上条「そこのおねーさん! お茶しない?」 麦野「あん?」(1000)

絶ったら5分後に投下開始します。

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上条「そこのおねーさん! お茶しない?」 麦野「あん?」


当SSは「とある魔術の禁書目録」の二次創作SSです。
しかしながら、登場人物のキャラ設定・性格に関しては多少の改変がなされております。
特に主役の一人である上条当麻は、ガワと『幻想殺し』とフラグ体質以外はほぼ別人となっております。

また、時系列は原作1巻直前となっております。
あるいは、時系列的におかしい状況も生まれるかもしれませんが、
「それはそれ、これはこれ」と納得していただけると幸いです。

あ、それとけっこうな割合でエロが入ります。
部分的にR18ですが、ハリウッド映画になぜか入るセックスシーンと同じぐらいの気持ちでお読みください。

もし読んで頂けるのならば、以上を念頭に置かれますよう、よろしくお願いします……

本日は約24スレほど投下します。


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「そこのおねーさん! お茶しない?」
 終業式を午前中に終え、夏休みに入ったばかりの“学園都市”の午後。
 大通りを歩く学生たちの足取りは軽く、その表情は等しく笑顔で弾んでいる。
 しかし、それは当然だ。陰鬱な期末考査を終え、青春の代名詞ともいえる夏休みに入ったのだ。浮かれない学生はいないだろう。
 だから、こんな光景は“学園都市”のいたるところで見る事ができた。これからの夏休みを、さらに素晴らしいモノにすべく、彼女の居ない男子学生がする行為――
 即ち、ナンパである。

「あん…?」
 声をかけたのは、ツンツン頭が特徴的な、やや垂れ目の男子学生。
 声をかけられたのは、ロングコートに緩やかウェーブのロングヘアが特徴的な、ややキツ目の年上系美人。

 ここに、王子様とお姫様の邂逅が果たされる…



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「…ナンパ? 悪いけど、他を当たって」
 声を掛けられた美人さんは、しかし、今にも「シッシッ」と手を振りそうな態度で、すげなくお断りを入れる。
 だが、こんな事でめげていてはナンパなど成功しない。ツンツン頭の少年は、持てる笑顔のパターンを総動員して彼女の気を惹こうとする。
「いやいやいや! 絶対に退屈させませんって! この上条さん、別にナンパ使用と思ってお姉さんに声を掛けたわけじゃ無いんですよ!? お姉さんがあんまりに美人だったから、口と身体が勝手に動いたわけでして… うわっ、間近でみるとすっげぇ美人!」
 商売人であったら揉み手をしているであろう卑屈な態度で、あらん限りの言葉で美人を褒めちぎる。もちろん、おべっかだとは相手も分かっているだろうが、8割本気の言葉は意外と相手に響くものだ。
「はいはい、ありがと。でも、お姉さん暇じゃないし、君みたいな年下の子と付き合う気は無いの。じゃあね」
「お昼! お昼まだでしょ!? 奢りますって! ほら、近くに17学区の学食街あるし、もう少し足を伸ばせば23学区のレストラン街あるし! もちろん俺が奢りますから、お昼だけでも!」
 パシン! 拝むように両手を合わせて、チラリと美人を仰ぎ見る。ちなみに、彼のカードはここまでである。
「はぁ… メンドクセー……」
 それまで努めて視界に入れようとしていなかった美人だが、いよいよ豪快に振ってやろうと、ツンツン頭の少年を睨みつける。
 元々、彼女は気が短い。つまり、しつこい男は嫌いなのだ。
「あのさぁ… 暇じゃないって言ってるでしょ? 痛い目みたくなかったら……」
 そう言い掛けると、美人の懐で小さな着信音が響いた。ムッとした顔で言葉を飲み込んだ彼女は、流れるような動作で携帯電話を取り出し耳に当てる。
「…はい、麦野だけど」
『あ、麦野ですか、絹旗です。超手短に言いますが、予定が超変更になりました。対象がポイントから超離脱したようです』
 耳に入った声に、さらに表情を険しくし、声を小さくする美人。
「…何よ、情報が漏れた?」
『その可能性は超ゼロですね。向こうの運が超良かった。そういうことでしょう。滝壺さんの追跡は超続行中ですが、向こうが腰をすえないと、完璧な襲撃は無理そうです。ですので…』
「どっかで時間を潰しとけって?」
『はい。まー、ファミレスかなんかで待機して置いてください。補足したら私も超急行しますので』
「…チッ、了解」
 機嫌が悪そうに携帯を閉じる。ふと気付いて目をやると、ツンツン頭の少年はまだ拝んだままだ。
 軽く息を吐いて、不機嫌な表情を取っ払うと、悠然と腕を組んで少年を頭のてっぺんからつま先まで観察する。
(顔は条件付きで丸、明らかに年下、体型はアスリートタイプ… 何かスポーツでもやっているのかしら? …ふん、遊んでやるか)
「……奢ってくれるって?」
 口の端をほんの少し吊り上げて、キツ目の美人が、少年にとってはこの上ない言葉をこぼす。
 その言葉に、バッ、と弾かれたようにツンツン頭の少年が顔を上げると、満面の笑顔で「もちろんですとも!」と叫んだ。




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「じゃ、ちょっと高いトコ奢ってもらおっかなー?」
「うっ… いやいや、ちょっと高くてももちろんオッケー!
 で、でも、良ければ私めにお店のチョイスをさせて頂けませんか?」
「えー、その店、良い所なんでしょうね? あ、私、麦野ね」
 ナンパをされるのは初めてではない。どうせ今日限りの関係なんだからと、キツ目の美人――麦野沈利は本名を明かす。
「任せてください! えっと、麦野さん! 俺、上条当麻って言います」
 一方のツンツン頭の少年――上条当麻はドキドキものである。はっきり言えば、玉砕覚悟で臨んだ相手なのだ。
「上条クンね。キミ運が良いわ、こんな美人捕まえたんだから。頑張って楽しませてちょうだい」
「は、はい……!」
(うわー、自分のこと美人って言い切っちゃってるよこの人……)
 もちろん、麦野の端麗な容姿から声を掛けたのだが、こうもはっきり言われるとかなり緊張する。
(男慣れしてんだろーなー…)
 対して自分は彼女居ない暦=年齢だ。だが、一応の計画は頭の中にあった。
「えっと、有名なトコじゃないんですけど、美味いオムライスを食わせる洋食屋があってですね…」
「オムライスねー… ま、いっか」
 第二関門突破。これでチェーン店や身の丈にあってない高級店を言うようだったら、麦野は即サヨナラするつもりだった。
 そういうテンプレな対応は彼女の好みでは無い。
「よ、よかった… えっと、店、近いんで、こっから歩いていけますよ」


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「ふむ、ふむ、ふむ…」
「ど、どうすか?」
 注文し、運ばれてきたオムライス(鮭入りライス)を頬張る麦野を、心配そうな顔で上条が見つめる。
 彼女の好みに合わなかったら、当然、そこでアウトである。
「……ま、合格かな」
「よ、よかったー!」
 実は密かに麦野の好みどストライクを当てていたのだが、そんな事を知らない上条は、もはや何度目か分からない安堵の息を吐く。
(普通に美味いわね… 鮭が良い感じにライスに馴染んでるわ…)
 そうやって、当たり障りの無い会話を挟みつつ、オムライスを食べ終わると、麦野はチラリと携帯の着信を確認した。
(絹旗からの連絡は、まだ無い、か… チッ、早くどっか一箇所に固まりなさいよ…)
 ふぅ、と軽く息を吐くと、対面に座る上条ににっこり微笑みかける。本日初めての笑顔に、上条の顔がたちまち赤面する。
「あ、あの、麦野さん…?」
「これからはどーしよっかなー? まだ暇な時間が続きそうなんだけど?」
 第三関門突破。上条は高鳴る鼓動を必死に抑えつつ、必死に頭を回転させる。
 昨日のプランと今の状況を懸命に照らし合わせて口を開く。
「腹いっぱいになったし、ちょっと身体動かせる遊びしません? この近くにボウリング場がありまして…」
「ぷっ!」
 いかにも学生的な上条の発案に、思わず麦野が噴き出す。まさかボウリングとは予想外だった。
「あはは、ボウリングかぁ… 当然、そこの払いは…」
「わたくしが持ちますとも! もちろん!」
 あまりに必死な上条の様子に、麦野がケラケラと笑う。
「冗談、冗談よ。そこまでお姉さんも鬼じゃないわ。割り勘で良いわよ」
「よ、よかったぁ~」
 予算的にギリギリだったのか、心底ホッとした表情を見せる。
 麦野は、そんな上条を不覚にも少しかわいいと思ってしまった。



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 かこーん!!
 シリコンボールが激突し、ピンが空中に舞う。
 ボールがその場で手に合わせて成型されたり、ボールの起動がレーンに記録されたりと、
所々ハイテクな仕掛けは用意されてはいるが、基本、アナログなルールは変わっていない。
 2投して多く倒した方が勝ち。単純だが、ちょっとコツを掴めば、女性でも男性と競い合えるのがボウリングの魅力の1つだ。
「そーれっ!」
 専用に調整されたボールを、やや角度をつけて麦野が投げる。
 ボールは吸い込まれるように1ピンと2ピンの間に激突し、本日何度目か分からないストライクのコールがボウリング場に響き渡る。
「よっしゃ!」
「つ、つえー…」
 上条が青ざめた顔でスコアを見る。
 すでに3戦目の10フレームだが、麦野とはほぼダブルスコア。
 上条も一応は100アップを軽く超えているのだが、麦野が当たり前のようにターキーやフォースをだすので、まるで追いつける気がしない。
「ふっふっふー、どんなもんじゃー? もしかして、勝とうとか思ってたかにゃー、上条クン?」
 男子を叩きのめす快感からか、弾んだ声で麦野が言う。
 言われた上条は、愛想笑いもそこそこに、やおら真剣な表情になってボールを構える。
 流石に彼とて男子の意地がある。ここまでコテンパンにやられていては流石に面白くないのだ。
「……せいっ!」
 真っ直ぐ振り切ったボールは、1ピンやや左寄りに激突するも、惜しくも10ピン残し。
 焦った上条はスペアも逃し、3戦目も麦野の勝利に終わった。
「上条クン、よっわーい!」
 彼女にしては珍しく上機嫌な声を出す。とにかくこの美人さん、相手を実力で見下すのが大好きなのだ。
「俺が弱いんじゃなくて、麦野さんが強すぎなんスよ! …もしかして、やりこんでるクチ?」
「ばーか、こんな疲れるコト、やりこむわけないじゃん。
 入射角とボールの回転を計算して、後はまっすぐ投げるだけ。簡単なスポーツよ」
「んな簡単って言われたって…」
 流石に面白くないのか、上条が口を尖らせる。
 機嫌が悪いと癇に障る仕草だが、今はスルーするぐらいの精神的余裕がある。

(まぁ、意外と楽しませてもらってるし、少しサービスしてあげようか…)
 心の中でチロっと舌をだして、麦野はコンソールを操作して、ゲームを練習モードに切り替える。
 ボール速度・軌跡、接触角度、投球アクションが記録できる優れモノ機能だ。
「ほら、ちょっと投げ方見てあげるから、構えてみて」
「え、投げ方?」
「後ろで見てるとさ、上条クン、体軸ブレブレなのよねー。まぁ、それを意識して中心線狙ってるんだろうけど…」
 少し呆然とする上条の手を強引に引っ張って、投球レーンに立たせると、麦野は上条の背中からピッタリと胸を密着させた。
「ちょッ! ちょッ!!」
 慌てふためく上条を尻目に、抱きかかえるように麦野が上条の身体に手を回す。
「こ・ら。視線は真っ直ぐ、先頭のピンを見て。ブレ無いように腰を支えて――?」
 何の気もなしに腰に回した麦野手が、上条の腹筋に触れた瞬間止まる。
 元々筋肉質だとは感じていたが、掌から伝わる感触はかなり鍛えた筋の弾力だ。
(鍛えてる? スポーツか、それとも……)
 ほんの少し、麦野が思考を回転させるが、上条の方はたまったものではない。
 後ろから抱き付かれているせいで、麦野の見事な豊乳が自分の背中に押し潰されている。
 下着と上着を間に挟んでいるにも関わらず、圧倒的な質量のおかげで何がどうなっているのかがはっきり分かる。
(やべッ、やべぇ!!)
 いくらなんでも、これは思春期の男子学生にとっては刺激が強すぎる。
 しかも、麦野が動かないものだから、余計に神経が背中の豊乳を感じてしまう。
 血液が下半身に一気に集中する。しかも、麦野の手は上条の下腹部をさわさわと撫ぜ回している。
 天国のような、あるいは地獄のような数瞬が過ぎた。いい加減、上条が声を出そうとした瞬間、麦野が唐突に上条から離れた。
「え、あー……」
「…ふふ、なーに残念そうな声出してんのよ。ほら、腰がブレないように投げてみて」
 その言葉で、上条は投球を開始するが、投球フォームは見事なへっぴり腰。力なく投げられたボールは、当たり前のようにレーンの溝を掃除した。
「あはは! 何それ! 腰が引けちゃって、かーわいー!」
「だ、だって! 麦野さんがッ!」
「ん~~、アタシがどうしたのかにゃ~?」
 心底楽しそうに、麦野がニヤニヤと上条を見つめる。
 「アンタがおっぱいを当てるから」とは当然言えるはずもなく、上条は顔を真っ赤にして「いえ、その…」と口篭った。
「良い思いしたでしょ?」
「えっと、はい……」
 妙に優しい声色で言われて、思わず上条が素直に頷いた。
 その背伸びをしていない少年の表情を見て、麦野の表情が益々喜色ばむ。
「ふふ、素直で良いわ。頑張って楽しませてくれたご褒美よ… さて……」
 そう言って、麦野はチラリと携帯の着信を確認する。絹旗からの着信はまだ無い。
 あるいは、今日中の決着は無理なのかもしれない…
(なんか、そういう気分じゃなくなったしねー。良いおもちゃも見つかったし…)
 ほんの少し悩むと、麦野は携帯を操作して非常時以外の着信拒否に設定した。
(決めた、暗部の仕事は今日は無し! たまにはこんな休日も良いわね)
 まだ呆然としている上条の横に立つと、麦野は楽しそうに上条の腕に絡みついた。
「うぇ!?」
「上条クン、動いて疲れたから、甘いもの食べたいなー」



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「ごちそうさま」
 目に止まった喫茶店で頼んだケーキセットを食べ終わると、麦野はさりげなくレシートを自分の方に手繰り寄せた。
「あ…」
「ねぇ、上条クンのレベルはいくつ?」
 何か言いかけた上条だったが、それに被せるような麦野の質問に気勢を削がれる。
「えっと、笑いません?」
「返答しだいかなー」
「いや、こーゆー前フリだから分かると思いますけど… レベル0っす」
「ふーん、ま、学園都市に居る学生の半分以上はレベル0なんだから、別に笑ったりしないわよ」
 麦野がそう返答すると、上条は少し安心した表情になった。
 学園都市において、レベルは絶対なものだ。
 それは、単に学力の話だけでは無く、もらえる奨学金の額、研究機関からの報奨金と、財政上でも差が出てくるのだ。
 ゆえに、学園都市においてレベル0は常にコンプレックスを抱えて生活している。上条が少し卑屈な態度を取ったのもそのせいだ。
「麦野さんは?」
「んー、レベル3。粒子変化に関する能力よ」
「す、すげー… 美人でスポーツ万能でレベル3かよ…」
 レベル3(強能力)は全体のレベルで言えば真ん中あたりだが、レベル0の上条にとっては、もちろん雲の上の存在だ。
「ふふふ、凄いでしょー。こうやってアタシの時間取ってるの、ありがたく思いなさいよ」
「もちろんですとも!」
 麦野の言葉に、やけに力強く反応する上条。
 なんと言うか、犬のようである。
(ちょっと気の利く年下クンかー、キープしとくかなー)
 実のところ、麦野沈利は陽の当たる道を堂々と歩く人間ではない。
 はっきりと言えばイリーガルな人間である。
 だから、恋愛などは遠い過去の産物だし、いまさら恋人が欲しいとも思わない。
 思わないのだが、こうやって楽しい時間を過ごしてしまうと、ついつい欲が出てしまうのだ。
 麦野はケーキセットの紅茶を一口飲むと、軽く身を乗り出して上条に話しかけた。
「ね、上条クン。まだ時間ある? アタシ、ちょっと買い物したいんだけど?」
 古今東西、女性のショッピングに男が付き合うとロクな目に会わない。
 無論、これも麦野のテストなのだが、上条は躊躇うことなく頷いた。
「あ、良いッスよ。荷物持ちっしょ? いくらでも付き合いますって」
 そういって、ニカッ、と笑う。
 決して洗練されていない、素のままの笑顔だったが、それが麦野には快く思えた。
(いいわ~、弟キャラを被ってるのかもしれないけど、こうも分かり易いと対応が楽ね。うん、キープしとこ)
「良かった。それじゃ、行くわよ」
 そう言うと、当然のようにレシートを掴んで麦野は席を立った。
 上条が慌てて「あ、自分の分は…」と言いかけるが、麦野はレシートをひらひらと振って答えた。
「これからこき使うんだから、ここの支払いは任せなさい。その代わり、絶対に泣き言は言わないこと…!」
 美脚が自慢の某金髪トラップ娘がこの光景をみたら、思わず偽者かと疑うような笑顔を浮かべ、麦野沈利は歩き出した。




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「これ良いわ~、キャミは何枚持ってても足りないしね… ん~、夏は暖色系少ないのがネックね… あ、パンプスめっけ…」
(まだ買うのかよ……)
 麦野がショッピングを始めてすでに数時間が経過していた。
 夏と言えども、外は茜色に染まっている。
 すでに上条の両手には、数を数えるのも馬鹿らしいほどの買い物袋がぶら下がっている。
 飛んでいったマネーカードの額など考えたくも無い。
(レベル3って、金持ってんだなー…)
 それが、レベル0である上条の偽らざる本音である。
 一方の麦野は、恐ろしいほどの上機嫌である。
「お、リップも夏の新作がでてんじゃーん。どれにしよっかなー。ねぇ、上条クン、どの色が似合うと思う?」
 店頭に並ぶ色取り取りのリップを指差して麦野が笑う。
 その目は半ば試すようだ。
 もちろん、上条には女性化粧品の知識はほとんど無い。だからと言って、何も答えないのは当然ご法度だ。
「えっと、麦野さん、暖色系好きなんですよね…?
 あー、だったら、あんまり派手な色じゃなくて、そのコートに合うような薄いヤツが良いんじゃないと、上条さんは思うのですが…」
 なんとか絞りだすように上条が答えると、意外と満足したのか、麦野は「そう? じゃ、そうしようか」と答えて、迷いの無い手つきで数種類のリップを選び出した。
 さらに消費されるマネーカード。金額にして、すでに6桁は軽く超えている。
「さて、と…… 次はー、あ、タイツの新色見なきゃ」
(後悔はしねぇ、後悔はしねぇぞ!)
 強く自分に言い聞かせて、上条は汗で滑る買い物袋を握り直した…



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 麦野の散財が終わったのは、外の陽もどっぷり暮れてからだった。
 終わりごろには上条の身体は買い物袋で埋め尽くされていて、散々麦野に笑われたり写メを撮られたりした。
 この格好でどこまで歩かされるのかと恐怖した上条だったが、麦野はあっさりと集積センターに行き、荷物の全てを自宅に宅急便送りにしてしまった。
「上条さんの苦労はいったい…」
 流石に愚痴の1つも言いたくなったが、「纏めて送らないと二度手間でしょ?」という麦野の台詞に、上条は苦笑いと共に愚痴を飲みこんだ。
「ふふ、まぁ、根性見せてもらったし、夕食もアタシが奢るわよ。お店、こっちで勝手に決めちゃうけど、良い?」
「えっと、はい。ていうか、夕飯まで良いんですか?」
 軽くなった身体を軽くほぐしながら上条が言う。
「もちろん良いわ。今日は本気で楽しかったわー。 …ま、最近仕事で嫌なことが続いていてねー。良いストレス発散になったわよ」
 まだまだ笑顔の麦野が言う。
 買い物にはギブアップだった上条だが、そういう笑顔を向けられると、苦労も報われた気分になれる。
「楽しんでくれたんなら、俺も嬉しいです。まー、別れるのが寂しくなっちまいますが…」
 細心の注意を払って、可能な限りさりげなく上条が言った。
「んー、まぁね…」
 敏感に言葉の裏を読み取った麦野は、さて、どうしようかと頭を巡らせる。
(メルアド教えるのは確定で良いわよね。表用の捨てアドだから、いくらでも変更利くし…
 あとは、今日はどこまで『許しちゃう』か、ね…)
 麦野は不意に上条の正面に立つと、最初にそうしたように、上条の頭のてっぺんからつま先までをじーっと見つめた。
「えっと、麦野さん?」
「んー、ちょっと黙ってて」
 困惑する上条の言葉を切って捨てると、麦野はどんどん思考を進めていく。
(別に食べちゃってもいいけど、童貞だったときが面倒よねぇ…
 でも、直感だけど、この子は肉体関係持ったら、無茶苦茶懐いてきそうよね。どことなく犬っぽいし…)
 麦野の実年齢からしてみれば行き過ぎた思考だが、彼女の本質から見れば全く違和感は無い。
 麦野沈利はこういうオンナなのだ。
「…食べちゃうか」
「はい?」
 麦野がぼそりと呟いて、よく聞こえなかった上条が思わず聞き返した、その瞬間、
 Pipipipipipipipipipipi!!
 麦野のポケットから、けたたましいアラーム音が鳴り響いた。



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「……クソがッ!!」
 さっきまでの笑顔を一瞬で消し去ると、麦野は小さく毒づいて荒々しく携帯を耳に当てた。
「……はい、こちら麦野」
『あんたってばー!! なんで着信拒否してんのさ!! 今日は仕事の日でしょーがッ!!」
 携帯からは、聴き慣れた、しかし、不快さだけは変わらない女性の声が響いた。
「はぁ? 今日は休日、アタシが決めた。用が無いんなら切りますけどー?」
『こいつらときたらッ!! アンタね! 絹旗が何言ったか知らないけど、状況は依然進行中なの!
 子犬くん食べようとか、盛ってんじゃないわよ!』
「切りまーす」
『ちょっと待てぇ!! 緊急コールだっつってんだろうが!」
「だったら、とっとと用件言えよ…ッ!!」
 思わずドスの利いた声を出して、しまったと上条のほうを見る。
 が、彼はなぜか麦野の方を見ておらず、暗い路地裏の先を凝視している。
(ほっ、よかった…)
 自分でもワケの分からないため息を吐くと、麦野は改めて電話先に問い質した。
「で、何?」
『……今日アンタに処理を依頼した男だけど、何やったヤツか知っているわよね?』
「ああ、元々はアタシたち『アイテム』の下部組織の人間で、対立組織にエスとして潜り込んだけど、いつの間にか裏切ってた馬鹿だろ?」
『そう、で、こっちに裏切りがばれて、しかも対立組織にもエスだとばれて逃亡したその馬鹿なんだけど、
 組織内のNo.2を丸め込んで、クーデターを起こしたのよ』
「で」
 興味なさそうに麦野が答える。そんなの、上手くいかないに決まっている。
『当然失敗して、その馬鹿はNO.2共々組織からも追われる身になったんだけど… 
 運の良いことに組織から逃げ出すのには成功したみたい』
「それじゃ、状況変わって無いじゃん。
 腰を落ち着けたら滝壺が補足、アタシか絹旗が襲撃して終わりじゃん」
『いやー、アタシもそう思って、たった今滝壺にサーチしてもらったんだけどさ。
 滝壺が変な事言うのよ。『麦野とそろそろ出会う』って』
「は?」
 ひどく嫌な予感がして、麦野は視線を巡らす。今、彼女が立っているのは大通りから外れた路地裏一歩手前。
 通行人は全く居ない。
『でね、アンタのGPSと馬鹿の現在地を照会したら、ばっちり逃亡ルート上にアンタが居るのよ。いやー、偶然って怖いわねー』
「ばっ、馬鹿野郎!! 最初にソレ言えよ!!」
 電話の先で、絶対にコイツは笑っている。そう確信した麦野は、即座に電話を切ると、神経を尖らせて周囲を索敵した。
 が、それは無駄な行為だった。
「あんたら誰だよ、俺らに何か用か?」
 妙に落ち着いた上条の言葉が聞こえ、そちらに目を向けると、上条の視線の先に、いかにも柄の悪そうな学ラン姿と、神経質そうなスーツ姿の2人の男立っていた。
「お、お前…ッ!!」
 スーツの男――元エスの馬鹿が、麦野の姿を確認して絶句する。
「畜生… テメェのせいで俺がこんな目に……」
 彼の中でどういう超理論が展開されているのかは分からないが、どうも、ここまで追い詰められているのは麦野のせい、と彼は思っているようだ。
「こうなったら… ここで刺し違えて……」
 物騒なことを口走る。今日一日で相当神経をすり減らしたのだろう、その声に余裕は全く無かった。
(まずいまずいまずいまずいーーーッ!!)
 対する麦野も相当に動揺していた。身の危険を感じたわけではない。彼女が本気を出せば、ほんの数秒で馬鹿を含めた2人組を消し炭に変えることが出来る。
 問題なのは……
(それをやったら、上条クンまで処理しなきゃならないじゃない……!!)
 麦野沈利。外見はちょいキツ目の美人さんだが、その正体は、学園都市の暗部組織『アイテム』に所属する闇の掃除屋だ。
 さらに、彼女は学園都市でも7人しか居ないレベル5の第4位。「原子崩し(メルトダウナー)」を操る超能力者なのだ…!




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(どうするッ!?)
 もちろん、もっともベターな方法はこの場から上条もろとも逃げ出すことである。
 そうして、改めて体勢を整えて襲撃をすれば良い。その方が楽だ。
 だが、万が一。いや億が一、この馬鹿どもを取り逃がしてしまったら?
(ない、とは言い切れないわね… 実際、コイツはアタシ達から半日逃げ回っていたんだし…)
 背中を冷たい汗が流れ落ちる。
 暗部の基本は『目撃者すら残さない』だ。それに従えば、当然、上条も抹殺対象となり得る。
(……はぁ、柄にも無いことしちゃったわね。もう、二度とナンパの誘いに乗るのは辞めよう…)
 ほの暗い暗部の常識が彼女を縛る。恐ろしいほどの能面を被って、麦野が右手を上げた。
(せめて、一瞬で…)
 目標は上条当麻。彼女の超能力である
 その能力が、発動しようとしたその時、上条当麻が不意にしゃべりだした。
「なぁ、何の用かって聞いてんだけど。おっさん達、耳、聞こえてる?」
 何気ない足取りで2人組に歩を進める。
「うるせぇ! 俺たちゃ、その女に用があるんだッ! ガキは引っ込んでろ!!」
 元スパイがそう怒鳴る。すると、上条は首だけ麦野に向けて、落ち着いた声で聞いた。
「麦野さん、こいつら知り合い?」
「えっ、いや、知り合いってー言えば、知り合いだけど…」
「ふーん、友達?」
「んなわけね…… ないわよ!」
 思わず地が出た麦野だが、上条は気にせず再び視線を2人組に向けた。
「つまり、お前ら麦野さんに迷惑かけてるわけか…」
「ごちゃごちゃ言ってねぇでそこをどきやがれ!」
 学ラン男が怒鳴る。恐らく、彼がクーデターに失敗したNo.2なのだろう。
 しかし、上条はそれに取り合わず、ポケットから掌大の薄いフィルムシートを2枚取り出すと、それを手際よく両手甲に貼り付けた。
「……テメッ、やる気か!?」
 それを見た学ラン男が俄かに身構える。
 上条が貼り付けたフィルムシートは、一般学生には馴染みが薄い物だが、裏家業に生きる彼らにとっては馴染み深い物だ。
 厚さ、たった数ミリのフィルムだが、その正体は学園都市の超科学で作られた高効果衝撃吸収シートだ。
 このシートを貼り付けていれば、たとえ鉄の扉を殴ったところで、手指へダメージを受ける事は無い。
 つまり、上条は無言で「いまから殴り合いをします」と宣言したのだ。
 上条は2人組から視線を外さないまま、左手をやや前方に突出させ、左足を半歩進めた前傾姿勢を取った。
「…大人しく逃げるんだったら、このまま見逃すぜ?」
 いやに低い声で上条が言う。その台詞2人組も覚悟を決めたのか、学ラン男が一歩前に出る。
「か、上条クン、危ないわよ!」
「麦野さんには、指一本触れさせませんから」
 今度は振り返らずに言う。中々に決まった台詞だが、麦野には大馬鹿の台詞に聞こえた。
(確か、前に渡された資料では、組織No.2のあの学ランはレベル3の強能力者…!)
 あんなフィルムシートを常備しているくらいだから、上条も多少は喧嘩の心得があるのだろう。しかし、能力者が相手なら話は全く違う。
 能力の種類にもよるが、とうていレベル0の上条が敵う相手ではない。自分で殺そうとしたくせに、麦野は上条のことを本気で心配した。
「お望み通り、テメェから火達磨にしてやるッ!」
 学ラン男が空中の一点を注視するように自分だけの現実(パーソナルリアリティ)を構築する。
(あいつの能力は、確か…ッ!?)
 事前に読んでいた資料を思い出す。資料に書いてあった学ラン男の能力は発火能力(パイロキネシス)レベル3。能力の中でも、比較的戦闘に向く能力だ。
「駄目よッ、上条くん!!」
 とっさに麦野が叫ぶ。しかし、それが合図になったかのように、上条が弾かれたように学ラン男に向かって走り始めた…!




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 発火能力(パイロキネシス)とは、意外に定義の広い能力である。
 一般的には、任意の場所を発火できる能力を指すが、発火までの過程が多岐にわたる。
 指定した空間の微細なチリを発火させるもの、対象物の温度を急激に上昇させるもの、など、方法は様々だ。
 学ラン男の場合は少し厄介な手順が必要なものだった。
(一瞬で丸焼きにしてやる…ッ!!)
 学ラン男の暗く激しい思考が現実を侵食する。
 右手人差し指と中指に嵌めたセンスの悪い指輪を、突進する上条に向ける。
 すると、彼だけに見える“AIMの道”が出現する。
 彼の能力名は『酸素回廊(オキジジェンルート)』。空中の酸素を集約・圧縮し操る能力だ。
 コントロールされた圧縮酸素は、細い糸となって上条の身体に纏わりついた。
「セット完了… 燃えろッ!!」
 学ラン男が、火打石代わりの指輪を擦り合わせると、小さな火花が弾け、それはすぐに圧縮された酸素に引火。
 たちまち火線が上条に走る!
 後は上条の服が燃え上がって勝負は決まる。学ラン男は自分の勝利を疑わなかった。
 しかし、
「シッ!!」
 短い吐息と共に、上条が左手を素早く前に突き出す。
 上条が差し出した左手は、高速で走る火線を見事に掌で受け、そして、
 火線はあっけなく消失した。
「…は?」「……ッ!!」
 学ラン男が間抜けな声を出す。そして、後ろで今の現象を見ていた麦野も息を飲む。
「………ぉおお!!」
 一人、上条だけが動揺も無く動く。一気に学ラン男との距離を詰めると、左足を大きく前に踏み出し、体幹の強烈な右回旋と共に、左手を振りぬいた!
 ドゴッ!!
 左スマッシュが、正確に学ラン男の鳩尾を捉える。
「あッ、がっ…!!」
 腹部からの強い鈍痛に、学ラン男の体がくの字に折れる。
「おぉ!」
 上条はさらに引く左手の勢いで体幹左回旋し、右足を大きく一歩踏み出すと共に、右手を高速で突出させる。
 ズッ!
 重軽い音がして、学ラン男の首が強制的に後ろに折れる。
 綺麗なフォームの、まるでお手本のような右ストレートだ。
 学ラン男が、がくっ、と両膝をついたのを確認すると、今度は上条は元スパイに突進した。
「ちょ、お、お前ッ!!」
 明らかに動揺した元スパイが、片手を後ろに回す。おそらく、そこに拳銃でも隠し持っているのだろうが、上条はそれが取り出されるより早くクロスレンジに入ると、小さく身を屈めて、体重の乗ったボディストレートを放った。
「ぐぁ…!」
 胸骨の下らへんを痛打された元スパイの顎が下がると、今度は狙い済ました右アッパーカットが元スパイの身体を跳ね上げた。
 一瞬、完全に身体が宙に浮いて、元スパイは頭から崩れ落ちて失神した。
「………ふっ」
 しばらく油断無く身構えていた上条は、2人が完全に倒れたことを確認して、ようやく全身から力を抜いた。



.

(………さて、)
 自分をひっかけたナンパ学生が、一応は百戦錬磨のはずの2人をのした。
 それはそれで驚く内容だが、麦野には看過できない1つの現象があった。
(確かめるか…)
 麦野は軽くうなずくと、足取り軽く上条に近づいた。
「あっ、麦野さん、あとは警備員(アンチスキル)に連絡… でいいスか?
 こいつら、レベル0の俺に能力使ったし、武器も持っているみたいだし…」
 何か勘違いしているのか、上条が確認を取るように麦野に言う。しかし、麦野はそれに答えず、素早く上条の左手を両手で持った。
「あ、あの…?」
 動揺する上条に、麦野は今日一番の笑顔を見せた。
「あは、上条クンって、凄く強いのね。カッコ良かった!」
「えっ、いや、そ、それほどでもないですよ……!」
 上条にとっては、狙い通りの効果だが、流石にこの反応は予想できずに身体が固まる。
 そして、左手を包む柔らかい感触にドギマギする。
 しかし、上条には完璧に隠しているが、麦野の眼は全く笑っていない。
(『原子崩し(メルトダウナー)が発動しない…ッ!?)
 実は麦野は、手から極少出力の『原子崩し(メルトダウナー)』を放出しようとした。
 極少といっても、本来は鉄壁をもぶち抜く威力の『原子崩し(メルトダウナー)』だ。熱いどころでは済まない。
 それなのに、上条に異変は無い。
(厄介だけど、面白いわね…)
 心の中でにやりと笑うと、麦野は己の舌で右上第3臼歯を軽くなぞる。
 一定の手順を繰り返すと、精巧に作られた義歯から、幅数ミリの極少カプセルが舌の上に落ちた。
 ともすれば、存在を触り失いそうになるそのカプセルを舌の上で構えると、麦野は一気に上条と唇を合わせた。
「………!?」
 あまりの行動に酷く仰天する上条を無視し、舌を使ってカプセルを強引に上条の口腔に流し込む。
 唾液と共に送られたソレを、上条は知らずに飲みこんだ。
「…えっと、あの、え、ご、ご褒美とか… ですか? はは、やりぃ…… って、はれ……?」
 顔全体を喜色で埋めた上条が、一瞬にして意識を失い崩れ落ちた。
 麦野が使ったカプセルには、速効性の睡眠剤が封入されていたのだ。
「薬は効く、と……」
 お情け程度で上条の身体を支えた麦野は、コクコクと納得するように頷くと、携帯を取り出してどこかしらに電話を掛け始めてた……




.

 目覚めは最悪だ。
「ここ… どこだよ……?」
 上条が、ようやく深い睡眠から目が覚めると、そこは全く知らない景色だった。
 そこは誰も使っていない部屋のようだった。
 12畳ほどベッドだけの空間に、上条は一人後ろ手に縛られて、ベッドの上に転がされていた。
 しかも、
「パンイチかよ……」
 上条の格好はボクサーパンツ1枚のみだ。
 空調はしっかり管理されているのか寒さは感じないが、流石にこれは落ち着かない。
「てゆーか、何でこんな目にあってるんでせう…? 上条さんは下心アリアリでナイト役をやっただけなのに…」
 むしろソレが悪かったとは考えたく無い。
 上条があれやこれやと妄想をしていると、部屋のドアが唐突に開いた。
「…あ、超起きてますね。超うぜー」
 ドアの外から顔を覗かせたのは、ローティーンのパーカー姿の少女だ。
 彼女は詰まらなさそうに上条を一瞥すると、すぐに顔を引っ込めてドアを閉じた。
「いや、誰なんだよッ!?」
 思わず叫んでしまう上条。
 すると、ドアの外から「うっさいわねー」と今日一日で聞きなれた声がした。
「目ぇ、覚めた?」
 ドアから登場したのは、当然、麦野沈利だ。
 昼間被っていた、キツ目美人の仮面は完全に脱いでおり、素の乱暴な口調である。
「ったく、テメェのせいで大した苦労だよ。ちっ…」
 不機嫌を隠そうともせず、麦野が頭をガシガシと擦る。
 その変貌ぶりに目が丸くなる上条。
「あ、あのぉ、麦野さん…」
「まず、質問に答えなさい」
 なんとか会話しようと声を掛けた上条だが、それに被さるように麦野が詰問を開始した。
「アンタ、レベル0って嘘でしょ?」
「い、いや… 上条さんは正真正銘のレベル0なんです、けど……」
 答える上条の声がどんどんと小さくなる。それもそのはずで、言っている途中から、麦野の眉尻がキリキリと吊り上ったからだ。
 絶句する上条の前で、麦野は上条から剥がしたであろうフィルムシートをひらひらと舞わせた。
「あ、それ…」
「素直にしゃべらねぇと、こうなるぞ?」
 麦野が能力を発動すると、フィルムシートが一瞬で灰に消えた。
 あのシートは耐衝撃性だけでなく、耐火性にも優れている。それを一瞬で灰にできる能力など、上条は知らない。
「いやッ! 嘘っつーか、嘘じゃないっつーか!」
「アンタのシステムスキャンの結果は知っているわ。その上で聞いてんだよ…!」
「わ、わかりましたッ! 話します、話しますからッ!」
 さらに麦野が凄むと、観念したのか、上条がぶんぶんと首を縦に振った。




.

「だ、誰にも話さないでくださいよ… 実は…」
 上条は、しぶしぶ、といった風に己の秘密を暴露した。
 いわく、自分の左手には、あらゆる異能を打ち消す『幻想殺し(イマジンブレイカー)』が宿っており、これまで打ち消せなかった能力はないとのこと。
「レベル0なのは、システムスキャンの機器の性能も打ち消してるんじゃないかって… 中学ん時の担任が言ってました」
「『幻想殺し(イマジンブレイカー)』ねぇ… で、この秘密を知っているのは?」
「えっ、そこまで話すんスか? うぅ… 中学と高校の担任と、仲の良い友達2人の4人だけです。名前は、勘弁してください!」
「ふん… まぁいいわ」
 努めてどうでも良い風に麦野が言う。だが、内心では口の端が吊り上りそうになるのを抑えるのに必死だ。
(コイツは拾いモンだな… カモネギっつーか、立ってるだけでこんなのが釣れちゃうなんて、美人は罪ねー)
 そう思ったら耐え切れず、麦野は口に手を当てて「ククッ」と短く笑った。
 その笑いが、いかにも悪役じみていて、上条は背筋が冷たくなるのを感じた。
「あの… お姉さん、もしかして、ヤバイ人ですか…?」
 へらへらと愛想笑いを浮かべて尋ねる。
「んー、上条くんはどう思う?」
 表情を昼間の笑顔に戻して言うが、上条には悪魔の笑顔に見えた。
「もしかしなくても、暗部の人…?」
 この学園都市には、開発された能力を使って、あるいは使わされて、学園都市を統べる統括理事会からの汚れ仕事を行う集団、通称『暗部』が存在する…
 一般学生、特にレベル0の間でまことしやかに流れる噂だが、友人を通じてスキルアウトとも多少のつながりがある上条は、その存在が真であることを知っていた。
 麦野は、ふぅ、と軽く息を吐くと、上条の顔を覗きこんだ。
「正解。どこでどう聞いたのかは知らないけど、だいたい、想像している通りで間違い無いわよ。私は暗部組織『アイテム』のリーダーで、レベル5の超能力者、麦野沈利よ」
「れべるふぁいぶ…ッ!!」
 そのあまりのレベルの高さに絶句する。レベル3でも雲の上の存在なのだから、レベル5だともはや別の星の話だ。
「上条クンの能力も、正式に評価すればレベル5相当だと思うけどね。ま、それはどうでも良いわ」
 そういうと、麦野はやおら縛られた上条を仰向けに転がすと、馬乗りになって右手を上条に向けた。
「うわっ!」
「はい、説明はここまで。さて、上条クンには2つの選択枝があります。私の下僕になって生き延びるか、拒否してこのまま一生を終えるか… さぁ、どっち?」
「いきなりですかー!?」
 思わず逃れようと身体をジタバタ動かすが、重心に乗られているせいか、思うように身動きが取れない。
「あ、それ以上暴れるなら、答えを聞かずに焼却処分だから♪」
 楽しそうな、しかし、ドスの効いたその台詞に、上条の動きがピタリと止まる。
 恐る恐る麦野の表情を見上げるが…
(こ、こえぇぇ…!)
 目端も口の端も吊り上ったその笑顔は、まさしく肉食獣の笑みである。上条は本能的にこの女には逆らえないと理解した。
(けど… 暗部の一員!? そ、それは嫌だッ!! 上条さんは気楽な一般学生で居たいのに…!)
 やはり、己の分をわきまえず、こんな美人をナンパしたのが間違いだったのか… 明日から夏休みだからといって、浮かれた自分が悪かったのか…
「あ、あのー… 質問とかは…?」
「あと5秒ー、ごー、よーん、さーん……」
「うわぁぁ!! な、なります! 下僕になりますッ!! 犬とお呼びください、麦野さま!!」
 反射的に叫んで死ぬほど後悔したが、実際に死んでしまっては元の子も無い、と上条は無理やり納得することにした。
「そう… アタシは殺ると言ったら本気で殺すから。今から長い付き合いになるかもしれないんだし、よく覚えておいてね」
 満足そうにそう言うと、麦野はゆっくりと立ち上がった。
 上条は、かなり本気で引いたが、今は頷くしかない。
「絹旗ー、おっけーだってさ」
「…うげぇ、素直に超殺されていてくださいよ… 男を入れるとか、超面倒です…」
 麦野が隣室に声をかけると、先ほどチラリと顔を見せたフードの少女が、なにやら色々な機器を持って入ってきた。
「まぁ、麦野が良いって言うんなら、超従いますが… あー、絹旗最愛です。
 たった今から超クソッタレな毎日が始まりますが、運命だと思って、超諦めてください」
 ほとんど投げやりにそう言うと、絹旗はペンシル型の注射器を上条の右腕に当て、躊躇い無く注入スイッチを押した。
 プシュ、と軽い音がして、極微量の液体が上条の体内に入り込んだ。
「痛ッ! え、なんだよ、今の…?」
「専用のAIMにだけ反応するナノデバイスです。
 まぁ、主に所在地確認と超裏切り防止ですね。
 あと、『アイテム』専用の携帯端末と、偽の学生証が3つと偽造免許が1つ…
 あ、これはウチのメンバー超謹製のスタングレネードです。男の人なんで、数珠タイプにしときました。
 あと、20万ぐらい入っているマネーカードが5枚。使うときは、きっちり領収書貰って、あとで申告してくださいね。
 活動外で使ってもかまいませんが、超節度は持ってください。それと…」
「あのー、まずは縄を解いてもらえないでしょうか…?」
 機関銃のように説明する絹旗を遮って上条が懇願する。流石に体勢がきつい。
「…らしいですけど、麦野?」
「しばらくそのまま」
「だ、そうです。超ご愁傷様です。最後に、この携帯端末に『アイテム』の組織名簿が載っています。
 しかし、閲覧したら超記録が残るので、超注意してください。超安易に開くなっってことです。
 では、他に質問は? 無いですね。それでは、私は上に結果の報告と調整を行ってきますが… 麦野?」
「基本的に、立ち位置はアタシの盾、場合によっては滝壺の盾。左手については当然秘密にしといて」
「…超了解です。やれやれ、あの喧嘩の映像から加工が必要みたいですね… それじゃ、私は超失礼します、あとはごゆっくり…」
 言うだけ言うと、絹旗は部屋から出て行った。さらに、玄関らしきドアの音も聞こえたところから、完全に屋外に出て行ったようだ。




.

「さて、と…」
 絹旗が完全に出て行ったことを確認して、麦野はベッドの端に腰掛けて上条の顔を覗きこんだ。
「混乱してる?」
「当たり前ッス」
 若干拗ね気味に上条が答える。
「クスクス、ごめんなさい。でも、こうでもしないと、上条クンを処理しなきゃいけなかったんだから、まずはアタシに声を掛けた不幸を呪いなさい」
「はぁ、不幸だ……」
 うなだれる上条を見て、麦野の笑みが悪戯っぽいものに変わる。
「ねぇ、『アイテム』に入るのはそんなに嫌?」
「そりゃ… 暗部って噂にしか聞いたことないですけど… 
 ……人殺しとかする、裏の掃除屋でしょ?」
 かなり躊躇いながら上条が言う。しかし、そこは最も気がかりな点だ。
「結果として人殺しになることはもちろんあるわ。でなきゃ、こっちがやられちゃうからね。けど、上条クンには人殺しはさせないわよ」
 そう言うと、麦野はさらに顔を上条に近づけた。
「上条クンさぁ… アタシのマジカレになんない?」
「は…?」
 この流れからどうしてその発言なのか? 上条の頭にハテナマークが無数に飛び交う。
「あの… 上条さんは基本馬鹿なんですけど… どういうことでせうか?」
「何言ってんの、そのままの意味じゃん。アタシと付き合わないか、ってこと。あれ、脈無し?」
「い、いや、突然すぎてビックリっつーか、この状況で理解しろっていうのが無理っつーか…」
 混乱する思考をなんとか整理しようとする。
 目の前に居る女性は、今日ナンパした美人さん。
 しかし、美人さんはただの美人さんではなく、学園都市暗部に所属する危険な美人さんだった。
 それにほいほい声をかけて、しかも良いとこ見せようとした自分は、一転、危険な契約を交わしてしまった。
 そして、抵抗できない状態で『付き合わない?』と切り出される。
 …どう考えても美人局である。
「あの… なんで俺なんスか…?」
 いろんな意味を込めてそう問う。
「ふむ… 『丁度良い』とか、『便利そう』とか、そんな感じかしら?
 キミの左手の能力は盾に丁度良いし、今日のデートを見る限り、気も利くし便利そうだから」
 身も蓋も無いとはこの事である。

「丁度良い便利キャラっすか、はは…」
「意外と重要な要素だと思うけどね。それに…」
 麦野が笑う。
「一回のデートでアタシを落としたつもり? こっちは続きもオッケーって言ってるのに、据え膳食わないの?」
 そう言うと、麦野は片手を伸ばして上条の腹筋を撫ぜ始めた。
「鍛えてるわね… ボクシング部?」
「いや、違います… ほとんど独学と、あとは友達からたまにコーチを受けて…」
「へぇ、朝ランとかしてるの?」
「は、はい、毎朝10km走ってます。 …あの、麦野さん?」
 上条の声が震える。腹部を撫ぜていた麦野の手が、どんどんと下に降りて行ったからだ。
「アタシ、筋肉質な子って、好きよ… 逆に嫌いなのは、ホストタイプや、もやしタイプ。やっぱり男には力強さを求めたいわね…」
 言いつつ、麦野の手がとうとう上条の股間に触れる。
「うぁ…」
「あは、固くなってんじゃん」
 弟の悪戯を見つけた姉のように、麦野が楽しそうに笑う。
 麦野の手が、股間の形を確かめるように大胆に動く。
「む、麦野さん、ソレ以上は…ッ!!」
「アタシの男になるんだったら、今すぐ『ソレ以上』もできるんだけどなー…」
 上条の喉が派手に「ゴクリ」と音を立てる。
 その誘いは明らかに罠だ。完全な色仕掛けだ。
 だが、思春期真っ盛りの上条少年が、その誘惑に耐え切れるはずも無かった。
「なりますッ!! 盾でも何でもいいので、付き合ってくださいッ!!」
 上条、魂の叫びである。
 その叫びに、麦野は、にたぁ、と笑うと、股間を撫ぜ回していた手を突然離した。
「えっ…?」
 不安そうに声を上げる上条を見下ろすと、麦野は静かに顔を寄せて、上条と唇を合わせた。
「ん…」
 薬を飲ませた不意打ちのファーストキスと違って、それは、長く、静かな、情熱の篭ったキスだった。
 上条の唇を丹念に愛撫し、おずおずと差し出された舌を唇ではむ。
 そっと両手で上条の頭を挟むと、大量の唾液を口腔内に流し込む。
 それは恐ろしく興奮する味だ。
「じゅぷ… ぢゅ……!」
 散々舌を絡めてから、麦野がゆっくりと顔を引き離すと、2人の唇の間に、銀色の糸が伸びた。
「すげぇ……」
 夢見心地、といった風に上条が呟く。
「言っとくけど、アタシは結構キミに本気なんだ。
 上条クンが今日みたいにアタシを守ってくれるなら、アタシは絶対に貴方を裏切らない…」
 麦野が着ている服を脱ぎ捨てる。
 形の良い豊乳があらわになり、上条の眼が釘付けになる。
「アタシの男になるんだから、この身体は上条クンのモノよ。だから、失望させるような事はしないでね」
 手を伸ばして、上条のボクサーパンツを一気に抜き取る。
 散々お預けを食らっていた上条のペニスが天に向かって反り上がる。
「ふふ、おっきいじゃん…」
 邪魔にならないように片手で髪をかき上げて、棒が暴れないように片手でそっと包んで、麦野はペニスの先端を躊躇なく咥えこんだ。
「嘘ッ! マジで!!」
 上条にとってはフェラチオ初体験だ。
 生暖かい口腔の感触に、思わず暴発しそうになるのを必死に堪える。
 じゅぶ、じゅぷ、ぢゅ……
 唾液を丹念にまぶすように、ペニス全体を舐めまわす。
 時折、顔を上げて上条の表情を確認すると、クスッ、と悪戯っぽく笑みを浮かべる。
「ん… じゃ、こっちも準備してもらおうかな…」
 いったん身体を離すと、麦野はショーツをスルスルと脱いで、ペニスを掴んだまま上条の身体に跨った。
 いわゆる、シックスナインの体勢だ。
「濡らし方、わかる?」
「は、はい!」
 目の前に突き出された淫靡な器官に、上条は迷うことなくむしゃぶりついた。
「ン… もっと優しく… そう、良いわよ…」
 手コキで暴発しないように刺激しながら、麦野が上手く腰を動かして上条を誘導する。
(ふふ、ホント、犬っころみたいねぇ…)
 経験的に、男はクンニを嫌がるものだ。
 そういう状況に麦野が追い込んだにしても、上条の一生懸命な奉仕は心地良いものだった…




.

「…もう良いわよ」
 そろそろ上条の顎が疲れ始めたとき、麦野はそう言って体勢を入れ替えた。
 上条に正対して馬乗りになる形… つまりは騎乗位だ。
「入れるわ」
「…はい」
 短い応答の後、麦野は腰を屈めて上条のペニスをヴァギナに飲み込んだ。
 ズブ、ズブ、と卑猥な音を立てて上条のペニスが麦野の腟内に消えていく。
 麦野の太ももが上条の身体に触れ、互いの陰毛が触れ合うと、コツン、という感触があって、ペニスの先端と子宮口が接触した。
「すご… キミのチンポ、アタシにぴったりじゃん……」
 流石に余裕が無くなってきたのか、粗く息を吐きながら麦野が言う。
 相当に感じている様子だが、それは上条も同じだ。
「なんだコレ… 気持ちよすぎる……ッ!」
(ナカが… すげぇ温けぇ… チンポの先が融けたみたいだ…)
 麦野の膣壁は、例えるならば肉のヤスリだ。
 上条のペニスをあらゆる方向から削り、刺激し、絞り上げている。入れた瞬間に射精しなかったのが奇跡だ。
 だから、こういうことをされたら耐えられなくなる。
「動くよ… 遠慮なく腟内でイッていいから…」
 麦野が腰を前後に動かす。
 男にとって、騎乗位ではコレをやられるのが一番効く。
 肉ヤスリがペニス全体を擦りあげて、しかも軽いピストン運動も入るのだ。
 当然、上条は我慢できなかった。
「うっ、駄目だ! 我慢できねぇ!!」
 最後の理性で麦野から逃れようともがくが、逆に麦野にがっちり抱きつかれて小刻みに腰を動かされてしまう。
「……出るッ」
 麦野の最奥で、上条は盛大に射精した。
 それは、上条がこれまで体験したことの無いような、長く、激しい射精だった。ペニスの先端が爆発したような感触だ。
 麦野も、吐き出された精液の量がわかったのか、驚いたように目を丸くする。
「うわー、すっごい出てる… なぁにぃ、溜まってたの…?」
「まさか… 麦野さんだから…」
 本心から上条が言う。こんな気持ちのいい膣壁なら、出ないほうがおかしい。
「ありがと、これで一応、恋人同士ね」
「一応、すか…」
「ま、会って12時間しか経ってないしねぇ…」
 そういうと、麦野は精液がベッドにこぼれないように、ハンカチで秘所を押さえて立ち上がった。ついでに、上条を縛っていた縄を能力で焼き切る。
「シャワー浴びてくるから、上条クンは隣の部屋の冷蔵庫から何かてきとーに料理作って。簡単なもので良いから」
 そう言われて、夕食がまだだったことを思い出す。
「…ヨロシク」
 色々な意味を込めて、麦野が言った。




.

 夕食の後は第2ラウンドだった。
「あっ、あっ、あっ、そこッ!! 突いてッ、もっとッ!!」
 四つん這いになった麦野をバックからがんがん突く。
  パンッ、パンッ、パンッ!!
 上条の下腹部が、麦野の形の良いお尻にぶつかり、小気味の良い音を立てる。
 そのたびに、かなり大きな麦野の豊乳がぶるんぶるんと揺れた。
「はぁ、はぁ、はぁ… くっ、締まる…ッ!!」
 手形が付く位、麦野の腰を両手で掴んで、激しく腰を打ち付ける。
 麦野の膣の締まりは相当で、ペニスを引き摺り出すにも軽い苦労が必要となる。
「良いよ、上条クン、気持ち良い… ホントに2回目?」
 夕食の席で確認したが、上条は童貞ではなかった。
 しかし、それも単に「1回目は、なんかノリで…」経験しただけで、テクニックや耐性はゼロに近い。
「ホントに麦野さんが2回目ですッ! こっちは、必死です…ッ!!」
 パン、パン、パンッ…!
 リズムカルな音が段々とペースを上げる。
 上条の限界を感じた麦野は、顔を後ろに向けると、「いいよッ、腟内でッ!」と短く言った。
「だ、出しますッ!!」
 これが最後と、思いっきり腰を前に突き出して、上条はまたしても麦野の最奥に射精した。
「すっげぇ気持ち良い… 腟内射精って、すっげぇ気持ち良い……」
 だらしない表情で上条が呟く。よくよく見れば、口の端によだれも見える。
「あ、今抜かないでね…」
 こちらも肩で息をしていた麦野が、繋がったまま器用に身体を半回転させる。
 繋がったまま正常位に移行すると、麦野は微笑んで両手を上条に向けた。
「だっこ」
「…あぁ」
 意味を理解した上条が、抜けないように注意しながら麦野の背中に両手を差し込み、ゆっくりと麦野の状態を起こす。
「あん… 深いぃ……ッ」
 体勢的にさらに最奥を突かれるカタチになって、麦野が桃色の吐息を漏らす。
 2発目を出したばかりだが、上条の分身はまだまだ元気だ。



.

「何回出すつもり、ねぇ?」
「んなこと言ったって、麦野さんのナカ、すっげぇ気持ちいいし…」
 2発出した事で少しは余裕が出来たのか、上条が口を尖らせて言う。
「…ね、キスしてよ」
 麦野がねだると、上条はややぎこちなく麦野と口唇を合わせた。
「ン…… ギュっとして…」
 言われるがままに、背中に回した手に力を込める。勃起した乳首が胸板にあたり、コリコリとして気持ち良い。
「力強くて良いわ… もっと……」
 上条がさらに力を込めると、麦野はその長い両脚を上条の腰に絡め、腹筋を小刻みに収縮させた。
「うっそ…! マジでッ!?」
 上条が「信じられない」といった表情で言う。
 麦野の身体は全く動いていないが、腟内だけは別の生き物のように、うねうね、と締緩を繰り返し始めたのだ。
「どうじゃー、気持ちいいだろー」
 してやったりな表情で麦野が言う。上条は白旗を揚げるように天を仰いだ。
「…世の中には、こんな気持ち良いコトがあるんだなぁ… と上条さんはしみじみと感じていますです…」
「おっさんくさ… 若いんだから、もっとがっつきなさいよ」
 麦野が不満げに言うと、上条は「それなら…!」と麦野を押し倒す。
 内心、「コレ、許してくれるかなー」と思いつつも、麦野の身体を180度折り曲げ、いわゆるまんぐり返しの体勢を取らせる。
「ふーん…」
 それでも余裕綽々な態度の麦野に、上条の男のプライドが疼く。
 さっきのバックも麦野にリードされっぱなしだったのだ。そろそろリードを奪いたい。
「思いっきり行きますッ!!」
「どうぞ」
 上条が、すぅーーっ、と大きく息を吸う。ボクサーだけあって、その肺活量は相当なものだ。
 ずずっ、とゆっくりペニスをカリまで引き抜くと、確認するように麦野と視線を合わせ…
 ズンッ!
 思いっきり麦野を貫いた。
「はぁぁぁぁぁッッ!!」
 凄まじい衝撃に、たまらず麦野のおとがいが反る。
 軽く達したようで、膣壁が、ぎゅぅ、と締まる。
 それを敏感に感じ取った上条は、イカせた喜びに染まり、さらに乱暴に腰を打ち付けた。
 バンッ!! バンッ!! バンッ!!
「あッ!! あッ!! あッ!! あぁんッ!!」
 麦野の身体がベッドの上で激しくバウンドする。本能的な恐怖を感じたのか、両手がひき千切るようにシーツを掴んだ。
「…………ッ!!」
 動く上条も必死だ。無酸素運動のラッシュは練習でも本番でもやったことがあるが、これはそれ以上にキツイ。
 下半身の快感など感じる暇は無い。ただ、衝撃と悦楽にゆがむ麦野の表情と艶声を糧に、激しく腰を動かす。
「やっ、すごっ、はげしぃッ!! すごいよ、上条クン!! すごいッ!!」
 麦野にしても、上条がここまでやるのは嬉しい誤算だ。
 テクニックなど欠片も無いが、勢いと、なによりスタミナが素晴らしい。こんなに力強く、激しく、長く動いてくれる男はなかなか居ない。
「イク、イク… イクよ… イッちゃう!!」
「お、俺も… もう、出ますッ!!」
 お互いに絶頂を確認し合うと、上条は最後の力を振り絞って麦野の最奥にペニスを打ちつけた。
 その瞬間、本日3回目、抜かずの2発目が麦野の子宮を直撃した。
「ーーーーーッ、あああぁぁぁぁッ!!」
 まるで呼吸の仕方を忘れたかのように、麦野がぎこちなく肺腑の中身を吐き出す。
 それでも、両脚はいつの間にか上条の腰に絡められていた。
「うわ… チンポの先が、ビクビク震えて…!」
(イッた後のマンコって、こんなに気持ちいいんだ…)
 ただでさえ敏感な射精直後の亀頭が、絶頂の痙攣で揺れる膣に優しく翻弄される。
 この快感は一生忘れない。上条は根拠も無くそう確信した。
「ん…」
 麦野が軽く目を閉じると、既に意を得た上条は、すぐに口唇を寄せて麦野のキスの雨を降らせた。
「ん~~♪」
 その行為に満足したのか、麦野がにっこりと笑った。
 それは、上条は今日初めて見る事の出来た、麦野の素の笑顔であった。




.

「はぁ~~~……」
 流石に限界、という風に麦野がバタリと大の字に寝そべる。
 弾みで、ずるり、と上条のペニスが引き抜かれ、麦野のヴァギナから、都合2回の精液がごぽごぽと溢れだした。
「いっぱい出したわね… 妊娠するかも……」
 ボソッと呟くと、同じく肩で息をしていた上条が真顔で言う。
「責任、取る覚悟は出来てるよ」
「ぶっ!」
 その台詞に、麦野が「ぎゃはははっ!」とはしたなく笑う。
 よっぽどおかしかったのか、腹を抱えて悶絶し、痙攣するたびにゴポゴポと新しい精液が溢れる。
「なんスか、そんなにおかしいですか?」
 上条が拗ねて口を尖らせる。
 その様子に、麦野はさらに爆笑したが、上条が本気でいじけそうになっているのを見て、「馬鹿ね…」と上条の額にデコピンを打った。
「いてっ」
「オンナがナカで良い、って言ったんだ。きちんと計算してるに決まってるでしょ。ま、逆の計算もあるかもだけど、信じなさい」
 そう言うと、麦野は自分の横をぽんぽん叩いて、「うで枕」と言った。
 上条が仰向けになり左腕を横に伸ばすと、麦野が嬉しそうに腕の上に頭を置いた。
「えっと… もしかして今日はこのまま…?」
「いえーす、今からシャワー浴びるのもタルイでしょ? とりあえず、今日はおやすみなさい…」
 そう言うと、麦野はすやすやと寝息を立てて眠ってしまった。
 動こうにも動けなくなった上条は、翌朝痺れて使いものにならない左手を見つめて呟いた。
「嬉しいけど、不幸だ……」
 夜が、ようやく更けようとしていた……




.

 翌朝、上条は腕の痺れと大きな物音で目を覚ました。
 隣で寝ていたはずの麦野は、既に起きたのか居なかった。
「う… うぁー、やっぱ痺れてら… う~ん、目覚めがやけに爽快… って、あんないい思いをしたんだから当然か…」
 昨日のセックスは、思い出すだけで勃起しそうになるほど強烈だった。
 しかも、昨日の麦野の言葉通りなら、自分が頑張れば、あの身体をいくらでも味わうことが出来るのだ。
 上条は顔が自然とにやけるのを感じた。
「暗部だろーが何だろーが、上条さんはやってやりますよ! っと、しかし、そろそろ服が欲しいな…」
 今の上条は丸裸だ。とりあえず、脱ぎ捨ててあったボクサーパンツを履くと、隣室のドアが開いた。
「あ、麦野さん…?」
「超残念ですが、違います。ていうか、超どいてください。タンスを入れますので」
 その声と共に入ってきたのは、妙に見覚えのあるタンスだった。そう、あれはまるで…
「……俺の部屋のタンスじゃねーかッ!!」
「はい? 何、超当たり前のことを言ってるですか?
 こちとら、麦野にアサイチで叩き起こされて気が立ってるんです。
 手伝う気が無いのなら、部屋の隅でぶるぶる震えていたください」
 タンスが完全に部屋に入ると、それを両手で支えている絹旗が見えた。
 大人の身の丈はあるタンスを、ローティーンの少女が一人で抱える姿は、ひどくシュールだ。
「よっこいしょ」
 全く息を乱すことなく、絹旗はタンスを部屋の隅に置いた。
「タンスの場所は超ココでいいですか?」
「は…? いや、何で上条さんに聞くのでせう?」
「何でって… あぁ、なるほど… それじゃ、勝手にレイアウトを決めますね」
 そう言うと、絹旗はどんどん家具を部屋に持ち込んだ。
 参考書や漫画入りの本棚。布団に包まれた大量の衣類。ラジカセ・テレビ・他こまごました小物が入ったままのメタルラック…
 それらがどんどん運び込まれ、殺風景だった部屋が一気に男子学生の部屋になった。
「おい! なんで俺の部屋の荷物がココに運ばれてるんだよッ!」
 流石にたまりかねて上条が詰問すると、絹旗は心底、哀れな者を見る目つきで言った。
「麦野は… 見た目どおり気難しいオンナなんで、超努力してご機嫌をとってください。
 1に麦野、2に麦野、2,4がなくて超麦野。それぐらいの扱いで超お願いします」
「いや、答えになってねーし…」
「あぁ、終わったわね」
 上条が唖然としてると、麦野が姿を現した。
 昨日の乱れた姿はどこへやら。既にばっちりメイクも決めて、見事なまでの美人さんである。
「食器とか、ここと重複する物は処分したわ。冷蔵庫は迷ったけど、2ドアだったから要らないわよね。
 あと、ベッドはそれ使った。整髪料とか、そこらへんの消耗品は今日買いに行きましょ… なによ、なんで変な顔してるの?」
 麦野が訝しげに2人の表情を伺う。
 上条と絹旗はお互いに目配せをし合うが、絹旗が黙って首を切るジェスチャーをしたので、上条は恐る恐る尋ねた。
「あのぅ… もしかして、上条さんはココに住むんでせうか?」
「はぁ? なに寝ぼけた事言ってんの?」
 麦野の台詞に一縷の希望を見出す上条、しかし…
「そんなの当たり前でしょ? アンタは私の盾なんだから、四六時中一緒に付いてもらわなきゃ困るじゃない」
「ま、マジで…ッ!?」
 上条の顔面が蒼白になる。いくらなんでも行動が突飛で、しかも早すぎる。
「ま、とりあえず、タンスから服を出して、シャワー浴びてきなさい」
 右手の親指を、クイ、とドアの外に向けて麦野が言う。
 片目を瞑ってにやけている所を見ると、上条の反応は期待通りのものだったようだ。
「ま、これから超よろしくお願いします。
 …それと、超ご愁傷様です」
 絹旗がポンと上条の肩を叩くと、それを合図に上条は崩れ落ちて呟いた。
「不幸だ……」




.

以上デース。

改行はスンマセン。
読み易く改行する技術が身に付いてないのです。

とりあえず、1週間で書いた分を月曜夜に投下します。
筆が乗れば、キリがいいところで投下します。

それでは、もし読者の方がいらっしゃったら、また次週…

あ、そういえば『幻想殺し』左手の件ですが、
特に深い意味は無く、
「ボクシングのパリィングの技術使うんなら、左手の方が便利だよなぁ…」
という、作者の下種な調整の結果です。
決して、右手と左手を間違ったわけではありません。
ええ、ありませんとも。

短いですが、キリの良い所まで書けたので、
本日23時より投下します。
今回もエロありますので、18歳未満の方はタブをお閉じください。

また、居ないとは思いますが、上琴至上主義の方々には読了をおすすめしません。
ご注意申し上げます。

それじゃ投下します。
本日は14レスほどです。

「補習~~~ッ?」

 絹旗も交えた朝食の席で、麦野が心底呆れた声を上げた。

「…いつ?」
「えっと、今日の10時から…」
「サボれ」
 発端は、朝食後にショッピングに行く気満々だった麦野に、上条が勇気を振り絞って「あのぅ… 上条さんは今日から補習なんですが…」と訴えたことだ。
「だいたい、上条クンの学校って、特にレベルが高いわけじゃないんでしょ? なんで補習なんて受ける必要があるのよ?」
「いや、単純に期末考査で赤点を取ったからなんですが…」

 麦野が半目になり、しらー、とした雰囲気が流れる。
 ほとんどの場合、能力のレベルと学力は正比例する。
 こう見えても、麦野沈利は頭に超がつくほどの秀才だし、隣の絹旗も天才少女と言っても過言ではない。
 しかし、だからこそ学力底辺の事情は、感覚的に理解できないのだ。

「…サボれ」

 再び麦野が静かに、しかし、迫力を込めて言う。
 思わず従ってしまいたくなりそうな上条だが、脳裏に浮かぶのは、担任である幼女教師の泣き顔だ。

「そ、それは…」
「麦野、それは超不可能かもしれません」

 シリアルをパクついていた絹旗が、面倒そうに言った。
「…なんで?」
「ツンツン頭の学校を調べたときにわかったことですが、彼の担任がかなりの難物です。

 警備員(アンチスキル)や統括理事会とも深いつながりがありますし、『幻想殺し』のことも知っています。
 さらに、非常に面倒なことに熱血教師です。私生活を劇的に変化させると、痛い腹を探られる可能性があります」

「ちっ… マジ?」

 麦野がジトーッと上条を睨む。
 上条は、まさかのフォローに驚きつつ、あわてて頷いた。

「ま、マジですッ!! 子萌先生は超過保護で、理由も無く休んだ生徒には家庭訪問するんスよ!」

 嘘ではない。家出少女をわざわざ見つけて、自宅で保護するほどの博愛精神溢れる教師なのだ。

「うぜー…」

 麦野の眉根がどんどんと寄り上がる。
 危険を察した絹旗が、麦野に見えないように高速ウィンクを上条に送る。

(超なんとかしてフォローしてくださいッ!)
(そ、そんな無茶な!)

 だが、上条もレベル5の怒りなど買いたくない。
 必死に頭を巡らせてなんとか言葉をひねり出す。

「ほ、補習は昼過ぎに終わりますから、そこから第7学区で落ち合いません? 13時には必ず…」

 必死の思いでそう言うと、麦野はもう一度大きく舌打ちをして、頭をガシガシと掻いた。

「…それで良いわ。ただし、次に赤点とったら容赦しねぇぞ…!」
 ドスが効いた声で通告され、上条は冷や汗だらだらで何度も頷いた。



.

「…であるからでしてー。む、上条ちゃん、ちゃんと聞いてますか?

 先生の話をきちんと聞かないと、すけすけみるみるの追加ですよー?
 まったく集中できない補習授業をなんとか切り抜け、そそくさと教室を出ようとした上条の背中に、とある生徒の一人が声を掛けた。

「かーみやーん、今朝の騒動はどういうことよ?」
「ああ、土御門か…」

 本心は第23学区にダッシュしたいところではあるが、ここはきっちり対応しておかなければならない。
 声を掛けた生徒、土御門元春は上条が住んでいたアパートの住民、元お隣さんなのだ。

「いやー、いきなりちっこい中学生がかみやんの部屋のドアぶち抜いて、次々と家具を運び出したときはびっくりしたぜい。

 まさしくエクストリーム引越し。つーか、なんで引越しなんかしたん?」
 土御門の眼が、サングラスの奥でキラリと光る。

「いや、親が勝手に新しい部屋見つけてきてさぁ。ホントは前から決まってたらしいけど、連絡きたのが昨日なんだよ。騒動かけてわりぃな」

 片目を瞑って軽く拝む動作をする。
 もちろん、本当のことなど言えるはずも無い。

「ふーん…」

 サングラスに隠れて表情は見えないが、口調は何でもなさそうに土御門が言う。

「じゃ、学校にはもう連絡いってるん?」
「…! いや、新学期に連絡するよ」

 内心、冷や汗をかく。
 担任教師が今の家に襲来するなど、考えただけでも恐ろしい。

「さよか。まぁ、筋トレはさぼんなよ。俺たちゃ、基礎体力が命なんだから…」

 何を隠そう、この土御門が上条の格闘の師匠だ。
 ひょんなことからスキルアウトに襲われていた上条を助けて以来、土御門は親身になって上条に格闘術を教えているのだ。

「おう、しっかり鍛えとくよ。それじゃ、また今度な!」

 上条が片手を軽く上げ教室を出る。
 それを最後まで見届けた土御門は、おもむろに携帯端末を取り出すと、少し苛々した動作で画面を叩き始めた…



.

「そっか… 学校にはどう連絡をしたらいいんだ…?」

 新たな問題にげんなりしつつも、上条は麦野との待ち合わせ場所に急いだ。
 現在時刻は12時30分で、だいぶ余裕があるにはあるのだが、できるだけ『あの麦野』は待たせたくない。

「ちっくしょー、もっと学校に近い所を指定しときゃ良かったぜ…」

 後悔しながらも足を速める上条に、またしても、そして今度は黄色い声が背中から掛かった。

「ちょっと! アンタよ、アンタッ!! 待ちなさいってば!」

 その声に、上条がギクリと背筋を伸ばす。この状況では絶対に聞きたくない声だった。

「とうとう見つけたわ… まだアンタとの勝負はついてないわよッ!!」
「おめーかよ、ビリビリ中学生……」

 上条に向かって、ずんずん、歩いてくるのは、名門・常盤台中学の制服に身を包んだ、茶髪の女子中学生だった。

「ビリビリじゃない! 私の名前は御坂美琴! いったい、いつになったら覚えるのよ!」
「いや、だって第一印象がそれだし…」
「クッ… ムカつく…ッ!」

 この少女との不毛な関係は、少女が不良学生に絡まれているのを、よせばいいのに上条が助けようとしたことから始まった。
 絡まれた少女を連れてとっとと逃げようとした上条だったが、その時に発した「こんなガキに盛るなよ」という台詞が、いたく御坂美琴のプライドを傷つけたらしい。

「ここで会ったが百年目ッ!! 今日こそ決着をつけてあげるわ! 遺産分配やっとけやゴラァ!!」

 怒りのあまりか、茶髪の先端から、バチバチ、と火花が散る。
 御坂美琴、人呼んで『常盤台の超電磁砲(レールガン)』。
 麦野沈利と同じく、学園都市で7人しか居ない、能力者の頂点であるレベル5の一人だ。

「決着って… なに馬鹿なこと言ってんだよ、おめーは… 」

 上条がげんなりした表情で言う。
 初対面の対応は、確かにマズッた自覚はあるが、だからといって、ここまで難癖をつけられると流石に辟易する。

「そもそも、レベル0の上条さんがレベル5に敵うわけないでしょ? ハイハイ、俺の負け、俺の負け。納得したならどっか行ってくれ、お前にかまってる時間ねぇんだよ」

「ふ・ざ・け・ん・な・ぁ!!」

 御坂美琴の身体から電撃が迸り、小規模な雷となって上条を襲う。

「……ッ!!」

 常人ではよける事など出来ない攻撃だ。
 しかし、ある程度予期していたこと、それと、毎日の研鑽の成果により、が、ほぼ無意識に反射防御が行われた。

「…ッと!! あぶねぇ…」

 野球のキャッチボールのように、上条は左手で雷を受け流すようにキャッチする。
 その瞬間、雷は霞のように宙に消え去った。

「…まだよ!」

 防がれたとわかって、御坂美琴がさらにボルテージを高める。
 放電の余波で街路灯の電球が短絡するが、そんなのはお構いなしだ。
 さらに高出力の雷を上条に向かって放射する!

「チッ!!」

 舌打ちと共に上条は左半身になり、左手を肩まで軽く上げる。
 さらに集中力を励起させ、襲い来る電撃を悉く左手で打ち落とす。

「おおぉぉ!!」

 超高速で迫る電撃をパリィング。
 それは既に常人の域を超えた技であった。




.

 上条当麻は基本的に無力なレベル0である。
 人口230万人のほとんどが学生である学園都市では、ややもすれば若者が暴走しやすい土壌であるとも言える。
 事実、武装集団化した無能力者の集まりである『スキルアウト』や、心無い能力者によって行われる『無能力者狩り』など、学生に端を発する問題はいくらでも存在する。
 上条も、『無能力者狩り』の被害にあった一人だ。
 当時の上条は中学2年生。友達の友達の、さらに友達が開いた集会に興味本位で参加し、そこで『無能力者狩り』に襲われた。
 そのときは、前述の土御門元春の活躍で難を逃れた上条だったが、生まれて初めての生命の危機に、何かのスイッチが入ってしまった。
 以来、上条は自身を鍛えることにした。
 土御門からボクシングの基礎を教わり、毎日の少なくない時間を鍛錬に使った。
 スキルアウトとも繋がりを持った。構成員とはならなかったが、それでも組織間の小競り合いに巻き込まれることはそれなりにあり、いくつかの鉄火場も潜り抜けた。
 彼の能力者に対する防御技法は、そういった日常によって培われ、洗練されていったのだ。



.

「ちくしょう……」

 当たれば昏倒する電撃をすべて防がれ、御坂美琴は悔しさのあまり歯軋りをする。
 大人げないことをしているのは分かっている。
 だが、レベル5の矜持と、本人にも理解不能のもやもやとした感情が、彼女を実力行使に駆り立てる。
 それは、もはやある種の脅迫観念だ。

「なんでアンタがレベル0なのよ…ッ!!」
「んなの俺が知るかよッ!! テメェの事情ばっか押し付けやがって…」

 上条も上条で、相手のことを単なる『無能力者狩り』としか認識していない。
 相手が女子中学生ではなかったら、問答無用で殴り倒しているところだ。

「終いにゃ、本気で怒るぞ…ッ!!」
「今までは本気じゃなかったってワケ!? 人を舐めるのも大概にしなさいよ!」

 ディスコミここに極まりである。

「舐めてるのはテメェだろうが…!!」

 上条の声に本気でドスが効きはじめる。
 ビンタぐらいなら良いか… 右の拳を軽く開くと…

「かーみじょークン、彼女を待たせて、他の女となに乳繰りあってるのかにゃー?」
 今、一番聞きたく無い声が上条の耳に届いた。



.

「……ィェ」

 消え入りそうな声で意味不明の単語を呟くと、上条は油の切れたロボットの様に、ギギギ、と首を声のほうに向けた。
 濃いブルーのヘソ出しタンクトップに薄いクリーム色のカーディガン、美脚が眩しいホットパンツに少々派手な薄紅色のサイハイソックス、日差しを意識しての鍔の広いキャップにレイバンのサングラス。
 全身から美人オーラを放つ麦野沈利がそこに立っていた。

「聞こえてる、上条クン? あと、今何時かわかってる?」
 それまで操作していたのか、携帯端末をポケットにしまいながら麦野が言う。
 問われた上条は、慌てて腕時計の時刻を確認する。
 …12時55分。待ち合わせ時刻ではないが、上条の背筋に冷や汗が流れる。

「デートの一時間前までに… とか無茶は言わないけどさぁ。朝はアタシが折れたんだから、出来る限り早く来るのが礼儀ってやつじゃない?」

 口調は意外に優しげであるが、眼が完全に笑っていない。

「す、すいません! 変な中学生に絡まれちまって…」
「へ、変とは何よッ!!」

 置いてけぼりを食らった御坂美琴が叫ぶが、麦野はそれにとりあわず、片手を、にゅ、と伸ばして上条の耳をつねりあげた。

「いたたたたたたッ!!」
「そんなの、アンタが構うからだろうがッ! 彼女待たせてる時は! たとえ世界の軍隊に追われていても振り切って来なさいッ!! 良いわねッ!!」

 言い放って、抓った手離すと、返す手で思いっきり上条の頬に平手打ちを食らわす。

「ぐはっ!!」

 ぱしーーーん!! と非常に良い音がして、上条がキリキリと舞い崩れる。
 目から火花が散り、朦朧とした意識の中で、なんとか「すみませんでした…!」とだけ声を絞り出した。




.

「な、な、な……」

 予想外の展開に御坂美琴が絶句していると、麦野が、ジロリ、と睨みつけてきた。

「…ヒトの男に汚い唾つけないでくれる?」
「き、汚いですってッ!?」

 一瞬沈下したボルテージが瞬間的にマックス入る。
 だが、麦野はあくまで冷静に「ああ、そうだ」と答える。

「構ってもらいたいんなら、他に適当な男を見つけて頂戴。これは昨日から私のモノだから、今後、ちょっかい掛けたら承知しないから」

 静かに、しかし、はっきりと宣言する。

「…うぅ、あー、麦野さん… 相手は中学生だし…」

 頭を振って上条が立ち上がる。中々にタフだ。

「中学生でもオンナはオンナよ。アンタも、もうこんな小娘に構うんじゃないわよ」
「黙って聞いてりゃ勝手なことを!!」

 怒りが再び頂点に達したのか、美琴の髪から火花が散る。
 が、麦野は「はぁ…」とため息をつくと、腕時計をみて「そろそろ来るかしら…?」と呟いた。
 その瞬間、

「風紀委員(ジャッジメント)ですのッ! って、あら、お姉さま…?」

 何も無い中空から、これも常盤台の制服を着たツインテールの少女が出現した。
 その腕には、有志によって構成される学園都市の治安部隊『風紀委員』の腕章が見える。

「く、黒子、何でここに…?」
「い、いえ… 一般人に能力を行使して暴れている能力者が居ると通報があったものですから…」

 ツインテールの少女が、かなりバツの悪い顔で言う。

「あ、通報者は私ね。そこの中学生がアタシの彼にこれでもかってぐらい雷飛ばしてたわ。とっとと連行してちょうだい」

 冷たくそう言って、自分は立ち上がった上条の腕に絡みつく。

「アタシら被害者だし、もう行っていいでしょ? 経緯が知りたきゃ、そこの短絡してない監視カメラのログを見て頂戴。…さ、上条クン、いこ」

 そう言って、麦野はまだ動きの固い上条をひっぱって歩き出した。
 その2人の背中に、御坂美琴は何か声を発しようとして、しかし、何を言えばいいのかわからず、片手を追うように前に突き出し、表情を歪ませ、ようやく「…待ってよ!」と声を絞りだした。

「か、彼女って、本当…?」

 泣きそうな声で上条に問う。
 しかし、上条がそれに答えるよりも早く、麦野がそれに反応した。

「ふふ…」

 明らかな勝者の笑みを見せると、麦野は素早く上条と口唇を重ねた。

「ん…ッ」

 唖然とする常盤台の2人を尻目に、くちゅくちゅ、と音がするぐらい情熱的にキスを交わす。
 悪趣味だなーとは思いつつも、後が怖いので上条も無言で応える。

「ぷはっ…!」

 ようやく口唇を離すと、麦野は完全に美琴から視線を外して、

「さようなら」

 と、言い放ち、今度こそ上条を引っ張って美琴の前から立ち去った。

「お、お姉さま…」

 流石に色々と察した黒子が、遠慮がちに美琴に声を掛ける。
 しかし、それが契機となってしまった。

「う… うぐ… うゎぁぁ… あああぁぁぁぁ…」

 おそらく、その時初めて自覚したであろう恋心に、そして破れた恋心に、御坂美琴は声を震わせて慟哭した……




.

「ぎゃはははっ、あの顔!! 見たぁ、上条クン!? 『え、嘘でしょ?』ってな感じでさぁ!!」
「いや、流石に趣味悪いですって…」

 上条が控え目に言うと、麦野はそれでも上機嫌に「いーんだよ!」とばっさり切り捨てた。
 2人が居るのは雑居ビルにあるカラオケの一室だ。
 あの後、すぐに麦野が「そこ、入るわよ」と言って、目に付いたカラオケボックスに上条を連れ込んだのだ。

「アイツあれだろ? 常盤台の超電磁砲だろ? はン、第三位があんな小娘だとは思わなかったわ。痛快だわー」

 どうも、麦野は御坂美琴に対して、なにやら鬱積した感情があったようだ。
 それが思わぬ形で解消されて、恐ろしくハイになっているらしい。

「あー、気分が良いわ。上条クン、アンタあの娘の恋心に気付いてなかったの?」
「いやぁ、全然… うぜぇ、としか思ってなかったし…」

 その答えがドツボに入ったのか、麦野はソファの上で、「うぜぇだって!? カワイソーッ!!」と笑い転げた。

「ヒッ、ヒッ……! あぁ、一ヶ月分ぐらい笑ったわ… アンタサイコー! どんだけアタシを楽しませてくれるのよ…!」

 そう言われても、自分がどんなファインプレイをしたか気付いていない上条は、ただ「はぁ…」と愛想笑いを浮かべた。

「ふぅ… ま、今日のペナルティはアレでチャラにしといたげるわ。ううん、むしろ大きなプラスポイントね… ね、ね。何かおねだりして良いよ?」

 本当に上機嫌らしく、麦野が上条にしなだれかかって甘い吐息をかける。
 今日の麦野はタンクトップだから、形の良い豊乳が、ぐにゃり、と上条の身体に押し付けられるのが、視覚的に大変よく分かる。

「え、おねだり…!?」
「なんでもいーぞー? ここ、カメラ無いみたいだし…」

 麦野がチラリと周囲を確認して言う。

(これは、あれだよな… 誘われてるよな…)

 ゴクリと上条が唾を飲み込んで麦野の服に手を掛けようとすると、突然麦野が、

「あ、でも本番は無しね。アタシ、今はピル持っていないし、服を汚したくないから」

 という言葉に、力を失う。
 だが、

「だ・か・ら、お口でシテあげる… 今日は特別、口の中に出して良いよ…」

 妖しく、扇情的に上唇をぺロリと舌で舐めると、麦野は躊躇わず上条のズボンのチャックを引き下げた。




.

 麦野の白く細い指が、社会の窓に進入したかと思うと、次の瞬間には上条のペニスが顔を覗かせた。

「わぉ、もうガチガチじゃん?」
「そりゃ、この状況で勃たない男はいないですよ」

 上条が興奮と期待とが入り混じった声で言う。

「そりゃそっか… 上条クンは楽にしててね……」

 そう言うと、麦野はペニスに顔を近づけて、大きく膨張した亀頭の先端を、チロ、と舌で舐めた。

「…ふふ」

 軽く笑って、さらに、チロチロ、と亀頭を小刻みに舐める。

「うぉ…」

 昨日の初フェラではいきなり咥えられた。
 あれもあれで強烈な快感だったが、こうやってチロチロ舐められるのもまた違った快感だ。

「チロ、チロ、チロ… ん、カウパー出てきた…」

 舐めると同時に竿をごしごし擦られると、鈴口から透明な液が絞りだされる。
 麦野はそれを舌ですくい上げるように舐めると、上条がよく見えるように、わざと、コクリ、と喉を動かして飲み込んだ。

「麦野、さん…ッ!」
「ククッ、期待してな」

 男だったら誰しも想像するであろう素晴らしい未来予測に、上条の興奮がさらに高まる。
「次はココ…」

 竿をしごく手の動きをいったん緩めると、麦野はペニスの根元の2つある袋のうち1つを口に含んだ。

「……嘘ッ!?」

 上条の頭が電撃が走ったように仰け反る。
 [田島「チ○コ破裂するっ!」]でも使った事の無い、未知未感の性感帯だ。
 そんな上条の反応に気を良くしたのか、麦野は口の中の大事な玉を、激しく、しかし慎重に舌の上で転がす。

「やべぇ… それ、本気でやばいッス……」

 全く耐性の無い上条が、即座にギブアップすると、麦野はあっさりと玉を口から吐き出して、

「それじゃ隣ね♪」

 もう片方の玉を咥えて転がした。

「――――ッ!!」

 最早、上条は言葉も出ない。
 しかし、ここで果てると麦野の身体に精液が掛かってしまう。
 それだけは避けたい一心で射精を我慢する。

(麦野さんは「服を汚したくない」って言ってた… だから、もしかしたら…)

 淡い期待を糧に、念仏を唱える勢いで下半身の快感に抗う。
 それは1つの拷問だった。



.

「……ぢゅぅぅぅぅぅ!!」

 麦野が玉袋に口をつけて、音を立てて激しく吸い上げる。
 狂ってしまいそうな快感に、上条は奥歯が鳴るほど歯を食いしばって耐えた。

「あは… 耐えてる上条クン、かっわいー。そうか、そうか… そんなにおねーさんの口の中に出したいか…」

 ペニスを弄る手はそのままに、悪戯っぽい笑みを浮かべて上条を仰ぎ見る。
 その上目遣いに心から屈服した上条は、

「出したいですッ!! 麦野さんの口の中に出したいですッ!!」

 と、プライドをかなぐり捨てて頼み込んだ。

「…そう、素直ね。素直な男の子は大好きよ。これからも素直で居てね…」

 自然な笑みでそう言うと、麦野は手早く長髪をゴムで後ろに束ね、両手で上条のペニスを捧げ持った。

「いいわ、たくさん口に出して… 飲んであげる…」

 そう言って、大きく口を開けて上条のペニスを飲み込む。
 深く、深く……
 顎が外れんばかりに大きく口を開いて、咽頭がえずくほどに喉の奥まで、
 とうとう、鼻先が上条の陰毛に触れる場所まで麦野はペニスを咥えこんだ。

「すげぇ…」

 快感よりも感動で上条が呟く。
 おそらく、今、麦野は呼吸もままならず、生理的な嘔吐感を強引に押さえつけているのだろう。
 その証拠に、麦野の眉根が苦しそうに震える。本当はペニスを吐き出して咳き込みたいに違いない。

「ぉぐ… ごっ… ぐぅ…」

 それなのに、麦野は上条の腰に両手を回すと、抱きしめるようにさらに顔を押し付けた…!
 上条のペニスの先端が、柔らかくて狭いナニカを突破する。

「もう無理だッ 射精します!!」

 既に我慢の限界を超えていた上条が、その刺激にとうとう屈服する。

 ドクッ! ドクッ! ドクッ!!

 耐えに耐えてられてきた精液の勢いは凄まじく、咽頭の壁に抵抗無くぶち当たったそれは、当たり前の様に鼻腔側に跳ね返って、麦野の双鼻口から精液が吹き出る。

「おごぉ… ごぐ… ぐ…」

 気道に入らないかと心配になるくらい、麦野が必死に精液を嚥下する。
 慌てて上条が腰を引こうとするが、腰に回された麦野の手がそれを許さない。

「麦野さん…ッ 離して!!」

 振りほどこうにも、腰に上手く力が入らない。
 結局、射精が完全におさまるのを確認して、麦野がゆっくりとペニスを吐き出し始める。
 いつの間にか額には玉のような大汗をかいており、それが麦野の苦しみを表していた。

「ありえねぇ… 凄すぎる…」

 もはや上条の口からは感嘆の単語しか出ない。
 麦野の唇が雁口まで後退する。

(ああ、ようやく終わる… いや、終わっちまう… 終わりだ…)

 と、上条が思った瞬間、

 「ぢゅるるるるるるッ!!」

 麦野が最後の力を振り絞って、尿道に残った精液を吸い上げた…!

「あ……ッ!! ああああぁぁぁぁぁ!!」

 不意打ちに特大の快感を叩き込まれて、上条が無意識に大音声で叫ぶ。
 まるで『おこり』のように上条の身体が、ビクッ、ビクッ、と痙攣する。

「ぢゅぅぅ… んぅ… ごく… ぷはっ、すううううううううぅぅぅううぅぅ……  はぁぁぁぁあああああああああ……」

 最後の一滴まできっちり飲み干して、麦野が深く深く深呼吸を行う。

 「はぁぁぁぁぁ… しんだーーーー……!!」

 そのまま、ぐたっ、と上条の身体に倒れこむと、緩慢な動作で紙ナプキンを手に取り、びぃぃぃ…! と鼻腔内の精液を吹き出した。

「うげぇ、血ぃ出てる… はぁ、錯乱したわー、やっぱこの技は封印だわー、リスクでかすぎ…」

 ひとしきりえずき、咳をし、呼吸を整えた麦野は、ぐったりとしてピクリとも動かない上条を見た。

「おーい、上条クン、生きてるー?」

 返事が無い。不審に思って顔を覗きこむと、
 …上条はこれ以上ないくらいのだらしない笑顔で失神していた。

「ぶっ!!」

 あまりの表情に思わず麦野が吹き出す。

「この子は、なんでこうもアタシのツボに入ることばっかりするのかしらねー。…本気になりそう」

 一瞬だけ、暗く冷たい表情を覗かせる。

「……なわけねぇよ、アタシがお前に本気になるか、ボケ…」

 誰に言うわけでもなく呟くと、麦野は頼んでおいた烏龍茶をストローに含ませ、上条の鼻の穴に遠慮なく流し込んだ。

「…………ぅがッ!! ゴホッ!! ゴホッ!!」

 強制的に覚醒させられ、上条が激しく噎せながら目を醒ます。

「がはッ… うぇ?」
「こーら、寝てんじゃないわよ」

 目を白黒させた上条が、慌てて焦点を合わせると、麦野がやんちゃな弟を見るような目で苦笑していた。

「あ、す、すみません!! あんな良い目にあったってのに、俺は……」

 本気で情けなく思っているのか、口をへの字に歪めて頭を下げる。
 麦野は軽く肩を竦めると、上条の額に軽いデコピンを打った。

「痛ッ!!」
「ばーか、アタシのテクが凄かっただけだろーが。なぁにぃ? 昨日からエッチ続きで、自信持っちゃった感じ?」
「いや、そんなことは…!」
「そういうの、やめてね。自分の役割はきっちり把握しておきなさい。アタシと長く付き合うコツよ…」

 少し、ほんの少し感傷めいた言い方をする。
 上条は何かを言いたくて、しかし、言う方法がわからずに、ただ、

 「はい…」

 とだけ答えた。




.

 風紀委員活動第一七七支部。
 主に能力者によって構成された、学園の治安を守る学生間組織。
 その拠点のひとつに御坂美琴は居た。

「…記録、照会終わったわ。申し訳ないけど、確かに御坂さんは能力を行使しているわ」

 言葉を発するのは、眼鏡と巨乳が特徴的な女子生徒だ。
 場の雰囲気から、この場所の責任者のようである。

「どんな事情があったか知らないけど、一般生徒、しかもレベル0に能力を行使するのは重大な校則違反よ。御坂さんとも有ろう人が、知らないわけはないでしょう?」

 内容は厳しいが、口調は優しい。
 それもそのはずで、御坂美琴は、知り合いらしきツインテールの風紀委員に連れられてこの部屋に入ってから、今の今まで号泣していたのだ。
 泣きやんだ、というより涙も涸れた状態の今は、精神的にひどく不安定に見える。

「…はぁ、白井さん、どんな状況だったの?」
「は、はい… わたくしがその場に急行したときには、既に事態は収束に向かっておりまして…」

 白井と呼ばれたツインテールの少女が、あの時の事を遠慮がちに語る。
 聞いた眼鏡の風紀委員は、「失恋かー…」としみじみと呟いた。

「まぁ… 私も経験あるけどねぇ。好きな相手の恋心を自覚できずに暴走しちゃうこと…」
「固法先輩がですか…?」

 驚いたように白井が言う。
 いかにもお堅いイメージがある彼女には、似つかわしくないように思えた。

「そりゃ、この歳になれば、恋愛の1つや2つはしてるわよ。失恋もね…」

 少し遠い目をして語ると、固法は改めて美琴に話しかける。

「御坂さん、風紀委員としても貴女の行動は看過できないし、知人としても貴女を放っておけないわ」

 話しかけられ、ひどく緩慢な動作で美琴が顔を上げる。
 その表情は、まるで幽鬼のようだ。

「お姉さま… ああ、おいたわしや…」
「白井は少し黙ってて。もし、もしもよ…? その男の子のことが諦めきれないのなら…」

 いったん、言葉を置く。

「私は立場的にチャンスをあげられるかもしれない。それをどうするのかは、御坂さん次第よ」

 美琴の表情に困惑の色が浮かぶ。
 どうして彼女はそんなことを言うのだろう?

「まぁ、ぶっちゃけると、一方の当事者である女性の行動が、かーなーり、癪に触るからね。あんな自意識過剰な見せ付け女に負けちゃ駄目よ、御坂さん」

 風紀委員・固法美偉。
 痛恨のおせっかいが、今始まる。




.

「あーあーあー、はいはい、聞いてるってばよー」
 整髪剤だのマグカップだの、細々とした買い物をすませ(勿論、支払いはすべて麦野である)、目に付いたファミレスで遅めの昼食を摂っていると、突然、麦野の携帯が鳴り出した。
 面倒そうに電話に出た麦野は、明らかにテンションがダウンした状態で机に突っ伏し応答している。

「あのさー、今日は月の日だから出動なしにしてくんねーかなー?」
『こいつときたらッ!! 昨日、さんざん子犬クンに跨ってアンアン喘いでたじゃないの!! そんな嘘、通るかボケェェェ!!』
「うざー… 昨日は逃亡犯を見事捕まえたじゃん。ボーナス休暇ぐらいあっても良いでしょ。そうよ、それが良いわ」
『逃亡犯ノシたのは子犬クンじゃんw アンタはただ盛って腰振ってただけじゃんw かみじょークーン、すっごーい、てな感じィ??』
「…あー、適当に10°ずつ角度を変えて『原子崩し』を撃ったら、いつかアンタに当たるかしら…? 何発目ぐらいで当たると思う?」
『っざけんな!! 一発撃った時点で、暗部総動員でテメェミンチだコノヤロウ!!』

 どんどんと険悪な雰囲気になる会話に、しらず上条の背筋に冷や汗が流れる。

『ウダウダ言ってないで、さっさと仕事に取り掛かれッ!! 5分後にフレンダが合流するから、あとはヨロシクッ!!』

 ブツッ、と電話が切られる。
 麦野はのろのろと身体を起こすと、無言で上条の頭をはたいた。

「あいたッ! えぇ!?」
「ごめん、叩いた」

 頭にハテナマークを浮かべる上条に対して、麦野がぶっきらぼうに言う。

(こ、これは麦野さん式の甘えかたなんでせうか…?)

 一応、それで正解である。

「上条クン、昨日の今日でなんだけど、お仕事入ったわ。準備できてる?」

 冷静に上条に言う。

「準備つっても… 俺の準備は麦野さんに勝ってもらったメリケン・シールぐらいですよ」

 上条がポケットから、昨日使ったフィルム・シートと同じものを取り出す。

「なら、良し。今から『アイテム』の一人と合流するから、話はそれからよ」

 そう言うと、麦野は携帯とは別の個人端末を取り出して、猛烈な勢いで画面を叩き始めた。

(いよいよか…)

 今夜が暗部としての上条のデビューとなる。
 軽い興奮と、どうしても感じる後ろめたさ、そして、麦野に良い所を見せたいという虚栄心…
 いろんな思いがない交ぜになって、上条は軽く拳を握りしめた…




.

 ちなみに―――
 とあるアパートのとある無人の部屋のベランダに引っかかった、とある銀髪シスターは、
 とあるド派手な2人組に回収され、
 とある物語は始まる事なく終了した……




.

はい終わりです。

次はまた書き溜めが進むか、
次々週の月曜日に。

saga忘れて肝心なシーンで伏せ字の体たらく。
一気にしょぼん。

あと、今回改行入れてみましたが、
反応しだいじゃ次回は直すかも。

では次回に会いましょう。

ちょっと安価
1.さてん
2.こんごー
3.おりじなる
↓1

おけ。

登場した所でロクなことにならなそう

>>98
良い勘してらっしゃる。

もひとつ安価。

1.まえ
2.うしろ
3.うえ

↓1
複数選択可能

キリよく書けたので約1時間後の0時に続きを投下。

今回、恐らくは皆様の予想通りにとあるキャラがとんでもない目にありますので、
超電磁砲アニメスレで「おはよう○子」とかレスしている方は該当シーンを読み飛ばすことをお勧めします。

該当シーンの名前欄に「惨奴逸痴」と入れときますので、NGワードにしといてください。

それでは、約1時間後に…

それじゃ、投下を開始します。
今回は… えーと、45kBぐらいです。





「体晶を強奪~~~~~?」

麦野沈利が、眉根を歪めて素っ頓狂な声を上げる。
フレンダ・セイヴェルンと名乗る金髪碧眼の少女が語った仕事の内容が、麦野にとっては意外だったようだ。

「なーんで、うちらがそんなこすい真似しなきゃならないの?」
「結局、裏ルートで出回った体晶は、極力回収しなきゃならない訳」

やれやれ、と言った風にフレンダが言う。

「ウチらにお鉢が回った理由は、まぁ、滝壺が居るからよね。回収したら、そのまま使えってことじゃん?」
「しょーもねぇ……」

完全にやる気を無くした麦野が机に突っ伏す。

「…体晶って、なんなの?」

完全に話に置いてけぼりになっている上条が、対面に座るフレンダに聞く。

「まぁ、一種の能力強化薬? 相性とかあるし、誰が使っても効果があるものじゃないけど」

フレンダが親切に説明をする。
なぜかは分からないが、上条に対しては好印象のようだ。

「へぇ、そんな便利な薬があるんだ」
「結局、能力を暴走させているだけだし、副作用もあるし、カラダぼろぼろになるし、そんな便利なものじゃないって訳」

フレンダがドリンクバーのメロンソーダを、ズズッ、と啜る。

「…はぁ、もうちょっと詳しい内容」

ようやく、のろのろと頭を上げた麦野が、面倒そうに言う。
やる気は相当に無いようだ。

「はいはい、第11学区にシリンダー・コスモっていう燃料系の研究機関があるんだけど、そこが使ってた柄の悪い連中が居てね」

学園都市の研究機関のほとんどは、その内部に黒い非合法な部分を有する。
元々の技術の根管が『人体実験』の成果だからなのかもしれない。
よって、様々な荒事が発生する場合に備えて、それぞれが独自に私設部隊を持つ場合がある。

「ま、本人たちは『私設部隊』のように思っていたようだけど、結局はただの『スキルアウト』な訳」

私設部隊の質は様々だ。
警備員(アンチスキル)や風紀委員(ジャッジメント)と互角に戦える場合もあれば、街の不良集団に毛が生えただけの存在もある。

「結局、そいつらが、『シリンダー・コスモ』側から得た『体晶』を横流ししようとしたから、あっさり粛清が決まった訳」
「それじゃ、その内ゲバのドサクサに紛れて、『体晶』を回収しろってこと?」
「そーいうことだね」

フレンダがメロンソーダを飲み干すと、物足りなさそうに再びドリンクバーに向かう。

「あー、強奪かぁ……」

内容を聞いた麦野が、上条を見つめて面倒そうに考え込む。
本心では、「上条さんは何をすればいいんでせう」と聞きたくてたまらない上条だが、ここはぐっと堪えて麦野の言葉を待つ。




.

「…デビュー戦に気合が入っているところ悪いけど、上条クンは待機ね」
「あ、やっぱりそういう流れですか…」

多少、予想はしていたが、肩透かしを食らって上条が力を抜く。

「んー、相手は武装しているし、『体晶』の現物を見たこと無い上条クンは足手まといになる可能性があるわ。
 逃走用の車で待機していてちょうだい。朝にもらった免許証を忘れないようにね」
「あ、あのー、上条さんは自動車を運転したことないんですが…?」
「はぁ? 学園都市の車はほとんどオート制御でしょ? 技能なんて必要ないわよ」
「そ、そうですけど…」

麦野の言うとおり、学園都市の車は、そのほとんどが衛星とリンクした自動制御となっている。
運転手の役割は旧来のものから大きく変わり、『とりあえず無人でないことの証明』ぐらいでしかない。
だが、確かに柔軟な走行を得るためにはハンドルを握らなければならない。

「麦野ー、流石にトーシロが座ってるクルマに乗りたくないんだけどー」

ドリンクバーから戻ってきたフレンダがフォローを入れる。
麦野は再び考え込む表情を見せる。

「…ちっ、じゃ浜面も呼ぶか。アイツら暇だろうし、上条クンの良いお手本になるかもね」
「だね。結局、『滝壺いるかもー』って匂わせれば、馬車馬の様に働くって訳」

2人は上条の知らない名前で盛り上がる。
よく分からないが、浜面という人と一緒に仕事をすればいいらしい。

「おし、それじゃ、浜面を呼ぶから、到着次第、移動・潜伏。
アタシがフォワードでフレンダがバックアップ。
フレンダぁ、先行して下調べと仕込みを済ませときな」
「了解、結局、事前準備が一番重要って訳…」

2杯目のメロンソーダを飲み干してフレンダが立ち上がる。
去り際に上条だけ分かるようにウインクをすると、口の動きだけで「がんばってね」と言う。

「………ッ」

反応すると麦野が怖いので、目線を合わせず頷く。
どうも、朝に会った絹旗という少女と違って、フレンダは上条に対して好意的なようだ。

(多分、麦野さん関係なんだろーなー……)

まだ『アイテム』に関してほとんど何もしらない上条だが、リーダーの麦野に対しては、メンバーの間で様々な感情があるのだと思った。




.

――――『コスモ・シリンダー』が所有するとある廃工場跡。
過去に廃棄されたその施設は、所有者を変えることなくその役割だけを変えていた。
即ち、非合法な人員・装備の拠点としての役割である。

「や、約束通り… 一人で来ました……」

既に日は落ちて当たりは闇色。
そんな薄暗い廃工場には、全く似つかわしくない少女が、一人、居た。
年恰好はローティーンの、ロングの髪に花柄の髪留めが印象的な少女だ。

「おぉ… 入ってくるところ、誰にも見られていないだろうな…?」
「は、はい… 十分に注意しました」

応対をしているのは、リーダーらしき鋲の入った革ジャンを着た青年だ。
2人の周囲には10数人ほどの柄の悪い男たちがたむろしている。
会話する2人を見ている者も居れば、周囲を油断無く警戒している者も居る。

「カネ、用意できた?」
「はい… 10万、ですよね……」

少女がハンドバックを探って、かわいらしいレターセットを取り出す。
本来は、友達に向けて他愛の無い手紙が入るそれには、今は少女が持つ全財産が入っている。

「あぁ、今から保管場所に連れて行くから、ソレは大事に持っときな。『体晶』と交換だ」

そういって歩き出す青年に、少女が慌てて付いて行く。
少女の名前は佐天涙子。
どこにでも居る女子中学生で、そして、どこにでもいる無能力者だ。

「初めに言っとくが、コレを使ったからって、能力が得られるとは限らないからな。全くのムダになることもある。それでも良いんだな?」
「…はい。アタシ、何やっても能力が発現しなくて… もう、コレに頼るしか……」

少女――佐天の悩みは、学園都市の無能力学生にとって共通のものだ。
自分にどんな超能力が眠っているのか―――。
己と、家族の期待を背負ってはるばる学園都市にやって来て、そして、無能力者の烙印を押される。
学生の大多数がそうであるとは言え、多感な少年少女にとっては、容易に受け入れがたい現実だ。

「少しでもチャンスがあれば、それに賭けてみたいんです…」

悲壮な表情で佐天が呟く。
それを、革ジャンの青年は憐れみの混じった目で見つめる。

(『体晶』で発現した能力が、まともな訳ないだろうに…)

青年――儀房秀隆という――が心の中で吐き捨てる。
今では、コスモ・シリンダーの使いっ走りとして活動しているが、青年はある程度将来を期待された強能力(レベル3)の能力者だった。
しかし、能力開発に行き詰まり、怪しげな非合法実験に参加したことを契機に、研究機関の闇に身を置く羽目になってしまった。

(『体晶』を売りさばいた金と、『コスモ・シリンダー』の社外秘データを使って、もっと良い企業に潜り込めれば…)

それがこの青年の目的だ。
今のままでは企業の使いっ走りとして切り捨てられる。
そう切実に感じたからこその行動だったが、それが見事に裏目に出たことを、彼は知らない。




.

『ターゲットは企業側が用意した囮と一緒に奥に引っ込んだわ。突入班の無線を傍受したけど、目標の移動が終了したと同時に突入するみたい』

四輪駆動の大型バンのスピーカーから、フレンダの声が響く。
携帯端末で廃工場のマップを確認していた麦野が、フムフム、と頷く。

「了解、フレンダは引き続き馬鹿どもを監視。戦闘が始まったら、上手くやつらを足止め・誘導してね」
『りょーかい。結局、楽勝な訳よ』

ブツッ、という音と共に通信が終了する。

「さて、と…」と呟いた麦野が車内を見回すと、上条が助手席に、そして運転手席に金髪に鼻ピアスが特徴的な青年が座っていた。

「浜面ぁ、アタシは騒ぎに紛れて進入するから、上条クンとしっかり留守番してんのよ」
「あいよ、暖気して待っとくわ。あとさ… 今日は滝壺いねぇの?」
「いねぇよ、ばーか」
「ちくしょー、騙された……」

それなりに気心が知れているのか、浜面と呼ばれた青年が軽く応答する。

「上条クン、ま、分からないことがあったら、そこの馬鹿に聞いてね」
「あ、ああ…」

遠慮がちに浜面を、チラリ、と見ると、いつものことなのか、浜面は軽く肩をすくめて苦笑する。

「それじゃ、行って来るわ」

そう言うと、麦野は片耳に小さなインカムをつけて、バンから降りた。

「あ、麦野さんッ!」
「なに?」

麦野が足を止める。

「あの… 気をつけて…」
「…ふふ、心配は自分にしときなさい」

麦野は手を、ひらひら、と振ると、何気ない足取りで夜の闇に消えて行った…




.

「儀房ッ!! 侵入者だッ!!」

廃工場の奥深く。
『体晶』や儀房が密かに集めていた『本社』のデータが保管されている、通称『金庫室』
『体晶』が納められている金庫を解錠しようとしたとき、儀房はその報告を受けた。

「何だって、どこの誰が…?」

近くのコンソールを操作して、スクラップに偽装してある監視カメラを起動する。
壁に無造作に置かれたモニタに灯が入ると、そこには十数人の完全武装の集団が廃工場の門扉に張り付いているのが見えた。

「この廃工場の場所は『本社』の連中も知らねぇんだぞ…? ……ッ!?」

弾かれたように佐天を見る。
何かを察した彼女は、慌てて、千切れんばかりに首を振る。

「わ、私じゃない!! い、言われた通りのルートを通ったし、誰にも言ってません!! ほ、ホントですッ!」
「…何も言ってねぇよ、勘違いすんな」

取り繕うように儀房が言う。
一瞬、この少女がスパイか、とも思ったが、だとしたら少女が取り残されているのがおかしい。

(いや… コイツはただ何も知らなくて、『虫』を付けられた使い捨てって事も考えられるか…)

その考えに思い至り、儀房は「クソッ」と吐き捨てた。

「…迎撃するぞ」
「逃げねぇのかよ!!」

チームの一人が叫ぶ。

「逃げるにしたって、『体晶』やデータを持ち出す時間が居るだろッ! お前とお前、ここで『本社』のデータを持ち出せるようにしとけ」

矢継ぎ早やに指示を出して、コンソールを操作する。
この部屋に至るまでの通路が電子ロックされ、廃工場が迷宮と化す。

「これで少しは時間が稼げる… データのアウトプットが終わったら、6番通路で待機しておいてくれ」
「あ、あのッ、私はッ!?」

状況の急変についていけない佐天が叫ぶ。
詳しいことは分からないが、ここにいたら危険だとは分かる。
不安で不安で胸が潰れそうだ。

「お前は… ここに居ろ。下手に動いたら戦闘に巻き込まれる。いいか、『体晶』のこととか全部忘れて、浚われた一般人を装え、分かったな!」

とうとう涙を浮かべ始めた佐天が、コクコク、と何度も首を縦に振る。

「よし… データのアウトプット、早めにな。いくぞッ!」

儀房が残りのメンバーを促して部屋を出る。
残された佐天は、恐怖と後悔で、腰を抜かして床にへたり込んだ……





.

「ナンパぁ!? あの麦野を!? なんて命知らずなヤツ……」
「いや、まさか暗部のエージェントとか思う分けないでしょ!?」

麦野を待つバンの中では、上条と浜面が砕けた口調で話をしていた。
意外と相性は良いようである。

「そりゃ、アイツは黙ってたら美人だけど、それ以上に近寄りがたいオーラがあるじゃん?」
「そこらへんが、上条さんの好みのどストライクというか… 
「お前の好みって、何よ?」
「……寮の管理人のお姉さん?」
「ありえねーッ!! 麦野が管理人とかありえねーッ!!」

思わず絶叫する浜面。

「そんな寮があったら、住人全員がストレスで10円はげ作るわ。断言するね」
「え、麦野さん、優しいじゃないスか…?」

浜面が信じられないモノを見たような目つきをする。

「優しいって、え、なに… あのモンスターが…? …お前、精神系の能力使われて無いか?」
「んなわけねー!!」

今度は上条が絶叫する。

「…まぁ、いいさ。よくよく考えれば、これから、麦野の暴走は止めるのはお前の役割なんだからな… 頼むぜぇ、彼氏さんよぉ…」

浜面が拝むように手を合わせる。

「暴走って… 電車やバスじゃあるまいし…」
「そっちの暴走の方がまだかわいーよ!
 …あー、多分、そろそろかなぁ…」

浜面がバンのラジオ(に偽装した通信機器)を操作する。

「おーい、フレンダ、そろそろ突入?」
『ザザッ あ、あー…  今、麦野に通信送ったところよ。突入側は門扉の解除に成功、これから突入ね。防御側は果敢にも迎撃に出るみたい』
「オーケー、撤収気をつけてな」

それだけ通信してスイッチを切る。

「見てな、そろそろ派手な花火が上がるぜ」

浜面が麦野の消えた方角を指差す。
上条がつられて目をこらした、
その瞬間、
―――極太の白色光が煌めいた。

ズガァァァァァッ!!!!

「え、なに…!?」

一瞬遅れて、何か大きな破壊音が聞こえる。
そして、さらにそれは連続した。

ズガァァァァァッ!! ドゴォォォォォッ!!

白色が煌めくたびに大音声の破壊音が聞こえる。

「もしかして… 麦野さんがコレを…?」
「ああ、これが学園都市の超能力者(レベル5)、麦野沈利の『原子崩し(メルトダウナー)』だ。
 これで、数割の出力っていうから恐ろしいぜ」

既に遠目からでも、廃工場の一角が残骸と化しているのが分かる。
上条は、釣り上げた魚の大きさに、改めて戦慄した。




.

佐天涙子は後悔の真っ只中に居た。
新学年になり、次々と能力を発現させる同級生。
担任教師の同情と諦めに満ちた表情。
その何もかもが嫌になって、普段なら軽くスルーするダイレクトメールに目を止めてしまった。

『能力の暴走過程で生まれた、能力強制発現薬』

その煽り文句を真に受けた佐天は、恐ろしく厳重なメールの遣り取りにさらに信頼を強めてしまい、結果として、この部屋で震える破目になってしまった。

(早く家に帰りたい…ッ!! 怖い、怖いよ…ッ!!)

チラリと顔を上げると、いかにも柄の悪い男2人が、怒鳴りあいながらコンソールを操作している。
声の調子からして、どうにも上手くいってないらしい。

「おいッ! データはどこまでアウトプットするんだよッ!?」
「ンなもん、全部に決まってんだろうが!!」
「アホか! データが重すぎて、ここにあるメディアだけじゃ足りねぇぞ!!」

部屋の中に響く怒鳴り声に、思わず耳を塞ぐ。

(早く誰か助けに来て…)

佐天はヒーローの登場を心から願った……




.

「あ、ボクシングするんだ」

「ほとんど我流ッスけどね。『ホーリーランド』が上条さんおバイブルです」

「あー、わかるわー、それ。俺もそれ読んでアマレス囓ったもん」

「アマレス、強いですよね~」

「いや、ボクシングもつえーよ。俺、喧嘩の時、タックルにショートフック合わせられたことあるし」

「え、マジッスか? どうなんったんです?」

「一発で気絶。いやぁ、ボクサーのカウンタースキル、やばすぎるわ…」

「俺からしてみたら、アマレスの低タックルとか、本気で嫌ですけどね…」

「そうかぁ…? …今度、マスでもしてみる?」

「あ、いいスね。どっかの公園の砂場でやりましょうか……」

……男2人は、ほのぼのとした雰囲気の中、格闘技談義で盛り上がっていた。



.

「クソッ!!」

ガンッ!!

『金庫室』に残った2人のうち、メッシュ髪の男がコンソールに拳を打ち付ける。

「何やってンだよ!!」

残る1人、スカジャンを来た男があわてて詰め寄る。

「やっぱりデータがデカすぎンだよ!! HDDぶっこ抜いても足りねぇ!! つーか、そんな時間もねぇ!!」
「…前に儀房が言ってた。セキュリティを突破して『金庫室』まで行くには、最低20分はかかるって…」

部屋の隅でがたがた震えていた佐天が思い出す。
確かに、この部屋まで来るのには恐ろしく時間が掛かったし、なにより、どこをどう歩いたか分からないほど、通路が入り組んでいた。

「儀房たちが足止めもしてくれてる… 少なく見積もっても、30分ぐらいは猶予があるんじゃねぇか…?」

スカジャンが楽観的な予想を立てる。
その予想に少し落ち着いたのか、メッシュが大きくため息を吐いて椅子に身を沈める。

「…クソッ、何でこんなことに…」
「『体晶』のウリがやっぱマズかったんだよ… ありゃ、マジの厄ネタだったんだ」

後悔を口から吐くようにスカジャンが声を絞りだす。

「…厄ネタっつーなら、ソコにも居るぜ?」

メッシュがギラリとした眼光を部屋の隅に向ける。
蹲っていた佐天の肩が、ビクリ、と震える。

「なぁ、おい、嬢ちゃんよォ!! とんでもねぇことしてくれたなぁ!!」
「ヒッ… わ、私、何も知らないです… 本当です… ごめんなさい、ごめんなさい…」

小さく小さく、「ごめんなさい、ごめんなさい……」と繰り返す。
その謝罪が、男の神経を逆撫でする。

「知らないで済むかよッ!! あぁ!!」

ゴンッ!!
再び、コンソールに拳が打ち付けられる。

「いやぁ… ごめんなさい、ごめんなさい……」

佐天に出来ることは、ただ小さく震えることだけだ。

「…おい、データ移行の指示は済んでるのか?」

突然、スカジャンがメッシュに言う。

「ん…? あぁ、つっこめるだけのメディアはつっこんだし、HDDもあとはぶっこ抜くだけだ」
「じゃ、時間あるな……」

スカジャンがギラつく瞳を佐天に向け、にぃ、と笑う。

「なぁ、嬢ちゃん名前は何?」
「え… さ、佐天涙子です…」

名前を言うのも恐ろしいが、言わないのはもっと恐ろしい。

「佐天ちゃんかー。じゃ、さ…、佐天ちゃんに、代償を支払ってもらおうぜ……」

明確に、『金庫室』の雰囲気が変わる。

「おっ! やっべ、気がつかんかったわ、それ」

メッシュが「へへへ…」と野卑な笑いを浮かべる。

「あああああ…………」

佐天の恐怖が最高潮に達した。



.

「駒場さんって… あの、独特なしゃべり方をする人?」

「なんだよ、ウチのリーダー知ってるのかよ? お前、どこのチーム?」

「いや、俺はどこのスキルアウトにも入ってないけど、青ピって知らね? 声がすんげぇ野太い」

「ああ、あの馬鹿?」

「そそ、その馬鹿。そいつの関係で、ちょいと出入りに参加したことあって」

「青ピって、アイツなんなの? 不死身系能力者? 殺しても死なないって、どーゆー理屈なんだよ…?」

「本人曰く、『ボクはボクが認める属性の娘の攻撃しか効かないんや~』って言ってたけど……」

「はぁ? それ、軽くレベル4以上あるんじゃねーの?」

「いや、それが、本人は能力発現未満のれっきとしたレベル0なんだ……」

「マジでナニモノなんだよ……?」

……バンの中では、すっかり仲のよくなった2人の、馬鹿なダベリ話が続いていた。



.

「嫌ぁぁぁぁぁぁッ!!」

声のあらん限り叫ぶ佐天を、メッシュが背後から羽交い絞めにする。
ニヤニヤと下品な笑いを浮かべたスカジャンが佐天の前に立つと、佐天の上着の襟元に手をかけた。

「ここ、完全防音だから、いくら叫んでも無駄だぜ…!」

ビリィィィィ!!

声と共に、上着を力任せに引き千切る。
可愛らしいデザインのブラジャーが露わになり、佐天の顔が羞恥に染まる。

「やめてぇぇぇぇぇ!!」
「うっはー、たまんねー!!」

声に興奮したのか、メッシュが手を伸ばして佐天の胸を荒々しく掴む。

「ヒッ!!」
「お、けっこー胸あるじゃん。コイツはアタリかも…!?」
「マジ? 佐天ちゃん隠れ巨乳?」

スカジャンも空いた片乳を乱暴に掴む。
すると、下品な笑みがさらに歪んだ。

「へへ… 楽しめそーじゃん…!」

スカジャンが強引にブラジャーを剥ぎ取ると、歳の割りに大きいおっぱいが、ぶるん、と飛び出る。
メッシュが「いいじゃん、いいじゃん!」と語気を強める。

「触らないでッ!!」

あまりの羞恥に恐怖が振り切ったのか、佐天が正面のスカジャンを右足で蹴り上げる。
が、か弱い女性の筋力では、ぺし、という音を発するだけだ。

「お、足上げてくれるなんて、協力的だね~」

自分勝手な解釈をすると、スカジャンは一気に、下着もろとも佐天の下衣を剥ぎ取った。
まだ無毛の、幼い割れ目が外気に触れる。

「なんだ、ここはまだガキンチョかよ…」
「馬ッ鹿! 巨乳で無毛とか、そっちの方がソソルじゃん!」

ガチガチガチ…

既に、佐天の歯の根は合わず、顔面は蒼白で今にも意識を失いそうだった。




.

「ネコミミむぎのん…」

「ナシナシナシ! カワイイ系はないですよ!!」

「んじゃ、ナースむぎのん…」

「う~ん、ギリナシ?」

「えー、注射とか似合いそうじゃん?」

「似合いすぎて怖いデスヨ…」

「それもそうか… ほんじゃ、そっち」

「婦警むぎのん、とか?」

「メスポリとか呼ばれてそーだな、アリだ」

「女教師むぎのん」

「かなりアリ! タイトスカートの癖に、足の太さを気にして色の濃いタイツとか履くんだぜ、きっと!」

「ボンテージむぎのんは……?」

「あー、そりゃナシ。似合いすぎてつまらん」

「それじゃ… あ、バニーむぎのん…?」

「……………………………」

「……………………………」

「「アリアリアリアリアリアリアリッ!!」」

……バンの中はやっぱり平和だった。





.

「ほんじゃ、ご開帳~」

既に抵抗をやめた佐天の太ももを、スカジャンが強引に開く。
大陰唇すら閉じた秘裂が、わずかに口を開く。

「あ、あ……」

それを見る佐天の瞳は空ろだ。
まるで、他人事のように光が無い。

「パイパンのタテスジ、たまんねぇな…」
「なんだよ、お前ロリコンかぁ?」
「締まりがすげぇってことだよッ!!」

スカジャンが、わずかに盛り上がった秘裂の端を両の親指で押さえると、軽く力を入れて「くぱぁ」と左右に開く。
見事なサーモンピンクの肉壁が顔を覗かせた。

「…ゴクッ」

二次性徴直後の青い肉体を蹂躙する暗い喜びに、スカジャンの興奮が否応無しに上がる。
どう考えても処女だ。生理用品すら挿入れたことがないだろう。

「わりぃな… 濡らしてる暇がないんでよ……」

やや緊張に震えた声でスカジャンが言う。
それを聞いたメッシュが、引きつった笑みを浮かべた。

「お前、鬼畜だなぁ、おい…」
「…そっちも穴が空いてるぜ?」

欲情とストレスが、理性の枷をあっさり外す。
スカジャンがさらりととんでもない『提案』をすると、メッシュも、ゴクリ、と唾を飲み込む…

「コイツ、発狂死するかもな…」
「構うこたねぇよ、自業自得だ…」

2人の男が佐天を拘束したままズボンを下ろす。
佐天の耳には2人の会話が入ってきているが、心がその理解を拒絶する。

(これは夢…、悪い夢……ッ!!)

現実を逃避し、心の中で何度も念じる。
防衛機制としたは、当然の逃避であるが、しかし、その為に、
佐天は決定的な抵抗のチャンスを逃してしまった。



.

ピト……

薄汚く、凶悪に勃起したスカジャンのペニスが、佐天の秘裂に接触する。
そのおぞましい感触に、ようやく佐天の意識が現実に戻る。
だが、それは最悪のタイミングだった。

「お、お願いします… グスッ、やめて… やめてェ……」

嗚咽交じりの懇願を、正面のスカジャンに行う。
万人の心を動かしそうなその行為は、しかし、この場面においては完全に逆効果だ。

「やだね……!」

皮肉なことに、佐天の懇願がスカジャンの行動のスイッチを押した。
ペニスを強引に佐天の秘裂に食い込ませる。
亀頭が秘裂に半分まで喰い込むと、ようやく佐天の身体が動き始めた。

「イヤッ!イヤッ!! 嫌ぁぁぁぁッ!!!!」

思い切り叫び、身体を捻る。
しかし、前後から男たちに挟み込まれていては、満足な抵抗などできない。

「けけっ、暴れるのがちっと遅いぜ… さぁ、ぶち抜いてやる…ッ!!」

スカジャンが佐天の腰をガッチリ掴み、強引に腰を突き上げ、そして…

ぶちぶちぶちぶちッ……!!!!

少女の身体には完全に規格外のペニスが、秘裂を入り口に佐天の身体を貫通する。

「ひぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃッッッ!!!!」

激痛。あまりにもの激痛に佐天があらんかぎりの絶叫を上げる。

(痛いッ!! 痛いッ!! 痛いッ!!!!)

佐天の意識が激痛に染まる。
生まれてこのかた、経験したことのない『内臓を裂かれる』痛み。
それまで、経血しか流れたことの無い細い膣道を、大質量のペニスが強引に逆流する。





.

「……………ぁ、……………ぁッ!!」

酸素を求める金魚のように、佐天の口が、パクパク、と開閉を繰り返す。
激痛により腹筋が痙攣し、上手く空気を吸うことが出来ない。

「うぉ… 締まる……ッ 最高だぜ、このガキ……ッ!!」

佐天の苦悶などお構いなしに、スカジャンが腰を揺する。
それまで膣道で堰きとめられていた破瓜血が零れ落ちて、鉄さびの匂いが佐天の鼻に届く。

(血の匂い… あたし、死んじゃうの……ッ!?)

死への恐怖からか、激痛に固くなった佐天の身体に、少しだけ力が戻る。
正面のスカジャンから逃れようと、必死に地面を、スカジャンの身体を、手と足で押そうとする。

「おいおい、もうぶち込んでんだから、暴れるんじゃねーよ」

しかし、スカジャンは逆に佐天を抱きしめるように拘束すると、両手を佐天のお尻にまわし、強引に割り開いた。
セピア色の、可愛らしい菊座が外気に触れ、驚いたように、ひくひく、と痙攣する。

「おら、とっととぶち込めよ」
「別にソッチの趣味は無いんだけどなー」

台詞と口調とは裏腹に、顔全体で醜悪な笑みを浮かべたメッシュが、佐天のアナルを指で弄る。

「……………え?」

驚愕、疑問、悲哀、、不安、逃避……
様々な感情を顔に浮かべ、佐天がゆっくりと背後のメッシュを振り返って見る。

「なに、するんですか……」

聞きたくない、知りたくないのに、口が勝手に開く。
佐天の性知識は、年齢・性別相応のものしかない。
アナルセックスや二穴挿入など、想像すらしたこともない。

「…ケツ、緩めとけよ」

佐天の質問には答えず、メッシュはお情け程度にだ液をアナルと亀頭に塗りこむと、ペニスを手でしっかりと固定して佐天のアナルに押し当てた。

「あ、あは… あはは……」

ようやく、背後の悪魔が何をしようとしているのかに気付いた佐天が、乾いた笑い声を上げる。
股間の激痛はすでに鈍痛に変わっていて感覚はほとんど無いのに、お尻の穴に触れた汚らわしいペニスの体温が、やけにはっきりと感じられた。

「あんたたち、人じゃない… ひとでなし… ひとでなしぃ……」

それまで出番を忘れていたかのように、佐天の瞳から涙が次々と零れ落ちる。

「ちっ、うっせーな……!」

少女の批判に、メッシュが静かに逆上する。

「こんな所にほいほい来たテメェの責任なんだよ…ッ!!」

声をと共に、ペニスを強引にアナルへ突き刺す。

メリメリメリメリッ……!!

「……………ぁぁぁぁああああああ!!!!!!」

指さえ入るのが怪しい小さな菊座に、赤黒い勃起したペニスが突き刺さる。
佐天は瞳と口とを限界まで拡げ、必死に伸ばした手でと何も無い空を掴む。

………ピシッ。

強引な挿入でどこかが裂けたのか、佐天の肛門から、たらたら、と鮮血がしたたり落ちる。
その量は破瓜血の比ではない。

「へへっ、滑りが良くなってちょーど良いや……」

メッシュの言葉は、既に佐天には届かない。
佐天は気絶一歩手前の状態で、ただひたすら股間の鈍痛と異物感に耐えている…




.

「お、入ってきたのがわかるな…」
「うぇ、チンポの先がぶつかっちまった。気持ち悪ぃ…」

いったい、どこにそんなスペースがあるのだろうか?
少女の細い腰の中に、長大なペニスが2本も埋め込まれている様は、ひどく現実感のない光景だった。

「時間もねぇし、早めに済ませようぜ」
「おぉ、勝手にイカせてもらうわ」

ズリッ、ズリッ、ズリュッ!!

男2人は視線を交わすと、てんでばらばらに腰を動かし始めた。
リズムもタイミングもバラバラなその動きは、かえって佐天の激痛を増悪し、不規則な衝撃に佐天の身体が下手糞な操り人形のように跳ねる。

不意に、

ズンッ!!

「がッ…… はッ!!!」

偶然に2人が腰を突き出すタイミングが合い、佐天の身体が下から上に突き上げられる。
その衝撃で、それまで必死に身体を支えていた両足が地面から離れ……

佐天の身体が完全に宙に浮いた。

「ぐぁ…… あぁ…… し、ぬ……!!」

それは、まさしく串刺し刑だ。
全体重を股間で支える羽目になり、佐天の激痛が最高潮に達する。
それは、少女の我慢の限界をとうとう越え、
一度、「はぁぁぁ……」と肺に残った空気を吐き出すと、佐天の眼球が、クルリ、と上に回転し…

佐天涙子は意識を喪失した。




.

『もしもーし、馬鹿言ってないで、周辺の哨戒ぐらいしておきなさいよ~』

バンの中でほのぼのと会話をしていた上条と浜面に、フレンダから通信が入った。

「ん、何か動きあった?」
『突入側が迎撃側の戦力の大半を無力化したわねー。
 迎撃側はリーダーがけっこう頑張ってたけど、今は散り散りになって逃げてるわ』
「麦野は?」

通信先で、何かしらの機器を操作する音が聞こえる。

『工場内は電波の通りが悪いけど、そろそろお宝に到着するみたい。
 ま、結局、麦野に心配は不要って訳よ』
「おーし、そんじゃ、そろそろクルマを暖めておくか…」

浜面が運転席の電子ロックを外して、クルマのエンジンを掛ける。
エンジンが駆動し、バンが小さく揺れる。

『んじゃ、アタシもそろそろ離脱して… あっ!!」
「うん? どうしたん?」

通信先で変な声を上げたフレンダに、浜面からつっこみが入る。

『このアホが… あー、浜面、聞いてる?』
「おお、何かトラブルか?」
『いますぐバンを移動して! 迎撃側のリーダーが麦野の『原子崩し』で空けた穴から逃亡しようとしてるわ!』
「げぇ、マジか…」

迎撃側のリーダー、儀房は高位の能力者だ。
無能力者である浜面にとっては、接触は避けたい相手だ。

「それじゃ、第2ポイントに移動するか…」
「待てよ、麦野さんに連絡はつくのか?」

バンを移動させようとした浜面に、上条が疑問をぶつける。

「あー、どうなん、フレンダ?」
『……だめね、電波が通じてない。まぁ、麦野なら何とかすると思うけど…』

フレンダの声が尻すぼみになる。

(麦野は心配じゃないけど、勝手にバンの位置を変えたら、後でオシオキされるかも……)

フレンダの背筋を冷や汗がタラリと流れる。

『…あー、浜面、さっきの取り消しね。その場で麦野を待っててちょうだい』
「はぁ!? 能力者とやりあうのはごめんだぜ!!」
『うっさいなー、私が急いでソッチに戻るから、それまでやり過ごしててよ!!』
「あ、ゆっくりで良いぜ。敵が現れたら、俺が対処するよ」

上条が拳の感触を確かめるように、ゴンゴン、と両拳を打ち付ける。

「…できンのか? この業界、油断と慢心はすぐに命取りになるぜ」
「リーダーの資料はさっき読んだし、向こうがコッチを無視するなら突っかからねぇよ」

上条が冷静に答える。
浜面は「ふむ…」と納得するように頷くと、無線機に語りかけた。

「つーことだ、フレンダ」
『りょーかい。…麦野に良いトコ見せたいとか、そーゆーこと、考えるんじゃないわよ』
「出来ることをやるだけですよ」

上条が、リラックスした笑顔で応えた。




.

パンッ、パンッ、パンッ……

『金庫室』の陵辱劇はまだ続いていた。
スカジャンは満足したのか、煙草を喫いながらデータの移行を監視している。

「…チッ、反応無くてツマンネーな…」 
                                        ・ ・ ・
既に、2人に何度か射精されたのか、佐天の股間は出血と精液でまだらピンクに染まっている。
今は後背位でメッシュに犯されているが、身体全体が脱力していて、呼吸もひどく浅い。

「………うっ!」

程なく、短く呻いたメッシュが何度目かの射精をする。
佐天は声1つ上げない。

「おーい、満足したなら、そろそろ引き揚げの準備しようや」
「ふぅ… そうだな、『体晶』を金庫から出しとくか……」

そう言って、メッシュが何気なく視線を金庫に向ける。
すると、その横顔が眩い光に照らされた。

「…………あ?」

光の方へ向くと、壁の一箇所が同心円状に発行し、白熱があっという間に進んだと思ったら…

ドガァァ!!

メッシュの見つめる壁が一瞬で崩壊し、その先から一条の光線が光速で飛来し、

ズァ…!

メッシュの頭部が、一瞬で蒸発して消えた。




.

「な、な、何だッ!?」

相棒が一瞬にして物言わぬ肉槐に姿を変え、スカジャンは狼狽して光線の大本を凝視した。

「…ん、ようやく目的地に到着したかな?」

綺麗に丸く穴の空いた壁から、ひどく場違いにのんびりした声が聞こえ、果たして、麦野沈利がその端正な顔を見せる。

「あー、誰かに当たってたか… 『体晶』も消し飛んでないでしょうねー」

麦野はメッシュやスカジャン、それに佐天の姿を視界に入れてはいるが、
『金庫室』の惨劇などお構い無しにキョロキョロと周囲を観察した。

「お、あの金庫か、情報通りね。さて、頂いていきましょう……」

その、完全にスカジャンを無視した言動が、怒りの導火線に火をつける。

「舐めやがってッ!!」

部屋に隠していたサバイバルナイフを手に取ると、スカジャンはいまだ自分を無視する麦野に突っかかった。

「死ねぇぇ!!」

ナイフの切っ先を麦野の顔面に突き出す。
万人が身構えそうなその突撃に、しかし、麦野は全く慌てるそぶりを見せずに、ただ、うるさそうに掌をナイフに向けた。

ポワ…ッ

麦野の掌が淡く発光する。

「……………ッ!!」

最早勢いを殺せないスカジャンは、そのまま麦野の掌目掛けてナイフを突き出し…
ナイフもろとも、片手が前腕まで消失した。




.

「………へ?」

スカジャンが、己の消えた四肢を不思議そうに見つめる。
そこにあったはずの片手は消え去り、白い前腕骨と、沸騰して湯気を立ててる太い血管が見える。

「ぎゃぁぁぁぁ!!」

痛みが一拍遅れでやって来て、スカジャンが悲痛な叫び声を上げる。
麦野が『原子崩し』を掌に展開し、スカジャンの攻撃を受けたのだ。
例えるなら、数千度の溶鉱炉に素手をつっこんだようなものだ。

「ああ、うるさい」

ズァ…ッ!

麦野が軽く手を振ると、『原子崩し』がスカジャンの頭部から胸部までを貫き、スカジャンは絶命した。

「やれやら… これだからやっすい仕事は… ん? この娘は何かしら?」

その時点で初めて気付いたのか、麦野が虫の息の佐天を発見する。

「あーらら、輪姦されちゃったのか… ん~……」

突入前に読んだ資料を思い返す。

(確か、企業側が用意した囮が居たわね… それがこの娘か…)

金庫の扉を『原子崩し』で焼き切り、中にあった『体晶』を確保すると、麦野はしばらく思案に暮れた。

「ほっといてもいーんだけど……」

なんとなく、なんとなくだが、そうすると上条に嫌われるような気がする。
そういう思考に至ったことを不快に思いながらも、麦野は佐天を強引に担ぎ上げた……



.

「クソッ、クソッ、クソッ!!」

廃工場の中を1人で走りながら、儀房秀隆が何度も毒づく。
迎撃に出て、侵入者が『本社』である『コスモ・シリンダー』の私兵だと気付いた。
自分達が切り捨てられたことを知った儀房は、逃走ルートに指定した6番通路に向かうこともできず、絶対絶命の窮地にあった。

「データや『体晶』は諦めるしかないのか…ッ」

今から『金庫室』に戻るのは自殺行為だ。
部屋に残した2人が上手く逃走していてくれるのを強く願うが、合流するための手段が残されていない。

「ちくしょう… なんなんだよ、この大穴は…ッ!?」

儀房が、麦野が侵入するときに空けた『原子崩し』の照射後を忌々しげに見つめる。
記憶が確かなら、この大穴の先は『金庫室』に繋がっているはずだ…

「…誰かが強引に『金庫室』に侵入した。しかも、こんな大穴をいくつも空けるヤバイ奴だ… 接敵はできねぇ…」

素早く思考し、決断を下す。

「…外部から侵入したのなら、この大穴は外に繋がっているはずだ。そこには、侵入者の足があるかもしれん」

儀房は賭けに出ることにした。
この穴の先に脱出手段があることを信じて、大穴を潜る。

「…あの娘は無事だろうか」

『金庫室』に残してきた佐天を、この工場内でただ1人、儀房は心配した。



.

果たして、儀房は敷地の外で、あからさまに改造されたバンを発見する。

「…十分だな」

周囲の環境を確認し、バンにゆっくりと近づく。
バンの運転席には人の姿は無い。
すると、後部座席のドアが空いて、ツンツン頭の男子学生が降りてきた。

相手の姿が分かるまで近づくと、ツンツン頭が声を掛けた。

「何か用スか?」

きさくな口調だが、儀房はそんな芝居に付き合うつもりはなかった。

「誰かは知らんが、そのクルマは頂くぜ」

会話に乗ってきてくれず、ツンツン頭――上条は密かに全身を脱力させる。

「…だいぶ能力使ってるみたいだじゃねーか。こっちは無視して、とっとと逃げたら?」
「ああ、そのクルマを頂いてからなッ!!」

瞬間。儀房が己の「自分だけの現実」を展開する。
目標は、懐に隠し持ったペットボトル。
彼がソレを地面に滑り落とすと、地面に当たる瞬間、
中の水が弾けた――ッ!!


.

「おっとッ!!」

はじけた水の一部は高速で上条に飛来し、上条が慌てて避ける。

「水系は、マジで便利だよな……」

資料に書いてあった儀房の能力名は『純変粘水(スターチシロップ)』。
その効果は、範囲内の水塊を固体・液体・気体のいずれにも属さない粘体へと変え、自由に操るものだ。

水操作系としては比較的ポピュラーな能力だが、儀房の能力の真髄はその粘水の汎用性だ。
固くして殴ればちょっとしたハンマーとなり、あるいは、相手の顔に貼りつかせれば容易に剥がれず、相手は窒息する。

張り付きは左手の『幻想殺し』で解除できるが、水のハンマーで殴られるのはまずい。
さらにこちらは徒手空拳だ。近づかないことには話にならない。

だから、上条は儀房に向かって猛然とダッシュした。

「……ッ?」

不審に思いながらも、儀房が水槐のハンマーを上条に叩きつける。

ドコォ!!

水槐を左側に受けた上条が、横に吹っ飛んで倒れる。

「………驚かせやがって」

あまりにあっけなく決着がついたことを怪訝に思いながら、儀房はバンに近づこうとする。
倒れた上条との距離が最小となった瞬間、

「………!!」

上条が跳ねるように立ち上がって儀房に右手で殴りかかった。

「……アホかッ!!」

しかし、それを完全に予想していた儀房が、水をまとわりつかせた腕でパンチをガードする。

「あら…?」
「そんなバレバレな『死んだフリ』に騙されるわけねーだろ!!」

儀房が腕を振る。
手から伸びた水がフレイルのように変則的な動きを見せ、上条の身体に激突する。

「ぐぅ…」
「大人しく気絶しとけ!」

窒息目当てに上条の顔に水槐を貼り付かせる。

「ごぼぉッ!!」

呼吸を止められ、上条が再び地面に転がる。
暫く観察して、上条が向かってこないことを確認してから、儀房が改めてバンに目を向けた。

その瞬間――、

ピカッ!!

「うぉ!!」

バンのハイビームが突然煌き、儀房の網膜を光に染めた。
運転席に隠れていた浜面の操作だ。
視界を急に奪われて、思わず身体をくの字に折った儀房に…

「おおッ!!」

左手で張り付いた水を解除した上条が、高速のワン・ツーを叩き込む。
左手のジャブが側頭部を、右手のストレートが正確に顎の先を捉えて、儀房の脳が激しく揺らされる。

「あ、が……」

脳幹からの信号が一時的に遮断され、儀房が失神する。
多少、鼻から水が入ったのか、激しく咳き込んだあと、上条は「ふぅ…」と大きくため息をついた。



.

「おぉ、なかなかやるじゃ~ん!」

浜面と2人で儀房を縛り上げていると(当然、隠し持っていたペットボトルは全部回収している)、離脱に成功したフレンダが小走りに走り寄ってきた。

「ソイツ、『上』に引き渡せばボーナス貰えるかもよ」
「お、マジ? いやぁ、上条サマサマだな!」

浜面が嬉しそうに言う。

「いやぁ… 浜面さんが上手く協力してくれたからですよ」

実際、上条としてはかなりの綱渡りだった。
ハイビームのタイミングが早くても遅くても、儀房の隙はつけなかっただろう。

「あとは麦野さんだけか…」

上条が、麦野が消えた方角を見る。

「向こうから連絡は?」
「結局、無し。表の戦闘も終わったッぽいし、そろそろ引き揚げたい所だけど…」

その時、縛られている儀房がわずかに身じろぎし、目を醒ました。

「……うぅ」
「あ、起きた? 能力使わないでよ。使った瞬間、コイツを爆発させるから」

フレンダが儀房の耳の穴に粘土状の物体をねじ込む。
小さな起爆発信機がついたそれは、フレンダお手製のプラスチック爆弾だ。

「結局、アンタは負けた訳よ。大人しくしててね」

ニヤリとフレンダが笑う。
儀房は何も言わない。
何も言わず、とある行動に集中した。



.

(…使うか)

訓練によって調節された内外尿道括約筋を弛緩させ、少量の尿を気付かれず排泄する。
排泄された尿をコントロールし、自分のヘソの穴に仕込んだとある粉末を吸収させる。
慎重に尿を口元まで移動させ、粉末が混じった尿を、儀房は躊躇わず飲み込んだ。

「………ッ!! なに飲んだテメェ!!」

儀房の嚥下に気付いた浜面が慌てて儀房の喉を押さえようとする。
しかし、それよりも早く、儀房が能力を解放する。

ドゴォォォォォン!!

まるで爆発の衝撃波を食らったように、上条、浜面、フレンダの三人が吹っ飛ばされる。

「…な、なんだッ!?」

苦痛に顔を歪めて上条が立ち上がると、いかなる手段か、拘束していた縄を切断した儀房も、ゆらり、と立ち上がっていた。

「おおおおオオオオッッッッ!!」

ヒトのものとは思えない咆哮が、儀房の口から漏れる。
野生的な戦慄を得た上条が、仲間の無事を確認するために声を上げる。

「浜面さん、フレンダさんッ!!」
「つ~~、俺は大丈夫だ!」
「アタシも!! くっそ~、多分、『体晶』を飲みやがったんだ!!」

フレンダの発言に一応得心する。
とすれば、今の衝撃波は能力の応用なのだろう。

「周囲の水分を操って、放射線状に弾けさせた…?」

頭を捻るだけ捻って、一応の結論を得る。
だとしたら、不用意に近づくのは危険だ。

「うわ~、結局、これってピンチな訳!?」

フレンダが毒づく。爆発させないことを見ると、プラスチック爆弾も解除されたのだろう。

「ああああああアアアアアッ!!!!」

再び儀房が叫び、大気中の水分が一瞬で集まり、散弾のように弾ける!!

「……ぐぉ!」

上条とフレンダは、距離もあり何とか避けたが、浜面がダメージを食らう。

「浜面ぁ!!」
「クソッ!! おい、上条!! 当たると痛ぇぞ!!」
「そんなの分かってますよ!!」

上条が歯軋りする。
左手で散弾をキャンセルしようにも、範囲が広すぎる。

(どうするッ! どうするッ!?)

必死に頭を働かせていると、

「…結局、新人にばっかり頼ってちゃいけない訳よ!」

フレンダが動いた。




.

フレンダ・セイヴェルンは『アイテム』内唯一のレベル3(強能力者)だ。
その能力名は『取り寄せ(アポーツ)』。
範囲限定・重量限定・大きさ限定・よく知っているモノ限定、と様々な制約があるが、効果範囲の物品を掌に瞬間的に『取り寄せ』ることが出来る。

(相手は『体晶』で強化したといっても、結局は『水使い』ッ! だったら、いくらでも打つ手は有るって訳よッ!!)

フレンダが意識を集中し、『自分だけの現実』を現出させる。
掌に取り寄せたものは、上条が台所でよく見るものだった。

「は… 小麦粉…?」
「どりゃ!!」

フレンダが取り寄せた小麦粉の袋を投擲する。
それは空中で飛散し、儀房の周囲を白く染める。

「まだまだァ!!」

恐らく、儀房の対策にと、バンに大量に溜め込んでいたのだろう。
次々と小麦粉の袋を取り寄せて儀房に投げつける。

「ぐぐぐぐグググッ!! この、アマッ!!」

暴走した意識の中で、儀房が歯軋りする。
今の彼の演算力では、液体であれば何でも操る自信がある。
それが大気中に微細にしか存在しない水分でもだ。
しかし、これだけの小麦粉が大気中に飛散すると、それがすべてチャフとなり、演算力が追いつかない。

「ぃぃぃぃよっしゃぁ!!!」

フレンダがガッツポーズを取る横で、上条が身を低くして走る。

「フレンダさんナイスッ!!」
「おおオオッ!!」

小麦粉粉まみれになった儀房が、それでも大気中の水分を操ろうと集中する。
しかし、それよりも速く、上条が高速のステップインで距離を詰める。

「今度は痛ぇぞ!!」

ダッキングからの体幹の戻しを利用して、左ショートフックを儀房の肝臓に叩き込む。
とんでもない激痛が走ると同時に、次は右のショートアッパーが鳩尾に突き刺さる。

「か… はっ!!」

悶絶し、儀房がさらに身体を折ると、

「おおおおおぉぉぉぉぉ!!!」

地面スレスレを上条の拳がかすり、そのまま天頂方向に軌道を変えたアッパーが儀房の顎を打ち貫いた…ッ!!
儀房の身体が宙を舞い、背中からバタリと倒れる。

「…終わった、よね?」

緊張が解けたのか、ガッツポーズのまま固まっていたフレンダが、脱力して、へなへな、とその場に崩れ落ちた。


.

「ん~、頑張ったみたいね。うむうむ、大儀であった」

麦野がバンに帰還すると、どっと疲れた表情の3人が出迎えた。
儀房は協力な睡眠薬で眠らせてある。

「あ、一番の殊勲はアタシだかんね。麦野ぉ、ギャラの増額ヨロシク♪」
「アンタは… まぁ、ボーナスは申請しといてあげる」
「やったー!! …で、麦野の『お土産』はなんなの?」

フレンダが、いまだ意識の戻らない半裸の佐天を指差して言う。
男2人が、どう扱っていいか分からずにあたふたしている。

「アタシのマンションに滝壺と絹旗を呼んでちょうだい。
 とりあえずは、2人に治療させてから考えるわ。
 アンタはソコの男を『上』引き渡してちょうだい」
「うぃ、了解。なーに買おっかなー♪」

嬉しそうにフレンダが小躍りする。
それを見て苦笑した麦野が、不意に真面目な顔をして佐天を見る。

(ホント、どうしたもんかしら……?)

自分が起こした気まぐれを扱いかねて、麦野はこっそりとため息を吐く。
そして、「とりあえず、毛布を…!!」「膣洗浄とかした方がよくねッ!?」と騒いでる男の片割れを見る。

……自分が佐天を担いで現れたとき、上条は何か救われたようなホッとした表情をした。
それを、なぜだかその表情を大事にしたい、と、麦野は脈絡も無くそう思った……




.

――ぼんやりとした意識の中で、佐天が会話を聞く。

自分は助かったのだろうか、それとも、いまだ闇の中なのだろうか?

夏休み初日が、終わろうとしていた……



.

以上。

むぎのんエロは次回にまわします。
それでは、またキリのいいところか来週の月曜日に投下します。

あと、二回目の安価でうえのみだと佐天さん死んでました。

うん、もう日曜日でいいや。

キリがいいところまで書けたので、0時より投下します。

今回はだらだらしたエロ回です。
滝壺がようやく登場しますが、あんまり出番はありません。

あと、投下終了後に佐天関連の安価をします。

それでは、約一時間後に。

それじゃ投下開始。

今回は30kb弱。

はじめまーす。



シャァァァァ……

「……………ぁ」

肌を打つ熱量と、股間の刺すような疼痛に意識が覚醒する。
網膜から送られた光情報を、ようやく後頭葉が知覚すると、佐天の周囲には湯気が漂っていた。

「お、超気が付きましたか? よかったです。このまま植物人間かと、超心配しました」

佐天の正面から声がする。
ぼやける焦点を必死に合わせると、自分の股間に蹲っている栗毛色の髪が見えた。

「―――ひっ!!」

一瞬、悪夢の続きかと誤解し、慌てて身を引こうとすると、背中にとても柔らかい感触が、ぽわん、と弾んで、

「だいじょうぶ、きれいにしているところだから」

と、のんびりした声が耳元で聞こえた。

「え、えっと…」

混乱した頭で周囲の状況を確認する。
むっとする湿気を帯びた小部屋に、自分を含めた裸の女性が3人。

「おふろ…?」
「はい。医療用ビデを使っての膣洗浄は超終了しましたので、次はお尻の穴です。
 少々裂けてますので、滲みると思いますが、超我慢してください」

声と共に、自分の肛門に生暖かい液体が掛けられる。

「……痛ッ!!」

宣言された通り、滲みるような痛みがあって、佐天が呻く。
すると、背後の女性が、佐天が動かないように優しく抱きしめた。

背中の感触で分かるかなり大きなおっぱいが肌に潰れて気持ち良い。

「だいじょうぶ、だいじょうぶ… 綺麗にした後はお薬塗るからね?」

構図的には、レイプされたときとあまり変わらない状況だが、穏やかな口調と、温かいお肌の触れあいが佐天の緊張をとく。

「酷いことを……」

肛門を洗浄する栗毛の少女――絹旗がポツリと漏らす。

「けっこう強い薬を使ってはいますが、しばらくはトイレが地獄になると思います。必ずウォッシュレットで洗浄するのを忘れないで下さい」

絹旗の言葉に、自分が何をされたのかを改めて思い出す。

「ひっく… ひっく…!」

あの時の恐怖が想起され、佐天の瞳から涙がこぼれる。

「よしよし、怖かったね……」

背後から抱きついた少女――滝壺理后が、優しく佐天の頭を撫ぜた。




.

「…済んだ?」

24畳はあるだだっ広いLDK。
その中央のソファに座った麦野が、バスルームから出てきた3人に声を掛けた。

「はい、治療は超終わりました。けど、明日、きちんと医者に見せたほうがいいですね」
「それはその娘の判断ね」

場所は麦野の高級マンション。
この場に居るのは、家主の麦野、佐天の治療のために呼び出された絹旗と滝壺、治療を受けた佐天、それと、強制的にこのマンションに引っ越した上条。
さらに、「帰れ」と言われたのに、やや強引に上がりこんだ浜面の6人だ。

「…グスッ、あ、ありがとう、ございます… グス… グス…」

まだまだ、泣き止みそうにない佐天が、しかし、頑張ってお礼を言う。
治療した2人に、自分を助けた恩人が、このきつい目の美人だと教えられていたからだ。

しかし、麦野の反応は冷淡だった。

「別に… たんなる気まぐれだし……」

麦野の言葉に、佐天の背筋が、ビクッ、と伸びる。

「おいおい、麦野よぉ…」

浜面が軽く抗議しようとするが、麦野に冷たい目を向けられて、しゃべる姿勢のまま固まる。

「つーか、テメェなんで居るんだよ? 帰れつっただろ?」
「いや… その娘が心配だったし…」
「はぁ? 輪姦された後に、男に心配されてもうれしくねーだろ? 下心アリアリの癖にうぜぇ…」

麦野の台詞に、佐天が思わず浜面から距離を取る。

「あっ!! いやいや、マジでそんなこと考えてないから! 誤解だから!!」

浜面が慌てて否定する。
と同時に、なんでこの女は、いきなりこうも不機嫌なのだろうか、と考える。

(現場から撤収するときは機嫌良かったよなぁ… あの娘がバスルームに消えて、『上』に事後処理の報告を受けてからか…)

『仕事』の後始末などの連絡を受けるのは、いつもリーダーである麦野の役割だ。
共有が必要な情報だったら教えてくれたりもするが、基本、麦野はあまり『上』からの報告を語らない。

(何か、癇に障ることをいわれたのか、な…?)

冷や汗だらだらでそう思い、近くに居る上条に目線でヘルプを送る。
上条も、今日一日で親しくなった浜面をフォローしたいが、不機嫌な麦野を見るのは慣れていないため、どうにも躊躇ってしまう。

いやーな雰囲気が流れて、お互いが気まずそうに顔を見合わせていると、
麦野が突然頭を、ガシガシ、と乱暴に掻いて言った。

「……シャワー浴びてくる。滝壺と絹旗、悪いけど、その娘の面倒、最後まで見てやって。アタシは…無理」

それだけ言い残して、麦野沈利はバスルームに消えた。

「……はぁ、麦野は、超拾ってきた猫の育成を母親に任せるタイプですね」
「それだけやさしいんだよ」

ここに居る誰よりも麦野との付き合いが長い2人には、麦野の心情がある程度分かるようだった。
滝壺が、「とりあえず、すわろ?」と佐天を促し、絹旗が「キッチン、超勝手に使いますよ」とキッチンをあさり始めた。



.

「『体晶』で能力発現ですか… 超申し訳ありませんが、それは完全に詐欺ですね」
「そうなん、ですか…」

絹旗が作ってくれたホットミルクを啜りながら、佐天は、ほぅ、と溜息を吐いた。

「そうだね… それに、あれは無闇に使うものじゃないよ…」

滝壺がやけに重い口調で言う。
それもそのはずで、彼女の『能力追跡(AIMストーカー)』は、『体晶』による能力増幅が前提条件となる能力だ。
そのため、稀にでは有るが、確実に『体晶』を使用するケースがあり、『体晶』のデメリットも熟知している。

「使った後は、丸一日ふらふらするし、熱出るし、良い事ないよ」
「まぁ、ああいう滝壺は見たくねぇな。痛々しくてよ」

佐天から一番離れた席に座った浜面が言う。
…あそこまで麦野に言われたのに、それでも帰らない浜面を、上条はすごいと思った。

「…半分は詐欺だと思っていました。けど、少しでも可能性があるならって…」
「すべて他人任せの可能性なんて、超失敗するに決まってますよ」

言い訳めいた佐天の思考に、絹旗が釘を打つ。

「…はい、迷惑をかけてすいません」
「ま、麦野もああ言ってますし、超出来る限りのフォローはします。
 …『精神洗浄』とか、やる覚悟があるならツテを紹介しますよ?」

絹旗が言う『精神洗浄』とは、薬、ないしは高位能力を用いての記憶操作だ。
心的外傷や情報の忘却などに使われるもので、一般人には馴染みが薄いものだ。
もちろん、方法によっては後遺症も存在する。

「えと、えっと……」

佐天の瞳が迷うように揺れる。
そして、その頚が縦に振られようとしたとき、滝壺の制止が入った。

「だめ、忘れちゃだめ」

柔らかく、しかし有無を言わせぬ言葉だった。
絹旗が軽く肩をすくめ、浜面が静かに頷いた。

「まぁ、そうだな… 俺も忘れないほうがいいと思うぜ。失敗は投げ出したり忘れたりするもんじゃねぇ、向き合うもんだ」

重々しく言う、が、芝居臭い。

「くさっ! 滝壺がいるからって、背伸びしすぎです…」

絹旗が鼻をつまんで顔の前で、ぱたぱた、と手を振る。

「あ、強引に残っているって、そーゆー…」
「ば、ばか、ちっげーよ!!」

上条が得心したように手を打ち、浜面が慌てて否定する。

「しかも、彼女を心配するフリしてダシに使っています。超最低ヤローです」
「むぅ… これは上条さんもフォローできねぇ…」

絹旗がさらに追い討ちをかけ、上条もそれに同調する。

「お、お前ら…」

狼狽し、しかし、なんとか笑顔だけは崩さないまま、浜面が、ちらちら、と滝壺を見る。
彼女は、にこにことした笑顔を崩さずに言った。

「だいじょうぶ。最低ヤローなはまずらも応援している」
「いや、応援しないでくれ…」

がっくりとうなだれる浜面。
それを見て、佐天の顔にようやく微かな笑みが浮かぶ。

「ふふ…」

それを見た絹旗と上条が目線を交わし、そっと溜息を吐いた。



.

「…まだ居るし」

ほどなくして、タオルで頭にターバンを巻いた、バスローブ姿の麦野が現れた。

(うーん、すごい… 美女ってこういう人を言うんだろうなぁ…)

その余りにもの『らしさ』に、佐天が素直に感嘆する。
同級の中では、発育は良い方だと思っているが、これから、どう成長してもこの雰囲気を出せるとは思わない。

「あー、それじゃ、俺はそろそろ…」
「ねぇ、むぎの。今日は泊まっていっていいでしょ?」

流石にこれ以上は無理だと判断した浜面が腰を浮かせるが、それに被せるように滝壺が言った。

「え?」
「ね、ここのソファで寝るから」

滝壺の提案に、麦野がげんなりとした顔を作る。
ほぼ、麦野沈利の意思で動く『アイテム』だが、唯一、麦野に意見を言えるのが滝壺だ。
滅多に自己主張をすることはないが、だからか、たまに言う意見は中々曲げることはない。

「…勝手にしなさい。アタシはもう寝るから、騒がないでよ」

本当に興味がなさそうに麦野は言って、自分の部屋のドアを開けた。
そして、上条を、ジロリ、と睨むと、人差し指を手前に、クイクイ、と曲げて「上条クンはこっち」と言う。

「あ、はい……」

半ば予想はしていたが、流石にこの人数の前での指名は恥ずかしくて、なるべく他の顔を見ないようにして麦野に駆け寄る。

「あの、俺… うわっ!」

何か言いかけた上条を、突き飛ばすようにして部屋に放り込む。
微妙な顔をした面々をチラリと見ると、麦野は一言「おやすみ」と言って、ドアを閉めた。

「……ま、あとは超哀れな彼氏に任せましょう。っていうか、滝壺は何を持ってきたんですか?」

嘆息する絹旗が滝壺を見ると、彼女はかなり大きなリュックをがさごそと漁っていた。

「えへへ、じゃ~ん、みんなでやろうとおもってたんだ」

滝壺が取り出したのは、一昔前――ただし、学園都市の外ではまだギリ現役――の家庭用ゲーム機だ。

「あー、そういえば、この前、第7学区で買ってましたね…」
「人数がそろうチャンスをまってたの」
「うわー、懐かしいです……」

興味がある風の女性3人に混じって、1人浜面はあぶら汗を流す。

(えっと… 多分、ドアの向こうじゃ麦野が上条とヨロシクやってて、俺はここでかわいい女の子3人と朝までゲーム…!?)

「はまづらもやるよね?」

好きな女の子の可愛い笑顔。
これは楽園なのだろうか、それともハニートラップの入り口なのだろうか。
どこまで理性が持つのか分からないまま、浜面は性欲との戦いを決意した……




.

部屋に入るなり、麦野はベッドに腰掛けると、枕元のサイドボードから小さなポーチを取って上条に投げ渡した。

「おっと…!」

上条がポーチをキャッチして怪訝そうな顔をすると、麦野は長いおみ足を上条に向けた。

「ペディキュア剥がして、ネイルケアしてちょうだい」

麦野の言葉に上条は戦慄する。
当然、女性の爪のケアのやり方など知らない。

「えーっと…」
「心配しなくても、そのポーチに道具一式とやり方書いたメモがあるから。…丁寧にやりなさいよ」

そう言われて、ポーチの中身を物色すると、様々な化粧道具と、雑誌の切り抜きが丁寧にスクラップされた小さくて可愛いノートが出てきた。
その、あまりにも女の子なノートを見て、麦野沈利にもこんな側面があるのだと感心する。

(鼻歌を歌いながら、ファッション雑誌のスクラップを作る麦野さん… うん、アリだな、アリ)

「なにニヤケてんのよ、早くしなさい」

そう言うと、麦野は、ドサッ、と上体をベッドに倒す。
ベッドに仰向けになって、足だけ投げ出した格好だ。

麦野に急かされて、上条は慌てて麦野の足を持ち上げた。
ノートの1ページ目を凝視して、恐る恐る『non acetone』と書かれた除光液を取り出す。

「あ… 下準備がいるのか……」

除光液のキャップを開ける前に、麦野の足指の間にスポンジを挟み込む。

(うーん… なぜだか知らんが興奮するな……)

麦野の足はひと目で分かるほど形が良く、――変態的だと思うが――思わず舐め回したい衝動を覚える。

「除光液をティッシュに浸み込ませて……」

恐る恐る、鮮やかオレンジに染まった爪にティッシュを当てる。
しばらく時間を置いてティッシュをずらすと、気持ち良いくらいにペディキュアが剥がれた。

「お…!」

やってみると意外と楽しい。
コツを掴んだ上条は、ただし極めて慎重に、残りの爪のペディキュアも一気に剥がす。

「次は、えーと、爪磨きか……」

ぺらぺらしたプラスティックの研磨シートをつまみ、『コレを参考に磨く!!』とメモ書きされた写真を横目に、一心不乱に麦野の爪を磨く。

こしこしこしこしこし……

しばらく静かな時間が流れる……
麦野は、天井を仰ぎ見たまま何も言わない。
上条も、沈黙の雰囲気を感じ取り、何も言わない。




.

不意に、麦野が言葉を作った。

「………ねぇ、上条クン?」
「………はい?」

手の動きを休めず上条が答える。

「あの娘、可哀想だと思う?」
「それは…………」

上条が言葉を選んでいると、麦野が上体を、むくり、と起こす。
その拍子に、バスローブの袷が開いておおきなおっぱいがこぼれたが、麦野は隠そうともしない。

「おべっか使わなくていいから、素直に答えて。上条クンの本音が聞きたいの」

真剣な目で言う。

「そりゃ… そうスね…… やっぱり、可哀想だと思います。無能力者の劣等感って、クラスメイト見てりゃこっちも感じますし。
 自業自得かもしれないけど、初体験がレイプだなんて、許せないです」

麦野の目をみてしっかりと言う。

「そう、そうよね…」

予想通りだが期待はずれ、そんな雰囲気ありありで麦野が口を尖らせる。

「麦野さんは、そうは思わないんですか?」

上条が踏み込んで問う。麦野は聞かれたがっている。そう感じたからだ。

「………………………」

麦野が顔を不機嫌にしかめる。しかし、その不快感は上条に向けられたものではなかった。

「……この学園都市において、無能力者(レベル0)であることがどんなに幸せなことか、あの娘はそれが分かってないのよ」

独白するように、麦野沈利が一気に言う。

「どういう、ことですか?」

麦野の言葉の意味が分からない。
この学園都市では、レベルは学生のヒエラルキーそのものだ。
それなのに、頂点に立つ超能力者(レベル5)である麦野がそんなことを言うのはおかしいと思った。

しかし、麦野は上条の質問には答えず、逆に上条に聞き返した。

「上条クンは、どうして自分の能力を秘密にしていたの?」
「えっ? ああ、いや、大した理由じゃないんですけど……」

上条の脳裏に、優しい目をした老教師の顔が思い浮かぶ。

「…俺は中学のときのシステムスキャンで無能力者(レベル0)だということが分かったんですけど、ひょんなことからこの『幻想殺し』があることを知りました」

じっと、自分の左手を見つめて言う。

「そん時は、嬉しくて… で、まず最初に一番親しい友達、そして、担任の先生に報告したんです」

その教師は、定年をはるかに過ぎて、なお教壇に立っていた老教師だった。
しかし、その教師は喜ばなかった。それどころか、これまで見せたこともない、鬼の様な形相でこう言った。

『上条くん、この能力のことは、誰にも言ってはいけない。
 君は、最後まで無能力者を装ってこの実験都市を出て行きなさい…!』

この言葉は忘れることができない。
普段は温厚な老教師が見せる鬼の形相に、幼い上条は、自分がとんでもない能力を宿していることを知った。

「……そっか、良い先生に出会えたわね」
「はい… でも、なんで秘密にするように言われたのかはさっぱりで…」
「わからないの?」

麦野にそう言われ、上条は必死に頭を捻る。
捻って捻って捻りまくって、しかし、マンガのような理由しか思い浮かばない。

「か、解剖されちゃうとか…?」

ハハ、と引きつった笑いを浮かべて言う。
冗談のつもりだが、麦野に通じなかったらどうしよう、と上条が冷や汗を流す。だが、

「なんだ、わかってるんじゃん」

予想外の回答がきた。

「へ…?」
「その先生は、この学園都市の闇を少なからず知っていたんでしょうね…
 いえ、『実験都市』なんて言い方するくらいだから、相当深いところまで知っていたのかもしれないわ」

呆然とする上条を尻目に、麦野が言葉をつなげる。

「あらゆる能力をキャンセルする能力だなんて、どんな系統にも属さない、オンリーワンでミラクルな能力よ。
 …研究者が知ったら、涎どころか、精液垂れ流すんじゃないかしら」

麦野の下品な表現で上条が我にかえる。

「じゃ、じゃあ、先生がああ言ったのは…!」
「非人道的な研究から、キミを守るためでしょうね…」

そう言って、麦野が心に微妙な感情を作る。

(そうやって、いろんな人が守ってきた子を、私が拐かしたわけか…)

彼女としては本当に珍しいことに、麦野沈利は少しだけ自分の行動を悔やんだ。

「上条クン… 貴方が考えている以上に、この学園都市の闇は深くて、濃いの。
 外より10年以上進んだ科学を、『ノーリスク』で享受できることが、幸せ以外の何だと言うの?」

麦野が、上条の瞳を、じっ、と見て言う。

「…考えたこともなかったです」
「今からはよく考えなさい。必要になるから…」

そう言って、麦野は上条がケアした足の爪を、ためつすがめつ眺めた。

「…ン、初めてにしては上出来かな……?」
「え、そうですか? よかった……」

上条はホッと胸を撫でおろし、自然な笑顔を浮かべた。
声色から、多少は麦野の機嫌が直ったことを感じたからだ。

そんな上条の仕草を見て、麦野は複雑な感情のうねりを感じる。

(…贖罪? それとも、彼に媚でも売ってるのかしら…?)

彼女の機嫌が突然悪くなった理由。
それは、『上』から儀房の処理が完了したと報告を受けたからだ。  .・ .・ .・
そして、『上』が通達した儀房の末路は、元鞘の『コスモ・シリンダー』研究部預かりになる、というものだった。

(一生、研究者の実験動物になるのか… それとも……)

そこまで考えて、麦野沈利は思考を止めた。
そして、このことは決して上条には言わないと決めた。

(…人殺しはさせないって、約束したからね)

どうして自分でもそんな約束を守ろうとしているのか……
麦野沈利は、分かっていることを分からないことにすると、はだけたバスローブを脱ぎ捨てて一糸纏わぬ姿になった。

「あ、麦野さん……!」

期待と興奮で声が上擦る。
隣の部屋には、浜面はじめ4人の男女がいるが、この裸体を見たら、羞恥など吹き飛んでしまう。

「今日は疲れているし、昼間にたっぷりサービスしてあげたから、今夜は全受けでいくわ。
 アタシが満足できるように、頑張ってリードしてね」

そう言うと、今度は両足そろえてベッドに仰向けに寝そべる。
形の良いおっぱいが、重力に逆らって天を突く。

「…わかりました、頑張りますッ」

上条とて、リードされっぱなしは男として嫌なものだ。
リードした経験など全く無いが、男子学生の嗜みとして読み漁った各種参考書――つまりはエロ本――の内容を真剣に思い出す

(まずは、Aからだよな…)

昨夜のセックスで、麦野がキス魔であることは何となく理解していた。
上条は、「麦野さん、キスします…」と声を掛けると、静かに目を閉じた麦野と口唇をあわせた。

柔らかい… 昨夜は興奮しすぎて感じられなかった口唇の感触に、上条の鼓動が速くなる。

「ん… ちゅ… ちゅ……」

啄ばむようなキスを暫く繰り返すと、上条は舌を麦野に這わせながら、ゆっくりと頭を下げていった。
程なく、目標地点である豊乳の先端に到達する。

「……私のおっぱい、好きなの?」

わずかに潤んだ瞳で麦野が言う。
上条はそれには答えず、麦野のおっぱいにむしゃぶりついた。

「あン… あぁ…!」

敏感な乳首に吸い付かれ、麦野がたまらず息を吐く。
その反応に手ごたえを感じた上条が、さらに乳首を舌で嬲る。

じゅぷ、じゅぷ、じゅぷ……!

舐め続けていると、乳首がわずかに勃起したのが分かる。

(麦野さん、感じてるんだ……!)

軽い感動が上条の心に生まれ、ペッティングにますますのめり込んで行く。
片方の乳首を舌で転がしながら、もう片方の乳首を手で愛撫する。
固くしこった乳首を、指で挟んで弄ると、麦野の身体が小さく震えた。

「はぁん… くぅ…」

何かを堪えるように麦野が呻く。
口での愛撫をそのままに、手でおっぱいを鷲掴みにして掌で乳首を、ゴリッ、と刺激する。

「…ンッ!!」

麦野の身体が明らかに跳ねる。

(激しいのが好きなのかな…?)

試しに、口に含んだ乳首を上下の歯で捉えて、コリコリ、と甘噛みをしてみる。

「あん! そこぉ……」

効果は劇的だった。
麦野は、もう離さない、といった風に上条の後頭を両手で押さえる。
頭を拘束された上条は、それならいっそ、と一心不乱に乳首を責める。

じゅぷ、カリ、コリ…!

全身から麦野の鼓動を感じる。
十分に麦野が昂ぶったと感じた上条は、唯一フリーな片手をそっと麦野の股間に回す。

「……ン」

太ももを遠慮がちに撫ぜると、麦野はその行動を待っていたかのように股を開いた。
女性器の形状を必死に思いだして手で探ると、柔らかい陰毛の先に複雑な器官に触れ、

ぐちゅり…

麦野沈利が濡れていることを知った。

濡れた性器を指で弄り回す。
偶然、指が敏感なクリトリスを爪弾いて、麦野の身体が跳ねる。

「あッ… そこは優しく扱ってちょうだい……」

滅多に聞けない麦野の懇願。
そこに支配する喜びを感じた上条が、やや乱暴にクリトリスを指で押し潰す。

「きゃん!! もぅ、駄目じゃない……」

口ではそう言っていても、麦野は抵抗する素振りを見せない。
それを無言のメッセージだと感じた上条は、中指で膣口を探り、そのまま、ずぶずぶ、と指を根元まで押し込んだ…!

「はぁぁぁぁぁ…!」

努力呼気を全開にして麦野が悦楽の声を上げる。
ここが勝負どころだと感じた上条は、膣に埋まった中指を引っ掻くように動かし、親指でクリトリス押し潰す。
さらに、両の乳首も口と指で刺激を加え続ける。

「ああッ!! それ、駄目ぇ!! おかしくなるッ!!」

予想外な4点責めに、麦野の快楽のメーターが一気に振り切れる。

「ひぃ! あっ、あっ、あっ… あぁぁぁぁぁ!!!!」

頭を掴んでいた両手をベッドに叩きつけ、シーツを滅茶苦茶に掻き毟る。
おとがいが限界まで反り上がる。

「イク… イクぅ……ッ!!」

一瞬、ブルリ、と大きく身体を震わせ、おこりに掛かったように身体を突っ張らせた後、麦野は糸が切れたように脱力した。

「……っ、は~~…」

全力の愛撫で疲労した上条も、ようやく一息をつく。
膣から指を引き抜くと、麦野をつぶさないようにベッドに倒れこむ。

「ふぅ… はぁ、はぁ……」

荒い息をゆっくりと整えると、はにかむような笑みを上条に見せる。

「…イカされちゃった、馬鹿ぁ」

初めて見せた麦野のその笑顔は、再び上条の身体に灯を入れるに十分な破壊力を持っていた。

『麦野さんッ!!』
『きゃ、もぅ… イッたばかりなんだから、最初はゆっくりね……』

ドアの向こうからやけにはっきりと声が聞こえる。

「あぅあぅ… 声が大きすぎますよ……」

ひたすらゲーム画面を凝視することに集中し、他からの情報をシャットダウンしようとするが、どうしても耳が音を拾ってしまう。

「あぁー!! そこのエリアは私の店が3軒あるのに! 絹旗、超卑怯ですッ!!」
「ふふふ、株の相乗りはいたストのきほんだよ」

絹旗と滝壺は慣れているのか、隣室の艶声などどこ吹く風でゲームに集中している。

「…あの、みなさん、平気なんですか?」

顔中を真っ赤にして佐天が呟く。

絹旗と滝壺は、「ん?」とお互いに顔を見合わせると、絹旗が諦め顔で、ぱたぱた、と手を振る。

「麦野は超アノ時の声が大きいですからねぇ… もう、超慣れっこです」
「きもちよさそうだよね、むぎの」

少女2人がなんでもないように言う。

ちなみに浜面は、

「あれは父ちゃんと母ちゃんのセックス… あれは父ちゃんと母ちゃんのセックス……!」

と念仏のように呟くことで、なんとか平静を保っている。

「てゆーか、今の段階で超ギブアップですか? これからが超凄いんですけど…」

絹旗が何気なく言った言葉に、佐天と浜面が石像と化す。

「………え、なんで?」
「だって、これから本番みたいですし、麦野、超ケモノな声を出しますよ」

ぼん!

ブレーカーが落ちたように佐天が側面に倒れこんだ。

「あんッ! あんッ! あんッ!! もっとッ! もっと、おまんこ突いてぇ!!」

折り畳まれた屈曲位で激しく腰を打ちつけられた麦野が吼える。
時折、お互いの陰毛が絡み合うまで深く腰を打ち込んで、情熱的なディープキスを交わす。
前戯によって充分に潤った麦野の膣からは、ペニスとの摩擦で白濁した愛液が吹き出す。

「はぁ、はぁ… うっ… 出る…ッ!!」
「いいよ! 腟内に出してッ!!」

ドクッ、ドクッ、ドクッ……

子宮口に直接ぶっ掛ける勢いで射精する。
体奥に暖かい奔流を感じ、麦野は多幸感を感じた。

「薬のんでなきゃ、絶対妊娠してるわ、これ……」

下腹部を撫ぜながら麦野が言う。

「…ゴム着けろって言われたら、ゴム着けますよ、俺?」

避妊薬が少なからず母体へ影響を及ぼすことを考え、上条が躊躇いがちに言う。

「アタシは腟内射精が好きなのよ。生ハメもね」

妖艶な笑みを浮かべて言う。

「アンタは変なこと考えないで、どばどば精液を注ぎなさい」

そう言って、麦野の膣が妖しく収縮する。

「…それじゃ、次はバックで行きます」

瞬く間に硬度を取り戻したペニスを埋め込んだまま、ゆっくりと麦野の身体を半回転させる。

「……ガンガンいってね」

麦野の言葉を合図に、手形が付くほど麦野の腰を掴んだ上条が、ガンガン腰を振り始めた。



.

『ああ! 凄いッ!! 上条クンのおちんちんが子宮突いてるッ!! 気持ちいいッ、おまんこ融けちゃう!!』

相変わらず、リビングには丸聞こえだった。

「おーおー、今日は超特に激しいですねー。流石、我が『アイテム』が誇るビッチむぎのんです」

コントローラーをかちゃかちゃ動かしながら絹旗が言う。

「きもちよさそーだねぇ」

行為の内容を分かっているのかいないのか、滝壺が無表情にそう呟く。

「こーなると向こうが終わるまで眠れませんから、ゲームの存在は超ありがたいですね… よっしゃ、ボンビーのなすり付けに成功ッ!!」
「ぐ… きぬはた、卑怯……」
「なーにいってるんですか、超常套手段です♪ はい、次は貴女の番ですよ」

絹旗が傍らの佐天にコントローラを差し出す。

「………あ、ども」

先ほどまでは顔を真っ赤にして「うひゃあ…」とか、「すご…」とか呟いていた佐天が、妙に神妙な顔をしてコントローラを受け取る。

「……? 超どうかしましたか?
「いえ…… 本当はあんなに気持ち良いものなんですね、セックスって……」

その台詞に、絹旗と滝壺が顔を見合わせる。

「はぁ… まぁ、世間的には超そーゆーもんでしょう。しかし…」

チラッと絹旗を見る。

「私も滝壺も超処女ですから、超アレがどんだけ気持ちいいのかは、よく分かりませんけどね」
「そう、なん、ですか……」

内心の動揺を隠して佐天が言う。
自分より年下に見える絹旗はともかく、明らかに年上で、お風呂で豊満なおっぱいを堪能した滝壺が処女とは意外だった。

「……あ、ねぇねぇ、はまづら?」

その滝壺が、最早地蔵のように表情を固めた浜面に話しかけた。

「………………は、なに、滝壺……?」

殆ど唇を動かさずに、極力、滝壺を見ないように浜面が言う。
が、しかし、滝壺は強引に浜面の視界に入るように身をくねらせて近づくと、ほんのり微笑をたたえて言った。

「はまづらも、女の子を気持ちよくさせたことあるの…?」
「ぐはぁぁ!!」

血を吐くような叫び声を上げて、浜面が真横に倒れ込む。

「鬼だ… 超鬼が居ます……」

戦慄の表情で絹旗が呟く。

「はまづらどうしたの…? おなかいたいの…?」

突然倒れた浜面に慌てたのか、滝壺が心配そうに擦り寄る。
                                     ・ ・ ・ ・. ・ .・
そして、何をと勘違いしたのか、その白く華奢な手で浜面の下腹部らへんを撫ぜ始める。

「どこかな? ここ? ここが痛いの?」
「はぅぅッ!!」

ビクッ、と一瞬ひどく身体全体を痙攣させて、浜面が動かなくなった。

「あれ…? はまづらねちゃった?」

不思議そうに首をかしげた滝壺は、「お…」と何か閃いたように指を立てると、「どっこいしょ」と倒れた浜面の顔を持ち上げた。

「まくらがあった方がいいよねぇ」

とすん、と浜面の頭部を正座した自分の太ももの上に乗せる。
しかも、浜面の顔が自分の中心を向くような角度である。

「…………………………いっそ、殺せ」

天国か地獄か、夢か現か、甘い女の子の体臭に包まれた浜面が、低く呟いて全身を弛緩させた……

.

―――翌朝。

「お世話になりました」

身支度を整えた佐天が、朝シャンを終えてラフな格好でダイニングに座る麦野に頭を下げた。

「…ン」

オレンジジュースを口につけた麦野が、視線だけで返事をする。

「今日はどうすんの?」

麦野の朝食を作っていた上条が、カウンター越しに話しかける。

「絹旗さんが口の堅いお医者さんを紹介してくれるそうで…」

取り敢えずの応急処置はしてあったが、朝起きたら股間に当てたガーゼは真っ赤だった。
それを見た絹旗が、「一度、超しっかりと医者に診てもらうべきですね」と言ったのだ。

「そっか… あんまり、気にするんじゃねぇぞ」

少し躊躇いつつも、上条の性格では言わずにはいられなかった。
しかし、佐天は意外にもさっぱりとした顔で返事をした。

「ありがとうございます。昨日のことは、犬に噛まれたとでも思うことにします」
「あ、そう、か……」

少し拍子抜けに上条が言う。

「はい。 ……お2人のおかげです」
「は?」

より具体的に言うと、麦野の嬌声のおかげだが、流石にそれを言う度胸は佐天には無い。

(初めては痛いって言うし、これからどんどん気持ちよくなっていくのかな…?)

昨日のレイプは悪夢でしかないが、セックスという行為自体には、より興味を持ってしまった。

(夏休みだし… ソッチの方向で、ちょっと背伸びしてみようかな……)

上条が作ったフレッシュサラダを、むしゃむしゃ、と食べている麦野を窺う。

「………なに?」
「いえ、本当にありがとうございました」

再び頭を下げる。

(凛としてて、エロカッコよくて、たぶん、高位の能力者で、こんな高いマンションに住んでて、可愛くて甲斐甲斐しい彼氏さんが居て……
 麦野さんって、凄いんだなぁ……)

一晩明けて、麦野の印象が畏怖から憧憬に変わった気がする。
能力者としては無理でも、女性として麦野を目標にするのは、なかなかに心躍るものがあった。

(まずは素敵な彼氏作りだ…!)

佐天涙子の夏休みが始まる……



.










―――――とある処女達のお化粧タイム。

「……けっきょく、昨日もはまづらは襲ってくれなかった…」

「えっ!? あれ、超誘ってるつもりだったんですかッ!?」

「わたし、がんばったのに… ぐす… わたしに魅力が足りないのかなぁ…」

「い、いや… あの状況で襲ったら、私が超殴り倒してますよ……」

「…そうなの?」

「浜面、超不憫な……」







                                     第一話  了

はい終了。

10分後に佐天産に関する安価だすね。

あと、アニレー2期万歳。

麦野が動く姿が早くみたいぜ。

誰もおらんか、まぁいいや。

佐天の相手。

1.ぶりっと
2.ゆうき
3.たすく
4.りょうと

下1

はい、2ですね。
ユウキか、なるほど…

まぁ、出るかどうかはわかりませんけどね。
単に、佐天さんのセカンドバージンを書きたいだけなので。
それと、適当な既存キャラが居ませんので、佐天さんの相手はオリキャラです。

基本的に一穴一棒で行くつもりです。

それでは、次の日曜らへんに。

エロが気に食わないので書き直します。
明日投下予定。

あんま納得できなかったけど、まぁ書けたので今日の19時に投下予定。

ちなみに今回から第2話。
タイトルは、うーん、「恋敵」?

1話とは違って、ラブラブでエロエロな話になる予定。あくまで予定。予定は未定。

むぎのんの恋のライバルも登場するよッ!
ツンデレが可愛いあの娘だよッ!

あ、佐天さんの登場シーンは今のところ考えていません。多分、2話には出ない。

もし、登場シーンを増やして欲しかったら、↓1にむぎのんのライバルを予想して当ててください。

ではでは。

御坂はもう死んだ!(恋愛的な意味で)
吹寄辺りと見た

ちょっと用事ができたので、前倒しして今から投下します。

今回は30kB弱。試験的に挿絵AA入れます。

あと、むぎのんのライバルは残念ながらはずれ。
佐天さんはしばらくフェードアウトですな。

それでは開始。



S-1 第7学区 緑化公園

「はっ、はっ、はっ、はっ…・・!!」

シン… と静まり返った真夏の早朝。
第7学区の緑化公園内には、早朝ランナーがポツリポツリ居るぐらいだ。

その公園に、自主トレに励む1人の少年が居た。

「フゥ… シュッ!!」

小刻みなステップワークをなぞった後、軽く左手のみでシャドーを行う。
ブンッ、ブンッ、っと肉体が音を立てる。

「………うしッ!!」

感触を掴んだら、今度は本格的なシャドーを行う。
基本は左、右のワン・ツー。
時折、左右のフック、左手のスマッシュ、右手のロングフック、アッパーを交える。

「……………………ぉお!!」

約30秒ほどシャドーを繰り返して、最後は右ストレートで締める。

「はぁ… はぁ… はぁ……」

膝に手をついて大きく深呼吸を繰り返す。
首にかけたタオルで汗を拭うと、目の前に、にゅ、とペットボトルのミネラルウォーターが差し出された。

「よーやく、自主トレに復帰かよ、かみやーん」

少年―――上条当麻はバツが悪そうに笑みを浮かべて、土御門元春の差し出したペットボトルを手に取った。



.

「3日もサボるなんて、いっくら夏休みといえどもたるんでるにゃー」
「いや、ワリィ… ちょっと、それどころじゃなくてさ…」

この数日、夜には必ず麦野と肌を重ねており、ぶっちゃけ、朝錬の時間に起きれなかったのが真相だ。
昨夜は、麦野が早々に自分の部屋に引き揚げたので、いつもの朝錬の時間に起きることができたのだ。

「にゃー、トレーニングは3日サボると、取り戻すのに1週間はかかるぜい?」
「や、すまん、このとーり」

拝むように土御門に両手を合わせ、上条がにへらと笑う。

「…で、新しい暮らしはどうよ?」
「あー、刺激的であることは間違いねぇな…」

上条が慎重に言葉を選ぶ。
己の身分の隠し方については、昨日の昼から夕方にかけて、麦野からとっくりとレクチャーを受けている。
驚くことに、麦野や上条が住むマンションは一種の『セーフハウス』であり、あのマンション丸々一棟が麦野の持ち物であるらしい。

しかも、書類上は上条はあのマンションではなく、第7学区にある別のアパートに住んでいることになっており、
そのアパートは専門のスタッフによって、毎日『男子学生が生活した空間』を演出しているらしい。

(どんだけ金が掛かってんだよ…)

そのため、友人などに家を訊かれた場合はこのアパートの住所を教えれば良いらしい。
突然訪ねてこれられても、それは単なる留守であり、約束を取り付けられたら、実際にアパートに居れば良いのだ。

「…つーことで、尾立荘っていう所に住むことになったよ。来るときには連絡入れろよ」
「んー、まぁ、そのうち伺わせてもらうぜい」

土御門が興味なさそうに言ったことに、上条が胸を撫で下ろす。
…色々と恩があるこの男は、あまり騙したくないのだ。

「あ、でもかみやん。学校に引越しを届けるんなら、早くした方がいいぜい?」
「あー、やっぱり子萌先生には早めに言っとくか…」

今週1週間は補習である。
風の噂では、担任の月詠子萌教諭は、補習終了後には各生徒に家庭訪問をするという。
それが本当なら、それまでには伝えておいたほうが良いだろう。

「にゃー、子萌先生もだけどにゃー。アイツ、昨日来たぜ。前のかみやんの部屋に」
「アイツって… まさか……」

上条が問い返そうとしたとき、土御門のポケットから、Pririririi...と携帯の着信音が響いた。
着信画面を見た土御門は、軽く眉を歪めると、「ワリ、ちょっと急用みたいだ」と軽く手をあげて上条から離れた。

「おい!」
「ほんじゃ、今日の補習でな~」

流れるような動作で、土御門元春は上条の前から消え去った…




.

「……チッ、こっちは中学からのダチと立ち話しただけだっつーのッ!!」

電話に出た土御門は、挨拶の言葉もなしに電話口に毒づく。

『監視対象は、既に貴方の管理下から外れているのですよ? 以後の管理は『アイテム』が担うと通達があったはずです』
「だからって、3年間ほぼ毎日顔を合わせてた友人と、いきなり絶交しろってか? アホか…」

普段の軽薄な口調とは全く違う、険のある口調で言う。

『距離の取り方などいくらでもあるでしょう? それに、貴方が不用意に接触しようとしなければ、監視対象が勝手に貴方を避けてくれるはずですよ?』
「ごくろーなことだよ…ッ」

実際、今日会ってみて、上条が自分を避けようとしてる雰囲気は感じられた。

(カミやんは友人想いだからな… )

暗部に友人を巻き込まないための努力を、土御門ははっきりと感じていた。

(だからって、放っとけるかよ……!)

土御門元春も、学園都市に蠕く暗部の一員である。
しかも、上条が所属した『アイテム』などより、もっと深い、イリーガルな組織に所属している。

上条と友人関係であるのも、最初は『暗部』の任務であった。
しかし、多感な時期に多くの時をともに過ごした観察対象は、いつしか本当の親友へと様変わりしていた。

「とにかくッ! お前らの邪魔をするつもりは無い! 立ち話ぐらいでいちいち煩いんだよ!」
『……わかりました。ただし、こちらの障害となれば、警告無しで排除させていただきますが?』
「…ああ、そうしろ。そんなヘマは踏まんがな」

熱くなっている。と土御門は柄にも無く感じた。




.

S-2 麦野のマンション「Melt kiss」

「ただいまーっす…」

時刻はまだ早朝と言える朝の7時。
麦野がまだ寝ている可能性も考えて、小声でマンションに戻った上条だが、

「おかえりなさい」

麦野はばっちり起きていたらしく、タンクトップにスパッツのラフな格好でダイニングテーブルの前に座っていた。
テーブルには、今日の新聞やファッション雑誌、学園都市が発行するTOWN誌などが積まれている。

「おはよ」
「おはようございます」

軽く目を合わせると、上条は麦野に近づいて軽く唇を合わせた。
『朝、顔を合わせたら必ずキスすること』とは、麦野が上条に課した様々な注文のうち1つだ。

「ん、よし。トレーニング?」
「はい、マメにやっとかないと、身体が鈍るんで」
「マッサージとか出来る?」
「ええと、ストレッチぐらいなら…」

上条が躊躇いがちに答えると、麦野は「よしよし…」満足げに頷いた。

「それなら今度やって貰うわ。今日の朝食はアタシが作るから、上条クンはシャワー浴びてらっしゃい」
「え、良いんですか?」

『朝食は基本的に上条担当』も麦野が決めたことだ。

「良いわよ。けっこう臭うから… 汗臭い男は嫌いじゃないけど」
「ありがとうございます」

上条がペコリと頭を下げると、なぜか麦野が不満げに眉を寄せた。

「2人きりの時は我慢するけど、外で一緒に居るときは敬語はやめてね」
「は… あ、あぁ…」

麦野の言葉に、「はい」と言おうとしたのを慌てて言い直す。
しかし、この怖くて美しいお姉さまに、敬語以外のどんな言葉で話していいか分からない。

「えと、タメ口で良いの…?」
「いーのよ、アンタはアタシの彼氏なんだから。デート中に敬語しゃべったらひっぱたくからね」

真顔でそう言われ、上条はそのシーンを想像して「はは…」と苦笑した。



.

「うめぇ…」

ダイニングテーブルに並べられたフレンチとトーストをガツガツを頬張る。
上条も1人暮らしが長いので、色々と料理には自信があるつもりだったが、このフレンチトーストは味を再現できそうにない。

「オトコノコって感じねぇ」

ダイニングに頬杖をついた麦野が言う。
彼女はフレッシュジュースとサラダだけだ。

「むぐ… 麦野さん、料理うまいッスね」
「ちょっとハマッた時期があってね、その名残。あんまり他人に作ったことがないから、味が合ってよかったわ」
「…俺の朝食は、きちんと作れてます?」
「サラダをまずく作れる人間が居たら会ってみたいわねー」

麦野がフレッシュジュースを口につける。
遠まわしに及第点を与えられて、上条が密かに胸を撫で下ろした。

「いやぁ、メシマズって、マジで居ますよ? サラダは流石に無いでしょうが、クソ不味い目玉焼きなら食ったこと有ります」

麦野のプレッシャーにだいぶ慣れたのか、上条の口が滑らかに動く。

「はぁ? 目玉焼きをどーやって不味く作んの? あんなの焼くだけじゃん?」
「いやぁ… 『健康に良い菜種油』とか『頭が良くなるカルシウムスパイス』とか、
 そういう、怪しげな健康サプリメントを入れたがるヤツが居て……」

その時の味を思い出したのか、上条の顔が微妙に歪む。

「加熱時間とかはきっちり計っているから、焼き具合は完璧なのに、
 肝心の味が駄目駄目っつー、ある意味、芸術品が生まれまして…」
「ふ~ん…」

上条の話を軽く聞いていた麦野が、瞬間、にやっと表情を変える。

「それって、前カノの話?」
「ぶはっ!!」

突然投下された麦野の爆弾発言に、上条が思わず吹き出す。

「…当たりか。やーねぇ、今カノの目の前で、前カノの話するなんて。デリカシー欠けてんじゃない?」
「い、いやいや、彼女とかじゃ全然ないッスよ! 仲の良い女友達っつーか!!」
「でも、初体験って、その娘となんでしょ?」

麦野の鋭い指摘に上条が絶句する。
女のカンは鋭いというが、なぜにたったこれだけの情報でわかるのだろうか?

「……でも、マジ彼女じゃないです。今でも、なんであんな事になったのかよくわかんねーし」

神妙な顔つきになって上条が言う。
『触れて欲しくない』という雰囲気がありありである。
しかし、

「詳しく話しなさい」
「………ハイ」

麦野には逆らえなかった。




.

「ソイツとは中学からの同級生で、まぁ、腐れ縁みたいな感じの女友達なんですが……」
「へぇ… 女友達ねぇ…」

上条の一言一言に麦野の突っ込みが入る。
なんと言うか、いじめっ子な口調である。

「マジで女友達です! …少なくとも、中学卒業まではずっとそうでした。
 俺もアイツもそう思っていたはずです」

コイツほんとにニブいんだなー、と麦野はしみじみと思う。

「好意に気付いて無かっただけじゃないの? ホラ、ツンデレとかさ」

まさか、と上条が手を、パタパタ、と振る。

「いやいや、デレとか1回も無かったですよ。
 いっつもデコ光らせてイライラしてたから、陰で『イラ子』って呼んでたし…」

当時の光景を思い出したのか、上条がウンザリした表情を作る。

「ま、すっげぇウルサイ奴、かつ仕切り魔で、委員長でもないのに、クラス行事は大抵は『イラ子』が仕切っちゃうんです。
 俺にも、あーだこーだと毎日口うるさくて… なんつーか、クラスのオカン? みたいな感じ」
「口うるさいのはアンタだけ?」

暫く思い出すように考え込んで、首を横に振る。

「いや… 『イラ子』に毎日小言を言われてたのは、俺の他に男が2人いたッス。…ソイツらも中学1年からずーっと一緒でした。
 『イラ子』を合わせた4人とも、幼馴染って言って良いのかもしれないです」

声のトーンがわずかに下がる。
前フリが終わり『その時』の事を話すようだ。

「えっと、中学卒業して、卒業パーティーみたいなのを開いたんですよね、その4人で」
「結局、仲が良いんじゃん」
「いや、ホントは男3人で飲む予定だったんだけど、なんでか知らないけど、アイツが後から来たんですよ」
「『イラ子』ちゃんが?」
「……はい」

答えにくそうに上条が頷く。

「なんかわかんねぇけど、男2人のどっちかが呼んだみたいで、強引に参加したっつーか」
「口うるさい娘なのに、『飲んでる』ことを注意しなかったの?」

麦野の突っ込みに、上条が、きょとん、とした表情になった。

「……………そーいや、珍しくアイツ何も言わなかったな。
 つか、率先してアイツが飲んでた…」
「はーーーーーーン…」

気持ちいいくらい、にやにや、と小馬鹿にした笑みを麦野が浮かべる。

「え… 『それに気付けよ』みたいな感じ?」
「さぁねぇ… それより、さっさと続き」

時間稼ぎに問い詰めたいが、麦野にそう言われては、先を話すしかない。

「それで、4人でぐだぐだ飲んでたんですけど、男2人が先にダウンしちまって、
 『イラ子』とサシになっちまったんですよ」
「あー、はいはい、予想できるわ」
「ぐぬぬ…」

(このコ、本気で気付かなかったのかしら…?)

ここまで『お膳立て』が揃っているのにソレに気付かないのは、
鈍感を通り越して、精神を洗脳されていたのではないかと、本気でそう思う。




.

「はい、続き続き」
「うぅ… そ、それで… 2人で飲んでるうちに、イラ子が、『上条、アンタ童貞…?』とか言い出して…」
「『経験ないなら、わ、私としてみる…ッ!?』」

妙に演技がかった声で麦野が言う。

「な、なんでわかったんスか?」
「むしろ、分からない方がおかしいでしょうが…」

麦野はその『イラ子』に対してほんの少し同情した。
同じ女として、目の前の少年は完全に有罪である。

「それで、ヤッたんだ。上条クン、サイテー、好きでもない娘とセックスするなんてー」
「だ、だってッ! すっげぇ興味あったし、アイツ、脱ぐしッ! おっぱいでけぇし!!」

完全に余裕が無くなって来たのか、上条が狼狽した声で叫ぶ。

「うっさい! もっと先を予想してあげましょうか?
 ……上手くできなかったんでしょ?」
「そ、そこまで分かりますか……」

上条が完全にうなだれる。
中学卒業したて、しかもアルコールも入っていた。
相手を気遣う余裕など、当時の上条少年には無かった。

「えっと、俺も初めてだったし、『イラ子』も初体験だったみたいで…
 挿入までは何とかできたんだけど…」
「アンタでかいもんねぇ。あまりの痛さに、『イラ子』ちゃんが泣き叫んで暴れた、でしょ?」
「……はい。けど、俺、もう止まんなくて。サルみたいに腰振っちゃって」

『昨日の夜もサルだったけどね』とは、流石の麦野も口にしない。
麦野だけが知っているが、上条のセックス時の腰使いは相当激しい。
慣れている自分でなければ、受け入れるのには苦労するだろう。

「気付いた時には、腟内射精してて… そしたら、『イラ子』が顔をくしゃくしゃにして泣いてて…」

話しているうちに、当時の情景が思い浮かんでくる。
春にしては蒸し暑かった室内、隣室で眠る男2人のやけにはっきりとしたイビキ、
そして、股間を真っ赤に染めて、静かにむせび泣く『イラ子』……

「とんでもない事したって気付いて、慌ててフォロー入れようとしたんですけど…」

あの時、涙で顔を歪めた彼女は、こう言った。

『上条当麻ッ!! あんたサイテーッ!! 2度と私に近寄らないでッ』

あの声と表情は、中々忘れることができない。

「そう言うと、『イラ子』はそのまま帰りました… 俺は、ワケわからなくて…
 誘ったのはアイツの方なのに…」
「アンタ、ホント、サイテー」
「ぐっ…」

吐き捨てるように麦野が呟き、上条が言葉に詰まる。
上条も、自分が『駄目な事』をしたことは分かっていた。
しかし、そうなってしまった『過程』を理解していないから、どう行動して良いのか分からなかったのだ。

「でーぇ、それからどうしたの?」
「翌日謝りに行ったんですけど、会ってくれなくて…」
「あったりまえだろーが、ボケ」

それで当然、と麦野が言い捨てる。

「翌日とか馬鹿じゃないの? 一晩泣いた後の顔なんて、見せたくないに決まってるじゃない」
「そ、そうか…」

初めて気付いた、という風に上条が冷や汗付きで納得する。

(意識的には気遣いができるけど、無意識的には気遣いできない子なのね、上条クンは…)

心の中で嘆息する。
しかし、少なくとも2人以上の女性から一方的な好意を寄せられているのだ。
このツンツン頭には、女を惹きつける不思議な魅力があるのだ。




.

「…それで、その娘とは縁が切れた、と…」
「いえ… 今もクラスメイトッスけど……」
「はぁ!?」

珍しく仰天した表情で、麦野が素っ頓狂な声を出す。

「クラスメイト!? なんでッ!?」
「『イラ子』、成績は良かったはずですけど、なぜか俺とおんなじ高校に入学したんです」
「なんつー健気な……」

額に手を当てて麦野が呟く。

「…気まずかったでしょ?」
「そりゃもう! 春休みはメールもガン無視でしたから、クラスでばったり会って、すっげぇビックリしました」

しかも、クラスで再開した『イラ子』は、「いつも通り」に上条に接したのだ。

「俺、ビックリして何も言えなかったら、イラ子が『上条当麻! 入学式の手順は把握しているの!?』って、突然突っかかってきて…」
「ごーいんに関係を元に戻した、と」

(そこまで行動力あるのに、なんで告白しねぇんだよ、その馬鹿は)

気付かなかった上条も上条だが、その『イラ子』も相当に馬鹿だと思う。

「それから?」
「それからは、中学と一緒っつーか、普通にクラスメイトです。
 …流石に俺から、あの時のことは話題にできなくって」
「へたれ」
「ぐっ…」
「…けど、まぁ、しゃーないか」

麦野が呆れ顔で嘆息する。

(こんな無神経な朴念仁に釣られたとは……)

というよりも、常盤台の超電磁砲といい、話に出てきた『イラ子』といい、
極めて身近に彼女候補が居ながら、どうして上条が自分に声を掛けてきたのかが気になった。

「ねぇ、もし、その『イラ子』ちゃんから告白されたらどーすんの?」

極めて軽く、しかし、内心ひどく真剣に麦野が尋ねる。
しかし、上条はあっさりとその質問に答えた。

「そりゃ、麦野さんが居るんだからきっぱり断ります。二股とかありえないです」
「あ… そ、そう…」

悩む素振りの無い上条の返答に、麦野が珍しく狼狽する。
もちろん、期待していた通りの答えだが、ここまで素早く言い切られると、妙にドキドキしてしまう。

「俺、麦野さんのこと、好きですから」
「わ、分かってるわよ!」

さらに、上条の無意識な追撃に声を荒げる。
そして、なんとなくだが、上条について1つ理解した。

(この子、善意に裏が無いのね… だから、他人をよく惹きつけるけど、見返りを期待しないから、他人の好意に気がつかない、か……)

不本意ながら嬉しいと思ってしまう。
そして、顔も名前も知らない『イラ子』に対して、優越感と対抗心とが複雑に混ざり合った、微妙な感情を抱いた。



.

     >、:::::::::::, '::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ソ、
    <::::::::::::, '::::::::::::::::,;:::::::::::::::;:::::::::::::::::::>ー‐
     >、::,:::::::::::::::://l:::::::::::::/l:::i:::::::::::::::::>z_      そりゃ、
     zソ::,:::::::/:::,l://._l:::::/ソ:' l::'l:::::::::::::::::::>、

    <::::::ノ::::,'/:/_l:'ィイ,'::// >ーヤ!::::::::::::::::::::>ー     麦野さんが居るんだからきっぱり断ります。
      ̄>:::::::l ! ぞ! /   !ぞ!\¨l::::::::::::::zー'
       >l ;l ー‐'  .   ー-' .l::,ヽ::::::::\      二股とかありえないです
       ̄ニ! i    :       ,' ノ::< ̄

        ∠.::、  _ _      _' イ:ー≠ー
            、 r_ _ヽ  イ::::::へ'            ,_
           _ .l\    イ,'V'¨ ヽ            / ノ     ィ-‐‐フ
          /   >: : : : .へ、_            , ' 〈_ , ' ノ >ーy'

        _ イ   / .}: : : l   /ヽz_       /  ;   >  ィ
     < ̄  癶  /  l: : :〈 、 /\ \  ヽ     {  . '     イ   ‐-、
  /        V' >‐イー‐ ' )/ー \ノ  :.∧     l     /   __,ナ‐、
 l  ゝ  , '     .: >、\ ; ; l \     :  }   .l    /       ___,ノ
. .l    У       .:  \ l; /〉 ./   .: :   ェ、 l  .  l
 l     、:   .   :   l l; l /     ,'    l ,    l   n _n_◎  _,n_  n _n_◎  _,n_ 
 l      :      : :     l;l ノ 〔ニニ〕,  ,'  V    ,l   l l└i七   7/,ニ、 l l└i七   7/,ニ、
                                       LK⊆T   〈/r三ュ  LK⊆T   〈/r三ュ
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       .  -‐-: : :-   .      ノし
.      /: : : : : : : : : : : __: \     て
.     /: : : : : : : : : : : : : : :ト: : ヽ    (
   . : : : : : : : : : : : : : :/: :八 : : : .

  / : : : : : : / : /: .:/: :/: : : : : : :.

.   : : : : : : :/://: : ,:/: :∧: : : : : : :i
  |: : : : : : //: //:/  \: i : : :|
  | : : : : T/‐/.._/ ./⌒ `l: : : |
 |: : : : |-‐=ミく  / _..ニ._ |: : :リ

.  : : : :.:l:、 {り    {り  ` |: : :|
.  } : : : / `¨^   {: ¨ -‐ /|: : :|
 /: : : :八 lj     /′  厶|: : :|        あ…
ノ: : : :///ヽ            .: :八: : \
: : : .:///ハ :\ ―-‐  イ: :/.:∧: : : :\     そ、そう……
: : .://////} : :>-<{: : :|.:∧/:∧: : : : : \

.://////リヽ\     `ーァ⌒ー---―ュ : : \
:. :://厶イ__.:. \  /7 /   /   ヽ: : ヽ
-r<__ヽ r、- `   ´/ /    /     i : : : .
  /―…ミヽi       / /      /    |: : : i
: i二二 :、 \__../ /     {/     | : : :|
: }└‐‐ 、     ヽ__//      |:      | : : :|
:/     \__/::::::::\         ∨     | : : :|
        く::::::::::::::::::::ヽ       :.      | : : : :.
         \:::::/、 ⌒ヽ      八    |: : : : :\   \




.

浜面は麦野の事をこう評する。曰く、

「テレビゲームをノーミスクリアできないと気が済まず、少しでもミスがあったら怒り狂って、たとえエンディングを見ても納得しない人間。
 それを帳消しにするためにハイスコアを更新して満足するタイプ」と。

学園都市の頂点に君臨する超能力者(レベル5)であり、類稀なる美貌とほぼ完璧な肢体を持つ麦野は、あらゆる面で『勝ち組』と言って良い人間である。

しかし、現実の麦野は、『アイテム』という学園都市の暗部に所属し、イリーガルな非日常にその身を置いている。
どんな言葉で飾っても、所詮は闇の掃除屋に過ぎない。
同じ超能力者である御坂美琴のように、大多数の人間から憧憬を受けたり、賞賛されたりすることは、決して無いのだ。

正道を歩めない代償を、麦野沈利は常に欲している。

それは同じ超能力者(レベル5)への歪んだ対抗心や、一般的でない過大な浪費、所有物・縄張りへの異常な執着心、
そして、依存とも思えるほどの異性との肉体関係。

麦野の気性、境遇をある程度理解している他の『アイテム』メンバーは、だから、麦野の奔放な性生活について何も言わない。
フレンダが上条の存在を歓迎したのも、それが麦野の精神安定の一助になると喜んだからだ。

ゆえに、上条の真っ直ぐな好意を持て余す。

麦野沈利は、「好きだ」という言葉の裏づけを、別の方法で求めてしまうのだ。




.

「……補習まではまだ時間があるわね」
「え、はい…」

ちらりと壁の時計を見る。
時計の針は8時過ぎ、『一回戦』ぐらいはできそうだ。

「話しにくいことを話してくれたお礼、してあげる」

妖艶に微笑んで上条が座る椅子の前まで行くと、膝をストンと落としてしゃがむ。

「ちゃーんと洗ったの? すっごい匂いよ…」

上条の股間に鼻を近づけて麦野が言う。
無論、これは麦野の冗談なのだが、さっき「汗臭い」と言われたばかりの上条は動揺する。

「も、もう一回シャワー浴びて…!」
「ばーか。オスの匂いがそう簡単に落ちるかってーの」

トランクスごと麦野が上条の短パンを引きずりおろすと、まだ萎えた上条のペニスが顔を出した。

「こぉら、なんで萎えてんのよ…!」
「無茶言わないで下さいよ…」

たはは、と上条が苦笑する。
そんな上条を、チラリ、と見上げると、麦野は手を伸ばしてサイドボードからベビーローションを取り出した。

「仕方が無いわね、おねーさんが勃たせてあげる…」

タンクトップを脱ぎ捨て、就寝用のスポーツブラを外す。
形の良い豊乳が露わになると、麦野は乳の谷間にベビーローションを垂らした。

「……期待しているなら、ワンと吠えること」
「ワンッ!!」
「ぷっ、はえーよ、おい…」

ニヤニヤ楽しそうに笑うと、麦野は上条のペニスを乳の谷間に挟み込んだ。




.

「うっわ…」

まだ柔らかいペニスが、もっと柔らかいゴムマリにサンドイッチされる。
ベビーローションの潤滑を上手く使って、麦野は両腕で挟んだ豊乳をリズムカルに動かした。

ぬちょ、ぬちょ、ぬちょ……

肉のプレスに攪拌されて、上条のペニスが一気に硬度を増す。
最初は完全に乳の谷間に隠れていたペニスが、次第にその存在感を増し、ついには谷間からひょっこりと亀頭を覗かせた。

「すっごい膨張率よねぇ… 倍以上になってんじゃん」
「や、これで勃たない男なんていませんよ… すっげぇ、気持ち良い…」
「ふふん、とーぜん」

誇らしげに言うと、麦野は首を思いっきり前に倒して、そのまま上条のペニスにかぶりついた。

「うおッ!!」
「ぢゅ、ぢゅ、ぢゅぅ~~~」

上条のペニスは平均よりはるかに長大だが、それでも流石に先端を咥えるのがやっとだ。
それなのに、亀頭の先をしゃぶっているだけで、上条はペニス全体に快感が広がるのを感じた。

「すご…」

もう麦野とは何度となく肌を重ねているが、そのたびに麦野のテクニックに翻弄されてしまう。
いったいどれだけの引き出しを持っているのだろう。

「ぢゅぱ… ふぅ、上条クンの大きいから、先っちょ咥えるだけでも大変ね…」
「…でかいと、やっぱ嫌ですか?」

密かに気にしていることを問う。
だが、麦野は笑ってそれに答えた。

「太くて長くて、そして固ーいおチンチンが私は好きよ。あ、ユルマンってわけじゃねーからな」
「麦野さんがユルマンとか、何の冗談ですか」

上条も笑う。             タメ
実際、麦野に挿入して10分持った例しがない。

「麦野さんのオマンコはサイコーっす」
「くっく… ようやく下品な台詞が出てくるようになったじゃん」

そう言うと、麦野は仕上げをするようにダイナミックにおっぱいを躍らせて、上条のペニスをしごき上げた。
そして、スッ、と立ち上がると、ベビーローションを己の秘所に塗りこんだ。

「濡らす暇がないから、ズルしてごめんね」
「そんな… 全然平気ですよ…!」

珍しく殊勝な態度の麦野に、思わず胸が、ドキッ、と高鳴る。
外見は『綺麗なお姉さん』なのだから、はにかむような笑みがとてもよく似合う。

(…やべっ!)

上条のペニスに、限界以上の血液が集中する。

「うそ… またおっきくなった!? また泣かされちゃうわね、私…」

麦野が興奮を隠しきれない声で呟くと、抱きつくように座った上条の腰に跨った。




.

「いちいち許可いらないから、腟内にだしなさいよ… ねッ!!」

ずぶずぶずぶ……!!

長大なペニスが、小陰唇を巻き込みながら、麦野の秘唇に突き刺さる。
早すぎず、遅すぎず… 
ペニスが膣道を押し広げる感触を楽しむようにして、麦野が丁寧に腰を降ろす。

(デカ… やっぱ、このチンポ、最高だわ……)

麦野の殿部が上条の太ももに着陸すると、麦野は軽く痙攣して「あああぁぁぁはぁぁぁ……」と長い長い吐息を漏らした。
       ハ
「どこまで挿入いってるの、コレ…? 口から飛び出そうよ…」

麦野が慈しむように下腹部を撫ぜる。

「麦野さん…」
「ん……」

2人の視線が交錯し、自然と舌を絡めあう。
互いに貪るように口唇を吸い合うと、たまらない、とった風に麦野が身体をくねらす。

コツッ、ゴツッ!

「……ッ!! んあっ!!」

麦野の動きに合わせて上条が軽く腰を突き上げると、タイミング良く麦野の子宮を亀頭がノックした。
麦野はひどく感じているようで、上条は秘所の体奥から熱い愛液が降りてくるのを感じた。

「やば、やば…ッ!」

不安定な男の腰の上では、一度バランスを崩すと中々体勢を整えることができない。
ペニスと秘唇でつながり、長い両脚を左右に広げた姿は、まるでヤジロベーのようだ。

「あぅ、あぁ… ちょ、ちょっとタイム…!」

必死に足を伸ばして床の支持を得ようとするが、つま先がかするばかりで上手く行かない。
却って、その足掻きがさらに体奥をペニスで抉る結果となり、麦野は背筋が痺れる快楽に口唇を噛んで堪えた。

「か、上条クン… そ、そろそろ…」
「…麦野さん、すいません」

一言謝ると、上条は麦野の背中と殿部に手を回して、優しく、しかししっかりと麦野の身体を把持した。




.

「え、ちょっと!」
「よっ、と!!」

鍛え上げた背筋と腹筋、下肢筋をフルに使って、慎重に慎重に麦野を持ち上げる。
いわゆる、駅弁スタイルだ。

「きゃッ!」

いきなり持ち上げられた麦野が、落下するのではないかという本能的な恐怖を感じ、悲鳴を上げて上条に抱きつく。
ところが、両手を首の後ろに回し、逞しい胸板に顔を密着させると、なぜか混乱した心が一瞬静まった。

「あ…」

背中とお尻に回された手が暖かい。
自分の身体がオトコに取り込まれたような錯覚を得た麦野は、無意識のうちに両脚を上条の腰に絡ませ、しっかりと上条を大好きホールドした。

「…動きますッ!!」

完全にイスから立ち上がった上条が、麦野を落とさないように細心の注意を払って身体をゆする。
麦野は女性の中でも身長が高く、さらに豊満であるがゆえにそれなりに体重もある。
いくら全身を鍛え上げてる上条でも、駅弁スタイルはかなりの重労働だ。

「あッ、あッ、あッ、上条クン、凄いッ!! 奥、奥にきてるッ! 私ッ、融けちゃう!!」

だが、自分の体重の大部分を結合部で受け、しかも小刻みに体奥を突かれる麦野はたまったものではなかった。
上条が腰をゆするたびに極彩色の火花が脳ではじけ、そのたびに膣と身体とが痙攣する。

(コレッ! 本気でヤバイ…ッ!)

もう、何回イッたか覚えていない。
体奥を何度も突かれて、子宮が完全に降りてきているのが分かる。

(今、腟内射精されたら……ッ!?)

きっと、とんでもないことになる。

「あッ、あッ、かみ、じょうクン… ナカ、ナカは…ッ!」
「くぅ、はい… 腟内に出しますッ!!」
「ち、ちがっ、そうじゃなくてッ! あ、ダメッ、ダメッ!!」

保っていた余裕が全部吹き飛ぶ。

「出しますッ!!」
「だめーーーーーーーッ!!」

ドクッ、ドクッ、ドクッ、ドクッ!!

「ああぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!!!!」

麦野の子宮に、マグマのように熱いザーメンが叩きつけられる。
同時に、脳髄が融け堕ちるかのような快楽が突き刺さる。

「ゃぁ… らめぇ……」

信じられないオンナの多幸感と、オトコに隷属する暗い満足感が、麦野を優しく包み込む。

(気持ちいい……)

煩わしい現実の一切合財を今だけは忘れて、麦野は全身を脱力させた。



.

「うおっと!!」

背中に回されていた麦野の手が一瞬で解け、ダラン、と力無く垂れ下がる。
大好きホールドしていた脚も力を失い、上条は危うく麦野を落としそうになった。

「ええと…」

両腕の腕力だけで麦野を保持すると、上条はとりあえずリビングのソファに麦野を寝かせた。
仰向けに寝かされた麦野は、いまだ浅い痙攣を繰り返していて、視線は宙を彷徨い、口角からは涎が零れ落ちている。

「や、やりすぎたかな…?」

上条は麦野の惨状を見て後悔したが、後の祭りである。

(よくよく考えてみたら、これって『イラ子』の時とおんなじ状況じゃ…!)

上条の背中を冷たい汗が流れる。
『イラ子』と違って麦野は超能力者(レベル5)。
しかも、これまでの付き合いから分かる通り、苛烈な性格の持ち主だ。

(ふぉ、フォローしないと殺されるかも…!)

上条があたふたしていると、不意に麦野がもぞりと動いた。

「ん… んぁ… あーー…」

軽く頭を振って目の焦点を合わせると、首を廻らせて上条を発見する。
緩慢な動作で起きようとするが、

「あ、ら…? げ、腰が抜けてら…」

下半身が脱力しきっている様で、仕方なく麦野は半身を起こした状態で上条を手招きした。

「上条クン、来て」
「は、はいッ!!」

何をされるのか分からないが、「とりあえずここは従っとけ」という本能の囁きに従い、上条は麦野のそばに立った。

「えっと、麦野さんッ、す、すいません、やりすぎちゃって…!」
「うん? なに言ってんの? ほら、綺麗にしてあげるから、おチンチン出しなさい」

麦野はそう言うと、上条の股間に口をよせ、一回の射精で少し硬度を下げたペニスを頬張った。

ちゅぱ、ちゅぱ、ちゅぱ…

愛液にまみれた竿や玉袋も丁寧に舐める。
尿道に残っていた精液も残らず吸い上げて飲み込む。

「はぁ…」

上条が思わず溜息を吐く。
麦野の本気フェラとは全く違う、別の快楽がそこにあった。

「ちゅぱ… まぁ、こんなもんかな?」

御掃除フェラを終えると、麦野は、ちょいちょい、と手で合図をして上条を屈ませた。
てっきりキスをするかと上条が口を寄せると、不意に麦野が上条の首筋に吸いついた。

「えっ!? なんで!?」

驚く上条を尻目に、麦野は思いっきり「ぢゅぅぅぅ!!」と首筋を吸引する。
ほどなく麦野が口唇を離すと、浅黒く焼けた上条の肌でもはっきりと分かるほど、
真っ赤なキスマークが上条の首に刻まれていた。

「…あー」

麦野の行為にやっとで気付いた上条は、キスマークを手で触れて「やられたー」という表情をする。

「そろそろ補習でしょ? アタシのことは気にしないで行ってらっしゃい。
 あと、当然だけど、隠しちゃダメだからね」

悪戯っぽい笑みで言う。
上条当麻は、嬉しくもあり、誇らしくもあり、
そしてやっぱり大半は恥ずかしさで、顔を赤く染めた。




.

S-3 「とある高校」

「お、終わった…」

正午ちょうど。
ギリギリで駆け込んだ補習は、表面上は何事も無く終了した。

ただ、授業をすべく教室に入ってきたロリロリしぃ担任教師が、上条を見たとたん大仏の様に無表情になったり、
土御門元春が無言で(しかし頭に怒マークをつけて)ケータイを高速タッチしたり、
その他大勢の落ち零れクラスメイトから「裏切り者」呼ばわりされたりはしたが、

おおむね、混乱も無く終わった。

「恥ずかしくて死にそうだ……」

クラスメイトからの追求は何とか避けたが、担任のロリ教師からは職員室への出頭を命ぜられてしまった。
当然、シラを切るつもりだが、今日も午後から麦野とお買い物の予定なので、なんとか短時間で済ませたいところだ。

「…失礼しまーす」

適当に頭を下げて職員室に入り、担任教師の机を目指す。
すると、そこには先客が居た。

「「あ…」」

上条と先客は、同時に互いを発見し、そして、同時に同じ声を上げた。

背中まで伸びるロングの黒髪、利発で意思の強そうな瞳、さらさらのおでこ、スカートのポケットから覗く健康食品の袋…

「吹寄… お前なんで…?」
「……居たら悪いの? 上条当麻……!」

吹寄制理、通称『イラ子』。

上条当麻の『初体験』の相手がそこに居た。




.

はい、今週はこれで終了です。
>>205さん大当たり、むぎのんのライバルは、アニメでおっぱい増量に成功した吹寄です。

あと次回か次々回は美琴が出ます。
彼女にもチャンスが微レ存?

それではまたキリのいいところで投下します。

あ、あと挿絵AAについてご意見をば。

作者的には正直失敗かなーと思っているので、
話題に上らないなら多分次から消えます。

気付いたら40k近くになっちゃった。
全部、吹寄が可愛いのが原因です。

というわけで、本日18:30ごろに投下します。
あと、美琴の出番とか言ったけど、ありゃ嘘だった。全部吹寄に食われた。

でわ。

それでは投下開始。

今回は40kあるのでちょっと多め。
あと、エロはこじつけ。

S-4 「とある」学校 職員室



「…なんでお前がここに居るんだよ?」
「別に居たっていいじゃない…?」

教務机に向かって座る、担任の月詠子萌教諭を挟んで正対、
ぶっきらぼうに訊く上条に、同じぐらい不機嫌そうに吹寄が答える。

「あ、上条ちゃん、ちょうど良いところに来ましたね!
 たった今、吹寄ちゃんに聞いたんですけど、引越ししたって本当ですか?」

キィ、とイスを軋ませ振り向いた外見年齢約10歳のロリロリしぃ教師が、上条を見上げて質問口調で言う。

「えっと、え… 吹寄から?」
「昨日、貴様のアパートに『たまたま』立ち寄ったら、もぬけのカラだったのを発見したのよ!
 隣室の土御門元春に聞いたら、引越ししてるって言うじゃない…」
「お前… なんでわざわざ俺んちまで来たんだよ…」
「た、たまたまって言ってるじゃない! たまたまよッ!!
 …な、なによその目は!?」

妙に取り乱す吹寄に、上条が疑惑の目を向ける。

「いや… たまたまでどーして…」
「う、疑ってるの!? そ、そんな風に思うのは、体内のイオンバランスが崩れているからよ!
 ホラ、この『3秒でイオンチャージ! 塩味風わたあめ』を食べなさい!」
「い、いらねーよ!!」

スカートのポケットから、駄菓子風の栄養食品(サプリメント)を取り出そうとする吹寄をあわてて制止する。

「はいはい、吹寄ちゃんもそれくらいにするですよー。それで、どうなんですか上条ちゃん?」

パンパン、と手を叩いて同級生2人の漫才を止めると、月詠教諭は上条に詰問した。

「は、はい… 親父が知り合いの不動産屋から紹介されたみたいで… 向こうも急に決まったみたいで、学校への連絡が後々になっちゃって…
 親父から連絡来ていませんか?」

これも麦野(正確には麦野の指示を受けた絹旗)が演出した偽装工作だ。
複数のルートを最終的に1つのルートにするやり方で、父親である上条刀夜名義での封書が届くことになっている。

「来てはいますがー、きちんと本人からも確認を取らねばと思ったんですよー。
 住所とか経緯とか、しっかり先生に教えてください」
「はぁ…」

少し腑に落ちないものを感じながら、上条は(スパルタ指導で)仕込まれた嘘をスラスラと語った。

「………っていうことで、尾立荘って所に住んでます。やっぱ、家庭訪問とかするんですか?」
「しますよー、と言いたいところですが、ちょっと先生が忙しいので、今は未定ですねー」

手元のメモ帳を、ふむふむ、と確認しながら月詠教諭は言う。

「分かりました、間違いないようですね。…そういうことですので、吹寄ちゃん、上条ちゃん家の確認お願いしますね」
「「はぁ!?」」

上条と吹寄が同時に声を上げる。

「ど、どうして私が…」
「どうしてコイツと…」

互いに指を突き付け合いながら2人が言う。

「今言った通り、先生忙しいですからー。緊急で特別補習のスケジュールを組まなきゃならないんですよー」

「今日は飲みの約束があったのに残業なんですよー…」と、ぶつぶつ呟いて、月詠教諭は2人にA4サイズの特別なシートを手渡した。

半透明なプラスチックの下敷きのようなソレは、特殊な刺激を与えると、向けた風景を画像として表示・保存する、いわば『インスタント風景撮影デバイス』だ。
写真と違ってサイズも大きいし、強度も高いのでファイリングがし易いという利点がある。

これで、上条の新アパートを撮って来い、ということらしかった。

「撮ったら、上条ちゃんが明日の補習のときに持ってきてください。それじゃ、お願いしますねー」

話は終わりとばかりに、月詠教諭は2人に背を向けて、机の上のノートPCに向かった。
上条と吹寄は、ぎこちなく目線を交わすと、不承不承といった感で「はい…」と了承した。

「それじゃ、失礼します…」

麦野にどう説明しよう… と、そう考えながら退出する上条に、月詠教諭が振り向かずに声をかえた。

「そうそう。上条ちゃん、不純異性交遊はほどほどにしてくださいねー」
「…………ハイ」

背中に冷や汗だらだらで上条は答えた。




.

S-5 「とある」高校 職員室前の廊下

「上条当麻……ッ!!」

職員室を出た瞬間、吹寄がドスの効いた声で上条を呼ぶ。

「不純異性交遊ってどういう事よッ!?」
「こ、子萌先生のジョークだよ!」
「き、貴様ッ! あの夜のことを月詠先生に話したんじゃないでしょうね!?」

あ、そっちか… と上条は肩透かしを食らった気分になる。
そして、ひょんなことから絶好のチャンスが巡って来た事に気付いた。

「…話してねーよ。それと、あのさ、吹寄……」
「な、なによ…?」

突然、神妙な顔になった上条にドギマギしながら吹寄が答える。

「あの夜のこと、お前を傷つけちまって、マジでごめん。ずっと謝りたかった。この通りだ!」
「へっ… えぇぇ!?」

真剣に吹寄に頭を下げる。
突然の謝罪に吹寄がたじろぐ。

「ごめん、吹寄……」
「そ、そ、そ、そんなこと突然言われたって…!」

可愛いぐらいに狼狽した吹寄が、わたわた、と両手で空気を掻きまわす。
しかし、一向に頭を上げない上条に「うぅぅぅぅぅぅぅ……!」と唸り声を上げると、やおら、腕組みをして顔を横に向けた。

「……べ、別に怒ってないからッ! に、逃げちゃったのは私だし……」
「……そうなのか?」
「そ、そうよ!!」

ぷい、と顔を横に向けたまま吹寄が言う。
その顔は加熱された薬缶のように赤い。

「そっか…… よかった……」

ホッとした上条が顔を上げる。

「あのさ… し、心配してくれてたの……?」
「そりゃそうだろ? お前泣いてたし…」
「わ、忘れてッ! そういうのは全部忘れてッ!!」
「ああ、そうだな… あの夜のことは、全部…」
「だ、駄目ッ!! あの夜のことは忘れないでッ!!」
「…どっちだよ?」

そう聞かれても、吹寄だって困るのだ。




.

吹寄制理は上条当麻のことが、現在進行形で好きだ。
意識し始めた切欠はあまり思い出したくないが、好きだと自覚した時のことは良く覚えている。

確か、初めて中学2年の『一端覧祭』の実行委員に立候補したときだ。
あの時に色々と邪魔されたり、逆に手伝ったりしてもらって、吹寄制理は恋に落ちたのだ。

それからずっと、恋の花を育てに育て、ついに結実したと思ったのがあの夜の出来事だ。
土御門元春ともう1人の悪友にノセられて、アルコールの手助けもあって処女を捧げることに成功した。
…本当ならば、セックスの前後に告白して、恋人同士になるはずだったのだが。

(あんまり痛くて、逃げちゃって… しかも、ショックで数日寝込んじゃって… 私の方も告白するチャンスを逃しちゃって…)

吹寄にとっても、あの夜は不本意な結果なのだ。
しかし、好きな人に処女を捧げた記念の夜でもある。
忘れたくはないし、忘れて欲しくはない。

「……忘れないで。できれば、覚えていて」
「……ああ」

神妙な顔で上条が吹寄を見つめて頷く。
恋する乙女は、それだけで心の中をハート色に染まる。

(心配… してくれてたんだ……)

幸せで胸がいっぱいになる。
絶対に嫌われたと思っていたから、上条の言葉は何よりも嬉しい。

(脈ある… まだ脈はある…!!)

夏休みは始まったばかり、しかも、これからこの男は自分と行動を共にする。
いや、それどころか、まだクラスの誰も知らない新居に一緒に行くのだ。

(これ、チャンスじゃん… あたし、今、チャンスじゃん…!)

ニヤケそうになる顔を必死で抑えて、吹寄はいつもの不機嫌な表情を作って言った。

「それじゃ、この話は終わりにして、とっとと上条の家に行きましょう。遠いの?」
「えっと、歩いて15分くらいだけど… ちょっと待ってくれ、予定入れてたんで、遅くなるって電話入れるから」
「ん、わかった、早くしなさいよね」

密かに幸福度がマックス振り切れそうな吹寄は、上条の連絡先まで気が回ることがなかった。



.

「…ん?」

化粧台に置いた携帯が音を立てる。
午後に備えた化粧に余念のない麦野が、着信音を聞いて軽く眉を細める。

「上条クンに設定した『お仕事用』の着信音…? なんかトラブルにでも巻き込まれたのかしら?」

アイテムのメンバーは、個々に様々な電話番号を持っている。
それは、様々な偽装を円滑に行うための小細工であり、今回の着信番号は「カバーストーリーに小トラブル」というものだ。

「…はい、アタシよ」
『あ、ども、俺です…』

この回線では、名詞はすべて代名詞に代えることとなっている。

『俺の部屋、やっぱり学校からつっこみ入りました。今から、同級生の女子と確認してきます』
「あーあ、やっぱりか… で、どれくらい?」
『まぁ、すぐすぐ、といったところっス』

『すぐ』1回で30分。
つまり、今回は1時間ぐらいということだ。

「了解、じゃ、あとは適当に…」

そこまで言って、麦野の脳裏に1つの考えが閃く。

「…ねぇ、おおよそ理解したから、『もう一回かけて』」
『えっ? あ、はい。了解です…』

麦野の意図を把握した上条が一旦電話を切ると、すぐに―今度は通常回線で―電話が掛かってきた。

「ねぇ、その同級生って、『イラ子』ちゃん?」
『……麦野さんって、実は精神系の能力者じゃないですか?』

電話の向こうで上条が絶句する。

「うっさい、ちっ、『同級生の女子』なんて呼び方するからよ。ちょっと、余計な事言って無いでしょうね!?」

電話を通して、上条が躊躇う雰囲気が伝わってきた。

『えっと… 別に変な事は言ってないっスけど…
 単にこの前の夜のことを謝っただけです、けど…?』
「謝った!? 『この前の夜はごめん、心配してた』って!?」
『は、はい……』

麦野の剣幕に上条がたじろぐ。

「馬鹿ッ、アホッ、間抜けッ! アンタ、また地雷踏んだわよ!」
『えっ、な、なんでッスか?』

(この男は本気でタチ悪いわ……)

思わず天井を仰ぎ見て、麦野が溜息を吐く。

「……試しに、その子に『おい、お前、顔がニヤケてるぞ』って言ってみなさい。不意打ちで」



.

「えっ… は、はぁ、ワカリマシタ…」

引きつった笑みを浮かべて上条が吹寄の方を向く。
吹寄せはおっぱいを支えるように腕組みをして、そっぽを向いている。

「…おい」
「なによ?」
「お前、顔がニヤケてるぞ?」
「………ふえ!?」

言われた吹寄が、可愛いくらいに狼狽して、さわさわ、と自分の頬を撫でまくる。

「う、嘘ッ!」

吹寄の表情がどんどんと崩れ、泣いているような、笑っているような、不思議な表情になる。

「見ないでッ! 見ないで上条!!」

とうとう、両手で顔を覆って吹寄がしゃがみこむ。
膝小僧、おっぱい、両手の、見事なトーテムポールが出来上がった。

「お、おい……」

あまりに分かり易すぎる反応に、上条は自分が地雷を踏んだことをはっきり自覚した。



.

「どう?」
『…えっと、なんか、しゃがんで震えてます』

上条の声には力が無い。

「はぁ… ちょっとは想像しなさいよ。処女を捧げた好きな男から、『心配した』なんて声を掛けられたら、そりゃ、恋する乙女は舞い上がっちゃうでしょうが」

諦めた口調で麦野が話す。

(とりあえず、今日の夜はお仕置き確定ね...)

『すいません…』
「…早めに合流するわよ。部屋で待っていなさい」
『はい…』

電話を切って、また一度溜息を吐く。

「ったく! あの男わ~~~」

腹立ちまぎれに、携帯をベッドに放り投げる。
上条の鈍感さにも腹が立つが、夏休みだからと接触の可能性を考えなかった自分にも腹が立つ。

「……トドメ、刺しとくか」

物騒な台詞を呟くと、麦野は暫く額に手を当てて何かを考え…
今まで施した化粧を全部落とし始めた。



.

S-6 偽装アパート 尾立荘前

「着いた、けど……」

学校から歩いて数十分。
夏の日差しの下、2人は何の変哲もない鉄筋2階建てのアパートの前に居た。

上条がアパートを指差すと、長髪で表情を隠した吹寄が、無言で『風景撮影デバイス』を取り出す。

「……こ、この風景で良い?」
「ん? ああ…

吹寄がデバイスを構えて言うと、上条が「どれどれ…」と横からデバイスを覗き込む。
自然と上条と吹寄の顔と顔が近づくが、馬鹿は気付かない。

「………ゴクッ」
「えーと、俺の部屋があそこだから… ああ、この角度でいいぜ」
「じゃ、じゃあ、撮るからこれ持っててよ…」

デバイスを上条に持たせると、吹寄が刷毛状のトリガーを取り出す。

「動かないでね…」

デバイスを構える上条の背後から、胸を背中に押し付けるようにして上条に密着する。
ボリューミーな巨乳が、ぐにゃり、と上条の背中で押し潰される。

「ふ、吹寄…!」
「う、動くなって言ってるでしょ!」

デバイスの撮影は、特殊線維でできた刷毛で裏側をなぞることで完遂される。
そのため、それほど大きくない刷毛でA4サイズのデバイス全体をなぞる必要があり、
吹寄は小刻みに身体を動かしながら刷毛を滑らせる。

当然、動きに合わせて吹寄のでっぱいが、打ち粉の上で職人にこねられるうどん生地のように、ダイナミックにその形を変える。

(こ、こいつ… わざとやってるんじゃねーだろーな…!?)

上条は、どうしようも無く股間に沸き起こるオスの本能を必死で抑えた。



.

吹寄制理の行動は勿論わざとである。

(あたしには、女としての可愛げがない…!)

曰く、『美人なのにちっとも色っぽくない鉄壁の女』。
さらに、幼馴染から『イラ子』と呼ばれるほど吹寄は口うるさく怒りっぽい。
それは吹寄も理解していることで、しかし、同時に矯正は難しいとも感じていた。
考えるより先に、口や体が動いてしまうのだ。

(だから、肉体で釣るしかッ!)

吹寄制理はかなりスタイルが良い。
女子にしては高身長だし、足もスラリと長い。
おっぱいは、トップが3桁に届こうかというバストサイズで(もちろん、アンダーとの落差も相当なロケットおっぱいである)、
陰でクラスメイト男子から『メロンっぱい』と呼ばれるほどの爆乳である。

なんと言うことか、あの麦野沈利よりも巨乳なのだ。

(一度セックスした仲なんだし、もう一度襲われて、既成事実を作り直してやる…ッ!!)

吹寄制理、完全に肉食系女子の心理である。

「か、上条、ずれちゃったからやり直すわね…」

何がずれたのか上条からは判別できないが、吹寄は刷毛を裏返してせっかくデバイスに写した風景を消去していく。

「は、早めに済ませてくれ…」

鈍感な上条は、当然のように吹寄のボディランゲージを解することができない。
しかし、

(鈍感なのは覚悟の上。今は出来るだけ興奮させて、家に上げてもらってからが勝負よ…!)

妄想と願望と、恋慕と情愛が暴走した吹寄の、過激なスキンシップはそれから10分以上続いた。




.

「こ、こんなモノかしら…?」

都合3回。デバイスの撮影が終わり、ようやく吹寄が上条との密着を解くと、
上条の背中のワイシャツには、見事に顔並みの大きさの汗の染みが2つ出来上がっていた。

「はー、はー、お、終わったか…?」

直立不動で五感から伝わる吹寄の『オンナの体』に耐えた上条が、ようやく緊張を解いて大きく息を吐く。

「じゃ、じゃあ、用も済んだだろ? 今から会う人が居るから……」
「の、喉が渇いたわね! 上条当麻! 貴様は協力したクラスメイトに茶もださないの!?」
「いや、そりゃ、出すのが当然だけど…!」

背中(吹寄のおっぱいが当たってなかった部分)に冷たい汗が流れる。
上条の性格では、「世話になったな、上がって冷たいの飲んでけよ」と言うのが普通である。
しかし、まごまごしていると、怖いお姉さんがここにやってきてしまう。

(ビリビリの二の舞だけは避けないとッ!)

少し恋慕を見せた御坂美琴ですら、あそこまで悪趣味な手でぶちのめした麦野である。
一度手を出したことを告白している吹寄には、どんな手段を弄するか想像もつかない。

脳裏に、御坂美琴の号泣した姿と、あの夜の吹寄が重なる。
さすがに、幼馴染のあんな姿は、もう見たくない。

「…なぁ、吹寄」
「な、何よ、急に真面目な顔になって… ドキッとするじゃない!」

上条のやけに真剣な顔に、吹寄の顔が、カーッ、と紅潮する。
ついでに、

(き、来たッ! 釣れたっ!)

と、いらん勘違いもする。

「俺さ、お前のこと、もう傷つけたく無いと思ってるんだ…」
「よ、ようやく理解したの? 貴様は、もっとあたしに優しくすべきよ!(良い流れ!)」

「一応、俺、けっこう気を使ってるつもりなんだぜ?」
「それなら、もっと行動に示すべきでしょ!(さぁ、早く家に上げなさい!)

「行動、か… でも、強引にすると、またお前怒るだろ?」
「し、してみないとわからないじゃない!(今度は絶対に逃げないから!)」

「そうなのか? 強引にしちゃって良いのか?」
「そうよ! やってみれば良いのよ(よっしゃ、既成事実再ゲットぉぉぉ!!)」
「そうか……」

何かを決心したかのように上条が呟き、姿勢を正して吹寄の正面に立つ。

「吹寄…!」
「ひゃ、ひゃい!」

思わず吹寄の声が裏返る。
『メロンっぱい』の奥の心臓が、ドクドクと鼓動を限界まで速める。

(も、もしかして、ここで告白までいっちゃうのッ!?)

乙女煩悩が思考を爆発的に加速させ、コーナーを曲がりきれずにコースアウトする。

「上条… 良いよ……」
「ああ、吹寄……!」

何が良いのか良くわからないが、上条当麻は覚悟を決める。
そして、勢いよく身体を動かし、

ガバッ!!

「……ッ!! ……………ん?」

上条の動きに思わず目を瞑った吹寄が、恐る恐る開眼すると、

「………へ?」

上条当麻は、見事に腰を90°曲げた、深々としたお辞儀をしていた。

「吹寄さん! 今日のところは帰ってください!!」
「ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

瞬間的にこみ上げた怒りに任せて、吹寄が、サラサラおでこのヘッドバットを上条の後頭部に叩き込む。
ゴチンッ!! と、非常に良い音がして、上条が声も上げれずに地面に前のめりに倒れた。

「いったぁぁぁ…!」

もちろん、吹寄もただでは済まず、両手で額を押さえて苦悶する。
そうして、2人でアパート前で悶絶していると、

「…なーにしてんの?」

上条が、今、一番聞きたくない声がした。

「………ハイィィ!!」

その声を聞いて、きっかり3秒後に、上条がまるでバネ仕掛けのように跳ね起きる。

「あ、あのッ! これはその、アレがソレでコレがアレで………はい?」

上条が支離滅裂な言葉を口走ったあと、声の持ち主―麦野―を見て困惑した声を出す。

「そんなに慌てなくてもいいじゃない。私がビックリしちゃうわ」
「あ、ああ… え…?」

上条当麻が絶句する。
その原因はたった一つだ。

「麦野、さん… そのカッコ……」
「あら、何か不思議なことでもあるの?」

麦野沈利は、紺色のブレザーに、同色のスカート姿、化粧も控えめのナチュラルメイク、
つまりは、女子高生ルックだったのだ……!

「あの… 貴女、誰ですか…!?」

麦野の存在感に圧倒されつつも、吹寄が詰問する。
しかし、麦野はその質問自体には答えずに、赤くなった顔よりさらに赤い吹寄せのおでこを、さわさわと撫ぜた。

「女の子が暴力は駄目でしょ。赤くなってるから、家に上がって冷やしましょ」

そう言って、2人をアパートへ誘導する。

喉まで出かかった「アンタ、誰だよッ!」という台詞を何とか飲み込んで、
上条は無言でガクガクと頷いた。



.

S-7 偽装アパート 尾立荘 上条の部屋(偽)

「う、つめた……」

冷凍庫の氷とビニール袋、タオルで作った即席の氷嚢を額に当てる。
丁寧に作られたそれは、麦野がテキパキと作ったものだ。

「落ち着いた?」
「は、はい… ありがとうございます……」

まだ頭が混乱したままだが、とりあえず吹寄が麦野に礼を言う。

「当麻クン、また何か女の子に失礼なことを言ったんでしょ?」
「ィェ、ソンナマサカ……」

色々なことに全力で突っ込みたい。
突っ込みたいが、突っ込んだら、恐らく自分の命は無い。

「こんな暑い日に女の子を立たせて… もっとデリカシーを持つようにって、いつも言ってるでしょ?」
「はい、ごめんなさい…」

構図としては、まさしく弟的立場の男の子を叱る、年上のお姉さんである。
そして、大変に意外なことに、そういう仕草が不思議なほどに麦野に似合った。

「さて、と… それじゃ、今日もお昼ご飯作るから、貴女も食べて行ってね?」

そう言うと、麦野は部屋のクローゼットを開け、なぜかそこに有る、可愛いフリルのついたエプロンを手に取る。
手早くそれを見に付け、麦野が1Kのキッチンに移動しようとすると、とうとう我慢の限界を超えた吹寄が声を上げた。

「あ、あのッ!! 貴女は上条君と、どういう関係なんですかッ!?」
「吹寄、それは…」

思わず答えようとする上条を、吹寄が睨みつけて黙らせる。

「どうなんですかッ!?」

恐らく、フレンダか浜面辺りがこの場に居れば、「ぶち殺し確定、アーメン」と十字を切っただろう。
           ・ .・ ・ .・ ・ ・ .・ ・ .・ .・ .・ ・ ・  .・ .・ ・ .・ ・ .・ .・ .・ .・ ・ .・ .・
しかし、麦野は、恥ずかしそうに目を伏せると、はにかんだ笑みを浮かべた。

「そういうの、大声で他人に言うもんじゃないし… 恥ずかしいわ……」

上条の顎が、かくん、と落ちた。



.

(失礼な態度とりやがって、アイツは~~~!)

台所に立った麦野が、心の中で毒づく。

無論、麦野の変貌はわざとである。
自分でも、キャラではないと十二分に理解しているが、まぁ、やってやれないことではない。

(なるべく、穏便に退場願いたいからね…)

強引に上条から引き離しても良いが、禍根を残すのは、上条の学校生活から考えると良くは無い。
そのため、自然と吹寄から身を引くようにもって行きたいのだ。

吹寄について麦野が知っていることは、今朝、上条から聞いた、メシマズ、世話焼き、怒りっぽい、といった点である。
そこで、麦野が狙ったのが、自分が『優しくて料理の上手い年上の彼女』を演じ、吹寄の劣等感を煽るというものだ。

(処女を捧げたくせに、最後まで『押せない』へたれ女なら、これで充分でしょ)

麦野が余裕綽々な、かつ、思わせぶりな態度をとって女としてのレベルの差を見せ付け、
吹寄が勝手に誤解(ある意味誤解では無いが)をして、上条を諦めるのが狙いだ。

大雑把で穴のある作戦だが、ゴリ押しすればいけるだろうと麦野は考えていた。

(まぁ、たまには女子力あるトコ魅せとかないとね)

料理の腕を見せ付けるのだから、昼食にはそれなりの料理を出さねばならない。
冷蔵庫の中は先ほど確認したが、一通りの野菜と牛肉があったから、サクッと肉じゃがを作ろうと考えている。

(えーと、お出汁は流石に取る時間が無いから、料理酒を使って……)

テキパキと麦野が材料を並べていると、スッ、と違う影が台所に立った。
吹寄だ。彼女は麦野が並べた食材を見ると、輪ゴムと取って長い髪を後ろで束ねた。

「……手伝います。話はそれから」

有無を言わさぬ口調に、麦野がカチンと来る。
が、今の設定は『優しいお姉さん』だ。いつものように切れるわけには行かない。

「あら、座ってて良いのよ? 当麻クンと何か話をしていたら?」
「けっこうです」

そう言うと、吹寄は「肉じゃがですね? 野菜は私が下ごしらえします」と言って、玉ねぎの皮を剥き始めた。

(……おい!)

その滑らかな手つきを見て、麦野が上条に視線を送る。
睨まれた上条が、慌てて吹寄に声を掛けた。

「ふ、吹寄、お前、料理できるの?」
「はぁ? 学園都市で1人暮らししてるんだから、出来て当然でしょ」
「だって… お前の作る料理って……」

言い難そうに上条が言うと、吹寄はしばらく考え込んで、それから何かを思い出して言った。

「……もしかして、中学の調理実習のときのアレ? あれはね、はじめっから『ああいう味』を狙って作ったのよ。
 あの健康調味料、それが特徴なんだから」
「…え、そうだったん?」

そうなのである。
吹寄が過去に作ったメシマズ料理は、もちろん、怪しげ健康食品のせいで不味い料理に仕上がったのだが、
あの味は、『健康』を維持するための摂食制限を演出するものなのである。

「そもそも、料理が作れないんだったら、あんな健康調味料使わないわよ」
「まじかよ……」

上条が絶句して麦野をチラ見する。
麦野はにこやかな笑みを浮かべて、「それじゃ、お願いしますね。助かるわ」と朗らかに答えているが、

目が全く笑っていない。

「ふ、不幸だ……」

恐らく、今夜執行されるであろうお仕置きを想像して、上条は力なく呟いた。



.

「はい、お待たせしたわね」

リビングのちゃぶ台に3人分の昼食が並ぶ。
薄く湯気をたてた料理は、健康な少年の胃袋を大いに刺激した。

「う、美味そう…」

麦野の恐怖を一瞬忘れて上条が呟く。
すると、吹寄が悔しそうに言った。

「…お料理、上手なんですね」
「あら、貴女も充分なんじゃない? お野菜の形、すごく綺麗よ」
「…そういう、切ったり計ったりは得意なんですけど、アレンジ、苦手なんです。だから、テンプレートな味しかできなくって」
「自分の好みを押し通すのがアレンジとは言わないわ。誰かに食べてもらって、感想を言ってもらうのが一番よ」
「味見とか、どういうタイミングですれば?」
「そりゃ、もちろん、味を整える前後にやるのが良いわよ」
「適量って、どういう風に解釈すれば?」
「もっとファジーに考えて大丈夫よ。アレは単に好みで量が変わるだけだから」

自然と会話が続き、麦野沈利が奇妙な気持ちになる。

「えっと……」
「あっ、自己紹介がまだでしたね。吹寄です、吹寄制理。貴女は…」
「あー… 麦野よ… 麦野沈利」
「麦野さん、ですか……」

噛み締めるように麦野の名前を呟く。
麦野の想定通りの状況ではあるが、どうにも麦野には嫌な予感がした。

「…とりあえず、食べましょう?」
「…はい、頂きます」

麦野と吹寄が示し合わせて、そして上条が慌ててそれに倣って昼食が始まった。
が、会話が発生しない。

(空気が重てぇ…)

上条が女子2人をチラチラ見ると、吹寄は遠慮無しに麦野をジッと見ていて、
麦野は、見られていようが平静を保っている(ように見える)

そして、そのまま続いた無言の団欒の終わり際、吹寄が突然言った。

「…結婚まで考えているんですか?」
「………ングッ!!」

吹寄のあまりな発言に、上条が喉を詰まらせる。
麦野も内心、(手順をどんだけすっ飛ばすんだ、この娘…)と戦慄しながらも、『お姉さん』の仮面をきっちり被って上条の背中をさする。

「…すこし、びっくりしちゃったわ。吹寄さん、そういうことを考えるのはまだ早いんじゃない?」
「そう、ですか…? でも……」

一瞬、口ごもり、そして、一気に言い切る。

「あたしと上条は、親公認の許婚同士なんです。そういう覚悟が無ければ、譲れません」

この日、吹寄、最大級の爆弾発言が投下された。




.

「い、許婚ッ!?」

一瞬だけ『お姉さん』の仮面が外れて、麦野が驚きの声を上げる。

「どういうことよッ!?」
「し、知りませんッ! 上条さんは何も知りません!! っつーか、テキトーなこと言ってるんじゃねぇよ!」
「て、テキトーじゃない! 中学のときの『中域短期父兄参観』で、ちゃんと上条のご両親に挨拶したの!!」

麦野が上条を、ぎらり、と睨む。
だらだらと滝汗を流す上条が、必死に記憶を探る。

「え、えっと… 確かに、あん時は、お前とウチと、家族全員でメシ食ったけど、そんな話は出なかっただろ…?」
「で、出たもん!!」

吹寄が必死に主張する。

だが、『許婚』は真っ赤な嘘だ。
上条の両親から『制理ちゃん、ウチの当麻をよろしくお願いします』と言われたことを、無理やり拡大解釈して言っているのだ。

(どうしよう… あたし、とんでもない事言ってる……!)

実のところ、冷静そうに見える吹寄制理の脳内は、限界ぎりっぎりまでテンパっているのだ。
この部屋から逃げ出したくてたまらない。いかにも仲の良さそうな麦野と上条を見て居たくない。

麦野の思惑は見事に効果を発揮して、吹寄制理の劣等感をこれ以上ないくらいに刺激した。

いや、刺激しすぎたのだ。
だから、吹寄制理は無謀ともいえる嘘を口走ったのだ。

そして、一度、嘘をついて自暴自棄になった吹寄の口から、あれだけ躊躇っていた言葉が暴発する。


「か、上条… もうこうなっちゃったから言うけど、あたし、アンタが好きだからッ! ホント、好きだからッ!!」
「吹寄……」

誰にとっても最悪のタイミングでの告白だった。
気がつけば、吹寄の目から大粒の涙が溢れている。

「………あぁ、もう」

滅多にないことに、思考が一時フリーズしていた麦野が再起動する。
『許婚』という単語に動揺したが、その後の吹寄の態度からそれを嘘だとわかった。
ならば、確認してしまえば良い。

「当麻クン、ご両親と連絡を取ったら? そうすれば分かることでしょ?」

その台詞に、上条は安堵の表情を見せ、吹寄がビクリと身体を振るわせる。

「うぅ… 上条、やめて……」
「ごめん、吹寄… でも、流石に大切なことだから…」

上条が携帯を取り出して実家にコールする。
麦野がジェスチャーで『ハンディホンにしろ』と指示をだし、上条が操作すると、呼び出し音が部屋中に響いた。



.

S-8  上条の実家 リビング

Prrrrrrrr……

「おーい、お母さん電話。今、ちょっとお土産出すのに手が離せなくてー」

「あらあら、また呪い関係のお土産ですか?
 ……はい、もしもし上条です。 …あら、当麻さん? どうしたの…? 
 …え、吹寄さん家の制理ちゃん? もちろん覚えているわ。
 あちらの奥さんとは、毎週フィットネスクラブをご一緒してるのよ? 制理ちゃんの話もよくするわ。
 ………え、許婚? 当麻さんと制理ちゃんが?」

上条当麻の母親たる、上条詩菜の眼光がキラリと光る。
その視線の先は、怪しげな人形を棚に飾ろうとしている夫の姿がある。

唐突だが、上条当麻の父親、上条刀夜は大変女性にモテる。しかも、自覚無しに。
そして、それは確実に1人息子である当麻にも遺伝していて、本人以上に母親である詩菜がそれを実感していた。

(当麻さんも、もう高校生… 制理ちゃんなら、良いお目付け役になれるんじゃないかしら?)

学園都市に1人暮らしで、痴情のもつれで刃傷沙汰でも起こされたらたまったものではない。
詩菜は素早く計算を完了すると、悪魔のような笑みを浮かべて受話器に話しかけた。



.

S-9  偽装アパート 尾立荘 上条の部屋(偽)

『ええ、そうよ。親同士で勝手に決めて申し訳ないけど、吹寄さんとは、そういう風に話を進めているわ~』
「「「はぁ!?」」」

携帯電話からの、あまりにも予想外な回答に、3人が三者三様の驚愕の表情を取る。

「か、上条さんッ! そ、その話はッ!!」
『あら、その声は、もしかして制理ちゃん?
 当麻さんに伝えてなくてごめんなさい、これからもヨロシクね~』

電話越しの詩菜の言葉に、泣き顔だった吹寄が喜色に染まる。

「はいッ! お義母様ッ!!」

『うん、良いお返事でママ嬉しいわー。
 それじゃ、当麻さん、制理ちゃんと仲良くねー』

プツ、ツーツーツー……

電話が唐突に切られ、部屋の中に一時の静寂が生まれる。

「……改めてお聞きします。麦野さんは当麻とどういう関係ですか?」
「恋人よ」

吹寄が事務的に問い、麦野が抑揚無く答える。

「わかりました、それでは、今日のところは帰ります。
 ……親の認可を貰ったからって、当麻があたしを見てくれないんだったら、本末転倒ですから…」

吹寄が、スッ、と立ちあがる。そして、麦野に深々と頭を下げる。

「宣戦布告です。絶対に当麻を貴女から取り戻してみせます」

それだけ言うと、吹寄は呆然とする上条の方を向いた。

「あたし、貴方を絶対振り向かせてみせるから…!」

そして、溢れる愛情を示すように、上条の頬にキスをして、顔を真っ赤に染める。

「それじゃ! 首を洗って待ってろ、上条当麻ッ!!」

そう言い残し、吹寄制理は去った。




.

S-8 麦野のマンション Melt kiss リビング


「がぁぁぁぁぁぁ、ムカつくッ!! 何が『宣戦布告』だッ! あの小娘が、調子に乗りやがって……ッ!!」

あれから、昼食もそこそこにマンションに戻ると、麦野沈利は怒りを爆発させた。
何か声を掛けようとした上条は、ボディに前蹴りを食らって悶絶している。

「…クソッ、ここまで計算を外したのは久しぶりね……」

実のところ、麦野が怒っているのは自分自身のミスについてだ。
結局、プレッシャーを与えすぎて吹寄を暴発させたのも、上条に電話を掛けるように指示したのも麦野なのだ。

「あー、腹立つ!!」

ドカッ、とソファに腰を降ろす。
そして、ようやく悶絶から回復した上条を、ちょいちょい、と手招きで呼ぶ。

「ハイ、ナンデショウ?」
「私はアンタを手放すつもりはこれっぽっちも無いから。アンタは私のオトコ。おっけー?」
「…オッケーです」

バツが悪そうに上条が言う。
流石に鈍感な彼も、自分のこれまでの態度が原因だとひどく後悔していた。

「俺がなんとか話をつけて…」
「ばーか、アンタから動いたら、火に油を注ぐようなもんでしょ? しばらくは様子見に徹しなさい」
「はい…」

「はぁ…」とため息を吐いて、麦野が膝を立てて膝小僧を抱える。
いまだにブレザー・スカート姿なので、足の隙間から白いショーツが見えているが全く頓着しない。

上条を『アイテム』に引き入れてから、出来るだけ敬遠していた思考が麦野を襲う。

麦野自身は絶対に否定するが、彼女は『暗部』であることに劣等感を感じている。
ゆえに、性欲や支配欲に代償を求めるが、その犠牲になったモノに対して、少なくない負い目を感じているのだ。

(私があの時、上条クンを『アイテム』に引き入れなかったら、幸せなカップルが出来上がってたんでしょうね…)

所在なげに佇む上条を眺める。

「……突っ立ってないで、横に座りなさいよ」

自分の横の席を、ポンポン、と叩く。
上条がぎこちない動作で座ると、麦野が上条の肩に頭をもたれさせた。




.

「…麦野さん?」
「ちょっとこのまま…」

(あー、まずい、まずい…)

麦野の中の小さな負い目が、『考えてもどうしようもないのに考えてしまうこと』を食べて成長する。

(…どうしてこうなっちゃうんだろう?)

麦野の身体が小さく震えだす。

麦野沈利の心は強い。
仕事と割り切れば躊躇わず人を殺すことができるし、どんなプレッシャーでも笑って跳ね除ける強い意志もある。
だが、それらは少しずつ、だが、確実に麦野にダメージを与えていた。

そして、吹寄制理に感じた、日向を歩く少女への劣等感が、
ついに麦野沈利の鉄の心を折り曲げてしまった。

「……ぐす、ぐす」

上条は、最初、麦野が笑っているかと思った。
なにやら良からぬことを思いついて、暗い情動に笑っているのかと。

しかし、よくよく聞いてみると、それは確かに泣き声で…

「む、麦野さん……」
「ばかぁ、こっち見るなぁ…」

上条の腕が、ぎゅ、とつかまれる。
手入れされて形の良い爪が、上条の肌に食い込む。

「……ごめんね」
「え?」

細く、小さい声が聞こえる。

「人生、めちゃくちゃにしちゃって、ごめんね…」
「………」

上条は絶句して、思わず麦野を見た。
見てしまった。

そこには、ブレザーを着た少女が、膝小僧を抱えて泣いていた。

普段見せる大人びた余裕などカケラも感じない。
等身大の麦野沈利がそこに居た。

「見るなって… ちょっと、やぁ……」

上条は腕を伸ばすと、麦野の身体を自分に押し付けるように抱い寄せた。

「離してよぉ…」
「すいません、でも、離せないです」

さらにぎゅっと、麦野の身体を抱き寄せる。

不謹慎だが、初めて見せる麦野の『弱さ』を、上条はたまらなく可愛く思ってしまった。
同時に、そんな麦野をめちゃくちゃに犯したいという、暴力的な劣情も強く感じた。

「俺、麦野さんと一緒に居て、楽しいですから」
「そんなこと無い、嘘……」
「嘘じゃねぇよ……」

上条は麦野の後頭部を優しく手で把持すると、優しく、しかし強引に口唇を合わせた。
麦野の瞳から流れる涙が、口に入って少し塩辛い。

「ん… ふ…」

舌を絡めあうようなディープキスではなく、お互いの吐息を交換し合うような、深くて長い口付け……
どうしようもない劣情に逆らえず、上条はキスをしたまま麦野をソファに押し倒した。



.

長い口付けを離して身を起こすと、泣き顔のブレザー少女に馬乗りになる。

「……泣いてる女に欲情するとか、サイテー…」
「泣き顔、すっげぇ可愛い」
「…サイテー」

麦野が、ぷい、とそっぽを向く。
その、一つ一つの仕草が、上条の暴力的な劣情を刺激する。

「犯すぞ…」
「好きにしなさいよ……」

麦野のその許可が、完全に上条の理性を崩壊させる。
ブレザーの前ボタンを外すと、中のブラウスを両手で掴んで左右に引きちぎる。

ブツブツブツッ、と小さなボタンが弾け飛んで、白いブラジャーが顔を見せる。
外す手間も惜しいのか、上条がブラジャーを強引にたくし上げると、麦野の綺麗な豊乳が姿を現した。

上条は無言で豊乳を鷲掴みすると、飛び出た乳首を乱暴にしゃぶる。

「ん… あん… もっと、乱暴に、シテ……」

上条の口技がさらに加速する。
自然と、繊細さよりも勢いを重視した愛撫となり、所々、上条の歯が麦野の乳首に当たる。
そのたびに、麦野に軽い疼痛が走るが、逆にそれが麦野のマゾヒスティックな快感を助長した。

「……噛んで」

耳を疑うような台詞が麦野の口から零れる。
一瞬、上条は躊躇したが、すぐに思い返して麦野の乳首を前歯で、ガリッ、と噛んだ。

「…………ッ!」

ズキッ、とした痛みが、乳首から全身に広がる。
しかし、今の麦野にとっては、痛みこそが心地良い。

「……もっと、もっとぉ!」

リクエストに応えて、強く、強く乳首を噛む。
さらに、空いている手でもう片方の乳首を強く捻る。

ギリ、ギリ、ギリ……ッ!!

乳首から発生する激痛に、麦野の顔が大きく歪む。
しかし、それはどこと無く陶酔した表情だった。




.

「麦野さん、けっこうマゾ入ってるんだな」
「…そんなわけねぇだろ、馬鹿ッ!」
「いや、本当だぜ… ほら…?」

スカートの中に手を突っ込んだ上条が、ショーツのクロッチ部をまさぐる。

「…もう濡れてる」
「いちいち言うな、馬鹿ぁ…」

口ではそう毒づくが、身体は裏腹に腰を上げて、上条がショーツを脱がせやすいようにする。

ショーツを片足にひっかけ、スカートをめくると、すでにガチガチに勃起したペニスを秘所に当てる。
一瞬、麦野と視線が交叉すると、それを合図に、上条は強引に、そして一気にペニスを挿入した。

ズブズブッ!!

「…………ぃたぁ」

濡れ方が足りてなかったのか、麦野が苦痛の呻きを上げる。
だが、上条はそんなことはお構いなしに、ピストン運動を開始する。

ズリッ、ズリッ、ズリッ…!

上条の長大なペニスが、肉の槍となって麦野の身体を抉る。
歯を食いしばって、その痛みと衝撃に耐えていた麦野だが、次第にその表情に変化が生じ始めた。

「ぐっ、ぐぅ… はぁぁぁ…… ぁん、あぁん……」

いくら乱暴にしていても、ここ数日で幾度と無くセックスをした2人だ。
自然とお互いの腰の動きが同調し、2人が最も気持ち良い動きに変化する。

「はぁ、はぁ、はぁ…… あぁん、んぁあ!!」

結合部から、じゅぶじゅぶ、といやらしい水音が響く。

「…前から思ってたけど、濡れすぎ」
「アンタこそ、チンポでかすぎ… 吹寄ちゃん、よく裂けなかったわね」

イラっときたのか、ピストン運動が速まる。

「あっ、あっ、あっ!! 駄目、もうイクッ!!」
「イッちゃえよッ!! 俺も、くぅ……!」

両手を互いに絡ませて、口唇を互いにあわせて塞いで、
上条と麦野は同時に絶頂に達した………




.

「…ありがと」

それから数度、体位を変え場所を変え、激しいセックスを終えると、
麦野はいくらか落ち着いた声で上条に言った。

「…オトコの前で泣いたのは初めてだわ」
「俺の前だったらいつでも良いぜ」
「ぷっ…!」

上条当麻の、あまりにもの気障っぽい台詞に思わず吹き出す。

「ばッッッかじゃねーの? セックスのしすぎて、頭がサルになってない?」
「ひっでぇ! 自分だってセックス好きなくせに…」
「あン!?」
「事実じゃん!」

軽く睨みあって、そして、麦野が相好を崩す。

「…敬語、ようやく抜けたね」
「えっ!? あー、まー、そーかも……」
「そっちの方が良いわ、ずっと……」

そう言うと、麦野沈利は破れたり汚れたりしている服を全部脱いで、股間から精液が垂れないようにハンカチを当てた。

「ねぇ、一緒にシャワー浴びよっか。髪の洗い方教えたげる」
「爪の次は髪ですか、へいへい…」

上条も手早く学生服を脱ぐと、不意をついて麦野をお姫様抱っこした。

「きゃッ!」
「そんじゃ行くか」
「もう、調子のんなよ、テメェ……」

口を尖らせながらも、どことなく嬉しそうに麦野が笑った。

―――十数分後、バスルームから再び麦野の嬌声が響いた。






「あ、そうそう、お仕置き決めて無かったわね。
 今からしばらくブロウジョブサービス中止ね」
「………地味に辛ぇ」





                                                  第2話「恋敵」 了





.

はい以上。

吹寄のあまりにものヒロイン力に圧倒されて、
強引に麦野へシフトした結果がこれだよ。
後悔先に立たず。

2話はこれで終了なので、次から3話。
長めの話になる予定です。

でわでわ。
それと、ブレザー・女子高生ルックの麦野を想像して、
「BBA、無理すんな」と思った奴、
正直に挙手な。














ちょっと次回予告。あと、上条さんのチンポのサイズは、太さの長径5cm、長さ16cmね。









次回予告。


先の見えない哀れな逃走劇。
『暗部』に下る非情なハンティングゲーム。
ターゲットは、単価18万円の哀れな人形。

「―――俺様がやっても良いが、ハッカーを確保する必要があるな」
「―――悲恋か、やりきれねぇな…」

次回「妹編」

書き忘れてたけど、3話はダークなエログロになります。(予定)

ちょっと安価。

今回は詳しく説明。

「次回開始時に既に暗部堕ちしているキャラを選んで」

性格改変をノリノリで行います。
好きなキャラをあえて外すのもありか?

1.こんごーさん        : 漫画版の性格をベースに、裏社会にどっぷり染まった強かさをブレンドします。

2.わんない&あわつき    : 表面上の性格はそのままで、中身はキマシタワー、的な性格破綻レズカップルにします。
3.やなぎさこあおみ      : 固法先輩のルームメイトの風紀委員。暗部との二重スパイにします。当然性格はほぼオリジナル。

ちょっと遠めに↓3
もしくは、本日10:00:00以降初めてのレス。

…このスレって監視されてんの?

そして圧倒的婚后さん人気にワロタ。

1つ聞きたいが、
超電磁砲8巻、177ページの5コマ目で、
お前ら興奮した?

おーけー、おーけー。

そんじゃ、誰に踏ませようかのぉ…

個人的には木ィィィィ原くゥゥゥゥンを押す

>>290
ネタバレになって申し訳ないが、
木原一族は扱いが面倒すぎる&ベタな使い方しかできないので、
ウチのSSには出しません。

ネタ潰しって言葉、知ってるか?

あ、いや別に不具合はまだないけど、
それぐらいでな。

色々予定が立て込んだので、突発投下。

今回は短め20k。
でも、エロは挿入する、絶対にだ。

多分、第3話はこんな感じで小出しになると思います。





S-1 DAY マイナス1

PM23:00 マンション「Melty kiss」 絹旗命名 「インランの間」


ギシギシギシギシッ…

クィーンサイズのベッドの上で、若い男女が互いを貪りあう。
その豊かな双乳に夥しいキスマークをつけられたキツ目美人の女性は、
ツンツン頭の少年の激しいピストン運動に、喜悦の涙を流す。

「あンッ、あンッ、あンッ!! あぅッ!!」

ピストン運動のたびに、かなり大きめな豊乳が、ぶるんぶるん、と盛大に揺れ、
5,6回突かれるごとに、形の良い顎を反らして絶頂に達する。

「ぅ、締まる…… 沈利、またイッた?」
「さっきからッ、イキっぱなしよ…! 当麻クン、耐えすぎ…ッ!」

既に何回か腟内射精されているのか、結合部から精液と愛液が混ざった液体が吹き零れる。
上条と麦野、通算何度目になるか分からない、ガチセックスの最中だ。

「流石に3発目だからな…! これで長持ちしなかったら、怒るだろ…ッ!!」

ズリッ、ズリッ、ズリッッ!!

四方の膣壁を擦るように、細かい変化をつけてピストン運動を繰り返す。
擦られる膣壁で感じ方が違うのか、麦野の反応も微妙に変化する。

「…あ、ソコッ! ソコ良いわ…!」
「ん、ココ?」

新たに発見した性感帯を、ペニスの上カリでごりごり擦ると、麦野が声にならない悲鳴を上げる。

「―――ッ!! すご… ソコ、良い……ッ!」
「それじゃ、これでラストにするぜ…ッ!!」

新たな弱点を見つけた上条が、その場所をピンポイントに責める。

「………ぉぉおおおおああああああああ!!!!」

シーツを引き千切らんばかりに掴んで堪えていた麦野が、耐え切れなくなって獣のような唸り声を上げる。

「…出すぞ、沈利ッ!!」

麦野の限界を悟った上条が、奥の奥までペニスをぶち込んで勢い良く射精を始める。
子宮のみならず、脳にまで精液をぶっ掛けられたような感覚を経て、麦野沈利はようやく脱力を得た…


.

「うぁーーー、すっげぇイッたぁ……」

上条が秘裂からペニスを、ずるり、と引き抜くと、抑揚の無い口調で麦野が呟いた。
下品な物言いだが、こういう言い方をするときは彼女の本心が出ている証拠だ。

「……あー、なぁ沈利」

麦野が上機嫌なのを確認して、上条が躊躇いがちに声を掛ける。

「あのさ、そろそろ、解禁してもよくね? …お掃除フェラ?」

吹寄の件からフェラ禁止になってから1週間ほど。
あの時の充足感が忘れられない上条は、麦野の機嫌の良いときにおねだりをしようと、タイミングを計っていたのだ。

しかし、麦野は無言で自分の秘裂に人差し指と中指を突っ込みと、ぐちゅぐちゅ、と盛大に腟内を掻き回す。
そして、精液と愛液が付着して、湯気が立つほどにふやけた指を上条の前に突き出した。

「舐めて」
「………っえ?」
「はい、ブ~~~!! 『己の欲せざる所人に為す勿れ』ってかぁ? 
 テメェができねぇことを、彼女に強要させんじゃねーよ」

口調はそこまで激しくないが、ガン拒否である。

「いやッ! 舐める舐める、舐めさせていただきますッ!!」
「遅いっての。つーか、ちっとは我慢しろよ」

やや呆れた口調で麦野が言う。

「くそぅ… あれ、マジですげー感動するんだけどなぁ…」
「こんな良いオンナに、生ハメ中出ししてんだから、ぜーたくなこと言うな、バカ」

零れた精液がシーツを汚さないように、麦野がティッシュで秘裂を押さえる。

「はい、抱っこ」

麦野が片手を上条に伸ばすと、心得た上条が麦野を軽々とお姫様抱っこをする。

いつものパターンでは、このままバスルームに直行して一緒にお風呂を入るのだが、今回は無粋な電子音がそれの邪魔をした。

Pipopipopipo......

独特な電子音に、麦野の表情が「げぇ…」と歪む。

「…ぜってぇ、タイミング計ってやがったな、覗き見ヤローめ…」

憎々しげに呟いて、傍らの携帯電話を取る。
とりあえず、上条が麦野を抱っこしたままベッドに腰を降ろすと、麦野は電話の通話スイッチを押した。



.

『や、先ほどはお楽しみでしたね♪』
「ブチ殺されたくなかったらとっとと用件を言え」

予想通り、電話の主は『アイテム』に仕事の斡旋をする、通称『指示役の女』だ。

『へーんだ、可愛い子犬ちゃんと昼夜問わず盛っちゃってさぁ… この淫乱女めッ!!』
「そういうアンタは、もしかしてクモの巣張ってんじゃないの? 早く使わないと、オンナやめるハメになるぞ?
 ……あ、もしかして、すでに閉経しちゃってる?」
『こ、こいつときたら…… なんでそう下品な言葉がポンポン出やがるんだ……!?」
「うっさい、良いから、とっとと用件を言えッ!!」

『指示役の女』は、それでもまだブツブツと文句を言っていたが、間を取るように、「あ~ごほん」と咳払いをして話し始めた。

『…今回のお仕事は『奪還・回収』よ。まぁ、よくある『外』への技術流出の阻止ね。
 詳しくは後から説明するけど、アンタらにはハンター役をやってもらうわ』
「ちっ、めんどくせーな… つうか、即応しなくて大丈夫なのかよ?」

学園都市の『10年以上先を行った』技術は、学園外の科学者にとっては垂涎の的だ。
当然、技術の流出には気を使うし、事前に察知しているのなら、即応部隊が即確保するのが通例だ。

『それが色々と複雑っつーか、やっかいな事情があってねぇ。アンタらに動いてもらうのは明後日になるんだわ』
「…げぇ、嫌な予感しかしねぇぞ?」
『あ、それ多分当たってる。
 今回のメインは、当然、トチ狂った科学者の逃亡阻止と技術奪還なんだけど、
 裏にもう一つ目的があって、逃亡者を泳がせて、逃亡を幇助する反学園都市の組織を把握するわ』
「だりぃ… 悪いけど、アタシはパスね。とっとと目標を確保して終わらせてもらうわ」
『コイツときたら… ま、普通に仕事をやる分には文句は言わないわよ。
 敵対組織のあぶり出しは、『他の暗部』がやってくれるでしょーから』

『指示役の女』の言葉に、麦野の表情が歪む。

「『暗部』を総動員するつもりか… よっぽど上質の餌なんだな?」
『それは資料を読んでから判断してください。それでは、健闘を祈ります』

電話は唐突に切れた。
麦野は忌々しげに携帯をベッドに放り投げると、上条の耳に口を寄せて言った。

「お風呂で楽しんだら、皆に連絡してちょうだい。けっこうでかいヤマになりそうよ…」

日常が終わり、非日常が幕を開けようとしていた……



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S-2 DAY -1

同時刻 とある路地裏


学園都市の路地裏を、大きなスポルディングバッグを肩から下げた、中肉中背の壮年男性が歩いている。
あまり運動慣れしていないのか、それともバッグが相当に重いのか、ぜえはあ、と肩で息をしている。
                                                 フルチューニング
「マスターマスター、マスターの鼓動が頻脈です。適切な休憩が必要です、と、ミサカ00000号が申し上げます」
「……うるさい、休憩はあとだッ!」

男の3歩半後ろを、一人の女性が歩く。
この女性も、大きめのバッグを肩に架け、両手にボストンバッグを下げる重装備だが、男と違って息の1つも上がっていない。

「『暗部』が動き出す前に、ある程度の仕込みを済ませておかねばならん。休んでいる暇は無い…!」

男は1つ気合を入れると、傍らの女性を見た。

その女性は男よりも少し背が低く、162cmほどの身長で、身体の線が見えない緩めのワンピースを着ている。
頭にはつばの広い麦わら帽子を目深にかぶっているため、表情を探ることは出来ない。

「マスターマスター、わたくしめの計算では、小休止を取った方がより効率的です。と、ミサカ00000号が申し上げます」
「…うるさい、黙って私について来い… 命令だ!」
「マスターマスター、命令を『統合・解釈』いたしました。発語を休止し、マスターに追随します。と、ミサカ00000号が申し上げます」
「…ああ、それで良い」

『マスター』と呼ばれた男は、しかし、足を止めて少女を見た。

(くそ… どうして私は、こんなことを……)

男の表情が、形容しがたい形に歪む。
後悔をベースに、諦観と愛想と、そして決意をミックスしたような表情だ。

発語を禁止されているためか、女性が首をかしげて疑問を向ける。

「…なんでもない、行くぞ」

男は女性の疑問には答えず、踵を返して歩き始めた。
女性も、それ以上追求しようとせず、きっちり3歩半下がった位置で、男に従って歩き始めた。

男の名前は天井亜雄。
数日後には、学園都市の『暗部』ほぼすべてから狙われる、哀れな研究者だった……




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S-1 DAY 0

PM1:00 「とある」ファミリーレストラン


「超電磁砲(レールガン)の複製人間(クローン)~~!?」

とある昼下がりのファミリーレストランに、フレンダ・セイヴェルンの素っ頓狂な声が響く。

「ふれんだ、こえがおおきい」
「あ、ゴメン、滝壺。 …でも、どーしてそんな物が作られた訳?」

窓際19番のファミリー席には『アイテム』全員が揃っており、黒一点な上条はどうにも居心地が悪い。

「『どうして』かは、超簡単にわかるでしょう。
 レベル5を量産できれば、学園都市のパワーバランスが、超ひっくり返りますから」

絹旗の言うとおり、超能力者(レベル5)は、それ1人だけで一国の軍隊に匹敵すると言われている。
その量産が可能ならば、世界征服も夢ではないだろう。

「問題は、なぜ『超電磁砲』か、ということね。
 資料によると、クローン作成に使われたDNAマップは、超電磁砲が10歳のときのものらしいわ。
 その時、あの小娘はレベル1にも達していなかったそうよ」

あまり興味の無い風に麦野が言う。

「ワケわかんねぇな。学園都市側は、ビリビ… 御坂がレベル5になるのが分かっていたって言うのか?」

『ビリビリ』と言い掛けた時、麦野に、ギロリ、と睨まれて、上条はあわてて言い直した。
うっかり失言をして、また要らないフラグを建てないように、麦野によるデリカシー強化訓練である。

「DNAマップ提供の目的は、筋ジストロフィーの治療となっているけど、可能性としてはそれも有るわね……
 アタシだって、最初からレベル5をめざした特別カリキュラムを経てレベル5になったんだし」

珍しく麦野が遠い目をして言う。

麦野はあまり自分の過去を語らない。
それは『暗部』であることからの戒めなのか、それとも、別の理由なのかは定かではない。
ただ、漠然と『聞くべきではない』と、上条は感じていた。

「……それで、こんかいのたーげっとは?」

停滞した雰囲気を、やんわりとした滝壺の声が破る。

「…えーと、『天井亜雄』 量産型能力者計画、通称『レディオノイズ』計画の超責任者ですね」

「『レディオノイズ』計画は、御坂美琴の体細胞クローンの作成に成功するも、
 その性能はオリジナルの1割に満たなかったため、計画は凍結……
 結局、レベル5の量産は失敗に終わったって訳」

「つまり、あまいさんの研究はしっぱいにおわった?」

「結論から言うとそうね。
 私財を投じた研究が失敗に終わり、巨額の負債を抱え、ニッチもサッチも行かなくなった哀れな天井研究者は、
 唯一の『研究成果』を手土産に、学園都市外部に亡命しようとした、と」

「そして、その『研究成果』がこの娘か……」

上条の手の中には、掌大の撮影デバイスがある。
そこには、過去、彼に何度も勝負を挑んできた少女、御坂美琴に良く似た少女が写っていた。

研究成果とは、即ち、1体だけ生産されたクローンのプロトタイプである。




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                           オリジナル
「ミサカタイプ・クローンか… どー見ても御坂美琴本人よりも肉体的に成長してるわね」
「クローンですから、実年齢は数歳程度でしょうね。…精神年齢が何歳かが気になりますが」

デバイスに写る少女は、上条や麦野が遭遇した御坂美琴よりも若干大人びて見える。

「能力は強能力(レベル3)の劣化電気(レディオノイズ)。
 出力は超電磁砲の1割未満みたいだけど、『電気使い(エレクトロマスター)』としては充分な能力ね。
 電気的なトラップや追跡手段は使えないと見て良いわ」

麦野が冷静に分析する。

「ですが、ウチには滝壺が居ます。
 これは超大きなアドバンテージでしょう」

絹旗が滝壺を見ながら言う。
滝壺の能力である『能力追跡(AIMストーカー)』は、たとえ地球の裏側に居ようとも、能力者であれば完全にその位置を補足できるものだ。
『体晶』のサポートが必要とはいえ、かなり強力な能力だ。

「…まかせて」

注文したパフェをもぐもぐ食べながら、絹旗が言う。

「でも、結局動けるのは明日からなんでしょ? めんどくさー…」

フレンダが呆れたように両手を挙げる。
絹旗、滝壺も同様の感想のようで、互いに頷きあう。

「どうも、学園都市側は今回のヤマを特別視しているみたいね。
 ドクター天井の逃亡も仕組まれた匂いがするわ」
「というと?」
「…具体的な結論を出すには情報が少なすぎるわね。
 とりあえず、今日は各自情報を頭に入れて、明日から行動を開始するわよ」

上条の質問を微妙にはぐらかし、麦野が会話を締める。
何か用事でもあるのか、フレンダが一番に席を立った。

「とりあえず、アタシは浜面通じてスキルアウトに探りを入れておくわ。
 妹の様子も見ておきたいしね」

そう言って、お気に入りの帽子を被るフレンダに、麦野が声を掛けた。

「フレンダ、それならコレも連れていってちょうだい。
 スキルアウトにツテもあるみたいだし」

麦野が上条が指差して言う。
事前に話してあったのか、とくに動揺も無く上条が立ち上がる。

「…ま、別に良いけど、妹に色目使わないでよ?」
「しませんって、上条さんをどんな風に見てるんですか…?」
「性獣」
「……ひどい誤解だ」

顔に手を当てて落ち込む上条を、麦野が頭をはたいてどやしつける。

「変に気にすんじゃねぇよ、余計に怪しいだろうが。とっとと行って来い」
「へーい、そんじゃ、フレンダさん、ヨロシク」
「あいさー。いやー、上条が居てくれると助かる訳よ」

何が嬉しいのか、満面の笑みを浮かべてフレンダが言う。

「…フレンダぁ、手ぇ抜いてトチったら、容赦なく処分するからな。調子のんなよ?」
「う… 分かってるわよ。仕事はきっちりこなすから…!」

ドスの効いた麦野の台詞に、フレンダは思わず冷や汗を流した。




.

S-4 DAY 0
同時刻  某ホテル最上階ペントハウス。



「相手は『電気使い(エレクトロマスター)』だからな、
 俺様がやってもいいが、ハッカーを確保する必要があったわけだが…」

学園都市を一望できる高級ホテルの最上階。
機能的な生活空間や、それと不釣合いなほど電子化されたシステムスペースがあるペントハウスに、特徴的な男女4人が居た。

「それで、塔下くんがナンパしたのが彼女なの?」

最初に言ったのは端正な顔立ちをした長身の青年で、
それに応えたのは、小柄な、しかし、大人が着るようなイブニングドレスを見に纏った少女だ。

「ナンパっつーか、ネットに複雑な暗号キーを置いて釣っただけですけどね。
 まさか、こんな娘が釣れるとは思っていなかったです」

そう言ったのは、天使の輪のような金属環が頭部をとりまいている少年だ。

少年―塔下―が見下ろした先には、ソファに横になったローティーンの少女が居る。
その少女は、たくさんの花をかたどった髪飾りで頭を飾っている。

「この小娘が『守護者(ゴールキーパー)』だってか。弱能力者(レベル1)なんだろ?」
「僕も信じられないですが、状況証拠的に真実のようです。
 現に、垣根さんが構築して、僕がアレンジしたデコイをあっさりと解析していますし」

塔下が肩をすくめる。
それで納得したのか、青年がドレスの少女に目線を送る。

「まあいい、確認してみりゃ分かることだ、『心理定規(メジャーハート)』を使ってくれ」
                        ・ .・ .・ ・ .・ .・ .・ ・ ・ .・.・ .・ ・ .・ .・
「了解。戦闘能力はないみたいだから、貴方と距離単位5まで縮めるわよ」

ドレスの少女が、花の少女に近づき覚醒パッチを鼻に当てる。
わずかな身じろぎと共に、花の少女が目を開くと、ドレスの少女が「パーソナルリアリティ(自分だけの現実)」を展開した。

「…………………………ぁ」

目覚めたばかりで状況が理解できない花の少女は、周囲をキョロキョロと見回して、最終的に視線を青年に向けた。

「よう、良い夢を見れたか? ちなみに俺は垣根帝督という。あんたの名前は?」

花の少女の視線を真っ直ぐ受け止め、青年―垣根帝督―が微笑む。
その笑みをどう解釈したのか、花の少女の頬がみるみる紅潮し、恥ずかしそうに視線を落とす。

「う、初春、初春飾利です… 垣根さん……」

飴玉を転がすような甘ったるい声で、初春飾利は答えた。



.

「初春か、面倒だから呼び捨てにするぞ、いいな」
「はい… かまいません……」

垣根に見つめられるのが余程恥ずかしいのか、初春は人差し指を、もじもじ、と擦り合わせて視線を合わせようとしない。

(相変わらず、えげつねー能力だなー)

その様子を見て、塔下が戦慄ともとれる感情を抱く。

『心理定規(メジャーハート)』は精神感応系の大能力(レベル4)で、
その効果は「人の心の距離を自在に調節できる」という恐ろしいものだ。

効果の強度は、彼女が独特に用いる『距離単位』という単位で設定し、
距離単位5は、例えるなら、そのアイドルの為に100万単位の金銭を惜しみ無く浪費する熱狂的なファンほどの距離だ。

「そんなに緊張することは無いさ。少しお前に手伝ってもらいたいことがあってな。それで、ここに呼んだわけだ」
「は、はいッ! 何でも言ってください!!」

今の初春にとって、垣根は親、親友以上に心を許す相手だ。
その場で愛の告白をしてもおかしくない心理状況なのだ。

「じゃ、頼みごとの前に1つ確認だ。
 初春は、『守護者(ゴールキーパー)』と呼ばれる凄腕のハッカーだよな?」
「はい、そうです。 …どうして、垣根さんがそのことを?」
「そこは気にするな」
「はい、わかりました」

疑問に思って首をかしげるが、垣根がその疑問を一蹴し、初春が素直に頷く。

「頼みごとってのは、とある犯罪者の追跡だ。
 学園都市の技術を『外』に流出させようとしている悪い奴だ。
 そいつの足取りを追ってくれ」

垣根の言葉を、コクコク頷きながら聴いていた初春は、納得したように、最後に大きく頷いた。

「なるほど、よく分かりました。
 ということは、垣根さんは『警備員(アンチスキル)』、もしくは『風紀委員(ジャッジメント)』ですか?」
「…いや、そうじゃない。これは俺様の私的な頼みごとだ」

魅了しているとはいえ、凄腕のハッカー相手に嘘をつくのは不味いと判断し、垣根ははぐらかした。
しかし、それが致命的なミスとなった。

「それでは、お引き受けできません」
「……なに?」

相変わらずもじもじと、しかし、はっきりした口調で初春は拒絶した。

「…もう一度言うぞ、犯罪者の追跡に協力してくれ」
「すみません… 垣根さんの私的な用件であるなら協力できません。
 犯罪者の追跡ならば、『警備員(アンチスキル)』に任せるべきです」

さらに拒絶を受け、どういう事か、と垣根はドレスの少女を見た。

「……おそらくは、『どんなに親しい相手でも譲れない一線』が彼女にはあるんでしょうね」
「見た感じですが、『ハッカーとしての能力を悪用しない』とか決めてるんじゃないんですかね」

ドレスの少女と塔下が順番に言う。

垣根は「チッ… ムカつくぜ…」と1つ舌打ちをすると、
「初春、そうなのか?」と初春に尋ねた。

「はい、私のハッキング技術は限定された状況でしか使いません。
 些細な頼みごとならば状況により行いますが、犯罪者を追跡するような高度な操作を私用で使うわけにはいきません」

初春の回答に垣根は天を仰いで嘆息した。
『心理定規(メジャーハート)』の高い能力は垣根もよく分かっている。

それなのに、自己を曲げない初春の克己心が凄まじいのだ。

「ドジ踏んだぜ、クソ…… 能力を解除してくれ」

ドレスの少女が、肩をすくめて能力を解除する。

すると、それまで熱視線を送っていた初春が、始めは呆然と、次第に理解へ、
そして、最後に憤怒の表情を作って垣根を睨みつけた。




.

「人の心を…… なんてことを……ッ!!」
「おいおい、素直に協力してくれれば、最後までお前はハッピーだったんだぜ? 自業自得だ」

怒りを押し殺した声で言う初春に対して、垣根が吐き捨てるように答える。
その声には、若干の怒りが含まれていた。

「貴方がたは何者ですか…?」
「『スクール』。もしかしたら知っているかもしれんが、学園の『暗部組織』だ」

あっさりと垣根が言い、初春の表情がより険しくなる。

「…内実は知りませんが、非合法な組織の存在は確認しています」
「そりゃ結構… じゃ、正気の初春に再度お願いだ。俺たちに協力してくれ」
「まっぴらごめんです…!」

今度は明確に初春が拒絶する。
ドレスの少女と塔下が、互いに顔を見合わせて「あちゃー」という表情を作った。

「貴方がたがどんな目的で活動していらっしゃるのかは分かりませんが、
 非合法な活動に手を染めることはできません!!」
「オーケィ、オーケィ。わかったから耳障りな声で喚くな、喧しい」

垣根帝督が不機嫌そうな声をだして、ギロリ、と初春を睨む。
しかし、なおも初春が言い募ろうとした、その瞬間、

「………………!?」

初春の口から発語が止む。
それは、まるで声が口から出る前に『見えない壁』に吸い込まれているかのようだった。

驚き、身体を動かそうとするが、今度は手足が見えない枷でも嵌められているかのように動かない。
動作と声を封じられた初春が、青ざめた表情で垣根を見た。

「まぁ、予想はつくだろうが能力を使わせてもらった。テメェがどんな手段を用いようが解除はできねぇ。
 ――俺の未元物質(ダークマター)には常識が通用しねぇからな」

垣根帝督、学園都市の頂点である超能力者(レベル5)の第2位である青年が、残忍な笑みを浮かべる。

「…どうするんですか?」
「搦め手が効かねぇなら、正攻法で責めるしかねぇだろ」

垣根の言葉を聞いたドレスの少女が、「可哀想に…」と呟く。

「初春よ、ギブアップするなら早めにな、俺だって趣味じゃねぇんだからよ」

低く、無機質に調整された声色に、初春は確かな恐怖を感じた……




.

はい終了。

次回は丸々初春回の予定。
予告どおりエログロ(作者の中では)やります。

初春にしたい、あーんなことやこーんなことをレスしてたら、
もしかしたら文中で実現するかも!?

それではまた次回。

なぜだろう…
もう10kbほど書けてしまっている…
筆がノリノリすぎてで初春がヤバイ
解剖学的にだるまはアウトでも、神経学的にだるまはセーフだよね!

どんなだるまだよ

>>330
第5―6頸椎の間になにか挟むと、神経学的にだるまになれるよ!
ホント、未元物質って便利な能力だぜー。

ネタバレになるかもだから、知りたい人は『頚髄損傷』でググッてちょうだい

できたので今から投下。

初春の拷問回。
今回も20kb強。





S-5 DAY 0
13:30 ペントハウス

「~~~~~~~~~~ッッ!!!!!」

ペントハウスに声無き絶叫が響く。

絶叫の主は初春だ。
いったいどういう能力干渉を受けているのか、彼女はソファの上で両手両足を支離滅裂に動かし、
両目の瞳孔を限界まで拡げ、苦悶の表情で千切れんばかりに首を振る。

「えぐい… 気が触れるんじゃない?」
「いったん止めるか」

無表情にのたうちまわる初春を見下ろしていた垣根が、指をパチンと鳴らす。
すると、あれほど暴れていた初春が、糸の切れた人形のように、くたり、と動きを止めた。

「意識有るか、おい」

垣根が初春の肩を軽く足蹴すると、初春はのろのろと顔を上げて焦点を垣根に合わせた。

「…なにを、したん、ですか………?」

今にも消え入りそうな弱々しい声で初春が尋ねる。

「あん? 別に難しいことじゃねぇよ。
 てめぇの『感覚』を『未元物質』で全部インターセプトしただけだ。
 言ってる意味、分かるか?」

垣根の言葉に、初春が激しく震えだす。

感覚を遮断する。
それはつまり、五感を含めたすべての体性感覚、深部感覚が無くなるということだ。

何も見えず、何も聞こえず、何も言えず、何も感じない…
暗闇よりももっと恐ろしい『何か』に、初春は叩き込まれたのだ。

「よし、理解したならもう一回だ。今度は長く時間を取るぞ」
「ま、待ってくだッ」

初春の制止もむなしく、垣根帝督は冷酷に「自分だけの現実(パーソナルリアリティ)」を展開した。



.

はじめは闇。

視覚、聴覚、嗅覚、味覚を奪われ、完璧な闇が初春を包み込む。
人間は本能的に闇に恐怖を抱く。
頭で理解していても、それでもゾクリとした恐怖が初春を襲う。

次に不可触。

触覚が完全に遮断されると、それまで触れていたものすら知覚できなくなる。
結果、それまで座っていたソファを認識することができず、支持面の喪失を脳が認識するが、現実の身体はソファに座っている。
認識の齟齬が発生し、脳が混乱する。

最後に自己の喪失。

人間は運動覚、位置覚と呼ばれる深部感覚によって、自分がどこに居るのか、自分の身体がどんな位置にあるのかを認識している。
しかし、その感覚を喪失してしまうと、自分で自分の身体を認識できなくなる。
                  ・ ・ ・
結果、初春は無感覚の渦に溺れた…!

(怖いッ、怖いッ、怖いッ、怖いッ!!
 助けてッ!! どこになにがあるのッ!? 私はどこッ!? ここはなにッ!?)

わずかでも感覚情報を得ようと、初春が手足をやたらめったらに振りまわす。
しかし、どんなに足掻いても手足は何も知覚してくれない。

いや、そもそも振り回している手足の情報すら脳に伝達されない。
初春には、自分が何をしているのかすら理解することができない。

(声が出せない…ッ 何も触れない…ッ 手足を感じない…ッ 体温も感じない…ッ!!
 私、死んじゃったの……ッ!!)

形容するなら『幽霊の感覚』だろうか。                ・ .・ ・
思考だけが明確に維持されているが、まるで手足が落とされただるまのようだ。

何もかもが混乱し、思考が滅裂となる。
直接は操作を受けていない呼吸すら不規則になり、脳が乏血に陥る。
                            ・ ・ ・
とうとう、手足を動かすことすら不可能になり、おこりのような痙攣が初春を包んだ。

「はっ、はっ、はっ、はっ、はっ、はっ……!」

狂う… 初春の残された理性が、その二文字を思い描いたとき、
唐突に感覚が元に戻った。

「………………っはぁああああああああああッ!!!!!」

いっぺんに感覚が脳に伝達され、初春が少女とは思えない呼気を発する。

全身の汗腺が一気に開き、気持ちの悪い油汗がぐっしょりと肌を濡らし、そして…

ちょろろろろ………

あまりにもの恐怖に膀胱括約筋が緩んだのか、初春はカエルが潰れたような体勢で失禁した。



.

「花飾りのセーラー少女、拷問の末の失禁かぁ… 絵になるなぁ、激写激写っと…」

塔下が嬉しそうに初春の痴態をデジタルカメラで撮影する。

「悪趣味… 近寄らないで、ヘンタイ」
「弱み弱み、脅すカードは多い方がいいでしょ?」

そう言って撮影を続けていると、フラッシュの光が眩しかったのか、初春が薄く目を開いた。

「…ギブアップするか?」

垣根が短く尋ねるが、初春は黙ったまま小さく首を振る。
その反応に、塔下は「ヒヒ、そうこなくっちゃ」と卑屈に笑い、ドレスの少女が額に手を当てて嘆いた。

「…初春さん。悪いこと言わないから、強情張らないで協力してちょうだい。本気の本気で、ただじゃ済まないわよ?」
「……駄目です、みさなん、警備員(アンチスキル)に出頭してください…」

初春の回答に、ドレスの少女ががっくりと肩を下ろす。

「この期に及んでこの娘は… 偉いっつーか、馬鹿っつーか……」
「風紀委員(ジャッジメント)なんでしょ? そーゆープライドが高いのかもですよ」
「風紀委員だろうがなんだろうが、馬鹿に変わりはねぇな。せっかくの技能を無駄に潰してやがる。
 弱能力者(レベル1)つーのも、納得できるぜ」

吐き捨てるように垣根が言うと、彼はゆっくりと初春に近づくと、セーラー服の襟首を掴んで、強引に初春の顔を引き寄せた。

「いいか、てめぇは最後にはギブアップする。そういう拷問を俺たちがするからだ。
 ダメージの少ないうちに協力するのがクレバーな対応だったんだよ」

互いの呼吸が感じられるまで顔を近づけて言う。
初春は気丈に垣根と視線を外さないが、その表情は不安に満ちている。

「だが、ムカつくことにてめぇは最も愚かな選択をした。だから俺も容赦しねぇ。」

言い終わると、垣根は初春の身体をなぜるように手を振った。
すると、どんな能力干渉が行われたのか、初春の服が、熱せられたアスファルトの上の氷のように、融けて消えた。

「ひ、ひゃああ!!」

流石に慌てた初春が両手で胸を覆い、太ももにぎゅっと力を入れる。
歳相応の慎ましい胸が、一瞬だけ露わになった。

「さて、と。月並みな言葉だが言わせて貰うか…」

口の端を釣り上げて垣根が笑う。

「女に生まれたことを後悔させてやる…」

耐えられないかもしれない。
                      ヒビ
磨耗した意識の中で、初春は精神に皹が入るのを感じた。




.

「塔下、てめぇの出番だ。動きは制限してるから存分にやりな」

垣根がそう言って初春から離れる。そして、そのまま部屋から出て行った。

悪魔が居なくなって、初春は身体を動かそうとしたが、手足が鉛のように重くなってその行動を縛る。

(これも能力でしょうか… なんてインチキ…)

初春がそうやって無駄な抵抗をしていると、塔下と呼ばれた少年が嬉々とした表情で近づいてきた。

「さぁて、久々に全力で行きますか……」

いつの間にか用意したのか、塔下が自分の頭に装着している金属環と同じものを持ち、
初春の隣には小さな冷蔵庫ほどのワークステーションが設置されていた。

金属環とワークステーションは絹糸のような細い導線で繋がれており、付属しているモニタには様々な数字が踊っている。

「初春ちゃん、動かないでねー。ちょっとプスっといくから…」

塔下はそう言うと、金属環を初春の頭周にセットし、ワークステーションのコンパネを叩く。

シュ… という軽い発射音と共に、金属環から計8つの導針が伸び、初春の頭部に接着される。
痛みは無いが、頭部に花飾り意外の物が装着されることに、ひどい違和感を感じる。

「んー、パルス確認… 次は脳波っと……」

モニタに表示される矩形波を見ながら塔下がちょこちょこと操作を行い、やがて大きく納得したように頷く。

「おっけー、出力はこれで良し、と。そんじゃ、入力機器を挿入しよっか」

そう言うと、塔下は初春にとある細長いモノをかざして見せた。
それは、ありていに言ってしまえば、男性器をかたどった張り型で、底部からやはり細い導線が伸びている。

「……それで、私を犯すつもりですか?」

流石に予想もしていたし、覚悟もしていたのか、動揺を押し殺した声で初春が言う。
しかし、塔下は笑顔で首を振った。

「え、いや、そんな酷いことしないよ。やっぱり処女喪失はホンモノが良いでしょ?
 これは別の穴専用。その方がパルスを入力しやすいから」

そうして、塔下が新たに取り出した物を見て、今度こそ初春の顔が引き攣る。
塔下が取り出したのはイチヂク浣腸器だ。

「や、やめてください……」
「いきなり挿入したら裂けちゃうしー、中にブツが残っているとノイズが多いんだよね。
 さ、さ、いよいよ乙女の花園がご開帳ですよ~」

おどけた口調で、しかし、有無を言わせぬ力で塔下が初春の太ももを割り開いた。
初春も必死に力を入れて太ももを閉じようとするが、上手く力を入れることが出来ない。

「嫌ぁ!」
「ひひひ、いい悲鳴だねぇ~。でも、残念でした~」
「……死ねよ、ヘンタイ」

傍らに立つドレスの少女が、ボソッ、と呟く。
同性としては、流石に不快感が強いのだろう。

しかし、そんな声もどこ吹く風で塔下は初春の股を開帳し、一気に初春の身体を折り曲げた。
微かに尿臭がする無毛の割れ目、ほんの少しセピア色にくすんだ菊座が、完全に露出した。

「初春さん、お願いだからギブアップしてちょうだい。コイツはガチでやばいヘンタイよ。本気で壊されるわよ」
「余計な事言うなよ、エセキャバ嬢! あ、死ぬ事はないから安心してね、初春ちゃん」

初春の歯の根が、カチカチと音を立て始める。

悪党に自分のスキルを悪用されるのは、学園の秩序を取り締まる風紀委員(ジャッジメント)としても、
超A級ハッカーとしても、そして、初春個人としても、死んでも拒否したいことだ。

しかし、自分の心を存分にもてあそんだドレスの少女。
その少女が「ガチでやばい」というこの男に何をされるのか……

決意と覚悟が、恐怖によって大きく揺らぎ始めた。


.

「はい、注入~」

何のためらいも無く、塔下が初春の肛門にイチヂク浣腸を突き刺し、中の液体を腸内に注入する。
冷たい液体が腸内を逆走する感覚に、初春が「ひっ…」と短い悲鳴を上げた。

「コレ、無駄にハイテクな学園都市謹製の浣腸液だから、便臭は全部消えるから安心してね」

何をどう安心すれば良いのか分からない。
ただ、注入された浣腸液はすぐにその効果を発揮し、初春は腸が蠕動運動を始めるのを感じた。

(お、お通じ… 前はいつでしたっけ…!?)

確実に訪れるであろう惨劇に、初春の心を絶望感が覆う。

「さーて、トイレの準備~」

鼻歌を歌いそうなハイテンションで、塔下が1m四方の厚手のシートを取り出し、初春の殿部に敷いた。
それの意味することを悟った初春が思わず叫ぶ。

「……ッ、まさかッ!?」
「うん、これが初春ちゃんのトイレ。さっきも言ったけど、臭いは消えるから、安心して出して良いよ」

そう塔下は言うが、冗談ではない。
先ほどの失禁は、ほとんど無意識の粗相だったが、今は意識もクリアだ。
人前で排泄など、人間としてのプライドが許さない。

「と、トイレに行かせてください…!」

次第に強くなる便意に顔を歪ませて初春が懇願する。

「おぉ、テンプレ通りの台詞を自分から言ってくれるなんて、初春ちゃん分かってるね~。
 …でも、もちろんだーめ」

心底嬉しそうに塔下が言う。

「女の敵が……」

ドレスの少女が、心配そうな表情で初春に近づいた。

「初春さん覚悟を決めて。
 身体に悪いことじゃないし、コレをしておかないと、後が本気で辛いから…
 早めにギブアップしなさいよ」

ドレスの少女が、初春の下腹部を優しく撫ぜる。
暖かい手の掌で撫ぜられて、便意が少し軽くなる。

(……そうです、直接痛めつけられるわけではないですから、恥ずかしさを我慢すれば)

浅く息を整えて、冷静になろうと初春が首をめぐらす。
そうして、とある一点を見つめた瞬間、目が大きく開かれて、ぎょっとした表情に変わった。

「ソレ… 何ですか……?」
「ん、コレ? 勿論カメラだよ。あ、お尻の下に置いているのは指向性の集音マイク。
 初春ちゃんのトイレシーン、クリヤーに撮影・録音するから安心してね」

あっけらかんとした死刑宣告に、初春は己の耳を疑った。

「…………いやぁぁぁぁぁぁ!!」

とうとう耐え切れなくなって抵抗しようとするが、手足は思うように動いてくれない。
逆に、無理やり身体に力を入れたせいか、腹部の鈍痛が悪化する。

「あ、あ、あ……!」

ナニかが下腹部から一気に滑り堕ちる感覚。
必死に肛門括約筋を締めようとするが、
間に合わない。

「だめぇぇぇぇぇ、見ないでぇ、撮らないでぇぇ!!!!」

ぶりゅ、ぶりゅ、りゅ……

始めは押し出されるようにココア色の便塊が顔を覗かせ、次第に活火山のマグマのように断続的に噴出を繰り返す。

「いやぁ… いやぁ……」

惨めだった。どこかに消えてしまいたかった。

だが、初春はまだ知らない。
これが、ただの準備段階に過ぎないことを……

S-6 DAY 0
14:00 ペントハウス


「…さて、綺麗にしたから本番と行きますか」

塔下がいくらかテンションを押さえた声で言う。

塔下が少し不機嫌なのは、初春をもう少し言葉で嬲って撮影を続けるつもりが、
ドレスの少女がさっさと汚物を片付け、初春の殿部を綺麗に洗浄したせいだ。

「まったく、せっかくのチャンスを……」
「あぁン…?」

ぶつくさ言う塔下を、ドレスの少女が睨む。

「……初春ちゃん、リキまないでねー」

ドレスの少女の威圧感に怯んだ塔下が、矛先を初春に向ける。
先ほどの張り型にたっぷりとローションを付けると、無遠慮に初春の肛門に突き刺した。

「あああぁぁぁぁ………」

浣腸液とは違い、明らかな固形物の逆流に初春が悲鳴を上げる。
肛門が弛緩しているせいか、あるいは潤沢に塗られたローションのせいか、痛みは全くない。
しかし、狭い直腸を張り型に拡張される嫌悪感は相当なものだ。

「コレ、一個32万もするディルドゥなんだぜ? しかも俺が心血注いでカスタマイズしてるからさー」

べらべらと塔下が喋るが、初春にそれを聞く余裕は無い。

「ええっと… 初春ちゃんの陰部神経叢は… お、あったあった、そいじゃ神経針を打ち込んで、と…」

塔下がコンパネを操作すると、腸内の異物感が増悪する。

「…嘘、もしかして、私の神経に直接信号を送るつもりなんですか…!?」

塔下の台詞を理解した初春が恐怖の声を上げる。

「そうだよー。あ、今のうちに聞いておきたいけど、初春ちゃんはオナニーの経験、ある?」
「知りませんッ!!」

恐怖の裏返しか初春が声を荒げる。

「あ、そう? それじゃ、まずは『むず痒い』を体験してみよっか」

瞬間、初春の身体が、ビクリ、と震える。

(…え、なんですか、これ……?)

腸内の異物感が、ふっ、と掻き消え、代わりに絨毛で擦られるような痛痒感が初春の股間を被う。
チクチク、カリカリ、耐えられないことはないが、ひどく気になる感覚。

「と、止めてください……」
「あっはー、感度良好みたいだねー。ほんじゃ、次は『温快感』いってみよっか」

それまで感じていた痛痒感が消え、今度は股間全体がお風呂にはいったかのような暖気に包まれる。

「………あ」
「へへ、これ、気持ち良いっしょ? 半身浴みたいな感じで」

(く、悔しいけど、そうかも…)

塔下の言った通り、それはまるで半身浴のような気持ちよさだ。
初春の白い裸体が俄かに暖色を得る。



.

「んじゃ、どんどん気持ちよくしていこっか!」
「……ふぁ?」

強制的にリラックスしていた初春が、思わず気の抜けた声を出す。
しかし、瞬間、

「ふぁ!!」

ビクンッ! と初春の身体が震える。
口が半開きになり、可愛くて小さな舌がほんの少し顔を出した。

「らに、らんれすかぁ……?」

その原因は、もちろん股間からの刺激だ。
快感。まさしくそう形容するにふさわしい感覚が初春を蹂躙している。

塔下には誤魔化したが、初春は自慰をしたこともなければ、当然、絶頂の経験も無い。
初めて感じるには、その快感は強烈過ぎた。

「やぁ… だめですぅ… らめぇ……!」

ぴったりと閉じた無毛の割れ目から、半透明の液体がじわじわと滲み出る。

「お、愛液出始めてるじゃん。モニタの反応は…
 ……へぇ、初春ちゃん感じやすいんだ。快感の出力が平均値より全然高いよ」

その塔下の台詞を聞いたドレスの少女が、慌てて初春の耳元で怒鳴る。

「初春さん! 今すぐギブアップして!! ココロが壊されるわよ」
「ふぁ、あぁ、れも、れも… らめれす、協力はぁ…」
「馬鹿ッ 生死が掛かってるのよ!」
「ちょいちょーい、余計な事言わないでよね」

おどけた声で、しかし、有無を言わせず塔下がドレスの少女を押しのける。

「今から言いトコなんだ、邪魔すんなよ、な…?」

塔下が凄惨な笑みを浮かべる。
ドレスの少女は、忌々しげに舌打ちを打つと、不承不承初春から離れた。

「…やばくなったら止めるわよ」
「あっはー、ヨロシクぅ。 それじゃ、『倍化』してみっか!」

嬉しそうに塔下がコンパネを叩く。

初春の地獄が始まった。



.

「ぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!!! らめぇぇぇぇ! らめぇぇぇぇぇぇ!!」

潰されたカエルのような格好で、初春が悲鳴を上げる。
快感に侵襲された秘裂は愛液を撒き散らし、シーツにぐっしょりとした染みを作る。

「やぁぁ!! くる、くるッ、なにかきちゃうッ!! んきゃあああああッ!!」

初春の身体が2,3度激しく痙攣し、モニタを見ていた塔下が「お~」と感嘆の声を上げた。

「おめでとう! 初春ちゃん、初イキだね」
「はつ、イキ……?」
「絶頂、つうか、つまり『イク』ってやつ。体中が敏感になってるでしょ?」

塔下が、初春の全く膨らみの無い洗濯板のおっぱいの、しかし、それだけは痛いぐらいに勃起して存在感を増している乳首に指を近づけた。
そのまま、ピンッ、と乳首を指で弾くと、またも初春の身体が痙攣する。

「ひっ…! さ、触らないでくださいッ! 感じすぎちゃう…!」
「あーあ、そういうこと言っちゃうと、こんなことしちゃうんだぜー」

塔下は両手で初春の両乳首を摘むと、コリコリ、と乳首を捻った。

「~~~~ッはぁ!! つねらないでくださぁい…!」

それまで気にも留めていなかった胸からの快感に初春が悶える。

「はい、胸イキたっせーい。ホント、感度が良いんだね。まだクリ系は弄ってないのにさぁ」

塔下が嬉しそうに呟くが、初春にはそれを聞く余裕が無い。
堪えても堪えても、快楽の波が思考を塗りつぶす。

(馬鹿になる…ッ 馬鹿になっちゃいます…!!)

ドレスの少女が「壊れる」といった理由がよく分かった。
初春のココロの皹がさらに深まる。
もし、これ以上の快感を与えられたら……

「…塔下、まだ続ける気?」

ドレスの少女が口を挟む。

「ん~、モニタを見る限り、まだまだ初春ちゃん余裕があるよ?」
「そう言って、これまでに何人壊してきたのよ。とっとと終わらせなさい」

ドレスの少女が鋭い口調で言う。
塔下は、「う~ん…」と頭を掻いた後、「しゃーない」と呟いた。



.

「まぁ、これで最後じゃないし… ほい、初春ちゃん、ギブアップする?」
「…………………!」

塔下の問いかけに、散々躊躇ったあとに初春が首を振る。
その反応に塔下は口の端を釣り上げて笑うと、小さな導子を手に取った。

「それじゃ、一気にレベルを上げるね」

抑揚の無い声でそう言うと、塔下は初春の股間をまさぐり、クリトリスを摘んだ。
初春のソレは、処女であることを示すように完全に皮を被っているが、これまでの快感に痛いほど勃起していた。

「…すぐにギブアップしろよ」

これまでのおどけた口調とは、明らかに違うドスの効いた声を出し、塔下は導子を初春のクリトリスに突き刺した。

「ヒッ…!」
「さあ、イッちゃいな」

塔下がコンパネを叩く。
導子から指向性のパルスが流れ、それは初春のクリトリスを通り抜け、神経に直接信号を叩き込む。
興奮した初春の感覚神経は、圧倒的な速さで脊髄の後根から入り、中枢、脳へとパルスを伝えた。

結果、
初春の脳内で、極彩色の火花が散った。

「きゃぁあああああああッッッッッ!! 死ぬッ、死ぬッ、死ぬぅぅぅぅぅぅ!!!!!」

動かないはずの初春の身体が弓なりに反る。
眼球がクルンと回転して白目を剥き、舌をこれでもかと言うほど前方へ突出させる。

ぷしゅ……

夥しい量の愛液が秘裂から噴出し、またも、ちょろちょろ… と尿を失禁する。

「止めてッ、止めてッ、止めてぇ! 止めてくだしゃいぃぃぃぃ!!!」

初春が気力を振り絞って懇願する。
だが、塔下は耳に手を当てて聞こえないフリをする。

(ホントに壊れる…ッ!? でも、これを耐えればッッッ!!)

恐らくこれが最大レベルなのだ。
初春は自分にそう言い聞かせて、耐える決意をした。
しかし、恐ろしい塔下の台詞が聞こえてしまった。

「あ、20秒耐えたらパルスが倍増するから。ちなみに天井知らずにね。えーと、あと6秒で倍増だね」

初春の心が、完全に折れた。

「やりますぅぅぅぅぅ!! 協力しますから止めてくださいぃぃl!!!!!」

涙と鼻水と涎を撒き散らしながら初春が叫んだ。
塔下は面白くなさそうに「あ~あ、つまんねぇ…」と呟き、ドレスの少女が、ホッと胸を撫で下ろした。

「そいじゃ、停止…と。 う~ん、数値的にはまだまだ耐えられたんだけどなー」
「黙れヘンタイ。初春さん終わったから安心して」

ドレスの少女が、ハンカチで優しく初春の顔を拭う。
初春は子供のように「ひっく、ひっく……」と泣きじゃくっている。

(ごめんなさい、固法先輩… 白井さん……)

先輩や同僚の顔を思い出し、初春は涙を流し続けた。

S-7 DAY 0
15:00 ペントハウス


「終わったか?」

しばらく経って、垣根が姿を現した。
何かの作業をしていたのか、だるそうに肩を回している。

「はい、喜んで協力してくれるそうです」

ワークステーションの終了処理をしながら塔下が答える。
ちなみに、張り型や導子は初春に装着されたままだ。

「……あの、早くコレを外してください」

快感信号が止まったせいで、股間の異物感が復活した。
一刻も早く取って欲しかった。

しかし、垣根の冷酷な声がそれを許さない。

「……塔下、鍵つけとけ」
「ひひっ、了解でぇす」

塔下は下卑た笑みを浮かべると、ゴテゴテとベルトや金具のついた革パンツを取り出し、無理やり初春に穿かせた。

貞操パンツとでも言うのだろうか。
その革パンツはクロッチ部に小さなファスナーが付いていて、排尿をするのには不自由ないが、
肛門へは全くアクセスを許さず、挿入された張り型を完全に固定している。

初春は排泄を封じられてしまったのだ。

「な、何をするんですか…ッ!」
「このヤマが終わったら外してあげるから、それまで我慢ね」

嫌がる初春を押さえつけて、塔下が所々にある南京錠を施錠する。
数秒後には、股間は完全に塞がれてしまった。

「酷い……」
「まぁ、保険みたいなもんだ。お前がしっかりと協力してくれたらすぐに外してやるよ」

垣根はそう言うと、南京錠の鍵を掌に握りこむ。
すると、どういう作用が働いたのか、3個あった鍵が知恵の輪のように複雑に絡みあってしまった。

「その南京錠も俺様の『未元物質』で強化してあるから絶対に壊れねぇぞ。
 …ああ、トイレが我慢できなくなったら、その時だけ外してやる」
「…どうしてこんな酷いことができるんですか?
 人の尊厳をここまで貶めて、いったい何がしたいんですか…ッ!」

怒りのこもった声で初春が言う。
垣根が激昂しないかと、塔下とドレスの少女が、内心ハラハラさせたが、
意外に垣根は冷静に答えた。

「何がしたい、か… 言葉にするのは少し億劫だな。
 まぁ、最終的な目標は学園都市に復讐することで、今はそれの準備段階といったところかな…?」

そう言うと、垣根は薄く笑って初春を見つめた。

「『スクール』へようこそ、初春飾利…」

暗部に堕ちた少女は、自分がもう陽の下に戻れないことを、直感的に悟った……



.

ハイ以上。

次回はフレンダ回の予定。
予定は未定。

ちなみに初春の快感入力装置は、感度は落ちるが遠隔操作もできる設定。

あと、帝春? ウチには期待せんといてくれ。

では次回。 

前回投下を読み直して、出来に納得できないので初春陵辱をリテイクします。
本編はこのまま続け、合間にちょこちょこ書いて、出来たら投下する予定。


ということで、封印箇所を安価。

1.π
2.栗
3.エイヌス
4.マリア

↓1
もちろん複数あり。ゼロは全とみなすんでソコントコヨロシク。

おk。
長くなるかもだが、頑張るわ。

テスト

回線がちょっと妖しいけど、とりあえず投下。
今回は30kb弱。

それでは始めます。

S-8 DAY 0
PM2:00  第5学区 とある「路上」


「…つーことで、うちら姉妹は『置き去り(チャイルドエラー)』だった訳」

夏の日差しがこれでもかと照りつける道路上、上条は道すがらフレンダの身の上話を聞いていた。

フレンダの言う『置き去り(チャイルドエラー)』とは、いわゆる捨て子のことで、
親が『入学金』だけを支払い子供を『学園都市』の寮に入れ、その後行方をくらますことだ。

ほとんどの『置き去り』は施設に預けられるが、不幸な場合は『学園都市』の実験動物として扱われる場合もある。

「アタシは12歳で、妹は6歳。
 ぶっちゃけ、野垂れ死ぬ寸前のところを、駒場の旦那に拾ってもらった訳よ」
「あの人そういうことしそうだよなー。外見と中身の完全な不一致というか…」

2人が話題にしている『駒場利徳』という人物は、そこそこに大きな『スキルアウト(武装無能力者集団)』を率いるリーダーだ。
いわゆる、無法者のまとめ役的存在で、お世辞にも法に則って生きている人間とは言えないが、
奇特なことに、私的に社会的弱者を匿ったり、支援したりしている人間だ。

「外見はともかく、結局、あの喋り方が問題な訳よ。
 …で、まぁ、アタシは偽造身分で能力開発を受けて、なんとかレベル3の能力を発現したんだけど、
 結局、あとは学校をばっくれて、なんだかんだあって、駒場の旦那つながりの裏の仕事を請け負っていたら、
 色々あって、いつの間にか『アイテム』の一員になっていたって訳」

口調は飄々としているが、『なんだかんだ』『色々あって』の部分にに言い難い苦労があったのだろう。
上条は、ふむふむ、と頷きながら、この娘も苦労してんだなー、と内心思った。

「しっかし、上条連れてけって、どういう魂胆な訳?」
「この前しず… 麦野さんと相談したんだけどさ。
 知り合いのスキルアウトにはヤバいバイトをしていることを伝えておけってさ」

フレンダが「ほほぉ…」とニヤニヤ笑うが、とりあえず無視をする。

「『暗部』やってりゃ、そのうち嫌でも関わり合うことになるから、その時に余計な混乱をしないためだって。
 もちろん『アイテム』関連の話は伏せるけど、アリバイ作りの一環だってさ」
「ああ、そりゃそうね。そのスキルアウトってクラスメイトだっけ?
 だったら、学校にアリバイも作りやすいって訳よ」

フレンダが大きく頷く。
『アイテム』に協力する浜面のように、それと知らなくても『暗部』に協力するスキルアウトは多い。
その多くは金銭目的であるが、中には浜面のように奇妙な連帯感を持つ者も居る。

「んで、上条の知り合いってどんな奴なのよ? 浜面は『変な奴』って言ってたけど?」
「いや、そのまんま。すっげぇ、変なヤツ」

上条が友人を想像して言う。

「とりあえず、会えば分かると思うぜ。ま、駒場さんとアポとってからの話だけどな…」

要領を得ず、首をかしげるフレンダを見て、上条は申し訳なさそうに苦笑した。



.

S-9 DAY0
AM10:00 第9学区 公衆多目的トイレ



「……よし、設置は完了した。 そっちはどうだ、00000号?」

一定額の料金を払い使用する多目的トイレ。
トイレという名称ではあるが、その広さは12畳ほどあり、トイレ機能のほかに簡易医療キット、洗浄装置、休憩スペースなどがあり、
簡易病室と言っても差し支えない機能が備わっているリラックススペースである。

ここに、スーツ姿の天井亜雄と、00000号と呼ばれる御坂美琴によく似た少女が居た。

天井はトイレの背面になにやら手のひら大の物体を設置し、00000号は能力「劣化電気(レディオノイズ)」を使用してこの部屋の防犯システムをハッキングしていた。

「はい、マスター、マスター。 わたくしめの操作は完了しております、とミサカ00000号は申し上げます」

00000号が表情の無い顔で言う。
天井のスーツ姿に合わせてだろうか、彼女もパンツスーツを着用して、変装用か薄いサングラスをかけている。

「よし、それなら移動するぞ… 次の目標は第11学区だ……」

ふー、と大きく息を吐いて天井が言う。
しっかりと睡眠をとってはいるが、慣れない作業・環境に疲労が溜まる。

(…しっかりするんだ、今が正念場なんだぞ…!)

疲労に萎える気持ちを強引に奮い立たせる。
彼と彼女は、朝からずっと各学区ごとに、こうやって多目的トイレに『細工』を施しているのだ。

「……行くぞ」

傍らに置いたボストンバックを天井が手に取ると、00000号がそっと手を重ねた。

「マスター、マスター。昨日から申しておりますが、マスターの疲労が顕著です。
 この環境は休息に適しておりますので、適切な休憩をとられては如何ですか? と、ミサカ00000号は奉ります」
「時間が無いんだ。それに、私は疲れてはいない…!」

苛々した口調で天井が言うが、00000号はゆっくり首を振った。

「いいえ、マスターは大変に疲労されていらっしゃいます。
 これ以上の強行は、真剣にマスターのお体が心配です。それに……」

00000号が天井に近づき、そっ、とその身体に抱きついた。

「わたくしめは昨日も一昨日も『ご奉仕』をしておりませんし、『施し』も受けておりません。
 マスターはわたくしめの事がお嫌いになられましたか…?」

00000号のその言葉に天井の顔が極めて複雑に歪む。

「いや… 違う、そうじゃない……」
「マスター、マスター。それでしたら、ここでわたくしめに『ご奉仕』をさせて頂けませんか?
 そして、マスターさえよろしければ、卑しい雌豚に『施し』をお与えください。と、ミサカ00000号は奉ります」

恭しく、言葉通りに主人に仕える奴隷のように、00000号が天井の前に跪く。
何かに気圧されるようにして、天井が休憩スペースのベンチに、ドスン、と腰を落とすと、
ミサカ00000号は慣れた手つきで天井のスラックスのベルトを外した。




.

チャックを開け、細く白い手を開いた窓に差し込むと、ムッ、とする臭いと共に、まだ萎えているペニスが引っ張りだされる。

「マスター、マスター。『ご奉仕』させて頂きます。と、ミサカ00000号が申し上げます」

天井のペニスを、まるで神像か何かのように熱い視線で見つめると、ミサカ00000号は躊躇わずにソレ全体を口の中に飲み込んだ。

「んぐっ、ぢゅぷ… ぢゅ……」

頬の動きだけでそれとわかる激しい口戯に、天井のペニスがあっという間に硬度を増す。

ぢゅ、ぢゅぅぅぅ………

頬がへこむほど激しい吸引をして、そのまま顔を上げてペニスから離れる。
天井のペニスが勃起していることを目視すると、00000号はスーツとブラウスの前ボタンを外し、ブラジャーをたくし上げて胸を露出した。

ぶるん、という擬音がつきそうなほど、豪快に00000号のドでかいおっぱいが顔を出す。
御坂美琴(オリジナル)とは、文字通り桁違いのその爆乳の乳首には、意匠化されたハートマークのピアスが光っている。

「マスター、マスター。雌豚の醜く肥大した胸で気持ちよくなってください。と、ミサカ00000号が懇願します」

むにゅ、と00000号が巨乳の間に天井のペニスを挟みこむ。
ゆるゆる、と巨乳を手で上下に動かして調子をみると、だらしなく開いた口から大量の唾液を滴らせる。

水飴のようにペニスに掛かった唾液を潤滑液にして、そしてそれをペニス全体にまぶすように巨乳でペニスをしごき上げる。

「うぁ…」

それまで、何かを堪えるように無口だった天井亜雄が、思わず喜悦のうめき声を上げる。

「マスター、マスター。ようやく声を出していただいて嬉しいです。と、ミサカ00000号は奴隷の喜びを申し上げます」

口の端をほんの少し引いて薄い微笑を浮かべると、00000号はさらに大量の唾液を口から垂らした。

痛いくらいに勃起した天井のペニスが、鈍く光るほど濡れたのを確認すると、ミサカ00000号は天井から離れて、パンツをショーツごと足首まで引き下ろした。
その秘所の陰毛は完全に剃られており、下腹部には形の崩れた英文で『slave』と刺青が施されている。

そんな、少女にはあまりにも不釣合いなパーツを恥じらいもせず、00000号は天井に背をむけて壁に手を着いた。



.

「マスター、マスター。前は使用できませんので、こちらの穴に『施し』をお与えください。と、ミサカ00000号が申し上げます」

ミサカ00000号はそう言うと、片手を臀部にまわして尻ぼたを割り開いた。
よほど使い込まれているのか、わずかに隆起したアナルは、軽く拡げられただけでその妖しく菊口を開く。

「……くそッ」

天井は短く、何に対してか分からない悪態を吐くと、ゆらり、と立ち上がって00000号に近づいた。
片手で頭を、片手で腰を乱暴に掴み、ペニスを00000号のアナルに近づけると、示し合わせたように00000号が天井のペニスを掴んで己のアナルへと導いた。

「どうぞ、ご挿入くださッ、いいぃぃぃぃッ!!」

00000号が言い終わらないうちに、天井が00000号のアナルにペニスを突き刺す。
ズッ、ズッ… と音を立ててペニスが飲みこまれていく。
挿入に確かな快楽を得ているのか、ミサカ00000号が「あはぁぁぁぁ……」と歓喜の声を上げる。

「マスター、マスター… わたくしめのけつまんこは気持ち良いですか? と、ミサカ00000号がうかがいますぅ…」
「…あぁ、最高だ。お前は最高だよ00000号…」
「ありがとうございます… マスターのおちんぽも気持ち良いです……」

一番奥までペニスを突き刺した後、緩やかに天井が抽挿を始める。
本来は排泄器官であるはずの直腸・肛門なのに、驚くほどスムーズにペニスが出し入れされる。

「ますたぁ、ますたぁ……」

ミサカ00000号が桃色の吐息を漏らす。
本気で感じていることを証明するかのように、ピアスで飾られた乳首が固く勃起する。

「はぁ、はぁ、はぁ……」

天井の息遣いが荒いものとなり、次第に抽挿のスピードが早くなる。
最初は両手を壁について体を支えていた00000号が、背後からの衝撃にそれだけでは支えきれずに顔と爆乳を壁に押し付ける。

「ますたぁ、ますたぁ…! イキます… イキますッ! ますたぁのおちんぽでイッてしまいます! とぉ、ミサカ00000号はアヘ顔で申しあげますぅ!」

言葉の通り、だらしなく半開きになった口から舌を垂らして、ミサカ00000号が絶頂を迎える。
同時に天井も果てたのか、強く歯を食いしばって「うぅ…!」と呻くと、00000号の腸内に2日分の精液を注ぎ込んだ。

「……マスター、マスター。わたくしめは、今、幸せを感じております。と、ミサカ00000号は多幸感に包まれながら申し上げます…」
「ああ、そうだな…」

ずるり、と天井がペニスを腸内から引き抜くと、00000号は小さな布切れを取り出して丸めると、強引に己のアナルにそれを押し込んだ。

「ん、んぅ…」
「…おい、ちょうど便器があるんだから出していけよ」
「マスター、マスター。マスターから頂いたザーメンをトイレに流すなど、バチが当たります。と、ミサカ00000号は照れくさそうに申し上げます」

恥ずかしそうにそういって、ミサカ00000号は衣類の乱れを素早く直す。

「これはしばらくわたくしめの宝物です。と、ミサカ00000号は宣言いたします。さて、それではお掃除をいたします」

射精して力なく垂れた天井のペニスを手で持ち上げると、さっきまで腸内に入っていたそれを、ミサカ00000号は躊躇い無く口に咥えこんだ。
再び勃起させないように、極力刺激をしないようにお掃除フェラを行う。

だが、注意していても天井には刺激がいっているようで、天井の腰がびくりと震えた。

「…00000号、もういい。催してきたから顔をどけろ」

次第にこみ上げてきた射精後の排尿欲求に天井がそう言うと、00000号は逆に天井の腰に両手を回して抱きついてきた。

「……おい」

その意味を察して天井が00000号を見下ろすと、00000号は潤んだ目で天井を見上げた。

「……出すぞ」

いろんなものを諦めたように天を仰いだ天井が、陰部の緊張を解く。
ちょろろ… と緩やかに鈴口から流れ出る尿を、00000号は躊躇いもせずに、ごくごくと喉を鳴らしてすべて飲み込んだ……



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S-10 DAY 0
PM 2:30 第8学区 駒場利徳の「アジト」

「おー、大体お姉ちゃんの彼氏?」

居住スペースが併設された4階建ての複合ビル。
表向きは運送会社の支社ということになっているし、ある程度の業務も行っている。
ここが『スキルアウト』駒場利徳の本拠地だ。

上条とフレンダが居住スペースに入ると、出迎えたのはフレンダを幼児化したような金髪碧眼の幼女だった。

「アホなこと言ってるんじゃないよフレメア、ちゃんといい子にしてた?」

そのまま抱きついてきたフレメアの頭を、よしよし、と撫ぜてフレンダが言う。

「……今日は何の様だ?」

部屋の奥から、のっそりと身長2m近い大男が現れた。
コピー用紙を吐き出すような独特なかすれ声のその男が、スキルアウト(武装無能力者集団)のリーダー、駒場利徳だ。

「あー、フレメアの顔見に来たのと、それとちょっとした情報収集かな?」
「だったら、もう少し頻繁に顔を出せ。姉らしく妹の面倒をもっと見ろ」

駒場の言葉に、フレンダがバツが悪そうに頭を掻く。
フレンダも妹のことが嫌いではないが、必ず一緒に居る駒場の説教が苦手なのだ。

「だいたいだな、もう充分に自活できるカネは稼いだんだろ? 姉妹で新しく部屋を借り直して、付属小のある高校に入りなおしたらどうだ?」
「だいたいだなー」
「や、はは… ちょっと散財あって、あんま溜まってないっていうかさー、あはは……」

頭を掻き掻きフレンダが誤魔化す。

フレンダが裏の仕事に染まるようになったのは、もちろん、フレメアを含めた姉妹の生活費を求めてのことだった。
しかし、そのあまりにも高額な報酬に、フレンダは辞め時を見失ってしまったのだ。。

当分、仕事を辞める気は無いし、そのためには、妹は比較的安全な駒場の下で預かってもらいたいのが本音だ。

駒場もその辺りは薄々感付いているが、自分も裏の人間であるから、あまり強くは言えないのだ。

「まぁいい、それで、お前はなんでコイツに着いて来てるんだ、上条?」

駒場が顔をめぐらして上条を見る。
上条は小さく頭を下げて、「チワス」と駒場に挨拶した。

「えっと、色々あって、俺、今、フレンダさんと一緒にバイトしてるんスよ」
「…別に他人の事情にどうこう言うつもりはねぇが、早まったんじゃねぇか?」

スキルアウトのリーダーとしての側面か、駒場がわずかに険のある口調で言う。

「はは… なんつーか、流れで…」

流石に、脅されてハメられて篭絡されたとは言えない。

「…ま、いいか。別にメンバーでもねぇお前に説教してもしかたねぇか。
 つーか、お前タイミング良いな。奥に居るヤツにはきちんと説明しろよ。

駒場が部屋の奥を親指で、クイッ、と指す。
なんだろう、と上条とフレンダが覗きこむと、奥のドアから浜面と、そして特徴的な青い髪に耳ピアスの少年が出てきた。



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「え、青ピ? なんでココに居んの?」

上条が、あっけに取られた表情で言う。

「なんやのん、カミヤン水臭いな~。
最近、いろんな人が『カミヤンがおかしい』って言ってたから、ボクなりに色々と探り入れとったんよ。
そしたら、仕上クンがなんや知ってそうな『予感』がしたから、こうやって聞きにきたわけなんよ」

青髪ピアス、通称青ピ、本名不詳。
上条当麻の幼馴染であり、駒場とは別組織のスキルアウトのリーダーだ。

「『予感』って、相変わらず謎な能力だな……」

システムスキャンによると、彼の能力は無能力(レベル0)である。
にも関わらず、彼は他人から見ると超能力かと見紛う奇想奇天烈な思考・行動を行うことで有名だ。

「ま、ま、でも、仕上クンから色々聞いて安心したよ。カミヤンも男の子なんねぇ、吹寄にはあんなにツレナイ態度とってたのに…」
「いや、きっかけは俺だったし… って言うか、浜面さん喋ったの!?」

一応、『アイテム』は学園都市の『暗部』組織であり、一般人(とは言えないが)には極秘の組織のはずだ。
上条の言葉に、ハッ、とした表情になった浜面が見る見る青ざめる。

「あれ… 俺、なんで……!」
「お前、マジで能力者なんじゃねぇのか……?」

狼狽した浜面の声にあわせるように、駒場が低い声で誰何する。

「ちょ、ちょ、ちょッ! ボクが聞いたら仕上クンが話してくれたんやん!
 能力とか使ってへんよ。そりゃ、色々と詳しく質問はしてけど」

本気で慌てた素振りで、青ピが両手を振る。
上条、浜面、駒場が互いに顔を見合わせあって、三者それぞれ溜め息を吐く。

「…こういうやつなんスよね」
「誘導尋問とかされたわけでもねぇのに…」
「絶対にコイツとは敵対しねぇ」

「いやいやいや、なに深刻そうな顔してますのん! あ、わかった! お口チャック!? お口チャックなんね!
 仕上クンから聞いたことはお口チャックするから、マジで!!」

青ピが口の端を指で摘んで、真横に引く動作を繰り返す。
その仕草をガン無視し、上条が浜面に耳打ちする。

「で、どこまで話したんスか?」
「『アイテム』の名前は出しちゃいねぇけど、麦野の名前は出しちまった…
 あくまで、お前の彼女っていう紹介だけど……」
「ご愁傷様です… せめて一瞬で逝けるように祈っておきます…」
「不吉なことを言うなよ!!」

ボソボソと小声の相談を終えると、上条は青髪ピアスに向き直った。

「まぁ、つーことで、彼女が出来てさ… その彼女が、たまにヤバい仕事に関わることがあるから、それを手伝うことになったんだ」
「ふーん、そのこと、吹寄は知ってるのん?」
「…なんでそこで吹寄が出てくるんだよ?」
「ええから」

恐ろしく平静な声で青ピが促すと、上条の口が自然に開いた。

「彼女――麦野のことは知ってるけど、仕事のことは知らないよ。なんか許婚宣言とかして、前より構うチャンになっているけど…」

ハッ、と口を押さえるが、時すでに遅しである。

「ははぁ… 吹寄は一足遅かったわけやねぇ… まぁ、後はイラ子の頑張り次第かぁ」

微妙な表情になっている上条を尻目に、青髪ピアスはしたり顔で頷く。

「うん、吹寄を巻き込まないんならいいんとちゃう? けど、学則法はしっかり把握しとくんやで?
 ああいう仕事は実入りはええけど、受け方1つ間違うと、子萌ちゃん無くだけじゃすまへんからな」

青ピなりに真面目な表情を作って言う。
上条も真剣な表情になり、「ああ、吹寄は巻きこまねぇ」と頷いた。




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『カミヤンの無事も確認したし、ほんならボクは帰るわ~。
 駒場さん、仕上クン、カミヤンのことヨロシクな~』

得た情報で満足したのか、青髪ピアスはそう言ってさっさと帰って行った。
残されたフレンダ姉妹含む5人は、とりあえず場所をリビングに移して話を進めていた。

「…ってことで、結局、明日から『狩り』が始まる訳。
 やらないとは思うけど、逃亡幇助とかしないでね。反学園都市勢力として粛清されちゃうから」

フレンダが『学園都市がとある人物のクローンを餌にした反勢力のあぶり出しを行う』という部分を上手く説明した。
もちろん、クローン元の情報や、天井の名前などは一切出していない。

「ゾッとしねぇ話だな…… 人助けがご法度か……」

駒場が不機嫌そうに言う。

「駒場さんが一番心配な訳よ。アタシら保護したときみたいに、ほいほい孤児を連れ込んじゃ駄目な訳」
「でもな…… そういうの、ロジックじゃねぇんだよ……」
「それは百も承知してるけどさぁ…… アタシ、駒場さんと対立したくない……」
「……わかった、とりあえず、それっぽいの見かけたらお前に連絡することにするよ。それでいいか…?」
「うん、お願い」

フレンダが心からホッとした表情を見せ、隣に座らせたフレメアの頭を撫ぜた。
難しい話がよく分かっていないフレメアは、不思議そうに「にゃあ?」と鳴いた。

「…それじゃ、用事も済んだし帰るか?」

そういって上条が席を立ったが、フレンダは軽く首を振った。

「上条は帰って良いよ。アタシは折角だからもちっとここに居るわ」
「…いいのか?」
「コールかかったらすぐ行くし、結局、今日はこれ以上の動きは出来ない訳でしょ?」

フレンダの言葉に、上条は「なるほど、そうか…」と呟いた。

「そんじゃ、俺は帰るわ。駒場さん、浜面さん、お邪魔しました。フレメアちゃんも」
「おお… あ、俺も出るわ。これから半蔵と会う約束してっから」
「そうか……」

浜面も腰を上げ、さらにフレメアをちょいちょい、と手招きした。

「フレメアちゃん、今日は半蔵とメシ食う日だったろ?」
「……大体、浜面にしてはよくおぼえていた。行く行く、すぐ行く」

少しの逡巡の後、フレメアがフレンダの手を、スルリ、と抜けて浜面に駆け寄った。

「ちょっと、フレメアぁ。お姉ちゃんと遊ばないの?」
「大体、お姉ちゃんとはいつでも会えるけど、浜面メシは今日しかない訳。行こ行こ、すぐ行こ」

フレメアが浜面のすそをグイグイ引っ張る。
浜面は駒場に意味ありげな視線を送ると、上条を促して部屋から出て行った。



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「姉ちゃんと遊ばなくても良かったのかー? メシも大事だけど、姉妹のコミュニケーションも大事だぞー?」

浜面と2人でフレメアを『捕まったうちゅーじんごっこ』していた上条が言うと、フレメアが歳に似合った背伸びした表情をした。

「大体、このおにーちゃんは鈍感だー」
「いやー、あの流れで空気読めんかね、お前?」

フレメアと浜面に呆れた声で言われ、はた、と上条がとある可能性に思い至る。

「……えっと、もしかして、残してきた2人って?」
「ま、フレンダの片想いだけどなー。コイツやアイツの生い立ちって、知ってる?」

浜面が、フレメアと出てきたビルを親指で指差し言う。

「『置き去り』出身ってことは、まぁ…」
「なら話は早い。
 右も左も分からない近未来都市に放り込まれた外国人姉妹、それでも、お姉ちゃんは妹だけでもと、一生懸命生きるための努力をする。
 けれども、世間の風は冷たい。どんなに努力しても生活は楽にならず、とうとう進退窮まるところまできた。
 …そんなときに、優しく手を差し出して2人を助けたのが駒場だぜ? 惚れるなっつーのが無理な話だ」
「大体、駒場が自覚無さすぎ」

浜面が訳知り顔で説明し、フレメアがそれに同調する。
上条はひどく納得しながら、駒場とフレンダをそれぞれ頭に思い浮かべてみた。

「…惚れた理由は分かったけど、サイズ、違いすぎじゃね?」
「…そこが一番のネックなんだよな」

そう言って、上条と浜面は互いに顔を合わせて、にへ、と笑うと、片手を上げて別れた。




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「……やめろ」

アジトの中に駒場の声が低く響く。
目線を下げると、座った駒場の膝の上に跨るようにフレンダが腰を降ろし、顔をうずめるように駒場に抱きついている。

「……やめろよ、フレンダ」
「やだ」

まるでマタタビを与えられた猫のように、その匂いと感触がご褒美とばかりにフレンダが駒場の身体をまさぐる。

「せっかく妹からもらったチャンスだもん、確実にモノにする」

フレンダの身体が伸び上がり、両手を駒場の首に絡め、口を耳元に寄せる。

「ねぇ、抱いてよ」
「……駄目だ」
「なんでよ……!」

声にはっきりと分かるほどの苛立ちを含んで、フレンダが無理やり駒場を口唇を重ねた。
激しくいバードキスを繰り返しながら、全身を使って駒場の身体を刺激していくが、駒場利徳は彫像のように動かない。

そんな駒場の様子に、フレンダが明らかに意気消沈して肩を落とす。

「…結局、便女穴には欲情しないって訳?」
「違う、そうじゃない……!」
「だってそうじゃん!」

フレンダが叫ぶ。

「結局! 使用済みの汚れたカラダは抱く価値無いって訳でしょ!」
「違う! そんな風に自分を卑下するな…… しないでくれ……」

駒場の大きな手が、フレンダの頭をそっと包む。

フレンダが駒場に救われたのは13歳の時だ。
12歳で『置き去り』にされてからの1年間、フレンダは『少女娼婦』として春を売って生きていた。
しかし、建前上、学生の街である『学園都市』において、風俗産業は表向き禁止されている。

そのため、フレンダは素行が劣悪の『スキルアウト』に身を寄せ、斡旋される変態どもに、毎夜、その身体を捧げていた。
金髪碧眼で見るからに天使のような少女は異常に人気が高かったが、それだけに身体の酷使が激しかった。

さらに、フレンダは客のみならず、所属していた『スキルアウト』にすら性処理人形として扱われていた。
全ては妹と共に生きるためだが、フレンダの肉体と精神は確実に磨耗していた。

そこに現れたのが駒場だった。

すでに対立するスキルアウトのリーダーだった彼は、少女売春の話を聞いて胴元のスキルアウトを襲撃し、
薄汚い不衛生なトイレで精液漬けになっているフレンダを見つけたのだ。

『クソがッ! クソがッ!!』

その時にしか聞いたことの無い罵り声を上げて、駒場はそれまでフレンダを犯していたスキルアウトを一撃で蹴り殺し、
目から光を失いかけた汚液まみれのフレンダを、その身体に抱いて保護したのだ。



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「あの時からずっと… アタシは貴方のことだ大好きなの…… 惚れて当然じゃん……」
「……そういう計算で、助けたわけじゃない」
「じゃあ、どういうつもりだったのよ……!」
「……言っただろう、ロジックじゃねぇんだ。売春の話を聞いて、身体が勝手に動いたんだ」

僅かに照れが入った口調で駒場が言うと、フレンダは不機嫌そうに口を尖らせた。

「そんなの当然じゃん… 恋がロジックとか、アホか…」

完全にあきれた口調でそう言うと、フレンダは膝乗りのまま上着とスカートを素早く脱いだ。
雪のように白い肌と、力いっぱい抱きしめたら折れそうなスレンダーな肢体が露わになる。

「じゃあさ、聞き方変えるよ。アタシの身体、綺麗?」
「そりゃ、お前…… 綺麗だよ……」

正面からの視線に耐え切れず、駒場が横を向いて言う。

「抱きたいって思う?」
「……思わねぇ」
「嘘吐け、バカ!」

フレンダが白くて細い手で駒場の股間を探ると、固いジーンズが確かに隆起している。

「いい加減、覚悟して白状してよ。なんで抱いてくんないのよ…? アタシのこと嫌い?」
「嫌いじゃねぇよ……」
「だったらなんでよ…… 結局、汚いって思ってるんじゃん……」

とうとう、フレンダの瞳に涙が浮かぶ。
それを見た駒場が、観念したように溜め息を吐いて言った。

「……多分、入んねぇから」
「……は?」
「入らねぇよ、お前のカラダにゃ……」

その言葉を聞いたフレンダが、素早く駒場のジーンズのチャックを開けると、一瞬の躊躇いの後に駒場のペニスを引っ張りだした。

「……うぉぉぉ」

ソレを見た瞬間、フレンダの顔が青ざめる。
比喩でもなんでもなく、駒場の一物はフレンダの前腕と同じ大きさだった。

「い、良いモン持ってんじゃない……ッ!」
「……無理すんな、お前にゃ無理だ」

確実に照れが入った口調で駒場が言う。
しばらく「うぐぐ…」と唸って、駒場のペニスを見つめていたフレンダが、覚悟を決めて口を大きく開く。

「あーーーーーん!!」
「おい!」

口を限界まで広げて先端だけでも咥えようとするが、自分の握り拳を口に入れようとしているものだ、当然入らない。

「……デカッ!」
「……無理だ、って言ってんだろ? 諦めろ」

駒場がペニスをなおそうとすると、表情を消したフレンダが、「フィストなら…」と小さく呟いた。

「……ん?」
「フィ、フィストぐらい経験あるって訳よッ! 元・娼婦舐めんなよゴラァ!!」

気合を入れるように叫ぶと、フレンダはショーツを乱暴に脱ぎ捨てて、精神を集中させた。
『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』が展開されると、フレンダの手の中にボトルローションが現出する。

「……待て、お前、それをどっからアポーツした……?」
「こちとら周到に準備してんのよ! サイズは予想外だったけど、『デカくて入らない』は予想済みって訳!」

粘度がやけに高いローションを掌に取ると、フレンダは駒場の巨大ペニスに両手でそれをなすりつけた。

「やめろッ! 裂けるぞッ!!」
「結局! 裂けてでも入れたるって訳よ!!」

自分の秘所にも大量のローションを塗りこむと、フレンダはペニスの先端を秘所にあてがって、大きく深呼吸をした。



.

「…暴れないでね、そしたら確実に裂けるから……」
「……ぬ」

言葉で駒場の動きを封じると、フレンダはゆっくりと、しかし力強く腰を落とし始めた。

「ぐ、ぎぎ……!!」

口にすら入らなかった亀頭が、フレンダのヴァギナにめり込む。

杭打ちとか、そういうレベルのイメージではない。
例えるならば、ぎゅうぎゅうに詰めたリュックの口に、1.5リットルのペットボトルを強引に詰め込んでいるようなものだ。

「ふー、ふー、ふー……!!」

腹圧を下げるようにフレンダが腹式呼吸を繰り返す。
ズズッ、ズズッ、と亀頭の半分まではなんとか入ったが、それから先が中々進まない。

「……もう止めろフレンダ。コレを咥えた女はこれまで誰もいねぇんだ。元々、体が小さいお前には無理だよ」

駒場が諦めたように言うが、その台詞のある部分にフレンダが反応する。

「……ちょっと待って、つーことは、もしかして利徳って童貞な訳?」
「……挿入したこと無いって意味じゃ、そうだ。 …なんだよ、悪ぃのかよ?
「いや、気合が入った」

スゥーーーー、ハァーーーー、とこれまで以上にフレンダが深呼吸を繰り返す。

「裏技、使わせてもらうわ……」
「……何をする気だ?」

フレンダが片手を自分の下腹部に、片手を手の甲を下にして駒場の下腹部に置く。
1つ、覚悟を決めたように「…うし」と気合を入れると、極限まで精神を集中させ『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』を展開する。

「……お前、まさか!?」
「恋するオンナをなめんなぁ!!」

フレンダの身体が一瞬、ビデオのコマ送りのようにブレ、そして、ドンッ、という音と共にフレンダの臀部が駒場の下腹部と衝突した。
その瞬間、駒場は自分のペニスが、これまで体験したことの無い『道』に挟まれ、恐ろしく狭い『門』をぶち抜いた感触を得た。

「がッ… はっ……」

肺腑の空気を絞り出すようにフレンダがうめき声を上げる。
そして、愛しげに自分の下腹部を撫ぜると、そこは不自然に盛り上がっている。

「てへ、挿れてやったぜ、ちくしょー……」
「……無茶しやがって」

フレンダが行ったのは、己の身体の『引き寄せ(アポーツ)』だ。
手掌にしか物体を出現できないことを利用して、駒場の身体と自分の身体を一瞬で引き寄せたのだ。

当然、異物である駒場のペニスは、空いた空間であるフレンダの膣と子宮に強引に収まる格好になったのだ。

「はぁはぁ… どう、初セックスの味は…?」
「……まぁ、なんつーか、嬉しいよ、フレンダ」

完全に照れたその声に、フレンダが安心したように笑う。

「よかった、よかった…」
「ああ…… ところで、だ」

幸せそうなフレンダに対して、ひどくバツが悪そうに駒場が言う。

「……どうやって抜くんだ、これ?」
「……………………ッ」

フレンダの表情が一瞬で引き攣る。

「……再演算は?」
「い、痛くて、無理……」
「だろうな…」

色々と諦めた顔でそう言うと、駒場は大きく大きく「はぁ~~」と溜め息を吐いた。


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S-11 DAY 0
PM 3:00  麦野のマンション「Meltykiss」


一足先にマンションに戻った麦野が、今回の資料を読み返していると、携帯電話の着信が鳴った。

「…フレンダ? はい、もしもし」
『……あ、麦野? えーと、その……』

電話から聞こえる声は、ひどく弱々しく、麦野の直感が嫌な警告音を出す。

「どうした? 一般回線で大丈夫な会話なの?」
『あ、別に襲撃とか、そんなんじゃないんだけど…
 アタシ、明日からの仕事、もしかしたらパスするかも…』

麦野の眉根が訝しげに寄る。

「…説明しろ」
『あのね、怒らないで聞いてね。ふぅ……』

何かを堪えるような溜め息を挟んで、フレンダが続けた。

『せ、セックスしたら、抜けなくなっちゃった、えへへ♪』
「ふれんだぁーーーッ!!!!」

マンション中に、麦野の絶叫が響いた。




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はい終了。

次回は久々に美琴が出る予定。

それでは次回。

童貞の時のほうが想像力豊かにシーンを書けていた気がする。
エロSSにリアリティなんざ、塩一掴みぐらいあればいいなだし、
いわんや、禁書SSをや。

今週・来週はちょっと忙しくなったので、投下は恐らく無しです。
クリスマスらへんにまた会おうず。

スタンディング・マスターベーションしながら
拍手喝采するなんて…
>>399のオナテクは次元が違うな。

>>420
そーゆーレスは、間接的に作者を攻撃してるんだが、どう思う? ん?

初春陵辱が中々上手く書けない……
どーせ、変更点は尿道カテーテルプラスして、神経針を無線式にするだけだから、
DAY-1以降に陵辱シーンを改めて挿入するかなぁ…
局部だけ切り取られたスクール水着を着て、断続的にイキながらハッキングする初春って、需要あるかなぁ…?

あと、00000号は性奴隷個体じゃなくて愛奴隷個体だから(キリッ

というわけで、本日16時から続きを投下。
開始時にも書くけど、今回、美琴が登場するので、美琴ファンは読了に注意してね。

そいじゃ投下開始。40kb弱。

今回でDAY-0終了。多分、3話は本気で長い。

あと、今回御坂美琴が出ます。
ゆえに、ガチ美琴ファンには読了をお勧めしません。

用法・用量はしっかり守って読了ください。

S-12 DAY 0
PM 3:00 第7学区 風紀委員『第一七七支部』


「…ようやく終わったぁぁぁぁ!!」
「ご苦労さま、よく頑張ったわね」

部外者立ち入り禁止の風紀委員詰め所に、御坂美琴の疲労に満ちた声が響いた。
労う声は固法美偉のものだ。
彼女は美琴から10数枚のレポート用紙を受け取ると、1枚1枚その中身を確認した。

「お姉さま、お疲れ様ですわ!」
「ありがとー、くろこー……」

御坂美琴がもたれかかる様にイスに座る。
彼女が提出したレポートは、『反省文及びボランティア活動報告書』だ。

それは、上条当麻に対して行った能力使用に対するペナルティで、
ボランティアの内容は、『能力を使わずに1週間の公共施設清掃活動』というものだった。

『能力使用不可』が前提であり、かつ『罰』の側面を持たせるために、反省文はなんと手書きである。

「もう、しばらくはペンを握りたくない……」
「前世紀の学生はみんなやってたことだけどね… でも、これでようやくこのメモを御坂さんに渡せるわね」

固法はそう言うと、御坂にB6サイズの小さなメモを差し出した。

「はい、初春さんが調べてくれた、上条さんちの住所。最近引っ越したみたいよ」

固法の声を聞いた途端、それまで消沈していた美琴が、ガバッ、とその身を起こす。

「ど、どうして…!?」
「あら、迷惑をかけた本人に直接謝罪するのは、当然のことでしょ?」

固法が悪戯っぽく片目を瞑り、隣に居る白井黒子が肩をすくめて苦笑した。

「私としてはあまり気乗りしませんが…」

美琴を懸想する黒子としては、美琴があまり異性と接近するのは好ましくない。
しかし、ここ数日、元気の無い美琴の姿を見るにつけ、考えを柔くしたのだ。
                                                 .・ .・ ・ ..・ ・ ・ ・ ・ ・
「今回はあくまで謝罪だから、白井さんにも同行してもらいます。いい、御坂さん、今回はあくまで謝罪よ」

美琴の両肩を、がっし、と掴み、固法が強弁する。

「けど、夏休みは始まったばかり。謝罪が済んだら、あとはルール無用のヴァーリトゥードよ。あらゆる手段を用いて、愛しの彼をゲットするのよ、オッケー!?」
「は、はいッ!」

勢いに押されて、美琴が勢い良く返事をする。
そして、渡されたメモを改めて読むと、そこに2つの住所が書いてあることに気付いた。

「あの、これ、2つ住所がありますけど?」
「下のほうは『自宅に居なかったら、多分コッチに居ます』って初春が言っていたから、多分、あの女の家なんじゃない?」
「ああ… あの性悪女の……」

黒子が忌々しげに言う。
美琴に直接ダメージを与えた麦野のことを、当然、黒子は快く思っていない。

「……今日は初春さん居ませんね、非番なんですか?」

あまりあの時のことを思い出したくない美琴が、話題を変えるように言う。

「初春は非番、と言うよりも、今日はなにやら個人的な調べ物をしているようですわ。 なんでも、昨日、怪しいコードを発見したとのことで、それを追っていますの」
「そうなんだ… 初春さんだけで大丈夫なの?」

心配そうに美琴が言うが、黒子は立てた指を横に振って得意げに言った。

「お姉さま、初春だって一人前の風紀委員(ジャッジメント)ですの。
 危険はあるかもしれませんが、それの対処は心得ているはずですわ」

相棒を信用しているその言動に、美琴は素直に感心した。
…実際は、この瞬間に初春の心はぽっきりと折れてしまっているのだが。

「そうなんだ… うん、折角初春さんが調べてくれたんだから、しっかり謝らないとね」

いくらか元気を取り戻した声で言うと、美琴は勢い良くイスから立ち上がった。

「それじゃ、黒子いこっか。アンタ、暴走はしないでよね」
「それはこちらの台詞ですわ。お姉さまも、重々、ご自制なさってくださいませ」

少女2人が微笑み合うのを見ると、固法は満足そうに何度も、うんうん、と何度も頷いた。

S-13 DAY 0
PM 3:30 偽装アパート 尾立荘前


「で、案の定留守かい……」

勢い込んで来たものの、(当然だが)上条のアパートには誰も居なかった。

「お姉さま、両隣もお留守のようですわ。…どうしましょう?」

隣室のメーターを確認した黒子が、遠慮がちに美琴に言う。

「…気は進まないけど、もう一つの住所を訪ねるしかないわね。一応、これ謝罪なんだし…」

本当に気が進まない口調で美琴が言う。
あの麦野沈利とは顔も合わせたくないが、仕方がない。

美琴とて、『上条に会ってとにかく謝りたい』という気持ちは強い。

「わかりましたわ、それでは移動を… て、あら…?」

黒子が踵を返そうとすると、上条のアパートに向かって、1人の女性が歩いてくるのが目に入った。

タンクトップに包まれたでっぱいを盛大に揺らし、さらっさらのオデコを光らせ歩くのは、自称・上条当麻の許婚、吹寄制理だ。

「……どちら様?」

上条の部屋の前に立つ少女2人を、吹寄が不機嫌そうに誰何する。

この一週間ほど、あまり上条が携帯電話に出てくれないので、足しげく上条のアパートに通うのが日課になっているのだ。
ちなみに、この吹寄の行動はしっかりと上条に報告されており、2回だけ吹寄を部屋に上げている。

「…その部屋の人に何か用事?」

なかなか口を開かない2人に苛々した様子で吹寄がさらに問う。
しかし、美琴も黒子も、とある一点を凝視してフリーズしている。
その一点とは、言わずもがな、吹寄のおっぱいだ。

((でかい……))

自分たちの頭ほどありそうなド巨乳に、言い知れぬ敗北感を抱く。

「あのね…… ん?」

いい加減焦れた吹寄が、2人の視線に気付くと、面倒そうに、ふんっ、と鼻を鳴らした。

「あんまり見てると、見物料取るわよ?」
「……ハッ!? ご、ごめんなさい、つい……」

正気に戻った美琴が頭を下げ、遅れて黒子も「す、すみませんですの!」と頭を下げる。

「別に良いから、こっちの質問に答えてくれない?」
「あー、えっと、私たちは…」
「わ、私たち、以前、上条さんにご迷惑をおかけしてしまって…!」

口ごもった美琴の代わりに、黒子が口を開いた。

「迷惑?」
「は、はい! こちらのお姉さまは高位の電撃使い(エレクトロマスター)でいらっしゃいますが、
 お姉さまが能力を行使されたときに、不幸なことに、上条さんがお巻き込まれになられて……」
「そ、それで、謝りにきたんです!」

何とか復帰した美琴が同意する。
それを聞いた吹寄は、やや表情から険をとって、「ふぅん…」と頷いた。

「そういう話、聞いたことないけど、まぁ、自分から不幸話を話すタイプじゃないしね、当麻は」

はぁ、と吹寄が溜め息を吐く。
しかし、その台詞の中には、御坂美琴にとって聞き捨てならない言葉が含まれていた。

「あ、あの… 上条、さん、とは、どんなご関係ですか…?」

勢い込んで尋ねる。
対して吹寄は、美琴のことを何も知らないので、なんでもないように答えた。

「え? 許婚よ、親公認の」
「「は、はぁぁぁぁ!?」」

美琴と黒子が口をあんぐりと開けて叫ぶ。
その反応になぜか悦を感じたのか、吹寄が胸を反らせて、ふふん、と勝ち誇る。

「ま、高校生ともなると、そういう関係も有るってことよ… で、留守なんでしょ?」

放心状態の美琴が、かくかく、と頭を上下に振る。

「はぁ… どうせあの女のところでしょうね…」
「あ、あの女って、あのオンナですか……?」

つい、ポロリと美琴が口に出してしまうと、耳ざとく吹寄がそれに反応する。

「…麦野さんのこと、知ってるの?」
「えっと、いや、その、名前は知らないんですけど…… あっ、一緒に歩いているのを見たんで……」

しどろもどろに美琴が答えると、吹寄は納得したように頷いた。

「ああ、なるほどね。…悔しいけど、許婚はアタシだけど、今の彼女はあの人なのよ。 …なに、その顔? やっぱり知り合いなんじゃない?」
「い、いえ、本当に知らないです… 名前だって今知ったし……」

しばらく、じとー、と美琴を見ていた吹寄だが、やにわに小さく肩をすくめると、「まぁ、いいわ」と呟いた。

「当麻にはアタシから言っておくから、貴女たちはもう気にしなくても良いわよ」

その言葉を聞いて、美琴がポケットに入れたメモを手で強く握る。

(…なんかムカつく)

このデカチチには、絶対麦野の住所は教えないでおこう。
そう、美琴は心の中で誓った。

S-14 DAY 0
PM 4:00 麦野のマンション「Meltykiss」 リビング


「つーことで、フレンダは今回リタイアだ。まったく、あの馬鹿は…… あ、ソコソコ……」

いつものマンションのいつものリビングでは、床に敷いたマットレスに麦野が腹ばいになり、その麦野に馬乗りになって上条がマッサージを行っている。

上条はポロシャツに部屋着の短パン、麦野はスポーツブラにスパッツというラフな格好だ。

「ていうか、フレンダ大丈夫なん? 裂けたりとかしてんじゃねぇ?」

麦野の脊柱に沿って、翼を広げるように両手を動かしてマッサージを行う。
女性らしい、ふにふに、としたお肌の下にある、しなやかな筋を慎重に伸張する。

「恥を承知で医者に行くらしいわ、繋がったまま… あ~、いいわ、それ……」
「駒場さんもなんと不幸な……」

笑えばいいのやら、哀れめばいいのやら、判断のつかない表情で上条が言う。

(つーか、あの体格差だったら、フレンダが駅弁スタイルで抱きついて、駒場さんがコートを着れば上手く隠れるかも……?)

思わずそんなシーンを想像してしまい、ぷっ、と吹き出す。

「なぁにぃ? 面白いことでもあったぁ?」

マッサージが気持ち良いのか、麦野がだらけた声で言う。

「いや、なんでも。ケツ揉むよ?」
「いーよー……」

上条が両手の手掌を使って、麦野の臀部をぐにぐにと圧迫する。

(えーと、骨盤がここだから、大臀筋はこのあたりか……)

土御門から習った解剖学を頭に思い浮かべて、形良く発達したお尻を優しくマッサージする。

麦野が着ているのは薄いスパッツ1枚のみだから、殆ど裸尻を揉んでいるようなものだ。
段々と上条の手の動きが熱を帯びてくる。

「…手つきがやらしーぞー?」

ほんのり桃色の吐息と共に麦野が言う。

「いえいえ、上条さんはマッサージをしているだけですよ、っと…!」

そう言いながらも、上条は五指を蠢かせるように臀部を揉みしだく。
うつ伏せに寝る麦野の吐息が、緩やかにその間隔を短くしていく。

(沈利はお尻も最高だなー… 揉んでて飽きねぇ……)

思わず、両足の付け根に指を伸ばしたくなるが、そこはぐっと我慢する。
代わりに、親指をそろそろとお尻の中心に降ろし、窄まりの周囲を優しくマッサージすると、麦野の身体がピクッと震えた。

「……興味あるの?」
「え、何に?」
「お尻、アナルセックス」

そういう目的で触ったわけではないが、多感で欲望満載な男子学生としては安易に否定できない事柄だ。

「…んー、ぶっちゃけると、ある、かな? でも、無理はしたくない」

上条の脳裏に、後穴をレイプされて裂傷を負った佐天涙子の姿が浮かぶ。
想像はできないが、麦野のああいう姿を見たくはない。

だが、麦野は特に動揺するでもなく、上条の言葉に答えた。

「…ま、そのうちね」

『無理』とか、『嫌』とか言わないあたり、麦野沈利である。

「いいの?」
「しばらく使ってないから、準備要るし。アタシも嫌いじゃないし。
 ま、マンネリ予防とでも思っておきなさい。それより……」

言葉と共に、麦野の手が、スッ、と伸びて上条の手を取り、スパッツの上から秘裂に押し当てた。
ちゅく… と汗と共にもっと粘ついた液音が微かに聞こえた。

「テメェの触り方がやらし過ぎるから、火が着いちまっただろーが」

顔を上げて、上気した頬と潤んだ瞳で上条を見る。

「責任とれ、コラ」

S-15 DAY 0
PM 4:10 麦野のマンション「Mwltykiss」玄関前


「ここがあの女のハウスですわね…」

目の前にそびえる高級マンションを見上げて黒子が言う。
美琴は、まだ失言のショックが尾を引いているのか、若干元気の無い様子だ。

「黒子… 今日はもう『ごめんなさい』だけ言って帰るわよ…」
「ええと、はぁ、そうですわね…」

美琴を異常なほど崇拝している黒子にとって、異性との接近は止めて欲しいのだが、こうも元気が無い様子を見るのも苦痛である。

「…思うにお姉さま、しばらくあの殿方とは距離を置いた方がよろしいのでは無いでしょうか?
 果報は寝て待て、という言葉もございますし……」
「うん…… でも、許婚とかいるみたいだし……」

許婚の存在がかなり強烈だったせいか、なんだかよく分からない焦燥感を美琴は感じていた。

「大変失礼ですが… お姉さまはあの殿方のことを、本当に好いていらっしゃるんですの?」

黒子が、おずおず、といった風に美琴に訪ねる。
問われた美琴は、眉間を指で摘むと、「う~~~~~む……」と低く唸った。

「なんて言うか… あの女があの馬鹿にキスしたときに、無茶苦茶悔しくて、無茶苦茶悲しかったのよね… さっきのデカチチの人の時も」

自分でもよく分かっていない微妙な気持ちを、必死に説明しようとする。

「正直に言うと、アイツのことが好きかどうかはよく分かんない… けど、胸がモヤモヤしてるの、ずっと……」

胸の辺りを苦しそうにさする。

「…だいたい、アイツが私のこと無視すんのがムカつくのよ!
 恋とかそういうのとは別に、とりあえず私のことを名前で呼べっつーのよ!」

美琴の髪の毛から、微弱な放電現象が起こる。
どうも、上条のことを考えるにつれて、段々と腹が立ってきたらしい。

「それにこのままだと、あの麦野って女や、デカチチの許婚に負けた感じがしてすっごい嫌。
 私はそんなに軽い存在じゃないわよ……!」

はっきりと分かるほど美琴の髪が放電する。

黒子は、本当なら、ここで宥めるのが自分の役目だと分かっていたのだが、それまでの沈んだ美琴を見ていたせいか、ついついノッてしまった。

「その通りですわ! あの類人猿はお姉さまの魅力に気付いていませんのよ!」
「そう? …そうよね。うっし、謝るだけはなし! 一言、『名前で呼べ』ぐらいは言ってやろうじゃないの!」

完全にテンションを戻した美琴が、大きく自分に気合を入れる。
そして、美琴と黒子は互いに頷き合うと、マンションの自動ドアを潜って、オートロックのエントランスに足を踏み入れた。

かくして、御坂美琴はルビコンを渡る。


.

S-16 DAY 0
PM 4:10 麦野のマンション「Mwltykiss」 リビング


「あんッ、あんッ! ソコ、ソコ弱いのッ!! ソコばっかり卑怯よぉ……ッ!」

リビングでは、ストレッチマット上でまんぐり返しになった麦野が、屈曲位で上条に激しいピストン運動を食らっていた。

「へへ… せっかく沈利のGスポット見つけたんだから、責めなきゃ損だろッ? つーか、沈利も気持ちいいからいいじゃん…ッ」

この前発見した、麦野の新たな性感帯を、ペニスで激しく擦り突く。
抽挿のたびに白濁した愛液が秘裂から飛び散り、麦野が長い髪を振り乱してよがる。

「駄目ッ! 感じすぎて、おかしくなるぅ!」

本能的な安楽を求めてか、麦野が上条に抱きつくように両手を伸ばす。
だが、上条は意地悪そうに笑うと、麦野の両腕を両手でマットに押さえつけると、さらにピストンのスピードを上げた。

バンッ、バンッ、バンッ、バンッ!!

「いやぁぁぁぁぁぁ!!!! だめぇぇぇぇぇぇ!!」

四肢を完全に抑えられた麦野が、絶頂と共に悲鳴を上げる。
本イキしたとわかるほど膣道が収縮し、上条は思わず麦野の体奥で射精した。

「うっ… あー、出ちまったか… 沈利のマンコ、気持ちよすぎ、我慢できねぇ」
「馬鹿ぁ… ちょっとは手加減しなさいよぉ…」

イッた後の顔を見せたくないのか、両手で顔を隠して、しかし目線だけはチラッと出して麦野が言う。
その仕草から、普段の傍若無人な態度と真逆の可愛さを感じて、上条は再び下半身に力が集まるのを感じた。

「……さーる」
「沈利だって、1回じゃおわらねぇだろ?」

麦野に覆いかぶさるように身体を密着させ、愛の篭ったディープキスをする。
じゅぷ、じゅぷ… と互いの唾液をこれでもかと交換する作業に没頭すると、次第に麦野の身体から力が抜け、くたり、と脱力し始めてた。

「やっべぇ、幸せ感じちゃってる……」

ディープキスで出来た銀色の糸を断ち切り、沈利が呆然と呟く。
その台詞に、言いようの無い充実感を得て、上条は麦野の背中に手を回した。

「沈利、足を絡めて」
「うん、だっこして……」

麦野の長い足が、しっかりと腰を大好きホールドしたのを確認すると、上条は麦野と繋がったままゆっくりと身を起こし始めた。

「うあぁぁ… 奥まで刺さるぅ…」

自然と体重でペニスが最奥まで突き込まれる。
この前試して以来、麦野はこの駅弁スタイルに病みつきになっていた。

とにかく、密着感と挿入角度が良いらしい。

「あっ、あっ、あっ… あぅぅぅ……」

上条がリビングを、のっしのっし、と歩くと、麦野の身体が小刻みにバウンドする。
数毎に軽い絶頂を迎え、麦野の頭の中に小さな火花が次々と炸裂する。

(あー、こりゃヤバイ… 意識跳ぶかも……)

軽い絶頂は深い絶頂の前ぶれだ。
今は小刻みに突かれているが、一度でも深く激しく突き込まれたら、はしたないあえぎ声を上げてイッてしまうだろう。

上条が麦野のそんな些細な変化を敏感に感じ取り、抱えなおす動作で深く突きこもうとしたその瞬間……

ぴんぽ~ん……

部屋のチャイムが甲高い音を立てて鳴り響いた。

「……え、誰?」

反射的に上条が答えてしまったが、それが不味かった。

無駄にハイテクな麦野のマンションは、チャイムの応答は音声認識になっている。
これは、部屋に生活する人間の音声を勝手にサンプリングし、その人の声色によって応答・拒否を判断してくれる優れモノだ。

が、しかし、優れすぎたその技術は、今の上条の声を応答と判断したらしく、リビングの60インチモニターに来訪者の顔がデカデカと映し出された。

「………げっ!」

モニターが映したのは、当然、エントランスでチャイムを鳴らした御坂美琴と、お供の白井黒子だった。
対面で繋がっているおかげか、まだ麦野にはモニターが見えていない。

「……だれぇ?」

首をめぐらそうとする麦野を慌ててキスで止めて、上条の頭が高速回転する。

映像は単方向(ワンウェイ)だが、音声は双方向(ツーウェイ)だ。
今の状態では、こちらの声もあちらの声も筒抜けになってしまう。

(あのビリビリが訪ねてきたなんて知れたら、超能力者(レベル5)の全面対決になっちまう……ッ!!)

そこまで考え至った上条は、画面の御坂美琴が口を開くより前に怒鳴った。

「あの…」
「15分!!!!!!」

突然の大声に、画面の中の御坂美琴が、ビクッ、と震える。

「15分たったら降りてくるからッ! 黙ってロビーで待ってろ!!」

麦野に聞かれないように、麦野の身体を思いっきり抱きしめて上条が叫ぶ。
画面の美琴が神妙に、コクコク、と頷いて、これで落着と上条は思った。

が、

「やっ、それ、だめぇ…」

急に怒鳴り、体位を弄ったのがまずかったのか、上条は麦野の体奥をペニスで突きこむ格好となってしまったのだ。
ゆえに、麦野はあえぎ叫ぶ。

「やだぁ!! 死ぬ、死んじゃうよぉぉぉぉぉぉ!!!!」

御坂美琴がモニターの中で驚きの顔をすると共に画面が消失する。

(聞かれたッ!? いや、しかし、このまま沈利を放っては……!)

非常に幸運なことに、麦野はまだ来訪者の正体に気付いていない。
上条は断腸の思いで麦野とのセックスを切り上げることを決意すると、一旦ペニスを引き抜いて、麦野をダイニングテーブルに腹ばいにさせた。

「あん… もうバック?」
「後ろからされるのも、好きだろ?」
「うん、好き… いっぱい突いて……」

男を受け入れるために、麦野が精液と愛液でぐちゃぐちゃになった秘裂を自らの手で開く。
内心、冷や汗をかきながら、上条は勢い良くペニスを突きこんだ。

「あっはぁぁぁぁぁ!!」

(…まぁ、どうせ上には上がってこれねーし、早々にお帰りいただくか…)

麦野の嬌声をBGMにそう決意した上条は、トドメを刺すべくピストンのピッチを上げた。



.

S-17 DAY 0
PM 4:15 麦野のマンション「Meltykiss」 エントランス


しかし、事態とは常に悪い方に転がるものである。

「く、黒子、今の声!」
「はい、間違いなく女性の悲鳴でしたわ!」

言うや否や、白井黒子が能力を発動してテレポートする。
残った美琴はポケット端末を取り出して、エントランスの入出力装置に接続、マンションの防犯システムに侵入する。

「あのバカ… 何やってんのよ……ッ!」

完全に勘違いした御坂美琴が、己の能力を駆使して状況を把握しようとする。
しかし、

「…何コレ!? 普通のマンションの防犯システムじゃ無い!!」

このマンションは、暗部組織『アイテム』の拠点の1つであるから、当然、電気能力者のハッキングに対するシステムも構築してある。
だから安易に、かつ早急にダイブした美琴が弾かれたのだが、そのことが却って美琴の疑念を強める結果となってしまった。

外からマンションの外観を確認してきた黒子が、美琴の隣に再びテレポートしてきた。

「お姉さま! このマンションの階層構造は一般的ですわ! 内部へのテレポートは可能です!」
「こっちは駄目だったわ。エントランスドアを開こうとして潜ったら、あっさり弾かれちゃった。なんとか通報システムにはばれなかったけど、再挑戦は無理ね…
 普通のマンションじゃないわよ、ここ。」
「まさか… どこかの組織の隠れ蓑だと…!?」

少女2人のボルテージが段々と上がっていく。

「でも、中枢に近いエントランスは開かなくても、各部屋のドアを個別に開くことはできるかも…」
「それでしたら、わたくしがドアの前までエスコートいたしますわ! お姉さま捕まってくださいまし!」

美琴が黒子の肩を掴むと、黒子が素早く「自分だけの現実(パーソナルリアリティ)」を展開する。
外から見たマンションの階層構造から11次元のベクトルを計算し、エントランスから目的の部屋までの空間をつなげる。

「跳びますッ!」

次の瞬間、美琴と黒子は何の変哲も無い、両開きのドアの前に出現した。

「ナイス黒子! ここなら…ッ!!」

最早、ポケット端末を使わずに、御坂美琴がドアの電子ロックを解錠する。
コクリと黒子に頷くと、いつの間にか『風紀委員(ジャッジメント)』の腕章をつけた黒子が、勢い良くドアを開けた。

「ジャッジメントですの!」

美琴と一緒に玄関を上がり、短い廊下を走りぬけてリビングへ通じるスライドドアを開く。

その瞬間、

「とうまぁぁぁぁぁぁぁ!! 好きぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」
「くっ… 出すぞッ! 沈利の子宮に全部出してやるッ!!!!」

恋人2人の激しいセックスが終了し、遠目でも分かるほどの激しいフィニッシュが行われる。
つの字が2つ重なったような格好の2人が、ゆっくりと視線をドアに向け。

……4人の8つの眼が点になった。



.

S-18 DAY 0
PM 4:20 麦野のマンション「Mwltykiss」 リビング

「ッッッっざけんなぁぁぁぁぁぁl!!!!」

瞬間的に『ぷっつん』した麦野が理性のタガをあっさり放す。
繋がってのしかかっている上条を乱暴に背中から振り落とすと、無意識のリミッターを解放する。

(まずいッ!!)

ぞわっ、とした恐怖を覚えた上条が、全身の筋をフルに収縮させてフローリングの床を蹴る。
何人もの能力者と対峙してきた戦士としてのカンが、麦野の状態が危険だと囁く。

「死ねよやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

超能力者(レベル5)麦野の『原子崩し(メルトダウナー)』がフルパワーで放たれようとした瞬間、
必死の思いで接近した上条が、その左手で腕を掴んだ。

「…………あッ!?」

無意識に練り上げられた麦野の「自分だけの現実(パーソナルリアリティ)」が四散する。
期待していた結果を得られなかった麦野は、「チッ!」と舌打ちすると、忌々しげに上条を見た。

「……なんで止めんだよ!?」
「……暴走したら、やばいんだろ?」

視線だけで人を殺しそうな形相の麦野に、上条が出来るだけ平静を装って答える。

以前、絹旗や滝壺から聞いていたが、麦野の能力である『原子崩し(メルトダウナー)』は、ひどく不安定な能力らしい。
その破壊力は折り紙つきだが、最大出力で能力を行使すると、麦野本人すら消し飛ぶほどの出力を出してしまうのだ。

上条が『幻想殺し(イマジンブレイカー)』で止めていなかったら、ドアで固まっている美琴と黒子はもちろん、上条や麦野すら一瞬で消滅していただろう。

「……クソが」

能力の暴走を自覚して少し冷静になったのか、麦野がややトーンの落ちた声で悪態を吐く。

「……離せよ、とりあえずはキレねぇから」

やや乱暴に上条の左手を振り払うと、ゆっくりとした歩みで美琴と黒子に近づいた。

「あ、あの… その……」

とんでもなくショッキングな光景に美琴が何も言えないでいると、目の前に来た麦野が全裸のまま腰に手を当てて仁王立ちした。
注がれたばかりの上条の精液が、股間から、ぼたぼた、と落ちるが気にも留めない。

「意趣返しのつもりかよ、コラ……ッ!」

頭半分低い美琴を見下ろす体勢で詰問する。
普通ならこういう物言いをされると、カチン、ときて言い返す美琴だが、流石にこの情況では何も言えない。

.

「も、申し訳ありません!! じ、事件性を感じて、風紀委員であるわたくしの独断で……」

美琴に代わって、黒子が腰を90°に曲げて謝罪する。

「あぁッ!! 風紀委員は学内の事件担当だろうが!! 管轄外でナニ越権行為してんだよッ!!」
「そ、それは……」

麦野の言ったことは事実で、黒子たち風紀委員(ジャッジメント)は、本来、学校内の治安維持を行う組織だ。
学外の担当は、教師で構成させる警備員(アンチスキル)が担当となる。

「返す言葉もありませんの… 非礼の段、深く、深く謝罪いたします。本当に申し訳ありません!」

段々と黒子の口調が焦ったものになる。
というのも、チラリと横目に見た美琴の様子が明らかにおかしいからだ。

「うそよ… そんな…… ささって… 垂れて……」
「と、とにかく、このような状況では、きちんと謝罪も出来ませんの! 日を… 日を改めて謝罪を!」
「ざけんなよッ! テメェらの顔なんざ二度と見たくねぇよ!!」

麦野が吐き捨てるように言い、美琴を睨みつけると、震える彼女の視線が自分の股間に集中していることに気付いた。

「…あン?」

釣られて視線を落とすと、股間から太ももにかけて、上条の精液が白い道筋を作っているのを発見した。
ふん、と1回鼻を鳴らすと、麦野は右手の人差し指で太ももの精液を掬い、美琴に良く見えるように突きつけた。

「なーに、見てんだよ? ナカ出しのザーメンがそんなに珍しいのかよ、あぁ?」

そのまま精液まみれの指を自分の口に持っていき、びちゃびちゃ、と下品な音を立てて舐めしゃぶる。
黒子の顔が引き攣り、美琴の震えがいっそう加速した。

「…沈利、もう勘弁してやれよ」

いつの間にか服を着た上条が助け舟を出す。
腹を立てているのは彼も同じだが、これ以上美琴たちが責められるのを見るのは、流石に気分が悪い。

「あぁ!? アンタ、この小娘の肩持つ気!?」
「そうじゃねぇよ。俺だって頭きてるけどよ、そこのツインテールが言う通り、仕切り直さねぇと、話しできる状況じゃねぇだろ?」

上条の言葉に、黒子が、コクコクッ、必死にと頷く。

「………マジ、ふざけんなよ…… 良いカンジにイケてたっていうのに……」

不満たらたらにそう呟くが、ひとまずの怒りは収まったらしい麦野が、くるり、と踵を返す。

「…シャワー浴びてくる。後は勝手にしろ…」

すたすた、とリビングに散乱した自分の衣類を回収し、床に零れた精液を綺麗にハンカチで拭うと、麦野はバスルームへと消えて行った。


.

「……はぁ」

麦野が視界から消えると、それまで何とか気を張っていたのか、美琴の膝が、カクン、と折れた。

「お、お姉さまッ!」

隣の黒子が慌てて美琴を支える。
普段なら、『ぐへへ、役得ですわ!』ぐらいは思う黒子だが、流石に今はそんな余裕はない。

「……15分、って言ったよな?」

完全に疲れた表情で上条が言う。
黒子は美琴に肩を貸したまま、バツが悪い顔で再度頭を下げた。

「本当に申し訳ありませんの… 女性の悲鳴が聞こえたので、てっきり事件かと……」
「それで人の家に突撃かよ… つーか、何しに来たんだよ?」
「…この前の騒動のお詫びに……」
「お前ら、無駄に行動力と実行力ありすぎ……」

ハハハ、と乾いた笑いを浮かべ、どんよりとした視線を茫然自失の美琴に送る。

「…もう帰れ、と言いたいけど、ビリビリをソファに寝かせるぞ。休んでけよ」
「それは…… これ以上、あの方の勘気を被るのは…」
「沈利は俺が宥めるよ。それに、いくら沈利でも、本気で弱ってる人間を嬲る趣味は… あるっぽいけど、させねぇから、俺が」

あまり頼りにならない台詞ではあるが、確かに今の美琴では歩行も怪しい。
自分がテレポートで運ぶのも良いが、今は空間移動のストレスも美琴にはかけたくなかった。

「お言葉に甘えさせていただきますわ… さ、お姉さま…」

黒子が苦労して脱力した美琴をソファに寝かせる。
手伝おうと手を伸ばしかけた上条だが、却って悪い結果になると思い、手を引っ込めた。

(夏休み前だったら、何も考えず手を出してただろうなー)

こういう行為がトラブルの原因なのだと、ようやく上条は自覚するようになっていた。

「つーか、お前らここの住所、どうやって知ったんだよ?」
「そ、それは……」

黒子が明らかに目線を泳がせる。
相棒である初春飾利が、意外に腹黒いハッカーであることを知っているだけに、余りまっとうな手段でないとは想像している。
それだけに、本当は隠しておくつもりだったが、こういう状況になってしまってはシラを切るのは難しかった。

「…わ、わたくしが風紀委員のデータベースから調べまして……」
「嘘つけ。学内担当の風紀委員に学外のデータベースがあるかよ」

上条の鋭い突っ込みに、黒子が返答に窮する。

「……友人のハッカーに調べてもらいましたの。方法はわかりませんし、名前は、その……」
「ハァ… その友人にどうやって調べたのか詳しく聞いて俺に教えてくれ。それが名前を教えない条件な」

まだあまり実感はないが、上条とて暗部組織『アイテム』の一員なのだ。
『アイテム』のセーフハウスである麦野のマンションが、いとも簡単に所在を割ったことについては追求せざるを得ないのだ。

最も、初春の現在の境遇から、そんな心配は杞憂なのだが。

「わかりましたの、必ず連絡いたします。 えぇと…」
「いちおー、俺のメルアド。絶対に他の人間に教えるなよ」

適当なメモにメールアドレスを走り書きして黒子に渡す。
神妙な顔でそれを受け取ると、黒子は視線を美琴にむけた。

「…こんな事をしでかして図々しいとは思いますが… お姉さまを責めないでくださいまし。罰はしっかりと受けますから……」
「まぁ、コイツがこういう行動するのも、元を正せば上条さんの自業自得な所もあるからなー…」

頭をポリポリと掻いて、上条は声色を慎重に整えて美琴に声を掛けた。

「あー、御坂美琴だよな? お前、もう俺を追うの止めろ。お前が辛いだけだよ。見てらんねぇよ」

その言葉が引き金になり、とうとう美琴が、ぐすぐす、と嗚咽を漏らし始める。
可哀想だとは思うが、ここははっきり言っておく必要があると上条は感じた。

「……あのな、今の俺は麦野の彼氏なんだ。御坂のことは好きでも嫌いでもないけど、麦野のことは好きなんだよ……」

言い終えて、上条が「ふぅ…」と大きな溜め息を吐いた。
例え傷つける結果になっても、吹寄にもこう言うべきだった。

上条は自分の優柔不断さに嫌気が差した。

「傷つけるようなこと言ってわりぃ… けど、これが本心だから……」

何かがぽっきりと折れるのを黒子は感じた。

そして、それは美琴も同様だったのだろう。
泣き腫らした目を小さく開けて上条を見ると、小さな小さな声で「わかった…」とだけ呟いた。

S-19 DAY 0
PM 4:30 麦野のマンション「Mwltykiss」 リビング


「どーゆーことだ、あン?……」

髪は洗わずに身体だけ流したのか、タオルターバンをした麦野がバスローブ姿でリビングに現れた。

再び怒気を発しそうな麦野に、黒子がリビングの床に正座をして深々と土下座をする。
幾分回復したらしい美琴も、ソファの上でしっかりと頭を下げた。

「ご気分を害して本当に申し訳ありませんでした。このお詫びは必ずいたしますわ」
「いらん、帰れ。風紀委員にも報告すんなよ、面倒だ」
「しかし…」
「アタシは帰れって言ったの…ッ!」

なおも言い募ろうとする黒子を一喝すると、黒子は諦めたように美琴を見た。

「お姉さま、今日のところは…」
「うん…… ごめんなさい、ごめんなさい……」

ふらつく足どりでソファから立ち上がり、美琴は何度も麦野と上条に頭を下げた。
優しい言葉を掛けたいところをぐっと抑えて、上条は短く「ああ…」とだけ答えた。

そうして、美琴と黒子が支え合うようにして玄関から出ようとした瞬間、

「……待ったッ!」

意外なことに麦野が2人の足を止めた。

「あの… 何か…?」

黒子が怪訝そうな表情で言うと、麦野はチラリと美琴を見て言った。

「コイツは『常盤台の超電磁砲』。レベル5の第3位、御坂美琴で間違いないのよね?」
「えっと、はい、そうですが…?」

訳もわからず黒子が同意する。
美琴も麦野がなぜそんな確認をするのか分からず、薄ぼんやりとした表情で頷いた。

「つーことは、ひょっとしたらAIMも似通っている可能性があるか……」

顎に手を当ててブツブツと呟くと、麦野は視線を上条に向けた。

「当麻、こいつら連れていつものファミレスに行って来て。それで、1時間ぐらいだべってて」

言いつつ、上条にだけ分かるように、素早く2回ウインクする。
意図を察した上条は、多少戸惑いながらも「ああ、わかったよ」と返した。

「あ、あのー、一体…」
「アタシに負い目感じてるんなら言う通りにしな。そうしたら、今日の件は水に流してやる」

凄まじく意外な麦野の言葉に、美琴と黒子が目をパチクリさせる。

「ふぁ…ファミレスで1時間だべれば良いんですの?」
「ああ。それと、ここに来てからファミレス出るまでのことは、一切合財他言無用、良いな?」

2人にとっては、奇妙な条件だが、それで家宅侵入を許してもらえるなら願ったり叶ったりだ。
美琴と黒子は互いに顔を見合わせると、おずおず、と視線を麦野から外さないで頭を下げた。

S-20 DAY 0
PM 5:00 「とある」ファミリーレストラン


「まったく… あの性悪淫乱女はどういうつもりなんですの…!?」

折角なので、と頼んだパフェを食べ終えると、口火を切るように白井黒子が憎々しげに呟いた。
麦野のマンションから出てからずっと、彼女は不機嫌な表情のままだ。
御坂美琴はと言うと、喪失状態からは回復したらしく、正面に座る上条の顔をチラチラと見ながらパフェを食べている。

「お前… ちっとは歯に布着せろよ。また拗らせたいのか?」
「元々はアナタが原因でしょう!?」

黒子がテーブルを、ドンッ、と叩いて怒りを露わにする。
マンションでは状況的に平謝りだった彼女だが、それだけに鬱積した思いが溜まっていたらしい。

「アナタがお姉さまを誘惑するから……」
「してねーッ! …っつうのは、俺の主観なんだろうな……」

上条が軽く息を吐いてドリンクバーのコーヒーを啜る。

吹寄の一件で上条も多少は成長していた。
自分のいらん行動が、自分が思っているよりも他人に対して影響を与えていると、身を持って実感したからだ。

「……あのさ」

それまで、ずーっと黙ったままだった美琴が、おずおず、と口を開いた。

「…迷惑、だった?」
「どれを指してんのかわかんねーけど、追いかけっこやガチンコ勝負は、そりゃ迷惑だった」
「そ、それは分かってるわよ! 自覚してるわよッ! そうじゃなくて……」

視線を泳がせて顔を真っ赤に染める。

「…ゎたしが、アンタのこと、す、好きだったこと……」

ガンッ!! 

ファミレスに鈍い音が鳴り響く。
白井黒子が突然、額をテーブルに打ち付けたからだ。
どうも、『聞きたく無いワード』を耳にした瞬間、脳が拒絶のあまり意識を強制的にカットしたらしい。

「お、おい… ツレ、大丈夫かよ…?」
「黒子にはさ… 胸のもやもやとか言ったんだけど…」
「無視かよ、ひでぇな…」

黒子の奇矯な行動に悪い意味で慣れている美琴が、全く気にするそぶりも見せず話し続ける。

「あ、アンタがあの女と、その… せ、セックスしているの見て、う、羨ましいなって思っちゃったの…
 キ、キスの時だってそう… 羨ましいなって… アンタとキスできて良いなって…」

ショッキングな出来事が続いて何かのスイッチが入ってしまったのか、真っ赤な顔のまま美琴が喋りまくる。

「ねぇ、これってやっぱり、アンタのことが好きだったってことだよね? ねぇ?」
「俺に聞くな… てゆーか……」

やれやれ、と上条が嘆息する。
この少女は、失恋によって恋を学んだのだ。

(すっげぇバイタリティ… 立ち直りが早いっつーか、なんつーか……)

「……俺のことはもう良いんだな?」
「うん…… アンタの言葉、痛かったけど、なんだか胸が軽くなったから……」

なんとも奇妙な、しかし、どことなく居心地の良い空気がテーブルに満ちた。

「そっか… わりぃ」
「謝んなくていいわよ、悪いことばっかりしてたの、アタシだし…」

御坂美琴が、ようやく笑った。

同時刻、同店内、上条たちのテーブルからほぼ死角となるテーブル。

「おおっとー、麦野の犬と第三位が超微妙に良い雰囲気ですねぇ… これは後で麦野に超報告しないと…」
「だめだよ、絹旗。麦野がかわいそう」

4人がけのテーブルを占拠しているのは、『アイテム』構成員の絹旗最愛と滝壺理后だ。
2人は麦野からの指示で、上条たちに見つからないように潜んでいるのだ。

「で、ソッチのほうは超いけそうですか?」
「うん、これだけ近ければ体晶の使用も少なくてすみそうだよ」

滝壺が小さなガラスケースから取り出した白い粉末を手の甲に乗せ、ちびちびとソレを舐める。
見るからにアレな風景に、何も知らない他人が見たら勘違いしそうである。

「………捉えた。ターゲットのAIM拡散力場は記憶した。これで、もーまんたい」
「アレは傑作でしたねぇ… それじゃ、仕込みはこれで超終了ですね。あとは明日勝負です…!」

滝壺の大能力『能力追跡(AIMストーカー)』は、たとえ地球の裏側に居ようとも、検索対象を探し出す強力なものだが、
一度、検索対象のAIM拡散力場を記憶しなければならない。

そして、御坂美琴のAIM拡散力場を記憶したのは、今回の任務に依るものだ。

『クローンっつーことは、いくらかはAIM拡散力場も似る可能性がある。保険の意味も含めて記憶しておけ』

というのが麦野の指示だ。

「フライングして、今から超検索したら大きなアドバンテージなんですが……」
「これでも十分フライングだって、麦野が言ってた。焦らずいこう…」

滝壺が若干気だるそうに言う。

体晶の使用は身体に悪影響を与え、さらに性質の悪いことに蓄積する。
滝壺は文字通り『命を削って』能力を行使しているのだ。

「……使用回数が超少ない方が良いですから」
「そだね、ありがとう、絹旗」

友人の気遣いに、微笑みを浮かべて滝壺が頷いた。


.

S-21 DAY 0
PM 6:00 第11学区 貸し倉庫街


物資の搬送が盛んで、そのために大きな貸し倉庫が整然と立ち並ぶ第11学区。
複雑な倉庫群の迷路を、みょうちきりんなルートで延々と歩き、壮年と少女の2人組が1件の貸し倉庫へやってきた。

「ここか… 尾行を警戒してのこととはいえ、流石に疲れたな……」

疲労感で満たされた声で言うのは天井亜雄だ。
彼とは対照的に、ミサカ00000号は涼しい顔で貸し倉庫の認証キーを入力した。

「141060561310000と… 何か意味があるのでしょうか? と、ミサカ00000号は当然の疑問をマスターに申し上げます」
「さぁな… それよりも、これからお前はあまり喋るなよ。ボロが出ると面倒だ」
「マスター、マスター。かしこまりました。今よりミサカ00000号はお口チャックです。と、ミサカ00000号はマスターの命令を遵守いたします」

両手の人差し指で口の前にバッテンを作って、ミサカ00000号が口を閉じる。

「よし… それでは入るぞ…」

物資搬入口よりもずっと小さい通用門のドアを開けて2人は中に入った。

貸し倉庫の中は様々な物資が積まれ、さらに光量が絞られており、目が慣れるのに少しの時間が必要だった。
ようやく目が慣れてきた天井が、誰か居ないかと口を開きかけると、突然、眩いライトが天井の顔に向けられた。

「うわっ!!」
「………………ッ!!」

悲鳴を上げてのけぞる天井をガードするように、ミサカ00000が無言で前に出る。

「あ、ごめんねー、驚かせちゃった?」

物資の隙間から、若い女の声がした。
続いてもう一つ。

「お姉さま、悪戯はお客人に対して失礼ですわよ。ましてや、こちらはご依頼人なのですから…」
「はいはい、みっちゃんは真面目ねぇ…」

ゆらり、と物資の陰から2人の少女が現れた。

1人は、冬服のミニスカートに、サラシにブレザーを肩に掛けただけという扇情的な衣装の少女、
もう1人は、艶やかな緑髪が美しい、デザイン着物を着た日本人形の様な少女だ。

「一応、符丁を確認しましょうか。『沈黙の巨人』」
「『とろみのついた日本酒』…」

天井が緊張を隠し切れない声で言うと、少女2人は満足したように頷いた。

「はい、オッケー。自己紹介をするわね。私たちは『グループ』。こっちは相棒の婚后光子」
「はじめまして、婚后光子と申します。そして、こちらのお姉さまが、学園都市第6位の超能力者(レベル5)……」

婚后がもったいぶった仕草で、手に持った扇子で隣の少女を指した。

「『座標移動(ムーブポイント)』の結標淡希ですわ」

結標は、にっ、と歯を見せて笑うと、手に持った軍用の懐中電灯をくるりと回した。



.

ハイ終了。

というわけで、あわきんとみっちゃん登場でようやくキャラが揃いました。
ちなみに、あわきんは最初からパーフェクトあわきんなので、どんだけ自分をテレポートさせようが吐き気1つ感じません。

あと、今回で美琴の上条フラグは作者的に完全に折ったつもりです。
原作の美琴は、行動原理が上条or妹達しかないので、それからの脱却狙い。
コレで自由に動いてくれるんじゃないでしょうか。

さて、次回からようやく第3話の本編突入です。
予定してるエロは、あわきん×みっちゃん、天井クン×00000号、塔下君×初春、そして、上条さん×むぎのん

では、キリのいいところまで書けたら投下します。では。

なんか2時間暇だったから小話書いた。

投下。

Status フレンダ・セイヴェルン、駒場利徳


「…うん、何とかなったね。外科手術に至らなくて良かったね」

消毒液の匂いが染み付いたとある病室。
脊椎損傷などの患者に使われる、大掛かりな牽引装置のあるその部屋で、
長時間の結合から解き放たれた大小アンバランスなカップルが、同時に溜め息を吐いた。

「……とりあえず、トイレ行って来るわ……」

非常に大変疲れた顔と声で、駒場がぼそりと言い、病室の外へ消える。

フレンダの無理な挿入から早数時間。
我慢に我慢を重ねた彼の膀胱は破裂寸前だ。

「うん… 行ってらっしゃい……」

対するフレンダも疲労困憊だ。
自分の腕ほどの肉棒を長時間胎内に埋め込んでいたせいで、太腿の筋肉が疲労の極みに達している。
さらに言えば、おまんこ穴はがばがばである。

「愛に暴走するのも結構だけどね、やっぱり、限度があるよね?
 今回は間歇的牽引で何とかなったけど、以後は十分に気をつけてね?」

どことなくカエルを思わせる風貌の医者が、やや呆れた口調で言う。

その言葉に、フレンダは「ハハハ…」と笑って返した。

「でも… 結局、ヤルためには入れるしかない訳で……」
「全部挿入しようとするから無理がでるんだよ。亀頭だけでも挿入は十分だよね?」
「む、むぅ……」

冗談のつもりが真面目に返されて、フレンダが戸惑う。

「とにかくお疲れ様だね。今日診察できたのはラッキーだったね、明日は予約の患者が来るから、1日遅かったら、確実に切開だったよ?」
「げぇ… それはラッキーだったわ……」
「……何が?」

トイレをすませた駒場が入ってくる。
フレンダと目が合うと、どちらとも無く気恥ずかしそうに視線を外した。

「はいはい、治った患者は出てった出てった。いちゃいちゃは自室でやってね?」
「いや、先生、別に俺ら……」
「了解っすー。行こ、利徳」

ベッド上でフレンダが両手を広げる。
俗に言う、『だっこしてポーズ』だ。

「…何のまねだ?」
「アタシ、足に力が入らないし、股間がすんごい痛くて歩けない」

色んなモノを含んだ盛大な溜め息を吐き出して、駒場はしぶしぶフレンダに両手を伸ばした。



.

Status 御坂美琴、白井黒子


PM10:00、常盤台学生寮。

「今日は散々な一日だったわね……」
「ですわね……」

順番にシャワーを浴びて、共にベッドに倒れ伏した2人がしみじみと呟く。
ファミレスで上条と別れた後、2人で話し合った結果、今日の出来事は2人の胸に仕舞おうという結論に達した。

固法には「失敗しました。フラれました」とだけ連絡してあるし、住所を書いたメモは焼却した。

「…初春さんには連絡とったの?」
「はいですの。件の住所は、デジタルデータに残していないとのことですの。 …どうやって入手したのかは、言えたものではありませんわ……」

風紀委員として、同僚の違法ギリギリのハッキングは頭痛の種だ。
上条にはメールで事の次第を送ってある。

「あっそ……」

2人の間に微妙な空気が流れる。

「………黒子」
「………お姉さま」

同時に声を掛けて、お互いが虚を付かれる。
しばらくして、黒子の無言の「どうぞどうぞ」ジェスチャーにより、美琴が躊躇いがちに話し出す。

「見ちゃったわね……」
「見てしまいましたわね……」

2人が言う「見た」とは、上条と麦野のセックスシーンだ。
歳相応の性知識しかない美琴と、耳年増でしかない黒子にとって、あの光景はそんな簡単に忘れられるものではない。

「く、黒子はさぁ…… その…… アレが見たの初めて…?」
「も、勿論ですわ!! そういうお姉さまは…?」
「アタシだって初めてよ!! あの、その… ズブって感じがすっごいリアルっつーか…」

顔全体を真っ赤に染めて美琴が赤裸々に語る。
いつもなら「お姉さま、はしたないですわ!」と内心はともかく注意をする黒子だが、今日は違った。

「抜くときも凄かったですの… ズボッ、ヌポッ、という感じで、ズルズルっと……」
「黒子… 言い方がやらしいわよ……」
「お、お姉さまだって…!」

よくよく見てみると、黒子も顔が真っ赤だ。

微妙な沈黙が2人を包む……

「き、気持ち良かったのかな……」

口火か切られた。

「い、イク、とか仰ってましたわね、あの方…」
「ていうか、男の人の精液見ちゃったんだ…… ホントに白いのね……」
「それを舐めるとか、想像を絶しますわ……!」
「そうそう! 舐めるもんなの、あれ!? マズイんじゃないの!?」
「く、黒子に言われましても… も、物の本によると、女性の愛液と味自体はあまり変わらないと載っていましたが……」

ハッ、と白井黒子の脳裏に戦慄が走る。

「お、お姉さま…?」
「く、黒子は舐めたことある…? っていうか… その、ぉなにぃの経験はある…?」
「ぐほっ!」
     オネエサマ
憧れの御坂美琴から出た突然の猥語に、黒子が鼻血を垂らして悶絶する。

「………ノーコメントですわ」
「あ、あるんだ……」
「ノーコメントですわ!!」

完全に否定しない事が、明らかな肯定ではあるが、流石に女性として明言はできない。

「…それってやっぱり、アタシを想像したりして……」
「お姉さま! お姉さま!! 先ほどから発言が過激すぎますわ!!」
「だ、だって! 興味出ちゃったんだから仕方が無いじゃない!!」

再び、微妙な沈黙が2人を包む。

「……………舐めたことはありませんわ…」

石臼で小麦粉を擂り出すような抑揚の無い声で黒子が言う。

「自分のを舐めるのは、流石に抵抗がありますの……」

ゴクリ、と、どちらか、もしくは双方の喉が鳴る。

「きょ、興味、ある…?」
「きょ、興味、ございます…?」

三度、微妙すぎる沈黙が2人を包む。

「…そっち、行くね」

ギィ… とベッドが軋む音がして美琴が床に立つ。
黒子は心臓が喉から飛び出るかと思うくらい胸を高鳴らせて、その瞬間を待った。

ぽすん、と横寝している黒子の正面に美琴が横たわる。
紅潮した頬と、ひどく色っぽく潤んだ瞳が、黒子の目の前に現れた。

「ああ… お姉さま……」
「一応、傷心の身なんだからね… 慰めてよ、黒子……」

それを免状と理解した黒子は、暴れまわる欲望を必死に抑えて、互いに震える口唇をゆっくりと近付けていった。

「………………ちゅ」

美少女2人の口唇が重なる。

男子禁制の女子寮に、新たな百合の花が加わった……



.

終わり。
気が向いたら本番シーン書きます。では。

誰か突っ込むだろうと思ってたが
子萌って誰だよ

ようやく纏まった時間がとれたので一気書き。
00:00より投下します。


>>495
おお、ご指摘ありがとうございます。
正しくは子萌× 小萌○ ですな。
このスレでは小萌先生はふたなり巨根設定だけど、残念ながら相手が居ない…
姫神でもスライド登板させるかのぉ…

そんじゃ投下します。
今回は30kb弱。

「…よし、始めるか」

『暗部』から連絡があった狩猟解禁時間、午前0時。
麦野沈利の短い一言で、『アイテム』が動き始めた。

麦野のマンションに集まっているのは、麦野、上条、絹旗、滝壺、そして浜面の5人だ。

「まずは平行して情報を集めるわよ。
 絹旗はネットの深いところからターゲットの目撃情報を検索。
 滝壺は『能力追跡(AIMストーカー)』でターゲットを検索。 …始めろ」

麦野の言葉に、絹旗と滝壺が無言で頷き、それぞれの操作に入る。

本来、PC関連の情報収集はフレンダが得意なのだが、現在リタイヤ中なので絹旗が担当となる。

「ええと、まずはネットの噂話サイトや尋ね人サイト、『書庫(バンク)』経由の超監視カメラ履歴からですね…
 流石に隠れて移動しているでしょうけど……」
「………………」

絹旗は、1つ1つ動作を確認するように、ぶつぶつと呟きながらPCを操作し、
反対に滝壺は体晶をひと舐めしてからは彫像のように動かない。

しばらく、全員が無言の時を過ごす。
しかし、ほどなく絹旗と滝壺が、同時に「あれ…?」と戸惑った声をあげた。

「どうした?」
「いえ… 超ダメモトで、尋ね人サイトの掲示板に画像無しで依頼レスをだしたんですが… ほら、見てください」

絹旗が指し示すPC画面には、数十件の新着レスの表示があった。

「依頼して数分で超えらくレスがついてます… 内容は…… えっ、画像あり?」

簡単にウィルススキャンして添付された画像を開く。
すると、ひと目で写真の男女と分かる、壮年男性と少女が歩いている画像が表示された。

「…ご丁寧に、地図情報までありますね。ええと、第3学区ですね」
「他のレスは?」

麦野の指示に、絹旗が次々にレスを開いていく。

「……超予想通りですが、どれもこれも超画像付きの位置情報ですね。
 これは12学区、これは14学区… うへぇ、全学区分ありますよ、コレ」

うんざりした表情で絹旗が言う。

「あからさま過ぎて、逆に超怪しいですね。撹乱にしちゃ、やり方が超稚拙です」
「情報の発信源は?」
「いちおー逆探してますが、超100%デコイですよ、これ? 無視するのが一番です」

絹旗がPC画面のウィンドウをいっぺんに消す。
麦野も絹旗の意見に賛成のようで、「でしょうね…」と呟いた。

「しかし、発電能力者(エレクトロマスター)らしいと言えば、らしい撹乱の仕方ね。
 どこの端末から情報をばら撒いているのか分かればいいけど……」
「餅は餅屋。いわばネットは相手の土俵ですから、超ダメモトで考えるべきですね」

そう言って、絹旗と麦野が滝壺を見る。
体晶の使用でやや苦しそうな滝壺は、妙な踊りを踊っていた。

「あれ… うん…… 北北東? あれ、西南西…? 真東…」
「どうした、滝壺?」

麦野が声を掛けると、滝壺が困惑した表情をした。

「麦野… クローンって沢山いるのかなぁ…?」
「……複数感知したのか?」

むむむ、と滝壺が困った顔になる。

「う~ん、やっぱり本人のAIM拡散力場を記憶したわけじゃないから、ある程度のズレや揺らぎは出るんだけど…
 似たような反応がすっごい沢山。しかも、移動してるよ…?」

滝壺の言葉に、麦野が「そうか…」と納得したように呟いた。

「体細胞クローンだったら、複数体複製することも可能ってわけか…? そして、粗悪乱造した個体は使い捨てに……?」
「クローンの人権とか、超無視した虫唾が走るやり方ですね。
 …どうします? 反応のひとつを辿れば、第3位のクローンを確保できるかもしれませんよ?」

滝壺が感知した反応がミサカ・クローンならば、『彼女』から何か情報を引き出すことが出来るかもしれない。

「……それは一旦保留、どうにも罠臭いわ。今は情報の精度を高めましょう。
 絹旗。滝壺が感知した座標と目撃情報との摺り合わせをしてちょうだい。」
「超了解です」

絹旗と滝壺が再び作業に戻る。
それを眺めながら、麦野は『複数のクローン』という可能性を思考の海に投げ込んでいった。

とあるホテルの最上階ペントハウス。

「だせぇ撹乱情報だな… 初春、どう見る?」

『アイテム』と同じ学園暗部組織である『スクール』も、ターゲットの目撃情報を精査している最中だった。

「……撹乱、で正解だと思います。問題は、どこの端末から… くぅ… アクセスしているかですが…… はぁ…」

所々に色っぽい吐息を漏らしながら初春が答える。

今の初春は、身体にぴったりとフィットしたスクール水着を着ている。
悪趣味なことに、股間と乳部は布が切り取られ、挿入されたアナルバイブや、乳首に着けられた電極ピアスが妖しく震えている。

「逆探は?」

そんな初春の惨状などどうでも良いのか、垣根帝督が無造作に聞く。

「やってます… 少し時間が掛かりますが、大本の発信源は特定できます…… あん……」

桃色の吐息を吐いて、初春がうらめしそうに背後に立つ塔下をチラリと見る。
塔下はにやにや笑いながら、「ん、どうしたの?」とすっとぼけた声を出した。

「……この悪趣味な道具を外してくれたら、もっと速く検索できるんですが…」
「あっれー、快楽のパルスは良い感じに出てるんだけどねー。
 初春ちゃん、さっきこっそりイッたでしょ? イク時はイクって言わないとー」

飄々とした塔下の物言いに、初春がぐっと口唇を噛んで悔しがる。
この半日で、絶頂すら知らなかった初春の肉体は過激に開発されてしまっていた。

「…ただ発信源ですが、ターゲットが能力を使用して端末から上げている場合と、そうでない場合も考えられます… ふぅ…」
「どういうことだ?」
「い、一日の準備期間があったなら、直接他者に頼むことも可能ということです。
 バイトを雇って、複数の端末から同時に情報を上げることもできます…」

赤い顔の初春の言葉に、垣根が「ふむ…」と考えるそぶりをする。

「能力に拠るものと、他者に拠るものと、選別しろ」
「…もうやってます。 
 花が咲くようにしか咲かないのと同じで、情報も流れる方向にしか流れません。あとはそれを丁寧に辿るだけです」

ぎこちない動きで初春がタッチタイピングを開始した。

「…こちらかも質問をしていいですか?」
「ああ、なんだ?」
「垣根さんの説明では、反学園組織を釣り上げるために1日ターゲットを泳がした、ということですが、それにしてはそういった情報が上がってきていません。
 そちらの精査は誰か別の人が行っているんですか?」

ターゲット、天井亜雄とミサカ00000号が1日自由に動き回れたのは、学園都市側の『彼らを餌にして敵性組織を釣り上げる』という方針があったからだ。
しかし、現在、初春の手元には、そうした学園都市外の組織の情報は集まっていない。

「……それについては、お前は何も気にしなくて良い。 いや、むしろ俺たちも気にすることじゃねぇ。ちーとばっかり癪だがな」

答えになっているようで、全くなっていない垣根の言葉に、初春は曖昧に「はぁ…」と相槌を打った。



.

「で、どう考えていらっしゃいます、お姉さま?」

第11学区の貸し倉庫。
倉庫の奥に作られた居住スペースで、半裸の少女2人が妖しく絡み合っていた。

「どうって、何が?」
「今回の件ですわ。哀れな科学者の逃避行、とは理解できましたが、それならお姉さまが彼らを学園都市外にテレポートすれば済む話では?」

絡み合っているのは結標淡希と婚后光子だ。
2人は、クィーンサイズのベッドに向かい合わせに横になり、お互いの秘所を、くちゅくちゅと弄りながら会話をしていた。

「依頼方法も正規のルートとは違っていましたし… きな臭い匂いがしますわ…… あん、お姉さま、手つきがいやらしいですわ…」
「ふふ… みっちゃんだってやらしーじゃん。私はみっちゃんの手の動きを真似してるだけだし…」

結標が婚后に顔を寄せ、婚后もそれに答えるように口唇を重ねる。
2人のかなり大きなおっぱいが、むにゅ、お餅が重なるように、相互に潰れあう。

「…ぷはっ、…まぁ、確かに変な依頼よね。跳ばすポイントを覚えるだけでも一苦労よ」
「ふぅ… 昨日は徒歩で学園都市を行脚… 今日からはお姉さまの能力をフルに使っての学園都市内の移動… 腑に落ちませんわ……」

考え込もうとする婚后に再びキスをすると、結標は手の動きを加速させた。
じゅぷ、じゅぷ、と淫水音が大きくなる。

「あぁ… お姉さまぁ… そんなに激しくされますと……」
「そろそろ時間だし、イッちゃいな…!」

結標の指が婚后の秘所をかき回しながら、同時に大きく勃起した婚后のクリトリスを、クリクリ、と潰す。

「………ぁあッ!!」

婚后の会陰部から脳髄に向かって快感のパルスが迸り、婚后の呼吸が一瞬だけ止まる。
絶頂の快感を思う存分堪能し、小さく口蓋から舌を出して「あ、あぁ…」と吐息を漏らす。

「気持ちいいですわ… とても、とても……」

せがむように婚后が口唇を求める。
結標がそれに応えて舌を絡め合い、絶頂にひくつく秘所を優しく愛撫していると…

コンコン、

ドアから遠慮がちなノックの音が響いた。

「……すまない、時間だが」

声は天井のものだ。
少しだけ焦りを感じる声だ。

「はぁい、すぐに行くから準備しておいて」

名残惜しそうに婚后から身体を離して、結標はベッドから降りた。

「時間厳守って、いかにも理系男子って感じねぇ…」
「わたくしの父も時間には厳しかったですわ。さて、それではお姉さま……」

傍らに準備していた濡れタオルで、丁寧に秘所を拭って婚后も立ち上がる。

「ええ、きっちりしっかりに最後まで。完璧に依頼を遂行するわよ…!」

静かな、しかし、力強い宣言と共に、結標は軍用懐中電灯のスイッチを入れた。

「…あの2人は信用できるのだろうか?」

苦悩と不安とを混ぜ合わせて濃縮したような表情で天井が呟く。

今日の一日は、恐らく彼にとって人生で最大のヤマ場になる筈なのだ。
拭っても拭っても、不安が彼の心に侵入し、精神を磨耗させる。
もし… 自分の計画が完遂できなかったら…

「クソッ…」

両手を組んで額に、ゴツゴツッ、と打ち付ける。

臆病な自分が嫌になる。気弱な自分が嫌になる。
研究ばかりに没頭し、無駄に歳を重ねた自分が嫌になる。

「どうして… 私は……」

不安が、心の底に厳重に封をしていたはずの後悔心を引き出そうとした時、

「マスター、マスター……」

ミサカ00000号が、打ち付ける天井の拳をそっと手で包んだ。

「頭部への過度な刺激は、脳細胞を破壊します。と、ミサカ00000号はマスターに奉ります」
「……ああ、そうだな」

組んだ両手をゆっくりと解き、天井はぎこちない笑みを00000号に見せる。

「少し… 自分を奮い立たせていただけだ… 今日が山場だからな…」
「なるほど、武者震いというやつですか? と、ミサカ00000号はマスターの頼もしさに胸キュンします」
「……私がもう少しソフト面に強かったらなぁ」

天井亜雄は肉体(ハード)面の専門家であり、脳(ソフト)面の専門家ではない。
クローンであるミサカ00000号の知的成長には、とある天才脳科学者の遺産が使われていた。

「マスター、マスター。ミサカの情緒はマスターの調教で完璧に仕上がっていますよ? と、ミサカ00000号はこっそりマスターを褒め称えます」
「ちっとも、こっそりじゃないじゃないか…」

やれやれ、といった風に天井が苦笑を漏らす。
そして、自分の中の不安が少し薄らいだのを感じた。

「……ありがとう、ミサカ」
「………………?」

不思議そうに首を傾げるミサカ00000号の頬を撫ぜる。

(やるしかないんだ… それが私の人生だ……)

密かに決意を新たにすると、天井は結標と婚后が居る部屋のドアを見やった。

「……しかし、まだなのか? あまり時間をオーバーすると計画に支障が」
「もう準備できてるわよ」

突然、天井の背後から結標の声が響いた。
ぎょっとして天井が振り返ると、ミニスカート、サラシ、ブレザーの結標と、どこかの学校のジャージを着た婚后が立っていた。

「い、いつの間に……!?」
「私の能力は知っているでしょ? 『座標移動(ムーブポイント)』 私にとって距離と空間はすべて紙一重の存在よ」

結標の台詞に、天井は軽い戦慄を覚えた。

結標の能力『座標移動(ムーブポイント)』は、彼女が指定する物体を、任意にテレポートする能力だ。
その効果範囲は極めて広く、かつ、数センチのズレも許さない正確なものだ。

学園都市全体でも希少なテレポーターの、その頂点に立つのが彼女だ。

「…少し安心した。単なる痴女かと思っていたところだったからな」
「あらあら、依頼人にそう言われちゃ、仕事人として失格ねぇ…」

天井の軽口を軽く受け流して、結標は不意に真面目な顔になった。

「それじゃ始めましょう。貴方たちは、ひたすらポイントに向かって下さい。何回もテレポートをすることになるから、酔い止めはしっかり飲んでおいてね」
「分かっている、私たちの命を貴女たちに預けよう。よろしく頼む」

天井と結標はしっかりと握手をし、それを真似してか、ミサカ00000号も婚后の手を強引に掴んだ。

「よろしくお願いします。と、ミサカ00000号は黒髪の素敵なお嬢様に申し上げます」
「おほほほ… どーんと、大船に乗ったつもりでいてくださいな」

00000の言葉に気を良くしたのか、婚后が豊かな胸を張って応えた。
その仕草がなんとも可笑しかったのか、結標と天井は同時に、クスリ、と微笑を漏らした。

「………お?」

沈黙が支配していた麦野のマンションで、絹旗が短い声を上げた。

「動いたか?」

麦野が短く問うと、絹旗がこっくりと頷いた。
情報の精査に入ってから、1時間ほどが経過していた。

「はい。情報を『アイテム』の権限を使って『書庫(バンク)』のフィルターに掛けていましたが、この2箇所が超怪しいです」

絹旗が示したのは、14学区と20学区のとある地点だ。

「この2箇所は、一般に出回っている地図では空き地ですが、『書庫(バンク)』の情報だと「建造物あり」になっています。
 さらに、滝壺さんの座標とも一致しています」
「うん…… 少しずつだけど、移動もしているよ……」

体晶の連続使用で疲弊しているのか、脂汗を流しながら滝壺が言う。
その隣では、滝壺を心配して浜面がおろおろと百面相をしている。

「…滝壺、そろそろ限界みたいね」
「お、おう」

麦野が言うと、本人よりも速く浜面が頷いた。

「これ以上粘って、もっといい結果が出ると思う?」
「超ノーですね。絞り込むだけは絞り込みました。あとは足を使うべきです」

絹旗が、スッと立ち上がる。
麦野も小さく頷くと、椅子から立ち上がった。

「よし、二手に別れるわよ。滝壺はここで待機、アタシと当麻は20学区、絹旗と浜面は14学区よ。
 ターゲットが反学園都市組織と接触する可能性もある。引き際だけは見誤らないように」

麦野の指示に、それぞれが動き始めた。



.

「よし、動くぞ」

ほぼ同時刻。
『スクール』もまた、行動を開始していた。

「確認するが、14学区と16学区だな?」

垣根帝督が、ずっと桃色吐息の初春に念を押す。

「は、はい…… その他の情報は、明らかな齟齬や介入が確認できました。確度が高いのがその2つです……」

良い感じに刺激と快楽に慣れてきたのか、わずかに身をくねらせながら初春が答える。
その表情は、何かを堪えるというよりも、快感を許容したような茫洋としたものだ。

「俺は単独で16学区に行く。塔下は14学区だ」
「了解、エセキャバ嬢は?」

塔下が、野卑た目で心理掌握を見ると、彼女は不愉快そうに塔下を一度睨みつけてから、垣根の方を向いた。

「テメエは初春と一緒に居ろ。『スクール』権限を使ってさらに情報に検索をかけろ」
「……貴方がたの持っていた符丁(パス)なら、すでに使わせていただいていますよ」

なんでもないような初春の言葉に、『スクール』3人がやや緊張した顔つきになる。
ここに居る誰も、彼女に暗部の権限や『符丁(パス)』の存在を教えてはいなかった。

「……いつの間に」

呆然とした塔下の言葉に、初春が大いに溜飲を下げた表情で答えた。

「おや、気付いていませんでしたか。他人のカラダを弄ることに集中しすぎですね… あッ!」

言葉の最後に、塔下が腹いせにバイブの振動を上げたせいで、初春は軽く絶頂したが、その目は生気を宿したままだ。

「……心理掌握(メジャーハート)、俺が戻るまで能力を使用して初春を拘束しておけ。余計な事をさせるな」
「了解…… 初春さん、貴女には脱帽よ。心から」

その言葉に、初春は悪戯を終えた子供のような気持ちで脱力し、肢体を弄ぶ快楽に身を委ねていった。




.

第20学区。
スポーツ工学系の学校が集まるこの学区では、競技場や体育館といった施設が所々に点在し、また、それらの用具や備品が納められれた倉庫が隣接している。
                                       ・ ・ ・ ・ ..・ ・ .・ .・ ・ .・
深夜、人の気配が消えたその場所に、一台のタンデムバイクがエンジン音を立てずに停車した。

「……さて、座標はここで間違いないわね。『下肢靭帯機能研究所』建設予定地って… もう施設が出来てるじゃない」

バイクの前席から降り立ったのは、黒いライダースーツを着た麦野だ。
ぴったりと身体にフィットしたそのツナギは、暗闇の中でもその見事なボディラインを際立たせている。

「でも、人の気配がまるでしないな…… やっぱ偽情報…? つーか…」

後部座席から上条が降り立つ。
彼は黒ジーパンにロングTシャツというラフな格好だ。

「なに?」
「なんかこう、ザ・女スパイ!な感じで、すげぇカッコいいな…」

遠慮なしに麦野の身体をジロジロ見ると、「ふん」と鼻を鳴らした麦野が上条にデコピンを食らわせた。

「いてッ」
「ばーか、褒めるならもう少し上手く褒めなさいよ」
「ああ…… うん、そのままハリウッド映画に出てもいいぐらいにキマッてる。正直、押し倒してぇ」

上条が素直に言うと、少しは満足したのか、麦野は「まぁ良し」と呟いた。

「それじゃ、ここからは真面目に行くわよ。まずは…… んッ!」

不意に、麦野は上条の手を強く引くと、そのまま身を低くして走り出した。
突然手を引かれた上条は、すっ転びそうになりながらも、麦野に従って走る。

200mほど無言・無音で走り抜けて、適当な遮蔽物に身を隠すと、麦野は鋭い眼で件の施設を凝視した。

「…何スか?」

小さな声で麦野に問うと、麦野が短く「先客が居る」と答えた。

「ターゲットではなく?」
「チラっと見たが、若い男が2人。しかも、ドアの解錠に集中していた。侵入者だ」
「侵入者?」

麦野の言葉に、上条が疑問の声を上げる。

「……接触する反学園都市勢力だったら、侵入なんかしねぇよな?」
「そうね… とすれば、考えられるのは他の『暗部』組織、か……」

数瞬だけ麦野は考え込み、そしてすぐに決断した。

「横撃する。話を聞きたいから、本命はアンタ。上手く気絶させてね」

麦野の言葉に、上条は静かに頷いて拳のメリケンシールを改めた。

「ハズレっぽいな、ここ」

施設の通用門。
侵入者2人の内、しゃがみ込んで電子キーを解錠していた背の高い男が不満げに呟いた。

「だな。人の気配は無し。だけんども、何か手がかりはあるかもよ」

解錠を相棒に任せて周囲を警戒していた小太りの男がそれに同意する。

「……で、いつ仕掛けてきそう?」

背の高い男が、何でもない風に尋ねる。

「えーとだな… おぉ、決断早えな。俺らをノシて情報を聞き出すんだとさ」
「なんだそりゃ? つーことは、アイツらも『暗部』か… あー、やだやだ、俺は荒事嫌いなんだよなぁ…」

背の高い男が、解錠作業を諦めて立ち上がる。

「『コウモリ』。相手が50m内に進入したら合図な。『逆落とし』を発動させる」
「あいよぅ。タイミング任された」

スキルアウトや企業の私兵とは全く違う、危険な『暗部』の雰囲気を漂わせ、『コウモリ』と『逆落とし』はギラリと眼を光らせた。

「…行くぞ」

麦野が短く言い、音も無く駆ける。
派手な能力ばかりに目が行きがちだが、麦野の体捌きは相当なものだ。
身体能力に自信がある上条ですら、本気で走らないと着いていくことが出来ない。

「相手が気付いたら、牽制に『原子崩し』をぶち込むから、アンタはダッシュ」
「了解…ッ!!」

相手との距離がぐんぐん詰まる。
おぼろげだった人影が、次第にはっきりと視認できる距離になった時、

「……ん?」

上条は、それまでドアの前で作業をしていた男が、急に両手を地面に押し付けたのを見た。

虫の囁き。
背筋に、ぞわり、とした言い知れない悪寒が走る。

「……危ないッ!!」

上条は、咄嗟に併走する麦野を突き飛ばした。

不意に突き飛ばされた麦野は、「きゃっ!」と凄まじく意外に可愛らしい声を上げて地面に転がった。
その瞬間、

バリイイィィィッッ!!!

地面から青白い稲光が、それまで麦野が居た空間に立ち上った。

「…………ッ!! こっちッ!!」

瞬時に状況を判断した麦野が素早く身を翻して駆け、上条もそれに続く。

相手から見えない適当なビルの影に身を潜め、2人して軽く息を吐く。

「…今の、なんだろ?」
「しくったわね… 相手が『暗部』なら、高位能力者であってしかるべきなのに……」

冷たい汗を流して麦野が後悔の声を出す。

(最近、企業の私兵ばっかり相手にしてたから、勘が狂ってたわ……)

反省と後悔は一瞬。
麦野はすぐに己を取り戻すと、相手の能力について思考を開始した。

「地面から電光っつーことは、発電能力者(エレクトロマスター)か?」
「いや、一般的な発電能力者(エレクトロマスター)なら、電光は放射・投射型になるはずだ。
 今のは、どっちかっていうと、設置型、もしくは局所型な感じだった」
「そうね… ということは…… ん?」

何かに気付いたように麦野が声を上げる。

「当麻ッ!! 避けてッ!!」
「え…?」

今度は麦野が上条を突き飛ばそうと手を伸ばすが、今度は間に合わなかった。

バリイイィィッッ!!

「ぐぅぅぅぁぁぁぁ!!! ちっくしょうッッ!!」

上条の足元から鈍い稲光が立ち上り、足底から上条が感電する。

反射的に左手を下肢にぶつけ、それ以上の感電をキャンセルしたが、微かに肉や体毛の焦げる匂いが漂った。

「……チッ!! 最初の位置まで後退するわよ!!」

大きな舌打ちを1回打って、麦野は上条の手を引いて走り出した。

「……駄目だな、当たったが仕留めてねぇ」

『コウモリ』が軽く首を振って言う。
その言葉に、『逆落とし』が残念そうに「クソ…」と呟いた。

「妙に勘の良いヤローだ。初撃といい、俺の『逆落とし』はそんなチャチいもんじゃねぇぞ…!」

地面から手を離した『逆落とし』が毒づく。

「…完全に『逆落とし』の効果範囲から出たな。なぁ、めんどくせーから逃げようぜ?」
「ああ… いや、これで相手が諦めるとも思えねぇし、俺たちの能力は迎撃には向いても、遊撃には向かねぇ。
 ここは、相手が沈黙するか完全に逃走するまで粘るのが良いと思うぜ」

『逆落とし』の言葉に、『コウモリ』が頷く。

「だな。それじゃ、相手の出方を… おっ、移動を始めるみたいだ」

『コウモリ』が耳に手を当てて呟く。

『コウモリ』の能力は局所的な集音能力だ。
極めて広範囲の、任意の空間の音を、高い精度で集音することが出来る。
麦野たちの接近も、わずかに鳴ったモーターの音を聞き分けて感知したのだ。

「それじゃ、今度も50m以内に入ったら合図よろ。近づいたら能力を使う簡単なお仕事です、と…」

『逆落とし』の能力は、地面に帯電している微弱な電気をかき集め、一気に放出する能力だ。
地面限定だが、効果範囲も広く、何より通常では狙い辛い放電を局所に集めることが出来る。

『コウモリ』と『逆落とし』は互いに視線を交わし、慎重にタイミングを推し量った。

「どう?」
「なんとか、走れそうだ…」

『逆落とし』の効果範囲から出て、麦野は上条の傷の具合を確認した。
途中で帯電をキャンセルしたのが効いたのか、火傷はそれほどひどくはないようだ。

(さて、どうする… 瞬殺するだけなら簡単なんだけど……)

殺しても良いのなら、この位置から『原子崩し』を連射して相手を消し炭に変えれば良い。
しかし、今回は情報も聞き出したいし、なにより、上条が横に居るときは、あまり破天荒な能力使用はしたくなかった。

「……俺がオトリになるよ。左手があるから、そこまでやばいことにはならねぇし、あと1発や2発ぐらいは……」
「駄目よ。さっきはたまたま手が動いたけど、基本的に感電したら四肢は麻痺するのよ。動けなくなってさらに喰らうのがオチよ」

やんわりきっぱりと上条の提案を蹴って、麦野は全身のライダースーツをあらためた。

「…オトリは私がやるわ。このスーツは一応の防電機能は備えているから、ある程度は防げるわ。奥の手もあるしね」

じっと上条を見つめる。

「アタシが走り出した2秒後に、同じルートを走りなさい。攻撃が来ても足を止めないこと、良いわね?」
「よくねぇよ! それだと沈利がッ!」
「うっさい、議論してる暇はねぇんだよ!」

反論した上条を、声を荒げて遮る。
麦野は軽く上条と口唇を合わせると、チロッ、と上条の前歯を舐めて言った。

「暗部組織『アイテム』のリーダーを舐めんじゃねぇよ。これぐらの修羅場はいくつも潜ってきてんだ。つべこべ言わないで…」

額を、コン、と合わせる。

「あいつらぶん殴ってノシてこいッ!!」

「なんだぁ、万歳突撃か? 女の方が真っ直ぐコッチに来るぞ?」
「自棄になった…? ンなわきゃねぇか、だが、やるこた1つだ」

『逆落とし』が地面に両手をつけ、『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』を展開する。
走る女の位置を予測して、AIMを集中させる。

「……喰らえッ!」

女の足元から、青白い電撃が鋭く立ち上る。

「……なにッ!?」

そのまま女が倒れ付すと思っていた『逆落とし』は、多少フラつたものの、女がそのまま走り続けるのを見て軽く動揺した。

「あのスーツ絶縁体かッ!?」
「いやッ、足音のリズムが乱れたッ。効いてる、もう一撃だッ!」

『コウモリ』の言葉に『逆落とし』が再び意識を集中させる。

「粘るじゃねぇか、だが、コイツで終わりだ……ッ!」

(予想以上にきっついわね…!)

多少の電撃はスーツが無効化してくれたが、それでも無視できないダメージが残った。
もう一度、アレをまともに喰らうとマズイ。

(あと30m、ここなら届く… 当麻、ビビるんじゃないわよ……ッ!!)

心の中で気合を入れて、麦野は走りながらスーツのポケットから1枚のカードを取り出した。

「上手く散らばれよッ!!」

妙に厚みと重みのあるそのカードを空中に放り投げて精神を集中させる。

「喰らえッ!!」

麦野がカード目掛けて『原子崩し』を照射する。
光速で直進した破壊光線が、カードにぶつかった瞬間、

光が拡散した。

「なんじゃそりゃ!?」

光速で飛来した幾筋もの光の矢に、『逆落とし』と『コウモリ』が咄嗟に地面に伏せる。

ドガガガガッ、と自分たちの周りを光の矢が貫いて行き、アスファルトやビルの壁を鋭く刺し抉った。

「え、えげつねぇ…」
「当たらんで良かった…」

抉れたアスファルトを見て、『逆落とし』と『コウモリ』が呆然と呟いた。

2人が自失していた時間はほんの数秒だった。
彼らも『暗部』らしく、素早く状況に適応しようとした、

だが、その数秒で上条が接敵した。

「おおぉぉぉッ!!」

右足で地面を強く蹴る。
慌てて身構えようとする『逆落とし』向かって跳躍すると、上条は勢いのまま左拳をオーバースィングで叩き付けた。

ドガッ!

「ぐぉ…!」

こめかみを強打された『逆落とし』が悶絶する。
さらに体を密着させ、相手の下腹部目掛けて右拳を打ち下ろす。

ゴッ、とひどく鈍い音がして、正確に鳩尾を強打された『逆落とし』が、そのままずるずると地面に崩れ落ちた。

「次ッ!!」
「待ったッ、待ったッ!! 降参ッ!!」

上条が次の相手に向いた瞬間、『コウモリ』は両手を挙げて降伏の意思を示した。

「……テメッ!」
「降参だよ、降参!! お前らだって仕事でやってんだろ? 俺らだってそうだ、痛い思いなんざしたくねぇよ!!」

そのあまりにも現金な物言いに、上条がムッとなる。

「ざけんな! 人に問答無用で能力使っておきながら…ッ!」
「そりゃ、そっちだって一緒じゃねぇか… とにかく降参だ、情報が聞きたいんだろ? 何でも話すぜ?」

諦めたように『コウモリ』がどっかと地面に腰を降ろすと、ゆっくりと麦野が近づいて来て言った。

「…じゃあ質問するぞ。お前らなんでここに居た?」
「おっかねぇ美人だなぁ… ああ、例のクローン狩りだよ」

あっさりと言う。

「ここの場所は?」
「取得した情報からの1点読み。当たれば儲けモン、ってところだ」
「成果は?」
「なし。俺の能力で施設内を調べたが、人っ子一人いねぇ」

『コウモリ』の言葉に、麦野は盛大な溜め息を吐いた。

「つまりハズレか… ったく、痛い思いしたっていうのに…」

あまり期待はしていなかったが、脱力感は相当だった。

「……当麻、こいつら拘束したら帰るわよ」
「え、ああ…… 放置して良いのかよ?」
「別に良いわよ… あんたらはこのレースから降りるんでしょ?」

上条に拘束されながら、『コウモリ』は頷いた。

「ああ、元々乗り気じゃなかったからな。陽が昇ったら通常業務だ」

『コウモリ』がニヤっと笑うのを見て、思わず麦野も苦笑を浮かべた。

「…あ、そうだ。あんたらの情報の出所はどこ? ネット?」
「いや、おたくらもそうかもしれんが、『上』から流れてきた情報だ」
「上から…?」

麦野の頭に、あのお調子者の声が再生される。

「……その情報って、オペレーターから?」
「ああ、そうだぜ?」
「そのオペレーターってさぁ… なんか妙な口癖…」

麦野がそう言った瞬間だった。

ひゅ… と何かが飛来する音が聞こえたと感じた瞬間、『コウモリ』の額に黒く太い鉄釘が突き刺さった。

「………………?」

何も言えず、何も感じず、『コウモリ』はそのまま地面に倒れ、死んだ。

「……なっ、バッ!!??」

麦野が慌てて上条を押し倒すと、再び飛来音が聞こえ、今度は倒れて気絶していた『逆落とし』の背中に鉄釘が突き刺さった。
背中から心臓まで穴を開けられて、『逆落とし』も音も発せず絶命した。

「隠れるぞッ!!」

麦野が問答無用にビルの壁に『原子崩し』で穴を空け、上条と共に身を隠す。
寄り添うようにして身を縮めると、麦野は携帯を取り出して滝壺にコールをした。

軽快な呼び出し音が鳴り、ほどなくして滝壺の声が聞こえた。

『……もしもし?」
「滝壺ッ、疲れてるとこ悪いけど、体晶を使って……」

早口で指示をだそうとする麦野の声を、滝壺の暗い声が遮った。

『麦野ぉ… 絹旗が……』
「あぁ!? 絹旗がどうした!?」

嫌な予感が頭をよぎる。

『絹旗が… やられちゃった……』

麦野の顔面から血の気が一気に引いた。


――――時は少し溯る。

14学区の指定されたポイントへやってきた絹旗と浜面は、そこで1人の能力者と相対した。

「あぁ、キミらもクローン狩りにきたんだ… 残念だけどここには何も無かったよ」
・...・ ・ ・ ・ ・
瓦礫と化した14学区の建物跡に、頭に特徴的なゴーグルを着けた少年が立っていた。

「でも、手ぶらで帰るのもなんだし、いっちょ、ここは同じ『暗部』を拉致ってみますかね… と!」

いやらしい目つきで、絹旗の体を舐め回すように観察して、『スクール』の構成員、塔下が言った。




                                                             続く




.

はい、以上です。

エロいシーンもっと書きたかった…
次回もまたキリの良いところまで書けたら投下します。でわ。

心理定規と心理掌握間違ってるよ

いい[田島「チ○コ破裂するっ!」]のオカズだわ

>>538
そういうレスがかなり嬉しかったり。
使って頂けて幸いです。もっとエロくなるように頑張ります。

>>531
「食蜂さまの最適化は完璧ですので!」(眼の中にしいたけ)

ちょっと体調崩していますので、次回投下は少しお待ちください。
3ヶ日でいっぱいかけて投下できることをめざします。

ではでは、来年も良いお年を……

インフルだったわ、マジ辛い…

書けたので20:30より投下します。

それじゃ投下します。
今回はちょっと短め、20kb弱。



「浜面ッ! 超離れていて下さい!!」

目の前の男から異常な雰囲気を感じる。
相手が『暗部』の能力者であるなら、無能力者である浜面が危険だ。

絹旗は浜面を庇うように前に出ると、手ごろな子供ほどの大きさの瓦礫を持ち上げ、一気に塔下目掛けて投げつけた。

「おぉ! スレンダーロリの怪力娘!? なにそれ萌える~!」

ごぉ! と音を立てて飛来した瓦礫を軽い身のこなしで避けると、塔下は足元のバックからサブマシンガンを取り出し、腰だめに構えた。

「げ、マジかアイツ…!」

超能力よりも、さらにリアルな暴力の象徴を見て、浜面が慌てて瓦礫の影に身を隠す。

「……超余裕!」

しかし、絹旗は恐れるどころか、逆に勝機とばかりに塔下に向かってダッシュした。
銃器を前にしたその行為に、若干の違和感を感じながらも、塔下は躊躇いもなく引き金を引いた。

「玉砕覚悟? つまんねー……」

バリバリバリ……!!

安っぽい爆竹が連続して爆ぜるような音が3回して、銃弾が絹旗に降り注ぐ。
一応、無力化を狙ってか、絹旗の脚目掛けて放たれた銃弾は、正確に絹旗の両足に集弾され、

ぐちゃ、

そのまま、見えない壁に押し潰されるように変形し、絹旗に傷1つ着けることなく地面に転がった。

「……へ?」
「私の『窒素装甲(オフェンスアーマー)』は、拳銃弾ごときでは貫けませんので…ッ!!」

絹旗の能力『窒素装甲(オフェンスアーマー)』は、大気中の窒素を操る能力だ。
効果範囲は体表から数センチと狭いものだが、圧縮された窒素の強度は凄まじく、自動車を持ち上げたり、弾丸を受け止めたりすることも可能なのだ。

「超頂きました!!」

能力を使用した絹旗のボディブローが、塔下の鳩尾に食い込む。

「ぐほっ!!」

激痛と衝撃に体が九の字に折れ曲がり、塔下はずるずると地面に崩れ落ちた。

「ふぅ… さて、超色々と話を聞かせてもらいますよ…!」

意識がトバないぐらいには手加減をした。
絹旗は塔下の腕を捻り上げると、そのまま馬乗りになり行動を制限した。

「……いってぇ、俺にはMッ気無いのになぁ… 上に乗るならもっとこー、腰を振るカンジで乗ってもらいたいなぁ…」
「減らず口ばっかり言っていると、テメェの金玉、超握り潰しますよ?」
「うわぁ、おっかねぇ……」

絹旗に見えない位置で、塔下は口の端をぐにゃりと歪めて笑った
            ・ ・ ・ ・ ・ .・ ・
「おっかねぇから、俺が握り潰すわ」

その瞬間、絹旗を凄まじい激痛が襲った。
                              .・ ・ ・
気絶すら許さないその激痛は腹部から、いや、腹の中からだ。

「がッ… ぐぁ… なに、を……!?」
「癪に障るってさー、言葉があるじゃん? あの癪って、諸説色々あるけど、一説には胆嚢のことらしいんだよね」

激痛により拘束が解かれ、塔下が逆に絹旗を押し倒す。

「まぁ、つまり、胆嚢っていう臓器が痙攣したりするとすんげー痛いわけ。まぁ、どこの臓器でもそうなんだろうけどさ」
「まさ、か……!?」

脂汗を大量に流しながら、絹旗が1つの可能性に思い至る。

「念動……!?」
「大正解! 俺の能力『第三透手(インビジブルサード)』は3本目の俺の腕だ。
 強度はあんまり大したことないけど、巧緻性はちょっとしたモンなんだぜ? 感覚もあるから、君の内臓の形がよく分かるよ」

内臓痛は人間の感じる『痛み』の中でも、特に異質なものだ。
そして、その一番の恐ろしい点は、『慣れることが出来ない』ということだ。

激痛が腹部から下腹部に移動する。塔下が圧迫する部位を胆嚢から腸に変更したのだ。

「ぎゃああ!!」
「あはは! 痛ったいだろー? 腸は特に過敏な臓器だからねぇ… ん? あれ、君、便秘してた? 詰まってるよ?」

あまりの激痛と羞恥から、眼から一筋の涙を流し、絹旗はとうとう気絶した。

「…あれ、イッちゃった? ほんじゃまぁ、後始末しますか…ッ!」

塔下はそう呟くと、不意に能力を使って落ちていたサブマシンガンを拾い、横薙ぎに弾幕を張った。

「…チッ! もう少し油断してろよテメェ!!」

足音を殺し近づこうとしていた浜面が、慌てて遮蔽物に隠れる。

「いやー、美女・美少女はともかく、男はお呼びじゃないんだよね? 鴨撃ちするから出てきてよ」

『第三透手』でサブマシンガンを引き寄せ、瓦礫に向かって連射する。

ガガガガッ、と盾にしている瓦礫が銃弾に削れる。
跳ね上がる心音を耳で感じて、浜面はジッとチャンスを待つ。

そして数秒後、カチリ、という音と共にサブマシンガンが動きを止めた。弾切れだ。

「よっしゃぁぁ!!」

雄叫びと共に浜面が瓦礫から躍り出る。
相手が新たな武器を手にするより早く接敵するため、猛然とダッシュする。
だが、

「お前、馬鹿だろ?」
「あ゛!! うお!!」

塔下の直前2m、足元を見えない何かに阻まれて、浜面は盛大にすっころんだ。

「はい、悶絶、終了~」

そのまま浜面の背中に足を乗せ、『第三透手』で浜面の胃を探り当てる。
これまで感じたことの無い激痛が浜面を襲う。

しかし、この状況が浜面の待ち望んでいたチャンスだった。

「……馬鹿はテメェだッ!!」

常人ならば悶絶して動けない激痛の中、浜面が強引に身体を動かし塔下のバックを取る。

「バッ! とっとと死ねよッ!!」

塔下が浜面の胃を握り潰そうと力を加える。
激痛がさらに増し、気を抜けば失神しそうになるが、浜面は根性でそれに耐え切り、叫んだ。

「ふじなみぃぃぃぃ!!!!」

塔下の両手をフルネルソンでがっちりホールドして、そのまま海老反りに体幹を伸展させる。
浜面と塔下の天地が急速に逆転し、塔下が暗い夜空を知覚した次の瞬間。

どがぁ!!

見事なドラゴンスープレックスが炸裂し、塔下の後頭と頸椎とが地面に激突、意識を完全に断ち切った。

「はぁはぁ…… 早く絹旗を連れて帰らねぇと……」

自身も少なくないダメージを負っているが、それでも気力を振り絞って絹旗を背負う。

「なんかヤベー感じがするぜ、このヤマ……」

足取り重く、浜面はこの場から立ち去った。

そして、その直後、

ヒュン…!

1人取り残された塔下の頭部に、飛来した鉄釘が打ち込まれた。
塔下は2度と意識を取り戻す事なく、絶命して果てた。

「……とまぁ、そんな感じで… あ、絹旗は命に別状はないけど、しばらく安静らしいぜ」
「…………焦ったぁ。ったく、滝壺が『やられた』なんていうから、てっきり死んだかと思ったわよ…」

麦野のマンション「Meltykiss」。20学区より急いで撤退した麦野が、浜面の説明を受けて胸を撫で下ろしていた。

「でも、内蔵損傷は軽くないよ? 浜面も……」
「わーってるよ。絹旗も浜面もこれでリタイヤだ。クソ…」

滝壺が心配そうな表情で言い、麦野が吐き捨てるように同意した。

「これからは、アタシと当麻で進めるしかねぇな… つーか、この事件、絶対に裏があるわよ……」

麦野が眉根を寄せて黙考する。
あの後、建物を調べて見つけたのは、活動を停止した脳細胞片と、灰になった線香、そして一輪の菊の花だった。

さらに、脳内に駆け巡るのは、『逆落とし』と『コウモリ』の命を奪ったあの鉄釘だ。

あの武器を使う能力者を、麦野はたった一人であるが心当たりがあった。

「……まだこの番号使ってるかな?」

今時ローカルな紙のアドレス帳を繰って、目当ての電話番号を探し出す。
あらかじめ複数用意してあるプリペイド携帯を使って、電話を掛ける。

長い長いコール音が続き、麦野が半分諦めかけた時、出し抜けに通話が繋がった。

『……はぁい、この番号を知っているのはどちら様?』
「アンタ、今なにしてんの、結標?」

某所、無人ビルの屋上に陣取っていた結標が、携帯から流れた意外な声に変な顔をした。

「麦野先輩!? うっわ、おひさー。えーと、先輩が最終登校して以来だから半年ぶりぐらい?」
『世間話をするつもりは無いの。アンタ、今、なにしてんの…?』

不機嫌さを押し殺した麦野の低い声に、結標がやや鼻白む。
麦野と結標とは、能力開発の進学校、霧ヶ丘女学院で一時期机を並べた過去があり、同じレベル5として浅くない親交があったのだ。

「何って… お仕事中だけど…… あー、もしかして、先輩も今回の件に?」
『クソッタレが… つーことは、さっきのバラしもお前の仕業か……』
「ちょっと、ちょっと! 何のこと?」
『とぼけんなよ、アタシの目の前で暗部2人をお得意の『鉄釘』で処理しただろ?』

麦野の言葉に、結標は眉根を寄せて不快感を露わにした。

「何それ…? 最初に言っておくけど、私じゃないわよ、それ。
 私は徹頭徹尾『運び屋』よ。そりゃ、荒事をしないわけじゃないけど、『掃除屋』みたいなことはやらないわ」

結標の口調が真剣なものに変わる。

『本当だな?』
「当たり前でしょ。それじゃ、忙しいから切るわよ? ま、今度お茶でもしましょう」
『待て、最後に1つ。『今回の件』っつったな。運んでるのは研究者か?』
「……それじゃ」

まずったー、という表情で電話を切る。
隣に居た婚后が、心配そうな表情で結標の顔を覗きこんだ。

「お姉さま、今のは……?」
「みっちゃんまずったわー。うっかり、敵対勢力に情報流しちゃったかも…」

結標がペロリと舌を出し、婚后が諦め顔で肩をすくめた。

「あんにゃろ、『座標移動(ムーブポイント)』が逃亡を幇助したら、捉えられるわけないじゃない……!」

麦野は結標の能力をよく知っている。
だが、それだけに腑に落ちない点もあった。

「…アイツが本気を出せば、ものの数分で学園都市の『外』へターゲットを連れ出すことも可能なはず… なのに、なんでこうもチンタラしてんだ?」

ブツブツと呟き、さらにもう一つの疑問点も浮上する。
                                            ウチラ
「それに… アイツは確か、学園都市総括理事長の直属のはずだ… 『アイテム』の様にカネやコネで依頼できるわけじゃねぇ…」

麦野の脳裏に嫌な予感がよぎる。
そう言えば、本来の目的である『反学園都市組織の釣り出し』は進んでいるのだろうか?

「…一度確認する必要があるわね」

「はぁはぁはぁはぁ……!!」

真夜中の第5学区。大学や短大が立ち並ぶ文教区を、天井亜雄とミサカ00000号は疾走していた。

「はぁはぁ… クソッ、ここでの遭遇は聞いていないぞ…ッ!!」
「マスター、マスター… 恐らく、人海戦術の網に引っ掛かったのではないでしょうか。と、ミサカ00000号は遠慮がちに申し上げます」

走る二人の背後から、複数の人間の荒々しい足音が聞こえる。
これまで順調に『逃亡』を続けてきた2人だったが、この第5学区でとうとう追跡者に捕捉されてしまった。
00000号が言うように、ネットや能力に拠らない、人の足を使った情報網に掛かってしまったのだ。

(次の移送『ポイント』はまだ先だ… クソ、どうする…?)

天井の顔が焦燥感に満ちた時、耳につけたイヤホンから結標の声が流れた。

『天井さん、足止めにみっちゃんを跳ばすから、落ち着いて逃げてちょうだい』
「え… 足止め……?」

天井が思わず振り返ると、丁度、そこに婚后光子が『転移』してきたところだった。

「……なんだ、あの格好?」

天井を振り返って笑う婚后の背には、巨大なジャイロスタビライザーが装着されており、そこにはテニスボールほどの黒い円球が数え切れないほど接続されていた。
その様相はどこかアニメ風で滑稽な印象であった。

「さぁさぁ、狼藉者はこの婚后光子が退治いたしますわ。天井さんは早く次のポイントへ…」
「あ、ああ… ありがとう…」

些か以上の不信感を感じながらも、天井は礼を言って走り始めた。

「さぁーてぇー、きっちり足止めして差し上げますわ!」

誇らしげに仁王立ちする婚后の前に、10人ほどの男たちが立ち止まった。

「…なんだ、このコスプレ女?」
「…無視しようぜ、獲物はすぐ先だ」

「…あら、貴方がた、少し失礼ですわよ…?」

追跡者たちが婚后を無視しようとした瞬間、婚后の両手が踊るように動き、ジャイロに装着されたボールに次々と触れていった。
その瞬間、まるで大リーグのピッチャーに投げられたかのように、凄まじい速度でボールが撃ち出された。

「何ッ!」「コイツッ!!」

完全に油断していたのか、数人がボールの直撃を受けて昏倒する。
婚后の能力は物体に風の噴射点を作り打ち出す『空力使い(エアロハンド)』だ。
ジャイロは噴射時の衝撃を吸収するもので、撃ち出したのは硬質ゴムで出来たゴム弾だ。

「あまりこの婚后光子を甘く見ないことですわ。でなければ……」

婚后がさらにボールを撃ち出す…!

「怪我だけじゃすみませんわよ!」
「クソ… 散開だッ!」

雨あられと撃ち出されるゴム弾を避けようと追跡者たちが散る。
目標点が一気に広がるが、婚后は慌てず騒がず、さらに弾幕を拡げる。

「ぐあっ!」
「がぁ!」

ゴム弾を受けて、追跡者たちが見る見るうちに数を減らしていく。
このまま全滅するのか… 追跡者がそんな思いに駆られた。
ところが、

「……あら、弾切れですわ」

えらくのんびりした口調で婚后が呟いた。
よくよく見てみると、婚后の言うとおり、ジャイロスタビライザーに装着されたゴム弾は0になっていた。

「ん、もう…… あと少しで全滅P勝ちでしたのに…… あら、何を呆然としていらっしゃるの?」
「ふ、ふざけやがってぇぇぇぇ!!」

それまでの劣勢の反動が怒りになり、追跡者が婚后に殺到しようとした。
しかし、やはり婚后は慌てず騒がず、ジャイロスタビライザーを、背面から腰の下まで包み込むような形状に変形させた。

「ま、足止めは十分ですわね。それでは、皆様……」

あらかじめ作られていた、ジャイロの噴射ガードに両手を当てる。

「ごきげんよう~~~!」

ロケットマンよろしく、婚后がジャイロに支えられるようにして空中に飛翔する。
呆然とする追跡者を文字通り尻目にして、婚后光子が夜空の彼方に消えて行った……

「ハァハァ… これで何度目だ…?」
「ふぅ… 6度目のチェックポイントです。と、ミサカ00000号は疲れのせいで無機質な声で申し上げます……」

逃亡を始まってから数時間、彼らはこうして定められた『移送ポイント』に移動し、『座標移動』による転移というプロセスを幾度となく繰り返してきたのだ。

「…ようやく半分か」

額に滴る汗を拭い、天井は懐から携帯電話を取り出して耳に当てた。

「……天井だ、そちらの進行はどうなっている…?」
『…それは貴方の気にする所ではありませんよ、ドクター天井。貴方は規定のルートを逃走すればいいのです』
「ぐっ… しかし…!」

なおも言い募ろうとする天井だが、一方的に相手から通話を切られてしまった。

「畜生……」

無念、後悔、不安、焦燥… 様々な感情を押し込んだ声で呟く。

「00000号、体調はどうだ? 辛くはないか?」
「はい、マスター。私は大丈夫です。と、ミサカ00000号はマスターの気遣いに満面の笑みで返します」

セリフの通り、にっこりと笑ってミサカ00000号が答える。
しかし、彼女の額からも玉のような汗が吹き出ている。

(これ以上の無理は… しかし…)

なおも葛藤を続ける天井の前に、結標淡希が音も無く転移して現れた。

「ご苦労様。それじゃ、跳ばすわよ」
「ま、待ってくれ…! もう少し休憩を……!」
「駄目よ。追跡者に捕捉されたら、そこで終了っていうルールなんでしょ? 少しの時間も無駄には出来ないわ」

結標の言葉に天井が臍を噛む。
すると、ミサカ00000号がそっと天井の腕を掴んだ。

「マスター、マスター。私ならへっちゃらです。ばんばん行きましょう! と、ミサカ00000号は愛しのご主人様にエールを送ります!」

その言葉にようやく決心がついたのか、天井は結標に向き直ると、「すまない、跳ばしてくれ」と頭を下げた。

「了解、なんだか妬けちゃうわね~」

クスリと軽く笑うと、結標は軍用懐中電灯を2人に向けた。

とある高級ホテル最上階ペントハウス。

塔下の用意した高級ワークステーションの前に座って、初春飾利はまんじりともせず時を過ごしていた。

心理定規は仮眠を取っている。
無用心にも見えるが、離れる前にきっちり能力『心理定規(メジャーハート)』を使って初春との距離単位は狭めてある。
初春の身体的拘束も併せれば、下手な真似はしないと考えたのだろう。

「……まぁ、情報のプールはすでに終わっているんですけどねー」

垣根に『スクール』情報へのハッキングを露呈した段階で、既にオンラインストレージへのプールは完了している。
さらに、『心理定規(メジャーハート)』の使用も見越して、情報の取り出しには時間制限も設けたため、現段階では誰も情報を引き出すことはできない。
ゆえに、

「暇ですね……」

意味も無くキーボートをかちゃかちゃと叩く。
情報の精査は、すでにオートプログラムを組んでいるので、あとはモニターを見ているだけで良い。
本当なら、初春も仮眠を取りたいところなのだが……

ブゥゥゥゥゥン……

「ああ… また……」

アナルに挿入されたバイブと、乳首に着けられたクリップが振動を始める。
塔下がそう設定していったのか、断続的に振動するソレが、初春の誘眠を妨げていた。

「あん… んぁ…… ぜぇぇぇったい、あの人、女の子にモテないです。断言できます……」

剥き出しの性感帯を擦られるような、あの地獄の快楽とは程遠いが、それでも定期的な快楽は初春を常に軽い絶頂へと導いていた。

「私、処女なのに… カラダだけこんなにいやらしくなって……」

局部だけ綺麗に切り抜かれたスクール水着では、乳首と股間の様子がよく分かる。
キャップに吸われた乳首は痛いほど勃起しており、自主的に股間に置いたハンカチは、秘所からの愛液でぐしょぐしょに濡れてしまっている。

「もう、お嫁に行けません……」

震える瞳でモニターに写るペントハウスのセキュリティを確認する。
『心理定規』は隣室、垣根と塔下も帰還した形跡はない。

初春はそろそろと片手を股間の革パンツに伸ばして、生地の上からクリトリスを探り当てた。

「んぁッ!!」

股間から、ビリッ、とした電流が走り、軽い絶頂を感じる。
しばらく、「はぁぁ… はぁぁ…」と深呼吸をして調子を整えると、次はゆるゆると指の腹で撫ぜるようにクリトリスの愛撫を始める。

「馬鹿になっちゃう… 馬鹿になっちゃいます……」

こうやって自慰をすればするほど、可虐者の思う壺なのは分かっているが、それでも指は止まらなかった。

「乳首も、こんなに……」

キャップの上から乳首をコリコリと弄る。
クリトリスと違った、じんわりと広がるような快楽が体幹に広まっていく。

「あ、あ、あ…… イク、イク、イク……………ッッッ!!!!」

初春が身を屈めて絶頂を迎えたその瞬間、

「お楽しみのところ悪ぃが、至急、塔下のバイタルを確認してくれ」

垣根帝督の声が間近から聞こえた。

「☆□△□★※☆△~~~~ッ!!!!」

あまりのショックに溺れたように手足をバタバタと動かす初春を、チョップ一発で黙らせてから、垣根帝督は同じ言葉を重ねた。

「早くしろ、塔下のバイタル」
「うぅ… はぃ…… いつから見てたんですか……」

そもそも、垣根はどこから入ってきたのだろうか?
入り口のセンサーは何も反応していないし、ドアが開く音もしなかった。

初春は横目で、チラチラ、と垣根を見て、そしてぎょっとした。

「か、垣根さん… それ……!?」
「ん…? あぁ、返り血だ、俺のじゃねぇよ」

垣根のスラックスの右半分が、黒い血でベットリと濡れていた。
問い質したい気持ちを何とか抑えて、初春がワークステーションの操作に集中する。

「えっと、あの人のバイタルは… え、D?」

『スクール』メンバーの状態を表すステータスに、垣根:L、心理定規:L、塔下:Dの文字が表示されていた。

「こ、これって……?」
「ああ、Dead… 死亡したようだな」

何でもないように垣根が呟くが、初春はショックを受けて両手で口を塞いだ。
いくら自分に極悪非道な行為をした人物とはいえ、流石に死亡した事実はショッキングだったのだ。

「そんな、なんで……?」
「他の『暗部』にやられたんだろうな。俺も3人ほど仕留めた。着替えてくるから、『心理定規』連れてきとけ」

それだけ言うと、垣根はさっさと隣室へ消えて行ってしまった。

初春は、図らずも遺品となってしまった自分の責め具を見て、なんとも言えない複雑な感情を得た。

「とうとう死んだか、あの変態」

塔下が死んだことについて、『心理定規』の感想はこの一言のみだった。

「で、何かわかったの?」
「まぁな」

初春をワークステーションからどかし、色々な操作を行いながら垣根が答えた。

「まず1つは、今回の件でターゲットは『反学園都市勢力』とは、一切コンタクトを取っていないっつーことだ」
「つまり、『上』の目論んだ『釣り出し』は不発に終わったってこと?」

『心理定規』が推論を言うが、垣根はゆっくりと首を振った。

「いいや違うな。まだ確証は無いが、恐らく、最初から『反学園都市勢力の釣り出し』なんざ、目的になっていなかったんだろうよ…」
「……ちょっと、それどういうことよ?」

『心理定規』の眉尻が釣りあがる。

「そういうことだろうさ。それともう1つ、ターゲットの逃亡を幇助しているのは『座標移動』だ」
「はぁ? それじゃ最初からウチラ負け戦じゃない!」

『座標移動』の巨大な能力は、『暗部』の中では語り草となっている。

「だが、いまだターゲットは学園都市内だ。…フン、色々見えてきたな」

椅子から立ち上り、垣根は初春と『心理定規』を見た。

「こいつは俺様の予想だが、恐らく近いうちに『上』からターゲットの位置情報が送られてくる。動くのはそれからだ」

『心理定規』が神妙な顔で頷き、初春も散々迷った挙句、おずおずと頷いた。



「はぁ? 全部『上』の仕込みぃ?」

麦野のマンション「Meltykiss」。
麦野と2人で夜食のバーガーを食べながら、上条が素っ頓狂な声を上げた。

ちなみに滝壺は隣室で寝ており、浜面と絹旗は深夜営業の闇医者に行っている。

「ま、あくまでアタシの予想だけどね。ターゲットの逃亡ルートも、逃亡手段も、全部『学園都市側』が用意したものなんでしょうね」

好みの鮭フレッシュバーガーを囓りながら麦野が答える。

「それじゃ、何のために俺たちは……」
「それを知るためにも、なんとしてでもターゲットを確保しなくちゃね」

指についたタルタルソースをペロリと舐めて、麦野がニヤリと笑った。

「アタシの予想が正しければ、現時点での最善手は『待ち』よ。つーわけで、食べ終わったらスルわよ」

麦野が、長いあんよを伸ばして上条の股間をまさぐる。
その旺盛な性欲に苦笑しながら、上条は「腰、立たなくなるといけないから1発な」と軽口で応えた。

ゆっくりと、しかし確実に、決着のときは迫っていた……






                                                                ――続く

はい、今回は、

・塔下君、飛竜原爆固めで轟沈
・みっちゃん空を飛ぶ
・ドキドキ、初春ちゃんおなにぃ中毒

の3本でお送りしました。

それでは、また次回。

あ、それと、散々質問された『塔下君』ですが、
原作15巻に出てきた『スクール』構成員の、『ゴーグルの少年』を勝手に改変したキャラです。
プロットでは、もう少し長生きして、初春にフェラぐらいさせる予定でしたが、冗長になるのでカットしました。
ではでは。

お待たせ。

キリ悪いけど、とりあえず0:00から投下。
次か、その次ぐらいで3話終わります。

なんで?

作者がageたいからageる。
以下、論争禁止。

ほんじゃ投下。
なんか、たくさんの人に監視されてたみたいで地味に嬉しい。

今回は25kbほど投下。

ぎしぎし、ぎしぎし……

瑞々しい若い肉体の交合に、クィーンサイズのベッドが揺れる。

「あぁ、深ぃ…… 奥まで届いているわ……」

仰向けに寝る上条当麻の上に跨り、麦野沈利が表情を蕩けさせる。
これまでに散々、毎日毎晩味わっているペニスだが、不思議と飽きが来ない。
それどころか、セックスすればするほど、自分の膣に馴染んできている実感がある。

(あー、落ち着くぅ……)

ここ最近、麦野沈利の最大のリラックスポジションがここだ。
上条に貫かれていると、肉体的にも精神的にも固定されているような気がする。

『暗部』の仕事で受けるストレスを、もっぱら上条との性行為によって発散しているのだ。

(こいつと離れるとマジでヤバイだろうなぁ…)

絶対的強者の立場である麦野は、『弱さ』に対して敏感だ。
『弱み』や『弱点』はできるだけ作らないようにしているし、何かへの依存も出来る限り控えてきた。

しかし、いざ依存対象を得ると、意外に精神が安定している自分に驚いている。

そんな風に、つらつらと物思いに耽っていると、不意に、ズン、と下から腰を突き上げられた。

「あんッ…!」
「何、考えてたの?」

軽い抗議の視線を下に送ると、悪戯っぽい瞳で微笑む上条が見えた。

「……仕事のことよ。もぅ、集中してたのに… あっ、ちょっと!」

浅く早く、膣奥をペニスの先端で、コツコツ、と突かれる。
子宮口は麦野の性感帯の1つだ。浅く突かれるだけで、軽くイッてしまう。

「セックス中にそりゃないんじゃないの?」
「……馬鹿」

そりゃそうか。と、麦野は思った。
今は仕事を忘れて良い時間だ。

しかし、そんなやる気になりかけた麦野の気持ちとは裏腹に、携帯電話が無機質な着信音を響かせた。

「……ぜってー見てやがる」

せめてもの抵抗なのか、騎乗位のまま麦野は電話に出た。

「はい、もしもし」
『……あんたねぇ。オトコに跨ったまま電話に出る、フツー?』

出歯亀を全く隠さず、しかもそれを問題にせず会話が始まった。

「で、最終逃亡ルートはどこよ?」
『……さて、なんのこと?』
「ざけんな。もう目星はついてんだよ」

数瞬、電話先が沈黙した。

『…第23学区だ』
「…派手にやれってか? 

第23区は航空・宇宙開発部門が占有する学区で、広大な敷地が特徴だ。
                           ・ ・ .・ ・ ・ ・ ・
『さぁね。予想される逃走時間は1時間後… 間に合うようにお願いね』
「……ふん、了解」

パタリ、と携帯電話を閉じる。
上条が怪訝そうな表情をしていると、麦野は激しく前後に腰を振り始めた。

「あと15分で終わって、シャワーに15分、移動に30分! さぁ、景気づけに一発かますわよ……!」

妖艶、というよりもドスの聞いた声でそう言うと、麦野沈利はニヤリと笑った。

コツ、コツ、コツ、コツ…ッ

「あっ、あっ、あっ、あっ……!」

上条が小刻みに体奥を突く度に、麦野の口から短い嬌声が漏れる。

本当はもっと激しく突かれるのが麦野の好みだし、上条もそれを把握している。
しかし、これから一仕事をすることを考えて、あえて動きを少なくしているのだ。

「ふぅ…… 小技が上手くなったわねー…」
「そりゃ、勢いばっかじゃ沈利だって満足できないだろ?」

首を伸ばして軽くキスをする。
口唇がほんの少し触れるだけのキスだが、それでも麦野は満足そうに満面の笑みを浮かべた。

「キスが優しくなった。がっついてばっかりだったのに…」
「心外だなー。上条さんはいつでも優しいですよ、と…!」

言葉と共に、騎乗位から強引に麦野を抱え上げる。
お気に入りの駅弁スタイルに移行して、麦野は挿入感を噛み締めるようにおとがいを反らした。

「あうぅぅ…… フィニッシュ?」
「時間無いから、後ろのテーブルに手を着いて……」

男の言われるがままに、麦野が両手を後ろに回してテーブルにつく。
長い脚をしっかりと上条の腰に回すと、より密着して挿入感が増す。

「…行くぜ!」

短い宣言と共に、麦野の腰が下から突き上げられる。
いつもの挿入とは違い、より腹壁側の膣壁を小刻みに突き上げられ、麦野の快感レベルが一気に高まる。

「それ…ッ、そこッ、凄い……ッ!」
「ああ… なんか、スッゲーとこ当たってる感じするぜ……」

上条の声に、やや緊迫感めいたものが含まれる。
毎度のことだが、駅弁スタイルは麦野を落とさないようにするのに気を使う。

上条が、よりしっかり麦野を把持しようと両手を臀部に回す。
すると、

にゅる……

「あ、バカ……ッ!」

しっかり持とうと力を込めた上条の右手中指が、意図せず麦野のアナルに、第一関節まで潜り込んでしまった。
入れた上条も、入れられた麦野も面食らって、思わず顔を見合わせてします。

「わりぃ……」
「き、汚いから… 早く抜いてよ……」

流石の麦野も、準備無しでアナルを弄られるのは恥ずかしいのか、目線をそらして頬を染める。

しかし、そんな仕草が、上条にとっては新鮮でひどく可愛いものに思えた。

「……痛くない?」
「い、痛くは無いけど…ッ!」

麦野の様子を確かめながら、慎重に中指をアナルに埋め込んでいく。
中ほどまで挿入すると、膣に埋め込んだペニスを、薄い腸壁・膣壁越しに感じることができた。

「うわ… 意外と近いんだ……」
「そりゃ、隣同士の穴なんだし… あ、ちょっと、そこで本気でストップ!」

中指が根元まで埋め込まれた段階で、麦野が真剣な声で言った。

「それ以上入れられたら、本当に指を汚しちゃうから……」

恐らく、絹旗やフレンダが今の麦野を見たら、悶絶を繰り返して憤死するかもしれない。
それぐらい、今の麦野はしおらしく、か弱く見えた。

「ああ、それじゃ、ここまでな…!」
「ちょ、抜いてよぉ! あぁんッ!!」

指をアナルに挿入したまま、上条が腰の動きを開始する。
挿入した指に、ピストン運動するペニスが、ごりごり、と擦れる。

当然、その間の膣壁・腸壁も擦られて、麦野はなんとも言えない、ぞくぞく、とした快感を味わった。

「もぅ… こんな、小技ばっかり、覚えてぇ…!」

予想外のアナル責めに、急速に昂ぶりながら、麦野は新たな絶頂の予感に腰を奮わせた。

「23区か。予想通りと言えば予想通りだな」

『スクール』専用のルートから得られた情報は、麦野沈利が受けたものと全く同じ内容だった。

「しかも1時間後か… 面倒くせぇ……」

1人ごちると、垣根帝督は上着を羽織って席を立った。

「待機じゃないの?」
「ブラついて時間を潰す」
「私は?」

腕を組んで眉尻を上げる『心理定規』を、垣根はチラリと一瞥した。

「もう、この件からは手を引いて良いぜ。あとは『残った暗部』を叩き潰すだけだからな。俺様だけで十分だ」
「あ、そ。それじゃ、こっちは勝手にやらせてもらうわね」

『心理定規』は軽く肩をすくめると、イブニングドレスの上から薄手のコートを羽織った。

「あ、あの……」

1人、会話の輪から外れていた初春が、おずおずと垣根に声を掛けた。

「その… あの……」
「あぁ、なんだ?」

歯切れの悪い初春の言葉に、垣根が面倒そうに応答する。

「…………お尻、外してください。その……」
「………あぁ、トイレか」

得心した垣根が、知恵の輪状になった鍵束を一瞥すると、複雑に絡み合っていた鍵束の内、一本が弾かれるように元の形に戻った。

「あ、ありがとうございます……」

礼を言うのもおかしな話だが、責め具を着けた張本人である塔下が死んだ以上、垣根が鍵を解除しないことには、初春の性感帯はロックされたままなのだ。

「の、残りは……」
「残りの鍵は1時間かけてゆっくりと解けるように設定しておいた。無理やり開けようとするなよ、鍵が壊れる」

そう言われて、初春は捻れた鍵束を見つめた。
よくよく見てみると、たしかにゆっくりと捻れが直っていっている。

「……1時間はここに居ろと」
「まぁな。それが解けたら、もうお前は用済みだから帰って良いぜ。お前の能力はチト惜しいが、使い処が面倒だからな」

あっさりと言う。
それはつまり、初春を『スクール』から解放するということだった。

「……………………………」

何か言いたくて、しかし、何も言えずに初春は黙り込んだ。
『風紀委員(ジャッジメント)』として、垣根帝督を見逃すことは出来ない。
しかし、この男に対して、決してこれ以上触ってはならない、と、心のどこかが警告を発しているのだ。

「まぁ、1時間何もしないのは暇だろうからな」

沈黙を守る初春に対して、垣根は1枚の光ディスクを差し出した。

「これは…?」
「前に質問したな、『何のために』と。ヒントぐらいは出してやる。後はおまえ自身で判断しろ」

それだけ言うと、垣根は初春に質問を許さず、さっさと部屋から出て行ってしまった。

「……私からは何の忠告も出来ないわね。観るか観ないかは初春さんの自由よ」

準備を終えた『心理定規』が、一枚のメモを初春に渡した。

「これ、私の連絡先。個人的には初春さんとお友達になりたいから、気が向いたら連絡をちょうだい」
「は、はぁ……」

どんな表情をして良いか分からず、初春は光ディスクとメモとを交互に眺めて溜め息を吐いた。

「1時間、か……」

1時間のインターバルを与えられたのは、何も追跡者だけではなかった。
逃亡者である天井亜雄にも、1時間の休憩(インターバル)が与えられていた。

「逃亡の英気を養えって? なんだかムカつくわねー」

場所は23区の多目的トイレ(リラックススペース)
そこで結標淡希が顔をしかめ、すぐそばに立つ婚后光子もコクコク頷いて同意する。

「逃げる獲物に適度な休息…… 癪に触るやり方ですわね」
「だが、有り難いのは事実だ……」

そう言うと、天井はミサカ00000号を呼び寄せ、寝台に寝るように指示をした。
深夜からの絶え間ない逃亡劇に疲労しているのか、彼女は肩で息をしていた。

「マスター…?」
「少し身体の調子を見よう。命令だ」
「はい、マスター…… はぁ…」

疲れからか、その独特な言い回しも行わず、ミサカ00000号は寝台に身を置いた。

「クローン、か……」

結標がポツリと呟く。
この夜の逃亡劇で、結標は彼女がどういう存在・状態なのか、おぼろげに理解していた。

「こんなこと言うと失礼になるかもしれないけど、儚い存在に見えるわ、私には」
「お姉さま、詩人ですわね… そこはかとなくインテリジェンスの香りが……」
「茶化さないの」

意外に真面目に考えているのか、結標がぴしゃりと言う。

「……印象としては間違っていない。体細胞クローンである彼女は、我々と違い寿命は明らかに短い」

ミサカ00000号のバイタルを測定し、携帯医療キットから長い針の注射器を取り出して天井が言った。

「能力も、オリジナルの御坂美琴と比べて、ほんの1割ほどしか再現することが出来なかった…… 儚い存在と言えば、そうだろうな……」

テキパキとなれた手つきでミサカ00000号の胸元をはだけ、左胸を露出させる。
乳首に着けられた意匠化ピアスも露わになり、結標と婚后が思わずギョっとした表情になる。

「なに、それ……?」
「……バカな男の、バカな行動の結果だよ」

慎重に注射器を操作し、心臓注射を行う。
すると、乱れていたミサカ00000号の呼吸が、ゆっくりと安静なものに変わっていった。

「これで、今晩はもう大丈夫だろう……」

ミサカ00000号の衣服を整え、天井は機器を片付けると、1つ、大きく息を吐いた。

「時間はまだあるな… 暇なら聞くかい? バカな男の身の上話を……?」

疲れに疲れきった表情で微笑する天井に、結標と婚后はゆっくりと首を縦に頷いた。

天井亜雄は元々『肉体操作(ボディポテンシャル)』系の科学者だ。
しかし、『肉体操作』系は能力としては地味で、また、科学への応用も利きにくい能力であり、天井は常に資金繰りに苦労をしていた。

「そんなとき、量産型能力者開発計画、通称『レディオノイズ』計画が立案された」

登録してあった超能力者(レベル5)御坂美琴のDNAマップを用い、体細胞クローンによる人工的な超能力者を造りだすプロジェクトであった。
肉体形成の分野において第一人者であった天井は、プロジェクトの責任者として白羽の矢が立ち、資金難に喘いでいた天井もこのプロジェクトに飛びついた。

「だが、知ってのとおり、計画は完全に失敗に終わった……」

計画の中期の段階で、学園都市を統べる『樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)』は、人工超能力者の可能性をゼロと断定した。
そのため、計画に参加していた企業や資産家は次々と見切りを付け、計画から離れて行った。

プロトタイプ体細胞クローン、『ミサカ00000号』が生れ落ちたのは、ちょうどその辺りであった。

「私は、傾いたプロジェクトを何とか建て直そうと躍起になった。少ない私財を投げ打ち、様々なコネを使い、なんとかミサカ00000号を超能力者に育てようとした」

だが、それも失敗に終わった。
何が原因だったのか分からない。いや、原因が多すぎて特定できないと言った方が正しかった。

「私は肉体変化・操作に関してはスペシャリストだったが、ソフト面、即ち脳については全くの門外漢だった。
 計画の初期には、布束という天才脳科学者がサポートしてくれていたが、彼女はすぐに計画から離れてしまったからな……」

計画が凍結され、天井の手元に残ったのは、多額の負債とただ1人製造されたミサカ00000号だけだった。

無残に最後のスポンサーが最後通告をしたときのことを、天井は良く覚えている。
何もかもか灰色になり、残された機材とミサカ00000号の前で、天井は獣のような絶叫を上げた…

「全てが終わった、そう思った。実際に科学者としての私は終わりだった。未来も何も無くなった……」

浅く寝息を立て始めたミサカ00000号を見て、天井が呟くように言った。

「私は全てを呪った… 私を責任者にした統括理事会を… 掌を返したスポンサーを… そして、何より、この娘をな……」

天井が2人の方を振り向いた。

「コイツが憎くて憎くて仕方がなかった。殺そうとも思ったし、実際に喉に手をかけた。…少し、気が触れていたんだろうな」
「…まぁ、気持ちは分からないでもないわね」

気遣うように、結標が天井に同調する。
天井は軽く「ありがとう」と言って、続きを話した。

「私が喉に手をかけても、この娘は無抵抗だった。当然だ、そういう風に調整していたのだからな。そして… 魔が差した……」

額に手を当て、ひどく後悔をした表情になる。

「無抵抗の美少女を前にして、その時の私は情欲を抑えることができなかった。
 …恥ずかしい話だが、研究一筋のせいであまり異性とは縁が無くてね。無抵抗なことを良いことに、散々この娘を犯し抜いた」

あの時、天井は思いつく限りの陵辱をミサカ00000号に与えた。
それでも、天井の気は晴れることなく、逆に行為はどんどんエスカレートしていった。

「元々、私は肉体変化の専門化だったから、この娘の体を思うがままに改造した。
 乳房を肥大化させ、陰毛を永久脱毛し、陰核の包被を切り取り、咽頭を改造し、タトゥーを彫り、ピアスを入れた…」

流石に不快に思ったのか、婚后が顔をしかめた。

「…ご本人を目の前にして言うことではありませんが、悪趣味なことですわね」
「はは、私もそう思う。思い出すだけで自殺したくなる……」

だが、天井が最も後悔していることは、それではなかった。

「度重なる肉体改造に、精神が未発達なこの娘も、ようやくおかしいと気付き始めた。 ……だから私は、この娘の脳も改造した」

2人が、軽く息を呑むのを感じた。

「さっきも話したが、私は脳は専門外だ。だから布束が残した『学習装置(テスタメント)』を使った」

『学習装置(テスタメント)』とは、視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚の五感全てに対して電気的に情報を入力することで、脳に技術や知識をインストールするための装置だ。

「だが、門外漢があやふやな知識で使ったせいか、期待する効果は現れなかった。結果は、ご覧の通りだ……」
「……性奴隷としての人格形成は、狙ったものではなかったんの?」
「さてな…… 狙ったようにも思えるし、そうでないようにも思える…… だが、この娘が、ああいった支離滅裂な言動を話し始めて、ようやく目が覚めた……」

天井が、再び2人を見た。

「君たちがどんな指令を受けているのかは分からないが、これからはこの娘の安全を第一に考えて欲しい」

そう言われて、結標と婚后は互いに視線を交わした。

「私のことは、もう良い。この娘を最終ポイントに指定された時刻に連れて行く。それを第一に頼む」

言って、深々と頭を下げる。
その天井の行為に、婚后は口元を扇子で隠して目を泳がせ、結標は困ったように頭を掻いた。

「……ま、事情は大体把握したから、私たちは全力で任務を遂行するだけよ」
「そうですわね…… 受けた任務をきっちりこなすだけですわ」

結標がきっぱりと言い、婚后がそれに同調する。
天井は、幾分和らいだ表情で、「ああ、それで頼む」と、微笑んだ。

「よし、行くか……」

漆黒のライダースーツに身を包み、麦野がハイブリット・バイクに跨る。

「………うぃ」

どこか冴えない声で上条が答え、後方のタンデムシートに跨る。
その頬には、赤々としたもみじ色の手形がついている。

「…ぶつことねぇじゃん」
「やめて、って言ったのにやめないからよ」

麦野から『勝手にアナルを弄った罰』として、風呂上りに痛烈な平手打ちを食らったのだ。

「……今度はちゃんと準備しとく」
「……はい?」
「なんでもない! 行くぞ!」

清音性に優れたハイブリットバイクが音も無く走り出す。
肉付きの良い麦野の胸腰部に手を回して、上条は互いのフルフェイスのヘルメットを、こつん、と合わせた。
このヘルメットは、内部で話した声を振動として広い、接触した同じタイプのヘルメットに伝達する優れモノだ。

『なぁ、シナリオ書いてるのが学園都市なら、最後に出てくる障害もやっぱり能力者かな?』
『ええ、恐らく出てくるのは『座標移動(ムーブポイント)よ』

麦野が数ヶ月前の記憶を引き出して答える。

『『座標移動(ムーブポイント)は、指定した座標の物体を任意に瞬間移動することができるテレポーターよ。
 この能力の凶悪なところは、始点と終点が固定されていないことよ』

つまり、見えるモノ全てが範囲ということだ。

『つまり、『見られたら終わり』ってこと?』
『まぁ、動き回っていたらテレポートは難しいらしいから、一箇所に留まらないことね』

一応、麦野の頭の中に戦闘プランはある。
上条が接近し、左手で結標を無効化するのが理想だが、それはかなり難しいだろう。

(大盤振舞いでいかないとね……)

それに、麦野個人としては、あまり上条と結標とは絡んで欲しくないのだ。

(アタシ以上に年下趣味だからな、アイツは……)

上条に聞こえないように軽く舌打ちして、麦野はアクセルを強く握り込んだ。

23区。
航空・宇宙開発分野が占有するこの学区に、音も無く麦野のタンデムバイクが進入する。

「……そろそろポイントね」

指定された逃亡ルートはすぐそこだ。
麦野は『座標移動(ムーブポイント)』の奇襲を警戒し、バイクの速度を緩やかに落とした。

瞬間、麦野の瞳が、光る何かを知覚した。

「…………来たッ!!」

手首を素早く動かし、前輪をロックしたままアクセルを全開。
強引にドリフトをしてバイクを方向転換させると、元居た場所を鈍く光る球体が通過し、そして、同じ速さで戻って行った。

「結標…… じゃないか……」
「あら、お姉さまのお名前を知っていらっしゃいますの? とすると、貴女が『原子崩し(メルトダウナー)』?」

高出力の証明の下に、この場にそぐわないブルマ少女がゆっくりと歩いてきた。

姿を見せたのは婚后光子だ。
婚后は以前使用したジャイロスタビライザーは背負っておらず、代わりに、3つのひも付きゴム弾がついたごつい手袋を両手に嵌めている。

「……ごめん、当麻」
「…わかった、まかせろ」

婚后の狙いは恐らく追跡者の足止めだろう。
そう判断した麦野は、上条を降ろすと、ギアを入れずにアクセルをゆっくりと上げた。

「…危なくなったら、すぐに逃げなさい。負けたときの狙撃に気をつけてね」
「ああ、沈利もな」

短く言葉を交わした瞬間、上条が猛然と婚后目掛けてダッシュする。
同時に、強引にギアを入れた麦野のバイクが、猛スピードで急発進する。

「……ッ!! 無視するおつもりですのッ!?」

婚后が手首を返してゴム弾を掌に引き寄せる。
しかし、婚后がゴム弾の射出準備を終えるより早く、上条が一気に距離を詰めた。

「おらッ!!」
「おっとっとッ!!」

意識を散らす目的で放った大振りの右ストレートを、婚后が慌てて前転してかわす。
その隙に、麦野のバイクは赤いテールランプを揺らして走り去った。

「……ま、良いでしょ。お姉さまが負けるはずはありませんし」

程よい脱力肢位でファイティングポーズをとる上条に相対する。
距離はおよそ1m強。先ほどの踏み込みを見るに、1ステップで上条は距離を詰めてくるだろう

「確認いたしますが…… 降参していただけませんか?」
「…そりゃ、コッチのセリフだッ!!」

上条が地面を強く蹴りつけ、婚后との距離を一気に詰める。
流石に女性の顔を殴るのは気が引けるのか、腹部を狙って左フックを放つ。

「あ、そ~れ!」

しかし、上条が動いたのと同時に、婚后も身を亀のように丸めたと思うと、胸に重ねた左腕を、右手で軽く叩いた。
瞬間、みえない何かに弾かれたかのように、婚后の身体が後方に吹っ飛んだ。

「なにッ!!」
「よっとっとッ!」

4、5メートルを一気に移動し、たたらを踏んで婚后が着地する。

「ご解説をいたしましょうか?」
「……『空力使い(エアロハンド)』。任意の点に空気の噴射点を作り、物体を飛ばす能力か……」
「ご名答! 人はわたくしの事を、『トンデモ発射場ガール』と呼びますのよ!」

婚后が今度こそ手元にゴム弾を引き寄せて左右計2個のゴム弾にタッチする。

「お行きなさいッ!!」

撃ち出されたゴム弾が、高速で上条に迫る。
が、上条は僅かに身を動かしただけでソレを回避した。

「おや?」
「電撃よりは遅ぇし、初動が分かっている弾なんて当たるかよ」

やや呆れた口調で上条が言う。     ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
しかし、それでも婚后は笑みを崩さず、手首をくるりと返した。

「……うおッ!!」

背部に、ぞわり、とした危険を感じて、今度は上条が地面に転がる。
そこを、手首の返しで軌道を変えたひも付きゴム弾が、高速で通過していった。

「……なんじゃそりゃ?」
「いわゆる1つの、くらっかぁ~・う゛ぉれぇ~いッ! ですわッ!!」

言葉の終わりに、今度は左右計4個のゴム弾を射出する。
しかし、4個のゴム弾は上条に向かわず、てんでバラバラな方向に飛んで行った。

「……まさかッ!」
「そのまさかですわッ!」

婚后が独特な動きで手首を返すと、4つのゴム弾がまるで生き物のように四方から上条に襲い掛かった。

「くっそッ!!」

身を捻り、後方に下がることでゴム弾をかわす。
距離がさらに離れた。

「やりますわね。では、これはいかが?

手元に戻したゴム弾の内1つを発射する。
足元に打ち込まれたソレを、上条が軽くジャンプしてよける。
すると、ほど同じ軌道で次弾が高速で迫った!

「チィッ!!」

着地の瞬間を狙われ、上条は強引に空中で身を捻り着地点をずらす。
しかし、不完全な着地はバランスを崩す結果となり、上条の瞳が3発目のゴム弾を捉えた。

ごつッ、と鈍い音がした。
何とか腕のガードが間に合ったものの、上条の右腕に見る見るうちに黒血が集まり痣となった。

「……ッたく、めんどくせー」

上条が大きく深呼吸をして、軽くステップを踏む。

「再度申し上げますが、降参していただけませんか? まだ、わたくし本気じゃないんですよ?」

余裕の笑みを崩さずに婚后が言う。
上条はそんな婚后をジト目で見ると、ふぅ、と息を吐いた。

「気は進まねえけど、お前を殴って倒すから」
「あらあら、負け犬の遠吠えにしては、大言が過ぎますことよ?」

婚后がゴム弾を射出する。
角度、時間、スピードを変えられたソレらが、いっせいに上条に襲い掛かる。

「ぐっ……ッ!!」

ゴム弾に翻弄されるように上条が身を捻る。
多方向から襲い掛かるゴム弾を、ある程度はよけることに成功するが、かわしきれない数個をやむを得ずガードする。

「おや、ジリ貧ですことよッ!?」

婚后がゴム弾の密度と速度を上げる。

(今だッ!)

瞬間、突如として上条が婚后に向かって猛然とダッシュした。
婚后が全てのゴム弾を射出したのを確認したのだ。

「弾が戻るよりも速くッ!」
「奥の手と言うものは隠しておくものですわよ?」

全弾使い切ったと思われた婚后の手に、手品のようにゴム弾が現れた。

「掌ばかりに集中して、手の甲を忘れていらっしゃいませんのッ!」

勝利を確信した婚后は、接近する上条の顔に向かって、必勝の一撃を射出した。
ダッシュした上条は、よける間もなく当たるはず。はずだった。

「そうだな、奥の手は隠しておくもんだ」

上条が左手を軽く振るう。
直撃するかと思われたゴム弾は、上条が左手で触れた瞬間、勢いを失って減速した。

「なッ!? そんなッ!!」
「痛かったぞ! 痛いぞッ!!」

ボディ目掛けて、5分の力で正確に鳩尾を打ち抜く。
婚后の身体がくの字に折れ曲がり、そのまま膝をついて崩れ落ちた。

「……ふぅ、何とかなったか」

先行した麦野は大丈夫だろうか。
心配する上条は、ふと、麦野の言葉を思い出した。

『負けたときの狙撃に気をつけてね』

上条は油断無く辺りを見回すと、迷った末に、婚后の武装を解除して担ぎ上げた。

「はぁはぁはぁ…… もうすぐ、もうすぐだ……」

一方、逃亡ルートの終わり際では、天井たち3人が息を切らせ疾走していた。
学園都市が指定した最終ポイントまであと数百メートル。
天井が逃走の成功を夢想し始めたとき、結標が天井の襟首を掴んで止めた。

「ぐっ… なんだッ!?」
「ごめん、天井さん。追いつかれちゃったみたい」

天井が慌てて首をめぐらすと、黒いライダースーツの女が、バイクから降りてヘッドライトをこちらに向けるのが見えた。

「やっぱ、ファイナリストは麦野先輩か…… こーんな屋外の開けた場所で、私に勝てるかしら?」
「能力が知れてりゃ、対策なんざいくらでも取り様があるだろうが、ボケが……ッ」

麦野が静かに闘志を燃やす。

「……後ろの2人が、ターゲットとクローンか。その2人を守りながら戦うつもりかよ?」
「このぐらいのハンデがちょうど良いんですよ。…天井さん、下手に動かないでね、始点がずれるから」

結標が念押しに言い、天井が深刻そうに頷いた。

「それじゃ… 始めますかッ!!」

結標が軍用懐中電灯のスイッチを入れ、超能力者(レベル5)同士の戦闘が始まった……


                                                      ―――続く。

はい終わり。

次で終われるかな?

婚后さんのゴム弾はジョジョではなくコータローまかりとおるLが元ネタ。
じゃあの。

ageちまったモンは仕方が無い。
仕方が無いので、短いけど麦のんVSあわきんだけ投下。

「ふっ!!」

麦野沈利、対、結標淡希。

最初に動いたのは麦野だった。
自身の座標を悟られまいと、大きく弧を描くようにダッシュする。
さらに、

「喰らいなッ!!」

未だ一箇所に固まっていた、結標、天井、00000号を巻き込むように『原子崩し(メルトダウナー)』を叩きこむ。

「強引なのは相変わらずね…!」

音も無く飛来する極太のビームに、しかし、結標は全く臆する事なく対処する。

「う、うわっ!!」

結標の代わりに天井が悲鳴を上げる。
が、次の瞬間には、天井は奇妙な浮遊感を感じ、数瞬前に居た場所とは全く異なる地面に座り込んでいた。

「ひ、ヒヤヒヤさせる…」
「何度体験しても慣れないですねぇ… と、ミサカ00000号がか弱く主張します…」

どうやら、『原子崩し(メルトダウナー)』が発射されてから、僅か数瞬の間に、結標が『座標移動(ムーブポイント)』の能力を使って彼らを瞬間移動させたようだ。

「ちっ、どこ行った…!?」

消えた結標を麦野が目をギラ付かせて探す。

探索時間はほんの数秒。
安易に見つからないと悟った麦野は、遠慮無く座り込んでいる天井たちに掌を向けた。

「動くと死ぬぞぉ!!」

瞬間、『原子崩し(メルトダウナー)』の斜線上に結標が現れる。

距離にして約3m。
結標は麦野が『原子崩し(メルトダウナー)』を照射するよりも速く、軍用懐中電灯を麦野に向けた。

「成層圏までふっ飛びなッ!!」
「やなこったッ!!」

文字通り光速のライトに照らされる直前、麦野の両足が爆発するように弾けた。
どぉん! という炸裂音と共に、麦野の身体が斜め後方に吹っ飛ぶ。

極めて慎重に出力を調整した『原子崩し(メルトダウナー)』を両足底から照射して、その反動で『跳んだ』のだ。

「うわッ! なにその荒業!? 足痛く無いの!?」
「余計なお世話!!」

麦野が空中で懐から1枚のカードを取り出して放り投げた。

『拡散支援半導体(シリコンバーン)』

『逆落とし』戦でも使ったソレは、『原子崩し(メルトダウナー)』を拡散させる、文字通り『アイテム』である。

「行けぇ!!」

『原子崩し(メルトダウナー)』がカードに接触し、光の槍が数条の光の矢に変化する。

「ちっ! 馬鹿の一つ覚え…ッ!!」

毒づくものの、その攻撃方法は苦手なのか、結標がテレポートして大きく距離をとる。

地面に光の矢が次々と激突し、瞬間的に砂煙が舞う。

「くぅッ… 目隠しのつもり……?」

本来なら、屋外では『座標移動(ムーブポイント)』はほぼ無敵である。
しかし、麦野が指摘したとおり、今の結標には天井とミサカ00000号という足手纏いが居る。
彼らを視認できる位置・距離が、結標の移動限界であり、麦野の勝機である。

「こっちだボケッ!!」

不意に、麦野の声が場に響いた。

「なッ…! 馬鹿にしてんのッ……!?」

『原子崩し(メルトダウナー)』の不意打ちを警戒していた結標が、わざわざ自分の位置を教えた麦野に苛立ちの声を上げる。
だが、麦野を見た結標は、苛立ちを不審に変えた。

「………痴女?」
「誰が痴女だッ!!」

結標の視線の先には、黒いライダースーツを脱ぎ捨てた麦野の姿があった。
ライダースーツの下は、往年の芸術品泥棒を思わせる薄紅色のレオタードで、さらに、そのレオタードの表面には不可思議な紋様がプリントされている。

「終わりだッ!!」

声と共に、麦野が豊満な肉体をダイナミックに躍動させて結標目掛けて突っ走った。

「いや、意味分かんないし… 万歳突撃ッ!?」

麦野の突飛な行動に混乱しながらも、反射的に結標は『座標移動(ムーブポイント)』で麦野をテレポートしようとした。
だが、

「!!??ッ 11次元ベクトルが計算できない…ッ!?」
「対策あるっつっただろーがッ!!」

このレオタードが、麦野の対『座標移動(ムーブポイント)』用の切り札その1だった。
レオタードの表面にプリントされた紋様は、可視者に視覚的な錯覚を引き起こし、その距離感を狂わせる効果があるのだ。

その錯覚は一瞬で一時的なものだが、結標の隙を作るには十分な時間だった。

「サヨナラ、結標…… 天国でそのショタコン治してもらいな……!」

麦野沈利が躊躇い無く『原子崩し(メルトダウナー)』を照射する。

どんぴしゃのタイミングだった。
結標が我を取り戻したときには、『原子崩し(メルトダウナー)』は目の前まで迫っていた。

自身へのテレポートは間に合わない。
勝負は決まったかと思われた。
しかし、結標淡希は、やはり学園都市第六位の超能力者(レベル5)であった。

「きてはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

『原子崩し(メルトダウナー)』が結標に激突する寸前、光の槍はその軌道を変えて垂直に立ち上った。

「な、なに…ッ!?」
「ああああぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッッ!!」

なんと言うことか。
結標淡希は、光速で照射された『原子崩し(メルトダウナー)』を、『座標移動(ムーブポイント)』でテレポートしたのだ。

よほど酷い負荷が脳にかかったのか、結標の鼻から一筋の血が、たらり、と流れ落ちる。
だが、その双眸は大きく見開かれ、麦野沈利を凝視している。

「……お前、アホだろ?」
「逆王手… 勝負あったわね……!」

結標がゆっくりと麦野に軍用懐中電灯を向ける。

麦野の背筋に、ぞわり、とした冷や汗が流れ落ちる。

(まずいッ!!)

そう麦野が感じ、結標が能力を使おうとした瞬間、

「おいおい、ちゃんと曲げる方向は確認して曲げろよ。危うく俺様に当たるところだったじゃねぇか……」

ヒートアップした戦場に、第三者の声が響いた。

麦野と結標が声のした空を見上げる。
そこには、大小6つの白い翼を優雅に広げた、ホスト風の青年が浮かんでいた。

「まぁ、予想通りだが、最後の相手は超能力者(レベル5)か。美味しい状況だなぁ、おい」

緩やかに翼を羽ばたかせ、青年――垣根帝督が、3人目の超能力者(レベル5)が地面に降り立った。

あい終わり。

あわきん、新約になってかまちーに忘れられてるんじゃないだろーか?

テスト

大丈夫かな?
次回投下は多分来週。

エロは入る予定は未定。

昨日ss速報(ここ)の鯖が落ちてたのは俺だけでせうか?

>>638
>>1も焦りましたが、どうもここの板では風物詩のようですな。

あー、麦のんとあわきんと吹寄にトリプルパイずりフェラされてー
つーか、そんなシチュ書きてー

更にオリアナ、オルソラ、神裂、ビバリー、ヴァルキリーを加えたらどうなるのか

ビバリーが誰か普通にわかんねえ…イギリス組か聖人か?

これ湾内さんとか御坂黒子と3Pとかあり得るな…素晴らしい

>>646
(おっぱいで)圧死する

>>648
アニメ『とある魔術の禁書目録』の初回DVD特典SS『とある科学の超電磁砲』に出てきた映画監督
見た目が18歳ほどでLカップという爆乳のアメリカ人
ちなみに美琴は彼女の映画『鉄橋は恋の合図』のファンで、19巻では浜面も彼女の作品を大絶賛していた
↓参考画像
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org3861091.jpg

突然ですが、今から投下。

今回は長め、50kb。
長いので、分割して読まれることを推奨。

では投下します。

「…消えろッ!」

垣根からどこか危険な雰囲気を感じ取ったのか、麦野がいきなり『原子崩し(メルトダウナー)』を照射する。
音も無く光速で迸った光の槍は、しかし、垣根が身体を覆うように被せた白い翼に吸い込まれ、消えた。

「…なに?」
「おいおい、ずいぶんと暴力的だな。そんなんじゃ、男にモテねぇだろ?」

垣根は余裕の表情を崩さない。
対して、絶対の自信を持つ必殺の一撃をあっさりと防がれ、麦野は不満そうに眉根を、ぎゅっ、と寄せた。

「…手に持っているソレはが獲物?」

結標が警戒した声で問う。
垣根の右手には、一見してそれとわかるライフルが握られていた。

「あぁ、これは違うぜ。暇だから今回の『掃除屋』をぶち殺した時の戦利品だ」

垣根がライフルを麦野と結標の足元に転がす。
強化プラスチックで構成されたフレームが、カン、と軽く乾いた音を立てた。

「『掃除屋』…」
「そうだ、お前らだって薄々気付いているだろ? 今回の件はずばり『暗部の間引き』だ。
 誰が音頭とってるか知らねぇし、証拠があるわけでもねぇけど、これが正解だよ」

垣根の言葉を麦野は冷静に受け止めた。

麦野自身も、恐らくそうであろうと予想していた。
任務に失敗した暗部があっさり『掃除』されたこと、狙っていたはずの『反学園都市勢力』がまったく釣り出されないことが一番の理由だ。

「…そうなの?」
「あたしに聞かないでよ、先輩」

麦野の問いに結標が簡潔に答える。

「ただ、あたし達に指示を出したのは、いつもの統括理事会ルートだけどね」
「つまり、それで正解ってことか、くそったれ……」

麦野が全身の緊張をやや解く。
内実が暗部同士の内ゲバであるのならば、最早、麦野が任務を継続する意味はない。

「予想してた中で最悪の答えだ。ふざけんなよ…」

麦野が毒づいて、バイクに向かおうとする。
だが、一歩足を踏み出す前に、垣根帝督が動いた。

「おいおい、なに帰ろうとしてんだよ、てめぇ…!」

垣根の翼がにわかにその先端を伸ばし、袈裟懸けに麦野に襲い掛かる。
慌てて麦野が後方にステップしそれをかわすと、アスファルトの地面に翼が炸裂音を立てて突き刺さった。

「コイツ……!」
「俺様にとっては、この状況は好都合なんだよ。内ゲバ? 最高じゃねぇか」

白い翼がゆっくりと垣根の背に格納される。
それは即ち、垣根が戦闘態勢をとったことを意味してた。

「俺様が目的を果たすためには、他のlevel5は邪魔なんだよ。だから…」

6枚の翼が一気に展開される。

「素直に俺様にぶち殺されろッ!!」

今夜、最後の戦闘が幕を開けた。

「淡希ッ!! 一旦休戦ッ!!」
「了解、先輩ッ!!」

女性2人が一瞬でアイコンタクトを取り、素早く共同戦線を作る。
顔には出さなかったが、麦野の『原子崩し(メルトダウナー)』があっさり防がれたことは、麦野、結標双方にとっても衝撃だった。
ゆえに、「この男には2人掛りではないと危ない」と、2人の本能が合致したのだ。

「いいねぇ、こっちも2人同時の方が手間が省けていいぜ!」

垣根帝督が白い翼を横薙ぎに振るう。
麦野と結標とを、一気になぎ倒す勢いだが、激突の前に2人の身体が空中に掻き消える。

「…テレポートかッ!?」

垣根の前方数m先の空中に結標が出現する。
そして、結標が何かを取り出そうとミニスカートの中に手を突っ込み、

「で、本命は後ろ、と…」
     ・ ・
無音で背後から照射された『原子崩し(メルトダウナー)』を、垣根は振り返ることすらせずに翼で防いだ。

「クソッ、大人しく死んどけよッ!!」
「こんな子供だましに引っ掛かるかっての、馬鹿か?」

垣根の後方で臍を噛む麦野に軽口で答える垣根。
しかし、今度は正面の結標が動いた。

「潰れろッ!!」

はるか遠方に駐機してあった軽クレーン車を垣根の頭上にテレポートさせる。
重さ数トンの重量物が、ふわり、と数瞬だけ滞空し、次の瞬間には大音声と共に垣根を押し潰した。

どぉぉぉぉん!!!

「やったか!?」
「先輩、それ禁句ッ!!」

固唾をのんで2人が見守る中、舞い上がった粉塵が次第に晴れ、そして。

「単純だが、それだけに効果的な攻撃だな。だが、俺様には通用しねぇな」

一体、どんな能力行使が行われたのか。
                             ・ ・ ・ ・ ・ ..・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ..・ ・ ・ ・ .・
垣根帝督は何事も無かったかのように、悠然と軽クレーン車の中から歩いて出てきた。

「…なんだコイツ?」

あまりにも異常なその光景に、結標が冷たい汗を流して呟く。

「おぉ、そういえば自己紹介がまだだったな。学園都市序列第2位のLevel5、垣根帝督だ」

白い翼がさらにその面積を拡大させる。

「――俺の『未元物質(ダークマター)』に常識は通用しねぇ」

どぉぉぉぉん!! どぉぉぉぉん!!

重量物の激突音が連続で木霊する。

結標が、目に見える車や街路樹といった重量物を、片っ端から垣根の頭上にテレポートさせているからだ。

「死ねよッ!!」

さらに、重量物で身動きが取れない垣根に、麦野が連続で『原子崩し(メルトダウナー)』を撃ちこむ。
しかし、

「馬鹿の一つ覚えか? いい加減飽きたぞ、おい」

垣根帝督は全くの無傷だ。
重量物は足止めにしかならず、『原子崩し(メルトダウナー)』は身体に届く前に白い翼に防がれてしまう。

「…淡希、攻め順を変えるわよ」
「了解… チッ、癪に障るわね…」

麦野がレオタードのスリットから「拡散支援半導体(シリコンバーン)」を取り出し中空に放る。

「食らえッ!!」

照射された『原子崩し(メルトダウナー)』がカードに接触し、複数の光の矢が垣根に襲い掛かる。

「なんだよ、結局は小細工かよ」

しかし、それも垣根は難なく防御する。
ますます不機嫌そうに麦野は眉を寄せるが、本命は結標だ。

(目標視認ッ!!)

軍用懐中電灯の灯りを垣根に向ける。

(アイツはメルヘンチックに飛んできたから、空中に跳ばすのは悪手… ここは地面に『埋める』ッ!!)

テレポート先を、数十m下の地中に設定。
圧迫、窒息させるのが狙いだ。

「とんでっけぇぇ!!」

結標が「自分だけの現実(パーソナルリアリティ)」を展開する。
だが、

「残念、既に解析済みだ」

垣根は強制テレポートされる事なく結標に向かってダッシュすると、白い翼を鋭く結標の腹部目掛けて打ち出した。

(ヤバイッ!! 回避ッ!!)

まだ余裕のある結標が、自身の身体をテレポートして回避しようとする。
しかし、結標がいくら能力を行使しても、テレポートは発生しなかった。

ドゴォ!

鈍く、深い音がして結標の腹部に翼が激突する。
瞬間的に胃の内容物が食道を逆流し、結標は激しく嘔吐した。

「う、げぇぇぇぇ!!」                  ・ ・ ・ ・ .・.・ ・
「悪いが、お前の操る11次元ベクトルを、全く違う異質なベクトルに変換させてもらった。テレポートを見せすぎたな」

さらにうつ伏せに倒れた結標に追撃を加えようとする垣根に、麦野が『原子崩し(メルトダウナー)』を照射する。

「させるかッ!!」
「てめぇも見せすぎなんだよ」

渾身の一撃は、しかし、垣根の翼に防がれ… いや、

「解析は終了した」
「え…?」
                                    ・ ・  ・ ・
白い翼に触れた『原子崩し(メルトダウナー)』が、そのまま反射・反転して麦野に襲い掛かった。

「…嘘でしょッ!!」

麦野が慌てて正面に『原子崩し(メルトダウナー)』のバリアを張って防ぐ。
しかし、その表情は焦りで満ちている。

「解析… 解析って…?」
「種明かしをしようか。お前の能力は『曖昧なままの電子を操る』能力だろう? 本来、電子線は直進するもんだが、それは常識の物理学での話だ」

垣根帝督が翼を広げる。

「俺様の能力『未元物質(ダークマター)』は、この世の物理法則に拠らない、全く異質な物質だ。
 異質な物質に触れた電子線はその性質を変えて反射した。実に簡単なタネと仕掛けだろ?」

翼を広げた垣根帝督がゆっくりと地面から離れて飛翔する。

「簡単に片付けるのはつまらねぇからな、遊んで殺るよ」

次の瞬間、ヒュン、という軽い風切音ががしたかと思うと、麦野のレオタードの右腕部分が、まるで刃物で切られたかのようにぱっくりと裂けた。
さらに、麦野の素肌にも長さ数センチの裂傷ができ、たらたら、と血液が流れ出す。

「かまいたち…?」
「正解。翼の隙間を通る風に一工夫加えてみた。おら、踊れよ」

垣根の言葉と共に刃物となった風が麦野に襲い掛かった。

「舐めんなッ!!」

麦野も『原子崩し(メルトダウナー)』のシールドを作りあらかた防ぐが、量がハンパではない。
度々にシールドの隙間から突破され、浅い切り傷をいくつも負う。

(このままじゃジリ貧じゃない…!)

所々を切り裂かれ、半ば半裸状態となった麦野が覚悟を決める。

残った「拡散支援半導体(シリコンバーン)」を全て中空に放ると、そのすべてに『原子崩し(メルトダウナー)』を叩き込む。

「おいおい、またそれか?」

拡散する光の矢が、垣根の翼に弾かれ、あるいは反射する。

しかし、それは麦野にとって覚悟の上だった。

「…跳べっ!」

結標戦で回避に使ったように、足元に『原子崩し(メルトダウナー)』を照射する。
爆発と共に急激な推進力を得た麦野が、跳ね上がるように夜の空に跳躍する。

「…せいッ!!」

さらに空中で『原子崩し(メルトダウナー)』を放射し、体軸に急激な横回転を与える。
急激に回旋した体幹に沿わせるように、麦野は全身の力を注いで右の踵を垣根帝督に叩き込んだ。

ズボッ、と音がして麦野の踵が白い翼に完全にめり込む。
ここで、初めて垣根帝督の表情が変わる。

「まさか…ッ!?」
「そのまさかよッ! ゼロ距離で喰らいやがれッ!!」

翼の内側から、麦野が『原子崩し(メルトダウナー)』を踵から照射する。
垣根の体表がほの白く発光し、電子線が垣根の服を焼く。
しかし、

「……流石に焦ったぜ」

麦野の放った渾身の『原子崩し(メルトダウナー)』は、垣根の身体を滑って後方へと流れて行った。

「そんな…」                                     .・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ .・ ・ ・ ・ ..・ ・ ・ .・ .・ ・ ・ ・ ・
「別にフリックのつもりじゃない。この白い翼は勝手に出てきちまうんだ。体表の汗に細工をして電子線を曲げさせてもらった」

空中で垣根が麦野を拘束する。

「最後の足掻きは良かったぜ。だが、これで終わりだ」

ドコッォ、と麦野を白い翼が強かに打撃する。
全身を激痛に支配された麦野の身体が力を失い、そのまま落下して地面に叩き付けられた。

「が… は……」

肺腑の空気を強制的に吐き出して麦野が悶絶する。
まだ意識は保っているが、満足に身体を動かすことが出来ない。

「予想外に手間は取ったが、結局はこの程度か…」

垣根帝督が地面に降り立つ。

「じゃあな」

トドメの一撃を放とうと、垣根が白い翼を広げたその時、

「テメェ、沈利から離れろッ!!」

最後の主役が遅れてやって来た。

肩に担いだ婚后光子を地面に降ろし、上条当麻が吼えた。

「……なんだ?」

新たな敵の登場に、垣根が臨戦態勢を整える。
言動から察するに、あの男は足元に転がっている女の仲間なのだろう。

「高位能力者か…?」

垣根が警戒して動かずにいると、上条は軽く息を吸った後、全力で垣根に向かってダッシュした。

「うおおぉぉぉぉぉ!!」
「…………ッ!!」

上条の雄叫びに、本能的な恐怖を感じた垣根が白い翼を振るう。
狙い済ました一撃は、しかし、上条がわずかに身を捻ったことであっさりとかわされた。

「格闘技… ボクシングかッ!!」

(肉体強化系の能力者か?)

だいたいのアタリをつけて、垣根がさらに翼を振るう。
上条は素早く右半身になり翼を避けると、サウスポーのリードブロウを垣根に叩き込んだ。

「シュッ!!」

右拳が白い翼に阻まれ、あっさりと防御される。
拍子抜けする垣根だが、上条は構わず右ジャブを繰り返した。

「ふッ!!」

顎、ボディ、顎、と狙いを散らしてジャブを放つが、悉く白い翼に阻まれる。
そうしているうちに、垣根の脳内に不審感が募り始めた。

「お前、もしかしてタダの無能力者か?」
「……ッ! だとしたらどうすんだよッ!!」

なおも攻撃を続ける上条に対して、垣根は軽く息を吐くと、短く呟いた。

「蹴散らす」

それまで防御一辺倒だった白い翼が俄かに動きを変え、上条の右側面から薙ぎ払うように強烈な一撃を加えた。

ドガッ、とも、ズンッ、ともとれる重い音と共に、上条がノーバウンドで数メートルも跳んだ。

「ぐッ…… 効いたぁ……」

右腕と右わき腹がズキズキと痛む。
恐らく、右尺骨と第9,10肋骨にひびが入っている。

「…内臓破裂ぐらいの勢いで殴ったが、身体だけは丈夫みたいだな」

悠然と垣根が近づき、翼を上条に叩き付けようとする。

「食らうかッ!」

上条は痛む腹筋をフルに活動させ、下肢を強引に天空方面に引き揚げて、そのまま後転倒立から身を捻って立位となった。

「おおすげぇ、体操選手か、おい?」

妙に感心した垣根が次々と翼を振るう。
一度食らって翼の軌道を掴んだのか、上条は見事な体捌きでその全てを回避した。

「やるじゃねぇか、無能力者でそこまでやるなんて、凄いよお前」
「世間を知らねぇみたいだな。俺程度のレベルの格闘家はこの街にはゴマンと居るぜ」

上条の言葉は本心だ。
豪快な足技を使う駒場や、格闘技の師匠である土御門などには、全く勝てる気がしない。

「能力者は、その能力で自分を縛っちまって、周囲が見えなくなるもんだ」
「…吹くじゃねぇか」

上条の言葉にカチンときたのか、垣根が僅かに顔をゆがませる。
そして、さっきと同じように白い翼を振るい、

「もう慣れたぜ、その攻撃はよ!」
「ざけんな無能」

よけたはずの右足が粉砕された。

「ぐぉぉぉぉぉ!!

たまらず転倒し、上条は激痛にのたうち回った。
どういう作用が働いたのか、右の踵骨、腓骨が砕かれている。

「遊んでやってるのを勘違いすんじゃねぇよ無能」

声とともに、右手首に強烈な翼の打撃が加えられる。
ぼきり、という音と共に、橈骨の遠位端が真っ二つに割られる。

「ぎゃああぁぁぁ!!」
「弱いものいじめなんて、柄じゃねぇのによ。弱いくせに吼えるからこうなるんだ」

倒れ付す上条に、垣根がすくうような一撃を加える。
サッカーボールのように翼に蹴られた上条が、きっかり3秒間滞空して、地面に強かに叩き付けられる。

「ぐっ… ごほぉ……」

先ほどひびの入っていた肋骨が完全に折れた。
幸い、肺には刺さっていないようだが、激痛が上条の視界を赤く染める。

「ああ、気分が悪いぜ… ん?」

ふと、右足に違和感を感じて垣根が視線を落とす。
すると、そこには荒い息をした麦野沈利が、必死に垣根の右足にしがみつこうとしている姿が見えた。

「これ以上は…」
「おいおい… 安っぽいドラマじゃねぇんだからよ…」

呆れた声を出して垣根が乱暴に麦野を振り払う。

「黙っとけ」

ごっ、と容赦ない蹴りが麦野の顔面を捉える。
頬に強い一撃を食らって、麦野が再び倒れ込んだ。

「何か企んでるのか?」

このとき、垣根の意識が少しだけ上条から離れた。

遠くから麦野の弱々しい声が聞こえる。

雄叫びを上げて駆け寄りたい気持ちをぐっと堪えて、上条は近くのとある人物に声をかえた。

「おい… 起きろ……」
「………なんですの、傷だらけのヒーローさん?」

声を返したのは婚后光子だ。
実を言うと、担がれている最中に目は醒ましていたが、上条もそれに気付いていたため大人しくしていたのだ。

「頼みがある。アイツの注意が完全に俺から離れた瞬間、『空力使い(エアロハンド)』で俺の身体をアイツ目掛けて飛ばしてくれ」

上条の言葉に婚后が胡乱な目つきになる。

「大人しく寝ていないと、本気で死ぬことになりますわよ?」
「俺が動かねぇと、沈利が殺されちまう。頼む……」

真剣な表情で婚后を見つめる。
その、あまりにも力の篭った熱視線に、婚后は頬が赤くなるのを感じた。

「べ、別にそれぐらいのことだったら構いませんが… まだ隙というほどには警戒を解いていませんわよ?」

ぷい、と上条から顔を背け、目線だけ横目で見る。

「大丈夫だ、沈利が隙を作ってくれる」
「……何か申し合わせを?」
「いや、何もねぇ」

あっさり言う上条に、ますます胡乱な目つきになる。

「何もねぇが、沈利なら最後の最後まで絶対に足掻いてくれる。それを信じる」
「……そうですか、わかりましたわ」

力強い上条の言葉に、婚后が深く頷いた。

「おらッ!!」

今度は腹部を蹴られる。
身を屈めて必死に痛みに耐える麦野に、垣根がますます詰まらなさそうに顔をゆがめる。

「おい… マジで何もねぇのかよ? 萎えるぜ…」

そう呟いた瞬間、麦野がギラリと目を光らせてとある一点を見つめ叫んだ。

「淡希ッ!!」
「………死んだフリさせとけよッ!!」

身体中を吐瀉物で汚しながら、結標淡希が力を振り絞って軍用懐中電灯を麦野に向ける。

「完全痴女じゃん!」

所々切り裂かれたレオタードは、その錯覚の効果も失っていた。
電灯の灯りが照らした瞬間、麦野の身体がはるか空中に出現した。

やや白み始めた払暁の空に、半裸のレオタード美女が舞う。

「食らえッ!!」

空中から地面の垣根目掛けて、『原子崩し(メルトダウナー)』を連続で照射する。
無論、そのどれもが白い翼に防がれ、弾かれ、反射されるが、そんなのはお構い無しだ。

反射された光の槍を強引に『原子崩し(メルトダウナー)』で打ち消し、さらに連射する。

「芸の無い足掻きだなぁ、おいッ!!」

攻撃の合間に、垣根が空気のかまいたちを飛ばす。
しかし、それを予期していたのか、麦野は『原子崩し(メルトダウナー)』を推力に使って弾かれるように空中を移動してよけた。

「チッ、面倒な…ッ!!」

舌打ちをする垣根だが、だからと言って焦ってはいなかった。

ああも無謀な空中機動と連続照射が長く続くわけは無い。
このまま防いでいれば、麦野沈利はじきに力尽きて墜落するはずだ。

そう予想して、垣根は『原子崩し(メルトダウナー)』の処理に全力を注ぎ込んだ。

「今だッ!!」
「あ、あの光の奔流の中に突っ込んでいくおつもりですの!? 下手をうったら貴方が焼かれますわよ!?」
「覚悟の上ッ!!」

上条の迷いの無い言葉に、婚后が息を呑む。

「やってくれ!」
「…ええい、わかりましたわ! 貸しイチですからね、色男さん!」

婚后が上条の身体の各部分を流れるような動きでタッチする。
次の瞬間、轟くような空気噴射とともに、上条の身体が砲弾のように飛び出していった。

麦野沈利は無我夢中だった。

結標の名前を呼んだのも、今、こうやって無駄な攻撃を続けているのも全くのノープランだった。

シュパンッ!!

「くぅ!!」

垣根の放ったかまいたちが麦野の肌を浅く切り裂く。
着ているレオタードはもう半分も面積を残していない。
『原子崩し(メルトダウナー)』を使った強引な飛翔もそう長くは続かない。

ただ、彼女が願うのは1つ。

(当麻が逃げる時間を…ッ!!)

結標が問題なく『座標移動(ムーブポイント)』を使えたのは大収穫だった。
テレポート能力は他の能力と比べても非常に複雑な演算を必要とし、とりわけ結標は身体的苦痛に弱いと知っていたからだ。

そして、『座標移動(ムーブポイント)』は、こと移動・逃亡にかけては、すべての能力の中でダントツの性能を持っている。

(離脱するときに当麻を連れて逃げてくれれば…!)

その希望を胸に秘めて、麦野は『原子崩し(メルトダウナー)』を撃ち続ける。

「早く… 逃げてッ!!」

祈るような気持ちで倒れた当麻を見る。

そして、その瞳に映ったのは、
雄叫びを上げて突進する上条当麻の姿だった。

「うおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!」

人間の重心は常に変化する。
基本的な解剖学的立位肢位では、重心は第4腰椎のやや前方に位置する。

しかし、四肢の関節運動や、体幹・頸部の回旋により、重心は極めて複雑にその位置を変化させる。

ゆえに、単純に吹っ飛ばしただけでは、人体は直進しない。

そういう意味では、婚后光子は掛け値無しの天才であった。

(すげぇ…ッ!! 身体の動きに合わせて噴射が…!)

まるで身体の動きを完璧に予測していたかのように、全く重心がぶれずに上条当麻が疾走する。

そして、麦野との射撃戦の最中、雄叫びに気付いた垣根帝督がこちらに顔を向け、

「取ったぁぁ!!」

上条、渾身の左フックが垣根の顔面を捉えた。

「ぐはぁぁッ!!」
                         ・ .・
空中にいることで、しっかりと下肢によるためを作れなかったことが災いしたのか、一撃では垣根は倒れなかった。
ただ、左手で殴ったことで能力をキャンセルしたのか、垣根の背中から6枚の翼が掻き消える。

「…てめぇぇぇ!!」

怒りに形相を歪めた垣根が、白い翼を再度出現させる。
だが、上条は当然のように、やや左半身のオーソドックススタイルになると、左ジャブを垣根の顔面に叩き込む。

「無駄n… ぎゃッ!!」

絶対の自信を持って防ごうとした白い翼があっさりと突破され、垣根の鼻頭に拳がヒットし鼻血が空中に散る。

「なん、だと……!」
「てめぇ、舐めすぎなんだよッ!!」

痛む右足を強引に地面に突き刺し、わき腹、胸部、顎の流れるような左フックの三連打を見舞う。

ドゴッ、ドコッ、ガッ!!

強烈な三撃に、しかし、垣根帝督は倒れない。
上条の身体が万全ではないことを踏まえても、それは異常なタフネスだった。

「…畜生め、この俺様に奥の手を使わせやがって……ッ!!」

垣根帝督の目つきが変わる。

そして上条は、確かに流れていたはずの垣根の鼻血が止まっているのを見た。

「…なにッ?」
「解析したぞ… てめぇの能力はその左手であらゆる能力をキャンセルするものか… どうりで最初は右しか使ってこねぇわけだ。奥の手隠してやがったな……」

上条の目前で、垣根の殴られた頬の青痣が、見る見るうちに治癒していく。

「それなら、俺様も奥の手を切らしてもらう。体組織の変性なんざやりたくねぇが、まぁ、細胞が入れ替わるまでの我慢だ…ッ!!」

恐るべきことに、垣根帝督は己の体細胞を『未元物質(ダークマター)』で変性し、治癒速度を異常に亢進しているのだ。

無論、作り変えられた体細胞は、他の細胞にどんな悪影響を及ぼすか想像が付かない。
ゆえに奥の手、滅多なことでは使うまいと、垣根自身が戒めていた能力使用だ。

「残念だったなッ! 銃火器の1つでも持ってりゃ勝ちだったのによ!」

垣根帝督が素早く右足を軸に身体を半回転させ、左足を上条の右わき腹に叩き込む。
なかなかどうして、腰の入った回し蹴りだ。

「クッ…!」

壊れた右腕でなんとか防御するが、衝撃とともに右手首に激痛が走る。
今ので、右手首が完全にイカれてしまった。

(尺骨までいったか… クソッ!!)

激痛に飛びそうになる意識を懸命に手繰り寄せる。

「俺様を油断させるためだろうが、ダメージを負いすぎたな! 超能力者だから身体を鍛えないってのは幻想だぜッ!」
「んなの、沈利を見てりゃ分かるよッ!!」

距離を取ろうと繰り出される強烈な前蹴りを何とかかわす。

(空手…じゃない、キックボクシングか…!?)

確信が1つの覚悟を生む。

(キックボクサーなら…ッ!!)

上条が無事な左足のみで跳躍する。

「おおぉぉ!!」

大降りの左ストレートを垣根が両腕を交叉してブロッキングする。
しかし、これで距離が詰まった。

「せいッ!」

上条が至近距離からのショートアッパーを繰り出す。
垣根は右足を一歩引いてそれをスウェイバックでかわすと、とある準備動作に入った。

右腕を強く引き、体幹を小さく、しかし、急激に右回旋させる。
左足が腰の高さまで持ち上がり…

(来たッ! ローキックッ!!)

狙いは上条の壊れた右足だ。
          ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
だから上条は、右足を前に踏み出した。

「……ッ!? せいッ!!」

上条の行動に不審感を感じながらも、垣根はそのまま強烈なローキックをぶち込んだ。

ゴッ!!!

肉と肉、骨と骨とが激突する鈍い音が響く。

垣根は、確かに上条の右足に致命的なダメージを負わせたことを確信した。

「終わりだッ!!」
「…ああ、終わりだッ!!」

不意に、上条の左手が伸びる。
勝利を確信した垣根の一瞬の隙をついて、上条は左手で垣根の左手首をガッチリと掴んだ。

「てめッ!」
「おおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」

全身全霊の力を振り絞って左手を手前に引く。

「な、なにッ!!」

垣根の左半身が強引に引っ張られ体勢を崩す。
そして、上条の眼に垣根の後頭部が見えた。

「ぐっ… ああぁぁぁ!!」

壊れた右手で強引に鉄拳を作る。
激痛が脳を引き裂くが、そんなものには構ってられない。

「チィッ!」
「じゃあな、三流超能力者。他人のオンナに手を出すからこうなるんだぜ」

引き絞る左腕の動きと連動するように、右腕を回転させる。
狙うは、垣根帝督の頸椎――!

ドガァァ!!!

強烈な右フックが垣根帝督の後頭部に命中する。
眼球が飛び出そうなほどの衝撃に、垣根の視界が真っ赤に染まる。
『未元物質(ダークマター)』で回復しようにも、未だ上条の左手で身体を掴まれているためか、上手く能力が使えない。

「くそ、が……」

後頭部を殴られたからか、四肢が麻痺して上手く動かすことが出来ない。
強靭な精神力でなんとか継ぎとめていた意識が、とうとう朦朧とした。

「ぐ……」

カクン、と垣根の身体から力が失われる。
垣根の左腕を掴んだまま上条は、油断せずにそのまま垣根を後ろ手に拘束した。

「……ふう」

大きく大きく息を吐き出し、この夜の全ての戦闘が終了した。

「もぅ… 無茶しすぎ……!」

いつの間にか地面に降りていたのか、麦野が慌てて上条に駆け寄る。

「わりぃ、けど、沈利が無事で良かったよ」
「それでアンタが重傷だったら意味ないわよ…」

上条の有様は酷いものだ。
特に、無理に使った右手首は、完全に関節方向とは違う向きに曲がってしまっている。

「早く病院に…」
「待った、それよりコイツはどうする?」

上条が拘束した垣根を示す。

「…負けた暗部を掃除していたスナイパーは、そいつが潰したらしいから、あんまり気は進まないけど、『上』に連絡して回収に……」

麦野がそう話した瞬間、突如、ガソリンエンジン音が鳴り響いた。

「な、なんだッ!!」
「当麻、向こうッ!!」

振り返った上条の眼に、闇に紛れるチャイナブルーのプジョー206が、3人目掛けて爆走するのが見えた。

「うわッ!!」

轢き殺されると感じた麦野が、上条を抱きかかえるようにして身を翻す。

ギャリギャリギャリギャリッ!!!!!

しかし、麦野の予想とは裏腹に、プジョーは豪快なドリフトを決めて急停止した。
そして、後部座席のドアが開き、

「垣根さん、乗ってくださいッ!!」

改造スクール水着に雨がっぱを着た初春飾利が、小さな身体を精一杯伸ばして垣根の身体をつかんだ。

「……ッ!!」

痺れる手足を何とか動かし、初春に引っ張られるようにして垣根がプジョーの後部座席に滑り込む。

「出してくださいッ!!」
「オッケーッ!!」

運転席に座った『心理定規(メジャーハート)』が、ギアとクラッチをリズム良く操作してプジョーを急発進させる。

後部座席のドアが閉まる瞬間、麦野と初春の目が一瞬だけ交錯した。

逃げるプジョーの車内で、初春が大きな溜め息を吐いた。

「こ、こ、こ、怖かったです… 運転が荒すぎですよ…」
「なに言ってんの、アレくらい普通よ」

やや親しげに会話を交わす女性2人を見て、垣根が不可解に眉を寄せた。

「……なんでお前がここにいるんだよ、初春」

拘束の鍵は渡した。
彼女が『スクール』と関わる必要は、もう無いはずだった。

「光ディスクの動画を見ました」

垣根とは視線を合わせず、初春が言った。

「暗闇の五月計画、プロデュース…… 貴方の行動原理がアレであるのならば……」

静かに、初春飾利が垣根帝督を見つめる。

「私は貴方に付いて行きます」

その言葉に、垣根は朦朧とした意識の中で、「…勝手にしろ」とだけ呟いた。

「……ま、どっちかってゆーと、ウチラにとってはありがたい展開かもね」

上条を抱いて地面に、ぺたり、と腰を降ろして、麦野沈利はしみじみと呟いた。

「いや、ホント。あんなのとは2度と相対したくないわ」

婚后に身体を支えられながら、結標が2人に近づいて言った。

「で、先輩はどうすんの? まだやる?」
「やるわけないでしょ。『アイテム』は今回の件から完全撤退よ」

麦野が両手を挙げて降参のポーズを取る。

「…ウチらを騙した上層部には、いつか落とし前つけるけどね」
「怖いなぁ… ほんじゃ…」

結標が軍用懐中電灯を操作して、離れた位置で抱き合っていた天井とミサカ00000号をこの場にテレポートさせた。

「……終わったのか?」

大事なものを守るように、ミサカ00000号をその腕に抱いた天井が、恐る恐る声を掛けた。

「ええ、貴方を狙う暗部は全員リタイア。おめでとう、ゴールよ」

結標の言葉に、麦野が軽く舌打ちをし、天井が深く溜め息を吐いた。

「……ありがとう、本当にありがとう。先ほどの戦闘を見て、自分がどれだけ危ない橋を渡っていたかを実感したよ」
「本当よ。あんな化け物が出てくると知ってりゃ、絶対に引き受けなかったわ」

おどけた調子で結標が言い、婚后がクスリと笑った。

「はは… それでは、ここからは私たちだけで良い。目的地はすぐそこだ」

ようやく緊張の取れた表情で天井が言う。
しかし、そう言って歩き出そうとした天井を、全くの第三者の声が止めた。

「いや、その必要はないよ?」

柔らかい声に6人が視線を向けると、いつの間にか昇っていた朝日を背に、カエル顔の医師が立っていた。

「なにやら騒動があってたみたいだからね。おっとり刀で来てみたら、もう終わっていたみたいだね?」

カエル顔の医師はのんびりとした口調で言うと、まず上条に近づき、素早く全身のチェックを行った。

「……うん、君、よく動けたね? 根性以前に、筋の付き方が理想的なんだろうね? ウチの病院なら全治2週間だから、早めに受診してね? とりあえず……」

カエル顔の医師が、上条の胸部に両手を当て、一瞬だけ力強く手を操作した。

ゴキゴキッ!

「ぐっ!」
「ちょ、ちょっと何やってッ!?」

上条がうめき声を上げ、麦野が慌てて詰問するが、カエル顔の医師は涼しい顔で答えた。

「うん、とりあえず、折れた肋骨は元の位置に矯正しておいたから、安静にしていれば肺に刺さる心配はないよ?
 手足の方は、流石に機材がないと無理だね?」

言われて、上条はさっきよりもずっと呼吸が楽になったのを感じた。

「あ、ども…」
「別に良いよ、僕は医者だからね?」

カエル顔の医師はそう言うと、今度は天井とミサカ00000号に向き直った。

「さて、君が天井君だね? 僕の患者はそっちかな?」
「はい、彼女です」

天井がミサカ00000号の背を押して前に出させる。
ミサカ00000号は状況がよく分かっていないのか、キョトンとした顔をしている。

「もらったバイタルデータだと、健康状態は問題ないみたいだね? あとは、病院でしっかりエコー検査をして…」
「あのぉ……」

完全に蚊帳の外に置かれた結標が、遠慮がちに声をかけた。

「別に知る必要も権利も無いかもしれませんけど、どういうことか説明してもらえませんか? 天井さん、貴方の目的って、逃げることじゃないの?」

結標の質問に、天井がかなり困った顔をする。

「あー、その… 騙したつもりじゃなかったんだが…… 私の本当の目的は、この人に彼女を託すことなんだ」

その言葉に、誰よりもまずミサカ00000号が反応した。

「託す…? マスター、託すとはどういう意味ですか? と、ミサカ00000号は不安を押し殺して申し上げます…!」
「そのままの意味だよ、00000号……」

天井がミサカ00000号の頬を撫ぜる。
その行為に何かを感じたのか、ミサカ00000号が両手で撫ぜる天井の手を掴んだ。

「ちょっとちょっと! 全ッ然、話が見えないんだけどッ!」

結標が半切れで怒鳴る。
その声に、カエル顔の医師が「おや?」といった風に首を傾げた。

「天井君、彼女たちには、母体のことはきちんと説明していないのかい?」
「は、はい…」
「それは迂闊だね? テレポートがどんな負担をかけるか分からないんだよ?」
「そう、ですね……」
「あのですねぇ……」

いい加減、結標が切れそうになったとき、カエル顔の医師が結標の方を向いて言った。

「彼女、ミサカクローン・プロトタイプ00000号は、妊娠しているね?」

結標の眼が丸くなった。

「に、妊娠ッ!!??」

結標が素っ頓狂な声を上げる。

「く、クローンって、妊娠できるんですの?」

婚后も流石に驚いたのか、思わず質問をする。

「うん、通常、クローンの生殖能力は極めて低い。無いと断言しても良いね?」

なぜかミサカ00000号がコクコクと頷く。

「けれども、流石は肉体変化の専門家である天井君だ。彼は完璧とは言わないまでも、一定の生殖能力を持たせることに成功した」

カエル医師の言葉を、ミサカ00000号が引き継いで答える。

「ですが、ミサカの生理はとても不定期です。排卵の無い月もありますし、着床の可能性もとてもとても低いのです」
「そう、本来なら、体外受精すら不可能な妊娠確率なんだね。なんだけど…」
「ミサカはマスターとのらぶらぶセックスで見事に妊娠しました! 排卵誘発剤もオギノ式も何も使わずです! と、ミサカ00000号は頬を赤らめながらマスターとのラブラブ度をアピールします」

微妙な雰囲気が流れた。

「…つまり、妊娠確率ほぼ0%だったけど、ヤリまくったおかげで見事に命中した、と」
「軽く言うけど、これは奇跡に近い出来事だね? はっきり言えば、学会で発表するレベルの出来事だね? できないけど」

はぁぁぁぁぁぁ…… と結標が盛大な溜め息を吐いて天井を見た。

「天井さぁん… ホント、最初に言っておいてよ…」
「すまない… 本当に、すまない…」

天井が顔を真っ赤にして何度も頭を下げる。
しかし、それで毒気を抜かれたのか、結標は両手を肩の高さまで上げて、首を、ふるふる、と左右に振った。

「ということは、最初から天井さんは学園都市外に逃げるつもりはなくて、そこのお医者さんのところに2人して保護されるのが目的だったのね…
 そして、逃げる過程で、情報に踊らされた『暗部』を釣る生餌になった、と……」

結標の言葉に、麦野が再び舌打ちを打つ。
だが、天井はゆっくりと首を振って言った。

「ほとんど正解だが、1つだけ違うところがある」

そして、ミサカ00000号の顔を正面から見て、言った。

「保護されるのはミサカ00000号、君だけだ」

ミサカ00000号の眼が大きく見開かれた。

「どうして… どうしてですか!? と、ミサカ00000号がマスターに申し上げますッ!!」
「それが、学園都市が出した条件だからだ。『妊娠したクローン体』という成果は保護されるべき対象だが、研究に失敗した研究者はそうではない」

天井は淡々と語った。

「今夜の逃亡が成功したのならば、お前の身は学園都市が最後まで面倒を見てくれる約束になっている。私は……」

少しだけ息が詰まった。

「私は、処分されるだろう。レディオノイズ計画で、私は不必要に学園都市の闇に触れてしまった。野放しにはされないだろう…」
「そんな……」

ミサカ00000号が口を押さえて絶句する。
そんな彼女の肩に手を置いて、天井が噛んで含めるように言い聞かせた。

「分かってくれ。君を生かす方法はこれしかなかったんだ…
「嫌です… 嫌です…ッ! マスターが居ないと、私は生きていけません……」
「生きてくれ、頼む。僕のためにも、僕と君との子どものためにも…」
「嫌です、嫌ですよぉ……」

とうとう、ミサカ00000号が泣き崩れる。
小さな声で「嫌です、嫌です…」と連呼する。

「…そういうわけだから、できればこれからもこの娘と…… ぶふぉッ!!」

次の瞬間、天井が結標の右ストレートでぶっ飛ばされた。

「……これ、かなりムカつきません、先輩?」

ハァハァ、と荒く息を吐きながら結標が言う。
すると、麦野が、ゆらり、と立ち上がって「そうね…」と同意した。

「ヤルだけやって、妊娠させといて、あとはポイとか、最低とかそういうレベルじゃないわね…」

かなり頭に来ているのか、麦野の周囲に『原子崩し(メルトダウナー)』が漏電している。

「最後まで責任持つのが男だろうがぁ!!」

倒れた天井の顔面に、麦野のサッカーボールキックが炸裂する。
さらに天井が吹っ飛ぶ。

「はいはい、戻っておいで~」

が、結標が即座に『座標移動(ムーブポイント)』を使って手元に天井を引き戻す。

「しかも何? 『僕のため』って? オンナに十字架背負わせて楽しい? ねぇ、楽しい?」

結標の容赦のないストンピングが天井の顔面を連打する。

「がっ、や、やめッ!!」
「はい握手~」

助けを求めて必死に手を伸ばす天井の両手を、麦野が両手とも握る。そして、

「焦げろや」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ」

限定的に展開した『原子崩し(メルトダウナー)』によって、天井の両手の平が真っ黒に焼かれる。

「ま、マスターッ!!」

ミサカ00000号が慌てて駆け寄ろうとするが、それを婚后が途中でブロックする。

「おっと、今は近づかないほうが良いですよぉ」
「で、でもマスターがッ!!」

ミサカ00000号の心配通り、天井は美女2人の陵辱を一身に浴びてズタボロになった。
顔は原型を留めないほどに変形し、両手は骨が見えるほどに炭素化している。

「あがが……」
「…まぁ、このくらいにしておいてあげる」

既に気絶している天井を一瞥して、麦野が荒い息を整える。

「君ら、無茶するねぇ…」
「別にいいでしょ。お医者さんはそこにいるんだし」
「そりゃそうだけど……」

カエル医師がかなり引きながら苦笑いをする。

「マスターッ!!」

ようやく解放されたミサカ00000号が天井に駆け寄り、必死に天井に声を掛ける。

「マスター、マスターッ!!」
「ああ、見た感じ、命に別状はなさそうだね。もちろん、手当ては必要だけど…」

カエル医師が苦労して天井を担ぎ上げる。

「顔は… こりゃ、元の形には戻らないなぁ。うわぁ、手は再生できないから、義手になっちゃうねぇ…」
「酷い…… なんてことを……」

ミサカ00000号が涙で潤んだ瞳で麦野と結標を睨みつける。
だが、次のカエル医師の言葉で、その表情が変わった。

「これは、僕の病院に長期入院しないと駄目だね。研究段階の再生技術も使って… ああ、これは年単位で治療に時間がかかりそうだ」
「え…?」

ミサカ00000号がカエル医師を見る。
カエル医師は、全然格好良くないウインクをしてみせた。

「決して自分の患者を見捨てないのが僕のポリシーなんだね? 僕の患者になったからには、治るまでは、最後まで僕が面倒をみるよ。無論、統括理事会が何を言おうと関係は無いさ」
「そ、それじゃ…」
「まぁ、とりあえず君は元気な赤ちゃんを産むことを考えなさい。ああ、名前はしっかり2人で考えること、いいね?」

ミサカ00000号の瞳から、先ほどとは違った涙が流れ落ちた。

「はい… はい…! 元気な赤ちゃんを産んでみせます。と、ミサカ00000号は高らかに宣言します!!」

それから2週間後―――

「ローション塗った?」
「塗った」
「抗生物質飲んだ?」
「飲んだ」
「洗腸はちゃんとできた?」
「浣腸3回して水しか出てこなくなった」
「よくほぐした?」
「指3本余裕」
「……よし、入れていいわよ」

麦野のマンション「Meltykiss」、麦野のベッドルーム、通称「インランの間」(絹旗命名)。
クィーンサイズのベッドに仰向けになった麦野が、自ら両脚を高々と抱え上げて、臀部の深いところまで男に見せ付ける。

この2週間、暇を見つけては拡張を繰り返し、つい先ほどまでも男の指で散々弄られ続けた菊のつぼみが、妖しくその姿を見せた。

アナルはヴァギナより低い位置にあるため、麦野の腰の下にクッションを入れて位置を調節する。
高鳴る動悸を抑えつつ、長大なペニスの先端を麦野のアナルに軽くキスさせると、麦野も緊張しているのか、アナルの皺がきゅ、と収縮した。

「……もうカミングアウトしちゃうけど」
「え、なに?」

紅潮した頬を見せたくないのか、麦野がそっぽを向いたまま言う。

「アタシ、アナルは初めてだから」
「え、あ、うん……」

この2週間、『退院したらアナルセックスさせたげる』と、麦野主導で準備を進めてきたから、この発言は正直意外だった。

「それじゃ、さ…… 無理しなくても良いんだぜ?」
「ううん、いいの… ていうか、その……」

麦野にしては珍しく言いよどむ。

「……処女、貰って欲しい。ここしか残ってないから……」

消え入りそうな声でそう呟く。
上条は、心臓の鼓動が一段階早くなるのを感じた。

(やべぇ… 今すぐガンガン犯してぇ……)

オンナにここまで言われたら後には引けない。
そもそも、上条本人も楽しみにしていたのだ。

「じゃ、入れるぜ…」
「うん、ゆっくりね……」

亀頭が肛門にめり込むと、麦野が「はぁぁぁぁ……」と腹式で呼気し、同時に下腹部に力を入れていきんだ。

「お、おおぉぉぉぉ…!」

抵抗のあった肛門が、ふわっ、と口を開き、その間に上条はエラの張った亀頭を完全に肛門の中に収めることに成功した。

「ちょ、チョイストップ!」
「お、おう!」

違和感が凄まじいか、それとも痛みがあるのか、麦野がペニスの進行を止めて、「ふぅー… ふぅー…」と長く長く深呼吸を繰り返す。

「…落ち着いた?」
「うん、いいよ… 痛がっても構わないでいいから、最後まで入れて…」

麦野が腕を伸ばして上条の首に手を回す。
いつもだったら、これは「キスして」の合図だが、今は違う意味があると上条は感じた。

「いくぞ…」

宣言と共に、ペニスを直腸に、ズズッ、ズズッ…! と進入させる。
途端に麦野の顔が苦痛に歪む。

本来は「出す穴」に「入れ」られる違和感と、狭い直腸を長大なペニスが蹂躙する圧迫感を感じる。

平均よりもずっと大きい上条のペニスを初めて受け入れるのだ。
きちんと準備をしていなければ、恐らく佐天のように肛門が裂けてしまっていただろう。

「大丈夫か…?」
「平気… 平気だから…… 最後までお願い……ッ」

首に回した手が背中に降り、思わず爪を立てて、カリカリ、と上条の皮膚を削る。

事前にローションを直腸内に注入してあったせいか、肛門を抜けてからはそれほど抵抗を感じない。

「はあああぁぁぁぁぁ!!」

麦野が肺腑の空気を全部吐き出すような大呼気をすると同時に、上条が最後まで腰を進める。
互いの陰毛がわずかに触れ合い、上条のペニスが全て麦野の直腸に収まった。

「……入った?」
「ああ、入った、全部……」

思わずホッとして脱力する麦野の顔に、上条がキスの雨を降らす。

「ぎゅってして… 強く……」

挿入したペニスがあまり動かないように注意して、上条は言われた通り麦野を強く抱きしめた。

「…ありがと」
「うん? いや、初めてなら優しくしねぇと」
「そうじゃなくて… あの時無茶して助けてくれたこと……」
「…ああ」

垣根との戦闘のことだと思い至り、上条は得心して頷いた。

「もうちょっとカッコよく倒せたらよかったんだけどな、ハハ…」
「なに言ってるの。十分カッコよかったわよ」

麦野が上条の頭を自慢の豊乳に押し付ける。
甘酸っぱい麦野の匂いが、上条の鼻腔いっぱいに広がった。

「あんなにボロボロになってさ… こんな色情魔の為に…」

上条を幸せ抱擁から解放して、正面に見据える。

「前に言ったかもしれないけど、もう一度宣言しておくわね。アンタはアタシの男で、でも、それ以上にアタシはアンタの女よ」

真剣な目つきで言う。

「だからね…… 心からのお願い… あんまり無茶しないで……」

スッ、と麦野の顔が近づき、上条と静かに、緩やかに口唇を合わせる。

「あぁ、分かったよ。出来る範囲で無茶することにする」
「…はぁ、言うだけ無駄なのかしらね」

溜め息を吐くが、その表情は穏やかなものだ。

「ね、動かないの?」
「いや、だってきつそうだし」
「少しぐらいなら我慢できるわよ。それとも、私のお尻、気持ちよく無いの?」

麦野の表情がやや不安げになる。

「まさか… 入り口はぎゅうぎゅう締め付けてくるし、ナカはあったかいし… すげぇ気持ち良いよ」
「じゃ、動いて。アタシも気持ちよくシテ…」

ここまで言われて動かないのは、男子としての沽券に関わる。

上条は「じゃ、いくぞ」と前置きして、ゆっくりと埋め込んだペニスを抜き始めた。

「おおおぉぉぉぉ…!」

長くて太い肉棒がゆっくりと抜かれる感触に、麦野が擬似的な排泄感を覚える。

(こ、これ… 結構良いかも……)

人間は、何かを「出す」際に快感を覚える生き物だ。
エラの張った亀頭が、腸壁をごりごり擦られながら排出するのは、麦野にとって未体験の快楽だった。

「それ、良い…」
「ん?」
「出すの… 出される時、気持ち良い…」

元々、麦野は快楽に対して感度が高い。
初体験のアナルセックスだが、麦野の身体はしっかりとそれに順応しつつあった。

「こうか?」

再び根元までペニスを押し込んで、今度もゆっくりとペニスを引き出す。

「あぁぁ… うん… それ、良いわ… 気持ち良い…」

ズズッ、ズズッ、と亀頭が腸壁を往復して擦る。
単調で静かな抽挿だが、上条のほうもこれはこれで気持ち良いものだった。

(肛門の締め付けってすげぇな…)

ペニスの竿を包む肛門の締め付けがヴァギナの比ではない。
まるで、強力な輪ゴムで締め付けられ、ごりごりと上下にしごかれているようだ。

「う、締まる…ッ!」
「ん? コレが良いの?」

呟いた上条の一言で察した麦野が、肛門をぎゅっと締める。

「うわッ!」
「あ、痛かった?」
「いや、全然… すっげぇ締まったから驚いただけ…」

肛門括約筋は随意筋であるため、かなり能動的に動かすことができる筋である。
元々、男を悦ばせるために色々と鍛えている麦野だから、この筋はかなり自由に動かすことが出来た。

「こんな感じ?」
「おっ、絶妙…」

本気で気持ち良いのか、上条が目を閉じて深呼吸しながら抽挿を繰り返す。
ぬめりが少なくなるとローションを追加する。

その内に、だんだんと抽挿のスピードが速くなってきた。

「あっ、あっ、あぁぁ……」

ぞりぞりと腸壁を擦られて、麦野が歓喜の喘ぎを上げる。
感じている証拠に、ペニスを飲み込むアナルのすぐ上の穴から、夥しい愛液が垂れ流れている。

「はぁ、はぁ、はぁ… くっ…」

感じているのは上条も同じで、既に何度も射精の波をやり過ごしている。

不意に、上条と麦野の視線が交錯した。

「そろそろ…」
「うん… 最後は激しくシテ…」

そう言われて、上条が改めて麦野の両脚を抱え上げ、身体を二つに畳んだ屈曲位にする。

「…イクぞッ!!」

短い宣言と共に、上条が猛烈なピストン運動を開始する。

びちゃ、びちゃッ!!

いつものセックスとは位置がずれ、上条の下腹部が麦野のヴァギナを叩く。
そのたびに、溢れた愛液がしぶきを上げて飛び散る。

「あッ、すごッ… すごい……ッ!! ごりごり、アタシのお尻がごりごり削られてるぅ……!!」

完全にアナルセックスの感じ方を覚えたのか、麦野が通常のセックスと変わらぬ喘ぎ声を上げる。
フリーになった両手がベッドのシーツを引き絞り、なんとか押し寄せる快楽に耐えようとする。

「イクならイッちゃえよッ! アナルセックスでイッちゃえ!!」

こちらもあまり余裕がない上条が激しく腰を動かして叫ぶ。

「だって、だってお尻だよッ!? 絶対に痛いまま終わると思ってたのにッ!!」
「それだけ、俺と沈利が愛し合ってるってことだろッ!」
「ばかぁ!! こんな時にそんな事言わない!!」
「こんな時だからじゃねぇか!」

麦野を気持ちよくイカせたい。

その気持ちが、ほとんど無意識に上条の手を動かした。

「あ、馬鹿、今弄ったらッ!」

上条の左手が伸びて、固く隆起したクリトリスを摘む。
少しの間、抽挿を止めて麦野の顔を覗きこむと、麦野は涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにして「イヤイヤ…」と首を振った。

「おかしくなる… 今弄られたら、絶対におかしくなっちゃう…」
「…見せてくれよ、おかしくなった沈利を…ッ!」

ぐにゅ。

猛然とピストンを開始すると同時に、左手で固くしこったクリトリスを押し潰す。
瞬間、

「ああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

部屋中どころか、マンション中に響きそうな大声を上げて、麦野が絶頂に達した。
同時に、痛いくらいにペニスを締め付けられた上条も限界に達する。

「く、出る… 出すぞッ!!」

ドクドクドクドクドクドク……!!

信じられないくらい大量の精液が、麦野の直腸に注がれる。
子宮に掛けられるのとは、また違った精液の注入に、麦野の下腹部が悦ぶように痙攣した。

「はーッ、はーッ、はーッ!!」

数百メートルの全力疾走を終えた後のように、2人が荒く激しい呼吸を繰り返す。

「はぁ、はぁ… 抜くぞ?」

声を掛けて、上条が萎えたペニスをずるずると引きずりだす。
それまで限界に拡げられていた肛門が閉じるより早く、注入された精液が、ごぽっ、とあふれ出てきた。

「うわ… エロ……」

ヴァギナから精液が逆流するシーンは何度も見てきたが、これがアナルになるとまた違った淫靡さがあった。

「えっと、たしか、終わったらすぐに洗うんだったよな…」

抗生物質は飲んでいるが、それでも感染症が怖い。
事前のレクチャーではそう教えられていたが、

「……待って、アタシが綺麗にするから」

麦野が緩慢な動作で上条にのしかかると、萎えた上条のペニスを大きく口を開けて頬張った。

「お、おい… 今は」
「いいひゃら…」

いくら浣腸を繰り返して綺麗にしたとはいえ、今の今まで腸内に入っていたそれを、麦野は愛おしそうに喉の奥まで頬張った。

上条にしてみても、禁止されていたから、かなり久しぶりのフェラだ。
身をもって知ってる麦野のテクニックに、再び血液がペニスに集まるのを感じた。

「かひゃくなっら…」
「沈利にフェラされたらそうなるって… つか、解禁… で良いの?」

ちゅぽん、と堅くなったペニスを口外に出して、麦野が言った。

「ホントは病室でしてあげるつもりだったんだけどね。大部屋だったから遠慮したのよ」

そう言って、除菌用のウェットティッシュを使って、丁寧にペニスを拭き清める。

「うわ、スーッってする…」
「まぁ、こんなもんで良いかしら…」

しっかり除菌したのを確認すると、麦野は改めてベッドにあがり、上条に向けてM字に開脚した。

「さぁ、次はドコの穴を使うの? …ココ?」

麦野が口を指差す。

「今日は喉フェラだってしてあげるわよ… それともココ?」

未だ精液を垂れ流すアナルを指差す。

「コツは掴んだから、貴方のおちんぽをごしごし擦ってあげるわよ… それとも、ココ?」

愛液でぐずぐずになったヴァギナを指差す。

「いつか貴方の子供を孕む、その予行練習、しない?」

頭がクラッとなる。
その誘い方は卑怯すぎる。

「…ンなの、全部味わうに決まってんじゃねーか!」

理性がぷっつんした上条が、乱暴に麦野のヴァギナにペニスを挿入する。

愛の睦み事は、まだまだ終わらない……

――とある病院のとある病室

「マスター、マスター。おシモの世話は如何でしょうか? と、ミサカ00000号が尿瓶を片手に申し上げます」
「…つい30分前にやってもらったばかりだ」
「では、マスター。性処理の方は如何でしょうか? と、ミサカ00000号が指でのの字を書きながら奉ります」
「いらん… というか、頼むから病室でそういう事を大声で言わないでくれ…」
「…わかりました、と言いながら、しれっと右手をマスターの下衣のナカへ…」
「やめんかッ!」
「……………ケチ」
「あのなぁ…… それより、お前の体調はどうなんだ?」
「はい、万全です。赤ちゃんも、エコー検査で順調に生育していることが判明しました」
「そうか…」
「3ヶ月だって… そう、お医者さんが言ったの…… 貴方の子よ…… と、ミサカ00000号が昼メロ風に言い放ちます」
「ああ、そうだな、私の子だ……」

天井亜雄が、苦労して視線をミサカ00000号の腹部に向けた。

「元気に育てよう。…2人で」
「…はいッ!」

病室に、涼しげな風が吹いた気がした。



                                                         第3話 妹編 了

次回予告。


「え、沈利って、お嬢様だったの?」
「上条当麻ッ、貴様鼻の下を伸ばしてるんじゃない!」
「きょうこそははまづらと…」
「超潮風が気持ち良いですッ!!」
「…アタシの別荘だってこと、わすれるんじゃないわよ?」


第4話
「砂浜でセックスするときは、立ちバックでやんないとまんこに砂が入って怪我するのよね」



「ええと、自己紹介をします。私は、天草式十字凄教所属の魔術師、姫戸です」

次回は海で水着回で新キャラでエロエロな予定は未定。

はい終了。

次回投下はマジで未定。
ちょっと忙しくなるので。多分、1月中はないです。

1,2時間でちゃちゃと書いた短編は投下するかもですが、本編は2月以降に。

それでは次回。

ちょっととある部分の描写に時間がかかっております。
まぁ、明日には投下できるんじゃね?

ようやく書けたから投下。

今回は20k強。


麦野のマンション「Meltykiss」

20畳ほどの広いリビングで、麦野沈利はソファに身を沈めて携帯電話を耳に当てていた。

足元では、恋人である上条当麻が真剣な顔でペディキュアを塗っている。

「……で、結局あんたらは介入の事実を認めないわけね」
『それは上の判断って、何度もいってるでしょーが。アタシは単なるアナウンサーだし」
「ざけんなよ、ったく……」

研究者の逃亡を利用した『暗部』の間引き事件から2週間後。
上条の骨折も癒え、麦野は満を持して『電話の女』を吊るし上げようと連絡したのだが、その返事は玉虫色のものだった。

『だいたい、アンタだって分かっていながらコッチの話に乗ったんでしょ? 怒るのはお門違いだと思うんだけどなぁ』
「こっちは重傷者2名、軽症者2名出してんだ。納得いく説明を貰うのは当然だろうがッ!」

あの事件で麦野率いる『アイテム』は、学園都市側からの操作された情報により、危ない橋をいくつも渡ったのだ。

『……正直、ソレについての感想は「よくやった」と言った所ね。誰も死なないとは予想していなかった』
「てめぇ……」

麦野の声に明らかな怒気が混ざる。
『電話の女』に対して怒りを露わにするのは珍しいことではないが、今回は明らかにその質が違った。

「……使い捨ての駒だってのは理解してるけどよ、声に出して言うんだから、それなりの覚悟はしてるんだような、あぁ、おい…!」

思わず上条の手が止まるほどの冷たい声だった。
知らず、上条の喉が、ごくり、と鳴る。

「今回の『暗部の間引き』で、さぞ予算や資源に余裕ができたんだろうさ。だがな、『暗部』の絶対数が減るって事は、互いに牽制する必要もなくなるって事なんだぜ?」

声がますます冷たくなっていく。

「……首輪の管理はしっかりやっておけよ!」
『ええ、そのつもりよ。ついては、アンタたち『アイテム』の24時間監視を、1週間全面的に解除するわ」
「……は?」

24時間監視とは、即ち、麦野が直前に言った『首輪』のことである。

学園都市内に居る限り、彼女たち『アイテム』の行動は常に把握されている。
それがどんな手段なのかは分からない。だが、確実に『首輪』は嵌められているのだ。

『いちおー、期間内なら学外への外出許可も出るわよ。行き先ぐらいは連絡してちょうだい』
「……なに考えてやがる?」

低い声で麦野が問う。

『……「よくやった」。そう言ったはずよ』

そう言うと、『電話の女』は二、三、外出の際の連絡手段について言って、そのまま唐突に電話を切った。

「………チッ」

通話が終わった携帯電話をしばらく忌々しそうに見つめて、麦野は軽く舌打ちを打った。

「チクショー、調子狂うわ…」

パタン、と携帯電話を畳むと、足元で一心不乱にペディキュアのデコレーションをしている恋人を見る。

「ねぇ、当麻ー」
「…ん? ちょっと待て、今、良いカンジでデコできてるから」

この男はけっこう手先が器用で、かつ、職人気質な部分があるらしく、毎日のペディキュア塗りが最早趣味になりつつあった。

「……………うし、よく出来た。今回のテーマはクール&キューティーな。水色系がキレイにはまったぜ! んで、なに?」
「教えたアタシが言うのもなんだけど、上達したわねぇ…」

きれいにデコレーションされたペディキュアを、ためつすがめつ眺めて麦野が感心した声を出す。

「水色…… 水…… うん……」

なにやらコクコクと頷いた。

「決めた」
「え、なに?」
「海行くわよ、海!」

すくっ、と立ち上がって、麦野は高らかに宣言した。










第4話「砂浜でセックスするときは、立ちバックでやんないとまんこに砂が入って怪我するのよね」









.

「海だあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「超青いですぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅうぅ!!!!!!」

レンタル・ミニバスの窓をいっぱいに開けて、フレンダと絹旗が身を乗り出して叫ぶ。

学園都市では滅多に体験できない鼻につく潮風。
鬱蒼とした自然林から鳴り響く蝉の鳴き声。

麦野率いる『アイテム』の面々プラスαは、学園都市から『外出』して、『外』の海水浴場へとやってきたのだった。
学園都市23区から定期航空機に乗り、遠く離れた県営飛行場に降り立ち、さらにレンタルバスに揺られて5時間。
待望の潮風は、溜まった移動ストレスを解消させるに十分な威力があった。

「海かぁ… 無茶苦茶久しぶりだなぁ…」

バスの運転席で、浜面仕上が嬉しそうに呟く。
幼い頃、両親に連れられて海に行ったのは覚えているが、それはおぼろげな記憶だ。
しかし、こうやって潮風を身近に感じると、まざまざと当時の風景を思い出すことが出来た。

「おぅ、浜面。運転変わらなくていいか?」

それなりに広いバス内でも、窮屈そうに身を屈めてそう言ったのは駒場利徳だ。

麦野が『アイテム』メンバーに、

「非常に親密、かつ口が固くて『表』の人間じゃなければ誘って良いわよ」

と言ったがために、フレンダがかなり強引に連れ出したのだ。

「ええと、次の休憩所で頼むわ。路肩に寄せるスペースねぇし」
「おお、そうか… 遠慮なく言ってくれよ」

どことなく残念そうに言って、駒場が自分の席に向かう。

席に向かう最中、サングラスに麦わら帽子を被った麦野にぎこちなく頭をさげる。

「……ども」
「ヘンに気を使わなくて良いわよ」
「…………ども」

言葉少なにそう言って、フレンダの前の席(2人分)にどっかと座る。

(気まじぃ……)

一応、彼は能力者による『無能力者狩り』に対抗すべく組織した、武装無能力者集団(スキルアウト)のリーダーだ。
昔から知っているフレンダはまだしも、能力者の最高峰である超能力者(レベル5)である麦野に対しては、複雑な感情を拭いきれないのだ。

さらに、『見知らぬ女性の集団に参加する部外者』という立場は、馴染むまでかなり気まずいものだ。

「ねぇねぇ、利徳~~! 海だよ、海ッ!! エメラルドグリーンの碧い海だよ~~ッ!!」
「見えてる。あと、身を乗り出すな、あぶねぇ… うぉい!!」

前方の座席から身を乗り出していたフレンダが、駒場が喋っている途中にそのまま座席を越えて駒場にダイブした。
慌てて駒場がフレンダの小さな身体をキャッチすると、そのままフレンダは駒場の膝の上に乗って座席の窓を開けた。

「うっひゃ~、気持ち良い~~!!」
「お前なぁ……」

あの壮絶な初体験からこっち、フレンダは完全に恋人気取りだ。
男のけじめとして、それは素直に受け入れた駒場だが、衆人監視でイチャイチャするのは流石に精神的に辛い。

「フレ…」
「フレンダ~~! はしゃぐのも良いけど、砂浜でトラブル起こさないでよ!」

駒場が注意するより早く、麦野がサングラスをずらして睨みつけながら言った。

「わ、わかってる訳よ!」

麦野に一喝されて、フレンダが駒場の膝の上で大人しくなる。

言葉なく開いた口を緩慢に閉じて、駒場はもう一度「ども…」と呟いた。

――真夏の海水浴場。

海水浴客で賑わう砂浜に、上条・浜面・駒場の3人が適当な場所に荷物を降ろした。

女性陣は着替えや準備に時間がかかるので、男どもは諸々の準備をするために手早く着替えて場所を確保したのだ。

「だぁぁぁ… 気ぃ使って疲れた……」

手際よくパラソルやポータブル椅子、断熱マットなどを準備し、一通りセッティングが終わると、駒場が大きな身体をマットに横たえて嘆息した。

「まぁ、なんと言うか、お疲れさん、旦那。…ほれ」

苦笑した浜面が駒場に冷えた缶ビールを差し出し、自身も一缶空ける。
明らかな未成年者違反だが、周りの男性客もすべからくアルコールを摂取しており、咎める者も居ない。

「浜面、運転は?」
「ここから泊まる所までは運転手が来るってよ。だから気兼ね無しだ」
「そりゃ良いね」

嬉しそうにプルトップを引き、喉を鳴らしてゴクゴクとビールを喉に流し込む。
よく冷えた炭酸が冷えた身体に拡散し、なんとも言えない幸福感に包まれる。

「ぷはぁ! うめぇ… おぅ、上条は?」
「あ、くださいください」

パラソルの支柱を思いっきり捻じ込んだ上条が、無げ渡された缶ビールを手にとって、これもおいしそうにあおる。

「くはーっ、うめぇ… 海っていいなぁ……」
「ああ、一瞬で生き返ったぜ」

ようやく一息ついて余裕ができたのか、駒場の口が軽くなる。

「つーか、なんで俺なんだよ… フレメア誘えばいいじゃねぇか……」
「フレメアちゃんは完全に『表』の人間だから駄目だって、麦野が却下したらしいぜ。それに、フレンダは『彼氏』と来たかったんだよ」

浜面が、やけに『彼氏』という言葉を強調して言う。

「……おぅ、久しぶりにスパーでもやっか?」
「へへ… 砂地はアマレスの独壇場だぜ? 得意の足技がどんだけ使えるかな…?」
「朝錬に砂浜ダッシュとか『一歩』でやってたなぁ…」

それなりに脳筋な3人が、妙な意味でボルテージを上げていると、目の前を地元の女子大生らしきビキニ集団が通り過ぎた。

「…………………」
「…………………」
「…………………」

学園都市は、例外を除いてハイティーンまでの学生とアラサーオーバーの教師しかいない。
滅多に見ない20台前半の成熟した水着姿を、男どもの眼が自然と追尾する。

「………………いいな」
「………………いいね」
「………………いいッスね」

若い衝動に3人が浸っていると、遠くから「あ~~~~ッ!! 超鼻の下伸ばしてますッ!!」という甲高い声が聞こえた。

「お、おお、着替え終わったか?」
「へっへー、私は超服の下に水着を着込んでいましたからね! 1人で先に来たおかげで、3人の浮気現場をばっちり目撃しましたよ!」

年齢に似合ったスポーティなタンクトップビキニを着た絹旗が、小悪魔めいた笑みを浮かべて言い放った。

「いやッ! 別に浮気じゃねぇし!! 見てただけだし!!」

上条が慌てて叫ぶ。
麦野の嫉妬など、考えるだけで恐ろしい。

「そ、そうだぜ! 見てただけだよ!」

こっちは、滝壺にあらぬことを吹き込まれるのを恐れた浜面だ。

本人たちの知らない一方通行な両想いをこじらせている彼は、この旅行で滝壺に告ろうと密かに考えているのだ。

「ほほぅ、超そうですか… 本当ならば、麦野や滝壺に超注進するのが私の使命ですが… ほら、超何か言うことありませんか?」

そう言って、薄い胸を張って仁王立ちする。

一瞬、「なに言ってんだコイツ?」な表情をしていた2人だが、絹旗の言わんとすることを理解して、慌てて水着に注目した。

柄はオーソドックスなストライプだが、ローティーンの絹旗にはとても良く似合っている。
普段はボーイッシュな格好を好む絹旗だから、『水着』という非日常的なギャップが余計にそう感じさせるのだろう。
決してセックスアピールが高いわけではないが、ジュニアアイドル的な可愛さが十分に引き出されていた。

「可愛いッ!! 絹旗すげぇ水着姿可愛い!!」
「ああ! セクシーで超キュートだ! ナンパされるかもなッ!」

機関銃のように褒めちぎられ、絹旗がますます薄い胸を張る。

「え~、別にそんなことは… 超々ありますけどー、お2人とも超想い人がいらっしゃるのにー、こんなせくしぃ少女に超悩殺されていいんですかー?」
「いやいや、マジで可愛いって…… え~と…」

他に褒める言葉を捜していると、不意に周囲の男性客から「おっ!」とか、「すげ…」といった歓声があがった。

「うん?」
「こぉら、早速馬鹿やってんじゃないわよ」
「…………………………すげぇ」

ポツリ、と上条が呟き、浜面、駒場が、ゴクリと喉を鳴らした。

歓声の原因は、きわどいハイレグ水着を着た、麦わら帽子にサングラス姿の麦野だ。

布地の極端に少ないハイレグビキニは、着る者によっては下品な印象を与えてしまう。
しかし、プロポーション抜群の麦野が着ると全く違った。

トップはオレンジ色の三角形ブラ。
Fカップオーバーのどっしりとした質感のバストを、乳房の総面積の1/3ほどの布地で吊り下げるように支えている。
しかも、砂浜に足を取られないように少し跳ねるように歩いているおかげで、弾むように豊乳が縦に揺れる。
縦に、揺れる。
見ている側が零れ落ちるのではないかと心配になるぐらい見事に揺れる。

さらに素晴らしいのは、豊満なバストからは想像できない、キュッ、と美しく締まったウェストだ。
女性らしい柔らかさを残しつつも引き締まったそこは、わき腹のところに2本の美しいラインが走っている。
それは程よく腹筋が鍛えてある証拠で、上条が「使ったことないけどオナホより気持ち良い」と評する名器の源でもある。

また、ヒップも素晴らしい。
腰の位置が日本人離れした高い位置にあるだけではなく、お尻の山頂が高い位置で盛り上がっている。
ビキニも超ハイレグでお尻の内側半分しか覆っていないので、むっちりとした『丸尻』が歩くたびにコレでもかと横に揺れる。
横に、揺れる。

もちろん、スラリと伸びる素足も素晴らしい。
密かに足が太いのを気にしている麦野だが、むしろその頭身から考えれば丁度良い太さで、非常に肉感的な美しさを備えている。
あえて変態的な表現を使うならば、「頬をすりすりしたい太もも」とでも言うべきだろうか。
美脚を越えた蕩脚とでも言うべき美パーツがそこには存在した。

全体的に目に毒とかそういうレベルではない。
普段全裸を日常的に見慣れている上条でさえ開いた口がふさがらない。

周囲の一般男性陣は、思わず「ありがとうございますッ!」と両手を合わせて拝み、
女性陣はやっかみや嫉妬心をはるかに超越して「別次元って居るのね……」と完全に白旗を上げていた。

「きぬはた~、馬鹿晒してんじゃないわよ!」
「うぅ~、麦野が出てくる前に超賞賛を浴びたかっただけじゃないですかー。こうなると分かっていたから超早く着替えてきたのに…」
「そういう狡い考えしてるから成長しないのよ。 …で、どう?」

軽く絹旗をたしなめた後、麦野が上条に向いて軽く胸をそらす。

「完璧… いや、もう… 言葉がでねぇ……」
「ふっふっふ… そうでしょうとも。有り難がって見物しなさい!」

傲岸不遜な物言いがまたよく似合う。
無いものを誇るのは滑稽だが、本物を誇られては、ただただ頭を下げるしかない。

「いやぁ… マジですっげぇな… なんかうら……」
「はーまーづーらー…! アンタが褒めるのはアッチでしょ?」

麦野が、クイ、と親指を向けると、そこには残る2人の女性陣が、正反対の表情で立っていた。

「やっほぅ! 利徳を悩殺しにきたぜぃ!!」
「あ、あの… はまづら、あんまり見ないでね…」

元気よく手を振るのがフレンダ、恥ずかしそうに身を縮めているのが滝壺理后だ。

フレンダの水着は女性陣の中で一番布地が小さい。
ボトムは麦野とほぼ変わらない大きさの黒のハイレグビキニだが、そもそもお尻の大きさが違うのであまり露出が高くは見えない。
しかし、金髪碧眼に色白ボディに黒のハイレグビキニは恐ろしく映える。
トップがお腹辺りで交叉するスリングショットなだけに、妖しい色気を醸し出している。

「ど~~ぉ? 利徳、興奮したぁ?」
「…………………アホ言え」

冷めた口調でぶっきらぼうに言い放つが、フレンダを完全に直視できないところを見るにかなり衝撃を受けているようである。

「あ、あのさ…」
「うん…」
「あの… 凄く…」
「うん……」

対してこちらは浜面と滝壺である。
『アイテム』(と浜面)全員がワンピースで来るだろうと想像していた滝壺だったが、
なんとなんと、完全に予想外のビキニスタイルである。

フリルの付いた花柄のレモントップは、清楚な絹旗にとても良く似合っている。
着やせするタイプなのか普段はあまり意識されないが、滝壺も相当な巨乳の持ち主である。
さらに、肉感的な麦野とは違って、線の細い滝壺の巨乳は、体型とのギャップが凄まじい。
全体的にパーツの小さな顔、鎖骨の浮き出た華奢な肩、それを経由して、当然薄いであろう胸部だけが、ありえない角度で盛り上がっているのだ。
麦野やフレンダと違って、トップは乳房全体を覆うタイプのモノだが、それでもずっしりとした重量が視覚から伝わってくる。
儚げな印象とも合わさって、ギャップによる破壊力は相当なものだった。

「凄く… 可愛い……」
「うん……///」

周囲からの「お前ら早く付き合えよ」光線を一身に浴びて、浜面と滝壺は暫く2人の世界に浸っていた。

「どぉぉぉぉりゃぁぁぁぁ!!!! 超超回転海老ぞりスパイクぅぅぅ!!」
「なんのぉ!! 結局そのコースは読んでた訳よぉぉぉぉ!!!!」

波打ち際で繰り広げられる仁義無きオンナの戦い。

学園都市から持ち出した『超高級999層重ねアイスプディング』を賭けて、ちびっ子2人が死闘を繰り広げている。

「あはー…… 北北西から信号がきてるよ、浜面…」
「えーっと、北北西って、あっちか…」

こちらは、巨大な天蓋付き貸し浮き輪に乗っかって海面に浮かぶ滝壺を、浜面が望む方向にバタ足で牽引している。

「浜面はこっちに乗らないの?」
「い、いや… 2人で乗るのは狭いし…」

それが滝壺の決死のアタックだと気付かない、馬鹿な男である。

「乳ぐらい揉みゃいいのによー、根性無しが……」
「それが出来たら、とっくにくっ付いてるでしょ」

泳ぐ気も遊ぶ気も無い駒場は、炎天下で汗が流れることを良いことに、さっきから大量のアルコールを消費している。
その駒場の呟きに答えたのは、パラソル下の断熱マットにうつ伏せになり、恋人からせっせとサンオイルを塗ってもらっている麦野だ。

「…そうだな、ちょっとは手助けしたほうが良いのかな」
「フレンダから逃げ回っていたアンタにゃ無理でしょ?」

容赦ない麦野の言葉に、駒場が、ぐっ、と言葉を詰まらせた。

「ま、しっかり責任取ってるのは偉いと思うけどね」
「……別にフレンダを嫌ってたわけじゃないからな」

駒場が自然に答える。
アルコールの助けか、それとも少しは慣れたのか、麦野ともようやく緊張せずに会話できるようになっていた。

「なぁ、アイツが足を洗うことってできねぇのか?」

前々から疑問に思っていたことを率直に訊いた。

「…学園都市の中じゃ、絶対に訊かないでよ、それ」
「分かってるよ。だからココで訊いてるんだ」

麦野が「むー…」と唸ったあと、「難しいんじゃない」と答えた。

「本人が足を洗う気ないし、そもそも、アタシもフレンダも入ろうと思って『アイテム』に入ったわけじゃないからね」
「そうか… すまん」

あまり触れてはいけない部分の話だと察して、駒場は口を閉じた。

たったったったった……!

「げっとぉぉぉぉぉ!!!!」

微妙な雰囲気の中に、勝負に勝利したフレンダが猛烈な勢いで駒場にダイビングした。

「うぉ!」
「りとくー! アイスゲットしたぜぇ!! 約束通り2人で食べよ!」
「んな約束… あぁ、わかったわかった! 引っ張るな!」

小動物にまとわりつかれ、巨人がのっそりと身を起こす。

「ちょっと行ってくる」
「あいよ」

フレンダが駒場の海パンをぐいぐいと引っ張る。

そんな2人をチラリと見て、麦野は誰にも見えないようにクスリと笑った。

「胸の下もちゃんと塗りなさいよ」
「わーってるって。しかし、すげぇ日差しだなぁ…」

学園都市も、大概、日差しが強かったが、この砂浜の日差しはさらに強烈だ。
さっき試しに海に足を浸してみたが、砂浜はともかく岩場の塩水は、温泉を思わせる熱湯に変わっていた。

「でも、なんでまた海に?」
「別に、単なる思い付き… それに、気分も変えたかったしね」

そう言われて、上条は『間引き』のときの戦闘を思い出した。

「……そうだな、確かに気分転換は必要だな」
「でしょ… ちょっと、胸の下って言ったでしょ」
「うつ伏せじゃ塗りにくいよ」
「まったく…」

一息溜め息を吐いて、麦野がゆっくり身を起こして割り座になって座った。

「これでいいでしょ?」
「いいけど、この体勢だと…」
「気にしないでさっさとやる」

ピシャリと言われて、しぶしぶ上条が手にサンオイルを乗せて背後に回る。
そーっと両手を前に回して、下乳から手を潜り込ませる。

(うっわー、見られてる……)

密かに注目されていたのだろう。
周囲の男性の眼がいっせいにこちらに注目されるのが分かる。

「んぅ……」

背後から下乳にサンオイルを塗る様は、どう見ても胸を愛撫している図だ。
麦野は平静としているが、こういう時は男のほうが気恥ずかしい。
それなのに、麦野は更なる要求を出してきた。

「どーせだから、おっぱい全部に塗ってちょうだい」
「……楽しんでるだろ、てめー」

上条の言葉に麦野がニヤリと笑うと、素早くブラの紐を解いた。

「うわっ!」

パサリ、とブラジャーが落ちる前に、なんとか上条が麦野の豊乳を鷲掴みにして周囲の視線から隠す。
いわゆる、手ブラの状態だ。

「お、お前な…」
「あはは! オイルは私が垂らすから、しっかり塗りなさい」

楽しそうな麦野の声に、上条はやれやれと溜め息を吐いた。

「うわぁ…… 超迷惑な超バカップルですね……」

滝壺たちと合流した絹旗がウンザリした声で呟く。

「しばらく戻れねぇな、あれは……」
「いいなぁ…」

滝壺の指を咥えた発言に、浜面がドキっと胸を高鳴らせる。

「えっと… ああいうのに憧れるの?」
「うん、うらやましい……」

そう言って、滝壺が浜面をチラチラと見る。
しかし、ここでも浜面のヘタレが発動する。

「そ、そうか…」

と言って場を濁そうとする浜面が、突然、

「ぎゃッ!!」

と悶絶して飛び上がった。

「ど、どうしたの…?」
「い、いや… ちょっと海草が触れたかな、はは…」

騒動の原因は絹旗だ。

水中で、にゅ、と伸ばした手で、遠慮無しに『窒素装甲(オフェンスアーマー)』を使ってわき腹を捻り上げたのだ。

(なにすんだよッ!!)ボソボソ

滝壺に聞こえないように囁いた浜面に、絹旗が鬼の形相で答える。

(なにするじゃないですよ、この超超朴念仁ッ!! オンナがここまで超アプローチしてるのに何スルーしてるんですかッ!!)

『仕事中』でもここまで真剣な表情はしないだろう。
それほどの形相で睨みつけられて、浜面が言葉に詰まる。

(良いですかッ! もうこの場で決めてくださいッ!! もし、決めずにノコノコと戻ってきたら…)

水面から出した手をコキリと鳴らす。

(握りつぶします……!)

ゾッとするような声でそう言われ、浜面は思わずコクリと頷いた。

「あれ、絹旗戻るの?」
「いえ、折角なので超泳いできます」

シュタ、と手を上げると、絹旗はビート板を手にものすごい勢いのバタ足で泳いで行った。

「? ヘンだね、絹旗」
「お、おう…」

不思議そうに絹旗を見送る滝壺に、浜面が裏返った声で返事をする。

「うん? 浜面もヘンだね?」
「いや…」

口ごもり、しかし、全身の勇気を拾い集める。

(勇気出せよ、おい、俺ッ!!)

ゴクリと喉を鳴らして、滝壺を正面から見る。

「な、なに……?」
「た、滝壺!」

高鳴る鼓動を押さえ込もうとして押さえ込めず、何回も深呼吸を繰り返す。

「あのさ、滝壺…」
「うん…… 俺さ… ずっと言いたかったことがあって……」

(これは… ようやく…?)

勇気を出した度重なるアプローチがついに効果を出したのか?

滝壺が内心ワクワクしながら浜面の次の言葉を待つ。

だが、浜面はやはりヘタレ属性なのであった。

「た、滝壺は、俺のことどう思ってるの?」
「………えぇー」

そりゃーないぜーと、滝壺ががくっと肩を落とした。

「いやぁ、美味かった! 海はサイコーだし、言うことない訳ッ!」

相当にハイテンションなフレンダが、駒場を先導してどんどん歩く。

「おい、あんまり離れるんじゃねぇよ」
「えー、2人っきりになりたいじゃん!」

既に周囲に人影は無い。
立入り禁止のロープをあっさり越え、誰も来ない岩場エリアに入って、フレンダはようやく足を止めた。

「うーん、ここなら邪魔は入らないかな…?」
「邪魔って…」
「結局、他の人が居るとイチャイチャしたくない訳でしょ?」

フレンダは駒場を適当な岩場に座らせると、己の胴体ほどもある駒場の太ももに跨った。

「ねぇ… 水着姿見ても興奮しないの?」
「…してるよ。でも、カエル先生から止められてるだろ?」

流石に、繋がったまま病院には2度と行きたくない。

「オーラルはできるじゃん…」
「あのな、お前…」
「…だってさ、麦野たちはずっとイチャイチャしてたのに、アタシはお預けだったんだもん…」

駒場の分厚い胸板に、甘えるように頬を擦りつける。

「ここなら良いでしょ? 誰も見てないし……」

フレンダがスーッと口唇を駒場に寄せる。
そして、それが触れ合おうとしたその瞬間、

「あー、お前ら立ち入り禁止の札が見えんかったのか?」

若い、ひどく若い女性の声が響いた。

「あ… すまん……」

地元の監視員か何かと思い、駒場が慌てて立ち上がって声の方を見た。

「ここいらは岩場が切り立っているし、なにより潮が満ちたら渦を巻くんだ」
「ああ、悪い…」

駒場が向けた視線の先には、前合わせの着物を着た少女が立っていた。

「すぐ戻るよ」
「ちぇー……」

ぐずるフレンダをひょいと肩に乗せて、駒場が立ち去ろうとする。

「ああ、待ちな。潮が満ち始めている。元来た道は危険だから案内するよ」
「そうか… 重ねてすまん」

駒場が頭を下げると、少女はニカッと笑った。

「まぁ、気にすんな。私の名前は姫戸、まぁヨロシク」

そう言って差し出した少女の手は、不釣合いなほどゴツゴツと岩のように固かった…

はい、終了…

ごめんなさい。
エロを期待した人ごめんなさい。
投下を始めて、初めてのエロ無し回…
理由はお察しください。

あと、4話のヒーローは駒場さんです。

上条さんと麦のんはエロ担当… のはずが…

では次回。

姫戸って天草の?

スランプ中。

たまによくある。治し方は俺が知ってる、俺に任せろ。

来週中ごろになりそうです。

>>763
一方さんが上条さんに助けられないSSだからな

レディオノイズの実験は行われなかったしグループにもいないし良くわからん

ところで>>1 今時間軸は何巻ですか?

>>764
4巻ぐらいのつもり。
ただし、詳しくはあまり考えてないです。
テキトーに8月序旬ぐらいに思っておいて。

さて、人生を賭けたプレゼンがようやく終わったので、そろそろ再開できそうです。
もう暫くお待ちを。

本編が一応、キリの良い所まで書きあがったけど、まさかまさかのエロシーンどころかお色気シーンも無し。

個人的に腹が立ったので、(テメェのプロット力がないせいだろうに)
>>483の続きを書いてみた。

ので、投下します。

「とある美少女達の情愛交合(くんずほぐれつ)」

16kほどです。




「えと、まずは何をすれば良いわけ…?」

2人同じベッド、同じ布団の中。
御坂美琴と白井黒子は、互いの息が掛かる距離で見詰め合っていた。

「その… 黒子がリードしてくれるんだよね?」
「ととと、当然ですわ…ッ!!」

失恋のショックを埋めるためか、はたまた、最初から興味があったのか、
御坂美琴は以前から猛烈なアプローチを続けていた白井黒子と肌を重ねようとしていた。

無論、御坂美琴は処女である。
ましてや、女性同士の睦合いなど全く知識に無かったが、

(まぁ、黒子は無駄に知識を溜め込んでるでしょうから、まかせてオッケーよね…)

と無責任かつのん気に考えていた。

が、果たして大任を任された白井黒子は、

(どどどどどどッ、どうしましょうッッッ!!??)

大混乱の極みにあった。

白井黒子は淑女である。

たとえ普段の言動があーだったり、行動があーだったりしても、一応は淑女である。

変態的な言動や行動は美琴オンリーのものであるし、さらに言えば、本能に我を忘れての行動なので、身に覚えもあまり無い。

ゆえに、こうして任されてしまっても、黒子はどうして良いかさっぱり分からなかった。

(り、リードと言っても、何をリードすれば良いのでせう!?)

混乱して、笑顔のまま凍り付いている黒子を、美琴がやや心配そうな表情で見つめた。

「……黒子?」
「と、とりあえず、お姉さま… き、キスなど如何でしょうか…?」

言ってしまって、

(何を言っているんですの私はーッ!!?)

心の中で大絶叫する。

これはヤバイ。
絶対に電撃コースだ。

美琴が頼んだのは、「慰めて」ということだけだ。
無論、肉体的な『触れ合い』は含めてのことだろうが、キスを許すなどとは言っていない。

(お姉さまのファーストキス(願望)を奪うなどという暴挙が、黒子に許されるはずが…ッ)

「うん、優しくね…」

しかし、黒子の想像とは裏腹に、美琴は静かに目を閉じて、やや口唇を突き出した。

(通ったぁーーーーーーーッ????????)

なんだろう、このご都合主義は?
なんだろう、この理想的な展開は?

(黒子は明日の朝、息をしていないのかも知れませんわ……)

人生の幸運を全て使ってしまっているような状況に、白井黒子の理性が段々と削られていく。

「ふーッ、ふーッ……」

鼻息あらく息を整えると、おずおず、と口唇を美琴に寄せる。
時間にしたらほんの一瞬、しかし、黒子には数時間にも思える時間が流れて、

ちゅ…

2人の口唇が重なりあった。

(ああ… とうとう……)

憧れのお姉さまの口唇を奪ってしまった。

なんと柔らかい感触だろう!
なんと幸せな味だろう!!
パライソという言葉はきっと今の状態を指すのだ!!

身体のほんの一部分、わずか数センチ平方の接触だけなのに、どうしてここまで幸せな気分になれるのだろう。

(お姉さまの体温が、口唇を通して伝わってきますわ……)

身体の中心が、じん、と痺れるのがよく分かる。
このまま、多幸感に包まれて、黒子が意識を落とそうとする寸前、美琴が口唇をそっと離した。

「あ……」
「ね、ねぇ黒子… この先は…?」
「はぁ……………  はぁ!?」

超予想外な美琴の『おねだり』に、黒子が素っ頓狂な声を上げた。

「び、びっくりさせないでよ…! き、キスで終わりなの?」
「そそそそ、そんな事は……ッ!」

(マズイですわ…! 既に黒子の性知識はゼロですのッ!)

引き攣った笑顔を保ったまま、黒子の頭脳がフル回転する。

(とりあえず、顔を見せないようにしないと…ッ!)

自分の動揺を悟られてはいけない。
さしあたってそう感じた黒子は、結果的に次の一手に繋がる行動に出た。

「お姉さま、後ろを向いてくださいまし…」
「え、う、うん……」

言われた通りに美琴がベッド上で寝返りをうつ。
これで顔を見られることはない、と一息ついた黒子の眼に、とある美琴のパーツが飛び込んできた。

それは『うなじ』である。

(お姉さまのうなじ… あぁ、スッとラインが通っていて綺麗ですわ…)

それは本能的なものだろうか、はたまたここに来てようやくいつもの暴走癖が発動したのか、
黒子は美琴のうなじに口を寄せると、紅く小さな舌を、ちろり、と出して、美琴のうなじをペロリと舐め上げた。

「ひゃっ!」
「お姉さま… 身体の力を抜いてくださいまし…」

ちろちろ、ちろちろ… と、美琴のうなじを丹念に舐め上げる。
普段は気にも留めない身体のパーツを舌で愛撫され、美琴の背筋をゾクゾクとした何かが走った。

「く、黒子… やぁ、べぇろがエッチすぎるよ…」
「…まだまだ序の口でございますことよ?」

ようやく調子が出てきたのか、黒子が若干余裕を持った声で応える。

(ここはアタリだったようですわね… それでは、次は勇気を出して…!)

黒子の手が、スッ、と伸び、背後から美琴を抱きしめるように回される。

「黒子…?」
「お嫌でしたら、抵抗なさってください…」

声と共に、黒子がゆっくりと美琴のシャツのボタンを外し始める。
一瞬、美琴はビクッ、と身体を震わせたが、すぐにされるがままに緊張を解いた。

「…いいよ、痛かったら言うから」
「……はいッ」

美琴の言葉に、黒子の手の動きが加速する。

シャツのボタンを外し終えると、焦る気持ちを抑えて、今度はブラジャーのホックを外す。
緊張をまぎらわせるために、大きく美琴のうなじを、べろり、と舐めると、黒子はそっとブラジャーの中に手を忍ばせた。

「「………あっ」」

美少女2人が同時に声を上げる。

1人は、誰にも触れられたことの無い、敏感な頂点を触られたことで、
1人は、その頂点が固く尖っていることを発見して。

「お姉さま… 感じていらっしゃいますの?」
「わかんない… わかんないよ…… あッ!」

言葉の途中、手の腹で乳首を、コリッ、と刺激され、美琴が桃色の吐息を漏らす。

美琴のコンプレックスの1つであるおっぱいだが、同年代の女子と比べて、それほど貧しいわけではない。

黒子は確かな膨らみを感じるそのおっぱいを優しく掌で包むと、乳首を中心に円を描くように手を動かし始めた。

「はぁ… あぁ…」
「お姉さま……」

美琴の吐息を聞いているうちに、段々と黒子の気分も昂ぶり始めた。

憧れの御坂美琴が喘いでいる。
しかも、自分の腕の中、自分の手によって!

最早、白井黒子を止められる存在など、『学園都市』には存在しなかった。

ぢゅぅぅぅぅぅ……

「やぁ…! 黒子、そんなに吸っちゃダメェ…!」

黒子が美琴のうなじにむしゃぶりつき、強く強く吸い上げる。

「…ぷはぁ、はぁはぁ… お姉さま、明日は一日部屋から出られませんの」
「え…?」
「黒子の愛の証を、しっかりと刻んでしまいましたもの…」

黒子が手鏡を使って美琴に己のうなじを見せる。
そこには、くっきりと黒子のキスマークが、赤く浮かび上がっていた。

「すごい… 黒子の所有物って感じ……」
「………ふぅ」

自覚はないのだろうが、美琴のセリフで黒子の欲情の炎がさらに燃え上がる。

「こちらも舐め舐めいたしますわ…!」

美琴の身体を強引に仰向けにすると、襲い掛かるように自分が馬乗りになる。

最早不要となった美琴のシャツとブラジャーを取り去ると、驚いておっぱいを隠そうとする美琴の両手を、己の両手で拘束する。

「く、黒子…」
「……あむ」

御坂に抵抗する暇を与えず、黒子は一気に固く尖った美琴の乳首を咥え込んだ。

「ひぅ!」
「ぢゅ、ぢゅ、ぢゅぅぅ…!」

吸い上げるように乳首を激しく吸引し、さらに舌で前後左右に愛撫する。

テクニックも何も無い本能的な愛撫だったが、愛護的な精神が働いているのか、美琴に苦痛はなかった。
むしろ、乳首を責められるたびに、ゾクゾクとした感覚が背筋を走りぬける。

(あぁ、すごい… やっぱり、えっちって気持ち良いんだ……)

乳首からの快感入力もそうだが、黒子に押さえ込まれているこの状況が堪らなくいやらしい。

(黒子、すごく一生懸命、私のおっぱいを吸ってる…)

乳房に当たる、黒子の鼻から漏れる吐息から、黒子がすごく頑張っているのがよく分かる。

「……んッ!」

何度目か分からない黒子の吸引に、美琴が短い嬌声を上げる。
そして、

じわ……

美琴は身体の中心から、暖かい『なにか』が滲み出るのを感じた。

(あ、あれ…? 今、私……)

おもらしをしたような、その不思議な感覚に、美琴は知らず知らず太ももを擦り合わせる。

(あ… お姉さま、もしや…)

目ざとくそれを感知した黒子は、いったん乳首から口を離すと、潤んだ瞳の美琴を見つめた。

「お姉さま、黒子に全てを晒すお覚悟はできていらっしゃいますか?」
「そんな… わかんないよ…… でも、黒子がそうしたいなら……」

頬を、かぁ、と紅潮させて美琴が呟く。

黒子は思わず、ごくり、と喉を鳴らすと、「それでは、ここを見せて頂きます…!」と宣言した。

「は、恥ずかしい!」
「お姉さま、わたくしもすぐに後を追いますの…」

恥ずかしさに身をよじる美琴に構わず、黒子は美琴のズボンを一気に足首までずり下ろした。
可愛らしいキャラ絵がプリントされたショーツを目の当たりにし、黒子が「ほぅ…」と息を吐く。

「く、黒子ぉ…!」
「お姉さま、お覚悟を…!」

黒子が美琴のショーツを触れ、『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』を発動させる。
瞬間、美琴のショーツが消え去り、産毛の様な陰毛と、綺麗に縦に割れた秘所が露わになった。

そのタテスジは、ぬらりと妖しい液体で覆われていた。

「……感じていらっしゃったんですわね、濡れていますわ」
「いやぁ… 言わないでぇ……」

美琴が両手で顔を覆って、いやいや、と首を左右に振る。

「綺麗ですわ、とても…」
「言わないでってばぁ…」

美琴は手をどけようとしない。
表情を見れないのは残念だが、それ以上の興奮と欲求が黒子にはあった。

「お姉さま、純潔(マリア)はお守りいたしますわ。ですが、お覚悟を…ッ」

黒子は強引に太ももを割り開くと、無防備な秘裂に顔を近づけた。、

「黒子、こ、怖いわ…ッ!」
「愛しております、お姉さま…!」

告白と同時に、黒子は大きく舌を伸ばし、美琴のタテスジを下から上に舐めしごいた。

「ひゃぁぁ!!」
「あぁ… これがお姉さまの味ですのね…」

舌にのった美琴の愛液は、黒子にとってネクタルそのものだ。
四肢に力が張りつめ、思考が通常の何倍にも加速したような気がする。

「もっと下さい… 黒子にお姉さまのお恵みを…」
「あぅぅぅ……」

さらに何度も黒子の舌が美琴のタテスジを舐め擦る。
その行為の中、秘裂の上部で小さく震えるクリトリスに舌が当たると、美琴の身体が小さく、しかし鋭く痙攣した。

「…お姉さま、ココが気持ち良いんですの?」
「だ、ダメッ! そこ、凄く良い……!」

相反する言葉を聞いて、黒子は容赦なく美琴のクリトリスを口に含む

「だ、ダメッ!!」

美琴の制止も聞かず、黒子は乳首でしたときのように、優しく甘く、美琴のクリトリスを吸い上げた。

ぢゅぢゅぢゅ!

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

それまで昂ぶり続けた美琴の快楽がとうとうオーバーフローを起こす。
下半身から脳まで光速で走り抜けたインパルスは、美琴の脳内に極彩色の花火を咲かせた。

「お、お姉さま!?」

流石に驚いた黒子が口唇を離したが、絶頂が続く美琴は何も言えない。

(すごい… これがイクってことなんだ……)

朦朧とした意識の中で、美琴が初めての絶頂を学習する。

(こんなに気持ち良いなら、もっと早くしてもらえばよかった…)

これも刷り込みなのだろうか、美琴は自分に初めて快楽を与えてくれた黒子を、ひどく愛おしく感じ始めていた。

己の痴態に戸惑う黒子を見上げると、美琴はそっと両手を差し出して黒子の頬を挟むと、顔を持ち上げて優しく口唇を合わせた。

「お姉さま…」

戸惑う黒子に、極上の笑顔を向けると、美琴はだらしなく潤んだ瞳で言った。

「もっと、シテ…」

ぷっつん。

どこかで何かが切れた音がした。

「おねぇぇぇぇさまぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

あの笑顔は凶器であった、と後に黒子は回想する。

白井黒子は顔面を美琴の秘所にもぐりこませると、まさしく犬のように美琴の秘裂を舌で愛撫し始めた。

御坂美琴の嬌声が部屋中に響き始めた。

「はーーッ、はーーッ、はーーッ、はーーッ!!」
「はぁ… はぁ… はぁ… はぁ…」

約1時間後、完全に疲労困憊した美少女2人が、ベッドの上でそれぞれ大の字になった。

「も、むりぃ… くりょこぉ… もお、むりぃぃ……」
「わ、わたくしも… あごが… したが… しゃべるのも、おっくうですわ……」

長時間責められ続けた美琴の股間はとんでもないことになっている。

おそらく、僅かにおしっこも漏れたのだろう。
シーツには愛液と唾液とおしっことが、形容しがたいグラデーションとなって染み込んでいる。

「くりょこ、すごすぎ…… にじっかいから先、おぼえてない……」
「ご、ごまんぞくいただけて、なによりですわ……」

一応会話はしているが、美琴も黒子も、己の暴走に戦慄を感じていた。

初めての身体の重ねあいでこれだけの痴態を晒してしまったのだ。
これから、自分たちはどこまでレベルアップしたしまうのだろうか?

どちらともなく2人は視線を合わせると、とりあえず口唇を重ねる。

(……ま、いっか。ここまで気持ち良いと何も考えられなくなる…)
(……まぁ、よろしいでしょう。ご奉仕の素晴らしさを実感いたしましたし…)

そうして美少女2人が、緩やかな後戯から熱い前戯に移行しようとした瞬間、部屋のドアが音を立てて開いた。

「お前ら、そこまでにしておけ。あ~あ、シーツをこんなに汚しよって…」

ピシ、美琴と黒子の身体が石像のように硬直する。

ぎりぎりぎり、と2人が首を声のほうに向けると、そこにはビシッとしたスーツに細メガネをかけたクールビューティーが佇んでいた。

「「りょりょりょりょりょりょ、寮監ッッッッッ!!!!」」

そう、そこに居たのは、泣く子も黙る、常盤台外部寮名物の、鬼の寮監が立っていたのだ。

その存在を知覚した2人の行動は素早かった。

「「も、申し訳ありません(の)!!」」

ベッドの上でそれぞれ正座し、深々と額をシーツにこすり付けて土下座する。

(まずいまずいまずいッ! よりによって寮監に…!)
(こ、今度はいったいどんなペナルティが… 最悪、お姉さまと部屋を分けられる可能性も…!)

だらだらと冷や汗を大量に流す2人を睨みつけると、寮監はやおら「ふぅ」と溜め息を吐いて、手をひらひらと泳がせた。

「ああ、良い良い。ペナルティなどは無い。後始末さえしっかりしておけばな」

「「………はぁ?」」

あまりに意外すぎるそのセリフに、2人はまた同時に素っ頓狂な声を上げてしまった。

「ど、どういうことなんですか?」
「どうもこうも無い。簡単に言うならば、だ」

寮監のメガネがキラリと光る。

「百合行為をいちいち厳罰にしていたら、常盤台の生徒の大半を厳罰に処さないといけないからだ」
「………うそぉ!?」

それはつまり、自分たち以外にも、『事に及んで』しまった生徒が大量に居るということらしかった。

「我が常盤台はその校風ゆえか、異性より同性に憧れを抱く生徒が非常に多い。お前たちが良い例だな。
 そして、それは厳罰をもってしても消えることがなかった」

頭が痛くなったのか、美琴が額を押さえる。

「そうした中で、『異性に関心を持ち傷物にさせるよりは…』と消極的な態度を学園が取り始めた。
 あとは、責任逃れと理由のこじつけの雪崩式連鎖だ。
 とうとう、『学園内の百合行為を黙認し、以後のアフターケアに努める』といった不文律が出来上がってしまった」

黒子が口をあんぐりと開けて驚きを表現する。
風紀委員に所属する彼女だが、そんな話は一切聞いたことが無かった。

「ゆえに、お前たちの行為も罰則の対象ではない。ただ、初めての行為で暴走することが多々あるのでな。
 事後処理の指導も兼ねて、私が止めに来たのだ」
「じ、事後処理とは?」
「お前ら気付いていないだろうが、酷い匂いだぞ? それと、そのシーツは流石に寮のリネン室では洗えんから、専門の業者に配送する」

そう言うと、寮監はB4サイズの冊子を2冊取り出し、それぞれ美琴と黒子に配った。

「基本的な事後処理のやり方や、女同士のプレイで困る初歩的なQ&Aが載っている、活用しろ」
「……本当にアフターケアをやっているんですね」

呆然と美琴が呟く。

「まぁな。ああ、そうだ……」

寮監のメガネが妖しく光った、ような気がした。
                                         ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「プレイに幅を持たせたいなら、いつでも私のところに訪ねて来い。手取り足取りとっくりと教えてやる」

それはまさしく、獲物を見つけた蛇の視線であった。








                                                  ――fin?

おーわーりー。

やっぱりエロが一番筆が進む。

本編はエロシーンまで行ったら投下します。

あと、初春調教の方を明日の夜あたりちょこっとやります。

じゃあの。

ようやく出来たけど、エロが相対的に薄い?
というか、50kbもあるし……

まぁいいや、30分後ぐらいから投下します。

ちょっと長いので、暇なときに読んでください。

さて、それでは投下します。




「お兄さんたち、どっから来たの、地元じゃないよな?」

岩場をひょいひょいと飛び歩きながら、姫戸と名乗った少女は駒場に問いかけた。

「ああ、観光だよ」
「ふーん、そっちの金髪の子は留学か何かか?」

学園都市では異国人は珍しくはない。
しかし、『外』においては、当然、その限りではない。

「まぁ、そんな感じ。結局、ずっと日本に住んでる訳だけど」
「ぎゃん? だから日本語うまかとねぇ」

次第に少女の口調が訛りだす。
観光客向けの標準語が崩れていっている様だ。

「監視員か何かのバイトをしているのか?」

少し警戒を解いたのか、駒場が姫戸に尋ねた。

「ぎゃん。まぁ、バイトじゃなくて、本業だけどね」

ニヤリと笑った答える姫戸を改めて観察する。

背丈はフレンダとそう変わらない、歳もそうだろう。
時代劇のような前合わせの着物を着ているが、純朴な顔立ちには似合っていて、田舎の少女と思えば不自然ではない。

非常に身軽な様子で、足元が不安定な岩場をひょいひょいと飛び跳ねて移動している。

(学生かと思ったら本職のガイドか何かか…? やたら手がゴツゴツしてたのは、苦労している証拠なのかな…)

握手をしたときの掌の感触を思い出す。
不意に、子供の頃に観させられた『昭和日本史【黎明期】』のビデオが思い出される。

「…苦労してんだな」
「はぁ?」

険しい顔の大男に突然そんな事を言われ、姫戸が変な顔をする。

「…なんか、妙な勘違いしとらん? 別に私は苦労とかしとらんよ?」
「ああ、いや…」
「つーか、田舎に変なイメージもっとっとじゃなかと?」
「む… すまん……」

駒場が素直に頭を下げて、肩に乗るフレンダが「ばーか」と面白くなさそうになじる。

「結局、『働いてる子供』に激弱な訳よね、利徳って」
「そ、そんなんじゃねぇ…!」

うりうり、と駒場の頬をつっつくフレンダと、それを邪険にあしらおうとして出来ない駒場。
そんな2人をチラリと返り見て、姫戸は小さく息を吸って言った。

「…なぁ、お前たち、もしかしたら『学園都市』から来たんじゃないのか?」
「ん? …なんでそう思うんだ?」

多少、警戒心を強めて駒場が逆に問う。

麦野から軽く念を押されているが、今回のバカンスは一種のお忍びである。
無用な詮索はされたくなかった。

「なんでって、ぎゃん金髪の娘とか、アニメの中か、それかテレビで見る『学園都市』の運動会でしか観たこと無かとよ」
「そ、そういうもんか…」

『学園都市』と『外』との技術的ギャップは色々と把握していたが、こういう文化的ギャップはあまり考えたことなかった。

「結局、バレてんならバラしていい訳でしょ? そうよ、アタシらは学園都市から来たの。一応、ナイショだから他の人に言わないでよ」
「おい、フレンダ…ッ!」

駒場が慌てて止めようとするが、時すでに遅し、である。

「なーに、びびってんのよ。結局、麦野にばれなきゃいい訳よ」
「お前のその無鉄砲・無責任・無自覚のポカで、どんだけ痛い目あってると思ってるんだよ…」
「う… ま、まぁ、今回はそう大したことじゃないし… ね、ねぇ、ナイショにしといて、よ…?」

フレンダの口調だ尻すぼみに小さくなる。
理由は、2人に向けた姫戸の眼だ。

「ふむ… 金髪碧眼に『学園都市』からの来訪者か… えらく無防備ばってん、それだけ自信があるとバイね」
「は…? ちょっとどういう…」
「―――――ッ!!」

ズサァァァァァァァ!!

フレンダが問い返そうとした瞬間、駒場が大きな身体を跳躍させて、肩に乗せたフレンダともども姫戸から距離をとった。

刹那――

ヒュパッ!!

さっきまで駒場が居た空間を、鮮やかな銀閃が通り過ぎた。

「な、にそれ…ッ?」

信じられないようなものを見たようにフレンダが声を絞り出す。

「よう避けたな。アタは護衛かなんかかね」
「てめぇ…ッ!」

瞬時に臨戦態勢を取る駒場の視線の先には、長さ3尺3寸の大太刀を振り抜いた姫戸の姿があった。

「天草式十字凄教所属の魔術師、姫戸。魔法名は『prehendere714(執拗に追い縋る猟犬)』」

チャキ、と姫戸が大太刀の刃を返す。

「今からアンタらを叩っ斬るばい」

さんさんと照りつける太陽の光を浴び、大太刀の刃が妖しく煌いた。

「離れてろフレンダッ!!」

やや強引にフレンダを肩から降ろすと、駒場は岩場を蹴って姫戸に接近した。

(どういう能力かしらねぇが、長モノは懐に飛び込めばッ!!)

一般人であれば、そう、それが警備員(アンチスキル)や風紀委員(ジャッジメント)でさえも、大太刀を前にここまで果敢な行動は取れない。

しかし、駒場は百戦錬磨の戦士であった。

「すごか度胸ね。けど、そりゃ蛮勇ばい」

構えた大太刀が瞬きする間に消え去た。

首筋に、ぞわっ、とした悪寒を感じ、駒場は弾かれたように身を反らした。

ヒュパ、と鋭い風斬り音とともに、刃が駒場の頸部スレスレを通過する。

背中に冷や汗をどっと流し、駒場がはっきりと顔をゆがめる。

(なんだ今のは… 振ったのが見えなかったぞ…ッ)

「ほぅ、よく避けるの。見えとらんはずばってん」

再び手元に大立ちを構える。
その動きは流麗でよどみが無い。

「…その細腕でよく振るえるな」
「おぉ、ぎゃんて。たいぎゃ苦労しとっとバイ。だけん…」

姫戸の右足が一歩前に出る。

「大人しく斬られてはいよ」

再び、大太刀が視界から消え去る。

(下がるかッ!?)

最初のように後方に跳躍すれば安全に避けられるだろう。
そう理性が回避を選択しかけたその瞬間、研ぎ澄まされた本能が警告を発した。

(ッ!! いや、違うッ!!)

瞬間、ガバッ、と蛙のように岩場に身を伏す。
その真上を、ごぅ! という音を立てて大太刀が一直線に突き込まれた。

(突き、だと…ッ!?)

大太刀を手元に引く動作など全く無かった。
しかし、現実に姫戸は見事な片手突きの姿勢で止まっていた。

もしも、後方に跳躍していたら、着地した瞬間か、あるいは空中で、どてっ腹に風穴を開けられていたことだろう。

「…アンタ、何モンね? 刀は見えとらんどもん?」
「てめぇこそ、どんな能力者だ……」

『学園都市』の能力者とは明らかに異質な、その常軌を越えた技に、駒場は冷や汗を止めることができなかった。

「なんば勘違いしとっと? さっき言うただろが。天草式十字凄教の魔術師と。まさか知らんわけじゃなかろ?」
「知らねぇよ!! 魔術師って… 魔法なんか存在するわけねぇだろ!!」
     ブキ
(クソッ、靴を履いていれば…)

駒場の脳内が強い焦燥感で満たされる。

都合3斬。
運よくかわす事ができたが、次も避けられる自信は無い。

「はぁ、なんば言いよっとか? そこの金髪は元ローマ正教の魔術師だろが!」
「「……ローマ?」」

突然まくし立てた姫戸のセリフに、フレンダと駒場が同時に声をあげた。

「あ、アタシ!?」
「お前、イタリア出身だったっけ…?」
「冗談! アタシはフランス系!!」

怒りを言葉に乗せてフレンダが叫ぶ。

その渾身の一言に、姫戸が首をかしげて「えぇ…?」と困惑する。

「ぎゃんこつは……」

大太刀を降ろして悩みはじめる姫戸に、「ちょっと、姫戸ッ!!」と新たな声が掛かった。

「『一閃』を感知してきたけど、アンタなにやってんの!?」
「ああ、対馬ねえさん。いや、ターゲットを見付けたから…」

登場したのは、ふわふわな金髪にスレンダーな体つきをした長身の女性だった。
対馬と呼ばれたその女性は、相対する駒場とフレンダを、じっ、と凝視すると、やおら腕を振り上げて、

ゴンッ!!

「あいたぁッ!!」

容赦なく姫戸の脳天に拳骨を打った。

「な、なんで!?」
「よーーーーっく見ろこん馬鹿ッ!! そして、もう一度ターゲットの特徴を言ってみなさいッ!!」
「えぇ… えーと、金髪碧眼の女… じゃなかと?」
「……『両手両脚が義肢』は?」
「………おー、お?」

姫戸が改めてフレンダをジロジロと見る。

「……お前、腕がびろーんと伸びたり、突然、変形したりとかせんか?」
「するわけないじゃん!!」
「あ、あら……?」

一瞬で、姫戸はバツが悪そうな表情を作って長身の対馬を仰ぎ見た。

「ど、どぎゃんしよ… 人違いだったごたぁ……」

ガンッ!!

言葉の終わりとともに、情け容赦ない対馬の拳骨が再び炸裂し、姫戸は「ぎゃぁ!」という悲鳴とともにしゃがみ込んだ。

「すいませんすいませんすいませんすいませんすいませんすいませんすいませんすいませんすいませんすいません……!!」

ガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガン……!

声の主は対馬、音の発生源は姫戸の額だ。

瞬時に状況を悟った対馬は、強引に姫戸を土下座させ、自身も土下座をして頭を下げると、ひっ掴んだ姫戸の頭を何度も何度も上下させた。

当然、姫戸の顔面は地面である岩場に激しく打ち付けられ、頭蓋骨を使った即興の打楽器と化していた。

「ほんッッッッッとぅぅぅぅにすいませんッ!! うちの馬鹿がとんだご迷惑をッ!! どうお詫びすればいいのか…ッ おらぁ、お前も謝らんかいッ!!」
「がっがっがっがっがっがっがっがっ……ッ」

そのあまりに異様で、かつ、ギャグにしか見えない行為に、駒場とフレンダはすっかり毒気を抜かれてしまった。

「……いや、そのぐらいでいーだろ? 俺も怪我をしたわけじゃないし…」

本当は警察に連絡するレベルの凶行なのだろうか、自分たちも基本お忍びである。
あまり大事になってもらいたくは無かった。

「つーか、あんたら何者なんだ? 魔術師とか魔法名とか、よくわからんが…」
「え、この娘、魔法名まで名乗ったんですか!?」

何気無しに駒場は呟いたが、それは対馬にとっては驚愕の情報だったらしく、今度はネックハンギングツリーで姫戸を持ち上げ始めた。

「お・ま・え・はぁ~~~!! なに一般人に魔法名晒してんだよッ!! 死ぬか!? 死ななきゃ治んないのッ!?」
「ご、ごべんなざぁぁぁいい!!」

姫戸は完全に泣きが入っている。
流石にこれ以上はマズイと感じた駒場が、対馬の肩を叩いて姫戸を降ろさせた。

「やめとけって」
「……すいません」

ぴくぴく痙攣する姫戸を降ろした対馬が、改めて駒場に向き直ると、腰を90°曲げて頭を下げた。

「この娘には、あとで厳罰を与えます。ですから、どうかこの場で起きたことは忘れてください」

声は切実で切迫したものであった。

「厚かましいとは重々承知の上です。しかし、そうしなければ、私たちは貴方がたを……」

対馬の雰囲気が、ゆらり、と僅かに変わる。
そこに危険な何かを感じた駒場は、フレンダが何か言う前に強く頷いた。

「ああ、わかった。口外はしないし、司法にも訴えない」

横でフレンダが何か言いたそうだが、頭に手をポンと乗せて堪えさせる。

「ありがとうございます……」

対馬はそう言い、グスグスと泣いている姫戸を無理やり立たせると、改めて2人そろって最敬礼をした。

「本当に申し訳ありませんでした。こっちの小道を真っ直ぐ進むと、海水浴場に出れます」

頭を上げずに脇の小道を指差し、そのまま微動だに動かない。
どうやら、駒場たちが立ち去るまで、ずっと頭を下げておくつもりのようだ。

「…もう、辻斬りなんてすんじゃねぇぞ」

全身の緊張をといて駒場が片手を上げて立ち去ろうとした、その刹那、

――――ピシ

首筋になにかチクリとした感触があった。

(……? 蚊、か…?)

駒場は軽くそう考えると、脇のフレンダを再び肩に乗せて、いまだ頭を上げない2人に「それじゃ…」と声をかけて小道に進んだ。

「……人が良いんだから、殺されかけたのに」
「勘違いだったんだから、いいだろ?」

ようやく疲労に襲われたのか、駒場がコキコキと首を動かして嘆息した。

「しかし、まぁ、魔術師か…… ただの妄想少女かもしれんが、『外』も物騒なんだな…」

そう呟くと、駒場を再びフレンダを肩に乗せて、示された小道を歩きはじめた。

「あぁ、ようやく帰ってきた。どこで油売ってたのよ」

駒場とフレンダが戻ると、既に麦野たちはパラソルを畳んで撤収準備を終えたところだった。

「夏の海で開放的な気分になるのはわかるけどさ。一発ヤル体力は夜に残しておきなさいよ」
「あのなぁ… 俺たちは……」

麦野のデリカシーのない言葉に思わず反論しそうになるが、慌てて堪える。

「いや、なんでもねぇ。荷物運ぶぞ」

大の大人でも運ぶのに苦労しそうなパラソルやクーラーボックスを、ひょいひょいと肩に何個もかける。
そんな駒場に、なぜか救われたような表情の浜面が声を掛けた。

「マジで何してたの?」
「いや、ちょいと変なのに絡まれてな…」

そこまで言って、駒場は女性陣(特に滝壺と絹旗)が白い眼で浜面を見ていることに気付いた。

「…お前、何かしたか?」
「い、いや… ハハ… 別に何も…」

笑って誤魔化す浜面だが、その笑みはどこか引き攣ったものだった。

駒場が不思議に思っていると、視界に「流せ、無視だ!」と全力でジェスチャーする上条が見えた。

(…女関係か)

ここ数日で、何となくそういう雰囲気には敏感になってしまった。

ここは関わらない方が良いと判断した駒場は、あっさり浜面を見捨てて麦野に尋ねた。
浜面が「あ、おい…」と縋ろうとするが知ったことではない。

「で、どこに運ぶんだ。バスか?」
「ううん、あっちの波止場。クルーザーが迎えに来てるから」
「……は?」

麦野が1つ丘を越えた先を指差した。

「クルーザーって?」

駒場が同じようにクーラーボックスを担いだ上条に聞くと、上条は分からないと言う風に肩をすくめた。

「聞いても教えてくれないんだよ。ニヤニヤ笑うだけでさー」

上条の言葉に、麦野は「行けば分かるわよ」とだけ答えて、麦野は見事なヒップラインを揺らして歩き始めた。

「ガチでクルーザーかよ… しかも、でけぇ…」

波止場にて一行を待っていたのは、大きなキャビン付きのクルーズ船だった。
外観を見ただけでも、相当に金のかかったシロモノだと分かる。

「これもレンタルか…? 無茶するなぁ…」

空港でレンタルバスを借りたことを思い出して上条が呟く。
しかし、それを聞いた麦野は、悪戯っぽい表情をして否定した。

「ばーか、レンタルじゃねぇよ」
「え、じゃあ、何コレ、もしかして…」
「そ、私の船」

えっ? と周囲の男たちが絶句する中(女性陣は平然としている)、クルーザーから1人の男性が出てきた。

体格は駒場と比べても遜色のない長身の老年男性、異国人を思わせる彫りの深い顔立ちをしたモノクロームの紳士は、海だというのにきっちりとしたスーツ姿であった。

「お久しぶりでございます、お嬢様」
「ああ、久しぶり。世話になるわよ、山岡さん」

慇懃に頭を下げる男性――山岡に、麦野は慣れた口調で話しかけた。

「お嬢様……?」

なにか得体の知れない悪寒を感じて上条が呟くと、麦野が本当に楽しそうにケラケラと笑いながら答えた。

「キャハハ! とうまぁ、毎晩アンタの上で腰振ってる女が、まさか正真正銘のお嬢様だとは思わなかったでしょ?」
「え、えーと… えっ、沈利って、お嬢様だったの…?」

いつもなら喉で止まる言葉が、驚きのためかあっさりと口から飛び出す。

「沈利お嬢様は、麦野重工の令嬢でいらっしゃいます」

麦野重工は、上条でも名前を知っている超巨大重工業系複合企業だ。

「まぁ、本流じゃないけどね。それでも、小さい頃はずいぶん贅沢させてもらったわ」

今もそんなに贅沢ぶりは変わりませんけどねー、と絹旗あたりは思うが、もちろん口には出さない。

「紹介するわ。この人はウチの使用人で山岡さん。これからお世話になるから、みんな挨拶!」

「あ、ども」「お世話になります…」「おぉ、執事さんな訳? よろしくー」「超よろしくお願いします」「……よろしく」

一行がそれぞれ挨拶をして頭を下げる。

上条も頭を下げようとしたが、瞬間、山岡にジッと見つめられて思わず言いよどんだ。

山岡は皆の礼に軽い会釈で返したあと、静かに迫力のある声で上条に話しかけた。

「あ、えーと…」
「上条当麻様ですね?」
「あ、はい…」

コクンと頷くと、山岡が深々と頭を下げた。

「お嬢様からお話は伺っております。お嬢様の心身をお守り頂き、ありがとうございます」
「いや、俺は別に…」
「今後とも、よろしくお願いします」
「は、はい… よろしくお願いします…」

なにやら大きな糸に絡み取られた感触を感じ