ユミル「なんだコレ?」(119)

ユミル「ん・・・」ガバ

ユミル「・・もう、朝か」キョロ キョロ

ユミル(皆食堂に行ったのか)ムクッ

ユミル(今日は休暇だ)バサッ

ユミル「クリスタは確か、ミーナやハンナと演劇を見に行っていたな」

ユミル(私も朝食、食べにいくか)

ユミル「髪留め___え?」カチャ

ユミル「・・・・・・」

ユミル(・・・こっちは、確かに髪留めだ)カチッ

ユミル(けど、こっちは・・・)

ユミル「なんだコレ?」

ユミル(何かのケースでは、無いn) グゥゥゥ

ユミル(・・・とりあえず、腹ごしらえ!)

食堂

ユミル「ここにしよう」カタン

ユミル(さて、アレも気になるけど、今はしっかり食べよう)バリッ パク

ユミル「ん!いつもより旨い!」


※CPは一応あり

※昔話を使った作品のパロディ

※更新は全二回か三回

※でも次の更新は一週間以上開きます

※最後に、爬虫類が苦手な方は微注意


――食堂



ミカサ「ユミル」

ユミル「!ミカサじゃないか」

ミカサ「貴女が一人なんて珍しい」

ユミル「お前こそ一人きりなんて珍しいな」

ミカサ「ここに座っても大丈夫?」

ユミル「構わねぇぜ」

ミカサ「・・・」カタッ

ユミル「・・・」

ミカサ「・・・」

ユミル「振って湧いた休暇だよな」

ミカサ「私もそう思う。教官と兵団の各支部の責任者が集まっての緊急の会議なんて、本当に珍しい」


ユミル「お前の所属兵団を巡っての話し合いじゃないか?」

ミカサ「?」

ユミル「お前は百年に一度の逸材だから」

ミカサ「そう」

ユミル「なんだよ、お偉いさんたちがお前の為に集まったってのに・・・えらく淡白だな」

ミカサ「私はエレンの行くところについていくだけ」

ユミル「過保護」

ミカサ「そう言うユミルも過保護と思う」

ユミル「私はクリスタについて憲兵団に行こうなんて思ってねぇぞ」

ミカサ「それはおかしい」

ユミル「は?」

ミカサ「クリスタが10位以内に入ると言う事はまだ決まっていないのだから」

ユミル「・・・」

ミカサ「だから、まだ憲兵団に行こうなんてと断言するのはおかしい・・・と、私は思う」


ユミル「・・・そう言えばそうだったな」

ミカサ「そう」

ユミル「・・・」

ミカサ「・・・」

ユミル「でもあいつも頑張っているからな、私は是非とも上位に入って欲しいとは思っているんだ」

ミカサ「・・・」

ユミル「だからつい、口から出てしまったんだろうな」

ミカサ「そう言う事にしておこう」

ユミル「あぁ、そうしておいてくれると助かる」

ミカサ「・・・」

ユミル「なぁミカサ」

ミカサ「なに」

ユミル「話は戻すが。お前が休日に一人なんて珍しいな、幼馴染達はどうした」

ミカサ「露骨に話題を戻すなんてユミルらしくない」

ユミル「そこはそっとしておいてくれ」


ミカサ「・・・エレンとアルミンはライナー達と一緒に街に遊びに行った」

ユミル「へぇ、駆逐駆逐言っている奴が外出とは珍しい」

ミカサ「友達付き合いも大切だと、私は先日エレンに言われたので」

ユミル「なんか話が飛んだ気がする」

ミカサ「気にせずに続きを聞いてほしい」

ユミル「そうか、話を切って悪かったな」

ミカサ「・・・私は先日エレンに友達付き合いも大切だと言われた」

ユミル「へぇ」

ミカサ「そこで私は答えた・・・エレンも休日は訓練ばかりで友達付き合いは下手ではないのかと」

ユミル「随分とストレートに言ったんだな」

ミカサ「そしたらエレンはむきになってしまい、俺だって友達付き合いくらい出来ると意気込んで・・」

ユミル「で、ライナー達と街に出かけたって事か・・・解かり易いくらいにむきになっているな」

ミカサ「そう、むきになっている・・・エレンはまだ子供、だから心配」

ユミル「アルミンも一緒に居るんだったら大丈夫だと思うぞ」

ミカサ「そうだろうか」


ユミル「子供なりに、あいつ等自分の短所を補っている。二人揃って一人前、そう思えば安心できないか?」

ミカサ「・・・確かに、そう思うと少しは安心」

ユミル「そう言いつつ不満そうだ」

ミカサ「私も大人、少しは我慢できる」

ユミル「まぁ、ライナーもいるし」

ミカサ「そう」

ユミル「理不尽な暴力系統の事は、全部あいつが引き受けてくれるさ」

ミカサ「そう思うと、少し安心できた気がするから不思議」

ユミル「はは」



ミカサ「・・・ところでユミル」

ユミル「なんだよ」

ミカサ「そのテーブルの端にある、随分とカラフルな布はどうしたの?」


ユミル「あぁ、これか・・・私もわかんねぇんだけれどよ、朝起きたら私の髪留めのすぐ傍に置いてあった」

ミカサ「じゃあそれは髪留め用の入れ物?」

ユミル「いいや、どうも違うらしい・・・ほれ」ピラッ

ミカサ「形が思っていた物と全然違う、少し手に取ってみてもいい?」

ユミル「あぁ」ヒョイッ

ミカサ「これは・・・随分と可愛らしい、カエルのぬいぐるみ?」

ユミル「ぬいぐるみにしては中に綿も入っていないし、ぺったんこのままなんだよな」

ミカサ「そう言えばカエルの下の方だけ綴じられていない、しかも下の方が足ではなくまっすぐ裁断されている」

ユミル「最初は制作過程の物かと思ったが・・・なんか似たようなものを見た事があるんだよ」

ミカサ「?」

ユミル「なんかこう・・・料理場とかである様な」

ミカサ「あぁ、熱くなった鉄板とかを手に取る時の、あの手袋?」

ユミル「そう、それ」


ミカサ「あれはミトンと言う」

ユミル「そっか・・・よかった、思い出してすっきりしたよ」

ミカサ「確かに、それによく似ている」

ユミル「そうだろ?だったら片方しかないのも少し納得できるんだよ」

ミカサ「・・・でもそれにしては生地が上等すぎるし、薄すぎる」

ユミル「だよな。こんな手触りの良い生地、内地でも滅多にお目に掛かれねぇと思うのに」

ミカサ「こんなに手に吸い付くような素敵な生地。女の子だったら手元にあるだけで嬉しいと思う」

ユミル「・・・主席様はこの出所に心当たりはあるか?」

ミカサ「残念な事に、特に予想できるところが無い」

ユミル「主席様でも駄目となると、お前の連れの辺りは目をキラッキラさせながら言いそうだよな」

ミカサ「?」

ユミル「これは壁外から持ってこられたものなんじゃないかってさ」




――ばさっ



がさがさ ごそごそ

カチャ パタン! もそもそ



アニ「・・・無い」



がさっ がたん

もそもそ ぱたぱた・・



アニ「無い、無い・・・やっぱり無い!」

アニ「ど・・」



アニ(どうしよう・・・あのカエルのパペットが無くなっている!)


アニ(昨日、なんだか夜中に目がさえて。時間潰しがてら私物を整理しようとして・・・それで)

アニ(あぁ、もう!途中で寝落ちてしまうなんて、本当に最悪だったよ)



ごそごそ もそもそ

ぱたぱた



アニ「・・・っ」



アニ(あのパペット・・・故郷から大人達に支持されて渡された物だった、よね)

アニ(その時に聞いた説明・・・使う機会なんて無いと思っていたけれど、あれはやばい)

アニ(もしもあれを“手に嵌める”人が居たら、その人によっては大変な事になる!)

アニ(あれは、あのカエルのパペットは)



アニ(邪魔者を排除する為にと渡された、万が一の時に使用する・・・呪われた道具なのに!)


――食堂



ミカサ「ユミル、流石に私の家族は其処まで短絡的じゃない」

ユミル「じゃあ全く可能性が無いと?」

ミカサ「言い切れは、しない・・・けれど」

ユミル「博識な幼馴染の方は?」

ミカサ「確かにその可能性を提示する事は・・・ある、かもしれないけれど」

ユミル「はは、じゃあさ。いっその事持ち主が見つからなかったら試してみようぜ」

ミカサ「?」

ユミル「あいつ等の目の前にこれを出した時の反応をさ」

ミカサ「ふふ、それは面白いかもしれない」

ユミル「だろ?」

ミカサ「・・・」

ユミル「ミカサ?」


ミカサ「そう言えばユミル」

ユミル「なんだよ」

ミカサ「貴女は今日の予定は何か入っている?」

ユミル「あぁ、そう言えばお前は休日を一緒に過ごす相手を探していたんだっけ」

ミカサ「そう」

ユミル「残念だが、私には少し野暮用があってな」

ミカサ「・・・それは残念」

ユミル「それに野暮用が無いと、私がクリスタを一人放っておく訳ないだろ」

ミカサ「・・・」



ユミル「・・・じゃあこうしよう。野暮用が済み次第、私はお前と合流する」

ミカサ「?」


ユミル「そしてお前と一緒に話している姿をエレンに確認させる」

ミカサ「!」

ユミル「私とお前が一緒にいる姿をエレンに見せれば、お前も保護者としての面目が立つだろうからな」

ミカサ「助かる」

ユミル「その代わりと言っては何だが、今後何か頼む事があるかもしれないが・・・それでいいか?」

ミカサ「私の出来る範囲で、なおかつ常識の範囲内であれば構わない」

ユミル「ま、それでいいさ。主席様に恩を売っておくのも悪くは無いだろ」

ミカサ「わかった、ここは恩を売られておくべき場面」

ユミル「素直にそう思ってくれていると助かるよ・・・おっと。じゃあそろそろ行こうかね」

ミカサ「?」

ユミル「そろそろ私の野暮用がやってくる時間帯なんだ」

ミカサ「そう・・・ユミル」

ユミル「なんだ?」

ミカサ「感謝する」

ユミル「おぉ、感謝しておいてくれ」


ユミル(兵団の幹部達の顔や行動を見ておけるいい機会だからな、逃すのは勿体ない)

ユミル(あわよくば何か面白い弱みでも掴めれば最高なんだが、まぁそんな機会はなかなかないだろうな)



ミカサ「ユミル」

ユミル「ん?」

ミカサ「忘れている」

ユミル「あぁ、そう言えばそうだったな・・・これの持ち主も片手間に探してみるよ」



――ぱたん

ユミル(さてと、会議室はあっちか)

ユミル(きちんと隠れる場所に目途はついているが、早めに行っておかないとな)ゴソッ



ユミル「っと、これも落とさないようにきちんと畳んでポケットに入れないと・・」


ユミル(にしても本当にこれ、本当に生地がいいよな)

ユミル(デフォルメされて結構可愛い造りだし、クリスタにプレゼントしても喜ぶかも)

ユミル(っと、駄目だ駄目だ。その前にルームメイトの奴等に心当たりがないか聞かないと)

ユミル(このまま自分の懐に入れて、後々でトラブルになったら面倒だし)

ユミル(でもクリスタ、喜んでくれそうだよな)

ユミル(なんだったら縫い込まれていない部分を縫い込んで、中に綿を詰めたら普通の人形にしてもいいかも)

ユミル(このままの状態で綿を入れても平面になるだけだよな、立体的にするにはどうすればいいんだ?)



ユミル(手を入れこんで、立体的にしたらどうなるか試してみるか)


タッタッタッ



アニ(無い、本当に無い!あんなに目立つカラフルな物なのに、こんなにも見当たらないなんて、部屋の中には無いとしか思えない)

アニ(何かが手違いがあって、部屋の外に持ち出されたとなると・・・本当に大変だ)

アニ(あれが人の手に渡ると、十中八九拾い主に呪いが掛かってしまう)



アニ(い、いや別に、壁内の奴らの手に渡ったところで・・・どうせ壁を壊して、壁内の人類は)

アニ(そ、そうだよ。別にあのアイテムによって呪われる人が居たところで)



アニ(・・っ、やっぱり駄目だ。やっぱりそれでも夢見が悪い)



アニ「ぁ・・!」

アニ「あそこにいるの、ユミル?・・・しかもその、手に持っている奴は!」



アニ(しかも手を、パペットの中に入れこもうとしているのか!?)















アニ「ユミル、ちょっ・・待っ!」


ユミル(へぇ、ちょっと立体的にしてみたけれど・・・さすがにこのままじゃ微妙だよな)

ユミル(布の端の部分を部分的に入れ込んで、もう少しスムーズな立体になるように調節すれば)

ユミル(うん、なんとか行けそうだ。なかなか可愛いぬいぐるみになりそう・・)



――がやがや

ユミル(?なんだ、なんか騒がし・・)



「うわっ、なんだこれ」

「なんだってこんな所に」

「せっかく綺麗にしたってのに」



ユミル(・・・?なんだ、なんか皆がこっちの方を見ている)



「誰か摘み出せよ」

「嫌だよ、俺触れねぇって・・・それに結構でっかいし」


ユミル(失礼な物言いだな、なんだ?私に言っているのか?喧嘩なら買う・・・っ!?)

ユミル(なんだなんだ!?巨人が攻めてきたのか!それにしてはこの巨人、服を着ていやがるぞ!?)



「おい、なんだこれは」



ユミル(は、えぇ!?・・・う、後ろから何かに体を掴まれて持ち上げられたぁ!?)

ユミル「け、けろ・・・!(は、離せ!)」





ユミル(・・・ん?)



「リ、リヴァイ兵長!」

「上官が来るって言うのに、お前等は満足に掃除もできないのか」

「まぁリヴァイ、少し真似かねざる客が入り込んだだけだろう。小言をあまり言うと嫌われるぞ」

「うるせぇ」


ユミル「けろけろ(な、なんだよ失礼な奴だな私は訓練兵・・!)」

ユミル「・・っ!?(ま、また変な声が出ている!?)」



「だが普段生活する学び舎にカエルを紛れ込ませるなんて、こいつ等の目は節穴としか思えん」



ユミル(か、かえるぅ!?)



「そう訓練兵を虐めるな・・・ほら、早くキース殿の待つ会議室に行こうじゃないか」

「ふんっ」ポイッ

ユミル「け、けろ・・!」



――ケロ、ケロ…!? ヒュー…



ポトン








アニ(あ・・・あぁ、遅かった)ガックリ







アニ(って、それどころじゃない)

アニ(カエル・・いや、ユミルを探しに行かないと蛇にでも運悪く見つかったら、丸呑みにされちゃう)

アニ(流石にそれは惨すぎる、助けに行かないと!)


――外



ユミル(な、なんだよ一体何があったんだ)

ユミル(私が、このユミル様がカエルになってるってのかよ!)

ユミル(そんな事、ある訳ねぇ!だってほら、私の手はきちんと人間の・・!)チラッ



ユミル「・・・」



ユミル(あ、足は!?か、顔の形!手・・・はもう見たし)

ユミル(声はどうだよ!さっきのは少し喉の調子が可笑しくなっていただけだよな!?)





ユミル「けろけろ」



ユミル(・・・)


ユミル(ど、どうしてこうなった)

ユミル(私はそんなに悪い事・・・結構して来たけれど、こんなカエルになる程の事なんて・・)

ユミル(も、したかもしれないけれど)



ユミル(まさか・・・第三の人生がカエルだなんて)

ユミル(そんなの、あんまりだ)



ユミル「けろっ・・・」



ユミル(今後の食事は虫になるのか?それにもう温かいベットには入れないのかよ)

ユミル(そう思うと、きついばかりだと思っていたが今までの暮らしは幸せだったんだな。今気が付いても遅いが)

ユミル(・・・これから先の人生は人とも関われなくなるし、人としても生きられなくなるのか)



ユミル(クリスタにも、もう・・)


――がさっ、がささ!



「ミル・・・ユミル!」



ユミル(!!)

アニ「ユミル、どこに行ったんだい!」



ユミル(あ、アニ!?)

アニ「ユミル、いたら返事をするんだ!」

ユミル(どうしてお前が・・・でも、んな事はどうでもいい!アニ!ここだ!私はここ・・)ピョンピョン

アニ「返事をしろって!」がさがさ

ユミル「けろけ・・・ろ(アニ、私はここ・・・って)」ピョンピョン

アニ「返事をしなっ!」どかどか



ユミル(カエルから見た人間の足・・・怖っ)


アニ「ユミル!?」

「けろ、けろっ!けろろ!!」ピョンピョン!

アニ「ん?」



ユミル(ぎゃー!やだやだ、それ以上早足でこっちに近づくなぁ!踏みつぶされるぅ!)ピョンピョン!!

アニ「あ、ここにもカエルがいたね・・・逃げているんなら可能性は薄いだろうけれど」

「けろっ!!」ピョンピョン!!

アニ「取り敢えず捕まえてっと」ギュッ



ユミル「けろ゛!?(むぎゅ!!い、息が・・・力が掛かりすぎ)」

アニ「取り敢えずこの籠の中に入ってな!」ポイッ

ユミル「け、けろ・・・?(い、痛てて・・・ん?か、籠?)」




アマガエル「けろ!」ヤァ!

ウシガエル「げごっ」オマエサン シンガオダナ

アオガエル「けろろ」ミカケナイ シュルイダネ

ヒキガエル「・・・げごっ」ベッピンサンジャネェカ

ウシガエル「もー」ワタシニハ マケルケドネ

トノサマガエル「けろ」ソウイウナ ワシノ コノミデハアルゾ



ユミル(神様、私が一体何をしたって言うんだ・・・)



ユミル「けろ・・(カエルだらけの籠に放り込まれるなんて・・・こんな人生あんまりすぎるだろ)」



………

……


アニ「さて、これで一通りのカエルを集め終わったね」トサッ



アニ(問題はこの中に、目的の人物がいるかって言う事なんだけれど)

アニ「まずは何にしても、確認してみない・・と」パカッ



ぴょーん!!



アニ「!?」

ユミル「けろろろ!!(あ、アニ!!た、助けてくれぇ!)」ピタッ

アニ「な、なに!?顔に、顔にカエルが・・!」


トノサマガエル「げろ、げろろ(おーい、そこの別嬪さん。試しに儂と交配してみないか)」

ユミル「けろっ!!けろろ!!(無理無理無理無理絶対無理!!カエルとなんて嫌だぁ!!)」

アマガエル「けろ(何言っているんだよ、君だってカエルの癖に)」

アオガエル「けろろ(だよなぁ)」

ユミル「けろろ!!(こんなに早く人間捨てたくない!捨てるなら捨てるでもっと絶望してからがいい!人間辞めるのに一時間も掛からないなんて嫌だぁ!!)」



アニ「ちょ、なんだいこのカエル!離れな!」グイグイッ



ユミル「けろ、けろろ!(アニ、助けてくれ!)」

アニ「離せって、流石に私が山育ちで抵抗が無いとはいえ。流石に顔面にカエルが張り付くのを放置できる様な・・」

ユミル「けろ・・・ぁに!」

アニ「!」

ユミル「けろ・・・けろ、たすけ・・・ぁに」ケロケロ

アニ「もしかして、あんたがユミル?」

ユミル「!」


アニ「もしあんたが本当にユミルだったらさ、ちょっと右足上げてみて」

ユミル「!」ヒョイッ

アニ「左足も」

ユミル「!!」ヒョイッ

アニ「頭を下げてみて」

ユミル「けろっ」ペコッ



アニ「・・・良かった見つかって、あんたユミルだね」

ユミル「けろっ!」ピシッ

アニ「そんな勢いよく片手を挙げなくても大丈夫だよ・・・にしても声帯がそろそろ馴染み始めているのか、多少なり声が出せるようになっているね」

ユミル「!」

アニ「試しに、少し意識的に声を出してごらんよ」

ユミル「ほんと、だ」ケロッ


アニ「もう少ししたらきっと、きちんと話せるようになるよ。それまでの辛抱だね」

ユミル「なで、わかぅ?」ケロッ

アニ「・・・うん、本当だね。なんでわかるんだろうね」

ユミル「?」

アニ「・・・まぁ、今話せられるようになったんだからきっと話せる様になる様な気がしただけさ」

ユミル「・・・けろっ(そうか)」



アニ「本当に偶然なんだけれど、カエルに急に変わったあんたを私は見ていたんだ」

ユミル「ぁりが、と」

アニ「・・・流石に放っておけなかった。それだけさ」ヒョイッ

ユミル「!」

アニ「にしてもあんた、ウシガエルじゃなくて良かったね・・・もし食用ガエルだったら、部屋にサシャがいたら喰われちまう」

ユミル(確かに)


ウシガエル「もー(やだ、私の噂?)」

トノサマガエル「げごっ(そうみたいだな)」

アオガエル「けろけろ(美しさ故に食べられるって話みたいですよ)」



アニ「あ。あんた達はもういいよ・・・ほら、帰りな」ポイッ



ウシガエル「もー!(いやん、もう退場?)」

アマガエル「けろろ(短い登場時間だったでやんす)」

アオガエル「けろっ(また機会があればいいんだけれどなぁ)」

ヒキガエル「げごげご(無理じゃね?)」

トノサマガエル「げろっ(また機会があればお会いしましょうね、麗しい人)」

ユミル「けろろ!(もう会いたくねぇよ!)」



アニ「・・・なんか随分と仲良くなったみたいだけれど、一旦部屋に戻るよ。二人きりで話したい事もあるしね」

ユミル「けろっ(おう・・なんかえらく疲れたわ)」


――女子寮



アニ「良かった、まだ誰も戻っていないみたいだね」

ぱたん



ユミル「よっ」ピョン

ぽてっ

ユミル「・・・(ベットだ)」



ユミル(もう、この部屋に戻る事は無いかもしれないと一度は覚悟した・・・私達の部屋だ)

ユミル(なんかえらく大きく感じるし、ベットも思った以上に体が沈むけど)

ユミル(それでも、なんだかえらく・・・嬉しい)



アニ「ユミル、どうかした?」

ユミル「なんでもない・・・けろ」


アニ「声はどう?」

ユミル「ぁ、あぁー。うん、大分声の出し方がわかって・・きた、けろ」

アニ「なんかまだ少しけろけろが出てきているけど」

ユミル「そっちのほぅ、が。なんだか・・・出やすくて。気を抜くと少し出てきやすい・・・だ、っての」

アニ「そう言うもんなのか」

ユミル「おう」

アニ「でも少しずつ戻って来ているよ」

ユミル「話し相手がいるからかな・・・けっこう慣れて、きたけろ」

アニ「また出てきているけろ」

ユミル「アニ・・・うつってる」

アニ「不覚」



ユミル「んんっ・・・ま、なんとか話せる様になったな。それだけでも進歩だ」


アニ「でも、それだけじゃ訓練兵生活には戻れないよ」

ユミル「だな。このままじゃいい見世物になってお終い・・・なんてことに」



アニ「・・・」

ユミル「・・・」



アニ「きっと珍しいカエルとして大事にされるさ、よかったね」

ユミル「慰めんな!そんな人生望んじゃいねぇ、けろっ!」

アニ「下手に兵士やるより長生きできるかもしれないよ?」

ユミル「長生きしてもこんな、こんな・・・」

アニ「・・・」



ユミル「こんなの、あんまりすぎる」


アニ「戻りたい?」

ユミル「戻りたいに決まってる」



アニ「・・・戻る方法を、私が知っているとしたら」

ユミル「!」

アニ「聞きたい?」

ユミル「もちろんだ!」

アニ「困難な道だよ、生半可な努力じゃ到底叶わない。それでも知りたいと思うの?」

ユミル「あぁ、それでも知りたい・・・でも」

アニ「でも?」

ユミル「おまえ、なんで知っているだ?」

アニ「・・・友達の友達がね。以前お爺さんが動物になってしまった事があるそうでさ」

ユミル「へぇ」



アニ(こんな言葉じゃ、誤魔化すのは厳しい・・・か?)ハラハラ




ユミル「そんなに人間が動物になる事ってあるのか」



アニ(えぇ、これで信じるの!?)

ユミル(巨人にもなれる人類もいるから不思議ではない・・・だろうし)



アニ「あ、あぁ。私も作り話だとばかり思っていたけれど、あんたの姿を見る限り・・・本当なのかもね」

ユミル「ふぅん。で、解決方法は?」

アニ「友達の友達の話では。たしか最初に触れた異性の人物と口付けをしたら戻れた・・・って事だけど」

ユミル「けほっ!?(口付けぇ!?)」

アニ「ユミル、出てる。勢いよく声を出し過ぎた所為で口からカエルの胃袋飛び出してる」

ユミル「・・・」モドシモドシ

アニ「カエルの胃袋って、結構簡単に口から飛び出すんだね」

ユミル「私も自分の胃袋初めて触った・・・気持ちわりぃ」

アニ「どんまい」


ユミル「・・・にしても口付けかぁ。ま、寝こみを襲えばまぁなんとか」

アニ「なると思うんだ」

ユミル「?まぁなんとかなると思っているぞ」

アニ「ユミル、相手が誰か覚えているのかい」

ユミル「いや、少し混乱していて覚えていないが・・・訓練兵の中の誰かなんだろ」



アニ「・・・」

ユミル「?」



アニ「ユミル、あんたは頭が悪くないんだからきっと思い出せるはずだ。思い出してみなよ

ユミル「・・・?」

アニ「そっちの方が、ショックが少なくて済むだろうし」

ユミル「えぇっと」




――なんだってこんな所に

――せっかく綺麗にしたってのによぉ



ユミル(うんうん、思い出せる)



――誰か摘み出せよ

――嫌だよ、俺触れねぇって・・・それに結構でっかいし

――おい、なんだこれは

――け、けろ・・・!(は、離せ!)



――リ、リヴァイ兵長!?




ユミル「・・・」

アニ「思い出したようだね」

ユミル「よりによって、まさか・・・相手は」

アニ「そう」










アニ「あんたは人類最強であり潔癖な男、リヴァイ兵長に口付けしないと元に戻れない」

ユミル「・・・」


ユミル「カエルの姿の私が、か」

アニ「カエルの姿のあんたが、ね」

ユミル「潔癖症の人類最強男に」

アニ「そうだね」



ユミル「・・・いや、それ無理じゃね?」

アニ「・・・」

ユミル「他に方法は?」

アニ「無いね」

ユミル「・・・」

アニ「じゃあ一生カエルのまま過ごす事になるよ」

ユミル「・・・くそっ」

アニ「やるしかないさ」

ユミル「あぁ、もう・・・やればいいんだろ、やれば」


一回目の更新はここまで


思っていた以上に書けた、そして時間が空いたので投下します
更新は全三回になりそうです


………

……



アニ「まだ会議はやっているみたいだね」コソッ

ユミル「あぁ、でも会議に参加しているのは兵団の幹部のみだから」

アニ「一応は幹部ではなく、兵士長と言う立場だからね。幹部召集会議では外れるって訳だ」

ユミル「リヴァイ兵長が廊下で一人、立ちすくんでいる」



リヴァイ「・・・」



アニ「これはチャンス・・・かもしれない」

ユミル「チャンスに見せかけて、私がこの世からおさらばする事態にならなきゃいいが」

アニ「踏みつぶされるだけでアウトなサイズだからね、軽々しく声を掛けるのは止めた方がいいかも」

ユミル「巨人を駆逐しまくる兵長だもんな」

アニ「人類最強かつ潔癖の男だもんね」


ユミル「あ」

アニ「なに」

ユミル「手持ち沙汰だからか掃除用具を内ポケットから取り出した」

アニ「なんだろ、あれ」

ユミル「なんだろな」

アニ「・・・金のミニはたき、みたいだね」

ユミル「なんではたきを兵服の中に忍ばせているんだ、そしてなんで金色なんだ」

アニ「さぁ、何故だろう」

ユミル「お。早速はたきを使って、周りの棚の埃を払い落し始めたぞ」



アニ「・・・」

ユミル「・・・」



アニ「あの人、いつもあんな風に時間を潰しているのかな」

ユミル「よっぽど暇なんだろ」


ユミル「あ」

アニ「なに」

ユミル「兵長殿がはたきを放り投げながら、手の届かない部分の埃を払い落し始めたぞ」

アニ「身長故に届きにくい所は技術でカバーか、絶妙な投げ加減だ」

ユミル「何故、ジャンプをしてはたかないのか」

アニ「埃が舞うからじゃない?」

ユミル「そう言う物か?」



アニ「・・・あ」

ユミル「どうした」

アニ「兵長さんが放り投げたはたきが、棚の奥に入り込んじゃった」

ユミル「マジか」

アニ「手を伸ばしているけれど届かないっぽい」

ユミル「あぁ、頑張っているが届いていないみたいだな」


アニ「・・・」

ユミル「・・・」



アニ「これ、接触するチャンスなんじゃない?」

ユミル「は?」

アニ「あんたが隙間に入り込んで、あのはたきを取ってあげたら?カエルで小さいんだし」

ユミル「そう言えば私の体、小さくなっていたな・・・うん、恩を売るいい機会かも」

アニ「その恩を、どのように有効活用するか。そしてどんな形で恩を売るかが重要だね」

ユミル「・・・回りくどい事は面倒だな」ボソッ

アニ「何か言ったかい?」

ユミル「いいや、別に・・・じゃあちょっくらファーストコンタクトでも取ってくる」ピョンッ

アニ「行ってら」ヒラヒラ


………

……





むかしむかし、あるところに

金の毬で遊ぶ一人のお姫様・・・ではなく、金のはたきで一人掃除をする人相の悪い男がいました

手の届かない場所も、一人はたきを放り投げつつ仕事に精を出しますが

目測が謝ったのか、そのはたきは手の脇をすり抜けて棚の奥深くに入ってしまったのです



――廊下



リヴァイ「取れねぇな・・・面倒だが、棚を動かしてから回収するか?」

リヴァイ「いや、流石にこんなに大量の本が入った棚を移動するとなると、一度中身を出さないといけないし」

リヴァイ「流石にそこまですると、骨が折れる作業になっちまう」


はたきは暗い隅っこに落ち込み、どんなに手を伸ばしても届きません

悲しみから悪態を吐きまくる、そんな男の目の前に



――ピョンッ!!

 ヒュー…ッ ポトン



見目麗しい救いの女神・・・ではなく

やや大きめのカエルが一匹、はたきと男の目の前へと飛び込んできました



リヴァイ「!」

「お困りですか、兵長殿」

リヴァイ「・・・誰だ?」

「えぇっと・・(いきなり事情を思い切り話すのもなぁ)通りすがりの者です」

リヴァイ「何でカエルが言葉を喋っているんだ」

「まぁそんな細かい事はいいじゃないですか、このはたきが欲しかったのでしょう?さぁ、どうぞ」


カエルは金色のはたきを手に取り、男に差し出します

男は手を差し延ばすと



リヴァイ「!」スカッ

「・・・」ヒョイ



カエルは手を引いて、はたきに触れさせないようにします

だがもう一度カエルははたきを差しだます、が

男が再度、手を差し延ばしても・・



リヴァイ「!」スカッ

「・・・」ヒョイ


リヴァイ「・・・」

「・・・」スッ

リヴァイ「!」スカッ

「・・・」ヒョイ

リヴァイ「おい、なんのつもりだ」

「お礼もなく受け取ろうとするのは、品も礼儀も無いと思いませんか?」



また、はたきをひっこめます

男はだんだん苛立ってきました

だがカエルが言うのももっともです、男は苛立ちながらもお礼の言葉を口にします



リヴァイ「・・・礼を言う」

「言われてから礼を言われても、心が籠っているとは思えません」


リヴァイ「ならどうしろってんだ」

「・・・」

リヴァイ「・・・おい、どうしろって言うんだよ」



「キスしてくれたら返してやる」



まぁなんと言う事でしょうか、脅迫です

このカエルは脅迫を行って、人様から口付けを奪っていこうと言く心算なのでしょう

なんと言うキス魔なのでしょうか!



リヴァイ(口を利く上に人間様に色気づくなんて随分とふてぶてしいカエルだな)



男の心の声も、皆様賛同いただけると思います

だがその一方で、カエルも一生懸命でした

当然でしょう、人間としての人生を取り戻せるかと言う瀬戸際なのですから


リヴァイ「・・・」

「嫌そうですね、ではこの金のはたきは拾い主である私が頂いていきますよ?」

リヴァイ「くそっ・・・分かった、用件を飲むからそのはたきを寄越しやがれ!」



男は思いました

カエルごときが何をほざいているのかと

人様を脅迫し、対等に話すなんてこのカエルは何様のつもりなのかと

男にとってカエルはカエルでしかなく、対等に話をする存在ではありません

なのでカエルの手から金のはたきを受け取った男は、そのまま何もせずにカエルに背中を向けます

カエルは慌てて声を荒らげました



「ちょ!おい!!どうなっているんだよ約束は!?」

リヴァイ「・・・うるせぇな」

「約束があっただろう!?なんで帰ろうとするんだ!」


リヴァイ「口約束なんて当てにならねぇってよくわかっただろう、この汚物め」

「おぶっ・・!?」

リヴァイ「泥の中に住み、表面が湿気て細菌まみれの癖に。汚物と言われて何傷ついているだ、身の程を知れ」

「そ、それは・・・確かにカエルはそうかもしれないけれど、でも私は」

リヴァイ「汚い出生の者はな、どうしたって大切にはされねぇんだよ。勉強になったとでも思うんだな」



ざわざわ

――ガチャ



リヴァイ「!」

エルヴィン「あぁ、リヴァイここで待っていたのか。会議が終わったので戻るぞ」

リヴァイ「・・・わかった」



「・・・」


カエルを置いて、男は住処に戻ってしまいます

カエルはただただその後姿を見送る事しかできませんでした

当然です

今廊下に姿を現せば、まず間違いなく出てきた多くの足によってプレスされてしまうでしょう



ようやく人通りが少なくなり、静かになった頃

カエルは自分の元にやって来てくれた、協力者の手の中に納まる事が出来ました

話を隠れて聞いていた協力者は、カエルに話し掛けます



アニ「ユミル、流石にちょっと直接的に頼みすぎたんじゃ・・」

ユミル「・・・」

アニ「・・・ユミル?」

ユミル「よくも」



ユミル「よくも汚物だなんだと・・・若い女に向かって言ってくれたな、あの糞野郎」


カエルは協力者の手の中で震えていました・・・静かに、怒りによって



アニ「!」

ユミル「狡猾と言われた私を欺きやがって、必死に頼み込んだってのに・・・ましてや汚物だぁ?ふざけんじゃねぇ」

アニ(カエルの体から、怨念が吹き出して見える)

ユミル「この恨み、晴らさずおくべきか・・・・ぜってぇその口に、汚物と言った物を押し当ててやる」

アニ「まぁ、頑張りな」

ユミル「何はともあれ、あいつ等の後を追わないとな。アニ」

アニ「なに」

ユミル「移動に協力してくれ」

アニ(・・・まぁ私の所為ってのもあるしね、にしても今日が休日で良かった)



アニ「わかったよ、じゃあ馬を借りてくるから少し待っていてくれ」

ユミル「おぅ」


――調査兵団本部



エルヴィン「ふぅ、色んな幹部との会議は本当に疲れるな」

リヴァイ「お前は引き受けた事を全て行おうとするから、余計疲れるんだ」

エルヴィン「仕方がないだろう、兵団内ではコツコツと信用を積み重ねていかない事には何も出来ないからな」

リヴァイ「壁外ではあんなに人を死に追いやる癖に」

エルヴィン「それは耳が痛い」

リヴァイ「その癖、壁内では他人の眼ばかりを気にしている様に見える」

エルヴィン「・・・」

リヴァイ「お前はもっと俺をこき使ったらどうだ、今日の会議だって俺も参加する事は出来たと思うぞ」

エルヴィン「あぁ・・・そう言えば商会からの差し入れで軽食が届いている、一緒にどうだ」

リヴァイ「露骨に話を逸らそうとするのはよせ」

エルヴィン「一緒に食べないかリヴァイ、君が好きな銘柄の紅茶もあるんだが」

リヴァイ「・・・はぁ。分かった、茶器を用意してくる」




――こんこん



リヴァイ「ん、誰だ?」

――こんこん

エルヴィン「今は関係者以外は立ち入り禁止と伝えていたはずなのだが」

――こんこんこんこん

リヴァイ「ちっ、せっかちだな。今開けるから待ってろ・・」



ガチャ

「こんばんわ」

リヴァイ「・・・」

「リヴァイ兵士長殿、貴方ははたきを取ると口付けてくれると約束したはずだ。なのに勝手に・・」



ぱたん


エルヴィン「?リヴァイ、どうした」

リヴァイ「いや、なんでも」



――こんこんこんこんこんこん



リヴァイ「!」

エルヴィン「リヴァイ、開けてあげなさい」

リヴァイ「・・・ちっ」



ガチャ

「口付けてくれると約束したのに!何勝手にドア閉めているんだよゴラァ!」ペタペタ

リヴァイ「カエルの足で地団太を踏んでも微妙な音しか出てねぇぞ」

エルヴィン「おや珍しい、カエルの客とは・・・しかも喋っている」


「団長さんよぉ、あんたこいつをどんな教育しているんだ!」

エルヴィン「どんな、とは?」



「簡単に言うとよ・・・かくかくしかじか・・・って事なんだ」



エルヴィン「なるほど、はたきを取ってくれたのに口付けて貰っていないと言う事か」

「あぁ、私だって自分の身長より低身長のチビで金髪でも碧眼でも愛らしくもないお前なんてタイプじゃないから我慢しているのに」

リヴァイ「無茶苦茶な言い様だな」

「この際だからもっと言うぞ」

「私は低身長で華奢で儚げで可愛らしくて天使で可愛らしくて可愛らしくて可愛らしい奴が好みだ」

「だが仕方がない。お前で我慢してやる、苦渋の決断って奴だ。だからお前も我慢しろ、これでお互い様だ」

「だからさっさと潔癖症なお前の顔面に、汚物と表現したこのカエルの唇を押し付けて嫌な顔しやがれ!この糞野郎が!」



リヴァイ「嫌がらせを行いたいと言う気持ちの方が前面に出ていやがる」

エルヴィン「それ程までに約束を破られた事がショックだったのだろう、可哀想な事だ」


リヴァイ「エルヴィン、お前まさかこのカエルごときに肩入れするつもりじゃねぇだろうな」

エルヴィン「だが約束したのだろう?・・・だがまぁ、このカエルの言い分として間違っている部分はある」

「何処が間違っているってんだよ」

エルヴィン「初対面でいきなり口付けを要求すると言うのは、あまりにも早急なのではないか」

リヴァイ「ふざけるな、早急じゃなくても断る」

「そうか、なるほど・・・確か一理ある」

エルヴィン「理解してくれて嬉しいよ」

リヴァイ「こちらは嬉しくとも何ともないんだが」



「では訓練兵の身分では懐が厳しいが致し方ない、シーナにある最高級ホテルの最上階を予約しよう」

「ホテルに入る前には三ツ星レストランで肉の出るフルコースを食し、そこでワインを開けて花火を飛ばし」

「ついでに貴金属でもプレゼントしてから色の良い返事を受け取る事にする、そしてホテルで夜景を見ながらその唇を貰う・・・それでいいか?」

リヴァイ「発想がえらくバブリーだが、年齢はいくつだ」

「・・・ぴちぴちの17歳だ」

リヴァイ「今のところは肌がぴちぴちと言う部分しか実感が湧かないな」


「なら其処に更にスレンダー系で手足が長く、胸は人並みだが乳輪は小さめの美乳系だと言う説明も加えてやろう」

「さぁどうだ、唇を奪いたくなってきただろう。さっさと唇を奪えやこの野郎」

リヴァイ「カエルにそう言われても、そんな気持ち湧く訳ねぇに決まっているだろうが」

エルヴィン「そう言うなリヴァイ。レストランはともかく・・・まずは一緒に食事でもどうだ?」

「おぉ!そこのおっさんに比べるとあんたは話が分かるな団長殿、ありがたく頂こう」

リヴァイ「おい!」



エルヴィン「リヴァイ、私がお前を幹部達の集まる会議に出さないのはお前の性格が壁内の仕事に向かないからだ」

エルヴィン「そもそも私がお前の実力を買っているのは壁外での活動が主だったはず」

エルヴィン「約束も守れないお前が壁内での仕事に口を出すな」

リヴァイ「っ!」



エルヴィン「さっきも言っていたが、兵団内ではコツコツと信用を積み重ねていかない事には何も出来ない」

エルヴィン「お前がそんなにもカエルと唇をかわすのが嫌だったのなら、そもそもはたきを諦めるべきだった」

エルヴィン「ただ、それだけの話だ」


「ふむふむ、話の分かる・・・立派な団長殿だな」

リヴァイ「正しすぎて、気持ち悪い奴だとも言えるが」

エルヴィン「はは、酷い言われようだ」

「よし、わかっただろう兵長殿。約束は守らなきゃならねぇぞ?」

「団長殿!食事をした後リヴァイ兵長殿と二人きりにして欲しい。他人の目の前だとキスもしづらいだろうし」

エルヴィン「そうだな、二人きりになる程度なら大丈夫だろう」

リヴァイ「何をもう口付けする前提で話してやがる!する訳ねぇえだろ、この化けガエルが!!」

「心配しなくてもいい、繰り返し言うが私の正体はぴちぴちの17歳かつスレンダーで手足の長い美乳系だ」

「更に言うならば、きつめの視線がSM系好みの輩に大うけするタイプのブスだ」

「安心しろ、身の程は知っているからキス以上の事はしないさ」



リヴァイ「身の程を知っているなら、まずはカエルと言う品種の身の程を知りやがれ」

「それは無理だ、正体は人間だからな」

リヴァイ「不愉快だ、俺はもう帰らせて貰う!」


――バタン!!



「・・・」

エルヴィン「・・・」

「やっぱり、素直にブスと言ったのが悪かったか」

エルヴィン「素直なのは良い事だと思うが、まぁサンドイッチでも食べていきなさい」

「ありがたく頂こう」モグモグ



エルヴィン「ところで君は本当に人間の転じたカエルなのか?」

「残念な事に」

エルヴィン「もし戻れなかったらどうする」

「・・・考えたくもないね」

エルヴィン「もし、君さえよければ調査兵団に入らないか?」

「けろっ!?(えぇ!?)」ビクッ


エルヴィン「リヴァイは正直者過ぎてね、こう言う駆け引きには向いていないんだ」

エルヴィン「君なら色んな所に潜んで、様々な情報を教えてくれそうだし」

エルヴィン「なにより、話した感じは私と会話も合いそうだ」

「・・・」

エルヴィン「どうだい?見世物になるくらいならいい就職先になると思うが」

「・・・考えておくよ」



男が上司と食事を行おうとしている所、扉を叩く音が聞こえます

扉を開けると、なんと先程のカエルがいるではありませんか

慌てて扉を閉めてしまいますが、上司によってカエルは部屋に招かれてしまいました

男は渋々カエルを招き入れます

そしてカエルから事情を聞いた上司は、男に「約束は守らなければならない」と告げるのでした


二回目の更新はここまで
コメを下さった皆様本当にありがとうございます

補足が遅くなりましたが、リヴァイとエルヴィンの会話の時に名前が無いのは
二人が会話している人物を名前で認識していないからです

次回で完結します


※注意※

五月号(現段階での最新号)で判明した調査兵団女性兵士のお名前が出てきます
ほんの少しでもネタバレが嫌だと言う方は御注意下さい


――リヴァイ自室



リヴァイ「はぁ・・・面倒事に巻き込まれたな」



こんこん

リヴァイ「誰だ」

ペトラ「兵長、ペトラ・ラルです」

リヴァイ「入れ」

ペトラ「失礼します」



かたっ

リヴァイ「何の用だ」

ペトラ「明日の予定について相手方から連絡がありました」

リヴァイ「そうか」


ペトラ「兵団保有の馬の管理方法が新たに導入されると言う事で、手続きの手順が変わるらしいです」

リヴァイ「どんな風に変わる」

ペトラ「詳しくはこちらの用紙に書かれています、就寝の前に確認をお願いします」

リヴァイ「わかった」

ペトラ「あと」

リヴァイ「?」

ペトラ「こちらは、エルヴィン団長からです。先程食事を食べて行かれなかったと言う事なので」

リヴァイ「あぁ、助かる」

ペトラ「それでは失礼致します」

リヴァイ「しっかり休め」

ペトラ「はっ!」



がちゃ


リヴァイ「・・・で、なんでお前が食い物の中に紛れ込んでいるんだ?」カチャッ

「見つかったか・・・まぁ、私を食べてって奴か?笑えないが」

リヴァイ「そうだな、吐き気が出る。生のままのカエル料理なんて」

「完全に同意だ」

リヴァイ「じゃあ帰れ」

「取り敢えずお前に拒絶される事は解かっていたのでこう言った物を持ってきた、見ろ」

リヴァイ「これは」

「団長殿に一筆したためて貰った、リヴァイ兵長は招待したカエルを必ず部屋に招き入れる様に・・・と」

リヴァイ「・・・ちっ」

「部屋に入れて貰うぞ、よっと」ピョンッ

リヴァイ「くそっ不愉快だ、部屋にカエルを招き入れるなんぞ」

「わかったよ、じゃあこのテーブルの上からは動かないようにするさ」

リヴァイ「・・・エルヴィンめ、他人事だと思って」

「そう言うな、約束を守る事の大切さを教えてくれるなんて立派な上司じゃないか」

リヴァイ「あぁそうだな・・・立派な奴だよ、壁の中ではな」


「なんだ、えらく不満そうに見えるが」

リヴァイ「不満なんてねぇさ」

「そうは見えない」

リヴァイ「・・・」

「あんな立派な上司の、いったい何が不満なんだよ」

リヴァイ「あえて言うならば、立派すぎるところか。会議で言った発言は必ず実行するし、議会の評価も鰻登り」

リヴァイ「その成果もあって、以前より調査兵団の活動費も賄われるようになってきた」

「良い事じゃないか」

リヴァイ「大衆的にはな、だが俺はそう言う奴は性に合わん」

「団長はあんたを兵団に誘ってくれた奴だったはずだが、そんなに性に合わないのなら何故兵団に来たんだ?」

リヴァイ「あいつは団長になって変わっちまった。俺が最初に会い、付いて行こうと思わせた奴はもういない」

「・・・」

リヴァイ「いつだって公務公務、そのくせ会議に俺を参加させる事なく重責を背負って来やがる」

「でも、お前は団長殿の事が嫌いではないんだろ」

リヴァイ「は?」


「金色のはたきなんてお前の趣味じゃないだろうからな、誰かからのプレゼントの可能性が強い」

リヴァイ「・・・」

「お前と親交の深い、金のある奴となると。まぁ一番可能性が高いのは団長殿だろうな」

リヴァイ「変に目聡いカエルだ」



「団長殿も言っていたが、カエルと口付けをしたくなければ約束をせずにいればいい。なのにお前は約束した」

「それは口では悪口を言いつつも。お前は団長殿の事を尊敬し、信頼していると言う感情の表れだと思うんだが」

リヴァイ「・・・」

「お前と団長殿の間に何があったのか、どんな関係であるのかは別に深く聞くつもりはない」

「だがこの程度の事だったら私にだって察せる。お前は団長殿を嫌なんじゃない、心配しているだけなんだと」

リヴァイ「俺はあいつにムカついているんだぞ」

「私にはお前が素直じゃないだけに見える」


リヴァイ「・・・随分とおしゃべりなカエルだ」

「それはすまない、おしゃべりは嫌いだったか」

リヴァイ「いや、こんなにずけずけと物を言う奴と話すのも久しぶりで少し気分がいい」

「そうか」

リヴァイ「相手はカエルと言うのは不服だがな」

「もし、その愚痴を聞いたら口付けてくれるか?」

リヴァイ「がっつきすぎだ、代償が発生するなら言わん」

「仕方がない。相手を落とすいい機会になるかもしれないし、代償無しで聞いてやろう」

リヴァイ「随分と態度のでかいカエルだな」

「じゃあ話しかけるのを辞めるか?」

リヴァイ「俺の認識では、カエルに話し掛けるのは空気に話し掛けている様なもんなんだ」

「だったら空気に話し掛けてろ」

リヴァイ「あぁ、俺は空気に話し掛けているんだ・・・だから返事をするなよ」

(なんだよ。結局のところ、聞いてほしいんじゃねぇか)


リヴァイ「・・・俺は、壁外に出ているエルヴィンこそが本当の奴であると思っている」

「今の団長殿は本当の団長殿ではないと?」

リヴァイ「返事はするな」

「はいはい」



リヴァイ「しかし、そうだな。本当の奴ではないと言う訳ではない」

リヴァイ「しいて言うならば、奴は今猫を十匹以上は被っていると言う事だ」

リヴァイ「公約を守り、王に従い、立場をわきまえて議会の信用を得る」

リヴァイ「だが壁外では冷徹で、現状を正しくとらえて、咄嗟に切り捨てる物の判断が出来る奴でもある」

「・・・ちなみに、私は部下にならないかと誘われたんだが」

リヴァイ「今の話を聞いて無理だと思ったんなら沼の底で暮らし続けた方が安全だぞ」

「元は人間だし、そんな生活は御免だな」

リヴァイ「まぁ、そんな鬼の様な奴なんだが。俺はあいつの片腕としてやっている訳だ」

「・・・」


リヴァイ「なのに」



リヴァイ「エルヴィンは壁内で、俺の力をほとんど頼ろうとはしねぇ」

リヴァイ「まぁ、下町のごろつきだった俺にそう言った仕事を任せられないって事だろうが」

「・・・」

リヴァイ「思い切り議会に難題吹っかけられ、スケジュールや体力だってかなりきつい事になっているのに」

リヴァイ「その所為で壁外でも激務になり、俺の部下を死なせる作戦ばかりになって。あいつもまた辛い思いをするのなら」

リヴァイ「普段から俺をもっと使って、その頭でもっといい作戦を考えてくれた方が」

「・・・」

リヴァイ「あいつだって楽できるだろうに」



「なんだ」

リヴァイ「?」



「結局、お前が壁内では頼って貰えなくて拗ねていると言う話か」


リヴァイ「なんだと」ジロッ

「違うか?」

リヴァイ「違ぇだろうが、何処をどう捕らえたらそんな話になる」

「お前の要望はこうだ。団長殿に壁外では今までの指揮と同様、壁内の思惑に囚われず好きにやって欲しい」

「そして壁内でも自分を右上として使って欲しい・・・纏めるとそんなところだ」

リヴァイ「俺はあいつの行動に文句があるだけだ。議会にへりくだり、俺を重要な会議では弾き飛ばす。そんな奴の姿勢に・・」

「なんだ、やっぱり当たっているじゃないか。表現が捻じ曲がっているだけで」

リヴァイ「違う!」



「じゃあなんで団長殿から貰ったはたきを捨てなかった」

リヴァイ「っ」

「さっきも言ったがな、それはお前が団長殿を慕っているからだ」

「見知らぬカエルと口付けの約束をするくらいには・・・そのはたきを大事にしていたからだ」

「その行動の意味を、好意を持っている意外にどう表現できる」

リヴァイ「ぐっ」


「認めちまえよ・・・そしたら前の発言も、好意を持っている事を前提に変換出来る」



「俺は壁外での団長の指揮がお前の本当の姿であると知っていて、その指揮の元で右腕として行動できることに誇りを持っている」

「だから壁内でも大変な仕事の際には自分を頼って欲しい、一人で背負いすぎるな・・・そんな表現にな」

「変に自分の出生が汚いからとか理由をつけるな、変に捻じ曲げる必要だって無い」



リヴァイ「だったら、どうしろって言うんだ」

「どうもなくていいさ、結局お前は自分の上司に誇りを持って仕えていると言うだけだろ」

「他の奴等から見ると『エルヴィン・スミス殿は素晴らしい部下をお持ちで』なんて評価にも繋がるだろうな」

「いい上下関係だと思うぜ、私も」

リヴァイ「・・・」

「少し素直に、信頼していると言う事を伝えればいいだけだ。にしても、随分と遅めの反抗期だったな」

「しかも親ではなくて上司にだなんて・・・本当に信頼しているからこそ、なのかもしれないが」

リヴァイ「くく・・随分と久しぶりだな、そんな直接的に指摘されるのは」


「お前は兵士長だもんな、他人からしてみたらなかなか指摘しづらいんだろ」

リヴァイ「カエルの癖に生意気だ」

「カエルの所為でもなんでもなく、生意気さは元からの性格でね」

「けど・・・人間のなりをしていたら、おそらく私もお前も他人行儀で終わっていただろうし」

「今、カエルのなりをしているからこそ指摘出来たと思っている」

リヴァイ「・・・」

「今は・・・今だけだがな、カエルの姿も悪くは無いと思っちまった。ったく、お前のせいだぞ」

リヴァイ「見紛う事なきカエルの癖に」

「だから元は人間だって」

リヴァイ「・・・ふっ」



リヴァイ「そう思うと、俺も少しは」ボソッ

「何か言ったか?」

リヴァイ「・・・いや」

リヴァイ(俺も少しだけ、お前がカエルの姿で現れてくれて良かったと思っちまっただけだ)


「にしても」

リヴァイ「あぁ?」

「あんたは兵士長の癖に大人じゃねぇな」

リヴァイ「どう言う意味だ」

「出生が故に態度を変えられるなんて、この世にはごろごろあるじゃねぇか」

「なんでそんな事を気にしているんだ、そんな性格じゃないように思えるんだが」



リヴァイ「・・・だな、俺もゴロツキ出身の癖によくもまぁ兵士長になれたもんだと随分と言われた」

リヴァイ「卑怯な手段でエルヴィンに取り入っただとか、他人の弱みに付け込んで地位を得ただとか」

リヴァイ「そんな事は無いと、そんな言葉に惑わされる事も起こる事もないと思ってきたはずだったが」

リヴァイ「・・・いつの間にか、その思考に染まっちまったって事か」

「・・・」



リヴァイ「言葉の力ってのは、恐ろしいな」


――ユミルさま

――ユミルの民

――私達の為に、どうか



(あぁ、そうだ。言葉の魔力と言う奴は恐ろしい)

(その言葉を掛けつづけられる事で、自分が否定したいと思っていた物にだって変っちまう)



――ユミルさま



(兵長殿はゴロツキ出身と言う、他の物よりも立場の低い者になってコンプレックスを持ち)

(クリスタは要らない子と言う言葉によって、綺麗に死ぬ事で自分に付加価値を付けたいと思う様になり)

(そして私は・・・“ユミルさま”になった)



(きっとそれは、カエルになってしまったこの体を戻す以上に・・・とてもとけにくい呪いで)

(自分が否定したいものにされちまうと言う事は、とても辛い事だ)


「・・・出生が故に、虐げられる事は。残念な事にこの世界ではいくらでもある」

「だが」

「あんたのその劣等感は、あんたの中と一部のどうでも良い奴等の中にしか無いじゃねぇか」

「だったら、気負う必要なんて無いと思うぜ」

リヴァイ「・・・」



「それに、あんたは」

リヴァイ「なんだ」

「きっと、一度気付いたら同じ轍は二度と踏まない人間だ。もう二度と、その焦燥感に苛まれる事もないだろ」



(私とは違って・・・な)

(私に掛けられた“ユミル”の呪いはまだ解けそうもない、こんなにあがいているのに)

(でも)


リヴァイ「・・・」

「大丈夫だ、あんたは強い。あんたはもう大丈夫だ」



(あんたは、呪いが解けたんだろ?)

(なんだよ、そんな意外そうな顔でこっちを見るなって)

(なんでわかるんだって顔をしているな。そんなのみりゃあ分かるさ、表情が違う)

(そして私は、そんなあんたが・・)



(心底、羨ましいと思うぜ)





リヴァイ「・・・」スッ


「え・・・わわっ!」

リヴァイ「おい、餞別だ。持ってけ」

「顔の近くに持ち上げられて、お前が目を閉じていると言うのは・・・そう言う意味でいいのか?」

リヴァイ「確認するな、俺が目を開けてカエルに口を押し付けるなんて鳥肌が立つんだ」

リヴァイ「だから勝手に、さっさと済ませろ」

「・・・ありがとよ」チュッ



リヴァイ「・・・」

「・・・」



リヴァイ「・・・」

「・・・」ケロッ



リヴァイ「戻っていねぇじゃねぇか!!」ブンッ!!

「わっ!?・・・がふっ!!」バシィッ!!


リヴァイ「くそっ、口付けて損した。ティッシュ、いや、タオルでも足りねぇ・・・早く拭かないと」

「・・・」



(あ、あいつ。潔癖症が故の拒絶反応か、思いっきりこの体を壁に向かってぶん投げやがった)

(体が、痛てぇ。シャレになんねぇ・・・なのにあいつはこっちに背中を向けて、一心不乱に口を拭いてやがる)

(頭きた、怒った。マジで沸点通り越して訳わかんねぇ)

(後ろを向いているな・・・こうなりゃ嫌がらせだ、そんなに口を拭くほど嫌がるってんなら)



リヴァイ「ちっ、アルコールはどこだ」





――がしっ





(もう一回・・・やってやる!)


リヴァイ「あ?」

「・・・」



リヴァイ「お、まえ・・・ぶふっ」



「・・・」チュー…

リヴァイ「・・・!」



「んー・・・」チュー…

「!!」ジタバタ



(んだよ、動くなよ。嫌がらせになんねぇじゃねぇか)ガシッ

「!!」ググッ…



ぐいっ!!


「ぷはっ。あぁ、外されちまった・・・って、あれ?なんで兵長殿がこっちの目線より下、に?」

リヴァイ「・・・」

「ってかこの視界」

リヴァイ「・・・」

「手、足・・・!か、顔は!体は!?おぉ!胸も戻ってる!」ペタペタ ムニムニ

リヴァイ「・・・」

「戻ってる」

リヴァイ「・・・」

「よ、よかった」



リヴァイ「おい、感動している所に悪いが」

「ん?」

リヴァイ「なんでまた、口付けした」

「は?そんなの単なる嫌がらせ」


リヴァイ「・・・」

「・・・ぁ」



リヴァイ「削ぐ!!」ガシャッ!!

「どわっ!!?」ヒョイッ!



王と一緒に食事をしたカエル

今度は「私をあなたの部屋に入れて下さい」と言います

カエルが不気味で男は嫌がりますが、またまた上司に約束を守るようにと言いつけてられてしまいました

部屋に入ったカエルは更に要求を口にし、更にはプライベートな所まで口を出してきます

腹が立った男は、カエルを壁に叩き付けました

するとどう言う事でしょうか

カエルはなんと、若い女に姿を変えたのです



女の失礼かつ命知らずな行動を(別の意味で)大層気に入った男は、近くに置いてあったブレードを抜刀し・・・


リヴァイ「よし・・・約束通り、可愛がってやろう」

「は?可愛がるなんて約束はしてねぇ・・・どわ!!」

リヴァイ「ちっ、避けやがるとはな・・・俺に嫌がらせをしようなんて50年早いんだよ、この若造が」

(こちとら50年くらいは軽く過ごしてきたって!!じゃなくて、やべぇ)

リヴァイ「一撃目は避けられたが、次は全力で行く」

(やばいやばいやばいやばい)

リヴァイ「くらえっ」

(くそっ、やられる・・!)



――ひゅっ、すとっ



「は?」



――ばふっ!!


その時です、男と女の元に何かが飛び込んできました

その人影は協力者で、彼女は信煙弾を改良して作った煙幕を部屋の中に充満させます



アニ(くそっ。私達が万が一の時に使う為に持っておいた貴重な煙玉、こんな所で使う事になるなんて)

アニ(でも、やっぱり私の失敗で同室の奴を放っておくことは出来なかった)

アニ(ライナーとベルトルトには怒られるね・・・私はまだ、心を殺しきれていない)



ユミル「お、お前・・」

アニ「いいから、ほら!窓から脱出しな」

ユミル「お、おう」

アニ「ほら、早く帰るよ」

ユミル「あっ・・・ちょっと待て、一言だけ残させてくれ。おい、兵長殿!」

リヴァイ「げほっ・・・あぁ?」



ユミル「人間の姿に戻してくれてありがとよ!そして一つだけ言っておく!」


ユミル「私をカエルの姿にしたのは、カエルの形をした手袋みたいな奴なんだ!」

ユミル「それが人間に戻った時に外れたらしい、そこの床に落ちている」

ユミル「だから・・・その手袋の中に絶対に手を入れるなよ!私みたいにカエルになっちまうからな!」



アニ「・・・ほら、早く」

ユミル「あぁ、すまない」





リヴァイ「げほっ・・・くそっ、また埃が舞っちまった。また掃除しなくちゃならねぇじゃねぇか」

リヴァイ「・・・」

リヴァイ「これが、人間をカエルの姿にする手袋・・・か?」

リヴァイ「・・・」

リヴァイ「取り敢えず、人の手の届かないところには置いておかないとな」


――道中



アニ「戻れて良かったね」

ユミル「こんな夜遅くまで待っていてくれたのか・・・本当にサンキュな、アニ」

アニ「別に、待ってただけだし」

ユミル「なんかお前、今日はやけに優しくね?」

アニ「別に、いつもこんな感じ」

ユミル「そうか?」

アニ「そうだよ」

ユミル「にしても、何か忘れている様な・・・あ」

アニ「?」

ユミル「やばっ、早く戻らねぇと!」

………

……


――次の日、朝



ミカサ「・・・」

ユミル「ミカサ、本当にすまない!」

ミカサ「別に、そう言う事もある」

ユミル(オーラが許していない、全然許していないから!!)

ミカサ「気にしなくていい」

ユミル「本当に悪かったって、な!次の休日・・次の休日こそきちんと!」

ミカサ「だから、気にしなくても」

ユミル「だったら、そんな冷たい目で見るなよ!」

ミカサ「私は至って普通」

ユミル「んな訳あるか!!」

ミカサ「私は自分の体を完全にコントロール出来・・」

ユミル「体じゃなくて目線がコントロール出来てねぇんだ!」

ミカサ「・・・」


エレン「ふぁ・・おはよ」

アルミン「おはよう」

クリスタ「あ、おはようエレン、アルミン」

エレン「何かあったのか?」

クリスタ「うん、なんかね。昨日二人で約束していたのにユミルがすっぽかしちゃったんだって」

アルミン「へぇ、ミカサとユミルは遊ぶ約束でもしていたの?」

ミカサ「いや、そう言う訳では・・」
ユミル「実はそうなんだ!」ガシッ



ミカサ「!」

ユミル「こいつが結構楽しみにしていてくれたのに。私がつい、その・・寝過ごして」



ミカサ(ユミル、一体何を?)コソコソ

ユミル(いいから話を合わせておけって)コソコソ


エレン「・・・ミカサ、それは本当か?」

ミカサ「それは本当、私はユミルと・・・たまに、結構、まれに会話する」

アルミン「へぇ、そうだったんだ」

クリスタ「じゃあミカサ、今回はユミルも来れなかったけれど。今度の休み、皆で舞台を見に行かない?」

ミカサ「!・・・い、いいの?」

クリスタ「うん」

ミカサ「ふ、不束者ですがよろしく」

ユミル「それは友達同士にしては何かが違うって」

クリスタ「ふふっ、ミカサって面白い人だったんだね。これからも宜しく」

ミカサ「よろしく」



ユミル「よし、じゃあ次の休暇は必ず開けておくよ・・・お、そうだ」

ミカサ「?」


ユミル「なぁ、そこにもう一人追加してもいいか?」

クリスタ「もう一人?」

ユミル「アニも誘いたいんだ」

クリスタ「私は別に構わないよ、ミカサもいい?」

ミカサ「私は平気」

クリスタ「じゃあ、アニの予定も聞いてくるね」タタッ

ユミル「どうせだったらミカサも行ってこいよ」

ミカサ「そうしよう」タタッ



アルミン「あはは、なんか安心したなぁ。ミカサにも女の子の友達が結構いるみたいで」

エレン「・・・」

アルミン「・・・エレン?」

エレン「おいユミル、本当なのか?お前ミカサと本当に仲がいいのかよ」

ユミル「そうだが?」

エレン「なぁんかミカサの態度が不自然で、いまいち信用しきれねぇんだよな」


ユミル(こいつ、意外とミカサの事に対しては鋭いよな)

ユミル(返答された時に少し違和感を感じたんで、ミカサをクリスタと一緒に行かせたが。正解だった)

ユミル(ミカサに友人が出来た現場を目撃、って事で昨日の約束が収まらないかと思ったんだがな)



エレン「本当か?」

ユミル「あぁ、本当だ。私とミカサはまぁまぁ話すぞ」

アルミン「エレン、別にミカサの交友関係にそこまで口を挟まなくても」

エレン「お前まさか、ミカサを何かで脅したりとか・・」

ユミル「随分と失礼な奴だ」

アルミン「そうだよ、いきなりそんな事を言うなんて」

ユミル「・・・じゃあ私も、クリスタ達の所に行かないといけねぇから」

エレン「待て、まだ話は」

ユミル「だぁ、うるせぇな!一々疑って掛かってくるな!」


アニ「舞台・・・?私はそこまで興味ないけど」

クリスタ「アニは舞台を見た事がある?」

アニ「いや、それはない・・・けど」

クリスタ「なら絶対に見るべきだよ!」

ミカサ「そう、是非見てみるべき。私もたった今、パンフレットを見せて貰ったが面白そうだった」

クリスタ「この公演はロングランで、次の休みまでやっているみたいなの」

アニ「そう・・・でも、私は本当に」



アニ(これ以上同期と交流をして、心を殺せなくなるといけないし)



クリスタ「そう言わずに、ストーリーだけでも聞いてくれないかな?」

ミカサ「そう」

アニ「ぐいぐいくるね・・・はぁ、わかった。話聞くだけだよ」



アニ(話をしている間に朝食を済ませて、さっさと退散しようっと)


クリスタ「うん。これはね、とある国のお姫様とカエルにされちゃった王子様のお話なの」

アニ「・・・は?」

クリスタ「外の世界に語り継がれていたお話を元に作り上げられているお話なんだ、とっても素敵だったなぁ」

ミカサ「そう、呪いは愛を誓い口付けを交わす事でとけると言うとてもロマンティックなお話」

クリスタ「女の子のならハートを鷲掴みにされちゃうような舞台で、だから是非アニにも見て欲しくて」

ミカサ「そう、アニも見るべき。この話を聞いて見たくなってきたはず」

クリスタ「今回を見逃すともうこの公演は見れなくなっちゃうかもだし・・・是非!」



アニ「・・・しょうがないね、今回だけだよ」

クリスタ「え?」



アニ「えってなんだい、あんたが誘ってきたんだろ」

クリスタ「う、うん。でも・・・まさかこんなにあっさりと了承して貰えるなんて思ってもみなかったから」

ミカサ「私も、三時間はこの舞台について語り明かさないと無理かと思っていた」

アニ「私だって乙女なんだ、そう言うのに行きたい時もあるさ」


ぎゃぁぎゃあ

ミカサ「・・・?」

クリスタ「あれ、なんか騒がしい・・あ」

アニ「・・・」



エレン「だからぁ、なんかいまいち信用できねぇからミカサにもう一度尋ねるだけだって!」

ユミル「それが余計なお世話だっての!ミカサを心配するなら交友関係くらいそっとしておいてやれよ!」

エレン「嫌だ!」

アルミン「エレン、ヒートアップしすぎだよ。ね、落ち着いて」

エレン「俺は落ち着いている!」

アルミン「落ち着いていないから!」

ユミル「めんどくせぇな、私はもう向こうに行くぞ」

エレン「させるか!」

ユミル「いい加減にしろ、この駄々っ子」

エレン「駄々っ子じゃねぇっ!」


ユミル「そんな相手を困らせる事ばっかり言っていると・・・いつかカエルになっちまうぞ!」

エレン「なる訳ねぇだろ!!」

ユミル「カエルになるのが嫌なら離せ!」

エレン「嫌だ!」



クリスタ「ユミルったら、昨日の夜話したお話をもう覚えているのかな」

アニ(いや、あれは体験からの方だね)

ミカサ「エレンがカエルになるのなら、口付けるのは私でありたい」

クリスタ「ふふ、ミカサったら凄い乙女だね」

ミカサ「そ、そうだろうか」

クリスタ「あ、アニ見て!ミカサったら照れてる、可愛い」



アニ(少しだけ、少しだけ話の内容を調査するだけだ・・・私がこの子達に関わるのは、その間の時間だけ)

アニ(でも、この時間が、もっと続けばいいのに)


………

……





――それから1年後 リヴァイ班



リヴァイ「ではこれから掃除をする場所を発表する」

一同「「はっ!」」

リヴァイ「まずエルドは玄関から応接間の間を頼む」

エルド「はい」

リヴァイ「グンタは廊下と浴室、ついでにトイレも頼む」

グンタ「はっ」

リヴァイ「オルオとペトラは台所回りと倉庫、きちんと荷物の下まで拭くように」

オルオ「はっ!」

ペトラ「わかりました」


リヴァイ「そしてエレンは新入りなので一番簡単な庭全域だ」

エレン「はっ!・・・はぁ!?全域ですか!」

リヴァイ「文句あるのか」

エレン「・・・いえ」



ニファ「失礼します、兵長に伝達です!」タタッ

リヴァイ「・・・ニファか、伝達は誰からだ」

ニファ「ハンジ分隊長です、リヴァイ兵長に至急来て確認してほしい事があると」

リヴァイ「ちっ、今日は少し時間が取れたから自室の掃除が出来ると思ったのに・・・おい、エレン」

エレン「はい」

リヴァイ「お前にはまず、俺の自室の清掃を命じる。床と窓を簡単でいいから掃いておけ」

エレン「は、はい」



エレン(まぁ、それくらいなら・・・あ、でも掃除する範囲が増えた)


――リヴァイ自室



エレン「ここが兵長の部屋か・・・俺達の部屋より結構広いし荷物も多いけれど、案外普通だ」

エレン「っと、余計な物には触らないでおかないとな。よし、さっそく床を拭いてっと・・・わ!」

とさっ・・

エレン「しまった!後ろを見るの忘れてた、棚の上にあった物が・・」

エレン「ま、まさか割れ物じゃないよな?音も軽かったし。・・・あ、よかった布だ」

エレン「急いで片付けないと」



エレン「なんだコレ?」

エレン「・・・カエルのぬいぐるみ?制作途中の奴か?」

エレン「兵長も裁縫とかやるのか、凄く意外だ」

エレン「お、生地がいいな触った感じが凄く滑らかだ。あれ、これって手袋の形に似ている」

エレン「手を入れる奴なのか?」


ごそごそ



エレン「けろ?(ん?)」

エレン「けろっけろろ!?(なんだコレ!?)」



――がちゃ!

???「えぇっと、兵長に言われた書類は・・・確か机の上って言っていたっけ」

???「ん?」



 ケロッ ケロロ…



ニファ「あぁ、カエルか・・・兵長に見つかったらポイ捨てされちゃうよ。ほら、外に連れて行ってあげる」





ユミル「なんだコレ?」【終】


スポットが行きますように、と願いを込めて最後はこの方で
初登場からずっとニファちゃんに目が行っていたのは自分だけではないと信じてる


勢いで書いたら思いの他好調に筆が進みました、ついでにもう一つのスレも進みました
スレを立ててくれた方、スランプから救ってくれてありがとうございます

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