御坂妹「あなただけが世界」(28)

ss速報vip復旧が遅いのでこっちにスレ立て

欠陥幻想が大好きな>>1です。
御坂妹のss少なすぎ…。
どうせなら自分で書いてしまおうと思ってスレ立てしました。

原作の設定や
時系列等々都合のいいようになっていますが
二次創作ですのであしからず。

絶対能力進化計画当初ですが上条さんは高1という設定です。インデックスさんとは出会う前。
インデックスはおそらく登場しません。

カップリングは
上条×御坂妹(00001号)となっております。

こまけぇこたぁの精神で読んでください!



第七学区の細い路地を、脱兎のごとく駆ける少年がいた。



上条「はぁっ…はぁっ…はぁっ」



いい加減撒いたか?

そう思って彼が振り返った先には、いまだ7人余りの不良(スキルアウト)たちが同じように息を切らして走ってきていた。

前を走るこの少年、上条当麻は現在不良達に追われている。



上条「不幸だ…」

彼の口から、今日で既に何度目かわからないセリフがこぼれる。

何が不幸かといえば、彼が家を出た時からもう既に不幸だった。

例えば地面を転がる空き缶があったとして、この少年ならば間違いなくそれを踏んでしまう。

今回は、その空き缶が彼の住む学生寮に転がっていたこと。

そして、その場所が寮の階段の前だったことが不幸だっただろう。

流れるような動作で、断末魔の叫びを上げながら彼は転げ落ちた。

十数段にも上る階段から転げ落ちた後でなお走り回ることのできる彼の打たれ強さは、間違いなく日々の不幸の産物といえる。

彼にしてみれば嬉しい事でもなんでもないのだが。




語るのも億劫であるが、この少年はその後スキルアウトの抗争に巻き込まれている。

冒頭から彼が追われているのは、それがそもそもの原因。



『ただぶつかっただけ』



彼にかかれば、ただそれだけのことで騒動の渦中の人物になり変われてしまう。

ただぶつかっただけ―――ほとんど大勢の人々は、偶然という言葉でそれを処理するだろう。

偶然空き缶を踏んでしまったり、それが原因で転んでしまったり。

はたまた、偶然怖いお兄さんたちにぶつかってしまうこともありえる。

しかしこの少年に限っては、それらの出来事を偶然の一言で処理することが出来ない。

ただの偶然と呼ぶには、頻度が、遭遇率が高過ぎる。

だから、今日の出来事は必然と呼ぶのが相応しいのかもしれない。

この世界のシステムは―――それを作った神様は、この少年のことを嫌っているようだから。



―――少年の不幸は、これだけでは終わらない。

入り組んだ路地を駆け抜け、大きく視界が開けた先に待っていたのは大型の研究所だった。

学園都市に点在している数えきれないほどの研究施設の中でも、一際大きいものであることが伺える。

彼はすぐさま左右を確認した。




上条「不幸だ…」



不幸だった。

少年が右を見た先に飛び込んできたのは、赤く大きな文字で書かれた通行止めの文字。

丁寧にバリケードが施されているところを見るに、工事中の場所のようだ。

右に逃げ道がないことを理解した脳は、全身の運動神経に、左に走れと命令を下す。

右に走ることが出来ない以上、もう左にしか逃げ道はない。

地面を蹴り、驚異的な加速力を見せた少年だったが、顔を上げた途端その足は止まることになった。




……さすがはスキルアウト。



この学区を根城にしているだけのことはある。

彼らは、あらかじめ半数に別れて挟み撃ちを狙っていたのだ。

足には自信のある少年だったが、ここにきて地の利が不良達の方に味方をしたようだ。

背後は工事現場、左手は追手、前方にも追手。

万が一も彼が助かるとするなら―――



上条「…研究所に逃げこむしかない、か」

こめかみから流れる冷や汗を気にも止めることなく、少年は研究所へ向かって駈け出した。

背後で何やら不良達が騒いでいるが、絶対足は止めない。ついでに耳も貸さない。

ただ顔半分振り返るだけ。

少年の不幸は絶えない。

不良達は武器を持ち直し、また少年を追い始めた。

――――――――――――――

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―――――

――

……蹴り破るか。

研究所の入り口を前にして完全に足を止めてしまっているこの少年は、地理に疎いばかりか知識にも乏しい。

そもそもどうして研究所に逃げこむなどと馬鹿なことを考えてしまったのだろうか。

一般の学生が簡単に侵入できるほど、研究所のセキュリティシステムは甘くないと何故判断できなかったのだろうか。

蹴り破る…なんてそもそも無理な話である。

思い出して振り返ると、不良達は今か今かと少年に迫りつつあった。

距離から見て、不良達が彼に追いつくまであと30秒かからないだろう。

不良達の装いを見渡せば、バットを構えている者から、鉄パイプを握っている者……メリケンサックを装着している者まで、バラエティに富んだ面々が揃っていた。

この絶体絶命の状況下でも、彼らの姿を見れば日本の将来を憂いてしまう。




上条「しょうがない…」



少年の両の手が固く握られる。

できれば穏便に済ませたいと思い、逃げるを選択肢していた彼だったが、八方塞がりでは逃げようがない。

少年が選んだ道は、強行突破だ。

左の拳を引き、わずかに重心を落とし、構える。

日々の不幸が産んだ、少年独自の戦闘スタイル。

彼がようやく構えを見せたことによって、不良達の走行速度も落ちはじめる。

彼らもまた、各自の武器を次々に構え始めた。

両者の間に、一触即発のピリピリとした空気が流れる。


ウィイーーーーーーン


空気にそぐわない機械音に、不良達が目を見合わせた、その時。

すでに少年は彼らの前からその姿を消していた。






運よく研究所を出るところだった女性研究員と遭遇し、同じタイミングでドアをくぐることで難なく侵入成功。

さらに幸運な事には、不良達に気を取られた女性研究員は、この少年に気が付かなかった。

いまごろ彼らはアンチスキルでも呼ばれて逃げまわっているのだろうか。

見えない扉の奥に思いを馳せ、ひとしきり心のなかで罵倒した後、少年は動き出した。

おそらく研究所内は監視カメラが作動しているだえでなく、警備ロボットも徘徊しているに違いない。

となれば、一箇所にとどまり続けるのはナンセンス。

少年は特にこれといった考えもなく、施設の奥へ歩を進めた。





そのとき少年は、彼が彼である所以を忘れていたのかもしれない。

予想外の形で回避された危機も、偶然も、ラッキーという言葉で片付けてしまうほどに。

彼は、その小さなラッキーも、大きな不幸へ続く道に過ぎなかったということを、どこまでいこうと自分は不幸であるということを、ソレを見た瞬間に悟った。

ソレと呼ぶには少々語弊があるかもしれない。

なぜなら、ソレが指すものは複数、それも数えきれないほど存在したからだ。

少年はあれを知っている。

あれは培養液とか呼ばれる液体だ。

しかしなぜ培養液に人間が浸かっているのかは少年の理解の範疇を超えていた。

それもひとりやふたりでなく、大勢の人間が、ただ目を閉じて、髪を漂わせて、培養液の中に存在している。

誰だってそうだし、この少年もそうだ。

この光景を見た瞬間、悪寒がした。

ワイドショーに出てくる殺人現場の第一発見者なんかも、こんな気分だったんじゃないかと思う。

言葉にするなら、見てはいけない物を見てしまった。

そんな気分。



思考を遮るように、背後からけたたましい音が響いた。

前にも聞いたことがあるこの音は、警備ロボが異常を察知して発しているものだ。

以前同じような音を聞いたのは、今回とは違い彼のせいではない。

彼の知り合いの中学生が、彼の隣で無銭飲食をしたせいだ。

あのときは何故か少年も逃げる羽目になって



……まったくアイツのせいで散々な目にあったんだっけ


警備ロボが追ってきているのに、自然と少年の足が止まった。

別に止まろうと思って止まったわけじゃない。

心になにかがひっかかったのだ。

何にひっかかったのか、振り返れば分かりそうな気がする。

振り返ると、すぐそこにまで警備ロボが迫ってきていた。

客観視するなら、ここは脇目もふらずに逃げる場面のはず。

でも、今の彼には危機感も、焦りもない。

ただ欠けたピースを拾うように、背後に広がった異様な空間に再び目を向ける。

ここで振り返らなければ、あるいはまったく別の人生が待っていたのかもしれない。

でも、少年は振り返るという道を選んだ。

振り返ると、少年の心のなかのモヤが一気に晴れる。

そしてもう後戻りできないということが、彼には驚くほどすんなりわかった。




見えてしまえば、もうごまかせない。

もう、逃げられない。

他ではない自分自身が見つめているから。



培養液を漂うその人は、少年の顔なじみの中学生、御坂美琴に間違いなかった。

ちょっと投下

少年は、つまらない。

彼の人となりがつまらないというわけではなく、ただ彼は生きていることがつまらない。

この少年――『一方通行』の日常は、学園都市で暮らしているその他大勢の人々のそれとはまるで違っている。

たとえば殆どの学生は今学校で過ごしているが、彼は行くあてもなくダラダラと歩いていた。

230万人の頂点、つまりこの街で最高の頭脳を誇る彼は学校に通う必要がないのだ。

だから、この少年はやることがない。

彼へ宛てられる奨学金は他の学生とは桁が違うため、働く必要もない。

彼の一日のほぼ大半は睡眠に当てられており、他の時間はといえば、ただ眠くなるまで無駄に時間を消費するだけ。

あとは、そう。

こんな風に―――。




「おい、てめぇが第一位様か?」



うざったそうに顔だけ振り返ると、そこには数人の武装集団がいた。

数えるのも億劫であるが、今日はこれが2回目の襲撃である。

一回目は二人組の能力者が、二時間ほど前に襲ってきたと思う。

『思う』という、曖昧な表現を用いたのは、この少年にとっては記憶に残るほどの出来事でもなかったからだ。

故に、彼は襲ってきた二人の顔を覚えていないし、どんな能力だったのかさえ知りもしない。

わかっているのは、あいつらも、こいつらも、『最強』の名に目が眩んだ馬鹿だということだけ。

そもそも、と彼は思う。

そもそも彼らは、最強という言葉の意味がわかっていないのか。




DQN1「てめぇを倒せば俺達がこの街の最強だ!」

DQN2「なんだ、聞いてたよりもヒョロくて弱そうなやつじゃねえか」ニタァ

DQN4「さすがにこの人数相手にしてビビってんじゃねえの?」



一方「やっぱりか。…オマエら最強って言葉の意味わかってンのか?」

一方「一番強ェから最強っていうンだよ」



言いながら、片足を地面に下ろす。

途端、地面にヒビが入り、彼らは吹っ飛んでいった。

ほら…。やっぱり少年は、もう彼らの顔など頭の中から消え失せていた。

気を失っているのか死んでいるのかさえわからない。

そんな男の顔を、身体を、全く見ずに踏みつけ越えていく。




一方「ゴミが束になったところで、ゴミはゴミでしかねェンだよ」

一方「集まったところで余計に見苦しいだけだっての」



吐き捨てるように告げ、ダルそうに伸びをする。

聞こえてるか聞こえてないかなんてどうでもいい。

ただ、悪態でもつかないとやっていられなかった。

ストレスは爆発寸前の所まで来ている。次に誰かが立ちふさがったら殺してしまいそうなほどに。




―――こんな生活が嫌だった。

学生たちは、尊敬の目で、憧れの目で、あるいは畏怖の目で超能力者を見る。

誰もが望む力の、その頂点に君臨する彼がほしい物、それは誰しもが持っている平穏な日常だった。

そんな彼から見れば、能力開発に勤しむ学生たちが滑稽に見えて仕方がない。

彼らは強大な能力を持たないことの幸せを知らないのだ。

だから、少年はただ欲しかった。

平穏な日常を。

そんなとき、ある男が現れた。

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――――

――




『少しいいかな?』



男は、オールバックヘアにサングラス、スーツという身なりだった。

どこの研究所の遣いなのかと尋ねたら、男は意外そうな顔をして何故そう思ったのかを聞いた。

自身が研究者に装具わない装いをしている自覚があったのだろう。

にもかかわらずひと目で見ぬいた少年を意外に思った。そんなところ。

少年にとっては簡単な事だった。

彼は自分の人生がどういうものなのか把握しているのだ。

それはまるで、箱の外から中を見つめているような感覚だった。

箱の中で生きる少年も、周りの人間も、世界も。決められた秩序の中で運命というレールに縛られて生きている。

そして少年は自分の人生を客観的に外から見つめて、把握していた。

少年に声をかけてくる奴なんて、最強の能力を研究して甘い汁を吸いたい研究者か、最強の座に眩んだ馬鹿しかいない。

いままでは例外なくそうだったし、これからもそうなのだろう。

それが彼の走る運命のレール。

神様から押し付けられた、ハズレの中のハズレのレール。

レールはどこまでも一本道で、どこかで交わることなんてない。


少年の答えを聞いた男は、どことなく満足気に頷いたあと、突拍子もない言葉を口にした。




曰く、『絶対能力進化計画』



その実験に参加しないかという誘い。

くだらないとでも言うように、少年はあっさりと断った。

レベル6――聞くに、男は少年に今より強くなれると言いたいのだろう。

他の超能力者にしてみれば、魅力的な誘いなのかもしれない。

しかし、この少年に限っては興味もない話だった。

学園都市の第一位。

それは、つまりこの世界で最強だという不動の肩書。

今より強くなったところで、それは変わらない。

論外だ。

これ以上男の話に耳を傾けるのも面倒であるため、少年は歩みを進めた。

しかし、続く男の言葉は、彼の心を確実に揺らした。



『たしかに君は最強の能力者だ』

『しかし最強止まりでは、君を取り巻く環境はずっとそのままなんだ』

『しかし最強の先にある、絶対的な力ならば――君の生活に、変化をもたらすかもしれないよ』



一方「最強の先……だと」




―――神様が少年に押し付けた、ハズレの中のハズレのレール。


いつまでも変わらないはずの彼の人生に、ひとつの波紋が広がった。

求め続けた、しかし手に入るはずもない彼の欲しかったもの。

曰く、『最強の先の絶対の力』

少年は、男の言葉に力を感じた。

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