からでも考えておこう。

ユミルに、迷惑はかけたくない。

―――――――――――――

―――――――

―――






ユミル「お疲れ。荷物持ちありがとな」

ベルトルト「あ、ううん。平気だよ、このくらい。何だったら女子寮にも持っていこうか?」

ユミル「いや、そこまでは悪い。その代わりと言ってはなんだが、夕食後時間あるか?」

ベルトルト「え?あるにはあるけど…」

ユミル「じゃあ、夕食後中庭に来い」

ベルトルト「わ、わかった…」

ユミル「じゃあなー」スタスタ

…行っちゃった。

夕食後、中庭か…話したいことはそこで話すのかな?

それにしても、今日は久しぶりに楽しかったな。

夕食までまだ時間あるし、ライナーはまだ帰ってきてないし…

部屋に戻って本でも読むかな…。










ガチャッ

ベルトルト「…誰も、いない」

丁度良いと言えば丁度良いのかな。

あの本は…あ、あった。

何故か、この主人公と自分が重なっているように思える。

一人だけ色が見えない…ってとこと、色がないっていうのが重なっているのかもしれない。

…早く読んで、早く返してしまおう。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「あなたの名前は、シュヴァルツ」

少女は少し自慢気に言った。

「…シュヴァルツ?」

「そう。ドイツ語で黒って意味なの」

黒…

少年は少し傷付いてしまった。

この子もやはり皆と同じ、僕を色の無い人間として見ている。

周りとは違う人間として見ている。

自分と好意的に接する人間はいない、と。

だが、次の瞬間少年の思惑は全くの誤解であったことが発覚した。

「だって、あなたにしか無い色だもの」

「僕にしか、無い色…?」

「そうよ。あなたは真っ黒でしょう?でも、他には無い色なのよ」

自分にしか、無い。

「確かに迫害されてしまうようなことかもしれないけど、逆手に取れば誰も真似できないってこと。
 言わば個性じゃない!」

…個性。

「…そんなこと、考えても無かった」

少年は驚きと期待が入り混じったような瞳をしていた。

そのような考えを自分が持っても良かったのか。

周りからの負い目を感じなくても良いのか、と。

「周りを避ける必要も、無いのかな」

「もちろん。これからは私も一緒だし」

「…ありが、とう………」

少年は泣き出してしまった。

この様な、人の暖かさに触れたことが無かったからだ。

「な、泣かないでよ…こっちまで悲しくなっちゃうよ…」

しまいには少女も泣き出してしまった。

少女の赤い目から、頬を伝い涙が地面に落ちる。

すると、少女の足元から、弧を描くように赤色が拡がっていった。

それは空にも広がり、夕焼けを残した。

少年は驚き、空を見上げているとあることに気づいた。

肌に色が付いているのだ。

まるで血液が巡ったような、健康的な肌色に。

これも少女の涙のせいなのだろうか。

「…どうして、色が」

「…私の涙は、色を塗り替えることができるの」

「色を?」

魔法みたいだ、少年はそう思った。

「私、魔法が使えるんだ」

少年の心を見透かしたように、少女は笑った。

「…ありがとう………」

少年はまた泣き出してしまった。

「ま、また泣かないでよ!」

そんな少年の周りでオロオロしている少女を見て、少年はなんだかおかしくて笑い出してしまった。

少年は、色を貰ったのだ。

(完)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




ベルトルト「…あれ、読み終わった」

見た目の割に短かった。

どうやらこれは短編集のようで、一話一話違う話が掲載されているようだ。

最初こそ少年に感情移入していたが、最後の最後で現実に引き戻された。

色を貰えるはずなんてない。

それと同様に、もう自分が血の色以外の色を拝むことは出来ないということくらい知っていた。

ベルトルト「…所詮、作り話だ」パタン

そう呟き、本を閉じた。

期待してはいけない。

夢を見てはいけない。

…作り話なのだから。

ガチャッ

アルミン「あ、ベルトルト!もう帰ってたんだね」

マルコ「ただいま~」

ライナー「ベルトルト!お前、逃げやがって…」ニヤニヤ

ジャン「そうだそうだ、話聞かせろ」ニヤニヤ

コニー「寝かさねえからな」ニヤニヤ

エレン「お前ら…ベルトルトが可哀想だろうが!」

…ああ、帰ってきた。

ベルトルト「お、お帰り…」

ライナー「なあ、ベルトルト…」

ジャン「何故ユミルと」

コニー「街に出たんだ?」ニヤ

…何故君達は今日に限ってそんなに仲がいいんだよ。

やめてよ、めんどくさい…。

ベルトルト「荷物持ちを頼まれただけだよ…」

ライナー「ほう?」ニヤ

ジャン「じゃあ何故荷物持ちを頼まれるような状況に?」ニヤ

コニー「…っ……」ニヤニヤ

やるならやるでコニーにも台詞残しといてあげなよ…。

ベルトルト「廊下ですれ違っただけ。君達が期待してるようなものじゃないよ…」

そう、残念ながらね。

嘘ばかり吐いてるけど、この気持ちは本物らしい。

持ってはいけないと知りながらも、持っていたいと望んでしまう気持ち。

きっと、僕はユミルが………。

コニー「なんだー、じゃあただの荷物持ちかよー!!」

ベルトルト「そう言ってるじゃないか…」

ジャン「くそ、やめやめ!付き合ってたとしても腹が立つだけだなこりゃ」

ライナー「おう、ベルトルト…悪かったな。夕飯食いに行こう」

ベルトルト「大丈夫…うん、行こうか」スッ

エレン「よし、俺らも行くか」

アルミン「うん、今日もパンかな…」

マルコ「はは、しょうがないよ…ジャン!待ってよ」ダッ

ライナー「廊下で騒ぐなって…煩い奴等だな」

そう言いながらも楽しそうに笑っている君が、怖くて堪らない。

絶対に使命を忘れているから。

君が壊れてしまったら、僕もアニも置いていかれてしまう…。

ライナー「どうした?早く行こう」

ベルトルト「…うん」

どうか…どうかライナーが壊れませんように。













この願いが酷く残酷なことだと知ったのは数日後だった。

今日の分終わり
>>98ありがとう
スローペースでごめんね










ベルトルト「ご馳走さま」ガタッ

ライナー「もう食べたのか?ちょっと待ってくれ、もう少しで…」

ベルトルト「あ、ゆっくり食べてていいよ。僕この後用事があるから…」

ライナー「お、そうか?気を付けろよ」

ベルトルト「うん…じゃあね」チラッ

ユミルはもう行ったみたいだ。

いつまでも待たせては悪い。

もう行かないと…。







ユミル「おう、来たか」

ベルトルト「ごめんね、ちょっと待たせちゃって」

ユミル「ああ、いや大丈夫だ」

ベルトルト「…で、何か用なの?」

少しの挨拶をし、本題に入る。

ユミル「…少し、頼みたいことがある」

ベルトルト「え?で、出来ることなら…」

何を頼まれるんだろう…。

ユミルなら平気で肉体労働とか頼んできそうでちょっと怖い。

ユミル「…お前、立体機動は上位だろ?」

ベルトルト「え、まあ…出来る方だけど」

ユミル「……少しでいい、クリスタに教えてやってくれないか?」

ベルトルト「…え?クリスタに?」

確かにクリスタはあまり得意な方では無いけど、どうして僕なんだろう。

この目では、巨人の模型が見えづらいのに。

ユミル「…理由は言えないが、クリスタを十位以内に入れたい。
他の分野は裏から手を回せば何とかなるが、立体機動だけはクリスタ自身にどうにかしてもらうしかない」

ベルトルト「…そりゃまあ、そうだけど」

ユミル「今日一日でわかったんだ。お前には人に教えられる程の頭も腕もある。教えてやってくれねえかな…」

正直、クリスタと関わると結構目立つ。

だから本当は嫌なんだけど…そんな頼み方をされたら断れないじゃないか。

ベルトルト「…僕で、良ければ」

ユミル「!!!!本当か!!!?ありがとう!ベルトルさん!!」ガシッ

ベルトルト「あ、わ…ゆ、ユミル…手…!!」カアアアア

ユミル「あ…す、すまん…悪い」バッ

ベルトルト「…う、ううん、大丈夫」

…離されちゃった。

何故だか、ユミルの手はすごく温かくて…いつまでも握ってもらいたい、そんな気持ちになる。

ユミル「と、とりあえず、さっそく明日の立体機動練習で頼むな」

ベルトルト「う、うん。上手く教えられるかわかんないけど…任せて」

…本当にこんな約束をしてしまっても良いのか。

今になって後悔が押し寄せてくる。

目立つだけじゃなくて、男子からの視線も痛いんだろうな…。

ユミル「じゃ、また明日。呼び出して悪かったな」

ベルトルト「ううん、大丈夫。気を付けてね、じゃあ」フリフリ

ユミル「おう、ありがとな」フリフリ スタスタ

ベルトルト「…ふう………」

クリスタと一緒ってことは、ユミルとも近くにいれたりするのかな…?

それはそれで、役得ってやつかも。

ちょっと楽しみになってきた。

ベルトルト「…僕も帰ろ」

それにしても、あそこまで想ってもらえるクリスタが少し羨ましい、な…。











ガチャッ

ベルトルト「…ただいま」

ライナー「お、帰ってきたか」

マルコ「お帰り」

ジャン「丁度いい、灯り消してくれねえか?」

ベルトルト「ん、いいよ。まだ起きる人はいないの?」

アルミン「ああ、エレンもコニーももう寝ちゃったから、いないと思うよ」

ベルトルト「了解。じゃあ、お休み」フッ

ジャン「おう」

マルコ「お休み」

アルミン「お休みー」

ライナー「お前も早く寝ろよ?」

ベルトルト「うん…」ゴソゴソ

灯りを消し、布団に潜る。

僕の寝る位置は窓が近いので、今日も夜空を眺める。

真っ暗で、世界の終焉を思わせる空だ。

…ああ、早く寝よう。

寝られるかわからないけど、瞼を閉じてみた。

真っ赤な血が浮き上がる。

ただ、今日一日で慣れてしまったのかいつものような不快感は無い。

何も考えず、眠れば、……いい……















僕はまた白い部屋にいた。

昨日と違うのは、誰かの泣き声が聞こえることくらいか。

何処かで聞いたことあるな…何処で泣いてるんだろう。

部屋をぐるりと見渡す。

すると、部屋の隅っこで自分の膝に顔を埋め、その大きな体を隠すように座る僕がいた。

…今日は自分を第三者視点で見る夢か。

ちょっと、怖いなあ。

ベルトルト「…グスッ…う…んっ……うう……グスッ」

ずっと泣いている。

気持ち悪いなあ、いつまで泣いてるんだよ。

ベルトルト「…らいなあ……グスッ…うう…らいなあ……」

呼んだってライナーは来ない。

彼は今兵士だからね。

ベルトルト「怖い…怖いよ…あに………」

アニ、か…。

最近話してないな…近くにもいれないし。

ベルトルト「…寂しい…うっ……寂しい…よ…グスッ」

アニは寂しくないかな。

ミーナといるとき以外は基本独りだから…。

僕はライナーといても寂しいのに。

ベルトルト「…グスッ……グスッ……うう……っ」

…泣き止めよ。

自分が泣いてるとこを見るの、こんなに気持ち悪いなんて思わなかった。

いつまでも子供みたいに泣いて…。

泣き止め。

ベルトルト「…う…うう…あ……グスッ……」

泣き止め。

ベルトルト「グスッ…うっ…ヒック…助けて…」

泣き止め。

ベルトルト「らいなあ…あに…ヒック…グスッ」

泣き止め。

ベルトルト「…ゆみる………」

…え、今、なんて
















ベルトルト「」ガバッ

ベルトルト「…夢………」ハァ

また変な夢を見た。

泣いてる僕を突っ立って見る夢。

ライナーとアニの名前を頻りに呼んでたな。

…でも、何故ユミルの名前も呼んだんだろう。

わからない。わからないから、怖い。

ああ…考えたら目が冴えてきた。

まだ日も昇ってないのに…。

一回水を飲みに行こう。












ベルトルト「…また、か」

ユミル「…よお。お前もまたか」

昨日のように、ユミルが食堂にいた。

また夢見でも悪かったのだろうか。

ユミル「お察しの通り夢見が悪かったんだ」

だから何でわかるんだよ。

ベルトルト「そっ、か。僕もだけどね」

ユミル「そうだろうな。ちなみに髪留めもつけていない」

ベルトルト「それはもうわかるよ…」

ユミルなりの冗談なのだろう。

ユミルの冗談が挨拶だと言うことは、ここ数日で何となく分かっている。

ユミル「そしてお前が欲しているであろう水だ」スッ

…察しが良すぎて困る。

ベルトルト「…ありがとう。今日は僕の分も用意してくれたの?」

ユミル「ああ。何となくお前も来るかと思って」

……ここまで来るともう超能力だよ。

ベルトルト「…どうも。昨日は聞かなかったけどさ、どんな夢を見たの?」

ユミル「………昔の自分の夢だ」

ベルトルト「…自分?」

何で、それが悪い夢になるんだろう。

僕なら故郷にいた頃の夢が見れて嬉しいんだけど。

…よっぽど嫌なことでもあったのかな。

ベルトルト「…昔、何かあったの?」

ユミル「…まあ、色々やってたもんで」

ベルトルト「…ふうん」

何となく含みのある言い方。

「これ以上聞くな」と言う意味が含まれているんだろうと思うと、それ以上聞けなかった。

ユミル「じゃ、もう戻るわ。今日の訓練よろしくな」ガタッ

…クリスタ、か。

ベルトルト「う、うん。じゃあ、お休み」

ユミル「おう、お休みーー」スタスタ

…今日も眠れそうにない。

またベッドで本を読もうかな…。

でもマルコに借りた本は、あの話以外に興味を惹く話が無かった。

…散歩しよう。










ベルトルト「…」ハァ

誰もいない、倉庫の近く。

ここは僕とライナー、そしてアニが情報交換として良く使う場所だった。

二年を過ぎた頃から、特に交換する情報が無くなって利用する必要も無くなってしまったけど。

…懐かしい、な。

「…誰?」

背後から声が聞こえた。

この声は…

ベルトルト「…アニ?」

アニ「…何だ、ベルトルトか……」ハァ

ベルトルト「ど、どうしたの?こんな時間に」アセアセ

アニ「いや、何となく眠れなくて。散歩してたのさ」

ベルトルト「そっか。でも人気も無いし…危ないよ?」

アニ「それはあんたも同じでしょ」

ベルトルト「で、でも、女の子だし」

アニ「私は今でもあんたに勝てる自信があるけど?」スッ…

ベルトルト「わ、ま、待って!!構えないで!!!!」オロオロ

アニ「…ふふ、相変わらずだね」フッ

あ、笑った。

…アニとこんな風に話すのも久しぶりだなあ。

ベルトルト「まあ、ね。流石にちょっとキツいものもあるけど」

アニ「…ライナーはちゃんと戻れてる?」

…!

ベルトルト「…知ってたんだ」

アニ「遠くからでもわかるよ。顔付きがしょっちゅう変わるからね」

ベルトルト「…そっか。今はまだ僕の呼び掛けで戻るけど、これ以上進行したら…」

アニ「…あんたはライナーみたいにならないでよ」

ベルトルト「…わかってる」

わかってる、わかってるんだけど…。

どうしても心の奥底ではユミルのことを考えている。

自分のことは棚にあげて、ライナーにどうこう言うなんて…

最低だ。

アニ「…じゃあ、そろそろ戻るから」クルッ スタスタ

ベルトルト「あっ…お休、み…」

アニ「」フリフリ

…でも、久しぶりに話せて良かった。

アニがライナーのことを知ってるのは驚いたけど。

…まあ、一人で抱え込むなってことかな。

………戻ろう。

今日はここまで!
レス嬉しいありがとう
追っかけて読んでくれたりする人もいるんかな?
次の更新がいつになるかわからんが続く

うわあああああ皆ありがとう
テストやらなんやらでずいぶん遅れてしまった
投下







宿舎に戻る頃には夜が明けていた。

暗く、見えづらかった道も今では明るく真っ白になっている。

僕からしたら、見えづらいことには変わりないかな。

ガチャッ

ベルトルト「…」ソロッ

ライナー「お?何処行ってたんだベルトルト」

ベルトルト「お、おお、おはよう…」ビクッ

ライナー「?散歩はいいが、ちゃんと眠れてんのか?」

ベルトルト「…まあまあ、かな?」

ライナー「あのなあ、そんなんじゃ訓練に支障が出るだろう。俺達は立派な兵士になるんだからな」

ベルトルト「…兵士」ピクッ

ライナー「…おい、聞いてるか?」

…ああ

ベルトルト「…ライナー」

またか

ベルトルト「僕達は兵士じゃない、戦士だよ」

ライナー「…は?何言ってんだよ…戦士ってなんだそりゃ」






…え?

ベルトルト「…じょ、冗談、だろう?」

そんなはずは

ライナー「寝惚けてるのか?」ハハハ

待って

ベルトルト「ちょっと…」

ライナー「顔洗ってくるな」スッ

ガチャッ

…ああ

何てことだ。

ついに

ついにここまで来てしまったのか。

ベルトルト「…僕の声でさえも、届かないのか」ボソッ








結局この後、僕は起きてきたマルコやアルミンに揺すられるまで、ただただ呆然としていたらしい。

ライナーと話してから記憶が酷くふわふわしている。

ああ、訓練に…行かないと…。




―――――――――――――

―――――――

―――





キース「今日は立体機動の訓練をしてもらう。
    各自ペアやグループを組み、巨人の模型討伐を目的としながら指定のルートを通ってもらう。
    尚、教え合うことも許可する。それでは訓練始め!!!!」

一同「「「「「ハッ!」」」」」





エレン「ライナー!組もうぜ」

ライナー「ああ。ベルトルト、お前はどうする?」

ベルトルト「…ああ、僕はもう約束してるから…ごめん」

ライナー「お、珍しいな。大丈夫だ、気にするな」バッ

ベルトルト「うん…」

何となく、朝のことがあってから話しづらい。

ライナーが壊れないよう気を遣ってきたが、これ程までだったとは。

ライナーは人類に肩入れしすぎなんだ。

…僕もユミルの頼みを聞いてる時点で大概だと思うけど。

そうだ、クリスタは…

クリスタ「ベルトルト!ユミルから聞いたよ。今日は教えてくれるんだよね?」

ベルトルト「ああ、うん。僕で良ければ」

クリスタ「よろしくね!」ニコ

ベルトルト「よろしく。…あ、ユミルは?」

クリスタ「あそこの出発点で待ってるよ。行こう」タタタタッ

ベルトルト「うん」タッタッタッ

ああ…早速男子からの視線が痛い。

やだなあ…少し目立ち過ぎる。

まあ、これも今だけだし…立体機動中に皆余所見はしないだろうからね。

我慢だ、我慢。

ユミル「よおベルトルさん。よろしくなー」

ベルトルト「う、うん。よろしく…」

ユミル「じゃあ早速、行こうぜ」バッ

ベルトルト「うん」バッ

クリスタ「あ、待って!」バッ





ユミル「うん…ここでいいか」スタッ

ベルトルト「?ここから始めるの??」スタッ

ユミル「ああ。丁度あそこに模型があるんでな…クリスタ、教えてもらえ」

ベルトルト「えっと…じゃあ一回、クリスタだけであの模型を削いでみてくれる?あの…やり方をまず、見たいんだ」

クリスタ「わかった!やってみるね」バッ

そういい、クリスタは向かいの木にアンカーを刺し、模型目掛けて降下していった。

模型の前で少しガスを噴かす。

あれがきっとクリスタなりの工夫なのだろう。

ジャンが言っていたことの応用…クリスタの軽い体重では、あまり深い斬撃が生み出せない。

だからガスにより負荷をかけているのだろう。

でも、あれでは…

クリスタ「…やあっ!!」ザシュッ

まだまだ浅い。

クリスタ「…はあ…ど、どうだったかな…?」スタッ

ベルトルト「えーっと…君は、直前でガスを噴かしてるよね?」

クリスタ「うん、そうだよ」

ベルトルト「負荷をかけるつもりだろうけど…君だと逆に、流されちゃうんだ。軽すぎて」

クリスタ「嘘!?流されてたの…?」

ベルトルト「うん…少し、右に。こういうのは君より体重がある人の方が向いてるかも」

クリスタ「そうだったんだ…」

僕の言葉を聞いて、クリスタはわかりやすく項垂れる。

ユミルはそんなクリスタの顔を見て少し不機嫌そうだ。

…教えてくれっていったのはそっちじゃないか。

ベルトルト「だから、飛び出した直後にガスを噴かして、あとは遠心力で削ぐと良いかも」

クリスタの体重ではこれが最善だ。

クリスタ「なるほど…じゃあ、もう一回やってみるね」バッ

クリスタはガスを噴かしながら勢い良く飛び出し、そして振り子式に模型目掛けて降下していった。

クリスタ「っ!!!」ザシュッ

さっきよりは全然深い。

どうやら僕の読み通りだったようだ。

クリスタ「す、すごい!さっきより深く削げたよベルトルト!!」パアアアアア

ここで女神スマイル。

どっかの誰かさんが見たら気絶してしまいそうだ。

ベルトルト「頑張ったね、クリスタ。これを応用すれば、大抵の模型は深く削げると思うよ」

…あくまでも模型、だけど。

クリスタ「ありがとう!頑張ってみるね」

クリスタは嬉しそうに跳ねている。

それを見たユミルもなんだか嬉しそうだった。

眉間に寄ったしわの数が少なくなった気がする…。

ユミル「じゃあ、ルート通りに飛んでみるか?」

ベルトルト「そうだね。クリスタもここまで出来るようになったし…問題ないと思うよ」

ユミル「よし、行くか」バッ

クリスタ「うん!」バッ

ユミル、クリスタに続いて僕も飛び出す。

さっきので大分動きが良くなったクリスタは、楽しそうに模型を削いでいた。

それを見ていると、隣のコースからガサガサと音が聞こえた。

あの飛び方は…アニ、だ。

こっちと言うより、僕を見ながら飛んでいる。

目が合った。

何となく、アニの心情を察してしまった。

「関わるな」。

クリスタに技術を教えてしまっては、脅威になる可能性がある。

ライナーと同じだってことはわかってる。

でも、ユミルに頼まれたら…何故か断れないんだよ…。

ユミル「っ!!!!ベルトルさん!!!」

ベルトルト「えっ」カンッ

集中してなかったせいか、アンカーを刺し損ねてしまった。

ベルトルト「わっ……」バシャッ

下を流れていた川に落ちた。

…あまり高いところを飛んでなくて良かった。

クリスタ「ベルトルト!!大丈夫?」

ベルトルト「あ、ごめん…大丈夫だよ」

ユミル「あーあ…下が川で良かったな…怪我は無いか?」

ベルトルト「うん、無いよ。うわ…服濡れちゃった…」ビチャア

ユミル「…どうすっかな」

ベルトルト「とりあえず、ゴールまで行くよ」

クリスタ「え…だ、大丈夫なの!?」アワアワ

ベルトルト「大丈夫。濡れちゃっただけだし…飛ぶくらい出来るよ」

ユミル「ゴールには教官もいるだろうしな…行こうか」

ベルトルト「うん」バシャッ








ザワザワ ザワザワ

ベルトルト「…」スタッ

ゴールに着いたは良いが…結局目立ってしまった。

そりゃそうだろう、服がびしょ濡れなのだから。

ライナー「お、おいおいベルトルト…服が濡れてるが…どうした?大丈夫か?」タッタッタッ

エレン「おお…?本当だ。大丈夫かベルトルト!!」タッタッタッ

ベルトルト「ああ…ちょっと川に落ちちゃって」ハハ

ユミル「教官に言えば着替えさせてくれんじゃねえか?」

クリスタ「着替えた方がいいよね…」

キース「…何事だ?」

ベルトルト「!!…教官」バッ

ライナー「!」バッ

エレン「!」バッ

ユミル「!」バッ

クリスタ「!」バッ

キース「何故…服が濡れている。フーバー訓練兵」

ベルトルト「はっ…実は、立体機動中にアンカーを刺し損ね、川に転落してしまいました!!」

キース「貴様がか?ほう、珍しいな。次は座学だ…さっさと着替えに行け。もし遅れたら…分かっているだろうな?」

ベルトルト「はっ!!」バッ

ライナー「着いて行かなくて大丈夫か?」

ベルトルト「これくらい大丈夫だよ。着替えに行くだけだし」

エレン「早く着替えてこいよ?」

クリスタ「うん。急がないと遅れちゃうよ」

ベルトルト「はは、じゃあ着替えてくるね…ライナーは席とっといてね」

ライナー「おう、任せとけ」











ガチャッ

ベルトルト「…」ハァ

着替え…どこに置いたかな。

髪の毛は拭くだけでいいけど…服はこのままだと気持ち悪いし。

幸い、座学は私服で良いし、他にも私服の人がいるから大丈夫だろう。

訓練服も乾かす必要がないし。

ベルトルト「…あった」

いつも着ているセーターとシャツ、ズボンを手に取る。

アニの瞳が僕の脳裏を横切る。

色がなくとも分かる、酷く冷たい瞳。

僕だって関わりたくない。

でも、体が僕の思考とは反して動いてしまう。

ベルトルト「…もう行こう」

保守、支援ありがとうございます
一ヶ月と少し…空けていて申し訳ない
七夕のお話を上げてきたから更新するよー







その後、私服に着替えた僕は待ってくれていたライナーと共に座学の講義を受けた。

だけどいつかの座学のように集中が出来なかった。

でも僕はユミルやユミルの髪留めのことを考えていたわけでもなく、何処かぼーっとしていた。

ライナーに心配されてしまった。

…実を言うと教官にも心配された。

ユミルも声をかけてくれて、何となくふわふわした気持ちになったのを覚えている。

―――――――――――――

―――――――

―――


ライナー「ベルトルト、風呂入らないのか?」

ベルトルト「ああ…何か、怠くて…」

ライナー「そうか…まあ昨日入ったんなら大丈夫だと思うがな…今日はゆっくり寝ろ」

ベルトルト「…うん。ごめん…お休み」

ライナー「お休み」












「ベルトルト」

…?

「ベルトルト」

…だ、れ?

「…すまない」

…何処に行くの?

「ベルトルト」

…次は、誰?

「…すまないね」

…また、何処かに行くの?

「ベルトルさん」

…曇って、顔が見えないよ

「…ごめんな」

…ちょっと、待って

あ、見えた

待って

置いてかないで…

ライナー、

アニ、











ユミル…








ベルトルト「…!」パチッ

な、何だ、あの…夢?

ベルトルト「おいて、かれる…」ドキン…ドキン…

心臓が速まる。

目の前が霞んで見える。

ベルトルト「…?」ゴシゴシ

心なしか頭もぼーっとしている。

全身の血液が頭に集中している気がする。

それとは裏腹に、背中には悪寒が走る。

ベルトルト「…さむい」

これまでに感じたことのない、強い悪寒。

急に不安になる。

ベルトルト「おいて、かれちゃう……!」

寒い、寒いよ

誰か安心させて。

何でもいいから…

安心するものってなんだろう。

唯一見えるもの…

ああ…あれか。

ナイフなら食堂の隣…調理場にあったよなあ。

おぼつかない足取りで部屋を出る。

相変わらず視界は霞んでいる。

色がないのも相まって、夜の廊下はさらに不気味に見えた。

怖い、怖い、怖い、寒い、寒い、よ。

早く、早く安心しなくちゃ。

調理場に入り、ナイフを手に取る。

それで少し左腕を切りつけてみた。

ベルトルト「…でないな」

思ったより血は出ず、じわりと滲む程度だった。

こうしてる間にも、背中の悪寒は増し頭に集中した体温が沸騰しそうだ。

もうちょっと切ってみよう。

今度は思いっきり切りつけてみた。

すると血はだんだん溢れてきて、傷口の端の方からポタポタと床に垂れた。

ベルトルト「血…」

僕の唯一見える色。

ああ

安心する

安心する


安心す

ユミル「ベルトルさん?」

ゆみる…?

ユミル「おい、何やってんだこんなと…」

ベルトルト「」フラッ


ユミル「!?おいっ…」

バタン










ユミル「ベルトルさん!」

ベルトルト「!!!」ハッ

ユミル「ああ、良かった…起きたか」ハァ

ベルトルト「ここ…」

医務室、かな?

ユミル「ああ。お前は熱…と失血で倒れたんだ」

ベルトルト「僕…そんなに出血してた…?」

ユミル「…まあな。でも何でお前、自傷なんか…」

安心するから、なんて言えるはずがないので

ベルトルト「わからない…熱のせいか記憶が酷くぼんやりしてるんだよね」

熱のせいにしてしまおう。

ユミル「なんだ、熱のせいかよ…。」

ベルトルト「う、うん。そう」

ユミル「傷…残っちまってるな」スッ…

ユミルが僕の傷を撫でる。

ベルトルト「!」ドキッ

びっくりしたのかなんなのか、心臓は強く脈を打ち、触られた傷は…何と言うか、切ない。

ユミル「あ、すまん…まだ痛いよな」パッ

ベルトルト「あ、いや、うん…ご、ごめん」

ユミル「ああ…な、何か悪いな?」

ベルトルト「はは…」

何か気まずくなってしまった。

今日のユミルは何だか歯切れが悪いな…?

ベルトルト「あ、の…」

ユミル「何だ?」

ベルトルト「どうしたの?…なんか、ユミルらしくない」

ユミル「…」

また、黙った。

聞いてはいけないことだったんだろうか。

ベルトルト「あ、聞かれたくないことなら…」

ユミル「今日、夢を見たんだ」

ベルトルト「…?」

ユミル「それで、気づいてしまった。いや、自覚したんだろうな…」

ベルトルト「…?な、なにを」

ユミル「」ガタッ

ベルトルト「!?」ビクッ

ユミル「お前今日は訓練出ちゃ駄目だからな。絶対安静だ!それと、腕の傷。見られたらあれだから袖で隠しとけ。いいな!」

ベルトルト「え?あの、えっと」オロオロ

ユミル「じゃ!」バタン

ベルトルト「え…」ポツーン

ど、どうしたんだ…?本当に。

やっぱりユミルらしくない。

それと、何の夢を見たんだろう…。

自覚って一体何を…?

…今日のユミルはわからないことだらけだ。







ガチャッ

ベルトルト「ん…?」パチッ

ライナー「お、よう、ベルトルト。起きてたのか」

ベルトルト「いや、今起きたとこ…」ボーッ

あれ、いつの間に寝てたのか…。

ライナー…今は休憩時間かな。

ベルトルト「どうしたの…?」

ライナー「いや、ユミルにお前が熱で倒れたと聞いてな」

ユミルか…。

ベルトルト「別に、わざわざ来なくても良かったのに…」

ライナー「そういうわけにもいかんだろう…こっちはお前のことが心配でだな」ハァ

ベルトルト「相変わらずだね…」ハハハ

ライナー「そう言えば…ユミルが人に構うなんて珍しいよな。てっきりクリスタにしか興味が無いと思ってたんだが」

ベルトルト「ああ…まあ、僕ユミルと夜に会ってるから」

ライナー「何!?そんなこと、初めて聞いたぞおい…逢瀬か!?」

ベルトルト「え!?ち、違うよ!!!夢見が悪かったときに、たまたま…」

ライナー「ああ…何だ、そういうことか。お前が俺の知らないところで大人の階段を上ったのかと…」

ベルトルト「もう…そんなんじゃないよ」

ライナー「はは、俺もクリスタとそれくらい出来たらいいんだがな」


ベルトルト「…!」

ああ…兵士なんだ。


ライナー


そんなことが、出来るような立場だったなら


ベルトルト「ねえライナー」



僕達は幸せになれただろうか。














ベルトルト「僕らは人を好きになる権利を持ち合わせていないよ」




ライナー「…は……?何だ、急に」

ベルトルト「ライナー…また、兵士なんだね?」

ライナー「何言ってんだ…俺は元々」

ベルトルト「君は、戦士だよ」

ライナー「…だから、お前は何を」

ベルトルト「聞いて。僕は、僕らは…巨人だ。人間じゃない」ポロッ

ライナー「……あ…………」

ベルトルト「お願い。お願いだ…戻って、きて、ライナー…お願い……いなく、ならないで…」ポロポロ

ライナー「…あ…ああ…す、すまん……また、俺は……」

ベルトルト「う、うん。大丈夫…良かった…」グスッ

ライナー「…昼飯…置いていくな………すまん」ガチャッ

ベルトルト「…ありがとう」ニコ…

バタン




…やってしまった。

ライナーが人の涙に弱いと知ってて、僕は泣いてしまった。

「お願い」をしながら。

僕自身、かなり揺さぶられているのに…。

僕は、卑怯だ、臆病だ…最低だ。

こんな奴…恨まれて当然なのだろう。

それだけのことをしてきたのだから。

ベルトルト「…はあ……」グスッ

ガチャッ

ベルトルト「」ビクッ

ユミル「…よ」

ベルトルト「ユミル…!」

ユミル「あ、朝は急に出てってすまんな…」

ベルトルト「あ、ううん…僕の方こそ、嫌なことを思い出させたみたいで…」

ユミル「あー…いや、別に嫌なことでは無かったんだ」

ベルトルト「え、そうなの…?」

ユミル「まあ、うん。そうだな………飯食ってないのか」

ベルトルト「ライナーが置いてってくれたんだ。後で食べようと…」

ユミル「よし、私が食べさせてやろう」






ベルトルト「……は?」


ユミル「ほら!口開けろ!!あーん!あーん!!」グイグイ

ベルトルト「へ!?ちょ、何急に…んあ!…っぐ…」ゴクッ

ユミル「どうだ、美味いだろ」

ベルトルト「…いや、いつものスープだけど……」

ユミル「…可愛い気がねーな」

ベルトルト「…190超えの男に可愛い気を求めることの方が間違ってると思うけど」

ユミル「なんかやる気失せた。後自分で食え」

ベルトルト「そ、そこまでしといて…!?」

ユミル「私は教官に言われて様子見に来ただけだし」

ベルトルト「ええ…」

してほしかったわけじゃないけど、何だか上げて落とされた気分だ。

ユミルらしいと言えばユミルらしいんだけど、何か引っ掛かるような…。

ユミル「…熱は下がったか?」ピトッ

ベルトルト「…っ……!?……!!?」

おでこを触ってきた。

今日のユミル、やたらと触ってくるな…僕何かしたかな。

ベルトルト「あの、ちょ…ゆみ」

ユミル「ん…熱はもう無いな。お前、寝不足だったから…寝たら治ったのかもな」

ベルトルト「そ、そう…?」

ユミル「ああ。明日は訓練出られるぞ」

ベルトルト「本当?…良かった」

あまり長く休んでいては、成績が落ちてしまうかもしれない。

そしたら計画も台無しだ。

…何度も夢に見た故郷。

絶対…絶対帰る。帰るんだ…

ベルトルト「じゃあ…僕もう大丈夫だから…戻ってもいいよ」

ユミル「そうか?でもまだ心配だ。お前だけだとまた何をするかわからないしな」

…故郷に帰るためには…関わってはいけない。

これは僕がライナーに言ったことなのだから僕が守らないと。

ベルトルト「…言い方を変えよう。戻ってくれないかな?」

ユミル「…」

視線を感じる。

僕は俯いているが、ユミルは僕を見つめているのだろう。

ユミル「…ああそうかよ。私がいちゃ迷惑だよな」クルッ

ベルトルト「あ、違…」バタン

…善意でやってくれていたユミルを、突き放してしまった。

これが、僕からライナーに「お願い」していたこと。

覚悟はしていても胸がいたい。

ライナーだからこそ、壊れてしまうのか。




…僕が思ってた以上に、この世界は残酷に作られているようだ…。

今日の分終了
次はまたいつになるかわからんが…なるべく早く来るぜ
では

その翌日、熱がすっかり下がった僕は訓練に復帰した。

ライナーは相変わらず兵士で…僕が泣いていたことなんて微塵も覚えていないだろう。

アニもアニで心配してくれていた。

ライナーのことを話したら少し怒っていたけど…。

問題は…ユミルだ。

昨日のことで話しかけて来なくなるだろうと踏んでいたが…

ユミル「よおベルトルさん」

ベルトルト「ユミル…」

きっと根が良い人なのだろう、一度でも心配したら最後まで気にかけてくれる。

ユミル「もう大丈…」

ベルトルト「行こう、ライナー。今日は座学だろ」スッ

ライナー「お、おう…?」

ユミル「…」

その優しさが、僕には痛い。

ユミルといると、安心しきってしまうから。

血の色とユミルは、同じくらい安心する存在なのだと気づいてしまったから。

だから、だからこそ、僕達は関わってはいけない。

どうせ殺してしまうんだ…何もかも。




ライナー「おい…何かあったのか?ユミルと」

ベルトルト「…何でもないよ」

ライナー「言ってみろよ。お前はすぐそうやって溜め込むから…」

ベルトルト「…何でもないって言ってるだろ!」

ライナー「…」

アルミン「ど、どうしたの?二人とも…」

ライナー「アルミン…」

エレン「喧嘩か?珍しいな」

ミカサ「講義室の前で喧嘩は良くない」

ベルトルト「あ、ご、ごめん…邪魔だったよね」

ライナー「すまん。中入るな」

アルミン「いいよ、そんなに急がなくても。それにしても…ベルトルトが怒るなんて、よっぽどのことがあったんだね。
     良ければ、相談に乗るけど…」

ベルトルト「ああ…ごめん、何でもないんだ。ちょっとイライラしてて。ライナー、ごめんね」

ライナー「いや、俺もしつこく聞いて悪かった…座ろう」

エレン「じゃあ俺らも近くに座るか」

ミカサ「そうしよう」

アルミン「お邪魔させてもらうね」

ベルトルト「いいよ」

教官「そろそろ席につけー」

ベルトルト「…」ガタッ

教官「今日は前回の復習から始めよう。まず巨人の生態についてだが…」

解散式までもう何週間も無い。

僕…僕らには、もう分かりきった巨人の生態について復習している暇は無かった。

今日のこの時間、僕は"計画"について考えてみることにした。

ライナーが不安定なんだから僕がちゃんとしなければ。

確か今日は昼食のあと会議だったし…




トントン

ベルトルト「…ん?」

アルミン「ごめん、ベルトルト…」

ベルトルト「どうしたの?」

アルミン「マルコに本を借りてるんだよね?読み終わってたら、貸してくれないかなあ…」

ああ…あの話以外読んでいないな。

ベルトルト「読んだからいいけど…マルコに言った方がいいんじゃないかな?」

アルミン「それなら言ってあるよ。勝手で悪いけど…」

ベルトルト「いや、いいよ。じゃあ夕飯のあとでいいかな?昼食のあとはちょっとやることがあって…」

アルミン「全然大丈夫!ありがとう」

ベルトルト「はは…」

あの本…すっかり忘れてた。

渡す前に探さないとな…。







カンカンカンカン

教官「今日の座学はここまでだ。各自良く予習復習しておくように」

ライナー「ん…昼食か。行こう」

ベルトルト「ああ…う「ベルトルさん」

ユミル「一緒に飯食おうぜ」

ベルトルト「…」

ライナー「……ベル「行こうか、ライナー」

ベルトルト「…」スタスタ

ライナー「あ、おい………」

ユミル「…」

ライナー「…すまん」スタスタ

ユミル「…チッ」






ベルトルト「…」ハァ

また無視してしまった…。

思ったより…無視する方が辛いな。

無視される方がよっぽど気楽だ。

でも話してしまうともっと辛い。

僕らに、別の生き方は出来ないのかな…。

アニ「ベルトルト…」

ベルトルト「あ…」

アニ「もう来てたのかい?早いね。あんた、ご飯は食べたの?」

ベルトルト「…食べて、ない………」

アニ「…何で食べてこないのさ」

ベルトルト「食欲が無くて…」

アニ「…あいつは?」

ベルトルト「ライナーは…」

ライナー「ベルトルト!」タッタッタッ

ベルトルト「あ…」

ライナー「なんだ、ここにいたのか。捜したぞ」

ベルトルト「ごめん…」

ライナー「…ん?」チラ

アニ「?」

ライナー「おい、何でアニといるんだ?」

ベルアニ「!!」

…また、兵士なの………?




ライナー「あ…ああ!!今日は会議だったな…す、すまん」アセアセ

ベルトルト「お、覚えてたのか…」ホッ

アニ「…心配して損した」ハァ

ライナー「す、すまん………で、今日は解散式の翌日についてだろ?」

ベルトルト「ああ。僕がまた巨人になるんだよね」

アニ「うん、戦うまではしなくていい。超大型巨人についてどれくらいの対策をしているかちょっと見てみるだけだから」

ライナー「なるほどな。俺達は待機か」

ベルトルト「そういうことになるね」

アニ「…気を付けてよ」

ベルトルト「…ああ。もうこんなこと…終わらせよう」

そして、帰ろう。故郷に。

ライナー「じゃあ俺達は行くな。次は何だったか…」

ベルトルト「立体起動装置の整備じゃなかったっけ」

アニ「そうか。私はこっちから行くね」

ライナー「おう、じゃあな」

ベルトルト「気を付けて、ね」

アニ「」スタスタ

ライナー「…じゃ、行くか」

ベルトルト「うん」

―――――――――――――
―――――――
―――


ベルトルト「」キョロキョロ

今日は誰と同じ班だったっけ…。

名簿見るの忘れちゃったな。

マルコ「ベルトルト」トントン

ベルトルト「あ、マルコ…」

マルコ「今日の班は僕と…あとコニーだよ」

コニー「よろしくな!!」

ベルトルト「そうなんだ…うん、よろしく」

マルコ「じゃ、やろっか」

コニー「おう!」

カチャカチャ…

マルコ「熱はもう大丈夫?」カチャカチャ

ベルトルト「うん。もう大丈夫だよ」カチャカチャ

マルコ「そっか!よかった…皆心配してたよ」カチャカチャ

ベルトルト「ご、ごめんね…」カチャカチャ

マルコ「あはは、大丈夫。あとアルミンから聞いたんだけど、あの本読み終わったんだって?」カチャカチャ

ベルトルト「ああ…読み終わってるよ」カチャカチャ

マルコ「そっか!どの話が面白かった?」カチャカチャ

ベルトルト「えっと…少年と少女の色?だったかな」カチャカチャ

それしか読んでないんだけど…

マルコ「最初の話だね。あれは中々感動するよね」カチャカチャ

ベルトルト「あ…うん、そうだね…」カチャカチャ

最初こそ…まあ感情移入もした。

そのまま行けば感動し、涙するはずだっただろう。

だが所詮は物語…あんなことで感動出来るほど、僕は子供じゃない。

マルコ「今日アルミンに貸すんだろ?ネタバレすると凄い怒るから気を付けてね」カチャッ

ベルトルト「…わかったよ」カチャッ

コニー「マルコ!ここわかんねえ…助けてくれ!!!」ガチャガチャ

マルコ「え、僕達もう終わっちゃったよ!?」

コニー「はあ!?早すぎるだろ!くそー…どうすればいいんだ」

マルコ「えっと…ここはこうで…こうして」カチャカチャ

コニー「なるほど…さっすがマルコだな!」

マルコ「いや…皆…わかるから、ね?」

教官「33班!整備は終わったか!!」

マルコ「ハッ!先程終了致しました!!」

教官「そうか。次の班と持ち場を代われ」

マルコ「了解致しました!!」バッ

ベルトルト「…移ろっか」

コニー「おう!」カチャッ

マルコ「次は…あ、僕達は夕飯まで待機みたいだ。どうせだし食堂で待とっか」

コニー「そうだな…よし、行こうぜ!」

ベルトルト「僕、本取ってくるから先に行ってもらってていいかな?」

マルコ「ああ…うん、いいよ」

コニー「じゃあ先に行ってるなー」

ベルトルト「ありがとう」




ガチャッ

バタン

ベルトルト「…」ガサッ

どこにしまったっけ…?

確かこの辺に…

ベルトルト「あ、あった」

早く行こう。



ガチャッ

ユミル「…」

ベルトルト「!」ビクッ

ゆ、ユミル…!!?

ここ…男子寮、のはずなんだけど…。

む、無視だ無視…辛い、けど…。

ベルトルト「…」スッ

ユミル「…」イラッ

ダンッ!!!

ベルトルト「!!」ビクッ

か、壁に追い込まれた…どうしよう…。

ベルトルト「あ、あのゆみ「てめえ…」

ユミル「いい加減にしろよ…」

凄い怒ってる………当然、か。

ユミル「今日一日シカトしてくれやがって…」

ベルトルト「…」

ユミル「シカトする理由はなんだ?言ってみろよ」

ベルトルト「………」

それは…使命に支障を支障をきたすと思ったからで…

…いや、本当の僕を知ったら君が離れていくと思ったから…。

持つべきじゃない感情だとわかっているのに。

ユミル「…理由はねえのか?……余計に質が悪ぃ…」

ベルトルト「…」

ユミル「おい、まだシカトを続ける気かよ。…理由もなくこんなことされてりゃ私だって…流石に傷付く」

ベルトルト「…っ」

そんなこと…わかってる。

わかってる、けど………!!

ユミル「……だんまりか」

ベルトルト「…」グッ

ユミル「…チッ」ダッ

ベルトルト「!ゆみ…」

ああ…行っちゃった……。

傷付けたくなかった、のに…僕は…。

ベルトルト「…あ」スッ

視界の端に赤く光る物が映った。

これは…ユミルの髪留め?

ベルトルト「…気付かなかったんだ………」

どうしよう、今のままでは渡せそうにもない。

…持っておくか……。食堂に行かないと。






マルコ「あ、ベルトルト。本あった?」

ベルトルト「うん、あったよ。アルミンはもう点検おわってる?」

コニー「アルミンならトイレに行ったから…もうすぐ帰ってくんじゃねえかな」

ベルトルト「そっか…あ、来た」

アルミン「やあ、ベルトルト。お疲れ様」

ベルトルト「お疲れ様。はい、本だよ」

アルミン「あ、ありがとう!!マルコ、借りるね」

マルコ「どうぞどうぞ」

コニー「お前ら真面目だなー…本なんか読んで」

マルコ「コニーはもうちょっと読んだらどうかな…」

コニー「読むと眠くなっちまうんだよなー」

アルミン「あはは…」

ライナー「よう、ベルトルト。ここにいたのか。お前らもお疲れ」

マルコ「お疲れ様ー」

アルミン「お疲れ様」

コニー「おう!お疲れ!」

ベルトルト「あ、もう終わったの?」

ライナー「ああ。俺達も夕飯まで待機だ」

ベルトルト「そっか…」

ライナー「………ん?」グイッ

ベルトルト「わっ、な、何!?」

ライナー「左腕…傷、か?随分深…」

ベルトルト「な、何でもない!」バッ

ライナー「そうか?でも…傷が」

ベルトルト「何でもないってば!…僕は、平気だよ」

ライナー「お、おう…悪い」

ベルトルト「…いや、僕も…ごめん」



ガチャッ

サシャ「やっほーーーい!ご飯です!」

クリスタ「まだだよサシャ、夕飯まで待機ってだけだよ?」

ユミル「うるせえぞ…」

ベルトルト「!」

ライナー「く、クリスタ達も終わったのか?」

クリスタ「あ、ライナー!うん、終わったよ」

ユミル「おいゴリラ…クリスタに話しかけてんじゃねえ…」

ライナー「何だユミル…偉く不機嫌だな」

ユミル「…」チラ

ベルトルト「…」フイッ

ユミル「…どっかの誰かさんのせいでな」プイッ

クリスタ「ごめんね、ユミル帰ってきてからずっとこんな調子で…」

ライナー「ああ…いや、俺は平気だからなっ」ハハハ

ガチャッ

エレン「あーー腹減ったな…」

ミカサ「私達が最後だっただろうか…」

ジャン「あ、マルコももう終わってんじゃねーか!」

アニ「…」

ライナー「お、全員終わったな?」

サシャ「皆さん!もう!食べますよ!?食べていいんですね!?」

コニー「うわ!やめろサシャ!!!そのパンは俺のだあああああ」

マルコ「コニーもサシャも座って…」アセアセ

クリスタ「ユミル、食べよ?」

ユミル「…おう」クルッ スタスタ

ライナー「俺等も食べるか」

ベルトルト「………うん」

ユミル、髪留め他のに変えてる。

色も分からない、他の物に…。

僕と会った後、落としたのに気付いたのだろう。

…僕の知らない色を着けてることが…とても、不安に感じる。

そこまでユミルのことを想っているとでも言うのか?

そんな感情、持つべきじゃない。

片隅に置いておくのさえ危険なものだ。

そんなものを、僕は、持ってしまっている…。

さっきライナーに傷を触られたけど、ユミルの時みたいにはならなかった。

……駄目だ。

何も考えるな。

今はユミルと関わらないことだけを考えよう。

……でも、何故今になってこの傷は

切なく疼き始めるのだろう……………。

今日の分終わり。思ってたより早く来れて良かった…
傷が疼くって厨二かよ…
ではまた

わー…すごいなんかお待たせ。おはよう
思ったより夏休みって取れないもんだねごめんね…
保守ありがとう!あげます

…あれから、数日経った。

卒業試験も間近になった僕達は、それぞれ勉強や訓練に追われ、余裕を無くしていた。

ユミルのことを無視し続けていた僕は、それでいいと思っていた。

ユミルを考える余裕を無くせばこんなに悩まずに済むのだから…。



ライナー「明日も自習か?」

ベルトルト「うん…座学の教官が言ってたよ」

ライナー「そうか…いやー、試験準備期間って暇で仕方が無いな」

ベルトルト「そんなこと言ってないで、勉強しなきゃ…10位以内に入れなくなっちゃうよ」

ライナー「俺等は余裕だろ」ハハハ

ベルトルト「ちょっと…」ハァ

ジャン「何だ、そんなに余裕なのか?お前ら」

ベルトルト「そ、そんなことない…よ?」

マルコ「いや、でも君達は間違いなく10位以内…の中でも上位に入ると思うよ」

ライナー「そう言われるとちょっと照れる」

ベルトルト「もう…マルコまで………」

ジャン「羨ましいこった!俺も10位以内に入るつもりだが…エレンより上を目指してえな」

マルコ「お前は本当負けず嫌いだな」ハハハ

ベルトルト「まあ…でも、そうだね。入れるといいな…」

ライナー「よし、頑張るか」

ベルトルト「うん。このあと、自習室行こうか」

マルコ「あ!いいね。ジャンはどうする?」

ジャン「俺も行こうかな」

ライナー「じゃあ皆で勉強会だな!」

ジャン「おう。じゃあ昼飯食ってくるわ」

マルコ「君達はもう終わったの?」

ライナー「ああ。作業が早めに終わったからな」
ベルトルト「ゆっくりでも大丈夫だよ」ニコ

マルコ「そっか…じゃあ行ってくるね」

ベルトルト「うん……」ニコニコ…

ベルトルト「…………はあ………」

ライナー「……辛いな」

ベルトルト「…どうするのさ、勉強会なんて約束…これ以上、仲を深める訳にもいかないの……わかってる…?」

ライナー「…すまん、本当に…わかってはいるんだが……癖というか」

ベルトルト「……気を付けてよ……」

ライナー「ああ……………」

もうすぐ卒業だと言うのに、ライナーは時々兵士になってしまうから……不安、だ。

不安で、不安で、仕方が無い。

ライナー「…だが、自習室に行こうと言い始めたのはお前だからな」

ベルトルト「…言い訳しないでよ……」ハァ

でも勉強会しようって言ったのは君だし……なんて、反論とも言い難い言い訳しか出てこない。

ああ…焦るばかりで頭の中がまとまらない…。

解散式の翌日には、巨人にならなければ…いけない、のに。

ライナー「…なあ、そういえばお前………」

ベルトルト「?」

ライナー「あれはどうなのか?その…全色盲ってやつ。五年前と変わらないか?」

ベルトルト「ああ…治らない、って言ったじゃないか。今は記憶を頼りに色を思い出しているだけだよ」

ライナー「そ、そうか…悪い………そ、うか…ああ…大変だな…」

ベルトルト「…ライナー?」

ライナー「ああ、すまん…大丈夫だ。ここのところ…記憶が酷く不安定でな」

ベルトルト「…わかってるよ」

ライナー「お前にも…迷惑をかけてるんだろう?情けないな…」ハァ

ベルトルト「大丈夫だよ。僕だって普段から迷惑かけてるし…もう慣れたから、ね」

ライナー「…今の言葉は何か…胸に刺さる言い方だな…」

そう言って少し笑ったライナーは、本当に楽しそうに見えた。

ベルトルト「はは、お返し」

そう言った僕も、きっと楽しそうに笑った、と思う。

本当なら僕達は、笑うことも許されないはず…なんだろうなあ………。











キース「…では、104期生上位10人の名前を読み上げる!主席、ミカサ・アッカーマン!次席…」

今日は…訓練兵団解散式だ。

いよいよ…この時が来た、と言ってもいいし、来てしまった、と言ってもいいかもしれない。

明日には決行する…と言っても変身するだけなんだけど。

ついでに座標を見つけられたらラッキーかな…。

取り敢えずは超大型巨人に対してどれだけの対策を行っているか観察しておかないと…。

昨日のうちに僕は壁上にいてもおかしくない整備班に入れておくことが出来たし、準備は出来ている。

ライナーもアニも、怪しまれないような配置にしてあるし、大丈夫だろう…。

ただ一つ気掛かりなのが…いや、気にしないようにしてはいるんだけど…ユミルだ。

問い詰められて以来、ユミルも僕をいない者のように扱ってはいるが、妙な視線を感じる。

視線だけで監視されているようで、少し怖いし…勘づかれたら困る。

細心の注意を払って、使命に臨もう。

キース「…104期訓練兵!これにて解散!!!敬礼ッッ!!!!」

全員「「「ハッ!!!!!」」」

…本番は、明日だ。












ジャン「あー…明日から内地へ行けるって言うのになんで砲整備なんか…」

マルコ「口じゃなくて手を動かしなよ。終わらないよ…」

ベルトルト「…」

ジャンとマルコが同じ班か。

適当な口実を立てて抜け出そう…。

ベルトルト「ジャン、マルコ…あの」

ジャン「何だよ?」

マルコ「どうしたの?」

ベルトルト「このあと教官に呼ばれてて…ちょっと抜けても良いかな?」

ジャン「ああ、いいぜ。あれだろ?兵団の希望調査だろ?」

ベルトルト「あ、うん、そうなんだ」

マルコ「それじゃしょうがないね、急がなくてもいいから行っておいでよ」

ベルトルト「ありがとう…行ってくるね」

…いい感じに誤解してくれた。

これなら少しは怪しまれる可能性が減る…かも。

ベルトルト「ジャン、マルコ…あの」

ジャン「何だよ?」

マルコ「どうしたの?」

ベルトルト「このあと教官に呼ばれてて…ちょっと抜けても良いかな?」

ジャン「ああ、いいぜ。あれだろ?兵団の希望調査だろ?」

ベルトルト「あ、うん、そうなんだ」

マルコ「それじゃしょうがないね、急がなくてもいいから行っておいでよ」

ベルトルト「ありがとう…行ってくるね」

…いい感じに誤解してくれた。

これなら少しは怪しまれる可能性が減る…かも。

>>264間違えた

ベルトルト「!」

ライナー「…」

ライナー…

ライナー「…」グッ

ベルトルト「!…」コクリ

僕、頑張るよ…。





ベルトルト「…」

門の真上に来た。

と言っても、人に気づかれないよう立体機動装置で壁に張り付いている形だけど。

うわ…巨人が…いっぱいいるなあ…。

あまり良く見えないけど、五年も放置されて古臭くなった血痕もある。

…吐き気がする、な…。

でも僕が招いたことだ。

最後まで…責任を持ってこの任務を果たさなきゃ。

これは、ライナーが良く言っていたことだから…。

…そろそろかな………。

ベルトルト「ーーーーッ!!」ガリッ

カッ


ドオオオオオオオオオオオオン…

兵士「うわっ!!?」

ゴオオオオオオオオオオオ…ッ


エレン「熱ッ……!?な!!?何がーーー!!?」

コニー「うわあああぁぁ」

エレン「!?みんな!!クッ……!!」

エレン「立体機動に移れッ!」


エレンや…皆が見える…。

今更だけど…後悔なんてしてる場合じゃない。

しょうがないこと、だから。

…?ライナー?

何でそんなところに…え、あれは…

僕たちで作った手信号…?

えっと…か、い、へ、い、も、ん、を、こ、わ、せ…?

何で今になって…わ、わかった…壊すよ。

ドオオオオオオオオオンッ

エレン「!?」

トーマス「壁が壊された…」

コニー「まただ…また…巨人が入ってくる…
ちくしょう…やっぱり人類は巨人に…」

エレン「サシャ!!サムエルを任せた!!
固定砲整備4班!戦闘用意!!
目標目の前!超大型巨人!!」シャッ

ミーナ「……!!」

エレン「これは好機だ、絶対逃すな!」ダッダッダッ

エレン「壁を壊せるのは超大型だけだ!!こいつさえ仕留めれば……!!」ダダダダダ

エレン「……よう、5年振りだな…」

…エレン

君の、その目は…苦手なんだ…っ!

エレン「…っ」ダッ

…ひっ…こ、来ないで…!!!!

ブオンッ ズガガガガガガガガガガガ

エレン「…くっそ…!!!」パシュ キュイイイイ

うわっ!!?う、腕に…!!

こ、怖い…やめてよエレン…!!

エレン「…くっ!」パシュッ ヒュウウウウウ

エレン「鈍い!!いける!!」ギュイイイ

まずい…蒸気を、あげないと…っ!!

ピシッ ブワアアアッ

エレン「なっ…!?熱っ!?…くっ…行けええええ!!!!」ドオオオオオオッ

削がれ…っ!?

じょ、蒸発、しないとっ!!!

ブオンッ

エレン「……!?」





ベルトルト「…はあ、は…っ…は……」

怖かった…。

あんなエレンの顔…見たこと…ない。

いつかの夢のエレンより、何倍も怖かった。

ベルトルト「は、ああ…蒸発してよかった…はあ…」

そろそろ、戻らなきゃ…。

…マルコとジャンが僕を探し始めるかもしれないし。

……ユミルはどうしているだろうか…。

何でこの後に及んでユミルのことを…

それよりもライナーやアニだ。



…ライナー…僕はどうしてまた壁を壊さなきゃいけなかったの……?

とりあえず終わり
相変わらず短いのに期間が長すぎるのどうにかしたいなあ
あ、あと、保守はありがたいんだけど不快に思う人がいるようだから、sageてくれると助かるな
本文がまだ来ないのに長いことageられてるのはちょっと邪魔だからねー…
ではまた!

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年06月10日 (火) 14:14:09   ID: -clL8SMc

期待!

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