双葉杏「きらりはバカだなぁ」(118)

双葉杏(17)


杏「……え? ユニット?」

ちひろ「はい。事務所の方針としてソロよりもユニットに力を入れようってことになったんです」

杏「……めんどくさい」

ちひろ「まぁまぁ、そういわずに! とってもいい子なんですよ?」

杏「いいこって言われても……っていうか、自分でいうのもなんだけど普通にイイコだったら杏と一緒なんて無理だよ?」

ちひろ「そこは大丈夫ですよ……えぇ、大丈夫ですとも」

杏「……?」

杏「まぁ、なんでもいいけどさ……」

ちひろ「それじゃあ部屋に入れてあげてもいいですか? 実は今日ついてきてもらってるんですよ♪」

杏「えー、部屋が汚いし入れたくないなー」

ちひろ「……平常運転じゃないでしょうか」

杏「だけどほら、こういったら帰ってくれない? ダメ?」

ちひろ「……いちおう、少し聞いてきますね」


   ガチャッ……バタンッ


杏(……ユニットかぁ。めんどくさそうだしなぁ)

杏(でもひょっとしたら一緒にだらけたりとかして、飴とかくれて甘やかしてくれたりするかも……)

杏(…………なんてね。期待するだけ無駄無駄、めんどくさいしやめとこ……)

杏「まぁ、別にどっちでもいいか……ん?」

杏「なんか……妙な気配が……」

   ガチャッ!

きらり「おっじゃましまーす☆」

杏「へ? だ、だれだおまえ!」

きらり「にょ? きらりはー、きらりだにぃ?」

杏「き、きら……?」

きらり「そーお! きらり! うぇへへへ、杏ちゃんだよねー?」

杏(で、でかい……180はあるし、なんだこいつ……)


諸星きらり(17)

ちひろ「……はい。というわけでこちらが杏ちゃんのユニット候補の諸星きらりちゃんです」

きらり「にょっわー☆ よろしくぅー!」

杏「あぁ、うん……」

ちひろ「さぁ、輝かしいトップアイドル目指して頑張ってくださいね!」

きらり「うんうん、がんばりゅっ!」

杏「……」

ちひろ「私は他の子のユニットの説明をしないといけないのでここらへんで失礼します。頑張ってくださいね?」

きらり「はーいっ!」

杏「……え、連れて帰らないの?」

ちひろ「仲良くなるためにはまずは会話からですよ、杏ちゃん! では!」

   ガチャッ   バタン

杏「……あー、なるほどなぁ」

きらり「うぇへへへ……きらりがアイドルー☆ やっばーい☆」

杏「ねぇ、つい最近アイドルになったとか?」

きらり「え? うんうん! そーなの! なんでわかったのー? スッゴーい!」

杏「いや、杏みたいなのを押し付けられて文句言わないってことはそういうことかなって思っただけ」

きらり「杏ちゃんみたいなのー? 杏ちゃんとーってもかわいいにぃ?」

杏「……」

きらり「にょ……どしたー?」

杏「別に。いやになったら文句言えばたぶんちひろだって鬼じゃないし、ユニット変えてくれると思うよ」

きらり「むぇー! なんでそういうこというの?」

杏「別に……私に期待しないでくれればそれでいいよ。杏は何もしないから」

きらり「なんにもしないの? ……あっ! そかそかー、今日はお休みだもんね!」

杏「そうじゃなくて……いや、いいや」

きらり「うきゃ?」

杏「別に、なんでもない……お休みだったら貴重な時間でしょ? 帰って好きなことしてたら?」

きらり「好きなこと……じゃあここにいるにぃ!」

杏「……はぁ?」

きらり「だって、杏ちゃんと仲良くなりたいんだにぃー?」

杏「……」

きらり「……だめ?」

杏「……ま、いいか。あんまり散らかさないでね」

きらり「えー、もうグチャグチャーってなってゆよ?」

杏「これがベストの配置なの」

杏「~~♪ よし、4面クリアっと……」

きらり「……」ソワソワ

杏「……」

きらり「……」モゾモゾ…

杏「……なに?」

きらり「あっ、なにしてるのかなーって気になったの……おしえてー?」

杏「んー、古いゲームだよ。結構ムズいんだよね……」

きらり「そーなの? 杏ちゃんじょーずだにぃ!」

杏「まぁ、慣れてるし。……やってみる?」

きらり「いいの?」

杏「ずっと見られてたら集中できないしさ。ほら」

きらり「にょ……よーっし! やったるにぃ!」

   ピコピコピコ
          ピョピョピョピョピョ

      ドゴーン  テッテレテテーテテン

きらり「むむむ……むぇー、むつかしい……」

杏「まぁ、初めてならそんなもんじゃない? ……んー、おなかへったなぁ」

きらり「にょ……そーいえば、きらりも少しおなかすいたかも……」

杏「じゃあ今日はどこの出前にしようかな……っと……」

きらり「わぁ、いっぱーい! すごーい!」

杏「……なんか食べる? 別に、いいけど」

きらり「えーっと……ねぇねぇ杏ちゃん、だいどころ借りていーい?」

杏「台所? 別にいいけど」

きらり「よーっし、それじゃあ杏ちゃんはなにが食べたいー? ピザにすぅ? おそばにすぅー?」

杏「……ピザかなぁ、これのSサイズと……なに食べるの? ピザ、いらないの?」

きらり「むむむ……りょーかい! じゃあ、デリバリーはちょっとおまちあれー☆」

杏「……?」

杏「……なんか言って外にいっちゃったけどどうするんだろ? ピザ、やっぱり頼もうかな」

        ガチャッ

きらり「たっだいまー! もー、近くのスーパーがどこかわかんなくてスゴーい遠回りしちゃったのー! むぇー!」

杏「あ、お、おかえり……? なにその荷物」

きらり「杏ちゃんが、ピザがいいーって言ったから今からピザを作っちゃうの! スゴいでしょー! うぇへへへー」

杏「は? ピザを家で……?」

きらり「うんうん! コンロはあるからー、おさかなを焼くところでやけばバッチシ☆」

杏「……え?」

きらり「にょ? どしたー?」

杏「いやいや、わざわざそのために買い物にいったの?」

きらり「うん! スーパーの場所わかんなかったにぃ、きらりってばドジっこ?」

杏「……信じられない。他人のためによくそこまでできるね」

きらり「だっていっしょにがんばるお友達だもん! ねっ?」

杏「……いっしょにがんばる、か」

きらり「よーっし! やったるにぃ! 杏ちゃんも一緒に準備すぅー?」

杏「いや、いいや」

きらり「そかそか、じゃあ具はどーしよっかなー? こっちとー、こっちとー」


杏「……期待しないでよ、やりづらいなぁ」ボソッ


きらり「……にょ? 杏ちゃんなにか言ったー?」

杏「べつに。変な奴とユニット組むことになったなぁって思っただけ」

きらり「へんなやつじゃないもん! きらりだにぃ!」

杏「はいはい……」

きらり「かんせーっ! にょっわー! ばっちし☆」

杏「どれどれ……うわ、すごいね」

きらり「うぇへへへー、きらりんチャレンジだいせいこー☆」

杏「……」

きらり「杏ちゃん、どうぞー?」

杏「え? いや、杏は……」

きらり「……にょ、きらいなものあった?」

杏「……ま、いいや。もらうね」パクッ

杏「……」モグモグ…

きらり「どーかな? どーかな……?」

杏「……やるじゃん、結構おいしいよ」

きらり「そかそか☆ うぇへへへー、ばっちし!」

杏「……」

きらり「きらりもー、いっただっきまーすっ! あーんっ」パクッ

杏「……」

きらり「にゅふふふ……おーいしー☆ きらりってばすっごーい!」

杏「……あのさ」

きらり「にょ、杏ちゃんどしたー? ……あっ! 足りなかった……?」

杏「違うけどさ。どうしてここまでするの?」

きらり「だってー、一緒に……」

杏「……いっしょにがんばるお友達だから?」

きらり「にょ……うん。そうそう! きらりね、杏ちゃんと仲良しになりたいの」

杏「………ま、いいや。とりあえずはい」

きらり「うきゃっ!? こ、こんなにお金もらってもこまっちゃうにぃ!」

杏「買い物と、ついでにいろいろ走り回ったみたいだしお駄賃だと思っておいてよ。駅の場所はわかる?」

きらり「……わかんない」

杏「案の定かぁ……はぁ」

杏「ごちそうさま。とりあえず駅までは案内してあげる」

きらり「にょっ、いいのー?」

杏「居すわられても寝る場所とかないし。暗くなってから帰して何かあったとかもめんどくさいしね」

きらり「心配してくれてゆー? うぇへへへ、ありがとー☆」

杏「そうじゃなくて……いや。そうだね、はぁ、歩くのめんどくさい……」

きらり「だいじょぶー?」

杏「だいじょばない。杏はこういう子なの、覚えといて」

きらり「りょーかい!」

杏「……」

きらり「にょ、どしたー?」

杏「いや、素直だね……まぁ別にどうでもいいんだけどさ」

きらり「んにぃ……?」

杏「……寒い。でも厚着とかめんどくさいし動きづらいんだよなぁ……」

きらり「杏ちゃんだいじょぶ? えーっと、えーっと……」

杏「あーうん。まぁ割と慣れてるからさ……さっさと送るよ……」

きらり「そかー……むー」

杏「……はぁ、でも疲れた。もう歩きたく、なっ……」

   ヒョイッ

きらり「こう!」

杏「な、ななっ!? なにすんだ!」

きらり「杏ちゃん、あるくのつかれりゅーっていったから、だっこならだいじょーぶかなって思ったの!」

杏「へ? あぁ、いや……でも、それじゃあそっちが疲れるでしょ?」

きらり「へーき、へーき☆ きらりんパワーがギュンギューンってきてゆからだいじょーぶだにぃ?」

杏「きらりんパワー、ねぇ……ま、いいや。それならまぁ、このままで……」

きらり「うぇへへへー、よしよーし☆」

杏「……あ、やっぱりちょっと待って」

きらり「んにぃ? どしたー?」

杏「抱っこは流石に悪いからおんぶにする」

きらり「りょーかい☆ ささ、どぞー?」

杏「ん……」ギュッ


きらり「よーっし、きらりん号、ごーっ!」

杏「おー、いけいけー」


杏(……変な奴。同じユニットってだけでこんなに構うなんてばっかみたい)

杏(でも……これなら……ちょっとは……)


きらり「次の角はどっちー? ……あんずちゃーん?」

杏「え? あ、うん。右かな」

きらり「りょーかい! きらりん号まがりまーす……」

杏「よし、到着だね。よくできました」

きらり「すっごーい! 迷わなかったにぃ!」

杏「一応この道ぐらいはわかるよ……外に出る気はほとんどないけどね」

きらり「えー、いい天気なのにもったいなーい☆」

杏「天気なんて気にするのもめんどくさいだけだし……っくしゅ。あー、じゃあ杏は帰るから」

きらり「あっ、杏ちゃん!」

杏「……なに?」

きらり「よければこれどーぞ? きらりのマフラー☆」

杏「……ひらひらのふわふわで正直浮いてるんだけど」

きらり「そーなのー! ふわふわで浮いてるみたいでしょー?」

杏「………」

きらり「にょ? どしたー?」

杏「いや、いいや。家に帰るまで寒いし借りとくね」

きらり「うん! 次のレッスンであおーねっ!」

杏「なんだかなぁ……変な奴。ホント、変な奴」

杏「……割とあったかいなこのマフラー」

杏「さっさと家に帰ってゲームの続きしよっと……」


杏「……レッスンかぁ。めんどくさいなぁ」

――――

――

杏「……はぁ。おはようございます」

トレーナー「はい、おはようございま……杏ちゃん!?」

杏「……」

きらり「あっ、杏ちゃん! おっはよー☆」

杏「あー、うん。ほら、マフラー」

きらり「あっ、ありがとー! うぇへへへ、うれすぃー☆」

杏「……このまま帰りたい」

きらり「杏ちゃん、いっしょにレッスンだにぃ? がんばろーっ!」

杏「……」


トレーナー(23)

トレーナー「えーっと、着替え終わりましたね。それじゃあ軽いアップからやっていきましょう!」

きらり「はーいっ!」

杏「……おー」

トレーナー「まずは柔軟から。ケガの予防は大切ですよー」

きらり「にょ、にょっ、にょわー……むぇー」グッ グッ グッ…

杏「……」ベタン

きらり「にょっ!? 杏ちゃんすごーい!」

杏「……うん、別に」

トレーナー「……」

きらり「むー、きらりもべたーってできるようになりたいにぃ……」

杏「真面目なんだしそのうちできるようになるんじゃない?」

きらり「そーかな? うぇへへ、そうだといいなー」

トレーナー「それじゃあまずはステップの基本から練習していきますよ?」

きらり「むむむ、いっちにー、さんしっ」

杏「いちにーさんし……」

トレーナー「はい、そこでターンしてクラップ。顔は笑顔で!」

きらり「くるっ、パーン! いぇい☆」

杏「たーんしてっ……」ドテッ

きらり「にょ、杏ちゃんだいじょぶ?」

杏「……うん、まぁ」

きらり「ケガしてなーい? へーき?」

杏「別に、そういうのじゃないから気にしなくていいよ」

杏「……いち、に、さん」

杏「ターンして、クラップしてっ……」グラッ


杏「ターン、クラップ……」

杏「……ステップ、ステップ」

きらり「杏ちゃん……?」

杏「……はぁ、やっぱりダメかな」

きらり「にょ……杏ちゃん……」

トレーナー「杏ちゃん、いったん休憩したほうが……」

杏「あー、うん。わかった……じゃあ休憩のために家に帰るね」

トレーナー「あっ、待って! ね。見学していきましょう!」

杏「………」

きらり「杏ちゃん、どしたー?」

杏「あーあ、なんかできる気がしてたのになぁ」

きらり「にょ……」

杏「あれ、いちおう真面目にやってるんだよ。笑えるでしょ? どうすればいいかわかってるのに失敗するんだよ」

きらり「………」

杏「あーあー。やっぱり杏がやる気出すなんて慣れないことしないでおけばよかったかな……」

トレーナー「そんなことないですよ! ほら、今回は少し体調が悪いとか、ね?」

杏「毎回毎回、それ言ってて悲しくならない? 自分でも流石にそれは苦しいと思うよ」

トレーナー「で、でもほら……」

杏「……ね。トレーナーだってこういうぐらいどうしようもないんだよね、杏」

きらり「……」

杏「はぁ……休んでる間に上達したりなんてするわけないかぁ。ちひろには杏からペア変えるように言っておいてあげるからさ」

きらり「……まって」

杏「大丈夫だって、多少はいいやつと組めるでしょ? 杏をレッスン場に引っ張り出せたっていえばさ」

きらり「杏ちゃん待って!」

杏「……なに? やっぱりさぁ、向き不向きってあるよね。杏はめんどくさいこと全部だめなんだよ。で、全部めんどくさいの」

きらり「で、でも昨日はすっごく楽しかったにぃ?」

杏「そりゃあ、家にいるのは楽だもん。なんかちょっとやる気になってもいいかもなーって思ったぐらいにさ」

きらり「じゃあ、いっしょにやろ?」

杏「……やった結果が、今のだよ。ターンで転ぶし、ちょっとステップ踏んだら息が上がるし」

きらり「でも、ちょっとずつやればだいじょーぶ! ねっ?」

杏「努力なんてめんどくさいだけだよ。やってもできないやつはできないの」

きらり「……だいじょーぶだもん!」

杏「なんで?」

きらり「きらりがいっしょにやるから、ずーっといっしょにやるから! そしたらできるようになるにぃ!」

杏「……そしたらきらりのレッスンができないでしょ? トレーナーだって、期待の新人の足引っ張られるのは嫌じゃない?」

トレーナー「そ、そんなことありませんよ!」

杏「……」

きらり「ねっ? 杏ちゃん、いっしょにやろ?」

杏「……疲れるのは好きじゃないし」

きらり「だいじょーぶ! ぜーったいだいじょぶだにぃ!」

杏「なんだかなぁ……」

きらり「にょ?」

杏「わかった。めんどくさくなったら杏のことほっといていいからね」

きらり「うん! いっしょにちょっとずーつやろーね!」

杏「ステップでここをクロスして、そこからターンする……」

きらり「にょ、そうそう!」

杏「だから、頭ではわかってるんだってば……」

きらり「あとはー、ここでぐっ! ってやってぎゅーんってすぅの!」

杏「……ぐ? ぎゅーん?」

きらり「そうそう! ぐぐっ、ぎゅーん!」

杏「それでうまくいくなら苦労しないんだってば、まったく……」

きらり「そーお? でも、ここでぐっ! ってやんないとぐるんってしたときにぎゅーんってできないから……」

杏「……頭痛くなってきた」

きらり「にょ、だいじょぶ杏ちゃん?」

杏「別に。トレーナーは杏たちだけを見てるわけにもいかないから別のアイドルのほういっちゃったし帰ろうかなー」

きらり「あーんずちゃーん」

杏「……はいはい」

杏「いちにさんし、いちにさんし……」

きらり「うんうん……」

杏「で、ターンしてクラップ……っ」

きらり「そこ! そこでぐーっ!」

杏「ぐ……って……」

 クルッ  パァン!

杏「……あ」

きらり「にょ……」

杏「……」

きらり「杏ちゃんすっごーい! できたできたー!」

杏「……ただの、基礎中の基礎のステップだよ。これだけで、もう、息上がりそう、だし」

きらり「でもほら! やっぱりできるんだにぃ? だいじょぶだいじょぶ!」

杏「……ねぇ」

きらり「にょ、どしたー?」

杏「ステップひとつ覚えるのに、もう夕方だよ。すぐ疲れるから、休憩してばっかりだし」

きらり「でも疲れたままだとだめだにぃ? だからー、元気になるようにきゅーけー!」

杏「……休憩もサボりのうちだと思わないの?」

きらり「んー、でも杏ちゃんはがんばってるから休憩してもいいと思うにぃ」

杏「他の人はやれてるんだよ。終わらせてから休憩するのが普通なの」

きらり「……にょ」

杏「でも杏はそれが終わる前に休憩してるの。ほら、めんどくさい」

きらり「でも杏ちゃんは、そうしなきゃ疲れちゃうんでしょ? じゃあ休憩もオッケー! ばっちし☆」

杏「……おひとよしなのか、バカなのかわかんないね」

きらり「むぇー、おばかさんじゃないもん! ぷんぷん!」

杏「はぁ……なんかひさびさにレッスンした気がする……」

きらり「おっつおっつばっちし☆ だいじょぶ?」

杏「ステップが1つ踏めるようになっただけだけどね……あーあ。なんか慣れないことなんてするんじゃなかったかな……」

きらり「でも杏ちゃん、できたときうれしそうだったにぃ?」

杏「うるさいなぁ、別にいいでしょ」

きらり「うん! とーってもよかったにぃ!」

杏「……」

きらり「にょ? 杏ちゃんどしたー?」

杏「いや。別に……」

きらり「そかそか、じゃあ気にしない!」

――――

――


杏「あーーー……ぁー。はぁ……」

きらり「にょっわーーーーーーーーーーーーーーーーー!」

杏「……よく息が続くね」

きらり「うぇへへー、ばっちし?」

杏「はぁ……疲れた……いきできない……」

きらり「しんこきゅー! すってー!」

杏「え? あ、すぅ……」

きらり「すってーーー!」

杏「す、ぅ…………」

きらり「すってーーーーーーー!」

杏「……ぷはぁっ、無茶言わないでよ!」

きらり「にょ、ごめんなさい……でも、これではいかつりょーアップってトレーナーさんが言ってたにぃ?」

杏「……へぇ」

杏「はぁ……疲れた……」

きらり「おつぁーしゃー☆ だいじょぶ?」

杏「……あのさ、杏のことばっかりみてていいの?」

きらり「にょ? どーして?」

杏「自分のレッスンメニューがあるでしょ? そっちができないんじゃない?」

きらり「んー、それはどうにかしちゃうからへーきだにぃ!」

杏「どうにか、ね……」

きらり「うん!」

杏「………」

きらり「どしたー?」

杏「きらりはさ、レッスン楽しい?」

きらり「うん、とっても楽しい!」

杏「そっか……」

きらり「杏ちゃんもじょーずになってー、いっしょにダンスしてー、いっしょに歌っちゃうの! うきゃー! アイドルぅー!」

杏「……」

きらり「杏ちゃん?」

杏「やっぱり、ユニット解消したほうがいいと思う」

きらり「にょっ……」

杏「……」

きらり「な、なんで? 杏ちゃん、きらりのこと、きらい……?」

杏「いや、面倒見もいいし正直いいやつだなって思うよ。でもさ……だから杏みたいなのよりもっといいパートナーがいると思うんだ」

きらり「そんなことないにぃ! 杏ちゃんいっしょーけんめーがんばっててすごいもん!」

杏「杏はさ、もう頑張らないのに慣れてるせいでちょっとやっただけですごく頑張ってるように見えるだけだよ」

きらり「でも、レッスン楽しぃって言ってくれたにぃ……」

杏「……ちょっとはさ、できる気持ちとか、やる気になるとか、わかったよ」

きらり「だったらいっしょにもっとがんばろ? ねっ?」

杏「だからダメだよ。今はちょっと楽しいけど、たぶんすぐにまたやる気なくしちゃうしね」

きらり「そんなことない! 杏ちゃんは……杏ちゃんは……」

杏「……安心してよ。きっとさ、もっといい人いるだろうし」

きらり「……あんずちゃん」

杏「はいはい、今日はここで解散……おつかれ、きらり。考えといてね」

杏(あーあー、慣れないこと言っちゃったなぁ)

杏(でも、ステップひとつできるようになるまでつきっきりで見てもらってないとダメなんて奴と組んでるよりはずっといいだろうし)


杏「……あ。お腹減ったなぁ」


杏(……ピザ食べたいなぁ。家に遊びに来るか誘うぐらいはしてみてもよかったかもなぁ)

杏(でもなぁ。あんなに恰好つけたこと言っといて家には来いなんていうのもなぁ……)

杏(……めんどくさいこと考えてるなぁ)


杏「杏らしくないや。さっさと帰って寝よっと……」

――――

――

  ピピピピッ  ピピピピッ  ピピッ

杏「……んー。朝起きるのは辛くないんだけどなぁ」

杏「あー。勢いであんなこと言わなきゃよかったかな……」


杏「……レッスンいくときらりがいるよなぁ」

杏「めんどくさいなぁ……ちひろに電話してユニット解消って言おうかな……」

杏「…………」ピッ ピッ ピッ

杏「……ま、いいや。今日はサボろう」

杏「……んんー? あれ、寝ちゃったのか」

杏「ふぁ……もう昼過ぎかぁ。レッスンしてたら休憩ついでに探検とか言ってたかなぁ」

杏「………」

杏「ま、いいや。さーて……うわっ」

杏「着信18件かぁ……多いな」

杏「……よし、電源切っておこう」

杏「これで向こうも杏がやる気なくしたと思って諦めるだろうし」

杏「……諦めるだろうし」

杏「ちひろにはなんていおうかな……実家の事情?」

杏「うーん、悩むなぁ」

杏「レッスンなんて疲れるだけだし、ぜんぜんできないし」

杏「………」


杏「……つまんないなぁ」


杏「まぁ、いいや。もうちょっと寝てよ……」

  コンコンコン

杏「……んぅ……」

   トントントン

杏「………ん……?」

   ……トントン

杏「……うわ、ずっと寝てたのか……もう夕方だ」

    ドンドン

杏「まぁこっちのほうが杏にはあってるよね……どうせレッスンだってまともに」

    ドンドンドン!

杏「うるさいなぁ! 誰!?」

  きらり『杏ちゃん? だいじょぶ? 風邪とかじゃなーい?』

杏「あ……」

  きらり『杏ちゃん……? おきてるよね? おでんわつながらないから、ひょっとしたら大ピンチかも! って思ってお薬買ってきたの!』

杏「………」

  きらり『だから、ドア……開けて? ね?』

杏「別に、そんなんじゃないから……」

  きらり『杏ちゃん、今日は調子悪かったんだにぃ? トレーナーさんにもちゃーんといったからだいじょぶ! ね?』

杏「……なんでさ」

  きらり『にょ?』

杏「昨日言ったでしょ? きらりは別のアイドルと組む方がいいって。だから今日はわざとサボったの」

  きらり『……どうして?』

杏「だから、めんどくさかったから」

  きらり『でもでも、だって! 楽しいって言ってたにぃ!』

杏「きらりはさ、すごいよ。杏みたいなのにも優しいし面倒見はいいし。スタイルだっていいしね」

  きらり『杏ちゃんだってかわいいもん! だから、いっしょにいるとハピハピすぅの』

杏「……可愛いアイドルだったら他にもいるよ。大丈夫だって、すぐになれるからさ」

  きらり『杏ちゃん……』

杏「ドア、開ける気はないから。帰ってよ」

  きらり『……また、くるにぃ?』

杏「………」

杏「……やっぱりちひろに連絡しとこう、かな」

杏「『そりが合わないからユニットの相手変えたい。真面目すぎてやってらんない』……っと」

杏「これでいいか。送信……」

杏「あんなしゃべり方だしでっかいから変な奴だと思われたんだろうなぁ。いや、変な奴は変な奴だけど」

杏「でも、杏みたいにめんどうな奴じゃないしねー。これで一件落着だ」


杏「……結局、アイドルなんてやめとけばよかったのかなぁ」

杏「実家に帰るのもめんどくさいなぁ……はぁ……」

――――

――

杏「………おっ、クリアだ」

杏「やるじゃん、流石は杏だ」

杏「1週間もこもったかいがあるね。うんうん」

杏「……1週間かぁ」


杏(なに期待してるんだろうなぁ……帰るわけでもなく、レッスンするわけでもなく……)

杏(そもそもちひろが返信してこないのが悪いんだ、うん。私は悪くないぞ)

杏(……きらりのパートナーが決まらないとかかなぁ)

杏「……はぁ。糖分補給しよう」

    コロン

杏「げ……もうこれだけしかないのか……」

杏「食っちゃ寝生活も続けてると飽きるんだなぁ……すごいね杏、まさかのだらけることすら放棄とは大したもんだ」

杏「素晴らしいだらけっぷりを評して、ずっと休んでいられる権利をあげましょー」

杏「わー、ぱちぱちぱちー」


杏「……むなしいなぁ」

杏「……飴、買いにいこうかな」

杏「そうそう、飴が足りないしね。うん」

杏「あー、飴がないとだらけてすらいられないなー。うんうん」

杏「買いにいかなきゃ……」

杏「……」

杏「外に出るのはめんどくさいなぁ」

杏「でも飴のためだから……うんうん、飴のため……」

 


杏「あー、道間違えちゃったなー」

杏「やれやれ、杏としたことが迂闊だなー」

杏「……なにやってるんだろうなぁ、ばっかみたい」

杏「なんで電車まで乗って事務所まで来てるんだろ」


杏(きらりがまた来るっていったのに来ないのが気になるからかな?)

杏(自分で来るなって言っておいて勝手だなぁ。うわぁ、めんどくさいやつ……)

杏「はぁ。ま、いっか……ちょっと覗くだけだし……」

杏「……んー」

ちひろ「あら、杏ちゃん。体調はもう平気なんですか?」

杏「へ? あ、ちひろ!」

ちひろ「おはようございます。ひさしぶりですね」

杏「メールの返信……っていうか、体調? なんのこと?」

ちひろ「あら、きらりちゃんが言ってましたよ? 杏ちゃんが少し調子が悪いからしばらくお休みするって」

杏「そんなのメールみたら嘘だってわかるでしょ?」

ちひろ「メール? さぁ、なんのことでしょうか」

杏「……とぼけちゃって。まぁいいや、きらりはどこ?」

ちひろ「あぁ、きらりちゃんだったら今レッスン場です。どうぞ♪」

杏「……うん」

杏「うーんと……あ」


  トレーナー「はい、ジャンプ! そこで手を引いて……」

  きらり「はいっ! えっと、こうやってー、むーっ!」

  トレーナー「いい動きですね。すごくいい感じですよ!」

  きらり「うぇへへへー、ばっちし?」

  トレーナー「えぇ、ばっちりです。これならかなり負担も――」


杏「……おー、やってる。なんか知らないけどハイレベルだなぁ」

ちひろ「そうですねー。きらりちゃんはかなり真面目でいいこみたいです♪」

杏「どの口がいうんだか。杏みたいなのよりもっといいパートナーをつけてあげてよ?」

ちひろ「あぁ、それなんですけどね……」

杏「……?」

ちひろ「あの動きを見てわかりませんか?」

杏「あの動きって……普通にレッスンしてるんじゃないの?」

ちひろ「……よく見ていてください。杏ちゃんならわかるはずですから」

杏「……まぁ、いいけど」


   きらり「いち、にぃ…ぎゅっとして、さぁん! とん、とん、くるりん☆」

   トレーナー「よし、いい感じです! でもあまり力を入れすぎると相手の負担になりますからね」

   きらり「りょーかい! むー、むつかしいにぃ」

   トレーナー「……きらりちゃんがしようとしてることは、それだけの難易度ってことですよ」

   きらり「でも、早くできるようにならなきゃ杏ちゃんが待ってるにぃ!」

   トレーナー「はいはい……」



杏「……杏が待ってる?」

ちひろ「ほら、あの動き。きらりちゃんがまるで誰かと手をつないでるみたいじゃありませんか?」

杏「……じゃあ、あれって」


   きらり「くるりん、くるりん、しゃるうぃーだーんす……」


ちひろ「はい。きらりちゃん、いろいろと考えていたみたいですよ?」


   トレーナー「ホンモノ相手だったら、重さもあるので腰を抱くようにですね……」


杏「杏と、ペアを組むための練習? 杏が疲れないようにするため?」


   きらり「でもでも、それだと続きの時にむつかしいにぃ?」


ちひろ「ええ。あそこまで熱心にやっている以上、止めるのも忍びなかったですから♪」


   トレーナー「そこはこう……こうして……」


杏「……なんだよ、それ……ばっかみたい」


   きらり「ふむふむ……」

ちひろ「それに、珍しいものも見れましたからね……ふふっ」

杏「何の話?」

ちひろ「いえいえ。杏ちゃんも成長したってことですよねぇ……さ、いってらっしゃい」

杏「へ? ちょ、ちょっと待って――」

   ドンッ


    きらり「にょっ」

    杏「あっ……」



ちひろ「……相手に見捨てられるわけでもなく、自分から人のことを思って身を引こうとする」

ちひろ「いやぁ、杏ちゃんにも可愛い一面があるんですねぇ♪」

ちひろ「従姉妹としても一安心ですよ、えぇ」

杏「……」

きらり「あ、杏ちゃん……いまのみてた……?」

杏「……まぁ、ね。変なこと考えたね」

きらり「う、うん。あのね? 杏ちゃんが疲れるのが無理ならきらりがお手伝いすればだいじょぶって思ったの!」

杏「そんなことしたら離れられないし、負担がやたらに増えるでしょ? いいの?」

きらり「だって、できたとき本当にに楽しそうだったにぃ? だったら、いっぱいっぱいできるようになるまでお手伝い!」

杏「……なんで」

きらり「にょ?」

杏「なんで、そこまでするのさ」

きらり「んーと……」

杏「杏はさ、なんにもできないんだよ?」

きらり「でもでも、いっしょのがんばろーって約束したにぃ?」

杏「あんなの、勝手に決められたことでしょ? もっともっと、いいユニットだって組めるはずだし」

きらり「むー……でも、きらりは杏ちゃんのこと大好きだにぃ?」

杏「は?」

きらり「だって、杏ちゃんはがんばりやさんだもん! すっごーくえらいと思うの!」

杏「普通なら、できて当たり前なんだよ。それができないし、やる気もないの」

きらり「だけどきらりといっしょのときはできたし、やってくれたにぃ?」

杏「それは……まぁ、だって、しつこかったし……」

きらり「うぇへへへ……すなおじゃないのねー?」

杏「そんなんじゃない! ……そんなんじゃ、ないし。ただ、できないんだからできないなりに、ほうっておいてくれたらよかったんだ」

杏「久々に、やる気になってさ。相変わらずダメな自分が嫌になった」

きらり「……」

杏「だから、ユニットなんて解散したほうがいいと思ったのに。バカだなぁ……」

きらり「うぇへへ……そうかも? でも、杏ちゃんと一緒だととーっても楽しいんだにぃ?」

杏「は、ははは……本当、きらりはバカだなぁ……」

きらり「杏ちゃん……」

杏「……すっごく、迷惑かけるよ? 杏、ダメダメだし、めんどくさいのいやだし」

きらり「だいじょぶ! いっしょに練習すればへーきだし、いやなこともお手伝いしちゃうにぃ?」

杏「じゃあ……じゃあ、さ」

きらり「うん」

杏「杏と、ユニット……組んでくれるの……?」

きらり「うん、もちろん!」

杏「……ありがと」

きらり「うぇへへへ……よしよーし」

杏「んー、もうちょっと撫でてて……」

きらり「うん! うぇへへ、さらさらー☆」

杏「………」

トレーナー「……オホン。いいですか?」

きらり「に゙ょっ」

杏「あっ。忘れてた」

トレーナー「杏ちゃん、あなたって人は……いえ、いいです。よかったですね」

きらり「うん!」

杏「……ごめんね?」

トレーナー「え?」

杏「ほら、トレーナーだって忙しいのは知ってるからさ……いろいろ、面倒だったでしょ」

トレーナー「あー、それは……まぁ。いいでしょう」

杏「……でも正直、杏はやる気になっても杏だよ? ステップもまた踏めなくなってるかもよ?」

トレーナー「あぁ、そこはたぶん大丈夫ですよ?」

杏「え?」

きらり「きらりんパワー!」ヒョイッ

杏「わ、わととと……」

きらり「杏ちゃーん、しゃるうぃーだーんす?」

杏「しゃ、しゃるうぃーだんす?」

トレーナー「きらりちゃんの動きに沿って動いてみてください。動線はきちんと考えているのでスムーズ……な、はずです」

杏「う、うん……」

きらり「わんつー、わんつー……」

杏「と、と、っと……」タンタン タタン

きらり「たーんっ、ぎゅっ!」

杏「わぁっ、お、おぉ……」クルッ

きらり「からの、すてーっぷ! いち、にのさぁーん!」

杏「わ、わわ、うわっ……!?」 トン タタン タンッ

きらり「あんどきゃっち!」ギュッ

杏「お、っとっと……はぁ……はぁ……」

きらり「どーお? ばっちし?」

杏「い、生きた心地がしなかった……あんなの動き、初めてしたよ……」

トレーナー「でも、きちんと動けてましたよ? きらりちゃんとのデュオとしてね」

杏「……むちゃくちゃだね。疲れないの?」

きらり「うぇへへへ、きらりんパワーでかいけつぅー?」

杏「振り回されるほうはまぁ、考えてくれてるんだろうけど……振り回す方の負担も大きそうだし」

きらり「だいじょうだいじょぶ! へーきだにぃ?」

杏「……少しは杏もステップ覚えるから、無茶はしないでよね」

きらり「杏ちゃん……心配してぅー?」

杏「まぁね……あのさ、きらり」

きらり「にょっ、な、なぁに?」

杏「ありがと。いろいろ考えてくれて……嬉しかった」

きらり「……にゅふふふ☆ 杏ちゃんてばかっわいー☆」ギュッ

杏「ちょ、た、たまには真面目にお礼ぐらい言おうかなって思ったんだ! 悪いか!」

きらり「んーん、うれすぃー☆」

杏「……はぁ、もう。今日は帰る」

きらり「にょ、杏ちゃん……」

杏「レッスンの時間ももうあがりぐらいだし……いいよね?」

トレーナー「まぁ、大丈夫ですけれど……」

杏「うん、じゃあさ、きらり」

きらり「なぁに?」

杏「うちに来てよ。ピザ焼いて欲しいんだ」

きらり「ピザ? りょーかいっ☆ まっかせてー!」

杏「あぁ、あわてなくてもピザは逃げないってば……ゆっくりでいいよゆっくりで」

きらり「にょ、わかったにぃ」

――――

――


杏「……うーん」

きらり「むぇー……」

杏「ちょっと焼きすぎたね」

きらり「失敗しちゃったにぃ……」

杏「ま、いいや。食べようか」

きらり「うん!」


杏「まぁ、でもそこそこおいしいかな」

きらり「うぇへへへ、杏ちゃんといっしょにつくったもんねー?」

杏「はいはい……」

杏「……あっ」

きらり「どしたー?」

杏「飴買ってくるの忘れてたなぁ……はぁ」

きらり「にょ、たいへーん! どーしよ? 買いにいくー?」

杏「でもめんどくさいしなぁ……」

きらり「じゃあきらりがおつかいすぅ?」

杏「いや、それは……ダメ。もうちょっとダラダラしてたいし」

きらり「そかそか……じゃあもうちょっとあとでいっしょにいくー?」

杏「あぁ、うん。じゃあそれがいいかな……」

きらり「むふー。でも食べてすぐに横になると牛さんになっちゃんだにぃ?」

杏「牛かー。牛の世界って結構大変らしいしなぁ、めんどくさそうだしいやだなぁ……」

杏「……ん…」

きらり「にょ……杏ちゃーん?」

杏「……すぅ……すぅ……」

きらり「もー、寝ちゃったのー? ……うしさんになっちゃうにぃー?」

杏「……へ、へへ……あめぇ………」

きらり「………」

杏「……ん、ふぅ…………」

きらり「ほっぺ、ぷにぷにー……うぇへへ……きゃわわー」

杏「んんー………」

きらり「にょっ、ごめんね? よしよーし……うん、だいじょぶかな?」

杏「ん……んん……?」

きらり「…………」

杏「あー、寝てたのか……あー、よく寝た……」

きらり「…………」

杏「きらりも起こしてくれればよかったのに。結構時間立ってるし暗く……きらり?」

きらり「……んにゅ……くぅ……」

杏「……寝てるの?」

きらり「………んみゅ……」

杏「なにそれ返事? へんなの……まったくもう」

きらり「………くぅ……くぅ……」

杏「膝枕しててくれたのかな。足しびれるだろうし起こせばいいのに……」

きらり「……ん…」

杏「おぉ、すごい……さらさらだなぁ。杏も少しはケアとか考えないとだめかなぁ……」

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