絹旗「最近浜面が超冷たいんですが」(725)

禁書の浜面×アイテム物です。

黒夜中心ですが、できれば全員満遍なく。

はじめからデレ9:ツン1ぐらいの割合になるかと思います。

遅筆ですが、どうかよろしくお願いします。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1369845075



「最近浜面が超冷たいんですが」


珍しく二人だけで昼食を取ったある日の午後、
絹旗最愛が、不意にそう告げた。

「はぁ?」


余りにも唐突で脈絡のないその言葉に、
自分でも呆れるほど気の抜けた声で問い返す。


「だから、浜面が最近、超!冷たいって言ってるんです!」


自分の気のない返事に焦れたのか、絹旗ちゃんは語気を強めて言い直した。




「…どこが。」


言われて思い返してみるものの、少なくとも自分の記憶には、
浜ちゃんが絹旗最愛に対し、冷たく当っていた事など只の一度も無い。


一昨日だって雨が降る中、前々からの約束だと言って、ご丁寧にも相合傘で、
いつものつまらない映画を見に、二人で出かけたぐらいなのだ。


新参者の自分はもちろんの事、れっきとした恋人である能力追跡でさえ、
定期的に二人っきりで出かける口実のある絹旗ちゃんの事を、羨ましがってさえいる。


「私が言ってるのは、超そういう事じゃあ無いんです!」


思ったことをそのまま告げてみると、案の定絹旗ちゃんは不満そうに口を尖らした。




「そりゃ映画ぐらい超見に行きますよ!超約束してましたし、浜面だって趣味の超一つだって言ってくれてますし!」

「私が言ってるのは!超そういう事じゃあ無いんです!」

「良いですか、黒夜。フレメアが来るまで、浜面の膝の上は私の超特等席でした。」

「滝壺さんや麦野は超多分体格の問題なんでしょうね。その場所に座ろうともしませんでしたし、私の事をどかそうともしませんでした。」

「それがフレメアが来た事で超全てが変わってしまったんですよ!」


熱く語る絹旗のその姿に、自分は言葉を失っていた。



当然の事ながら、それは気圧されていたからではない。
あまりにも下らない理由に、呆れ果てていたからだ。


「え、は?それが理由?」

「フレメアが来て浜ちゃんの膝を独占できなくなった。それが浜ちゃんが冷たくなったって理由な訳?」


そんな私の問いに、呆れたようなため息をつくと、絹旗は焦れったそうに言葉を続ける。


「そんな訳ないでしょう。大体私だって四六時中浜面の膝の上に座ってるわけじゃ無いんですし。」


話は超最後まで聞いてくださいと、勿体ぶると、彼女は口に出すのすら忌々しいと言わんばかりに、
苦々しく顔を歪めた。



「話は超昨日の夜のことです。」

「その時私は何時ものように浜面の膝の上で、二人で前日に見た映画の感想と、超次に見に行く映画の予定、その他諸々を話し合っていました。」





『浜面、昨日の映画は超最高でしたね!』

浜面の膝の上に座ったまま、絹旗はその逞しい胸板に頭を擦り付け、
自身の喜びを包み隠さずに浜面に伝える。

浜面の方でも特に嫌がる風でもなく、かと言って過度に照れる事もなく、
ただ当たり前の事として、それを受け入れていた。




『ああ、久しぶりに大当たりだったな。滅茶苦茶面白かったよ。』


頭を撫でながら浜面も優しく答える。


『私も浜面と一緒に見に行った映画が超当たりだったのは超嬉しいです!』


その手の動きにくすぐったそうに身を捩らせながら、絹旗も弾けるような笑顔を浜面に向ける。


『そう言ってもらえるとこっちも嬉しいよ。次の映画も決めてあるんだろ?』



『は、はい!再来週なんですけど、超面白そうな映画があるんですよ!レイトショーなので、映画見たあとで二人で超ついでに外食もしてこれますし!』


『ああ、分かった、どっか美味そうな店探しとくよ。また映画館の場所、教えてくれよな?』


『はい!』










「その時点で浜ちゃん全然冷たくないんじゃない?」


長々と続けられる惚気に、とうとう我慢できずに口を挟む。


「超最後まで聞いてください言ったでしょう。問題はここからなんです。」


頬を膨らませながら抗議する絹旗だが、見る限りでは、
話を遮られたこと、というよりも、
浜面との甘い思い出に浸っているのを邪魔された事に機嫌を損ねているらしい。

こんな下らない話に長々と付き合ってもいられない。
さっさと終わらそうと、露骨にため息をついて、手で話を促す。


「まあ、ここまでは超良かったんですよ、ここまでは。」








『えへへ、映画も超楽しみですけど、浜面とのご飯も超楽しみですよ。」

『あー、あんまり期待しすぎんなよ。そんなに高いとこには連れてけないから。」

『全く、超甲斐性なしですね、浜面は。まあでも構いませんよ、超安くても。下手に高い所に言って、映画に行く回数が減ったら超嫌ですからね。』









「だから結局デレてるだけだよね絹旗ちゃん。」


本題に入らないのならばまあ我慢はできる。
だが浜ちゃんとのイチャイチャを自慢されるのには些か我慢の限界というものがある。


「超違います!ここからが問題なんですから、落ち着いてください!」


こちらの露骨な呆れ顔に、ようやくこちらの意図が多少なりとも伝わったのか、
多少慌てながら絹旗ちゃんが弁明する。


「問題って言っても何があんのよこの状況で。」


「…あの女が来たんですよ、超優しい浜面を超惑わせる魔性の女が。」


短いですが今回はこれで以上になります。

余り頻繁な更新はできないかもしれませんが、なるべく早くに投稿します。

クズ浜面いらね。さっさと消えろ

タイトル詐欺みたい

乙!
また続きが楽しみなのが増えたわ

>>12
そーゆー事言うんじゃありません!ママ怒りますよ!?

新約7巻は読んでないのか?
確かに浜面はあらゆる面で上条さんや一方通行に劣る。
けどな、彼なりに頑張ってんだよ!

ところで俺達のヒーローこと上条さんの出番はありますか?

乙おつ
浜黒とか超期待

続き期待

ラッキーマンだからね浜面は 全部都合よく回るよ(笑)

たとえどんなに主人公補正が効いていたとしても上条や一方と比べればかなりマシな主人公だと思うんだが

はまづらは応援できない

外野がクソうるせえ

乙デレる絹旗が超可愛い

>>15
そいつは他のスレでも同じ事を書いているやつだから触れるな
てか、嫌いなのは別にいいけどレスすることじゃないと思う……

>>19
馬鹿言うんじゃございません。
浜面みたいなキャラは逆に主人公補正があっちゃいかんのよ。
そもそも主人公補正ってのはどんな作品の主人公にも付き物とも呼べるシステム。
上条さんみたいな王道正統派主人公ならどんなに補正があっても問題ない。
逆に一方通行みたいなダークヒーロー、浜面みたいなアンチヒーローには補正はあってはならないと思うのよな。
浜面のコンセプトは「どんなに酷い負け方をしても前に進める主人公」だからね。

>>20
滝壺寝てろwwwwwwwwwwwwww

>>21
サーセンwwwwwwwwwwwwww

>>23
あ、そうなの?
何だよマジレスして損したわwwwwwwww

連投メンゴ!

>>1氏は以前何か書いてた?

浜絹なのかなー?期待。

黒夜中心なんだから浜黒なんじゃね浜面×アイテムともあるけど
タイトルは絹旗使わず
黒夜「◯◯」か浜面「◯◯」でいいのに

>>25いい加減メール欄に半角小文字でsageって入れてレスしろ

>>28
超済まぬ!!!

絹旗どんだけフレメアに嫉妬してんだwwwwww

いいぞ、続けてください。

浜面って酷い負けってあったっけ?

上条さんや一方さんの方がよっぽど
きっついダメージ食ってる気がする

>>31
げんころ+主人公補正+様々な人脈バックアップありの上条
初登場から最強で弱体化してなお強い一方通行

この二人と比べたら浜面は常に無理ゲー強いられすぎ。

楽しみ

浜面は主人公化さえしなけりゃ良かったのに…
土御門やステイルのポジションに徹してた方が今よりも輝いていただろうて。
中途半端に主人公になってしまったせいで魅力激減だよホント…

クズ浜面しね。キモい

>>35
新約1巻以降の浜面は微妙だけど別に嫌いって程でもないのよな
つーかお前は言い過ぎwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
何の怨みがあんの?

まぁかまちーが活躍させたがるから仕方ないね 

ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


特に理由のない暴力が浜面を襲う!

年下に妬きモチやく最愛ちゃん可愛い。

上条信者が浜面アンチに必死すぎで笑える

麦野は浜面でこそ輝く

>>41
一方厨だろJKwwwwwwwwwwwwwwww
此処での浜面アンチもそうだが、一方厨は上条アンチにも必死だし、
厨や信者ってぇのはつくづくファンとは別の生き物だって思うわwwwwww
行儀悪過ぎwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
特に一方厨のキモさは異常wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

てか何でこんなに浜面嫌われてんの?

絹旗メインかと思ったら黒夜だった
デレすぎてきめえ

>>44
一部に粘着な荒らしがいるだけ。

おつー
なんてこった
ここは砂糖の国だった!

いいねぇ


たくさんのレス、ありがとうございます。

一応は黒夜メインですがタイトル詐欺にならないよう、
絹旗も可能な限り増やしていきます。








『にゃあ…浜面?』

『おお、フレメア、どうした。』


絹旗の頭を撫でながら、浜面は現れたフレメアに優しい声をかける。


『浜面、大体絹旗と映画見てきたの?』

だが、そんな浜面の優しさにも関わらず、フレメアの表情は晴れない。



彼女の太陽のような笑顔は、見るものを幸せにする。
だからこそ、彼女の笑顔が曇れば、見るものの心を暗くしてしまう。


彼女を実の妹のように可愛がる浜面にとって、それは尚更だろう。


『ああ、前からの約束でな、すげえ面白かったぜ。な?絹旗。』


心に生じた僅かな不安を振り払うかのように、浜面は殊更に明るい調子で絹旗に話しかける。


『ええ、超最高でした!また「二人」で映画を見に行きましょう!』



浜面の胸板に頬を擦り付けながら、絹旗は甘え混じりの明るい声で答えた。

その素直な眼差しと笑顔は、浜面を目を奪わせるほどの力を確実に持っていた。

だが、結果的にはそれが災いしたのかもしれない。

頬を膨らませ、不機嫌を露にしていくフレメアに気づくことができなかったのだから。



『…にゃあ。』

『ん?』

『浜面…抱っこ。』


拗ねた表情のままで、フレメアは浜面へ両手を差し伸べると、
そのまま自分を抱きとめるよう、要求する。



『はあ!?』


『え、お、おいフレメア…』


ある意味では至極順当な、そして当事者達にとっては突拍子も無いその要求に、
それぞれが異なった反応を見せる。


『抱っこ!』


その反応を半ば無視して、フレメアは再び浜面へと話しかける。

お願いと言うよりも我が儘と言った方が相応しいかもしれない彼女の言葉に、
浜面は困ったように頭をガシガシと掻いた。



『…浜面、超変な事考えてるんじゃないんでしょうね。」

しょうがない、とでも言いたげな浜面の表情を敏感に察したのか、
絹旗は浜面の服の裾を強く掴んで釘を刺す。

彼女なりに精一杯怖い顔をして睨んだつもりだったのだろうが、
その表情には、溢れ出た不安が広がっていた。


『…』


女性二人との間で板挟みになると言う事は、
浜面仕上にとっては珍しい事ではない。



ただ、何度経験しようが慣れるものではないし、
もっと上手い対処は出来ないだろうかと後で落ち込むことも度々だ。

世の色男達はどのようにこの問題を解決しているのだろうか。


『浜面、抱っこ~!』


と、思わず現実から目を逸らそうとした浜面に、再びフレメアが抱っこを要求する。

追い詰められる浜面に残された選択肢は、
あくまでも原則に則って答えを出す事だけだった。



『へ?』


浜面の服の裾を掴む絹旗の体に、不意に持ち上げる力がかかる。

何が起こったのか分からないでいる絹旗の体は、
浜面と同じ高さまで持ち上げられていた。


『あー、ごめんな、絹旗。ちょっとフレメアと場所替わってやってくれ。』

『え、ちょ、ちょっと浜面、超どういう事ですか!』

『いや、ほら、絹旗は今までずっと座ってただろ?だから、ほら、そろそろ交代というか、な?』



納得出来ずに問いただす絹旗だったが、
浜面の答えは至極無難で味気の無いものだった。



『いや、そんなの超納得出来ません!』


『そんな事言わずに、フレメアだって納得してくれそうに無いからさ。』



絹旗の抗議を軽く流し、浜面は絹旗を降ろそうと、彼女の体を遠ざけようとする。

その行動に少しでも抵抗しようと、絹旗はバタバタと手足を振り回す。


『頼むよ絹旗、昨日だってずっと一緒だっただろ?』


『超嫌です!浜面がどっか行くとかいう理由なら納得も出来ますけど!』


『他の奴が座るからどいてくれなんて、超絶対に嫌です!』



必死に反論する絹旗をよそに、浜面は絹旗を降ろすと、
フレメアに向かって手を伸ばした。



『ちょ、ちょっと浜面!超嫌って言ってるじゃないですか!』


怒鳴る絹旗だったが、既に浜面の膝の上にはフレメアがすっぽりと収まっていた。


『大体、浜面の抱っこ、気持ちいい、にゃあ~。』


フレメアというと、絹旗の事など眼中に無いとばかりに、
浜面の胸板へと頬を擦り付けている。

先ほどまでの絹旗と全く同じその仕草は、まるで前の女の匂いを消し、
自分の匂いを擦り込んでいる様に、真偽はともかく、少なくとも絹旗の目にはその様に移った。

『話も終わってないのに何やってンですかねェ、このお子ちゃまはァァァァンっ!』



『ほら落ち着けよ絹旗。』


フレメアの頭を撫でたままで、
浜面はほんの少しだけ申し訳なさそうな表情を浮かべ、声をかける。


『そりゃいきなりどけって言われて不機嫌になる気持ちも分かるけどさ。』

『我慢してくれよ、な?』

『絹旗の方が、お姉ちゃんなんだからさ。』


優しい笑みを浮かべながらのその言葉に、
絹旗は反論の言葉を奪われる。



ただ、年齢だけを基準にした結論だとは言え、
浜面は少なくともこの場では自分よりもフレメアを選んでしまったのだ。


ご丁寧にも『お姉ちゃんなんだから』と強調した上で。


ここで下手に反論してしまえば、『お姉ちゃんなんだから。』という言葉は、
直ちに『お姉ちゃんの癖に』という言葉に変わってしまうだろう。


『ごめんな、絹旗。ほら、また次の映画の場所調べといてくれよ。俺も色々準備するからさ。』


強引なやり方だと自覚しているのか、浜面もどこか申し訳なさそうである。



その言葉に力なく答えると、寂しさを背に浮かべながら、絹旗はゆっくりと部屋を後にした。

名残惜しさに耐え切れず、去り際に部屋の中を覗いてみたが、そこにあったのは、
後ろめたさの欠片もなく、浜面に甘え続けるフレメアと、それを優しく受け入れる浜面の姿だった。

自分と居た時よりも、浜面が嬉しそうな顔をしている様に見える。

そんな有るはずの無い劣等感に苛まれつつ、絹旗は今度こそその場から立ち去った。












「あァァ、今思い出しても腹が立つンですよ、あの小娘。」


机を叩きながら絹旗が目を血走らせながら、黒夜に恨み言を口にする。

まあ気持ちも分からないでもないが、黒夜の聞く限り十分浜面だって配慮してくれている。
それでも我慢できないっていうのは浜面の言うとおり、年下相手は大人気がなさすぎるのではないだろうか。


「浜ちゃんだって一応は気使ってくれてんじゃん。子供のやる事なんだから許してやんなって。」


「納得なんて超出来ません!」


宥めようとする黒夜の言葉を一蹴し、絹旗は更に愚痴を続ける。



「大体、超何が『お姉ちゃんなんだから。』ですか。」


「こういう時だけ年齢の事を言うのは超ずるいと思います。」


「年齢の事言うんだったら、私だって麦野や滝壺さんより超年下なんですから、二人より優しくしてもらっても良いはずじゃないですか。」


「浜面が優しくないって言う気は超ありませんが、二人に比べて超特別扱いしてもらってるとは思えません!」


「それがフレメアなら超尚更ですよ。そりゃあ年齢はフレメアの方が超下ですよ?」


「でも私が浜面に甘えれるようになったのは超最近なんです!初めてあった時から超甘えっぱなしだったフレメアよりも、私が甘えられてた時間の方が超短いに決まってます。」


「浜面もそのあたりの事を超考慮してくれてもいいじゃないですか!」



止めどなく続く愚痴に、黒夜もいい加減辟易する。



「結局の所、絹旗ちゃんどうしたいのよ。何、フレメアをやっちゃおうとか、浜ちゃんに一泡吹かせてやろうとか考えがあるわけ?」


「そんなトチ狂った麦野みたいな真似、超するはずないでしょう。」



話を強引に進めようとして投げかけられた過激な言葉に、
絹旗は呆れたような溜息で応えた。


「さっきも超言いましたが、私はフレメアに超甘えるなって言ってる訳じゃないんです。ただやっぱり順番は超守るべきだし、浜面もフレメアを超特別扱いするのはやめるべきだって超言ってるんです!」



「だったら、そう言ってくれば良いじゃん。こんな所で愚痴ってないでさ。」



いい加減に面倒臭くなってきた。
こっちも他人の愚痴を聞く様な趣味はない。



大体フレメアを特別扱いしてるって言ってるけれど、自分と比べれば十分可愛がってもらってるじゃないか。
それが例え、自分が素直に甘えられていないのが原因だったとしても。


「超分かってませんね。」


素っ気ない反応を気に求めず、絹旗は勢いづいた調子で話を続けていく。


「直接浜面に言ったら只の我が儘みたいに超思われちゃうじゃないですか。そんな聞き分けのない超子供みたいな真似、超絶対に嫌ですよ。」


「だからこそ、黒夜に話にきたんです。」



黒夜に指を突きつけ、ようやく本題に入ろうとする絹旗だったが、
聞いている方からすれば、嫌な予感しか浮かんでこない。



「私が直接言えば超我が儘になる事でも、他の人の口から聞けばどうなりますか?」


『絹旗がその事で、超深く傷ついて、今にも泣き出しそうなぐらい超落ち込んでいた。超
可哀想だと思わないのか?』


「超こんな感じで言ってくれれば、超優しい浜面のことです。きっと私への対応を超後悔して、超優しく接してくれる様になりますよ!」


拳を握りしめて力説する絹旗の目は、希望に満ちて光り輝いている。
おそらくそれを見ている自分は、正反対の目をしているのだろう。


「と、いう訳で、超お願いしますね、黒夜。」


弾ける笑顔を浮かべ絹旗は黒夜の肩に手を載せた。



「いやさ、何となく予想してたけどね。ぜっっっっったい嫌だから。」


「まあまあ、超そう言わずに。」


拒否する黒夜に怯むことなく、絹旗は肩に置いた手を軸に、器用に体を回転させた。

あれよあれよと言う間に扉の方へ体を向けられる黒夜だったが、
てこでもその場を動かないと必死にその両足へと力を込める。

一瞬は踏ん張ったものの、その頑張りも、『窒素装甲』の前では無力に等しい。

ズルズルと押し出され、あっという間に部屋の外へと追いやられてしまう。



「じゃあ黒夜、あとは超任せましたよ!」


絹旗は必死に抵抗する黒夜を能力で一方的に追い出すと、こちらの反論も聞かずに宣告し、
部屋の戸を閉めて、自分の世界に引きこもってしまった。

一方的に閉められた扉からは、妄想に耽る絹旗のだらしない声が聞こえて来る。

おそらくフレメアに浜面を取られた時の絹旗もこんな感じで部屋を去っていったのだろう。

ただ一つ違うのは、黒夜の胸の中にあるのは、怒りや屈辱などといった感情ではなく、
全身の力を根こそぎ奪ってしまうような、筆舌し難いまでの呆れ、ただそれだけであった。


今回はこれで以上になります。

次も来週中には投稿できるよう頑張ります。


>>25

諸事情でエタったものですが、
一度だけ、禁書「十年後」という浜面ハーレムものでスレを建てたことがあります。

あのスレの人か!
いつかでいいから続きを書いて最終回が見たい!

タイトルに絹旗使わず黒夜にすればいいだろ

なにこのモテモテ男。
もげてくれませんかねマジで。

>>72
お前は浜面と同じように一人に絞ったキリットさんやありゃりゃ木さんにも同じことをいうのか?

俺は言う。

乙ー……黒夜、頑張れ。

悪くないんだが少々違和感を感じるお…

十年後の人か!
あれの続きも待ち続けてるんだが
何にせよ乙です

浜面×アイテムいいよ~

応援してるよ、乙

黒夜、逆に考えるんだ。
自分が浜面の膝の上を占領してしまえばいいんだと。

>>78

結局、それがオチじゃないかって思ってた訳よ

>>78
そして右側と左側がフレメアと絹旗に占領されて背後から滝壺に抱きつかれる浜面

>>80
麦野「……」

>>81
か、肩車してもらえば…

>>82
重心が上過ぎてバランス崩すだろ

逆に考えるんだ
浜面が麦野の上に載ればいいと

>>84

騎乗位ですね。


解ります。


沢山のレスありがとうございます。

今回は少し短いですが、とりあえず投下します。



部屋を追い出された黒夜が浜面の元に向かったのは、
何も馬鹿正直に絹旗の願いを聞き入れたからではない。

ただ何となく、何となく浜面の元へ足が向いてしまった。

それだけの事だった。
少なくとも、今の黒夜が認めている範囲の中では。

「はあ…。」

扉の前で溜息を付きながら、ふと黒夜は、その『何となく』の理由について、考えてみた。



絹旗に言われたからではない。
だとしたら何故だろうか。

昔の自分なら、別にどこかに出掛けでもすれば良かった筈だ。
それが今では、この小さな家の中だけで居場所を求めてしまう。

一人で居るのが淋しくなったからだろうか。

随分と温い答えだが、あながち間違ってはいないだろう。



自分の事を迎え入れてくれたこの家の雰囲気に、自分は確実に毒されている。


この家には、他に第四位と能力追跡がいるが、
現状でこの二人と十分に打ち解けてるとは言い難い。
だから自分は浜面の所に行くのだろう。


他人事の様に出されたその答えは、黒夜自身にも嘘臭く感じられた。


では、これからこの家で生活し、その二人と当たり前の様に触れ合えるようになったとして、
浜面ではなくその二人のもとに行こうと思うだろうか。



考えれば考える程に、『何となく』の中身が、
『浜面に会いたいから』、になってしまう。


何故かそれが妙にイケナイ事のように思えてしまい、
黒夜はその答えを打ち消すように、強く頭を振った。


目の前にある浜面の部屋の扉にそっと手を当て、
音を立てないようにゆっくりと開く。

中を覗いてみれば、浜面がこちらに背を向け、
どっかりとあぐらをかいて、机で何か作業をしている。


声をかけるのがはばかられ、部屋に入るでも無く、
黒夜はただ浜面の背中を見つめていた。


…思えば、こんなにも一個人としての男性に視線を注ぐのは、
人生で初めての事なのかもしれない。


置き去りとして学園都市の所有物となり、実験動物として筆舌にし難い扱いを受けてきた。


目に映るものは全て敵。



イカレた科学者「達」
暗部にまで堕ち果てた屑野郎「達」
仕事で依頼された抹殺対象「達」


何時も何時も、自分の前に現れるのは、分類された「誰か」達だ。

勿論浜面だって初めはそうだった。


それが、殺し合い、共に戦い暮らすうちに、
いつの間にか、「誰か」ではなく、個人としての浜面仕上を見つめるようになっていった。



始めは敵意しか込められていなかったその視線には、段々と違うものが混じり始め、
今ではすっかり敵意以外の何かで満たされている。

生まれて初めて味わう誰にも聞けないこの感情。

決して不愉快でないその気持ちに身を委ね、黒夜は相変わらず浜面を見つめていた。

浜面はどうやら自動車関係の本を読んでいるようだ。
そう言えばロードサービスの仕事を目指して勉強しているという話を聞いたような気がする。



ページを捲る仕草、手に持ったペンを回す癖、
めいいっぱいに伸びをする両腕。

何てことないその仕草一つ一つが、黒夜の目を捉えて離さない。

今の黒夜を他の誰かが見れば、きっと浜面に遠慮して中に入らないのだと思うだろう。

だが実際は、中に入る事さえ失念するぐらい、浜面に見惚れているだけなのだ。



そもそも彼女には、絹旗やフレメアの様に、浜面に甘えるという発想が無かった。

今の黒夜海鳥にとって、浜面仕上が、その両目に映っている。

それだけで心が満たされていたのである。

「黒夜?」


「!?」

黒夜の気配に気づいた浜面がこちらを振り向き声をかける。

急に投げかけられたその言葉に、黒夜の全身が驚きに強ばった。


「どうしたんだ、そんな所で?」

胸の中に生じた言葉にしきれない程の喜びが、
黒夜に、浜面へ抱いている感情の正体をうっすらと分からせようとする。

「良かったらこっちに来いよ。丁度息抜きがしたかったんだ。」

入口で立ち尽くす黒夜に、再度浜面は声をかけた。

その声に操られるように、黒夜は覚束無い足取りで部屋の中へと歩を進めた。


とりあえず今回はこれで以上になります。

話の進みが遅くて申し訳ありません。

乙。
浜ちゃんまじお父さん。

乙ー!!!

期待

レスありがとうございます。

今回も余り多くありませんが投下します



部屋に入り、黒夜は後ろ手で扉を閉める。

当たり前の行動とは言え、自分自身の手で、
浜面と二人だけの空間を作り出した事に、妙な高翌揚感と緊張を覚える。

だが、そこで再び足が止まってしまう。

浜面の部屋に入ったのはこれが始めてはないが、
先ほどの話を聞いているだけに、どうしても膝の上に目が行ってしまう。


(ていうか二人ともどうやってアソコに座ってんだよ!)



体格の大きな浜面だけに、座れと言われればなんとか座れないことは無いだろう。

しかしながら座ってしまえば浜面とほどんど密着することになってしまう。


自分の鼓動が相手に伝わるあの場所で、体の全てを預けてしまうというのは、
とても喜ばしいことであると同時に、とても恥ずかしい思いもしてしまうだろう。


絹旗やフレメアなら、おそらくなんの迷いも無くあそこに飛び込んでいくだろう。


だが、自分にはそんな勇気は無かった。



(でも…いいなぁ。)


優しい笑顔と逞しい胸板に目を奪われ、
つい自分も浜面の胸の中で、抱きしめられている姿を想像してしまう。


自分の予想以上にすんなりと浮かんできたその光景は、
ただ浜面を見つめるだけで満足していた黒夜には、些か刺激の強すぎるものであった。


本人が気づかない内に、その小さな頬は真っ赤に染まり、
高まる鼓動は否応なしに彼女の呼吸を乱していく。



「ほら、そんな所で立ってないで。」



入口で立ち尽くす彼女の気持ちを知ってか知らずか、
浜面は座布団を自分の隣に敷くと、気軽に声をかける。


「あ!う、うん。」


内心を悟られていないかと心配しながら、
黒夜はおずおずと浜面に近づき、隣に腰を降ろす。

隣に座ってみると、身長差から自然と浜面を見上げる形になってしまった。

こちらの視線が全て見透かされそうで、より一層に緊張してしまう。



「てっきり絹旗と一緒にいるって思ってたんだけどな。」


真っ直ぐに自分の方を見たままで、浜面が口を開いた。


「あ、あぁ、さっきまでは一緒に飯食ってたんだけどね。絹旗ちゃんが用事があるとかで、さ。」


内心の同様を抑え、黒夜は精一杯平静な風を装って返事をした。


「へぇ…」


「何さ、その反応。」



黒夜は、自分の言葉に妙に含みのある返事をした浜面を、
じろりと見上げて睨みつける。



その視線に怯むことなく、浜面はむしろ嬉しそうに微笑んだ。


「いや、随分馴染んでくれたなあ、と思ってさ。」



「まあ、そりゃあ、ちょっとぐらいはね…」


くすぐったいような気まずさを味わいつつも、
浜面の言い分を受け入れる。


「絹旗ちゃんとだって縁がないわけじゃないし、他に行くあても無いし…」

「自分の部屋だってあるし、御飯も美味しいし。」



ただ受け入れるのが少しだけ悔しく、ボソボソと言い訳をしながら、
黒夜は浜面に答えていく。



あれこれと言いつつも決して否定しようとしない黒夜に、浜面も満足そうだ。

とうとう言い訳も言い尽くし、只々恥ずかしさだけが残った黒夜に、
調子に乗った浜面が意地悪そうな表情を浮かべる。



「別に、俺がいるからって正直に言ってくれても良いんだぞ?」


「は、はァ!?」


少し考えれば質の悪い冗談だと、すぐにわかる言い回しだった。

だが、余りにも的を得すぎていたその指摘に、
思考は一瞬で奪われ、まともな対応を封じられてしまう。




「ちょ、ちょっと何言ってんの浜ちゃん、バカじゃないの!?」



思った以上に上ずった声で、浜面の軽い冗談を本気で否定しにかかる。


「あーもー信じらんない!何が『俺がいるから』だよ。」

「バカ!バカ!能力追跡いるくせに顔に似合わない事言いやがって!ほんっとーにバカだよね!」



あらん限りの罵声を浴びせるだけ浴びせ、黒夜は浜面から顔を背ける。

真っ赤に染まった顔を見られたくない、という彼女なりの精一杯の抵抗だが、
上から見下ろす浜面からすれば、多少顔の向きが変わったところで、見える表情に大した違いは無い。



可愛いなあと、率直な感想を浮かべながら、
目を伏せ口を尖らせる黒夜の愛くるしい顔をじっくりと眺める。


妙な沈黙が部屋を満たす。
それは浜面と黒夜、心地よい二人きりの時間だった。

だが、顔を背けている分だけ、黒夜には不安が入り込む余地があった。


(怒ってたりしないかな。)


勢い任せとは言え、あれだけの暴言を吐いてしまったのだ。

冷静になってみれば、さっきの言葉も只の冗談だって直ぐに理解できる。
自分からしてみれば、多少悪質ではあったが。



(そりゃ本気で言われても、困る…けどさ。)

結局はあんな冗談を言った浜面が悪いんだ。

例え怒ってたとしても、絶対に謝ってなんかやんない。
と決意を固め、黒夜は頬を真っ赤に染めたまま、浜面の方へ顔を向けた。


「…何笑ってんのさ。」


「いや、可愛い顔してるなあって。」


無駄に気を使ってしまった腹立たしさと、照れ隠しで、
浜面の腹に思いっきりパンチを叩き込む。



うずくまる浜面を見ながら、黒夜は呆れたように溜息をつく。


「何か浜ちゃん思った以上に女ったらしな気がする。」


「げほっ、そんな事ねえよ、相手は選んでるつもりだし…」


その選び方に問題があるんだと思いながら、
黒夜は絹旗の顔を思い浮かべる。

十分に恩恵に預かったにしろ、
自分同様に絹旗も同じような腹立たしさを味わったのだろう。



そう思えば、呆れと嫉妬でやる気を失っていた絹旗のお願いも、僅かながらやる気が出てきた。

それに絹旗をダシにすれば、少しは自分の溜飲も下げられ、
浜面も反省してくれるかも知れない。


「浜ちゃんがそんなんだから、私が絹旗ちゃんから散々愚痴られるハメになっちゃうんだからね。」


そんな淡い期待と、浜面との会話を求め、
黒夜は全くやる気の無かった、そもそもの用事に取り掛かった。

今回はこれで以上になります。

投下間隔、分量、書き方等、改善点ご指摘頂ければ幸いです。


黒にゃんかわいいよ

麦野とかいう超年増よりも超若い子のほうが浜面の超好みですよね

>>117
うん、わかったから落ち着こうなモアイ。

クズ浜面しね。キモい




もう浜面が絹旗・黒夜の二人とも結ばれればいいんじゃないかと思ってしまったぜ。

>>120
眠そうな女の子が道路標識片手にそっちに向かったぞ

>>121


ま、マジで…………


な、なんじゃこりゃぁぁぁぁあ!


う、後ろから何かしら眠そうな女の子に…………


頭ぶち叩かれるなんて……………


大根足おばさんのターンはまだですか?

>>123



お、おい…………


お前の後ろで原子崩しのお姉さんが笑みを浮かべてビットみたいなようなもんをだしてやがるぞ。

愉快なオブジェだらけのスレですね

おばさんじゃなくて熟女と言っておけば死なずに済んだのにな

姉御はセーフなのかな?

むぎのんだろ。

少し短いですが、とりあえず今回の分を投下します



「絹旗が黒夜に愚痴ったって?また随分珍しい話だな。」


特に悪びれた様子も感じさせずに、浜面は軽い調子で口を開く。


「他人事みたいに言っちゃって、ちょっとは責任感じて欲しいんだけど。」


『散々』という所に力を込めていったつもりだが、浜面には伝わっていないようだ。

改めて釘を刺しなおすが、それでも応えた様子はない。


それどころか意味ありげな笑みを浮かべながら、こちらの方にニヤニヤした視線を送ってくる。



「まあ、思い当たる節が全くないって事もあるけどな。」

「それよりも二人が愚痴を言い合えるぐらい仲良くなったって思うと嬉しくなってさ。」


暢気な浜面の言葉に、黒夜は再び頬を染める。


「またそんな事言って混ぜっ返しちゃって…」


黒夜は照れ隠しに手を出す事こそ無かったものの、
また話を元に戻されてはたまらないと思い、
浜面の言葉を半ば無視するような形で強引に言葉を続けた。




「ていうかほんとに浜ちゃん覚えないの?あんだけ絹旗ちゃん怒らしときながらさ。」


その言葉に浜面は考え込むような素振りを見せるが、
一向に思いついた様子が見えない。


「…絹旗だろ?一昨日だって映画にも付き合ったし、今朝会った時だって怒ってる様には見えなかったぞ。」


「あー、まあそりゃ浜ちゃんに対してはそうかもしんないけどね。でも、怒ってたのは本当だから。」


言えば言うだけ、浜面は頭を抱えて真剣に悩んでいく。


その姿に、黒夜は思わず笑みを漏らした。


相手が絹旗とは言え、真剣に悩んでくれる浜面の姿に、
自分達の事を本当に大切に思ってくれているんだな、と改めて実感する。

以前までなら、それでも自分だけは違うんだろうなと、卑屈に思い込んでしまっていただろうが、
今の自分なら、浜面が大切に思っている仲間の内に、自分も含まれていると、確信を持てるようになった。

だからこそ、浜面が他のメンバーの事を大切に思っているのを見るのは、
嫉妬心こそ呼び起こされるものの、黒夜にとって喜ばしい事には違いない。



「駄目だ、分かんねえ!あいつ何怒ってたんだ?」


困り果てたといった様子で、浜面は黒夜に答えを尋ねる。

妙に素直なその行動に、思わず黒夜は笑みを漏らした。

それを誤魔化すかのように、ため息を一度だけ付き、
黒夜は少しもったいぶった口調で口を開く。


「フ・レ・メ・ア。心当たりあるんじゃないの?昨日の事って言ったらさ。」


少し得意げな、それでいて僅かにチクリと責めるような黒夜に、
始め浜面はポカンとした表情を浮かべたあと、
「ああ、そんな事もあったか。」と言いたげな、煮え切らない表情を浮かべた。



一瞬手応えの無さを感じはしたが、
浜面の立場からすればそう思うのも無理はないかもしれない。

よくよく考えれば大した話でもなんでもないのだから。


「あの事だろ?絹旗が膝の上に座ってる時に、フレメアが来て、場所変わってくれって言った奴。」

「そうそう、浜ちゃんは悪いわけじゃないんだし、大人気ないとは思うんだけどねえ。」


いざ面と向かって話すと、改めて事のバカバカしさを痛感する。

絹旗はこれを浜面に伝えてくれと言っていたが、
伝えたところで何か変わるとでも思っているのだろうか。




「ま、そんな事言っちゃうぐらい、絹旗ちゃんもまだまだ子供だって事だよ。」


自分は違うけど、と言いたげな黒夜に苦笑すると、
浜面はため息をついて頭を軽く掻いた。


「まあなあ、ちょっと前までは大人びてるって思っていたけど、最近は年相応、というかそれ以上に子供っぽくなってる様な気がする。」


「いい傾向なんじゃない?子供の頃から暗部にどっぷり漬かった生活だったんだから、心底甘えられる人が出来たら甘えたくもなるって。」


恐らくは黒夜自身も気づいていなかっただろうが、
浜面に向けたられたその言葉には、知らずの内に自分自身の事も重ね合わせされていた。




「そうか…そうだよな、だったら細かいこと言わずに精一杯甘やかしたほうが良いのか。」


「そのあたりは浜ちゃんに任せるよ、ほっといたら絹旗ちゃんはドンドン付け上がりそうな気もするけどね。」


直接的な言い方は避けながらも、少しだけ浜面の背を押すような言葉を口にし、
黒夜はいたずらっぽく微笑んだ。


絹旗に対して多少のヤキモチが無いではないものの、
それでも浜面と話すきっかけを与えてくれたことだけは、
感謝しないといけないのかもしれない。



そう考え、照れくさそうに微笑む浜面に、黒夜も同じように微笑みかける。


些細な相談とほんの少しの会話だけでも、
黒夜の胸を喜びで満たすのには十分すぎる程であった。

コミュニケーションの余韻に浸りながら、浜面へと目を向ける。

さりげない日常を幸せだと思える事と、
その幸せを分かち合える相手がいる事が、こんなにも素晴らしい事だったなんて、
昔の自分には想像もできなかっただろう。



「ああ、わかったよ、黒夜。別にこっちも嫌って訳じゃないんだ。」




黒夜の真っ直ぐな視線を受け止めると、浜面は優しい言葉で応える。


「それに付け上がるって言っても、今の所は精々ベッドに潜り込んでくるぐらいだ。そんな程度で文句言うのも流石に大人気ないだろ?」



しかし、軽い口調で発されたその言葉が耳に届いたその瞬間、
黒夜は胸に広がる余韻はそのままに、
自らの体温が氷点下にまで下がったような錯覚を受けた。




「………は?」






とりあえず今回はこれで以上になります。

次回もなるべく早くに投下します

キモいクズ浜面[ピーーー]

乙ー!!!

絹旗潜りこんでくるのかーそれはアカンなぁ。

もしもし滝壺さん?

むぎのんがフレンダにやったことを滝壺は素手で出来そうだから怖い

美化されてるけど浜面ってやっぱクズなんだよな…
アンチが沸くのもわかる気がする

頑張れはまづら

浜面からしたらホント子供が寂しい時に布団にもぐりこんでくる感じだと思ってるんだろうなぁ
浜面マジお父さん、でもお母さん(滝壺)には言った方がいいと思うな、しつけ的に。

乙はまづら!

来てたか、無理なくゆっくりやってくれ

乙 また読めて嬉しいぜ

同居人の布団に潜り込むといえばインさんは寝ぼけてだけど
絹旗はどうなんだろうな

マダナノカナー

乙です。黒夜可愛いのう
しかし浜面マジお兄ちゃんだなww




その言葉を理解するまでのほんの数秒が、黒夜にとっては永遠かのように思えた。

浜面は今なんと言ったのだろうか、と反復しようとする度に、
自らの胸をどす黒い何かが埋め尽くしていく。

ふと頭に浮かぶのは、浜面でも絹旗でもなく、何故か第四位の顔だった。

ああ、きっと麦野沈利も同じような感情を抱いてしまったのだ。

だとするならば、彼女の行動にも、
十分情状酌量が認められるべきなのではないだろうか。




ぼんやりとそんな事を考えている一方で、
彼女の脳は順調、かつ丁寧に情報を分析していってしまう。

絹旗は浜面に甘えている事、浜面がそれを受け入れている事、
その温情に付け入って過度とも思える接触を行っている事、
そしてそれは、何故かベッドの中でまで行われているという事。

冷静で明晰な黒夜が、十分な時間と情報を与えられた上での判断である。

暗部のリーダーを務めたほどの彼女が、私情で歪めた結論を出す事などありえない。

つまり、黒夜の脳内で繰り広げられている、この淫靡な光景は、
疑う余地の無い、確かな答えなのだ。





「…え、浜ちゃん、絹旗ちゃんと一緒に寝てンの?」



思わず漏れたその言葉は、自分が想像していたよりも数段低く冷たいものだった。



「ああ、たまにだけどな。」



その声に秘められた感情に気づくことなく、
浜面は事も無げに黒夜の問いに答える。



「『寝ぼけて部屋を間違えました』って感じでさ、布団に潜り込んできてから、恥ずかしそうに言い訳するんだぜ?」


「…まさか浜ちゃん、その言い訳信じてるとか言わないよね?」



あっけらかんとした浜面の答えに、言質を取る様に黒夜は念を押す。



殺気が漏れでないようにと、冷静さを装った彼女の努力は、
幸か不幸か功を奏してしまっていた。


「まさか!そりゃあ一回目ぐらいは信じたけどさ、さすがに同じ言い訳何度も繰り返されたら嫌でも気づくって。」



「へえ…そっか、まァそうだよねェ…」


一応作り笑いを浮かべていはいるものの、
頬の筋肉はピクピクと怒りで震えだしそうになっている。

そんな黒夜に、猶も気づかないまま、浜面は手を口にあてて微笑んだ。



「これがまた面白いというか、可愛らしいというかな。まあ聞いてくれよ黒夜。」


「そうそう、一度目は信じたんだよ。まあそんな事もあるかなって。」


「それで二回目、ちょっと違和感は感じたな。しっかりものの絹旗にしちゃ珍しいだろ?」


「まあ翌朝、寝ぼけまなこで『戻る部屋を超間違えました。』なんて言われたら何も言えなかったけどさ。」


「んで三回目、流石に俺もそん時には、多分こういう事だろうな、って思ってたよ。」



「だからあいつが潜り込んで来る時には寝たふりしてやってさ。で、入ってきたら手を握ってやったんだ。」


「一瞬ビクッってしてたけど、直ぐに強く握り返して来てな。次の日の朝には、しっかり手を握ったままで、
『戻る部屋を超間違えました。』って言い張るんだよ。」


「頭撫でてやったら、恥ずかしそうにそっぽ向いてたけどな。」


暗部のリーダーが殺気で全身を満たしているというのに、
全く気づかない能天気さというのも、ある意味才能と言えるかもしれない。


今迄あまり懐いてくれなかった妹分が積極的に甘えてくれるようになった。
その事を素直に嬉しく思うのも、兄貴分としての度量なのかもしれない。


しかしながら、その話を、未だ素直に甘える事が出来ない妹分の前で自慢げに話せばどうなるか、
予想すら出来ないというのは、些か残酷すぎると言わざるを得ない。



浜面の話を聞くうちに、黒夜の表情は、次第に能面が張り付いたかのような笑みになっていった。

だが、真正面から彼女の目をみれば、その内心では、
怒りというよりも、嫉妬の炎が燃え盛っていると、嫌でも気づいてしまう筈だ。


「…ちょっとそれは甘やかしすぎなンじゃない?」


決して声を荒げる事なく発されたその言葉に、どれほどの自制が働いていたか、
浜面には知る由もないだろう。


「そうか?まあ、でも今更断るのも可哀想だろ?」


「そうかもしンないけどさ、流石に能力追跡だっていい思いしないンじゃないの?」



至極真っ当な黒夜の指摘だったが、何故か浜面には伝わらないらしい。
両腕を組んで首を傾げ、黒夜の言葉の意味をじっくりと考えている。

そんな反応に焦れったさを感じたのか、浜面の返答を待たずに、黒夜は言葉を続ける。


「大体浜ちゃんが寝たふり何かしてるから、潜り込んでくるんじゃないの?」

「絹旗ちゃんなら起きてるって分かれば帰るだろうから、はっきり言っちゃえばいいじゃん。」


その言葉を聞いて、浜面はようやく口を開く。



「つってもなあ…」



相変わらずはっきりしない言葉だったが、黒夜はその続きを辛抱強く待った。




浜面の話を聞くまでは、軽率な行動は慎もうという思いからだが、
その思いが浜面に対しての信頼なのか、或いは浮気の言質を取ろうとする女性特有の手腕によるものなのか、浜面は勿論のこと、黒夜にさえも理解できなかった。


「いや、一度あったんだよ。俺が起きてる時に絹旗が部屋に来た事。」


「でも、そん時は流石に帰ったんでしょ?絹旗ちゃんは。」



問いかける黒夜の言葉に、浜面は黙って首を振ると、そのまま言葉を続ける。


「ベッドスタンドだけ電気付けて、本読んでた時だ。」



「まあいつもの様に絹旗が入ってきたんだ。部屋の電気が消えてたから気づかなかったんだろうな。」


「入ってきてすぐに俺と目が合ってさ、ビクってなった後で、凄く気まずそうに俯いたんだよ。」


「今までうやむやにしてた言い訳が、一気に通用しなくなったんだから、そりゃあ恥ずかしいだろうな。」


「でもこっちもそん時にはもう分かってたからさ。」








クズ浜面しね



『ほら、入ってこいよ、絹旗。』


読んでいた本を閉じると、浜面は片手で布団を持ち上げ、
小さな女の子が入れるような隙間を作り出す。

俯きながらも、浜面から目を逸らせないでいた絹旗は、
その声に導かれるようにゆっくりと歩を進め、それでもベッドの前で足を止めてしまう。


『ほら、な?』


だが、間近で呟かれたその言葉は、
躊躇う絹旗の背中を、優しく、力強く押し出してくれる。



消え入るような声で「はい。」と答えると、
絹旗は浜面が作ってくれた隙間へと、自分の体を潜り込ませていく。


『すいません…浜面。』


小さな顔を真っ赤に染め、絹旗はおずおずと謝罪の言葉を口にした。


『気にすんな。』


自分に縋り付いてくる絹旗の頭を優しく撫でると、
浜面はベッドスタンドの灯りを落とした。

二人きりの空間には、その音が妙にはっきり響いた。










「なんか帰るどころか何時も以上にしっかりとしがみついて来たけどな。」

今回はこれで以上になります。

少し間が空いて申し訳ありません。

次回もなるべく早くに投下するつもりですが、来週中は少し難しいかと思います。

乙。絹旗ちゃん可愛いヅラも兄貴っぽくていい

はーまづらぁ

負けても許されるカッコいい男は違うわ(笑)

このままじゃ滝壺がアイアンクローの力加減を誤って浜面の頭蓋骨をリンゴみたいに砕いてしまう

滝壺が浜面と「娘なら絹旗みたいな女の子がほしいよな」とか言いながらエッチしてるとかそういうのならアイアンクロー回避できるな

もうみんなで浜面の布団に入って寝たらいいんじゃないのか?

.: : : : : : : : :: :::: :: :: : ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ☆:::::::+::::::::::::::
  . . : : : ::::/⌒ヽ: ::: :: : :::: :: ::: ::: :::::::::::::::::::::::::..,,::。:+:::::::::::::::::::::::
  . .... ..::::/  <`O:: :: ::: :::::: :::::::::::: : :::::::::::::::::::+,::o;;::・;,:::::::::::::::::::::
     ⊂ニニニ⊃. . .: : : ::: : :: ::::::::: ::::::::::::::::..<;;::・,,::;ゞ;;o;*::.:::::::::::

     /:彡ミ゛ヽ;)ー、. . .: : : :::::: ::::::::::::::::,,;;;<;+::;;;´;*::o*:,,;;ゞ;;::::::::
    ./ /ヽ/ヽ、ヽ  i. . .: : : :::::::: :::::::::::;;;*;;;〇;ゞ;*::;;:<;;;*;:;ゞ;;o;
   / / 。  ヽ ヽ l   :. :. .:: : :: ::<;;;;〇;ゞ;*::o,ゞ ;*;;;;*ゞ;*:o

  ̄(_,ノ  ̄ ̄ ̄ヽ、_ノ ̄ ̄     ;;;*;;;〇;ゞ;*::;;;;;*ゞ;*::o, 〇;;; *
                       : : : : : : llllllll : : : : : :
                           田田田

          o。_。_lコ<o>     |l≡≡≡|ミ|__。≠_〇o
 。+ +。。。。。 |l|FFFFFFF|。 。 .。 +|l≡≡≡|ミ|EEEEEEEEEEE|lll| .。+

  * o  o.   |l|FFFFFFF / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     。。oo  |l|FFFFFF |  同世代の連中は結婚したり会社では後輩に仕事を教える立場になったりしてるのに
     。。oo  |l|FFFFFF |  ひとり職も彼女も見つからないまま今年も寂しいクリスマスが来るのか...
   /| ̄ ̄ ̄l ::|FFFFFFF \

   |ミ|:」」:」」:」| ::|FFFFFF     ̄|/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   |ミ|:」」:」」:」| 〇 FF.。   ∧_∧  |l≡o + +! + 。 〇   +
   lミl.」」.」〇 ++ +  (´・ω・) o  〇 。 o  +   〇 。 +

  __〇___。_゚__/ ~つと)____o______〇__o___。
  二Il二Il二Il二Il二Il二Il二Il二Il二Il二Il二Il二Il二Il二Il二Il二Il二Il二Il二

十年後の人か

十年後の続き執筆も検討してもらいたい

マダカーナー

私待つわ

浜面がアニメでイケ面なのは日野のおかげ!

まだか

遅くなり申し訳ありません

あまり分量は多くありませんが投下します



話が終わる頃には、黒夜は両手で頭を抱え、机の上に突っ伏していた。

これ以上話を聞きたくないという思いや、絹旗に対する強烈な嫉妬、
それに加え、自分も浜面に同じ事をして欲しいという欲求がないまぜになり、
黒夜の心を激しくかき回している。


滝壺がどうだとか常識人ぶって言っただけに、
自分の本音の浅ましさが、なお一層に恥ずかしい。


「ん、どうしたんだ黒夜。」



「…いや、別に。何も無い、っていうか、何も言えないっていうか、ね。」

浜面の問いかけに力なく答えると、黒夜はゆっくりと顔をあげる。

だが、丁度その正面に浜面の顔があったため、慌てて顔を逸らした。


「まあちょっとシスコンっぽいかなって自分でも思うんだけどさ。今更追い出すのも可哀想だろ?」


「ああ、まあそうだろね…」


多分、浜面にそんな事をされたら絹旗は泣いてしまうだろう。




自分に置き換えてみれば易易と想像できるのが腹立たしいが、
何をするよりもまず涙が込み上げ、捨てられた子犬のように、
ひたすら泣き叫んでしまうに違いない。


「もうなんかお腹一杯って感じだよ。」


深いため息と共に吐き出されたその言葉には、
疲労の色がありありと浮かんでいた。


「ん?何がだ?」


あれこれ考えこむ黒夜に、浜面は無神経に近い程の呑気さで問いかけた。



いちいち返答する気力こそ無かったが、『シスコンっぽいか』と問われるならば、
自信を持ってシスコンだと、いや、絹旗の言葉を借りるなら、『超』シスコンだと断言できる。


そんな浜面の顔を覗き込むと、黒夜はもう一度大きくため息を付いた。


「浜ちゃんのどこが冷たいってんだろね。」


今となってはただの我儘以外の何物でもない絹旗の言葉。



甘えている、と、一口に言っても、デート紛いの外出を重ね、
家にいる間は膝の上を独占し、寝る時には夜這いを繰り返す。



これだけの事をしてもらっておきながら、堂々とそれを言える彼女の図々しさは、
ある意味では自分も見習うべきなのかもしれない。


と、絹旗の行動を一つ一つ数えている内に、黒夜の頭にある疑念がよぎった。
当人同士は兄と妹の様な気分でいるのだろうが、
果たして周りから見ればどのように映っているのだろうか。


少なくとも年長者二人の顔を思い浮かべてみれば、
暖かく見守るという言葉は当てはまりそうにもなかった。



「さっきも言ったけど、能力追跡に第四位は何も言わないの?あの二人なら相手が絹旗ちゃんでも、遠慮せずにヤキモチ妬いて来るでしょ?」


学園都市最高峰の能力者二人とはいえ、
話が浜面仕上の女性関係となれば、フレメアに嫉妬する絹旗と同レベル、
あるいはその基準を下回る思考能力となる事さえ予想できてしまう。


だが、口に出しては言ったものの、黒夜には腑に落ちないことがあった。


浜面に関することであれば、滝壺たちは分別を失う。
それは間違いない。


それならば、絹旗が自分の所に押し掛けてきたように、
彼女達も何らかの行動を起こす筈である。



しかしながら、滝壺や麦野がそんな騒動を起こしたという覚えは無い。

自分の知らない所で勃発し、解決していたというのならその限りではないが、
当事者の誰を取ってみても、そんな器用に事を運べるタイプには思えなかった。


「ヤキモチって言っても…相手は絹旗だし、滝壺も麦野も特にそんな事なかったぞ?」


浜面の返答を聞き、黒夜は一方で納得し、一方で首をかしげた。


「あの二人が…?」


「滝壺の場合、隠れてそういう事してれば怒るかもしれないけどな。」


黒夜の疑念に答えるように、浜面はそう付け加えた。



『隠してなければ怒らない』


頻繁に浮気するダメ男の言い分みたいだと思いながら、
黒夜はその言葉を受け止める。


「まあ、それなら分からなくもないけどさ。」


「別に普通に受け入れてくれてるぞ。昨日だって絹旗が入り込んできた時だって普通に抱きしめてあげてたし。」


「へえ…え?」


最後に付け加えられた浜面の一言に、黒夜の思考が固まる。




「…え、昨日って絹旗ちゃんは浜ちゃんのベッドに潜り込んできたんだよね?」


「ああ、さっきも言ったけど、最近はちょくちょく潜り込んでくるしな。」



「でも、浜ちゃんは、さっき潜り込んできた絹旗ちゃんを、能力追跡が抱きしめてあげたって言ってたよね?」


「ああ、言ったぞ。」


一言一言噛み締めながら、黒夜はゆっくりと浜面に問いただす。


「つまり、絹旗ちゃんは、昨日能力追跡に抱きしめてもらって、浜ちゃんと一緒に寝たって事でいいんだよね?」


「ああ、でもそんなはっきり言われると恥ずかしいな…ぶがっ!」


浜面の肯定の言葉が耳に届いたその瞬間、黒夜は自身の拳を浜面の腹に叩き込んでいた。



「ちょ…ちょ、お前、いきなり何を…」


荒く息を突きながら自分を睨みつける黒夜に、
浜面は苦悶の表情を浮かべながら問いただす。

黒夜自身、自らの取った行動に少なからず驚いてはいたが、得られた結論を考えてみるに、
自分は間違った事をしていないと確信していた。


「何を、じゃないでしょ浜ちゃン。」




黒夜の性的知識は決して豊富なものではない。

だが、恋人同士が同じベッドで寝るという事が、
どういう事か分からない程に乏しいものでもなかった。

そして、そんな二人の寝床に、
別の女性が加わったという事がどういう事なのかについても、
想像できない程の物でもなかったのである。


「…何やってンの浜ちゃン。ていうか、何でヤってンの浜ちゃン。」



放たれた言葉の内容のせいか、先程までと全く同じ声量なのにも関わらず、
その声は二人きりの部屋に妙に大きく響いた。



腹を抑え、悶える浜面だったが、黒夜の言葉を聞くと、
一瞬呆気にとられた表情を浮かべる。

そして、ほんの少しだけ、考え込む様な素振りを見せた。
だが、直ぐに何かに思い当たったように、黒夜の方へ再び視線を向ける。


「ああ、そういう事か。」


そう言った浜面の顔には、今までには無い、意地の悪い笑みが浮かべられていた。




今回はこれで以上になります。

多忙な為、次回までは投下ペースが遅れそうです。

来週中はおそらく無理かと思われますので、再来週末頃に投下を予定しております。

また十年後ですがこちらの方もゆっくりとですが、製作しています。

いちどエタったモノのため、こちらの方は完全に終わってから投下するつもりです。

おつおつー
次も楽しみ


十年後のほうも楽しみ



十年後が見捨てられてなかった……


CV.日野は女にモテてリアル充かだめなヤツあたりに分かれるがここの浜面は前者

滝壷の絹旗に対する態度は正妻の余裕かそれとも…

なんというエロ面
しかし男ならしかたない


エロ面より先に滝壺に食われてね、絹旗

またもげづらかいなと思ったらお父さんだった

予定より遅れて申し訳ありません

とりあえずキリのいいところまで投下します



「…何さその反応。」


浜面の事だから、てっきり自分が怒ってみれば、
多少なりとも遠慮したような反応を示してくれるだろう。

そんな予想を大きく裏切るその笑みに、
黒夜は表情にこそ出さないものの、少なからず動揺していた。

何時も優しい浜面がこういう表情を見せる時は、決まって自分をからかう時だ。
普段であればそれもコミュニケーションの一つとして楽しめるのだが、
今日、この時だけに限ってみれば、追求されたくない弱みが、
溢れるほどに存在していた。





それでも引かずに立ち向かう意志を持てたのは、
全面的に相手に非があるという確固たる自信を持っていたからだ。


「いやらしい顔しちゃって…」


少しだけ顔を逸らし、横目に観るように浜面を睨みつける。

気圧されていると自白しているようなものだったが、
流石に正面から浜面を見据えるだけの度胸は無かった。


「いやいや、黒夜も『そういう事』考えるんだって思ってな。」



「ッッ…!」




非難するような自分を気にもとめず、
意地悪な笑みを浮かべたままの浜面の言葉に、
黒夜は思わず赤面する。


「そ、そりゃあ、そんな事言われたら考えちゃうに決まってるじゃん!私だって…そりゃあ、人並みの知識…ぐらいはあるんだし…」


露骨な表現を避けようと言葉を選んでいるうちに、
声の勢いが自分でもはっきりとわかるぐらいに落ちていく。

気取られないように勢いづけようと思ってみても、
話す内容と話す相手を意識してしまうと、その努力も虚しいものとなってしまった。


「…」



とうとう黙り込んでしまう黒夜を見つめる浜面だったが、
その顔に浮かんだ意地悪な笑みの中には、先程までの様な優しさが混じり始めていた。


「…恋人同士が一緒に寝るってったらそれしかないじゃん。そ、それに、そこに他の女が混じるとか!」

「もう有り得ないっての…」



非難するための言葉とは言え、浜面に対して『そういう話』をするという事は、
黒夜に想像以上の羞恥をもたらしていく。

赤く染まった頬を両手で隠しながら、尚も黒夜は追求を続けるが、
少しも意に介さない浜面を前に、自分の方が責められているかの様な錯覚すら覚えていた。



「そうだな…中途半端に伝えると、黒夜も変に誤解しちゃうよな。」


不意に話しかけた浜面に、黒夜は精一杯の虚勢を張って刺すような視線を向ける。

照れ隠しに頬を掻きながら、睨みつける黒夜に浜面は優しく笑いかけた。


「とりあえずはっきり言っとくけどな、お前が想像しているような事は一切無い。」


「え…へ?」


簡潔に、そして唐突に告げられた結論が受け止めきれず、
思わず間抜けな声を漏らしてしまう。



「一切無いとか、だって…その、浜ちゃんと能力追跡はこ、恋人同士だし…」


「そりゃあ恋人同士が一緒に寝るって言えば、外から見ればそういう事だって思われるかもしれないけどさ。」

「流石に絹旗が寝てる横でそういう事はしねえって。ましてや絹旗に手出すなんてある訳無いだろ?」

「大体、一緒に寝てるからって絶対にそういう事してる訳じゃないんだぞ。」



少し呆れた様に微笑みながら、浜面は諭すように、ゆっくりと話しかける。

疑うのならばいくらでも疑える筈の言葉だが、
何の動揺も感じられない浜面の声に、黒夜は疑念を挟むことが出来なかった。



後に残ったのは、盛大な一人相撲と、
言葉にし尽くせない程の強烈な公開と羞恥心だけ。


「まあ、黒夜も何だかんだでそう言うのに興味がでる年頃だもんな。」


変に気を使った年長者の言葉が、
殊更に黒夜の傷ついた心に、遠慮なく塩を塗りこんでいく。


「…」


赤面した頬を隠していたはずの両手は、自らを支える力を失い、
だらりと重力に任せてぶら下がって、
一部の隙間も無く赤面した可愛らしい顔をさらけ出させていた。



「ん?どうした、黒夜、大丈夫か?」


無言で硬直する黒夜の顔を覗き込み、
浜面は気遣うように声をかける。


全くの善意から出た筈の行動だったが、極限状態にある黒夜にとっては、
最後の堤防を決壊させるのに、十分な衝撃を持っていた。


「び…」


「び?」




「びぇぇええええええええええええええええええええええええええええええええんっ!!!」





「しょうがないじゃんかよっ!一緒に寝てるってったら普通そういう事考えるに決まってんじゃないかよ!」

「何で聞きたくもない絹旗ちゃンの我儘聞いた挙句、こんな大恥かかないといけないンだよおおおおおおっ!」


黒夜の表情を覗き込もうと顔を近づけていた浜面は、
突如放たれた絶叫に、耳を抑えて大きくのけぞった。


「分かった!すまん黒夜!俺が悪かった!それに黒夜、そういう事を考えることは別に恥ずかしいことじゃないぞ!」


「黒夜ぐらいの年齢だったら健全に成長しているって証拠なんだから、むしろ喜ばぶっ!」


「うっさい!うっさい!うっさい!そうやって変に気使われる方が恥ずかしいんだよおおおおっ!」



想像以上に黒夜を追い詰めていた事に気付き、慌てて宥めようとするが、
一度爆発した感情はそう簡単には収まってくれない。

むしろ火に油を注ぐ事になったようで、
神経を逆なでされた黒夜に、腹を思い切り殴られてしまう。

腹を抑えてうずくまる浜面と泣きじゃくる黒夜。

柔らかな陽気に照らされた昼下がり、うめき声と泣き声で満たされた室内は、
何故か暖かで心休まる空気で満ちていた。











声が枯れてしまうのではないかと浜面が心配した程の黒夜の大号泣は、
彼の必死のフォローでどうにか一応の落ち着きを見せた。


それでも黒夜は浜面とは目を合わせずに、鼻をしゃくり上げならブツブツを文句を言い続けている。


「もう絶対絹旗ちゃんのお願いなんて聞いてやんないんだかんね。」


頬を膨らませた黒夜の、何度目かになる宣言を、
微笑ましげに見ると、浜面は軽く頭を下げて口を開いた。


「ありがとな、黒夜。わざわざ絹旗の我儘に付き合ってくれて。」


「別に…ただの気まぐれだし、今回限りだし…」


唐突に告げられたお礼に、黒夜は一度だけ浜面へ目を向けると、言葉少なく返答する。



愛想笑いの一つもないぶっきらぼうな口調だったが、
今の浜面には黒夜が喜んでいることがはっきりと分かっていた。

その不器用さに苦笑しつつ、浜面は膝を進め、黒夜の方へ体を近づけた。


「じゃあ、今度は黒夜の話をしようか。」


「…へ?」


唐突に縮まった距離に黒夜は自分の心臓が大きく脈打つのを自覚した。


「いや、さっきから話を聞いてるとさ、絹旗の境遇ならとか、絹旗の場合はとか、そんな事ばかり言ってただろ?」



「あ…ま、まあ、言った…かな?」


浜面に指摘された瞬間、黒夜の胸がざわめいた。

確かに自分はその言葉を何度か口にした。

そしてその言葉を口にする時、自分の心の中には、
ある一種の願望が生まれていた。

だが、自分の本心から生まれたその願望は、
直接ぶつけるのは勿論の事、浜面に気付かれる事さえも恐ろしかった。



「なあ黒夜。」


黒夜が身を引こうとするよりも先に、浜面の手が黒夜の手を押さえつけた。

決して強く抑えられた訳ではないのに、
黒夜は身動きの一つさえもとれなくなっていた。


「お前、何か俺にして欲しいことがあるんじゃないか?」


問いかけられたその言葉は、何に遮られることもなく、
黒夜の心の奥底まで、一直線に突き進んでいく。

押さえつけられていた、黒夜の血の通わない筈の手からは、
忘れて久しい人間の温もりが、はっきりと伝わっていた。

今回はこれで以上になります。

今月は多忙のため、次の投下も2週間ほど先になるかと思います。

超ニヤニヤもんじゃねーの。次も期待してるから頑張ってくれ

黒にゃんが可愛すぎてたまらん
浜面もかっこ良いよ乙


たらしじゃないですか、やだもー

乙ー!!
浜面がいい男すぎる。

>>220
上ヤン病にかかったからな……
そりゃタラシ化するわ

黒「ん?今なんでもするって言ったよね?」


とりあえずキリのいい所までできたので投下します




「な…にか…って?」



浜面の行動に戸惑いながら、黒夜は喉からかすれかけた声を搾り出す。

唐突に向けられた話の矛先は、
彼女の秘めた願望にその切っ先を合わせている。


「何かは何かだよ、何か俺にして欲しい事、あるんだろ?」


先程までと同じ優しい口調で、浜面は言葉だけを強調するものへと変えた。


「だ、だって…そんなの急に言われても。」


その言葉に気圧されたのか、黒夜の口からは再び戸惑いの声が漏れる。

だが、それでも彼女の口からは、浜面の指摘を否定する言葉は出てこなった。




否定することも肯定することもなく、狼狽える彼女を、浜面は真正面から見つめている。


反射的に目を逸らそうとする黒夜だったが、目が合ったその一瞬だけで、
彼女の視線は浜面に絡め取られてしまう。


僅かに顔を背けることすら出来なくなった黒夜は、
頬を赤く染めながら浜面に問いかける。


「だ、大体、何でそう思うのさ。」



「何でって、そりゃあ、さっきまでの話聞くとやっぱりな。」



黒夜の言葉に、浜面は少し口ごもりながら答える。

言いよどむというよりは、言葉を選んでと言ったほうが適当なその様子は、
自分の出した結論に、ある程度の確信があるという様子が見て取れた。





「さっきから『絹旗なら』とか『絹旗の場合は』とかずっとそんな言い方してただろ?」


「そういう黒夜だってずっと同じような境遇で生きてきたんだから、多分絹旗みたいに、俺にして欲しい事があるんじゃないかって思ってな。」


そんな事はない。

そう言い張るには、二人の人生はあまりにも短く、あまりにも似通っていた。

否定の言葉を失った黒夜には、自分の中にある願望が、よりはっきりと理解できていた。


「そんなの…言えるわけ無いじゃん。」


それでも彼女の口からは、拒絶の言葉が発せられる。

絹旗と似通った人生を歩んでいるとは言え、やはり二人の道は異なっていた。



その違いは、何よりも目の前の浜面に対して犯してしまった、
決して忘れる事のできない二つの過ちとなって、彼女の心に傷を残している。


一度は浜面と出会う切欠になった、新入生としての抗争。
自分はその事件で、彼と彼の友人、そしてその忘れ形見を、歪んだ目的の為に害そうとした。


その過ちを、自分は何の償いを受ける事もなく許してもらい、
そのまま浜面や絹旗の生活の環に加わった。

今まで生きてきた道がそうだったから、
絹旗とは違い、自分には浜面のような人間がいなかったから。

そんな居直りに近い言い訳が、
今思えば、二度目の過ちに繋がったのかもしれない。

二度目の事は、今思い出すだけでも体が震えてくる。



恋査との戦いで自分が犯してしまった最低最悪の失敗。


大怪我をした自分の元に駆けつけてくれた浜面。
ついこの間まで命を狙っていた相手に背中を預け、囮となって自分を助けてくれようとした浜面。
そんな彼に、自分は何をもって答えたのか。


彼の優しさを侮辱し、信頼を捨て去り、挙げ句の果てに大怪我まで追わせた。
浜面の事を信じようとした自分にすら、したり顔で唾を吐きかけたのである。


絹旗ならきっとこんな事にはならなかっただろう。


二人の道がいくら似通っているとはいえ、同じ人物の思考パターンを植えつけられているとは言え、
やはり別個の人間であることには違いない。



その違いは、あまりにも決定的な場面で、
大切な人の命を危険にさらしてしまう結果となってしまった。

同じ境遇で育った絹旗の対比こそ、自分が願望を口に出すに値しない、
穢れ切った人間なのだと、否応なしに自覚させられる。

似た環境で育ったために、同じ願望を抱いたとしても、
絹旗にはそれを口に出す資格があり、自分の様な人間には決して持ち得ないのだ。


「言え…る訳…無い…じゃん。」


何故自分はあんな事をしてしまったのだろう。

何故自分は浜面の命を危険にさらしてしまったのだろう。

何故自分は浜面の信頼を裏切ってしまったのだろう。

自分に対する怒りと後悔、そして恐怖が渾然となって黒夜の胸をかき乱し、
処理できなくなった感情の奔流は、涙となって、彼女の両目から溢れ出した。



嗚咽にまみれた自分の声を聞いて、初めて自分が泣いているのだと気づく。
慌てて顔を覆い隠そうとするが、片手を浜面に抑えれられているため、十分に隠すことができない。

体を捩って手を引き抜こうとするが、
想像以上に強い力で抑えられていた手は、ピクリとも動かない。


「恋査の時の事か?」


泣きじゃくる黒夜に、浜面が静かに声をかける。

答える事はできなかったが、反射的に震えてしまった体は、
その答えを言葉よりも雄弁に語っていた。

しばらく黒夜を見つめたあとで、浜面は再び口を開く。



「あの時の事は…済まなかった。」



「お前があの時の事を気にしてるって言うんなら、それは間違いだ。」


溢れる涙のせいで彼の表情を読み取ることはできなかったが、
命を危険に晒した相手からの突然の謝罪は、
黒夜をより一層に深い、混乱の渦へと追いやっていく。


「なん…で浜ちゃ…んが…っ!」


恋査に重症を負わされた時も、浜面は同じように自分に謝った。


「言っただろ?お前からの信頼を得られなかったのは俺の責任だって。」


あの窮地を運良く生き延びてなお、
浜面は同じように、自分に責任があったと後悔している。

だが、その言葉に甘えるほど、自分は厚かましい人間ではない。

それは違う、という言葉が出ずに、
必死で頭を振って、否定する。



「お前がそう思えないんだったら、それでも良いさ。」


どこかその反応を予想していたかのように、
浜面は落ち着いた口調で話しかける。


「でも俺は、あの時、心底自分に腹が立った。」


「お前からの信頼を得られなかったせいで、自分だけじゃなく、お前の命まで危険に晒しちまった。」


「多分、思い上がってたんだろうな。麦野と和解できたんなら、黒夜ともおんなじ様にも和解できるって。」


「大した努力もしないで、簡単に出来ると思ってた。あいつとだって3回も殺し合ってようやく和解できたのに。」



そこまで言うと、浜面は軽くため息をつき、視線を下に落とす。

押さえていた黒夜の手を優しく握ると、
自分を勇気づけるように深呼吸をした。



「何にしろ、俺は同じ間違いを犯したくない。」


「だからお前に信頼してもらえるように、少しでも努力していきたいんだ。」


その言葉とともに、浜面は再び黒夜に目を向ける。

向けられた目には、揺るぐ事のない強い決意が込められていた。

それだけの強い意志が込められているにもかかわらず、
黒夜は不思議と威圧感を感じなかった。


むしろ、自分の背中を優しく押し出してくれるような、
一歩を踏み出す勇気を与えてくれるような、
心を奮い立たせる不思議な力が感じられた。




それでもなお、願いを口に出すことを躊躇う黒夜に、
浜面は力強く、励ますような口調で声をかける。


「そうやって黒夜が自分の気持ちを押し殺してしまう方が、俺は辛い。」


「俺が原因でお前に負担をかけてるんだって思うと、すげえ悔しいし、情けない。」


「そんな事ない!浜ちゃんは!」


思わず否定の言葉が口をついて出る。



だが、浜面は、すがり付くようなその言葉を手で制すと、更に言葉を続ける。


「俺たちは仲間なんだ、お互いに間違いを犯したら、正し合わないといけないし、許し合わないといけない。」


「もし黒夜が自分を許せないって思うんなら、それは俺がちゃんと支えてやれてないって事だ。」

「もし黒夜が俺に許して貰えないって思うんなら、俺は黒夜にその程度の人間だって思われてるって事だ。」


「だから、俺はその方が辛い。」


「滅茶苦茶な我儘や気まぐれで、一日中振り回される事なんかよりも、よっぽどその方が辛い。」



その言葉を聴き終えた時、黒夜は至極当たり前の事に気付いた。

ようやく、気づくことが出来た。

自分が一人ではない、という月並みな事に。



浜面の言葉と、握ってくれている手が、鈍い自分にも気づかせてくれる。

自分がどれだけ心に闇を作り出し、それに浸っていようとしても、
繋がったこの手は、きっとそれを許しはしない。

どんな深い闇からでも、この手は自分を引きずり出して、隣を歩かせてくれるだろう、
自分を握っている浜面の手と、その手に繋がる仲間達の手は。

そう気付いた瞬間、自分にのしかかっていた重い何かは、
いつの間にか消え失せていた。


「だから、どんな小さな事でも良い。聞かせてくれないか?黒夜の為だけじゃない、俺の為にも。」


「もう一度聞くぞ、黒夜。」




「何か、俺にして欲しい事があるんじゃないか?」



再び投げかけられたその言葉が、
自分でも知覚できない程の速度で全身を駆け巡っていく。


自分がして欲しいことはなんだろうか。


絹旗の話を聞いて、自分も同じようにして欲しいと思った。


だが、それは今の自分が本当にして欲しいことなのか、
ただ絹旗を羨ましがっているだけなのではないだろうか。


大好きな浜面に、今自分が本当にして欲しい事はなんだろうか。



見栄も羨望も取り払い、ただ浜面とだけ向き合うこの場面で、
黒夜の心が導き出したその答えは、自分自身が驚く程に、些細で幼稚なものだった。

だが、黒夜は、それを恥ずかしいと思う間も無く、口に出していた。

浜面の思いに少しでも早く答えたかったのかもしれない。
解き放たれた願望が、制止する間も無く飛び出したのかもしれない。



「浜ちゃんに…頭、撫でて欲しい。」



「それで…褒めて欲しい…どんな…つまらない事でも、いいから。」



何にせよ、黒夜の理性が形にする前に飛び出したその言葉は、発した後でも、
黒夜の顔を真っ赤に染めるのに、十分すぎる程の熱を持っていた。

今回はこれで以上になります。

展開が遅くて申し訳ありませんが、
次はきっちり黒夜をデレさせる様に頑張ります

いらねよks

さっさとクズ浜面しね

よし来た、待ってる

乙!
黒夜可愛い。

いやもうデレデレじゃね?

ココアに砂糖と生クリーム入れたような甘ったるい展開が待ってるのか




いいぞもっとやれ

うわあ…これはいつか正妻に刺されますね、間違いない

刺される?
挽肉にされるの間違いだろ

先に食いそう

浜面がこれだと上条さんに彼女ができたらどうなるんだろうか……
ヤンデレ化は回避不可だな

絹旗同様、抱きしめてやって仲良く一緒に寝るんでない>滝壺

これよりさらにデレるのか……
期待

まだか

少し遅れましたので中途半端ですが投下します



心の準備をする間もなく、願望を吐露した後で、黒夜は固く目を閉じた。

自分の行為があまりにも恥ずかしかったから、という気持ちが無かった訳ではない。

だが、そんな羞恥心よりも、今の黒夜には遥かに気がかりで恐ろしい事があった。

浜面は自分の願いを聞いて、どのように感じたのだろうか。

自分が伝えたささやかで子供じみた願い。



勿論それがどんなものであれ、浜面は決して侮辱したり嘲笑ったりする事は無いだろう。

だが、彼の目の端に、ほんの僅かにそんな感情を見つけてしまうだけで、
自分の心は再び挫けてしまうかもしれない。

どれだけ有り得ない事だと思っても、いや事実有り得ない事であるのにも関わらず、
可能性という恐怖に囚われた自分の心は、浜面の目に拒絶の欠片を見出してしまうのでは無いだろうか。

その疑念は、黒夜の瞳を固く閉じたまま、開かせようとしなかった。

今までの人生の中で、一度も信頼できる人間に出会えなかった彼女が、
今までの人生の中で、心に浮かべる事さえ出来なかった願いを口に出すという事は、
黒夜は勿論の事、背中を押した浜面にさえ、想像もできなかった程の勇気が必要だった。



深い闇の中から、彼女はその勇気を振り絞って、小さな一歩を踏み出した。

だが、その踏み出した一歩が踏みしめた場所はどんなものだったのか、
今までの自分から進んだ一歩という距離がどれほどのものだったのか、
それを確かめるのには、また新たな力を求めなければならない。

あるいは、それはまた、彼女が振り絞らなければならない新たな勇気なのかもしれない。

だが、踏み出すまでの勇気を彼女が振り絞ったというのならば、
踏み出した先で彼女を暖かく迎え入れるのは、
背を押し、手を伸ばした、仲間の役目なのだろう。



「頑張ったな、黒夜。」



不意に投げかけられたその言葉と共に、
目を閉じて俯く黒夜の頭へ、固く広い手が乗せられる。

その手が浜面のものだと、当たり前の事を認識するよりも先に、
乗せられた手は、彼女の小さな頭の上を、右へ左へと動き回った。

生まれて始めて経験する、頭を撫でられるという感覚に戸惑いながら、
黒夜はほんの少しだけ、目を開けてみようとした。

言葉よりも明確な浜面の答えが、黒夜に目を開く勇気を与えてくれたのかもしれない。



だが、小さく目を開いた黒夜の目には、浜面の表情は映らなかった。

こっそり上目遣いで見ようとしても、頭を手で抑えられている状態では、浜面の顔を見ることはできない。

手を払うなり、目をはっきりと開くなりすれば良いのだろうが、
直視するほどの勇気は無かったし、手を払うなどという選択肢は、
当然の事ながら思考の端にも登らなかった。


そもそも、あれやこれやと考える内にも、浜面の手は頭を優しく撫でさすっていく。

彼の手から与えられる心地よい刺激に、黒夜は次第に思考を奪われていき、
いつの間にか彼の手の感触をよりはっきりと味うために、集中力を費やすようになっていた。



大きく、逞しい浜面の手。

何気なく見ていた彼の手の情報が、より具体的な質感をもって、次々と更新されていく。

肉体的な強さよりも、能力の強さが常に上位に置かれる学園都市で、
男性的な逞しさを感じられる事は、あまり無い。

それでも、やはり自分の肌に触れる形で示されたならば、
後から付け加えられた能力などよりも、遥かに心に安らぎを与えてくれるものであった。


比較することの出来ない黒夜には預かり知らぬ事であったが、
特にそれが父性を求めている様な少女であったり、
好意を持つ男性からのスキンシップを求めている様な場合には、
その魅力は数倍以上にもなって、心に癒しを与えてくれる。



少しでもその感触を求めようと、黒夜は自ら頭を浜面の手に擦り付ける。

その行為は、浜面から見れば、もっと積極的な行為をねだっている様に写った。


「んっ…!」


頭を撫でていた浜面の手が、不意に黒夜の首筋にまで降りてくる。

なまじ集中していたのが仇となったのか、頭よりは幾分と敏感な部分への刺激に、
黒夜は驚きとも喜びとも聞こえる声を漏らしてしまう。

だが、黒夜は、それが唐突な行為であるにも関わらず、
抗議の声を上げるような事はしなかった。



むしろ、身を悶えさせるようなその刺激に、身を晒し続けることを望むかのように、
彼女の体は一切の抵抗を行おうとはしなかった。

彼女の心も、そんな体の反応に引きずられるように、その行為を積極的に受け入れていく。

時折、手の動きに体を震わせる黒夜を眺めながら、
浜面は彼女の望みを叶える様に途切れることなく撫で続けた。

それがどれだけの時間続けられたのか、黒夜には分からなかった。

確かなことは、浜面の手の動きに体を委ねているうちに、
彼女の心の中にあった恐怖心は、存在していたことすら忘れそうなぐらい、
跡形もなく消え去っていたという事だけである。



「もっと早くこうしてやれば良かったな。」


不意に浜面の声がかかる。

穏やかな声に導かれるのように、黒夜は浜面の方へと目を向けた。


「黒夜がそんなにして欲しいんなら、別にいつでもしてやれたからさ。」


言いながらも、浜面は黒夜を撫でる手を止めない。


「思ってたよりも頭小さいんだな。」


「髪もサラサラで…意外だけど手入れもちゃんとしてて。」


撫でながら、浜面は手触りの感想を黒夜に伝えていく。


決して悪い事を言われている訳でも無いのだから、素直に喜べば良いのだろうが、
あまりにもストレートな浜面の言葉に、黒夜はどう反応していいのか分からなかった。

そんな彼女の内心を知ってか知らずか、浜面は一言だけ付け加えた。


「見てるだけだと気付かない、黒夜の一面が良く分かる。」


それは先程、黒夜が抱いた気持ちと全く同じものだった。



いつも見慣れている浜面の手は、見ているだけでは分からない、逞しさと優しさが宿っている。

無能力者の筈の彼のその手は、ただ自分に触れるだけで、それを際限なく分け与えてくれた。

ただ触れるだけで、自分をこんなにも幸せにしてくれる彼の手は、
幻想殺しなどよりも遥かに素晴らしい力を持っているのではないのだろうか。

寸毫の迷いも無くそう思うほどに、彼女の心は浜面で満たされていた。

とりあえず今回はこれで以上になります。

少し中途半端になったので、次はなるべく早く投稿出来るように頑張ります




そうしてくれ

クズ浜面しね。さっさとゴミ箱へ逝け

乙おつー
浜面いいね

絹旗スレかと思ったら黒夜スレだった
スレタイ詐欺だ

浜面をCV:日野で脳内再生したらやばかった
イケボノすぎるわwwww日野ちゃまwww

浜面まじお父さん。

デレデレやん

乙です

とりあえず続きを投下します。

甘く出来ているかどうか不安なので、アドバイス等頂けましたら助かります。



「それで…、次は黒夜の事を褒めれば良いんだったな?」


幸せに身を委ねる黒夜に、浜面の言葉がかけられる。

その言葉に、黒夜は自分自身が告げた願いに、
まだ叶えられていない物がある事を思い出した。


「あ…でも。」


だが、黒夜は浜面の申し出を素直に受け入れようとはしなかった。

今この時に、これ以上の幸福を望む事は、とてつもなく贅沢で身分違いな事のように思えた。



「べ、別に今日じゃなくても…何か褒めてもらえるような事があった時でいいからさ。」


恥ずかしそうに微笑みながら、黒夜は断りの言葉を口にする。

浜面に対しての遠慮が無かったとは言い切れないが、
黒夜の発した言葉は、紛れも無き本心から出た真実の言葉だった。

無理矢理に口実を作って褒められるよりも、いつか浜面が本心から、
自分の事を褒めても良いと思ったその日に、一言優しく褒めてもらうほうが、
きっと自分も幸せになれるだろう。

それよりも、今は撫でてくれている浜面の手に満足するまで味わいたかった。



彼女を満たした幸福は安らぎを産み出し、その小さな体中を覆っていく。

昼下がりの窓から降り注ぐ陽光はそんな彼女の背を暖かく照らしていた。


「褒める事だったらいくらでもあるさ。」


穏やかな空気に浸り、幸せそうな笑みを浮かべる黒夜に、浜面が再び語りかける。

彼女の纏う雰囲気を壊さないように、優しい声で、ゆっくりと。


その言葉に、黒夜は緩慢な様子で浜面の方へと顔を向けた。

普段の彼女なら絶対に見せない、弛緩しきったその表情は、
彼女の内心を、どんな言葉よりも雄弁に、浜面に伝えていた。


「黒夜は良い子だからな。」


だが、続けたその言葉に、黒夜は少しだけ、拗ねた表情を浮かべる。

恐らくお世辞だと思われてしまっているのだろう。



それでも、黒夜が浮かべたその表情は、浜面に意地悪なやる気を与えた。

もしこの言葉が嘘ではないと、彼女に信じさせる事が出来たなら、
彼女はどんなに喜んでくれるだろうか。

そして、喜んでくれた彼女は、どんな表情を浮かべてくれるだろうか。

浜面仕上はそんな好奇心を、今この場で何としてでも満たしたくなった。


「お世辞で言ってるんじゃないぞ?」


とりあえず、浜面は口を尖らせた彼女に、釘を刺すことから始めた。

内心を見透かした言葉に、黒夜は少し不満そうな表情を浮かべるが、
撫で続ける内に、すぐにまた締りの無い笑みを浮かべるようになる。



「今日だって、俺のお願いした通りに、して欲しい事正直に言ってくれたしな。」


「そう…だけど、でもそれはこっちがお礼言わないといけない事だし…」


浜面が褒めても、黒夜はそれを直ぐに否定してしまう。

褒めて欲しい、という願望と、自分は褒められるような事などしていない、
という先入観が、彼女の心の中でせめぎ合っているのが、浜面の目から見ても、
簡単に読み取ることが出来た。

恐らく、自分が人に褒められるような人間ではない、という思い込みが、
彼女の心に枷を掛けてしまっているのだろう。



だが、そんな枷は、今の浜面にとって、大した障害にはならない。


先程黒夜に告げた、「良い子だ」という言葉が嘘でない証拠に、
彼には黒夜を褒めてやりたい事が、いくらでもあった。


それこそ、彼女の枷を砕き、否定する言葉が尽きてしまうほどに。



「それだけじゃ無いだろ?絹旗の我儘にだって付き合ってくれた。」


「あれはただの気まぐれ…だしさ。」


「気まぐれでもなんでも、落ち込んでた絹旗は嬉しかったと思うぞ。それは黒夜のお陰だ。」

「それにフレメアの面倒だって見てくれてるだろ?」


「それは浜ちゃんとか、第四位だってしてる事で…」


「他の人は関係ないさ。」

「今は黒夜を褒めてるんだ、他の人がしてるから、黒夜を褒めないで良いって理由にはならない。」


一々こちらの言葉に反論する黒夜だったが、その内容を聞いてみれば、
褒められ慣れていないが故の、些か的外れなものばかりであった。



それでも褒められる事に悪い気はしないらしく、
抑えきれない喜びが顔に浮き出ている。

本人もそれは自覚しているようで、否定している手前、
それを隠そうと顔を伏せたり背けたりして、
こちらに顔を向けまいと、涙ぐましい努力を見せていた。

その度に浜面は、わざと黒夜の弱い部分に手を這わせ、
彼女の表情が少しでも見れるように、顔を自分の方に向かせようとする

純粋に自分に頭を撫でられ、褒めてもらって喜んでいる彼女に、
このような意地の悪い行いをする事に、浜面はほんの少しだけ、申し訳ない気持ちを覚えた。



その度に、もうこの辺にしておこうと、良心が腕を引っ張ってくるのだが、
だが、それもたまに見え隠れする、彼女のくすぐったそうな、嬉しそうな顔を見る度に、
ついもう一度だけ、と彼女の顔が見たくなってしまう。

その気持ちは、自分の言葉を否定し続ける、黒夜の頑固さへの意地と相まって、
浜面に、また次の悪戯心を呼び起こしてしまった。


「あとは、ちゃんと一人で歯磨き出来るようにもなったもんな!」


黒夜の事を褒める数々の出来事の中から、
特に子供扱いした物を選び、殊更に強調して黒夜の頭を撫でてやる。


「は、浜ちゃん、それ、完全に馬鹿にしてんじゃん!」


露骨すぎる言い方に、流石に黒夜もムキになって反発した。



怒りよりも羞恥の方が上回っているらしく、こちらに向けた顔は、
可哀想なぐらいに、真っ赤に染まっていた。

だが、予想された通りのその反応に、浜面は動じた様子を見せない。


「いや、結構大事な事だぞ?虫歯になってからしばらくは滝壺にチェックしてもらってたんだから。」

「それがもうチェックしなくても大丈夫って言われたんだろ?凄い凄い。」


「絶対、絶ッ対に馬鹿にしてる!」


今度はこっちが黒夜の言葉を否定する側に回る。

馬鹿にしている訳じゃないと弁解してはみたものの、黒夜は中々に信じてくれない。


とはいえ、からかい半分なのだから、あながち間違ってはいないのかもしれないが、
それでも、決して嘘をついている訳では無かった。


「本当に馬鹿にしてるわけじゃないって。」

「それは黒夜が自分の失敗を反省して、もう二度とあんな目に合わないよう努力してるって事だろ?」

「むしろここを褒めないでどうするんだよ。」


唸る黒夜に、浜面は言い聞かせるように話しかける。

浜面も彼女をからかうだけが目的でこんな事を言ったのではない。


それがどんなに小さなものでも、いや、それが小さなものだからこそ、
彼はそれを見つけて、褒めてやりたかった。

その小さな一歩こそが、紛れもない彼女の成長の証なのだから。


「だ、だって、そんな簡単な事で褒めてくれるなんて…」


浜面の言葉に、黒夜は信じられないといった様子で口を開く。


「何言ってんだ、人に褒められるなんて本当は簡単な事なんだぞ。」


そんな彼女に、浜面が最後に付け加えたその言葉こそ、
黒夜を枷から解き放つのに、最も必要な言葉だったのかもしれない。

今回はこれで以上になります。

次もなるべく早く投下できるように頑張ります。



早目にな

乙!

乙ー!!
既に絹旗が出てなくてタイトル詐欺になりつつあるなぁww


黒夜=高山みなみで再生している

毎度甘くて悶えるわ乙

この二人甘すぎるよ滝壺さん

拗ねた黒夜書いた人?

>>295
はい、以前総合スレの方に投下しました。

十年後の他はそれだけです。


少し期間が空きましたが、きりの良い所まで出来たので投下します



「だって…私、今まで褒められた事なんて無くて、昔の研究所でも落ちこぼれみたいに…」



そう言った黒夜の顔には、驚きと戸惑いが入り交じっていた。

彼女にとって、他人から褒められるという事は、それだけ得難い経験だったのだろう。

だが、少なくともこれからは、自分が傍にいてやれるこれからは、
他人から褒められるという事を、当たり前で簡単な事にしてやらなければならない。

それこそ、真っ当な道を一生懸命に歩いている、ごくごく普通の人達と同じように。


「だったら、そいつらが馬鹿だったって事だよ。」



浜面は軽い調子ながらも、躊躇う事なく言い切った。

その迷いの無い言葉は、黒夜の心に絡みついた、
薄暗い過去の鎖を確かに砕いていく。


「そいつらの言葉を借りるんなら、俺だって落ちこぼれさ。」

「なんてったって学園都市お墨付きの『無能力者』だからな!」



自分が無能力者である事を、明るく笑い飛ばす浜面の言葉には、
ほんの僅かな劣等感も混ざってはいない。


「まあ、そう言う意味だと、俺が落ちこぼれっていう事に関しちゃ間違っちゃいないかもしれないけどな?」


だからどうした、とでも続きそうなその口調に、
流石の黒夜も、ムキになって否定するのがバカバカしく思えた。


「だけど、そんな落ちこぼれでも、人を褒める事は出来る。」

「勿論人に褒めてもらう事もだ。」

「その証拠に、黒夜の事、ちゃんと褒めてやれてただろ?」


悪戯っぽく微笑みかけた浜面の問いかけに、黒夜は反射的に頷きそうになった。

だが、幸か不幸か、黒夜の明晰な頭脳は、それを素直に認める事が、
どれだけ恥ずかしい事か気づいてしまう。


喉まで出掛かった言葉を強引に飲み込み、
それでも感謝の言葉を発してしまいそうな口に蓋をする。

だからといって、彼女が否定の言葉を出せるはずも無く、
ただ顔を染めたままで口をもごもごと動かしている。

浜面の方でも、その反応だけで十分だったらしい。

いや、いくら見返りを求めなかったとはいえ、
自分がしたことで黒夜がこんなに喜んでくれている事は、
浜面を少なからず、彼が想像していた以上には喜ばせていた。

思わず緩みそうになる頬を少しだけ引き締め、浜面は言葉を続ける。


「もしまだそれが信じられないんだったら。」

「今度は俺を褒めてくれよ、さっき黒夜が言ってたように、どんな小さな事でもいいからさ。」


どこか悪戯っぽく、そして嬉しそうに微笑む浜面の言葉に、
黒夜は戸惑いの色を隠す事なく問い返す。


「わ、私が…浜ちゃん…を?」


「ああ、落ちこぼれだって言われ続けた黒夜が、落ちこぼれだって言われ続けた俺を、だ。」


一人で歩く事が覚束無い幼子を支えるように、
浜面はゆっくりと黒夜の問いかけに答え、思考の道筋を導いていく。


「今じゃなくて良い。」

「俺の普段の生活を見ていて、何気なく褒めても良いって思えるような事があったら、その時でいいから。」



自分が誰かを褒める。

昨日までの自分には思いもよらなかったその行為に、
黒夜は当然のように困惑する。

しかし、その一方で、その言葉を聞くと同時に、
浜面に感謝しなければならない事が、湯水のように溢れ出してきた。

自分を迎え入れてくれた事や、信じてくれた事だけじゃない。

虫歯になった自分を気遣ってくれた事。

一人で時間を持て余していた時にただ黙って側にいてくれた事。

夜ご飯に自分の好きな物を作ってくれたこと。

眠れない時に話し相手になってくれた事。

彼がしてくれた些細な事の一つ一つが、
どれだけ自分にとって大切だったのか、黒夜は改めて実感した。



自分が浜面を褒めるなんて、凄くおこがましい事だというのは分かっている。

だが、それでも、黒夜は、今まで浜面が自分にしてくれた事の全てに、お礼を言いたかった。


「あ…」


どれから言えば良いのだろうか、
どんな言葉で言えば良いのだろうか、
そんな迷いが、ごく当たり前の様に黒夜の頭をよぎる。

まだ浜面と共に暮らすようになってから、それ程日が経った訳ではない。

それでも、自分の中にある全ての言葉を尽くしても、
この思い全てを伝え切れるとは思わなかった。


「あ…あのさ…!」


どれに対して、どんな風に言うかはまだ決められない。

だが黒夜は、『ありがとう』の一言を最初に言う事だけは決める事が出来た。


「あ、あ、あり、がとう…浜ちゃん。」


緊張を隠せずに伝えられた黒夜のお礼に、浜面はただ笑顔で答える。

そして、それは、浜面の顔を見て、きちんお礼を伝えた黒夜の目にも、はっきりと映った。

伝えられた達成感、次に繋げる言葉を決めなければいけない焦り、浜面が喜んでくれた嬉しさ。

その感情の渦は、彼女にとって好ましいものには違いなかったが、
黒夜が制御するには、あまりにも大きかった。

彼女の体から言葉を奪ってしまうには十分すぎる程に。



「その…えと、あ…」

どんな事でも良いから言葉にしないと、
黒夜がそう焦れば焦るだけ言葉はこぼれ落ちていく。
少し落ち着いて考えを整理しようと思っても、
頭を占めているのは、浜面にしてもらって嬉しいと感じた事の全てである。

思考の矛先をどこに向けても、今の黒夜の頭の中には、
彼女が落ち着ける場所など、存在しなかった。

当然ながら、本人としては意外だったかもしれないが、
それを見守る浜面にも、黒夜の感情は手に取るように解っていた。


「ありがとうな、黒夜。」

くるくると目を回す黒夜を愛おしく思いながら、浜面は感謝の言葉を口にする。

例え上手く言葉にできなくても、黒夜が自分にしてくれた事は、
彼女にとっても大きな大きな一歩になった筈だ。

その一歩を自分と一緒に踏み出してくれた事に、
浜面は「ありがとう」と言わずにはいられなかった。

無理しなくても良い、と浜面が口にしようとしたその時、
彼の手の下にある、小さな黒夜の体から、消え入りそうな声が聞こえてくる。


「は、浜ちゃんは…私、だけじゃなくて、み、皆の事もちゃんと見守ってくれて…」

「気遣ってくれ…て、さ、支えてくれて、優しくて、頼りになって、いつも、いつも頑張ってて…」


些細な物音でかき消されてしまうような小さな声、
それでも浜面には、彼女の声がはっきりと聞こえていた。

まるでそれを遮る雑音が、彼女を思って声を控えているかのように。


「だ、だから!は、浜ちゃんも…良い子、だと思う…よ。」



言い終えた後で、二回、三回と黒夜は深呼吸をする。

その後で、彼女は目を俯かせ、ふいっと顔を逸した。


「…ありがとうな、黒夜!」

そう言いながらも、浜面は少しだけ黒夜が横を向いてくれているのを有難いと思った。

自分の想像以上にだらしなく緩みきった顔を、彼女に見られなくて済むのだから。

今回はこれで以上になります。

絹旗もタイトル詐欺にならない様、出せるように頑張ります。


ええ話や…

糞スレ乙。二度と来んな!そして、さっさとクズ浜面しね。

乙でした
もう黒夜といちゃつくだけでいいんじゃないかなw

超乙
可愛いなぁもう

乙ー!!
黒夜可愛いな、絹旗なんていらんかったんや。



絹旗ちゃんが来たらさらに甘くなるのか
黒夜と絹旗が浜面を取り合うのか

終わり?

まだしばらくは続けます

今回もあまり多くはありませんが投下します。















「な?簡単だったろ?人を褒めるのなんて。」


暫くして落ち着いた黒夜に、浜面は声をかける。


「…簡単だけど、凄く難しかった。」


先ほどの恥ずかしさを拭いきった訳ではないようだが、
それでも彼女の顔には、達成感を浮かんでいた。


「ああ、簡単だけど、難しい。俺だってついこの間、誰かに殴られるまでは忘れてた。」


頭の中をよぎる苦い思い出。

だが、あの時、あの経験があったからこそ、自分は黒夜にその事を伝える事が出来たのだろう。



「でも、私は大丈夫だよ、浜ちゃんが居てくれるんだから。」


そして、自分もその事を忘れないでいられるだろう。


「ああ、俺もだ。黒夜が側に居てくれるからな?」


「うん!」


浜面の笑顔に、黒夜も満面の笑みで応える。

黒夜は、自分は今までの人生の中で一番の笑顔を浮かべているのだと確信していた。

だが、それは明日にも二番目になるかもしれない。

何故なら、明日からも浜面が側に居てくれるのだから。


そう思った次の瞬間、黒夜は自分の体が、
強い力で前に引き寄せられたのを感じた。


「え?」


気がついた時には黒夜は浜面の胸の中に収まっていた。

自分が浜面に抱きしめられていると気づくまでの間も、
彼の手は、相変わらず彼女の頭を撫でていた。


「は、浜ちゃん!?ちょ、ちょっと!」



「うん?どうした?」


当然の様に戸惑いの言葉を口にする黒夜だったが、浜面の方は、全く動じた様子を見せない。

恐らくは絹旗やフレメアにしているのと同じ様に抱き寄せたのだろうが、
側に座るだけでも緊張してしまう黒夜には、浜面の行動はあまりにも刺激が強すぎたのだろう。

平然とした浜面と混乱する黒夜。

すれ違った二人の思考が互いにすり合おうと努力する外で、
彼らの体は、何の抵抗もなく、互いを受け入れ合っていく。

そしてその成果は、黒夜の小さな体の機能全てを使って、浜面の体温を、
匂いを、触れた肌の感触を、彼が纏う服の衣ざわりを、彼女の脳へと次々と送り込んでいった。

キモいクズ浜面しね。


「わ、私ここまでしてってい、言ってないんだけど。」


鈍重な思考を追い越し、詰め込まれ続ける情報は黒夜の思考を着実に妨げていく。

それでも彼女は、どうにか浜面へ、ささやかな抵抗を試みる事が出来た。


「ん?ああ、まあ気にすんなって、俺がしたかっただけだから。」


尚も言葉を続けようとする彼女の頭を、浜面は半ば強引に自分の胸板に押し付ける。


「だっ、だってほら、こんなの、ね?ね!」


口だけは否定の言葉を元気に吐き続けているが、
体の方は抵抗する意思など初めから無かったかのように、浜面へと身を委ねていた。

いや、委ねていたと言うよりも、むしろ彼女の方から、浜面の体へ、
自身を少しでも這わせようと体をしなだれさせている様にも見える。


「嫌だって言うんなら辞めるけど、良いだろ?別に。」


彼女の心の内を知ってから知らずか、浜面は黒夜に念のための確認を取った。

とはいえ、浜面は、黒夜に断られる事など微塵も想像していないのだろう。

それが当然と言わんばかりの口調と強引さで、黒夜の背を抱きしめた手へ、更に力を加える。



形だけでも浜面を拒もうと、彼の胸板に添えられた黒夜の手は、
自身の体に押し出され、導かれるように、浜面の背中へと回された。


「あ…」


戸惑いの声を最後に、黒夜は浜面と目を合わせ、再び恥ずかしそうに逸した。

抵抗しようと言葉を尽くせば尽くすほど、浜面の匂いは、口を通して彼女の身に浸透し、
混乱した頭を、浜面と、そして黒夜にとっても都合のいい形に落ち着けていく。

一度落ち着いてしまえば、彼女の視界は全て浜面で埋め尽くされた。


普段の黒夜にはあまりにも刺激の強いこの光景も、
浜面が直ぐそばで支えてくれているこの状況なら、ただ好ましいだけの事として受け入れられる。

しかも、これは浜面の方から望んでくれた事なのだ。

黒夜はただ口を閉ざし、浜面の逞しさに身を委ねてさえいれば、それで良かった。

浜面の方は落ち着いたもので、この体勢でも撫でやすいように、
頭から背中まで撫で下ろすように手つきを変えていく。

時折くすぐったく感じる事もあったが、その優しい手は、
彼女の心をゆっくりゆっくりと溶かしていった。



だが、彼女は、背に回した手に力を込めることは出来なかった。
背に回した手に力を込めてしまえば、浜面の体の中にさえ取り込まれてしまいそうに思えたから。

しかしその想像は、彼女の心に生じた劣情に僅かな火を灯した。

いっそ浜面の中に取り込まれてしまえば、それはどれだけ幸せなのだろう。

決して自分からは力を込めることの出来ない、黒夜の手。

その手に一言だけ命じてもらえれば、自分も浜面の様にする事が出来るかもしれないのに。
この現実離れした妄想を少しでも現実に近づけることができるかもしれないのに。

心に生じた浜面への思いは、今まで彼女が浜面に抱いた気持ちの中で、
最も理不尽な物だったのかもしれない。


それでも浜面の胸の中で、ほんの少しだけ貪欲に、
これ以上を望む事が出来たのは、黒夜にとっての確かな成長だったのだろう。


「良い子だな、黒夜。」


浜面からの何度目かの言葉に、黒夜は胸板へ頬を擦り付けて応えた。

欲情と我儘も全て浜面に包み込んでもらい、黒夜は只々安らぎに浸る。

その内に、いつしか黒夜は目を閉じていた。
だが、それは何かから逃げるための行為ではない。


与えられた幸せを余すところ無く受け入れようとする為に、
余分なものを少しでも排除しようとした、これ以上を望んだ、彼女のささやかな努力だった。

今この時、彼女の瞼の裏にも、心の内にも、浜面仕上以外は存在していない。
それはまさしく彼女の努力の結晶に違いなかった。

だから、彼女が、殴り込んできた幼馴染の罵声や喚き声を、
これっぽっちも聞いていなかったのも、それはそれで、やむを得ない事なのであった。

今回はこれで以上になります。

多分次は絹旗がメインになります。

乙!

>「良い子だな、黒夜。」



日野声で再生したらやばかった
こういう的だけ浜面の声優が日野聡でよかったと思うよ……

乙です

おつー
これは調教完了ですわ

浜/面/仕/上

続きというか幕間を投下します。

時系列では絹旗が黒夜に相談する日の前日の夜になります。










「はまづら、お疲れ様。」

浜面がロードサービスの勉強を終え、諸々の雑事を片付けた時には、時計は既に深夜を回っていた。

溜まった疲れを紛らわそうと、凝った肩を大げさに回し、ため息をつきながら部屋の扉を開ける。

そんな浜面を迎えたのは、彼の部屋のベッドで横たわる最愛の恋人の声であった。

「先に寝てても良かったんだぞ?」


自分の寝床で滝壺が待っている事に、浜面も今更驚きはしない。

それでも、やはりそれを喜ぶ気持ちだけは、始めの頃と変わらなかった。

普段はもう少し早く眠る彼女に気遣いの言葉をかけ、浜面も同じ布団へと入り込む。

それとほぼ同時に、布団に隠された滝壺の手が、浜面の手を探り当て、しっかりと握り締めた。


「だって、眠る時ははまづらが側にいて欲しいから…」


気だるげな声で甘えながら、滝壺が体を寄せてくる。

露骨な表現で好意を伝える事が少ない彼女だが、この時間だけは違っていた。

時には手を握りながら、時には目を見つめながら、
普段は母性を感じさせる彼女が、女としての顔を唐突に覗かせる。

慣れるまでは随分と驚かされたが、最近では、その言葉に隠された彼女の勇気と、
口調で覆い隠した恥じらいまで分かるようにもなってきた。


気だるげな声で甘えながら、滝壺が体を寄せてくる。

露骨な表現で好意を伝える事が少ない彼女だが、この時間だけは違っていた。

時には手を握りながら、時には目を見つめながら、
普段は母性を感じさせる彼女が、女としての顔を唐突に覗かせる。

慣れるまでは随分と驚かされたが、最近では、その言葉に隠された彼女の勇気と、
口調で覆い隠した恥じらいまで分かるようにもなってきた。


時にはそれをからかって拗ねさせてしまう事もあったが、その表情でさえ愛らしいと思えてしまう。

言葉の代わりに頭を撫でて微笑みかけると、滝壺は安らいだように、目を細めたままでにっこりと笑う。


「でもな滝壺、珠に本当に寝てて欲しいって思う時もあるんだぞ?」


ふと思い出した記憶が、言葉となって浜面の口から出た。

ただそれだけを聞いてしまえば不安にさせてしまう言葉だが、
滝壺の目を見ていると、言うべきかどうか迷っている言葉も、
知らずのうちに全て引き出されてしまう。


ありえない事だが、もし自分が浮気でもしようものなら、
見つかっている、いないにかかわらず、自分は自白してしまうだろう。

そんな事を考える自分を、滝壺が不思議そうな顔で見つめていた。


「滝壺の寝顔って、凄く可愛いからな。」


痛くもない腹を探られるのも困るので、本格的に怪しまれる前に口を開く。

夜遅くに布団に入り込んだ時に見られる、待ちきれずに寝てしまった滝壺の寝顔は、
月の灯りを受け、どこか現実離れした神秘さを帯びていた。


それこそ本当に現実の物か確かめようと、頬に指で触れたり、接吻をした事もある。
その度に、眠る彼女の口からは、可愛らしい声が寝息と共に漏れ出ていた。

眠気に負けて無防備をさらけ出すのも、普段の彼女らしいと言えるのだが、
普段は色気を遠ざけている彼女の無防備さは、男の寝床の中では、かえってそれを引き立ている。


「…はまづらの意地悪。」


褒めたつもりの言葉に、滝壺は不満そうに口を尖らせた。


「本当に可愛いんだぜ?おまけに綺麗だし。」


決して嘘ではないと、拙い言葉を尽くして伝えるが、滝壺の機嫌は戻らない。

頬を膨らませて、可愛い顔でこちらを睨みつけている。


「明日は私が早起きして、はまづらの寝顔を見るから。」


膨らんだ頬をつついていると、不意に滝壺が口を開いた。

言われて見れば、早寝で遅起きの彼女は、
自分の寝顔を見る機会は少ないのかも知れない。


だが、わざわざ夜更かしして待っていてくれた滝壺が、
次の日にも早起きしなければならない程の価値が、自分の寝顔にあるとは思えなかった。


「そんなに気合入れて見るほどの物でも無いだろ?俺の寝顔なんて。」


「…それでも見る。」


一応言っては見たものの、滝壺は頑固に言い張っている。

そうなった彼女に何を言っても聞き入れてもらえないのは、
今までの経験から嫌という程分かっていた。


とはいえ、浜面の方としては、別に寝顔を見られたからと言って嫌な事もない。

「だったら今日は早く寝ないとな?」

一応は物分りのいい風を見せ、滝壺の頭を撫でてやる。

だが、そう言いながらも、浜面は朝のささやかな楽しみを逃すつもりはなかった。
一日の初めに見る滝壺の寝顔は、彼にとって朝の活力を与えてくれる大切な物なのだから。

浜面の言葉に頷いて、滝壺も布団をかぶり直す。



「じゃあそろそろ電器消すか?」

そんな彼女の小さな唇に自分のそれを重ねたあとで、浜面は優しく問いかけた。

部屋の照明は入ってきた時、既に落としてある。

あとはベッドスタンドの小さな明かりを消せば、二人の体は闇に包まれるだろう。

だが、滝壺は、その行為に嬉しそうに微笑んだ後で、ゆっくりと首を振る。


「あと10分だけ待ってあげよ。」


その言葉と共に、滝壺はちらりと扉の方へと目をやった。

こんな遅くなら、もう寝てしまっているだろうとも思ったが、
何かの弾みで起きてしまい、部屋まで来てしまった事も一度や二度ではない。


「ああ、じゃああと10分だけな。」


その言葉と共に、浜面はスタンドに伸ばした手を布団の中へと収めた。

スタンドの灯りの下で、二人は互いに見つめ合い、今日一日のたわいない出来事に言葉を交わす。

そんな二人の部屋の扉が小さく開かれたのは、それから5分程しての事だった。


潜めるような足音をと共に、その影はゆっくりと近づき、二人が眠るベッドに忍び込む。

だが、二人は恋人との寝床に、断りもせずに入り込むという不躾さにも、遮るような声を発さなかった。

毎日とは言わなくても、週に何度も忍んでくるこの訪問者に、二人もとっくに慣れていたのだから。

だが、その日は普段とは一つだけ違うことがあった。

それは、二人の間に潜り込んだ彼女が、浜面の方にはっきりと背を向けた事だった。



「きぬはた、どうしたの?」


彼女の行動を不思議に思った滝壺が絹旗に問いかける。

そして、その問いかけに応えた絹旗の声は、珍しいぐらいに不機嫌な物だった。


「どうもしません。今日は滝壺さんと超一緒に寝に来ただけなんですから。」

今回はこれで以上になります。

途中で分かりづらい話をはさんで申し訳ありませんが、こちらは次回の投稿でさっくり終わらせるつもりです。



滝壷かわいい
拗ねた絹旗かわいい

最愛で一瞬絹旗かと思たWWWWW

滝壺可愛い流石正妻…
乙です

おつー
この砂糖しかない空間に飛び込める絹旗さんパネェw

滝壷正妻すぎるwwww
絹旗むくれてるwwww


一方むぎのんは一人さびしくベットの中……(’・ω・)

乙です
拗ねた最愛ちゃんも超かわいいですね!

マダカナー

1ですが投下が遅れて申し訳ありません。
誠に申し訳ないのですが多忙のため、来月半ばぐらいまでは投下できない状況が続きそうです。

なるべく早くに投下できるよう努力します。

私生活も大事だ
のんびり待つわ

必要ない。さっさとクズ浜面死 ね

報告ありがとう
待ってるよー

モブもいらん

>>361 だったらスレ閉じるか黙ってろ。できないならお前が死ね

死ねって書くためにわざわざ間に半角スペース入れるとか可愛いな

遅くなりまして申し訳ありません。

絹旗パートが終わるまでですが、一応キリのいいところまで出来ましたので投下します。


普段なら嬉しそうに擦り寄って来るはずの彼女が、今日はこちらの方に目すら向けない。

滝壺も不思議そうな表情を浮かべ、「何かしたの?」と言いたげな視線を送ってくる。

とりあえずは首を振ったものの、現に絹旗がこうして不機嫌になっている以上、
きっと自分は何かをしてしまったのだろう。

とはいえ、背中を擦り付けてくるあたり、彼女も本気で怒っているわけでは無いらしい。

ただ単に構って欲しくてこのような行動をとっているだけなのだろうか?

絹旗の頭を撫でながら、ここ数日の記憶を探ってみたが、
彼女の機嫌を損ねてしまうような事は、特に思い当たる節もなかった。



なんにせよ、本気で怒っていないのなら、あれやこれやと気をもむよりも、
絹旗を可愛がってやるほうが手っ取り早い。

浜面は、可愛らしいうなじを晒し、そっぽを向いている彼女の頭を、いつものように優しく撫でてやる。

始めこそ少し驚いたように身をこわばらせたが、直ぐに気持ちよさそうに浜面の手を受け入れた。

その光景に滝壺も一安心したようで、微笑みながら絹旗を抱きしめている。

絹旗は滝壺に抱きしめられ、浜面に頭を撫でられて、
寝る前の安らかな一時に浸っていた。



特に甘えたがりな絹旗にとって、滝壺の好意は事の他に嬉しいらしく、
弾んだ声で雑談に花を咲かせている。

それはそれで構わないのだが、あくまでも浜面に対して怒っているという姿勢を変える気はないようで、
浜面に話しかける事は勿論の事、視線を向ける事さえしようとはしない。

それでいて撫でる手を止めようとすると、ねだるように頭を何度も何度も擦り付けてくる。

我儘一杯の癖に甘える事だけ一生懸命な彼女は、
昔の姿からは想像もできないほど、年相応かそれよりも更に幼い姿を曝け出していた。


もし自分達の子供が滝壺の方にだけ懐いてしまえば、このような疎外感を味わってしまうのだろうか。

ふと生じた妄想を振り払おうと、浜面は再び絹旗へコミュニケーションを取ろうと試みた。

どうせ普通に話しかけても相手にされないならと、まずは後ろから頬をつついてみるが、
くすぐったがるだけで嫌がる事すらしない。

それならばと、力を入れて乱暴に、がしがしと頭を撫でてみたが、
反応が無いのはそのままに、かえって絹旗を喜ばしただけのようだ。


「ふふっ」


あれやこれやと試す浜面と、何が何でも相手をしようとしない絹旗の意地の張り合いに、
思わず滝壺の口から笑いが漏れる。


「ねえきぬはた、はまづらが何か怒らせるような事したの?」


穏やかな微笑みを浮かべ、滝壺は
先程まで浜面につつかれていた絹旗の頬に、手を添えて問いかけた。


「超別に何もありませんよ、さっきも言ったじゃないですか。」


「今日は滝壺さんと超一緒に寝に来ただけだって。」


「だから超浜面の事なんて、超知りません。」


口を尖らせたままで、絹旗はさっきと同じ言葉を口にする。

ともすれば相手を怒らせてしまう絹旗の態度だが、
演技と分かってしまえば、拗ねた顔さえも可愛らしい只のお子様である。

滝壺も少し怒ったほうが良いのかも、と思いはするのだが、
彼女の母性が、それを行動に移させてはくれなかった。

何よりも無粋な真似をして、彼女の安らかな時間を邪魔したくなかったのだ。


「だったら俺はリビングにでも移ろうかな。」


「なんか邪魔者みたいだし。」


だが、それと歩調を合わせるだけの父性は、
そっぽを向かれ続けていた浜面には備わっていなかった。
と言うよりも、男子にありがちな悪戯心の方が勝ってしまったのかもしれない。

なんにせよ、少し不機嫌そうな声で発されたその言葉は、
絹旗を動揺させるには十分すぎる程の力を持っていた。


「え…や、やっ…!」


いきなり冷水をかけられたように身をこわばらせ、
絹旗の口からは言葉にならない声が漏れる。


「絹旗もその方が良いだろ?」


駄目押しとばかりに意地悪く確認するが、その口調とは裏腹に、
浜面の口にはしっかりと笑みが浮かんでいた。

その上、ご丁寧にもわざと身をゆすって、
今すぐにでも出て行くような演技まで付け加える手の混みようである。

絹旗の頭越しに、滝壺がやり過ぎだとでも言いたげに、
こちらを非難するような目で睨んでいた。


「だ、駄目です!超駄目です!」


そんな二人を余所に、絹旗は大慌てで首を振る。



「なんでだよ、俺なんて関係ないって言ってたじゃねえか。」


「そ、それは…確かにそうなんですけど…」


どうにか都合の良い言い訳を必死で考えようとするが、
気ばかり焦って、上手い言葉が思い浮かばない。

素直に一言『浜面にも側にいて欲しい。』と言えればどんなに良かっただろう。

言葉が見つからないでいる一瞬一瞬の内に、浜面が出て行ってしまうのではないか、
そう思えば思う程に、絹旗の焦りは不安となって、更なる混乱を呼び寄せていく。


「えっと…ちょ、ちょっと待って下さいよ、浜面。」


時間稼ぎに引き止めてみたものの、焦ってばかりの頭は、
ちっとも解決への手がかりを与えてくれなかった。


「待って…待って下さい、もう少し…」


今にも泣き出しそうな顔になっている絹旗に、滝壺は助けの手を差し伸べた。

胸元を軽く二度つつくと、絹旗の顔がこちらへと向けられる。

滝壺は向けられた瞳にしっかり映るよう、
自分の胸に手を当てて、意味ありげににっこりと微笑んだ。


具体的に口添えをする事こそ無かったが、絹旗にはその行為だけで十分だった。


「そ、そうですよ、滝壺さんですよ!」


「いくら浜面が超浜面でも、やっぱりこのタイミングで出て行かれるのは滝壺さんだって超嫌な筈です!」


「だからしょうがなく、超しょうがなく、浜面もここにいてもらわないといけないんです!」


はやる気持ちと嬉しさがないまぜになった声で、絹旗は一気にその言葉を言い終え、
その後で、答えを与えてくれた滝壺の胸に、甘えるように頭を擦り付ける。

滝壺は、そんな絹旗の頭を撫でる一方で、これ以上は許さない、
とでも言いたげに、浜面を睨みつけた。



「そうかー、そういう事なら俺も出て行く訳にはいかないよな。」


その視線に屈したのか、自分でもやりすぎだと思ったのか、
浜面も素直に絹旗の言葉を聞き入れ、大人しくベッドの中へと戻る。


「本当にそうですよ!」

「こんな事超わざわざ言われなくても察さないといけないのに、浜面は超浜面なんですから。」


浜面の体がベッドの中に戻ったのを感じたのか、
絹旗は先程までの緊張もどこえやら、気の抜け切った声で答えていた。

随分現金な態度だとは思ったが、
自分が側にいてくれる事を、そんなにも喜んでくれるというのは、悪い気はしない。


だが、それは浜面にとっても同じだった。
滝壺も絹旗も、側に居てくれるだけで、自分を幸せにしてくれる。

そんな二人が自分の意思で、わざわざ寝床に脚を運んでくれている事が、
浜面は今更ながらに嬉しくなった。

相変わらずこちらに背を向け、滝壺に甘える絹旗の体の下に、浜面は自分の腕の一方を潜り込ませる。


「な、何するんですか浜面!」


いきなり体の下から伸びてきた浜面の手に、絹旗は驚きと抗議の声を上げた。

だが、浜面の方はその声に動じる様子もなく、そのまま手を伸ばして滝壺の背中まで回す。



「ん?いやほら、滝壺のおかげでベッドから追い出されないで済んでるんだろ?」


「だからこうして感謝のハグをだな。」


とりあえず絹旗からの質問には答えたものの、別に手を緩める事もなく、
もう一方の手も滝壺の手に回すと、絹旗ごと強引に抱き寄せた。


「わ…はまづら?」


「愛してるぜ、滝壺~。」


普段よりも大分軽い調子で囁かれる愛の言葉は、おそらく浜面なりの照れ隠しなのだろう。

その証拠に、滝壺を抱きしめる彼の手には、いつもと同じかそれ以上の力が込められていた。


「うん…私もだよ、はまづら。」


そう言いながら、滝壺も浜面の背に腕を回す。

それだけ見れば仲睦まじい恋人同士の光景だが、
間に挟まれた絹旗からすれば、そんな呑気な事は言っていられない。」

前は滝壺の豊満な胸を押し付けられ、後ろは浜面の胸板にしっかりと受け止められている。


「超イチャつくんなら私のいない所でやって下さいよ…」


二人に抱きしめられ、身動き一つ取れない状況の中、絹旗は呆れたようにため息をついた。


「きぬはたも居てくれないと嫌だもん。」


そう言いながら滝壺は、不満そうに口を尖らせる絹旗の額に、軽く口づけをする。


「…超しょうがない人達です。」


ぶっきらぼうに言いながら、絹旗は観念したように、滝壺の胸に顔を埋める。

耳から首から真っ赤にさせたままでの強がりに、浜面と滝壺は声を出さずに笑い合うと、
どちらともなく、ベッドスタンドの明かりに手を伸ばした。




かちり、という子気味の良い音と共に、微かに部屋を照らしていた最後の明かりが消え落ちる。

三人がそれぞれ夢の世界に旅立つ中、
微かに意識を保っていた浜面は、絹旗の耳にそっと口を寄せ、


「…意地悪してごめんな?」


と一言だけ呟いて、眠りに落ちた。



次の日の朝、目を覚ました浜面の目に最初に映ったのは、
ベッドに横たわりながら、にこやかに微笑む滝壺の顔だった。


「可愛い寝顔だったよ?」


別に見られて困るものでは無いが、
流石に寝起きの顔に面と向かって言われると、何やらくすぐったいものがある。

頬を掻いて誤魔化しながら、浜面は枕元に置いてある目覚まし時計に手を伸ばした。

時間を見てみれば、そろそろ朝ご飯の準備をしなければいけない時間だ。

そういえば今日は俺が当番だったかな、と体を起こそうとして、
浜面は始めて自分の腰にまとわり付く違和感に気がついた。


目をやってみれば、昨日は背を向けていた筈の絹旗が、がっしりと腰に両腕を回して抱きついている。

どうやらよっぽど寝心地がいいらしく、多少身を揺すったぐらいでは起きない程に熟睡しているらしい。


「こっちの方が可愛いだろ?」


「はまづらの方しか向いてないから分からないよ。」


そう言った滝壺の声には、少しだけ悔しそうな色が浮かんでいた。

何にせよ朝の支度が遅れれば麦野にも迷惑をかける事になる。


心地よい寝床とすがりつく絹旗に名残惜しさを感じながらも、
浜面は抱きしめる絹旗の手を解き、ベッドから立ち上がった。


「きぬはたが起きたら手伝いに行くね。」


「ゆっくりしててくれて良いよ。絹旗もその様子じゃしばらくは起きないだろ。」


部屋から出て行く浜面の背に声を掛けると、滝壺は絹旗を自分の下へ抱き寄せる。

気を使ってくれるのは嬉しいが、それでも一人ベッドに残される事に、
一抹の寂しさを感じずにはいられなかった。


それを誤魔化すため、滝壺は絹旗を抱きしめる手に力を込める。


「ん…」


自分としてはそれほど強く抱きしめたつもりは無かったが、
程なくして、腕の中から、絹旗のぐずる様な声が聞こえてきた。


「…あれ、滝壺さん?」


「おはよう、きぬはた。」


眠気混じりの絹旗に目覚めの言葉をかけるが、その言葉も耳に届いているのかどうか、
何かを探すように、周りを見回すと、不安そうな顔で口を開いた。



「浜面は…?」


「朝ご飯作りに行ったよ。ついさっきまでは居たんだけど…」


滝壺の返事に、絹旗は再び表情を暗くする。


「きぬはたがお腹空かせ無いようにって作りに言ったんだから、怒っちゃだめだよ?」


「それでもやっぱり…超せっかく一緒に眠ったんだから、起きた時も超側にいて欲しかったです。」


慰めの言葉を頭では理解しても、
心情がそれについて行かないらしく、不満そうに口を尖らせている。


「…滝壺さん。」


落ち込んだ声で振り向くと、絹旗は昨晩のように、滝壺に抱きついてきた。


「最近浜面が超冷たいんです。」


不満そうに、そして淋しそうに漏らした絹旗の言葉に、
滝壺は何も言わず、ただ笑顔を浮かべ、彼女の小さな頭を撫でていた。








なお、その日の朝ごはんは、愚図って起きない二人の為、浜面がわざわざ寝室まで運び入れた。

行儀が悪いと浜面にお説教を食らう絹旗だったが、その頃には寝起きに見せた不機嫌さはどこへやら、
満面の笑みを浮かべて、贅沢で自堕落な三人での朝食に、舌づつみを打っていた。

今回はこれで以上です。

度々遅れて申し訳ありませんが、次は早めに投下できるよう、頑張ります。


絹旗可愛い

こんな人生なら自堕落になっちゃうわ
あま~い乙でした

コレで超冷たいとか普段どれだけ甘やかしてるんだよ

乙ー!!!

>>393
ツンデレなんだろ。

実に可愛いくないツンデレだ

モブ

この絹旗可愛いな
昔ワンコを室内飼いしてたせいか「忠犬きぬはた」というなぞ単語が

絹旗がこうなるまでダメダメになった過程がみたいw

虐待されてた猫保護したら、だんだん慣れてはきてもすぐ逃げるのを経て
安心しきったら超デレて膝から離れない、ってのを思い出した

遅れて申し訳ありませんが
とりあえずきりのいい所まで出来たので投下します
















幸せそうな黒夜を抱きしめていた浜面だったが、ふと、部屋の入口に誰かの気配を感じた。

滝壺だろうか、麦野だろうか、と少しは気になったが、
別にやましい事をしている訳ではないのだからと、別に気に止める理由もない。

だが、入口に立つ気配は、そこから動こうともせずに立ち尽くしている。

不思議に思った浜面が、顔を上げてみると、
そこには怒りで顔を真っ赤にした、文字通り鬼の様な形相の絹旗が、肩を震わせながら立っていた。


「これはどういう状況なンですかねェ?」


本気で怒っている時にしか使わない言葉遣いで問いかけてくるが、
どういう状況かと聞かれても、見たまま以上の説明はしようがない。


「どういう状況って言われてもなあ…」


「黒夜を可愛がってやってるだけなんだが。」


「だから超何で黒夜なンか可愛がってンですか!」


一応口に出してはみたものの、間髪入れずに絹旗の文句が帰ってきた。


そういえば昨日機嫌が悪かった理由は、
フレメアを可愛がりすぎて絹旗を蔑ろにしていたから、
とか黒夜が言っていたような気もする。

朝ごはんで好物を用意してやったら嬉しそうにお礼を言ってきたので、
てっきり機嫌も良くなったと思っていたのだが、どうやら甘かったようだ。


「そりゃあ黒夜にお願いされたからだよ、まあ俺がこうしてやりたいって思ったのもあるけどな。」


変に誤魔化してしまえば、かえって妙な誤解をさせてしまう。
あくまでも事実だけを伝えれば、賢い絹旗ならちゃんと分かってくれるだろう。


そう考えた浜面だったが、実際はそんなに簡単な話ではない。

賢い絹旗は確かにそれが嘘でない事は理解できた。

しかし、それが納得出来るかは、全くの別問題である。


「だいたい黒夜も何超甘えてるんですか!私が超お願いした事はちゃんと浜面に伝えてくれたんですか!?」


矛先を黒夜に変え、絹旗は厳しい口調で問い詰めた。

だが、そんな絹旗の態度とは対照的に、黒夜の動きは、まるで寝起きのように緩慢だった。



名残惜しそうに浜面の胸から顔を離し、邪魔者を見るような目を絹旗に向ける。


「ああ、言った言った。絹旗ちゃんから言われた事はちゃんと伝えといたから。」


とおざなりな言葉を投げかけると、すぐさま同意を求めるように浜面へ笑いかける。

浜面がそれに応じる様に頭を撫でると、再び嬉しそうに微笑み、浜面へと抱きついた。


「だったらどォいうつもりでそンな真似出来るンですかねェ!」


当てつけにも見えるようなその黒夜の行動に、絹旗は床を踏み抜かんばかりの勢いで地団駄を踏む。



騒音を撒き散らしながら喚く絹旗に、黒夜は再び目を向けた。

だがその目を見れば、絹旗を疎ましく思っているのは明らかであり、
今すぐにでも出ていかないと容赦はしない、とでも言いたそうに睨みつけている。

かと言って絹旗も易々と引くつもりも無い。

先程までの緩やかな空気はいつの間にか消え去り、
今にもお互い能力を使っての取っ組み合いにでも発展しそうになっている。

しばらく睨み合った後、先に口を開いたのは黒夜だった。


「大体絹旗ちゃんは浜ちゃんに甘えすぎ。」


「色々話聞いてみたけど、どこが冷たいんだか。」


馬鹿馬鹿しいとは思いながらも、
始めは黒夜もほんの少し、絹旗に共感していた。


「一昨日は浜ちゃんと一緒に映画見に行って、昨日もフレメアが来るまでは膝の上座ってて、夜には能力追跡と寝てるところに割り込んで、そのまま抱きしめてもらうって…」


しかし細かく話を聞いてみれば、むしろ浜面を独占しすぎているのは絹旗の方だ。


一緒に暮らしていない分、過ごす時間が短いフレメアが拗ねたり駄々をこねたからといって、
咎めよう等と言う気持ちは全くと言っていいほど起きなかった。


「フレメアとかが文句言うのって当たり前だよね、ていうか絹旗ちゃん、私達と比べてどんだけ浜ちゃん独占してんのさ。」


むしろあれだけ浜面に甘えさせてもらっておきながら、
堂々と不満不足をいう事に、決して小さくない怒りさえも覚えている。


「他人と比べてどうとかじゃないんです!私は今までよりももっと!ずっと!浜面の側にいたいんです!」


とはいえ、絹旗も言われっぱなしでは終わらなかった。

いくら向こうの方が正論だったとしても、現実問題として絹旗はまだまだ満足していない。


もはや当たり前となったはずの家族との日常だが、
彼女にとっては、まだどこか現実味の薄い、夢や幻の様に感じられる事がある。

幸せというものから縁の遠かった彼女が、それを実感する為、
人一倍以上の触れ合いを求めたからといって、そこに何の罪があるだろうか。

結局、嫉妬が原因の感情論の応酬は、互いに平行線をたどるだけの物にしかならない。


「大体私が不満そうにしてるのに、いけしゃあしゃあと浜面に甘えるなんて、そっちの方が図々しいとか思わないんですか!」


自分のことを棚に上げてとは良く言ったものだが、
そんな絹旗の言い分を鼻で笑うと、黒夜は当てつけるように浜面に抱きついた。



「図々しくなるだけでこんなにいい目に会えるんなら、幾らでも図々しくなってやるよ!」


「いいから超さっさとそこを離れろって言ってンです!」


お互い決して譲らない意地の衝突は、第三者にしか解決しえないものである。

となれば、ここでその役目を果たすのは、
当事者の一人であり、ある意味元凶でもある浜面仕上以外にはあり得なかった。


「…分かった、絹旗、俺が悪かったよ。」


二人の争いを見かねたのか、浜面は昨日の事について、絹旗に頭を下げる。

それは違う、と思わず反論しようとした黒夜だったが、浜面はそれを遮り、更に言葉を続けた。



「俺にも理由が無かった訳じゃないけど、それでもお前が傷ついたっていうんなら、俺が悪い。」


「済まなかったな。」


絹旗を真っ直ぐに見つめながら伝えられたその言葉には、
その場しのぎの繕いや出まかせは微塵も含まれていなかった。


「ま、まあ分かってくれれば超良いんですよ…」


堂々とした浜面の態度は、
絹旗に、自身の行動がどれほど子供じみたものだったか、
嫌というほどに思い知らせていた。



だが、情けないと思いつつも、浜面が謝ってくれた事と、
これ以上彼とつまらないいざこざで争わなくてもいい事に、
少なからず喜びを感じていたのも確かであった。


「だったら…その…」


頬を染めながら、絹旗は何かをねだるような素振りで口を開く。


「わ、私もそっちに行っても良いですか?」


緊張と恥ずかしさで顔を真っ赤に染めながら、
絹旗は今日一日、ずっと望んでいた思いを口に出した。



昨日フレメアがしてもらっていたように、そして今日黒夜がしてもらっているように、
自分もああやって何の遠慮もなく、心の底から存分に甘えたい。

心から溢れ出そうな願望は、絹旗の口から出た瞬間に20字程度の言葉に収まってしまう。

そんな彼女の言葉に、浜面は少しだけ考え込むような素振りを見せ、
一度黒夜に目を移した後で、絹旗へ笑いかけた。


「ああ、勿論だ、ほら。」


そう言いながら、浜面は絹旗に手を伸ばす。


だがその一方で、不安そうにしがみつく黒夜の体も、しっかりと抱きしめていた。

浜面の言葉に、絹旗はゆっくりと部屋の中を進んでいく。

一度黒夜と目があったが、その目はどこか不安そうに潤んでいた。

あと一歩、ほんの少し大股で浜面に届く所で絹旗は足を止める。

彼の胸の中には相変わらず黒夜が抱かれており、
決して離れないと言わんばかりに浜面へしがみついている。


「あの…浜面?」


「ん?ああ、悪い。」


自分はどうすればいいのか、そんな言葉を言外に含んだ絹旗の問いかけに、
浜面は軽く謝ると、黒夜の体を抱きしめたまま、少しだけ横にずらした。

大柄な彼の体は、そうするだけで、
絹旗一人の体を収めるだけの隙間を十分に確保できていた。

だが、その彼の行動に、絹旗も黒夜も少しだけ不満そうな表情を見せる。


「まあ不満もあるだろうけど、今日はこれでお互い我慢してくれよ。」


その気配を敏感に察したのか、浜面は二人に声をかける。


「これなら昨日みたいに黒夜も追い出さなくていいし、絹旗も帰さなくても済むだろ?」


どこか申し訳なさそうな浜面の言葉に、二人は僅かに目を合わせ、睨み合った後で、
しょうがないとでも言いたげにため息をついた。

その一方で、互いにどこか安心していたのも事実だった。

片方は追い出されずに、片方は追い返されずに、
この場から離れないでも良くなったという事に。


「…超もっとそっちに詰めて下さいよ黒夜。」


「…後から割り込んできた割に偉そうなんだよね絹旗ちゃん。」


憎まれ口を叩きながらも、しっかり抱きついてくる二人に苦笑しながら、
浜面は彼女たちの頭を交互に撫でてやる。


恐らく、これからはこういう風に撫でてやる事も増えるかも知れない。

だが、彼女たちが喧嘩しないで済むのなら、
結局のところ、これが一番いい方法だったのだろう。

その答えを自分は一日遅れでしか出せなかった。


やっぱりまだまだ未熟だ。


そんな当たり前の事を改めて実感すると同時に、
そんな自分を慕ってくれる二人が、浜面の目には今まで以上に有り難く、
そして可愛らしく映っていた。

これで本筋は終わりになります。

蛇足で続きを書くか、以前中断したSSを早く完成させて投下するかは未定ですが、
続きを書く場合はこのスレに投下します。

キモいスレはいらん。害悪>>1とクズ浜面死 ね

おつー

乙かわいい

乙ー!!!
きぬはたかわいい。

モブ絹旗

つまらん

糞スレだった…

面白いわ

モアイ絹旗

乙でした
甘過ぎて別けて読んだわw
続きにも期待

つまらんからさっさとHTML化してこい

完全に蛇足だから


続きが出来ましたので、とりあえず投下させてもらいます。

今回はとりあえず繋ぎだけで


しばらくの間、二人は先程までの喧嘩が嘘の様に、
浜面の腕の中で、静かに体を休めていた。

このまま眠ってしまうのではないだろうか、
そんな風に浜面が思い始めたころ、黒夜が思い出したかの様に口を開いた。


「ねえ浜ちゃん…」


「私も今日浜ちゃんのベッドに行っていい?」


躊躇いがちに告げられたそのお願いに、
ああいいよ、と浜面は何の気なしに答えようとする。


「そんなの超駄目に決まってるでしょう!」


しかし、彼の言葉は絹旗の叫び声に遮られてしまう。


「滝壺さんの迷惑を超考えてください!いくらなんでも超図々しすぎますよ!」


滝壺だったら別に構わないと思う、と口を挟もうとしても、
二人の会話はあっという間に口喧嘩に発展してしまう。


「絹旗ちゃんだって昨日行ってたんじゃん!図々しいのはそっちでしょ!」


「私だって二日連続でなんて行ったりしません!超少しぐらいは気を使ってるんです!」


それでも取っ組み合いにならないのは、浜面の膝の上から離れたくないからだろう、
どんな喧嘩の種も、今の二人にとっても、最優先事項には決してなりえい。

とはいえ、事が喧嘩に発展してしまえば、一番困るのはやはり浜面本人だ。

どちらの肩を持っても片方には恨まれる。

かと言って、だったら二人一緒に来れば良いという物でもない。

絹旗はああ言った手前頷くわけにはいかないし、
黒夜も絹旗ばかり贔屓してずるいと拗ねるだろう。


さてどうしたものか、と考え込む浜面に明暗を与えてくれたのは、
暖かな昼の、ゆったりと流れる時間だった。


「だったら今から昼寝するか?三人でさ?」


二人の言い合いの合間を縫って、浜面は独り言の様に、そう呟いた。


「へ…?」


「昼寝、ですか?」


キョトンとした顔を向ける二人に、浜面は得意そうに微笑みながら言葉を続ける。


「ああ、丁度いい時間だし、今なら滝壺にも迷惑かからないだろ?」



そんな彼の提案に、絹旗と黒夜は不承不承といった様子で頷いた。


「…私はそれで構わないけど。」


「まあ…超迷惑が掛からないのなら、それが超一番ですし。」


内心満更でも無いのは二人の表情を見れば一目瞭然だが、
わざわざそこをつついて気分を損ねる必要もないだろう。

喧嘩が再燃する前に、浜面達はクッションや布団を集め、居間に三人の寝床を用意する。

置いてあるソファーに布団を掛けただけの物だが、昼寝ならこれで十分だ。


浜面は早速その上に寝転がるが、寝心地を確認する間もなく、絹旗と黒夜も上に伸し掛ってくる。


「ちょっと黒夜!浜面が超苦しがってるじゃないですか!」


「どう考えても絹旗ちゃんのせいでしょ!いきなり伸し掛って!」


再び喧嘩しそうになる二人の上に布団を掛け、
浜面はさっきまでの様に、彼女達をそれぞれの手で抱き抱えた。


「ほらほら、昼寝の時間なんだからいい子にしてろよ。」


そう言いながら、抱きしめる手に力を込めてやると、
抗う事なく、その小さな体を浜面へと預けてくる。


「たまにはこういうのも良いよな。」


絹旗と黒夜は独り言の様なその言葉に頷くと、
浜面に目をやり、示し合わせたかのように口を開いた。


「「おやすみなさい。」」


全く同時に全く同じ言葉を告げたのが照れ臭かったのか、
二人は相手を責めるように睨んだ後で、恥ずかしそうに目を逸す。


「ああ、おやすみ。」


彼女達の額に軽い口づけをしながら、浜面も二人に眠りの言葉を返した。


その言葉を聞き届け、二人は嬉しそうに笑って、ゆっくりと目を閉じる。


浜面もしばらく二人を眺めていたが、
彼女達から寝息が漏れてくるようになると、安心したようにその目を閉じた。


浜面も眠りに落ちたあと、誰も見る者の無いその寝床の中で、
絹旗と黒夜の小さな手は、浜面の胸の上でしっかりと重ねられていた。


それから暫くの後、玄関の鍵が開く音と共に、誰かが家の中へと入ってきた。

何者かは迷う事なく台所へと進み、諸々の片付けを終えた後で、居間に足を踏み入れる。

昼寝をする三人を見つけた彼女は、少し驚いた表情を浮かべると、
ゆっくりと、そして静かに彼らの側へと歩いていく。



「随分見せつけてくれるじゃないの。」


仲睦まじく眠るその三人の姿に、彼女の口から思わず言葉が漏れた。


「この女たらし。」


怒っているというよりも呆れているといった方が良い口調だが、
両手を腰に当てて、仁王立ちしながら見下ろすその姿は、
彼女をよく知る者であれば、本能的に身の危険を感じずにはいられないだろう。


だが当の三人は、各々の幸せな夢の中で、
だらしのない顔を無防備に晒している。

その気の抜けた姿に、呆れていた彼女の口から、愉快そうな微笑みが漏れた。

しばらくの間、三人の寝顔を眺めた後で、彼女は眠る浜面に唇を重ねると、


「ねぇ?はーまづらぁ~。」


と囁き、彼らの眠りを妨げる事なく、静かに居間から去っていった。



今回はこれで以上です。

満遍なく出すと言っておきながら麦野だけ出ていなかったので、
麦野メインでもう少しだけ続けます。

たぶん絹旗と黒夜は殆ど出ないと思いますが、良ければもう少しだけお付き合いください。

おつおつー続きも楽しみだぜ

キモい。さっさと死 ね

期待してます!

麦野、待ってました

デレ麦のんか
ツンドラ麦のんか

どちらにせよ期待

実につまらん糞スレだ

そんなとこ張りつく、さもしい人生だな

くだらん

最近現れてる絹旗アンチだろ
絹旗スレを発狂したかのように荒らしてるからな
携帯とパソコン使ってIDまで何回も変えちゃってるしね

(荒らしをスルーできない奴も荒らしと変わらないけどな)

本人乙

 よっこらしょ。
    ∧_∧  ミ _ ドスッ

    (    )┌─┴┴─┐
    /    つ. 終  了 |
   :/o   /´ .└─┬┬─┘
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  ありがとうございました
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秋田

島根

鳥取

北朝鮮

とりあえずきりのいい所まで出来たので投下します












「ふう…」


誰もいなくなった夜のリビングで、浜面は一つため息をつくと、
溜まった気だるさを振り払うように大きく伸びをする。

夕食の準備を手伝い、風呂にも入って、洗濯もしてアイロンも掛け終わった。

あとは寝るだけという所なのだが、昼寝をしたせいか眠気が全く湧いてこない。

しょうがないからロードサービスの勉強でもしようかと本を開いてみると、
これが思った以上に熱中してしまった。


少し前までは一緒に昼寝していた絹旗や黒夜も起きていたが、
今ではそれぞれ部屋に戻り、ぐっすり眠っている。

ようやく眠気も沸いてきたが、まだまだベッドに行くにも物足りない。


「何かあったっけな…」


晩酌にビールの一杯でも飲もうか、と思い、キッチンの方へと足を運ぶ。


「あら?もう勉強は終わったの?」


扉を開けると、誰もいない筈のキッチンから、浜面に声が掛けられた。

胸に生じた小さな驚きを押し殺し、声のした方へ目を向けてみると、
エプロン姿に身を包んだ麦野が、ボウルを持ったままま、こちらに笑顔を向けている。



「まだ起きてたのか?」


その問いかけに頷くと、麦野は浜面に背を向け、ボウルの中身をかき回し始める。


「新しいお菓子にでも挑戦しようかと思って。」

「昼間に下準備から始めると、フレメアや絹旗が五月蝿いしね。」


背を向けたままの彼女の動きに、浜面は自然と目を奪われていた。

普段のラフな格好はそのままに、少し小さめなエプロンを腰の上で結んで、
麦野は楽しげにキッチンを動き回っている。


家庭的な雰囲気と、そこはかとなく強調された尻が、
普段とはまた違った彼女の色気を浜面に感じさせた。

リハビリの為だった筈の料理が、
麦野の新しい趣味になるまでに、そう時間は掛からなかった。

初めは、決して手馴れているとは言えない手際をからかう様な事もあったが、
徐々に上達する彼女の腕前と、こちらの好みや健康を気にかけてくれる優しさに、
今では自分を含めたアイテムの全員が、素直にお礼を言っている。


「そんなに見ないでよ、恥ずかしいから。」


視線に気付いたのか、麦野は振り向きながら浜面に話しかける。

浜面の方には決してやましい思いは無かったが、
頬を染めながらもどこか嬉しそうな麦野の表情を見ると、
嫌でも艶のある唇や、エプロンがピッタリと貼り付いているせいで強調された胸に視線が誘導されてしまう。


「それで、浜面はどうしたのよ。」

「お茶でも飲むなら入れるけど?」


そんな浜面の視線に麦野も気づいたようだったが、呆れたようにため息こそついたものの、
嫌がる様子も怒る様子も、全くと言っていいほど見せなかった。



「ああ、いや、寝る前にちょっと一杯呑もうと思ってさ。」

「確かビール余ってただろ?」


麦野の体から目をそらし、浜面は冷蔵庫の方を顎でしゃくる。


ビールが余っていたかどうか、実際の所は覚えていないが、
切れていたとしても麦野が補充してくれているだろう。


「ええ、この間買っておいたから。」

「でもお酒だけ飲むと体に悪いんじゃないの?」


そう言うと、麦野は手に持ったボウルを置いて、冷蔵庫の中身を確認する。



「適当にスナックでもつまみながら飲むよ、別に深酒するつもりもないしな。」


特に何も考えずに言ったその言葉に、麦野の手が止まる。

それが彼女の地雷だったと浜面が気づく間も無く、
麦野は満面の笑みを浮かべたまま浜面の眼前まで歩み寄り、
その細く白い指を彼の胸元へと突きつけた。


「台所に立ってる女の前でスナック菓子で良いとか、随分な言い草じゃない?」


顔に笑みを浮かべたまま、目だけで睨みつけるという、
恐ろしいながらも器用な仕草に、浜面は素直に感心していた。


とはいえ、こうなってしまうと自分に出来るのは素直に頭を下げる事ぐらいしかない。


「悪かったって、でもこんな時間から作ってもらうのも悪いだろ?」


謝りながらも一応弁解は入れては見るが、
自分の余計な気配りは、今の麦野にとっては逆効果にしかならないのかもしれない。


「料理の準備している後ろでスナック菓子食べられる方がよっぽど悪いわよ。」

「適当につまみ用意するから机の上片付けておいて。」


そう言いながら麦野は冷蔵庫から適当な食材を取り出し、手際よく準備にかかる。



ああ、と一声だけ頷くと、浜面は居間に戻り、言われた通りに机の上を片付けた。
とはいえ、元々対して散らかしてもいなかっただけに、そこまで時間がかかるものでもない。

一通り終わらせて手持ち無沙汰になった浜面の耳に、台所から麦野の包丁の音が届く。

少しぐらい手伝ったほうが良いだろうか。
そう思いながらも、先程の様に藪蛇になってしまうかも知れないと思うと、
いまいち台所の方へと戻る気にはなれなかった。

程なくして扉が開き、麦野がお盆に幾つかの小鉢とビールを載せて入ってくる。


「あら、少し待たせちゃったかしら。」


「いや全然、むしろ思ったより早くて驚いてるよ。」


お世辞でもなく、浜面は素直にそう思っていた。

自分も全く料理をしない訳では無いが、
お盆の上に載っている料理を全て作ろうとすると、
どう少なく見積もっても今の倍は時間がかかるだろう。

余ったおかずから流用したとは思うが、それにしたって大した腕前だ。

感心する浜面を余所に、麦野は浜面の隣に腰を下ろし、机の上につまみを並べていく。


最後の小鉢を置いた後、麦野は浜面にグラスを手渡すと、
用意したビールの栓を抜いた。

小気味のいい音が二人きりの居間に響く。

思わず笑みが漏れたのは、ようやく酒にありつける嬉しさだろうか、
それとも、麦野がこんな風に晩酌の用意までしてくれるようになった事の嬉しさだろうか。

渡されたコップを黙って突き出すと、麦野も同じように笑みを浮かべながら、
栓を抜いたばかりのビールを注いでいく。


「私も一杯貰っていい?」


浜面のグラスにビールを注いだ後、麦野は悪戯っぽく笑いながら、
隠していたもう一つのグラスを取り出し、浜面に見せてくる。


「当たり前だろ?こんな時間からつまみ用意してもらって、一人で飲むとかとてもじゃないけど言えねえよ。」


後が怖いし、という言葉をこらえ、浜面は麦野に笑いかけて、彼女のグラスにもビールを注いだ。

じゃあ乾杯、という声と共に、互いのグラスを合わせ、浜面はビールを一息にあおる。

麦野はそんな浜面の姿を横目に見ながら、ほんの一口だけグラスに口付けた。



「…」


互いに無言のまま、浜面は空になったグラスを麦野の方に突き出す。

麦野の方もそれに対して何か言う事もなく、黙ってグラスにビールを注ぎ直した。

ただ先程とは違い、麦野は浜面との距離を、お互いの肌が触れ合うまでに縮めていた。

自分のグラスが再び満たされたのを確認した後で、
浜面は麦野の肩を少し強引に抱き寄せる。

自分に惚れている女が身を寄せてきた時、黙って肩を抱いてやる。
それぐらいの度胸と甲斐性は、浜面にも育っていた。


今回はこれで以上になります。

浜面は同居人と酒を飲んでるだけなんですが、この場合浮気になるんでしょうか?

知るか!

浮気ダメ、絶対

浮気じゃない、本気だ

むしろ浮気を本気にしたら良いよ(淡い期待)

好きにヤったらイイじゃない!

おつおつ

浜面もげろ

下手に拒絶してヤンデレ化されるよりはマシだな

 よっこらしょ。
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良妻系麦のん……だと……?
予想外だがすばらしい

 よっこらしょ。
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キモい>>1もクズ浜面…さっさと死 ね

やけに熱心な粘着がいるようだけど、非常に面白い
続き期待

糞つまんね~

 よっこらしょ。
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おお続ききていた
やっぱり麦野は可愛いね
乙でした

10年後の女将むぎのんを思い出すなぁ


あまり長くはありませんが、続きが出来ましたので投下します。


「…あんたとこんなふうに過ごせるようになるなんてね。」

つまみに箸を付ける浜面を眺めつつ、麦野は感慨深そうに呟く。


「元に戻っただけだろ?前みたいにさ。」


それが当たり前なんだとでも言いたげに、
浜面は素っ気なくも見えるぐらい、軽い口調で応える。

だが麦野は、浜面のそんな様子に嬉しそうに微笑んだ後で、はっきりと首を振った。



「嘘、前はこんな風にしてくれる事なんて無かったじゃない。」


肩を抱いている浜面の手に自らの手を重ね、甘えるような声で笑いかける。


「まあ…そりゃあそうかもしれないけどよ。」


一瞬顔に浮かんだバツの悪さを振り払うと、浜面はそれを誤魔化すように反論した。


「それを言うならお前だってそうだろ?こんな風に料理を作ってくれる事なんて無かった。」


彼なりに多少恨みがましく言ったつもりだったが、
麦野の方は「あら?そうだったっけ。」とだけとぼけて愉快そうに笑っている。


もう酔ったのだろうかとも思ったが、流石に一杯でこうなる程麦野も弱くない。


「ああ、そうだったよ。絶対に無かった。」


このまま流されるのも癪なので、浜面はもう一度だけ同じ言葉を繰り返した。


「まあ…作りたくても作れなかったからね、人に…浜面に自信を持って食べてもらえる料理なんて。」


その言葉を言うと麦野は自嘲するような笑みを浮かべる。

本当なら麦野だってそうしたかった。
好きな男の為に料理を作り、美味しいと言ってもらう。

そんな恋する乙女にありがちな願望ぐらい、昔の彼女にだって備わっていた。


暗部組織のリーダーとしての責任、学園都市第四位としてのプライド、
そんな物のせいで、表に出すどころか、自分自身が認めることさえもしなかったが。

だが今は違う。

押し付けられた肩書きや順位に縛られるよりも、
自分の素直な気持ちを大切にする事の方が、もっと大事だと気づくことが出来たから。


「まあ…でもこれが前に進むって事じゃないの?」


浜面は昔に戻った、という言葉を良く使う。

血まみれな非日常を過ごしていながらも、
楽しい日常というものは、ほんの僅かな時間、確かに存在した。


年相応か、あるいはそれよりもう少し過激に馬鹿をやり、
立場やレベルも考えずにいられたその時間は、まさしくアイテムにとっての青春だったのだろう。

しかし、自分や滝壺、絹旗にとって、それは戻るべき場所というには少し違和感があった。

その日常とはあくまでも暗部の生活と不可分な物であり、
血みどろの非日常の一部でしか無かったのだから。

それを戻るべき日常だと浜面が言えるのは、
やはり浜面が本質的には表で生きていくべき人間だったという事だ。


だが、浜面の言う、「昔」に戻って生きていくのは、
ずっと裏で生きていた自分達にとって、また別な意味を持っていた。

今までとは全く違った価値観の中で、
穏やかな日々をまばゆい光の注ぐ表の世界で生きていく。

それには各々が今いる場所から、
一歩でも前に踏み出さなければならなかった。

例えそれがどんなに小さな一歩でも構わない。

真っ当な価値観の真っ当な日常の中で、
日々を良くするため、それぞれの願いを叶えるために、
自分自身の努力で、一歩でも前に踏み出さなければならかった。


「絹旗は前より素直になった。」


「黒夜はちゃんと歯を磨くようになった。」


「滝壺はあんたとの関係をどんどん深めていってる。」


そこまで言うと麦野は言葉を切り、浜面にからかう様な目を向けた。


「あんたら二人が一緒に寝るようになるなんて、昔は絶対に有り得なかったじゃないの。」

「昔に戻った、とか言ってても、何だかんだで前に進んでるのよ、私たち全員。」


そう言いながら、麦野は浜面の為に作ったつまみに箸を伸ばす。



「ほら、あーん。」


一番の自信作をつまむと、溢れないように手を下に添え、そのまま浜面の口元に近づけた。

その行為に、多少は恥ずかしそうな表情を浮かべる浜面だったが、
二人きりなんだからこれぐらい良いでしょ?という麦野の言葉に押し切られ、
渋々といった風に、差し出されたつまみを口に含んだ。


「旨い…」


思わずその言葉が漏れる程、麦野の料理は美味しかった。


「そうか…俺達はちゃんと前に進めているんだな。」


浜面は、ため息混じりにそう呟いた後で、愉快そうに、そして嬉しそうに微笑んでいた。

そこから何度かの酒杯を重ね、つまみの数も残り少なくなって来た頃、
浜面は思い出し方の様に、麦野へと問いかける。


「なあ、お前から見て、俺はどんな風に前に進んでるんだ?」


「んー…?」


既に酔いが回っているのだろう。

麦野は頬を染め、瞳を潤ませながら、
浜面の問いへの答えを素直に考え込んでいる。


ともすればだらしなく見えるその仕草が妙に可愛らしく、
答えが出るまでの間、麦野の頭を撫でてやる事にした。

気持ちよさそうに身を悶えさせるのは絹旗達と同じだが、
麦野がやると、妙に艶かしく色気を纏って見える。

喜んでくれるのは嬉しいが、
これでは答えを貰えない上に、こちらも何やら妙な気分を掻き立てられてしまう。

後ろ髪を引かれながらも、浜面は手を彼女の頭から離した。


名残惜しそうにこちらを見つめる麦野の目が、妙に罪悪感を引き立てる。

しばらく口を尖らせていた麦野だったが、
このままこうしていても浜面の手が戻ってこない事に気づいたのか、諦めたように口を開いた。


「ロードサービスの勉強だってしてるんだし、それで十分とは思うけど。」


「…そう、優しくなったかな、前よりも、ずっと。」


今回はこれで以上になります


次回もなるべく早く投稿します

しょうもない

ニヤニヤした乙!

キモいなクズゴミスレ。さっさとhtml依頼しておけks
さっさと死 ね

荒らしが楽しんでるので続けるべき

おつですーこれからも楽しみ

乙~!
良スレ発見

とりあえずきりの良い所まで出来たので投下します


その言葉に、浜面は心の中で首を傾げた。

『優しくなった。』と言われて勿論嬉しくないわけではない。

だが自分としては、前と比べて特に接し方を変えたつもりはなかった。

麦野の料理の練習に付き合ったこともあるし、黒夜が歯磨きを忘れないようにも気にかけていた。

絹旗が甘えたがっている時にはこっちから言ってやったし、
滝壺を不安にさせないように積極的にデートに誘ったこともある。


とは言っても、それらは仲間であれば、恋人であれば当然の事で、
自分自身の中で、何か成長した部分として誇れるものでは到底無かった。


不満という程大きな物ではない、心の中に生じたほんの僅かなざわめき。
元より顔に出るはずも無かったその気持ちは、何故か隣にいる麦野には筒抜けだったらしい。


「自信持ちなさいよ、浜面。」


想い人の名を呼びながら、麦野は浜面の胸を優しく指で突く。


「私たち全員あんたの優しさに助けられてるんだから。」


例え本人にとっては気がつかない一歩だったとしても、
その一歩は浜面の周りの人間の背を支え、優しく前に押してくれた。


「それに、素敵じゃない?」


「これから新しい生活を営んでいこう、新しい目標に向かっていこうって中で、自分よりもまず私たちの事を気にかけてくれるんだから。」


「惚れ直したわよ、改めて。」


満面の笑みを浮かべながら、麦野は真正面から堂々と浜面へ愛の言葉をぶつける。

後ろめたさを微塵も感じさせない、一途で素直なその告白は、
浜面の口から言葉を奪うには十分すぎる威力を持っていた。



「う…ぉ…」


何か言い返そうと思ったが、口から出るのは意味をもたない呻き声ばかり。

恐らくは顔も真っ赤になってしまっているのだろう。
麦野に直視されるのが照れ臭く、苦し紛れに顔をそらしてはみたが、
この距離では期待した程には隠しきれていないかもしれない。

好意を伝えた嬉しさか、浜面から期待通りの反応を引き出せた喜びか、
麦野の方は今まで以上に上機嫌になりながら、
浜面の胸をまるで字でも書くかの様に、突きつけた指でなぞっている。



「ふふっ…は~まづらぁ~」


湧き上がる感情を誤魔化すように、浜面は麦野の頭を少しだけ乱暴に撫でた。


「お、お前なあ…あんまりそういう事軽々しく言うもんじゃねえぞ。」


勿論麦野の言葉が嫌な訳ではないし、こちらに抱いてくれている好意だって知っている。

それでも、同世代の平均と比べて、特別女性経験が多いわけでも無い浜面にとっては、
毎日一緒に暮らしている相手の分かりきった告白でも、容易く心を揺さぶられてしまう。


「なーにが不満なのよ、何か問題でもある?」


それに引き換え、言った本人は堂々としたものだ。

多少の照れぐらいはあるかもしれないが、
少なくとも浜面が見る限りでは表面には現れていなかった。


「大体、惚れさせたのも惚れ直させたのもそっちなんだから、ちょっとぐらいは責任取りなさいよ。」


狼狽える浜面を余所に、麦野は軽く頬を膨らませ、拗ねた風を装いながら言葉を続ける。


麦野の様な美人に言われ、男冥利に尽きる言葉ではあるが、
当然ながら浜面としては、ハイ喜んでと答えるわけには行かない。

答えたい気持ちも無いではないが。

かといって、お前が勝手に惚れたんだろ。
と身を寄せて侍る美女の肩を抱いたまま、プレイボーイの様な言葉で突き放す訳にもいかない。

言ってみたい気持ちも無いではないが。


「まあ、その…前向きに頑張るよ。」


現実的な答えとしては、玉虫色の解答で結論を先延ばしにするという、
日本人らしいというか、小市民らしいというか、とかく浜面らしい答えしか出せなかったが、
今の所は、恐らくこれが最善手なのだろう。



「ええ、気長に待たせてもらうわ。」


麦野の方も、浜面の言葉ににっこり笑うと、
グラスの中に八分程残っていたビールを一気に飲み干し、
手近にあった瓶から、再びビールをグラス一杯に注ぎ直した。


「ん。」


「はいはい。」


その動きに釣られるかのように、
浜面もビールを飲み干すと、麦野の方へグラスを向ける。

何にせよ、解消されずに残った気恥ずかしさを晴らすには、酒は最適な道具であった。


互いに一杯づつ飲み終わった後、二人は身を寄せ合ったまま、それぞれ物思いに耽る。

ほんの僅かな言葉ではあったが、愛を囁き交わした先程の時間は、
互いの温もりを感じたまま余韻に浸りたいという贅沢な願望を、二人に抱かせていた。

暫くの沈黙と十分な余韻を味わった後、先に口を開いたのは浜面だった。


「それにしても、お前の口から惚れてる何て言葉が何回も出るなんてな。」


一度目より二度目、二度目より三度目と、
言いにくい言葉でも繰り返すうちに言い慣れてくる事はあるだろう。

感覚として、そして実体験としても理解できるが、
それにしても麦野の性格とは微妙にそぐわない気がしないでもない。


ましてやそれが、報われない、とまでは言わないまでも、
直ぐには答えを出せない話となれば尚更である。


「あら、悪かった?」


「悪くねえよ…むしろその、嬉しい。」

「ただ、変わったって思ってな。」


平然と問い返す麦野に、浜面の口から思わず本音が引き出される。

今更隠す事でも無いのだろうが、やはり言葉にすると気持ちが昂ぶる。


「そりゃあね、一度好きだって言うのに三回も殺し合うなんて、割に合わないでしょ?」


麦野の方も驚いた様子こそないが、声は少しだけ弾んでいた。



「まあそりゃあなあ。」


所々に、物騒な思い出の影が覗く。

もう一度経験したいとは間違っても思わないが、
想い出話の題材としてなら、そう悪いものでは無いかもしれない。


「まあそれも『前に進んだ』って事じゃないの?」


「そういうもんかね。」


「そういうもんよ。」


言ったあとで二人は愉快そうに笑うと、互いに持っているグラスをかちりと合わせた。


「ああ、そういえば。」


グラスの中身をまた一口飲むと、麦野は思い出したかのように口を開く。


「今日の昼は随分とお楽しみだったじゃない?」


「ちょっと話を詳しく聞かせて欲しいんだけど、まさか嫌とは言わないでしょう?」


「ねぇ」



は ・ ま ・ づ ・ ら ?


恐らくは気のせいだと思う。

気のせいだとは思うが、浜面はその瞬間、部屋の温度が一気に氷点下にまで下がったように感じた。

今回はこれで以上になります。

浜面は同居人と酒を飲んでるだけなんですが(ry

などと述べており以後は余罪を追求する方針で捜査が行われると思われます

イチャイチャがメインだし良いんじゃないかな?

ただし!!気の迷いや間違いは誰にでもあるよね……ましてや酒が入ってればさ!!!!

スレの無駄遣い

まだかね

まだまだ

遅れましたが、続きが出来ましたので投下します


「今日の昼って…まさか絹旗達と昼寝してた事を言ってるのか?」


内心の恐怖を押し殺し、何くわぬ声で麦野からの質問に答える。

変に狼狽えでもすれば、かえって相手につけ込まれるだけだ。


「何だ、自覚あったの?」


そんな浜面の反応に、麦野はつまらなそうな声を出す。

だが、そんな表面上の反応に騙されてはいけない。


釣られてこっちが口を滑らせれば、牙を剥いて噛み付いてくるのは経験上百も承知だ。


「いや、昼は殆ど寝てたからな。何か言われるならそれしか無いってだけの話だ。」


初めは随分と失敗もしたが、慣れてみれば決して解除が難しい爆弾ではない。

暴発すれば殺し合いにまで発展しかねないが、
上手く処理すればそれはそれで楽しいコミュニケーションになる。


「へえ、じゃあ私が何で怒ってるのかも分かる?」


「いんや全く。つうか怒ってたのか?」


こちらの連れない返しに、麦野の機嫌が少しだけ悪くなったのを感じる。

とはいえここまでは予定の範囲内。

まず第一に堂々としていること、次に軽々しく謝らないこと、
最後に埋め合わせをちゃんと用意してやること。

このルールを守っていれば、話の中で少しばかし機嫌を悪くさせても、
そこまで酷い結末にはならない事は分かっている。

特に今回の場合、怒りの原因は分かっていても、
それが何故麦野を怒らせる事になったのか、皆目検討がつかない。

まずは軽く突き放して、向こうが詳しく説明するのを待つのが一番だ。



「ええ、あんたが思っている以上にはね。」


こちらの意図を知ってか知らずか、麦野はため息をついた後で、
少しだけ照れる素振りを見せながら話し始めた。


「そりゃあ惚れたのはこっちだから、あーだーこーだ言う権利なんて無いんでしょうけど…」


言いづらそうに言葉を濁す麦野の頭を、先程までと同じように優しく撫でてやる。

一瞬だけ麦野が睨みつけて来たのは、恐らくこの程度では騙されないという意思表示だろう。



「釣り上げられた魚としちゃあ、餌も貰わない内から次の魚に取り掛かられると、あんまりいい気はしないのよ。」


口元を隠すように抑えながら、彼女は躊躇いがちに言葉を続けた。

撫で続けたせいで口元が緩んでいるのだろう。

無理に手を取って確かめて見たい衝動に駆られたが、
そこまでやると、いくら麦野でも容赦せずに原子崩しを撃ってくるかもしれない。


「次の魚って…絹旗や黒夜はそんなんじゃないだろ?仲間っていうか妹みたいなもんだ。」

「嫉妬してくれるのは、まあ嬉しいけど、ちょっと大人気無いんじゃないか?」



年下への嫉妬を半ば冗談と思いながら諭す浜面に対し、
麦野は当てつけるように大きなため息をつく。


「あんたはそのつもりかもしれないけど、あのお子様二人は誰がどう見たってあんたに惚れてるでしょ。」


その言葉に、浜面は首を傾げて考え込む。

 『惚れている』と言われてそりゃあ悪い気はしない。

それでもあの二人の接し方を見ていると、男女の恋愛等という大げさなものではなく、
ただ懐かれていると言った方が余程しっくり来る。


仮にもし麦野の言うとおりだったとしても、子供の頃によくありがちな、
身近にいる年上の男性に興味を持った、程度の事なのではないだろうか。

多分浜面はそんな程度にしか考えていないだろう。

浜面の思考を寸分たがわずに読み切ると、麦野は再び心の中でため息をついた。

彼の考え全てが間違っている訳ではない。

今の時点であの二人が抱いている感情の割合は、
異性に向けて、というよりも、親愛な友人、家族に向けて、といった方が大きいとは思う。

だが、その比率が逆転するのも、時間の問題に過ぎない。


些か幼児退行してしまった精神年齢に騙されがちだが、
絹旗も黒夜もとっくに女としての成長が始まる年齢になっている。

抱いている気持ちは幼少期の淡い初恋と同じようなものかもしれないけれど、
女として成長しつつあるあの二人の体は、その気持ちが世間一般、大多数の人間と同じように、
成長とともに薄れ、消え去っていくことを許してはくれない筈だ。

浜面に頭を撫でられたり、抱きしめられたり、触れ合う度に、
心が満たされる一方で、体は確かな火照りを訴え続けてくる。

その熱がどういう意味を持つものなのか、
分からない程、あの二人は馬鹿でも幼くもない。


気づいてしまえばあとは坂を転げ落ちるように一直線だ。

同じ人物での実体験があるからこそ、麦野は絹旗と黒夜が、
これから女として堕とされていく過程を手に取るように想像できた。


「まあ良いわ、どっちにしたって私の嫉妬が無くなるわけでも無いんだし。」


あれやこれやと言い訳を考えようとしている浜面に、麦野はぴしゃりと結論だけを突きつける。


「まあ…そりゃあ、なあ。」


大人気無いと言われたが、その一言で引くと思ったら大きな間違いだ。

それに、絹旗や黒夜の事を抜きにしても、こっちには納得出来ない事があった。



「この家には何人の人間が住んでいるか、浜面には分かるかにゃ~ん?」


わざとらしい猫撫で声で、分かりきった質問をぶつける。

勿論それは話題を逸らすため等では無い。


「えー…5人です。」


口調に不穏なものを感じ取ったのか、浜面の言葉に取って付けた敬語が混じる。

何が言いたいのかは薄々分かっているかもしれないが、
男の方から女に向かって堂々と言えるような話でも無いだろう。



「そ~ね~あんたをいれて5人。」


「私とあんた、滝壺に黒夜、絹旗の5人よね?」


駄目押しとばかりに、指を浜面の前で開き、一本一本折りたたんで数えていく。

自分では百点満点の笑顔を浮かべているつもりだが、浜面の目にはどう写っているだろうか。

美少女が笑いかけてるんだから、もう少し嬉しそうな表情をしなさいよ、ほら。


「そ、そうだな、黒夜も始めは不安だったけど、馴染んでくれて安心してるよ。」


半ば期待通りに、浜面の目は乾いた笑みが浮かんでいる。



「ええ、本当にね。」

「昔殺そうとした誰かと一緒に寝るぐらい馴染んでるわ。」


彼の発言を利用して、話を一気に本題に近づける。

それは浜面にも伝わったのだろう。
乾いた笑みはそのままだが、表情が引きつっていた。


「ところで浜面。」


「はい…」


「この家の中で、一人だけあんたと一緒に寝た事がない仲間外れが居るんだけど。」






「誰だと思う?」

今回はこれで以上になります
次回もなるべく早めに更新します。

乙です
麦野と寝ると滝壺さんが・・・

盛り上がってまいりました

もう麦野で良いじゃないかにゃーん?

ババアは止めとけ

まずい この情勢はまずいぞ

麦のんかわいい

遅れましたが続きが出来たので投下します

ただ今回殆ど話が進んでないです。







そりゃあお前だよ。
と冗談めかして言ってみようか。

一瞬だけ浜面の頭にそんな選択肢が浮かぶが、
検討する間もなくに霧散した。

確かに正解には違いないが、なんの臆面もなくそれを口にするほど、
浜面の頭は曇りきってはいなかった。


「…」


だが、そうだと言って惚けるわけにもいかない。

当たり前の事だが、質問の正解はどっちにしろ『麦野沈利』しかないのだから。


結局の所、問題は答える内容では無く答え方の方なのだ。

さてどう答えたものか、と浜面は彼なりに頭を絞って答えを捻り出そうとする。

とは言え、常に都合のいい時に都合のいい答えが出せる程、
彼の頭は特別には出来ていなかった。

それでも答えを出そうとする浜面と、彼の答えをただ待ち続ける麦野。

自然と二人の間には妙な緊張感を持った沈黙が漂う事になる。

先にその空気に耐えられなくなったのは浜面の方だった。

隣で黙る麦野がどんな表情をしているのか、
答えも出せないままに顔を向ける。


「あっ…」


目が合うと同時に麦野の口から驚きの言葉が漏れた。

何時ものように、何てことの無さそうな表情を浮かべながらこちらを見つめる麦野。

だが、彼女の目の中には、浜面の様な、近しい者にしか気づくことができない弱さが混ざっている。

その弱さの正体が何なのか、原因を作った張本人である浜面には、直感的に理解出来た。

どんな些細な事でも、一人だけ同衾できない事を些細というかは別にして、
仲間外れにされると言うのは決して気持ちの良いものではない。

こっち側の理由も麦野からすれば十分すぎる程に分かっているだろう。

だからといって、麦野は何も言われずに放ったらかしにされて、
平然とできるタイプであっても平気でいられるタイプでは無かった。


「あっ…」


目が合うと同時に麦野の口から驚きの言葉が漏れた。

何時ものように、何てことの無さそうな表情を浮かべながらこちらを見つめる麦野。

だが、彼女の目の中には、浜面の様な、近しい者にしか気づくことができない弱さが混ざっている。

その弱さの正体が何なのか、原因を作った張本人である浜面には、直感的に理解出来た。

どんな些細な事でも、一人だけ同衾できない事を些細というかは別にして、
仲間外れにされると言うのは決して気持ちの良いものではない。

こっち側の理由も麦野からすれば十分すぎる程に分かっているだろう。

だからといって、麦野は何も言われずに放ったらかしにされて、
平然とできるタイプであっても平気でいられるタイプでは無かった。



「悪かったよ…」


麦野の目を見たまま、浜面は謝罪の言葉を口にする。

単純に、滝壺や絹旗と一緒に寝ている事についての謝罪ではない。

一言二言でも気にかけてやらなければならない立場の自分が、
一方的に麦野の優しさに甘え、少なからず傷つけてしまったことへの謝罪だ。


「そんなの、一々謝ってもらう事でもないでしょ。」


弱さをさらけ出してしまった事が恥ずかしいのか、
麦野はぷいとそっぽを向いてしまう。



「謝るっていうか、少しぐらいは説明するべきだった。」


そんな麦野の頬に手を添え、優しくこちらの方へと顔を向けようとする。

ほんの少し、言い訳程度に抵抗する素振りを見せた後で、
麦野はゆっくりとこちらの方へ顔を戻した。


「説明なんかより、たまにで良いから一緒に寝てくれた方が嬉しいんだけど。」


拗ねたように頬を膨らませた麦野に、手を合わせ、もう一度深々と頭を下げる。


「いや…その話はまた別の機会という事で、一つ。」


浜面が下げたその頭を、麦野が軽く叩く。



「謝るっていうか、少しぐらいは説明するべきだった。」


そんな麦野の頬に手を添え、優しくこちらの方へと顔を向けようとする。

ほんの少し、言い訳程度に抵抗する素振りを見せた後で、
麦野はゆっくりとこちらの方へ顔を戻した。


「説明なんかより、たまにで良いから一緒に寝てくれた方が嬉しいんだけど。」


拗ねたように頬を膨らませた麦野に、手を合わせ、もう一度深々と頭を下げる。


「いや…その話はまた別の機会という事で、一つ。」


浜面が下げたその頭を、麦野が軽く叩く。



「それで、何で麦野だけ仲間外れになってるかって事なんだが…」


しばらく麦野に頭をぐりぐりと小突かれ、更に一発二発と軽く叩かれた後、
ようやく頭を上げる事が出来た浜面は、言葉を選んでゆっくりと話しだした。


「まあ、滝壺については、そういう関係だからって納得してもらうしかない。」


その言葉に、麦野は素直に頷く。

はるばるロシアまで言って決着を付けた話だ、今更彼女も蒸し返すつもりはないのだろう。


「…で、問題というかなんというか、絹旗と黒夜の方なんだけど。」

「あの二人は、やっぱり俺にとっちゃ妹みたいなもんなんだよ。」

「だから、あいつらが今まで出来なかった分、甘えさせてやりたいし、あいつらの望む事なら何だって叶えてやりたいと思ってる。」


これだけでも麦野は理解してくれるだろう。
だが、恐らく心情的に納得し切ることは難しいはずだ。


麦野の立場からすれば、自分の行為は過剰に見えるかもしれないし、
それがどんなに些細なものであっても、
彼女の中にある嫉妬心をちくりちくりと刺激しているのには違いがないだろう。

それを解消するには、もう一歩だけ踏み込んで話をしなければならなかった。

少なからず躊躇いのある、もう一歩分だけ。



今更になって生じた迷いを振り払おうと、
浜面は頭をがしがしと掻いて自分の決意を固める。

そんな浜面を止めるでもなく、急かすでもなく、
麦野はただ黙って続きを待っている。

そんな麦野の目に、追い詰められたような、諦めたようなため息をつくと、浜面はまた言葉を続けた。


「…あいつらだって、多分あと数年もすれば、他で友達も出来るだろうよ。」

「そしたら、その他に好きな男も出来て、いつかはきっとこの家を出て、他の奴と一緒になるだろう。」

「想像したくも無いけどよ、やっぱり妹ってのはそういうもんだろ。」

「だから、俺の所に居てくれてる間ぐらいは、やっぱり俺に甘えて欲しいんだ。」


口にするどころか、頭に浮かべるだけでも恥ずかしいこの気持ち、
多分世のお父さん達は、日々の生活の中で、度々この気持ちに悩まされているに違いない。

いっちょまえに父親面、兄貴面するのもおこがましいが、そう考える事で、
ただの友人、仲間から、あいつらを素直に甘えさせてやれる様な立場になれる。

何の根拠も自信も無いが、何故か浜面はそう思っていた。


「…」


浜面の独白を聞き終わっても、麦野は直ぐに言葉を発しなかった。

納得しては貰えなかっただろうか、怒らせてしまっただろうか、
と、不安になりながら麦野の顔を覗き込む。


「はぁ…」

その瞬間、麦野の口から呆れたようにため息が漏れた。


「全く…何時までたっても馬鹿なんだから。」


「ああ、馬鹿だよ、でもただの馬鹿じゃないぞ、立派な兄馬鹿だ。」


おどけた様に笑ってみせると、麦野も釣られたように口を抑えて笑いだした。

よっぽど可笑しかったのか、その目にはうっすらと涙が浮かんでいる。

指で涙を拭ってやると、じゃれつくように手を叩かれた。


「兄馬鹿も馬鹿よ、本当に馬鹿、馬鹿なんだから。」


笑いが収まると、麦野は柔らかな微笑みをこちらに向ける。

その目からは先程までの不安は綺麗に消え失せていた。


「ふふっ…浜面のばーか。」


何故か嬉しそうに馬鹿、馬鹿と繰り返す麦野の頭を少しだけ強く撫でてやる。
麦野は振り払いも嫌がりもしなかったが、反撃とばかりに、軽く浜面の背中を抓っていた。











「あれ?でも今の理由だと私も入るんじゃないの?」


しばらく二人で笑いの余韻に浸ったあと、麦野は何かに気づいたように口を開いた。


「へ…?」


麦野の言葉に、浜面の口から何故か間抜けな声が漏れる。


「いや、ほら、浜面の言い分は、絹旗や黒夜がいつかこの家を巣立って行くから今甘やかしてるって事でしょ?」


「私だってもう暗部からは足を洗ったんだしさ、余所で友人の一人や二人出来るじゃない?」


麦野が言葉を続けるにつれ、浜面の方は次第に表情は硬くなっていく。


「お、おう、そうだな。」



「それなら、私だって出て行くかもしれないって考えになるのが普通だと思うんだけど。」

「そんでもって、それなら家に居る間ぐらいは精一杯甘えさせてやろうってのが普通と思うんだけど。」

「絹旗や黒夜みたいに。」


やっぱり逃げられなかったか。

浜面の胸を、後悔と諦めの感情が満たす。

さっきまでの言葉に嘘はない。

嘘はないが、あくまでもそれは絹旗や黒夜に対してのもので、
麦野に対しての言葉は欠片も含まれていなかった。


勿論、麦野に向けるべき理由もあった。

あるにはあったが、正直にそれを言ってしまえば、麦野の機嫌を損ねる、
いや、率直に言えば、激怒させてしまうかもしれないものだった。


「…まさか、私があの二人よりも年食ってるから別にいいや、とか思ってるんじゃないでしょうね?」


麦野の言葉が次第に険しさを増していく。

中途半端に誤魔化そうとしたのが気に障ったのか、
あるいは溜まった鬱憤をこの機会に吐き出してしまおうと考えているのか、
どちらにせよ、浜面は、自分の逃げ道が全て失われてしまった事に気づいた。

麦野の追求に、素直に両手を上げ、降参したことを示すと、
浜面は観念したとばかりに口を開いた。



「分かった、正直に全部話す、話すから、最後まで怒らずに聞いてくれ。」


進みが遅くて申し訳ありませんが、今回はこれで以上になります。

結局浜面は怒ってる麦野の前で、絹旗黒夜に対しての惚気しか言ってないような…

クズ浜面死 ね。二度書くなキモいだよ

おつー

乙ー。
ヤバ。超かっこいい。この浜面

マジでつまらんからさっさとHTML化してこい

ああ、気になるところで…乙です

退屈なスレだ

良かった、此処は荒らされてなかったか安心した。
絹旗スレを荒らしまくってる基地外マジ許さん呪殺してくれる。

>>588
でも上げるのな……



















































任務理解

ageていただき感謝御礼申し上げます。

ageていただき感謝御礼申し上げます。

ageていただき感謝御礼申し上げます。

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ageていただき感謝御礼申し上げます。

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かかったなマヌケ
今キッチリ通報したわ

お前が複数のPCを使って荒らし行為を行っている事は運営に全て報告した

死ぬ程後悔させてやる
今夜からは怯えて眠れ

色々調べさせて貰った
絹旗がメインのスレには必ず湧いてやがるコイツ
もうすぐ荒らし自体出来なくなるようにしてやる

そりゃ荒らした奴が一番クソには違いないけど、何故わざわざageたしと言わざるを得ない
それもsage忘れじゃなくてsaga入れて
おかげで嗅ぎつけられちゃったし…

すこしキリの悪いところですが投下します


覚悟を決めたものの、口は相変わらず重いままだ。

何しろ言い方を一つ間違えてしまえば、それこそレベル5の第四位と四度目の殺し合いになりかねない。

それでも浜面には、真正面から正直に話すしか無かった。

嘘や誤魔化しが通じないのは、さっきで嫌というほど思い知ったし、
これ以上麦野を欺くのは、いくらなんでも不誠実過ぎる。


「…別に意地悪で除け者にしてるって訳じゃないってことは、お前にも分かってるんだろ?」


「さあ…どうかしらね?餌も与えられないのに好意的な考え方ばかり出来る女かどうかは、あんたが一番よく分かってるんじゃないの?」


返された麦野の言葉には、その端々までびっしりと刺が滲んでいる。

本気で怒っているという事もなさそうだが、怒る準備は万端らしい。


「餌を与えるとか、そんな偉そうな真似が出来る人間じゃねえよ…」


一応は宥めようと謙遜してみたが、期待したような効果は殆ど得られなかった。


「…で、さっきのお前の質問の答えだけど。」

「私があの二人みたいに、出て行くまで精一杯甘やかしてやろうって思われないのは何故か?」


話し出そうとする浜面に、麦野ははぐらかされない様にとしっかり要点を突きつける。

その言葉に一瞬ひるんだ浜面だったが、勇気を振り絞り、質問への答えを口にした。




「答えは、お前は何があっても一生俺の側から離れない、って思ってるからだ。」



言い終わった後、即座に麦野の原子崩しが飛んでくることを覚悟した。

腕の一本ぐらい吹っ飛ばされても文句は言えないような事を言ったのだから。

それも堂々と。

自分と麦野は恋人じゃない。

友人、仲間、相棒、どれだけ誤魔化そうとしても、その一点だけは絶対に変わってくれない。

何故なら自分がそう選んだから。

麦野にもそれで納得して貰ったから。

だが、それでも麦野の気持ちが変わらないのは分かっていた。


滝壺の事を世界の誰よりも愛している。

その気持ちは今でも全く変わっていないし、暗部だったころのアイテムにいた時よりも、
ロシアで駈けずり回っていた時よりも、遥かに強くなっている自信があった。

だが、その一方で、麦野に対する気持ちは着実に変わり続けてきた。

新しい生活を受け入れ、自分や滝壺達を支え、それでいて、
自分に変わらぬ愛を抱いてくれている。

そんな麦野に、自分は段々と惹かれていった。

滝壺と恋人である以上、この思いは不義のものかもしれない。

だからこそ、口に出さずに、表に出さずに、胸の中に秘めてきた。


たまにそれを覗かせる事があったとしても、それは例えばこんな風に、
夜の一時、二人きりの時間で、麦野が見せてくれる愛情と照らし合わせるだけで、それで満足だった。

そしてそれを続けるたび、変わらぬ麦野の愛情に触れるたびに、自分はある事に気づいていった。

麦野は、きっとこの気持ちを生涯変わらず抱き続けてくれる、
ささやかな触れ合いだけで満足して、一生自分の側に居続けてくれる、と。

嬉しく思う気持ちの中に、どこかでそれを当然の物として受け入れる自分がいた。


「お前が俺の事を愛してくれてるなんて、一生側に居てくれるなんて、そんなの当たり前だと思ってる。」


はっきりと言葉にしてみると、自分がどれだけ傲慢だったのか思い知らされる。

こんな気持ちは滝壺にさえも抱けない。


必死で掴んだ恋だからこそ、それがかけがえの無いものである事を知っているから。

かけがえの無い物であるからこそ、無くしてしまわない様に必死でつなぎ止めなければいけないから。

恋人にさえ抱けない思いを、自分は麦野に対して、心のどこかで当たり前の様に抱いていた。

考えれば考える程に、腕の一本どころで済む話では無いような気がしてくる。

さっきから麦野は俯いてばかりで、こちらに顔を向けてくれない。

答えを伝えた直後は、あっけにとられた様な表情を浮かべていたが、
今その顔がどんな風に変化しているのか、想像しただけでも恐ろしかった。

とはいえ、答えは既に伝え終えた。

あとは麦野がどんな感想を持つのかだけだ。


返答を待つだけの僅かな時間の間に、頭の中を、先程自分が出した答えが駆け巡った。

自分が最低なのは今更言うまでも無いが、麦野の関係は一体どう表現すれば良いのだろうか。

体を重ねる事は勿論、デートさえもしていない。

たまに二人で話すぐらいはあるが、それぐらいなら浮気とまでは言えないだろう。

かといって麦野は俺に惚れているし、俺も憎からず思っている。

その上一生麦野を側に置いておけるとするなら、ただの友人とは言えないし、俺もそうは思っていない。

頭の中にキーワードを並べ、乏しい語彙の中から、答えを探す。



するとどうやら、一つだけ、この状況に適した言葉が浮かんできた。

とは言えその言葉は、自分の人生の中ではおよそ縁の無かった言葉であり、
使う機会がまさか来るとも思ってなかった物だった。

それだけに、一瞬これが正解で良いのかとも思ったが、
使い慣れないこの言葉の意味を考えてみれば、むしろこれ意外に無いとさえ思えてくる。




自分と麦野の関係を表現するのなら、これが女を囲うという事なのだろうか。




改めて思い浮かべると、何の違和感も感じられないほどにしっくり来る。


最低なのは置いておいて。

この答えが正解かどうか、まさか麦野に聞いてみるわけにもいかないが、恐らくは間違ってはいないだろう。



麦野の意識がどうあれ、自分がしようとしていたのはそういう事だ。

彼女の好意を享受し、それが当然の物と思い、その一生を共にさせる。

それと引き換えにこちらが渡すのは、自分の側に居させてやるだけという体たらく。

なるほど、金銭を与えて生活だけは保証している輩よりも、自分の方が酷いじゃねえか。

そりゃあ麦野も怒って当然だ。

開き直ったと言う訳では無かったが、妙に落ち着いた気分で一人頷いていると、
顔を伏せたままの麦野が口を開いた。


「随分偉そうな言い分じゃない。」


声からは特に怒りは伝わってこなかった。


だが、下手に感情を探るような事はしない。

ここまで来たら後は麦野に委ねるだけだ。


「ああ、自分でも分かってるよ。」

「でも本音を言えって言われると、これ以外に思いつかなかった。」


拙くても正直に、麦野に気持ちを伝える。

僅かに沈黙したあとで、麦野が再び口を開いた。


「…あんた、滝壺にも同じ様に思ってるわけ?」


「いや、思ってないさ。」

「恋人相手ににそんな自信を持てる程、俺は出来た男じゃない。」

「お前だからそう思えたんだ。」



そう答える自分の口は、驚くほどに滑らかだった。

先ほどよりも少しだけ長い沈黙が二人の間に訪れる。

それが終わるよりも先に、麦野は浜面の頬に手を添えた。


「ねえ…目、瞑ってくれる?」


彼女の言葉に従い、大人しく目を瞑る。

頬を張られるだけですむのか、正面から殴られるのか、はたまた原子崩しでも打ち込まれるのか。

そのどれが来ても可笑しくないと思っていただけに、
次に彼女がとった行動は、ほんの僅かでさえも予想できなかった。

今回はこれで以上になります。

次回もなるべく早く投下できるように頑張ります

おつおつ

乙かれさま

乙です

●●

数少ない浜面が平和に暮らしている世界線
他はひどい目にあうだけでフォローさえない














さらしあげ

キモい浜面だな。さっさとしね

とりあえず浜面さん爆発オナシャス

いいと思うけどな

キリが悪い

そんな >>1 を応援してる

とりあえず続きが出来ましたので投下します。


「…っ!?」

唐突に唇に重ねられた柔らかな感触、それが麦野の唇だと、体の方は直様に理解したが、
頭の方は全くと言っていいほど理解しようとしなかった。

こちらが固まっているのをいい事に、唇の隙間からは麦野の舌が入り込み、俺の唇に絡み付いてくる。

やんわりと拒絶することも出来なくは無かったが、
拙い舌使いでながら、懸命に縋り付いてくる麦野をどうしても押しのける気にはならなかった。

滝壺と普段している、まるで性交の合間に交わすような、濃厚な口づけを麦野と交わしていく。


「んちゅ…ちゅっ…れろ…ぷはっ…んちゅうっ…」


気がつくと、手は自然に麦野の腰に回り、彼女が逃げ出さないようにしっかりと抱きしめていた。

一度目を開けてみると、顔を真っ赤に染めた麦野の表情が目に映る。


一瞬怒らせてしまったのかとも思ったが、目の端に涙を浮かべ、幸せそうに微笑む姿は、
どうも怒りとは似ても似つかない物のように思えた。

もう一度目を閉じ、たっぷりと接吻を交わした後で、麦野を優しく押して体を離れさせる。

麦野は名残惜しいのか、最後に舌を触れ合わせて来たが、
それ以上は特に逆らう様子も見せず、大人しく俺の動きに従った。


「…始めてのキスにしては中々だったんじゃない?」


問いかけるような視線を向けてみると、麦野は少しだけ沈黙した後、悪戯っぽく笑ってそう言った。


「…怒ってたんじゃねえのかよ。」


酷い事をした自覚があるだけに、麦野の反応は拍子抜け以外の何物でもなかった。

まるで都合のいい女として扱っていたような自分の言い分は、
いくら好いていてくれてるとは言え、プライドの高い麦野が黙って水に流す筈が無いものなのに。


「怒るって、何に対してよ。」


「いや、ほら、何ていうかお前の事、キープっていうか、都合のいい女みたいな言い方しちまったじゃねえか。」


改めて口に出すのも情けなかったが、分かって貰えてない様ならそれもしょうがない。

罰を受けると覚悟を決めた以上、麦野に伝わらなかったからといって、
今更有耶無耶で済ます訳にはいかなかった。

だが、そこまでしても、麦野は怒りの色を見せなかった。

ただ呆れたように微笑むと、今度は頬に軽く口づけをする。


「今凄く幸せな気分なんだから、変な事言って水ささないでよ。」


「幸せなって…お前。」


麦野の言葉に、今度はこちらが呆れた様な声を上げてしまった。


「ええ、幸せ。」

「聞き間違いなんかじゃないし、あんたの言ってる意味を履き違えてる訳でもない。」

「それでもね、幸せなのよ、本当に。」


浮かんだ涙を拭いながら、麦野ははっきりと幸せだと伝えてくる。

ああ、そうなのか、と無責任にその言葉を受け入れられたらどんなに良かったのだろうか。

その思いが顔に出ていたのか、俺を見つめる麦野の表情は、ほんの少しだけ曇っていた。


「まあ、あんたなりに悩んだんだから、しょうがないのかもしれないけどね。」


慰めるように頭に添えられた手は、
義手の筈だというのに何故か暖かく、混乱した頭を落ち着かせてくれる。


「でもね、あんたが悩んでる事なんて、こっちはとっくの昔に受け入れてるのよ。」


耳に届く声は、泣いた子供をあやす様な、穏やかで優しい声だった。


「恋人同士で暮らしてる所に割り込んでるんだし、どうしようもないぐらいに惚れた弱みだってあるんだから、ね。」

「だからとっくの昔に受け入れてるのよ、精々が仲間止まり、女として扱われても、そっちの都合の良い時だけの話だって。」


「そんな事…!」


「無理しないで良いのよ、今はそれで満足してるんだから、今はね。」


口を挟もうとする浜面の声を遮ると、麦野はどこか不敵な笑みを浮かべながら、そう告げる。


「だからあんたはこれっぽっちも負い目なんて負う必要なんて無いの。」

「いい男の特権なんだから堂々と構えてりゃ良いのよ、堂々とね。」


いい男と言われて決して悪い気持ちはしない

しないが、一人の女性を囲っているかいないかでこれだけ動揺する男に、
そんなプレイボーイの様な振る舞いを求められても、正直言ってどうしていいのかわからない。


「ええ、それが出来る男だったら、ひょっとしたら言い寄ってくる女の一人や二人、殺してたかもしれないわ。」


正直にそれを伝えてみると、さらりと怖いことを言われた。


こちらが出来ないと分かっている事を進める辺り、
ただからかわれてるだけなのだろうか。

真剣なのを茶化された悔しさが、本題そっちのけでふつふつと沸き上がってくるのを感じる。

腹いせに、麦野の頬へこちらから口づけしてやると、頬を染めながら悔しそうにこちらを睨んできた。

怒ったように見せたいのだろうが、表情の端々からは嬉しそうな雰囲気が嫌というほど伝わってくる。


「浜面のくせに話そらすんじゃないわよ。」


「そっちの方が先じゃねえのか?」


口を尖らせた麦野に軽口で返してやるとバツの悪そうな表情を浮かべ、ぷいと顔を逸らしてしまった。


「全くもう…だいたいあんた深く考えすぎなのよ。」

「私が拗ねてたのは、一人だけ除け者にされてたってだけの話なのに、変に深く考えて…」

「ま、そのお陰であんな事言ってもらえたんだから、よしとしなきゃね。」


麦野は顔を逸らしたまま、妙に一人で納得したようにブツブツと言っているが、
こちらとしては何の事だかさっぱり分からない。


「いい?私はあんたの側にいれれば都合のいい女でも何でも構わないのよ。」

「でも、それがあんたの重荷になって厄介者みたいに扱われるのだけは絶対に嫌。」

「そういう理由であんたが私と寝てくれないのも絶対に嫌。」

「けれど、あんたが言ってくれたような理由だったら、私は別に怒りゃしないっての。」


腑に落ちないでいる俺の顔を見て、麦野は一言一言言い聞かせるようにゆっくりと言葉を紡いだ。


「そんな事よりも、私はあんたが信じてくれてた事の方が嬉しいのよ。」



「麦野沈利は一生浜面仕上を愛し続けるって。」

「何があっても一生あんたの側で添い遂げるって。」

「肌を重ねるどころか、今まで唇さえも交わした事の無かった私の気持ちが、ちゃんとあんたに伝わってるって。」

「そうやってはっきり言葉で聞けた事が、何よりも嬉しいのよ。」


そこまで言い終わると、麦野は再び唇を重ねてきた。

先程に比べれば幾分軽い口づけだったが、
その後に彼女が浮かべた笑顔は、今まで以上に愛らしく思えた。

今回はこれで以上になります。

次回もなるべく早くに投下できるよう頑張ります。

麦のん…

乙おつ

もう飽きた

↑[ピーーー]

おつおつ

>>674
変なのに触れたらいかん 無視が大事

まだかな

遅くなって申し訳ありません。

続きができましたので投下します。


それから暫く、とりとめも無い話をした後で、麦野は部屋へ帰っていった。

恥ずかしながら何を話したのかは全く覚えていなかったが、
これからの人生を左右するような話では無かったような気がする。

というよりも、そう思いたい。

一人きりになったリビングで、可能な限り頭の中身を整理しようと試みた。

だが、考えれば考えるほどに、自分の情けなさと麦野の思いの深さだけが際立ってきてしまう。

これからも彼女の気持ちに甘えていいのか、
この感情を抱いたまま、ずっと彼女を側に置いていていもいいのか。

そんな問いかけが頭の中をぐるぐると回るが、結論は始めから一つしか用意されていなかった。


自分がどう考えていようと、余所からは所詮二股やら浮気にしか見られない。

それでもこの関係を一生続けたいと言うのなら、麦野の好意や滝壺の黙認に甘えるのではなく、
自分自身が主犯として、悪びれることなく堂々と振舞わなければならないだろう。

彼女達はそんな事をしなくても良いと言ってくれるかもしれない。

今までどおりの曖昧な関係のままで、一生側に居てくれるかも知れない。

だが、麦野の気持ちを聞いてしまった以上、
彼女の好意に甘え続けるという選択をとれる程、浜面仕上は器用な人間ではなかった。


「…滝壺にもちゃんと話を聞いてもらわないとな。」


自分に言い聞かせるように、浜面はぽつりと言葉をもらす。


口に出して言わなければ、固めた決意が崩れないまでも、
ズルズルと先延ばしになってしまいそうな気がした。

心の内には、そうしてしまえば楽になれる、そんな甘い誘惑が確かに存在しているが、
滝壺と麦野への気持ちは、そんなものに揺るがされる程、弱々しい物ではない。


「はあ…」


一つため息をついて、雑念を振り払うと、浜面はゆっくりと立ち上がった。

正直に全てを話して受け入れてもらう。

滝壺ならきっとわかってくれるはずだ。

自分の下した結論も、麦野の気持ちも。

そんな事を頭に描きながら、浜面はリビングの電気を消して、寝室へと足を向けた。


流石にもう滝壺は眠ってしまっているだろう。

暗い廊下には、自分の足音以外の音は何一つ聞こえない。

次に、次に彼女と言葉を交わした時に、自分は全てを伝えよう。

一歩一歩ごとにそんな覚悟が固まり、胸の中から勇気が湧いてくる。

寝室への扉を開けると、案の定明かりは全て消えていた。

暗さに慣れた目には、少し大きめのベッドの端の、一人分の膨らみが写っている。

規則正しく上下するその膨らみは、滝壺が安眠している事を伝えてくれた。


ベッドに入ることで起こしてしまうのでは無いだろうか。

そんな思いがちらりと頭をよぎる。

起こしてしまうぐらいなら、いっそソファーか、何ならリビングで寝た方が良いのかもしれない。

だが、明日の朝目が覚めた時に、自分が側に居なかった時の滝壺の気持ちを考えてみると、
例え起こしてしまっても、一緒のベッドで寝てあげるべきだろう。


「…よっと。」


静かに布団を捲り、息を潜めて滝壺の隣に潜り込む。

何時もなら頭の一つでも撫でる所だが、流石に今日は控えておいた。

体を横たわらせ、明日滝壺に話す言葉でも考えておこう。



「遅かったねはまづら。」


眠っていたはずの滝壺に声を掛けられたのは、そんな風に思い始めた矢先の事だった。


「お、起きてたのか?」


彼女の声は、今しがた目が覚めたばかりの声ではなかった。

眠気を微塵も感じさせないはっきりとした声に、口からは思わず驚きが漏れる。

待っていてくれたのか、と素直に喜べないのは、自分に後ろめたい何かがあるからだろうか。

滝壺の目は冴えているし、自分の決意は固まっている…筈だ。

時間や状況などは言い訳にしたくない。

そんな物を理由にずるずると伸ばしたくないからこそ、
『次に言葉を交わした時に、はっきりと伝える。』と決めたのだから。



「どうかしたの?はまづら。」


胸に生じた逡巡を押し込めている間に、滝壺の方から声をかけてきた。

どう切り出せばいいのか、どう伝えればいいのか、それさえも決まっていない中で、
自分は彼女に、これからの人生を左右するような決意を伝えなければならないのだろうか。


「ああ、ちょっと話したいことがあってな。」

「長くなるけど、大丈夫か?」


だが、胸に生じた迷いは、むしろ最後の一歩を踏み出す力を与えてくれた。

どうせ自分なんかがごちゃごちゃ考えていても良い答えが出るわけじゃない。

だったら真正面からぶつかって行くのが一番だ。

今までの人生の転機が全てそうだったように。


浜面の問いかけに、滝壺は何かを悟ったように頷くと、
枕元にあるスタンドに明かりを灯した。

暗い闇の中、ただ一つ灯る淡い光に照らされた滝壺の顔は、
触れれば崩れてしまいそうな、儚く危うげな美しさを帯びていた。

これからの話の次第では、ともすれば彼女に拒絶されてしまうかもしれない。

そんな状況にも関わらず、浜面はその美しさに言い訳も出来ない程に見惚れてしまう。

それだけ自分は滝壺理后に惚れ込んでしまっているのだろう。

だからこそ、そんな滝壺にだからこそ、例え拒絶されてしまったとしても、
格好いいところを見せたくなってしまった。

今回はこれで以上です。

この夜を切り抜ければエンディングに移れるかと思います。

浜面が切り抜けられればですが…

おつ乙!

おおお更新きてるぅ
もう一度さいしょから読んで糖分補給してくる

>>688は糖尿病になってしまった!

更新気がつかなかったわ、乙!

実につまらん
浜面はやっぱいらんかったんや

sslはいらない事しかレスしねーな
つまらねーのはてめーの人生とオツムの中身だよ

>>692
抑えるんや 無視しておけばこれ以上の波風はたたぬ

さらしあげ

浜ちゃんマダ?

浜 田 大 明 神


 _≦ ̄ ̄ ̄ ̄マ_

`ミ ノィノハソソッ  彡
彡 /    \ ミ
彳イ      ヽ ミ
|| <≡ツ ミ≡> |ミ

(6| -・-><-・- |6)
ヽ(_  (_)  _)ノ
 | _ノ⌒⌒ヽ_ |
 ヽヽ二二二ノノ
  >ー――<
 /     \

遅くなって申し訳ありません。

続きができましたので投下します。


「さっきな、麦野と話したんだ。」

「うん…」

「まあ、初めは軽い嫌味みたいなもんだったんだよ。」

「絹旗だけならともかく黒夜まで抱いて昼寝しやがってってさ。」

「それで終わりなら大した話でも無かったんだけど、俺が下手にごまかそうとしたせいで、少し変な感じになってな。」

「うん…」

拙い俺の話に、滝壺は一つ一つ相槌を打ちながら聞いてくれる。

ああ見えて、案外鋭いところのある滝壺なら、こんなもったいぶった様な言い方をしなくても、
きっと大凡の内容を察してくれるだろう。

それでも、浜面はそうしようとはしなかった。


そうした方が早く済ませられる。

そうした方が楽に終わる。

そんな見せかけだけの利点よりも、今の浜面には優先すべきものがあるのだから。

さっき麦野と交わした言葉の一つ一つは、浜面にこれからの人生の道筋を示してくれた。

その道筋は他でもない滝壺と共に歩んでいくものだ。

なら、その一つ一つを伝えなければいけない。

彼女が愛してくれた男が、何を話し、何を思ってその答えを出したのかを。

例え、滝壺がそれを聞いてどんな感想を抱き、どんな答えを出したとしても。

覚悟が決まっていたせいか、それとも滝壺が冷静に聞いてくれていたからか、
浜面が話す言葉には些かの淀みも混じらなかった。



「薄々は分かってたんだ…でも言葉にして出したのは初めてだった。」

「麦野は一生の俺の側に居て、一生俺の事を愛してくれてるって。」

「…傲慢だって思うかもしれないけど、麦野はそうだって言ってくれた。」

「気づいてくれたんだって喜んでくれたんだ。」


「うん…その気持ち、私にも良く分かるよ。」

「多分、私も麦野と同じ立場なら、きっと同じ気持ちになると思う。」

黙って話を聞いていた滝壺が、そこまで話をしたところで初めて口を開いた。

傲慢にさえ聞こえるかもしれない自分の言い分を、滝壺は麦野と同じように受け入れ、肯定する。

その事に不思議と驚きは無かった。

むしろ心のどこかで、滝壺もきっと麦野と同じ様に思うのだろう、とさえも考えていた。




「自分でも随分酷い事をしてきたって思ってるよ…あいつの気持ちに好き勝手甘えて…」


「駄目だよはまづら、酷い事って言っちゃ。」

「そうやって重荷として扱われる方が、きっと凄く辛いことだから。」


滝壺から出る答えは、やはりどこか麦野と似通っていた。

同じ環境で仲間として戦ってきたからなのか、同じ相手を好きになってくれたからなのか。

全くタイプの異なる二人にも関わらず、女性としての考え方には共通点を感じずにはいられない。

なら、俺が出した答えも、きっと滝壺は受け入れてくれるのでは無いだろうか。

麦野が受け入れてくれたのと同じように。


「ああ…でも、はっきり言葉で聞いてしまった以上、今までと同じ関係には戻れない。」

「無理に今までの関係を続けようとしても、結局は何時かそれが負担になって、麦野や滝壺を傷つけてしまうような気がするんだ。」



「…だったら、はまづらはどうしたいの?これからの…私やむぎのとの関係を。」


滝壺にすれば迷惑な話かも知れない。

過酷な人生を歩み、何度も何度も死線を潜った末に手に入れた幸せな生活。

そのパートナーが、勝手な心変わりのせいで、急に今までの様には過ごせないと告げてくる。

不安を与えてしまうのは当然だし、なんなら一発や二発殴られても文句はいえないだろう。

だが、こうなった以上、この話を避けて通る事は出来ない。

自分に出来る事は、滝壺が受け入れてくれるであろう新しい生活を、
今までのものよりももっと素晴らしいものだと感じてくれる様、
精一杯にパートナーとしての勤めを果たす事だけだ。


「…滝壺、お前を愛してる。」

「それは今までと変わらないし、これから一生絶対に変わらないって思ってる。」

「でも、それと同じぐらい麦野が好きなんだ。」



「どっちが上なんて決められないし、二人への気持ちを秤にかけて比べるなんて絶対に出来ない。」

「だから…これからは麦野の事もちゃんと恋人として、人生のパートナーとして接していこうと思う。」

「滝壺との関係を終わらせるって訳じゃない。」

「滝壺にはこれからも一生、俺の側に恋人としていて欲しい。」

「これからの麦野と同じように。」


答えは全て正直に伝えた。

麦野に二股をかけると言った時も、相当な自己嫌悪に陥ったが、
今現在交際してる相手に二股の許可を得るのは、それ以上の物がある。

一瞬たりともこの答えを受け入れてくれると思った自分が急に恥ずかしくなってきた。

最悪の結果が頭を駆け巡る中、滝壺は何も言わずにこちらをただジッと見つめている。


何か言ってもられえる方が余程気が楽なのだが、あるいはこれも滝壺なりの抗議なのかもしれない。

無言の緊張に責められるまま、浜面の心はどんどんと追い詰められていく。

もういっそ勢いで押し倒して、体で説得してみようか。

そんな思いが浮かんでは消え、浮かんでは消えしていると、こちらの思いを察したのか、滝壺が口を開いた。

「はまづら。」


「は、はい、何でしょうか。」


「…ありがとう。」

何故だか自然と敬語になってしまう浜面に滝壺は何故か感謝の言葉を告げる。

およそ二股を告白した相手には似つかわしくない言葉だ。

あるとするなら、『ありがとう』の前に、『今まで』と付け加えた場合ぐらいだろうか。


それでも滝壺の顔には、怒りも悲しみも浮かんでいない。

ありえないと思いつつも、滝壺自身が、
出した答えを本当に喜んでくれているような錯覚さえ感じてしまう。

そういえば麦野も同じように喜んでくれた。

同じ男を好きになった女性同士にしか存在しない共感がそうさせるのかもしれない。

恐らく自分には決して理解出来ないだろう。

彼女達が他の男を自分と同じように愛する事は、この先決して無いのだから。

「…はまづら?」

自分が出した答えを受け入れてくれた事が、感情では伝わっても、頭では受け入れる事が出来ない。

その空白を埋めようと、浜面は滝壺の体を自分の胸の中へと抱き寄せた。

今回はこれで以上になります。

進みが遅くて申し訳ないですが、よければもう少しだけお付き合いください。

さすが浜面、良い屑っぷり
原作のヒーロー像はどこに行ったんですかねw

クズ浜面しね


そっちはあっちでやってたからなあ
こっちでもやられてもなんだその困る

おつー
よし、これであと数人増えてもなぁなぁでいけるぜ!

なーんで浜面SSってこうもハーレム化するんだ
途中までいい兄さんっぽい感じでよかったのに残念すぎる
最終的にはなんだこの屑はって感じ
見て損したわ

辛辣過ぎだろw
それ浜面とか関係なくハーレムアンチだよw

絹旗がメインじゃないのになぜかタイトルになってる謎のSS
その絹旗はほぼ空気だし

「とある魔術の禁書目録(インデックス)」だってインデックスは空気だろ
それと同じ

いや贔屓目に見てもハーレムSSとしてもダメだろ
全員のキャラが崩壊しまくり
大体浜面はそんな器用な性格じゃないし、他キャラも合わせて御都合主義すぎる
なんで二股+アルファで綺麗にまとめようとしてんだ
滝壺は嫉妬深いのにそんな二股+アルファで綺麗に収まるわけないじゃん
絹旗は絹旗で完全に空気でタイトル詐欺だし
完全に全員のキャラ掴めてないから読んでてオリキャラのように感じるわ

それほかのSSでも毎回言ってるの?







「い_大な滝絹_」だって?

まーたエタるんじゃねーだろうな

この作者まえのもエタったからなー

流石にもう誰も望んでないだろ

うん

続き待ってます

やっぱあきらめます

あと1時間少々ですが、諦めずに待ってます

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