P「俺に足りないもの」 (62)

P「……んー」カタカタ

P「……むむむむ」カタカタ

ガチャ

P「ん?」

高木「……キミィ、まだ仕事かね?」

P「社長……ええ、まぁ」

高木「残業代を渋るわけではないが、少し根を詰めすぎじゃないかね」

高木「何か悩みでもあるなら、言ってみたまえ」

P「悩みというか……最近、皆のランクアップが停滞気味じゃないですか」

P「だからこう、打開策なんかを考えているんですけどいい案が浮かばなくて」

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高木「ふむ。確かに一時期に比べれば落ち着いているが……」

P「……俺に足りないものってなんなんでしょうね」

高木「足りないもの?」

P「当たり前の話ですけど、アイドルの皆は頑張ってます。努力の仕方も間違ってない」

P「でも、先に進めない。それはつまり、プロデュースする俺の力不足って事じゃないですか」

P「でもその力っていうのが何なのか。経験や知識じゃなくてこう……もっと別の何かが足りないんじゃないかと」

高木「ふむ……そうだな、私から見て……」

P「はい」

高木「いや。ここは他の者の意見を参考にした方がいいだろうな」

P「他の? 律子や小鳥さんですか」

高木「その二人も含めて、765プロ全員だよ」

P「社長、それは……」

高木「躊躇いがあるかね? 気持ちは分かるが、たまにはいいだろう。アイドルとそういった話をしてみるのも」

高木「うちの事務所の方針を思い返してみたまえ」

P「……分かりました。今度、聞いてみます」

高木「今度、というのはいかんよ。思い立ったが吉日というだろう。今日は無理だが、明日にでも聞いてみるといい」

P「あ、明日ですか?」

高木「ハッハッハ。私も結果を楽しみにしているよ」



P「うーん、社長にはああ言われたが……どう切り出せばいいんだ」

春香「あ、プロデューサーさん! おはようございます」

千早「おはようございます」

P「おはよう。春香、千早……二人か」

春香「何か用ですか?」

P「用というか何というか……ちょっと時間、いいか?」

千早「プロデューサーがそうやって言葉を濁すのは珍しいですね。私たちは大丈夫ですから、どうぞ」

P「助かる。唐突ですまないが、俺に足りないものって何だと思う?」

千早「足りないもの……ですか?」

春香「あ! 分かりましたよ!」

P「おっ、なんだ?」

春香「乙女心ですよ乙女心! プロデューサーさんはもっと乙女心を理解するべきです!」

P「お、乙女心ぉ? ちょ、ちょっと待ってくれ。それはどういう……意味なんだ?」

春香「恋愛とか、恋心とか、そういうのに鈍感な部分です」

P「いや、俺も別に人並みの恋愛感情はある……はずだぞ」

千早「プロデューサーには好きな人がいるんですか?」

P「……小学生の頃だけど」

春香「ホッ……じゃなくて! 例えば、私好きな人がいるんですって言ったらどうします?」

P「何!? 春香、相手は誰だ!? 場合によっては……いや、ここは個人として応援するべきなのか、いやしかし……」

春香「ほらっ。そういう部分が鈍感だって言うんです!」

P「ぬ? ……ああ、そうか。例えだよな。確かに、少し過敏に反応しすぎるかもしれん」

千早「……そういう話でもないと思いますが」

千早「あの、経緯を話してもらえますか。なにか話が明後日の方を向いているような気がするんですけど」

P「ああ、そうだな。実は――」カクカクシカジカ

春香「あー。そういう話だったんですか」

千早「社長から……そうですね、私が思うにプロデューサーに足りないものとは自信ではないでしょうか」

P「自信?」

春香「あー、分かるかも」

千早「今、私たちが伸び悩んでいると仰いましたが、ここまで上り詰めたのは誰の力だと考えていますか?」

P「……そういう事か。だが、俺は適正な評価をしてると思うぞ」

P「答えはお前たちアイドルの努力の成果であり、俺や律子、小鳥さんのサポートの賜物でもある、だ」

千早「では、その比率はどうですか」

P「比率? ……7:3かな。無論、後者が俺だ」

春香「それは違いますよ!」

千早「春香の言うとおりです。そこがおかしいんですよ」

P「いやいや。俺を持ち上げてくれるのは嬉しいが、お前らの方が何倍も頑張ってきただろう」

千早「私にとっては逆……いえ、2:8でプロデューサーの力のお陰だと思っています」

P「それは言いすぎ……主観が入りすぎだ。客観性に欠けてるよ」

速さだな

千早「そうですね。偏りがあるのは認めます。自分のやってきた事を過小評価するつもりもありませんし」

千早「ですが、今のを主観というのならプロデューサーの考えも主観ではないですか?」

P「……俺は客観的に考えているつもりだが」

春香「絶対に間違ってます! 私だって千早ちゃんと同じで、プロデューサーさんにはいっぱい助けられてると思ってます!」

千早「二対一……少なくともこの中では私たちの意見が客観性に近いようですが?」

P「むぅ」

春香「……プロデューサーさんが私たちの力を信じてくれているのは嬉しいです。でも」

春香「たまには、同じくらいプロデューサーさん自身を認めてあげてもいいと思います」

P「…………」

P「……自信ねぇ」

P「千早だからこそ出た……いや、あの千早が2:8って言ったんだよな。自分を2って」

P「それに俺自身を認める、か……」

亜美「お、にーちゃん! うろうろして、どったの?」

P「よう亜美。それにあずささんも」

あずさ「何か考え事ですか~?」

P「ハハハ。ま、そんなとこです。伊織はいないのか?」

亜美「いおりんならやよいっちと遊んでると思うよ。いおりんに用事?」

P「そういうわけじゃないが……二人とも、ちょっと時間貰えるか」

あずさ「構いませんよ~」

亜美「なになに、何かお話?」

P「ああ。実は昨日――」カクカクシカジカ

あずさ「そんな話を……」

亜美「ぬっふっふ。亜美には分かるよ。にーちゃんに足りないのはズバリ! 速さだー!!」

P「速さが足りない!! ……って、そういうネタはいいから」

亜美「ありゃりゃ」

あずさ「う~ん、プロデューサーさんに足りない部分ですか」

P「まぁ、足りないとか不満みたいなものとか、ですかね」

あずさ「半分は解決しちゃったんですけど、それでもいいですか?」

P「え、半分?」

亜美「んん?」

あずさ「プロデューサーさんにはもっと頼って欲しいなと思ってたんです」

亜美「あぁー。なるほど。にーちゃんってワンワンな部分あるもんね」

P「ワンマンって言いたいのか。でも、俺そんなに頼ってませんか?」

亜美「自覚ないの? じゃ、直近で誰に何をたよったか言ってみてよー」

P「一昨日、急な仕事が重なって貴音に一人で現場行ってもらった事とか」

亜美「ダメダメ。あずさおねーちゃんが言いたい事一ミリも理解してないYOー!」

P「えっ、何がダメなんだ?」

あずさ「え~っと、それは他に方法がなくて仕方が無い場面ですよね。そうじゃなくて」

亜美「もっと普段からたよっていーよって事!」

P「ん? ん?」

亜美「もう! なんで分かんないかなー」

あずさ「例えばですけど、たまに飲みに行くとき、プロデューサーさん愚痴って言いませんよね」

P「バンバン言ってるじゃないですか」

あずさ「私や小鳥さんの愚痴や悩みに同調して、ですよね?」

P「そんな事は……」

あずさ「後は、そういうのを言い出しにくい雰囲気の時とかだけわざと率先して」

P「……買い被り過ぎですよ」

あずさ「プロデューサーさんのそんな心配りは凄く嬉しいんです。けど、気遣われるだけじゃ寂しいと思いませんか」

あずさ「だから、さっき言ったんです。半分解決したって」

亜美「こういう相談してくれる事、全然なかったもんね」

P「…………」

P「もっと頼ってくれ、か」

P「まさかそんな答えを返されるとはなぁ……」

響「はいさーい! あ、プロデューサー!」

貴音「おや、貴方様」

P「響、貴音。二人とも今来たのか」

貴音「はて。何か悩み事でも?」

P「貴音はいきなり核心を突いてくるな」

響「えっ、プロデューサー悩んでるのか!?」

P「まぁ、悩んでるというか相談があるというか。ちょっと聞いていいか」

響「もちろん! 自分と貴音が何でも答えて見せるぞ!」

P「助かるよ。実は――」カクカクシカジカ

貴音「貴方様に足りないものですか」

響「うー。プロデューサーは今のままじゃダメなのか?」

P「ダメだと思うから聞いてるんだ」

響「自分はそのままでいいと思うぞ……けど」

P「けど?」

響「もうちょっと構って欲しいかな……なんて」ボソッ

響「あ、いや、今のナシ! なんでもないぞ! なんでもないから!」アタフタ

P「わ、分かったから落ち着け!」

貴音「では、私から一つよろしいですか」

P「あぁ。元々こっちから聞いてることだし、頼むよ」

貴音「貴方様は、私の事をどこまで知っていますか?」

P「うーん、質問が曖昧だな。能力とか特技なんかは分かるが、そういう事でいいのか」

貴音「いえ。どちらかと言えばより個人的なものです。例えば、好きな食べ物、交友関係など」

P「好きな食べ物はラーメンだろ。交友関係は……まぁ、響とは特に仲がいいよな。他の皆とも良好だろ?」

貴音「では、最近見つけたお気に入りのお店などはどうでしょう?」

P「そんな店があったのか。どこなんだ?」

貴音「……貴方様に足りないものはそれだと、私は思いますよ」

P「は? いや、待ってくれ。意味が分からないよ」

貴音「少し前の貴方様ならば、この程度の情報は既に知りえていたはずです」

P「……難しいな。もう少し分かりやすく説明してくれないか」

貴音「ふむ。今の貴方様にはもう少し直接的な表現をした方が良いようですね」

P「察せなくて悪いが、そうしてくれると助かるな」

貴音「最近の貴方様は私個人をあまり見ていないように感じる、と言っているのです」

P「貴音自身を……? そんな俺は」

貴音「……貴方様は亜美や真美には話を聞きましたか?」

P「亜美とはさっき。真美はまだだけど」

貴音「では、続きは真美に任せましょう。響も適任だとは思いますが、まだ少し気持ちが昂ぶっているようなので」

響「あうぅ」

P「……そうみたいだな。分かった。響は任せるぞ」

貴音「はい……貴方様なら、きっとすぐ答えが見つかりますよ」

P「貴音はいつも意味深だよな」

P「俺がアイドルをちゃんと見れてない、か」

P「それに響。構って欲しい……って、もしかしてそういう意味なのか?」

真美「うんうん唸って、どしたの?」

P「うおっ!? な、なんだ真美か」

美希「ハニー、お疲れなの?」

P「美希もいるのか。ちょうどいい。少し聞きたいことがあるんだが、いいか」

真美「別にいいよ?」

美希「ハニーの頼みは断らないの」

P「実は……」カクカクシカジカ

真美「足りないものねぇ……分かった! 速さが――」

P「それはもう亜美が言った。流行ってんのか、そのネタ」

真美「ちぇっ、先越されてたかー」

美希「あふぅ。ハニーに足りないのはミキだと思うな」

P「ミキ? 幹……芯が通ってないって意味か?」

美希「違うの。ミキはミキなの」

P「あのな、俺は真面目に――」

美希「冗談だよ」

P「はぁぁ」

美希「……今日だけは、だけど」ボソッ

P「……結局、何か思いつくものはあるのか?」

真美「そりゃあるっしょー」

美希「ハニーに足りないものなんてお見通しなの」

P「それは?」

美希「ハニーにはお昼寝が足りないって思うな。ミキと一緒にお昼寝しよ?」

真美「いやいや。にーちゃんに足りないのはゲームだYO! 真美とゲームするのが正解っしょ!」

P「お、お前らなぁ……」

真美「まーまー、そうカタくならずに」

美希「ミキはいたってマジメだよ。ハニーはお昼寝するべきなの」

P「仮にも仕事中にそんな事できるか。万が一律子や社長に見つかったら……」

美希「律子……さんは怒るだろうけど、でも怒るだけで許してくれると思うよ?」

真美「そだよー。にーちゃん、最近肩に力入りすぎっしょ」

美希「たまにはだらしなくてもいいの。お仕事モードのハニーはカッコいいけど、だらしないハニーも可愛いし」

真美「付き合い悪いしさー。真美たちとゲームしたのどんだけ前だと思ってんの」

P「どんだけって、ええと……」

P「……」

美希「あふぅ。気付いたのなら、ミキはもう寝るね」

真美「今日はいいけど、今度ゲームやろうね」

P「そうだな。そうだよな。……ありがとな二人とも」

P「まさかゲームが足りないって言われるとはな」

P「それに昼寝、か。全くムチャクチャだ」

P「でも、それも正解なんだろうな……」

雪歩「プロデューサー、お茶どうですかぁ?」

P「ああ、頂くよ。いつもありがとう」

真「何か考え事ですか。眉間に力入ってますよ」

P「そうか? そうかもな……二人ともちょっと今、時間あるか」

真「構いませんけど」

雪歩「何かお話があるんですか?」

P「実は昨日社長にな……」カクカクシカジカ

真「なるほど。足りないものですか」

雪歩「プロデューサーに足りないもの……」

真「あ、男らしさとか!」

P「俺、そんなにナヨナヨしてるか?」

真「そうじゃなくて、こう自然にお姫様抱っこしてくれるような」

P「真、それは多分男らしさというより王子様らしさとかそういう類だと思うぞ」

真「あれっ?」

雪歩「……あのぅ、今日のお昼ご飯って何でした?」

P「えっ、昼?」

P「今日は色々雑事もあったし、皆に意見聞いてまわってたからゼリー飲料で済ませたが」

真「えー……ちなみに、朝は?」

P「コンビニでパン買って食ったけど」

真「昨日の夜」

P「なんだったっけ。えーと、コンビニで弁当買ったな」

真「昨日のお昼は、おにぎり食べてましたよね。確か二つ」

P「よく覚えてるな……当たってるし」

雪歩「やっぱり。プロデューサーに足りないのは栄養ですぅ!」

P「む。これは……いやでも一昨日は小鳥さんやあずささんと飲みに行ったし」

真「それで適切な栄養価を取れてると?」

P「言えないよなぁ」

P「で、でもこれくらい何とも無いぞ? 食べるときは食べてるし、そもそも食べる時間も――」

雪歩「そういう問題じゃないです!」

P「うっ……」

真「雪歩の言うとおりですよ。後、付け加えるなら安心感も足りません」

P「あ、安心感?」

真「最近のプロデューサー、いつ倒れてもおかしくないみたいに感じますよ」

雪歩「たまにフラフラしてて、凄く心配になります」

P「そ、そうだったか?」

雪歩「そうなんです!」

P「……申し訳ない」

真「アイドルは自己管理が大切ですけど、それはプロデューサーにも言えるんですから」

P「……御尤もです」

P「雪歩も真も……凄かったな」

P「特に雪歩。声を荒げて……俺の為に」

P「心配をかけてた、か……」

伊織「何辛気臭い顔してんのよ」

やよい「プロデューサー、だいじょうぶですか?」

P「ん、大丈夫だ。二人は何かの話中か?」

伊織「まぁね。で、あんたはどうしたの」

P「あー。実は今皆に色々聞いてまわってるんだが……」カクカクシカジカ

伊織「足りないもの、ね」

やよい「むずかしい事はよくわからないですけど、プロデューサーに必要なのはお休みかなーって思います」

P「休み? 休憩とかか」

伊織「どっちかっていうと休日の方よね」

やよい「うん。プロデューサーが休んでいるところ、あんまり見てないなって」

P「そりゃ、休みの行動なんて見せるもんじゃないしな」

伊織「バカ。あんたが事務所に居ない日を見てないって事でしょーが!」

P「うっ。わ、分かってるよ。でも今は色々忙しいだろ」

伊織「あんたの言い分も分かるわよ? けど、だからこそ今何かあったら大変でしょ」

やよい「プロデューサーに何かあったら、みんな心配します」

P「……そうだな。雪歩たちにも同じ事言われたよ」

伊織「もう一つ。休みもそうだけど、自分への投資ってちゃんとしてる?」

P「投資? 将来に向けての貯金とか、仕事用のスーツとかそういうのか?」

伊織「言い方が悪かったわ。趣味にお金使ったり、時間割いたり……自分の事、大切にしてる?」

伊織「元からそういう傾向はあったけど、最近のあんたって自己犠牲が過ぎてると思うわよ」

P「……」

伊織「全部が全部、悪い事だとは言わない。でも良い事だとも思わない。この意味、わかるでしょ」

やよい「ええと、伊織ちゃんと似たような事かもしれませんけどプロデューサーいつも私たちに優しいじゃないですか」

やよい「それをそのまま自分にしてあげてもいいかなーって」

良いSSだな

伊織「ここまで聞いて、あんたの感想は?」

P「……耳が痛いな」

伊織「痛いって事は自覚あるわけね。ならいいじゃない」

やよい「あの、わがまま言ってごめんなさい」

P「やよい、今のどこがわがままなんだ。謝る必要は無いよ」

P「ここは俺がお礼を言う場面だ。二人とも、ありがとう」

やよい「はいっ」

伊織「ま、これに懲りたらちょっとは自分と向き合いなさいよ」

P「そうだな」

P「……やよいはやっぱりお姉ちゃんなんだな」

P「伊織にもあそこまで言われて……どっちが年上なんだか」

律子「何、ぶつくさ言ってるんです?」

小鳥「なにやら色々お悩みのようですね~?」

P「アハハ……口に出てましたか。まぁ、色々と」

律子「足りないものを聞いてるんですってね」

P「なんだ。聞いてたのかよ」

小鳥「亜美ちゃんや真美ちゃんが嬉しそうに教えてくれましたよ」

P「あいつら……」

律子「皆、プロデューサーが心配なんですよ」

P「……そうだな」

小鳥「で、私が思うプロデューサーさんに足りないものですけど」

P「お、さっそく答えがあるんですね」

小鳥「ズバリ! 個性です」

P「こ、個性?」

小鳥「うちの事務所は個性派揃いですから。その中で光るためには口癖とかあった方がいいなぁと」

小鳥「例えば語尾にピーを付けるとか」

P「なるほどピー……うん、無理がありますよね」

律子「だったらノらないで下さいよ」

律子「私からは一つだけ……時間です」

P「時間? あぁ、確かに足りないな。全然足りない。企画も営業も、動ききれてないよな」

小鳥「そういう意味じゃないですよぉ」

律子「プロデューサーは、あの子達が今伸び悩んでいる事を問題に思ってるんですよね。それは自分の力不足だと」

P「あぁ。律子だってそうだろ?」

律子「否定はしません。けど、今までとこれから、速度が違う事はそんなにおかしいことですか?」

P「……目標は必要だろ」

律子「そうですね。皆、一日も早くトップアイドルになる事を目指しています」

律子「けれど、プロデューサーのいう早さは皆の思いと一致していますか?」

律子「私は、プロデューサーに足りないのは早さなんかじゃなくて、むしろ逆だと思います」

P「逆……もっとゆっくりしろと?」

律子「言わば、結果を待ってあげる時間です」

小鳥「私も律子さんと同じですよ。皆、ちゃんと成長してるじゃないですか」

小鳥「プロデューサーさんは、アイドルの皆に無理をさせたくないから自分の分で補おうとしてるんですよね」

小鳥「でも、それって気持ちがチグハグな早さで……なんていうか765プロらしくないです」

P「765プロらしさ……」

律子「うちのアイドルたちの一番いいところって何だと思います?」

P「それは……」

小鳥「きっとそれが、今のプロデューサーさんに足りないものですよ」

P「……」

P「……ふぅ。これで全員、か」

P「参ったな。色々参った」

高木「おや、君一人か。ちょうど良かったよ」

P「社長……その、小脇に抱えているのは?」

高木「ハッハッハ。君の足りないものについて私からは言わないが、代わりに秘密兵器を用意していたんだよ」

P「秘密兵器ですか?」

高木「これだよ」スッ

P「こっ、これは!?」

高木「プロデューサーに必要なあらゆる力をカバーする高性能ヘルメット『Pヘッド』だ」

高木「これさえあれば誰でも一流のプロデューサーになれるのだよ!」

P「す、凄い! ……でも、お高いんでしょう?」

高木「ふふふ。今ならズバリたったの765円だよキミィ!」

P「おお、安い! これは買いですね!」

P「…………って、何やらせるんですか」

高木「いやいや、君の顔つきが昨日と違っていたのでね。思わずついというやつだよ」

P「用意周到に準備してきてるじゃないですか……」

高木「ふふふ。皆に聞いてまわったようだが、何か掴めたようだね?」

P「掴めた……いえ、見えなかったものが見えるようになった、という方が合ってるかもしれません」

高木「ほう?」

P「自分自身のこと、アイドル個人個人のこと、見えてるつもりで見ようとしていなかったもの……」

P「……俺、結構皆に慕われてるんだなぁと」

高木「ハッハッハ。今更だねぇ」

P「それから、やっぱり皆アイドルなんだって思い直しました」

高木「今まではアイドルとは思ってなかったという事かね?」

P「いえ。ただ、改めて思ったんです。話をして、元気を分けて貰って……嬉しい事だなと」

高木「惚れたかね」

P「とっくの昔から惚れてますよ。じゃないとプロデューサーなんてやってません」

高木「ははは、それはそうだ」

P「……社長」

高木「ん?」

P「今回はありがとうございました」

高木「私は何もしていないよ」

P「……俺、765プロでよかったです」

高木「ふむ。その先は酒でも酌み交わしながら聞いたほうが良さそうだな」

P「いいですね。ですが、それはまたの機会で」

高木「何か用があるのかね」

P「いえ。今日はちゃんと休まないと。皆の気持ちを蔑ろには出来ませんから」

高木「そうか。では、次の機会を楽しみにしているよ」

P「はい」


終わり

まさか>>10に速さで負けるとは……

完結した結果の感想が怖いが、>>34のお陰でもういいやって思えた。いい意味で。

読んでくれた方、ありがとうございます。

気が付いたらそこそこの数のSS書いてた。
のに、シリアス少ないから書いてみようと思った。
こうなった。

後味を悪くするかっこ悪い行為かもしれないが、
数的に区切りが良かったので良作凡作駄作含め過去作まとめて見た。
晒すと自分の引き出しの狭さとか色々バレるけど。今作も結構ネタ流用してるし。

P「……」ジー
P「EXEC_765」
P「Pヘッドに飽きた」
P「Pヘッド大図解?」
P「アイドルプラスプロデュース」
P「トランプで遊ぶ」
P「ぷちどるぱわー」
P「フリーゲームで遊ぼう」シリーズ
P「ホワイトパーティ」
P「メインヒロインってさ」
P「亜美たちは元々入れ替わりでやってたんだよな」
P「俺はプロデューサーだ! プロデューサーでたくさんだ!」
P「俺はプロのデューサーだ」
P「皆の個性がブーストした」
P「給与明細見られた」
P「緊急脱出装置だ」
P「事務所で寝泊り」
P「重大発表がある」
P「他の事務所を見て気付いたんだが」

以上、名前順。

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