アカギ「ククク………バレンタインか」 (42)

「あの、バレンタインチョコ、受け取ってくださいっ………!」

「え?あ、ありがとうっ……!」

アカギ「ククク………バレンタインか」

アカギ「男女の愛を誓う記念日に便乗し……食品メーカーがごぞってチョコを売りさばこうとする日、ククク」

アカギ「痩せた考え……それにのけられるあいつらも大間抜け、同情できねえっ」

この時…アカギ13才…この思春期真っ盛りの天才は…食品メーカーの思惑を完全に見透かしていた…!
世の中がバレンタインに毒されている中、唯一人気づいていたっ…!
この行事の奥に潜む悪魔…!悪鬼…!邪鬼…!物の怪の存在にっ…!

アカギ「ククク…」スタスタ…

アカギ…バレンタインの日…いつもと変わらぬ様子で登校っ…!

アカギ「…ん……?」

アカギ、自分の下駄箱の隣っ…!見つけるっ…!バレンタインチョコを……!
その下駄箱の男子に対する愛のメッセージっ……!甘いチョコ……!

アカギ「ククク……どうしてもっとスカッと生きねえのかな……」

アカギそのチョコを手にするっ…!通常の非モテならばそこで奪取っ…!横取りっ……!もてない男の醜いひがみっ…!
しかしこの若き天才は…そんなことをする輩からは最も遠いところにいるっ…!

アカギ「ククク……」パキパキパキッ!!

あろう事か砕くっ…………!

アカギ「これでいい…無意味な死…これこそがギャンブル…」
バラバラ…

その場に撒き散らすっ……!その日の気温は29度……確実に溶けるっ…!
掃除の時とても厄介な事になるっ……!
だがアカギは構わないっ……!

アカギ「………」スタスタ

アカギそのまま教室にっ……!

ガララララ…

アカギ「……」スタスタ

アカギ「ん…?」

アカギ…自分の机に座った時……天才ゆえに感じるっ……!ある違和感っ……!
そう……!昨日までなかったものが入っているっ……!バレンタインデー…そして机の異物……!
この符号が意味するものは……一つっ………!

アカギ「あらら」

アカギ…GETする……!チョコ……!バレンタインチョコをっ……!

アカギ「ククク………」

モブ「おうアカギ、どうせお前もチョコもらえなかったんだろ?くくく…」

モブ「悲しいやつだぜ、くくく…………」

アカギ「なに寝ぼけたこと言ってんだよ………」

モブ「なに?」

アカギ……見せる……チョコをっ……!

モブ「ば、馬鹿な!?てめえ裏切りやがったな!」

モブ「俺たち非モテと同じくもらえないんじゃねえのかよ!くそが!」

モブ「やっちまえーーーー!」

アカギ「ククク……便利だなこれ……特にもてない男の仮面を剥がすのに有効……」

アカギ「こいつの前では皆演技をやめてくれる………」

モブ「うるせええ!」

非モテ躍起っ……!集結っ………!アカギを殺すため……!襲いかかるっ……!

アカギ「くく……落ち着けよ」

モブ「なにぃ!?」

アカギ「勘違いするな……くれてやるさ」ドサッ

この時アカギ以外にも無抵抗……チョコをモブの足元に置く……!

モブ「ほーう…話がわかるやつだな」

モブ「まあ逆らっても、強引にねじ伏せてはいたがな…」

アカギ「俺もさ…」

モブ「え?」

ガキイィッ!!

モブ「くろぶあああぁぁっ!!?」

膝蹴りっ……!アカギ容赦のない膝蹴りっ………!

モブ「ひいいいっ!?」

「て、てめえぇ!?」

アカギ「ククク…!」シュッ

バキイィッ!!

モブ「ぎゃああぁ!」

モブ「ひいいいいいぃいぃ………!!?」

アカギ「お前は勘弁してやる…その代わりこいつらの後片付けだ…」スタスタ…

モブ「ひいいいいいいいいいいいい」

アカギ「ククク…」

アカギ……非モテを尻目に廊下へ……!

アカギ「……ん?」

石川「アカギ」

アカギ「ククク………どうかしたの?」

石川「うちの組長がお前とニセアカギ、どっちがチョコを沢山もらえたか、どうしても知りたいそうだ」

アカギ「クク……」

アカギ……石川につれられ川田組へっ……!

ガララララ

石川「組長、アカギを連れてきました」

川田組長「おお、アカギ、待っとったぞ……!」

ニセアカギ「来たな……アカギ……」

アカギ「クク……」

ニセアカギ「さあ、どちらがチョコを多く貰えたか……勝負といこうじゃないかっ……!」

川田組長「新旧アカギの対決……久々に胸が熱くなるぶつかり合いじゃ」

ニセアカギ「どうした………?俺はこの日のためにワックスを付け……お洒落なサングラスをしたっ…!」

ニセアカギ「女にモテる為に努力して来たんだっ……!お前などに負けるものかっ…!」

アカギ「クク……なるほど…凡夫だ、的が外れてやがるっ……!」

ニセアカギ「なにっ……!?」

アカギ「そんなことをすればする程……食品メーカーの思う壺っ……!生贄っ……!食物っ…!」

アカギ「ククク………」

ニセアカギ「貴様っ……!なら勝負だっ……!」

アカギ「待て……お前が自信満々にふっかけて来た勝負だ……何を賭ける事になっても文句は無いな……?」

ニセアカギ「なに?」

アカギ「髪の毛すべてだっ………!」

ニセアカギ「なんだとっ……!?」

ざわ………ざわ………………

アカギっ……!まさに狂気の沙汰っ……!悪魔の誘いっ………!
男にとって最も恐ろしいハゲ………!脱毛っ……!それを強要するっ……!
ハゲになってしまえば……そうっ……!お洒落など意味はないっ……!笑われるだけっ……!
されないっ……!生涯……人間扱いっ…………!

ざわざわ………

ニセアカギ「ば……馬鹿なっ……!受けられるわけないだろっ……!」

アカギ「なぜ…?」

ニセアカギ「なぜもくそもないっ……!ハゲになればっ……!おそらく貰えないっ…!生涯チョコなどっ……!」

ニセアカギ「笑われるっ……!道を歩いただけでっ……!負け犬っ……!」

アカギ「クク………それこそがギャンブル……無意味な死こそ……本質っ……!違うかいっ………!?」

ニセアカギ「タイプが違うんだろ……俺とお前では……」

アカギ「タイプじゃないっ……土俵の問題さっ……お前はチョコを貰っただけでバレンタインデーを知った気になっている……!」

アカギ「勝負師ではないっ……!」

ニセアカギ「きさまっ……!」

川田「まあまて、アカギ」

アカギ「?」

川田「お前の言い分…古い人間のワシにはよく分かるっ…しかし今日はなんでもチョコで図る時代じゃ…」

川田「ここにチョコが200ある……アカギが勝てばこのチョコを全て渡そう…馬券を買うようなものじゃ」

アカギ「クク………買いましょう…その馬券……!」

ニセアカギ「勝負だアカギっ……!俺は8個チョコを貰ったっ………!」バッ

ニセアカギっ……!八個っ……!驚愕の八個っ………!一個で万々歳と言われているチョコを八個っ………!
モテ男っ…………!紛う事なきモテ男っ…………!

アカギ「クク……」

対するアカギは一個っ…………!話にならないっ………!
一個対八個っ………!勝てないっ…………!このままでは敗北っ……!敗走っ…………!
しかしこの若き天才は………!全く別のストーリーを予想しているっ………!

アカギ「俺は20個だっ…………!」バララッ

ニセアカギ「…!なにっ……………!?」

川田「ほおーーー……」

ニセアカギ「馬鹿なっ……20だとっ………!?なぜ……」

アカギ「クク…………」

アカギの策は単純明快っ…………!買い占めっ………!
学校にくる前………コンビニで購入しておいたのだっ………!チョコをっ…………!
アカギは知っていたっ…………今日の学校のカーストはチョコで決まる事をっ………!
所謂隠し預金っ……………!

ニセアカギ「そんなっ………」

アカギ「組長、では遠慮無く………」ガサッ

川田「手間かけたな、アカギ」

アカギっ……!得るっ……!200ものチョコをっ…………!両手では抱えきれない程の甘味っ……!

ガララララ…

キーーーーンコーーーーンカーーーーンコーーーーーン

鳴るっ………!この時始業のベルが……!すなわち授業開始っ………!
生徒は皆……着席を強要されるっ………!

アカギ「ククク………」スタスタ

がっ………!アカギはこれをスルーっ………!一瞥もしないっ……!
まっすぐ昇降口に向かうっ……………!アカギ………!あろう事かっ……………!

帰宅っ………………………!

アカギ「ククク……………」スタスタ

伝説の日は……続くっ………!

もう眠いから寝るっ………………………!

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