アカギ「ククク……リベリオンズか」 (82)


強敵、市川との死闘に勝利し行方をくらました、赤木しげる

彼が再び姿を現したのは、その6年後

それまでの間、アカギは生き死にの博打を繰り返していたという

13歳……年齢的には中学に通う年頃であったアカギは一体どこで何をしていたのか

謎に包まれた空白の6年間……その伝説の一ページが今、明らかになる……!


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1383455198


目を覚ます……赤木しげる

そこは森の中……圧倒的、森林……!

「ククク」

アカギ……笑う!

目が覚めて、見覚えがない場所……意味不明な状況にも関わらず、不適に笑う

「面白い」

歓喜……!

アカギは楽しんでいた……この拉致されたという状況を!


「動かないで」

その時、登場……少女!

圧倒的、赤……レッド……スカーレット……バー二ング!

燃えるような赤い髪をした少女……登場……!

その首には金属の首輪!

特殊な性癖の持ち主……というわけではないらしい

アカギの首にも同じ首輪がある

おそらく……この首輪は誘拐犯の手によって取りつけられたもの


「藤堂悠奈よ。あなたの名前を聞かせてもらえるかしら」

「アカギ……赤木しげる」

自己紹介……まずは互いに名乗り合う

「それで、アカギは今の状況がわかってるのかしら」

「いや、ぜんぜん」

「なら何で笑ってるのよ」

腑に落ちないと言った顔つき

アカギの回答は少女にとって納得のいくものではなかった


それも当然のこと

拉致された状況を楽しむなど、まともな人間であればあり得ない

「それで、藤堂さん。この首輪は何なんですか」

「そこから説明が必要か……OK。ポケットにPDAが入ってるでしょ」

懐を探るアカギ

出てきたのはトランプを模したゲーム機のようなもの

これが……PDA!

「電源、つけてくれる」


「わかりました」

この時、アカギ意外に素直

PDAを操作する……!

浮かび上がったのは人、旗、地図の3文字

地図……は文字通り、ここら一帯のマップ!

これにより、アカギは薄々理解し始める

自分が拉致された意味

これから始まるギャンブルを


その後もアカギは淀みなくPDAを操作する

とても生まれて初めてPDAに触れた人間の対応とは思えない

赤木しげる/プレイヤーナンバー7

クリア条件/メモリーチップを10個以上保有する

ルール

1. プレイヤーには各自固有のPDAが与えられる
PDAに表示された『クリア条件』をゲーム終了までに達成せよ
ゲーム終了については後日通知される

2. プレイヤーはPDAを3時間以上手放してはならない
なお、身体から1m以上離れた状態を手放したと見なす

3. プレイヤーに装着された『首輪』を外してはならない

4. ゲームのフィールドは区画分けされた複数のエリアから構成されている
プレイヤーは制限されたフィールドから外へ出てはならない

5. ゲームには複数のプレイヤーが参加している
他者のPDAの所有・使用は自由だが、クリア条件が成立するのは初期に配布されたPDAにのみ限定される
PDAは本来の所有者がリタイアした場合、そのPDAを操作不能にする

6. 上記ルールに反しない限り、プレイヤーのあらゆる行動を許可する
また、クリア条件を満たせなかった場合、もしくはルールに違反した場合はプレイヤーを失格と見なし、首輪を爆破する


「ふーん、なるほど」

アカギ、完全に現状況を理解……!

「無茶苦茶な文面だったと思うけど、信じるわけ」

一方、悠奈はそんなアカギの様子に不信感を抱く

果たして、初めてゲームに参加した人間が、この状況を簡単に受け入れられるのかと

「言っとくけど、これは冗談でも何でもないのよ。クリア条件を満たせなければ、首輪は爆発するわ」

「ククク」

「ちょっと、何がおかしいのよ」


「あんた、このゲームに参加するのは二度目か」

「!?」

アカギ、見抜く……!

レッドガール……藤堂悠奈がゲームに参加するのが二度目であるということを!

「何で、そんな」

「別にただ何となく、そう感じた。俺に話しかけてきた時からあんたの気配は他と違っていた」

「気配って、あんたねぇ」

「それに藤堂さんの言動は違和感がある。無茶苦茶な文面と言っておきながら、あんたはルールが真実であると確信していた」


「私の言動から考察したか……拉致された状況にも関わらず、そんなことを……まあいいわ。私のPDAを見せるから、そっちのも見せてくれるかしら」

このゲーム、情報は間違いなく重要になってくる

故にここで断られる可能性もあるだろうと、悠奈は考えていた

「かまいませんよ」

が、しかし、アカギ、またしても素直

「物分かりがいいのは助かるわ」

自分のPDAを見せながら、悠奈はアカギのPDAを確認

アカギのクリア条件

それはメモリーチップとやらを10個集めること


悠奈が目を付けたのはその次

特殊機能!

PDAには一人に一つ、特殊な機能がついている

ゲームの展開を左右しかねない重要なポイント

アカギのPDAの特殊機能……それは、半径10メートル以内にいるプレイヤーのメモリーチップの所持数を表示するというもの

比較的平和な機能に悠奈、安堵

とりあえずは一安心

クリア条件、特殊機能共に好戦的な内容ではない


「状況を整理しましょう」

アカギのクリア条件

メモリーチップを10個以上保有する

現時点でアカギはメモリーチップなるものを知らないが、悠奈は知っている

故にクリアー……!

集めるものが何か分からないという状況は解消された

続いて特殊機能

半径10メートル以内にいるプレイヤーのメモリーチップの所持数を表示する

これに関しては現時点での使い道はない


「これは命がけのゲーム。しくじったら、私たちの首輪はとぶ。それは理解したかしら、アカギ」

「くどいぜ、藤堂さん」

クリア条件を満たせない場合は爆死

首輪が爆発し、アカギは命を奪われる

まさにデスゲーム!

死の遊戯

命懸けのギャンブル……!


「それじゃあ、そろそろ行動を開始するから」

「その前にやることがある」

「何? まだ確認してないルールでもあったかしら」

「いや、そんなことじゃない。ただ、この玩具は」

アカギはPDAを持った手を振り上げ……

「いらない」

放棄……!

地面に叩きつける!

「……は?」

悠奈、唖然


地面に叩きつけられ、PDA損壊!

液晶は真っ二つに割れ、外側のプラスチック部分は十字に砕け飛び散る!

木端微塵!

このゲームにおいて命と同等のPDA

それをアカギは何の躊躇いもなくドブに捨てた!

意味不明

理解不能

狂った暴挙!


「あ、あんた、何やってんのよ!」

悠奈、叫ぶ!

アカギのあり得ない行動に驚愕……そして激怒!

「何がですか」

「何がって、自分が何したか分かってるの?!」

このゲーム実は案外、ルールが曖昧に出来ている

ルール2の『プレイヤーはPDAを3時間以上手放してはならない』は、PDAの状態までは指定されていない

故にたとえ、PDAが壊れようとも、持ち歩いていれば、ルールに抵触しない可能性はある

加えて、プレイヤーは自分のPDA以外のクリア条件ではクリアできないとされているが、クリアの際にPDAを持っていなければならないとは記されてない

「でもね、PDAが壊れた時点でゲームの続行が不可能と見なされて、首輪を爆破される可能性もあるのよ」


「そいつは初耳だ……でも関係ねーな、そんなこと」

「っ……!」

更にアカギはPDAによって得られていた恩恵

時計、地図、特殊機能

ゲームを進めていく上で重要になってくるもの全てを失った

時計と地図に関しては、悠奈と行動を共にすれば問題はないが、特殊機能は別

一人に一つ与えられる機能をゲーム開始早々失うというのは、あまりにも痛い

ゲーム開始時からアカギは他の全プレイヤーに差を付けられたことになる

麻雀で例えるなら、東一局、聴牌してリーチをかけたのにも関わらず、流局時、ノーテンだと言い張って手牌を伏せるようなもの

イカれた蛮行、狂った行動、クレイジーな暴挙!


しかも、実はそれだけではない

これはアカギの知らないことだが、PDAにはメモリーチップを差し込むことによって、地面に埋まった食糧や武器の座標を表示する機能がある

これも、悠奈と行動を共にすればある程度は解消されるだろうが、万が一離れ離れになった時が痛い

ゲームの期間七日間

その間、ずっと一緒にいられる保証などないのだ

何が起こるか分からないゲームである以上、安易な考えは死を招く

「人の話を聞いてたの! このゲームは命がけなのよ。ゲームをクリアするのに、何でこんな馬鹿な真似を」

「ズレてる……全て!」

「は……?」


「こんな、運営の都合で何時変わるかも分からない条件、満たす意味はない」

「まさか……気づいてるの」

それ以上は言えない

ゲームに二度目に参加する悠奈はこの先ゲームがどうなるかを喋ることを禁じられている

クリア条件が人の死亡によって変更されることを話すことはできない

「ククク、クリア条件とやらが途中で変わるのは大よそ察しがついてる。人を拉致したにも関わらず、物探しをさせるだけの条件じゃ、ゲームとして盛り上がらない」

「っ……! でも、だからってPDAを壊すことはないじゃない」

「つくづく的が外れてるな、藤堂さん」


「運営が用意した条件を満たしたところで、それは本当の勝利とは言えない」

「あんた、何言って」

「藤堂さん。俺はハナから運営が決めたゲームの条件なんて、達成する気はないんですよ」

「……それ以外で首輪を外す方法を探すっていうの。このゲームを知らないから、そんなことが言えるのよ」

悠奈は知っている……このゲームがいかに過酷なものか

クリア条件を満たす以外に生還する方法がないということも

少なくとも、彼女はそれ以外の方法を、見つけることはできなかった

「アカギ。あんたは下手をすれば、あと三時間で死ぬ。仮に生き延びても、PDAが壊れていればクリアを認めてもらえないかもしれない。そうしたら、ゲーム終了時にあんたの首輪が爆発して」

「その時は、ただ、死ねばいい」

「え……?」


「死ぬときがきたのなら、ただ死ねばいい。どちらにせよ、クリア条件を満たしたところで、それは俺にとって勝ちとは言えない。
なら同じさ……そんな勝利は俺にとって敗北と何ら変わらないんだから」

暴論、あまりにも無茶苦茶な発言

だが、ならば何故……

「俺は赤木しげるとして生きて、赤木しげるとして死にたいんだ」

ここまで説得力があるのか……!

「それに言っとくが勝つ気だぜ、俺は。あんたは3時間だのゲーム終了時だのと言ってたが、ダラダラした勝負をする気はない」

「でも、ゲームの終了時間は運営が」

「ならそいつらを潰せばいい。クリア条件を満たすだの、そんな手の込んだことは不要だ。俺はもっとストレートに行くよ」

アカギの目的……それはこのゲームの運営の打倒!


「拳銃を貸してくれ、藤堂さん」

ゲーム二度目の悠奈は早い段階から武器を調達していた

「……何に使う気?」

「いいから見てなって」

本来であれば、悠奈は軽はずみに拳銃を渡したりしない

彼女の目的は全プレイヤーの生存であり、そのために武器を自分以外が持つことを良しとしない

「……わかったわよ」

しかし、この男であれば何かしてくれるのではないか

自分『たち』が出来なかった何かを成し遂げるのではないか、という根拠のない期待を抱いてしまう


馬鹿げている、何を期待している……ゲームのルールは絶対……それを覆すなど不可能

その考えは間違ってはいない

ただし、例外はあった

それが、後に神域と呼ばれ伝説となる男……

「面白い、狂気の沙汰程、面白い!」

赤木しげる……!

アカギは銃を首輪に向けると、躊躇なく引き金を引いた

「ちょっと!」

止める間などありはしない……!


銃弾が首に当たれば、それだけでアウト!

圧倒的絶命……!

首に密着している首輪のみに銃弾を当てるのは、事実上不可能

あまりにもリスクが高い行為

狂っている……狂気の沙汰……!

敵に遭遇する前から、命がけ!

あまりにも分の悪い賭け……!

並の人間なら死ぬ……ゴミのようにあっさりと絶命

デッド……ダイ……すなわち、死亡


「嘘……でしょ」

「何でもいい。手段は選ばない。地獄を一度くぐっちまうことさ。藤堂さん」

地面に落ちて、転がっていく首輪

「ツキの女神はいつだって、その先にしゃがみこんでいる」

アカギ……生還!

爆発する首輪、その呪縛から解放される……!

そして、これによってクリアー

おそらくは最短……ゲーム始まって以来、最短のスピードでアカギはゲームをクリアした


(こんなことが、あり得るの)

悠奈、呆然と立ち尽くす

アカギの偉業、その神業に声も出ない

(別領域、発想が常人のそれじゃない)

ゲームに巻き込まれた人間の思考は大きくわけて二パターン

こんなゲームあり得ない、テレビ番組のドッキリだと現実逃避するか

ゲーム運営に憤りながらも、クリアを目指すか


悠奈は後者だった

かつて彼女は運営に怒りを覚えながらもゲームクリアを目指した

結局、受け入れるしかなかったのだ

このゲームが終わったら、運営をぶちのめしてやる

そうやって意気込むことはできても、ゲーム中は彼らに従うしかない

しかし、この男、赤木しげるは違う

第三の選択肢、ゲームを初めからやらないことを選択

挙句の果てには拳銃で首輪を破壊


「行くか……! もう一度死線をくぐりに!」

ルール4、プレイヤーは制限されたフィールドから外へ出てはならない

この文書からフィールドの外には運営の人間がいるということが推測できる

首輪を外した以上、アカギを縛るものはもう何もない

拳銃を片手に、アカギは走り出す……!

命懸けのギャンブル

運営との対決をするために……!


まずアカギの行く手を阻むのは地雷原

地雷の森……!

踏めば一瞬で体が木端微塵に砕け散る地雷の隙間をアカギは駆け抜ける!

運営も首輪が破壊されることは予想外

当然、対応が遅れる

その隙を突くためには、一つ一つ地雷を掘り出している暇などない

またしても狂気の沙汰……折角、拾った命をアカギは再び危険に晒す


いかに勝負強いアカギとはいえ、一つ間違えば地雷を踏むこともありうる

そうなれば、死ぬ

神がかり的な技で生還したにもかかわらず、塵芥のように消し飛ぶ

地雷を踏んで死ぬという、意味のない死をとげる

「そうなった時はただ死ぬだけだ……!」

犬死にを辞さない……!

あふれる才気を持ちながら、そんなものなんだと惜しげもなくドブに捨て死ねる!

それが赤木しげる……!


走りつづける赤木

その前に立ち塞がるは運営の用意した兵隊

車から次々と降りてくる

圧倒的、重装備!

スコーピオン

3点バースト

圧倒的サブマシンガン!


それに比べてアカギが持つ銃はハンドガン

この時点でアカギ、相当不利……!

しかも最悪なのは人数……アカギは1人に対し、運営実行部隊はここにいるだけでも10名

10倍! 10倍の訓練を受けた人間と戦闘を強いられる

正面からの戦いはまず無理

ここは森に隠れつつチャンスを伺うのが定石

運営実行部隊もそう読んでいる

だからこそ、アカギは……

「面白い……渡って見せよう、その綱」

突っ込んだ……!

猪突猛進……圧倒的、正面突破!


予想外……!

一瞬は驚くものの、実行部隊は銃を構える

そして発砲……!

銃弾の嵐がアカギを襲った!

が、アカギはそれを回避

避けながらも、少しずつ前進

「ククク」

その表情に恐れなし……!


「何だ、このガキは」

戦いが始まってしばらくすると実行部隊の隊員たちに動揺が走る

マシンガンの嵐、それは確かにアカギを捕えていた

全く当たらないわけではないのだ

「馬鹿な、何で銃弾が一発も『直撃』しないんだ」

あり得ない現象……!

急所に当たらない!

仕留めるには至らないため、アカギは動き続ける


「くそ、殺せ! 殺せ!」

銃を乱射する実行部隊の隊員

対するアカギはスコーピオンで反撃!

そう……アカギは倒した実行部隊隊員から銃を奪っていた

圧倒的、剥ぎ取り!

モンスターハンター!

運営側の武器の優位は消滅する


結果、全滅……この場にいた実行部隊10名は全滅した

「足りねえな、この程度じゃ」

だが、アカギは満たされない

訓練された兵士との戦いもアカギを満足させるには至らなかった

次なる敵を求めてアカギは突き進む

実行部隊の乗ってきた車を奪いアカギはアクセルを踏んだ


立ち塞がる実行部隊をアカギは車で跳ね飛ばして進む

銃弾が次々とガラスを突き破ってくるが、完全無視!

装甲車が立ち塞がろうと、アカギはブレーキを踏まなかった

衝突して転倒する可能性は承知の上で、アクセル!

ひたすらアクセルを踏み続ける

圧倒的暴走車!

一見すれば、完全に狂っている


だが、実のところ中途半端に止まるよりも、こちらの方が生き残る可能性は高いのだ

十四人のプレイヤー全員が反旗を翻したのならともかく、現在運営に立ち向かっているのはアカギのみ

結果、実行部隊は全てアカギに差し向けられている

目先の安全を優先してブレーキを踏めば、瞬く間に取り囲まれて袋叩き!

圧倒的、リンチ……!

よって、アクセルを踏み続けるが正解

異常こそ正常……!

狂気に身を任せることによって、アカギは生還の道を見出す!


「ククク、ここは島だったわけだ」

驚愕の真実……!

廃村かと思われていたゲームフィールドは実は島だった

圧倒的、アイランド

砂浜をアカギは車で進み続ける

が、しかし、ここで狙撃!

アカギの心臓を狙った一撃


「舐めるなよ、俺を……!」

アカギはハンドルをきって、それを回避!

無論、銃弾が見えていたわけではない

直感……天性の感覚がそれを可能にした

だが、アクセルを踏み続けた車で、急ハンドルをきれば、当然転倒は免れない

ハリウッド映画のように車は横に回転、転倒!

アカギは砂浜に投げ出される


「よし、今だ。奴を倒せ!」

そして、ここで真打ち登場

通称、運営の男……!

この運営の男というのは、単なる運営の雑兵ではなく、このゲームを取り仕切るゲームマスターの役割を担っている

実は以前にゲームに何度も参加していたベテランプレイヤーであり、現役を退いたとはいえ、その実力は折り紙付き

そして運営の男の周りには、実行部隊の隊員が約40名!

この島にいる生き残った実行部隊を全員ここに集結させていた


「残念ですがアカギ様。あなたはここでゲームオーバーです」

「どうかな……!」

「確かにあなたの実力は素晴らしい。その実力はあの粕谷瞳をも上回るでしょう。しかし――」

運営の男が手をあげると、実行部隊がサブマシンガンを構える

「ここに集められた実行部隊は40名。加えて、ここは砂浜だ。身を隠す場所など、ありはしない」

「……」

「予想外の展開にお客様も満足されたことでしょう。ゲームを盛り上げていただき、ありがとうございます」


そして始まる、最終決戦……!

運営の男はあくまで慢心することなく、アカギを追いつめる

実行部隊は運営の男の指示によって、統率のとれた動きを見せていた

一方、アカギは劣勢

運営の男の言う通り、砂浜に遮蔽物はない

唯一あるのは、自らが乗ってきた車のみ

そこに身を隠し、チャンスを伺う……!


アカギが車に隠れたのを見た運営の男は狙いを燃料タンクに切り替える

まずは、車を爆破し、遮蔽物を完全になくす作戦……!

車の爆発にアカギが巻き込まれて死ねばよし

死ななかった場合、遮蔽物を失い姿をさらしたアカギを、サブマシンガンで狙い撃ちにする

合理的、尚且つ隙がない指示

運営の男、圧倒的優秀……!

「ククク、脆い……その盤石にするというのが危険……!」

「見てろ、凍りつかせてやる!」


スコーピオンを握る手をあげたアカギ

その狙いは運営の男……ではない

あろうことか、アカギは銃口を自身が隠れている車の燃料タンクに向けた

間を置かず発砲

銃弾が燃料タンクに直撃する

圧倒的、爆発……!

車が爆発し炎上した


「むっ……!」

爆発によって、土煙が巻き起こる

「そうか、奴は、これを狙って」

運営の男が気づいた時には遅い

アカギは煙に紛れて突撃していた!

「同士討ち狙いか、懐に入られる前に撃ち殺せ」

「ククク、遅いぜ」

アカギは既に実行部隊の中に紛れ込んでいた


「どこだ、どこにいる!」

声が聞こえたにも関わらず、アカギの姿はない

「司令、奴が見当たりません」

「ちっ、一体、どこに……まさか」

(ククク、気づいたか)

アカギは倒した実行部隊の一人から奪った服を、車を爆破する前に取り出して、着替えていた

「くそ、よく顔を見て探せ、奴は我々に紛れ込んでいる」

が、それをさせまいとアカギはスコーピオンを乱射!

たちまち実行部隊は混乱に陥る


(こんなところで終われるか)

運営の男はこれまで数多くのゲームでゲームマスターを務めてきた

あらゆるイレギュラーに対処してきた

それが……こんな、たかがゲーム一つ

プレイヤー一人のために、自分の身に危険が迫っている

あってはならない事態

ここで逃げ出しても、運営の男は組織から責任を取らされる

殺されるか、再びゲームに放り込まれるか

(冗談じゃない)

ゲームマスターのプレイヤーとの大きな違いは同じ駒でも、安全域にいられる駒であるということ


(こんなガキ一人のために、今まで築いてきたものを失ってたまるか)

その執念が成せる業か……実行部隊の中に尖った鼻……ついにアカギを発見する

(死ね、蛇が……!)

懐に入れられていたベレッタを取り出しアカギに向ける

(貴様を殺す……鉄槌だ!)

が、しかし……駄目……!

引き金にかかった指に力を入れる寸前、運営の男の拳銃は宙を舞い地面に落ちる


「な、何故!?」

圧倒的、狼狽……!

アカギは他の実行部隊の相手をしていて、こちらに気付いてはいなかった

ならば一体、誰が……

「っ……!」

目に入ったのは燃えるように赤い髪

スカーレットレディ……バー二ングプリンセス

まるでヒーローの如く、颯爽と姿を現したのは紅蓮の反逆者……

「藤堂……悠奈……!」

本日はここまでにします。読んでくれた人に圧倒的感謝……!


「馬鹿な……何故、起こる、こんなことが!」

運営の男、叫ぶ!

あり得ない事態……!

悠奈の首に巻かれているはずの首輪の消失

それが意味すること、それは、彼女がアカギと同じく拳銃で首輪を破壊したということ

「命が惜しくないのか、死ぬ、一つ間違えば死ぬんだぞ!」

「あんたに言われなくても、そんなことわかってるわよ」

当然、悠奈も承知していた

首に銃弾が当たるリスクについて……!


「私はアカギのようになれるわけじゃない」

かつて参加したゲームで悠奈が愛した男性……蒔岡彰

彼から貰った命を絶対に無駄にはしないという誓いを胸に悠奈はゲームに挑んでいた

アカギの言うところの無意味な死の肯定……それとは対極に位置する信念

「でもね、命を無駄にしないっていうのは、ただ安全域で生き延びればいいってわけじゃないのよ!」

死ぬ間際になっても『死にたくない』と喚き、無様に命を奪われるような人間……そんなものはゴミ……!

圧倒的無価値……!


悠奈だけでは、拳銃で首輪を破壊するという思考には至らなかった

仮に至っても、実行することはできなかった

だが、道……!

道が切り開かれた……アカギは拳銃を使用して首輪を破壊するという道を示した

それに呼応する……すなわち風……旋風!

「ここにいることが私にとって最善の判断だった」

ゲームが始まって殺し合いに発展した際に自分や他の参加者が死ぬリスクとここで首輪を外して運営を潰して運営と戦うリスク

より多くの人間が生き残る可能性が高い方に悠奈は賭けた

「私は『命を無駄にしない』ためにここにいる」


ここまでの道のり……それは左程、困難なものではなかった

地雷原……悠奈は一つ一つ地雷を撤去しながら足を進めた

圧倒的、リスク回避

アカギを迎え撃つために、動ける実行部隊の殆どが砂浜へと集められていたため、第二関門もほぼノーリスク

まだ僅かに息のある実行部隊員にだけ気をつけて進めばよかった

「私がやったことと言えば、アカギの切り開いた道をただ通っただけ。だから三流、赤木しげるという男に言わせれば、おそらく私は三流の人間」





「いいじゃないか、三流で」

背後から声があがった……!

実行部隊の隊員を殲滅したアカギ……悠奈の隣に立ち言い放つ

「熱い三流なら上等よ……!」


「アカギ……あんた」

「やるぜ、藤堂さん。これが正真正銘、最後の戦いだ」

「そうね……それと、いつまで私の事をさん付けで呼ぶ気よ。似合わないからやめなさい」

「ククク、そうかい……悠奈」

「それでいいわ、しげる」

このやり取りに運営の男、苛立つ……!

「恋愛ごっこか? あ? 愛だの恋だの、そんなもんで、このゲームを、理不尽を覆せるとでも思ってんのか!」

その言葉に僅かに口元をつりあげながら……

「「ズレている(わよ)……全て……!」」

アカギと悠奈が同時に言い放った


赤木しげるという男にとって女など勝負の合間の休憩に過ぎない

よって、彼が恋愛感情などというものを抱くことはない……!

藤堂悠奈が愛した男性は生涯において蒔岡彰ただ一人

よって、アカギを色恋の対象として見るなどあり得ない……!

運営の男の主張は圧倒的的外れ!

「もういい、お前ら死ね! ゴミになれ……!」

運営の男……マジギレ!

取り出したのは日本刀……!


「あれは、彰の……!」

「そう、これは一年前のゲームで蒔岡彰が使っていた日本刀だ。愛した男の刀で死ねるなら本望だろう」

刀をチラつかせながら、運営の男は芝居がかった動作をする

「あんた……! やっぱり、最低ね!」

「おやおや、これもゲームを盛り上げるための演出なのですが、お気に召してもらえなかったようで」

「そうやって勝負が始まる前から相手の動揺を誘おうとする手法、人を嵌めることばかり考えてきた人間の発想……痩せた考え……!」

「ちっ……口が数の減らないガキが!」

運営の男は刀を振りかぶりながら、アカギに接近する


悠奈はそれを銃で牽制

「しげる、体の具合はどう」

横目でアカギを見ながら問いかける

アカギの身体は運営実行部隊との戦闘で並ならぬ傷を負っていた

急所にこそ当たっていないとはいえ、流した血液の量は少なくはない

「足りねえ、まだ足りねえよ……この程度の相手じゃ、生を実感するどころか、スリルすら感じない」

「……」

強がっているわけではない

この男は本気で、この状況に何の恐怖も感じていない

圧倒的な異端者……!


とはいえ戦いが長引けば、不利になるのはこちら側

故に……

「さっき言ったわよね、しげる。ダラダラした戦いはしないって。
 30秒……30秒で片をつけるわ……!」

超短期決戦……悠奈はアカギに策を伝える

「ククク、面白い」

アカギは間を置かず同意

一歩前にでる


「作戦会議は終わったか」

二人のやり取りが終わるのを見計らって、運営の男が口を開く

「あら、待ってくれてたの」

「これもゲームを盛り上げるための演出ですよ」

「そう、ならこちらも最高のショーをお見せするわ」

悠奈が発砲……!

運営の男は右に移動してそれを回避

直後、急接近する


「藤堂悠奈……まずは、お前からだ!」

振り下ろされた刀は、悠奈の身体を切り裂く寸前、阻まれる

赤木しげるによって……!

「何だと……!?」

運営の男の刀をアカギは両手で挟み受け止める

圧倒的、真剣白刃取り……!

「馬鹿な、こんなことが……!」

蛇? 否……赤木しげるという男はそんなものではない

その程度の枠には収まらないことを運営の男は理解する


「悪魔、こいつは……悪魔!」

取り乱す、運営の男

その隙を、悠奈は見逃さない

渾身の力を込めた、回し蹴りを運営の男にくらわせた!

「ぐっ、ぐぁ……!」

それでも、まだ意識を失わない運営の男

元ベテランプレイヤーの意地を見せる

「今よ、しげる……!」

「ククク」


次の瞬間、アカギ……飛ぶ!

圧倒的、飛び膝蹴り……!

「かはっ……!」

顔面を蹴られて、運営の男の体は宙を舞った

そのまま地面に落下

薄れゆく意識の中で運営の男はかつての自分を思い出す

運営組織を告発しようとした結果、捕まり薬物を投与され運営の駒にされたこと

藤田修平と細谷はるな――自分には子供が二人いたこと


そして、その二人が今回のゲームの参加者であること

「俺は、何をして……」

今更後悔などしても遅すぎる

自分の手は、どのプレイヤーよりも血に染まっているのだから

だが、しかし、今回のゲームは開始早々に潰され破綻した

赤木しげるの手によって、完膚なきまでに叩き壊された

つまり、修平とはるな、その両名は無事だということ

そのことに安堵しながら、運営の男は完全に意識を失った。


こうして私、藤堂悠奈はこの狂ったゲームから二度目の生還を果たした。
あの後、私はしげると一緒に他のプレイヤーを回収して、島を脱出したわ。
その過程で彰の姉だった少女と私の一騎打ちや物語の世界から出てきたようなチェーンソーを持ったメイドとしげるの死闘、藤田一家の再会など、色々あったけど、それを語るのはまたの機会にさせてもらう。

島を出た私たちをゲームの主催者はしつこく追ってきた。
海上警察などにも根回しされ、逃げ場を失った私たちを保護したのは、運営組織と対立している集団、エース。
彼らの手によって、私たちは何とか運営組織の手から逃れることができたの。
エースは私たちに国外への逃亡を勧めたわ。運営組織から逃れるためには、それしかないと言った。

乙…っ!

素晴らしい作品…!…とても乙…!

>>1は…これを「乙」と認識した…っ!

違う…!断じて否…っ!間抜けもいい所…っ!

「乙」…これは…馬の尻尾…っ!

圧倒的…!圧倒的ポニーテールっ!

ざわ…ざわざわ…っ!

勘違いするな…っ!…間抜け…!…固定観念に飲まれた…ss作者の末路…っっ!!

乙…!これは…「乙」ではなく…ポニーテールだ……っっ!!

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年06月29日 (月) 17:35:46   ID: uDkpryFd

完全な俺得クロス。
本当にありがとうございました。

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