美琴「私が一万人以上殺した、殺人者でも?」(973)


「ええいっ、ちくしょう不幸だっ、不幸過ぎますーっ!」

 上条当麻は街灯が薄暗く足元を照らす通りを全力疾走で駆け抜けながら叫び声を上げた。

 ガサガサとやかましい音を立ててぶん回される買い物袋の中身は、最早そのままミキサーにでも掛けて怪しげな健康ドリンクにでもしてしまった方がマシな程度にぐちゃぐちゃに攪拌されている事だろう。

「くそっ、残り八人……? こんだけ走って二人しか引き離せてないのかよっ! ええいもうっ!」

 不幸の塊としては珍しく何の障害も妨害も無く行きつけの商店に辿り着き、リーズナブルな食材を満足行くまで購入する事が出来たから、機嫌よく鼻歌なんぞを歌いながらの帰り道。
 ふと目をやれば建物の陰に男三人に囲まれた見覚えのある少女が居たのをスルーしていればこんな事にはならなかった。

 しかしその時の上条は機嫌が良かった為、可憐な容姿ではあるが明らかに見た目も中身も子供な女の子に粉をかけるような哀れな男達を救済すべく、その集団の中へと踏み込んでしまったのだ。

 辺りは大通り沿いとはいえ夜も遅く一般人の通行も減り、道の両脇にろくでもない格好をした不良とホームレスがちらほら点在するのみ……と高をくくっていたのも大きな誤りだった。
 その集団に声をかけ、軽く説教でも始めようかと思った矢先、遠巻きにたむろっていた、一見無関係と思われる不良の塊がすっくと立ち上がり、こちらを囲むように歩み寄ってきたのだ。
 二~三人の塊が、一つ、二つ、三つ――合計十人に囲まれた私上条当麻が取った選択肢。
 すなわち、全力で逃走。

「なんで俺がこんな目にーっ! 不幸だあああああああっ!!」

 叫び声は空しく路地に響き渡り、薄霧に包まれた虚空へと吸い込まれていった。


 気が付くと上条を追う足音は止んでいて、そっと後ろを伺っても人の気配どころか野良猫一匹見当たらない路地が広がるばかりだった。
 前を向くと建物の間から抜けたその先は川沿いの広い道路が目の前を横切り、時折乾いた音を立てて車が通り過ぎては暗闇に慣れた目をライトで焼いていく。

「はぁ……今日も不幸だった。明日はもう少し幸福だといいなぁ……」

 左手に持った買い物袋からたぷたぷと液状になった中身を思いつつ溜め息を吐く。
 幸いにも自宅であるアパートへは目の前の川を渡れば5分と経たず到着する位置だった。
 が、橋に差し掛かった所で上条はその足を止め、再び溜め息を吐いた。

「ちょっと! 人の顔見るなり何なんだよその溜め息は! いくらなんでも失礼かも!」

 辺りに明かりもなく視界は闇に閉ざされてる中、その真っ白な服装と輝くような銀髪が鮮明に浮かび上がり、上条はそのただでさえ低いテンションを更に低下させうな垂れる。

「なんでお前がここにいるんだよ。ってかつまり、俺を追ってたあいつらは……」

「ふん、当然私が片付けたに決まってるんだよ」

 フンス、と鼻息も荒く薄い胸を張る少女の指先からは人工とも天然とも付かぬ光が灯り、少女の白磁のような顔を照らし出した。

支援


 そう、上条は不良どもに囲まれていた少女を助けようと声を掛けたのではない。
 この目の前の一見子供で――中身も子供だが――それだけに余計に危険極まりない少女から不良どもを助けようとわざわざ気を利かせて声を掛けたのだ。
 命が惜しかったら、すぐにケツまくって逃げ出せ、とお節介なアドバイスをする為に。

 そしてその上条の涙ぐましい努力は、結局彼女の気まぐれにより全て灰燼に帰したのであるが。

「不幸だ……」

「だから、人の顔見てその態度は失礼だって言ってるんだよ!」

 プンスカと迫力の無い怒り方をしている少女だが、先程から言っているように、見た目と裏腹に少女は10人以上の不良どもとは比べ物にならないほどに危険極まりない存在である。
 薄水色のブラウスに白いスカート、羽織られたこれまた真っ白な薄手のカーディガンという服装はこんな夜中に一人で出歩くとすぐにでも暴漢に襲われかねない可憐な少女にしか見えないが、その胸元に掛かる特殊な形状の十字架は、見るものが見れば一瞬で顔を蒼ざめさせるであろう、魔神候補生の証である。

 魔神。

 それは、魔術を極めた結果、神の領域にまで達するものの事を言う。

 目の前の銀髪少女は、その域に達すると言われている天才魔術師。しかも彼女は見た目通り、小中学生程度の年齢で、その地位にまで登りつめた天才である。
 それは彼女の才能だとか、特異体質だとかも充分影響しているだろうが、それ以上に彼女自身の研鑽と努力の賜物である事だろう。
 そんな自信に満ち溢れた表情に、上条はしかし呆れた溜め息をみたび吐く。

「なんだってそんなお前が俺に付きまとうんだよ……」


「そんなの、貴方が逃げるからに決まってるんだよ。いい加減白黒付けさせて欲しいかも!」

「白黒も何も……俺に勝てる要素なんか欠片も無いのに何を言ってるんだか。お前は百年に一度の天才且つ魔神候補生で、俺は未だに術の一つも満足に覚えてないただのオチこぼれの見習い魔術師なんだぞ?」

「オチこぼれ、ねえ……」

 少女は如何にも自分は不機嫌ですよー、とでも言うかのように眉間にしわを寄せ、右手人差し指に嵌めた指輪を左手でなぞった。


「……ねえ、ゲーティア、って知ってる?」


「は?」

 夏場なのに、周りの空気が2~3度下がったような感覚に、鳥肌が立つ。
 少女の全身を包み込むように燐光が浮かび上がり、伸ばした指に嵌められた指輪が熱を持ったように赤く染まり始める。

「別名『悪霊の書』。ゴエティア、と言った方が正確なんだけど、日本人の貴方にはそっちの方が馴染みがあるかなって思ったんだよ。でも知らないなら使う必要も無かったかも」

「そ、そのゴエ、だかゲーだかがどうしたんだよ?」

「魔術書『レメゲトン』の第一書を指すんだけど、主にソロモン王が使役したとされる72柱の悪魔の召還法を記した禁書なんだよ。この指輪はその書の中に記述のある召還用護符の属性を付与したものなんだけど」

 言って、少女は右手人差し指にある指輪を掲げ、呪を紡いだ。


「我が呼びかけに応えよ悪魔! 30の軍団の長、地獄の大いなる侯爵、マルコシアスよ!」


 次の瞬間、少女の目の前の地面に円に囲まれた五芒星が浮かび上がり、光と共に翼を持った巨大な狼が現れた。

「……マジですか」


「……と、まあこんなものを手軽に召還出来る代物なんだよ」

 まるでマッチを使って上手にロウソクに火を灯せましたー、位のノリで化物を召還せしめた少女が得意気に鼻を鳴らす。

「お前……まさか、コレ使って不良どもを伸したんじゃないだろうな?」

「むっ、失礼かも! 流石にあの程度のチンピラをやっつけるのにこんな物騒なモノを使ったりはしないんだよ!」

「そんな物騒なモノをじゃあなんでワタクシめのように無能な魔術師見習い相手に召還しやがったんでしょうか!?」

「……フン」

 何かが少女の気に障ったのか、途端に不機嫌のオーラを撒き散らしながら少女が掲げた指をゆっくりと振り下ろした。

 その動きに呼応するように目の前の羽根付き狼がギラッ! と上条を見据え……。

「って、え? ちょ、まさか……!」

「グオオオオオオオオオオオッ!!」

「ギャアアアアアアアアアアアアアッ!!!」

 危険を察知し身構えると同時、覆いかぶさるように襲い掛かってきた。その巨躯は一瞬にして上条に覆い被さり、轟音を持って振られた腕は上条の身体など襤褸切れ同然に吹き飛ばす、かのように見えたのだが。


「……で、なんで貴方は全くの無傷なのかな?」

もしかしてフラグメーカーの人?


「…………」

 その場には吹き上げられた砂埃にまみれつつも、右手を頭上を守るように掲げた上条の姿があるのみで、先ほどまで凄まじい威圧感を放っていたソロモンの悪魔は影も形も見当たらない。

 上条の掲げた右手が、正式な手続きを踏む事でしか還る筈の無い悪魔を、消し去ったのだ。

「ホント、その力は本当に何? 私が今まで読んできた10万3000冊の魔術書の中にも、そんな術式も霊装も用意してないのに全てを打ち消すような術なんて載ってなかったんだよ。私が百年に一度の天才だって言うんなら、貴方は千年に一度の天災かも!」

   イマジンブレイカー
――幻 想 殺 し

 少年の右手に宿りしそれは、異能の力であれば魔法の炎でもソロモンの悪魔でも触れれば一瞬で無に帰す。
 ただし、その右手が打ち消すのは異能の力のみであり、例えば一撃で人間の身体など肉片に出来る悪魔を消し去れるとしても、その悪魔が足元のアスファルトを踏み砕いたら、上条は約9メートル下の水面に打ち付けられ、運が悪ければ溺死体となるだろう。

 なので。

(怖えーっ! 何なのあの化物っ! 咄嗟に庇った右手に当たったら消えたけど絶対死んだと思った! 走馬灯十周くらいぐるぐる回ったよ今ッ!!)

 表面上平静を装い体中からダラダラと大量の汗を噴出させ、それでも男の意地とばかりに虚勢を張ったまま呟く。

「なんていうか、不幸っつーか……ついてねーよな」

 上条の言葉に、ぐっ、と気圧されるように少女が顔をしかめ、目の前の少年を睨みつける。
 犬歯さえ覗かせて苛立ちを露にする少女に、上条当麻はその日を締めくくるように深い溜め息を吐いた。

、 、 、  、 、 、 、、 、 、 、 、
「オマエ、本当についてねーよ」


――――――――
――――
――


 英国領、グレーター・ロンドン。
 19世紀からの産業革命による急速成長を遂げ、現代社会の中心地の一つであると同時に、数々の歴史的な建造物をそのまま残した、欧州、いや全世界でも有数の大都市。
 そんな発展した都市であるこの街に住む人々は、当然、皆多かれ少なかれ科学の恩恵を受けていて、その信望者でもある。

               オカルト
 だから、その裏に潜む非科学の存在を知らないし、それを疑っても居ない。

     そ れ
 だが、非科学はその街の中心に確実に根を張って存在しており、屋台骨の一つとして大英帝国を支えてさえいるのだ。

                                   ネセサリウス
 そして、裏の存在である非科学の、その更に裏側に、”必要悪の教会”という組織が存在している事は、更に希少であり、そんな奇特な組織の末席にその不幸な少年が一人、座している

 名を、上条当麻。

 魔術の才能も無ければ頭の出来も悪く、その特殊の右手だけが一際異彩を放つものの、魔術師としては彼の利き腕でもあるソレはただの邪魔物でしかないという現実、とどう贔屓目に見ても”向いてない”、”場違い”な彼がそんな組織に所属しているかというと。

 一言で言えば彼が不幸だから、である。


 幼い頃から不運にまみれた人生を送り、周りからは疫病神とまで呼ばれ疎まれ蔑まれ、見かねた父親が頼ったのは、よりによって、科学万能の現代社会に真っ向から歯向かう選択――すなわち、”非科学”だった。

 世界最大の宗教である十字教、その三大勢力の一つであるイギリス清教に海外出張の際に邂逅を果たし、ぞっこん入れ込んだ父親により、上条当麻はイギリスに連れて来られ、興味の薄い参拝旅行に強制的に参加させられたのだ。
 そして例によって彼の不幸が発動した。

 その旅行、上条にとっては退屈そのものでしか無かった。
 興味の無い文化の興味の無い観光施設に無理矢理つれてこられ、そして同行者である父は熱心にその文化の、施設の素晴らしさについて熱弁を奮ってきて上条があからさまにヒいてるのにも全く気付く様子なく一人でハッスルしているのだ。
 これで楽しめという方が無理なもので、上条当麻(当時小学生)はとにかくこの苦痛の時間が早く終わってくれることだけを考え、鼻息の荒い父親の後をてくてくとついていくのみだった。
 そして、あまりの退屈さに欠伸を噛み殺すのも億劫になった上条は、近くにあった丁度いい高さの彫像に右手を掛けて寄りかかり。

 バギン、と乾いた音が響き渡った。


 晴れてイギリス清教の(裏側の方の)お偉いさんに見初められた彼は、色々な紆余曲折を経た上で、”その身の不幸体質を究明し、解消する為”という本音と建前の入り混じった理由により”必要悪の教会”の一員として、”魔術”の勉学に励む見習い魔術師として迎え入れられたのである。


 勿論、その事が彼の不幸人生を軽減するどころか加速させた事は言うまでもない。


 そして今日もロンドンの片隅にある、古びた街並みの中でも一際古めかしくこじんまりとしたアパートの一室にて、上条当麻の不幸な一日は幕を開けた。

「いや、何も朝っぱらから不幸な一日と決め付ける事はないよな……」

 我ながらしょうもない事を呟いてるな、等と情けない事を自覚しつつ、上条はのそのそとくたびれた布団から這い出した。
 ふと見れば眩いばかりの日差しが部屋に差し込んでいる。ここの所曇りの日が続いていたが今日は三日ぶりの晴天だ。流石の上条も今日ばかりは何かいい事がありそう、と心を浮き上がらせる。

「そうだ、布団でも干すか」

 何しろ三日ぶりのいい天気である。今日干さなければ明日からまた曇天や雨天に見舞われないとも限らない。空には雲ひとつなく、万が一にもにわか雨で台無し、という展開も有り得るとは思えず、取り込む頃には太陽の臭いを沢山吸った、ふかふかの布団を堪能できる事だろう。
 何だか思考もヤケにポジティブになった上条は、三つ折りに畳んだ布団を両手で抱え、器用に足で窓を引き開けると、ベランダへと足を踏み出した。


 ベランダには既に少女が干されていた。


「…………」

 ずるずると布団を取り落とし、目の前の物体をマジマジと見つめる。

(……うわ、美少女だ……うちのベランダに美少女が干されてる……)

 化粧っけも全くなく、埃や擦り傷さえついてるのに、文句なしの美少女だった。
 年頃の男の子たる上条としてもこうまで間近で美少女の、しかも無防備な寝姿を見るのは初めての体験だ。

(つか……日本人、だよな? 女子中学生?)

 肩までの茶色い髪をシンプルなヘアピンで留め、半袖のブラウスに袖なしセーター。
 すらっとした細身の体型に、プリーツスカートから伸びる長い足は白く、そのスカートの短さは年頃の男の子である上条にとって目に毒である。
 ふと、吹いた風にプリーツスカートがまくれあがってドキリとさせられたが、その下から覗いたのは色気の薄い短パンで、思わず上条は心の中でがっくりと膝をつきうな垂れた。
 とはいえ、太ももの付け根の方まで見れたことや短パンごしにうかがえる形の良いお尻は充分に眼福だったりして。

 ……いやいや、俺は気を失ってる女の子を前にして何考えてやがりますか!
 っていうかそもそもなんでうちのベランダに女の子が? っていうかこの子ボロボロじゃないか。ひょっとして死んでたりしないよな?
 どうしよう、触っちゃって良いのかな。触って指紋とかついちゃったら俺殺人犯として疑われちゃうのかな。でもなんか触ったら柔らかそうで正直触りた……いかん、その展開は不幸全開の上条さん的にもろくそリアルに想像できるっ! いや待て上条さんは清廉潔白純情少年なのですよ! 生まれてこの方罪など犯した事は……そりゃ拾った100円をネコババしようとした事はあるけど、あれはその姿を速攻持ち主に見咎められボコボコに殴られたからノーカンなの! 第一あの時のオッサンもたかだか100円程度で心が狭いったら無いね! どうみてもヤのつく人だったんで全力で土下座したけど……。その後全力で逃走したらドブにハマったり財布落としたりしたけど……。

「ねぇ、ちょろっとー」

「ああ、思い返せば不幸な人生だった……」

「おーい、もしもーし。聞こえてるー?」

「色々不幸を思い出してたら腹減ってきたな。そういや朝飯まだだったっけ」

「…………」

「あー、作る気力も湧かねぇ。パンでも焼いて食えばいいk」

「い・い・か・ら・人の話を聞けええええええええええ!!!」

「おわああああっ!?」

 辺りのガラスがビリビリと振動音を立てる程の大音量が響き渡り、上条の心臓がドッキュン、と跳ね上がった。


 一瞬遠のきかけた意識を取り戻すと、向かいの建物や僅かに道行く通行人が辺りを見回して音の源を探しているのが目に入り、上条は慌てて目の前の少女をむんずと左手で引っつかむと全速力で部屋の中へと引っ込み窓を閉め……ようとしたらさっき取り落とした布団が引っ掛かって閉まらない。仕方が無いのでカーテンを閉める事で誤魔化した。

「はぁっ、はぁっ、あ、あぶねー。もう少しで俺が傷だらけの少女をベランダに天日干しにする変態嗜好の最低クズ野郎認定される所だったぜ……」

「そういう今のアンタはその傷だらけの少女を脇に抱えたまま荒い息を吐くアブないお兄さんにしか見えないけどね」

「うわああっ、わ、悪いっ!」

「って、きゃあっ!? い、いきなり放り出すんじゃないわよ、ってて……」

「あ、すまん。ってお前がいきなり人を動揺させるような事言うからだろうが! 第一人様の部屋のベランダで大声で叫ぶとか止めろよな心臓に悪過ぎる!」

「しょうがないでしょ! アンタが幾ら話しかけてもブツブツとわけのわからない事呟いて人の事無視するからっ!」

「そりゃ朝起きていきなりベランダにボロボロの女の子が引っ掛かってたら誰だって現実逃避したくもなるわっ! そもそもなんでお前はあんな所にあんな体勢で引っ掛かってたんだよ!?」

「そ、それは……その」

「な、なんだよ……」

 売り言葉に買い言葉とばかりに怒鳴りあってた上条も、いきなりしおらしくなった少女の様子に戸惑う。
 きゅっ、と両の拳を強く握り締め、少女は躊躇うように、しかしはっきりと呟いた。

「追われているのよ……」


 もし上条当麻が、現在の彼のように人とは違う数奇な運命を辿ったのではなく、ごく普通の日本人として日本で育ち日本の学校に通い、平凡な高校生として過ごしていたのなら、少女の言葉に深い溜め息を吐き、

「何を馬鹿な」

 と斬って捨てた事だろう。

 しかし、上条当麻は知ってしまっている。
 この世には、裏の世界が存在している事を。
 皆が事件もなくつまらない、平和な日常を送っているすぐ一つ裏の路地では、血が流れ、骨が砕かれ、肉を焼かれる暗闇が存在する事を。
 生まれ付き稀有な右手を持っている上条でも、つい数年前までは想像さえしていなかった。
 しかし今、彼はオカルトという世界に足を踏み入れ、見習いのペーペーという立場ではあるけれど、少なくとも腰の辺りまではどっぷりと浸かり、最早簡単に抜け出す事は出来ないであろう位には非日常に染まりきっている。

 だから、彼は、自嘲するように微笑み、しかしまっすぐこちらを見て目を逸らさない少女の視線を受け止め、見つめ返して言った。



「何を馬鹿な」


「ちょっと! 思わせぶりに引っ張っておいてそれは無いでしょ幾らなんでも!」

「いやいや、でもそれはねーよ。追われてるって今時中二病にも程があるぜ? しかもそれでなんでよりによってこんなボロアパートのベランダに引っ掛かってるんだよ。その設定ならどっちかっつーと街角でぶつかってきてとか裏路地で倒れているのを偶然通りがかってとかそっちの方がしっくり来るぞ」

「そんなのこっちが好きで引っ掛かってたんじゃないんだから仕方ないじゃない! こちとら追っ手を撒く為に必死で、屋上から屋上に飛び移ってたら流れ弾に当たって気が付いたらあそこに引っ掛かってたんだから!」

「屋上から屋上ってお前自分が忍者だとか言うつもりか? 忍者とかいう設定喜ぶのはアメ公くらいで純粋な日本人が忍者ネタ使うのは幾らなんでも重症じゃ……」

「忍者ネタって何よ!? っていうかなんでアンタは私が中二病って前提でしか話が出来ないのよ! 確かに私はリアルで中二だけど中二病発症してまで人様の家のベランダに引っ掛かって遊ぶ趣味は持ち合わせていないわ!」

 それと、一応言っておくけど私は忍者じゃなくて超能力者だから! と怒鳴りながら付け加えるのを忘れない美琴に、アカンこれは本当に重病患者だと上条は右手で口元を抑え涙を堪える。

「……大丈夫だ、中学生なら誰しもそういう病気に罹る物なんだ。それは後で思い返せば確かに恥ずかしい事かもしれないけど、その経験はきっと将来クリエイティブな仕事に付く時にはきっと役に立つ」

 言って、美琴の肩に手を掛けようとするとバチコーンと思い切りハタかれた。痛い。


「だからその異様なほどに優しい眼差しでこっち見んな哀れむな同情すんな! っていうかその場合ごくごく平凡な会社員とかになった場合はどうなるのよ!」

「そっと胸の奥にだけしまって墓の中まで持ち込むしか、ないな」

「そんな悲しい未来は嫌っ!?」

「人間、諦めが肝心だぞ」

「安っぽい同情してんじゃないわよ! っていうか違うから私のは中二病的なアレじゃなくてガチで追われてんの! だからそんな痛ましいものを見るような目でこっち見んな重い溜め息吐くな何もかも理解したような顔で深く頷くなぁっ!!」

 はぁ、はぁ、と息を切らせ少女の肩が上下する。
 そんな少女の必死な様子を見て、上条は上条でなんだか愉快な子だなぁ、と心の中で呟いた。恐らく聞かれたら思いっきりぶん殴られるだろう失礼な呟きである。

「あー、まあなんつーか、散々からかっておいてなんだが、な」

「な、何よっ、今更謝っても許してなんてあげないんだからね!」

「その……さっきも言ったけど俺朝飯まだなんで腹減ってるんだよな。良かったらお前も食うか?」

「ッ! 誰がアンタの施しなんか……!」

 ぐううううきゅるるるる、と、可愛らしい腹の虫が鳴った。恐らく、目の前の少女の胃の辺りから。
 ふと見やれば少女の顔がみるみる内に真っ赤に染まっていく。あまりの恥ずかしさに目の端に涙まで浮かべているので、上条は指摘しようと開きかけた口を閉じ、頬を掻きながら「いいからその辺に座って待ってろ」とキッチンへ向かった。

 ふと目を逸らす直前に見えた、こちらに手を伸ばしかけて引っ込める真っ赤な顔の少女を見て、上条は苦笑を噛み殺す。
 折角だからトーストに乗せる苺ジャムくらいは多めにサービスしてやろう。

ってな所で初回の投下を終了させて頂きます。
本当は全部書き溜めてから一気投下したかったんですが煮詰まって我慢出来なくなって放出と相成りました。
遅くとも3~4日に一回は投下したいと思ってますのでしばしのお付き合いをお願いします。

お話としては原作1巻の再構成で、但し登場人物の立ち位置と舞台とが若干妙な事になってる感じです。
おかげで色々とめんどくさかったりややこしい事になったりどこが再構成?になってたりもしますがご了承下さい。
地の文形式だし勝手解釈や勝手設定バリバリなんで合わないなーって人は引き返した方が無難だぞ!ごめんね!

>>7
トリップの通り、正解です。
今までのお話とは色々と毛色が違うと思うのでご注意をー

乙!

ついに来たか……完結に持っていってくれるなら、いくらでも待つ。

ちょっと用事があるのと細かい修正入れてるので初回投下はこれだけですが夜にもっかい投下予定です
完結は絶対持ってくってかそんなに長くならないと思われますよぅ
それじゃまた今夜!

超期待してます!

予告から期待してました。
乙です

うおおおおお期待支援

乙乙
インデックスが美琴で美琴がインデックス?
といってもタイトル見る限り美琴は一方さんの役もとってるし展開が予想出来んな

>>23
間接的に殺したってことじゃない?
原作でもそんなこと言ってたし

待ってたぜ!
超期待してる

乙です!
美琴の追手が誰か気になるな

黒子

戻ったか!!
>>1乙期待してます

おいおい、超期待できるな。乙なんだよ。
原作よりもありそうなイントロストーリーにわらたww 上条父なら魔術にのめり込みそうだ

超期待

ただのゴミだろ? ゴミ琴

キャラアンチは二次SSまで荒らすようになったのか
ほんとゴミだな

ついに来たか
超期待

ちょ そんなモンに触れるな

スレが大惨事になるかもしれないだろ

ちょっと楽しみかも

二次創作スレが大参事(キリッ

このスレなに?
一回中断したスレを一から投下し直してんの?

噛ませ犬は……コンゴウさんかな?

全然わからん

スレタイ見た瞬間ガッツポーズ取ってしまった
期待してる

ついにきたか……超待ってたぜ期待
自分のペースでいってくれい

予告編見た時から期待してたんだよ!

アンチに負けず最後まで頑張ってくれ

アンチ=ツンデレ

期待してるぜ

コメントめっちゃついててびっくりした。なんというぷれっしゃあ・・・

ありがとうございます、少しでも期待に沿えるよう頑張ります
とりあえずちょいちょい見直ししながら20時頃をめどに投下します

あ、関係ないですけど投下中のレス歓迎ですから出来れば遠慮せずにガンガンやっちゃって下さい
これを言ったらアレかもですが細かいボケやネタに突っ込んで貰えるのが嬉しいタチなんでw

銀魂関係のスレみたいなノリで良いんだな?

>>46
そんな感じで
いや銀魂関連ってクロスSSを幾つかしか読んだ事無いので良く分かりませんがw

んじゃ投下しますー

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――――
――


「まずは自己紹介しなくちゃね。私は御坂美琴、見ての通り日本人よ」

「御坂、ね。俺は上条当麻。こちらも見ての通り日本人だ」

「上条さん、ね。よろしく」

「お、おう。よろしく」

 ジャムトーストとベーコンエッグというお手軽もお手軽な朝食を終え、ひとここち付いた所で、傷だらけの少女改め美琴と向かい合う。
 こうして落ち着いてみると、確かに傷だらけで、ブラウスやセーターやスカートのあちこちが擦り切れたり汚れたりしているが、少女は整った容姿をしていた。
 一言で言えば美少女だ。
 化粧っけは全く無かったが、それが逆に少女の健康的な美しさを演出しているとも言え、曲がりなりにも年頃の男の子である上条は正面から向かい合うのが照れ臭い。

                                        ロンドン
「しっかし、アレだな。幾らイギリスの中でも比較的外国人が多い首都とはいえ、まさかピンポイントで日本人が住んでる部屋のベランダに引っ掛かるとは、お前凄いよなー」

 照れ臭さを誤魔化す為に適当に話題を逸らす上条だが。

「あはは、言われて見ればそうよねー。なんだか運命じみたものを感じちゃうわ」

「う、運命!?」

「え? いやいやいやマジに捉えないでね? 軽いジョーダンよジョーダン!」

「あ、わ、悪いそうだよな」

 上条当麻、年下の少女にちょっぴりドキドキしてしまうの図。余計に墓穴を掘ってしまったと反省。

「そ、それよりえっと御坂、さん」

「呼び捨てでいいわよ。アンt……上条さんの方が年上だろうし、堅苦しいの苦手だからフランクに行きましょ?」

「そっか、んじゃ御坂。俺の方も呼び易い呼び方でいいぞ。年上っつっても大してかわらなそうだし、敬語も不要だ」

「……そ。ありがと、助かるわ」

「それより、御坂。あちこち傷だらけじゃないか。救急箱あるから軽く手当て位はした方がいいんじゃないのか? 服もボロボロだし何か貸そうか?」

「んー、そうね。正直あちこちヒリヒリするから、悪いけど好意に甘えさせてもらおうかしら。でも服は良いわ、多分借りても返しに来れないだろうし……」

「あ、そっか、追われてるって設定……じゃない、マジで追われてるんでしたねすいませんでしたぁっ!」

 会話の途中で美琴方面から尋常じゃない怒気を感じた上条は素早く土下座の姿勢にてその怒りを収める事に成功する。普段からその不幸体質で危ない人に絡まれやすい上条の得意スキルの一つ『THE・瞬間土下座』がこんな時に役立つとは、等と上条は自分の運の無さに一瞬感謝しかけ、次の瞬間に暗鬱な気分に陥った。
 トボトボと救急箱を取りに部屋の隅へ移動する上条に、思わず美琴も申し訳ない気持ちになりそわそわと膝を擦り合わせるものの、何を慰めれば良いのかさっぱり分からず結局何も言えないまま渡された救急箱を大人しく受け取った。


「中の物、何使っても良いからな。使う機会も多いから包帯とか消毒液の在庫は多めに備蓄してあるし」

「ありがと……使う機会が多いって、なんか激しいスポーツの部活動とかやってるの?」

「ああ、まあそんなとこ……」

 実際はそんなとこじゃなく、単に自らの不幸体質のせいだなんて言えない上条は不自然に目を逸らすと乾いた笑いと重い溜め息を漏らすのだった。

 と、美琴の方に目をやると、何だかそわそわとしながら上条の様子をチラチラ伺っていた。
 なんだ、トイレか? というベタなボケが一瞬浮かんだが、すぐに合点が行って上条は立ち上がりながら何気ない風をよそおい尋ねた。

「えっと、飲み物でも買って来ようと思うけど、御坂は何か要るか?」

「あ、うん。じゃあ、ヤシ……じゃない、何かサイダー系があれば、それで」

「あいよ」

 去り際にひらひらと手を振り、上条は自室を後にした。


 上条が去った後、遠ざかる足音に耳を凝らしていた美琴は、そこからたっぷり百秒ほど待ってから衣服に手を掛け、脱ぎ始める。
 細かい傷は全身のあちこちに刻まれ、服を着たままでは手当て出来ない箇所が幾つもあるのだ。
 流石にさっき知り合ったばかりの男の子の前で服を脱ぐ真似は出来ず、さりとて世話になった人に出て行けとも言えなかったので、上条が空気を読んで外出してくれたのはありがたかった。

 ふと、わき腹の青痣に湿布を貼りながらその傷を負った場面を思い起こす。
 じわり、と目の端に涙が浮かびかけ、慌てて少女はそれを拭い脳裏の映像を消し去るように頭を左右に振った。

「どうして、こうなっちゃったのかな……」

 弱々しい少女の呟きは、誰にも届く事無く、空気に溶けて消えた。
 包帯を巻く手はのろのろと動き、手当ては遅々として進まない。

 見知らぬ街の片隅で。見知らぬ少年に温もりを与えられ。それでも少女はただひたすらに孤独だった。

――――――――
――――
――


「超能力、ね」

 行きつけの雑貨屋で飲み物を購入した帰り道、人通りのまばらな路地を歩きながら上条は呟いた。
 美琴の前では中二病呼ばわりしてからかいはしたものの、実際上条は少女からキナ臭いものを感じ取っていた。

 イギリスに移住する前、住んでいた実家の程近くに『学園都市』なる場所があった。
 東京都西部のほとんどを高い壁と厳重な警備システムで囲い、その中にはその名の通り夥しい数の教育機関が詰め込まれた、学生の為の街。
 しかしその詳細は外部への徹底的な情報規制の下ほぼ霧の中。周辺では怪しげな噂話が幾つも広まっていて、当然上条もその一部は耳にした事がある。


――曰く、学園都市内部では、子供達を使い、超能力の開発を行っている。


 火の無い所に煙は立たず、とは言うものの、物には程度というものがあり、実際火の無い所に煙を立たせる輩など履いて捨てるほどいる事くらい上条も熟知している。
 そして『学園都市』とは、その閉鎖的な性質上、そういった性質の悪い輩のやっかみの対象としては余りに適当に過ぎた。
 しかもよりによって超能力、と来たもんだからいくら何でもその噂が荒唐無稽の笑い話に過ぎない事など、幼い時分の上条であっても分かりすぎる位に分かり過ぎるという物だ。


    オカルト
 だが、魔術が存在する事を上条は知っている。


 ここ、霧の中の街であるロンドンで、表の世界の住人には決して知られないまま、魔術はあちこちに潜み、溶け込んでいる。
 そんな事を通りを歩く学生もしきりに時間を気にしているビジネスマンも楽しそうに歩く親子連れも真っ白い服に銀髪の少女も一切知らず、のほほんと平和で退屈な日常を過ごしている。

「…………」

 そのまま何も見なかった事にして通り過ぎようと上条が歩を進めようとすると、その白い銀髪少女が物凄い形相をしながら前方に回りこんできた。

「ちょっとそこのツンツン頭! 今あからさまにスルーしようとしたよね? いい度胸してるかも!」

「……あー、なんだチビッ子魔神か」

「むきーっ! 私にはインデックスってちゃんとした名前があるんだよ! いい加減ちゃんと覚えて欲しいかも! 貴方初めて会った時からチビッ子って言ってるし!」

「初めて会った時……?」

 言われて上条はその時を思い出してみる。


 それは一ヶ月前の事だろうか。
 初めて会った時もこの女は不良どもに囲まれていた。そう言った場面を見過ごせない性質の上条は当然割って入ったのだが。

『やー、こんな所にいたのかー、ダメじゃないかはぐれちゃー』

『……私、貴方の事知らないんだよ。手、離して欲しいかも』

『ハハ、ハ……ハ?』

『いいから離して。汗でベタベタして気持ち悪いんだよ』

『いや、お前ここは話を合わせろよ! 折角の俺の『知り合いとの待ち合わせのフリして連れ出しちゃうぞー♪』作戦がっ!』

『なんでそんなメンドクサイ事しなくちゃいけないの?』

『おまっ……!』
                                                  サモンイフリート
 そのまま少女と口論になってガキだのウニ頭だの罵りあった挙句少女がキレて炎の魔神召還ーどかーん(この時点で不良ども全滅)とかなって咄嗟に右手で防御したら、なんで無事なんだと因縁を付けられ、次々と魔術で攻撃をふっかけられたりそれを打ち消すやり取りを繰り返した挙句、何故かそれ以来目を付けられ会う度ケンカをふっかけられるような関係になってしまったのだった。


「これが不幸と言わずしてなんといえばいいのだ……」

「……何いきなり遠い目をして人の事無視するのかなこのウニ頭は」

 上条としては今は部屋に残してきた少女の方が気になる。とりあえず目の前のチビッ子は適当にあしらう事にした。


「で、何か用でもあるのかよ 。そもそもお前の家も通ってる教会も反対方向だろ。もしかして嫌味な上司にパシらされてるとかか?」

「そんな事させられてないんだよ! それよりっ! 今日という今日こそ私の魔術でコテンパンに打ちのめしてやるんだから黒コゲにされるか手足引き千切られてダルマになるか全身の穴という穴から墳血するか好きな死に方を選ぶといいかm……むぐっ!?」

 街中で物騒な発現を大声でわめき散らすインデックスの口を思い切り右手で覆い隠した。

(馬鹿野郎っ! こんな一般人が大量に居る所で魔術だとかダルマとか物騒な事大声で言うんじゃねぇっ!)

(むーっ! むぐぐーっ!)

(き、聞かれてないよな今の……?)

 暴れるチビっ子を必死で抑え付け、上条は辺りの通行人の様子をチラリと窺う。


 ざわ……

    ざわ……


(…………ん?)


 あらやだ、誘拐……?

    冴えない顔した男ね……きっと女の子にモテないからって……


(あれーっ!? ひょっとして俺の咄嗟の行動裏目ですかーっ!?)


「…………え、あ、いや。これは……ですね」

 ピピーッ! と鋭い笛の音が響き渡った。
 釣られて目を向けると、ごっつい体つきをした警察官がこちらに向かってくるのが目に入った。

「ゲッ! ちょ、ちょっと待っ……いやこれは違うんです誤解ですああもう不幸だちくしょうーッ!」

「あっ、ちょ、ちょっと待つんだよウニ頭!」

「不幸だああああああああああああああっ!!!」

 泣きながら全力で逃げ出した上条を、インデックスは慌てて追い掛ける。
 上条当麻、結局本日も不幸まっさかりであった。


「はぁ、はぁ……ああもう畜生一体俺が何をしたってんだ」

「大人しく私と勝負しないのがいけないんだよ」

「…………なぁ、なんでお前居るの?」

「なっ! いちゃいけないの!?」

「うん」

「むきーっ! ムカつくムカつくムカつく! いいからとっとと勝負なんだよ!」

「勝負も何も、お前が一方的に魔術ぶっ放して俺が全部打ち消してるだけじゃないか。そういうのってただのイジメって言うんだぞ。前園さんもカッコ悪いって言ってるしいい加減にしたらどうだ?」

「何を訳の分からない事言ってるんだよ! 大体そっちがカッコつけて攻撃しないからイジメみたいになるだけかも! いい加減マジメに私と戦うんだよ!」

 キャンキャンとうるさい少女に、上条は溜め息を一つ吐き出した。

 、 、 、 、、 、、 、 、 、、 、 、 、 、
「じゃあ、マジメにやっていいんかよ?」


 ぐ……ッ、とインデックスは言葉を詰まらせた。

 上条にまっすぐと睨まれただけで少女の全身は強張り、指1本動かせなくなる。
 インデックスにとって上条当麻とは得体の知れない恐怖そのものだ。
 何しろ、自分が今まで築き上げてきた自信もプライドも魔術の技術も、訳の分からない内に全て打ち消されてしまい、何十もの魔術攻撃を打ち込み続けたにも関わらず、当の上条は舞い上がった埃や土に汚れてはいたものの全くの無傷だったのだから。

 ふ、と上条は目を逸らしてガリガリと頭を掻く。ただのハッタリだったにも関わらず思い切りビビられてしまった。これじゃホントに年下の女をイジメてるだけにしか見えない。

「はぁ……まったく、なんで俺の周りには自称超能力者とかチビッ子魔術師とかそんなのばかりなんかね。なんつーか、不幸だなぁ」

「ちょ、ちょうのうりょくしゃ……?」

 さっきまでギャーギャーうるさかった少女なら噛み付いてきそうな発言なのに、今はびくびくと若干距離を取りながら聞いてくる。
 自分から絡んできたくせに、と思わないでもないけど、そこまでビビらせてしまったのは上条本人であるし、何とも複雑な心境だ。
 なんだかばつが悪くなった上条だが、何の気なしに半歩踏み出したらびくぅっ! と、2~3歩後ずさられてしまい、思わず溜め息が漏れる。

「…………はぁ」

 どうやら今は自分が何をしてもビビるモードのようだと判断した上条は、仕方ないので雨の中の捨て犬のようにブルブル震える少女を放置して家へと足を向けるのだった。

――――――――
――――
――


「ただいまーっ、と」

――!? わっ、ひゃっ!

 玄関を開けると、奥の方からどったんばったんと派手な音が悲鳴と共に響いた。

「? ……まさかっ!」

 一瞬考え込んだ上条だが、美琴が追われている事を思い出し、即座に駆け出す。
 本当に追っ手が来ているのであれば逃げ場の無い狭いアパートの部屋はただの袋小路であり、危険な死地となる。


「無事かっ、みさ、か……!」

 短い廊下を一足飛びに駆け抜け、奥の部屋に飛び込むと、上条の目の前には肌色が広がっていた。

「…………へ?」

「……………………」

 上条の目の前で、ベッドに腰掛けた姿勢で固まってる御坂美琴。
 ベッドの枕元付近にはサマーセーターとブラウス、スカートと短パン、そしてブラ……が綺麗に畳んで置いてあり。



 つまるところ、御坂美琴は裸だった。


 かろうじて、見てはいけなそうな部分には包帯が不器用に巻かれているおかげで隠されているので、一応セーフ? と上条としては思いたいのだが。

「………………」

 思い切り涙目の美琴を見るに、こりゃ多分アウトだろうなぁと諦めの心境に陥る。

 そして、そんな上条に更に追い討ちをかけるかのように、パサリ、と明らかにヘタクソに巻かれた包帯がずり落ちて布団に着地した。

「………………」

「………………ふ」

「ふ?」

「ふにゃあああああああああああ!!」

「ぎゃあああああああああああああああああッ!」

 バチバチビリビリィッ! と突如少女の前髪から危険な音と共に蒼白い光が撒き散らされる。
 咄嗟に右手を突き出したのは習性なのか本能なのか分からない。
 が、その蒼白い光は上条が突き出した右手に触れると、バギン、と甲高い音と共に消え去った。

今晩は以上となります
次回は2~3日中に・・・

>>37
全部書き下ろしですよー
なんか誤解させるようなこと書いてすいません

追っ手が分かるのは次回か次々回かな・・・
今の所ヒントは0なんで好きに予想してみてくださいw


原作インデックスの神裂ステイル辺りか

ですのと寮監あたりでどうか

ふにゃー

上条さん今見た光景を絵にしてくれ!

>>1乙!
ステイル、ねーちんのポジションに誰が入るのがすごい気になるな
科学サイドで美琴のある程度強い仲間って言ったら黒子しか
思い浮かばないしな

正直この発想はあった

ここまで設定変えてると逆に楽しみになってくる

妹達かアイテムと予想
大穴で猟犬部隊とかかな

ステイルポジは黒子じゃね?

>>1超乙!

イン(ryとほぼ逆転してるって考えるなら
美琴と ある程度、関わりや接点がある(あった)人物って事にだよな…?
(話の流れも一緒だと、上条さんとバトルになるから それなりに戦闘ができる人物になるな…)

黒子と初春と佐天あたりじゃね?

佐天さんがバット持って追いかけてきてたら胸熱だなぁ

逃げてるってことは美琴より強い、もしくは同程度の強さなハズ
よって超能力者かパワードスーツ、ファイブオーバー、暗部組織ってとこだな!

佐天が魔術師かもよ
あーでも、科学側か

学園都市第一位、一方通行の白井黒子!
学園都市第二位、未元物質の初春飾利!
学園都市第四位、原子崩しの佐天涙子!

と言う可能性もここではありそうだがどうか

超能力者は魔術サイドで言うと神の右席級だし、噛ませならレベル3~4程度が妥当だと思うけどね

やばい面白い
これは期待大きいわ

>>75
麦野×佐天だと・・・!と思ったがスレの内容思い出してな・・・

予想はよそう


やっと追いついた…!
やべぇ、これはおもろいわ…
めっちゃ支援ですよ!!

GJ素晴らしい。歩く教会破壊をそう補完したですか。
佐天さんがこのド素人が!っていいながらバットで上条さんタコ殴りするとこ想像して笑ったw

GJ!
続き待ってます

多分黒子かなぁ
まともにやれば黒子が美琴に傷を負わせるなんて出来ないだろうけど美琴の方が黒子を傷つけるのを躊躇う内に攻撃されたとか

>>83
いや、結構いけそうだと思うのだが

「黒子の愛が受け入れられないのならいっそ、黒子と戦ってくださいまし」

っていう台詞がアニメであったわけで

>>1が書き難くなるような予想レスはそろそろ控えようぜ




刺客はスフィンクスと"いぬ"

予想してみろと>>1本人が言ってんだから構わんだろうよ

職場からこっそり
予想レスで書きにくくなることはないので控えて頂かなくて大丈夫ですよう

ただごめん、ヒント0って上で言ってるけど某所で予告編見た人は答え書いてあったわ
完全にボケてた本当にすいません空気読んで答え書き込まなかった人ありがとうw

あと次回かその次に答が分かるって言ったけどそれも嘘だった
計算してみたらもうちょっと先だ重ねてごめん
代わりと言ったらなんだけど昨晩に少し書き溜め進んだのでトラブルが無い限りは今晩投下する
それで勘弁してくださいお願いします;

これは1巻終了後に美琴と同居フラグ立ってるわけですがそのへんはどうなのかな(キリッ

>>88
それは秘密です!(キリッ

21時過ぎから投下します


「あ、れ……?」

「…………へ?」

 思わず顔を見合わせる少年と少女。

「い、今の……何?」
                      エレクトロマスター
「あ、その……今のが、私の超能力。電撃使いって言って、電気や磁力を操る事が出来るの」

「電撃使い……」

「そ、それよりアンタの方こそ、今の何? 私の電撃が消えちゃったんだけど……!」

「あ、ああ。これはだな……」

――――――――
――――
――


 イマジンブレイカー
「幻想殺し……?」

「ああ、俺はそう呼んでる」

 あの後、あまりの事に冷静になってしまった事が幸いしたか、裸を見られた事はとりあえず不問にして貰えたようだ。
 ちなみに美琴は包帯を巻くのが非常にヘタクソで、上条が結構な時間を掛けて外出から帰ったにもかかわらず上手く負けずに四苦八苦してたとの事で、仕方ないから上条が代わりに巻いてやった。はっきり言って羞恥プレイだったがそれについても何とか我慢してもらえた……と、思う。

 そして、今は改めてお互いの能力について情報交換をしているといった状況である。

「異能の力なら、なんでも……って。嘘みたいに反則な能力ね、それ」

「確かにな……生まれた時から付き合ってる俺も、良く分からない部分が沢山ある。ある人には、これがあるせいでお前は不幸なんだって言われた事もあるんだぜ」

「え、不幸? なんで?」

「なんでも、この右手は神様から与えられた幸運さえも打ち消してしまうんだと」

「神様……か」

「ん? どした?」

「いや……何でもないわ」


 言いつつ、虚空を睨みつけるように黙り込む美琴を見ると、どこが何でもないんだよと言いたくなる上条だが。

(……ま、聞くのも野暮ってもん、かな)

 色々喋って喉も渇いたので、買って来た瓶入り飲料を取り出し、片方を美琴へ投げ渡す。

「ひゃっ! あ、ありがと」

「あ、ちょっと温くなっちゃってるのと、持ちながら走ったから噴きこぼれるかも知れないから気をつけろよ」

「え、ちょ、きゃっ!?」

 思い出したかのように注意した上条だが、時既に遅く、少女の手元から白濁した泡が吹き出し少女の手に噴きかかった。

「は、早く言いなさいよそう言う事!」

「あ、悪い。言うの遅かったか……」

「あうう……手がべとべとするぅ……」

 幸いにも瓶を持っていた手とスカートの端が少し濡れただけで済んだようだ。
 渡した濡れ布巾でスカートの端を丁寧に擦る美琴を眺めていると、ふとこちらを見た美琴と目が合った。

「……何よ」

「あ、いや。渡した方半分くらいこぼれちまったし、こっちと取替えようぜ」

「え、いいわよ別に……。私の方だって不注意だったんだし」

「いいからいいから」


 半ば強引に美琴から瓶を奪い取ると、自分の持つ未開封の物と取り替えてやる。
 一瞬戸惑ったような表情を浮かべた美琴だが、渋々といった様子で瓶を受け取ると、今度は慎重にその蓋を開封した。
 こぼさずに開封出来た事にほっとしたような顔をした美琴は、喉が渇いてたのもあり瓶に口をつけぐいっと傾ける。

「んく、んく――――むぐっ!? ご、ごほっ! ごほごほっ! な、にこれ、苦っ!」

「何って、ジンジャービアだぜ。ジンジャーエールの元ネタ」

「ジンジャービア……これが?」

「飲むの初めてか? こっちじゃ一般的なんだけどなぁ」

「アンタ、思い切り顔ニヤけてるわよ。ひょっとして図ったわね?」

「へへ、これ初めて飲む奴は大抵強烈なジンジャー臭にむせるんだよなぁ。俺も最初はそうだった」

「くっ、こ、子供の悪戯かっつーの!」

「いやまぁ、なんつーかある意味お約束っつーかなんつーか。でも美味いだろ?」

「う、ま、まあ美味しいけどさ」

 どこか納得できない顔をしつつも、ちびちびとジンジャービアを飲む美琴。なんだかんだで気に入ってくれたようで、内心してやったりの上条だった。

面白いし新鮮だから期待してるよ! 頑張ってね!

――――――――
――――
――


「じゃ、私そろそろ行くわね。色々ありがと、世話になったわ」

「え、お、おい」

 さばさばとした表情で笑い、立ち上がる美琴に上条は戸惑った。
 何を戸惑ったのか? 上条本人にも分からない。が、何となくこのまま少女を行かせたくない。不思議とそう思った。

 が、美琴はスタスタと玄関に移動し、既にドアに手を掛けている。

「あの……御坂」

「何?」

「えっと……行くアテとか、あるのか?」

 落ち着き無く聞いてくる上条に、驚いたように美琴は振り返る。

「何? 心配してくれてるの?」

「え? ああ、いや……そりゃ、心配くらいするだろ。お前は曲がりなりにも若くて可愛い女の子なんだし、ここはお前にとっちゃ勝手が分からない外国なんだぜ?」

 先程のジンジャービアのやり取りを見ても、美琴がロンドンという土地に慣れていない事は明らかだと上条は確信している。
 そんな見知らぬ土地に一人、しかも怪我だらけの少女を放り出すと思うと、生来のお節介な上条としてはとてもじゃないけど放ってはおけない。


「ふーん、そっか。心配してくれてありがと」

 クスリ、と笑う美琴に食い下がろうとする上条だが。

「でもね」

 バチッ、と美琴の前髪から蒼白い閃光が迸る。次の瞬間、それは上条が伸ばしかけた右手に吸い込まれ、パキン、と乾いた音を立てて消滅した。

「この通り、私はただのか弱い女の子じゃないわ。だからご心配無用」

「で、でもよ……」

「あ、そうだ」

 何かを思い出した美琴はドアに向いていた体をクルリと上条に向け直し、ニッコリと笑いながらチョイチョイと手招きをして見せた。

「ちょいとアンタ、顔貸しなさいよ」

「? なんだ?」

「いいから、美琴さんからの最後のお礼よん♪」

「良く分からないけど……こうか?」

「そうそう、ちょっと右向いてー。うんうんそんな感じそんな感じ」

「…………?」


 言われるがまま顔を近づけ、美琴に頬を向ける姿勢を取る上条。
 一瞬、これはまさか……キで始まりスで終わる甘酸っぱい青春のアレとかソレとかですかーっ!? と思いちょっぴりドキッとした上条だが、




「じゃ、後は歯を食いしばってねー」


「……え?」



 次の瞬間物凄い殺気を浴びせられ、その幻想をぶち壊された事を知る。


「さっきは良くも人の裸見てくれたわねええええええええっ!!」


「ごっ、がァあああああああああああああああああッッッ!?」

          ビリビリ
 轟ッ!!! と電撃が篭められた拳が唸りを上げたかと思うとそれはまっすぐに上条の左頬に突き刺さる。上条はノーバウンドで5メートルほど吹っ飛び床を転がり奥の部屋の壁に激突、肺の中の空気を全て吐き出し、床に崩れ落ちた。

「はー、すっきりした。んじゃ、さよならー♪」

「待てコラッ! 恩人になんていう仕打ちして行くんだテメェッ!」


「だーかーら、それはありがとって言ってるでしょ?」

「ふざけんなっ! お礼は一言で恨みは強烈なパンチとかあまりに釣りあってねぇじゃねぇか!」

「美少女の裸に値は付けられないのよ。プライスレスプライスレス」

「自分で美少女って言う奴ほど信用ならない奴はいねぇよっ!」

「なによー、細かい事をネチネチと。どうせ二度と会わないんだしほっとけばいいじゃないそんな事」

「ほっとけるかっ! ていうかお前とは絶対二度どころかこれから何度か会いそうな気がするよッ! それに!」

 バン、と壁を叩いて上条は叫ぶ。


「……お前、追われてるんだろ。本当に一人で大丈夫かよ。実際ベランダに引っ掛かって気絶してたじゃんか」

「…………いいから、ほっとけばいいじゃない」


「だから、ほっとけるかって。服だってこの辺りじゃ見慣れない格好で、そんなボロボロだし、滅茶苦茶目立つぞ」

「……はぁ。ホントにお節介のお人好しねアンタ。第一それならなんでアンタはこんな怪しい格好した女がベランダで引っ掛かってて、そう平然と優しく出来るのよ」

「そりゃあ……」

 上条にもそれは分からなかった。話してみたら思ったより会話のウマが合ったとか、単に困ってる人を見捨てられない性分だとか、そういうのかもしれない。

 けど、ちょっと違うような気もする。
 何がどう違うのか? と言われてもはっきりとは分からず頭を捻ってみるも、答えは出ない。

 ただ、どうしてもそのまま少女を行かせたく、ない。
 それだけははっきりとしていた。


「……やっぱ、ほっとけねぇよ」


「……私に関わるとアンタも追っ手に襲われて危ないわよ?」

「だとしても、土地勘の無さそうなお前一人で逃げるより、ここに住んでる俺が協力した方がいいだろ? それとも、お前も追っ手もこっちに来てから長いのか?」

「ううん、私がこの街にいるのは昨日の夕方からよ。その時から既に追っ手に見つかってて、そっから徹夜で逃げ通し」

「じゃあやっぱ俺が……」

「アンタさ、やっぱお人好しにも過ぎるわよ。そもそもなんで私が追われてるのか、犯罪者なんじゃないかって疑ったりとかしないの?」

「犯罪者ぁ? お前みたいのが大した犯罪なんて犯すとは考えにくいんだが……」

「忘れたの? 私は電撃を操る超能力者よ? 見た目や年齢なんか関係ない」

「……、だとしても、俺はお前が悪い奴には見えねぇよ。少なくとも、一晩中追い回されて体中青アザだらけにされるような犯罪を犯した奴には、とても見えない」

「随分私の事買ってくれちゃってるわね。アンタがそこまで私を信用してくれるのは嬉しいけど、さ。アンタはなんで、会ったばかりの私にそこまで言えるのよ?」

「……短い時間だって、分かるさ。お前が悪い奴じゃないって」

「…………私が、悪い奴じゃ、ない?」

「ああ、そうさ。だから……」

「ふーん、でもさ、それって――」








「――私が一万人以上殺した、殺人者でも?」







なんかときめいてきた
>>1の過去作とかある?


 美琴の言葉に、上条の思考が固まる。


 殺人者?


 一万人?


 少女の口から出た言葉の意味が分からず、上条は目の前の少女に訴えかけるような眼差しを送った。

 そんな上条を見て、美琴はクスリと笑いを漏らす。
 それは、まるで、当然自分に手を差し伸べる存在などいやしない、とでも言いたげな笑いで。

「助けてくれた事は本当に感謝してる。もし出来たら、いつか十倍にして返すからね」

「え、待っ……」

「じゃあね」

 伸ばしかけた右手の先で、バタン、と勢い良くドアが閉まった。

 それは、まるで拒絶。

 行き場の無い右手を宙にさまよわせ、上条は力なくその手を握り締める。
 去り際、ドアの隙間から覗いた少女の表情が、目の奥に焼き付いて離れなかった。


 上条は、美琴との短い時間でのやり取りを思い出し、ふと気付く。

 あんだけやかましくギャーギャー叫んで。

 食事を与えたら急に大人しくなって。

 包帯を巻いてやったら顔を真っ赤にしながらぶつぶつと文句を呟いて。

 からかったり、下らない冗談を言ったらイチイチ良い反応返してくれて。

 電撃喰らったり思い切り殴られたりしたけど、そのドタバタもまた楽しくて。



――つまる所、自分は彼女とのやり取りが、楽しかったんだな、と。


 だから、上条は少女のそんな顔がヤケに胸に残った。


 寂しくて、苦しくて、今にも潰れそうなのに。




 始めっから助かるのを諦めているような、そんな顔が。



 部屋に戻り、シーツの乱れたベッドに座りながら、上条は思う。
 束の間の邂逅で、上条の心に不思議な風を、暴風を引き起こし、あっという間に去っていった少女の事を。
 何故自分はあの少女を引き止めなかったんだろう。
 引き止められないなら、せめて目的地の近くまでついていってやっても良かったのに。
 上条は落ちこぼれとはいえ、魔術という裏の世界の住人で、荒事に巻き込まれる事には慣れていて、美琴は超能力者とはいえ女の子で上条は男だ。

 だが、それがどうした。

 所詮は奇妙な出会い方はしたものの、今日初めてあったばかりの、赤の他人だ。
 上条が親切心と同情で伸ばした手は、あっさりと拒絶されたのだ。
 ならば、ただ街中で偶然出会っただけの上条に、出来る事など何も無い。

 ただ、それだけの事。
 それだけの事なのに、何故だか上条は無性にイラついていた。



 でも、イラつくだけで、何も出来なかった。

以上、本日の投下終了です。
以下、謎のおまけ

☆NGシーン

 イマジンブレイカー
「幻想殺し……?」

「ああ、俺はそう呼んでる」

「……アンタの方がよっぽど中二病じゃない」

「それは言わないでッ!?」

☆NGシーンその2

 思い出したかのように注意した上条だが、時既に遅く、少女の手元から白濁した泡が吹き出し少女の手に噴きかかった。

「は、早く言いなさいよそう言う事!」

「あ、悪い。言うの遅かったか……」

「あうう……手がべとべとするぅ……」

「……、……」

「あれ? どうしたの前屈みになって?」

「……ちょっとした男の生理現象です」

「?」



すいませんでした。

これは両方入れてよかったのが明白(キリッ

美琴が純粋にかわいい。なんか久しぶり、このときめく感覚

ちょっと原作だとときめきにくくなってきてたから
こういうのはクるね 乙!

ちょいとだけレス返し

>>64
ボクからもお願いします!

>>103
◆MDOfmX8bYE のトリップでググればちょっとだけ引っ掛かります
こことは違う雰囲気の話しか書いてきてないのでご期待に添えるか・・・
あと、このスレの予告編みたいのを現行別スレで投下しちゃってますが一部ネタバレ含むんでご注意下さい


次回投下は明後日くらいを目標にしております
それではー

うおおおお乙
美琴が可愛すぎてつらい
この後の展開も想像するとつらい


なにこれ久しぶりにときめいた…
NGシーンも良かったwww

とりあえず>>1に敬礼だっ!ビシッ


どっかで見たことある酉だと思ったらフラグメーカーの人か

乙!
オラすげぇワクワクしてきたぞ


続きが気になってしょうがない

NGシーン2は、全く同じこと考えててワロタwww

追い付いた
全力で支援

乙!

美琴がベッドで寝て三下はバスルームで眠るわけですね
wwktk

ここの美琴ならデレて上条さんといっしょにベッドで寝そうだなww

「家主が風呂で寝てるのに暢気にベッドで寝られないわよ!」って
何故か二人そろって床で寝たりとかな

パジャマぺろぺろ
だが待てまだ同居のどの字も出てないぞおおお落ち着け

この発想は新しい気がするけど、さきがけいるのかな?

インデックスの代わりにオルソラが来た的な小ネタは見たことがある

かなり楽しみだ
期待

これは期待

久しぶりに続きが気になってしかたがないSSに出会ったぜ

今日更新あるかな

乙! ノーバウンドたん出てきたww
更新が楽しみすぎて生き延びられない

沢山のコメントマジありがとう・・・!
このあと20時から投下します
今夜はちょっと短めに行間話、美琴さんの過去回想編となります

よっしゃあ!

――――――――
――――
――


 中学の初夏、私は超能力者の第三位に認定された。
 達成感。それもあったとは思うけど、それよりも「何故?」という思いが強かった。

 自分の能力に自信が無かった訳ではない。
 けれど、超能力者に上がったその途端、既に他に六人いるのにその上から三番目になる理由が分からなかった。
 普通上がったばかりの自分は末席の七位か、たとえ前回からの期間が数ヶ月あるにせよ、精々六位くらいなんじゃないかと思っていた。

 それが、いきなり第三位だ。
 怪しいにも程がある。

 でも、何度見返してもその書類には第三位の文字が躍っていて。
 私の肩にはずしりとその三文字がのしかかった。

 ここまで来ると最早苦笑しか浮かばないな、等と強がってみたら、それはそれで諦めがついた。
 もう上に二人しか居ない。
 なら、今まで上だけ見て走り続けていた足をふと止め、周りを見る余裕を作るのも悪くない。


 自分は確かに自らの能力を伸ばす事に注力してきたし、成長してきた実感はある。
 けれど、逆を返せばそれはそれしか出来ないだけの単純馬鹿であり、立ち塞がる壁に真正面からぶつかる事しか出来ない融通の利かない意地っ張りだっただけの事で。
 能力なんか伸ばさなくても友達を沢山作ったり、他の特技を活かして学生生活を充実させているクラスメイトに比べて、私は何ら優れている点など無かったと思っている。

 それを、”能力が人より高いから、鼻に掛けている”と言う者もいたけど、それに対して何の反論もしなかったのは、相手するのが馬鹿らしい、というのもあるけど。
 上手く反論するだけの言葉を持ち合わせて居なかっただけの事だ。


 始めの内はただ手の平の間の電光が星の欠片みたいで、沢山の星を作りたいと思い。
 一つ、二つとそれが増えるたびに嬉しくて、もっと沢山、もっといっぱい、とそれに打ち込んで居ただけだった。

 楽しかった。
 嬉しかった。
 誇らしかった。

 そして気が付けばレベルは上がり、小学四年生にして強能力者に到達し、全校集会で表彰までされた。

――御坂さんはいいよね、優秀で

 そう言われて、照れくさくて嬉しかったけど、すぐに気が付いた。
 それは称賛とか、羨望とかそういうのじゃなく、敬遠とか、嫉妬とか、そういう言葉だった事に。

 悪意。

 それを向けられる事に、幼い私は戸惑った。
 どう受け止めればいいのか、どう処理すればいいのか、分からず。
 分からない事を持て余し、落ち着かず、とりあえず目の前の分かる事を先に処理しながら先送りにしていた。

 そして、レベルはまた上がり、先生達には褒められ、友達には遠ざけられ。

 誰一人友達の居ない、常盤台中学へと進学する事を決めた。

 それは、先送りにし続けたその問題から、ただ逃げただけだった。
 結局私は、幼く弱い子供のままだったのだ。


 子供のままじゃ居られない。

 逃げた先の常盤台で、私は仮面を被る事にした。
 幸いにも、知り合いが誰一人いない事が功を奏し、私はどうにか立ち位置を確保する事が出来た。
 それはちょっと想定していたものとは違ったけれど。

       レベル4
 入学時に大能力者だった事から、私は妙に持ち上げられ、結局浮いた存在にはなったが、元々仲が良いと思っていた友人が急に疎遠になる事に比べれば、なんて事はない。
 輪の外に弾かれる事に比べれば、輪の中心になって二~三歩離れた位置から囲まれ続ける事なんて、恵まれている方だ。


 そして、超能力者になったその夏、その距離は更に二~三歩離れる事になる。
 私はただ微笑みを浮かべ、距離を詰める事なく、その立場を受け入れる。

 同じ超能力者の第五位である先輩に派閥に誘われた事があったが、丁重に断った。
 その誘いは、向こうから近付いてくる物ではなく、私から歩み寄るような要求だったからだ。
 私は、自ら距離を詰める事も、遠のく事もしないと決めていたから。

 結局、私は頑固で、ワガママな子供のままだった。


 そして、次の春。私は中学二年生へと進級した。
 そこで、私は常盤台中学に進学して以来、初めて私との距離を動かす存在に出会う。

 その人物は、白井黒子という。

 初めて会った時、いきなり私に人差し指を突き付けると、何をヘラヘラと笑っているのか、気持ち悪い、等と言ってきた。
 呆気に取られる私の周りで、他の子達がざわめく。
 そこから畳み掛けるように投げ付けられる嫌味や悪口の数々。
 はっきり言って言い掛かりもいい所だった。
 私は彼女に何も言っていないし、何もしていないのに、何故こうも理不尽にボロクソ言われるのか。

 でも、気付いたら笑い出していた。
 久しぶりに大声を上げて、腹を抱えて笑った。
 笑われた彼女は目を白黒させ――いや、決して駄洒落のつもりはなく――笑う私に地団太を踏んで更なる罵詈雑言を浴びせると、踵を返して去っていった。

 でも、私の心には一筋の涼風が吹いていた。


 そんな彼女と、二ヵ月後にはルームメイトになり、三ヵ月後にはすっかり息の合ったパートナーになるだなんて、誰が予想しただろう?

 毎日のようにじゃれ付いてきて、逆に鬱陶しがって小突いたりぶっ飛ばしたり電撃でビリビリしたりするような関係になるだなんて、誰が想像できただろう?

 毎日張り付いたような笑いしか浮かべてなかった私が、声を荒げて怒ったり、涙が滲むほど笑ったりするようになるだなんて、誰が思っただろう?

 黒子は、私の世界を変えた、掛け替えのない存在だ。



 でも、それでも、私は仮面を脱ぐ事は出来ないままだった。

 黒子は、私の一歩後をついて来る、可愛い後輩にしてパートナー。



 私と同じ位置に立って、同じ目線で見てくれる存在は、ついぞ現れないまま。






――そして、悪夢の実験の存在を知った時、私の虚飾の世界は、支える者が誰も居ない砂糖菓子で出来た私だけの現実は、音を立てて崩れ去った。






以上です、短くてすいません・・・
今回は行間って事で、上条さんの居ない学園都市での美琴がどうなるか
それが現在の美琴にどう繋がるのかという所での描写になります
美琴さんと黒子や他二人の関係は原作(超電磁砲)と大差ない感じをイメージして頂ければ
色々と妄想入ってますがご容赦下さい

次回はまた二日後・・・かな

乙!
これはつらい……


確かに辛いわこりゃ


これは辛いな…
原作じゃあ上条さんがいたから少しは和らいだだろうけど上条さんがいないから余計に…

乙!
レベル5のみんなはこういう目に遭ってきたのか・・・
いっつーもていてくんもむぎのんも・・・

>>143
どいつもこいつも根性が足りてないからな!

>>144
アンタは色んな意味で例外だwwww

>>144てめぇwwwwwwしんみりした読後感を返せwwwwww

乙~
続き待ってます!

ttp://2syokan.blog.shinobi.jp/Entry/1083/
ここから鑑みるにこの作品もふひょおおおおおおおおおううううううううう
上琴も上禁もその他もみんなちがってみんないいと思うんだ

正直な話俺は美琴とインデックスは仲良くしてほしいと思う

>>149
超同意

>>149
超同意です

インさンを預けるのは良くないと思うぜェ。
やっぱり仲良しがいちばンだなァ。

ここのインデックスと美琴が出会うのはいつになるのやら・・・

ここのインデックスと美琴は原作通りいがみ合うんじゃないのか
立場が入れ替わってるんだし

てことは美琴がインデックスに品の無い女って言うのか…!

ねぇなww
まあいがみ合うかどうかは>>1次第じゃね
単純な立場逆転じゃなく状況事態が原作とは色々違うし

でもここの上条さんは美琴が居候なら食費とかあまりかからないから不幸にはならないよな。インさんの噛みつきのような物理攻撃もないし

ヒント:電化製品

入院費が一番の理由って聞いた

美琴の性格上家でずっとゴロゴロするようなニート生活はせんだろww
むしろ家事を率先してやりそうだし

あれ、それってなんて専業主f

>>158
上条さんは高額保険に入るべきだといつも思ってるわ

こむばむは
インデックスと美琴が仲良くする姿は大好きです
禁琴百合スレ早く再開しないかなぁ・・・

このスレでインデックスと美琴は邂逅するんでしょうかね
今の所一巻分(というには色々と違っちゃってますが)のアイデアしか無いのでなんとも言えません・・・

で、本当は夜に投下しようと思ってましたが夜勤明けで超ねむいので今から今日の分投下して寝ようと思います
じゃあ早速投下ー


 資料室での作業を終え、さて帰宅しようという段。
 無意識に吐いた溜め息に反応するかのように声を掛けられ、上条は足を止める。

「どうした、いつにも増して貧乏なツラしやがって」

 振り返ると、ボロボロのゴスロリ衣装を着たボサボザ髪の女がいた。

「貧乏とか言わないで下さい。貧乏なのは事実ですが」

「ハッ」

 鼻で笑われた。予想した反応だけど普通にダメージがでかく、上条は肩を落とし溜め息を吐く。

「で? そのしょぼくれた表情は何だよ。また転んで財布落としたか買った食材全滅させたのか」

「そんな所です。いいからほっといて下さい」

「やだよ。お前からかうの楽しいから好きだし」

「俺はシェリーさんにからかわれるの嫌いですけどね」

「おいおい、つれないねぇ」

 くつくつと肩を震わせてニヤけたツラを向けてくる意地悪な先輩だが、これでも結構世話になっているので無視は出来ない。
 今だってからかってるようで落ち込んでる上条の様子を心配して声を掛けてくれたのだ。

「ってか、底抜け馬鹿のお前さんがそう辛気臭い顔してると空気が悪くなるんだよな。嫌な事があったか分からんがその物覚えの悪い脳味噌の特性活かして速攻忘れてヘラヘラ笑ってりゃいいのに」

 ボロクソ言われて上条の心がズタズタに切り裂かれる。これでも心配してくれてるんだよ……多分、とこぼれそうになる涙をぐっと堪えた。


「で? 一体何があったんだ? 人には話せないような事か?」

「……なんでもないですよ、ホントに」

「ふむ……」

 探るような目。暗号や文書の解読を専門としている彼女の事だ、上条のヘタクソな隠し事なんて小学生向けの国語の教科書並に読み解くのは簡単だろう。
 しばしじーっと冴えない顔をした少年の目を覗き込んでいたボサボサ女は、一人得心したように頷くと呟いた。

「……女か」

「ブッ!!」

「ほっほーう」

 正解と認めたくない正解をズバリ言われてしまった事に激しく動揺する上条。
 意地悪な先輩である所のシェリーの笑みが悪魔のように深くなった。
 上条の背中に嫌な汗が伝う。


「待って下さい、そういうんじゃないですからね! 妙な想像しないで下さいよね!」

「あーあー、分かってる分かってる」

「うわぁ絶対分かってねぇよこのボサボサゴスロリ女、絶対妙な想像してるニヤけ具合だよその表情! 退屈してた所に美味しい弄りネタが転がり込んで来たのを心底喜んでる目だよその輝き具合!」

「オイコラ誰が暇人だって?」

「ボサボサゴスロリ女呼ばわりしたのはスルーしてまで暇人呼ばわりに噛み付いてきた!?」

「まあ暇なんだけどさ」

「しかもすぐに手の平返して認めた!?」

「で、何歳位年下? あんまり下だとお前の年齢でも犯罪だぞ?」

「なんで始めッから年下断定なんだよ! 俺が年上属性持ちである可能性は考慮してないのかよ!」

「いや、だってお前ってロリコンっぽいし。例の魔神候補のチビッ子にも付きまとわれてデレデレしてるし」

「してねえええええ! こちとらアイツのせいで何度も生命の危機に瀕してるっつーの! デレデレどころかこの前ドロドロの溶岩真上からドッサリ降り注がれたっつーの!」

「お熱いねぇ」

「熱いとか感じた瞬間蒸発死しますけどね! どっかのゴム人間の兄貴よろしく死亡確定ですからね!」

 渾身のボケのつもりだったが目の前のゴスロリ女には通じないネタだった。わざわざ日本から取り寄せてまで毎週欠かさず読んでる自分がちょっぴり恥ずかしい。


「で、何?」

「いや、何? って言われてもですね……」

「いいから、話せよ。その女の子と何があったんだ? ん?」

「なんでそういう話になってるかが無茶苦茶疑問なんですけど」

「いいから、話せっつってんだよ。具体的な話じゃなくてもいいんだ。そうだ、『友人の話なんですけどね』って事にしておけば誤魔化しつつ相談できるんじゃないか?」

「それ聞く方から提案したって何の意味もないですよね!?」

 駄目だこの女。こりゃなんか話すまで絶対逃がしてくれないわ。
 そう心底実感した上条は、今日何度目か分からない溜め息を吐き、どうぼやかして話そうか思案をめぐらせた。

「えーっと、ある日、見覚えのない布団がベランダに干されてた、としましょうか……」

「出だしから意味不明すぎ。やり直し」

「…………」

 駄目出し来るんかよ。


 それから九回は駄目出しを喰らいつつも、何とかぼやかして説明してみたものの。

「知らん。自分で考えろ」

 とバッサリ斬り捨てられた。

「そもそも、それお前自身が何にモヤってるのか、何が納得行かないのか分かってないじゃんか。その時点で他人に相談した所で何の意味もないわな」

 そう思って言いたくなかったのに無理矢理聞き出したのはお前だろ。

「ま、いい暇潰しにはなったよ。んじゃ私ゃ作業の続きあるから戻るな」

 もう二度とこの先輩には真面目な相談しない。絶対しない。

 涙目になりながらボロボロの背中を睨みつけてると、ふとそのボサボサ頭が振り返り、睨み返された。
 思わずビビって首をすくめるチキンな上条だが。

「一つだけ先輩からありがた~いアドバイス」

「へ?」


「上条よぉ、お前って馬鹿だしドジだし無能だし空気読めないし、何かに躓くとすぐにウジウジと考え過ぎて動けなくなるようなどうしようもないヘタレ野郎だけどよ」

「…………」

「でもよ……。ここだ! って決めて突き進む時、そん時の突進力だけは私でも止めらんない位の厄介な突進力がある。私ゃそこだけは買ってやってるんだよ、これでも」

「……シェリー、さん」

「ま、足掻けよ。存分にな」

 ひらひら、と手を振りながら再び遠ざかり始めるボロボロのゴスロリ服。
 その上で揺れるボサボサのライオン頭が、時々妙に頼もしく思えるのは、こういう面があるからだ。

「…………」

 廊下の真ん中で、上条は深く頭を下げる。意地悪で、強かで、でも時々厳しい優しさをくれる尊敬すべき先輩の背中に。


 顔を上げ、右手を握り締め、少年もその足を踏み出す。

 その顔は、さっきまでと違い、目標を捕らえた猛禽の眼差しに変わっていた。

――――――――
――――
――


 美琴を探さねばならない。

 会って何をするかなんて分からない。会って何が出来るかなんて分からない。
 けれど、会わないと何も始まらないのは確かだ。

 しかし上条に少女を探す手掛かりは皆無だ。

(どうする……!)

 分かっているのは、少女が追われている事。そして超能力者である事。

(どうする……!)

 焦っても仕方ない。そう言い聞かせつつも、手立てのなさがどうしても上条を焦らせる。

 超能力という非日常の存在を探せばいい、と言うだけなら簡単だが、100人に1人は魔術に関わる人間であるここロンドンでその理屈は通らない。
 魔術と超能力は全く別の物だとしても、上条にはそれがどう違うのか等という知識は皆無だ。

(どうする……!!)

 焦りで考えがまとまらないままに、上条はとにかく足を動かしロンドンの街を走り回った。


 特に目星があったわけでもない。

 それを見つけたのは本当に偶然だった。

 一時間近く走り回っても何の手掛かりも得られず、こうなりゃどっかのチビッ子魔神の完全記憶能力でもアテにしようか今まで散々虐待された(でも無傷)ツケを考えればそんくらい可愛いもんだろああでも素直に人の頼み聞くまともな性格してない(但し対上条限定)から無駄か等と自棄になりかけてた上条は、高台の手すりにもたれて薄暗い街並みを見下ろしていた。
 中心街から外れているとはいえ、現代社会における頂点にある都市の一つ。街のあちこちに人工の灯りが散りばめられ、人々は昼間と変わりない明るさの元、それぞれの生活を営む。

 上条はぼんやりとそんな日常の情景を眺めつつ、非日常の真っ只中にいる少女の事を想った。
 もう、この街には彼女は居ないのかもしれない。
 もう、追っ手により彼女は始末されてしまったのかもしれない。
 そんな事を考えつつも、上条にはちっとも諦める気にはなれなかった。


――じゃあね。


 笑いながら、泣きながら、別れた少女にまた会いたいから。
 会って、肩を掴んで、言ってやりたいから。


――私が一万人以上殺した、殺人者でも?


「……当たり前じゃねぇか、そんなの」


 その時、上条の視界の端に、チカチカッと灯りが点滅するのが見えた。


「…………?」

 ぼやけた意識をふと引き締め、その一帯に目を向けると、街の一区画の灯りがまとめてフッ、と消えた。

 停電? にしては影響範囲が狭い。
 電源やブレーカーの故障なら精々建物一つ分にしか影響しないはず。
 ああ、でもブロックごとの配電設備の故障とかならあり得るのかも、等と考える上条の目の前で、すぐ隣の区画でもフッ、と灯りが消えた。

「…………まさ、か」

 灯りが消失する直前、蒼白い閃光が路地裏を駆け上がるのが見えたような気がした。
 疑いが頭をもたげ、すぐに確信に至る。

「……ッ! 間に合うか!?」

 休んだ事で冷え切った身体に再び熱を入れ、上条の足が跳ね上がった。
 細かい路地まで駆け慣れた街だ。上条がその路地に足を踏み入れるのにものの五分と掛かる事はあるまい。
 そう頭では冷静になろうと呼び掛けるも、馬鹿みたいに心臓を叩き付ける鼓動が収まる事はなかった。

――――――――
――――
――


 その路地に飛び込んだ途端、地面にうずくまる美琴の姿が目に入った。

「御坂ッ!」

 遂に見つけた事に歓喜と興奮を覚え、息が詰まる。
 慌てて駆け寄り、助け起こそうとすると、拒絶するように手で制され思わず立ちすくんだ。

「アンタ……なん、でここに?」

 荒い息をつく美琴を見て、頭に血が昇りそうになるのを必死に抑え付ける。

「……、お前この辺で派手にやりあったろ、この辺り数区画分停電状態だぞ」

「ごめん、手加減したつもりだったんだけど……」

「そんな事より、怪我してるんだろ? 肩貸してやろうか?」

「だい、じょぶ……ぐっ!」

「全然大丈夫じゃないじゃないか! くそ、誰がこんな事を……」







「――私達、超能力者ですが? と、ミサカはお二人の会話に割り込みます」








 暗がりの向こう、無機質な緑色の光を放つ軍用ゴーグルを額に付けた少女が佇んでいた。
 肩に掛けたベルトにぶら下がっているのは、その少女の華奢な両手で支えるには不釣合いの黒い物体。

 アサルトライフル。

 そんな物騒なものを持つ少女の背格好は、壁に片手をついてもたれながらぜぇぜぇと息を吐く美琴とほぼ変わらない。
 いや、それどころかそっくりだ。
 ていうか、そっくりなのは背格好だけじゃない。服装も、体格も、髪型も、そして。

「……貴方は、無関係の一般人ですか? であれば、その隣にいる人物から離れ、大人しくこの場を立ち去りなさい、とミサカは警告を発します」

「み、御坂……が、もう一人……?」

 そう、その顔も、声も、全てが美琴とそっくり、同一だった。
 まるで、双子の姉妹かのように。

以上です
学園都市からの追っ手、その1ようやくのご登場です
次回は早ければ明日明後日辺りにでも


沢山のコメント、本当に励みになりますありがとう!
もうちょい細かいレス返しした方がいいのか正直迷いますがどうしましょうかね・・・

乙!
おお…また気になるところで
妹相手じゃ美琴の分が悪すぎるよなあ……
これは何人目のミサカなんだろう

まさかのシェリーwwww
続きが気になるぜ。乙

シェリーカッケーwww
上条さんに銃器は相性最悪だよな…

乙でした!
ただ御坂妹の「超能力者」のセリフ部分は「能力者」のほうがよくありませんか?
禁書に限っては超能力者=レベル5のイメージがどうも先行しちゃって…細かくてすいません
続き楽しみにしてます!

>>178
言われて見ればそうですねぇ・・・
どーにも 魔術師←→超能力者 って対比が頭にあり過ぎてついって感じですわw
ご指摘感謝ですです

1乙です

シェリー△

妹達もLevel 5になってる世界なのかあ。
バックグラウンドがどういうものなのか興味深いね。

うわわLevel 5て意味合いじゃなかったのね。
リロード忘れてて恥ずかしい。

超乙です
アサルトライフル相手じゃ上条さん役に立たないじゃないか


乙!
なるほどシェリーがでてくるとはwww
正直1さんすげぇわ…いろいろと
これからも期待なんだよ!

乙!

美琴は妹達を傷つけるつもりはないだろうし
防戦一方にでもなってたのかな?
それが長時間続けば体力的にもやばくなりそうだし…

今見つけたがこれは期待

乙!

結局、これは期待できるって訳よ

異能力者

超期待です

>>189
上げてんじゃねェぞ三下がァ!

>>190
なりきりすんならちゃんとやれ

俺、今回の話が終わったらこれのスピンアウト作品「とある魔術の竜王殺息(ドラゴンブレス)」を書くんだ・・・

ってエイプリルフールネタを投下しようか迷ってたら既に4/2でござった
にんともかんとも

あ、次回投下は今晩になると思います

ドラゴンブレスで車吹っ飛ばすとか破片も残らなくね!?ww

原子崩しみたいなもんだからなーww

射程距離が地上から大気圏外で、それでいて幻想殺しを押し返す出力だからなwww
チートってレベルじゃねぇぞwwwwww

このインさんは首輪あるのかな。
10万3000冊があるってことはやっぱあるのかな。
この配役でその辺どうなるのかもとても気になる


正座待機

今晩って今日だったのな

徹夜待機してたぜ

まだー?

すいません先程帰宅したばかりで細かい修正したいのでもうしばらくお待ち下さい
23時頃には投下したい

待ってる

よしコーヒー入れて待ってる

では投下します


「繰り返します。この件に無関係であれば即座にこの場を立ち去りなさい、とミサカは再び警告を発します」

 目の前の光景を理解できず、上条の思考はカラカラと音を立てて空転した。
 目の前で物騒な武器を構える少女は誰か?
 普通に考えれば、美琴の姉妹か。ならば何故彼女を狙う? そんな危険な武器を持ってまで。


――いや、今考えるべきはそこではない。


「お、れは……」

「そ、うよ……」

 その時、傍らの少女からカスれた声が聞こえた。

「! 御坂ッ!」

 その声で上条は呪縛から解き放たれ、思い出す。彼の本来の目的を。
 しかし、その目的である少女は、そんな少年の思いを否定する。

「アンタは……無関係でしょ。だから、早くここを立ち去り、なさい……」

「いや、俺は……!」

 苦しげに息を吐きながらも拒絶する少女に、しかし上条は納得できず言葉を返す。

「これ、は……私個人の問題よ。アンタを巻き込む訳には、いかない。だから、見なかった事にして、帰りなさい」

 それでも少女は、再度上条を拒絶した。

「はっきり言って……アンタは邪魔なだけなのよ」

「……ッ!!」


 頭では分かっている。

 幾ら上条が普通の一般人とは違うとしても。裏の世界に身を置く者だとしても。
 それは、美琴の住む世界と必ずしも交わらない。
 美琴の居る領域にはとてもじゃないけど届いていない。

 上条は特殊な力を持ってるとしても、所詮は見習い魔術師でオチこぼれ、無力な一般人と何ら変わりないのだ。


――けれど、それがどうした。


 上条は己が無力で足手まといである事など知っている。
 魔術の世界であればチビッ子やら同僚や先輩に弄られ追い掛け回されてるから身を護る術は身体に叩き込まれているが、相手は未知の超能力という存在。

 果たしてそれに己の右手は通じるのか?
 もし通じなかったら、相手の攻撃に馬鹿正直に右手を構え、それを引き千切られて無様にのた打ち回るのみだ。


――だから、それがどうした。


 恐怖が上条の足を、心を激しく震わせる。


――そんなものは、傷付き、倒れそうになりながらも、歯を食いしばり強がる少女を放り出して逃げる理由になんか……


 それを強引に抑え込み、上条は右手を固く、固く握り込んだ。



――なる訳が、ないッ!!!


「…………?」

 黙って顔を伏せたまま拳を握り締める少年を訝しげに見ていた美琴だが、カチリ、と乾いた音が耳に入った事ですぐに意識を目の前の追っ手に戻し、身構える。

                                                     オリジナル
「どうやら動きが無いようなので、こちらの用事を進めさせていただきます、とミサカはお姉様への攻撃態勢を取ります」

「そう、簡単に捕まると思う?」

 不敵な笑みを浮かべる美琴だが、ふらつく足が、額に浮かぶ汗が、虚勢である事を示していた。

「……どうか、大人しく捕まって頂けませんか? と、ミサカは油断無く構えつつ降伏勧告をします」

「冗談、言わないでよねッ!」

 壁にもたれた姿勢のまま、美琴の前髪から眩い雷光が迸り、ゴーグル少女の足元に突き刺さった。
 ノーモーションで放たれたそれは、しかし少女には当たらず、アスファルトに焼け焦げた跡をつけるに留まる。
 光速に等しい攻撃をあっさりと避けたゴーグルの少女は、上空にいた。

 コンクリートの壁面を蹴る事で跳躍したゴーグル少女は、短いスカートをなびかせつつも空中で姿勢を崩す事無くアサルトライフルの引き金を引いた。

 プシュ、プシュ、と気の抜けた音が二つ。特殊なサイレンサーでもついているのか、風を斬るようにアスファルトに突き刺さる弾の威力に反し、路地から離れた他者の耳に届く事はない。


 美琴としても、これ以上他者を巻き込みたくないので、その点はありがたかった。
 前方に身を投げ出して転がり、片膝をついた姿勢で起き上がり振り向くと、丁度ゴーグルの少女も地面に降り立ち、こちらを肩越しに振り返っていた。
 その向こうに、まだ佇む少年の姿を見て美琴は唇を噛み締めた。

「アンタ! いい加減離れなさい! 大怪我しても面倒見る余裕こっちには無いんだからね!」
                                                     エレクトロマスター
 美琴の足元に散らばるネジやら金具の欠片がフワリと浮かびあがる。電気・磁力を操る能力者である美琴は、その能力で金属の類であれば砂鉄でさえも掌握し、武器として振るう事が出来る。

(出来れば、傷付けるような攻撃はしたくないんだけど……)

 事情があって、美琴は目の前の少女を積極的に攻撃する事が出来ない。
 精々手加減をした電撃で動きを止めたり牽制をして逃げる隙を作る程度だ。

(ほんっと、最悪の追っ手を用意してくれたもの、ねッ!)

 操った金属片の何割かを電磁力を使い音速に近いスピードで打ち出す。
 しかし、それらは目標の少女に届く前に、見えない壁に引っ掛かるように動きを止めた。

「それで攻撃のつもりですか」

 見ると、ゴーグル少女の前髪にも青白い電光が跳ね回っている。容姿だけでなく、能力も美琴と少女は同じなのだ。磁力を帯びた金属での攻撃は同じく少女の操る磁力により無力化される。

「手加減等という余裕を見せていますと、余計な怪我をしますよ、とミサカはお姉様に塩を送ります」

「まったく、やりにくいったらないわね!」

 逆に少女により打ち返された金属片を能力で打ち落としつつ、再び牽制の為の電撃を放つ。
 少女に当たらないように、横の壁や足元、避け易いギリギリを狙い、且つ上条を巻き込まないような……。

「……、え?」

 ふと視界を動かすとさっきまで視認していた筈の少年の姿が無かった。


 警告通り逃げ出してくれたのだろうか? だとしたら何の問題もないが、美琴の心には何かが引っ掛かって落ち着かない。
 顔を伏せ、拳を握り締めていた少年は、逃げ出そうとか、素直に引き下がろうとか、そういう殊勝な行動を取るようにはどうしても見えなかったからだ。
 美琴は思わずそのまま視界を動かし、少年の姿を探してしまう。
 そして、それが決定的な隙を生み出している事に気付いたのは、その直後だった。

「油断大敵です」

「な、しま……ッ!?」

 美琴の牽制は正確で、精確で、たとえ美琴が一瞬気を逸らした程度では隙を作るような甘いものではなかった。
 しかし、少女はそこに強引に美琴の隙を作る為に、牽制として放った美琴の電撃に自ら体を当てに行く。
 美琴の狙いは、牽制を牽制として受け止め、避ける事で予測される相手の立ち位置に対し優位な自身の立ち位置を確保する事だから、その少女の動きは完全に美琴の心理の裏を突いていた。

「お姉様の攻撃は、どれも手加減が過ぎます、とミサカは冷静に分析します」

 それは、美琴の、少女を傷付けたくないという想いが生み出した、過剰な手加減という隙。まともに浴びても、電撃使いであれば、ほとんどダメージが通らない程度には手加減された電撃など、牽制の役目も果たせはしない。

「チェックメイトです、とミサカはお姉様にトドメを刺します」

 そして、少女はまっすぐと構えたアサルトライフルの引き金を引き。



「――させるかよッ!!」

「……ッ!!?」

 少年の鋭い蹴りが、アサルトライフルを弾き飛ばした。


「あ、アンタ!」

 今度こそ美琴は驚愕にその動きを完全に止めてしまう。
 そんな美琴に素早く駆け寄ると、上条は強引に腕を掴み路地を駆け出した。

「いいから逃げるぞ、御坂!」

「え、あ、ちょっと……!」

「させません、とミサカは少年を敵と認定し攻撃します」

 ゴーグルの少女から凄まじい閃光が迸り、上条の背中を襲った。
 光速で迫るそれは、一瞬で上条に到達し、そして。


――バギンッ!


「……なッ!?」

 上条の右手に弾かれ、乾いた音を立てて砕け散る。
 驚愕に動きを止める少女。そしてその視界の端に、ニヤリと獰猛な笑みを浮かべる少年が映った次の瞬間、二つの影が路地の奥へと消えていった。

 後に残された少女は呆然とそれを見送るのみだった。


 一方、まんまとその場を逃げおおせた上条はというと。
 去り際に思わせぶりな笑みを浮かべつつ、実際は内心冷や汗をドバドバ流し、必死で恐怖と興奮を抑えつつ必死で足を動かしていたのだった。

(怖ぇぇぇっ! でも、上手くいったっ!)

 あの時上条は武器を失った少女の次の動きを予測し、美琴の腕を左手で掴み、右手を余らせておいたのだ。
 そして相手に無防備な背中を見せる事で狙いの的を絞らせ、後はタイミングを合わせ背後で右手を振るうだけ。

 はっきり言って、ただのバクチなだけの作戦だったのだが、それだけに成功すれば相手の虚を突く効果は大きい。
 そうして上条の狙い通り、少女の思考を数秒止める事に成功。上条たちはまんまと逃げおおせたのだった。

(考えてみれば、俺の右手は御坂の電撃を無効化してたじゃねぇか。魔術だろうと超能力だろうと、異能の力に変わりは無ぇって事だ)

 とはいえ、上条の作戦は穴だらけだ。何しろあのタイミングで相手が能力を使って攻撃してくるとは限らない。
 唯一目に付いた武器であるアサルトライフルは、拾い上げて狙って撃つ、といった動作のタイムラグを考えれば使われる恐れは無く、また服装のどこにも別の銃器を忍ばせている膨らみは見当たらなかった(因みに、少女がジャンプした時にスカートの中を覗いてそこにも銃器が無い事も確認済み。しましまのパンt……も確認済みだがそれは今は関係無い。無いったら無い)。

 しかしながら、たとえバクチな作戦であっても、結果的にこうして上条は美琴を連れて逃げ出す事に成功した。
 その事実を前にしてみれば、咄嗟に考え付いた作戦の杜撰さなどは些事に過ぎない。
 そして彼の右手が追っ手の切り札である異能の力に通じる事が確認できた事は、上条に取って何よりもの勇気と歓喜を呼び起こした。

(つまり、俺は御坂の追っ手に抗える手段を持っている。……御坂を守る事が、出来る!)

 その事が実感できた上条は、無意識の内に笑みを浮かべていた。
 少女の力になれる事が嬉しくて仕方ない。そう、今にも言いたげな程に。

――――――――
――――
――


「はぁっ、はぁっ! どうやら、もう追ってこないみたいだ、な……」

「あ、アンタ……どうして、こんな……」

 今にも噛み付かんとばかりの勢いの美琴を手で制し、上条は乱れた息を整える。

「話は後、とにかく安全な場所まで移動しようぜ」

「安全な場所って……そんなのあるの?」

「…………」

「無いんかい!」

「いや待って、心当たりが無いわけじゃないんだが、後で何を要求されるかが怖いっつーか……」

「はぁ……アンタってホント後先考えなしよね」

「安心しろ、自覚はある」

「なら治してよ、早く」

 さっきから美琴センセーの物言いがキツい。もっとデレを下さい。


「まあ迷ってても仕方ないしそれこそ後の事を考えても時間の無駄だ、行くぞ」

「ああもう、なんでアンタについてく前提になってんのか全然分かんないんだけど!」

「……関わんなって言われても、俺は付きまとうのやめないぞ。そう決めちまったからな」

「自分勝手な言い分ね……ホントなんでこんな奴のベランダに引っ掛かっちゃったのかな、私ってば」

「さあな。何でも俺の右手は不幸を呼び寄せるらしいし、そのせいかもな」

「アンタ、人の事不幸呼ばわりするつもり? 流石の私も……!」

「でもさ」

 少年は少女に笑いかける。

「この右手は厄介なもんばかり引き寄せてきたけど、全部が全部不幸じゃなかったって思うんだよ」

 上条の透き通った笑みに、不覚にも美琴はドキリと胸を弾ませた。

「な、なによ、それ……」

「んー、まあ少なくとも見た目だけは美少女な子と知り合えた訳だし? その点だけ見れば幸せかもなーって」

「びしょ……っ!」


「な、なな何こっぱずかしい事言ってんのよ! ナンパか! ナンパのつもりですかぁ!?」

「ちょ、おち、落ち着けよ! なんかビリビリ来てる、漏れ出てる!」

「うっさい! いいから早く安全な場所とやらに案内しなさいよ馬鹿!」

「馬鹿って……そりゃ上条さんはロクに勉強も出来ないお馬鹿さんですけどさ……トホホ」

「…………もう」

 肩を落としつつも、素直に美琴を先導し歩く上条に、少し申し訳ない気がしつつ。それでも美琴は何故だか火照る顔の熱を冷ますのに必死で何も言えなかった。

「怪我してるし、疲れてるかもだけどさ、こっから5分程で着くから、それまで我慢してくれよな」

「大丈夫よ、大した怪我じゃないし……」

「そっか」

 へらり、と笑う上条を見てると、益々頬が火照るのを感じる。なんで? どうして? と頭では混乱しつつ、不思議と心は落ち着いて心地よさを感じている自分が信じられなかった。

(もう、ほんとワケ分かんない……でも)

 さっきまで少年に掴まれていた自分の右手をそっと眺め、静かに溜め息を吐く。


(コイツになら……いいかな)

 ぼそり、と聞こえないように漏らした呟きに、上条が「ん?」と振り返るが、何でもないと首を振る。
 不思議そうな顔で首を捻る彼を見てると、自然と笑みがこぼれた。


 自分の撒いた種だから、他人を巻き込めない。
 そう頑なに思い込んでいた自分が、気が付けば何だか馬鹿馬鹿しく思えて。

(だって、アレだけ拒絶しても……駄目だったし。仕方ない、よね……)


 少女は久しぶりに心が軽くなる想いに戸惑いつつ、不思議な心地よさを感じていた。

――――――――
――――
――

            ロスト
「……目標を完全に消失、とミサカは現状を確認し、次なる策を考えます」

 静けさを取り戻した路地裏にて、ゴーグルの少女が一人、佇んでいた。

「……それにしても、アレは何だったのでしょうか。とミサカは先程の不可思議な現象を思い起こし思慮にふけります」

 放たれた電撃が幻想のように霧散し、始めから何も無かったかのように消え去った。

(学習装置や、その後に教わったどんな能力でも、あんな現象は見た事がありません。絶縁能力とも違う……)

                                                           アウェイ
 電撃を無効化したというより、現象そのものが打ち消されたような、不思議な感触だった。改めて敵地に来ている事を実感する。

(ともかく、今はお姉様の居場所を再度探査し……そうですね、私一人では荷が重そうなので)

 ジャリ、と沈黙の降りた路地に何者かが踏み込む音が響く。目を向けると、そこには闇の中でもはっきりと浮かび上がるほどに白い、白い少年が鋭利な笑みを浮かべていた。

最強の刺客だな
wktk

                           レールガン
「よォ……。その様子だと逃がしたようだな、超電磁砲を」

「……情けない事に、その通りです。とミサカは自らの失態を隠す事無く報告します」

「チッ、まァ残りカスみたいなもンだとは言え、曲がりなりにも超能力者、ってェ事か」

「それもありますが……今回は謎の闖入者がいましたので。とミサカは新たな情報を共有します」

「闖入者ァ?」

 白い少年が笑みを収め、ギロリとその紅い瞳を動かし睨みつけて来た。

 ビクッ、と少女は思わず身を震わせる。
 すぐに気を取り直し姿勢を正すが、既に見咎められていたようで、少年がチッ、と舌を鳴らした。

「オイオイ、気持ちは分かるが今は俺ァお前を害するつもりはねェンだ。あンまりビクビクすンじゃねェよ」

「すいません。しかしこれもミサカ達が少しずつ人間らしい感情を得た証拠と思うと、不便ではありますが感慨深くもあります。とミサカは少し場違いな感動を覚えてみました」

「ハッ、確かになァ」

 少年が嗤う。



 カツン、と乾いた金属の音が路地裏に響く。見れば、少年の右手には凝った意匠の杖が握られ、そのおぼつかない足取りを支えているようだった。
 少女はじっとその杖と、少年の首元にあるシンプルなチョーカーを眺め、何か言いたげな目で黙り込む。

「……人の欠陥の証ジロジロ見てンじゃねェよ。それより闖入者ってな、なンだ」

「失礼、報告を続けます」

「あァ、そうしろ」

 カチリ、と少女は外れたままだったアサルトライフルのセーフティをロックした。
 それだけ先程の現象に気を奪われていたのだろうか、と少女は一人自らの心境を省みる。

(今回は、油断から逃がしてしまいましたが……)

 淡々と少年への報告を行いつつ、少女は心に再び誓いの火を灯す。

  ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
(今度も逃がしませんよ、お姉様。絶対に……)


以上です
学園都市よりの追っ手、あっさりとその二号も登場でした
以下、一部レス返しします

>>176-177、>>180>>184
シェリーさん好評で何よりです
この話では上条さんは必要悪の教会所属なんで、
色々と自分の趣味っぽく人間関係が出来てたり出来てなかったりします

>>193-196
この話の設定でのインデックスさんも色々と趣味全開で弄っちゃってるので
いつかその辺も明かせるといいですね
明かすとしたら物語の中で、但し今回の話とは別の機会になると思います

>>198
すいません、誤解を招く書き方で・・・
次回以降は気をつけます


毎度のコメント、本当にありがとうございますおかげさまでやる気バリバリです
明日以降夜勤が続くので投下は遅くなるかもです
早ければ2日、遅ければ4~5日後になるかと・・・

乙!!
一方通行は前頭葉やられてんのか…
続きがきになるぜ!!


一方さんは打ち止め救った後かな?

残りカスってどういうことだ…前回捕まったときに何があったんだ…
美琴つらすぎる


一方さん丸くなった後か

ちょっと質問
ここの上条さんは英語は話せるの?
舞台がイギリスだけど

>>224
難しい文法とかは苦手かもですが普通に話せます
多分シェリーさん他優しい先輩に丁寧に教えてもらったんでしょう

顔面ぶんなぐらないのか…


同棲するのかどうか気になってきた。

>>226
美琴がそりゃ手加減してんのわかってんだからぶんなぐったりしないだろ
そもそも同じ顔下やつぶんなぐるってどうなんだ…
 


学園都市から美琴が逃げ出してきた理由も、妹達や一方さんが追いかけてくる理由が予想できないぜ…
続き気になってしかたねぇぜ

>>228
それでもぶん殴るのが上条さんだろ!!11
いやまぁ冗談で書いたんだがな…

ちゃんと男女平等にそげぶする上条さんが好き

まだそげぶの出番じゃないんだよきっと!

上条さんは老若も問わないからな

老若男女は選ばないけど相手は一応選んでるよ!
多分

本気で敵対してるかどうかだよな
あんだけ殺しにかかってきたのに美琴は殴れなかったし

打ち止めをウイルスとかで制御して妹達に命令だしてるんじゃないかな
一方通行は打ち止めを助ける為に参加してるとかか・・?

>>235
予想はよそうぜ!

>>236
>>236
>>236

>>236

>>236

>>236

なんでこんな無駄なことを…無駄なことは嫌いなんだ…無駄無駄

こんばんは
遅くなりましたが今夜20時頃から投下します
予め断っておきますが今回は美琴さんの過去回想話その2です
そして、内容は一部痛い表現というか、グロい物を含みます
苦手な方は↑の名前でNGかけて見ないようにして下さい
投下後に簡単に内容についてダイジェストで説明しますんでNGにした方はそちらを読んで把握して頂ければ良いかと思います
投下前にも再度注意書きしますんでよろしくお願いします


グロいとかこまけぇこたぁ(ry
正座して待ってる

※注意

繰り返しますが、今回の投下には一部痛い表現、グロい物を含みます。
苦手な方は「回想2 ◆MDOfmX8bYE」の名前をNGに登録して読み飛ばしてください
投下後、簡単な内容をダイジェストで載せますので、NGにした人はそちらをご覧下さい

――――――――
――――
――


 ビュウ、と風が吹き荒れ短い髪を弄っていく。

 踏み込んだ操車場は薄暗く、しかし目的の人物は白く闇に浮かび上がっていてすぐに見つかった。
 私にとってそれは越えようとして越えられなかった、最初で最後の壁。登山家の前に立ち塞がるK2東壁だってもう少し隙を見せてくれるだろうって位には絶対的な障壁だ。

 いや、既に越える事を諦めてる時点で、何を引き合いに出してもその比喩は相応しくないだろう。
 何しろ、私の自信は、心は、あの日――八月十五日に、跡形も無く砕け散ったのだから。

 その後の私は、研究所を潰して回ったり、第四位とドンパチやったりと醜くも無様に足掻いた。
 それでも必死で、そのふざけた実験を止めたかったのだ。
 なりふりなど構っていられなかった。

     ツリーダイアグラム
 遂には”樹形図の設計者”のハッキングにまで手を出した。これこそが逆転の一手、確実に実験を止める妙手だと、その時は確信していた。たとえ唯一の心の拠り所だった後輩の信頼を裏切り、その手で断罪される事になろうとも、本望だった。


 しかし、学園都市の誇る最高の演算装置をハッキングしてまで下した中止命令は、布告されること無く、実験は滞りなく継続されたのだった。

                                                            スペック
 何の事は無い、学園都市どころか世界最高峰、他に存在するどの演算装置の数千、数万倍の性能を誇る人工頭脳でさえ。

                               デコイ
 学園都市の闇に潜む誰かさんにとっては、ただの囮に過ぎなかったのだ。



「ンだァ? 誰かと思えば第三位のお嬢さンじゃねェか」

 きひっ、と心底面白いものを見たかのように、学園都市の第一位が嗤った。

「どしたァ、夜分遅くにこンな所まで? まさか自分そっくりの人形がスプラッタになるのを見学する趣味でも持ってンのか? だとしたら随分と悪趣味な嗜好をお持ちなンだな第三位ってなァ!」

「……、……」

 応えず、ポケットの中からコインを取り出す。
                            ソ レ
「オイオイ、何トチ狂ってンだよ……。テメェの超電磁砲は通じないって前ン時思い知ってンだろ?」

 演算を開始。何もない空気中、構えた右手からまっすぐに、白い少年……一方通行に向けて伸びる電磁のレールをイメージする。

「……アンタはそこで見てなさい。手、出すんじゃないわよ」

 背後で息を呑む音が聞こえた。視線を送るまでもなく、そこに私の妹が居る事は電磁波の干渉から分かっている。

「ごめんね」

 気がつけば呟きが漏れ出ていた。



「本当はもっと沢山話したかった。
 いっぱいいっぱい謝りたかった。
 買い食いをしたり、噛み合わない会話をしたり、もっともっと一緒の時を過ごしたかった」

 自分でも制御できない思いからか、それとも今更死の恐怖におびえた心が決壊したのか。
 意志とは無関係に私の口は言葉を紡いでいた。

「生きる事の、生まれた事の、死ぬ事の意味を教えてあげたかった
 不幸な形で産み出されてしまった命でも、貴方は」

「……お姉、様」

「貴方達は私の――」

 妹なのだから……と言おうとして、思わず口をつぐんだ。
 私みたいな人間に、貴方達の姉だなんて言う資格は無いと、そう感じたから。

 彼女が訝しげに眉をひそめる気配を感じ、情けなさにぐっと唇を噛む。

 弱虫の姉は、結局妹と向き合う事も出来ず、せめてもの抵抗とばかりに正面の敵を睨み付けた。


(この、コインを撃ち出した時)

 ともすれば、震えそうになる指先を気力で抑え付け、演算に集中する。

(私の命も、この実験も)

 ものの数秒で演算は組み上がり、超能力者の電撃使いである自分にしか見えない電磁のレールが、一直線に敷かれた。
 後は、そのレールに弾丸を乗せるだけ。


(全て、終わる――――!!)


 音速の三倍でコインは発射され、それは白い少年へと突き刺さる。
 そして、まるっきり同じ軌道を、今度は逆方向に走り出したコインは、狙い違わずこちらへ向かい、そして。


 焼けるような衝撃、全身を打ちのめす様な轟音が全身に響き渡った。

――――――――
――――
――


 薄暗い操車場の片隅、砂利にまみれ転がる少女が、身を捩り呻き声を上げる。

「ぅ、あ……ぐ、がぁ……、は……ッ!!」

 意識全てがごっそりもぎ取られるかのような衝撃に、しかし美琴は全力で抗った。

 ここで、意識を手放す訳には行かない、そう強く歯を食いしばる彼女をあざ笑うかのように、繋ぎとめようとした身体に灼けるような激痛が襲い掛かる。

「ぐ、ぅ……あ、ぁ……ッ! ぁぁあぁぁあぁぁぁぁぁああああぁあぁ……ぁ、ぅあは、が……ッ!!!!!」

 右肩を中心に胸の辺り、右腕の先は指先までの感覚が失われてる。
 にもかかわらず、激痛は巨大な波のように美琴の意識を飲み込み押し流すかのように襲い掛かってきて、とてもじゃないがその少女の矮躯では耐え切れる物ではなかった。


「ぁ、く……かは……ッ、ぐ……ふ、ぅ……!」

 口から漏れ出るのは嗚咽と血痰。目に映るのは靄のみ。
 それでも少女は左手に掴んだ砂利を握り締め、乱れた息を整える。ボヤけた視界を見定める。

 視界の向こう、血と泥にまみれた白い何かが転がっていた。

(なんだろう、アレは。細長く、折れ曲がって、捩れていて)

 ぼんやりとした視界が徐々に鮮明さを取り戻し、少女はその転がる細長い何かの正体を知る。

(……ああ、なんだ、そうか)

 少女が視線を動かすと、その右肩は引き千切れて無くなっており、焼け焦げた血と赤黒い肉の塊がサマーセーターの肩口から顔を出していた。




――アレは、私の右腕だったモノじゃないか。




 途端に激痛が現実となり意識を埋め尽くす。


 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。


 いっその事このまま意識を手放せば痛みも薄れ、楽になれるのに。

 少女を苛む痛みはそれさえも許さないのか、ただその細く頼りない身体を捩り、震わせ、少女は心で絶叫を続ける。


 ジャリ、と乾いた音が操車場に響いた。


 のろりと顔を上げると、白い悪魔がこちらを見下ろしている。
 照明が逆光となり彼の表情は伺えない。


 ジャリ、ともう一歩足音が近付く。


 地面を通して伝わる振動だけで激痛が走る。
 少女に出来るのはただその痛みと恐怖に打ち震え、彼に焦点のぼやけた目を向ける事のみ。


 痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖い痛い怖――


「オイ」


 カスれた呼び声に、少女の身体がぴくり、と震えた。


 のろのろと見上げると、口角を鋭く吊り上げた悪魔が笑っていた。

「そういうつもりか、テメェ……」

 ゆっくりと、悪魔がその毒手を伸ばす。その指先一本でも触れたら、血流だろうと生体電流だろうと逆転させ、あらゆる生物を死滅させる事ができる、その手を。

「三下が貧相な脳味噌必死で働かせて、愉快でクソ下らねェ事考えるじゃねェか」

 そして、その指先が、体一つろくに震わせる事も出来ない少女の体に近付き、そして。

「気に入ったぜ。だから最強の第一位サマからご褒美のプレゼントだ。きっと安らかに逝ける筈だ」

 きひ、とその吊り上げられた口角からさも愉快そうに笑いを漏らし。


「良かったな、最期の最期にイイ夢見られンぜェ?」


 その指先が触れ、少女の全身からフッ、と全ての感覚が失われた。


 少女の意識はそこで途切れ、そこから先は、まったくの闇へと――

以上です
NGにした方向けのダイジェストを以下に

---

実験を止める為、自らの命を投げ出す事を決意した美琴。
実験場に居合わせた妹達に、思わず謝罪の言葉が漏れるも、その言葉は途切れる。

一方通行と対峙する美琴。
挫けそうになる心を奮い立たせ、美琴は超電磁砲を放つ。
その攻撃は一方通行に反射され、美琴の身体は吹き飛ばされた。

激痛に苦しみ、這い蹲る美琴。
一方通行は美琴の狙いが何であるか理解し、嗤いながら美琴にその手を伸ばす。
その手が触れた時、美琴の意識は闇に包まれた。

---

今回も短くてすいませぬ
上条さんが妹達を殴らなかったのは美琴が手加減してるのに気付いてたからだと思います
でもあの場面、確かに殴りに行っててもおかしくないですねw

次回投下は3~4日以内を予定してます
それではー

おつおつ

乙!
俺はグロが大好きだから最高だった!
次回も待ってるぜ!


そこまでグロく無かったと思うんだけどなあ

乙!

>>258
確かにオオゲサだったかもですね・・・
苦手な方もいるかなぁと思いまして気にしすぎたかもです


あの鬼畜ssで訓練された俺にとってはグロでも何でもなかったんだよ!!


気になるところで引くなあ…

注意書きに関しては、この程度でも苦手な人は居るだろうし
>>1が他に書いていたSSとの差もあるし、するに越したことは無いと思う
ていうのが一読み手としての意見かな

>>261
ぐらんぎにょるですね分かります
あの人の1/10程度でも地の文の上手さが分けてもらえればなぁ・・・

>>262
ちょっとビビり過ぎた感もあるかもですが念の為というのもあるのでこれで良かったのかもですね
ご意見ありがとうございます

ここは黙って>>1の優しさに惚れとくべき

乙!


注意書きに関してはそこまで丁寧にせんでもいいと思うけどな
発狂するやつがいた時に「注意書きあったろ」って言えればそれでいいわけだし

おつ
なんら問題ないと思います

あまり過剰にグロ注意と入れると逆に期待しちゃう人もいると思うんだ

結局注意書きについてのレスばかりで内容の感想が無くなっちゃったなw

上条さんが学園都市にいてくれて良かったと改めて感じたよ

投下します
チェックしながらなのでペース遅めかもです

――――――――
――――
――


 目が覚めると、見知らぬ天井だった。     それ
 いつも見慣れたはずの薄汚れたみすぼらしい天井は、今は温かな暖色で描かれた華が規則的に並ぶ幾何学模様で満たされている。
 半覚醒の意識が丸ごと天井に吸い込まれるような不思議な感覚に包まれながら、上条は昨晩までの出来事を思い出していた。

 ベランダに引っ掛かっていた少女。

 超能力という魔術とは異なる異能の力。

 学園都市からの追っ手。

 その美琴そっくりの少女から、寸での所で美琴を連れ出し逃げる事に成功した上条は、その足でロンドンでも特に胡散臭い空気がプンプンの区画に向かった。
 そこには怪しげなオカルト商品がコンビニ気分で並べ立てられた妙な土産屋があったり、こだわりのヴィンテージジーンズが置いてあると評判だがちょくちょく店主が店を空けるせいで人気は今ひとつなジーンズショップがあったり、風体も年恰好もバラバラな女性ばかり住んでいる不可思議な女子寮があったりと、とにかくカオスな地区という事で有名だったりするのだが、上条の目的の場所はそんな区画の端っこにある石造りの家だった。
 そして幸運にも(?)家の主に温かく(?)迎え入れてもらう事に成功した事から、今現在上条と美琴が寝泊りさせてもらっている場所となったワケである。
 尚、件の家の主は、上条にとっても頼りになる先輩であるのだが、同時にとても苦手な天敵でもある”あの人”だ。

「……そう言えば、結局シェリーさんの家に泊めて貰ったんだっけ」


 ギリギリまで迷いに迷った上条は、結局背に腹は変えられぬと、天敵を頼る事にし、散々嫌味や勘繰りをされる覚悟でその扉を叩いたのだが。
 意外にもその意地悪で性悪で悪な先輩は、余計な詮索を一切する事もなく二人の目をじっと見詰めると、溜め息一つで家の中へと招き入れてくれた。
 少々面食らった上条は、余計な事と分かりつつも何故自分を糾弾しないのかと問い質したのだが、「まずはそこの子の手当てからだろ。いいからお前は座ってろ」と一蹴。結局上条にとって、このややこしくて理解しがたい先輩はどこまでも頭の上がらない天敵なのだった。

「御坂美琴……か」

 次に上条の脳裏に浮かんだのは昨晩聞いた彼女の事。
 夕飯の後に何故だか急に野暮用を思い出して外出したシェリーの居ぬ間に、ぽつりぽつりと美琴が語ってくれた彼女の抱える事情は、覚悟を決めて少女の手を掴んだ上条にとっても衝撃的なものだった。

 能力によって明確に差別され、区別され、傷付けられた子供達が互いにぶつかり、更に傷付いていく日常。

 研究価値があるというだけで、国際法でも禁じられている人間のクローンを生産する科学者達。

 そうして産み出された歪な生命を、実験と称して簡単に虐殺する事をよしとする世界。

 何もかもが上条にとって信じがたく、許せない。
 そしてそんな一人の少女を襲った絶望の数々さえ、閉鎖された実験場にして、高い塀に囲まれた箱庭である学園都市が抱える闇の一端に過ぎないという事実に、上条は後頭部の奥に重いものがのしかかるような感覚を覚えた。
 吐き気と言い換えてもいい。要するに、それを聞いた上条が覚えたのは抑えがたい怒りと理解しがたい衝動だった。


 寝起きの定まらない思考を振り払う為、上条は洗面所を求め寝床を抜け出した。
 フラつく足元を注意しつつ、ギシギシと悲鳴を上げる木板の廊下を歩き、目的の扉の前に到着。一息にガラリと開け放つ。

「…………」

「…………」

 改めて上条当麻の特性について触れる必要があるだろう。
 散々彼について理解している者にとっては今更ではあるが、上条当麻は不幸である。
 その不幸は時として一見すれば幸運にも取られるであろうトラブルへの遭遇体質をも含んでいる。
 業界での言葉で言えば「ラッキースケベ」という奴だ。

 つまり、彼が開け放った洗面所への扉は、その奥にある浴室へと続く更衣室への扉も兼任しており――

「…………えーっと」

「……、……ア・ン・タ・はそんなに人の貧相な体を見るのが大好きかぁぁぁぁぁぁぁああああっ!!」

――バスタオル一枚でその艶やかな裸体を隠す、御坂美琴嬢がいたというワケである。

――――――――
――――
――


「まったく、嫁入り前の乙女の柔肌をなんだと思ってるのよアンタは」

「いや、その点につきましては本当に申し訳なく思います、ハイ」

「ああもう、二回も、二回も見られた……ショックっていうか泣けてくるっていうか逆に自分が情けなくて溜め息も出ないわ……。学園都市に戻れたら心理掌握のヤツに記憶消して貰おうかしら……見た方じゃなくて見られた方の記憶を」

 ふへぐひふへへー、と奇妙な笑い声を上げて遠い目をする少女を、上条は心底悪い事をした気分になりながらおろおろと眺めていることしか出来なかった。
 上条が中に人がいるのを確認せずに扉を開け放ったのは確かだが、鍵をかけずに無警戒に朝風呂を楽しんでいた少女にも非が無いわけではない。しかし、裸を見られる側と見た側でどっちが得でどっちが損かと言えば、それは明らかに見られた側が損で見た側が得だろう。
 これが男女の組み合わせが逆だと判定が難しくなる所だが。

 ともあれ、上条は今回明らかに得した側で美琴が損した側である事は確かだ――たとえその後シェリーに首根っこふん掴まれて記述するのも憚られるような■■■な××××を@#▼☆※△&ようとも。あまりの事に当事者である”見られた”美琴も直接制裁を加えるのを控えた事実はこの際関係ない。

 なので、上条は沈みきってブツブツと呪文めいた言葉を吐き続ける少女へのせめてもの誠意を見せる為、その目の前で床に頭を打ちつけた。
 つまり土下座した。


「すいませんでした、御坂様!」

 ゴンッ! と鈍い音に驚いて少女が目を向けると、そこには視界いっぱいに広がるツンツン頭の頭頂部があった。

「え、ふぇっ!? な、ななななによいきなり!」

「私の不注意により、御坂さんをとんでもない辱めに併せてしまい申し訳ありません! この上条当麻、心より反省しております!」

「へ? え? え?」

「謝って許されることではないこと、理解しております! しかし何も言わずにただほとぼりが冷めるのを待つのではあまりにも不義理が過ぎますゆえ、つきましては!」

「いや、だから何言ってんのかさっぱり……」

 混乱する少女を置いてけぼりにしたまま、上条の謎口上は続き、少女はますます混乱する。

 そして、次の瞬間、少女の全身に電流が走る。

              ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「――この上条当麻、一生をかけて今回の事に責任を取らせていただきます!!」


「…………………………は?」


――お分かりだろうが、勿論その言葉自体に対する上条本人の深い考えは、皆無だ。


「え? 今ちょ、な、なんて?」

「ですから、どうか沈んだ顔をせずですね、えーっと」

「その、せ、責任……って、ど、どういう……」

「み、御坂には笑っていて欲しいっつーか、なんていうか……」

「わ、笑っていてって……そんな……」

「ん? お、おいどうした御坂? 顔赤いけど、具合悪いのか?」

「いや、これは、その……そういうんじゃなくって……」

「無理はすんなよ? ほら、辛いなら横になっていた方が……」

「え、あ、辛いっていうか、なんか今はほわほわして温かいっていうか……ふにゃぁ……」

「御坂? 本当に大丈夫なのか……? 何か俺に出来る事は……!」



「あー、もう見てらんね。永久にやってろバカップルが」

「!?!」

「?!?」



……同じくお分かりだろうが、当人達に自覚は、全く無い。

――それが、上条夫妻の馴れ初めでした


 いつの間にか二人の傍には食料の入った紙袋を両腕で抱え込んだライオン女が仁王立ちしていた。

「まったく、人んち来てまでいちゃいちゃしてんじゃねーよガキどもが」

「しぇ、シェリー、さん……」

「チッ」

 そのライオン女ことシェリーは盛大に舌打ちをすると、カウンターテーブルに紙袋を置き、てきぱきと食材を冷蔵庫に片付け始める。
 取り残された二人は互いに顔を見合わせると、気まずい空気を誤魔化すように乾いた笑い声を上げる。

「あ、アハハ……えーっと、俺シェリーさんの片付け手伝ってくるわ」

「あ、うん……い、いってらっしゃい……」

「…………はぁ」

 ぎくしゃくとやり取りを交わす二人を眺めつつ、シェリーは盛大に溜め息を吐きだした。


 初々しい二人を見てると無性に腹が立ってくるシェリーとしては軽はずみに二人を泊めた昨晩の自分を後悔しかけるわけだが、今更追い出すわけにも行かない。
 それに、シェリーにとっても思うところがないわけではないのだ。


 超能力。


 その言葉はシェリーにとっても因縁深い物がある。
 それは丁度今から20年程前の出来事。
 シェリーと、彼女の親友の、どこにでもある、悲劇と呼ぶにもおこがましい、くだらない事件。

(エリス……)

 けれど、シェリーという人物の根底に、今でも根付いている、一つの出来事。

(ったく、未練がましいったらありゃしないね。私とした事が……)

 しかし、そんな過去が少女と少年を助ける動機となったのだから、何とも因果なものだとシェリーは思う。

 その後も色々と親友との思い出を巡らせていると、恐る恐る、といった様子でこちらの顔色を窺うツンツン頭が視界に入る。

(…………イラッ)

 その頭をいつも通りの強さでスパン、と引っ叩くと幾分すっきりした。
 気を取り直したシェリーは、下らない思考を打ち払いつつ朝食の準備を始める事にする。



「あのー、上条さんは何故にぶっ叩かれたのでせうか……?」

「知るか。いいから手伝え」

今回も短いですが以上です
僕にも上条さんの一億分の一でいいからラッキースケベが欲しい


次回は二日以内を目標に
では!


期待してますよ~

乙!
上条さんが羨ましすぎてつらい

乙です
上条さん、美琴、シェリーの異色の組み合わせにwktkが止まらない

>>1乙です

ステイルは天才、神裂は聖人で2人ともトップクラスだけども
シェリーって魔術師の中での立場はどのくらいなんだっけ?

乙!
続きが気になるぜ!

>>278
さりげなく入ってくんなwwwwww

はーやーくーーーーつづきーーー

シェリーを最大限に生かしてるな!凄いぜ!>>1

>>285
ステイルは14才という若さで教皇級の魔術使えるようになったから天才と言われてる感じだし
シェリーは初期のステイルと同じぐらいの実力はありそうだよね
個人的にシェリーも初期のステイルもLEVEL5より少し下ぐらいだと思うけど…

原作1巻にはいないけどシェリーは土御門ポジみたいな感じかな
+小萌先生か

ここぞとばかりに美琴にラッキースケベ発動してんなww
いいぞもっとやれ

GJです!
続き待ってます!

>>278
なにナチュラルに入ってるんだよw

そして2日たった訳ですが

今日の夜中のはずさ

上げすまん

>>295
クソッ!クソッ!

投下しますよー

さあこい

おっしゃ期待

――――――――
――――
――


「こんな所にいたのか」

 背中からかけられた声に少女が振り返ると、どこか居心地の悪そうな、でも心配そうに様子を伺う上条がいた。
 さっきの今だし、ぎこちなくなったり追い返されたりしないだろうか、等と不安になっているのだろう。
 しかし、そんな心配も杞憂とばかりに美琴は微笑み、ぽんぽんと自分が座り込んでいる地面の隣を手で叩いて座るように促す。

「ここ、ちょうど陽だまりになってて、あったかいのよ」

 草木が生い茂り、というより伸びるまま放置されたようなシェリー邸の庭は、そのせいか夏場にも関わらずひんやりとした空気に包まれている。
 そんな中、美琴が座っている周辺は日の光が程よく集まり、穏やかに吹く風とあいまって快適な空間を演出していた。
 躊躇しつつ少女の隣に座ると、なるほどこれならさっきまでの微妙な空気も晴れようものだと感じるほどの心地よさに、上条の波立つ心もみるみる凪いでいく。

「……こんなのんびりしてていいのかな」

 ぽつりと美琴がかすれた声で呟いた。

「多分、しばらくは大丈夫」

「そうなの?」

 答えが返ってきたのが意外、と言いたげに美琴が見て来たので、上条はなんだか照れくさくなり、頬を掻きながら視線をあさっての方向へ逸らした。

「この家さ。知り合いの魔術師のルーンの効果で、特定の手順を知っている人物以外には意識に入りにくくなってるのよ。だから、追っ手の奴らもしばらくは気付かない、と思う」

 風が一際強くなり、少女の髪をなぶる。その髪の先が上条の頬をかすめ、ふわりと漂う香りに上条の胸がドキリと大きく跳ねた。

キター\(^o^)/


「……そうなんだ。それも、魔術、ってヤツ?」

「ああ、うん」

 片手で跳ねた髪を抑え付ける少女を見てると、こんな華奢な身体の少女が過酷な運命を背負ってるのが何だか冗談みたいに思えてくる。
 上条も直接追っ手に相対し、本気で襲い掛かってくるのを目にしているから、それが冗談でも何でもない事を分かっている。

「へぇ……便利なのね、魔術って」

「……まあ、便利だな。使うやつはいけ好かないけど」

「?」

「いや、何でもない」

 しかし、こうして穏やかな陽気の下、のんびりと日向ぼっこをしている姿は、本当に、ただの普通の女の子で。

「っつーか、科学の方がよっぽど便利じゃねぇか。誰にでも使えて、こんなにも人間の生活に根付いてるし」

「……そうかもね」

 他愛のない会話に柔らかく微笑む姿からは、とてもじゃないけど、科学の頂点たる超能力者の第三位、なんて肩書きは想像も付かなかった。


「でも、科学もピンキリよ。特に私みたいな、化物なんかは、扱いづらいわけよ」

 自嘲気味に笑う彼女の表情に、陰りは見当たらない。その事が上条には気に食わなかった。

「それこそ、追っ手を差し向けて、排除しようと思うくらいには、ね」

「させねえよ、そんな事」

「……ふふ、そうね。アンタならそう言うと思った」

 明るく笑い飛ばすように言う少女の心が、傷付いていないわけじゃない事を、彼は知っていたから。
 だから、上条は少女がなんでもない事のように自らの境遇を話す少女を見ている事に我慢が出来なかった。

「そういうの、やめろよな」

 だから、上条は少女が被るその仮面を、壊してしまおうと思った。

「そうやって始めから何もかも諦めて、自分の事低い所に置いておけば、他人から何言われたって傷付かないとか思ってるのか? そういうのって、間違ってるだろ」

 ぴくり、と少女の肩が動き、上条に目を向けた。一瞬驚いたような顔をした少女は、でも次の瞬間には「何を言っているのか分からない」とでも言いたげに困ったように微笑んでみせる。

「何よ、そんな怖い顔しちゃって。大丈夫よ、私は全然平気――」

「平気ならなんでそうやって本心隠してまで無理して笑ってんだよ!」

上条さんが匂いフェチなのは確定的に明らか


 ざわり、と風が草木を鳴らし、肩を撫でていく。
 目の前の少女はぐっ、と唇を噛み、何かを耐えるように顔を伏せた。
 上条は、少女にそんな顔をさせてしまうのが堪らなく悔しく、だからこそ言葉を重ねる。

「御坂は、化物なんかじゃねぇよ」

「……やめてよ」

「どんな能力を持っていても、例え一万人の死者を作る原因を作ってしまったとしても」

「……、」

「下らない事で笑ったり、怒ったり、不安になったり、感動したりする、普通の女の子だ」

「……もう、やめ……」

「ジンジャービアにむせて慌てたり、その……裸を見られて怒ったり不機嫌になったり」

「……、……」
                                                         ヤツ
「自分のせいで犠牲になっちまった妹達の為に悲しんだり、考えなしに手を差し伸べようとした馬鹿を心配して手を振り払ったりするような……そんな優しい女の子だよ」

 ひくっ、と少女の肩が跳ね、細かく震えだすのが目に入った。が、上条はお構いなしに続ける。

「だから、俺は、お前がなんと言おうと……御坂を守るよ。嫌だっつってももう遅いからな」

「……、私は……」

 少女の震えは最早見ないでも伝わってくるほどにまで大きく、だからその少女の呟きも震えていた。


「私には、そんな権利なんて、ないのに。「助けて」なんて言って、都合よく助けてくれる誰かが現れるなんて、そんな夢物語のヒロインになる資格なんて……」

「資格とか権利じゃねぇよ」

「……だから、やめてよ。そういうの……」



「そっちこそやめろっつってんだよ!!!」



 思わず上げた叫び声に少女の肩が大きく震えた。
 少女を怯えさせるつもりなんてこれっぽっちもなかった。
 けれど上条には我慢出来なかった。本当は心の奥底まで傷付いて、ボロボロで、だけどそんな弱い自分一つさらけ出す事も出来ずに、歯を食いしばり続ける少女の姿を見るのが。


「もうやめろよ、そういうの。そうやって一人で何もかも抱え込んで、自分一人が悪いって思い込んで、自分で自分を責めてばかりいるんじゃねぇよ。
 俺はもう知っちまってるんだからな。お前が過去にどんな失敗をしたかを。過ちをしたかを。
 そしてそれがどう間違って悲惨な現実を引き起こしてしまったとしても、お前はそれを丸ごと背負い込もうと立ち向かっていけるような強さと責任感を持ってるヤツだって事を。
 悲惨で救われない生を与えられてしまった妹達を命懸けで救おうとする優しいヤツだって事を」

「そんなんじゃないっ! 私は、そんな上等な考えを持ってなんかいないわよ! ただ私は意地になってただけで……!」

「でも、実験を止める為だけに死のうとまでしたんだろ? 命を懸けてでも、妹達に生きていて欲しかったんだろ?」

「……ッ!」

「だったら、それは間違いなく御坂の強さで、優しさだろ。他にどんな感情が含まれていようと、ただ妹達に生きていて欲しいって思ったんなら。そう思えたのなら」

「……、……」



「お前は、立派に妹達の姉なんだよ。俺が保証してやる」


「……ホント、アンタってつくづくお人好しね」

 そんな上条の想いが伝わったのか、少女がボロボロの素顔を見せて笑っていた。その頬には涙の筋が伝っている。

「なんで、アンタってばそんなに優しいのよ」

 そっと左手を伸ばし、少年が少女の涙を拭う。少女はただされるがままにそれを受け入れていた。抵抗するそぶりも見せずに。
 抵抗する元気も無いのかと、少女の疲れきった心を想い、上条は唇を噛んだ。
 勝ち気で明るい少女の、ボロボロの泣き顔に、上条の心は痛んだ。

「優しくなんかねえよ」

「……、……」

「その、あれだ。俺も男だし。可愛い女の子の前だとカッコ付けたくなるんだよ……うん」

「…………似合わないわよ、バカ」

「うぐ」

 ストレートな言葉に思わず呻く。本気で傷付いたのか若干涙目な上条を見て、美琴がクスリと笑いを漏らした。

「……でも、ありがと」

 涙でぐしゃぐしゃで、何もかもに疲れきったような、弱々しい笑みだったけど。
 綺麗だな、と上条はその笑顔に見蕩れながら思った。
 その笑顔を守る為にだったら――たとえちっぽけな力だとしても――自分の持てる全部を持って、何にだって立ち向かえる、と。


 そう、その時の上条には、確かにそう思えたのだ。






 その先に何が立ち塞がっているのか、知るわけも無かったから。





上条さんの説教、そして美琴デレ編でした
毎回短い投下で申し訳ないです

次回投下は未定!
書き溜めがぜんぜん進んでないから!


きになる引きかた…

流石にただ未定と書いただけだとあんまりなんで目標4日後としておきます・・・
シェリーさん人気ゴイス
ククク、もっと広まれシェリーさん愛好の輪・・・!
シェリーさんはこの後もチラホラ出番があるかも

あと>>278に素で気付いてなかったwwww自然過ぎる畜生wwwww
こういうの大好きですもっとやれ

乙です
不吉な予感…

モノローグがすげえ気になる乙
上条さんマジ頑張って

乙っした
つか上条さん実は説教しつつも口説いちゃってるよねこれww
そしてこの引き方には不安が残るが上条さんならきっとなんとかしてくれる!

続きが気になって仕方がない…
乙です!

思ったけどこれって最後はハッピーエンド?

それを知らずに読むのが面白いんじゃんじゃんじゃん?

ハッピーエンドだよ

そりゃ、誰もが笑って誰もが望む最っ高なハッピーエンドを上条さんが目指さないわけがないだろ

上条さんは何だかんだで最高のハッピーエンドを作り上げてくれるだろ。
上琴だとさらにいい……と言っても、上琴ルート以外になりそうにもない

この人の今までのスレ的に上琴でしょ……たぶん

三巻の内容までやってくれるならまだインデックスがヒロインになる可能性もあるんだけどな

>>324
シスターズの役が見つからない…
クローンの代わりにホムンクルスとか用意すればいいのだろうが、オリキャラになってしまう

2万人のインデックスのクロ-ンは食料事情が真面目にヤバイ

一つ部屋に閉じこめておくと、徐々に数が減るよ。

この世界観での3巻ネタは一応構想”だけ”はあります
カタチになるかどうかは自分の貧相な脳味噌からまともな骨組みのアイデアが出来るかどうか次第
2巻ネタは構想さえ無いけどね!

書き溜めはそこそこ進んだので金曜に投下は出来そうです

これで上琴にならなかったらそれはそれでやばいような

むしろ上琴を目的に読みに来てるようなもんだしな……

>>324
シスターズ
 尼達 か

>>327
ぬーべーにいたなそんなの

この話のインデックスさんもちょっと色々見てみたい

このスレ見ててふと思ったんだが、インデックスが料理の味に
あまりこだわらないのはやっぱりイギリス出身だからなんだろうか

そもそも記憶消してるから、好き嫌いがリセットされたんじゃね?

そもそもここのインデックスさんに「首輪」が付いてるのかもわからんしねえ
常時自動書記モードみたいなもんだし、わざわざ記憶消さずとも身にかかる火の粉は自分で蹴散らせそうだしな

まだ少ししか読んでないけど、レンタルマギカ入ってる?

追いついてしまった・・・がんばって!

>>335
それもありそうだな
しかし、腐ったパンとか食べれるくらいに舌が残念なのは
否めないwwwwww

行ったことあるがイギリスは飯が不味いだけでゲテモノではないぞ
ダシ系の味が無いというか、大味でしつこくて飽きるだけだし

つまり腐ったパンも食えるインデックスの舌の残念さは天性のもの

すまんね、どっかで見た煮こごりみたいなのとか
ジェイミーの給食のヤツとかのイメージが強くてな…
北の方はうまそうなんだがな、酒もうまいし

>>341
確かに北のほうはうまそうなイメージだが逆にそっちの方がゲテモノ多いかもwwww
南はパンと芋と肉と魚の揚げ物と赤キャベツの漬物しかないww

いつか行く事になったら紅茶とスコッチとスコーンで頑張るわww

パスポート写真を撮りに行く服がないから俺諦めるわ

すまん雑談で伸びちまった
必要だったらSSの描写にでも役立ててくれ
伝統料理だと赤い漬物は高確率で付いてくる

>>343
中華でおk


 雑 談 大 歓 迎


飯が合わない国に行った時は中華安定は良く聞きますね
色々参考にしたい内容があって取り込みたい所ですが
ハンパに組み込むと突っ込み所満載になりそうなのでむつかしい

夜勤明けダウンしてて四日以内投下は失敗しましたが今晩(土曜夜)には投下しますんでご勘弁を・・・!

イギリスはフルーツフライやケーキフライ・クッキーフライとかわけわかんなくなる位とりあえず揚げたものが多いと聞いたなぁ

ケーキとクッキーならまだわかるけどフルーツってww

朝御飯は普通に美味しい
でもオートミールだけは不味かったわ
大麦のお粥のブルーベリー味とかあったし

あと向こうは基本的に料理に味付けしない
自分で塩胡椒とビネガーかけて食う

投下しまーす

――――――――
――――
――


「よお、居るかい?」

 開け放たれた扉に寄りかかりながらシェリーが声を掛けると、長身の男が手にした本をめくりながら応えた。

「……お互い顔を見合わせた後に出る質問じゃあないと思うんだが、それは」

 男は資料室の中で何やら探し物をしている様子で、会話をしながらもその手を止める事無く資料棚を漁っている。
 長身だが、声にも顔付きにも若さと若干の幼さを残していて、落ち着いたその服装や物腰と併せて見ると年齢を測るのが困難だが、これでいて未だ十代の前半だというから恐れ入る。
 そしてシェリーはそんな歳にそぐわない男の態度が気に食わないタイプだったりする。

「挨拶代わりみたいなもんじゃないか、こんなの。やだねー細かい事をネチネチと」

「……人に嫌味を言ってストレス発散したいだけなら帰ってくれないかい?」

「やだね、他に用事はあるし。そっちが嫌味を言いたくなるような態度を取るのが悪い」

「…………」

 男は呆れたように溜め息を吐くと、資料棚を漁る手を止めて向き直った。
 いつもの事。そう、シェリーが彼に回りくどい嫌味混じりの会話で苛立たせてくるのはいつもの事なのだ。


「で? 何の用だい。休日の筈の君がわざわざ僕を訪ねてくるって事はそれなりの意味があるんだろう?」

「はん、話が早いのは助かるが、無駄に聡い男は女性に嫌われやすいわよ?」

「……いいから、さっさと本題に入ってくれ。こっちも暇じゃあないんだ」

「せっかちな男も嫌われやすいって言うけどねぇ……」

「……生憎、僕は自分の事で手一杯でね。女性の評判なんか気にしてる余裕も無いんだよ」

 その苛立ちを隠す様子もなく、男が赤い髪をかき上げる。
 隠した所で表に出すまでからかってくるので無駄だと経験で分かっているのだ。
 だが、そういう分かったような慣れたような態度を取れば取ったでこの意地悪い女が大人しくなると考えるのは彼の甘さである。

「おや? あのチビッ子ちゃんの言葉一つに右往左往するステイル先生の言葉とは思えないねぇ。この前だって『ステイルのその指輪、デザインがシックでかっこいいかも!』って言われて、その後似たデザインの指輪を二十個買ったり褒められた指輪を五時間かけて磨き上げたりと随分影響を受けて――」

「わーっ! わーっ! ななななんでそんな事まで知って……じゃない、それはたまたま僕自身も気に入ってるからそうしただけで深い意味は無いし、魔術的記号としても僕に都合がいいからストックを多めに確保しただけで他意は全く無いんだよ!」

 サーッ、と音を立てて顔色を蒼褪めさせる男、ステイルに、シェリーは獲物をしとめた肉食獣の笑みを浮かべた。

「ふーん、そうかそうか、なるほどねぇ~」

「そんなあからさまにニヤついた目で僕を見るな! それより何の用なのかいい加減はっきりしてくれないか!?」

「あー、はいはいそうだったね。今日はこれくらいで勘弁しておいてやるよ」

 くっくっく、と心底楽しそうに笑うシェリーに、男は頭痛を抑えきれないとばかりに顔を歪めた。

 ネセサリウス
 必要悪の教会とは、宗教組織であり、魔術師の組織でもある。
 人に、社会に害なす魔術師に対抗する為、徹底的に魔術を研究し、備える部署。それが必要悪の教会の実態である。
 例えば、魔術書の解読を専門とするシェリー達のような魔術師がいたり、ありとあらゆる魔術書の写本をその脳に蓄える禁書目録の名を関する少女がいたり。
 そして、今シェリーの目の前にいる赤髪の魔術師、ステイル=マグヌスのように、荒事専門の魔術師も多く所属している。
 このステイル、元は金髪をわざわざ真っ赤に染めていたり、指輪やピアスをごてごてと着けていたり、右目の下にはバーコードのような刺青をしていたりと見た目は不良神父そのものだが、これでいて僅か十四歳にしてルーンを極めた天才魔術師である。
 こうやってものの見事におちょくられて顔を真っ赤にしてオタオタしてても、である。

 閑話休題。

「まあ用事と言っても大した事じゃあないよ。例の人払いのルーンをまた何枚か貰おうと思ってね」

「……つい先日かなりの枚数を提供したと思ったけどね。それに人払いの術なんてわざわざ僕に頼まずともやりようがあるだろう」

 話題を戻してくれた事に内心安堵しつつ、居住まいを正して平静を装うステイルだが、前髪が汗でペタリと頬に張り付いてたりして結構カッコついてない。
 しかしもう充分からかって満足したとばかりにシェリーは突っ込まずに本題を進める。
 ここに来た本来の目的を果たす為に。

「お前さんのが一番使い勝手がいいし慣れてるんだよ。効果範囲が精密だし何より再配置も楽だ」

「君ほどのベテランに褒められるのは光栄だが、そこまでストレートだと逆に何か裏がありそうで怖いね」

「はっはっは、気にし過ぎだよ天才魔術師さんよ」

「どうだか」

 言いつつも、律儀に手持ちのストックからルーンのカードを渡す若き魔術師に、シェリーはしかし内心の警戒を緩めずその表情をつぶさに観察していた。
 ステイルはその実力もさる事ながら、作戦遂行能力の高さを買われていて、よく重要な任務を任せられる事が多い。
 そしてシェリーは、その任務のほぼ全てが組織のトップである”女狐”からのものである事も知っている。

 つまり、彼の動きに注視する事が、必要悪の教会の見えぬ意志を判断する基準となりうる事を知っているのだ。

「ん、あんがとさん。これだけあれば大丈夫そうだ」

「前に渡した数も結構あったと思うんだが……補充しなきゃいけないほど消費したのかい?」

「ああ……まあ、そんなとこ。ところでさ、ステイル」

 受け取ったルーンをパラパラと確認していたシェリーは、ピッ、とその内の一枚を取り出して目を細めた。

    ペオーズ
「一枚、PEORTHのルーンが混じってるんだけど。何これ、貰っちゃっていいの?」


「……ああ、すまないね。整理が甘かったみたいで紛れ込んでしまったようだ。欲しいというのなら、持っていってくれでも問題ないよ」

 そういってひらひらと手を振り、早く出て行けとばかりに本棚に向き直るステイル。
 その顔に動揺の色も怪しい点もなし、とシェリーの観察眼は語るが、脳裏では別の何かを感じ取っていた。

「ふーん、あっそ。確か思いがけない幸運だか悪運だかを象徴してるんだっけ? 縁起がいいし貰っておこうかな、サンキュ」

 PEORTHのルーンが象徴するのは、ダイスカップ。ギャンブルに使う、ダイスを放り入れてカラカラ転がすアレである。
 意味はシェリーの言ったとおり、偶然やハプニングにより転がり込む幸運を示したり、そして、「秘密」と「それを暴く」事も象徴している。

「じゃ、な。また切れた時催促に来るよ」

「ん、出来れば今度は皮肉やからかいを抜きにしてくれると有り難いんだけどね」

「あー、そいつぁ無理だ。私のライフワークみたいなもんだしな、これは」

 カラカラと笑うシェリーにステイルはやれやれと肩をすくめる。
 参った様子のステイルに、シェリーは満足、とばかりに息を吐くと、くるりと踵を返して部屋を去っていった。

――――――――
――――
――


「やれやれ、相変わらず嵐のような人だね……」

 煙草の一つでも吸って気分を晴らしたい所だが、生憎書庫と言うロケーションがそれを許さない。
 さっさと”仕事”を終えて愛するニコチンとタールにありつきたいと思いつつ、ステイルは手に取った本を傍らの棚に乱雑に積み上げた。

 所属も担当も違い、普段から密に交流があるわけでもないが、一度会えば強烈な印象を残していくこの皮肉屋でひねくれ者の女魔術師はステイルにとっても苦手な相手だ。
 だからと言うわけではないが、彼女が「最早用は無い、アデュー」とばかりに悠然と去った後も、その開けっ放しの扉を見詰め続けていた。
 そして、充分に時間が経った後、沈黙が書庫に染み入ったのを確認し、そっと右手を耳元に伸ばした。

「……言われた通り来ましたよ。ええ、ほぼ言われた通りの時間にです」

 薄闇に包まれた書庫には、ステイルの他に誰も人影がない。にもかかわらず、まるで目の前に話し相手がいるかのように、ステイルはそっと小声で呟くように誰かに話しかけていた。 

「はい、ですからそれも言われた通り渡しました。疑われてはいるでしょうが、それも計算の内なのでしょう?」

 懐に忍ばせた栞のような紙切れと、右耳にぶら下がるピアスの内の一つが僅かに振動し、ステイルにだけ聞こえる声を届けている、いわゆる二つで一セットの遠隔通話用の霊装だ。

「ていうか、僕としては貴方がなんで彼女がルーンをねだりに来ると分かっていて、敢えてそれを渡すように言ったのか甚だ疑問ですがね。……いえ、いいです。長くなりそうなので遠慮しておきますよ」

 霊装越しに聞こえてくる声が如何にも愉快そうな声色なのを感じ取り、ステイルは本日一番の溜め息を吐いた。

「僕が逆らえないのをいい事に、これ以上余計なことに巻き込まないで下さい。おかげでそんな事実もないのに貴方専属のエージェントみたいに噂されてこっちはホント迷惑なんですよ」

 霊装の向こうの声が余計に愉快そうに弾むのを、ステイルは頭痛さえ感じながら聞き流す。何故今日はこんなにも苦手な相手とばかり会話させられるのだろうかと、呪詛のように心で呟きながら。

「……はぁ、分かりましたよ。とりあえずもう少し頻度は落として下さい。それじゃ、御機嫌よう――」

 ランプの火が揺れ、闇が蠢く中、赤髪の魔術師が通話を打ち切るように声を潜めてその名を呟く。

       アークビショップ
「――――最大教主」

 それきり、ピアスも懐の栞も振動を止め、薄暗い書庫に沈黙が降りる。
 静寂の中、赤髪の魔術師はじっと目を閉じたまま、闇に溶け込むように佇んでいた。
 何か考え事をしているのか。或いは辺りの気配を探っているのか。その真意は彫像のように固まった彼の姿からは感じ取れそうにもない。

 やがて、ステイルは目の前の資料棚から目的の本を抜き取り抱え込むと、音も立てずその部屋を後にした。



「……相変わらず勘の鋭い子だね。やだやだ」

 その書庫から二区画ほど離れた廊下の角で、シェリーは座り込んでいた。
 傍らの床にはうっすらと淡い光が灯っている。光の中をじっくり目を凝らして覗き込むと、それはさきほどの薄暗い書庫の映像だった。
 書庫に元々張り巡らせられている防護や書物の傷み防止の術式に紛れ、シェリーは自らの術式を一つ割り込ませていた。

 ゴーレム
 泥人形。

 愛用のオイルパステルを使用し、本来であれば一体の巨人を召還するそれを、わざと一部分――つまり眼だけを生成し、まるで監視カメラのような用途で使用したのだ。

「しっかし、どっから嗅ぎ付けやがったのかね、あの女狐は」

 ガリガリとボサボサ頭を掻きながら、シェリーは考える。
 自分達の事情はどこまで把握されているのか。どの程度目を付けられているのか。介入はあり得るのか。

「……いや、あの女狐の事だから介入は無いな。するつもりならとっくに横槍が入ってる筈だ」

 始めに布石だけ打ち、後は当事者が踊るのを眺め、結果がどちらに転がろうと最後に美味しい所を掻っ攫っていく。
 それがいつものパターンだと分かっている。
 性質が悪いのはそれが得てして現場の側にとっても都合のいい落とし所になっている事だ。

「どちらにせよ考えるだけ無駄だな。ここは敢えて相手の策に乗る事でこちらからも利用させてもらうのが吉か、クソ」

 よっ、と親父臭い掛け声と共に立ち上がると、埃のついた裾をはたく。

「ま、縁があって迷い込んできた子猫だ。ふらっといなくなるまでは面倒見てやろうじゃないの」

 太い笑みを浮かべた今のシェリーを上条が見たら、恐らく重い頭痛を堪えながら思うだろう。


 最高に楽しそうで、最高に邪悪な――最低な顔をしているな、と。

またも行間なお話でした。
次の投下も四日くらいを目標に・・・


イギリスどころか日本から足を踏み出したのも生涯一回しかない自分には本当に興味深い話ばかりで楽しく読ませてもらってます。
機会や時間やお金があれば行ってみたいんですけどねヨーロッパ
旅行と言えば何年か前に両親と三人しかいない家で俺一人置いて両親が一ヶ月イタリア旅行行ってしまった事がありまして

ありがとうございました


最大主教なー

乙ー シェリーもステイルもイケメンすぎて濡れる

おつ!
ここのシェリーさんになら彫られてもいい

>>360
目の下のバーコードな

>>1
ポジションを本編と置き換えると
アレイスター→女狐
土御門→ステイル
って感じかな

乙~
続き待ってます!

>>361
目の上のデコにもバーコードな

インデックスがいるせいかちょっとステイルがやわらかめだな
やさぐれてないというか

ステイルと上条って面識あるのかな
好きな女の子が追っかけてる男だしステイルのほうは名前くらいは知ってそうだが

>>366
そもそも同じ組織

そうだね同じ組織だから面識あって当たり前だよね

方や末端の見習い魔術師、方や最大主教とコンタクトを取れるくらいには偉い天才魔術師
別に面識がなくても全然不思議じゃないんだけど

美琴&黒子と上条さんの面識をインデックス&ステイルに置き換えた程度の面識だと思ってた

ああ、それはあるかもな
まあ、ステイルさんがご執心のインデックスさんは上条にご執心なわけだから、知らないことはないんじゃね
「またあの類人猿ですの!?」もとい、「クソッ、またあの東洋人かッッッ!?」ってとこか

なんだって!?インデックスにでれでれなステイルさんだと!?

インちゃんにデレデレなステイルはいつも通りじゃなイカ

>>370
俺もまんまそんなイメージだったな
だから8巻相当の話では主人公として奔走してくれると信じてる

てゆーか8巻のとこまでやんのかな?

今日の投下楽しみ

3巻までやるかどうかも分からないって言ってるのに8巻とか鬼すぎだろww

今晩の投下は日付変わった後くらいになりそうです
しばしお待ちを

投下しまうま
今回も短いですスマヌスマヌ・・・


 窓の外を見ると、薄い雲が空一面を覆い隠していた。
 白く鈍い太陽光が空全体に広がり、カラッカラに晴れた青空を見るのとは違った不快な眩しさが目に痛い。

 いっその事分厚い雲で薄暗い灰色の空になってしまった方がいいと思えるくらいだ。
 そしてどしゃ降りの雨でもたっぷり降ってくれれば尚いい。
 中途半端に我慢を強いられる方がよっぽど街を、心を腐らせて行くのだから。

「……、って現実逃避してみても時間の無駄なんだけどね……」

 視線を正面に戻し、溜め息を一つ。
 学園都市第三位の称号を持ち、今は追われる逃亡生活の身である少女、御坂美琴は口の端をひくつかせながら目の前の難関を前に立ちすくんでいた。
 もっさりと積み上がっていた山のほとんどは突き崩され、左手の最新鋭洗濯機(飽く迄学園都市外部での最新鋭の為、学園都市内部の美琴からすれば十年二十年位前の型なのだが)のドラム型洗濯槽の中に収まっている。
 だが、残り数枚だけは手付かずのままカゴの中に残されており、「はよ俺も入れてくれ」と美琴の心を急かしたてている。もちろん美琴の幻聴なのだが。

「今日もいい天気ね……」

 さっきまでハンパに曇ってる空に文句をつけてた癖に白々しい現実逃避をしてしまうのは、乙女御坂美琴としては致し方ないことだった。


 何もせず漫然と匿ってもらうだけという立場に我慢が出来ない位には無駄にアクティブで意地っ張りな彼女は、「家事の一つ位は担当する!」と意気込んだはいいが、その挙句こんな事態に陥ってるのだから世話はない。
 彼女に分け与えられた仕事とは、すなわち洗濯で、高性能な洗濯乾燥機が配備されているシェリー邸でのそれはもう楽勝どころの騒ぎではないのだが、その程度の仕事においても彼女はあっさりと高い壁にぶち当たった。

 ある意味学園都市第一位よりも手強い壁だった。
 何しろ一方通行という壁は越える事が出来ない事が最初から分かっていたのだが、今回の壁は越える事は簡単だがそれにより負ってしまうダメージやら失ってしまう尊厳やら純情乙女心やらが深刻というタイプだから性質が悪い。

 しかし、御坂美琴という少女は目の前に立ち塞がる壁を見ると、とにかくまっすぐそれに立ち向かい、正面から越えていく事が信条である。
 たとえ越える事で何かを失おうとも、そんな事で怖気づいてはいられないのである。
 と言うわけで、散々躊躇ったり逃避しまくったりしておいてなんだが、遂に覚悟を決めた美琴は、目の前の”敵”を全力でにらみつけた。


 男物の、下着。


「……、……」

 言うまでもなく、あの上条の物である。


「た、たかが男の下着一つに何をそんなに動揺しちゃってるのかしらねこの美琴センセーってば……」

 わざと客観的に自らを嘲笑ってみたが伸ばそうとした手は途中で固まり進みそうもない。
 無意識の内に上条のトランクスを中心とした適当な半径のフィールドを脳内にイメージし、その範囲に入ることさえビクついてしまっている自分がいて、心のどこかでその事を本気で馬鹿らしいと認識しているが何度やってもそのフィールド内に指一本入れる事が出来ない。

 恐るべし上条・トランクス・フィールド。
 略してK.T.フィールド。

「……、うぐ……」

 下手に名付けたせいで余計になんか凄味が増して不可侵度もランクアップした気がしてしまう乙女御坂美琴十四歳であった。

「くそおおっ、負けるかーっ! たかがK.T.フィールドの一枚や二枚、美琴ちゃんの雷撃の槍であっさり貫通してやろうじゃないの! このーっ、このーっ!」

 ビリビリバチバチと弱めの電撃で牽制してみるも、その雷撃さえK.T.フィールドに触れる直前で躊躇するように引き返しプシュンと霧散する有様。学園都市の誇る超能力者の名が号泣と言うものである。
 もっとも、そのK.T.フィールドでさえ彼女の脳内が構築した妄想であるから、彼女が挑んでは敗北しているその未知の力も彼女自身の力が作り出したものといってもいいのかもしれない。
 子供の頃から脳に電極ぶっ刺したりクスリ漬けになったり勉学と研鑽に打ち込んだりと人体実験もかくやの壮絶な過程を経た結果、作り出すのが男のパンツの周りにエンガチョバリアを張る力というのもどうかと思うのだが。


「くそーっ、くそーっ、このやろっ、このやろっ!」

 そのまましばらく学園都市の技術の粋を無駄遣いしたシャドウボクシングをしていた美琴だが、段々とアホらしくなってきてやがて電撃を引っ込めると萎れた仏壇の花よろしくしおしおとうな垂れた。
 傍から見れば手狭な洗濯室の片隅で男物のパンツを目の前に一人悶え、百面奏した挙句ぱんつに向かって火花を散らし(比喩でなく)、挙句疲れてがっくりと肩を落としている少女という、構図。
 もうそれは清々しいまでの120%怪しい人物そのものである。

「……何やってるんだろ、私」

 チラ、と目的のトランクスを見やる。
 何をそんなに恐れる事があるのか。無地のダークグレーで何の装飾もない地味なだけの布の塊ではないか。
 成分にして綿100%、ゴム部分がポリエステル製、表面にゴミやら垢やらが付着してるかもだがそれだって洗えば落とせるし皮膚なんて新陳代謝で入れ替わるし何か具体的な害があるわけでもない。ていうかそもそもその垢だって元々は皮膚とその分泌物だったものが粘土状に固まったもので、一体何故ソコまで毛嫌いする必要があると言うのだ。

 むしろ汚れているのは邪まな想像を浮かべる自分自身の心の方ではないのか?


「そうよ。そうよね。アハハハ、ほーんと私ってばなにいっちょ前に意識しちゃってるのかしら。今更純情乙女じゃあるまいし男物のぱんつ如きぽぽいのぽーいって放り込めばいいだけじゃない」

 がっはっは、と強がりつつも顔を真っ赤にして汗をだらだら流しながら結局動揺しまくりな美琴だったが、こういう時は得てして本人に自覚などない。
 そしてその事が幸いしてか、そのまま伸ばした手は今度は謎のバリアに阻害されることなくトランクスに到達。ひょいと摘み上げる事に成功。そのままスムーズな動きで洗濯槽へとソレは投下されたのだった。

 思った以上にあっさりと片付いた事に内心安堵した美琴は、パンパンと一仕事を終えた職人が埃を払うように両手を叩き合わせて得意気に笑った。

「ほーら、なんともなかったじゃない。だから言ったでしょ、この御坂美琴サマの手に掛かっちゃあ、この程度の壁なんて越えるとかいうレベルのもの……じゃ……」

 はた、と叩き合わせてた手を止め、目の端に映ったそれをまじまじと美琴は見詰める。
 この右手首辺りについてる、糸状の、糸よりももっと細くて丈夫で光沢がある、チリチリと縮れたモノは一体なんだろう?

 悲しいかな、考えるまでもなくソレはアレなのだと美琴の頭脳は瞬時に答えをはじき出してしまった。
 こういう時学園都市の頂点たる優秀な脳味噌が恨めしい、とか思ったりしたが、別にその答えは彼女が劣等な脳味噌を持っていたって瞬時に導き出せたであろうからとんだ濡れ衣である。


 すなわち、縮れ毛+直前に手にしていたもの(男物トランクス)=???


「……う、う、うううううううう」


 それでも彼女は耐えた。それこそ学園都市の頂点へと登りつめたその忍耐力と精神力で。
 叫び出して走り出したい気持ちをギリギリと全身全霊を込めて抑え込み、ふらふらとすぐそばにある流し台へその手を伸ばす。

 一歩、一歩と近付く速度はもどかしいが、慌てて動いてその???がふわりと飛ばされてしまっては大変な事になる。
 例えば手首についてる内はまだ抑え込む事が出来るそれでも、風に吹かれて顔とかについたらもう耐えられない。大惨事である。
 そういった事態に陥らないように、また自らの心を落ち着ける意味でも、この牛歩のような速度が今の自分には理想的なのである。そうなんだったらそうなんだ。

「……うう、うう、うううううううう」

 怪談話に出てくる幽鬼のように怪しげな呻き声を出しつつ、ゆっくりと歩を進める。夜道で出会ったら十人中七人が逃げ出し、残り二人が腰を抜かして倒れ、最後の一人はそのまま失禁してもおかしくない迫力だ。

 しかし、今は朝日が登りきった午前中である。さんさんとお日様が降り注……いではいない曇り空だが、先程も言ったとおり空は明るく眩しいほどであり。
 その為現状の美琴に出会った人物は怖がる事も逃げる事もせずこう言った。


「よう、御坂。洗濯の方はどうだ? ……ってなんで変な顔しながら唸ってるのお前?」


 そしてそんな気軽に声を掛けられた美琴は(自分が排除しようとしているブツの推定持ち主に声を掛けられたせいもあってか)抑え付けていた物があっさりと決壊したのだった。


「にゃあああああああああああああああああああああああああっ!!」


「うぎゃああああああああああああああああああああああああっ!?」


 バリバリピシャーン! と派手な音と共に雷撃はまっすぐ少年の下に向かい、それは即座に彼の右手によってバキンと綺麗に打ち消された。幸いにもその雷撃は完璧なまでに彼にのみ襲い掛かった為、周りの機器には被害が出る事はなかった。
 とはいえ、ただ声を掛けただけの上条少年の精神にはトラウマレベルの恐怖を刻み込むといった被害は出たのだが。







 ちなみに、少女の手に付着していた縮れ毛の色は薄汚れた金色で、手入れを怠っている証左にフケなんぞが付着してはいたが、少女が顔を真っ赤にして叫びだすような何かでは無い事を補足しておこう。

以上ですかんくす

なにこれひどい・・・内容無さ杉
でも今まで書いたシーンの中で1・2を争うノリノリ度だったのはキミと僕の秘密ですよ?

毎度沢山の温かい、楽しいコメントありがとうございます
皆様のレスで逆に新しいアイデアも浮かんできてホント助かりますぜ・・・!

ステイルさんと上条さんの面識についてですが、既に投下されてる中にそれとなく仄めかす内容はありますんで興味がある方は探してみるのもいいかも
といってもそんなに分かりにくい所じゃないと思いますがw

ステイルさんがメインで活躍する話か・・・書きたいですねぇ
それに限らずこの先の話についてはアイデアが浮かぶかが勝負どころですが、色々書きたい意欲はあるので多分何かは書かれる筈です
少なくともインデックスさん主役のスピンアウト作品はやってみたい!
それがとある魔術の竜王殺息ってタイトルになるかも、このスレ内でやるか新しくスレ建てるのかも未定ですがw


次回投下はちょっと遠いかも・・・遅くても4~5日以内には投下したい!
ではでは

乙です!!
美琴さんかわええなぁ~

次回も楽しみですww

書いてから言うんじゃない全くけしからん

おつおつ
こっそり採取してお守りに入れたりしなくて良かった

マジで内容が無いwwww
だがそれがいい。乙

昔の人は言った、頭空っぽの方が夢詰め込めると

っつーかスレタイとの乖離がひでぇwwww

美琴可愛いw

男のぱんつに女の縮れ毛のほうが事後っぽくて異様にエロいだろ。
と、俺は思うんだが皆はどう?

平和ですね…乙

とりあえずパーマ毛はシェリーさんのってことでFA?

なに言ってるんですか、「薄汚れた金色」って書いてあるじゃないですか
薄汚れた金色=栗色=美琴の髪の毛と同じいろ=美琴の下の毛
ってことにきまってますよ
というわけでその毛はもらっていきますね

え?下まで染めた浜面のだろ?

いや、ヴェントのだろ常考
だから俺がもらうぜ

>>397
義妹が屋上に来いってさ

おまえら想像力豊か過ぎんだろwww

そろそろ来ないのか

超遅れてしまい申し訳
忙しかったとはいえ流石に間空きすぎた上に何の報告も無くてすいません・・・
とりあえず出来た所まで投下致します
推敲しながらなんで間隔空きますがご了承下さい


 洗濯物を全て放り込み、後はプログラム通りに洗濯乾燥機が全てこなすに任せるのみとなった美琴は、重苦しい空気の中に居た。
 向かい合うは、先程全くのとばっちりで電撃を喰らわせた被害者である所の上条当麻。
 はっきりと表面に不満や不快を漂わせているわけではないが、理不尽な攻撃を加えた自覚のある美琴にとっては何気ない仕草一つ取ってもネガティブにしか捉えられない。

「えっと……あの、ごめん」

「え? あ、ああ、いいよ別に」

「でも、やっぱりごめん」

 美琴にしては勇気を出して謝ってみたのだが、上条の反応は思ったよりもそっけない。
 その事がちょっぴり不満だったが、さりとてそれにケチをつけるのもどうかと思うので美琴は謝罪の言葉を重ねる。

 上条からしてみれば確かにびっくりはしたが、幻想殺しで打ち消したことで実際に被害があったわけでも無い。だから、美琴がなんでこうまで縮こまっているのか理解できなかった。
 しかしながら、美琴からしてみれば上条が登場するまでの自分の行動や思考の後ろめたさもあるし、被害ゼロなのもたまたま上条が不思議な力を持っていて、咄嗟にその右手を突き出す反応が出来たからに過ぎない。
 というか、美琴にとっては前者の恥ずかしい思考の方が今も自分の胸にちくちく突き刺さっているのが問題だった。おかげでまともに上条の顔をまっすぐに見れない。問題としては後者の方が大きい事も分かってるのに。思春期ど真ん中に位置する乙女の、乙女心のなせる業か。

「むむむむむ……」

「ど、どうした御坂?」

「な、なんでもないわよ! ほっといて!」

「いや、そんな事言われてもですね……」


 さっきまでシュンとしてたのがいきなり顔を真っ赤にして不機嫌そうに唸りだしたもんだから上条でなくても気になるというものだが、今の美琴にそこまで気が回ろう筈もない。
 上条としてはそんな美琴を前にただオロオロとうろたえる他になかった。

「あ、そうだ。御坂、着替えとか生活用品とか大丈夫か? 必要なものがあるなら早めに言ってくれれば俺が買ってくるけど?」

 この空気の払拭にいい話題が思い付いた、とでも思ったのか、殊更に明るい声が出る上条だったが。美琴の反応はといえばジトっとした目で見上げてくるという、予想外に芳しくない物だった。

「もう既にシェリーさんが目ぼしいの揃えてくれてるわよ。それに第一、アンタに女の子の生活用品とか買いに行かせると思う? 仮に下着とか生理用品とか頼んだとして、堂々と買う気なの?」

「うぐっ、そ、それは……!」

「それとも……ひょっとしてアンタってば、私にアンタ好みの下着着せて喜ぶ変態趣味を持ってるとかじゃないわよね?」

「バッ! そ、そんな趣味あるわけ無いだろ!」

「……どーだか」

 かく言う本人も先程上条の下着を見て興奮(?)してた癖に酷い言い様であるのだが、そんな事を露とも知らない上条は冷や汗をダラダラと流しながら必死で否定する他無い。
 そんな上条の反応を見て、美琴の疑念は膨らみ、その事が更なる追撃の言葉を生み出すのだった。

「ってか良く考えたら、朝起きたらベランダに不審者が引っ掛かってたのに平気で部屋に連れ込んだり、人の裸を二回も見たりと、前科があるのよね、アンタには」

「だからそれは悪かったって……」

 その事を言われると弱い上条だった。


「ひょっとして私を追っ手から逃がしたり匿ったりしてるのも、下心アリアリでやってんじゃないでしょうね……?」

 ジロリ、と上条をジト目で睨みつける美琴だが、その頬の辺りはほんのり赤く染まっていた。万一それに気付いていればその後の上条の運命は変わっていたのだろうか?

 しかし、実際にはそんな細かい相手の所作などあっさりスルーするのが上条の上条当麻たる所以だったりもする。

「あのなぁ……。そんな思わせぶりな事言って動揺させようとしたって無駄だぞ? こちとらお前相手にそんなボーイミーツガールなラヴイベントなんか最初から期待しちゃいねーからさ」

「…………」

「あれ、何故急に黙ってしまわれますか? 心なしか前髪の辺りがバチバチ言ってますけどー。美琴さーん」

「…………」

 上条としては無理矢理ギャグ方面に空気を持っていこうとしてみたつもりだったが、美琴の前髪のバチバチは激しくなるばかり。慌てて右手を頭に伸ばそうとすると一瞬早くバッチィン、と電撃が伸びてきて上条の右手に突き刺さった。
 あまりの反応のよさにびっくりして手を止めてしまう上条の耳に、なにやら空気が漏れるような音が聞こえてくる。

「ふふ、ふふふふ、ふふふふふふふ……」

 それは、目の前の少女の喉の奥から響いてきているようだった。というか美琴の含み笑いだった。
 上条は美琴の背中から湧き出るドス黒いオーラを幻視した。幻だと分かってるのに何故かそれは妙な現実感があった。

 上条は思った。これひょっとして俺ヤバくね?


「ねえアンタ」

 はい、と上条は自分が呼ばれたっぽいのでとりあえず返事をしてみる。
 とてつもなく不幸な予感がした。

「アンタの事、なんか……」

 バチバチバッチィン! と危険が危ない音が響き渡り、激しい火花が上条の視界を焼いた。



「だい……っきらい!」


 紫電が四方から迸り、上条に襲い掛かる。次の瞬間に彼が感じたもの、それが、上条当麻が御坂美琴から初めて味合わされる、超能力という力による電撃の痛みだった。

――――――――
――――
――


 すっかり機嫌を損ねたらしく、美琴はプリプリしながら隣の部屋のソファーに移動して、今は一人ブツブツと呟いている。
 おっかなびっくり声を掛けてみようとするとキッ、と睨みつけてくるので正直怖かった。
 そのくせ、気が付くとチラチラとこちらを肩越しに窺ってくる。気になって視線を向けるとババッ、と体ごと目を逸らす。

 一体何がしたいんだよ……と、上条は電撃で先っぽが縮れた前髪をくりくりと弄り回しながら溜め息をついた。
 ほっとけばその内機嫌を直して話しかけてくるかな……と、半ば諦めの心境で上条はご機嫌ナナメの電撃姫を視界から外す事にした。

 電撃姫。確か美琴は自らが『常盤台の電撃姫』等と恥ずかしい名称で呼ばれている事をぼやいていた。
 学園都市の頂点、たった七人の超能力者。魔術の世界にも世界に二十人といない『聖人』という特別はいるが、分母が不明な魔術師という集団の中ではそれが何分の一の確率での話なのかは分からない。少なくとも二百三十分の七よりは希少だとは思うが、そもそも比べる対象として妥当なのかも測りかねる。
 それだけ学園都市という世界は外から見て未知の存在だ。

 美琴のこの後の処遇としては、最終的には学園都市に帰すのが妥当だとは思う。しかし追っ手として美琴を襲う存在も学園都市の住人だ。その目的や学園都市における立場などは一切不明。
 今の状態で美琴を学園都市に帰しても、美琴が平和な日常に戻れるのか? それが確認できるまでは下手に彼女に動いてもらうわけには行かない。

 幸いにも、上条達の所属するイギリス清教は学園都市とのコネがあるとシェリーが言っていた。
 今はシェリーを通じて、イギリス清教の上層部から学園都市へと探りを入れてもらうよう工作を施している最中だ。
 その手のややこしい汚れ仕事は上条の苦手とするところで、結局何もかもシェリーの世話になってしまっている現状が歯がゆい。

 上条は美琴の為に自分が何の役にも立っていないことに言いようも無い焦燥を感じていた。
 さっきのやり取りだって、少し落ち込んでいるように見えた美琴を、軽い会話で気を紛らわせればと思っただけなのに、余計に機嫌を損ねてしまった。
 せめて美琴が学園都市に無事帰れるまでに少しでも彼女の力になってやれたら――。


(――それが、何になるって言うんだよ……)

 分かっている、全てが解決したら、美琴は元の生活に戻る為ロンドンを去り、学園都市へ帰る。
 このまま解決しなかったら、とか学園都市全てが美琴の敵だったら、とか想像しないでもないが、それは美琴にとっての不幸で、その事態に陥らないように協力する事こそが上条の本意だ。
 全て丸く収まって、色々と世話になったわね、学園都市に来たら歓迎するわ、と笑みをかわしあい別れるのがこの物語のハッピーエンドだ。それ以上何を望むというのだ。

 このままの生活を延々と続けるわけには行かないのは上条だって同じだ。早くこの状態が解消されるのが一番に決まってる。それなのに、何故上条の心は小さな引っ掛かりを覚えてしまうのだろう?

                                オカルト          ESP
 上条と美琴は住んでいる国も、世界も違う。上条は魔術の世界、美琴は科学の世界。上条はイギリスはロンドン、美琴は日本の学園都市。
 二つは決して交わることは無く、偶然に偶然が重なって、刹那のすれ違いが訪れただけ。

 たったそれだけの話。
 それだけの話なのに、何故か上条の心は波打つようにざわめき、何故だか無性にイラついて、


「あれ?」


 と、不意に違和感を感じて思考を止める。
 視界の端、隣の部屋のソファーから飛び出していた、茶色の頭が居なくなっていた。
 シェリーから寝室として割り当てられていた部屋に戻ったのかと一瞬思ったが、何となく嫌な予感がした。

 美琴が近くに居る時に、僅かに感じる濃密な気配というか空気が感じられない。その事を以前美琴に尋ねた時、AIM拡散力場だか電磁波だかの問題で、動物等に嫌われて触れない、等というボヤきを漏らされたが、意識すれば感覚が鋭敏な人間にも感じられるものらしい。
 そして、今それは感じられない。
 つまり、美琴は、この家に、いない?

 それでも、まだ決まったわけではないと上条は美琴のいそうな部屋を片っ端からノックし、呼び掛けてみた。
 全ての部屋から返事が無かった。
 それだけで満足せず、またぞろ不幸イベントが起こる事も覚悟でドアを開けてみた。
 そして、全ての部屋で実行したにもかかわらず、少女の姿を発見出来なかった事で、ようやく確信に至った。


 御坂美琴は、一人で、誰にも言わず外出した、と。

――――――――
――――
――


(ああ、もう……なんだってまたこうなっちゃうのよぉっ!)

 隣の部屋で焦げた髪先を弄くっている上条を横目で見つつ、御坂美琴は後悔の念に苛まれていた。
 さっきは悪い事をした、と素直に謝ろうとしたのに、つまらない事で苛立ってまた当り散らしてしまった。
 これでも学園都市では超能力者という頂点にまで登りつめた身だ。
 能力・精神・感情の制御はむしろ得意とするところで、多少短気でケンカっぱやい所があるのは自覚してるが、それも抑えるよう心がけている。

 なのに、何故上条の前ではこうまでも上手く行かないのか。美琴は自分の事なのに全然分からなかった。

(感謝……してるのは確かなのに)

 情けない事に、ボロボロ泣いてる姿まで見られてしまっている。彼の事を信頼できる人だとも思う。全てが終わって、また別れる時が来ても、絶対いつかまた会いに来て、この恩を何倍にもして返したいとも思っている。
 それなのに、先程から彼に取っている態度は全くの正反対ではないか。恩を仇で返すような真似とさえ言える。

(でも、でもなんか……さっきは凄く嫌な気持ちになった。なんで、なんだろ……)

 上条に「期待してない」とか言われた時、ワケも分からず胸が痛んだ。
 なんだか全てを拒絶されたような気持ちになって、悲しみと怒りが異様に湧き上がって、気が付けば意識してないのに前髪から電撃が漏れ出ていた。
 その電撃は意識して出したものではない。イラだった時、ムカつく相手を前に威嚇で電流の欠片を見せつけるように放出する事はあるが、アレはそういうのではなかった。
 今思えば、感情が昂ぶった位で何故能力が制御できなかったのか不思議だった。制御ミスだとしたら超能力者として精密な電撃を制御するのがウリの自分のチカラが疑わしく思えてくる。

                   パーソナル・リアリティ
(精神が不安定になって……”自分だけの現実”が、揺らいでいる、とか?)

 思えば、あの操車場で気を失ってからの記憶は無く、気が付けば見知らぬ土地の見知らぬ街角に放り出されていた。
 焦って辺りを窺い、そこが学園都市でも、日本でさえも無く、遥か海外のイギリス、ロンドンである事が分かった時は、流石に言い知れぬ不安を覚えた。

 そんな見知らぬ街をふらふら歩いていたら、見知った顔を見かけた。その顔が自分と瓜二つのものだったので、大きな疑念が生まれたものの、一番に感じたのは安堵だった。
 駆け寄ろうとしたら警告の声を発せられ、息を呑んだ。彼女――妹達が私に向けた目は、あからさまな、警戒色。

 どうして、私よ。分からないの? と半ば悲鳴のように叫ぶと、妹達は顔をしかめ、再び警告を発してきた。ワケが分からず一歩を踏み出すと、足元に銃弾が突き刺さる。
 突き刺さった銃弾は自分の電磁波の干渉を受け付けない、ゴムを主成分とした特殊弾だった。その事が、更に混乱を加速する。
 始めから、私に対抗する為の装備を備えている。つまり――
 その事を、その現実を認めるのが怖かった。

 だから、逃げ出した。

 その事が、今の今まで、心にしこりとして残っている。

 しかし、それからは必死だった。
 妹達の私を追う手は執拗で、こちらの思惑を上回るような装備や戦略を駆使して、私は追い詰められる一方だった。
 それでも、この命を投げ出してまで救いたかった命だった。傷付けるなんて始めから選択肢になかった。
 だから、いくら追い詰められても、その銃弾がこの身に突き刺さろうとも、彼女達を傷つける事はできなかった。

 辛うじて妹達の追撃を逃れた後、精根尽き果てた私は、気が付けば移動中に気を失っていた。
 そして、気が付けば見知らぬ少年の部屋のベランダに引っ掛かっていたのだ。

(そういえば、ロンドンで気が付いた時、何か荷物を持ってた気がしたけど……)

 ありふれた肩掛けのバッグのような物だった気がする。そこそこの重量があった筈だが、逃走の際、肩紐が千切れとんだので、邪魔になって打ち捨ててきた。
 ひょっとしたらアレの中に何か現状に対するヒントがあったのかもと思うと、何故最初に中身を確認しなかったのかと思う。が、今となっては詮無きことだ。


 ちら、と隣の部屋の少年の顔を窺うと、なにやら難しい顔をして考え込んでいた。
 さっきまでしきりにこちらを気にしている素振りだったのに、今は完全に考えに没頭してこちらの様子に気を払っていないようだ。
 試しに、そっとソファーから立ち上がってみるも、気付く様子は無い。そろーっと一歩踏み出してみる、やはり気付かない。

(これ、何だか面白いかも……)

 そのまま少しずつ少しずつ気配を忍ばせながら移動してみるも、上条は相当深く自分の考えに没頭しているようで、反応なし。
 結局部屋の外に出るまで彼が気付くことは無かった。

(どんだけ入り込んじゃってるんだか……ったく)

 呆れて息を吐くも、ふと思えば彼が周りの変化に気付かないほど考え込む事となれば、それの原因は自分である可能性が高いのは明らかだった。
 改めて自分がもたらした厄介ごとと、それによる少年の心労に心が痛んだ。それこそ下心の一つでも持って助けてくれる方が少しは割に合うのではないのかとさえ思う。
 そのくせ、自分と来たら妹達と真っ向から顔を合わせるのが怖くて逃げ回ってただけだし、自分のおかれた状況一つ自力で知る事も出来ない。

 一度海外にも繋がっている回線を利用して学園都市の情報にハッキングを掛けてみようとしたが、外部からの侵入に対しては無駄に堅固な防御網を張り巡らせている件の科学技術都市だ。外の一般レベルの機器ではとてもじゃないがそれを破るに事足りなかった。せめて国家、ないしは軍事レベルの先端機器が必要だろう。
                                               チキン
(だからって、その程度の壁にぶつかった程度で諦めてるって、どんだけ私は臆病者なのよ……)

 ぐっ、と唇を噛み締めた。鈍く重い痛みが走るが、それがなんだというのだ。他人が心を痛めているというのに、自分は痛みを怖がるだなんて、なんて自分勝手でワガママなんだろう。


 そっ、と扉の隙間から部屋を覗き見ると、上条はまだ何か考え込んでいた。その顔は痛ましく歪んでいる。
 彼にそんな顔をさせてしまっているのは、間違いなく自分だ。
 ならば、自分は少しでも彼に報いたい。報わなくてはならない。

(分かってる。この想いも、今から私が取る行動も、結局はアンタを苦しめるかもしれないって、事)

 分かってても、立ち止まれないのが御坂美琴という人間だった。今までの彼女は弱りきっていて、いつもだったら迷い無く踏み出している足を動かせずにいた。
 しかし、上条という存在のおかげで、美琴はその”いつも”の力を僅かながら取り戻しつつあった。
 それはとても皮肉な事実だった。上条は、そんな少女の強さなど、望んではいなかったというのに。

(だけど、私は行かなきゃ……行って確かめなきゃ行けない事、ううん、確かめたい事が――ある)

 少女の目に宿る炎。その火種を灯した少年を最後に一瞥し、美琴は足音を殺し家を出た。
 目の前に広がるは見知らぬ土地、見知らぬ街、見知らぬ路地。

 しかし、少女の足は躊躇いの欠片も見せずに踏み出される。

 一歩踏み出したら、後は軽く、あっという間に駆け足になった。
 心なしか引かれる後ろ髪は重かったが、無理矢理振り払うかのように少女は懸命に走った。

 その先にある、真実を求めて。

以上でありますりらんか

基本一巻的なお話を書いてるつもりですが美琴さんは行動派ヒロインなんで色々と違った流れになったりもします
同じ舞台を用意してもそこに立つ人物が違えば結果が違って、
それが面白くなるのかつまんなくなるのかは結局は自分がどの程度手綱をコントロール出来るかなのかなぁとかなんとか

上条さんと美琴さんが細かい所ですれ違っちゃうのはある意味宿命なのか
こっからどうなるのか正直自分でも分かりませんが、思うエンディングになんとか漕ぎ着けれるよう頑張ります
具体的には今日のコミック1で上琴本を買い漁r

ありがとうございました


p.s.前回のあの毛が何かの答えは最早各自の心の中って事にしておいた方がよさそうな気がする今日この頃です

乙~ 美琴かわいいよ美琴

乙です

多少のすれ違いは会ったばかりだし仕方ないよね

おつおつ
続きが気になる気になる

しっかり書かれてていいな、面白い

じゃあ、僕は前回のあの毛が何かの真実を求めて懸命に走りますね

一つだけ、どうしても気になる箇所があったので訂正

>>408
×少なくとも二百三十分の七よりは~
○少なくとも二百三十万分の七よりは~

二百三十人しかいないとかどんだけ過疎なんだよ学園都市っ!
他にもこまごまミスってるところあるけど全部修正かけてる余裕ないので特に不味い所だけって事で・・・

二百三十人・・・
学園都市というより学園村?
レベル5は村一番の稼ぎ頭七人ってところかな

>>420
なにそれちょっと面白そう

↑間違えた>>422

>>423の気持ちは痛いほどわかるがww

>>422
誰か書かないかこれww
小ネタスレにでも転載してくれww

学園都市が230人の村だったら

もしあなたが無能力者であると非難されることや
または落ちこぼれる恐怖を感じることなしに学校に行くことが出来るなら…
あなたは学園都市の60パーセントの人たちより恵まれています

もしあなたが暗部の戦いの危険や投獄される孤独や獄門の苦悩
あるいは非人道的な能力開発の悲痛を 一度も経験したことがないのなら…
あなたは学園都市の1パーセントの人たちより恵まれています

もしレベルが5で奨学金がたっぷりで
他の人と被らない特別な能力名を与えられているのなら…
あなたはこの世界の中で最も裕福な上位7人のうちの一人です


もしあなたの右手に異能の力であれば神様の奇跡だって打ち消す力が宿っているのなら
…それはとても稀れ なことです

我慢できなかった。
正直スマン。

もしも世界が~って奴ですか
自分もちょっとそれ思い浮かんだw
上手いなぁ

>>422が読めると聞いて

>>427
学園都市が230人の村だったらレベル5なんて誰もいないだろ
0.0007人になるんだぞ

>>430
??すまん頭の悪い俺に解説してくれ
その小数点の人数はどっから出てきたん?

縮小図と割合は違うぞ?

くだらねぇ
内容が面白けりゃ良いんだよ

>>433
真理だ

>>433
お前…マリなのか…?

わたし待つわ

いつまでも待つわ

>>431
本来の学園都市では230万人中の7人なんだから
230人の村だったら1万分の7人(0.0007人)ってことだろ

元ネタの100人の村でも人類統計比率を参考に縮小してるんだから
レベルごとの人数の割合を保存すべきだろうし

つまり超能力者はすごくめずらしいんだな!

天才現る

凄くわかりやすいな

というか>>439が凄く削板っぽい

まさかのソギー降臨

気が付けば一週間以上空けてしまった
これでもGW中もう一回投下が目標だったんだぜ……

ここからの内容は半端な状態で投下したくないんでもうちょい待ってくだせえ
既に再構成とは大幅にズレてく辺りなんで色々と難しい・・・
頑張って皆様が楽しめる物になるよう致します

待ってる

マテイル・スグナス

誰だよそのステイルのまがいもんみたいな奴w

>>446 ニテイル・マネデス

じっくり書いてね
ここのインさんが結構楽しみ

まぁ、穀潰しじゃないからな

mdknmdkn

マナカナ

俺の未元待機(ダークマダー)に常識は通用しねえ。








マダー?

散々待たせてしまい申し訳ありませぬ・・・

書いては消し書いては消しを繰り返していたらまたも10日近く経っておりました
流石に間空け過ぎなので推敲も甘いですが今から投下させて頂きます
ちょいと時間ギリギリなんで半端な所で切れたらごめんなさい


 薄雲より降り注ぐ陽光を避けて歩く路地裏は涼しく、薄い半袖シャツから伸びる腕は肌寒ささえ感じる。
 検体番号一〇〇三二号、御坂美琴のクローン体の一人である少女は、その表情の乏しい顔を上げ、天気のはっきりしない空を心なしか恨めしげに見つめていた。

 打ち捨てられた投機物の間から時折ネズミや蟲がうろちょろと顔を覗かせては、何かにびっくりしたかのように姿を引っ込める。それは、少女が体質として放つ電磁波のせいなのか、それとも少女の重く沈む心中が放つ空気のせいなのか。

                                         レベル5        オリジナル
 少女の脳裏を占めるのは一人の人物。彼女達の素体元となった超能力者で、彼女達のお姉様、御坂美琴。
 あの日、何を思って、決して敵う相手ではない学園都市最強の前に立ち塞がったのか。心が未成熟な自分達ではまだ理解できないと、そう思いつつも、その事に胸の辺りがぽかぽかと温まる不思議な想いを感じていた。

 その温かさが、今の自分の原動力となっていると言ってもいい。
 心のどこかでは納得の行かない任務。実行している内容を、驚愕と戸惑いに顔を歪めるあの表情を、思い起こせば胃の底辺りに重石のような物がのしかかり、息が詰まる。
 それでもそれを決しておくびには出さず、ただ目標達成を目的に黙々と目の前の仕事をこなすのみ。

 迷いはある。迷う事も、悩む自由も今の自分に与えられた権利であり、義務なのだろう。
 考えるのを止める事だけは決してしてはならないと思う。思考を停止した結果が、あの実験への参加であり、自分を大切に想ってくれた人を無自覚に傷付ける行為だったのだから。
 こんな事を思っているのは妹達の中でも一部かも知れない。多くの姉妹は突然の実験の停止と、変貌した環境に対する戸惑いに翻弄され、適応する事に手一杯だ。そしてそれは無理もない事だと思う。

 そんな混乱の最中、あんな事が起これば、妹達のほとんどが思考を放棄するのも、また無理のない事だろう。
 それだけに、せめて自分位は。事件の核心の近くにいた自分だけでも、考えるのを止めてはいけないと。
 あの時、そう、心から思った。


「とはいえ、思考を止めていない個体は、ミサカ以外にもいるのですけどね、とミサカは自らの思考につっこみを入れてみます」

 徐々にだが、個性とか自分の考えを持とうという動きは、各個体から出始めているのが最近の傾向だ。
 身近なものに興味を持ってみる。もっと周りを良く観察してみる。知識だけでなく体験として味わってみる。それだけで世界というものは一気に広がりと色彩を帯びていくものだと、自分達は元々知っていた筈。
 知りたい、触りたい、感じたい、といった欲求は元々持っていたにも関わらず、自分達には無駄なものと半ば見過ごしてきた今まで。これからはその欲求にもう少し素直に向き合って行こうという動きが、幾つかの個体を中心に見られるようになった。

 例えば、様々な食べ物を味わってみる。住んでいる街を無為に散策してみる。テレビや雑誌といった媒体から情報を得、それを実践してみる。
                                                                        オリジナル
 中には他個体に秘密でこっそりダイエットしている個体や、髪型や服装に凝ってみる個体等も出てきている。
 流石にお姉様に倣って短パンを履く個体や、某白モヤシのファッションをリスペクトする個体が出てきたのには正直反応に困ったものだが。

 全ての個体がそれに対して積極的というわけではない。
 全体から見れば、変わろう・動こう・考えようとしている個体は一パーセントにも満たないのが現状だ。
 が、今は僅かでも、その動きがいずれ他の個体にも伝播していく事は想像に難くない。

 いい事ばかりとも限らない。
 現に、失敗して痛い目を見ているケースも少なくない件数発生している。
 しかしながら、その痛みも含め、自分達にとって全てが新鮮で興味深い事ばかりなのだ。

 そして、今自分がこうしてまとまりのない思考の中で、自らの行為に迷いや戸惑いを覚える事も、とても大切な事なのだと思う。
 全ては、あの日、あの時、あの人が与えてくれたきっかけによる物なのだから。


「……、」

 と、巡らせていた思考の沼より意識をもたげ、感じた違和感にそれを向ける。
 二日ほど前、その足取りをプッツリと途切れさせて以来、一向に掴む事の出来なかった感触が、そこにあった。
 様々な状況から絞り込んだ消失地点、正にそこから現れた事に強い違和感を覚える。
 まるで巧妙な手品師に目の前で消されたコインを、再び目の前で出現させられたような、丸ごと騙されたような感覚。

「しかし……確実に、この気配はお姉様のそれであると、ミサカは断定します」

 細部に至るまでほぼ一致するものの、他の妹達の感触とは僅かにズレと強度が違う、AIM拡散力場の――電磁波の干渉。
 ここ三日、何度疑わしい地点を歩き回り、時には一方的に見つかる事を覚悟で電磁波を飛ばし、手を尽くして調査しても見つからなかった気配。それが何故今になって突然感知出来たのか? 疑問は浮かぶものの今はそれより優先すべき事がある。
 すなわち……またその気配が断たれる前に、捕捉する事。

 その要件を満たす為、少女は電磁波の動きを分析しつつ移動を開始しようとして、ふと足を止めた。
 先程感じた僅かな電磁波の感触が、今はチリチリと肌の表面を撫でるように強く感じられる。慌ててそれの発信源を再び走査し、少女は眉をひそめる。

「まさか……向こうから、こちらへ向かっている……? と、ミサカはお姉様の動きから推測をします」

 一体何を目的にして? と思考しながらも、同時にその推測が正しいか、僅かな移動にて反応を窺う。
 果たして、目標のものと思われる気配もこちらの移動に合わせて動きを変えてきた。その軌道は変わらず、こちらへ近付くもの。

 二、三度繰り返すも、反応は変わらず、いよいよ持って向こうがこちらへの接触を図ろうとしている可能性が高まってきた。
 次に考えるべきは――。

「どの位置で、接触するか……ですね」


 場所の問題だけでなく、他個体との配置関係も考えなくてはならない。
 待ち望んだ折角の機会だ、無駄に出来ない。
 御坂美琴のクローン体の一人、一〇〇三二号は、他の個体と密に連絡を取り、慎重にお姉様を迎え入れる体勢を整えていく。

 その事を察知してる筈の御坂美琴の動きは、しかし変わらず、むしろその包囲網の中心に敢えて踏み込むような動きでさえあった。


(考えても分からない事はある……というのは、最近とみに思うことではありますが)

 そういう時にどうすればいいのか、その答えの出し方は一つではない。
 調べてみる。探してみる。試してみる。そして……

(実際に聞いてみる、というのが今回の場合は近道のような気がします)

       オリジナル
 そう言えばお姉様もまどろっこしい事が苦手な性分で、自ら首を突っ込みたがる性質を持っていたと、どこかの記録に記述があった覚えがある。
 もしかして、彼女もそういう想いで、逃げ回るのをやめて真っ向から話を付けに来ようとしているのだろうか。
 だとしたら、今まで逃げ続けていたのに、一転して姿を現したのは何故だろう?
 何か心境を一変させるような出来事がこの三日の間にあったのだろうか。

(そういえば、あの時お姉様の手を取って逃げたあの少年と一緒では無いようですね)

 或いはその少年がこの状況を作るきっかけなのではないかとも思う。しかしそれなら何故今は別行動なのだろうか。
 もしくはそれも折込済みでのあえての別行動……?

 考えれば考えるほど、次から次へと疑問が雪ダルマ式に増えていく。
 考え続けるという事は本当に大変だ。

(とりあえずは、迫るお姉様との接触に集中した方が良さそうです)

 徐々に強まるピリピリとした空気が、肌を撫でるように走っていく。触覚とは少し違った感触――電撃能力者特有の、感覚。

――――――――
――――
――


 音も無く。静かに、しかし鮮烈な存在感と共に、その人影は現れた。
 互いに寸分違わない容姿、しかしまとう空気と表情は明らかに異質。

「今まで散々逃げ回っておいてなんだけど……待たせたわね」
                                                                  おねえさま
 前に着ていた制服はボロボロになっていたから着替えたのか、黒のTシャツにジーンズ生地の短パン姿な、御坂美琴。

「……何から話せばいいのか、若干整理が付かない点もありますが、とりあえず――」

                                                  シリアルナンバー
 対し、常に持ち歩いていた銃器を傍らに立てかけたまま、伏せていた顔を上げる検体番号一〇〇三二号。

「お待ちしておりました、お姉様。と、ミサカは平静を装い声を掛けます」

「……装い、って。声に出して言ったら何の意味も無いじゃないの」

 呆れたように片眉を吊り上げ、溜め息を吐く美琴に、一〇〇三二号は表情を変えずに佇んだままだ。見ようによってはキョトン、ととぼけているようで、そのせいか心なし張り詰めた空気も若干の緩みを見せていた。

「ま、何はともあれ、こうして落ち着いて対面するのも久しぶりだし」

「……、」

 緊張していたのはお互い様だったのか、美琴が深く、ゆっくりと息を吐き出して言った。

「じゃ、色々と聞かせてもらおうかしら。もっとも……答えてくれるなら、だけど」

 鋭い眼光に射抜かれ、吹き付けるような威圧感に晒され、それでも一歩も引く気を起こさず、一〇〇三二号はそれらを受け止めた。
 そして、ゆっくりと口を開く。

「ミサカも、お姉様に尋ねたいことがあります。しかし、同時にお姉様が何を求めているかも気になります、とミサカは自らの迷いを正直に告げます」

「……、そうね。こっちとしてもそっちが何を聞きたいかは気になるわ」

 少女達は、お互いに歩み寄ろうとしている事を悟り、心の中で安堵の息を吐く。互いに求める物が同じなら、それはきっと満たされる望みが大きいのだから。

「ですから、ミサカは――」

――――――――
――――
――


 流れ出る汗が目に入り、痛む。
 拭おうと擦る手の甲にも汗がべた付き、不快感は増すばかりだ。

「くそっ、どこに居るんだ御坂!」

 思わず出た声は焦燥に満ちていて、そんな自分にまた苛立ちを感じてしまう。
 落ち着け、焦ってどうする。
 そう呼びかけたところで早鐘を打ち続ける鼓動も全身から噴き出る気持ちの悪い汗もちっとも収まっちゃくれない。

 何故ここまで動揺しているのだろう。
 もしかしたら、美琴が姿を消したのはただの気まぐれで、ちょっとそこら辺を散歩して気が済んだらひょっこり戻ってくるのかも知れない。
 ただの取り越し苦労であって欲しいと、そうであったらどれだけいいかと思う。

 しかし、だとしても、上条は黙って帰ってくるのを待っているだけなんて出来るわけが無かった。
 今こうしている間にも、美琴が追っ手と接触し、傷付いたり、危険な目に合っている。
 その可能性が僅かでもあるという事実だけで、上条が動くには充分過ぎる理由となるのだ。


(アイツを……御坂美琴を守るって。自分の、ちっぽけな力全部振り絞って、アイツを傷付けるヤツらに立ち向かうって、そう誓ったんだからな)

 だから、少年は街を駆ける。
 守るべき少女がその先にいる事を信じて。


 上条がそれに気付いたのは、見慣れた路地への角を曲がった時だった。
 それは、トラブル体質の彼が、逃走経路の一つとして良く利用する、狭くて見通しの悪い路地の一つ。
 通る者もほとんど居ないため片付ける者も少ないのか、ガラクタが散乱し、砂埃まみれのため足を取られ易い地面。
 その性質を良く知る上条は、いつも予め暗闇に目を慣らしておき、ガラクタや砂埃がたまっている箇所を注意深く観察しながらその路地を通っていた。

 その時も、慌ててもつれそうになる足を、一旦速度を緩めることで落ち着かせ、障害物の分布を把握しつつ慎重に足を運ぼうとしていた。
 しかしながら、いつになく路地全体に整然さが満ち、いつもなら散らばっているゴミも埃も一つとして見当たらない事に気付く。
 思わず足を止めた上条は、薄暗い路地全体を改めて眺め回したが、そこにはやはり塵一つない綺麗な地面が続いているのみだった。
 それはまるで、丁寧さがウリの清掃業者が時間や機材を使い磨き上げたような、不自然なまでの綺麗さだった。
 まさかそれが、たった一人の人間が、ものの数秒で仕上げたものであるとは、上条は知るよしもない。

 ただ、上条は、その向こう側に今までに感じた事の無い恐ろしい何かの存在を感じ取っていた。

 この路地を進み、大きく曲がりくねったその先には、確か人の居なくなった建物と、広場があった事を上条は思い出す。

 その禍々しい気配は、その広場の辺りから漂っていた。

 知らず内に堪っていた唾を、ゴクリと飲み下し、上条はゆっくりとその足を前へと進めた。
 本能で”それ”に近付く事は危険だと悟っているにも関わらず、上条は一歩一歩と確実に”それ”へと近付いていった。
 本能とは別の何かが、”それ”と上条が探している少女との関係を、悟っていたからだろうか。


 やがて、上条が広場に踏み入る。
 横手には寂れた倉庫のような建物が、主を失ったその内部の空洞を、崩れた壁面のあちこちから曝け出していた。

 広場に人の気配は無い。
 先程まで感じていた禍々しい何かも、淀んだ空気の中に溶け込んで消えてしまったかのようだった。

「……、」

 さっきまで流れていた汗はいつの間にか引っ込み、気付けば二の腕には鳥肌さえ立っている。
 無意識に両の腕を互いに擦り合わせつつ、上条はぐるりと辺りを見回した。
 四方の建物に切り取られた空からは薄明るい陽光を注いでくるが、それが地面を照らす面積は僅かで、広場のほとんどは薄闇の中だった。
 淀んだ空気と、放置された建物にまとわりつく蔦が、ひんやりとまとわりつくような湿気を生み出していて、辺りの気配を薄く引き延ばしているかのようにも感じられる。

 果たして、先程の気配はどこに消えてしまったのか。
 既にこの広場から立ち去ってしまったのだろうか。
 それとも上条の緊張がもたらした、ただの錯覚だったのだろうか。

 そのどれとも判別付きがたく、上条はもう一度辺りを見回して気配を探る。
 実体の無い気配に震えてしまう自分に苛立ち、焦燥だけが尽きぬ泥泉かのようにドロドロと湧き出しては思考を塗り潰していく。

 上条は時間を無駄に消費している事を自覚しつつ、苛立ちで足元の小石を蹴りつけそうになる。


 その時だった。

 上条が出てきた路地とは逆側、その奥に。

 白い人影が佇んでいる事に、気付いたのは。


――カツン、と路地に乾いた金属音が鳴り響く。


 暗闇の奥、その闇の中でぼんやりと浮かび上がる、白い人影。
 その双眸は、紅い、まるで血の色のような紅。

「よォ、こンな所で何やってんだ? 三下ァ……」

 カツン、と右手に持った変わった形の杖を突き、その白い悪魔がニタァ、と嗤う。

 その悪魔を目にしただけで、上条の周囲の空気が2~3度下がったような錯覚を覚えた。
 全身から異様な汗が噴き出し、シャツが肌に張り付く感覚が気持ち悪い。

 それだけの、威圧。
 それだけの、畏怖。

 理由も分からず、上条はその白い人物に睨まれ、ただただ立ち尽くしていた。

 アクセラレータ
 一方通行。


 御坂美琴が恐怖の記憶と共に語った、学園都市最強の悪魔が、上条の前に立ち塞がっていた。

以上です
どーにか区切りつく所まで投下出来た!
なんかすげー間空いちゃってホント申し訳ありません
次回はここまでお待たせしないように致します・・・たぶんw

それでは!

乙乙
自分のペースで頑張ったらいいよ

乙! >>1頑張れ!

おつおつ
とうとう一方通行と接敵ですね
杖をついているということは天井をぶっ飛ばした後なのかしら…?

乙!
待っていたぜい!

ふーむ、美琴が負けた後、学園都市で何が起こったのか……

次も期待してる。

戻ったか!
舞ってた!


奇態


しばらく読んでなかったせいか>>460で舞夏がスゲー掃除スキル発揮したと思った
もう駄目だ…

乙~
続き待ってます!

毎度いっぱいコメントありがたう!
そろそろ張りたい伏線あちこち張り終えたんで後は苦手な戦闘シーンをどーにかすればって感じですぐふぅ
しっかり全部回収出来るといいなぁ

関係ないけど御坂妹figmaが届きました
8089号(お亡くなり済み)でした
生存個体だったらSSに登場させようと思ってたのにっ!
こうなったらそこら辺も捻じ曲げて10031号以前も一部生き残ってる事にしようかしらw

00001号から順に実験投入じゃなくて20000体の中から適当な検体で実験してたから番号が歯抜けになってると考えるんだ

>>473
奇才現る

その手があったか
まああんまりメタなことやって空気壊す事になると怖いので状況を見つつ考えまする
ありがとうございましたー

限定2万体のあれか?

つーことは10032号とか20000号とかの人もいるのか

>>477
原作に出てる個体はかなりレアだよな
10032号とかいったいオクに出したらいくらで取引されることやら

>>478
18万円ですね、わかります

これって上琴何ですか

これって上琴何ですか

上琴です
再構成です
クロスではありません

sageを覚えてください
sageを覚えてください

■■「どちらにせよ私の出番はない・・・・悲しいけどこれが現実・・・・」

そんな事言われると逆に姫神さん登場の2巻話維持でも捻り出したくなって来るじゃないか
頑張れオレの極小のうみそ

×維持 ○意地

誤字レベルで常盤台入学資格が得られる程度の能力

■■「作戦通り……。ふふふ。」

■■は人を超越した存在を呼び出す使いどころのある設定があるのに
科学の力で人工天使の創造に成功しちゃってる今、吸血鬼ごときはお呼びでないのが辛いところだな

むしろ■■の能力は魔術サイドっぽい

おまえ等は何で海苔の話をしてるのか

>>489
海苔は日本人の心だからだろjk

昔は身分の高い人を本名で呼ぶのは憚られていた
その名残だよ

インノチョウクダシブミさんの本名もたしかに憚られてるな

一方通行「本……名……?」

■■「藻類サイド……?」

1マダー?

わたし待つわ

いつまでもまーたーせーてごめんなさいホントに
この土日中には投下します

あなたのペースで構わない
そんな読者です

待ってる

待ってるんだよ!
ついでに早くインデックスを活躍させるべきかも!

インさん何やってんすか

すいません、今晩用事入ってしまいました
投下は日付変わる頃か明日の夜になりそうです・・・

自分としてもインデックスさん早く出したいお!

待ってるよ

日付変わってら・・・
えっと、お待たせ致しました今から投下します
ちょいと半端な所で切れてしまうかも&見直しながらだから遅いかもですがご了承下さい

ウオオォォォン待ってたぜい
とりあえず服脱いどきますね


「……あの鉄砲玉どもが」

      ホスト                  ゲ ス ト
 その家の主、シェリーが帰った時、そこに押しかけ客たちの姿は無かった。

 お茶でも飲んでいたのか、テーブルの上のポットに僅かな温もりが残っていた事から、二人が出て行ったのはそんなに前では無さそうだ。

                   ガキ
「ったく、これだからせっかちな子供どもは厄介なんだよ……」

 ガリガリとボサボサ頭を掻きながら苛立たしげに吐き捨て、シェリーは考える。
 一通り家を見て回ったが、得られた情報は僅か。美琴に貸していた部屋は整然としており、上条に貸していた部屋と居間は散らかっている。
 居間には上条用に使用していたマグカップが倒れ、中身がテーブルクロスにぶちまけられていた。

 恐らく、美琴は静かに外出し、上条は慌しく外出したのだと思う。

                                  バカ
「順当に考えりゃ、娘っ子がこっそり外出して、気付いた上条が慌てて飛び出した、ってとこかね。やれやれ……」

 たった一日二日の少ないやり取りだけで、シェリーは美琴の本質を大体掴んでいた。
 まっすぐで、単純で、思い立ったらすぐ体が動いてしまう、そんなタイプだ。

 まるで上条の女版みたいな少女だ。
 だからこそ、上条本人もとても放っておけないのだろう。
 とはいえ、こっちからすればその放っておけない輩が二倍に増え、厄介なことこの上ないのだが。

「まあ、なんだかんだで受け入れてる以上、自業自得なんだけどな……」

 厄介ごとの種と分かってて、関わるだけで渦中に放り込まれる相手だと分かってて、それでも放っておけないのは、最早性分というものだろう。
 これでも昔は他人の事など我関せずで通し、碌な交友を持たず孤高と言うか孤独な日々を過ごしていたのだ。
 今だって、大方そのつもりでいるつもりなのだが、どうにも上手くいかない。

 それもこれも、あの、ツンツン頭のクソ馬鹿と関わって以来の事だ。


「こういうのなんていうんだっけ……。えっと、”ヤクビョーガミ”?」

 はぁ、と溜め息を吐きながらシェリーが自分でも良く分からない呟きをこぼした。

 奇しくも、その呼称は上条当麻が幼少の頃、周囲の人間から疎んじられてた象徴とも言うべき物だ。
 が、それと今シェリーの口から零れ落ちた物とは根本的な違いがある。
 それは、

「問題なのは、そんな厄介事に次々と巻き込まれておいて……悪くないって思っちまってる自分がいるって事だよな」

 口にするものが、上条へと抱く想いと、浮かべる表情。
 心の底から面倒だと思いつつも、シェリーはそれでも決して上条と関わるのを止めようともしない。
 何故なら、彼女が今言ったように”悪くない”って思ってしまっている事と。

「元より、見捨てるつもりが少しでもあるなら、最初っから手を差し伸べたりなんかしてねぇよ、ってな。ハハッ」

 上条当麻という人間を、心から好いてしまっている自分を、自覚しているから。


 尤も、本人に直接それを問おうものなら、全力できっぱりと否定するのだろうが……。


「さって、んじゃ脇役は脇役らしく、目立たない仕事でもしてますかね」


――
――――
――――――――


――カツン、と金属が石畳を叩く音が響く。

 知らず口腔内に溜まっていた唾を飲み下し、上条は力の抜けそうな全身に喝を入れるかのように、右手を強く握り締めた。

 建物の切れ目から僅かに差し込む陽光。その切り取られた光源をゆっくりと通り過ぎる姿は、闇の中にいるよりも尚、鮮やかに浮かび上がる白い影そのもの。
 そう、まるで昼間の空にぽっかりと浮かぶ青白い月のように、それは見る者に現実感すら感じさせない。

 しかし、そこから吹き付けるかのように発せられる威圧感は、間違いなくそれが現実である事を嫌と言うほど上条の肌に焼き付けてくる。
 プツプツと粟立つ二の腕の辺りを無意識に擦り上げながら、上条はハッタリでもいいと目の前の悪魔を睨みつける瞳に力を込めた。


「一方……通行……っ」

「あァ?」

 ピタッ、と足を止め、白い少年が顔を歪める。

 張り詰めていた空気が僅かに緩み、上条はようやく溜め込んだ息を吐き出す事が出来た。

 紅い瞳が舐めるように動き、上条の全身を這い回る。
 何故、目の前の男は名前を知っているのか、と口にしても居ない一方通行の思考が視線から流れ込んでくるようだった。

(――くそ、俺は蛇に睨まれたカエルかってんだ……!)

 良くある慣用句だが、実際に使う機会が来るとは夢にも思っていなかったと、上条は引いていた汗が再び噴出すのを感じる。
 目に入り視界を塞ぐそれを拭う事さえ出来ず、上条はただただ立ち尽くしたまま一方通行を睨みつけていた。
 それを拭う為に手を上げる、ただそれだけの動作でさえ、目の前の化物の機嫌を損ねるのではないか、そんな不安さえ覚えたからだ。


 その視線に殺意などは微塵も込められていない。ただそこにあるのは、ごくごく薄い興味のみ。

 その所作に害意などは微塵も込められていない。ただそこにあるのは、気だるそうな空気のみ。


 にもかかわらず、上条の全身は緊張と重圧に包まれ、指一本動かす筋肉さえ動かない。


 今の上条を支配するもの、それは正しく恐怖だった。


「あァ、そっか」

 一方通行の顔が微かに歪み、上条を見る目に色が宿った。
 それだけで上条の全身から力が抜けそうになり、ぐらりと平衡感覚が崩れる。

(く、そがっ!)

 ただ対峙しただけでこうまで人を呑み込んでくるのか。
 ガクガクと震える足を踏ん張りながら、上条は学園都市第一位というモノがどういうモノなのかを思い知らされた気分に心がへし折れそうになった。

「なンで俺の名前知ってやがンだ……って一瞬間抜けな事思っちまったが」

 一方通行はそんな上条に気を払う様子もなく、一人くつくつと喉の奥で嗤っていた。

「そりゃァ、第三位と一緒だったンだもンなァ。知ってて当たり前だったか」


 ぴたり、と上条の空転する思考が止まった。

 第三位。つまり、御坂美琴。
 その名を意識した、ただそれだけで、上条は自らの冷え切った体の芯に、再び火が灯るのを感じた。

 今、この場に自分がいるのは、何故だ?
 汗にまみれながら蒸し暑い街中を走り回ったのは、何故だ?

 そして、それらの答えと、目の前にいる人物は、どんな関係を持っている?

(そうだよ、何ビビってやがんだ、上条当麻)

 強く、強く拳を握り締めた。
 血が止まり、指先が白くなろうとも、手の平に爪が食い込み、血が滲もうとも、ただ力を込めて握り締める。

 気圧されて震えていた自分を。
 本来の目的を忘れかけていた自分を。

                                             げんそう
 何より目の前の化物を相手に”こいつには勝てない”と思い込んだ自らの弱気を、その右手でぶち壊す為に。


「上条当麻、だったか」

 ゆらり、と陽炎のように、一方通行は佇んでいた。

「こっちは名乗らなくても分かってるよなァ? つっても”一方通行”ってのは本名じゃないンだがなァ」

 ぐい、と顎の下の汗を拭い、上条は振り払う。

「ま、本名なンざ忘れて久しいし、今じゃそっちが本名みたいなもンだが――」

「無駄話はいい」

「……ア?」

 振り払ったのは汗でなく、怖気づきそうになっていた、さっきまでの自分。

「お前も、御坂を追っている連中なのか?」

「フン。そうだ、と言ったらどうすンだ?」

 一方通行がさも興味無さそうに鼻を鳴らす。紅い瞳の奥には鈍い光が宿り、上条の心の底をうかがうように照らしてくる。
 上条は心が怯みそうになるのをぐっと抑え込み、尋ねた。

「……なんで、どんな理由があって、御坂を追っている?」

「ハッ!」

 心底面白い物を見たかのように、一方通行の顔が愉快そうに歪む。
                                                   ア レ
「それをオマエに言った所でなンになる? なるほど分かりましたじゃァどうぞってオリジナルを差し出してくれるってのかァ!?」

 ギリィッ、と上条の歯が軋む音が路地裏に響いた。

「……”アレ”じゃねぇ」

「あン?」

「……御坂は御坂だ、モノじゃねぇよ。差し出すとかぬかす奴には――」

 あまりの怒りに、握り込んだ手の平が痛んだ。少女の不幸に心が痛み、食い込んだ爪の先から血が滲み出した。


「――絶対に、渡さねぇ」


 この期に及んでも、上条の心は恐怖に囚われていた。
 空気にさらされた肌は例外なく粟立ち、その癖汗はとめどなく噴出し続けている。

 肌は凍え、思考は溶け出し、身体は細かく震えてろくに動かせない。


 だが、引き下がる理由は何も無かった。


「とっとと失せろよ三下! お前らには御坂に指一本触れさせねぇ!」

 だから、ただ煮え滾る心の赴くまま、上条は吼える。


「……ホザくじゃねェか、雑魚が」

 空気が、一瞬でその色を変える。
 風が、一瞬でその臭いを変える。

 灰色が、漆黒に。無臭が、鉄錆の臭いに。

「本来なら、ここで暴れ回るのは禁じられてるンだけどなァ……」

 よどみなく、慣れた仕草で、その左手が首筋を撫で、そして。

「生意気にキャンキャン吼える駄犬にはァ、お仕置きが必要です、ってなァ!」


――カチリ、と何かのスイッチが入る音。


 それと共に、まるで質量のある塊が辺りの空気を埋め尽くしたかのように、上条の全身に重圧が押し寄せてのしかかった。


 いつの間にか天頂へと差し掛かっていた太陽が薄い雲越しに路地を照らし出していた。
 しかし上条とってそこは、まるで暗く重い闇の汚泥に満たされた――冷たく深い、沼の底そのものだった。


「……、ッ!」

 がくがくと膝が崩れ、地面に崩れ落ちそうになるのを必死で堪えつつも、上条は目の前の化物から目を離さなかった。
 内心の恐れを隠し、唇を噛み締め、真正面から睨み続けていた。
 まるで、少しでも目を逸らす事が、弱気を見せる事が、禁忌かのように。

 そんな上条に、化物は哀れな獲物を前にした肉食獣の笑みを浮かべる。

「……どォした、もうビビってンのか? ションベン垂れ流しながら命乞いするなら、今の内だぜェ」

 ブン、と右手を振り払うように回し、その手に持っていた銀色の杖を放り捨てる。
 カラン、と乾いた音がヤケに甲高く響き渡り、上条の心をざわつかせた。


――何かが違う。


 さっきまでその全身に纏う異様な空気にそぐわず、この男は右手に握った杖に寄りかかり、それに頼った歩き方をしていた。
 しかし今はどうだ。
 ダルそうに崩れた姿勢はともかくとして、しっかりと地面へと伸びる両の足には不安定さを微塵と感じさせず。地面を踏みしめたそれは、それの主の放つ威圧感と相まって、いつでも獲物に飛び掛かれる猫科の肉食獣を髣髴とさせる。

 障害者が一瞬で健常者にでもなった、とでも言うのだろうか。
 馬鹿馬鹿しい考えだと理解しつつ、それであればどうやって目の前の現象を理解すべきかが分からない。

 それに、”違う”と感じた”何か”は、”それ”とは明らかに次元が違うモノだった。

(これも、超能力って奴、なのかよ……)

 思い当たる可能性は、未知なる異能の力。
 しかし、変化のきっかけは、どう考えても男の首筋にある簡素なデザインのチョーカーだ。
 浅いとは言え、オカルトの世界に片足を突っ込んだ上条は、これでも異能の気配というものを少なからず嗅ぎ分ける事が出来る。
 それは勘というより、単なる経験則みたいなものだったが、それだけに大きく外す事は稀だ。
 そしてその上条の嗅覚は、そのチョーカーに異能の力を感じる事が出来なかった。

(つまりは、純粋な科学だか医学だかに基づいたモノだって事か?)

 学園都市の誇る科学力とやらは、どれだけの可能性を秘めているのだろうか、見当も付かない。
 高度に発展した科学は、魔法のそれと見分けが付かない、等という言葉があるが、異能という特異なる力を一切使わず、それらと同じだけの結果を導き出せるほどの技術を、学園都市という集団は既に持ち合わせているというのだろうか。
 本当に?


「何考えこンでるンだか知らねェけどよォ……」

 心底どうでもいい、といった調子で、一方通行が呟いた。

「本当にビビッてるってンなら、素直に引き下がっとけ。こっちとしちゃあ、あの小娘を回収できれば事を荒立てるつもりはねェンだからな」

 それは、脅しでも何でもなく、事実なのだろう。
 現に、今の上条は目の前でただ突っ立ってるだけの男を前に、気配だけで気圧され、少しでも気を抜くと地面に膝をついて崩れ落ちてしまいそうな体たらくだ。
 それだけの力量差、それだけの絶望的な壁が、確かにそこに存在していた。


「…………く、はは、は……」

 しかし、それだけの現実を前にしながら、上条の心に込みあがって来たのは、抑え切れない笑いだった。

「……ハァ?」

「いや、悪ぃ。何か抑え切れなくなっちまって、な。ははは」

 突然笑い始めた上条を、一方通行は表情を変えず見詰めていた。コイツ、頭のネジどっかに落っことしやがったか? とでも言いたげだ。
 そんな超能力者にお構いなく、上条は笑い続ける。

 それは楽しい、というよりは馬鹿馬鹿しい、と言った笑いだった。
 しかしそれは複雑に絡んだ上条の思考を緩やかに梳かし、ばらばらと解いていった。

「……あー、なんだからしくなく難しい事考えちまってたな。クソ」

 考えるのが面倒になっちまったと、上条は乱暴に髪をかきむしった。
 さっきから何をうじうじうじうじと無駄な時間使ってやがるんだと、深く息を吐き出した。

「そんなどうでもいい事考えてる暇あったら、目の前のコイツをブン殴るのが先だよな」

 そして、右の拳を握り締め、目の前の第一位へと突き出すと、ニヤリと笑ってみせた。

「こっちはお前みたいな奴に、降参する気はさらさら無いからな」

 上条の言葉に、一方通行の表情が歪む。
 構わず、上条は言葉を続けた。

                 さいきょう        さいじゃく
「かかって来いよ科学世界の第一位。非科学世界の末席が相手だぜ」

以上です

うん、前回バトルシーンがどうの言っておきながら結局バトル始まりませんでした
次からは本当にバトルシーンです、ハイ
ホント毎回長らくお待たせして申し訳ないです、ハイ

一応次回は今週中には投下出来ると踏んでるんですけど、何しろ信用度ゼロのマダオさんなんでなんとも言えません
でも、その、頑張りますハイ

それでは!


待っていた

さて、二人の戦いがどのようになるのか?
非常に期待

上条vs一方通行で上条さん負けるパターンとか見た事ねぇな、引き分けとかならあるけど

おつおつ
学園都市は美琴を回収して何をさせようってのか

やっぱりこの二人には、ほのぼの日常よりも対峙した際のピリピリとした緊張感の方が似合うな!

乙です

おつです。
一方さんがすでにチョーカーつけてたり、一体何がどうなってるのか
これからの展開を楽しみに待ってます


続き楽しみにしてます

杞憂かもしれんがフラグメーカーのほう6月27日になる前に一回書き込まないと作者の書き込み3ヶ月ないとhtmlにされるから続けるなら書き込んどいたほうがいいかもしれんよ

おおう・・・ご親切にどうもw

続きが気になりますwwww
頑張ってください!

つづきはまだですかー?
もう半月経っちゃいましたけど
せめて生存報告だけでもしてくれるとありがたいです

生きております!
停滞しまくりで申し訳ないー
次回投下はなんとか今週中には行けそうです・・・!

わーい
楽しみにしてるよん

頑張ってくださいwwww

日付変わった辺りで投下しまっす

んでは投下ー


「く、クハハハハ! 言うじゃねェか雑魚が! 面白ェ、そこまで言うなら少しは楽しませてくれるンだろォなァ!!」

 一方通行の哄笑が響き渡り、空気がビリビリと震えた。
 しかし上条はそれに言葉で答えず、腰を落とし身構える。
 その様子を、目の前の男はただニヤニヤと笑いながら眺めていた。

(……、完全に舐め切ってやがるな。だが――)

 まるで引き絞られた弓のように。
 撃鉄を引かれた拳銃のように。
 その拳はただ放たれるのを待ち、硬く握り締められている。

(――――舐められてた方が、好都合だ!)

 次の刹那、上条の身体が跳ね、弾丸のように目の前の男へと放たれた。

 何の構えも予備動作も起こしていない一方通行は、もちろんその動きに対して大きく反応が遅れた。
 上条の身体が、右拳が一方通行に向けて迫るその間、彼が出来た動作といえば、ズボンに両の手を突っ込んだまま――僅か数ミリ右足を地面から浮かせる事のみだった。

 しかし、たったそれだけの動きしか出来なかったのでは無かった。

 たったそれだけの動きで、充分だったのだ。


「あーあ、ホントならオマエみたいな無関係な雑魚相手に、こンな事したくねェンだけどよ」


――――たん、と。

 まるでリズムを刻むかのように、右足で軽く地面を踏みしめた。

 そして、ただそれだけの動作で、石畳を構成するブロックが爆発的に浮き上がり、

「う、おぉッ!!」

 ゴォッ!! と鈍く重い音と共に、石畳のつぶてが風を切り裂いた。


 散弾銃のように上条へと襲い掛かる弾丸は、しかし一つ一つが大人の握り拳よりも大きく、当たればその部分の肉をまとめて吹き飛ばすだけの威力を秘めていた。
 咄嗟に身をひねるのが間に合わなかったら、今頃上条の身体はどうなっていた事か。

「……、っく!」

 崩れかけたバランスを蹴り足で何とか踏み止まり、上条は次の攻撃に備えて一方通行を睨みつけた。
 ズキリと鈍く足首が痛んだが、それを気遣う余裕は無い。

「くはっ、イイ反応するじゃねェか! じゃあコイツはどォだァ!?」

 一方通行が足を上げるのを目にした上条が反射的に身構える。
 しかし、その足が石畳を叩いても、石畳の砲弾は放たれず、上条はバランスを崩しタタラを踏んだ。
 飛んでくると思った石のブロックは、ふわりと柔らかいボールのように浮き上がり、丁度一方通行の目の高さまでゆっくりと浮き上がり、

「急かすンじゃねェよ。下手な鉄砲数撃ちゃってェのは、あンま好みじゃねェンだよ」

 そのブロックを、一方通行はドアでもノックするかのように軽く叩いた。

「マジ、かよ……ッ!」

 ブォッ!! と弾けるような音が鳴り、石の砲弾が先程の倍する速度で打ち出された。
 先程の爆発するように弾けた砲弾と違い、それは狙い済ましたかのように上条の身体の中心を狙って飛来する。

「く、そぉぉぉッ!!」

 身を投げ出すように横の地面を転がり、上条はなんとかそれを避ける事が出来た。
 硬い石畳に背中と腕を強く打ち付け、一瞬息が詰まりそうになるのを何とか堪え、上条は素早く身を起こし一方通行に向き直る。

 しかし、

「ッハ、飛ンで火に入るなンとやら、ってなァ!」

 コンコン、と今度は二つのノック音。
 それと共に石の砲弾は勢いよく放たれ、体勢を整えようとしていた上条の脇腹を捉えた。


「ぐ、がぁぁぁぁぁぁぁぁあああああっ!!」

 重く硬い衝撃が上条の身体に突き刺さり、次の瞬間、上条は地面の上を激しく転がるように吹き飛ばされる。

「うぐっ! が、は……ぁ」

 そのまま上条の身体は建物の壁にぶつかる事でようやく停止し、力なくうつ伏せに倒れた。
 石のブロックが突き刺さった脇腹は熱を持ったように熱くズキズキと痛み、あちこち打ち付けた全身からも重い痛みが走る。

(ヤ、バイ……倒れてる場合、じゃ……!)

 起き上がろうと身を捩るのも激痛を伴い、上条はうつ伏せの状態で首だけを動かし、視線を巡らせる。

 埃の舞う箱庭の奥に、白い悪魔がさっきと全く姿勢を同じく、佇んでいた。
 攻撃するでもなく、こちらを警戒する色も無く、ただ立っているだけ。


 それが、超能力者。

 それが、学園都市第一位。


 それが、とある一人の少女を守る為、今上条が戦いを挑んでいる相手。


「……ッ、……く」

 上条は痛む身体を更に痛めつけながら、それでも何とか立ち上がった。
 そして再び右拳を構える上条を見て、一方通行は深く溜め息を吐いて言った。

「オイオイ、なンだか妙にめンどくせェ相手に絡まれちまったよォだなァ……」

 先程の一撃を食らって立ち上がる事を、感心してか呆れてか、一方通行が嗤う。

 気のせいだろうか、上条にはその笑いがどこか物悲しく、まるで助けを求めているかのようにさえ映った。

(気を散らしてる場合か……馬鹿が)

 生まれた迷いを振り払い、上条は目の前の敵を観察する。

 力の差は圧倒的。
 一歩でも縮めようとした距離は逆に広がってしまった。
 一撃を当てる事も出来ず、相手のたったの一撃であっさりと吹き飛ばされた。
 しかし、それでも上条は笑みを浮かべた。

(上等だ……)

 口の端から滲み出る血を拭いつつ、上条はひたすらに隙を窺う。

(最初っから敵う相手じゃないなんて……分かりきってた事じゃねぇか!)

 追い込まれた獲物は、時に捕食者を噛むと言う。
 上条が野良猫に喰われる鼠なら、その鋭い歯を突き立てればいい。
 上条が猛獣に喰われる牡鹿なら、その角を振りかざせばいい。

 そして、奇しくも上条にはその右手に歯であり角である得物を宿している。

     そ れ
 後は、”幻想殺し”を突き立てる瞬間を見極めるだけだ。


「どォした? さっきから熱ゥい視線を注いでくれやがって」

 睨み合いに焦れたように、一方通行が話しかけてくる。

「一発喰らっただけで怖気づいたのかァ? ならこンなクソめんどくさい事さっさとやめて、大人しく降参してくれると助かるンだが……」

 ヘラヘラとやたら気安い調子に、上条の神経はささくれ立つ。が、イラ立った所で勝ち目が上がる訳でもないのは明らかで、上条はただひたすらに一方通行の姿を睨み続ける。
 その様子に、一方通行も若干のイラ立ちを現し始めた。

「なァ……。あからさまな時間稼ぎはこっちにとっても都合悪いンだけどよォ……」

「……、……」

 あくまで無言を貫く上条に、しかし一方通行は口の端を吊り上げて笑ってみせた。





「……今頃超電磁砲がどうなってンのか。少しは気にならねェのかァ?」


「……ッ!!」


 たった一言で、上条の思考が沸騰する。
 その様子に、目の前の化物は満足そうに笑みを深めて言った。

「ギャハッ! そォ、そォだよその表情! 雑魚が無い知恵絞って無駄な長考にかまけるよりゃァ、そうやってカッカ来て突っ込ンでくる方が俺ァ好みだぜェ!」

「……誰、がその手に乗るかよ!」

「あァ? なンだよオマエ、こうまで言われてまだビビって足竦ンじゃってンですかァ? 仕方ねェ奴だな、じゃァこっちから行ってあげましょうかァ?」

「――なッ!?」

 言って、一方通行は無造作に足を踏み出した。反射的に両手を交差させるが、その足が地に付いても、瓦礫どころか砂粒一つ飛んで来ない。
 そう、ただ一方通行は歩いて来ているだけだ。
 両手をズボンのポケットに突っ込んだまま、やや猫背姿勢の、食後の運動に散歩でもするような気安さで。

(どういう、つもりだ……)

 何かの罠か、ただの挑発か、上条には全く分からなかった。
 ただ、上条が必死で詰めようとした距離を、一歩も進めずむしろ吹き飛ばされて離された距離を。
 一方通行は何の遠慮も無く縮めてきているのだ。
 状況だけを見れば上条に取って都合がいい事は確実。それだけに、

(罠に……決まっている!)

 上条の緊張は高まる一方だった。
 踏み出せば、その先は隙間無く張り巡らされた針の山。
 罠だとは分かっている。しかし、上条に取っての大きなハードルであったその距離が、拳を届かせる事の可能な間合いが、あと数歩で、届く距離にまで縮まる。
 それが、この闘いにおいて、最初に訪れるかもしれないチャンスなのだ。

(罠だとしても……いや、むしろ)

 上条は未だ迷う心を抑え付け、その距離が来るのを待ち受ける為、気を張り巡らせる。
 罠であるならばと、躊躇するのは上条のやり方ではない。むしろ――

(――その罠に掛かる事で、ほんの僅かな勝機を……見つけ出す!)


 そして、その針山への一歩が、踏み出された。


「う、おおおおおぉぉぉぉぉぉ、ああああああああぁぁぁっ!!!!」

 獣のような雄叫びを上げ、上条が踏み出す。
 その右手は固く握られ、最短の距離を辿り、目標へ向かう。

 それは、集中したが故に、上条が思うより早く、まっすぐで、彼自身でも認識するより早く一方通行の顔に肉薄し、その顔に突き刺さった。


――かに、思えた、その刹那。



「はァーい、残念賞ォー」



 耳元で轟音が響いたかと思った次の瞬間、上条の平衡感覚は一瞬で滅茶苦茶に狂わされた。


 否。


 上条の身体は激しく吹き飛ばされ、上空を舞っていたのだ。


 路地裏にそよぐ僅かな風。
 それは一方通行の肌に触れた瞬間、人一人の身体を簡単に打ち上げ、飛ばす轟風と化した。
 上条の身体は紙クズのように吹き散らされ、宙を舞い、そのままなす術も無く放り出されて、そして。

 ドサリ、と、一方通行の遥か背後の地面に突き落とされたのだった。


 罠はその見た目通り、罠だった。
 針の一本や二本、いや十本だろうと二十本だろうと、上条は踏み砕いてでも乗り越え、その拳を突き刺さんと踏み出したが、

 それは、針みたいなチャチな罠ではなく、人一人を軽く吹き飛ばす爆薬だった。
 ただ、それだけの事だった。


「……いやァ、危ねェ危ねェ。今少しだけど頬にカスってたぞ、ホント」

 明るい調子で呟く一方通行の言葉は、しかし頭から石畳に叩き付けられた上条には届いていなかった。


「あァ? 焦ってちょっと加減間違えたか?」

 苦笑交じりに頭をガリガリと掻き、一方通行は動かなくなった上条の元に歩み寄る。
 如何にもめんどくさそうに、軽い溜め息を吐きながら。

「あー……、生きてるか?」

 一方通行が倒れる上条のすぐ傍でその足を止めた。
 不用意に近付くのは、相手がもう動けないのを確信しているのか、それとも不意を突かれても対処できるだけの自信があるからか。

 そんな彼が足元に見下ろす男の身体はピクリとも反応せず、ただそのうつ伏せに倒れた頭の辺りから、じわじわと赤い染みを広げていくのみだった。
 一見して本当に死んでるかのようにも見えるが、ゆっくりと肩が上下している。その呼吸は思ったよりも乱れもしておらず、か細くもない事から、そこまで深刻な状態では無いようだ。

「ふゥ、勢いあまって殺しちまったらやべェしな……」


 上条達が知る由もないが、彼ら科学サイドの重要人物が魔術満載のロンドンで堂々と活動できるのは、裏からの手回しや約束事が幾つも重ねられた上での事だった。
 例えば、活動範囲や、滞在場所の指定。一般人に見咎められない事や、行動記録の開示。
 そして何より、魔術サイドの関係者への必要以上の接触や敵対行為の禁止だ。

 この事はイギリス清教の上層部や裏側の人物にも伝わっており、彼ら学園都市からの追っ手の活動についてもある程度は見逃されるように情報工作が施されている。

     、、 、 、 、 、 、、 、 、 、 、 、、 、 、、 、 、 、 、 、 、、 、、、  、 、 、 、、 、 、、 、、 、 、 、、
 そう、何も事情の知らない魔術サイドの下っ端が被害を受けようと、目を瞑られるであろう程度には。


――しかし、殺してしまうまで行くと、流石に全て見逃されるとまでは行かない。


「ふン……、でもこのまま放っておくのもやべェかも知れねェしな……。ったく、クソ面倒臭ェ」

 そのまま一方通行が爪先で上条の肩口をつつくと、ふわりと上条の上半身が持ち上がった。その顔を片手で掴み、腕一本で上条の体をぶら下げるように持つ。
 華奢で、まるで骨の上に薄い皮を被せただけに見える細いその腕は、とても人一人を支える事など出来そうにないにも関わらず、たった一本で軽々と上条の身体を掴み上げている。
 その光景は、見る者がいればとても奇妙に映っただろう。

 しかしその程度、一方通行の持つ能力――”ベクトル操作”――においては、空き缶を蹴り上げて拾うよりも簡単な仕事である。
 そして彼がその気になれば、一瞬で上条の顔を卵のように掴み割る事さえ出来るのだ。

 そう――その、白く、うっすらと血管が浮き出て見えるほどに白く細い右手一本は、それだけの力を秘めた”毒手”なのである。

 つまり、上条の生殺与奪は、今や彼の気まぐれな心一つに委ねられていた。


「……ッ、く……ぁ……」

 その事を知ってか知らずか、上条が身をよじり、うっすらと目を開いた。


「よォ、おはようさン」

 それは、目覚めの光景としては最悪の、最凶の微笑。

 生物としての本能が、恐怖と、忌避と、危機を感じ取り、全身を凍りつかせるような、眼光。

 しかし、それさえも感じないほど夢うつつなのか、上条の目は一方通行の指の間からまっすぐと彼を見つめ、動く事は無い。

 そして、朦朧とする意識の中、上条はのろのろと右手を動かし、自分を掴み上げているその手へと伸ばした。

「ン? まだやるつもりかァ?」

 顔を掴む指先に僅かに力を入れて警告の意を伝えると、上条の右手が一瞬、その動きを止める。
 が、すぐにそれはのろのろと自らの顔を掴む腕へと向かって動き出した。

 やれやれとめんどくさそうに溜め息を吐き、一方通行がその右手を払おうともう片方の手をポケットから抜き出し、



 パン、と、予想外の力で払い返された。


「…………ハ?」

 一方通行がその現象を理解するより早く。
 思わず正面からその目を、左手で掴み上げたその男の鋭い眼光を目にした時には既に遅く。

 ぐらり、と視界が揺れ、引っ張られるようによろめいた身体と共に、意志とは無関係に一歩二歩、足が踏み出されていた。


 否。


 いつの間にか離していた左手をねじ上げられ、バランスを崩されたのだ。


 そして、左肘に走る鈍い痛みを自覚した、その時――――




――――振り返ったその先には、目の前に迫る拳があるのみだった。


 一方通行には、最初から相手を殺す気も必要以上に痛めつけるつもりもさらさら無かった。
 つまり、一言で言えば、彼は相手を舐めてかかっていた。

 対して、上条は相手の強さを、彼我の絶望的なまでの力量差を自覚していた。
 そしてその上で、その身がどれだけ傷付こうと、目の前の化物をブン殴ろう、それだけをひたすらに念じ続けていた。

 一発でいい。
 少女を苦しめ、追い詰めるこいつらに、その何百、何千分の一でもいいから、その痛みを刻み付けてやりたかった。

 そして、ただそれだけを頑なに狙い続けた上条が、傷付き、倒れ、立ち上がり、そして吹き飛ばされ――――最後の最後に掴んだ好機こそ、正にこの瞬間だったのだ。

            さいじゃく
「歯ぁ食いしばれよ 最強 ――――――」

 上条の、岩のように固く握り締められた右拳は、限界まで引き絞られた弓のように、振りかぶった腕の先で放たれるのを待っていた。
 後はもう、その弓の弦を放すのみ。

                さいきょう
「――――――――俺の 最弱 は、ちっとばっか響くぞ」



 そしてその矢は放たれ、悪魔の顔へと――突き刺さった。


 重い、重い一撃を顔面に深く刻み込まれた一方通行は、砂埃を撒き散らしながら石畳の上を転がり、その華奢な体を路地の壁に強く叩き付けられた。


「ぐ、ァ、がは……、ッ!」


 叩き付けられた矮躯は、その口腔から胃液を吐き出し、ガクリと首をうな垂れ、そして。

 ゆっくりと、前のめりに崩れ、倒れた。



 それを薄れゆく意識の端で見ていた上条の体もまたよろめき、砕けた瓦礫の中に崩れ落ちる。

 倒れたその顔の口の端には、乾いた血がこびり付いたそこには、ただの一撃を、しかし全力の一撃を叩き込んだ、勝者の笑みが浮かんでいた。




 そして、砂埃舞う裏路地の一角を、再び静寂の帳が落ちていく――


――――――――
――――
――


「う、うそ……でしょ……?」

「……、……」


 程近い別の時、程近い別の場所。

 二人の少女が向き合い、立っていた。

 瓜二つのその少女は、しかし全くの別の表情を浮かべている。

 無表情を浮かべる、妹達――検体番号一〇〇三二号。

 強張った表情で震える、御坂美琴。


 じっと佇む少女は、怯えたように震える少女をただ静かに見つめている。

 その無表情の奥に、悔しさと、悲しみを称えて。


 震える少女は、視界に佇む少女を捉えながら、何も見えてはいなかった。

 戸惑いと、否定と、そして――理解の色を瞳に宿して。


「そう……なん、だ……」

「……、お姉様……」

 俯き、呟く美琴の姿に、一〇〇三二号が瞳を揺らし、唇を噛む。意を決して告げた事を後悔する気持ちがもたげ始めるが、それを振り払うように、美琴が顔を上げ、見つめてきた。

 そして、自嘲染みた苦笑交じりに、口を開きかけ。


「――――――――ッ!!」


 今度こそ、その表情が凍り付く。






       「よォ、話し合いは終わったかァ?」








――――カツン、と、辺りに乾いた音が響き渡った。




 乾いた音が耳朶を揺さぶり、どこまでも脳内に響いていた。




 薄闇の中から、白い、白い身体が滲み出てくる。

 その姿は、忘れようにも忘れられない、悪夢の、悪魔の姿。

 恐怖と、憎しみと、絶望の象徴。

                        プライド                      モノ
 あの時、あの場所で、少女と、少女の自信と、少女の大切なものを引き裂いた、存在。


                レベル5       アクセラレータ
 学園都市最悪の化物。超能力者の第一位、一方通行。



 それが視界に入った瞬間、少女の思考は、一瞬で真っ白に――――真っ黒に塗り潰された。



「……、……ぁ」

「っしょ、とォ。クソ、半病人にこンな荷物運ばせンなよなァ……」


 そして、その悪魔の肩に担がれ、引き摺られているのは。


「……あ、ぁ……」

「ン? あァ、安心しろ。死ンじゃいねェよ」


 ダラリと手足を投げ出し、ボロボロの姿を晒しているのは。


「あ、ぁ……、……」

「クソ、散々てこずらせるだけじゃなく、その後の面倒までかけまくりやがってクソ野郎ォ……」


 どさり、と地面に投げ出され、ピクリとも動いていないのは――





――――――上条当麻、その人だった。






.




「……あ、ぁ、あぁぁ、ああああぁあぁぁぁ、ぁぁあぁあぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああぁぁああぁぁぁぁあぁぁぁぁあああああぁぁあぁあああああああぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!!」




.

以上です
やっぱりバトルは苦手。

次回こそはなるべく早く来ます
では!

つまり……そういうことだってばよ
二人とも気絶して一方さんが先に起きたのか
おつおつ

乙です!

一方さんパネェっす


続き待ってます!

乙乙乙!
ずっと持ってたぜ!

乙です!!
バトルよかったですよーwwww
続き待ってます!!

乙ですよ。乙なんです。
インデックスさんは、もう出てこないのかなぁ。立場が入れ替わっても空気なのは変わらないな・・・。

なんでここコマンドしてないのに赤いんだよwwwwww

続き待ってますwwwwww

0時半ごろ投下します

待ってました

うわーい待ってたホイ



 浮かんでは沈む、意識の中。

 目に入るのは、砂利混じりの土の壁。

 頬をくすぐるのは、風に揺れる雑草。


「……あぁ…………ぁぁ……ぁ…………ッ!」


 そして、耳に入るのは風の音と人の声。

 悲鳴のような、咆哮のような、少女の声。


「…………なさいっ……タ、ソイ……何……たの……!」

 少女が体を震わせて、声を震わせて、空気をビリビリと震わせていた。

「……イツに……たら、タダじゃ……かないん…………ッ! アンタ……だけじゃ…………って言うの!?」

 どうしてだろう、その叫びは、怒りと、怨嗟と、糾弾の色を濃く含み、叩き付けられていたというのに。

「そんなの……ッ!」


 俺には――――少女の泣き声にしか、聞こえなくて。それが悲しくて。


「…………絶対にこのアタシが許さないッ!!!」


 俺は大丈夫だって、言いたいのに。


 指一本動かせない自分が、ただ悔しくて――――


 肌の表面をちくちくと刺す痛みは、少女から漏れ出る紫電の余波によるものだろうか。
 その痛みがすぐにでも手放してしまいそうな意識を寸でのところで繋ぎ止めていた。

 薄れた意識でも分かるほどに、美琴が感情を迸らせていた。
 傷付いた上条を目にして、憤っていた。

(やめ、ろ……御坂……)

 動かない身体に、上条は歯噛みする。
 指一本動かせない自分に、そんな自分の為に怒りを露にする美琴に、その美琴を止める事の出来ない自分に苛立つ。

 少女の前に立つのは、正真正銘の化物。
 一方通行。

 上条はその身をもってその強さを思い知った。
 そして美琴は、そんな化物の強さに膝を屈し、追い詰められ、死を選択する程に絶望した。

 その彼女が、こんな役立たずな自分の為に、絶対に敵わない相手へと立ち向かっている。
 そんなクソ下らない状況を作り出してしまった自分の無力に、無能に、無策無謀に腹が立って仕方が無かった。

 だから、上条は動かない身体に力を込め続ける。

(……俺、なんかの為に……駄目、だ……)

 たとえ動かない身体を動かしてでも、美琴を止めたかった。
 明滅する意識の灯を、歯ぎしりしながら繋ぎ止め、彼女の前に立ち塞がりたかった。

 けれども、ガラクタの身体は、指一本動かす事が出来なくて。


(み、さか……逃げ……)



 そして、美琴はそんな上条の想いを、倒れたまま、閉じかけた目の奥から感じる眼光を――――正しく受け取り、感じ取っていた。

 だから……だからこそ、美琴は震える両足を押さえつけてでも――敵わないと、勝てっこ無いと心の底から思い知っている相手を前に――立っていられるのだという事を、少年は知らない。

 そして。


 そんな少女の覚悟も、土台も、既に揺らぎ、崩れきっている事も。

 彼は、知らない。


「――――お姉様」

「…………ッ!!」

 だから。瓜二つな少女の、冷たく、無感情な言葉は、しかし激情に昂ぶる姉の思考を凍り付かせた。

 戸惑うように、躊躇うように。

 そして、怯えるような目で、少女は視線を横に動かし、視線を合わせる。

 自分と同じ顔の少女を。

 自分と同じDNAの少女を。

 自分と、同じ――――。


「……、……ッ」


 少女が、唇を噛む。


 急速に収まっていく雷気と、冷えていく空気の中、上条は込み上げてくる不快感に押し流されかけていた。
 適度に肌をなぞっていたピリピリとした痛みは消え失せ、上条の意識を繋ぎ止めていた楔の一つが引き剥がされる。
 踏み止まろうともがこうにも、一つ、また一つと楔は剥がされ、抗う力は失われていく。

 ブラックアウトしていく視界は、力なく震え、うな垂れる少女の姿を映していた。

 先ほどまでの気迫が見る影もなく失せ、それどころか今にも泣き出しそうな少女を見ていると胸が痛んだ。


 何が彼女の怒りを霧散させたのか?
 何が彼女の心を挫いたのか?

 上条に残された僅かな意識の中、疑問は渦巻くが、働かない思考力は一切の答えを導けない。


 そんな弱々しい少女を残したまま、深淵へと引きずり込まれていく意識をどうにかして引き止めたくて、上条は心の奥で叫び声を上げる。

 喉も枯れんと、絶叫する。


 あんな顔をした少女を、そのままにしては置けない。

 今にも泣き出しそうな少女を、守らなくてはいけない。


 しかし、そんな上条の想いも、焼け石に水に過ぎず。


 激しい頭痛と不快感が急激に湧き起こり、上条の意識は押し流され、真っ黒に塗り潰されていくのだった。


(み……さ、か…………)


 最後のひとかけらの意識が消え去る瞬間、少女と目が合った。


 目が合ったその瞬間、少女は力なく微笑み、そして――――


――――――――
――――
――


 うっすらと、身体が浮き上がるような違和感。

「……気が、ついたの?」

 ここ数日で見慣れた天井、暖かな華曼荼羅模様を目にしたことで、上条はここがシェリーの家だと気付く。
 それと同時に、視界の端に、心配そうに覗き込む少女の顔が目に入った。

「御坂……? いつっ、てて……!」

「あっ、コラ! まだ動いちゃ駄目よ……」

 全身にのしかかるような痛みと熱が襲い掛かり、上条は呻き声を上げて身を捩った。
 慌てて少女が上条の体をそっと抑えつけ、ゆっくりとベッドへと寝かし直す。

 心配げにまつ毛を伏せる少女を横目で見ながら、少女の身体に怪我が無い事を確認した上条は、大人しくベッドに横になった。

「今は朝……か? くそ、情けねぇな……一晩中寝こけてたって事かよ」

 窓から差す日の角度から、おおよその時間帯を推測し、極力軽い口調で苦笑を浮かべてみせる。
 その事が何の気休めにもならないことは分かっているが、悲しげな少女の顔を見ていると、強がらずに居られない上条だった。

 が、そんな軽口に、美琴はふるりと身体を震わせ、余計に顔を暗くして言った。

「三日よ」


「…………え?」


「一晩じゃない、三日。アンタは三日間寝込んだまま、今やっと目が覚めたのよ」

「みっか……え? 三日!? そんなに眠ってたのかよ俺!」

「そうよ! 三日も! 三日もうんうんうなされて、ちっとも目を覚まさないで、ようやく今日の早朝落ち着いてきて……やっと、三日ぶりに目を覚ましたのよアンタは!」

「……ッ!」

 突然どなりつけられてビクッ、と上条は体をすくませる。
 ぎょっとして視線を動かすと、少女は激しい怒りに肩を震わせ、その目には涙が今にも溢れ出しそうな程に湛えられていた。

「アンタはっ! こんな私にも優しくしてくれたから! アンタが、私の心を救い上げてくれたから! 私はもう充分だと思って、後は私がちゃんとあの娘たちと向き合って話を付ければ、それでいいと思ってたのに!」

 ぽた、ぽたた、と温かい雫が上条の顔を濡らす。
 それは、じわりと上条の頬に染み入り、傷に染みた。
 傷だけでなく、上条の心も鈍く痛んだ。


「アンタは、なん、で……」


――――また、泣かせちまったな……。


 ぎゅっ、と。
 上条の横たわるシーツの裾を強く握り締め、少女は悔しそうに唇を噛んだ。

 そんな少女に、上条はかける言葉を失う。
 上条を責めるような口調で叫ぶ少女が、実は一番責めているのは自分自身だと、上条は気付いていたからだ。

 自分勝手に一人で行動して、その事に気付いた上条が後を追う事を考えていなかった。
 妹達の他に、もっと恐ろしい追っ手がこの街にいる事を考えていなかった。
 そんな自分の浅慮が、上条当麻を傷付けた。

――――でも、それは違う。

 何の考えもなしに、感情の任せるままに当てもなく美琴を追って無防備に街に飛び出したのは、上条自身だ。
 出会った相手が、上条がとても敵う相手で無い事を知りながら、一発殴ってやりたいと無謀にも勝負をふっかけたのは、上条自身だ。

 そこに少女の、御坂美琴の落ち度なんて、ほんの些細な割合しか含まれて居ない。


――――けれど、そんな言葉で少女が納得しないことなど、分かっていた。


 だけど、かける言葉の一つも見つからない上条は、力の入らない右手を動かし、少女の涙を拭おうとした。
 ふらふら、ゆらゆらと、右手が少しずつ持ち上がるのを見て、少女は驚いたように目を丸め……ふわりと微笑んだ。

 そっ、と。
 少女の手が上条の右腕に添えられ、支えられる。

 少女の温もりが、包帯ごしに、上条の腕へと伝わった。


 少女は、上条の優しさに、胸がきゅっとなるのを感じながら、想った。

 これ以上、迷惑をかけられない。
 これ以上、少年を傷付けたくない。

 でも、その想いは、決して満たされる事がない事も、少女は知っていた。
 今からとる少女の行動は、少年を深く傷つける事に、少女は気付いていた。
 だからといって、少女は止まるつもりは、無かった。


――――お姉様、とミサカは告げにくい事実を前に、逡巡します。


 愛しい、大切な妹の困った顔が思い出される。


――――しかし、黙っているわけにも行かないので、覚悟を決めます、とミサカは腹に力を入れます。


 優しい、純粋な妹の言葉を思い浮かべる。


「ねえ、知ってる?」

 微笑みかけると、少年は眉をひそめ、じっとこちらを見詰めてくる。
 その深く黒い瞳に、いつの間に自分はここまで惹き込まれていたのだろう。

「本当はね、見知らぬ街に一人放り出されて、凄く凄く心細かったのよ、私」

 自分でも信じられない弱音が口をついて出る。
 でも、それも仕方ないか、とすんなり受け入れる自分がいた。

「アンタに優しく声かけられて、ちょっと強引に助けられて。ちょっと迷惑だな、って思いながら、でも本当は結構嬉しかったのよ」

 上条の表情が緩む。
 なんだそんな事、とでも言いたげな、ちょっぴりムカつく呆れたような顔に、クスリと笑いが漏れた。


「だからね」


 そっ、と。
 両手で支えた右腕を持ち上げ、その大きな手に顔を寄せる。


「これだけは言っておくね」

 少女の瞳から、また涙が一粒こぼれる。


――――お姉様は、つまり。



「ありがと。……………………じゃあね」






 右手に頬が触れ、そして。



――――――――バギン、と。


 乾いた音が、鳴る。









「…………………………………………え?」


 上条の右手に、何かを砕いたような感触。

 それは、いつもの慣れた感触で。つまり。


 異能を、打ち消した時の、感触。


「……、みさ、か……?」

 のろのろと、視線をその右手の触れた先に移す。


 そこには、変わらず、少女の顔があった。

 きょとんと、とぼけたような、感情の薄い顔があった。


「な、なんだ……びっくりさせんなよ、ハハ……」

 一瞬、少女の存在が掻き消えたような、そんな気がしたが、変わらず少女はそこにいた。
 そこに居て、不思議そうに上条の右腕を抱えながら、その右手に頬を触れていた。

 そして、少女は探るように視線を動かし、ふと息を吐いて言った。



「……なるほど。細かい状況は理解できませんが、おおよその事は把握しました」


 少女は小さく頷くと、そっと上条の手を布団へ下ろし、





「――――と、ミサカは状況を把握する為、ミサカネットワークへの接続を図ります」



 まるで、今目覚めたばかりかの様子で、言った。




 感情の薄い、光の薄い双眸が鈍く光る。

 上条の、間抜けな、引きつった笑いが、その目の奥に映り込んでいる。


                      、 、 、 、 、 、 、 、 、 、
 上条が言葉を失い、見つめる中、検体番号一九一〇二号は、ただ静かに沈黙し、通信を続けていた。

以上です。

やっと書きたい所書けた感じ。
ここを書くための伏線は色々散りばめましたが上手く行ったのやら・・・。
もうすぐクライマックスでございますよ。

次回はなるべくはやk(ry

おつおつ
つまり・・・どういうことだってばよ?

そうきたかー
オリジナルがあれなことはあれだったけど、うぎゃー

おつ



なん……だと……?
じゃあ、やっぱり御坂は、あの操車場で腕をぶっ飛ばされた時…

次も期待してるぞ

乙です

美琴・・・なんてこったい

えっ?いつ入れ替わったの??
まさか最初から???

やべえめちゃくちゃ続きが気になる~……

乙乙
正直予想外だった

乙~


俺の頭じゃ理解が追いつかないぜ…美琴はどうなったんだ?

美琴はとっくに死んでて意識が一九一〇二号に入ってたってことでいいのかな?
乙乙

>>587
え…なにその鬱展開…
そんなんだったら即座に読むの辞めちゃうんだけど

やめれば?

幻想殺しが作用したって事は、学習装置ではなく精神操作系の能力によるものなのか

乙ですwwwwww
うわぁまさかの展開にドキドキしまくってます!(>_<)
続き待ってます!!

乙ですwwwwww
うわぁまさかの展開にドキドキしまくってます!(>_<)
続き待ってます!!

乙ですwwwwww
うわぁまさかの展開にドキドキしまくってます!(>_<)
続き待ってます!!

落ち着けwwww

>>588
あくまで俺の推測だぞww
もしかしたら植物人間状態なのかも知れんし

あんましアレな事書くのはアレですが一言だけ言うと自分はハッピーエンド大好きッ子です

あと、色々と滅茶苦茶ですが一応一巻再構成なんで
このエピソードでのインデックスさんの出番はニアリーイコール美琴さんの出番ということで悪しからず。

じゃあ期待して服を脱いで座して待つ
上条さんをこれ以上巻き込まないために美琴が妹達を身代わりにおいて学園都市に帰ろうとしたのかしら・・・?

電波によるハッキングかな。何にせよ現状はVSステイル中か神埼戦の前に相当するのかな?

三日寝てたんだから神裂戦後だろ

もしや心理掌握さんが絡んでいるのだろか??

そろそろぬいどこうか・・・・・・・

そうか夏か

久々確認すれば更新が!

まさかの展開…続きも楽しみにしてます!!

願わくば幸せな結末を……

あうあう
すごく大好きです
おもしろいです
心臓が痛くなる

美琴さーん(;_;)

続きが気になりすぎて…wwww

まだか

きっと新約2巻の最後の挿絵を凝視するのに忙いんだよwwww

>>606
なぜわかったし

新約2巻の幸せ度は異常
色んなキャラの色んな面が見れたしねーちんは活躍したし一方さんや浜面との連携プレーもかっけかったし最後はアレだし!

はいすいませんこのモチベ使ってさっさと続き仕上げます!

超がんばりやがれです!

左手握ってる挿絵だけで、ご飯一升はいける。

同感wwww

うぅ、やめて。
10日に本屋行ったのになくて、注文したのに来ない私のハートを傷つけないで。

>>611
ネタバレが嫌ならスレ見んなよ
つかそれを言うためだけにあげんな

投下、キター!!!…って、糠喜びした。
そんな私のハートを傷つけないで。

ネタバレ推奨するわけじゃないが、楽しみを助長させるものだって研究結果が発表されたらしいぞ
ソースはYahoo!のニュース

どうでもいい

そもそもネタバレされてない

>>609はネタバレだろ

更新そろそろか?

マダー??

もう前回から1ヶ月だもんな

まさかとは思うけど禁書読み返したら止まらなくなったとか?

そろそろ正座待機が限界に近いぜぇ…自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中

お待たせしていて申し訳ない・・・
とりあえず今週末までには投下出来るよう頑張ります自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中

来たか
フラグメーカーの方も一応生存報告しといた方がよくないか?自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中

待ってるよ自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中

ご好意により知り合いの人に挿し絵を描いてもらい、
併せてスレに貼る許可ももらったので狂喜しつつ貼り付けさせていただきます
わーいわーい!


---

「……美少女だ……美少女がうちのベランダに干されてる……」
「ちょろっとー、聞こえてるー?」



---

「…………え、あ、いや。これは……ですね」
 ピピーッ! と鋭い笛の音が響き渡った。
 釣られて目を向けると、ごっつい体つきをした警察官がこちらに向かってくるのが目に入った。



---

――バギンッ!
「……なッ!?」
 上条の右手に弾かれ、乾いた音を立てて砕け散った。



---

「あー、もう見てらんね。永久にやってろバカップルが」
「!?!」



---

以上です!

――本編の方はもう少しお待ち下さい・・・ッ!

.自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中

>>626
おお、上手いもんどすなあ自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中

普通にラノベの挿絵みたいですね(褒め言葉として成立してるか微妙か)自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中

>>626
待ってますぜ!!
自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中

上手いなぁ
持つべきものは絵の上手い知り合い自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中

うおおお
うめええ自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中

なるほど。目の保養とはこういうことなのですねwwww自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中

日付が変わったらもう見れないの・・・?自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中

見れないお…自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中

せめてうpする日言ってくれないときついお…自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中

流れるの早かったか・・・
上げ直すとしてどこに上げるのが妥当かなぁ自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中

とりあえず次回投下後にもっかい貼ります
その後のことは改めて考えますー自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中

再うpしてもらえるのか?
ありがたや
続きともども楽しみにしてまっせ自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中

次回投下がわからない自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中

投下予告とかしておいたほうがいいですかね?
一応目処は立ったので今晩の日付変わる辺りに投下しようと思います
お待たせしてばかりで申し訳ありません・・・自治スレッドでローカルルール変更の話し合い中

舞ってるぜ

まじか!? 
総員!新約2巻のラストの挿絵を見ながら正座待機だwwww

ちょいと構成の都合上、行間と本編を間空けて投下したいので予定より先に投下致します。



「しかしまあ、超能力ってのは良く分からないけど凄いな」

「へ、なにが?」

「いや、その……」

 シェリーの家に泊まる事となった最初の夜、慣れぬ環境に中々眠れず起きていた美琴と上条は、薄暗い灯りに照らされたリビングに留まっていた。
 ちなみに家主の方は部屋で豪快ないびきをかいている模様。

「俺達魔術師ってのは、何をするにも準備、儀式、道具の用意に詠唱構築としち面倒くさいのにさ、超能力ってな一瞬でバチバチーってんだろ? なんつーか、瞬発力というかが違うなーっていうか」

「……言っとくけど、みんながみんな思った瞬間に火とか雷とか水とかバンバン出せるワケじゃないんだからね?」

「え? 違うの?」

 キョトンとした顔をする上条に、美琴は「んー」と宙を睨み考え込む。

「何から説明したものかねぇ……。まあ私の場合は予め雷撃の矢や槍を放つ演算を構築して用意してるっていうか……ルーチンとかマクロみたいなものなのよね」

「る、ルーチン……って何?」

「ちょっと専門用語過ぎたかしら……?
 例えば拳銃とか使う時、使う本人は引き金を引くだけで弾を撃てるわよね? でも実際に内部ではハンマーが弾丸の雷管を叩いて火薬に火を着けたり、薬きょうを銃身から弾き出したり、次の弾が自動的に装填されたりしているワケ」

「……お、おお。そんで?」

 正直上条は拳銃なんて物騒なものは使ったことはないので――それはもちろん美琴も同じ――正直ピンとは来なかった。が、漫画や本でおおまかに構造は知っているので、なんとなく理解できなくもない為、黙って続きを促す。

「私達能力者もそれと同じで、予め脳内の演算領域に電位差を構築する、それをまっすぐに打ち出す為の道筋を形成するとかの演算式が用意されていて、咄嗟の時にはそれの引き金を引くだけって感じね」

「な、なるほど……。目には見えないけど、インスタントで使えるような道具が用意されてるって事か」

「そういう事。魔術がどういうものかは良く分からないけど、そっちだって道具とか用意してたのを使って瞬間で放ったりとかは出来るんじゃないの?」

「言われて見れば、確かにそういうのはあるけど」

「なら、それと同じよ」

 上手く伝わった事に満足したのか、美琴がふわりと微笑む。なんだかんだでお喋り好きな女の子であり、説明好きでもある美琴にとって、上条の振った話題は正にベストチョイスだったのかもしれない。
 その証拠に、既に二人の間にさっきまでのぎこちない空気は無かった。

「――でも、同じ所ばかりじゃない、か」

「え?」

 その代わりに、少女の顔には僅かな陰が差し込み始めていた。



「そっちの話を詳しくは聞いてないから間違ってるかもだけど、魔術ってのは知識とか道具や下準備さえ正しい手順で行えば基本的に誰にでも使えるんでしょ? それに比べるとこっちはちょっと不便だし不公平かもね」

 説明しながら、美琴はどこか寂しそうな目で遠くを見つめた。何かの失敗を、思い起こし後悔するかのような色に、上条の胸に何か重いものがのしかかる。

「一人に与えられる能力は一種類だけだし、身に付いた瞬間に高レベル――強力な能力が最初から使える人もいるから、明確に才能の差が見えちゃうしね。
 ある程度努力や工夫で埋められる物はあるけど、それで伸びるかどうかも結局は元から持ってる才能なのかもしれないし……努力が才能の差を埋める、だなんて、ただの気休め……なのかな」

 伏せられたまつ毛をふるわせるように、美琴が呟く。彼女の見てきた過去に、彼女の感じる今に、何か思う所があるのかも知れないが、上条にはそれが何か分からない。
 その事に焦燥を覚えた上条は、気が付けば否定の言葉を挟んでいた。

「で、でもさ、魔術だって結局は似たようなもんだよ」

「……そうなの?」

「ああ。そうさ」

 きょとんとした顔で尋ねる美琴。その目にさっきまでの寂しさが薄れているのが見え、上条は内心安堵の息を吐く。



「そりゃあ手順や道具があればある程度は誰にでも使えるけど、なんだかんだで才能の差はついちまう。
 俺なんか落ちこぼれだっていつも馬鹿にされてるし、そんな俺の周りにも天才と呼ばれる魔術師はいやがるしな。
 中には俺より年下なのにある分野の魔術について他の追随を許さないくらい極めてる奴もいるし、ありとあらゆる魔術の知識を持ってそれらを完璧に使いこなすチビっ子もいる。更に言えば、生まれ付き持った体質で神の子の性質を宿した”聖人”なんてとんでもない才能を持ったヤツもいるんだぜ?」

「せ、聖人?」

「ああ、何でも世界に二十人程度しかいないらしくて、いずれも人間離れした身体能力と魔力を持っているんだそうだ。
 一度だけ、俺の知ってる聖人の本気って奴を見た事があるけど、動きが早過ぎて俺には何やってるんだか全然分からなかったな」

 聖人。

 生まれた時から神の子に似た身体的特徴・魔術的記号を持つ人間の事で、その事から神の力の一端をその身に宿す事を可能としている。
 その力は『聖痕』と呼ばれる神の子に似た箇所に魔力を込め、開放する事により発揮される。
 これは姿や役割が似ているものにはその性質や力が備わるという、偶像の理論によるもので、十字架や神の像を始めとしたレプリカにその神秘の力の一端が宿る事象と同じ物と言われている。


……などというややこしい理論は上条の苦手とする所で、もちろん説明なんて出来るわけもないのだが、その拙い説明を聞く美琴の顔に先ほどの陰は見られない。
 必死にその凄さを伝えようとする彼の努力は辛うじて報われたようだ。



「はあ……世界に二十人ねぇ……。二三〇万分の七に比べても果てしない数字よね、それ」

 目を丸くして驚く美琴に、上条は一瞬我が事でもないのに嬉しくなりかけ、すぐにそんな自分を恥ずかしく思った。
 天才魔術師が知り合いだったり、世界的にも稀有な聖人を見た事がある事が何の自慢になるというのか。

 上条の感じたそれは、たかが雑談程度の話では良くある勘違い自慢程度の事に過ぎず、何もそこまで恥ずかしく思う必要など無いのだが、それでも上条は何故かそんな自分が嫌で仕方なかった。
 それは上条の心の底に他人ではなく自分自身の力を目の前の少女に認めて欲しいという想いが、欲望があり、その事を自覚できていないが為の葛藤なのだが、他人どころか自分の心の機微にも疎い彼には分かる筈も無い事だ。

「どうしたの? いきなり黙っちゃって」

 気が付けば、美琴が心配そうに上条の顔を覗き込んでいた。
 慌てて表面を取り繕い、「なんでもないよ」と笑って首を振るも、美琴はなんだか納得していない様子で口を尖らせる。


「アンタさ、すぐ他人の事情にはクビ突っ込んで来る癖に、自分の事にはあんまし踏み込ませようとしないとか不公平じゃない?」

「え? そ、そうか?」

「自覚なし、ね。はぁ……まあ、いいけどね」

「?」

 何となく貶された気がして納得が行かなかったが、上条には具体的に何を非難されたのか良く分からないので反論できない。
 それでも何か文句を言い返したくて足りない頭を捻っていたが何も浮かばず、先に美琴が神妙な顔をして口を開いた。

「そんな事より、私としちゃ当面の問題をどうにかする方が先決ね」

 



「あ……そう、だな」

 美琴の態度にはっとして上条は気を引き締めて考え込む。

 今はこうして安寧に無駄話に興じる事も出来るが、美琴は未だ追われる身。今日は色々あって疲れているからともかく、明日からは今後の事も中長期的に検討せねばならない。

「あんまり先延ばしに出来る事でもないしな……」

「ええ」

 真剣な顔をして頷く美琴。
 当然ながら当事者である美琴は上条よりも危機意識は高く、明日どころか今この場で今後の方針を決めるべく、口を開いた。


「とりあえず――――当面の生活費と、必需品の確保が最重要課題ね」

「…………え、そっち?」


 思わず間抜けな声を上げる上条に、美琴はキッと鋭い視線を送りながら言った。

「何言ってんのよ、私にとっては死活問題なんだからね!」

「お、おお……悪い」

「とはいえ、アテがあるわけでも無いしなぁ……どうしたもんだか」

「……、……」

 腕を組み考え込む美琴の前で、上条は取り残されたかのような心境でそれを見守るのみ。

 とはいえ、何であれ美琴の力になってやりたいという思いを抱きつつある上条だったが、悲しいかな彼の身の上は所詮は魔術師見習いという胡散臭いモノ。
 そこらの貧乏学生にも劣る身分である。


(ここで、「お金の事なら心配するな、俺が全部面倒見てやる」とか言えりゃあカッコ付くのにな……はぁ、不幸だ……)

 そんな事を一人思いつつ肩を落とす上条少年だが、その言葉を現実に口にした時、それがどういう事態を引き起こすのかまでは想像の範疇外のようであった。


 

以上です。
本編は予定時間か、それより少し遅れ気味に投下されるかも



>俺達魔術師ってのは、何をするにも準備、儀式、道具の用意に詠唱構築としち面倒くさいのにさ、
なんだかんだ今の原作ってこういう初期の設定なくなってるよね
大半の魔術師は設定に忠実なのかもしれんがチートばかりが目立ってそれが魔術師の普通にされてる

画像たのむうう

クソ早く寝たいのに本編と画像が楽しみで寝られない

明日月曜日だというのに

が…画像を

眠いから画像だけ見て寝たいのに…

画像もいいけど、本編読みたい…

あの画像は待つ価値あると思う だがなるべくなら本編あわせて早めの投下をプリーズ!

本編と画像がみれなくて眠れない・・・

すいませぬ、推敲もしたいのでもうちょいとかかります
ので、先に画像だけ上げなおしますね
尚、申し訳ないですが他にうpろだ見つかりませんで、保管庫お借りしました


---

「……美少女だ……美少女がうちのベランダに干されてる……」
「ちょろっとー、聞こえてるー?」

http://loda.jp/index_index/?id=600


---

「…………え、あ、いや。これは……ですね」
 ピピーッ! と鋭い笛の音が響き渡った。
 釣られて目を向けると、ごっつい体つきをした警察官がこちらに向かってくるのが目に入った。

http://loda.jp/index_index/?id=601


---

――バギンッ!
「……なッ!?」
 上条の右手に弾かれ、乾いた音を立てて砕け散った。

http://loda.jp/index_index/?id=602


---

「あー、もう見てらんね。永久にやってろバカップルが」
「!?!」

http://loda.jp/index_index/?id=603

---

今度は消されない、と思う・・・

正直想像以上だった…ありがとう寝るよ

よし寝よう

あ、また頼むと伝えといて

朝一で本編読むために寝るわ

うっひょー!3枚目の上条さんの不敵な笑みと4枚目の美琴さんの照れ顔たまんねーッス!!

遅くなりすぎた……
お待たせいたしました、今より投下します


――――――――
――――
――


「始めはネットワーク内のノイズか何かだと思っていました、とミサカは告げます」

 御坂美琴を瓜二つの少女・検体番号一〇〇三二号は淡々とした口調で語る。

「ある日、アメリカにある関連施設へ預けられていた個体・一六四九九号のネットワークとの接続が不安定になり、間もなく切断されました。
 幸いにも同施設には他に五体ほど預けられていた為、その内の一人が様子を見に行く事となったのですが、見つかった一六四九九号は不可解な言動と行動を取り、こちらの呼びかけにも強い警戒を示していたのです、とミサカは当時の様子を伝えます」

 視界の端、窓際の壁に背を預けているのは屋敷の主である魔術師、シェリー。
 その視線は興味なさげに闇に沈んだ外へ向けられており、表情はうかがえない。

            シスターズ
 屋敷の外には他の妹達が待機している。
 警戒も、警備も必要な状況ではない筈だが、そうしていないと落ち着かないのだそうだ。

           シスターズ
「施設にいた五体の妹達により、一六四九九号を連携して取り押さえることに成功しました。
 しかし、状態を見る為、一六四九九号をネットワークへ強制接続させようとした所、不明な放電現象の後、一六四九九号は意識を失い、しばらくして目覚めた一六四九九号は何も覚えていませんでした。
 結局、その後詳細な検査を行うも原因は特定出来ず、慣れぬ環境でのストレスによる一時的な錯乱、とのひとまずの結論を出し、該当の個体については慎重に経過を見守る事となったのです、とミサカは最初の事件を説明し終えます」

 少女の説明は淀みなく、その声色から一切の感情を感じさせなかった。

「しかし、実際はそれで終わりではありませんでした。
 その後も同様の錯乱現象が世界中の妹達にて立て続けに発生し、私達はようやくそれで認識を改めることとなったのです」

 それは果たして、奥に秘めた感情を隠すのが上手いからなのか、それとも本当に何も感じていないのか。

 オリジナル
「御坂美琴の意識か、或いはそれに近い何かが、妹達の意識を乗っ取って現出している、と」

 上条には判別が付かなかった。


 だから、気が付けば疑問の声をあげていた。



「それで……お前らは御坂に何をしたんだよ」

 ピクリ、と一〇〇三二号の肩が震える。

「……質問の意図が分かりかねます、とミサカは貴方に問い返します」
                                                                            おまえたち
「御坂はな、自分の事を”一万人以上殺した殺人者”って言ってたんだぞ。幼い頃、騙されたとはいえ自分の犯した過ちが大勢の妹達を殺す原因となった事を悔やんで、実際に裏で糸を引いてた奴や、手を汚していた奴と同じ位、自分の浅はかさを憎んでさえいやがったんだ!
 それほどまでに妹達が死んで行く事を、それを止められなかった事を、悔やんで、心を痛めて、それでも強がって笑ってやがったんだ!
 それなのになんで! どうしてお前達は、そんなアイツを追い詰めるような事しか出来ないんだよ!」

「み、ミサカは……!」

「たとえDNAを提供した側と、そのクローンってだけの関係だとしても、御坂はお前達の為に体張って頑張ったじゃねぇか! お前達の為に心を痛めたじゃねぇか!
 御坂は自分の為だって言ってたけど、それでもお前達を一人の人間として扱って、見捨てる事も出来なくて、自らの命を投げ出しても構わないって思うほど、妹として見てくれたじゃねぇか!
 お前達はその事に少しは感じる所は無いのかよ! なんでアイツの事を思ってやれないんだよ!」


「……ッ! いい加減にしてください!」



 感情の無い人形のようだった一〇〇三二号が、その目を吊り上げ激昂している。

「私がお姉様に、何も感じていないと! お姉様を追いまわす事に心を痛めて居ないなどと、決め付けないで下さい!
 私達だって、お姉様を助けたかったんです! 救いたかったんです! その為に八方手を尽くし、お世話になった人に頭を下げ協力してもらい、本当は頼りたくなかった最強の超能力者にまで……!」

 肩を震わせ、膝に置いた両手を白くなるほど握り締める少女。


 そんな少女を見て、シェリーはフン、と鼻を鳴らす。それに込められたのは呆れか、それとも感心か。

 しかし、上条はそんな少女を見て、深く息を吐いた。


「…………ふざけんなよ」


 それに込められたのは、呆れでも、感心でも、憐憫でもなく。


 憤り、だった。



「それならなんで、御坂はあんなにボロボロだったんだよ?」

「……、そ、れは……」

 一〇〇三二号の肩が震え、色の無い表情に陰が差す。

「確か、御坂が手加減していたのには気付いてたよな。御坂がお前らを傷付ける気が無いことには気付いてたんだよな。
 ならなんでお前らは御坂を傷付けたんだよ! なんでアイツの気持ちに気付いておいて、それに応えてやる事が出来ないんだよ!
 姉が妹を想って、妹が姉を想うなら、まず傷付けるより先に出来る事があるだろうが!
 苦しんでるアイツに声を掛けてやる事が、手を差し伸べてやる事が、肩を貸してやる事くらい出来るだろう!」

「ミサカは……ッ!」

 ぎゅっ、とサマーセーターの胸の辺りを掴んで、少女は声を上げる。

「ミサカは……ミサカだって、お姉様を助けたかった……!」

 それは、まるで慟哭のようで。それは、まるで悲鳴のようで。
                                                           わたしたち    お姉様
「でも、何をやっても……どんな検査や調査をしても、どんな資料やデータベースを見ても…… 妹 達 に宿る そ れ が、何者なのか、何が起こっているのか、解明する事が出来なかった……!」

 少女は胸を掴むその手を白くなるほどに握り締め、

「そんな無力な私達に、お姉様は毎回優しく微笑みながら、でも壊れそうな笑顔で、慰めるように言うんです……」

 ぼろぼろに掠れた声を絞り出し、


「”ありがとう”、って……!!」


 自らの罪を、懺悔するかのようにうなだれた。




 



「……、……」

 沈黙する上条の前で、少女は肩をふるわせ続けた。

 後悔と、悲しみに震える少女を見ながら、しかし上条は安堵した。


 少女が、美琴の事で、こんなにも感情を乱した。
 少女の精神は幼く、未熟で、学習装置で最低限の知識と経験を学習したのみの、生まれたばかりの子供同然と言ってもいい。
 そんな妹達が、御坂美琴の妹が。

 心から姉の事を想い、全身を震わせ声を荒げるほどの強い衝動で姉への叫びを上げたのだ。

「――――なんだ、俺が心配するまでも無いじゃねぇか」

 上条は、へらりと穏やかに微笑む。

「お前らは、御坂と、妹達は、疑いようも無く、完璧に、最高の――――姉妹じゃないか」


 ただそれが、それだけの事が、無性に嬉しい。そう、思えたから。

                                       いもうと
 美琴の、強くて、弱くて、何より優しい姉の想いは、しっかりと大切な存在に、伝わっていたのだから。



「し、まい……? 私達と、お姉様が、ですか? と、ミサカは疑問を口にします」

 一〇〇三二号の言葉に、上条は微笑みながら頷いた。

「互いの事を想い、お互いがお互いの為に自分の出来る事をしようとする。それが出来るお前たちが姉妹じゃないなら、なんだってんだよ」

 上条のきっぱりとした断言に、一〇〇三二号が目に見えて動揺する。

「し、しかしミサカ達は実際はお姉様の妹などではなく、DNAマップを使用したクローン体であり……」

「そんなの関係ねぇよ」

「……え?」

 戸惑う一〇〇三二号を気遣うように、上条は再び頷いてみせる。

                    ・ ・ ・
「お前たちは御坂の事を慕い、お姉様と呼んでるじゃねぇか。御坂はお前達がそう呼ぶ事を受け入れ、妹としてお前達の事を大切に想ってるじゃねぇか。それ以上なにを望むっていうんだよ?」

「……ッ、……」

「だからさ、お前達は、そんなヒネくれたやり方じゃなく、そのまま素直に伝えればいいんだよ。御坂を、大切な姉を助けたい、救いたいって。
 それで力及ばないからって、恨んだり、憎んだりするような、そんな小さな姉じゃないだろ、御坂は」

「……、お、姉様……」

 それでも逡巡する少女に、上条は苦笑する。
 やはり、見た目大人びていて、落ち着いているように見えても、彼女達はまだ感情が未成熟な子供なのだ。
 自らの揺れ動く感情に、そう簡単には折り合いが付けられないのだろう。
 そしてそれはいずれ時が経てば、様々な経験を経れば、自ずと気付き、分かる事なのだ。
 だから、今はそれでいい、と上条は笑いながら戸惑う少女を優しく見守った。

 そんな上条の優しげな視線に、一〇〇三二号の心は余計に乱され、混乱を助長しているのだが、それに気付いているものはこの場には誰も――――いや、少し離れた場所で二人を、呆れた視線で眺めている女が一人だけいた。


「……ったく、またかこの野郎は」



 その視線の主、シェリーはボリボリと頭を掻くと、不機嫌そうに声を放つ。

「新たなフラグを建てるのはその辺にして、上条よぉ」

「は? フラグ?」

 上条の自覚のない発言にツッコミを入れるのも面倒だとシェリーはそれを無視する。

                         ヒロイン
「おう、そこの唐変木。どうやら、お前の待ち人が逆に待ちくたびれてるようだぜ」


 シェリーの言葉は全くもってわけが分からず、上条は当然何一つ理解できなかった。
 だから、聞き返そうと、口を開きかけ、そして。


 その声を紡ぐ直前――――凄まじい轟音が響き、窓から強烈な蒼白い光が差し込み、部屋全体を包み込んだ。



 





 塗り潰された視界の中、誰かの叫ぶ声がする。
 しかし轟音で失われた聴覚には、空気が震えていることは知覚出来ても、その内容までは判別できない。

 ただ、部屋の中に慌しく誰かが駆け込んできた気配は感じる。
 先ほどの轟音と閃光からも、何か異常な事態が起きている事は確かだった。


 ふと、目の前に黒っぽい人影が立ち塞がっている事に気付く。
 その堂々たる存在感から、上条はそれがシェリーである事が分かった。
 そして、その人影が思い切り振りかぶって、力いっぱいの拳を叩き付けようとして来ている事も――

「――――って、え?」

 次の瞬間、全力全開でぶん殴られた上条は、もんどりうってソファやら机やらを巻き込みながらゴロゴロと部屋を転がり、思い切り壁に頭をぶつけて止まった。
 ずりずりと壁からずり落ちる途中で正気を取り戻した上条は、がばっ、と立ち上がると顔を真っ赤にして抗議する。


「いきなり何すんだアンタは! 今の流れ、どの辺に俺を殴る必要があったんだよ!?」

「必要なら、無い」

「堂々と胸張って言えばなんでも通ると思うなよ!? 大体いつもアンタは俺に対する暴力にいちいち容赦が無さ過ぎますよね!? 何がどう気に食わなかったかは知らないけど、自分の家の家具を滅茶苦茶にするのをいとわないほどの威力で殴るのは流石にやり過ぎだと上条さんは思うのですがっ!!」

「あー、うん。悪かった悪かった。ごめんよ」

「ぐぬ……ッ!」

 上条の必死の訴えも、シェリーは耳クソをほじりながら適当に流すと言った始末だ。これでは流石の上条もやり切れず地団太を踏みたくもなる。

「まあそれはともかく、目も耳も正常に戻ったろ?」

「え? あ、そ、そういえば……」

 そこまで来て、シェリーが殴る際に簡単な回復魔術(というよりは、網膜に焼き付いた残像をリセットし、鼓膜を無理矢理ほぐすような強引な手法だが)をかけていた事に気付く。
 が、それならなんで全力で殴らなくてはいけないのかとの疑問が浮かぶが、その回答は間違いなく”なんとなく殴りたかったから”だろうと予想がついたので、上条はそれ以上何も言わない事にした。


 



「で、結局何があったんですか? 今の轟音と光は何か関係が?」

 否応にも気が焦る上条はシェリーに回答を迫るも、それをやんわりと手で制し、シェリーは視線を横へと投げかけた。
 その視線で示す方向に目を動かすと、そこには妹達―― 一〇〇三二号ではなく、外で警戒に当たっていた個体 ――が、微かな焦りの表情と共に控えていた。

「……外で何か、見たのか?」

 上条の言葉に、少女は頷いて答える。

「それまでは穏やかに、薄雲がゆっくりと流れる暗い夜空でした。が……」

 妹達の薄い表情に、僅かな戸惑いと焦燥が浮かびあがった。

「凄まじい轟音と共に、上空に大量の光が溢れ出しました。幸いにも妹達は全員ゴーグルを装着していましたし、この手の事態に際しての対処法が身についており、耳を塞いで轟音にも耐える事に成功しました、とミサカは学習装置の効果を報告します」

「妹達全員がかよ。凄いな……」

 思わず感嘆の声を漏らすが、妹達は聞こえなかったのか意味が理解できなかったのか、小首をかしげるのみでその発言を流した。

「轟音と閃光を凌いだ私達は、直ちに事態の把握に努めました。今も手分けして状況を調査、随時報告と精査を行い、現在の状況を捕捉し続けています、とミサカは伝えます」

 話しながらも妹達は通信を行っているのか、チラチラと視線が外や斜め上に動き続けている。

「……推測ではありますが、現状最も考えうる結論を述べますと――」

 少女が、若干強張らせた表情で、一瞬言葉を詰まらせる。

 そして、躊躇いがちに告げた。


「――――お姉様が……お姉様の意識体と思われる現象が再びここロンドン市内で発現いたしました。

 場所は――――上空約六~七〇〇〇メートル付近、です」


「……ッ!!?」


 上条の思考が、全身がざわめき、硬直した。



「……お姉様は」

 黙りこんだ妹達に代わり、一〇〇三二号が口を開いた。

「お姉様の顕現は、一定の期間を経過するか、脳波に何らかの刺激を加えると霧散し、終了します、とミサカは説明します」

 ゆっくりと、装置が再起動するかのように回り出す上条の思考の傍ら、一〇〇三二号が淡々と語る。

「一度消失したお姉様は、しばらくの間世界中どこにも現れず、また感じ取ることは出来ません。また、顕現したお姉様は、前回顕現時の記憶の一切を失い、はっきりと持っているのは一〇〇三二次実験の日、一方通行に立ち向かった時までの記憶のみ、です」

 その冷静な口調が、上条の思考を解きほぐすように染み入り、上条の思考はやがて正常に回り始める。

「そして再びお姉様が現れるのは、長い時で2週間程度。短い時でも3日程。対して今回の再現出までの時間は、たったの二時間三十九分です、とミサカは現状の異常性を示します」

 一〇〇三二号の言葉を、その意味を飲み込み、現状を把握する。

「しかも……今回、お姉様は妹達の誰かの体を借りての顕現ではなく、意識体のみが上空に浮かび上がっている状態です、とミサカは状況を信じられないながらも、ありのままを報告します」

 上条には状況をはっきりと理解など出来ない。何が起こっているのか。何故起こっているのか。そんなものは一切理解できない。

 だが。

「要するに、だ」


 上条にはそんな些細なことは関係無かった。


 



「御坂がそこに、いるんだろう?」

 上条には分かっていた。

「そこに行けば御坂に、会えるんだろ?」

 現在の状況が不明でも、上条の目的ははっきりしている。

「なら、俺がすることはただ一つ」

 そして、その目的は、今そこに、見える位置にあるのだ。


「――――御坂を、御坂美琴を救う。……それだけだ」

 ならば、後は右手を握り締め、その足を前に踏み出すのみ。



 そう、それが――――上条当麻なのだから。



 

以上です。
説教、フラグ建築、と上条さん要素満載?な感じでやってみましたが・・・どうだったでしょう?
いよいよクライマックス?って所まで来たと思いますがはてさて、無事終われるやら

また、次回更新の目処が立った頃にご報告に参ります
毎度お待たせしてしまい本当に申し訳ない、精進します・・・!

>>1
次の展開がめっちゃ気になる

挿し絵師さんがpixivへ挿し絵をうp&このスレへのURL掲載許可を頂いたので貼るお!

ttp://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=21552886


pixivなんで見れない方はすいませぬ・・・!

乙です。
話が急展開ですな。続きが楽しみです。

乙乙
また気になる引きだ

中々先が読めない展開でいいな

ちょっと現状よくわかんない
元々上条と一緒に居た御坂はなんだったの?妹達の誰かの肉体で意識だけが出たやつ?
御坂本人はもう死んでて意識だけがどっかに出てくるだけなの?

>>681
御坂の生死云々はともかくその解釈で問題ないんじゃないかな
つかその質問に答えたらネタバレになっちゃうでしょ
一応ハッピーエンドにはするって>>595で言ってるんだしおとなしく続きを待つべし

>>681 前半の疑問には>>13>>309を読み返すといいかも

ぼくたちは、なかよく>>1乙してるよ 
                        ∧_∧
                   ===,=(´・ω・ ) >>1

                   ||___|_゚し-J゚||_

                ∧_∧/ //.___|^∧_∧
           >>1乙 (´・ω・ ) /||    |口|(´・ω・ ) >>1
                ./(^(^//|| ||    |口|⊂ _)      
  >>1乙      ∧_∧ /./  || ||    |口| ||    ∧_∧    
   ∧_∧     (´・ω・ ).>>1乙..|| ||    |口| ||  (´・ω・ ) >>1乙  
  (´・ω・ )  /(^(^/./     || ||    |口| ||    ゚し-J゚
 "" ゚し-J゚:::'' |/  |/ '' " :: ":::::⌒  :: ⌒⌒⌒ :: ""  `
 :: ,, ::::: ,, " ̄ ̄  "、 :::: " ,, , :::   " :: " ::::




ああ、今更気づいたけどジブリールの……

ふむ・・・胸が無いからこそ、引っかかり続けても痛くないんだな。
ん?誰か、窓を叩いてるn  ぎゃーーーーーーーーーーーー

こんばんは、どうにか今週中には次回投下出来そうです
具体的には金曜の夜辺り、かと
出来るだけ終わりまでのピッチを上げていこうと思いますんでヨロシクお願いします!



>>685
         /:::::::ヽ /
__   _,-/:::::::::::Y

|:ヽ二=--:::::,-ー----、_ヽ   い  そ
|:::::,--' ̄ヽ ̄        >
|::-~~     ヽ        /    け  れ
ヽ        .|        /
. ヽ  _,..---ー' ̄ヾl、::::::::::::...    な  以
 ヽ/:::(        " ` `ヾヾ:ゝ
  }::::::::::〉  __,,,_   ___ ヽ    い  上
/~-、::::/_____' _____  /___`_〉、
ヾ/;>~`ー-、_f/-'エp`l)=/'l. pヽ h \

ヽ〈(.     ヽヽ、___// .|、二_//   `-、  __
 ヽへ.     `ー--" 〈---/~     ∨
  `-,、       、__  〉 ./
    |ヽ      ,...__二  /
    |ヽ     ./==、-l /
   ,-| \    ~ー---' /
  /ヾ、  丶   ~~~` ./

 _/  \  ~ヽ___,-/、

/ |\  ~\__   ノ  |/ヽ_
  |  \   __>-ー'~~ ヽヽ`-、


>>686
引っ掛かってるのは胸の部分ではなく御坂さんのステキなくびれ部分です
腹筋も割れるほど鍛えてるので痛くもないのです


ところで、予想レス大歓迎派の自分としてはその手のレスにはなるたけ反応しないようにしたい所なのですが、
>>683で書かれているレスを読み返すと何が分かるのか非常に気になって仕方ないのです・・・
書いてるの俺なのになんでだ・・・

おそらくどちらのシーンも美琴に触れるときは左手だったってことを言いたかったんじゃないか?

それはそれとして続き待ってるぜ

なるほど、美琴は素敵な胸筋をお持ちなのですねwwww

続きを全力で待ってます!!

>>683の者です 
 >>688さんのおっしゃるとおり、あえて左と記述されていたので>>1が注意深く書かれたのかな、と。憶測で>>1まで惑わせてしまってごめんなさいorz  続き、楽しみにお待ちしてます。

>>688>>690
あ、はい。左手は意図してやりました!
なんか>>683を深読みし過ぎて勘違いしてたのは自分の方ですすいません・・・!

それはともかく、そろそろ投下します
よろしくお願いします



――――――――
――――
――


 ゆっくりと、傷口に触れていた手を離す。
 霞がかかっていたかのような少女の目が、やがて焦点を結んでいくのが見えた。

「……う、ぁ……?」

「よォ。気分はどうだ、眠り姫さンよォ……?」

 そんな少女に笑いかけてやると、未だはっきりとしない意識のまま、少女――御坂美琴は、ぼんやりとこちらへ目を向ける。

「……、……ッ!」

 途端に表情を歪め、身を起こそうとして――何かに気付いた。

「……え? 何、これ……」

「……ク、ハハ……ッ!」

 その姿に思わず笑いを漏らすと、少女の目が鋭くつり上がりこちらを睨みつけてきた。

「どういう……つもり、……ッ!」

「さァなァ……」

 聞かれて答える義理もないし、そもそもコイツは既に気付いているのだろう。
 それさえ分かれば事足りる。

「……答えな、さいよ……。アンタ、なんでこんな、事……!」

「ククッ、そンくらい自分で考えろよ、三下ァ……!」

「……、ま、さか……!」

 這いつくばったままにも関わらず、こちらの肌がざわめくような怒気を放ってくる少女。
 その疑問に視線を動かし目的を示すと、少女の表情が強張った。



 視線の先、そこにはしゃがみこんだまま不思議そうな目でこちらを見ているもう一人の少女が居る。
 足元に転がされたままの少女と、その顔は瓜二つ。

「あ、ぁ……」

 あまりの激情に、震えて、声もまともに出せず、少女は起き上がろうと身をよじる。

 しかし、無駄だ。

 先ほど能力で、彼女――――御坂美琴の止血を行った際、同時に首から下の運動中枢も麻痺させておいてある。
 彼女の能力を駆使すればそれも長くは続くまいが、その間に自分の目的は充分に果たせるだろう。

「あ、ぁあ……、あ…・・・」

 そう、このクソくだらない実験を止める為に――――この最悪の化物を止めるのではなく――――自らの価値を貶める事で、シミュレート結果を狂わせようだなんて回りくどい、甘えた考えを持ちやがった、夢見る悲劇のヒロインに、思い知らせてやるのだ。


「あぁ、あああ、ぁ……あぁ……」

      ゆめ
 そんな幻想は、簡単に、ぶち殺される程度の代物だという事に。


「――――アクセラ、レェタァァァァァァァッ!!!!!!」




.



「ハハッ、どうしたァ! うねうねと無様に這いずり回りやがって、今更そんなソソる誘い方したってちっとも勃たねェンだよ三下がァッ!!」

「ふ、ざけんじゃ、ないわよ……ッ!」

 懸命に追いすがろうとするも、自由の利かない、しかも片腕の欠けた体ではそれが叶う筈も無い。
 それでも必死に力の入らない体を震わせ、必死の形相で抗う少女の姿に、僅かに溜飲が下がるのを感じる――が。

「だが残念、既に先約が入ってるンでお姉様にはそこでご待機願います、ってなァ……。なァに安心しろよ、妹さンの次は、お前の番だからよォ!」
                                 デク人形
 ジャリ、と殊更に足音を響かせつつ、出来損ないのクローンへと歩み寄る。

「や、めろ……その子、に……手を、出すな……!」

「あァ? 聞こえないですよ第三位さァン? クハッ、悔しければ止めてみろよ? 回りくどい手ェ使って実験をじゃなくって、実際にお前のクローンを蟻みてェにプチプチプチプチ潰してる、この俺自身をよォ!!」

「……くっ、……!」

「ハッ、いいねいいねェその顔! 怒りと悔しさにまみれてて滅茶苦茶そそるぜェ! クハハハハハッ!!」

 下らない、と。心底そう思った。
 この実験も、それに拘泥する奴らも、翻弄される奴らも――何より下らないと思ってる癖に自分で止まる事も出来ず、惰性でこの手を血に染め続ける自分自身も。

 下らない、と。そう思う自分に気付く事も思えば久々かもしれない。
 昨日までの自分ならそんな感傷一つ覚える事無く、ただ与えられた餌に無心で喰らい付く実験道具に過ぎなかった筈だ。

 下らない、と。そんな思いと苛立ちが引き出されたのは何故だ。
 チラリと振り返れば必死にもがき続ける哀れな少女が居て、そして――――


(ああ、そうだ。
 こいつが全ての元凶なンじゃねェか……)

 そう、頬を吊り上げ、少女に嗤ってみせる。


―――― そんな自分勝手な想いを、自分自身が一番下らないと感じている筈なのに。



 思考がドス黒く濁り、染まっていく。
 頭が冷え切ると、冷静になるどころか、思考が凍り付きまともに働かない事もあるのだと知った。

 クズは所詮、どこまで行ってもクズで。
 底の無い奈落へ堕ち続けてついた加速は、ちょっとやそっとじゃ止まるどころか緩める事も出来やしない。

 オリジナル                    クソッタレ                       モルモット        みぎて
 御坂美琴の上げる悲鳴と絶叫をBGMに、一方通行はその手を振り上げ、震える哀れな一〇〇三二号を前に、死神の鎌を振り上げる。

「最期に何か面白いことでも、言ってみろよ……デク人形」

 気まぐれに、そんな言葉を掛けてみた。
 特に意味など無い。ただ、このままあっさりと殺すのもつまらないと、そう思っただけだ。
 出来るだけ苦しめて殺すのも悪く無いが、感情の薄いこいつらはどんなに残虐に、執拗に痛めつけようと大した反応はせず、逆に苛立つだけの事が多い。
 もっとも、その様子を見て元気に反応してくれるであろう人物がその場にはいるが、そこまでしなくとも充分にそいつは絶望し、狂った叫びを上げてくれることだろう。


「……、……」

 予想通りというかなんと言うか、クローンの少女は何の言葉も発することは無くただ目を見開いてこちらを見ていた。
 まだ意識は朦朧としているのか、その視線は虚ろで、正面に居る一方通行ではなく、何もないその向こうをぼんやりと眺めているようだった。

「……チッ、お前になンか期待するのがそもそも間違――――」


 その時、一方通行は自分の認識が誤っている事に気付く。       ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・  ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
 一〇〇三二号は、何もない向こうを眺めていたのではなく―――― そこに現出している何かを、凝視していたのだ、と。



.









 一方通行の背後で轟音が鳴り響いた。







.




「オイ、オイオイオイ……こりゃァ、なンの冗談だァ……?」

 振り返ると、視界いっぱいに紫電の柱が広がっていた。
 天にまで届くそれは、天から差す光の道のようであり、神の宿る樹木のようでもあり、御坂美琴の頭から生えた角のようでもある。

 目を灼かんとばかりに強烈な光を放つそれは、神々しく、また禍々しく――――


「なンだよ、これじゃァまるで……」


 化け物みたいだ、と呟こうとして躊躇う。
 否、化け物は彼自身だ。これはそれとは違う何かだ。

 人間じゃない、という点においては同じかもしれない。
 けど、それ以上に何かがおかしく、何かが違う。



.



 聳え立つ白光の真っ只中、目を閉じたままの少女の表情はほとんど窺えないが――――彼には、うっすらと慈愛の笑みを浮かべているように見えた。
 その笑みからは、その穏やかなものに違いないのに、一方通行は背筋に薄ら寒いものさえ感じる。
 その姿、そして、そこから押し寄せるモノ、見るだけで足元の地面がビリビリと震えるような威圧感。


「……、……クソッ!」


 そう、あの一方通行が、震えているのだ。
 何に? 目の前のモノに。
 どうして? それが分かれば苦労はしない。

 ただ、一方通行は感じていた。
 その目の前のモノが、どんなモノなのか。何より、それが自分にとってどういう意味を為すものなのかを。


「まさか、なァ……。だとしたら、こいつァとンだ皮肉だぜェ……」


 垂れて来た汗を拭い、一方通行がひとりごちる。
 あの学園都市最強が、超能力者第一位が、冷や汗をかくと言うのは、異常事態だろう。
 だが、それも無理もない。最強は、今自分を上回る存在を目にしていると、理解しているのだから。



     ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・  ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
 そう、神ならぬ身にして神の力を得た存在と、彼は今対峙しているのだ。




.



――――――――
――――
――


 目が覚めたのは、近付く気配があったからか、それとも今見た夢のせいか。

 闇の中、うっすらと目を開けると、埃だらけの床が窓から差す光に照らされていた。

 すえたような臭い、濡れた空気、じっとりと肌に張り付くシャツ。
 それら全てに苛立ちを感じつつ身を起こすと、壊れかけのボロベッドが甲高い音を立てて軋んだ。

「……、チッ」

 最悪の目覚めと言ってもいいほどの最悪の目覚めだが、今はそんな事に構っていられる状態じゃないことはなんとなく分かった。
 夢で見たのと同じ顔の少女が、その乏しい表情を強張らせ、息が切れるのも厭わず駆け込んできたのだから。

「……一方、通行……!」

「……、……」

 あくびを噛み殺し、彼女の息が整うのを待つ。闇の中ベッドの横を探り、愛用の杖を引き寄せると、ようやく少女が口を開いた。


「お姉様が、お姉様のAIM拡散力場が、再び収束しつつあります、とミサカは現状を報告します」

 その言葉に、意図せず眉がピクリと動いた。



「…………随分と早ェな」

「確かに……、その通りです」

 思わず漏れ出た呟きに、少女も同意とばかりに頷く。

「しかし、この感じは間違いなくお姉様の物です。ミサカには……ミサカ達には、それが確信できます、とミサカは自分達の主張を提示します」

「あァ、別に疑ってるわけじゃねェが……」

 がりがりと頭をかきむしり、杖の力を借りて起き上がる。途端、ぐらりとバランスを崩しかけ、壁に手をつき体を支えた。

(……チッ、昨日のダメージが残ってやがる。流石にモロに喰らい過ぎたか……)

 壁についた手を離し、そっと頬に触れると、若干の痺れと小さな針に刺されたような痛みが走り、思わず顔をしかめる。
 ふと視線を戻すと、目の前の少女がじっとこちらの顔を眺めているのと目が合った。

「大丈夫ですか、一方通行? と、ミサカは確認を取ります」

「……大した事ねェ。ちょっとした寝起きの立ちくらみだ」

「やはり、あの上条という少年との戦闘で負った傷が、まだ癒えていないのですね、とミサカはその言葉をスルーして指摘します」

「……、……」

 感情のない木偶人形だったクローン体達は、最近どうも妙な方向に成長を遂げているような気がする。
 若干の頭痛を覚えつつも、それを噛み殺し、少女へと言葉を返した。



「だから、大した事ねェよ。心配せずとも最低限の仕事をこなす事くらい、朝飯前だ」

「……そうですか、ならば何も言いません、とミサカは聞き分け良く口を紡ぎます」

「フン……」

 カツン、と杖を突き、ゆっくりと一歩を踏み出す。
 先ほどふらついたのが嘘のように安定した足取りに、数歩後ろをゆっくりとついてくる少女が口を開く。

「それにしても、既に治りかけているとはいえ、そこまでの痣を作る殴打を受けながら、良く勝利出来ましたね、とミサカは疑問を口にします」

「……、……」

「良く勝利出来ましたね、とミサカは疑問を口にし直します」

 余計な事にしつこく食いついてくる個体だ。
 このまま無視し続けたらどうなるのか、ふと興味が湧いたが。

「良く勝利出来ましたね、とミサカは再三疑問を口にします」

「……うぜェ」

 とてもじゃないけどその前にこっちのイライラが我慢できないレベルまで高まるのが予想できたので、仕方なくそれを断念する。



「……ちょっと前の俺だったら、ブッ飛ばされた事を理解する事もなく、無様に路地裏でおねンねしてた……だろうな」

 返答があった事が意外だったのか、少し面食らったような様子で立ち止まる少女。
 なら最初から聞くな、と言いかけた所で少女が口を開いた。

「……つまり、その時の貴方と今の貴方は違う、と?」

「ま、なンつーか、な」

 足を止め、窓から外を眺めると、いつの間にやら上空には鼠色の重苦しい雲が広がっていた。

「三回目ともなりゃァ、いい加減慣れるってなもンなンだよ」

 その奥に、懐かしい気配を感じ取り、じっとそれを眺める。


「――――格下に不覚を取るなンて無様な体験に……、な」





 カッ! と視界が真っ白に染まるほどの閃光がロンドンの空に広がった。





.





 その光を浴びながら、彼はその笑みを深くする。


 学園都市第一位の価値を一瞬で突き落としたその時と、全く同じ光景が目の前に現れたのを知覚しながら。


 一方通行は、湧き上がる昂揚感にその身を委ねる。


 そう、寝ても覚めても脳裏にこびり付いて離れず、夢にまで見る。

 それゆえ彼が焦がれて止まなかったその光景が、今目の前に広がっているのだから――――









.

以上、一方さんサイド
色々な意味で厨二病乙、な感じでした
そろそろ自分勝手な設定に皆が愛想つかすころだと思う


次回もなるべく早いうちに!

乙でした!

つぎも楽しみに待ってます!

おおっ、これは思っていた以上のハッピーエンドが待っていそう。ワクドキします。 乙でした!

乙なんだよ!!
大丈夫だ!自分は >>1 のこと好きだぜぃ(笑)
次も楽しみにまってるぞ!!

乙です
続きを待ってます

乙!!
まさか美琴がlevel6だと!?

乙!
美琴が殺されてなかったことが嬉しすぎる

そんなことより、魔神インデックスさんの出番はまだですか?

まっさきにフィアンマに攫われそうだな。ここの美琴は

乙!
美琴がレベル6かー
そういうことだったのか。
続き、楽しみにしてますね

なるほど、これがペンデックスにあたるのか

するとシェリーは小萌せんせいポジだったのか

もしかして一方通行がチョーカー付きになったのはLevel6の美琴にやられたから…?


ペンデックスよりヤバイと思うのは自分だけだろうか。神と同じ力だろ?

>>717
俺もそう思ったが、三回目の不覚って言ってるし二回目は天井じゃね?

1回目 第三位でLevel6できちゃった→実験中止
2回目 天井ウイルス→チョーカー付きに
ってことなのか?

理解力が乏しいのでよくわかんないけど
一回目が美琴で二回目は……上条?

>>720
直前のレスくらい嫁
あとageんな

wktk

>>722

sageはそこじゃなくてメール欄

禁書が映画化するらしいぞ!!

待ってます

とりあえずあげ

>>1でもないのにageるな

>>726

君には残念だよ。てか死ね

>>1はローソンフェアで美琴のパジャマ当てるための準備で忙しいのか!?

とりあえず…待ってますww

すまない

まだかなー

まーつーわ

いつまでーもまーつーわ

たとえあなたが

ホモ

サピエンス

もどき

にふり向いてくれなくても~♪

早く来てくれー

美琴「これが私の力よ!私の嘆きだ!」

元ネタわかる人いるかな。てか>>1来てー

美琴「其の嘆きこそ我の糧也」

何か思いついた

まだか?

俺は>>1に飢えていますwwww

というわけでマダー??

もうそろそろ2ヶ月か……

>>1よ!新約三巻の表紙にニヤニヤする気持ちはわかるが来てほしいんだよwwww

まだなのか…
落ちる前になんとか…

気が付けば2ヶ月経過……本当に申し訳ない
今週か来週には投下します

フラグの方も落ちる前に一回書いた方がいいぞ

>>748
そちらも近いうちに投下しようと思います

生存報告だけでもありがたいwwww
>>1が無事でよかった!!

おお来てたか

「彼が焦がれて止まなかった」

意味は沢山ある。 さて、どれかな

お待たせしております
何事も問題なければ11/27または28の夜にこのお話のラストエピソードを投下開始する予定です
ただ、ちょっと綿密に手直ししたい所なので2~3回に分けて投下しようと思っております
それではまた

マジかとうとう最後なのか
待ってる

待ってます

今日あたりか?

色々と手直しが上手く行かず1時くらいになりそうです
平日だし明日がある方、無理せずお休みになられた方が良いかもですよ・・・


――――――――
――――
――



「――――始まった、か」


 眩いほどの閃光に顔をしかめつつ、赤髪の魔術師は吸殻を踏み消した。
 綺麗に清掃された舗装路を汚すその行為は見咎められれば注意の一つも受けそうだが、その路地には彼以外の人影はおろか、生物の気配さえしない。


「全ての仕掛けは予定通り。役者どもの配置は、ほぼ想定の範囲内――――」


 続けて取り出した煙草に、指先から出した炎で火を灯す。
 暗がりに赤く浮かび上がるその顔に表情は無く、興味の無い歌劇を見せられているかのようだ。

                    アドリブ
「後の展開は――――全てが、台本なし。……全く、」


 最初のひと吸いを肺の奥まで飲み込み、紫煙を吐き出した。
 心底美味そうに――しかし心底気に食わないかのように、男はただ煙草をふかす。


「……あの腹黒女狐め」



 川に面した堤防の上の広い道。その道に突き当たる中でも一際暗い路地の奥。
 まるで眩い雷光から隠れるように、その男はその身を影に隠していた。声色も囁くようで、そこから感情を読み解くことは困難。
 ただ、ゆっくりと、味わうように煙をくゆらせるその仕草に、感情の揺らぎが垣間見えるのみ。


――――カツン。


 乾いた音が狭い路地を挟む壁に反響し、魔術師は顔を上げる。
 暗がりの奥、うっすらと、しかし凄絶なまでの存在感を放つ、白がいた。

「……、……」

 魔術師と白い少年との視線が交錯する。
 それはほんの数秒の事のようで、永遠のようでもある刹那。


――――カツン。


 白が視線を逸らし、再び歩み出す。
 まるで、最初からその路地に佇む長身の男など居なかったかのように、その存在を完全に無視してただ通り過ぎる。

 魔術師も視線を再び落とし、紫煙を燻らせる。
 まるで、自分以外誰もその路地に踏み込むものなど居なかったかのように、通り過ぎる少年を見る事もなく佇む。


 乾いた音が路地を通り過ぎ、遠ざかっていくのを待ってか、魔術師はその顔を上げ、天を仰いだ。

 真っ暗な筈の空に立ち昇る蒼白い雷光が、分厚い雲を灰白く浮かび上がらせている。
 手をかざし、光を遮りながら眉をしかめた魔術師はその唇の端に笑みを浮かべた。



「――――はてさて」


 つり上がる男の口の端から、紫煙がこぼれる。
 視線を落とし、魔術師はその路地を後にするべく足を踏み出した。


「物語の結末は、どうなるやら、ね――――」


 ゆっくりと、路地から歩み出ると、その先に広がる川を見下ろす。
 ロンドンの中心を流れ、昼間にはその広く穏やかな水面を存分に煌めかせるその川も、今は強めの風に煽られてその水面を波打たせている。
 足を止め、じっと水面を見つめる男の表情は、何も考えていないようでもあり、考えに没頭しているようでもあり――


――ふと、何かに気付いたかのように、男が顔を上げる。

 男の視線の先、川の対岸に、見知ったツンツン頭が息を切らせて走り去っていくのが見える。


「……、……」

 途端に男の表情から力が抜け落ちた。それは、呆れによるものなのか――それとも、安堵によるものなのか。
 その赤の魔術師――ステイル=マグヌスは黙したまま、走る少年の姿を見送ると、深く深く紫煙を胸に吸い込んだ。


(やれやれ……かな)




 川から吹き上げる風に赤髪を靡かせ。傍観者はただ、静かに煙草をふかし続けている――――


.


――――――――
――――
――



 気がつけば視界に光が溢れていた。
 遠くに散りばめられた温かな光――人々の灯りと、近くを跳ね回る鋭利な光――荒れ狂う雷光。
 性質は違うし、色も、光量も違うのに、私にはどちらもただひたすらに綺麗に思えた。


――私、まだ……消えてない?


 靄がかかった思考に泡のような思考が浮かんでは沈んでいく。
 そうやって私はただ川の流れに浮かぶ木の葉のように吹き荒れる風の中にたゆたい続けていた。

             ロンドン
 激しい雷光が夜の倫敦を白く浮かび上がらせる。
 その光を遠くに眺めながら、同時に私の思考はそこに一つの光景を思い起こし、重ね合わせていた。

 吹き荒れる砂混じりの風。紫電をその表面に這わせ、暗闇に浮かび上がるコンテナ。驚愕に顔をこわばらせる、白い悪魔と――――自分そっくりな、妹。

 無限に広がる感覚と知覚を全身に受け止めながら、しかし私が一番に思い知ったのは、己の無力。

           チカラ                  チカラ
 何故だろう――能力は底無しに湧いてくるのに、電撃は限界を越えて迸るばかりなのに――どうしてか私にはそれが無意味なものに感じた。


 渇望でもなく。
 絶望でもなく。
 そこにあるのはただただ、何もかもが空っぽの虚しさ。


 嘗ては、絶対的な力を求め、それに向かって突き進んでいた事もあった気がする。
 仮にそれを自らの研鑽により手にする事が出来たのなら、それはきっと達成感や充実で満たされた素晴らしい体験であったろうと思う。


          、、 、 、 、 、 、 、 、 、 、、
 そう――今の与えられた偽物の絶対能力なんかとは違って――きっと、とても素晴らしいモノに。


.



――与え、られた……?


 自らの内からわき上がった言葉を、しかし理解できず戸惑いで心が揺れ動く。
 思考が混濁しているらしい。記憶も曖昧で、自我を保つ事さえ難しい。

 そもそも私は何故こんな所に居る?
 ここで何をしている?


――思い、出せない。でも……。


 胸の奥に、ほのかに温かく、しかし苦い、何かが揺らめいていた。
 注意して意識しなければ気付かない程度の、でも多分それはとてもとても大切な、何か。
 いつからそんなものが自分の奥底にあるのかさえ分からないけど、何故だかそれがある事だけは強く確信できた。


――私……、私は……。


 それを意識する事で、何かが思い起こされていく。
 果たして、それは思い出していいものなのか――同時に不安も首をもたげて来る。
 心が震え、まっすぐとそれに目を向ける事も出来ない。
 そんな弱い自分が、情けなくて、視線を落とした。


 その向けた視線の先に、豆粒のような人影が映る。



――? あ、れは……。


 意識した瞬間、胸がずぐん、と鈍く痛み、息が詰まった。
 あの人影を目にした、それだけで……何故、こんなにも自分が反応を示すのか、分からない。


――あれは……あの、人は……ダレ?


 人影の顔も、体つきもろくに判別できない、そんな状態で、でも不思議と私はその視線を外す事が出来ない。
 服装も表情も窺えないほどの長い距離を隔てて、それでも。

 私には、それが……アイツが、私をまっすぐ見つめてくれているような、そんな気がして。



 私は、その黒髪をツンツンと尖らせた少年の姿に、意識の全てを奪われ続けていた。


――――――――
――――
――


 走りながら上条当麻は考える。
 どうやってあの荒れ狂う雷撃を越え、どうやって上空高く浮かぶ少女のもとに辿り着き、そしてどうやって少女をその呪縛から解き放つのか。
 考える。
 しかし、ロクな手は思いつかないままだ。

 だからといって、今必死に動かす足を止めるつもりは全く無かった。
 この内から溢れ出す衝動こそが、泣いている少女のもとに辿り着き、その涙を拭いたいという強い想いこそが、上条当麻そのものだからだ。


 フォックスワード
 偽善使い、などという言葉が浮かぶ。


 嘗て、己が正義を、独善を、そうと自覚しながら偽善と嘯き、ただ感情の赴くままにその右手を振るっていた少年がいた。
 その拳と、直情で、確かに避けられた悲劇があった。救われた笑顔があった。

 しかし、その行為で――その事で自分とは別の正義を挫く自覚があったこそ自らのそれを偽善と呼んでいたそれを、自嘲を――


  殴り飛ばす岩の拳があった。
  吹き散らす紅蓮の炎があった。
  斬り伏せる神速の剣閃があった。



 思い知った事が二つある。

 己が振り翳す独善が、偽善とも言えない矮小なものであった事。力無き者のただの遠吠えに過ぎなかった事。
 己が自らの行為を偽善と吐き捨てる事で、傷付く者がいる事。力無き拳でも救われた者からすれば、それはたとえその持ち主であろうと許されぬ愚行であった事。


 それゆえ、少年は偽善と言う言葉を使うのをやめた。
 それゆえ、少年は己が矮小な拳を振るうのをやめなかった。

 巨大な岩の拳を振るう意地の悪い先輩に、無限の炎を噴き上げるいけ好かない神父に、神に祝福された真っ直ぐな聖人に、その力を――上条当麻の姿を――いつの日か認めてもらう、その為に。


 ネセサリウス
 必要悪の協会の末席、上条当麻の矜持は、正にそこにあるのだ。




 息を切らし、上条は走り続ける。
 じめっとした空気が火照る身体に絡み付き、上条の全身からは汗が噴き出していた。
 そのまとわりつく汗を振り払うように、走る速度を上げる。
 辿り着くべき場所は、目と鼻の先だ。

(まずは、御坂の近くに辿り着き、そして――)

 熱くなる身体に引き摺られる事無く、思考を冷静に保つ。

 心は、灼熱のようにどこまでも熱く。
 頭は、氷雪のように常に涼しく。    ルール
 これも上条がイギリスに来て教わった原則の一つだ。

(――後は、力の使い所さえ間違えなければ)




 何にせよ、全てはそこに辿り着いてからと、上条は足を動かし続ける。
 逃げ足とスタミナだけは、幸いにも嫌というほど鍛えられていた。
 その事に感謝の念さえ抱きつつ、上条は目の前に高く聳える蒼白い雷光の昇る麓へと目を向ける、と――

(……、……?)

 ようやく辿り着いたそこで、上条は思わず足の動きを緩め、ゆっくりと立ち止まった。
 そこは、テムズ川に掛かる幾つもの橋の内の一つ。上条も名前を知らない、ありふれた鉄橋。
 その鉄橋を支える柱の一つをまるで避雷針にするかのように、蒼白い雷の柱がそこから天へと立ち昇っている。

 そして、その柱の程近くに、人影が一つ。

(あれ、は……!)


 白の閃光に照らされ、その白さを異様に際立たせた悪魔。


 学園都市からの刺客。
 つい先日、上条当麻と真っ向から対峙し、完膚なきまで打ちのめした超能力者、一方通行が佇んでいる――


また、二日以内に

待っちょるぜよ

乙~

久しぶりに来てた!乙!


来てたあああああ!!!

ひさしぶり、乙!

差し出口だけど、「しかめる」のは顔で眉は「ひそめる」ものだよ!

乙ぅぅぅ!!!

乙乙

二日以内と言いましたが無理でしたァー!
夜勤と飲み会挟むんで週末をお待ちください。。。

そんかわし週末で一気に投下予定
ちなみにラストエピソードとは書きましたが第一部の、と一応補足しておきます

・・・第二部がいつになるかは不明ですけど
・・・そもそもこんな勝手設定勝手解釈勝手改変の嵐の話続いてどうすんだって話ですけど

需要はある!! 乙!

乙!楽しませてもらってます!
続きまってる!

2部がある…だとぉ!!!!
もう終わりかと絶望していた俺に希望の光だぜ!!
>>1大好きだぁww しっかりと飲んで来い!




二部あるとか嬉しい…いつまでも待ってる

週末越えてもう新約3巻来ちゃうのに投下できないビクンビクン

えーと、新約3巻来たら多分色々と脳味噌シャッフルされると思うので、
それの一週間後に投下します・・・たぶん(信用度ゼロ

まってる

三巻の内容次第でニヤニヤし過ぎないようにな

>>785+ガッカリしすぎないようになww

新約3巻上琴大勝利だったな

変なフラグ立ってたし、正直イマイチだった

mdkn

なんのこれしき

きっとアレだ
クリスマスに投下してロマンチックにするんだ

どうせ仕事以外の予定ないしそうしよう

では24の夜に

期待

24日か…なぜか予定が空白だからリアルタイムで楽しめるぜorz

>>794奇遇だな!…俺もだorz

みんな十字教徒じゃないからな 予定がなくて当然だ!  

某所で「御坂美琴さンですかァ」が今更まとめられてるね
あれもう1年以上前なのか

>>194-795
24も25も何もない日だろ?
何もない日に特別なんて幻想を求めるなよ

>>798
俺の誕生日なんだよ!

>>799フライングおめでとうww

誕生日だよ……最近別れた彼女の

おまえら本当はリア充なんだろ爆発しろ

>>801
涙拭けよwwwwww



そしてクリスマスは一緒に盛り上がろうぜ

>>799
なんだバレンタインベイビーか

>>802俺はラブ○ラスがあるからリア充だぜ☆

>>793-805

    そ.L/ ノ  }7人)´/ァ'人)ヽN、}てぅY i`Yぅちi{y く) _)⌒`
> ――<ヒZーr米N .:/ /´:/ 八ノ|:.  i :.个'(人)从   }`Y≧ー
         `Y iヽ’′/ .: :/:  .:i: !:.   | :.: : i:. i:  :\ノ、ノろ,
          }个1.: .:.'. /..:/:.:. |:i:...:|:..:: : |i .::..:.:.l: :l::. :.:. iハ:ヾ^′
 言 そ   { i.: |:.i .l::.'::.::i!:.:. .:.}:} .:i}:.:::.: 小:::.:.: |i::|i::i:.:.: :li :i:N

 わ .ん    }:| ::i :!:i:..i::::_!:::: .:ムj::,イ:::: :.:} }:!::::::::|1:!!:|:.:: 小:|:|
 な な    |:| ::|.:|イ:l:::十:::::77/リ}:::::::/ 辻:::::::ト}:||:'.:::リ:|! :!:!
 い. 悲    {:l::::|::N!┴'┴‐'ぐ′ノ--/ ノ'ノ}:」:フTメ}::::/::;::.リ}′
 で し.    N::::{´  __-≧=’     /_   /'7::::::/:}ノ
  : い    {_:小 イ下う::f;不`     示う::〒ミ /.:/:/:/
  : 事    ト、ヽ( 厂 ̄ヽ ) ....................`¨¨ぞう/::/イ∧
        { 、 ∨{{ ::::::::::::}!:::::::::::: i::::::::::::::::: }ノ/ィ'ノ人ド\

      /⌒ヽヽ.〉|!    |{   _ 〉     |{' 从
.` ー―く    《=∨込:、   ,.ij-- く(, --、    ノ /
      '.    |「 i|ノィト )、〈廴__  __jハ  (/イ 
       '.   |L.l| ::::}  \` ー‐ ー‐.´<
        l   `T {:ノl   ` ー‐.≦∧:......\
    / }    ノ..|!    '.      /ヽ.》,.......\
 _, く.........ノ   {.. |!    丶   ,〈   }l..............}\_


親父さんのPCサポセンやらされてたらこんな時間になった
おかでさまで推敲一行も出来て無いので遅くなります確実に日付変わります多分2時とか3時とか4時になりますすいません・・・

俺なんか女医さんと看護師さんとイケメン医師と楽しくおしゃべりしてたぜ

…入院中だからな!

久しぶりのプレゼントです    ワーイ

そういうことなら仕方ないね
ドンマイ

書いてる内に膨らんでいく
まあそれも仕方ないかと思いつつ投下



 埃にまみれ、荒れ狂う風に白髪を乱され、それでも超能力者は空を見上げ続けていた。
 何かを求めるように、その目は細められ。
 何かを欲するように、その瞳は光を放っている。

「……ッ!」

 その姿、眼差しに上条は思わずひるみ――すぐに気を取り直し、自らを叱咤する。
 脳裏に、身体に刻まれた本能的恐怖は拭えないが、今は表面上だけでもそれを抑え付けていなければならない。

「何……やってんだ……」

 絞り出すように漏らした言葉は、僅かに掠れていた。
 それでも震えてはいないと、上条は己の意地を貫き通す。

 アクセラレータ
「一方通行――――ッ!」
                                    しょうねん  しょうねん
 吐き出すように叩きつけられた声に、ゆっくりと視線を下ろし、超能力者は無能魔術師を視界に収めた。

 その視線に、前回感じたギラ付くかのような攻撃の意思は無く――――しかし、それに似た鋭い何かが宿っている。
 それは、飢えのような、渇きのような、何か。


「何しに、来やがった。…………いや」

 しかし獣は、表情を一転させた。

             さいじゃく
「――――待ってたぜ、三下」


「……、……こっちこそ」


 その笑みは、獲物を見つけた獣のように獰猛だったが。
 上条は怯む事無く、同じく獰猛な笑みでそれを受け止める。

                さいきょう
「――――会いたかったぜ、第一位」


 夜の鉄橋。
 対峙する二人の男は、互いの本心を推し量れないにも関わらず、何かを確信するかのように同じ顔で笑った。




 遥か上空まで伸びる雷光は、まるで原初の地に聳え立つ一本の樹木のようだった。
 或いは、その地に最初に降り立った神の通り道か。
 いずれにせよ、間近に感じる異様な圧力は、それがただの電撃や雷の束では無い事を感じさせる。

 上条当麻は、見習いとは言え魔術師だ。
 ろくな魔術は使えないし、ろくに知識も身に付けていないが、”視”る事くらいは流石の上条でも出来る。
 そう、上条はそこに何か”魔術的な流れ”が存在する事に気付いていた。


(――しかも、どこかで見覚えのある、術式)


 魔術師として基礎的な事以外には滅多に触れる機会の無い上条にとって、見覚えのある術などは限られる。
 それこそ基礎中の基礎か、少ない機会でたまたま目にしたものか、或いは。

                                 モノ
(いつも見掛ける類――――つまりは、いつもそこにある術式)


 すなわち、イギリス清教――――必要悪の教会の、術式。


 ここに来て、上条にもおぼろげに事件の背景に潜むものの影が見え始めていた。





「―――オイ」

 掛けられた声に、上条の意識が思考の沼から引き上げられた。
 はっ、と顔を上げると、視界に入るのは白い悪魔の冷たい相貌。

「何やら一人で考えこンでるとこ悪いンだがよォ……。何かおっぱじめるンじゃ無ェのか?」

「……、……」

 言葉に、数秒目を泳がせ、口を開く。

「……そのつもりでは、あるんだけどな」

「はァ?」

 眉をひそめる超能力者に、苦笑が漏れる。
 果たして、これを言っていいものか、上条は数瞬の迷いの後、諦めて真実を口にする。

「ぶっちゃけ、特に策とか無しにとりあえずやって来たというか……」

「……舐めてンだろ、オマエ」

「いやっ、ちょっ、待っ、落ち着いてっ! 話せば分かるぞきっと!!」

 一方通行の手が首元のスイッチに近づくのを見て、慌てて両手を振り回して制止する。
 前の戦いで彼がそれに触れた後を体験した上条は――それが何かは良く分からないが――それがヤバい事だけは文字通り痛いほどに思い知ってるだけに必死になるのも無理は無い。
 その清々しいまでに無様な必死さに呆れた一方通行が、やれやれと伸ばしかけた手をジーンズのポケットに突っ込んだ。上条による全身を使った制止のジェスチャーも収まり、空気が弛緩する。

「……そういうそっちはどうなんだよ。ただぼーっと突っ立って雷見物してたワケじゃないんだろ?」

「……、……」

 一方通行の顔が、不機嫌そうに歪む。
 何か地雷を踏んでしまったかと上条の背に冷たい汗が伝う、が。

「……情け無ェ話だが、俺の能力にも制限と限界って奴がありやがる」

 ほとんど吐き捨てるような口調で、だが律儀にも返答を返して来る。

「だから、考え無しにとりあえず特攻、みたいな馬鹿な真似は出来ねェ。オマエみてェのとは違ってな」

「…………う」

 ぐさ、と冷たい口撃が上条の心を抉った。

「とりあえず、今ントコまともな確率で状況を打破できる方法は見つかって無ェな」

 それに構う様子も無く一方通行は淡々と告げた。
 言外に、だからオマエが何とかしろ、と言われてるようで、上条は溜め息を一つ吐く。




 ざり、と石畳を擦る音が複数。
 視線だけど動かすと、いつの間にか二人を挟み込むように複数の少女達が佇んでいた。
 その顔はDNAレベルで同一、浮かべる表情に感情が薄いのも同様。


 シスターズ
 妹達。

                           いもうとたち
 上条が救うと誓った少女――御坂美琴の、クローン体。
 それが、同じ場所に何人も集まっていた。

「ロンドンに派遣された妹達、全十一個体集結済みです。と、ミサカは報告をします」

 その内の一体、一〇〇三二号が対峙する二人に声を掛ける。
 その一見して空虚な瞳に宿る炎を認めるように、上条は真っ直ぐに目を合わせると深く頷いて見せた。

「……いつの間につるんでやがるオマエら」

 半眼で睨み付けてくる一方通行の視線を受け、上条は頬をぽりぽりと掻く。

「いや、つるんでるってワケじゃ……ない事も、ないのかな?」

「…………チッ」

 面倒くさそうに舌打ちをする一方通行に、上条は気付けば抱いていた恐怖感は紛れていた。
 先ほどのやり取りといい、今の一〇〇三二号に対する態度といい、その人間臭い仕草に化け物としての印象が薄れたからだろうか。




「お前らで勝手にやればいいだろォが。なンで俺まで巻き込もうとしやがる」

 突き放すように言う一方通行を、しかし一〇〇三二号はじっと見つめながら問い掛ける。

「貴方は、力を貸してくれないのですか? とミサカは問い掛けをします」

「……、……」

 無言のまま佇む一方通行。
 が。

「……アホらしィ。オマエらだけで勝手にやってろ」

「! 待って下さい、一方通行……!」

 くるりと踵を返す超能力者に、少女が追いすがろうと駆け出す。

「あっ、おい!」

 呼び止める上条を通り過ぎ、駆けて行く一〇〇三二号。
 咄嗟に伸ばした右手は届かず、すり抜けるように少女の姿が遠くなり、


――――ゆらり、と。視界の端で何かが揺らぐ。


「……、……?」


 見ると、真っ直ぐに立ち上っていた雷撃の柱が、ゆっくりと、大きくたわむように揺れていた。

「な、んだ……? 何が、起こ……っ!?」

 瞬間、背筋を走る違和感。上空を見上げると、そこには。


「ッ! 伏せ――――!」


 巨大な蒼白い閃光が、視界いっぱいに広がり――――――――









「ボッと突っ立ってンじゃねェッ、ボンクラがアアアアアァァァァァァァァッ!!!」

「……!?」


 トン、と白い腕が少女を突き飛ばし、上条の元にその身体が一直線に吹き飛んできた。


「ッ! ……っと、とと……!」

 咄嗟の事にバランスを崩しながらも、上条は何とか少女の身体を受け止めた。

 次の瞬間。



 轟!! と、世界を底から震動させるかのような音と共に、閃光が降り注ぎ。



「……ぐ、がああああぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!!!」



 その雷撃が。膨大な質量をも感じさせる雷の塊が、一方通行の全身を貫いた――――






 立ち込める焦げた臭いと、鼻を刺すような異臭――――オゾン臭。
 閃光に灼かれた視界が、白く染まった世界が、徐々に徐々に、色を帯びていく。

「一方、通行…………?」


 舞い上がる砂埃の向こうで、ゆっくりと人影が崩れ行く。


「そ、んな…………」


 呆然と、それを見つめる一〇〇三二号の声は掠れ、風に溶けた。


――――どしゃり、と。


 柔らかい肉が硬い地面を叩く音がした。


「まさ、か。……そんな、筈は…………」

 焦点の合わない目で、一〇〇三二号がそれを否定する。

「一方通行、は…………。彼の能力が……利いて、ない?」

 目の前の現実が信じられない、と。小刻みに身体を震わせる。

「ミサカを、突き飛ばす瞬間。確かに彼の首のスイッチは、ONになっていた、のに」

 熱に浮かされたような声で、かぶりを振る。

「何、故……」

 見れば、遠巻きに眺めていた他の妹達も、一〇〇三二号と同様に、或いはそれ以上にこわばった表情で呆然と立ち尽くしていた。
 恐らく、口にしてはいないが、彼女達も全く同じ疑問を、困惑を胸中で吐き出していることだろう。

 しかし、幾ら否定の言葉を、疑問の言葉を投げかけても。
 砂埃が晴れた向こうに倒れているのは、間違いなく一方通行で。
 それはすなわち、現実だという事。

 全ての物理現象を、ベクトルを反射する超能力者が、ごく普通の物理現象である電撃の直撃を受け、倒れたという、事実。
 学園都市第一位が、あっさりと力尽きるというありえない光景に、一〇〇三二号は自失した。
 或いは、その原因が彼女を庇ったからだという事の方が、彼女にとっての衝撃なのかも知れないが。




――――その時。




 ぴくり、と。

 その白く細い指先が動いた。

「う、オ……ッ、…………ッは」

「……ッ! 一方通行……!」

 ずり、と。今度は手が動き。砂利を掴む。

「…………クソ、ど、うなって……やが、る……ッ!」

 呪詛を吐くように呻きながら、腕が動く。肘を支えにして、一方通行が少しずつ、上体を起こし始めた。

「ッ! 今、助けま――」

「待て、行くんじゃないッ!!」

「……、ッ!」

 駆け出す一〇〇三二号の腕を引き、上条は右手を伸ばした。


――――バギンッ!!


「……なっ!?」

 砕ける音と、感触に、上条の心に微かな実感が湧いた。
 驚く声を上げるクローンの少女を背中に庇いつつ、上条は掲げた右手の向こうを見据えて息を吐く。



 一方通行の反射の利かない雷撃。
 どうみても一〇〇三二号を狙って放たれたという挙動。
 そして上条はそれらの光景を、魔術的な”眼”を通して、別の側面をも見出していた。




「――――そういう、事か……?」

 思わず漏れ出た言葉に、一〇〇三二号が首を傾げる。

「……? 何の、事です、とミサカは疑問を呈します」

「いや、まだ俺も良く分からないことだらけなんだけど、ううん……」

 一〇〇三二号をその場に制止しつつ、上条は倒れた一方通行を助け起こして離れた場所に連れて行く。
 その場にいた他の妹達に預けようとしたが、しかしそれを振り払い、杖を頼りに一方通行が立ち上がる。
 受けたダメージは決して小さくないが、何とか独力で立ち上がる程度には体力を残しているようだ。

「何か、分かったのかァ……?」

 一〇〇三二号の近くに戻ろうとする上条に一方通行が尋ねる。

「ああ。少しだけ、だが」

 気付いた点はある、ヒントは掴んだ。しかし材料が足りない、そんな顔つきで上条は腕を組む。
 考え込む上条に、恐る恐ると言った様子で一〇〇三二号が声を掛ける。

「何だか良く分かりませんが……ところで、とミサカは貴方の思考を中断すべく声を掛けます」

「ん? どうかしたか?」

 一〇〇三二号は上条の尻の辺りを指差しながら尋ねた。

「その後ろからはみ出したカードはなんでしょうか、とミサカは気になった事を指摘します」

「……後ろって、尻ポケットか? ……お、なんだこれ……」

 よりによって取り出しにくいジーンズの左後ろポケットからはみ出た一枚のカードを何とか取り出し、まじまじと見つめる。
 丁寧にラミネート加工されたそのカードは、上条にとっては見慣れた形をしていて、その中央には特徴的な記号が刻まれている。


「…………シェリーさんの仕業か、これは」

 脳裏に意地悪な先輩のしたり顔が浮かび、上条はやれやれと溜め息をついて苦笑する。
 心底、あの先輩には敵わないなと実感しつつ、上空を見上げる。

 渦巻く雷光は今にもその舌を伸ばさんと揺らめいている。


(――――時間が、無い)


 予感めいた想いが、上条の心に微かな焦燥を生み出していた。



年内にもう一回投下に来ます
が、多分あと一回じゃ終わらないから終わりは年明け以降
ていうかこのスレ内でおわらなそうなんで適当な所で次スレ建てる予定

それではー

乙 
次スレだと?大歓迎

おつおつ
次スレになっても期待してるよー

乙にゃんだよ

乙乙


次スレとか嬉しいなあ

乙乙
二人はどうなるのか、そして2巻の内容はどうなるのかwktkしながら待ってるよ

乙!!

乙!

乙!

あーおもしろい 胸熱
乙でした!
また続き待ってます

いいねえ凄まじくいいねえ
期乙侍

共闘の雰囲気にドキが胸胸

くるかなー

あと3時間だし、来ないんじゃない?

え、明日って13月ですよね? まだまだ年内は続きますよn・・・

すいません、元旦出勤の為今晩無理です
1/2夜に投下いたします!今度こそガチで!

元日出勤どんまいww
楽しみに待ってるから仕事がんばれぃ!!

さあ、いつでも来い!

推敲中・・・
上条さんちのベランダに引っかかったまましばらくお待ち下さい・・・

                         . .-―-. 、
                       /: : ,: : : : : :ヽ
                     /: : /::/: /:i: : ヘ:、

                 -― //: r 、: /: :ノl/l: : ::l: |
               /  -、l/: :: .l./:l/ ┰:.|//|: |:|
              /  ../ ̄` Yl/l: :ハ == ┰|//
            /  .::/.― 、.;/Vl:/::ヘ  _=//|/

           ./   .:::l   .:`l| .>l:: ィ:\' ./l/______
           /  .:::..::::|  .:::::::|――/:::::::::| ...::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
         .../:::::: ̄ ̄./   l::::(::l .<::_:::::| -―   ̄ ̄ ̄
 ....... ̄ ̄ ̄ ̄::::::::: ――| ̄`Y--./ .|  ̄l'

::::::::::::::::::::    ̄ ̄―--| l  ::::ト、/ |..| | ::::|
 ̄ ̄ |...|  ./:::TT::::|..|::::::|:| .:::/:ヘ  |..| l  ::::l
    |...|  l::::|..||:: |..|::::::|.| .:::|::::::、 .|..| ./ .::/

    |...|  |::::l..l:::::l..l:::::::|.|  :::|::::::::>|../  :/
    |...|  |::::|..|::: |..|::::::|:ヘ ::|r-'^ ./ .::/

    |...|  .'―|..|―|..|-―|^l ::|   /  /
    |...|    |..|  |..|:::::|..|::|  |  / ..:::l
    |...|    |..ト .|..|:::::|..|./ .:::l l,ハ ::ノ
    |...|    |..|ヘ. |..|:::::|..|l .::::::|  |ノ''..|
    |...|    |..| l.|..|:::::|..ノィ:l;lイ   .l...|
    |...|    |..| .||..|::::).|イノノ:|   .|...|


つか知らぬ間に挿絵のAAが出来てた模様なので喜びの余り転載してみたりw

乙ー 夜干しされときます

気が付いたら4時とか・・・いつの間に時間を吹き飛ばされたんだろう

こんな時間ですが投下します。
若干眠いのですがなんとな寝落ちしないようにしないと・・・

ふひひ



 上条当麻は魔術師だ。

 幻想殺しのせいで落ちこぼれ、術の一つも行使出来ないとはいえ、魔術の知識を持ち、理解できる人間。
 その特殊な右手は、体内の魔力の流れを阻害するし、彼の周りの魔力の流れも乱す為、とことん魔術師という職業に向いてないのだが、そんな彼にも出来ることは、ある。

 例えば、魔力の流れを”視る”事。
 それと、予め他の魔術師に用意してもらった簡単な霊装を使い、その効力を発揮する事。

       、、
 上条は、左手で持ったカード――――ルーンが刻まれた札を眺めた。

 ペオーズ
 PEORTHの刻印が記されている。

 その示す意味は誕生・発覚・再発見。
 またはギャンブル、思いがけない幸運、そして……隠されたものの正体を暴く事を暗示している。

 それが、ルーンの魔術師がこっそりシェリーに受け渡し。         ワンピース
 出掛けにシェリーが上条のジーンズにこっそり忍ばせた、パズルの最後の一片。




(正直、これが今の状況に対してどんな意味を持つのか、わかりゃしねぇ……)

 しかし、わざわざ気付かれないように渡したという事は、何か意味がある筈だ。
 無い筈が無い。
 あの意地悪で、ひねくれて、それでいて肝心な所でとことんお節介な先輩魔術師が関わっている以上、今上条の手にこれがあるという事実に何の意味が無いというのは、まずあり得ない。
 上条の知るシェリーという魔術師は、そういう人間だった。
 だから、今はそれを信じるのみ。


 ちら、と傍らの少女に視線を向ける。

「……、……」

 少女はこくり、と頷き一つで返して来た。
 少女の目の奥、微かに宿る迷いと恐れは、見なかった事にする。
 表面上だけでも、僅かの躊躇も見せずに了解の意を返してきた事の意味を、上条は正確に理解していた。
 その覚悟を、強い意志を汲み取らない野暮は避けて当然の事。

 上条はそのまま他の妹達へ視線を巡らし、最後に片膝をついてうずくまる一方通行へを目を向ける。
 ギラつくような鋭い目で睨み返して来るものの、形だけでも強がりそうな彼が両の足で立つ事も出来ない辺り、文字通り満身創痍と言った所なのだろう。




 実の所、上条の与り知らぬ所だが、今現在の一方通行にとって電気・磁気・雷という現象は相性が最悪、正に弁慶の泣き所なのだった。
 何しろ、今の彼は独力ではまともに歩けない、言葉を発する事も理解する事も出来ない有様だ。
     、 、 、 、 、  、 、 、 、
 それを他人の能力と電子機器で補っているのだ。”彼の能力で反射できない雷”というのは、言ってみれば一撃で彼を無力化しうる最悪の相手とも言える。
 にも関わらず、先ほどの一撃で彼が満身創痍ながらもこうして片膝をつきながらも起き上がり、会話が出来るという事は――――

「……、チッ」

 舌打ちを一つ。
 彼の視線の先、上条当麻は妹達の一人、一〇〇三二号と何かを示し合わせ、実行しようとしている。
 自分や他の妹達には、「考えがある」とだけ伝えて詳細は語らぬまま。
 恐らくこうして無様を晒している一方通行については状態を気遣い、始めから戦力に数えていないのだろう。
 一方通行にとって、その事が無性に腹が立って仕方ない。

 とはいえ、客観的に見て今の彼が現状に対し何の役に立つのか。
 そう言われて平然と答えを返せる程の材料を、彼自身も持ち合わせていない。
 その事が余計に腹立たしく、しかし一方通行は噴き上がりそうな怒りをじっくり、時間をかけて抑え付ける。

 思考を冷静に。分析を正確に。状況をクリアに。
 学園都市の頂点たる超能力者は、その鋭い双眸を細め、集中する。




――――――――
――――
――


 紫電の樹木は、時と共に揺らぎを増し、今にも崩れて倒れ掛からんとしているようだった。

――それが稲妻の柱としてそこに屹立しているのにも、何者かの働きかけが起因している。

 上条は不自然且つ強力な魔力の流れがそこに集中している事から、そう推測した。
 そして、その無理矢理に整えられた均衡が、もうすぐ崩れるであろう事も。


 一〇〇三二号と目を合わせ、上条は一つ息を吐く。
 手には汗、弾む動悸、震える指先――しかし秘めた決意は微塵も揺らがず。
 対する一〇〇三二号の心中は推し量れないが、その心の強さを、想いを上条は信じていた。
 だからこそ、出来れば危険に巻き込みたくないと考えている上条が、協力を要請したのだ。
 無論、時間や状況が、手段を選ぶ余裕を奪っているからでもあるのだが。


「……行きます」


 言葉と同時、一〇〇三二号が歩を進める――――聳え立つ雷光の柱へ向けて。

 一歩近づいただけで、紫電の樹木が大きくたわんだ。
 思わず竦みそうになる足に力を込め、そのまま踏み出す。
 紫電は更に揺らぎを増し、その身を大きくしならせる。
 まるで強い力で引き絞られた弓のようだ。
 そして、その矢はもう間もなく放たれる。


 次の一歩、少女がその身を進めた。

 鎌首をもたげた雷が、刹那その動きを止め――――


「――――ッ!!!!」



―――閃光が、降り注ぐ―――



 少しでも反応が遅れていたら、失敗に終わっていたであろう。
 それはほんの僅か、瞬きさえ許されぬ刹那の中の刹那。

 しかし、そのほんの髪の毛一本程度もない薄氷を、上条は渡り切った。


「……こっち、だッ!!」

「……ッ!!!」


 その瞬間、一〇〇三二号の腕を掴み、降り注ぐ雷の軌道から引き離す。
 それと同時、上条は左手に持っていた札を、降り注ぐ雷へと投げ込む。
 無理な体勢での強引な動きにバランスまでは取る余裕も無く、もつれ合うように二人は地面に倒れこんだ。



 ズガァァァァァァァッ!!!! と、全身を劈くような轟音と衝撃、そして爆発的な閃光が弾け、そして。




――――――静寂。







 先ほどまで荒れ狂っていた風が止んだ。

 上空まで立ち昇っていた雷光の柱が、その姿を消している。

 その頂点――――遥か高みにあった少女の気配も消えていた。



 ふと見やると、先ほど落雷のあった場所に、一塊の蒼白い光があった。
 眩いばかりの光を放つそれは、その光のせいで良くは見えないが、ちょうど人一人くらいが身を屈めた位の大きさに見えた。

 そう、丁度少女一人が、膝を抱えて丸まる、その位の大きさに。






 雷は新たなる宿主として妹達の一人の身体を狙って降り注ぐ。
 その雷を媒介に、ルーンの札がその力の正体を暴く。


――――上条の考えが正鵠を射たか、その目論見が成功したかは分からない。



 ただ、上条には、閃光の中に人影が見えた気がして。

 それが、彼が求めたその姿に見えた気がして。


 ゆっくりと、その身を起こし、のろのろとそれに近付いた。



「…………御坂、か?」


 光に、その中の少女に。上条は右手を伸ばし、





――――――閃光が、弾けた。








「あ、ぁ、ぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああッ!!!」

 咄嗟に反応できたのは、正に奇跡としか言いようが無い。
 動揺で崩れかけた体勢から上条は強引に右手を伸ばし、打ち付ける。

 それだけで、巨大な鉄橋を根こそぎ吹き飛ばすであろう物量の雷が霧散した。

 しかし、少女の影を中心に広がる雷光は再び膨らみ、爆発的に閃光を迸らせ、

「!? ……く、そっ!!」
                            、 、、 、、 、、
 それを上条は右手で打ち消す――――否、打ち消し続ける。


――――キィ、ァ、ァァァァァァァァッ!!!!


 悲鳴のような、軋む音のような響きが、辺りに響き渡る。
 それは、能力に翻弄される少女の叫びか。それとも少女から噴き上がる雷撃の鳴動か。

 無限に膨らむ蒼白き雷光を、上条は右手を翳し押し返し続ける。
 打ち消している筈のそれは、しかしその右手の表面の僅か先に留まり続けていた。


「う、あ……おおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉッ!!!!」


 咆哮。

 それは、初めて見る光景に、総毛立つ全身から、震える心から迸る悲鳴か。
 それとも、挫けそうな心を、崩れ落ちそうな己を叱咤する叫びか。


 右手が処理しきれない量の、異能の力。
 今直面しているそれがそういうものだと理解し、戦慄が走る。


 膠着状態――――――――否。


 みしり、みしりと右手が軋み、鈍い痛みが走るのを感じる。     チカラ
 処理が追いつかない――つまり、少しずつ、僅かずつであるが、その異能は幻想殺しを侵食して来ている。
 このまま押し合いを続ければ、待ち受けてるのは――消し飛ばされるのは、上条の方だ。






(それでも……負けて、堪るかよ――ッ!)


 弾き飛ばされそうな右腕を左手で掴み、強引にねじ伏せる。
 全身の体重をかけ、全霊の気合を乗せ、それでも吹き飛ばされそうになるのを全力で踏み止まる。
 チリチリと漏れ出る雷の筋が肌を灼いていく。
 食いしばった歯から血が滲み出る。
 踏ん張った足は震え、今にも石畳の上を滑り出さんとしている。

 それでも上条は抗った。
 全身全霊で抵抗の意を示した。
 刻一刻と圧力は増していくばかり。
 限界などとうに越えている。


(ち、く……しょう……、……ッ!)


 全身の骨がぎしぎしと軋み、突っ張った筋肉はもう一押しで千切れてバラバラになるだろう。
 上条の頬を冷たい汗が伝う。

――この手を離すわけには行かない。

 心ではそう思っていても、全身を被せるように押さえ込んでいる右手は、少しずつ。
 その皮膚を焼かれ、爛れ、引き裂かれ、そして――――









「――――の、磁場に同調。……脳波を、同期――――」




           バチィッ!! 、と――――何かが、弾ける音。







「――――ミサカネットワーク上に防護壁を断続的に展開――――正常に終了。


   目標である雷撃の出力低下を確認。と、ミサカは状況を分析し、報告します」



 言葉と共に、上条の隣に突き出される細い手があった。
 それは、鮮やかな紫電を纏い、上条が押し返す雷光へと吸い込まれていく。

 見渡すと、その向こうにも同じく突き出される手があった。
 その向こうにも。その更に向こうにも。その先にも。そのまた先にも。
 膨張する雷光の周りをぐるりと囲むように、その手は――――同じ顔の少女達による紫電の陣は、形成されていた。


 それを全て見渡し――――全て見渡せる余裕が出来ていることに、上条は気付く。
 幻想殺しと雷撃の爆発が、両者の力が均衡していることに、上条は戸惑いを覚える。

       チカラ
「ミサカ達の能力を全て集めても、持たせる事の出来る時間は僅かです。とミサカは実情を吐露します」


 目が合った妹達の一人が、言った。

     オリジナル
「所詮はお姉様の能力の、ほんの一部にも満たない出力です。とミサカは自らの力不足を悔やみます」


 別の妹達が、言葉を紡いだ。


「私達に出来るのは、貴方のサポートと、そして――」

 次に言葉を繋いだ妹達が、ちらりと視線を動かし。
 上条もそちらに視線を動かすと、そこには。



 暗闇に浮かぶ白い影――――超能力者の姿。



「彼の解析までの……時間稼ぎです」


 蒼白き雷光に照らされ、尚白いその相貌を歪ませながら。


 一方通行は、その全ての能力を、それの為に注ぐ。





「一方、通行……!」

 上条の呻くような声に、一方通行は不機嫌そうに鼻を鳴らす。

「……、情け無ェが……今の俺はポンコツだ」

 何かの準備運動か予備動作かのように、その両手を握り、ゆっくりと開く。

「限られた時間の中で、完全に未知の法則を相手に、制限された力。状況はお世辞にも明るいとは言えねェ」

 開かれた手を再び強く握り、大きく息を吐き出して――――嗤う。

「だから――――俺の出来る事も、所詮は時間稼ぎだ」

 そしてその両手を高々と振り上げる。死神が構える鎌のように。




                                 ヒーロー
「ムカ付くが譲ってやる。だからドジるンじゃねェぞ――――三下ァァァァァァッ!!!!!」


 瞬間。


     振り下ろされた両手が雷光へと吸い込まれ――――真っ二つに引き裂かれた。







「ッ! 今、です……! と、ミサカは貴方を促します!」

 少女の声に後押しされるように上条はその裂け目に向けて走り出す。

「う、お……おおおおおおおおおぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、……ぁぁぁぁぁッ!!!!」

 上条が駆ける先、白き雷光の向こうにシルエットが浮かぶ。
 眩いばかりだった閃光が引き裂かれ、そのヴェールが剥がされた事により明かされたそれは。それこそは。
 上条が、上条当麻が求めた――――少女の姿。

 チカラ
 能力に翻弄され、雁字搦めの運命に囚われた超能力者。

 強くて、優しくて、それ故に誰よりもか弱い自分の心を押し殺し、隠し続けた幼き少女。

 少女の境遇を、少女の傷付いた心を、少女に齎されなかった救いを、人は不幸と呼ぶかも知れない。

 そして哀れみ、同情し、しかしその取り返しの付かない運命を、仕方ないことと諦めるかも知れない。




                 ふこう
(だけど――――俺はそんな運命を、受け入れない)


 そんな結末で、物語を終わらせなどしない。





 確かにそれまでの彼女の運命は、不幸そのものだったかも知れない。

 それが彼女自身が撒いた種が原因だとしても。彼女の与り知らぬ黒い意志によるものだとしても。

 仕方ない事と、避けられなかった事と、諦めたりなどしない。

 それとも、彼女や、その周り、或いはこの世に存在する誰か等ではない、それこそ運命――――神の意志によるモノが作用しているのだとしても。



      カミサマ                             ミライ
(そう。例え運命がアイツを……御坂美琴が不幸へ突き落とされる物語を描いてるって言うんなら――――――――)


 上条の右手が、蒼い雷光へと伸ばされる。今度こそ届かせると、その掌は何かを掴むように開かれる。

      ミライ              ミライ
 少女の不幸を否定する為に。彼女の幸福を――――掴む為に。




(――――――――まずは、その幻想をぶち殺す!!)







 バギン、と。

 
 
 乾いた音が空間に響いた。








次こそたぶん第一章最終回。

今度こそ近い内に。


新年早々ヤルネェ!

おつおつ

妹達かっこいい


あれ第一章ってことは第二章もやるの?正直期待してなかったからめっちゃ嬉しいんだがww

乙!
二章があるのか、続きが楽しみすぎるな


美琴の体がどうなってるのかそれが気になって仕方ない!

新年早々熱い展開乙!
第二章も期待してるぜ

乙!!新年早々良い物を読ませてもらったぜ

>>864
あんな高エネルギーを発しているんだ、当然服なんて弾け飛んでだな…

二章っていうと、二巻相当?

ともあれ期待!

乙!

なんか読んでると体中ビリビリ来たww

乙!!
おかげで今年はいい一年になりそうだww

乙!
>>867 …ハッ!

>>867 天才か

>>867
師匠と呼ばせてください

>>873
コラ、>>1ww

ワロタww

乙ですの

続きが気になって夜9時からしか眠れない…というわけで>>1まだー?

更新まだ~かな

超喜んじまったorz

>>878
君には失望したよ

ageられたからには続きを急がねばならぬな・・・!
すいません、もうちょい掛かります
MM2Rが面白いのがわr・・・と言った冗談はともかくとして・・・もう少しお待ちください

おっと、これは意外と>>878がいい仕事したかな?ww

気長に待つよ

>>878
君には感激したよ

もう1つの方もそろそろ2カ月経つんだよ!
3カ月になる前に保守してくれると嬉しいな

おっつー

いつまでも待つぜ

まだかなー

待ってるんだよ!

あと二日ー
もう…ダメかも(´・ω・`)

『「私がオバサンになっても……本当に変わらない?」』

蜜柑

ホムゥ?マドカァ-

>>893 スクラップの時間だぜェェェ!!ほォォォォォォむほむゥゥゥゥゥゥ!!!!!!

もう、だめなのね…

1、頑張れ……!
俺は続きが読みたい!!

なんか悲愴なムードが漂ってるけど、ここはまだひと月猶予がある
危なかったのはあっちのスレで、それも>>1がメッセージ落としてるから見てきて安心したらいい

でも、ひと月なんてあっというまさ
ほうとうに、あっという間なんだよ

まぁ、そうだが

ホムッホムゥ~ホムン!ミャロカ~

またひとつ、星が輝きを喪ったか……

お疲れっしたァ、と

しかし、2ヶ月も生存報告も出来ないなんて、24時間完全拘束、携帯の電波が完全遮断されてるような場所にでもいるのかな?
あれか、カイジの地下強制労働施設かなんかにいるんだろうね

チンチロで勝てたら再開されたんだろうが、残念、残念

>>901

おい、デュエルしろよ

なんか勘違いしてる人多いけど、このスレ3カ月ルールの適用範囲内だよね?
あと一月は落ちないはず

900こえたし減速しようぜ

なんかマジで申し訳ない
とりあえず短くでも投下してリハビリとしたい



 静かな風が吹いている。
 短い薄茶の髪に頬を撫でられながら、御坂美琴はぼんやりと遙か下方の水面を眺めていた。
 見るものが見ればそれはまるで自殺願望者とでも思うだろう、生気のない瞳。
 常の快活な少女を知るものからすればそれは尚更だろう。

    、、、 、 、 、 、 、 、、 、 、、、、、
――そんな自分自身の姿を目にしながら、御坂美琴は寸刻戸惑い、そして目の前のそれが自らの見る夢だと理解する。


(何で今更こんな夢を見るんだろ……)


 それは、絶望の淵の淵に追いやられた時の自身の姿。
 抗い、弾かれ、それでも抗い続け、そうやって越えた先に待ち受けていたものは、結局底も見えない奈落への崖っぷちであると知った、無力な少女。
 少女は立ち尽くし、叫び、恐怖し。しかし引き返すことも出来ず、その崖の底へと身を投げる事を決めた。


(そして、この後……あの操車場で……)


 思い出しかけ、首を振る。それは決して彼女にとって幸福な記憶ではない。
 目を背けてはいけないと強迫観念に似た思いが首をもたげるが、それでも少女は、せめて今だけは、誰も見ていない今だけは弱い自分でいたかった。
 ぼろぼろな自分の心をありのまま吐き出したかった。


『どうして……こんな事になっちゃったのかな……』





 欄干にもたれ掛かりながら呟く彼女の言葉は、過去の自分からこぼれ出た嘆きであり、現在の自分の心に渦巻く叫びでもあった。

 目の前で苦しむ人を助けたいという思いを踏みにじられた、どうにかして自分の力で救い出したかったけど、どうにもならなかった過去と。
 それどころかそれさえ更に大きな陰謀に利用され、挙げ句の果てにそんな自業自得な自分に手を差し伸べようとしたお人好しの馬鹿まで巻き込んで、傷つけてしまった、現在。


(ホント、馬鹿ね……)

                       バ  カ
 そして、何よりも馬鹿なのは、そんな親切な少年に甘えて、救われた気分になってしまった彼女自身。
 こんな馬鹿な自分にも救ってもらえる未来があるのかもと、愚かな幻想を抱いてしまった、どこまでも罪深く愚かな少女。


『助けて……』


 その言葉は誰に聞かれることもなく夜の闇に飲まれて消えていく。
 都合のいいタイミングで現れるヒーローなんて存在せず、少女は悲劇から救われるヒロインなんかでは無く、誰もが笑って帰れるハッピーエンドなんて存在してなどいなかった。
 だから、その呟きは、少女の嘆きは、暗い川面に吸い込まれ沈み消えていくのみ。


『助けてよ……』


 そうする事で、少女は振り切ろうとしていたのだ。自分の胸に残された弱気に、恐怖に。
 たとえ振り切ったその先にあるのが、口を大きく広げて待っている絶望の深淵であるとしても。






 だから、少女には最初それが何か理解できなかった。


「……、……」


 ざり、と。アスファルトの欠片を踏む音がする。
 少女が顔を上げると、そこにはいる筈のない、否、いなかった筈の人影が視界を遮っていた。



「……何、やってるんだよ、お前」



 そう。まるでお伽噺に出てくるような、ヒーローのような少年の姿が。




 少女は呆然と立ち尽くし、目の前の何かを眺め続けていた。


(……、あれ?)


 何かがおかしい。その言葉だけが浮かび、しかしそれより先に思考が進まない。
 その間にも、少年は一歩、一歩と足を踏み出し、少女に近付いてくる。


「何やってるんだ、って聞いてるんだよ。なあ……」


 びくり、と怯えるように身をすくめる少女。いつの間にか落ちていた視線をのろのろとあげると、痛みを堪えるように顔をしかめる少年の顔が目に入った。


(なんで、コイツ……こんな顔、してるんだろ)


 そこまで考えた所でようやく停止していた思考が回り始める。
 状況はさっぱり理解できない。けど、少年のその顔をこれ以上見たくないと、それだけを思い少女は平静の仮面をその顔に貼り付けた。


「何って――なんでそんな事アンタにいちいち説明しなきゃなんないのよ?」





――――――――
――――
――


「何って……なんでそんな事アンタにいちいち説明しなきゃなんないのよ?」


 少年の目の前で、少女がいつもの快活さを取り戻し、不適な笑みさえ浮かべてくる。
 そこにいるのは、いつもの少女。元気で自信家で不遜な、万全の御坂美琴だった。
 その事に、上条は抑えきれないほどの苛立ちと悔しさをわき上がらせ、歯噛みする。


「私がどこで何をしようと私の勝手じゃない。こちとら不本意にも超能力者の第三位やってる超電磁砲よ? ちょっとした夜遊びの最中にちょっかいかけてくる不良程度あしらえないようなヤワじゃないのよ、残念なことに」


 それはまるでちょっとした悪戯を親しい友人に見られて言い訳混じりの軽口を叩いてるようにしか見えず、そんな完璧な日常を演じきっているが故にか、決定的な矛盾に気付いていない。
 すなわち、


「……、やめろよ」


 上条の言葉に一瞬言葉を詰まらせ、しかしなんでもないように受け流して美琴は笑う。


「やめるって、何をよ? 第一、夜回りの教師でもないアンタに夜遊びの一つや二つ注意される筋合いなんか無いんだけど。
 あ、お嬢様学校に幻想を抱いてるってんなら言っとくわよ。あそこはアンタら男子が思ってるような甘っちょろいトコロなんかじゃ……」


 尚も言い繕う少女の言葉を遮って上条は言う。



「だからもうやめろよ。お前が今誰に何を言い訳しようとしてるか分からねぇけどよ、少なくともそれは今、ここで、俺に対して言っても意味のない事だろ? いい加減気付けよ!」






「は、はぁ? ……、な、何をよ?」


 ぐっ、と喉を鳴らし。上条が顔を歪める。
 果たして少女をその夢から覚醒させるのは正しい事なのか。このまま幸せな幻想に浸ったままの方が少女の為なんじゃないのかと疑問が首をもたげる。
 しかし、それらを全てねじ伏せ上条は告げる。

                                かこ
「御坂が今立っている鉄橋は過去お前が立ち尽くした学園都市じゃない。そして――」


 少女が息を呑む音が耳朶を打つ。


               いま
「――お前の立っている鉄橋には、絶望から救い上げる手が伸ばされているって事を!」



 はっ、と少女が見回すとそこには、上条だけでなく複数の人影が立っていた。


 彼女を姉と慕い、遠く異国の地まで駆けつけ集まった、妹達の姿が。






「……、……ッ!」


 少女の顔に理解の色が広がる。すなわち、それは夢の世界から、現実の世界へと回帰した証。
 それでもまだ若干の戸惑いが隠せない様子で少女は視線を巡らせた。


「アンタ、達……」


 未だ警戒心を覗かせつつ、しかし御坂美琴は本能的に察していた。
 自分を見つめる複数の同じ色の瞳が、一見して無感情に見えるそれらが、温かなものを内側から滲ませている事に。


「…………なん、で?」


 けれども、同時に理解できなかった。
 何故、彼女達――妹達が。少女自身の軽挙が元で望まぬ生と、無数の死を享受する事となった犠牲者たる御坂美琴のクローン体達が、他ならぬその元凶でありオリジナルである自分を、そんな視線で見守るのか。

 だから、彼女は掠れた声を搾り出す。


「なん、でよ……!」


 内から止め処なく溢れる、疑問の声を。


「どうして、そんな目で私を見るのよ……!」


 自らの心の瘡蓋を掻き破り、そこから痛みと後悔を噴出させながら。


「そんなボロボロの姿になりながら、なんで笑っていられるのよっ!!」


 いっその事、数多の責め苦を、呪詛の言葉をぶつけてくれれば楽になるのに、と。


 少女は慟哭する。




 少女の言葉に、妹達は顔を見合わせた。
 そして、互いの服が擦り切れ、所々焦げ跡さえ残し、また互いの顔や手足が埃や汚れ、細かい火傷や擦り傷だらけである事に気付く。
 どうやら、先程激しく迸る紫電を無理やり抑え付けている時に、抑え切れなかった電撃と暴風でいつの間にか負傷していたのだと、今更ながら認識する。


 けれども、少女達はそれを見て、より一層表情を緩めた。

            、 、 、 、 、 、 、                                     ミサカネットワーク
 そして、妹達――御坂美琴の妹達は、互いの紡ぐべき言葉が、伝えたい想いが同じである事を――彼女達の能力を使うまでもなく――理解し、静かに頷いて。


 彼女達の姉に、その顔を、眼差しを向け直して告げる。



「愚問です、とミサカは意地を張るお姉様に言葉を返します」


 彼女達一人一人の、心からの想いを。





「確かにお姉様はお節介にも頼んでも居ないのに私達が粛々と遂行していた実験を体を張って止めてくれやがりました」

 と、一六四九九号がわざとらしい溜め息を吐いて言った。


「でも、そのお礼のつもりだとか、ましてやレベル6になったお姉様を危険因子と判断して止めたいとか」

 と、一八〇〇九号がゴムが緩んでずり落ちそうな暗視ゴーグルを左手で直しながら言った。


「そんなくだらない事でミサカはここに立っているのではありません」


 と、一三八八九号が真剣な眼差しを更に強めながら言った。



 そして、一〇〇三二号は、まっすぐと御坂美琴を見詰め、告げる。








「――――お姉様は、ミサカ達の姉だから」









「――――――――、ッ」


 自らの喉が蠕動し、くぐもった音を鳴らすのを感じた。
 少女は、御坂美琴は、その自分の体の動きを、理解する事も出来ず、ただ震える自分の体を抱き締め、歯を食いしばる。


「……ただ、それだけです」


        い も う と
 無機質なクローン個体の言葉は、しかし少女の心に温かく染みていった。
 守りたい、救いたいと想いつつも、心のどこかで理解できない、得体の知れない異物のように感じていた少女達の心を、初めて直に感じた気がした。

 ふと目を上げると、自分と同じ顔をした、しかし自分とは違う少女と目が合う。
 少女の目に、キラキラと微かな光が見える。


――濡れて……いる?




「そしてミサカは。あの時、ミサカを妹と呼んでくれたお姉様に、重ねてお願いをします」


 少女の――妹達の目に光が揺らめく。そしてそれはそこから溢れ出し、彼女達の白い頬に一筋の線を引いた。


「散々姉不幸をして来た不出来な妹達ですが、せめて、この時だけは……お姉様を姉と呼ぶ事を、どうか許して下さい」


 自分と同じ顔の、数人の少女達が、同じ顔で泣いていた。
 それは、不器用で、ぎこちなく、歪な泣き顔だった。


「ミサカに生きる事の意味を、苦しさを、喜びを教えてくれた、世界で一番大好きな、お姉様を救う事が」


 そんな少女達を見て、美琴は胸の奥がすっと軽くなるのを感じる。
 泣き方一つも分からない、幼い妹達を愛しく想う。


「今を生きる全てのミサカの……心からの、願いなのですから」


 そして、そんな妹達の、まっすぐな愛情を感じ――――美琴もまた涙を流した。



以上となります

本当は最後まで一気に突っ走りたかったけど難産
申し訳ありませんでした

乙 待ってた! 美琴の記憶が失われてなくて良かった

は 早く 早く続きを


悪い ミスった!
乙でした!

生きてたぁ

おつ

乙!!漫画版超電磁砲見た後だから泣けた、てか泣いた!

漫画版超電磁砲は上条さんがかっこいい濡れた

保守

そろそろ来てほしいんだよ!

2ヶ月が目の前さー

ヤバいな……

そろそろ生存報告欲しいかも

まだか

一週間経てば三ヶ月さー

なん…だと…?

待ってるよ

超お待ちしてます

こんなにも書けないといっその事一度落とした方がいいんじゃないかとも思えますが
もうちょっとだけ頑張ります

フラグの方も生存報告来てほしいかも

>>941
900まで行っててキリもいいし、次章は態勢が整い次第新スレで、ってことで落としちゃってもいいと思うんだ

>>942

フラグのほうって何?

>>944

 フラグメーカー 
 

だめだ、俺の乏しい理解力ではこの話は難しかった
場面がころころ変わっちゃうともうお手上げだ…

時系列で起こった出来事を教えてくださると嬉しいです

失礼なこと言ってないで読み返しなさい

>>946
理解力が小学生以下じゃないですかーやだー

結局続けるのか?

いくら時間が開いても続けて欲しい
いつまでも待つ

ともかく一巻の完結までは見届けないと、(うっかりぽっくり)死んでも死に切れない……

明日更新。

明日更新。

良かった  間に合った

本当なら嬉しい

でも酉ないよね

どうなる?

>>952-953
誰やねんw
相変わらず書けてないですが951さんも言うとおり一巻分だけは何とか区切り付けて置きたいですねー・・・
何とか根性出して頑張ってみます

やっぱ偽物か…と思ったら本物キター!ww
マジで期待してんだから頑張って!

本物を召還するとはこいつできる

もう覚えてないな

本物降臨しとるやんw
あとわずかだけどこのスレで終わるんか?

次スレはよ

頑張れ頑張れ

はよ

>>965
シネよ

もう覚えてないや、内容

頑張れ頑張れ

もうそろそろヤバイ

もう8ヶ月書いてないじゃん

ふぁいと

気が付いたらXmasがXデーなんだな
願わくば1サンタの来たらんことを

つーかイブで3ヶ月じゃん
残り考えたら次スレを立てるところだろうけど

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