ベルトルト「僕の世界と」ユミル「私の色」(23)

上げ直しです。

僕は目が見えない。

…と言っても、見えないのは色だけだ。

全ての物が白黒に見える。

でも生まれつきそうな訳じゃない。

色が見えなくなったのは…五年前、壁を壊した日からだ。

取り敢えず内地の医者に診てもらったら、僕は「全色盲」という病気にかかったらしい。

それに、数万人に一人という確率でしかかからないから、前例も無ければ治療法もない。

だから僕はこれまでの記憶を頼りに、色を思い出すしか無かった。

生活に特に支障は出ないが、ライナーやアニには打ち明けている。

白黒の世界でも、やっぱり二人は頼りになる。

…あ、白黒以外にも、一つだけ見える色がある。








血の色。


五年前のあの日から、血の色だけが瞼の裏に焼き付いて離れない。

これだけはどうしても、ライナーとアニに言う気にはならなかった…。

白黒の中に一つだけ浮かぶ、血。

瞼を閉じれば思い出してしまうから、僕は最近不眠症に悩まされていた。

もうすぐ夜明け。

まだ早いので、誰も起きてこない。

言わば僕だけの時間だ。

こういうときにするのは、色を思い出すことだった。

目の前にある枕は…白、だ。

じゃあベッドを支えている骨組みは木で出来ているから…濃い茶色、かな。

僕の目には濃い灰色にしか映らないけど。





トンッ

ベルトルト「…ん?」

隣で寝ている彼が転がってきた。

珍しいな、寝相はいい方なのに。

故郷のことで不安なのかもしれない。

…不安なのは僕もだけど……。

ベルトルト「君の髪の毛は…ひよこみたいな黄色、だったかな」

小さい頃、ライナーがアニやべリックにひよこ頭と馬鹿にされていたのを思い出した。

ひよこ…昔は故郷にいっぱいいたな。

…帰りたいな。

……………顔を洗いに行こう。

ベッドから静かに降り、廊下に出る。

考えている間に太陽が出てきたようだ。

空が白い。

窓から見える空は晴れている…多分。

空は青かったんだっけな。

そういえば、アニの瞳も青色だった気がする。

…あれ、どんな青色だっけ。

確か空みたいな青色だったと思うんだけど……



…空ってどんな青色をしていたっけ。

ああ、またこれか。

幼い頃の記憶には限界がある。

僕は色を忘れ始めていた。

訓練兵三年目になってから特に酷かった。

血の色はあんなに鮮明に思い出せるのに

どうしよう。また、僕の世界から色が消えてしまう。

ああ、やだ、怖い、怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。



エレン「…ベルトルト?」




ベルトルト「…あ、や…あ、エレン………」

エレン「どうしたんだ?具合でも悪いのか?」

心配そうに聞いてくる。

…よほど酷い顔をしていたんだろうな、僕は。

ベルトルト「…ううん、何でもない」

エレン「…?そうか、じゃあな」

ベルトルト「うん…」

エレンが起きていると言うことは、もうすぐ皆起きてくるだろう。

早く顔を洗って準備をしなくちゃ。

今日は対人格闘だったな…

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―――――――

―――




キース「それでは、各二人ずつペアを組んで訓練を開始しろ!」

一同「「「「ハッ!」」」」

ベルトルト「あ、ライナー…」

ライナー「あ、悪い…クリスタと約束してるんだ。すまないが、他の奴と組んでくれないか?」

ベルトルト「…そっか、大丈夫だよ」

困ったなあ、ペアがいない。

アニ…は、エレンとか…

マルコや、アルミンも他の人と組んでる。

後は、話したことも無いような人達…



ユミル「よお、ペアがいないなら私とやらねーか?」

ユミル、か。

そういえば、ペアを組んだことなかったな…

ユミル「…おい?」

ベルトルト「!っあ、ごめん…いいよ」

ユミル「すまねーな。私のクリスタがお前の相棒に取られちまってよ」

ベルトルト「ああ…ごめんね」

ユミル「謝んなよ、お前のせいじゃない…っと、じゃあ私がならず者をやるぞ」

ベルトルト「うん」

ユミルが木剣を構えて僕に向かってくる。

真っ正面から向かってきたと思えば、地面を蹴って方向を変えた。

その様子から見るに、素人ではなさそうだ。

…まあ避けれるんだけど。

見てて思ったけど、ユミルって手が綺麗だな。

指がスラッとしてる。

顔もそんなに悪くない…コニーはどうしてブスって言うんだろう。

でも、目は苦手だ。

心を読み取られてしまいそうで、何か怖い。

…ただそんな目でも色が見えてるのかと思うと、少し羨ましい。

ベルトルト「あっ…」

ユミル「ん?」

ベルトルト「髪留め、落ちたよ」

ユミルのだろうな。

拾ってみて、ドキリとした。







色が、見える。

くすんだ赤色。

見えるってことは、血の色と認識しているのだろうか。

古くなって錆びた血の色に似ている。

気にしてはいなかったが、こんな髪留めを使っていたのか。

ユミル「…?早く返せよ」

ベルトルト「あっ、ご、ごめんね。はい、どうぞ」スッ

ユミル「…おう、ありがとな」

髪留めを長く見すぎたのか、ユミルから鋭い視線を感じる。

ちょっと、怖いなあ…。

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―――




サシャ「やっとお昼です!!コニー!パァンください!!」

コニー「やらねえよ!お前はじっとしとけ!!!」




ライナー「はは、元気だなあいつらは」

ベルトルト「…そうだね」

ライナー「あ、対人格闘の時はすまんかったな…」

ベルトルト「…ううん、平気。ユミルと組んだし」

ライナー「ユミルとか…珍しいな。あ、そういえばクリスタと飯を食う約束をしたんだが…いいよな?」

ベルトルト「…うん、いいよ」

最近、僕が色を忘れていくより早く、ライナーは使命を忘れている。

クリスタの話をすると、特に…。

それに兵士のライナーは僕の病気のことを知らない。

色のこと以上に、君のことが心配だよ………。

クリスタ「あ、ライナー!こっちの席だよ」

ライナー「おう、すまんな」

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